前回の検討会での議論を踏まえ、事務局において所要の修正を行った「裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策(案)」(資料35-1)に沿って、事務局より前回からの修正点を中心に説明が行われた後、議論を行った。(◎:座長、○:委員、●:事務局)
○ 最終案は、前回の検討会で私が申し上げた意見を相当程度採り入れたものとなっており、感謝している。ただ、一点確認であるが、事業者対消費者、事業者対労働者など弱者への配慮規定について基本的考え方の部分に盛り込んでほしいという意見については、1.(1)②の「広範な国民にとって」という形で反映されているということか。
● 「広範な国民にとって」という文言は、更に敷衍すれば、いわゆる「社会的に弱い立場にある人々も含め」という意味も込めて盛り込ませていただいたつもりである。ADRは一部の人達のものであってはならず、幅広い国民にとって選択肢となりうるような実質を備えた適正かつ実効的なものである必要があるとの趣旨をお示ししたものである。委員の御指摘の御趣旨は、可能であれば、できるだけ法案に盛り込んでいきたいと考えているが、表現ぶりについては、若干、わかりにくいようなものになっていることについては御理解いただきたい。
○ P4(注)の「基本的に、認証業務についての認証の要件の不適合や法令違反の疑いがある場合に実施されるものであって、個々の事案の処理における和解案の内容等の当否を問うことを目的とするものではない」について、再三問題にしているが、改善命令等、行政が監督を行う際に認証要件の(2)ウ②の能力を見る際に、万が一としても、個々の事件について調べる場合があると理解せざるを得ないが、そのような理解でよいのか。
● その点については、万に一つという意味においては、そのような可能性を否定するものではない。
○ P5「その他」は、仮に認証制度が導入される場合には何年か後に見直すとの意見を踏まえたものだが、今の段階で見直しに言及するということは、案そのものに不安があるということである。それならば、現時点で法律を作らなくとも良いのではないか。法律ができた後何年かの間に混乱や被害が生じた場合、その回復には相当な時間や労力を必要とし、大変である。また、再開後の検討会の第一回目で申し上げた今回の案の方向性以外の選択肢を議論する必要があるとの意見は、時間が足りなくなり、結局は議論されずに現在にまで至っている。今回の認証制度は、長年の間、実務に携わってきた経験から考えても、実務を踏まえたものではないと考えている。もっと実務を尊重してほしかった。
さらに、前回の検討会で寄せられたある団体からの意見について「委員限り」の資料であったとのことだったので、団体名を明示した発言は議事録から抹消していただいて差し支えないと申し上げたが、その後確認したところ、「お取り扱いには御留意いただきますよう」と書かれているのみであった。これまでも、例えば日弁連の意見書を引用した発言を行った委員もいるので、私の前回の発言はそれらの委員の発言と同等の扱いにしていただきたい。外部からの意見を明らかにせずに審議を行うことはいかにも閉ざされた議論というイメージになってしまう。何が問題になっているのか外部に知られることなく、検討材料が一つしかないと考えられることには懸念の意を表する。前回検討会の前に大川弁護士から「認証制度の導入に反対する意見書」というものをいただいた。大川弁護士は二弁の仲裁センターを立ち上げたときからの最初のメンバーであり、検討会のヒアリングでも発言されたことがある人である。この検討会の場で、その内容を具体的に紹介するつもりはないが、認証制度に反対するという大川弁護士の意見に賛同する弁護士が続々と名乗りを挙げているというものであった。そのような反対意見があるということも紹介したい。私は、この検討会の場でも前々から申し上げているように認証制度には反対であり、その内容については議事録をお読みいただければおわかりになるかとは思うが、今回、私の意見をペーパーにまとめて持ってきたので、私の意見として、これをインターネットで公表し、開かれた議論を行っていただきたい。検討会でも反対意見があったことを伝え、広く意見を聞いたうえで、それを踏まえた検討を行っていただきたい。
● 見直し規定の件については、委員のような意見も一つの考え方だとは思うが、他方、新たな制度を導入する場合、欠けている点を補うということも含め、状況を踏まえつつ、所要の措置が必要になれば考えていくという考え方も一つの見解であり、このような表現ぶりとさせていただいた。また、意見をインターネットに開示せよとの御意見については、委員の御発言に代えてとの御趣旨だということであれば、その点については措置したいと考えている。
◎ 前回の検討会の議事録について、他の委員と同様にするという点については御指摘のとおり措置させていただくが、具体的な隣接団体の名称を開示することは、必ずしも先方の了承をとっているわけではないので、場合によっては団体の名称については開示できない場合もあることを御了承いただきたい。
○ やはり、検討会の場で採り上げてほしいという事情があるからこそ意見を出してわけであるのだから、特に発表するなと言われた場合以外は、オープンにするのが原則なのではないかと考える。特に、前回の検討会で私が引用した部分については「検討会で検討してくれ」と書かれている部分なのだから、当然に検討会で採り上げられるべき事項であり、それを伏せておくのは誠意がない態度と見なされても致し方ないのではないか。本件については秘密にしなければならない事項があるわけではないと考えるので、その点を配慮した措置を講じていただきたい。
● いただいた御意見については然るべく委員の方々には配布しているし、意見書という形態をとってはいなくとも、説明会や意見交換などの場において外部の方々から提起された御意見についても会議の進捗に応じて随時、お諮りしているところである。決して、それらの御意見を我々が握りつぶしているわけではない。
◎ いただいた意見の趣旨に関係なく、その一部だけを捉え、「この点について検討していないのでおかしい」という形で引用されると、書面の提出者の意図とは異なることになるので、留意が必要ではないかと考える。
○ 見直し規定について、消費者側から見れば、例えば、今国会に提出された公益通報者保護法案、情報公開法案など、新しい形でスタートするような法律については、必ず見直し規定を盛り込んでいるので、法案になるのであれば、見直し規定を盛り込んでいただきたい。
認証制度については、消費者団体の中でも、意見数の多寡は定かではないものの、ADRの多様性・柔軟性にかんがみれば、必ずしも行政が認証するという仕組みをとらなくともいいのではないかという意見と、どのようなADR機関が出てくるのかわからないので認証制度は必要なのではないかという意見の双方がある。消費者保護のために認証制度を導入するのかとの意見もあったが、認証を取得することによっていかにも良いADRであるという誤解が生じるかも知れないことを懸念しており、必ずしも認証制度の導入が消費者を保護することになるとは考えていない。また、認証制度を導入すれば、たとえそれが任意の制度であったとしても大抵の機関は認証をとろうとするのではないかとの懸念もあるが、消費者側から見れば、16,000もが活動しているNPOにはNPO法で認証が行われている一方で、ADRに何も要件を設けなくともよいのかという話となれば、消費者側から見れば、手綱のようなものは必要であり、その中で多様かつ柔軟な選択肢を見出していけるのではないかとも考える。
最終的な結論としては、とにかくこの制度でスタートさせてみて、要件のハードルの高さなどを随時見直し、必要がないと判断されれば、ハードルを徐々に下げていくという方法も考えられるのではないかと思う。また、ADR法はADRの拡充・活性化のための一つの手法に過ぎず、法律以外にもたくさん考えるべき論点があるのではないかと考える。法律は一つの出発点に過ぎない。
◎ 認証制度を導入したときに、どれくらいの機関が認証を求めてくるのか、その多寡については現段階では予測できないところがあると思う。また、NPOとADRとは、その性格も法的効果の点でもかなり異なるので、一概に比較することは困難なのではないか。
○ 本日の取りまとめ案については、これまでの議論の経緯などを踏まえればこれで良いと考える。そもそも、多様な見解が存在する中で皆が満足するような形でとりまとめることは難しいが、法律を作るか作らないのかどちらがベターなのかを考えた場合に法律を作る方が良いという意見が多く、法律を作る際に必要となるだろう配慮については、各委員から色々な意見があり、それらがそれなりに反映された案となっていると考えるので、このような形でスタートさせて良いと考える。
執行力については、座長がおっしゃったとおりに理解している。座長は、再開後の検討会のはじめに民主主義の原則でと仰ったが、11人の委員がそれぞれの業界の代表として出席しているので委員の意見がそれなりに社会の意見を反映しているであろうが、一方で、11人の委員はあくまでも11人でしかないので、社会全体の意見ではないということもあろう。また、この検討会がスタートする前の審議会意見書における執行力の記載と今回の結論とは、ややニュアンスが異なるということもあるが、どちらが正しいということでもないだろう。どちらが優先されるということでもないであろうから、さらに幅広い意見を求めるというオプションもあっても良いのではないかと考える。
○ 調停前置について「調停前置の原則を適用しない」と書かれているが、前々回の検討会において、私は「調停に付することができる」旨を但書きのような形で盛り込んでほしいと申し上げ、事務局も「その方向で」と仰ったように記憶している。また、前回も意見という形で、認証ADR機関が裁判所の調停とは等価だと言えないと申し上げ、事務局にもそのような方向性で御検討いただけるものと考えていた。そのことについては、法案策定の段階で御配慮いただきたい。
また、執行力については、仮に付与することを考えるのであれば、執行決定や公証人の執行承認とは、一体いかなるものを決定する手続であるのか、そのような手続を付加してまで執行力を付与するのか等々についても、十分に御検討いただきたいと考える。
● 第一点目については、今いただいたような御意見を含めて検討するという意味も含めてこのような表現ぶりを使わせていただいたものである。
◎ 執行力の付与については、仮に執行力を入れるとすれば、その後、手続がどのようになるのかについて検討されていないことは御指摘のとおりなので、当然検討会においても御議論いただきたいと考えている。
○ 司法制度改革全体の流れの中でADRをどのように位置づけられていくのかについては一つの関心事項であり、制度自体が本当の意味で活性化されてくれば、司法との間に良い意味での棲み分けが生まれ、司法制度全体の活性化に繋がっていくと考える。その場合、ADR法が全体の紛争解決にとっての第一歩であるとのメッセージ性をより明確に打ち出していくことが必要なのではないか。また、今回のこの諸方策(案)をもって必要十分なわけではないが、ADRの拡充・活性化のためにはやむを得ないことがわかるようにしていただきたい。また、この認証基準によって、実績のある機関を支援したいが、他方で、解決金目当ての機関や事件屋が必ずしも規制できるわけではなく、場合によっては、そのような機関や事件屋の活動ばかりが活性化されてしまうのではないかという懸念もあるので、そういった懸念を回避できるようにスタートしてもらいたい。
また、認証制度が導入された場合、いかなる制度になるのかについては予測できない部分もあるが、利用者にとって見れば、なるべくそのようなリスクを下げるためにも認証制度を導入することには一定程度の意味合いがあるのではないかと考える。しかし、今回、P1の②において補強はなされたものの、対等の交渉能力を持つことを前提とした自主解決との紛争類型に馴染まないもの、すなわち、紛争解決能力に力の格差がある場合などについては、特段の配慮をして頂きたい。仮にそれがなされないのであれば、今回は、対象分野からは外すということも検討していただきたい。さらに、行政型ADRの活性化など、分野ごとに独自の棲み分けを発揮していくことを可能にするような課題や、個人認証の問題や苦情処理のスキームの問題などの残された中長期的な課題についても、なるべくならば熱気が冷めない早い内に整理していただきたいと考えている。
◎ 座長として、ここで一度議論を総括したい。この検討会で取り扱うこととなったADRの拡充・活性化というテーマは、仲裁のように、これまでの議論の蓄積が十分ではなかったこともあって、そもそも論の部分で意見の対立があったり、各論においても御意見は十人十色といった状況があったりもした。また、そのようなこともあって、今国会への法案提出を見送るという残念な事態もあった。
そのような状況であったにもかかわらず、各委員の毎回の熱心な御議論のおかげで、ようやく一つの方向性が見えてきたかなとの印象を抱いている。各委員の立場になってみれば、まだまだ議論が不足しているのはないかという部分や、決して積極的には賛成できないという部分など、細かに挙げていけば、問題点は少なからずあろうかとは思う。
しかしながら、他方で、推進本部事務局の立場になってみれば、設置期限を間近に控え、法案の策定のために残された時間が極めて少なく、この時期に、少なくとも立案の方向性程度は固めておく必要があるという点にも配慮は必要であろう。
そのようなことを総合的に勘案すれば、事務局から本日示された立案の方向性は委員全員の御意見と完全に一致するとは言えないまでも、この資料の記載の範囲に限れば、これまでの議論の趨勢をほぼ反映しているものと言えなくはないのではないかと考える。
ただ、そのような認識に立った上で、以下の点については、座長として推進本部に強く申し上げ、議事録に留めておきたい。
皆様も御承知のとおり、この検討会の議論では、認証制度の導入について、ADRの発展をかえって妨げることになるので、断固として反対するという御意見もあった。また、認証制度の導入を認めたとしても、運用次第では、同様の懸念があるとの御意見もあった。
このほか、前回と今回の議論でも、各委員から、資料の文字上には現れていない点について、様々な注文や意見をいただいた。これらの御意見は決して、この検討会の中だけにとどまるものではない。
したがって、このような方向性に沿って立案作業を進めていくとしても、このような懸念が表明されたことを十分に念頭に置いて作業を進めるべきであるということについては、事務局に強く申し上げる必要があると考えている。
また、ADR、特に多様な民間ADRについては、法律に実態を合わせていくというよりも、運用後の状況に応じて、法律の方が柔軟に変化・発展を遂げていくべきものなのだろうと思うので、そのような柔軟な発想をもって立案に当たっていただきたいということも、合わせて、注文しておきたい。
この他、特に、私の提案を御了承いただくとした場合に、その他にもこのようなことに御注意いただきたいということがあれば、御発言いただきたい。
○ 認証制度を導入することとなった場合の注文を2点申し述べたい。「手続実施者」という言葉について、これは、以前に用いられていた「手続主宰者」と較べればその不適切さが軽減されているとは思うが、紛争当事者も手続の一端を担う手続実施者の一員であろうとの考えもある。認証制度は調停とあっせんのみをその対象とするものであるから、希望としては、立案の段階では、調停人、あっせん人という言葉を使う方が適当なのではないかと考える。「手続実施者」という文言は、学問上も実務上も使われていないので、これを使わないで立案して欲しい。
また、P4(5)アの「名称独占」について、どのような名称を独占させるのか具体的にイメージしにくいが、例えば、「法務大臣指定認証機関」のような名称が使われるとすれば、その名称だけでも、実施する事務の内容や料金やスピードなどの点で極めて優れた機関であるとのイメージを与えてしまう可能性が少なくないのではないかと懸念している。今回の認証制度はハードルが低いため、これまで調停やあっせんについて全く実績を持たない機関や評判が必ずしも良くはない機関についても認証を受けることができるが、それらの機関にもそのような名称を名乗ることを許すことは、消費者契約的な観点からは、かえって問題があると考える。今回の制度の実態を簡潔な言葉で消費者に誤解を与えないように表現できるような名称はないのではないか。また、法的効果についても、今回の認証制度によって得られる法的効果は極めて限定されており、時効中断効にしても、後に訴えを提起しなければならず、訴訟手続の中止や調停前置の例外も裁判所の裁量に委ねられるという点においては認証による直接的な法的効果というわけではないので、「法的効果を付与された機関」との名乗り方もミスリーディングであろう。したがって、名称独占については、規定を置かないことも含め、御検討いただきたい。
● 問題意識については、私自身も委員と共有している。今の御指摘を十分に踏まえつつ、最善の選択を行っていきたいと考えている。
◎ まだ御意見があるかも知れないが、今日、事務局にて用意したこの案は検討会の議論の趨勢を相当程度反映していると考える。あとは、政府部内の調整や、さらに幅広い意見を踏まえた作業に委ねることとしても、検討会としてはその役割が軽視されていることにはならないと考えている。
そこで、私としては御異論や御注文はあったものの、それらに十分に留意して立案作業を進めることが大前提であるというという意味において御了承をいただければと考えているが、いかがか。
(○ 委員より、了承します、了承しませんとの声あり。)
◎ 賛成・反対といった御意見があったが、ここで単純に賛否を問うのはいかがなものかと思う。座長としては、反対意見があったことも踏まえつつ、事務局にはこの方向で立案作業を進めていただくことにさせていただきたいと考えるが、この私の発言を御了承いただけますでしょうか。
(特段の異議なし。)
その後、事務局長より挨拶があり、今後の検討会の持ち方について事務局より説明があった後、座長より、検討会が一応の区切りを迎えたことについての所感が述べられた。
次回の検討会については、事務局の検討状況等に合わせ、タイミングを見て開催することとなり、開催が決まり次第、事務局より連絡することとなった。