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ADR検討会(第35回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成16年6月14日(月)13:30 〜14:45

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局 第一会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、佐成実、高木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官、内堀宏達企画官

4 議題

裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策について

5 配布資料

資料35−1 裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策(案)

6 議事

○青山座長 それでは、ただいまから第35回「ADR検討会」を開会いたします。
 本日は、推進本部事務局から提出されました、「裁判外の紛争解決手続の拡充・活性化を図るための諸方策(案)」について、検討会としては最後の議論を行いたいというふうに思います。
 勿論、これで検討会としての役割が終了するというわけではなく、前回の最後に事務局から御説明がございましたように、法案については、しかるべきタイミングで事務局から御報告を受け、必要な意見を事務局の方に具申するということをいたしますとともに、ADRを巡る法案の策定以外の諸課題につきましても、推進本部の設置期間内は議論を継続してまいりたいというふうに存じます。
 それでは、これから事務局から最終案の説明をお願いしたいと思いますが、その前に、議長として若干申し上げておきたいことがございます。
 本日の議論の中心の1つは、前回最後まで両論残っておりました執行力の付与の部分であろうかと思います。
 前回の検討会の終了後、私といたしまして、推進本部事務局の立案について検討会の議論をどのように反映させるのが適当かということについて相談いたしました。
 その結果、検討会という限られた場でも、積極、消極論があれだけ残っている、そしてそれぞれは非常に理解し得る根拠があるという状況にかんがみますと、政府部内だけの検討だけではなく、もう少し幅広い意見を踏まえた上で結論を出す方がよいのではないかということで事務局と考え方が一致しました。
 今日、御説明いたしますのは、そういう上での議論でございますので、まず、この点をお含みの上、説明を聞いていただきたいというふうに思います。
 それでは、推進本部事務局から前回の議論を推進本部事務局としてどのように受け止め、どのような最終案になったのかということを資料に沿って御説明をお願いしたいというふうに思います。
 小林参事官お願いします。

○小林参事官 それでは、資料35−1に基づきまして、前回の御議論との関連にも触れながら、特に修正部分を中心に御説明をしていきたいと思います。
 まず、1ページの「1.基本的考え方等」のところでございますけれども、まずBのところで「広範な国民にとって」という文言を新たに挿入いたしております。
 これは、前回の議論におきまして、力の格差なり、あるいは社会的に弱い立場にある方々が、このADRによって不測の損害を被ることがないよう、そういった配慮が必要ではないかという御議論をいただいたものを踏まえたものでございます。
 広範な国民にとって、つまり、社会的に弱い立場にある方も含め、広範な国民にとって裁判と並ぶ紛争解決の選択肢となるよう、その適正かつ実効的な実施が確保される必要があることという基本的な考え方をうたったものでございます。
 もとより、この問題につきましては、こういった基本的な考え方を明らかにするということのみならず、これからの制度設計におきまして、例えば審査基準でありますとか、あるいは情報開示の内容でありますとか、あるいは監督の在り方、こういった制度設計や、あるいは運用におきまして、そうした懸念が生じないように、これから具体的な作業をしていかなければならないということが大前提ではございますけれども、前回の御指摘につきましては、そういった形で受け止めさせていただいております。
 Dのところでございますけれども「民間の行う裁判外の紛争解決手続の基盤の整備に当たっては、紛争当事者や紛争解決事業者その他の関係者の自主性・自立性が、十分に配慮されなければならないこと」ということにいたしまして、新たに「紛争当事者」ということを明記いたしております。
 これは、前回の議論におきまして、ADRというのが、紛争当事者の自主性・自立性を最大限尊重した紛争解決手段であるということをもう少し踏まえた方がよいのではないかという御指摘を踏まえたものでございます。
 もとより、紛争当事者の自主性・自立性をどのように手続に反映させていくのかということにつきましては、それ自体、ADRそれぞれによって異なるわけでございますので、余り一律にADRとはこういうものだということを規定いたしますと、かえってADRの多様性に反することになるわけではございますけれども、少なくとも制度基盤の整備に当たっては、そういった紛争当事者の自主性・自立性がきちんと配慮されるような、そういうようなことで取り組んでいく必要があるのではないかということで、その部分を明記したものでございます。
 2ページにまいりますが、2.の認証制度に絡む部分で「(2)認証の手続」でございます。
 アの部分「認証を申請するか否かについては、紛争解決事業者の任意とする」というふうに書き改めておりますが、これは前回、この場の議論ではございませんけれども、座長の方から、認証制度は任意だということがきちんと伝わるように表現した方がよいのではないかという御示唆をいただきまして、このような表現ぶりに改めております。
 同じような趣旨で、イにおきましても、認証の申請があった場合において、主務大臣は云々ということで、必ずしも認証制度初めにありきということではないという形での表現ぶりに改めております。
 3ページでございますが「(3)認証事業者の義務」の内容のA、これはいわゆるディスクロージャーについて触れた部分でございますが、その中のディスクロージャーの対象事項、一定の事項ということで、括弧の中に例示を行っているわけですが、これは前回原委員の方から御指摘がございました、「紛争解決の実績の概要」につきまして明示していなかったわけでございますが、それは非常に重要だからきちんと書いた方がよいのではないかということでございまして、これは従来からの御議論でもございますので、その旨明示させていただいたということでございます。
 4ページの「(4)認証事業者の監督」の部分でございますが、ここでは(注)の部分を追加させていただいております。「主務大臣による報告徴収等は、基本的に、認証業務について認証の要件の不適合や法令違反の疑いがある場合に実施されるものであって、個々の事案の処理における和解案の内容等の当否を問うことを目的とするものではない。認証事業者の自主性等を阻害するものであってはならず、立案に当たっては、そのような懸念が生じないよう、所要の規定を置くことを検討する」ということでございます。
 これは、前回、山本委員からも御指摘がございまして、座長の方からもこういった旨の記述を追加するようにということで、この検討会でも御指示があったわけでございますけれども、個別の案件に介入することが目的ではないということを明確にするための所要の説明を加えたものでございます。
 5ページでございますが、認証ADR事業者に対する法的効果の付与の部分でございまして、イがいわゆる執行力の問題でございます。
 前回の記述におきましては、この部分だけは議論がいろいろ分かれているということで、ペンディングという形で御提示させていただいたわけでございます。
 前回の議論におきましても、やはりそもそも付与すべきか否かということについて、この場での議論も積極、消極に分かれたかと存じます。また、先ほど座長から御紹介があったように、それぞれの主張については理解し得るそれぞれの合理性、あるいは説得力があるということでございますので、今回の私どもの方針の提示におきましては、以下のようにさせていただきたいと思っております。
 「執行力の付与については、付与した場合の弊害の発生を懸念する意見があることに十分配意し、対象となる当事者の範囲、請求権の範囲及び価額等を限定することを含め、更に幅広い意見も踏まえた上で、結論を得る」ということでございます。
 今後の段取りにつきましては、前回の会議の場でも御説明をいたしましたが、私どもといたしましては、こういった方針で立案作業を進めていく予定をしているわけでありますけれども、その過程においては、当然、説明会などを開催して、広く国民の御意見を伺いながら進めていくということを考えておりますし、その進捗状況につきましては、こちらの検討会の方に御報告をし、先ほど座長からもありましたように、御意見を賜わるということであるわけでございますが、特に、この執行力の問題につきましては、そういった過程を経る中で、幅広い意見も踏まえた上で結論を得て、また、こちらの検討会の方にお諮りをしたいというふうに考えております。そういったものとして受け止めていただければというふうに考えております。
 同じく5ページの「II.その他の課題」でございますが、「2.関係機関間の連携の促進」につきましては「関係府省等は、『ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議』におけるこれまでの取組みを更に発展させるとともに、紛争解決事業者や相談機関を含め、関係機関間の連携の促進に積極的に取り組む」ということで「相談機関」ということを新たに加えております。
 これは、前回の検討会でも御説明を申し上げましたが、相談機関の重要性ということを強調される御意見があったものを踏まえたものでございます。
 現に、私どものつくっておりますパンフレットの右半分は相談のみを行っている機関のものでございますし、当然、ADRへのアクセスということを考えた場合にも、相談機関の果たす役割は非常に重要であろうということで、こういった民間を含めた連携組織を立ち上げていくに当たっては、相談機関の役割もきちんと受け止めていきたいというふうに考えております。
 最後に「II.その他の課題」の「3.その他」でございますが、これを新たに付け加えております。
 「民間紛争解決業務に関する共通的な制度基盤の整備は、従前にはなかった試みであることにかんがみ、認証制度導入後の状況等も見極めながら、その効果等については、制度導入後においても、適切な検証が行われるよう努める」という一文を加えております。
 その趣旨は、前回の検討会におきまして、いわゆる見直し規定のようなものを考える必要があるのではないかという御指摘を踏まえたものでございます。
 その際に申し上げましたように、これは立案その他の現時点での方針ということでございますので、なかなか見直し規定ということ自体を直截に書くというのは難しい面がございますし、それから御趣旨を踏まえれば、それは法律のみならず、今回の新たな制度の導入全体に関わる問題かと思われますので、このような形で、「その他」の中で全体を包括するものとして検証を図っていき、そして検証の結果、効果がない、あるいは残念ながら何か予想もしていなかった問題が生じた場合につきましては、当然、所要の措置を講じていくということを考え、こういった表現ぶりとさせていただいております。
 以上、若干駆け足になりましたが、前回の議論を踏まえた修文について御説明をいたしました。
 前回いただいた御意見につきましては、可能な限り取り入れさせていただいたつもりでございますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○青山座長 ありがとうございました。この資料は、執行力の部分を除きまして、基本的には、前回皆様からいただいた資料を入れられるものは入れさせていただいたものですので、前回からそれほど大きく変わっているということはないと存じます。
 また、執行力につきましては、今の小林参事官の説明にもございましたが、推進本部事務局から幅広い意見を踏まえて検討した結果として、もう少し先の時点で、いずれの方向を取ろうとするかについての検討状況を、この検討会で御報告いただき、検討会として改めてそこで意見を申し述べる機会があるということでございますので、こういうことで提案させていただいた次第でございます。
 そのような前提に立ちまして、特にこのような方針で、法案提出に向けた立案作業を進めていくことにつきまして、あるいは立案に当たって、特に事務局として事務局に注文を付けておきたいというようなことがございましたら、どのような意見でも伺いたいというふうに思っておりますので、どうぞ活発に御意見をお述べいただきたいというふうに思います。
 どなたからでも、どうぞよろしくお願いいたします。

○原委員 前回、私が発言した意見をかなり取り入れていただきまして、大変ありがとうございます。
 1つ確認なのですけれども、事業者対消費者、それから事業者対労働者という弱者ですね、こういったところへの配慮規定を是非基本的なところでお願いしたいというふうにお話ししておりまして、多分それが「広範な国民にとって」というところかなというふうには思うのですけれども、そういったところでよろしいのでしょうかということと、そうであれば何かもうちょっと、本来であれば明示的なものになればよいなというふうな感じはいたしましたけれども、確認させていただきたいと思います。

○小林参事官 先ほどの御説明で、少し触れたつもりではあったのですが、まさに「広範な国民にとって」というのは、更に敷衍して申し上げれば、いわゆる社会的に弱い立場にある人々も含めという意味を込めて入れさせていただいたつもりでございます。
 要するに、ADRというのが一部の人たちのものであってはいけない、幅広い国民にとって選択肢となり得るような実質を備えた、適切かつ実効的なものである必要があるという趣旨をお示ししたものでございます。
 この部分につきましては、勿論このまま法文化するわけではないということは、お話申し上げておりますが、可能であるのであれば、できるだけ法案に盛り込みたいということもございますので、若干、表現ぶりについては、かた苦しい書き方になっていることは御理解いただきたいと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 廣田委員どうぞ。

○廣田委員 今日のペーパーの4ページの(注)のところで直した部分なのですが、基本的に認証の要件の不適合や法令違反の疑いがある場合に実施されるものであって、個々の事案については当否を問うことを目的とするものではない。こういう表現になっているので、確かに、こういう表現であるということは、前回も出ましたのでわかっているのですが、私が再三問題にしているのは、個々の事件についても当然改善命令その他のときに調べるかどうか、これは万に一つにしても調べるかどうかということが問題なのです。これは私の理解では、認証の要件を調べるということであれば、認証の要件が前のページの3ページの上の方のBで「申請の対象となる紛争解決業務(以下『申請業務』という。)を継続して公正・適確に行うことができる能力」と、「能力」と書いてある以上は、これが実際に行われているかどうかということが問題になってくるので、当然、万に一つの場合にも、個々の事案については調べる場合もあると理解せざるを得ないと思うのです。大体クレームというのは、個々の事件に付くものなのですよ。必ずそういうふうになっているものですから、それを調べないということ は、要するにこの監督をやらないということと同じ意味になりますから、それはあり得ると理解してよろしいのでしょうね。それは当然ことだと思うのです。万に一つの場合ですよ。だから前回の答弁のとおりだと理解してよいと私は読まざるを得ないのですが、それはそれでよろしいのでしょうね。

○小林参事官 何回かやりとりをさせていただいておりまして、その点については、今、委員も万も一つというふうにおっしゃいましたが、万に一つという意味において、そういう可能性は否定しないということでございます。

○廣田委員 続いていいですか、ほかにもあるのですが、よろしいですか。

○青山座長 はい、どうぞ。

○廣田委員 それから、最後の方の5ページに「3.その他」というのがありまして、これは前回も、その前も佐成委員から仮に認証制度を導入する場合には、何年か後に見直すというような意見がありまして、これについては山本委員も三木委員も賛成されています。
 そういう意味では、確かに1つの考え方だと思うのですが、今の段階で見直しを言うということは、それだけこの案そのものに不安があるということだと思うのです。そういう不安があるのだったら、私は法律をつくらない方がよいと思います。法律をつくって動かしたときに、見直しをするまでの何年かの間に混乱が生じたり、被害が出たりということがあれば、それを回復するというのは非常に大変なのです。かなりの時間だとかエネルギーがかかるわけです。そういう不安を抱えてまでも急いでこういう法律をつくる必要があるかどうか、私は大変疑問に思っています。それが1つです。
 まだいいですか、ほかにも申し上げて。

○青山座長 どうぞ。

○廣田委員 私は、これを出すという前提で話されていますけれども、そうではない考え方、一番最初の段階で、ほかのやり方もある、ですから、それを議論する必要があるということを最初の4月の段階で申し上げたと思うのですね。ですからこのことばかりに時間をかけていると、そういうことは検討ができなくなるのではないかということを懸念していたわけですけれども、現実にそういうことは議論されていなくて今日まで来たわけです。
 私は、この認証制度というのは、実務を踏まえていないと思っています。私は、ずっと実務をやっておりまして、もっと実務を尊重していただきたいというのが私はの気持ちです。
 前回寄せられた意見は、委員限りと言われましたけれども、委員に配られたペーパーについては、私は前回委員限りというのは読んでいなかったと申し上げて、私がうっかりしたのかなと思ったのですが、配られたペーパーには、委員限りと書いていなくて、特段の断わりをいたしておりませんので、お取り扱いには御留意いただきますようと書かれていただけなのですね。それで、前回申し上げた団体からの意見の中には検討してくださいと書いてあったから私は発言したわけです。
 ですから、私以外に、例えば日弁連の意見書なんかも引用されて発言された人もありましたので、私は、前回のその部分については抹消していただいて結構だと言いましたけれども、しかし、それは抹消しないでいただきたいと思うのです。少なくとも、ほかの委員の方々のペーパーを引用した部分と同等の扱いにしていただきたいと思っているわけです。
 というのは、外部からの意見を明らかにしないで審議するというのは、いかにも閉ざされた議論になりまして、よいことではないと。ここで何が問題になっているということが外に知られないということになると思うのですね。延々と認証制度の議論をしてしいたわけですから、これしかないと思われているかもわからない。私はそれを大変懸念しているわけです。
 それで、前回の前に私のところに届けられた意見の中には、大川宏弁護士の認証制度導入に反対する意見書というのが出てきました。
 前回こういうことがありましたので、大川弁護士に私が尋ねたところ、どうぞ固有名詞を出して、紹介したり、引用しても構わないということですから、その辺も若干申し上げたいと思うのですが、大川弁護士は、二弁の仲裁センターを立ち上げたときからの最初のメンバーです。ここのヒアリングにも出てきて御説明をされたことがあるわけです。そのペーパーの内容はいちいち紹介いたしませんけれども、これは認証制度に反対で、その賛同する弁護士が続々と名前を名乗り上げて、こちらに届けられていると思うのです。それは紹介しませんが、そういうふうに反対意見というのがあるということをお伝えしたいと思っております。
 私は、この認証制度をどういう形でお伝えするかはわかりませんけれども、今日はまだ結論が出ていませんけれども、前々から言っているように反対です。反対意見は、何度も発言しましたので、議事録を読んでいただければわかるけれども、しかし、議事録をわざわざ読むという人は少ないだろうと思いますので、私は、今日反対意見をペーパーにまとめて持ってきました。ですから、私はここでは言いませんけれども、これは今日の私の発言の一部だと理解していただいてインターネットで発表していただきたいと思います。それで開かれた議論にしていただきたいと考えております。
 同時に、今日の皆さんの議論によって、どういう形で、先ほどの法案を考える1つの組織だとかに、それを特に説明していただくことになると思うのです。ただ、やはり反対意見があったと、これこれの反対意見であるということは同時に伝えていただいて検討していただく、そういうふうに必ず持っていってもらいたいと思います。そうでないと、これは本当にいろいろな意見が出ないままに、私も言う機会をずっと待っていましたけれども、言う機会がない、しかも私は法案の形で案を出しておりますけれども、これも検討する時間がなかったですね。
 ですから、そういう意味で、どういうことが議論になったかということは、私はまだほとんどやっていないと理解しておりますので、私なりにも今日ペーパーを出しますので、その意見を付して、それで検討していただきたいというふうに思っています。
 以上です。

○青山座長 わかりました。何か答えることはありますか。

○小林参事官 まず、最初にお触れになった見直し規定の件でございますが、廣田委員がおっしゃったことも1つの考え方ではなかろうかと思いますけれども、他方、制度導入ということになった場合に、先ほどは、問題点が生じた場合だけを申し上げましたが、更に欠けている点を補うということもあるわけですので、そこは状況を踏まえながら所要の措置が必要になればその時点で考えていくということは、これはこれで1つの考え方ではないかと受け止めましたし、その旨を明らかにするために、このような表現をさせていただいたということでございます。
 それから、御意見の方をインターネットに開示するということにつきましては、廣田委員の御発言に代えてという御趣旨だと思いますので、その点については措置をしたいというふうに考えております。

○青山座長 前回の議事録の訂正の点は、他の委員と同様にするということは、そのとおりいたします。ちょっと調べまして、具体的に名前を委員会限りと、今、限りという表現ではなかったというふうにおっしゃいましたけれども、内実はそういうものであって、固有名詞を出されるということについて、必ずしも了承を取っている段階ではない発言でございましたので、場合によっては、固有名詞を取らせていただくという形にさせていただきます。

○廣田委員 私が申し上げたいのは、意見を出される以上は、やはり何か取り上げてほしいとか、そういう姿勢で出されると思いますから、特に発表するなと言われない以上はオープンにするのが本当だと思うのです。ましてや、私が引用したものは、検討会で検討してくださいと書いてありましたから、それは当然言うべきものである、むしろ言わないということは誠意がないというふうに私は理解して申し上げたのです。そういう趣旨ですので、秘密にしなければいけない事項があるわけではないと理解しておりますので、1つその点を配慮していただきたいと思うのです。
 何か、やはり密室で議論したという姿勢は、これから法案をつくろうというのですから、そういうことはやるべきではないと私は考えております。

○小林参事官 誤解があってはまずいので、一言申し添えますけれども、密室で議論をしているというつもりは全くございませんで、いただいた意見につきましては、先ほど引用がありましたように、基本的に委員の方にはお配りをいたしております。
 また、いろいろと意見書という形ではなくても、説明会でありますとか、意見交換ということで外部の方といろいろ意見交換をさせていただいている機会はあるわけでございまして、そこで提起された問題については、会議の進捗に応じて整理をした上でお諮りをしているというわけでございますので、何か検討してくださいといったものを私どもの方で抹殺したとか、握りつぶしたということではないということは御理解いただきたいと思います。

○青山座長 私の方からもちょっと申しますけれども、外部から出された意見を全体として趣旨を引用されることは構いませんけれども、例えば認証制度では賛成であると、しかし、こういう点は更に検討してほしいという意見のうち、この検討してほしいという点だけをとらえて、この点が検討していないからおかしいというような形で引用されると、やはり書面の提出者にとっても迷惑ではないかということもありますので、提出した人の名前は伏せさせていただきたいと、そういう趣旨もございます。
 ほかに何かございますでしょうか。

○原委員 今のことに関連してなのですが、どのように発言すればよいのか、言いにくいのですが、大川先生は、私もずっと長年、90年代に仲裁センターを立ち上げられたときから存じ上げているので、大川先生のお名前も出たので、少し消費者側の意見ということも出しておきたいと思います。
 その前に、見直し規定の話なのですが、消費者側から見ると、例えば今国会に挙がった公益通報者保護法ですとか、消費者契約法とか、情報公開法とか、新しい形でスタートする、初めて世の中に出ていくような法律は、必ず見直し規定を入れて今まで来ているので、やはり私としては、これが法律という形になるのであれば、附則というところでもいいですので、見直し規定を入れられた方がよいのではないかなとは思っております。
 それから、認証制度の話なのですが、大川先生はお名前を挙げられてもよいということなのですが、ほかの弁護士の方々からも、認証に反対という御意見等が出てきております。
 私自身も消費者団体の中でこの話をすれば、両方の意見があるというような感じがしておりまして、1つはADRの多様性、柔軟性ということを考えると、必ずしも行政が認証するという仕組みを取らなくてもよいのではないかという意見と、もう一方は、やはり手綱としてですね、どういったADR機関が出てくるかわからないので、手綱を持っておいてほしいという、私としては両方の意見があると思っています。それが、どちらが多いのか、少ないのかというところまでは、にわかには判断ができないというようなところにあります。
 ただ、御意見を拝見していてちょっと思いましたのが2つありまして、1つは消費者保護のために認証を導入するのかというような御意見の方もあったのですが、必ずしも認証を導入することが消費者保護だというふうには感じていなくて、逆に認証を取ることで、何かいかにもよいADRであるというような、そのようなところも出てくるのではないかということも逆に懸念をしておりまして、認証の有無が消費者保護そのものということでもないのではないかなということも思いました。
 それから大川先生の意見の部分も、執行力の付与とか、時効中断効とかという法的効果の話で書かれていますが、もう一つ、弁護士第72条をどう外すかという大きな柱が認証制度を導入するかどうかということのポイントとしてあったかと思うのですが、この部分については、どのように考えていらっしゃるのかということを考えながら読みました。
 それから、認証制度を導入して、選択制であっても大体が認証を取る方にいくのではないかといった懸念も示されているわけなのですが、そのことをどう判断するかなのですが、消費者側から見ると、一方でNPO法がありますね。これは法人格を与えるということになって、今、1万6,000 のNPOが活躍をしています。これもある要件を定めて、世の中に出ているということになるわけですけれども、かなり多様な活動を展開していらっしゃるところがあって、一方で、NPO法のようなもの、そのレベルのようなものがある中で、ADRは何も要件がなくてよいかというと、それは消費者側からすると、手綱はあってもその中で多様な柔軟な解決手法というものも見出せていくのではないかなというようにも考えられます。最終的な結論としては、ともかくスタートさせてみて、そのハードルの高さとか、手綱だとか、そういうものを見て見直しを入れることで、やはり難しくないということであれば、そういったところを外していくというようなことも考えられるのではないかなという感じがしております。
 それから、35回も議論を重ねて、法律の話を随分してきましたけれども、私は、法律はやはり1つの手法にすぎなくて、本当にADRの拡充とか活性化とかを考えると、これ以外にもっともっとたくさん検討すべき課題があると思っておりまして、1つの出発点にすぎないのではないかなという感じがしております。
 あと、もう一点付け加えると、消費者はある程度選択できるのですが、労働側がちょっとしんどいかなというふうに思うところもあって、正面切って認証制導入に賛成とか反対とか、そのようなことがなかなか言いにくかった面はあります。

○青山座長 わかりました。特に事務局からは何かありますか。

○原委員 回答は特に結構です。意見です。最後ですから。

○青山座長 この制度を取った場合に、認証を求める機関が多いかどうかというのは、何とも言えないと思います。取った方がよいと考える機関と、いや、そんなものは必要ないという機関とどのぐらいいるかというのは、全く予想はできない状況です。
 それから、NPO法人との比較のことも少し言われましたけれども、かなり性格も違いますし、法的効果の点も違いますので、必ずしも一律に比較することは難しいのではないかというふうに私は思っております。
 ほかに何かございますか、どうぞ高木委員。

○高木委員 最後ですから、一言だけ申し上げます。
 今日のとりまとめですけれども、これまでの議論状況からいったら、これで結構だというふうに思います。廣田委員のように、害があるし、反対だという方もおられれば、そうではないという方もいらっしゃるだろうと思います。法律ですから、もともとさまざまな意見がある中でとりまとめていくのが普通のことで、みんなが満足できるということの方が逆におかしいのだと思うのです。
 そのとき、この間も申し上げましたけれども、平山先生流の70%の平均値で考えるべきではないかというふうに思っていまして、委員の中には70%以下だという御意見もひょっとしたらあるのかもしれないけれども、それでも法律をつくるか、つくらないかという選択のどちらかで言えば、それはやはりつくった方がよいというふうに考える方が多かった結果、こういうとりまとめになったというふうに考えています。
 前回、佐成さんから見直しの要望が出て、見直しではないにしても、検証という形で、それなりの配慮がされましたし、もともとこれはなくても法律が見直しできるというのは当たり前の話でもありますから、これでスタートしてよろしいのではないかというふうに思います。
 執行力についても、座長がおっしゃったとおりに私も理解しています。最初は、座長は「民主主義の原則で」みたいなことをおっしゃって、11人の意見の前回の意見分布から言えば、こういう書き方というのは、ちょっと踏み超えている部分があるのかもしれないとは思いますけれども、11人がそれぞれのグループからの代表で、委員の意見が社会全体の反映と言えなくもないというところはあるものの、何しろ11人でしかないというところは1つあると思います。
 もう一つ、この検討会が根拠になっている審議会の方では、執行力の部分は、こういう書きぶりではなく、ここでの結論とはやや異なったスタンスで肯定的に書かれているというふうに思いますし、そういうふうに違った意見が出てきたときに、どっちが優先して、どっちを重んじるとか、そういったことは言うつもりはありませんけれども、違う意見のときには、もっとそれ以外に幅広く意見を求めるというのは1つ手法として理解できますので、こういうとりまとめでよいというふうに思っています。
 そんなところだと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ綿引委員、お願いします。

○綿引委員 基本的に、今、高木委員が言われた点に特に付け加えることはありませんが、前回、ちょっと仕事で出席できなかった関係もありまして、細かい点ですが、1、2点だけ申し上げさせていただきます。
 1点は、調停前置の部分なのですが、調停前置の原則を適用しないという言い切りで最後のとりまとめもなっておるのですが、前々回、これについては調停に付することができるということを、ただし書なり何なりという形できちんとしていただきたいというようなことを申し上げましたし、それで事務局もその方向でとおっしゃったように記憶しております。
 前回も私の意見として、その点については、今回認証ADRというのが裁判所の調停とは等価とは言えないというところについては御紹介いただいて、その方向で御検討いただけるのかなというふうに基本的に理解していたものですから、この点については法案の作成段階では、もう一度御配慮いただきたいということは、改めて申し上げておきたいということです。
 それから、執行力の点については、冒頭に座長も御紹介になりましたし、今、高木委員が言われたところに尽きるのだと思うのですけれども、その議論をするときに、仮に執行力付与ということを考えるときには、やはり方法手続として考えられている執行決定ですとか、公証人の公証行為とかというものの、一体何を決定する手続なのか、それが一体どういうふうにされるのか、そういう手続を踏んでまで執行力を付与するのか、また、そういったことが果たしてADR和解に執行力を付与するという考え方と整合するのかという辺りについても十分な検討をしていただきたいということだけは、もう一度述べておきたいと思います。その辺の検討は、今まで全く不十分なままであったということは否定できないだろうと思いますので、その点も含めて検討していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 以上です。

○青山座長 何かございますか。

○小林参事官 まず、1番目の問題でございますが、これは前々回のやりとりでも、あるいは前回綿引委員は御欠席でしたけれども、綿引委員の御意見を御紹介させていただいたときに、私の方からもコメントさせていただきましたが、今、おっしゃったような趣旨を含めて検討するという意味で、この表現を使わせていただいているということでございますので、その点を含めて検討していきたいと思っております。

○青山座長 執行力の点は、仮に執行力を入れるとすれば、その後、手続はどうなるかということが検討されていないことは間違いないところでございます。
 一応、前回の意見分布も私は十分わかっている上で、しかし、こういうふうにとりまとめさせていただいて、もうちょっと広く意見を聞いて、仮に執行力について入れるというようなことになれば、当然、その検討段階で、もう一度この検討会に戻ってきて、そこで十分その点は詰めさせていただこうというふうに思っておりまので、どうぞ、その含みで御了承いただければというように思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。

○龍井委員 一部これまでの発言と重複するかもしれませんけれども、やはり、司法制度改革全体の流れの中で、これがどういうふうに位置づけられていくのかなというのは、もう一つの関心で、裁判制度自体が、本当の意味で、我々にとっても活用し難くなり、上級審に行ったら、行ってしまうのではなくて、ある程度の実効力を持ってくるということになれば、検討している分野もよい意味でのすみ分けができ、全体で活性化すると、そういう議論をしてきたと思うのです。
 その場合に、繰り返し言っておりますけれども、どこにどう書き込むということだけではないのですけれども、これが全体の紛争解決にとっての第一歩であると、見直しの話もございましたように、こういうステップアップをして、全体としてよい方向になりますという、言ってみればメッセージ性といってきたことが、もう少し、この1.なのかどこなのかということは別にしまして、検討会のまとめとしては、今回のものが完全にして十分なのではなくて、それは別に廣田委員が御指摘される欠陥という意味ではなくて、やはりまず安全で信頼できるものからスタートをしようということで、やむを得ない面が私はあると思っていますので、是非そういう方向に受け取られるようなつくりにしていただきたい。
 その意味で、やはり私ども利用者からして、どうしても不安に思うのは、既に実績を持っておられるところ、あるいはNPO活動でいろいろなネットワークを持っておられるところが、これによって更に進んでいくことには全面的に支援したいと思いますし、場合によっては法律と関係なくやられるかもしれない。
 ただ、心配なのは、これもまた繰り返し指摘してきたように、ただ解決金目当てで群がってくる、あるいは事件屋みたいになりわいとしてしまうというものまでが必ずしも今の基準だけでは、入口で規制できるわけでもないわけです。そういうリスクは負わなければいけないわけですけれども、どうもそういう部分だけが目立ってしまって、そちらの活性化支援にしたくはない。そこは、いずれ健全化してきますよというふうになればよいのですけれども、何しろ今の段階では、本当に何が起こるかわからないので、そこのリスクはなるべく避けたところからスタートしたいというときに、完璧ではございませんけれども、一つの目安というのはがあれば利用者にとってありがたいことですので、国際的な動向なんかも見ながら新しい基準づくりの話もされているようですから、またその段階でよいものにしていくと、そういう大きな流れを今回は出していただきたいなと思っています。
 その上で、原委員からも御指摘がありましたように、1ページ目のBで一部補強はされたわけですけれども、やはり対等の交渉能力を持つということを前提にした自主解決という紛争類型になじまないもの、つまり一方的な解決能力に力関係の差があったり、あるいは事業者側から弱者の方に逆に訴えてくる、これは前回に申し上げましたけれども、そういうことに対する特段の配慮をしていただきたいということについて、よい知恵がなければ、前回も申し上げましたように、今回は対象分野から見送るということも含めて、是非検討していただきたいというふうに思っています。
 なおかつそこに、これは今回ここで書くかどうかわからないのですが、やはり幾つか委員から御指摘があったように、我々労働分野に限ってみても、今回のことによって、いわゆる行政型のADRが更に元気になっていく、あるいは独自のいろいろなすみ分けの中で持ち味を発揮していくと、これは勿論例で申し上げただけで、ほかの分野でもそうだと思うのですが、そういうことの発信のようなもの、あるいは三木委員が提起しておられたような個人認証の問題ですとか、前回も話題もなりました苦情処理のスキームの問題とか、その他なのかどうかわかりませんけれども、そういった点について、どこかの段階で、少し早目に残された課題の整理をしていただいて、次の議論に、余り熱気が冷めないうちに議論が継続していくという姿を望みたいと思っております。
 以上です。

○青山座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 もし、御意見がなければ、座長としてここで一旦議論をまとめてさせていただきたいと思います。
 率直に申し上げまして、我々の検討会が取り扱うことになりましたADRの拡充・活性化という問題につきましては、例えば、仲裁のような蓄積があって出発したわけではございません。そもそも論の部分で意見の対立もございましたし、各論に入りましてからも意見が十人十色と言ってもよいような状態であったと思います。そういうこともありまして、今国会に提出するということは見送らざるを得なかったということになったわけでございます。
 それはそれで大変残念でございましたけれども、そういう状況であったにもかかわらず、委員の皆様方の毎回の熱心な御議論のお陰で、ようやく一つの方向性が見えてきたのかなという印象を持っております。それぞれの委員のお立場に立ってみますと、まだまだ議論が不足しているのではないかとか、あるいは積極的には賛成できないという点など、細かく挙げていけば、いろいろな細かな問題点はまだまだあるかもしれません。
 しかし他方では、政府と言いますか、推進本部事務局の立場に立ってみますと、11月の末という設置期限を間近に控えまして、法案の策定のために残された時間というものは、極めて少のうございます。この時期に、少なくとも立案の方向性程度は固めておかなければ、これからの作業は進まないと、事務局としては大変困った立場になるということは、おわかりいただけると思います。
 そういうことを総合的に勘案いたしますと、事務局から、本日お示しいたしました立案の方向性は、委員全員の御意見と完全に一致するとは勿論言えないと思いますけれども、この資料に記載させていただきました、前回からの意見を踏まえて修正させていただいて、今日お出しした記載の範囲内に限れば、これまでの議論の趨勢を最大公約数的にほぼ反映しているのではないかというふうに、私は考えております。
 ただ、そうした認識に立った上でも、以下の点につきましては、座長として議事の進行の責任を担ってきた立場から、今日は山崎事務局長もお隣りにいらっしゃいますので、推進本部事務局に強く申し上げておきたい、これは記録にとどめておいていただきたいというふうに思っていることがあります。
 2点ございますが、ちょっと前置きも長うございますけれども、御承知のとおり、本検討会の議論では、認証制度の導入について、ADRの発展をかえって妨げることになるので、断固として反対するという意見もございました。これは、学問的信念に基づいた御発言で、それはそれとして立派な御意見だと勿論拝聴しておりますが、また、そうではなくて、認証制度の導入を認めたとしても、運用次第では同様の懸念があるという御意見も多く方からいただいたところでございます。
 このほかに、前回と今回の議論でも各委員から資料の文字上には表われていない点についても、さまざまな御注文や御意見をいただいたところでございます。これらの意見は、決してこの検討会の中だけでとどめておいてよいものではないというふうに思っております。
 そこで、具体的に2点の注文を出しておきたいのですが、第1点は認証制度でございますけれども、この方向性に沿って立案作業を進めていくといたしましても、認証制度の導入につきまして懸念が表明されてきたということを十分に念頭に置いて、立案作業を進めていくべきであるということを強く事務局に申し上げておきたいというふうに思います。
 第2点は、これは法案全体に関わる問題でございますけれども、ADR、特に多様な民間ADRについては、法律をもって実態を縛ると、法律に実態を合わせさせるというのではなくて、運用後の状況に応じて、法律の方が柔軟に変化、発展していくべきものであろうというふうに思っております。靴を先につくって、靴に合わせて足を調整しろというのではなくて、当然のことながら、足に合わせて履きやすい靴をつくると、法律はそういう履きやすい靴であろうと思いますので、そういう意味で、柔軟な発想をもって立案に当たっていただきたいというふうに思います。
 この認証制度の問題と、それから法案全体について立案に当たってても、特にこの2点は十分に御注意いただきたいというふうに私自身は思っております。
 特にほかに何か、これをまず了承していただくとした場合に、こういう注意を更にしてほしいという御発言があれば、追加的に御発言をいただきたいと思います。
 三木委員どうぞ。

○三木委員 私自身は、認証制度には反対ですので、今まで発言は控えておりましたが、導入するということになった場合の注文ということで、2点だけ申し上げたいと思います。
 1点は、これは言葉の問題ですから、どのぐらい重要かはわからないのですけれども、手続実施者という言葉についてです。従来、手続主体者という言葉が使われていて、それについては誤解を招くという発言を何度かいたしまして、それで現在の手続実施者に改めていただいたということだろうと思います。
 当然、主宰者という言葉に比べれば不適切さは軽減していると思いますけれども、なお、既に外部からも手続を実施するのは調停人や仲裁人だけではなくて、当事者もまた手続の実施の一旦を担うというような御意見も聞こえてまいっております。
 以下は、私の希望ですけれども、認証については調停、あっせんのみを対象とするということですから、ここではあえて疑義のある手続実施者という言葉を使わずに、調停人とかあっせん人といった言葉を使えばよいのではないかと思います。
 また、一般的に置かれる規定の部分があるとした場合に、そこでは調停人やあっせん人だけでは不十分ということもあろうかと思いますが、その場合も、なるべくは仲裁人とか第三者とかいう言葉を使って、これまで学問の世界でも実務の世界でも使われてきたことがない手続実施者という言葉をなるべく使わない方向で立案が可能であれば、それを望みたいというふうに思います。
 2点目ですが、これは4ページの(5)のアに関係する部分であります。この部分で、私が特に危惧を持っておりますのは、認証に係る名称の独占に関する規定を置くという部分であります。
 これも過去に私を含めて何人かの方が懸念を漏らされたことと関係はしておりますけれども、この名称の独占という場合に、どのような名称を独占させるのかということについては、なかなか具体的なイメージを持ちにくいところでございます。
 と言いますのは、例えば、法務大臣指定認証機関というような言葉を使われてしまいますと、それはあたかもその機関がADRの実施の内容とか、料金とか、スピード等において極めて優れている機関だというような意味で認証を受けたという印象を与える可能性が少なくないと思います。しかし、今回の認証制度というのは、そうした利用者にとって真に知りたい点について審査をした上で認証するということではないわけであります。
 先ほど、原委員が認証というのは消費者にとって有利になるかどうかは疑わしいとおっしゃいましたが、私もそのように思っております。今回の制度ですと、これまで全く調停、あっせんについて実績のない機関でも認証を受けることができるでしょうし、あるいは少々利用者にとって評判がよろしくない機関であっても、この要件であれば認証を受けることは可能だろうと思います。
 そうしますと、何らかの名称を名乗らせるということは、かえって消費者契約的な観点から見ると、危険が生ずるおそれも少なくないと考えます。名称という以上は、何らかの短い言葉で名乗ることになるのでしょうけれども、今回のこの制度のこうした実質や実態を短い言葉で消費者に誤解なく与えるような名称というのは、そうそうないのではないかというふうな気がいたします。
 また、法的効果の点についても同様でありまして、今回の認証によって得られる法的効果というのは極めて限られておりまして、時効中断効があるといっても、それは後に訴え提起をしなければいけないということで、その点も短い言葉で名乗った場合には、一般の消費者にはそこはわからないことになって、この認証機関を使えば、それだけで時効は中断するというような誤解を与える可能性もあります。また、綿引委員が再三懸念されておられることも関係するかと思いますが、訴訟手続の中止や調停前置については、これは法的効果といっても、裁判所の裁量に関わるわけですから、認証の直接的な法的効果というほどのものではないのではないかと思います。そうしますと、法的効果を付与された機関だという名乗り方も、またかなりミスリーディングではないかと思います。
 ほかにも挙げていけば、もろもろ問題点が思い浮かぶわけですが、そうしたところから場合によっては、この名称独占については規定を置かないことも含めて御検討いただきたいというのが2つ目の希望であります。
 以上です。

○小林参事官 2点御指摘をいただいたかと思いますが、いずれも懸念と申しますか、問題意識自身は、私自身、三木委員と共有いたしております。勿論、選択肢はかなり限られているのではないか、あるいはかなり難しいのではないかという御指摘もよくわかるところではございますが、その点につきましては、今の御指摘を十分踏まえて、最善の選択をしていきたいというふうに思っております。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、なお御意見があるかもしれませんけれども、今日、事務局で用意していただきましたこの原案は、検討会の議論の趨勢を相当程度反映していることは間違いない事実であると思います。
 そこで、あとは政府部内の調整や、更には執行力のところでちょっと申しましたけれども、幅広い意見を踏まえた作業にゆだねることといたしまして、そういうことにいたしましても、検討会としてはその役割が軽視されているというようなことがないと私は思っております。
 そこで、いろいろな御意見、御議論あるいは御注文はあったものの、それらに十分留意して立案作業を進めていただくということを大前提といたしまして、それを再度確認した上で、今日提出させていただきました事務局の原案を御了承していただければというふうに私は思っておりますが、いかがでございますでしょうか。

○廣田委員 私は了承しません。

○青山座長 わかりました。

○平山委員 私は賛成です。了承します。

○青山座長 わかりました。私は、前に最後のときは民主主義の基本原則というようなことをちょっと申しましたけれども、これは多分いろいろなお考えのことがあって、この点は反対だけれども、この点は賛成とか、そういうこともあって、意見の分布は十分わかっておりますし、今、御意見をいただいた方の意見もわかりますので、私としてはこういうふうにさせていただきたいと思います。
 私としては、反対意見があるということを了承しながら、事務局としてはこの方向で立案作業を進めていただくということにさせていただきたいと思います。この私の発言を御了承いただけるかどうかということでお願いしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、私がそういうふうに発言したということにつきまして、苦汁を飲みながらという方も勿論いらっしゃると思いますけれども、大方の御理解をいただいたというふうに理解いたします。
 それでは、ここで山崎事務局長から、一言委員の皆様方に御発言がございます。

○山崎局長 青山座長ほか、委員の皆様方におかれましては、長期にわたりまして、このADRの整備基盤の整備について御議論をいただき、また、事務局における立案方針のとりまとめに多大な御尽力をいただきましたことにつき、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 ただいま青山座長からもございましたけれども、議論の蓄積が十分と言えない状況からスタートいたしましたこともありまして、2年以上の長期にわたって御議論をお願いするということになってしまいました。
 法案は、この通常国会にも出そうという予定でまいったわけでございますので、そういう点で詰めが十分にできずに延びましたこと、これにつきましてもおわびを申し上げたいと思います。
 先月から今月にかけましては、ほぼ毎週御議論をいただくというような状況になりまして、いろいろ御無理を申し上げたと思いますけれども、ようやく一応その方向の基礎を固めることができたということでございます。
 ただいま、いろいろ御議論もあり、座長の方からも御要請がございましたし、各委員からも法制上の御指摘をいただきました。こういう点をよく頭に入れて、最終的なまとめをしていきたいと思います。
 いずれ大きな方向が定まった段階で、また開かせていただいて、御報告あるいは御意見をちょうだいするということになろうかと思いますけれども、この間、我々に少し時間をちょうだいしたいと思っております。皆様方の意見を十分頭に入れながら最終的な詰めを行っていきたいと思っております。
 この検討会、私は余り出席率はよくないので、非常に申し訳ないのですけれども、特にこの国会は、10本出しました法律のうち9本まで承認をいただき、先週の金曜日でやっと私の身柄が解放されました。この中には、マスコミ等でいろいろ報道がされていると思いますけれども、裁判員制度、あるいは行政訴訟とか、かなり大きなものが多数含まれておりまして、この間、ほとんど私は国会答弁に身柄を取られておりましたが、今日、検討会に出席できて立ち会えるようになったということは、本当によかったなと思っております。今まで欠席が多かったことにつきましても、この席でお詫びを申し上げたいと思います。
 いずれ、この法案をなるべく近い国会に提出をしてまいりたいと考えております。11月30日が期限でございますので、それに間に合うように国会が開かれれば、そこへ出すということでございます。
 あと、この検討会は、これも先ほど座長の方からもお話がございましたけれども、今回は制度基盤の整備についてのまとめということですが、これ以外に問題点はまだ残っているわけでございますので、この期限がある限り、詰めを行っていきたいと思います。また、皆様方にも引き続き御協力をお願いするということになって強縮でございますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○青山座長 最後に、前回の検討会でも簡単に説明がありましたけれども、改めて今後の検討会に持ち方につきまして、事務局から説明いたします。

○小林参事官 それでは、若干、前回あるいは冒頭の御説明と重複する部分がありますが、検討会の残されたテーマについて御説明をしたいと思います。
 大きく残されたテーマとしては3つあるのではないかというふうに考えております。
 第1点は、いわゆる隣接法律専門職種のADRの代理の問題でございます。これにつきましては、方向性が固まってきた段階で御議論いただきたいというふうに考えております。
 第2点目が、先ほど龍井委員からもお話がありましたが、いわゆる中長期的な課題も含めて、全体でADRの拡充・活性化についての議論をする機会を設けさせていただきたいというふうに考えております。
 今回は、法案の骨格ということで、先ほど御指摘いただいたようなメッセージ性が必ずしも十分でないという御指摘は十分承知いたしておりますので、是非そういった機会におきまして、今後のADRのあるべき姿についての御議論も大いにしていただき、整理ができるものについては整理をしていきたいというふうに考えております。
 それから、第3点目が今日議論していただきました、この骨格に基づいての立案作業でございますけれども、この立案作業につきましては、何回も繰り返して強縮ですけれども、説明会などを開催し、幅広い国民の意見を伺いながら立案を進めていくということを予定しているわけでありますが、その進捗状況に応じまして御説明をし、御議論をいただく機会というものを設けたいというふうに考えております。
 都合3つのテーマがあるわけでございますけれども、必ずしもそれぞればらばらに3回やるということではなく、うまくタイミングを合わせまして、これ以上お忙しい皆様の日程を煩わすことはできるだけ少なくなるように工夫をしてみたいというふうに考えております。
 ただ、今、局長からも話を申し上げましたとおり、若干いろいろな作業には時間を要するということでございます。また、夏期休暇の時期ということもございますので、1つの目途としては、秋前あるいは遅い夏といった辺りを1つの目途として念頭に置いていただければというふうに考えております。
 どうもありがとうございました。

○青山座長 どうもありがとうございました。参事官の御説明のとおり、ADR検討会としての活動は、今後とも継続していくことになりますが、今日で一応の区切りを迎えたということかと思います。
 そこで、座長として若干感想めいたことを述べさせていただくことをお許しいただきたいと思いますけれども、一言で言いますと、何て言いますか、振り返ってみれば、「はるけくも来つるものかな山いくつ」というような感じでございます。一昨年の2月5日に第1回の検討会を開きましてから、今日で2年数か月の間に35回ということでございます。その間に、さまざまな紆余曲折がありましたけれども、今日1つの方向性を出して、それにしたがって立案作業を進めていくということについて、大方の御了承をいただいたということで、座長としてはほっとしているところでございます。
 認証制度につきましては、最後まで大きく議論が分かれていたところでございますけれども、ここにお集まりの委員の方全員が日本のADRを拡充・活性化して、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢にしなければならないという強い、強いお気持ちを持っている点では、全員一致していることであろうというふうに思います。
 そういう意味から見ますと、認証制度を取るか、取らないかということを、ある意味で言うと、一つの富士山に登るのに、御殿場口から登っていくのか、富士吉田口から登っていくのかという、言ってみれば方法論の対立という面があったのかと思います。
 それで一応、認証制度を取るということにして、しかし、認証に伴うさまざまの懸念や方向性については、ここで指摘されましたいろいろな御注意、御注文を相当程度加味した上で、例えば認証の要件を、ハードルを非常に低くするとか、仲裁は思い切って外すとか、いろいろな工夫はさせていただいたと。
 その反面としまして、認証に伴う効果というものも、ある程度取り入れることができたと、執行力は別といたしまして、今までのところ取り入れることができたのではないかというふうに思っております。今日お示ししたところが、先ほども言いました、この委員会の最大公約数的なところではなかったのかなというふうに思っております。
 今後の立案作業につきましては、私は先ほど事務局に注文を申しましたので、繰り返しません。振り返ってみれば、はるけくも来つるものかななんですが、今後先を見た場合にも、これからどうなるかということなのですが、これから先を見まわすと、やはり我が国のADRが、本当に国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となる日が来るまでには、まだまだ幾多の困難が我々の前に横たわっていることは間違いのないことでございます。
 そういう困難の一つひとつを取り除くために、ここに御参集の委員の方々が、今後とも御努力していただければ大変ありがたいと、私も微力ながら、そういうことをさせていただきたいというふうに思い定めているところでございます。
 ちょっと一区切りがついたということで、少しほっといたしまして、余分なことまでしゃべらせていただきましたけれども、2年数か月にわたりまして、各委員の方々には大変熱心に議論に参加していただきまして、それにつきまして心からなる感謝の意を表したいというふうに思っております。
 それでは、次回の検討会ですが、これは、先ほども事務局から御説明いたしましたように、事務局の検討状況に合わせまして、タイミングを見て、先ほどの御説明ですと、秋前、あるいは遅い夏という程度のことしか申せないことで大変恐縮ですが、これはこちらの検討状況ということがありますので、御了承いただきたいというふうに思います。開催が決まりましたら、事務局から、また御連絡させていただきます。
 それでは、今日の検討会は、これにて終了いたします。どうもありがとうございました。