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ADR検討会(第37回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年10月12日(火)14:00~17:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、佐成実、髙木佳子、龍井葉二、廣田尚久、三木浩一、山本和彦(敬称略)
(事務局)宮内一三(日本行政書士会連合会会長)、中村邦夫(日本司法書士会連合会会長)、松岡直武(日本土地家屋調査士会連合会副会長)、坂田純一(日本税理士会連合会専務理事)、大槻哲也(全国社会保険労務士会連合会会長)、丸島儀一(日本弁理士会副会長)、横須賀博(社団法人日本不動産鑑定協会会長)、木村謙(日本弁護士連合会副会長)(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議題
(1)隣接法律専門職種等に対する裁判外紛争解決手続の代理権付与
   ① 検討の視点等
   ② 関係者等からのヒアリング
(2)その他

5 配布資料
資料37-1 隣接法律専門職種等に対するADR代理権の付与に関する検討の視点等
資料37-2~37-9 ヒアリング関係資料等   

6 議事
 はじめに、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案」の概要について、事務局より説明が行われた。(◎座長、○委員、●事務局)

◎ 法案の内容について、この機会に御質問等はございますか。
             ~特段の発言なし~

◎ それでは、山崎事務局長より一言、お願い申し上げたい。 

● 裁判外紛争解決利用促進法案については、本日ようやく閣議決定に至り、私もホッと胸を撫で下ろしているところである。これも委員の皆様方の長時間にわたる御議論と御協力のたまものであると感謝している。これまでの御協力について、御礼申し上げるとともに、議論がここまで長引いたことについてはお詫び申し上げたい。

◎ 座長として私からも所感を申し上げたい。
  本日閣議決定された法案は、ADR検討会における三十数回にわたる議論の集大成とも言えるものである。委員の方々の御意見は様々であり、この程度の法的効力では不十分ではないかという人もいれば、もっとシンプルな形であっても良かったのではないかという人もいることについては承知しており、この法案については、委員の皆様方の意見の最大公約数であって、それぞれ妥協もいただきつつ、様々な形で委員の皆様方の御意見を反映させていただいたつもりである。私としては、この法案が無事に成立の運びとなり、日本の民事司法において、審議会意見書にもあるとおり、ADRが裁判と並ぶ選択肢となるよう切望している。
  また、法案は閣議決定されたが、これでADR検討会の任務がすべて終了したわけではなく、隣接法律専門職種のADR代理権の付与の問題がもうひとつの課題として残っている。弁護士法第72条との関係においてADR代理をどのようにするのかについては非常に難しい問題であると認識している。

○ 私は妥協などしておらず、この法案については今でも反対である。その旨はしっかりと議事録に残していただきたい。

◎ 私が妥協と申し上げた趣旨は、この法案に反対の者も含め、11名の委員で議論した結果であるという意味合いである。

  引き続き、事務局より、隣接法律専門職種等に対するADR代理権の付与に関する基本的な考え方について説明した。その後、日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会、社団法人日本不動産鑑定協会及び日本弁護士連合会より、隣接法律専門職種等に対する裁判外紛争解決手続の代理権付与に関する要望等について、提出資料に基づきヒアリングを行ったのち、それぞれの説明に対して質疑応答がなされた。主なものは以下のとおりである(◎:座長、○:委員、●:説明者)。

(日本行政書士会連合会に対する質疑)

○ 団体として積極的に認証を受けるとのお考えであり、団体としてADR機関を設ける予定であると理解した。ただ、紛争の範囲は必ずしも専門知識の範囲と一致するものではないが、他の機関との相互の乗り入れについてはどのように考えているのか。それぞれの職種の方々がめいめい独自にADR団体を作るということになれば「縦割り」になってしまうのではないか。それでは、国民の権利・義務の保護の観点から問題だし、自分のADR機関で代理権が認められないのはおかしいと言った短絡的な発想に繋がりかねないと考える。

● 事案によっては他の隣接法律専門職種と連携して業務を行うことが必要になると考えているが、具体的には今後の課題。いずれ相談してまいりたい。

◎ 日本司法書士会連合会はADR機関での紛争解決手続実施期日におけるADR代理を打ち出しているが、この点についてどのように考えているのか。

● 紛争当事者のADR代理を行うことを考えている。

○ ADR代理業務についての倫理の問題については、どのようにお考えか。

● 本会にも倫理規定は当然にあるものの、特段、ADR代理についての倫理に限定した議論はしていない。全般的な倫理規定を適用し、仮に不足があれば補充してまいりたい。

(日本司法書士会連合会に対する質疑)

○ 司法書士法第3条第1項第7号で「裁判外の和解について代理すること」が司法書士の職責となっているが、その解釈として、この和解にはADR代理を受けた範囲内での相対交渉も含まれると考えているのか。また、「ADR代理は、ADR機関における紛争解決手続実施期日においてのみ行えることとすべきである」ということに関し、これは相対交渉の危険性を意識したものだと思うが、そのような危険性を回避するような方策は持っているのか。

● 相対交渉も裁判外の和解の範囲内で認められると考えている。
  また、相対交渉の危険性については重々認識しているところである。

○ 今の質問に関連して、紛争解決実施期日のみに限っているが、所定の手続を踏まなければならないという意味か。また、かなり厳格にADRというものを考えているようだが、認証ADRのみを対象とすることを考えているのか。 

● 第一点目の御質問については、ADR代理と称して不当に紛争に介入することを避けるために紛争解決実施期日のみに限定したものである。第二点目の御質問については、主として認証ADRを対象とすることを想定しているものの、非認証ADRも対象に含まれうるものと考えている。

○ 団体として積極的に認証を受けるとのお考えであり、団体としてADR機関を設ける予定であると理解した。ただ、紛争の範囲は必ずしも専門知識の範囲と一致するものではないが、他の機関との相互の乗り入れについてはどのように考えているのか。それぞれの職種の方々がめいめい独自にADR団体を作るということになれば「縦割り」になってしまうのではないか。それでは、国民の権利・義務の保護の観点から問題だし、自分のADR機関で代理権が認められないのはおかしいと言った短絡的な発想に繋がりかねないと考える。

● 御指摘のとおり、我々が行うことができるADR業務の範囲は法律の枠内の事項に限られるのが基本と考える。この範囲を逸脱するような事案については、まずは弁護士と相談してまいりたい。

○ ADR代理業務についての倫理の問題については、どのようにお考えか。

● 倫理の重要性については以前から認識しており、昨年6月の定時総会でも司法書士倫理を策定し承認を得ているところである。会員研修のカリキュラムを策定し、研修も行っている。

○ ADR機関外で和解して、ADR機関への申立を取り下げるといったことも考えられるのではないか。

● 原則として、ADR機関で行われる手続のみを考えている。

(日本土地家屋調査士会連合会に対する質疑)

◎ 日本司法書士会連合会はADR機関での紛争解決手続実施期日におけるADR代理を打ち出しているが、この点についてどのように考えているのか。

● 日本司法書士会連合会と同じく、期日におけるADR代理を中心に考えている。

○ ADR代理業務についての倫理の問題については、どのようにお考えか。

● 倫理の研鑽は大切な問題であって、ADRを行うに当たっても重要なものと認識している。今年度は、モデル的に倫理についてのカリキュラムを専門家の先生を交えながら研究しているところである。

○ ADR機関外で和解して、ADR機関への申立を取り下げるといったことも考えられるのではないか。

● 原則として、ADR機関の場について検討しており、ADR機関以外の場についてはまだ検討していない。

(日本税理士会連合会に対する質疑)

◎ 日本司法書士会連合会はADR機関での紛争解決手続実施期日におけるADR代理を打ち出しているが、この点についてどのように考えているのか。

● 会として検討を行ったわけではないが、個人的には日本司法書士会連合会と同様に考えている。

○ ADR代理人としての職業倫理の問題については、どのようにお考えか。

● 税理士法第1条に税理士の使命が明記されており、倫理や綱紀については詳細な規定を持っているが、ADR代理を行うことに伴い、更に追加すべき規定が生じることになれば追加していきたいと考えている。

○ ADR機関外で和解して、ADR機関への申立を取り下げるといったことも考えられるのではないか。

● 一義的には、本人の意思は無視できないのではないかと考えている。

(日本社会保険労務士会連合会に対する質疑)

○ アドバイスや助言を行うのみでは足りずADR代理を行うことが必要になってくるケースとは、具体的にはどのようなものか。また、社会保険労務士は使用者側の代理人となることが圧倒的に多いのではないか。社会保険労務士会としてADR代理を行う場合、労働者側の代理も行うということか。

● 具体的事例を申し上げれば、企業年金が解散したケースにおいて、それまでの積立額を個人がいったん受け取ることになるが、企業側は年金を退職金と同様の取扱いとし、その返済額を企業側に戻すように主張する場合がある。そのような場合、大抵の人間はお金を企業側に返すが、たまに将来への不安などから返還しないケースがあり、そのような場合には、企業側は不当利得返還請求を行う場合が多い。最近の事例では、そのような場合に社会保険労務士が相談を受け、退職金の前払いと位置付けてはどうかといったアドバイスをしたが、企業側は訴訟に切り替えてしまい、それと同時に担当が弁護士に切り替わってしまったということがあった。このような場合に、社会保険労務士がADR代理を行うこととなれば、そのような問題もなく合意することが可能である。
  また、確かに社会保険労務士は使用者側から依頼されるケースが圧倒的に多いが、労働者側からの依頼もある。社会保険労務士は企業寄りとの見解もあろうが、企業の健全な発展のためには労働者等の福祉の向上に資することが重要であり、公平公正な判断をすることになると考えている。

(日本弁理士会に対する質疑)

○ 著作権全般にADR代理権を広げてほしいとのことであるが、弁理士の専門性との関係についてはどのように考えているのか。

● 創作性との関連で共通性がある。著作権であっても、例えば著作物の電子化などでは、契約の局面が必ずと言ってよいほど創作性が論点になってくる。 

○ 弁理士については、既に一定の限度においては紛争処理のADR代理を行っているところであり、ADR代理については、相対交渉を含めた交渉や相談とも密接不可分なところがあるが、それらの代理との関係性を伺いたい。

● 知的財産については、契約の中味に基本的に紛争性が内在しており、係争性の有無についての判断がつきにくい側面を有すると理解している。係争性がなければ代理が可能であり、係争性があればダメということになると、区別が非常につきにくいため、相対交渉における代理も含めていただきたいと考えている。

(社団法人日本不動産鑑定協会に対する質疑)

○ 遺産分割の財産評定や離婚に伴う財産分与や借地借家法の正当事由を補完する金銭的給付についてADR代理権を付与されたいとのことであるが、それらの事項において、不動産鑑定士が関わる局面は紛争全体の中の一部に過ぎない。そのような紛争における不動産鑑定士の関わり方についてのイメージを御教示願いたい。

● 相続の場合において、不動産価格が問題となった場合について、ADR代理に限定することを考えている。そういった紛争において、まずは鑑定の面が問題となって紛争が発生することも多い。

○ そのような事例において、ADR代理よりも適切な関与の仕方があるのではないか。今の説明を聞くと、例えば鑑定人、補佐人として関わればよく、なぜ代理人とならなければならないのかという説明になっていない。

● もちろんそのような関与の仕方も考えられるが、鑑定には費用もかかるので必ずしも適切であるとまでは言えないのではないかと考えている。

(日本弁護士連合会に対する質疑)

○ 隣接法律専門職種に対するADR代理権の付与について、代理権を付与しなくともADRの拡充・活性化に繋がるとお考えなのか、それとも、代理権を付与してもADRの拡充・活性化には結びつかないとお考えなのか。

● 基本的には、法律分野についての専門性が高い職種については、代理業務よりも むしろ手続実施者として関与することがADRの拡充・活性化に繋がるものと考え ている。

◎ 審議会意見ではADRにおける弁護士以外の隣接法律専門職種の活用が謳われているが、日弁連の理解は、それはADR代理における活用ではなく、手続実施者や補佐に留まるということでよいのか。 

● 色々と検討した結果、隣接法律専門職種はADR代理になじまないため、ADR代理よりも手続実施者として活用される方がより望ましいと考えている。

○ 弁理士については専門性もある上に、一定の代理権も既に付与されているわけで あるが、そのような場合、ADRの手続についてのみの代理とすることは非現実的 である。ADRの周辺、ADRからはみ出した部分に係る代理権の付与については どのようにお考えか。

● それについては色々と難しい問題もあるが、これまでの検討では、弁理士については特定機関において代理権を付与することを考えている。

○ 手続終了後においても、例えば民事調停などにおいても代理人同士で話合いを行うなどという局面があるが、そのようなものは認めがたいと考えているのか。

● 相手方が手続を取り下げた場合における対処方針の決定なども行いうることとなり、それはADR代理の枠外に領域の問題を取り扱うことを許容することにもなりかねないため、期日外のADR代理はできないものと考えている。

  最後に、事務局より、隣接法律専門職種のADR代理及びADRの拡充・活性化の中長期的な課題について議論するため、11月上中旬にADR検討会を開催したい旨の説明があり、日程等詳細については決まり次第、追って各委員に連絡することとなった。

(以上)