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ADR検討会(第38回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日 時:平成16年11月8日(月) 13:00 〜15:10

2 場 所:司法制度改革推進本部事務局 第一会議室

3 出席者(委 員)
青山善充(座長)、佐成実、高木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、 日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
山崎事務局長、松川次長、古口次長、小林参事官

4 議 題

(1)隣接法律専門職種に対する裁判外紛争解決手続の代理権の付与に関する検討状況
(2)裁判外紛争解決手続に関する中長期的な課題(自由討議)

5 配布資料

資料38−1 隣接法律専門職種に対する裁判外紛争解決手続の代理権の付与に関する検討状況
資料38−2 裁判外紛争解決手続に関する中長期的な課題(討議用メモ)

6 議 事

○青山座長 時間になりましたので、それではただいまから「ADR検討会」を開催いたします。
 本日は、安藤委員が残念ながら所用で御欠席のほか、皆様御出席いただいております。 本検討会も御存じのとおり、今回が第38回目ということでございますが、司法制度改革推進本部の設置期限であります11月末まであと3週間足らずとなり、このADR検討会も今回が最後となりました。また、推進本部事務局のすべての検討会の中でも、今日の検討会が11の検討会の中では最後の検討会だということであるようでございます。
 ADR検討会に託されました検討課題のうちで、裁判外紛争解決手続の拡充・活性化のための制度基盤の整備ということにつきましては、前回のこの検討会で事務局から御説明がございましたように、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案というものを去る10月12日に国会に提出したところでございます。
 先週から衆議院法務委員会におきまして、その法律案の審議が開始されました。私も11月5日金曜日の午前中には参考人として参議院法務委員会に呼ばれ、意見を述べてまいりました。私のほかには、日弁連副会長の松尾良風さん、それから当委員会の原早苗委員も参考人としてそれぞれ意見を陳述されました。3人とも法案の成立の必要性を強く訴えるものでございました。
 その後の参考人に対する質問の中で、幾つか新しい発見がございました。意外だと思った点を1点だけ紹介させていただきますと、少なくとも私の意見陳述あるいは質疑に対する応答は、認証制度というものは、ADRというものの本質には必ずしもそぐわないという基本的スタンスを持ちつつも、現段階では認証制度を導入するのはやむを得ないのではないかというスタンスで説明をさせていただきました。
 しかし、これに対して、法務委員会の質問は認証制度の導入は当然であるという認識の下に、むしろ非認証のADR機関が今後どんどんと、雨後のタケノコのように増えてきて、そのADR機関がやりたい放題のことをやるとすれば、そちらの方が弊害ではないかというスタンスからの質問が多数ございました。
 今週もその審議が多分続いておりますが、いずれにしても法案を出した以上は国会で早期に成立していただきたいと望んでいるところでございます。
 それでは本日は、残る課題であります隣接法律専門職種に対する裁判外紛争解決手続の代理権の付与の問題と、もう一つは、裁判外紛争解決手続に関する中長期的な課題のこの2つのテーマにつきまして、締めくくりの議論をしていただき、本検討会はそれをもって、与えられた責務を全うすることにしたいと思います。
 そこで、まず初めに「隣接法律専門職種に対する裁判外紛争解決手続の代理権の付与に関する検討状況」につきまして、推進本部事務局から説明をお願いしたいと思います。小林参事官、お願いいたします。

○小林参事官 それでは、本日のテーマの1番目でございますが、隣接法律専門職種に対します代理権付与の問題について御説明いたします。
 この問題につきましては、前回の検討会におきまして各隣接法律専門職種の方々などから、御意見を賜ったところでございます。主宰者としての専門家の活用につきましては、今国会に提出をいたしておりますADR法で措置をしたわけでございますが、代理人として専門家の方の活用を図っていくということは、利用者にとっても便宜ではないかということで検討をしているところでございますし、各団体の方からもそういった期待に応えるべく、内部で十分に御議論をされた上で真摯な御要請をいただいたものと認識をいたしております。
 したがいまして、この問題の検討につきましても、私どもとして最大限、いろいろな要素を考慮して検討をさせていただいているところでございます。
 ただ、この代理権の付与につきましては、前回も若干御説明をいたしましたように、紛争の当事者にとりましては、紛争の当事者の権利義務を直接処分するという権限を有するということでございますし、また資格制度につきまして、個別に検討していくということでございますので、非常に慎重な検討あるいは難しい調整が必要な状況でございます。
 したがいまして、本日これからお話する内容につきましても、あくまでも現時点での検討状況という段階のものであるということにつきましては、あらかじめ御了承いただければと考えております。ただいまの時点の検討状況ということで御説明をさせていただきます。
 まず、本問題につきましての検討の視点につきましては、資料38−1の2ページ目に掲げてございます。この問題につきましては、前回も御説明をいたしましたので、詳しい御説明は省略いたしますけれども、基本的には個別の検討に当たりまして、2つの点を言わば座標軸として検討しているということでございます。
 1つは、その職務の業務を遂行するために備えている専門的知識・経験が有用であって、弁護士以外の代理人を必要とする社会的ニーズに応え得るものであるのかどうかという点。
 第2点といたしまして、その職種の業務として紛争解決に関与してきた実績などを通じて、代理業務を公正・適確に遂行するに足る法律的能力や倫理規律を備えていると言えるかどうかという点で、この2点を軸といたしまして検討をしているということでございます。
 次に各職種の現行制度につきまして、本件に関係する部分でございますけれども、現在の業務についての整理をいたしております。
 左側から民・民間の紛争、民間と民間との間の紛争、行政と民間との間の紛争、それから紛争性のない業務と整理をさせていただいておりますけれども、これを御覧いただきましてもおわかりになると思いますが、各職種におきまして、現在の制度の下で行われている業務というのも非常に多種多様でありますし、本件との関係でこういった紛争性のあるもの、ないものと仕分けをしていきますと、かなり実態には差があるという状況にあるということは御理解いただけるかと思います。
 詳細な御説明の方は省略させていただきます。
 先ほど申し上げましたような2点の視点から、そして今御覧いただいたような現行制度における業務内容といったものを照らし合わせまして、前回いただきました御要望についての検討状況を整理したものが、次のページ以降でございます。
 以下、それぞれの職種ごとに御説明をしていきたいと思います。
 まず1枚目につきましては、司法書士、弁理士でございます。これらの職種につきましては、いずれも一定の条件の下で訴訟代理権、あるいは一定の範囲のADR代理権が既に付与されている職種でございまして、基本的にはADR代理業務を行う上で必要な法律的能力を有しているかという点での問題はないのではないかということでございます。
 したがいまして、主にADR代理の拡充の御要望をいただいているわけでございますが、それが本来業務との関係で十分な専門的能力を有すると言えるかどうかという点が1つのポイントになろうかと思います。
 その結果につきましては、ここのところにございますとおりでございますけれども、弁理士の方からいただいておりますADR代理の対象を不正競争全般に拡大するという部分につきましては、少なくとも現行制度の下では現在の業務との関連性は必ずしも十分ではないのではないかということで、これについてはなかなか難しいのではないか、現段階でこの問題に結論を出すというのは時期尚早ではないかということで、×印をしておるわけでございます。
 その他のものにつきましては、この方向での検討を進めているということでございます。
 続きまして、2枚目でございますが、社会保険労務士と土地家屋調査士でございます。これらの方々につきましては、訴訟代理権はないということでございますが、それぞれに特定の分野の専門的知識・能力を有しておられますし、また民・民間の紛争性のある業務の実績があるか、あるいはそれに非常に密接に関わりのある業務を行っておられるということでございます。
 したがいまして、要望をいろいろといただいておりますけれども、これについてはこの方向で検討をしているという状況でございます。ただ、先ほど申し上げたような状況でございますので、可とする場合の条件等ということを検討しているわけでございますが、具体的にはそれぞれの大臣が指定する機関で実施をする、あるいは必要な能力担保措置を講じていただく、あるいは弁護士との共同受任事件に限るというような条件を付することについて、検討をさせていただいているという状況でございます。
 それから、3枚目でございますが、税理士、不動産鑑定士、行政書士の方々でございます。これらの方々につきましては、現行制度の下におきましては、民・民間における紛争性のある業務についての実績はないという状況でございます。また、特定の分野の専門的知識・経験というのが必ずしも十分でないか、あるいはその専門的知識・経験というのがある場合につきましても、それを生かすのはむしろ代理ということよりも補助者としての立場で生かしていただく方が実効的ではないかということで、これらにつきましては、なかなか現在の状況では難しいのではないかと考えられます。ただ、将来課題とすることについて、なお検討させていただいているということでございます。
 若干付言をさせていただきますと、税理士の方々につきましては、代理の問題とは別に、この要望事項の上段にございますように、ADR主宰者等の相談者として積極的に関与していきたいという御要望をいただいたところでございますが、これは現行制度の下でも法律的には可能でございますし、また現実のニーズを踏まえても、この部分については私どもとしても大いに御活躍を期待したいというところの部分でございます。
 それから、不動産鑑定士の方につきましては、鑑定という業務の性格上、先ほど申し上げたような状況にございますので、やはり将来課題とすることについて、なお検討中ということでございます。
 また、行政書士の方につきましても、民・民間の紛争の実績がないということ、それから幅広い分野を取り扱っておられるわけではございますが、逆に申し上げると特別に専門性を有している分野というものがなかなか見出し難いということがございますので、これにつきましても、なお将来課題とすることにつき検討をさせていただいているという状況でございます。
 冒頭申し上げましたように、非常に難しい検討、調整を要するものでございますので、今の状況は、今申し上げたところでございますが、更に検討を進めまして、最終的には推進本部において決定をいたしまして、その後の士業法改正などに向けた道筋をつけたいと考えております。
 以上でございます。

○青山座長 前回の検討会で、7つの隣接法律専門職種の方々から御意見をお伺いいたしまして、それを踏まえてつくられたものが本日の資料でございますけれども、これにつきまして何か御質問等がございましたら、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
 どうぞ。

○龍井委員 2点御質問があります。このチャートでいうと3枚目ですか、検討項目のチャートの中の能力担保措置の中に研修・試験等という記載がございますが、その内容は職種によって性格が違うのかもしれませんので、一般論としてお聞きをしておきたいと思うんですが、ここでいう研修とは、多分自主的に行うものも含まれると思うんですが、試験とは客観性のあるものと言いますか、第三者機関的なところで行われる試験ということでイメージしてよいのかどうなのか。
 逆に言うと、合否というものがあれば、クリアーした者についてだけに、ここで言えば代理というものが認められます。ということになりますと、試験に合格された人という人が一般的な士資格とは違う、何かもう一つ新たな、資格と呼んでよいのかどうかわからないんですが、そういうものが客観的に見てわかる形になるような意味でこの試験ということを受け止めてよいかどうかというのが1点目です。
 それから、2点目は同じチャートの対象となる紛争の種類というところで、これは私どもが特に労働関係で例示をさせていただいて、幾つか懸念という形で表明させていただいた点の中で、特に個別紛争と言いますか、個人型紛争と言いますか、そういうものと、いわゆる集団型の紛争になった場合というのが、どういうふうに配慮されるのか。今の時点で何か考えがあったらお聞きしたいと思います。
 以上です。

○小林参事官 まず第1点目でございますが、これは今、龍井委員もおっしゃったように、基本的にはそれぞれの職種ごとの検討ということになりますし、他の条件がどういう設定にされるかということによっても変わってくるということが大前提ではございますが、一般論として申し上げれば、仮に研修プラス試験ということになった場合には、いわゆる資格の中に行える方が限定されるという意味で別の資格ができるということを排除しているわけではございません。ただ、それが適当かどうかというのは、これはいろいろな判断、検討が必要であろうかと思いますが、今の訴訟代理権についての場合でもそういった仕組みがとられておりますので、一般論としてそれを排除するものではないということでございます。
 それから、2点目は労働分野の関係ということでよろしいですか。

○龍井委員 はい。

○小林参事官 労働分野の関係につきましては、個別労働の関係の代理権を考えておりますが、より具体的には社会保険労務士連合会からの要望事項に書いてある内容ということになろうかと思います。

○青山座長 よろしいですか。

○龍井委員 はい。

○青山座長 では、ほかにいかがでしょうか。どうぞ、原委員。

○原委員 私も1点だけ確認なんですが、実際に、司法書士、弁理士など7業種について、具体的な要望事項などが書かれてあるんですが、一体でき上がった関わるADRでこれに要望されたことに絞るのか、それとも扱う紛争の種類を無限定に広げていってもよいというスタンスをとるのかということは、それぞれの個別法の検討に委ねられるということになるのか、それともここで、もう今日しか時間がないから無理ではあるんですけれども、ここである程度この要望事項に書かれていることについて了解をすることになるのかどうかという辺りがちょっとよくわかりませんので、対象となる紛争の種類との整理のところをもう少しお聞きしたいと思います。

○青山座長 事務局から。

○小林参事官 基本的には、対象となる業務の範囲につきましては、それぞれある意味では最も自分たちの職種について知悉をされておられる団体の方からいただいている御要望でありますので、その御要望を踏まえて検討をさせていただいているということでございますので、それをあえてそれ以上に広げるということについては、今回特に作業をしているわけではありませんけれども、具体的に更に、これは大きな基本的な方向付けでありますから、細部も含めて検討を更に続けていく過程で、若干の出入りがあるということは、特に否定をしているわけではございません。

○青山座長 原委員、具体的に。

○原委員 もう少しお話をさせていただきたいと思うんですが、私も国会参考人で、本当に私が適任だったかどうかというのは大変恐縮なんですけれども、利用者消費者ということで意見を述べさせていただきました。
 それで、委員全体としては、青山先生に検討会の総意を発言していただいたというふうに思っているんですが、最初に青山先生の方からおっしゃられたように、国会に上がってみると、認証を受けないADRなど、いろいろなADRが出てきて、どうなるんだという懸念のようなことを表明される意見がかなり多くて、それからちょっと敷衍して考えると、例えば、司法書士であれば、主な要望事項としてここに1つだけ掲げられていますけれども、もしもここに掲げられている内容について○×というような判断というのがなされているんだと思うんですが、それを今ここに挙げられている主な要望事項以上に広げるというふうになったときには、○ではなくて×になるかもしれないという懸念もあると思うんです。
 そういうときには、もうこの検討会は散会してしまいますので、それぞれの個別の法律を抱えていらっしゃる省庁の判断に任せるというようなことになるのでしょうかという御質問でです。

○小林参事官 先ほどの回答の繰り返しになるかもしれませんが、それぞれの団体におかれまして、十分に議論された上でこの分野について自分たちが活躍をしていきたいということで御要望をいただいたわけでございますので、その部分についての検討をさせていただいたということでありますので、基本的にはこの大きな方向性に沿って検討が進められるということであるというふうに思います。
 先生がおっしゃっている全然全く別のことが入ってくるというのは、どういう契機なのでしょうか。

○原委員 例えば、司法書士であれば要望事項にある金額は140万円以下のとなっていますが、これが140万円以下ではなくて、もっとすごく高額なところまでいった場合ですとか、弁理士であれば、今のところ著作権について書かれていますけれども、それ以外に範囲を広げるというふうになった場合ということです。

○小林参事官 なった場合と言いますか、むしろ検討の筋道として今回の検討の整理において、余り個別的なお話を申し上げるのは適当かどうかわかりませんが、この要望事項と要望事項に対する検討の結果を踏まえて検討するということでありますので、今おっしゃったようなことが突然何か現われてくるということはないと思います。

○原委員 大体、わかりました。では、徐々に現われたときはそれぞれの個別の法律の中での判断になっていくということですね。

○青山座長 個別法については、法務省以外の省庁が担当しているものも幾つかありますけれども、例えば、社労士法であれば社労士法を所管する厚生労働省で単独にできるというわけではなくて、やはり法務省と協議しながら、あるいはこれは日弁連の意見も聞きながら、72条の関係でどうだろうかということを検討しながら、やはり法律をつくることになると思いますので、ある省庁が全体的なADRの体系の中で、突出して全体の調和を崩すというようなことはないのではないだろうかと期待しております。その基本線がこの案だと御理解いただければと思っております。

○小林参事官 済みません。非常に微妙な問題なのできちんと申し上げた方がよいと思いますが、要するに検討の土俵を決めているわけでございますので、土俵と道筋を決めているわけでございますので、基本的にはこの方向で検討をしていただくということです。

○青山座長 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ、佐成委員。

○佐成委員 社労士と土地家屋調査士のところの検討状況のところで、可とする場合の条件等とそて、先ほどの説明では、機関を指定するとか、能力担保措置をとるといった御説明があったんですが、弁護士の関与に関しては、「共同受任等」として、ここに例示として挙がっている共同受任以外に、例えば助言といった形での関与なども含めて検討されているという認識でよろしいのでしょうか。

○小林参事官 この代理の問題につきましては、助言という形で担保するということはなかなか難しいのではないかと考えておりまして、弁護士の関与につきましては、共同受任ということを前提に考えております。ただ、その範囲につきましては、なお検討しているということでございます。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。
 それから、事務局にそういう個別法ができ上がる時期みたいなことについて、目安があったらちょっと皆さんに御紹介いただけますか。

○小林参事官 これは、最終的にどういうとりまとめをするかによるわけではございますけれども、基本的には専門家の活用を図っていくということでは、ADR法の趣旨と軌を一にするわけでございます。
 ADR法につきましては、これはADR機関側、あるいは利用者、国民の周知徹底を図るという意味からもやはりそれなりの準備期間が必要だろうということで、公布後2年半以内に施行するということにいたしております。
 したがいまして、先ほど申し上げたこととの関係でいきますと、それまでにこの代理の問題についても措置がなされることを想定しているということでございます。そういう意味では、次期通常国会以降ということになろうかと思います。

○青山座長 よろしゅうございますでしょうか。ほかに何か御意見ございますでしょうか。

○龍井委員 ちょっと確認ですけれども。

○青山座長 どうぞ。

○龍井委員 この問題の検討状況について、この検討会自体は今日で最後なんですが、その判断については何がしらの形でオープンにされると言うか、確認されることになるのでしょうか。つまり、原委員の質問と関連をするんですが、現在検討の土俵に上がっている要望事項について検討していくということがわかるのでしょうか。 例えば、後ほどの議題にもなると思いますけれども、この全体の見直しは5年後とされていますが、そのときに多分その関連で個別法についても見直していきましょうという段階が生まれますね。そのときに、今回の○×はこういう根拠に基づいて、さっきの説明では時期尚早という表現もあったんですけれども、実績等々から見て時期尚早だという話、あるいは論理的にあり得ない話と、レベルがいろいろと異なる。
 勿論、おっしゃったように微妙な判断が入っているから一概に言えないんだけれども、そういう今回の議論で結論付けた根拠について、やはりどこかで明示することによって、共有されていないといかないのではないかと思います。私がさっき集団紛争のことを伺ったのも、これは要望にないかもしれないけれども、将来そういうことが議題になる可能性だってあるわけです。
 これはもともとそういうものにはなじまないんですという判断で、この場で議論しているわけではないから、多分お役所の方の判断だと思うんですが、その根拠がやはり何らかの形で明示をしておくことが必要かなと思っているんです。何かそういうことがされる可能性があるかどうかということです。

○青山座長 事務局、答えられますか。

○小林参事官 先ほど申し上げましたように、最終的には検討の結果につきましては、推進本部決定といった形でとりまとめることを予定いたしておりますので、その内容につきまして、現時点での検討の結果というのは明確にされるということになりますし、将来課題等の扱いについても、その中で必要があれば触れられることになると思います。
 いずれも仮定の御質問になるので、なかなか答えにくいのですけれども、契機としてはその部分がきちんとした整理の場ということになると思います。

○青山座長 どうぞ、廣田委員。

○廣田委員 司法制度改革審議会の意見書では、72条の見直しを含めて個別的に検討せよというふうになっていました。そのトーンからすれば、今回の結論は非常にトーンダウンしているという印象を率直に言って強く持っています。
 そこで、最後のページの税理士、不動産鑑定士、行政書士についてですが、そのほかの×が付いているところも含めて、将来課題とすることにつきなお検討中というのは、今日から将来なのか、施行された後からの将来なのか、その辺がはっきりしないのですが、もし今日からなお検討するというのであれば、あえて×を付ける必要はないのではないかと私は思います。
 そこのところを2年半後に検討するということになると、随分絞られてしまう。2年半もあるのなら、72条のことも含めて弁護士会と具体的に擦り合わせをして、何ができる、何ができないということをはっきりさせて、織り込めるところは織り込むというのが意見書に対する本当の答えだというふうに私は思います。ちょっとその辺を検討していただきたいと思います。

○小林参事官 まず、×が付いていることにつきましては、これは特に何か深い意味があるわけではなくて、説明の便宜上、付けさせていただいておりますので、もし、そういう意味では不適当だということであれば、その点についてはそういう意味だということでお話を申し上げたいと思います。
 いずれにしましても、ここでそういう形で示させていただいているのは、現時点で、要するに今回、先ほど申しました推進本部の決定をする際に付与するということでとりまとめをするというのは難しいという趣旨で×を付けているわけでございまして、その後の検討について、どういう扱いにするのがよいのかということについては、まさに今、検討をしているということでございます。先生の御意見も一つの御意見として承りたいというふうに思っております。

○青山座長 司法制度改革審議会意見書の話が出ました。確かに、72条を見直すと書いてございますけれども、それは隣接法律専門職種の各業界の実態を見ながらという限定文言も入っていたと思います。それで、それぞれによって違ってくるというのが現在のところのこの資料だということで御理解いただきたいと思います。
 それから、これがどこまで将来を拘束するかということですけれども、要するに、これは現在の検討状況をそのまま出すとこうなるということでございまして、これを基礎としながら、これから裁判外紛争解決の利用の促進に関する法律の施行は公布の日から2年6か月以内の政令で定める日までに施行するということになっていますから、その施行までに個別法は代理業務について何らかの対応をしなくてはいけないと思います。それに向けての現在の検討状況をここに表わしたわけです。
 その後、法律が施行されてから5年以内に施行の現状を見ながら、必要に応じて更に検討するという見直し条項が法律の附則の2条に入っているわけですが、それに向けて、これが拘束力を持つということではございませんので、その点は誤解のなきようにしていただきたいというふうに思います。
 ほかに、何かございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 このテーマは、これから最終的な結論を出すまでに関係省庁のみならず、多方面との調整が必要になる事項であると思います。大変難しい問題だろうと思います。そこで、今日、事務局から御説明のあった検討状況も、あるいは隔靴掻痒の感を委員の方々はお感じになりつつお聞きになった点も多々あろうかと思いますけれども、そういうこともございますので、御了解いただきたいと思います。
 今後、事務局が政府としての案をとりまとめて、司法制度改革推進本部決定というような形でとりまとめていく過程では、今日いただいた御議論や、それから勿論、今までにいろいろな御意見をいただいておりますから、そういうものを参考にした上でとりまとめていただくということで、この問題に関するこの検討会での議論は終えたいと思っておりますが、それでよろしゅうございますでしょうか。

○高木委員 済みません、今の推進本部決定ということの意味合いを教えていただけますか。今、推進本部決定にまとめるとおっしゃったのですけれども、この推進本部決定がどういう位置づけのもので、どういう意味を持つものかということについて教えていただけないでしょうか。

○小林参事官 推進本部決定は、推進本部としての意思決定でございます。

○高木委員 それはだれを拘束するんでしょうか。

○小林参事官 推進本部構成員を拘束することになります。

○高木委員 ただ、これは11月末になくなるわけですね。その後はどうなるんでしょうか。

○小林参事官 それは事実上、構成している各府省を。

○高木委員 拘束すると。

○小林参事官 拘束という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、その間で合意したという事実が残るということでございます。

○青山座長 それでは、引き続きまして、本検討会の次のテーマに移らせていただきたいと思います。
 それは、本検討会の議論の締めくくりの問題と言ってよいかと思いますが、裁判外紛争解決手続に関する中長期的な課題について自由討議という形で、委員の方々の御意見を承っておきたいということでございます。
 まず、資料38−2「討議用メモ」につきまして事務局から御説明をお願いしたいと思います。
 小林参事官、お願いいたします。

○小林参事官 本検討会におきましては、ADRに関します拡充・活性化策の中で、総合的な制度基盤の整備ということで、いわゆるADR法に関する議論を進めてまいりました。 それから、その関連で代理権の付与に関する議論も行ったわけでございますが、その過程におきまして、ADRの拡充・活性化については、単にそういった法的措置のみならず、運用上の問題も含めて、あるいは短期的な問題のみならず中長期的な課題についてもきちんと議論する必要があるという御指摘をいろいろといただいてきたところでございます。
 勿論、そのうちの幾つかの部分につきましては、関係省庁等連絡会議における検討、あるいはアクションプランの作成などを通じて、一部検討あるいは実施をしてきたところでございますが、なかなかまとまった時間を取ってそういったことについて議論することができなかったということがございます。
 それで、最後の最後ということで非常に心苦しいわけではございますけれども、この機会に中長期的な課題につきまして、これまで断片的にはいろいろとお伺いしてきた部分があるわけではございますけれども、委員の皆様の御意見を賜って、今後の活性化策につなげていきたいと考えております。
 ただ、全くのフリーディスカッションということになりますといろいろ議論があちらこちらに飛ぶということもございますので、考えられるテーマ、これまでの検討会の議論の中で出てきたテーマを幾つか挙げさせていただいております。必ずしも網羅的でもございませんし、あるいは一部重複する部分もあろうかと思いますが、皆様の御議論をいただく際のよすがといたしまして、幾つかのテーマを設定させていただいたということでございます。
 1番目は、これは言わずもがななのかもしれませんが、国民の理解の増進を図っていくにはどうしたらよいかという問題。
 2番目が、関係機関間の連携。
 3番目は、紛争解決手続の担い手をどう育てる、あるいは活用していくかという問題。 4番目、これは検討の過程においては細かい紛争解決手続のルールを定めるのは時期尚早ではないかということで、いわゆる調停一般法のようなものの検討については見送ったわけでございますが、そういった問題についてどう考えるのか。
 5番目として、法的効果につきましては、いろいろと議論した結果、現在のADR法においては時効中断効、訴訟手続の中止、調停前置の特例を挙げているわけでございますが、それ以外に見送ったものも含めまして、法的効果として、今後考えていく必要があるものとして何があるのか。
 その他というのは、それ以外に何か課題があるのかどうかということでございます。
 いずれも、議論の一つの目安ということでお示しをしたものでございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、この「討議用メモ」を参考に議論していただきたいと思いますが、あるいは委員の方々の中には、なぜ、この最後の段階になってこんなことを議論するのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。一体、この議論の成果はどうなるのかということにまず御関心がおありかと思います。
 これについて、まず、私の方から申しますと、今日御議論いただくのは、議事録には勿論残るわけでございますが、議事録だけに残すというのではもったいないように思います。これまでADRの拡充・活性化を図るために、当初はまったく議論の蓄積がなかった状況から議論を始め、2年何か月かにわたってこの会議に参加してくださった委員の方々の意見を、私としては十分にこれから活用させていただきたいと思いまして、事務局に最後の機会にこのような自由討議の時間を設けてほしいということを要望した次第でございます。
 今日の議論でいただきました意見を基に、私としてはADRに関する中長期的な課題を、この検討会の途中では私は最終報告、最終報告というような言葉を何度も使いましたけれども、最終報告という形で、この会議をしてまとめ上げるのは時間的に無理でございますので、仮に座長レポートというような形でまとめさせていただいて、今後、ADRの研究・検討に当たられる方々に向けたメッセージとして残しておきたいと考えております。それは多分、これからのADRのいろいろな機関の立ち上げにも参考になるでありましょうし、それから、運用あるいは認証の取扱い等においても、いろいろな意味で参考になる貴重な資料になるであろうと思います。勿論、5年後の見直しの際にも、十分に活用していただけることになるのではないかと思った次第でございます。
 そこで、時間を頂戴することになるのは大変苦痛に思いながら、最終回に是非こういう議論をして、私の座長レポートを事前に全委員にお目通しをいただきまして、その上で事務局を通じて公表するという扱いにさせていただきたいのですが、まず御意見を伺う前に、今日御議論をさせていただいて、そういう扱いをすることについて御意見があれば承りたいと思いますが、いかがでございますでしょうか。御了承いただけますでしょうか。

(「賛成」と声あり)

○青山座長 わかりました。
 それでは、そういうことにさせていただいて、ここに幾つか項目が並べてありますが、御意見をいただきたい点は、ADR法が成立したからといって直ちに日本のADRが拡充・活性化するなどということは、どなたも考えておられませんので、この法律が制定した後の、ADRの拡充・活性化の方策、アイデア、運用、希望、注文、5年後の見直しについての今から考えておくべきことなど、なんでも結構でございますので、従来の検討会では包括的になかなか御議論いただけなかった点について、御意見いただければと思っております。
 どのテーマからでも結構でございますし、どなたからでも結構でございますが、できれば今日は最後の機会でありますので、全員の方に御意見を賜れば、私としては大変幸せだと思っております。
 どうぞ、どなたからでも、1回だけではなくて、2回、3回の発言の機会もありますから、遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。1時間半ほどの時間を用意しておりますので、どうぞ、御自由に御発言いただきたいと思います。
 原委員。

○原委員 私は参考人で、随分、意見を言いましたので、まずほかの方々からと思っておりましたが、いかがでしょうか。

○青山座長 まず、口火を切っていただくのでいかがでしょうか。ポイントだけ言っていただければ十分です。

○原委員 わかりました。
 こういう機会を設けていただいたのを大変よかったと思いました。私も、今回の参考人のためにちょっとノートをひっくり返してみましたら、大学ノート5冊分になっていて、随分、検討を重ねたものだと感じました。是非これを後に続く方々のためにも、成果として残していただきたいと思います。
 幾つか思っている点がありまして、ここに書かれていないものも何点かあるような感じがしているんですが、一つは、一番最初に国民の理解の増進というのがあるのですけれども、やはりADRそのものについて言葉を知らないというか、言葉の理解がないということもありますけれども、ADRという言葉の認知度を上げていくよりも、裁判以外の紛争解決の仕組みがあるとか、手続があるとか、そういうことの認知度を上げていくことが非常に重要ではないかと思っております。
 ADRは何かとても遠いところにある話ではなくて、私ども、例えば消費者にとっても、それから、市民、国民にとってもトラブルというのは日常いろんな場面であるわけで、それをそれぞれの場で解決を図っているわけですけれども、そのすぐちょっと先にこういった紛争解決の仕組みがあるんだということ、身近な存在なんだということを含めて、理解増進ということを図っていただきたいと。
 その際には、検討会の冒頭でも何度か申し上げましたけれども、ポイントは2つあって、1つは苦情とか相談とか、それから調停とか仲裁とか裁定とか、いろいろな言葉が使われていますけれども、やはりきちんとした言葉の定義づけと、自分が今どの立場に行って物事を解決しようとしているのか、その次のステップに行くとどういう選択肢が用意されていて、自分は選ぶということができるのか、といった定義づけをまず図って、自分がどのポジションにいて選択を働かせることができるのかということが大事であるということ。
 もう一つが、自主的な紛争解決の仕組みであるのだという、自分が主体性を持って取り組むべきことなんだということ、その2点が一番最初のところで書かれている国民の理解の増進のところでは必要ではないかというふうに思っております。
 2点目のところで関係機関との連携ですが、この法律ができることですぐに動いてきそうなのが、行政型のADRと民間のADRとの連携の部分で、行政の、例えば消費生活センターなどでは、苦情とか相談とか紛争解決を民間のADRと連携を図って解決していきたいという動きが行政側の動きとして出てきていますので、そういう意味では大至急、既存の民間のADRは、このADR法にのっとって、ある程度規程を点検して、透明性の向上を図って、行政型のADRとの連携を図っていただきたいというふうに思っております。
 担い手の育成については、参考人の意見陳述のところでも青山先生も、松尾先生も力説をされておりまして、ここが一番のポイントというふうにおっしゃられた点は私も同意見であります。
 法的効果というところなんですが、法的効果と直接ではないんですけれども、私が思っていますのが、ADRで紛争は個別に解決をされていくということになると、裁判であれば判例という形で公のものになっていって、例えば、次の政策をとるときに裁判での結果みたいなものが反映されていくわけですけれども、ADRの場合、解決ばかりに主眼が置かれて、それが公の財産になっていかないと非常にもったいないというふうに私は思っておりまして、できるだけそれも公の財産になるような形で、次の施策へ反映できるような道筋が必要ではないかと感じております。
 それから、ここに書かれていない点でちょっと3つ気になるところがあって、1つはコスト論の話を随分したのですけれども、これを法律では弁護士法72条を外して報酬を得るということができるという形にしていますので、今後のADRは報酬を得るという形にはなりますけれども、それであってもかなり大きな負担というかトラブルの内容によっては大変なところありますので、何らかの扶助のような仕組みづくりも検討されてよいのではないかと思います。
 2つ目は、国際的取引の場面です。ネット取引とか、金融取引に代表されますけれども、国際間のADRの選択とか連携という辺りをどのように考えていくのかの整理も必要と思います。
 最後なんですが、先回の国会で質問をかなり受けたところで、青山先生が印象的だったというふうにおっしゃられたところは私も同様で、認証を取らないADRというものがどういう形で存立をしていくのかという検証について、それは市民側からやるということになると思うのですけれども、そういったものの存在について、どのように考えていくのかということも考えていくべきだと思います。私としては、認証以外の第1条から第3条に活かしていただきたいと思っておりますので、認証を取らないADRについても何らかの見解というのは出しておく必要があると思っております。
 ちょっと、本当に口火を切るという意味で、以上のようなことを思っています。

○青山座長 包括的な御意見いただきましたけれども、ほかにどうでしょうか。
 それでは、山本さん。

○山本委員 まず最初に、第1の国民の理解の増進という点ですけれども、裁判外にも紛争解決の仕組みがあるということの認知度を上げる必要があるという、今の原委員の御指摘は全くそのとおりだと思っています。
 具体的な手段として1つ思い浮かぶのは、最近、法教育という議論が非常に盛んにされていて、これは推進本部も関与されているのかと思いますが、法務省などを中心にそういうような議論がされているということを承知しております。やはりこういう問題については子どものときからある程度、そういうものがあるんだということをよく知らせていくと、それを常識にしていくということが、非常に一般的な理解の増進という観点からすれば重要なのかなというふうに思いますので、その法教育のいろいろな議論の中で、三権分立とかそういうのも大事なんですけれども、そういう抽象的な制度論ということではなくて、もっと具体的にこういうことについては紛争を要望できるとか、紛争が起こった場合にこうすれば解決できるんだというところを強調して教えていくということがもっと重要ではないかというような御提言もされていたように記憶しておりますので、そういう観点からすれば、こういう紛争解決の仕組みとして、まさにADRというようなものがあって、それがどういうふうに働いていくのかということを、子どものときから教えていくというようなことは非常に重要かなというふうに思いました。
 第2点は担い手の点ですけれども、これはこの検討会でも繰り返し議論がされていて、龍井委員を始めとして議論がされていたADR士という問題ですが、将来的にはそういう方向を検討していくことは十分考えられるのではないかということです。 この検討会で議論をしてみて、そもそもADRにとって最も重要なのは人である、担い手であるということには異論がなかったところだと思いますし、その人に必要なのは法的な能力もそうでありますけれども、話し合いを促進する能力というようなものも同じ程度に重要なのではないかということが確認されたのではないかと思っておりまして、その点は非常に重要な、この検討会の成果だったのではないかと思います。
 ただ、その話し合いの促進の能力というような部分については、現段階で具体的にどのような知見・能力というものが必要なのか、あるいは、それをどういうふうに確認するのかということについて、なかなか具体的なコンセンサスが得難いということだったのではないかと思うわけですが、やはり中長期的な課題ということであれば、こういうADRの専門能力について確認し、必要であれば国家資格を付与する、そして、そのようなADR士という者が行ったADRについて何らかの特別の効力を認めていくというような方向は十分に検討に値するところではないかというふうに思っています。
 そういう意味で、長期的には、そのための基盤整備、これは認証ADR等において、ADRに実際に携わっていかれる方々によって、一定の共通の何らかのテクニックといったものが形成されていくのではないかというふうに思いますし、関係機関の連携の一つの在り方として、そういう担い手間の交流等といったようなことも行われていくのではないかと、それから私などが所属している大学などの教育機関においても一定の責任があるのではないかと思いますが、そういったところで基盤が進展していくことを前提に、将来的にはそういう方向を検討すべきではないかというのが私の意見です。
 その次の裁判外紛争解決手続のルールですが、これは先ほど参事官が言われた点ですけれども、UNCITRALの調停モデル法等を一つのモデルとした法整備ということが将来検討されていってもよいのではないかということです。
 この点については、検討会の早い段階で三木委員の方から御紹介がされたところだったわけですが、今回については、ADRについての基本法制の整備を目的とするということで、その具体的な調停手続法の制定ということについては今回の対象にはならないというふうに整理されたわけですが、しかし、それは別途、そのような法律の制定を検討するということの必要性について否定的な判断がされたということではなかったのではないかというふうに思っております。そういう意味で、将来的にそのような作業は必要になってくるのではないかというふうに思います。
 立法については、そこに十分な需要の裏づけがあるということが必要であるということは勿論だと思いますけれども、仲裁法がそうであったように、日本が世界的な流れから遅れて、結果として国際的な紛争解決の舞台として日本の存在感を薄れさせるというようなことがやはりあってはならないのではないか、そういう意味では、機敏に対応していく必要があると、各国がどの程度モデル法を整備していくかということを横目でにらみながら、日本においても法律化のための準備を今からしていく必要があるのではないかというふうに思います。
 この検討会でも、一つの問題としては調停手続の中での情報について、訴訟を仲裁で利用することの当否についてかなり詳細な議論がされて、意見も分かれたところでありますが、そのような具体的な論点について中長期的な視野に立って、理論的にも実務的にも詰めていくということが必要ではないかというふうに思います。
 最後に、法的効果について2点申し上げておきたいわけですが、いずれも既に検討会で議論されたところですが、1つは勿論、執行力の問題です。
 今回は時期尚早ということで見送られたわけですが、これは施行後、一定の期間、実際の認証を受けたADR機関の状況を見て、更に検討をしていく必要があるのではないか、実際に認証を受けたADR機関に何らかの濫用的なことが起こるという可能性が本当に生じるのかどうか、あるいはそういう執行力抜きにして、果たしてこの新しくつくられる制度というのが実効的に機能をしていくのかどうかというような点を検証して、何年か先に再びその当否を判断する時期が来るのではないか、そうすべきではないのかというふうに思っております。理論の側でも、そういう執行力の付与の可能性、理論的な根拠、あるいは手続等について更に検討を進めていく必要はあるだろうというふうに思っております。
 もう一点、法的効果の問題として、法律扶助の問題があります。
 先ほど、原委員からもコストについての議論のお話が出たわけですが、今回は主として予算上の問題という点があって、これは断念されたものというふうに考えます。パブリックコメントでも出てきましたように、この点についてはほとんど反対というものはなかったわけですが、結果としては実現に至らなかったということですが、将来的には更に検討の必要があるのではないか。
 私自身は、ここでも意見を述べさせていただいたように、これはADRというものの位置づけにも関係してくる問題だというふうに思っております。ADRを真に裁判と並ぶ紛争解決の魅力的な選択肢とするということであれば、裁判を含めた多様な紛争解決手段の中で最も適切な手段を選択できる権利というものを国民に保障する必要があるわけでありまして、適切な解決方法がもしADRであるのだとすれば、これを資力の有無にかかわらず利用できるようにするのが国の責務であるというふうに私自身は思っております。
 この点については、総合法律支援法が制定されて、民事法律扶助が支援センターの役割として位置づけられ、また、支援センターは同時にADR機関等とも提携して、実効的な紛争解決方法を保障していくという業務を扱うというふうに承知しております。そういうようなセンターができて、いわゆる司法ネットというものができていって、そして、法律扶助予算についても恐らく、今後、更に充実が図られていくんだろうと思いますが、そういったようなことも踏まえて、将来的にはやはり仲裁を含めて、ADR全般についての法律扶助の拡大について再検討をする必要があるのではないかというふうに思います。
 フランスの方でも、最初の段階ではADRに対する法律扶助の適用というのはかなり慎重なところから始めたわけですが、その後、拡大して、現在ではほぼADR一般についても法律上認めるという形になってきておりますので、そういう国際的な動向なども踏まえて、更に再検討する必要があるのではないかと思います。
 以上が、私の意見です。

○青山座長 どうもありがとうございました。包括的な御意見いただきました。
 どうぞ、龍井委員。

○龍井委員 全体の感想で言うと、やはり最後まで裁判外という言い方が、若干払拭できないという言い方は変なんですけれども、やはり議論の経過からすると、今回のADR検討会でやってきた蓄積が私どもの要望からすれば、やはり司法改革全体にどう寄与していくか、裁判制度そのものと今のいろいろと持っている問題点についてもこういう全体が活性化する中でより迅速化、低廉化も含めて改善されていくような、何かそういう方向につながっていると。まず、これは雑駁な感想です。
 理解の推進については、お二人の御指摘どおりで、もう一つできればと思っているのは、政府は結局、仕組みの紹介だけではなくて、当然のことですけれども、実績なり事例なりが、これはマイナスのことも含めてかもしれませんけれども、どれだけ利用者に手渡されていくか、これはそれぞれの認証、非認証問わず、各ADR機関の努力によることは当然ですけれども、何かそれを社会的にサポートする、必ずしも国ということではなくて、何かそういう手だてが自主的努力と併せてするようなサポートの体制もあってもいいのではないかと。
 担い手のところについて、特にADR士については触れていただきましたので、もう一つの点はやはり、これから労働分野でも労働審判制、個別紛争処理委員会、このADR、そして当然裁判。いろいろと広がっていく中で、やはりそれは広い意味の相談です。結局、相談、これは第1回や第2回のときから議論されていたことではありましたけれども、どういうところの道筋がこの紛争ケースにとってはよりふさわしいかということを、多様化すればするほど、そういう振り分けをしていくような場所と、そういう意味での担い手、アドバイザーなんでしょうか、そういうことも広い意味では視野に入れていく必要があるのかなと思います。
 それから、今の実績との関連で、やはり検証と言いますか、1つはそれぞれの具体的なケースについての、原委員も御指摘された苦情処理のような体制がそれぞれの分野で自力でやることは勿論ですし、それぞれの分野によって仕組みが違うのかもしれませんけれども、そのフォローアップをどういうふうにつくっていけるか。必要があるかないかも含めて、検討課題だと思います。
 もう一つは、やはり法律そのもの、それから先ほど話題になった個別法も含めて、やはりどこかの段階で一度検証して見直していくという機会を、これも既に幾つか委員から指摘をされていますが、是非、その必要を含めて、国民的議論を起こすような意味でつくっていただきたいと思います。それから、国際的な認証と言いますか、国際規格と言いますか、そういう動向もあるやに伺っていますので、そういう動向もにらみながら、そういう検討をしていくチャンスをまた是非つくっていただきたいというふうに思います。
 それから、私も利用者の立場からすれば、選択肢が広がっていくときに、先ほどのアドバイザーの例で申し上げましたように、解決事例だけではなくていろいろな意味での情報が開示されていくべきだと思います。
 これについては、ここでも大分議論がありましたように、認証というところでいかにも縛りがかかるか、あるいは前回の法案要綱でも非常に厳しいように見えたわけですけれども、認証、非認証を問わず、最終的には、必要な情報については開示していくことが決められていますので、義務としてではなくて、より前向きに最低限、こういうことについてはお互いに開示していきましょうということになっていけばよいと思います。そういうもののきっかけを認証という手続がを与えたに過ぎませんが、認証による線引きというのは私は余り好ましくないと思っていますが、かと言って、いい加減なものがあったらいけないとも悩んできましたが、認証により今後良い方向に行くようなADR文化がつくられるようなふうにいけばよいなと思っています。最後は希望です。
 全項目に触れていませんけれども、以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、三木委員、どうぞ。

○三木委員 この資料38−2の上の5つは、これまでこの検討会で2年にわたって議論してきた内容で、恐らく各委員、繰り返しになろうかと思いますので、私は最後の「その他」というところに絞って意見を申し上げたいと思います。
 この検討会は裁判外紛争解決の促進ということをテーマに2年間議論してきたわけですけれども、そのテーマとの関係で言いますと、すべての必要な事項は議論されたということにはなっていないだろうと思います。これは時間の制約、その他の問題もあったと思います。
 私が考えますに、裁判外紛争解決の促進あるいはそれを利用する国民の利便、あるいは権利の実現という観点から特に重要で、かつ、この検討会で議論されなかったものの1つは行政型のADRではなかったかと思います。行政型と申しますよりも、政策型のADRということであります。
 この検討会の中で1度か2度は、私も簡単に言及したかもしれませんが、諸外国の中には一定の政策目的を実現する手段として、一種の行政型のADRというものを活用するという動きもあるように認識しております。例えば、消費者保護とか中小企業保護とか、あるいは在日外国人の保護とか、あるいはインターネット上の紛争解決とか、いろいろと思い浮かぶわけであります。
 例えば、消費者保護とか中小企業保護を意図した紛争解決ということを考えてみますと、これは紛争当事者間に構造的な力の格差が存在する分野で、労働分野などはその一つですけれども、これについては労働審判制度のようなものが構想されたわけですが、こうした力の格差が構造的に存在する当事者間の紛争というのは、何も労働問題に限られるわけではないわけであります。
 例えば、こうした大企業と中小企業の間の紛争を例に取りますと、これは訴訟ではなかなか適切な解決ができない分野であります。中小企業の側では大企業に不満があっても、それを裁判ということにすると取引を打ち切られたりとか、あるいはそうではなくても、いろいろと心理的あるいは財政的な障害が横たわっている分野であります。
 また、ADRの一つとして一番発達している裁判所の民事調停などを考えてみましても、裁判所附属型のADRというのはどうしても司法の一部であるということで、公平性というものが要求されますから、弱者に加担したような構造というものが取りにくい側面がどうしてもあるわけです。
 また、民間型ADRでこれが拾えるかと言いますと、これはいろいろな紛争タイプによって異なってきますが、例えば消費者型の紛争ですと、紛争規模が小さいために費用対効果ということでなかなか民間ではやっていけない側面がある。何よりも、一定の政策を実現するという観点を民間に担わせるということには問題があるわけで、これはどうしても一種の行政というものの積極的な関与が必要になってくるだろうと思います。
 それで、関与という中には幾つかありまして、仕組みとしてそうした弱者の側に有利な手続の仕組みをつくるということもありましょう。例えば、諸外国では片面的な義務を一方の当事者に課する、あるいは片面的な負担を課するという例もあります。また、先ほど、法律扶助とADRの関係というお話もありましたが、国家の予算を紛争解決に投入するという場合に法律扶助だけが唯一の手段ではないわけで、そうした政策型のADRに予算を投入するということが考えられるわけです。
 先ほども言いましたように、この種のADRは利用者の利用手数料だけで運営していくというのが難しいというものが少なくないわけです。端的に申せば、税金を一部投入することによって低額な利用料で、特に弱者の側が気軽に利用できるようにするということは国家全体から考えてみますと、それによって紛争の泥沼化や、あるいは将来生ずる紛争が未然に抑止できるというようなことで、私自身は国家全体ということでは、かえって予算の節約ということになる可能性も少なくないだろうと思っております。
 また、ネット上の紛争についてもそうでありまして、現在、一部の公的な援助を受けたADR機関で実証実験などが行われているようでありますが、その話を伺ってみても、なかなか利用者に求める利用料金だけでペイをするようなことには将来もなっていきにくい。特にネット上の紛争というのは低額なものが多いということですので、こうしたところにも継続的に公的な費用が投下されるというような必要があるのではないかと思います。
 いずれにしても、このような一定の行政上の政策というものを実現していくという手段として、積極的に国家が関与していって、政策型のADRを育てていくということを是非、私個人としては次の課題として考えていただきたいと考えております。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 佐成委員、どうぞ。

○佐成委員 今まで色々、委員の皆さんがおっしゃった御意見に同調するところは非常に多いのですけれども、繰り返しの部分もございますが、一応述べさせていただきます。
 まず、国民の理解に関してですけれども、教育の問題の重要性というのは私も非常に関心があるところで、法教育、あるいは初等教育から含めて紛争解決の在り方などについて、早い段階から教育していくことが非常に大事な課題ではないかというのが一つでございます。
 国民の理解の増進に関して申しますと、この度、認証制度が新たに導入されますけれども、いろいろな制度が並立して、その間で制度間競争をしていくということになると、データと言いますか、数値的なもの、あるいは利用者の声というものを体系的に収集して、今後の有益な議論に結び付けていくための、統計とまでは言いませんけれども、データ収集の体系的なシステムが構築されていくことが望ましいのではないかと思います。
 ADRに関しては、機密性とかそういう問題はありますけれども、どの程度の利用者の方がどのような形でといった実態や、あるいは実際に利用した方がどのような感想をお持ちなのかといった、生の声をできるだけ体系的に収集して、それを今後の制度の改善なりに生かしていくというような基礎的な基盤整備というのもまた大事かなというふうに考えます。
 関係機関間の連携に関しましては、選択肢が増えることに伴って、利用者が最適な選択をできれば望ましいわけですけれども、国民一人ひとりが自分にとって、当該直面している紛争に応じて最適な解決方法を選択できるかというと、必ずしもそうではなくて、やはりアドバイザー的な立場の方、取り分け、現行制度でいけば弁護士、あるいは隣接法律専門職種の方々の助言というのは非常に大きな要素になってくるんだろうと思います。
 そういう意味で、弁護士会なり隣接法律専門職種の団体の方々に、広い視野で裁判外紛争処理についていろいろと知見を積んでいただくと同時に、業種とか業界だけではなくて、横断的に情報収集や議論ができるような場を設けられればよいのではないかと思っています。単に行政庁間での情報共有ではなくて、民間の中でもそういった職種を超えた、ADRなり、紛争解決についての情報収集ができるような、しかも、国民にとってアクセスのしやすいような場があることも必要ですし、それは国民が広く紛争解決に関する情報を得る重要な手段になるのではないかというふうに考えます。
 あとは、今回は裁判外ということですけれども、当然、裁判自体の改革というのも、やはり最終的に我々国民のよりどころになるのは裁判でございますので、裁判自体の更なる改革というのも制度間競争という中の一つだと思いますので、そういうことも重要なのではないかと思います。
 そしてその結果として、行政型ADR、司法型ADR、認証型、非認証型といろいろな制度間の競争ができると思いますし、その中で裁判の方も更に質を上げていくというような形で発展していくことが望まれると思います。
 ADR士という制度も非常に好ましい制度だと思いますので、それもそういった中で位置づけられるのとよいのではないかと考えます。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。他に、いかがでしょうか。
 それでは、平山委員、どうぞ。

○平山委員 これまで2年6か月間、大変長い期間かけていろいろと議論されて、私ども大変勉強させていただいたわけでございますけれども、まだわからないところが私自身にはたくさんございます。それと同じように、今まで決まったことを国民に広く知らせるという広報という大きな仕事があるのではないのかと思っております。
 率直に言って、私も異国語を聞いているような部分がかなりございまして、なかなかわからないところがたくさんございますので、特にせっかくここまでまとめられたものについては広く何らかの形で広報する必要があるのではないかと思います。
 もう一つは、このADRというのが、どんなルールで、どんな形で解決するのかといった、ここで書いてある「裁判外紛争解決手続のルール」、この辺もやはりADRをやるとどんなことになるんだというようなことが一つ大きな広報のポイントではないかと思います。
 それから、私も幾つかこういったような関係の仕事をしているわけですけれども、やはり国民の裁判に対する知識というんでしょうか、先ほども山本先生がおっしゃったような法教育なんていう問題があるのではないかと思いますけれども、工学系の学会では盛んに倫理という問題について、それぞれの学会で倫理規定といったような問題を議論しております。ですから、法教育というのはどういうことかよくわかりませんけれども、まさに国民にこういった裁判の紛争に関する倫理と言うんでしょうか、その基礎的な知識をもっと教えるような機会をたくさんつくってやると、この辺のいろんな問題が将来にわたって健全な発展をするのではないのか。そんなような気がいたします。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。
 それでは、どうぞ。

○綿引委員 この2年半の議論を聞いていて、日本にはまだ裁判外の紛争処理というものが全く根付いていない中で法案をつくろうとしたところで、私たちは非常に苦労をしたのではないかと思うのです。これから、何を広報する、何を教育するといったときにも、まだ裁判外の紛争処理というものが、正直なところ、日本にはおよそ根付いていないのだと思うのです。
 なので、今度、初めて認証ADRという形で裁判外の紛争処理というものを法的に認知した。そして、認証制度というものを入れたということで、認証制度を運用される法務省が、これをどれだけ適正に運用してくださるかというのは一つすごく大きなところだと思うので、そこのところは、これが変な規制にはつながらず、かつ、健全なADRの育成につながるように上手に運用していただくというのが今後のために、現実的な意味では非常に大切なことではないかというふうに思うというのが第1点です。
 あと、先ほど座長の方から国会での審議の御紹介あり、三木委員も言われたのですけれども、私も、紛争の解決というのは絶対ペイする仕事ではないと思います。経済的にみてもうかる仕事では決してない。やはり、そこのところを認識して、この制度が動き出さないと、とんでもないことになるというのは間違いないだろうというふうに思っています。
 ですから、ADRというものを、これから何とか日本国における紛争処理の中で位置付けていこうというときに、これが下手なビジネスになっていってしまったら、これはとんでもないことになるんだということはみんなが心しなければいけないのではないかと考えております。紛争処理によって儲けようということでは、決して裁判外の紛争処理というのが健全には成長していかないだろう。
 それでは、儲からないものをどういうふうにやっていけばよいのかというところになると、先ほど三木委員が言われたようなことも一つの政策的な考え方なんだろうと思いますが、やはりADRに携わる方にそういう認識と見識を持って取り組んでいっていただくようにお願いするよりほかないかなという思いです。決してペイする仕事ではないけれども、それが裁判とは別の紛争処理機能を果たすとすれば、儲からなくてもよい解決をという基本理念があって、そういうADRが健全に育っていってくれればと、これは何か祈るような気持ちですと申し上げるよりほかないと思います。
 非常に抽象的なことを申し上げました。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○高木委員 私も本当にここに挙げられた中長期的課題で、○が付いていることについては、すべてもうこれまで何回も申し上げたような気もしますし、皆さんがおっしゃったこととそんなに変わらないので、あえて申し上げる必要はないのではないかという気がしていたんですが、ここに掲げられた中では、やはり一番の問題点は国民の理解がないという点なんだろうと思いますので、この点についてコメントさせて頂きます。綿引委員がおっしゃったとおりで、ADRが根付いていないところで法律を作ろうとしたため、この法律をつくることについては、双方から反対、あるいは大きな抵抗があったということと、それからもう一つ、冒頭に紹介された国会で青山座長の認識とは全然違う立場からの懸念が表明されたということが表すように、やはり国民の理解はまだまだ浸透していないように思います。確かに、そのため懸念もあるのかなと思いました。
 ですから、ここはやはり一番大切なことなんだと思うんですが、それをきちんと国民に正しく理解していただくためには、やはりとても時間のかかることだと思うし、例えば、それが本当によいものかどうかということは、担い手にもよるし、解決手続のルールにもよるし、どんな解決をしていったかという解決結果にもよるわけですから、すべてが関係して理解の増進につながるということでしかないので、地道にやっていくしかないのかなと思っています。
 ただ、日本では裁判によるよりは、話し合いで解決した方がよいというような、一般的な国民感情というのは、あるのではないかと思われますので、まずは、話し合いがうまくいかなかったときに、例えばADRがありますよというような感じのところを広報していくということから始めるのでしょうか。法教育も勿論重要なんですけれども、そういったことを今後やっていく必要があるだろうと思います。
 そうだとすると、相談機関との連携であるとか、総合法律支援法ができましたので、そこにおける情報収集及び広報活動の部分で、アクセスポイントのところで実際には担っていただくのが一番よいのかなと思います。
 もう一つは、担い手で言われたADR士の話なんですけれども、それも1つの検討課題であるというふうに思います。ただ、その場合に今ある資格がたくさんあるわけです。今日、議論になった7業種の方々もありますし、弁護士もありまして、それがやはり法律事務を、弁護士の場合は一応オールマイティーでやり、その他の方々は、その一部をおやりになっていらっしゃるというような認識なんだと思うんですけれども、今日のペーパーで、民・民の紛争解決に入っておられない方も、そこに入っていくようなことを、今後も、もし考えるとすれば、資格を一本化して、今までのような議論、つまり個別法による対応ではなくて、例えば、弁護士会のような組織のところでの登録とか研修を一本化するといったような形で資格の統一というのを図っていく必要があるのではないでしょうか。ADR士と名前を付けるかどうかは別として、そんなことをやっていくことを考えないと、今のような議論をずっと続けていったのでは、なかなか難しいのではないかと思いました。
 行政型ADRで、三木先生がおっしゃったことについては、私は余り考えてなかった問題なので、今後ちょっと検討させていただきたいと思います。
 以上です。

○青山座長 廣田委員、どうぞ。

○廣田委員 ここに今日いただいた「討議用メモ」にあるのは、この法的効果は立法上の問題になりますので、これはともかくとして、それ以外についての国民の理解の増進とか、この辺りのことは私は10年来ADRを実践していましたので、ある程度やっていたつもりです。しかし、これはなかなかうまくいかないのです。あれこれやってみても、なかなかうまくいかない。
 そこで今、中長期的な見直しを言えと言われても、なかなかよい答えが出てきません。私から見ると、特に認証制度という問題が導入されますと、中長期的な見通しとしては一層難しくなったのではないかと思っています。
 例えば、一例を挙げれば、認証を受けたADRと、認証を受けていないADRが、どういうような連携をするかという具体的な問題になってくると、これは非常に難しい課題ができたな、難題が出てきたな、という印象を私は持っております。
 ですから、今日の段階で私が責任を持って、中長期的な見通しを言えと言われても、これは難しい。これからの宿題にさせてもらうよりしようがないと思っております。

○青山座長 ほかにまだ、どうぞ。

○原委員 ちょっと意見になるかどうかなんですけれども、現場に少し近い者という意味で、消費者相談の現場から見ていると、先ほど三木先生がおっしゃられた行政型ADRの消費生活センターなんかでの苦情、あっせんですとか、それから各都道府県が持っております苦情処理委員会とか、東京都にあります被害救済委員会というような存在があります。それから、PLセンターというものが、法の制定以後、精力的に各業界団体で設けていますし、金融関係は、山本先生と御一緒をしていますけれども、金融トラブル連絡調整協議会の中で、各金融の事業者団体によるADRのモデルづくりとか連携というような点に関わっておりますし、廣田委員が御熱心にやってらっしゃいます弁護士会がおやりになっている仲裁センターというようなものもありますけれども、ずっと現場に近いところで見ていて、先ほど綿引委員や高木委員がおっしゃられたように、国民的な認知度とか理解とかというのが、どこまであるんだろうという辺りは確かに感じてします。
 ただ、高木委員がおっしゃったとおり、第三者を入れての解決を望みたいという気持ちというのは、これは私はかなり強いと思っております。だから、当事者同士で苦情とかを持ち込んでも、どうしても解決できないということで、それで消費生活センターの電話を取られる方というのも確かに多いわけで、そこに持ち込まれたものがPLセンターの方に紹介をされたり、まずADRではなくて金融機関の苦情相談のところへ持ち込まれたりしていて、国民、消費者側からすると、第三者を入れての紛争解決というのは、非常にみんなの中にはあるというような感じがしております。
 私自身も、もう個別に幾つもそういう案件の御連絡をいただいたりして、相手と連絡を取って何とかやってもらえないだろうかというようなことをお願いしていますが、それでもうまく結び付いていないというような感じがしております。
 だから、本当に中長期的な課題で、私としては滞留している紛争の解決方法を、裁判以外にもあるということとを、きちんと世の中に出していくべきではないかと感じています。
 今のところではちょっと貧弱なと言いますか、乏しい分野ではありますけれども、今後は可能性としては高いと感じています。
 その関連で2つ課題が残っていると思います。一つ目としては、先ほど三木先生の方から行政型ADRについての議論が十分でなかったというところで、私自身も行政型ADRの話をなぜしてないんだといろいろな人からずいぶんと言われたりしましたけれども、民間型ADRに絞った認証制度としたことから今回除外していますが、行政型ADRが何をどの程度やるべきなのかということと、行政型ADRと民間型ADRの連携ですね。この辺りはとても大きな課題で、特に消費者問題ばかり取り上げて恐縮ですけれども、消費者問題などでは大きな課題だと考えています。
 その場合、消費生活センターなどにお電話なさる方は、第三者に入って解決をしてもらいたいと思っているんですが、それは本当にアドバイス的な機能だけではなくて、いよいよ紛争になりそうな場合に、紛争解決するための仕組みがあるようなところで解決をしたいという思っても、まだそういう機関があると思ってらっしゃらない方が多いので、ニーズがあるのではないかというのが私の感じなんです。
 そういうものが何かちゃんとあって、そのことを理解していれば御利用なさる方も多いのではないかという気もしているので、そこの仕組みが必要だけど、行政型ADRというのは税金を使うということになりますから、そうなると無限定にそこを伸ばすというわけにはいかないので、そこは民間型のADRとの連携とか役割分担が必要になってくることになると思います。
 それから、民間型のADRなんですが、PLセンターはまだ案件が非常に少ないので、かなり柔軟な解決の手法というか、解決を取られているということで、まだいろいろな事例を拾ってみても、それでケーススタディでやれるというところまでは至っていないと思っています。
 金融なんですが、歴史と言いますか、かなり長くやってらっしゃるようなところもあるのですが、いかんせんテーブルに付かないとか、資料を出さないとか、結果が出ても尊重しないとか、モデルではそういうことはあってはいけないというふうになっているんですけれども、いまだそういうところが散見をされます。
 それから、個別の金融機関が、オープンにしたくないために自分のところで解決を図ろうとして、事業者団体のADRを利用しないような感じを私も受けたりしていて、まだまだこの辺りのADRの自主的尊重の点で問題があると感じています。裁判のように強制的にテーブルに座らせることはできませんけれども、私としてはせっかくのADRという裁判以外の紛争解決の仕組みというのを、やはり尊重していただきたいという感じが、今のADRのいろいろな場面を見ていて感じているところです。
 だから、国民の側にももう少し理解、認知というものを深めていく必要があるし、今おやりになってらっしゃるADRというところでは、やはりその場を尊重する、本当にやはり公正に紛争の解決のために、真摯に努力を重ねられている姿を見せられるということが非常に大事ではないかと感じております。感想的な意見ですが、以上です。。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。2巡目ということになりますが。
 よろしければ、私からも。どうぞ。

○原委員 一言だけ、とても簡単なことですけれども、山本委員でしたか、佐成委員でしたか、国際的なところでの規格化が進んでいるという話があったんですが、これは国際標準化機構、ISOというところで検討が進められていて、発効するのは来年の11月ぐらいですかね。

○山本委員 再来年になると思います。

○原委員 再来年になるんですか。そういうものが顧客満足の仕組みの中で検討されているということなので、青山座長がまとめられた報告書にも是非一筆入れておいていただけたらと思います。

○青山座長 それでは、私の方も一委員として少し意見を申させていただきたいんですが、その前にこの間の国会の審議の中で、主に我々の意見陳述が終わった後の議論の中継で、ADRを立法する立法事実が果たしてあるのか、国としてやるべきことが他にあるんではないかと、ADRはまだそんなに需要があるかとという質問をした方がございます。それを前振りにしておいて、具体的な質問をなさったのですが、その前振りのところを答えるのもどうかと思いまして、具体的な質問にいきなり答えてしまったんですが、多分そういう意識もあると思うんです。それは、やはりADRが十分認知されていないということが根本的にあるわけで、これは先ほど綿引委員が果たして根付いているかという問題意識と全く共通の基盤の話だと思います。
 それで、もしADR法が成立した後の、今後の問題というのは、今日のメモの項目で書かせていただいたことでもあるんですが、私は、時間の県警もありましたので、参考人として申した点が3つだけありました。
 第1は、何と言っても、日本のADRが今後拡充・活性化していくための一番大事なこと何かと言えば、ADR機関の質の向上だと思っております。特にこれは民間型ADRについては、そのことが当てはまるんではないかと思っております。民間型ADR機関も、数はもう非常にたくさんありますけれども、格好だけと言いますか、休眠状態であってみたり、あるいは苦情処理機関が備わっていますよというアリバイ的なものであったりするものもないわけではない。勿論、非常に活躍しているADR機関も民間には幾つかございます。これも、私は国会の場では具体的な名前を挙げて御紹介させていただいたんですけれども、そういう大いに活躍している機関だけとも言えない。
 そうすると、このADR法が施行されますと、この1条から3条までの基本的な部分はすべてのADR機関が対象になる基本法的なものですから、各ADRは自己点検する必要があると思います。
 第3条第1項に理念を規定しているところがありまして、その手続が法による紛争の解決のための手続として、紛争当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、公正かつ適切に実施され、かつ専門的な知見を反映して、紛争の実情に即した迅速な解決を図るものとなっているかどうか、その手続がなっているかどうかということを自己点検する必要があると思います。自己点検することと相まって、情報を開示するということも考えられます。そういう自己点検と情報の開示を定期的に繰り返すことによって、徐々にであれADR機関の質というものは向上していくんではないかと思っております。
 ADR機関がペイするものではないということを、先ほど綿引委員が指摘されましたけれども、全くそのとおりで、私は、ADR機関ととしては、自らの紛争解決機関としての資質を向上して、国民がわかりやすく安心して使えるようになることがまず大事で、これの点は私も祈るような気持ちでいるところでございます。
 それから、ADR機関は、やはり今日の第2のところで書きましたけれども、守るという姿勢ではなくて、相互の連携をより一層保つという姿勢が大事ではないかと思います。相互の連携を保つということなんですが、このADR検討会は3年前に発足した直後、平成14年の夏ごろ、関係省庁に呼びかけをしまして、連絡会議を設置いたしました。委員は、我々は直接関係しませんでしたけれども、事務局の非常な御努力で開催して頂き、大変好評であったと伺っております。
 そうだとすると、そういう横の連絡をするような事務局的機能を、各行政型ADR機関とか、民間型ADR機関できちんと受け取めてもらえるかのではないかという気がします。もし場合によってそれができないとすれば、先ほど山本委員が御指摘されたような、平成18年から発足する日本司法支援センターの中にそういう業務がありますし、場合によっては認証制度の所管官庁である法務省自身が乗り出してよいとと思います。そういった法務省なり監督省庁なりが協力し合って、そういう横の連携を図るような事務局的機能を是非引き継いでもらいたいということが、第2点の連携の問題です。
 それから、何と言っても一番大事なのは、先ほどから指摘されているような、人材の育成、担い手の育成で、あっせん人、仲裁人、調停人をどうやって育てていくかという問題だと思います。
 昨年、日本弁護士連合会が仲裁人を養成することを主たる目的とした、それ以外にもいろいろありますが、日本仲裁人協会というのを発足されまして、ここでは研修会も実際にやっておられるようで、インターネットなんかでも見られますけれども、こういう事業は非常に高く評価すべきではないかと思います。日弁連だけではなくて、もっともっとあっせん人、調停人、仲裁人になるような人たちを育てていくことが必要だと思います。
 ただ、それを民間団体に任せていただけでよいかというと、私はそうは思いません。やはりここに国の予算を投入することは必要だと思います。その根拠付けでございますけれども、これは法律扶助の問題も同じですが、社会に生起する紛争をADR機関が迅速、適切に解決するということが社会に対する貢献だと思うんです。裁判所が紛争解決することによって、社会に対して役割を負っているのと、程度は違いますども、同じようにそのような意味合いがあると思うんです。
 ですから、そういうADR機関の担い手に対して、あるいはADR機関を利用する人々に対して法律扶助という形で国家予算を投入するということは、決しておかしなことではない。量の問題は勿論ありますけれども、そういうふうに思います。
 これも、どこがそういうことをやるのかというと、法律の4条の中に、国のいろいろな責務が書いてあります。そのうちの、その他必要な措置ということの中に、そういう担い手の養成ということもはまるのではないかと思っています。この点は、認証業務を担う法務省に努力をお願いしたいということを、私は法務委員会でも申しました。
 それから、あちらこちらに話が飛んで申し訳ないんですが、やはり今出ていなかったところでは、これだけ我々の議論に時間がかかったのは、やはりADRについての学問的な蓄積というのがなかったということが、一つの理由だと思います。
 これは、私もその不勉強を大変恥じている点でございますけれども、そういう反省の上に立って、山本委員と三木委員にも全面的に御協力いただきまして、10月23日に仲裁・ADR法学会という学会を発足させました。会員は、まだ200 名を超えた程度ですけれども、こういう学会も、仲裁やADRの学問的進化、国際的動向の調査あるいは実態調査ということによって、学問的に寄与ができるのではないかというふうに思っております。
 ADRを拡充・活性化していくための、何か1つの決め手なんていうのはあるはずないので、そういうさまざまな総合的な政策を進める以外には恐らくないんだろうと思っています。
 そんなことがとりあえず、私が今日感じたことでございます。
 何かほかに、どうぞ。よろしゅうございますでしょうか。
 それで、今日いただいた意見を、先ほど申しましたように、本日の意見だけではありません。今までの議事録に出ている意見も拾い出すつもりでいますけれども、そういうものも含めて、先ほど申しましたように、座長レポートのようなものをつくりたいと思います。私としては、そんなにページ数がたくさんあるというものではなくて、多分数ページ以内の簡単なレポートをまとめさせていただきまして、各委員にも御覧いただいて、こういうことでよいかということの御確認をいただいた上で、先ほど言いましたように事務局から公表させていただくということにさせていただきたいと思います。
 それでは、時間の関係もございますので、これで議論を終えることにしたいと存じます。ここで今日御出席いただいております山崎事務局長から、事務局を代表して、ご挨拶いただきたいと思います。

○山崎局長 皆様方には、本当に長時間、御熱心な御討議をいただきまして、心から御礼を申し上げます。
 これだけ時間が掛かったというのは、やはり内容が難しかったからでございますし、従来よりなかなか議論ができなかった分野で、それだけ大変なものであったということを物語っていると思います。本日の検討会が、私ども11ある検討会の最後の検討会ということになりました。
 今日、いろいろと御討議もいただいて、おまとめをいただいたようでございますけれども、先に国会に出しました法案につきましては、本日の段階で7時間の審議時間を経ておりまして、明日もう一度審議いただく予定です。そういう状況まで来て、次に参議院できっちり、この本部がある間に法律として成立させることができるよう、我々も努力してまいりたいと思っております。
 先ほど青山座長からお話しがございましたが、青山座長、原委員、松尾日弁連副会長に参考人として出ていただいたわけでございますが、あの後の質疑で、実は私も、青山座長がおっしゃられた質問を2回受けました。まず司法制度を充実するのが先決ではないかということで、ADRについては本当に立法事実があるのかという御質問がございました。両方大事だということで、私は申し上げてまいりまして、これから育てるんだということで理解してほしいと、ニーズはあるはずだということで答弁をさせていただいたということでございまして、まさにこれからの問題だろうと私も理解しております。
 ですから、皆様方には、これから実務の方で関与されている方もおられると思いますけれども、そういうところで今後の充実に是非力を貸していただきたいと思いますし、政府は政府として、必要なことはやっていかざるを得ないという覚悟でおります。
 また、5年後の見直しも当然入ってくるわけでございますので、今後ずっとフォローしてまいりたいというふうに考えております。
 それから、先ほど御了承いただきました代理の件につきましては、もう本部の設置期限があと二十日ちょっとぐらいしかございませんけれども、その間できちっと最終的に決定して将来につなげたいと考えております。
 残された課題を、我々として最大限きちっとした成果が出るように、努力をしてまいりたいと思います。
 それから、本部につきましてはあとわずかで終わるわけでございますけれども、改革は終わるわけではございません。私どもが命ぜられたのは、仏をつくれということでございましたので、あと若干残っておりますけれども、仏はつくりました。ただそこへ魂をどう入れるかというのが、また重要な話でございまして、裁判員制度を考えても、5年後施行でございますから、そこまでずっとフォローはしていかなければならない。それが司法全体に課せられた課題でございます。
 ですから、今後まだまだこの制度改革が定着するまで、是非皆様方のいろいろな側面からの御支援を賜らなければできませんので、今後ともよろしくお願いをしたいと思っております。
 また、法曹三者もその期待にたがわぬように、大いに心して頑張らざるを得ないということで、法曹三者の方にもそれをお願いしたいと考えております。
 最後になりますけれども、本当に皆様方には長時間、御熱心な御討議をありがとうございました。
 どうもありがとうございました。

○青山座長 どうも御丁寧な御挨拶ありがとうございました。それでは、この検討会の担当参事官として検討会の議論をサポートしていただきました。小林参事官からも、何かございましたらどうぞ。

○小林参事官 事務局を代表して局長が御挨拶申し上げた後に、私ごときがお話を申し上げるのは、非常に僣越ではございますが、皆様には多大なる御迷惑をおかけしたお詫びをする機会を与えられたということで御容赦いただきたいと思います。
 皆様方には、大変長い期間、多大なる御協力をいただきまして、本当にありがとうございました。私としましては、できるだけ実のある建設的な議論をしたいということで、できるだけ率直なお話をさせていただいたつもりではございますが、あるいは委員の皆様にとりまして、失礼なもの言いになってしまったこともままあったのではないかと思います。この機会におわびを申し上げたいと思います。
 この2年10か月を振り返ってみますと、先ほど来いろいろとお話がありましたように、ADRが脚光を浴びたということは非常によかったのではないかと思いますけれども、他方、その脚光を浴びたのが非常に突然であったものですので、既存のADR機関、あるいは新たに参画を希望している方々、あるいは何よりも利用者の方にとって、非常に期待もあるとともに戸惑いもあったということが、強い印象として残っております。
 今後、ある意味では試行錯誤が続けられるということになるのではないかと思いますけれども、委員の皆様方におかれましては、それぞれお立場もあるとは思いますけれども、引き続きADRの振興につきまして、温かい目で見守っていただきたいと考えております。それをお願いいたしまして、私の御挨拶とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○青山座長 それでは、私も一言、御挨拶させていただきます。
 ADR検討会を振り返ってみますと、平成14年2月5日に第1回の会合を開きまして、今日まで2年10か月、38回にわたって会議を開いてきました。38回というのは、この11の検討会の中ではレコードだそうでございます。
 思い出していただきますと、初めは2年間で作業を終えたいということでお忙しい皆様方に審議に御参加いただいたわけでございますけれども、途中でやはり2年ではできないということで3年になったという経緯がございます。
 その理由は、やはり難しかったということですけれども、もっと具体的に言いますと、日本におけるADRがまだ揺籃期にある。これを今後、21世紀の日本で裁判制度とどういうふうに関係付けていくかということについてのフィロソフィーなり、あるいは認証制度なら認証制度というようなものを、ADRというような私的自治の世界に導入することはどうなのかという、ADRに対する国の関与の在り方はどうなのかというような基本的なスタンスといった問題について、やはり各委員の間に、こ当然に考え方が違うところでありまして、その議論の収斂をするまでには、2年という期間ではやはり足りなかったというのが私の率直な感想でございます。
 それでは、今から振り返ってみるとどうかというと、あるいは外部から見ますと、これだけの内容だったら2年でできたはずだという批判も受けるかもしれないというふうに私は腹をくくっておりますが、内部でいる限り、私の感じではやはりそうではなかった。プロセスを重視して、議論を尽くし、そして、その最大公約数を取ってまとめていただくというためには、やはりこれだけの時間が必要だったのかなというふうに思っております。それは言わば産みの苦しみとも言うべきものでありまして、フィロソフィーやスタンスが異なっても、日本におけるADRの今後の充実・活性化をさせることが必要であるという点では共通の認識を持つ11人の委員がともに産みの苦しみを苦しんだ結果ではなかったかというふうに思います。
 座長代理として、私が欠席したり早退したりしたときに座長の役割を務めていただきました山本委員ほか、それぞれお名前は申しませんけれども、全委員にこの機会に深い敬意と感謝の念を申し上げたいというふうに思っております。
 また、事務局も、山崎事務局長及び古口、松川、大野三次長以下、事務局の方々、なかんずく、ただ今挨拶されました小林参事官、山上企画官、内堀企画官の3人の事務局の実質的なスタッフの方は、今御挨拶にもありましたように、時には委員の先生方から叱られながらも、これが自分たちの仕事なんだということを割り切られて、じっと耐えて、毎回の資料づくり、議事録のとりまとめ、関係省庁や法制局との折衝等、3年間ADR漬けの日夜を過ごしてこられたのではないかというふうに思います。
 私どもは事務局と、身内に近いので、そういうことを私の口から別の機会でお礼を申し上げた方がよいのかもしれませんけれども、事務局に対する感謝の念は全委員共通だと思いますので、私が代表しましてこの場で事務局に厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。
 それから、このADR検討会は、議事の公開について途中で審議方式を変えたことは御存じのとおりであります。11の検討会の中ではいち早く原則公開という公開方式をとりまして、この会場も各委員の関係の方々、ADR機関の関係の方々、あるいはプレスの方々もスペースの余裕のある限りという限定はございますけれども、公開してきましたし、議事録もインターネットで公開してきた次第でございます。
 この点に関して、毎回熱心に私どもの議論を見守ってくださった方々にも、この機会に御礼を申し上げたいというふうに思います。そのことが、実は私どもの議論に緊張感と責任感を持たせ、濃密な議論を監視したと言いますか、後ろの方から支えてくださった。これが欠かせないファクターであったというふうに思いまして、感謝の念を表明する次第でございます。
 ADR検討会はこれで終了するわけでございますが、先ほど山崎事務局長もおっしゃったように、これから始まるんだということだと思います。ADR法はこれから産声を上げ、よちよち歩きを始めるわけでありますし、それから、日本のADRがどこまで伸びるかはともかく、国民にとって裁判に並ぶ魅力的な選択肢としての歩みをこれから始めることになるであろうというふうに期待しております。
 ここに御参集いただいた、委員の方々全員、今後はそれぞれの持つ本来の職場に帰られるんだと思いますけれども、それぞれのお立場でADR法、それから、ADRの発展を見守り、お力をお尽くし、お出しいただくように、僭越ながら、私からお願いさせていただきまして、御挨拶とさせていただきます。
 どうも、いろいろありがとうございました。
 それでは、本日の検討会はこれにて終了いたします。どうも、長い間ありがとうございました。