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ADR検討会(第5回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時 平成14年6月10日(月)15:30 ~17:30

2 場所 永田町合同庁舎司法制度第1会議室

3 出席者
(委 員)
青山善充座長、安藤敬一、髙木佳子、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)
日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議題
(1)法的効果の付与等について(その1)(時効中断効の付与)
     (第4回検討会の続き)
(2)法的効果の付与等について(その2)(執行力の付与)

5 配布資料
資料5-1 ADR検討会において出された意見等(総論)
資料5-2 ADR検討会において出された意見等(各論)
資料5-3 時効中断効の付与のオプション(補足)
資料5-4 説明資料(執行力の付与)
資料5-5 参考資料(執行力の付与)
資料5-6 参考資料(主なADRの手続比較)
資料5-7 ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議の設置について

6 議事

〔開会〕
○青山座長 それでは、ただいまから、第5回「ADR検討会」を開会いたします。
 本日は、全体で2時間を予定しておりますが、このうち始めの30分は、前回に続きまして、時効中断効の付与の問題について議論を行いたいと思います。
 そして、残りの1時間半でございますが、これにつきましては、法的効果の付与等に関する議論の第2項目といたしまして、執行力の付与の問題について議論を行い、5時半には終了させていただきたいと思います。
 それでは、まず、時効中断効の付与につきまして審議をお願いしたいと思いますが、議論に関係いたしまして、事務局から資料5-1、5-2といたしまして、どちらも前回までの検討会で出された意見の概要を要領よく整理したものが出されております。5-3といたしましては、前回の議論を踏まえた補足ペーパーでございます。この中には、前回議論にありました平成5年の民事調停の時効中断に関する判例のコメントや、ドイツ法についての紹介も含まれております。5-4と5-5は、執行力に関する問題ですから、これは後から御説明いただきますが、5-6といたしまして、今回新たにお出しいたしましたのが、民事調停を含めた主なADRの手続の比較表を整理したものを提出させていただいております。これらにつき適宜参考にして議論を進めていただきたいと思います。

〔法的効果の付与等について(その1)(時効中断効の付与)(第4回検討会の続き)〕
○青山座長 それでは、早速時効の中断効の問題でございますが、お手許にあります前回の第4回の議事録の35ページの上から8行目の綿引委員の御発言からが時効の中断に関する議論でございます。綿引委員の御質問を含めて議論のやりとりがあり、36ページの下から5行目に髙木委員の意見の陳述があり、37ページの上から10行目に山本委員から御意見をいただき、37ページの下から2行目から廣田委員から御意見をいただいております。これを巡って、41ページあたりからまた議論のやりとりがございます。43ページの下から7行目に三木委員の御意見、44ページの真ん中から原委員の御意見の陳述があり、45ページの上から5行目に安藤委員の意見の陳述があるということで前回は時効中断効についてお話し合いをいただいたと思います。
 そこで、前回に意見をいただいた方も勿論でございますけれども、そうでない方もどうぞ自由にADRについて、これを利用することによって、時効の中断ないし、それに類似する効力を認める方がいいのかどうか、認める場合にどういう押さえるべきポイントがあるかということについて、前回の続きとして御自由に御議論を賜わりたいと思います。
 どなたからでも結構でございますのでお願いいたします。どうぞ、廣田委員。

○廣田委員 私は、前回にかなり長々と話をさせていただいたのですが、それでも少し補足したいことがあります。その補足のところを申し上げたいと思います。
 まず、綿引委員の方から出た裁判所の負担が増えるか減るかという問題があると思いますが、これは色々な要素がありますけれども、ADRに対する申立てが、時効中断効になるかどうかという争いが一々裁判所に持ち込まれたら、その負担は大変なことになるだろうと考えられるわけです。これまでの判例は皆そういう争いだったのです。しかし、時効中断が認められるということに決まればそういう争いはなくなるでしょうし、仮に時効中断の事実が争われても形式的な証明で足りると思います。それが1点です。
 もう一つは、時効中断を目的として出される訴訟というのがあるでしょうけれども、その一部もADRに申し立てられる可能性がある。時効中断効が認められればそういう可能性もあります。ということになれば、プラスマイナスすれば、結局裁判所の負担を軽減されるのではないかと思われます。それが1つです。
 第2点は、時効だとか、時効中断に関しては、どちらにしても証明の問題というのは避けられない問題で、例えば催告の有無についても、結局は証明によって白黒を付けられる。これが、ADRという第三者の形式的な証明で足りるということであれば、証明も簡単になる。要は、法律上の要件をどのように上手く定めることができるかという問題ではないかと思われます。
 補足するところの第3点は、実務上の問題なのですが、時効というのは当事者が援用しなければ、裁判所はそれによって裁判をすることができない。これは民法145 条にそう定められております。ですから、裁判所は時効を援用するかどうかということについて釈明を求めることができません。
 それと少し似たような問題で、ADRで時効中断を認めないと、時効間際になってきますと一々訴えを出すかどうかを当事者に打診しなければいけない。そうすると、ADRの中立性、公正性がそのことによって疑われる可能性があるわけです。そのことがADRの利用阻害の大きな要因になります。つまり、申立人に時効中断のために訴えを提起しますかということを打診すると、相手方から不信を買うことになります。また、打診をしないで権利が失われてしまうと、後々申立人から不信を買うということになりますので、実務においてはこれは避けたい。そうしますと、時効が中断したということをはっきり割り切って、むしろADRで中身の充実した審議をする方がいいのではないかということが、もう一つ補足したいところです。
 もう一つ、これに似たようなことなのですが、仲裁に関しては仲裁契約がありますと、妨訴抗弁が出る可能性があるわけです。そこで訴えが出せないでいる間に時効が完成してしまうということもあり得るので、そのような事態は避けなければいけない。したがって、仲裁ということに関して言えば、なお一層時効中断効が必要であるということになってきます。
 これらを考えますと、結局時効中断効を認めなければ、権利そのものが消滅してしまいますから、そういう事態はどうしても避けたい。ですから、時効中断に関しては、広く認める必要があるのではないかということを前回の発言に補足させていただきたいと思います。

○青山座長 どうもありがとうございました。どうぞ、山本委員。

○山本委員 私も前回は、大きな形では、時効中断効を何らかの形で認めるべきではないかという御意見を申し上げたわけですが、本日は、もう少し踏み込んで、より具体的な制度の姿について、現段階での私の意見を申し上げたいと思います。
 要件、効果の両面ですが、まず、効果の点につきましては、今回の資料の5-3で付与のオプションという形で色々なパターンが提示されております。
 この中でも、前回御紹介のあった「チェス・クロック方式」と言うのでしょうか、資料の中では下から2つ目の問題がそれに当たるのだろうと思いますけれども、これは私としてはかなり魅力的な考え方であるとは思っておりますけれども、法制的に見れば、日本の時効法制一般から見ると、やや異例のシステムに属するわけですので、その場面にだけ導入するというのは実際には困難であろうと思います。
 仲裁タイプの時効中断については、これはあくまでも訴訟や仲裁のように原則として当事者の合意なしに必ずそこで判断がなされて、解決がなされるという裁定型のADRでのみ可能な構成であろうと思いまして、調整型のADRを含むADR一般の法制の中で採用するのは難しいのではないかと思います。
 したがって「民事調停タイプ」あるいは「個別労働紛争解決促進法タイプ」かということになるのではないかと思いますが、この2つの考え方は理論的に見れば、恐らく考え方がある程度違うと言いますか、前者の方は、これは申立て自体に時効中断効を認めるということですので、ADRが訴訟に代わる権利確定手続であるということを前提にした考え方ではないかと思います。
 これに対して後者の方は、これは申立てに時効中断を求めるというよりも、将来の訴え提起の時効中断効がADR開始時に遡及するということですので、あくまでも権利確定を担うのは訴訟であって、それへのつなぎの手続としてADRが位置付けられているということであろうかと思います。
 最終的には、どちらによるか政策判断の問題かと思いますが、後者のような考え方の方が、要求される要件についてはある程度軽いものとして考えることができるのではないか。
 それから、現在の個別法制とのバランスという点から考えても、後者のアプローチが妥当ではないかと思っております。ただ、それは前者を全面的に否定するわけではなくて、まさに民事調停でそうであるように、民法151 条を類推できるかどうかというのは、なお解釈論としては残る問題であろうと思いますので、解釈論的には、つまりADRの基盤が民法151 条を類推するにふさわしいものになれば、民法151 条的な解決もなされ得る余地を残すということであろうと思いますが、制度的には個別労働紛争解決促進法的なアプローチでよいのではないかというのが、私の現段階の印象です。
 それから、長くなって恐縮ですが、要件については、やはり5-3の資料の最後から2番目のペーパーでドイツの民法典の新法の消滅時効の法制が挙げられておりますけれども、これはある程度参考になるのではないかという気がしました。
 特に、下から2つ目の○で、当事者が一致して和解を試みている紛争解決機関に和解の申立てがなされた時という考え方は十分成立し得るのではないか。
 つまり、相手方が交渉に入ることについて同意をすることが時効中断効を遡及させる1つの原因として捉えるという考え方があり得るのではないかということでございます。
 実体的な権利自体に対する同意は、承認として時効中断効を直ちに持つわけですが、それとは異なって手続的な紛争解決に向けた同意を時効中断の手がかりとするということはできないかということであります。
 こういった場合、同意を要件にすればADR機関の独立性や、あるいは手続の公正ということを必ずしも問題にする必要はなくて制度を組めるのではないかということです。
 勿論、同意の有無については問題があるわけですが、最終的には前回の廣田委員の御意見に従って、これは証明の問題とならざるを得ないと思いますが、現在でも催告や承認については証明の問題として処理されておりますので、基本的にそれと同じと考えていいのではないかということです。
 ただ、一般的にはそういう考え方がとれるとしても、手続的な安定を得るために一定のADR機関を認定して、特に安定した効力を認めるという選択肢も考えられてよいのではないかと思います。
 2つの方法があると思いますが、1つはドイツの制度のように、ドイツでは、州司法庁により設立承認されたADR機関については同意を問題にせずに時効中断効を認めているようでありますけれども、そういう形で認定機関については申立てに基づく時効中断の余地を直ちに認めるという考え方があり得るでしょう。
 もう一つは、そういう形で認めるのではなくて、いわば証明の点だけを事実上認定によって担保するという考え方もあり得ようかと思います。これは、例えば電子認証法などに採用されているように、記録保存等がしっかりした機関について一定の認定を付与して、当事者が安心してそのADR機関を利用することができるような基盤を整える。ただし、法的な優遇措置は特に採らないという考え方もあり得るのだろうと思います。
 おそらく、前者のドイツのような考え方を取れば、認定及びそれに基づく色々な規制というのは強くならざるを得ないと思いますが、後者であればそれがもう少し緩くていいのではないかと思われます。
 この点、どちらがいいかということについては、私自身も必ずしも結論を持っておりませんが、今のところそういうようなイメージで時効の中断の問題を考えているということでございます。以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。他にいかがでしょうか。どうぞ原委員。

○原委員 前回は、本当に感想的な形でしか意見を出しておりませんで、今日は少し制度全体的にどのように考えるか発言をしておきたいと思うのですが、私の発言要旨をまとめられたのを見ましたら、時効中断効は消費者にとって、メリット、デメリット双方があるというような単純な表現で書かれていますが、消費者側としては、時効中断効はやはり必要だと考えると、そのために整備すべき条件は何かという形で定義をさせていただきたいと考えております。
 3つの場面がありまして、前回に髙木委員の方から、機関と、要件と、遡る形の3つの切り分けでどうでしょうかというお話がありまして、私はとても分かりやすかったものですから、それに沿ってなのですが、機関については、前回も申し上げましたように、やはり悪質事業者が交渉を時間の圧力の下において、責任を逃れようとしているというような利用のされ方は是非避けていただきたいと思っておりまして、機関はそういう形で避けるということを何とかしていただきたいのです。
 今、山本先生がおっしゃられたように、ドイツのように州が認定しているものは、即OKという方法が1つあると思うのです。ただ、そうすると今度はADR機関そのものをどういう形で認めていくのかという話とも絡んでくるので、廣田委員も前回おっしゃっていましたけれども、そこだけの議論での排除は中々難しいだろうと思っています。機関の問題としては、そういう悪質事業者の排除ということをどうしても考えていただきたいと思っています。
 要件のところなのですが、これは是非消費者側や市民の側が主体的にかかわれる、どこかで自分たちが判断にかかわれるということを考え方としては入れておいていただきたいと思っております。
 それが、今、山本先生の方から話されたように、資料5-3の別紙2のドイツの制度のような形で両方が交渉に入ることを前提としているということでOKとするのか、もう少し踏み込んだ形でお互いの合意というところにするのかというところは、まだ議論があるかと思いますけれども、この時効中断効について、やはり当事者、消費者側がかかわる形で組み立てることをお願いしたいと思います。
 3点目ですが、遡る形というのが妥当であろうということで、資料5-3にも、「個別労働紛争解決促進法タイプ」として、ADR開始時に遡って時効中断ということが書かれていて、これが私としても現段階では一番やりやすいのではないかと思います。
 前回、起点をどこに置くかという話をいたしました。これが遡る形を取ったときに、どこまで遡れるかというところが、消費者問題として大きなポイントでADR機関に入ってきたもの、そこまで遡って言うことは分かるのですが、ではADR機関をどこまで認めるのか、例えば国民生活センターとか、消費生活センターみたいなところをADR機関と認めると、仮に認めないとなるとそういったところに入ってきた苦情処理のところまで遡れるのかどうかということも議論としてあるように思います。
 消費者相談の典型的な例は、よくたらい回しと言われる部分なのですけれども、企業にクレームを持っていったけれども、相手にされないから行政が持っている消費生活センターへ持ってくると、また業界団体に持っていって、また消費生活センターに返ってくるという形で、結構たらい回し的な状況というのが行われていて、それを考えるとどこまで遡れるかというところも、ただ単純にADRの開始時点とか、ADR機関に持ってきた時点とされたときに、ではADRというのはどこまでを含むのかとか、それから相談とか苦情が前に入ってくるものについてはどう考えるのかというところもきちんと議論をしていきたいと考えております。
 以上です。

○青山座長 他にどうぞ。三木委員どうぞ。

○三木委員 前回にも多少申し上げたことですが、国連のUNCITRALの国際商事調停モデル法の審議においては、資料5-3の分類によりますと「時効停止タイプ」というのを想定して議論が行われてきました。勿論、世界的には時効のストップの方法としては中断もあれば停止もあるということが了解された上で、敢えて停止タイプの方が望ましいということで議論がされてきたわけです。
 また、今回資料に掲げられておりますように、ドイツでも停止という仕組み方がされているようであります。
 なぜ、中断より停止が望ましいのかという点につきましては、余りUNCITRALの場では詰めた議論は行われておりません。したがって、当然の前提として議論が進んでいったような面がないわけではないのですが、私なりの解釈を加えて申しますと、広い意味で交渉が継続している間は時効が完成しないことが望ましいが、しかし、時計の針をゼロに戻すまでの必要性があるのかという考慮が根底にあったのだろうと思います。
 そのように考えてみますと、私自身は、我が国の現在の民法における時効停止という言葉遣いと必ずしも同じではないかもしれませんが、広い意味で停止タイプの方が趣旨に沿っているのかという気が現時点ではいたしております。
 そのような目で既存の法制度を見ますと、「民事調停タイプ」にしましても「個別労働紛争解決促進法タイプ」にしましても、これも広い意味では一種の停止タイプとも見られないことはないように思います。
 と申しますのは、規定の仕組み方は違いますが、後に訴え提起が必ず要求されていると。時効中断効それ自体は、見様によっては、訴え提起の効果として生ずるわけでありまして、調停はその訴え提起に至るまでの時効の完成を停止するという機能を担っていると見られないわけでもないわけであります。
 そういう目で見ますと「民事調停タイプ」、「個別労働紛争解決促進法タイプ」、「時効停止タイプ」、更には、資料5-3に挙げられております「催告継続タイプ」。これらは、事の実質を見るとそれほど異なった理念に基づいているわけではないように思われます。したがって、これらを整理して広い意味での「時効停止タイプ」を考えていく余地はあろうかと思います。
 勿論、先ほど山本委員がおっしゃられたように、現在、我が国の民法では、こうした意味での時効停止を基本的に仕組んでおりませんので、既存法令との関係でどうかという問題は当然あろうかと思います。
 ただ、ドイツの立法を見ていて感じることでありますが、ドイツでは交渉による消滅時効の停止も併せて規定をしたようであります。
 これは、先ほど原委員がおっしゃったこととも若干関連するように思いますが、ADRと交渉の間に、時効停止の関係で截然と線を引くのがいいのかどうかというのは、やはり一つ考えておくべきところではないかと思います。
 ADR、この場では調停ないしあっせんということになろうかと思いますが、そういう紛争解決の制度に時効の停止効を付与するのか、それとも当事者間で交渉が続いている間は、少なくとも時効は完成させないというところが出発点になるのか、そしてADRというのも、調停・あっせん型のADRというのは交渉の一環として枠に収めて考えた方がいいのかという哲学の問題がまず議論されるべきであろうと思うからであります。
 現段階では、これ以上の定見を持っておりませんが、せっかくの機会ですから、そういうところから考えていくべきではないかと思います。
 繰り返しになりますが、既存法令との整合性が若干問われるわけですが、先ほど申しましたように、現在の民事調停や個別労働紛争解決促進法などは、見様によってはそれほど今申し上げたことと異なった哲学で仕組まれているわけではないと私は考えておりますので、既存法令との整合性も、制度の仕組み方によっては、それほど困難なく取れるのではないかと漠然と考えております。

○青山座長 どうぞ、綿引委員。

○綿引委員 三木委員がおっしゃっている停止というのが、我が国の民法上の停止とは若干異なる意味でお使いになっているという趣旨は十分理解したのですけれども、ただ、議論をしていくときに停止型という言葉を使ってしまいますと、議論が混乱するのではないかという気がしますので、まず、言葉の問題として停止というのは、やはり民法上の停止を前提にして、それとは違う形で、どういう形での時効をストップする、どの程度のストップ効だというように、どういう中断効なのかという議論の仕方をしないと議論が混乱するのではないかという気がしましたので、その辺をまず一言申し上げさせていただきます。
 そういう意味で、いわゆる時効の停止を認めるというのは、少なくとも現行の民法の時効法制に照らすと取り入れられにくいというのは山本委員がおっしゃったとおりだと思います。
 今度はどういう形で時効中断効を認めていくのかという問題だと思うのですけれども、山本委員がおっしゃったのは、ADRに対する申立てに一定の要件をかぶせて、民法とは別に中断事由を立法化しようという御意見ということになりましょうか。
 そこを確認したいと思います。

○山本委員 申立てに要件をですか。

○綿引委員 例えば、両当事者が一致して和解の交渉に入っているというような要件をかぶせることによって、それ自体を民法とは別の中断事由にしようということと理解していいのですか。

○山本委員 中断事由にするというよりは、個別労働紛争解決と同じように、そこで合意がされればいいわけですが、合意がない場合に一定期間内に訴えを提起すれば交渉に同意した時点に遡って時効が中断するという仕組みがいかがかということです。

○綿引委員 民法とは別の中断事由ということですね。

○山本委員 そういう意味です。

○綿引委員 もう一つの考え方として、民法の和解の申立てと同視できるような実態を持つものというような要件の書き方、それにはどういう要件が必要かというのは、また1つなのですけれども、そういうものは民法上の和解のための呼出しとみなすというような立法の仕方が1つあるのだろうという気がします。
 やはり、民法は基本実体法なので、それとかけ離れた時効中断事由を認めるのは、私には非常に抵抗感があり、基本法から余り離れて、基本法が認めている中断事由とはおおよそほど遠い事由にまで時効中断効を広げていくというよりは、民法という基本法がある中で、時効中断の効力を認めていい事由とはどういうものなのか、そのためにはどういう要件をかぶせたらいいのかというような議論の仕方の方が落ち着きがいいのではないかと思います。
 前回の議論の冒頭で座長の方から民法の全体とのバランスということを考えたらどうでしょうかというお尋ねがあったのもそういう趣旨のように理解しておりますので、そういう議論の仕方が必要ではないかという感じがしております。

○山本委員 私の発言は、新たな中断事由ということで、規定の仕方としては、おそらく個別労働紛争と同じように、ADRへの申立て、あるいは合意の時点において、時効中断との関係においては訴えの提起があったものとみなすという条文の書き方になるのだろうと思います。だから、時効中断事由としては、民法上の請求ということで、新たな中断事由を立てるという趣旨で申し上げたわけではないということです。

○三木委員 私が言った停止というのは、今の民法の停止と異なる意味で申し上げております。
 ただ、これは綿引委員も御承知のように、日本の時効停止というのが、本来の意味での時効停止制度ではないと言われていることもまた事実であります。
 そういう意味では、私が言っているのは、本来の意味での停止ということを言っているのですけれども、これが紛らわしいけれども、用語としては前回も言った「チェス・クロック方式」でも結構ですが、そういった意味で、そのことを考える余地はあろうという趣旨です。それから、現行の法制に合わないとおっしゃいましたが、これも今言ったことの繰り返しになりますが、これはおそらく解釈の余地があるかと思いますが、私の見方では、現在の民事調停法や個別労働紛争解決促進法などは、一種の「チェス・クロック方式」を導入しているものと見ていますから、その点についての解釈の余地はあるとしても、見方によっては現行法に比べて突飛なものを言っているわけではないという見方もあろうかと思います。

○綿引委員 先生がおっしゃっているのを突飛だと言っているつもりではなく、停止という言葉を使うと、一般に議論が混乱しやすいというので、そこは少し日本語を整理して議論した方がいいのではないかという趣旨で申し上げただけですので。決して先生がおっしゃっている「チェス・クロック方式」が突飛だとまで言っているつもりはありません。

○青山座長 他に御意見ございますでしょうか。安藤委員どうぞ。

○安藤委員 三木先生の言われるものは、大体前回私が申し上げたものをより具体的にしていただいたと感じております。
 基本的に言いますと、裁判と並ぶのではなくて、裁判につなぐという形でありますので、余り大きな権力を与えるということは、逆にADRの活性化という意味とは遠ざかってしまうのではないかと思います。
 勿論、既存の状態で、それを更に制限するということではなくてそれを少し拡大する、そして下に緩やかな状態である程度の力を付与すると、これが基本ではないかというような感じを受けておりますので、ADRに関して言われるのは、また言葉の問題でADRをどういうふうに日本語に直すかと同じように、時効の停止という表現をどういう文言にするか。それによって、そういった状態を採用していただくのがベストではないかと考えております。

○青山座長 私も一委員として少し発言させていただいてよろしゅうございますでしょうか。決してこれまでの議論をまとめるというところまでいっているわけではなくて、私個人の意見として申させていただきますと、ADRの利用について時効中断を認める必要があるかどうかということにつきましては、今までのアンケートやその他の意見から必要があるのではないのではないだろうかという意見が強いように思っております。
 では、どういう形で時効の中断ないしそれに類似した効力を認めるかと言いますと、私はイディアルティプスとして考えると、4つぐらいの方法があるのではないだろうかと思っております。
 第1は、あくまでもイディアルティプスとして申し上げますと、民法の時効の中断とは別のメニューを一つ用意すると。つまり、ADR機関への紛争解決の申立て自身に時効の中断を与えることができるかという考え方でございます。これは、考え方としては最もシンプルですっきりしているわけでございますけれども、私はかなり難しいと思っております。
 それは、民法149 条の訴えの提起の場合でさえ、訴えの却下あるいは訴えの取下げの場合には時効中断効は生じないとしているわけでございますから、そういう民法とのバランスから考えて、ADRに申し立てたということだけで時効の中断になるというのはかなり難しいということになるのではないかと思います。
 つまり、ADRの利用あるいはADRに対する申立てと言いましても、先ほど原委員から御紹介がありましたように様々な形がある。仲裁、あっせんの申立てから、単なる苦情、相談というようなものまでありますから、これが最後に正式な和解にたどり着けば、勿論それでいいのですが、それ以外に挫折することはたくさんあるのに、そういうものを全部含めて、申立てをしただけで中断をするということは不可能だと思います。
 そうすると、民法149 条と同じように、どういう場合に時効が中断しないことになるかという書き分けは、かなり難しいのではないだろうかと思っております。
 第2の方法は、先ほどからも言われていますように、これは立法例にもありますとおり、民事調停法19条、調停が不調に終わってから2週間以内に訴えを提起すれば、調停の申立ての時に訴えの提起があったものとみなす。個別労働紛争解決促進法16条も、30日以内に訴えを提起すれば、あっせんの申請の時に訴えの提起があったものとみなす。公害紛争処理法42条の25は、責任裁定の申請を裁判上の請求とみなすこととし、その前段階ともいうべき調停については、同法36条の2で、それが打ち切られてから30日以内に責任裁定の申立てまたは訴えの提起があったときは、調停の申請の時に責任裁定の申立てまたは訴えの提起があったものとみなす、という解決方法を取るということでございます。
 これは、民法との関係で言いますと、民法151 条の和解のための呼出しがあった場合にそれが調わなかった場合に、30日以内に訴えの提起があれば、遡って呼出しの時に中断が生ずるという仕組みを、立法によって個別的に明らかにしたということだろうと思いますので、そういう形を取るという方法です。先ほどから山本委員などがおっしゃっているのは、まさにこれだと思いますが、ADRへの申立てが不調に終わって、後から訴えを提起した場合に、30日以内に訴えの提起がなされていれば、ADRへの申立ての時に時効の中断があったという規定をするのは、割合従来の立法技術から比べて、それほど無理ではないかもしれない。
 ただ、ADRへの申立ての要件というのをきちんと決めていかないと、ただ相談というようなものではいけないかもしれませんけれども、要件を絞ってさえいけばできるかもしれない。
 3番目は、民法153 条の催告から6か月以内に訴えを提起すれば時効を中断するという規定を類推して、ADRを利用して相手方に紛争解決のためにテーブルに着くようにということを言ったということが、民法の催告に当たるということになりますと、催告をしてから6か月以内に訴えを提起すれば、時効の中断効が遡って生じるという解決も立法上できるかもしれない。これは、1つの考え方だと思います。
 今、3つ申しましたけれども、これはいずれも時効の中断でございまして、時計の針を巻き戻す方式なのですが、4番目は、それとは違って前から出ておりますように、時計の針を止めておくという方法です。ドイツ民法は、今までの30年という時効期間を思い切って短くして、新しく時効の停止を打ち出した。その中に、紛争解決機関への申立て、あるいは和解のための交渉にも時効の停止を認めているということから見ますと、本来の意味での時効の停止、すなわち時計の針を止めておくということも考えられるかもしれない。
 これは、先ほど山本委員が民法との関係で、日本は中断方式なので時効の停止というのはないから難しいということを言われましたが、この停止という規定をどこに置くかという問題にも関係してくると思うのです。民法の基本法の中に停止を入れるというならば、これは非常に困難かもしれませんけれども、ADR基本法というようなもので、交渉のテーブルに双方が着くような状態が作り出された時から、それが成功すればいいのですが、成功しなかった場合に挫折する、そこまではとにかく時計の針が止まっている。挫折したということになると、そこからまた時計が動き出すという停止方式というのも民法とは別の法体系だったら、あるいは可能かもしれません。これは、法制局的なこともありますので、私には判断がつきませんけれども、そういう4つぐらいのことが考えられると思います。
 第1というのは、イディアルスティプスとしてかなり難しいとすれば、これから第2、第3、第4というような可能性を要件を絞りながら考えていかなければいけないかと思っております。
 特にドイツ法の今度の新しい条文は、実は先ほど事務局からいただいて、今読んでいるところですけれども、もう少しどういう思想でドイツ法で新しい法律が制定されたのかということを皆さんと一緒に研究していく必要があるのではないだろうかと思っております。
 少し長くなりまして、大変恐縮でございます。
 何か他にございますでしょうか。どうぞ。

○髙木委員 私も前回は、時効中断の方向性として認めるべきではないかということだけ申し上げて、要件や認める場合の方式等については意見を言わなかったつもりなのですけれども、少し申し上げます。
 山本先生のお考えとほとんど似たような感じで考えているのですが、原委員がおっしゃったように、苦情処理というか、相談とあっせんとが具体的によく分からない部分も可能な限り対象にしたいと考えており、それを取り込むにはどうしたらいいかと。
 ドイツ法の条文のように、例えば機関を介して当事者が「一致した」和解を試みているという規定ぶりにすると、その「一致」があるのかないのかがよく分からないところもあるので、機関を中心として当事者が何らかの話し合いがなされているという状態を表現するような形で、それを取り込んで認めることが可能かどうかと思っております。

○青山座長 今日、それ以上、山本委員の意見を聞こうということではないのですね。

○髙木委員 少し伺いたいとも思ってはいたのですけれども。何らかの形で取り込めないでしょうか。

○山本委員 それは勿論、ADRということの定義の問題が1つありますね。

○髙木委員 先生の場合はADRについて、そこで時効中断効を認めるADRとそうでないADRをスクリーニングをするということが前提になるのですか。この「個別労働紛争解決促進法タイプ」を採用するという時に。

○青山座長 ADRの機関を限定するかどうかということでしょうか。

○山本委員 いや、機関は特に限定しなくて、ただ、苦情相談とか、どこまでが時効中断効を持つようなADRなのかということは何らかの形で定義する必要があることは間違いないだろうと思います。

○髙木委員 私もADRは限定しないで、全ての機関に対して、個別労働紛争解決タイプでなるべく苦情の部分でそれなりに「あっせん」の実態のある部分を取り込めるような形で時効中断を認めていくのがいいのかと。他の法制との絡みで、多分限度があると思いますけれども。

〔法的効果の付与等について(その2)(執行力の付与)〕
○青山座長 それでは、時間の関係もありますので、次の議題に進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。
 時効のことは、まだこれから要件とか難しい問題がありますので、しかし一応色々な意見が出てきたということだけで今日は次の検討に委ねたいと思います。
 それでは、今日は、執行力の付与に関する議論の最初のところをやっていただきたいと思います。
 関連する資料として事務局から資料の5-4、5-5の2つが出されておりますので、まず、これについて全般的な説明をお願いしたいと思います。

○小林参事官 それでは、資料は2種類お配りしておりますが、説明資料の方を中心にお話をさせていただきたいと思います。全体の構成は、時効のときの説明資料とほぼならって作成いたしております。
 1ページに「強制執行までの手続の流れ(概要)」ということで、最終的に請求権を実現するまでに、どのような手続が必要になっているのかということを簡単に整理させていただいています。
 そもそも「執行力」というのは、2ページに色々定義をさせていただいていますけれども、「債務名義に表示された給付請求権の強制執行による実現を求め得ること」ということになっておりまして、広く権利の実現をどう図っていくのかということでございます。
 これは元々自力救済も当然考えられるわけでございますが、これが広く認められますと、社会秩序が混乱する恐れもありということで、現在においては最終的な実現という部分につきましては、国家が全面的にその任務を担っているということでございます。
 ただ、権利の実現と申しましても、これは非常に重大な問題でございまして、一方では権利の実現の方途が、中々迅速に行われないということになりますと、これは社会生活上色々支障が生ずるわけでございまして、契約を結んでも契約が守られる保障がない、あるいは、契約が実現する保障がないということになりますと、予測可能性がないということで、一例を経済活動に取れば、そもそも投資が行われなくなるという問題があるわけでございます。
 他方、権利の実現ということで申し上げれば、仮に正当な権利の実現ということであっても、これは債務者側から見れば、生活でありますとか、あるいは企業であれば経営でありますとか、そういうところを脅かす可能性もあるという問題もありますし、それが不当な権利実現であれば、当然更に大きな問題ということになりますので、いずれにしましても、強制的な権利の実現ということについては、慎重な手続を踏むということになっております。
 それが、1ページにございますように、我が国の場合はこういった手順を踏んでということになっております。これを見ていただきますと分かりますように、まず執行機関と権利判定機関というのを分けた形にしております。この執行機関につきましては、これは権利のそもそもの存在自体等について判定をするということではなくて、むしろ執行に特化することによりまして、迅速性を出すとか、あるいは能率性を確保しているということでございます。
 他方、そうなりますと、権利判定機関におきまして、執行機関において改めて権利についての判断をしなくていい程度に高度の蓋然性を生じ得るような一定の様式を備えた文章をつくらなければいけないということになるわけでございまして、これが債務名義と呼ばれているものでございます。
 勿論、現実に執行が必要になるに至る過程で、色々な状況変化もございますし、あるいは条件付きのものについては、条件が満たされたかどうかということを確認する必要があるので、債務名義のみならず、右側にありますように執行文の付与ということが合わさりまして執行の方にいくわけでございますが、いずれにしましても、こういった慎重な手続を経た上で執行に至っているということでございます。
 続きまして、3ページでございますが、これはADRにおいて執行力を付与するというのがどういう背景から出てきた問題かということでございます。例は、お金の貸し借りでございますけれども、返済の方法としまして、分割払いということの設例になっております。この設例では、3か月間は10万円ずつの返済をしたものの、4か月目以降はどういう事情か分かりませんけれども、返済が途絶えてしまったということでございます。
 この場合、後ほど御説明しますように、民間のADRにおきましては、この合意には執行力はございませんので、Aさん、貸主としましては、Bさんに対して強制的に返済をしてもらうということができないということになります。
 こういうような状況でございますと、そもそもAさんのような立場の人につきましては、ADRでの合意、あるいはADRの利用を躊躇するということがあるのではないかということが、そもそもこの問題の背景でございます。
 今、分割払いの事例を挙げましたけれども、4ページを御覧いただきたいと思いますが、似たような事態が想定されるケースは、他にもございます。
 1つは、合意から履行までの間に一定の期間を設定する事例。平たく言えば猶予するようなケースでございまして、借金の返済を巡って一定期間支払いを猶予するというようなケース。あるいは、借家の明渡しを巡りまして、新たな住居を探すまでの期間を猶予するというケース。
 2つ目の類型としては、履行が継続的に行われるようなケースでございまして、今、事例で挙げたような借金の分割の返済。あるいは、養育費の毎月の支払いというようなケース。これは、継続的に履行されるというようなケースでございます。合意して、すぐ履行されれば問題はないわけですけれども、こういうようなケースについては、合意があるにもかかわらず、履行が滞るということが想定されるわけでございます。
 3ページの下に書いてあることなのですが、今、申し上げた4ページのような、いわば非常にフレキシブルな解決方法というのは、実はADR機関の一つの売りになっているわけでございまして、裁判では中々実現できないような当事者の実情を反映したような解決方法というのがADRの一つの強みになっているわけでございます。
 他方、強みになっている解決方法の履行が必ずしも執行力が与えられていないということになりますと、せっかくのフレキシブルな方法に中々思い切って踏み切れないという問題が指摘されているところでございます。
 5ページをお開けいただきたいと思います。これは現行法の中で、先ほど申し上げました債務名義が与えられているものに至る過程を整理させていただいたものでございます。左側の方が「裁判所での内容確定」ということでございまして、裁判でありますとか、あるいは民事調停、あるいは即決和解と、こういったものによって債務名義が与えられることを示しております。
 右側が「裁判所外での内容確定」ということでございますが、こちらの方はかなり限られた範囲でございまして、1つは公証制度による執行証書のケース。もう一つは、仲裁でございますが、仲裁もそれだけで完結した制度ではございませんで、別途執行判決という形で最終的に債務名義になるということでございます。
 いずれにしましても、問題になりますのは太線で示してありますところの、ADRを経ても経なくてもいいのですが「民法上の和解」の部分が直接債務名義になるという手段がないということでございまして、現実の問題としては太線から横の方に流れて、即決和解を利用するケース。それから右の方に流れて、公証制度を利用するケース。更に右に流れて、形式的に仲裁を利用するケース。この3つの、いわばバイパスを通ることによりまして、債務名義を得ているというのが現実でございます。
 6ページをお開けいただきたいと思います。それでは、実際のニーズについてはどうかということでございますが、「民間ADRに対するアンケート調査」、これも時効のときと同じように、もう少しブレイクダウンして分析をいたしております。
 まず、執行力の付与が必要だと回答した機関でございますけれども、全回答機関中では48%、何らかの法制上の手当が必要と答えた機関の中では63%ということで、比較的高い率を占めております。
 もう少し具体的に見てまいりますと、参考にございますように、紛争全般を取り扱う機関、これは弁護士会の仲裁センターが中心ということでありますけれども、こちらでは92%ということでございまして、その他、特定分野の紛争を取り扱う機関では37%ということでございます。
 これは、推測ではございますけれども、弁護士会の仲裁センターの場合には、やはりプロ集団として色々な解決方法を模索されているという中で、色々工夫しても執行力がないと中々そこに踏み込めないという問題もございますし、また、裁判に比べて執行力を与えられていないというのが、何となく半人前と言いますか、見劣りする原因になっているということを意識されての回答と理解しております。
 次に、紛争解決の方法のところで見ますと、これはある意味では当然でございますが、相談・苦情処理の場合では25%、あっせんまで行っている場合は50%、仲裁又は調停まで実施している機関においては55%ということで、やはり相当踏み込んで紛争処理を実施しているというところほど執行力が必要だという意見が強くなっております。
 7ページをお開けいただきたいと思います。理由ですが、必要とする意見としては、先ほど申しましたように、相手が約束を破れば、現在では裁判所に訴えるしか方法がないので、執行力を付与してほしいとか、あるいは先ほど少し触れましたが、現在は執行力がないために、分割払いを採用しにくいということ、あるいは、そもそも手続の信用性と言いますか、機関の信用性が減殺されるなどの問題があるので、執行力の付与を検討してほしいという意見をいただいております。
 他方、執行力につきましては、時効と違いまして、不要あるいは慎重という意見もかなりございます。
 具体的には、一番上にございますように、当事者間の力の格差の是正がない限り消費者にとっては危険であるとか、あるいは反対ということではないと思いますけれども、基本的にADRの場合は、納得ずくで合意をしているので、履行される可能性が高く、執行力を付与する必要性は感じないというような意見もいただいております。
 他方、先ほど申し上げたように、現実に3つの便法が行われているわけでございますが、これらの便法につきましては、やはり手間、コストがかかるというのが一つの大きな問題となっております。
 特に即決和解、あるいは執行証書の作成という便法につきましては、これらのものは実際に履行を巡って問題が生じたときには、相手方の協力を得ることは難しいものですから、執行力を確保しようとすれば、合意をしたときに必ず一手間余計にかけなければいけないという問題がございまして、既存の債務名義の活用には一定の限界があるというような御意見もございます。
 参考としまして、別途行政型ADRについてもヒアリング調査を行っておりますが、行政型ADRの場合でも、執行力の付与が望ましいという意見もございました。
 8ページでございます。ユーザーサイドの意見でございますけれども、一番上にございますように、消費者団体の方からは、少なくとも現行のままで執行力等の法的効果を付与することは時期尚早であるという御意見をいただいております。
 検討会におきましては、全般的な意見としまして、十分な制度設計が行われないまま、簡単にADRに法的効果を与えるという議論は危険であるという意見も出されております。
 以上が、実際のニーズということでございます。
 9ページにまいります。では、仮に執行力を付与する、あるいは執行力の付与について議論する際に、どのようなオプションが考えられるかということでございますが、9ページは、これまで認められている債務名義と、今回のADRにつきまして、色々な角度から比較をしている図でございます。
 少なくとも、私ども事務局で勉強した限りでは、どういった要件があれば債務名義が与えられるか。必要条件なり十分条件は必ずしも明確に整理されたものを勉強不足で中々きれいにまとめられなかったのですが、色々な方の御意見を伺いながら考えられる要素として挙げられるものを並べてございます。
 点線で囲った部分でございますが、手続の場あるいは作成者、あるいは大きな影響を受けます債務者がどれぐらい関与しているのか。あるいは公序良俗に反していないかなどの実体的正当性がどういうふうに担保されているか。あるいは、先ほど申し上げたような手続的な正当性をどの程度担保されているのかということについて比較をしたものでございます。
 これを眺めながらどういうことを考えるかということでございますが、時効の場合と少し違いまして、少なくとも現行制度と比較していく限りにおいては、時効のように色々な選択肢があるというような状況ではなさそうだということでございます。
 1つの取っかかりとしましては、ADRと相対交渉との比較という観点があろうかと思います。勿論、ADRと相対交渉をどう位置付けるかというのは、先ほど時効の問題でも必ずしも截然と分かれないのではないかという議論がありましたから、必ずしもここをきちんと切るというのが唯一の答えではないと思いますが、仮にADRの方については、こういった効力を与え、相対交渉については与えないという考え方を取るとすると、その差異というのは、これを見る限りADR機関、あるいは主宰者が実体的な正当性であるとか、あるいは手続的な正当性の確認をできるかどうかということになるのではないか。
 要するにADR機関を通すがゆえの付加価値というのは、この部分に求めざるを得ないのではないかということが議論になり得ると考えます。
 他方、ADRと、同じような調整的手続である民事調停、あるいは裁判所の和解を比較しますと、こちらの民事調停なり裁判上の和解につきましては、勿論、合意をするのは当事者であるわけでございますけれども、その過程において裁判官、書記官が関与と申しますか、チェックと申しますか、当事者の合意が変な方向に動く、ないしは手続が非常に偏頗な形で行われるということになりますと、その部分をいわばチェックと申しますか、是正できるような仕組みになっているわけですけれども、この部分についてのADR機関、主宰者の関与が、同程度のものが期待できるのかどうかということが1つ問題になり得るわけでございます。
 そうしますと、その部分が仮に裁判官、書記官の関与で保障されているのと同程度のものでないということになりますと、それを補完するものとしてもう少し付加的な手続が必要になってくるのではないかという議論も勿論出てくるわけでございまして、その場合には、一つの参考としては、仲裁でとられているような、司法機関によるダブルチェックということが考えられるのかということでございます。これが、隣りに出ておりますクエスチョンマークでございます。
 あるいは、もう少し観点を変えまして、下の方の「公証」あるいは「支払督促」というところにつきましては、もう少し軽いチェックで済んでいるとも見られるわけでございまして、そうすると、それとの関係で、この2つは金銭給付等に限定されているわけですから、そういった対象を限定するということによってバランスを取るという考え方も、この表を見る限りは、出てくるわけでございます。
 もう一つは、先ほど3つの便法があると申し上げましたが、1つの便法としては、形式的に仲裁に移行するという便法が取られているわけでございますが、仲裁への便法につきましては、例えば当事者間で合意した内容と全く同じ仲裁判断が出される保障は制度的にはございません。
 それから、何らかの錯誤があって合意したケースにつきましては、仲裁に移行してしまうと取消しができないとか、便法なりの問題が当然あるわけでございまして、それであればもう少し正面から移行を求めるという考え方もあるのではないかという議論がされているわけでございます。
 若干事務局の説明としては、やや個別の事例案に踏み込み過ぎたかもしれませんが、どうもこの表を見る限りは、中々時効のように選択の幅はそう広くないのではないかという感じがいたしております。
 10ページは、今申し上げたことの補足でございますので、11ページにまいります。
 「執行力付与のオプション」ということになっておりますが、基本的には、現行の制度あるいは現行の便法について整理をしております。
 一番右側に時効と同じように、ADR機関に執行力を付与するとするとどういう点を確保しなければならないかということで、いくつか考えられる例を挙げてございます。
 1つは「執行機関が改めて実質審理を行うことを要しない程度にまで、請求権存在の確実性が高まっている必要」。これは先ほど申しましたように、執行機関ではこの判断はできませんので、あるいはしないという制度設計になっておりますので、非常に請求権存在の確実性の蓋然性が高い段階にまで合意を高めておかなければいけないという問題が1つございます。
 それから、2番目としましては、これは「強制執行し得る請求権の内容が明確である必要」があるということでございまして、これは先ほどの執行機関の性格とも絡んでくるわけでございますが、そのADR機関は色々フレキシブルな解決策を工夫することが可能でございますし、また、それが1つの売りでもあるわけでございますが、執行ということを考えますと、やはりこの部分は明確である必要があるということが言えるかと思います。
 3番目は、これも時効のときにも似たような議論をしましたが、やはり制度の悪用は防止しなければならないということで、一方当事者と通謀しているようなケース、あるいは通謀していないけれども、先ほど申しましたようなADR機関を関与することによる付加価値のないような場合、つまり両当事者が実質上は合意してきたものをADR機関に持ち込んで、単に執行力を付与してもらうだけというようなことは避けなければならないのではないかということでございます。
 そうした色々な要件を考えてみますと、ADR機関に要求される具体的な要件としては、相互に絡むとは思いますが、1つは、主宰者なりADR機関自身につきましては、公序良俗違反ではないかどうかの実態面、あるいはお互いの合意に至るプロセスに余り偏頗がなかったかどうかという手続面での正当性を当事者以外の第三者としてきちんと確認できる、あるいは必要があれば是正できるだけの資質が要求されるのではないかというのが一点目であります。
 2点目としましては、そういう第三者のチェックが勿論あるわけでございますけれども、そもそも手続として債務者側の権利がきちんと担保されているのかどうかという点、このあたりはどうしても必要ではないかということでございます。
 以上、非常に簡単でございますが、執行力の関係の御説明でございます。

○青山座長 事務局が大変よく勉強していただきまして、5-4の資料は、我々の議論の出発点になると思います。時効の中断よりも難しいという話がありましたけれども、確かに難しい問題を抱えていると思いますので、どうぞ御自由に、今日は第1読会でございますから、御自由に御発言をいただきたいと思います。

○髙木委員 質問をよろしいですか。9ページの表の四角の中のことなのですが、真ん中あたりに「ADR関与の下での合意に服する合意」というのは、具体的に言うと、執行認諾文言に似たようなものを考えておられるのですか。

○小林参事官 そこはもう少し補足をし、かつ、図ももう少し丁寧に書く必要があったかと思いますが、結論から言えば、執行認諾のようなものを考えておりますが、それは必要だという考え方と、必要でない、あるいは選択を認めるといういくつかオプションはあると思いますので、そういう意味でこの図は不正確ですけれども、意図するところはそういうことです。

○青山座長 他に質問がありましたらどうぞ。

○安藤委員 同じく9ページの表のところなのですが、横尾委員に伺いたいのですが、海外紛争の場合に、私の知っている限りですと、裁判以外には方法がないような感じを受けているのですが、この中でこういう方法があるのだぞとか、そういうのがあれば教えていただきたいと思います。

○横尾委員 御質問の趣旨は、国境を越えた場合ということですか。

○安藤委員 そうです。

○横尾委員 非常に漠然としているかもしれませんけれども、私が先日御説明しましたケースは、そもそも国際間でルールがない場合です。
 訴訟上のルールすら決まっていないところでは、ADRが有用である。つまり当事者が合意した形での紛争解決によることがよいということでございます。
 ですから、ここで言うと民間型かもしれません。また、日本の企業とどこかの国の政府とが当事者になるということもあるかもしれません。どういった規範を使うのかということは、その時によって変わってくるかもしれません。

○青山座長 私の方から補足いたします。国際的な民事紛争の解決については、どこかの国の裁判ということもありますけれども、仲裁というのが非常に行われていると思います。国際的な商事仲裁に関するモデル法というのが作られていまして、それが日本でもそれに従った仲裁法を制定しようということで、仲裁検討会で検討しているところでございます。
 その他に、三木委員がUNCITRALという機関に出ておりますが、国際的な調停のモデル法というのも作られておりますので、国際的な紛争の解決としては、大きく言いますと裁判、2番目に仲裁、それから調停という3つがあるのではないかと思います。

○安藤委員 この図で言うと、上の3つである程度海外紛争の中にADRを含めるということができるというわけですね。
 もう一つ、原委員にお伺いしたいのですが、インターネット関係の場合ですと、どの辺のところに問題があるのですか。9ページの中でです。

○原委員 インターネット関係も国境を超えるものと、国内で完結するものと二通りあると思っていて、国境を超えるものについては、青山先生が述べられたところだと思いますし、国内も一応これで整理はできているのだと思うのですが、中々事実認定のところは大変難しい状況にあるのは確かであります。
 ただ、仕組みができても、ネット関連では、そこの部分の困難性というのは、私も第1回目の検討会で意見を申し上げましたけれども、事実認定あたりの危惧は必要だろうと思います。執行力の付与という点では、この表の中に入っているのだと思います。

○青山座長 よろしゅうございますか。

○安藤委員 その2つだけは、ADRに欠かせない要件の部分に入るのじゃないかと思います。

○青山座長 他に質問はありますか。

○横尾委員 執行力の付与につきまして、1つ教えていただきたいのですが、ここで債務不履行のケースが出ていたと思うのですが、非常に単純なことなのですけれども、この事例で債務不履行があった場合に、そのことがなぜ強制力を持った執行力を付与していくことに直ちになるのか。
 つまり、ADRの考え方というのが当事者同士の合意に基づくものということがありまして、それが一度は合意されたものが、再び破られた場合に、そこに国家権力を持ってくるということは、何か唐突なような気がします。もう一度ADRに持っていくということにならないか。ADRの理念からして、これをどういうふうに解釈していくのかという素朴な疑問なのです。

○小林参事官 中々難しい御質問ですが、もしBさんが資力がなくて、返したくても返せないというケースは、もう一度お互いにとって納得づくで実現できるような返済スケジュールを作るというのはあり得ると思うのですが、資力は十分あって、途中で返すのがばからしくなってやめたというようなケースについてまで、ゼロから、これはそもそもお互いの同意なのだから、また、話し合いをしましょうというのは、逆に言うと債権者側にとってややおかしいのではないかということであって、勿論、そこに国が出てくるのはいいかどうかというのは別問題としてありますが、やはり合意は守られるべきものではないかと思います。

○横尾委員 時間がかかるようなのですけれども、そこにもう一つ手続があるような気がするのです。つまり、裁判なり、そういったものをもう一つかませるということが本来的にはあって然るべきであって、ADRが当事者同士の合意を尊重するという観点からすれば、不履行が生じた場合にも、その解決策というか、合意された中身が不十分だったということでないかと思うのです。そこからすぐに執行力の方へ行くというのはどうなのかという疑問があります。

○青山座長 それは疑問というよりも御意見ですね。執行力を付与する必要があるかどうかという根本的な問題ですね。

○横尾委員 ただ、このような類型の必要性も一方で認識しております。

○青山座長 もう議論に入っていますから、御意見をどうぞ。

○原委員 アンケートですとか、消費者側のヒアリングのところで消費者側は執行力の付与について、不要とか慎重論ということがあって、このペーパーの中でも紹介されておりますので、少し消費者側が何を考えているかということを前にお話ししておいた方がいいかと思いまして、先に発言させていただきます。
 3点くらいあるように思っております。1つは、なぜ消費者側が執行力の付与について慎重論を言っているかということなのですが、ここの1つ目の意見のところに2つ理由がありまして、1つは、ADRの定義づけがはっきりしない中で、執行力の付与の話だけ先行していくというのはどうであろうか。制度の整備が前提であろうということです。だから、森が分からないうちに林の中に入って木の議論はできないというようなところがございます。
 それから、2つ目の理由としては、アンケートの結果でも、執行力の付与を望む声というのは非常に高いです。最も望む声が高いとなっておりまして、その理由なのですけれども、印象として、信頼性ですとか、それから半人前という紹介がありましたけれども、「裁判と並ぶ」となると、やはりきちんとした執行力の付与まであった方がいいという意味では、確かにそのとおりで、特に弁護士会の仲裁センターあたりを中心に、そういう声が出てくるというのは、もっとものような気もするのですけれども、他のところも含めて、全部ひっくるめて、執行力の付与を望む声がトップに来ているところをちょっと危惧しておりまして、既存のADR、これを現状を追認する形での執行力の付与はあり得ないと思っておりまして、それはどういうADRが執行力の付与ということに値するのかという議論がないと、何か一番望む声が高いから、執行力の付与について検討して、ADR基本法の中に入れ込むべき話だということではなくて、ひょっとすると、これは第2ステップの話なのかもしれない。ADRがどういうものかというところがまずきちんと定義をされて、認知をされていく中で、その次の第2段階のステップの話かもしれないというのが第1点です。
 それから、第2点なのですが、消費者側、市民側なのですけれども、いつ、この執行力の付与という場面に向き合うのかということを考えたときに、ADR機関、入口に入るときにその選択をするのか。それとも、入口に入った後、そこからまた2通りあって、例えば調停から仲裁に移行するようなシステムの中で選択するのか、それとも個別の案件によってそこで自分が選択をするという場面に遭遇するのかということです。
 3つ目の場面は、結論が出た後の執行力ということです。先ほど9ページのところだと、「ADR関与の下での合意に服する合意」というあたりになってくると思うのですけれども、こういうことで合意しましたということを執行する。ここについては、消費者側も、グループで議論したのですが、ここについては、あった方がいいという意見もあったのです。実際に決められたことは履行していただきたい場面もあるということです。
 3番目の結論が出た後の執行力の点では、合意に執行力を付けるということも考えられるのではないかという意見があります。
 実際に消費者側はどこでこれに向き合うのかということをもうちょっと私としては理解させていただきたいと思っております。
 それから3点目なのですが、これもヒアリングのときに質問を受ける形でお話し申し上げたと思いますけれども、やはり情報ですね。ADRの中でどういうことが行われているかということの情報がないと、消費者は選択ができない。執行力の付与があるとしても、どういう場面で、どういう案件で執行力が付与されているのかが知りたいというところです。
 ところが、ADRの議論の中の1つの大きな柱として非公開性の話があって、この非公開性の話はまだ十分な議論はしておりませんけれども、余りにも非公開性ということがADRの特質であるということになってしまうと、消費者としては、選択のための情報も得られないという状況になってしまうので、ADRの中で何がどのように行われているのかという情報提供もないと、単純に執行力付与が必要ですという話には進めないと感じております。
 以上、3点です。

○青山座長 どうもありがとうございました。

○三木委員 UNCITRALにおける国際商事調停のモデル法の制定に関する議論の中で執行力の付与という問題がどのように議論されているか、簡単に御紹介しておきたいと思います。
 先ほど参事官の方から、我が国のアンケートの結果で、時効中断効の付与の問題と執行力の付与というのは、若干回答のニュアンスが違うということをおっしゃいました。すなわち、時効中断効の付与については、その方向自体には多くが賛成しているのに対して、執行力の付与については、それに危惧を抱く声も少なからずあると。
 実はUNCITRALの場における議論も、まさにそれに近いものがございました。すなわち、時効中断効ないし停止効の付与につきましては、その方向自体にはほとんど誰も反対しない。UNCITRALというのは国内的な法の統一をやっておりますので、各国で統一ができるかという技術的な面で難しいというような議論の方向です。
 それに対しまして、執行力の付与につきましては、そもそも付与が望ましいのかということに疑問を呈する国も極めて数多くありました。勿論、他方で付与すべきだという国もかなりの数あるということで、こちらは方向自体が一致しているとは言えない状況でございました。
 それとの関連で申しますと、執行力の付与に関しましては、議論をする際に、ADRという漠然とした議論ではなくて、これははっきり調停、あるいはあっせんを含めていいのかどうかは議論の余地があると思いますが、そういう形で議論をしないとやや不正確になろうかと思います。
 と申しますのは、法律の専門家の方々には申し上げるまでもありませんが、ADRの中には、仲裁のように既に執行力が付与されているものもありますし、それを引っくるめて議論をすることは望ましくないだろうと思います。
 それは先ほど横尾委員が意見としておっしゃったことにも関連するのですが、これを調停とはっきり区切って考えますと、UNCITRALの場で執行力の付与に危惧を抱く意見の中に、まさに横尾委員がおっしゃったように、調停というのは、お互い納得づくで結論を出すものだと。その納得が崩れたのだったら、それはもう一度何らかの形で納得を形成すべきであって、いきなり国の強制力に訴えるのがいいのかという議論もあるわけですから、ここは調停の性格を常に見据えながら議論すべきであって、裁断型の仲裁の議論が混入してくるような議論の仕方は避けるべきだという気がいたします。

○髙木委員 アンケートでは弁護士会の方で執行力の付与を望む声が多かったということに起因しての御意見が多いと思いますので、弁護士会の中の議論を少し提示しますと、弁護士会の中でアンケートで結構執行力を望む声が多いというのですけれども、すべてのADRについて言っているのではなくて、弁護士会の仲裁センターあるいはそれと同視できる程度のADR機関について認めるべきだという議論が多いのです。特に、どういう要件が備わったときにそれを認めるべきかという細かい要件についてのアンケートも取ったりして色々やっておりますので、必ずしもすべてのADRを一緒くたにして法的効果付与先行の議論をしているわけではないということを申し上げておきます。
 もう一つ、弁護士内部の議論の中でも、結果としては大きな数字で執行力を望む声があるみたいに読めるのですけれども、有力な反対説もあって、考え方としては、3つあるのかと思います。
 その1つは、三木先生のおっしゃったように、方向性すら一致していないというところで見られるのですけれども、本当に執行力を与えるのがいいのかどうか。ADRの良さとか柔軟性というのが全くなくなってしまうと、それはもうADRではないのではないかという根本的な理由があって、執行力を認めるべきではないという意見があるということを御紹介しておいた方がいいと思います。
 あとは執行力を付与すべきとする説としては、一定の要件のもとに認めるべきであるということで、その要件を議論しているということ。
 それから、最初に申し上げた不要説は若干ニュアンスの異なる不要説で、例えば今回の意見書の中に裁判所との連携というのを挙げてあるわけですけれども、例えば執行力の確保の方法として即決和解や、公正証書という形があり得るのですが、そういうものに持っていくのに、その際、例えば一から審査をするのではなく、そこをもう少し柔軟に考えてくれないとか、そういったことが言われています。
 例えば委任状であるとか、資格証明書とか、そういったものを改めて付けなければならないし、証拠資料みたいなものも全部コピーを出したり、資格証明書についていうと、原本でなければならないとかというのがあるわけですから、そういったところで軽くしてほしいという意見はございます。

○廣田委員 説明資料の11ページ「必要となる要件」を見ますと、現存のADRでも、この要件を満たしているところはある。ほとんど満たしているだろうと思われるところはあります。だけれども、肝心なことは、この要件を満たしているかどうかを誰が判断するのかという問題です。誰が判断するかによって、それが場合によってはADRを規制する方向にいくという危険性があります。
 このADR規制につながることを避けたいという気持ちがあるというのが、やはりこの議論のネックになっていると思います。
 そこで、そういう問題から入っていきたいと思います。切り口、入口のことになりますが、そうしますと、11ページの下の方にある既存の債務名義を活用するとか、即決和解、執行証書、仲裁への移行ということは、例の便法なのですけれども、これは現在でも行われている便法なのですが、ADRに対する規制を避けようとすれば、いっそのこと執行力を付与しないで、その便法を使えばいいという議論も1つあると思うのです。
 しかし、この便法は、先ほど小林参事官がおっしゃったように、それ自体指摘されたような問題もあるし、大体二度手間になるのです。二度手間になるというのは、当事者にとって相当な負担です。一方、ADRにとっては、現在程度の事件数であれば二度手間でも大したことはないかもしれませんが、事件数が増えるということになりますと、この負担については対応できなくなる可能性も出てくると思います。現在でも交通事故紛争処理センターなどはかなり事件数が多いわけです。
 また、先ほど横尾委員がおっしゃったような1つの哲学の問題が出てきまして、ADRに執行力を付与することはそれほど大切なことなのかという問題があり得ます。特に、私的自治を尊重するならば、必要ではないのではないかという考え方があって、現に良い調停人の行った調停は執行力を待つまでもなく、大抵は任意履行で処理され、解決されているわけです。
 これに対して別の考え方があって、元々約束、あるいは契約というのは守られるべきだという考え方もあります。もし、これが履行されなければ、もう一度和解契約に基づいて訴訟をしなければならない。これは横尾委員のおっしゃるようなADRという手もあると思うのですが、何度やってもだめだったら、最終的には国家権力による物理的強制力が控えているということに最後には行かざるを得ないということになるのです。このこともまた二度手間になります。
 そうすると、この二度手間を避けるために、ADRに執行力を付与するということは考え方としてはあるわけで、つまり、契約、あるいは調停、約束ができたことと執行という2つの時間的間隔を短縮することが、政策的にはあってもいいのではないかという感じがします。
 そこで、要は実質的な調停の段階で十分に当事者の意思を踏まえているかどうかという問題なのですが、実質の点では、即決和解や公正証書よりも当事者の意思を確認するという確かな方法を大体のADRでは取っていると思うのです。
 国家機関でないところに執行力を付与するのはどうかという議論も、あるいはあるかも分からないのですが、これは現在の仲裁でも執行力は与えておりますし、それとはそれほど矛盾するものではない。そうしますと、形式的なところで何が必要かということになりますが、即決和解にしても、公正証書にしても、書記官だとか公証人役場の事務職員がきちんとチェックをしてくれます。文言上のチェックをしてくれる。こういう条件を備えているかどうかということも1つのポイントになるということになるのではないかと思います。
 そこで、ちょっと長くなって恐縮なのですが、時効中断効は権利の消滅を伴いますから、これは広く認められるべきだと思うのですが、私は執行力については、時効中断効が法律論であるのに対して、むしろ1つの法政策の問題だと考えた方が分かりいいのではないかと思うのです。
 その場合に、ADR促進の観点からして、できるものなら付与したいという考え方も1つあるでしょう。しかし、執行力というのは、皆さんがおっしゃっているように強い効力ですから、あらゆるADRに付与するのは問題である、勿論悪用される恐れもあります。
 ということになれば、作業としては執行力を付与するADRと付与しないADRを分けなければならない。この分けるのは誰が分けるのか。あるいはこの場合どういうふうに要件を定めるのかということになるのですが、その要件を定めることと、要件に該当するかを判断することとで、またここで規制は避けられないと思います。1つのジレンマみたいなものが出てくると思います。
 そのようなことをすることは、立法技術の上でも難しいということで、この問題はそういうところから入っていくと立往生する可能性があるのではないかと私は思っているのです。
 そこで、他の何かいい方法はないかということになるのですが、前提として、執行力を持っているところも持っていないところも、それはADRそれぞれの個性だという考え方にまず立つべきであると私は思うのです。その点で横尾委員の哲学をクリアーしたいと思うのです。もう一つは、執行力を付与させることによって、そのことによってADRに内容的な規制をすることは避けたい。逆に言えば、規制が必要なADRには、執行力を付与しない方がいいと思うのです。もう一つは、執行力については、時効中断効のような、法の欠?という問題ではなくて、法政策の問題ですから、法政策上付与すべきADRには与えて、付与しないADRには与えないというのが1つポイントだと思うのです。もう一つは、現行法を見てみますと、すべて執行力というのは法律によって与えられているわけです。これは今日整理していただいた資料にあると思いますけれども、具体的には民事執行法22条に定められている。そこにずっと並んでいる。そこから派生しているわけです。
 しかし、一般的な要件を設けて付与するADRと付与しないADRを分けて、誰かがその要件に該当するかどうかを判断しなければならないということは賢明ではない。しかし、現存のADRは既にあるわけですから、法政策的に付与する必要があるADRであるか否かは大体判断ができると思うのです。
 そうすると、具体的な現存のADRを特定して、法政策的にこれとこれには付与するということを法律によって定めるという方法が1つあると思うのです。すなわち、ADR基本法では、執行力が必要なものについては、法律によって付与するという法律を作るという形があり得ると思うのです。ですから、ADR基本法の中に入れるかどうかは別にして、すなわち別の法律にするかどうかは別にして、具体的に、こことここに、こういう形の執行力を付与するということが、法政策上必要であればそれを認めればいい。法律によって作ればいいと考えます。その場合にも、一定の要件をADR基本法に定めておく必要があると思うので、私なりに考えてみますと、法律に存立の根拠のあるADR、多くの行政型のADRは大抵これに入ると思うのです。
 それから、組織・人的構成、手続規則の上から、公正性、中立性が担保されているADR。そして、長年の実績があって、社会的に認知されているADR。例えばこういうような要件を並べて、そのうち必要なものについて、これとこれとに与えるという法律を作ったらどうかという枠組をまず考えてみると、見えてくるのではないかと思っているわけです。
 要約すれば、自動的に執行力を与えるというのではなくて、法政策上、必要があれば法律によって与えるというようにする。将来設立されるADRについては、法律に要件を定めておく必要はないということです。改めてその法律に追加していくとか、そういうことをしなければいけないことになりますが、その段階で設立後に追加するか、あるいは削除するか、取り消すか、そういったものをまた法律によって決める。ただし、行政型ADRを法律によって作るときに、その行政型ADRに執行力を付与したいときには、その法律の中に織り込むということもできるかと思うのです。以上は基本的な枠組を言っているだけなのですが、そういう枠組で考えていれば、見通しが立つのではないかと私は考えています。
 今言ったことは枠組のことで、細かいところはまだあります。付与する執行力の内容としては債務名義にするか、執行判決あるいは決定にするか。あるいは公正証書、調停調書とのバランスはどうかとか、仲裁判断との整合性はどうかとか、付与するところの実際の具体的な基準はどうかなどです。
 それから、現実にADR機関の希望とか、内容的な調査、データをつかみたいと思います。選択という言葉を先ほど原委員がおっしゃいましたけれども、執行力を付与されたADRでも、場合によって内規、規則によって付与しない形の解決方法も選択できるようにするかどうかということも検討の余地があると思います。
 あと、外国のADRの関係も、この範疇で考えてみる必要があるかと思います。こうして枠組を作って考えてみると、この議論は割合見えやすいような議論になってくるのではないかと考えております。
 以上です。

○青山座長 大変斬新なアイデアですけれども、これについてどうぞ御議論を。

○三木委員 調停に執行力を付与するかという問題につきましては、色々な既存の法制度との整合性を考えなければいけない局面が多々あると思います。取り敢えず思い付くだけでも3つほど局面があろうかと思います。
 1つは、仲裁制度との整合性で、UNCITRALの場でも、仮に調停に執行力を付与するとしても、仲裁を手続の面でも効力の面でも超えることはあり得ないということを当然の前提として議論がなされました。なぜならば、言うまでもなく、仲裁は民間型の紛争解決とは言っても、極めて重い手続が置かれておりまして、その重い手続が置かれている仲裁ですら、執行力の付与には極めて慎重な制度がとられております。これよりも手続において慎重性を欠く形での執行力の付与はあり得ない。
 もう一つ、効力の点でも仲裁判断というのは、それだけで単独で執行力はありませんで、その後執行判決なり、執行決定を、国によって違いますが、得なければいけないということですから、その効力もまた仲裁を超えることはできないというのが国際的な共通認識でありました。私自身も、我が国の仲裁法制との関係で手続、効力の両面で整合性を考える必要があると思います。
 2つ目は、民法の契約の一般理論との整合性も考える必要があると思います。と申しますのは、調停における和解の合意というのは、それ自体は民法的に見れば1つの契約にすぎないわけです。典型契約としての和解契約という理解が一般的だと思います。
 そうすると、当事者間合意による契約が直ちに執行力を持つ。あるいは一定の手続を踏めば、既存の執行法制とは異なる形で執行力を持つというのが、現在、存在しないわけでして、その辺でADRだから執行力を与えてもいいのではないかというのはやや議論が短絡過ぎるおそれがあるということだろうと思います。
 3つ目は、執行法制との整合性も考える必要があろうかと思います。その関係で、資料の9ページの図ですが、この図は一番上に「付与のプロセス等」と書いてあることからも明らかなように、一定のプロセスが執行力をもたらすのだという前提で作られております。しかし、本当にそうであるかどうか自体、まだ検証がされていないのだろうと思います。
 見方によっては、我が国の執行法制というのは、公務員がかかわった場合にのみ執行力を付与するという前提で仕組まれているとも見えないわけではございません。言うまでもなく裁判、それから民事調停、裁判上の和解、公正証書、支払督促、すべて裁判官ないしそれに準じるような立場にある公務員がかかわって債務名義が作成されるということでございます。
 先ほど廣田委員は、仲裁は公務員がかかわらない形で執行力が付与されているという例であるということをおっしゃったように思いますが、それも、そう言えるかどうかは疑問の余地がございます。
 まず、仲裁人に関して言うと、確かに仲裁人は民間人ですが、我が国の法制上は極めて公務員に近い扱いがされております。例えば、刑法犯としては公務員以外で唯一収賄罪の対象になるわけですし、あるいは忌避手続、裁判官の忌避手続とは違いますが、忌避事由等にも服するということです。
 更にそうした仲裁人が出した判断で直ちに執行力が付与されずに、文字通り裁判官が関与する執行判決が更に付加されなければならない。
 そうしてみますと、我が国の既存の法制では、公務員が関与しない形で執行力が付与されている例はないような気がいたします。そのことが望ましいかどうかという議論は後にあろうかと思いますが、既存の法制度がそうであるとすれば、それを超えることが望ましいのか、望ましくないのか。あるいは超えるとした場合にどういう理屈で超えるのかという観点も必要かという気がいたします。

○青山座長 他にいかがでしょうか。

○山本委員 私は一般論としては前にお話ししたかと思いますが、現場のADR機関において一定の需要があるとすれば、我々としては、それをなるべく尊重して審議していく必要があるのではないかという見解を持っております。ただ、この執行力の問題については、確かにアンケートにおいては、相当程度の需要があるというのが資料の6ページで御指摘があるところなのですが、私はこの結果についての見方はかなり慎重である必要があるのではないかと思っています。
 ここでの前提として、アンケートでは単純な質問で聞かれているわけだと思うので、先ほど髙木委員からも御指摘がありましたが、回答されている機関も、すべてADRが作った合意が当然に執行力が認められるという前提で、それはほしいと言っておられる可能性があるのではないかと思われるからであります。
 しかし、今までの皆さんの御議論で明らかなように、そのような制度を作ることは私も無理だと思っております。そこには何らかの形で一定の限定がかぶらざるを得ないと思うわけであります。
 事務局がオプションとして整理されているのは的確な整理だろうと思っておりまして、そこで与えられいるアプローチの範囲というのは、おそらくそれほど広くはないということだろうと思います。
 1つは、合意に対する交渉の観点からアプローチするという方法はあろうかと思います。執行証書に近いものとして位置付けるということだろうと思います。つまり、認定したADR機関に対して、その限りで公証人に代替する公証機能を付与して、執行証書類似の債務名義として認めるという考え方であります。
 しかし、これは超えるべきハードルはかなり高いであろうと思います。今まさに三木委員から御指摘があったように、公証人は公務員であるわけです。国の機関であるわけですが、それに代替するものを民間等の機関に認めることができるのかということで、少なくとも何らの認証をかぶせることはこの場合必至になると思います。
 それから、執行証書の要件、手続等を超えられるかという問題もあろうかと思います。執行受諾文言の必要性、あるいは金銭債務に限定するというようなことがかぶってくる可能性は高いという議論です。
 それでもなお需要があるのかどうかということは、このアンケートからは直ちに言えないと思うわけです。
 第2のアプローチとして考えられるのは、内容手続等をチェックする、さっき小林参事官がダブルチェックと言われましたが、そういうアプローチ、この場合、最終的には裁判官によるチェックが前提になると思います。そのオプションの例として、ADR和解は直ちに債務名義とするという例として民事調停の調停調書が挙げられておりますが、民事調停というのは、言うまでもなく、裁判官が加わった調停委員会により調書が作成されるものでありますので、それは裁判官のチェックが入っているわけであります。仲裁判断については、三木委員御指摘のとおり、執行判決という形で裁判所のチェックが入る。結局、ADR機関でできた合意について、裁判所が何らかの執行判決あるいは決定を付与するシステムとなるのだろうと思います。
 このようなシステムを取っている制度として、私の知っている限り、フランスはこのような形でADRが作った一定の合意について、裁判所が決定という形でチェックをかけて、執行力を認めるアプローチをしております。この場合でも、すべてのADR機関にこれを認めることができるかというと、直ちにそうだということは中々言い難いところがあるわけでありまして、フランスなどでも裁判所が付託した、付調停にした場合のADR機関、あるいは公認の調停人が行うADRに限定しているわけでありまして、交渉アプローチの場合に比べればやや広いということはあり得るかもしれませんけれども、すべてに認められるかどうかということはかなり疑わしいと思っています。
 それから、廣田委員が御指摘になった代替方法、もう一度裁判所に行くということになると、即決和解などとどこが違うのかというのが問題になってくるわけで、参事官の方からは、紛争が再燃したと言いますか、実際に債務不履行が起こった場合に裁判所に行けばいいという意味で即決和解に比べれば手続は軽くなるのでよいという御指摘はあるかと思いますが、こういったすべてを前提にして、なおこの執行力を付与するということについてADR機関が希望するかどうかというのは、直ちには言えないのではないかと思っております。
 そういう意味で時効の場合とは、全体の雰囲気でそうだと思いますが、やや違う側面がありまして、より慎重な検討が必要であろうと思っております。
 まだ、私自身は現段階では、この点には定見を有しておりませんけれども、今後更に考えていきたいと思います。以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。執行力の付与につきましては、まだ、御意見を賜っていない方もいらっしゃいますけれども、それは次回にさせていただきたいと思います。時間でございますので、実は私も言いたいもありますけれども、それも次回にさせていただきたいと思います。

〔その他〕
○青山座長 ここで事務的なことを3点ほど、これは当検討会の議論とも関係する動きでございますけれども、紹介させていただきたいと思います。
 まず第1点目は「ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議」の設置についてでございます。事務局から資料5-7として、これについてのペーパーが配布されておりまして、御覧いただきたいと思います。今週の木曜日、13日から発足するということでございます。

○小林参事官 第1回検討会でも御紹介したかと思いますけれども、ADRの拡充・活性化につきまして、当本部がいただいている宿題は2つございまして、1つは共通的な制度基盤の整備ということで、まさに皆さんにこうして御議論いただいていることでございますが、もう一つは、制度整備を待たずに今の実務の中で更に連携を図っていくことにより解決できる問題があるのではないかということで、こちらにつきましては、関係省庁等連絡会議を設置することが、これ自身答申の中でも、あるいは推進計画の中でも決定されておりますので、これを6月13日にスタートするということでございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。私どもの検討会といたしましては、この6月13日にスタートする連絡会議における議論と、この検討会の議論が相互に十分に生かされるように適切に連携を図っていく必要があろうと思っております。連絡会議の動きにつきましては、適切なタイミングで小林参事官の方から御報告いただきたいと思っております。これが第1点目の御報告でございます。
 第2点目でございますが、司法制度改革推進本部事務局の顧問会議のメンバーと、各検討会の座長との懇談会ということがございます。これは今週の19日に顧問会議のメンバーと検討会の座長との間で意見交換を行うために開催されるということになりました。当検討会からは私が出席させていただこうと思っております。
 その際には、同検討会のこれまでの各委員の熱心な御討議があって、鋭意検討が進んでいるという状況を、時間の関係もございますから、ごく簡単に御説明させていただこうと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。その結果につきましては、何らかの形で次回にでも御報告させていただきたいと思います。
 第3点目でございますが、議員立法によりまして、社会保険労務士法の改正の動きがございます。これが私どもの検討会の検討と若干関係しているようでございますので、ちょっと事務局から御説明いただけますでしょうか。

○小林参事官 それでは、御説明をしたいと思います。ペーパーは御用意していませんので恐縮でございますが、社会保険労務士法につきまして、今から申し上げるあっせん代理を可能にするということだけではなくて、社会保険労務士法人制度を創設するとか、あるいは報酬規定を削除するといったような、いわば規制改革的なものも含めて議員立法で法改正をするという動きがございまして、今、与党内の手続が行われているということで、近々国会に提出されるということでございます。
 このうち、当検討会の検討と関連いたしますのは、今申し上げたあっせん代理を行うことを業務として可能にするということでございますが、たまたま今日お配りした資料の5-6で、色々なADR機関の手続を比較しているのですが、この中で左から2つ目の個別労働紛争調整という、これが、これまでの集団的な労使紛争ということではなくて、個別の個人の労使紛争を扱うADR機関であるわけでございまして、最近制度がスタートしたわけでございますが、これまでは社会保険労務士の方は、主宰者の方に入って活躍されていたということでございますが、併せて当事者の代理人としての業務が行えるようにする体制ということで議員立法が提出されるということでございます。
 議員立法でございますので、私ども推進本部事務局としてコメントする立場にはないわけでございますが、大きな流れとして申し上げれば、ADRにおいて隣接法律専門職種の活用を図っていこうという1つの動きではないかと考えております。
 ただ、いずれにしましても、ADRにおける隣接法律専門職種の活用を今後どう図っていくのかということにつきましては、今後ADR検討会におきまして、総合的に検討していきたいと考えております。
 ということで関連の動きとして御紹介させていただきました。

○青山座長 今の3点につきまして、何か御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、最後に次回の日程を確認させていただきたいと思います。次回は7月22日月曜日でございます。

○小林参事官 内容が盛りだくさんなものでございますので、差し支えなければ1時半にさせていただきたいと思いますが、また、きちんと御連絡をさせていただきたいと思います。

○青山座長 内容でございますが、本日の執行力の付与の問題についての議論の続きをまず行いたいと思います。
 2番目といたしまして、審議会の意見書で指摘しております裁判手続の連携という問題についての議論をしたいと思います。
 もう一つ、第1回の検討会においてお諮りしましたように、関係機関からのヒアリングということで、既にいくつかの関係機関から御意見を賜りましたけれども、この次は最高裁判所、法務省、日弁連からのヒアリングも実施させていただきたいと思っております。
 そういたしますと、夏休み前の最後の検討会ということで、次回は大変盛りだくさんでございますので、開始時間を午後1時半ということにさせていただきたいと思います。正式な連絡はいたしますけれども、お含み置きいただきたいと思います。
 本日の検討会は特に御発言がなければこれで終了させていただきたいと思います。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。