関係機関及び事務局からの説明に対して、委員と説明者との間で、次のような質疑応答がなされた(○:委員、●:説明者)
◯ 最高裁に対して、(1)民事調停の件数が増加している理由は何か、(2)民事調停の結果に対する満足度の調査は実施しているか、(3)民事調停の進め方はどうしているか、(4)裁判所OBはどの分野のADRへの活用が考えられるか、(5)ADRが証拠調べ等について裁判所に協力を求めることに対してはどう考えるか。
法務省に対して、(1)法的効果を付与するADRの要件についての具体的な考え方はあるか、(2)民事訴訟の実務では、証拠制限契約はどのように扱われているか。
日弁連に対して、(1)仲裁センターを拡充していく際に、民事調停との競合をどう考えるか、(2)ADRでは法律に従った解決を行わなくてもよいと考えるか、(3)本日の意見をさらに深めた第2段の意見書が出るのか。
● (1)民事調停の増加の背景には、近年の景気の低迷による特定調停事件の激増があると思われる。(2)民事調停に対する満足度については正確な情報は持っていないが、調停に代わる決定に対する異議が出るのが2%に過ぎないことからも推し量られるのではないか。(3)ただ両者の言い分を聞くだけでなく、ある段階で合理的な調停案を提示したり、調停に代わる決定を出すことになる。(4)裁判所OBには書記官から裁判官まで幅広い人材がいるので、ADRの類型に応じた活用方法が考えられる。(5)裁判所がADRに協力することの重要性はあると思われるが、他方、簡易・迅速といったADRの特性となじむのかどうか疑問。
● (1)ADRの要件については現段階で明確なイメージは持っていないが、個々の法的効果ごとに、司法型ADRとの関係を踏まえて検討する必要があると思われる。(2)民事訴訟の場で明示的に証拠制限契約を主張するケースは少ないと思われ、実際には、裁判官の自由心証の中で証拠能力を低く見ることになるのではないか。
● (1)仲裁センターが魅力的になり、弁護士が大いに利用すれば、民事調停に劣らないものとなって、両立することは可能と思われる。(2)ADRでは、法の精神を念頭に置きつつも、必ずしも法律の規定に従った解決をしなければならないものではない。(3)日弁連においても、今後さらに検討を深めていきたい。区切りがつけば再度意見書を提出することもあり得る。
◯ 最高裁に対して、(1)近年の民事調停で、調停に代わる決定が増加したり、審理回数が減少しているのは、特定調停事件の増加と関連があるのではないか。(2)調停委員のうち、専門家の占める割合はどの程度になるのか。
● (1)特定調停事件とそれ以外の民事調停事件を区分した統計はないが、一般的には、特定調停事件については、調停に代わる決定を出したり、数回程度の審理で終結する場合が多いと思われる。(2)専門家の数は、提出資料4にほとんど網羅していると思われる。
◯ 最高裁に対して、事務局作成の資料に提示されている各論点に対する考え方いかん。
● 個人的見解として申し上げれば、(1)論点1については、ニーズに応じて、一定のレベルで引継ぎのルールを明確化することは検討に値すると思われる。(2)論点3については、調停前置をADR前置に置き換えることが可能なのであれば、むしろ明確に制度化した方がよいのではないか。(3)論点4・5については、訴訟による解決を求めている当事者に対して、裁判所がADRへの回付等を指示するのは、責任逃れの感が強く、当事者に誤解を与えることになるとすれば問題である。
◯ 日弁連に対して、法的効果を与えるADRを絞るための要件としては、どのようなものが考えられるか。
● すべてのADRに法的効果を付与することは適当でないという意見では一致しているが、どのような要件を課すかについては、議論百出の状態であり、明確な回答はできない。
● 一つの考え方として、法律家がどの程度関与するのかといった観点から、関与の在り方ごとに区分しつつ、検討しているところである。