〔開会〕
○青山座長 ただいまから始めさせていただきます。今日はADR検討会の第6回会合でございます。議事に入ります前に、今月5日に開催されました司法制度改革推進本部の顧問会議でアピールがとりまとめられ、本部長である小泉総理に提出されましたので、この位置付け等につきまして事務局より説明願いたいと思います。アピールの文章はお手元に配布してございます。では、古口事務局次長からお願いします。
○古口次長 お手元に「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」という題のペーパーと「内閣総理大臣挨拶要旨」をお手元に配布してあります。去る7月5日に開催されました顧問会議におきまして、この「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題するアピールがとりまとめられました。そして司法制度改革推進本部長である小泉内閣総理大臣に提出されたわけです。このアピールは司法制度改革推進本部令第1条第2項に基づき、顧問会議が司法制度改革推進本部長に意見を述べたというものであり、同時に国民に向けたアピールとしての意味も併せ持つものと位置付けられております。
アピールの内容は司法制度改革審議会の意見の趣旨に従い、「21世紀の日本を支える司法の姿」として、「国民にとって身近でわかりやすい司法」、「国民にとって頼もしく、公正で力強い司法」、「国民にとって利用しやすく、速い司法」の3つを掲げた上で、推進すべき具体的な改革の内容を示したものとなっております。特に2年以内に判決がなされるように、制度的基盤の整備や人的基盤の充実を十分に行うとの目標を掲げた点が注目されております。
このアピールを受けて小泉内閣総理大臣は、全国どの町に住む人にも法律サービスを活用できる社会を実現すること、裁判の結果が必ず2年以内に出るようにすることなどを具体的な目標として改革を進める必要があるとし、改革に向けた強い決意を述べられております。本検討会におかれましては、このアピール及び総理大臣の発言の趣旨も十分に踏まえて今後も検討を進めていただければと存じます。よろしくお願いいたします。
〔関係機関からの説明〕
○青山座長 どうもありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。なければ、この趣旨を受けて今後、検討会を進めてまいりたいと思います。
それでは、本日の議題に入ります。お手元に議事次第がございますけれども、本日は関係機関からの説明、裁判手続との連携に関する説明・討議、前回の続きとして執行力の付与に関する討議を用意してございます。10分ほどの休憩を挟みまして前半と後半に分けて進めたいと思います。
まず前半では、関係機関からの説明と裁判手続との連携に関する事務局からの説明をしていただきまして、それら説明に対する質疑を終え、後半では裁判手続との連携及び執行力の付与について議論を行うこととさせていただきたいと思います。終了予定時間は午後5時までとなっていますけれども若干延びる可能性もございます。どうぞ御了承いただければと思います。
それでは議題の第1番目といたしまして、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会からこれまでの検討会における議論を踏まえ、それぞれのお立場からADRの拡充・活性化に関連いたしまして、現状の御説明あるいは御意見等をそれぞれ15分間ぐらいずつ、御発表いただきたいと思います。本日は、最高裁判所事務総局民事局の菅野雅之第二課長、法務省民事局の小野瀬厚参事官、日本弁護士連合会ADRセンターの鈴木誠委員長のお三方に大変お忙しい中お越しいただいております。既に御着席ですので御発言をお願いしたいと思います。
最初は、最高裁判所にお願いしたいと思います。最高裁判所は何と言いましても、日本における司法型ADRの中心機関であります民事調停や家事調停を運営している立場にもあり、本日はその実情等を中心に御説明いただきたいと思っております。
なお、資料として6-1を御提出いただいております。それでは最高裁判所の菅野課長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〔最高裁判所〕
○説明者(最高裁判所事務総局民事局 菅野第二課長)最高裁事務総局民事局第二課長の菅野でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは着席の上御説明をさせていただきます。
ただいま青山座長の御紹介にあずかりましたように、本日はいわゆる司法型ADRの1つである民事調停につきまして、まず現状をできるだけ簡潔に御説明させていただいた上で、これからのADRの発展・充実のために参考になるのではないかと思われる事項につきまして最後にまとめて御紹介をさせていただきたいと思っております。
調停制度はちょうど今年で施行80周年を迎えますが、利用者のニーズを踏まえた制度改革を時宜に応じて行っていくということで、時代の変化にも対応し、この間多くの人々に利用されてきたものと考えております。調停制度の現状について御理解をいただくということは、そうした観点に立っても、ADRの拡充・活性化に向けた議論に有益ではないかと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
資料6-1「ADRの拡充・活性化のために」というレジュメの1枚紙と別紙といたしまして、統計関係を4種類ほど付けさせていただいております。一番最後にリーフレットを3種類ほど付けさせていただいております。説明の中で適宜触れさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず民事調停の現状について御説明をいたしたいと思います。御承知のとおり、調停制度は裁判官のほかに調停を担当するのにふさわしい資質・能力を備えた一般市民の方から選ばれた調停委員を2人以上交えて当事者が話し合いを行い、相互に譲り合って合意することで紛争の実情にかなった円満な解決を実現することを目的としているところでございます。
そこで、配布資料6-1の別紙1を御覧いただければと思います。「民事調停事件の新受事件数」でございますが、表上は平成4年から10年分をまとめさせていただいておりますが、平成4年度以降一貫して増加を続けておりまして、平成13年度も「全裁判所」の欄にございますとおり、36万件を超えておりまして過去最高の新受事件数を更新している状況でございます。この件数は平成4年度の新受事件数と比べますと、約3.5倍という形になっております。また直近のアバウトなデータでございますが、本年度の1月から5月までの新受事件数を見ましても、昨年度との比較でさらに約33%増加しているという状況でございまして、引き続き激しい増加傾向が続いているという状況にございます。
続きまして、別紙2のグラフを御覧いただければと思います。これは「民事調停事件の既済事件数及び平均審理期間」についてでございますが、折れ線グラフを見ていただければ、ここ数年間の平均審理期間は大体2か月半程度でございまして、迅速な解決が図られていることが窺われるのではないかと思っております。
更に別紙3のグラフを見ていただければと思います。こちらは「民事調停事件の既済事由別事件数」ですが、終局事由すなわち事件が終了した理由をそれぞれ掲げているわけでございますが、うち「調停不成立」が1割程度に過ぎないことは、円グラフを見ていただいてもおわかりかと思います。円グラフで言うと、茶色の部分の8.4 %が不成立ということでございます。また、「調停成立」が水色の部分で33.2%でございます。
「調停に代わる決定」、これは調停における話し合いの内容を踏まえて、裁判所が解決案を示すという手続ですが、この「調停に代わる決定」の部分が34.2%という形になっておりますので、これを合わせた7割程度の事件については円満な紛争解決が図られているということが言えようかと思っております。その他、「取下げ」が2割ちょっとございまして、この中でも下のコメ印にありますが、調停手続外で実質的な解決が図られているものも多数含まれているのではないかと思っているところでございます。
以上のことからいたしまして、民事調停は紛争解決のスピードの点でも、また紛争解決の実効性という面におきましても、総じて利用者に満足いただけるような安定した成果を上げさせていただいているのではないかと考えているところでございます。
引き続きまして、民事調停がこのような形で御利用いただいている理由について、こちらで感じておりますところを御紹介させていただきたいと思います。まず最初に、調停制度への信頼ということが挙げられようかと思っております。また、手続が簡易で安価であるということ、そして訴訟のような一刀両断的な判断によってではなくて、話し合いでの円満な解決を図るという点が我が国の国民性に合致していると思われることが挙げられるのではないかと思っております。
それから、詳しくは、後ほど事務局の方から御説明をいただくことになろうかと思いますが、訴訟と民事調停との間に一定の手続面での連携が図られている、つまり調停の結果に基づいて強制執行の申し立てができる、あるいは訴訟事件から調停に付されたけれども調停が成立しなかった場合には調停における争点整理の結果等を利用できることなど、こうした理由も考えられるのではないかと思います。しかし、やはり調停制度が利用者から信頼を得ているということが民事調停が多くの人々に利用される大きな要因ではないかと考えられるところであります。
つまり、先ほども申し上げましたとおり、民事調停手続では一般市民の方々のほか、法律の専門家である裁判官も加わるということで、双方当事者の言い分を単純に調整するというのではなく一定の法律的な評価、あるいは訴訟が提起された場合の判決の見通しといった点もある程度踏まえながら、双方の歩み寄りを促していくということが可能となっているところでございます。
このような法的な評価の面と一般市民の良識、これらのバランスを取りながら事案に即した紛争解決を図っていくことができるという点にこそ、いわば調停の妙味がございまして、この点も調停に対する信頼を支えているものではないかと思っているところでございます。
また、調停委員は社会生活上の豊富な知識・経験や、専門的な知識・経験を有する方から選任されるわけですが、選任後も面接技法、基礎的な法律知識、交渉調整能力等の調停委員に必要な能力の維持・向上を図るために、裁判所では各種研修を実施いたしまして、総合的なスキルアップを図っているところでございます。また、調停委員自身も変化する利用者のニーズに応えられるように、自主的に研究会を行うなどの自己研鑚にも励んでいるところでございます。
更に、近時の社会経済の高度化・複雑化、国民の権利意識の高揚に伴いまして、建築、医療、知的財産権、金融取引などに関する紛争、これらはいずれもその解決に専門的な知見が必要とされるものでございますが、これらの調停事件が増加しているところでございます。これらは、紛争解決のニーズに機動的に対応するために、本検討会の委員でもいらっしゃる平山先生を始めとする専門家団体の諸先生方にも大変御尽力をいただきまして、各方面の専門家の方々に民事調停委員になっていただくように努めているところでございます。
資料の別紙4の棒グラフを御覧いただければと思っておりますが、これは「専門家調停委員数の推移(民事調停)」ということで、本日お越しいただいている隣接法律専門職種の方々などを中心にして、専門家の方々で調停委員となっていただいている数を、平成11年の10月と今年の4月の段階を比較して棒グラフにしているところでございます。例えば、今御紹介いたしました建築分野で見ますと、建築士という項目がございますが、平成11年では約240名程度だったのが、平成14年には約2.2 倍の535 人までになっているところでございます。いずれの専門職種の方々についても、これを見ていただくとおわかりのとおり、この2~3年の間に大幅な割合で調停委員数の増加を図っているところでございます。これら専門家の方々には専門的な知見を要するような調停事件の解決のために大変御活躍いただいているということでございます。
2つ目に、このポイントで御紹介させていただきたいことといたしまして、「アクセスの拡充の試み」を何点か御紹介させていただきたいと思っております。民事調停は民事上の調停であれば広くその対象となるところでございます。消費生活上の紛争や隣人との紛争などのような、身近な市民生活上の紛争から、先ほど来御紹介申し上げているような建築関係の紛争あるいは医事関係の紛争まで含めて、非常には幅広に適切な解決を図ることが可能な手続でございまして、そういう意味でいわば紛争解決のデパートという言い方ができようかと思っております。
そして、この制度を国民に十分活用していただけるように、裁判所といたしましてはアクセスの拡充に努めさせていただいているところでございます。具体的には、全国438 か所の簡易裁判所を中心といたしまして本日お配りした各種リーフレットを備え置きまして、利用者に対して必要な情報を提供するあるいは実際に受付相談を行うということをさせていただいているところでございます。リーフレットは、まだ法律的な表現振りなどが多くて不十分なところもあるかもしれませんが、できるだけイラスト等を活用して、字を極力少なめにしてわかりやすいイメージを強調させていただいているところでございます。
また、各裁判所には定型申立書なども備え置きまして、この定型申立書に必要事項を記入するだけで、簡単に申立てができるような工夫もさせていただいているところですし、こうした調停に関する情報は裁判所のホームページ、あるいは全国34か所で稼働しているのですが、手続案内システムという電話の音声で応答する、あるいは、ファックスによって情報をそのまま取り出せるというシステムも導入しておりますので、これらのシステムによっても必要な情報を入手することができるという形になっているところでございます。この簡易裁判所の民事手続案内サービスにつきましては、このオレンジ色の表紙のリーフレットのところで紹介をさせていただいているところでございます。
以上が基本的に今の民事調停の現状、あるいは利用される理由というところで御紹介をさせていただきたいところでしたが、こうした点も踏まえてADRに今後求められていくものというのは、どういう点があり得るのかということについて、若干触れさせていただきたいと思っております。
まず、ADRが仮に現在必ずしも利用されていないということであれば、その理由の1つとして考えられるのは、ADRの存在が余り知られていないということが挙げられようかと思います。したがって、その存在自体を国民に知っていただくということが非常に重要なことではないかと思っております。
民事調停の場合には、先ほど申し上げましたとおり、取り扱う事件の間口が非常に広いということがございますので、裁判所に申し立てれば多くの場合、紛争解決に向けての有効な話し合いを行うことが可能となるということですが、ADRの場合には各機関ごとに取り扱う事件類型も様々という事情があろうかと思いますので、どのような紛争について、どのADRに申し立てれば解決が図られるかに関する情報が、利用者に十分提供されるということが重要ではないかと考えられます。
そのためには、1つには地方公共団体などがADRの運営にかかわって、一般事件を対象に幅広に相談を受け付けて、更に各論に踏み込んだ解決に向けた情報提供を行う。それとともに簡単なあっせんも行えるという、そういうイメージのADRを拡充していくということも重要なのではないかと考えられます。また、ADRに関する情報提供面での連携の強化につきましては私ども裁判所といたしましても、例えば裁判所の相談窓口に訪れた方に、適宜にADR情報を提供したり、あるいは利用者が自分のニーズに合った紛争解決機関を選択できるように援助を図っていくということをさせていただきたいと考えているところでございます。
また、民事調停と比べまして、一般的なADRの場合には法律家の関与が必ずしも十分ではないということ、すなわち業界団体等が設置したADRに対してはそうした意味合いで、やや信頼性や中立性に疑問が持たれている可能性があること、これらの点などもADRが利用されていない一つの要因かと思われるところでございます。
この点につきましては、ADRの拡充・活性化のために今後解決を図っていかなければいけない問題であると思われますが、一つの方策としてADRの主宰者として裁判所職員のOBを活用していただく、あるいはADRの主宰者に裁判所の調停委員などになっていただくといった、そういう意味での方向性に加えまして、裁判所とADRとの間で協議会や研修会の開催などを行って、ADRの主宰者と裁判所職員との間の知識やノウハウの共有化を図っていく、こういう形でADRとの連携を図るための方策も検討させていただきたいと考えております。
実際、例えば東京簡易裁判所におきましては、国民生活センター、あるいは東京都消費生活総合センターなどと意見交換会などを実施しているところでございますし、裁判官をこれらのADRの内部研修の講師として派遣するということも実施しているところでございまして知識やノウハウなどを共有する場として好評をいただいていると伺っているところでございます。
このような形で、私ども裁判所といたしましても、ADRは裁判手続と並び立つ車の両輪だということでございまして、多様な紛争解決メニューを国民に提供するものとして非常に有益なものと考えておりますので、ADRを充実・発展させるために、手続面のほか情報面等を含めて可能な協力をさせていただきたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○青山座長 どうもありがとうございました。後から議論させていただきます「裁判手続との連携」等に関しても大変有益なお話をいただいたと思っております。
続きまして、今度は法務省からお願いしたいと思います。法務省は司法型ADRの制度的根拠であります民事調停法や仲裁の根拠法であります公示催告仲裁手続法を所管しておられる立場にございます。本日はそのような制度を主管しておられる立場から、法的効果の付与あるいは裁判手続との制度的連携のあり方等に関する議論を深めていく上で、我々に参考になるような話を伺えると期待しております。
それでは、資料6-2に基づきまして法務省の小野瀬厚参事官からお願いいたします。
〔法務省〕
○説明者(法務省民事局 小野瀬参事官)法務省民事局参事官の小野瀬でございます。それでは着席して御説明させていただきます。
まず、法務省とADRの関わりでございますけれども、今、青山座長からお話がありましたとおり、法務省は裁判所において行われますいわゆる司法型ADRの根拠法としての民事調停法、家事審判法、仲裁手続の基本的なルールを定めております「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」を所管しておる立場でございます。その関係でこの検討会につきましても関係機関として参加させていただいております。
現在、改革審の意見書の提言を受けまして、ADR検討会と仲裁検討会におきまして、ADRに関する共通的な制度基盤の整備ですとか、国際商事仲裁を含む仲裁法制に関する議論が行われておりますけれども、法務省といたしましては司法制度、司法型ADRを所管する立場から所要の協力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
ADR検討会におきます検討項目についてでございますけれども、この検討会におきまして現在までに検討されてこられた法制面での論点、例えばADRの利用と時効の中断との関係、ADRによる紛争解決と執行力との関係、訴訟手続との連携の問題、これらの問題は当省が所管いたします民事の基本法でございます民法、民事執行法、あるいは民事訴訟法にかかわる重要な問題だと認識しております。
これらの基本法との整合性につきましては、今後も検討会で御議論がされるものと思っておりますので、法務省といたしましてもこちらでの御議論を見守ってまいりたいと考えいる次第でございまして、改めてここで申し上げるべきことはございませんけれども、これらの法律を所管する立場からいくつか申し述べさせていただければと思っております。
まず、ADRの利用と時効の中断でございますけれども、どのような方法で時効中断効を付与するのかということにつきましては、いくつかのオプションが出され、様々な角度からの御議論がされているところでございます。法務省といたしましては、現段階におきましては、こちらでの御審議の推移を見守ってまいりたいと考えている次第でございます。
ただ、ADRの利用が時効との関係で単なる裁判外の催告以上の効果が与えられるということになりますと、そのような効力を付与する根拠を、民事調停等との関係でどのように考えるのか、その根拠に照らしてどのような要件を課していくのか、更にはその要件が明確なものとなるのか、すなわちその効力の発生の有無は裁判所が判断するという場面でも問題になりますし、債権者が時効中断措置を採る際の行為規範となる場面でも問題になりますので、それらの点について御検討いただければと思っております。更に、仮にADRの進行中に時効の中断効が生じるものといたしますと、訴訟手続におけるものと同様に手続が合理的な期間内に進められることが担保されることが必要かどうかということにつきましても、検討がされるのではないかと思っております。
次に(2)のADRによる紛争解決と執行力との関係でございますけれども、この問題につきましても、現在認められております債務名義との関係で、執行力の付与をどのように根拠付けるのか、またその根拠に照らしてどのような要件を課すのかということが問題になろうかと思います。また、ADRによる判断に執行力を与えるということは、国家による私人に対する強制力の行使を認めるということになりますので、それを基礎付けるものとしての債務名義が、どのような手続によって生み出されるのかということにつきまして、慎重に検討がされるべきではないかと思っております。これまでの債務名義が、いずれも最終的には法的な素養を有します国家公務員のチェックを経た上で作成されているということがございますので、それらのこととの関係につきましても御議論をいただければと思っております。
次に(3)の「ADRと裁判所との連携のあり方について」でございますけれども、この問題につきましては、紛争解決のプロセスといたしまして、裁判制度とADRとをどのように関連付けることが可能なのか、また関連付けるといたしまして、その意義をどのように考えるかが問題になろうかと思います。いくつか論点がございましたけれども、まず調停前置をADR前置で置き換えることができるか、という論点があったかと認識しております。
例えば、現行法の民事調停法第24条の2がございますが、地代・家賃等の増減請求事件、すなわち地代・家賃等の値上げや値下げに関する事件でございますが、それらの事件につきまして、訴えを提起しようとする者はまず調停の申立てをしなければならないとされております。その調停前置主義の理由でございますけれども、継続的な法律関係でございますのでできるだけ合意による解決が望ましいということですとか、値上げの額や値下げの額の幅はそれほど大きいものではございませんので、少額訴訟であるという訴訟経済上の問題、どれぐらいの地代・家賃が相当なのかという点につき専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性があるなど、これらのことが調停前置主義の根拠として挙げられるかと思います。
調停前置をADRの前置に置き換えるられるのかどうかにつきましては、結局のところ、なぜ調停前置主義が採られているのかといったような、その趣旨をどう見るのかによって決まってくるのではないかと思われるところでございます。
例えば、民事調停におきましては、裁判所が同意の相当性までチェックいたしまして、合意内容が相当でないと認めれば調停を成立させないということもできるわけでございます。そういった紛争解決に対して裁判所が極めて能動的に主宰者として関与するということが予定されているということが調停前置の趣旨に含まれるのかどうか、訴えによって自己の権利の実現を図ろうとする者にそのような実質を備えないような民間のADRを経ることを義務付けるということが相当かどうか、ということも問題として検討されるのではないかと思っております。
なお、仮に調停に代わるものではないといたしましても、ADRの結果により話し合いによる解決が困難であるということになりますと、その結果として調停前置の例外、すなわち調停に付すということが相当ではないということで調停前置を経なくても訴えが認められるということもあろうかと思っております。
次に、ADRにおいて提出された資料の訴訟手続における利用のあり方についても御議論がございました。現行法の下では民事調停手続におきます資料は、自動的にその後の訴訟手続の資料となるものではございません。その後の訴訟手続におきまして、例えば当事者がこれを書証として提示するなどいたしまして口頭弁論に上程されたものに限って、訴訟の資料になるということになっております。ADR機関に提出された資料につきましても、そのような現在の取扱いとの関係について考える必要があるのではないかと思っております。
また、当事者がADRの手続中に自分に不利益な事実を認める発言をしたとか、あるいはそういったことを記載した主張書面を出していたとか、あるいはADRにおいて話し合いをすることを前提にして、話し合いのためということを前提にして出した資料などにつきましては、相手方が訴訟手続においてこれを主張や証拠として提出することはできない、あるいは提出すべきではないという問題もあろうかと認識しております。
この点につきましては、現在の民事訴訟法では特段の規制はされておりません。民事訴訟におきましては、証拠能力、どういうものが証拠となり得るのかという問題につきましては原則として制限はございませんで、文書等は原則としてすべて証拠となり得、後は証拠価値の問題としてその採否が最終的に裁判所の自由心証に委ねられているということになります。したがいまして、そういった現在の制度との関係ということにつきましても検討する必要があるのではないかと考えております。
なお、今の問題につきまして、ADRにおいて提出された資料を訴訟に持ち出さないというように、ADRにおける規律によってそのようにされているということがございますと、規律いかんによりましては、それらの手続であるということの前提で、その手続をお互いに利用している以上、当事者間でADRで提出された資料を訴訟手続においては証拠資料として用いないといった証拠制限契約が結ばれていると見て、取り扱いをすることも可能ではないかとも思われるところでございます。
次に、裁判所が事件をADRの手続に付す、今の付調停に関するものでございますけれども、これにつきましては裁判所の職権によって調停に付すことができるという規定が民事調停法第20条1項あるいは家事審判法第19条にございますが、裁判所が訴訟事件を特定のADR機関に付すことができるとする趣旨といたしまして考えられますことは、一つに訴訟手続によらず合意によって解決することが望ましいという場合と、二つにADRに付して争点整理がなされるということが期待できる、といったことがあるのではないかと思っております。
このADRに付すという問題につきましては、それにふさわしいADR機関が果たしてあるのかという問題は別といたしまして、裁判を受ける権利との関係についてもやはり検討しておく必要があるのではないかと思っております。例えば、仮にADRに付すといった形式が、当該ADR機関に対する新たな申立てを要し、当事者の一方又は双方がそのために申立費用を負担しなければいけないということになれば、そういった費用負担を課していいのかどうかという点も問題になると思っております。
なお、先ほどADRに付す趣旨といたしまして、争点整理がなされるということについて申し上げましたけれども、現在の民事調停の利用のあり方といたしまして、専門的な知識・経験を有する民事調停委員による争点整理を意識した付調停が行われているという現状がございます。例えば、建築瑕疵の事件におきましては、かなりの成果を挙げていることは承知しております。
このような専門的な知識・経験を有する者を、訴訟手続において利用するための新たな方策といたしまして、現在民事訴訟法の改正が法制審議会において検討されておりますけれども、その中で専門委員制度の導入が審議されており、その専門委員制度という専門的な知識を有する者の訴訟手続における活用につき中間試案を公表いたしまして意見を求めておるという段階でございます。先ほどのような趣旨で、ADRに付すということにつきましては、他方で、今の民事訴訟法の改正で専門委員制度の導入が図られているということも併せて考慮しながら御議論いただくのがよろしいのかと思っております。
以上、駆け足でADRと裁判所との連携のあり方について、現段階で検討されるべき点ではないかと思われる部分を申し上げました。今後の御審議におきましても、それらの問題点につき御検討されることを法務省としては期待しております。
○青山座長 ありがとうございました。大変参考になるお話を伺ったと思います。
それでは、最後に日本弁護士連合会にお願いしたいと思います。
ADRの拡充・活性化との関係では、弁護士会はADR機関を主宰する立場、代理人としてADRを利用する立場、あるいはコンシリエーター、メディエーターなどという形で、ADRの手続を行う立場などいろいろな幅広い関係をお持ちでございます。
本日は、ADRの拡充・活性化全般にわたりまして、基本的な考え方やこれまでの取組等を御説明いただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、資料は6-3をいただいております。御説明いただくのは、日弁連ADRセンターの鈴木委員長でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
〔日本弁護士連合会〕
○説明者(日本弁護士連合会ADRセンター 鈴木委員長)日弁連の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。着席して御説明させていただきます。
ADRにつきましては、日弁連といたしましても、かなり古くからいろいろと取り組んでおりまして、今、日弁連関係で大変に活性化しておるADRといいますと、日弁連交通事故相談センターがございますけれども、これは長い間にわたりまして大変多くの利用をいただいているところでございます。また、各弁護士会に仲裁センターを設けて活動しておりますけれども、これにつきましてもだいぶ実績が積まれてきだしたというところでございます。
そのようなところ、昨年6月に改革審の方から意見書が出まして、その中でADRの拡充・活性化ということにつきまして積極的な御意見がありましたので、我々日弁連といたしましても、新たにADRセンターを作りまして、そのセンターにおきまして約一年近くにわたって、いろいろとこの問題について検討・研究を重ねておるというところでございます。
本日、資料としてお配りいたしました「ADR(裁判外紛争解決)についての意見」という書面でございますけれども、これは我々のセンターの中でいろいろ意見交換したものをこの度まとめさせていただいたものでございます。現時点における日弁連の考え方というところまではまだいきませんが、検討状況を御報告申し上げるという程度の内容のものでございます。
以下、これに従いまして若干御説明をさせていただきたいと思います。まず我々がADRを考えます場合、弁護士はほとんど毎日の仕事において、広い意味のADRの仕事をこなしておるところが実情でございまして、相談を受ける仕事の中で裁判所に持っていくものはその中の一部でございまして、相当部分につきましては何らかのADR的活動によって紛争の解決に努力をしておるというところでございます。ただ、今日のADRはそういう広い意味よりは、機関のような組織ができ上がっておる民間型ADRといいましょうか、あるいは弁護士会型のADRを前提にしたADRを考えてまいりたいと思います。
まず、ADRがどういう場合に役に立つかというところでございますけれども、いくつかこの意見書で挙げていましたけれども、まず第1に考えられますのが、異なる法社会における紛争という問題でございます。これは国際仲裁とか調停に顕著に表われるわけですけれども、紛争当事者の国や民族が違うあるいは習慣が違うという場合に、1つの法律でこれを規律することが大変難しい場合がございますけれども、それらの場合にADRが活動する場面が出てくるのではなかろうかということが考えられます。
次に「時代の進歩の先端での紛争」ということでございますけれども、例えばインターネットのドメインネームという問題がありましたけれども、これなども問題が起きたときにすぐ法律が追い駆けていくということがなかなかできない場合がありますけれども、そのようなときにADRが機敏に対応することが可能ではなかろうか、弁護士会でも日本知的財産仲裁センターを弁理士会と共同で立ち上げておりまして、現在ここでいろいろとADR活動が行われております。
3番目に「感情がからむ紛争」と書きましたけれども、これは離婚、いじめ、犯罪被害を、勿論家庭裁判所の調停等でも十分機能するわけですけれども、またそれと違った方向でのADRも可能ではなかろうかというところでございます。
4番目の「高度に専門知識が必要な紛争」は、これから可能性が出てくるのではないかと思いますけれども、医療、建築、工学、科学、そういう専門家が入らないとできないような問題についてADRが活動できるのではなかろうかと思います。裁判所の調停、あるいは裁判においても、鑑定制度その他で対応はされておりますけれども、またそれとは違った意味での対応の仕方がここで考えられるのではないかと思います。
5番目の「柔軟な手続や解決内容を必要とする紛争」は、例として、森永ひそミルク事件について取り上げておるわけですけれども、訴訟をやっていても訴訟中に臨機応変に対応しにくいものを、ADRで対応できないだろうかということを考える余地があるのではないかということでございます。
6番目の「公開されたくない紛争」は、特許紛争のような場合ですとか様々な場合があると思われますけれども、訴訟ということになりますと原則公開でございますので、公開されない解決ということもADRの1つの活動場面であると考えられます。
7番目の「強制履行になじまない紛争」は、裁判型のADRでも可能な分野かもしれませんけれども、ADRでもできるであろうと考えております。
8番目の「裁判所になじまない紛争」はここに例として、千葉すず選手のスポーツ仲裁裁判所を挙げてみましたけれども、このような方面での裁判所ではない別の専門家というか関係者が中心になったADRが可能であろうかと考えられます。
9番目の「早期対応」は、ADRの中心的な課題でございまして、早期、簡単、あるいは安くということの中の1つとして、初期段階で紛争が余り発展しないうちに解決をするというところで、ADRの活躍の場面があるのではないかというところでございます。
そのようなADRの可能性のあるものに対して、我々日弁連といたしまして、いろいろとこのセンターで検討を重ねておるところでございますけれども、基本的にはADRの拡充・活性化について大賛成というか、そう持っていかなければならない、意見書にもありますように裁判と並ぶ魅力的な選択肢の1つということが非常に重要なことであろうと我々も思っております。ただ、ADRだけが発達すればいいということを考えているわけではなくて、やはりADRのことをいろいろ検討する前提として、裁判所の容量の拡大とか、裁判所の拡充・活性化というか、裁判所自身が国民のニーズに合った立派な機能を果たしていくということが前提で、先ほど車の両輪というお話もありましたけれども、そういうことがあって初めてADRが活動できるというものではないかと私どもも考えておるわけでございます。
ADRの手続についてでありますけれども、これは公平・中立な第三者が適正な手続の下で公正かつ透明な法的ルールに基づいて解決が図られるということが絶対に必要であろうと思うわけでございます。そういうADR機関に対して、我々弁護士がどのように関与していくべきだろうかということを考えておるわけでございますけれども、結論といたしましては、やはりADR機関に対して積極的に我々弁護士が関与していかなければならないであろう、またいくべきであろうと考えております。それは私ども弁護士はいろいろと職業的に毎日、実質的なADR活動を仕事を通じて行っておるというところでそのような訓練を毎日受けていると言いましょうか、そういうところもありますし、また基本となる法律その他についてもそれなりの能力を備えていると考えられますので、ADR機関に対して弁護士はこれから積極的に関与していくべきである。これは、ADRを扱う担当者としても、また組織の中に入る者としても、両者において関与すべきであると思うわけでございます。
次に、我々が今日までどのようなADRに取り組んできたかということを簡単に申し上げたいと思います。我々が取り組んできましたものにつきましては、先ほどちょっと触れましたけれども、「財団法人日弁連交通事故相談センター」では平成13年度におきまして相談件数が大体3万3,000 件、あっせん件数が2,500 件という数字になっておりまして、かなり多くの方々に御利用いただいているというところでございます。それから、今、弁護士会で最も力を入れておりますのが弁護士会で行っております「あっせん仲裁センター」でございます。これは第二東京弁護士会が一番最初に始めたわけでありますけれども、その後どんどん増えてまいりまして、現在15の単位会と1つの支部で行われておるというところまでいっております。弁護士会は、今、全部で52ばかりありますけれども、これら全部についてというところまではまだいっておりませんけれども、それに向かって、鋭意準備を進めておるというところでございます。小単位会の場合、弁護士の数が非常に少ないということもありまして、直ちに仲裁センターを立ち上げるということは困難なところもありますけれども、これは日弁連、あるいは弁護士の多いところから応援をすることによって立ち上げようという準備を今始めておるところでございます。近い将来には、全県に仲裁センターが設けられるときが必ず来るであろうと思っております。
我々が活動したものといたしましては、近畿弁護士会連合会の「罹災都市臨時示談斡旋仲裁センター」は神戸の震災における場合でございました。それから、「日本知的財産仲裁センター」は、以前「工業所有権仲裁センター」と言っておったのですが、最近名前を変えましてこのような名称でやっておりますけれども、弁理士会と弁護士会が共同いたしまして仲裁センターを立ち上げたというものでございます。「社団法人東京銀行協会」、「社団法人信託協会」等との提携も行っております。更に「指定住宅紛争審査会」、それから「国際仲裁連絡協議会」等と協力関係にございましてADRの活動を行っておるというところでございます。「法律相談センター」は広い意味のADRということですけれども、ここに書きましたように、全国52単位会ですべてこれを扱っておりまして、年間16万件の有料相談、それから22万件の無料相談というように大変件数の多いものでございます。法律相談は、紛争解決手段を選択するスタートというところでございまして、これからますます重要視していかなければならないところではないかと思います。
先ほどちょっと触れましたけれども、昨年の9月に日弁連の中に「ADRセンター」を設けまして、いろいろと情報を集めたり、意見交換したり、これからの方向性を検討したり、あるいはこの検討会の委員に対するバックアップをしたりという活動をいたしております。
更にADRに対する日弁連の今後の取組ということでございますけれども、これはやはり仲裁センターを非常に重要視しておりますので、これに対する連絡協議会をつくっております。ADR手続を担当する弁護士の倫理規定を追加するということで現在検討をしております。その他、仲裁人やあっせん人の候補者名簿の作成などを行っておるわけでございます。更に(4)今後の検討課題を書きましたけれども、ここに書いてありますようなことをこれから検討していきたいと思っているわけでございます。
そこで、最後にADR基本法がこの検討会でこれから議論されるであろうと思いますので、この基本法について我々の検討の状況を御報告させていただきたいと思います。ADR基本法というものをつくるということには、我々としては基本的に賛成でございます。大いにここで御議論していただきまして、立派な法律をつくっていただきたいと考えておるわけでございます。仲裁はまた別に検討されておりますので、まもなく法制化されると思いますけれども、仲裁以外のADRにつきましてもやはり基本となる部分について、これを法律に規定することによって拡充・活性化に大いに役立つであろうと我々は考えております。
先ほど法的効果について法務省から御報告がありましたけれども、我々といたしましても、時効中断の問題、執行の問題とか、あるいは調停前置の問題とか、それらのものについて、やはり一定の規定に従った一定の組織を持ったちゃんとしたADRに対しては個々にいろいろ検討していただいた上で、それらの法的効果を付与するという方向で検討をしていただきたい。ただ、やみくもに一般的に付与するということではなく、やはり個々のADR機関に対して必要の限度においてそのような方向で検討していただきたいと考えるわけでございます。裁判所との連携等の問題もございましたけれども、先ほどの御報告を聞いておりまして、なるほどということを考えたわけでございます。
我々弁護士会といたしましては、意見書にもございますように、裁判と並ぶ魅力的な選択肢の1つとしてのADRという方向でこれからも大いに勉強をし、研究をし、協力をしていきたい、積極的にADRの中に入って我々自身も活動していきたいと考えておりますので、これからもよろしく御指導いただきたいと思います。
以上でございます。
○青山座長 ありがとうございました。ADR全般について、詳細なお話を伺ったと思います。ただいまの説明につきまして御質問等があろうかとは存じますけれども、御説明の中で触れられた「裁判手続との連携」に関し、本日の討議テーマとして事務局からも説明資料が提出されておりますので、まず事務局からの説明を伺った上で一括してお三方に対する質疑、事務局の説明に対する質疑を行いたいと思います。
それでは事務局から「裁判手続との連携」につきまして御説明をお願いいたしたいと思います。資料6-4、6-5でございます。それでは小林参事官お願いいたします。
〔裁判手続との連携について〕
○小林参事官 説明が続きまして恐縮でございますが、できるだけ重複のないように御説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
資料は、今、座長からお話がありましたように、資料6-4、6-5を御用意させていただいておりますが、説明の方は資料6-4の流れに沿って御説明していきたいと思いますけれども、適宜資料6-5を参照いたしますので併せて御覧いただければと思います。
まず「裁判手続との連携」でございますが、この連携という言葉はADRに関します改革審の意見書の中でも大きな柱として取り上げられております。これは、ADRに限らず、社会がだんだん高度化・複雑化しますと、どうしても縦割りの世界での対応というのは限界が出てくるわけでございまして、そういう中で連携という言葉がある意味では魅力的なマジックワードとして使われるわけでございますが、その内容をきちんと整理をしないと、かけ声倒れで終わってしまうのではないかということでございまして、その辺りから説明に入りたいと思います。
資料6-4の2ページをお開けいただきたいと思います。具体的にADRと裁判との関係で、連携が考えられる局面としてどのようなものがあるのか、ということを整理したものがこの図でございます。一番上にございます「手続面の連携」が主としてこれから御議論をいただこうという内容でございます。情報の引継ぎの問題でありますとか、手続の連携に関する一般なルールがないという状況を踏まえまして、これらについて制度的整備を図れないかということでございます。その下に枠で囲ってございます2点がございまして、「情報提供面の連携」、「担い手確保面での連携」という2点が掲げてございます。
具体的な促進策として考えられるようなものを、一番右側にいくつか例示をさせていただいておりますし、先ほど最高裁判所からの御説明の中でいくつか御紹介があった部分と関連してくるわけでございますが、具体的な情報提供面の連携、あるいは担い手確保面の連携が考えられるわけでございます。こちらの方につきましては、法制的な整備と申しますよりは、むしろ実務的な連携ということでございますので、この欄の上にございますように、先般発足いたしました「ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議」などの中で、具体的な議論を進めてまいりたいと考えております。本年度中にアクションプランの作成を考えておりますが、適宜本検討会にも御報告をさせていただいて御意見を賜りたいと思っております。
続きまして、3ページから5ページで、現在におきます裁判とADR関係の制度的な面での連携についての整理をさせていただいております。3ページにつきましては、司法型ADR、先ほど最高裁の方から御説明がありました民事調停との制度的な連携についての整理をさせていただいております。
まず、裁判とADRの連携といってもいくつかの局面があろうかと思いますので、3ページ一番左側にございますが、3つ整理の仕方をいたしております。1つ目は訴訟におけるADRの活用、2つ目がADRにおける裁判所の活用、3つ目が裁判とADRとの役割分担という3つの局面で整理をさせていただいています。
最初の、訴訟におけるADRの活用、この場合は民事調停でございますが、これにつきましては、調停の過程で得られた情報の引継ぎということに努力をされているということでございます。これは、資料6-5の1ページを御覧いただきたいと思いますが、1ページの下の「実務等」で、石栗判事の『ジュリスト』の論文を掲載させていただいております。実務におきましては、調停事案につきまして、調停手続における争点整理の結果や、調停委員会の見解、これらのものを訴訟手続で活用するために、その内容を当事者に明らかにしていく、その当事者から訴訟の段階でそれらを活用していただくということで、それらの情報が円滑に引き継がれるように様々な工夫がなされているということでございます。
2番目が、民事調停におけます裁判所の活用ということでございますが、これは調停委員会は裁判所に事実調査、証拠調べの嘱託が可能ということでございます。これにつきましては、資料6-5の5ページをお開けいただきたいのですけれども、5ページの一番上に(注)とありますが、そこでは制度が採られている理由についての説明がございます。特に調停委員会に何か不都合があるということではなくて、むしろ遠くにいる当事者の方、あるいは争っている物件が遠隔地にある場合、その所在地などを管轄の地方裁判所に事実調査の実施を委嘱してその結果を報告してもらうという趣旨と承知いたしております。
3番目に、訴訟と民事調停との役割分担の問題でございますが、最初に民事調停前置制度がございます。これは先ほど法務省の方から御説明がございましたので重複は避けますが、この制度が置かれている趣旨につきましては、資料6-5の8ページに先ほどの法務省と同じような説明が記載してございますけれども、まず、地代・借賃増減請求事件につきましては訴訟に先立って民事調停手続を経る必要があるということでございます。2番目が訴訟手続の中止でございますが、これは調停申立事件について、併せて訴訟が提起された場合につきましては、裁判所は調停手続が終了するまで訴訟手続の中止が可能ということでございます。ただ、これは裁判所の自由裁量ということになっております。この趣旨につきましては、参考資料の9ページをお開けいただきたいと思いますが、(注1)のところでございますけれども、中止することができるようにしたのは、民事に関する紛争をまず調停によって解決させるようにするのが望ましいという調停法の立法趣旨によるものであるということであります。その次が職権付調停制度、これは裁判が提起されたものにつきまして、適当なものについては職権で事件を調停に付することが可能だということでございますが、これにつきましては参考資料の6ページをお開けいただいただきたいと思いますけれども、特に実務におきましては先ほど法務省から御紹介があったと思いますけれども、専門的な知見を要するような事件につきましては、むしろ紛争解決そのものというよりも争点整理などをねらって、事件を専門家である調停委員の意見が聞けるような調停に付するという実務が工夫されているということでございます。
こういったことで、非常に御苦労されているわけですが、これが制度の本来の趣旨にそもそも合致するかについては若干御異論もあると伺っておりまして、これも資料6-4の6ページにそういった御意見も御紹介させていただいております。以上が、民事調停と裁判との連携の現状でございます。
続きまして、資料6-4の4ページでございますが、4、5ページとそれぞれ行政型ADR、民間型ADRについて同じように例を示してございます。まず、4ページでございますが、これは同じような順序で整理をさせていただいております。まず最初に「ADRの過程で得られた情報の引継ぎ」についての例は何かということでございますが、これはほとんど唯一の例なのですけれども、「公正取引委員会の審判手続に関する例」ということで、公取委が行った審決に対する取消訴訟におきましては、裁判所は公取委に事件記録を求める必要があるということで、したがってこれはいわば書類がそのまま一括して裁判所に送られるというケースでございます。ただ、これは非常に特殊なケースでございまして、この下の注書きにございますように、審決取消訴訟におきましては、公取委の認定した事実がそれを立証する実質的な証拠がある場合には、裁判所を拘束するという実質的証拠法則が適用されることになっておりまして、この関係で関連資料については一括送付を求める必要があるということでございます。
2番目に「裁判所への証拠調べ等の嘱託」でございますが、これもほぼ唯一の例だと思いますが、特許庁の審判手続に関する例でございまして、審判手続において裁判所に証拠調べ、証拠保全の嘱託が可能ということでございます。
次に「裁判とADRとの役割分担」につきましては、先ほどの「訴訟と民事調停との役割分担」の1つにございました「訴訟手続の中止」につきましては、これは公害紛争処理に関する裁定の例がございます。公害紛争処理につきまして御記憶かと思いますが、時効中断についても特則が置かれており、そういう意味でいえば特別の制度であると言えると思いますが、訴訟手続についても特則が置かれておりまして、公害に係る被害に関する紛争について、責任裁定・原因裁定の申請があった事件につき訴訟が継続するときは裁判所は裁定があるまで訴訟手続の中止が可能であるということでございます。
資料6-5の10ページを御覧いただきますとその規定がございますけれども、他方で訴訟手続が中止されないときには、逆に裁定委員会は責任裁定の手続を中止することができるということになっておりまして、これは裏腹の関係にあるということでございます。
ADRに対する証拠調べ等の嘱託、これは裁判所の方からのADRに対する「証拠調べ等の嘱託」でございますけれども、これも例が2つございまして、1つは公害紛争処理に関する原因裁定の例でございます。これは資料6-4の4ページの右側の欄にございますように、「裁判所は、必要があると認めるときは、公害等調整委員会に対し、その意見をきいた上、原因裁定の嘱託が可能」であるということでございます。また、特許庁につきましても特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託をすることが可能ということになっております。ただ、これらはいずれもその結果につきましては、裁判所を拘束するものではないということになっております。以上が行政型ADRでございます。
資料6-4の5ページにまいりまして、民間型ADRの例でございますが、まず「訴訟におけるADRの活用」として「ADRの過程で得られた情報の引継ぎ」の問題でございます。これは先ほどの公取委のように情報の引継ぎが制度化されているものはございませんで、むしろ後ほどもう少し詳しく御説明しますが、情報の引継ぎを制限する考え方の例として、我が国ではございませんけれども、UNCITRALの調停モデル法のケースを挙げてございます。この資料にございますように、当事者間に合意がある場合を除き、合意があればまた別なのですけれども、当事者や調停人等は、①、②、③にあるような自白でありますとか、専ら調停手続のために準備された書面といったものについて、訴訟への証拠としての提出等が禁止されているということでございます。この趣旨につきましては、ADRであればこそ提出されたものについて、安易に訴訟で利用されるということになると、かえってADRの利用を阻害することになるという考え方があると考えられますけれども、こういった調停モデル法の例がございます。
調停モデル法につきましてはこの検討会での議論でも何回か御紹介されたと記憶しておりますが、あくまでもモデル法でございまして、各国の立場としましてはあくまでも立法に当たって十分考慮すべきものということでございます。また、これはもともと国際商事調停に関するものでございますので、当然国内でありますとか、あるいは商事以外のものをもともと想定したものではないということでございます。ただ、仲裁の例でもおわかりいただきますように、モデル法とはいえモデル法が各国において採用され、また現実に商慣習の上でそういうことが適用されるということになってまいりますと、これも国内法を考えていく上には十分参考にしていかなければいけないという性格のものと理解しております。この調停モデル法で今のような考え方が示されているということでございます。
2番目の「ADRにおける裁判所の活用」ということでございますが、これは仲裁手続につきましては、中ほどに「裁判所への証拠調べ等の嘱託」とございますように、裁判所に対して証拠調べ等の協力を求めることが可能ということになっております。この趣旨につきましては、資料6-5の4ページの中の(注)として、「仲裁判断のために必要な行為をなし得ないとすれば、私的紛争の適正な解決という目的を達することができないことになるので、裁判所の協力を得るための途を開いておく必要があるため、規定が置かれたもの」という記載がございます。
3番目の「裁判とADRとの役割分担」につきましては、これも現行において明確な規定はございませんけれども、まず「調停前置制度におけるADRの活用」については、岡山の仲裁センターの方からヒアリングをした際に御紹介があったものでございますけれども、弁護士会における仲裁センターにおける手続の実務例としましては、調停前置事件について弁護士会の仲裁センターで実質的な話し合いがなされていれば、改めて民事調停を経なくても訴訟手続ができるという、法解釈と言いますか運用がされている例があるということでございました。これは資料6-5の9ページの中ほどに御紹介してございます。
「妨訴抗弁性」とありますけれども、これは仲裁手続の中で仲裁合意について理由があるときについては、裁判所は訴えを却下する必要があるということであります。
その下は括弧書きにして「ADRに対する証拠調べ等の嘱託」としてございますが、これは別にADRのみを想定したということではございませんけれども、裁判所は必要がある場合には官公署のほか相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することができることとされていることで、これは現行法でも一般的に適用されているところでございます。
以上が、現行の制度についての御紹介でございます。それでは今後これらの連携について、更に発展させていくことについてのニーズでございますけれども、資料6-4の6ページから10ページまで、例によってアンケート調査の結果をまとめさせていただいております。時間の関係もございますので、個別の項目ごとの御紹介は省略させていただきます。結論から申しますと両論があるということでございます。積極的に進めるべきだという方の意見について言えば、当事者を含めて紛争解決の便宜が図られるということが賛成側の意見としては非常に強いということでございます。消極的な意見としては、2つございます。1つは、ADRと裁判の性格はそもそも異なるのではないかということでございます。これは、やや木に竹を接ぐという印象が否めないのではないか、言葉は悪いですけれどもADR機関側から言うと裁判所の下請け的な役割というのはいかがか、もう少しスマートに言えば、ADRと裁判とは性格が異なるのではないかということでございます。また、消極的な意見の2番目として、現行のADRがそれだけの能力や体制を備えているかどうか、逆に言うと、裁判との関係で一定の役目を果たさなければならないのだとすると、相当の資質向上や体制の整備を図らなければならないが、ADR機関にとってかなりの負担になるのではないかということでございました。細かい各論につきましては資料を御参照いただきたいと思います。
資料6-4の11ページにまいりますけれども、それではADRの中でも特に仲裁についてはある程度ルールが現在でもございますし、それから今検討中の仲裁法でも整備がされるということが予定されております。そこで、特に調整型のADRと裁判所の手続面での連携についてこれからどういったことが考えられるのかという御説明に入りたいと思います。11ページは先ほどからの現状についての説明と同じように、3つの側面から見て整理をしております。
まず、「訴訟におけるADRの活用」でございますが、これは[論点1-1]と[論点1-2]に分けてございますように、大きく2つの流れあるいは背景がございます。[論点1-1]で述べておりますは、せっかくADRで議論したのだから、たまたまADRで合意に至らなかった場合でもその成果についてはできるだけ裁判の場において活用したいという考え方で、ADRの過程で得られた情報・合意結果の裁判手続への積極的な引継ぎを制度化できないかということでございます。もう一つは、[論点1-2]で述べておりますのは、先ほどのUNCITRALの例を御説明した際に少し申し上げましたけれども、逆にADRでいろいろ出された情報については、安易に裁判で持ち出されないようにしてほしい、そうしないとむしろADRの利用が阻害されるという議論でございます。これは、主宰者あるいは当事者の守秘義務とも関連する議論で、どちらかと言うと引継ぎを制限するよう制度化できないかという議論でございます。
ある意味では二つの相反する議論の方向があり若干複雑になりますので、次の12ページをお開きいただければと思います。左側が積極的な情報の引継ぎの制度化に関するものでございます。真ん中に<ルール化のイメージ>がございます。この考え方に立った場合には、一定のADRについて訴えが提起された場合に、ADRが裁判所へ事件記録を送付するなど、先ほど公取委の例を御紹介しましたが、そういうように事件記録を送付するなど、ADRでの交渉の成果を引き継ぐこととし、議論としては更に、ADRで認定された事実について裁判所を拘束するという、これもまさに観念的な議論ではありますけれども、そういった意見もないわけではございません。
これに対しまして、そういったルールは必要ないのではないかという考え方がその下でございます。これは引継ぎという面については、現在でも当事者から申し出によって十分事件記録の提出は可能でありますし、またそれで十分ではないかという考え方でございます。一番最初に御紹介しました、民事調停における情報の引継ぎの工夫も、いわばこういう当事者にいかに質のよいコンパクトな情報を提供するか、それが当事者を通じて訴訟の方にどう引き継がれていくのかということについて、いろいろ民事調停としても工夫をされているということでございますので、基本は当事者からの証拠提出で十分ではないかという考え方がございます。
右側の方が、証拠制限をすべきではないかということに関するものでございまして、中ほどにルール化のイメージがございますが、一定の情報についてはあらかじめ当事者間で合意のある場合のみ訴訟での利用を可能とする、原則は禁止だということでございます。このイメージを条文化したものの1つが、先ほどのUNCITRALの条文ということになります。
これについても当然反対論があるわけでございまして、この下にございますように、あらかじめ当事者間で証拠制限契約を結んでいない限り、訴訟での利用を可能とすることで十分ではないか、原則は自由でいいのではないか。それで必要があれば、これも先ほど法務省から御紹介いただいたと思いますけれども、証拠制限契約を結ぶということで、必要があれば提出を制限することは可能であるわけなので、そういう制度を活用した方がいいのではないかというのが反対サイドの意見として書いているものでございます。
戻っていただききまして、11ページでございますが、右側に留意点がございますけれども、今申し上げようなものが問題点としてあるわけでございますけれども、仮に引継ぎの制限をするということになりますと、これは更に検討すべき事項としましては、どういった種類の情報の引継ぎを制限するのか、それから引継ぎの制限の方法、そもそも主張すること自体を禁止するのか、あるいは主張を許しても証拠として採用することを禁止するのか、そういった点。あるいは、すべてのADRにそういった措置を講ずるのか、ある一定のADRに対してその措置を講ずるのかという、時効や執行力の付与と同じように、対象となるADRを絞り込むべきかという議論も検討する必要があるということになるわけでございまして、仮に制限をするということになりますと、更にいろいろ検討を行う必要があるわけでございます。
2番目のADRにおける裁判所の活用ということにつきましては、ADRでの解決促進のため事実調査、証拠調べについて裁判所の協力を求められないかということでございますけれども、これにつきましては、勿論取り敢えず裁判所の事情を置けば、便利と言えば便利という側面もありますが、他方調整型のADRにそういう裁判的な手続を持ち込むことに対する警戒感、消極的な考え方というのは、先ほどアンケートのところで申し上げたように、ADR機関側も持っている面もあるということが言えるかと思います。
3番目に、ADRと裁判・民事調停との役割分担でございますが、まず最初は調停前置の関係でございまして、これは法務省の御説明の中で御紹介があったかと思いますけれども、調停前置事件においてADRを経ていれば、民事調停を不要とできないかどうか、これは運用としては一部のところでは行われているというのが、先ほどのヒアリング結果の御紹介でございましたけれども、これをきちんと制度化できないかというものでございます。これにつきましては、調停前置制度の趣旨をどう考えるのか、あるいはしっかり事前に話し合いをするというのは、先ほどの運用でも条件になっていたわけでございますけれども、そうした点について悪用は防止できるかどうかという問題も、当然議論になってくるわけでございますし、それから民事調停の場合は、執行力があるわけでございますけれども、ADRの場合に仮に執行力が与えられていなかった場合について言うと、そういう執行力が与えられていないものについて、前置対象にするのが適当かどうかという御議論もあり得るかと思います。
次は、訴訟手続と両方提起された場合の調整の問題でございまして、現在では両手続を調整する一般的ルールはないわけでございますけれども、ADR継続中の訴訟手続停止を制度化する必要はないかどうかということでございます。ただ、これにつきましては、当事者にADRの応諾義務が課せられれば別でございますけれども、基本的に当事者がもしADRを不要と思えば、手続から離脱できるということだとすると、これをあえて制度化することがそれほど実益があるのかどうか。それから、やや観念的な議論かもしれませんが、こういうADRに継続している場合には訴訟手続の停止ということになりますと、それは裁判を受ける権利との関係で問題がないかどうかということも議論になるのではないかと思っております。
3番目が、付ADRの問題でございます。これも2つございまして、1つは事件の処理そのものをADRに委ねるという論点5です。これは、通常想定されている付ADRということでございます。
もう一つは、先ほどの民事調停の実務の運用として行われている、争点整理的なものを中心にADRに委ねるという考え方、これが論点6でございます。
これらにつきましては、これも法務省の方からあったと思いますけれども、裁判を受ける権利との関係をどう考えていくのか、特に先ほどの調停前置と同じように、執行力が仮に与えられないということになりますと、そういう執行力が与えられない解決を当事者に受け入れさせることが適当かどうかという問題。
あるいは、3番目の○でございますが、これも法務省から御紹介があったと思いますけれども、コストの追加負担をどう考えるか、これを国が持てばまた別でしょうけれども、当事者負担ということになりますと、そういったものを当事者に強制できるかどうか、強制できないとすれば当事者の同意が必要になるのではないかという議論が出てこようかと思います。
2番目のところにございますように、そういった訴訟手続の一部を担わせることがADRのあり方になじむかどうか、これもアンケート調査のところで触れましたけれども、ADRのそもそも論との関係で問題にならないかということもあります。
最後でございますけれども、これはADRできちんとした解決なり争点整理がなされるということが前提になるわけですけれども、そういったADRの質の面での担保をどうやって図るかということが、この場合でも問題になるわけであります。
以上で、一応資料の説明は終了いたしますけれども、若干補足させていただきたいのは、ADRと訴訟との連携というのは、制度的にはいろいろ考えられているのですが、なかなか実態的には本当にうまくいくのだろうかという御疑問が当然あると思いますし、それはそれで御議論いただきたいということではありますけれども、1つはこういういろいろな可能性を模索しているのは、第一回の検討会の御説明の際にも申し上げたかと思うのですけれども、こういう裁判手続との連携を図るということが、少なくともほかの国においては、ADRの政策的助成の1つの手段として活用されている、調停前置の対象としたり、あるいは付ADRの制度を設けるということが、特にまだADRが十分成長してない場合におけるADR助成の1つとして採用されています。だから、我が国もということではなくて、そういうふうにストレートにはつながらないと思いますが、それはそれとして一つ考えなければいけないことではないかということがございます。
それからもう一つ、説明は省略したのですが、1ページをお開けいただきたいのですが、ここで「ADR拡充・活性化のための連携(全体イメージ)」をお示ししてございます。連携と言っても、いろいろな局面があるというのは、これを御覧いただければわかるかと思いますけれども、1つはアクセス情報提供面、あるいは担い手確保面での連携、これはそれぞれの間でやっていくことが必要であるし、求められているわけですけれども、手続面の連携については、現行では裁判と民事家事調停の間は非常に緊密な手続面での連携がなされているということでございまして、右側の裁判と民間行政型ADRの手続面の連携については、先ほど来、若干御紹介しましたけれども、非常に乏しいという状況でございます。そして、この部分を拡充していくということについて言うと、これもやや微妙な問題になるのですけれども、民事調停、家事調停といわば一種競争的な関係にもなり得るということでございますので、いずれ国民の立場から見てどういう形が望ましいかという問題ではありますけれども、これは勿論裁判とADR自身もある種競争的な、車の両輪とは言え、一種競争的な関係になり得るケースもあるわけですけれども、手続面の連携を考えていくということになると、民事調停、家事調停との関係も考える必要があるということではないかと思います。若干補足させていただきました。
以上でございます。
[質疑]
○青山座長 ありがとうございました。それでは、先ほどの三機関からの御説明と、ただいまの事務局からの資料の御説明を併せまして、まず質疑がありましたらお願いしたいといふうに思います。御意見は後で伺います。
原委員、どうぞ。
○原委員 それぞれに御質問があります。まず、最高裁ですけれども、民事調停は大変件数が増えています。平成4年から3.5 倍。この件数の増加の原因というか、どういうものが増えてきているのかということ。
実際には成立しているのが3分の1、あと裁判の方に3分の1ということなのですが、ここでの結果の満足度みたいなことは計られたことがあるのかどうかということ。
3点目は、どういう調停のやり方になっているか、ある程度の案を提示して両者を歩み寄らせるような形なのか、それとも両者の話し合いを聞いてというような形なのかというのは、実はいろいろ私ども消費者側の方に、調停に持っていくと説得をされるという意見をよく聞いておりまして、確かに裁判官とか社会的な責任がある方たちというのが、調停員になればそういうこともあるかなと思うので、どういう調停になっているのかをもう少しお伺いしたいと思います。
それから、法律家の関与が必要ということで、裁判官のOBの活用をとおっしゃられたのですが、これはADR全般について、そのように法曹関係者がかかわるということとお考えなのかどうかということをお聞きしたいと思います。
事務局の説明の中で11ページの論点2のところで、事実調査・証拠調べについての裁判所の協力を求められないかという話が出ているのですが、このことについても御意見をいただければと思います。
法務省の方にお願いしたいのですが、時効中断も、執行力の付与も、ADR前置についても、それぞれ要件の明確化が必要だとのお話をなさったのですが、この場合の要件の明確化とか、どういう要件を置くのかというのは、具体的に考えていらっしゃるものがあるのかどうかということです。
それから、事務局の説明の中の12ページに証拠制限契約の話が出てくるのですが、お話の中にも証拠制限契約で訴訟に上げないことの規律もあると御紹介もあったのですが、実際にこれがあるのかどうか、どのように使われているのか、具体例があったら教えていただきたいと思います。
日弁連に対してなのですが、調停とは違った形での紛争解決が必要だとおっしゃられて、ただ6ページでは法の支配の担い手として、弁護士は頑張ると書かれていて、今、仲裁センターに非常に力を注いでいるというお話があったのですが、金融トラブル等連絡調整協議会で、金融分野では弁護士会の仲裁センターの方に紛争解決を持っていく流れが出てきていて、弁護士会もそれでやりたいということであれば、かなり仲裁センターというのが広がってくるのかなと。こういう金融のような専門的な分野もそうですし、それから資料の中に自治体との連携の話が出てきて、実際に上がってくるような案件もとなると、かなりのところこういう仲裁センターを広げていきたいとなっているのか、そういったように広げていかれると、先ほど事務局の1ページに戻っての説明にあったとおり、民事調停との競合というところが出てくると思うのですが、この辺りについてどのようにお考えになっていらっしゃるのかということをお聞きしたい。
それに関連してなのですけれども、仲裁センター、それから民間型ADRに弁護士がかかわっていっても、実際には裁判所とか判例とは離れた形の民間型ADRの自由な設計というのも出てくると思うのですが、その場合離れてもいいとお考えなのか、それとも法の支配の担い手なのだから、近いところで判断をしていきたいとお考えになっているのかをお聞きしたいと思います。
最後に、提示していただいた資料の13ページ以降、今回は多分第1弾だと思っておりまして、また第2弾として執行力付与とか、時効中断効とか、裁判所との連携とか、これは「研究」という言葉になっているのですが、このペーパーは7月22日付けですけれども、また第2弾が出ると考えておいてよろしいのかどうかということ。
ちょっと盛りだくさんですみませんが、よろしくお願いします。
○青山座長 では、原委員から最高裁、法務省、日弁連、それぞれにいくつも質問が出ておりますので、最高裁、法務省、日弁連の順でお答えいただけますでしょうか。
○説明者(最高裁判所 菅野課長) 順に御説明させていただきたいと思いますが、まず第1に件数が非常に増加しているということの背景、原因等についてというお尋ねでございましたが、最大の事件増加の原因は、昨今の景気の低迷が背景になって、いわゆる特定調停事件という多重債務者が負っている債務について債権者との間で支払い方法等を調整するというタイプの調停事件が激増しているということが言えようかと思います。かねてからこのタイプの事件というのは、一定割合で存在はしていたのですけれども、特にバブルがはじけて景気が悪くなってから、破産事件なども激増しているわけなのですけれども、それと同じような形で調停の分野にもこの種の事件が多数入ってきている。かつ平成12年にこの種の事件をできるだけ幅広に解決する、多重債務者の方の経済的再生を図るという目的をより実効性を持たせるための立法として、特定調停法が施行されたということもございまして、これも背景となってこの種事件が非常に増えているということが言えようかと思います。
結果についての満足度等を確認調査をしているのかという点についてでございますが、いくつかの裁判所でそういう試みを始めているという話は聞いたことがあるのですけれども、今、私も正確にどこでどういうことを行っているかという情報を持ち合わせておりません。方向性としては、御指摘のあったように、今後できるだけユーザーの方々の満足度をいかに図っていくかという方向性で裁判所も検討していく必要があるのではないかと、私個人的に思っておりますし、似たような話といたしまして、簡易裁判所では少額訴訟という30万円以下の金銭請求について、できるだけ1回の審理で紛争を解決しようという試みをしているのですが、この類型のものについては数年前にいくつかの大きな裁判所で利用者の方々に実際に手続を利用して、どんな印象を持たれたか、満足度はどの程度だったかというアンケート調査をさせていただいたという実績がございます。
今の満足度の問題と、次に御質問いただいた、実際どういう調停のやり方をしているのかという2つに関連する事項として紹介させていただきますが、先ほどお配りをしている資料の中でも、資料の別紙3「民事調停事件の既済事由別事件数」という中で、成立ともう一つ調停に代わる決定という部分について御紹介をさせていただきました。この調停に代わる決定というのが、全体の中で34%ぐらい割合を占めているわけですけれども、この手続というのは両当事者からいろいろとお話を伺って、裁判所の方として調停活動を尽くしたけれども、当事者の方としてはなかなか最後の決断ができない。その場合に裁判所の方が積極的に決定という形で解決案を提示して、両当事者から異議が出れば、その決定の効力はすべて失われる。異議が出なければ、調停が成立したのと同じようにみなされるという位置付けの手続になっているわけでございまして、こういうものが3割以上ぐらいあるわけですけれども、この手続について実際に裁判所の方で決定案を出したところ、異議がどの程度の割合で出てきているかというと、ここ数年大体2%程度ということでございますので、逆に言うと98%ぐらいの方は、少なくともこの調停に代わる決定については、特に異議を出さずに、そのまま決定を受け入れてくださっているということが言えようかと思っております。
今のは結果の満足度ということと直結するお話ではありませんけれども、参考になるという意味で御紹介させていただきましたが、どういう調停のやり方かという点につきましても、これはなかなか御指摘のとおり難しい部分があろうかと思います。まずは両当事者の言い分を率直に伺うということが、私どもとしても調停活動の第1の部分だろうと思っております。
ただ、両当事者は通常は意見が対立しているので、裁判所に申し立てをしてくるという実情にございます。ですから、ただ両当事者の言い分を聞いているだけで、具体的な解決案が生まれてくるかというと、なかなか難しい部分もあろうかと思いますので、そういう意味で調停委員会の方でこれを整理するとこのようになるのではないか、あるいは相手方の言い分ではこういう部分があるから、それを反映させると全体としてこういう成り立ちになるのではないかという、先ほどのお言葉によると説得という部分も出てくるところがあるのではないかと思っております。
そういう意味で、いろいろやり取りを進めた上で、調停委員会の方とすると合理的な調停案をある段階で提示させていただく、あるいはそれでもなかなかすり合わせが困難が場合には、先ほど申し上げた調停に代わる決定という手続に進んでいく形になっていくのではないかと思っておりますが、確かにこの部分はそれぞれの事件の個性、あるいは事件の類型などによっても、いろいろな違いはあるのかなと思っております。
4番目に御指摘いただいた、法律専門家の活用、特に裁判所関係者の活用という部分について、ADR全般について考えているのかという御指摘でしたけれども、これもまさにそれぞれのADRの特性に応じてという部分があろうかと思います。裁判所関係者と十把一からげで申し上げても、受付手続なんかをやっている裁判所書記官から裁判官まで、いろいろなものもございますので、そこはやはりそれぞれの類型やADRの性格に応じた活用をしていただくやり方があろうかと思っております。
最後に、証拠調べ等への裁判所の協力について、どのように考えているかということにつきましては、基本的には先ほど事務局の小林参事官から御指摘いただいたようなポイントに尽きるのかなという気がいたしております。ADRの活性化という観点からすれば、裁判所が証拠調べ等で協力できるところを協力させていただくというルートをつくっていくことも重要性があるのかなと思っておりますが、他方ADRの本来的な特質というのが簡易・迅速という部分にあるとすれば、そこで裁判所を経由して事実を確定させて証拠調べをするという概念が、どこまでうまくぴったりなじんでいくのかというところを慎重に御検討いただく必要があるのではないかと感じている次第でございます。
以上でございます。
○青山座長 では、法務省から。
○説明者(法務省 小野瀬参事官) まず第1点の要件の明確化についてでございますけれども、現段階におきまして法務省の方で具体的な要件のイメージを持っているわけではございません。先ほど申し上げましたとおり、時効ですとか、調停前置の問題ですとか、それぞれの制度ごとに司法型ADRとの関係でどう根拠づけるのかといった点を踏まえて要件を検討されるべきではないかということで、こちらでの御議論をも踏まえまして、私どもとしても検討してまいりたいと思っている次第でございます。
2番目の証拠制限契約でございますが、裁判所の実務にそれほど詳しくはないのですが、少なくとも明示的に証拠制限契約があるということを主張して、証拠能力を争うというケースは少ないのではないかと思っております。実際には、調停とかの過程での資料なり主張がなされますと、これは話し合いの場でのことなのだからということで、裁判官の方がそういう前提としてそれを見るということで、裁判官の自由心証の中で証拠価値を低く見るということはあろうかと思いますけれども、明示的に証拠制限契約ということが主張される例は少ないのではないかと認識しております。
○青山座長 それでは、日弁連どうぞ。
○説明者(日本弁護士連合会 鈴木委員長) それでは、第1点ですけれども、民事調停と仲裁の関係ですけれども、私はそれぞれの長所を活かして両立が可能ではないかと考えているわけです。今、仲裁が余り数は多くないのですけれども、認知の問題、世間に余り知られてないという問題とか、これからいろいろ御議論をいただく、例えば時効中断の問題とか、執行力の問題とか、あるいは調停前置の問題とか、そういうもので仲裁の中身がもっと魅力あるものになってくれば、調停と同じように増えるかどうかはまだわかりませんけれども、どんどんこれから案件が増えてくるのではなかろうか。
と言いますのは、これは弁護士会中心にやっておりますので、紛争事の最初というのは弁護士のところに持ち込まれることが非常に多いですから、弁護士がその気になれば非常に大きな案件を取り扱うことができるのではないかと思います。今、裁判所の調停も弁護士が持って行っているものが相当数あるのではないかと思いますけれども、それと同じように弁護士がこの仲裁を使いやすいものなるということであれば、大いにこれを利用するのではないかと思うのです。費用の面とか、いろいろまだ解決しなければならない問題がありますけれども、迅速とか簡易とか、そういう面では調停に劣らないと自負しております。
第2点ですけれども、仲裁に金融関係が入っていっていいのかという問題がありましたけれども、これは金融関係だからいけないとか、そういうことは毛頭考えていないので、仲裁というのは非常に範囲を広く考えておりますから。
○原委員 いいとか悪いとかではなくて、すごく範囲を広げて考えていらっしゃるので、その方向性ですかということです。
○説明者(日本弁護士連合会 鈴木委員長) 金融が来てもいいし、何が来てもいいと考えております。
弁護士が、いろいろなADRの機関に関与していくということで、柔軟な解決に対して、弁護士は判例とか法律とか、そういうものに余り縛られるのではないかという御趣旨ではないかと思うのですが、常に弁護士は判例とか法律が念頭にはありますけれども、このADRのいい点というのは裁判と違って、杓子定規にそれを適合しない、フレキシブルに、事件ごとに対応した処理ができるというところが一番いいところではないかと思うので、やはり法の精神と言いましょうか、正義とか、あるいは公平とかそういうものは常に念頭に置かないといけないと思いますけれども、必ずしも法律の規定に従わなければならないとか、判例に従わなければならないとか、そういうことではなくて、その辺も柔軟に考えていく必要があるだろうし、また現に我々のセンターでもそういうものの考え方でいこうということになっております。
3番目に、この意見書にまだ続きがあるかということでございますが、これは我々のセンターでずっと継続的に研究しておりますので、これから更に時効中断の問題とか、あるいは執行力の問題とか、各論の分野はこれから検討するということになりますので、それらに区切りがつきましたところで、場合によってはまた意見書を出させていただきたいと考えております。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかの方、どうぞ御質問があったらお願いいたします。廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 最高裁にお伺いしたいのですが、特定調停ですけれども、先ほどの御説明の中には審理回数が大分減っていること、調停に代わる決定が非常に増えていること、これはかつての統計では非常に少なかったと思うのですけれども、これが非常に増えていることと、調停不成立が少なくなっていること、こういった数字は特定調停が増えているということと相関関係があるのではないかと思います。
そこで、もしあるとすれば特定調停とそれ以外の調停との間の、別々の統計があるのでしょうか。統計がないとしても、大体区別して別々に統計するとすれば、どんな傾向がお互いに見られるかをお伺いしたいと思います。
もう一つ全く別のことなのですが、先ほどいただいた資料の別紙4に専門家調停委員の数が出ていますが、これ以外は一般の市民、学識経験者が調停委員と考えてよろしいかと思うのですけれども、この専門家調停委員の数というのは、大体全体の調停委員の数の何%ぐらいに相当しているのでしょうか。
○説明者(最高裁判所 菅野課長) まず、最初の方の点についてですが、特定調停とそれ以外の調停との差異、あるいは最初に御指摘いただいたようなポイントというのは、特定調停特有というか、特定調停にかなり引っ張られた結果生じてきていることなのかどうかという辺りにつきまして、まず例えば17条決定の割合がかなり増えているのではないか、この辺りの点につきましては、恐らく廣田委員御指摘のように、特定調停の影響がかなり大きいのではないかと思っております。
特定調停の場合には、基本的には弁済計画というのを策定して、3年から5年ぐらの間に元本を中心にどういう形で分割弁済をしていくかという約束をつくっていくという手続になるわけですけれども、将来の利息をカットするかどうかとか、その辺りについて非常に債権者側と申立人の債務者側との間で、こういう社会的な状況ですので、対立が深まって少しでも多く回収したいという方と、とてももう資力がない側の間の溝が深まるという実情がございます。そういう状況を少しでも解決を図るために、裁判所の方はできるだけ将来利息をカットするような方向で、調停に代わる決定を活用する。その調停に代わる決定を出した場合については、通常、債権者側の方もそれに積極的に異議を提出してまで、資金回収を更に図ろうとはなかなかしないという実情が恐らくある。ですからこそ、先ほど申し上げたように、調停に代わる決定の異議率もかなり低いという実情がございますので、裁判所の方は少しでもそういう弁済計画を立てやすくするために、調停に代わる決定を多く活用するようになっているという実情があるのではないかと考えております。
期日回数において、その辺りは何か影響があるのかどうかという辺りについては、私どももそこら辺の細かい統計は今わかりませんので、確たることを申し上げられませんけれども、確かに特定調停の場合には最初に申立人の方から大体どの程度の弁済能力があるのかという辺りを聴取いたしまして、それを踏まえて相手方債権者との間で1~2回の調停期日を持って計画を確定していくという流れになりますので、2~3回程度で終了するというパターンが多いのではないかと思っております。
それに比べまして、一般の調停事件の場合には、今申し上げたようなパターンというのが標準的とはなかなか申し上げられないと思いますので、もう少し期日回数を重ねる、あるいはイレギュラーな審理の経過をたどるというものも、一定の割合で混ざっているのではないかと思っております。
次に、二つ目にご指摘の、専門家調停委員の割合が実際どの程度と考えたらいいのかという点につきまして、私どもも今、正確な数値は把握しておりませんが、確かに今回提示させていただいている業種の方々というのは、一般的に考えられる専門家という類型の方々はほとんど網羅しているのではないかと考えております。
ですから、大変恐縮ですけれども、これを足していただいて、民事調停委員、これは平成13年10月ということで、14年の4月と半年ほどずれますけれども、13年10月の段階では総数で1万3,000 人程度おるわけです。恐らく若干平成14年4月に増えているかなと思いますけれども、そんなに大幅にというわけではないのと思いますので、1万3,000 人のうちからおおよそこれを足していくと、いわゆる弁護士さんなども含めた専門家の方々の割合というのは出てこようかと思います。今、まとまった数字を持っていなくて大変恐縮なのですけれども。
○青山座長 最高裁にお願いしていいですか。資料の提出を検討していただきたいのですが、2つの情報、特定調停とそれ以外の調停に分けた場合の事件の終結期間等、もう一つは、専門家調停委員の割合。これについて、資料を提出していただけますか。
○説明者(最高裁判所 菅野課長) わかりました。そこはちょっと検討させていただきたいと思います。
それから、前者の方については、どの程度まで2つをうまく分けて、統計をまとめられるかという点がちょっと定かでないところがありますけれども、その点も含めて検討させていただきたいと思います。
○廣田委員 調停の成立率をそえていただきたいと思います。
○説明者(最高裁判所 菅野課長) わかりました。
○髙木委員 ひとつは廣田先生の質問と全く同じだったので、もう一つ残りました質問は、原委員の質問でちゃんとお答えがあるのかと思って期待していたら、はぐらかされた感じがしたのですが、もう一度再度御説明いただきたいと思います。事務局資料の11ページの各論点について、個別に最高裁のお考えを伺いたいと思います。
○説明者(最高裁判所 菅野課長) それでは11ページの各論点でございますが、必ずしも私どもの方が意見を申し述べるのが適当かどうかという部分もありますけれども、個人的な意見という意味合いも含めて、若干気付きの点を申し上げさせていただきます。
論点1の関係ですか、ADRの過程で得られた情報を裁判手続でどのように活かしていくのか、あるいはそれには問題があるのかという点についてでございますが、ここは多分制度的に言うと法務省の方で指摘されていたような、現状でも弁論主義、当事者主義という形を踏まえながら、書面は裁判所の方に出てきているという実情はあろうかと思いますけれども、ニーズに応じて一定のレベルで資料の引継ぎ的な何らかの制度化が考えられないかということは、検討に値するテーマではないかと思っております。
ただ、恐らくこの場で問題になるのは、先ほど御紹介いただいた専門調停、建築調停などの場合と同じように、記録そのものを形式的に引き継ぐというよりは、どういうふうにADRの結果がコンパクトにまとまって、かつ利用者の方々が利用しやすいような形で還元されていくのか、そういうのが裁判所に出てくることになるのかという辺りが実際に実効性のあることになるのかどうかという意味では、非常に大きなポイントになるのかという感じはいたしております。
論点2のところは、先ほど申し上げたようなところかと思います。
論点3のADR前置の関係については、これは非常に難しい、まさに制度的な問題かと思います。真に、今調停前置となっているものについて、一定のADRとの関係でADR前置とすり代えていくということが可能であれば、多分裁判所の立場に立つと、むしろ明確にそういう制度化を図っていただいた方が後で混乱等がなくなり得るのかなという感じはしているところでございます。
4番のADR係属中の訴訟手続の停止、あるいは5番の事案によって訴訟係属事件の処理をADRに委ねることができないかという辺りについては、私どもの立場からなかなか申し上げにくいところですけれども、やはり訴訟を求めてきていただいている当事者の方に対して、裁判所の側から積極的にADRに行きなさいとか、ADRが係属しているのだから訴訟は止めるというのは、ここにも御指摘いただいている裁判を受ける権利その他の関係で、何か裁判所が責任逃れをしてしまうような感覚を持たれるということで、むしろ当事者の方々が誤解を持たれるということであると、それは問題なのかという感じもいたしますので、この場合についても、どういう場合にこういうことが可能になるのかというのはある程度明確にしていただく必要があるのなかと思っております。
以上でございます。
○青山座長 よろしゅうございますか。ほかの方、いかがでしょうか。
○山本委員 1点だけ、日弁連の方にお伺いしたいのですが、先ほどの御説明からすると、ちゃんとしたADR機関について法的効果を付与するということを積極的に考えるべきではないかという御趣旨のお話かと承ったのですが、私も基本的にはそういう方向であるべきではないかと思うのですが、問題としましては、ちゃんとしたADR機関というのを、だれがどのように認定するのかという問題があろうかと思うのですが、その辺りについて現段階での弁護士会の方のお考えを伺いたい。
1つの考えとしては、国家機関がADR機関を認定して、それについて特別の効果を付与するという考え方もあり得るのかと思うわけですが、その辺りを含めて、どのようなお考えかをお聞かせ願いたいと思います。
○説明者(日本弁護士連合会 鈴木委員長) 実はその点については、まだ結論的なものは出ておりません。いろんな意見が出て検討中であるというところしか申し上げられないのですけれども、いずれにしても、やはり何らかの規定と言いましょうか、どんなADRに対しても、法的効果を与えていくということになりますと、これは大混乱ということになると思いますので、要件をどこに持ってくるかということは非常に難しい問題で、弁護士会の中でも委員会の中でも、本当に議論百出というところでございまして、いろんな意見があって、現在、まとめるのが非常に難しいような状況にありました。その点を中心に検討している委員が来ております。
○関係機関(日本弁護士連合会ADRセンター 吉岡副委員長) 大変核心を突いた御質問なので、今、検討していまして、意見書に書きましたとおり、法律家がどの程度関与しているかとか、その関与のやり方もいろいろあろうかと思うのです。機関に関与している場合、あるいは調停なり、あっせん自体に関与している場合、あるいは事後的に書類等についてのチェックなり関与する場合とか様々あり得るわけで、そういう場合を分けながら、まさに検討しているということでございます。
○青山座長 まだ、御質問の御希望はあるかもしれませんけれども、予定の時間を大分超過しておりますので、質疑の時間はこれで打ち切りにさせていただきたいと思います。
本日は最高裁菅野課長、法務省小野瀬参事官、日本弁護士連合会ADRセンター鈴木委員長のお三方におかれましては、大変お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。委員を代表して御礼申し上げたいと思います。
なお、先ほど申しましたように、最高裁にはもし可能であれば、資料の追加提出をお願いしたいと思います。それから、日弁連の鈴木委員長には、せっかくこういう意見書をいただきましたので、それ以後の検討がありましたら、私どもの検討会の検討が続いている間に、是非有益な御意見をいただければと思っております。
今日はお忙しいところ本当にどうもありがとうございました。
それでは、ここで10分間休憩を取りたいと思います。したがいまして、3時50分から再開いたします。
(休 憩)
[討議]
○青山座長 引き続き議事を進めます。小林参事官は、現在、同じ時間帯に進行中であります法曹制度検討会の方に出席のために中座しておりまして、代わりまして、事務局より山上参事官補佐に出ていただいておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、後半でございますが、後半は裁判手続との連携、そして、前回の続きといたしまして、執行力の付与について御議論いただきたいと思います。まず、最初の1時間ほどは、裁判手続との連携、特に手続面での連携について御意見をいただきたいと思っております。
本日はこの議論については1巡目でございますので基本的な点を中心にできる限り全員の方から御意見を承っておきたいと思っております。
では、どなたからでもどうぞ、裁判手続との連携、特に手続面での連携について御意見を賜りたいと思います。
○綿引委員 先ほど髙木委員の質問に、実務的な感覚から感じていることを簡単に申し述べさせていただきます。
まず、論点1-1、1-2、どのような形での引継ぎのルールがあり得るのかということですけれども、これについては、先ほど法務省の方からも御紹介がありましたように、やはり民事訴訟法をベースに考えざるを得ないと思います。ADRでどういう資料が出て、どういう主張が戦わされ、どんなふうな争点整理がされたかとしても、それが訴訟の場に上程されない限り、裁判所としてはそれを審理に取り込みようがない。裁判所としても、せっかくADRでいろんな争点整理がされ、また、様々な専門家の意見などが出されましたら、それを訴訟の場に提出してくれなければ、それは大いに利用していきたいと考えているところですけれども、そのためには、例えば争点整理であれば、そのように主張が整理されたということを当事者が裁判所の弁論で言ってくれなれば、それが訴訟における主張にはならない。専門家の意見がこういうことであったということを裁判所が参考にするためにも、やはりそれは専門家がここでこういう意見を述べたということを書証なり何なりという形で出していただなければならない。
最近、民事調停における争点整理なり、専門家の意見なりが裁判手続に引き継がれているというのも、まさにそういう争点整理案がつくられているのを、口頭弁論の場で「争点整理案のとおり」というふうに当事者が陳述してくれるから、そのとおり争点を確定できるのであり、それから平山先生を始めとする専門家の委員の方の貴重な御意見というのも、こういう意見が出ましたという形で書証にされているからこそ、裁判所は、判断の材料にすることができる。これは民事訴訟法を前提とせざるを得ないのではないかというに考えております。
先ほど問題になっておりました、ADRの場だからこそ出すけれども、これは訴訟には出さないでくれと言われた証拠はどうなるのかということですが、これについても、それに反して提出されてしまったから、証拠能力がないといって裁判所が証拠の取り調べをしないということは今の民事訴訟法ではできないのではないかと思います。ただ、そういう証拠として出さないという約束の下で入手されたものだとすれば、それでそのようなものであることを前提に裁判所は証拠評価を行うことになると申し上げることはできると思います。これはやはり裁判所の自由心証の中で処理していかざるを得ない問題ではないかと思います。ですから、民事訴訟法をベースに考えていかざるを得ないのではないかというのが論点1についての私の考えです。
論点2の裁判所に証拠調べとか事実調査の協力を求められないかという部分です。
正直なことを申しますと、裁判所で証拠調べをするためには、それを的確に行うために、我々は日々非常な苦労をして、争点を絞り、このポイントでこういうふうに証拠調べをしましょうということを当事者と煮詰めながら証拠調べをやっています。もし、そういうことがなく、ADR機関からこの点だけ調べてくれ、この証人を調べてくれと言われても、的確な証拠調べができる自信が私にはございません。
また、ADR機関でどのような証拠が出ているのかということも十分にわからないままで、人証だけを調べてくれと言われても、これも実態がわからないまま、証人だけ聞いてくれというのは、非常に裁判所としては苦痛なことになるだろうと思います。
さらに、裁判所における事実調べまで必要とするようなことが、ADRの役割として求められているのだろうかという本質的な問題を考えますと、裁判所に事実調べの協力を求めて、それをADRにおける解決に活かすということをより積極的に考えていく必要があるのだろうかということについては、私は消極的な感覚を持っています。
論点3の、調停前置の関係で申しますと、これはADRにおける話合いの結果を活かすという意味で最も現実味のある問題点の1つではないかと思っています。岡山の仲裁センターで御紹介がありましたように、十分に仲裁センターで話合いがされて、それにもかかわらず話合いがまとまらなかったということがあった場合には、敢えてもう一度民事調停を経てきなさいなどということはいわなくていいというのは、まさにそのとおりだと思います。
ですから、その部分を、例えばADR基本法のようなものをつくったときに、ADRできちっとした実質の話合いがされて、話合いができる見込みがないということが確定されたような場合には、調停前置の要件を満たしたものとみることができるというような規定を置くことは考慮してよいと思います。もちろん、要件立てをもうちょっと考えていただいかなければいけないと思いますが、そういうことを条文化していただけますれば、調停前置との関係で裁判所としては非常に気持ち安らかに調停前置の要件を満たしたなと判断ができるようになるだろうと思います。ここは本当に現実的な問題としてこの検討会で御検討いただいたらと思います。
あと、ADR継続中の訴訟手続の停止とか、裁判所の方からのADRへの付ADRでしょうか。この辺りになってきますと、少なくとも職権ではそういうことはできないだろうと思います。一方の当事者が裁判所に裁判を求めてきているのに、裁判所が強引に裁判所ではやらない民間のADRに行きなさいということを職権ですることはできない。ただ、当事者がこういうADRで一回話し合いをしてみたいので、その間、訴訟手続を待ってくれと、期日の指定をしないでくれと言われれば、それには裁判所は十分に事実上対応していくことができると思いますが、職権での付ADRですとか、職権で訴訟手続を停止するということは恐らく憲法との関係でも難しかろうと思っております。
争点整理をADRに委ねることができないかという部分も、先ほど申し上げましたように、当事者がADRにおける争点整理を訴訟手続でも利用してほしいということで、訴訟に上程してきてくれれば、それを裁判所としては受け入れるというのが基本的なスタンスになるのではないかと思っております。
若干網羅的になりましたけれども、実務家の感覚から申し上げまして、論点1から6について、今、考えていることを申し述べさせていただきました。
○青山座長 どうもありがとうございました。包括的な御意見を伺えたと思います。どうぞ論点の1から6に限らず、裁判との連携について御議論いただければと思います。
○髙木委員 今ので確認をよろしいですか。1は民事訴訟をベースに考えざるを得ないということは、改めて制度化は不要ということですね。運用でやればよろしいと。
○綿引委員 そうですね。民訴を度外視して制度化するということができるのだろうかという、むしろ疑問の方になるかと思います。民訴とは別に個々のADRにおける争点整理の結果は、その当事者が起こしたときには訴訟における主張とみなすなどというのは、とても民訴との関係で法体系的にも難しかろうという感覚です。
○髙木委員 もう一つ、最後の付ADRの方なのですが、裁判所からは言えないというのは、裁判所に起こしたものをADRに行きなさいということはできないとおっしゃるわけですけれども、例えば法律で一定要件のもとに勧告することができるとか、やわらかいものがもしできたら、それはそれで別に裁判所としては構わないですか。
○綿引委員 それはよろしいのじゃないでしょうか。当事者がそういう勧告を受け入れて行くのであれば。
○髙木委員 証拠調べの点について、ADRから頼まれたからといって責任ある証拠調べができるものではないという点については、多分、そういうところもあるかと思うのですが、それは、今、他の裁判所へ嘱託尋問をお願いするときも同じ問題がありますね。当事者にもし尋問させることを許せば、それはそれで考えられるという道はあるとお考えですか。
○綿引委員 要は、裁判所に座り雛でおれという形になるのかなと感じがします。
○髙木委員 仲裁法と同じことだと思いますが。
○綿引委員 やはり仲裁法はそれなりに一定の仲裁手続が定められた中でやっているのに比べて、ADRでどこまできちっとした整理がされた上での証拠調べになるのかというところに非常に疑問があるということもありまして、基本的には消極的な感覚を持っております。
○青山座長 どうぞほかの方。横尾委員どうぞ。
○横尾委員 私はADRと裁判との連携について。やはり迅速性とか専門性とか非公開という、ADRの特性というのがございますが、そういったものが裁判手続との引継ぎを規定することによって、かえってその特性を損なってしまうのではないかと思います。これは具体的に連携を図るということだけではなくて、それを前提とすることにより、かえってADRの運用の柔軟性を損なってしまうと思います。
事務局の資料にございましたけれども、せっかくADRで進めてきた手続、これを全く使わないというのは効率性の観点からどうかということだと思いますが、ADRを進めていきまして、そこで合意に至らなかったという段階で、既に迅速性の利点が失われてしまったと思うのです。その段階では、例えば、当事者は迅速性を捨てて納得性を選択する様なこともあると思うのです。
当初は迅速で、効率的な解決を重視して、話合いを行ってきたけれど、やはりそこで示された合意案には、納得できないということでADRを離脱したということであれば、当事者は今度は納得性を尊重する手続を求めたいのですから、迅速性を重視して示した妥協点や認めてしまった自らの「非」を引き続き裁判に持ち込まれたくはないのではないかと思います。であれば、そこに何らかのステップをもう一つ何か加えなければ、自動的にADRから裁判の方に移っていくということについては、むしろ弊害が多いのではないかと思います。
例えば私ども産業界でやっておりますようなPLセンターの方でそういった意見が強いということを申し上げたいと思います。
○青山座長 今おっしゃったことは、ADRが途中で挫折したときに、そのまま裁判の方に移行するのは、無駄だとおっしゃったのでしょうか。
○横尾委員 ADRが挫折した段階で、例えば争点整理といったもの、証拠に代わるようなものについて、裁判の方に自動的に引き継いでいくべきではないということです。
○青山座長 わかりました。何かほかにどうぞ。
○三木委員 先ほど事務局から適切な御紹介がありましたように、先月、UNCITRALの方で国際商事調停モデル法が成立いたしました。我が国は選挙で選ばれたメンバー国としてその審議に参加しております。また、その場で意見を述べておりますので、その内容を今後は踏まえる形での議論というのもある程度は必要であろうと考えております。
今回の論点の中でそれに関係するものとして、これも先ほど御紹介がありましたが、1つは論点1-2というところで、情報の引継ぎの制限が場合によっては必要ではないかということです。
この点につきまして、モデル法の方では、証拠能力が一定の範囲で制限されるという規定を置いたわけです。我が国でこれと同じような規定がADR基本法で置けるかどうかという点については、先ほど綿引委員がおっしゃったように、現行の民事訴訟法との関係というものも考えなければいけないので、直ちに同じ規定が置けるとは言い難い面もあろうかと思います。ただ、ADRでは調整型の手続であることを前提として、訴訟では出さないような情報が出されるとか、あるいは弱味も見せるということもありますので、そのモデル法の規定の趣旨は十分に理解ができるのではないかと思います。
1つの考え方としては、現行の民事訴訟法に証拠能力の制限規定が実質的にはないということとの整合で考えますと、ADRの合意、具体的には調停の合意がなされた場合に、そこで出された情報は訴訟に出さないという証拠制限契約が結ばれたものだということをデフォルト・ルールにして、勿論、当事者はそれと反対の合意もできるという規定を置く余地はあろうかと思います。
仮にこのような規定を置く場合には、先ほど綿引委員がおっしゃった民事訴訟法との整合性が取れないということはないだろうと思います。というのは、言うまでもなく現行の民事訴訟法でも証拠制限契約が結ばれれば、その場合には例外的に証拠能力が否定されるということは、これは認められているからです。
それから、もう一点、モデル法の審議と関係する事項としては、論点4がございます。ADR継続中に訴訟手続を停止するような制度が置けないかということです。これもモデル法の審議過程で議題として上った論点でございます。ただ、これは最終的にはモデル法の条文からは落ちております。これについては、このような制度を置くことを積極的に推す意見と、それから先ほど来、御意見がありましたように、置くことの問題点を指摘する見解、両方がありまして、結局、いずれの意見も多数を占めるには至らなかったということで落ちたということです。
したがって、この場で踏み込んだ意見を申し上げるつもりはありませんけれども、この論点については、プラス・マイナス両方の問題が種々ございますので、慎重な議論が必要かと考えます。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにどうぞ。
○原委員 確認をさせていただきたいのですが、調停モデル法ということですね。仲裁法の方は国内法を整備という動きになりましたけれども、調停モデル法はそうではないという御見解だったのですが、調停モデル法の位置付け、国内でどういうふうになっていくのかという位置付けを大前提としてお聞きしたいということと、それから、2つ目は、調停モデル法で使われている「調停」なのですが、この定義はどんな形で定められているのかということ。
それから、5ページに書かれている囲みのところを見ると、モデル法で禁止という言葉になっていますね。だから、先ほどおっしゃられたことを深く聞き取れていないのだと思うのですが、法律できちんと禁止となるのか、それとも法律に契約に基づいてやるようということにになっていて、契約に基づいたものについては禁止という、先ほど事務局が説明されたペーパーの最後にありました証拠制限契約を結んだ場合に禁止なのか、法律で禁止なのか。その3点のところをもうちょっと教えていただきたいと思うのです。
○三木委員 第1点が、我が国でUNCITRALの調停モデル法をどう考えたらいいかという御質問で、これは私がお答えすべき立場にあるのかどうか、ちょっとわかりませんが、私見ということで申し上げます。
先ほど事務局から御紹介がございましたが、この調停モデル法というのは、調停全般を対象にしたものではなくて、直接的には国際的な商事性のある調停事件を対象にしたものです。しかし、これはUNCITRALという機関が国際的な商事事件に関する法の世界的な統一を扱う機関であるという制約に服しているからであって、モデル法をつくる過程における前提として、各国がこのモデル法を採用する場合には、一般の調停事件にも適用可能なようにという意識で作られております。また、各国が商事とか国際という限定を外して採用することは構わないという明文もありますので、現実には調停一般を意識したモデル法だと考えてよいかと思います。ただ、そうは言いましても、条約ではありませんで、モデル法ですので、当然直接的に各国政府を拘束するという意味はございません。あくまでもUNCITRALがモデルを示して、こういう形が1つの望ましい国内法の姿ではないかという案を提示したという意味であります。
これと日本の今の国内のADR基本法に関する議論との関係ですが、今、申しましたように、条約のような意味での遵守義務というのがないことは確かです。ただ、日本政府はこの議論に参加しておりまして、いろいろと日本政府の意見も述べておりますので、突如として手のひらを返したような議論が国内で行われていることはあまり望ましいことではないだろうと個人的には考えております。
それから、2点目として、原委員がおっしゃった、このモデル法で調停というのをどう定義しているのかという問題は、これは本日配布されました参考資料の2ページの抜粋の調停モデル法の1条に規定がございます。1条の3項でこのような文章で規定が置かれているわけですが、お読みになっておわかりのように、かなり広い形で定義がされております。
具体的には、この仮訳によりますと、複数の当事者が第三者に対して紛争の有効的な解決の試みの援助を求める手続をいうということですから、我が国で言いますと、あっせんも含めた広い意味で使われていと理解してよいかと思います。
○原委員 3点目は法律で禁止ということになっていますね。それは条文上の禁止なのか、それとも。
○三木委員 10条の関係ですね。
○原委員 そうです。それで、契約に基づいて禁止ということになるのかどうか。
○三木委員 これはなかなか読み方の難しいところがございますが、私の理解は以下のとおりです。
10条の規定というのは、調停で出された一定の情報については、原則として、訴訟への提出が禁止されるという趣旨の規定になっております。その意味は、出すという行為を禁止するという意味ではありませんで、出されたものについて、証拠能力がないという趣旨で理解されております。
ただし、当事者が別段の合意をすることを妨げておりませんので、反対の合意をすれば出すこともできるということです。そうすると、それを証拠制限契約に引き寄せて読むことも可能です。つまり、証拠制限契約を積極的に結ばなくても、結んだものと同様に扱うというように、意思の推定に近い扱いを定めた規定と見ることもできると思います。
○龍井委員 非常に印象的な意見表明だろうと思うのですが、お示しいただいた論点のところ、これは御指摘のあったように、かなりケース・バイ・ケースで考えてみないと判断できないところがございますので、ここについては、まだそんなに具体的にコメントはできないと思います。
ただ、裁判との手続面の連携ということが、民間型ADRの活性化の基本であり、ないしは先ほどの話だと司法型と競争的、競合的になっている、奇異になるのかというと、必ずしもそうじゃないのではないかと思っています。さっきも言われました特性ということを考えていった場合に、恐らく証拠の問題をとってみても、そこでそういうことをしなくてはいけない案件だったら、多分、ここで自己解決は他分できないわけで、そうじゃないものが求められているのだろうと。
先ほど日弁連の整理にもございましたように、私どももちょうど検討中なのですけれども、どういう案件だったらここがふさわしいという特性がある。ただ、証拠の問題にしても、それはまさに特性によるわけで、そういう意味では前々回に出された自己解決能力というキーワードを私もとても重視をしたいと思っているのは、それがある程度自己解決能力がある、自己完結しなかったときに、それが既に裁判があるよということでいつも我々の労働関係で言えば、せっかく労働委員会の命令が片っ端から無視されているような状況があったときに、そこの連携を強化しただけでは、そこは多分埋まらないと思う。
逆に言うと、少し慎重に発言しなければいけないのでしょうけれども、そういうADR機関に、例えば法曹関係の方がきちんと関わられて、問題の専門性と、それからある種法的な意味での専門性というところで、そこのある種の格付けというか、いい意味の権威付けというか、そういうものがなされていくことで、自己解決能力が高まっていくのではないか。チャートで言うと、一番下の司法型とこちらが競合していくための条件整備という流れの中で検討したいなと思っているのです。
ですから、出されている問題の重要性と、手続面の連携ということをどこかで整理しなくてはいけないことはわかっているのですが、そのアプローチをしていく場合のスタンスとして、そんなふうに考えたいなと思っています。
○青山座長 今、部内でそういうことを御検討中なのですか。
○龍井委員 事務局レベルですけれども。
○青山座長 いずれまた、次回かに是非お聞かせいただきたいと思います。
○安藤委員 先ほど法務省のお話を聞いていましたら、ADRどうもワンルームのマンションをもらって、好きな家具いくらでも置いていいよという形で、周り壁だらけで動けないような印象を受けたのです。ですから、そういう観点をちょっと離れて考えなきゃいけないのかという感じを受けました。
論点2の場合ですけれども、ADRとして動く場合には、私は事実調査などを裁判所に協力を求めるというのは絶対反対なのです。ADRはADRとしてあくまでも民間型、それから当事者同士の話し合い、これによって進んでいかなければいけないかなと考えております。
それで、論点1の方へ戻りますと、逆な意味でもって、このADRで一応当事者同士が話し合いをした上で出たもの、これに関しては、裁判所に対してはADRが証人としてそこでもたらされた結果を証言する。その証言みたいな形で裁判所で受け入れられたらどうなのだと。そういうことになれば、1つのADRとしての力と言いますか、地位に関してもちょっと上がる状態に出てくるのではないかなと考えております。
それから、役割分担についてなのですが、私、いまだに時効の中断効に引っかかっておりまして、時効の停止的なやり方ができないのかなという形から言いますと、裁判所の方にこういう問題をADRで調停というか、調整をしますという届出をした時点で、時効の中断効ないし停止が得られるという形を取るのであれば、裁判所の方が訴訟手続があっても、差戻しと言ったらおかしいですけれども、ADRで今やっているのだから、調停などはしませんよという形で判断するというのもできるのではないか。それが1つの連携という形にできないかなと。
非常にがさつな意見ですけれどけも、そんな考えを持っております。
○青山座長 私、理解が十分に至らなかったものですから、ちょっと聞かせていただきたいのですが、論点1のところでおっしゃったのは、ADRで解決ができなかったとすると、裁判所に証人として行くというのは、だれが証人になるのですか。
○安藤委員 ADRの当事者がです。
○青山座長 ADRを主宰した委員が、裁判所に行くと。
○安藤委員 こういう形でやりまして、こういう結果で、結論が出ませんでしたという形で、いわゆる証人みたいな形で、それを証言として取り上げてもらうという形になれば、ADRに関しての1つの権威づけというか、1つの証拠として出るのだという何かがあれば、そのADRに関してもっと調整自体にも、当事者同士は真剣にやってくれるのではないかと。
○青山座長 わかりました。ほかにどうぞ。
○髙木委員 私も結論的に言うと、まだまとまっていません。論点1-1、1-2のどちらかということなのですけれども、この中では一番難しい問題なのかと思います。ADRをどう考えるか、どういうふうにみんなが考えているのか。また、それが定着しているかどうかというのがわからない。この段階で何か制度化をするのは、多分これをやっていると神学論争になるのかなという感じがして、どちらかに制度化を決めてしまうという問題なのかというふうに思っています。
先ほど石栗判事の調停における実務が紹介されて、いろいろな形で実際上、訴訟で司法型ADRの機関の成果が生かされるということについて、紹介があったのですけれども、それと同じようなことは弁護士会の仲裁センターでもやっておりまして、仲裁センターにおいて合意が成立しなかった場合でも、あっせん人ないし調停人が意見書を書き、それを当事者に渡す。その意見が訴訟において、証拠として提出されるなどして事実上使われて、大体似たような判断がされる。実際には私はやった経験がないのでわからないのですけれども、そういうふうに他の弁護士が言っておりましたので、多分そうなのだと思います。そういったことが可能ではないかと思いますので、そこは運用でまかなう方がいいと思う。UNCITRALのルールもあるのかもしれないのですけれども、証拠制限まで決めていいのかというのがちょっと気になって、モデル案の規定自体は至極当然の内容ではあっても、そこまで決められるとかえって動けなくなってしまうし、活性化という観点から考えて、阻害要因にならないのかどうなのかという気がしますので、そこはちょっと考えていきたい。
それから、論点2、3、4、5、6なのですけれどけも、この中で取り上げるとすれば、3の調停前置の代わりにADR前置をという点は、制度化でも運用でもどちらでもいいのかもしれませんが、考えられるかなということです。
それから、論点5と6も考えていいのではないかと思うのです。
4は余り意味がないので、考える必要はないというのがざっくりとした感じで、結局、今のADRの現状や実務を考えると、必ずしもここまで踏み切る必要は、多分皆さん考えておられなくて、ちょっと勇気は要るのかと思うのですけれども、せっかくADR基本法というのをつくれればつくろうという時に、恐らく10年か30年か50年か、寿命はわかりませんけれどけも、ある程度先を見て考えなければならないとしたら、本当に漠然としたものでもいいから、入れておくべきものではないかなと思いまして、ここの中で入れるとすれば論点3、5、6くらいかなと思います。
○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○山本委員 最初ということですので、一般的なことから申し上げさせていただくと、私自身はADRと裁判との連携というのは、非常に重要な問題であって、今、髙木委員から30年、50年後を考えるという話がありましたが、長期的な視野に立てば、非常に重要な問題、積極的に考えていくべき問題であろうと思っております。
最初に参事官の方からも御紹介がありましたが、諸外国の法制とか運用とかを見ても、この裁判手続とADRが連携するというのが、ADRが発展する1つの方向になっていることは間違いないのじゃないかと思います。
アメリカなどでも、私はよくわかりませんけれども、三木委員の書かれたものなどを拝見すると、裁判所と連携しているコート・アネックスADRというのでしょうか、そういうものがADRが盛んだと言われているアメリカの中でも大きな位置を占めているというふうに言われておりますし、ADRを政策的に振興しようとているドイツとかフランスなどでも、そのような方向がADRの振興の中核的な部分を占めているということがあるのだろうと思います。
特に私は日本においては、裁判所への国民の信頼というのが非常に強い。悪く言えば、お上に対する信頼が厚いということになるのかもしれませんが、そういう国からすると、裁判所と一定の連携をADRが持っているのだということ自体がADRの信頼を高める大きな材料になるのではないかと思っておりまして、せっかく法整備をするのであれば、この問題について、一定の規定を設けていくということをできるだけ積極的に考えるべきではないかと思っています。
それが総論的な話ですが、まだ、各論点については、それほどの定見を持ち合わせておりませんが、今の御議論を伺っていて、若干の論点について、現時点での感想を申し上げさせていただければ、論点1については、今、お話があったように、論点1-2の引継ぎの制限という点は、先ほど来、証拠制限契約というお話が出ておりますように、これは結局は当事者が決める問題で、規定を置くとすれば、デフォルト・ルールを決めるということにとどまるのだろうと思いまして、今まで出てきた時効とか執行力のように、当事者の意思によってはどうしようもない問題、必ず法規定がなければ解決できない問題とは、問題の性質が違うということはそのとおりだろうと思います。
ただ、そのデフォルト・ルールをどう決めるかという点については、勿論、現在の民事訴訟法の基本的なルールがありますので、それが基本になるということは確かだろうと思いますけれども、ただ、三木委員などからの御紹介もありますとおり、国際的な潮流も十分に配慮する必要があるのではないかという気がいたしますし、また、当事者が合意できると言っても、真の合意の機会を与える必要はないのかということも考えていく必要があるのではないか。デフォルト・ルールとしては、証拠制限は認めないとしても、当事者が証拠制限契約を結ぶような機会を付与する。例えばADR機関の規則などで、その点をはっきりさせる。このADRについては証拠制限を認めるのか。あるいは証拠制限は認められないようなADRなのかということをはっきりさせる。当事者にその点の選択の機会を与えるという解決策もあり得るのかと思っております。
それから、論点2については、先ほど必要ないのではないかというお話がありました。私はこれは恐らく必要になるのは、結局、当事者に対しての証拠調べというのは意味がないわけで、第三者に対して強制的な形で証拠調べをするという、この人の話を聞けば、その紛争解決についてはある程度見通しが立つと。事実認定について当事者間で激しい争いがあるけれども、この人の話を聞けば、解決できるのではないかという場合に、しかし、その人が任意で話してくれないという場合に裁判所の力を借りて話を聞いて事実を解明するという場合かなという感じがしております。
第三者を念頭に置いた場合に、仲裁では既に認められているわけですが、仲裁は最終的にそこで紛争を解決することが担保されている裁判に代わる既判力を持つ判断をつくる手続でありますが、それに対して調整型のADRというのは、最終的に解決されるかどうかという保証はないわけで、そういう保証のない手続で第三者にそのような形で強い協力を求められるかどうかというのは、これはまた1つの問題としてあるのかなという印象を持っていまして、そういう意味で私自身は必要がある場合というのは、なくはないのではないかという気がするわけですが、しかしなお、検討すべき課題は多いという印象を持っておるということでございます。
最後の論点5、6の点ですが、これについては、綿引委員がおっしゃったことは誠にもっともだろうという気がしておりまして、規定をするとしても、当事者の同意ということが問題にならざるを得ないのでないかというのが私の認識です。
私が知っております限りでは、フランス法でADRに関する立法をする場合に、この点が最大の争点になったところでありまして、それまでの実務では、当事者の同意を得ないでADRに付しているという運用がかなり普及しておったわけでありますけれども、それはやはり問題ではないかということが立法過程で問題になって、最終的には当事者の同意を必要的なものとしました。最大の問題は先ほど御説明のあったコストの問題で、当事者の同意を得ないでコストを負担させるということはできないのではないかという点だったと思いますが、ほかにもこういう形で当事者の同意を得ないで付ADRをつくるとすれば、そのADRの結果が判決と同じ効力を持つものでないと、国民の裁判を受ける権利という観点から問題があるのではないかとも見られるので、当事者の同意を得ないでこういうシステムをつくるというのはかなりハードルが高くなってしまうという点が懸念されます。
そういう意味では、制度をつくる当初としては、当事者の同意を得てADRに付するという制度をつくると。それは逆に先ほど申し上げましたように、ADRの振興という観点から見れば、こういう形で裁判所から事件が付されるということは、ADRが活性化していく1つの大きな鍵になるのではないかと見ておりまして、そういう面からすれば、当事者の同意を得て付するという道を開けるということは、1つ大きな意味があるのかなという印象を持っております。
○青山座長 どうもありがとうございます。
○廣田委員 ただいまの山本委員のおっしゃったことなのですが、私もADRの活性化という観点からすれば、やはり裁判とADRとの連携というのは大変重要な問題だと考えております。この問題の難しいところは、裁判所から見て、連携の相手方になるADRの規模だとか、力量だとか、質だとか、それがいろいろあるので、一律に論じにくいということがあると思うのです。
もう一つ、率直に言えば、現実にはADRがまだ十分に成熟していないので、どこを押さえて議論していくかということがなかなかわかりにくいということです。
また、もう一つ大事なことは、今、議論されているように、基本的な準則というだけでなく、手続に関する規定ということが必要だということです。ここにも大変難しさがあると思います。その一例としては、先ほど綿引委員がおっしゃったように、民訴法を前提として考えなければいけないということで、例えば論点1については、民訴法を前提にすべきということは誠にごもっともで、結局、自由心証主義との関係をどう考えるかという問題にも帰着してくるので、そこのところを読み間違えることはできないと思います。そういう難しさがあると思うのです。
私はこのADRの連携の中で、将来構想になるかもしれませんが、最も大事な問題は、事件の相互移管ということだと思うのです。これを制度化できるかどうかという問題で、事件というのは、ADRに適した事件と訴訟に適した事件がありますから、それを適切に振り分けるような、これはアメリカでは行われているようですが、振り分けるようなものが制度化していって、実際適切に相互移管するというのが本来のあり方であると思うのですが、これも現状を踏まえるとなれば非常に難しい。ADRそのものがつかみにくいということになるのではないかと思うのです。
そういうことからすると、将来の課題をある程度設定する。このADR基本法では、まず努力目標を規定するという方向が1つあると思うのです。それで制度がきちんとできていればこの話ができるのですけれども、制度の整備が先行する問題ではないかと私は思っております。ですから、今の段階で論点1~6までありますけれども、一番大きなポイントは、論点5だと思うのです。その制度整備を含めて言うことだと思うのですが、これは今はっきりとなかなか書きにくいところがあると思うので、今の段階で確実にできることだけをきちんと具体化して、あとはあまり無理をする必要はこの段階ではないのではないかと、私は現在のところは考えております。
問題は、何のために連携をするかということなので、その努力目標、あるいは目的みたいなものを明示する。普通は紛争の適切な解決とか、当事者の利便とか、いろいろなものがあると思いますが、この辺は今後の議論に委ねたいと思います。そういうことを一応明記しておくというのも1つの方法ではないかと思うのです。
また、もう一つあり得るとすれば、裁判所とADRの連携を具体的に協議するための協議機関、組織、そういったものを設けるということを定めるということも1つの方法だと思います。将来に課題を残して具体化していくということも考えていいのではないかと思っています。
以上です。
○青山座長 どうもありがとうございました。
○原委員 私が最後の方に発言するのは珍しいのですが、実は私どもの方も、全国消費者団体連絡会でこのADRのワーキンググループをつくっているのですが、この問題を皆さんに話をしたところ、論点5、6については意見が出たのですが、ほかのところがまだ明確な意見になっていません。それは先ほど髙木委員がおっしゃられたようなところとも関連をしているのかと思っております。一応皆さんのお話をお聞きしてから意見を言った方がいいかと思いました。
私自身としては、できるだけADRは自由な設計でいいと思っているのですが、一方で裁判があって、誰にでも裁判に訴える権利があるわけですから、全く裁判を離れた形ということはあり得ない。どういう連携の仕方、関係の持ち方をするのかというところが大きいのだと思っております。そういう観点からすると、一応意見が言えるのは論点1と論点2と論点5、6の辺りです。
論点1の部分なのですが、「情報」の扱いなのですけれども、私たちは基本的に民訴法に慣れているというところがあって、原則としてこれまでのADRは、ADRで不調であれば裁判へ持っていくということを考えていますので、原則ADRで出された資料というのは訴訟に持っていかれるというふうに考えていますので、原則論としては出すというところがみなし上としては基本線になるように思うのです。
ただ、横尾委員がおっしゃられたように、ADRの1つの特性として、迅速というところがあって、そうなれば、非公開性の下でどんどん関連する資料出して解決を図るというのも1つの選択肢ではあると思うのです。ただ、それは事業者側から、そういう意向も強いかと思うのですが、消費者側は今の裁判に対する不満でよく時間が掛かるという話があるのですが、これは不満の1つですけれども、最大の不満ではないのです。最大の不満というのは、時間がかかってもいいけれども、自分たちが納得する判決になっているかどうかというところが一番大きい関心事ですので、非公開性の下で迅速姓ということで、ここに出された資料は外に出さない。先ほどの調停モデル法の考え方もそうだと思うのですけれども、そこは私たちの発想とガラリと変わるところがあって、一足飛びにそこの世界ではなくて、原則、できるだけそこに出されたものは裁判の場でも活用していくというところではないかと思っております。
それから、論点2のところなのですが、ここもとても難しいですが、感覚として、先ほど山本委員がおっしゃられたようなところに、消費者側の意見はあるように思います。
全く裁判所を利用しないということではなくて、あるいは専門的な第三者に意見を聞くという形の活用があるのではないかというお話がありましたけれども、そういう道というのも、私としては選択肢としてあるのではないかと思っています。
一方で、何が何でも裁判所の言っていることに頼るのではなくて、ADRとしても、事実調査とか証拠調べについてある程度権限があればADRでもできるのかもしれない。必ずしも裁判所ではないのかもしれないと思っております。
それから、論点5と6なのですが、これは消費者グループの中では意見は出ていて、実際にアメリカなどではこういうことをやられているというお話ではあったのですが、私たちからすると、綿引委員がおっしゃられたように、裁判に持ってきているものを、それはADRの方に向いているからどうかとかということで裁判所から振り分けられるというのは反対だというのは、明確に出ていました。
ただ、私としては、それでも2つくらいの要件はあって、1つは、専門的な案件で、こちらのADRを利用した方がいいのかもしれないという場合です、だから、裁判所が職権でやるのではなくて、アドバイス的な形でおっしゃられるということはあるのかしれないということ。それから、最低限、山本委員がおっしゃられたように、本人の同意、当事者の同意ですね。それは最低限必要だと考えております。今、感じております点ということです。
○青山座長 また、次回にゆっくりやっていただきたいと思います。
○三木委員 今の原委員の御発言をうかがうと、あるいは誤解がおありになるのかもしれませんので、ちょっと確認をしておきたいと思います。ADRで出た情報が訴訟でも利用できるというのは、維持すべきではないかという趣旨のことをおっしゃったのですが、そこで言うADRで出た情報ということの意味が問題です。UNCITRALのモデル法にしましても、あるいは諸外国の立法にしましても、ADRにおいて当事者が自分の立場を補強するために出した主張や証拠につき、それがいったんADRで出されれば訴訟で出せなくなるという意味の議論をしているわけではありません。
参考資料2ページの10条を見ていただければと思うのですが、ここで制限されておりますのは、例えば(1)の(a)で言いますと、調停に応ずる意思を有していたというのは、譲る気があったのじゃないかという意思です。つまり、全面的に争わない意思を表出していたとかです。あるいは(b)項で和解の提案が出ていますね。例えばこの点は譲りますという意思表示です。また、(c)の自白ですが、この点はもう認めますから手を打ちましょうとか、あるいは調停人の提案で相手方も折れると言っているから、この辺で手を打ってはどうですかという提案とかを意味します。いずれにしましても、自らが示した弱味とか自白などは、そういう点は、それは調停だから出したのであって、訴訟では無制限に相手方から自分の出した弱味を使われては困るという趣旨です。
○原委員 わからなかったのはこの(f)なのです。「もっぱら調停手続のために準備された書類」、これはすごく範囲が広いようなのです。
○三木委員 これは「もっぱら」に意味がありまして、調停だけに使う、つまり訴訟ではもともと使わないということが予定されている書面という意味です。訴訟でも使えるときは「もっぱら」ではないわけです。そういうことですので、自分にとって立場を補強するような証拠とかが、一旦ADRを経れば出せなくなるという議論がされているわけではありません。その点を是非御理解いただきたいと思います。
付言しますと、結局、このモデル法では各国で対立のある論点はさすがに強引に統一するわけにいかないので、いろんな論点が落ちた部分もありまして、全部で14か条の条文になっております。そのうちの意味のある部分のほとんどは、実は広い意味でADRの情報が無制限で訴訟やそれ以外のオープンな場に出ていかないようにするための規定でありまして、そういったことが必要だということにつきましては、各国で異論のないところです。また、日本の国内でも、この2年余の間、UNCITRALの議論が行われていることはオープンにしておきましたが、この点に間して反対してくれという意見は寄せられておりません。
さらに情報として、若干、アメリカの動きを申し上げておきたいと思います。アメリカは50の州がありますので、州ごとに法律があるということで、州法の統一のための一種のモデル法というのを作るということが、昔から行われております。そうした中で、ごく最近まとまったものとして、統一調停法という一種のモデル法があります。この統一調停法ですが、その規定のほとんどは、ADRで出た情報が、特に不利な情報が、無制限に外に出ていないことを保証する規定が中心になっています。
ついでに申しますと、世界的な立法との関係で、大きな潮流になっているのは、論点の1-2と並んで、これも先ほど来、ほかの委員の方が重要だとおっしゃっている論点5です。つまり、この2つがやはり世界的には重視されているのではないかと思います。論点5の訴訟事件の処理を裁判所がADRに委ねるというのは、既に多くの方から御指摘があったように、これはADRを国家としてどのくらい根付かせ、活性化していき、ひいては市民の自律性のある社会をつくっていくかという、国家の政策の問題と密接にかかわることだろうと思います。
したがって、こういうことが今、行われていなくてもうまくいっているじゃないか。大きな問題が生じていないじゃないかということだけでは議論できなくて、我が国が将来に向かってどういう政策を取っていくかということと関連するということだろうと思います。 ただその場合に、これも綿引委員、山本委員がおっしゃったことの繰り返しになって恐縮ですが、裁判所が事件を一定の要件の下にADRに付していくといっても、それは当事者の合意を無視してやれるかというのは大きな問題であります。
私の理解が間違っていなければ、1998年のアメリカの連邦ADR法は、主として論点5のような内容を扱った法律なのですけれども、その中で、当事者の意思を無視して強制的に事件をADRに付せるかどうか大きな議論になりまして、たしか連邦法として一定の立場は示せませんで、各地方裁判所のローカル・ルールに委ねるという形で決着がついたと理解しております。そのくらいここは重要なポイントだと理解しております。
○青山座長 今日は綿引委員の論点の整理についての発言から入りまして、非常に高い水準の議論がひとあたり終わったと思っております。
ADRと裁判手続の連携という点では、私は日本の場合にはかなり諸外国と違う要素があると思っております。と言いますのは、今、この検討会でやっていますのは、ADRといっても仲裁は除いたADRの基本的なルールを考えている。もう一つは民事調停とか、家事調停という、裁判所との連携が最も密接なものは取り敢えず除外して、ほかのものを考えているという2つのことがありまして、先ほどから三木さんが紹介されているようなUNCITRALの国際商事調停モデル法などの考え方とは随分違っておりますし、アメリカのコート・アネックスADR、あるいはドイツの最近の動きともかなり違うことを日本では民事調停、家事調停というのがあるために配慮しなくてはいけないと思います。
もう一つは、国際商事調停モデル法の考え方も、日本にどこまで取り入れることができるかという問題があります。国際商事仲裁モデル法はほとんどそのまま日本に取り入れようと思えばできるのに対して、国際商事調停モデル法をそのまま日本に取り入れようとすると、従来の制度との枠組みをかなり変えなくてはいけないという点がありまして、同じモデル法でも、扱いはかなり違うのではないかという気もいたします。
そういうことも含めまして、この裁判手続とADRとの連携の問題は、次回に更に各論点を、今日発言された方も発言されなかった方も含めてもう一度御議論をしていただきたいと思いまして、今日はこの辺でこの議論は打ち切りにさせていただいて、よろしゅうございますでしょうか。
[執行力の付与について]
○青山座長 次に、執行力の付与についての御議論を、前回に続きましていただきたいと思います。今回は事務局の方から、前回までの各論に関する議論の概要をまとめた資料として6-7というのが提出されておりますほか、前回の議論で賛否両論がありました既存の債務名義を活用する場合のオプションにつきまして、追加的なコストがどのくらいかかるか、手間がどのくらいかかるかということを簡潔にまとめたものとして、資料6-6が提出されております。これらを適宜参考としていただきながら御発言いただきたいと思っております。
時間も窮屈でございますけれども、5時20分くらいまでやらしていただきたいと思っているのですが、もうちょっと延長するかもしれませんが、どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思っております。
○廣田委員 前回、言い足りないことがありましたので補いたいと思います。執行力が実務の上でどのように使われているかを考えておく必要があると思います。
執行力が付与されているものはいろいろありますけれども、例えば即決和解を取り上げますと、これは裁判外で相対交渉を続けていて、その結果合意が成立したときに、その合意に執行力を付けたり、実務として利用するということになると思います。
例えば土地の所有者が再開発をしたいときに、借地人との間で明け渡しの交渉をして、明け渡しの合意にある程度達したとします。このときに執行力が付いていませんと、万一期日に明け渡しをしてくれなければ、計画がガタガタになってしまって大損害が出る。それで土地の所有者としては執行力が欲しいということになるわけです。
一方、借地人の方も、土地の所有者が約束した借地権の売買代金とか、立退料を支払ってくれませんと、次の住居の手当ができないということになります。したがって、借地人の方も執行力が欲しい。
こういうときに、即決和解をしておきますと、土地所有者は安心して金融機関から融資を受けて計画を進めることができますし、借地人も新居を購入する契約をすることができます。
したがって、即決和解をしておきますと、その後の計画を円滑に進めることができますので、履行することが容易になる。このように、執行力を付けることは、履行を促進する役割を果たしていると言うことができると思います。
したがって、執行力と言いますと、あたかもすぐ強制執行するように受け取る人がいるかもわかりませんけれども、それは決してそうではなくて、逆に執行しないで履行を促進するという役割を果たしているわけです。
ですから、実際に執行しなければならないということは極めて少ないということができるので、私の35年近い弁護士経験を見ますと、即決和解はたくさんやりましたけれども、その即決和解で執行に至ったケースはゼロです。したがって、執行力が付与される即決和解は大いに役立っているわけです。
また、債務者の側に何らかの事情があるとき、例えば今は履行できないけれども、もう少し時間の余裕があれば履行できるなどというときに、執行力が仮に付いているものがあったとしても、もう一度ADRを利用する可能性があるわけです。債権者としても、無理に執行して実効性がないよりも、実を取ることで話し合いに応ずる確率がかなりありまして、そのときには執行はされませんけれども、執行力が付いていることが決して邪魔になるわけではありません。むしろ前の和解に執行力が付いているから、それが話し合いを促進するという場合もあるわけです。これが実務から見たときの執行力の付いている効果なのです。
このように考えますと、執行力が付与されていることは、実務上は利便性が高いことははっきりしているわけで、したがって、ADRにおける調停に執行力が付与されれば、ADRの利用促進に寄与することは確かだと思います。もともと調停なりあっせんなりで和解が成立した以上、それが履行されることは筋なので、約束したことは実行するということは社会人、あるいは企業としての基本であって、これが守られない社会は成り立たなくなります。
問題は約束したという内容ですが、ここで私的自治の原則をしっかり踏まえておけば、それを守ることも、その延長上の問題になるだけのことで、例えば話し合いをしっかりしていたにもかかわらず、それを破れば執行されるということは、そのことがあるからと言って、私的自治そのものが侵害されるということではないと私は思います。
また、消費者問題については、消費者金融などの事件についてはつらいところですけれども、裁判所における調停制度も執行力が付いているわけですし、逆にPL被害などの場合には、執行力が欲しいということがあると思うのです。
それから、個別労働紛争なども労働者にとって執行力がある方がよいという場合もかなり多いのではないかと思います。
問題は、執行力を付与するのは公務員がやることだという意見がありますけれども、即決和解や公正証書と比較したときに、交渉過程はすべてそれ以前の当事者が行う。実質的な中身は当事者が決めているわけです。交渉過程は知らない、実質的な中身も当事者が行う、ただ形式だけを見て執行力を付与するというのであれば、これは公務員である必要があるかもしれない。つまり、交渉過程を知らない、実質的な中身を当事者が行うということを補完して、正当性を付けるのが公務員による認証だと私は思っています。
これに対して仲裁判断は、実質的中身を仲裁人が知っていて判断をします。したがって、実質的中身を仲裁人が十分に掌握していれば、これは勿論、手続の公正性も含めてのことですけれども、公務員による認証は必要ないということで、そういう考え方に立って、執行判決を取れば執行できるという形になっているのではないかと思います。
ADRにおける調停は、交渉過程まで知ることができます。また、当事者の意思は反映されております。したがって、交渉過程を知っていて、実質的な中身による当事者の意思が反映されることは、これは仲裁以上でありまして、この段階で公務員という要件は必ずしも必要ではないのではないかと私は思っております。
また、調停については、公正性、中立性が問題にされます。前回、三木委員が、ADRにおける調停人には収賄罪がないと言われましたが、調停は公正・中立でなければ成り立たないわけです。賄賂をもらって、一方の当事者のひいきをしようとしても、それでは信頼を失って不調になるということです。したがって、調停そのものが成立しないわけです。こういうことはだめだということはわかっていますから、調停人が賄賂をもらうことまず考えられないと言っていいのだと思うのです。
私が言いたいのは、調停というシステムそのものに、完全ではありませんけれども、公正性だとか中立性に向かわざるを得ない力学が働いているということを言いたいのです。この力学を使うことが調停の妙味なので、したがって、収賄罪がなくても、公正性、中立性は損われずに、調停は機能することができると思います。それが疑われるようなADRには執行力を付与しなければいいのです。
執行力を必要とするということを別の観点から見ますと、例えば品確法には法律そのものにADRというシステムが付いているわけです。また、いろいろなADRが設立されたり、設立が予定されている。これは事前規制から事後救済へという世の中の動きに即応しているわけです。これを言葉を換えて言えば、法律ができればそれだけでよいというのではなくて、その実効性を確保するために、紛争解決の道筋まで配慮しなければならなくなったということが、大体の世の中の趨勢だと思うのです。
そうだとすれば、その次にはその実効性を確保するために、紛争解決の方法だけを決めるのではなくて、それから一歩進んで履行することまでも確保するというふうに行くのが当然の流れではないかと私は思っております。前回法政策の問題だと私が述べたのは、このことを言っているのです。
ただし、ADRにおける調停にそれほど強い執行力を付ける必要はないということはあります。三木委員がおっしゃったように、取りあえずは仲裁判断以上のものである必要はないと思っていますので、例えば仲裁判断が裁判所の決定手続によって債務名義を付与するということになれば、それと同じでいいと思います。
また、当事者の意思を尊重するということがADRの基本であるとすれば、ここにもう一つクッションを入れて、執行認諾約款を必要とするという要件を加えてもよいと私は考えています。
前回山本委員がおっしゃったように、もう一度アンケートを取るということには私は賛成であります。そのときに、考えられる方式を具体的に明示して、そして、この方式を採るときにはどのような条件が必要なのかということも示して、それでも執行力が必要か、そのメリット・デメリットは何かと、きちんと各ADR機関に聞いてみる必要があると思います。
同時に、第三者が客観的に判断できるようなADR機関の資料だとか、例えば仲裁人のリスト、規定集、手続フロー、人的・物的設備を取り寄せてみたらどうだろうかと思います。そのときに、事務局体制がどのようになっているか、調停調書、あるいは和解契約書をだれがチェックするか、ということも不可欠ではないかと思います。
私が前回調査をする必要があると言ったのは、言葉が足りなかったのですが、そのような意味で言ったつもりであります。
そういう主観的、客観的資料によって、既存のADRのうちここならばというところに、法律によって執行力を付与するというのが私はよいのではないかと思っております。
結論としては、できるだけ意見書の線から後退させないことにして、意見書には執行力の付与を可能にするための具体的要件とうたってありますので、それを定めることによってADRの拡充、活性化を図りたいと思っております。
そして、ADR基本法にはこれこれの条件がそろっていて、必要と認められるものは法律によって付与するというふうにその大枠を決めて、具体的にこことここと定めればいいのではないかと思っております。
大急ぎで話したものですから、何か棒読みみたいになって恐縮なのですが、大体申し上げました。
○青山座長 よくわかりました。ほかにいかがでしょうか。
○原委員 質問をよろしいですか。前回は一番最後のところでおっしゃって、今もなのですが、ここだから執行力を付与してもいいという機関があるということで、執行力付与の具体的要件を法律で定めてそこにあげましょうという感じなのですが、これはいろんなADR機関があって、その中でこの要件を満たせば執行力付与ということの認定をしようという考えになるのですか。
○廣田委員 そうではなくて、私の考えは、基本法には大枠で、要するに執行力を与えるというのは民事執行法がありますから、その枠を超えないで、法律で執行力を与えるというふうにするのが筋だと思うのです。執行力というのは非常に強い効力ですから、どこかの認定機関が法律外で認定すれば与えるということにするのは、私はまずいと思います。法律によってこことここには執行力を与える。現在も、公正証書にはこうだ、即決和解はこうだと、法律に全部決まっているわけです。
要するに、基本法では法律によって与える、抽象的な条件を備えて必要と認められるときには法律によって執行力を与える、というものにしておけばいいと思うのです。その基本を定める法律が必要かどうかまた議論があるでしょうが。
実際に与えるのは、具体的に法律にある種の条件を充したときには、立法によって与えればいい。どこかが認定するのではなくて。
○原委員 機関を基本法の中で定めるということではなくて、基本法の中に要件を定めておいて、それに照らし合わせて、このケースの場合は執行力を付与していもいいと。
○廣田委員 そういう方法でなく、私が考えているのは、基本法には大体の抽象的な要件でこういう条件が備われば、必要と認められるある種の機関に法律によって執行力を与えるという大原則を置いてもらうということです。そのことを基本法に書き込んでもらう。しかし、実際にはそれは抽象的なものがあって、法律によって与えると言っても、具体的にどこに与えるか決めません。具体的には、別の法律にするか、民事執行法に追加するか、形はともかくとして、現存の特定のADR機関にこういう形の執行力を与えるという法律をつくるということです。
○綿引委員 今、廣田委員もすべてのADRにおける合意に執行力をとおっしゃっているわけでもないし、そこでの合意に直ちに執行力をとおっしゃっているわけでもないということも承知いたしましたので、そういう意味では安心するのですけれども、廣田委員のようなきちっとした代理人が付いてできた和解は執行まで行かないという御経験はそのとおりなのだと思うのですが、私としましては、執行力というものの重大性、危険性ということを十分に認識していただいて、議論をしていただく必要があるだろうと思います。
要は、いくらいくら支払うという約束をして、それに執行力があるということは、払わなかったときにいきなり給料の差押えをして、そこから取り立てをする。家を差し押さえて競売にかける、こういうことができるのだということを認識して議論はしていただきたいと思います。
私どもも和解などをしているわけですけれども、やはり代理人が付いている当事者とそうでない当事者で話し合いをした場合に、どうしても代理人が付いていない当事者が押されてしまう。裁判所が後見的な役割をしてあげないと、かなり不利益な和解ができてしまうことがある。そういうことを見ておりますので、相対交渉でできた合意に直ちに執行力を与えてしまうということは非常に怖いことだろうと思っています。
消費者金融などがあるADRをつくって、「つくって」というのも変ですけれども、ADRと称するもので消費者と話し合いをして、いくらいくらを支払うという合意をつくる。もし、その合意に執行力を付与されるということになると、債務名義作成会社みたいなものもできてしまいかねないという危険性のある議論だと思います。
前回私なりに申し上げましたのは、基本的には三木委員が整理していただいたところが、まさに当を得ていることだろうと思います。やはりADR機関に何からの執行力を与えるとしても、仲裁判断以上のものになってはいけないだろうということ。要するに、一度は裁判所のスクリーニングを通すような形が必要だろうと思います。
それとともに、そういう厄介な形での執行力を、あえてADRにおける合意に執行力を付与する必要があるのかというところにも相当の疑問を持っておりまして、龍井委員が言っておられたように、ADRというのは自主解決だったはずなのに、何で最後に来て突然国家権力に結び付くのかということで、木で竹を接ぐというか、そういう印象もないわけではない。その辺のことを十分に考えていただいて、この議論をしていただきたいと思います。
もう一点、便宜的と事務局は説明なさったのですけれども、執行力がどうしても欲しい合意ができたときに、即決和解などを利用できないかと考えております。要するに、合意ができましたというものを、裁判所に持っていって債務名義にしましょうという形をもう少しきちっとルート化できないのか。
今回、補充的な資料を出していただいて、即決和解というのは非常に費用も安くて、よい債務名義の取得方法のようなのですが、簡裁の方に聞きますと、かなりお待たせしているという話を聞きまして、例えばADRできちっとした合意ができた場合に、即決和解の手続を早く進められるようなルールをつくるというのも1つのアイデアではないかという気がします。先ほど廣田先生もおっしゃっていたように、合意ができたものを即決和解に持っていくわけなのですけれども、ADR機関が入ってきちっと合意ができたなら、それは他のものより少し速いスピードで即決和解に持っていってあげるというルール化も一つの方策として考えてはどうなのかということです。
いずれにしても、できた合意にそのまま剥き出しで執行力を与えるということは絶対に難しいと考えていただきたいなというのが私の感じです。
○青山座長 時間の関係もございますけれども、特に御発言になりたい方、お願いします。
○三木委員 何度か申しましたように、モデル法の審議においてこの執行力の問題は極めて長い時間をかけて議論されまして、結局は世界的な法統一は難しいということにはなったのですが、その過程で実際に執行力を付与すべきだという意見が一部の国にあるけれども、本当にそういうことを実行している立法例があるのかという話が出ました。そこで、UNCITRALの事務局の方で調査が行われ、その結果が報告されました。もっとも、これはUNCITRALの関心に沿っての調査でありますので、例えば市民間の隣人紛争のような調停のケースまでフォローしたかどうかはわかりません。したがって、網羅性がどの程度あるかということは留保して申し上げたいと思いますが、UNCITRALの調査によりますと、何らの意味で調停に執行力が付与されている法律を持っている国や地域として4つほどありました。
具体的には中国、バミューダ、インド、香港でありました。それぞれ仕組み方は違うのですが、この4つにすべて共通しているのは、仲裁判断と同じレベルの執行力を有するという規定にいずれもなっております。したがって、おそらく仲裁の取消事由のようなものがあるときには、こちらも取消せるという手続保証があるとか、あるいは執行判決や執行決定のようなものを経なければいけないということが主眼だろうと思います。
こうして見ると、比較法的に見ても、先ほど来、廣田委員も綿引委員もおっしゃったように、仲裁を超えるような執行力というのはどうも難しいだろうという気がいたしております。
○青山座長 どうもありがとうございました。時間の関係もございますので、私からもちょっと発言させていただきますが、前回から引き続きまして、執行力の問題を議論いただいているのですが、この問題は非常に難しい問題で、時効の中断の問題よりも更に難しい問題だということは多分、皆さん認識しておられると思います。
この事は、執行力をどう考えるかということからも関係してくる。確かに廣田委員がおっしゃったように、執行力というのは履行促進という効果がある。それが非常に利便性があるということはおっしゃるとおりなのですが、執行力というのは、ある意味では、見方によれば国家権力の赤裸々な発現でありますから、土地収用とか刑事の執行とか民事執行というのは、みんな同じように国家権力が実力をふるって法の姿を現すところであるわけです。
その執行を実際にするのは、勿論、国家の執行機関でありますけれども、その根源たる執行力を付与することをどれだけの手続と機関と要件を持って執行力を与えていいのかどうかということがここで問われているのだろうと思います。
ADRの拡充・活性化のために執行力の付与が必要だということは、アンケートの中でもかなりの答えがありますし、それが利便性があることは間違いないところですので、これについて慎重に議論をしているわけですけれども、今日のところである程度収斂してきたのは、ADRで一致したからといって、それに直ちに執行力を与えるということについては、どなたも賛成しないというか、だれもそんなことは考えてない。執行力を与えるかどうかも議論がありますが、仮に与えるとすれば、相当の要件と機関と手続を厳格に絞った上で与えなくてはいけない。
与える場合には、三木委員がおっしゃったように、仲裁判断の執行力以上のものには自ずからならないというところも、大体の意見の一致があったと思います。
そうしますと、あと議論の対立はあるものの、ADR独自の執行力をどういう形で与えるか、与える方式をどうするかということと、そういうオプションのほかに、綿引委員が先ほどの発言でおっしゃったように、ADR独自の執行力はまだちょっと早過ぎるということになるとすれば、今日は十分に御議論いただけなかったのですが、従来の執行力を付与する即決和解とか、公証人の執行証書、あるいは仲裁でもいいですが、そちらの方に結び付けていく、その結び付け方を工夫するというのももう一つのオプションである。そちらの方は十分に検討していない。ですから、今日の議論をある程度集約したところと、それから、既存の執行力付与の手続を利用するというもう一つのオプションを、次回辺りに更に議論していただくということで、今日の執行力の議論はこれで終わりにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
○山本委員 今のはおまとめだと思うので、私としましては、基本的にはそういう方向で結構だと思うのですが、確かに直ちに執行力を認めるということが問題があるということはそのとおりだろうと思うのですけれども、なお、この段階でその点について、検討する余地が全くなくなるということはいかがなものか、もう少し検討の余地を開いておいていただく方がいいのではないかなと思っております。
公証人とパラレルのような形でアプローチするという方向性というのは、例えばドイツで弁護士和解の制度があり、それについて執行力を付与するような制度があるように承っておりまして、一定の要件を前提として、そのような仕組みそれを検討するという余地はまだあるのではないでしょうか。
○青山座長 私の言っているのは、ADRで合意したことに対して直ちに執行力を与えるということはない。両者が合意したら、それで直ちに執行力が与えられるということは、おそらくどなたも考えていない。
○山本委員 どんなADRということの意味の問題なのですが、それはADRに一定の要件を付した場合でも、なお、裁判所の決定がなければ付与できないという。
○青山座長 いや、そういうことは言っていないのです。そうじゃないのです。どんなADRでも、両当事者がそこでADR機関の委員がこれでいいですねということで合意したら、それで直ちに執行力が与えられるということはあり得ない。だから、与えられるとすれば、ADR機関を、どういう要件を備えているADRか、どういう手続が行われたADRかということを明確に絞って、そうした上でなければ執行力は与えられないだろう。与えられる場合に執行判決みたいなものが要るかどうか。それはちょっと別の問題かもしれない。その余地はある。その余地のほかに既存制度の利用型はあるということを言ったのです。
○山本委員 それであれば、まったく異存はありません。
○廣田委員 公証人とパラレルに考えるということなのですが、先ほども言いましたけれども、執行認諾約款を付けるということを1つのオプションとして、これも十分に検討していただきたいと思うのです。執行認諾約款を付けるということはワンクッション入るわけですし、当事者間の合意を元にしておりますから、これはADRらしいと言ってもいいと思います。公証人とのバランスもとれますので、そういうところにウェートを置いて議論してください。
○青山座長 要件の中にそれは入っているのです。
○三木委員 ちょっと言葉尻をとらえるようで申し訳ないのですが、確認ですが、先ほどから廣田委員もどんな機関に付与するかという言い方をされ、山本委員もそういう言い方をされ、座長もそういう言い方をされましたが、私が理解している限り、ドイツの弁護士和解にしても、これは山本委員に間違っていたら教えていただきますが、フランスの制度にしても、機関に執行力を付与するという制度はないのではないかと思います。それは機関ではなくて、特定の個人、要するに、資格を持っているとか、特定の素養を持っている個人、つまり公証人であるとか、弁護士であるとか、そういう方が関与した和解に執行力を付与するというケースはありますが、機関を認定するというのと、個人を認定するというのは別な議論ですので、議論が機関に収斂されるのは私は困ると思いまして、個人的には機関というのは非常に危険だと思っていますので、少なくとも個人と機関は区別して議論を進めていただきたい。
○青山座長 認定調停人みたいなものをつくるという制度ですかね。
○三木委員 そういう制度が諸外国に多少あるのは存じていますが、機関というのはあまりないのではないかと思います。
○山本委員 ドイツにあるのではないかと思うのですが。州が認定したADR機関について、調停前置にして、調停が成立した場合には執行力を付与するという制度があったのではないでしょうか。
○三木委員 少なくとも、あまり多くの例はないだろうと思いますので、いずれにしても、議論を分けていただく必要があろうかと思います。
○廣田委員 日本の民事・家事調停も機関に与えられる執行力です。
○三木委員 それは大きな議論になるのでここで詳しくは申しませんが、日本の民事調停や家事調停の性格は、通常のADRとはかなり異なると思います。
[その他]
○青山座長 よろしゅうございますか。それでは、当検討会の議論と関連する動きについて、2、3紹介させていただきましたいと思います。
3つあるのですが、まず第一に、推進本部の顧問と座長の懇談会ということについて御報告を私の方からいたします。
6月19日に司法制度改革推進本部顧問と、検討会座長との懇談会が開催されまして、私も当検討会の座長として出席し、検討会の検討状況等を御説明するとともに、意見交換を行ってまいりました。議事概要は、既に推進本部のホームページに掲載されております。議事録も、私は既に入手しておりますので、御覧になった形もいらっしゃるかと思いますが、ごく簡単に概要だけ報告させていただきますと、当日は検討会の座長、あるいは代理は全部出席したのですが、顧問の方は、佐藤幸治座長、奥島孝康顧問、小島明顧問、3人しか御出席賜りませんでした。推進本部からは、推進本部副本部長の森山法務大臣が出席されました。その4人を相手に私ども御説明をし、質疑が行われたわけでございます。 私が報告いたしましたのは、司法制度改革審議会意見書の言葉を引きまして、裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるようにADRを拡充・活性化するための、基本法をも視野に入れた共通的基盤の整備をすることが我々の任務であり、それは16年3月までにこの任務を仕上げるようにということで、今、検討を進めている。検討会のメンバーは、これこれの方で、全員非常に熱心に各回に参加していただいているということと、具体的に今検討しているのは、総論的な部分と各論である時効の中断とか執行力の付与とか裁判手続との連携とか、法律扶助といった問題であるということを御説明いたしました。
特に御質問もなく、大変御苦労様でございますが、よろしくという御挨拶があっただけでございます。
以上でございます。何か御質問ございますか。
その次に、UNCITRALの関係ですが、三木さん、簡単にお願いします。
○三木委員 先ほど申しましたように、先月に総会でUNCITRALのモデル法が成立いたしました。当然どういう形で使うにせよ、この検討会の議論に反映させるべきだと思っておりますので、近い将来、お時間をいただいてまとまった報告をいたしたいと考えております。
○青山座長 その際にはモデル法の翻訳も是非お願いいたします。
その次に、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議でございますが、資料6-8を御覧いただきたいと思います。この資料のとおり、先月の6月13日に正式に発足したということでございます。そこでの会議は、これから本格的な議論が始まるということでございますので、検討状況につきましては、いずれ事務局からまとめて御報告いただくということにしたいと思います。
それでは、最後に、5月に開かれました第4回の検討会で、私がおそるおそる提案させていただきましたことを覚えていらっしゃいますでしょうか。夏休みの宿題ということでお願いしたいと思っております。
その折に申し上げたことをもう一度リマインドしていただきたいのでございますけれども、ADRの総論、すなわちADRの拡充・活性化に関する基本理念、例えばADRの拡充・活性化への期待や現状の問題点などにつきまして、次回の検討会開催日であります9月30日頃を目途に、委員の皆様にレポートを提出していただけないかというお願いでございます。分量はA4で2、3枚程度のものをイメージしておりますが、勿論、それを超えた大論文をお書きいただいても結構でございます。
なお、提出していただいた後に、それをとりまとめて、個人名も付した形で公表したいと考えておりますので、そのような前提でお考えいただきたいと思っております。これは御了承を得てからと思っておりますので、御了承いただけますでしょうか。
私としては、最初のときに議論がありましたように、我々は誰もADRの専門家というのは一人もいない。だから一から勉強して、そしてこの大事な問題を勉強しながらやりましょうということをここで誓い合ったように思います。
その手前もありまして、5か月経ったところでございますけれども、ある程度もやもやしてきて、考えがまとまりつつあるところだと思います。ちょうどいい機会でございますので、ADRというのは何だろうか。日本におけるADRの将来を考えて、どういうADRをつくったら、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢になるものができるのではないだろうかという、各々の思いの丈をぶつけてもらいたい。
総論と言いましたけれども、必ずしも総論にこだわるわけではありません。総論については、いろいろのものも出ております。むしろ各論に入っていただいても勿論構いません。余り細かな議論というよりも、大きな議論で、日本におけるADRをどうするか、自分ならこうしたいということをお書きいただいたら、それが実現してもしなくても、あのときにこういう議論がなされたのだということで、いつかは必ず役に立つときが来るのではないか。我々委員として、そういうことをするのが課されている責任の一端ではないかと私自身思いますものですから、勿論、私も書きますので、皆さんにもお願いしたいと思いますが、早く退席された方が二人いらっしゃいますけれども、御了承を得たいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
○綿引委員 公表を前提とするという点については、私はちょっと再検討をお願いしていただきたいです。この段階では。
○青山座長 氏名を特定しない公表というのはありますかね。
○綿引委員 正直申し上げて、ものにまとめて書く、少なくともレポートという形で書く、まだそこまで熟したものが何もないものですから、この段階での未成熟な文章が公表されるということについては、私はそのような責任を持って書く自信は全くないというのが率直なところです。
○青山座長 そういう御意見はもっともだと思いますので、それではお出しいただくのはお出しいただく。それの公表の仕方は、こういう議論はオープンにしておりますけれども、書面で出されたものはそれとは自ずから同じ扱いをしなくても済むと思いますので、論点整理には使わせていただきますけれども、そのままの形で出すかどうかは事務局の方に少し知恵を出していただこうと思っておりますが、綿引委員、それでよろしゅうございますか。
○綿引委員 はい。できれば匿名でも何でも文章をそのまま公表ということではなく、ここでの議論の材料になるようなレポートであれば少し気楽に書けるだろうと思いますが。
○青山座長 わかりました。匿名ということでもそのままは出さないようなことを考えたいと思います。また、公表と言いますか、その方法についてもまたお諮りいたします。それでよろしゅうございますか。
○綿引委員 その段階で、また何か言わせていただくかもしれません。
○青山座長 とにかく9月30日を目途に、まだ、我々卒業したわけではありませんので卒業論文までいきませんけれども、1学期が終わったところのレポートのつもりでお書きいただければと思います。
それでは、最後に次回の日程を確認させていただきたいと思います。次回は2か月以上先になりますけれども、9月30日の月曜日に裁判手続との連携につきまして、若干本日の議論の続きを行った上で、同じく審議会の意見書で指摘されております専門家の活用について検討していきたいと思います。
また、その際には、第1回の検討会においてお諮りしましたように、オブザーバーとして出席いただいております隣接法律専門職種の方々を始め、様々な専門家からのヒアリングも実施させていただく予定でおります。ヒアリング先につきましては、事務局において適宜調整していただくことにしたいと思いますけれども、いずれにせよ多くの方からお話を伺うことになりますので、今回同様、開始時刻を午後1時30分からということにさせていただきたいと思います。
次回は、多くの検討会が重なるために、場所もいつもとは違う会議室になるということでございます。場所、開始時刻等は追って事務局から御連絡をいたします。
今日は時間も大変超過いたしまして御迷惑をおかけいたしました。その上、夏休みの宿題をお願いいたしまして、更に暑い夏をお過ごしいただけるのではないかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。