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ADR検討会(第7回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時 平成14年9月30日(月)13:30 ~17:00

2 場所 永田町合同庁舎第1共用会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、 廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)
(説明者)
畑   光(日本行政書士会連合会理事)
北野聖造(日本司法書士会連合会会長)
松岡直武(日本土地家屋調査士会連合会副会長)
石井宏尚(日本税理士会連合会専務理事)
大槻哲也(全国社会保険労務士会連合会会長)
渡邉一平(日本弁理士会副会長)
清水文雄((社)日本不動産鑑定協会副会長)
藤井教子((社)全国消費生活相談員協会理事長)
玉本雅子((社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会副会長)
(関係機関)
最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)
日本行政書士連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会
日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)
古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議題

(1)ADRにおける専門家の活用について
 ○専門家からのヒアリング
  • 日本行政書士会連合会
  • 日本司法書士会連合会
  • 日本土地家屋調査士会連合会
  • 日本税理士会連合会
  • 全国社会保険労務士会連合会
  • 日本弁理士会
  • 平山善吉委員(建築関係)
  • (社)日本不動産鑑定協会
  • (社)全国消費生活相談員協会
  • (社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
 ○説明・討議
(2)その他

5 配布資料

資料7-1 日本行政書士会連合会
資料7-2 日本司法書士会連合会
資料7-3 日本土地家屋調査士会連合会
資料7-4 日本税理士会連合会
資料7-5 全国社会保険労務士会連合会
資料7-6 日本弁理士会
資料7-7 平山委員
資料7-8 (社)日本不動産鑑定協会
資料7-9 (社)全国消費生活相談員協会
資料7-10 (社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
資料7-11 説明資料(専門家の活用)
資料7-12 追加提出資料(最高裁判所)
資料7-13 ADR検討会において出された意見等(各論)
資料7-14 ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議の検討状況
資料7-15 国民生活モニター調査(5月実施)調査結果

6 議事

[開会]

○青山座長 ただいまから、第7回「ADR検討会」を開会いたします。早速、本日の議事に入ります。
 お手元に議事次第が配布されていますが、本日は、ADRにおける専門家の活用というテーマで、専門家の方々からのヒアリングを中心に、事務局からの説明も含めて議論を行いたいと存じます。
 なお、ヒアリングの間に一度短い休憩を挟む予定でございます。
 終了予定時刻は5時ということになっておりますが、若干伸びることとなろうかと存じますので、御了承いただきたいと思います
 また、前回の検討会では、裁判手続との連携につきまして本日の検討会で引き続き議論を行うと私から申し上げましたけれども、このように時間的余裕がない状況でございますので、本日の討議の続きとともに、次回の検討会に先送りさせていただきたいと思います。
 それでは、議事の第1番目といたしまして、議事次第にございます10名の専門家の方々からのヒアリングに入りたいと存じます。
 各専門家の方々からは、各職種の専門性を活かしたADRへの関与の現状と今後の可能性という問題につきまして、御説明をお願いしてございます。
 ヒアリングの進め方でございますけれども、全体を3つのグループに分けまして、グループごとにお1人10分ずつの御説明をいただいてから、一括して全体で15分ないし20分程度の質疑を行うというサイクルで、3巡する形で行いたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。御出席いただく方々の御紹介はグループごとにさせていただきたいと思います。
 それでは、早速最初のグループの皆様を、御発言いただく順序で御紹介させていただきます。
 まず、日本行政書士会連合会の畑光理事でいらっしゃいます。
 日本司法書士会連合会の北野聖造会長でいらっしゃいます。
 日本土地家屋調査士会連合会の松岡直武副会長でいらっしゃいます。
 お三人の方にはお忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 なお、ヒアリングでございますが、あらかじめお願いしたいことがございます。それは、10人という大変多くの方々から御説明をいただくことになりますので、大変恐縮でございますが、10分という説明時間はどうぞ厳守していただきたいとお願いいたします。そのために、重ね重ね失礼でございますけれども、残り2分の時点と、残り30秒の時点で、事務局の方から合図があるかもしれませんけれども、それも御了承いただきたいと思います。
 それでは、早速、日本行政書士会連合会の畑理事からお願いしたいと思います。なお、資料7-1を御提出いただいております。どうぞよろしくお願いたします。

[専門家からのヒアリング]
[日本行政書士会連合会]

○説明者(日本行政書士会連合会 畑理事) 御指名を受けましたので、日本行政書士会連合会の畑光が御説明申し上げます。
 行政書士という仕事は、法律では官公署に提出する書類の作成、及び権利義務に関する書類の作成ということになっておりまして、官公署に出す書類というのは非常に幅が広いわけですけれども、その中で更に専門性のある税務に関することは税理士さん、社会保険、労働保険については社会保険労務士さん、同じ官公署でも法務局、裁判所、検察庁については司法書士会さん、その他登記については土地家屋調査士さんの分野もありまして、それぞれが専門的に分化されておりますが、残った分については行政書士が幅広くやっておるということを冒頭申し上げて、業際と言いますか、それぞれの関わりがありますので、今、それぞれ業界が集って、業際でトラブルを起こさないようにやろうとしているところであります。
 それでは、行政書士として、このADRにどのように参加するか、あるいはどのように関わってきたかについて、お手元の資料に出させていただきました。
 非常に大きな契約や紛争性のあるものは弁護士さんがおやりになるわけですけれども、金額の大きい少ないは別にいたしましても、日常市民の生活の中で起きるいろんな契約、あるいは遺産分割の相談、そのようなことの、いわゆる権利義務に関する書面。
 それから、風俗営業、割に都会派的な仕事ですけれども、マージャン屋、パチンコ屋、キャバレー、バーといったような公安委員会の許可を取るような許認可の仕事といったようなもの。それから建設業の許可申請や宅建業の免許申請。その他、厚生労働省の医薬品の認可とか、財団法人の許可だとか、そういうこともやっているわけでございます。
 そういうものに関わりながら、東京の場合は各区役所単位で週に何回か常設の無料相談会等を開きまして、都民や区民の相談に応じているということで、最近特に行政書士の存在を認めていただくようになってまいりました。
 そういうことで、我々としても、いろいろな研修会等をやりまして、法的知識の充実に努めておるところでありますが、資料の2に書いてありますように、自分たちのつくる書類というのは、将来どういう紛争が起きても耐え得るような証拠としての重要性を認識させるといったことでつくっておりまして、後日紛争になったときに、どのように証拠能力を付けるかといったような面で進めておるわけであります。
 さらに、依頼者との話合いといったことで、話術等を訓練いたしまして、あまり高度な専門用語を使わないでどのように理解させるかといったようなことで、日常の生活に関与しているということで、将来ADRが国民になじんでまいりましたならば、我々としても、それに十分に参加し、市民の立場から代理人として参加できるのではないかと思っているわけであります。
 例えば、貸金業の登録なども我々がやるわけですけれども、そういうことで業者の内訳というか、内面も非常によく知っておるという関係もございまして、今、多重債務者といったサラリーマンや一般の市民の方で、クレジットやサラ金などで苦しんでいるものがありまして、司法書士会等でも非常に積極的に参加されているわけですけれども、我々もこういう相談が非常に多いということで、特に貸金業者で悪質なものが増えまして、最近、東京都の場合は、貸金業の登録を申請するときは、弁護士、行政書士以外の代理人は認めないというふうにしていただいて、変な貸金業というようなものをできるだけ防御しようという行政もおやりになっているようですけれども、我々としては、そういう業者の問題と併せて、借りる方の立場から、いろいろな相談が持ち込まれるということでございます。
 先ほどの建設業の許可申請との関係がございまして、建設業の入札参加等につきましては、経営事項審査というものを非常に厳しくやっておりまして、そういうものの点数を計算するということを業者に代わってやっているわけですが、一方ではその建設業者と民間との紛争といったことがございまして、裁判に持ち込む前に何とか話がつかないかとか、どうしたらいいかという相談が非常に多いわけでございまして、そういう段階で取り上げて、できるだけ円満に解決するようなことを、今は正式な機関ではありませんけれども、努力しているというところでございます。
 更に自動車のナンバープレートを付けるという仕事があるわけですけれども、その登録の申請等に関わってディーラーと付き合っているということがございまして、業者にかかわるいろいろな問題等についても、法廷に出るようなことではなくて、できるだけ民間で大げさにならないように話をつけてはどうかということでやっておりますけれども、やはりADRが立ち上がってくるならば、そういうところで権威のある解決をするように目指していきたいと思っております。
 我々としては、いろいろ議論いたしました結果、2つの関わり方を持とうとしておりまして、1つは、ADR機関の設置と運営ということでございまして、機関の設置になりますと、経費をどうするか、あるいは人材がちゃんといるかといったような問題もありますけれども、本日のお手元の資料にありますように、設立準備のためにこれから研究会を更にやっていくわけですけれども、当事者双方が主体となって解決する、あるいは行政書士は当事者への助言者たる立場で解決に努力する、手続は簡易で廉価、迅速であることとする、この機関は安定的、継続的に国民に法的サービスを提供し、早期に紛争の解決を図るといったような目的で立ち上げようじゃないかという議論をしているところであります。
 ただし、こういうもので立ち上げるにしても、先般来からこの検討会でも御検討になっておりますけれども、公正性、中立性の確保、あるいは既存の紛争解決制度との調整、特に裁判所による民事、あるいは家事調停制度との関係には大いに調整が必要であろうと考えております。
 それから、費用の調達等はこれから研究していくわけですが、いずれにいたしましても、このADR機関の概要の中では、行政手続にかかわる問題と、民民の紛争の問題もあります。行政手続は、行政不服審査法等で申請したけれども不許可になったとかいろいろあるわけですが、それをADRで何かうまく解決する方法ができないかということと、特に民民紛争で、今は音楽著作権というのが非常に問題になっておりますけれども、食事とかに行きますとカラオケを歌わせるところがあるわけですけれども、そことJASRAC、音楽著作権協会とで、著作権を払わないといったような、日々紛争が起きているわけで、こういうことをADR機関で解決できないかなということを具体的には思っております。
 次に、ADRの担い手といたしましては、我々は全国的に3万5,000 人会員がいるわけでして、各都道府県、市町村単位には必ずいるわけですので、カラオケのない町はないわけでして、そういうところで解決していこうかということを考えております。
 もう一つは、他に設けられているADR機関に代理人として、一般市民の代理人、もしくは代行、あるいは補佐という立場で参加したいということで、国民生活センターとか建設工事紛争審査会とか、建設紛争調整室、交通事故紛争処理センターといったところに顔を出してみたいと思っております。
 以上で終わります。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本司法書士会連合会の北野会長にお願いいたします。資料7-2を御提出いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

[日本司法書士会連合会]

○説明者(日本司法書士会連合会 北野会長) 御紹介いただきました連合会会長の北野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はこのような機会を私どもに与えていただきまして、誠にありがとうございます。また、検討会委員各位がこのADR創設に向け、熱心な検討を重ねられていることに深く敬意を表しますとともに、その成果に大いに期待しているところであります。
 私の発言の要旨は、今日の資料にお出ししておりますので、御参考にしていただきたいと思います。
 私たち司法書士のことでありますけれども、現在の会員数は約1万7千有余名全国的に存在いたしております。そして、主たる業務が国民生活と強く結び付いた登記にかかわるものであることから、地域的偏在は少なく、全国にくまなく存在しているとも言えます。このように司法書士に対する一般的なイメージからすると、司法書士が関与するADRについても、法律の専門家としての役割が期待されているのではないかと思います。
 しかし、私たちは登記そのものをADRの目的、あるいは対象として行うことは想定いたしておりません。と言いますのは、登記を巡る紛争をおおまかに分析しますと、手続上の問題と登記原因となる実体契約上の問題に分けることができます。手続としての登記は、公法的な非訟行為とも言われ、私的紛争解決を目的とするADRにはなじまないと思っているところであります。一方、私的紛争における登記にかかわる問題は、まさに実体契約を巡る紛争でありますので、このような紛争を一括して登記という概念で括ることは不適当だと思っているわけであります。
 ただし、ADRを実践するについては、主宰者並びに関係者に中立性、公正性が強く求められると思いますが、司法書士は法的手続を通じて当事者の利害調整に長年携ってきたことにより、職能としての中立性、公正性といった特性を醸成してきた歴史があり、そのような意味では登記の専門家としての司法書士の特性は活かし得るものと考えている次第であります。
 また、司法書士の一方の重要な職務として、裁判所に提出する書類の作成があります。言うまでもなく、裁判手続における書面の役割は極めて重要であり、民事法律扶助法においては、書類の作成自体、すなわち司法書士の事務も法律扶助の対象になっています。司法書士の業務としての裁判所に提出する書類作成とは、単に書面作成にとどまらず、依頼者の求めに応じて訴訟などの裁判手続全般について、説明、助言を行っているというのが実態であります。
 司法制度改革審議会が行った民事訴訟の利用者に対する調査結果のうち、裁判手続の公正性、裁判結果の妥当性などの質問に対する本人訴訟で裁判をした利用者の回答を見ると、予想を超える満足度、理解度が得られていることが読み取れます。
 この結果については、裁判所の努力によるところも大きいと思われますけれども、本人自身が訴訟を遂行したことにより理解度が高まることは勿論、ある意味での達成感、満足感があることは間違いないと思われます。
 ADRについては、とりわけ当事者の主体的関わりが重要であり、本人訴訟により国民の司法へのアクセスを支援している司法書士の経験は、有用なものとして活用できるものと確信するところでもあります。
 また、個々の司法書士がその日常職務により、国民の家庭生活や経済活動にかかわる法的問題について十分に相談に応じることを大切にしておりますが、また、司法書士会においても、事業として恒常的な相談活動を積極的に行っているところであります。
 そこでは、相続や土地・建物の売買、賃貸借、高齢者の財産管理を中心とする成年後見問題など、国民の誰もが遭遇する身近な問題を始め、消費者の生活再建にかかわる問題などの幅広い相談に応じています。
 更には、地域によっては自治体や消費生活センターなどの相談、苦情処理手続への参加や、その法的解決に向けての連携活動を行っている司法書士会も存在しているところであります。こうした相談活動も、十分にADRに活用できるものと考えているところであります。
 また、来年4月1日施行の改正司法書士法により、司法書士に簡裁の事物管轄を上限とした訴訟、和解、調停の代理、並びに裁判外の和解の代理が新たに認められることとなり、少額な紛争や、生活にかかわる紛争について、まさに専門家として活動することが期待されているところでもあります。
 司法書士がかかわるADRは、法律的主張を整除し、厳密な法的判断の下に結論を見出すという言わば裁断型のものではなく、紛争当事者が十分に話し合い、経済性、合理性や現実性を加味し、主体的判断によって合意に至るというあっせん的なものを主軸とすべきと考えています。
 例えば、暮らしの紛争解決を支援するセンターを設立し、相談から始まり、事案に応じてあっせん、調停などの手続を主宰してその解決を図るとともに、他のADR機関と連携して初期的な紛争処理の振り分けを行う、国民に身近な窓口として機能すべきことを目指します。
 そのためには、導入部となる相談活動について、可能な限り対象範囲を広く取ることが求められます。また、司法書士はその専門的知見をもって、ADRを利用する側からも、代理人や助言者としての役割を担うことができると考えています。
 その際、司法書士が主宰者又は利用者の代理人として活動するADRが、国民に手軽に活用される制度となるよう、弁護士法72条については、特段の御配慮をいただきたいと思っているところであります。
 ADRの法的効果に関しましては、執行力と時効中断効、裁判手続との連携が大きな問題であると思います。時効中断効が認められないとすれば、ADRは催告以下の手続ということにならざるを得ず、現実的ではないと考えています。
 更に執行力、裁判手続との連携については、個別のADRの特性ともかかわることであり、慎重な議論が必要だと思っているところでもあります。
 今後、司法書士はその有する専門性を更に高めるとともに、問題解決に向けた交渉能力、コミュニケーションを促進させるための技能の習得に向け、研鑽を積み、国民に身近なADRをお約束し、私の意見表明といたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、次に日本土地家屋調査士会連合会の松岡副会長にお願いいたします。資料7-3を御提出いただいております。どうぞよろしくお願いします。

[日本土地家屋調査士会連合会]

○説明者(日本土地家屋調査士会連合会 松岡副会長) 御紹介いただきました日本土地家屋調査士会連合会の松岡でございます。
 資料7-3のグラフと数字を中心に御説明させていただきたいと思います。
 私ども土地家屋調査士の業務は、土地家屋調査士法では不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量・申請手続又は審査請求の手続と定められております。
 表示に関する登記と申しますのは、権利の対象となる個々の土地建物の物理的な現状、つまり姿、形をリアルタイムに正確に登記簿に記録するための登記で、それによって不動産に関する権利の保全、取引の安全を図るとともに、租税に関する資料、あるいは土地利用など行財政施策の基礎資料としての役割もございます。
 今、日本の国土はカミソリの刃のごとく細分化されておりまして、全国で土地の筆数は人口の倍を超える2億7,000 万筆あると言われておりますが、不動産というのは文字の感じから見れば全く変化なく床の間に鎮座しているように見えますけれども、物理的に、あるいは法律上は絶えず変化しております。
 資料1は、1年間の表示に関する登記の申請件数と筆数ですが、土地の登記では実に430 万件、860 万筆もが登記事項に変更ありとして申請される数です。そのうちの約530 万筆が土地境界の確認を要する登記ということになっております。表示に関する登記は法律的な面と技術的な面の双方の知識・技術が必要になりますので、ほとんどの場合、土地家屋調査士が代理人となって、所有者に代わって地図や境界の調査、測量、申請手続をしているわけで、日本で土地境界の調査、確認、鑑定などを職業としている唯一の専門家とも言えると思います。
 これからお話しするADRは、この地図と境界の専門家である土地家屋調査士の専門性を最大限に活かしたものとして、日本土地家屋調査士会連合会が取り組んでおります境界紛争解決のためのADRです。
 境界が不明であったり、紛争があったりすると、家を建てたり売り買いしたりする場合、せっかくの権利を実現することができなかったり、道路や公共施設をつくるとき、土地買収ができなくてインフラ整備ができない。何よりも境界は朝晩目につくだけに、紛争の存在というのが精神衛生上非常に悪いとか、いろんな弊害があります。
 境界紛争の原因にはいろいろありますが、争いの端緒を端的に表したのが資料2の模式図になっております。日本では境界の概念として2通りありまして、1つは登記された土地の地番境、例えば1番地と2番地の境目、私たちは筆界と呼んでいます。もう1つの境界はそれとは別に、所有者や占有者が、契約とかあるいは思い違い、占有状況の継続などによって自分の所有権の及ぶ限界としてそれぞれに考えている境界、これを私たちは所有権境とか、あるいは占有境と便宜呼んで区別しております。
 この図の上の方に現地の占有境と登記簿上の地番境が一致しているときには紛争が起こっておりません。しかし、下の図のように、時として本人の認識する境界と、登記された地番と地番の境目が一致しないということがあります。地番境といいましても、ほとんどの場合、明確に境界の杭が入れられているわけではなくて、また、これまでの地図づくりや面積表示の多くが明治初期の地租改正時に測量されたままの土地が多いとか、いろいろな歴史的な過程から地番境が明確でない場合が多いからでもありますが、この両者が一致しないときに境界紛争となるというケースが多いと思います。
 紛争になったときの訴訟には2つの形態があります。1つは、地番境を明確にしてくださいという境界確定の訴えとして、ストレートに提訴される場合。もう1つは、所有権の及ぶ範囲を訴訟で確認するための所有権確認の訴えです。しかし、この境界にまつわる裁判の審理には地番境の特定など極めて専門性の高い知識をもって争点整理をする必要があることもあって、解決までには非常に時間が長くかかっております。
 資料3は、土地を目的とする訴えの申請件数ですが、勿論、このほかに訴訟にこそなっていないが、火種がくすぶり続けているような例もたくさんあります。
 資料4、5は、訴訟が提起された場合の平均審理期間ですが、一審から高裁での判決まで5年以上かかっている件数は、土地境界に関して言えば3分の1以上。一審から最高裁まで行けば10年以上かかっている例も少なくありません。
 ところで、訴訟の目的物の価格と言えば、多くの場合、争いの範囲というのが、ブロックの外面か中心かといった数センチという例が多くて、面積にしてもごくわずかなものですが、資料6にありますように、土地境界で見れば6割以上が90万以下です。つまり、費用対効果、かける労力と時間から見た場合は、当事者にとりましても、裁判所にとりましても、また、弁護士先生にとりましても、間尺に合わないというのが境界裁判と言われております。
 境界訴訟は現場の地面の争いではなくて、人格をかけた争いであるとも言われますけれども、意地とメンツをかけての争いでもあります。
 その上に境界問題の特殊性として、ほかの訴訟と違って、争いの相手が世の中で最も争いたくない、いつお世話になるか分からない隣人であるということもあります。
 一方、先ほど申しましたように、資料7のように、土地家屋調査士は毎日の日常業務が境界と対峙しているわけで、依頼された登記申請を全うするために、境界の特定・確認のために調査して、隣接の所有者に説明して、お互いの納得を導き出して境界を確認している。その結果、以後の境界紛争を防止したり、争いの一歩手前まで行っていた境界への不安を解消していることに役立てているという背景があります。ADRでは、そのノウハウを活用して、社会に数多く見られる境界紛争を専門家としての知識、経験を活かして、より迅速、的確にできるだけ市民の負担を軽くして、しかも隣人と争っているという心の痛みを感じさせないような解決を図ろうというものです。
 資料8を御覧いただきますと、最近、民事調停委員等として、約330名の土地家屋調査士が裁判所に採用され、そういった面で紛争の解決に協力しているところですが、日本土地家屋調査士会連合会では、裁判所からの境界の鑑定依頼に応える体制を構築しているほか、ADRが今ほど言われていなかった十数年くらい前から境界紛争をもう少し早く解決し、その結果を速やかに登記に反映させて、できるだけ廉価に解決できないものかという研究を続けてまいりました。
 境界問題相談センターと名づけておりますが、現在、東京、大阪、愛知の3つの単位会で本格運用に向けての検討を続けております。
 このADRの特色は、境界問題の多くは、積極的に他人の土地を奪いにいったというのでなくて、単に境界が分からないといった不安とか、あるいは隣人への疑念である場合であって、その不安とか疑念を、専門家が相談に乗ったり資料や現地を調査したりして、あるべき位置を解明し示すことで納得し、結果として本格的な紛争の一歩手前で解決することが多いといったことに着目して、相談部門を充実させるということにしております。
 紛争処理センターなどと言わずに、境界問題相談センターとしている所以でもありますが、更に必要であれば地番境の鑑定をして、まず争点を整理することとして、調査部門、境界鑑定部門を設けております。
 調査士会ではこれまでも裁判所からの境界の鑑定依頼に応えるべく、鑑定委員会をつくって受け皿と能力担保のための研修の充実を図ってきましたが、会によっては資料センターというのもございますが、こういったものもADRで活用しようということを考えております。
 あっせん・調停部門では、境界問題というのは、建築工事とか遺産分割、塀の設置とか、さまざまな原因があり、解決方法にも多様性が考えられますので、司法書士、税理士、建築士、場合によっては不動産鑑定士等の力をお借りして、専門家の協働体制を取ることを予定しております。
 また、特に弁護士法72条の関係もありますが、弁護士先生の紛争調停能力、あるいはノウハウをお借りしようと、試行会では地元の弁護士会にも協力をお願いしつつあるところです。
 また、センターでは、地番境と所有権境という両方の境界に関する紛争の解決を考えておりまして、紛争解決の結果は確実に登記簿に反映させることによって、以後の紛争を防止すること、権利の保全に役立てることを考えております。
 資料9は、境界ADRと他の相談窓口、紛争解決機関との連携をイメージ図にしたものですが、裁判制度との関係では、土地境界が関係する訴訟にあっては、境界問題相談センターとの間で前置あるいは移行のような形で、また、ADRでの調査資料や鑑定資料を活用していただくことによって、裁判の迅速化、あるいは適正さの確保、結果として裁判費用の節減にもなるかと思っております。
 また現在、別途地番境紛争のみを扱う行政委員会型のADRも検討されているとお聞きしますが、このADR組織では土地家屋調査士が委員会の委員、あるいは代理人、鑑定人等として参画させていただく等として、あるいは境界問題相談センターが前置機能のような役割を果たすことによって、効果的な連携を図っていきたいと考えております。
 まだ試行、あるいは検討中でございまして、財源の問題とか研修体制とかさまざまな問題がありますが、日本土地家屋調査士会連合会では、土地家屋調査士の専門知識、経験を活かして、より国民のニーズに応えるようなADRを構築したいと考えております。
 以上です。

[質疑]

○青山座長 どうもありがとうございました。
 さて、ただいま3機関からいただきました御説明につきまして、ここで15分ほどの質疑の時間を設けたいと思います。御質問の際にはどなたへの質問であるかをあらかじめおっしゃっていただいて、御質問をしていただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。

○原委員 御三方に。それぞれ皆さんADR機関をつくられるということでの検討に既に入っていらっしゃるということですね。機関というのは、ここでの議論を踏まえながら、それを生かす形だとは思うのですが、やはりそれぞれニーズが高いというように把握していらっしゃって、おやりになるというところなのか、それともこれからニーズを掘り起こしていくというようなところなのか。皆さんそれぞれ全部つくられているという感じなので、どうかなと思ったものですから、その辺の雰囲気、ニーズがあるからやるというのか、それともこれからニーズを掘り起こすということなのか。
 それから、司法書士会と土地家屋調査士会とで対照的だったのが、弁護士法72条の話で、司法書士会さんの方では、あまり弁護士法72条の規制がかかってこない方がよくて、ある程度フリーにやらせていただきたいという感じなのですが、土地家屋調査士会さんの方は、弁護士さんにそこの部分は依頼したりということのようですが、その辺りは大変お答えしにくい部分でもあるのかもしれませんけれども、ちょっと感触だけでも。

○青山座長 それでは、その2点について、最初の方は皆さん全部への御質問ですね。

○説明者(日本行政書士会連合会 畑理事) 行政書士会としては、ADRを積極的に立ち上げようかなという立場を取っておるのですが、全方位ではなくて、著作権という問題がございまして、これは弁理士会が既に知的財産権のセンターを弁護士会と共同でおやりになっているのですけれど、いわゆる工業所有権四法にかかわる問題といったことかありまして、著作権も若干おやりになっているようですけれども、著作権というのは文化庁が所管しておりまして、これはその創作性があるかないかということではなくて、誰が先にやったか、それから、公表したか、おおむね50名以上に開いたときに公表したと言っているようですが、中身の審査はやらないでやっているのですが、それはそれでいい。それから、著作権法105 条であっせんとか紛争の委員会が文化庁に設けられているわけです。
 そこで、カラオケなどに行きますと、実際にお客からは20円なり200 円なりを取っているわけですけれども、それをJASRACに払わないという店もたくさんあるわけです。
 我々はたまたま居酒屋などに行ってカラオケをやろうとすると、JASRACから払えと来ているというのに遭遇することがあるわけですけれども、そうすると、訴えるの訴えないの、そんなもの5年前からやっているじゃないかと言って取り立てに入っているということで、お店の中でガンガンやっているケースを何件か見たのです。それが裁判になるかどうかは別にしまして、警察へ告訴するぞとJASRACは言う。店のママさんたちは、そんなこと言ったって儲かっていませんよと言っている。お客からは200 円なり取っている。私、東京におりますけれども、日常、歌舞伎町や上野や新橋を見ているといっぱいあるわけです。
 それを何か民間の紛争処理機関でやらないと、カラオケはホテルに行ってもやっているわけですから、そういう著作権のADRのような機関をつくって、民間的に早く解決してあげるといったことはないかというのは、かねがね我々の中で話が出ておりまして、だから積極的に立ち上げてみようかということを、特にテーマを絞って考えております。

○説明者(日本司法書士会連合会 北野会長)私ども仕事を通じて体験するのですけれども、裁判所に提出する書類の作成を通じて、訴訟支援を行っているのですが、残念ながら訴訟支援と言いましても、本人が裁判所に行きたくないし、行けないという状態では、なかなか支援しにくいわけです。
 裁判所は俗に言う敷居が高いものでありまして、また、全人格からの判断がなされないための難しさや困惑もあるだろうと思うわけです。そういう状況の中で、私たちが全国的に展開している相談活動におきましては、いろいろな悩みが持ち込まれるわけです。しかし、私どもに対する相談が多くありながら、その法制度上、十分な解決機能を果たせないもどかしさを常に感じているところです。
 そういたしますと、私たちは裁断型ではないにしても、調整やあっせん機能を持った形で、その人たちに対応したいという気持ちが司法書士には強いわけです。
 全国的に社会生活は、非常に複雑かつ高度なものになっていますので、やはり悩みも非常に多いという実感があります。そういうものを吸収しながら、ADRで解決を図っていくことは、既にもうニーズがあるのではないかと思っているところであります。
 私たちは、ADRの制度が立ち上がったときには、スムーズに移行できるような実質的な体制も整えつつあるところであります。それも全国展開を目指しているところでございます。

○説明者(日本土地家屋調査士会連合会 松岡副会長) ニーズの問題ですが、日常業務を取り扱っておりますと、本当にニーズは多いと思います。まず、費用対効果を頭に描いた場合、どうしても泣き寝入りとか、あるいは声の大きい人の勝ちとか、こういったことになるような場面も数多く見るわけですけれども、そのほか、例えば日本の国土を調査している地籍調査事業は、都市部で特にその進捗が悪い。まだ53%しか進んでいないと言われています。その原因の一番大きなものは、民有地間の境界に紛争があったり、あるいはこれが解決しないためというようなことが言われております。
 また、裁判で所有権の及ぶ範囲を決めていただきましても、それを直ちに登記に反映させることが難しい。そういった意味では、直ちに地番境を扱っている登記の方でも両方が解決できると。こういうことでなければ、あまり意味がないのではないかと思います。この辺を解決できる機関があればということは、常々我々が考えてきたところです。
 例えば、裁判所からの和解調書がありましても、それは直ちに登記に反映させることはできない場合もあるというようなこと等々であります。日常業務を取り扱っている中では、そういったニーズは非常に高いと考えております。
 また、弁護士法72条との関係を御質問いただきましたけれども、私どもは弁護士法72条があるからないからということもさることながら、やはりADRにつきましては、専門家というのが協働体制といった、お互いのノウハウを活用し合ってということ、他のADR機関との連携があればそれでいいという意見もあるかも分かりませんが、そういったことも必要ではないか。
 特に弁護士先生の紛争調停能力も十分活用させていただきましたら、そういった形で一緒に取り組んでいければ、問題解決も早くなるのではないかなという気もしております。

○青山座長 原委員、司法書士会連合会からも72条関係をお聞きしますか。

○原委員 はい。

○説明者(日本司法書士会連合会 北野会長) 72条の特段の配慮をお願いしたところでありますが、私どもが司法書士として主宰者あるいは利用者の代理人として、あるいは助言者として、利用者のことを考えますと、まず依頼人の代理人若しくは助言者として、72条が大きくかぶさってくるようですと、私どもは本当にこの人のためということができない危険性があります。
 現に私たちの今の職務では、72条の制限を大きく加えられているところでありますけれども、ADRそのものは広く活用されるべきものである。裁判よりはもっと広く活用されるべきものである。したがって、その人を信頼し利用するということについても、広く個人の判断に委ねるべきだと思っております。勿論、そこに専門性を持った責任というものが残りますけれども、利用者の側としてADRを考えていただきたいと思うところであります。
 また、主宰者としてのADRでありますが、これはまさしく私どもが職務を通して、実体験を通した専門的知見を持って主宰者となるわけです。そこでは、いろいろな経験を有した上で、ADRの主宰者として調整機能を果たすわけですので、そこに直ちに弁護士法72条の問題や、弁護士の力が必要ということは考えていないわけであります。
 いろいろと検討、あるいは協議、調停する中において、弁護士さんの力をいただく、協力体制を敷くということは別問題でありますけれども、それが是非とも必要ということは考えない方がいいのではないかと思うところであります。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかの方、もし御質問がありましたら。髙木委員どうぞ。

○髙木委員 主として司法書士会の方にですが、紛争の初期的なところとか導入部とかいう言葉をいただいたと思うのです。そして、特に土地家屋調査士会さんなどと比べた場合、専門性が広いように受け取れたのですが、専門性については、どういうお考えでしょうか。
 それから、紛争というのは、常に初期とか導入ばかりではなくて、必ず進行して、面倒なことになって、権利義務の熾烈な対立があることもしばしばあるのですけれども、そうなったときはどういうふうになさるおつもりで、こういうことをお考えになったのかということです。
 それから、審議会の意見書を拝見しますと、専門家の関与については、職種ごとに実態を踏まえて個別的に検討し、法制上の位置づけを明確にしろと書いてあったので、こういう形のものが出てくるとは思っていなかったのですが、司法書士会さんではこれが審議会の意見書の目指すところだとお考えになっていらっしゃるのかというのが3つ目。
 4つ目として、内部でこういうことをお考えになるについて、反対意見、不安とか、現場の司法書士さんが携わっていくのでしょうから、少数意見がなかったのかというところをお聞きしたいと思います。
 それから、関与の在り方として、司法書士会自らが主宰するADRを設立する以外にも、専門家の活用というのはあり得ると思うのです。今、目指しておられるものが、非常に少額の紛争であるとか、身近なものをお考えになっておられて、これは弁護士会の実験がありまして、既に財政的にかなり破綻して大変な苦労をしている。そういうところへ更にもう一つ、全国的につくり上げることがどうなのか。あるいは弁護士会と一緒に、弁護士会の仲裁センターに本当に専門家として関与する道みたいなものをお考えになられるのか。
 もう一つ、72条について特段の配慮をとおっしゃいまして、司法書士が活躍できる部分もあるからと言われるのですが、そのことはそのまま司法書士さんでなくてもいいという主張につながるのだと思われますけれども、その場合、どこまで外すということになるのかということ。

○青山座長 幾つかありましたので、1番目、2番目というふうに明らかにしながら、お願いします。

○説明者(日本司法書士会連合会 北野会長) 導入部の範囲を広く、ということをお話ししましたが、導入の部分を大事にしたいと申しましたのは、私たちの経験から申し上げますと、相談者は特にどの職能に、どの相談をしたいという明確な区分けをしないままに相談に来るわけであります。したがって、核心に触れた相談や、いろいろな事案に対する前に、1つの整理をしておく必要があるだろうと思うわけです。それもADRの大事な窓口だろうと思います。
 そして、司法書士が主宰するものについて、これは責任の範囲を大きく超えている、能力を超えていると分かれば、他のADRにスムーズに移行させるという方策を考えています。そしてこれは、どのADR機関も持つべきであろうと思っているところであります。
 専門的関与ということでありますけれども、私どもは裁判所に提出する書類の作成、並びに登記事件についての代理を行うわけであります。これでいきますと、裁判になじむものすべての相談を受けざるを得ないということになります。したがって、紛争事件そのものを特定するわけにはいかないのであります。そういうことでありますから、この実情をADRにおいて活用していただきたい。さらに、私たちが弁護士さんと大きく違うのは、全国にくまなく存在しているということと、国民生活に身近な法的問題に接する機会が多いということです。したがって、専門性といえばその部分が専門性であり、今後も大事にしていきたい。ADRもこれを活用していただきたいと思うところであります。
 能力を超えた不安と言いますのは、今のところで御理解いただきたいと思うわけであります。
 審議会の目的とするところはどうなんだ、どう考えているのかと言われましたけれども、審議会そのものは、国民が主体となって司法にアクセスすることを考えていると思います。したがって、専門家の能力は勿論でありますけれども、国民が利用しやすい司法の在り方、ADRの在り方を十分考えていくということが必要だと思っていますし、司法書士会はそのことを念頭に置き、ADRを考えているところであります。
 それから、財政的な問題でございますけれども、これは確かに苦しいことになります。実費をいただくにしても、大きな収入源になるとは一切考えていません。しかしながら、130 年の歴史を持って、司法書士は国民に身近な法律相談相手として一生懸命頑張ってきました。これを更に機能させるべくADRにおける役割を担いたいと思っているところでもあります。
 それから、他の職能との連携、あるいは他の機関との連携、これは当然必要だと思います。利用者の立場から見れば、1つのADRで解決できないもの、あるいは他の専門職能が要る場合は、当然にその職能との連携を持ってADRを推進していく必要があると思っているところであります。
 72条の問題でありますが、これは先ほど申し上げましたように、利用者の立場から信頼を得た専門家がその人の立場に立って助言や代理をするということが一番大事だろうと思います。したがって、専門性のない方が代理をしたりするということは大きく疑問がありますけれども、専門能力があるとADRの制度で認められた場合には、やはり72条よりは、その方を重視していくべきだろうと思うところであります。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。予定の時間がまいっておりますので、あるいは御質問をなさりたい方もいらっしゃるかと思いますけれども、ここで次のグループに入らせていただきたいと思います。
 畑理事、北野会長、松岡副会長の御三方には、大変お忙しい中を我々のために御説明いただきまして、どうも本当にありがとうございました。
 (日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会説明者退席)

○青山座長 では、次のグループの皆様を、御発言いただく順序で御紹介させていただきたいと思います。まず、日本税理士会連合会の石井宏尚専務理事でいらっしゃいます。
 全国社会保険労務士会連合会の大槻哲也会長でいらっしゃいます。
 日本弁理士会の渡邉一平副会長でいらっしゃいます。
 お三方にはお忙しい中を御出席いただき、誠にありがとうございます。
 それでは、まず日本税理士会連合会の石井専務理事の方から御説明をお願いしたいと思います。資料7-4を御提出いただいております。また、時間の方はよろしくお願いいたします。

[日本税理士会連合会]

○説明者(日本税理士会連合会 石井専務理事) 御紹介を賜りました日本税理士会連合会の専務理事の石井でございます。
 本日は、このような機会をお与えいただきましてありがとうございます。
 御承知のとおり、国民の税に関する関心が非常に高まっておるところでございますが、私ども税理士は、現在、6万6,000 名の会員を擁しておりまして、20年ぶりに税理士法が改正されまして、その主たる目的は、納税者の利便性を更に高めるということで行われたところでございます。
 ところで、ADRに関する私どもの関与の現況と今後ということでございますが、私ども税理士が業といたしておる租税に関しての紛争は、原則として官と民との間の事案であると心得ております。私ども税理士がその有する専門性を活用いたしまして、現在民事調停委員に就任することや不服申立ての代理人になるなど、ADRに関わっているものと理解しているところでございます。
 それでは、私どもの業務の専門性と申し上げますと、現行の申告納税制度におきましては、納税者自らの計算によりまして、租税債務を確定し、税額を完納することによりまして、国等と納税者との間の租税の債権債務の法律関係を自動的に消滅させることが基本原則となっております。
 税理士制度に課されております社会的任務は、納税義務の適正な実現を図るとともに、納税者の適法な納税義務の履行を援助することにあるのであろうと認識しております。
 現在の租税法規は非常に複雑多岐にわたっておりまして、当事者主義をとる現行の申告納税制度の下におきましては、納税者を後見する社会的制度が要請されるのは極めて当然でありまして、税理士制度の存在意義もその点に見出すべきものと言えるものと思っております。
 ところで、紛争の性格とその解決方法でございますけれども、税理士業務におきます紛争には、税務行政手続における紛争と、租税確定手続における紛争がございます。
 税務行政手続における紛争につきましては、その原因の1つといたしまして、税務調査におきます税務職員の質問検査権の行使に関しまして、所得税法等各税法におきましては、「調査について必要があるとき」と規定されているのみでありまして、具体的な手続規定が何ら設けられていないことが現状でございます。
 例えば、権限のある税務職員の質問検査権の行使が合理的な裁量権を逸脱している場合、納税者あるいは納税者の代理人であります税理士が是正を求めることによりまして、紛争に至らずに済む場合もありますが、それ以外は紛争を提起するほか解決の手段がございません。
 租税確定手続におきます紛争は、主として納税者の申告による税額と租税行政庁の調査による税額が異なる場合に生じるわけでございますが、通常は、納税者の代理人である税理士が、主張又は陳述を行うことによりまして、当事者間に合意ができ、原申告が是認されるか納税者が修正申告すること等によりまして、紛争に至らない場合が多いわけでございます。
 しかしながら、それでも紛争が発生した場合、その解決方法といたしましては、租税行政庁に対する異議申立て、国税不服審判所に対する審査請求及び裁判所に対する紛争を提起することとなるわけであります。
 先ほど申し上げましたけれども、先般の税理士法改正によりまして、税務行政処分の取消訴訟等におきまして、裁判所の許可を得ることなく補佐人として弁護士さんとともに裁判所に出頭し、陳述することができるようになったことは、大変意義深いものと思っております。
 平成12年度の税務調査におきます更正決定又は修正申告等により処理された件数は、約86万7,000 件でございますが、同年度に国税不服審判所になされました審査請求の件数は3,401 件、処理件数は3,066 件、うち全部取消し又は一部取消しの件数は466 件でございました。
 このことから、納税者と国との紛争は必ずしも多いものとは言えません。紛争に至らないために果たしている税理士の役割は大きいものと自負するところでございます。
 ADRから見ました国税不服審判所の意義と問題点でございますけれども、国税不服審判所は、行政上の救済制度として設けられたものでございまして、行政型のADR機関とされております。
 国税不服審判所は、本来、納税者の救済を目的といたしまして、国税の執行系統から切り離されたものとして設けられたものでございますけれども、その手続主宰者である国税審判官は、そのほとんどが税務行政の執行系統に属していた国家公務員でございまして、審判官の任期満了後は、また元の執行機関に戻っている状況にかんがみますと、中立性を旨とするADRとしての機能を十分に果たしているものとは必ずしも言い難いのではないかと考えております。
 税務行政における苦情処理等の取組の現状でございますけれども、国は、申告納税制度の下で、納税者自らが適正な納税義務を履行することを図るとともに、一方におきまして、適正公平な課税を実現するための責務があります。
 適正な納税環境の整備のため、個人情報を除きましては、職員向けの執務参考資料としての情報、事務連絡等につきましても、徐々に一般に公開されつつあります。
 広報広聴体制を強化するため、全国84の主要税務署に「税務広報広聴官」を配置いたしまして、納税者利便の向上や事務運営の改善に資されているところであります。
 税務相談や税務に関する苦情等に積極的に応ずる体制を確立するため、国税局、税務相談室が設置されております。平成12年度における相談件数は284 万件、苦情件数は2,101 件でありまして、迅速・適切に処理するよう配慮されております。
 税務一般に関する納税者からの苦情にかかわる事務のうち、納税義務を適正・円滑に履行するために必要な助言・教示及び調整に関する事務を担当する「納税者支援調整官」を新たに国税局及び主要税務署に配置しております。
 税理士会における税務相談等の取組の現状でございますが、租税を巡る紛争を未然に防止するため、納税者自らが法律に基づく納税義務を適正に履行することが何よりも重要であります。
 税理士会は、委嘱者の経済的理由により、無償又は著しく低い報酬で税理士業務を行う税務援助事業を、税務援助規則等に基づきまして積極的に推進しております。
 業務遂行過程での士業内部における紛争解決の方法といたしまして、改正税理士法を受けまして、税理士会が会員の業務に関する紛議について、紛議調停規則及び細則等を制定いたしまして、会員又は当事者その他の関係人の請求に基づきまして調停をすることとなったところでございます。
 これは、調停を目的としたADR機関でございまして、税理士会内部の機関とは言え、納税者からの期待と信頼を高め、申告納税制度のさらなる定着を図るため、その健全な運営を行っております。
 租税におきますADR機関等に関しましては、税務行政手続におきます紛争を解決するため、税務調査の事前通知等の規定を国税通則法に具体的に明文化する必要があるものと考えます。
 租税確定手続における紛争を解決するため、国税不服審判所に自己統制機能等を特色としながらも、納税者の権利救済のための第三者機関たる性格がより見える形となるように要請しております。
 更に、私ども、税理士会といたしましても、遺産分割における相続人間の紛争、離婚調停等による財産分与等を巡ることにつきましても、ADRについて積極的に対応するため、関係士業団体との検討を行ってまいりたいと思います。更に、弁護士法第72条の見直し等につきましても整理をしていただきたいものと考えております。
 以上です。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、全国社会保険労務士会連合会の大槻会長にお願いいたします。資料7-5を御提出いただいております。

[全国社会保険労務士会連合会]

○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻会長) ただいま御紹介をいただきました全国社会保険労務士会連合会会長の大槻でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、社会保険労務士の士業としての専門性とADRにおける社会保険労務士の役割についての説明及びADRの実施における要望を申し上げさせていただきます。
 カラーの資料をもって説明させていただきます。
 まず、類ある士業を富士山に例えてみるとき、雪化粧をしたあの美しい頂に位置するのは弁護士さんであり、その裾野にあって路地裏を自転車で忙しく駆け回っている姿が社会保険労務士の日常であるとイメージしていただいてよろしいかと思います。
 つまり、社会保険労務士は、それだけ中小零細規模事業所との関わりが非常に深いということでございます。
 ところで、2002年版「中小企業白書」によると、規模別事業所、企業数の構成比は、大企業が0.7 %、中小企業が99.3%の割合を占めているのです。また、そのうち77%は従業員数1人から19人の小規模事業所となっています。今、これらの事業所の多くが景気の低迷にあえぎ、厳しい市場競争で生き残りをかけて闘っているのです。事業経営者は、解雇や賃金の引き下げ、あるいは長時間労働など、苦汁の選択を迫られているのです。
 一方で、それらが労使トラブルの発生原因となっているのも事実です。しかし、この人たちは、積極的に裁判で勝ち負けを決めることは余り考えていないようです。それは、時間を使い、気を使い、金を使うことになるからです。だからこそ、裁判外紛争処理、いわゆるADRが必要とされているのです。
 1枚目を御覧ください。社会保険労務士の専門性についてです。社会保険労務士は企業の発展、とりわけ中小零細規模事業所の事業の健全な発達とそこに働く労働者等の福祉の向上に寄与するため、労務管理の業務に精通した専門性をもって、適切な労務指導を行っているのです。
 例えば、職場の憲法とも言われている就業規則の制定などの相談指導、労働条件や福利厚生の取扱いに係る労使間のトラブル対策、最近話題になっている労災認定に絡む過労死問題と労働実態への対応、健康保険法、労災保険法に基づく保険給付の求償権と第三者行為災害による示談、和解処理などの相談指導の実務に携っているのです。
 社会保険労務士法は、昭和43年に公布施行されています。立法時の趣旨説明で、重要ポイントとして次の事項が挙げられております。
 1つは、中小企業の労務管理の近代化が切実な問題であること。
 2つは、中小企業では、労務及び社会保険関係の専門部課を企業内に持つ余力もないために、これらの専門家を部外に求めているのが現状であること。
 3つは、労働社会保険関係の事務は、経営者が的確に処理する必要があるだけでなく、労働者の権利の確保にも関係する重要な事柄であるということによるものです。また、これらは、現在に至っても未だ変わっていない状況にあります。
 2枚目を御覧ください。ADRにおける社会保険労務士の役割についてです。社会保険労務士は、こうした社会のニーズと制度の趣旨に沿って、その役割を果たすために、労使に身近で、労使双方と信頼を厚くし、公正な立場で職場の労働問題の解決、雇用、年金問題等専門性の高い事件への対処、紛争等の早期解決の役割を担っているのです。
 3枚目を御覧ください。ADRに関する社会保険労務士の要望についてです。これまで、社会保険労務士の専門性と専門的業務の役割について御説明させていただきました。そこで、これらの専門的業務の専門性をADRの実施に活かしていただきたく、つきましては、具体的に次の項目を要望いたしますので、国民の利便性とサービス提供を実現する上で是非結実させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。
 1つ、まず、大前提として、労働関係及び労働社会保険諸法令に関連する法律事務に限って、弁護士法第72条の規制から開放し、非法曹の専門家としてADRにおける活用を図っていただきたいこと。
 2つ、社会保険労務士自らがあっせん人等として、ADRの実施に参与できること。それには、例えば、開業社会保険労務士がADRに参与することの阻害要因となりかねない規制の対象とされている、社会保険労務士法第23条の労働争議介入禁止の条項を削除していただきたいこと。
 3つ、民事調停、労働調停への委員、代理人、補佐人としての参与、ADR実施のための鑑定、代理、和解等の法律行為が行えること。例えば、個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争調整委員会でのあっせん代理に関しては、本年の第154 回通常国会で社会保険労務士法一部改正法に盛り込まれ、継続審議となっておりますが、地方労働委員会におけるあっせん代理、また、ポジティブアクション等女性労働問題の解決に当たり、雇用機会均等法における調停について代理することを認めていただきたいこと。
 4つ、社会保険労務士会が設置している総合労働相談所を、ADR機関として認知していただきたいことです。
 なお、社会保険労務士はあくまでも裁判外での紛争解決の担い手として、実務に参与することであって、参与する者のための能力担保措置として、既に平成13年度より司法研修を実施し、憲法、民法、民事訴訟法、労働法等の第1ステージを4,500 人が受講しました。引き続き、弁護士、法曹関係者の方々に御協力をいただき、第2ステージのカリキュラム等の企画等、実務的研修の準備に取り組んでおります。平成15年度から、実施を予定しているところです。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、日本弁理士会の渡邉副会長、よろしくお願いします。資料7-6を御提出いただきました。

[日本弁理士会]

○説明者(日本弁理士会 渡邉副会長) それでは、私の方から御説明させていただきます。お手元の資料に基づきまして説明させていただきます。
 ADRへの弁理士の関与の現状と今後の課題ということであります。
 2ページを開けていただきます。弁理士業務の内容ということをまず御確認いただきたいと思います。①、②、③とございます。知的財産、特許、意匠、そういうものの知的財産の創造に対して弁理士が関与していること。発明等を創作するところに対しまして、発明者と相談をして、いい形のアドバイスするというところから関与しています。
 それから、例えば、創作された発明等につきまして、それをいかに有効な特許として出願するか。そういうことで知的財産保護ということで権利にするものでございますが、そういうところについて関与しております。
 そうしまして、今度はそういうことで特許を取った後、紛争が生じます。生じました後は、弁護士さんと共同で訴訟問題、現在のところは補佐人ということでございますが、平成14年の法改正で、能力担保研修等を経た上で、訴訟につきまして代理をすることができることになりました。こういう知的創造サイクルという形で、知的財産の創造、保護、活用、この3つについて弁理士が関与しているということを示しております。
 続きまして3ページを見ていただきたいと思います。それでは、ADRに対しては弁理士はどういう形で関与していくか、その現状ということでございます。
 1番目に、ADRの類型として司法型ADR、行政型ADR、民間型ADRがございます。そのうちの司法型ADR、裁判所における民事調停委員でございますけれども、弁理士は、今のところ分かっている範囲で、日本弁理士会が推薦した者は23名でございます。まだ少数でございますが、我々が知っている範囲では、日本弁理士会が推薦しない形でも、個人的にといいますか、裁判所から直接という形で弁理士に特許侵害の関係といいますか、民事調停にかかわるという形でやっている方がございます。
 それから、3番目の民間型ADRでございます。ここでは、日本弁護士連合会さんと日本弁理士会の共同でございますが、日本知的財産仲裁センターを設立し運営しております。
 このような、日本知的財産仲裁センターという形で運営しておりますが、弁理士はそういうところで、仲裁人、調停人という形で関与し、また代理人としましても関与しております。
 お手元の資料でございますが、1998年からの日本知的財産仲裁センターの申立事件一覧がございます。過去5年間の一覧でございますが、残念ながらそれほど利用が進んでおりません。1年平均約4~5件ということでございます。これはいろいろ理由があると思いますが、やはり改善しなければいけないことで、これはまた後で説明したいと思います。
 またもう一つ、JPドメイン名、こういう紛争につきましては、申立事件は増えているということがございます。このような形で、弁理士は日本知的財産仲裁センターといったところにおきまして関与しているところでございます。
 4ページに書いておりますのは、弁理士というのはADRに関与するのに適性があるかということで、知的財産に関する紛争解決、そういうADRに関しましては、弁理士は資質があるのではないかということを述べております。
 3の③、一番下のところでございますけれども、法律的な知見、特許等にかかわる技術、そういうものに関する専門的知見、そして、調停術的能力、対話術的能力というのが、発明者等との会見、いろいろな形での会話を通して訓練をしておりますので、それらの資質を有しているのではないかと考えております。
 したがいまして、弁理士は知的財産分野におけるADRにおきまして、調停人、仲裁人というような形、又は手続の代理を行う代理人として関与するに十分ではないかと考えております。
 5ページでございます。したがいまして、司法型ADR、現在、先ほど言いましたように、民事調停委員23名というのは、弁理士会から申請している数としては非常に少ない。もっと多く関与できるのではないか。私の知る範囲では、地方裁判所等におる方が、約二年間、調停委員となっておりますけれども、ただ、事件数はほとんどない、2年間全くなかったということもありますので、基本的に余り活躍していないという状況であるのは残念でございます。
 それから2番目の「民間型ADRへの発展的関与」。先ほど言いましたように、日本知的財産仲裁センターを設立しておりますので、こういうもの、それから説明を落としましたけれども、弁理士は民間型ADRで国際商事仲裁協会というものもやっております。そういう民間型ADRの拡充、活性化を通しまして、更に弁理士が発展的に関与できるのではないかと思います。
 それから、弁理士は関与するのに適性があるのではないかというお話をいたしましたが、当然ながら、ADRということの観点から、やはり研修をしなければいけません。仲裁人、調停人としての専門性を養成するための研修ということを考えておりまして、今年、来年と、弁理士に対する調停人、仲裁人としての何たるか、それからどのようにすればいいかを研修する予定でございます。
 そして更に、調停人、仲裁人、それから調停・仲裁手続の代理人としての弁理士、これも当然ながら専門性がございますので、そういうものを研修するという手続も現在準備しておるところでございます。
 それから6ページでございます。最後になりますが、これが一番大事なところでございますが、ADRに対しまして弁理士が関与するに当たっての今後の課題がございます。
 1番目でございます。裁判所と日本知的財産仲裁センターとの連携でございます。裁判所の調停の中で極めて技術的、専門的な場合は、その判断を日本知的財産仲裁センターに委嘱する等の方法があるのではないかと考えております。したがいまして、より連携を図るべきではないか。
 2番目で、弁理士が行い得る仲裁代理等の業務範囲がございますが、現在、弁理士法の4条2項2号では、著作権があいまいになっております。
 一方、日本知的財産仲裁センターはその業務範囲に著作権が含まれておりまして、勿論、弁護士さんが入っておりますから、著作権を取り扱うことはできるわけでございますけれども、この辺り、弁理士の方が困っているという状況がございます。
 3番目、税関での輸入阻止でございます。これは弁理士の業務範囲に入っておりますけれども、やはり仲裁センターのより積極的な関与が必要ではないかということがございます。
 4番目でございますが、現在、特許庁の判定制度が問題になっております。判定制度やめようという廃止論も出ておりまして、それに対しまして、日本知的財産仲裁センターが関与しようという形の議論を今やっております。ただ、日本知的財産仲裁センターは財政的に脆弱でございまして、財政的な裏付けという形で多少の国の援助等も必要ではないかということも考えております。
 最後の5番ですが、ADRの法的効果付与、時効中断効等の法的付与というのは当然要るであろうと考えております。
 以上でございます。

[質疑]

○青山座長 どうもありがとうございました。
 ただいま、3機関からいただきました御説明につきまして、ここでも15分ほどの質疑の時間を設けたいと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞお願いします。

○龍井委員 2点ですが、まず石井さんにお伺いしたいのは、先ほどの御説明の中で2ページですか、国税不服審判所の意義と問題点というところで指摘されています、任期満了に伴う云々というところで中立性についての問題を指摘されているのですが、実態上何かこういう問題があるのかどうか。中身の問題として、もし何か問題があるという御指摘があればお伺いをしたいのですが。
 大槻さんにお伺いしたいのは、冒頭で御指摘された中小企業の裾野で御活躍をされているというところで、幅広く経営問題を含めていろいろなものに携っていらっしゃるということをお伺いしましたが、資格ということでは当然これは労働社会保険に関するものが中心になる、つまり、資格としてはそこに専門性があることになると思うのですが、その場合に、最後に御指摘になったような労働関係全般にそうしたものを手がけているということの専門性との整合性というのを、何かさらなる要件が必要なのか、あるいは現状でも対応できると考えられるのか。
 あるいは最後は研修ということをおっしゃいましたけれども、これは渡邉さんが御指摘になった点ですが、果たして、相談・あっせんという、かなり実務経験を要する問題がある程度研修でカバーできるものだろうかどうなのか、その辺はどう考えるのか。

○青山座長 石井さんと大槻さんお願いします。

○説明者(日本税理士会連合会 石井専務理事) お答えさせていただきます。まず、私ども税理士会は従来から国税不服審判所の審判官に私ども税理士を登用していただきたいという要請を行っております。
 なお、私どもが任用されることにつきましては、法的な根拠もあるわけでございまして、しかしながら、現状におきましては登用された事例がない。ただ、私どもは、あくまでも国家公務員の方々が現職を離れて不服審判所の審判官になられ、また元に戻るから、必ずしも行政サイドに立って審判をされるというようには認識しておりません。
 しかしながら、そういう現状からいたしますと、ごく一般的に見れば、私どもが登用されないということも含めてという意味ではありませんけれども、また、国税の方に戻られるということから考えますと、やはり私どもを登用していただくことによって、そういった一般的な中立性が守られているかなという疑問が剥がれるのではないかと思っておりまして、私ども6万6,000 名からおりますので、積極的に御活用いただければありがたいと思っているところでございます。

○青山座長 それでは次に、大槻さんどうぞ。

○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻会長)まず労働問題全般なのかという御指摘の点でございますが、労務管理が社会保険労務士の主要業務であり、その中で集団の労使関係とか、あるいは個別の労使関係といったこと、また、賃金体系とか、あるいは退職金制度の在り方、人事評価制度などにも精通しており十分対応できると考えております。
 もう一つ、研修で十分カバーできるのかということでございますが、やはり労働問題、とりわけ労使関係の問題というのは、法律論だけでは解決できない。当然、そこには人間関係論といいますか、人と人との関係ということが非常に大事だと思うわけでございまして、その点におきましては、やはり労使団体の関係者の方の実務的ないわゆる経験則等も踏まえた点からの御指導などもいただくことを研修に盛り込んでいくということを考えております。
 それともう一つは、既に各都道府県会に労使団体との交流部会というものを発足させることにしております。それは、やはり労使問題にかかわらず、労働問題の関係については、これからの時代は、労働組合の方あるいは労働者を代表する方、また事業を展開されている経営者の方、そういった方々の御意見なり御指導もいただく必要があろうかと思います。ましてや今は外資企業が相当増えてきており、そういう中での日本的な労務管理と、いわゆる外国の労務管理の在り方、そういったことなども含めながら今後やっていかなければいけない。こういうことで具体的には労使団体との交流部会を設置して、実務的な取組をしていきたい、このように考えております。

○青山座長 ありがとうございました。ほかに、どうぞ。

○廣田委員 税理士会の石井先生にお伺いしたいのですが、お時間がなかったので最後のところを御説明いただいていないと思うので、その部分について、レジュメの3ページの終わりのところを伺いたいのですけれども、2の専門性を活用した貢献方策の③のところからですが、これ以下は、どうも民間同士の紛争に関することをお書きになっているのではないかと思うのです。
 税理士の先生方は、主に企業に非常に身近なところにいらっしゃいますから、対官に対する問題に限らず、民間の相談を受けることは多いと思います。それで、私の読み方によると、民間で相談を受けたときに、それに専門性を活かして活躍したいということが書いてあるのではないかと思うのです。
 それからずっときますと、一番最後の⑥のところで、弁護士法第72条の見直し云々と書いてありますけれども、ということは、そういうときに御相談を受ける、勿論、税金が絡んでいたり財政的な問題が絡んでいるわけですが、つい紛争が起こる、そうすると、どうしても先生方についてきてくださいというような話になってくる可能性が多いのかどうか。もし多いということを前提にしたら、やはりここで72条が引っかかってくるわけですけれども、ADRにおける代理権を認めてほしいという趣旨なのか、そこははっきり書いてないので、そこのところを伺いたい。

○説明者(日本税理士会連合会 石井専務理事) ただいまの3ページの2の③以降でございますけれども、特に④のところでございますが、遺産分割に伴います相続人間の紛争等は、私ども自体は相続税の申告にかかわるわけでございますけれども、現実に、その前段階として分割の問題が出てまいります。その折に、やはり弁護士先生ということになりますと、なかなか時間的な問題等もございまして、できれば私どもといたしましては、税に関することにつきましては、弁護士法72条について御検討いただければ、これらの問題の処理が可及的にある意味ではできるのかなと思っておるところでございます。
 それから、私どもがADR機関に対しまして、代理権云々ということがございました。それからまた、機関を設定するかどうかというようなこともございますけれども、私ども自体は、現段階ではセンター等の問題について機関決定等はしてございません。2ページの一番上にございますように、比較的税務に関する訴訟といたしますと、このようなことで処理が行われているのは非常に少のうございます。しかしながら、3ページの④等につきましては、税務自体に行く前の段階でございますし、案件としてはかなりあるだろうと考えております。
 したがいまして、士業団体等と今後協議をいたした過程で、こういう機関が必要であるということであれば、是非参画をしたいというような意味合いから、このような表現にさせていただいているところでございます。

○青山座長 廣田委員、よろしゅうございますか。

○廣田委員 はい。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○安藤委員 今までの6人の先生方にお伺いしたいのですが、各機関でもってADRというのを発足したときに、執行力の付与を必要とするかしないか、それから、現状の活動において公証役場を必要としているのかしないのか、その辺をちょっとお伺いしたいのですが。よろしいでしょうか。

○青山座長 それでは、安藤委員の御質問は6人の方からお聞きしたいということですから、先ほど既にヒアリングが済んでおりますけれども、会場にいらっしゃいますので、できればお許しいただきたい。しかし、最初に席におつきなっているお三人の方から、もし、自分のところでやる機関をつくる場合に、執行力付与というような問題についてどうお考えになっているか、まず、ひとあたりお聞きしてから、先ほどの順にお願いしたいと思います。

○説明者(日本税理士会連合会 石井専務理事) 私ども直近にただいまのようなADR機関を創設したいというところまでは現段階では考えておらない。ということは、機関決定自体をしておりません。したがいまして、そのような現状から、執行力という御質問でございますけれども、出来上がった過程で、私ども単独でそのようなADR機関を創設できるのかできないのかというような問題がございますので、その過程で検討させていただくべき事柄ではないかと思っております。

○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻会長) 私ども社会保険労務士会では、既に総合労働相談所を設立しておりまして、とにかく一刻も早くといいますか、近いうちに47都道府県すべてに設置するということを決定しております。そのための予算も設けてやっております。そういうことから考えまして、現在やっている実態から見ましても、執行力を持たせていただく、したがって必要であるというような判断をしております。

○説明者(日本弁理士会 渡邉副会長) 先ほど御説明しましたように、弁理士会では日本弁護士連合会さんと一緒に日本知的財産仲裁センターを設立しておりますので、したがいまして、そこのところでは、仲裁判断で執行力が付与されると理解しております。

○青山座長 それでは、日本行政書士会連合会の畑理事どうぞ。

○説明者(日本行政書士会連合会 畑理事) 私の方では、今、執行力をどうするか、時効の中断とか執行力については研究すべき段階であるということで、まだ結論は出しておりませんが、1つの考え方としては、公正証書をもって公証人の力で執行するという程度を考えたらどうかというところが1つの問題として出ております。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、日本司法書士会連合会の北野会長どうぞ。

○説明者(日本司法書士会連合会 北野会長)私どもが考えますADRでございますが、これはあくまでも対話型であり合意形成の場であります。したがって、限りなく契約の締結の延長上にあるものと思うわけであります。そういう自立的な立場のADRということを考えておりますので、ここに執行力という公権力をそのまま付与させると、大きな制約が課せられ利用範囲を小さくすることになるのではないかと思うわけであります。そういうことになりますと、民間型のADRとしてはマイナス要因になると思いますので、執行力そのものをADRに付与することが大前提とは考えていません。
 しかしながら、それを安心して利用するために、時効中断効については十分配慮いただきたいと思っております。

○青山座長 どうもありがとうございました。次に、日本土地家屋調査士会連合会の松岡副会長お願いします。

○説明者(日本土地家屋調査士会連合会 松岡副会長) 境界紛争の合意解決の成果を、登記簿ないしは登記所備え付けの地図に反映させるという面では、これは和解の際に配慮すれば可能なことなのですけれども、センターの調停によって合意された境界線を越えて存することになった建物の一部とか、あるいは工作物を撤去する必要が生じたときのように、境界線の変更に間接的に関連している紛争を解決するについては、執行力の付与ということもお願いした方がより効果的ではないかというように考えております。

○安藤委員 公証役場の利用についても、現在の活動を皆さんにお伺いしたいのですが。

○説明者(日本税理士会連合会 石井専務理事) 私どもADRに伴う公証人役場の活用につきましては、特に現段階では考えておりません。なぜかといいますと、執行力云々の問題から考えてみまして、執行力自体について現段階では試行しておりませんので、公証役場の利用自体も考えていないということでございます。

○説明者(全国社会保険労務士会連合会 大槻会長)社会保険労務士会の方では、特に公証役場を利用しているということはございませんが、今後必要があるかないか、まだ検討もしていないというのが現状でございます。

○説明者(日本弁理士会 渡邉副会長) ADRとは関係ございませんけれども、弁理士は公証役場をたくさん利用していますので、出願を早くした早くしないというような紛争がございますので、設計とか何か新しいことをやったときに、それを公証役場に持っていって、その日を確定するというときに使っております。

○青山座長 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、石井専務理事、大槻会長、渡邉副会長、御三方、大変お忙しい中を御出席いただきまして、どうもありがとうございました。委員を代表して御礼申し上げます。
 それでは、ここで5、6分の休憩を取りたいと思います。3時20分に再開させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 (日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会説明者退席)

(休  憩)

○青山座長 それでは議事を再開させていただきます。
 最後のグループの皆様を発言していただく順序に御紹介させていただきます。
 まず、建築関係の専門家の活用につきまして、当ADR検討会の平山善吉委員に御説明をお願いしております。
 社団法人日本不動産鑑定協会の清水文雄副会長でいらっしゃいます。
 社団法人全国消費生活相談員協会の藤井教子理事長でいらっしゃいます。
 最後になりましたが、社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の玉本雅子副会長でいらっしゃいます。
 平山委員は勿論でございますけれども、御三方には、お忙しい中わざわざ御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは、まず、平山委員に建築関係の専門家というお立場から御説明をいただきたいと思います。資料7-7を御提出いただいております。

[平山委員(建築関係)]

○平山委員 平山でございます。
 まず、資料7-7に沿って説明したいと思います。今まで御説明いただいた方、あるいはこれから御説明いただく方は、それぞれ連合会の委員長とか、あるいは協会の代表とか、そういった方でございますが、私は何か個人というような感じでお話しさせていただきますので、少し皆さんと観点が違ったかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
 これから、建築について話しますけれども、建築に関するADRというのは、資料の3ページにございますが、非常にたくさんございます。
 特に今までの皆さんのように、それが連合会とか協会とかという形でこの問題を考えているのではなくて、私は建築学会の会員として、裁判所に調停委員としてお手伝いしている。そんな立場でお話をさせていただきたいと思います。
 まず、レジュメに従って、最初に「1.建築界の現状」でございますけれども、建築界はどういうわけか、最近特に紛争が非常に増えております。そのために、いろんな法的措置がとられておりますけれども、その効果はあまり上がらずに、まさに増えているというのが現状でございます。
 そこに丸ポツが2つほど付いてございますけれども、そんなようなことで主として法規が今までの建築基準法から、設計者責任とかそういった個人の責任という方向へ大きく転換したというのが大きな特徴でございます。
 2番目に「建物完成までの流れ」というのを書きましたけれども、皆さん既にお家を建てられて気がついていると思いますけれども、建物一つつくるのに、そこに書いてございますように、大小によって若干違いますが、企画、設計、施工、監理、完成というような流れで完成すると思います。それぞれに関して、企画、設計、施工、監理にはたくさんの方たちがそれに関係してくる。こういったものが完成までの流れでございます。
 実際に工事をやる形態はどうなっているかと言うと、本請、下請、孫請、最近はこんなような景気で、孫請の下の孫請とか、その下の孫請なんていうのがあって、大変複雑になっております。
 一方、建築に携わる専門の方たちはどんなものかと言うと、建築に含まれる専門分野として、トータル・コンサルタントとか、設計事務所、施工会社、監理事務所があり、その中に括弧してございますように、例えば設計事務所であれば、幾つかの業務の方が関与し、施工会社についても同じようにたくさん市民の方が関与しているというのが現状でございます。
 次のV番目が、建築士法に定められた建築士としての業務というのが、そこに書いてございますが、これが普通のところと違って、一部はそれぞれ資格を持っております。
 例えば、3番目に現場の技術者として一級建築士、二級建築士、木造建築士というような資格がございます。最初の建設業というのは建物が完成するための施工の形態であり、2番目の設計事務所というのは設計監理の形態であって、それぞれの中にまた分業してそういったようなものがある。
 これは、今までのお話と若干違うのかなと思いますのは、その他として大学、高専の先生方、これは建築ではかなりいろいろな方が実際に関与している。それに対しての研究者、行政の技術者、こういったような方たちでございます。それから、今までお話を聞いた中で、若干関係があるのかなと思っていましたのが、不動産関係の方々も建築の中に含まれていると、こんなふうに考えております。
 「2.建築士等の専門性」といたしましては、現在、建築にかかわる従事者というのは、500 万人と言われております。この中で、いわゆる一級建築士、二級建築士、木造建築士の資格を持っている方が95万人、あと一般建築家あるいは建築士と言われものは、一級建築士を指していると思いますが、これが30万3,000人と。
 こんなふうに建築は、かなり幅広く、それからその業務の内容が大変複雑でございます。そういったところに紛争が生じたときに、その紛争の原因は何かというところがかなり大きな問題になるのではないかと思います。何かあったときに、かなり自分たちの業務の範囲があいまいである。例えば、設計士の業務はここからここまでと決まっているようで決まっていない。その辺のあいまいさが紛争を複雑にしているのではないかと思っております。
 「3.建築紛争の事例」でございますけれども、例えば、東京地裁では月平均30件ぐらいの紛争があると言われております。
 その原因を探るのは、今お話しましたように、大変難しい。というのは、2番目とかあるいは1.のiv、1.のvで述べましたように、それぞれいろいろな方がこれに関わっておりますので、その範囲がなかなか定められない。
 そこで裁判所は、2年ほど前から建築学会に何とか協力ができないかというようなことで、建築学会ともいろんなことを考えた末、裁判所に全面的に協力しようと。その協力は何かと言いますと、調停委員とか鑑定人の派遣でございます。
 その結果、今まで東京地裁の例で取りますと、建築紛争は平均35か月ぐらいかかっていたそうでございますけれども、専門家の関与によって、現在は約半分になったというようなことが言われております。
 その建築紛争における紛争の種類というのは、主として瑕疵を巡る問題でございますけれども、2ページぐらいの真ん中に「i)注文建築では、『請負契約』で定められた内容と異なる点が『瑕疵」となるもの」。それから、建売建築ではということで、そこに書いてあるようなものは瑕疵の大きな原因でございます。
 これを専門的な技術上の視点から見ると、瑕疵の種類として、まず瑕疵の発生原因というものがございますけれども、これも非常に複雑でして、設計に起因するもの、施工、監理、それから材料に起因するものといったような発生原因があります。
 2番目に発生箇所というようなことも考えております。
 もう一つは、これは私たちもこの紛争のお手伝いをして、改めて気が付いたことですけれども、契約内容の不備とか不明確による紛争が非常にたくさんあるということが分かりまして、これらの点に関しても、学会を挙げていろいろな方にお手伝いしていただきながら、整理をしているところでございます。
 もう一つは、2番目に書いてございますけれども、業務区分というのがはっきりしていないのです。業務区分というのは、設計業務、施工業務、監理業務といったものがありますけれども、それが複雑に絡み合っていると同時に、その境界線がはっきりしていない。当然、次の支払い条件の不備などもございます。
 もう一つ、建築紛争での大きな問題は、ある金額で決めて始めた工事が必ず途中で変更になるという問題がございます。この変更になるための追加とか、変更の工事に対する紛争、この辺がかなり大きな問題で、これに対して改めて共通の書面をつくろうというようなこともやっております。
 この辺が実際にある大きな問題点でございますが、最近特に多い事例といたしましては、そこにi~vまでございますけれども、建築の場合は、目で見て分かるものと、目で見て分からないものがございます。i、iiは目で見て分からない。これは専門家は分かるのですけれども、消費者の方にはなかなか分からない。
 例えば、自分のつくった建物が安全なのか、安全でないのかというのは、最初は当然安全であるべきものがつくられているわけですけれども、途中でどうもこれは危ないのではないかということは気が付くのですけれども、どこが危ないのかということは消費者の方は分からない。それは消費者の方が間違って判断している場合も非常に多いのです。
 この辺のことは、これからどうしようかという大きな問題ですけれども、私的鑑定というのがございまして、消費者の方が、自分の家は大丈夫かなと誰かに相談すると、その人が積極的に悪い問題だけを取り上げて消費者を焚きつけるのですが、その辺のことが非常に大きな問題となっております。あるいは、特に安全性とか、地盤の問題、この辺が見えない問題として大きく扱われております。
 後は、見て自分の家がどのぐらい傾いてしまったとか、こんなはずではなかったということは幾つかございますけれども、それがiii 、iv、vと書いてございます。
 具体的な紛争の例としましては、これは私よりもここに弁護士の先生がたくさんいますが、いわゆる何とかに対する請求事件というのがそこのi~viに書いてありますが、そういったような事例として調停が行われている。
 「4.専門性を活用したADRへの関与」ということでございますけれども、例えば、東京地裁の最近の例を4ページに図で示しました。
 1の図は、どんな紛争があるのか、紛争の部位を示したものですから、大して関係がないとしても、すべての図は、平成13年の4月から14年の7月までの統計でございます。
 これは、私たちは全国の裁判所で関与をしていますけれども、東京地裁で取った統計でございます。
 まず、事件終了事由の区分として、調停の成立したものが347 件に対して240 件の約70%で調停が成立しております。
 その成立した調停に対して、左の下に図3とございますけれども、調停事件終了事由ということで、成立が286 件に対して240 件、84%とかなりの率で調停が成立しているということがお分かりだと思います。
 これはまさに調停に対してADRの寄与だと思っておりますが、それは私たち専門家が関与することによって、iに書いてございますように、裁判に至る前に、争点の整理、瑕疵発生の原因及び当事者責任の特定などを、原被告、あるいは裁判官を交えて整理して調停に入るというようなことをしております。
 建築関係のADRの現状というのは、一番最初に申し上げましたように、建築に関しては、今日お話を聞いたような連合会とか協会というのはなくて、それぞれ建築学会とか、建築家協会とか、技術協会とか、いろいろなものがあって、その中の1つが建築学会でございます。それが、建築学会を除いて、そこにございますように、「(1)裁判外紛争処理機関」そして「1)裁判所における民事調停」「2)建築工事紛争審査会」。これは別添の資料がございます。それから3)とか4)がございます。
 「(2)相談窓口」でございますが、それに関してもたくさんの窓口がございます。
 こんなように建築紛争に関しては、それぞれの必要に応じてADR機関ができたということかと思いますけれども、例えば建築紛争審査会というのは、既にできて50年の歴史がございますし、それぞれにかなり歴史と実績がございます。
 6番目に建築学会の場合をお話ししますと、2000年に建設学会は裁判所と協力して司法支援建築会議を設置いたしました。これは、建築学会がそれぞれ厳正中立な立場であるということから協力したわけでございますが、建築学会は裁判所に協力するだけではなくて、裁判所からいろいろな裁判の事例をいただいて、それを調査分析するという学会本来の仕事をして、紛争を未然に防ごうということで、司法支援建築会議というものをつくりました。
 もう一つは、もうちょっと学会らしく、今まで建築基準法とか建築に関する、家を建てるための法律・基準というのはあるのですけれども、瑕疵が生じたときにその瑕疵が何だという解説書がない。それから、その瑕疵は直すのにどれぐらい費用がかかるのだというものもないというのが現状でございます。
 そこで、そういったようなことを、建築学会では建築技術の現状というような形で、それぞれみんなで手分けして、裁判所と相談して本をつくっております。今年度中にはその本ができるだろうといった報告をいたしまして、終わりにいたします。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、社団法人日本不動産鑑定協会の清水さんにお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。資料7-8が提出されております。

[(社)日本不動産鑑定協会]

○説明者(日本不動産鑑定協会 清水副会長) 日本不動産鑑定協会を代表いたしまして、本日ADR検討会に初めて出席させていただきましたことを、御礼申し上げます。
 それでは、まず「不動産鑑定士の有する専門性」について若干御説明させていただきます。
 我々不動産鑑定士は、法律に基づいて、他人の求めに応じて不動産の評価、すなわち経済価値を判定し、その結果を価額に表示する専門家集団であるわけでございます。不動産については、一般市場でなかなか合理的な市場が成立しにくいという特性があるために、このような法律ができ上がっておるわけでございます。
 不動産の価値は、その不動産に対して認める効用や、あるいは相対的な希少性、有効需要等の相関な結合によって決定されるものであります。
 それはまず、不動産の特定、権利利益の確定をし、経済価値を判定することでありますが、それにはまず不動産の有効な利用方法を判定し、そして市場の価格形成要因、あるいは市場参加者の属性等を調査分析をして、その後評価手法の三方式、すなわち原価方式や比準方式、収益還元方式を採用することによって、対象不動産の価額を判定し、それを評価書で依頼者に表示することでありますが、この評価書については、当然説明責任が求められているわけでございます。
 また、各種不動産は多岐にわたる行政法規の規制を受けることが多いものですから、我々不動産鑑定士は、その業務の特質上、民法や不動産行政法規の法律にそれなりに精通しております。また、日常業務においても、知識の集積や研さんに励んでいるところでございます。
 そして、不動産の経済価値に関する訴訟事件においては、裁判所は鑑定人として不動産鑑定士を多用しており、その専門性は高く評価されているところでございます。
 「専門性を活用したADRへの関与の現状」といたしましては、主として調停委員として、裁判所での調停で生かされております。特に宅地建物調停事件においては、不動産鑑定士の調停委員は、その紛争事件の解決に多くの実績を有しておりまして、調停の専門委員としては弁護士に次ぐ人数が選任されております。確か平成12年の調査では、民事調停委員が653名、家事調停委員が316名選任されているようでございます。
 その扱う事件の内容と言いますと、いわゆる地代家賃の増減の問題、あるいは更新料等の一時金の問題、また借地借家の明渡しや、その他不動産にかかわる価値の紛争等、多岐にわたっておるわけでございます。
 そのような形で、鑑定協会といたしましては、今ところ組織的な対応といたしまして、平成7年に不動産鑑定相談所というものを各都道府県の社団法人に設置しております。そして今日に至っておりますけれども、この件についてはさほど大きな相談事例があるわけではなく、我々の調査でも記憶にとどめる程の事案はないとの事務局からの回答でございました。
 しかし、鑑定士の個別的な対応といたしましては、不動産の紛争が大体価格にかかわるものが多うございます。当事者間で不動産鑑定士に依頼をして裁定されているという個人的なケースが、かなり実際上は多く存在するのではないかと思います。いわゆる裁定ということで、当事者が価格、あるいは家賃地代も、当事者同士で誰かに見ていただこうかという場合に、不動産鑑定士を多用しているようでございます。
 「今後のさらなる活用の可能性」ということで、どのようなADRを活用の場として考えているかということでございますけれども、司法型ADRといたしましては、民事調停委員が多数選任されて活躍しているのは御存知のとおりだと思います。
 また、行政型ADRといたしましては、例えば土地収用委員になったり、あるいは土地評価審査委員等々、いろいろな審査委員に選任されているところでございます。
 そして、民間型ADRといたしましては、本会といたしまして、今回単独でADR自主組織を組成する方向で検討しているところでございます。ただ、この話が最近来たわけでございますので、機関決定もしておりません。ですから、機関決定もしなければならぬし、あるいは財政上の問題もクリアーしなければならないところであります。
 その組織形態といたしましては、地代家賃増減額を中心といたしました借地借家に係る紛争仲裁センターの設立・運営が考えられるところでございます。また、もしこの件について関係諸機関による連絡協議会等が設置される場合は、本会も会員として是非入会したいと考えております。
 それでは、どのような活用の形態があり得るかということで、主宰あるいは代理ということでございますけれども、我々不動産鑑定士は、ADRの場においては不動産の評価、価値が関連する事件について、主宰と代理のいずれの役割においても、専門性を有効に活用することによって、紛争の迅速な解決に寄与できると確信しております。
 まず、主宰でございますが、不動産鑑定の本質は、常に裁定であるとも見られております。民事の宅地建物調停事件における調停委員として多大な実績を示しているのがその理由の一端であります。
 また、代理についても、不動産鑑定士は不動産の評価、価値が関連する事件についても、当事者の代理として紛争の解決に十分な能力を発揮できる専門家であります。この場合は、代理人であることを紛争の相手方の関係者間にも認知された下で、行動することとなりますが、これは評価の専門家として、紛争当事者たる依頼者の代理人として、相手のみならず依頼人に対してもその根拠を示すことによって、不当な主張に対しての抑止力になり、紛争解決をより早めることとなります。
 更なる活用を実現する上での課題・問題点といたしましては、先ほど申しましたように、財政上の問題、あるいは代理権の問題、研修の問題があるわけでございますが、財政上の問題といたしましては、地方社団については非常に人数も少のうございます。財政上の負担が大きくなることも考えられるので、これから非常に大きな問題であろうかと思っております。
 それから、弁護士法第72条については、不動産鑑定士は、紛争が法律関係の事件であるとしても、不動産に関する事件は究極的には経済価値の配分が解決の鍵であることがほとんどであります。この種の事件については、不動産鑑定士にも代理権が認められる方向での改正を望みたいと思います。
 最後になりますが、研修会でございますけれども、不動産鑑定協会は全国的な組織で義務研修を毎年やっております。研修委員会もございます。そういうような形で不動産鑑定士はADRに対応する研修会の設置運営も十分対処可能と考えておる次第でございます。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、社団法人全国消費生活相談員協会の藤井理事長にお願いいたします。資料7-9を御提出いただいております。

[(社)全国消費生活相談員協会]

○説明者(全国消費生活相談員協会 藤井理事長) 今日の機会をいただきましたこと、御礼申し上げます。
 協会の活動概要は、時間の制約がありますので、省略させていただこうと思っておりますけれども、私どもはもともと国民生活センターが行政で消費生活相談の業務をやる相談員を養成する必要があるということで、相談員の養成講座を開設なさいました折の受講生、その修了者が集まりまして、任意で団体をつくりまして、10年さまざまな活動を積み重ねました上に、昭和62年になりまして、社団法人化することを認められたという団体でございます。定款にその目的が書かれております。
 私ども、消費生活相談員の有する専門性について御説明させていただきたいと思います。私どもの協会の会員のほとんどは、国民生活センター認定の消費生活専門相談員という資格を取得しております。また、その大半の会員が、全国各地にございます消費生活センターや、国民生活センター等で消費生活相談の業務に携わっております。
 今申しました、消費生活専門相談員という資格制度でございますが、国、地方自治体等が行う消費生活相談業務に携わる相談員の資格を認定する制度でございまして、内閣総理大臣を長とする平成2年の第23回消費者保護会議におきまして、国民生活センター及び各地の消費生活センターで消費者相談に携わる相談員の能力、資質の向上等を図るため、相談業務にかかわる公的資格制度を創設することが決定されまして、経済企画庁長官の認可を受けまして、平成3年度から国民生活センターが実施しておられる制度でございます。現在は、内閣総理大臣の認可事業になっております。相談に応じるための一定水準以上の知識と能力を持ち合わせていることを国民生活センターの会長が認定した者に与えるものでございます。
 平成13年度までの資格認定者の数は2,620 名でございます。認定者は、国民生活センターに登録されています。この専門相談員の資格以外に、消費生活に関する資格認定制度等につきましては、後から玉本様の方からお話があると思いますが、消費生活アドバイザーの制度、消費生活コンサルタントの制度、消費生活相談員養成講座修了者の制度などがございます。
 「専門性を活用したADRへの関与の現状」ということでございますが、消費生活センターの相談員といたしまして、行政型ADRでの関与につきましてお話をいたします。
 全国の消費生活センターと申しましても、いろいろなセンターの状況がありますが、ここで申し上げますのは、週4日以上開設いたしております、都道府県、政令指定都市、市町村の合計、このときは391 について、そこで相談に当たる相談員1,416 人についての勤務実態調査があります。身分が、この場合正規職員である人は5%の77名、あとは非常勤、アルバイトに当たるものでございまして、それが95%、1,339 人を占めております。また、その非常勤、アルバイトに当たる者の中での有資格者は81%という現状でございます。このデータは、平成13年に内閣府の国民生活局消費者調整課の調査によるデータでございます。
 消費生活相談の範囲ですけれども、相談員が行います仕事の範囲は、消費者が商品及びサービスを購入又は利用する場合に生じる、安全とか、品質、計量、価格、表示、契約等に関する相談でございます。最近は専ら80%ぐらいが契約にかかわるような相談に傾いてはおります。
 その相談の処理というのは、相談者に対して、事業者との交渉に必要な助言を行い、また、事業者と直接交渉する「あっせん」を行って、問題解決に当たっております。また、事案によりましては、情報の提供や他機関の紹介で終了してしまうというケースもございます。
 もう1つは、地方自治体の新しい消費生活相談窓口と、私どもの協会の幾つかでございますが、業務委託という関係で、消費生活相談を担当するという形の契約もしております。
 3番目に、当協会の任意でやっております事業でございますが、相談事業で相談担当者になることによりまして、民間型ADRでの関与をするという仕事で、もう少し中身を申し上げますと、当協会では「週末電話相談」「電話相談110 番」という場で、消費生活専門相談員の有資格者が相談業務を担当しております。これは、いわばボランティアでございまして、公益法人としてたくさんの消費者の方の利用に応えるという形での業務をやっております。
 この場合、複数の会員が同席いたしまして、会員間で情報の交換や協議を行いまして、互いに連携いたしまして、相談者に最もよいと考えられるような自主交渉のための助言とか、情報提供を行っております。
 ただ、私ども現状では、ここに申し上げました程度に留めておりまして、どうしてもあっせんが必要と判断されますような事案に関しましては、国民生活センターに移送いたしまして、処理を依頼いたしております。
 ちなみに週末電話相談は、年末・年始を除きまして、センターがほとんど開かれておりません土曜・日曜に相談を受け付けさせていただいておりまして、私どもも始めました当初は若干少のうございましたが、昨年度では1,388 件。今年度8月末現在で763 件の相談を受けております。
 それから、消費生活専門相談員が調停委員として仕事させていただいている場合もあります。最近は、一部の地方裁判所からは、消費生活相談の経験者を民事調停委員に採用したいが、関係のある者はいるかというような御連絡等を受けまして、関係のある地域に関係者がおります場合には推薦をいたしますというような手続を取りましたら、ほとんどの場合採用していただきまして、非常にお役に立っているというような報告を受けておりますし、また会を通しませんけれども、個人的に関係者の推薦を得まして、民事調停委員や家事調停委員に採用されている会員も多数ございます。
 今後のさらなる活用の可能性ですけれども、消費生活相談での活用ということでございますが、地方自治体の消費生活センターや、国民生活センターでの新規採用も勿論考えられることでございますが、現在は、全国各地に470 を超えるような常設の消費生活センターがありまして、年間76万件以上の相談を受け付ける状況でございます。
 現状では、消費生活センター等役所の相談窓口の利用者は、それでも3%程度にすぎないという国民生活動向調査などのデータがございます。
 今後、こういった行政型ADRが更に整備、充実・強化をされるということが必要と言われておりますし、そういうことが実現いたしましたら、担当者の需要というものが更に増大するものと考えられます。
 それから、介護保険法によりまして、最近介護保険サービスについてさまざまな問題がありますが、これも契約関係でございますので、この部署での相談業務を担当しております相談員も増えております。
 他のADRでの活用では、調停委員とか、民間型ADR機関での採用などが考えられる範囲と思っております。
 活用の形態でございますが、相談、あるいはあっせん・調停などの主宰は考えられると思います。
 現状で、消費生活センターの処理は、相談、あっせんまでというふうにされておりまして、消費者保護条例に基づく苦情処理委員会では、調停による解決が図られているケースもありますので、こういった制度がもっと活用されるようになりますと、調停というところまで仕事ができるということになろうと思います。
 終わりに、時間がまいりましたので、今後の課題はレジュメをご覧いただきたいと思います。公的資格を付与されている消費生活相談員がADRの担い手として、もっと他の機関との連携をさせていただきたいと、その必要があると思っております。
 よろしくお願いいたします。

○青山座長 どうもありがとうございました。それでは、最後に社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の玉本副会長、よろしくお願いいたします。

[(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会]

○説明者(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 玉本副会長) 社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の玉本でございます。
 本日は、ADR検討会におきまして、説明の機会を得ましたことを感謝申し上げます。
 最初に、当協会の概要を簡単に説明させていただきたいと思います。日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、通称NACSと言っておりますが、1988年に設立いたしまして、本年で14年目を迎えております。名称のとおり、消費生活アドバイザーと消費生活コンサルタントがそれぞれ別の団体でおりましたけれども、合併いたしまして、公益法人として発足いたしました。
 現在、会員は約4,000名でございます。6支部体制で、全国ネットで活動を展開しております。
 主な活動といたしまして、大きな2本柱として、1つは学校における消費者教育のテキスト作成と講師派遣ということでございます。もう1つの柱は、消費者相談室NACSウィークエンド・テレホンの実施でございます。
 この大きな2本柱の周りに、シンポジウムとか、研究発表大会とか、勉強会とか、さまざまなものを開催しながら、消費生活にかかわるさまざまな活動を展開しているような状況でございます。
 本日の本題に入らせていただきます。
 「消費生活アドバイザー、消費生活コンサルタントの有する専門性」ということでございます。両アドバイザー、コンサルタントの役割ということは、ここに書いておいたものをお読みいただくといたしまして、消費生活アドバイザー、消費生活コンサルタントはともに試験とか、講座とかで非常にたくさんの勉強といたしまして、知識を得ます。また、その中で問題解決への能力というものも問われてまいります。
 また、その人その人の経歴とか、仕事上の専門性とか、更に新しく発生する消費者問題について、調査とか、研究、研修を重ねまして、幅広くさまざまな分野で消費者問題を専門として活動しております。
 消費者問題の専門家としての論文発表とか、提言なども行っております。また、国や地方自治体の審議会、委員会、研究会などへの参画、最近は大学教員など多様な分野でも活動している状況でございます。
 2番目に専門性を活用したADRへの関与の状況でございますが、事務局からいただきました資料の中の「<設営機関に着目した分類>」ということがございますので、それによって分類をいたしました。
 まず、司法型ADRの関与の状況といたしましては、最近多重債務問題とか、高齢者の被害が多数発生していることがございます。民事調停委員とか家事調停委員への起用がございまして、相談の経験を活かし、大変活躍をしているということでございます。
 次に行政型ADRへの関与でございますが、これは国の消費者相談部門における消費生活相談員。省庁とか、地方局の消費生活相談員として起用されております。
 また、地方自治体の消費者相談部門における苦情・紛争処理委員会及び消費生活相談員ということでございます。平たく言いますと、都道府県、市区町村の消費生活センター、及び消費生活センターにまだならない窓口でございますが、そういったところでも消費生活相談員をしているということでございます。
 更に、各機関によって名称が異なってまいりますが、苦情紛争処理委員会とか、被害救済委員会等の委員にも起用されております。
 次に民間型ADRへの関与でございますが、製造物責任法が成立いたしまして、各種のPLセンターができました。その各種PLセンターの中で、やはり消費者問題の専門家というような形で起用されております。
 次に業界団体の相談センター。これは金融とかIT関連とか、今、業界団体でも相談センターをおつくりになっていらっしゃいまして、その中でまた消費者問題の専門家という形で起用をされております。
 あと、流通関係とか、メーカーとか、いろいろございますけれども、こういった企業のお客様相談室で相談を受けるというようなこともございます。
 当協会におけるADRといたしまして、「消費者相談室NACSウィークエンド・テレホン」というのを1991年に開設いたしました。土曜日、日曜日に消費者相談を受け付け、あっせん解決を図っております。年間約1,000件を超えておりまして、最近ではメールによる相談も増えております。
 消費者契約にかかわる紛争解決のための要素として、6の要素を考えております。この6の要素につきましても、当相談室が裁判外紛争処理機関に求められる要素は有していると考えておりますけれども、予算の関係でなかなかそこまでは至らないのが現状でございます。
 審議会の意見書の中で、インターネット上のADRの総合窓口サイトの整備をするということが記載されておりましたけれども、私どもの協会では、インターネット上の消費者相談の受付といたしまして、1999年と2000年に2つの実証実験をいたしました。
 1999年に行われました事業は「活力ある高齢者のための電子商取引」ということで、実証実験として、ホームページ上での消費者相談を行いました。ITを利用して消費者相談を受けるというものの先駆けでございまして、ネット上の相談の利便性と問題点が検証されております。
 現在はホームページの掲示板にいろいろな相談が寄せられまして、問題解決に向けていろいろな方がアドバイスをしてくださったり、またいろいろな機関を御紹介したりということで、コンサルタント的な役割も果たしていると思っております。
 2番目に、2000年に行いました実証実験は「消費者企業相互情報流通ネットワークシステム」というものの実地検証でございました。
 これは「情報流通市場」というホームページを立ち上げまして、5つのシステムの実地検証をいたしました。その中で、消費者保護システムとして、トラブル解決のために自分でトライするシステムと消費者相談の実施をいたしました。
 このホームページは、やはりITによるADRになり得るのではないかと思いまして、継続を図ったのですが、政府予算が得られませんで、継続はできませんでした。一民間団体であるNACSとしては、やはり継続できなかったということは非常に残念に思っております。
 「今後の更なる活用の可能性」ということでございますけれども、今検討会でいろいろと検討されているように、これからは多様な分野におけるADRが設立されると考えられます。私どもが、消費者関連の専門家として、いろいろなADRで発言をしていけるような可能性を秘めていると考えております。
 「どのようなADRを活用の場と考えるか」ということでございますが、私どもの協会では全国約4,000名の会員を有しておりまして、それぞれが得意な分野を持っておりますので、人材は割合と豊富ではないかと思っております。それで、多様な分野でのADRを活用の場と考えております。消費者関連は勿論、IT関連、金融関連、建築関連、高齢者関連、福祉関連、医療関連などもその分野ととらえております。
 「どのような活用の形態があり得るか」ということでございますが、相談といたしましては、私どもが専門とするところでございますので、電話とか面談とか出張相談とか、これからはITによるホームページ上の相談とか、メールによる相談とか、ポータルサイト的機能を持つ相談等を考えております。
 主宰につきましては、民間型ADRとして、消費者関連専門家集団のADRがあり得ると思っております。当協会NACS消費者相談室は11年の歴史を持って、相談、仲介・あっせん解決のノウハウを蓄積しております。この組織を更に強化・発展させまして、仲裁機能を持つADRとして全国ネットで展開を図れればいいなと考えております。
 ADRには、勿論弁護士さんにおいでをいただいて、司法書士の皆様、税理士、弁理士、土地家屋調査士の皆様方とネットワークを組み活動を続けていきたいと思っております。このことは、相談・紛争解決のワンストップサービスともなり、相談者の利便性が図られると思っております。
 代理については、ADRによって代理人になり得る範囲を定めておりますので、それをクリアーすれば代理人となり得ると考えております。
 「更なる活用を実現する上での課題・問題点」でございますけれども、ADRの論議はまだ始まったばかりで、相談、あっせん、調停、仲裁など、どのような機能を持つ機関をADRと称するか明確になっておりません。一般の方々には、まだまだ分かりにくいと思いますし、ADRの機能も分かりにくいかと思っております。
 民間型ADRを運営するためには、やはり資金が必要でございまして、それがどう手当をしていくのか、当協会でもこれが一番大きな課題となっております。
 最後に、消費者と事業者間の紛争解決には、消費者問題を専門とする者の活用が是非とも必要と考えます。
 以上、これで終わりでございます。ありがとうございました。

[質疑]

○青山座長 どうもありがとうございました。
 それでは、4人の方から御意見を賜りましたので、ただいまから15分ほど質問の時間を設けたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 どうぞ。

○綿引委員 それでは、清水先生にお伺いしたいのですが、私、不動産鑑定士の方の専門的知見というのは、ADRにおいて、大いに活用されなければいけないと思っているのですが、大変失礼な言い方かもしれないのですが、訴訟の場などに出てくる不動産鑑定士の方の意見の中の質の高いものと低いものの差というのが非常に激しいというのが私の実感です。
 また、執行関係などもお手伝いいただいておりますが、この中でもやはり質の高いものと低いものがある。この辺を、一定のレベルをきちっと確保していくための方策というのは、研修会のことなどもおっしゃったのですが、その辺についてはもう少し考えられないのでしょうか。

○説明者(日本不動産鑑定協会 清水副会長) 一昨年から、義務研修、義務まではいかないのですけれども、義務的研修というような形で全国的に持ち回りでやっておりまして、たまたま今のところ一般鑑定についての義務的研修なものですから、今後は、民事訴訟法とか、民事執行法とか、家賃地代のこととか、こういう関係の方も、十分経験者がたくさんおりますので、その人たちを活用しながらやっていきたいと思っております。
 ただ、たまたま今回初めて機会を得たものですから、用意が何もできなかったのですが、今後はそれに向けて急ピッチで会員の資質向上とその平準化をしていきたいと思います。

○青山座長 ほかにいかがでしょうか。三木委員、どうぞ。

○三木委員 藤井さんと玉本さんにお伺いしたいのですが、それぞれの組織に関係しておられる資格認定の制度、例えば消費生活相談員の資格認定とか、消費生活アドバイザーの資格認定とかにつきまして、どういう仕組みや要件で認定しておられるのか。
 また、平均してどのぐらいの期間の、どのぐらいの内容の勉強で資格認定を受けられる程度のレベルに達するのか、あるいはその認定の際に、相談の実技のようなものが何か課されるのかどうか、つまり筆記的なものなのか、実技的なものなのか。
 その他諸々細かいことでも結構ですけれども、資格認定の具体的なイメージが湧くようなことをお教えいただければと思います。
 併せて、仮に将来ADRの主宰者としての資格、例えば調停人としての資格とか、あっせん人としての資格のようなものを設けてはどうかという議論が起きた場合に、法律の知識以外の点で、どういう能力が図られるべきだとお考えなのかも、個人の御意見で結構ですからお教えいただければと思います。

○青山座長 論点は多岐にわたりますが。それでは今のことにつきまして、まず藤井さんの方から、その後で玉本さんにお願いします。

○説明者(全国消費生活相談員協会 藤井理事長) 私が先ほどお話させていただきました中で、国民生活センターの長がその資格を与えられるという制度だということは若干申し上げましたが、イメージが湧く程度とおっしゃられると、どのように申し上げたらいいのか、それほどの資料も持っておりませんけれども、実際にどのような出題があるかというのを手元に持っておりますので、申し上げます。一次試験は消費者問題にかかわる一般常識、消費者行政にかかわる関連法規、消費者問題にかかわる基礎的な法律知識、消費経済にかかわる経済知識、消費生活上の商品サービスにかかわる知識、消費生活相談に携わるに当たっての基礎的知識の出題と論文です。そして、二次試験として面接の口述試験があります。この資格取得をしたいという人がかなり最近多うございますので、当協会として目指す人のための講座というのを夏期に3日間ぐらいの講座内容で実施しておりまして、私は消費生活相談に携わるに当たっての基礎的知識に関係したような講座の講師を務めたりいたしております。その際の会話等を通じてみると、受講生自身は知識を相当お持ちです。
 試験問題は、専門相談員で現職にありましてもなかなか正解できないと思うような、かなり高度な内容の問題も出ますので、最近の試験合格者は、知識的には相当立派な方というふうにお見受けはいたします。
 ただ、問題なのはそれが現場で採用されたときにすぐ対応できるかどうかの点で、非常に危惧されるような部分がありまして、そのために私どもは資格を取って入会をされた方を、どう現場用に教育・指導するかというところが、一番大事な点だと思っております。先ほど申しました週末の電話相談などに、かなり経験豊かなベテランと、現場でこれからやりたいとか、今相談の場に着いたばかりの人を組み合わせまして、複数で1つの事案について検討しながら助言などもさせていただくというような形の研修の場に出てもらい、相談業務の実際を学ぶというような鍛え方をしております。
 それから毎年、消費者月間に国の事業に協賛し、今年でしたら生活110 番というテーマで、かなり広範な問題について相談を3日間受けましたが、そういう場でもいろいろな知識を持っている、経験年数もさまざまな者がグループをつくりまして、その中で相談を受け、先輩の意見などを十分聞いて体得するというような場を設けたりいたしております。

○青山座長 では、玉本さん、どうぞ。

○説明者(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 玉本副会長) まず、2つの資格がございますので、初めに消費生活アドバイザーの方の資格につきまして申し上げます。
 消費生活アドバイザーと言いますのは、財団法人日本産業協会、この日本産業協会と申しますのは、特定商取引に関する法律の指定法人となっております。この日本産業協会が行います、消費生活アドバイザー試験に合格した者、また一定の要件を満たした者という者に付与される資格でございます。
 内容といたしましては、今、藤井さんの方からもお話がございましたけれども、範囲が大変広うございます。1.消費者問題、2.消費者のための行政・法律知識。その中で行政知識、法律知識とございます。3.消費者のための経済知識といたしまして5項目ございます。経済一般知識、企業経営一般知識、生活経済、経済統計と調査方法の知識、地球環境問題、エネルギー事業ということがございます。4.生活基礎知識でございます。これは1~9までございまして、医療と健康、社会保健と福祉、余暇生活、衣服と生活、食生活と健康、住生活と快適空間、商品サービスの品質と安全性、広告と表示、暮らしと情報、またこれが細かく分けておりますけれども、これが試験の範囲となっております。
 昨年、13年度でございますけれども、受験申請者が2,991 人で、合格率が21.1%ということでございます。
 消費生活コンサルタントの方でございますが、消費生活コンサルタントは、財団法人日本消費者協会が行います消費生活コンサルタント養成講座を修了した者に付与されるということでございます。消費生活コンサルタントも、年1回、2か月間、ばっちり会場に通って勉強をするというようなことでございます。
 2001年までで1,800 名ほどこの消費生活コンサルタントというのがおります。カリキュラムの例でございますけれども、これも5までございまして、消費者問題を知るための講義とか、社会経済の現状を知るための講義、商品・サービスと消費者問題、消費者問題への対応、実務実習ということで、いずれにしましても、実務実習というのが入っておりまして、そこでロールプレイイングをしましたりして、研修を重ねるということでございます。
 それと、法律の知識以外という御質問がございましたけれども、こういったようものを学びましても、なかなか実際の場に立ちますと、初めての場合にはきちんとした相談ができないようなこともございます。
 そして、法律知識以外に私はバランスよく物を考えるということが必要ではないかと思っております。これは相談員にとって欠くべからざる要件ではないかと思っております。
 そして、消費者契約法の第1条の目的のところに、消費者と事業者の間の情報の質・量、並びに調整力の格差ということがございますけれども、こういったものをいろいろな形で事例を通しながら学んでいけばバランスよい考え方というのができてくるのではないかと考えております。
 以上でございます。

○青山座長 よろしゅうございますか。
 それでは、お三方には御多忙の中を我々に御説明いただきまして、本当にありがとうございました。委員を代表して御礼申し上げます。
 (日本不動産鑑定協会、全国消費生活相談員協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会説明者退席)

○青山座長 それでは、ヒアリングに続きまして、「専門家の活用」について御議論いただきたいと思います。その前に、事務局からこのテーマに関して、現状や論点について簡単に御説明をお願いしたいと思います。
 事務局からは、説明資料として7-11が提出されておりますので、小林参事官お願いします。

[説明]

○小林参事官 それでは、説明資料に基づきまして、若干御説明をさせていただきたいと思います。
 本日はヒアリングが中心ということでございますので、通例のような、かなり論点を細かく列記したような資料は御用意しておりませんで、むしろ本件を巡ります周辺の状況でありますとか、背景といったものを中心に御説明をさせていただきたいと考えております。
 まず、説明資料の1ページ目から6ページ目までは、司法制度改革審議会の意見書の抜粋でございます。なぜ今更また意見書の抜粋をお載せしたかということでございますが、本件に関しましては、若干ほかの検討項目と違った特殊事情がございますので、その点について御説明する便宜でございます。
 まず、1ページ目から3ページ目までは、ADR関係の記述に書かれてある専門家の活用でございます。それから、4ページ目から6ページ目まで、ここは弁護士制度の改革に関連しまして、隣接法律専門職種の活用等というテーマで掲げられているところでございます。
 両方参照していただくと分かりますとおり、基本的な記述は全く同じでございますが、本件のADRにおける専門家の活用という問題が2つの側面から意見書の中で取り上げられているということを説明したかったということでございます。
 それから、もう1つは6ページでございますが、こちらは弁護士制度の改革の方で掲げられている記述でございますが、先ほど髙木先生からも御指摘がありましたけれども、本件につきまして、具体的な関与の在り方については、職種ごとに実態を踏まえて判断すべきであるということでございます。
 他方、当検討会で議論しておりますADRの問題は、基本的にはADRに関する共通的な制度基盤の整備ということでございまして、ここでやや難しいところがございまして、一方では共通的な制度基盤の問題として議論する必要があるのと同時に、具体的な措置については個別の分野ごとに議論していかなければらないということでございます。
 今日のヒアリングをお聞きいただいても分かりますように、かなりそれぞれの分野に固有の事情、背景等がございます。当然そういった分野につきましては、それぞれ所管する省庁の政策的な判断というものもあるわけでございますので、その辺りを十分勘案しながら議論を進めていく必要があるということでございます。
 7ページは、それではADRにおける専門家の活用形態としてどんなことが考えられるかということでございます。
 これにつきましては、ヒアリングをお願いした皆様方にもあらかじめお話をしてございましたので、今日のヒアリングもそういうような形で御説明があったかと思いますけれども、大きく3つの形態があろうかと思います。
 1つは、中ほどにございますように、仲裁、調停、あっせんの主宰者として関与されるというケース。それから、2番目は、紛争当事者のところにそれぞれございますが、代理人として関与するケース。3番目としまして、主宰者の横にございますけれども、補助者として専門的な助言を行うという立場。こういった大きく3つの関与の仕方があるのではないかという整理でございます。
 8ページでは、具体的に現在どのような活用が図られているかということでございますが、これは既に第2回の検討会でお配りした資料の中から作成させていただいたものでございます。
 左側に司法型ADR、行政型ADR、民間型ADRということで運営主体で分け、横が主宰、あるいは代理という形態でございますが、代理につきましては、司法書士が民事調停における代理権が来年4月施行の改正法によって認められることになりますし、弁理士につきましては、2つのADRにつきまして、代理権が法律上認められているということでございます。
 それから、主宰につきまして、消費生活関係の方、あるいは隣接法律専門職種の方、あるいはその他の専門家の方々が、それぞれの機関において主宰者として活躍されているという状況でございます。
 9ページですが、このうち民事調停におきます専門家の活用につきまして、これは最高裁の方から資料をいただきましたものでございますけれども、いわゆる専門家といわれている方々がどれくらいの比重を占めているかということを御説明したものでございます。今日ヒアリングさせていただいた方々も、かなり入っておられるようでございます。
 10ページですが、これはADR機関に対するアンケート調査を御説明した際に一度お示しをしたものでございますけれども、それぞれADR機関の側から見て、どういった専門家を活用しているのかということについてまとめたものでございます。
 それから、11ページにまいりますが、それでは、その中でも主宰者について、どのような能力が必要になってくるのかということでございます。これは詳しくは次回以降に御議論いただくということになると思いますけれども、非常に難しい問題でございまして、ここにお示ししたのも、あくまでも1つのイメージでございます。何もこれが世の中の定説であるとか、あるいは事務局としてこういった姿を想定しているというわけではございませんが、幾つか考える要素、あるいは組み合わせというものがあろうかと思いますので、それを単純に図にしたものでございますが、その割合はともかくとして、ADR主宰者に求められる能力としては、おおよそ3つくらいのものが考えられるのではないかというのが中段以下でございまして、1つは、法的思考を通じた紛争解決能力。この中には、単なる法律知識、あるいは争点整理能力のみならず、それにプラスα した説得能力なども含まれるのではないかということでございます。
 それから、2番目がそれぞれの紛争の分野があるわけでございますが、紛争分野固有の専門的知識ということでございます。この点につきましては、今日、いろいろな団体の方からお話を聞かせていただいたところでございます。
 それから、3番目でございますが、これはヒアリングの中でも触れられた方がおられたように記憶いたしておりますが、そういった紛争分野固有の専門的知識、あるいは法律的な知識のみならず、心理学的手法と言いますか、話合い促進能力的なもの、あるいは人間関係と表現をされた方がおられたように記憶しておりますが、そういった能力でございまして、コミュニケーション技術とか、カウンセリング技術、こういったものが必要になってくるのではないかと思います。
 先ほど申し上げましたように、これらをどういう組み合わせで考えていくか。あるいは、これらのどれに重点を置いて考えるべきかということにつきましては、おそらくADRの紛争の分野によっても異なるでしょうし、あるいはどういう形態のADRか、比較的調整型のADRなのか、あるいは裁断的なADRなのか、そういったところによってもかなり違ってくるのではないかということでございます。
 12ページは、先ほどのアンケート調査と同じ際に行ったものでございますけれども、今後、主宰者あるいは代理人として専門家を活用していく意向について、これもADR機関側に聞いた回答でございます。
 主宰者として活用を拡大する意向が31%、代理人として活用を図る意向が20%ということでございまして、若干ADRというものの性格上かもしれませんが、代理人として活用を図るというのが少ないという状況にございます。
 13ページ以下でございますが、先ほど来、ヒアリングの中にも出てまいりました弁護士法の関連規定を載せております。また、参考のところには、最高裁の判例でございますが、その趣旨についての御説明でございます。
 本検討会におきましては、今日、ヒアリングをお聞きしたところからスタートいたしまして、まずはADRにおいて専門家を活用していく必要があるのかどうか。また、どういった形で活用していく必要があるのかどうかということを議論していただくということがスタートでございまして、その過程の中で、弁護士法72条との関係で何か調整をする必要がある、考え方を整理する必要があるということになりますと、それについて引き続き議論するということになるのではないかと考えております。ただ、そこは先ほど申しましたように、個別の分野によってかなり事情・背景が異なりますので、その辺りはまずは一般論としての議論からスタートするのではないかと思っております。
 14ページは、弁護士法72条につきまして、別途、法曹制度検討会で検討が進められております。そして、そちらの方におきまして、これは法曹制度検討会の資料からの抜粋でございますが、1つは、弁護士法第72条の但書につきまして、「この法律及び他の法律に別段の定めがある場合この限りではない」などと改正することはどうかということで、議論がされたということでございます。そういった方向で議論がとりまとめられたというのが第1点でございます。
 もう1つは、会社形態の多様化につきまして、親会社がグループ会社の法律事務を有償で取り扱うことと弁護士法72条との関係に関する議論が、現在、検討が進められている状況と聞いております。
 以上、本件を巡ります背景、周辺状況について、御説明いたしました。

[討議]

○青山座長 ありがとうございました。専門家の活用の問題は、今回初めて取り上げる問題でございます。そこで、今日はあまり時間があるとは申せませんけれども、先ほど10人の方から様々な御説明をいただきましたものですから、それをも適宜参考としながら、今の小林参事官の御説明を基に、専門家の活用につきまして御議論をいただきたいと思っております。
 それから、時間の関係でございますけれども、今日は30分ぐらいはこのために取れると思いますが、次回の検討会でも裁判所との連携の問題も含めて、このテーマを引き続き議論して更に検討を深めたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 私の方から、先ほどの小林参事官の御説明につき補足的に申し上げたいのですが、この資料7-11に司法制度改革審議会意見書の別々の箇所から引いていただいてありますが、非常に重要な意味があると思いまして、発言させていただきます。
 私どもADR検討会では、今のところもしADR基本法というものができるとすれば、その内容についてどういうことを考えていくかという方向で今検討している。その中で専門家の活用という場面に私どもは差し掛かってきているわけですが、さて、専門家の活用というのは、別の面から見ますと、法曹制度の中で法律家以外の専門家をどういうふうに活用していくかという場面もあるわけです。そちらの方は、どちらかというと、各業種、各業法ごとに個別的な論点として出てきているわけでございます。
 ところが、我々の方は、もしADR基本法というものをつくるとすれば、各専門家の、例えば司法書士なら司法書士法、行政書士なら行政書士法という個別の法律がありますが、そういうものにあまり個別的に足を踏み込めるかどうかという問題がございます。そこで、その間に、法曹制度の方での問題状況と、我々のADRの検討での問題状況をすり合わせていかなければならないという問題もあるかと思いますけれども、とりあえず法曹以外の専門家をADRにどれだけ活用できるか、それが望ましいのか、どういう可能性があるのかというようなことについて一般的なお話を伺えればということが事務局の問題提起であると思っております。
 それでは、ADRにおける専門家の活用につきまして、どなたからでもどうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。あるいは、資料7-11についての御質問ということがありましたら、それでも結構でございます。

○髙木委員 今日伺った感想的なところから入りたいと思うのですけれども。
 一番最初に専門家の関与ということを伺ったときに思ったのは、例えば資料7-11でいいますと7ページですが、普通には補助者としての専門家の能力とか知見とかを生かすという話かなと思っておりまして。

○青山座長 当事者の補助者という意味ですか。

○髙木委員 これは主宰者の補助者という位置付けで書いていると思うんですが、そういう意味では平山先生がおっしゃった建築紛争における建築家の参加の仕方、それによって3年くらいかかっていた紛争が半分近くになった、そういったものが一番望ましいのかなと思っていたわけです。
 司法書士さん、弁理士さん、税理士さん、皆さんそれなりの専門分野をお持ちではあるものの、やはり専門分野が非常にこま切れになっていると思われるのです。それぞれの団体がそれぞれに主宰してADRを立ち上げるというのが、ある意味でトータルなサービスを求めているというのが国民の立場なのだろうと思いますし、あるところから先の領域になると、訓練も経ていない、経験もないというところが、紛争になることが分かっていてこういうものができるというのが、意見書が望んだ姿なのかというのをすごく疑問を持ちました。
 私が申し上げるといろいろ弊害があるかもしれないので、その辺について皆さんの御意見を伺いたいと思って口火を切らせていただきました。

○青山座長 いかがでしょうか。確かに幾つかの団体から検討中というところもありましたけれども、それぞれの団体でADR機関をつくるということをはっきりおっしゃったところもありますので、そうすると、そういう業界ごとといいますか、専門職ごとのADRがこれから立ち上がるかもしれない。そういうことが日本のADRの将来にとってよいことかどうか非常に疑問だというのが髙木委員の御発言です。
 この点どうですか。どのように考えるべきか。初めて出てきた問題ですが。

○横尾委員 私はまだ意見がまとまっているわけではないんですが、髙木先生のお話も一部頷けるところもございますけれども、既に弁護士法72条の観点から幾つかの士業については例外的な扱いも始まっておりますし、それから、民事調停委員の中にもそういった専門性を活用しようという動きもございますので、私は一概に否定はしないで、できるだけ活用していくという前向きな形で制度を仕組んでいくことが必要ではないかと思っています。

○綿引委員 私も同じ感想です。今、横尾委員が言われたように、専門性を活用するというのはもっともだと思いますし、それはしていかなければいけないと思うのですが、それが先ほど髙木委員が言われたように、各業界団体ごとにそれぞれが何らかの紛争処理機関をつくっていくというのは、今日伺ったのが本当に全部なってしまったら、一体どういうことになるのだろうと。
 本当にそれがきちっと機能していくのだろうか。また、質的に担保できるのたろうか。また、何の連携も取れずにそのような紛争処理機関がいっぱいできてしまったら、国民が果たしてうまく選択できるような仕組みになるのだろうかということを考えますと、あまり業界団体ごとに我々の専門知識でいい紛争処理機関ができるよという流れではなく、どういう形でそれぞれの専門的な知見を活かして行けるのかというのを、もう少し地に足をつけて考えないといけないなというのが今日伺ったところの率直な感想でした。その点では髙木委員の御意見に同感です。

○山本委員 私も最後の理想的な姿としては、あまりにいろいろなADR機関が、こういう言い方は悪いですが、雨後の筍みたいに出てきて、わけが分からなくなるということが必ずしも望ましいとは思ってはいないのですが、ただ、私自身この検討会でも何度か基本的な認識として申し上げたように、ADRの国家法の整備の在り方としては、やはり基本的には民間の自主的な努力というものをできるだけ尊重するように、そしてそれを国の立場から規制するようなことはなるべく避けた方が望ましいのではないかという認識を持っております。
 最終的にはそのようにADR機関が乱立するとしても、それは市場による淘汰、つまり利用者の選択によって整理されていくというのが、紛争解決サービスにおいても望ましい姿ではないかというのが私の認識です。
 勿論、最低限の規制としてどこまで求めるかということについては、これはいろんな議論があり得るだろうと思いますけれども、基本的な姿勢としては、最初の段階から人為的な形で規制するよりは、ADRというものがまだ今の日本社会では十分に根付いていないという状況を前提にすれば、最初の段階ではある程度自由な発想で、それぞれの機関なり団体なりにやってみていただくと。それで勿論不都合が出てくれば対応していく必要はあると思いますけれども、基本的にはそういう自律的な努力に期待するというのが制度の姿としては望ましいのではないかというのが基本的な認識です。
 本日の御議論で専門的な能力をどう活用するかという点で、事務局の資料7-11の11ページの整理というのは、私は非常に的確な整理をされているのではないかと思っています。
 専門的知識というのは、1つは紛争内容の専門性、今日は主としてそれが中心だったかと思いますけれども、税務紛争であるとか、境界紛争であるとか、消費者紛争といった紛争内容について、それぞれの方が有している専門性をどう活用するかというのが1つの問題で、これは確かに髙木委員がおっしゃったとおりだと思いまして、一方では紛争解決の主宰者として関与するということもあるでしょうし、その主宰者を補助するという関与の仕方、訴訟でいえば裁判官に加えるのか、鑑定人的な形でその知見を利用するのか、それは双方のやり方があり得て、それをどういうふうに整理するのかというのが今後の課題になるだろうと思います。
 それとともにもう1つ、私は特に調整型のADRにおいては、今後は心理学的手法を通じた話合い促進能力という形で御提示になっておりますけれども、こういう意味での専門知識、紛争分野ではなくて紛争解決そのものについての専門知識というものがあるのではないか。法的な専門能力とは別に、こういった専門能力というものがあり得て、これをどういうふうにADRに活用していくのかということは、これは非常に私は重要な問題だと認識しています。ただ、まだ十分に定見がありませんで、問題点の指摘だけとします。

○廣田委員 今の山本委員の御意見に概ね賛成です。専門家の活用という問題は、今の定義、11ページの図が大きなポイントになると思うのですが、ここでいう紛争分野固有の専門知識、もう1つ心理学的手法等を通じた話合い促進能力。こういうものがどこかで欠けてしまうと、ADRというのはあまりいいものにはならないわけです。ですから、これは是非活かしたいというのが意見書の意見だと私は理解しております。
 専門家の活用は、それだけにとどまらないで、それから先にいろいろなところに方向が伸びていくのですね。1つの方向が、それをやるとどうしても弁護士法72条という問題に触らざるを得ないという方向はあると思います。今日のヒアリングの意見にもはっきり出ていたと思うのです。
 もう一つの方法が、今、髙木委員の御指摘された制度論の方になります。全体の制度論で見た場合どうなるかという問題ですが、これでいいのだろうかという疑問が分からないでもないのですけれども、ただ、今、山本委員がおっしゃったように、それがいけないということになると、11ページのこれそのものをつぶしてしまう可能性が現状ではあるわけです。ですから、私はそういう規制については、あまり考えてはいけないのではないか。むしろ、元のところに戻って、専門家の活用というレベルのところから、果たしてADR基本法で何ができるかというところを議論すべきであると思っております。
 そのために、私は現実のADRの姿というものを押さえて、実際にどこでこういう活用がなされていくか。それについて72条はこれでいいのかどうか。そういう現実の姿を踏まえて、今日は時間がありませんから、次回に意見を述べたいと思います。
 今日のところはその程度にしたいと思います。

○青山座長 三木委員、どうぞ。

○三木委員 私はこの検討会における議論やその他の場を通じて、ADRというものに対する認識が広まっていって、従来あまりADRを主宰することなどに御関心を持たなかったいろいろな団体が、いろいろな形でADRに参与することをお考えになっている。その中の1つとして、場合によっては団体ごとに自前のADR組織も検討してみたいとおっしゃっていることは大変結構なことではないかと思います。
 もともと世界のADRムーブメントを振り返ってみても、その大きな要因の1つは、紛争解決を法曹三者を中心とする狭い意味の法律家にだけ任せていていいのかという点があったことは確かなところであります。
 法律家に任せる紛争解決というのは訴訟がありますし、我が国では他の国に類を見ない裁判に付属した調停などというものもあるわけですから、むしろ法律家だけの狭い考えによる紛争解決から、更にもっと自由な観点でいろいろな紛争解決が目指される機関がいろいろつくられていいと思います。その意味では、規制的な話が出てくることは望ましくないし、また、実際問題としても、こういう機関はADR組織をつくってはいけないという議論ができるとは思えません。
 ただ、懸念のようなものをお感じになる委員の方がいらっしゃるとすれば、その背景としては、何点かあろうかと思います。
 1つは、ある分野の専門家であれば、その分野のADRをつくる資格と能力があると、直ちに言うことにはやはり疑問があります。ADRを主宰するためには、先ほど他の委員からも引用がありましたけれども、資料7-11の11ページの一番下にあるコミュニケーション技術とかカウンセリング技術などといった当該分野の専門家としての能力ではカバーできないADR主宰者の能力というものが別途必要になろうかと思います。
 それは何も法曹以外の専門家だけに当てはまる話ではなくて、弁護士であろうと、裁判官であろうと言えることでして、我が国の法律家教育ではこうした能力はほとんど涵養される機会がないまま法律家になっているわけでありますから、弁護士だから当然調停人なれるというものではないだろうと思います。
 他の国のADRの実態を比べて我が国でも最も欠けているものの1つは、ADRの主宰者となるための教育とか研修の仕組みがない。あるいは資格認定のような仕組みがないということだろうと思います。
 そういう意味では、現段階ではこの検討会は専門家の活用という問題と研修という問題は別個のテーマとして扱っておりますが、その両者は密接に関連するものでありまして、どこかの段階でリンクさせて議論するという段階が来なければならないように感じております。
 もう1点、先ほど山本委員が雨後の筍という言葉を使われたのですけれども、その表現自体はやや不穏当だと思いますが、ただ御趣旨は私も分かるのでありまして、もう一つ大事なことは、各ADR機関相互の連携ということだろうと思います。
 我が国では、委員の皆さんは十分御承知のように、数だけ見ると現状でもかなり数のADR機関が民間型、行政型合わせてあるわけです。ただ、そのほとんどが横の連絡がないし、一つひとつを取ってみると、必ずしも活発に利用されているとは言えない。そしてまた、それぞれが狭い分野のみを扱っているという中で、将来いろいろなADR機関がこれから更に増えていくことは私は望ましいと思っておりますが、ただ乱立するだけでは国民のためにならないだろうと思います。
 どうにかして、それらを横に連絡させたり、あるいは国民から見てワンストップサービスができるような仕組みをつくらなければいけない。それこそがADR基本法と仮称されているものの1つの役割だろうと思いますから、そうした仕組みをつくるために法や行政ができることというのは何なのだということ、これも考えていかなければいけない。
 その意味では、専門家の活用という問題と、機関相互の連携という問題もそっくりでありまして、やはりどこかの段階でリンクさせて議論する必要があると考えています。

○青山座長 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○安藤委員 私いつもどおり皆さんとはちょっとずれた意見なのですが、紛争当事者から主宰者に相談というのは私はおかしいと思うんです。相談窓口であって、そこから主宰者の方へ、相談窓口がそのまま主宰者になるケースもあると思いますが、必ず相談窓口というのを1回経て主宰者の方に行くと、これがADRではないかと思いますので、レベルの低いと言ったら失礼でけれども、とにかく気軽に相談できるような窓口、これをいかに充実させるかというのが一番のADRの必要性なのです。そこで受けたものを、それではこの機関に持っていったらどうだろうという形を取っていかない限り、現状の縦割というのは絶対に消えないわけです。
 ですから、その辺りで、せっかくADRという新しいものをつくるのですから、その辺の相談窓口というもの、むしろ啓蒙や何かについても当然のことですけれども、そういった機関もどこかに与えるといったような方法を何か工夫していかなければいけないのではないかと考えています。

○青山座長 おっしゃっている意味は、各機関ではなくて、ポータルサイトみたいなものをつくれと。

○安藤委員 ですから、今の形で言いますと、失礼ですけれども、消費者相談員ですとか、こういうところは主宰者になる前に、まず窓口になってほしいのです。その窓口があって、自分のところで処理できるのだったらいいけれども、これはここにつなごうと、この問題だったらここへお願いしたらどうだという連携をつくっていくことが必要ではないかと思います。

○青山座長 分かりました。どうもありがとうございました。
 今日の資料7-11の13ページに弁護士法の問題が出ておりまして、14ページには法曹制度検討会の資料としてそのたたき台がこちらの方に回ってきておりますが、こういう弁護士法の改正についてはどうかというような、廣田委員はこれは次回にじっくりお話しするということですが、何か今日御意見があれば、おっしゃっていただければと思いますが。
 かなり今日は、専門家の活用に端を発してADRの本質の話まで出てきましたので、この辺で今日の検討会を終わらせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、最後に事務局の方から何点か、当検討会の議論とも関係する動きについて紹介させていただきたいと思います。
 それではお願いします。

[その他]

○小林参事官 まず、資料7-14でございますが、「ADRの拡充・活性化関係省庁連絡会議の検討状況」でございます。
 ちょうど今、三木先生から御指摘をいただきまして、1つはADR機関間の連携の強化、それからもう1つは人材の養成という2つの問題をどこかのタイミングでこちらの方とも収斂させていく必要があるのではないかという御指摘をいただきましたが、その問題につきまして、法制の整備を待たずに、今できることは何かということで検討を進めているのがこの関係省庁等連絡会議でございます。
 6月13日に設置されて以降、幹事会あるいは本会議を開催いたしまして、詳しい説明は省略させていただきますが、関係機関からのヒアリングを重ねて、まさにADRの実態を踏まえて、何か現時点で改善策を講じられないかということで検討を進めております。
 今後につきましては、こういったヒアリングを踏まえまして、本年度中を目途にアクション・プランのようなものを作成しまして、これを実施に移すということと、それから、これはあくまでも行政機関の集まりではございますけれども、ADR機関が集まった連絡協議会というものを早期に整備したいと考えておりまして、この準備も並行して進めていきたいと考えております。
 それからもう一つでございますが、資料7-15でございます。これはもう既に、新聞などのマスコミには公表されておりますが、内閣府が実施いたしましたADRに関する意識調査でございます。対象は消費者問題ということでございますし、また、アンケートも国民生活モニターの方に実施したものでございますが、2ページ以降、なかなかADRに関する認知度でありますとか、イメージ、それからADRに求めるもの、政府に求めるものということについて、興味深い結果が出ておりますので、詳しい説明は省略させていただきますけれども、御覧いただければということで配付、御紹介をいたしました。
 以上でございます。

○青山座長 どうもありがとうございました。今の資料7-14、15につきまして御質問がございますでしょうか。なければ、これをお読みいただいてということにさせていただきます。
 それでは、最後に、次回の日程を確認させていただきたいと思います。次回、第8回ADR検討会は、10月28日月曜日の午後2時から、テーマは、本日の議論の続きを行うとともに、冒頭申し上げましたように、裁判手続との連携につきまして、前回、第6回検討会の議論の続きを行うということでございます。
 したがって、裁判手続との連携と、専門家の活用という2つのテーマを次回、10月28日午後2時からやらせていただきたいということでございます。
 それから、意見書の指摘事項で残っておりますところの、法律扶助の対象化ということにつきましての若干の議論を行いたいと考えております。これはまだ議論していないところでございますので、お考えをお聞かせいただければと思っております。
 それから次回には更に、第1巡目の議論として残された課題がないかということも含めまして、2巡目以降の議論の進め方についてどういうふうにしたらいいかという今後のスケジュールについてもお諮りしたいと考えております。
 それから、最後でございますが、各委員に御苦労をおかけしております夏休みの宿題、つまりADRの拡充・活性化に関する基本理念に関するレポートでございます。既に御連絡申し上げましたとおり、皆様から事務局を通じて私に御提出していただき、それをベースとして私の方で検討会での2巡目の議論の素材として、「総論に関する論点メモ」というようなものを作成したいと、それは夏休み中に御連絡しております。もう既に御提出いただいた方もありますが、御提出いただいていない方はなるべく早く事務局の方まで御提出いただきたいということでございます。
 次回は、御議論いただく各論のテーマが多数残っておりますので、各委員からいただきました総論に関するレポートの論点メモを整理いたしまして、提出いたしますのは、10月ではなくて11月の会合になろうかと思っておりますが、未提出の方はなるべく早くお願いしたいと思っています。
 以上、時間が今日も超過いたしまして、大変御迷惑をおかけしました。本日の検討会はこれで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。