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ADR検討会(第9回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年11月11日(月)13:30~15:50

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、髙木佳子、龍井葉ニ、原早苗、平山善吉、 廣田尚久、三木浩一、山本和彦(座長代理)、綿引万里子(敬称略)
(事務局)古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)ADR全般に対する通則規律
(2)法的効果付与等の要件チェック方法
(3)今後の検討の基本的枠組み(論点整理)
(4)その他

5 配布資料
資料9-1説明資料(ADR全般に対する通則規律・法的効果付与等の要件チェック方法)
資料9-2論点整理メモ(座長案)
資料9-3論点整理メモ関連資料
資料9-4ADR拡充・活性化関係省庁等連絡会議関係資料
資料9-5補足資料(参考)(法律扶助の対象化関係)

6 議 事

(1)ADR全般に対する通則規律

(2)法的効果付与等の要件チェック方法

 ADR全般に対する通則規律及び法的効果付与等の要件チェック方法について、事務局より、資料9-1に沿って説明が行われた後、討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長、●:事務局)

(ADR全般に対する通則規律)

 事務局から、ADR全般に対する規律の必要性として挙げられ得る項目として、「ADRの信頼性の確保」、「当事者の選択権の確保」、「その他(ADRの利用促進)」が、また、考えられる規律内容として、「主宰者規範の設定」、「手続規範の設定」、「組織運営規範」「その他」等の論点が提示された。

○ ADR全般に対する通則規律について議論する前提として、「ADR全般」とは何を指すのかを確認する必要がある。例えば、主宰者の中立性について考えても、仲裁や調停の場合は分かりやすいが、双方当事者の役員等が主宰者となるミニ・トライアルの場合にどのように考えればよいかは難しい。
このように、「ADR全般」に諸外国で開発されているニュータイプの手続が含まれるとなると、これらの手続の特徴をすべて考慮しなければならなくなるため、ADR全般ではなく、その一部を取り上げて議論を進めた方がよいのではないか。

□ ADRの外延については別途議論することにして、ここでは、中核的な手続である仲裁・調停・あっせん等を中心に議論することとしてはどうか。

○ 議論の前提として、どのような紛争のタイプを念頭に置くのかというところは、委員の間で一致しておいた方がよいのではないか。例えば、主宰者要件について考えても、ある事件には法的知識が必要であるが、他の事件には調整能力がより重要であるというように、紛争のタイプによって求められる能力が異なる。
このため、一部の紛争のパターンを想定して制度設計を図ったために、他のパターンを締め出すおそれがあることには十分に注意する必要がある。

● どのようなADRの活性化を図るかという点については、意見が分かれるところであり、今の段階でADRのタイプを絞って議論をするというのは難しい。現時点では、各委員の関心に応じて、どのタイプのADRを念頭に置いた場合にはどのような制度設計が必要かということを御議論いただきたい。

○ 紛争解決の対象をできる限り広げた形で議論していきたい。通則規律については、特に中立性の担保をどのように捉えればよいのかという点について、公正性を確保するためのものなのか、組織からの独立が重要なのか、議論の焦点が難しい。

○ 紛争のタイプや内容がどのようなものであっても、最低限必要な規律があるのではないか。現行制度の中では、例えば住宅紛争処理制度は、最低限必要な規律を法律に規定するという観点から議論されたものであり、議論の参考となるのではないか。

○ 相談や苦情処理も念頭に置きつつ、まず、仲裁や調停を中心に議論を開始すればどうか。

○ 主宰者規範のうち主宰者要件を考えるに当たって、弁護士法第72条の問題は避けて通れない。主宰者資格については、現実の姿を素直に認めた上で、審議会意見書に沿って一歩前進することが望まれる。
現実には、民事調停・家事調停には弁護士以外の専門家が数多く携わっているし、弁理士法では弁理士にADRでの代理権が認められている。また、会社の担当者が代理人となることも広く行われているが、これらの行為が弁護士法違反として刑事責任を問われたことがないのは、正当業務行為に当たると考えられているからである。このように、弁護士法第72条は一部空文化しているといえるが、形式的には違反行為であるとみえるため、ADRに携わる人々にとっては、せっかく立派な仕事をしているのに法に違反していると言われては元気が出ないのではないか。
このため、ADRにおいて正当業務行為を行っている場合には、弁護士法に違反しない旨を明文化すべきである。例えば、主宰者についていえば、ADR機関が認める仲裁人・調停人は弁護士法に違反しない旨の規定を置くことや、さらに進んで、隣接法律専門職種の業務分野においては、その専門知識を活用することなどが考えられる。また、代理人についても、企業法務部の担当者や身分の近い者が代理人となることに加え、ADR機関が認める者や隣接法律専門職種の専門分野における活用も考えられる。
このように、最小限でも、正当業務行為に当たる部分を開放していくべきであり、これによって、専門家の下に集まってくる紛争がADRに持ち込まれることによって、ADRの活性化につながるのではないか。

○ 諸外国における主宰者・代理人の資格要件についてみれば、仲裁や調停の主宰者・代理人を法律家に限定している例はほとんどないと思われる。

○ 通則規律の内容については、利用者の選択の前提となる情報が開示される仕組みを作るため、ADRが制定すべき項目を強行的に規定することが重要である。
規律の性格については、調停などは仲裁と異なって訴権を放棄するものではないので、基本的には当事者の自治に委ねるべきであり、仲裁のようなデフォルト・ルールを置く必要はないと思われる。ただ、法制的には難しいかもしれないが、法的効果を伴わない形で訓示規定や努力義務を置くことによって、ADRを誘導していくことも考え得る。

○ 通則規律の設定に当たっては、「当事者の選択権の確保」を図ることが重要であり、各機関が規則を制定すべき項目のみを規律することとして、どのような内容の規則を制定するかは各機関に委ねた上で、その内容が公開されることが望ましい。
この他、当事者同士が主体的に紛争を解決するものであることや、消費者と事業者の格差を考慮すべきことなども、緩やかな理念規定や訓示規定として置くことも考えられる。

○ ADRを幅広く捉えて議論すべき論点と、ADRの範囲を絞って議論すべき論点を分ける必要がある。
「ADRの利用促進」に関しては、あらゆるタイプのADRについて考えることができるため、ADRを幅広く捉えて議論してもよいと思われるが、他方、「当事者の選択権の確保」については、すべてのADRに共通的な議論はできないものと思われ、ADRのタイプを考えながら議論していく必要がある。また、「ADRの信頼性の確保」についても、手続のタイプや紛争のタイプによって議論は異なってくると思われるため、きめ細かな議論が必要である。

○ 通則規律の設定に当たっては、個々の問題を加味しながら、ちょうどよく制度設計ができるような配慮が必要である。

(法的効果付与等の要件チェック方法)

 事務局から、促進的な規定を設ける場合の対象ADRの限定方法として、「事前チェック」、「事後チェック」、「事後チェックと事前チェックの組合せ(併用)」が考えられ得ることが提示された。

○ 法的効果のイメージが明らかでない現段階において、要件チェック方法の議論を行うのはやや時期尚早の感がある。これらの問題については、調停やあっせんの定義や付与される法的効果の内容が明らかになってから見極めていくべきものではないか。

○ 消費者団体では、ADR機関という組織に対して法的効果を付与するという方向での検討は行っておらず、提示された論点には違和感がある。また、対象ADRを限定するということになれば、要件から外れたADRには法的効果を付与しないという強制的な権限が付与権者に与えられることになるのではないか。

● 事務局が提示した論点では、事前チェック方法として、機関を認定するほか、手続や主宰者を認定する方法も考えられるとしていることに留意いただきたい。

○ 要件チェック方法として、認定方式を回避することは十分可能ではないか。例えば、時効については要件を法律で規定し、立証を通じて効果を付与する方法をとるべきであるし、執行力については現存の機関を法律によって限定列挙すべきと考える。また、法律扶助については、法律で扶助の方向だけ出していけば、後は予算と審査委員の判断に委ねられるのではないか。

○ そもそも、一定の要件を満たすADRに法的効果を付与すべきかどうかということについて、委員のコンセンサスが得られていないのに、要件チェック方法について議論する意義は乏しいのではないか。

□ 今回、要件チェック方法を論点として取り上げたのは、今後、法的効果の付与等についてさらに深く議論していく中で、やはりそれぞれの法的効果等を付与するに当たって要件をどのように絞っていくかという議論は避けて通れないと思われるからである。このため、一巡目の議論の最後として、どのようなチェック方法が取り得るか、それぞれのメリット・デメリットにはどのようなものがあるかについても一応検討していただきたいと考える。

○ 基本的には、事前チェックによって特定のADR機関にのみ法的効果を付与するのは望ましくない。また、行政が認定することになれば、認定後も、適正に業務が遂行されているかどうかを、ADRの内部に立ち入って審査する仕組みが必要となると思われ、自主性を特長とするADRの本来の趣旨にそぐわない面もあるのではないか。
ただ、事前チェック方法の対象を機関ではなく主宰者とし、個人の資格として考える方法はあるかもしれない。例えば、公認の調停士やADR士といった有資格者が行ったADR手続に何らかの法的効果を付与することは考え得る。

○ できる限り自由なADRを確保する観点からは、事後チェックが望ましい。ただし、利用者の予見可能性は重要な問題であり、事前の予見可能性がなくては利用者がADRの利用を決断できないおそれがある。
このため、利用者からも的確に判断できる要件が立てられるのであれば事後チェックでもよいが、それが難しいのであれば、国の関与を最小限にする工夫をした上で、事前チェックを併用せざるを得ないのではないか。

○ チェック方法をどうすべきかは法的効果との関係で決まるものと考えるが、例えば時効中断効では、当事者の予測可能性が重要であり、事前チェックと事後チェックの併用が考えられるのではないか。
事前チェックの対象を手続や主宰者とすれば国の関与が薄まるというのはわかるが、ADRに関する法制度を整備して国がその利用を促進する以上は、利用者の信頼を得る必要があるはずであり、国の関与は避けられないのではないか。 

○ 利用者の立場に立って考えた場合、少なくとも訴訟まで見据えてADRでの解決を図るのであれば、予測可能性が確保される事前チェック方式は必要なのではないか。

(3)今後の検討の基本的枠組み(論点整理)

 今後の検討の基本的枠組みについて、座長より提示された論点整理メモ(資料9-2)に沿って討議が行われ、以下のような意見が出された。(○:委員、□:座長)

○ そろそろADRの定義や外延を整理する時期に来ているのではないか。また、同様に、あっせんや調停の定義についても、整理すべきではないか。

○ ADRの定義に関しては、消費者の立場からは、Mediationを今後の紛争解決の柱として考えているが、このうち、調停については制度設計が可能であると思われるが、あっせんをどのように取扱うかというのは難しい問題となるだろう。
論点整理メモについては、「私的自治を徹底したADR」が拡充・活性化を図るべきと考えられるADRの一例として置かれているが、単にこのようなADRがあればよいということではなくて、ADR拡充・活性化の本旨の一つとして、すべてのADRに求められるものとして位置付けるべきであると考えている。
また、消費者と事業者の力の格差をどうやって対等に近づけ、公平性を図っていくかという論点も重要である。

○ ADRの概念の中にどのような手続を含めていくのか、あるいは外していくのかという議論は必要であろう。

○ まずは簡単なところから、仲裁との関係を整理してみてはどうか。また、行政型ADRや司法型ADRとの関係を整理して、法整備の対象を民間型ADRに絞るのかどうかを議論することにしてはどうか。

○ 司法型ADRをここでの議論の対象から外すということを明確化した方がよいのではないか。また、行政型ADRをどのように取扱うか、相談や苦情処理を含めるのかどうかという点についても議論し、法律に盛り込むADRの外延を明らかにする必要があるのではないか。

○ ADRの範囲が広すぎて、あるタイプのADRを念頭に置いた意見が他のADRには通用しないということが起こり得るため、今後はADRの範囲や目標を決めて議論すべきではないか。

○ 司法型ADRを外すかどうかを含め、検討の対象となるADRの種類や手続の範囲をどのように決めるかという問題は、議論の項目によって異なってくるものと思われる。例えば、「あっせん」の定義をみても制度によって定義の仕方が違っており、これを統一するのは非常に難しいし、「あっせん」と「調停」を区別することも難しい。

○ ADRのタイプごとにどのような効果が認められるのかを考えていくことが必要であると思われる。なかなか難しいことであると思うが、最終的に議論を収斂させていくためには、一巡目が終わった現段階で、こういう場合にはこのような解決の仕方があるといったマトリックスを考えて、活性化の意味合いを確認する手続が必要となるのではないか。

○ ADRの範囲は事項ごとに決定すべき問題であろう。その際には、BtoB紛争を扱うADRとBtoC紛争を扱うADRとでは考慮すべき問題が異なると思われるので、その点を念頭に置いておかなければならない。
また、「私的自治の尊重」と「ADRへの信頼性の確保」とは必ずしも対立する概念ではないと思われ、信頼性を確保するための最低限の規律を設けつつ、私的自治の尊重と調和する形での規律方法を探ることが重要である。
今後の進め方としては、一定の法制化を目標とするのであれば、ベーシックなたたき台をもとに、的を絞った具体的な議論をしていく必要があるのではないか。

□ 今後の議論の方向としては、①ADRの範囲を明確にしつつ、拡充・活性化を図るべきADRに関する議論を深めていくとともに、②そのために必要と考えられる取組について、法的効果の付与等に関する各項目から、事務局からの案を示してもらいながら具体的な議論を進めていくこととしてはどうか。
現段階では、ADRに関する共通的な制度基盤の整備について、必ずしも議論を尽くしたとはいい難いものの、少なくとも、少なからずの点について、法制上の措置を講ずる必要があるのではないかという共通認識ができつつあるのではないかと考えられるので、今後は、法案化も十分念頭に置きながら、更に検討を深めていくこととしたい。
こうした措置に関する検討については、理想と現実の両面にわたり、なかなか難しい問題もあろうかと思うが、2巡目では、少しずつでも、個々の論点について方向性を見出していくこととして、一回ずつ論点整理を提示しつつ、取りまとめながら進めていきたい。

(委員からの異論はなかった。)

座長が退席し、以後の議事は座長代理により進められることになった。

(4)その他

 事務局より、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議の検討状況についての説明があった。
 次回は12月9日に開催され、いわゆるADR基本法の制定を目指した本格的検討の初回として、ADR拡充・活性化の基本理念、国等の責務などの総論事項についての検討を行うこととなった。また、UNCITRAL国際商事調停モデル法の説明も行われることになった。さらに、関係省庁等連絡会議の検討に関連する議論も行われることになった。

(以上)