首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会行政訴訟検討会

行政訴訟検討会(第1回)議事録



1 日時
平成14年2月18日(月)15:00 〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)市村陽典、小池信行、小早川光郎、塩野宏、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、小林久起参事官

4 議題
(1)座長の選任等
(2)検討課題及び検討の進め方について
(3)今後の日程等

5 配布資料
資料1: 行政訴訟検討会名簿
資料2: 司法制度改革審議会意見書(抜粋)
資料3:関係基本法令 (略)
資料4:行政事件訴訟法の概要
資料5:平成12年度行政事件の概況(最高裁判所事務総局行政局)
(法曹時報第53巻第9号(平成13年9月1日発行)から引用)(略)
資料6:行政訴訟検討会の当面の予定(案)

6 議事

【小林参事官】所定の時刻になりましたので、第1回「行政訴訟検討会」を開会させて頂きます。
 本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。後ほど、当検討会の座長を互選でお決めいただくことになりますが、それまでの間は、私、参事官の小林が進行を務めさせて頂きます。
 初めに、司法制度改革推進本部事務局長の山崎から御挨拶を申し上げます。

【山崎局長】事務局長の山崎でございます。よろしくお願い申し上げます。
 開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の皆様方には、大変御多忙中のところ、この検討会に御参加いただくことを御承諾いただきまして、大変ありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。
 この改革推進本部は御案内のとおり、昨年12月1日に内閣に設置され、本部長が、総理大臣でございます。司法制度改革審議会の意見書の趣旨にのっとりまして、司法制度の改革と基盤の整備を総合的かつ集中的に推進し、3年以内を目途に関連法案の成立を目指すこととされているわけでございます。
 具体的な法令案の立案作業でございますけれども、これは私ども事務局が中心になって行ってまいりますが、行政訴訟検討会を始め、主要なテーマごとに、有識者等による検討会を開催いたしまして、意見交換を行いながら事務局と一体となって作業を進めると、こういう方式を取らさせていただいているところでございます。
 したがいまして、この検討会の性格につきましては、皆様方に、審議会の答申のようなものをおまとめいただくということは予定しておりませんけれども、立案作業に関しまして忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思います。この検討会では「司法の行政に対するチェック機能の強化」と、こういう観点から御検討をお願いしたいと考えております。
 「司法の行政に対するチェック機能の強化」に関しましては、司法制度改革審議会は、憲法が規定する三権分立の抑制・均衡システムの中で、従前にも増して司法の果たすべき役割が一層重要となることを踏まえ、司法の行政に対するチェック機能の強化を図る必要があるとして、行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査の在り方に関して、法の支配の基本理念の下に、司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討を行う必要がある。政府において、本格的な検討を早急に開始すべきである、との意見を述べまして、これに引き続きまして、21世紀の我が国社会においては、司法の果たすべき役割が一層重要となることを踏まえると、司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で、行政訴訟制度を見直すことは不可欠であると述べております。当検討会では、この審議会の意見を踏まえまして、行政事件訴訟法を中心といたしました行政訴訟制度の見直しに関する検討を行っていただきたいと考えているところでございます。
 委員の皆様方には、大変お忙しい中を恐縮でございますけれども、このような司法制度改革を推進する意味の重要性を十分に御理解賜わりまして、御協力いただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 はなはだ簡単ではございますけれども、以上で私からの挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

(座長の選任)
 委員の互選により、塩野委員が座長に選出された。

(議事の公開については協議の結果、次の取扱いとすることとなった。)

  • 毎回の会議の議事概要及び議事録を作成し、公表する(議事録には発言者名を記載する)。
  • 報道機関に会場における議事の傍聴を認める。
  • 検討会における議論の円滑化を図るため又は関係機関の業務に支障が生じるのを避けるために必要やむを得ない場合、検討会における判断により、議事録への発言者名の記載を避け、会議の傍聴を制限し、又は会議資料を非公開にすることがあり得る。
(報道関係者入室)

【塩野座長】それでは、ただいまから審議に入りたいと思いますが、その前に私の方から、御挨拶なり、私の気構えなりを一言だけ申し上げておきたいと思います。
 先程、検討会の皆様から、座長の御指名を受けたところでございます。非力ではございますけれども、皆様の御協力を得まして、是非良い成果を生み出すべく、会議の進行を行いたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 年寄りですから、多少昔のことがどうしても出てきてしまいますが、昭和37年、つまり1962年に行政訴訟法が制定されまして、ちょうど40年になります。その間、既に1989年の日本公法学会の総会で行政訴訟法の改正問題と申しますが、そういったものが正面から議論されたところでございました。
 引き続きまして、改革に向けての論文が逐次刊行されております。その意味では、学会として行訴法改革論議の灯というものは、絶えることなく続いていたわけでございます。しかし、これも学界内部、あるいは法曹界の一部における関心事であります。勿論、住民運動の方々で、このままの行政訴訟法ではどうしてもうまくいかないという御議論も承ったことはございますけれども、主として広がりはそう多くはなかったということが言えます。
 ところが、今回、ようやく政治の日程に上がってきたということがございまして、先程局長の方から趣旨の御説明があったところでございます。
 こういうふうに現実の政治日程に上がってまいりましたので、私としては、この重要課題に検討会がいささかでも寄与することができるようにしたいということを念じて、司会の進行に当たりたい思っておりますので、冒頭に申しましたように、皆様方の御協力是非お願いしたいと存じます。
 それでは、議事に入ります。まず当検討会の検討課題及び検討の進め方について事務局から説明をお願いいたします。言わば根本的な検討課題は既に局長から御説明があったところでございますが、それを二段にわたってブレイクダウンするという意味で、検討課題、及び検討の進め方について事務局から説明をお願いいたします。

【松川次長】それでは、着席のままで恐縮でございますが、私の方から「行政訴訟検討会」についての検討課題と検討の進め方について概略のところを御説明申し上げたいと存じます。
 まず、検討課題として求められております件でございますが、先程事務局長の挨拶でも申し上げましたとおり、司法の行政に対するチェック機能の強化、すなわち司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で、行政事件訴訟法を中心とした行政訴訟制度を見直すということが求められているところでございます。
 審議会の意見書におきましては、お手元の資料2に関係部分の抜粋を資料として配布させていただいていますが、そこにも記載がありますように「裁判所は、統治構造の中で三権の一翼を担い、司法権の行使を通じて、抑制・均衡システムの中で行政作用をチェックすることにより、国民の権利・自由の保障を実現するという重要な役割を有している」とした上で、「21世紀の我が国社会においては司法の果たすべき役割が一層重要になることを踏まえると、司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で、行政訴訟制度を見直すことは不可欠である」としているところでございます。
 また、現行の行政訴訟制度につきましては、この意見書では、審議会の議論の中で、現行制度に内在している問題点や、新たなタイプの紛争の出現に伴う問題点、更には、行政事件の専門性に対応した裁判所の体制に関する問題点などの指摘があったとされているところでございます。具体的課題につきましても、多岐にわたって書かれているところであります。
 更にこの問題の検討の進め方につきましては、「そもそも、司法による行政審査の在り方を考えるには、統治構造の中における行政及び司法の役割・機能とその限界、さらには三権相互の関係を十分に吟味することは不可欠である。国民の権利救済を実効化する見地から、行政作用のチェック機能の在り方とその強化のための方策に関しては、行政過程全体を見通しながら、「法の支配」の基本理念の下に、司法と行政それぞれの役割を見据えた総合的多角的な検討が求められる」との意見を述べているところであります。
 このように司法の行政に対するチェック機能の強化に関する検討は、事柄の性質からも、問題点、課題ともに多岐にわたる総合的多角的な検討が求められているところであります。しかしながら、審議会の意見は、検討すべき角度、視点については方向性を示しておりながらも、必ずしも具体的な提言をするには至っておりません。
 当面、こういうふうに総合的多角的な検討を進めながらも、事務局といたしまして、司法制度改革を具体的に推進するという観点に立った場合におきましては、ある程度の検討が進んだ段階で論点を相当絞って詰めた検討を進めていただく必要も生じ得るのではないかと考えているところであります。
 そこで、検討期間及び検討の頻度等でございますが、まず検討の期間の目途につきましては、推進本部の設置期間との関係もございますので、平成15年の暮れまでの2年程度の期間を一応の目途としてお願いできたらどうかと考えているところであります。
 それから、頻度でございますが、原則として、1か月に1回程度開催させていただければと考えておるところでございます。皆様方には御多用中のところを恐縮でございますが、以上のような趣旨を踏まえて、よろしく協力のほどお願い申し上げたいと存じます。
 よろしくお願いいたします。

【塩野座長】今の次長の説明についても御質問があろうかと思いますが、引き続き、もう一つ、ブレイクダウンしたものを用意しているようでございますので、参事官の方から御説明をお願いします。

【小林参事官】それでは、先程の次長の説明に補足して、検討課題と配布資料の若干の御説明について補足させていただきます。
 検討課題につきましては、先程次長の方から紹介した資料の2という意見書の抜粋がございますので、これに基づいて御説明したいと思いますが、次長から御説明したように、この意見書の枠で囲ったところ、その後の「(1) 行政訴訟制度の見直しの必要性」というところで、その4行目に「当審議会の議論の中で、現行の行政訴訟制度に関しては、次のような指摘があった」という形で、(i)(ii)(iii)と分けて、「(i)現行の行政訴訟制度に内在している問題点」、それから「(ii)現行の行政訴訟制度では対応が困難な新たな問題点」、それから「(iii)行政事件の専門性に対応した裁判所の体制に関する問題点」、こういう形で3つの問題点に分けて議論がされたという指摘がされております。
 そして、具体的にその(i)の「現行の行政訴訟制度に内在している問題点」としては、「行政庁に対する信頼と司法権の限界性の認識を基礎とした行政庁の優越的地位(政策的判断への司法の不介入、行政庁の第一次判断権の尊重、取消訴訟中心主義等)が認められており、その帰結として、抗告訴訟が制度本来の機能を十分に果たしえていない」このような指摘があったとされているところでございます。
 (ii)の「現行の行政訴訟制度では、対応が困難な新たな問題点」というところでは、「行政需要の増大と行政作用の多様化に伴い、伝統的な取消訴訟の枠組みでは必ずしも対応しきれないタイプの紛争(行政計画の取消訴訟等)が出現し、これらに対する実体法及び手続法それぞれのレベルでの手当が必要である」このような指摘があったとされているところでございます。
 審議会の意見書はその次に、先程次長から御紹介したように「21世紀の我が国社会においては司法の果たすべき役割が一層重要となることを踏まえると、司法の行政に対するチェック機能を強化する方向で行政訴訟制度を見直すことは不可欠である」とした上で、最後の行に「このような認識に基づき、行政訴訟制度の見直しに関する当審議会における議論の中で挙げられた具体的な課題は多岐にわたった」として、その課題を指摘しているところでございます。
 具体的には、その課題の指摘については、2行目にある「行政訴訟手続に関する諸課題」というのと、それからその次の段落にございます「行政訴訟の基盤整備上の諸課題」、このような2つの課題に分けて記述がされているわけでございます。
 そして、その第1の行政訴訟手続に関する諸課題としては「例えば、現行の行政事件訴訟法上の個別課題として、原告適格、処分性、訴えの利益、出訴期間、管轄、執行不停止原則等のほか、義務付け訴訟、予防的不作為訴訟、行政立法取消訴訟等の新たな訴訟類型の導入の可否も問題となる。さらに、民事訴訟をモデルとした対応とは一線を画した固有の「行政訴訟法(仮称)」の制定の要否も視野に入れることが考えられる。このほか、個別法の上の課題(不服審査前置主義、処分性、原告適格等)の整理・検討も併せて必要となろう」このような課題を指摘しているわけでございます。
 その次の「行政訴訟の基盤整備上の諸課題」という課題としては、「行政訴訟の基盤整備上の諸課題への対応も重要である。例えば、行政訴訟に対応するための専門的裁判機関(行政裁判所ないし行政事件専門部、巡回裁判所等)の整備、行政事件を取り扱う法曹(裁判官・弁護士)の専門性の強化方策等について、本格的な検討が必要である。また、法科大学院における行政法教育の充実も求められる」というような課題を指摘しているわけでございます。
 「(2)司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討」というところで、「この問題に関する具体的な解決策の検討は、事柄の性質上、司法制度改革の視点と行政改革の動向との整合性を確保しつつ行うことが不可欠であり、また、行政手続法、情報公開法、行政不服審査法等の関連諸法制との関係、国家賠償制度との適切な役割分担等に十分留意する必要がある。さらに、行政委員会の準司法的機能の充実との関係にも配慮しなければならない。そもそも、司法による行政審査の在り方を考えるには、統治構造の中における行政及び司法の役割・機能とその限界、さらには、三権相互の関係を十分に吟味することが不可欠である。国民の権利救済を実効化する見地から、行政作用のチェック機能の在り方とその強化のための方策に関しては、行政過程全体を見通しながら、「法の支配」の基本理念の下に、司法と行政それぞれの役割を見据えた総合的多角的な検討が求められるゆえんである。政府においては、行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査の在り方に関して、本格的な検討を早急に開始すべきである」このような意見が述べられたわけでございます。
 この意見書の記載の説明は以上のとおりですが、読んでいただければ分かりますように、行政訴訟に特有の専門的な事項をかなり多く含んでいるわけでございます。
 他方で、この検討会の構成は、意見書の指摘する総合的多角的な検討に資するために、必ずしも行政訴訟の専門家には限らずに、幅広い分野の有識者にお集まりいただいている関係から、意見書の専門的な内容のうち、特に行政訴訟に関する部分を御理解いただくために、配布資料を説明しながら、少し行政訴訟の基本法である行政事件訴訟法の概要と、行政訴訟の概況につきまして、御説明をしたいと思います。勿論、専門家の方にとっては、やや迂遠かもしれませんが、検討会の共通認識を作っていく過程として、少しばかり御辛抱願いたいと思います。
 資料3「関係基本法令」というのがございます。この第1は、行政事件訴訟法です。この行政事件訴訟法は、座長からも先程御指摘があったように、ちょうど40年前に制定されて、昭和37年10月1日に施行された法律、全文で45条から成っているわけでございます。この法律は平成元年に民事保全法、平成8年に、現在の新しい民事訴訟法の制定に伴う、一部改正はあるのですが、基本的な部分では、昭和37年の制定以来改正はないという法律でございます。
 行政事件訴訟法の趣旨は、第1条にありますように「行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」というふうに規定されておりまして、行政事件訴訟についての一般法ないし基本法としての性格を持つ法律であるとされているわけです。
 同じ法律の7条に規定されていますとおり「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による」ということになっているわけでございます。
 資料4ということで「行政事件訴訟法の概要」という、行政事件訴訟の概要を簡単にまとめた資料を用意しております。これは事務局で作成したものでございます。
 資料4の1ページ、「第1行政事件訴訟法の規定の概要と行政事件訴訟の類型」という項目では、行政事件訴訟法の規定の概要を説明しながら、行政事件訴訟の種類をお示しすることを目的としたものでございます。
 行政事件訴訟につきましては、行政事件訴訟法の第2条で4つの訴訟類型があるとされておりまして、それが抗告訴訟と当事者訴訟と民衆訴訟と機関訴訟ということになっているわけでございます。
 意見書の中に、先程御説明したように、抗告訴訟というのは、行政事件訴訟法3条1項で抗告訴訟というのは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟を言うとされているわけでございます。
 行政事件訴訟法はこの抗告訴訟について第2章というのを設けまして、8条から38条までで規定しております。
 それから、意見書の中にも取り挙げられている取消訴訟というのは、抗告訴訟の中の1つの種類として、行政事件訴訟法の第9条で、資料の4ですと、AとBとか書いてあるのですが、処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴え、こういうものが規定されているわけです。そして、行政事件訴訟法の第2章の第1節、8条から35条までがこの取消訴訟について規定しているということになります。
 取消訴訟のうち、処分の取消しの訴えでいう処分とは何かという問題、これは処分性という形で意見書の中に取り挙げられていますが、その処分とは何かというのは、行政事件訴訟法3条2項で、行政庁の処分、その他、公権力の行使に当たる行為と規定されております。
 ちなみに、裁決取消しの訴えでいう裁決というのは、3条3項で、審査請求、異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為と規定されております。
 行政事件訴訟法は抗告訴訟のうちに、今の取消訴訟以外にその他の抗告訴訟という規定の項目を設けておりまして、これが第2章の第2節、36条から38条までになります。取消訴訟以外のその他の抗告訴訟については、行政事件訴訟法は、この資料4でAからCまで、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、それから取消訴訟以外の抗告訴訟という3つの種類に分けて規定をしております。
 行政事件訴訟法は、このほか第3章、これが39条から41条までになりますが、そこで当事者訴訟について規定して、第4章で、これが42条と43条で、民衆訴訟と機関訴訟という、抗告訴訟以外の訴訟類型3つについて規定してあります。
 当事者訴訟というのは、第4条にあるように、この資料4にAとBと書いてありますが、2つの類型がありまして、当事者間の法律関係を確認し、または形成する処分、または裁決に関する訴訟で法令の規定により、その法律関係の当事者の一方を被告とするというのが1つの類型でありますが、そのほかに、Bにありますように、公法上の法律関係に関する訴訟、これを一般に当事者訴訟と規定しています。
 それから、行政訴訟の第3の種類である民衆訴訟というのは、第5条にありますように、「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するのをいう」とされておりまして、機関訴訟については6条で「国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう」とされております。
 第5章が、補則となって、44条と45条がございますが、44条で仮処分の排除、45条で処分の効力等を争点とする訴訟について規定を設けております。
 それから、資料4の1ページの下から2行目以下ですが、これは取消訴訟に関する規定を第2で挙げておりまして、2ページ目の第3というところが、取消訴訟以外の抗告訴訟に関する規定です。
 第4が、当事者訴訟に関する訴訟です。
 第5が、民衆訴訟及び機関訴訟に関する規定を挙げています。
 意見書の記述に関係の深い条文を資料3に戻りまして、行政事件訴訟法の条文から御紹介いたしますと、意見書の記載の中にありました処分の取消しの訴え等、審査請求との関係につきましては、行政事件訴訟法、関係法令の資料の1ページの左上になりますが、8条で掲載しておりまして、8条の第1項で、処分の取消しの訴えは、当該処分につき、法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消しの訴えを提起することはできない旨の定めがあるときは、この限りでないと規定されています。
 第8条2項で、各号の場合、下の段に一、二、三というのがありまして、審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないとき。それから処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。3号で、その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。これらの場合には、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することはできないという定めがあっても、裁決を経ないで処分の取消しの訴えを提起することはできると規定されております。
 次に、「原告適格」ですが、これについては、行政事件訴訟法第9条、資料1ページ下の左の段になりますが、第9条で、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分または裁決の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者に限り、提起することができると規定しております。
 「管轄」については、資料は関係法令の2ページの右の上の段になりますが、第12条で規定しています。第12条の1項で、行政庁を被告とする取消訴訟は、その行政庁の所在地の裁判所の管轄に属するとした上で、12条の2項で、土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができるとされており、更に12条の3項で、取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たった下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができるという規定になっております。
 それから「出訴期間」についても指摘されていますが、同じページの右下の段、14条にありまして、出訴期間については、14条の1項で、取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から三箇月以内に提起しなければならないということになっておりまして、第3項で、取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでないという規定になっております。
 少し飛びますが、資料の3ページの右の下の段、第25条というところがございます。「執行停止」というのも意見書に取り挙げられていますが、執行停止に関しましては、第25条第1項で、処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げないと規定した上で、第25条第2項で、処分の取消しの訴えの提起があった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるための緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができると規定されております。
 その第3項では、執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼす恐れがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができないという規定になっているわけでございます。
 次に、資料3の関係法令のうち行政手続法が7ページにございます。この立法に関与された方もこの委員の中におられるわけですが、行政手続法というのが平成5年に制定されて、平成6年10月1日から施行されております。この1条にあるように、この法律の目的として、「この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第三十八条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする」という法律でございます。
 14ページ以下が「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」になっております。これは平成11年に制定されて、平成13年、昨年の4月1日から施行された法律です。
 その目的ですが、第1条にありますように、「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」法律でございます。
 資料3の21ページ以下が「行政不服審査法」でございます。これは昭和37年に制定されまして、行政事件訴訟法と同じ昭和37年10月1日から施行された法律でございます。
 この法律の趣旨は、第1条の1項に規定されておりますように「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」法律でございます。
 第1条の2項にありますように、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによるわけです。
 それから、関係基本法令の最後、これは資料3の最後のページになりますが、「国家賠償法」を挙げております。
 国家賠償法は第1条の第1項にありますように、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずることを定めた法律でございます。
 資料5があります。これは最高裁判所事務総局行政局がまとめた平成12年度行政事件の概況でございます。
 第1部が行政事件の動きで、第2部が裁判例の概観となっております。
 第1部の「新受件数の動き」というところで書いてありますように、平成12年における行政訴訟の新受件数は、各審級合わせて3,468件であり、このうち第一審の新受件数(高等裁判所を第一審とする事件を含む。以下同じ)は平成11年より219件増加して2,014件、控訴審の新受件数は91件増加して722件となっているということでございます。
 それから、その事件の種類別ですが、その次の項目にありますように、平成12年における第一審の新受件数を事件の種類別にみると、工業所有権関係事件が480件(23.8パーセント)と最も多く、以下、地方自治関係事件が459件(22.8パーセント)、租税関係事件が325件(16.1パーセント)となっており、これら三種類の事件で全体の6割を超えているという状況が説明をされております。
 それから、資料5の概況の3枚目以下、これは統計をまとめております。どのような統計があるかと申しますと、第1表から第6表までは、昭和23年から平成12年までの全審級と第一審の行政訴訟事件を、事件の種類別に分けた新受件数、既済件数、未済件数の統計。
 それから、3枚めくると、第7表がございまして、これが平成8年から平成12年までの地方裁判所の行政訴訟事件の新受件数を訴訟の種類別に分けた統計です。
 それから、第8表が平成12年の第一審の行政訴訟事件の既済件数を事件の種類別、それから終局内容別に分けた統計です。
 第9表がありまして、これは平成8年から平成12年までの第一審の行政訴訟事件の既済件数を終局内容別、認容とか棄却とか却下等に分けた統計です。
 第10表と第11表は、平成8年から平成12年までの地方裁判所の行政訴訟事件の既済件数と未済件数の審理期間別に分けた統計です。
 それから、第12表から第14表までというのがありまして、これが昭和23年から平成12年までの控訴審の行政訴訟事件に関する統計です。
 それから、第15表が地方裁判所判決に対する上訴率。
 第16表が、事件の種類別にその上訴率を分けた統計。
 第17表が、控訴審の既済件数を事件の種類別と終局内容別に分けた統計。
 第18表は、それを平成8年から平成12年まで、終局内容別に既済件数を分けた統計。
 第19表が、上告審の事件の種類別の新受件数。
 第20表、第21表も、事件の種類別の既済件数、未済件数、上告審の統計でございます。それから、第22表で、高等裁判所に対する上訴率。
 第23表で、事件の種類別に分けた高等裁判所判決に対する上訴率。
 第24表で、上告審の既済件数を事件の種類と終局内容で分けた統計。
 第25表は、上告審の行政訴訟事件の既済件数を終局内容別に分けた統計。
 第26表からは執行停止になりまして、26表が執行停止申立事件、地方裁判所の事件の種類別での新受件数。
 それから、第27表が、平成12年の地方裁判所の執行停止申立事件の既済件数を事件の種類別と終局内容別に分けた統計。
 第28表が、高等裁判所の統計。
 第28表、第29表は、執行停止の高等裁判所の統計となっているわけでございます。
 その次に、同じ資料の統計から次のところですが、「第二部裁判例の概観」というところがございまして、そこで平成12年度に現れた行政事件の裁判例のうち、公刊物に搭載された裁判例で実務上参考になると思われる主要なものを概観したものでございまして、裁判例の判決要旨がまとめられておりますので、御参考にしていただきたいと思います。
 以上で資料の説明を終わります。
 資料6というのは、今後のスケジュールのところで御説明をしたいと思っております。以上でございます。

【塩野座長】それでは、今までの局長説明、次長説明、そして、更に行訴法の全般的な説明を前提といたしまして、これについて質問があれば伺いたいと思います。
 この検討会は、従来の審議会とやや違ったところがございまして、私もどういうふうに運んでいいのか、まだ、よく分からないところも色々ございます。そういうところもありますので、何も今日で進め方についても全て決めるというものでもございません。逐次方針変更、多少の変更はあるということでございます。
 先程次長から、確か2年ということで平成15年の末ごろまでには、この検討会としての取りまとめを、取りまとめという言葉を使っていいかどうかというのももう一つの問題になるわけですけれども、実質的な審理は一応締めがあるということでございました。本来ならば、まだ検討会の任期はあるわけでございますけれども、あと立法の段階を考えますと、どうも今、私の一応の整理で考えますと、第一に立法化してもらいたいというのは、大体その辺のことかなと。その後の期間はどうするかというのは、これまた御相談ということになりますが、差し当たり、まず重要なのは、そういうことで期限が非常に限られているということも頭の中に入れて、進め方等についても、今日も御質問があれば承りますし、また、いろいろ今後も時に応じて御意見を承りたいと思っております。差し当たり何か御質問等ございますでしょうか。

【小早川委員】資料について、よろしいでしょうか。現状でどうかということがあったんだと思いますので、今御説明いただいたことは、出発点のデータなんですが、この統計の分類が非常に伝統的、古典的でありまして、例えばこれを見て、環境関係はどうなっているのかとか、消費者が訴訟を起こしたのはどのくらいあるのかというのは分からない仕組みになっているんですが、そういう理論的、制度的ではないかもしれないけれども、社会実態をうまく捉えられるようなデータがないものか。ないものねだりかもしれませんが、余り信頼できない感覚的な話というのは巷間あるんですけれども。

【小林参事官】私も実はこの統計を見ながら、その他というところが多くて、類型的に非常に古典的な類型なんだろうなというふうに、説明をしようと思って準備しながらそう思っていたんですが、おっしゃるとおりのところについて、どういうものが議論の進行に応じて必要になってくるか。また、それが可能かどうかというのは、更に裁判所とも相談しながら検討していきたいと思っております。

【塩野座長】他に何かありますか。
 余り後になって、実はこんなはずじゃなかったというのは言われるのは進行役として一番つらいところでございますので、今日じゃなくても結構でございますから、この検討会の進め方について、あるいは庶務についての誤解が後で生じるといけないと思いますので、確認的な御質問でも勿論結構でございます。
 私が申し上げると何だか具合が悪いんですが、次長に御質問しますが、1か月1回を原則とするということなんですが、私の経験ですと、最初大体それでいきますが、あとは大体週1回とか、場合によってなることがあるので、特にこれだけの広がりを持った論点について、これを短期間でやって下さいとお願いするときに、1か月に1度というのは大変御遠慮なことは分かりますけれども、遠慮していて議論が薄かったと言われては私も大変困るものですから、必ずしもそうではないというふうに皆さん方に御了解を得ておいた方がいいのではないかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。

【松川次長】今の御指摘ですが、とりあえずゆっくりと検討していただくためには、少なくとも1回程度は必要かなという思いで一応の目途として申し上げさせていただきました。また、論点が多岐にわたっていますので、詰めた検討が必要になった段階でどうかという御指摘ですので、その段階では更に皆さん方の意見を承った上で、できるだけ意向に添えるようにしたいと。
 ただ、事務局全体として申し上げますと、とりあえず10の検討会が同時並行になっておりますので、とりあえずの目途としては月1回ということで提案させていただいた次第です。勿論、議論の進捗状況に応じて、頻繁に開催していただくのは大いに差し支えないと思っております。

【芝池委員】すべての検討会が全部2年ですか。15年の末まで会合を持たれるんですか。

【松川次長】必ずしもそうではなくて、物によっては今年の秋にでも法案を出さないといけないものもございます。来年の通常国会に出さないといけないものもありますので、そういったものはその後の取り扱いはどうなるかということもございます。
 また、事柄の性格上、2年ではなくて、本部の設置期間3年ぎりぎりまであるものもあろうかと思いますので、検討会の性格に応じてだろうと思います。ただ、ぎりぎりといっても、一応意見書では早急に検討を開始すべきだということを言われておりますので、検討の先のことも念頭に置いて考えると、一応2年程度は必要じゃないかという趣旨で申し上げさせていただきました。

【芝池委員】他の検討会が比較的早く終わるものがあるんでしたら、必ずしも事務局もお忙しいというわけでもないと思いますので、後の方になればこの検討会の開催の頻度は上げることができるということですか。

【松川次長】そういった面ではそうなると思います。

【塩野座長】芝池さんは京都ですが、京都から毎週でも出てくると言っておりますので、事務局もそれなりの体制は整えてください。
 先程小早川委員からも申し入れがありましたけれども、これからいろいろ資料をお願いするということがあろうかと思います。そういうときに事務局としては、しっかりとした資料を作りたいということは常に念頭にあるものですから、一応お時間をいただきたいということもあろうかと思います。しかし、最初は確かに1月に1回くらいで済みますけれども、私の予測では、そうは恐らくいかないだろうということは、事務局もそれなりに心得ておいていただきたいと思います。他に何かございましょうか。
 それでは、進め方等につきましては、おいおい御意見をいただくとして、今日は第1回ということもございます。そこで委員の皆様方の物の考え方について、今後何回かやっているうちに、だんだん分かってきて、本当の実質的な議論ができるということになるだろうと思うんですけれども、しかし、何分初めてお目に掛かる方も結構多いものですから、今日、それぞれの御専門の御紹介も兼ねて、あるいは日頃この問題について、何かしら御疑問、あるいは御意見があれば、ごく短い時間で恐縮でございますけれども、御発言をいただければと思います。
 論点整理に載るような事柄は改めて御意見を賜る機会もあろうかと思いますので、それよりももうちょっと背景的な御説明で結構だと思います。
 私から御指名を申し上げて大変恐縮ですけれども、「あいうえお」順ということであれば問題なかろうと思いますので、市村委員、どうぞ。

【市村委員】先程御紹介いただきました東京地方裁判所の市村と申します。
 東京地方裁判所には2つの行政専門部がございますが、そのうちの1つを担当しております。
 行政事件訴訟というのは、先程お話が出ておりましたけれども、近年、事件数が非常に増加傾向が顕著であるということが特徴の1つかと思います。
 もう一つ、その中身に非常に変化が出てきているというふうに実務を担当しながら感じております。例えば、10年くらい前には、外国人、あるいは大手企業というものは、まず原告には登場しませんでしたが、今はその比率が非常に高くなっている。それから、訴訟の目的も、従来は行政処分によって侵害された過去の侵害の排除、回復というものを目的としておりましたけれども、現在は将来の予想される侵害の阻止を求めるといったものも非常に多くなっている。その対応として、無名抗告訴訟を含めて、取消訴訟以外の訴訟分野というのが非常に増えてきている。そのように非常に変わってきているというのが特徴的なことであろうと思います。
 こうした中で、いろいろな国民のニーズがあって、こうした検討会で行政事件訴訟法の改定が審議されるということは非常に意義があろうかと思います。
 私も実務に携る者として、行政事件訴訟制度が実務上、できるだけ国民に利用しやすいものとなるということを目標にして議論に積極的に参加させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【小池委員】法務省大臣官房審議官の小池でございます。
 私は出身は、元々は裁判官でございますが、昭和60年に法務省民事局にやってまいりまして、それから今までの間、2年ほど裁判所に戻りましたが、ずっと法務省に勤務しておりますけれども、本籍が一体どこへ行ったのかよく分からないという状態でございます。
 現在の仕事は、民事局の中に参事官室という、民事基本立法を取り扱う部署がございます。そこの責任者のような仕事をしております。
 御承知のように、最近は民事立法は非常にスピードが早うございまして、商法、倒産法、それから民法の財産法を含めまして、いろんな改正が今同時に行われております。マスコミでも頻繁に取り上げていただいているわけでございますが、特に平成17年までを目途といたしまして、これまで懸案であった立法を一気に解決しようというような向きにございます。
 行政事件そのものにつきましては、私は裁判官の時代にほんの少しやったことがあるという程度でございまして、そのころの印象、これは随分前でございますけれども、行政事件訴訟法上のいろんな難しい理論について、裁判例、それから学説の蓄積によって、随分いろんな知恵や工夫が詰め込まれてきたんだなという具合の印象を持ったことがございます。
 現代は構造改革の時代でございますので、改革審の意見書にあるような司法と行政の役割を見据えた検討というのが求められているわけでありますが、新しい時代に対応し得るような合理的、機能的な制度のありようにつきまして、ここでの御議論などを参考にしながら、自分自身でも身に付けていきたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。

【小早川委員】東京大学法学部の小早川でございます。
 専攻及び担当授業科目としましては、行政法と最近では地方自治法の授業も担当しております。行政法の研究を始めました当初から、行政訴訟の研究というのは、自分のテーマでありまして、最初はドイツのものを勉強しました。並行してフランスのことを勉強しまして、若いころに留学した先はフランスでございます。
 いずれにしましても、関心は最初は専ら理論的、制度ですけれども、その理論構造を理解、分析するというところにほとんど力を注いでおりましたが、考えれば考えるほど分からなくなる。今も小池さんがおっしゃいましたけれども、非常に複雑な中身を背後に控えた制度の立て方ですので、なかなか分からなくなりまして、いまだにその部分の教科書が書けないというお恥ずかしい次第でございます。
 最近は司法改革の時代ということでございますから、理論的な話だけではなくて、実社会から何が求められているか。これをきちんと見据えた議論を、特にこの場ではすべきであろうということで、先程もちょっとそういう資料のお願いをしたわけでございますが、制度そのもの、行訴法そのものも重要ですが、やはり人的な要素、あるいは組織的な要素も大事でして、人材の養成はこれまた別のところの問題かもしれませんが、裁判所の体制の在り方、これは意見書にもありますとおりですけれども、この検討会でも重要な課題として議論させていただきたいなと思っております。
 いずれにしても、これからいろいろ勉強していきたいと思います。

【芝池委員】京都大学の芝池でございます。
 専門は行政法でありまして、先程小早川さんから、御自身の今までの研究の流れのようなお話があったんですけれども、かなり対照的な道を私は歩んできまして、小早川さんが行政訴訟を勉強しているときは、私は実体法の勉強をしておりまして、小早川さんがパリに行ってワインを飲んでおられるときには、私はミュンヘンに行ってビールを飲んでおりました。
 小早川さんは、まだ行政訴訟の教科書を書いておられませんけれども、私は書いてしまったという、何かにつけて対照的な行動を取っているわけでありますが、今回の行政訴訟検討会への参加について、お話をいただきましたときは、非常に緊張するものを感じました。
 先程座長からもお話がございましたけれども、40年ぶりの法律の改正が見えてきたというところでありまして、40年前と言いますと、私はまだ高校生だったんですが、次の40年を考えますと、もう死んでいるんです。
 そういう意味で、是非この機会に自分なりに納得のできるような新しい法律、あるいは改正法律になるかもしれませんけれども、納得のできるものを作ることができればと考えております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【芝原委員】三菱総研の芝原でございます。
 何か私、一人場違いな感じもしますが、先程参事官がおっしゃった、総合的多角的観点の一人ということだと私は自認をしております。私がみております社会システム研究本部自体が、やや制度、仕組みをにらんだものでございまして、私どもが今、考えていますのは、社会システムというのは基本的に主体と制度・仕組み、それから技術というのが絡み合ってそれぞれに相互作用を及ぼしているわけです。今であればIT社会と言われていますように、IT技術が制度・仕組みを変えざるを得なくなってきているとか、あるいは、それに引きづられて自治体も変わらざるを得ないとか、逆に言えば、地方分権になり国と地方の主体の関係が変われば、それによって制度も変わっていかざるを得ないとか、我々としては社会の仕組みをそういう面で色々仕事としてやっているわけでございまして、行政の専門でも法律の専門でもございませんが、国民としては、行政を横で見たり、場合によっては中から見たりということで、少しは見えているかなというところで、こういう場で何か発言できればと思っております。
 この行政訴訟関係で、事前に事務局の資料をお見せいただいて感じましたこと、あるいは実際に行政を横で見ていて思いましたのが、やはり原告になる側の国民、あるいは企業なりと、被告になる行政の側が、先程の資料にありましたように、法的な有越性だけではなくて、圧倒的に情報の格差と言いますか、情報力の問題、それから負担力の問題とか、反証する側は税金を使って膨大に組織を動かしてできる一方、訴える側は一私人的対応でやらざるを得ないということです。こういう圧倒的なパワーバランスの違いをそのままにしておいて、果たして改革ができるのか。あるいは国民が使いやすいと思うような状況がつくり出せるのかというと、ちょっと難しいのではないか。
 そういう圧倒的にパワーバランスが異なるという状況が、行政が国民に対する緊張感を、ある意味では失なわせているんではないかという感じがしておりまして、是非行政が司法権力をバックにした国民をもう少し意識をする。あるいは、司法をバックにして、国民がもう少し行政を牽制できるような仕組み、制度なりを作るべきではないかという感じがしておりまして、そういう観点からこの行政訴訟の検討を少しでもサポートできればと思っております。
 以上です。

【成川委員】私は労働組合の中央団体で労働組合の政策要求などをまとめることをしています。
 今までの政策要求のあり方を要約しますと、行政に対する、労働基準とか、社会保障などの要望、要請を私のところでまとめまして、要請をすると、こんな仕事をしてきました。
 この間、行政改革がありまして、労働組合も国民のための行政制度なりを要請してきたわけですけれども、そういうときに行政と立法の関係がどうあるかということを大変いろいろ学ばされまして、今回の行革の中では、内閣の行政に対する指導性、こういう新しい方向が出てきております。また行政に対しまして、先程御紹介ありましたように情報公開法など、行政行為の国民に対する説明責任とか、裁量行為をどれだけ透明性を持って示すか。あるいはそれをどうルール化するという問題が出てきたと思っております。
 翻って、これと行政の行為が具体化したときの、色々な国民に対する問題点が、どんなところにあって、国民はそれに対して異議を申し立てるというような、いわゆる司法の段階としてどうなるんだという議論も、労働組合の中で起きております。積極的に行政改革のみならず、司法の在り方についても、一国民として勉強しながら、労働組合として発言する必要があるんじゃないか。労働事件など、大変長い時間を掛けて解決したりしておりまして、それらに対して長過ぎるんじゃないかという単純な感じも持っているんですが、それのみではなしに、やはり我々のこれまでの経験から言いますと、一般国民の目の中で具体的な行政なり、あるいは司法が、どんな関係があるのかということは、我々なりに自ら考えて、そこでの問題、我々組合等にも再度調査すれば、こういうふうないろんな悩みがあると出てくると思いますので、それらを踏まえて、この検討会の中で私なりの御意見を申し上げたいと、こう思っております。

【萩原委員】東京都立大学の萩原でございます。
 私、大学院の独立研究科の都市科学研究科というところに所属しておりまして、専門は一応都市地域経済学と環境経済学と両方やっておりますが、環境につきましては、環境だけというよりは、都市地域という枠組みの中での環境問題ということで、いわゆる公害と言われていたような時代から、環境だけをやってきたということになるんですが、どちらかと言いますと、モデル分析と言いますか、数式を使ってがちゃがちゃやるようなことで、ちょっと現実離れしているんじゃないかというふうに見られなくもないんですが、そういう形でずっとまいりまして、最近は環境評価ということでリスクの評価ということに関心を持って、リスクの評価、それからリスクのマネージメントということを研究の対象としております。
 もう一つは、今回の行政訴訟にも関係するかと思うんですが、水資源と環境のコンフリクトに関する研究会というものを、ある学会で立ち上げまして、そのまとめ役ということもありまして、いろんな方々の研究を聞きながら、私自身もそのコンフリクトという部分について、どんなものがあるのか。
 まだ聞きかじりの段階ではあるんですけれども、先程から出てきておりました法律用語はよく分からないのですが、最近そういうコンフリクトの分野でステークホルダーというのがよく出てきて、私、初めは何のことか全く分からなかったんですが、日本語では利害関係者とか訳すんだというんですが、それもどういうのが利害になるかというのもよく分からないし、関係者というのも、どこまでかとか。恐らくこういう訴訟ということになると、そういうことがかなり定理が難しくなるんだろうなと。研究の分野でもまだよく分からないわけですから、まして法律になると、その辺の定義をするというに、厳密にやらなければいけなくなるほど、難しいんだろうなということをちょっと最近思っております。
 今まで紹介いたしましたように、経済学が専門ですので、法律のことは全くわからず、このお話がございましたときも、全く素人でということを申し上げたら、そういう素人の意見で結構ですからということで少し安心しているんですが、先程来、色々行政訴訟法ですか、いろんな法律のお話を聞いていまして、全く法律用語が分からなくて、望むらくは、私のような素人が理解できるような日本語で法律を書いていただく。これは他の法律全体の議論の中で分かりやすい言葉でということもあるようですけれども、少なくともこの行政訴訟に関して、私のような者でも分かるような日本語で、なおかつその気になれば、自分で何か異議を申し立てるということができるような、そういう分かりやすい表現にしていただけたらなと願っております。
 以上でございます。

【福井(秀)委員】私、学部生時代に塩野先生に行政法の単位をいただきまして、その後、建設省という役所に入りまして、そこでかなり国側の指定代理人ということで土地収用、成田関連の訴訟ですとか、あるいは河川の長良川水害訴訟や河口堰訴訟等で、国の代理人として出席を、述べ数十件くらいの事件を担当したことがございます。そういう意味で大学時代に習ったことが確かに生きるなという実感を持っていました。
 今、私は大学で行政法や労働経済学を担当しておりますが、一方の行政庁の当事者という立場を離れて、行政訴訟の経験を振り返ってみますと、これは大抵の場合、被告側が勝つような構造になっているなということを強く実感いたします。というのは、私、法案の立案などにも、都市計画や住宅関連の立法、あるいは収用等にも行政官としても関わってきましたが、被告になる予定者が実質的にはその法案を作ってしまいますので、そう簡単に訴えの利益があったり、そう簡単に法案で負けるような作り方にはならないわけでありまして、先程も御指摘ございましたが、原告、一市民として行政を相手に闘うということは、非常な重荷であるという実感があります。
 しかし、本来、違法である場合には、救済がなされるべきというのは当然でありまして、できるだけ敷居の低い、本当に正義が貫徹されるべきときには、されるような行政訴訟制度でないと、行政の方も適法な権限行使をするという緊張感がなくなりますし、また泣き寝入りする私人が出てしまうということになるわけですから、そういういい意味での活性化を図っていくということは大変重要な課題だろうと考えています。特に行政訴訟については、最近色々な議論がございますが、私の感覚では、行政訴訟も民事訴訟と特に異なるという類型に置くのではなくて、民事訴訟でも誰かの権利が侵害されたときに救済されるというようなときには、やはり行政訴訟でもそのような権利救済は実質的に同等に与えられるべきだし、民事訴訟よりやたら広がってもいいというわけでもないし、やたら狭まってもいいというわけでもない。できるだけイコールフッティングに立った救済措置というのが本来国民にとっても分かりやすい救済制度ではないかという感覚を持っております。
 よろしくお願いいたします。

【福井(良)委員】総務省の行政管理局審議官でございます。
 行政管理局と申しますと、行政機関の組織とか定員とか運営の調整という所掌事務を持っておりまして、その運営の調整ということの延長線上のものとして、先程事務局から御紹介がありましたけれども、行政不服審査でありますとか、行政手続、あるいは行政情報公開、この3つの法律を所管としております。恐らく、今後の検討会のメインの部分でございます、行政事件訴訟法でございますけれども、それに関連する一連の制度を取り扱っているということで、お声が掛かったものと理解しておりますので、そういう立場から議論に参加させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【水野委員】弁護士の水野武夫です。
 昭和43年に弁護士登録しました。30数年弁護士をしております。所属は大阪弁護士会です。
 これまで、比較的行政訴訟をやってきた方だと思います。一番多いのは、税務訴訟でありますが、それ以外にも環境行政訴訟とか、住民訴訟とか、その他行政訴訟に携わってまいりました。
 先程福井委員が行政訴訟、被告の立場から見て、被告が勝てる構造だということをおっしゃいましたけれども、まさにそのとおりでありまして、弁護士の一般的な感覚は、行政訴訟には非常に絶望しておるというのが実感であります。
 これは、まず土俵に上がれない。その次に、土俵に上がっても勝てない。土俵に上がって相撲に勝っておっても、ジャッジが故意か過失かミスをして勝たしてくれない。こういう3段階の状況にあるというふうに、私どもは感じています。
 今回の司法制度改革審議会の意見書に基づいて、司法制度改革の推進が行われるということになりまして、日弁連では色々と意見を申し上げてきたわけですけれども、検討会で十分な検討をしてもらいたい。取り分け国民の目に開かれた検討をしてもらいたいということを要望してまいりました。それが実現して、この行政訴訟についての検討会が設けられ、私はその委員の一員になったということで、その責任の重大さを痛感しているところです。
 座長や芝池委員から御指摘がありましたように、これまで学会、実務界、あるいは市民、そういったところから、行政訴訟の改革の必要性ということが色々と言われてきたわけでありますけれども、具体的な改革の日程に登ることはなかったわけであり、そういう意味では、50年に一度の機会であると思っておりまして、この検討会の役割は極めて重要であると思っています。
 先程来、何度も御紹介がありましたように、審議会の意見書は非常に高い見地からの改革を言っておるわけでありまして、ともすれば行政訴訟の改革と言いますと、例えば原告適格の拡大とか処分性の拡大とか、行政事件訴訟法の一部を手直しすればいいということになりがちですが、そうなってはならないと思うわけであります。意見書では、行政訴訟手続に関する諸課題について、行政訴訟法の制定の要否ということも言われていますし、行政訴訟の基盤整備上の諸課題については、行政裁判所の設置といったことも言われております。
 更に項を改めて、総合的多角的な検討ということで、これはあくまでも国民の権利救済を実効化する見地からの大きな改革を求められているわけでありまして、できる限りこの審議会の意見書に沿った改革を限られた期間でありますけれども、実現できるように努力したい。さすが塩野検討会は立派な改革案を提言したと誉めてもらえるよう、皆さんと御一緒に努力したいと思っていますので、よろしくお願いします。

【塩野座長】ありがとうございました。私の会議の進行に当たっての気持ちは、先程申し上げたとおりでございます。皆様方に存分の御意見をいただく。それをこの検討会内部でじっくり討論をお願いすることと同時に、国民の皆様方、あるいは関心のある皆様方とも、いろんな対話を持つ時間を持ちたいなと思っております。
 私はこの機会がワンチャンスとは申しませんけれども、このチャンスを逃すと、また遠いところに改正の機運が延びてしまうということもございますので、高いところを目指しながら、しかし、実現可能な線に向けて、皆様方の御協力を是非お願いしたいということ、また、そういうふうに私が進行を図るべきだと考えております。
 昭和37年の話が前から出ておりますけれども、これは私が助教授になる直前の頃でございまして、田中先生、雄川一郎先生が色々なことで議論しておられたということをよく覚えております。
 この行訴法は多分、私の記憶ですと、7年間くらい掛けております。当時議論をリードしておられましたのは入江俊郎、田中二郎、兼子一、柳瀬良幹といった、すべて故人におなりになりましたけれども、大変な理論家であり、また、実務経験も豊かな方々でおられました。それを支えたのが、裁判官では白石、杉本、東京地裁の判事もしておられました。学会では雄川一郎、三ヶ月章といった先生方で、7年間掛けて、ああでもない、こうでもないという議論をしたいわば本当に手づくりの、非常に理論的な水準の高いものでできたと理解しております。
 他方、国民の使い勝手という点からしますと、果たして現在の国民の皆様が期待しているようなものとして提示されていたかどうかという問題はあろうかと思います。
 これだけきちんと議論をして作り上げたものについて、色々なことを考えていくときには、私としては、この行訴法制定当時の議論について、もう一度深く立ちいって見る必要があるのではないか。これは事務局には大変御苦労をお掛けすることになるかと思いますが、資料的には行政事件訴訟法の審議会議事録等々全て揃っておりますので、その資料を十分に活用していただきたい。あるいは活用したいというのが私の気持でございます。
 もう一点は、当時と比べますと、外国の情報が全く違っております。当時はまだそんなに情報が流通していない時代でございましたので、やや日本的なドグマと申しますか、それによって作り上げていったところがございますが、現在では、ともすると日本が世界で一番だめな行訴法だというので、悲嘆にくれてみせる人が多いんですけれども、その点はともかく日本の行訴法の比較法的な位置づけも、この際しっかりやっておかないと、先程水野委員が言われましたように、後世に残るようなものはできないのではないかということでございます。これも事務局にかなり御負担をお掛けになるかと思いますけれども、その点についてもしっかりと資料を収集して臨みたいと思っているところでございます。
 事務局の皆様、それぞれに、特に参事官、次長、これからも色々とお願いするところがあるかと思いますが、また、その折り折りに御意見を承ることにさせていたしましょう。
 それでは、大分時間も迫ってまいりましたので、次に今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。

【小林参事官】資料6、行政訴訟検討会の当面の予定(案)というのがございますので、それに基づいて御説明をしたいと思います。
 第1回が2月18日、本日でございますが、第2回以降の予定でございます。第2回は3月19日に予定をいただいておりますが、第2回以降、先程次長から御説明したように、月に1回くらいの割合で検討を進めるに当たって、意見書にもありますように、総合的多角的な検討をすると。こういった幅広い委員の方々に行政訴訟の現状、問題意識について、認識を共有していただくという点から、なるべく意見を早い段階で多くの方から聞いていってはいかがかというように考えております。
 具体的に第2回以降という項目に書きましたように、委員の方々の中でも、それぞれ御意見をお持ちの方、特に行政法の専門家の方もございますので、そういった方々を中心にしながら、その他の行政訴訟制度の利用者サイドの方や、制度を運用しておられる立場の方々、そういったような関係の方々も含めて、意見を伺っていってはいかがかと。それから、行政訴訟の実情に関して、国と地方公共団体、これは被告の立場に立つのでしょうけれども、実際の行政訴訟について、直接タッチしておられる方から、現状の行政訴訟の実情、御意見について伺ってはいかがかと。
 それから、福井良次委員からも御指摘がありましたように、行政手続法と関係諸法制との関係もございます。そうした法律の中には、行政手続法や情報公開法のように、比較的新しく立法され、そういったことによって、行政の在り方がかなり基本的に変わってきている部分もございますので、そういった法制について立法の経緯やその後の運用状況等についてお話を伺うということも重要ではなかろうかということで、そういった点について有識者の方、あるいは総務省等の関係省庁の方々から御意見を伺えればいいのではないかと思っております。
 それから、座長から先程御指摘もありましたように、主要各国の行政訴訟制度、やはり40年間も経っている法律ですし、三権分立という国の基本に関わる部分の制度設計に関する問題でございますので、慎重な検討が必要であろうと思いますので、主要な国の行政訴訟制度については基礎的な研究もきちんとした上で、ある程度まとめて、この検討会に御報告をするという形を取る方がよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 このような幅広い意見の聴取や行政訴訟制度の調査等を踏まえた上で、事務局の方で、それまでに出たような問題点をある程度、そのまままとめるような形にして、それをまたこの検討会でお示しをして、更にそこから問題点について御意見を伺って、論点の整理、絞り込み、そういったことをやっていってはいかがかと、このようなスケジュールを当面考えておるわけでございます。

【塩野座長】短い期間に効率よく議論していただくということで、今日は多少予定につきましても、先に走り過ぎているような形て御披露をいたしております。勿論、これに限るということではありませんで、今後の予定としてこういうことも考えてはどうかといったようなことがあれば、おいおい考えてまいりたいと思いますが、今日のところは実は時間も押しておりますので、第2回目くらいのところまでは整理をさせていただきたいと思っております。
 なお、そのこととの関係でございますけれども、先程私もちょっと申しました主要各国の行政訴訟制度に関する調査でございますが、これは比較的年齢が若く、そして現在、制度を色々勉強している方、そういう方に一種の委託調査みたいなものをお願いしてはどうかというのが私の心持ちでございます。この中に勿論、小早川、芝池、福井、それぞれ行政訴訟で外国制度の研究に携わって来られた方がおありですけれども、このお三人はいろんなことでお忙しいということで、この方々に、例えばアメリカの原告適格についての判例をフォローしてみろと言われても、なかなか難しいことではないかと思います。そういうことで、もし皆様方の御同意が得られれば、皆様も現役ですけれども、若手の現役で、それぞれその道で論文を書き、あるいは向こうと接触のうまくいくような方について私が選定をして、お願いをさせていただければと考えております。
 また、そういう方々の御了承を得られれば、どこかの席に座っていただいて、この検討委員会の雰囲気を察知しながら、外国の制度の紹介をしていくということにでもなればなとも考えております。ともすると、外国法制度は、外国人が問題にしていることを、そのままいかに正確に日本に伝えるかというのが日本の外国法研究のスタイルでございますが、今回はそうではなくて、日本が問題にしていることを、外国人がどう捉えているか、そういう角度からの依頼をしたいと思っております。
 ということで、資料6と、それから私が今申しました外国の調査に関する依頼。若手に対する依頼の件も含めて、御提案申し上げておきますが、何か御意見があればおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 だったら、外国調査は行くのかということにもなりますが、今日は時間もありませんので、余りいいかげんな返事をしてもらっても困りますので、もし若手の方にお願いするとすれば、そういうこともあり得るということで事務局の方もお考えをいただければと思っております。
 それから、事務局における論点整理のフリートーキングというのは、すぐに行われるわけではありませんで、そういったことについて特に主要各国の行政訴訟制度に関する調査がだんたん出てまいりますのは、夏休み明けというふうにも考えておりますので、それまでに出た色々な論点を、事務局なりに整理して、案を作ってここにお見せするという意味でありまして、すぐさま事務局が次回にも論点整理をして、これでやれというものではないということだそうですので、広く論点をお出しいただきたいと思います。
 以上で大体会議の進め方、当面の予定でよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日事務局から準備していただいた資料の他に、皆さんの机上にジュリストの論文が2つ出ております。これは小早川委員が色々、編集に携わっていただいているものであります。これはジュリストの本年2月1日号から、シリーズ「行政訴訟を考える」が始まっております。当検討会における検討の参考になると思いましたので、差し当たり今日お配りしたというものでございます。私から事務局にお願いをいたしました。
 これは全5回シリーズということで、既に第2回目は、ジュリストをお買い求めの方にはお手元に届いているかと思いますが、これは次回にこの場でお配りをしたい。5回シリーズについては、事務局の方で配っていただきたいと思います。これは何もここで提案されていることに従いながら議論を進めようという趣旨ではございません。できるだけこの問題についての共通認識を積み上げていきたいという1つの資料になるのではないかということでお配りしているものでございます。
 そのほかのことで、自分として、こういう資料を皆さんに是非配って欲しいんだということがあれば、それはこの場でお配りすることは可能かと思いますが、私の方で法律雑誌全部集めてここでいちいちお配りするというつもりはございません。差し当たりこのジュリストをお配りして、共通認識を作っていただきたいということでございます。
 そこで2回以降の意見聴取のことでございますけれども、次回にどうするかということでございますが、もし、よろしければ、当検討会の次回で行政法を専門にしている研究者である小早川委員、芝池委員、福井委員から意見聴取を行いたいと思いますが、お三方、是非ここはお引き受けいただきたいと思います。例えば、無名抗告訴訟は是か非かという、そんなすごい議論をここですぐやるわけではなくて、共通認識をできるだけ作っていただきたいということで、しかし、今日お伺いしたよりも、もう少し専門的な角度から日本のどこがおかしいので、自分はここはこういうふうにすべきだということ等でよろしいと思います。そのときに、すぐ激しい議論をするのではなくて、まず、質疑に応じていただきたいということでございます。第1回目の共通認識の作成過程というふうに考えていただければと思います。お3人よろしゅうございますね。

【小早川委員】時間はどのくらいですか。

【塩野座長】この点は事務局と相談して下さい。後で時間のことも申しますので、もう少し詰める必要があると思います。
 あと1、2点、私の方で事務的なことを申し上げておきたいと思いますが、1つは、これは事務局ともまだ打ち合わせも何もしておりません。資料でございますけれども、行訴法の資料等々、毎回お持ちいただくのも何かと思います。そこで、普通はここに置くことがあるんですが、基礎的な資料はここに置いておき、どうしてもお持ち帰りになりたい方は2部用意するということになろうかと思います。例えば行政事件訴訟法というのは、行訴法の人は全部持っていますけれども、例えば萩原先生はまだお持ちではないと思います。そうすると、これを持っていけるということでどうぞお持ち帰りになっていただいて、しかし、次回からは、もう1つ別なものを置くということで、お願いします。
 それから、議事録の作り方でございますけれども、そこはちょっと説明していただけますか。皆様方に一遍お返しをして、大体正確だと思いますが、間違って速記を取ることがありますので、その分は直していただくという時間的な余裕、そのように考えております。
 以上でございますが、福井委員どうぞ。

【福井委員】資料でございますが、できましたら両面コピーにしていただけますと、保管のときにかさばらなくていいと思います。

【塩野委員】御提案ありがとうございました。
 ちょっと時間もございますが、最初でございますので、今日はこの程度にさせていただきたいと思いますが、なお、時間のことで先程ちょっと申し上げたかったことでございますが、京都とか遠いところから来られた方に、2時間掛けて、2時間で帰るというのは、必ずしも公正ではないと考えております。せっかく遠いところをおいでいただいた方もおられますので、あるいはいろんなことを調整して、ここに出てこられた方がありますので、2時間で直ちに閉めるというよりは、2時間半くらいの余裕があった方が私はいいのではないかと思いますが、例えば次回も2時間半あれば1人、大体何分くらいということが出てくるということもありますので、会場の設営等々、あるいは速記の委託契約等で色々、あるかと思いますが、いつも2時間きっかりでやめるということではなくて、そこはちょっと相談をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。

【芝池委員】4月以降の会合の日程なんですが、それはどうやって決めるんでしょうか。

【小林参事官】至急調整させていただきます。

【芝池委員】私が心配していますのは、講義などが始まりますと、曜日だけでも決めておいていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。

【小林参事官】なるべくそういう絞り込みを掛けたいと思っています。

【芝池委員】私、後期は空いているのは月・水だけなんです。ですから、それでだめな場合は、講義日程を変える必要がありますので、早目に決めていただきたいんです。

【塩野座長】大学関係の方は講義の日程が入りますので、早急に整理して下さい。どうもありがとうございました。
 それでは、どうもありがとうございました。今日はこれで終わります。