【塩野座長】それでは、今までの局長説明、次長説明、そして、更に行訴法の全般的な説明を前提といたしまして、これについて質問があれば伺いたいと思います。
この検討会は、従来の審議会とやや違ったところがございまして、私もどういうふうに運んでいいのか、まだ、よく分からないところも色々ございます。そういうところもありますので、何も今日で進め方についても全て決めるというものでもございません。逐次方針変更、多少の変更はあるということでございます。
先程次長から、確か2年ということで平成15年の末ごろまでには、この検討会としての取りまとめを、取りまとめという言葉を使っていいかどうかというのももう一つの問題になるわけですけれども、実質的な審理は一応締めがあるということでございました。本来ならば、まだ検討会の任期はあるわけでございますけれども、あと立法の段階を考えますと、どうも今、私の一応の整理で考えますと、第一に立法化してもらいたいというのは、大体その辺のことかなと。その後の期間はどうするかというのは、これまた御相談ということになりますが、差し当たり、まず重要なのは、そういうことで期限が非常に限られているということも頭の中に入れて、進め方等についても、今日も御質問があれば承りますし、また、いろいろ今後も時に応じて御意見を承りたいと思っております。差し当たり何か御質問等ございますでしょうか。
【小早川委員】資料について、よろしいでしょうか。現状でどうかということがあったんだと思いますので、今御説明いただいたことは、出発点のデータなんですが、この統計の分類が非常に伝統的、古典的でありまして、例えばこれを見て、環境関係はどうなっているのかとか、消費者が訴訟を起こしたのはどのくらいあるのかというのは分からない仕組みになっているんですが、そういう理論的、制度的ではないかもしれないけれども、社会実態をうまく捉えられるようなデータがないものか。ないものねだりかもしれませんが、余り信頼できない感覚的な話というのは巷間あるんですけれども。
【小林参事官】私も実はこの統計を見ながら、その他というところが多くて、類型的に非常に古典的な類型なんだろうなというふうに、説明をしようと思って準備しながらそう思っていたんですが、おっしゃるとおりのところについて、どういうものが議論の進行に応じて必要になってくるか。また、それが可能かどうかというのは、更に裁判所とも相談しながら検討していきたいと思っております。
【塩野座長】他に何かありますか。
余り後になって、実はこんなはずじゃなかったというのは言われるのは進行役として一番つらいところでございますので、今日じゃなくても結構でございますから、この検討会の進め方について、あるいは庶務についての誤解が後で生じるといけないと思いますので、確認的な御質問でも勿論結構でございます。
私が申し上げると何だか具合が悪いんですが、次長に御質問しますが、1か月1回を原則とするということなんですが、私の経験ですと、最初大体それでいきますが、あとは大体週1回とか、場合によってなることがあるので、特にこれだけの広がりを持った論点について、これを短期間でやって下さいとお願いするときに、1か月に1度というのは大変御遠慮なことは分かりますけれども、遠慮していて議論が薄かったと言われては私も大変困るものですから、必ずしもそうではないというふうに皆さん方に御了解を得ておいた方がいいのではないかという感じもいたしますが、いかがでしょうか。
【松川次長】今の御指摘ですが、とりあえずゆっくりと検討していただくためには、少なくとも1回程度は必要かなという思いで一応の目途として申し上げさせていただきました。また、論点が多岐にわたっていますので、詰めた検討が必要になった段階でどうかという御指摘ですので、その段階では更に皆さん方の意見を承った上で、できるだけ意向に添えるようにしたいと。
ただ、事務局全体として申し上げますと、とりあえず10の検討会が同時並行になっておりますので、とりあえずの目途としては月1回ということで提案させていただいた次第です。勿論、議論の進捗状況に応じて、頻繁に開催していただくのは大いに差し支えないと思っております。
【芝池委員】すべての検討会が全部2年ですか。15年の末まで会合を持たれるんですか。
【松川次長】必ずしもそうではなくて、物によっては今年の秋にでも法案を出さないといけないものもございます。来年の通常国会に出さないといけないものもありますので、そういったものはその後の取り扱いはどうなるかということもございます。
また、事柄の性格上、2年ではなくて、本部の設置期間3年ぎりぎりまであるものもあろうかと思いますので、検討会の性格に応じてだろうと思います。ただ、ぎりぎりといっても、一応意見書では早急に検討を開始すべきだということを言われておりますので、検討の先のことも念頭に置いて考えると、一応2年程度は必要じゃないかという趣旨で申し上げさせていただきました。
【芝池委員】他の検討会が比較的早く終わるものがあるんでしたら、必ずしも事務局もお忙しいというわけでもないと思いますので、後の方になればこの検討会の開催の頻度は上げることができるということですか。
【松川次長】そういった面ではそうなると思います。
【塩野座長】芝池さんは京都ですが、京都から毎週でも出てくると言っておりますので、事務局もそれなりの体制は整えてください。
先程小早川委員からも申し入れがありましたけれども、これからいろいろ資料をお願いするということがあろうかと思います。そういうときに事務局としては、しっかりとした資料を作りたいということは常に念頭にあるものですから、一応お時間をいただきたいということもあろうかと思います。しかし、最初は確かに1月に1回くらいで済みますけれども、私の予測では、そうは恐らくいかないだろうということは、事務局もそれなりに心得ておいていただきたいと思います。他に何かございましょうか。
それでは、進め方等につきましては、おいおい御意見をいただくとして、今日は第1回ということもございます。そこで委員の皆様方の物の考え方について、今後何回かやっているうちに、だんだん分かってきて、本当の実質的な議論ができるということになるだろうと思うんですけれども、しかし、何分初めてお目に掛かる方も結構多いものですから、今日、それぞれの御専門の御紹介も兼ねて、あるいは日頃この問題について、何かしら御疑問、あるいは御意見があれば、ごく短い時間で恐縮でございますけれども、御発言をいただければと思います。
論点整理に載るような事柄は改めて御意見を賜る機会もあろうかと思いますので、それよりももうちょっと背景的な御説明で結構だと思います。
私から御指名を申し上げて大変恐縮ですけれども、「あいうえお」順ということであれば問題なかろうと思いますので、市村委員、どうぞ。
【市村委員】先程御紹介いただきました東京地方裁判所の市村と申します。
東京地方裁判所には2つの行政専門部がございますが、そのうちの1つを担当しております。
行政事件訴訟というのは、先程お話が出ておりましたけれども、近年、事件数が非常に増加傾向が顕著であるということが特徴の1つかと思います。
もう一つ、その中身に非常に変化が出てきているというふうに実務を担当しながら感じております。例えば、10年くらい前には、外国人、あるいは大手企業というものは、まず原告には登場しませんでしたが、今はその比率が非常に高くなっている。それから、訴訟の目的も、従来は行政処分によって侵害された過去の侵害の排除、回復というものを目的としておりましたけれども、現在は将来の予想される侵害の阻止を求めるといったものも非常に多くなっている。その対応として、無名抗告訴訟を含めて、取消訴訟以外の訴訟分野というのが非常に増えてきている。そのように非常に変わってきているというのが特徴的なことであろうと思います。
こうした中で、いろいろな国民のニーズがあって、こうした検討会で行政事件訴訟法の改定が審議されるということは非常に意義があろうかと思います。
私も実務に携る者として、行政事件訴訟制度が実務上、できるだけ国民に利用しやすいものとなるということを目標にして議論に積極的に参加させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【小池委員】法務省大臣官房審議官の小池でございます。
私は出身は、元々は裁判官でございますが、昭和60年に法務省民事局にやってまいりまして、それから今までの間、2年ほど裁判所に戻りましたが、ずっと法務省に勤務しておりますけれども、本籍が一体どこへ行ったのかよく分からないという状態でございます。
現在の仕事は、民事局の中に参事官室という、民事基本立法を取り扱う部署がございます。そこの責任者のような仕事をしております。
御承知のように、最近は民事立法は非常にスピードが早うございまして、商法、倒産法、それから民法の財産法を含めまして、いろんな改正が今同時に行われております。マスコミでも頻繁に取り上げていただいているわけでございますが、特に平成17年までを目途といたしまして、これまで懸案であった立法を一気に解決しようというような向きにございます。
行政事件そのものにつきましては、私は裁判官の時代にほんの少しやったことがあるという程度でございまして、そのころの印象、これは随分前でございますけれども、行政事件訴訟法上のいろんな難しい理論について、裁判例、それから学説の蓄積によって、随分いろんな知恵や工夫が詰め込まれてきたんだなという具合の印象を持ったことがございます。
現代は構造改革の時代でございますので、改革審の意見書にあるような司法と行政の役割を見据えた検討というのが求められているわけでありますが、新しい時代に対応し得るような合理的、機能的な制度のありようにつきまして、ここでの御議論などを参考にしながら、自分自身でも身に付けていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
【小早川委員】東京大学法学部の小早川でございます。
専攻及び担当授業科目としましては、行政法と最近では地方自治法の授業も担当しております。行政法の研究を始めました当初から、行政訴訟の研究というのは、自分のテーマでありまして、最初はドイツのものを勉強しました。並行してフランスのことを勉強しまして、若いころに留学した先はフランスでございます。
いずれにしましても、関心は最初は専ら理論的、制度ですけれども、その理論構造を理解、分析するというところにほとんど力を注いでおりましたが、考えれば考えるほど分からなくなる。今も小池さんがおっしゃいましたけれども、非常に複雑な中身を背後に控えた制度の立て方ですので、なかなか分からなくなりまして、いまだにその部分の教科書が書けないというお恥ずかしい次第でございます。
最近は司法改革の時代ということでございますから、理論的な話だけではなくて、実社会から何が求められているか。これをきちんと見据えた議論を、特にこの場ではすべきであろうということで、先程もちょっとそういう資料のお願いをしたわけでございますが、制度そのもの、行訴法そのものも重要ですが、やはり人的な要素、あるいは組織的な要素も大事でして、人材の養成はこれまた別のところの問題かもしれませんが、裁判所の体制の在り方、これは意見書にもありますとおりですけれども、この検討会でも重要な課題として議論させていただきたいなと思っております。
いずれにしても、これからいろいろ勉強していきたいと思います。
【芝池委員】京都大学の芝池でございます。
専門は行政法でありまして、先程小早川さんから、御自身の今までの研究の流れのようなお話があったんですけれども、かなり対照的な道を私は歩んできまして、小早川さんが行政訴訟を勉強しているときは、私は実体法の勉強をしておりまして、小早川さんがパリに行ってワインを飲んでおられるときには、私はミュンヘンに行ってビールを飲んでおりました。
小早川さんは、まだ行政訴訟の教科書を書いておられませんけれども、私は書いてしまったという、何かにつけて対照的な行動を取っているわけでありますが、今回の行政訴訟検討会への参加について、お話をいただきましたときは、非常に緊張するものを感じました。
先程座長からもお話がございましたけれども、40年ぶりの法律の改正が見えてきたというところでありまして、40年前と言いますと、私はまだ高校生だったんですが、次の40年を考えますと、もう死んでいるんです。
そういう意味で、是非この機会に自分なりに納得のできるような新しい法律、あるいは改正法律になるかもしれませんけれども、納得のできるものを作ることができればと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【芝原委員】三菱総研の芝原でございます。
何か私、一人場違いな感じもしますが、先程参事官がおっしゃった、総合的多角的観点の一人ということだと私は自認をしております。私がみております社会システム研究本部自体が、やや制度、仕組みをにらんだものでございまして、私どもが今、考えていますのは、社会システムというのは基本的に主体と制度・仕組み、それから技術というのが絡み合ってそれぞれに相互作用を及ぼしているわけです。今であればIT社会と言われていますように、IT技術が制度・仕組みを変えざるを得なくなってきているとか、あるいは、それに引きづられて自治体も変わらざるを得ないとか、逆に言えば、地方分権になり国と地方の主体の関係が変われば、それによって制度も変わっていかざるを得ないとか、我々としては社会の仕組みをそういう面で色々仕事としてやっているわけでございまして、行政の専門でも法律の専門でもございませんが、国民としては、行政を横で見たり、場合によっては中から見たりということで、少しは見えているかなというところで、こういう場で何か発言できればと思っております。
この行政訴訟関係で、事前に事務局の資料をお見せいただいて感じましたこと、あるいは実際に行政を横で見ていて思いましたのが、やはり原告になる側の国民、あるいは企業なりと、被告になる行政の側が、先程の資料にありましたように、法的な有越性だけではなくて、圧倒的に情報の格差と言いますか、情報力の問題、それから負担力の問題とか、反証する側は税金を使って膨大に組織を動かしてできる一方、訴える側は一私人的対応でやらざるを得ないということです。こういう圧倒的なパワーバランスの違いをそのままにしておいて、果たして改革ができるのか。あるいは国民が使いやすいと思うような状況がつくり出せるのかというと、ちょっと難しいのではないか。
そういう圧倒的にパワーバランスが異なるという状況が、行政が国民に対する緊張感を、ある意味では失なわせているんではないかという感じがしておりまして、是非行政が司法権力をバックにした国民をもう少し意識をする。あるいは、司法をバックにして、国民がもう少し行政を牽制できるような仕組み、制度なりを作るべきではないかという感じがしておりまして、そういう観点からこの行政訴訟の検討を少しでもサポートできればと思っております。
以上です。
【成川委員】私は労働組合の中央団体で労働組合の政策要求などをまとめることをしています。
今までの政策要求のあり方を要約しますと、行政に対する、労働基準とか、社会保障などの要望、要請を私のところでまとめまして、要請をすると、こんな仕事をしてきました。
この間、行政改革がありまして、労働組合も国民のための行政制度なりを要請してきたわけですけれども、そういうときに行政と立法の関係がどうあるかということを大変いろいろ学ばされまして、今回の行革の中では、内閣の行政に対する指導性、こういう新しい方向が出てきております。また行政に対しまして、先程御紹介ありましたように情報公開法など、行政行為の国民に対する説明責任とか、裁量行為をどれだけ透明性を持って示すか。あるいはそれをどうルール化するという問題が出てきたと思っております。
翻って、これと行政の行為が具体化したときの、色々な国民に対する問題点が、どんなところにあって、国民はそれに対して異議を申し立てるというような、いわゆる司法の段階としてどうなるんだという議論も、労働組合の中で起きております。積極的に行政改革のみならず、司法の在り方についても、一国民として勉強しながら、労働組合として発言する必要があるんじゃないか。労働事件など、大変長い時間を掛けて解決したりしておりまして、それらに対して長過ぎるんじゃないかという単純な感じも持っているんですが、それのみではなしに、やはり我々のこれまでの経験から言いますと、一般国民の目の中で具体的な行政なり、あるいは司法が、どんな関係があるのかということは、我々なりに自ら考えて、そこでの問題、我々組合等にも再度調査すれば、こういうふうないろんな悩みがあると出てくると思いますので、それらを踏まえて、この検討会の中で私なりの御意見を申し上げたいと、こう思っております。
【萩原委員】東京都立大学の萩原でございます。
私、大学院の独立研究科の都市科学研究科というところに所属しておりまして、専門は一応都市地域経済学と環境経済学と両方やっておりますが、環境につきましては、環境だけというよりは、都市地域という枠組みの中での環境問題ということで、いわゆる公害と言われていたような時代から、環境だけをやってきたということになるんですが、どちらかと言いますと、モデル分析と言いますか、数式を使ってがちゃがちゃやるようなことで、ちょっと現実離れしているんじゃないかというふうに見られなくもないんですが、そういう形でずっとまいりまして、最近は環境評価ということでリスクの評価ということに関心を持って、リスクの評価、それからリスクのマネージメントということを研究の対象としております。
もう一つは、今回の行政訴訟にも関係するかと思うんですが、水資源と環境のコンフリクトに関する研究会というものを、ある学会で立ち上げまして、そのまとめ役ということもありまして、いろんな方々の研究を聞きながら、私自身もそのコンフリクトという部分について、どんなものがあるのか。
まだ聞きかじりの段階ではあるんですけれども、先程から出てきておりました法律用語はよく分からないのですが、最近そういうコンフリクトの分野でステークホルダーというのがよく出てきて、私、初めは何のことか全く分からなかったんですが、日本語では利害関係者とか訳すんだというんですが、それもどういうのが利害になるかというのもよく分からないし、関係者というのも、どこまでかとか。恐らくこういう訴訟ということになると、そういうことがかなり定理が難しくなるんだろうなと。研究の分野でもまだよく分からないわけですから、まして法律になると、その辺の定義をするというに、厳密にやらなければいけなくなるほど、難しいんだろうなということをちょっと最近思っております。
今まで紹介いたしましたように、経済学が専門ですので、法律のことは全くわからず、このお話がございましたときも、全く素人でということを申し上げたら、そういう素人の意見で結構ですからということで少し安心しているんですが、先程来、色々行政訴訟法ですか、いろんな法律のお話を聞いていまして、全く法律用語が分からなくて、望むらくは、私のような素人が理解できるような日本語で法律を書いていただく。これは他の法律全体の議論の中で分かりやすい言葉でということもあるようですけれども、少なくともこの行政訴訟に関して、私のような者でも分かるような日本語で、なおかつその気になれば、自分で何か異議を申し立てるということができるような、そういう分かりやすい表現にしていただけたらなと願っております。
以上でございます。
【福井(秀)委員】私、学部生時代に塩野先生に行政法の単位をいただきまして、その後、建設省という役所に入りまして、そこでかなり国側の指定代理人ということで土地収用、成田関連の訴訟ですとか、あるいは河川の長良川水害訴訟や河口堰訴訟等で、国の代理人として出席を、述べ数十件くらいの事件を担当したことがございます。そういう意味で大学時代に習ったことが確かに生きるなという実感を持っていました。
今、私は大学で行政法や労働経済学を担当しておりますが、一方の行政庁の当事者という立場を離れて、行政訴訟の経験を振り返ってみますと、これは大抵の場合、被告側が勝つような構造になっているなということを強く実感いたします。というのは、私、法案の立案などにも、都市計画や住宅関連の立法、あるいは収用等にも行政官としても関わってきましたが、被告になる予定者が実質的にはその法案を作ってしまいますので、そう簡単に訴えの利益があったり、そう簡単に法案で負けるような作り方にはならないわけでありまして、先程も御指摘ございましたが、原告、一市民として行政を相手に闘うということは、非常な重荷であるという実感があります。
しかし、本来、違法である場合には、救済がなされるべきというのは当然でありまして、できるだけ敷居の低い、本当に正義が貫徹されるべきときには、されるような行政訴訟制度でないと、行政の方も適法な権限行使をするという緊張感がなくなりますし、また泣き寝入りする私人が出てしまうということになるわけですから、そういういい意味での活性化を図っていくということは大変重要な課題だろうと考えています。特に行政訴訟については、最近色々な議論がございますが、私の感覚では、行政訴訟も民事訴訟と特に異なるという類型に置くのではなくて、民事訴訟でも誰かの権利が侵害されたときに救済されるというようなときには、やはり行政訴訟でもそのような権利救済は実質的に同等に与えられるべきだし、民事訴訟よりやたら広がってもいいというわけでもないし、やたら狭まってもいいというわけでもない。できるだけイコールフッティングに立った救済措置というのが本来国民にとっても分かりやすい救済制度ではないかという感覚を持っております。
よろしくお願いいたします。
【福井(良)委員】総務省の行政管理局審議官でございます。
行政管理局と申しますと、行政機関の組織とか定員とか運営の調整という所掌事務を持っておりまして、その運営の調整ということの延長線上のものとして、先程事務局から御紹介がありましたけれども、行政不服審査でありますとか、行政手続、あるいは行政情報公開、この3つの法律を所管としております。恐らく、今後の検討会のメインの部分でございます、行政事件訴訟法でございますけれども、それに関連する一連の制度を取り扱っているということで、お声が掛かったものと理解しておりますので、そういう立場から議論に参加させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【水野委員】弁護士の水野武夫です。
昭和43年に弁護士登録しました。30数年弁護士をしております。所属は大阪弁護士会です。
これまで、比較的行政訴訟をやってきた方だと思います。一番多いのは、税務訴訟でありますが、それ以外にも環境行政訴訟とか、住民訴訟とか、その他行政訴訟に携わってまいりました。
先程福井委員が行政訴訟、被告の立場から見て、被告が勝てる構造だということをおっしゃいましたけれども、まさにそのとおりでありまして、弁護士の一般的な感覚は、行政訴訟には非常に絶望しておるというのが実感であります。
これは、まず土俵に上がれない。その次に、土俵に上がっても勝てない。土俵に上がって相撲に勝っておっても、ジャッジが故意か過失かミスをして勝たしてくれない。こういう3段階の状況にあるというふうに、私どもは感じています。
今回の司法制度改革審議会の意見書に基づいて、司法制度改革の推進が行われるということになりまして、日弁連では色々と意見を申し上げてきたわけですけれども、検討会で十分な検討をしてもらいたい。取り分け国民の目に開かれた検討をしてもらいたいということを要望してまいりました。それが実現して、この行政訴訟についての検討会が設けられ、私はその委員の一員になったということで、その責任の重大さを痛感しているところです。
座長や芝池委員から御指摘がありましたように、これまで学会、実務界、あるいは市民、そういったところから、行政訴訟の改革の必要性ということが色々と言われてきたわけでありますけれども、具体的な改革の日程に登ることはなかったわけであり、そういう意味では、50年に一度の機会であると思っておりまして、この検討会の役割は極めて重要であると思っています。
先程来、何度も御紹介がありましたように、審議会の意見書は非常に高い見地からの改革を言っておるわけでありまして、ともすれば行政訴訟の改革と言いますと、例えば原告適格の拡大とか処分性の拡大とか、行政事件訴訟法の一部を手直しすればいいということになりがちですが、そうなってはならないと思うわけであります。意見書では、行政訴訟手続に関する諸課題について、行政訴訟法の制定の要否ということも言われていますし、行政訴訟の基盤整備上の諸課題については、行政裁判所の設置といったことも言われております。
更に項を改めて、総合的多角的な検討ということで、これはあくまでも国民の権利救済を実効化する見地からの大きな改革を求められているわけでありまして、できる限りこの審議会の意見書に沿った改革を限られた期間でありますけれども、実現できるように努力したい。さすが塩野検討会は立派な改革案を提言したと誉めてもらえるよう、皆さんと御一緒に努力したいと思っていますので、よろしくお願いします。
【塩野座長】ありがとうございました。私の会議の進行に当たっての気持ちは、先程申し上げたとおりでございます。皆様方に存分の御意見をいただく。それをこの検討会内部でじっくり討論をお願いすることと同時に、国民の皆様方、あるいは関心のある皆様方とも、いろんな対話を持つ時間を持ちたいなと思っております。
私はこの機会がワンチャンスとは申しませんけれども、このチャンスを逃すと、また遠いところに改正の機運が延びてしまうということもございますので、高いところを目指しながら、しかし、実現可能な線に向けて、皆様方の御協力を是非お願いしたいということ、また、そういうふうに私が進行を図るべきだと考えております。
昭和37年の話が前から出ておりますけれども、これは私が助教授になる直前の頃でございまして、田中先生、雄川一郎先生が色々なことで議論しておられたということをよく覚えております。
この行訴法は多分、私の記憶ですと、7年間くらい掛けております。当時議論をリードしておられましたのは入江俊郎、田中二郎、兼子一、柳瀬良幹といった、すべて故人におなりになりましたけれども、大変な理論家であり、また、実務経験も豊かな方々でおられました。それを支えたのが、裁判官では白石、杉本、東京地裁の判事もしておられました。学会では雄川一郎、三ヶ月章といった先生方で、7年間掛けて、ああでもない、こうでもないという議論をしたいわば本当に手づくりの、非常に理論的な水準の高いものでできたと理解しております。
他方、国民の使い勝手という点からしますと、果たして現在の国民の皆様が期待しているようなものとして提示されていたかどうかという問題はあろうかと思います。
これだけきちんと議論をして作り上げたものについて、色々なことを考えていくときには、私としては、この行訴法制定当時の議論について、もう一度深く立ちいって見る必要があるのではないか。これは事務局には大変御苦労をお掛けすることになるかと思いますが、資料的には行政事件訴訟法の審議会議事録等々全て揃っておりますので、その資料を十分に活用していただきたい。あるいは活用したいというのが私の気持でございます。
もう一点は、当時と比べますと、外国の情報が全く違っております。当時はまだそんなに情報が流通していない時代でございましたので、やや日本的なドグマと申しますか、それによって作り上げていったところがございますが、現在では、ともすると日本が世界で一番だめな行訴法だというので、悲嘆にくれてみせる人が多いんですけれども、その点はともかく日本の行訴法の比較法的な位置づけも、この際しっかりやっておかないと、先程水野委員が言われましたように、後世に残るようなものはできないのではないかということでございます。これも事務局にかなり御負担をお掛けになるかと思いますけれども、その点についてもしっかりと資料を収集して臨みたいと思っているところでございます。
事務局の皆様、それぞれに、特に参事官、次長、これからも色々とお願いするところがあるかと思いますが、また、その折り折りに御意見を承ることにさせていたしましょう。
それでは、大分時間も迫ってまいりましたので、次に今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。
【小林参事官】資料6、行政訴訟検討会の当面の予定(案)というのがございますので、それに基づいて御説明をしたいと思います。
第1回が2月18日、本日でございますが、第2回以降の予定でございます。第2回は3月19日に予定をいただいておりますが、第2回以降、先程次長から御説明したように、月に1回くらいの割合で検討を進めるに当たって、意見書にもありますように、総合的多角的な検討をすると。こういった幅広い委員の方々に行政訴訟の現状、問題意識について、認識を共有していただくという点から、なるべく意見を早い段階で多くの方から聞いていってはいかがかというように考えております。
具体的に第2回以降という項目に書きましたように、委員の方々の中でも、それぞれ御意見をお持ちの方、特に行政法の専門家の方もございますので、そういった方々を中心にしながら、その他の行政訴訟制度の利用者サイドの方や、制度を運用しておられる立場の方々、そういったような関係の方々も含めて、意見を伺っていってはいかがかと。それから、行政訴訟の実情に関して、国と地方公共団体、これは被告の立場に立つのでしょうけれども、実際の行政訴訟について、直接タッチしておられる方から、現状の行政訴訟の実情、御意見について伺ってはいかがかと。
それから、福井良次委員からも御指摘がありましたように、行政手続法と関係諸法制との関係もございます。そうした法律の中には、行政手続法や情報公開法のように、比較的新しく立法され、そういったことによって、行政の在り方がかなり基本的に変わってきている部分もございますので、そういった法制について立法の経緯やその後の運用状況等についてお話を伺うということも重要ではなかろうかということで、そういった点について有識者の方、あるいは総務省等の関係省庁の方々から御意見を伺えればいいのではないかと思っております。
それから、座長から先程御指摘もありましたように、主要各国の行政訴訟制度、やはり40年間も経っている法律ですし、三権分立という国の基本に関わる部分の制度設計に関する問題でございますので、慎重な検討が必要であろうと思いますので、主要な国の行政訴訟制度については基礎的な研究もきちんとした上で、ある程度まとめて、この検討会に御報告をするという形を取る方がよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
このような幅広い意見の聴取や行政訴訟制度の調査等を踏まえた上で、事務局の方で、それまでに出たような問題点をある程度、そのまままとめるような形にして、それをまたこの検討会でお示しをして、更にそこから問題点について御意見を伺って、論点の整理、絞り込み、そういったことをやっていってはいかがかと、このようなスケジュールを当面考えておるわけでございます。
【塩野座長】短い期間に効率よく議論していただくということで、今日は多少予定につきましても、先に走り過ぎているような形て御披露をいたしております。勿論、これに限るということではありませんで、今後の予定としてこういうことも考えてはどうかといったようなことがあれば、おいおい考えてまいりたいと思いますが、今日のところは実は時間も押しておりますので、第2回目くらいのところまでは整理をさせていただきたいと思っております。
なお、そのこととの関係でございますけれども、先程私もちょっと申しました主要各国の行政訴訟制度に関する調査でございますが、これは比較的年齢が若く、そして現在、制度を色々勉強している方、そういう方に一種の委託調査みたいなものをお願いしてはどうかというのが私の心持ちでございます。この中に勿論、小早川、芝池、福井、それぞれ行政訴訟で外国制度の研究に携わって来られた方がおありですけれども、このお三人はいろんなことでお忙しいということで、この方々に、例えばアメリカの原告適格についての判例をフォローしてみろと言われても、なかなか難しいことではないかと思います。そういうことで、もし皆様方の御同意が得られれば、皆様も現役ですけれども、若手の現役で、それぞれその道で論文を書き、あるいは向こうと接触のうまくいくような方について私が選定をして、お願いをさせていただければと考えております。
また、そういう方々の御了承を得られれば、どこかの席に座っていただいて、この検討委員会の雰囲気を察知しながら、外国の制度の紹介をしていくということにでもなればなとも考えております。ともすると、外国法制度は、外国人が問題にしていることを、そのままいかに正確に日本に伝えるかというのが日本の外国法研究のスタイルでございますが、今回はそうではなくて、日本が問題にしていることを、外国人がどう捉えているか、そういう角度からの依頼をしたいと思っております。
ということで、資料6と、それから私が今申しました外国の調査に関する依頼。若手に対する依頼の件も含めて、御提案申し上げておきますが、何か御意見があればおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
だったら、外国調査は行くのかということにもなりますが、今日は時間もありませんので、余りいいかげんな返事をしてもらっても困りますので、もし若手の方にお願いするとすれば、そういうこともあり得るということで事務局の方もお考えをいただければと思っております。
それから、事務局における論点整理のフリートーキングというのは、すぐに行われるわけではありませんで、そういったことについて特に主要各国の行政訴訟制度に関する調査がだんたん出てまいりますのは、夏休み明けというふうにも考えておりますので、それまでに出た色々な論点を、事務局なりに整理して、案を作ってここにお見せするという意味でありまして、すぐさま事務局が次回にも論点整理をして、これでやれというものではないということだそうですので、広く論点をお出しいただきたいと思います。
以上で大体会議の進め方、当面の予定でよろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
それでは、本日事務局から準備していただいた資料の他に、皆さんの机上にジュリストの論文が2つ出ております。これは小早川委員が色々、編集に携わっていただいているものであります。これはジュリストの本年2月1日号から、シリーズ「行政訴訟を考える」が始まっております。当検討会における検討の参考になると思いましたので、差し当たり今日お配りしたというものでございます。私から事務局にお願いをいたしました。
これは全5回シリーズということで、既に第2回目は、ジュリストをお買い求めの方にはお手元に届いているかと思いますが、これは次回にこの場でお配りをしたい。5回シリーズについては、事務局の方で配っていただきたいと思います。これは何もここで提案されていることに従いながら議論を進めようという趣旨ではございません。できるだけこの問題についての共通認識を積み上げていきたいという1つの資料になるのではないかということでお配りしているものでございます。
そのほかのことで、自分として、こういう資料を皆さんに是非配って欲しいんだということがあれば、それはこの場でお配りすることは可能かと思いますが、私の方で法律雑誌全部集めてここでいちいちお配りするというつもりはございません。差し当たりこのジュリストをお配りして、共通認識を作っていただきたいということでございます。
そこで2回以降の意見聴取のことでございますけれども、次回にどうするかということでございますが、もし、よろしければ、当検討会の次回で行政法を専門にしている研究者である小早川委員、芝池委員、福井委員から意見聴取を行いたいと思いますが、お三方、是非ここはお引き受けいただきたいと思います。例えば、無名抗告訴訟は是か非かという、そんなすごい議論をここですぐやるわけではなくて、共通認識をできるだけ作っていただきたいということで、しかし、今日お伺いしたよりも、もう少し専門的な角度から日本のどこがおかしいので、自分はここはこういうふうにすべきだということ等でよろしいと思います。そのときに、すぐ激しい議論をするのではなくて、まず、質疑に応じていただきたいということでございます。第1回目の共通認識の作成過程というふうに考えていただければと思います。お3人よろしゅうございますね。
【小早川委員】時間はどのくらいですか。
【塩野座長】この点は事務局と相談して下さい。後で時間のことも申しますので、もう少し詰める必要があると思います。
あと1、2点、私の方で事務的なことを申し上げておきたいと思いますが、1つは、これは事務局ともまだ打ち合わせも何もしておりません。資料でございますけれども、行訴法の資料等々、毎回お持ちいただくのも何かと思います。そこで、普通はここに置くことがあるんですが、基礎的な資料はここに置いておき、どうしてもお持ち帰りになりたい方は2部用意するということになろうかと思います。例えば行政事件訴訟法というのは、行訴法の人は全部持っていますけれども、例えば萩原先生はまだお持ちではないと思います。そうすると、これを持っていけるということでどうぞお持ち帰りになっていただいて、しかし、次回からは、もう1つ別なものを置くということで、お願いします。
それから、議事録の作り方でございますけれども、そこはちょっと説明していただけますか。皆様方に一遍お返しをして、大体正確だと思いますが、間違って速記を取ることがありますので、その分は直していただくという時間的な余裕、そのように考えております。
以上でございますが、福井委員どうぞ。
【福井委員】資料でございますが、できましたら両面コピーにしていただけますと、保管のときにかさばらなくていいと思います。
【塩野委員】御提案ありがとうございました。
ちょっと時間もございますが、最初でございますので、今日はこの程度にさせていただきたいと思いますが、なお、時間のことで先程ちょっと申し上げたかったことでございますが、京都とか遠いところから来られた方に、2時間掛けて、2時間で帰るというのは、必ずしも公正ではないと考えております。せっかく遠いところをおいでいただいた方もおられますので、あるいはいろんなことを調整して、ここに出てこられた方がありますので、2時間で直ちに閉めるというよりは、2時間半くらいの余裕があった方が私はいいのではないかと思いますが、例えば次回も2時間半あれば1人、大体何分くらいということが出てくるということもありますので、会場の設営等々、あるいは速記の委託契約等で色々、あるかと思いますが、いつも2時間きっかりでやめるということではなくて、そこはちょっと相談をさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【芝池委員】4月以降の会合の日程なんですが、それはどうやって決めるんでしょうか。
【小林参事官】至急調整させていただきます。
【芝池委員】私が心配していますのは、講義などが始まりますと、曜日だけでも決めておいていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。
【小林参事官】なるべくそういう絞り込みを掛けたいと思っています。
【芝池委員】私、後期は空いているのは月・水だけなんです。ですから、それでだめな場合は、講義日程を変える必要がありますので、早目に決めていただきたいんです。
【塩野座長】大学関係の方は講義の日程が入りますので、早急に整理して下さい。どうもありがとうございました。
それでは、どうもありがとうございました。今日はこれで終わります。
|