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行政訴訟検討会(第16回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年4月25日(金) 13:30〜17:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員) 塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)
(事務局) 松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田斉志企画官

4 議題
  1. 論点についての検討
  2. 今後の日程等

5 配布資料
資料1 行政訴訟制度の見直しについて検討の方向性が概ね一致していると思われる事項
資料2−1 国及び公共団体への被告の一元化の具体的な制度内容の案及びこれに関連して派生する問題の項目
資料2−2 国及び公共団体への被告の一元化の具体的な制度内容の案及びこれに関連して派生する問題
資料3 管轄の拡大についての主な論点
資料4 出訴期間等の教示についての主な論点
資料5 行政の作為・不作為の給付を求める訴え、確認の訴えの主な論点
資料6 行政訴訟検討会における意見の概要

6 議事

(1)論点についての検討(□:座長、○:委員、△:外国法制研究会委員、■:事務局)

□本日の議題は、引き続き論点についての検討であるが、第1、第2ラウンドの検討に続き、いわば第3ラウンドの検討として、さらに掘り下げた検討を行っていただきたい。今まで非常に多岐にわたる御意見の表明、問題点のご指摘等をいただいたが、これまでの検討会における皆様の御意見は、資料6にまとめてある。
 今後の進め方について、前回の検討会でご意見を伺ったところ、今までの議論で方向性が概ね一致していると思われる検討事項について、その項目、内容を確認の上、なお検討が必要な論点について審議を進めるとともに、行政訴訟の特殊性から不可欠なこととして、行政の実情についての情報を得るということで、行政庁側の意見を聞く、他方で、その他の検討項目についても重要なものについて、並行して引き続き検討を進め、可能な限り具体化を図っていくということで、委員の皆様方の御了承を得たと理解をしている。こういう形で、進めてよろしいか。

(委員から異論なし)

【検討の方向性が概ね一致していると思われる事項について】

□ではまず、検討の方向性が一致している点についての確認を行い、それを踏まえて先に進むという作業がどうしても必要になるので、資料1「行政訴訟制度の見直しについて検討の方向性が概ね一致していると思われる事項」について、委員の皆様に御確認をいただき、御意見等があればいただきたい。

○本日の資料はどこで作成したのか。

■事務局で作成した。

○プロパティの中の文書作成名義とかタイトルに「最高裁意見確定」、「法制局見え消し」、「最高裁修正済み」などが付いているが、これはどういう意味か。

■いろいろな過程でいろいろなところと意見交換をしている。

○要するに委員に配布する意見は、事前に最高裁の意見を聞いて確定してから、意見照会されているということか。

■いろんな意見を伺っているということである。

■事務局で今までの議論を踏まえて、整理させていただいていると理解しているが、その過程でいろいろ事実関係を確認する必要で、やりとりはしているものだと思うが、意見を聞いて事務局でまとめるという形はとっていない。

○作成者に情報管理課と出てくるのはこれはどこのことか。

■全体のコンピュターシステムを情報管理課が管理している。

○検討会の議論というのは、あくまで内閣に置かれている司法制度推進本部の素案作り、しかも検討会の事務局として資料を作成していただいていると認識しているが、最高裁は司法権の一翼、最高責任者であって、そこが検討会の委員の意見を聞く前にあらかじめ意見を言って、しかも修正とか意見で確定ということがあるとすると、これは妙なことになるのではないか。本来政策判断を検討会で行った上で、あるいは検討会に最高裁から委員が派遣されているのだから、その場でオープンに議論していただくのは何ら支障がないと思うが、委員に配る前提として最高裁に意見を聞いて、何らかの形で合意ができたものについてのみ、委員に配るというのは如何なものか。

■決してそういう過程があったということではない。いろいろな過程でいろいろな意見をお伺いしているということである。

○メールをプリントアウトしている限りでは全然分からなかったが、別の画面で見たら、「最高裁案に修正したもの」、「最高裁意見プラス法制局見え消し」、「最高裁修正で確定」といったものが出ている。最高裁と事前に協議しておられるということになると、意見を聞かれるのはもちろん良いと思うが、最高裁と事前に案を作っておられるような印象だから、これは如何なものか。

□今の事実関係は全然存じないが、事務局の責任において今日の案をお出ししていただいていると理解している。事前に誰かと相談してそこで確定したなどと言っても、それは検討会の今後の検討に何らかの全く影響を及ぼすものではない。御自由に御意見をいただきたい。

○事前に確定した意見に拘束されるいわれはないことは当たり前のことだが、意見の取りまとめプロセスとして、李下に冠を整すべきではない。本来オープンの場で議論することが検討会の趣旨だとすれば、最高裁の意見を聞くのであれば、オープンにここでどういうことは最高裁に相談しようと相談した上で、事前に聞くなり、あるいは最高裁の方にここで意見を開陳していただくことは問題ないと思うが、全くわからないところで、確定とか修正とか重みの序列があるような形で、不透明な形で、しかも司法権の頂点にある最高裁と行政の立案体制の部局とが事前に相談されるというのは今後やめていただかないとまずいのではないか。

■具体的な内容については承知していないが、そういうことで確定しているというようなことではない。

○確定しているかどうかを問題にしているわけではない。そういう手続があったということ自体が問題ではないかという指摘である。

□実際にいい案を作ろうというときに、どういう調整をするかは詳しくは存じないが、先ほども申したように当たり前のことをもう一度ここで当たり前のこととして、確認したいと思うので、よろしいか。今後、事務局としても注意していただく。

■資料1は、第15回行政訴訟検討会までに行政訴訟制度の見直しに関し基本的な方向性について概ね一致がみられると思われる事項を挙げたものです。現実の制度設計の可能性や見直しの具体的な内容については、この資料の注にもございますように、さらに検討が必要と考えられるものでございます。
 第1と第2に分かれておりまして、第1は「基本的な見直しの考え方−権利利益の実効的救済の保障」という項目でございます。内容につきましては、「行政訴訟制度を見直して、国家賠償や行政不服審査の制度と相まって、国や公共団体による権利利益の侵害を受けた者の救済を実効的に保障することができる制度とする」、こういう項目でございます。
 第2は具体的な見直しの考え方でございます。この第2の項目は1と2と3で、1は「行政訴訟を利用しやすくするための見直し」、2は「審理を充実・迅速化させるための方策の整備」、3は「本案判決前における仮の救済の制度の整備」、この3つの項目に分かれております。1の「行政訴訟を利用しやすくするための見直し」につきましては、(1)の「被告適格者の見直し」、(2)の「行政訴訟の管轄裁判所の拡大」、(3)の「出訴期間等の教示」、この3点を挙げております。
 (1)の「被告適格者の見直し」につきましては、「被告適格を有する行政庁を特定する原告の負担を軽減することにより、訴えの提起を容易にする等のため、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服の訴訟については、行政庁を被告とせず、処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告とする」、このようなことでございます。注につきましては、「抗告訴訟の被告適格者を行政庁から国又は公共団体に改めることに伴う関連規定の整備の要否等については、なお検討が必要である」ということでございます。
 2頁の(2)の「行政訴訟の管轄裁判所の拡大」につきましては、「行政訴訟へのアクセスを容易にするため、行政訴訟の管轄裁判所を拡大する」という項目でございます。注といたしまして、「土地管轄をどのように拡大するかについては、行政事件を扱う裁判所の専門的な体制の問題等と関連して、なお検討が必要である。また、土地管轄を拡大した場合の移送に関する特別の規定の要否等についても、なお検討が必要である」というものです。
 (3)の「出訴期間等の教示」につきましては、「訴え提起の機会をより実質的に保障するため、行政庁は、処分をする際に、その相手方に対し、出訴期間の制限などを教示しなければならないものとする」というものでございます。注といたしまして、「教示の内容、相手方の範囲、教示義務に違反した場合の効果等については、なお検討が必要である」というものです。
 2の項目でございますが、「審理を充実・迅速化させるための方策の整備」でございます。「訴訟関係を明瞭にし、審理を充実・迅速化させるため、訴訟の早期の段階で処分又は裁決の理由を明らかにするための方策を講ずる」というものです。注といたしまして、「処分又は裁決の理由を明らかにするための具体的な方策については、①処分又は裁決に関する理由の説明や記録の提出等を行政庁に対して命ずること、②裁決の取消しの訴え又は裁決を経た処分の取消しの訴えにおいて、裁決をした行政庁に対し裁決に関する記録の提出を命ずること等の意見が出ているが、その採否等については、なお検討が必要である」というものです。
 3の「本案判決前における仮の救済の制度の整備」につきましては、「本案判決前における仮の救済に関して、権利利益の救済の実効性を確保する観点から検討し、必要な制度の整備を図る」というものです。注といたしまして、「権利利益の救済の実効性を確保する観点から、仮の救済について具体的にどのような見直しを要するかについては、①執行停止要件の緩和、②執行停止に対する内閣総理大臣の異議の制度の見直しを含む執行停止決定に対する不服申立ての具体的在り方の見直し、③執行停止以外の多様な仮の救済方法の整備等が必要であるとの意見が出ているが、どのような制度を採用するか等については、なお検討が必要である」、以上のような項目を挙げております。

○資料1は、今後の検討会での議論において、ある種の、憲法とまではいかないが、方針を示す文書ということになるのか。

□行政庁の意見、国民の皆様の御意見を承るための資料というふうに御理解をいただきたい。憲法だからもう変えられないということではなくて、国民の意見、あるいは行政庁の意見を聞き、幅広い情報を得て変えることもあるが、最初は、こういう形でお伺いするという趣旨で理解しているが、よろしいか。

(委員より異論なし)

■行政訴訟の問題は非常に多くの国民の利害に関係する項目であり、これまでの多岐に渡る御意見を開陳されているが、いよいよ来年の通常国会への立案に向けての作業ということで、概ね一致した項目を確認した上で進めてはどうかという前回の議論があった。そういう意味の、途上の段階のものという意味で、座長がおっしゃったとおりだと思う。事務局としては、今後も様々な議論の過程で、修正していくべきもので、弾力的に考えていくべきものと思っている。

○今回の資料2−1から4は、概ね一致しているという方向の資料にしては非常に細かく、かなり専門的で、なかなか意見を言いづらいところがある。概ねという、ある意味では大雑把というような意見も今後何らかの形で採用していただき、技術的な議論は専門家の方にしていただいて、私どもの意見としてはこういう方向でとにかく行ってもらえれば良いということにしていただきたい。

□是非そうしていただきたい。行政訴訟法の専門家でも細かいところまであまり気を配っていないところがある。それは、前回そういった細かい点についても十分目配りをしていくように、というこの検討会の場で委員の御指摘があったので、事務局なりに整理をしたものである。ただこういった難しい作業があり、そういう点については一応事務局なりに勉強したということで、この資料として出ている。委員からは、国民の目から見た率直な御意見をいただければ、それをどういうふうに今度は法律上生かしていくかということについては、事務局がいろいろと考えてくれることだと思う。

○専門家の目から見ても、大変技術的で専門的な議論が多い。ここで検討すべきは法制局で作る条文ということではなくて、政策のコンセプトだと思う。たとえばコンセプトを決めれば、そう技術的に問題なく決まるという論点と、いややっぱりコンセプトは決めたけれども、基本的にどっちに転ぶかは政策判断しないといけないという論点は厳格に分けて、後者についてはここで合議する価値がある。しかし前者については後で法律職人との間でゆっくりやってくださいというのがこの検討会の正しいスタンスだと思う。あまり細かい論点をここで議論するということは時間の効率も悪いので是非避けていただきたい。

○細かいことをここで議論する必要はないが、専門的だからと言ってここで議論しないというのは、結局細かくやっていったらできなかったということがあるので、そういうことのないように、多少事柄が専門的になっても、ここで可能性を詰めておくということは事柄によっては必要だろうと思う。

○確認だが、第1の基本的な見直し方というのは全体を貫く総論的なスタンスを決めたもので、具体的にこの前この場でコンセンサスが得られた、概ね一致したところから検討に入るというのは、第2の1から3までに書かれた各事項であると理解してよいか。

□そう理解している。

○元々やっているテーマが非常に技術的な訴訟法の話しであり、その中の大きな考え方を取るだけでは決まらない部分というのはかなり多くあって、そういうところについても、ここでどういう考え方に立つべきかという議論はして、議論を少し深めた上で立案作業をやっていただかないと、事務当局として方向性を見い出しにくいのではないかと思うし、我々もその後、これが成案になって現実に現場で使うという状態になったときに、どういう議論の考え方の下にこうなってきたのか、ということが是非分かるような、裏付けのあるようなものをやっていただきたい。そういう意味で、第2の論点についても、十分な議論をしていただきたい。

□議論すべきところは議論し、細かい点についてプロフェッショナルに任せた方がいいものは任せておくということで、その辺の判断は場合によっては私にお任せいただくことがあるかもしれない。この点は事務局に任せて、成案を経て、もう一度またここで議論するというやり方になるかと思う。
 それでは中身に入る。

○資料1の第1の1行目で、「国家賠償や行政不服審査の制度と相まって」とあるが、曖昧な感じがする。現在行政訴訟の役割が限定されており、その結果、国家賠償の役割が救済手段としては広くなっており、それを踏まえるとすれば、国家賠償と行政訴訟を完全に並列するだけでは新しい行政訴訟のあり方を示すことにはならない。良い文言は思いつかないが、現在国家賠償に比重が傾きすぎているところを正す方向性を出すような文言に、可能であればするべきだと思う。

○第1に書いてある、権利利益の実効的救済を保障する、これはこれで異存はないが、行政訴訟制度の目的として、もう一方では、行政の適法性の確保という面があり、その面からも見直しをする必要があると思う。ただそれが全員一致しているのかどうかは分からないが、この面だけで見直すのだということで一致したということではないということだけは、確認して欲しい。

■委員の述べられた趣旨を表現したつもりであり、ここで皆さんの意見が一致しているのは、国家賠償や行政不服審査があるが、それに依存しすぎて、行政訴訟が活用されていない、あるいは取消訴訟中心主義の問題があって、本来活用すべき場合に活用されていないのではないか、少なくとも権利救済という面からはその部分は改善していかなければならないのではないか、そこは一致したのではないかと思い、資料に記載している。お二人方の趣旨はそのとおりであり、資料に盛り込んだつもりである。

○修正意見ではないが、権利利益の侵害を受けた者の救済を実効的に保障することはもちろん必要だが、訴訟制度というのはそれだけではなく、自分は権利利益の侵害を受けたと思ったという人に対して、本当にそうかということを公の場で調べて、その結果、いやそれは我慢しなさいということもあり得るが、とにかくそういう不満を持った人に対して、その不満に適切に対処できるようなものと理解していきたい。

□次に、第2の点については、1、2、3という点を掲げているが、この項目を取り上げて、逐次検討に入っていってよろしいか。

○被告適格者の見直しを考えるときに、行政事件訴訟法を変えればそれでいい範囲だけでやるか、個別法で行政庁を被告にすべきと規定しているものがたくさんあるが、そこの射程をどうするか、それから主観訴訟だけか、客観訴訟まで同じように見直すのか。これは枠組みとして非常に大きいことだ。もしこの改正をやった後も行政庁を被告とする形態がたくさんあるのであれば、必ずしも行政主体に統一してしまうから後は問題ないとは言えなくなり、行政庁であるときはこうなる、行政主体のものはこうなる、と2重の手続法を作らなければいけなくなる。可能な範囲がどこなのかということを考えておかなければ議論の前提ができない。

□今のうちの民衆訴訟、機関訴訟の点についてはこの資料の2−2の9頁のところに取り上げて、事務局作成の段階ではその点は意識していると理解している。個別法については専門的なので、この場でこの条文についての行政庁は行政主体にすべきという議論は無理ではないか。

○行政庁が主体になるものが、個別法を改正しないということを前提に残るものであるのか、その場合、手続法としての行政事件訴訟法は、手続を2重に持つのか、それとも主観訴訟においては個別法の改正あるいは読み替え等を考えて、みんな統一していくという方向で整理するのか、そこは議論しておく必要はあると思う。

■それは個別の論点の検討のところでお願いしたい。

○(3)の「出訴期間等の教示」自体は異存ないが、出訴期間そのものは廃止しろと言っているので、今までどおり一律に出訴期間を持つことを前提にして教示制度を設けることについて意見が一致したということではないということだけ言っておく。

□出訴期間についてはまた後の方でまた議論の対象にする。

○被告適格者に関連して、国、地方公共団体以外の各種法人で、現在はその法人の機関の行為について、行政事件訴訟法で行く場合と民事訴訟法で行く場合と両方あり、その仕切りの問題があるが、特に独立行政法人が増えてくる傾向にあるということもあり、行政訴訟の守備範囲をどこまでにするのかという問題が実際には絡んでくるだろう。その際に、今は公権力の行使かどうかということで切っているが、その切り方が今後も続いていくのかどうかということは、他の論点とも絡んでくるのではないか。

○資料2−1に、「その他の法律で、検討が必要と思われるもの」として「行政不服審査法の規定の整備の要否」とあるが、行服法の場合は処分庁や審査庁を特定をすることによってスタートする制度なので、もし行政事件訴訟法で考えているような国ないし地方公共団体ということを想定するのは無理ではないか。

□いろいろ意見交換していただき、資料1については、注にもあるように、まだこれから検討しなければならない事項についてさらに検討する必要があるということは共通の認識であるが、現段階では、方向性が一致している事項はこの資料のとおりということで、今後のステップに入ってよろしいか。

○第2の1の(1)の被告適格で、枠の中の下から2行目、「事務の帰属する国又は公共団体」とあり、国又は公共団体を被告とするという点では合意はあったと思うが、自分は行政庁が帰属する国、公共団体というふうに理解していて、行政機関が帰属する国又は公共団体と事務の帰属する国又は公共団体が一致しない場合というのがあり得るのではないか。

○機関委任事務がなくなったので、ほとんどなくなったと思う。行政法ではないが、刑事捜査の際の司法警察員の行為というのはあるいはあるかもしれない。他にも個別には機関委任事務は全廃したと言いながら、実は生き残っているのがあるような気もして、ゼロとは言えない。

□今度の地方分権一括法で原理的にはそういう問題はなくなっている。ここは原則的なことを書いてあるというふうに理解していただきたい。例外中の例外があるかもしれない。

○仮の救済のところで、枠の中に書いてある趣旨は、現行法では取消訴訟の規定の中に執行停止の規定が置かれているのに対して、仮処分の排除は取消訴訟の関係に限らず一般的に置かれており、いずれにせよ、義務付け訴訟や不作為請求の差止め訴訟のような場合の仮の救済はどうなのかという議論はある。ここに挙がっている問題は取消訴訟との関係に限るものではないと理解してよろしいか。自分はそのように広く見直した方がいいと思う。

■ここで出た意見は非常に多角的なもので、表現はこのとおりで、取消訴訟に限っていない。そういう意味で幅広く、仮救済を充実していこうという意味では一致はあったけれども、ではその仮処分の禁止を本当になくしていいのかどうかということになると、これは具体的な問題についてまだ一致はなかったと思うが、ただ全体を見ながら充実を図っていこうという抽象化したレベルでは一致があったと見られるということで、こういうふうに記載した。

□それでは資料1の四角い枠に入った点について、これでよろしいという御意見をいただいたということにしていきたい。

(委員より異論なし)

【検討の方向性が概ね一致していると思われる事項以外の事項について】

□次の問題は、第2トラックについての問題である。どのような項目があるか委員の皆様方から是非御意見をいただきたい。

○第2トラックで議論すべきことはいっぱいあるのではないか。一々挙げていたらきりがない。第6回フリートーキング参考資料の中で、行政訴訟制度の趣旨・目的から始まって、行政訴訟と民事訴訟の関係など、目次に書いてあることは全部もう一遍議論して、一つ一つ確定していく必要があると思っている。

○今ここで、今回であと何をやるか決めるという趣旨か。

□いや、今日一応御意見を承りたいということである。

○それは際限なくある。非常に大部にわたる論点があり、各委員ごとにまた同じ内容を繰り返しても仕方がない。どの論点について、どういう見解なり政策を取るのかということを決定する作業が、何らかの形で必要だと思う。ここでもう一回自分が言ったことをまた言っても時間の浪費だと思うので、どういう論点が残っているのかということも含めて、事務局の方でできるだけ公正な形で整理していただいた上で、それを決する作業に移っていただきたい。

□先ほど、御議論いただいて御了解を得た資料の事項については、外部の意見を伺うところまでは来た。今度は何をとりまとめるかというときには、それぞれの今までの発言の中から、これは是非、やはり第2トラックに位置付けて、そろそろ外部の意見を聞くことを事務局に詰めてもらう必要があるものではないかということの御意見を承りたい。この段階になって、どれを自分としては取り組むべきなのか、時間的な問題もあるので、たとえばこの点については是非第2トラックで並行して取り上げるべきだという、そういう趣旨の御意見を承りたい。それをお伺いしないままに、事務局で、これが大体一番大事だということで、第2トラックの事項を整理することは、今までの検討会の審議の仕方からしてできないと思う。ご自分として、あるいは国民の目から見て、これはどうしても取り上げるべきだと思うというようなことがあれば、それはこの場で意見の交換をし合い、そしてそれを第2トラックとして本当に集中的に議論して取り上げるかどうかという点は、しかるべき手続で進めたい。

○資料6で意見の概要をまとめていただいているが、この目次はフリートーキング参考資料の目次に合わせて整理していただいている。つまり、この意見の概要に出ている項目について、我々は一生懸命議論しているので、この中で、どれとどれを次に議論してくれという立て方をされても、これは全部と言わざるを得ない。各項目について、資料2−2のような整理をしていただいて、議論して、場合によれば多数決で決めないといけないこともあるかもしれないが、フリートーキング参考資料に基づいて議論してきて、そのまとめとして資料6があるわけだから、その項目を追っていくとのは当然のことではないか。その議論をしていく中で、たとえばこれについては意見が一致しているから飛ばしましょうということがあってもいい。

○たくさんの論点がこれまで話題に上ったが、検討会のこの検討に残された時間というのは相当迫ってきている。その中で全部をやるということが可能かどうかということは段々難しい状況になっているという認識を持っている。第2トラックは意見の隔たりがまだ解消できていない部分であり、それについて、行政庁のヒアリングをするなり、パブリックコメントをかけるという場合に、具体的なものにせず、ただ賛成か反対か、どちらが多かったかという形でその手続をすることはできないのだろうと思う。この前2つの仕分けをして、そういう手続ができる程度に仕上げるものと、それから早くそれに乗せていくものを選ぶ作業を分けることになったのだから、座長が言われたことは、優先順位を決めて、とにかくやろうというお考えではないか。何年かけてもいいという議論になれば、網羅的にやればいいと思うが、残された中ではやはり優先順位を決めながら、効率的な議論で、具体的にしなければいけないものは、この中で具体的にしていこうという作業を是非やっていかなければならないのではないか。

○時間がないというのは全く理由にならないと思う。あらかじめいつ頃までに何をしなければいけないというのは設置された段階から決まっているのだから、その段階から決まっていることを今まで延々議論してきたわけで、その議論の中で優先順位を付ける必要がもしあったのであれば、一人5つづつ言えなどとして、最初から議論の無駄な時間を避けるのが適切な審議手続だった。真面目に議論してきた問題について時間がないから絞れというのは、検討会としては全く正しくない判断だ。議論をして、ある程度、全員一致ではないけれども、煮詰まっている論点や、概ねの方向については一致していることがあるだろうから、それは一定の整理をした上でやるのかやらないのかということを、各人ごとの優先順位ではなくて、議論として真面目にやってきたもの全部につき、検討会として合議体で決した上で成案に乗せるということは、あまりにも当然のことではないか。時間がないから優先順位を付けて上の方だけやろうというのは、この検討会として決して取るべき態度ではないと思う。要するに、各人が今ここで私はこれは重要だということを出しても仕方がない。各人プレゼンテーションは終っている。今回まとめていただいた論点について、やるのかやらないのかということについて投票でもあるいは議決でもして、何らかの形で採択する方向にするのかしない方にするのか、あるいは非常に一致しているとか似ているものであれば、括った上で実現できるのかどうかということをできるだけ前広に検討していって、決する手続に直ちに入った方がいい。

□その決する手続の資料はどうするのか。

○それは事務局で作っていただくのが一番いいと思う。

□事務局としては作りようがない。今まで出してきた論点は資料6の目次のように並んでいるのだから、このうち、どれを第2トラックとして最初に国民の意見を承るときに取り上げるのか。

○しかしそれができない事務局だったら、何のための事務局か。全員一致していること以外は事務局は作業できないということだったら、そんな事務局はあっても意味がないと思う。

○今まで議論した中で本当に優先順位をどうするかという点ではそれぞれ御意見があると思うので、何が大事かということを改めて意見を徴するのは意味があると思う。

○この論点の膨大な範囲の議論を、最初はなるべく広めに議論してきたが、時間との関係を考えたら大変な状況にあると思う。論点を広げたものにつき、全ての採否を決めないと第2トラックが始まらないということになると、これは時間が足りないことになるので、座長の御提案は、第2トラックに挙げるものの順位がつけば、まず挙げていって、場合によっては第3トラック、第4トラックがあってもよいからということであり、網羅的に今まで議論してきたものの採否を決めないと議論できないということは避けていただきたい。

□できるだけ皆様の御意向に沿った形で運営してまいりたいと思い、これだけの論点を十分に拾っていただいたが、時間の問題もある。行政事件訴訟法は7年かけているが、今回はその数分の一の時間で成案を得なければならないという枠の中にあるので、時間の関係というのはやはり意味の持つものだと思っている。資料2のようなものを作って一つ一つ全部つぶしていくというのは無理である。これはやるべきだという御意見を承り、それを事務局が整理するということはお引き受けするが、どうだろうか。

○こと細かに一個づつの発言について採否を問うことは有り得ない話だと思うが、まとめていただいた中でそれぞれの項目ごとにいくつかの大括りの論点というのは必ず存在していると思う。排他性についてもそうだし、あるいは訴えの利益なり原告適格についてもそうである。全員一致ではないけれども、随分建設的な議論で、かなりの程度基本方向が一致しているという論点は随分あると思う。そういったものについては、少なくともここまでであれば全員一致で可能性があることかもしれない、あるいは大多数の方がこの辺りであれば落ち着きがあるかもしれないということについては、それぞれの委員がこれは重要だということで強調されたことは議事録上明らかだから、それを整理するのは事務局の仕事だと思う。何もこれを逐一、全部法的な論点を洗い出す必要性は全くなく、大きな意味での論点は括っていただかないといけない。ここで優先順位を付けて言えと言われて、言い忘れたり、あるいは時間がなくって整理できなかったものはやらないということではまずいと思う。

□そんなに難しい話を申し上げているのではなく、たとえば、裁量処分については出ていないが是非自分はやるべきだという御意見があればそれは承るし、訴えの提起と請求の特定が自分としては非常に重要だと思うからこの場で議論すべきだという点があれば、それは御意見として承るが、それに対してはそれは少し専門的過ぎだという御批判もあるかもしれない。これを落としたら行政訴訟検討会は何をやっていたのだという点があれば是非言っていただきたいと思って申し上げている。

○限定列挙ではなくて、今もう1回頭の整理をするという議論であれば別にやっていただいて結構だと思うが、今言い忘れたら失権するとか、あるいは議論の対象にしないということはやめていただきたい。時間の制約があるという前提で第2トラックを決めて、第3、第4があるわけがないということも常識の帰結である。

□今日締め切りということにはならない。

○時間がないということからしても、それぞれが自分はこれを議論してもらいたいということを出して、体系的ではなく、あっち行ったりこっち行ったりするような議論の仕方は、非常に非効率的だ。事務局主導というが、当初は何も我々検討会の委員が議論していないのに、論点はこれだけだと事務局がやるのは越権ではないかと問題になったのであって、今散々議論してきて、それを事務局の努力で整理していただいたのだから、自ずとこれを見ていけば、このテーマについては大体委員の方向性というのはこういう方向ではないか、と事務局が言っても、それは誰も否定しないと思う。そういう形で議論をまとめていかなければ、いつまでたってもまとまったものは出来上がらない。今はその時期ではないか。今回の2から5までの資料はそういう形で作っていただいているわけだから、そうやって一つづつつぶしていかないと終らないのではないか。

□今回の資料は意見の一致が見られているからできたのである。そうでないものも一杯ある。その点については、意見の一致は見ていないかもしれないが、とにかくこれは議論してほしいというのがあると思う。たとえば原告適格はまだ一致していないけれども、とにかく第2トラックで議論しないとおかしいではないかというのをいっていただきたいと思っているのである。つまり、意見の一致を見たのはこの第1トラックで一応出してあるので、意見の一致を見ていないが第2トラックとして並行的に議論してほしいものは何かということを申し上げている。今日で限定列挙するわけではないので、とにかく自分はこれをやりたいということを言っていただきたい。そうでないと議論は進まない。

■確かに、時間がないから十分な議論をしないというわけにはいかず、十分な議論をするように努力をさせていただきたいと思う。事務局主導にならないのではないかという御指摘の趣旨は、ある程度今までの議論のことを勘案した上で、事務局でたたき台として第2トラックの進め方について、こういうテーマでという提案はしてもいいという御趣旨か。その前提として言えば、資料6の意見の概要について、この第1から逐一ということなると、これはまた議論の蒸し返しになる可能性があるので、効率的とは思われない。今までの議論の中でも、意見が対立しているにせよ、何が対立しているか、何が問題なのかということを幅広く国民に分かってもらう必要があるというものはあると思われるので、そういうものを中心に、細かい括りではなく、ある程度大きな議論として分かる括りで括った上で、事務局の方で整理をしてやっていけという御趣旨か。そういうことであるならば、ある程度考えさせていただく。ただし、事務局は何らかのヒント、ある程度のニュアンスを出していただかないとなかなかやりずらい。今回で意見出し漏れだから後で取り上げないということは決してないので、ある程度ヒントとなるものを御議論いただきたいという趣旨である。その上で、事務局で申し上げたような資料をまとめた上で、議論していくという御趣旨であれば、そういう方向で考えさせていただきたいと思う。

○今のような趣旨であれば、大きな意味での議論をした上で、後はある意味ではかなり細かい点も含めて明らかになっているものを一定の大局的観点で整理していただくことは誰も事務局主導などと非難しないということはおそらく意見が一致している。そういう前提として議論されるのであれば結構だ。要するに、そういう意味で取り上げるべきかどうかについて、ここで多少ブレイン・ストーミングをして、少なくともそこで出たような論点については、どの考え方とどの考え方について論点があったのかということについて次回なりに整理していただいて、そこで取り上げるかどうかも含めて、もう少し突っ込んだ議論ができれば非常に効率的ではないかと思う。

○元々の検討会の趣旨からして、国民がアクセスしやすい、国民が利用しやすいということからすると、いわゆる門前払い構造をなくすということになると理解している。本案審理に入らないときの理由に、類型が違うとか、裁量の問題だからダメだとか、あるいは原告適格の問題でダメだとか、訴えの利益がないとか、いくつかある。アクセスということを考えたときに、そこに関係するようなことについて、あくまでも門前払い構造をなくすということからすると、どれとどれをまず考えなければいけないのかということについて議論していただきたい。

□それは自分の理解では2つあると思う。つまり原告適格、出訴期間等の門前払いにするのは厳しすぎるのではないかという個別の問題がある。それから何も分からないで裁判所に来た人に、実はあなたの訴えはこういうふうにやればうまく行くとか、あなたの訴えはとにかく受け止めて、こちらの方で審理できるように綺麗に整理しようとか、そういった意味でのアクセスの便利さ、2つの問題があって、それぞれについて今まで御指摘もあったところだと思う。アクセスの重要性というのは委員から常に御指摘があるので、非常に重要な論点だと思っている。

○いわゆる門前払いにになぜなるかということを考えると、たとえば、出訴期間が切れている、正しい行政庁を被告にしなかった、それから訴えの利益が早期に消滅してしまうなど、諸々の原因がある。その中で、たとえば、今回被告を行政主体にし、出訴期間も見直し、あるいは出訴期間があるという教示をし、仮の救済制度としてたとえば執行停止を使いやすくして、訴えの利益について意味がある期間を長くすることは、みなアクセスの拡大に繋がっている。議論としては原告適格を広げようという議論もあると思う。ただ何が効率がいいかというのは全体の仕組みの問題であり、今のような整備をした上で、あとさらにどこが必要かという議論をする方が効率的かと思う。ある程度固まりつつあるところ、一致するところを固めつつ、後は何が足りないかという目配りをしながら、建設的な意見を出し合えばいいのではないか。

□今の指摘は、こういった視点を忘れるなということであり、それを具体的にどういう形で取り上げていくかはいろいろ考え方があるが、重要なポイントだと受け止めている。

○門前払い構造の点で、あと一つはゾーニング型とか計画型の行政決定をどうやって訴訟に乗せるかという点が重要な論点としてあると思う。ただ、これを議論していると、そういうものを対象にする訴訟は今の取消訴訟の考え方とは違うのかということになってきて、取消訴訟についてのコンセプトを変えないといけないということになるかもしれない。この対象の広がりの問題を全然論じないということになると、これまでの何十年の議論に照らして、一体この検討会は何だったのかということで、フラストレーションを増やすだけではないか。
 もう一つは間口を入った後どこまで奥に行けるのかという点で、従来の議論との関係で義務付け訴訟の問題というのは是非、議論していただきたい。現在の行訴法の3条の書き方から出発して、長い間に堅苦しい殻ができてしまっているので、その殻から脱皮して、成長するには条文に手を付けることは必要で、この検討会としても、そういう意味で行政事件訴訟法の条文にどういう変更が可能かという形で議論していくべきである。
 さらに、行政訴訟の類型と言った場合に、諸類型の中で取消訴訟に特別な地位を与える今の仕組みがいいのかどうかという点は、しかるべきタイミングでこの検討会として何か発信、提案しなければいけないとすると、行訴法をこういうふうに変えたらというところまでは果たして行けるのかという気がこのごろしてきた。それにしても、取消訴訟の排他性ないし出訴期間付きの取消訴訟の利用強制という今の仕組みをどう評価するかということはもちろん、なお議論していく必要があると思う。できれば、検討会として何らかの考え方は出すべきではないか。
 それに対して、原告適格の問題というのは、今の条文をどう取り替えたらという点からすると、非常に先行きの見えにくい話しで、どういうふうに進めていったらいいかよくわからない。自分としては、裏から、団体訴訟の問題について何か具体的な提案をし、それが視野を広げてみれば原告適格問題そのものについても何らかのメッセージになるというのも一つの方向だと思っている。ただ、これは議論の先取りをしているのかもしれない。
 もう一つは、行訴法の30条の裁量処分の審査のあり方についての現行法の条文は、是非、変更の方向で考えていただきたい。

○一番大事な議論は、今の行政訴訟制度、つまり抗告訴訟制度というのがこのままでいいのかどうかという点を根本的に考えなければならないのではないか。これは、いわゆる取消訴訟中心主義、あるいは公定力といったものをどう考えるかということである。とりわけ民事訴訟との関係においても、民事訴訟でも行政訴訟でもそれぞれの要件に当たるのであれば、その要件で訴えができるというのが当たり前のことであって、こちらがやれるからこちらがやれないというのは制度としてもおかしいし、そういった形で整理すべきだと申し上げているが、そこを変えるのか変えないのかということは委員の方々の御意見を基に結論を出していかざるを得ないのではないかと思う。私は申し上げたような意見を持っているが、たとえばそれが私1人の意見で、他の委員の方が全然それに賛成でないと言われたら、それはそれで仕方がない。この検討会の結論としてはそうなるが、逆もあるかもしれない。だから、そこをまず議論してもらいたい。

○私が議論していただきたいと思うのは、資料6の意見の概要の目次で言うと、第3(取消訴訟について)のところである。後は、気になるのは第5の仮の救済であり、仮の救済は本案訴訟に付随する形で存在するものだが、その手当てがきちんとできないと、たとえば義務付け訴訟というものを認めるということについも、義務付け訴訟の実効性が発揮できないということになるので、仮の救済は是非、議論をしていただきたい。ただこの仮の救済の問題はかなり技術的な問題であり、今回で細目を全部詰め切れるかという問題はある。ここでは大雑把な方向を出していただいて、何らかの形で作業グループを作って、技術的な詰めをするという体制を作った方がいいのではないかと思う。

□仮の救済については、事務局の整理では第1トラックであり、次回に資料ができていると思う。

○今指摘された論点なり、方向性は全部賛成である。補足的に申し上げれば、排他性の問題はやはりこの検討会として何らかの結論は出さないといけない。象徴的なのは大阪空港判決のような事例であり、航空行政権という得体の知れない概念が出てきて、民事訴訟のほとんどの可能性が閉ざされるというような判決は書けないような条文を少なくとも作る必要があるというところは、排他性についての非常に重要な論点ではないか。概念として申し上げれば、たとえば建築確認と民事の差し止め訴訟は併存するから、これと空港の設置はパラレルだと思う。飛行機を飛ばしていいという免許があるからといって、騒音を出してもいいということにはならないというふうに考えればいいわけであり、何らかの意味での航空行政権の排他性なり、公定力というのは、その行為自体の覆滅を目指すような別の手段を用いることはできないというような内容のことを確認的にでも書けば、過度の運用拡張は随分防げるのではないか。技術的な議論なので、詳細には申し上げないが、いずれにせよ大阪空港判決のような形にならないような排他性の縮減というのは是非とも検討会として結論を出していただきたい。
 出訴期間については、2段階ないし長短、少なくともバリエーションが必要だと考えている。教示はもちろん重要だが、出訴期間で、たとえば相手方と行政庁との間の関係だけであれば、資料の散逸に着目して長めでいいし、第三者や多数当事者に関わるような領域では短めの方がいい。何ヶ月、何年にするかはともかくとして、バリエーションを設けた上で、最短については3ヶ月ではなくて、6ヶ月とか10ヶ月とか、もうちょっと長めにしておかないときついという点についても是非議論の上、決していただきたい。
 裁量についても、30条の規定をあのまま残すことについては問題が多いというのは御指摘があったとおりで、できるだけ立法による裁量の統制という形が全うできるように何らかの客観的な基準、客観的な行政の取り組み姿勢について、事後審査になじみやすいような基準を書く努力をしていった方がいいのではないかと思う。
 違法の確認、義務付け、差止めなど、いわゆる無名抗告訴訟の領域に入るようなものについて、どのような要件の下に使えるのかということをきっちり書いておいて、運用上問題がないようにしておくということも重要だと思う。また、計画とか、環境について、何という訴訟類型で争うかどうかはともかくとして、何らかの形で統制ができないのはおかしいということも是非取り上げていただきたい。
 通達や行政指導についても、熟度は低いけれども何らかの形で争えるという手段の対象として検討していただきたい。
 原告適格については、最高裁の法律上保護された利益説は、極めて狭い運用になっていると思われるので、これについても基本的には拡大し、その行為がもたらす具体的な権利侵害なり苦痛なりに応じてということを条文上明らかにできれば、ということも課題にしていただければと考えている。
 仮の救済については、迅速に、明日執行されるかもしれないというものについて、止めうる機会を与えるような制度でないと、本当の救済にならない。仮の救済の仮というのはないが、何らかの意味で早い決断ができるというような制度は、是非検討が必要ではないか。併せて、内閣総理大臣の異議についても、自治体が被告の訴訟でも内閣総理大臣が常に差止めができるというのはやはり異様な制度であり、これを廃止した上で、たとえば執行停止については行政の方できちんとした抗告の制度を整備するといった代替措置を講じることも、是非考えていただきたい。
 さらに事情判決も、たとえば選挙無効で使われるというような、本来、制度が想定していない異常な適用例がなぜか最高裁でも確定しているので、代償措置のないような事情判決は本来書いてはいけないという当たり前のことももう少し条文上手当てできないだろうか。
 印紙代、片面的敗訴者負担、報奨金という負担の軽減になるような措置も、どこまで取り入れるかはともかく、是非議論いただければと思う。
 最後に、客観訴訟ないし規範統制訴訟としては、納税者訴訟のようなものをやってはどうかと考えているが、これも納税者に留まらず、計画とか環境とか適法性確保訴訟のような類型について、必要性が強いと認識されるに至っているようなものについては検討してはどうかと思う。さし当たり以上である。

○基本的に、使いやすさ、実効性という観点から行くと、国民の目から見たら、アクセス、入り口でどうか、それから実際のプロセスでどうか、それからコスト的にどうかという一つの大きな軸があると思う。
 入り口については、原告適格や類型の問題が非常に大きな問題だと思う。結果的に今回どうするのかという整理がいるのではないか。
 もう一つはプロセスの問題で、これが実は入り口以上に、結果として、国民には心理的に、プロセスが非常に硬直的で時間が掛かるなどの意味で使いにくい、あるいは実効性がどうもないのではないかという印象を持たせている可能性もある。そこら辺りに手当てが今回できるか、あるいは既に議論されていることをそういう目で見たときに結果としてどうなるのか。そういう意味では、司法裁量がどこまであり得るのか、その意味で仮の救済が一種の司法裁量に近いのではないか。そういう観点に立てば、もっとしなやかな司法プロセスが取れるのではないか、という感じがしており、是非そういう目で仮の救済をもう少し技術的にうまく組み立てられないか。しなやかなさという意味では適法性のコントロール、予防的措置をどこで仕組みとしてできるかという辺りがもう少しあってもいいのではないかという感じがしている。いずれにしてもその辺のしなやかさ、迅速さはおそらく裁判の判決、あるいは裁判所、あるいは裁判の判決の持つ信用の問題とそれからリスク回避、それに対するおそれのためのリスク回避など、いろいろ微妙なところで司法を縛っているかと思うが、そのバランスを考えて、プロセスのしなやかさをどういう形で担保しうるのかというのは気になっている。
 もう1点は、訴訟遂行能力の問題であり、個人で組織に対抗できるかという観点から、団体訴訟的なものがあってもいいのではないか。団体訴訟が原告適格、類型だけの問題ではなく、訴訟遂行能力のパワーアップという意味であってもいいという感じがしている。

○パブリックコメントにかけるという意味で言うと、行政訴訟に対して国民がどういうふうに見ており、それに対してこの検討会がどう答えていくのかという視点にもなると思うので、第1回のパブリックコメントで出ている論点について、この検討会で検討した中身については、第2トラックで、意見の違いはあるとしても、しっかり検討して、意見の分布、結論があったというところは出していくべきではないか。皆さんが出した大体の論点は、ほぼそういう点で賛成である。比較的パブリックコメントでは費用などの面についても関心を持っている方がかなりおられるので、今後もし余裕があればこの辺についてもやって、検討会としてのパブリックコメントを出すことが必要だと思っている。

○およそ重要だと一般に言われているものは全て挙げられたのではないか。ただ、論理的な関係でポツポツとやれない話が多々ある。特に民事訴訟との関係、取消訴訟の排他性の問題について、訴訟類型を包括するというようなことを考えたときに、現行法では処分でないものについても統制をする、あるいは是正のための訴訟手続を設けていくという手段をとる前提としては、民事訴訟と取消訴訟との関係についての議論はどこか早い時期にすべきで、委員に予備的主張があるならばそれも是非聞かせていただきたい。私自身は、今抜けている救済類型を法案化する方がいいと思っており、その順序は事務局にお任せするが、機械的に前の方からというのではなく、最初にある程度ここで大きく分かれるかなというところを早い時期にやった方がいいと思う。

○今までの改革論議に手が付く前に、権利の実効性確保に何が有益かという議論としてしきりにされていたのは、無名抗告訴訟をもっと使おう、制度があるのにほとんど使っていないではないか、という指摘である。もう少し要件がきちっと皆で合意できてていけば、かなり使えるのかなと思いつつも、非常に茫漠としているので、なかなか使えなかった。もし権利の侵害を受けた者の救済の実効的な保障というものに何か使えるかということを考えるとしたら、まずそこをどう整備していくか、というところに頭が行く。それで出来るのかどうか、要件ができるのかどうかというところはまだ全然わからないが、割合今までの議論があるなので、手を付けやすく、かつうまくいけば実効的な保障というのに役立つのではないかと思わる。実現できる見込みがありそうなこの辺からやってはどうかという提言をしたい。

□今日で締め切るわけではないが、皆様方の御意見を伺っていると、大体事務局でも整理できるのではないかと思った。

■次回に全てというわけにはいかないので、論理的な順序ということも勘案しつつ、できるだけ効率的に議論ができるように順序を追ってやっていきたい。

□第2トラックとして、どの点をちきんと取り上げようという整理はできるのではないかと思った。後は事務局の方でどこまで準備ができるかということだと思う。

【被告適格者の見直しについて】

■被告適格を有する者の見直しについては資料が2つあり、資料2−1は見直しの具体的な内容を簡潔に記載するとともに、見直しに関連して派生する問題の項目だけを拾い上げたものであり、資料2−2は関連して派生する問題について、行政事件訴訟法の条文に必然的に影響が出る可能性がある条文について、論理上どういう見直しが必要となる可能性があるかを検討した資料である。
 資料2−1で、見直しの具体的な内容は「取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならないものとする」ということである。この点については先ほど委員から御意見があり、事務の帰属するという形がよいのか、その行政庁、行政機関が帰属する国又は公共団体の方がよろしいのか、そこはさらに検討しなければならない問題であり、そうした解釈の幅、文言が適切かという点についてはさらに検討が必要と思われる。なお補足として申し上げると、行政機関が帰属するという形にした場合に、仮にかつてあった機関委任事務のようなものがある場合には、国の事務であっても、処分した行政庁の帰属する地方公共団体が被告になるということになると思うが、そうなるとこれまでの整理とは異なった結論になるので、そのどちらがよいかという判断を要することになる。
 関連して派生する問題のうち、行政事件訴訟法の条文については資料2−2の方に譲り、資料2−1では「その他の法律で、検討が必要と思われるもの」について若干御説明する。(1)「行政不服審査法の規定の整備の要否」については、被告適格を有する者を見直した場合に論理必然的に生ずる問題ということでは必ずしもないが、被告適格を有する者を見直すことによって、かえって行政不服審査法との関係で誤りを誘発することにはならないだろうかという観点から、この見直しについての必要性の御意見もあった。これに対しては先ほど御指摘のあったところで、行政不服審査法は処分をした処分庁に対する異議申立てと上級庁に対する審査請求を相手方によって区別をしているので、そうした構造上の問題もあり、被告適格ほど簡単な問題ではないのではないか。
 行政庁を当事者とする訴訟というような文言が、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の規定にあるので、これにどういう影響が及ぶかは検討が必要になろうかと思う。
 その他、先ほど御指摘があったが、個別法で特定の行政庁を被告として定めている法令がある。一例を挙げると、たとえば、特許法の179条では特許庁がした決定等に対して、判断をしたのは特許庁だが被告としては特許庁長官を被告とするといった制度があるし、海難審判法54条でも、高等海難審判庁がした判断に対して被告としては高等海難審判庁長官を被告とすると個別に定めている例がある。これらをどのように扱うか、わざわざ別の行政庁を定めている趣旨からして、どういう見直しがいるのかいらないのかといったところは個別の法律の趣旨に関わって検討が必要であろうと思われる。
 最後に記載しているのは、訴訟手続上、処分をした、あるいは処分をすべきものとされる行政庁を特定するための方策を講ずる必要はないか、という点である。これは、処分庁自体の特定の必要性が審理の上であるかないかという問題もあるし、別の観点からいうと、審理の対象と考えられるような処分自体を特定する要素として、関係した行政庁、処分をした行政庁はどうかということが問題になることもあると思う。そういった観点から、何かしら方策が必要なのか、必要でないのかも問題になるのではないかということを挙げている。
 資料2−2は、被告適格を有する者を見直した場合に論理的に影響が及びそうな条文はどのようなものがあるかについて検討をしたものである。たとえば、被告適格を有する者について定める11条の現行法の規定では、1項のただし書に、処分、裁決をした後にその権限が他の行政庁に移った場合に誰を被告とすべきかという問題が、11条2項では、処分または裁決をした行政庁が後になくなってしまったときには誰を被告にしたらいいのかという問題があるが、被告適格者を事務の帰属する国又は公共団体にするのであれば、こういった点については条文上の手当てはいらなくなるのではないかということで、一応の考え方を示している。この資料では、一つの論理を辿っていくと、何らかの改正が必要になりそうだなと思われるところについては二重線のアンダーラインを引いている。
 それから、先ほどの御意見の中でも御指摘があったが、国や地方公共団体以外に被告となるものがどういう範囲かについては、独立行政法人など様々なものがあり得る。これについては、現在でも、処分をする「行政庁」の解釈として議論されており、判例もある。それと同じような考え方を辿っていくのではないかということで記載している。
 なお、この資料は、論理的な必然性に重点に置いて検討したもので、それだけのものでしかなく、別途の観点から、この際、条文を別の角度から見直すべきだといったことも御意見としてはあろうかと思う。その場合にはその旨の御意見を是非いただきたい。また、論理上から見ても、ここは検討が足りないではないかとか、こうも考えられるではないかという点も、お気づきのところがあれば是非御指摘をいただきたい。
 事務局としてもなかなか難しいと思っている点を1、2点挙げさせていただくと、資料2−2の4頁から5頁にかけて、15条の関係を挙げている。被告を誤った訴えの救済のところであるが、これについては、民事訴訟の原則と異なって、行政庁という一機関を被告とする制度を置いたがための、複雑なものに対応した規定だと考えると、被告適格を有する者を改めると、こういった救済は必ずしも必要ではないのではないかという考え方も成り立つところであるし、他方で、これが出訴期間の制約があるがために救済をしてあげようという制度だというところに重きを置くと、やはり救済の必要があるのではないかという考え方も成り立つところで、それをどういったところで調和を取っていくかについては、教示の制度の関係も含めて、全体的な制度の必要性をもう一度吟味する必要があるのではないかと思っている。
 また、資料2−2の8頁で、判決の拘束力、33条の関係を記載している。これは一応の手当てが必要ではないかということで記載をしているが、そもそもこの判決の拘束力が一般に民事訴訟で言われている判決の既判力と、どう違うのかといった辺りから見解が分かれ得るところだろうと思う。そうしたことも含め、行政庁単位で拘束力を及ぼすのか、あるいは国又は公共団体といった行政主体単位で拘束力を及ぼす方がいいのか、この辺は単に論理的な問題だけでは決まらない面があり、さらに検討を要するところである。
 先ほど御指摘があった民衆訴訟あるいは機関訴訟の場合にどう規定を整備するかということも一応記載をしてあるが、民衆訴訟の場合には地方自治法で、あえて被告を行政機関として定めている例があり、これについて、個別法でそうしているものを今回の見直しの際にどちらに寄せて考えるべきかということは別途の検討が必要であろう。機関訴訟は本来、機関と機関の争いですので、それを行政主体という形で統一するのが良いのか悪いのか、ここもなかなか判断を要する問題ではないかと思う。

□今のところについては、先ほどの御指摘で言えば、アクセスの容易さの視点に立って、その一部分を抜き書きしていると理解していただければと思う。

○議論の大前提として、行政訴訟の全てに被告を行政主体で統一するという方向を出すのか、そうでなくて個別法の具合を見ながら、個別法の立法者に任せていくのか、それは大きく違って、後者であれば行政事件訴訟法は両方に対応できるように訴訟法を作っていかなければいけないから、かなり大きな仕組みの違いになってくる。早期に、どうするのか、どうできるのかも含めて検討しておく必要があるのではないか。

○行政主体に被告を改める場合に、個別実体法の中で処分権限は今は行政庁が保有するように書いてあるが、そこはそのままにするという前提の議論か。

■資料は、行政庁が処分をするといった構造は変えないで、単に訴訟の場面において被告と名指しするものを国又は公共団体とするとしたら、その関係で最低限手当てがいるかという範囲の検討をしたものである。

○この議論の出発点は、原告に被告を特定する紛らわしさの負担を強いるべきではないというところであるから、実はかえってややこしくなるかもしれないという可能性がないか心配である。たとえば、農林水産大臣から何らかの許認可を受け、それを争うときに農林水産大臣を被告と書いてはいけないということにし、あえて国と書かないといけないとすると、処分庁ではなく、これは国か、公団か、公共団体かということを忖度して書かないといけないということになるとしたら、かえってややこしい。特に名宛人に関する限りはむしろ処分庁そのものを訴えた方がかえって楽だということがある。被告の紛らわしさに関する間違いを防ぐということに立つと、かえって原告が選ばないといけなくなるという事態が発生するのは避けた方がいいのではないか。

■被告を誰にするかということと、その表示をどういうふうにするかということは、その表示を国を被告としたものと認めるという方法もあるので、どこまで受け付ける裁判所の方でサービスをするかということで対応できる問題でもあろうかと思う。被告がそもそも違うということになると、手続上複雑になるので、被告は一つとした上で、後はその表示方法をどうしたらいいかという御提案だというふうに受け止めて、その辺どんな工夫ができるか、どんなサービスができるか、当事者の使いやすさという観点から検討していきたい。

○まったくおっしゃるとおりで、表示上、被告が国になったとしても、表示が行政庁であったときに無下に蹴飛ばすということではなく、そういうのは当然に適法にしてあげるという配慮を是非していただきたい。

○そうすると、裁判所が今言われている行政庁がどこに帰属するのかを探さないといけないことになるのか。相手方を特定するのは、今の当事者訴訟構造の中では、本来的には原告が負っているのだという前提をとって、違ったときの救済をどうしてあげるかという視点で考えさせていただかないと、そこだけバランスが悪くなるのではないか。
 事務の帰属する国又は公共団体の解釈で、現在では権限の移動があったときによく問題になることがあり、それをどうするかという問題で、「帰属する」という意味は現行と同じように現に帰属すると理解すればよいか。

■そういう趣旨で記載している。

○3頁の土地管轄の関係で、「裁決をした行政庁の所在地」にできるとして、「した」というところがあるので、そこで少しずれが出てきてしまうようなので、後で御説明いただければそれはいい。
 それから、建築基準法の77条の25というところで、指定検査機関が建築確認をするとなっていて、この建築確認については、一応審査請求ができ、訴訟もできるという構造になっていると思う。ところが、この指定検査機関は必ずしも法人でなくてもいいようで、そういうことを念頭に置くと、「団体」という言葉でも引っ掛かってこないものがあるかもしれないので、その辺りは検討していただき、団体以外のいわゆるみなし公務員の行う処分のようなものが拾えるような形で整理することは必要だと思う。

○被告そのものも地方分権で事務が移るので、国側の事務としてやった処分が訴訟のときには県の事務に移っていることがあり得る。それも含めて条文を考えていただく必要がある。
 行政主体、法人を丸ごと被告とするというのであれば、アイデアとしては今の原処分主義をやめてしまうということもあり得る。処分と裁決は大体同じ法人の中でされるということであれば、ひっくるめて訴訟の対象にすることもあり得ると思うが、そうすると、裁決固有の瑕疵で原処分取消しということになるのかなど、いろいろ問題が出てきてしまう。利用する側からすれば、そんな細かいところで勝ち負けを決めるよりは、対象となる処分の記載を間違えたために勝てないというようなことはまずいので、検討に値する問題ではないかと思う。

○懸念されるのは、今いわれたように、裁決と原処分という区分けが今は被告が違うということでしっかり仕切られているが、被告が同じ主体に入ってくると、それは同じではないかという話が出てくる。救済の方法としては、くっ付けてもいいではないかというのは一つの考え方としてあると思うが、一方で、訴訟はできるだけ迅速に判断しなさいということになると、対象は本当の不満があるところに絞られている必要があり、余分なものは見ないという形でないと、迅速化の方では非常に障害になるはずだ。連続的なものは区別せず1個でやっていいとか、裁決と原処分とが全部出てくればみんな審理の対象にするとか、そこら辺はそんなにルーズにすべきでないし、マイナスの面もよく考える必要があると思う。処分を単位に考えるという構造は基本的には維持して、その範囲でどのように拡大をすべきかという議論として仕組んでいただきたい。

□技術的な問題は事務局で法制的な検討を進めてもらい、行政官庁の意見あるいは国民皆様の御意見を聞いた上で、特に個別法に関わる点については所管庁の意向も聞きながら、検討していただきたい。それは検討会にも適宜報告をしていただくという格好になろうかと思う。

○資料2−2の5頁にも指摘があるが、被告を誤った訴えの救済は、今までの判例上大変厳しいと認識しており、今度、行政庁と行政主体の間で何らかのミスが増えるかもしれないので、15条の救済の可能性が今の程度だとすると狭すぎるのではないか。15条自体をある程度見直して、多少選択の余地が広がったことに伴う救済手段として、誤った場合についてもできるだけ救済しやすいように手当てをした方がよいと思う。

○誰を訴えるかについていろいろな規定が個別法に定められているが、これは今の行政事件訴訟法が行政庁を被告とすることを前提として作られているのだから、根本的な制度を変えるときに個別法でこれだけはどうしても行政庁を被告としてもらわないと困るのだというケースはまずないと思う。個別法も当然それにならって、主体に変えてもらうということでいいのではないか。むしろ国に変えれば、今まで個別法でどこを訴えるか、高等海難審判所長か、高等海難審判所かという議論はなくなるので、個別法の手当てが要らなくなるのではないかと思う。そういう個別法のことも含めて当然変えるという前提で考えていってほしい。

○自分も、行訴法で主体が被告になれば、個別法の行政庁を前提とする訴え提起に関する規定は全部関連整備で一斉に変わると思っていた。ただ客観訴訟は別である。民衆訴訟や機関訴訟というところは一つ一つ手作りのところがあり、住民訴訟もいわば自己完結的な手続になっているので、主体を被告としないという選択肢をどうしても取りたいという要請があれば、それはそれで分かるが、一般の抗告訴訟については全部自動的に関連整備として変えられてしまい、どうしてもある処分についてはこうしたいということがあれば、それは自分のところで手続法を作ってください、ということになるだけではないか。

○15条の問題だが、たとえば、嫡出否認の訴え、認知の訴え、取締役会決議議議決取消しの訴えなどはみな出訴期間はあるが、出訴期間の救済の規定は特には設けられておらず、民訴一般原則だけである。それと比べて、改正後の行訴の出訴期間の働きがどうかということは一応検討する必要があると思う。たしかに行政主体を書くべきときに行政庁と今までどおりに表示してしまい、何らかの救済をする必要があるというレベルでは、何らかの救済をする必要があると思うが、出訴期間の面で今までの他の法規、民事関係法規と比べて、行政の方が今度は特異性を持つのだろうかということは、一応根本的なところから考えて議論した方がいいのではないか。ここでそこまで詰めて議論できるかどうかは別である。

□ある程度こちらの方のスタンスを明確にしておいた方がいいのかと思う。つまり、自分もこれは整備法の話と思っていた。整備法もないので今までどおりだと思われるとかえって困るので、そのニュアンスは少し明確に出すようにした方がいいのではないかと思う。

○方向性はいいと思う。ただ地方自治法を考えてみると、機関が被告になった場合に、たとえば相反のときに相反者を排除する規定など諸々あるので、その辺りは大きくいじることになって、各省庁大変なのではないか。それがばらばらの制度を持っていると余計混乱するので、できるなら全部統一していければと思う。

【管轄の拡大について】

■資料3「管轄の拡大についての主な論点」に現行の条文を記載しており、現在は「行政庁を被告とする取消訴訟は、その行政庁の所在地の裁判所の管轄に属する」ことを原則とした上で、2項、3項で例外規定を設けている。2項では「不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる」とし、3項はさらに「事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる」とこれもまたプラスアルファの規定を置いている。
 1については、被告適格を行政庁から国又は公共団体と改めた場合に現行法の管轄の範囲を少なくとも狭めるようなことはしてはいけないのではないかという御意見は既にいただいており、最低限それに見合った手当ては必要だろうということで、その範囲内だけで変えることになった場合には(1)、(2)と書いてあるような2つぐらいの方向がある。ただここで管轄の問題として議論していただくべきところは、現行の規定よりも管轄の範囲を拡大すべきだとして、その場合にどの範囲でさらにどのように拡大すべきかというところである。なお、被告適格を見直した場合に伴う管轄の見直しの条文的な表現について、先ほど御指摘のあった、現に事務の帰属するというところと平仄が合っていないのではないかというところについては、もう少し事務局の方で検討させていただきたい。
 2の土地管轄を拡大する範囲については、いくつかの考え方を提示していただいているが、(1)と(2)の2つの考え方に大別できるのではないか。(1)は原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができることとする考え方、すなわち個人の場合ですと原告の住所地を管轄している高裁単位で考え、全国を8つのブロックに分けて、高等裁判所の管轄の範囲内で管轄を拡大しようというものである。(2)は原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができることとする考え方で、個人の場合であれば、原告の住所地を管轄する地裁にも訴えを起こせるようにプラスアルファの管轄を考えたらどうかということである。管轄の拡大について御検討いただく際には、最高裁から現在、原告の住所地で行われている事件と、そうではない事件について、どのようなデータになっているかの御紹介をいただき、また、その際に地理的に離れていることの不便さを解消するための一つの手立てとして、審理の仕方において電話会議システムやテレビ会議システムを実際に使っているという御紹介もあった。そういった実際の審理手続上の工夫というものも併せて、管轄の拡大についてはどのように考えるべきかをお考えいただきたい。
 3は、行政訴訟の場合には様々な被告があり得るが、被告を問わず一律に同じような拡大の仕方をしてよろしいかどうかという問題点である。2の(1)、(2)の高裁単位か、地裁単位かといういずれの考え方を取る場合にも、この問題は生ずるのではないか。ここでたとえばとして挙げているのは、被告が地方公共団体の場合はどうかということであり、原告が全国に支店を有していて、被告は地方公共団体で、被告の地方公共団体とは異なるところにその原告企業の本店があるという場合にどう考えるべきか。さらには、地方公共団体に限らず、独立行政法人、地方の住宅公社のようなところもございますけれども、こういった必ずしも全国に拠点を有しないような行政主体も被告になる可能性がある。こういったことについても、原告の住所地に寄せた管轄の拡大ということで同じように考えてよろしいのか、その場合に不都合がないのかどうか、というところも御検討いただきたい。
 4は移送の規定の要否であり、管轄を拡大した場合に何かしら民事訴訟と異なる移送の規定を設ける必要があるかどうか。民事訴訟法自体に既にいろいろな事件の審理の都合を考えたり、あるいは当事者間の公平を考えた移送の規定があるが、それで不十分な場合があるかどうかということである。最後に挙げているのは、管轄もものによっては拡大すべきではないという類型の事件というのはないかということである。個別法の問題になるが、例として挙げている中央労働委員会の救済命令取消訴訟については、行政事件訴訟法第12条第3項の適用を排除しており、下級行政機関が処理した場合の管轄を認めていない。これによって事件を東京に集中しているという事情があるので、こういった個別の配慮をしているものについてはどういった方向で考えるべきかという問題点もあるという指摘である。こういった点を中心にして御検討いただければと思う。

○最後にいわれたのは東京高裁か。

■地裁である。

○1(1)だが、民事訴訟法4条に定める裁判所のほか、ということだと、中央官庁の場合は東京になるのか。

■国が被告になる場合は東京となる。まず東京とした上でさらに実際に処分をした行政庁の所在地というやり方が(1)であり、(2)の方はまず被告の、国なら国の普通に認められる管轄である東京というのを考えないで、最初から行政庁の所在地ということで手当てをする。

○そうすると(1)は現在よりも原告の方からして不利になるのか。

■現在よりもオプションが増えるということである。

○たとえば、新潟の税務署長が被告になるべき事件があったとして、それは東京地裁に提起できるということになるが、そのときに行政庁側が適切な対応ができるのかどうかという問題はある。その辺は行政庁のヒアリングをやるべきことではないか。管轄の問題はたしかにうんと広くすれば、どこでも選べるという意味では原告には選択の幅が広がるということで有利だが、逆に被告の負担が増すという側面と常に表裏になっているので、その辺りは聞いてみる必要がある。

○今の話ももっともであるし、資料に書かれている地方公共団体の場合はどうかということも、確かにずっと別荘所在地の町村が所有者に対して税金を掛けている場合に、まず市町村が東京や大阪まで出てこなければならないようにするか、逆にするか、どっちが公平かという話で、問題があると思う。
 現行で東京高裁の専属管轄になっているものはここの話から外れていると考えてよろしいのか。

■基本的な管轄だけを定めている場合であれば、ここで管轄が付加される場合には加わる場合があると思う。管轄が完全に集中している規定の場合にはその規定ぶりによっては広がらないということになる。それは個別の規定を見てみないと何とも申し上げられない。

○12条3項の、事案の処理に当たった下級行政機関も当然に残すという選択肢もあると思うが、このペーパーではそれは選択肢から外れているようだが。

■説明が不十分だったが、12条の2項、3項については基本的に残す前提で、1項に関係する手当てだけで、今の管轄よりもプラスアルファする方向しか記載していない。

○全部これは1項がらみの議論で、2項、3項には影響しないという理解でよろしいか。

■2項、3項には影響しないであろうという前提で記載している。

○1の(1)、(2)はどちらでもいいと思う。特に意見はない。どうしても東京地裁でやりたいという人がいれば、そこでやるようにする。
 2は、(2)でやっていただきたいと思うが、少なくともどちらかは採用すべきである。(1)も(2)も採用しないということは困る。今回の改革で拡大したということがないといけないと思うので、どちらかを採用してもらいたい。
 それから3の地方公共団体の場合、元々本店があって、支店で処分しているという場合には、被告の所在地と違う裁判所で起こすことも認めざるを得ず、その負担は被告が負うべきではないか。ところが、いわゆる行政決定があった後、原告が住所地を自分で変えた場合についてまで被告の負担にさせることは問題かなという気もするので、その辺りで整理したらどうか。
 5の関係では、必要性があるのであれば個別法で入れてもらわざるを得ないので、ここではあまり議論の対象ではないのではないか。

○事案によってはその行政庁の所在地よりも物的な案件の対象物の所在地の方が重要だということがあり、地方公共団体の場合もそれは両方あるわけで、法人の本社相手に地方公共団体が何か調査をして処分をしている場合であれば、それは地方公共団体が事業者の所在地でやっても別におかしくない。東京の業者が青森まで行って不法投棄をして、青森県が課徴金を取ろうというようなときだと、青森県が被告になり、わざわざ東京まで来て応訴しなければいけないのか、それはどうかということもあり、いろいろな案件を頭に浮かべた上で、どの辺が落ち着けるのか考える必要がある。

□今後の予定としては、国の行政官庁だけではなく、地方公共団体で訴訟担当をしている方に類する方にヒアリングをすることがあるとお考えいただきたい。

○2については、自分はかねてより(1)がいいと申し上げている。ユーザーフレンドリーということからすれば、原告の普通裁判籍所在地というのはよく分かるが、行政事件訴訟をやる裁判所の専門性を高めるということからすると、全国津々浦々の地方裁判所でやるよりはある程度の集約を図るという要請、専門の裁判官が的確・迅速なサービスを提供するという体制を制度として用意するという要請も非常に重要なので、両方を兼ね合わせている(1)がいいのではないか。
 5については、それぞれの極めて特殊な処分の取消訴訟の管轄を個別法でどうするかという話であり、ここであまり議論しても、だからやめようという話ではないし、管轄の大本のルールが変わるなら特則を設けてほしいという話は出てくると思う。しかしそれは今の段階で、どれほどどういうところから言ってくるか分からないし、まずはある程度の方向性、基本ルールとしてはこういうふうに変わるということを示した上で、各省庁の意見を聞いてみるということではないか。

○事務局で知的財産訴訟の検討がされていて、大阪と東京に集約するということだが、行政事件訴訟は視野に入っていないのか。

■知的財産事件にも行政事件はあるので、その関係の調整は必要になる。

○知的財産訴訟の専門性のあるものの扱いについては、効率性ということも検討されていると思う。行政事件一般があれだけ専門性があることではないにしても、かなり特殊な領域であることは間違いないので、全面的に一律に広げるということのマイナス面はかなりあると思う。特別の扱いをするということはあるのではないか。地方公共団体、あるいは独立行政法人を相手にする場合の議論も同じで、そこはよく所管省庁の実情を聴取した上で検討すべきだと思う。

○知財の関係と行政事件は違う。知財の中に行政事件が含まれており、その限りでは重なっているが、より大きく知財で集約化を図るという趣旨は、できるだけ迅速に集約化された専門的組織の裁判を受けないと諸外国に遅れを取るという、むしろ原告の利益でもある。ここで議論しているのは、大多数は行政にひどい目にあわされたと考えている零細な原告たる市民なり、企業の救済ということであり、知財のようなそもそも非常にプロフェッショナルライクな当事者しか紛争のゲームに参画してこないというものとは大分違い、集約した方がいいという意見には反対である。

○行政訴訟というのは専門性が必要だが、その必要性というのは医者の専門医と似ているところがあって、現実に臨床経験をどのくらい踏むかが非常に大事で、本だけ読んでもなかなか身につかない。そうするとどうしてもある程度の数が必要である。そういうことを考えていくと、全国全部というのはなかなか難しいのではないか。そういう意味で2の(2)はどうかという気がする。テレビ会議、電話会議といったITの活用をもっと積極的に進めていくことによって、双方向からアクセスが容易になっていくと思われるので、その辺りも是非検討材料にしていただきたい。

○全部の行政事件をそこに集めるというのであれば話は別だが、多数の事件は各地裁でやるわけで、その一部の事件だけをどうするかという話であるから、知財のケースとは違う。

○できるだけ専門性を高めた方がいいという観点では、ブロックの中心地に集めるというのは合理性はある。ただ、その場合には、実際上の審理のあり方として、常に高裁所在地に毎度、毎度出廷をしないと審理を受けられないということではなくて、できるだけテレビ審理なり、電子メール審理なりを通じて、便宜の図られた形で審理を受けられるということとセットでブロックの中心地で行うということには合理性があると思う。

○高裁所在地でやるとなった場合には、そこに来なくて済み、沖縄の方であれば、福岡高裁に行政側が出頭し、当事者は最寄りの裁判所が沖縄地裁であれば沖縄地裁に来ていただければできるので、そういう形でかなり推進できると思う。

□一番議論が分かれているのは、2の土地管轄を拡大する範囲のうちの(1)、(2)の選択の問題だ。この点はいろいろな角度からの意見を聞くということだと思う。

○土地管轄の拡大の(1)の案だが、一つの選択肢としては高裁の支部の所在地の地裁ということもあり得る。

【出訴期間等の教示について】

■資料4の1「教示義務の対象となる行為」で、対象となる処分等の行為の範囲について、どのように考えるべきかということで、たとえば書面でする行為に限定すべきか否かといった点を検討しなければいけないのではないか。この点、行政不服審査法第57条に教示の一般的な規定があり、「行政庁は、審査請求若しくは異議申立て又は他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を教示しなければならない。」とし、その後にただし書があり、「ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない」として、行政不服審査法の場合には口頭の処分の場合は除かれている。
 2は、教示の相手の範囲で、この点について、処分等の教示義務の対象となる行為の相手方、処分であれば処分の相手方だけに教示をすればよいということにすべきかということである。この点は、行政不服審査法57条は、1項において、「処分の相手方に対し」ということになっている。他方で57条2項では、「行政庁は利害関係人から教示を求められたときはその事項を教示しなければならない。」となっている。その点も御参考にしていただきたい。
 3は、「教示義務の内容」について、どのように考えるかということで、いくつか例示をしている。これ以外にももし教示すべきだと思われる事項があれば、挙げていただきたい。例示をしているのは、①取消訴訟を提起できる行為であること、②訴訟の場合に被告となるべきもの、③不服申立前置の定めが適用される場合はその旨、④出訴期間の定めが適用される場合はその期間、⑤訴えを提起することができる裁判所、こういったことは教示義務の内容としてふさわしいかどうか御議論いただくべきものの例示として挙げられるのではないか。
 4の「教示の効果」で、誤った教示をした場合や教示義務が定められているのに教示をしなかったという場合について、何らかの法的効果を定めるべきか否か。さらに、効果を考えるという場合であれば、教示が追完された場合、すなわちたとえば処分の際には本当にはその際に教示しなければいけなかったのだけれども、後で気が付いて、別の機会に教示をしたというような場合については、効果が違ってくることがあるかといった点。法的効果を定める場合にはどのような法的効果が考えられるだろうか、これは教示義務の内容によってもその効果はそれぞれ考えられるところと思うので、併せて御検討いただきたい。

○この問題は今までなかったところなので、どういうふうな位置付けになるのかを議論していただいた上で、導入していただきたい。特に教示の内容、間違った場合どういう効果があるのか、そのときにかえって混乱を招くのではないかという気がする。処分性があるのかということはいつも悩まされるところであり、そういう分野について全部あまねく教示をやらなければいけないというふうにしていると、間違えて出訴ができるか如くにやった例もあり、そういうことにもなりかねないので、あまり固くすると、かえって変な結果になるかもしれない。十分な議論をしていただいた上で導入していただきたい。
 行政庁にとっては今までやっていなかったことなので、負担にはなると思う。その負担とプラスのものとがどの程度でバランスが取れるのかということも今のことに関係すると思うので、行政庁の意見もいろいろと聞いていただきたい。

○今言われたことは逆だと思う。負担をしなければならないのは行政であって、一般国民にその負担をさせるのはおかしい。行政が間違えるのは論外なので、行政が間違えることがあり得るから問題だとか、負担になるからというのはちょっと。

○出訴期間は元々法律で決まっていて、たとえば嫡出否認の訴えは何日、取締役会の決議無効の取消しの訴えは何日以内ということは言わない。行政処分をするときにこのことを言うことにしようというのは、当然そうでなかったら国民が特別の負担を負うということには繋がっていないのではないか。誤ったりする人もいるので、さらにサービスを増して、出訴期間の徒過によって是正を求める機会を奪わないようになるべくしようということだと思う。普通の法律の比べればよりいっそうのサービスではないか。行政が負わないから、行政にそれを軽くするとそれが利用者である国民の方に増すという理屈にはならないのではないか。

○行政にとってそんなに負担ではないのではないか。典型的な処分であれば印刷しておけば済む話である。
 教示の相手は、いわゆる処分の相手方がはっきりしていない場合、一般処分のようなものの場合にどうするかだが、官報などで告示、公示する場合にはそこに書くべきではないか。名宛人がある場合で、第三者が訴えるときにどうするかというのは非常に悩ましい問題だ。

○処分の第三者の場合と一般処分の不特定多数の相手方の場合は、請求に基づいて教示をするというやり方しかないのではないか。官報に載せるというのは適切ではないと思う。
 難しいのは、むしろ1の教示義務の対象となる行為であり、取消訴訟の対象になるかどうかはっきりしないグレーゾーンの行為について、どのようにするかは悩ましい。請求に基づいてやるという仕組みを作った場合に教示をすると、行政の判断としては取消訴訟の対象性を認めるということになり、なかなかこれは難しい。グレーゾーンにある行為について教示を求めたところ、地方公共団体は不服申立てできないという教示をしたという話を聞いたことがある。確かにそういうふうにせざるを得ない場合も出てきかねない。それは好ましくないことなので、避けなければならないが、実際にはあり得ることも考えて、制度を作らないといけない。

○処分性があやふやな行為は結構あり、はっきりとしているのにも関わらず行政庁が認めていないという処分性の領域もある。教示する場合に客観的に処分だ、処分でないということに疑義がある、ないしは紛争がある行為について、正確な情報、最高裁で確定されるであろうとおりの情報を事前に提供するのはなかなか難しい。こういう場合は、たとえば最高裁判決があるものについてはこれはできると絶対言わないといけないとし、行政庁の独自の解釈は許さず、下級審段階で分かれているとか、疑義があるものについてはその旨の事実を教えてあげるなど、助かるかもしれないし、ダメかもしれないというものは正確にそういう状況が分かった方がよいのではないか。

■基本的には取消訴訟によらなければ不服を申し立てることができない処分については、取消訴訟によらなければ不服を申し立てることはできませんという意味を教示するのではないかと思う。不服を申し立てることはできませんという教示はできないのであって、つまり取消訴訟というのは排他性もあり、出訴期間もある、当事者に大きな不利益をもたらしていて、それなりに行政の、ある意味特権も与えているわけだから、それにはそれなりの教示を認めさせようということを考えるのではないかと思う。そうだとすると、教示の効果をどう考えるのかと言うと、取消訴訟によって行政側が受けているそういった利益とリンクさせていくか、自分が処分かどうか分からないのに、訴えが起こったら処分だと言って、出訴期間を主張していいのかとか、そういうところとどうリンクさせていくかというところはこれから議論する必要があるのではないかと考えている。自分が処分でないと思って、取消訴訟によらなければならないという教示をしていないのに、1年ぐらい経ってからやはり取消訴訟かと思って訴えたら、出訴期間はもう過ぎているというのでは、これで本当に行政はいいのかということである。

○教示しなかったものは後からそれは処分でなかったということにして、違法性の承継を前提として、後行行為で争わせるということか。

■具体的にどういう効力を持たせるかというのは一番難しい問題だから、効力というのはある意味で行政が持っている訴訟上の利益をいかに制限していくかというところから考えないといけないのではないかと思う。

○それはそのとおりだが、実際にファジーなものはあるので、そういうものをどうするか。

■後で取消訴訟が起こったときに、処分であったときに、それは出訴期間は経過しているといって判断していいのかということである。

○教示しなかったときにはそういう主張はさせないと。

■そういったことを考えないといけないのではないか。

○ファジーなものは教示義務はないということか。

■あると考えるべきではないか。

○出訴期間があると言ったものが正しければ、それは出訴期間の枠が生じるが、そういうことを一切言わなかった、あるいは教示しなかった場合には、後になって、出訴期間が徒過しているということを言えないことにすればいい。

□教示は基本的にはサービスだが、サービスが逆に被害を起こさないようにというところが一番大事である。この点につきましては、出訴期間について検討する際にも、併せて検討をしていただくことになると思う。

【行政の作為・不作為の給付を求める訴え、確認の訴えについて

■資料5は行政の作為の給付を求める訴え、不作為の給付を求める訴え、確認の訴えに関する主な論点を簡潔に記載した資料である。民事訴訟の判決は、その内容に応じて、給付判決、確認判決、形成判決に分類されるのが一般的であるが、給付判決に関連して、民法においては、第414条で、債務が作為を目的とするものか不作為を目的とするものかによって、その履行の強制の方法を違えている。このようなことから、この資料では、判決の形式を一つ念頭に置き、訴えを、行政の作為を求める訴え、不作為の給付を求める訴え、確認の訴えという形で分類した。行政の作為の給付を求める訴えについては、「義務付け訴訟」という言われ方もあるが、「義務付け訴訟」という言葉は多義的で、給付の訴えのみならず、行政庁が一定の処分をする義務があるということの確認を求める確認の訴えを含めて、行政庁の公権力の行使の発動を求める訴訟として「義務付け訴訟」を捉える立場もあるし、差止め訴訟というような形で言われる行政の不作為の給付を求める訴え、不作為義務の確認を求める訴えも不作為の義務付けであるとして、これらを含めて「義務付け訴訟」というように捉えるような立場もある。様々な考え方のあるところだが、この資料では、当面の分類として、作為の給付を求める訴え、不作為の給付を求める訴え、確認の訴えという形で、求める判決の形に応じて場合を分けている。
 ただし、確認の訴えについては、いわゆる義務付け訴訟や差止め訴訟という文脈で捉えられる確認の訴えに限らず、民事訴訟の確認の訴えとの関係も含めて、広く確認の形の判決による救済全般を対象として議論していただきたいという趣旨なので、確認の訴え一般という観点で御議論いただきたい。
 1(1)は、不作為による救済を求める訴えによる救済が必要とされるのはどのような場合かという点で、①から④として例を挙げている。①は、法令に基づく申請に対して行政庁が応答しないという場合に処分等を求める事例で、この場合には、現行法上は不作為の違法確認の訴えによる救済も考えられる場合である。②は申請に対する一部拒否処分があった場合、③は全部拒否処分の場合で、これらの場合は現行法では、拒否処分の取消訴訟を提起して救済を求めることが考えられる。②の場合は、③の場合と異なり、取消判決が下されると、申請が一部認められていた部分まで取り消されてしまうことになるのではないかという問題もある。④は、違法建築物の隣地居住者が行政庁に対して規制権限の発動を求める申請権を認めた規定がないという場合を前提として、違法建築をしている者に対して行政庁がその是正命令を発することを求めるという場合である。現行法上明示的に規定されている訴えでは、この事例に対応した訴えは想定し難い。これらの場合に作為の給付として行政庁が処分等をするように求める訴えを認めるべきか否かという点を含め、どのような場合に行政の作為の給付を求める訴えによる救済が必要と考えるべきか御議論いただきたい。この資料の別紙では、4頁の1で行政の作為の給付を求める訴えに関する裁判例を挙げており、網羅的に裁判例を挙げたものではなく、例示に過ぎないが、受刑者の処遇、公務員関係、租税関係、建築基準法や外国人の在留関係、土地区画整理、社会保障給付など、非常に多様な分野で、訴えが提起されている。適法な訴えと認められた例は少ないと言えるが、これらも参考にしていただきたい。
 次に、(2)は、この訴えと取消訴訟や不作為の違法確認の訴えとの関係をどのように考えるかという点である。これは、(1)とも関係するところであり、(1)の例示で挙げている①は不作為の違法確認の訴えによる救済が考えられる場合であるし、②・③は取消訴訟による救済が考えられる場合なので、これらの救済と行政の作為の給付を求める訴えによる救済との関係をどのように考えるかによって、作為の給付を求める訴えの適用範囲が異なってくると考えられる。この点に関しては、別紙の2として関連の裁判例を挙げている。別紙の2(1)では、処分の取消訴訟と併せて提起された作為の給付を求める訴えについては、取消訴訟による救済があり得ることを理由として、作為の給付を求める訴えについては訴えの利益がないとしたり、あるいは作為の給付を求めることができる例外的な場合に当たらないとされている例をいくつか挙げている。また、7頁の(3)では取消訴訟と併せて提起されたものではないけれども、取消訴訟による救済があり得るからという理由で作為・不作為の給付を求める訴えを不適法とした例を挙げている。取消訴訟と作為の給付を求める訴えの併存関係を認めたものは6頁の下から7頁にかけて(2)として挙げている一つの例しか調べた限りでは見つけることができなかった。これらも参考にしつつ、救済方法の間の適切な役割分担、これをどのように考えるか、その中で、取消訴訟中心主義といわれている考え方が過度に影響を及ぼしている部分がないか、こういった点についても御検討いただきたい。
 1頁の(3)「その他」は、行政の作為の給付を命ずる請求が認められるための要件をどのように考えるかという点、それから判決の効力・判決の執行についてはどのように考えるかという論点を挙げている。判決の執行については、これこれの処分をせよ、というような形で一定の作為を命ずる判決がされたが、行政側がこれに従わないという場合が有り得ないとはいえないのではないか、そういう場合にはどのようにしてその判決の内容を実現するのかという問題だが、そもそもそのような場合は想定する必要がないという考え方もあるかもしれない。
 行政の作為の給付を求める訴えが認められるための要件の点については、下級審の裁判例では3つの要件を満たす必要があるのではないかといわれることが多い。たとえば別紙の1で挙げている行政の作為の給付を求める訴えに関する裁判例のうち、比較的時期も新しく、高等裁判所の判断に至っている例で考えると、⑱が5頁の下の方にある。この事例では、行政の作為の給付を求める訴えの適法性の判断について、高裁では原審である地方裁判所の判断をそのまま引用しているので、大阪地裁平成2年4月26日判決の該当箇所をご紹介する。この判決では、「原告は、請求の趣旨2項において、被告に対し、原告が岸辺住宅にかかる簡易ガス事業を営むことの許可を求めている。しかしながら、本件のような義務付け訴訟は、裁判所が、行政庁に代わって自ら行政処分をすることとなるから、三権分立の制度上原則として許されないというべきであり、ただ行政庁が特定の処分をなすべきこと、又はなすべからざることが法律上羈束されていて裁量の余地がなく、しかも、第一次判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要でなく、さらに行政庁の行政処分を待っていたのでは多大の損害を被るおそれがあり、事前の救済の必要があるが、他に適当な救済方法がない場合に限って、極めて例外的に許されるものと解するのが相当である。」として、この事案では、簡易ガス事業の許可申請に対して、許可の基準を満たすか否かの判断に当たっては通商産業局長にある程度の裁量権が認められていることなどから、義務付け訴訟の許されるための要件のうち、行政庁が特定の行政処分をすべきこと、又はすべきでないことが法律上覊束されていて裁量の余地がなく、しかも、第一次判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要でないという要件を満たしていないということで、不適法とした事例である。
 このように、下級審の裁判例には、作為の給付を求める訴えが認められるのは例外的な場合であるということで、その訴えが適法になるための要件として、一つ目に、行政庁が特定の処分をなすべきこと又はなすべからざることについて法律上羈束されており、行政庁に自由裁量の余地が全く残されていないことなど、第一次判断権を行政庁に留保することが必ずしも重要でないこと、という要件が挙げられる。「明白性の要件」ということで言われることがあるが、これが必要であるとされる。二つ目としては、事前審査を認めないことによる損害が大きく、事前救済の必要性が顕著であるというような要件、これを「緊急性の要件」と言われることがあるが、これが2つ目として必要である。さらには、三つ目の要件として、他に適当な救済方法がないこと、これを「補充性の要件」というように言うことがあるが、これも必要である、とする場合が多いように思われる。資料の別紙の1(2)で作為の給付を求める訴えを不適法とした訴えを18挙げているが、これは概ね、この3つのうちのいずれかの要件を欠くというような形で、訴えを不適法であると判断した事例である。
 行政の作為の給付を求める訴えについて現行法上明示的な規定がないが、明示的な規定がない現行法の解釈として、下級審の裁判例が、そのような要件が必要であるとしており、そういう解釈論である。立法論として行政の作為の給付を求める訴えの要件を考える場合には、これらの判決の中でも出てきた、三権分立の観点、それから取消訴訟や不作為の違法確認の訴えといった現在明示的に法定されている訴えとの役割分担、さらには取消訴訟中心主義という考え方がどこまで強調されるべきなのか、あるいは強調されるべきではないのか、このような観点を含め、何らかの要件がいるのかいらないのか、いるとする場合どのような要件を設定すべきなのか、という辺り改めて検討していただく必要があるのではないか。
 次に資料2頁目の2は行政の不作為の給付を求める訴えである。(1)として、この訴えによる救済が必要とされるのはどのような場合かという点を挙げている。①から③として例を挙げているが、①は、懲戒処分あるいは場合によっては刑罰といった重大な不利益を受けることを防止する必要がある場合を考えている。②は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の効果が短期間に終了してしまうような場合、たとえばよい例かはわからないが、受刑者が懲罰処分を言い渡され、その執行が目前に迫っているのだけれども、懲罰処分の執行自体は長期間にわたるものではなくて、懲罰処分の取消訴訟を提起して、併せて執行停止を申し立てたとしても、執行停止が認められるまでの間に懲罰処分の執行が終ってしてしまうというような場合があるのではないか。このように取消訴訟による救済、併せて執行停止も含めて、そういった場合の救済が実効的に機能しない場面もあるのではないかというところである。
 ③は、一旦実施されると原状回復の不可能あるいは困難な行為の差止めを求める場合も検討に値するのではないかというところである。
 これらの場合に不作為の給付として行政庁が処分等をしないように求める訴えを認めるべきか否かという点を含め、どのような場合に行政の不作為の給付を求める訴えによる救済が必要と考えるべきか御議論いただきたい。この資料の別紙では、3として7頁の下から、行政の不作為の給付を求める訴えに関する裁判例を挙げている。これも網羅的に裁判例を挙げたものではないが、参考にしていただきたい。
 2頁に戻り、不作為の給付を求める訴えの2つ目の論点として(2)は、この訴えと取消訴訟との関係をどのように考えるかという点である。この点に関しては、別紙の2、7頁の真中の(3)で両者の関係について触れた裁判例を挙げている。(3)の②として挙げている古都保存協力税の関係の事例では、「法定抗告訴訟によって救済の実を挙げることのできない例外的な場合に当たらず、訴えを許容すべき場合に当たらないから、訴えの利益がない」という判断をしている。こうした例も参考にしつつ、救済方法の間の適切な役割分担をどのように考えるか、その中で、この訴えについても、取消訴訟中心主義といわれている考え方が過度に影響を及ぼしている部分がないのかどうか、こういった点についても御検討いただきたい。
 それから行政の不作為の給付を求める訴えの論点の(3)として、2頁の一番最後に、差止めの要件を規定すべきかという点を挙げている。下級審の裁判例では、先ほど作為の給付を求める訴えの適法要件としてあげられる3つの要件を御紹介したが、これとほぼ同じような要件を満たす必要があると判示している裁判例もある。たとえば、別紙の3で、比較的新しいものでいうと、8頁の上の方に(2)として5つ挙げているうちの一番最後⑤の東京地裁平成3年6月28日という判決があり、供託官に対し供託金の還付の差止めを求めた事例である。この判決では、次のように判示している。「行政庁に対し、一定の不作為を求める給付訴訟は、法律上第一次的判断権を有する行政機関の判断権を裁判所が代わって行使する結果となるから、三権分立の原則に反し、原則的には許されないというべきである。ただ、行政庁が将来行うこと明白確実な処分について、行政庁の第一次判断権を侵害せず、当該差止めを認めないと、回復しがたい損害が生じる恐れがあり、かつ、その損害につき、他に適切な救済方法もないときは、かかる訴訟も認められると解する余地がある。これを本件についてみるに、右判断権の侵害の点はともかく、供託金の還付請求権は金銭債権であり、その還付の差止めを認めないと原告らに回復しがたい損害が生じるとか、他に適切な救済方法がないということはできない。」として、この訴えを不適法としている。
 他方、差止めの要件に関しましてはこれまでいろいろ御検討いただいた中で、他の制度の差止めの請求の場合を御紹介しております。株主による取締役の違法行為の差止めの請求に関する商法第272条は「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」を差止めの要件としているし、侵害の停止又は予防の請求に関する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の第24条は「著しい損害を生じ、または生ずるおそれがあるとき」を要件としている。また、住民訴訟にも差止めの請求があるが、住民訴訟としての差止めに関する地方自治法第242条の2第6項では、これは改正されたところであるが、「差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない」という逆の方向からの制限を設けている例は既に御紹介している。
 こういった他の制度なども参考にしつつ、立法論として、不作為の給付、すなわち差止めを求める要件についてどのように考えるべきかについても御検討をお願いしたい。
 確認の訴えについて、資料での3頁に(1)として記載しているが、確認の訴えによる救済が必要とされるのはどのような場合と考えられるかについて御検討願いたい。ここでいっている確認の訴えは、義務づけや差止めといった文脈で捉えられる、公権力の行使の発動・不発動を求めるための確認の訴えに限って検討していただく趣旨ではなく、むしろ、民事訴訟か行政訴訟か、あるいは抗告訴訟か当事者訴訟かというような区別はさておいて、取消訴訟のような典型的な訴訟では必ずしも十分な救済が図れないが、確認の訴えであればその救済機能を発揮するというような場合があるとしたらそれはどのような場合なのか、といった観点から、確認の訴えによる救済の必要があるのはどのような場合かを御検討いただきたい。
 (2)では、確認の利益に焦点を当てている。行政訴訟における確認の利益と民事訴訟の確認の利益とはどのような関係にあるのか、また、どのような関係に立つべきなのか、という点、そして、これまで取消訴訟という制度があることが、確認の利益の判断になにがしかの影響を及ぼしてきた場合があるのか、あるという場合には、その点についてどのように考えるべきなのか、という点も併せて御検討をいただきたい。最後の点に関しては、資料の別紙の4の確認の訴えに関する裁判例を御覧いただきたい。9頁に例として(1)、(2)と2つの最高裁の判決を挙げている。これらは、いずれも実質的には公権力を発動しないことを求めるための確認訴訟という性格を持った訴えということができ、この二つの判決では、資料でアンダーラインを付しているように、訴えの利益の判断において、処分を受けてから事後的に争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情があるかないか、という点が問題とされている。ここで言われている事後的な争い方は、懲戒処分などの処分を受けてからその処分を取消訴訟で救済を求めることを想定しているものと考えられる。この点で、取消訴訟による救済があり得るということが確認の利益の判断に影響を与えているのではないかとも考えられる。この点をどのように考えるのかについても併せて御検討をいただきたい。
 なお、二つ目の(2)の平成元年の最高裁判決の事件では、高等裁判所段階では、訴えを無名抗告訴訟と捉えて、その要件として、資料10頁の下から12行目から記載しているように判断をしている。一般に、行政庁の公権力の行使について予防的に行政庁の不作為義務の確認又は処分権限の不存在の確認を求める無名抗告訴訟が適法なものとして許容されるのは、当該行政処分について、三権分立の原則を考慮しても、行政庁の第一次的判断権を実質的に侵害することがなく、しかも、その処分がされ又はされないことによって発生する損害が重大であって、事前の救済を認めるべき差し迫った必要性があり、他に救済を求める手段がない場合に限られるものと解されるところ、この場合には実質的当事者訴訟ができるからということで、無名抗告訴訟として許容される場合に当たらないとして訴えが却下されている。また、この平成元年の最高裁判決には、伊藤正巳裁判官の補足意見が付されており、その補足意見の中では、3つの要件について触れている。「上告人は、本訴において、本件土地につき、将来、河川法七五条にいわゆる監督処分その他の不利益処分を受けるおそれがあるので、これを防止するため、あらかじめ、河川管理者たる被上告人が河川法上の処分をしてはならない義務があることの確認(第一次的訴え)ないし河川法上の処分権限がないことの確認(第二次的訴え)を求め、さらに、本件土地が河川法にいう河川区域でないことの確認(第三次的訴え)を求めるというのである。右の第一次的訴え及び第二次的訴えは、講学上いわゆる「無名抗告訴訟」に当たるものと考えられる。このような訴訟は、行政事件訴訟法の認めるものではないということはできないが、その性質上例外的な救済方法であつて、それが許容される場合は限られたものというべきである。原判決は、その許容される要件として、当該行政処分について行政庁の第一次的判断権を実質的に侵害しないこと、その処分がされ、又はされないことによつて生ずる損害が重大であつて、事前の救済を認めるべき緊急の必要性のあること、他に救済を求める手段かないことを挙げているが、この見解は正当として是認することができる。本件の場合、上告人が、右の監督処分その他の不利益処分をまつて、これに関する訴訟等において、事後的に、本件土地が河川法にいう河川区域に属するかどうかを争つたのでは、重大な損害を被るおそれがあるとは認められず、したがつて、事前の救済を認めるべき緊急の必要性があるとはいえないから、上告人は、右の義務の存在の確認(第一次的訴え)ないし処分権限の不存在の確認(第二次的訴え)を求めることは許されない。」と述べられている。こういった点も参考にしていただき、確認の訴えの論点について御検討いただきたい。

□この問題はこの検討会で取り上げなければならない非常に一番重要な問題点の一つだと思う。指摘のあった問題以外にもこういった問題があるから検討すべきだという点があれば是非お願いしたい。

○今の説明の中で1頁の1の(1)の②の受益処分の一部拒否処分について、取消しだと受益していた部分までひっくり返るので、まずいのではないかという指摘があったが、それは要するに受益部分を残して、不利益部分取消しをすれば足りるということにはならないのか。

■そういう考え方はありうると思う。訴訟の対象をどのように捉えるかによって、工夫ができる場合もあるのではないかと言えるが、中には一部認めている部分も含めて、全体が1個の処分として、取消訴訟の対象になっているという考え方も多々されているところではないかと思う。

○土地に関するものだと、分割して取り消している判決はいくらでもある。

○たとえば、年金給付などで、障害1級か2級かという場合に、1級で申請したのだけれども、2級と認定されたが不満だという場合に、その差額をというのはなかなか難しい。2級として認定した処分を取り消して、1級にしろという形で請求するから、全部1回消えて、また積み上げていくという形になる。

○受益処分の一部にせよ、全部にせよ拒否処分になった場合に、要するに給付せよと求める場合は取消訴訟の排他性とその求める訴えの関係を理論的にはどう整理されているのか。

■そこは問題になるところである。取消しを一旦してからでなければ、給付が求められないという考えもできるし、給付を求める訴えにはそもそも取消しを求める請求が含まれているから、そちらでできるのだという考え方もできると思うし、両方一遍に請求しないといけないという整理もあり得るところだと思う。

○排他性が立法の産物だから、立法論で別の定めは可能だという理解でよろしいか。

■はい。

○事務局が丹念に具体的な例を出しているが、これを法律家でない人が見たときに、こういう裁判はそもそもダメだという説明をして納得するかどうかということを法律家でない委員の方にお聞きしたいぐらいである。これは、この請求を認容すべきかどうか、認めるべきかどうかという議論ではない。それはその中身に入って、こういう請求が認められるかどうかは裁判をやってみないと分からない。ところが、ここで出された例はそもそも頭から、そういう請求はそもそもできないと言って、裁判を受け付けない例である。これで良いのかどうか、国民の常識に合うのかどうかということを是非、法律家でない委員の感想でも聞かせていただきたい。
 その前提の問題として、先ほど例に出された独禁法と地方自治法の住民訴訟は、要件がなければ請求棄却の話か。

■訴えの適法性の要件か、実体要件というところは解釈の分かれるところと思う。

○独禁法はどうか。

■棄却した例がある。

○だから、独禁法の関係で、差止めが認められるかどうかについては、裁判を受け付けないのではなくて、審理をした結果、その要件に当たるかどうかを判断してもらえる。ところが、今出された例は頭から判断してもらえないというケースである。これでいいのかどうかということを考えていただきたい。

○先ほどの要件について、判例の理由では、要件に第一次判断権、裁量の余地がない場合といえるかとか、それから緊急性、それから適当な救済方法がないとか、そういう理由があるが、この行政事件訴訟法にそういうことがないのに、どうしてそういう要件が出てくるのか。

○先ほどの裁判例の中で、伊藤正巳判事の補足意見のところに端的に書いてあった。国の仕組みというのは、司法、行政、立法と分立している。本来なら、行政にこうやってくださいというべきものを、そこをパスして、いきなり司法の方で代わってやってくださいということは許されない、というのが、いわれている三権分立という部分だと思う。この辺りは本来は行政作用であって、行政府がまず判断するという建前になっている事項ではないか、という事項について、行政庁が少なくとも先に判断できるというのが建前で、それもやらないで司法の方が先に判断することが許されるのは、三権分立から言うと例外的なことなのだろう。そういう例外的な場合に当たるというのはこんな要件が必要だという、例外は例外として、どんな場合に許容するかということで、緊急性、明白性ということを言っている。

○第一次的判断がないから、ダメだという話は、行政に一度も話をしないで、いきなり裁判所に持ち込んだというような誤解があるだろうと思うが、決してそうではない。行政にいろいろとやった挙句、結局行政はやってくれないという場合にやむなく裁判所に持ち込むことであって、きちんとした形であってもなくても、実際には行政の判断が出ている。だからこそ裁判所に救済を求めるのである。つまり、行政がやらないとかダメだと言って救済を求めていっているわけで、その場合に正式な判断がないからダメだというようなことではねてしまうのはおかしいのではないかということである。

○三権分立から第一次判断権の尊重を導き出すというのはこれは一種のドグマないし、マジックワードだと思われる。三権分立というのはまさに権力機構の分立のシステムの話であり、ここで問題になっている義務付けや差止めの無名抗告訴訟の領域は、社会実体があって、そこで行政が違法な拒否処分あるいは違法な処分をしようとしている、ないしはやるべき義務を果たしてくれないというときに、法に適合していないからこそ、何とかしてほしいということを司法判断として求めている。これはまさに熟した限りにおいては三権分立と何も関係のない話だと思う。第一次判断権というのも、一種のごまかし用語であり、第一次判断権を尊重するということで、適法に行われるべき行政がそうでないと考えている人にとって、何か不利益が被る場合に、それを司法権が口を出してはいけないということとは何も関係がない話で、こういうマジックワードにごまかされないで実質的に適法な行政をやらせるための司法統制だと考えれば素直に結論が出てくる論点である。
 3つの基準のうち、第一次判断権を振りかざすという判例の議論はおかしいと思うが、それはさておくとして、2つ目の基準で、回復し難い重大な損害というが、これは全く間違った基準である。取消訴訟になってから争うよりも、1%でも、0.1%でもちゃんと回復される可能性があるなら、重大かどうか、回復し難いかどうかなどと一切関わりなく、多少なりとも取消訴訟よりもちゃんと救済の道が得られるのであれば、第2要件については完全にクリアするとしなければ、これは一体何の権利があって回復し難い重大な損害などと、条文にもない勝手な基準を振りかざすのか全く理解できないので、これは絶対やめるべき基準の典型ではないか。

○第一次判断権があるのは当たり前である。どの程度尊重するかという程度の問題だと思う。今回の改革では、第一次判断権を以前よりもうちょっと後退してもらうという話であって、第一次判断権が全く意味のない議論であるということにはならない。
 作為の給付を求める訴え、義務付け訴訟は、大きく分けると、拒否処分と行政の不作為の場合について考えられる。拒否処分については取消訴訟、不作為については不作為の違法確認訴訟があるが、それでは不十分なので義務付け訴訟を考えるということになっている。その際、典型的な義務付け判決が出る場合というのはそうないのではないかと思っている。一つのあり方としては、拒否処分については取消訴訟の延長で義務付け判決を考え、不作為については不作為の違法確認訴訟の延長として、義務付け判決を出しうる場合には義務付け判決を出すという仕組みである。現在の制度の延長上にあるので、立案しやすいように思る。ただ、このやり方には欠点があり、仮の救済がうまくいかない。取消訴訟に義務付け判決を付けると、執行停止だけではうまくいかないので、仮命令的なものが必要になってくるが、その制度が仕組みにくいという問題はある。

○難しさは要件をどのように定めるべきかだ。3要件というのはおかしいという御批判があるが、それでは何を要件にするか。たとえば申請制度があるときに全く行政に対する申請をしないままダイレクトに給付を求めるというのは、これは誰でもダメだろうと言うと思う。そうするとどういうところで線引きをしていったらいいのか、そこはなかなか難しいところで、要件論の形でやる方が建設的ではないか。
 何らかの義務付け的な要件を別途に認めるというと、単に取消訴訟の違法があるかどうか、処分に違法があるかどうかというテーマではなくて、もう一つの新しくなった要件の充足という問題をやらざるを得ない。これはかなり当事者の負担としても審理は重くなると思うので、何でもかんでもそれがプラスになるという原則にすると、形は広くなっているようだが、非常に重たい訴訟になってしまうということがある。そこは切り離し自由、あるいはくっ付けたければくっ付けるという2つを当事者の選択ができるようにするべきでなかろうかと思う。

○全体として考えてバランスの良いシステムにするということが議論の前提である。およそ行政官というのは国民の敵で、弱みを見つけては相手の権利を否定しようとする人種だという前提にすれば、いかに行政官に決定させずに、裁判所が国民の権利をとことん擁護するかということになるが、その前提は差し当たり取るべきではない。一般的に国民の権利、個々の権利と全体の権利がうまく実現できるようなシステムというのは、立法で行政機関への申請・申立ての手続を整備するということがまず第1にあるはずである。資料の1頁の分類の(1)の①から④までのうち、①から③までは一応申請の制度があって、それを経て、裁判所でどこまで立ち入るかという話だが、④についてはそもそも申請の制度がない。そこで現行法だと第三者が裸で裁判所に義務付け訴訟を提起するということになる。もしそういう権利実現が必要であれば、行政法上のシステムとして第三者による申立ての制度というのが本来あるべきである。実際、第三者は役所に行って、まず陳情したが取り合ってもらえず、仕方がないから裁判所に行ったということだと思うので、最初のところをきちんと制度化するのが本当は大事なのではないか。ただ、これは結局個別法で必要に応じて作りなさいという話なので、この検討会でいくら言っても各省が作ってくれるとは思えないが、そこが大事だという前提を置きながら、しかし最小限どうしても現行システムがうまくいかない権利救済について、裁判所がどこまで乗り出すかというスタンスがいるのではないか。現行法はそこは割り切ってしまって、取消訴訟中心主義であり、必要なものは申請の制度があるはずで、申請拒否決定があれば申請拒否決定の取消訴訟で国民は満足しなさいという立場を取っていたと思うが、そこは固すぎる。申請拒否処分プラス取消訴訟という救済ルートで十分でないときは義務付け判決がされてもしかるべきではないか。先ほど取消訴訟プラス義務付け訴訟、義務付け判決という考え方を言われたのは私も同感するところである。うまくいかない場合の救済として、義務付け判決の要件は、少し緩めてもいいのではないか。実際問題としては、悠長な救済手続を踏んでいたのでは間に合わないというケースが問題だと思うので、重要なのは仮の救済である。実体判決の要件論も重要だけれども、仮の救済制度をきちんと作るということが、さらにここでは重要ではないかと思っている。

○民事訴訟では給付訴訟が原則で、それは権利救済として一番端的だからである。ところが、こと行政を相手にするときだけはそういうことはダメというのが今の制度である。要件論で言うと、本来給付訴訟ができていいはずなのだが、行政相手だから給付訴訟では困るという場合に給付訴訟は遠慮せよというのであれば、そちらの方で要件を書くべきだ。だから、給付訴訟ができるという要件ではなくて、たとえば、第一次判断が出されていない場合にはこれはできず、まず行政に行け、というのは理由があり、申請権があるのに申請せずに裁判所に訴えてきたときに、申請してきてくださいというのは分かる。こういう場合は逆に給付訴訟は困るのだという場合の要件を書くべきではないかと思う。

○給付を求める訴えについて、資料では、それを適法として認めたというのは1件で、後はゼロというのを見ると、どうしてこうなってしまうのかという感じを受けた。申請をしたのにも関わらずそれに対する処分が出ていないとか、拒否されているとか、そういうことの中で、争点になり、裁判所に訴えたが、その場合にさらに緊急性なりの要件を付けて、まず行政とやりなさいとやるのは、原告にとって重たい負担を課しているという印象を持っている。そこで争点になったとすれば、その点について裁判所として判断し、それが義務付け訴訟ということであれば、そういう判決を出すというのは非常に納得的で、争いの成熟ができているということであれば、義務付け訴訟を出すということになるのではないかという感想を持っている。

□現行法は取消訴訟中心主義を取っているというふうに解釈した学説もあり、裁判例もそう解釈したわけだが、この取消訴訟中心主義が三権分立の当然の帰結かというと、そこは議論のあるところだと思う。一つの意見としては、立法者の選択であり、同じ憲法の下で、今までの取消訴訟中心主義から脱却しようということを考えたとしても、それは直ちに三権分立原則違反という問題は生じないのではないか。その辺を整理しておかないと、取消訴訟中心主義が三権分立の原則だと言われると、少しだけ緩めようかという話になって、議論が矮小化されすぎるのではないかという問題がある。取消訴訟中心主義からすると、第一次判断権や、3要件もそれなりの説得性、論理はある。そこで取消訴訟中心主義をどう考えるか、そこを是非、整理していただきたい。要件論は、取消訴訟、確認訴訟、給付訴訟が一応3つ並んでいるのだとすれば、3要件そのものとは違った角度から問題が出てくると思うし、実体法上の要件論だとすると、給付請求権があればそれはあるではないかという、それだけの話になる。訴訟法上の要件論があるのか、あるいは訴訟上の要件論ではなくて、どうも実体法上の要件でもこの際書かないと裁判官は大変だという話であれば、そういう要件論として今後議論をしていただければと思った。
 取消訴訟をどう見るかによって、給付訴訟、さらに確認訴訟が非常に重要なものとなると思うので、こういった点については確認訴訟でできるのではないかということについてもいろいろ御議論をいただければと思う。
 義務付け訴訟等については、今日の御意見をお伺いしていると、取消訴訟だけは最後までやって、どうしてもダメな場合に救うというのではなくて、もう少し義務付け訴訟、あるいは確認訴訟の可能性を探ってみたらというようなお話だったと思うので、その方向で整理をさせていただきたい。この点については、次回でも御議論をいただくことになろうと思う。

(2)今後の日程等

■資料1の第2の2の「審理を充実・迅速化させるための方策の整備」、3の「本案判決前における仮の救済の制度の整備」、これは注に書きましたようにかなり論点が多岐にわたろうかと思いますので、この点について資料を用意したいと思っております。それから第2トラックの検討につきましても、今日の議論を踏まえて、さらに具体化できないかどうかも含めて、それから今日いろいろと御意見をいただきましたので、そういった論点について補充して、御検討お願いできるように準備したいと思っております。

□そういうことでよろしいか。

(委員から異論なし)

□事務局の御提案に御了承いただいたので、検討の方向性が概ね一致している事項についての2の「審理を充実・迅速化させるための方策の整備」、3の「本案判決前における仮の救済の制度の整備」についてペーパーに基づき検討を進めたい。
 第2トラックの検討についも、本日の議論を踏まえて、給付訴訟、確認訴訟について実効的救済という観点から具体化できないかどうか、これも引き続き、検討するが、先ほど第2トラックについて、こういう点を議論すべきだという御提案がいろいろあったので、事務局で整理をし、できるものは次回に御提示をし、無理であれば次々回になろうかと思うが、そういうことでよろしいか。

(委員から異論なし)

7 次回の日程について

 5月23日(金)13:30〜17:30

以 上