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行政訴訟検討会(第17回)議事録
6 議 題 【塩野座長】第17回行政訴訟検討会を開会いたします。議事に入ります前に事務局から、説明があります。 【松川次長】それでは私の方から。委員の皆様には既に概略をご説明させていただいておりますが、前回の検討会の冒頭に指摘されました資料作成上の問題につきまして、改めてご説明させていただきます。お手元の右側の一番上の資料にありますように、この問題につきまして新聞報道にも取り上げられまして、委員の皆様始め各方面にご迷惑をおかけした点をおわび申し上げたいと思います。 【塩野座長】それでは本日の議題に入りますが、まず事務局から本日の資料について説明をお願いいたします。 【小林参事官】本日の資料につきましては、お手元の議事次第にございますように資料の1から13までございます。ご確認をお願いいたします。右手の方に、いつものようにそれ以外にも参考資料を置いてございますので、ご参照ください。以上でございます。 【塩野座長】それで、本日の議題でございますが、まず前回の最後にご議論いただきました、「行政の作為・不作為の給付を求める訴え、確認の訴え」につきまして、事務局から資料を補充していただいておりますし、さらに議論をして、あるいは議論の熟度からいってもよろしいかと思いますので、前回の続きでこれを最初にご議論をいただきたいということでございます。それから方向性が概ね一致しているということで、第1トラックということで掲げておりました、見直しの考え方の3つの項目のうち、残りの2つ、すなわち「審理を充実・迅速化させるための方策の整備」、それから「本案判決前における仮の救済の制度の整備」の検討を行いたいと思います。順序といたしましては、仮の救済の制度の整備が義務付け訴訟等々と関連するところが多いものですから、まずそれをやっていただいたらどうかと。その後で、審理を充実・迅速化させるための方策の整備をやったらどうかというふうに順序を整理しております。 (委員から異論なし) それではまず、「行政の作為・不作為の給付を求める訴え、確認の訴え」について、補充資料も踏まえて、検討をお願いいたしますが、事務局から資料の説明をお願いいたします。【村田企画官】それでは、お手元の資料番号が付いておりますものの、資料の3の方をご覧いただければと思います。行政の作為・不作為の給付を求める訴え、確認の訴えの主な論点を補充する趣旨でお出しした資料でございます。このテーマにつきましては、前回の検討会で検討をしていただいたところですが、その際の検討も踏まえましてさらに若干の整理もいたしました。 【塩野座長】この論点自体は前回ご説明があり、多少の議論も交わしたわけでございます。そして、そのときには要件論というのがかなり挙がっておりましたので、要件論の問題を中心に整理したものでございます。その他、判決の執行の問題、それから確認の訴えの問題が付け加わっているということでございます。 (委員から異論なし) それではどなたからでも結構でございますので、選択肢も出ておりますので、自分はこの選択肢ということ、あるいはこの選択肢以外にもあるではないかというご指摘があれば、是非言っていただきたいと思います。【芝池委員】義務付け訴訟、ないし義務付け判決につきましては、この制度を求める世論のようなものがあると思っておりまして、私自身は義務付け訴訟を、あるいは義務付け判決を何らかの形で、導入した方がいいと考えております。それは行政に対する司法のチェックを強化するということになるという考えにもよっているわけであります。その導入の仕方、制度化の仕方ですが、これは前に発言をさせていただきましたが、取消訴訟、それから不作為の違法確認訴訟のそれぞれにおきまして、裁判所が義務付け判決を出しうる場合には、そういう判決をできるという程度にするのがいいのではないかと思っております。その理由でありますが、義務付け訴訟でありますと、義務付けのための要件が揃っていることを原告が主張あるいは立証する必要がありますが、これは一つのリスクでありまして、場合によりましては、取消ししか認められないような原告の主張もありうるわけでありまして、ですから取消訴訟とそれから義務付け訴訟を完全に分けてしまうというのは得策ではないという判断に基づいております。 【小早川委員】今の芝池さんのご提案に賛成するところが多いのですが、それは結論でありまして、また繰り返しになるかもしれませんけれども、考え方の前提からちょっと申し上げたいと思います。今日のペーパーで、要するに①、②という2つの場合があって、それぞれについて認めるか認めないかということです。①の方は、申請の制度があるので、現行法でも取消訴訟で行けないことはない、不作為の違法確認でも行けないことはない。ただ、その後に拘束力のややちょっと分かりにくい仕組みでもって、一応の救済が図られている。それに対して、②の方は、現行法では取消訴訟の道には繋げにくい。したがって、直に義務付け訴訟の問題として出てくるということだと思います。②のようなケースについて、義務付け判決を求める道を開く必要があると私も思っております。その場合の要件がどうかということになりますが、それ以前に、行政訴訟だけでなくて、行政作用についての法のシステムの全体の形がいかにあるべきか、②のような訴訟が出てくる可能性をできるだけ少なくするということが大事ではないか、ということは前に申し上げたかと思います。例えば、第三者から行政庁の権限の発動を求める必要が考えられる場合には、第三者からの申立ての仕組みというのを、できるだけ立法で作るべきではないか。そうすればそれは①の方に流れ込んでいくと思います。そういう形が本来望ましい。そういうものを本来の姿として行政訴訟の制度を考えるのがいいのではないかと思います。 【塩野座長】では、芝池さん今の点で。 【芝池委員】補足させていただきます。この②で、規制権限の行使を求める訴訟でございますが、これは私も現在の不作為の違法確認訴訟において、申請の要件を外すということで対応すると考えております。この場合には、不作為の違法確認訴訟の中で裁判所が対応するということになりますので、判決としては、義務付け判決ではなくて、確認判決ということになると思います。 【福井(秀)委員】私もこの①、②を含めて、義務付け訴訟の類型があった方がいいという点で、今の両先生と基本的には同じ発想です。若干、補足しますと、この補足説明のところで、取消訴訟の排他的管轄との関係を随分丁寧に議論されているのですけれども、これも先ほど村田さんがいみじくもおっしゃったように、現在の取消訴訟の排他的管轄は現行の行政事件訴訟法の産物ですから、まさにここは立法論の議論の場だと考えると、現在の排他性ないしは公定力の概念をそのまま維持しないといけないわけでは必ずしもありませんので、そういう意味で、もうちょっと柔軟にここは考えた方がいい。要するに排他性が被らないような形で仕組めばいいと発想をすればよろしいのではないかと思います。そういうふうに考えると、これは小早川先生がおっしゃいましたが、例えば給付を拒否されたという場合であれば、給付してほしいというのが本人の意図なのでしょうけれども、その中にはいろいろ取消しとか再決定とか含んでいると解釈するのが素直だと思います。非常に熟している、義務付けの判決に熟しているような要件が整っていれば、その場合には義務付けだと、しかしそこまでは熟していないけれども、とにかく何らかの給付なりが必要ではないかという場合には、再決定がとにかく要るのではないか。そこにも熟していないで、でも原告に何らかの救済を与える必要があるというのであれば、現行でもある不作為の違法確認でも構わない、という序列を想定して、もちろん原告がそれにある程度了解を与えているということが前提なのでしょうけれども、柔軟な判決を判決時に決めて出せるようにしておくのが適切だと思います。これは結局、審理の進捗次第ですので、これも村田さんがおっしゃいましたけれども、あまり要件論として、訴訟要件として、このような義務付けの類型を捉えるのではなくて、結局のところ、どんな判決、要するにある義務付け判決を下すには、判決のために必要な要件は何なのかという、できるだけ本案の議論として捉える方が適切ではないかと思います。あらかじめ厳格に類型を審理してからでないと中身に入れないというのではなくて、今のようなことも判決の時点で総合的に考えて、もっとも適切な類型を選べるようにしておいてはどうかということです。 【塩野座長】それでは判決の執行についてのところまでも、ご意見が出ましたので、(1)、(2)は大変関係するところもございますので、まず(1)、(2)のところについて、なお御意見があれば承りたいと思います。 【水野委員】私も今の意見に基本的には賛成でありまして、前から申し上げていることでございますが、こういう訴訟を認めていくべきだと思います。それぞれの訴えが独立の訴えの形式と捉えるのか、それとも延長線上か、これは先ほど来言っているように不作為の違法確認のレベルで判決を求めて、それが熟していればそうだし、給付まで求めてそこまで熟していればそういう判決をしたらいい。これは前から私が申し上げているとおりであります。ただ、どちらの判決を求めるかということについては、やはり、少なくとも最終段階では原告の方で特定する必要があるだろう。給付まで求めるということになると、非常に訴訟が重くなって、原告の負担が増えて大変であるという議論がありますが、そこはやはり、原告がそこまで求めたいというのであれば、それは裁判所は当然それに応じなければならないだけの話でありまして、そこは原告の選択に委ねたらいい。もちろん原告の選択に当たっては、適切な裁判所の釈明権が行使されることは大前提であります。 【塩野座長】要件について、何かお考えがあれば、どうぞおっしゃってください。 【市村委員】②については、先ほど芝池先生、小早川先生がおっしゃられたような意見に私も基本的な方向としては賛成です。先ほど小早川先生がご指摘なられた要件のような下で、という辺りであれば、適切なのかなと思っております。ただ、ちょっと①については、前から対立するところなんですが、再三出てくる、熟していればという表現で、こうすればということになっているのですけれども、弁論を終結するというのは熟したら終結するということになっているのです。判断するに熟したら終結するというので、ある一定期間が来たから終結するというわけではありません。だから、そうすると判断できる程度に熟している、それが理由があるかないかということが判断できる程度まで審理しなければいけないわけです。そうすると熟していれば、でなくて、熟するところまで審理しなければいけない。そういうふうに考えますと、答えが出てきたところだけ、やればよい、というやり方はちょっと今までのやり方とは違うわけです。それは訴訟法的な見方からですが、もう一点、実体法的に見て、再三申し上げているのですけれども、拘束力を使ってやるというやり方、例えば、ある給付申請に対して、拒否処分があったときに、給付を拒絶したのは間違っているという、給付すべきだという判断を裁判所がした場合に、具体的な給付額をいくらにして、給付決定をするかということについて、そこの部分で、本当にそこが滞ったり、裁判所の言っていることに従わなかったり、ということで権利救済が図られていないという場面がそんなに出ているのだろうかという気がするのです。どっちかと言うと、今出てきた②の形のものの義務付けを認めるべきだということが今までのニーズの核心ではないかという気がするのです。それに比べて、①というのは、確かにたくさんの、大きなものを予定して、できた範囲でやればいいではないかというのは一つの考え方だと思うのですが、先ほど言ったような例えば給付の場合には、それをやらなければいけないという責任と、負担があるようなことと裏腹のものですから、そこの点で、今のようなものの方が得なのかどうか。私としては、そこの部分は慎重に考えた方がいいのではないかということは前と同じです。 【塩野座長】どの点ですか。 【小早川委員】今の市村委員の点です。さっき水野委員が、いかなる判決を求めるかは最終的には原告の申立てだと言われた、今の市村委員も多分同じお考えで、そうでなければうまくいかないということだと思うのですけれども、私は訴訟法の厳密な設計能力がありませんが、原告の方で義務付けまで求めたい、しかし場合によっては取消しでもいいよ、というときに、裁判所が事案を審理してこの事件は取消し止まりの方がよかろうと思ったらそこで切る、原告の意に反してはいけないのですけれども、どこまで裁判をすればいいのかということを裁判所が、裁量かもしれませんけれども自分で土俵を設定して、その上で、判決に熟したらそこで判決してしまうというやり方ができないのか。そこは今までの訴訟の常識からすると違うのかもしれませんが、行政訴訟の場合には、どれだけを行政に差し戻すのかという、役割分担の問題がありますので、そういうことが考えられるのではないかという感じがいたします。 【塩野座長】その点、ちょっと後になりますけれども、行政訴訟の対象、取消訴訟の排他性、民事訴訟との関係のところ辺で出てきますので、原告がどの程度まで請求を特定しなければいけないかという点について、また議論することになると思いますので、今のようなご指摘があったことを踏まえておきたいと思います。 【市村委員】(3)まで入っているということで、ちょっと言い忘れましたが、(3)のところで、「173条の定める方法による」というのも一つの射程に入っているようなのですが、今までの、例えば民事執行の中の理論では、一例を挙げますと、行政庁の行う公権力の行使としての意思表示、というものはこれは別だという認識で、仮に給付訴訟ができるのだとしても、その意思表示というのは公権力を有する行政庁だけが行えるので、これについてはこの173条が使えないという理論が執行法の世界ではかなり言われていたと思います。そこら辺の検討はしておいて、ですから主文の形式として、どういう主文にするのか。意思表示を擬制するような形で、本当にできるのかということはぎりぎり考えておく必要があろうかと思います。 【水野委員】今の点、取消判決はどうですか。 【市村委員】それは形成ですから構わないと思います。一緒ではないと思います。 【水野委員】意思表示。 【市村委員】意思表示を擬制というのは、例えば本来なら、ある行政処分をできる権限というのは権限的に分配されているわけです。それが当然に、裁判所にも包括的に全部あるというふうになっているわけではないという理解で今までは議論していたと思います。 【水野委員】取消訴訟の判決が出たときに、行政庁が改めてその判決を受けて、拘束力で取消しの意思表示をするのかどうか、しなければならないのかという議論。今は判決が確定すれば、行政庁が取消しと言わなくても、取消しの効力が生ずる。つまり行政庁が取消しの意思表示をしたのと同じ効力が生ずると解されているのではないでしょうか。 【市村委員】そこはそうです。 【水野委員】そうすると、今の議論もまったく同じで、何らかの意思表示という意味では、何らかの処分をするというのも意思表示だけれども、一旦した処分を取り消すというのも意思表示でないか。 【市村委員】今の取り消すというのは形成判決の、形成力を付する効果があるのであって、今問題にしているのは、173条の意思表示の擬制ができるかどうかの問題ですから、次元をそこでは異にするのではないかなと私は思います。 【福井(秀)委員】それはそうで、もちろん法的性格かつ技術的、専門的に議論したらそうなのですけれども、多分それも一種の立法政策だと思うのです。そういう場合、どうせ作為の意思表示を命じられて確定したら、もう一回やらないといけないというだけで、最高裁で確定した以上は、裁量はないわけですから、二度手間を省く、時間と労力を節約するという意味では、同じことなら、手前の方でやらした方がいいということもあり得る。それは必ずしも行政権の本質とか、司法権の本質という大上段の議論から出てくる議論ではないという気がいたします。 【塩野座長】そういう御議論もあると思いますが、この点、なかなか作用法上の権限が法律上、行政機関に委ねられているという、それをどういうふうに理解するかという問題だと思います。取消判決の場合、これは形成力で説明つきますが、ただ議論のあるところですので、両方のご議論があったということは引き取りたいと思います。 【福井(秀)委員】要件で補足なのですが、3要件の点は、私も、判決時の、判決要件としての明白性というのは当然ないと判決が書けませんから、重要だと思うのですけれども、緊急性の要件については、前回も発言したと記憶しておりますが、顕著かとか、著しいかというのはちょっとまずいと思うのです。というのは、何らかの合格決定なり、給付処分という受益がそこで得られなければ、そこで得られたよりも後からだと多い損害があるという単純な差し引きと言いますか、プラスマイナスがどっちに転ぶかを見てやらないと、社会的には不合理な結果を招きます。顕著とか、著しいと言うと、マイナスの部分もしばらくは我慢せいということを、とりもなおさず言ってしまうことになりますので、あまり限定しないで、緊急性というよりはむしろ単なる多寡で考えた方がよろしいのではないか。補充性はもちろん要らないと思います。 【塩野座長】いろいろとご意見が出て、私の思うところ、基本的にはかなり一致しているところがあると思います。ただ今日はいろいろなご意見を伺うということですから、無理にこれは一致しましたと、私が言う必要は毛頭ないものですけれども、(1)については、とにかく両方ということで、大体のご意見が一致していると思いますが、ただ訴訟類型か、判決類型かというのは、後の一般的な話と関係いたしますので、そこはまた事務局が法制的に考える時間的余裕があれば、また考えていただくといたしまして、ここはどちらかに両方のご意見があったかと思います。訴訟要件の問題は、今まで大体出尽くしていると思いますが、取消訴訟中心主義はやめたと言った後の話ですので、それを取消訴訟中心主義をやめないといったら、これはまた話が元に戻ることになりますけれども、やめたということになると、訴訟要件の問題ではなく、どうも本案の問題なのかと、本案の問題を、ここは後は法技術的な問題で、全く分からないのですけれども、本案の問題は訴訟法に書けるかなという感じがちょっとするものですから。 【市村委員】そうですね、一義性と言った方が使いやすい。 【塩野座長】田中先生も一義的明白と、もう一つ加わってくるので、そこは可能性があるのですが、ここはいわゆる重大明白の一義的明白ではなくて、あるいは客観的明白ではなくて、客観的に確定していることですね。 【福井(秀)委員】補足なのですが、さっきの(2)の③の、抽象的な作為を求めることも認める、これも大変良い考えだと思うのですが、補足説明でかなり難しいご議論がされていますが、結局裁量の余地があって、例えば、違法建築なりであれば、建て替えさせるか、あるいは改築するかを選べるけれども、とにかく何かをやらなければいけないというようなところで救えていれば、そういう救済があった方がいいのではないかという趣旨です。 【水野委員】今の要件論は大体概ね、どの辺りが多数で。 【塩野座長】私が整理した限りでは、訴訟要件の問題としてではなく、おそらく本案の問題であろうと。本案の問題については、明白性というのもあるし、それから小早川さんはちょっと別のことをおっしゃってましたが、あれは本案なのか、訴訟なのかよく分からなかったのですけれども。 【小早川委員】私は、①の場合には、処分があること、あるいは申請したけれども一定期間答えがないことを条件に、訴訟を認めるということであれば、その上さらに義務付け判決まで至るための訴訟要件をプラスする必要はないと思います。それは塩野座長のご意見のとおり。ただ、②の方を見ると、そっちは入口でもうちょっと絞れるかなと、そこは訴訟要件のつもりで申しました。 【塩野座長】それでは、「不作為の給付を求める訴え」につきまして、今のような形でご意見を賜りたいと思います。 【小早川委員】従来は、義務付け訴訟よりも、不作為の給付と言いますか、処分の差止めの訴訟の方が認めやすいみたいなことが言われたことがあるのですが、ただそれもよく考えるとよく分からない話です。私は、それはともかくとして、何でもかんでも認めてしまうと、行政庁がひょっとして自分に対してこんな処分をしてくるかもしれないというふうに、心配性な人が訴えを起こしてくる、自分は将来交通違反をするかもしれないが免許停止をしてくれるなよとか、そんなような訴訟をいくらでも起こせるのも、これはまたおかしな話です。執行停止、仮の救済の仕組みが今よりも良くなるということを前提にすれば、とにかく処分があってから争いなさいという原則はあってもいい。ただ、それだけでは足りません。ここもさっきと同じことですけれども、著しい損害が見込まれるような、そういう何らかのプラスアルファの事情があれば、事前の差止めを求めることを認めてもいいのではないか。これは、長野勤評の判決、高知の河川区域の判決のように、将来の不利益な取り扱いを見越して現在の法律関係の確認を求めるという場合の確認の利益の判断の問題と共通してくるのだろうと思います。 【芝池委員】今の小早川委員のご意見と全く同じと言ってもいいと思います。予防訴訟ないし差止め訴訟は、取消訴訟の前倒しでありまして、取消訴訟中心主義をやめても、やはりこういう差止め訴訟のようなものは、例外に留まるであろう。後はそういう訴訟、差止め訴訟が認められる場合の要件なのですが、小早川委員が言及されました、長野勤評に関する最高裁の判例で用いられているような表現、ちょっと読み上げますと、「事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等、事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合」という要件ですれども、この辺りがいいのではないかと思っております。というのは資料の方で明白性とか補充性とか緊急性とかあげて頂いているのですが、これを法律で全部並べるのはどうも見苦しいところがあると思いますので、できるだけ簡単に法律にする場合は整理した方がいいということであります。 【水野委員】私も作為の給付を求める訴え、不作為の給付を求める訴えについて、区別する必要はないのではないか。したがって、これは5頁の④と、先ほどの2頁の③とが対応するわけなので、これと同じでいいのではないかと思います。何らかの行政処分をするという、行政庁に代わって行政処分をするという、給付の方がやっぱりきついのではないか。差止めはまだないわけですから、現状のままだという方がやっぱりまだましではないかという気がするのです。ただ、小早川先生がおっしゃったように、何でも裁判にやれるかというとそれはむしろやれないわけで、つまり処分が行われそうだということは当然必要であるわけです。処分が行われそうにないのに差止め裁判がやれるわけはない。これは何になるのですか、訴えの利益になるのですかね。ちょっとそのところは詰めていませんけれども、滅多にそんなことはないのだけれども、まるっきり処分の可能性がないのに、処分をしてはならないと言う判決を求めてきたときに、そのときはどうするのかという、極めて例外的な場面については、ちょっと留保したいと思います。基本的には同じでいいのではないかと思います。 【福井(秀)委員】私もこの不作為の給付といいますか、差止めがあった方がいいという点で、今までのご発言と共通なのですけれども、要件については、①と④の区別が必ずしも資料上明らかではないように思います。①はさっきの作為の給付とほとんどパラレルに並べておられるのですが、水野委員が言われたように、確かに両方ある意味では共通だけれども、ただそれぞれに特質があるということを考えると、差止めの場合の、例えば明白性とかというのはやや当てはまりにくいのではないかという気がいたします。特に自由裁量の余地が全く残されていないとか、第一次判断権を行政庁に留保することは必ずしも重要ではないというのは、この差止めについて言えば、こういう議論よりはむしろ、やったら違法になるよという要件がある、ある一定の蓋然性のある侵害行為をすれば違法で、取消訴訟の対象になると言うだけのことでないかと思うのです。違法なことをやってはいけないとうことだけで、自由裁量の余地が全く残されてないかどうかということと、やったら違法になるというのは重ならないと思うのです。やったら違法になるようなことはやめてほしい、ということで、先ほどの議論にあった、一定の何らかの蓋然性がある場合に、求めたときには、それだけで基本的には訴訟に乗せればいい、という気がします。どっちかというと、④的な考え方なのかもしれません。そういう気がいたします。それで、これも顕著とか著しいとか、重大とか判例にもいっぱい出てくるのですが、これも先ほど申し上げたことと同じ考え方を持っておりまして、要するにそこで差止めないで、やられてから回復してくれというのでは、後始末に、本人も含めて、社会的費用がいっぱいかかる。要するに大小関係で捉えて、その段階で止めておいた方が、困難の回復がより安い費用、ないしより容易にできるのだという場合には認めればいいと思うわけでして、そういう意味では、この緊急性というのはやや縛りはきついのではないかという印象です。 【市村委員】結論から申し上げますと、私の考え方は先程小早川委員、芝池委員がおっしゃられた理由付けも含めて、すべて同じであります。やはり、これは事前にこういうことを行うというところに、その特殊性があるわけで、それを認めるのはどのような場合か、というところから、先ほどのような絞りがかかっている。その中の一つの考え方として、長野勤評の最高裁の判決というのは、ある意味では大きな指標になるのではなかろうか。こういう面から、要件についてはそうした考え方を付加するのが相当ではないかと思います。原告適格という形で果たしてどういうふうに考えるのか、という辺りはなかなか難しいところです。これを妙に絞り込むと使えない制度になってしまうし、外せばそうするとほとんどそこには原告適格がないという問題はなくて、むしろ先ほどの要件のところで絞りがかかる。後者の方で絞りが結局かかるのであればそんなにおかしな運用はされないのかなと思います。 【成川委員】今、お話を聞いてて、不作為の給付を求める訴えが何らかの縛りなり、著しい損害などがないと非常に濫訴のおそれがあるのではないかというお話なのですけれども、必ずしもそうかなという感じがしました。確かに心配性の人は、裁判に訴えてくるということはあると思いますが、それ自身は非常にやはり負担、精神的、物理的のみならず、やはり色々な準備等が必要であって、当然そういう中で訴えてくるということだと思います。そのときに、その訴え自身はどういう根拠があるかどうかは十分議論はされるべきであると思いますが、それを入口のところでそういう訴えを退けるという形になるのは私としては好ましくないのではないか。一応受け取めた上で、判決というか、判断をするときの条件として、それがそうなっているかという形で納得いただくというか、やっぱりそういうのが私としてはわかりやすいなというふうに感じました。 【塩野座長】インジャンクションは、今の日本法的な議論はしますか。訴訟要件か、本案か。 【中川外国法制研究会委員】訴訟要件かという話はしません。しませんというのはここで挙がってるような緊急性とかというのは、仮の差止めを認めるかという場面では、なされ得ますけれども、最終的に差止めがされるかどうかというのは本案、まさに先程から言われているような、それだけの熟した資料ないし主張が出ているかということで、決まるものと思います。 【塩野座長】ですから、ちょっとこの辺は本当に本案の問題として考えるか、訴訟要件の問題として考えるかということは残されたところだと思いますけれども、行政の不作為の給付を求める訴えというカテゴリーは田中二郎先生もこれにはやや好意的なのです。つまり、それは特に頭に描いておられていたのは、人権侵害を未然に防ぐような場合はやっぱりあるのではなかろうかということだと思うのです。 (委員異論なし) それでは最後の確認の訴えですが、このところは同じような形でご議論いただきたいと思うのですけれども、どうぞ、ご意見があればおっしゃっていただきたいと思います。この問題は、後で出ます取消訴訟の対象をどうするかということとも関係いたしまして、2度議論するよりは取消訴訟の対象のところで広げても広げなくても確認で、できますでしょうとか、そういった話をすればいいというふうにも思っております。ここの説明自体も非常に簡単になっているのはその趣旨ではないかと思います。ただ論点としては、非常に重要な論点で例えば法律上効力がないとされる行政指導について、一体どう考えたらいいのか、確認訴訟できちんと受け止められるかどうかということはあると思います。【小早川委員】ここに、行政立法とか行政計画の無効の確認を求める訴えという例が出ています。今、座長がおっしゃられたように、これは処分性問題と重なり合う話なので、併せて議論しなければいけないと思います。具体的な例で何ですけれども、外形標準課税の場合に、事前にどういう訴訟形式がいいか。従来の取消訴訟中心主義の頭で行くと、何か既にあったものの取消しなり無効確認だろう、したがって条例の無効確認だ、という議論になるのですけれども、今さっきの差止めの方ができるとすれば、自分たちが狙い打ちされるというような状況があれば、条例の無効確認よりも、自分たちのための将来の処分の差止めの方が、実体に過不足なく対応しているのかなという気もします。 【塩野座長】確認訴訟は、そういう問題が元々あるのです。一種の補充性みたいなものがあるのですが、これは実は私もかねてから確認訴訟の活用がどの程度できるのかという点について、一番心配なのは民訴の方の確認訴訟、あるいは確認の利益というものが一体どうなっているのかという点について、もう少し情報を集めないと、ここで勇ましいことを言っても、そんな民訴ではとんでもない話だといって、受け止めてくれない場合もありますので、その点、もし何かしら時間的な余裕があれば、民訴の先生方、どなたかに、例えば具体的な例を出して、この場合、民訴ではどういうふうに考えているのか、あるいは民訴の基本的な考えはどういうものなのかということをレクチャー受けたらどうかということも思っています。こういう事もあるべしということを前提に、どうぞご議論いただければと思います。 【福井(秀)委員】この確認の訴えで、行政指導が法律上効力がないとあるのですけれども、例えば国家賠償ですと違法な行政指導を前提の賠償請求権というのがあり得るわけですし、また違法な行政指導をやるべきでないということの例えば確認を求めるとか、いろんな置き直し方があると思うのですけれども、法律上効力があるものだけが、確認の訴えに乗るという頭で作られている資料なのですか。 【村田企画官】いえ、それを断定しているものではなくて、どのような争い方がいいかということを単に問うているだけです。 【福井(秀)委員】そうすると、あんまり立法、計画、行政指導とか区別しなくても、できるだけ対象を広げようということであれば、実益があれば基本的には認めるということになるように思います。 【塩野座長】確認の利益があれば認められるのですけれども、その確認の利益が一体どういうものなのかという点について、もう少し資料を整えなければならない、そういう趣旨ですし、また行政指導について確認訴訟は効かないのでしょうかね、というのは私は大分前からずっとつぶやき続けているところでございます。 【市村委員】ただ、今おっしゃった前提は分かるのですけれども、普通の場合であれば確認の相手方というのは行政主体になりますね。今度みんな行政主体になるから同じになってしまうのですけれども、位置付けとしてここのものなのか、当事者訴訟の位置付けなのかという分類の意味では少し違うところがあるのかなと思います。だからあちらを膨らましていくというか、あちらの射程をもっと広く確認していくという形で対処できる事項と、どちら側から広げていく事項とか、どの辺りがぶつかるのかという辺りはなかなか難しすぎてよく分からない。 【塩野座長】行政指導は細かい議論をするとなかなか難しいのです。あれは職員ですから、行政庁ではないのです、行政指導は。 【市村委員】ですから、もしそうだとするとどちらかというと、この抗告訴訟なり、こちらから広げていく確認、その中である確認の訴えを認めていくというよりは、行政主体を相手に確認をすることになるのではないか。 【塩野座長】そこはもう少し考えていこうと思うのですけれども、ただ私がここで是非前提としていただきたいのは、これは抗告訴訟だから、あるいは行政訴訟だからということではなくて、要するに行政主体あるいは行政主体の職員が何事かやったときに、自分に不利益になると思う時に手を挙げる人、手を挙げた人がいたときに、どういうふうにそれを受け止めるかという、そういうお話ですので、抗告訴訟はちょっとまた別のことでご議論いただきたいと思います。 【深山委員】遅れてきて、ちょっと議論の焦点が合っていないかもしれませんが、確認訴訟は、古典的な民訴の理解だと、給付訴訟が認められるときは給付訴訟が直截な解決だということで、そちらでやって確認訴訟は許されない、そういう意味では補充性がある、最後のバスケットクローズみたいな世界です。先ほどの小早川先生の方も不作為の給付を求める訴えで救済をするのか、それとも外形標準課税の例を挙げられてましたけれども、元の方で行くのかというのは、実際に当事者の気持ちからすると自分に近い、自分の困りそうなことに近いところで争うという意味では元の違法確認で行くよりは予防的不作為の方がいいのではないかというお話がありましたよね。それと似たような話なのですが、不作為の給付を求める訴えで、求める不作為で何をしてはいけないかというこの特定性、普通処分だと取消訴訟だと非常に厳密に、誰が、いつ、何法に基づいた、どの処分ということを特定します。こういう形の特定は事前ですから、厳密にやればやるほど、難しい。いつやるかはもちろん、これからのことですから、ないわけですかれども、それ以外のことを全部特定しろというと、処分の内容というのは不可能に等しい。そうすると、ある程度抽象度の高い、何とか法に基づく、これかこれかの監督処分はやめてくれというのか、あるいはどれをされるか分からない、いろんな監督処分があって、どれも困る、しかし疑われている調査は受けているというときに、全部ダメだというのか、どんどん広げていくと、不作為の給付を求める訴えで行くべきなのか、それとも確認の訴えで行くべきなのかというのは、そういう意味では隣接しているところがあるのです。両方の棲み分けといいますか、私が古典的に思うところでは、不作為の給付が求められれば、確認の方はできないだろうと思うのですが、ですから取消訴訟の対象の関係との隣接点もあるというお話がありましたけれども、不作為の給付についても私はどの範囲をまず特定すれば、不作為の給付を求められるのかという問題があって、それとやっぱり軒を接している問題だと思うのです。 【塩野座長】その点はご指摘の通りだと思います。 【福井(秀)委員】その点に関連してなのですが、例えば東京都の外形標準課税なんかは深山さんの発想だとむしろ条例の違法確認の方が直裁だということになるのですか。予防的不作為よりはそっちの方がかえって明快ではないかということですか。 【深山委員】予防的不作為に一義的明白性みたいなことを要求すると、およそいくらの課税処分をされるかは大体、利益がどのくらいか分からないですから、いつされるかはもとより、分からないのです。しかしそれでも根拠法令さえはっきりしていて年度ぐらいはっきりしていればいいというふうに言わざるを得ないのかなと。ただそれがどんどん広がっていくと、およそもう少し前で叩かないといけなくなってきちゃって、その棲み分けが非常に難しい。 【福井(秀)委員】給付が原則だということをあまり重たく言い過ぎると、大変難しいところに陥るわけです。 【深山委員】ただ、先ほど出た古典的な民訴の理解では、給付で行けるものはあえて確認をしなくていい。それともう一つは、給付の場合もそうなんですが、何々をしてくれないというときにして欲しい人もいるわけです。自分はして欲しくないと。第三者が喜ぶ場合だってあるわけで、元をどんどん叩いていく、抽象度が高まるとその当事者が争わせるのが適切かという問題がどんどん広がるような気がして、ですからなるべくコンパクトがいいと思うのです、争う範囲は。その当事者が困っていることの救済のために必要な限度です。だけれども、そこは難しいですねと言っているだけで、良いアイデアがあれば教えていただきたい。 【福井(秀)委員】そこで迷わなくていいように仕組んでおかないと、社会の混乱が起こるということになります。 【水野委員】それは要するに、例えば不作為の給付、抽象的不作為を求めることを認めるかどうか、そこで違ってくるわけで、例えば何らかの不祥事があったとして、それを争っているときに、戒告だとか解雇だとか、そういう懲戒処分の種類も分からないときに、そういう具体的な処分内容が分からなかったら、差止めができないと言うのか、それとも抽象的な不作為でいいということであれば、懲戒処分をしてはならないという差止めがあるわけですね。具体的な処分でなかったら差止めが認められないということであれば、懲戒権限行使ができないことの確認を求める、何かそういう確認訴訟に行かざるを得ないという、そこはそれによって違ってくるのではないんですか。 【深山委員】軒を接する問題だということです。 【水野委員】それはそうだと思うのです。 【小早川委員】ですから、長野勤評の場合は、自己観察結果を自分で書く義務がないことの確認を求める方が審判の対象としてもかっちりしていますし、それに違反したときに将来どんな処分がくるか特定しないと差止めができない、と言ったかどうかは分かりませんけれども、そういう問題は確かに深山委員がおっしゃるようなことになるので、そこは自ずと、どっちでやるかというのは分かれてくると思います。 【塩野座長】項目を立てた基本的な理屈と言いますか、契機は要するに取消訴訟なり、給付訴訟なりなんなりでうまく救えないものについて、確認というものをちゃんと用意しておく必要があるのではないか。それはあると言われればあるのですが、たまたまそれについて、あまり活用してこなくて、市村さんだけ活用していたところがあるのですが、活用してこなかった。そこでこの際、こういう活用の道をもう少し、きちんと整理したい。その場合に、先ほど深山委員が言われたように古典的な民訴のままだと危ないものでも、最近民訴もいろいろ変わっているというので、近年の民訴では一体、我々が考えていることで、確認の利益があるのかどうかという点について、もう少し整理していきたい、そういうことだと思います。 【萩原委員】ちょっと分からないので、教えていただきたいのですが、今議論になっている話で、先に座長もおっしゃったように確認の訴えが取消訴訟の対象と非常に関連するということは分かります。後で深山委員がおっしゃった予防的不作為という話と確認の訴えというところの議論もまだ分かるのですが、ここに書いてある行政立法、行政計画というようなことについて、訴えができるのかということについて、ここにわざわざ書いてあるので、それについてはどうなのかということなのです。例えば、予防的不作為何とかというようなことで、その行政立法、行政計画ということについても可能なのかどうか。 【塩野座長】それは私の理解では、例えば行政立法、行政計画が取消訴訟の対象になりますと言ってしまうと、先ほどの話ですが、確認訴訟は要らないのかな、あるいは確認できないと見るのかなと、そういうことに繋がってくる。ただ、行政立法でもいろんな行政立法があるので、なかなか取消判決、あるいは取消訴訟に馴染まないものもあるのではないか、そういうものでも自分に具体的にこういう利益侵害が起きそうだということであれば、それは確認訴訟でこれを救うことができるかどうかという、そういう問題提起、というふうにご理解いただければと思います。 【村田企画官】資料の2をご覧ください。本案判決前における仮の救済の主な論点と考えられるものを記載した資料でございます。1として、「執行停止の要件」の問題を挙げております。執行停止の要件として「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という要件が行政事件訴訟法第25条第2項本文に規定されておりますが、この要件が厳格に過ぎるのではないかというご意見のあるところです。そこで、このような定めにより不都合が生じているのは、どのような場合か、という観点からご検討いただいたらどうかと考えたところです。なお、この規定の前身であります行政事件訴訟特例法第10条第2項では「処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき」と規定されておりましたけれども、現行の規定はこれを緩めたものだといわれております。立法担当者の解説であります杉本良吉さんの行政事件訴訟法の解説では、「処分を受けることによってこうむる損害が金銭賠償不能あるいは原状回復不能のもの、もしくは「著しい損害」でなくても、社会通念上それを被ったときはその回復は容易でないとみられる程度のものであれば足りるとする趣旨である。」とされております。さらにこれに続けて解説では「もっとも、この損害は、ひっきょう裁判所において執行停止の拒否を判断するにあたって、停止によって原告の受くべき利益(免れる損害)として、当該処分の不停止によって維持される公共の福祉と比較衡量されるところのものと考えられるから、具体的事情の下において、後者とにらみ合わせて、それを犠牲としてもなお救済に値する程度の損害かどうか相対的に決まる性格のものといえよう。」とも解説されております。 【塩野座長】この仮の救済につきましては、第1トラックということで、権利の利益の実効的な確保ということで、大方のご同意を得ているところだと思いますけれども、さらにそれをもう少し細かく要件の問題について、調べていただいたということだと思います。 【市村委員】私がお答えできる、あれではないのですけれども、私の感じでは、例えばですけれども、私はこの続行の中に入るというのでもいいのかなというふうに思ってしまうのですけれども。ただ、運用の問題とご指摘ありましたが、要件が大きな形で、執行停止の要件ができているものですから、現場で使うときは、いつか申し上げましたが、例えば、公共の福祉というものの取りようによっては、何でも公共の福祉に影響があるとは言えてしまうわけです。それをどうするかということで、さらに運用の中で工夫が、いろんな分野でなされております。例えば、最近多いのは退去強制処分の停止ですけれども、そうしたときには見方の基本の軸として、一つには行政処分の執行によって確保せんとする利益、それから本人の受けるダメージとを比較衡量する。ただ同質のものでないので、なかなか単純な比較衡量はできないのですけれども、その大小をどこまで本案で決着つくまで、どちらが待つべきかという辺りのことを直截にやって、事件ごとに段々類型化しているのが現状でございます。 【塩野座長】いかがでしょうか。 【福井(秀)委員】執行停止の要件なのですが、今市村委員が言われたご議論にも通じるのですけれども、これは後ろの方にも出てくる、公共の福祉なり、公共の利益ということと独立に、回復困難な損害を避けるために緊急の必要ということを判断するというのは若干無理があるような気がします。というのは、民事でも基本的構図は同じだと思いますけれども、執行されて困る人と、執行しないと困る人と、いわば裏表で両方の当事者がいるわけです。執行されて困る人はもちろん被処分者であり、執行しないと困る人というのはいろんな意味での処分の受益者とか、あるいは行政なり公共一般の利益と置き換えてもいいわけですけれども、そうしますと執行停止の判断をするときに、本案の話が仮に白地だと、これからどう転ぶか分からないということを前提に考えますと、これは確率の問題ですから、一応対等に考えるとすると、結局どちらの方が利益のいわば残存部分が多いのかということに帰すると考えるべきではないかと思います。具体的に言うと、執行で得られる利益というのは公共の利益です、執行で失われる利益は被処分者の利益。執行で得られる利益マイナス執行で失われる利益というのが、いわば純益として一応、計上しうるわけです。もう一つは執行停止で得られる利益、これは被処分者のものですし、執行停止で失われる利益、これは公共のものだとすると、これも観念的には差分を出すということができるかと思います。まさに差分の純益同士を比べてみて、一体どっちがでかいのか、仮に本案の勝訴確率が同じであれば、それが大きい方に転ぶ方が、結果的には合理的になる、こういう観念的な図式はあると思うのです。ですからやはり、こういう定性的な要件ではなかなか言いにくいというのは分かるのですが、この緊急の必要とか、いろいろ持って回った言い方をするよりも、むしろ比較衡量して、本案が白地だということを前提にすれば、公共の福祉と、それから被処分者の利益との差し引きの勘定で判断するという思考枠組みの方が、社会的にも、合理的だという気がいたします。これに関して、似たような議論が後ろの方にも出てくるのですが、(3)の方はあとの方がよろしいですか。 【塩野座長】2までです。そこで止めてください。 【水野委員】今福井先生がおっしゃったこと、基本的にそのとおりだと思うのです。これは要件を度外視しましたら、大体この事件は執行停止をしないといけないかどうかというのは、ある程度あると思うのです。ところが、それが本当に執行停止をすべき事案なんだけれども、執行停止の要件がきつすぎるので、その条文によってはできないということがあってはならない。それで、日弁連は執行停止を原則にすべきだと、ドイツ式に、と言っているのですけれども、執行停止を原則にしても、執行不停止を原則にしても、それに対する例外の要件についてはある程度、柔軟な形にすべきではないかと思うのです。仮に現行法どおり、執行不停止を原則にしますと、どなたもおっしゃっていますけれども、今の回復困難だとか、緊急の必要とか、これはいかにも要件がきつ過ぎるわけです。少なくとも、緩めるべきだと思います。 【芝池委員】今まで、各委員のご発言と同じようなことでありますけれども、この執行停止をするかどうか、通例は公益と私益の比較衡量で決めるということになっているのではないかと思っております。ただ一つ付け加えるとしますと、原告が勝訴する見込みが明らかである場合、この場合やはり仮の救済の必要性が高くなると思います。逆に勝訴の見込みが全くといっていいほどない場合、こういう場合、仮の救済の必要性は小さくなるだろうと思っておりまして、法律の文言にかけるかどうかは自信ありませんけれども、そういった点も考えた方がいいのではないかと思っています。公益と私益の比較衡量が必要となりますのは、グレーゾーンの場合、勝訴できるかがはっきりしない場合ということになります。 【市村委員】今のご指摘、確かに、私も前にあれしたのですが、今の建築確認の例で、第三者の保護という側面が、今の制度の中にはあまりきちっと出ていないのではないかという危惧はあります。ただ、今おっしゃられた中で、私益とおっしゃられたのですが、必ずしもそれに全部還元しきれないというか、そういう公平な、あるいは一つの基準に基づく運用をするということ、それ自体が公益性を持っているという側面もあると思いますので、そうしたものを確保するという意味では、やはり公益というのは全くなくなってしまうものではないだろうと思います。それと先ほど来、比較衡量というお話なんですが、実際の感覚ですと、例えば食品衛生法に基づいて、営業停止処分を受けている場合、営業停止処分がこんなに長引いたら、もう私のところは倒産してしまいますという、非常に切実な申立人の訴えの場合、その問題とそれを停止する必要性と、本当に秤にかけられるだろうかということも考える必要があります。非常に異質なものを、どうしてもかんがえなければいけないタイプのものが多くなるので、量的な比較が非常に難しいという特殊性があるということが、一般の民事よりは多いのではないかと思っております。 【深山委員】最初に座長が言われたとおり、この要件は非常に抽象的なものですから、これの書き方の問題なのか、運用の問題なのかというのは参考で付いている裁判例を読むと私もそういう気がしないわけではないのですが、さはさりながら、この要件が厳格過ぎると思われるのは、ごく素直に考えて、回復困難な損害というのは、金銭賠償で、てん補賠償が生命身体についてもできるという原則を民事的には一方では取りながら、回復困難といった、人が死んだときにすら、てん補賠償として、金銭賠償が建前となっているのに、回復困難な損害って何なのかというのが非常に分かりにくく、ものすごく重く見える。 【塩野座長】ちょっと時間がありますので、何か特に付け加えることがありましたら、今の第2の方でありましたら、どうぞ。 【福井(秀)委員】さっき、芝池委員がおっしゃった、本案に理由がありそうかなさそうかというのは、私、さっき申し上げなかったのですが、全く同感でして、これも現に25条の3項にも、「本案について理由がないと見えるとき」とありますので、勝訴確率がうんと高い場合と、うんと低い場合には、おのずとそれにウェート付けをした判断があってしかるべきですので、先ほど申し上げた意味はあくまでもニュートラルな場合であり、勝ちそうかどうかということによって、ウェートは変わってくると思います。 【塩野座長】この問題、いろいろご意見がございまして、やはり多少要件をもう少しわかりやすく書き改めた方がいいのではないかというご意見もございました。良い知恵が出るかどうか分かりませんけれども、何もないとまた同じような議論になりますので、いつかの段階かで、事務局の方で、こういうものが作れれば、作ってご批判にさらしてみたらどうかという感じもいたしますので、よろしくお願いいたします。なお、私はこの判例を見てて、この要件、よくこれだけ一生懸命やっていただいているなあと、柔軟にやっているので、そんなに条文にしなくてもいいのかなと思ったら、最高裁の判決が出ましたので、これはやっぱりきちんとしないと、またえらい硬い読み方を下級審がやり出したら大変だという気がいたしました。それから、執行停止に対する不服申立ての在り方は、注にもありますように、内閣総理大臣の異議の制度との関係もありますので、ちょっといろいろな点で注意深く検討を要するところだと思いますので、こういった問題があるということは、今回新たに指摘されましたので、問題について、特にこれは仮に原審決定の執行停止に対する即時抗告に執行停止の効力を認めるとすると、その場合の要件はどうなるのかといったような問題も含めて、事務局にさらなる検討をお願いしたいと考えております。 【市村委員】そこはそれとの相似形というか、そういう形になるのかなと思います。ただ、同じ意味で先ほどちょっと意見を言わせていただきましたけれども、その在り方が命令という形でやるのか、行政にそれを義務付けるというか、うなずかせる形でやるのか、という問題はやはりこちらの方でも同じ問題で出てくるのかと思います。 【塩野座長】基本的にはこのペーパーは民事訴訟の仮処分の制度を横目に見ながら、それと同等に扱っていいものは、同等に扱うべきではないか、そうでないものはそうでないというだけの話なのですけれども、例えば一番出てくるのは、(3)の③のところで、「公共の福祉又は公益に配慮した要件」という部分が出てきておりますが、これも民事の仮処分でもやはり裁判官は見ているのでしょうか。 【水野委員】それは私は何遍も申し上げているとおり、裁判官が公共性を見ていることは間違いない。 【市村委員】どうも、執行停止の制度との連続性というのはやはり無視できないのではないか。だから先ほど、執行停止のところで、もっと見直しをしましょうと、同じ延長でいいのですけれども、やっぱりこの仮の制度というのはさらにその上に積み上げていくというか、そういう性格を持っているのではないか。実務では民事仮処分の場合は担保、保証金が非常にいろんな意味で機能しているはずなのです。ところが、行政のこういう場面では全くそういうものは実質的にはあまり持たないものだろうと思うのです。その問題が抜けてくるというので、同じにしましょうといっても、金銭を立てることで、いろいろと強弱を補う、あるいはいろんなリスクを回避するという期待はできなくなります。むしろ正面からやっぱり考えなくてはいけないもの、相手方の利益というよりは、この場合は先ほど来出ている公共の福祉とか公益とか、そういう形ですけれども、それは何らかの形で配慮する必要はあると思います。だから、そういう意味で、要件をどこで考えるかというと、単純に44条を廃止してしまって、後全部使えるというのは、やはり現実的には難しいのかなと思います。 【福井(秀)委員】私も今、市村委員がおっしゃったような趣旨なんですけれども、やっぱり先ほど申し上げたような天秤にかける要素がないといけないというのはそれはそのとおりだと思います。ただ、仮の地位の仮処分についての特質ということで考えると、大体これは、当人の身分的な地位とか、割合本人に関わるものに限るようなケースが多いと思うのです。合格した地位とか、公務員の身分たる地位とか。そうするとそれを認めることに伴い阻害される公益というのは、多分もうちょっと一般的な侵害処分に比べると、比較的限定的な領域に留まるものが多いという特質があると思いますので、天秤にかけて、実体判断すると、それほど仮の地位を認めたからといって、天地が引っくり返るようなことは滅多に起こらないのではないかという気がします。 【深山委員】公共の福祉、あるいは公共の利益についての要素はどちらの方も何かしら、考えざるをえないとすれば、これは民事保全と同じように保全の必要性は原告、要するに申立てをする方が言うというのでは、事柄の性質上、おかしいという気がするのです。公共の福祉に重大な影響があるかどうかは、ありませんということを国民の側が言うのはおかしいので、やはり執行停止と同じように消極要件として、国又は行政側が言うようにする。その限りでは、民事保全は被保全権利も保全の必要性もいわば国民の側になりますので、やっぱり独特な部分というのは、主張立証の責任分配の点でもあるのではないですか。 【塩野座長】この点はかなり専門技術的なことになりますので、民事保全手続との関係を見ながら、できれば事務局の方で整理をしておいていただきたいと思います。 【水野委員】これは、どちらでも。 【塩野座長】そういうことであれば、時間の節約もございますので。 【水野委員】むしろ、仮処分、保全処分の制度と違うものにする必要があるのかどうかという気がします。 【塩野座長】この点はもう少し、事務的に整理してもらうということにいたしまして、大分時間も経ちましたので、この辺でちょっと休みを取ったらいかがかと思います。 (休 憩) 【塩野座長】それでは会議を再開いたします。それでは次に「処分又は裁決の理由を明らかにするための方策」の整備について、ご検討をお願いいたします。これも第1トラックにおきまして、大筋のところについては、意見の一致を見ているところですけれども、具体的な制度設計については、まだいろいろと問題があるということで、事務局で整理していただいたものです。それではまず、事務局の方から、説明をお願いします。【村田企画官】資料1をご覧ください。「処分又は裁決の理由を明らかにするための方策についての主な論点」ということで記載してございます。1として記載しておりますのは、まず理由の説明を求めるという点に関してでございます。処分又は裁決に関する理由の説明を求めるために、民事訴訟法に現在規定があります、第149条の釈明権等という規定がございますけれども、ここで定められている制度のほかに、行政訴訟に独自の制度を設ける必要があるかどうかということについて、ご検討をいただく必要があるのではないかと考えました。民事訴訟法の149条では、まず裁判長の権限として、「口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる」ということで、裁判長が当事者に質問をしたり、立証を促したりする権限がございます。これを釈明権と言っているわけでございますけれども、こういった制度がある。しかも陪席裁判官も必要に応じて、裁判長に告げて、その処置を講ずることができることになっておりますし、また当事者も裁判長に対して必要な質問をしてほしいというときは、それを裁判長からこういう質問をしてほしいという形で求める、必要な発問を求めることができるということで、149条3項の規定がございますけれども、そのような仕組みになっているところでございます。行政訴訟で、行政事件訴訟法の第7条によりまして、現在でもこの規定、当然行政訴訟においても適用があるわけでございますから、行政事件を扱う裁判所の方で、この釈明権の行使ができるわけですけれども、これとは別に行政訴訟の特殊性というのを何かしら考えて、独自の制度のものを作ろうということにするのであれば、その必要性をどこに求めるのかといった点をまとめておく必要があるのではないかというところでございます。 【塩野座長】1に2つございまして、1は理由の説明について、新たにこういった制度を考える必要があるかどうかということで、この点については議論しているときに、いろんな角度からやはりこれは必要でないかということのご発言があったわけでございます。それぞれについて、多少ニュアンスのある発言ですので、私はそれぞれについて納得していただければというふうに申し上げました。ですが、そういう意味ではここは、それぞれの制度化の根拠はいろいろとおありかと思いますけれども、制度を設ける必要があるということについては、一応のご意見をいただいていると思います。ただ、この際前回この問題を議論したときに、発言についてもう少し補いたいとか、あるいはそのときには発言しなかったけれども、今回こういう理由があって出したい。さらには必要ないというご意見も含めて、どうぞ、1の方からお話をしていただきたいと思います。 【芝池委員】裁判の実務をよくご存知の方にお聞きしたいのですが、この理由の説明のようなものを求めるとしますと、これは最初の期日のときになるのでしょうか、あるいは訴えの適法性を認定した後ということになるのでしょうか、適法性を認定する前になるのでしょうか。 【市村委員】もし作るのだとすれば、今のやり方ですと一応、本案前の答弁というのが出てきて、一区切りあります。そして、なお実体に入った主張をせんとするときに、1回目で全部やってしまうときもありますし、区切ってやっていくこともあります。あるいは全くそんなことは必要がないという対応もあります。第2弾に入る必要がないと言っているときにまで、全部やらなければいけないということはおそらくないと思います。むしろその適法を、処分の適法を実体的に根拠付けようというようなときの、一番便利な手段として冒頭に出てくるというのであればよろしいのではないだろうかなと思います。 【水野委員】これはもちろん本案の話なのですけれども、本来処分をしているわけですから、行政はそれなりの資料を持っている、あるいは理由もはっきりしているわけです。けれども、私の経験で言いますと、税務訴訟ですと、第1回の答弁でなかなかそこまでやってもらえないのです、不思議なことに。これを本案前の抗弁で出していれば、また話は別なのですが、本案前の抗弁では出していないという場合であっても、第1回期日では、原告の請求を棄却するという答弁だけしておいて、課税処分の根拠については次回に、という話になる。証拠も大体、小出しなのです。やはり行政訴訟の場合では、原告と被告とのいわゆる、武器の対等が保障されていないということがかねてから言われているわけです。これは要するに行政の方はいろんな証拠を持っているわけですけれども、それをなかなか全部オープンにしない。したがって、原告の方でも十分な争いができないということです。民事訴訟の文提で書類が出されるとしても、これは当事者でない場合も想定しているわけで、行政訴訟法はあくまで当事者間の訴訟ですから、やはり民訴の文提とは違った、プラスアルファしたものを設けるべきだというのは是非必要だと思うわけです。それでやはり、そういった処分の根拠となったと言いますか、その処分をするに際して収集した資料は一切出すということにすべきでないか。これは証拠として出されてもいいわけですが、せめて、閲覧をさせるということにすべきだと。行政手続法18条は「調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料」、こういうことになっているのです。これはかなり限定的だと思うのです。つまりそういった不利益処分をした、それに足る書類という意味で。しかしそれとは矛盾するような、つまり行政庁に不利益という書類も当然ありうるわけですから、そういったものを含めて、やはり一切の資料を出させるという制度を作る必要がある。これはそういった資料というのが何も行政庁だけのものでありませんので、国民のものでありますからです。もちろん、例外的な手当ては必要だと思いますけれども、原則として、そういった制度設計をすべきだと、前々から申し上げておりますけれども、そう思います。 【福井(良)委員】今の水野委員の関連ですけども、一切の資料ということで、把握できるかどうかという心配がありまして、多分従前の問題と並行して、各省の資料の保管の状態とか、どういう形態で、どの程度、どの期間保管することになっているか、実態とも係わりますので、そこは各省ヒアリングのときに、問題提起として聞いた方がいいかなと思います。 【塩野座長】今はもう既に2の方に入っておりますが、1のところはこの前の議論のときには、今水野委員がおっしゃった武器対等の問題もございましたけれども、私もそのとき申し上げたのは、むしろ行政過程における行政の説明責任の問題が司法過程においても、やはり貫徹すべきではないかということも申し上げたような記憶がございます。これはそれぞれの根拠が違うということがございますけれども、とにかく何らかの手当を設けるべきだということについては一致していると思います。そこで、むしろ問題は記録等の提出、2のところで、今福井委員から、それからあるいは水野委員からご提案があったわけですが、これは前回も確か、深山委員の方から、実は法制審の方でも特に文書提出命令については議論をしているので、その辺との兼ね合いも考えるべきだというふうなご発言もあったような記憶もございますが、その後進んでいるのでしょうか。 【深山委員】実は文書提出命令の見直しの作業は現在もやっておりまして、現在も、といいますか、来年の通常国会に、民訴法の一部をまた見直すという中の、検討事項の一つとして公文書の文書提出命令制度のさらなる見直しというのが入っています。ただ、これは主として、刑事関係書類の文書提出命令、そういう意味では公文書ではありません。ごく限られた範囲の文提について、そこを中心にして見直しを行うということではあります。ただ、この資料の1で書いてあるのは、素直に読んで、釈明の話かなと思ったのです。釈明権のほかに、と書いてありましたので。ですから、釈明処分を念頭に置いたような記述かなと。2の話はまた文書提出命令の話が出てくるのですが、これは立証、証拠調べの話ですね。行訴も広い意味で民訴ですから、主張の話なのか、立証の話なのか、第三の道なのかという辺りのところが、段々制度を詰めていくときには非常に重要なことで、そこら辺りが事務当局のお考えがよく分からないなと、私は思ったのですが、立証の方については、職権証拠調べで、文書提出命令をかけて公文書についてもぎりぎりのところまで、これ以上やると、守秘義務違反で処罰されるというところまでは出してくださいということになっていますし、そもそも行政情報公開法で、ほぼ守秘義務違反にならないものは全部出せるというか、取れると、それはどの人でも開示請求ができるというシステムがありますので、立証の場面でここは争点になる、ここの勝負はこの行政庁のこういう文書があるのに出てこないというのであれば、最終的には裁判所が職権で提出命令をかけて、故なく秘密だ、秘密だと言えばインカメラ手続で裁判官が見て、そんな秘密はないでしょう、出しなさいと言って、命令を出して、水野委員が言われているようにまさに当事者ですから、これは非常に大きな不利益が違反について生じますので、立証の場面では私は文書提出命令の更なる見直しを一部の公文書についてはしておりますけれども、それも見ていただきたいですが、もうやりようがないのではないかと、むしろ主張しようという段階で、釈明ですから、訴訟関係を明瞭にするために詳しい被告の内部の検討資料がどうしてもないと分からないというようなときに釈明処分として、性質としてはですね、主張をはっきりさせると、争点を。そのために記録なりを出すということを考える方向で考えた方がいいのではないかなと、基本的には。 【塩野座長】私はちょっと舌足らずですから、一応基本的には釈明の話、主張立証の問題と一応切り離して、ご提案をしているつもりだったというふうに思っております。 【水野委員】ただ、文書提出命令の場合は、文書の特定がそこそこ必要なのです、大体の民事訴訟の文提というのはこういう争いですから、こういう文書があるはずだ、これがほしいと、そういう関係で出てくる。ところが、今議論しているのは、行政訴訟の冒頭部分で、さっき座長が説明責任とおっしゃっていましたが、やはりこういう理由で、こういう資料に基づいて、こういう処分をしましたということはまずやるべきなので、だからそれが説明責任に必要な範囲内で、これだけの資料でやりましたということだけではなくて、他にも資料はあるはずなので、それも含めて出せという制度が必要ではないかと思っております。 【深山委員】文書提出命令は、確かに文書の標題や趣旨を特定することになっていますが、そこはこの間の法改正で、少し緩やかにしてもいいですよと、はっきり何という文書か分からないけれど、それに関する文書で言えば、名前なんか分からなくてもいいですということにしているはずです。なぜ、しかし文書の特定が要るかというと、最後に不服の申立てができるわけです。ですから本当は出すべき文書を出さなかったときは裁判所が最後は文書を見て判断すると、それで例外文書はどれかということは裁判所が決めることになっているわけで、そうなると文書が漠然としていると、出す方も何を求められているか分からない。裁判所の方も出すべきか、出さざるべきかというのを決めるのに困るから、文書の特定はある程度不可欠になっているのですが、今の、しかも立証事項が定まっていて、そのときの証拠として必要があるという場面の話と、訴訟の入口で全部出しなさいというのは全然違う話だと思うのです。いわば段ボール1杯、2杯とか、一つの処分でそういう処分もありますが、全部取りあえず出してくれと、争点はここだけかもしれないが、全部出してくれと、それはなぜかというと説明責任だけで全部出せというのは、これはコストと、あるいは手間と必要性とのバランスがあまりにも失しているのではないかと私は思います。立証の場合については、立証に必要な限度では手当がされているし、釈明的なものとして考えるのだとしても、何も入口で無条件で全部出しなさいという制度にする必要は全然ないのではないかなと思います。 【小早川委員】今の議論を聞いていて、こういうことをこれからロースクールで教育しないといけないのかなと思いました。 【水野委員】今の深山さんに対する反論ですけれども、要するに全部コピーして出せと、そういうことを言っているわけではなくて、少なくとも開示する必要があるだろうという話が一つ。それから、行政処分がされた場合に、例えば事実認定でも、行政庁が行った事実認定に沿う証拠もあれば、これと矛盾する証拠もあり得るわけです。ところが矛盾するような証拠は出てこないのです。それからもう一つは、いろんな利益衡量して、行政決定をしている場合に、こういった状況の中で裁量権を行使して、こういう処分をしたと。ところがそれに矛盾するような資料だってあり得るわけです。例えば環境問題で言いますと、何か開発の処分だとすると、開発の処分をするにマッチした資料は出てくるけれども、それに反する資料というのはなかなか出てこない、こういったことがあるわけです。ですから、そこをどうやってオープンにさせるかということです。確かに情報公開法も一定程度役割を果たすのはそのとおりですけれども、今議論しているのは行政訴訟の場においては、訴訟の当事者については、やはり相手方の持っている、それに関連する資料は、全部、オープンにして、その中で争いをすべきではないかと、これはまさに武器対等であるべき訴訟の場でないかということで議論しているわけですので、そういう必要性はあるのではないか。 【福井(秀)委員】私も水野先生のおっしゃることに基本的に同感なのですけれども、深山さんがおっしゃったように、第1回目に何が何でも細かく特定できるかというと、それはそのとおりだと思うのですけれども、ただここは訴訟法の技術的な問題というより、基本的な問題の構図において、水野先生がおっしゃったことは私も非常に実感としてよく分かるのです。実際の訴訟の指定代理人の経験で申し上げますと、1回目の期日というのは極力不親切にやるのだというのは法務省の訟務局の、少なくとも当然のご指導でして、行政庁は訟務局にみんな洗いざらい持っていくわけです。こんなのは要らない、あんなのは要らないと言って、最低限の一番不親切な対応をするのだったら、これとこれぐらいで十分だというのが、1回目に限らず、とにかくばれない限りは最後までそれが続くというのが、最近は変わったかどうか分かりませんけれども、私の知る限り、行政庁の応訴手段のセオリーでありまして、あんまり当事者主義ということで、本人の出したい資料だけ選択できるのだということだと、多分行政訴訟の場合にはうまく回らないということがあると思います。現実にこの間も、川辺ダムの判決がありましたけれども、あれだって、千人を超える人が実は本人は署名していないということが、処分をやり、さらにそれに対する異議決定までやっている中で、明らかでなかったはずはないのに、それが一審では明らかになっていなかったわけです。こういうのは、ばれてしまうのはよほど下手な応訴をした場合で、知らない事実は知らないまま、闇に葬られるということはかなりあると思います。私も守秘義務に反しますので、具体的なことは言えませんけれども、隠しおおせたであろう資料だって、随分脳裏には浮かぶわけでして、やはり本当はそれではいけないと思うのです。もちろん、どこまで特定できるのかという技術的な困難はあるにしても、本来、その裁判の前提となった処分に関係する、要するに法的な判断に熟するに当たって使った資料を不利なものも含めて包み隠さず、法廷の場に出すべきだというのが、1回目にやるかどうかはともかくとして原則で、それをできるだけ合理的な形で取捨選択できるようにするという仕組みに近づけるべきではないかと思います。 【市村委員】前回も少し申し上げたのですけれども、行政庁の保有している文書について、民事訴訟法の改正がなされて以来、文書提出命令の申立てなどが、非常に多くなってきました。その動きがどうなっているかということについてはまさに半年単位ぐらいで変化してきているというふうに言っていいのではないかと思います。当初のうちは、非常に大雑把な、特定のレベルでも、大雑把な特定しかしないという感覚だったものが、やはりそれではいけないというふうな認識で非常に細かなところまで出てきている。昨今のポイントというと、また少しずれていまして、そういうものが今、ここで問題になります220条4号ロの、公務の遂行に著しい支障を及ぼすか否かという辺りで、どの範囲でそれを出すか、という辺りのところの攻防というか、そういう議論に移ってきているわけですけれども、段々進化して、地についたものになりつつあると思うのです。裁判所はまだ判断回数が少ないものですから、どういう範囲でそれが線引きができたかというのはとても言えないのですが、ただこれが定着してくれば、先ほど深山委員が指摘されたように、立証の場面においてはやはり、例えば3、4年前のこの状況と比べたら随分違う状況が出てくるだろうと予想されるところがあります。そういう意味で立証の面から言うのであれば、もう少し、文書提出命令というやり方でどこまで出てくるのか、その辺りを少し見て、やっていった方がいいのではないか。例えば仮にここにもし入れて、またここに同じように4号のロという同趣旨のような規定を入れるのであれば、入口が違うだけで、結局同じことをやってしまう。そういうことがどこまで進んで、なおその他にどういうものが必要なのか、という議論が一つあるのかなと思っているのです。また、先ほどおっしゃられた釈明の問題として、どこまで答えるかという問題は、皆さんおっしゃるとおり違うと思います。ただ、釈明の問題と、一方では立証責任という問題があるわけですから、当事者としての立証責任の問題とが、実際は釈明といって、それが入れ替わってしまうようなものでも困るわけで、だから、それが本来の釈明義務なり、あるいは行政庁としての義務なりとして、どこまでやるべきかという議論は、それだけ独立にもう少しやった方がいいのではないかという気がいたします。 【塩野座長】大分議論が整理されたと思います。この点について、実は今日もう一つ、二つ大きな議題がございますので、今ちょうど文書提出命令についてはもう少し推移を見た方がいいというご提案もございましたので、そういうことも勘案しながらヒアリングの資料を作るということにしたいと思います。 【小林参事官】資料4は行政訴訟の対象と、取消訴訟の排他性、民事訴訟との関係、出訴期間に関して、これまでの検討会の議論の概要を踏まえて、論点を整理したものであり、その論点については、国民の権利救済を実効的に保障するという観点から、主だったところを拾ったものです。全体の議論の概要については、別途資料6と資料7として、要約したものを用意しており、こちらの概要を併せてご参照願いたいと思います。 【塩野座長】どうもありがとうございました。この資料は今まで、今日ご議論いただいた資料と作り方がかなり異なっておりまして、今までお示ししたのは義務付け訴訟等の提案を除いて、第1トラックで大体方向性が見えているものについて、なお論点を細かくしてもらったと。義務付け訴訟についても、かなり議論が煮詰まっているところもございまして、要件等について絞った形で、ご提案し、ご意見をいただいたところでございます。ただ、このことはこれから主な論点として出されている問題点については、なおご提案があり、またそれについてもう少し考えるというようなご意見もご披露ございまして、どれに固まったというものでもございません。そういう趣旨で、今までのご議論をできるだけ客観的に整理してみると、こういうことでございます、というような資料でございます。 【芝池委員】それでは行政立法、それから行政計画に対する訴訟に関しまして、1のところに大体対応すると思いますが、意見を述べさせていただきます。まず、行政立法の方でありますが、1のアのところに掲げておりますように、現行法でも直接具体的な法効果を生ずるようなものにつきましては、取消訴訟の対象になることが認められていまして、その程度でいいのではないかと思っております。つまり行政立法のために、特に訴訟の類型を設ける必要はないであろうということであります。その理由は、一つは行政立法につきましては独立の訴訟を認めますと、もし裁判におきまして、その行政立法の違法性が否認されるということになりますと、その後の民事訴訟などにおいて、行政立法の違法性を主張する場合に制約になるかなと思います。つまり最初の訴訟で、既成事実ができあがってしまうという問題があるということであります。ですから、行政立法を争う訴訟というのはリスキーな訴訟であると、最近私は言うようにしておりますが、そういうものでありますので、行政立法については特別の訴訟の形式を設ける必要はなくて、現行法で言いますと、取消訴訟の枠内で許容される範囲で認めるのがいいのではないかと思っております。あるいは2のところに書いてあります、確認訴訟という形でも結構だというふうに思います。ですから行政立法につきましては、民事訴訟あるいは行政処分に対する取消訴訟などにおきまして、付随的な形で行政の審査が行われることになるのであろうと考えます。 【小早川委員】1番につきましては、まず行政指導というのは基本的に取消訴訟に乗せる必要はないのではないか。特定の個人なり、事業者なりが相当ひどい目に遭っているのであれば、それは民事訴訟の差止めで足りるのではないか、被害が生じた後であれば国家賠償なりなんなりでいいのではないか、基本的にはそうだと思います。あとは、毅然として従わなければよいという、行政手続法の精神ということになります。 【塩野座長】その場合の判決はどういう、通達や行政計画は。 【小早川委員】2のところで、違法確認が基本だけれども、次の3になるのですか、ケースによって適切な是正措置というのが絞られてくれば、それを判決で。事業計画であれば、この計画に従って事業を続行してはならないというような判決ができるかどうかです。 【塩野座長】それは一種の差止め訴訟ですか。 【小早川委員】はい、計画の違法認定ということを主体にした訴訟だけれども、判決としてはそこまで。 【水野委員】私は行政立法とか行政計画につきまして、やはり初期の段階で違法かどうか裁判所に判断してもらう必要があり、これは国民の側だけではなくて、被告の行政側も必要性があると思うので、これを積極的に認めるべきであると思っております。しかし、この1のウに書いてあるような、行政立法と行政計画等を取消しの対象とすることによって、排他性等によって争う機会が制限されるとか、あるいは違法性の承継の問題があるとか、そういったところについては十分検討をする必要があるだろうと思います。そういう手当をするということを前提にすれば、訴訟の対象を拡大する方向に行くべきだろうと思います。ただ、それに代わるべきものとして、今小早川さんが言われたように違法の確認とか、そういった別の救済手段があるのであれば、そちらの方が適しているのであれば、そちらの方でと思いますので、その辺り、何が何でも取消訴訟の対象にすることについて拘るつもりはありません。 【福井(秀)委員】私も今の水野委員のご指摘とほとんど同じです。結局、違法の確認といっても、あるいは取消しといっても、目的はそんなに変わらないので、より弊害がない方でやればいいのではないかと思います。ただ、この1番のア、イ、ウの問題点の指摘というのはあまり説得的でないような気がするので、ちょっとコメントします。ウについては、要するにこれは、今ご指摘があったように、立法の仕方、やり方次第だと思います。後から争わせた方がいいというのであれば、違法性の承継を認めるような立法的手当をして、そこでやればいいし、早期の段階で一挙に解決すべきだというのであれば、そこに出訴期間を設けて、その代わり違法性の承継を遮断する。それは立法の選択によるわけでありまして、一律に排他性のドグマを、立法論ですから、維持する前提でないといけないということには必ずしもならないと思います。 【芝池委員】補足しますけれども、行政立法について争う訴訟、私は独立の類型を考えているのですけれども、これは別に確認訴訟でできるのであれば、それで結構です。この行政立法を争う訴訟というのは、実際上の必要性がどこまであるかということが一つ問題でありまして、確かに条例は時々争われることがありますけれども、政省令が争われたことは、例はあるのは知っておりますが、そんなにないです。そういう状況で、あえてこういう訴訟類型を設ける、あるいは争える可能性を法律で認めるかどうかということの実益については疑問を持っているわけです。 【福井(秀)委員】それは既判力でしょうか。 【芝池委員】既判力の問題ではありません、事実上の問題を言っているのです。一旦そういう判決が出ると、何らかの形で影響がしないか。そうしますと、無責任な人とは言いませんけれども、訴訟が好きな人がそういう訴訟を起こして、負けるということになりますと、それはやっぱり後で真摯な訴訟を起こす人が困るのではないでしょうか。困らないですか。 【福井(秀)委員】既判力が及んでいないのですから、事実上は確かにあり得るかもしれませんが、それは他も、ある意味では熟していないものが争われる場合でない場合でも、訴訟行為の巧拙によって下手くそなやり方をすると、同じような類型について、下手な判決が出ることがあり得るので、あるとは思いますけれども、今のような行政立法に固有の論点とも必ずしも言えないとも思います。 【塩野座長】先ほど、1から順々に、と申しましたが、やはり先ほど既に2の方にも入った議論がありますので、1と2に関連させても結構でございますので、2の方も睨みながら議論をしていただきたいと思います。 【水野委員】2の心配ばかり申し上げてもしょうがないのですけれども、これに対する反論として、アとイがあります。一つは行政の円滑・効率的な遂行による国民の利益を検討すべきだということなのですけれども、今のような排他性と出訴期間を伴った形成訴訟というものでないと、行政の円滑・効率的な遂行が阻害されるというのは、私としては理解できない、何故そうなのかと。抽象的にいつもそういう議論がされるのだけれども、実証的にそれによって、どういうふうに具体的に行政の円滑・効率性の遂行が阻害されるのかということについては、ほとんど言われていないのではないか。 【福井(秀)委員】全く賛成です。若干補足すれば、アの方は今のような排他性と出訴期間を前提にして、必ず議論を進めないといけないというわけではないので、やはり排他性とか出訴期間の意味を個別に還元して、守るべきは守るし、変えるべきものは変えるということでよろしいのであって、あまりそもそも論の議論は馴染まないのではないかと思います。 【塩野座長】ちょっと質問ですが、今の採用内定、民間の場合はどうなるのでしょうか。 【小早川委員】民間だと、内定で契約が、労働関係が成立しております。 【塩野座長】そちらの方で整理した方がいいのかなと。 【福井(秀)委員】民事の世界。 【塩野座長】民事の世界ではなくて、行政の世界でも。あえてそれを取消訴訟の対象としないで、その方が直截に行くのかなという気がしたものですから。 【福井(秀)委員】要するに、今おっしゃられるような形で争えるようになればそれで結構だと思います。 【塩野座長】ご意見の趣旨は、趣旨と言いますか、分かりましたので。 【小早川委員】私もアとイはあまり反論としては出て来ないような気がします。アの方はまさに行政過程の中に裁判所による審査をどうやって組み込むか、それが行政の円滑・効率的な遂行に資するはずなので、そういうような訴訟の在り方を前向きに考えていくことに対しては何ら反論にはならないと思います。 【塩野座長】ちょっと質問なのですが、この2と4との関係ですが、2は行政の処分、あるいはその処分を個別法に委ねるかどうかというのは、また別問題ですけれども、それとそれ以外のものも含めて、とにかく違法を確認する訴訟を設けるというお話なのです。そうすると先ほどの、この場合のアの設問の仕方が、あるいは反論の仕方がご提案そのものに対しての反論ではないということになるのです。つまり中核部分はどう作るかは別にしても、中核はありますと、取消訴訟に。その他にもいろんなものがありますよと、それについても取消訴訟というか、違法確認訴訟というか、そういうものを一緒に入れておいたらどうですか、そういうお話がここのお話だとしますと、先ほど小早川委員のご指摘の、例えば行政指導とか、行政立法でしたか、ここに追い込んでもいいのではないかと。 【小早川委員】行政立法は別だと思います。 【塩野座長】行政指導ですね、ここに入れ込んでもいいのではないかというときに、私が質問したいのはそれは違法確認というのは、結局は確認の訴えの問題、あるいは差止めの問題なのか、ということになると、それは判決の類型の問題となって、こういうカテゴリーを作るかどうかとはやや別の話かなというふうに伺ったのですけれども。 【小早川委員】ですから、取消訴訟とは別の大皿を。 【塩野座長】判決でそういうものは受けますよということになっていれば、これは先ほどから問題となっておりますのは、訴訟類型を作るか、判決類型を作るかということで。 【小早川委員】訴訟がないといけない。訴訟であればいいのです。民事訴訟の一種だということでもいい。 【塩野座長】それを民事訴訟だと言うか、行政訴訟と言うか、これは後の命名の問題ですから、やめてくださいと申し上げているわけで、要するに確認訴訟、あるいは給付訴訟で引き受けられるということになると、何故この大きなものを作らなければ、違法確認訴訟を作らなければならないかということがちょっと分からない。水野委員の年来のご主張は、訴訟類型はいらないので、入口はどんどん何でもいらっしゃいと、判決のところで整理しますということだと、こういう違法確認訴訟というのをお作りになるというのはちょっとよく分からなかったものですから、この際ご質問をしたところです。 【水野委員】今、事務局の方で2ということで置かれている趣旨はちょっとよくわかりません。 【松川事務局次長】ちょっと混線しております可能性がありますので、資料の作り方が悪かったかもしれませんので、これは2つの論点が混ざってしまっているのです。包括的に違法確認的なもので捉えた訴訟で考えていこうというご主張と、それにプラスアルファ取消訴訟の排他性だとか出訴期間だとか、というのをできるだけ制限を縮小していこうという主張を同時に主張されている方がいらっしゃったものですから、あたかも論理的に繋がっているように、別のところの論点に対する反論をされているのと一緒にしてきているので、ちょっと混乱しているのかもしれません。ですからご主張の内容が出訴期間の問題、排他性の問題はまた別途論じるとして、という問題であれば、また別の議論かもしれませんが、新たな類型として、取消訴訟に代わるものとして、全て違法確認で争うということになると、取消訴訟が持っていることの意義をどう考えるかという基本問題は残りますので、これについては出訴期間を縮減すべきだと言う人についても最低限、第三者の関係では出訴期間は要るのではないかというご主張の方もいらしているわけですので、それは別途議論していただかないといけませんので、だからそういう問題とリンクされている誤解があるので、その点の主張がきっと紛れ込んだのだと思いますので、そこはさらに今後の議論で整理させていただきますが、そこは一応具体的なご主張は併せてされている方がおられるとしても、論理的には別の問題だと考えて議論させていただくという前提であれば、おっしゃる点はよく分かります。 【水野委員】ただ、私が以前から申し上げているのは今の取消訴訟はやめてしまって、この2のような訴訟、制度に変えるべきだということを申し上げているのです。ただ、さっき1との議論で、例えば小早川先生がおっしゃったのは取消訴訟を残すと、1というのは取消訴訟を残すという前提の議論だから、取消訴訟を残すという前提で、行政立法とか行政計画とか、その他についてこれは取消訴訟の対象にしないで、それを2のような訴訟でやったらどうかと、こういうご主張だと理解しましたので、ですから1の問題について、こういったものも取消訴訟の対象にすべきだと思いますけれども、2という形で争えるのであれば、それはそれでいいのではないかということを、1の問題として申し上げた。 【小早川委員】私もちょっと1、2の分け方に引きずられたところがあって。1のように取消訴訟を残すという前提で書かれているものですから、ではその取消訴訟の対象は何なのだということなのですが、2の訴訟が取消訴訟も全部吸収してしまうものであるという可能性はまだ立法論として残っていると思いますので、その場合はまた議論の仕方は別だと思います。 【萩原委員】いずれにしても1だ、2だという話にしても、意見と言いますか、行政立法とか行政計画とか、そういったようなものが、訴えられるかというところ、そこのところが一番の問題ですから、それを取消訴訟の対象の拡大で行くのか、もっと包括的な形で行くのかというところは、それはまた別の議論があるので、取りあえず行政立法や計画は争えるということの了解でよろしいのですか。 【塩野座長】要するにそれが国民の権利利益の侵害をもたらして、訴訟の対象になるような状態のものであれば、それは何らかの形で救わなければ憲法に反するという、そういう前提です。救われるべきものは救われないといけない。 【萩原委員】後は国民の立場と言いますか、国民の権利救済ということからすると、この2の方の訴訟類型の選択のための国民の負担をなくし、というところが非常に共感するところでもあり、形としてはこういう形もあってもいいのかなというふうに思います。これは何だか私もよく分かりませんけれども、何か2の方にちょっと印象的には良い印象を持ったところでございます。 【成川委員】この間の議論で、取消訴訟中心主義を少し変えようではないかという議論をしてきたのですが、この文章の立て方はまず、取消訴訟の対象の拡大とくると、今までの議論の中の取消訴訟中心主義を改めるという趣旨が、最後の文章はどう作るか分かりませんが、今議論のための、たまたまこういう順番にしているということであれば理解できますが、まとめ方として、ちょっと思うときには工夫をする必要があると思います。 【塩野座長】多少説明が不十分だったのかもしれませんけれども、取消訴訟中心主義を非難しているときには、それによって本来もっと良い救済の方法があるのに、それを否定してしまっている、義務付け訴訟とかですね。あるいは給付とかですね、それを押しとどめているという意味なんですね。ここで言われている趣旨は私の多少忖度するところでは、拡大することによってもっと救える場合があるのではないかと、そういうお話としてここに出てきているわけです。ただ、そうは言っても拡大すると、結果的に取消訴訟の排他性、出訴期間の制限が出てきてしまうということについての議論もちゃんとしておかなければいけないだろうと、そういう趣旨で出てきております。 【福井(秀)委員】4の排他性の縮減、先ほどのご説明を聞くと、大阪空港を念頭に置いておられるような気がしたのですが、それはそれで分かるのですけれども、一般的に排他性をとにかく少なくすればいいという議論の文脈でなくて、おそらく底流にあったのは不明確で、過度に拡張解釈されるような排他性の概念は明確にした方がいいし、限界線がある程度限定的なところに留まっていた方がいいという意味で、大阪空港の問題を典型例にこういう議論が出たのだと理解しております。そういう前提で考えると、これも反論っぽいのが下3行に付いているのですが、噛みあってないと思うのです。というのは現在でも排他性が生じるものだという明確な規定は行訴法にはないですけれども、これも塩野先生以来の学説でも、行政事件訴訟法に取消訴訟を置いてあること自体の解釈論として出てくるのだということになっているわけですから、言ってみれば現在の排他性の一種の解釈論的根拠がかなり、あいまいだということもあると思います。実際に、今の判例が、大阪空港が典型ですけれども、規定ではっきりしたものがないが故に、あるいはないにも拘らずなのかもしれませんけれども、非常に揺れている。しかもかなり限定的になっていますので、そういう解釈が最高裁まで含めてある以上、それは硬直的で、もうちょっと工夫の余地があるのではないかと考えれば足りるわけです。一般的な規定が適切でないというのはちょっと噛みあっていないので、どうすればその過度の拡張を回避できるのか、そういうふうに考えていくべきではないかと思います。 【小早川委員】4のところ、私は意味が分からないのです。先ほど大阪空港と言われましたけれども、大阪空港判決は取消訴訟の排他性を問題にしているわけではない。取消訴訟の排他性というのは、取消訴訟ができるなら民事訴訟ではダメよという、そういう話なのですが、あの判決は取消訴訟ができるとはまさに言っていないわけです。あれは抽象的に、民事訴訟事項ではなく抗告訴訟事項だ、けれども現行の行訴法の下で抗告訴訟を起こせるかどうかは分かりませんよという、そういうことだと思うのです。 【芝池委員】まず、1のところに関わることなのですが、私も行政上の意思決定、行政決定について、述べさせていただきますけれども、最近ちょっと見解を変えておりまして、取消訴訟との関係で言いますと、行政処分というのはやっぱり特別なものがあるのではないか。一方的具体的に、権利義務を形成するものでありますから、他のものとはちょっと違う。そういうものに対応するものとして、取消訴訟が形成されてきたという事情があると思います。ですから、現在は私は取消訴訟の対象としては行政処分、それからプラスアルファとして、行政決定と言ってもいいし、行政の行為と言ってもいいのですが、要するにこれまで取消訴訟を提起して、処分性が認められなかったもの、しかし学説などにおきましては、取消訴訟の対象として認めるべきであると言われているようなものを対象にできるようにしたらどうかと考えております。そういうことを前提としまして、排他性の話なんですが、確かに行政処分につきましては、現在排他性があると言われておりますし、また国民の権利救済の機会を広げるという点からしますと、排他性を縮減していくという方向で検討が行われるであろうと思いますが、ただこの排他性について法律で書くというのは極めて困難だと思います。一般的に行政処分について、排他性を認めるのでありますと、それはそれで書けると思いますけれども、縮減という方向で書くというのは極めて困難であろうと思っております。何故かと言いますと、この問題については理論的な検討が全くといっていいほどこれまで、行われていないからであります。例えば、建築確認に対しましては取消訴訟ができると同時に民事訴訟ができるというのが現在の裁判実務だろうと思います。それから原子炉の設置許可の場合でも、取消訴訟あるいは無効確認訴訟ができると同時に、民事訴訟が裁判所に認められておりますけれども、しかし、こういう建築確認、あるいは原子炉の設置許可の場合に、何故民事訴訟ができるのかということについては全然と言っていいほど、研究がないのです。私は考えるところはありますけれども、要するにそういう状況でありまして、ですから排他性を縮減するとしましても、その基準が今のところ提供できないというのが学説の状況ではないかと思います。そういう次第でありまして、これは前に申し上げたと思いますが、排他性については新しい行訴法では規定はしない。今後の学説の奮闘に期待をするということにすればいいと思っております。 【水野委員】いくつかの訴訟制度、2つの訴訟制度ですね、それぞれ必要性に応じて設けられたときに、国民がどちらを利用するかというのはこれは国民が選択すればいい、これは基本なのです。一方が成り立たなければ仕方がないのですけれども、民事訴訟も成り立つ、行政訴訟も成り立つということであれば、これはどちらを選択してもいいではないか。原告がどちらかの訴訟形式を選択してきたときにはそれを認めたらいい。それを一方の訴訟形態でしかダメだという必然性は全くないと思うのです。ですから、そういったことについて排他性についての規定がないのは当然なのですが、残念ながら今は排他性は認められているということです。もしも、排他性が認められる必要性があるというのであれば、何故必要性があるのかということを論証しなければならないと思うのです。そういうことがないままに、排他性が認められているのはおかしい。それについて、これからの学説に期待したらいいではないかというのは一つのアイデアかもしれませんが、やはりできる制度にするのか、できない制度にするのかということぐらいはきちんと法律に書いたら済む話でありまして、できないというのであったらできないとしておいた方がいい。できるのであれば、できると法律に書いておけばいいわけで、できるかできないかについて、大阪国際空港裁判みたいに何年も争って、ようやくケリを付けるという制度はおかしいと思うのです。今、原発の訴訟とか建築確認の訴訟の例が出ましたけれども、あれは民事訴訟の要件に合致するから民事訴訟、行政訴訟の要件に合致するから行政訴訟でやっているのです。だから、付近の住民が原発の許可処分が違法だということで、行政訴訟でやる。その審理の対象は処分の違法性である。付近の住民が電力会社を相手に原発を建築してはならないということは人格権に基づいて、民事訴訟としてやっているわけで、それはそれぞれ認められているということです。おそらく付近の住民が電力会社を相手に、処分が違法だから差し止めろというのは多分、やってないし、認められていないのではないかと思います。原被告が同一の場合には特に問題は出てこない。基本的には2つの訴訟制度が認められていれば、それを便利な方を利用させたらいいと考えるのが自然な考えではないかと思っております。 【小早川委員】原発やら建築確認やらといった場合に両訴訟が併行し得るというのは、これは芝池委員がどういう意味でおっしゃられたのかあれですけれども、個別に見れば建築確認というのは隣人の民法上の妨害排除請求権を制限する効果を元々建築基準法上、与えられていないという、そういう解釈論であり、同じことが核規制法についても言えるということで、個別の解釈論としてはそうなっているのですよという、それだけの話だと思うのです。ただおそらく、おっしゃられたのは、どういう民事法体系、行政法体系の原理でもってお互いの役割分担をしているかは、そこははっきりしない、そこの原理が明示されていないということかと、それはそのとおりだと思います。結論としては、排他性の問題というのは訴訟法で何か書いても仕方がないのではないか、これは結局個別法の解釈の問題だというふうに私も思います。 【深山委員】前にも同じことを言っておりますけれども、この水野委員の言われた、2つあって国民が選べればいいじゃないか、それを制限することは何もないということを言われたのですが、私もいつも言っておりますが、少なくとも古典的な、中核的な行政処分について、早期に効力を安定させることは、これは行政が、あるいは役人が助かるという話ではないのです。国民一般の利益になるから、そういう制度を取っているわけで、次の後続的な処分が次々に予定されているとか、権利関係が変わって、それを前提にさらに権利関係が積み上がってしまうような行政処分について、出訴期間も排他性もなく、何年経ってからでも、困った人がいればその効力を無効として争えるということでは、困るのは役人ではなくて、国民なのです。ですから、現行の排他性、出訴期間そのもの自体がそのままいいというつもりはないのです、出訴期間については前にも私は延ばす必要はないと言いましたが、皆さん延ばすということであれば、それに固執しないのですが、排他性と出訴期間を伴った形で、少なくとも中核的な、ある部分の処分が早期に法律関係を安定させるというのはこれは非常に大きな公益で、それを困った人、その人のためになしにしてしまえば世の中結構だという話には全然ならないと思うので、そこは現在のシステムの核心部分というのは維持すべきです。ただそこで一般的に言われている処分性がないということで跳ねられて救済ができなくて困っているケースが多々あるじゃないかと、これに対する対処をしなくてもいいと言うつもりもないのです。それはそれで今なお、中核的なシステムを拡大するという考え方もあるでしょうし、私自身は別途の手当を何かできないかなという方がいいかなと思いますが、いずれにせよそういう現行法のシステムの中核部分というのは存続させるべきではないか。 【水野委員】仮に行政の早期安定が必要だとしても、排他性の問題とは別なのです。出訴期間の問題はそのとおりなのですが、もしも例えば早期の確定が必要だというのがあれば、行政訴訟に出訴期間がある場合に同じ種類の民事訴訟を起こしたときに、同じような出訴期間を被るという制度にすれば済む話で、仮定の話ですけれども。だから、排他性で民事訴訟を排除する議論にはならない。 【塩野座長】大分時間も経ちましたのですから、議論を整理するつもりはありませんが、ただ排他性、出訴期間というと大変乱暴な話に聞こえますが、排他性というのはこういう処分であったらば、取消訴訟を提起してくださいというルートを設定しているだけなのです。水野さんのおっしゃるのはルートを設定したのならば、もう一つ別のルートもあれば、両方やっていいのではないかという、そういうお話なのですが、ただ比較法的な検討で、排他性が議論されているのはイギリスだけでして、東アジア、も韓国であれ、台湾であれ、いろいろと行政事件訴訟法の改正があるのですけれども、この処分についての取消訴訟という点については、そうまだ突っ込んだ議論はされていないのです。それは日本のように、取消訴訟があるから却下判決が多いとか、なかなかみんな出訴できないとか、ということにはなっていない。むしろ韓国は日本の何倍も取消訴訟が提起されている、台湾も同じです。それからドイツも同じです。ドイツはもう一つ前に、訴願前置も置いているのです。だけれども、そういうルートもみんな使いこなしているということを我々、比較法を随分やりましたので、そういう点をどう見るか。もちろんそれに対して、アメリカの伝統がある、そしてイギリスの伝統があります。そして日本の伝統はどういうものかということも踏まえた上で、客観的にいろいろとご議論をいただきたいということです。大分時間が経ちましたので、あと10分間いただけますか。 【福井(秀)委員】今の塩野先生が整理されたのと全く同感でして、結局排他性はあってもいいと思うのです。水野先生のおっしゃりたいことは別に排他性がすっからかんになるべきだということではなくて、やっぱり排他性がそれこそはっきりしていて、民事訴訟との間で混乱がないようになっていればいいというご趣旨だと思いますので、その限りでは私もそうだと思います。それで今の排他性の規定について言えば、先ほど大阪空港は取消訴訟の排他性ではないとご指摘ありましたけれども、言い換えれば、抗告訴訟の排他性を認めているという点では大体、相似形ではないか。 【小早川委員】違いますよ。 【福井(秀)委員】そういう理解が大方だと、私は思っておりますけれども、だとすれば取消訴訟か抗告訴訟かはともかくとしても、何らかの形で航空行政権をそれ自体をひっくり返すのだという、別の裁判は取れないけれども、うるさいから飛行機を飛ばすのをやめてくれという裁判が認められなくなるいわれはないという辺りの議論を立法に置き換えられるのであれば、置き換えた方がいいのではないか、こういう趣旨でございます。 【塩野座長】その趣旨を一生懸命書いたつもりなのですが、なかなか難しいなというのが。 【市村委員】ちょっと今の議論で。私は違うように思ったので、ちょっと確認したいのですが、水野先生がおっしゃっている排他性の議論は今福井先生がまとめられたようなご趣旨でおっしゃられたのですか、本当に。そう受け取ってよろしいのかどうか、私は先ほど来伺ったのではそうでないように思ったものですから。 【水野委員】福井さんのおっしゃっているのはちょっとよく分かりませんが、つまり大阪空港の例で行きますと。 【市村委員】申し訳ありませんけれども、おっしゃっている部分でのケースでは分かったのですけれども。今福井委員がおっしゃっていたのは要するに調整がはっきりしていないところが問題なので、調整をはっきりさせれば、逆に排他性を残していいのではないかということをおっしゃられたので、水野委員が先ほどからおっしゃっられたのは2本のルートが成り立ちうるようなケース、それはいいんじゃないかと、逆に言うと、それは排他性を否定しているように私は思ったものですから、違うのではないかと。 【水野委員】私は、おっしゃっるとおりで、両方の要件があれば、それぞれ違うわけだから、両方やれればいい。予備的主張としては、弊害はどっちがどっちがということですから、それがきちっと解決するのであれば、かなりの部分は救えるということは言えると思います。 【塩野座長】日本の場合は特にドイツの場合と違いまして、あるいはフランスの場合と違いまして、行政裁判所制度がないものですから、そこは自由闊達に、最高裁の例は出しませんけれども、自由闊達にやっていただければ、今のようなやりとりの不便さということはなくなるというふうに思います。 【福井(秀)委員】今、4までだと思っておりました。5には全く触れておりません。 【塩野座長】ただ芝池さんはそこはしゃべってしまったのですから。もちろん議論を制限することはございません。今日は私の司会の不手際で、大変時間を取りましたけれども、濃密な議論をしていただいて、大変ありがとうございました。これからもこういった議論をしていただきたいと思います。 【小林参事官】今日は原告適格まで論点をまとめていますが、それ以外にもこれまでの議論の概要をまとめた資料は示しています。その部分についても、論点をお示しする形で、ご議論をいただけないかと思っています。今度作る部分と今日ご検討頂いた資料の4と5を次回ご検討いただきたいと思います。そういった部分等をまとめて、ある程度この検討会で検討している主な論点をまとめたものを作って次回にお示しをし、それで行政官庁にヒアリングができるような準備をしてはどうかと思っています。次回はそのようなたたき台を作らせていただきたいと思います。 【水野委員】今のようなことで結構だと思いますが、そういった意見を求める場合、今まで第1読会、第2読会とやってきまして、今の段階である程度、議論を整理するという論点整理、という趣旨だろうと思うのです。この論点整理をいわゆる第1トラック、第2トラックということはやめて、きちっと頭から整理するべきだと思います。それで今日お手元に、改革の方向性が概ね一致している論点についての整理という、私の名義のペーパーを配らせていただきましたが、これはそういった次回までの事務局の作業に多少なりとも参考にしていただきたいという趣旨でお配りしております。また、概ね一致していないとおっしゃっる方がいるかもしれませんが、一つの参考資料として、次回の事務局のペーパーの作成に参考にしてもらえれば、という趣旨でお配りいたしましたので、よろしくお願いいたします。 【塩野座長】他に何か。よろしゅうございますか。どうも大変長時間ありがとうございました。それでは今日はこれで終わりたいと思います。 |