- 1 日時
- 平成15年7月24日(木) 13:30〜17:40
- 2 場所
- 司法制度改革推進本部事務局第1会議室
- 3 出席者
-
(委 員) |
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略) |
(説明者) |
小河俊夫(公害等調整委員会事務局総務課長)
石上 卓 (全国知事会調査第一部長)
中村次良(東京都総務局法務部長)
大藤俊行(金融庁総務企画局企画課長)
山中伸一(文部科学省大臣官房総務課長)
太田雅都(会計検査院事務総長官房法規課長)
遠藤隆志(会計検査院総長官房総務課渉外広報室長)
徳力徹也(公正取引委員会官房総務課審決訟務室長)
河野一郎(財務省大臣官房文書課業務企画室長)
石川善朗(人事院事務総局総務局企画法制課長)
井原文孝(人事院事務総局公平審査局調整課長) |
(事務局) |
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田企画官 |
- 4 議題
- 各行政官庁等からのヒアリング
- 今後の日程等
- 5 配布資料
- 資料1 行政官庁等ヒアリング進行表
資料2 各行政官庁等からの意見等
・公害等調整委員会
・全国知事会
・東京都総務局法務部
・金融庁
・文部科学省
・会計検査院
・公正取引委員会
・財務省
・人事院
・内閣官房
・内閣法制局
・宮内庁
・衆議院
・参議院
資料3 行政訴訟検討会開催予定(第22回以降)〔改訂版〕
- 6 議事
- (1)各行政官庁等からのヒアリング(□:座長、■事務局)
-
□本日と明日は行政官庁等からのヒアリングを行う。最初各省庁から説明をいただき、質疑応答する形で進めたいと思うが、質疑応答については、各行政官庁等の行政分野にどのような影響が出るか、またその背景にある国民の生活、経済活動等にどのような影響があるか、そういった点も含めて適宜質問をしていただきたい。
- ①公害等調整委員会からの説明(□:座長、○:委員、●公害等調整委員会、■事務局)
- 資料2(公害等調整委員会分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
○裁定に対する不服については60日という規定があるが、60日というのはなぜそうなっているのか。例えばこれが逆に90日や、1年だったらまずいのか。あるいはもっと短くて30日の方がいいのか。60日と決められていることについての実質的な根拠は何かあるか。
●当時の他の類似法律等から引き出したものであり、60日自体でこうでなればならないということはないと思う。ただ、30日以内となると非常にあわただしいので、裁定の内容を吟味してからということになると、30日以内というのはかなり厳しいということから、訴訟を提起する場合の利益というものを考えて、60日はあった方がいいのかと思う。ただし、90日となると多少の違いだと思うが、1年ということになると、元々これについて鉱業等他産業との調整、一般公益との調整なので、いわゆる権利関係の確定ということになるとかなり長い間確定しないということになる。特に多いのは、他産業に支障があるのでいわゆる鉱業権を認めないとした場合においては、例えば鉱業権者の方が早く権利関係を確定したいということだから、1年まで待たずにいいのかと思う。ただし、これについては、今回検討されているようなので、それについては、なるべくそちらの方に合わせられるのではないかという方向で考えている。これについては多分、他の法律も同じ問題があると思うので、整備法の段階で検討させていただきたい。
○この裁定については東京高裁の専属管轄が認められているが、こういう立法は他にも例はある。この点については、今回の改革では、少なくとも私は余り手を入れることは考えていなかったが、例えば鉱業権を巡る争いだと、実質はあるどこかの地方に鉱業権を持っている人と、それから周辺の住民の争いになる。勿論、形式上の被告は公害等調整委員会になるが、実質は東京にいない人が争うので、そうすると、高裁の専属管轄は認めるにしても、東京に限定する必要はないのではないか。勿論、公害調整委員会の方としては困るということはわかる。
●制度的に申し上げると、事実認定の拘束力があるので、まず、公調委が行う裁定の段階においては、現地における職権を含めた調査を行うし、場合によっては現地の審理も行う。その上で東京において審理期日を何回かやってということになるので、あらかたのものについては多分調べており、すべて訴訟が提起された場合には、我々の記録を送付するので、それで大体足りているのではないかということから、そもそも裁定自体が東京で行われるということで東京高裁になったのではないか。では全国の高裁レベルまで広げるかということになるが、それは件数的にはそんなに多くないので、実質認定の拘束力、証拠提出の制限があるから、実質的にはそれほど影響はないとは思う。あとは他の法律を含めてこういった裁定、審決を行う場合の法律立てのやり方ということではないかと考える。
○実際に現地を見たりするのは、委員会での審理の段階で、必要があれば現地に行くということか。
●特に申請人側が現地の状況を見てほしいという希望がある。かなり膨大な書証も含めてお出しいただくが、現地を見なければわからない部分もあるので、大体毎回のように現地は調査する。現地において当事者双方の意見を聞く場合もあるし、現地における審理期日を開く場合もある。その場合は、当事者双方の主張を述べていただく場合、それから場合によっては現地において参考人の出頭を求めて、意見聴取を含めてやることはある。
□いろいろな御意見の中に検討が必要、あるいは整備法が必要と考えられるという御指摘があるが、これは基本的には行政審判であるといったことでの御主張というふうに伺ってよろしいか。原告適格の問題は、原告適格プロパーの問題ではなくて、固有の仕組みの話だと理解し、むしろ原処分者であると考え、処分に対する申請人適格と考えた方がよろしいかと思う。そこで確認だが、整備法が必要と考えられるというのが幾つかあるが、これは適用除外ないしは別の法律事項を個別法で手当をしてほしいということか。
●各省類似のものがある場合には、いわゆる一括整備法で処理できるのではないか。それまでの段階において、我々が一括整備法では対処し切れない、ないしは大きな構造的な問題がある場合には、場合によっては単独で法律改正をする必要が出てくるかもしれないが、今までの検討の段階においては、ほぼそれほど問題はないのではないか。一括整備法による部分的な改正によって今回の場合対処できるのではないか。ただ、詰まっていないところも非常に多いので、その辺は逐次我々も検討させていただきたい。
□一括整備法もいろんなやり方があり、一括整備法の中で個別法の改正があることもあるので、特別な手当が必要な場合があるけれども、他省庁と同調の歩調を取れる場合もあるし、公調委で特別なものもあるという理解でよろしいか。
●はい。
- ②全国知事会からの説明(□:座長、○:委員、●全国知事会、■事務局)
- 資料2(全国知事会分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
○4ページの(10)で、出訴期間の廃止については、行政の信頼性ということと、行政行為の法的安定性を損うと2つ挙げている。具体的には、廃止すると信頼性が失われる、あるいは廃止すると法的安定性を損うという御意見だが、なぜそうなるのか。
□この質問は、説明者に、すぐに答えてもらうのは無理かと思う。アンケート調査に基づく説明なので、そういう質問があったということは、きちんと報告をしていただきたい。
●具体的に出てきた県からの理由が明確にあるかどうか確認する。この次のときには理由も付して今の質問に答える形で提出させていただく。
○大変漠たる言い方で恐縮だが、回答を御覧になって、都道府県のこの問題についての関心というのはどうか。
●私の立場から言えば、今、この段階で26県くらいしか回答がないということで、非常に問題に対する整理に時間がかかるのかなという印象を持っている。十分な議論をした上でこういう回答をしたかどうかという点について、もう一つ疑問というところもあり、もう少し自分たちでこれについての議論をさせていただいたらいいのかなという気も実はしている。
○具体的に都道府県によって、実際にいろんな事件を抱えているので、そこから意見が出てくるというケースが多いのか、それともむしろ抽象的、一般的なのか。
●既に統計資料等ございますけれども、各県によって訴えられる件数というのはまちまちであり、東京都が一番多いが、認識というのはそれぞれの県で確かにばらばらだと思う。いずれにしても、そういう中で、全くゼロというところはないと思うが、そういう中での判断だと思う。
○一般に都道府県の法務の体制というのはどうか。
●26団体、回答をしていただいたが、その中でそういう専門部署を設けているのは5団体しかない。
□そういった資料はいただけるのか。
●提出する。
○幾つもあるので例示だが、例えば4ページの「(13)原告適格の拡大」で、解釈・運用の問題であるということは、現在の解釈・運用はいいという意味なのか、あるいは悪いけれども、それは解釈論で対応できるという意味なのか。あるいは立法する必要はないという意味なのか、それぞれの根拠は何かということは、今でなくてもいいが、そういうことまで教えていただかないと余り参考にできない。
それから「(17)裁量の審査の充実」で、これもいずれも問題があるというが、どの部分が、なぜ問題があるのかわからないのでは、これも参考にしようがないので、具体的に教えていただきい。
「(18)弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」も、訴訟制度全体の問題として検討すべきであるということは、行政訴訟についての敗訴者負担の取扱いは、固有の問題としては一切ないということなのか、行政訴訟に多少問題があるとしても、それは無視して全体の中でだけ考えればいいという意味なのか、意図がよくわからないのと、個別の理由がよくわからないので、もし、御意見ということであれば、そういうことも含めて根拠が具体的にわかるように教えていただきたい。
●(18)は行政訴訟だけ取り上げることはどうかという観点かという感じがする。
○それは行政訴訟だけ取り上げて議論するに値しないほど行政訴訟固有の問題はないのだという事実認識を前提にしているのかどうかということである。
●その辺は各県の意見をもう一度精査する。
○この生データ、回答は非常に興味があるが、知事会の方に申し出れば、見せていただけるのか。
●生のデータは47全部集まるかどうかわからないが、集まった段階で、それをできるだけ生のデータを提出させていただきたい。
□「(8)確認の訴え」で、必要性が乏しいとする意見が多いというときに、何でなのかを聞きたかったので、即答は求めないが、何か都道府県独自の、我々が気がつかなかった問題点が出ていれば大変検討の参考になるという趣旨、都道府県ならではの議論というのが欲しいという趣旨で、お願いをしたい。
国民訴訟について、特に意見は参照されなかったのか、それとも意見が出なかったのか。自治体が大変苦労しておられ、また、住民訴訟は大変意味のある訴訟だと思っているので、それについて過去の経験に鑑みて、どうかという御意見でもあればと思った。
●入れてなかったが、1県あった。国民訴訟制度を早急に設け、国の適法な財務会計行為の確保に努めるべきである、という意見である。
□訴訟の相手となるのは、これから分権の時代なので、むしろ霞が関よりも都道府県、あるいは中核市等々の市ではないかと思っている。
- ③東京都総務局法務部からの説明(□:座長、○:委員、●東京都総務局法務部、■事務局)
- 資料2(東京都総務局法務部分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
○管轄と敗訴者負担のところで出た話で、大きい法人相手の場合は事情が違うということだが、これは例えば資本規模とか従業員規模とか、そういうもので扱いを分けるべきだという御提案か。
●そこまで細かい議論はなかった。実際上規定するのはなかなか立法技術上難しいかという中で議論になり、感覚的に自治体より大きいところはたくさんある。東京都などは割と大きい方だが、区市町村で小さいところは大変ではないかということである。ただ、立法の仕方は確かに難しいという感じがしている。
○大きいかどうかということと、それから行政事件の構造として、税金で養われている職員を抱えている自治体なり政府と、私企業で下手するとつぶれるというリスクを抱えている民間との間のイコールフッティングというのはどう思うか。
●そこまでは考えていないというか、地方公共団体としても最近は非常に厳しくて、どんどん人が削られているし、そういう意味ではだんだん私企業と似てきている。
○そもそも行政に優越的地位があるから私企業に権力的な行為を一方的にできる。ここの議論というのは、そういう場面についてだけの議論をしている。さっきの大きいか小さいかで切るのかとか、あるいは何らの基準で扱いを変えるのか、もしも具体的な案があるのであれば、また後ほどでも教えていただきたい。
○「審理の充実等のための方策の整備」のところで、理由の説明などについて、現行制度の範囲内で十分対応可能と書いておられるが、これは現在、訴訟の場で十分ないし、適切に理由の説明、記録の提出を行っておられるという自負心の表れか。
●そういうことである。
○最後の弁護士報酬のところで、訴え提起の手数料の方はどうか。
●手数料の方は費用の中に入っている。今は敗訴者負担である。
○住民の方が敗訴すれば、自分の分も払うのは当然であるということか。
●御存じだと思うが、お互いに余り請求しない実態になっている。印紙代、郵券代など、東京都が勝っても、訴訟費用は原告の負担とするという主文をもらっても、それを向こうに請求したというのは、1件くらいあると思うが、ほとんどない。
□権利であってもか。住民訴訟にならないか。
●訴訟費用確定の申立てをしなくてはいけないのだが、それはたまたま相手の方が起こしてきたので、こちらの方から積極的に起こしたというのはない。
○取らないことが、住民訴訟で問題にされる可能性というのはないのか。
□そういう住民訴訟は今まで出てこないが、これから出てくる可能性はあるのではないか。
●相当細かい話になる。
○ぎちぎち言えば、住民訴訟の議論になるかもしれないが、民間同士の裁判でも取っていないのが普通である。訴訟費用は被告の負担とするとか、原告の負担とするとか、主文には出るが、取っていないのが大体の慣行で、それは1つは訴訟費用の確定請求というめんどうな手続をしなければいけないということがある。
石原知事が自動車排ガスの問題について、国を相手に訴訟をやるということで公約をしておられたが、これは東京都が原告となって、国を相手の行政訴訟をやるということか。
●東京都がどういう立場で、どういうような形態の訴えを起こすかということについて、ここではコメントできない。
○もしそのときに、東京都が原告になって、国を相手に行政訴訟を起こそうと検討してみたら、いろいろと問題点が多くて、困ったということがあるかもしれないと思った。
●確かにいろいろ検討しているのが、なかなか難しいところがある。
○それはどういうところか。
●それはお答えできない。
○先ほどの質問に対して、東京都はきちんと理由を説明し、記録を提出しているということがあったが、東京都がきちんとやっておられるにしても、そうでない自治体もあり得るので、法制化してはならないというほどの御意見ではないのかと思うが。
●それはそうである。
○仮の救済のところで、現行法の内閣総理大臣の異議については何か経験からして意見はないか。
●ほとんど使われていない。
○かつて公安委員会にはしばしば出てきた。そうすると、特に残しておいた方がいいというほどでもないのか。
●中でも余り残しておいてもいいという議論もなかった。
□あまり関心がないということか。
●あまり使わない。
○同じく仮の救済関連で、食品衛生関係などで、不衛生なものがのさばっては困るという御指摘があったが、行政処分にもいろいろなものがあるので、そういう公衆衛生絡みなどは1つの典型だが、そうでないもので、実質的には民訴の仮処分みたいなものを認めてもいいような金銭的なものとか、そんなようなものについてはどうか。
●実際に具体例を検討したわけではないので、申立人の方の失われる利益の程度と、執行停止、仮処分が認められることによって、行政側の方の不利益、公益の内容、程度、それを比較衡量するしかないのかと思う。具体的なものは、先ほどの衛生の関係とか、それから、旅券の発行の場合に、仮に発行してしまうと、海外へ行っていろんなことをやってしまうという場合には大変な問題になってしまう。
○例えば生活保護などについてはどうだろうかという検討はどうか。
●生活保護については検討していない。東京都では実際やっておらず、市町村の方でやっている。
□1ページの3の審理期間の定めというのがちょっとわからなかったが、本案を早くやれということか。
●仮の救済そのものの結論を早く出してくれということである。
□2ページの4−(1)の義務付け訴訟のところで、我々の考え方の基本には、取消訴訟中心主義というのは、逆の意味で三権分立の点から見ていかがなものかという議論も含めて、取消訴訟中心主義に対して、そのまま維持するものではないという前提で議論しているので、このままのお答えだと、議論が食い違っていると思うので、その点はまたお考えいただきたい。
それから、5−(5)のところは、C案を取っているが、C案は、処分があったことを知った日から3か月の出訴期間を廃止するというものである。そうすると、東京都としては、こういった一種の短期の出訴期間はおよそ要らないという考えなのか。それとも、場合によっては要るかもしれないけれども、それは別途に手当をするという考えなのか。
●これもどれが一番いいかというのも、そんなに深く突っ込んだわけではないが、これが一番疑義が少ないかということだけである。
□それはそれでいいのだが、短期の方は要らないのか。
●短期の方は要らない。
○そうすると、短期、長期という区分をなくして、ある程度長期で一元化しても、そんなに行政処分は支障がないという御趣旨か。
●今のところないのではないかと思う。
○東京都のされる処分で、例えば3か月以上も放っておいて安定しないのは絶対困るというのは思いつかないということか。
●短期間で検討したので、今までの検討の中では思いつかなかったのだが、私ども実際に行政事務をやっているセクションではないので、実際にそういうところからヒアリングをしたわけではなく、訴訟専管部門で考えているだけだから、本当はそういうところと打合わせするともうちょっと違う答えが出てくるのかもしれない。
- ④金融庁からの説明(□:座長、○:委員、●金融庁、■事務局)
- 資料2(金融庁分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
○12ページの出訴期間の延長のところで、金融行政の安定性の観点という御指摘をいただいたが、具体的に出訴期間が延長された場合に、こういう点で金融行政で支障が生ずるといったような点はあるのか。
●必ずしも具体的に考えたわけではないが、内容で随分変わってくると思う。いわゆる処分を行うことの効果が非常に広がっていくもの、例えば、金融機関の健全性に問題があるということから、いろいろ業務改善命令を行ったり、いろいろな措置を要請するといったような場合には、金融機関の関係、例えば預金者であるとか、債権債務関係を有する者とか、そういったようないろいろな形で影響を被る者が多い。ところが、そういったような関係がないような行為については、ある程度の期間放置されてもその影響は少ないと思うが、非常に広がりを持つような場合については、出訴期間の延長というのは、かなりの影響を持つのではないかと思う。
○今、例示された業務改善命令だが、これは一種の行政処分である。それが例えば、今は3か月だが、1年経っても争えるように仮に延長した場合、預金者、債権者、債務者にどれだけ影響が出てくるのか。
●その処分の妥当性が長期間にわたって争われて、そこが不安定な状況に置かれるというようなことになると、まさに処分をベースにして事実関係が積み重ねられていくわけであるから、そこは影響があるのではないかと思う。
○仮に裁判を起こした場合には、判決まで2年も3年もかかり、それでも結論が出ない。他方で、今は3か月だが、それが例えば1年に延長したというときに、金融行政を担当している方として具体的に困る、金融行政が停滞して困るとか、安定性が失われると困るという具体的なイメージが今の御説明だけだとわかない。
●我々も更に具体的に検討したい。
○業務改善命令を出して、相手の金融機関がそれに従わない場合、出訴期間が3か月、あるいは1年経つまで放って置くのか。
●いや、それは放って置かない。
○そうするとどうなるのか。業務改善命令を出して、それで従わなければどうなるのか。
●それに従わない場合には、それに沿った法律、法令に基づいた措置を講じていくということになる。
○芝池委員】どういう措置がされるのか。
●そこはいろいろである。
○刑罰はかかるのか。
●刑罰は基本的にはかからないが、最終的には免許の取消しとか、そういったようなこともあり得るのではないか。
○今まで余り例はないかと思うが、業務改善命令があって、相手が従わなくて、免許取消しなどには、時間的にはどのぐらいかかるのか。
●具体的、個別的に申し上げることは難しいと思うが、いろいろあると思う。
○1年間はのんびり待っているということはあるのか。あまり出訴期間というのは問題にならないのではないか。相手の方が不服であれば、おそらくかなり速やかに法的な措置、訴訟を起こしていくのではないか。
●説明者(大藤企画課長)】そこは、私どもも必ずしも十分分析しているわけではない。ただ、いろいろ類似ケースなど、事例の蓄積というようなことにもなるかと思うが、出訴期間が延びたからといって、そこが決定的な影響を与えるとか、そういうことではないと思う。
○出訴期間の延長をしても、少なくとも今の業務改善命令について言うと、実際上の不利益というのは考えにくいのではないかということか。
●申し訳ないが、そこは我々もまだ十分具体的に検証しているわけではない。
□違法性の承継の問題もあるので、そこも含めてお考えいただきたいと思う。
行政処分はいろいろと金融庁所管の法律であるはずだが、訴訟件数というのは、今までどのぐらいあるのか。
●情報公開関係が1件ある。
□いろいろ議論しているので、具体的に結果を待ってという話だが、我々としては現場の生の意見を伺いながら議論をしたいということである。我々の議論を固めた後で、金融庁にどうだと言って、金融庁がこれは困ると言われても、これはもう後戻りできないので、そういう趣旨で、特に選択肢を付けるなどして、それでとにかく現場の意見を聞きたいということで、検討会として各省庁に来ていただいているから、できれば早目にまた追加的な資料をお出しいただければと思う。
- ⑤文部科学省からの説明(□:座長、○:委員、●文部科学省、■事務局)
- 資料2(文部科学省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
□義務付け訴訟のところで、ちょっと意味がわからなかったところがあるので、教えていただきたいが、5ページで、少なくとも申請に対する処分等行政庁が何らかの処分を行うことが予定されているもの、つまり申請に対して応答処分が予定されているというケースで、そういった申請権のない者が何か求めてきたというのは、どういう場合を想定しているのか。
●それは、原告適格の問題になるかもしれませんけれども、そういうものを認めるかということである。
□具体的にどういう場合に本来の申請拒否処分を予定している場合に、それ以外の者が、当該申請拒否処分をせよということを求めることがあるのかを、文科省の例で教えていただければ参考になる。今の話は、要するにちゃんと行政手続はできているのだから、そちらの線に沿って行政がきちんとやっているときに、その手続を踏まないで第三者が来て、それで裁判所で突然作為命令を出しても困る、というのは、抽象的にはわかるが、具体的にどういうことが考えられているのか。ここで議論の対象としていたのは、おおよそ申請権を持たない場合で、例えば、違法建築物について除却命令をなかなか行使してくれないので、除却命令の申請権などはないと一応理解しているが、そのときに除却命令を第三者が求めるという、もともと申請権のない処分類型について議論をしている。それからもう一つ、手続を取ったのだけれどもゼロ回答だったとか、非常に不満な回答であったということで、もう裁判に熟しているから義務付け判決をもらいたいという、そういった2つの種類を想定しているが、ここはどういうことを具体的に考えているのか。
●どこら辺まで広がるかというところが危惧される。
□面白い発想なものですから、具体的な例を教えていただきたいと思う。
○御回答は、大体現状でいいのではないかという基本的なスタンスだと思う。
●変えなければならない部分はあると思うが。
○立場上、そういう御意見ならば、それはそれでいいが、我々の方は、審議会の意見書を踏まえて、行政訴訟が十分機能していないという御指摘の中で改革すべき点があるということでやってきている。今回、一応改革のいろんなテーマを出している。これを見られて、文科省さんとして、担当者として、これはもう困る、具体的に文科省の行政の中で、これをこういうふうに変えられたら、ここは困ってしまうと思われた点はあるか。
●まずは行政の方が法律に則ってやっていくという場合に、不作為や何かもあるが、そこはそこで要件があるが、そこに至る前の段階で、何らかの法律上の利益ということで、行政行為をやる前に具体的な法律上の利益が発生する前に司法の方に救済を求めていくということはどうなのかなという考えが1つある。それが義務付け訴訟や、取消訴訟の成熟度の度合があると思うが、具体的な行政行為というものが具体的に行われる前の段階で、それについての取消訴訟を行うとか、あるいは裁判所自体が是正措置というものを行政庁に考えさせるというよりも、裁判所自体が一定の行政行為というものを行政庁に対して命ずるといった、その辺りのところが、やはり司法裁判所制度なので、そういう中で行政庁との司法との区分けという点で別に行政庁がいいということではなくて、制度としてどうなのかという考え方である。
□我々はその点は十分意識しながら議論をしているつもりである。
●その点について、具体的にいろいろな行政事件の中で、今までも裁判所も苦労しながらある一定の結論を出してきたと思われるから、具体的に言えと言われたが、それは今までの具体的な判決の積み重ね、そういう中で積み重ねられてきた裁判所の判断というものも重視していただくとありがたい。
○行政庁として、担当者としてこれを読んで、こんなことに変えられると、たちまちうちの行政のあの部分が停滞して困るとか、何かそのような印象を持たれた箇所は具体的に特にないか。
●どんどん訴訟が起こされることによって、行政ができなくなるという点で、今まで行政訴訟がどういう分野で起こされたかというふうなところもチェックしてみて、我が省の中でもどういうところが処分性があるか、一番多そうなものを幾つかピックアップして、また、こういう点が困るという形で具体的にお出しできれば思う。従来どういうところが行政事件訴訟で起こされていたのか、その辺も例を挙げてみたい。
□伊場遺跡の話があるが、文化財についての利害関係人として研究者がいて、その文化財の保護が廃止されようとしているときに、そういった研究者について原告適格を認めるべきだというような議論がいろいろあるが、文科省としては、そういった文化財保護について仮に団体訴訟を認めるとしたときの準備はしているのか。別の省庁では、多少団体訴訟についての準備もしておられるようだが。
●まだしていないのではないかと思う。
□我々としては、そういう点に関心があるので、ひとつよろしくお願いしたい。
●承知した。
□我々としては、日本の権力分立、つまり司法と行政の在り方も考えながら、かつ判例等を見ながら議論しているつもりであるが、外国と比較した場合に、日本の判例、あるいは日本の制度全体が少し縮こまっているという問題意識も別にあり、日本の権力分立は、あるいは司法と行政はどうしてこんなに固いのかという疑問が底辺にあっての議論だということも御承知いただきたい。
- ⑥会計検査院からの説明(□:座長、○:委員、●会計検査院、■事務局)
- 資料2(会計検査院分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
□検査の請求だが、法的な意味で仕組むというのはなかなか難しいという話だったが、現在いろいろな行政組織内からの、いわゆる内部告発的なものもあると同時に、おそらく外部の方からも会計検査院に対して、こういった点はどうかというような、自分の権利利益の侵害ではないが、検査をしてくれないかといったような申出があると思うが、一体それはどのぐらいの件数があがっているのか、その処理はどういうふうにしておられるのか、その処理の扱い方の今の状況についてどういうふうな御判断なのか、評価をお伺いしたい。
●外部の方からの情報提供が年間で約六百数十件ほどあるが、これについては、外部情報の取扱要領というものを内規で定めており、それに従って処理している。大まかに申し上げると、国費の関与がないと、会計検査院は検査ができないが、その辺が御理解がなくて、検査院ができないというものがその中に約二割程度はそういったものがある。これは、大きくⅠ類、Ⅱ類と分けるが、Ⅱ類というのが大体二割ほどである。残りの八割ぐらいは、何らかの具体的な情報があるということだが、それを更にA、Bと分け、具体性がある、それから比較的事象が古いものだと、なかなか書類も残っていないので非常に難しく、そういったところで、またA、Bという色分けをするが、Ⅰ類については、すべて担当検査課に送付して、そこで活用方針というものを立てて、全部局長決裁を得るというふうにしている。それに従い、検査をするが、これはサイクルもあり、直ちに手を付けられるものもある、なかなかサイクルに合わないこともあるが、何らかの形で活用方針に従って情報を確認していくことにしている。それに従い検査報告の掲記につながるもの、なかなかそれに至らないものもたくさんあり、なかなか検査だけでは知り得なかったような、本当に内部からの情報によって検査報告に掲記しているものは確かにある。率的には、残念ながらかなり低いと言わざるを得ないが、そういう形で活用させていただいている。
□今の内部要領はホームページか何かに掲載されているのか。
●いえ、内部要領、事務取扱要領なので、特にそういった形で公開はしていない。ただ、これまでも情報公開の開示請求があったので、これについては全面的に開示している。
□その制度化がどの程度可能かどうかはわからないが、国民から何か情報を得たい人ならばどうぞというような形での制度化については会計検査院ではどうか。
●独禁法では、そういったものを受け付けて、その結果について通知するといった義務規定があると承知しているが、今のところ検査院においては、パンフレットの中で、そういった貴重な情報になっているという記述はしているが、それを積極的にというところまでは今は至っていない。もし、これを更に積極的に受け付けるという形にしていくと、件数は当然増えてくると思うが、具体性のある非常に貴重な情報というものと、新聞情報とかに触発されたいろんな御意見的なものが増えてしまうと、それに従って検査課もいろいろマンパワーが取られる。Ⅰ類にしたものについては、すべて検査課が何らかの形で対応するようにしているので、それに必要となるマンパワー、それを選別するための質的評価をするために、予備的調査など、そういった制度的な受皿をもう少し整備するというのが将来的に検討すべきであるということはあるかと思う。今のところはまだそこまで至っていない。
○マンパワーの点とか、そういうのはよく理解できるが、さっき冒頭で国民一人一人が検査の請求をするというのはおかしいと、国会を通じてという趣旨のことをいわれたのか。
●おかしいというふうにはいっていない。
○おかしいというとちょっと語弊があるが、現在の会計検査院法の35条には利害関係人からの審査の要求があったときには、これは審査しなければならない、そしてその結果を報告するという規定がある。利害関係人という縛りが当然あるが、国の税金がいろんなところで無駄に使われているという事態があったとすると、広く言えば、国民すべてが利害関係人だとも言えなくはないわけで、そういう意味からすると、会計検査院法にも現在そういう規定があるわけだから、いわゆる国民からの審査という制度を設けること自体は特に憲法上問題になるとか、国会との関係で問題になるということはないのではないかと思うが、いかがか。
●35条の審査制度そのものは、いわゆる戦後GHQが強力に規定しなさいということで、アメリカの会計検査院のGAOの規定をそのまま持ってきたというふうに言われているが、実は、今はGAO自身は審査制度を持っていない。その後、行政不服審査法、あるいはアメリカでGAOが従来取り扱っていたようなもの、例えば公務員が給与が低いので、それを何とかしてくれとか、それから軍人の給与を何とかしてくれとか、あるいは国と契約を行った会社の従業員が最低賃金を守っていないので、それを払うようにしてくれとか、そういった請求が大体6,000件ぐらいアメリカであると言われているが、そのほとんどがそういったものである。それは、日本で言えば、行政不服審査とか、あるいは人事院とか、あるいは厚労省、そういったところが担っている制度になっており、審査制度自身は、利害関係人の要件が厳しいからということではなくて、むしろ他の制度で救済の道が開かれているということで、こちらの方に請求がないというふうに考えていただいた方がいいのではないかと思う。
□実例がないのか。
●実例はある。
□どういうものがあるのか。何件ぐらいあるのか。
●今まで要求があった件数は70件ほどある。そのうち是正を要するとしたものが3件、それから要しないとしたものが17件、これは資料が古いとか、そういったことがあり、なかなか判定し難いとしたものが1件、残りは大体、例えば会計経理に当たらないとか、それから利害関係人にならないとかということで却下等のものが49件になっている。
□利害関係というのは、具体的に一番多いのはどういうものか。
●最近の事例では、例えば補助金の交付決定を受けて道路を造るが、その道路が自分の家にかかるので、そういうものを何とかしてくれということだ、実は交付決定自身は行政行為であり、行政行為に伴って会計経理が続くということであって、行政行為を是正しない限りは、そこも変わらないということで、いわゆる行政行為が争われても検査院としては答えようがないということで却下になるというようなことがある。
□却下ではない例をお願いする。
●最近の例で、ある私人の方が、国のある施設が自分の土地まで入り込んで占拠をしているというような事例が幾つか寄せられ、それは本来私の土地なんだから返していただけないかというようなものが、現在、複数件寄せられている。これはおそらく利害関係人ではないかと考えているものである。
●つまり国有財産の管理という会計経理行為で、いわゆる私人の土地が国に占拠されているということでは利害関係人でm会計経理にも当たるのかと思う。行政行為を争って来られる方が多くて、そこはなかなか検査院としてはお答えできない、いわゆる要件に当たらないというのが多いかと思う。
○ときどき省の金の使い方がおかしいというふうなことが社会問題になるが、そういう場合は、そういう社会問題になったからという、それだけの理由で調査をされるということはないのか。
●マスコミ等で話題になり、かつ国会でいろいろ問題になったものについては、検査院の判断としてやるべきだということで実際にもやっているし、マスコミ情報というのは非常に貴重な情報であって、それらも加味しながら検査テーマを毎年考えていくということにしている。
□先ほど、違法性だけの問題であれば、会計検査院を通さないで裁判所に持っていけばいいではないかと言われたが、それは会計検査院としては、そういう制度が望ましいとお考えか。
●違法性だけであれば、いわゆる住民訴訟制度から言えば、いわゆる検査機関、監査機関については、不当性を判断させるために前置しているというのがその制度の趣旨だということであれば、他の人にやってくれということではないが、検査院が違法性だけやるということはどうなのかなということで申し上げた。
- ⑦公正取引委員会からの説明(□:座長、○:委員、●公正取引委員会、■事務局)
- 資料2(公正取引委員会分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
□今の説明の確認だが、特則が既にあるものは改正しないだろうという前提で、それはそれで改正しなければ結構だというお話と、もう一つは、仮に明確な特則がない場合について、こちらの方で例えば原告適格等々を改めるということになると問題があるというふうにいわれた、その問題があるというのは、やはり大元の行政審判制度という公正取引委員会の持っている制度との関係でいっているのか、それとももう少し一般的なお話として言っているのか、その辺はどううか。
●今の独禁法の体系というのは、審判制度をまず根本に据えて、それを前提とした上で制度設計がされているので、その審判制度との関係で、実質的証拠法則の適用がどうなるかとか、そういう審判との関係で問題が出てくるだろうというのが主たる問題だと思う。
○今回行政事件訴訟法の改正という議論をしているが、今回の改正に関わりなく、やはり全部について特則は維持する必要があるのか、それとも行政事件訴訟法が変われば、場合によっては、この特則も一部変え、原則に戻していいという部分があるのか。
●特則が変わらないという前提で内部では議論していたので、その部分について詰めた議論というのは申し上げていない。公正取引委員会のような行政委員会という特殊性を前提とした制度と思うので、おおよそ変えられないということはないが、そういう行政審判制度に関してどういう訴訟の仕組みをつくるのかというのは、かなり大きな話になるのではないかと思い、仮にそういう話になるとすれば、それは十分検討させていただかないといけないと思う。
○例えば、東京高裁の専属管轄とか、出訴期間も決めているが、これなども変えるということは全然お考えにならないのか。
●今のところ具体的に検討しているというのはないが、ただ理屈の上でおよそ考えられないかということはないとは思う。ただ、東京高裁に専属管轄になっているというのは、審判が前提になっているということが1点と、独禁法に関する事件をできるだけ1か所に集中して専門的に処理した方が効率的ではないかという立法時の考え方があったようなので、そういったものについて、今、現状が変わったのかどうかとか、その辺も少し考えなければいけないと思う。
□義務付け訴訟で、独占禁止法45条は要するに行政訴訟をどう変えようと、実体法上の請求権を与えていないというのであれば、関係ないようにも思うが。
●そこは誰に請求訴訟提起を認めるかという話になってくると思うが、仮に実体法上の請求権がない者には、およそそういう義務付け訴訟の提起の余地がないということであれば、全くこれまでの業務と変わることはないと思う。確かに極端なケースかもしれないが、非常に広めて義務付け訴訟を何か行政に対して申請をしたものに対して認め、こういう申告のようなものも含まれるというようなことであれば、若干問題が生ずるということである。
□他に義務付け訴訟はないか。もしあったら後でお願いしたい。
●また御報告する。
○請求権がなければ義務付け訴訟はないだろうというのは、そのとおりだが、むしろ問題は、47年最高裁判決の、立法で変えて、あの程度の非常に関係者からは関心の持たれる不問決定なり何なりも訴訟の対象にすべきではないかという点についてはどうか。それはやはりどうしても困るということか。
●先ほど申し上げたのは、義務付け訴訟で非常に広げた場合である。公正取引委員会に対して談合を調査しろ、調査するよう義務付けを求めるという訴訟を提起したが、談合の審査というのは、非常に内々でやっているので、そういう訴訟が出てきてしまうと、せっかく内偵していても、それですべておじゃんになってしまうということになるので、そういう調査の密行性を考えると、申告者が訴訟を提起するというのは、業務に支障を生ずる可能性があると考える。
○それは、不問決定がされて、申告者に通知がされたものに対して、取消訴訟を起こされるのはまずいということか。
●不問決定がなされたというのも、その時点において、とりあえず違法性の可能性が低いということなので、当該事件について引き続いて監視をしていくとか、注意していくというケースはたくさんある。申告があって、その時点では黒だとまでは言えないので、とりあえずは取り上げないことになったけれども、いろんな情報を集めているというケースというのはあるので、その段階で、例えば訴訟が提起されるということだと、もしかするとその後支障が生ずる可能性があると考える。公正取引委員会がこれを調査するかもしれないぞというのが明らかになってしまうという可能性がある。
○独占禁止法の78条で、現行法でも公正取引委員会の審決取消訴訟が提起された場合には、当該事件の記録が送付されてくることになっているという前提で審判をされているのだろうと思うが、記録が後日裁判所に送付されるという前提があるということによって、審判そのものの審理が窮屈になっているとか、本来ならもっとここまで率直に出せるものが出されていないとか、そういう感じを持つことはないか。
●率直に申し上げて理屈の上ではあり得るような気がするが、実態として、だから審判の場で主張ができないとか、そういうことは余りないのではないかと思う。将来的に訴訟が裁判所に行ってしまうかもしれない、だから審判廷にはできるだけ証拠を出さないようにしようというようなインセンティブが働いているという感じは持っていない。
○送付された記録の範囲というのは、どの程度なのか。
●審判廷に出てきた記録一切となっている。条文上、一切のものと書いてあり、私どもの方で何か選んでということはできない形になっているので、審判記録として審判廷に持ち出された記録はすべて裁判所に行く仕組みになっている。
□例外はないのか。
●何かマスキングするとか、これは例えば事業者の秘密に関わるものだから出せないとか、そういうものはない。条文上、一切のものを出すと規定されている。
- ⑧財務省からの説明(□:座長、○:委員、●財務省、■事務局)
- 資料2(財務省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
○ページの「出訴期間等の教示」のところで、必ず所定の時期までに裁決が行われるということを前提に書いておられると理解してよろしいか。要するに、裁決が何らかの都合で延びて出ないとか、そういう場合はないという前提か。
●所定の時期までに裁決が行われないということはある。
○最初の処分のときに不服申立ての教示をするが、裁決のときに訴訟の教示をするという意見か。
●当然裁決が出ないという場合があるので、その折には例えば審査請求がなされてから3か月経過したときに教示するとか、そこの部分についてはまた新たに、裁決のとき以外に教示しなければいけない場合が生ずると考えられる。
○7ページの義務付け訴訟と、8ページの差止めを求める訴え、これはいずれも同じようなことが書いてあるが、減額更正を求める義務付け訴訟を提起した場合に、調査ができなくなって問題がある、滞納処分の差止めを求める訴訟もそうだという趣旨だが、これは減額更正を求める訴訟ではなくて、今のように更正の請求の取消訴訟をし、滞納処分の取消訴訟をした場合とどう違うのか。
●減額更正については、ここで書いてあるケースは、減額更正の請求をしないまま、いきなり義務付け訴訟という形で行われるものである。更正の請求があった上で、我々の方は調査・審理を行うので、このプロセスを経ることなく、いきなり訴訟というプロセスに入ると、我々としては減額更正を求める内容が適正なものかどうか判断する機会も与えられないということになりかねないので、それが問題であるということを申し上げている。
○滞納処分の場合はどうか。
●差押えの取消訴訟だと、既に差押えがされている。これは取消判決があって初めて差押えの効力がなくなるが、差押えがされる前に差止訴訟がされると、それ以後、実際差止訴訟がされている間に差押えをすると、これはいかにもおかしいではないかという批判を浴びますので、どうしても滞納処分を差し控えざるを得なくなる。そうすると、時効との関係も考えなければいけないだろうが、どんどん時効が進んで、だんだん長引くと、徴収権の消滅時効が完成してしまって、国庫に入るべき税金が入ってこないということにもなりかねないということを心配している。
○前の議論は、更正の請求の制度を残すという前提であれば問題ないという趣旨か。
●更正の請求をしていただき、請求のあった内容について十分な調査をした上で、それが適正かどうかというのが確保されれば、その段階において訴訟をしていただくのは、全く我々として問題は生じない。
○だから、更正の請求を経た上で義務付け訴訟をやることについては何の問題もないということか。
●現在の制度においては、前置主義があるが、いずれはそういうことになるので、我々としては申告納税制度の下で十分な資料情報というのをこちらの方に得られている状態が確保されれば、ここで申し上げているような問題というのは生じないと考えている。
□訴訟が動くと調査権限はその間停止するという理解でよろしいのか。
●法律上停止するというところまでは明確になっていないが、現実問題として、既に訴訟のプロセスに入っている中において、質問検査権を行使して、その方々、あるいはその周辺の方々に対して調査を行うというのは、執行上極めて容易ではないというのが実態であると我々は認識している。
□私はかねてから調査権限は常に残り、調査権限を行使しないのは職務怠慢だと思っている。
○訴訟が起きてからでも、調査権は出てくる。
□少なくとも学説上の議論としては、通用しない。
○平成15年7月何日付けの供述書とか、そんなのいっぱい出てくるではないか。
□5ページのところで、情報公開や、今度個人情報保護法が施行されることになると、そちらの方から個人情報がごっそり出てきて、まだ余り出したくないようなものでも請求の対象になるが、そちらとの関係は、特に税務訴訟についてどうお考えになっているのか。
●そういった情報公開ですとか、個人情報保護の方で請求してもらって、そこで役立ててもらう分にはいいのではないかと思っている。
□そちらで嫌なものも出てくるが。
●それは、情報公開の制度で出すことになっているので、その制度に乗って請求してもらえれば、その制度に従って資料を出すという形になる。ただ、個人情報保護法については、これからまだ政令等を定めることになっているので、そこを見て検討する必要があると思う。
○6ページの内閣総理大臣の異議の制度がなくなると、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある執行停止はできないことを実効的に担保する制度がなくなってしまうと書かれているが、これは公共の福祉要件を残して裁判所に判断させるのでは、やはりまずいというお考えか。そしてそういうことが財務省の所管の行政の中で、具体的に何かあるのか。
●懸念しているのは、経済制裁国への海外送金停止といったことを、国際的に協調するということでやっている場合に、裁判所の方でこの送金についてはやっていいということが認められると、国際的に問題になるので、そういった場合に行政府の長たる内閣総理大臣が、そういったことを止めるような方策が必要ではないのではないか、あるいはそういうのをやめるのであれば、行政府としてそういったことを止めることができなくなってしまうのではないかという懸念を持っているということである。こういった制度が最近使われてないというのはよく承知しているが、ただそういう危機的な事態に対処するときに、全く制度としてなくしてしまっていいのかどうかということである。
□外国にはこういう制度はないので、にもかかわらず国際関係は動いているから、日本だけどうしてこういうのが必要かという点はどうお考えか。
●海外についてはよく承知していないが、要はその後立法府に対する報告を行うこととなっているので、三権分立の中でどう考えるかという問題ではないかと思っている。
□外国は何も内閣総理大臣とかが出てこなくても、別にいろいろやっているものだから、その点もお考えいただきたい。それから今の6ページのところで、もう一つ、仮の救済の方で、処分ごとに検討するべきであるというのは、処分ごとにそれぞれ仮の救済制度を置けというお考えか。
●ここの影響のところで申し上げたような形のものについて、いきなりこれを認めるということになると不都合があるので、そういった事案ごとに検討すべきもので、一律に仮の救済制度をどうするかということを決めるというのは問題ではないかということである。
□個別法で書けという御主張か。
●個別法というよりも、むしろ事案ごとに考えるということである。
□事案ごとに対応できるような制度を仕組んでほしいということか。
●そういうことである。
○11ページで、取消訴訟の排他性と出訴期間の制限を廃止すると行政の円滑な遂行が困難になる、行政行為の相手方始め、関係者の立場が著しく不安定なものになるといっているが、ここは具体的にどんなことが出てくるのか。
●義務付け訴訟のところで提起したような影響だとか、あるいは出訴期間のところに挙げた問題をまとめて書いているという趣旨であり、それ以上のものを書いているということではない。
○財務省の関係で、例えば具体的にこんなケースで困るということを教えていただきたい。
●それは14ページの「出訴期間の延長」で書いているように、免許について新たなものを与えるときに躊躇するといった問題だとか、そういう形で行政の円滑的な運営に支障が出るということである。
○14ページで、3か月内に裁判を起こした場合には、新たな免許は付けないのか。
●事例によるが、普通はしないことになるのではないかと思う。新たな免許をその時点で付けると、不法な状態になる可能性があるので、そういった訴訟が出ると、そこは新たな免許は出さない。
○そうすると、訴訟を起こされた場合には、もうまさにおっしゃるとおり、不安定だということか。
●訴訟が起こされるとそうですだが、訴訟が起こされなくても、出るかもしれないということで新たな免許を出すことについて躊躇をしてしまうということである。
○だとすると、訴訟が起こればもう出さないというのは本当にそうか。訴訟が起きれば3年や5年はかかるが、その間出さないのか。
●たばこの免許について通常訴訟を起こされるのは、不許可の方であり、そういった方は裁判等を起こすと、当然そこはたばこの免許というのは既存のたばこ屋さんからのある一定の距離を持ち、場所によって若干違うが、その距離基準を満たしておれば免許をあげましょうということになっている。したがって、訴訟を起こすのは、たばこの免許を不許可になった方が起こすわけだから、当然そういった方は裁判を起こしても、不許可になった方というのは距離基準を満たしていないところにたばこ屋をやりたいという申請がある。
○あなたが出している例を尋ねている。許可の取消処分を受けたとすると、例えばその隣で許可申請した人があると、それは距離制限にかかるから新たな処分はできないということだろう。
●微妙なところがあり、距離基準に引っかからないと。
○Aという業者が取消処分を受けたとすると、取消しだから、隣のBという人が申請してきたが、Aが訴訟を起こすかもしれないから、3か月間はBに許可できないという趣旨でおっしゃっているが、Aが3か月以内に訴訟を起こしたら、訴訟が3年、5年かかるではないか。その間はBには絶対許可を下ろさないのか。
●そういうことはないと思う。
○そうだろう。それは一緒ではないかということである。だから、そういう意味では説得力がないではないかということを申し上げている。11ページの行政の円滑・効率的な遂行が困難になるとか、行政行為の相手方をはじめ、関係者の立場を著しく不安定なものとするおそれがあるということについては、具体的にどういうふうに困るというのが、もう一つ行政官庁からのヒアリングであまり出てこない。
もう一つ、出訴期間の14ページで、②の方で大幅な延長は問題点があるという御趣旨だが、そうすると、小幅な延長ならいいではないかということだと思うが、今の3か月から、これは困るという大幅な延長というのは、大体どれぐらいだと考えているのか。例えば、1年とかどうか。
●そこはいろいろ議論があったところだが、期間は連続的なものだから、ここまでならいい、ここまでなら悪いと期間を区切って答えるのは、なかなか難しい。
○大幅なということをあなたの方で書いておられるから、大幅なというのはどれぐらいのことをイメージしているのか。
●部内の議論では、1年についてどうしても困るという特段の異論は出ていない。
□事務処理との関係で出訴期間内である場合と、それから出訴期間が終わったということになると、書類の管理や何かは変わってくるのか。
●法律で決まっているのは、その期間保存することになる。また、情報公開法の関係で、この書類については何年間保存するという規定があるので、それに従って処理をしている。出訴期間が変わってくると、そこの辺りをどうするかというのはまた考えなくてはいけなことが出てくるかもしれないが、現在は情報公開法の関係でそれぞれの書類の保存年限を決めている。
□国税局の関係では、常に大量処分性と専門性が問題になるが、それとの関係で出訴期間について、国税はこういう事情があるというようなお話は内部でしているのか。
●国税について若干申し上げると、一部研究会の議論において、除斥期間との関係で考えたらどうかという議論があったと承っている。ただ、若干出訴期間と除斥期間が異なるのは、出訴期間の始まるところは、通常であれば課税処分後に異議申立てを行い、不服審判所の裁決が出た後の3か月ということである。一方、除斥期間は申告が行われてから3年とか7年とか決まっているので、ちょっと土俵が違うということはある。そこはそういった2つの異なる制度を、同じ形で捉えるとやや我々としては混乱してしまうという感じがある。
□我々の方では主な検討事項の23ページでA案からC案まで出しているが、これについて、何か御意見があって、これは困る、国税の場合はこういう理由がある、あるいは別のたばこの営業免許のような場合はこうだ、というようなことで多少議論されたのか。
●議論はしたが、必ずしも詰まっていない。
□最後になって、財務はここはどうしても承服できないということを言っても、それこそ時機に遅れた抗弁になるので、適時適切にお願いしたい。我々は何も自分の意見をこのまま推し進めるということではなくて、できるだけ的確な情報をいただきたいということなので、この出訴期間の点でも、国税はこういう理由があるということ、あるいはおよそ一般的に行政処分はこういうことが重要だというふうに、およそ行政処分とは、というような議論でも結構だから、我々が今まで気付かなかった論点を出していただくと大変ありがたい。
●この案については、どの案で困るといった意見は省内から出ていないが、ただここに書いているように、関税につきまして贋ブランドの場合、廃棄を今、3か月置いているので、またどうするかというような問題は出てくるかと思う。
○例えば、1年ということについては、特に部内では異論がなかったということで、それはもう一つ言うと、今、異議申立期間が60日で、前置だから60日間出訴期間のようなものだが、これについても1年ぐらいだったら延長してもいいという御趣旨か。
●基本的に、どの期間であれば我々が対応できないとかいう議論に関しては、我々としても定量的な議論というのは非常に難しかったところである。ただ、幾つか問題となるものはあり、先ほどの原告適格の拡大であるとか、あるいは、現在租税訟務においては、いわゆる総額主義という形で争われているのがほとんどだが、例えば争点主義というような形になると、訴訟期間がどんどん延びていくと、また新たな訴訟を起こされるということになり、1つの訴訟が終わったタイミングで、たまたま除斥期間が切れてしまい、したがってもう更正処分が打てなくなるというような事態もあるので、ある意味でこちらの行政訴訟手続全体の改革の中で、そういった適正な課税を確保する観点から、必要なる手当を是非御配慮いただきたいといった議論は部内でした。けれども、今、委員の方からお話ありました、1つの期間を捉えてこれをどこまで延ばしたら支障が生じるとか、そういうような議論というのは我々の方も具体的に行っていない。
●国税の徴収の立場から、出訴期間について若干申し上げさせていただくと、国税徴収の流れというのは、督促があって差押えをして、公売公告をして、売却決定をして、換価代金の受入れをして、配当という手続でずっと流れていくが、差押えをしても、実務上は今の異議申立期間内は公売にかけることはなく、仮に債権の差押えでも、すぐに履行期限、取り立てられる期限が来ても、一応ある程度の期間、不服申立てが出るかどうかという様子を見守っている。そういう意味で、実際に不服申立ての利益を奪うことのないように配慮はしているが、これが出訴期間を延長したときに、待つ時間というのがどうしても長くならざるを得ないが、財産によっては段々と価値が減価する、あるいは陳腐化するといったようなものもあり、その辺を考えると国税徴収の立場から、6か月程度にしていただければありがたいと思う。
○それは今のたばこの小売りの議論と同じで、それでは異議申立期間が過ぎたら、まず異議申立てが出た、訴訟が出たという場合には、ずっと最後まで公売手続を進めないかといったら、そんなことはないではないか。つまり公売手続はどんどん進むわけで、最後の換価の制限だけがあるだけだろう。現実にはそれでやっているのだから、今の議論は反論にはならないと思う。
●換価制限は働いているので、それまでずっとやっていっても、無に期する可能性が高いとなれば、それは実際にムダな手続をやらないということになる。
○しかし、手続は進めるだろう。60日だけ待って、異議の申立てが出れば後はもうずっとやりませんというならわかるが。
●実務上やっていない。
○手続は進めるだろう。異議の申立てが出たら、まず差押えないか。
●差押えはともかく、差押えに対する異議の申立てが出た場合には、公売手続ができない。
○だから、制限があるのは、最後の換価だけだろう。
●法律はそうなっている。
○手続は現に進めているではないか。
●いや、それはやっていない。
□水掛け論なので、他の方に進む。
○24ページの①で書いていることは、要するに、不服申立前置はなくなっても差し支えがないということか。
●国税に関して記述されている不服審査前置は、大量・反復性、技術・専門性を踏まえて設けられているものであり、仮に不服申立てを経なくても、訴訟提起ができることとしていた場合でも、簡易・迅速な権利救済の手続である不服審査制度は、従来と同様の役割を果たしていくものと考えており、現在のところ特に目立って困る点が生じるとは考えていない。しかし、2番目でいずれにせよ、我々国税不服審判所だけの立場でものを申すわけにもいかないし、利用者である国民にとっての利便性、あるいは不服審査機能の意義、それから裁判所の対応能力、こういうものを踏まえて検討する必要があるとは考えている。
○2のところはそうだが、1のところで書いておられるのは、仮にという文章のところで、これは不服申立前置義務、前置強制がなくなってもよいということか。
●仮に不服前置がなくなってもということである。
□不服審査前置は個別法の問題だから、これは個別法で出てくる。そうすると、国税の方ではやめても差し支えないということであれば、他の制度がどうなっているかというのは無関係に、不服審査前置を廃止しても構わないということになるが。
●ただ、これは専ら一般的に行政訴訟検討会で検討している事項であり、国税の部分だけ、そもそも不服審査の話なので、そこを国税だけに限って個別法なり何なりを手当することについては、今のところ余り考えていない。むしろ、不服申立前置はいろいろ他省庁もあると思う。
□あまり言葉尻を捉えるつもりはないが、他省庁を見ながら不服審査前置を考えるというのもいささか問題があると思う。
○不服審査前置に国税の方から御覧になって、あるいはここで言っているように、裁判所の対応能力ということまで視野に入れて考えてということかもしれないが、何らかのメリットはあるが、なくしても何とかやっていけるというのが①の方の御趣旨か。もしそうだとすれば、国税のサイドからやはり不服審査前置、不服審判所のパフォーマンスがいいのであれば、それは利用者は裁判所よりまずそちらへ行くだろうということが考えられるが、それとは別に前置強制をやはりした方がいいという一番の理由は何か。これは他との横並びというよりは、国税はもう不服審査前置の最大の大物だから、ここで頑張っていただかないと、他は頑張れないと思う。
●横並びというのは、そういう意味で申し上げたわけでもないし、具体的に法律となればどうなるかということを考えただけであって、他省横並びでということではない。不服申立制度が国民にとって十分に魅力のあるものであれば、例えば自由選択主義をとっても、何ら弊害は生じないという考え方は傾聴に値すると考えている。ただし、国税という行政分野において、大量・反復性や技術・専門性という不服審査前置を設ける意義が従来よりあったことは、おそらく争いのないところだと思う。だから、これを取るというのは、一種の社会的実験になるだろうと思う。また、現在においても審査請求がなされたときから、3か月を経過すれば、裁決を経ずして訴訟提起できることから、現状においても納税者が訴訟提起する権利を不当に制限する仕組みにはなっていないと言えるのではなかろうかと思う。だから、むしろ不服申立前置が今まで置かれていたというのは、それだけ我が国税不服審判所が、それだけの働きぶりがあったということだと思う。
□いずれにせよ、行訴法の中では自由選択主義を取っていて、あとは個別法の問題になるが、やはり効果的な権利救済ということの全体のスキームの中で、この不服審査前置というのは、非常に重要な問題であると思っている。
●課税方サイドから申し上げると、やはり税務につきましては、大量・反復性、専門性、そういった極めて大きな特殊性があるので、課税の公平であるとか、またできるだけ一律な、適正な税務執行を行う観点から結論が非常に早い形で出ることが、税務行政の安定性の観点から極めて望ましい、また公平・適正な課税の観点からも望ましいと思っているので、前置主義の如何を問わず、今、申し上げたように、早期に確定がなされると、そういった安定した状態というのが我々にとって、課税庁サイドからすると極めて望ましいということだけ一言付け加えさせていただきたい。
○大量・反復ということが、今言われた、公平性・統一性を確保する、大量だから、その必要があるとおっしゃるのか、それとも裁判所が迷惑するでしょうということなのか、そこはどうか。
●課税庁サイドから申し上げれば、それは場所の問題ではなくて、そういった状態が早期に確保されると、これが極めて重要な問題であると考えている。
- ⑨人事院からの説明(□:座長、○:委員、●人事院、■事務局)
- 資料2(人事院分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。
□大雑把な質問で申し訳ないが、人事の問題は民間企業でもあるわけで、民間企業だってそれぞれ玉突きみたいにくることがあり得るが、公務員の場合、あるいは公務員法制の場合には、民間企業と比較して、こういう点で制度上今の民間のようなことが起こるのは具合が悪いという御説明はなかったと思うが、そこはどういうふうにお考えなのか。
●確かに民間の人事にもあるかと思うが、公務員の場合はそのポストにいる者が、やはり何らかの意味での権力的な関係というか、国民の皆さんにいろいろ影響を与える行為を行えるので、端的に言うと、ある何らかの権限を持っているポストに誰が就いているのか、2人就いているのか就いていないのかと、そういった状況が生ずるというのは、非常にまずいということだと思う。例えば仮処分のようなことを考えたときに、あるポストに2人の人間が就いていると、どちらの命令が正しいのか、あるいは処分が正しいのかといったような、これは非常に一般的な心配と言えば心配だが、そういう関係にできるだけ陥らないように、短い期間で確定させていくということがやはり必要なのではないかと思う。
□1ポストに2人ということは、制度上はあり得るのか。
●普通はない。
□ないという前提で議論をしておられるということでよいか。
○今の点が、まさに問題点だと思う。つまり民間でも同じことがある。そのときに、行政だけ特に違うと言えるのかどうかという問題で、3ページの仮の救済のところで、いろいろと書いておられるのが、これはまさに民間でも同じことが起きる。もしも分限とか懲戒処分が正しければ、確かに困るということになる。だから、これは民間と一緒。ところが、これ逆に、処分が間違っていると、違法であると、裁判所によって1年後に審理した結果取り消されるという事態だってあり得るわけだから、人事院はどちらかというと個人の公務員の味方の役所だから、違法な処分がなされたときには、その人の立場を最大限守らなければいけないという立場である。そうすると、発想を変えて、2つ書いてあるこのケースで、処分が違法だという場合、1年後に裁判所で取り消されるという場合を考えたときに、どうしたらいいと思うか。
●万が一違法な処分であったということであれば、それは勿論人事院ができる限り早く取り消すか、あるいは裁判所ができる限り早く取り消すことによって、元に戻すということになるかと思う。
○ただ、被処分者の公務員の立場からすると、やはり仮の救済という制度が適用されないと困るということにならないか。
●そこはやはり任命権者という、人事に責任を持つ人が、彼はこういう非違行為があったという判断をしているわけだから、どちらを取るかということである。
○間違えるという前提で話している。
●間違っている場合は、できるだけ早くそのことを見付けて、指摘して、修正させるというところが限度ではないかと思う。
○それだけではやはり救済としては不十分なので、裁判所もどの場合だって全部出すわけではない。民間会社の労働事件だって、どんな場合だって地位を回復するわけではなく、本案で勝てるという見込みがあって、初めて出る。だから、やはり両方あり得るわけで、どうもこれは処分は正しいというケースについて、これは出ない。しかし、どうも処分が間違っていると。現に1年後に取り消されるというケースを想定すると、やはりそういう仮の救済という制度がないと、その当該公務員にとってはたまったもんじゃないということにならないか。
●人事の場合にどういう状況があるかというのは、わかりにくいかと思うが、むしろそういう状況にあればもう取り消せる状況ではないかと思う。つまり、その任命権者がやったことがどうも怪しい、しかしまだ確定させるには事実調査をしなければいけないという状況というのが、果たしてあるのかと思う。結局は行為があったかなかったか、あるいはその行為が非常に違法なものなのかどうなのか、非違行為として見るべきなのかという、そこら辺の判断の話になってくるので、それについてはやはり人事権者の判断というのをまずは尊重せざるを得ないのではないか、それが公務員法の世界ではないかと思う。
□公権力の行使に当たって、その人がもし何か不始末を起こしたとすると、任命権者の責任になると、裁判所の責任は取れない状況だという、そういった問題もあろうかと思いますので、しかしその辺は質問に的確に答えるように、いろいろ考えていただきたいと思う。
○2ページのところで、迅速化の関係での開示の場合に不利益処分の不服申立てを行った者等の個人に関する情報、公務員が職務上知り得た秘密に関する情報等も含まれることから例外が認められないとすると、プライバシー、守秘義務等の点から問題となるという御指摘があった。ここでいうプライバシーというのは、やはり中心的なものというのは、その不服申立てを行った者、当該人のプライバシーというのが中心か。
●それは一応議論になって、証拠の面でもその辺りについての情報が一番たくさん多くあるので、それが中心である。ただ、勿論証拠の中には申立人だけではなくて、第三者の情報も入ってくる。
○そうすると、例えばこうした制度の中に、本人の方から、申立人の方から同意のようなもの、その了承を取るというようなものを制度の中に仕組んだ場合には、この辺は大幅に解決してしまうと考えてよろしいか。
●プライバシーということだけを見るとそうかもしれない。
○おそらくそういうことになると思うが、そうすると、例えば次に考えなければいけない問題というのは、どういう点か。つまりこうした事件の核心というのは、自分がどういう基礎的な事実を認定されて処分されたかというところに非常に関心があって、訴訟でもそういうことが中心になる。そうすると、むしろどんな認識を持って、あるいはどんなふうな情報があって自分にこういう判断が下されたのかということが大前提になろうかと思うが、本来ならそういう当事者については、そういうことがないと主張するのが普通だから、あるいはその評価が著しくおかしいと、そういうふうな争い方になるのが通常だから、むしろそこら辺が全部出てきてしまった方が、審理とすると原告にとってもすっきりするはずだということが多い。そうしたやり方をするときには、むしろ本人が同意していれば出してしまう方がいいのではないかとも考えがちだが、そうすると行政にとっては、例えばニュースソースの点とか、そういう点で次から困るんだとか、そういうものがあったらそういう点を具体的に教えていただければと思う。
●この問題は、まさに裁決に出てきている記録なので、人事院がまさに原処分について審査請求を受けて、裁決を出しているときの証拠の話ではある。だから、通常であればAさんが人事院で証言しているから、それは裁判所では証言しないという理由は普通は考えらない。私どもから見れば裁判所が、Aさんに証言を求めればいいのであって、人事院をそういうプライバシーの問題、あるいは守秘義務に関わる問題を、できるだけ早く確定した方がいいからという理由で、あるいは理由だけで、持っているものをごそっとまず裁判所が見てしまうという制度はちょっとどうなのかなという感じがしている。やはりあくまでも、Aさんは人事院で証言してもいいと思って証言したのだから、裁判所の方からAさんに証言をさせればそれで済むし、まさにこのプライバシーの問題も起こらないし、職務上知り得た秘密の問題についても、それぞれの省庁が裁判所にこれはこの問題を解決するために、しゃべってもいいかなと考えたらしゃべるわけだから、要するに、本来のパターンで処理すればいいのではないかという気がしている。人事院から、持っているものをごそっとまずもらうという便法をあえてつくらなくてもいい、あるいはこういうプライバシーの問題、守秘義務の問題があるのに、制度として仕組むまではしない方がいいのではないかと感じている。
○5ページの「原告適格の拡大」のところで、原告適格の拡大について消極的な意見を述べているが、この検討会で、原告適格の拡大という場合問題になるのは、処分の相手方以外の第三者である。ところが、公務員事件の場合、第三者がある公務員に対する処分を争うということはあるのだろうか。家族というのは考えられないことはないが、それ以外はどうか。
●率直にいうと、余り考えられないという気がする。だから、関係ないじゃないかというのがあるのかもしれないが、ただもし心配することがあるとすれば、そこまで検討されている中で範疇に入ってくるのかどうかわからないが、処分が軽過ぎるというような訴えを認めるのだとすれば、これはかなり問題で、別の問題になってくると思う。
○そうすると、例えば納税者としての立場でのということか。
●この場合は、処分は非違行為を問題にするので、例えば同僚を殴ったと、そうするとそれに対して減給だったけれども、それはけしからんという議論はあると思うが、それは認めるべきではないと思う。この国家公務員の制度は、やはりあくまでも職員の保護のための制度であり、今の例で言うと、本人が減給が不満であるということで訴えるのは、それは受け止めるべきだと思うが、第三者であるとか、あるいは国民の方からそういうことを受けるという仕組みは、今の制度を根底から覆してしまうということになると思う。
○先ほどの裁決に関する記録の問題だが、先ほどの御答弁は、裁判所で調べることは裁判所でやればいい、人事院は人事院として、裁判所とは別の空間をつくって、そこで人事行政上望ましい審理のやり方を自由にやり、証人もそういう雰囲気の中で証言をすることがいいという御趣旨だったと思うが、そこは国家公務員法は実質的証拠法則を取ってないから、これが独禁法だと、公正取引委員会の事実認定を裁判所が尊重するためにこそ、公正取引委員会の審決の記録を全部もっていき、それで審理をするが、方向が全く逆だという感じがする。人事院の場合にはむしろ裁判所はもう人事院の審理とは別に自前で審理をして、それで全然違った事実認定をしてもそれはいいですよという、そういうお考えかと思うが。
●人事院が責任を持ってやったものが、違う認定をされるとは思わないが、ただ事柄の性格としては、おそらく公正取引委員会などと違うのは、公正取引委員会の場合はひょっとすると公正取引委員会の判断を第一義的に見て、それを裁判所が審査をするという仕組みなのかもしれないが、人事院の処分の場合は、一番よく知っている、あるいは非違行為についての証明ができるのは、やはり処分者、各省の長である。だから、やはりあくまでも原処分主義、裁判においても裁判所がその処分者に証明をさせて判断していくという仕組みが今とられているし、それはそれで1つの妥当な制度という気がしている。勿論人事院の判断を裁判所が判断するというのも、1つの立法論としてはあろうかとは思うが、かえって現行の仕組みを変える必要はないかという気がする。
○私が、昔、労働委員会にいたときに、労働委員会はむしろ自分たちは、人事院風ではなくて、公正取引委員会風になりたい、そういうふうに裁判所に扱ってもらいたいという雰囲気で、それが立法されない不満がたまっているということだった。
○裁判所で独自に認定した方がいいという結論はわかるが、なぜそうすべきかということは、結局その処分された人のプライバシーなり秘密ということが主たる理由か。
●そうである。
○だとすると、その人が合意しているときに守るべき価値というのは消滅するから、それでなおかつ何に、一体だれが支障を感じるのかというのがよくわからない。
●まさにその人、申立人だけの問題であればそうだと思う。先ほども言ったように、人事院が持っている資料、証拠というのは、申立人だけではなくて、他の方々のものがある。
○他の方々の秘密が確保されていてれば、逆に言えば本人のプライバシーや秘密に関する部分は同意があれば要らないわけだろう。隠す必要はないだろう。
●それはそうかと思うが、その場合に同意という仕組みをつくるのか、おそらく裁判所が先ほどAさんと言ったが、Aさんの証言を求めれば済むのではないか。
○それは別に人事院に心配していただく必要はなくて、要するに現実に何か同意があって出すことに、人事行政の上で支障があるのかどうかということを端的に教えてほしい。
●プライバシーの観点だけから言うと、先ほど言ったようにないかもしれないが、守秘義務の問題も実はある。
○守秘義務というのは、例えばどういう場合か。
●それは各省の秘密に関わるものもあるので、例えば各省の電話の記録などのようなものも、私どもの方に出てくるので、それをやはりぼろっと出すかどうかというのは、あくまでも各省の判断で、それはやはり裁判所から各省に聞いていただいた方がよい。
○もう一回整理するが、本人の処分された人にとっての秘密なりプライバシーの領域以外のところは、それはそれで配慮するという前提でお答えいただきたいが、その場合に本人に関することのみのプライバシーや秘密に関して、本人が了解しているときにそれが裁判所に当然に出ていくことに関して、人事行政の上で具体的な支障はあるのか。
●ただいまの非常に限定された条件であれば、今すぐそれはまずいというのは思い付かない。
□私もかねて不服審査のことで、原処分主義について疑問があるが、人事院として裁決主義をやってみようかというお気持ちはないのか。これからだんだん公務員法制がいろいろ問題になっていくときに、不服審査は俺のところだということで頑張る気概はないのか。
●内部の議論としては、ないわけでもないが、ただ先ほど言ったように、人事なので、やはりかなり裁量に関わる部分の判断、人事行政に関わる部分で、やはりその処分が正しい、行われている現状の状況が正しいのかどうかということを、誰から裁判所に対して主張させるのが適当かということを考えると、仮に裁決を経たとしても、やはり原処分庁にやらせる方が、ある意味で論点も明確になる。
□そうすると、不服審査前置は要らないのか。
●そういう議論になってしまうと困る。この不服審査前置の関係でいうと、やはり人事院も勿論人事行政の1つの専門家として、第三者機関として、あるいは不当性の判断まで議論できるということで仕組みとしてはあるので、3か月経てば裁判の方にいけるという規定等も併せて考えれば、まずそこに私どもの方に来ていただいて審査していただくのが、非常に適当ではないかと考えている。
○最後のページの最後の2行で、不服審査前置を課していることによって職員に特段の不利益を強いていることはないものと考えると書いておられるが、これは何か根拠があっての話か。
●ここで書いたのは、仮に私どもが非常に長くとどめておいたときに、問題が起こるかもしれないけれども、そんなことはない、規定として3か月を経過して裁決がないときには、訴えを提起することができるという規定があるので、人事院の方に経由してもらうことが特段の不利益を強いているのではないという趣旨で書いている。
○それは推測ということか。もうちょっと強い根拠があるのか。
●推測というか、少なくとも私どもの方に来たくないと、すぐ裁判に行きたいのだけれどもという声は聞いたことはない。
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