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行政訴訟検討会(第20回)議事録



1 日 時
平成15年7月24日(木) 13:30〜17:40

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、萩原清子、
福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)

(説明者)
小河俊夫(公害等調整委員会事務局総務課長)
石上 卓 (全国知事会調査第一部長)
中村次良(東京都総務局法務部長)
大藤俊行(金融庁総務企画局企画課長)
山中伸一(文部科学省大臣官房総務課長)
太田雅都(会計検査院事務総長官房法規課長)
遠藤隆志(会計検査院総長官房総務課渉外広報室長)
徳力徹也(公正取引委員会官房総務課審決訟務室長)
河野一郎(財務省大臣官房文書課業務企画室長)
石川善朗(人事院事務総局総務局企画法制課長)
井原文孝(人事院事務総局公平審査局調整課長)

(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田斉志企画官

4 議 題
(1) 各行政官庁等からのヒアリング
(2) 今後の日程等

5 配布資料
資料1 行政官庁等ヒアリング進行表
資料2 各行政官庁等からの意見等
     ・公害等調整委員会
     ・全国知事会
     ・東京都総務局法務部
     ・金融庁
     ・文部科学省
     ・会計検査院
     ・公正取引委員会
     ・財務省
     ・人事院
     ・内閣官房
     ・内閣法制局
     ・宮内庁
     ・衆議院
     ・参議院
資料3 行政訴訟検討会開催予定(第22回以降)〔改訂版〕

6 議 題

【塩野座長】それでは、所定の時刻になりましたので、第20回「行政訴訟検討会」を開会いたします。事務局から本日の資料について御説明があります。

【小林参事官】資料につきましては、今日のヒアリングの進行表と、それから各官庁からの御意見、前回再調整させていただいた日程表を改めてお配りしております。以上でございます。

【塩野座長】本日と明日は行政官庁等からのヒアリングを行うことにしております。事務局から各行政官庁に対しまして、いろんな照会をしていただきました。その回答につきまして、既に委員の皆様方に事務局から送付していただいていると思います。本日は机上にその資料は置かせていただいておりますので、適宜御参照の上、御発言をいただきたいと思います。
 時間配分につきましては、お手元の資料1のとおりですので、最初10分から15分程度御説明をいただき、質疑応答する形で進めていきたいと思います。質疑応答につきましては、各行政官庁等の行政分野にどのような影響が出るか、またその背景にある国民の生活、経済活動等にどのような影響があるか、そういった点も含めて適宜御質問をいただきたいと思います。
 まず、公害等調整委員会からのヒアリングを行いたいと存じます。御説明は小河俊夫事務局総務課長です。よろしくお願いいたします。

【公害等調整委員会】

【説明者(小河総務課長)】公害等調整委員会総務課長の小河でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元にヒアリング資料ということで4ページプラス1枚資料を出させていただいておりますので、それに従いまして、御説明を申し上げたいと思います。
 まず1ページ目でございますが「公害等調整委員会の基本的性格及び任務」ということでございます。
 私ども公害等調整委員会は昭和47年、中央公害審査委員会と昭和26年以来、総理府の外局でありました土地調整委員会とを統合して設置されたものでございまして、国家行政組織法第3条に基づく行政委員会でございます。発足時は総理府の外局でございましたが、平成13年1月の省庁再編に伴いまして、総務省の外局となっております。
 それから「任務」でございますが、大きく分けて2つございまして、「公害に係る民事紛争の処理」、これは公害紛争処理法に基づくものでございます。あっせん、調停、仲裁及び裁定を行うものでございます。
 それと大きい柱の2つ目、これが今回の行政訴訟検討会に直接関連するものでございますが、「鉱業等に係る土地利用の調整」ということでございまして、昭和26年以来、土地調整委員会において所掌していたものでございます。この中には、大きく分けて3つございまして、「鉱区禁止地域の指定」、それから今回関連します「鉱業権設定の許可処分、岩石採取計画の許可処分等に関する不服の裁定」。それから、土地収用法等に基づきまして、意見の申出、承認等を行う。大きく分けてこの3つでございます。その中でアのb「鉱業権設定の許可処分、岩石採取計画の許可処分等に関する不服の裁定」が今回の直接の対象と考えております。
 それでは、この件につきまして、2ページ目で御説明をいたしたいと思います。「制度の趣旨等」でございますが、不服の裁定制度は、現在、土地利用に係る14の法律に基づく一定の行政処分を対象といたしております。これは4ページのアと5ページ目別紙で「不服の裁定の対象となる行政処分」でお示ししたとおりでございます。この制度というのは、鉱業、採石業及び砂利採取業と他産業又は一般公益とのいずれかの利益に係る行政処分に対する公害等調整委員会の裁定を通じて、土地利用に関し、「現実の利益衝突」が起きる前に、公益的な観点から、行政的、政策的な総合調整を図ろうとしているものでございます。したがって、違法な行政処分による個別の国民の権利侵害から救済し、防護する一般の行政不服の申立制度とは、その趣旨・目的を異にする制度でございます。
 そのため、公調委が行った裁定その他の処分については、行政不服審査法の適用が排除されております。
 また、その処理手続面を見ましても、土地利用調整法に基づきまして、第三者機関による合議体による手続、それから口頭審理、直接審理ということから、行政不服審査法における手続と大きく異なっておりまして、行政事件訴訟法ないしは民事訴訟法に近い手続となっておりまして、後ほど御説明しますが、第一審機能を持っているものとお考えいただきたいと思います。
 (2)以下の「概要」につきましては、裁定の手続関係でございますので、後ほど御覧いただければと思います。
 4ページ目でございますが「訴訟との関係」でございます。公調委が行った裁定又は決定に対して不服がある場合には、裁定書等が到達した日から60日以内に訴訟を提起しなければならないということでございまして、この60日については今回御検討されている訴訟の期間について関連するところがあると思いますので、その場合には整備法等の必要性が出てくるかと思います。
 この際、訴訟の提起については、原処分そのものを訴訟の対象とせず、公害等調整委員会を相手方として訴訟を提起するものでございます。したがって、公害等調整委員会が被告となるものでございます。
 それから、この訴訟につきましては、公調委の行う裁定が、公正を担保し、訴訟に準じた慎重な手続を経てなされるということを前提にいたしまして、次のような取り扱いがなされておるわけでございます。
 まず、事実認定の拘束力でございます。裁定に対する訴訟については、裁定委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠がある場合は裁判所を拘束することとなっておりまして、なお、実質的な証拠の有無については裁判所が判断するということになっております。
 また、新しい証拠の提出の制限もございまして、裁定委員会が正当な理由がなく、当該証拠を採用しなかったような場合、また、当該証拠を提出することができなかったことについての過失がなかった場合に限られております。なお、裁判所が新しい証拠を取り調べる必要があると考えた場合においても、裁判所は新しい証拠を取り調べることはできず、事件そのものを公調委に差し戻すという形になっております。
 そういったように、第一審の機能を持っておりますので、これについてはこの訴訟は通常の行政事件訴訟とは違い、東京高等裁判所の専属管轄とされております。
 そもそも裁定自体が東京における公害等調整委員会だけに裁定の真正を行うことができるということから、地方支分部局を持たない公調委においては、その訴訟についても東京高裁の専属管轄となることが重要だと考えております。
 なお、これに関連いたしまして「法務大臣の指揮権の不適用」ということがございまして、公調委自ら訴訟を遂行することとなっております。ただし、現実面といたしまして、これに関連いたしまして、この訴訟がなされた場合のためにということではありますが、元々法務省の、現在で言いますと、訟務担当の官房参事官が併任という形で我々の事務局の審査官となっております。
 それから、これに付加いたしまして申し上げますことは、回答の12ページでございますが、「不服審査前置による制約の緩和」について申し上げますと、我々が裁決主義を取っており、第一審機能を持っているということから、通常の不服審査とは違うものでございますので、この制約の緩和の趣旨とは相入れないものではないかと考えております。したがいまして、そもそもの制度が完全に見直すということでない限りにおいては、この面についてはそのまま適用できないと考えております。
 それから、もう一つ申し上げますと、原告適格についての緩和が御検討されておられるようでございますが、この件につきましては、公調委の行う裁定はそもそもの基となる法律の要件に従って、それが適法になされているかどうかを裁定するものでございますので、そもそも原告適格を拡大したからといって、法律の要件に縛られるわけでございますから、その辺は直接当事者の利益になるかどうかというのは、また別の話と考えております。
 なお、これに付言して申し上げますと、最近の場合は鉱業等についても環境紛争に絡んでいるものがございます。環境紛争に絡んでいるものにつきましては、いわゆる住民訴訟的なものがありますが、1つには、公害紛争という形で、例えば鉱業について言うと騒音振動を理由として行われる場合が1つあります。その場合も、仮に不服の裁定につきまして、住民側が一般公益があると主張して申請された場合もないわけではないのですが、これについて言うと、一般的には申請人の適格については余り厳格にやることなく、中身の審理において判断するという立場を取っております。
 ただし、付近の住民がこれを求める場合においては、実は住民が求めているものは環境の保全ということでございまして、鉱業権の取消し等を目的としたものではそもそもないということから、ある例で申し上げますと、不服の裁定が付近の住民から行われた場合において1つあった例がございまして、これについては、裁定そのものでございますと、住民側の申請を棄却するという形になったのではないかと、最終的にはそうならなかったのですが、そういう場合がございました。その場合、実は住民が求めていたのは、その住民の環境が保全されるということを目的としたということから、この裁定の期日外において当事者の話し合いを進め、被申請人は経済産業局長になるわけですから、実はその裏にあります業者側と住民側の話し合いを進め、公害紛争処理における調停に類似なものを行いまして、それのお手伝いをしたということで、公害防止協定が締結されまして、それによりまして、そのものの紛争については解決したということから、裁定申請自体が取り下げになったという例がございます。
 これにもあるように、原告適格というのが住民を対象にした場合には、やはりそのものの法律自体に、例えば環境配慮事項等があれば、それについては実質的な判断に踏み込めますが、これまでの法律のままでは、それに踏み込むことができませんので、私どもの裁定そのものというよりは、関連する公害紛争の方に近いものなのかなという感じがいたしております。
 なお、最後に申し上げますが、我々の不服裁定につきましては、似たような制度が公正取引委員会の審決制度がございますので、それとも御参照いただければ、我々の制度、多少特殊ではございますが、おわかりいただけるのではないかと考えております。以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、今、特に言及されなかった部分について、既にペーパーが出ておりますので、それも含めて質問の対象にしたいと思いますので、今のプレゼンテーション以外のことについてもどうぞ御質問いただければと思います。どなたからでも結構でございます。

【水野委員】裁定に対する不服については60日という規定がございます。60日というのはなぜそうなっているのか。例えばこれが逆に90日とか、1年とかだったらまずいのか。あるいはもっと短くて30日の方がいいのかとか、60日と決められていることについての実質的な根拠は何かありますか。

【説明者(小河総務課長)】これは当時の他の類似法律等から引き出したものでございますので、60日自体でこうでなればならないということはないと思います。ただ、30日以内となると非常にあわただしいものでございますので、裁定の内容を吟味してからということになると、30日以内というのはかなり厳しいということから、訴訟を提起する場合の利益というものを考えて、60日はあった方がいいのかなと思います。ただし、90日となると多少の違いだと思いますが、1年ということになりますと、元々これについて鉱業等他産業との、一般公益もございますが、他産業との調整ということでございますので、いわゆる権利関係の確定ということになるとかなり長い間確定しないということになりますので、特に多いのは、いわゆる鉱業権を認めない、他産業に支障があるので認めないとした場合においては、それは早く権利関係、例えば鉱業権者の方が確定したいということですから、1年まで待たずにいいのかな。ただし、これについては、今回御検討されておられるようなので、それについては、なるべくそちらの方に合わせられるのではないかという方向で考えております。これについては多分、他の法律でもあると思いますので、整備法の段階で御検討させていただければと考えております。

【芝池委員】この裁定については東京高裁の専属管轄が認められておりますけれども、こういう立法は他にも例はあるわけです。この点については、今回の改革では、少なくとも私は余り手を入れることは考えていなかったのですが、例えば鉱業権を巡る争いですと、先ほどおっしゃったような場合、実質はあるどこかの地方に鉱業権を持っている人と、それから周辺の住民の争いになるわけですね。勿論、形式上の被告は公害等調整委員会になりますけれども、実質は東京にいない人が争うわけで、そうすると、高裁の専属管轄は認めにしても、東京に限定する必要はないのじゃないか。勿論、公害調整委員会の方としてはお困りになるということはわかるのです。

【説明者(小河総務課長)】制度的に申し上げますと、私ども御説明しておりますように、事実認定の拘束力がありますので、まず、公調委が行う裁定の段階においては、現地における職権を含めた調査を行いますし、場合によっては現地の審理も行います。その上で私どもの東京において審理期日を何回かやってということになりますので、あらかたのものについては多分調べておりますので、内容的にはこれまでの例によればというこというなのですが、すべて訴訟が提起された場合には、我々の記録を送付いたしますので、それで大体足りているのではないかということから、そもそも裁定自体が東京で行われるということから東京高裁になったのではないかということでございまして、あとは、では全国の高裁レベルで広げるかということになりますが、それは後は件数的にはそんなに多くございませんので、実質認定の拘束力、証拠提出の制限がありますから、実質的にはそれほど影響はないとは思います。あとは他の法律を含めてこういった裁定、審決を行う場合の法律立てのやり方ということではないかと考えます。

【芝池委員】実際に現地を見たりされるのは、委員会での審理の段階ということですね。その場合、必要があれば現地に行かれると。

【説明者(小河総務課長)】特に申請人側が現地の状況を見てほしいと。かなり膨大な書証も含めてお出しいただくんてすが、現地を見なければわからない部分もありますので、これは大体毎回のように現地は調査いたします。現地において当事者双方の意見を聞く場合もありますし、現地における審理期日を開く場合もございます。その場合は、当事者双方の主張を述べていただく場合、それから場合によっては現地において参考人の出頭を求めて、意見聴取を含めてやることはございます。

【塩野座長】他に何かありますか。私の方から1つだけお伺いしますが、確認なんですが、いろんな御意見の中に検討が必要とか、あるいは整備法が必要と考えられるという御指摘がございましたが、これは基本的には行政審判であるといったことでの御主張というふうに伺ってよろしいですか。先ほどの原告適格の問題、これは議論をすると時間がかかりますので、これはやめておきますが、これは原告適格プロパーの問題ではなくて、固有の仕組みの話だと私は理解し、むしろ原処分者であるというふうに考えた方が、処分に対する申請人適格というふうに考えた方がよろしいかと思います。そこで確認なんですが、整備法が必要と考えられるというのが幾つかございますが、これは適用除外ないしは別の法律事項を個別法で手当をしてほしいということなんですか。

【説明者(小河総務課長)】先ほど申し上げました訴訟の適否の問題もございますように、各省類似のものがございます場合には、いわゆる一括整備法で処理できるのではないか。それまでの段階におきまして、我々が一括整備法では対処し切れない、ないしは大きな構造的な問題がある。問題というのは構造的な課題があるという意味ですが、ある場合には、場合によっては単独で法律改正をする必要が出てくるかもしれないのですが、今までの検討の段階においては、ほぼそれほど問題はないのではないか。一括整備法による部分的な改正によって今回の場合対処できるのではないか。
 ただ、お詰まりになっていないところも非常に多いので、その辺は逐次我々も検討させていただければと考えております。

【塩野座長】一括整備法もいろんなやり方がありまして、一括整備法の中で個別法の改正があることもありますので、特別な手当が必要な場合があるけれども、他省庁と同調の歩調を取れる場合もあるし、公調委特別なものもあるという理解でよろしいですね。

【説明者(小河総務課長)】はい。

【塩野座長】どうもありがとうございました。他に何かございますか。それでは、ちょうど時間がまいりましたので、どうもありがとうございました。また、何かあれば質問が出ますので、その節はよろしくお願いいたします。

【説明者(小河総務課長)】よろしくお願いいたします。

【全国知事会】

【塩野座長】それでは、次に全国知事会からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は石上卓調査第一部長でございます。よろしくお願いをいたします。

【説明者(石上調査第一部長)】全国知事会調査第一部長の石上でございます。今日はこういう機会を設けていただきましたことに、まず御礼を申し上げたいと思います。それでは、早速説明をさせていただきたいと思います。
 お手元の方にこの検討会における検討事項に対する都道府県の意見という6ページのものがあるかと思いますが、それを御覧いただきたいと思います。
 私どもの方はこの検討会の検討事項を全県に配布しまして、これに対する意見というものをアンケートの形で実施いたしました。現段階ではなかなか難しい問題が多いものですから、この段階では26団体の回答しか得ておりません。意見につきましては、この検討事項の中の回答のあったもの、これをここに列挙させていただきました。若干要約してございますが、そういったものでございまして、私どもで意見集約をしたとか、そういったものではないということを事前に申し上げておきたいと思います。今も回答がまいっておりますので、これにつきましては、後日、できればそのままのような形で資料としてお出しをさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 最初の1ページでございますが、時間の関係もありまして、幾つかの項目についてだけ説明をさせていただきたいと思います。最初に「被告適格者の見直し」でございますが、これにつきましては、考え方というところにございますように、実務上、特に影響がないとする意見が多い。ただ「その他の意見」で1点ございますけれども、1つ目の○でございますが、一般的に処分を行う際には処分庁の表示がなされているから、特段見直す必要はないのではないかという意見もございます。
 2番目でございます。「行政訴訟の管轄裁判所の拡大」でございますけれども、これにつきましては、現行の行政庁の所在地以外の裁判所に管轄を拡大することは特に地方公共団体の場合には遠隔地への出廷等が多大な負担となるということが想定されることとか、審理の迅速化という観点からも疑問があり、反対とするという意見が大多数でございました。
 2ページの方にまいりますが、「出訴期間等の教示」でございますが、これについては基本的に適当とする意見が多かったということでございます。新たにそういう規定を設ける場合には、教示の対象、相手、内容等について範囲を明確にすべきであるという意見が多くございました。
 次に、「(4)審理を充実・迅速化させるための方策の整備」ということでございますけれども、これについても、考え方については、妥当とする意見が多かった。ただ現行の民事訴訟法の規定の適用により十分に対応できるとする意見が多くございました。
 2つ目のところにございますように、「処分又は決裁に関する記録等の提出」等を求める場合は、下の「その他の意見」にもございますように、個人情報保護法等の関係法令、条例等の対象となるものとの関係、こういったものを除外するような必要があるのではないかという意見がございます。
 「(5)本案判決前における仮の救済の制度の整備」でございますけれども、執行停止の要件の緩和につきましては、処分が執行されると回復困難な損害が生じる場合や、申立人の利害のみにかかわる処分等について、一定の要件の緩和ということについて余地があるという意見がございました。 「(6)行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」でございますけれども、これについても、考え方の趣旨は理解できるとする意見がありますけれども、一方で行政に一定の裁量が与えられている分野につきましては、適当ではないという意見が多かったわけです。
 以下、これについての理由が書いてございますので、是非参考にしていただきたいと思います。
 次に3ページでございますけれども、「(9)行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」。これにつきましては、「その他の意見」にございますように、条例の制定改廃については、地方自治法で直接請求が認められている、ということを考えると、この拡大というのは適当でないという意見が多かったということでございます。
 それから4ページでございますけれども、「(12)出訴期間の延長」でございます。これにつきましても、下の「その他の意見」にございますけれども、先ほど賛成という意見を述べましたが、出訴期間の教示というものが義務づけられるのであれば、現行の出訴期間でも特に問題ではないという意見がございました。更に、出訴期間の起算日の明確化、これにつきましては、制度をより明確化する観点からも妥当であるという意見が多くございました。
 それから、「(15)主張・立証責任を行政に負担させること」につきましては、立証責任の配分については、民事訴訟法上も訴訟の内容等により変わるものであり、行政訴訟についてのみ一律に規定することについては適切でないという意見がございました。
 5ページでございますが、「(18)弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」でございます。行政訴訟に限るものではなく、訴訟制度全体の問題であるという観点で検討すべきものではないかということから、全体として両案ともに適当でないとする意見が多くございました。
 そういうことで最後になりますけれども、6ページの「3 その他」でございますが、今回の行政訴訟制度の見直しに当たりましては、最初の○にございますように、権利利益の救済の制度を拡充することのみに特化し、その一方で行政の最大の使命である公益の実現のため、その円滑・効率的な運営が損なわれることとなれば、かえって地域住民の利益を失わせる結果となりかねないので、両者の均衡が図られるよう、慎重かつ十分な検討を期待する、というような意見がございました。

【塩野座長】どうもありがとうございました。アンケート調査もしていただいたそうで、どうもありがとうございました。是非、全都道府県からもらえるように御努力をお願いしたいと思います。それでは、皆様から質問等承ります。どなたからでも結構です。

【水野委員】4ページの(10)です。出訴期間の廃止については、行政の信頼性ということと、行政行為の法的安定性を損うと2つ挙げておられます。これは具体的には廃止すると、どうしてこういうことになるのでしょうか。つまり、廃止すると信頼性が失われる、あるいは廃止すると法的安定性を損うという御意見ですね。なぜそうなりますか。

【塩野座長】この質問は、説明者にして、すぐにお答えいただくのはちょっと無理かと思います。アンケート調査ですので、そういう質問があったということで、こういう御意見が出たときに、こういう席でこういう質問が出たということはきちんと報告をしていただければと思います。

【説明者(石上調査第一部長)】わかりました。具体的に出てきた県からの理由が明確にあるかどうか確認します。申し訳ありません。その点も含めまして、この次のときには理由も付して今の質問に答える形で提出させていただきます。

【小早川委員】アンケートの集計ということのものですから、どういう御質問の仕方をすればいいかなんですが、大変漠たる言い方で恐縮ですけれども、回答を御覧になって、都道府県のこの問題についての関心というのはどうでしょうか。

【説明者(石上調査第一部長)】このあと東京都から、実務を担当している立場からの意見があると思います。私の立場から言えば、今、この段階で26県くらいしか回答がないということで、非常に問題に対する整理と言いますか、時間がかかるのかなという印象を持っておりまして、十分な議論をした上でこういう回答をしたかどうかという点について、もう一つ疑問というところもありまして、もう少し自分たちでこれについての議論をさせていただいたらいいのかなという気も実はいたしております。

【小早川委員】具体的に都道府県によって、実際にいろんな事件を抱えているので、そこから意見が出てくるというケースが多いのか、それともむしろ抽象的、一般的なのか。

【説明者(石上調査第一部長)】既に統計資料等ございますけれども、各県によって訴えられる件数というのはまちまちでございまして、東京都が一番多いわけでございますけれども、認識というのはそれそれの県で確かにばらばらだと思います。いずれにしても、そういう中で、全くゼロというところはないと思いますが、そういう中での判断だと思います。

【小早川委員】これから離れた質問が続いて恐縮ですけれども、一般に都道府県の法務部、東京都についてはこれから伺いますけれども、法務の体制というのはどうなんでしょう。

【説明者(石上調査第一部長)】26団体、回答をしていただきましたが、その中でそういう専門部署を設けているのは5団体しかございません。

【塩野座長】そういった資料はいただけますか。

【説明者(石上調査第一部長)】はい、一緒に提出いたします。

【福井(秀)委員】水野委員の意見にも関連するのですが、幾つもあるので例示です。例えば4ページの「(13)原告適格の拡大」ですが、解釈・運用の問題であるということは、現在の解釈・運用はいいという意味なのか、あるいは悪いけれども、それは解釈論で対応できるという意味なのか、立法する必要はないという意味なのか、それぞれの根拠は何か、ということは、今でなくてもいいのですけれども、そういうことまで教えていただかないと余り参考にできないものですから。
 それから「(17)裁量の審査の充実」ですけれども、これもいずれも問題があるというのですけれども、どの部分が、なぜ問題があるのかわからないのでは、これも参考にしようがないものですから、具体的に教えていただきい。
 「(18)弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」も、訴訟制度全体の問題の問題として検討すべきであるということは、行政訴訟についての敗訴者負担の取り扱いは、固有の問題としては一切ないということなのか、行政訴訟に多少問題があるとしても、そんなことは無視して全体の中でだけ考えればいいのだという意味なのか、意図がよくわからないのと、個別の理由がよくわからないので、もし、御意見ということであれば、そういうことも含めて根拠が具体的にわかるように教えていただければと思います。

【説明者(石上調査第一部長)】(18)は行政訴訟だけ取り上げることはどうかという観点かなという感じがします。

【福井(秀)委員】ですから、それは行政訴訟だけ取り上げて議論するに値しないほど行政訴訟固有の問題はないのだという事実認識を前提にしているのかどうかということです。

【説明者(石上調査第一部長)】わかりました。その辺は各県の意見をもう一度精査します。

【水野委員】この生データと言いますか、回答は非常に興味があるのですけれども、これは知事会の方に申し出れば、見せていただけるのですか。

【説明者(石上調査第一部長)】これについては、今日は説明用の資料につくりましたので、生のデータは47全部集まるかどうかわかりませんが、集まった段階で、それをできるだけ生のデータを提出させていただきたいと考えております。

【塩野座長】今のような雰囲気ですので、私が聞こうかと思っていたのは、先ほど飛ばされた「(8)確認の訴え」で、必要性が乏しいとする意見が多いというときに、何でなのかなということをちょっと聞きたかったので、即答は求めませんけれども、というのは何か都道府県独自の、我々が気がつかなかった問題点が出ていれば大変検討の参考になるという趣旨でございまして、ここで意見がおかしいということよりも、これは都道府県ならではの議論だというのが欲しいという趣旨でお願いをしたいと思います。
 国民訴訟について、特に意見は参照されなかったんてすが、それとも意見が出なかったのでしょうか。

【説明者(石上調査第一部長)】基本的にこれは意見が出たものを全部取り上げているつもりでございます。

【塩野座長】私などは自治体が大変苦労しておられ、また、住民訴訟は大変意味のある訴訟だと思っておりますので、それについて過去の経験に鑑みて、どうかという御意見でもあればと思いまして。

【説明者(石上調査第一部長)】失礼しました。これは入れてなかったのですが、1県ありました。国民訴訟制度を早急に設け、国の適法な財務会計行為の確保に努めるべきである、という意見でした。

【塩野座長】1県あったわけですね。できれば漏れなく教えていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。他に何かございますでしょうか。
 こういうところで、こういうことを申し上げるのは多少失礼かとも思いますけれども、実はこの検討会でも、ときどき訴訟の相手となるのは、これから分権の時代なので、むしろ霞が関よりも都道府県、あるいは中核市等々の市ではないかと思っているわけで、まさに知事会の構成メンバーがこれからの訴訟の一方の主役になるというお気持ちを持っていただきたいということなのです。先ほどからの御質問の趣旨もそういうことでございますので、よろしくお願いいたします。これから非常に訴訟の件数が、もし増えるとすると都道府県レベル、市町村レベルということになると思いますので、よろしくお願いします。その点PRをよろしくお願いいたします。他に何かございますか。よろしゅうございますか。それでは、どうもありがとうございました。

【説明者(石上調査第一部長)】では、先ほどのものも含めまして、後ほど提出させていただきます。どうもありがとうございました。

【東京都総務局法務部】

【塩野座長】それでは、東京都総務局法務部からのヒアリングを行います。御説明は中村次良総務局法務部長でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【説明者(中村法務部長)】東京都の法務部長の中村です。行政訴訟法の見直しに関する意見を申し上げる前に、先ほどもちょっと体制のことがありましたので、若干説明させていただきます。東京都では、執行機関ごとに、すなわち知事部局、それから、交通局とか、水道とか下水とか公営企業、それから教育委員会とか公安委員会とか行政委員会、それごとに訴訟対応をしております。私は知事部局の方の訴訟を担当しております。
 知事部局の訴訟件数について申し上げますと、最近非常に住民訴訟をトップに非常に増加しておりまして、現在、係属事件で民事が約100 件余、行政事件も約100 件余を抱えております。これは係属事件ですので、発生事件は年間大体民事で100 件くらい。行政事件は80件。完結もほぼそのくらい完結するということで、大体係属事件が双方とも100 件くらいということです。これらの事件は、行政事件は8名の職員、民事事件は14名の職員で、いずれも外部の弁護士を頼むことなく、職員のみで対応しております。職員の中には、4名の法曹資格者もおります。本日はこういう現実の体制や、更には現実の訴訟活動を踏まえて、私ども知事部局における訴訟の専門部門である私の方から意見を申し上げるわけでございます。したがいまして、本日の意見はあくまでも知事部局の訴訟専門部門の意見ということで、公営企業とか行政委員会を含む東京都を代表する意見ではありませんので、また、私どもより上層部の知事の意見でもございませんので、あらかじめお断りいたします。では、順次意見を申し上げます。
 お手元の方に意見の要旨というのが2枚ほど行っていると思うんですが、まず、「管轄裁判所の拡大」でございます。これはほぼ検討委員会でおおむね一致しているという具合に伺っております。これについては、私ども先ほど申し上げたとおり、限られた人員で訴訟対応をしておりますので、原告の住所地で起こされるということになりますと、例えば東京都の場合には固定資産税も、他の都道府県と違って、23区については固定資産税もかけていますので、23区で大体240万人くらいおりまして、そのうちの5万から10万人ぐらいが都外の方だということで、そういう方からいろいろ住所地で訴訟を起こされると、移動にかかる時間とか、いろんな経費、それから準備期間も移動で取られますから、そういう面で大変かなという具合に思っております。
 また、運動として訴訟を起こすというか、例えば事業認定訴訟で、いわゆる1坪地主がたくさんいる。これを全国でやられますと、その対応が大変だなということです。
 それから、これも内部でいろいろ意見があったのですが、地方公共団体より大きい会社もあるのじゃないか。そういうところが各支店で訴訟を起こされると、東京都の場合はあれなんですが、小さい市町村などは対応ができないのじゃないか。それの何かの歯止めが必要じゃないかという意見が出ました。
 それから、次の「出訴期間等の教示」の関係ですが、これは今は行政不服審査法に規定がありますが、それと同じような規定を設けていいのじゃないか。行政不服審査法の57条の審査庁教示義務の中に、裁判所を教示するとか、あるいは裁判所を誤った場合の教示の救済とか、期間を誤った場合の救済とか、そういう規定を設けた方がいいのじゃないか。行服法の59条に教示しなかった場合の救済の規定があります。これはちょっとどうかなと。通常、弁護士さんが起こして、今度の改正案では自分の住所地でも起こされるものですから、教示しなかった場合にどこの裁判所でもいいのだというのはどうかなということでございます。
 それから「審理の充実等のための方策の整備」でございますが、これはあくまでも私ども知事部局のことなのですが、他の行政委員会、交通局とか企業局はわからないのですが、私どもの知事部局では、今の民事訴訟規則の80条で、重要な証拠の写し、それは添付します。1、2回期日のうちには添付しますし、それから裁判所の訴訟指揮に従って、ほとんど出しておりますので、現行制度でいいのかな、私どもだけではそういう具合に思っております。それから、もし何か提出義務を課すという、それを文書提出命令でやる場合、今までは当事者にイニシアチブがあるのですが、職権でやる制度ができるかどうかわからないのですが、そういう文書提出命令の特則として位置づけるという場合には、現在ある、拒否できる制度が民訴法の220条の4号のロという規定があると思うのですが、実際に例えば都が何かの事件で、都の中でも銀行の格付けなどをやっているのですけれども、その格付けを公にするとえらい騒ぎになるだろう、そのようなことがあるので、そういう民事訴訟法の220条4号のロのような規定をやっぱり設けた方がいいのかな。
 それから、今の規定では漏れてしまっているのですが、先ほども出ていましたが、情報公開で非開示理由の中に個人情報で識別できるというのがあるのですが、その分が確かに漏れているというか、こういうような規定の場合に、訴訟を使って逆に資料を入手するという場合もありますので、その辺の整合性が図れないのかなと思っております。
 それから「本案判決前における仮の救済の制度の整備」でございますが、執行停止の場合でも、それから新たに想定しております仮処分を創設する場合でも、公共の福祉、または公益の配慮、こういったものを設ける必要があるのじゃないか。実際に原告の方が失われる利益の性質、それから内容、程度と、それから執行を止めることによって失われる公益の性質、内容、程度、これを比較衡量する必要があるのじゃないか。現実に仮の地位を定める仮処分を認める場合でも、例えば食堂の営業許可の仮営業を認めるという場合に、その方がものすごい不衛生で、それを営業させると生命・身体に影響を及ぼすという場合に認めないというのが必要ではないか。
 それともう一つ、そこに書いてありますが、期間を定めると、これだけだとわからないと思うのですが、現在は執行不停止の原則になっています。仮に執行停止が原則になってしまうと、早く結論を出さないと、ずるずると停止のままの状態で行ってしまって、実際上そのままの状態になってしまうと、公益にえらく影響を及ぼすときがあるのかなということで、早く結論を出してもらいたい。そういう審理期間も設けるべき、なかなか難しいのですけれども、2週間とか1週間とかという規定を設けることはなかなか難しいと思うのですが、速やかにだとか、訓示規定になってしまうかもしれませんが、そういう期間を設ける必要があるんじゃないかという具合に考えております。
 それから次のページでございますが、「行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」ですが、義務付け訴訟につきましては、やはり三権分立との関係で、責任ある行政の第一次判断権を尊重して、今まで下級審等で認められている要件ですが、一義性の要件とか緊急性の要件、補充性の要件はどこかに吸収されていたのじゃないかという議論があるんですが、そういうのが必要かなと考えております。
 それから、「出訴期間の延長」ですが、確かに今は処分があったことを知った日から3か月以内で、かつ、処分の日から1年ということで、訴える方には厳しいかな。確かに処分を知ったときというのは、なかなか疑義を生ずるので、どちから一方にした方がいいのじゃないかということを中で議論したのですが、後ろの方の、処分のあった日から1年というのが客観的事実で疑義が少なくてわかりやすいのじゃないかということでございました。
 それから、「主張・立証責任を行政に負担させること」でございますが、主張・立証責任は今までの判例とか学説でも、その処分の性質、侵益処分なのか、あるいは受益処分なのか、それから条文のつくりを踏まえて、いろいろ分かれてきています。事業認可、事業認定などについては、要件は処分者側。あるいは社会福祉関係、社会保障関係は原告の方の、一応実定法ごとに定まっているのじゃないか。それを一律に訴訟法というか、手続法で決めるのはいかがなものかという意見でございました。
 それから、一律に行政側の費用負担で証拠などを出させるということなのですが、証拠が必ずしも行政側の方に全部あるというわけではなくて、例えば税の減免処分などにつきましては、災害の状況とか、それからあるいは公共の用に供しているというのは、むしろ原告側の方に資料があるのじゃないかということで、一概に行政側だけの費用負担でそれを負わせろというのはいかがなかものかなという意見でございました。
 それから、「弁護士報酬の敗訴者負担の取り扱い」でございますが、これについては、現在、弁護士報酬については、日本の場合は弁護士強制主義を取っておりませんので、各自の負担となっているのですが、ほとんどが弁護士が付いている事件が多いでしょうから、自己責任の原則で弁護士費用については敗訴者負担を導入した方がいいんじゃないか。
 ただ、行政側だけに、原告が勝ったときだけ負わせるというのは、原告の方には先ほど言ったとおり公共団体よりも大きい原告もありますので、ちょっと問題があるのじゃないか。それに公費を払うというのは問題があるのじゃないかという意見でございました。以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、委員の方から御意見等を承りたいと思います。我々の考え方に対して直接のお答えになっていないところもありますけれども、場合によってはそういう質問を得たならば、ここはこういう理由で答えていないんだと、あるいは後で答える用意があると、そういう程度のことで結構でございます。

【説明者(中村法務部長)】7月7日にこれをいただきまして、中でちょっと議論しても、なかなか結論がまとまらないというか、両方の意見が出たり、なかなか。

【塩野座長】そうすると、後から資料追加ということもあり得るということでございますか、せっかく考えたのですから。我々としては、是非いろんな情報を得たいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、どうぞ皆さん。

【福井(秀)委員】管轄と敗訴者負担のところで出たお話で、大きい法人相手の場合は事情が違うということなのですが、これは例えば資本規模とか従業員規模とか、そういうもので扱いを分けるべきだという御提案ですか。

【説明者(中村法務部長)】そこまで細かい議論はなかったのです。実際上規定するのはなかなか立法技術上難しいかなという中では、議論になりまして、感覚的に自治体より大きいところはたくさんあります。東京都などは割と大きい方なんですが、区市町村で小さいところは大変じゃなかなということです。ただ、立法の仕方は確かにちょっと難しいのかなという感じがしています。

【福井(秀)委員】大きいかどうかということと、それから行政事件の構造だと、要するに、税金で養われている職員を抱えている自治体なり政府と、それから私企業で下手するとつぶれるというリスクを抱えている民間との間のイコールフッティングというのはどういうふうに思われますか。

【説明者(中村法務部長)】そこまでは考えていないというか、地方公共団体としても最近は非常に厳しくて、どんどん人が削られていますし、そういう意味ではだんだん私企業と似てきていますので、そういうような議論は。

【福井(秀)委員】行政事件というのは、そもそも行政に優越的地位があるから私企業に権力的な行為を一方的にできるわけです。ここの議論というのは、そういう場面についてだけの議論をしているわけです。さっきの大きいか小さいかで切るのかあるいは何らかの基準で扱いを変えるのか。もし具体的な案があるのであれば、後ほどでも教えていただければと思います。

【芝池委員】「審理の充実等のための方策の整備」のところなのですけれども、理由の説明などについて、現行制度の範囲内で十分対応可能と書いておられるわけですが、これは現在、訴訟の場で十分ないし、適切に理由の説明とか、記録の提出を行っておられるという自負心の表れなんでしょうか。

【説明者(中村法務部長)】まあ、そういうことです。

【芝池委員】最後の弁護士報酬のところなのですけれども、訴え提起の手数料の方はどうなのでしょうか。

【説明者(中村法務部長)】手数料の方は費用の中に入っています。印紙代とか、そういうのは全部入っています。今は敗訴者負担ですね。

【芝池委員】住民の方が敗訴すれば、自分の分も払うのは当然であると。

【説明者(中村法務部長)】御存じだと思うんですが、お互いに余り請求しない実態になっています。印紙代とか、郵券代とか、東京都が勝っても、訴訟費用は原告の負担とするという主文をもらっても、それを向こうに請求したというのはない。1件くらいあると思うのですが、ほとんどないです。

【塩野座長】権利であってもですか。住民訴訟に引っかかりませんか。

【説明者(中村法務部長)】訴訟費用確定の申立てをしなくちゃいけないのですが、それはたまたま相手の方が起こしてきたので、では、一緒にやりましょうということでやって、こちらの方から積極的に起こしたというのはないですね。

【福井(秀)委員】取らないことが、今の座長の御指摘のように、住民訴訟で問題にされる可能性というのはないのですか。

【塩野座長】そういう住民訴訟は今まで出てこないから、これから出てくる可能性はありますね。

【説明者(中村法務部長)】相当細かい話になりますね。

【水野委員】ぎちぎち言えば、住民訴訟みたいな議論になるかもわかりませんけれども、民間同士の裁判でも取っていないのが普通なのです。だから、訴訟費用は被告の負担とするとか、原告の負担とするとか、主文には出るのですけれども、取っていないのが大体の慣行と言いますか、それは1つは訴訟費用の確定請求というめんどうくさい手続をしなければいけないということがあります。
 1点だけ、御存じであればということでお尋ねしたいのですけれども、石原知事が自動車排ガスの問題について、国を相手に訴訟をやるということで公約をしておられた。これは東京都が原告となって、国を相手の行政訴訟をおやりになるということなんですか。

【説明者(中村法務部長)】それはまた東京都がどういう立場で、どういうような形態の訴えを起こすかということについて、ここではコメントできません。

【水野委員】もしそのときに、東京都が原告になって、国を相手に行政訴訟を起こそうと検討してみたら、いろいろと問題点が多くて、困ったということがあるかもしれないと思ったのです。

【説明者(中村法務部長)】確かにいろいろ検討しているのですが、なかなか難しいところがあります。

【水野委員】それはどういうところですか。

【説明者(中村法務部長)】それはちょっと、すみません。

【小早川委員】1つは、先ほど芝池さんが言われた質問に対して、東京都はきちんと理由を説明し、記録を提出しているからということがありましたが、それは東京都がきちんとやっておられるにしても、そうでない自治体もあり得るので、法制化してはならないというほどの御意見ではないのかなということです。

【説明者(中村法務部長)】それはそうですね。

【小早川委員】もう一つは、仮の救済のところで、1つは、現行法の内閣総理大臣の異議については何か御経験からして御意見ないですか。

【説明者(中村法務部長)】ほとんど使われていないですね。

【小早川委員】かつて公安委員会にはちょいちょい出てきましたね。そうすると、特に残しておいた方がいいというほどでもないと。

【説明者(中村法務部長)】中でも余り残しておいてもいいという議論もなかったです。

【塩野座長】あまり関心がないということですか。

【説明者(中村法務部長)】そうですね。あまり使わないです。

【小早川委員】同じく仮の救済関連ですが、先ほど食品衛生関係などで、不衛生なものがのさばっては困るという御指摘がありましたが、行政処分にもいろいろなものがあるので、そういう公衆衛生絡みなどは1つの典型でしょうけれども、そうでないもので、実質的には民訴の仮処分みたいなものを認めてもいいような金銭的なものとか、そんなようなものについてはどうでしょうか。

【説明者(中村法務部長)】実際に具体例を検討したわけではないので、申立人の方の失われる利益の程度と、それからそれに執行停止というか、仮処分に認められることによって、行政側の方の不利益というか、公益の内容、程度、それを比較衡量するしかないのかなと。具体的なものは、先ほどの衛生の関係とか、それから、旅券の発行の場合に、仮に発行してしまうと、向こうへ行っていろんなことをやってしまうという場合には大変な問題になってしまう。

【小早川委員】例えば生活保護などについてはどうだろうかという御検討は。

【説明者(中村法務部長)】生活保護については検討していないです。私ども実際やっていませんから、市町村の方でやっていますので。

【塩野座長】他に何かございましょうか。私の方から2つばかりあります。1ページの3の審理期間の定めというのがちょっとわからなかったのですが、本案を早くやれということですか。執行停止原則がかかっていると、早くやってくれとなっていますが、そこはまだ決めていないわけですね。

【説明者(中村法務部長)】仮の救済そのものの結論を早く出してくれと。

【塩野座長】この審理期間はそういうことなんですか。わかりました。もう一つは、2ページの4−(1)の義務付け訴訟のところ、これは我々の考え方の基本には、取消訴訟中心主義というのは、逆の意味で三権分立の点から見ていかがなものかという議論も含めて、取消訴訟中心主義に対して、そのまま維持するものではないという前提で議論しておりますので、このままのお答えだと、ちょっと議論が食い違っているなと思いますので、その点はまたお考えいただきたいと思います。
 それから、5−(5)のところは、C案をお取りになりましたが、このC案というのは、処分があったことを知った日から3か月の出訴期間を廃止するというものでございます。そうすると、東京都としては、こういった一種の短期、これはおよそ要らないというお考えなのですか。それとも、場合によっては要るかもしれないけれども、それは別途に手当をするというお考えなのか、そこはどうなんですか。

【説明者(中村法務部長)】これもどれが一番いいかというのも、そんなに深く突っ込んだわけじゃないのですけれども、これが一番疑義が少ないかなということだけなんです。

【塩野座長】それはそれでいいのですけれどけも、短期の方は要らないのかという。

【説明者(中村法務部長)】短期の方は要らないと。

【塩野座長】それだけきっぱりとお答えいただければ、それはそれで1つのお考えだと思います。帰ってから、また、ちょっと違ったということであれば、それはそれで。

【福井(秀)委員】今の点に関連して、そうしますと、短期、長期という区分をなくして、ある程度長期で一元化しても、そんなに行政処分は支障がないという御趣旨ですか。

【説明者(中村法務部長)】まあ、今のところないんじゃないかなと。

【福井(秀)委員】東京都のされる処分で、例えば3か月以上も放っておいて安定しないのは絶対困るというのは思いつかないということでございますか。

【説明者(中村法務部長)】そうですね、短期間で検討したので、今までの検討の中では思いつかなかったのですけれども、私ども実際に行政事務をやっているセクションではないので、実際にそういうところからヒアリングをしたわけではないので、訴訟専管部門で考えているだけですから、本当はそういうところと打合わせするともうちょっと違う答えが出てくるのかもしれません。

【塩野座長】そういう質問があったということを記憶していただきたいと思います。よろしゅうございますか。それではどうもありがとうございました。
 ちょっと休憩をさせていただきましょう。45分から始めます。

(休 憩)

【金融庁】

【塩野座長】それでは時間になりました。次に金融庁からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は大藤俊行総務企画局企画課長です。よろしくお願いいたします。

【説明者(大藤企画課長)】ただいま御紹介いただきました金融庁の総務企画局の企画課長の大藤でございます。
 本日は行政訴訟検討会における主な検討事項につきまして、事前に御提出申し上げました資料に沿いまして、当庁の意見等について御説明申し上げたいと思います。
 まず、ちょっとお断りでございますけれども、行政訴訟検討会における主な検討事項につきまして、当庁所管の行政分野に与える影響の有無、内容、程度として、どのような問題が考えられるかとのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、現在、検討会の方で制度の全体像とか、運用の具体的方法などが検討されていると聞いており、それの具体化を待ちまして、我々としても、更に検討を深めてまいりたいと思いますけれども、当庁所管の行政分野に与える影響の有無、内容、程度を、現段階で具体的に御指摘するのは難しいのではないかと考えてございます。
 例えば「2−1−(3)出訴期間等の教示」というようなテーマでございますが、例えば行政処分の際に行政庁が教示義務を負うということになれば、単純に考えますと、行政事務の負担が増すということだと思います。しかしながら、かかる改正に伴いまして、教示方法が明確かつ具体的・詳細に、仮に法定されるということになるということであれば、訴訟要件等につきまして、事前予測可能な範囲が広がるわけでございますから、権利利益の侵害を受けた者の実効的な救済に加えまして、行政の方からしましても、負担というものはその分軽減されるわけでございますし、かえって行政の円滑な遂行等にも資するということになると思いますので、そこら辺は、現段階でなかなか影響という形で明確にお答えできていないことをお許しいただきたいと思います。
 その上で、当庁の行政分野に与える影響の有無、内容、程度との関係で、検討を要すると思われる事項につきまして、どのようなものが考えられるかというお尋ねでございます。検討会におきましては、各論点につきまして、幅広い観点から御議論が進められているところと承知しております。当庁といたしましては、権利利益を侵害された者の実効的な救済を図るということは非常に大事なことだと考えております。
 ただ一方では、円滑な行政の遂行の確保ということも可能とするような方策を御検討いただきたいという趣旨から、今後の議論にも反映していただきたいと考えております視点、あるいは観点などを検討項目別に回答申し上げているところでございます。この点につきまして、順次御説明させていただきたいと思います。
 まず「2−1−(2)行政訴訟の管轄裁判所の拡大」という件でございます。行政訴訟へのアクセス、それから利便性と、一方で、同一の争点につきまして、全国各地で訴訟を提起された場合など、どういう影響があるかという観点から総合的に検討していただきたいということでございます。例えば当庁所管の金融機関の中には、全国展開しているものも多くございます。金融という性格上、非常に全国的、あるいは国際的に広がりが深い分野でございますし、そういったような点で例えばある金融機関に対する行政処分などを巡りまして、全国各地のいろいろな場所で一斉に訴えが提起されるような場合も考えられるところでございまして、このような点について移送制度等の手当を講ずるべきか否か等々併せて御検討いただく必要があるのではないかということでございます。
 それから、2ページの「出訴期間等の教示」についてでございますが、これにつきましては、やはり私どもといたしまして、その必要性等については十分御議論があるということだと思いますが、いずれにしても、教示すべき内容を明文で具体的に規定していただく、あるいは教示を行うべき者の範囲を明確化していただく、あるいは教示が誤っていた場合の治癒の方法を規定していただくなどの手当についても検討していただく必要があるのではないかと考えております。例えば当庁所管の金融機関に対して、行政処分を行う場合に、処分の名宛人たる金融機関以外の者に対しましても、どの範囲で教示を行う必要があるのかなどの問題点につきまして、できる限り具体的、かつ詳細に法定されるなど、事前に明らかにしていただくという必要があると考えております。また、これをしていただくことによりまして、行政の円滑な遂行等にも資すると考えております。
 それから、3ページの「第2−2 審理を充実・迅速化させるための方策の整備」ということでございます。これにつきましては、金融機関に対する処分などにつきましては、いわゆる金融機関関係の資料の中に、例えば取引先企業の営業の秘密に関わる事項でありますとか、金融秩序に影響を与えかねないおそれのある事項等が含まれているということが考えられるところでございます。といったようなことで、この点につきましては、非常に重要な点だと考えております。民事訴訟においても、民事訴訟法などによりまして、文書提出命令の提出義務の除外規定等の一定の配慮が講じられているところでございまして、これらとの整合性にも考慮していただいて、御検討いただきたいと考えております。
 当庁が関与した訴訟事件におきまして、当庁所管の行政分野にかかる事項につきまして、提出義務の範囲につき、裁判所の御判断をいただいた事例というのは現在のところないわけでございますけれども、しかしながら、情報公開手続が今かなり進められておるところでございますが、情報公開審査会より、例えば金融庁検査により得られた金融機関の債務者に関連する情報といったようなものにつきましては、当該債務者の権利、それから競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であるといたしまして、開示しないということが妥当であるという答申を既にいただいた例もあるところでございます。こうした事情も今後の御議論におきまして、考慮していただきたいと考える次第でございます。
 4ページの「第2−3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」の点でございます。権利救済を侵害された者の実効的な救済と、円滑な行政の遂行等との観点から、総合的に検討していただく必要があるのではないかと考えております。執行停止が認められることにより、権利利益を侵害された者の実効的な救済を図ることができるというメリットと、行政処分ができないために、公共の福祉を害するおそれが生じるなどのデメリット等を勘案しつつ御検討いただきたいということでございます。いろんなケースが考えられるわけでございますが、例えば金融機関の健全性に問題があるといったような場合に、いろんな形で行政処分でありますとか、業務改善命令とか行う場合がございますが、どういうタイミングで、あるいは、どういう内容で行うかということが一方で金融機関に対する預金者でありますとか、それから各種の債権債務者等の関係者にも影響が及ぶことにもなりますので、そういったようなことも含みまして御検討いただければということでございます。
 次に「第2−4−(1)行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」につきまして、5ページでございますが、これにつきましても権利利益を侵害された者の、抽象的な表現で恐縮でございますが、実効的な救済と、円滑な行政の遂行等との観点から、行政の作為の給付(義務付け)を求める訴えの在り方につきまして検討していただきたいということでございます。当庁所管の行政分野の中には、やはり高度に専門的、技術的な分野もございます。例えば、こういったような分野につきまして、どのような形で裁判所に判断をゆだねるのが妥当なのかという観点からも御議論いただく必要があると考えております。やはり、この点につきましても一義性でありますとか、緊急性でありますとか、補充性という観点から御議論がされているというように聞いております。
 それから「第2−4−(2)行政の行為の差止めを求める訴え」につきましては、今、お話ししたような点と同様でございます。
 7ページの「第2−4−(3)確認の訴え」につきましても同様でございます。
 8ページの「第2−5−(1)行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」というところでございますが、この点につきましては、現段階では、設計されるべき制度の在り方につきましても、種々検討会において御議論があると承知しておりまして、今後、私どもといたしましても、その議論が具体化されるのに合わせまして、更に検討を深めてまいりたいと考えている次第でございます。
 9ページの「第2−5−(2)取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設」ということでございます。これは、現行の取消訴訟制度における出訴期間につきまして、検討会において種々御議論があるところと承知しておりますが、行政処分等の効果を長期にわたり不安定とすることの妥当性という観点も御勘案いただく必要があるのではないかと考えております。例えば、先ほど申し上げましたように、金融機関の健全性等に問題がある場合に、いろんな形で行政処分を行うといったような点につきまして、やはり長期にわたりまして不安定な状況におかれるということになりますと、金融行政の観点からも支障が生じる可能性がございますので、そういったような点について御検討いただきたいと考えております。
 「第2−5−(3)裁判所が判決で必要な是正措置を命ずる考え方」でございます。この点につきましても、やはり金融機関につきましては、専門性とか、特殊性の高い分野でございます。必要な是正措置というものがなかなか一義的に導かれないような場合もあるのではないかと考えておりまして、こういったような観点について御考慮いただければと思っております。
 「第2−5−(4)取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止」でございます。これにつきましても、排他性に関する一般的な規定につきまして、検討会で更に御議論がなされると承知しておりまして、私どもとしてもその御議論の具体化を待ちまして検討していきたいということでございます。
 「第2−5−(5)出訴期間の延長」でございます。これにつきましても、先ほど申しましたような観点で、長期に不安定な状況に置かれるというようなことが金融行政に影響を与えるという場面も考えられるということでございます。
 「第2−6−(1)原告適格の拡大」というところでございますが、これにつきましても更に検討会で御議論されると聞いております。これにつきましても、検討会の御議論を踏まえまして検討していきたいと考えております。
 「第2−6−(2)自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定の削除」という点でございます。これも同様でございます。
 「第2−6−(3)団体訴訟の導入」についても同様でございます。
 16ページの「第2−7−(1)主張・立証責任を行政に負担させること」という点でございます。これにつきましては、民事訴訟制度における主張・立証責任の分配との整合性を勘案しつつ御検討いただきたいということでございます。
 「第2−7−(2)処分の理由等の変更の制限」というところでございます。これにつきましては、処分を受けた者が新たな観点から主張を行うというような場合もあると思われます。そういったような場合にどう考えるかという観点があると思っております。
 「第2−7−(4)裁量の審査の充実」というところでございます。これにつきましても、更に検討会の方で御議論が深められると聞いております。その具体化を見つつ検討させていただきたいということでございます。
 「第2−8−(2)」「第2−9−(2)」につきましても同じようなことでございます。以上、甚だ簡単でございますが、終わります。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、どなたからでも結構でございますから、御質問等をいただきたいと思います。どうぞ、水野委員。

【水野委員】12ページの出訴期間の延長のところですけれども、金融行政の安定性の観点という御指摘をいただいたわけですけれども、具体的に出訴期間が延長された場合に、こういう点で金融行政で支障が生ずるといったような点はございますでしょうか。

【説明者(大藤企画課長)】必ずしも具体的に考えたわけではございませんが、内容で随分変わってくるのだと思うんです。いわゆる処分を行うことの効果が非常に広がっていくもの。例えば、金融機関の健全性に問題があるということから、いろいろ業務改善命令を行ったり、いろいろな措置を要請するといったような場合には、金融機関の関係、例えば預金者でありますとか、それから債権債務関係を有する者とか、そういったような形で、いろいろな形で影響を被る者が多いわけでございます。ところが、そういったような関係がないような行為につきましては、そこの部分がある程度の期間放置されてもその影響は少ないと思いますけれども、非常に広がりを持つような場合につきましては、抽象的な言い方で恐縮でございますが、出訴期間の延長というのは、かなりの影響を持つのではないかと思います。

【水野委員】今、例示されました業務改善命令ですが、これは一種の行政処分です。それが例えば、今は3か月ですけれども、1年経っても争えると、仮に延長した場合に、預金者とか、債権者、債務者にどれだけ影響が出てくるのでしょうか。

【説明者(大藤企画課長)】直接はあれですけれども、その処分の妥当性が長期間にわたって争われて、そこが不安定な状況に置かれるというようなことになりますと、まさに処分をベースにして事実関係が積み重ねられていくわけでございますから、そこは影響があるのではないかと思いますけれども。

【水野委員】ちょっとそのイメージがわからないのですけれども、仮に裁判を起こした場合には、判決まで2年も3年もかかるわけです、それでも結論が出ないわけです。他方で、今は3か月ですけれども、それが例えば1年に延長したというときに、金融行政を担当している方として具体的に困ると、金融行政が停滞して困るとか、安定性が失われると困るという具体的なイメージが今の御説明だけですとわかないのです。

【説明者(大藤企画課長)】ちょっと我々も更に具体的に検討したいと思います。

【芝池委員】業務改善命令を出しますね、相手の金融機関がそれに従わない場合、出訴期間が3か月とか、あるいは1年経つまで放って置くのですか。

【説明者(大藤企画課長)】いや、それは放って置きません。

【芝池委員】そうしますとどうなるんですか、業務改善命令を出して、それで従わなければどうなるのですか。

【説明者(大藤企画課長)】そこは、それに従わない場合には、それに沿った法律、法令に基づいた措置を講じていくということになります。

【芝池委員】どういう措置がなされるんですか。

【説明者(大藤企画課長)】そこはいろいろでございます。

【芝池委員】刑罰はかかるのですか。

【説明者(大藤企画課長)】刑罰は基本的にはかかりませんけれども、最終的には免許の取消しとか、そういったようなこともあり得るのではないかと、ちょっと具体的なケースはあれですけれども。

【芝池委員】実際に免許取消しかどうかは別にして、そういう措置が考えられると。それは今まで余り例はないかと思うんですが、業務改善命令があって、相手が従わなくて、だから頭の中でシミュレーションするんですけれども、免許取消しとかいうのは、時間的にはどのぐらいなんでしょうね。

【説明者(大藤企画課長)】具体的、個別的に申し上げることは難しいと思いますが、いろいろあると思います。

【芝池委員】だから、1年間はのんびり待っているということはあるわけですか。ですから、あまりそこの出訴期間というのは問題にならないのではないでしょうか。

【説明者(大藤企画課長)】そういうことで、訴訟として妥当性をあれするのはまた別の話だということであればですね。

【芝池委員】相手の方が不服であれば、おそらくかなり速やかに法的な措置、訴訟を起こしていくのではないでしょうか。

【説明者(大藤企画課長)】ちょっとそこは、私どもも必ずしも十分分析しているわけではありません。ただ、いろいろ類似ケースとかで、そういったものが、いわゆる事例の蓄積というようなことにもなるかと思いますが、出訴期間が延びたからといって、そこが決定的な影響を与えるとか、そういうことではないと思います。

【芝池委員】出訴期間の延長をしても、少なくとも今の業務改善命令について言うと、実際上の不利益というのは考えにくいのではないかということですね。

【説明者(大藤企画課長)】申し訳ありません、そこは我々もまだ十分具体的に検証しているわけではございません。

【塩野座長】違法性の承継の問題もありますので、そこも含めてお考えいただきたいと思いますが、私の方から1つ2つお伺いしたいのですが、1つは行政処分はいろいろと金融庁所管の法律であるはずですね。訴訟件数というのは、今までどのぐらいありますか。

【説明者(大藤企画課長)】今のところないようでございます。

【塩野座長】ないのですか、昔の大蔵の行政指導が厳しくてと。

【説明者(大藤企画課長)】いや、そんなことはないのですが、情報公開関係のが1件あるようでございます。

【塩野座長】そうですか、だから余り感覚がないということだと思いますが。それからもう一つ今の関係で、私どもの御依頼の趣旨が徹底していなかったかと思いますが、いろいろ御議論しているので、その具体的に結果を待ってというお話なんですが、我々としては現場の生の意見を伺いながら議論をしたいということで、我々の議論を固めた後で、金融庁にどうだと言って、金融庁がこれは困ると言われても、これはもう後戻りできませんので、そういう趣旨で、お忙しいとは思いますけれども、こちらからの御質問に、特に選択肢を付けているのもありますね、あれでとにかく現場の意見を聞きたいということで、検討会として各省庁にお出ましをお願いしているものですから、そういう趣旨が徹底していなくて大変申し訳ありませんでしたが、そういうことでございますので、できれば早目にまた追加的な資料をお出しいただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。それでは、どうもありがとうございました。

【説明者(大藤企画課長)】どうもありがとうございました。

【文部科学省】

【塩野座長】それでは、次に文部科学省からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は山中伸一大臣官房総務課長、お願いします。

【説明者(山中総務課長)】文部科学省大臣官房総務課長の山中でございます。よろしくお願い申し上げます。
 今の金融庁さんの方の御説明を伺っていて、私も若干抽象的なところがあるものですから、恐縮でございますが、御趣旨に沿えないところがあるかもしれません。
 私どもは、行政運営を行政庁がやることがいいことだという前提ではございませんで、非常にいろんな面での御批判もありますし、行政行為の公正性を担保するという意味で行政手続法が制定されましたし、それによって行政上の意思決定をしていく際の内容、それから過程、こういうものを国民の皆さんに明らかにしていくんだと、そういう中で批判していただいて、行政行為というものが公正性あるいは透明性を担保しようという意思決定の過程がございます。
 もう一つは、御承知のとおり情報公開法が制定されましたので、国民の皆さんから行政文書の開示請求権というものがございますので、行政運営をしていく、当然行政上の意思決定をしていく際の文書につきましても、広く国民の皆様に対しての説明責任を果たすという意味で請求されれば公表していくということで、いろんな形で行政運営というのを行政庁の独り善がりにならないような形で、しっかりとチェックしていくという整備が図られてきておりまして、行政事件訴訟法の面につきましても、そういう意味での行政運営の公正性の担保という意味で、この見直しが図られているのだと私ども思っております。
 ただ、戦後、行政不服審査法、これで行政事件訴訟法が制定されまして、行政事件についても司法裁判所の管轄となったということで、ここにはらんでおりますところ、国の行政行為、権利侵害を受けた者の救済を実質的に保障するのだということで、行政庁が行った行為を司法によって審査させるということでございますけれども、ここら辺の司法と行政の判断というもののバランスをどう取るのかという点が、やはりずっとはらんだ問題として、現在の提案されております、幾つかの選択肢もございますけれども、そういう中にも入ってきているのではないかという気がしております。
 行政行為は多くの場合、法律がございますので、そこに従った形でいろいろな手続行為もあるわけでございますけれども、その際には行政手続法、あるいは情報公開法ということで、行政決定、行政行為を行うまでの過程の透明性、説明責任、こういうところについてやっているわけですけれども、そこで今回の御提言の中にもオプションがいろいろあるわけでございますけれども、例えば行政行為の義務付け訴訟の範囲の拡大の問題でございますとか、あるいは取消訴訟の対象の拡大といった、紛争の成熟度にかかわらず、通達、あるいは行政指導というものについて、一般的に訴訟の対象にしていく、あるいは裁判所が判決で必要な是正措置、具体的な内容を行政庁に対して命ずるというオプションもございますけれども、これらのところについては、具体的な例でどうだというのがございましたけれども、今まで具体的なものが事件として、行政事件でいろいろ判決が積み重ねられて、それらの御不満もあるかと思いますけれども、そういう中で行われてきた判断なり、あるいはそこで用いられた基準というのは、ある程度の行政行為による利益を得るもの、不利益を得るもの、全体的な公共の利益と申しますか、そういう中でどこがいいかということで、裁判所もいろいろ悩んで判断してきたのではないかというふうに思っておりまして、そういう一定の今まであるような判例の積み重ねといったものが、私どもの感じだと踏まえていただくというのが、1つの方法ではないかと思っております。例えば、裁量審査の充実ということで、現在の行政の裁量の範囲を超え、濫用があった場合に取り消せるという規定についても、これを更に広げる、あるいは要件を書き込むというような御提案もございますけれども、現在の規定でも社会状況の変化に対応して、いろんな柔軟な判断ができるのではないかというふうにも考えられまして、この辺りは具体的にどういうふうな形になっていくかというところは、先生方の方で更に検討ということでございますけれども、本当は、例えば文部科学省としては、どの選択肢がいいと考えるのかという材料を用意してまいりませんで恐縮でございましたけれども、基本的には、今までの判決の中で積み重ねられてきた考え方というものも選択肢の中で、割と一番初めの方とかに書かれておりますが、そういう考え方がいいような選択肢も多いのではないかと考えております。
 また、原告適格の拡大ということで、これについても従来、法律上保護された利益ということで、一応原告適格を切っておりますけれども、これについても幾つかのオプションが拡大するということでございますけれども、これも従来の考え方で国民の皆さんが一定の行政行為によって被害を受けた場合に、それを救済する訴訟の手段として、本当に十分なのかどうなのか、お考えいただけるとありがたいなと思っております。例えば、前に文化財の保護をやっていたときに、天然記念物がいて、それでゴルフ場をつくるということで、そこが天然記念物の生息地で、そこについて一定の判断をしようとしているときに訴訟が起こって、あのときは訴訟適格について、アカヒゲとか、天然記念物こと何々と言って、動物を原告とした訴訟代理人としての訴訟がございましたけれども、あれは訴訟適格で蹴っておりましたが、環境の問題は、団体訴訟の方のところでも環境保護に関連して出てきておりますけれども、確かに環境なら環境というものを誰が利益を受ける者かということを考えた場合、そこに住む者、具体的に処分の対象になるものだけでいいのかというのは、少しあるのかもしれませんけれども、ちょっとその辺り、法律上保護された利益という今の考え方でも対応できるのではないかと思われまして、ちょっとこの辺りも含め、御検討いただければと思っているところでございます。
 あとは幾つかありますけれども、今のところそんな感じでございます。

【塩野座長】あとはペーパーでいただいておりますので、ペーパーに書かれている事項についても質問があるかもしれません。

【説明者(山中総務課長)】総論的にはそういうところで、まずは、私どもは不作為のものは、不作為に対するいろいろ訴訟がございますけれども、いろいろ行政行為を行うというまでの手続の透明性、それへの情報の提供、そういうところを果たしてきているというものがあるものですから、それをやる前に何らかのことをやるという訴訟はどうかなという気がしているという感じでございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、どうぞどなたからでも結構でございます。それでは、今の点で、まさに義務付け訴訟のところで、ちょっと意味がわからなかったところがありますので、教えていただきたいのですが、これは5ページのところですが、少なくとも申請に対する処分等行政庁が何らかの処分を行うことが予定されているもの、つまり申請に対して応答処分が予定されているという、そういうケースですね。ところが、そういった申請権のない者が何か求めてきたわけですね。どういう場合を想定しておられますでしょうか。

【説明者(山中総務課長)】それは、想定しているといいますか、どの範囲のものにそういうことを行う、原告適格の方の問題になるかもしれませんけれども、そういうものを認めるかという。

【塩野座長】我々が議論しているのは、請求権がなければどうしようもないのですけれども、具体的にどういう場合に本来の申請拒否処分を予定している場合に、それ以外のものが、当該申請拒否処分について、何か、せよということを求めることがあるのかという、文科省の例で教えていただければ参考になりますが。今のお話は、要するにちゃんと行政手続はできているのだから、そちらの線に沿って行政がきちんとやっているときに、その手続を踏まないで第三者がぽんと来て、それで裁判所で突然作為命令を出しても困る。それはそれとして抽象的にはわかるのですけれども、具体的にどういうことが考えられているのか。私どもの方が、ここで議論の対象としておりましたのは、おおよそ申請権を持たない場合です。例えば、除却命令をなかなか行使してくれないので、除却命令の申請権などはないというふうに一応理解しておりますが、違法建築物についてですね。そのときに除却命令を第三者が求めると。つまり、もともと申請権のない処分類型について、ということで議論をしているところでございます。それからもう一つ義務付けは、手続を取ったのだけれどもゼロ回答だったとか、非常に不満な回答であったと、もう裁判に熟しているから義務付け判決をもらいたいという、そういった2つの種類を想定しているのですが、ここはどういうことを具体的に。

【説明者(山中総務課長)】ちょっと抽象的に、私どもはどこら辺まで広がるかというところで、そこの危惧されるという点で。

【塩野座長】面白い発想なものですから、具体的な例を教えていただきたいと思いますが。どうぞ他に、水野委員何かありますか。

【水野委員】文科省さんの御回答は、大体現状でいいのではないかという基本的なスタンスだと思います。

【説明者(山中総務課長)】変えなければならない部分はあると思うのですけれども。

【水野委員】それは立場上、そういう御意見ならば、それはそれでいいのですけれども、我々の方は、今、審議会の意見書を踏まえて、行政訴訟が十分機能していないという御指摘の中で改革すべき点があるということでやってきているのです。今回、一応改革のいろんなテーマを出している。これを見られて、文科省さんとして、担当者として、これはもう困ると、具体的に文科省の行政の中で、これをこういうふうに変えられたら、ここは困ってしまうと思われた点はありますでしょうか。

【説明者(山中総務課長)】いろいろ書いてあって、慎重、検討が多くて大変恐縮なんですけれども、基本的に私が見ておりまして、やはり司法と行政と申しますか、まずは行政の方が法律に則ってやっていくという場合に、不作為や何かもございますけれども、そこはそこで要件があるのですけれども、そこに至る前の段階で、何らかの法律上の利益ということで、行政行為をやる前に一時的に司法の方に具体的な法律上の利益というか、そういうことが発生する前に司法の方に救済を求めていくということはどうなのかなという考えが1つございます。それが先に申し上げましたような義務付け訴訟ですとか、取消訴訟の成熟度の度合があると思いますけれども、その前の段階で、具体的な行政行為というものが具体的に行われる前の段階で、それについての取消訴訟を行うですとか、あるいは裁判所自体が是正措置というものを行政庁に考えさせるというよりも、裁判所自体が一定の行政行為というものを行政庁に対して命ずるといった、その辺りのところが、やはり司法裁判所制度でございますので、そういう中で行政庁との司法との区分けといいますか、そういう点で別に行政庁がいいということではなくて、制度としてどうなのだろうかという考え方でございます。

【塩野座長】我々はその点は十分意識しながら議論をしているつもりでございますので。

【説明者(山中総務課長)】その点について、具体的にいろんな行政事件の中で、今までも裁判所も苦労しながらある一定の結論を出してきたと思われるものですから、具体的に言えと言われたのですが、それは今までの具体的な判決の積み重ねと申しますか、そういう中で積み重ねられてきた裁判所の判断というものも重視していただくとありがたいという感じでございます。

【水野委員】要するに、行政庁として、担当者としてこれを読まれたわけでしょう、そうすると、こんなことに変えられると、たちまちうちの行政のあの部分が停滞して困るとか、何かそのような印象を持たれた箇所は特にございませんか、具体的に。

【説明者(山中総務課長)】どんどん訴訟が起こされることによって、行政ができなくなるという、ちょっとチェックしてみますが、先ほどございましたけれども、今まで行政訴訟がどういう分野で起こされたかというふうなところもチェックしてみまして、我が省の中でもどういうところが処分性のあるというか、こういうふうなものに一番多そうなものを幾つかピックアップして、また、こういう点が困るという形で具体的にお出しできれば思います。
 ちょっと、従来どういうところが行政事件訴訟で起こされていたのか、その辺も例を挙げてみたいと思います。

【塩野座長】それから文化庁におられたということで、先ほどは天然記念物の話でしたが、当時は文部省ですが、文部省の文化庁自体のお話ではなかったんですけれども、例の伊場遺跡の話がございましたね、ああいった文化財についての利害関係人として研究者がいるというときに、その文化財の保護が廃止されようとしているときに、そういった研究者について原告適格を認めるべきだというような議論がいろいろあるのですが、文科省としては、そういった文化財保護について仮に団体訴訟を認めるとしたときの準備みたいなものはしておられますか。別の省庁では、多少団体訴訟についての準備もしておられるようなのですけれども。

【説明者(山中総務課長)】まだしていないのではないかと思います。

【塩野座長】そうですか、では我々としては、そういう点に関心がありますので、ひとつよろしくお願いいたします。

【説明者(山中総務課長)】かしこまりました。

【塩野座長】それから、先ほど来の御意見、それは1つの御意見としては承りましたが、我々としては、日本の権力分立、つまり司法と行政の在り方も考えながら、かつ判例等を見ながら勿論議論しているつもりでございますが、ちょっと外国と比較した場合に、日本の判例、あるいは日本の制度全体が少し縮こまっているという問題意識も別にありますので、外国はこうだからどうだということではありませんけれども、なぜ日本の権力分立は、あるいは司法と行政はどうしてこんなに固いのかなという疑問が底辺にあっての議論だということも御承知いただきたいと思います。
 そうでもないと、先ほどの御説明ではいつまで経っても結論が出ませんので、よろしくお願いいたします。
 それでは、どうも休み前はこれで終わります。どうもありがとうございました。ここで10分間の休憩をいたします。3時40分からでございます。その間、事務局の方から配布資料がございますので、なくさないようにしていただきたいと思います。

(休 憩)

【会計検査院】

【塩野座長】それでは、次に進めさせていただきます。これから会計検査院からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、太田雅都事務総長官房法規課長でございます。それから、遠藤隆志総長官房総務課渉外広報室長でございます。どうぞ、適宜どちらかでも結構でございますから、御説明いただきたいと思います。

【説明者(太田法規課長)】では、私の方から御説明させていただきたいと思います。お手元に検討事項に関する意見等ということでペーパーをお出しておりますが、Aにございますように、こういう納税者訴訟制度については、どういった影響があるかについてはまだ不明ということで、今回はBの点につきまして、訴訟制度に関する感想ということでお話をさせていただきたいと思います。
 1点目の本院の独立性との関係ですけれども、御案内のように検査院は、憲法上の国家機関と位置づけられておりまして、会計検査院法の第1条で、内閣から独立の地位を有するとされております。また、院法の30条の2という規定があるわけですが、検査院は国会からの検査要請を受け、その結果を報告することができるというふうにされております。この規定は、検査院に対しまして検査を義務づけているということではなくて、要請に応えて検査を実施するかどうかについては、検査院の裁量に属するとされております。このことは独立機関であります検査院の立場から当然のことと考えられておりまして、検査院では国民の関心の所在であるとか、国会における審議状況、そういったものに常に注意を払いながら、検査の専門機関としまして、自らの判断で厳正かつ公正な職務の執行に努めているということであります。こういったように、国会から検査要請を受けた場合でも、本院の独立性に配慮しまして、検査を義務づけるということはなされていないわけですが、今回の訴訟制度でどうして個人から検査請求があった場合に、検査を義務づけられるのか、本院の独立性との関係で説明が必要であろうと考えております。
 それから、国民が検査院に対して検査を要請したい場合には、国民の代表であります国会からの検査要請という道が開かれておりまして、このことは既に検査院の独立性にも配慮しつつ、国の場合にもいわゆる納税者訴訟制度の趣旨が実現されているのではないかというふうに考えております。
 第2点目の地方公共団体の制度をそのまま国に当てはめるということの妥当性ですが、地方公共団体の場合には、議会からの監査請求、それから首長からの監査要求について、いずれも監査が義務づけられているわけですが、したがいまして、住民監査請求に関しましても、監査を義務づけるということは均衡を失しているわけではないと考えております。
 しかし、検査院の場合は監査委員と比較しまして、より強い独立性を有しているということは、先ほどお話ししました他の機関からの要請に基づく検査が義務づけられていないということからも明らかでありまして、独立性の程度の異なる2つの機関について、これを区別することなく論じるのはいかがかと考えております。
 3点目の裁判所の関与についてですが、2点ほど検討する必要があると思います。
 1点目は、裁判所が関与すること自体ですけれども、地方公共団体の監査委員制度というのは、裁判所を絡ませまして監査委員の機能を補完するという意味があったというふうに聞いております。しかし、検査院の場合は検査の専門機関でありまして、むしろ独立した地位を与えることで、その専門性を発揮して十分な検査を行うことができるように制度的な保障を与えているというものと考えております。したがいまして、住民訴訟制度に裁判所を絡ませるということの合理性は認められるわけですが、国の場合に裁判所を関与させるということの合理性について稀薄ではなかろうかと考えております。
 2点目ですけれども、裁判所による関与があるとしましても、検査院が受ける検査要請のすべてについて裁判所の関与を受ける制度になっているということです。公表されております、いわゆる納税者訴訟制度では、検査請求ができるのは違法である場合に限られておりまして、不当な場合は含まれないというふうにしております。住民訴訟制度における監査請求の前置というのは、裁判所の判断になじまない、いわゆる不当性の問題を監査委員に審査させるというために設けられたというふうに理解しております。したがいまして、住民監査請求の創設の経緯を見ますと、違法性に限定した場合には、必ずしも監査請求を前置させる必然性はないと。直接裁判所に国民訴訟を提起できるとしても支障はないのではないかと考えております。
 第4点目の検査請求を受ける場合の本院の検査権限との関係ですが、いわゆる納税者訴訟制度の導入の背景としまして、談合事件をよく挙げられておりますが、いわゆる関係者が損失を国庫に返納していないということが挙げられているわけですが、例えば談合が行われているから、損害額を国庫に返還すべきというような検査請求があった場合に、現在の検査院の権限では、これに対する適切な勧告をするというのが極めて困難であると考えております。つまり、会計検査院法の22条と23条に検査院の検査対象を規定しているわけですが、国が私の企業と契約をした場合の検査権限につきましては、院法の23条第1項7号で工事の請負人の契約に関する会計、それから、物品の納入者の契約に関する会計というものに限られております。ということで、これ以外の契約については検査を行うことができないということになります。さらに、国以外の場合、例えば公団等が発注した事業につきましては、検査院は契約の相手方に対して全く検査権限を持っておりません。いわゆる談合の存在を明らかにするというためには、請負業者だけを検査するのでは不十分でありまして、入札参加業者のすべてについて検査を行うというのが不可欠であろうと思います。検査院は落札業者以外の入札業者については、検査を行うことができないという問題があります。
 こういったように、検査請求としてどんなものが請求されるのか、現在のところ不明ですけれども、請求に対応した検査権限を検査院が有しているかどうかということを検討していただきまして、不足している権限については、権限を付与されない限り、こういった制度を本院が担うというのは困難ではなかろうかというふうに思います。
 それから5点目、これは通常の検査業務との関係ですけれども、検査院の検査というのは、検査対象機関から提出されます計算書とか証拠書類について、在庁して検査を行っております書面検査というものと、それから各省庁、団体、都道府県、市町村等に職員を派遣して行う実地検査で行っております。その書面検査ですが、計算書で約二十万冊、証拠書類で約七千三百万枚、これは14年次の数字ですが、これを対象にして行っておりまして、実地検査は、調査官等の実地検査延べ人日数で4万2,000人日。それから、実地検査の施行率ですが、検査対象機関3万6,000か所に対しまして、全体で8.4 %となっております。
 本省とか、あるいは本庁、本社といった重要な箇所につきましては、44.2%となっているわけですが、これらの検査を行うために従事している調査官の数というのは800 人になっております。住民監査請求の場合には、地域が限られているということと、それから請求の内容が住民の身近な問題に限られているということですけれども、納税者訴訟の場合には、地域的には日本全国を対象としまして、さらに対象も国、独立行政法人、それから特殊法人、認可法人に及ぶと。請求の内容も請求者の利害に関係するものだけではなくて、マスコミ報道等に触発された請求も多数に上るということが予測されます。
 例えば、先ほどお話ししましたように、検査院が現在の検査権限で対処できない場合には棄却せざるを得ないといったもの。それから、マスコミ情報に触発されたもの、こういったものにすべて検査院が対応しなければならないということになりますと、検査資源に限りがありますので、本来の検査業務に支障を及ぼすことになる。そして、検査院の憲法上の職責を果たせなくなるというおそれがあるというふうに思っています。したがって、仮に検査請求を受けるとすれば、検査請求の内容とか件数にもよりますけれども、数百人規模の増員と、それに見合う予算措置が必要であるというふうに考えております。
 さらに、検査院が行っている検査テーマとの関係でございまけれども、検査院では、先ほどお話ししましたように、検査要員が限られているということで悉皆検査を行うことは合理的ではないということで、毎年各検査課ごとに検査テーマを検討しまして、そのテーマに沿って集中的に検査を行っております。検査テーマにつきましては、その当時の社会情勢の変化とか、国の財政状況、それからマスコミも含めました国民の関心の所在と、あるいは国会審議、そういったものを踏まえて選定しております。一方、検査請求というのは、個人の発意によって行われるというものでありまして、住民監査請求の中には監査になじまないと思われる請求も相当寄せられていると聞いております。
 こういったことから、検査院としては検査の専門機関としまして、長年の経験あるいはノウハウを生かして、自らの判断で検査テーマを選定し検査を行うということが限られた検査資源を有効に活用する道ではなかろうかと考えておりまして、検査院が納税者訴訟制度を担うというのは、いかがかというふうに考えております。
 最後になりましたが、検査院の検査サイクルとの関係で申し上げたいと思いますが、検査院は憲法90条の規定に基づきまして、毎年、国の収入・支出の決算を検査して、検査報告を作成し、提出するということになっております。この検査報告の提出時期に合わせまして、毎年の検査のサイクルを定めておりまして、集中的に検査を行う期間と、それから内部で検査報告をとりまとめる期間を区別することによりまして、検査報告の作成の効率化を図っております。
 一方、検査請求は常時行われるということになりますので、検査請求の件数によっては実地検査、あるいは検査報告の作成に支障が生じることが容易に予想されます。例えば、検査請求が一時期に集中した場合には、検査報告のとりまとめに要する人員をそちらの方に振り分けなければいけないということもありまして、憲法上の本来の職責である、検査報告の提出に困難をきたすということも考えられるかと思います。
 こういった制度の導入にはさまざまな問題がございまして、現在のところ検査院として受け入れることは難しいのではないかというふうに考えております。ちょっとと早口で雑駁でございますが、説明は以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。どうぞ、委員の方から御質問をいただきたいと思います。
 それでは、ちょっと私の方からお伺いしますが、検査の請求ですが、法的な意味で仕組むというのはなかなか難しいというお話でございましたが、しかし、現在いろいろな行政組織内からの、いわゆる内部告発的なものもあると同時に、おそらく外部の方からも会計検査院に対して、こういった点はどうかというような、自分の権利利益の侵害ではないですが、いわゆる苦情ではありませんけれども検査をしてくれないかとか、そういったような申出があると思うのですけれども、一体それはどのぐらいの件数にあがっているのか、その処理はどういうふうにしておられるのか、その処理の扱い方の今の状況についてどういうふうな御判断なのか、評価をお伺いしたいと思います。

【説明者(遠藤広報室長)】お話の外部情報につきましては、窓口になっておりますのが渉外広報室でございますので、私の方から説明させていただきます。そういった外部の方からの情報提供というのが年間で約六百数十件ほどございますが、これにつきましては、内部におきまして外部情報の取扱要領というものを内規で定めておりまして、それに従いまして処理しております。大まかに申し上げますと、会計検査院の職責といいますか、権限というものをよく国民の方は御理解いただいていないところもあるのかもしれませんが、国費の関与がありませんと、会計検査院は検査ができません。その辺が御理解がなくて、検査院ができないというものがその中に相当、約二割程度はそういったものがございます。これは、大きくⅠ類、Ⅱ類というふうにして分けるのですけれども、Ⅱ類というのが大体二割ほどでございます、残りの八割ぐらいは、何らかの具体的な情報があるということですけれども、それを更にA、Bと分けまして、具体性がある、それから比較的事象が古いものですと、なかなか書類も残っておりませんので非常に難しいので、そういったところで、またA、Bという色分けをするわけですけれども、Ⅰ類につきましては、すべて担当検査課に送付いたしまして、そこにおきまして取り扱いと言いますか、活用方針というものを立てまして、これは全部局長決裁を得るというふうにしております。
 それに従いまして検査、これはいろいろサイクルもございますので、直ちに手を付けられるものもございますし、なかなかサイクルに合いませんということもございますけれども、何らかの形で活用方針に従って情報を確認していくというふうにしています。それに従いまして検査報告の掲記につながるもの、なかなかそれに至らないものもたくさんございまして、正直言いますと、検査報告に最終的に情報提供、なかなか検査だけでは知り得なかったような、本当に内部からの情報によって検査報告に掲記しているものは確かにございます。率的には、残念ながらかなり低いと言わざるを得ないのですけれども、そういう形で活用させていただいているところでございます。

【塩野座長】今の内部要領でしたか、それはホームページか何かに掲載されていますか。

【説明者(遠藤広報室長)】いえ、内部要領ですので、特にそういった形で公開はしておりません。事務取り扱い要領ですので、しておりません。ただ、これまでも情報公開の開示請求がございましたので、これにつきましては全面的に開示はしております。

【塩野座長】その制度化がどの程度可能かどうかはわかりませんけれども、独禁法の45条に、最高裁は不問処分だというふうに言っておりましたけれども、処分ではないということでしたけれども、こういった国民から何か情報を得たい人ならばどうぞというような形での制度化については会計検査院ではどうですか。

【説明者(遠藤広報室長)】独禁法のように、そういったものを受け付けて、その結果について通知するといった義務規定があると承知しておりますけれども、今のところ検査院におきましては、お手元にも配布しておりますパンフレットの中で、若干そういった貴重な情報になっておりますという記述はしておりますけれども、それを積極的にというところまでは今は至っておりません。もし、これを更に積極的に受け付けるという形をしてまいりますと、件数は当然増えてくると思うのですが、今の割合と言いますか、具体性のある非常に貴重な情報というものと、新聞情報とかに触発されたいろんな御意見的なものが増えてしまうという、それに従って検査課もいろいろマンパワーが取られる。先ほど言いました、Ⅰ類にしたものにつきましては、すべて検査課が何らかの形で対応するようにしておりますので、それに必要となるマンパワー、それを選別するための質的評価をするために、予備的調査とか、そういった制度的な受皿をもう少し整備するというのが将来的に検討すべきであるということはあるかと思います。今のところはまだそこまで至っていないというところであります。

【水野委員】マンパワーの点とか、そういうのはよく理解できるのですけれども、さっき冒頭でおっしゃった国民一人一人が検査の請求をするというのはおかしいと、国会を通じてとか、そういう趣旨のことをおっしゃったんですね。

【説明者(太田法規課長)】おかしいというふうには。

【水野委員】おかしいというとちょっと語弊がありますけれども、ただ現在の会計検査院法の35条には利害関係人からの審査の要求があったときには、これは審査しなければならない、そしてその結果を報告するという規定があります。利害関係人という縛りが当然あるわけですけれども、しかし、国の税金がいろんなところで無駄に使われているという事態があったとしますと、広く言えば、国民すべてが利害関係人だとも言えなくはないわけで、そういう意味からしますと、会計検査院法にも現在そういう規定があるわけですから、いわゆる国民からの審査というふうな制度を設けること自体は特に憲法上問題になるとか、国会との関係で問題になるということはないのではないかと思うんですけれども、いかがですか。

【説明者(太田法規課長)】35条の審査制度そのものは、いわゆる戦後GHQが強力に規定しなさいということで、アメリカの会計検査院のGAOの規定をそのまま持ってきたというふうに言われているんですが、実は、今はGAO自身は審査制度を持っていないのです。その中で制度があるわけですけれども、その後、行政不服審査法とか、あるいはアメリカでGAOが従来取り扱っていたようなもの、例えば中身としては公務員が給与が低いので、それを何とかしてくれとか、それから軍人さんの給与を何とかしてくれとか、あるいは国と契約を行った会社の従業員が最低賃金を守っていないので、それを払うようにしてくれとか、そういった請求が大体6,000件ぐらいアメリカであると言われているのですが、そのほとんどがそういったものなんです。それは、日本で言えば、行政不服審査とか、あるいは人事院とか、あるいは厚労省、そういったところが担っている制度になっておりまして、審査制度自身は、利害関係人の要件が厳しいからということではなくて、むしろ他の制度で救済の道が開かれているということで、こちらの方に請求がないというふうに考えていただいた方がいいのではないかと思います。

【塩野座長】実例がないのですか。

【説明者(太田法規課長)】実例はございます。

【塩野座長】どういうものがあるのですか、何件ぐらいありますか。もしあれでしたら、時間の関係もありますので、後日に。

【説明者(太田法規課長)】今まで要求があった件数というのは70件ほどあります。そのうち是正を要するとしたものが3件、それから要しないとしたものが17件、これは資料が古いとか、そういったことがありまして、なかなか判定し難いとしたものが1件、残りは大体、例えば会計経理に当たらないとか、それから利害関係人にならないとかということで却下等のものが49件ぐらいになっております。

【塩野座長】利害関係というのは、具体的に一番多いのはどういう類ですか。

【説明者(太田法規課長)】会計経理の取扱で落ちるのが多いかと思います。皆さん請求される方は、利害があるから請求されるわけで。

【塩野座長】利害があるというのは、どういう類の方ですか。

【説明者(太田法規課長)】最近の事例でいきますと、例えば補助金の交付決定を受けて道路を造るのですけれども、その道路が自分の家にかかると、そういうものを何とかしてくれということなのですが、実は交付決定自身は行政行為でして、行政行為に伴って会計経理が続くということでありまして、行政行為を是正しない限りは、そこも変わらないということで、いわゆる行政行為が争われても検査院としては答えようがないということで却下になるというようなことがあります。

【塩野座長】却下のお話ばかりされているのですが、入れた話をお願いします。

【随行者(山口官房法規課総括副長)】最近の例でございますけれども、ある私人の方が、国のある施設が私の土地まで入り込んで占拠をしているというような事例が幾つか寄せられまして、それは本来私の土地なんだから返していただけないかというようなものが、現在、複数件寄せられております。これはおそらく利害関係人ではないかと考えているものでございます。

【随行者(太田法規課長)】つまり国有財産の管理という会計経理行為で、いわゆる私人の土地が国に占拠されているということでは利害関係人かなと。会計経理にも当たるのかなと。結構、さっきもお話ししましたように、行政行為を争って来られる方が多くて、そこはなかなか検査院としてはお答えできない、いわゆる要件に当たらないというのが多いかと思います。

【芝池委員】省の名前を挙げるのを差し控えますけれども、ときどき金の使い方がおかしいというふうなことが社会問題になりますけれども、そういう場合は、そういう社会問題になったからというので、それだけの理由で調査をされるということはないのでしょうか。

【説明者(太田法規課長)】それは例えば外務省の問題とか、当然マスコミ等で話題になり、かつ国会でいろいろ問題になったものについては、検査院の判断としてやるべきだということで実際にもやっておりますし、マスコミ情報というのは非常に貴重な情報でありまして、それらも加味しながら検査テーマを毎年考えていくということにしております。

【塩野座長】それでは最後になりますけれども、先ほどちょっと言葉尻をとらえるようで申し訳ありませんけれども、違法性だけの問題であれば、会計検査院を通さないで裁判所にさっさと持っていってくれればいいではないかと言われたわけですけれども、それは会計検査院としては、そういう制度が望ましいというふうにお考えなんですか、要するに会計検査院が迷惑がかからなければ、それはどうでもいいというお話なんでしょうか。

【説明者(太田法規課長)】今の公表されている法案では、検査院に配慮されているということなんですが、ただ、違法性だけであれば、いわゆる住民訴訟制度から言えば、いわゆる検査機関、監査機関については、不当性を判断させるために前置しているというふうな、それがその制度の趣旨だということであれば、他の人にやってくれということではありませんが、検査院が違法性だけやるということはどうなのかなということで申し上げたということです。

【塩野座長】もう少し考えてみてください。どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。どうも今日は御苦労様でした。

【公正取引委員会】

【塩野座長】それでは次に、公正取引委員会からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は徳力徹也官房総務課審決訟務室長です。よろしくお願いいたします。

【説明者(徳力審決訟務室長)】審決訟務室長の徳力と申します。座ったままで失礼いたします。本日は、行政訴訟制度の見直しに関連しまして、公正取引委員会の業務にどういう影響を与えるのかを御説明する場と理解しております。まず、公正取引委員会が行う行政処分につきまして、簡単に御説明させていただきます。公正取引委員会の処分を審決と申すのですが、その審決取消訴訟につきましては、独禁法上特則が定められております。したがいまして、その特則がある部分につきましては、行政訴訟制度の見直しが直接的に公正取引委員会の業務に何か影響を与えるということは少ないのではないかとは思いますけれども、本日は、まずそのような特則的な扱いにどのようなものがあるのかという点を御説明させていただこうと思っております。また、特則がない部分につきましては、行政事件訴訟法が一般に適用されることになりますので、その部分に関しましては、今回の見直しが私たちの業務に影響を与えるという可能性がございますので、簡単に御報告をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、最初の第1点目の特則扱いの御説明ということですが、7月16日付の一枚紙をお配りしているかと思います。「独占禁止法違反に係る行政処分手続について」という表題を付けておりますけれども、こちらの紙に沿いまして御説明をさせていただこうと思います。まず、公正取引委員会の訴訟の関係につきましては、特則扱いがあるというふうに申しましたけれども、その背景、前提としましては、公正取引委員会の行政処分というのが審判手続というものを経て行われるということでございます。審判手続はもう御案内のとおりだと思いますけれども、行政庁の側と行政処分を受けるであろう名宛人の側との間でお互いに主張・立証しあうという対審構造を採って行うというものでございます。この審判に関しましては、独禁法上規定がございまして、お手元の資料にありますとおり、独禁法の53条で、例えば審判の公開を定めておる、あるいは52条で被審人の防御権というものを定めている、あるいは、54条の3という規定ですけれども、審判手続において取り調べられた証拠のみによって事実を認定するのだというようなことが定められております。また、公正取引委員会の規則になりますけれども、審査審判規則というのがありまして、証拠調べ手続を定めるなどといった形で、非常に裁判に近い形で審判手続というのが行われております。御参考ということで、資料の方に判決例を書かせていただきましたけれども、公正取引委員会の審判手続というのは、行政手続の中でも司法手続にかなり類似している。あるいは、裁判所の言葉で言いますと、準司法手続の性格が極めて強いものであるというような整理がなされておるところであります。
 このような審判手続の存在というのを前提といたしまして、公正取引委員会の行う行政処分、審決の取消訴訟につきましては特則規定が若干ございます。それが資料の真ん中辺りに書いてございますけれども、1つは独禁法の85条で審決取消訴訟は東京高裁の専属管轄であるというのが定められております。
 また、独禁法の80条ですけれども、実質的証拠法則と一般には言われておりますが、公正取引委員会が認定した事実は、これを立証する実質的な証拠であるときに裁判所を拘束するといった規定もございます。
 あるいは、出訴期間についても特則的規定がございますし、あるいは裁判での証拠の申出について若干の制限規定もあります。あるいは処分を取り消すときには、公正取引委員会に差し戻すというような規定もございます。
 これらの特則的な規定につきましては、今日、お配りした資料の別添という形で個別に所定の様式に従った紙で御説明を簡単にしているところでございます。
 なお、1枚目の資料の方に書いてございますとおり、公正取引委員会の行っている審決取消訴訟につきましては、いわゆる法務大臣の権限等に関する法律の適用が除外されております。これは公正取引委員会の独立性に配慮いたしまして、法務大臣の訴訟指揮ということとの関係でその適用が除外されているということでございます。
 以上、申し上げましたとおり、若干の特則規定があるということで、この特則規定に変更がないという前提で考えれば、今回の行政訴訟制度の見直しというのが、この限りにおいて何か公正取引委員会の業務に影響を与えるということはないと思われます。このような特則的な扱いというものについても御配慮いただきたいと思っております。
 次に特則がない部分につきましては、行政事件訴訟法の適用がございますので、これとの関連で私どもの業務に影響を与えるというものについて、数点ほど御説明をさせていただこうと思います。
 これもいろいろ論点はあるかと思うのですが、代表的なものだけ御説明をさせていただきます。例えば行政行為の給付を求める訴え、いわゆる義務付け訴訟的なものが仮に認められるとした場合に、どのような方にこれが認められるかによって公正取引委員会の業務に与える影響も違ってくるとは思います。現在、独禁法の規定では、独禁法違反行為があると思慮するものは誰でも公正取引委員会に申告することができます。例えば、入札談合をやっているので、その入札談合を取り締まってくれというようなことを誰でも申し立てることができます。これまでの裁判の判決の考え方で申しますと、そういう申告者というのは、事件の端緒を与えるにすぎないので、公正取引委員会に対して具体的な処分をするように請求する請求権というものが認められているものではないというような整理がなされております。仮にこういった申告者についても公正取引委員会に対して処分を求める訴訟というのが提起できるということになりますと、先ほどの入札談合のケースで申し上げますと、入札談合の申告があって、公正取引委員会が内偵をしている間に申告人が訴訟を提起するということになると、公正取引委員会の調査の密行性が損なわれることになってしまって、公正取引委員会の審査に支障が生じるといったことも考えられると考えています。
 あるいは原告適格の拡大というのも入って、項目としてはございますけれども、これもどのような方に原告適格を拡大していくのかということによって、若干公正取引委員会の業務に影響が出てくるかと思います。先ほど公正取引委員会は、審判手続を経て処分をするのだというふうに申し上げましたけれども、簡易迅速な手続として勧告審決というものがございます。これは処分の名宛人の方において、公正取引委員会が例えば入札談合をやめろという勧告をするのですが、その勧告について、名宛人の方がこれを応諾すると、そういう行為はやめるということで応諾をした場合に、審判手続を取らないで、そのまま行政処分をするという勧告審決という制度があります。これは、処分を簡易迅速にやろうということで設けられている制度でございますけれども、仮に勧告審決の名宛人となっていない第三者が当該勧告審決の取消訴訟を提起するということになりますと、処分の迅速性を確保しようとした勧告審決の趣旨と整合性をどういうふうに取るのかというのが論点になってくるのではないかと思われます。あるいは、先ほど申し上げた審判を経て行う審決、審判審決につきましても、審判に参加していない第三者がその後になって審決取消訴訟を提起する場合には、審判手続に第三者は全く加わっていないので主張・立証していないわけですけれども、そういったものについても専属管轄を東京高裁とするのか、あるいは実質的証拠法則をそういった訴訟にも認めるべきなのかどうかといった論点が出てくるのではないかというふうに思います。これは今後具体的にどういうふうに制度設計がなされてくるのかということによって違ってくるかとは思いますけれども、そういった論点があろうかと思います。
 このほかにも幾つか論点がございますが、とりあえず想定される論点ということで簡単に御説明をさせていただきました。また、見直しの方向が具体化した段階で、再度御説明させていただければと思います。雑駁ですが、これで説明の方は終わらせていただきます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、どうぞ委員の方から御質問をお願いいたしましょう。今の御説明の確認ですが、特則が既にあるものはいじらないだろうという前提で、それはそれでいじらなければそれで結構だというお話。
 もう一つは、仮に明確な特則がない場合について、こちらの方で例えば原告適格等々を改めるということになると問題があるというふうにおっしゃった、その問題があるというのは、やはり大元の行政審判制度という公正取引委員会の持っている制度との関係でおっしゃっておられるのか、それとももう少し一般的なお話として言っておられるのか、その辺はどうなのでしょうか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】今の独禁法の体系というのは、審判制度をまず根本に据えて、それを前提とした上で制度設計がなされておりますので、その審判制度との関係で、先ほど申し上げた実質的証拠法則の適用がどうなるかとか、そういう審判との関係で問題が出てくるだろうというのが主たる問題だろうと思います。

【塩野座長】どうぞ何かあれば御質問いただきたいと思いますが。

【水野委員】今、いろいろ御説明があった特則があるわけですけれども、これは今回行政事件訴訟法の改正という議論をしているわけですけれども、今回の改正に関わりなく、やはり全部について特則は維持する必要があるのか、それとも行政事件訴訟法が変われば、場合によっては、この特則も一部変えると言いますか、原則に戻していいというふうな部分があるのか、どうなんでしょうか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】特則が変わらないという前提で内部では議論しておったものですから、その部分について詰めた議論というのは申し上げていないのです。公正取引委員会のような行政委員会という特殊性を前提とした制度かとは思いますので、おおよそ変えられないということはないですけれども、そういう行政審判制度に関してどういう訴訟の仕組みをつくるのかというのは、かなり大きな話になるのではないかなとは思いますので、仮にそういう話になるとすれば、それは十分検討させていただかないといけないなと思っております。

【水野委員】例えば、東京高裁の専属管轄とか、出訴期間なんかも決められておるわけですけれども、これなども変えるというふうなことは全然お考えにならないのですか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】今のところ具体的に検討しているというのはないですけれども、ただ理屈の上でおよそ考えられないかということはないかとは思います。ただ、東京高裁に専属管轄になっているというのは、先ほど申し上げた審判が前提になっているということが1点と、独禁法に関する事件をできるだけ1か所に集中して専門的に処理した方が効率的ではないかという立法時の考え方があったようですので、そういったものについて、今、現状が変わったのかどうかとか、その辺も少し考えなければいけないかなと思っております。

【塩野座長】私から1つですが、義務付け訴訟で、例の45条ですが、あれは要するに行政訴訟をどう変えようと、実体法上の請求権を与えていないというのであれば、関係ないようにも思いますが。

【説明者(徳力審決訟務室長)】そこは誰に請求訴訟提起を認めるかという話になってくると思うのですけれども、仮に実体法上の請求権がない者には、およそそういう義務付け訴訟の提起の余地がないということであれば、全くこれまでの業務と変わることはないと思います。確かに極端なケースかもしれませんけれども、非常に広めて義務付け訴訟を何か行政に対して申請をしたものに対して認めるということであれば、こういう申告のようなものも含まれるというようなことであれば、若干問題が生ずるということでございます。

【塩野座長】わかりました。要するに、予防線をできるだけ広くきちん張っておきたいと、そういうお気持ちの表われというふうに理解をしましたが、よろしいですか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】今後また具体的な検討があるかと思います。

【塩野座長】他に義務付け訴訟はないですかね。ちょっと余りわかり過ぎている例を出されたので、ちょっと我々も考えなければいかんというのがあれば、考えますけれども。もしあったら後で。

【説明者(徳力審決訟務室長)】また御報告するように致します。

【小早川委員】請求権がなければ義務付け訴訟はないだろうというのは、そのとおりなのですが、むしろ問題は、47年最高裁判決の、非常に関係者からは関心の持たれる不問決定なり何なり、それを取消訴訟というかどうかはともかくとして訴訟の対象にすべきではないかという、そういう点についてはどうですか、それはやはりどうしても困るということですか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】仮に義務付け訴訟ということで、先ほど申し上げたのは、非常に広げた場合です。公正取引委員会に対して談合を調査しろと、調査するよう義務付けを求めるという訴訟を提起したと。ところが、談合の審査というのは、非常に内々でやっておるわけですので、そういう訴訟がぼんと出てきてしまうと、せっかく内偵していても、それですべておじゃんになってしまうということになりますので、そういう調査の密行性というものを考えると、申告者が、一定期間置いてということだと思いますが、申告者が訴訟を提起するというのは、ちょっと業務に支障を生ずる可能性があるというふうに考えます。

【小早川委員】それは、不問決定がされて、申告者に通知がされたものに対して、取消訴訟を起こされるのはまずいと。

【説明者(徳力審決訟務室長)】不問決定がなされたというのも、その時点において、とりあえず違法性の可能性が低いということですので、当該事件について引き続いて監視をしていくとか、注意していくというのは、そういうケースはたくさんございます。申告があって、その時点では黒だとまでは言えないので、とりあえずは取り上げないことになったけれども、いろんな情報を集めているというケースというのはございますので、その段階で、例えば訴訟が提起されるということだと、もしかするとその後支障が生ずる可能性があるというふうに考えます。

【小早川委員】いろいろ手の内が。

【説明者(徳力審決訟務室長)】ええ、関心を持っているんだなと、公正取引委員会がこれを調査するかもしれないぞというのが明らかになってしまうという可能性がございます。

【市村委員】私は記録の関係でちょっとお伺いしたいのですけれども、公開等の書面の中で、独占禁止法の78条で、現行法でも公正取引委員会の審決取消訴訟が提起された場合には、当該事件の記録が送付されてくるということになっているという前提の中で審判をされているのだろうと思いますが、そういうふうに記録が後日裁判所に送付されるという前提があるということによって、審判そのものの審理が窮屈になっているとか、本来ならもっとここまで率直に出せるというもの、それが出されていないとか、そういうふうなお感じというのをお持ちになられることはないのかと、そこはどうでしょうか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】率直に申し上げて理屈の上ではあり得るような気がしますけれども、実態として、だから審判の場で主張ができないとか、そういうことは余りないのではないかと思います。将来的に訴訟が裁判所に行ってしまうかもしれない、だから審判廷にはできるだけ証拠を出さないようにしようというようなインセンティブが働いているという感じは持っておりません。

【芝池委員】送付された記録の範囲というのは、どの程度なのでしょうか。

【説明者(徳力審決訟務室長)】審判を行いますけれども、その審判廷に出てきた記録一切というふうになっています。条文上、一切のものというふうに書いてございまして、私どもの方で何か選んでということはできないような形になっていますので、審判記録として審判廷に持ち出された記録はすべて裁判所に行く仕組みになっております。

【塩野座長】確認ですが、例外はないのですね。書類全部出してしまうと。

【説明者(徳力審決訟務室長)】はい、何かマスキングするとか、これは例えば事業者の秘密に関わるものだから出せないとか、そういうものはございません。条文上、一切のものを出すというふうに規定されております。

【塩野座長】よろしゅうございますか、それではどうもありがとうございました。また、後日、別の質問があればそれに答えてください。どうもありがとうございました。

【財務省】

【塩野座長】それでは、次に財務省からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、河野一郎大臣官房文書課業務企画室長です。よろしくお願いいたします。

【説明者(河野業務企画室長)】文書課業務企画室長の河野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、説明させていただきます。最初に財務省でございますが、所掌事務につきましては、もう御案内かと思いますけれども、主計局が国の予算、決算関係、主税局は国税制度関係、関税局では関税関係、理財局は国庫関係、財政投融資、国有財産、たばこ事業等、国際局におきまして、外国為替国際通貨制度、国際経済協力開発、海外投融資などを所掌しております。また、地方支分支局としまして、財務局、税関がございまして、あと外局としまして内国税の賦課徴収等を所掌しております国税庁があるところでございます。
 これまでの財務省の関係で、行政訴訟が提起された主な案件といたしましては、国税の課税処分等に係るもののほか、輸入禁制品該当通知処分取消請求事件などの関税、通関に係るもの、たばこ小売販売業不許可処分取消請求事件などがございます。なお、国有財産に関しまして、所有権確認ですとか、所有権移転請求事件等の訴訟が提起されておりますが、これはおおむね民事訴訟で提起されているという状況でございます。
 それでは、お手元の資料に沿いまして説明させていただきます。最初の「第1 基本的な見直しの考え方」でございますけれども、これの財務省への影響ということでございますが、これはそれぞれの制度改正の内容によって異なりますので、後ほど話させていただくとおり、個々の制度ごとに検討する必要があると考えております。
 続きまして「第2−1−(1)被告適格者の見直し」でございますが、行政庁を被告とせず、国または公共団体を被告とするということでございますけれども、これにつきましては、特段の問題はないと考えております。
 次に「第2−1−(2)行政訴訟の管轄裁判所の拡大」でございますけれども、国税関係の処分につきましては、概ね税務署長が処分庁になっております。税務署は全国で524ございますので、そこがそれぞれ処分庁という形になっております。関税通関につきましては、税関長が大体処分権限を持っておりますけれども、支署長等に委任しているということでございまして、税関は資料の下に記載されていますような各地にございまして、高裁の所在地とは少しずれているような形になっております。この他、たばこの小売販売許可につきましては、財務大臣から財務局長へ権限委任がされておりまして、財務局は資料にございますとおり、ほぼ高裁の所在地と同じような形になっております。影響でございますけれども、原告の住所地が、行政庁の所在地または行政処分対象となった特定の場所等から遠く離れているということも考えられまして、それは原告が遠隔地、例えば地方にいるという場合ですとか、逆にコンビニエンス・ストアの場合につきましては、例えば本社が東京にあるというようなことがございますので、このような場合に、当該行政処分について権限を有して訴訟に対応すべき行政庁の者が相当遠方まで出張していくというようなことが必要になってくるかと思います。したがいまして、検討としましては、原告の利便と効率的な訴訟対応のための行政コストを勘案する必要がございまして、検討事項に示されておりますA案とB案を比べますと、主要都市に所在します高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所へ訴えるというA案が望ましいのではないかと考えております。ただ、地域の実情に密接に関係した処分というものにつきましては、関係者や関係機関の協力を得て審理を尽くすという観点からは、例えば先ほどのコンビニの場合のように本社が東京にあるようなケースで、原告の居住地を管轄する裁判所へ提訴を認め得ることが合理的か否かということについて検討を行う必要があるのではないかと思っております。
 次に「第2−1−(3)出訴期間等の教示」でございますが、行政庁が処分する相手に、その相手方に対し出訴期間の制限などを教示しなければならないものとするということでございますけれども、教示を行うことについては問題はないと考えておりますけれども、第三者の範囲等が明確でない場合、どのように教示すればいいのかということで、なかなか難しいことが生じるのではないかと考えております。したがいまして、その教示の対象となる行為ですとか、相手方等について、特に第三者に教示を行うという場合については教示を行うべき第三者の範囲について、明確にする必要があるかと考えております。不服審査前置の定めが適用される場合には、処分時に不服申立ての教示を行うことになりますので、出訴期間等の教示というのは、不服申立てに対する裁決の際に行うことが適当であるというふうに考えております。
 次に「第2−2審理を充実・迅速化させるための方策の整備」でございますが、審理を充実・迅速化させるため、訴訟の早期の段階で処分、または裁決の理由を明らかにするための方策を講ずるということでございます。これにつきましては、処分または裁決の原因となる事実を証する資料一切を提出するということになりますと、第三者に関する情報等も含めて包括的に提出することになりまして、守秘義務との関係で慎重に考える必要があること、このほか、行政上の調査や審査請求事案の審理においては、公になることを想定せずに資料の提出を受けているということが少なくございませんので、資料を一切公開するということになりますと、調査ですとか、審理等に対する協力が得られにくくなるなどの問題があると考えております。例えば、課税処分等に関する資料につきましては、例えば第三者に関する個人情報ですとか、営業上の秘密が記載された文章が多く含まれておりまして、また輸入物品に係る知的財産侵害物品の認定の場合には、その真贋の見分け方等を公表することにより、贋物の精度の向上を招くなど、公益を害する情報がございます。したがいまして、現行の文書提出命令と同様な形で、公務員の職務上の秘密に関する文書で一定の要件を満たすものについては、行政側が記録の提出を拒むことができる旨の規定を置いていただければと考えております。また、記録の提出義務の範囲は、争点の立証に関係の深いものに限定するなど、明確にしていただければと考えております。
 次に「第2−3本案判決前における仮の救済の制度の整備」でございますけれども、これにつきまして、執行停止の要件を必要以上に緩和しまして、暫定的に処分の執行を止めることができるようになる場合、更には、内閣総理大臣の異議の制度を廃止した場合に、例えばその間に納税に誠意を有しない者が差押えの対象となる財産を隠匿したり、あるいは資産凍結の対象となった経済制裁国等への海外送金の停止処分について、訴えの提起により送金が行われてしまうということも考えられますので、こういった場合に公平な課税ですとか、国際協調等、公共の福祉が損なわれるおそれがあると考えております。また、多様な仮の救済方法の整備につきましては、例えば酒類販売やたばこ小売販売の免許につき、不許可処分を受けた者が仮の免許を取得し得たり、輸入禁制品について仮の輸入の許可を取得し得るということになりますと、著しく公益を害するおそれがあると考えております。したがいまして、停止により守られる法益の性質・執行による侵害の大きさ、仮の停止を認めなければならない切迫性の要件が考慮される必要がありますので、執行停止が申し立てられたからといって、直ちに執行停止を認めるということには問題があると考えております。
 また、内閣総理大臣の異議の制度は、事後的な国会報告とも一体となった制度と考えられ、これを廃止する場合には、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある執行停止はできないことを実効的に担保する制度がなくなってしまうのではないかと考えております。
 仮の救済方法の整備に関しましては、処分ごとに検討するべきものと考えております。次の「第2−4−(1)行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」による、救済が認める範囲を拡大すべきということでございますけれども、例えば申告納税制度に基づく課税関係につきましては、申告後の調査を経ないで減額更正を求める義務付け訴訟を提起された場合、納税者の調査協力が得られないと、当局が十分な証拠収集ができませんので、立証を尽くす機会が失われまして、結果として減額更正が認められて、適正・公平な課税の実現を阻害するおそれがあるのではないかと考えております。
 また、行政庁の第三者に対する処分を求めることができることとした場合には、例えば差押財産を取得したい第三者が財産の公売を求める訴えを提起しますと、その財産が例えば納税者におきまして、換価の猶予ですとか、不服申立てが提起されていますと、これは換価制限にかかっておりまして、ただこれを訴訟の上で明らかにするというのは、納税者のプライバシーの侵害ですとか、守秘義務にも反しまして、問題が生じることになります。
 このように公益を損なう可能性や、第三者の権利利益に影響を与える可能性があり、作為の給付を認めるか否かについては、一定の要件が必要だと考えております。また、第三者に対する処分を求める場合に関しては、個々の処分ごとに検討していく必要があるのではないかと考えております。
 「第2−4−(2)行政の行為の差止めを求める訴え」につきまして、救済が認められる範囲を拡大するべきということでございますけれども、例えば滞納処分の差止めを求める訴訟が提起された場合には、これも納税者に対する資産状況等の調査の協力が得られないということになりますと、判決が確定するまでの間、納税に誠意を有しない者が差押え対象となる財産を隠匿することが考えられますので、こういう場合には租税の徴収が不可能となって、課税の公平が損なわれるおそれがあります。行政の行為の差止めは、公益を損なう可能性がありますので、差止めを認めるか否かについては、一定の要件を求める必要があると考えております。
 次の「第2−4−(3)確認の訴え」、その次の「第2−5−(1)行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」につきましては、相手方に対する法的拘束力を有しない行政指導や、専ら行政内部の取扱いの統一性・一貫性を図るための指示の性格を有する通達についてまで個々に訴訟が提起されることになりますと、円滑な行政運営に支障が生じ、ひいては国民に不都合をもたらしかねないということでございますので、原告適格をどうするかというところでよく考えていく必要があるのではないかと考えております。
 「第2−5−(2)取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設」でございますけれども、これにつきましては、これまでの義務付け訴訟ですとか、確認訴訟で述べたような問題が排他性につきましてはございます。また、出訴期間の制限の廃止につきましては、後ほど出訴期間の延長のところで述べたいと思っております。
 「第2−5−(3)裁判所が判決で必要な是正措置を命ずる考え方」についてでございますが、原告がどのような判決主文を求めるかが明確にされませんと、是正措置によりまして第三者がその訴訟を知らないうちに利益が害されるという場合がございますので、第三者の利益を害することのないよう、そういったことを裁判所に求めるのが適当かどうかということを検討する必要があるのではないかと考えております。
 第2−5−(4)取消訴訟の排他性の拡大解釈を防ぐための規定を置くべきだということでございますが、これはこれまで申し上げましたとおり、義務付け訴訟、差止訴訟、確認訴訟で述べたとおりでございます。
 「第2−5−(5)出訴期間の延長」でございますが、例えばたばこの小売販売の許可につきまして、距離基準が設定されておりますけれども、ある業者の許可の取消しを前提に、他の業者に新たな許可をするという場合に、許可の取消処分を受けた業者が訴訟を提起する可能性があるということになりますと、状況によっては新たな許可をするということを躊躇せざるを得ないということも考えられますので、出訴期間が長期に及ぶ場合には、そういった形で国民生活に不便を与える結果になりかねないと思われます。
 また、通関に関しまして、没収した贋ブランド品などの輸入禁制品の廃棄につきましては、実務上出訴期間を勘案して処分しているという状況になっております。したがいまして、出訴期間の大幅な延長につきましては、法律関係の早期確定の重要性や第三者の影響の観点から問題があると考えております。
 「第2−6−(1)原告適格の拡大」でございますけれども、これにつきましては、保護されるべき具体的な権利利益の範囲を明確にせずに、経済上の利益に関係しさえすれば、誰でも訴えることができるということになりますと、例えば既存のたばこ小売店が新規に参入する競業者の小売販売業の許可の取消しを求めて訴えを提起できるようになるなど、営業妨害を目的とした訴えが出てくるのではないかという懸念がございます。したがいまして、経済社会情勢を踏まえ、立法が保護することを予定していない既得権益を保護することにならないか、あるいは、新規参入者の権利利益を不安定にすることにならないかということについて検討する必要があるのではないかと考えております。
 「第2−6−(2)自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定の削除」でございますけれども、これにつきましては、財務省にどういう影響があるかというのは、必ずしも直ちにはわからなかったわけですけれども、こういったことを認めますと、権利利益を濫用しまして、多数の訴訟を提起するものが現れるのではないかという懸念がございますので、そういったことのないように配慮をいただければというふうに思っております。
 「第2−6−(3)団体訴訟の導入」につきましても、濫訴を招くというようなことがないように、歴史的、文化的な遺産、自然環境など回復不可能な価値というものはどういうものなのかということを明確にしていただくということが必要かと考えております。団体訴訟につきましては、当該行政分野において発生する問題の解決に適しているか否かという観点から検討する必要があるというふうに考えております。
 「第2−7−(1)主張・立証責任を行政に負担させること」でございますが、これは税につきましては、そもそも自らの事情について最もよく知る立場にある者自身が、自らの責任において、その内容が適正なものということで申告をすることを前提としている申告制度の下では、行政側よりも原告側がより多くの証拠を保有しているという場合が一般的であるかと考えております。したがいまして、すべて行政側に立証責任を負わせるということには無理があるのではないか。例えば、課税処分において納税者が新たな貸倒損失など、特別な経費の存在を主張して処分の違法性を訴えるような場合や、減額更正を求める者が自己の取引関係等を十分に証明しない場合、あるいは輸入品の知的財産権侵害の有無の認定において、輸入者が海外での正当契約の存在を主張する場合など、証拠を保有している原告側に立証責任があるとしなければ不適当な場合があると考えられます。したがいまして、立証責任につきましては、個々の事案ごとに検討するべきでありまして、一律に行政側に立証責任を負わせるということは適当ではないと考えております。
 「第2−7−(2)処分の理由等の変更の制限」でございますが、まず書面に理由として記載していなかった事項について、記載されている理由に関して、より詳細な説明をしたり、補足を行ったりする場合も含めて、一切主張ができないとするということであれば、それは現実的ではないと考えております。また、課税処分に関する訴訟の場合には、訴訟に入ってから納税者が新たな主張をするという場合がございますので、その場合に原処分時等の理由の変更を認められないことになりますと、納税者の新たな主張に基づいて行った判決で税額を確定するということにもなりかねませんので、そうなりますと適正・公平な課税の実現を阻害するおそれがあるかと思います。処分を受けたものが、新たな主張を行った場合にまで、その理由の変更を一切認めないということであれば、そういうことは問題であると考えております。
 「第2−7−(3)事情判決の制限」につきましては、当省につきましての影響は不明でございます。
 「第2−7−(4)裁量の審査の充実」でございますが、裁量につきましては免許の付与のように一定の基準を定めているような裁量処分がある一方で、例えば危機対応のような場合については、あらゆる事態に柔軟に対応する必要がありますので、予めすべての要素を盛り込んだ基準を設定することは困難な場合があるかと思います。
 したがいまして、裁量処分につきましては、行政府の行為として一定の幅の中で決定されるべきものであって、かつ処分内容を一義的に決定し得るものではないということを踏まえた上で検討していただければと思っております。
 次の「第2−8−(1)訴え提起の手数料の軽減」、その次の「第2−8−(2)弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」につきましては、訴訟制度全体の中で考えるべき問題でございますので、他の訴訟形態との整合性を踏まえて検討する必要があるのではないかと考えております。
 「第2−8−(3)不服審査前置による制約の緩和」でございますけれども、国税、関税等に関して規定されている不服審査前置につきましては、各行政分野の大量・反復性や技術性・専門性等を踏まえて設けられているものでございまして、仮に不服申立てを経なくとも訴訟提起ができることとした場合でも、簡易・迅速な権利救済手続である不服審査制度は、従来と同様の役割を果たしていくものと考えております。検討事項といたしましては、利用者である国民にとっての利便性、大量・反復性や技術性・専門性のある行政分野における不服審査機能の意義及び裁判所の対応能力を踏まえて検討をする必要があると考えております。
 次の「第2−9−(1)行政訴訟の目的規定の新設」と「第2−9−(2)国の公金の支出の適法性を確保するための納税者訴訟の創設」につきましては、当方への影響が定かではございませんので、コメントを控えたいと思います。以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、財務省、幅広いので大変かと思いますが、もし補充的な説明が必要であれば、後ろの方どうぞ、説明者の許可を得て発言していただいて結構ですので、肩越しにやらないでください、一応整理をしてください。
 それでは、どうぞどなたからでも結構でございますから。いろいろありますので、前の方からいきましょう、どうぞ。

【福井(良)委員】4ページの「出訴期間等の教示」のところですけれども、必ず所定の時期までに裁決が行われるということを前提に書いておられると理解してよろしいですか。要するに、裁決が何らかの都合で延びて出ないとか、そういう場合はないという前提ですか。

【説明者(河野業務企画室長)】所定の時期までに裁決が行われないということはございます。

【福井(良)委員】最初の処分のときに不服申立ての教示をするわけですね。裁決のときに訴訟の教示をするという御意見ですね。

【随行者(久米国税庁国税不服審判所審判官)】国税不服審判所の久米でございます。ただいまの質問でございますけれども、当然裁決が出ないという場合がございますので、その折には例えば審査請求がなされてから3か月経過したときに教示するとか、そこの部分についてはまた新たに、裁決のとき以外に教示しなければいけない場合が生ずると考えられます。

【水野委員】7ページの義務付け訴訟と、8ページの差止めを求める訴え、これはいずれも同じようなことが書いてあるのですが、つまり減額更正を求める義務付け訴訟を提起した場合に、調査ができなくなって問題がある。滞納処分の差止めを求める訴訟もそうだという御趣旨ですね。だけど、これは減額更正を求める訴訟ではなくて、今のように更正の請求の取消訴訟をした、それから滞納処分の取消訴訟をした、という場合でどう違いますか。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】国税庁課税部の審理室長でございますけれども、今、減額更正につきまして申し上げますと、ここで書いてあるケースは、減額更正の請求をしないまま、いきなり義務付け訴訟という形で行われるということです。

【水野委員】更正の請求をしない場合ですね。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】まずそれがあった上で、我々の方は調査・審理を行いますので、このプロセスを経ることなく、いきなり訴訟というプロセスに入りますと、我々としては減額更正を求める内容が適正なものかどうか判断する機会も与えられないということになりかねませんので、それが問題であるということを申し上げているわけでございます。

【水野委員】後の滞納処分の場合は。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】国税庁徴収部の深井でございます。差押えの取消訴訟と滞納処分の差止訴訟がどう違うかというお話なのですが、差押えの取消訴訟ですと、既に差押えがされているわけです。これは取消判決があって初めて差押えの効力がなくなるのですが、差押えがされる前に差止訴訟がされると、それ以後、実際差止訴訟がされている間に差押えをすると、これはいかにもおかしいじゃないかという批判を浴びますので、どうしても滞納処分を差し控えざるを得なくなります。そうすると、時効との関係も考えなければいけないのでしょうけれども、どんどん時効が進んで、だんだん長引くと、徴収権の消滅時効が完成してしまって、国庫に入るべき税金が入ってこないということにもなりかねないということを心配しております。

【水野委員】前の議論は、更正の請求の制度を残すという前提であれば問題ないという趣旨ですね。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】更正の請求をしていただきまして、請求のあった内容につきまして十分な調査をした上で、それが適正かどうかというのが確保されれば、その段階において訴訟をしていただくのは、全く我々として問題は生じませんが。

【水野委員】だから、更正の請求を経た上で義務付け訴訟をやることについては何の問題もないと。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】現在の制度におきましては、前置主義がございますけれども、いずれはそういうことになりますので、我々としては申告納税制度の下で十分な資料情報というのをこちらの方に得られている状態が確保されれば、ここで申し上げているような問題というのは生じないと考えております。

【水野委員】不服審査を経ないで、いきなり減額更正を求める義務付け訴訟とか、あるいは税金返せという裁判をやられたら、調査の期間がないので困るという御趣旨ですね。

【塩野座長】一般理論としてあれですか、訴訟が動くと調査権限はその間停止するという理解でよろしいですか。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】法律上停止するというところまでは明確になっておりませんが、現実問題といたしまして、既に訴訟のプロセスに入っている中におきまして、質問検査権を行使して、その方々、あるいはその周辺の方々に対して調査を行うというのは、執行上極めて容易ではないというのが実態であると我々は認識しております。

【塩野座長】そうですか。私はかねてから調査権限は常に残ると。調査権限を行使しないのは職務怠慢だと思っています。

【水野委員】それは一言申し上げます。訴訟が起きてからでも、調査権は出てきます。

【塩野座長】少なくとも学説上の議論としては、通用しないと。

【水野委員】だから、訴訟提起後何年も経った平成15年7月何日付けの供述書とか、そんなのいっぱい出てくるじゃないですか。

【塩野座長】ということもありますので、その前に申し訳ありませんが、5ページのところで、これは各省からのいろいろな御説明もあるのですけれども、情報公開とか、もう一つ個人情報保護法が今度は施行されることになりますと、そちらの方の面から個人情報がごっそり出てきますね。まだ余り出したくないようなものでも請求の対象になりますが、そちらの方との関係はどうお考えになっているのでしょうか、特に税務訴訟。まだ、余りお考えになっていませんか。

【説明者(河野業務企画室長)】そういった情報公開ですとか、個人情報保護の方で請求してもらって、そこで役立ててもらう分にはいいのではないかと思っております。

【塩野座長】そちらで嫌なものも出てきますよ。

【説明者(河野業務企画室長)】それは、情報公開の制度で出すことになっておりますので、その制度に乗って請求してもらえれば、その制度に従って資料を出すという形になります。

【塩野座長】それはおおらかな御返事で、大変結構だと思います。それでよろしいですか。

【説明者(河野業務企画室長)】ただ、個人情報保護法については、これからまだ政令等を定めることになっていますので、そこを見て検討する必要があるかと思います。

【塩野座長】ちょっと気になるところですので、そこはよろしくお願いいたしたいと思います。はい、どうぞ。

【小早川委員】6ページの内閣総理大臣の異議の制度がなくなると、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある執行停止はできないことを実効的に担保する制度がなくなってしまうとお書きいただいておりますが、これは公共の福祉要件を残して裁判所に判断させるのでは、やはりまずいというお考えか、そしてまたそういうことが財務省の所管の行政の中で、具体的に何かおありなのか。

【説明者(河野業務企画室長)】懸念しておりますのは、ここに書いてありますように、経済制裁国への海外送金停止といったことを、国際的に協調するということでやっている場合に、裁判所の方でこの送金についてはやっていいよということが認められますと、国際的に問題になりますので、そういった場合に行政府の長たる内閣総理大臣が、そういったことを止めるような方策が必要ではないのではないかと、あるいはそういうのをやめるのであれば、行政府としてそういったことを止めることができなくなってしまうのではないかという懸念を持っているということでございます。

【小早川委員】勇敢な裁判所が勝手なことをやられては困ると。

【説明者(河野業務企画室長)】こういった制度が最近使われてないというのはよく承知しておりますけれども、ただそういう危機的な事態に対処するときに、全く制度としてなくしてしまっていいのかどうかということでございます。

【塩野座長】外国にはこういう制度はないので、にもかかわらず国際関係は動いていますから、日本だけどうしてこういうのが必要かという点はどうお考えですか。

【説明者(河野業務企画室長)】海外についてはよく承知しておりませんが、要はその後立法府に対する報告を行うこととなっておりますので、三権分立の中でどう考えるかという問題ではないかというふうに思っております。

【塩野座長】私の質問の性質がよくないのかもしれませんけれども、外国は何も内閣総理大臣とかが出てこなくても、別にいろいろやっているものですから、その点もちょっとお考えいただきたいと思います。それから今の6ページのところで、もう一つ、仮の救済の方で、処分ごとに検討するべきであるというのは、処分ごとにそれぞれ仮の救済制度を置けというお考えなのですか。

【説明者(河野業務企画室長)】ここの影響のところで申し上げましたような形のものについて、いきなりこれを認めるということになりますと不都合がございますので、そういった事案ごとに検討するべきもので、一律に仮の救済制度をどうするかということを決めるというのは問題ではないかということです。

【塩野座長】個別法で書けという御主張ですか。

【説明者(河野業務企画室長)】個別法というよりも、むしろ事案ごとに考えるということです。

【塩野座長】事案ごとに対応できるような制度を仕組んでほしいと。

【説明者(河野業務企画室長)】はい、そういうことでございます。

【塩野座長】わかりました。

【水野委員】11ページですが、取消訴訟の排他性と出訴期間の制限を廃止すると行政の円滑な遂行が困難になる、行政行為の相手方始め、関係者の立場を著しく不安定なものになるとおっしゃっているのですが、ここは具体的にどんなことが出てきますでしょうか。

【説明者(河野業務企画室長)】これはここで書いておりますように、義務付け訴訟のところで提起したような影響ですとか、あるいは出訴期間のところに挙げた問題をまとめて書いているという趣旨でございまして、それ以上のものを書いているということではありません。

【水野委員】ですから、行政が困るとおっしゃっているわけですね、円滑・効率的な遂行が困ると。それから、いろいろ不安定になると。財務省の関係で、例えば具体的にこんなケースで困るということを教えていただきたいと思います。

【説明者(河野業務企画室長)】それは14ページの「出訴期間の延長」で書いていますように、免許について新たなものを与えるときに躊躇するといった問題ですとか、そういう形で行政の円滑的な運営に支障が出るということです。

【水野委員】もう一つ、重ねてお尋ねしますと、14ページは、今は3か月ですから、3か月内に裁判を起こしたとしますね。裁判を起こした場合には、新たな免許は付けないのですか。

【説明者(河野業務企画室長)】事例によりますけれども、普通はしないことになるのではないかと思います。新たな免許をその時点で付けますと、不法な状態になる可能性がございますので、そういった訴訟が出ると、そこは新たな免許は出さないということです。

【水野委員】そうすると、訴訟を起こされた場合には、もうまさにおっしゃるとおり、そういう不安定だと。

【説明者(河野業務企画室長)】訴訟が起こされるとそうですけれども、訴訟が起こされなくても、出るかもしれないということで新たな免許を出すことについてちょっと躊躇をしてしまうということです。

【水野委員】だとすると、訴訟が起こればもう出さないのですね。本当にそうですか。訴訟が起きれば3年や5年はかかりますよ。その間出しませんかね。

【随行者(能勢理財局総務課課長補佐)】理財局の能勢と申します。たばこの免許の関係で、今、御質問がございましたので、代わりましてお答えさせていただきます。たばこの免許について通常訴訟を起こされますのは、不許可の方でございまして、そういった方は裁判等を起こされますと、当然そこはたばこの免許というのは既存のたばこ屋さんからのある一定の距離を持ちまして、町場と田舎では若干違うんですが、その距離基準を満たしておれば免許をあげましょうということになっております。したがいまして、訴訟を起こされますのは、たばこの免許を不許可になった方が起こされるわけですから、当然そういった方は裁判を起こされましても、既存店から不許可になられた方というのは距離基準を満たしておらないところにたばこ屋さんをやりたいという御申請があるわけですから、したがいまして通常でしたら。

【水野委員】あなたが出している例を尋ねているわけです。許可の取消処分を受けたと、そうすると例えばその隣で許可申請した人があると、それは距離制限にかかるから新たな処分はできないということでしょう。

【随行者(能勢理財局総務課課長補佐)】微妙なところがございまして、距離基準に引っかからないと。

【水野委員】この人はだめだと、取消理由があるので取消処分を受けたと。

【随行者(能勢理財局総務課課長補佐)】取消しというよりも、免許の不許可処分を。

【水野委員】取消処分と書いてあるじゃないですか。

【随行者(能勢理財局総務課課長補佐)】はい。

【水野委員】Aという業者が取消処分を受けたと、そうすると取消しですから、隣のBという人が申請してきたと。ところが、Aが訴訟を起こすかもわからないから、3か月間はBに許可できないよという御趣旨でおっしゃっているわけですね。ところが、Aが3か月以内に訴訟を起こしたら、訴訟が3年、5年かかるじゃないですか。その間はBには絶対許可を下ろさないんですかということです。

【随行者(能勢理財局総務課課長補佐)】そういうことはないと思います。

【水野委員】そうでしょう。それは一緒じゃないですかということです。だから、そういう意味では説得力ないじゃないですかということを申し上げているのです。まあいいです。だから、11ページの行政の円滑・効率的な遂行が困難になるとか、行政行為の相手方をはじめ、関係者の立場を著しく不安定なものとするおそれがあるということについては、具体的にどういうふうに困るというのが、もう一つ行政官庁からのヒアリングであまり出てこないのですね。
 もう一つ、出訴期間の14ページですが、Bの方で大幅な延長は問題点があるという御趣旨ですね。そうすると、小幅な延長ならいいじゃないかということだと思うのですけれども、今の3か月から、これは困るという大幅な延長というのは、大体どれぐらいだと考えておられますか。

【説明者(河野業務企画室長)】そこはちょっと。

【水野委員】例えば、1年とかどうですか。

【説明者(河野業務企画室長)】そこはいろいろ議論があったところですが、期間は連続的なものですから、ここまでならいい、ここまでなら悪いと期間を区切って答えるのは、なかなか難しゅうございます。

【水野委員】大幅なということをあなたの方で書いておられるから、大幅なというのはどれぐらいのことをイメージしているのか。

【説明者(河野業務企画室長)】部内の議論では、1年についてどうしても困るという特段の異論は出ておりませんでした。

【水野委員】わかりました。

【塩野座長】今の関係であれですけれども、事務処理との関係で出訴期間内である場合と、それから出訴期間が終わったということになると、書類の管理や何かは変わってくるのですか。そこはどういうふうになっているんですか。

【説明者(河野業務企画室長)】法律で決まっておりますものは、その期間保存することになります。また、情報公開法の関係で、この書類につきましては何年間保存するという規定がございますので、それに従って処理をしているということでございます。出訴期間が変わってきますと、そこの辺りをどうするかというのはまた考えなくてはいけなことが出てくるかもしれませんけれども、現在は情報公開法の関係でそれぞれの書類の保存年限を決めているということです。

【塩野座長】国税局の関係では、常に大量処分性と専門性が問題になるのですが、それとの関係で出訴期間について、国税はこういう事情があるというようなお話は内部でしておられますか。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】国税について若干申し上げますと、一部研究会の議論におきまして、除斥期間との関係で考えたらどうかという議論があったというふうに承っております。ただ、若干出訴期間と除斥期間は異なりますのは、出訴期間の始まるところは、通常であれば課税処分後に異議申立てを行い、不服審判所の裁決が出た後の3か月ということでございます。一方、除斥期間というのは申告が行われてから3年とか7年とか決まっているわけでございますので、ちょっと土俵が違うということはございます。そこはそういった2つの異なる制度を、同じ形で捉えるとやや我々としては混乱してしまうという感じがございました。以上です。

【塩野座長】では、ちょっと立ち入ったことを伺いますが、我々の方ではA案からC案まで出しているのですけれども、検討の主な事項の23ページのところです。これについて、何か御意見があって、これは困ると。現状維持ならば現状維持ということでも、また1つの説明かと思います。そのときに、国税の場合はこういう理由がある、あるいは別のたばこの営業免許のような場合はこうだ、というようなことで多少議論されたのでしょうか。

【説明者(河野業務企画室長)】議論はしておりましたけれども、必ずしも詰まっておりません。

【塩野座長】そうですか。最後になって、財務はここはどうしても承服できないなんていうことを言ってももう、それこそ時機に遅れた抗弁になりますので、適時適切に。というのは、我々は何も自分の意見をこのまま推し進めるということではなくて、できるだけ的確な情報をいただきたいということなのです。ですから、この出訴期間の点でも、国税はこういう理由があるということ、あるいはおよそ一般的に行政処分はこういうことが重要だというふうに、かつての大蔵省のように、日本の全官庁を背負っているような立場から、およそ行政処分とは、というような議論でも結構ですから、我々が今まで気付かなかった論点を出していただくと大変ありがたいと思います。

【説明者(河野業務企画室長)】この案につきましては、どの案で困るといった意見は省内から出ておりませんけれども、ただここに書いておりますように、関税につきまして贋ブランドの場合廃棄を今、3か月置いておりますので、またどうするかというような問題は出てくるかと思います。

【水野委員】例えば、1年ということについては、特に部内では異論がなかったということで、それはもう一つ言うと、今、異議申立てが60日ですね。これは前置ですから60日間出訴期間みたいなものなんですね。これについても1年ぐらいだったら延長してもいいという御趣旨ですか。つまり異議申立期間がですね。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】基本的に、今、水野委員の方から具体的に1年ならば大丈夫とか、そういった形、どの期間であれば我々が対応できないとかいう議論に関しましては、我々としても定量的な議論というのは非常に難しかったところでございます。ただ、幾つか問題となるものはございまして、先ほどの原告適格の拡大であるとか、あるいは後ほど出てまいりますけれども、現在租税訟務におきましては、いわゆる総額主義という形で争われているのがほとんどでございますけれども、例えば争点主義というような形になりますと、訴訟期間がどんどん延びていくと、また新たな訴訟を起こされるということになります。そして、1つの訴訟が終わったタイミングで、たまたま除斥期間が切れてしまい、したがってもう更正処分が打てなくなるというような事態もございますので、ある意味でこちらの行政訴訟手続全体の改革の中で、そういった適正な課税を確保する観点から、必要なる手当を是非御配慮いただきたいと、そういった議論は部内でいたしました。けれども、今、委員の方からお話ありました、1つの期間を捉えてこれをどこまで延ばしたら支障が生じるとか、そういうような議論というのは我々の方も具体的に行っておりません。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】国税の徴収の立場から、出訴期間について若干申し上げさせていただきますと、国税徴収の流れというのは、督促があって差押えをして、公売公告をして、売却決定をして、換価代金の受入れをして、配当という手続でずっと流れていくわけなのですが、差押えをしても、実務上は今の異議申立期間内は公売にかけることはなく、仮に債権の差押えでも、すぐに履行期限、取り立てられる期限が来ても、一応ある程度の期間、不服申立てが出るかどうかという様子を見守っております。そういう意味で、実際に不服申立ての利益を奪うことのないように配慮はしているのですが、これが出訴期間を延長したときに、待つ時間というのがどうしても長くならざるを得ないのですけれども、財産によっては段々と価値が減価する、あるいは陳腐化するといったようなものもありますので、その辺を考えると国税徴収の立場から、6か月程度にしていただければありがたいなというふうに。

【水野委員】それは今のたばこの小売りの議論と同じなんで、まず異議申立てが出た、訴訟が出たという場合には、ずっと最後まで公売手続を進めないかといったら、そんなことはないじゃないですか。つまり公売手続はどんどん進むわけで、最後の換価の制限だけがあるだけでしょう。ですから、現実にはそれでやっておられるわけだから、今の議論は反論にはならないと思います。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】換価制限は働いていますので、それまでずっとやっていっても、無に期する可能性が高いとなれば、それは実際にムダな手続をやらないということになります。

【水野委員】だけど、手続は進めるでしょう。それは60日だけ待って、異議の申立てが出れば後もずっとやりませんというんだったらわかりますよ。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】深井課長補佐)実務上やっていません。

【水野委員】だって、手続は進めるでしょう。異議の申立てが出たら、まず差押えしませんか。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】深井課長補佐)差押えはともかく、差押えに対する異議の申立てが出た場合には、公売手続ができません。

【水野委員】だから、制限があるのは、最後の換価だけでしょう。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】深井課長補佐)法律はそうなっています。

【水野委員】だから、手続は現に進めているじゃないですか。

【随行者(深井国税庁徴収部課長補佐)】深井課長補佐)いや、それはやっていません。

【水野委員】そうですか。

【塩野座長】それは水掛け論ですので、いつまでも議論しても仕方ありません。他の方に進みましょう。

【芝池委員】24ページになりますが、Aのところで書いておられることは、要するに、不服申立前置はなくなっても差し支えがないということでしょうか。

【随行者(久米国税庁国税不服審判所審判官)】再び審判所の久米でございます。おっしゃるとおり、ここの意見書で触れてあるとおり、国税に関して記述されている不服審査前置は、大量・反復性、技術・専門性を踏まえて設けられているものであり、仮に不服申立てを経なくても、訴訟提起ができることとしていた場合でも、簡易・迅速な権利救済の手続である不服審査制度は、従来と同様の役割を果たしていくものと考えており、現在のところ特に目立って困る点が生じるとは考えてございません。しかし、2番目でいずれにせよ、我々国税不服審判所だけの立場でものを申すわけにもいきませんし、利用者である国民にとっての利便性、あるいは不服審査機能の意義、それからこれも大きいと思いますけれども、裁判所の対応能力、こういうものを踏まえて検討する必要があるとは考えております。

【芝池委員】だから、2のところはそうなのですけれども、1のところで書いておられるのは、仮にという文章のところですが、これは不服申立前置義務、前置強制がなくなっても。

【随行者(久米国税庁国税不服審判所審判官)】仮に不服前置がなくなってもということでございます。

【塩野座長】今のところの関係でちょっと気が付いたところを申し上げますと、不服審査前置は個別法の問題ですから、これは個別法で出てまいります。そうすると、国税の方ではやめても差し支えないということであれば、他の制度がどうなっているかというのは無関係に、これは先ほど芝池委員が指摘されたように、不服審査前置を廃止しても構わないと、そういうことになりますが。

【随行者(久米国税庁国税不服審判所審判官)】ただ、これは専ら一般的に行政訴訟検討会で検討している事項でございまして、国税の部分だけ、そもそも不服審査の話でございますので、そこを国税だけに限って個別法なり何なりを手当することについては、今のところ余り考えてございません。むしろ、不服申立前置はいろいろ他省庁ともあると思いますので。

【塩野座長】わかりました。あまり言葉尻を捉えるつもりはありませんけれども、このままだと芝池委員のような疑問が出てくるし、他省庁を見ながら不服審査前置を考えるというのもいささか問題があるというふうに思いました。

【小早川委員】国税の方から御覧になって、あるいはここで言っているように裁判所の対応能力ということまで視野に入れて考えてということかもしれませんが、不服審査前置に何らかのメリットはある、しかし、なくしても何とかやっていけますよというのが①の方の御趣旨なんでしょうか。もしそうだとすれば、不服審判所のパフォーマンスがいいのであれば利用者は裁判所よりまずそちらへ行くだろうということが考えられるわけですが、それとは別に前置強制をやはりした方がいいという一番の理由は何だろうか。
 これは、他との横並びというよりは、国税は不服審査前置の最大の大物ですから、ここで頑張っていただかないと、他は頑張れないと思います。

【随行者(久米国税庁国税不服審判所審判官)】横並びというのはちょっと、私はそういう意味で申し上げたわけでもございませんし、具体的に法律となればどうなるかということをちょっと考えただけでございまして、他省横並びでということではございません。不服申立制度が国民にとって十分に魅力のあるものであれば、例えば自由選択主義をとっても、何ら弊害は生じないという考え方は傾聴に値すると考えております。ただし、国税という行政分野において、大量・反復性や技術・専門性という不服審査前置を設ける意義が従来よりあったことは、おそらく争いのないところだと思います。ですから、これを取るというのは、一種の社会的実験になるだろうと思います。また、現在においても審査請求がなされたときから、3か月を経過すれば、裁決を経ずして訴訟提起できることから、現状においても納税者が訴訟提起する権利を不当に制限する仕組みにはなっていないと言えるのではなかろうかと思います。だから、むしろ不服申立前置が今まで置かれていたというのは、それだけ我が国税不服審判所が、それだけの働きぶりがあったということだと思います。

【塩野座長】わかりました。いずれにせよ、先ほどおっしゃったように、行訴法の中では自由選択肢を取っていて、あとは個別法の問題になるというのが今までのあれですので、あなた方の守備範囲ではないでしょうというふうに口走られると、それはそのとおりだと思いますけれども、しかしやはり効果的な権利救済ということの全体のスキームの中で、この不服審査前置というのは、非常に重要な問題ですので、我々としても何とかこの点は必要があると思っております。その点で資料を提供していただいたということですが、どうぞ。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】今、審判所の方から話がございましたが、むしろ私は課税部ですので課税方サイドから申し上げますと、やはり税務につきましては、大量・反復性、専門性、これは座長の方からもお言葉がございましたけれども、そういった極めて大きな特殊性がございますので、課税の公平であるとか、またできるだけ一律な、適正な税務執行を行う観点から結論が非常に早い形で出てきていただけることが、税務行政の安定性の観点から極めて望ましい、また公平・適正な課税の観点からも望ましいと思っておりますので、前置主義の如何を問わず、今、申し上げましたように、早期に確定がなされると、そういった安定した状態というのが我々にとって、課税庁サイドからすると極めて望ましいということだけ一言付け加えさせていただきたいと存じます。

【小早川委員】大量・反復ということが、今言われた、公平性・統一性を確保する必要があるんだとおっしゃるのか、それとも裁判所が迷惑するでしょうということなのか、そこはどうですか。

【随行者(上斗米国税庁課税部審理室長)】課税庁サイド、まさに課税するサイドから申し上げれば、それは場所の問題ではなくて、そういった状態が早期に確保されると、これが極めて重要な問題であると考えております。

【塩野座長】どうもありがとうございました。他に何かございますか。それでは、ちょっと時間が超過して申し訳ありませんでしたが、いろいろどうもありがとうございました。

【人事院】

【塩野座長】それでは、最後になりましたが、人事院からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、石川善朗総務局企画法制課長、それから、井原文孝公平審査局調整課長でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。

【説明者(石川企画法制課長)】石川でございます。座って御説明申し上げます。人事院でございますが、これは御案内のように国家公務員法に基づきまして設置されております、独立の第三者機関ということで、国家公務員法が公務の民主的かつ能率的な運営を保障するということを目的として定められているものでございまして、その3条で任免、分限、懲戒、苦情の処理、その他職員に関する人事行政の公正の確保と職員の利益の保護のために設けられているという位置づけにございます。そのことから、人事院規則の定立ということと、不利益処分に対する審査、準司法的な機能を持っているという位置づけでございます。
 人事につきましては、他の行政とちょっと違うなということだけ申し上げますと、1つのところが空きましたときにはそこのところに、例えば私が何か違反があれば、私のところに誰かがはまって公務を遂行していくという形になりまして、そうしますとそれが数珠つなぎのようになることが多くございます。したがいまして、いないということになりますと、公務がなかなかうまくいかないということになりますと、この公務を早期に安定させるということがやはり大事なことになるということになります。そういった特別な事情がまずございます。特に留意していただきたい、1ページから申し上げますと、これが「第2−1−(3)出訴期間等の教示」ということで、国公法の89条で既に教示制度を設けてございまして、最初のフレーズのところに、職員に対して、その意に反して、降給、降任、休職、免職、その他著しく不利益な処分を行いということで、その職員に対しまして処分説明書というようなものを交付いたしまして、その中で申立期間などを記載するとなっております。この降給とか、降任とか、これは非常にわかりやすいのですが、あと職員が著しく不利益な処分を受けたとき、こういう場合につきましては、今度は職員の方から処分説明書の交付を請求することができるということになっておりまして、この場合の処分説明書は今、申し上げたようなものを記載するという形になっております。こういうふうになっておりまして、では人事という、そういう言い方が適当かどうかわかりませんが、自分の評価は割と人事というのは高いわけでして、自分の場合も他より優秀ではないかと思ってしまうケースが割と、同僚なんかと話していると多い。そうしますと、客観的にそうだと思っても自分は不満だというようなこともあるわけでございまして、そういうことになりますと、不満ということで不利益だというようなことについなってしまうということがございます。それで、ここのところで各府省がということで書いてございますが、不必要な疑念を抱くことにもなりかねない。要は、人事行政というのは信頼関係が重要なものですから、そこのところでそういった教示制度、例えば私がどこか違う課長に行くということになったときに、必ず教示制度でそういったような不服申立期間とか、そういうことをやるということになりますと、むしろ信頼関係を損なってしまうのではないかというようなことで、ここには説明してございます。それが第1点でございます。
 それから2ページ目、「第2−2審理を充実・迅速化させるための方策の準備」ということで、これは裁決に関する記録の中ということになりますと、個人に関する情報、私生活情報とか、公務員が職務上知り得た秘密に関する情報等も含まれてしまいますので、プライバシーとか守秘義務との観点から問題ではないかということで、こういった文書につきましては、Bのところにありますが、提出を拒むことができるというふうにしていただきたいということでございます。
 3ページ目でございますが、「第2−3本案判決前における仮の救済の制度の整備」ということでございます。この場合、例えばということでありまして、分限処分ということで、例えば心身の故障のために職務を遂行できないということで免職処分になるというような場合に、いやできるということで、免職処分の執行の停止を行うというようなことになりますと、非常に公務の能率的運営が阻害されるのではないかという恐れがあるということを申し上げておりまして、一旦免職処分になりますと、ではそこのところに誰かをはめるという話になりますが、そうしますと、では後任者はどういうふうになるのかと、執行停止になった場合に2人になってしまうのかというような話でございまして、これは玉突き人事が多くございますので、1人の人がここで止まって、そうすると前の人はどうなるのかという話になって、その人は宙に浮いたままで、という考え方もあるかもしれませんが、そういったことになりますと公務の遂行上うまくないのではないかということが最初のところに書いてございます。
 また、懲戒免職処分ということになりますと、例えば破廉恥な行為をして、懲戒免職処分になったという方が執行停止ということになりますと、ここに書いてございますように、公務員関係の秩序維持という意味で、なぜこんなようなことをした人がまだいられるのかということになりまして、非常に問題ではないかと考えております。
 4ページ目でございますが、「第2−5−(2)取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設」ということですが、出訴期間による制限を設けないというふうにするということですが、これは今、申し上げているように、公務員を不安定な状態に置くのではないかということで、人事というのは重なっていくものでございますので、いつまでもそれが争えるという状態にしておくのはうまくないというようなことで書いてございます。
 それから5ページ目でございますが、「第2−6−(1)原告適格の拡大」でございます。原告適格につきましては、ここのBのところで書いてございますが、(1)で職員に対する不利益処分は一身専属的性質を有するということでございますので、同僚とかそういったところが原告適格を認めるという実益がないのではないかということ。それから、そういったことを認めますと、濫訴といいますか、そうなってしまいまして、公務の執行に影響があるのではないかということがここに書いてございます。
 6ページでございますが、「第2−8−(3)不服審査前置による制約の緩和」ということで、不服審査はいいのではないかということで、そのまま訴訟に行くというようなことですが、この2行目にも書いてございますが、人事院が人事行政の専門機関としてやるということが、合理的、かつ公正な判断を行える立場にあるのだということがまず第1点ですが、2番目としましては、判断の統一性を図ることができる。それから、人事院は専門性がある機関でございますので、簡易迅速な手続によって被処分者の救済を図ることができる、こういったメリットもある。それから、専門機関の前置ということでございますが、訴訟経済面からも有利であるというようなことを書いてございます。以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、委員の方からの御質問を承りましょう。どうぞどなたからでも結構です。ちょっと大雑把な質問で申し訳ないですが、今の人事の問題は民間企業でもあるわけですね。民間企業だってそれぞれ玉突きみたいにくることがあり得るのですけれども、公務員の場合、あるいは公務員法制の場合には、民間企業と比較して、こういう点で制度上今の民間のようなことが起こるのは具合が悪いという御説明はなかったと思いますが、そこはどういうふうにお考えなのでしょうか。

【説明者(井原調整課長)】確かに民間の人事にもあるかと思うのですけれども、公務員の場合はそのポストにいる者が、やはり何らかの意味での権力的な関係というか、仕事と言うのでしょうか、国民の皆さんにいろいろ影響を与える行為を行えるわけですから、端的に言いますと、ある何らかの権限を持っているポストに誰が就いているのか、2人就いているのか就いていないのかと、そういった状況が生ずるというのは、非常にまずいということだと思います。ですから、先ほど石川の方から御説明しましたように、例えば仮処分のようなことを考えたときに、あるポストに2人の人間が就いていると、どちらの命令が正しいのか、あるいは処分が正しいのかといったような、これは非常に一般的な心配と言えば心配なのですけれども、そういう関係にできるだけ陥らないように、短い期間で確定させていくということがやはり必要なのではないかと思います。

【塩野座長】1ポストに2人ということは、制度上はあり得るわけですか。昔、水産庁長官が2人いた時代がありましたけれども。

【説明者(井原調整課長)】普通はありませんね。

【塩野座長】ないという前提で議論をしておられるということですね。どうもありがとうございました。

【水野委員】今、座長がおっしゃった点が、まさに問題点だと思います。つまり民間でも同じことがあるわけです。そのときに、行政だけ特に違うと言えるのかどうかという問題で、この3ページの仮の救済のところで、いろいろと書いておられるのですけれども、これはまさに民間でも同じことが起きるのです。もしも分限とか懲戒処分が正しければ、確かに困るということになるのです。だから、これは民間と一緒。ところが、これ逆に、処分が間違っていると、違法であると、裁判所によって1年後に審理した結果取り消されるという事態だってあり得るわけですから、人事院はどちらかというと個人の公務員の味方の役所ですから、違法な処分がなされたときには、その人の立場を最大限守らなければいけないという立場です。そうしますと、これ発想を変えまして、2つ書いてあるこのケースで、処分が違法だという場合、1年後に裁判所で取り消されるという場合を考えたときに、どうしたらいいと思われますか。

【説明者(井原調整課長)】万が一違法な処分であったということであれば、それは勿論人事院ができる限り早く取り消すか、あるいは裁判所ができる限り早く取り消すことによって、元に戻すということになるかと思います。

【水野委員】ただ、被処分者の公務員の立場からすると、やはり仮の救済という制度が適用されないと困るということになりませんか。

【説明者(井原調整課長)】そこはやはり任命権者という、人事に責任を持つ人が、彼はこういう非違行為があったという判断をしているわけですから、それを一応どちらを取るかということなんですけれども。

【水野委員】だから、間違った場合という前提で話しているのです。間違えるという場合があり得るわけですから。

【説明者(井原調整課長)】ですから、間違っている場合は、済みません繰り返しになりますが、できるだけ早くそのことを見付けて、指摘して、修正させるというところが限度ではないかと思います。

【水野委員】それだけではやはり救済としては不十分なので、だから裁判所もどの場合だって全部出すわけじゃないわけです。民間会社の労働事件だって、どんな場合だって地位を回復するわけではない。やはり本案で勝てるという見込みがあって、初めて出るわけですね。だから、やはり両方あり得るわけで、どうも処分は正しいというケースについて、これは出ない。しかし、どうも処分が間違っていると、現に1年後に取り消されるというケースを想定しますと、やはりそういう仮の救済という制度がないと、その当該公務員にとってはたまったもんじゃないということにならないでしょうか。

【説明者(井原調整課長)】ですから、人事の場合にどういう状況があるかというのは、わかりにくいかと思うんですけれども、むしろそういう状況にあればもう取り消せる状況ではないかと思うんですけれども、つまり怪しいと、その任命権者がやったことがどうも怪しいと、しかしまだ確定させるには事実調査をしなければいけないという状況というのが、果たしてあるのかなと。結局は行為があったかなかったか、あるいはその行為が非常に違法なものなのかどうなのか、非違行為として見るべきなのかという、そこら辺の判断の話になってきますので、それについてはやはり人事権者の判断というのをまずは尊重せざるを得ないのではないかと、それが公務員法の世界じゃないかと。

【塩野座長】そこは、私が説明する必要ないと思うのですけれども、公権力の行使に当たって、その人がもし何か不始末を起こしたとすると、任命権者の責任になると、裁判所の責任は取れない状況だという、そういった問題もあろうかと思いますので、その辺はしかし水野委員の質問に的確に答えるように、いろいろ考えていただきたいと思います。

【市村委員】2ページのところで、迅速化の関係での開示の場合に不利益処分の不服申立てを行った者等の個人に関する情報、公務員が職務上知り得た秘密に関する情報等も含まれることから例外が認められないとすると、プライバシー、守秘義務等の点から問題となるという御指摘がございました。ここでいうプライバシーというのは、やはり中心的なものというのは、その不服申立てを行った者、当該人のプライバシーというものでしょうか。

【説明者(井原調整課長)】そうですね。それは一応議論になって、証拠の面でもその辺りについての情報が一番たくさん多くございますから、それが中心でございます。ただ、勿論証拠の中には申立人だけではなくて、第三者の情報も入ってまいります。

【市村委員】そうしますと、例えばこうした制度の中に、本人の方から、同意のようなもの、その了承を取るというようなものを仕組んだ場合には、この辺は大幅に解決してしまうと考えてよろしいでしょうか。

【説明者(井原調整課長)】プライバシーということだけを見るとそうかもしれませんね。

【市村委員】おそらくそういうことになると思うのですが、そうすると、例えば次に考えなければいけない問題というのは、どういう点でしょうか。つまりこうした事件の核心というのは、自分がどういう基礎的な事実を認定されて処分されたかというところに非常に関心があって、訴訟でもそういうことが中心になります。そうすると、むしろどんな認識を持って、あるいはどんなふうな情報があって自分にこういう判断が下されたのかということが大前提になろうかと思うのですが、本来ならそういう当事者は、そういうことがないと主張するのが普通ですから、あるいはその評価が著しくおかしいと、そういうふうな争い方になるのが通常なものですから、むしろそこら辺が全部出てきてしまった方が、原告にとってもすっきりするはずだということが多いわけですね。そうしたやり方をするときには、本人が同意していれば出してしまう方がいいのではないかとも考えがちですが、そうすると行政にとっては、例えばニュースソースの点とか、そういう点で次から困るとか、そういうものがあったらそういう点を具体的に教えていただければと思います。

【説明者(井原調整課長)】この問題は、私のまさに裁決に出てきている記録ですので、人事院がまさに原処分について審査請求を受けて、裁決を出しているときの証拠の話ではあるのです。ですから、通常であればAさんが人事院で証言しているわけですから、それは裁判所では証言しないという理由は普通は考えらないのです。ただ、それを私どもが、まさに私どもから見れば裁判所がそういう状況があるんだから、Aさんに証言を求めればいいのであって、人事院をそういうプライバシーの問題、あるいは守秘義務に関わる問題を、できるだけ早く確定した方がいいからという理由で、あるいは理由だけで、持っているものをごそっとまず裁判所が見てしまうという制度はちょっとどうなのかなという感じがしております。やはりあくまでも、Aさんは人事院で証言してもいいと思って証言したわけですから、裁判所の方からAさんに証言をさせればそれで済みますし、まさにこのプライバシーの問題も起こりませんし、職務上知り得た秘密の問題についても、それぞれの省庁が裁判所にこれはこの問題を解決するために、しゃべってもいいかなと考えたらしゃべるわけですから、そういう形で処理、要するに、本来のパターンで処理すればいいのではないかなという気がしておるんです。人事院から、持っているものをごそっとまずもらうという便法をあえてつくらなくてもいい、あるいはこういうプライバシーの問題、守秘義務の問題があるのに、制度として仕組むまではしない方がいいのではないかと感じているのでございますが、如何でございましょうか。

【芝池委員】5ページの「原告適格の拡大」のところですけれども、ここで原告適格の拡大について消極的な意見を述べておられるのですね。この検討会で、原告適格の拡大という場合問題になりますのは、処分の相手方以外の第三者なのです。ところが、公務員事件の場合、第三者がある公務員に対する処分を争うということはあるのでしょうか。家族というのは考えられないことはないのですけれども、それ以外。

【説明者(井原調整課長)】率直にいいますと、余り考えられないという気がします。ですから、関係ないじゃないかというのがあるのかもしれませんが、ただもし心配することがあるとすれば、そこまで検討されている中で範疇に入ってくるのかどうかわからないのですが、処分が軽過ぎるというような訴えを認めるのだとすれば、これはかなり問題と言いますか、別の問題になってくると。

【芝池委員】そうすると、例えば納税者としての立場でのということですね。

【説明者(井原調整課長)】この場合は、処分は非違行為を問題にしますので、例えば同僚を殴ったと、そうするとそれに対して減給だったけれども、それはけしからんという議論はあると思うのですが、それは認めるべきではないと思います。この国家公務員の制度は、やはりあくまでも職員の保護のための制度でございますし、今の例で言いますと、本人が減給が不満であるということで訴えるのは、それは受け止めるべきだと思いますが、第三者であるとか、あるいは国民の方からそういうことを受けるという仕組みは、今の制度を根底から覆してしまうということになると思います。

【小早川委員】先ほどの市村委員とのやり取りの、裁決に関する記録の問題なんですけれども、先ほどの御答弁は、裁判所で調べることは裁判所でやればいい。人事院は人事院として、裁判所とは別の空間をつくって、そこで人事行政上望ましい審理のやり方を自由にやり、証人もそういう雰囲気の中で証言をすることがいいという御趣旨だったと思うのですが、ですからそこは国家公務員法は実質的証拠法則を取ってないから、これが独禁法ですと、むしろ公正取引委員会の事実認定を裁判所が尊重するためにこそ、公正取引委員会の審決の記録を全部もっていくわけです。それでもって審理をするわけです。方向が全く逆だという感じがするのですが、人事院の場合にはむしろ裁判所はもう人事院の審理とは別に自前で審理をして、それで全然違った事実認定をしてもそれはいいですよという、そういうお考えかと思うのですが。

【説明者(井原調整課長)】人事院が責任を持ってやったものが、違う認定をされるとは思いませんが、ただ事柄の性格といたしましては、おそらく公正取引委員会などと違うのは、公正取引委員会の場合はひょっとすると公正取引委員会の判断を第一義的に見て、それを裁判所が審査をするという仕組みなのかもしれないのですが、人事院の処分の場合は、一番よく知っているといいますか、あるいは非違行為についての証明ができるのは、やはり処分者、各省の長なのです。ですから、やはりあくまでも原処分主義というのか、裁判においても裁判所がその処分者に証明をさせて判断していくという仕組みが今とられているし、それはそれで1つの妥当な制度なのかなという気がしております。勿論人事院の判断を裁判所が判断するというのも、1つの立法論としてはあろうかとは思いますが、かえって現行の仕組みを変える必要はないかなという気がします。

【小早川委員】私、昔、労働委員会にいたときに、労働委員会はむしろ自分たちは、今ので言えば人事院風ではなくて、公正取引委員会風になりたいと、そういうふうに裁判所に扱ってもらいたいという雰囲気だったものですから。

【福井(秀)委員】今の論点なんですが、要するに裁判所で独自に認定した方がいいという結論はわかるのですが、なぜそうすべきかということは、先ほどの市村委員の質問に戻りますが、結局処分された人のプライバシーなり秘密ということが主たる理由なわけですね。

【説明者(井原調整課長)】そうですね。

【福井(秀)委員】だとすると、まさに市村委員が言ったように、その人が合意しているときに守るべき価値というのは消滅するわけですから、それでなおかつ何に、一体だれが支障を感じるのかというのがよくわからないのですけれども。

【説明者(井原調整課長)】まさにその人、申立人だけの問題であればそうだと思うのですけれども。先ほども言いましたように、人事院が持っておる資料、証拠というのは、申立人だけではなくて、他の方々の。

【福井(秀)委員】他の方々の秘密が確保されていてれば、逆に言えば本人のプライバシーや秘密に関する部分は同意があれば要らないわけでしょう。隠す必要はないわけでしょう。

【説明者(井原調整課長)】それはそうかと思うのですが、その場合に同意という仕組みをつくるのか、おそらく裁判所が先ほどAさんと言いましたけれども、Aさんの証言を求めれば済むのではないかというような気がしますが。

【福井(秀)委員】それは別に人事院に心配していただく必要はなくて、要するに現実に何か同意があって出すことに、人事行政の上で支障があるのかどうかということを端的に教えてほしいのです。

【説明者(井原調整課長)】プライバシーの観点だけから言うと、先ほど言ったようにないかもしれませんが、ただここにありますように、守秘義務の問題も実はございますので、その両方を考えますと。

【福井(秀)委員】守秘義務というのは、例えばどういう場合ですか。

【説明者(井原調整課長)】それは各省の秘密に関わるものもありますので、例えば各省の電話の記録などのようなものも、私どもの方に出てまいりますので、それをやはりぼろっと出すかどうかというのは、あくまでも各省の判断で、それはやはり裁判所から各省に聞いていただいて。

【福井(秀)委員】もう一回整理しますが、本人の処分された人にとっての秘密なりプライバシーの領域以外のところは、それはそれで配慮するという前提でお答えいただきたいのですが、その場合に本人に関することのみのプライバシーや秘密に関して、本人が了解しているときにそれが裁判所に当然に出ていくことに関して、人事行政の上で具体的な支障はあるのですかということです。

【説明者(井原調整課長)】ただいまの非常に限定された条件であれば、今すぐそれはまずいというのは思い付きません。

【塩野座長】わかりました。私もかねて不服審査のことで、原処分主義について疑問があるのですが、人事院として裁決主義をやってみようかというお気持ちはないのですか。これからだんだん公務員法制がいろいろ問題になっているときに、不服審査は俺のところだということで頑張る気概はないのですか。

【説明者(井原調整課長)】内部の議論としては、ないわけでもないのですが、ただ先ほど言いましたように、人事ですので、やはりかなり裁量に関わる部分の判断、人事行政に関わる部分ですので、やはりその処分が正しい、行われている現状の状況が正しいのかどうかということを、誰から裁判所に対して主張させるのが適当かということを考えると、仮に裁決を経たとしても、やはり原処分庁にやらせる方が、ある意味で論点も明確になりますし。

【塩野座長】そうすると、不服審査前置は要らないと。

【説明者(井原調整課長)】そういう議論になってしまうと困るのですけれども。この不服審査前置の関係で申しますと、やはり人事院も勿論人事行政の1つの専門家として、第三者機関として、あるいは不当性の判断まで議論できるということで仕組みとしてはありますので、3か月経てば裁判の方にいけるという規定等も併せて考えれば、まずそこに私どもの方に来ていただいて審査していただくのが、非常に適当ではないかと考えております。

【塩野座長】どうもありがとうございました。どうぞ、最後の質問にいたします。

【芝池委員】最後のページの最後の2行なのですが、不服審査前置を課していることによって職員に特段の不利益を強いていることはないものと考えるというふうに書いておられるのですけれども、これは何か根拠があっての話でしょうか。

【説明者(井原調整課長)】一応ここで書きましたのは、仮に私どもが非常に長くとどめておいたときに、問題が起こるかもしれないけれども、そんなことはありませんと、規定として3か月を経過して裁決がないときには、提起することができるのでという規定がありますので、人事院の方に経由してもらうことが特段の不利益を強いているのではないという趣旨で書いております。

【芝池委員】それは推測ということですね。もうちょっと強い根拠がありますか。

【説明者(井原調整課長)】推測というか、少なくとも私どもの方に来たくないと、すぐ裁判に行きたいのだけれどもという声は聞いたことはありません。

【芝池委員】私はそういうふうには受け取っているんですけれども、一般に。何か確たる根拠があれば教えていただきたいと思ったんです。

【塩野座長】どうもありがとうございました。人事院の方、お待たせした上で、時間が経過して失礼をいたしました。今日はどうもありがとうございました。それから、委員の皆様方も所定の時間をちょっと超えた長時間、どうもありがとうございました。
 明日は、10時からですので、恐縮でございますがよろしくお願いいたします。