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行政訴訟検討会(第21回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成15年7月25日(金) 10:00〜18:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)
(説明者) 大海寺安(防衛庁長官官房政策評価監査課訟務管理官)
池田正(防衛庁長官官房政策評価監査課先任部員)
川辺英一郎(内閣府大臣官房企画調整課総括課長補佐)
吉田尚正(警察庁長官官房総務課企画官)
大竹昭彦(最高裁判所事務総局行政局第二課長)
竹谷廣之(農林水産省大臣官房文書課長)
倉吉敬(法務省官房秘書課長)
草賀純男(外務省官房総務課長)
林崎理(総務省大臣官房企画官)
青柳親房(厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官)
安達健祐(経済産業省大臣官房企画課長)
本田勝(国土交通省大臣官房総務課長)
石井喜三郎(国土交通省都市・地域整備局都市計画課長)
福本啓二(国土交通省河川局水政課長)
石川雄一(国土交通省道路局国道・防災課調整官)
笹谷秀光(環境省大臣官房政策評価広報課長)
森谷賢(環境省廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物対策課長)
(事務局) 松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田企画官

4 議題
  1. 各行政官庁等からのヒアリング
  2. 今後の日程等

5 配布資料
資料1 行政官庁等ヒアリング進行表〔再掲〕
資料2 各行政官庁等からの意見等
    ・防衛庁
    ・内閣府
    ・警察庁
    ・最高裁判所
    ・農林水産省
    ・法務省
    ・外務省
    ・総務省
    ・厚生労働省
    ・経済産業省
    ・国土交通省
    ・環境省

6 議事

(1)各行政官庁等からのヒアリング(□:座長、○:委員、■事務局)

□昨日に引き続き、行政官庁等からのヒアリングを行う。

①防衛庁からの説明(□:座長、○:委員、●防衛庁、■事務局)

資料2(防衛庁分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

□私どもの論点整理について、ある程度の御検討はいただいていると思う。そこで、例えばの話だが、出訴期間に3つのオプションがあるがどうかとか、あるいは原告適格をもっと拡大すべきではないかとか、その場合のワーディングとしては、こういうものがあるがどうかとか、そういった幾つかのオプションでお聞きしているものある。防衛庁で行政処分権限を持っている法律について代表的なものも教えていただきたいし、それからそれについての訴訟等があれば、それについても教えていただきたいという希望もあるので、本日、なかなかお答えができなければ、後日文書でお出しいただいても結構なので、いろいろ情報を提供していただきたい。まず、処分権限を有している法律がいろいろあると思うが、代表的なものを挙げていただけないか。

●自衛隊法において、第46条があり、懲戒処分が代表的なものである。

□外部に関するものではどうか。

●その他の法令については、後日文書で回答させていただきたい。

□処分を発動したことはないか。例えばいろんな認可等もあると思うが。

●それは、防衛庁、防衛施設庁のものがあるが、すべてお答えする準備をしていないので、後日、関係各課に問い合わせした上で、回答させていただきたい。

□防衛施設庁とは、時間的な問題で、今回はまだお話がうまくできていないということか。

●防衛施設庁の方にも、一応、今回照会はした。その結果として、これも後日お答えさせていただく。

□各省庁の説明資料はそちらの手元にもいっていると思うが、かなり丁寧にお答えいただいているのもある。こういった機会は、あと何回も設けられないので、できるだけ早い機会に防衛庁の情報を提供していただきたい。我々は、個別法についての情報は必ずしも多くはないので、是非現場の感覚での情報提供をお願いしたい。

○今まで、あるいは現在、被告になっている行政訴訟、民事訴訟はどれぐらいの数があって、どういう内容かというのが分かれば教えていただきたい。

●民事訴訟については、ちょっと数字的なものが十分ないが、行政訴訟においては、今まででおおむね四十数件ある。

○ストックベースか、累計か。

●累計である。

○どういうものがあるのか。

●そのうち、おおむね三十件ぐらいが人事の関係の訴訟である。

○残りはどうか。

●後は、情報公開関係等が数件ある。

○対外的、権力的処分を行って、その処分について被告になったというのはないか。

●そこも含めて、ちゃんと調べて回答させていただく。

□防衛庁の職員は特別職だから、人事院の公平審査にはかからないということになるが、その関係で何か問題というのが浮かび上がっているか。例えば、出訴期間の問題で、我々の考え方の1つのオプションとしては、出訴期間は要らないのではないかという議論もあるし、知った日から3か月というのもやめて、処分のあった日から1年間というのはどうだろうかと、そういうオプションがあるが、そういうオプションについては、防衛庁当局としてはどういうふうにお考えか、人事の関係をまずお伺いする。

●十分に調べたわけではないが、出訴期間については、今まで人事関係の問題として、もめたという形のものは記憶にはない。

□質問は、幾つかオプションがあるから、防衛庁として、そのオプションのうちのどれがベターであるとお考えなのか、そういったことについても情報をいただきたいということである。

●現在、提示いただいているものの中で、担当部局の方から特段の意見はないという形でもらっている。また、どれがベターかということは、そういう聞き方はしていないが、またもし答えられるようであれば、お答えさせていただきたい。

□我々としても議論を重ねた結果、幾つかのオプションを出した。それに対するお答えというのは、このオプション以外にもこういうオプションがあるというのが1つある。もう一つは、ないとすれば、このオプションのうち、どれが我が省にとって適切と思うかと、そういった御返事がいただけるものというふうに思っている。再度のお願いで恐縮だが、そういう点でもう一度考えていただき。
 それから、防衛施設関係のところで、いろいろな争いが起きたときに、内閣総理大臣の異議という制度があるのは御承知だと思うが、そういうものが必要な場合というのが考えられるのかどうか、その点はいかがか。執行停止について、現在、内閣総理大臣の異議という制度があり、裁判所が執行停止を決定したときでも、公共の利益に重大な影響を及ぼす場合には、内閣総理大臣が異議を申し出ると、異議を申し出た途端に執行停止は止まる、あるいは執行停止のプロセスはそこで終わるという制度で、これについては廃止の意見も出ているが、その点についてのお考えというのはいかがか。

●今、答えは持ち合わせていないが、今までのそういう防衛施設庁関係の訴訟でも、それが実際に使われたことはないわけであり、どういうお答えをしたらいいかというのは、準備できていない。

□もしお答えがないと、内閣総理大臣の異議の制度を廃止しても防衛庁としては全然問題はないと考えると、そういうふうに我々は受け取るので、その他の点も含めて、そこは是非お願いしたい。
 現在のところは、とにかく情報を集めたいというのが一番の問題だが、情報が集まらなければ、防衛庁としては、我々のいろいろな考え方をそのまま飲んでいただけると思い込むので、そこはよろしくお願いしたい。

○施設庁の関係で、基地の周辺問題でいろいろあるかと思うが、そういう場面において、団体訴訟的なものを防衛庁関係者はどうお考えか。

●今日は施設庁の者が私どもと同席しなかったこともあり、その辺については今答えるものは持ち合わせていない。これもまた引き続き持ち帰って、後日回答したい。

□大体こういった類いの疑問がそれぞれの項目全部についてあるので、作為を求める訴えとか、それから行政行為が、もし防衛施設庁関係であれば、その行為を差止める訴えの問題、あるいは確認の問題等々、すべての問題について、我々としては、いろんなオプションを出しているので、それについてのお考え、あるいはここに挙げられていない論点をお出しいただければと思う。とりわけ、対外的な処分権関係だと、やはり防衛施設庁が中心になろうか。今の制度等について、あるいはその訴訟の在り方について、特に防衛庁の関係からこういう点が問題である、だから訴訟のときでもこういった点を、情報公開関係訴訟でも、こういった点について考慮してくれないかというようなことがあれば、それもどうぞ教えていただきたい。
 人事と情報公開関係と、防衛施設庁関係を中心に、それから実力というのはもちろん公権力の行使に入っていて、その点についても、いわゆる行政行為でない行為というのが、防衛庁関係では、理論的にはいろいろあり得るところだと思うので、そういった点についても教えていただければと思う。

●引き続き検討する。

②内閣府からの説明(□:座長、○:委員、●内閣府、■事務局)

資料2(内閣府分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

□人事関係の問題の他にどういう処分権限があるのか。

●多分、一番日常的に起こっているのは、NPOの認証だと思う。ただ、そもそもNPOの認証というのは、かなり形式的に認証するという理念の下でつくられており、不認証はかなり少ない。例えば今、内閣府のトータルで1,100程度認証しているが、そのうち不認証21である。それから、うちだけではなくて都道府県が所轄庁なので、全国トータルでは、今まで認証された数は1万1,800程度だが、そのうち不認証は45である。ということで、必然的にこういうことに関する訴訟も、もちろんないというわけではないが、それほど活発にあるということではないので、特段、今コメントするほどのことではないと考えている。

□訴訟はないことはないのか。

●はい。

□我々の提案としては、例えば土地管轄の問題として、原告の住所地の裁判所ということも考えているが、今のところはなくとも、もし訴訟が増加したときに、管轄が、今の我々の1つの提案としての、原告住所地ということで対応するというお考えなのか、それともそれは困るのかと、その点を1つお伺いしたい。

●そこは内部でも検討が十分進んでいないので、今はお答えしにくいが、基本的には、これはある種横並びの問題だと思うので、そこは各省並びで、当方として特にはない。

□横並びというと、内閣府地方支分部局の絡みはあるのか。

●沖縄にある。ただし、沖縄は少し特殊で、法形式上は、内閣府の地方支分部局であるが、それぞれ国土交通省、農林水産省、経済産業省、財務省、あと公正取引委員会各省の支分局でもあるという形である。それぞれ、その業務については、各省大臣からの指示を受けるということになっているので、そういう意味では、支分部局はない。

□では、沖縄は別として、まず処分権者は所管の大臣で、それが別に地方支分部局に委任するということはないとして、訴訟が全国のNPOから出たときにどうなのかという点で、この点については若干の省庁から自分のところは地方支分部局があるという御説明があることに対して、地方支分部局がないので住所地で管轄を決められるのは困る、そういった御指摘もあるところなので、考えていただきたいと思う。

●承知した。

□NPO以外に何か処分権があるか。

●特にはない。

□それから行政指導も、例えば男女共同参画会議や何かで、個別企業に対して直に指導されるということはないか。

●調べさせていただくが、多分ないと思う。それは追って回答させていただくが、基本的にはないと思う。仕事は政府全体の調整なので、個別企業に直に指導することはちょっと考えにくい。それは帰りまして調べさせていただく。

○消費者関係で団体訴訟の検討をしておられて、民事訴訟が中心だとおっしゃったが、ただ消費者訴訟でも、例えばこれまでの例だと、ジュース表示裁判とか、そういった一種の公益的な行政訴訟というのがある。それから環境訴訟などは、かなり公益的な部分があり、むしろ個人に原告適格を認めるよりは、そういった活動をしている団体、NPOなどに原告適格を認めるのが妥当ではないかという議論があるが、そういった点について特に御意見はないか。

●それは、こちらから意見を申し上げる立場ではない。

○そういう団体に原告適格を認めて、訴訟を起こせる可能性を開くということは、特に反対とか、賛成とかないか。

●はい。

○消費者行政で、消費者センターなど苦情処理の形で、いろいろ調整なのか、あるいは苦情を聞いたりしていると思うが、それが訴訟に発展して、それに関わって内閣府として何か被告の立場に立つとか、そういう例はないのか。

●それはセンターが何かやったこととか、消費者行政を行ったことによって、訴訟の立場に立ったケースはないかということか。

○そうである。

●それも持ち帰って調べさせていただく。

□例えば三条機関が対応するといった問題、それから、国民生活審議会、それからセンターや何かで、それも内閣府にぶらさがっているが、そのような点で、まさに行政指導や何かでいろいろ問題が起きている可能性があるが、それに対して何か我々が聞くとすると、やはり内閣府を通さないと、あるいは内閣府に聞かないと答えが出てこないということか、それともセンターに直接聞いてくれということなのか、そこの整理をちょっとしていただきたい。

●私は、内閣府本府の代表で参りましたので、外局に当たる公正取引委員会等につきましては、その他につきましては私をとおしていただければ、またこちらからお返しをさせていただきたいと思う。

□NPOでも取消しという観念はあるのか。

●ある。

□その取消権を発動したときの出訴期間の問題とか、そういった点についてお話を伺いたいと思うし、このNPOは取り消すべきだということをだれかが請求したときに、そういうことがあり得るのかどうか。新聞報道によると、いろんなNPOがあると聞いているので、そういった点について第三のNPOからNPO相互の間の争いでこちらのものを取り消すべきだというような意見が出てきたときに、それは当局として、そういった訴えも受け止める用意があるのかどうか、そういう点も含めて、検討をよろしくお願いする。

③警察庁からの説明(□:座長、○:委員、●警察庁、■事務局)

資料2(警察庁分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

□2−2の審理充実の点で、情報公開法との関係について特段御言及がなかったが、どういうふうにお考か。

●情報公開法の場合にも不開示の要件があるので、情報公開の開示請求がなされた際には、まさに情報公開法に規定されております規定に基づいて判断をさせていただいている。そういった意味では、これはその制度の設計がどうなるかということにもよるが、例えば民訴法の文書提出命令にあるような規定がもし設けられるということになると、まさに情報公開法のような運用になるのではないかとは考えられる。

□運用になるのではないかということは、そういう御意見、あるいは御要望だと承ったらよろしいか。

●私どもとしては、私どもの活動に支障がないような形での制度設計がなされることが望ましいという要望である。

□いろんな暴力団の情報があるが、その生の資料が出ないというときはどういうふうに証明するのか。今までどうやっておられたのか。

●情報公開法の関係では、まずは裁判になったという話は、私も承知していないが、情報公開審査会にまずインカメラして、そこでかなりいろいろな機微な情報についても先生方には御提示を申し上げた。

□情報公開法の方は要件に該当するかどうかの話だが、こちらの方はどっちが該当するかという証明を追い求めているから、それは裁判所は好意的に推認してくれるのか。

●そこは、かなり機微な情報ということで、例えば具体的な例で申し上げると、暴力団仲間の中で得た情報というものを基にして指定の基礎資料にするといったことは実務としてもあり得るので、そういったものが法廷に出るということ自体が制度として設けられると、そこまで末端の暴力団が知っているとは思わないが、やはり全体としてこういったことをしゃべることによって、いずれは公の場に出てきて、自分の身に危険が及ぶのではないかといったことは、一般的には想定されると考えられる。

○現在でも暴力団を指定して訴訟が起きた場合には、当然そこは立証しなければいけないが、その辺りはどうお考えか。今までだと、なかなかその立証は難しいという話になるのではないか。

●今までに暴力団の指定に関して訴訟が起きたことというのは何件かある。それで実際に勝訴しているが、今までの訴訟の中では、行政庁の方で指定処分に、それはそれなりのきちんとした資料を作成して処分をしているわけだから、その中から全部が全部ではなくて、こちらが証明するのに非常に有効であると、しかもこれは公開をしても警察の方で情報入手元に危害が及ぶおそれがないとか、それから警察の手のうちを明かすことにはならない、あるいはなってもそんなに大きな被害はないというようなものを選んで、裁判官の心証を得られるものということで検討して提出をさせていただいて、その中で御理解を得て判決をいただいている。ただ、新民訴になって、行政文書の開示の制度で平成10年の改正があった後には、指定処分の取消訴訟というのは提起されたことはない。控訴審に係属しているというのはあるが、いずれにしても文提命令が警察の方で、当然処分をした行政庁の方でそれが適法だということの証明は第一義的にしなければならないので、そういった形で証拠を提出した上で、それで更にまだ足りないということで、裁判所の方から文提命令がかかったり、あるいは原告の方から文提命令の申立てがなされたということは、今までのところはない。しかし、たとえ文提命令の申立てがなされたとしても、やはり出せないものについては、その文書の特定がされれば、それがどういう性質の文書かというのは、それは裁判所の方でも大体御認定いただけると思われるので、そこはそのような形で御説明をしたいと思っている。

○そうすると、例えば暴力団の報復の危険のような具体的に今後の情報収集に支障があるような処分というのは、具体的に特定できるのか。

●処分というのは、文書ということか。

○いや、文書ではなくて、そういう文書の提出が論点になるような処分である。

●暴対法の中で、暴力団の指定の処分がある。それから暴対法に基づく各種命令というのがあるが、その行政命令は、一応すべてそういうことが予想されるものである。

○そうすると、そういう処分を特定して、そういう処分に関わる情報で、今後の情報収集に支障があることになるようなものについては、例えば警察庁の意見を聞いた上で判断するとか、あるいは具体的な実質審理をした上で出すかどうかを判断するという限定付きであれば、こういう審理の充実のための措置は支障がないということになるのか。

●現行でも行政事件訴訟法の7条で民訴法が適用されるというふうに認識しており、民訴法の中ではまさにそういった観点から、インカメラ方式とか、そういうことも含めていろんな手当がなされているので、その範囲であれば、もちろん現行でもそうですし、支障はないが、ただ何か一括して何も見ないでとりあえず文提命令ありきと、処分に関わった書類は一切全部出しなさいという命令がかかって、そこからあらがっていくというのは、今の制度とはまた異なるものだろうと思う。

○一斉にかかったとしても、その中で、さっきおっしゃったような個別に事情があるものについては除き得るような仕組みにしておけば問題ないということか。

●そこの部分が十分に手当していただければ、命令がかかったとしても、ただ文提命令の性質がよく分からないが、まず、文提命令がかかって、それで出さないということになって、それが民訴法に書いてあるような訴訟上の不利益とか、科料とかということにはならないと。

○そういう細部の制度設計までしているわけではないが、要するにおっしゃるような意味での支障があるものを出さなくて済めば支障はないということか。

●おっしゃるとおりである。

□何が何でも全部出せと言っているわけではない。

●私どもとして、こういった危惧を持っているということを御理解いただきたかったという趣旨である。

○ただ、そういう判断は行政庁で判断させてくれというのは、これはちょっとなかなか通りにくい議論だと思う。

○4ページの①の方の一番下のところで「道交法及び公安条例に基づく許可処分は、申請から集団行動が実施されるまでの時間が極めて切迫している」と書いておられるが、確かに判例を見ても、デモの前日に裁判所の決定が出るとか、そういうことがあって、時間的に切迫しているというのは確かだろうと思うが、これは仄聞するところ、むしろ警察がぎりぎりまで許可を出さないからだということを聞いたことがあるが、いかがか。

●公安条例におきまして、例えば24時間、ないしは72時間ということで、条例によって差はあるんですが、そこまでに申請をしてくださいということは書いている。

○24時間前でいいのか。

●もちろん、あらかじめ一定の余裕を持って申請いただく場合もあれば、まさに申請自体が1日ちょっと前に来た場合、こちらで警察として抱えるといってもできるものでもないし、そういう不満などは聞いてはいない。

○24時間前というのは、一般的には許可の申請の実情からいうと、かなり不思議な感じがするが。

●実際にデモならデモを行う前に、何時間前までにということで、例えば急遽そういう取り組みを行うとか、そういうことも実際にはあると思うので、こちらとしてはできるだけ前に切ってしまえばいいと思うが、ただその条例上も当然そういう配慮があって、ぎりぎりまで受付をするということはあると思う。

○6ページの方ですけれども、内閣総理大臣の異議の実例というのは、9回あるが、その他にも事前の準備を行った案件がかなりあると書いておられるが、これもやはりデモ関係か。

●すべてデモ関係である。

○一番最後の8ページで、犯罪被害者等給付金の審査請求、それから暴対法指定の審査請求の審査請求が出てから裁決が出るまでの期間というのは大体どれぐらいか。一番長いのでどれぐらいかかっているのか。

●最高で今までで3か月以内である。

○一番長いので3か月、それより長いのは実例としてはないということか。

●大体3か月ぐらいで、一番長くて5か月である。

○5か月もかかるというのは、何か特別な理由はあるのか。

●暴力団を指定する際には、いろんな膨大な資料を見て、それでどうなのかということをきちんと審査しなければいけないから、膨大な資料一つ一つについて再度の確認をするという意味で、ちょっと時間がかかった例もあるかと思う。特に、大きな組織になると、人数も多く、その分、やはり資料も多くなるという意味で時間がかかっている場合もあるかと思う。

○今、5か月とおっしゃったのは暴力団の関係か。

●そのとおりである。

●犯罪被害者等給付金の関係は、手元にないので、また後刻御報告するが、よくある事例としては、被害者そのものに帰責があるとして、例えば支給金の支給の減額裁定がなされて、それに対する不服申立といったケースがかなり多く、そうなると、事件の事実関係について、やはりかなり微妙な問題があるし、刑事訴訟との関係も見据えつつということで、被害者の帰責の程度というものについて、更に精査をするといった作業が必要になろうかと思うので、そういった点である程度の時間がかかっていようかと思うが、正確にどの程度かというのは、また御報告申し上げたい。

○今の不服審査前置の関係で、この2つの例は、ちょっと性格が違うようにも思うが、犯罪被害者の方は一種の受益処分で、通常人を相手にしている。暴対法の指定というのは、文字どおり暴力団からの請求を前提にしているということで、ちょっと違うような気がするが、これらがともに裁決を待ってからでないと訴訟を提起できないということに必然的になるグルーピングができるものかどうか、ちょっとよく分からない。

●実は、私の方でも必ずしも他の制度の全体の専門家ではないものですから承知はいたしておらないが、こちらに書かせていただいたような中身で、もともとはそういった立法理由についても、まずは行政庁で精査をした上でと、その上で更に不服があれば訴訟を提起するという形がより効率的ではないかという考慮に基づいて、そのような制度になっている。

○犯罪被害者だと、帰責事由の判定は、一種の過失相殺のようなものか。

●それに近いようなものであろうと思う。

○そういうのは、実際上、民事訴訟なりでも、交通事故裁判などで裁判官が適切に権限行使しているわけで、行政庁の判断がなければ判断できないというような性質のものかどうかというのは、ちょっとよく分からないのがあるのと、暴力団の方は、行政庁でないと暴力団性について、十分一義的に判断できないということだとしても、それは第一次判断権は既に指定があった段階で行使しているわけで、それが争われた段階で、やはりもう一回行政庁の手元に置かないとまずいということの必然性はどういう理屈か。

●それは、行政の専門性ということで、やはりまずは再度処分の当事者からの不服に対しては、再度行政において専門的な観点から精査をし、その上で判断をし、更に不服があれば裁判所の判断を求めるという手順がより効率的ではないかと考える。

○逆に言えば、いきなり裁判を起こされると、暴力団対策の点で何か支障が生じるということになるのか。

●暴力団対策で、何か暴力団対策上、いきなり訴訟が起きたからといって、絶対に困るということは、暴力団対策特有の場面では特段ない。

○被害者等給付金の方はいかがか。

●被害者等給付金の場合も、もちろんどうしてもだめかということについては、それはだめですというだけの理屈は私どもは持ち合わせていないが、そこはるる申し上げているような理由により、現在そうなっているということである。

○被害者と暴力団に共通する面もあるかと思うが、処分の相手方が警察庁の不服審査には期待しない、ないしはそれをやるだけの手間をかけたくない、いきなり司法審査を求めたいという場合に、いきなり裁判所に行く人が出てくれば、こういう事務は軽減されて行政効率は高まるということはあり得るかと思うが、そういう観点ではいかがか。

●司法の方は、私ども申し上げることではないのかもしれないが、やはりある程度争点が整理された上で、更にそれに対して不服があるという方には、また司法の場で御判断を求めていただきたい。

○司法の側で行政庁における不服審査情報を求めるだけの実利なりニーズがあるのであれば意味があるかもしれないということか。

●司法の側のことについて、私どもはお答えする立場ではないが。

□行政庁が二度判断すべきだという点には、もう少し暴対法あるいは犯罪被害者等給付の特別の事情がないと、今の行政事件訴訟法は自由選択主義が原則なので、たまたま不服審査前置になっているから今のような御説明かもしれないが、特有の御説明があるのではないか。特に暴対法の場合の指定について、ときどき議論するのは、まず、非常に緊急を要する場合には、ある程度の資料でまず処分をして、むしろ本当の勝負は不服審査の段階で、そこで行政の本当の専門性、あるいは統一性が図られるのだ、といった説明の仕方もある。そういった特別の事情について、もう少し御説明いただいた方がいいと感た。
 内閣総理大臣の異議だが、6ページの②で、今、これが発動されていないけれども、これがあることが重要な機能を果たしているということの趣旨だが、内閣総理大臣の異議の制度があるから裁判所に対して一種の抑止効果があり、だから裁判所はむやみな執行停止をしないのだという裁判官に対する抑止効果ということを考えておられると、これはまさに憲法問題が生ずるというふうにも思うので、言葉尻をとらえるつもりはないが、ここはいただけない。

●そのような意図では毛頭ない。

□確認のためにお聞きした。この点は、仕組みとしては難しい問題だと思うが、外国では別に内閣総理大臣の異議まで持ち出すまでもなく、こういったデモなどは、日本よりももっと激しいのがいろいろあるが、それなりに対応しているということだと思う。その場合に、今までは内閣総理大臣の異議があるということで、多少頼っておられるところがあるが、この制度は、おおよそグローバル・スタンダードではないという観点から多少外国の制度についてお調べになっているところがあれば、是非教えていただきたい。
 また内閣総理大臣の異議は、日本で言えば、やや歴史的な偶然の産物だというふうに私は認識しているが、現在、もう一度ここで立ち返ってたみた場合には、こういう制度があるじゃないかという具体的なアイデア、内閣総理大臣の異議までいかないまでも執行停止の手続の過程で、こういった仕組みが取れたらいいという、そういった御提案があれば是非いただきたい。単に内閣総理大臣の異議が極めて重要な機能を果たしているからというのではなく、そこはよろしくお願いをしたい。
 外国でのこういった点について資料はあるのか。

●それに直接というのはない。

○今の内閣総理大臣の異議の点で、処分庁の判断以外に内閣総理大臣が固有の利害で異議申し立てるべき実益は依然としてあるということか。要するに、これは処分庁とは別の人格で総理大臣がいきなり出てくる制度だが、処分庁の判断のやりとりで執行停止の有無が決まる制度ではまずいのか。処分庁は信用できないけれども、総理大臣の判断なら信用できるということがあり得るということになるのか。

□そうではないと思う。処分庁が負けてしまったので、親が出てくるという話だと思う。

○原告適格で、暴力団の構成員は原告適格がないのか。

●そのとおりである。

○処分性の問題ような気もするが、構成員は薄いということか。

●そのとおりである。

○そういう理解でもよろしいということか。

●団体全体に原告適格があると法律もなっているし、そういう仕組みだが、指定暴力団が指定されたことによって、指定暴力団員がどういう不利益を実際に被るかということになると、例えば指定暴力団の威力を示してみかじめ料を要求してはいけないという不利益とか、他人を暴力団に加入供与してはいけないという不利益が生じるだけということなので、おおよそ原告としての適格がない。また、実際にそういう処分を受けたときに、当然その処分に対して、自分は指定暴力団員ではない、あるいは指定処分そのものが不当だということを理由に処分の取消しを求めることもできるということで、全体の指定処分そのものに対して、個々の指定暴力団員に原告適格を認める必要はないという、そういう構成になっている。

○原告適格の拡大との関係で警察庁の管轄事項の中で問題になるのは、この案件だけだということか。他にも何か原告適格の拡大をすれば問題になるような案件というのはあるのか。

●私どもは全庁的に検討させていただいた結果として、暴対法の問題がもしあるとすれば、ここであろうということであり、その他、特段の問題はないということである。

○原告適格が認められるとしても、通常は指定された団体の構成員が個々に起こすというようなことは考えられない。仮に原告適格が認められるとして訴えを起こしてきたとしても、それぞれ処分というのは1つだから、一緒に審理すればよく、そんなに支障があって困るということにもならないと思うがどうか。

●今、24団体指定しているが、24の団体のそれぞれの処分については、もちろん何か訴訟を起こされれば、こちらで証明しなければいけないということなので、24の訴訟を争うということについては特に問題はないが、例えば暴力団員と指定されている者が、今、4万人おり、4万件訴訟を起こされると、それがそれぞれ別の事件として扱われるということだと、それぞれの主張がそれぞれで異なってみたり、そういうことになるといささか対応が難しいということにはなろうかと思う。

○ただ、4万人が訴訟を起こすというあり得ないことを想定して、原告適格を認められるのは困るという議論というのは、余り説得力がない。

●そこは、私どもしても、ここはまさにこういう問題もあり得るという趣旨の意見である。

□警察庁所管の法律、特に警察の営業関係等々、営業警察のようなものについて所管の法律があると思う。執行は都道府県公安委員会がやっておられるが、私どもとしてはそちらの方から情報がなかなか得にくい。知事会等から、あるいは都道府県団体からこの場で直にはなかなか資料を得られないので、そういった営業関係の面で、出訴期間の問題、あるいは原告適格の問題、我々がその辺をそれぞれオプションで出しているので、警察庁として、法律の所管の庁としてどういうふうなお考えか、もう少し幅広に御返答いただければと思うが、出訴期間についても何のお答えもないと私どもとしても判断しかねるところがあるので、その辺を改めて資料を出していただきたい。

●改めて検討させていただく。

□今日は、暴対法の話だったが、他にごく普通の行政処分があるので、そこを聞きたいということもあるので、よろしくお願いしたい。

④最高裁判所からの説明(□:座長、○:委員、●最高裁判所、■事務局)

資料2(最高裁判所分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○集中部だが、これは東京地裁とか、大阪地裁にあるのを指しているのか。

●そうである。

○名古屋にはあるのか。

●ある。

○その他の地裁、特に高裁があるところの地裁で、この集中部を今後設けていく予定、計画はあるのか。

●それは競合管轄の改正がどうなるかというのが、まず1つ前提となる問題で、8高裁所在地の地方裁判所ということになって、そこに事件数が集まってくるということになれば、前向きに考えたいということである。

○今の集中部とおっしゃっているのは、これは要するに行政事件以外はやらないという御趣旨か。

●それは、裁判所の部内では専門部と呼んでおり、集中部というのは、行政事件はその部に行くが、余裕があれば通常民事事件も行くというのを呼び習わしている。

○そうすると、もっと多いのではないか。京都とか神戸とかもそうだろう。

○完全な専門部というのは、実は東京だけである。東京には三か部の専門部があり、集中部というのは、おっしゃるとおり大阪、京都、神戸、それから横浜、さいたま、千葉、大阪にもある。逆に高松は高裁所在地だが、高松地裁は民事一か部しかないので、集中部といって集めるといっても、おのずと決まってしまう。

○高裁は集中部がなく、東京でも全部に機械的に配転されている。これは考えてみると、地裁レベルでは、言わば専門家が専門的知識を有する裁判官がやって、それをチェックする高裁レベルではそういうのがない。つまり、行政事件に経験の薄いようなところにも全部配転されると、これはむしろ逆ではないか。地裁は仮にそうであったとしても、高裁レベルではむしろ集中させて、専門の裁判官がチェックするのだというのが筋だと思うが、最高裁はどう考えるか。

●高裁の裁判長クラスは、何らかの形で行政事件に知見を持っておるということではないかと思うが、いずれにせよ、今のような御意見があったことは、また、持ち帰る。

○知財の関係は、例えば大阪でも高裁で、いわゆる集中部がある。同じような感覚からすると、やはり行政事件についても地裁に集中部を置くのが最高裁として妥当だとお考えなら、やはり高裁にも置かないと、具合が悪いのではないかなという気がする。

●知財の訴訟は、まさに今、御議論いただいているところであるが、かなり技術的な専門性が高いというとこと、まさに理科系の技術の専門性が高いという特殊性もあり、それと同列に論じられるかという問題点はあるように思うが、検討させていただきたい。

○先ほど言わば行政事件をたくさん扱っておられる裁判官の代表的な意見ということだろうと思うが、その紹介があったが、率直な感想を申し上げると、非常に消極的だという印象である。現場の裁判官が消極的だったら、かなり法律を変えないと積極的にならないのではないかという率直な印象を持った。現場で行政事件に携わっている裁判官が、本当はこういう事件については、例えば土俵に上げて審理をすべきではないか、あるいはこういうのは救済すべきではないかというふうに常識的に思うが、今の制度の下では残念ながらできず、だから非常に個人的に悩んだ、困ったんだといった類いの意見というのは全く出なかったのか。

●それは、裸の立法論、価値判断としての立法論という面からの意見と言うことができると思う。意見交換やヒアリングの場でも、裸の立法論について、おおよそ話が出ないかと言われれば、それは出るが、対外的に、私ども裁判官は、具体的な事件について法を解釈・適用して紛争を解決するという職責を負っており、それ以上に具体的な事件を離れていろいろものを申すこと、対外的にものを申すことが適当かという点も議論し、それは適当ではないのではないかというのが議論の帰結だった。したがって、今のような議論が出たことは出たが、ここでお話をさせていただくのはいかがなものかと思うので、差し控えさせていただきたい。

○現場の裁判官が一番直接的に感じている、そういった意見があるのであれば、いわゆる消極的な意見だけではなくて、現場の裁判官の中にはこういうふうなところで今の制度について悩んでいて、困っているとか、そういう意見は大いに出していただきたいと思うが。

●御趣旨はよく分かるが、積極的な意見ばかり出ているわけでもない。

○いやいや、出ているのであれば、それは紹介していただきたい。

○裁判所は解釈、運用をやる部局で、裁判官はそのための職員だということになると、この検討会なり、司法制度改革推進本部で行政事件訴訟法を改正しようというのは、解釈の議論ではなくて、法律をどう設計するのかという議論である。したがって、解釈をどうするのかからしか意見がないということは、裏返して言えば、立法論については沈黙するということになるのかどうかである。ないしは、現在の解釈をやっている立場からすると、それを超える立法については、必ずしも積極的に対応する意思はないということになるので、各裁判官の個別論というのは、どれぐらい統計的手法でまとめられたのかも分からないので、さておくとしても、最高裁としては、今回の改正作業全般について、どういうふうにとらえておられるのか。

●改正作業全般については、今次の改正自身が司法による行政に対するチェック機能の強化、そしてそれを通じた国民の権利救済の実効性を高めることという目的があり、そしてまた司法固有の作用が十分行われていないという指摘もあるということは認識をしていて、この観点から行政訴訟制度ができるだけ国民に使い勝手のよいものとなって、権利救済の実効性が上がるということも期待をしている。私どももその点について全く異論はない。現在の解釈に当たる者の立場から、それを超えるものについて協力をしないかと言われると、全くそういうことはなく、定めていただければ、それを粛々と運用させていただく。ただ、もし私どもにお尋ねがあるとすれば、普段から解釈適用し、運用している者の立場からすると、いろいろ立法提案があって、そういう立法の1つが採用されたときに、どんな不都合があるかと言われれば、こんな不都合が考えられるということぐらいは申し上げるべきかと思う。それ以上は、検討会、更には国会の方で御議論をいただいてお決めいただくことという認識である。

○そうすると、先ほどの個別の御意見も、総じて言えば、今おっしゃったような意味で、裁判官が解釈、運用に当たるときに、混乱あるいは疑念が生じないような明確な枠組みにしてほしいという趣旨が一貫していると思うが、それはそれで非常によく理解できるが、裏返して言えば、いわば現場での疑義や懸念や混乱が生じないような形で立法がなされれば、その立法の内容については特段の御意見はないという理解でよろしいか。

●そういうことである。

□私は今の意見と全然違う。外国法をいろいろ議論してもらったが、外国では原告適格の拡大でも処分性の問題でも、確認の利益の問題でも、裁判官が果敢に取り組んでおられる。例えば、フランスでは原告適格に何の規定もないし、ドイツでは権利侵害という非常に固い制度で、しかしどんどんとやっているので、私としては、これから日本の裁判官は大いにそういった点について活躍していただきたいという気持ちの方が強い。だから、その意味で、要件、効果をきちんと決めてもらわなければ困ると、なかなか動きがたいというのは、行政官はそう言ってもいいと思うが、むしろ逆に、救済に当たる機関だから、救済法というのは、本来裁判官がつくっていく法ではないかというのが私の基本的な認識で、それは諸外国でもそうだというふうに思う。そこで要件、効果をきちんと決めてくれなければ困るというのは、その意味では理解できるが、1つはある種、無理難題を我々の方に投げかけているのかなと思う。要件、効果をしっかり決めて来いと、決めて来なければ動けないという御趣旨だと、これは大変難しい。例えば、原告適格についてどこのところまでカバーできるかを法律上一義的に明らかにしろというのが要件、効果をはっきりさせろということだと、それは至難の技で、至難の技を要求されるということは、それはできないだろうということを前提にしておられるようにも思われる。むしろ、原告適格は各国の動きを見ても、本当に裁判官がいろいろな形で法をつくっておられるので、法をつくる領域と、それからここは立法者の本当の政策の問題なんだからきちんと要件、効果を書いてほしいという仕分けを、もう少ししていただきたいという感じがする。

○私は、今言われたことは全く異論はなく、本来、裁判官の方々は行政事件にせよ、すべての法の運用を熟知されている非常に貴重な存在であり、やはり現場でいろいろな問題意識を持たれて、積極的には法の運用が望まれる場面での立法論などはどんどん投げかけていっていただくふさわしい立場にあると考えており、是非そういう意見は、この場にも、あるいはまた別の形でも出していただければいいなと思っている。ただ、ちょっと私が懸念しているのは、一部には最高裁や裁判所は余り積極的な改正には熱心ではないのではないかという懸念を持つ向きもあり、もしそういうことであるのであれば、客観的で明白なという要件、効果論に徹する議論にとどまっていただく方が、まだ害は少ないという趣旨で申し上げた。そうではなく、いろいろ工夫をしようという知恵を出していただくのはもちろん大歓迎で、そういう意味では今の意見に全く賛成である。

○私も行政事件に関与しているが、これは非常に限られた部分でしかやっていない。ところが、行政専門部の裁判官というのは、たくさんの事件をやっておられて、一番問題意識、材料がいっぱいある立場の方である。だから、できればそういった方が、本当はこれは救うべきだと思うのだけれども、残念ながら今の法律では救えないんだとか、土俵に上げられないんだというようなことで悩んだりしておられるはずなので、そういった方に是非、いわゆる立法論も発言していただきたいという気がする。例えば原告適格を広げると、狭いというのは大体理解している、それではどういうふうに書いたらいいのか、明確に書いてくれとだけおっしゃるのではなくて、例えばこういうふうに書いたらどうかとか、あるいは少なくとも今回の文書には幾つかの案が出ているわけだから、これだったらここら辺までは救えるのではないかといったようなことは、一番よく御存じなのは、裁判官だと思う。だから、是非そういった観点での現場の裁判官の発言が、この審議に反映するようなことを最高裁にお願いしたい。1つの方法は、裁判官が個人でパブリックコメントに意見を出していただいたらいいと思う。実名を出すのは困るというのであれば匿名でもいいわけだから、最高裁の方から是非そういったことを奨励していただいて、大いに意見を出してくださいというふうに言っていただければいいのではないかと思う。

○私も裁判官の全体で検討した会議にも出席していたので、少し補充させていただきたい。明確性が是非ほしいというのは、やはり我々は規範があって、その規範を適用していくということを、それをやるべき職責と考えているわけで、そのときの規範が何なのかということ、それは言葉で全部書き尽くされていなければだめだと申し上げているわけではないが、ただ、例えば今回の原告適格の議論などについて、たくさん出た意見は、御提案があるが、それだったら、例えばこのケースだったら、これは含まれるのだろうか、含まれないのだろうかということがこれだけでは分からない。そうすると、狭いという御批判はもちろん分かっている、ただそれは広げたときに、この説だったらここは入るんだろうか、入らないんだろうかと、いろんな例をやってみると、一つの例えで、原告適格をドーナツのような形にすると、そのドーナツをどういうふうに広げていったのか、どの程度広がったのかというのが非常に分かりにくいという率直な感想があり、そういう意味で広げるなら、例えばこういうことが狭いから、こういう基準で取り込んだらいいという前提となる基準のようなものでもいいが、そういう議論ももう少し熟した上でないと解釈が非常に多義的になって混乱するのではないかということがある。一つひとつ裁判官が原告適格を、むしろ裁判官の頭で与えた方が適当だと思うものを入れるべきで、そうではないものを落とすべきだということでも解釈としてある得ると思うが、実は行政庁などの意見にもあるが、予測可能性ということがある。どういう人を念頭に置かなければいけないのか、そういうところからいっても原告適格というのは、やはりある程度の基準としてはっきり見えるものであってほしいというのが、やはり運用する側に当たってはどうしてもお願いしたいということである。

○今の御趣旨は理解でき、よく分かるつもりだが、そうすると、例えば今出ている案の、この基準だとこの事件ではオーケーになるのか、ダメになるのか分からないとか、多分こういうケースはどうかとかという、一種の解釈の限界の詰めみたいな知識なり経験を一番豊富にお持ちなのは、現場の行政事件を担当されている裁判官だと思う。そうすると、そのときにこれでは判決を書けないというので突きはなすのではなくて、この事件についてはどっちに読むのか決めるようにもう少し工夫をしてくれとか、あるいはこう書けばこの事件は読める、あるいは読めないというような対案を含めた、是非積極的な提案を現場の裁判官からしていただけると、もっと立法作業は豊かなものになると思う。そこはもちろん御協力いただいていると思うが、やはり現実の事例について、これはどうなんだ、あれはどうなんだということを、やはり現場の生の声として集約して届けていただくと大変が意味があるし、それは多分日本の裁判官の方は今まで遠慮されているし、今もおそらく行政訴訟の改革について遠慮されていて、余り聞こえてこない点である。アメリカとか、ドイツの裁判官は御承知のように、立法論でもばんばんジャーナリズムにも出て来るし、論文も書いているし、それなりに貢献されていると思うが、日本の裁判官もやはりそういう意味での立法への貢献は是非期待されているのではないかと思うし、今回は、特にそういうことを期待したい。

●先生方から裁判所に対して、大変御期待をいただき、身に余る光栄だが、原告適格を例に取って若干お話をすると、例えば、ジュース事件はだめだけれども、近鉄特急は入れるんだということであるとすると、どうしてそういうことになるのか、すなわちどうしてジュースは入れないで近鉄特急は入れるのかという御趣旨を御議論いただき、それを司法府に御明示いただくということまでは立法府の役割なのではないかと思っている。その議論が、検討会でなかなか難しい。どの事件を入れて、どの事件を入れないというのがなかなか見えてこない。それから、各文言についての御提案があるが、あれも文言だけ見て決まるというものではなく、文言の背景にある趣旨などを勘案して、その文言の解釈が決まってくるという、そこのところも今一つはっきりしないで、今のままで各文言でどの事案が入るのか、入らないのか裁判官に判断しろと言われると、ちょっと困るなというのが正直なところで、そういう御議論をいただきたいということである。

□もっと具体的な事件ごとに考えろというのは、さんざん御提案があり、それに基づいて多少僣越かとも思ったが、星取り表みたいなものをそれぞれの自分の頭の中でつくっておられると思う。もちろん、その星取り表が全員が一致しているとは限らない。ジュースだって入れるべきだという御意見もあるが、大体のところジュースは無理かなと、では近鉄特急はどうかなと、そういった形で議論は重ねているので、記録を丹念にお読みになれば、大体我々の狙っているのが、この辺だなというのがお分かりいただけるかと思うが、しかし、最終的なレポートの段階になると、そういった点について疑念というか、分かりにくいということがあれば、それは我々としては、この文言を変える趣旨は、ここを入れてほしいからだという形になるのではないかと思う。そういった議論はかなりしているつもりだが、そちらの方からの御意見を伺っていると、まだまだ至らない、ここをもっと突っ込んでほしいという点がおありかと思う。そういう点は、是非おっしゃっていただきたい。ジュースと近鉄特急の区別、それは理論的に成り立たないのならば、それは成り立たないとおっしゃっていただいて結構だが、我々としても議論は積み重ねているつもりなので、そこは突き放さないで、多少中に入って議論を積み重ねていただければと思う。ただ、どういう法律をつくっても、運用する解釈権は最後は裁判所なので、やはり裁判官が権利救済、あるいは利益救済という憲法の精神に立って、どんどん解釈をしていただきたい、判例法をつくっていただきたいというのが、これは私の個人的な希望かもしれないが、そういう考え方を持っている。なぜ、日本の裁判官は制定法準拠主義なのかという点を常々疑問に思っているので、この際、制定法準拠主義から離れていただきたいというのが、裁判官全員に対しての強いお願いである。

○裁判官の生の意見は非常に重要だと思う。裸の立法論というものが仮に立場上難しいとしても、例えばこの書き方なり、この案だとこういう事件を読むのか、読まないのかはっきりしないとか、あるいはこれではこういう点に疑義が残るとか、そういう現在の論点、主な検討事項で出ているようなことについても、裁判官としての非常に有益な意見の出し方があると思う。そういう意味で、最高裁からもこれは遠慮する必要はないんだと、そういう建設的な意見提出はどんどんしてはどうかと、匿名でもいいということだったらなお出しやすいとは思うが、そういうことを是非奨励していただくのは意味があると思う。

⑤農林水産省からの説明(□:座長、○:委員、●農林水産省、■事務局)

資料2(農林水産省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

□あるいは誤解があるのかなと思うのは、2ページの②のところで、執行停止を原則とする、というのが出ているが、我々の提案の中に執行停止を原則とするということは余り書いておらず、執行停止の要件をもう少し緩和するべきだという趣旨のことが書いてあるが、要件緩和についてはどうお考えか。

●そこは十分に読み込みが足りなかったかもしれないが、要件緩和のケースによっては、非常に、ケース・バイ・ケースですけれども、安易になされる場合もあるのか、あるいは暫定的な執行停止の導入とか、そういったこともあったからである。

○2ページ目の(2)の①で掲げていることだが、この逆の立場の場合でもこういう論理でよろしいということか。農水省の直轄事業をやる場合にも、この読み方で行かれるということなのか。農水省さんが直轄でやられるときに、執行停止なり、あるいは裁判所からそういう決定がでる場合、ここの読み方を今は違反者に対する立場となっていますが、この逆の立場で、農水省が執行者でやっている場合には、どういうふうにこれを解釈すればよろしいのか。

●執行停止の制度そのもの全体を否定するということはもちろん考えていない。当然そこは司法の御判断で必要がある場合やっていただくということになると思うが、ただもともとある行為の停止を前提とした、①のような処分もあるし、それから止めないとしようがないような場合にも、仮の救済をされてしまうと、なかなかかえって原状回復が困難になるような行政処分も幾つかあるので、そういった問題に御留意いただきながら御検討いただければという趣旨である。だから、一般論として、あらゆる行政処分について執行停止はおよそだめとか、そういうことを申し上げているわけでは決してない。

○①のアに、工事が行われた場合には原状回復が困難になってしまうということをおっしゃっているけれども、逆の立場で、農水省が工事をやるという場合には、逆の議論にならないかということをいっている。

●おそらくそういうケースもあるから、執行停止という現行制度があるのだと思う。

○そうすると、農水省が工事をやるときには、そういう訴えが起きていると、原状回復が困難になるから工事はストップするということをするのか、そうはしないでしょうということだが。

●おそらく、個別具体的なケース・ケースによるかと思うが、当然適法な手続を踏んで、関係者の同意も得てやっているというのが行政庁の立場であるから、そういう適法手続の関係者の方の利益を代弁して事業をやっているので、執行停止をしないでくださいという申立てになろうかとは思うが、そうではないという方ももちろん原告の方からはあろうかと思う。

○農地転用許可処分、あるいは農薬の登録の拒否処分というのが例に挙がっているが、今、仮の救済がない。許可の拒否処分は執行停止の対象にならない。執行停止では救済できない。そこで、この検討会では、そういう仮の救済の谷間のようなところを埋めることを考えている。確かに、仮の農地転用許可とか、仮の登録のようなものが無条件に認められると問題にはなると思うが、ただ現在は仮の救済がこういうケースではないわけで、そこを埋める必要もある。しかし、行き過ぎるとここに書いておられるようなことになるわけで、考える必要があるのは、こういうケースについて仮の救済を設けることがいいか悪いかという、そういう二者択一ではなくて、国民の権利救済もできる、同時に公益にある程度配慮した、そういうシステムをつくる必要があるということなので、こういう形で出てくると、何ともお答えのしようがないということになる。

●仮の救済の制度を、今の谷間のようなケースについて、一切つくるのがどうかというところまでの問題提起をしているわけではない。

○最初はゼロだから、それに何か新しいものをつくろうと思っている。もちろんそれが行き過ぎたものであれば、ここに書いておられるようなことになるけれども、だから必要なのはそうはならないような、同時に国民の権利救済にも配慮した制度である。

●私ども実務的にこういうようなケースも考えられるので、そういうようなケースについても御留意いただきたい。

○もちろんそういうのは留意する。

●制度設計を御検討いただきたいという意味での問題提起であり、一切仮の救済が全面的に難しいとかということではもちろんない。

○若干技術的な話だが、土地改良事業で換地処分、あるいは仮換地処分などについて、執行停止をした場合、ある特定の者が例えば照応原則に違反しているというようなことを申立てて、執行停止を申立てたとする。その場合に、その者に対する処分をもし仮に停止をしたときに、第三者への影響というのはどういうふうに理解したらよろしいのか。将棋倒し的になっていくのではないかという気がするが、その第三者というのはどこまで想定したらいいのか。あるいは、そういう集団的な一括して換地処分をするときに、何か考えておかなければいけないというふうなものがあったら是非教えていただきたい。

●今の御指摘は、土地改良事業をやり、Aさんの農地がこっちにあって、Bさんの農地をこっちにあって、一か所にまとめるために換地処分というのを私どもの制度で仕組んでいる。これは国土交通省の土地区画整理事業と同じ形である。まず換地計画を最初につくる。そのときも、3分の2以上の方の同意があれば換地計画が成立し、その計画に従って処分を個々具体的にやっていくという形を取っている。したがって、それに御不満な方が結構いて、換地処分反対という方がいらっしゃる、訴訟の対象になるケースがもちろんあり得る。そこでいもづる式にというのはまさにおっしゃるとおりで、Aさんの土地をBさんの土地にし、それから今度Bさんの土地をCさんというふうにずっとつながっているので、そういった意味では3分の2強制の制度の下のものでもあるし、また関係権利者なかなかみんながみんな満足するという形にはいかない制度なので、なかなか執行停止にはなじみにくいんではないかというふうに私どもは思っている。現在でも執行停止の対象外という制度ではない形になっているが。

○例えばAさんに対する処分を停止するという効果は、現実にどこまで波及すると普通考えていたらよろしいか。Bさんに提供する土地がなくなってしまうと、Bさんを出せないから次はCさんにということで、ずうっとつながるのではなかろうかと考えるが、それほどつながらないと理解しておけばよろしいのか。

●具体的なケースについて言えば、Aさんの土地についてそういう訴訟が起きまして、私どもとしては当然執行停止はかからない方がいいという立場に立とうかと思うが、万が一かかってどうなのかというと、一時的に仮換地処分ということで、少しリザーブしたような土地、後に公共施設を建てるような土地が部分的にあって、そういうところにゲームのような形で一時退避させておくような土地に、一時仮耕作をしていただくようなことで調整をしながらやっていくことは可能である。ただ、それも何年も訴訟が続いてその状態が続くと、非常にみんなに影響が大きいが、1年、2年ということであれば、一時的にリザーブしているような土地のところで耕作をしていただくということは可能だと思う。

○そんなことができるのか。Aの土地をBの土地、Bの土地をCの土地とか、換地は基本的に玉突きで、Aさんがどこかよその土地に行くのを仮に停止したら、Aのところに来るはずのだれかがこれなくならないか。

●そこは止まってしまうが、他方において工事もしている。田んぼの区画を真四角にしたり、大きい区画にする工事もやっているから、当然1回目のところでAの1番からAの10番までは換地処分しますとぱっとおさめて、次の人はすぐその次の土地に入ってくるまでは工事をするまで待ってもらう期間が必要なんで、留保してあるところの土地で仮に建てさせていただくというケースもある。それから、スムーズに工事がいけばどんどんいもづる式に送り込んでいく。

○工事というより、換地というのは土地の権利移転だから、法的な効果だけで判断するのではないか。

●そうであるが、換地処分をいつするかというタイミングがあり、工事が終わってでき上がったところにそれぞれ換地処分をしていっていただくことになる。

○ある換地、Aさんに対する換地処分を取り消したときに、その効力はどこまで、だれまで及ぶのかということと多分共通で、また後で1回整理して教えていただいた方がいいような気がする。

●承知した。

○質問というよりは、おっしゃられたことについての意見だが、2ページの一番最後、これは農業振興地域整備計画の中で農用地の線引きがされて、それを前提にして土地改良事業が行われるというシチュエーションをお考えだと思うが、御承知のとおり土地改良事業計画については、各種のものを含めて、一応取消訴訟の対象になるというのが、多分最高裁の立場だろうと思うが、ここで書かれているのは、それ以前の農用地区域の決定の段階で訴訟を認めるとどういうことになるかということだと思う。後の事業計画そのものが争われ得るのであれば、そこでさかのぼって農用地区域の線引きがこれでよかったのかということは、基本的には争点になり得る話だと思う。そうすると、前の段階で争わせないとしても、後の段階でいずれにせよそれは論点として出てくるかもしれない。そうすると、ここで心配されているようなことはむしろ増幅して、後の段階で基の農振計画自体が部分的にせよ、ひっくり返ってしまうということがあり得るわけで、御心配になるとすれば、むしろその逆じゃないかという気もする。むしろ基の方をたたけるようにしておいた方がいいのではないか。

●それは若干誤解があろうかと思う。まず、農振計画を立てて、その中に農用地区域といって、農業投資を重点的にやっていくエリアを決める。それはゾーニングの話である。それはそれで1つ一段終わり、その上にどういう投資をするのかというのは、いろんなパターンがあって、たまたま例示的に土地改良を書いているが、土地改良事業計画をその上に立てて、土地改良事業投資を行う場合もあるし、個別農家が自分でいろんな畜舎でもいいし、あるいはハウスを建てるんでもいいが、いろんな個別投資をしたりする場合もある。そういうようないろんな投資の前提に、この農振農用地区域のゾーニングがなっているということを申し上げている。今、御指摘のケースでいくと、土地改良事業計画の方で争っていって問題があるというときには、まず土地改良事業計画自身として土地改良事業計画の認可処分というのが行われるから、それ自身として訴訟の対象になっていく。その中のいろんな瑕疵があると思うが、ゾーニングそのものが瑕疵になるケースはまず考えられないのではないかと思う。むしろ土地改良事業そのもの、例えばいろんな種類があるが、用排水路をつくるとか、水路をつくるとか、農道をつくるとか、あるいは田んぼの区画形質を直すというようなことが土地改良事業であるが、そのことについていろいろ手続的な瑕疵、あるいは実質的な瑕疵があるということで争いになる。仮にその土地改良事業の処分が、いろいろ問題があって取り消されるといたしても、ゾーニングそのものとは何ら関係がない。ゾーニングは農用地区域としてふさわしいかどうかというだけの話である。

○そんなことはないのではないか。

○今のお話はその限りでは分かるが、土地改良事業の計画が合理的かどうかという場合に、そこのゾーニングが基本になる。あるゾーニングを前提にして、どういう部分にどれだけの投資をしようか、土地改良をどれだけやろうかということになると思うので、その基のゾーニングがもしおかしいということになれば、その土地改良事業計画自体がやはりおかしいということになると思う。

●土地改良事業計画自身は、ゾーニングの農振農用地区域を中心にやっていくので、そういう意味ではゾーニングを前提としてやっていくが、基のゾーニングが間違っていたというケースか。

○計画を争う訴訟を一般的に認めると、基のゾーニングが争われることになるということで御心配になっているわけだから、それはその計画がおかしいということが問題ではないか。

●それよりは、土地改良事業計画そのものを争っていただくとか、あるいはその上に普通の個人がハウスを建てるのは個別の問題だが。

○何か噛み合ってない。

□議論を整理すると、御質問は、土地改良事業計画の認可等の処分の要件として、農業振興地域の適法性が前提要件になっているのではないかという御質問だと理解している。今のは要件になっていないというお答えだと思うが、そうすると農振の計画はだれも、いつでも、どこでも争えないということか。

●そこに重点的にやっていくということなんで、そこだけでなければいけないという形にはなってない。

□農振に関する計画については、そこに瑕疵があっても、それは少なくとも土地改良事業のところでは争えない、瑕疵があっても争えないということか。そうすると、都市計画関係の、あるいは公有使用関係の計画が瑕疵があっても、それは一番最後のところで争えるというのが最高裁の議論なんで、そこで成熟性とか青写真論が出てくるが。今の場合、農振についてはどこでも争えないという御理解か。

●どういうケースが一番多く考えられるかというと、農振農用地区域のゾーニングに問題があって、実際に争いのケースが出てくるのは、農振農用地区域の中に区分されてしまった農地を転用したい、ここを宅地にしたいというようなときに、農地転用許可処分の可否を巡って争われるケースが一番多いと思う。

□それは対象になるのか。

●それは対象になる。

○論点は、基の計画が違法であるという場合である。後が違法だったら後で争うのは当たり前の話であって、つまり基の計画、例えば農業振興地域整備計画というのは、法律の10条によると基準が決めてあって、要件がある。例えば、この要件に合致してない違法な計画であるといって争うという場合、仮に後でそれは取り消されるという可能性があるとする。そのときに、多数当事者が関係するから、そのときに争わずに、もっと後の具体的な処分で基の計画を争いなさいというのでは、かえって逆ではないか。元々の計画が違法だという場合には、その段階で争わせた方が後々影響が少ないじゃないかという意見である。

●確かに早めにやれば、後々影響が少ないのではないかという御議論もあろうかと思うが、ただ今度関係者の数から見ますと、その計画の中であるAならAという土地についての、農地転用の問題のような形で顕在化してくる。

○そこの瑕疵を言っているのではない。基の計画に瑕疵があると言って、裁判になる場合の話を言っている。

●基の計画について瑕疵があるといっても、実際の訴えられた方の利害の問題は、結局どこの土地の転用であるとかという、そのゾーニングを影響してくる話だから、そこでそこに特化して救済、一番関心のある方から救済をしていくのが一番妥当ではないかというふうに思っている。

○それがここでおっしゃるような多数関係者への影響とか、公益達成の影響とか、停滞による国民の利便性への影響ということからすると、むしろ逆ではないかという質問である。要するに、基の根っこの計画が処分じゃない以上、つまり先行行為が処分じゃない以上、後行行為でその違法を争わせないといけないというのは憲法上の要請である。それは当然のことである。先行行為が処分なら違法性の承継がある場合には後ろでもいけるけれども、そうではなく、処分でないならもう後ろで争わせざるを得ないというのが大前提だから、そうすると、先行行為の計画のところが違法だったときの話をしているのだから、そこが違法だということを、その段階で争わせるのか、あるいはお尻の段階で争わせるのかというと、お尻まで待たせた方がいろんな人の権利に影響が少ないかというとむしろ逆だと思う。これが、一貫してさっきから議論されていることである。先の段階でやっておく方が、後々形成される第三者とか多数当事者の権利関係が、それほど熟してない段階だからまだ影響が少ないので、おっしゃるような趣旨で言っているのであれば、むしろ先で争わせた方がいいことになるのではないかということである。

●そういう議論はあろうかと思うが、ただその計画の中で全部ではなくて、そのある場所について結果的に取り消されるということになれば、あるAならAという土地についての転用許可処分を争っていって、それが取り消されるということになれば、その部分について瑕疵があったということになる。その部分についての瑕疵で話が進むのに、農振計画というのはある市町村一本で大体立てておりますから、その市町村にある農用地を持っている方、ほとんど全部に関係してきてしまうという形になる。また、農用地を持っていない方でも影響が及んでくる。
 そういう人たちの一般的な計画を前提とした、日常的なハウスを建てましょうとか、あるいは農協の投資をしていきましょうということが全部ストップしてしまうような、あるいは全部それが不安定の状態に置かれるよりは、それぞれの後の処分で争ったほうがよい。

○後行行為の段階で取り消されたとしたら、判決の効力で拘束なりで計画を立て直さなければいけない場合が出てきて、同じことではないか。

●後行行為で取り消されても、それは農地転用許可処分を争い、そこの中での判決の効力という形になるのではないか。

○計画の違法を理由として取り消されたらそちらに影響する。

□そこは行訴法の難問の1つである。

○議論をまとめる必要はないと思うが、今、御説明で挙げられているのは、個別の家を建てたいと、だけどそれが農用地に入ってしまっているというときに、ここは元々外してもよかったではないかという話である。私が最初に考えていたのは、むしろそうではなくて農用地指定を前提にして、大々的な土地改良事業を行われるというようなときの話で、それをどの段階で争うかということだった。お話を伺っているうちに、多少描いている例が違うということは分かったので、その個別の、ここはちょっと家を建てたいのでもともと外してほしいかったということであれば、それは何も全部ひっくり返す話ではないから、後から個別に争わせた方がムダがないということかもしれない。そこは分かるが、そうではなくて、この農用地の線引き自体がおかしい、全体として争いたいというようなケースであれば、やはりどうかというのが私の意見だし、おそらく他の方が考えておられるのも、そういうケースが典型的ではないかと思う。

●1点だけ申し上げると、土地改良事業の場合は、重点化である。だから、法律上の条件、農用地区域でなければ土地改良事業ができないとか、そういう形にはなっていない。要するに、投資の重点化という判断である。それから、農地転用許可処分や何かについて言えば、もう農振農用地であるかどうかはかなり決定的な影響を及ぼす要件になっている。

○そういう例でもいいので、計画自体の適否が争われて、もしそこが違法なら全体に影響するという場合だったら、おっしゃっている趣旨はやはり後でひっくり返るよりも、前の方がまだましじゃないかという矛盾点は依然として残る。

●個別に争われた方がいいのじゃないかと私は思うが。

○計画の段階で訴訟になれば、1つの大事である。後続行為段階で計画の違法を裁判所に言われた場合、それも大きな混乱になる。その混乱、どっちを避けるべきかという話である。質問者は、先に計画を争っておいた方がいい、後で混乱が起こるのはよくないと考えておられるが、農水省はそうではなくて、後の方で少々混乱があってもその方がいいんだというお考えだと思う。

□両方なかなか難しい問題があると思うが、そういういろいろな混乱があるならば、きちんとこちらの農業地域に関する法律等々において、争う時点はここであるとか、混乱が起こらないような法制というものは考えておられないか。我々の方でよく話題になるのは、公共事業計画訴訟をどうするかとか、あるいは都市計画関係のものもあるが、そういった1つの事業法の中に訴訟手続、あるいは争い方も含めて書く。一種、輪切りにしていく。例えば計画の部分は、この段階で早めにやってください。あとは違法性の承継は認めませんと、そういった輪切りの仕組みも考えられるが、そういうことはお考えか。

●今、御指摘のあった土地改良事業みたいな、公共投資のいろんな事業計画については、その計画の認可とか、そういう段階で争える道、あるいは行政不服審査や何かも含めて、規定の整備はされている。それと同時に、今度は農振の計画の方は、これは実は農振計画自身は市町村が立てて、市町村が議会の議決を経て定められる市町村の基本構想に即して定めるとともに、集落座談会などで住民の意向調査を行うという形を取っているから、どちらかというと市町村行政が噛んだ形で立てていくという構成になっているので、そういった中でいろんな利害調整が行政計画として調整されていくというふうに私どもは理解していて、司法手続の方は個別処分で争っていただくという法制の方がよろしいんではないかというふうに思っている。

□個別処分のときにも周りの方の事業計画の法制が問題になるということは先ほどから御指摘だし、それは説明の方もそういう場合もあり得るというお話だったので、そういうことであるとすれば、きちんとした計画法制でつくってみることも一つ考える余地があるかなと思った。

○全く法的なことではないが、先ほどの御説明で、環境の問題ということに関して、それは環境行政の問題だというふうにおっしゃられたが、この時代に農水省が行う事業も、すべて環境への配慮なくして行えないような実態になっているということも、既にいろいろ事例もあるし、何かその辺のところが引っかかったので、もう少しその辺に関してのお考えを確認させていただきたいと思う。

●全部が全部環境行政の問題だといって、そっちに押し込んでしまうということではなく、多少不正確だったかもしれない。例えば、今、幾つか例を申し上げた、土地改良事業計画、実際に公共事業をやるための事業計画で、そういった場合は当然環境への配慮ということも事業要件に入れていて、そういった利害も調整しながら進めていくというようなスキームに、特に近年改めて、法律に明定する形でやっている。
 ただ、農地法の3条の農業者同士の権利移譲の話であるとか、あるいは農地転用の話であるとか、そういったものは、本来的に問題にしている保護法益が、農業経営を行う方の権利利益の保護とか、あるいは農地の農業上の利用の保護という観点で行っているので、そこに争いやすいからということでかなり離れたところから、そのエリアにいらっしゃらないような、あるいは少し離れたようなエリアの住民の方が起こしているケースがあり、そういったようなケースを想定すると、妥当ではないのではないかということである。

□ただ畜舎が横に建てられては困るなという感覚があって、それは今のこの段階でつかまえるのは一番つかまえやすいなというふうに、国民の方は思われると思うので、その辺どういうふうに説得されるか。ただ困りますでは困る。

●農水としても、例えば畜産糞尿の処理の法律というのは別途立てており、そちらの法律のルールにのっとって、まだ経過期間中で、来年の秋から施行されるが、そういうような法制も導入して規制なりをかけていく法制は別途講じている。

□そういう1つのシステムとして御説明いただかないと、これだけだと何だか、あとは環境行政なんでこちらは知らないという話になってしまうので、そういう誤解を受けた。

●失礼した。

○土地改良事業については、周辺住民への環境配慮が明文であるということか。

●はい。

○それは言い換えれば第三者か。

●周辺住民というか、環境問題への配慮ということである。

○そういう意味で、環境を理由として土地改良事業計画区域外の住民が争う場合には、原告適格がありということか。

●そこは、すごく微妙な問題だと思うが、全く関係ないところの方までは想定してないと思う。

○関係ないのではなくて、その環境を理由とする理由がある場合の話である。

●理由がある場合というのは、一般的、抽象的におっしゃられると分からない。

○およそあり得ないと考えるのか、あり得ると考えるのか、どちらか。

●そういうお尋ねだとお答えしにくいが、その地域に実際に住んでらっしゃって、直接的に因果関係があって環境の影響がある方との関係においては、調整する仕組みになっている。

○一方でこの農地転用許可で例に出されているケースでは、これは農地法の趣旨なりの方に、要するに現在の法律上保護された利益説を前提にしても、周辺の住民の環境については、保護法益とはしていないという解釈か。

●住民の方ではなくて、実際例えばAという農地が不法に廃棄物の投棄が行われてしまったというようなケースを考えると、その周りにB、C、Dという当然隣接した農地がある。あるいは、そこの水路を一緒に利用している、下流のX、Y、Zといった農地があり、それは当然農地転用許可処分の際に視野に入れて問題にしていくということだと思う。

○そうすると、転用許可の相手方以外もそういった影響を受ける人は原告適格があり得るのか。

●ちょっと一点訂正させていただく。転用許可処分の際には、周辺農地の権利者の方に配慮するようにというのは法律に書いてあるが、原告適格に関しては、かなり古い時代の最高裁判例では、原告適格は周辺農地の権利者の方はないという判例もあるようである。

□あとで教えてください。

●今いろんな行政訴訟法の改正の方向というのは、正直私も不勉強なせいもあってよく理解してない部分があろうかと思うが、実務的にこういった問題点があるということで、一切何もかもこれがだめという趣旨で申し上げいるわけではないので、そこは是非御理解いただきたい。

□そこは理解しているつもりである。

⑥法務省からの説明(□:座長、○:委員、●法務省、■事務局)

資料2(法務省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○4ページの2−2、「審理を充実・迅速化させるための方策の整備について」だが、「全体について」のところで、民訴と情報公開を挙げているが、情報公開は一般的な話であり、民訴はもともと対等の民々を前提にしたもの。今議論しているのは行政訴訟であり、握っている情報に基づいて何らかの処分をした行政の違法を争う訴訟を前提に考えているわけだから、情報公開法とか民訴があるからというのは、余り説得力がないと思うがどうか。

●それがオープンになることによってどんな弊害があるのかという観点から考えると、これは出してはまずいとか、出さなくてもいいというのは、同じような平面があるのではないかと考えた。役人の受け止め方かもしれないが、各部局の者は、そういう感じだった。

○基本的には処分の違法性が訴訟の対象であり、その処分をしたのにはそれなりの理由と根拠、証拠などがあるわけであり、実際の訴訟をしていると、本来はすぐに出てきていいものがなかなか出てこないもどかしさがある。裁判所も同じ感じを持っているのではないか。だからやはり民訴の場合と違い、行政訴訟特有のそういったものをすっと出させるような制度づくりが必要なのではないか、という意識で議論しているが、どうか。

●ここはもう各論の議論だろうと思う。我々も、法務省の所管の中で、出せないとうものがそんなにあるわけではないと思っているが、難民認定の事象で外交機密というのを入れた。また、伝聞だが公安審査委員会の会議録は、確かに中身でちょっと困るというのがあるようだ。
 だから我々ももう少し各部局に今の趣旨を伝え、行政処分をやったからにはそれが正しいことの説明義務があると思うので、なおやはりこれは出せないというのが、どんなぎりぎりのものがあるのか、検討してみる。

○そういう(出せない)ものがあるだろうということは自分も認める。ただこの難民認定と公安審査のものは、資料を見るのは一切だめみたいな印象だが、そうでもないわけだな。

●一切、ということではない。

○分かった。資料の最後に書いてある刑事記録だが、刑事記録自体はそうだと思うが、ここで問題になるとすれば、刑事記録を行政処分の何らかの根拠に使ったという前提での話だから、行政処分の根拠に使っておきながら、刑事記録だから出せませんというのはおかしいのではないか。

●刑事記録が基になった行政処分の具体例の説明については、その準備ができていない。。

○5ページで、「内閣総理大臣の異議の制度を廃止し、かつ執行停止決定の執行を一切停止することができない制度とした場合には、公益を著しく害することになる事案が生じるおそれがないかの検討が必要である」という書き方をしているが、行政権の長としての内閣総理大臣ではなく、司法制度の中で裁判官がきちんとコントロールできるようになっていれば、内閣総理大臣の異議にこだわることはないという趣旨か。

●個人的にはそれでもいいのではないかという気はする。特に重大な公共の安寧とか安全にかかわるものについて、どこか一つ遊びをつくっておいていただきたいという感じだ。

□それが内閣総理大臣でなければいけないということではないという話だな。

●個人的見解だが。

○10ページの出訴期間の部分だが、証拠の散逸という観点で出訴期間を考えると、民事の時効はおそらく証拠の散逸ということと密接な連動関係があり、その観点からすると、証拠の散逸がない程度の期間は問題はないという見解だと理解していいか。要するに、散逸しなければ提訴されても受ける用意はあるという意味か。

●難民で出てくる人というのは、非常に特殊な状況で出てくるので、難民認定処分に限ると、短期間の間に証拠が散逸するということがあって、そこは何とか見てほしいという意味だ。一般の証拠散逸の議論で時効のことはよく分かるが、そこまで広く考えた話ではなく、難民の場合にはこういう特性があるということを理解いただきたいという趣旨だ。

○難民は7日間でないとまずいわけか。

●難民認定の場合には不服申立期間が7日に短縮されているので、そういう制度になっているという趣旨だ。

○ということは、難民についてこの程度の期間が確保されていれば、とりあえずは結構だし、あと一般則で言えば、この証拠の散逸というのが一番の関心事であるということか。

●そうだ。それから司法試験の方はちょっと違うが、保存の関係がある。それぞれ各論でばらばらに書いてある。

○保管の文書の負担ということか。

●負担ということだ。

○今の点だが、難民認定が、専ら海外において生じた事象を対象にしている特殊性から、証拠が散逸して事実の把握が困難になるから7日にしているという点がよく分からないが、やはり7日にしておかなければいけないということは証拠の散逸という面からあるのか。

○難民認定については、特殊な事情として考えるべきは基準時の問題だ。難民のように非常にいろんな情勢の変化でその人の立場が変わってくるものについて、余り長い期間があると、昔処分をしたときには間違えて難民でないという不認定処分してしまい、それを取り消したけれども、今は政治情勢が変わって、この人はもう難民でないということになると、余り意味がない訴訟になってしまう。それはなるべく早く区切りを付けていくという、そちらのプラスもあると思う。

○それはよく分かるが、それは証拠の散逸の問題ではないな。

●全然違う観点からの指摘で、帰ってよく入管から聴取して勉強したい。

□今の点、疑問に思ったのは、証拠の散逸といってもまだ手元にない証拠がなくなっているわけで、処分をした後で調査するのが難民の認定のやり方なのかという感じもする。普通はかなりきちんとした調査をして処分を打って、むしろ理由の変更ないし理由がいいか悪いかという議論をするが、この議論だと、まず処分をし、それで後で不服があればその段階でまた証拠を一生懸命集めよう、その証拠がなくなると困る、という理屈は、あまりやらないので、おもしろいと思った。

●難民側が訴えを起こすときに、出訴期間がずっとあると安心してしまって、ゆっくりしている間になくなってしまうかもしれない、そこの問題だ。本当に真剣にやる人だったらすぐやるだろうということだ。

□我々の論点に全くなかった点なので、大変興味深く伺った。

○ただ、本人としては多少証拠が散逸すると心配してもらうのはありがたいが、やはりじっくりと提訴の準備したいと思う人もいるかもしれない。そういう人に対しても、早くしないとお前は無くすに決まっているからというパターナリスティックな考慮で短くするというのは何か引き倒してしまうような気もするが。

●各論的に考えられるところで、ちょっとユニークなものを出してみたということだ。
 もちろん、当局側というのは、原告の主張を待って、その主張に基づいて反論できる資料を集めるが、それが長く経つと、海外であるがゆえに集めにくいというところはある。訴訟が起こり、主張されている点について最初に処分時でそれをきちんと固めているはずではあるが、もっと反論できる資料はないかと、本国に問い合わせてももう時間が経っていてないとか、そういうことになると外交ルートで資料集めるのも大変だ、ということはあるということだ。

●結局、原処分の際にいろいろ難民側から主張が出て、それに基づいて一時的な処分を行うが、その後で不服申立が行われヒアリングを行うと、別の事情をいろいろ言い出してくる。そうなってくると、当初の早めの段階であれば確保できた証拠が、戦争その他いろいろな情勢によって散逸してしまう可能性もあるという特殊性がある。

○特殊性は分かるが、常識で考えて、7日で無くなってしまって困る証拠はどんなものがあるのかという率直な疑問がある。3か月だったらまだ分かるが。

●反論する資料ということで、その人の身分関係の資料であるとか、例えば向こうで反政府活動をしている、だれだれのセクトに属していたとか、それで弾圧を受けていたと。そのときにその構成員のメンバーの資料であるとか、そういったものが取りにくくなるとか、そういう問題もあるという気がする。

○原告適格について、試験の不合格者の母親とかロースクールの学長というのは非常に面白い例だと思うが、今までの最高裁判例の中でも多少意見は分かれるかもしれないが、例えば里道の廃止のように、法律上保護された利益説の端的な応用からすると明らかに入らないようなものも原告適格ありと判断されている例があるが、そうすると今までの最高裁判例で、政策的判断の当否はさて置くとして、原告適格ありとしていて、しかし非常に直接的な法律上保護された利益説の応用では読めないものを無理して読んでいるようなものについて、素直に読むために条文を変えるとしたらどういう書き方があると考えるか。

●まだ分からない。

○そういうことこそ、法務省なり、プロの集団から建設的な意見をいただきたいと思うが。

●ここで逃げるつもりはないが、行政処分をしている行政庁としての意見を聞かせてくれという趣旨だったので。それはもちろん、また別途いろんなスタッフがいるので考えたい。

○21ページの不服審査前置のところの書き方だが、行政と司法の合理的な資源配分の観点が大事だというのは全くそのとおりだと思うが、何でもかんでも裁判所が引き受けるのでは合理的ではないということであれば、その行政による救済、不服審査の方にそれなりの資源を配分すべきである、そこできちんとした制度をつくり運用して、その司法の機能を代替、そちらの形でもって国民のニーズを満たしていくというのがいいということは分かるが、それは予算配分しろという話であって、不服審査前置にしろという話とはつながらない。むしろ、不服審査前置の制度をよくすればそちらに自然に利用者は行く。よくしないでおいて、しかし裁判所は手いっぱいだから、そう簡単には来るなというのはやはりおかしい。

●そういうつもりで書いたつもりはない。これは抽象論で書いている。今回の答えとしては不十分ではあるが、予算のことを言っているつもりはない。今、司法制度改革で議論されているADRのような発想だ。裁判所で本来やるべきものと、そうでなく処理できるものがあるだろうという感覚だけを書いている。
 今の行政の不服審査前置が本当に正しく機能しているかは、今予算がないから、人員がいないから、行政改革されているから機能していないんだと言うつもりは全然ない。そこは機能させなければいけない。そこが本当に最初の処分を追認するようなことばかりやっているとすれば大きな問題であり、そこはもちろん我々も見直していかなければいけないと思う。

○むしろ精神論ではなくて、予算をたくさんとっていただきたい。

○弁護士報酬の敗訴者負担だが、要するに民事と同じでなければいかんと読めるが、本当にそうなのか。優越的地位で非常にリソースのある側が行った処分が行政事件であり、しかも、勝訴・敗訴の予測が民事と比べるとおそらく一般的にはつきにくい、訴訟要件もあるし裁量の広さもあってつきにくいと。そういうときにイコールフッティングの意味で少し別の扱いをする意味があるのではないかという議論があったわけだが、それは真っ向から否定するのか。

●全然そんなつもりではない。まず民訴の方で司法アクセスの方で議論しているので、それがどういうふうになるかを見ないと、それを飛び越して法務省としては言いにくいということだ。

○司法アクセスの方では、行政事件について、ここで出たような議論を踏まえて実質的に議論していただいているのか。

●それはよくは承知していない。

○だとするとなおさら、行政訴訟については一緒くたにするのではなく、特殊な要素があるのであれば、それに応じた検討はしてもらう必要がある。

●はい。

⑦外務省からの説明(□:座長、○:委員、●外務省、■事務局)

資料2(外務省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○4ページに仮の救済関係のことが書いてあるが、例えば旅券の発給について日本国の利益または公安を害するかどうかについて、これは本当に調べようと思えば、いろんな資料を集めて判断しなければならないわけだが、一番最後に書かれているのは「一定の範囲の資料を基に、一定の時期までに判決を行うような種類の訴訟形態」ということを考えたらどうか、というのは仮の救済ということで確たる根拠もなしに旅券発給が仮にされてしまうというようなことでは困るということだと思うが、そうするとこの一定範囲の資料を基に、一定の時期までにというのは、普通の裁判所の判決を可能にするほどの証明がなくても結論を出すということだと思うのだが、その場合にはやはり本当はもっと調べないといけないのだけれども、一定期日までに結論を出すということになると、その場合の立証責任の問題というのは出てくる。よく分からないけれども発給すべきであるらしいから発給してしまえというのか、逆によく分からないから、これは本当は発給すべきなのかも知らないけれども、安全を見込んでやめておこうという判決になるのか、そこまでお考えになって書いているのであれば、説明をいただきたい。

●これについて具体的にどういうものがあるのか、どちらに立証責任があるとか、具体的な類型が確定できるかというと、なかなか難しいだろうと思う。旅券を発給する特定の目的、例えば渡航目的というのがあって、国際会議とか何とかに行くためだということで、そこを徒過するともう意味がなくなるというような期限限定的な要請があるという場合に、どういうことが考えられるかということだが、イメージとしては、そういうある種の具体的なニーズがそこにあって、それをどう救済するかというニーズが、一般論ではなくむしろ具体的に明らかな場合に、更にそういう仮の救済の可能性をどう考えていくかということがより現実的な問題になるということだろうと思う。

□その場合には、内閣総理大臣の異議の制度は要らないということか。それについて何か特別な考えはあるか。この場合は執行停止は効かないので、仮命令という形になると思うが。

●そういう考えは今のところない。

○3ページで、出訴期間の教示は経験上不要と書いてあるが、もう少し説明してほしい。
 また、出訴期間は3か月で十分だと書いてあるが、これも外務省の仕事との関係で具体的に説明をしていただきたい。

●これまでの旅券発給処分に対する取消しの例を見ると、大体、以前の段階で申請者との間でやり取りがあったりとか、そういうことをしていて最終的な処分を待って、すぐ訴訟に関わるというような事例が多かった。それでここで一応経験上というふうにさせていただいた。
 もう一つの方は、最終の正式な処分が出るまでにある程度の主張も出ているし、最終的に処分してから3か月であれば、裁判への対応なども判断でき、かつ自分の主張もまとめられるのではないかということだ。

○発給処分の前にやり取りがあるという話だが、それはどういうことか。

●それは事実上、行政側との電話のやり取りとか、あるいは都道府県の窓口に対して早く出してくれとか、そういうやり取りの過程で、現在、審査中であるとか、あるいは審査が必要なのでこういう資料を出してくれとか、追完してくれとか。

○それは普通、許認可申請すると、拒否処分が出るかどうか分からないわけで、旅券について言えば、我々がもらった経験から言うと、全然、実際に受け止るまでどうなるか分からない。しかし、今のおっしゃったケースでは、申請をした人が既に自分はひょっとしたらもらえないのではないかというのを分かっているということか。

●これまで大体、国益、公安に関係するような方々が多かった場合もあるし、あとは外務大臣として規則として定めるような名前の書き方を、自分はこれは気に食わないと、別の書き方でしてくれというような訴訟があったので、そういう限られた経験の中からの話ということで御理解いただきたい。

○今の質問に関して、取消訴訟が起こったものでは事前にいろいろやり取りがあるということだが、それは事実上のものだから法的保障はないのではないかというのが1つ。
 それから、起こったものについて事前のやり取りがあったということは、そういうことはひょっとしたらあるのかもしれないが、しかし取消訴訟を提起しなかったという例もあるはずだ。提起しなかった理由は、よくよく考え上で、これは訴訟では負けるに決まっているからやめたのか、あるいは取消訴訟制度について無知であったために、この3か月の出訴期間を逃したのもあるかもしれない。とすると、その後者のような場合については、この理由では保護していることにはならないのではないかということが2つ。
 それから、3つ目の法的安定の観点というのも、3か月あれば十分だとおっしゃったが、逆に聞きたいのは、その3か月が仮に半年とか1年に延びたときに、外務行政に何か重大な支障をもたらす事情があるかということだ。

●旅券発給処分で仮に拒否処分になった場合は、通常は不服審査の手続をその理由書の中で案内しており、通常60日ということでやっている。そういうことで不利益な処分を受ける人に対して、一応そういう形では公明正大にやっている。
 それが出訴期間が6か月、1年になった場合に、法的安定性が損なわれるかということについては、一応発給しないということなので、その辺が長くなるのは、逆に言えば処分を受ける側の人に不利益であって、官庁側の不利益ではないと思う。発給拒否処分については、一応、公定力というか、もうそういうことで定まったものだから、そこが延びることによって安定性が損なわれるということはまずないと考えている。

○はっきりしたいのは、取消訴訟を提起しなかった人の中には、出訴期間等について十分には熟知していない人もあり得るということは想定できるのか。

●期間を徒過した場合、要するに知らずに過ごしたのか、それとも、主体的に判断をしてもうしないということなのかということだが、そういうのはあるかも知れないが、そこまでは自信持って言えない。

⑧総務省からの説明(□:座長、○:委員、●総務省、■事務局)

資料2(総務省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○冒頭に、基本的な見直しの考え方については、望ましいと認識している旨説明をいただいた。
 しかし資料のその後をずっと読むと、全面的に反対であるというのがほとんど全分野にわたって展開されている。一つだけ出てきたのは被告適格の見直しについては結構だけれども議会だけは困る、というのがあったが、それ以外はほとんど全部反対だ。
 総務省としては、今回の改革の論議の中でどういった点を改革したら、この基本的な見直しの方向に合致すると考えているのか。

●総務省といっても大きな機能がいろいろ分かれており、一応その中心として地方公共団体の面倒を見ている部分を中心にお話申し上げた。地方公共団体というと立派な団体があるようにとらえられるが、個々の団体を見ると非常に小さいところもある。他方、現場をいろいろ経てきている経験から、なかなか相手とのやりとりも大変な部分、それによって職員が大変な苦労をするといった部分も多々見てきているので、地方公共団体に関して同じ議論をしていくときには、かなり支障が出てくるのではないかと申し上げている。

○第2−1−(3) 、5−(4) 、8−(1) という3項目については触れていないが、触れてない部分については賛成であると受け取ってよろしいか。

●特段、意見はない。基本的には、大きな異議はない。

□この関係で申し上げておきたいのは、地方公共団体としてもいろいろあるので、一律に霞ヶ関が対応しなければならないことをそのまま地方公共団体に適用するとなかなか難しいことがあるということである。
 そういった地方公共団体がいるということは配慮してほしい、ただ、この改革案全体に霞ヶ関にいるものとして全部反対だという趣旨ではない、と、私は理解をした。自分もその説はかなり説得力があると思うが、他方、処分の相手方の権利利益の保護ということを考えるときに、同じ法律に基づいて同じ公権力を行使しているときに、規模が小さいから相手方が我慢しなさいということにはなかなかいかないところがある。むしろ総務省にお願いしたいのは、地方公共団体の法務能力をもっと充実させるということだ。権力あるものはきちんとその権力を行使し、権力の行使に異議申立てができたらば、それに対してきちんと答えるのが権力者であって、100 人であろうと200人であろうと団体を持って統治権を行使している以上は、それがお作法であるということを、まず基本的にしっかり打ち立てておいてから話をしていただきたいと思うので、ひとつよろしく。
 法務能力の研修等々もやっておられると思うが、自分が見るところ、そんなに真面目にはやっていない。

○数百人の団体というのは本来、今後整理されるべきであろうと思うので、その現状を前提にして法務能力がないと開き直られては困る。
 現在は結構、地方議会が被告になる件数はあると思うが、現在、どういう体制で応訴しているのか。議会そのものに能力があるのか、それとも庁の部局に何らかの形で頼っているということなのか、それによって今後どうすべきかということも変わってくるかと思う。

●自分の経験でしかものを言えないが、議会サイドで物事が起きたときには基本的には議会の事務局が中心になって対応しているので、訴訟に関連したものが起こった場合でも、それが中心になると思う。
 ただ、法律上の相談などは、地方の大都市と言えども行政訴訟に通じていて相談に乗っていただけるような弁護士がなかなかいないということで、どうしても同じような方に相談されていると思うが、対応の主体としては、議会は議会サイドで対応していることが多いと思う。

○ただ、結局は弁護士に頼るのだとすれば、基本的に応訴の責任をだれが負うかということで、それを長に負ってもらっては困るということかと思うのだが、そこは内部的に団体を被告にしておき、しかし議会の処分については議長が最終的に、中では責任を負うということは組織的には可能ではないか。

●行政いわゆる執行サイドの中にも独立性の高い行政委員会は別途あり、そこは行政の執行サイドということでまとめることはできるかなとは思うが、議会となると、長とは機能が全く違うので、別ということで申し上げている。

□もっと別の論拠があれば、また出してほしい。

○基本的にこういう改善の方向が望ましいということであれば、どう変えれば建設的な改革提案になるのかという、むしろ対案を後ほどで結構だから是非教えていただきたい。
 そもそも検討会が提案した個別の案については全部異議があるが、基本的方向は支持するというのであれば、どういう案であれば基本的方向に合致するのか具体的に示してほしい。これでは議論はかみ合わない。
 もう一つ、自治体の規模が小さいと大企業よりも能力が劣るし情報量も少ないではないかという議論は、行政が少なくとも法治国家の担い手で、しかも権力処分について優越的地位で処分を発動するという立場にあるときに、規模が小さいところだから、ちょっと大目に見てよというふうに、おっしゃりたいようにも見えるが、それは法治国家の在り方として本当にそれでいいと思うのか。規模が小さいところだったら法治国家原則をゆがめてもいいのかというと、むしろ逆で、規模にかかわらず、やはりきちんとやっていただくのが前提ではないかと思う。
 個別項目についてだが、5ページの審理迅速化の方策だが、これも広範な資料提出は適当ではないとだけ書いているが、理由がよく分からないので、広範な資料提出をするとどのように自治体行政や総務行政に具体的な支障があるのか、後ほどで結構だから教えていただきたい。
 執行停止についても、仮処分に類する手続で執行を阻止されることは法的安定性を害して適当ではないということだが、これは要件の定め方なり、設計の仕方によるのではないかという気がする。
 また、例として書かれている第三者の建築物撤去だが、どういう場合にもここに書かれたようなことは起こり得るわけであり、それはまさに仮の救済をどのようなときに認めることにするのかという要件なり効果なりの問題ではないかという気がするが、そもそも論で本当に一切否定されたいというお考えか。
 11ページで、出訴期間や排他性の話について、却って国民の権利利益に反する結果となって妥当ではないということだが、後ほどでも結構なので具体的に何が支障になるのか教えてほしい。
 また、条例で決めることになったら出訴期間を定めることができなくなるというのは、これも意味がよく分からないので、要するに条例で自分自身が処分の根拠法令を定めるときには、自治体というのは自分で出訴期間を決める能力もない程度の団体なのかということだが、どういう意味かよく分からない。
 14ページで、行訴法9条は維持すべきであるということだが、これも例えば現在の最高裁判例などについて9条の解釈として行われているものは、すべて妥当だという政策判断の上でのことなのか、お聞きしたい。

●私どもも、自治体の規模について大目に見てくれと甘えているつもりはなく、実際に真に救済が必要な方の救済を図るという点には異論があるはずもないところだが、他方で、さまざまな改革の結果、現実問題として、大企業が次々と、しかも似たような訴訟をあちこちで起こし、といったようなことで、あちらがプロフェッショナルで、こちら側は素人ということは、現実問題としてはあるという中での話ではあるということで、そういった中で私人の権利救済と行政等のバランスをどう取っていくかというところで自分どもも悩んでいるところだ。

○行政庁と訴える側の対等性に関して、大企業に対して自治体が非常に小さい、というケースよりも、逆の、要するに国とか非常に大規模な自治体に対して零細な個人や零細な事業者が処分を受ける、というケースの方がむしろ圧倒的に多い。そちらの方についてはどう考えるのか、教えていただきたい。
 ここで対等な立場にあると書かれていて、要するに対等で敗訴した以上はその判断は司法の判断なんだから、ということだが、現在、もちろん対等の側面もあるかもしれないが、場合により、あるいはまた多数のケースでは、行政と訴える側は必ずしも対等ではない、情報量が違う、また予算も違う、更に訴訟要件や本案についても、現在の要件というのは必ずしも判決の予測可能性が高くないとか、いろいろな制約があるということを前提にしているが、ここで対等と断言するということは、そういう制約条件は制約にはなっていないという判断なのかどうか、教えてほしい。

○7ページの義務づけ訴訟について、ここでは行政庁が判断する前に司法が判断するのは例外であるべきだと書いてあるが、義務づけ訴訟の問題になっているケースの多くは申請に対して拒否処分がされて、それに対してちゃんと許可をくれとか、そういう話の方が多いわけなので、この理屈はそれも含めてのことなのかどうか。そっちは一応行政の判断は既にあるのでちょっと違うかと思うが、そこは立場がどうか。
 10ページで、行政立法を直接訴訟の対象にするのは適当ではないとあるが、地方自治体の場合にも条例と規則とで同じなのかどうか、やはり条例の方が基本的であり、かつ政治的な判断に重要な判断は条例という形になるのに対して、規則の方は必ずしもそうではないのではないか。先般の一括法以後、特にそうなっているのではないかという気もするので、その辺もちょっとお考えいただきたい。
 また、出訴期間の関係で、11ページ以降、やはり行政の便宜ということも言っているが、是非伺っておきたいのは、情報公開法関係もあるが、文書管理の保存期間について出訴期間の考慮があるのか、ないのか。出訴期間が変わるとすれば、文書管理規程の保存期間の定めも見直すという関係になるのか、ならないのか。
 最後の23ページの不服審査前置の関係だが、専門機関を設けている場合には、そちらが関与すべきであるということはかなり説得力があると思うが、そうでない一般の場合にあえて裁判所への道を閉ざすというか、遠回りさせることの政策的合理性の説明はこの文章には余りないように思うがどうか。

□この際ちょっと言っておきたいのは、10ページで条例を訴訟の対象にすると議論が蒸し返しになるというが、いわゆるインシデントの訴訟は認めるわけだな。処分が条例では適法だが、条例自体が違法だということはあり得るわけで、そうすると当然に訴訟の対象になるということなのか、およそ条例は訴訟の対象にはしないという、そういうすごい考えなのか、それは多分そうではないと思うが、そうするとこの議論は余り通用しないということが1つ。
 もう一つ、この出訴期間について、条例でどう規定するのか。委任が必要なのか、仮に委任がないと出訴期間というのは、能力の問題ではなく、法制上の問題としてどうなのか。これは地方自治法の所管の省の任務の一つでもあろうかと思うので、ちょっと法制的なことを考えておいていただきたい。自分も大変気になっているところだ。

⑨厚生労働省からの説明(□:座長、○:委員、●厚生労働省、■事務局)

資料2(厚生労働省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○9ページの出訴期間について、既に長期間営まれてきた受給者の生活が突然不安定に置かれるという事態も考えられるという表現で記述しているが、この「既に長期間営まれてきた受給者の生活」というのは大体どの程度ぐらいまでだったらと考えているか。

●おそらく、年金額は幾らぐらいであるかとか、その年金が実際に家計の中において、どういうウェートを占めているだろうとか、そういう総体的な関係で決まってくるだろう。

○余り長期間になるとこういうことが起こる、とおっしゃっており、それはよく分かる。ただ、1年ぐらいというのも案として出しており、その辺りの御意見を求めている。

●私どもが懸念しているようなケースについて、一律に何年ないし何か月であれば、その問題が起きないというのは、おそらくお答えできないだろうと思う。

○9ページの意見は、出訴期間が廃止された場合を前提に意見を書いているのか。

●5年とか10年とかとなった場合も同様のことが起こり得るということで書いた。

○5年、10年は考えていない。例えば1年に延長することについては、これは批判、反論にはなっていないと理解していいか。

●例えば1年だったときに全く問題がないかどうか、自分の口からは申し上げられない。

○ここに書いているのは出訴期間の廃止を前提にした主張ではないかということだ。

●廃止された場合には、まさにこのとおり、一番顕著な例が出るだろうということだ。

○現在、3か月の出訴期間の中でこういう年金の給付等に関わって、ここに書いてあるような受給権を争って出てきたという事例はかなりあるのか。

●詳細の個別具体的な例まではちょっと説明できないが、皆無ではないようだ。

○4ページ、5ページで、仮の救済につき、仮の救済がなされたときの弊害を縷々書いているが、逆に仮の救済がなされなかった、すなわち何らかの意味で処分が維持された場合の弊害ということも反面的には発生するわけだが、そちらとの比較考慮についてはどう考えるか。
 例えば、薬害エイズの問題で、加熱製剤の認可について、もし仮の救済があって早く出回っていれば不幸な人たちを随分避けられたかもしれないということもあり得るわけで、仮の救済をできるだけ認めないことが常に公益に合致するかのごとく読めるのだが、本当にそうか。

●薬害エイズのような個別な判例については、コメントする立場にないので遠慮するが、仮の救済をやった場合に、プラスの面とマイナスの面と両方出てくることは否定するつもりはない。
 ただ、「主な検討事項」には、そういった仮の救済についてのマイナス面、デメリット面について、例えば私どもが所管する行政に当てはめてみた場合に、十分な判断をするための材料があるかどうか自信がなかったので、その意味でデメリットはこういう面もあるので併せてお考えいただきたいとお伝えしたつもりであり、プラスの面があることを否定するつもりはない。

○重婚的な内縁関係にある場合の遺族年金の給付の受給権が争われ例で、裁判所が、受給権者の認定が間違えているということで取消判決をし、その訴訟が確定した場合、それからどのぐらいの間に、本来正しく認定された者に対する具体的な受給決定、給付が現実になされるのか。

●2つに分けて考えていただきたい。
 1つは基本権そのものの問題は、権利が発生した時点に遡って行われるので、問題ない。
 実際の支払の問題については、ケースによってすごく異なってくるだろうと思うが、普通に請求がされて年金が支払われるようなケースでは、大体、よほど難しいことがない限り、請求があってから3か月ないし4か月程度で、請求を窓口にしていただいて、それを記録上確認をして、年金額を計算して、それが支払われる。支払というのは、基本的には後から払うものは随時、定期で払うものは定期で、というのは時期の問題があるので多少幅はあるが、承知している限りでは請求書類が出されてから3ないし4か月で支払いができる。

○しかし、そもそも請求書類を当初だしている。それに対する拒否処分があって、その取消しを求めているという形ではなかったか。

●前に出されたものが確認できるのであれば、その判決が確定して、判決は具体的にこういうことで確定したという通知をいただき、そこから具体的な事務をすることになると思う。

○それは短い期間でできるのか。

●ただ、その前に、裁定をするために、機械が中心になって一連の作業するが、権利の確認から何からという作業を、例えば2つでてきたものを両方並行してやっていて待っているという形ではないから、最初にいただいて裁定請求をした方の作業が終わっていれば、こちらは言わば預っている状態になり、そこから事務を始めなければいけなくなるので、そこから3、4か月は少なくともないとできないと思う。

○行政立法、行政計画、通達への取消訴訟の拡大は反対という意見だが、段階的な行政決定で後続処分に処分性がある場合、後続処分で、先行の計画なり行政立法なりの違法が問われるということは今でもあり得るが、先行処分の段階で争わせることにし、後から蒸し返されて全体がひっくり返るのを防ごうという考え方については、反対という意味か。

●いろんなケースがあるだろうと思う。幸いにして今のところ日本ではこういうことで大騒ぎしたことがないから、そういうケースについて、今、指摘のあったようなケースがどの段階で、そういうことがひっくり返せるか、あるいは問題が生じないかというところをなかなかイメージしにくい点はあるが、確かに、ある時点できちんとストップがかけられれば、むしろその方が色々な意味での国民的な不利益が小さくて済むだろうというケースはあり得ると思う。
 ただし、それをどこでどのように線を引くことができるかは、例えば個別の行政法によってもケースが違うであろうし、もっと極端に言えば、同じ法律の中でも、言わば予想される被害の大きさによって違いが出てくるというケースがあり得るだろうと思うので、なかなか一律に判断できないのが正直なところだと思う。

○そうすると、この意見は、現在の厚生労働省所管行政のいろんな処分で、今の段階の処分性より早めるのが一律に不適切だという主張ではないということか。

●そこについてコメントしているつもりはない。

○こういう例については問題だという、具体的な限定的な例として言っているのか。

●逆に言えば、その処分性を早めること自身に問題がないとまで言える自信もない。「こういうケースについては我々は問題だと思う」ということ以上のことは申し上げられないという意味だ。

○具体的なことはともかく、処分性が早まることで、後での混乱を避けられるというメリットを一切否定されるのかどうかという点だが。

●一般論としてそういうケースがあり得るだろうことは容易に想像できるだろうと思う。

○12ページの弁護士報酬の敗訴者負担だが、この国民の負担増という理由は、およそ行政訴訟について、今よりも訴えをやりやすくさせようとか、あるいは活性化させようという、およそ司法制度改革審議会で課題として与えられている任務を果たそうとすると、何らかの意味で司法コストなり、応訴コストなりが高まって、国民に負担増が常に高まる方向にこそ行け、逆の方向というのはあり得ないわけで、こういう一般論よりは、もうちょっと具体的に教えていただきたい。敗訴者負担について、ここの主な検討事項で提案したようなことを実現したときに、厚生労働行政にとって具体的に支障があるようなことがあり得るのか。

●ここは基本的に一般論を申し上げたつもりだ。

○ということは、ないということか。

●具体的な事例を述べるまでに、その具体化できる部分が例として思い浮かばなかったので、一般論として申し上げた。

□今日のプレゼンにも、ペーパーにもないが、我々は、義務づけ訴訟を提案しており、やや典型的な例が厚生労働省関係の社会保険などだと思うが、それについてどう考えているか。

●資料7ページの2のところに書かさせていただいた。労災の関係のときの例を挙げ、ここまで極端な話はないかとも思ったが、やはり給付の義務づけというのが出てくる場合、なかなか行政訴訟のケースでいいものが思い浮かばない。それから、先般のハンセンの訴訟などは、ハンセンの損害というものについてかなり裁判所が具体的にいろんなケースに応じて金額を定めて、事実上、その後に国会が制定した補償法の、言わば法制度の給付の水準を決めることになったという実例もあるので、そういうことが広範に行われた場合、これは国賠のケースなので余り関係ないのかもしれないが、立法の行うことと司法の行うこととの線引きがちょっと分かりにくくなるなというのが、実務をやっている人間としての実感だ。

□社会保障的なものなどで、よく給付拒否の取消判決があれば、後は拘束力が働くので、あえて義務づけ訴訟を認める必要がないのではないかという意見も実務の方から伺うことがあるので、その辺について何か部内で検討があったか。

●現時点では、提出している範囲にとどまっている。まだ問題点に気付いてないのかもしれないので、引き続き検討する。

□大体その辺が一番問題になるのでよろしくお願いする。

⑩経済産業省からの説明(□:座長、○:委員、●経済産業省、■事務局)

資料2(経済産業省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

□公益事業等々の関係で、これは止まると大変だというのはよく分かるが、そうすると仮に違法だということになったときにどんな場合も止められないのか。

●事業者には供給義務があるが、ただ今回の東電の話みたいに、発電能力が低くなると、どんどん停電になってくるので、そのために使用制限命令をかけられるという法体系になっており、最後どうしても供給が足りないときは、お客様に対して使用制限命令をかけられる体系になっている。
 ただ、この高度情報社会において、例えば自宅で人工呼吸器を使っている方もいる。また、止めるにしても、そのエリアに病院がないかどうか確かめて止めることもできず、なかなか難しい。したがって、必要な供給の確保というのは、これは本当に重大な使命だと思っている。

□重大な使命ということは分かるが、仮に許可が違法になされたということについて、適切な原告適格を持つ者が出れば、その許可は違法だということになるが、今の説明だと、およそ公益事業については裁判的なチェックはできないというふうにも取れた。

●要するに1基とか2基というのは、全体の中で予備率を持ってやっているので、それによって直ちに停電が起こるということではない。電力事業者間で融通というのがあり、やはり基本的には国民の一番ファンダメンタルなところを支えているのが電気とかガスなので、その供給については責任を持ってやっていきたいということだ。

□次に、料金についてチェックがあると経営が成り立たなくなってつぶれてしまうということだが、認可が違法であるということはあり得るわけだな。

●総括原価主義というので認可していて、基準などいろいろあるが、違法ということは全くなくはない。

●自分どもも、取消訴訟一般を否定しているわけではもちろんなく、また、裁判所の最終判断により取り消されるということを否定するつもりは全くないが、仮の救済のような感じで審理途上でとりあえず危ないからということで改められることについては、いささか心配がある。
 特に原発の件についても、今ある出訴期間が終わればこの処分は一応確定するという中で、ビジネスをやっていく分には問題ないけれども、それが事後、いつまで経ってもふらふらする場合、世の中分からぬということでなかなかビジネスがやりにくいということを申し上げており、決して、およそこれについて手を付けるなということは申し上げているわけではない。

○仮の救済の5ページで、原発の問題が記載してあり、原発の後、ずっといろんな契約、あるいは工事が進んでいくということなのだが、座長が言うとおり適法な処分であった場合に止まっては困るというのは、もちろんよく分かる。しかし違法な処分も当然あり得るわけだから、止めた方が後々影響が少なかったということにもなる。これは裏腹だ。行政庁はすぐに適法を前提に適法なのに止められたら困る、というが、同じ論理は違法な場合を考えれば、早く止めておいた方が後々怒られなくて済んだ、被害が少なくて済んだ、ともなることを申し上げたい。
 ガス供給についての地域の増加許可も、この地域までAという事業者が広げてよろしいという許可も、それが違法な場合、むしろ現状維持のままでやっておいた方がよかったということにもなる。だから、全部適法を前提に、止められたら困る、仮の命令は困るという趣旨の主張が多いが、両方あり得るので、逆の場合も考えていただきたいと思う。

●確かに、必ず適法であるという前提も、また必ず違法であるという前提も、極端であるということだ。そういう意味で申し上げているのは、もちろん、行政庁としては許認可は適法であるべきということで、専門家の意見も聞きながらやっているが、そういう状況で裁判になり、仮の救済ということになるのは、もちろん、ロジカルに考えて適法でない場合があり得る、と考えたときに、そもそも仮の救済があり得ないのかと言われると、大変苦しみがあるが、ルールが今後できてくるときに、両方の極端ないずれの前提に立っても上手くない面がある。要するに、きちんと専門技術的な観点から、許認可の基準が適正なものであるかについては検討が必要で、現にやっているわけだが、実際に訴訟になったときに、その部分についてきちんと判断がなされるという前提があって、初めてこの仮の救済というのになじむかどうかということ、あるいは仮の救済を入れたときに、一方のビジネスの方への影響等を勘案して、そのビジネスへの影響を踏まえても、制度として仮の救済を認めるものの中に、こういったケースを含めるべきかということは決まるべきなのではないかと考えている。

○こういう制度を設けたからといって、何でもかんでも裁判所が全部やるというわけではない。やはり本案にある程度理由、勝訴の見込みがあるというような場合に初めて決定が出たりするし、あるいは影響ももちろん考える。だからここの括弧書きになっていることは必ずしも反論として適切ではないと思う。ガスの場合も、ガスの供給を受けることができなくなると書いてあるが、元の業者が当然あるだろう。

●我々も、国民の権利利益の救済をもう少し広げることについては、当然真摯に受け止めていかなければならないと思っている。
 したがって、仮の救済制度を整備すると、直ちにこういう問題が起こるからノーということではなく、ただ、これからいろいろ詳細を御検討いただくときに、例えばどういう問題が生じ得るのかということで、今日もヒアリングをいただいているんだろうと思う。
  例えば、電気やガスの料金など、非常に利害関係者も多く、例えば、値上げというときには、およそ、だれでも嫌だと言って手を挙げたくなるようなものがあるというようなときに、もし、一部の反対をする人が手を挙げたときに全部止まるとすると、ほかの供給をそのままの条件で受けたいという人も、みんな止まってしまうという、要するにある特定の人の救済ということに重きを置くことによって、第三者というか、ほかの人がみんなそこで、例えば執行が止まってしまって、かえって本来受けられるはずであったメリットを受けることができなくなるという問題が生じやすいという点がある。もちろん、違法な処分だったら、それは止めた方がいいと思う。結論が最初から分かっていれば、この問題は余り議論する必要はないが、止めるという救済制度を整備するというときに、それによって、逆に本来受けられる利益が受けられなくなってしまう人が比較的多く出てきやすいという特徴が特にあるので、詳細を検討いただくときに、その辺りを考慮していただきたい。

○だから、本来受けられるべき利益なのかどうかが問題になるわけだ。

●原子力についてはもちろん、ほかの分野についても共通だと思うが、全体に一律でこういった制度が入れられるのか、あるいは分野に応じて取り扱いを変えるのかというところ自体が、おそらく今後検討されるようなことだと理解をしており、その際の検討の参考にしていただくために、個別の話でこういう懸念もあるということなのでよろしくお願いする。

○5ページの(3)で、個別法等で特定放射性廃棄物の最終処分に関する話が載っており、一部の利害関係者が提訴した形で止められるのは問題だという指摘だが、この最終処分に関する法律でも指摘されているように、この安全性については、これはくっついているはずだ。その安全性問題で、当然、その辺での意見が出てきて、訴訟が提起されるということであり、そのときにまさに安全の問題が重要な場合であれば、仮の処分という形であれ、停止も検討されなければならないと、議論しているつもりだが、プロセス自身の中にそういう安全問題なんかが入っているという辺りを、もうちょっとちゃんと指摘してほしい。

●今、法律で最終処分施設というのを建設するまでのプロセスを規定しているが、その中で、特に一部の手続については地元の意見をよく聞いてやってください、こういう趣旨で法律がつくられている。
 これは、特にこういうところに意見を聞いてやってくださいというのを法定しているのだが、その意見がどうだろうが、とにかく、だれが何言っても救済できるんだという形にすると、逆に特にこの意見を重視して進めてくださいという趣旨にとられるところが出てくるのではないかということであり、もちろん、救済に重きを置けば、もっといろんなことを考慮すべきということがあるのかもしれないが、もともと法定している趣旨は、やはり最終処分施設の立地としても、国としてはどこかでやっていかなければならない。

○この最終処分に関する法律を策定するのにおいては、これと同時に、処分場の安全の規定をきちんと定めますという附則もちゃんと付いている。

●補足すると、安全規制はまた別途の法体系でやるようになっており、その安全サイドの方で問題があれば、それについてまた訴訟が起こることはもちろんあり得る。
 ただ、安全問題は別として、そもそも安全規制は十分担保された上で、なお放射性廃棄物の最終処分場を地元に置くか、置かないかという判断をするときに、その判断は、まずは市町村長、都道府県知事の意見を聞いて決めていきましょうということで、一応立法として判断をいただいているのであれば、そこはそれに従ってやっていただくのが筋だ。

○別の規定ではなく、当然、一緒の規定のはずだ。訴える人は当然、そこで訴えてくるわけなので、同じくそこで受け止めていただかないと困る。

●この手続が起こるのは大分将来ということになっており、そのときに最新の技術的知見を用いて安全性を判断するという観点から、今の法律には、安全については将来、技術的知見が確定したところで別途定めるとなっている。

○そうではなく、これを実際に実行するには、それを定めた上で発効するわけだから、条件だ。その点は明確にしていただきたい。

●それは当然、不可欠だと思っている。

○別だと言うからそう言ったのだ。

○いかに知事とか市町村長の意見を聞いても、もし違法な点があれば、これは裁判所が介入するのであって、違法でなければ手続どおりでいい。問題は違法となった場合の話であり、その場合は責任を免れる理由にはならない。

●それがあるから全くだめだとい話では、もちろんない。

○違法な点があるかどうかというのが裁判の場では決定的に重要だ。
 それから、高度に専門的な知識を有する措置について義務づけ判決を裁判所が出すと困ると書いているが、普通は、義務づけ訴訟を導入することに賛成される方でも、高度に専門的な判断が必要なものについては、裁判所はそこまでは入らない。
 ドイツでは指令判決という呼び方があるが、何らかの措置をしなさいという形に裁判所としてとどめるべきであると考えられているので、最後に書いている点は、心配になることはない。

○原発では、反対側から3つの形で訴訟が起こせる。前置手続を踏んで、出訴期間内に設置許可の取消訴訟を起こすか、出訴期間過ぎていても設置許可の無効確認訴訟を起こすか、そうでなければ、発電事業者相手に民事差止訴訟を起こすか、と、大きく分けて3つある。その中の無効確認は、この間大騒ぎになったが、それはちょっと特殊で、基本的には取消訴訟か民事訴訟かがあり、出訴期間の問題は公益事業の特質に鑑みて常に重視されているが、民事の差止めができるとなると、その問題が全部飛んでしまう。
 それを抜きにして取消訴訟の話だけしていても、基本的にはそういう問題があると思うので、その辺についての今の実務のやり方についての見解はいかがか。やはり、民事訴訟というのはまずいとお考えか。

●今挙げられた民事訴訟法上の訴訟というものについては、これはいつでも、建設差止請求ができることになっており、仮に行政訴訟上、取消が求められない場合であっても、民事訴訟法上、そういった安全確保の観点からの住民の方々の権利は確保されているのではないかと考えている。

○そうだとすると、取消訴訟について出訴期間の効用というか、必要性というものを強調するそのスタンスはどこにあるのか。

●我々が行政をやっている際に、許認可、あるいは建設許可を与えているが、これは我々とその事業者の間だけで成り立っている関係ではない。我々は公共事業、エネルギー供給の観点から、例えば原発を許可する場合は規制当局として、真摯に安全規制について検討した結果、安全を確保できる、と外部の専門家の意見も聞いて判断した上でゴーサインを出す。
 ゴーサインを出した以上、その事業者にも公益の一端を担ってもらうという役割も付与されるし、彼らも第三者の建設事業者などと契約関係を結んで、建設を進めていくことになろうかと思うが、その際に、まず考えてほしいのは、第三者の建設事業者、それで御飯を食べている事業者、その事業者は基本的には善意の第三者なわけで、その善意の第三者が契約を結んだにもかかわらず、出訴期間が十何年もかかって取消訴訟を求められて、今まで建設してきて、更に今後も幾つか建設をすることを予定して、いろんな計画を立てているところ、いきなりここで取消訴訟を認められ、仮に違法なことがあれば止められることになってしまうが、そこについては本当に危険なものであれば、無効確認請求などで、やはり違法の明白性とか、そういったものを含めて止められる仕組みになっているし、本当に危険なものであれば、先ほどの民事訴訟法上の建設差止請求というものを担保できることになっている以上、我々が公益として行政上の許認可を与える際に、公的な位置づけがものすごくあやふやなものになってしまった場合には、事業者の参入とか、そういったものが極めてやりにくくなるのではないかと、そういうことを懸念しているわけである。

○そうすると今の説明は結局、普通の取消訴訟ではどんな違法も争われ得るけれども、重大明白というか、特別な違法、特別な無効事由のあるような場合については、これは取消訴訟ではなくて、無効確認でもいいのだけれども、それ以外についてはやはり出訴期間内にきちんと問題を処理したいということだな。そうすると、今の民事訴訟で取消訴訟と同じような審理がされていると思うが、それはおかしいということか。

●おかしいというわけではなく、行政訴訟法と民事訴訟法それぞれの法律上の役割分担というものがあるのではないかと考えている。それで、行政訴訟法上では、我々がやる許認可について、その違法性について争う。それについては、我々も公共事業を進めていく上で、安全性を確認した上でやっていくわけで、真摯にやっている。それを前提にして、その事業を進めるという許認可を与えている以上、それに関係する者に行政訴訟法上、影響を与えてしまうことはなるだけ避けたいと考えている。

□取消訴訟の違法事由と、民事の差止めの要件が、おそらく違うという前提での話だと思う。

○被告適格者の見直しについて、これは大体どこも問題がないという回答が多いが、経産省の回答は、行政部内において行政庁を特定する作業が必要となる。その作業が遅延する場合がある、というようなことを言っており、下の方では、行政庁を特定する作業を一元的に担う部署が必要だ、みたいなことをおっしゃっているが、行政庁を特定するのが困難なことがあるのか。

●むしろ、その点は複数の省庁にまたがるとか、いろいろあるので、どこが主管になるかとか、非常に雑駁な話で恐縮だが、国会で質問いただいたときに、どれが責任を持って答えるべきかということについても、結構争いがあったりするものだ。

○具体的にどんなケースか。

●ここでの趣旨は、そんな重い話ではなくて、窓口というものを設けていなければ、結局どこに出訴すればいいのか分からない方が、国のどこかに訴訟提起をした場合、その分だけ作業に遅延が発生するであろうということだ。

□そこは軽い話だ思う。前の方の特許の方が重要かとも思う。

●先ほど、仮の執行停止の話で、訴訟を担当している者として気になった点が1つあり、違法性が明らかな場合には、早めに止めた方が影響は少ないのではないかという話が多々出ていたが、現在、原子力関係の取消訴訟などに関しては、大体短くとも十数年と、かなり時間がかかっている。なぜかというと、やはり内容がかなり複雑であり、我々も行政庁だけで決めているわけでもなく、外部の専門家の意見も伺って許認可しているわけだが、やはり内容が極めて専門技術的であって、違法性が明らかに分かるのであれば余り難しい問題じゃないが、そこを判断することにまず時間がかかっているのが現状だと思っている。
 そういう観点からすれば、我々としては、やはり判決で最終的に判断をいただいたところで、その判決を踏まえて行政としての対処を決定するということは、今の行政訴訟法上の仕組みのとおりだが、ここでいう仮の執行停止というものについては、そんなに簡単には行えないのではないかということを考えていることを委員の皆様に御理解いただければと思う。

○後で結論として違法になった場合だったら、早く停止しておいた方が結果的によかったということがある。ただ、適法だったということになれば、止めなかった方がよかったということになるし、それは裏腹だ。両方あるということを申し上げたわけだ。

□原告適格のところは、およそ、余り考えられないものを出しているが、我々は、公共料金の認可について、原告適格はだれが持つか、大変興味を持っているので、この点について、是非回答をいただきたい。

●どういう形にするのが一番いいのか、色々な議論があろうかと思うが、今の法律上の体系は、今の行政訴訟法上の体系を前提として、ただ利害関係者が多いのでどうするかというところで、例えば電気事業法なりガス事業法では料金の値上げの認可などでは、公聴会を開催するというプロセスを法定している。
 従って、公聴会というのは、悪い言い方をすれば聞いておしまいなのだが、それは行政庁が最後責任を持って判断をしない限り、あらゆる人が止める権利を持つことになってしまうと、これはそもそも上げも下げもできないということで、全体として最後は供給停止のところまでいってしまうという懸念があるので、そういう意味では、今あるような広く意見を聴取する手続は大切にしつつ、原告適格は余り拡大をしない方が、結果的には広く供給責任を事業者が全うするには、一番適当なのではないかと思う。

□原告適格を広めても違法事由が広がるわけじゃないから、一人でも、例えば公共料金、電気料金の値上げについて、この人ならば原告適格があるというのがあれば、おっしゃっていただきたい。

●最終的に取消訴訟であれば、当然違法であれば、そういうことだと思う。

□原告適格は、利用者であれば全て原告適格はあるということで理解してよいか。ではまた考えてお返事をお願いする。この点かなり気にしているところだ。誰もいませんというのも一つの答えだ。そのときに民事で出てくるから、民事で出てきたときにどうなるかということも含めて。

●後ほど。

⑪国土交通省からの説明(□:座長、○:委員、●国土交通省、■事務局)

資料2(国土交通省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○プレゼンで、少数の人が裁判を起こすことによって、ある事業を待ち望んでいる多数の人が利益を受けることができないのは困るということをおっしゃったが、こういう裁判の問題を議論する前提は、違法な事業はあってはならないということだ。だから、違法に道路をつくって、それが国民のためになるとしても、やはりそういう違法なものを是正する必要があると考えるべきであり、そこのところにすれ違いがあると思った。
 もう一つ、計画の段階では権利侵害がない、実際の権利侵害は建築確認の段階で起こるとの話があったが、用途地域指定では、建築をしようと思っていたが用途地域指定が変更されて建築確認を受けられなくなるという場合であれば建築確認の段階で争えばいいが、用途地域指定が変更され、環境が悪くなって困るという人から見ると、建築確認の段階はない。他の人に対する建築確認はあるが、自分自身に対する建築確認はないので、やはり用途地域指定を争えるようにした方がいいという議論がある。
 行政計画の場合、既成事実論というのがあり、計画の後色々な事業が行われるが、そういうものをやはり早い段階で争わないと、事業が進んでからでは既成事実ができてしまい、場合によったら事情判決をくらうということもある。そういう既成事実の発生を予防する点で、早期の権利保護ということが言われる。学説の方はそういうことを考えていたわけであり、そういうことも御理解いただきたい。

□今の意見は決して芝池委員だけではなく、かなりの人がそういう意見を持っていると思う。特に、執行停止は困ると言われ、どんどんつくってみて、それで事情判決についておそらくまた別の方からの意見もあろうかと思うので、今の計画の既成事実化ということについて十分御留意をいただきたい。

○11ページに、ある一件に対して膨大な提訴のおそれがあるという事例が2、3出ているが、こういう特別なもの以外に、今、実態としてまず国土交通省の関係で、年間どれぐらい訴訟があるのか。

●後ほど資料を出させていただく。

○年間の提起件数とストックベースと両方いただいた方がいい。

○その上で、11ページに書かれている事案は、これを読むと逆に団体訴訟的なことを認めた方が、訴訟の効率性は上がるんじゃないかと逆に読めるが、そういう趣旨はないか。例えば6,601名から提起されたとおっしゃっているが、これはまとめて、ある1つの適格な団体に訴訟を代表してもらって審理をする、そういう意味合いの団体訴訟的なことまでは考えてないか。そういうことを含めてのことか。

●具体的に提案までは内容を詰めていないが、実務上、これは異議申立であるが、これは川辺川ダムの案件だが、6,600名の方からお聞きし、極めて膨大な案件で、非常に大変だった。この中には地元でない、例えば○○川の自然を守る福岡県の住民の会とか、全く関係のない方が多数いた。それもすべて処理せざるを得ず、これは配達証明郵便で出すが、1件1,000円前後かかるから、行政的なコストとしても数百万円のコストになるので、そういうことを問題として出せさていただいた。

○2ページに、管轄裁判所が拡大すると、訴訟対応が大変だと書いているが、今、裁判所ではテレビ会議システムがあり、それも充実するということだが、そういうことであれば別によろしいわけか。テレビ会議で、地方で現場の近くの地裁のテレビ会議室に出向いて、例えば東京とやり取りするとか、そういうことができるのであれば、別にこれは余り影響がないと捉えてもよろしいか。

●1つの案件について、1つの訴訟であればそういうこともあると思うが、1つの訴訟について複数の地裁に同じようなもの、例えばある収用事業の認定の処分が出たとして、それが1つの訴訟としてではなく複数の訴訟が同時に全国で提起されるような場合には、それはそれぞれテレビ会議が開かれるということになるのか。

○今のだったら、併合を考えるか何かのことが先に来るので、おそらくテレビ会議でそういうことをやるのは、今のところ想定していない。

●そうすると、マンパワーの関係でかなり支障が出るかと思う。

○5ページの本案判決前の仮の救済のところで、事業の目的である公益の早期実現が困難云々と書いているが、公益の早期実現の仕方として、通常は事業に実際に着手する前に合意形成をきちっと取って、着手すればあとは広報の最適化という観点で短縮、早期実現というやり方が本来あるべきだと思うのですが、現在は工事着手する前の合意形成が、プロセスは当然踏まれているのだろうが、やや不十分なために色々な訴訟が提起され、着手してからも結構時間を要して遅れていると思うが、そういう意味で、事前の着手までの手続を厚くすることをもう少し所管の個別法でやるということは、考えられているか。

●個々の事業についてはともかく、関係者に迷惑をかけない事業にする、つまり正当性の確かにあるような事業にしていくための事前の手続を厚くするのは、我々の行政の方向だ。

●もう十数年前の話だが、自分が岐阜県の都市計画課長で、東海環状という道路をつくり始めるということがあり、当時は要綱ベースだったが、初めて都市計画の段階ですべて環境アセスメントを入れて、生物調査をし、住民の意見書を取った。環境についての意見書を全部取って評価書を専門家で書いていただくという手続は、今は法律の中に環境アセスメントが入ったが、これは1つの環境という問題がだんだん大きくなってきて、それについての専門的な知見を都市計画の中できちっと処理を事前手続としてするといった1つの例であろうかと思う。

○11ページだが、この6,601名の川辺川ダムの異議申立は、具体的にどの処分に関するものか。

●このときは計画の内容を変更の取消し、差止めを求めたもの。

○河川法に求めるということか。

●多目的ダム法という、河川法以外に別途大規模なダムのために利水者の利害を調整する法律がある。

○これが本案に乗る案件だったのか。本案は、適法な申立てだったのか。

●却下だ。

○そうすると、この1,344件というのはすべて却下か。

●そうだ。これは何人かの代理の方がまとめたので、通知の数、封筒の数としては1,344となっている。

○それで、6,601名の決定をしたということか。

●はい。

○ということは、それはもともと乗らない案件だったわけだな。もし裁判で同じようなことが起きていたとしても、却下になった案件なわけだな。

●と私どもは考える。

○とすると、そういうものまで入れるかどうかという政策判断はあると思うが。たくさんの人から提起されてわずらわしいというのは、そういうことは大いにあると思うが、それは一種本当に本案に乗るものではなくても、今でも、誰だって何を争って訴えても一応構わないことになっている。ただ、不適法で最後に却下されるだけのことだ。
 とすると、それは訴訟制度の仕組み方というよりは、どうせこういう使い方がされるときにはされる、そう考えれば、原告適格の拡充論とはちょっと別次元の議論かなという印象だ。
  だから、却下の判断がもし正当だったんだとすると、別に環境を理由にしようが、何しようが、そういうものはどうせ却下の決定をする、ないしは裁判で却下の判決を下すだけで終わることだから、一種不適法な訴訟というのは起こり得るが、それに対しては一応却下で応えないといけないというだけのことではないかと思う。

●こういう手続は、基本的には法律上手続を定めており、地元自治体の意見も聞く、場合によっては議会の意見も聞いて、それで本来の手続を経て公益性を判断して決めている。それで、それに満足されない方々が訴訟を提起されて、自分はそれは環境上正しくないと思う、とする。環境のアセスメントなどもやるので、そういうものを手続を経てやっているにもかかわらず、それを判断する。
 それを、政治的なものも含めて、意思決定のプロセス、憲法以下の法律で定められている日本の手続を経ていないものについて、どういう判断をされるかということだと思う。そこは、おっしゃられるように、もし違法ならそれはもっと早い段階でやった方がいいじゃないかということだが、同時に我々にも色々ある。

○こういうものについては、どうせ出てきても却下されるだけだとすると、多数から提起されるといっても、原告適格をこういうものにまで広げるという議論はおそらくこの検討会では共有されている議論ではないので、心配には及ばないのではないかという趣旨だ。
 もう一つ、料金認可だが、この書き方だと、高速道路料金についての料金認可はエンドユーザーは一切争えないというか、争わせるべきではないという政策判断か。

●そうだ。

○そうすると、最高裁の判決で近鉄特急の事件とかがあり、これなどはなかなかデリケートな問題だという議論が一方ではあるが、いかなる場合も料金についてはエンドユーザーは一切具体的な利益としては扱うべきではないということになるか。

●有料道路の料金についてお支払いいただけない方については、最終的には強制徴収の規定があり、この強制徴収は当然処分性があるので、その時点で争っていただく形になっている。

○要するに、不払いをやった上で強制徴収の段階で認可の違法を争えばいいということか。

●そうだ。今のところ公団に対する料金認可は、行政の内部的な行為という判例になっていると思う。

○同じ国土交通省でも鉄道の方、まさに近鉄特急のような鉄道の料金認可も所管していると思うが、そちらについてはどのようになっているか。

●所管外だが、自分はたまたま当時鉄道局におり、近鉄特急料金訴訟の高裁準備書面をドラフトした。御承知のとおり当時長沼ナイキ基地訴訟が出て、ちょうどこの行訴法の解釈が非常にクリアーになったので、その方向で議論をさせていただき、高裁では却下の判決をいただいた。
 法律上の具体的な個々の人々の利益を保護することを法律上書いていない、ただし、運輸省の中に運輸審議会というのがあり、公益を代表する方々の意見を聞く場所を設けている。そういう意味では問題意識は非常に持っていて、代替措置も講じているんです、と、現行法上は法律上の裁量としても一定の代替措置を講じた上で、個々の人々の利益を保護するまでは難しいんじゃないでしょうかというふうにして、その法律を意識してちゃんと、そういう代替措置を講じた上でやっている、したがって、利用者の意見は個別にそれなりに保護している、ということで御理解いただいた。
 だから、近鉄特急訴訟は必ずしも評判はよくないようだが、そこはいろいろ意識した上で、かなり代替措置を講じた上でやっていたことを御理解いただきたい。

○特ダム法のケースは原告適格ないだろうから安心しろという発言があったが、特ダム法の処分なり、それよりも更に河川法の方だともっとだと思うが、この研究会の支配的雰囲気が原告適格なしとまでは言えてないんじゃないかと思うので、余り安心されない方がいいと思う。
 それから、国土交通省関係では土地関連が多いと思うが、裁判管轄の場合に今の行訴法でいう、例えば国土交通大臣なり地方整備局長なりの処分について、東京なり福岡でない熊本地裁とか、鹿児島地裁とか、そっちの方に土地の関連で管轄があることになっているが、その規定はどの程度使われているのか。もしそういうデータがあったら、参考にさせていただきたい。

●それは確認をさせていただく。

○もう一つ、真意を伺いたいが、都市計画を訴訟の対象にするのはいろいろ問題が多いので困ると言っておられるが、最後のところで、もしするのであれば、排他性をかっちりと認めてほしいと言っている。ここはひょっとして本心はそちらにあって、いろんな個別の訴訟で計画の妥当性なり正当性なりが争点になるよりは、主張の遮断さえできれば計画訴訟を認めた方がすっきりするという考えは、ほんの少しでもあるのか。

●我々もまだそこまで判断をするに至っていない。今申し上げたのは、仮定の議論として都市計画を訴訟で争うことになれば、少なくとも申し上げた論点について、解決をしていただかないと、むしろ都市計画の実務、現場が混乱をしたり、あるいは都市計画を信頼して行動した方、事業に関与した方に迷惑がかかるということだ。もう一歩お前たちは踏み出しているのかと言われれば、そういう趣旨ではない。

□今の点で、都市計画システムである、と先ほどおっしゃったが、大変立派で、自分もそのとおりだと思う。それから、公共事業についても、多数のことを考えてどんどん進めないと困る、というのも大変立派な話だと思うが、ただシステムという場合に、先ほどから、手続はちゃんとやる、いろんなことをやるとか言うが、おそらく外国の法制を考える立法者は、システムのときに裁判所のチェックについてもシステムの1つというふうに読み込んで考えるだろうと思う。先ほどドイツの例を出されたので、もう随分勉強済みのところだと思うが、ドイツの場合にはベークプランについてもシステムとして出訴を認めているといった状況がある。
 だから、そういうシステムについても、自分はやはりそれは国土交通省の所管だと思う。十分丁寧にやるから大丈夫だということではなく、万が一誤ったときに、出訴とか訴訟の救済を求めてきたときには、計画段階で受け止めましょう、そこで出てこなければあとは違法性を遮断するというシステムをきちんと作るのは、我々にはできない。システムだから、全体を見なければいけない。利用計画についてはこれを認めると言っても、それでなかなか皆様方は納得されないだろうと思う。だからそこの点についてシステムがつくれていない間は、司法による行政のチェックということを憲法に従ってやらなければならないと思う。
 先ほどの土地利用計画の中の用途地域で、実際に権利侵害が起きてないではないかと、これは最高裁がそういうふうにお墨付きを与えていると思うが、あれは自分は国民の権利救済の点からいって、非常に不十分なものだと思っているし、外国の例を見ても、アメリカはゾーニングについてそれこそ当然の法理で認めているところだから、今後行政に対する司法のチェック機能というものも、裁判所ももう少し前に進むと、今のシステムができてない間は相当ひどいことになると思うので、所管行政をきちんとやっていただきたいと思う。実はこの検討会でそういった公共事業計画、土地利用計画、あるいは都市計画についても、提案しようじゃないかという意見は何度も出ている。しかし、それに対しては、賛成の意見ももちろんあると同時に、それはなかなか検討会では難しかろうという意見もあって、今のところそれが正面に出ていないが、今のようにいっぱい意見を聞きますから大丈夫だとか、そういう意見でとどまっている限りは、もう少し踏み出ざるを得ないなという感じも持っているので、議論を進めているぐらいのことまでは言っていただきたいと思う。
 ドイツは、プラン・フェスト・シュトリュンクス・フェアファーレンというのは十分勉強済みのことだ。これについては、日本の学者が随分論文を書いているので、もしそれを御存じなければ行政法学者の方で、ドイツはこうなっているということはかなり早めに御提示できると思う。アメリカのゾーニングについても、もう随分研究を重ねられていると思うが、それは十分資料としてお持ちだろうと思うので、そういった資料を持ちながら、是非システムを考えていただきたい。システムというのは、救済のシステムを考えて初めてシステムだ。あとから文句言ってもどうしようもないということで、小田急のようなことが起きているのは非常に不幸なことだと思うので、是非所管の行政庁としてちゃんと対策を立てていただきたい。次回お目にかかるときは是非御返答いただきたい。

⑫環境省からの説明(□:座長、○:委員、●環境省、▲外国法制研究会委員、■事務局)

資料2(環境省分)に沿って説明があり、これに対して、次のような質疑応答があった。

○5ページの原告適格の問題について、50件ほど取消訴訟があるということだったが、判決での原告適格の判断は今までどうなっているのか、また、行政解釈として、現行法ではどういう人に原告適格があり、またはなし、と考えているのか。

●最初の方の質問には、具体的に手持ちに数字がなくて申し上げられない。

○認めた例はあるのか。

●調べる。ただ、この52件の中には、人格権を基に訴訟の差止めを求めている民事訴訟もあり、全てが取消訴訟ではないことを付言する。

●後者の点について、網羅的に申し上げにくいが、例えば最終処分場が設置されて、それから管理型処分場というと水処理をした水が排水されることになるが、例えば想定されやすい事例としては、下流で農業用水として利用している者や、処分場をつくることによって地下水が影響を受けて、井戸水が従来通り利用できなくなる者といったようなものが想定される。

○それは現行法でも原告適格ありだと考えているか。

●これまでの判決等の中でそれがどう整理されているかまではわからない。

○今の判例なり、おっしゃった解釈が広がるのは困るという意味か。今の範囲は妥当で、それをもっと狭めてくれというのか、同じでいいというのか、あるいはもう広げてもらう部分は一切ないというのか。

●最終処分場の問題は、共通の大変深刻な問題があり、付近に住んでない方でも、そういったものの廃止を求めるという考え方の方がたくさんおられたりなどして、我々としては基準が満足されている限りは問題が起きないと技術的にも証明できると思っているが、利水者以外の方で訴訟を提起されるということがあるのではないかと思っている。

○3ページの差止め訴訟だが、行政の行為の差止めを求める訴えが提起できるとしたとしても、行政が停滞するということと必ずしも結び付かないと思う。それは民事訴訟だってやれるわけだから、行政行為の差止めを求める訴えを認めないという理由にはならないと思うので一言申し上げる。
 団体訴訟の件だが、自然環境の分野でB案に基づく団体訴訟を導入することについては、消極的であるということだな。その理由は「原告・被告間の具体的な争訟事件の解決を目的とする司法権によることが適当かどうか」とあるが、その意味がよく分からない。
 つまり、ある処分がなされて、それが違法だと言って争いになる。その時に、環境に関心を持っている団体が、原告適格が認められて裁判所に訴え出て、要は裁判所が違法かどうかを判断しようじゃないかというのが今の考えられている制度であり、裁判所で判断してもらうしかないわけで、そもそも司法権の場でやるのはおかしいのではないかというのは、ちょっと理解できない。

●どういう範囲の者を原告、あるいは利害関係人として選ぶのかという考えがなかなか難しい。その辺りが我々としてまだよく理解していないということだ。

○こうした問題はむしろ事前の行政的な手続できっちりやる方がいいというのは行政側としては分かるが、それをやってもなおかつこれは違法なんだと誰かが言っているときに、違法かどうかは裁判所以外に決めるところはない。それはまさに司法権によって決めてもらうべきだ。そして誰が裁判所に持ち込むのかといったときに、環境問題については、個々の人がやるのがいいのか、あるいはある程度団体が形成されている場合には、それに適した団体が持ち込むという方がいいのではないかという議論だ。
 だから、むしろ環境省は大いに賛成だという答えが出てくるのではと期待していたのだが。

●その辺りも含め、我々も団体訴訟が何なのかというものの理解もまだ十分していないので、その辺りも含めて考えていきたい。

○特に自然環境の分野は、そういうものに向いている分野ではないかとずっと言われているわけで、是非積極的な考えをお願いしたい。

●司法権の判断のありようについて我々がどうこう言う趣旨で書いたものではないので、そういう印象を与えるとすれば、ちょっと文章の書き方のまずさがあると思うが、我々がむしろ言いたかったのは、今、戦略アセスという新しいやり方も導入しつつあって、環境省としては一生懸命そのありようについて勉強中でもあり、むしろそういう形の中で関係者間の合意形成を図っていくという手法を進めているので、行政側のそういう進め方について、こういう場でも御理解頂いた上で御判断頂ければありがたいという趣旨だ。
 それから、特に希少動物の保護のような行政の部分は、なかなか難しい分野であり、その辺について判断する際に、どの程度原告適格の広がりを認めていくかというのは、非常に難しい分野ではなかろうかと思う。いろいろ事前に自然保護局からヒアリングを行った中では、ハンドリングと関係者がみんな納得するという仕組みが非常に難しい部分があるという中で、これが訴訟の権利という形で動く場合に、いろいろ考えなければいけないことが難しい。
 だから、先ほどの戦略アセスメントのようなアプローチで行政がアプローチしている経験なども少しこういう場で御披露し、その上で御判断いただいてはいかがかと思う。

○しかしここで議論しているのは訴訟の話だ。今の希少動物の保護に関する法律に仮に違反して、違法な何らかのことが行われていると、当然環境省がチェックすることになるが、それが不十分である場合、だれかがそれを訴訟に持ち込む。ところが希少動物は訴訟をやれないから、やはりその保護を日ごろから関心を持ってやっていた団体に認めて、その団体が裁判所に持ち込んで、それで裁判所で違法かどうかを最終的にチェックしてもらう、というシステムを導入するべきじゃないかという議論だ。

●我々もそれは絶対なじまないとか、そういう御提案について反対だということではなく、我々行政の目から見て色々な判断要素が必要であるという含みを書かせていただいている。

○環境省の方で是非積極的な検討をお願いしたい。

○今まで環境省は、国民にとっての環境をとにかく最優先で守ろうとする唯一の省だと思っていたが、今日の話を聞くと、他の省と同じように、訴訟を受ける側の被害者的な意識を感じ、非常に残念だ。
 原告適格の拡大についても非常に否定的だが、これまでにいろんな環境保護の運動をやっている方々からの、いろんな意見として、特に法律上保護された利益説というところに引っかかって、原告適格なしということで門前払いされたことに非常に不満があった。もし環境に関して個人の有する利益的なものが明確にどこかで明示されていれば、かなり裁判の過程でそれが考慮されて原告適格として認められ、少なくとも原告適格ということで門前払いにはならなかったケースが幾つかあると思う。
 とすると、このときに保護された利益ということを本当に考えなければいけないのは環境省ではないかと思う。国民にとっての守られなければならない環境に関する利益とはどういうものであるか、だから積極的に、原告適格とは何ぞやと一番考えなければならないのは環境省だと思うのに、今日の話を聞いていると否定的な意見であるということは非常に残念に思う。
 それと、戦略的環境アセスメントは確かに現実に動いていることは事実だが、ではどうしてこの産業廃棄物処理場の場合にそれを適用して、利害関係者の調整プロセスをやらないのか。実際にごみ処理場で、県レベルでやっているところもある。
 例えば、そういうことをして、もう少し解決の手立てを考えるということがあってもしかるべきではないのか。自然環境の保護の方については、戦略的環境アセスということが出てくるが、個人の場合、原告適格のときにそれが出てこないというのも何かおかしいという気もする。

●戦略アセスメント自体は、別に自然保護の局面だけでやるものではなく、またそれ自体は、環境省が中心となっていろいろ研究を進め、また関係省庁にもいろいろ働きかけ、試行的に展開中で、いろんな施設に関して実験適用している状況だ。
 例えば、廃棄物処理施設の建設にあたっても、そういうものをどう適用していったらいいかというのを、都道府県と相談しながら検討中であるという状態で、今はまだすぐに動いている状況ではなく、どういうふうに動かすかに当たって、当然いろんな施設、処理施設も含めていろんな施設のありようにも適用できるような戦略アセスということで考えている。
 戦略アセスメントについては、海外の動向も色々動いており、それらも情報収集して勉強に努めている。

○原告適格の補足だが、今の判例と運用なりで、どの人にありとかなしというのを是非具体的に教えていただきたいということと、実際に主な検討事項の中でいろいろな案があるが、どの案を取ったときに、例えばどれが含まれる、あるいは含まれないのか、また、いいのか悪いのかも併せて是非教えてほしい。
 もう一つ、廃棄物処理施設は迷惑施設だという非常に強い自覚を持たれているが、普通の感覚では迷惑であればあるほど司法的救済の必要性も高いということだと思う。おっしゃること全体を通じて、迷惑施設だからたくさん裁判が起こるのは困ると非常に強調していると思うが、果たしてそういうロジックになるのか。

●自分自身は、自身が産業廃棄物の仕事をしているせいもあり、今の基準が守られるものであれば、その設置について反対を唱えるものではないという個人的考えを持っているが、これまで悪質な業者による不法投棄などもあり、一般にはやはり自分の隣の庭に来てもらいたくない。ニムビー(NIMBY)という現象があるというのは、いろいろな方の話を聞くとそう理解せざるを得ないと思う。

○だから迷惑であるならなおさら適法に設置してほしいという近隣住民の利害は強いのではないかという趣旨だ。おっしゃっていることは逆で、迷惑であるからたくさん近隣住民から裁判が起きる、だから、原告適格を広げるべきではないとおっしゃっている。

●我々の主張は、個別具体な保護法益といった一定程度明確な基準というところが大事だと思っている。だから、判例について具体的に示してもらいたいというのは、我々もその点はきちんと勉強して、具体的な基準とは一体どういうものであるか考えていかないといけないと思う。

●付言すると、最高裁レベルでの判例が出ているかについては承知していないし、我々も全て争訟当事者となっているわけではないので、判決例のようなものをちょっと勉強したいと思う。
 これは都道府県が被告で、必ずしも我々が被告であるケースではないので、できる限りで検討したい。

○この検討会で行政訴訟の改革をやっている理由の1つは、現代型行政訴訟に今までの制度は対応できておらず、その1つが環境行政訴訟。そういう意識でやっているので、環境省に是非それを考えてほしい。
 その解決は2つあり、1つは、今、検討している行政訴訟自体を改革すること。もう一つは、いろんな個別法に訴訟条項を入れてもらうことだが、例えばこの前のアセス法の時も、例えば日弁連などはアセス法には訴訟条項を入れるべきだと言ったけれども入らなかった、他の省庁の所管の法律があるから、環境省だけではいかない部分もあるが、是非そういう方向も考えてほしいという要望を申し上げておく。

□水野委員の発言の趣旨は、こういった団体訴訟などは、なかなか横並びでは出ないが、飛び出るとすると環境省ではないかという気持ちを皆さんお持ちであるのに、一向に飛び出ないので心配だ、ということだ。ドイツの例を見ても、やはり団体訴訟はたしか環境保護の分野だったのではないか。

▲ドイツの団体訴訟は、自然保護が唯一の立法例だ。

●ドイツの例は勉強してきたが、まだなかなかドイツの状況と日本の状況、関係者の意識、それから各主体の状況の把握において、すぐに検討可能かどうか、ここは専門家が少し検証するべきだという感じがしていたので、原局、関係局では勉強している状況にある。

○勉強するのであれば、日本の場合についても、原告適格を広げるというのは、環境省の処分などが責められるという被害者意識だけではなく、環境省以外の各省の所管する領域において、環境問題は幾らでもあるので、そこで今の行政訴訟がどれだけの役割を果たしているのかどうかということを調べ、その環境行政の手法としての行政訴訟の位置づけということを、環境省としてももっと攻撃的に調査・研究して、方向を打ち出され、そしてその先にまた団体訴訟も出てくると思うので、是非前向きにお願いしたい。

7 次回の日程について

 9月5日(金)13:30〜17:30

以 上