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行政訴訟検討会(第21回)議事録



1 日 時
平成15年7月25日(金) 10:00〜18:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川委員、
萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)
(説明者)
大海寺安(防衛庁長官官房政策評価監査課訟務管理官)
池田正(防衛庁長官官房政策評価監査課先任部員)
川辺英一郎(内閣府大臣官房企画調整課総括課長補佐)
吉田尚正(警察庁長官官房総務課企画官)
大竹昭彦(最高裁判所事務総局行政局第二課長)
竹谷廣之(農林水産省大臣官房文書課長)
倉吉敬(法務省官房秘書課長)
草賀純男(外務省官房総務課長)
林崎理(総務省大臣官房企画官)
青柳親房(厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官)
安達健祐(経済産業省大臣官房企画課長)
本田勝(国土交通省大臣官房総務課長)
石井喜三郎(国土交通省都市・地域整備局都市計画課長)
福本啓二(国土交通省河川局水政課長)
石川雄一(国土交通省道路局国道・防災課調整官)
笹谷秀光(環境省大臣官房政策評価広報課長)
森谷賢(環境省廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物対策課長)
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田斉志企画官

4 議 題
(1) 各行政官庁等からのヒアリング
(2) 今後の日程等

5 配布資料
資料1 行政官庁等ヒアリング進行表〔再掲〕
資料2 各行政官庁等からの意見等
     ・防衛庁
     ・内閣府
     ・警察庁
     ・最高裁判所
     ・農林水産省
     ・法務省
     ・外務省
     ・総務省
     ・厚生労働省
     ・経済産業省
     ・国土交通省
     ・環境省

6 議 題

【塩野座長】それでは、時間になりましたので、第21回「行政訴訟検討会」を開会いたします。事務局から、本日の資料について説明をお願いいたします。

【小林参事官】資料説明は、お手元のとおりです。

【塩野座長】はい。それから、外国法制研究会で作成した論文に基づいて表が『ジュリスト』から今度出ることになりましたので、今日、お帰りまでにお配りすることになります。
 それでは、昨日に引き続きまして、行政官庁等からのヒアリングを行うことにいたします。防衛庁からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、大海寺安長官官房政策評価監査課訟務管理官でいらっしゃいます。それから、池田正長官官房政策評価監査課先任部員でいらっしゃいます。御説明は、どちらからでも結構でございますので、よろしくお願いいたします。

【防衛庁】

【説明者(大海寺訟務管理官)】おはようございます。防衛庁としまして、今般の行政訴訟検討委員会におかれます先生方の各行政制度の見直しにつきまして、各種行政訴訟に関して特に影響があるかどうかということで、見込まれる事項についての有無について検討してきたところでございますが、現時点におきまして、防衛庁にとって申し上げるべき特別の事情や意見は特段ございません。それゆえ、今般の回答におきましては、特段意見なしと回答させていただきました。
 よろしくお願いいたします。

【塩野座長】どうもありがとうございました。しかし、いろいろ私どもの論点整理について、ある程度の御検討はいただいていると思います。
 そこで、例えばの話ですけれども、出訴期間に3つのオプションがあるけれどもどうかとか、あるいは原告適格をもっと拡大すべきではないかとか、その場合のワーディングとては、こういうものがあるがどうかとか、そういった幾つかのオプションでお聞きしているのもございますので、最初にもう少しお伺いしたかったのは、防衛庁で行政処分権限を持っている法律について代表的なものも教えていただきたいし、それからそれについての訴訟等があれば、それについても教えていただきたいという希望もございますので、本日、なかなかお答えができなければ、後日文書でお出しいただいても結構でございますので、せっかくの機会でございますから、防衛行政には、私なんかは疎いところがございますので、いろいろ情報を提供していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 まず、処分権限を有している法律がいろいろあると思いますけれども、ちょっと代表的なものを挙げていただけますか。

【説明者(大海寺訟務管理官)】自衛隊法におきまして、第46条がありまして、懲戒処分ということで、そういうものが代表的なものです。

【塩野座長】外部に関するものでは。

【説明者(池田先任部員)】その他の法令につきましては、後日文書で回答させていただきたいと思います。

【塩野座長】処分を発動したことは、例えばいろんな認可等もあると思いますが。

【説明者(大海寺訟務管理官)】それは、防衛庁、防衛施設庁であるところがございますが、そこはすべてお答えする準備をしておりませんので、そこは後日、関係各課に問い合わせした上で、回答させていただきたいと思います。

【塩野座長】防衛施設庁とは、時間的なあれがあって、今回はまだお話がうまくできていないと。

【説明者(大海寺訟務管理官)】防衛施設庁の方にも、一応、今回照会はいたしまして、意見はありますかということで照会いたしました。
 その結果として、これも後日お答えさせていただきます。

【塩野座長】分かりました。それでは、こちらの方で、主として防衛施設庁との関係が多いかと思いますけれども、個別の法令を多少頭に置きながら、この点はどうかという点について、是非御意見を伺いたいところも委員の皆様方はあろうかと思いますので、多少、時間をちょうだいして質問させていただきたいし、お答えできにくいところがあれば、後日文書でお願いします。
 ただ、後日といっても、余り時間的にございませんので、各省庁の説明資料はそちらの手元にもいっていると思いますけれども、かなり丁寧にお答えいただいているのもあります。こういった機会は、あと何回も設けられませんので、できるだけ早い機会に防衛庁の情報を提供していただきたいと、我々は、手持ちの個別法についての情報は必ずしも多くはございませんので、是非現場の感覚での情報提供をお願いしたいと思います。
 それでは、委員の方、やはり防衛施設庁を中心として、実はこの点を聞いてみたいという点があれば、是非お願いしたいと思います。

【福井(秀)委員】今まで、あるいは現在、被告になっている行政訴訟、民事訴訟はどれぐらいの数があって、どういう内容かが分かれば教えていただけますか。

【説明者(大海寺訟務管理官)】民事訴訟については、ちょっと数字的なものが十分ありませんけれども、行政訴訟においては、今まででおおむね四十数件あります。

【福井(秀)委員】ストックベースですか、累計ですか。

【説明者(大海寺訟務管理官)】累計です。

【福井(秀)委員】どういうものがあるんでしょうか。

【説明者(大海寺訟務管理官)】そのうち、おおむね三十件ぐらいが人事の関係の訴訟でございます。

【福井(秀)委員】残りはいかがですか。

【説明者(大海寺訟務管理官)】後は、情報公開関係等が数件ございます。

【福井(秀)委員】対外的、権力的処分を行って、その処分について被告になったというものはありませんか。

【説明者(池田先任部員)】そこも含めて、ちゃんと調べて御回答させていただきます。

【塩野座長】それでは、私の方からも若干、我々の今までの行政官庁等へのヒアリングを通して、多少この点、一般的にどなたからもお聞きした方がいいなという点がございますので、その点も含めて簡単に御質問いたしたいと思います。
 1つは、先ほど防衛庁の人事の処分の関係がございました。防衛庁の職員は特別職ですね。だから、人事院の公平審査にはかからないということになりますが、その関係で何か問題というのが浮かび上がっていますか。
 例えば、出訴期間の問題で、我々の考え方の1つのオプションとしては、出訴期間は要らないのではないかという議論もあるのです。それから知った日から3か月というのもやめて、処分のあった日から1年間というのはどうだろうかと、そういうオプションがございますけれども、そういうオプションについては、防衛庁当局としてはどういうふうにお考えなんでしょうか、人事の関係をまずお伺いいたします。

【説明者(大海寺訟務管理官)】十分に調べたわけではございませんが、出訴期間については、今まで人事関係についての問題として、もめたという形のものは記憶にはないんですが。

【塩野座長】質問は、幾つかオプションがあるものですから、防衛庁として、そのオプションのうちのどれがベターであるとお考えなのか、そういったことについても情報をいただきたいということですが。

【説明者(大海寺訟務管理官)】我々が伺っておりますのは、現在、提示いただいているものの中で、担当部局の方から特段の意見はないという形をいただいております。   また、どれがベターかということは、ちょっとそういう聞き方はしておりませんけれども、またもし答えられるようであれば、お答えさせていただきたいと思います。

【塩野座長】あるいは、私どものそちらに対する質問の趣旨が必ずしも徹底していなかったのではないかと思いますが、何もなしで出訴期間を聞いても、それは答えられないだろうという御意見があちこちからございました。そこで、我々としても議論を重ねた結果、幾つかのオプションを出したわけです。そうしますと、それに対するお答えというのは、このオプション以外にもこういうオプションがあるというのが1つありますね。もう一つは、ないとすれば、このオプションのうち、どれが我が省にとって適切と思うかと、そういった御返事がいただけるものというふうに思っております。再度のお願いで恐縮でございますが、そういう点でもう一度考えていただきたいと思います。
 それから、防衛の場合、特に私もなかなかよく分からないところがありますけれども、防衛施設関係のところで、いろいろな争いが起きたときに、内閣総理大臣の異議という制度があるのは御承知だと思いますけれども、そういうものが必要な場合というのが考えられるのかどうか、その点はいかがでしょうか。執行停止について、現在、内閣総理大臣の異議という制度がありまして、裁判所が執行停止を決定したときでも、公共の利益に重大な影響を及ぼす場合には、内閣総理大臣が異議を申し出ると、異議を申し出た途端に執行停止は止まる、あるいは執行停止のプロセスはそこで終わるという制度でございまして、これについては廃止の意見も出ているということでございますが、その点についてのお考えというのはいかがでしょうか。

【説明者(池田先任部員)】今、答えは持ち合わせておりませんが、今までのそういう防衛施設庁関係の訴訟でも、それが実際に使われたことはないわけでございまして、どういうお答えをしたらいいかというのは、準備できておりません。

【塩野座長】やや、仮定の質問で、その点は申し訳ないのですけれども、ただ、もしお答えがないと、内閣総理大臣の異議の制度を廃止しても防衛庁としては全然問題はないと考えると、そういうふうに我々は受け取りますので、その他の点も含めて、そこは是非お願いしたいと思います。
 現在のところは、とにかく情報を集めたいというのが一番の問題ですけれども、情報が集まらなければ、防衛庁としては、我々のいろんな考え方をそのまま飲んでいただけるというふうに思い込みますので、そこはよろしくお願いいたします。どうぞ、他の方、何かここは是非聞いておきたい、あるいはきちんと調べておいていただきたいという点があればお願いします。

【芝原委員】施設庁の関係だと思うのですけれども、基地の周辺問題でいろいろあるかと思いますが、ああいう場面において、団体訴訟的なものを防衛庁関係者はどうお考えなのかなというのを知りたいのですが。

【説明者(大海寺訟務管理官)】今日は施設庁の者が私どもと同席しなかったこともあり、その辺については今答えるものは持ち合わせておりません。これもまた引き続き持ち帰って、後日回答したいと思います。

【塩野座長】それでは、大体こういった類いの疑問がそれぞれの項目全部についてありますので、作為を求める訴えとか、それから行政行為が、もし防衛施設庁関係であれば、その行為を差止める訴えの問題、あるいは確認の問題等々、すべての問題について、我々としては、いろんなオプションを出しておりますので、それについてのお考え、あるいはここに挙げられていない論点をお出しいただければというふうに思います。とりわけ、対外的な処分権関係ですと、やはり防衛施設庁が中心になりますかね。あとは、もちろん懲戒の話は今ので分かりましたが、そうではない場合、あとは情報公開はおなじみのところですけれども、それはやや共通した問題がありますので、特に防衛施設庁から情報公開について、今の制度等について、あるいはその訴訟の在り方について、特に防衛庁の関係からこういう点が問題である、だから訴訟のときでもこういった点を、情報公開関係訴訟でも、こういった点について考慮してくれないかというようなことがあれば、それもどうぞ教えていただければと思います。
 人事と情報公開関係と、防衛施設庁関係を中心に、質問事項に是非、もう一つ、実力というのはもちろん公権力の行使に入っていますが、そこの点についても、いわゆる行政決定、行政行為でない行為というのが、防衛庁関係では、理論的にはいろいろあり得るところだと思いますので、そういった点についても教えていただければと思いますので、防衛庁ならではのお答え、情報の提供を期待していますので、よろしくお願いいたいします。

【説明者(池田先任部員)】引き続き検討いたします。

【塩野座長】はい、他の方はよろしいですか、どうもありがとうございました。

【内閣府】

【塩野座長】内閣府からのヒアリングをお願いたいと思います。御説明は、川辺英一郎大臣官房企画調整課総括課長補佐でございます。よろしくお願いいたします。

【説明者(川辺総括課長補佐)】お手元に主な検討事項に関する意見等というのがございまして、内閣府といたしましては、現時点においては特段の影響はないというふうにお答えをさせていただいております。
 少し背景を説明させていただきますと、御存じかと思いますけれども、内閣府という役所は、政府内の政策の企画・立案及び相互調整をメインにやっておりまして、例えば経済財政政策、科学技術政策、あとは男女共同社会の参画の政策とかございますが、もちろん全く行政処分がないかと言えば、もちろんないわけではございませんけれども、特段に直接それを行使する機会というのは余りない。基本的にメインの仕事というのは、政府の中の仕事をし、例えば経済財政でございますと、昨今骨太2003というのが出ましたけれども、政府全体の経済財政政策の方向を示しつつ、それぞれの仕事につきましては、各省庁がそれに基づいてやっていくと、そういう感じになっておりまして、事実、こういった事件訴訟等に関することが余りないというか、全くゼロというわけではございませんけれども、今の時点において、こちらからいただいたものについて、特段コメントするような立場にはおりませんということでございます。
 それから、1点付け加えさせていただきますと、団体訴訟のことでございますが、行政事件訴訟に関する団体訴訟につきましては、我々としては特段コメントがないんですけれども、御存じかとは思いますけれども、現在、当府にございます国民生活審議会というのがございまして、そこで消費者団体訴訟ということの導入を図ろうということになっております。
 こちらの検討会は行政訴訟と、消費者団体訴訟というのは、多分民事訴訟法の特例という形になるかと、そういう意味では違うものと言えば違うものなんですけれども、多分そこを構成する法理論と申しますか、そういったものはかなり類似するのではないかと考えております。
 そこは類似性がありますので、今後ともこちらの方と事務局同士図りつつ、そごがないというんですか、そういうふうにやっていきたいと我々どもは考えております。
 ただ、今、申し上げ消費者団体訴訟につきましても、まだ検討が始まったばかりのものなんです。要件とか、だれが原告適格とか、なかなかまだ詰め切れていないところがございますので、この場でどうかということについて申し上げられる状態ではございません。
 以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。私の方から一般的なことで、情報不足のところもありますので教えていただきたいと思いますが、処分権限は全くないということはないとおっしゃいましたが、おそらく一つは人事関係の問題があろうかと思いますけれども、それは人事院から昨日聞きましたので、特に問題があればそちらから御説明いただきたいと思いますけれども、その他にどういう処分権限があるのでしょうか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】多分、一番日常的に起こっているのは、NPOの認証だと思います。ただ、そもそもNPOの認証というのは、かなり形式的に認証するという理念の下でつくられておりまして、不認証はかなり少のうございます。
 例えば今、内閣府のトータルで1,100程度認証しておりますけれども、そのうち不認証21でございます。
 それから、うちだけではなくて都道府県が所轄庁でございますので、全国トータルでございますと、今まで認証された数は1万1,800程度なんですけれども、そのうち不認証は45でございます。
 ということで、必然的にこういうことに関する訴訟も、もちろんないというわけではございませんけれども、それほど活発にあるということではございませんので、あえて申しますとここでございますけれども、特段、今コメントするほどのことではないと考えております。

【塩野座長】訴訟はないことはないわけですね。

【説明者(川辺総括課長補佐)】はい。

【塩野座長】我々の提案としては、例えば土地管轄の問題として、住所地ということも考えているのですが、今のところはないということなんですけれども、これからは大いにあるだろうということで、我々もいろいろ考えているわけですけれども、もし訴訟が増加したときに、管轄が、今の我々の1つの提案としての、原告住所地ということで対応するというふうなお考えなのか、それともそれは困るのかと、その点を1つお伺いしたいと思います。

【説明者(川辺総括課長補佐)】そこは申し訳ございません。内部でも検討が十分進んでおりませんで、ちょっと今はお答えにくいんですけれども、基本的には、これはある種横並びの問題だと思いますので、そこは各省並びで、当方として特に。

【塩野座長】横並びと申しますと、内閣府地方支分部局の絡みはありますか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】沖縄にございます。ただし、沖縄は少し特殊でございまして、法形式上は、内閣府の地方支分部局でございますが、それぞれ国土交通省、農林水産省、経済産業省、財務省、あと公正取引委員会もそうでしたか、各省の支分局でもあると、そういう形です。
 それぞれ、その業務につきましては、各省大臣からの指示を受けるということになっておりますので、そういう意味ではございません。

【塩野座長】では、沖縄は別として、例えばNPOで全国から、それからまず処分権者はもちろん所管の大臣でしょうけれども、それが別に地方支分部局に委任するということはないということになりますね。そして訴訟が全国から出たときにどうなのかという点で、この点については若干の省庁から自分のところは地方支分部局があるという御説明があることに対して、地方支分部局がないので住所地で管轄を決められるのは困る、そういった御指摘もあるところなものですから、こちらにいただいているペーパー、そちらにも各省庁のものが行っていると思いますので、それを見ながら考えていただきたいと思います。

【説明者(川辺総括課長補佐)】分かりました。

【塩野座長】NPO以外に何か処分権がございますか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】特にはないかと。

【塩野座長】それから行政指導も、例えば男女共同参画会議や何かで、個別企業に対して直に指導されるということはありませんか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】済みません、調べさせていただきますけれども、多分ないと思います。それは追って回答させていただきますけれども、基本的にはないと思います。
 先ほど申しましたように、仕事は政府全体の調整なので、個別企業に直に指導することはちょっと考えにくうございます。それは帰りまして調べさせていただきます。

【水野委員】消費者関係で団体訴訟の検討をしておられるということでしたけれども、さっき民事訴訟が中心だとおっしゃったけれども、消費者訴訟でも、例えばジュース表示裁判とか、そういった一種の公益的な行政訴訟というのがあるわけです。それから環境訴訟なんかは、かなり公益的な部分がありまして、むしろ個人に原告適格を認めるよりは、そういった活動をしている団体、NPOなんかに原告適格を認めるのが妥当ではないかと、こういう議論があるわけなのですけれども、そういった点について特に御意見はございませんでしょうか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】それは、こちらから意見を申し上げる立場ではございません。

【水野委員】そうですか、そういう団体に原告適格を認めて、訴訟を起こせる可能性を開くということは、特に反対とか、賛成とかありませんですか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】はい。

【水野委員】そうですか。

【成川委員】消費者行政で、消費者センターなど苦情処理の形で、いろいろ調整なのか、あるいは苦情を聞いたりしていると思うのですが、それが訴訟に発展して、それに関わって内閣府として何か被告の立場に立つとか、そういう例はないのですか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】済みません、それはセンターが何かやったこととか、消費者行政を行ったことによって、訴訟の立場に立ったケースはないかということですね。

【成川委員】はい。

【説明者(川辺総括課長補佐)】それも持ち帰って調べさせていただきます。

【塩野座長】今の点とも関係するのですけれども、内閣府にはいろんなものがぶらさがっているというと語弊がありますけれども、最近は何でも内閣府に行きたがるところがあって、そのときに今、我々が問題にしているようなものは、それぞれの例えば三条機関ですと三条機関が対応すると、今のこういった問題についてですね。それから、他のところで、今の国民生活審議会ですか、それからセンターや何かで、それも内閣府にぶらさがっているわけですね。

【説明者(川辺総括課長補佐)】内閣府にございます。

【塩野座長】そうすると、今出されたような点で、まさに行政指導や何かでいろいろ問題が起きている可能性があるのですが、それに対して何か我々が聞くとすると、やはり内閣府を通さないと、あるいは内閣府に聞かないと答えが出てこないということなんですか、それともセンターに直接聞いてくれということなのか、そこの整理をちょっとしていただけますか、内閣府としては、これは所掌の範囲だけれども、ちょっと情報等足りないので、むしろ直接に聞いてくださいという仕分けをしていただけませんか。本当にいろんなものがあって、公取のことをおたくに聞いても仕方がないとは思いますし。

【説明者(川辺総括課長補佐)】私は、内閣府本府の、本府というのは変な言い方で申し訳ありませんが、代表で参りましたので、外局に当たる公正取引委員会等につきましては、その他につきましては私をとおしていただければ、またこちらからお返しをさせていただきたいと思います。

【塩野座長】もし、こちらの方に聞いた方がいいということなら文書もそちらに、それはよろしいですか。

【説明者(川辺総括課長補佐)】公取は別で。

【小林参事官】所管の団体は、むしろ所管の団体を監督しているわけですから、それについてはむしろ意見をくださいということで言ってありますので、特殊法人等ですね。

【塩野座長】審議会といっても結構個別問題について、やることがありますので、私どもそこはちょっと承知をしていないところがありますから、お願いをしたいということでございます。
 他に、よろしゅうございますか。それでは、考えられる問題、あるいは起こりそうな問題ということも含めて、NPO周辺のことでも行政訴訟との関係でいろいろお伺いしておりますので、そこはきちんとお答えをいただきたいというふうに思います。

【説明者(川辺総括課長補佐)】検討します。

【塩野座長】NPOでも取消しという観念はあるのですね。

【説明者(川辺総括課長補佐)】あります。

【塩野座長】だから、その取消権を発動したときの出訴期間の問題とか、そういった点についてお話を伺いたいと思いますし、このNPOは取り消すべきだということをだれかが請求したときに、そういうことがあり得るのかどうか。新聞報道によりますと、いろんなNPOがあるというふうに聞いておりますので、そういった点について第三のNPOからNPO相互の間の争いでこちらのものを取り消すべきだというような意見が出てきたときに、それは当局として、そういった訴えも受け止める用意があるのかどうか、そういう点も含めて、ちょっと頭の体操をしていただけますかね。よろしくお願いします。
 他に何か、よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

【警察庁】

【塩野座長】それでは、警察庁からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、吉田尚正長官官房総務課企画官でございます。よろしくお願いいたします。

【説明者(吉田企画官)】警察庁の吉田と申します。よろしくどうぞお願いします。 では、座って御説明させていただきます。
 行政訴訟検討会における主な検討事項に関しまして、警察庁におきまして、貴検討委員会で御検討されている事項に関して、影響があると思われる事項について、事前に意見の提出をさせていただいております。
 お手元にお配りさせていただいてあろうかと存じますので、その書面に沿う形で、簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 書面に入ります前に、警察庁として、大きく影響を及ぼすのではないかと考えている点は、貴検討委員会におきまして御検討されている項目の中で申し上げますと、審理の充実・迅速化のための方策の整備の部分と、それから仮の救済制度の関係、この2点になろうかと思います。
 これにつきまして、もちろん、全体の行政訴訟制度の見直しという中での見直しの意義というものは、私ども重々承知をいたしておりますので、あくまでも警察全体として影響があるのではないかということで、御考慮いただきたいという趣旨での意見でございます。
 以下は、簡単に配布の資料に従って御説明を申し上げたいと思いますけれども、まず、最初に行政訴訟の管轄裁判所の拡大につきまして、御検討をされておるということでございますけれども、これはおそらく各省庁共通の問題かと存じますけれども、各都道府県警察で行う処分につきましては、処分の相手方が他の都道府県に居住しているということは想定されるということでございます。
 そういった場合に、例えば具体的には、こちらにも掲げておりますようなデモの申請に対する不許可処分というものがなされた場合の取消訴訟の提起、あるいは執行停止の申立てという状況が発生した場合に、それに対する対応として行政庁の対応が若干困難になろうかという問題があり得るのではないかということでございます。
 これは、特に東京においてデモが行われる場合はかなり多いわけでございますけれども、地方からのデモ申請といったものもあることはありますので、そういったときの、これは実際にそういった地方からのデモ申請の不許可で申立てがなされていろんな不具合があるとか、そういったことは事例としてはございませんけれども、あくまでも理論上の問題ではございますけれども、そういったことが、もしこういう改正がなされればあり得るのではないかということを御指摘をさせていただいたということでございます。これは、各省庁とも、おそらく横断的な問題だろうと思います。
 続きまして、審理の充実・迅速化のための方策の整備の中での問題でございますけれども、これにつきましては、検討事項として御提示をされております訴訟関係の明瞭化、審理の充実・迅速化というための訴訟の早期の段階での処分、または裁決の理由の明確化のための方策ということで御提示をいただいておるものでございますが、これに関しまして、例えば文書提出命令のような形での制度の設計ができないかというようなことを御提示されているものと理解をいたしておりますけれども、これは民訴法の規定にもございますような犯罪の捜査に関係するもの、これは警察独自の問題かと思われますけれども、やはりこういった処分の前提といたしまして、かなりいろいろ機微な情報収集活動というものがなされまして、それに基づきまして処分がなされるという実態が多々ございますので、そういった点につきましては御考慮を賜わりたいという考えでございます。
 具体的に申し上げますと、ここに掲げておりますけれども、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる暴対法でございますが、暴対法は御案内かと存じますけれども、一定の構成員の中に前科があるものの比率が一定の水準に達しますと、それは指定暴力団ということで、都道府県の公安委員会が指定いたしまして、国家公安委員会でそれの確認をするということでございます。
 それで指定暴力団になりますと、その団員が一定の、例えば刑事犯に当たらないような、私は山口組だというようなことを威力として背景に持ちつつ、みかじめ料を要求するとか、そういったことに対して中止命令といったものをかける。
 あるいは、対立抗争が起きますと、それを早期に終息させるという意味も含めまして、事務所の使用制限命令と、これは数年前に初適用いたしたものでございますけれども、こういった処分がございます。
 この際には、当然指定暴力団として認定するに際しまして、例えばいろんな情報提供者でありますとか、そういった者から得た情報等も勘案しつつ指定をし、あるいは中止命令の際にもそれを参考にするといった状況がございますので、仮に中止命令に対する暴力団側からの異議というものが提起された場合には、それを行政側としてすべての資料を明らかにするということになりますと、今後の警察の活動に支障が生じるのではないかということを危惧をいたしておりますので、そういった問題がございますということを御指摘申し上げたいというふうに思います。
 次に、仮救済の関係でございますけれども、これにつきましては、検討事項の中でお示しをいただいておりますものといたしまして、執行停止の要件の緩和でございますとか、あるいは不服申立の在り方等々御提示をされておるということでございますけれども、この点に関しましても、先ほど申し上げました暴対法に基づく各種の命令等につきましては、例えば、一定期間の経過後に、処分の執行力が発生するでありますとか、あるいは暫定的な執行停止といった制度が設けられるということになりますと、これは逆に脅かされている一般国民に対して、不利益な事態が生じるという可能性もあるのではないかということでございまして、この暴対法に基づく処分、特に暴力団を相手にする処分ということでございますので、そういった点には、やはり一定の考慮が払われるべきではないかということを考えております。
 更に、冒頭にも申し上げましたデモの関係でございますけれども、デモの関係につきましても、これはやはり実際にデモが行われる際に、不測の事態を防ぐという意味で、いろんな許可に条件を付けたりしておりますけれども、それに対して執行停止が自動的に認められるでありますとか、あるいは処分の要件が一定期間後に発生するということになりますと、例えばここでデモの当日になってしまうというような状況になりますと、警備上、あるいは交通対策上問題が生じるおそれなしとしないという危惧がございますので、そういった問題が警察業務の中ではあり得るということを御指摘申し上げたいと思います。
 それから、同じく仮救済の関係でございますけれども、執行停止に対する不服申立の在り方の関係で、これはいろいろ御議論があろうかと思いますが、内閣総理大臣の異議の制度の関係でございますけれども、これにつきましても、書面でるる書かせていただいておりますように、言わば伝家の宝刀というと、警察で言うのはちょっとおこがましい話かもしれませんけれども、デモの警備に際しては、やはり内閣総理大臣の異議の制度というのは、最後のとりでとしてあるということは重要であると私どもでは考えております。
 ここに書いておりますように、確かに第二次安保の華やかなりし時代にかなり効果を発揮したわけではございますが、実際に昭和46年以降、全く使われたことはないというのは、これは厳然たる事実ではございますけれども、やはりそこまでには至らないまでも、こういった制度の適用はあり得べしということで、事前の準備を進めたというケースは、かなり最近でもございますし、一番最近ですと、平成13年8月、2年前になりますが、ちょうど総理の靖国神社参拝の関係で、いろいろと世上で注目を集めたところでございますけれども、ある集団が靖国神社の前を通ってデモをしたいという申請をいたしまして、これに対しましては、対立する他派の集団のデモの申請もされておりましたし、あるいは右翼団体もかなり来るということで、そのまま靖国神社の前を通るということによって、交通上も、それから警備対策上も非常に大きな問題が生じるおそれがあるということで、許可はいたしましたけれども、条件を付けまして、靖国神社の前は外して許可をするという条件を付けるといった実例がございまして、これに対しまして、当該団体からの執行停止の申立てがございました。
 これに関しましては、裁判所におきまして却下をされておりますので、それ以上の事態には至っておりませんけれども、そういった際には、私どもはやはり常に最悪の事態を考えますので、そういった内閣総理大臣の異議という制度も念頭に置きつつ、もろもろの準備を進めたという実態はございました。
 そういった意味で、いろいろ憲法上の議論があるということも重々承知をいたしておりますし、藤田先生の教科書ですとか、そういったところでも勉強をさせていただきましたけれども、そういったことを踏まえましても、なお、この制度には公共の安全、秩序の維持という観点から最後のとりでとしての意義があるというふうに私どもは考えておるということでございます。
 その他につきましては、これはメイン・イシューということでもございませんけれども、原告適格が拡大されますと、例えばということでございますけれども、暴力団対策法に基づいて、ある暴力団が指定暴力団になりましたという際に、今は暴力団が原告適格を持つということでございますが、個々の暴力団員というものまでもし広がりますと、ある意味濫訴というおそれもなしとしないと、これも理論上の問題でございますけれども、こういったこともあり得るということで書かせていただいたものでございます。
 最後に、不服審査前置による規制の緩和の関係でございますけれども、これにつきましても、おそらく各省庁共通の問題であろうと思います。やはり、まず最初に行政部門におきまして判断をし、それを経た上で裁判に移るといった形がより裁判の簡素化という面でも効率的にはよろしいのではないかという趣旨でございまして、警察におきましては、不服審査前置ということを法律で定めておりますのが、犯罪被害者等給付金支給法の支給裁定、あるいは暴対法の指定というものがございますけれども、いずれもそれぞれ意義があるというふうに考えておりまして、提出の書面にもそのように記載をさせていただいたところでございます。
 警察庁関係につきましての説明は以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、これから委員の質問にお答えいただきたいと思いますが、即答できないときには、どうぞ文書で後日お答えいただいて結構でございます。今日、御用意いただいた御意見以外にも、私どもが用意した項目もいろいろありますので、この点について警察庁から今日は御説明がなかったけれども、どう考えるかという類いの質問も出るかと思いますので、それも今日お答えになれる範囲でどうぞお答えいただければと思います。
 それでは、どうぞどなたからでも結構でございます。できれば前の方からの方がいいですかね、この訴訟の管轄裁判所の拡大については、地方公共団体の機関の処分をどうするかという点については、いろいろなところから、特に地方公共団体を中心にして御意見・御要望等が出ております、ということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、2−2の審理充実の辺りからどうぞ。私の方から1つだけ質問ですが、情報公開法との関係について特段御言及がございませんでしたが、どういうふうにお考えなんでしょうか。

【説明者(吉田企画官)】もちろん、情報公開法の場合にも不開示の要件がございますので、情報公開の開示請求がなされた際には、まさに情報公開法に規定されております規定に基づいて判断をさせていただいているということでございます。
 ですから、そういった意味では、これはその制度の設計がどうなるかということにもよりますけれども、例えば民訴法の文書提出命令にありますような規定がもし設けられるということになりますと、まさに情報公開法のような運用になるのではないかというふうには考えられると思いますが。

【塩野座長】運用になるのではないかということは、そういう御意見、あるいは御要望だというふうに承ったらよろしいですか。

【説明者(吉田企画官)】私どもとしては、私どもの活動に支障がないような形での制度設計がなされることが望ましいという要望でございます。

【塩野座長】そこで、今のようないろんな暴力団の情報がありますが、その生の資料が出ないと、そんなときどういうふうに証明するのですか、裁判所はそんなにたやすく認めてくれるのですかね。挙証責任は、おそらくこの場合には警察の側にあると思うのですけれども、その辺ちょっと素人っぽい質問で、今までどうやっておられたのか、余り事件数はなかったと思いますけれども。

【説明者(吉田企画官)】情報公開法の関係では、まずは裁判になったという話は、私も承知しておりませんけれども、情報公開審査会にまずインカメラしまして、そこでかなりいろいろな機微な情報についても先生方には御提示を申し上げて。

【塩野座長】情報公開法の方は要件に該当するかどうかの話なんですけれども、こちらの方はどっちが該当するかと、証明を追い求めているわけですから、それはよく裁判所は好意的に推認してくれるんですか。

【説明者(吉田企画官)】そこは、かなり機微な情報ということで、情報を出すことによって、例えば具体的な例で申し上げますと、暴力団仲間の中で得た情報というものを基にして指定の基礎資料にするといったことは実務としてもあり得ますので、そういったものが法廷に出る、あるいはインカメラの場合ということでございましょうけれども、まさにそういったものが出るということ自体が制度として設けられますと、そこまで末端の暴力団が知っているとは思いませんけれども、やはり全体としてこういったことをしゃべることによって、いずれは公の場に出てきて、自分の身に危険が及ぶのではないかといったことは、一般的には想定されるというふうに考えられるということでございます。

【水野委員】現在でも暴力団を指定して訴訟が起きた場合には、当然そこは立証しなければいけないわけですね、その辺りはどういうふうにお考えなんですかね、今までだと、なかなかその立証は難しいという話になるのではないでしょうか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】今までに暴力団の指定に関して訴訟が起きたことというのは何件かございます。それで実際に勝訴させていただいているんですけれども、今までの訴訟の中では、行政庁の方で指定処分に、それはそれなりのきちんとした資料を作成して処分をしているわけですから、その中から全部が全部ではなくて、こちらが証明するのに非常に有効であると、しかもこれは公開をしても警察の方で情報入手元に危害が及ぶおそれがないとか、それから警察の手のうちを明かすことにはならない、あるいはなってもそんなに大きな被害はないというようなものを選んで、裁判官の心証を得られるものということで検討して提出をさせていただいて、その中で御理解を得て判決をいただいているというところでございます。
 ただ、新民訴になって、行政文書の開示の制度で平成10年の改正があった後には、指定処分の取消訴訟というのは提起されたことはない。控訴審に係属しているというのはありますけれども、いずれにしても文提命令が警察の方で、当然処分をした行政庁の方でそれが適法だということの証明は第一義的にしなければならないので、そういった形で証拠を提出した上で、それで更にまだ足りないということで、裁判所の方から文提命令がかかったり、あるいは原告の方から文提命令の申立てがなされたということは、今までのところはありません。しかし、たとえ文提命令の申立てがなされたとしても、やはり出せないものについては、今、企画官の方から説明させていただいたように、その文書の特定がされれば、それがどういう性質の文書かというのは、それは裁判所の方でも大体御認定いただけるというふうに思われますので、そこはそのような形で御説明をしたいと思っている次第であります。

【塩野座長】それでは、執行停止の方に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。

【福井(秀)委員】そうしますと、例えば暴力団の報復の危険のような、具体的に今後の情報収集に支障があるような処分は、具体的に特定できるわけですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】処分というのは、文書ということですか。

【福井(秀)委員】いや、文書ではなくて、そういう文書の提出が論点になるような処分。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】暴対法の中でですね、それは暴力団の指定の処分というのがございます。それから暴対法に基づく各種命令というのがあるんですけれども、その行政命令は、一応すべてそういうことが予想されるものでございます。

【福井(秀)委員】そうすると、そういう処分を特定して、そういう処分に関わる情報で、今後の情報収集に支障があることになるようなものについては、例えば警察庁の意見を聞いた上で判断するとか、あるいは具体的な実質審理をした上で出すかどうかを判断するという限定付きであれば、こういう審理の充実のための措置は支障がないということになりますか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】現行でも行政事件訴訟法の7条で民訴法が適用されるというふうに認識しておりまして、民訴法の中ではまさにそういった観点から、インカメラ方式とか、そういうことも含めていろんな手当がなされていますので、その範囲であれば、もちろん現行でもそうですし、支障はないんですけれども、ただ何か一括して何も見ないでとりあえず文提命令ありきと、処分に関わった書類は一切全部出しなさいという命令がかかって、そこからあらがっていくというのは、今の制度とはまた異なるものだろうと思って、まさに異なるものなんですけれども。

【福井(秀)委員】一斉にかかったとしても、その中で、さっきおっしゃったような個別に事情があるものについては除き得るような仕組みにしておけば問題ないということですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】そうですね、そこの部分が十分に手当していただければ、命令がかかったとしても、ただ文提命令の性質がよく分からないんですが、まず、文提命令がかかって、それで出さないということになって、それが民訴法に書いてあるような訴訟上の不利益とか、科料とかということにはならないと。

【福井(秀)委員】そういう細部の制度設計までしているわけではないのですが、要するにおっしゃるような意味での支障があるものを出さなくて済めば支障はないと、こういうことでございますか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】おっしゃるとおりです。

【福井(秀)委員】はい、分かりました。

【塩野座長】何が何でも全部出せと言っているわけではないのですが。

【説明者(吉田企画官)】私どもとして、こういった危惧を持っているということを御理解いただきたかったという趣旨でございます。

【塩野座長】よろしいですか、執行停止の方に入ってよろしいですか。

【水野委員】ただ、このメモで、そういう判断は行政庁で判断させてくれというのは、これはちょっとなかなか通りにくい議論だと思いますので。

【塩野座長】そうですね。それでは、どうぞ執行停止の方で何か。

【芝池委員】4ページの①の方の一番下のところなんですけれども「道交法及び公安条例に基づく許可処分は、申請から集団行動が実施されるまでの時間が極めて切迫している」と書いておられるのですが、確かに判例なんかを見ておりましても、デモの前日に裁判所の決定が出るとか、そういうことがあって、時間的に切迫しているというのは確かだろうと思うのですけれども、これは仄聞するところ、本当かどうか知りませんけれども、むしろ警察がぎりぎりまで許可を出さないからだということを聞いたことがあるのですけれども、如何ですか。

【随行者(和田警備局警備企画課課長補佐)】公安条例におきまして、例えば24時間、ないしは72時間ということで、条例によって差はあるんですが、そこまでに申請をしてくださいということは書いておりまして。

【芝池委員】24時間前でいいんですか。

【随行者(和田警備局警備企画課課長補佐)】もちろん、今、御発言がありましたように、あらかじめ一定の余裕を持って申請いただく場合もあれば、まさに申請自体が1日ちょっと前に来た場合、こちらで警察として抱えるといってもできるものでもありませんし、ですので、必ずしもそのようなことは、当然一方当事者としての立場ではありますけれども、聞いてはいないといいますか、そういう御不満とかは。

【芝池委員】24時間前というのは、一般的には許可の申請の実情なんかからいうと、かなり不思議な感じがするのですけれども。

【随行者(和田警備局警備企画課課長補佐)】実際にデモならデモを行う前に、何時間前までにということで、例えば急遽そういう取り組みを行うとか、そういうことも実際にはあるんだと思いますので、こちらとしてはできるだけ前に切ってしまえばいいんだと思うんですが、ただその条例上も当然そういう配慮があって、ぎりぎりまで受付をするということはあるんだと思います。

【芝池委員】6ページの方ですけれども、内閣総理大臣の異議の実例というのは、9回あると。しかし、その他にも事前の準備を行った案件がかなりあるというふうに書いておられるわけでありますが、これもやはりデモ関係ですか。

【説明者(吉田企画官)】すべてデモ関係でございます。

【水野委員】一番最後の8ページですけれども、この犯罪被害者等給付金の審査請求、それから暴対法指定の審査請求ですが、この審査請求の期間というのは大体どれぐらいかというのは分かりますか、一番長いのでどれぐらいかかっているか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】審査請求の期間というと。

【水野委員】審査請求が出てから、裁決が出るまでの期間です。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】最高で今までで3か月以内で。

【水野委員】一番長いので3か月、それより長いのは実例としてはないということですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】済みません、大体3か月ぐらいで、一番長くて5か月です。

【水野委員】5か月もかかるというのは、何か特別な理由はあるのですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】特別な理由というはあれなのかもしれないですけれども、一応、暴力団を指定する際には、いろんな膨大な資料を見て、それでどうなのかということをきちんと審査しなければいけないものですから、膨大な資料一つひとつについて再度の確認をするという意味で、ちょっと時間がかかった例もあるかと思います。
 特に、大きな組織になりますと、例えば山口組のような組織になりますと、人数も多うございますので、その分、やはり資料も多くなるという意味で時間がかかっている場合もあるかと思います。

【水野委員】今、5か月とおっしゃったのは暴力団の関係ですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】そのとおりです。

【説明者(吉田企画官)】犯罪被害者等給付金の関係は、ちょっと手元にございませんので、また後刻御報告いたしますが、よくある事例といたしましては、被害者そのものに帰責があるとして、例えば支給金の支給の減額裁定がなされまして、それに対する不服申立といったケースがかなり多うございまして、そうなりますと、事件の事実関係について、やはりかなり微妙な問題がございますし、刑事訴訟との関係も見据えつつということで、被害者の帰責の程度というものについて、更に精査をするといった作業が必要になろうかと存じますので、そういった点である程度の時間がかかっていようかと思いますけれども、正確にどの程度かというのは、また御報告申し上げたいと思います。

【福井(秀)委員】今の不服審査前置の関係ですが、この2つの例は、ちょっと性格が違うようにも思うのです。犯罪被害者の方は一種の受益処分、言わば被害者ですから、通常人を相手にしている。暴対法の指定というのは、文字どおり暴力団からの請求を前提にしているということで、ちょっと違うような気がするのですが、これらがともに裁決を待ってからでないと訴訟を提起できないということに必然的になるグルーピングができるものかどうか、ちょっとよく分からない点があるのです。

【説明者(吉田企画官)】実は、私の方でも必ずしも他の制度の全体の専門家ではないものですから承知はいたしておらないんですけれども、こちらに書かせていただいたような中身で、もともとはそういった立法理由についても、まずは行政庁で精査をした上でと、その上で更に不服があれば訴訟を提起するという形がより効率的ではないのではないかという考慮に基づきまして、そのような制度に。

【福井(秀)委員】犯罪被害者ですと、さっきお話があったように、帰責事由の判定ですね。一種の過失相殺のようなものですか。

【説明者(吉田企画官)】それに近いようなものであろうと思います。

【福井(秀)委員】そういうのは、実際上、民事訴訟なりでも、交通事故裁判などで裁判官が適切に権限行使しているわけで、行政庁の判断がなければ判断できないというような性質のものかどうかというのは、ちょっとよく分からないものがある。暴力団の方は、行政庁でないと暴力団性について、十分一義的に判断できないということでございますか。仮にそうだとしても、それは第一次判断権は既に指定があった段階で行使しているわけで、それが争われた段階で、やはりもう一回行政庁の手元に置かないとまずいということの必然性はどういう理屈ですか。

【説明者(吉田企画官)】それは、まさに先ほど福井委員がおっしゃいましたような行政の専門性ということで、やはりまずは再度処分の当事者からの不服に対しては、再度行政において専門的な観点から精査をし、その上で判断をし、更に不服があれば裁判所の判断を求めるという手順がより効率的ではないかというふうに考えます。

【福井(秀)委員】逆に言えば、いきなり裁判を起こされると、暴力団対策の点で何か支障が生じるということになりますか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】暴力団対策で、何か暴力団対策上、いきなり訴訟が起きたからといって、絶対に困りますということは、暴力団対策特有の場面では特段ないということに。

【福井(秀)委員】被害者等給付金の方はいかがですか。

【説明者(吉田企画官)】被害者等給付金の場合も、もちろんどうしてもだめかということについては、それはだめですというだけの理屈は私どもは持ち合わせておりませんけれども、そこはるる申し上げているような理由によりまして、現在そうなっているということです。

【福井(秀)委員】ある程度、両方、被害者と暴力団も共通する面もあるかと思うんですが、それは要するに処分の相手方が警察庁の不服審査には期待しない、ないしはそれをやるだけの手間をかけたくない、いきなり司法審査を求めたいのだという場合に、いきなりそっちに行ってもらう人が出てくれば、こういう事務は軽減されて行政効率は高まるということがあり得るかと思うのですが、そういう観点はいかがですか。

【説明者(吉田企画官)】司法の方は、私ども申し上げることではないのかもしれませんけれども、やはりある程度争点が整理された上で、更にそれに対して不服があるという方には、また司法の場で御判断を求めていただきたいというふうな形で。

【福井(秀)委員】司法の側で行政庁における不服審査情報を求めるだけの実利なりニーズがあるのであれば意味があるかもしれない。整理するとこういうことになりますかね。

【説明者(吉田企画官)】司法の側のことについて、私どもはお答えする立場ではございませんけれども。

【塩野座長】ここのところは、ちょっと昔の訴願前置主義がいいですというような調子の書きぶりなので、行政庁が二度判断すべきだと。もう少し暴対法あるいは犯罪被害者等給付の特別の事情がありませんと、今の行政事件訴訟法でも自由選択主義が原則でございますので、たまたま不服審査前置になっているから、今のような御説明かもしれませんけれども、もう少し考えを改めるというときに、特有の御説明があった方がいいのではないかと思いました。
 特に暴対法の場合の指定ということについて、ときどき議論するのは、まず、非常に緊急を要する場合には、ある程度の資料でまず処分をして、むしろ本当の勝負は不服審査の段階だと、そこで行政の本当の専門性、あるいは統一性が図られるのだと、そういった説明の仕方もあるわけですね、税なんていうのはときどきそういう説明をいたしますが、そういった特別の事情について、もう少し御説明いただいた方がいいなというふうに感じました。
 そこで、ちょっと前に戻って恐縮なんですけれども、内閣総理大臣の異議ですが、あれはなかなか難物で、言葉尻をとらえるつもりは全くありませんけれども、6ページの②のところで、今、これが発動されていないけれども、これがあることが重要な機能を果たしているということの趣旨なのですけれども、内閣総理大臣の異議の制度があるから裁判所に対して一種の抑止効果があるんだと、だから裁判所はむやみな執行停止をしないのだという裁判官に対する抑止効果ということを考えておられますと、ちょっとこれはまさに憲法問題が生ずるというふうにも思いますので、言葉尻をとらえるつもりはありませんけれども、ここは私としてはいただけない文章だというふうに思いました。

【説明者(吉田企画官)】申し訳ございません。そのような意図では毛頭ございませんので。

【塩野座長】だと思いましたので、確認のために。
 そこで、これは特にデモのときには、我々の方でもしょっちゅう議論していることなんですけれども、どっちかで日にちが迫っていますので、なかなか仕組みとしては難しい問題だと思うのですが、外国では別に内閣総理大臣の異議まで持ち出すまでもなく、こういったデモなんていうのは、日本よりももっと激しいのがいろいろありますけれども、それなりに対応しているということだと思いますが、その場合に、今までは内閣総理大臣の異議があるということで、先ほどからの御説明で多少頼っておられるところがあるのですけれども、この制度は、おおよそグローバル・スタンダードではないので、そういう観点から多少外国の制度についてお調べになっているところがあれば、是非教えていただきたい。
 また内閣総理大臣の異議は、日本で言えば、歴史的な偶然の産物だというふうに私は認識しているのですけれども、現在、もう一度ここで立ち返ってたみた場合には、こういう制度があるじゃないかというふうな具体的なアイデア、内閣総理大臣の異議までいかないまでも執行停止の手続の過程で、こういった仕組みが取れたらいいという、そういった御提案があれば是非いただきたいということなのです。単に内閣総理大臣の異議が極めて重要な機能を果たしているから、これを置いておけというのでは議論になりませんので、そこはよろしくお願いをしたいと思います。
 資料があれば、調べておられますか、外国でこういった点についての。

【随行者(和田警備局警備企画課課長補佐)】それに直接というのは、ちょっとございません。

【福井(秀)委員】今の内閣総理大臣の異議の点なのですが、これは処分庁の判断以外に内閣総理大臣が固有の利害で異議申し立てるべき実益は依然としてあるということなのでしょうか。
 要するに、これは処分庁とは別の人格で総理大臣がいきなり出てくる制度なのですが、処分庁の判断のやりとりで執行停止の有無が決まる制度ではまずいですか。処分庁は信用できないけれども、総理大臣の判断なら信用できるということがあり得るということになりますかね。

【塩野座長】そうではないと思いますよ、それは処分庁が負けてしまったので、親が出てくると、そういう話だと思いますが、だから親の一言で止まるという、そこの話だと思います。

【福井(秀)委員】もう一つ原告適格の方なのですが、これは構成員は原告適格がないのですか。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】そのとおりです。

【福井(秀)委員】原告適格なんですね。処分性のような気もするのですけれども、構成員は薄いわけですね。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】そのとおりです、処分性が薄いということで。

【福井(秀)委員】そういう理解でもよろしいと。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】ええ、それで団体全体に原告適格があるというふうに法律もなっていますし、そういう仕組みなんですけれども、処分性が薄いというか、指定暴力団が指定されたことによって、指定暴力団員がどういう不利益を実際に被るかということになると、例えば指定暴力団の威力を示してみかじめ料を要求してはいけないという不利益とか、他人を暴力団に加入供与してはいけないという不利益が生じるだけということなので、おおよそ原告としての適格がない。
 また、実際にそういう処分を受けたときに、当然その処分に対して、自分は指定暴力団員ではない、あるいは指定処分そのものが不当だということを理由に処分の取り消しを求めることもできるということで、全体の指定処分そのものに対して、個々の指定暴力団員に原告適格を認める必要はないという、そういう構成になってございます。

【芝池委員】今の原告適格のところなんですけれども、原告適格の拡大との関係で警察庁の管轄事項の中で問題になるのは、この案件だけだということでしょうか。他にも何か原告適格の拡大をすれば問題になるような案件というのはあるのでしょうか。

【説明者(吉田企画官)】私どもは全庁的に検討させていただいた結果として、暴対法の問題がもしあるとすれば、ここであろうということでございまして、その他、特段の問題はないということでございます。

【水野委員】通常は指定された団体が自ら原告になって訴訟を起こすのであって、その構成員が個々に起こすというようなことはちょっと考えられないのですが、原告適格が認められるとしてもです。仮に原告適格が認められるとして起こしてきたとしても、処分というのは1つですから、それぞれ起こしてきたって一緒にやったらいいわけであって、そんなに支障があって困るということにもならないと思うのですけれども、どうですかね。

【随行者(伊藤刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課課長補佐)】まさに、今、24団体指定しているんですけれども、24の団体のそれぞれの処分については、もちろん何か訴訟を起こされれば、こちらで証明しなければいけないということですので、24の訴訟を争うということについては特に問題はないんですが、同じ内容をあっちもこっちも、例えば暴力団員と指定されているものの中で、今、4万人おりますから、4万件訴訟を起こされると、それがそれぞれ別の事件として扱われるということだと、それでそれぞれの主張がそれぞれで異なってみたりとか、そういうことになると、いささか対応が難しいということにはなろうかということにはなろうかと思いますが。

【水野委員】ただ、4万人が訴訟を起こすというあり得ないことを想定して、原告適格を認められるのは困るという議論というのは、余り説得力がない。

【説明者(吉田企画官)】そこは、先ほども冒頭申し上げましたとおり、私どもしても、ここはまさにこういう問題もあり得るという趣旨の意見でございますので。

【塩野座長】最後ですが、私から1つお願いがございますが、警察庁所管の法律、特に昔流で言う警察の営業関係等々、営業警察のようなものについて所管の法律がおありだと思います。執行は都道府県公安委員会がやっておられるのですが、私どもとしてはそちらの方から情報がなかなか得にくいんです。知事会等から、あるいは都道府県団体からこの場で直にはなかなか資料を得られませんので、そういった営業関係の面で、出訴期間の問題、あるいは原告適格の問題、我々がその辺をそれぞれオプションで出しておりますので、警察庁として、法律の所管の庁としてどういうふうなお考えか、もう少し幅広に御返答いただければというふうに思いますが、出訴期間についても何のお答えもないと私どもとしても判断しかねないところがございますので、その辺を改めて資料を出していただければというふうに思います。

【説明者(吉田企画官)】改めて検討させていただきます。

【塩野座長】今日は、暴対法で一番すごいのを出してきたから、これはこうだなという話になるのですが、他でもってごく普通の行政処分がありますので、そこを聞きたいということもありますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【説明者(吉田企画官)】どうもありがとうございました。

【最高裁判所】

【塩野座長】では、次に最高裁判所からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、大竹昭彦事務総局行政局第二課長でございます。よろしくお願いいたします。

【説明者(大竹第二課長)】最高裁判所におきまして、行政事件訴訟法改正問題の担当をしております。行政局第二課長の大竹でございます。
 本日は、このような発言の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。座ったまま説明をさせていただきます。
 行政訴訟検討会の委員各位が1年5か月余りにわたりまして、精力的かつ真摯に検討を重ねられましたことに関し、まずもって深く敬意を表すものであります。
 本日は、お手元にお配りいたしました簡単なレジュメに従いまして、最初に行政事件訴訟法改正問題についての裁判所の簡単な基本的な考えを御説明をさせていただきます。
 次に、行政事件訴訟法が改正された場合の司法行政面での手当につきまして、若干のお話をさせていただきます。
 最後に、現在、各裁判所におきまして、行政事件を担当する裁判官が今回のヒアリング項目につきまして、おおむねどんな意見、感想を持っておるかといった点を併せて御報告をさせていただこうと思います。
 なお、裁判所は司法府に属するものといたしまして、当然のことながら所管する行政分野を持っておりません。
 したがいまして、本日は、他のヒアリング対象となっております行政省庁と異なりまして、制度の運用者としての立場からお話をさせていただくということにいたします。
 また、あらかじめ推進本部事務局からは資料提出の御要請をいただいておりましたが、ただいま御説明をいたしました理由から、一定のフォームに従った資料は御準備いたしませんでした。この点も御理解をいただけますれば幸いでございます。
 まずは、法改正ついての裁判所の基本的スタンスという点でございます。
 司法の行政に対するチェック機能を強化して、国民の権利義務の実効性を確保するため、行政事件訴訟法につき所要の改正がなされることは、誠に意義があることであって、裁判所といたしましても、基本的に賛意を表するものであります。
 その際、実際に制度を運用する者の立場からあえて希望を言わせていただきますと、行政事件を担当する裁判官が改正法の趣旨を十分理解できますよう制度改正の趣旨を十分に御議論いただきたい。
 併せて、改正法の解釈適用に当たって、戸惑うことのないよう、要件、効果をできる限り明確に規定していただきたいというのが希望でございます。
 本日、お話しいたします内容も極言すれば、この点に尽きるということになります。
 次は、行政事件訴訟法の改正により予想される事態に対する司法行政上の手当などにつきまして、若干の御説明をいたします。
 まずは、事件数の変動についてということでございますが、本検討会におきまして、国民の行政訴訟へのアクセスの拡充や、救済の実効性の確保の観点から、管轄の拡大、仮の救済制度の新設、あるいは新たな訴訟類型の創設などが検討されております。改正法の内容いかんでは、各裁判所に提起される行政事件の数が大きく変動することもあり得るものと考えております。最高裁判所といたしましては、改正による事件数の動向に十分注意をしながら、この変動に対応すべく人的、物的な態勢を整えていかなければいけないと考えております。
 なお、付言いたしますと、国民の行政訴訟への一層の拡充のため、テレビ会議システムでありますとか、電話会議システムでありますとか、情報通信機器のより一層の活用が望まれるところであります。
 例えば、テレビ会議システムにつきましては、各地方裁判所本庁及び一部の地方裁判所支部に設置されておりまして、現在でも争点整理手続や、証人尋問等の際に利用されております。
 このシステムを活用すれば、当事者がわざわざ遠くの裁判所に出向かなくても、最寄りのテレビ会議システム設置庁に御出廷をいただければ足りるということになります。
 今次改正の趣旨にかんがみまして、今後より一層これらのシステムの活用を各地方裁判所に呼びかけてまいりたいと考えております。
 次は、専門性の強化という点であります。
 昨今、中央省庁の改革や、あるいは独立行政法人の創設に代表されるように、行政の仕組み自体が大きく変わりつつあります。また、さまざまな行政実体法も頻繁に改正をされております。
 更には、1つ例を上げますと、公共施設の整備などに民間資金を活用する制度、いわゆるPFIに関する訴訟のように、新しい制度ができますと、すぐに訴訟の場に登場するという事件もございます。
 加えて、在来型、従来型の行政訴訟の代表格であります租税訴訟におきましても、外国税制が争点となるといった訴訟も散見されるようになってきております。
 このように、行政訴訟はますます複雑、困難、かつ多様化してきておるところであり、これに伴って、行政事件を担当する裁判官もこれまで以上に高度に専門的な知識が要求されるようになってまいりました。
 こうした観点からいたしますと、今次改正の目的であります国民の権利救済の実効性を確保するためには、裁判所の専門性を強化することは必要不可欠であると考えております。 最高裁といたしましては、今後検討されます管轄についての改正内容いかんにもよるところではございますが、例えば、今次改正で競合管轄が認められる裁判所のうち、事件数が増加すると予想されますところに、集中部、これは行政事件を集中的に取り扱う部をそう呼んでおりますが、その集中部を設置するといった方策も検討してまいる所存でございます。
 また、改正法の内容や、その立案過程における議論などいち早く各裁判所に周知徹底するために、執務資料など各裁判所に配布するといった情報提供面での充実を図りたい。
 更には、裁判官や裁判所書記官を対象にした研修なども実施してまいりたいと思っているところであります。
 以上のとおり、最高裁判所といたしましては、国民の権利救済の実効性の確保という今次行政事件訴訟法改正の趣旨が十分に周知徹底されますように努めますとともに、司法行政面からもできる限りのバックアップをいたす所存であるとの基本的な考え方に立っておりますので、この点御理解を賜わりますようお願い申し上げます。
 さて、最後に、各裁判所におきまして、現在、行政事件を担当しております裁判官のヒアリング項目についての意見、感想といったものを簡単に御紹介させていただきます。
 とは申しましても、全国の裁判官にヒアリング項目を送付して回答を求め、これを集約している時間的余裕などございませんでしたので、東京、大阪の高等裁判所の裁判官、それから全国の行政事件専門部、集中部のある地方裁判所の裁判官、それから高等裁判所所在地の地方裁判所で行政事件を担当しておる裁判官による意見交換や、これらの裁判官などからのヒアリングにおきまして出された意見の概要を御紹介させていただくということで御了解をいただきたいと存じます。
 また、意見交換やヒアリングにおきましては、司法府に身を置くものの立場から改正検討項目として運用面から見た問題点に絞って議論がなされました。その観点からの意見を御紹介させていただきます。
 ヒアリング項目が非常に多岐に及んでおりまして、すべての論点について意見を求めることはできませんでしたので、裁判実務に与える影響の大きさを考慮いたしまして、第1に、原告適格や処分性といった取消訴訟の訴訟要件、第2に、義務づけ訴訟、予防的不作為訴訟などの新たな訴訟類型の創設、第3に、行政訴訟の審理の改善、第4に、仮の救済制度といった点を中心に、意見交換ないしヒアリングをさせていただきましたので、その話をさせていただきます。
 まずは、原告適格の拡大の要否、可否についてでございます。
 この点、実務の運用に当たっている裁判官としては、現在の裁判例が採用していると言われる、法律上保護された利益説の判断枠組みの下で、できる限り原告適格の拡大に努めてはいるが、なお、原告適格が認められる範囲が狭いという御批判があることは承知しておるところでございます。
 国会において原告適格を拡大するという選択をする場合には、行訴法9条、これは原告適格の範囲を規定した条文でございますが、その行訴法9条の改正により、どのような事案について原告適格を認めることにすべきであるということなのか十分に御議論をいただきたい。
 その上で、原告適格が認められる範囲が明確になるよう客観的で明確な判断基準を設定して、できれば実務の運用に混乱を生じることがないように御配慮いただきたいという意見が数多く出されました。
 また、原告適格の拡大は、本来は行政実体法によって個別に手当されるべきものであって、そのほか裁判実務上疑義が生じることは少ないのではないかという意見もございました。
 次は、処分性についてでありますが、取消訴訟の対象となる処分の範囲の拡大につきまして、例えば行政指導1つを取り上げましても多種多様であって、これを一律に取消訴訟の対象とすることによる裁判実務上の混乱は避け難いのではないかという意見がございました。
 他方、行政立法や行政計画、行政指導などについて司法的なコントロールを及ぼすため、どの範囲のものが、いかなる段階で、どのような形で争えるとするのか、よく御議論をいただいて、要件、効果をお決めいただければ、あとは裁判現場でいたしますという意見もございました。
 被告適格についても御議論がなされておりますが、被告を行政庁から行政主体とすることにつきましては、改正法施行後、解釈上の疑義が生じないよう、関連する改正点への手当を含め、さまざまな観点から十分な御議論をいただきたいという意見がございました。 次は、訴訟類型についてでございます。
 最初に、義務づけ訴訟の立法化についてであります。
 まず、いわゆる申請拒否処分型という形で御議論をいただいておる義務づけ訴訟につきましては、行政庁が取消訴訟に従わないケースがどれだけあるのか、現在の取消判決と拘束力の枠組みでカバーし切れないのはどの部分か、すなわち、義務づけ訴訟を法定する必要性が強いのは、どのような場合かについて十分な御検討をいただきたいという意見が出されました。
 また、一定の金額の支払いまでを義務づける判決をなし得ることが法定された場合。例えば、原告としては、年金不支給処分がされたことに対して、一定の金額の支払いを請求し得るということになりましょうが、裁判所が支給額の計算などまでを適切に行い、併給禁止規定の存在などを精査して、誤りのない判決をするということとなりますと、制度としては重いものになりかねないということであり、迅速な救済とどのような折り合いを付けていくんだろうかといった疑問が生じるという意見もございました。
 他方、もう一つの義務づけとして議論されております、処分の名宛て人以外の第三者が、行政に対して規制権限の発動を求める方の義務づけ訴訟についてでありますが、人格権に基づく差止訴訟との関係を十分検討すべきであるといった意見や、処分の名宛て人の手続保障をどうするか、どの範囲で原告適格を認めるかといった要件面及び執行手続をどうするんだろうかといった効果面の両面について十分御検討いただきたいという意見が出されました。
 新たな訴訟類型の2番目として、いわゆる予防的不作為訴訟の立法化についてでありますが、これは無名抗告訴訟として現在でも認められているところであります。これを条文の上で明記する必要性は理解できる。ただ、その立法化に当たっては、真に救済を与えられるべきものに適宜適切な救済を付与するため、要件面で適切に絞りをかけるといったことも御考慮いただく必要があるのではないかという意見が出されました。
 次は、審理面についてということでございます。
 行政庁に資料を提出させる制度が議論されておりますけれども、これは迅速な審理、ひいては国民の権利救済の実効性の確保に資するものであるという意見がございました。
 他方で、平成13年の民事訴訟法改正において、文書提出命令制度が一部改正され、その運用状況が必ずしもかたまっていない現時点において、仮に類似の制度を入れるというこになれば、その必要性、相当性については両論在り得るということになるのではないかという意見もございました。
 また、裁決を経ている場合にかぎって、裁決記録一切を提出させれば足りるといった簡単なと言いますか、軽い制度にした方が、実際には円滑に機能するということになりはしないかという意見もございました。
 審理の2つ目として、裁量審査のことについても若干議論をいたしました。
 行訴法30条、行政裁量についての規定でございますが、行訴法30条の規定につきましては、適切な裁量統制の基準を規定できるのであれば、その方向で御検討をいただくべきではないかという意見がまず出されました。
 他方で、同条の存在自体によって、裁判所の判断が萎縮するという事態は考えられないので、その観点からは当面同条は廃止するという必要性まであるのだろうかという意見もございました。
 最後に、仮の救済制度についてであります。まず、執行停止の要件の緩和が議論されておりますが、現在の実務におきましては、執行停止の要件であります回復困難な損害を避けるため、緊急の必要があるとき、その文言をある程度弾力的に解釈しているということではないだろうか、その実務の運用に合わせる形で、文言を御修正いただくということは十分検討に値するといいますか、歓迎ということなんではないかという意見が出されました。新しい仮の救済制度の立法化につきましては、仮の救済制度の制度設計に当たり、行政事件と民事事件との異同について十分御配慮をいただく必要があるのではないか、また、その執行手続における問題点をも視野に入れて制度を御構築いただく必要があるのではないかといった意見が出されました。
 以上、現在、行政事件を担当する裁判官による実務の運用に携わる者の意見ということで御紹介をさせていただきました。
 最高裁といたしましては、本検討会におかれまして、十分な御議論をいただきまして、国民の期待に応える行政事件訴訟制度が構築されますことを祈念いたしますとともに、改正法が施行されました際には、その趣旨が十分実現されますよう、できる限りの努力をしていく所存でありますことを改めて申し上げまして、本日の御説明とさせていただきます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、今のプレゼンテーションについて、御質問、あるいは場合によっては意見交換ぐらいになってしまうかもしれませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 なお、このペーパーにいただいております1、2、3の点と、それから裁判官の意見の御紹介がございました。両方関係しているところがございますけれども、やや異質の問題でもございますので、まず、最初に2、3の点について御質問があれば、まず質問をいただきたいと思います。

【芝池委員】集中部ですけれども、これは東京地裁とか、大阪地裁にあるのを指しているわけですか。

【説明者(大竹第二課長)】現在は東京、大阪です。

【芝池委員】あと名古屋は。

【説明者(大竹第二課長)】あります。

【芝池委員】その他の地裁、特に高裁があるところの地裁ですが、この集中部を今後設けていかれる御予定というか、計画はあるのでしょうか。

【説明者(大竹第二課長)】それは競合管轄の改正がどうなるかというのが、まず1つ前提となる問題でして、8高裁所在地の地方裁判所ということになれば、そこに事件数が集まってくるということになれば、前向きに考えたいということでございます。

【水野委員】今の集中部とおっしゃっているのは、これは要するに行政事件以外はやらないという御趣旨ですか。

【説明者(大竹第二課長)】それは、裁判所の部内では専門部と呼んでおりまして、集中部と申しますのは、行政事件はその部に行くと、余裕がありますれば通常民事事件も行くというのを呼び習わしてございます。

【水野委員】そうすると、もっと多いのではないですか。京都とか神戸とかもそうでしょう。

【市村委員】完全な専門部というのは、実は東京だけです。東京には三か部の専門部がありますが、集中部というのは、おっしゃるとおり京都、神戸、横浜、さいたま、千葉、そのぐらいでしょうかね。もちろん、大阪もありますが。
 ただ、逆に先ほどお話になりました高松は高裁所在地ですが、高松地裁は民事一か部しかないのです。ですから、どの部に集めるといっても、おのずと決まってしまいますので。

【水野委員】ただ、高裁は集中部はないのでしょう。

【市村委員】いや、高裁所在地の裁判所であっても、例えば高松地裁になりますと、民事は1か部しかないものですから、集中部の設けようがないというか。

【水野委員】それで高裁は集中部がないわけで、東京でも全部に機械的に配置されている。これは考えてみると、地裁レベルでは、言わば専門家が専門的知識を有する裁判官がやって、それをチェックする高裁レベルではそういうのがない、つまり、行政事件に経験の薄いようなところにも全部配置される、これはむしろ逆ではないかと、素人的に考えますとね。地裁は仮にそうであったとしても、高裁レベルではむしろ集中させて、専門の裁判官がチェックするのだというのが筋だと思うんですけれども、その辺りは最高裁はどんなふうに考えるんでしょうか。

【説明者(大竹第二課長)】高裁の裁判長クラスは、何らかの形で行政事件に知見を持っておるということではないかと思いますが、いずれにせよ、今のような御意見があったことは、また、持ち帰ります。

【水野委員】知財の関係は、例えば大阪でも高裁で、いわゆる集中部がありますね、だから同じような感覚からすると、やはり行政事件についても地裁に集中部を置くのが最高裁として妥当だというふうにお考えなら、やはり高裁にも置かないと、最高裁までとは言いませんけれども、高裁には集中部を置かないと具合が悪いんではないかなという気がするのですけれども。

【説明者(大竹第二課長)】知財の訴訟は、まさに今、御議論いただいているところでありますから、ただかなり技術的な専門性が高いというとこと、まさに理科系の技術の専門性が高いという特殊性もございまして、それと同列に論じられるかという問題点はあるように思いますけれども、繰り返しますが、検討させていただきたいということでよろしいでしょうか。

【塩野座長】2、むしろ3のところですが、3のことについて、よろしゅうございますか。それでは、4のところ、質問に説明者個人のお考えでお答えになるのはなかなか難しいということは重々承知の上で、せっかくの機会でございますので、いろいろ御質問をしたいと思います。どなたからでも結構でございます。順序もどこからでも結構でございますので、原告適格からでも結構です。

【水野委員】先ほどいろいろと裁判官の、言わば行政事件をたくさん扱っておられる裁判官の代表的な意見ということだろうと思いますが、紹介があったのですけれども、率直な感想を申し上げますと、非常に消極的だというのが印象なのです。だから現場の裁判官が消極的だったら、かなり法律を変えないと積極的にならないのではないかという率直な印象を持ちました。それはいいとして、例えば、現場で行政事件に携わっている裁判官が、本当はこういう事件については、例えば土俵に上げて審理をすべきではないか、あるいはこういうのは救済すべきではないかというふうに常識的に思うのだけれども、今の制度の下では残念ながらできないのだと、だから非常に個人的に悩んだとか、困ったんだとか、そういった類いの意見というのは全く出なかったんでしょうか。

【説明者(大竹第二課長)】それは、裸の立法論と言いますか、価値判断としての立法論と言いますか、そういう面からの意見というふうに言うことができるんだと思います。
 意見交換やヒアリングの場でも、裸の立法論について、おおよそ話が出ないかと言われれば、それは出ます。出ますが、対外的に、私ども裁判官は、具体的な事件について法を解釈・適用して紛争を解決するという職責を負っておりまして、それ以上に具体的な事件を離れていろいろものを申すこと、対外的にものを申すことが適当かという点も議論いたしまして、それは適当ではないのではないかというのが議論の帰結でございました。
 したがいまして、今のような議論が出たことは出ましたけれども、ここでお話をさせていただくのはいかがなものかと思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。

【水野委員】それは、現場の裁判官が一番直接的に感じている、もちろん弁護士も感じていますけれども、だから、もしそういった意見があるのであれば、いわゆる消極的な意見だけではなくて、現場の裁判官の中にはこういうふうなところで今の制度について悩んでいて、困っているとか、そういう意見は大いに出していただきたいと思うのですけれども。

【説明者(大竹第二課長)】御趣旨はよく分かりますが、積極的な意見ばかり出ているわけでもありません。

【水野委員】いやいや、出ているのであれば、それは紹介していただきたい、出ていなかったらしょうがないですけれども。

【福井(秀)委員】今の御指摘にも関わるのですが、裁判所は解釈、運用をやる部局で、裁判官はそのための職員だということになると、この検討会なり、司法本部で行政訴訟法を改正しようというのは、解釈の議論ではなくて、法律をどう設計するのかという議論です。
 したがって、解釈をどうするのかからしか意見がないということは、裏返して言えば、立法論については沈黙するんだということになるのかどうかです。ないしは、アナロジーになるかもしれませんが、現在の解釈をやっている立場からすると、それを超える立法については、必ずしも積極的に対応する意思はないということになるので、各裁判官の個別論は、どれぐらい統計的手法でまとめられたのかも分かりませんのでそれはさておくとしても、最高裁としては、今回の改正作業全般について、どういうふうにとらえておられるのか。

【説明者(大竹第二課長)】改正作業全般につきましては、今次の改正自身が司法による行政に対するチェック機能の強化、そしてそれを通じた国民の権利救済の実効性を高めることという目的があるんだと、そしてまた司法固有の作用が十分行われていないという指摘もあるんだということは認識をしておりまして、この観点から行政訴訟制度ができるだけ国民に使い勝手のよいものとなって、権利救済の実効性が上がるということも期待をしております。私どももその点について全く異論はないのです。
 現在の解釈に当たる者の立場から、それを超えるものについて協力をしないかと言われると、全くそういうことはありませんで、もうお定めいただければ、それを粛々と運用させていただくと。
 ただ、もし私どもにお尋ねがありますことがあるとすれば、普段から解釈適用し、運用している者の立場からすると、いろいろ立法提案があって、そういう立法の1つが採用されたときに、どんな不都合があるかと言われれば、こんな不都合が考えられますということぐらいは申し上げるべきかなと。それ以上は、検討会、更には国会の方で御議論をいただいてお決めいただくことという認識でおります。

【福井(秀)委員】そうしますと、先ほどの個別の御意見も、総じて言えば、今おっしゃったような意味で、裁判官が解釈、運用に当たるときに、混乱あるいは疑念が生じないような明確な枠組みにしてほしいという趣旨が一貫していると思うのですけれども、それはそれで非常によく理解できるわけです。裏返して言えば、いわば現場での疑義や懸念や混乱が生じないような形で立法がなされれば、その立法の内容については特段の御意見はないという、こういう理解でよろしいわけですか。

【説明者(大竹第二課長)】そういうことです。

【福井(秀)委員】分かりました。

【塩野座長】外国法をいろいろ議論してもらいましたけれども、外国では原告適格の拡大でも処分性の問題でも、確認の利益の問題でも、裁判官が果敢に取り組んでおられるのです。例えば、フランスですと原告適格に何の規定もないと、ドイツでは権利侵害という非常に固い制度で、しかしどんどんとやっておられますので、私としては、これから日本の裁判官は大いにそういった点について活躍していただきたいという気持ちの方が強いのです。だから、その意味で、要件、効果をきちんと決めてもらわなければ困ると、なかなか動きがたいというのは、これは行政官はそう言ってもいいと思うのです。
 しかし、救済法というのは、本来裁判官がつくっていく法ではないかというのが私の基本的な認識で、それは諸外国でもそうだというふうに思うのですが、そこで要件、効果をきちんと決めてくれなければ困るというのは、ある種、無理難題を我々の方に投げかけているのかなと、だから要件、効果をしっかり決めて来いと、決めて来なければ動けないよという御趣旨ですと、これは大変難しいのです。例えば、原告適格についてどこのところまでカバーできるかを法律上一義的に明らかにしろなんていうのが要件、効果をはっきりさせろということですと、それは至難の技で、至難の技を要求されるということは、それはできないだろうということを前提にしておられるようにも思われます。むしろ、原告適格は各国の動きを見ても、本当に裁判官がいろいろな形で法をつくっておられるので、ですから法をつくる領域と、それからここは立法者の本当の政策の問題なんだからきちんと要件、効果を書いてほしいという、そういった仕分けをもう少ししていただきたいという感じがするので、その意味では、私は福井委員の意見とは一致しないのですけれども。

【福井(秀)委員】私は、塩野先生が言われたことに全く異論はございません。本来、裁判官の方々は行政事件にせよ、すべての法の運用を熟知されている非常に貴重な存在でいらっしゃるわけで、やはり現場でいろいろな問題意識を持たれて、まさに塩野先生がおっしゃったように、積極的に法の運用が望まれる場面での立法論などはどんどん投げかけていっていただくふさわしい立場にあると考えております。是非そういう意見は、この場にも、あるいはまた別の形でも出していただければいいと思っております。
 ただ、ちょっと私が懸念申し上げていますのは、一部には最高裁や裁判所は余り積極的な改正には熱心ではないのではないかという懸念を持つ向きもございまして、もしそういうことであるのであれば、客観的で明白なという要件効果論に徹する議論にとどまっていただく方が、まだ害は少ないという趣旨で申し上げたわけです。いろいろ工夫をしようというお知恵を出していただくのはもちろん大歓迎で、そういう意味では塩野先生の意見に全く賛成です。

【水野委員】今の点で、塩野先生がおっしゃったのと同じような趣旨のことを申し上げたいと思います。つまり、私なんかも行政事件に関与していますけれども、これは非常に限られた部分でしかやっていないのです。ところが市村さんとか、行政専門部の裁判官は、たくさんの事件をやっておられて、一番問題意識というか、材料がいっぱいある立場の方なんです。だから、できればそういった方が、さっき言いましたように、本当はこれは救うべきだと思うのだけれども、残念ながら今の法律では救えないんだとか、土俵に上げられないんだというようなことで悩んだりしておられるはずなので、そういった方に是非、いわゆる立法論も発言していただきたいという気がするわけです。それで、例えば原告適格を広げると、狭いというのは大体理解していると、それではどういうふうに書いたらいいのか、明確に書いてくれとだけおっしゃるのではなくて、例えばこういうふうに書いたらどうかとか、あるいは少なくとも今回の文書には幾つかの案が出ているわけですから、これだったらここら辺までは救えるのではないかといったようなことは、一番よく御存じなのは、裁判官だと思うのです。だから、是非そういった観点での現場の裁判官の発言が、この審議に反映するようなことを最高裁にお願いしたい。1つの方法は、裁判官が個人でパブリックコメントに意見を出していただいたらいいと思うのです。実名を出すのは困るというのであれば匿名でもいいわけでありますから、最高裁の方から是非そういったことを奨励していただいて、大いに意見を出してくださいというふうに言っていただければいいのではなかろうと思った次第です。

【塩野座長】そういうご要望があったということで。

【市村委員】先ほど来、いろんな御意見が出ていますけれども、私も裁判官の全体で検討した会議にも出席しておりましたので、少し補充させていただきたいと思います。
 そのときに、明確性が是非ほしいというのは、やはり我々は規範があって、その規範を適用していくということ、それをやるべき職責と考えております。そのときの規範が何なのかということが言葉で全部書き尽くされていなければ使えませんと、申し上げているわけではないのですが、ただ、例えば今回の原告適格の議論などについて、幾つか御提案があります。それだったら、例えばこのケースだったら、これは含まれるのだろうか、含まれないのだろうかということが、これだけでは分からない。この説だったらここは入るんだろうか、入らないんだろうかと、いろんな例でやってみると、必ずしも、分からない。一つの例えですが、原告適格をドーナツのような形にしますと、そのドーナツをどういうふうに広げていったのか、どの程度広がったのかというのが非常に分かりにくいという率直な感想があります。そういう意味で、広げるなら、例えばこういうことが狭いから、こういう基準で取り込んだらいいと、その前提となる基準のようなものでもいいわけですけれども、そういう議論がもう少し熟した上でないと、解釈が非常に多義的になって混乱するのではないでしょうか。裁判官が、原告適格を裁判官の頭で与えて適当だと思うものを入れるべきで、そうではないものを落とすべきだということでも解釈としてある得るところだと思うんですが、予測可能性ということがございます。どういう人を念頭に置かなければいけないのか。そういうところからいっても、原告適格というのは、やはりある程度の基準としてはっきり見えるものであってほしいというのが、やはり運用する側に当たってはお願いしたいということを言ったものだと思います。

【福井(秀)委員】今の市村委員の御趣旨は理解できると言いますか、よく分かるつもりなのですが、そうすると、その場合はまさに先ほど塩野先生、水野委員がおっしゃったことにも関わるわけですが、例えば今出ている案の、この基準だとこの事件ではオーケーになるのか、ダメになるのか分からないとか、こういうケースではどうかとかの、一種の解釈の限界の詰めのような知識なり経験を一番豊富にお持ちなのは、現場の行政事件を担当されている裁判官だと思うのです。そうすると、そのときに、これでは判決を書けないよ、というので突きはなすのではなくて、この事件についてはどっちに読むのか決めるようにもう少し工夫をしてくれとか、あるいはこう書けばこの事件は読める、あるいは読めないという対案を含めて、是非積極的な提案を裁判官の現場からしていただけると、もっと立法作業は豊かなものになると思うのです。そこはもちろん御協力いただいていると思うのですけれども、やはり現実の事例について、これはどうなんだ、あれはどうなんだということを、やはり現場の生の声として集約して届けていただくと大変が意味があるし、それは多分日本の裁判官の方は今まで遠慮されているし、今もおそらく行政訴訟の改革について遠慮されていて、余り聞こえてこない点なのです。アメリカとかドイツの裁判官は、御承知のように、立法論でもばんばんジャーナリズムに出て来ますし、論文も書いているし、それなりに貢献されていると思いますが、日本の裁判官もそういう意味での立法への貢献は是非期待されているのではないかと思います。今回は、特にそういうことを期待したいと思うのです。

【説明者(大竹第二課長)】よろしゅうございますか。先生方から裁判所に対して、大変御期待をいただきまして、身に余る光栄でありますが、原告適格を例に取って若干お話をしますと、例えばですが、ジュース事件はだめだけれども、近鉄特急は入れるんだということであるとすると、どうしてそういうことになるのかと、すなわちどうしてジュースは入れないで近鉄特急は入れるのかという御趣旨を御議論いただき、それを司法府に御明示いただくということまでは立法府の役割なのではないかと思っておるんです。
 その議論が、私もずっと拝聴しておりますが、検討会でなかなか難しい。どの事件を入れて、どの事件を入れないというのがなかなか見えてこない。
 それから、各文言についての御提案がございますけれども、あれも文言だけ見て決まるというものではなくて、文言の背景にある趣旨などを勘案して、その文言の解釈が決まってくるという、当然のことですが、そこのところも今一つはっきりしないで、今のままで各文言でどの事案が入るのか、入らないのか裁判官に判断しろと言われると、ちょっと困るなというのが正直なところでして、そういう御議論をいただきたいということでございます。

【塩野座長】分かりました。そういった御要望といいますか、もっと具体的な事件ごとに考えろというのは、次長を始め、さんざん御提案があり、それに基づいて星取り表みたいなものをそれぞれの自分の頭の中でつくっておられると思います。もちろん、その星取り表が全員が一致しているとは限りません。ジュースだって入れるべきだという御意見は、水野委員はかねて言っておられるわけですけれども、大体のところジュースは無理かなと、では近鉄特急はどうかなと、そういった形で議論は重ねておりますので、記録を丹念にお読みになれば、大体我々の狙っているのが、この辺だなというのがお分かりいただけるかと思いますけれども、しかし、最終的なレポートの段階になりますと、そういった点について御疑念というか、分かりにくいということがあれば、それは我々としては、この文言を変える趣旨は、ここを入れてほしいからだという形になるのではないかというふうに思います。
 ただ、これは座長が決めたって、皆さんが反対すればダメな話ですから、私としてはそういう形にもなるのではないか。
 それから、例えば処分性の問題というよりは、あるいはむしろ訴えの成熟性の問題でございますけれども、都市計画の用途・地域の規制みたいなものについてはどうなんだろうか、しかし、それは文言はなかなか変えにくいけれども、是非ここはこうしてほしいというふうな言い方で、もう少し具体的な形として議論をまとめるということになると思います。ただ、私は司会をしておりまして、そういった議論はかなりしているつもりなんですが、そちらの方からの御意見を伺っていると、まだまだ至らないと、ここをもっと突っ込んでほしいという点がおありかと思います。そういう点は、是非おっしゃっていただきたいと思います。ジュースと近鉄特急の区別、それは理論的に成り立たないのならば、それは成り立たないとおっしゃっていただいて結構でございますけれども、我々としても議論は積み重ねているつもりでございますので、そこは突き放さないで、むしろ中に、今までいろんな人の発言もありますけれども、多少中に入って議論を積み重ねていただければと思います。ただ、もう一度申しますけれども、どういう法律をつくったって、運用する解釈権は最後は裁判所ですので、やはり裁判官が権利救済、あるいは利益救済という憲法の精神に立って、どんどん解釈をしていただきたい、判例法をつくっていただきたいというのが、これは私の個人的な希望かもしれませんけれども、そういう考え方を持っております。なぜ、日本の裁判官は制定法準拠主義なのかという点を常々疑問に思っておりますので、この際、制定法準拠主義から離れていただきたいというのが、私の強いお願いでございます。これは、裁判官全員に対してのお願いでございます。

【福井(秀)委員】今の塩野先生の御意見は全く同感なのですけれども、若干補足で申し上げると、水野委員も言われましたように、やはり裁判官の生の意見は非常に重要だと思うんですが、先ほど御説明があったように、裸の立法論というものが仮に立場上難しいとしても、例えばこの書き方なり、この案だとこういう事件を読むのか、読まないのかはっきりしないとか、あるいはこれではこういう点に疑義が残るとか、そういう現在の論点、主な検討事項で出ているようなことについても、裁判官としての非常に有益な意見の出し方があると思うのです。そういう意味で、是非さっき御提案があったように、最高裁からも、これは遠慮する必要はないんだと、そういう建設的な意見提出はどんどんしてはどうか。匿名でもいいということだったらなお出しやすいとは思うのですけれども、そういうことを是非奨励していただくのは意味があると思います。

【塩野座長】他に、市村委員何か、もう少しありますか。

【市村委員】繰り返しになってしまいますので、遠慮しておきます。

【塩野座長】他に何かございますか、それでは、もう大分時間も経ちましたので、これは第1ラウンドぐらいに思ってください、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。これで休憩に入ります。

【小林参事官】午後は1時からということで。

【塩野座長】はい、1時集合ということでお願いします。

(休 憩)

【塩野座長】それでは、時間がまいりましたので、再開させていただきます。なお、委員の皆様方の机の上には、『ジュリスト』で各国の判例等の比較表が載っておりますので、適宜お使いいただきますようにお願いいたします。
 では、農林水産省からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は、竹谷廣之大臣官房文書課長でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。それから質問のときに、どなたか別の担当の方がお答えになるということでしたら、どうぞそれは適宜その席でお答えいただければ結構でございます。それでは、どうぞお始めください。

【農林水産省】

【説明者(竹谷文書課長)】今、御紹介いただきました。農林水産省の文書課長の竹谷廣之と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、座って御説明させていただきます。先にお手元にあるかと思いますが、いろいろ検討課題いただいておりますが、その中で主要な点をピックアップいたしまして、3枚紙を御用意させていただいておりますので、それに基づきまして4点ほど私どもの実務的な問題点につきまして、この場で御説明させていただければというふうに存じます。お手元に「『行政訴訟検討会における主な検討事項』が農林水産省所管行政に及ぼす影響」という資料がございます。
 まず、1点目のところは、農林水産省の行政について若干特徴を書いておりますが、食料の安全の問題でありますとか、農林水産業の振興の問題といったようなことを担当しているわけでございまして、当然そういったことから農地の問題でありますとか、森林の問題、あるいは水産に関します海域の問題でありますとか、あるいは安全の問題等に関わる、いろんな国民の権利義務に関わる部分があるわけでございます。
 2番でございますけれども、4つほど主なものということで今日お時間いただきまして御説明させていただきます。
 まず(1)の点でございますが、今回の行政事件訴訟法の見直しの関連で、管轄裁判所のことについての論点がございましたが、その点についてでございます。私どもの国、すなわち農林水産省が直接やっている部分もあるわけでございますけれども、団体の方にお願いをしてやっているという事務も多数ございまして、そうした中に農地転用許可でありますとか、保安林ということで水源の涵養でありますとか、土砂の崩壊を防ぐための森林の指定をしました保安林という制度がございますけれども、そういったものが地方公共団体の方におきまして、処分を行っておるものでございます。
 そうした処分において、処分の相手方、農地転用許可をいただく相手方、あるいは周りの関係の権利者でありますとか、また実際にそういう処分を行うのは都道府県知事でございます。そういった方々は、その土地の所在地にいるわけでございますけれども、例えばそこに書いてございますように、鹿児島県の農地の転用といったことになりますと、鹿児島県に皆さんほとんどいらっしゃるわけです。
 そうした中で、転用許可が仮に不許可になった際に、開発業者の方が東京に所在しておりまして、その東京の業者の方が訴訟を提起するということで、原告サイドの方の便宜ということで、東京に管轄ということになりますと、関係者すべて鹿児島にいるというようなケースにおいて、こういうことは十分想定されるわけでございますが、いろいろと不都合を生じるのではないかというふうな点が懸念されるわけでございます。
 同様に、今のは地方公共団体がということだったわけですけれども、この土地関係のものが農水省たくさん持ってございますが、農地あるいは保安林といったようなもの、土地改良事業とかいろいろとあるわけですけれども、そういった土地に着目したというような場合の訴えの管轄裁判所ということになりますと、今、申し上げたような点もございますと、今のように行政庁の所在地ということ以外にもし認めるとすれば、土地を中心に裁判所の管轄をお考えいただく方がよろしいのではないかと。原告を最優先に考えるということになりますと、なかなか難しい問題があるのではないかというふうに考える次第でございます。
 第2点が「(2)本案判決前の仮の救済の制度の整備」についてでございますけれども、①のところで、いわゆる執行停止の制度の関連でございます。この点につきましては、執行停止が非常に拡大されますと、原状回復困難なケースがいろいろあるのではないかというふうに懸念されます。
 ①の下に黒ポツが1個打ってございますが、いろんな行政処分があるわけですが、農地の違反転用が見付かった際に、その違反転用を行おうとしている工事を差し止める停止命令というのを私どもは行うわけです。国が行ったり、あるいは地方公共団体の知事が行ったりという形があるわけです。あるいは、先ほど申しました、保安林の指定ということを行いまして、一定の民間の方々の行為を止めるための処分があります。
 それに執行停止というものがかかる、更には暫定的な執行停止が自動的にかかるというような形になってまいりますと、そうした行政処分そのものの意味がなくなってしまうのではないかというような点が懸念されます。
 またその執行停止以外の仮の救済ということを考えますと、2番目の黒ポツのところで、ア、イと例を書いてございますが、農地転用の不許可処分を行った場合に、その不許可処分にもかかわらず仮の救済で農地転用がそのままできるんだということになってしまいますと、原状回復困難な状態にまで農地の転用が進んでしまうと。
 こういったケースでよくあるのは、ごみの不法投棄が行われまして、事実上廃棄物処理場のような形に転用されてしまうというようなケースもままありますので、それは単にその農地だけではなくて、周辺農地に及ぼす影響もございまして、非常に甚大な、原状回復困難な問題を生じるケースがございます。
 あるいは、農薬の登録拒否処分を行ったものとして仮の救済があると、またそういった安全性に疑問のある農薬が仮の救済で出回りますと、当然大きな健康の問題が生じる可能性があるわけでございます。
 ②のところでございますが、私どもが持っている制度の中で、土地改良事業などにおきましては、もともと全員同意を必要としないスキームになっているものがございます。国土交通省の土地区画整理事業と同じような形で、3分の2強制という形で、3分の2の方が同意すれば行えるという形の制度を持っております。3分の2の方が同意すれば、土地改良事業という農地の改良の事業ができると。
 そのようなケースにおきまして、一部の方々から執行停止のお話がございまして、それがそのまま行われるという形になりますと、一部の反対をもってすべてストップしてしまうというと、3分の2の強制の制度というものが全く無意味になってしまうのではないかという懸念が考えられるわけでございます。
 次は(3)でございますが、取消訴訟の対象を行政立法なり行政計画なりといったようなものに拡大するという点に関してでございます。
 この点につきましては、特に行政計画でございますけれども、そこに幾つか私どもの例を挙げておりますが、①のところをごらんいただきますと、農業振興地域の整備に関する計画、私ども農振計画と言っておりますけれども、そういったちょうど都市計画とパラレルのような農業振興地域の計画があるんですけれども、その計画制度につきまして、その計画そのものとして、処分性の有無にかかわらず、取消訴訟の対象になってくるという形になりますと、計画を前提としていろいろ農業者の方々等が活動する。
 例えば、その下に書いてございますように、農振計画の中には農用地区域といって、農用地として保全して、農用地としてしっかりと活用していただくエリアを決めるんですけれども、そういったエリアにおけるいろいろな投資活動、先ほど申しました土地改良をするような投資活動等が、非常に不安定な形になってしまうことが考えられます。
 次のページにまたがりますが、そうしたことになりますと、何のためにこの農振計画というものを立てたのかというような、計画制度そのものの意味合いにおいても不安定になるのではないかということが懸念されます。
 農振計画というのは、例えば農振計画を立て、その中に農用地区域を設定して、そこに投資を集中していこうという計画なわけですけれども、そういった計画制度そのものの意味が非常に困難になるのではないかというふうな懸念があるわけでございます。
 ③でございますが、そのほかに非常に成熟性の点で疑問のあるようなケースにまで取消訴訟が拡大されますと、行政計画とかそういったものに一般的に訴訟が広がってきますと、そういったことに行政庁の業務が忙殺されるということも懸念されるわけでございます。
 (4)でございますが、原告適格の拡大、あるいは自己の法律上の利益に関係のない主張を制限するというような現行の規定を見直すという点についてでございます。
 この点につきましては、まず①のところに書いてございますが、農地の権利移動、Aさんが持っている農地をBさんに譲りわたす場合に、農地法の3条の許可制度を敷いておりますが、そういった場合、AさんからBさんに移って、畜産農家の方が農地を取得するというようなケース。前は畑地だったと、そこを畜産農家が取得するというようなケースがありますと、周辺の住民の方が畜産農家はいろいろ臭いとか、糞尿の問題があるということを懸念して、訴えを提起するケースがあろうかと思いますけれども、それは本来は環境行政として処理すべき問題が持ち込まれてくるような話になりまして、本来の法目的とは関係ない形で、原告適格が広がりますと、そういった問題も権利移動の許可処分自身の中に持ち込まれて、非常に困難な問題が生じるんではないかということが懸念されるわけでございます。
 また、②にございますが、今のような農地を農地として権利移動するのにプラスして、今度は農地の上に畜舎を建てる。これは一種の転用でございますが、そういう転用行為が行われるようなこともあります。あるいは、保安林を解除するケースもあります。そうすると、やはり周辺住民の方々が非常に懸念をすると。住環境とか、あるいは地価の下落とか、いろんな要素で懸念されることも想定されるわけですが、そうした問題まで持ち込まれるというケースもあろうかと思います。
 また、海面の埋め立ての場合には、漁協の同意を得るという手続になるわけですが、漁協に漁業権の放棄について同意を得るということになるんですが、その際には当然漁協内部で、団体自治として手続を取るわけです。仮にそうしたケースにおいて、団体自治内部の手続に軽微な瑕疵があったとする。そういったようなケースについて、自己の直接的な利益に関係ないにもかかわらず、原告が主張を繰り広げるという形も想定されるわけでございます。
 そうしますと、本来環境行政の問題が持ち込まれまして、利用しやすい制度を利用するような形になってきまして、現実にもこういった問題幾つかあるわけですけれども、そうした問題が一層広がるのではないかというような懸念がされるわけでございます。
 また、③にございますように、こういった点におきましても、行政庁が忙殺されるというようなことも懸念される次第でございます。
 以上、主要な点だけを申し上げましたけれども、私どもこういった実務上の問題点がどういった形で今後法制化されていくのかということにつきまして、非常に関心を持っている次第でございます。よろしくお願いいたします。

【塩野座長】ありがとうございました。それでは、今のプレゼンテーションに対しましての質問を受けていただきたいと思いますが、せっかく他の点についても御回答いただいておりますので、今日プレゼンテーションしていただいた以外の点についても、もしかすると質問があるかもしれませんが、その節はよろしくお願いいたします。
 それでは、今日いただいたペーパーと、それから前にいただいているペーパーを照らし合わせながら、前の方から御質問いただきましょうか。ちょっと私の方から、あるいは誤解があるのかなと思うのは、2ページの②のところですが、執行停止を原則とする、というのが出ていますけれども、我々の提案の中に執行停止を原則とするということは余り書いてないように思いまして、執行停止の要件をもう少し緩和するべきだという趣旨のことが書いてあるのですが、要件緩和についてはどうお考えですか。執行停止を原則とすると言ってないものですから。

【説明者(竹谷文書課長)】そこは十分に読み込みが足りなかったかもしれませんが、要件緩和のケースによっては、非常に、ケース・バイ・ケースですけれども、安易になされる場合もあるのかなというふうに思ったものですから、あるいは暫定的な執行停止の導入とか、そういったこともあったものですから、そこは先生御指摘のとおりと思います。

【塩野座長】その辺についても、また御意見があれば、要件の緩和について、これでは大変やりにくいという点があれば、それは付け足してまた文書でお出しいただければ結構でございます。

【芝原委員】2ページ目の(2)の①で掲げていることなんですが、この逆の立場の場合でもこういう論理でよろしいということなんでしょうか。農水省の直轄事業をやる場合にも、執行停止なりをこの読み方で行かれるということなのですか。ここの読み方を今は違反者に対する立場となっていますが、この逆の立場で、農水省さんが執行者でやっている場合には、どういうふうにこれを解釈すればよろしいでしょうか、確認ですけれども。

【説明者(竹谷文書課長)】執行停止の制度そのもの全体を否定するとか、そういうことはもちろん考えてないわけでございまして、当然そこは司法の方の御判断で必要がある場合やっていただくということになると思うんですけれども、ただもともとある行為の停止を前提とした、①のような処分もございますし、それから止めないとしようがないような場合にも、仮の救済をされてしまうと、なかなかかえって原状回復が困難になるような行政処分も幾つかあるわけでございますので、そういった問題に御留意いただきながら御検討いただければというような趣旨でございます。
 だから、一般論として、あらゆる行政処分について執行停止はおよそだめとか、そういうことを申し上げているわけでは決してないわけでございます。

【水野委員】今おっしゃっている趣旨は、この①のアに、工事が行われた場合には原状回復が困難になってしまうということをおっしゃっているけれども、逆の立場で、農水省が工事をやるという場合には、逆の議論になりませんかということをおっしゃっているわけです。私はそう思って見ておったんですけれども。

【説明者(竹谷文書課長)】ですから、おそらくそういうケースもあるから、執行停止という現行制度があるんだと思います。

【水野委員】だから、そうすると、皮肉じゃないですけれども、農水省が工事をやられるときには、そういう訴えが起きていると、原状回復が困難になるから工事はストップするということをされますかと、そうはされないでしょうということなんですね。

【説明者(竹谷文書課長)】おそらく、個別具体的なケース・ケースによるかと思いますけれども、当然適法な手続を踏んで、関係者の同意も得てやっているというのが行政庁の立場でございますから、そういう適法手続の関係者の方の利益を代弁して事業をやっていますので、執行停止をしないでくださいという申立てになろうかとは思いますけれども、そうではないという方ももちろん原告の方からはあろうかと思いますが。

【芝池委員】今のところですけれども、農地転用許可処分、あるいは農薬の登録の拒否処分というのが例に挙がっているんですけれども、今は、仮の救済はないんです。許可の拒否処分は執行停止の対象にならない。執行停止では救済できないんです。そこで、この検討会では、そういう仮の救済の谷間のようなところを埋めることを考えているわけです。確かに、ここに書いておられますように、仮の農地転用許可とか、仮の登録のようなものが無条件に認められますと、ここに書いておられるようなことが問題にはなると思うのですけれども、ただ現在は仮の救済がこういうケースではないわけで、そこを埋める必要もある。しかし、行き過ぎるとここに書いておられるようなことになるわけで、ですから、考える必要があるのは、こういうケースについて仮の救済を設けることがいいか悪いかという、そういう二者択一ではなくて、国民の権利救済もできる。同時に公益にある程度配慮した、そういうシステムをつくる必要があるということなので、ちょっとこういう形で出てきますと、何ともお答えのしようがないということになるんですけれども。

【説明者(竹谷文書課長)】何と言いましょうか。仮の救済の制度を、今のおっしゃったような谷間のようなケースについて、一切つくるのがどうかというところまでの問題提起をしているわけではないわけです。

【芝池委員】最初はゼロですから、それに何か新しいものをつくろうと思っているわけです。もちろんそれが行き過ぎたものであれば、ここに書いておられるようなことになるんですけれども、だから必要なのはそうはならないような、同時に国民の権利救済にも配慮した制度なのです。

【説明者(竹谷文書課長)】ですから、私ども実務的にこういうようなケースも考えられますので、そういうようなケースについても御留意いただきながら。

【芝池委員】もちろんそういうのは留意するわけです。

【説明者(竹谷文書課長)】制度設計を御検討いただきたいという意味での問題提起でございまして、一切仮の救済が全面的に難しいですよとか何とかということで、この紙を書いているわけではもちろんないわけでございます。

【市村委員】若干技術的な話なんですけれども、土地改良事業で換地処分、あるいは仮換地処分などについて、これは執行停止をした場合、ある特定のものが例えば照応原則に違反しているというようなことを申立てて、執行停止を申立てたとします。その場合に、そのものに対する処分をもし仮に停止をしたときに、第三者への影響というのはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。つまりあれは将棋倒し的になっていくんじゃないかという気がするのですが、その第三者というのはどこまで想定したらいいのだろうか。あるいは、そういう集団的な一括して換地処分をするときに、何か考えておかなければいけないというふうなものがあったら是非教えていただきたいと思います。

【説明者(竹谷文書課長)】今の御指摘は、土地改良事業をやりまして、Aさんの農地がこっちにあって、Bさんの農地をこっちにあって、一か所にまとめるために換地処分というのを私どもの制度で仕組んでおります。これは国土交通省の土地区画整理事業と同じ形ですが。
 これは、まず換地計画を最初につくります。そのときも3分の2強制、3分の2以上の方の同意があれば換地計画が成立しまして、その計画に従って処分を個々具体的にやっていくという形を取っております。
 したがって、それに御不満な方が結構いて、換地処分反対という方がいらっしゃる、訴訟の対象になるケースがもちろんあり得るわけでございます。そこでいもづる式にというのはまさにおっしゃるとおりで、Aさんの土地をBさんの土地にし、それから今度Bさんの土地をCさんというふうにずっとつながっておりますので、そういった意味では3分の2強制の制度の下のものでもございますし、また関係権利者なかなかみんながみんな満足するという形にはいかない制度でございますので、なかなか執行停止にはなじみにくいんではないかというふうに私どもは思っております。
 現在でも執行停止の対象外という制度ではない形になっていますけれども。

【市村委員】つまり、例えばAさんに対する処分を停止するという効果は、どこまで波及すると普通考えていたらよろしいですか、現実にどこまで波及するか。つまり、そうするとBさんに提供する土地がなくなってしまうと。そうすると、Bさんを出せないから次はCさんにということで、ずうっとつながるのではなかろうかというふうに考えるんですけれども、それほどつながらないと理解しておけばよろしいんでしょうか。

【説明者(竹谷文書課長)具体的なケースについて言えば、Aさんの土地についてそういう訴訟が起きまして、私どもとしては当然執行停止はかからない方がいいという立場に立とうかと思いますけれども、万が一かかってどうなのかというと、一時的に仮換地処分ということで、少しリザーブしたような土地、後に公共施設を建てるような土地が部分的にあって、そういうところにゲームのような形で一時退避させておくような土地に、一時仮耕作をしていただくようなことで調整をしながらやっていくことは可能なんですね。ただ、それも何年も訴訟が続いてその状態が続いてきますと、非常にみんなに影響が大きいんですけれども、1年、2年ということであれば、一時的にリザーブしているような土地のところで耕作をしていただくということは可能だと思います。

【福井(秀)委員】そんなことができるのですか。だって、Aの土地をBの土地、Bの土地をCの土地とか、換地は基本的に玉突きですよね。だから、Aさんがどこかよその土地に行くのを仮に停止したら、Aのところに来るはずのだれかがこられなくなりませんか。

【説明者(竹谷文書課長)】ですから、そこは止まってしまうんですけれども、だけど他方において工事もしているんです。田んぼの区画を真四角にしたり、大きい区画にする工事もやっていますから、当然1回目のところでAの1番からAの10番までは換地処分しますとぱっとおさめて、次の人はすぐその次の土地に入ってくるまでは工事をするまで待ってもらう期間が必要なんで、留保してあるところの土地で仮に建てさせていただくというケースもあります。 それから、スムーズに工事がいけばどんどんいもづる式に送り込んでいって、それぞれ。

【福井(秀)委員】工事というより、換地というのは土地の権利移転ですから、法的な効果だけで判断するんじゃないですか。

【説明者(竹谷文書課長)】そうですけれども、換地処分をいつするかというタイミングがありますので、工事が終わってでき上がったところにそれぞれ換地処分をしていっていただくことになります。

【福井(秀)委員】多分、今の市村委員の質問の判決の効力とも共通ですね。要するに、ある換地、Aさんに対する換地処分を取消したときに、その効力はどこまで、だれまで及ぶのかということと多分共通ですね。また後で1回整理して教えていただいた方がいいような気がしますけれども。

【説明者(竹谷文書課長)】そうですね。

【小早川委員】質問というよりは、おっしゃられたことについての意見です。2ページの一番最後、これは農業振興地域整備計画の中で農用地の線引きがされて、それを前提にして土地改良事業が行われるというシチュエーションをお考えだと思うのです。ただ、御承知のとおり土地改良事業計画については、各種のものを含めて、一応取消訴訟の対象になるというのが、多分最高裁の立場だろうと思います。ここで書かれているのは、それ以前の農用地区域の決定の段階で訴訟を認めるとどういうことになるかということだと思うのですけれども、いずれにせよ後の事業計画そのものが争われ得るのであれば、そこでさかのぼって農用地区域の線引きがよかったのかということは、いろいろ微妙なところはあるかもしれませんが、基本的には争点になり得る話だと思うのです。そうすると、前の段階で争わせないとしても、後の段階でいずれにせよそれは論点として出てくるかもしれない。そうすると、ここで心配されているようなことが、むしろ増幅して、後の段階で基の農振計画自体が部分的にせよひっくり返ってしまうということがあり得るわけで、御心配になるとすればむしろ逆じゃないかという気もするわけで、基の方をたたけるようにしておいた方がいいのではないか。

【説明者(竹谷文書課長)】それは若干誤解があろうかと思います。まず、農振計画を立てて、その中に農用地区域といって、農業投資を重点的にやっていくエリアを決めます。それはゾーニングの話でございます。それはそれで1つ一段終わりまして、その上にどういう投資をするのかというのは、いろんなパターンがありまして、たまたま例示的に土地改良を書いていますけれども、土地改良事業計画をその上に立てて、土地改良事業投資を行う場合もありますし、個別農家が自分でいろんな畜舎でもいいですし、あるいはハウスを建てるんでもいいですが、いろんな個別投資をしたりする場合もございます。
 そういうようないろんな投資の前提に、この農振農用地区域のゾーニングがなっていますということを申し上げております。
 今、御指摘のケースでいきますと、土地改良事業計画の方で争っていって問題があるというときには、まず土地改良事業計画自身として土地改良事業計画の認可処分というのが行われますから、それ自身として訴訟の対象になっていきます。その中のいろんな瑕疵があると思うんですけれども、だけどゾーニングそのものが瑕疵になるケースはまず考えられないのではないかと思います。
 むしろ土地改良事業そのもの、例えばいろんな種類があるんですけれども、用排水路をつくりますとか、水路をつくりますとか、農道をつくりますとか、あるいは田んぼの区画形質を直しますというようなことが土地改良事業でございますけれども、そのことについていろいろ手続的な瑕疵、あるいは実質的な瑕疵があるということで争いになるわけですね。
 仮にその土地改良事業の処分が、いろいろ問題があって取り消されるといたしましても、ゾーニングそのものとは何ら関係がないんです。ゾーニングは農用地区域としてふさわしいかどうかというだけの話なんです。

【福井(秀)委員】そんなことないんじゃないですか。

【小早川委員】今のお話はその限りでは分かりますけれども、土地改良事業の計画が合理的かどうかという場合に、そこのゾーニングが基本になるわけですね。あるゾーニングを前提にして、どういう部分にどれだけの投資をしようか、土地改良をどれだけやろうかということになると思うので、その基のゾーニングがもしおかしいということになれば、その土地改良事業計画自体がやはりおかしいということになると思います。

【説明者(竹谷文書課長)】土地改良事業計画自身は、ゾーニングの農振農用地区域を中心にやっていきますので、そういう意味ではゾーニングを前提としてやっていきます。ですけれども、基のゾーニングが間違っていたというケースですか。

【小早川委員】これはそうでしょう。計画を争う訴訟を一般的に認めると、基のゾーニングが争われることになるということで御心配になっているわけですね。ですから、それはその計画がおかしいということが問題ではないかと。

【説明者(竹谷文書課長)】それよりは、土地改良事業計画そのものを争っていただくとか、あるいはその上に普通の個人がハウスを建てるのは個別の問題ですけれども。

【福井(秀)委員】何か噛み合ってないのですけれども。

【塩野座長】議論を整理しますと、今の小早川委員の御質問は、土地利用計画の認可等の処分の要件として、農業振興地域の適法性が前提要件になっているのではないかという御質問だと私は理解しています。

【小早川委員】土地利用計画ではなくて、土地改良事業計画です。

【塩野座長】失礼、土地改良事業計画です。今のは要件になっていないというお答えだと思うのですが、そうすると農振の計画はだれも、いつでも、どこでも争えないということですか。

【説明者(竹谷文書課長)】そこに重点的にやっていくということなんで、そこだけでなければいけないという形にはなってないんです。

【塩野座長】違法性があると思うんですけれども、農振に関する計画については、そこに瑕疵があっても、それは少なくとも土地改良事業のところでは争えないと、瑕疵があっても争えないということなんですかね。そうすると、都市計画関係の、あるいは公有使用関係の計画が瑕疵があっても、それは一番最後のところで争えるというのが最高裁の議論なんで、そこで成熟性とか青写真論が出てくるのですけれども。今の場合、農振についてはどこでも争えないという御理解ですか。

【説明者(竹谷文書課長)】どういうケースが一番多く考えられるかと申しますと、農振農用地区域のゾーニングのことに問題があって、実際に争いのケースが出てくるのは、農振農用地区域の中に区分されてしまいました農地が転用したいと、ここを宅地にしたいというようなときに、農地転用許可処分の可否を巡って争われるケースが一番多いと思います。

【塩野座長】それは対象になるわけですね。

【説明者(竹谷文書課長)】それは対象になります。

【水野委員】だから論点は、基の計画が違法であるという場合なんですね。後が違法だったら後で争うのは当たり前の話であって、つまり基の計画、例えば農業振興地域整備計画というのは、法律の10条によると基準が決めてあって、要件があります。例えば、この要件に合致してない違法な計画であるといって争うという場合、仮に後でそれは取り消されるという可能性があるとする。そのときに、多数当事者が関係するから、そのときに争わずに、もっと後の具体的な処分で基の計画を争いなさいというのでは、かえって逆じゃないか。元々の計画が違法だという場合には、その段階で争わした方が後々影響が少ないじゃないかというのが小早川さんの御意見なんです。

【説明者(竹谷文書課長)】確かに早めにやれば、後々影響が少ないんじゃないかという御議論もあろうかと思いますけれども、ただ今度関係者の数から見ますと、その計画の中であるAならAという土地についての、農地転用の問題のような形で顕在化してまいるわけですけれども、そこのところの瑕疵の問題として。

【水野委員】そこの瑕疵を言っているんじゃないのです。基の計画に瑕疵があると言って、裁判になる場合の話を言っているわけです。

【説明者(竹谷文書課長)】ですけれども、基の計画について瑕疵があるといっても、実際の訴えられた方の利害の問題は、結局どこの土地の転用であるとかという、そのゾーニングを影響してくる話ですから、そこでそこに特化して救済、一番関心のある方から救済をしていくのが一番妥当ではないかというふうに思っているわけでございます。

【福井(秀)委員】それがここでおっしゃるような多数関係者への影響とか、公益達成の影響とか、停滞による国民の利便性への影響ということからすると、むしろ逆ではないですかという質問なんです。要するに、基の根っこの計画が処分じゃない以上、要するに先行行為が処分じゃない以上、後行行為でその違法を争わせないといけないというのは憲法上の要請で当然のことです。先行行為が処分なら違法性の承継がある場合には後ろでもいけるけれども、そうじゃないんだったら、または処分じゃないんだったらもう後ろで争わせざるを得ないというのが大前提です。そうすると今、水野委員が繰り返し言ったように、先行行為の計画のところが違法だったときの話をしているわけですから、そこが違法だということを、その段階で争わせるのか、あるいはお尻の段階で争わせるのかというと、お尻まで待たせた方がいろんな人の権利に影響が少ないかというと、むしろ逆だと思うのです。このことが、一貫してさっきから議論されていることです。
 先の段階でやっておく方が、後々形成される第三者とか多数当事者の権利関係が、それほど熟していない段階だから、手戻りがあるにしてもまだ影響が少ないか。おっしゃるような趣旨なら、むしろ先で争わした方がいいことになるんじゃないですかということです。

【説明者(竹谷文書課長)】そういう議論はあろうかと思いますけれども、ただその計画の中で全部じゃなくて、そのある場所について結果的に取り消されるということになれば、あるAならAという土地についての転用許可処分を争っていって、それが取り消されるということになれば、その部分について瑕疵があったということになりますね。その部分についての瑕疵で話が進むのに、農振計画というのはある市町村一本で大体立てておりますから、その市町村にある農用地を持っている方、ほとんど全部に関係してきてしまうという形になってまいります。また、農用地を持っていない方でも影響が及んできます。
 そういう人たちの一般的な計画を前提とした、日常的なハウスを建てましょうとか、あるいは農協の投資をしていきましょうということが全部ストップしてしまうような、あるいは全部それが不安定の状態に置かれるよりは、それぞれの後の処分で争って。

【福井(秀)委員】後行行為の段階で取り消されたとしたら、判決の効力で拘束されて計画を立て直さなければいけない場合が出てきますね。同じことじゃないのですか。

【説明者(竹谷文書課長)】後行行為で取り消されても、それは農地転用許可処分を争い、そこの中での判決の効力という形になるんじゃないですか。

【福井(秀)委員】計画の違法理由として取り消されたらそっちに影響しますよ。

【塩野座長】そこは行訴法の難問の1つであると。

【小早川委員】今、御説明で挙げられているのは、個別の家を建てたいけどそれが農用地に入ってしまっているというときに、ここは元々外してもよかったではないかという話ですね。私が最初に考えていましたのは、そうではなくて、農用地指定を前提にして大々的な土地改良事業を行われるというようなときの話で、それをどの段階で争うかということだったわけです。ですからお話を伺っているうちに、多少描いている例が違うなということは分かったんです。ここはちょっと家を建てたいのでもともと外してほしかったということであれば、それは何も全部ひっくり返す話ではないから、後から個別に争わせた方がムダがないということかもしれない。そこは分かりますが、そうではなくて、この農用地の線引き自体がおかしい、全体として争いたい、というようなケースであればどうかというのが私の意見だし、おそらく他の方が考えておられるのも、そういうケースが典型的ではないかと思います。

【説明者(竹谷文書課長)】1点だけ申し上げますと、土地改良事業の場合は、重点化でございます。だから、法律上の条件、農用地区域でなければ土地改良事業ができないとか、そういう形にはなっていません。

【小早川委員】なってないけれども、当然。

【説明者(竹谷文書課長)】要するに、投資の重点化という判断でございます。それから、農地転用許可処分や何かについて言えば、もう農振農用地であるかどうかはかなり決定的な影響を及ぼす要件になっております。

【福井(秀)委員】そういう例でもいいので、計画自体の適否が争われて、もしそこが違法なら全体に影響するという場合だったら、おっしゃっている趣旨には、やはり後でひっくり返るよりも前の方がまだましじゃないか、という矛盾点が依然として残るのです。

【説明者(竹谷文書課長)】個別に争われた方がいいのじゃないかと私は思いますけれども。

【芝池委員】計画の段階で訴訟になれば、1つの大事件である。後続行為段階で計画の違法を裁判所に言われた場合、それも大きな混乱になる。その混乱のうち、どっちを避けるべきかという話なのです。小早川さんなんかは、先に計画を争っておいた方がいい、後で混乱が起こるのはよくないというふうに考えておられるんですけれども、農水省の方はそうじゃなくて、後の方で少々混乱があってもその方がいいんだというお考えだと思います。

【塩野座長】そういうことだと思います。両方なかなか難しい問題があると思うんですけれども、そういういろいろな混乱があるならば、きちんとこちらの農業地域に関する法律等々において、争う時点はここですよとか、混乱が起こらないような法制というものは考えておられませんか。
 我々の方でよく話題になりますのは、公共事業計画訴訟をどうするかとか、あるいは都市計画関係のものもありますけれども、そういった1つの事業法の中に訴訟手続、あるいは争い方も含めて書く。そうすると一種、場合によりましては輪切りにしていくわけですね。例えば計画の部分は、この段階で早めにやってください。あとは違法性の承継は認めませんと、そういった輪切りの仕組みも考えられるんですけれども、そういうことはお考えなんでしょうか。

【説明者(竹谷文書課長)】今、先生御指摘のあった土地改良事業みたいな、公共投資のいろんな事業計画については、その計画の認可とか、そういう段階で争える道、あるいは行政不服審査や何かも含めて、規定の整備はされております。
 それと同時に、今度は農振の計画の方は、これは実は農振計画自身は市町村が立てまして、市町村が議会の議決を経て定められる市町村の基本構想に即して定めるとともに、集落座談会などで住民の意向調査を行うという形を取っていますから、どちらかというと市町村行政が噛んだ形で立てていくという構成になっておりますので、そういった中でいろんな利害調整が行政計画として調整されていくというふうに私どもは理解していまして、司法手続の方は個別処分で争っていただくという法制の方がよろしいんではないかというふうに思っております。

【塩野座長】どうもありがとうございました。ちょっと時間が経過していますが、原告適格のところについては、いかがでしょうか。

【荻原委員】全く法的なことではないんですが、先ほどの御説明で、環境の問題ということに関しまして、それは環境行政の問題だというふうにおっしゃられたんですけれども、この時代に農水省さんが行う事業も、すべて環境への配慮なくして行えないような実態になっているということも、既にいろいろ事例もございますし、何かその辺のところが引っかかったので、もう少しその辺に関してのお考えを確認させていただきたいと思います。

【説明者(竹谷文書課長)】全部が全部環境行政の問題だといって、そっちに押し込んでしまうということではなくて、多少不正確だったかもしれません。例えば、今、幾つか例を申し上げた、土地改良事業計画、実際に公共事業をやるための事業計画ですが、そういった場合は当然環境への配慮ということも事業要件に入れていまして、そういった利害も調整しながら進めていくというようなスキームに、特に近年改めまして、法律に明定する形でやっております。
 ただ、農地法の3条の農業者同士の権利移譲の話でありますとか、あるいは農地転用の話でありますとか、そういったものは法益といいますか、本来的に問題にしております保護法益が、農業経営を行う方の権利利益の保護とか、あるいは農地の農業上の利用の保護という観点で行っておりますので、そこに争いやすいからということでかなり離れたところから、そのエリアにいらっしゃらないような、あるいは少し離れたようなエリアの住民の方が起こしているケースがありますから、そういったようなケースを想定すると、妥当ではないんではないかということでございます。

【塩野座長】そういうお答えがあるようですが、ただ畜舎が横に建てられては困るなという感覚があって、それは今のこの段階でつかまえるのは一番つかまえやすいなというふうに、国民の方は思われると思いますので、その辺どういうふうに説得されるか。ただ困りますではちょっと困るんですけれども。

【説明者(竹谷文書課長)】農水としても、例えば畜産糞尿の処理の法律というのは別途立てておりまして、そちらの法律のルールにのっとって、ちょっとまだ経過期間中で、来年の秋から施行されるんですけれども、そういうような法制も導入して規制なりをかけていく法制は別途講じておりますけれども。

【塩野座長】そうですか。そういう1つのシステムとして御説明いただかないと、これだけだと何だか、あとは環境行政なんで俺のところは知らないという話になってしまいますので、ちょっとそういう誤解を受けました。

【説明者(竹谷文書課長)】失礼いたしました。

【福井(秀)委員】今の件ですから、土地改良事業については、周辺住民への環境配慮が明文であるということですか。

【説明者(竹谷文書課長)】はい。

【福井(秀)委員】それは言い換えれば第三者。

【説明者(竹谷文書課長)】周辺住民というか、環境問題への配慮という。

【福井(秀)委員】そういう意味で、環境を理由として土地改良事業計画区域外の住民が争う場合には、原告適格がありということですか。

【説明者(竹谷文書課長)】そこは、すごく微妙な問題だと思うんですけれども、全く関係ないところの方までは想定してないと思います。

【福井(秀)委員】関係ないんじゃなくて、環境を理由とする理由がある場合の話です。

【説明者(竹谷文書課長)】理由がある場合というのは、一般的、抽象的におっしゃられると分からないんですけれども。

【福井(秀)委員】だから、およそあり得ないと考えるのか、あり得ると考えるのか、どちらですか。

【説明者(竹谷文書課長)】そういうお尋ねだとお答えしにくいんですが、その地域に実際に住んでらっしゃって、直接的に因果関係があって環境の影響がある方との関係においては、調整する仕組みになっております。

【福井(秀)委員】それで、一方でこの農地転用許可で例に出されているケースでは、農地法の趣旨なりの方に、要するに現在の法律上保護された利益説を前提にしても、周辺の住民の環境については、保護法益とはしていないという解釈ですか。

【説明者(竹谷文書課長)】住民の方ではなくて、実際例えばAという農地が不法に廃棄物の投棄が行われてしまったというようなケースを考えますと、その周りにB、C、Dという当然隣接した農地があります。
 あるいは、そこの水路を一緒に利用しております、下流のX、Y、Zといった農地がありますと、それは当然農地転用許可処分の際に視野に入れて問題にしていくということだと思います。

【福井(秀)委員】そうすると、転用許可の相手方以外も、そういった影響を受ける人は原告適格があり得るわけですか。

【説明者(竹谷文書課長)】ちょっと一点訂正させてください。転用許可処分の際には、周辺農地の権利者の方に配慮するようにというのは法律に書いてあります。それは申し上げたとおりなんですけれども、原告適格に関しては、今あれですが、かなり古い時代の最高裁判例では、原告適格は周辺農地の権利者の方はないという判例もあるようでございます。

【塩野座長】あとで教えてください。こちらでつかんでないといけませんので。
 大分時間が経ちましたので、あとお一方ぐらいもしあればということにさせていただきたいと思いますけれども、一点集中型で議論してしまいまして、あと出訴期間とかもお伺いしたかったし、それから農薬もそうですね。そういった面でのいろいろな行政処分に関係する問題もあろうかと思いますけれども、また場合によっては別途この点以外のことでこちらから御質問が参ることもあろうかと思いますから、そこは受けていただけますでしょうか。

【説明者(竹谷文書課長)】はい。今いろんな行政訴訟法の改正の方向というのは、正直私も不勉強なせいもあってよく理解してない部分があろうかと思いますけれども、実務的にこういった問題点があるということで、一切何もかもこれがだめという趣旨で申し上げいるわけではないので、そこは是非御理解いただければと思います。

【塩野座長】そこは理解しているつもりでございますので、どうも御苦労様でした。それでは、これで終わります。

【法務省】

【塩野座長】それでは、次に法務省からのヒアリングを行いたいと思います。倉吉敬官房秘書課長でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。

【説明者(倉吉秘書課長)】秘書課長の倉吉と申します。今の議論を伺っておりましたら、余り法務省にはダイナミズムのある行政処分は少ないかなという感じもいたしましたけれども、各部局からの意見をそれぞれ御指示に従いまして集約をいたしました。官房の方で取りまとめたということで、今日は私が説明させていただきます。
 なかなかこの新しい改正の方向とか、そういったもののイメージの結び方が十分ではなかったかもしれません。取り分け各部局の末端の方では、日常の業務をしながら今度の取りまとめ等もやっておりますので、なかなか付いていけないということで、あるいは御迷惑をおかけしているかとも思いますが、御容赦いただきたいと思います。
 我々としては、意見を十分に述べていないところもありますけれども、もちろん十分な関心を持って臨んでおりまして、今日のそれぞれの御指摘等も踏まえてまた検討を続けていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 時間の関係もあろうかと思いますので、お手元にお配りしたペーパーに基づきまして、簡単にここだけをというところを私の方から述べまして、その後御意見をいただきたいと思っております。
 最初の「被告適格者の見直しについて」でございますが、前段は、やはり法務大臣権限法の整備が要るだろうなと、既にいただいたペーパーの中にも御指摘はございましたが、それを書いております。
 後段の方なんですが、これは被告側において迅速に応訴対応することが困難とならないように、できれば行政庁の名前を訓示規定でいいから書いてもらえないだろうかと。ここに行政庁の名前が書いてあるということは、その行政処分たる請求を特定する上でも意味があるんだと記載しましたが、これは行政庁の名前が書いていなければ請求が特定されてない、だから却下だということを言っているわけではありません。多くの人はこういう制度設計になっても書いてくるだろうと思いますけれども、できれば書いていただきたいというお願いマターであります。
 それから、2番目の管轄裁判所の拡大、これもペーパーの中に御指摘がありましたが、移送の規定をやはり置いていただきたいと。これは、例えば、司法試験の合否の決定の行政処分について、同じような理由でこの問題はおかしいということで、全国の裁判所でやられたらかなわないなということであります。情報公開法36条2項と同じ趣旨の規定を置いていただければありがたいと思います。
 その次の出訴期間等の教示の関係ですが、これもペーパーに御指摘がありましたが、書面でする行為に限定していただきたいと。法務省の所管では一つは、また司法試験でありますけれども、不合格については実は個別に通知を行っておりません。それでいいのかというのは、ぎりぎり考えると議論があるのかもしれませんが、これはやってられないというのが本音でありますけれども、一応合格者に公告をいたします。公告をしたことによって、残りの人は不合格だよということを知らせているという理屈でやっておりまして、これに教示するということになるとかえってコストがかかるという問題です。
 もう一つは、今、国会でも問題にされているんですが、矯正施設の問題でありまして、被収容者に対して、戒具を使用したり、保護房に入れるというような事実行為による処分をやっております。これについて、一々出訴期間等を教示するというのは、現実的ではないと、非常に緊張した場面で制圧等をしてとなりますので、その辺のところにも配慮していただければありがたいという趣旨でございます。
 その次の訴訟の早期の段階で処分の理由を明らかにするための記録の提出等のところでありますが、ここは一言で申しますと、一番頭に「全体について」と、こんな一般論を書いて申し訳ないと思っておりますけれども、民訴の文書提出命令等の制度が整備されまして、その中で提出義務の除外文書等もございます。それから、提訴前の証拠収集の方も民訴の方で可能となったと。こういうところの運用の落ち付きを検討していく必要があるんではないかと。
 法務省の方の個別のものといたしましては、例えば難民認定にかかる資料、この中にはときに外交機密等もあるようでございます。
 それから、公安審査委員会では、破防法、それからオウムで問題になりまして、新しく立法されました、無差別大量殺人行為を行った団体の規制法、これに基づく審査を行っておるわけですけれども、その委員会の会議録等は、これを公開されること自体が委員会の事務の遂行に支障を及ぼすし、公共の安全にも大きく響くかなと思っております。
 最後のところは、刑事事件、少年事件のところで、最初に申し上げました文書提出命令の提出義務の除外文書になっていると、これと同じような手当がやはり要るのかなというのが部内の意見でございました。
 その次の仮の救済の制度のところですが、ここでは頭から2番目の○のところで、内閣総理大臣の異議について書かせていただきました。これは評判が悪いということは承知しておりまして、憲法違反の議論があるということもよく分かっております。我々としても、あれは昭和40年代でしたか、東京地裁と内閣総理大臣が国会議事堂前のデモでがんがんやり合ったと、あんなことが適切であると考えているわけではございません。
 ただ、また公安審査委員会なんですが、公安審査委員会がやる観察処分、その他の処分、これがぽんと執行停止でやられるというと、場合によっては国民の生命・身体に重大な影響を及ぼすということもあり得ると。だから、伝家の宝刀だということはよく分かっております。もう常に抜こうなんて考えているわけではありませんけれども、何らか要件を絞った形になるのかもしれませんが、内閣総理大臣の異議に類するようなものが、一つはあった方がいいのかなと。これは公安審査委員会の意見でしたので、御紹介をいたします。
 それから、仮の地位を定める仮処分の関係では、やはり司法試験の方が問題になりました。司法試験の不合格者が仮の救済を求めて、仮に合格した人になるというのはどういうイメージだろうかと、イメージの議論になって悪いんですが、ちょっと分かりにくいなと。あるいは、検事を懲戒で免職にしたら、仮の救済の申立てをされたとして、この場合、仮の検事というのがあり得るだろうかとか、そういう議論をいたしました。それを紹介しているものであります。
 最後のところでは、執行停止の関係でありますけれども、退去強制令書、あるいは収容令書がございます。これがぽっと止まってしまうということになると、収容できませんから、逃亡防止できないという問題が起こり得ると。
 それから、公安審査委員会については、もう先ほどと同じような問題でございます。  次は2枚飛ばしてください、読んでいただければ分かるところです。  3枚目、確認の訴えについてちょっと入れておきました。これもほとんど現実味のないあれではないかという御指摘をいただくかと思ったんですが、弁済供託の受理というのがあります。これは処分なんですが、その取消等をしなくても供託原因の不存在を主張できることになっておりますので、そういう場合にまでこの受理無効確認というのを認める必要はないのではないかと。
 最後の2行に、現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができる場合には必要はないと記載しましたが、この「目的を達することができる場合」というのは、もちろん最近の最高裁判例を踏まえた議論のつもりでありまして、現在の法律関係に関する訴えの可能性という要件については、最高裁は、柔軟に解しているわけで、それを前提にした上で書いているものであります。
 その次の行政計画、通達、行政立法、行政指導、これは後にどんどん広がっていくような、行政立法、行政計画というのは、法務省では余りないかなという感じがしておりましたけれども、ただ通達については、(具体的な例を挙げることができず、申し訳ありませんが、)やはり内部のものなので、その取消しを許容するためには、何らか限定的な要件が要るんではないかというのが部内の意見の大勢でございました。
 それから、取消訴訟の排他性、出訴期間の限定の関係であります。ここでは、まず難民不認定処分取消訴訟を取り上げました。難民認定では、海外でどんな事情があったのかということを、こちらで調べるという形になります。
 したがって、もともと資料の収集というのが困難だというところがあるわけですけれども、出訴期間を更に延長したりすると、いよいよ証拠の集め方が辛くなるかなという気がいたします。出訴期間を短くして、救済を拒もうという気はありませんし、御承知かもしれませんが、今国会に提出している入管法の改正法案では、難民認定申請期間を実質的に延ばすような工夫をしております。
 その上での一般論だということで、お聞きいただければと思うんですが、一般的には証拠の散逸を防ぐために、出訴期間というのはある程度限っておいた方がありがたいという趣旨でございます。
 もう一つは、また司法試験なんですが、これは書類の保存の問題でございまして、受験願書が約5万、短答式試験が4万5,000通、それから論文式が8万4,000通にのぼる答案用紙というものがございます。これがいつまでも争われるということになると、これだけ大量のものをずっと持っておかなければならぬと、これは辛いなということでございました。
 最後の行政決定ないし、行政上の意思決定というところで書いてありますが、ここは具体的な紛争の解決とはおよそ関係のない訴えが出てくると、一般論として訴訟対応がきついかなということが部内の意見で出ましたので書きましたが、具体的なものというのは法務省ではイメージできませんでした。申し訳ありません。
 1枚飛ばして、出訴期間の延長も大体同じようなところでございます。
 その次の原告適格の拡大のところ、ここは書いてあることはたった3行で、三下半のような書き方をして申し訳ございません。何とも表現が難しかったんですが、A案からD案まで出ております。それぞれそういう議論があるということをよく承知しているんですが、例えば事実上の利益であるとか、そういう書き方をしても、なかなか判断するのが難しいのかなと。具体的案件としては、またまた司法試験で申し訳ないんですけれども、例えば、不合格者の母親に原告適格があるか、こんな人が訴えを起こすなんて思っているわけじゃないです。頭の体操で言っているだけなんですが、母親というのはちょっと入らないんだろうなという気がするんですが、あるいはこの中の見解によっては、入るということになり得るんだろうかとか、それからもう一つ考えましたのが、要するに原告適格を広げる話ですので、今までにない事例なので、想像のことばかり申し上げて申し訳ないですが、ロースクールの学長、これを考えました。自分のロースクールのところで司法試験の合格者が出ると、その後の審査、文科省からの認可の関係、いったんは認可を受けているはずなんですが、そういった関係で有利になるというところがあると。違法に落とされたら、うちの大学の経営にかかわるという問題があり得るかと。その辺になると、認められるんだろうかと。それはどれかの説によると認められるということになるのか、よく分かりませんでした。これは私どもの理解が十分でないから分からなかったということかもしれないんですが、御存じのとおり法的に保護された利益説があるわけでして、あれは最高裁の判例も、確かに本来の法的に保護された利益説からぐんぐん動いてきているなという気がいたします。
 何とかそれで広げていこうとしているというのが、それは新潟空港訴訟やもんじゅの判決でも分かるわけですけれども、そういう形で、例えば、生命・身体とか、健康とか、原発の訴訟なんかそうですが、そういうものになると重いものが入ってきて、それは法律の当該行政法規の、当該行政処分の根拠規定だけではなくて、全体の法体系の中で見ていって、これが一般の公益に埋没しているとは言えないんではないかという厳しい議論をしております。
 その一方で、対局にあるのが、その司法試験の不合格者のお母さんみたいなものになるのかなと。中間的に来るのが、近鉄特急の事件であるとか、遺跡をやめてしまったというのがありましたね。大学の先生が原告になって、原告適格がないと言ったと。それは何か利益の重さなんかによっても濃淡があるのかなと。済みません、これは行政庁の立場で議論することではありません。検討会の方で議論していただければいいことなんですが、そういうこともない混ぜになりまして、そうするとやはりこういう一般的に法的に保護された利益という言葉を、例えば事実上の利益であるとか、そういう形で言い換えるだけでは、何か不安であるということであります。
 ただ不安であると言われても困ると言われると、何とも反論のしようがないんですが、今の母親とロースクールの学長の例当たりは、ちょっと考えてみる価値はあるのかなと、我々ももうちょっと検討してみたいと思っております。
 時間の関係もあろうかと思いますので、この程度で私の方の御説明はとどめたいと思いますが、もうお読みいただいていると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【塩野座長】どうもありがとうございました。時間の関係で省略された点についても、場合によっては質問が及ぶかもしれませんので、そのときはよろしくお願いいたします。
 それでは、順序を追って御説明がございましたので、比較的前の方から御質問をいただきたいと思います。一々ページを区切りませんから、ここは大分前の方だと思われることはどうぞおっしゃっていただきたいと思います。

【水野委員】4ページの2−2、「審理を充実・迅速化させるための方策の整備について」ですが、これで一つは「全体について」ということで、民訴の点、それから情報公開を挙げたわけですけれども、ただ情報公開はこれは一般的な話、訴訟を全然してないと。民訴はもともと対等の民々を前提にしたものですね。ですから、今、議論しているのはやはり行政訴訟ということで、情報を握って、その情報に基づいて何らかの処分をした行政の違法を争うという訴訟を前提に考えているわけですから、情報公開法とか民訴があるからというのは、余り説得力がないのではないかと思うのですけれども、いかがですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】どうなんですかね。それがオープンになることによってどんな弊害があるのかと、そこの観点から考える。そうすると、これは出してはまずいよとか、出さなくてもいいよというのは、その観点から検討しているという意味では、同じような平面があるんじゃないかと、一応考えたんですが、ちょっと役人の受け止め方かもしれません。各部局の者は、そういう感じでございました。

【水野委員】だから、基本的には我々は処分の違法性が訴訟の対象ですから、その処分をしたというのはそれなりの理由と根拠がある。それは要するにそういう証拠というか、そういうものがあるわけであって、実際の訴訟をやっている経験からしますと、本来はそんなものすぐに出てきていいものがなかなか出てこないというもどかしさがあるわけです。これはおそらく裁判所も同じような感じを持っておられるのではないか。
 だから、やはりいわゆる民訴の場合とは違って、何らかの行政訴訟特有のそういったものをすっと出させるような制度づくりが必要なんじゃないかと、こういう意識で議論しているんですけれども、その辺りいかがですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】ここはもう各論の議論なんだろうと思うんです。私どももそれほど法務省の所管の中で、これは出せない、あれは出せないと、そんなにあるわけじゃないなと思っていますが、難民認定の事象で外交機密というのを入れました。これはこういうのが実はあるんだそうです。それが何だといっても担当者は教えてくれないんですが。
 それから、公安審査委員会の会議録というのは、確かに中身でちょっと困るかなというのはございます。これも伝聞なんですが。
 だから、そういったところを、私どもももう少し各部局に当たって、今の御趣旨をお伝えしまして、それは行政処分なんだから、行政処分をやったからにはそれが正しいんだということをきちっと説明しなければいけない説明義務があると思いますので、それを入れてもなおやはりこれは出せないというのが、どんなぎりぎりのものがあるのかというのは、ちょっと検討をしてみます。

【水野委員】それはあるだろうということは私も認めるわけです。だから何かこの難民認定と公安審査のものは、これを見ると一切だめだみたいな印象だけれども、そうでもないわけですね。

【説明者(倉吉秘書課長)】一切ということではないです。

【水野委員】分かりました。最後の刑事記録ですが、刑事記録自体はそうだと思いますが、これはここで問題になるとすれば、刑事記録を行政処分の何らかの根拠に使ったという前提での話ですから、そうすると行政処分の根拠に使っておきながら、刑事記録だから出せませんというのはおかしいのではないか、どうでしょうか。

【説明者(倉吉秘書課長)】ちょっとそこの具体的に刑事記録が基になった行政処分というのを、むしろ私が具体例を説明しなければいけないので、それの準備ができておりませんので、申し訳ありません。それはまた。

【小早川委員】5ページですが、内閣総理大臣の異議の制度を廃止し、かつ執行停止決定の執行を一切停止することができない制度とした場合には、こうだ、という書き方をしておられます。行政権の長としての内閣総理大臣ではなくて、司法制度の中で、仮に一審の裁判官がときに跳ね上がることがあるかもしれませんが司法制度の中でそれがきちんとコントロールできるようになっていれば、別に内閣総理大臣の異議にこだわることはないという御趣旨ですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】私は個人的には、それでもいいのではないかという気はいたします。何らか、特に重大な公共の安寧とか安全にかかわるものについて、どこか一つ遊びをつくっておいていただきたいという感じです。

【塩野座長】それが内閣総理大臣でなければいけないということではないというお話ですね。

【説明者(倉吉秘書課長)】済みません。個人的見解だということにしていただいて。

【福井(秀)委員】10ページの出訴期間の部分なんですが、これ証拠の散逸という観点で出訴期間を考えるとすると、おそらく民事の時効というのは証拠の散逸ということと密接な連動関係があるわけです。そういう観点からすると、この証拠の散逸がない程度の期間、それは文書保管期間などとある程度連動するというのは分かるのですが、そこからおしていけば問題はないという御見解だと理解してよろしいわけですか。要するに、散逸しないことであれば提訴されても受ける用意はあるという意味ですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】これ、特に難民で出てくる人というのは、本当に難民であっても、うそをついている場合でもそうですが、非常に特殊な状況で出てまいります。だから、難民認定処分、これに限って考えていただきたいんですが、短期間の間に証拠が散逸するということがあると。だから、そこは何とか見てほしいという意味でして、一般の証拠散逸の議論で時効のことはよく分かりますが、そこまで広く集約させた話ではなくて、難民の場合にはこういう特性があるんですよということをちょっと御理解いただきたいという趣旨です。

【福井(秀)委員】難民は7日間でないとまずいわけですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】これ、下の方ですね、難民認定の場合には不服申立期間が7日に短縮されているんです。それは、そういう制度になっているのでそういう趣旨だろうと思います。

【福井(秀)委員】ということは、難民についてこの程度の期間が確保されていれば、とりあえずは結構ですし、あと一般則で言えば、この証拠の散逸というのが一番の関心事であるということなのですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】そうですね。それから、司法試験の方はちょっと違いますが、保存の関係がございます。そういうことです、それぞれ各論でばらばらに書いてあります。

【福井(秀)委員】保管の文書の負担ということですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】負担ということです。

【福井(秀)委員】分かりました。

【水野委員】今の点ですけれども、難民認定が専ら海外において生じた事象を対象にしているという特殊性から、証拠が散逸して事実の把握が困難になるから7日にしていると、ここらがよく分からないですけれども、実情を知らないんで。やはり7日にしておかなければいかないということはあるんですか、証拠の散逸のために。

【市村委員】難民認定については特殊な事情として、もう一つ考えなければいけないのは基準時の問題だろうと思うんです。どの時点で難民であったかというのは、これは当然処分時ということになりますけれども、それが取り消されると、取り消されて再判断するときの基準時はどこかというと、今の考え方だと再判断するときだと言うんです。
 難民のように非常にいろんな情勢の変化でその人の立場が変わってくるものについて、余り長い期間があると取り消したはいいけれども、それは昔、その処分をしたときには難民で確かにあったのに、間違えて難民でないという不認定処分してしまったと。それを取り消したけれども、今は政治情勢が変わって、この人はもう難民でないということになると、余り意味がない訴訟になってしまうわけです。それはなるべく早く区切りを付けていくという、そちらのプラスもあると思うんです。

【水野委員】それはよく分かります。それは証拠の散逸の問題ではないですね。

【説明者(倉吉秘書課長)】全然違う観点からの御指摘でございます。これは済みません、私一人の不勉強だということで、一度帰ってよく入管から聴取して勉強したいと思います。

【塩野座長】今の点、私もちょっと疑問に思いましたのは、証拠の散逸といってもまだ手元にない証拠がなくなっちゃっているわけですね。手元にあればいいわけですから、そうすると処分をした後で調査をするのが難民の認定のやり方なのかなという感じもしまして、普通はかなりきちんとした調査をして処分を打つわけで、むしろ理由の変更ないし理由がいいか悪いかという議論をしているわけですけれども、この議論だと、まず処分をしますと、それで後で不服があればその段階でまた証拠を一生懸命集めましょうと。その証拠がなくなると困るという理屈はおもしろいと思ったのですけれども、余りやらない理屈なもんですから。

【説明者(倉吉秘書課長)】これ難民側なんです。難民側が訴えを起こすときに、ですからこれは斜めからの議論をしているのかもしれませんが、出訴期間がずっとあると安心してしまって、ゆっくりしている間になくなってしまうかもしれない、そこの問題なんです。

【塩野座長】そのことを一生懸命考えてくださっているんですね。

【説明者(倉吉秘書課長)】だから、本当に真剣にやろうという人だったらすぐやるだろうということなんですけれども。

【塩野座長】我々の論点に全くなかった論点ですので、大変興味深く伺いました。

【福井(秀)委員】本人としては多少証拠が散逸すると心配してもらうのはありがたいけれども、やはりじっくりと提訴の準備したいと思う人もいるかもしれません。そういう人に対しても、早くしないとお前は無くすに決まっているからというパターナリスティックな考慮で短くするというのは何かひいきの引き倒しをしてしまうような気もするのですけれども。

【説明者(倉吉秘書課長)】つまり、こういう観点もあるよということで、要するに各論的に考えられるところで、ちょっとユニークなものを出してみたということです。
 もちろん、当局側というのは、原告の主張を待って、その主張に基づいて反論できる資料があるかというのを集めるわけです。それが海外であるがゆえに集めにくいというところはあります。そちらの問題はあります。長く経つとですね。要するに長く経てば経つほど、もちろん出訴期間が長く決められていればその間起こされるかもしれないぞというので確保するわけですけれども、全部が全部訴訟になるとは思っていませんから、短ければ3か月以内にぽんと起こったと、そしてこういう主張をされていると、この点について最初に処分時でそれをきちんと固めているはずではあるんだけれども、もっと反論できる資料はないかと、それで本国に問い合わせてももう時間が経っていてないとか、そういうことになると外交ルートで資料集めるのも大変だと、そういうところはあるということです。

【随行者(保坂入国管理局局付)】入国管理局の局付でございますが、結局、原処分の際にいろいろ難民側から主張が出るわけですが、それに基づいて一時的な処分を行うと。ところが、その後で不服申立が行われまして、それについてまたヒアリングを行うと別の事情をいろいろ言い出してくると。そうなってきますと、当初の早めの段階であれば確保できた証拠が、情勢、いろいろ戦争その他によって散逸してしまうという可能性もありますので、そういった特殊性があると思われます。

【水野委員】特殊性は分かるんだけれども、常識で考えて、7日で無くなってしまって困る証拠はどんなものがあるのかという率直な疑問があるのです。3か月だったらまだ分かるのです。

【塩野座長】それは申立ての方の話ですから、ちょっと別のことかもしれませんが。

【説明者(倉吉秘書課長)】反論する資料ということで、その人の身分関係の資料であるとか、例えば向こうで反政府活動をしている、だれだれのセクトに属していたとか、それで弾圧を受けていたと。そのときにその構成員のメンバーの資料であるとか、そういったものが取りにくくなるとか、そういう問題もあるのかなという気がいたしますが。

【福井(秀)委員】これは不服申立前置ではなくて、訴訟は独立に3か月以内にできるわけですね。

【塩野座長】大分、時間も経ちましたので、あと外務省の方も既に控えておられるということですので、何か特にございますでしょうか。

【福井(秀)委員】原告適格なんですが、さっきの不合格者の母親とかロースクールの学長というのは非常に面白い例だと思うのです。今までの最高裁判例の中でも多少意見は分かれるかもしれませんが、例えば里道の廃止のように、法律上保護された利益説の端的な応用からすると入らない可能性があるものも原告適格ありと判断されていますけれども、そうしますと今までの最高裁判例で、政策的判断の当否はさて置くとして、最高裁判例で原告適格ありとしていて、だけども非常に単純なと言いますか、直接的な法律上保護された利益説の応用では読めないものを無理して読んでいるようなものを、素直に読むために条文を変えるとしたらどういう書き方があるとお考えですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】それはまだ分かりません。申し訳ありません。それをやはり勉強しなければいけないなということで。

【福井(秀)委員】そういうことこそ、法務省なり、プロの集団から建設的な意見をいただきたいと思うのです。

【説明者(倉吉秘書課長)】ここで逃げるつもりはないんですが、行政処分をしている行政庁としての意見を聞かせてくれという趣旨でしたので、それはもちろん、また別途いろんなスタッフおりますので考えたいと思います。

【小早川委員】一番最後の21ページの不服審査前置のところの書き方なんですけれども、行政と司法の合理的な資源配分の観点が大事だとおっしゃるのは、それは全くそのとおりだと思います。何でもかんでも裁判所が引き受けるのでは合理的ではない、行政による救済、不服審査の方にそれなりの資源を配分すべきである、そこできちんとした制度をつくり運用して司法の機能を代替する、そちらの形でもって国民のニーズを満たしていくというのがいい、ということは分かるのですが、それは予算配分しろという話であって、不服審査前置にしろという話とはつながらないと思うのです。よくすればそちらに自然に利用者は行くわけですね。よくしないでおいて、裁判所は手いっぱいだからそう簡単には来るな、というのはやはりおかしいのではないか。

【説明者(倉吉秘書課長)】済みません、それはそういうつもりで書いたつもりはありませんで、これは本当に抽象論で書いておりますので、今回のお答えとしてははなはだ不十分だと自覚しながら出しておるものですけれども、予算のことを言っているつもりはありませんで、今、司法制度改革で議論されているADRのような発想です。やはり、物事として裁判所で本来こうやるべきものと、そうでなく処理できるものがあるんだろうという、そういう感覚だけを書いております。
 今の行政の不服審査前置が本当に正しく機能しているかというところは、今、予算がないから、人員がいないから、行政改革されているから機能していないんだと言うつもりは全然ございませんで、そこは機能させなければいけません。そこが本当に最初の処分を追認するような、そればかりやっているとすれば、これは大きな問題でありまして、そこはもちろん我々も見直していかなければいけないと思っております。
 そういう批判があることはよく分かっておりますので、その前提でのものだということでございます。

【小早川委員】精神論ではなくて、予算をたくさんとっていただきたい。

【福井(秀)委員】弁護士報酬の敗訴者負担なんですが、これは要するに民事と同じでなければいかんと読めるのですけれども、20ページですが、本当にそうなんでしょうかということなんです。要するに、優越的地位で言わば非常にリソースのある側が行った処分が行政事件ですね。しかも、勝訴・敗訴の予測が民事と比べるとおそらく一般的にはつきにくい。訴訟要件もあるし裁量の広さもあってつきにくい。そういうときにイコールフッティングの意味で少し別の扱いをする意味があるのではないかという議論があったわけですが、それは真っ向から否定されるわけですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】いえ、全然そんなつもりではございません。ここもおわびになりますが、そこまで突っ込んでやる余裕がなかったということでして、まず民訴の方で司法アクセスの方で議論していると、それがどういうふうになるのかというのを見ないと、それを飛び越して法務省としてこれについてぽんと言いにくいなという。

【福井(秀)委員】司法アクセスの方では、行政事件について、ここで出たような議論を踏まえて実質的に議論していただいているわけですか。

【説明者(倉吉秘書課長)】それはよくは承知しておりません。

【福井(秀)委員】だとすると、なおさら行政訴訟についてはどうなのかということを一緒くたにするんじゃなくて、特殊な要素があるのであれば、それに応じた検討はしていただく必要があると思うのです。

【説明者(倉吉秘書課長)】はい。

【塩野座長】他にもいろいろあろうかと思いますけれども、また別の質問があればまたこちらから別途お願いをしますので、お答えをいただければと思います。どうも今日はありがとうございました。

【説明者(倉吉秘書課長)】どうも済みません。雑ぱくな説明で失礼いたしました。

【外務省】

【塩野座長】お待たせいたしました。それでは、外務省からのヒアリングでございますけれども、御説明は草賀純男官房総務課長、それではよろしくお願いいたします。

【説明者(草賀総務課長)】官房総務課長の草賀でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、私どものコメントはペーパーでも出させていただいているわけですけれども、補足方々御説明させていただきます。
 外務省が所管する許認可の数というのは約二十件程度でございまして、内訳としては公益法人に関して民法が規定するものが7件、信託法に基づくものが3件、それから旅券法に基づくものが10件ということでございます。行政訴訟においては行政庁の処分が審判の対象とされることから、許認可などの処分行為が少ない当省といたしましては、余り多くの行政訴訟に直面してきたわけではございません。他方で平成11年に導入されました情報公開法に関連した訴訟については、これまで4件提起されております。
 行政訴訟でございますけれども、外務省の許認可というのは、今申し上げたように法人と公益信託、それから旅券というものに大別されるわけですけれども、大体行政訴訟にまで及んでいるものは旅券に関するものに限られております。内容は旅券発給の拒否処分の取消し、旅券返納命令処分の取消しといったもので大体これまで過去に9件そういうものがあるということでございます。旅券発給の拒否の根拠としております、旅券発給制限事由というのは、旅券法の13条に規定されておりまして、この13条は旅券返納命令においても引用しております。
 関係訴訟の大半は、この13条1項第5号の「著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という規定に関してでございます。旅券法の関係訴訟は、訴訟件数から見ましても、また争点も非常に偏っておりますので、一般的な現象であるとは言えないということだろうと思っております。
 したがいまして、今般、行政訴訟制度の見直しを進められて、それを実現した場合において、直ちに外務省の訴訟事項に関する行政訴訟が急増する可能性は余り高くないのではないかというふうに思っております。
 具体的な行政訴訟の今検討中の論点についてでございますが、主な点について言及させていただきますと、ここでは外務省としては許認可権も行政訴訟権限も非常に限定的ですので、外務省の業務の特質に関連した事項に大体限定して御説明した方が有益だと思います。
 まず、裁判所管轄の拡大でございますけれども、これは行政訴訟を国民が利用しやすいようにするということ自身はもちろん時機にかなっておると思っているわけですけれども、他方においてこれをどこまで広げるか、例えば、地方裁判所まで拡大されるということになりますと、外務省の場合には地方に支分局というものを持っておりませんものですから、それぞれの訴訟への対応が現実問題としてはなかなか大変になると。全部本省の方からそれぞれの地方裁判所のあるところに出張していくということになりますと、なかなか実際問題として対応が大変だというところはございます。
 次に、仮の救済の制度ということですけれども、若干気にかかりますのは、旅券についての特殊性であります。すなわち、旅券について仮の救済を行うという場合には、要するに旅券を発給するということになると思うんですけれども、そういたしますと、当該人物は旅券を発給すべきでないと考えているとした場合にも、その人が海外へ移動してしまうということが多いにあり得るわけで、その場合、回復不可能な結果を招くという危険があるのではないかというような、ちょっと懸念がございます。
 最後に、現在検討中であると理解しておりますけれども、行政計画などへの取消訴訟の対象の拡大という議論ですけれども、外務省の場合は許認可件数は非常に少ないわけですけれども、例えば経済協力の分野で、諸外国との間で何らかの合意をした、例えば経済協力に関する計画などが出てきて、そういうものについても対象に仮に含まれるということになった場合は、行政遂行の効率を損なう危険もあると思います。それに加えて若干その外国との関係で対外的な、一旦約束したことにつきまして、例えば取消訴訟ということに仮になってくると、若干信用の失墜というようなことも少し懸念されることがあるのかなと。ちょっとこれはどこまで計画というものが拡大されるかによるんだろうと思いますけれども、杞憂かもしれませんけれども、感じております。
 とりあえず以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは今のお話、それから提出していただいた資料に基づきまして、御質問等いただきたいと思います。

【小早川委員】ペーパーの4ページに仮の救済の関係のことを書いておられます。今、お話があったのですけれども、例えば旅券の発給について、日本国の利益または公安を害するかどうか、これは本当に調べようと思えばいろんな資料を集めて判断しなければならないわけです。一番最後に書かれている、「一定の範囲の資料を基に、一定の時期までに判決を行うような種類の訴訟形態」ということを考えたらどうかと言われるのは、仮の救済ということで確たる根拠もなしに旅券発給が仮にされてしまうというようなことでは困るということだと思うのですが、そうするとこの、一定範囲の資料を基に一定の時期までにというのは、普通の、裁判所の判決を可能にするほどの証明がなくても結論を出すということだと思うのです。けれどもその場合に、本当はもっと調べないといけないのだけれども一定期日までに結論を出すということになると、立証責任の問題というのはやはり出てくるわけです。よく分からないけれども発給すべきであるらしいから発給してしまえというのか、逆に、よく分からないから、本当は発給すべきなのかもしれないけれども安全を見込んでやめておこうという判決になるのか。そこまでお考えになってお書きになっているのであれば、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

【説明者(草賀総務課長)】これについては、具体的にどういうものがあるのか、どちらに立証責任があるとか、具体的な類型が確定できるかというと、なかなか難しいだろうと思います。要するに、旅券を発給する特定の目的、例えば渡航目的というのがあって、国際会議とか何とかというものがあって、それに行くためだということで、そこを徒過するともう意味がなくなるというような場合に、期限限定的な要請、ニーズというのはあるというような場合に、どういうことが考えられるかということなんですけれども、ただ、さはさりながら最初のそもそも論として、その旅券法の先ほど申し上げた13条の、それがあるような場合というものとの兼ね合いをどう考えるのか、ちょっとまだそこまで詰め切っていないというのが正直なところでございますが、イメージとしては、そういうある種の具体的なニーズがそこにあって、それをどう救済するかというニーズが、一般論ではなくてむしろ具体的に明らかな場合に、更にそういう仮の救済の可能性をどう考えていくかということがより現実的な問題になるということだろうと思うんです。

【塩野座長】その場合には、内閣総理大臣の異議の制度は要らないという、あれは執行停止の話でこれはやや仮命令的な話になりますけれども、内閣総理大臣の異議の制度については、何か特別なお考えございますでしょうか。この場合は執行停止は効きませんので、仮命令という形になると思うのですけれども。

【説明者(草賀総務課長)】これまでそういう考えは今のところないんです。

【芝池委員】3ページの出訴期間のところなんですが、出訴期間の教示は経験上不要ということをおっしゃっているのですが、その経験上というのはおそらく括弧の中にちょっと書いてあることだと思うのですけれども、もう少し説明をいただければと思います。
 それから、その下の出訴期間は3か月で十分であるとおっしゃっているのですが、これも外務省のお仕事との関係で具体的に説明をしていただければいいかと思います。

【随行者(旅券課員)】これまでの旅券発給処分に対する取消しの例を見てみますと、大体、以前の段階で申請者との間でやり取りがあったりとか、そういうことをしていて最終的な処分を待って、すぐ訴訟に関わるというような事例が多かったんです。それでここで一応経験上というふうにさせていただきました。

【塩野座長】もう一つ、御質問がありましたが。

【随行者(旅券課員)】もう一つの方は、これは旅券事務との関係で3か月が、それは必要、妥当かどうかという質問でしょうか。

【芝池委員】旅券の場合は3か月で十分であるという実質的な理由です。

【随行者(旅券課員)】やはり今、申しましたように、最終の正式な処分が出るまでにある程度の主張も出ていますし、最終的に処分してから3か月であれば、裁判への対応なんかも判断できて、かつ自分の主張もまとめられるんじゃないかということです。

【芝池委員】発給処分の前にやり取りがあるというお話なんですけれども、それはどういうことなんですか。

【随行者(旅券課員)】それは事実上、行政側との電話のやり取りとか、あるいは都道府県の窓口に対して早く出してくれとか、そういうやり取りの過程で、現在、審査中であるとか、あるいは審査が必要なのでこういう資料を出してくれとか、追完してくれとか。

【芝池委員】それは普通、許認可申請しますと、拒否処分が出るかどうか分からないわけです。

【随行者(旅券課員)】そうです。

【芝池委員】ところが、大きな企業の場合はどうか知りませんけれども、旅券について言えば、我々がもらった経験から言うと、全然、実際に受け止るまでどうなるか分からない。しかし、今おっしゃったようなケースでは、申請をした人が既に自分はひょっとしたらもらえないのではないかというのを分かっておられるわけですか。

【随行者(旅券課員)】これまでが、大体、国益、公安に関係するような方々が多かった場合もありますし、あとは外務大臣として規則として定めるような名前の書き方を、自分はこれは気に食わないと、別の書き方でしてくれというような訴訟があったので、そういう限られた経験の中からのお話ということで御理解いただければと思います。

【福井(秀)委員】今の御質問に関わるのですが、その取消訴訟が起こったものでは事前にいろいろやり取りがあるということなんですが、それは事実上のものだから法的保障はないんじゃないのですかというのが1つです。
 それから、起こったものについて事前のやり取りがあったということは、そういうことはひょっとしたらあるのかもしれませんが、しかし取消訴訟を提起しなかったという例もあるはずです。提起しなかった理由はよくよく考え上で、これは訴訟では負けるに決まっているからやめたのか、あるいは取消訴訟制度について無知であったために、この3か月の出訴期間を逃したのもあるかもしれない。とすると、その後者のような場合については、この理由では保護していることにはならないのではないかということが2つ。
 それから、3つ目の法的安定の観点というのも、先ほどおっしゃったのは3か月あれば十分だとおっしゃいましたけれども、逆にお聞きしたいのは、その3か月が仮に半年とか1年に延びたときに、外務行政に何か重大な支障をもたらすような事情があるのでしょうかということです。

【随行者(旅券課員)】旅券発給処分で仮に拒否処分になった場合は、通常は不服審査の手続をその理由書の中で案内しています。ですから、通常60日ということでやっています。我々は、そういうことで不利益な処分を受ける人に対して、一応そういう形では公明正大にやっております。
 それが出訴期間が6か月、1年になった場合に、法的安定性が損なわれるかということについては、一応発給しないということですので、まさにその辺が長くなるのは、逆に言えば処分を受ける側の人に不利益であって、官庁側の不利益ではないと思います。そこはやはり発給拒否処分については一応、そこは公定力といいますか、もうそういうことで定まったものですから、そこが延びることによって安定性が損なわれるということはまずないと考えております。

【福井(秀)委員】1つはっきりしたかったのは、取消訴訟を提起しなかった人の中には、出訴期間等について十分には熟知していない人もあり得るということは想定できるわけですか。

【随行者(旅券課員)】そこは自信を持って答えれるということは当然ないんですけれども、そういう不服審査の期間を徒過した後3か月というものを、要するに知らずに過ごしたのか、それとも、主体的に判断をしてもうしないということなのかということでございますか。そういうのはあるかも分かりませんが、ちょっとそこまでは自信持って言えないところです。

【塩野座長】どうもありがとうございました。お時間超過して申し訳ありませんでした。

【総務省】

【塩野座長】それでは次に、総務省からのヒアリングを行いたいと思います。
 御説明は林崎理大臣官房企画官でございます。どうぞお願いいたします。

【説明者(林崎企画官)】それでは早速でございますけれども、総務省でございます。
 私は今、お話がありました官房企画課の企画官の林崎でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私の方から概括的に一たんお話をさせていただき、個別の意見についてざっと御説明申し上げたいと思います。
 まず、私ども総務省でございますが、これも御承知のとおり、3省庁合併してできた役所でございますけれども、国の基本的な行政制度全般の企画立案、それから情報通信行政、電波行政、そういった部分。加えて地方自治制度の企画立案と、大まかに言うとこういう機能を背負っておるという役所でございます。
 当検討会におきましても、私どもの方から行政管理局の福井審議官に出ていただいておるということもございますので、そちらは各省庁との並びの部分もございますけれども、そちらの方は若干軽くいたしまして、地方行政を所管している部分を中心に、あと一部、電波監理審議会といった関係でお話を申し上げたいと思います。
 今、申し上げたような地方行政関係を所管しておりますけれども、これも御承知のとおり分権がだんだん進んできておりますので、これから地方公共団体が行政庁として紛争の当事者になるということが、ますます増えてくるのではないかというふうに私どもは認識しております。
 一方、行政活動の中で、一つは制度的に情報公開というのが進んでまいりましたし、あるいは行政手続というのも進んでまいりましたので、そういった透明性がかなり増してきているということ。それから地域における実際の行政においては住民、あるいはNPOといったものとの協働といったようなこともいろいろ進んでいますので、そういう意味では事前の合意形成といいますか、物事についての理解といったものを進める努力、また、進めてきながら行政を行ってきているといったような実態が、地方行政の方にはかなりあるということを御認識いただきたいと思います。
 私自身そうなんですけれども、地方行政は、現場に出向で行ってきておるという経験もございますが、そういった中で当然その行政に携わっておりますので、公の利益、公正中立ということで心がけてやっておるわけでありますけれども、なかなか訴訟マニアとでも呼びたくなるような方もいらっしゃるというのも事実ですし、情報公開の仕組みなども、かなり営利企業の方々が利用いただいているといったような気もいたしますので、仕組みの、何ていいますか、つくっていくときの理想と、現実の使われ方というところの間でかなりギャップを感じることが多かったような気がいたします。
 現実にその事務に従事している職員の負担も、今、申し上げたような場合は大変なことになるという部分もありますので、何ていいますか、行政庁性悪説といったようなことでは余りないのかなというような気もする部分もございますので、ちょっとこの機会に申し上げたいと思いました。
 あと、もう1点だけですけれども、国それから地方公共団体という言い方をしますが、特に地方公共団体の場合は、一般的な用語として地方公共団体と言ったときと、現実のイメージとがおそらくかなり乖離がある場合が多うございまして、地方公共団体、東京都みたいな巨大なところもあれば、もう人口が数百人といったようなところもございまして、そういった地方団体が行政処分を始めとする行政的な行為をしている部分もあります。
 そういった中で、他方、仮に争いになった場合のもう片一方の相手が巨大な企業だったりといったようなこともございますので、そこら辺、いろいろなケースもあるということを御承知おきいただきたい。
 それから現実問題として、地方で弁護士さんにお願いするというのもままならないというようなこともございますので、そういったことも頭の中に入れていただければなというふうに思っております。
 以上、ちょっと雑駁でしたけれども、総論部分でございますが、こちらの方にお出しをしてあります私どもからの意見等ということについて、それぞれ手短にお話申し上げたいと思います。
 まず、1ページ目でございますけれども、基本的な考え方につきましては、私どもとしてもこれは望ましいことだというふうに認識しております。
 一方ということで、今、私が申し上げたような地方公共団体の役割が増えている。一方で、地方公共団体というのは多種多様であるといったようなことを書いてございます。その辺をちょっと念頭に置いていただければということでございます。
 2ページ目でございますが、被告適格者の見直しの関係ですけれども、これにつきましては、特に地方行政に関連した部分について言いますと、被告を地方公共団体というふうにした場合でも、地方議会というのがございますので、この議会の議員の除名処分辺りは念頭に置きますと、地方議会にも被告適格を与えるべきではないかというのが私どもの意見でございます。
 3ページ目でありますけれども、ちょっと長々と書いておりますけれども、これは不服審査法の関係でございますが、不服審査法は、これも御承知のとおりでございますけれども、行訴法とは違いまして、直近に上級行政庁に審査請求を行うといったようなことがそれ自体に意味があるといった場合もありますので、そういったことからしますと、被告の適格につきましては峻別しておくことによって意味があるという部分がありますので、不服審査法の方はちょっといかがかなというようなことを述べさせていただいてございます。 不服審査法においては、教示義務も課してございますので、そこら辺は余り間違えがないようにというような手続も取られているというふうに認識しております。
 4ページ、管轄裁判所の拡大でございますが、これにつきましても、やはり国の場合と異なりまして、地方団体の場合はその地方公共団体自体の権限につきまして、地域的な限定がございますので、こういう場合はやはり問題があるのではないかと。地方団体はいろいろありますので、応訴の負担について、これが余り増大するようだとなかなかしんどいだろうということを書かせていただいております。
 5ページでございますが、審理の充実・迅速化方策でありますけれども、私どもとしては、これは民訴の釈明処分等により対応すれば足りるのではないかというふうに考えてございます。
 6ページでございますが、法案判決前の仮救済制度の関係でございます。執行停止の要件の緩和については、これも執行は行政処分、執行はできなくなるといったようなことだと支障が生じるというふうに考えてございます。
 公権力の行使に当たる行為についての執行停止以外の仮の救済についてということでございますが、これも法的安定性の観点からいかがなものかということで書かせていただいてございます。
 7ページでございますが、作為給付の訴えでありますけれども、書かせていただいているように、法定化の場合には3つの要件が満たされるような形でというふうに書かせていただいております。
 事後中心主義が維持されるべきであって、行政の作為を求める訴えを仮に認めるとしても行政庁の判断前に司法が判断するというのは、極力限定すべきであるというふうに考えてございます。
 8ページでありますけれども、行政行為の差止訴訟ですが、要件としてはA案ということを基本とすべきで、その要件を厳格にすべきと。
 9ページでございますけれども、確認の訴えにつきましては行政立法、行政計画辺りで取消訴訟の対象に該当しないというものにつきましては、やはり無効の確認、訴えを求めるというのは適当ではないのではないかというふうに考えます。
 理由は、その次の2−5−(1)、10ページのところでも書かせていただいておりますけれども、10ページのところに関しまして、これは条例規則に関して申し上げておりますが、地方公共団体はそれぞれ条例、規則といった形で行政立法行いますけれども、そこに至る過程ではそれぞれ、さまざまな立場からの論議が行われた上で議会の議決といったような形で行われますので、これをもう一度直接取消訴訟対象とすることは、やはり再度また違う議論といったようなことになりますので、著しく不適当なのではないかと考えております。
 法的効果を有しない行政指導を対象にするというのは、訴訟の目的にはなじまないのではないかというふうに私どもは考えてございます。
 11ページでありますけれども、排他性等の見直しの関係、あるいは違法確認訴訟制度ですけれども、これにつきましては、私どもとしてはやはり行政に係ります、官が関連します法律関係の安定といったようなことを考える必要があるということで、今の仕組みを維持すべきではないかというふうに書かせていただいてございます。
 今、非常に限定的に幾つかの法律で書かれていると思いますけれども、個別法でいろいろ排他性、あるいは出訴期間の制限といったものを定めるといったようなことがばらばらと増えてまいりますと、逆にこれはまたかなり混乱するのではないかというのが私どもの考えであります。
 また、同じく条例につきまして、これもなかなか難しゅうございまして、どうするのかと。条例で出訴期間を定めるというようなことが法律上、公正かどうかというのもありますし、仮にそうすることとしても個々の自治体がそれぞれのものに応じて出訴期間を定めることをできるのかなというのは、甚だ疑問というふうに考えてございます。
 12ページでありますけれども、裁判所が判決で必要な是正の措置を命ずるといったような考え方についてでございますが、やはりこれはなかなか、私どもというよりは、釈迦に説法かもしれませんが、司法の機能といったようなことから、ちょっとどうかしらというふうに考えております。
また、被告側から見てもどういった点を防御すればよいかというのが分からないといったようなこともございまして、なかなかしんどいんではないかなというふうに考えてございます。
 13ページでありますけれども、出訴期間の延長の話ですが、基本的には現行規定で維持されるべきではないかと。「知った日」といったものについて個別の法令で明確な解釈を明定するといったことは有益ではないかと。なかなか一律に規定するというのは難しいかもしれませんけれども、処分等によって需要が違うと思いますので、といったふうに考えてございます。
 14ページでありますが、原告適格の拡大ですけれども、私どもとしては行政事件訴訟法9条の規定は維持すべきであるというふうに考えてございます。
法律上の利益に当たるかどうかの判断に当たって、現行から変えて法律の保護範囲か否かを検討すれば足りるというふうにする考え方につきましては、個々の法律解釈いかんによって、個々の裁判官さんの御判断によるということになるんでしょうが、相当ばらつきが出てくるのではないかということで、行政機関としてはなかなか耐え難いんではないかというふうに考えてございます。
 15ページでありますが、自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定を避けるということでありますが、今の主観訴訟という形から見て適当ではないのではないかというふうに考えてございます。
 16ページでございますが、団体訴訟の導入の関係ですけれども、これにつきましては団体訴訟の必要性はそれぞれの訴訟類型によって異なりますので、個別の規定にゆだねるべきではないかと考えてございます。
 17ページの主張・立証責任を行政側に負担させるということについてでありますけれども、現行制度下におきましても当然、訴訟の中で必要な立証活動を行っておりますし、一律に行政に責任を負わせるという考え方の背景には、これも冒頭申し上げましたように、強大な情報を独占している強い行政と弱い私人というようなことがあるのかなと思いますけれども、必ずしも地方公共団体辺りは、特にそういうことでもないわけでございまして、そういった考え方はちょっとどうかと考えてございます。
 18ページでありますけれども、処分の理由等の変更制限ということですが、これもなかなか難しいんですけれども、実際に個々の処分を日々やっておるわけですが、その処分の段階でおよそ考え得るあらゆる理由を明らかにしておかないといけないということで、一つの理想論としてそういったこともあるかもしれませんけれども、現実問題として処分の遅延につながりかねないので、これも極めて不適当というふうに考えてございます。
 19ページ、事情判決でありますけれども、法律で事情判決ができないと定めることは私どもとしては適当ではないというふうに考えてございます。
事情判決制度が、実際に原状回復が困難、不能な場合でも訴えの利益が失われずに行政処分適否を司法判断の下に置くという機能を有している点を評価していいのではないかなどと思っております。
 20ページでありますけれども、裁量の審査の充実ということでありますけれども、裁量の逸脱についての判断基準を客観化しようとする努力は続けられるべきというふうに考えておりますけれども、その基準につきましては、これは個別法でやはり明らかにすると、その解釈も個別法の解釈によるということが適当と考えております。
もう一点、裁量の判断につきまして、行政管理あるいは行政評価に用いられている基準、これは費用便益分析手法などといったものが出ておりましたけれども、そういった基準や考え方を裁判規範の中に持ち込むということは、適当ではないのではないかというふうに考えてございます。
 21ページですが、ここに書いてございますのは、私どもは評価の関係を担当している部局があるわけですが、費用便益分析手法につきましては、これは実際やっていく中でそういった用語で表わされるようなやり方みたいなものを模索するといったことはあるんですけれども、評価法自体でこういったことが法令上組み込まれているといったことにはなっておりませんので、その点だけちょっと念を押すという意味で書かせていただいてございます。
 22ページでありますけれども、片面的な敗訴者負担制度の導入といったようなものにつきましては、適当ではないというふうに私どもは考えてございます。
 23ページでありますけれども、不服審査前置の関係でありますけれども、これにつきまして、やはり専門化された分野について、専門機関である行政委員会が審査するといったことは、非常に意義があるというふうに考えておりまして、私どもの方では特に行政法などでもよく取り上げられます電波監理審議会などもございまして、有効に機能しているというふうに考えてございますので、不服審査前置を定めることはできないとすることは適当ではないというふうに考えます。
 24ページでありますけれども、行政訴訟の目的規定の新設ということですが、適法性の確保というのは権利救済を通じて行われるということで、目的そのものとして法律上規定するのはいかがなものかというふうに考えてございます。
 非常に駆け足になりましたけれども、以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、今の御説明につきまして、必ずしもじゅうたん爆撃的に一つひとつということをやると時間がかかりますので、御関心の向きについて委員の方から、ページは指定していただきたいと思いますけれども、御質問いただきたいと思います。

【水野委員】冒頭に基本的な見直しの考え方で、これは望ましいと認識しているという御説明をいただきました。
 この私どものぺーパーでは、国や公共団体により権利利益の侵害を受けた者の救済を実効的に保障することができる制度とすると、そういうふうに変えていこうと。これは要するに、現在が不十分であるという前提で変えていこうという、この基本的な立場については賛同いただいているわけです。ところが、その後をずっと読みますと、全面的に反対であるというんですね、ほとんど全分野にわたって反対論が展開されている。一つだけ出てきたのは被告適格の見直しについては結構だけれども、議会だけは困るというのがありましたけれども、それ以外はほとんど全部反対だと。
 総務省としましては、今回の改革の論議の中でどういった点を改革したらいいと、つまり基本的な方向については賛成しているわけですから、どういった点を改革すれば、この基本的な見直しの方向、これが合致するとお考えになっているのか、というのが非常に大きな疑問なんですけれども、いかがでしょうか。

【説明者(林崎企画官)】何と言いますか、冒頭申し上げましたように、総務省といっても大きな機能がいろいろ分かれていて、一応その中心として地方公共団体の面倒を見ている部分を中心にお話申し上げ、そしてそういう中で冒頭申し上げたような地方公共団体というと何かこう立派な団体があるようにとらえられるんですが、個々の団体を見ると非常に小さいところもある。
 また、他方で現場をいろいろ経てきている経験からいって、なかなか相手さんとのやりとりも大変な部分、それによって職員が大変な苦労をするといった部分というのも多々見てきているものですから、ここで申し上げているのは、やはり特に地方公共団体に関して同じ議論をしていくときには、かなり支障が出てくるのではないかということを申し上げているつもりではあります。

【水野委員】どこを変えたらいいか。

【説明者(林崎企画官)】そうですね、どこを変えろというのが分かれば、おそらく非常にスムーズにできるんでしょうけれども。

【水野委員】お触れになっていないのが、第2−1−(3) 、5−(4) 、8−(1) という3項目についてはお触れになっていないのですけれども、触れてない部分については賛成であると受け取ってよろしいですか。

【説明者(林崎企画官)】特段、意見はないです。

【水野委員】そうですか。分かりました。

【塩野座長】今のやりとりとの関係で一言。

【説明者(林崎企画官)】基本的には、大きな異議はないということで。

【塩野座長】この関係で申し上げておきたいと思いますのは、今、先ほど申されたようにこれは地方公共団体を対象として考えている、それで地方公共団体としてもいろいろあるということで、私の理解は、こういう地方公共団体もいろいろあるので一律に霞ヶ関が対応しなければならないようなことと、それをそのまま地方公共団体に適用するとなかなか難しいことがあります。
 そこで、多少そういった地方公共団体について、別に緩めるということではありませんけれども、そういった地方団体がいるということは配慮してほしいということと承りましたが、私もその説はかなり説得力があると思うのですけれども、他方は、処分の相手方の権利利益の保護ということを考えておりますときに、同じ法律に基づいて同じ公権力を行使しているときに、規模が小さいから相手方が我慢しなさいとかいうことには、なかなかいかないというところがあって、むしろ私として総務省にお願いしたいのは、地方公共団体の法務能力について、もっとこれを充実させると。それで、権力あるものはきちんとその権力を行使し、権力の行使に異議申立てができたらば、それに対してきちんと答えるのが権力者であって、100 人であろうと200人であろうと団体を持って統治権を行使している以上は、それがお作法であるということを、まず基本的にしっかり打ち立てておいてから話をしていただきたいと思いますので、そこはひとつよろしく。
 それと法務能力の研修等々もやってはおられていると思いますが、私が見るところ、そんなに真面目にはやっていないなと。

【小早川委員】数百人の団体というのは本来、今後整理していかれるべきであろうと思いますので、その現状を前提にして法務能力がないということで開き直られては困ると思います。
 法務能力関連ではあるんですけれども、細かい話で、最初に出てくる地方議会、これは、議会が被告になる件数は結構あると思うのですけれども、現在、どういう体制で応訴しているのでしょうか。議会そのものに能力があるのか、それとも長の部局に何らかの形で頼っているということなのか。それによって今後どうすべきかということも変わってくるかと思います。

【説明者(林崎企画官)】ちょっと非常に自分自身の狭い経験でしかものを言えないので、なかなか責任を持った答えができなくて申し訳ないんですが、議会サイドで物事が起きたときには基本的には議会の事務局が中心になって対応しておりますので、訴訟に関連したものが起こった場合でも、それが中心になるとは思います。
 ただ、当然法律上の相談などは、なかなか地方の大都市と言えども行政訴訟に通じていて相談に乗っていただけるような弁護士さんがいないということで、同じような方にどうしても相談はされているとは思いますが、対応の主体としては、議会は議会サイドで対応しているということが多いと思います。

【小早川委員】ただ、結局は弁護士さんに頼るのだとすれば、基本的に応訴の責任をだれが負うかということで、それを長に負ってもらっては困るということかとは思うのですけれども、そこは団体を被告にしておいて、しかし議会の処分については議長が内部的には責任を負うということは、組織的には可能ではないですか。

【説明者(林崎企画官)】そこはちょっと詰めた議論をもう一度してみないと、何とも答えようがないんですが、行政いわゆる執行サイドの中にも独立性の高い行政委員会というのが別途あるんです。ただ、そこは行政の執行サイドということで、まとめるということはできるのかなというふうには思うんですが、議会となると三権じゃないんですが、長と議会ということでそれぞれ機能が全く違いますので、別ということで申し上げてはいるんですが。

【塩野座長】もっと別の論拠があれば、またお出しいただくということで。

【福井(秀)委員】総論的な話では、基本的に望ましいけれども、すべての個別項目は変えるべきではない、と受け止めたのですけれども、基本的にこういう方向ないしは改善の方向が望ましいということであれば、では、どう変えれば建設的な改革提案になるのかという対案を、後ほどで結構ですから是非教えていただきたいと思います。
 これは、そもそも検討会が提案した個別の案については全部異議がある。だけど基本的方向は支持するというのであれば、では、どういう案であれば基本的方向を支持するとおっしゃる基本的方向に合致するのか、具体的に示していただきたいと思います。これではそもそも議論はかみ合わない気がします。
 もう一つは、自治体の規模が小さいと大企業よりも能力が劣るし情報量も少ないではないかという議論、これは先ほど塩野座長がおっしゃったとおりだと思うのですけれども、やはり行政が少なくとも法治国家の担い手で、しかも権力処分について優越的地位で処分を発動するという立場にあるときに、規模が小さいところだから、ちょっと大目に見てよというふうに、どうもおっしゃりたいように見えるのですけれども、それは法治国家の在り方として本当にそれでいいと思われるのでしょうか。むしろ規模が小さいところだから大目に見てということだと、規模が小さいところだったら法治国家原則をゆがめてもいいのかというと、それはむしろ逆で、規模にかかわらず、やはりきちんとやっていただくというのが前提ではないかという気がします。
 若干、個別項目についてですが、5ページの審理迅速化の方策なんですけれども、これも広範な資料提出は適当ではないとだけ書いておられるのですが、理由がよく分からないので、もし広範な資料提出をすると、どのように自治体行政や総務行政に具体的な支障があるのかということを、後ほどで結構ですから教えていただきたいと思います。
 6ページも同様の観点ですけれども、執行停止について仮処分に類する手続で執行を阻止されることは法的安定性を害して適当ではないとおっしゃいますが、これは要件の定め方なり、設計の仕方によるのではないかという気がします。
 また、例として書かれている、第三者の建築物撤去ということですが、これはどういう場合にもここに書かれたようなことは起こり得るわけであり、それはまさに仮の救済をどのようなときに認めることとするのかという要件なり効果なりの問題ではないかという気がしますが、そもそも論で本当に一切否定されたいというお考えでしょうか。
 11ページなんですけれども、これも出訴期間や排他性の話ですが、かえって国民の権利利益に反する結果となって妥当ではないということですが、これがちょっと意味が分からないので後ほどでも結構ですが、具体的に何が支障になるのかということを教えていただければと思います。
 また、条例で決めることになったら出訴期間を定めることができなくなるというのは、これもちょっと意味がよく分からないので、要するに条例で自分自身が処分の根拠法令を定めるときには、自治体というのは自分で出訴期間を決める能力もない程度の団体なんでしょうかということですが、どういう意味かよく分からないということです。
 14ページの行訴法9条は維持すべきであるということですが、これも例えば現在の最高裁判例などについて9条の解釈として行われているものは、すべて妥当だという政策判断の上でのことでしょうかということもお聞きしたいと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。かなりいろんな論点出ましたので、今ここでやっていると時間の関係もありますし、また福井委員の方から後でも結構だということがございましたので、今の御質問の中で、今日こういった集まりの中で、是非ここは言っておきたいということをどうぞ。

【説明者(林崎企画官)】私どもとしても、1つは自治体の規模について大目に見てくれと、甘えているというつもりはないんですが、ただ実際に真に救済が必要な方の救済を図るという、ここはもちろん、異論があるはずもないところなんですけれども、他方でさまざまな改革の結果、現実問題としてここで言っているような大企業が次々と、しかも似たような訴訟をあちこちで起こされていて、といったようなことであちらがプロフェッショナルで、こちら側は素人ということは現実問題としてはあるという中での話ではあるということでございまして、そういった中で私人の権利救済と行政等のバランスをどう取っていくかというところで私どもも実は悩んでおるというところでございます。
 その他、あと幾つかいろいろ御指摘がございましたけれども、それにつきましては今お話ありましたので、また後ほど。

【福井(秀)委員】今もお話が出ました、行政庁と訴える側の対等性に関して22ページにも記述があるのですけれども、要するに非常な大企業に対して自治体が小さいというのであれば、逆のケースの方がむしろ圧倒的に多いわけです。要するに国とか非常に大規模な自治体に対して零細な個人や零細な事業者が処分を受ける。では、そちらの方については、逆の方についてはどうお考えになるのかというのも、これも後ほどで結構ですが教えていただきたい。
 対等な立場にあると書かれていますけれども、ここでは対等と書かれていて、要するに対等で敗訴した以上はその判断は司法の判断なんだからということですが、ここは私どもの主な検討事項にも前提の議論は書いてあるとおりで、現在、もちろん対等の側面もあるかもしれないけれども、場合によっては、あるいはまた多数のケースでは行政と訴える側は必ずしも対等ではない、情報量が違う、また予算も違う、更に訴訟要件や本案についても、現在の要件というのは必ずしも判決の予測可能性が高くないとか、いろいろな制約があるということは前提にしているわけです。ここで対等と断言されるということは、そういう制約条件は制約にはなっていないという御判断なのかどうかということも後ほど教えていただきたいと思います。

【小早川委員】私も、今日お答えいただかなくてもいいし、また、どちらかというと意見にわたる部分もありますが、とにかく幾つか申し上げます。
 7ページの義務づけ訴訟の話なんですが、ここでは行政庁が判断する前に司法が判断するのは例外であるべきだと言っておりますが、ただ義務づけ訴訟の問題になっているケースの多くは、申請に対して拒否処分がされて、それに対してちゃんと許可をくれとか、そういう話の方が多いわけなので、この理屈はそれも含めてのことなのかどうか。そっちの方は一応行政の判断は既にあるわけですから、ちょっと違うかなと思うのですが、そこはお立場がどういうことなのかというのが1つです。
 10ページで、行政立法を直接訴訟の対象にするのは適当ではないとおっしゃるんですが、地方自治体の場合に条例と規則とで同じなのかどうか。条例の方が基本的であり、かつ政治的に重要な判断は条例という形になるのに対して、規則の方は必ずしもそうではないのではないか。先般の一括法以後、特にそうなっているのではないかという気もしますので、その辺もちょっとお考えいただきたいということ。
 もう一つは、出訴期間の関係で、11ページ以降、行政の便宜ということも言っておられます。ここは自治体関係というよりは行政管理局マターかもしれないのですが、是非伺っておきたいのは、情報公開法の関係もありますが、文書管理上の保存期間について出訴期間の考慮があるのか、ないのか。出訴期間が変わるとすれば、文書管理規程の保存期間の定めも見直すという関係になるのか、ならないのか、それをちょっと伺いたいと思います。
 あともう一つは、最後の23ページの不服審査前置の関係ですが、専門機関を設けている場合にはそちらが関与すべきであるということはかなり説得力があると思いますが、「また」以前の、そうでない一般の場合に、あえて裁判所への道を閉ざすといいますか、遠回りさせるということの政策的合理性の説明は、この文章には余りないように思うのですけれども、そこはどうか。

【塩野座長】どうもありがとうございました。時間がまいりまして、他にもいろいろ、それだったら私もというのがあるかと思いますが、場合によっては文書で後ほどいただくということもあるかと思います。
 ただ、そんなことを言いながら、私も是非この際、ちょっと言っておきたいのは、10ページで条例を訴訟の対象にすると議論が蒸し返しになるというのですけれども、いわゆるインシデントの訴訟は認めるわけですね。条例を前提にして、しかし、その処分が、つまり条例には適法だけど条例自体が違法だということはあり得るわけで、そうするとそれは当然に訴訟の対象になるということなのか、およそ条例は訴訟の対象にはしないという、そういうすごいお考えなのか、それは多分そうではないと思うのですが、そうするとこの議論は余り通用しないということが1つ。
 もう一つ、是非教えていただきたいのは、この出訴期間を条例でどういうふうな、先ほどちょっとおっしゃいました委任が必要なのか、仮に委任がないと出訴期間というのは、能力の問題ではなくてですよ、法制上の問題としてどうなのか。これは地方自治法の所管の省の任務の一つでもあろうかと思いますので、ちょっとこれは法制的なことを考えておいていただけますでしょうか、私も大変気になっているところなものですから、よろしくお願いします。

【厚生労働省】

【塩野座長】それではお待たせいたしました。時間がまいりましたので厚生労働省からのヒアリングを行いたいと思います。御説明は青柳親房政策統括官付社会保障担当参事官でございます。よろしくお願いいたします。

【説明者(青柳参事官)】厚生労働省の社会保障担当の参事官をしております青柳でございます。よろしくお願いいたします。
 私どもの方からの御意見につきましては、お手元に既に13ページにわたる個別事項ごとの意見書のお届けをさせていただいておろうとか存じます。
 現在、先生方の下で進められております行政訴訟制度の見直しにつきまして、私どもといたしましては国民、あるいは住民の権利の保障という点から大変重要なものというふうな認識をしておるところでございます。
 しかしながら、私どもといたしまして、現在検討されている個々の検討項目につきまして、大きく申し上げまして2つの点でいささか問題があるかなということを懸念しておるということでございます。
 そのうちの第1の懸念といたしましては、国民の生活の安定、あるいは福祉の実現という観点から私どもはいろんな仕事をさせていただいておるわけでございますが、その点からさまざまな支障が生じないかという懸念。
 2点目は、非常に大げさな言い方をすれば、さまざまな形で行政の訴訟事務が増大するということが避けられないであろうというふうに思うわけでございますが、その負担が最終的には、直接的ないしは間接的に国民に負担が帰せられるのではないかと。そういう意味で、国民のいろんな意味での負担をどうやれば小さくすることができるかという問題意識を持たなければいかぬだろうと、そういう大きな2つの問題意識を持っております。
 本日は時間も限られておりますので、先ほど申し上げました、既に提出をさせていただいております当省からの意見の中で、これを個々に御説明するのではなくて、ただいま申し上げました2つの問題と申しますか、懸念と申しますか、その点につきまして特に強調をさせていただきたいという項目及び意見の中にも若干盛り込ませていただいているところもあろうかと存じますが、ある程度具体例につきまして、私どもの懸念をできる限り御理解いただくように御説明をさせていただきたいというふうに考えております。
 最初にこんなことを申し上げると、言いわけを申し上げているようで、ちょっとじくじたる思いがするわけでございますけれども、私どもは意見の中で幾つか具体例を申し上げておるわけでございますが、専門家の先生方からごらんになった場合に、どういう見直しが行われるようにしろ、裁判所の訴訟の運営というのは適切に裁判官によって図られるわけだから、厚生労働省が心配するようなことは実際に起こらないんじゃないだろうかと。その意味で厚生労働省が挙げている具体例というのは、実際には非常に極端な例ではないかと、このような受け止めがあるのかなということを正直心配しつつも、意見の中にお出ししているという部分がございます。
 ただ、私どもといたしましては、非常に口幅ったい言い方ではございますけれども、日々の仕事を、また地方公共団体等の御協力をいただきながら、直接国民あるいは住民の方に対して働きかけ、作用するということで仕事をさせていただいているという観点から、今般の見直しが実際に実現した暁に、裁判所に置かれてどのように運用なされていくかという点について、正直言ってちょっと想像できない部分もございます。
 そういうことで、先生方の方からオーバーだよと言って笑われるかもしれないということを承知の上で社会保障、あるいは労働分野を預からせていただきます、私どもとして懸念をしております点を、かなり幅広に挙げさせていただいたということを最初にお断りをさせていただければと存じます。
 まず最初に、第1の問題点、すなわち国民の生活の安定、あるいは福祉の実現という観点から見たときに懸念される点という点について、幾つか御紹介をさせていただきたいと存じます。
 現在、検討されております個々の項目の中には私どもが所管する行政分野に当てはめてみた場合に、繰り返し申し上げているようでございますが、国民の生活の安定、あるいは福祉の実現という観点から見て、逆に国民に不利益が生ずる恐れがあるんじゃないだろうかと思われるような点が幾つかございます。
 以下、提訴、審理、判決の各段階に関する見直し項目につきまして、それぞれ例を挙げながら御説明をさせていただきたいと存じます。
 多少、この意見書の中でページが前後いたしますが、恐縮でございますが、お許しをいただきたいと思います。
 まず、私ども意見書の9ページでございます。出訴期間の延長絡みの問題でございまして、検討事項としてちょうだいいたしております資料の22ページ以下の問題点というふうに考えておるわけでございます。
 ここにおきましては、まず1.のところにも書かせていただきましたように、社会保険給付、私どもは特に給付をさまざまな形で支給をさせていただいているわけでございますけれども、そこでは年金の事例を挙げさせていただきたましたが、こういった給付を基礎として国民の具体的な生活が成り立っているわけでございますが、そうやって生活をしておられる方々の法的地位、これは概念上の法的地位にとどまらず、具体的な生活上のさまざまな問題が生じてまいりますので、そういった言わば具体的な日常生活そのものが不安定化する恐れがあるんじゃないだろうかという懸念でございます。
 そこでは、一つの例として、例えば遺族年金給付の受給者の地位をめぐる争い、これは現実問題、不服審査も含めて、現実の訴訟のケースも決して少ないくないケースでございますけれども、いわゆる法律上の婚姻関係にある、本妻と通称言われておる方と、内縁関係にあった方との間で、ある方がなくなったときに自分こそが遺族年金の受給権者であるということを巡る争いといったようなことが生じ得るケースを念頭に置いたものでございます。
 そこにも例を書かさせていただきましたように、出訴期間が延長された場合に、いつまでもそういった法的地位が確定をしないままに、不安定なままに置かれるということが適切かどうかと、こういう懸念でございます。
 続きまして、前後していただいて恐縮でございますが、4ページをお開きいただきたいと思いますが、4ページでは本案判決前における仮の救済制度の整備についてのところでございまして、いただいております検討事項の8ページ関係の部分になろうかと存じます。  これは本案判決前において、仮の救済というのをかなり広範に認めるべきではないかという御意見であるというふうに理解しておるわけでございますが、例えば最終的に被告行政庁が勝訴をいたしました場合に、仮の救済として既に一定の支給された給付等が決定されておった場合に、これは法的な手当の問題もさることながら、現実に例えば年金等の給付は既に生活費として支弁されておるというケースを念頭に置かなければならないものですから、これを回収することは、現行の法律ではもちろん、難しいわけでございますし、仮に法的な手当をしたとしても現実的には難しいであろうと。
 そういたしますと、この部分については、保険料という形になるのか、あるいは税という形になるのか分かりませんけれども、最終的には被保険者なり広く国民に御負担をいただかなければいけないという意味で、そういう意味で直接的な負担がそういう意味で生じるだろうという懸念を示したものでございます。これが4ページの2.のところでございます。そこのところを例にして紹介をさせていただいたものでございます。
 また、同じようなケースを考えてみたときに、仮の救済を与えた後に被告行政庁は勝訴したと、原状を回復するというときに、訴訟に直接関わりのない第三者にこういった影響が生じるということを念頭に置かなければならないだろうということで、これは余り例としてどうかなと思ったんですが、4ページから5ページにかけて、介護保険の場合の給付の例を挙げさせていただきました。
 これは例えば、その介護保険のサービスを提供する事業者、この指定行為は、現在、都道府県が法律上行っているわけですが、この指定取消というものに対して都道府県が行った行政行為に対して、例えば裁判所が仮の救済として、その介護保険サービス事業者がサービスを引き続き行っていいという救済を行ったと。そうした場合に、判決が確定した際に都道府県が最終的に勝訴したと。
 そういたしますと、既に提供されたサービス、これはそのサービスを受けた、現物そのものを返せということはあり得ないのでありましょうが、その費用を支弁いたしました保険者たる市町村、あるいは費用に必要なお金を負担をした被保険者の方々、こういった方々の負担関係をどのように原状回復していいのかという問題が出てくるのかなということを若干懸念したものでございます。
 更に、4ページに戻っていただきまして、1.の方のケースでございますけれども、国民の健康安全等を確保するためにさまざまな規制を、私どもも衛生規制を中心に行っておるわけでございますが、これらについても仮の救済が行われることによって、非常に極端なケースかもしれませんが、国民の生命を危険にさらすような場合も起こり得るということで、1.の〈例1〉のところに書かさせていただきましたように、ある医薬品について安全性が十分に確認できないということで、行政庁が許可等を行わなかった。ただ、それに対して、裁判所が仮の救済として製造を認めるという判断をされた際に、それが極端な場合には、一般に流通していって人体の中に取り入れられていくというような極端なケースも場合によっては考えなければいかぬだろうと。それで本当に安全といったものが確保できるのかどうかと。
 例えば、そんなもので副作用みたいな問題が起きたときに、どういうふうに救済を考えていったらいいのかということまで、気にし出すと切りがないという一つの例かもしれませんけれども、懸念をしております。
 同じく、国民の健康安全に関する部分でございますけれども、5ページの方に3.で執行停止の要件緩和に係るケースが記載されておりますが〈例1〉でございます。
 ここでは、感染症対策の例を挙げさせていただきましたが、記憶に新しいSARSのような新感染症の蔓延の危機があった場合、日本の場合は幸いにして今回は水際で防ぎ止められたわけでありますが、そういったものが行われるときに、例えば、行政庁が非常に緊急的な対応として行ったものが、ベストの対策でないというようなことを不満に持たれた国民から訴訟の提起がされた場合に、そういった緊急対策の執行が停止されてしまうと。
 そういうことになると、当面国民の生命は危険にさらされるというような、非常に極端なケースも考えなければいけない。これは、裁判官がそこまで信用しないのかと言って、むしろおしかりを受けるかもしれないケースでありますので、あくまでも冒頭に申し上げたように、非常に気にしている場合には、このようなケースがあるということで御理解いただきたいと思います。
 続きまして7ページ、恐縮でございますがお開きをいただきたいと思います。7ページでは、裁判所が判決で必要な是正措置を命ずるということについてで、検討会における主な検討事項の21ページ以降に係る内容であろうかと存じます。
 ここにつきましては、特に私どもが懸念をしておりますのは、住民間でさまざまな利害調整が現実には必要になってくるようなケースでございまして、住民間で利益調整を含めた政策判断が求められるような事態に対して、裁判所は何らかの御判断をされるわけでしょうが、的確な対応が十分図れるかどうかというようなことについての懸念であります。7ページから8ページにかけて3.というところで〈例〉を述べさせていただきましたけれども、ある住民が例えば、福祉施設等の建設について反対、あるいは賛成ということで意見が分かれるというようなケース、これは現実には、最近、特別養護老人ホームのような施設は割に一般化しているんでそうでもないんですが、本当につい5年ないし10年ぐらい前まではございましたし、現在でも、例えば知的障害者の方の施設や、あるいは最近で言えば、例えば精神障害者の方の施設、こういったものについては、現実問題として意見が分かれるというケースがございます。
 そのような意見の対立が裁判所に持込まれた場合に、いずれもどちらが間違っているということではなかなかないものが現実のケースであるわけでありまして、現実には施設の安全性であるとか、施設で懸念している問題が起きたときにどのような対処をするかというようなことについて、行政庁が一つひとつ場合によっては間に入って、住民と建設予定者の間に入って利害を調整するというようなケースも、現実には起こり得るわけでありますけれども、そういったものについて利害を調整した上で、とにかく迅速に判断を下すというようなことを裁判所に全部お願いしていかないといけないというケースになってまいります。
 もし、その裁判所の御判断に時間がかかった場合には、行政庁として逆に言えば、必要な施設の建設をする、しない、もし、しないということになれば別の代替地につくらなければいけないということもあり得るかと思いますが、そういった判断が停止されてしまうというのは、最悪のことも考えなければいけないということであります。
 いずれにいたしましても、今、申し上げましたケース、国民の権利救済、あるいは利益の実現を図ろうということを御意図とされた見直しが、かえって国民に不利益を招くこともあるのではないかとの懸念というふうに御理解いただければと存じます。
 続きまして、時間も迫っておりますので急がせていただきますが、第2の懸念ということでありまして、今般のこの見直しに伴いまして、増大する行政の訴訟事務の負担が最終的に今、国民の負担ということになるということについて、少し具体例を引いて御説明をさせていただきたいと思っております。
 実は、私ども厚生労働省は、さまざまな訴訟を現在もやらせていただいておりますが、相当重い負担になっているということを数字を挙げて幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 今回の作業に当たりまして、私ども現実に省内で対応しております訴訟について、その状況を急遽調べてみました。
 まず、行政事件訴訟の件数でございますが、平成14年の1年間の新規提訴件数が約140件ございました。これは途中で解決をしていくような問題もあったりするわけでありますし、実は前から引き継いでいるようなものもあるわけでありますので、年末時点で調べて、一時点でどのくらいになっていることを調べてみましたけれども、年末時点での処理件数は厚生労働省関係だけで約290件ございました。
 実は直接行政訴訟とは関係ないんですが、密接に関わりのある、少なくとも役所側としては一体として処理をしなければいけない体制等のものとして、国家賠償訴訟の請求訴訟がございます。これが今、申し上げたものと対比させてみますと、新規の提訴が年間で約60件超えるぐらい、国家賠償請求訴訟がございまして、年末時点での未済件数が約160件、したがいまして、単純に先ほど申しました行政事件訴訟件数と、国家賠償請求訴訟の件数を併せますと、新規が約200件、年末時点での件数が約450件というのが、厚生労働省の処理件数でございました。
 行政事件の審理期間についてもちょっと調べてみました。14年に終結した訴訟についてのみ調べてみましたところ、終結までの審理期間が2年を超えております訴訟が全体の約4割あります。
 これをどういう体制で実施しておるかということでございまして、14年についての体制調べをいたしました。これは実は行政事件訴訟だけの専門官なり専門体制というのは余り意味がないものですから、行政事件訴訟及び国家賠償請求訴訟、両方含む数を調べてみましたが、訟務に関する専門官職、専門職として補佐級の専門官を置いておる人数でございますが、本省だけで十数名、地方庁を含めまして四十人強、訴訟に関する専門官を既に配置しております。
 この訴訟に関する専門官は、この方たちだけですべての訴訟がこなせるわけではなくて、むしろ、例えば裁判所との間の期日の調整でありますとか、具体的な訴訟があった場合の法廷への立ち会いでありますとか、そういったところをむしろ中心にやっていただくというわけでありまして、そもそも訴訟の件数が余りないような局部ではこういった専門官が配置されておりません。
 したがいまして、この専門職員のほかに、通常は他の職を担当しておる専門の係長でありますとか、補佐、こういったものが訴訟の場合に一緒に立ち会うと、あるいは準備書面をつくる際に一緒に相談しながら文章、文案を考えるという体制を取っているわけですが、これがおよそ80人強の職員が何らかの形でこの訟務に携わっていると。
 この中には例えば、担当課長が最終的に準備書面について判断をするために相談に預かるような件数はカウントしておりません。したがいまして、あくまでも専門の係長、補佐級の者が携わっているというケースのみを想定しておるわけでございますが、そのぐらいの体制でやらせていただいております。
 既に意見の中に述べております行政訴訟の管轄裁判所の拡大問題、これは1ページに述べさせていただきました。
 審理を充実・迅速化させるための方策の整備、この具体的な意見は3ページに述べております。
 立証責任に関する見直し、これも3ページに述べさせていただきました。
 弁護士報酬の敗訴者負担、12ページに述べさせていただいております。
 不服審査前置の見直し問題、13ページに意見を述べさせていただいておりますが、これらにつきましては、訴訟に対応する行政側の人的、財政的な負担が更に増加するであろうということは、これはおそらく御見解については先生方も御異論はないだろうと思います。
 ただ、私ども、誤解のないように申し上げますが、厚生労働省として、そういった人的、財政的負担が増加するということが問題であるということを、ここで申し上げたいというわけではなく、むしろこういった行政の負担増は、最終的には間接的に税金等の形で国民に負担していただかなければならなくなるということでございます。
 したがいまして、そういった面での、既に厚生労働省がそれだけ人員を配置した上で、先ほど申し上げたような処理の状況であるということを御念頭に置いていただきまして、この行政訴訟制度の見直しに際しましては、そうした負担をどう考えるかということを是非客観的に御判断いただければ幸いと存じます。
 多少、予定いただいた時間よりも長くなりましたけれども、私の方からは以上でございます。ありがとうございました。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、ある程度、論点を絞ってのプレゼンテーションがございましたので、できれば御質問もそれに合わせたいと思いますが、ただ、それ以外のところでもどうしてもこの点について聞きたいという点があるかと思いますので、それは排除するつもりではございません。
 そこで、まず、今日プレゼンテーションがあった点について、御意見あるいは御質問等をいただきましょうか。どなたからでも結構でございますが。

【水野委員】一番最初におっしゃった9ページの出訴期間の点ですけれども、具体的な例をお出しになられて、既に長期間営まれてきた受給者の生活が突然不安定に置かれるという事態も考えられるという表現で記述しておられるのですけれども、この「既に長期間営まれてきた受給者の生活」というのは大体どの程度ぐらいまでだったらというのをお考えでしょうか。

【説明者(青柳参事官)】それはおそらく、年金額は幾らぐらいであるかとか、その年金が実際に家計の中において、どういうウェートを占めているだろうとか、そういう総体的な関係でおそらく決まってくるだろうと。

【水野委員】ただ、問題は出訴期間の議論をしているわけですから、余り長期間になると、こういうことが起こるとおっしゃっている、それはよく分かる。そうすると、今の3か月ではちょっと短いじゃないかと言っているわけですね。例えば、1年ぐらいというのも案として出しているわけで、その辺りの御意見を求めているわけなんです。

【説明者(青柳参事官)】これは、私どもが懸念しているようなケースについて、一律に何年ないし何か月であれば、その問題が起きないというのはおそらくお答えできないだろうと思うんですが。

【水野委員】そうですか。

【芝池委員】今の9ページですけれども、上の方に出訴期間の延長と書いてあるのですけれども、御意見として書いていらっしゃいますのは、これは出訴期間を廃止された場合を前提にしておられるのですか。

【説明者(青柳参事官)】廃止されたとしてもかなり、それこそ5年とか10年とかとなった場合も同様のことが起こり得るということで書かさせていただきました。

【芝池委員】5年、10年は考えておりませんので、ですから例えば1年に延長するということについては、これは批判というか、反論にはなっていないと理解してよろしいですね。

【説明者(青柳参事官)】今、ちょっと水野先生の方からお尋ねがあったことと共通する部分があると思うんですが、例えば1年だったときに全く問題がないということは、私の口からはちょっと申し上げられないだろうと思います。

【芝池委員】いや、そうではなくて、ここに書いていらっしゃるのは出訴期間の廃止を前提にした御主張ではないかということなんです。

【説明者(青柳参事官)】廃止された場合には、まさにこのとおり、一番顕著な例が出るだろうということなんです。

【成川委員】今の件で、現在、3か月の出訴期間の中でこういう年金の給付等に関わって、ここに書いてあるような受給権を争って出てきたという事例はかなりあるのですか。

【説明者(青柳参事官)】済みません、詳細の個別具体的な例までは、ちょっと私も御説明できないのですけれども、皆無ではないというふうに調べておるようでございます。

【福井(秀)委員】4ページ、5ページの仮の救済です。ここで仮の救済がなされたときの弊害について、縷々書かれているのですけれども、逆に仮の救済がなされなかった、すなわち何らかの意味で処分が維持された場合の弊害ということも反面的には発生するわけですが、そちらとの比較衡量についてはどう考えますか。
 例えば、この法的な枠組みが直ちに馴染むかどうかは承知しませんが、薬害エイズのような問題で、加熱製剤の認可について、もし仮の救済があったとして、早く出回っていれば不幸な人たちを随分避けられたかもしれない。それはひょっとしたら仮の救済と連動した問題だったかもしれないということもあり得るわけです。仮の救済をできるだけ認めないことが常に公益に合致するかのごとく読めるのですが、本当にそうでしょうかという確認です。

【説明者(青柳参事官)】薬害エイズというような、個別な判例については、私はコメントする立場にないので遠慮させていただきますけれども、おっしゃるようにおそらく仮の救済をやった場合に、プラスの面とマイナスの面と両方出てくるということは私も全く否定するつもりきございません。
 ただし、どちらかと申しますと、これは私の読み方が足りないとおしかりを受けるかもしれませんが、いただきました主な検討事項を読ませていただいたところ、そういった仮の救済についてのマイナス面と申しますか、デメリット面について、例えば私どもの所管しております行政に当てはめてみた場合に、十分な御判断いただくための材料があるかどうかというところについて自信がなかったものですから、その意味でデメリットはこういう面もあるので併せてお考えいただきたいということでお伝えしたつもりでございますので、プラスの面があることを否定するつもりはございません。

【市村委員】今、プレゼンいただいたことと、ちょっと離れてよろしいでしょうか。
 たまたま出てたものですから、重婚的な内縁関係にある場合の遺族年金の給付の受給権が争われたと、この例をとって裁判所が取消しの判決をしたと、受給権者の認定は間違えているということで取消判決をして、その訴訟が確定したと。そうした場合に、それからどのぐらいの間に、本来そのものに対する具体的な受給決定というのは現実になされるのでしょうか。つまり、どのぐらいの期間で正しく認定された者に対する給付が始まるのか。

【説明者(青柳参事官)】行政実務の話としてということですね。

【市村委員】そうです。それをちょっとついでに教えていただきたい。

【説明者(青柳参事官)】2つに分けて考えていただきたいと思います。
 1つは基本権そのものの問題は、要するに権利が発生した時点にさかのぼって行われますので、そういう意味で問題ないだろうと。
 もう一つ、その実際の支払の問題については、おそらくこれはケースによってすごく異なってくるだろうと思いますが、例えば、今、そういった非常に難しい問題を抜きにして、普通に請求がされて年金が支払われるようなケースを考えていただくと、大体、よほど難しいことがない限り、請求があってから3か月ないし4か月程度で、請求を窓口にしていただいて、それを記録上確認をして、年金額を計算して、それが支払われると。
 支払というのは、基本的には後から払うものは随時で、定期で払うものは定期でとかいうのは時期の問題がありますから、幅は多少ありますけれども、私が承知している限りでは非常に難しい問題がなければ3ないし4か月で、言わばお支払いできると。そこは請求書類を出していただいてからということです。

【市村委員】しかし、そもそも請求書類を当初だしているわけじゃないですか、それに対する拒否処分があって、それの取消しを求めているという形じゃなかったですか。

【説明者(青柳参事官)】だから、前に出していただいているものが確認できるのであれば、言ってみれば、その判決が確定して、判決は具体的にこういうことで確定したという通知をいただいて、そこから具体的な事務をさせていただくことになると思うんです。

【市村委員】それは短い期間でできるということでよろしいですか。

【説明者(青柳参事官)】ただ、その前にその方について、いわゆる裁定をするために、機械が中心になって一連の作業しますけれども、一連の言わば、権利の確認から何からという作業を、例えば2つでてきたものを両方並行してやっていて待っているという形ではないものですから、最初にいただいて裁定請求をした方の作業が終わっておれば、こちらは言わばお預かりしている状態になっていると思いますので、そこから事務を始めなければいけなくなると思いますから、そこから3、4か月は少なくともいただかないとできないんじゃないかと思います。

【市村委員】分かりました。

【福井(秀)委員】6ページです。行政立法、行政計画、通達への取消訴訟の拡大は反対という御意見なんですけれども、これは段階的な行政決定で後続処分に処分性がある場合で、先行行為の段階では処分性がない場合には、後続処分でやはり先行の計画なり行政立法なりの違法が問われるということは、今でもあり得るわけですけれども、それを前提にしたときに、前の段階で争わせて、後から蒸し返されて全体がひっくり返るのを防ごうという考え方については反対という意味ですか。

【説明者(青柳参事官)】いろんなケースがおそらくあるだろうと思います。正直申し上げて、私どもも、例えばここの感染症の例のように、幸いにして今のところ日本ではこういうことで大騒ぎしたことがないものですから、そういうケースについて、今、福井先生の方から御指摘のあったようなケースがどの段階で、言ってみれば、そういうことがひっくり返せるか、あるいは問題が生じないかというところをなかなかイメージしにくいという点はありますが、正直申し上げて、これも先ほどのお話とちょっと似ているところがあるかもしれませんけれども、確かにある時点できちんとストップがかけられれば、むしろその方がその後の処分が進むよりは、いろんな意味での国民的な不利益が小さくて済むだろうというケースは、私はある得ると思います。
 ただし、それをどこでどのように線を引くことができるかということは、例えば個別の行政法によってもケースが違うであろうし、もっと極端に言えば、同じ法律の中でも、言わば予想される被害の大きさによって違いが出てくるというケースがあり得るだろうと思いますので、なかなか一律に判断できないというのが正直なところじゃないかと思うんですが。

【福井(秀)委員】そうすると、この御意見は、現在の厚生労働省所管行政のいろんな処分で、今の段階の処分性より早めるのが一律に不適切だという御主張ではないということですか。

【説明者(青柳参事官)】そこについてコメントしているつもりはございません。

【福井(秀)委員】こういう例については問題だという、具体的な限定的な例としておっしゃっているわけですか。

【説明者(青柳参事官)】逆に言えば、その処分性を早めること自身に問題がないとまで申し上げられる自信もございません。
 こういうケースについては、我々は問題だと思うということ以上のことは申し上げられないという意味です。

【福井(秀)委員】もちろん、具体的なことはともかくとして、処分性が早まることで、後での混乱を避けられるというメリットを一切否定されるのかどうかという点ですけれども。

【説明者(青柳参事官)】申し訳ありませんが、一般論としてそういうケースがあり得るだろうということは容易に想像できるだろうと思います。

【福井(秀)委員】もう一つですが、12ページの弁護士報酬の敗訴者負担です。この国民の負担増という理由は、およそ行政訴訟について、今よりも訴えをやりやすくさせようとか、あるいは活性化させようという、およそ司法審議会で課題として与えられている任務を果たそうとすると、何らかの意味で司法コストなり、応訴コストなりが高まって、国民に負担増が常に高まる方向にこそ行っても、逆の方向はあり得ないわけで、こういう一般論というよりは、もうちょっと具体的な平面で教えていただきたいのです。敗訴者負担について、ここの主な検討事項で提案したようなことを実現したときに、厚生労働行政にとって具体的に支障があるようなことがあり得るのでしょうか。

【説明者(青柳参事官)】ここは基本的には一般論を申し上げたつもりでおります。

【福井(秀)委員】ということは、ないということ。

【説明者(青柳参事官)】具体的な事例をちょっと述べるまでに、その具体化できる部分が例として思い浮かばなかったものですから、一般論として申し上げさせていただきました。

【塩野座長】他に何かございますか。
 私からも1点、今日のプレゼンにもないし、それからペーパーにもないのですが、義務づけ訴訟といものを提案しているんですが、頭の中に描いている、やや典型的な例が厚生労働省関係の社会保険とか何かそういったような計算上出てくるというものですが、それについてはどういうふうな考えでしょうか。

【青柳参事官】お手元の資料の、先ほど御説明をちょっと省かせていただいたかもしれませんが、7ページの2.のところにちょっと書かさせていただきました。

【塩野座長】これは是正訴訟のところに書いてあるのですよね。

【説明者(青柳参事官)】はい。例が余りよくないかなと思いつつも、1つ労災の関係のときの例を挙げまして、これはちょっと私も後でよくよく考えてみても、ここまで極端な話はないかなというようなことも思ってみたんですけれども、ただ、正直申し上げて、やはり給付の義務づけというのが出てくる場合、なかなか行政訴訟のケースで私もぴんといいものが思い浮かばないんですけれども、国賠なんかだと実際に額を決めないといけないというようなこともありますし、それから、これもこういう実例を挙げるのがちょっといいかどうか、私も悩みつつ申し上げるんですが、先般ありましたハンセンの訴訟などは、逆に言えばハンセンの損害というものについて、かなり裁判所が具体的にいろんなケースに応じて金額を定められて、それが事実上、その後に国会がおつくりになった補償法の、言わば法制度の給付の水準を決めることになったという実例もございますので、そういうことが広範に行われた場合に、はっきり言って、これは国賠のケースなんで余り関係ないとおっしゃられれば、それまでかもしれませんけれども、その立法の行うことと司法の行うこととの線引きがちょっと分かりにくくなるなというのが、いい、悪いは、私は判断する立場にありませんけれども、実務をやっている人間としては非常に分かりにくくなるなというのは実感としては感じております。

【塩野座長】私が伺っているのは、社会保障的なものやなんかで、よく給付拒否の取消判決があれば、後は拘束力が働くので、あえて義務づけ訴訟を認める必要がないのではないかという御意見も実務の方から伺うことがございますので、その辺について何か部内で御検討があったかどうかということです。

【説明者(青柳参事官)】現時点では、既に御提出させていただいている範囲にとどまっております。

【塩野座長】だから、その点についてはまだ御議論いただいていないということですか。

【説明者(青柳参事官)】まだ問題点に気付いてないのかもしれませんので、引き続き検討させていただきます。

【塩野座長】いろんな教科書を読みますと、大体その辺が一番問題になるので、よろしくお願いします。
 他によろしゅうございますか。どうもいろいろありがとうごさいました。時間超過しましたけれども。

【説明者(青柳参事官)】ありがとうございました。

【経済産業省】

【塩野座長】それでは、お待たせいたしました。経済産業省の方はお座りいただきたいと思います。御説明いただきますのは、安達健祐大臣官房企画課長です。それでは、どうぞ御説明をお願いいたします。

【説明者(安達企画課長)】お手元に私どもの意見、考え方をこういうふうにしておりますが、その前に両面コピーの1枚紙のレジュメも作ってまいりましたので、説明はこれに基づいて説明させていただきます。
 最初の「1.基本的考え方」は、基本的考え方なんですが、1.の2つ目のポツに書いてございますけれども、「現実に制度整備を行うに当たっては、特定の者の救済を過度に重視すると、却って、第三者や公共の利益を害するなど、別の問題も引き起こすことも考えられる。このため、行政行為の本来目的である公益確保の観点からも、バランスのある制度整備が重要。」というのが、基本的な考え方でございます。
 それから2.の私どもの資料のポイントでございますが、当省の行政分野において、個別具体的に問題がある事案を御説明させていただきたいと思っております。
 これから事案を御説明いたしますが、ちょっと紙にはないんですが、ここに書いてある事案は大きく3つの行政分野からなってございます。
 1つは特許でございます。特許については高度の技術専門性を必要とする分野で、その判断では新規性とか進歩性、このためには先行技術をすべて探知するというような形を取ります。
 したがって、これに対して、後で出てきますけれども、取消ということはあっても、給付命令はなじまないのではないかというようなことを考えてございます。
 特許の特徴の第2番目は、多数の利害関係人が生ずるということでございます。特許が設定されますと、それからビジネス上、いろんなライセンス契約が結ばれるということでございますから、安定性が求められるということでございます。
 特許の3番目の特徴は、訴訟手続を特許法に法定化をしている。これは被告適格者の法定とか、専属管轄の法定、これは東京高裁でございますが、それから今、知財高裁を特別につくろうという話もございます。これは専門性からくるわけでございます。開示資料の限定なんかも秘密を守るために行われているという特色がございます。
 ということで、一般行政事件訴訟とは若干異なる要素があるということでございます。行政分野の大きく2番目でございますが、これは公益事業でございます。電気供給業、ガス供給業でございます。これは事業許可が行われますと、多数の利害関係人、需要家に電気なりガスを供給するということでございます。これは公益事業でございますから、許可を受けた事業者は供給義務が生ずるということでございます。
 したがって、そういう事業許可等について、強い安定性が求められると、特に、今、停電を絶対に起こさせないということでやっておりますが、この高度情報社会で仮に停電でも起これば、生死に関わってくるというような問題もあろうというふうに思っております。それが2つ目の行政分野でございます。
 3つ目の行政分野は、産業保安でございます。これは火薬類取締法とか、そういう安全のための業務停止命令を直ちに出さないといけないとかいうような、公共の安全に関わってくる分野でございます。今から出てくる事例は、すべてこの3分野のものでございます。 それでは、2.の(1)でございますが、私どもの仕分け方としては、どういったことの利益を守っていかなければいけないかという順番になってございます。
 (1)は「行政処分を前提に権利関係を構築している者の地位の安定性への影響」でございます。
 例えば、今申し上げましたけれども、「行政処分の中には、それに基づき、多様な契約関係が構築され、多数の利害関係人が生ずるものが存在。」、  これは今、申しあげましたように、①でございますが、「特許権が付与されれば、それを前提にライセンス契約が締結される。」と。
 「都市ガス事業の許可や供給区域増加の許可がなされると、それを前提にガスの供給が行われる。」、いろんな家庭にガスが供給されるということでございます。
 「原子炉等の許認可がなされると、それを前提に建設事業者等の第三者との長期間にわたる契約が締結され、実際に施設の建設等が開始される。」というものでございます。
 こうしたものについて、いろいろ御提案の中で、下記のような事態になるのではないかということでございます。
 ①でございますが、「本案判決前の仮の救済制度で原処分の執行が停止され、前提となる権利が少なくとも一旦否定されかねない。」と。要するに、ガス供給が執行停止になるというような事態が起こってくるということでございます。
 ②でございますが、「出訴期間の廃止・延長により長期間にわたり当該権利の存在自身が確定しない。」ということになりますと、例えば発電所の建設なら10年ぐらい要するものがあるわけでございまして、こういった権利の不確定だけが継続されますと、実際の設備投資ができなくなってしまうという問題が生じてしまいます。
 ③でございますが、「原告適格の拡大により、誰が訴訟を起こすかも予め予測できない。」ということに仮になった場合でございますが、例えば、都市ガス事業の許可というのがあるわけでございますが、一方で競争相手のLPガス事業者というのがいるわけでございますが、このLPガス事業者が自分の競争関係にあることということによって、その都市ガス事業の許可の取消をということになりますと、公益上、非常に大きな、例えばガス事業は地域に導管を出して、導管でつなげて、数多くの家庭にガスを供給しているわけでございますから、そういうときにどこまで原告適格を拡大するのかという論点はあるのではないかというふうに思ってございます。
 (2)でございますが、「行政処分により保護しようという公益の確保への影響」。
 これは、「例えば、行政処分の中には、公共の利益のために緊急に実施する必要があるものや、多数の第三者の生活に影響を与えるものが存在。こうしたものについて、仮に本案判決前の仮の救済を認める等、いわゆる公定力を認めないこととすると、」、公共の利益を阻害するケースが生じやすいということでございます。
 ①でございますが、これは先ほども申し上げました産業保安でございますけれども、「原子力発電所の運転停止命令や火薬類取締法に基づく緊急停止命令等、公共の安全のために直ちに措置が講じられることが必要なものが、仮の救済制度により、その効力を止められ得ることとなる。」というようなことだと、ちょっと公共の安全のために影響が出てくると。
 ②でございますが、電気・ガスの公共料金の認可の処分でございますけれども、これが効力を止められることになりますと、経営に深刻な影響を及ぼして、それが引いては需要家への電気・ガスの供給に支障が生ずる懸念があるというようなことでございます。
 ③でございますが、これも消費生活用製品安全法でございまして、一般消費者に多大な被害を与える製品について回収を命ずる命令がございますが、この命令の効力を止められるようなことになると、不特定多数の消費者に被害が生ずる恐れがあるのではないかというようなことでございます。
 その他、訴訟対象を行政立法、行政計画に拡大した場合には、いろんなことが考えれますから、一律には申し上げませんけれども、例えば、原子炉等の安全確保のための審査基準等を争い得るということになりますと、例えば、現実的でない架空の特殊例外的な事例とか、限界的な事例を挙げて、審査基準の妥当性等が争われた場合には、高度専門技術的な内容を含むことから、適格な評価がなされない懸念があるというようなことを懸念としては持ってございます。
 (3)でございますが、「法律上定められている意思決定手続の実効性への影響」でございますが、高レベル放射性廃棄物と最終処分場をどこにするかというときに、法律に基づいて、都道府県知事や市町村からの意見聴取などの一連の手続が定められているわけでございますが、そうした法定の手続を踏んで行われた行政処分が、一部の利害関係による訴訟提起により差し止められたということになりますと、処分の妥当性を担保するために法定した手続の趣旨に合わない、むしろその法律の趣旨に合わないということになってくるのではないかということでございます。
 (4)でございますが、「行政府による専門的・技術的な検討を求められる処分への影響」でございます。
 これは一番最初に申し上げましたけれども、特許なんかについて、特許権をどの範囲で認めるか、発電施設の運転停止をどの程度の期間命ずるかといった、高度専門的な知識については、なかなか一義的ではないわけでございます。
 こういった事案について、作為の義務づけを求める訴えとか、裁判所が判決で必要な是正措置を命ずるというような場合には、なかなか裁判所が適切な判断をなし得なければ、かえって安全の確保なり、権利者の正当な利益を損なったりするのではないかということでございます。
 私どもの行政分野で、頂いた紙について、問題が生ずるとしたら、こういうものではないかという形で整理させていただきたました。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、今の1枚紙の点について、まず聞き漏らしたところ、あるいは疑問の点について御質問を承ります。その後で、そのほかの点についてもいろいろコメントしていただいておりますので、そのコメントについても必要があれば御質問をいただきたいとに思います。
 そこでまず、最初のプレゼンテーションの1枚紙について、何か問題、あるいは質問があれば伺いたいと思います。
 では、私から1つお伺いしたいんですが、特許の場合はいろいろ大体のところはこんなことかなと思っていますが、また後ほど、別の方からの御質問があると思いますが、私の方は公益事業等々の関係で、これは止まると大変だというのはよく分かるのですが、そうするとどんな場合も止められないのですか。つまり違法なことは経済産業省だからやらないだろうということは分かりますが、仮に違法だということになったときに。

【説明者(安達企画課長)】事業者には供給義務があるわけですが、ただ今回の東電の話みたいに、発電能力が低くなりますと、要するに輪番、どんどん停電になってきますので、そのために使用制限命令というのをかけられるという法体系になってございます。
 したがって、最後どうしても供給が足りないときは、お客様に対して使用制限命令をかけられる体系になってございます。
 ただ、この高度情報社会において、例えば自宅で人工呼吸器を使っている方とかいらっしゃるわけなんで、そういうのはなかなかできないわけでございます。
 止めるにしても、これは変電所ごとに止めていきますから、そのエリアに病院がないかどうか確かめて止めることもできず、なかなか難しいわけでございます。
 したがって、必要な供給の確保というのは、これは本当に重大な使命だというふうに思ってございます。

【塩野座長】それは重大な使命だということは分かるのですが、仮に許可が違法になされたということについて、適切な原告適格を持つ者が出れば、その許可は違法だということになるわけですけれども、これは執行で仮の救済とか何とか別に、今の御説明ですと、およそ公益事業については裁判的なチェックはできないというふうにも取れたものですから。

【説明者(安達企画課長)】失礼しました。ちょっと東電17基全部止まっていたものでして、ちょっと力が入っちゃったんですが、要するに1基とか2基というのは、全体の中で予備率持ってやってございますから、それによって直ちに停電が起こるということではございません。
 電力事業者間で融通というのがありますから、やはり基本的には国民の一番ファンダメンタルなところを支えている電気とかガスでございますので、何とかその供給については責任を持ってやっていきたいということでございますけれども。

【塩野座長】そこは責任感がより大きいことは分かりましたが、ついでに今のと同じような話なんですけれども、料金のことについてですが、料金についてチェックがあると経営が成り立たなくなってつぶれてしまって大変困るということなんですれども、認可が違法であるということはあり得るわけですね。

【説明者(安達企画課長)】違法というのは、要するに総括原価主義というので認可してございまして、そういう基準とか、いろいろあるわけでございますが、それは違法ということは全くなくはないと思います。

【随行者(松尾大臣官房企画課課長補佐)】私どもも、取消訴訟一般をもちろん否定しているわけではございませんで、ここで申し上げておりますのが、裁判所の最終判断が下って、やはりおかしいじゃないかということで取消されるということは、もちろん、今でもそうなっておりますし、それ自身を私も否定するつもりは全くないんですけれども、仮の救済みたいな感じで審理途上でとりあえず危ないからということで改められることについては、いささか心配があるという点。
 特に先ほどの原発の件につきましても、今ある出訴期間の中で、これが終わればこの処分は一応確定するんだという中で、ビジネスをやっていく分には問題ないけれども、それが事後、いつまで経ってもふらふらしていて、世の中分からぬということでは、なかなかビジネスがやりにくいということを申し上げているのでございまして、決して、およそこれについては手を付けるなということは申し上げているわけではございません。

【水野委員】仮の救済の5ページですけれども、例として1つは上から2段目くらいに、原発の問題がありますね。いろんな契約、あるいは工事が進んでいくということなんですけれども、これを今、座長がおっしゃったように適法な処分であった場合には止まっては困るというのは、もちろんよく分かるのです。
 しかし、違法な処分も当然あり得るわけですから、そのときに違法な処分があるという前提で考えますと、むしろ止めた方が後々影響が少なかったということにもなるでしょう。これは裏腹なんです。だから、行政庁はすぐに適法を前提に、適法なのに止められたら困るということなんだけれども、この同じ論理は違法な場合を考えれば、早く止めておいた方が後々、被害が少なくて済んだということにもなるということを一つ申し上げたい。
 その次のガス供給だって、地域の増加許可ですね。この地域までAという事業者が広げてよろしいと、ところがそれが、後で違法だとなるという場合には、むしろ現状維持のままでやっておいた方がよかったということにもなるわけです。
 ですから、全部、適法を前提に止められたら困ると、仮の命令は困るという御趣旨の主張が多いのだけれども、両方あり得るので、逆の場合も考えていただきたいなと思います。

【塩野座長】何か付け加えることはございますか。

【随行者(中村原子力安全・保安院企画調整課課長補佐)】原子力安全・保安院でございますけれども、まず、先生がおっしゃったように、適法で必ずあるという前提も、また必ず違法であるという前提も、極端であるということでございます。
 そういう意味で、我々が申し上げているのは、もちろん、行政庁としては許認可は適法であるべきということで、専門家の御意見もお聞きしながらやっているところでありますので、そういう状況で裁判になりまして、仮の救済ということになるのは、もちろん、ロジカルに考えて適法でない場合があり得る、と考えたときに、そもそも仮の救済があり得ないのかと言われると、大変苦しみがございますけれども、ルールが今後できてくるときに、両方の極端ないずれの前提に立っても上手くない面があって、要するに、きちんと専門技術的な観点から、許認可の基準が適正なものであるかといったことについては検討が必要で、現にやっているわけですけれども、実際に訴訟になったときに、その部分についてきちんと判断がなされるという前提があって、初めてこの仮の救済というのになじむかどうかということ、あるいは仮の救済を入れたときに、一方のビジネスの方への影響等を勘案して、そのビジネスへの影響を踏まえても、制度として仮の救済を認めるものの中に、こういったケースを含めるべきかということは決まるべきなのではないかと考えております。

【水野委員】だから、こういう制度を設けたからといって、何でもかんでも裁判所が全部やるというわけではないんですよ。やはり、本案にある程度理由があるという、勝訴の見込みがあるような場合に初めて決定が出る。
 だから、ここに括弧書きになっていることは、必ずしも反論としては適切じゃないと思いますので、ガスの場合だって、ガスの供給を受けることができなくなると書いてあるけれども、元の業者が当然あるわけでしょう。

【説明者(安達企画課長)】LPガスですね。

【水野委員】ええ。ですから、それはちょっとおかしいんじゃないかなと。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】資源エネルギー庁でございますけれども、私ども決して、国民の権利利益の救済というのをもう少し広げていこうところには、当然真摯に受け止めていかなければならないと思っています。
 したがって、もし、例えば仮の救済制度というのを整備すると、直ちにこういう問題が起こるからノーということではございませんで、ただ、例えばこれから詳細をいろいろ御検討いただくときに、例えばどういう問題が生じ得るのかということで、今日もヒアリングいただいているんだろうと思いますけれども。
 例えば、電気やガスの料金ということでいきますと、非常に利害関係者も多うございまして、例えば値上げというようなことがあったときには、およそ、だれでも嫌だと言って手を挙げたくなるようなものがあるというようなときに、もし、例えば電気やガスの供給の場合ですと、一部の反対をする人が手を挙げたときに全部止まるというと、ほかの供給をそのままの条件で受けたいとかいう人も、みんな止まってしまうという、要するにある特定の人の救済ということに重きを置くことによって、第三者というか、ほかの人がみんなそこで、例えば執行が止まってしまって、かえって本来受けられるはずであったメリットを受けることができなくなるという問題が生じやすいという点がございますので、もちろん、御指摘のように違法な処分だったら、それは止めた方がいいでしょうと。
 これは結論が最初から分かっていれば、この問題は余り議論する必要はないわけなんですけれども、止めるという救済制度を整備するというときに、それによって、逆に本来受けられる利益が受けられなくなってしまう人が比較的多く出てきやすいという特徴が特にございますので、その詳細を御検討いただくときに、その辺りを考慮していただけるといいのではないかなというふうに考えている次第です。

【水野委員】だから、本来受けられるべき利益として、その本来受けられるべき利益なのかどうかが問題になるわけですよ。

【随行者(中村原子力安全・保安院企画調整課課長補佐)】原子力についてはもちろん、ほかの分野についても共通だと思いますけれども、全体に一律でこういった制度が入れられるのか、あるいは分野に応じて取り扱いを変えるのかというところ自体が、おそらく今後検討されるようなことだと理解をしておりまして、その際の検討の御参考にいただくために、個別の話でこういう懸念もございますということですのでよろしくお願いいたします。

【成川委員】5ページで同じところの(3)で、個別法等で特定放射性廃棄物の最終処分に関するお話が載っておりまして、1枚もののところでも同じような趣旨で書いて、一部の利害関係者が提訴した形で止められるのは問題だという御指摘なんですけれども、この最終処分に関する法律でも指摘されているように、この安全性については、これはくっついているはずなんです。
 その安全性問題で当然、反対するものとか書いてありますが、その辺での意見が出てきて、訴訟が提起されるということなんであって、そのときにはまさに安全の問題は重要な場合であれば、仮の処分という形であれ、停止というふうなものも検討されなければならないんじゃないかと、こういうふうに私は議論しているつもりなんですが、これでは出ている現在の法律の中のプロセスをそのままやらないと問題が起きる、こういうふうな書き方なんですが、プロセス自身の中にそういう安全問題なんかが入っているんだという辺りを、もうちょっとちゃんと本当は御指摘いただきたいなと思うのです。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】こちらの特定放射性廃棄物の法律のところで申し上げております趣旨は、今、法律で最終処分施設というのを建設するまでのプロセスを規定しておるわけでございますが、その中で、特に一部の手続については地元の意見をよく聞いてやってくださいと、こういう趣旨で法律がつくられていると。
 これは逆に言えば、特にこういうところに意見を聞いてやってくださいというのを法定しているということになるんですが、それについて逆にその意見がどうだろうが、とにかく、だれが何言っても救済できるんだよという形にすると、逆に特にこの意見を重視して進めてくださいという趣旨に、逆に悖るというところが出てくるのではないかということでございまして、もちろん、御指摘のように確かに救済というところに重きを置けば、それだけではなくて、もっといろんなことを考慮すべきということがあるのかもしれませんけれども、もともと法定しておる趣旨というのは、これはやはり最終処分施設といったものの立地としても、国としてはどこかでやっていかなければならないというときに。

【成川委員】そのときに、このときの最終処分に関する法律を策定するのにおいては、これと同時に、処分場の安全の規定をきちんと定めますという附則もちゃんと付いているわけです。

【随行者(松尾大臣官房企画課課長補佐)】若干補足で申し上げますと、おっしゃいますように、安全規制はまた別途の法体系でやるようにいたしておりまして、その安全サイドの方で問題があれば、それについてまた訴訟が起こり得るということはもちろんあり得ると思っております。
 ただ、ここで申し上げますのは、その安全問題は別として、そもそも安全規制は十分担保された上で、なお放射性廃棄物の最終処分場を地元に置くか、置かないかというところの判断をするときに、その判断は、まずは市町村長、都道府県知事の御意見を聞いて決めていきましょうということで、一応立法として判断をしていただいているんであれば、そこはそれに従ってやっていただくというのが筋ではないかと。
 おっしゃいますように、安全のところで別の議論というのは、安全規定の別の仕組みの中でその議論はされるべきことは、当然そうだと思いますけれども。

【成川委員】別の規定ではなくて、当然、一緒の規定のはずです。訴える人は当然、そういう関係者はそこで訴えてくるわけなんで、同じくそこで受け止めていただかないと困ると思います。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】申し上げます。この手続が起こるのは大分将来ということになっておりまして、そのときに最新の技術的知見を用いて安全性を判断するという観点から、今の法律には安全については将来、技術的知見が確定したところで別途定めるというふうになっておるわけでございますので。

【成川委員】そうじゃなくて、これを実際、実行するにはそれを定めた上で、それを発効するわけですから、条件ですよ、その点は明確にしていただきたい。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】それは当然、不可欠だと思っております。

【成川委員】別だと言うからそう言ったんです。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】申し訳ありません。

【芝池委員】いかに知事とか市町村長の意見を聞いても、もし違法な点があれば、これは裁判所が介入するのであって、違法でなければ手続どおりでいいのです。問題は違法となった場合の話なんで、その場合は責任を免れる理由にはならないですね。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】それがあるから全くだめだとい話では、もちろんございません。

【芝池委員】違法な点があるかどうかというのが裁判の場では決定的に重要なことなんです。
 それから、1枚もののペーパーの最後のところですけれども、高度に専門的な知識を有する措置について義務づけ判決を裁判所が出すと困るということを書いておられるのですけれども、普通は義務づけ訴訟を導入することに賛成される方でも、高度に専門的な判断が必要なものについては、裁判所はそこまでは入らない。
 ドイツでは、指令判決というふうな呼び方があるんですけれども、何らかの措置をしなさいという形に裁判所としてとどめるべきであるというふうに考えられていますので、この最後に書いておられている点は、御心配になることはないだろうと思います。

【小早川委員】さっきから問題になっていた原発で言いますと、今の実務では反対者の側から3つの形で訴訟が起こせるわけです。前置手続を踏んで、出訴期間内に設置許可の取消訴訟を起こすか、出訴期間過ぎていても設置許可の無効確認訴訟を起こすか、そうでなければ、発電事業者相手に民事差止訴訟を起こすか、大きく分けて3つあると思うのです。その中の無効確認は、この間大騒ぎになりましたけれども、それはちょっと特殊なので、基本的には取消訴訟か、民事訴訟かということです。今日のこのペーパーでも出訴期間の問題というのは公益事業の特質にかんがみて常に重視されているのですが、民事の差止めができるとなると、その問題が全部すっ飛んでしまうわけですね。だから、それを抜きにして取消訴訟の話だけしていてもどうなのか。ただ、ここの検討会の土俵がどこまでかということもあるんですけれども、基本的にはそういう問題があると思うので、その辺についての今の実務のやり方についての御見解はいかがでしょう。やはり、民事訴訟というのはまずいとお考えでしょうか。

【随行者(池田原子力安全・保安院原子力安全特別調査課課長補佐)】原子力安全・保安院の訴訟を担当しております者でございます。 今の小早川先生のお話を踏まえますと、今、ここで議論されているのは行政訴訟法の今後の展望についてというようなお話だと思います。
 今、まさに挙げられた民事訴訟法上の取消訴訟というものにつきましては、これはいつでも、建設差止請求というのができることになっておりまして、仮に行政訴訟上、取消というものが求められない場合であっても、民事訴訟法上、そういった安全確保の観点からの、住民の方々の権利は確保されているのではないかなと考えております。

【小早川委員】そうだとしますと、取消訴訟について出訴期間の効用といいますか、必要性というものを強調される、そのスタンスがどこにあるのか。

【随行者(池田原子力安全・保安院原子力安全特別調査課課長補佐)】そこにつきましては、我々、行政をやっておる際に、許認可、あるいは建設許可というのを与えておるわけでございますけれども、これは我々とその事業者の間だけで成り立っているような関係ではございません。
 それは先ほど説明させていただいているところかと思いますが、我々は公共事業、エネルギー供給の観点から、例えば原発を許可する場合は規制当局として、真摯に安全規制について検討した結果、それで安全を確保できると、まず外部の専門家の方々の意見も聞いた上で、判断した上でゴーサインを出すわけでございます。
 ゴーサインを出した以上、その事業者にも公益の一端を担ってもらうという役割も付与されますし、彼らも第三者の建設事業者などと契約関係を結んで、建設を進めていくようなことになろうかと思うんですけれども、その際に、まず考えていただきたいのは、第三者の建設事業者、それで御飯を食べていらっしゃる事業者、その事業者は基本的には善意の第三者なわけです。その善意の第三者が契約を結んだにもかかわらず、出訴期間が十何年もかかって取消訴訟を求められて、今まで建設してきて、更に今後も幾つか建設をすることを予定して、いろんな計画を立てているところ、いきなりここで取消訴訟を認められて、仮に違法なことがあれば止められることになってしまうんですが、そこについては本当に危険なものであれば、無効確認請求などで、やはり違法の明白性とか、そういったものを含めて止められる仕組みになっておりますし、本当に危険なものであれば、先ほどの民事訴訟法上の建設差止請求というものを担保できることになっている以上、我々が公益として行政上の許認可を与える際に、公的な位置づけがものすごくあやふやなものになってしまった場合には、事業者の参入とか、そういったものが極めてやりにくくなるのではないかと、そういうことを懸念しているわけでございます。

【小早川委員】そうすると、今の御説明は結局、普通の取消訴訟ではどんな違法も争われ得る。それに対し、重大明白というか、特別な違法、特別な無効事由のあるような場合については、これは取消訴訟ではなくて無効確認でもいいのだけれども、それ以外については、やはり出訴期間内にきちんと問題を処理したいということなんですね。

【塩野座長】そういうことのようです。

【小早川委員】そうすると、今は民事訴訟で取消訴訟と同じような審理がされていると思いますけれども、それはおかしいと。

【随行者(池田原子力安全・保安院原子力安全特別調査課課長補佐)】おかしいというわけではなくて、行政訴訟法と民事訴訟法それぞれの法律上の役割分担というものがあるんじゃないかというふうに考えております。
 それで、行政訴訟法上では我々がやる許認可について、その違法性について争う。それについては、我々も公共事業とか進めていく上で、安全性を確認した上でやっていくわけでして、そこについては、真摯にやっているわけでございます。
 それを前提にして、その事業を進めるという許認可を与えている以上、それに関係する各者に行政訴訟法上、影響を与えてしまうようなことはなるだけ避けたいと考えております。

【塩野座長】取消訴訟の違法事由と、先ほど小早川委員の御指摘なんですが、民事の差止めの要件が、おそらく違うのではないかという前提での話だと思います。

【水野委員】被告適格者の見直しの、1ページなんですけれども、これは大体どこも問題がないという回答が多いのですが、経産省さんの回答は、行政部内において行政庁を特定する作業が必要となる、その作業が遅延する場合があるというようことをおっしゃっていまして、下の方では行政庁を特定する作業を一元的に担う部署が必要だ、みたいなことをおっしゃっているのですけれども、行政庁を特定するのが困難だみたいなことがあるのですか。

【随行者(松尾大臣官房企画課課長補佐)】むしろ、その点は複数の省庁にまたがるとか、いろいろございますので、どこが主管になるかとか、非常に雑駁な話で恐縮でございますが、国会で御質問いただいたときに、どれが責任を持って答えるべきかということについても、結構争いがあったりいたしますものですから。

【水野委員】例えば、どんなケースですか、その争いとは具体的に。

【随行者(池田原子力安全・保安院原子力安全特別調査課課長補佐)】ここでの趣旨は、そんな重い話ではなくて、窓口というものを設けていなければ、結局どこに出訴すればいいのか分からない方が、国のどこかに訴訟提起をした場合、その分だけ作業に遅延が発生するであろうということでございます。

【塩野座長】そこは軽いお話だと、私は思いました。そんなにまじめに考えている話ではないので、前の方の特許の方が重要かとも思います。特許の場合もどうかなという感じはするんですけれども。
 小早川委員、これ配られた趣旨は。

【小早川委員】特許の話は大事だと思ったので、この最新の法改正を踏まえた議論をしなければならないと思っただけのことです。

【随行者(池田原子力安全・保安院原子力安全特別調査課課長補佐)】1点だけ、時間延長しているところ申し訳ないですけれども、先ほど、仮の執行停止のお話で、訴訟を担当している者として気になった点が1つございまして、違法性が明らかな場合には、早めに止めた方が影響は少ないのではないかというお話が多々出ておりましたけれども、現在、皆様御承知のとおり、原子力関係の取消訴訟になどに関しては、大体短くとも十数年と、かなり時間がかかっております。
 これはなぜかと申し上げますと、やはり内容がかなり複雑であり、我々も行政庁だけで決めているわけでもなく、外部の専門家の方々の御意見も伺って、許認可しておるわけでございますが、やはり内容が極めて専門技術的であって、違法性が明らかに分かるのであれば余り難しい問題じゃないんですけれども、そこを判断することに、まず時間がかかっておるのが現状だと思っております。
 そういう観点からすれば、我々としては、やはり判決で最終的に御判断をいただいたところで、その判決を踏まえて行政としての対処を決定するということは、今の行政訴訟法上の仕組みのとおりでございますけれども、ここでいう仮の執行停止というものについては、そんなに簡単には行えないのではないかということを考えておるということを委員の皆様に御理解いただければと思います。

【水野委員】要するに、後で結論として違法になったという場合だったら、早く停止しておいた方が結果的によかったということがあるのです。ただ、適法だったということになれば、止めなかった方がよかったということになるし、それは裏腹ですよと、両方ありますよということを申し上げたわけです。

【塩野座長】時間が経ちまして、あと1点だけ、原告適格のところはおよそ、余り考えられないものを出しておられるのですれども、私どもとしては公共料金の認可について、原告適格は、だれが持つかという点について、大変興味を持っておりますので、この点について、是非御回答をいただければと存じます。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】まず、どういう形にするのが一番いいのかというのが、いろんな議論があろうかと思いますけれども、今の法律上の体系は、今の行政訴訟法上の体系を前提として、ただ利害関係者が多いのでどうするかというところで、例えば電気事業法なりガス事業法では料金の値上げの認可などでは、公聴会を開催するというプロセスを法定しております。
 したがいまして、逆に公聴会というのは、悪い言い方をすれば聞いておしまいなんですけれども、それは行政庁が最後責任を持って判断をしない限り、あらゆる人が止めるという権利を持つことになってしまうと、これはそもそも上げも下げもできないということで、全体として最後は供給停止のところまでいってしまうという懸念がございますので、そういう意味では、今あるような、要するに広く意見を聴取する手続というのは大切にしつつ、原告適格は余り拡大をしないという方が、結果的には広く供給責任を事業者が全うするには、一番適当なのではないかと。

【塩野座長】原告適格を広めたって、違法事由が広がるわけじゃないですから、一人でもこの人ならばというのがあれば、おっしゃっていただきたいのですが、例えば公共料金、電気料金の値上げについて、この人なら原告適格があると思いますと。

【説明者(安達企画課長)】それは最終的に取消訴訟であれば、当然違法であれば、そういうことだと思いますね。

【塩野座長】原告適格は利用者であれば、すべて原告適格はありますか、ということで理解してよろしいのですか。
 では、また考えてお返事をお願いします。この点、かなり気にしているところですので。

【随行者(安永資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐)】御指摘は要するに、では一体この認可を止めれる原告適格を有する人はだれなのかと。

【塩野座長】そういうことです。だから、だれもいませんというのも一つの答えです。そのときに民事で出てきますから、民事で出てきたときにどうなるかということも含めて。

【説明者(安達企画課長)】それでは後ほど。

【塩野座長】よろしくお願いします。どうもお時間ありがとうございました。

【国土交通省】

【塩野座長】それでは、国土交通省の方どうぞ。大変お待たせして申し訳ありませんでした。今のような議論をしておりますので、国土交通省はもっとすごいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。御説明は、本田勝大臣官房総務課長。石井喜三郎都市・地域整備局都市計画課長。福本啓二河川局水政課長。石川雄一道路局国道・防災課調整官でいらっしゃいます。御説明の分担等については、そちらの方にお任せいたしますので、よろしくお願いいたします。

【説明者(本田総務課長)】国土交通省官房総務課長の本田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。座って御説明をさせていただきたいと思います。
 私の方から概括的に本件についての当省の考え方を申し上げたいと思います。
 お手元に「『行政訴訟検討会における主な検討事項』に関する意見について」というメモをお配りしておろうかと思います。
 非常に多くの議論があると思いますけれども、かいつまんでポイントのみを今日、申し上げたいと思いますけれども、「第1 基本的な見直しの考え方」の部分でありますが、私どもも、国あるいは公共団体が国民の権利義務、法的な権利利益を侵害するような結果になった場合に、これは違法な行政として、その相手方の国民の皆様を救済するというのは当然のことだと思いますし、それが実効的に保障されなければ意味がない、ここもよく分かります。
 ただ、私どもの行政の多くは、単にじっと待って何かをする、時を過ごしているというよりは、例えば公共事業や、あるいはおそらく議論のおありのような都市計画のように、個々の方々のみならず、その地域社会や、あるいは国土というものに積極的に働きかけをしていくことによって、国民あるいは地域住民のニーズに応えていくという基本的な使命がございます。
 その意味では、あけすけに申し上げますと、その事業で直接的に法的な利益を侵害されていないような方が結果的にその事業を止めてしまうと、その結果、実はその事業を非常に待ち望んでいる多くの国民や、あるいは地域住民がおられるのに、期待されるようなサービスとか、そういうものが提供できないという事態は、実は最も恐れております。
 したがって、そういった事態にならないような制度に是非仕上げていただきたいというのが基本的なお願いでございます。
 その意味で一つ一つのことを申し上げますと、かつ私どもは何せ今、行政の効率化ということを言われておりますので、願わくば、これ以上手間暇が増えるような制度というのはなるべく御勘弁をいただきたいと思っております。
 そういう意味では、行政訴訟の管轄裁判所の拡大については、私どもが懸念しておりますのは、非常に後ほどの原告適格等との議論と相まって、こういった訴訟がしかも全国各地で提起されるような事態になることが行政側の経済的な負担のみならず、マンパワーの投入によって非常に大きな行政コストの増大になることを懸念いたしております。 「第2−3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」。
 次のページに移っていただきまして、行政の作為の給付を求める訴え、あるいは差止めを求める訴え、これは裏腹の問題だと思います。 「第2−5−(1)の行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」。
 右のページに移りまして、原告適格の問題、あるいは団体訴訟の問題、これは押しなべて、いろいろ書いてございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、直接的な法律の不利益、そういったものが発生していない段階で、その事業そのものを止めてしまうということが本当にいいのだろうかということを懸念した結果の御意見でございます。
 1ページに戻っていただきまして、「第2−3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」ということでありますが、事業施行について執行停止というようなことを認めるような制度が導入されてまいりますと、端的に言って、あらゆる事業について、まだ多くの方がその事業を期待しているような状態であっても、事業が一切執行できない、その裁判が終わらないと執行できないということになることは、それ以外の逆に多くの国民に本来提供できた利益を提供できない、その意味での不利益を与えかねないということを懸念しております。
 その次のページの行政の作為の給付、あるいは行為の差止めを求める訴えについての拡大ということになってまいりますと、ここも結局、後ほどの原告適格の問題とかなり共通する部分だと思いますけれども、どういう方に拡大するかによってでありますが、私どもが最も懸念しておりますのは、その方自体の直接的に侵害される利益を回復するという場合に限らずに、広く不特定多数の方の利益利害に関係する、そういう抽象的な行政行為、こういうことをやりなさいと、こういう事業をやりなさいというようなことが出てくるということは、非常にいかがかという感じがいたします。
 同じような考え方になってまいりますが、行政計画についてでありますが、これは後ほど、都市計画課長の方から詳しくお話を申し上げたいと思いますが、都市計画を含めた行政計画自体は、それ自体で直接に国民の方々の法的な権利義務に影響を及ぼすのものではないと、私どもは理解をしております。
 それに取消訴訟の対象ということになってまいりますと、法律上の利益を有する人は一体だれなのか、非常に不確定な段階で事業が適切かどうかじゃなくて、事業が違法か適法かという御判断をいただくということになると、非常に計画というものが一切実現が図られていかない。実現が図られる中で、例えばそれによって直接的に被害を被られると。
 その方を救済することに何らやぶさかではありませんけれども、ある計画ができたという、それだけの段階で、それを何かに照らして違法かどうかという議論をなされてしまいますと、本当に被害を被っておられないにもかかわらず、計画が頓挫してしまうというような事態が出かねない。そういうことはまた後ほど、詳しく御説明を申し上げたいと思います。
 同じように右側の「第2−6−(1)原告適格の拡大」の問題も、現在の行政訴訟法9条に明記されておりますとおり、処分または採決の取消しを求めるにつき、法律上の利益、これは個別具体的な利益と考えておりますけれども、そういった利益を有する方について、訴訟の対象とされるのが妥当だと思います。
 それを更に超えて、法律的に、しかも個別具体的な利益をお持ちでない方にまで、行政についての取消訴訟の権利といいますか、そういうものが拡大されていくことについては、冒頭申し上げましたような事業がいたずらに停止されてしまう、そのことによる本来その事業の実現を待ち望んでいる方々に対しての不利益をもたらしかねないというふうに考えております。
 最後の「第2−7−(4)裁量の審査の充実」の問題につきましては、これは私どもの行政事業、あるいは処分をする際の裁量の部分をなるべく少なくしていく、より明確な透明な基準でやっていくということについては大賛成なんですけれども、ある一定の裁量の問題について、司法の場でこれが裁量上いいのだとか、あるいは裁量としては問題だという議論になってまいりますと、それはこう申して恐縮ですが、いろんな事例で非常に判断が分かれてしまう可能性があると、その点についてちょっと懸念を感じております。
 ちょっと雑駁な御説明ですが、基本的にはそういうことを申し上げて、ちょっと都市計画につきまして、都市計画課長から詳しく御説明を申し上げます

【説明者(石井都市計画課長)】都市計画課長の石井でございます。
 お手元の資料の19ページから、ちょっと詳細に都市計画についての私どもの論点を書かさせていただいております。
 内容に入ります前に、実は私は岐阜県の都市計画課長というのを3年やりまして、どちらかというと現場の感覚で、少し今回、行政救済と都市計画との関係について、どういうことが課題になるかということを御説明したいと考えています。
 まず、このペーパーに入る前に、都市計画課長として都市計画をやっていますと、実は町中に住むというのはいろいろな人の利害が極めて対立をすると。そこには道路もなくてはいけないし、昨今、全く容積率を外すという議論もありますが、どちらかと言うと都市に住む場合にどれくらいの高さの建物にしようか、ここは住宅地だから低い建物がいいねとか、そういう自由にものを使うということから、都市に住むについては何らかのルールをお互いに決めていこうというのが、都市計画の発端ではないかと思います。
 それはいろいろな決め方があるんだろうと思います。住民で合意をするとか、あるいは議会で決めてもらうとかいう、いろいろなやり方がある中で、行政というものをかまして、アーバンプランナーが都市計画をつくっていくと。それが果たしてどうなるかということの仕組みというのが都市計画ではないかというふうに考えております。
 第2点として、都市計画を議論する場合に、我が国の都市計画は皆さん、先生方も今、実際の生活の中で見ておられるんだろうと思いますが、国際的に見ると、いろいろな形の都市計画があると。
 ドイツの都市計画のように、建築線に従って、この壁面線に家を建てなさいというものから、一方でゾーニングだけを決めて、そういう施設計画を外してしまっている都市計画もあると。
 更にその救済の仕方にも裁判所が関与をする場合でも、行政裁判所という、それを迅速といいますか、専門的に扱う救済のシステムがあるというように、どうも都市計画、それからそれに伴う権利侵害を考える際には、全体のシステムとして考える必要があるのかなというのが正直な私の感覚であります。
 そこで、現在の都市計画の持っている特有の性格ということで、ここに整理をさせていただきましたが、まず第1点は、都市計画には裁量性が極めて強い。当然、将来の都市の姿を描くということですから、現在の都市計画法ではメニューは示しておりますが、例えば、どこに商業地域を決めなければいけないという具体の基準を決めておりません。むしろ、そこの点については行政の裁量と、手続の中での皆さんの意見をどういうふうに参酌していくかという手続の問題としています。
 2点目として「都市計画に伴う利害の広汎性」ということですが、都市計画は大変たくさんの方の利害が絡みますから、むしろ利害調整の仕組みというものを都市計画は大変強く定めていると。公告、縦覧、意見書、それから都市計画審議会、更には権利が制限される見返りとしての土地の買い上げであるとか、このようなものも定めているところでございます。
 3点目、ちょっと慣れない言葉を使っていますが、「都市計画の多元性・連環性」と言うことで、実は都市計画の中には用途というような、ここは住宅しかできませんとか、ここは工業専用ですよというものだけではなくて、ここは工業地域だから物流を運ぶような太い道路をかませますとか、駅前ですから、市街地再開発事業をしますといったように、ちょっとお手元にも地図をお渡ししてございますが、そういう用途と施設と事業というものが相当、透明な絵の上に何層にも重なるように固まってきております。
 最後に、先ほど手前どもの総務課長も申し上げましたが、次の20ページでございますが、都市計画の段階では施設の中に一般的な建築物以外の固い建物を建ててはいけないという一般的な制限がかかりますが、計画だけで権利侵害ということはおきません。
 むしろ、建築確認といった具体の行為、その建築確認ができないとか、あるいは逆に事業に入ってきて、あなたの土地を収用しますといった、事業の段階に入ってきて権利の侵害が確定してくるということで、そういう意味での権利侵害の不確定性といったものがあるように思います。
 本日の具体の課題であります、都市計画が司法判断の対象となることについてどう考えるかということでございますが、先ず最初は「訴えの成熟性」ということでございます。都市計画の段階で、その計画の妥当性ということの判断で訴えができるということになりますと、相当2年、3年というふうに都市計画をつくってくる段階で、例えば何万通というような意見書、この意見書一通一通について、都市計画審議会の委員をしていただくと分かるんですが、その一通の意見に対して、これはどういう理由でこの意見は取り上げられないかという審査をすべての意見書について行っていきます。この手続は何だったのかということになります。
 2つ目に「都市計画に対する司法の判断」としては、私ども多少限界がある意味であるのかなということでは、1つは先ほど申し上げた広範な裁量性がある場合に、それについて裁判の過程で十分に審査が可能かどうかという問題。
 手続について見ますと、反対者の意見の審査をもう一度司法の段階で再度繰り返すということの意味はどういうことになるか。
 先ほど申し上げたように、多元的に積み重なっているとしますと、1つの都市計画を判断すると、一方も道路が太いということを議論するだけで、周りの土地利用とか、そういう問題も一緒に判断をする必要が出てくると。
 そういったことから言いますと、あるべき例えば司法審査ということになれば、関連する都市計画や利害関係者も参加させて、判断を置き換えるといったような司法判断が求められてきますが、これが現状の司法の仕組みの中で本当に可能かどうかということについては、十分に御議論をいただきたいと。必要があれば、むしろ都市計画の手続を厚くするといったことも選択肢としては考えられるのではないかと思います。
 最後に、次の22ページからでございますが、仮定の話といたしまして、都市計画を取消訴訟の対象とされるといった場合には、例えば以下のような立法の手当が必要になるのではないかと思います。
 まず1つは原告適格、横浜の環状線ですと、意見書が110万通ほど出てまいりました。あるいは、ほかの湘南道路でも10万通ぐらい。最近は意見書だけでも万という単位で出ることは、さほど珍しくない状況でございます。
 こういう中で都市計画法上の利害関係者というのは非常に、単に事業の用地に係るということだけではなくて、その地域の行政区画体の住民であるとか利用者を含めていますので、どこまでを原告適格者として判断するのかということについては、明確な基準を是非とも設けていただく必要があると思います。
 判決をもしいただいた場合には、その効力なんですが、ある人にとってこの道路の都市計画は間違いだと、ほかの人についてはその効力は及ばないということになると、都市計画が非常にぶらぶらしたものになってしまいますから、この場合には都市計画の効力が第三者の方にもきちんと及ぶと。
 それともし関連をしていると、例えば、用途地域の都市計画が変わってしまいますと、区画整理ですと、換地処分その他については商業と住宅では、土地の価格の算定が違いますから、そういうものも全部ひっくり返す必要がございますので、どこまで関連して取り消すのか、更にはそういう計画を信頼して事業をしたり、物事を行っていた第三者の保護をどうするかといった問題も併せていただきたいと思います。
 取消しはもちろんなんですが、逆に先方の主張を棄却とか却下をされた場合、その都市計画がその裁判で妥当だといった場合には、この効力を是非とも確実なものにしていただきたいと。そうしませんと、取消しだけは効果が出るんですが、何度裁判をしても妥当だという効力の方がいつまで経っても確定しないということになりますと、これも不安定な要素になるのではないかと思います。
 出訴期間の制限という問題が、今回も取り上げられておるようでございますが、この場合には違法性承継の理論を排除をしていただきたいと思います。
 また、今まで、ある都市計画について既に多数の権利が形成をされておりますので、これを訴訟の対象とすべきかどうかというところについては、相当慎重に御判断をいただく必要があるのではないかと思っております。
 最後に確認訴訟、その他いろんなやり方があると思いますが、取消訴訟の排他性についても認めていただきたい。これは仮定の問題として、そういう議論に入った場合には、かような論点がさまざまございますので、その点も十分に御判断をいただく必要があるということでございます。
 以上でございます。

【塩野座長】それでは、以上の説明につきまして、都市計画と前の公共事業も、多少関係あるところがあると思いますので、余り2つにきちんと分けずに重なった御質問については御二人から、あるいはその他の方からお答えをいただきたいと思います。

【芝池委員】最初の方でおっしゃったことなんですけれども、少数の人が裁判を起こすことによって、ある事業を待ち望んでいる多数の人が利益を受けることができないのは困るということをおっしゃいました。しかし、こういう裁判の問題を議論する前提は、違法な事業はあってはならないということなんですね。
 ですから、違法に道路をつくって、それが国民のためになるとしても、やはりそういう違法なものを除去といいますか、是正をする必要があると考えるべきだと思うわけでありまして、どうもそこのところにすれ違いがあるように思いました。それが1点です。
 もう一つは、計画の段階では権利侵害がない、実際の権利侵害は建築確認の段階で起こるというお話がございましたけれども、この問題は多くの方が議論しておられます。用途地域指定で言いますと、確かに建築をしようと思っていて、用途地域指定が変更されて、建築確認を受けられなくなるという場合であれば、建築確認の段階で争えばいいわけですけれども、用途地域指定が変更されて、環境が悪くなって困るという人から見ますと、建築確認の段階というのはないわけですね。他の人に対する建築確認はありますけれども、自分自身に対する建築確認というのはないわけでありまして、他方、他の人に対する建築確認というのは幾らでも起こりますから、そうすると建築確認の段階で争うとすると、何度も訴訟をしないといけないというふうなことになりますので、そういうところから、やはり用途地域指定を争えるようにした方がいいのではないかという議論があるわけです。
 計画の場合、もっと一般的に行政計画という形で言いますけれども、既成事実論というのがありまして、計画があって、その後いろんな事業が行われるわけですが、そういうものを早い段階で争わないといけない。事業が進んでからですと、既成事実ができてしまって、場合によったら事情判決をくらうというふうなこともあるわけで、ですから、そういう既成事実の発生を予防するという点で、早期の権利保護ということが言われるわけです。
 我々というか、学説の方はそういうことを考えていたわけでありまして、そういうことも御理解いただきたいと思います。

【塩野座長】今の点は御意見ということで、これでやり合っていますと時間が大変かかりますし、そういう意見が決して芝池さんだけではなくて、かなりの人がそういう意見を持っているということだと思います。今の計画の既成事実化ということについて十分御留意をいただきたいと思いますが、芝原委員、都市計画関係で何かございますか。

【芝原委員】11ページに、ある一件に対して膨大な提訴のおそれがあるという事例が2、3出ておりますが、こういう特別なもの以外に、今、実態としてまず国土交通省の関係で、年間どれぐらい訴訟があるのか確認で知りたいのですが、それは分かりますか。

【随行者(小林大臣官房総務課企画専門官)】今、手元には資料がございませんが、1年間でよろしゅうございますか。

【芝原委員】オーダー的でもとりあえずはいいんですが。

【国土交通省(小林大臣官房総務課企画専門官)】では、後ほど資料を出させていただきます

【福井(秀)委員】提起件数と係属ベースと両方いただいた方がいいんじゃないですか。年間の提起件数とストックベースと。

【芝原委員】さっき経産省の方から、これぐらいあるというのを教えていただいたのですけれども、国土交通省の方がもっと深刻な訴訟が多いんじゃないかと思いますので。

【随行者(小林大臣官房総務課企画専門官)】国土交通大臣と、それから整備局長、地方支分部局の長を相手取った訴訟ということでよろしゅうございますでしょうか。ほかに例えば関係する公共事業ですと、県とかそこまではちょっと把握しきれないと思いますので、そういう国を相手取ったものということでよろしゅうございますでしょうか。

【芝原委員】はい。
 その上でですけれども、11ページのここで書かれているような事案というのは、これを読むと逆に団体訴訟的なことをお認めになった方が、訴訟の効率性は上がるんじゃないかというふうに逆に読もうと思えば読めるんですが、そういう趣旨はおありではないのですか。
 例えば6,601名から提起されたということをおっしゃっておられますが、これはまとめて、ある1つの適格な団体に訴訟を代表してもらって審議をすると。そういう意味合いの団体訴訟的なことまでは考えていらっしゃらないのですか。そういうことを含めてのことなんですか。

【説明者(福本水政課長)】その部分は河川局の部分ですが、私どもで具体的に提案までは内容を詰めておりませんが、実務上として、これは異議申立でありますけれども6,000名、これは具体的には川辺川ダムの案件でございますけれども、6,600名の方からお聞きしまして、極めて膨大な案件で、私共も一課で処理しますので、膨大な処理でありまして、非常に大変だったということです。
 この中には地元でない、例えば○○川の自然を守る福岡県の住民の会とか、全く関係のない方が多数をいらっしゃいました。それもすべて処理せざるを得ないと。これは配達証明郵便で出しますので、1件1,000円前後かかりますので、行政的なコストとしても数百万円のコストになりますので、そういうことを問題として出せさていただいております。

【芝原委員】あと2ページに、管轄裁判所が拡大すると、全国に当然現場をお持ちですから、訴訟対応が大変だということを書いているのですが、今、逆に裁判所の方ではテレビ会議システムがございまして、それを充実するということなんですけれども、そういうことがあれば別によろしいわけですか。テレビ会議で、地方で現場の近くの地裁のテレビ会議室に出向いて、例えば東京とやり取りするとか、そういうことができるのであれば、別にこれは余り影響がないというふうにとらえてもよろしいですか。

【随行者(小林大臣官房総務課企画専門官)】それは1つの案件について、1つの訴訟であればそういうこともあると思うんですが、1つの訴訟について複数の地裁において同じようなものが、例えばある収用事業の認定の処分が出たとしまして、それが1つの訴訟としてではなく複数の訴訟が同時に全国で提起されるといった場合には、それはそれぞれテレビ会議が開かれるということになるんでしょうか。

【市村委員】まず今のだったら、併合を考えるか何かのことが先に来るので、おそらくテレビ会議でそういうことをやるというのは、今のところ想定しておりません。

【随行者(小林大臣官房総務課企画専門官)】そうすると、ちょっとマンパワーの関係でかなり支障が出るかなと思います。

【芝原委員】5ページの本案判決前の仮の救済のところで、①の第1パラグラフのところに、事業の目的である公益の早期実現が困難云々と書いてございますが、公益の早期実現の仕方として、通常は事業に実際に着手する前に合意形成をきちっと取って、着手すればあとは工法の最適化という観点で短縮、早期実現というやり方が本来あるべきだと思うのですが、現在は工事着手する前の合意形成のプロセスが当然踏まれているのでしょうけれども、やや不十分なためにいろんな訴訟が提起されて、着手してからも結構時間を要しているということで遅れていると思うのですが、そういう意味で、事前の着手までの手続の、さっきどなたか事前の手続を厚くするとか言っておりましたけれども、そういうことをもう少し所管の個別法でやるという手当の具体というのは、今、考えられているのですか。

【説明者(本田総務課長)】個々の事業についてはあれですが、考え方としては、先ほど私、多少乱暴なことを申し上げたかもしれませんけれども、中身がいいかげんな事業をやりたいと思っているわけでありませんので、そういった関係者に迷惑をかけないような事業にするために、つまり正当性の確かにあるような事業にしていくための事前の手続を厚くするというのは、我々の行政の方向だろうと思います。

【説明者(石井都市計画課長)】ちょっと追加しますと、都市計画でたまたま私が、もう十数年前の話なので、ちょっと古くであれなんですが、岐阜県の都市計画課長で、東海環状という道路をつくり始めるという、当時は要綱ベースですが、初めて環境アセスメント、それまでは環境アセスメントをやっていないか、あるいは事業の段階でということですが、都市計画の段階ですべて環境アセスメントをするということを入れまして、生物調査をし、住民の意見書を取りという、環境についての意見書を全部取って評価書を専門家で書いていただくという手続が、今は法律の中に環境アセスメントが入りましたが、これは1つの環境という問題がだんだん大きくなってきて、それについての専門的な知見を都市計画の中できちっと処理を事前手続としてするといった1つの例であろうかと思います。

【福井(秀)委員】11ページですけれども、この6,601名の川辺川ダムの異議申立というのは、具体的にはどの処分に関するものですか。

【説明者(福本水政課長)】このときは計画の内容を変更しましたので、その計画の内容の変更について取消しを求めるというか、差止めを求めると。

【福井(秀)委員】河川法に求めるということですか。

【説明者(福本水政課長)】そうですね。

【福井(秀)委員】これは処分性は。

【説明者(福本水政課長)】特ダム法ですね。多目的ダム法という、河川法以外に別途大規模なダムのために利水者の利害を調整する法律がございまして、そのための多目的ダム法というのがございます。

【福井(秀)委員】これが本案に乗る案件だったのですか。本案というのは、適法な申立てだったんですか。

【説明者(福本水政課長)】いや、却下です。

【福井(秀)委員】そうすると、この1,344件というのはすべて却下ですか。

【説明者(福本水政課長)】そうでございます。これは何人かの代理の方がまとめられましたので、通知の数としては1,344、封筒の数としてはそういうふうになっております。

【福井(秀)委員】それで、6,601名の決定をしたということですか。

【説明者(福本水政課長)】はい。

【福井(秀)委員】ということは、それはもともと乗らない案件だったわけですね。要するに、これについては裁判とか起きていますか。

【説明者(福本水政課長)】起きておりません。

【福井(秀)委員】これがもし裁判で同じようなことが起きていたとしても、却下になった案件なわけですね。

【説明者(福本水政課長)】と私どもは考えます。

【福井(秀)委員】そういうものまで入れるかどうかという政策判断はあると思うのですけれども、たくさんの人から提起されてわずらわしいというのは、それはそういうことは大いにあると思うのですけれども、それは一種本当に本案に乗るものじゃなくても、今だってこれのように、だれだって何を争って訴えても一応構わないことになっているわけです。ただ、不適法で最後に却下されるだけのことです。
 とすると、それは訴訟制度の仕組み方というよりは、どうせこういう使い方がされるときにはされる、と考えれば、原告適格の拡充論とはちょっと別次元の議論かなという印象なのです。

【説明者(福本水政課長)】本件の場合は地元の方もいらっしゃいまして、訴えの。

【福井(秀)委員】地元の方だったら、原告適格ありというか、要するに異議申立の利益はあったということですか。

【説明者(福本水政課長)】例えば、環境上どうかとか、そういう御議論をされているということです。

【福井(秀)委員】でも、それは中身に入らないで、却下決定したのではないですか。

【説明者(福本水政課長)】私どもの方はですね。

【福井(秀)委員】だから、その判断がもし正当だったのだとすると、別に環境を理由にしようが、何しようが、そういうものはどうせ却下の決定をする、ないしは裁判で却下の判決を下すだけで終わることですから、一種不適法な訴訟というのは起こり得るけれども、それに対しては却下で応えないといけないというだけのことではないでしょうか。

【説明者(福本水政課長)】こういう手続は、先ほど芝池委員もおっしゃって、私申し上げようと思ったんですが、基本的には法律上手続を定めておりまして、地元自治体の意見も聞く、場合によっては議会の意見も聞いて、それで本来の手続を経て公益性を判断して決めているわけですね。それで、それに満足されない方々が訴訟を提起されて、自分はそれは環境上正しくないと思うと。環境のアセスメントとかもやりますから、そういうものを手続を経てやっているにもかかわらず、それを判断すると。
 それを、私どもとしては政治的なものも含めて、意思決定のプロセス、憲法以下の法律で定められている日本の手続を経ていないものについて、どういう判断をされるかということだと思います。
 そこはおっしゃるように、もし違法ならそれはもっと早い段階でやった方がいいじゃないかということでありますが、同時に私どもいろいろございますが。

【福井(秀)委員】こういうものについては、どうせ出てきても却下されるだけだとすると、多数から提起されるといっても、原告適格をこういうものにまで広げるという議論はおそらくこの検討会では共有されている議論ではありませんので、御心配には及ばないのではないでしょうかという趣旨です。
 もう一つ、その上にある料金認可の方なんですけれども、料金認可について、この書かれ方ですと、高速道路料金についての料金認可はエンドユーザーは一切争えない、争わせるべきではないという政策判断ですか。

【説明者(本田総務課長)】そうです。

【福井(秀)委員】そうすると、最高裁の判決で近鉄特急の事件とかがあって、これなどはなかなかデリケートな問題だという議論が一方ではあるのですけれども、いかなる場合も料金についてはエンドユーザーは、一切具体的な利益としては扱うべきではないということになりますか。

【国土交通省(小林大臣官房総務課企画専門官)】有料道路の料金につきましては、お支払いいただけない方については、最終的には強制徴収の規定がございまして、この強制徴収は当然処分性がございますので、その時点で争っていただくという形になってございます。

【福井(秀)委員】要するに、不払いをやった上で強制徴収の段階で認可の違法を争えばいいということですか。

【国土交通省(小林大臣官房総務課企画専門官)】そうです。今のところは公団に対する料金認可は、行政の内部的な行為という判例になっておると思います。

【福井(秀)委員】同じ国土交通省で鉄道の方、まさに近鉄特急のような鉄道の料金認可も所管されていると思うのですが、そちらについてはどのようになっているのですか。

【説明者(福本水政課長)】所管外ですが、私たまたま当時鉄道局におりまして、近鉄特急料金訴訟の高裁準備書面をドラフトしまして、御承知のとおり当時長沼ナイキ基地訴訟というのが出まして、ちょうどこの行訴法の解釈が非常にクリアーになりましたので、その方向で御議論をさせていただいて、高裁では却下の判決をいただいたんですが、当時私どもも説明したんですけれども、法律上の具体的な個々の人々の利益を保護することを法律上書いていない、ただし、運輸省の中に運輸審議会というのがありまして、公益を代表する方々の意見を聞く場所を設けて、そういう意味では問題意識は非常に持っていて、代替措置も講じているんですと、現行法上は法律上の裁量としても一定の代替措置を講じた上で、個々の人々の利益を保護するまでは難しいんじゃないでしょうかというふうにして、その法律を意識してちゃんと、当時の地方鉄道法は戦前の法律で、運輸省の設置法は戦後できた法律ですが、そういう代替措置を講じた上でやっている、したがって、利用者の意見は個別にそれなりに保護しているということで御理解いただいております。
 ですから、そこはいろいろ意識した上でやって、近鉄特急訴訟は必ずしも評判よくないようですが、かなり代替措置を講じた上でやっていたことを御理解いただきたいと思います。

【小早川委員】最初はちょっと余計な話です。福井委員が特ダム法のケースは原告適格ないだろうから安心しろとおっしゃったのですが、特ダム法の処分なり、それよりも更に河川法の方だともっとだと思いますけれども、この研究会の支配的雰囲気が原告適格なし、とまでは言えてないんじゃないかと思います。私の意見はともかくですね。ですから、余り安心されない方がいいと思います。
 それから、国土交通省関係では土地関連が多いと思いますけれども、裁判管轄の場合に今の行訴法でいう、例えば国土交通大臣なり地方整備局長なりの処分について、東京なり福岡でない熊本地裁とか、鹿児島地裁とか、そっちの方に土地の関連で管轄があることになっていますが、その規定はどの程度使われているのか。もしそういうデータがありましたら、参考にさせていただければと思います。

【随行者(小林大臣官房総務課企画専門官)】それは確認をさせていただきます。

【小早川委員】もう一つ、真意を、心を伺いたいんですけれども、都市計画を訴訟の対象にするのはいろいろ問題が多いので困ると言っておられるんですけれども、最後のところで、もしするのであれば排他性をかっちりと認めてほしいと言っておられます。ここは、ひょっとして本心はそちらにあって、いろんな個別の訴訟で計画の妥当性なり正当性なりが争点になるよりは、主張の遮断さえできれば計画訴訟を認めた方がすっきりするというお考えは、ほんのちょっとでもおありになるかどうか。

【説明者(石井都市計画課長)】私どももまだそこまで判断をするだけに至っておりません。今、申し上げたのは、最初にお断わりしたように、仮定の議論として訴訟ということで、都市計画を争うということになれば、少なくとも私が申し上げたような論点について、解決をしていただかないと、むしろ都市計画の実務、現場が混乱をしたり、あるいは都市計画を信頼して行動された方、事業に関与された方に御迷惑がかかるということで、もう一歩お前たちは踏み出しているのかと言われれば、そういう趣旨ではございません。

【塩野座長】だめ押しになるかもしれませんけれども、私の方から今の点で、先ほど大変立派なことをおっしゃって、私もそのとおりだと思うのです、全体のシステムとして考える必要があると。それから、公共事業についても、多数のことを考えてどんどん進めないと困ると、それも大変立派なお話だと思うのですが、ただシステムという場合に、先ほどから手続はちゃんとやりますとか、いろんなことをやりますとか言いますけれども、おそらく外国の法制を考える立法者は、システムのときに裁判所のチェックについてもシステムの1つというふうに読み込んで考えるだろうと思うのです。先ほどドイツの例を出されましたので、もう随分勉強済みのところだと思いますけれども、ドイツの場合にはベークプランについてもシステムとして出訴を認めているといった状況があります。
 ですから、ただ、十分丁寧にやりますから大丈夫ですよということではなくて、万が一誤ったときに、出訴とか訴訟の救済を求めてきたときには、この場合には先ほど小早川さんもおっしゃったように、計画段階で受け止めましょう、そこで出てこなければあとは違法性を遮断しますというシステムをきちんとおつくりになるのは一つの考えと思います。ですから、そこの点についてシステムがつくれていない間は、司法による行政のチェックということを憲法に従ってやらなければならないと思います。
 先ほどの土地利用計画の中の用途地域で、実際に権利侵害が起きてないではないかと、これは最高裁がそういうふうにお墨付きを与えていると思いますけれども、あれは私は国民の権利救済の点からいって、非常に不十分なものだと思っておりますし、外国の例を見ても、アメリカは御承知のゾーニングについてそれこそ当然の法理で認めているところですから、今後行政に対する司法のチェック機能というものも、裁判所ももう少し前に進みますと、今のシステムができてない間は相当なことになると思いますので、所管行政をきちんとやっていただきたいと思います。ここは何度もそういう議論がありまして、実はこの検討会でそういった公共事業計画、土地利用計画、あるいは都市計画についても、提案しようじゃないかという御意見は何度も出ているのです。
 しかし、それに対しては、御賛成の意見ももちろんありますと同時に、それはなかなか検討会では難しかろうという御意見もあって、今のところそれが正面に出てないのですけれども、今のようにいっぱい意見を聞きますから大丈夫ですとか、そういう御意見でとどまっている限りは、もう少し踏み出ざるを得ないなという感じも持っておりますので、議論を進めているぐらいのことまでは言っていただきたいと思います。
 ドイツは、プラン・フェストシュテルンク・フェアファーレンというのは十分勉強済みのことです。これについては、日本の学者が随分論文を書いております。アメリカのゾーニングについても、もう随分研究を重ねられていると思いますので、それは十分資料としてお持ちだろうと思いますので、そういった資料を持ちながら、是非システムを考えていただきたいと思います。システムというのは、救済のシステムを考えて初めてシステムですね。あとから文句言ってもどうしようもないということで、小田急のようなことが起きているのは非常に不幸なことだと思いますので、その辺は是非所管の行政庁としてちゃんと対策を立てていただきたいというふうに思います。
 他に何かございますか。大変どうもご苦労さまでした。

【環境省】

【塩野座長】環境省の方、大変お待たせしました。笹谷秀光大臣官房政策評価広報課長、森谷賢廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長。よろしくお願いいたします。

【説明者(笹谷広報課長)】環境省の笹谷でございます。よろしくお願いいたします。
 最初に提出資料に即しまして、資料の説明を簡潔にさせていただきますが、環境省からは5、6枚の紙の中に、最初に総論的に「『行政訴訟検討会における主な検討事項』に対する意見について」7月25日付けで「環境省大臣官房政策評価広報課」と書いた紙があります。
 意見といたしまして、特に廃棄物処理施設の設置に関しまして、総論的な意見を私からまず述べさせていただきまして、後ほど担当課長から詳しく御紹介をするということにしたいと思います。
 総論といたしましては、廃棄物処理業の実施及び廃棄物処理施設の設置に関しましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、生活環境保全等のための観点から、個別事案について行政庁の許可により一般的禁止を解除するというスタイルを取っております。 実態上も廃棄物は人の生活から不可避的に発生するものでありまして、生活環境保全上適正な廃棄物の処理及び処理施設の円滑な実施・運営は社会にとって不可欠なものということは御承知のとおりでございます。
 一方、産業廃棄物に関しましての世の中の印象の悪さということもありまして、適正な廃棄物処理施設等であっても、設置予定地や設置地の住民から、いわゆる迷惑施設と指摘される状況も多ございます。
 今回の司法の行政に対するチェック機能の強化という御検討に当たりましても、このような廃棄物処理に関する社会的な要請及び現状といった観点から、それにかかる影響について十分に御検討いただきたいというのが総論的な考えでございます。
 私の方からは、資料の4枚目に、一般論としましての、行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大という部分について話がございます。第2−5−(1)に関する部分でありますが、ここ3行で説明させていただいておりますが、紛争の成熟性に関わりなく、すべての行政立法、行政計画等を一律に取消訴訟の対象とするという対応であれば、これらの妥当性に関する抽象的な取消訴訟が頻発するということも考えられ、効率的な行政の推進に関して懸念があります。これがもう一つの点であります。
 1枚おめくりいただきまして、最後のページの、第2−6−(3)の団体訴訟の導入に関しましても、これは全体論としまして、ここに書いておりますように、B案、個人に原告適格が認められない場合でも、特定の利益を保護することを目的とする団体に、原告適格を認めるという考え方につきましてでありますが、2点ございまして、1点はこういうことが考えられるものとしまして、環境省におきましては、自然環境保全の分野ということが考えられるんではないかと思っております。
 例えば、希少な動植物の保護のみを根拠とした原告適格を主張して、開発許可に対する取消訴訟を提起する場合があり得ますが、そもそもこういう問題については、原告・被告間の具体的な争訟事件の解決を目的とする司法権によることが適当かどうかということについては、慎重な検討を要するのではないかというふうに考えております。
 環境省といたしましては、むしろこうした問題は環境影響評価法に基づく、いわゆる環境アセスメントの適正な実施が考えられ、更に最近時点では、事業に先立つ上位計画などにより、より早期の段階でアセスメントを行う、いわゆる戦略的環境アセスメントという実施の仕方もあります。このような行政プロセスの中で、適切な形で環境保護団体からの意見聴取や、幅広い関係者の合意形成を展開するということが、効率的かつ効果的ではないかというのが環境省として承った論点に対する考え方でございます。
 この後産業廃棄物につきましては、個別論がありますので、産業廃棄物課長の森谷から補足させていただきます。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】産業廃棄物課長の森谷です。どうもよろしくお願いいたします。
 補足資料ということで、1枚棒グラフで示したものがございます。産業廃棄物の処理施設につきましては、業の許可を与えるとか、施設の許可を与えるというのは、これは法定受託事務ということで、都道府県の事務になっておりまして、一部保健所設置市は同格という扱いになっています。この資料で見ていただきますと、最終処分場と、これは国内で発生する産業廃棄物は毎年ここ10年間4億トンというレベルに達しているんですけれども、いろいろ中間処理とかリサイクルを促進しても、現在のところ直近のデータですとやはり約4,500万トン程度の産業廃棄物というのは最終処分しないといけない。環境省もそれを減らしていこうという政策を持って努力しているわけですが、そうするとこれを見ていただきますと、残余容量というのが、1億7,600万トン台ということで、全国その後4年弱ぐらいの余裕というか、それしかないという状況になっております。
 これが最終処分量が毎年あっても、新規に立地が円滑に進んでいけば回転していくわけですけれども、最近はいろんな意味で最終処分場の新規立地が厳しくなってきております。そこで、下の方を見ていただきますと、平成9年以降法律改正もあってか、これは設置に当たって事前に生活環境影響調査ということを事業者にしてもらって、市町村長の意見聴取、専門家の意見聴取、住民の方には縦覧と意見提出を行うということですが、そういう手続も入れてきたわけですが、不法投棄の投棄量というのが、約40万トンクラス毎年ありまして、最近ちょっと減ったのが幸いですけれども、そうするとなおさら産業廃棄物というのは大変なものであると、そういう施設の設置は近くではやめてもらいたいという、国民が産業廃棄物に対する不信感・不安感というのが強いものですから、それも相まってなかなか事実上の設置に当たっての地元の理解といいますか、了解が取れないという事態になっていることも背景にありまして、11年と12年とそれまで130件余りの最終処分場の設置があったものの、今は30件台にとどまっているところです。
 これが長期に続いていき、容量が減っていきますと、最終処分量自身が減ってきているので、今は何とかつないでいる状況でありますが、我々としては悪質な業者を厳正に処分をして、国民の産業廃棄物に対する不信感を払拭していくという努力は続けたいと思っているところですが、そこで個別の点について申し上げたいと思います。
 まず、第2−3の「本案判決前における仮の救済の制度の整備」のことでございます。先ほど申し上げたとおり、法定受託事務ということで、許可の取消しを都道府県が行った場合に、すべてではありませんが、その取消しが不服ということで行政不服審査、これは大変な数が毎年常時あります。しばしば営業が継続できないということから、その処分の執行停止をしてほしいと主張もあるんですが、処分された業者の営業中断による損失というのは、経済的不利益で、あとで補償が可能と私どもは考えておるわけですが、仮に処分された業者が処分執行停止の結果、違法行為を継続した場合、これはまた生活環境保全上の不利益が生じるということで、それをまた回復するための費用、これは生活環境上の回復ということで、すべてではありませんが、公費の投入が必要であるということで、慎重な取り扱いが必要と考えております。
 なお、不法投棄の原状回復につきましては、今の国会で、特別措置法で都道府県の対応の支援を行うというスキームをつくらせていただきましたが、それは過去のものをなくすということで、今後は新たな不法投棄をできるだけ抑制していきたいと考えている次第です。 2点目は、第2−4−(2)に係る件でございますが、行政の行為の差止めを求める訴えに関することでございます。先ほど申し上げたとおり、産業廃棄物の構造的な問題もあって、つまり悪質な業者がいることによって国民の不信があると。これからは優良な業者を市場で優位に立てるようにしていかなければいけないんですが、現状では迷惑施設として廃棄物処理施設をとらえられてしまいます。自治体の方で十分な審査を経ることなく、設置予定の付近の住民から行政の審査行為差止を求めるということになりますと、施設設置の手続に著しい遅延を来す恐れが予想されると思います。
 処理施設の逼迫、それが間接的にやはり不法投棄の増加の誘因になるということも考えますと、この点このような意見を申し上げさせていただかないといけないと思っております。
 最後の点ですが、第2−6−(1)の「原告適格の拡大」についてであります。論旨は先ほどと同じですが、一般的に迷惑施設としてこの産業廃棄物処理施設はとらえられてしまいますので、個別具体的に法律によって保護すべき利益といいますか、そういったものがある程度明確に基準として設定されていなければ、原告適格ということが無制限に拡大される恐れもなきにしもあらずという点を留意すべきではないかと思っておるわけです。
 廃棄物処理施設の設置許可を巡り多数の取消訴訟ということで、これは具体的には操業停止等の請求の訴訟ですが、現在私どもが把握しているのでは、約五十件ほどございます。近隣住民の理解を得るプロセスには、法的にそれなりのものを廃棄物処理法の中で今、設定しておりますので、こういった原告適格の拡大ということが、先ほど申し上げたような基準の設定ということがなければ、私どもとしては施設の計画的な整備が滞ることになるのではないかと。全国の処理施設の逼迫を今後見通していきますと、その点が心配であるということを申し上げさせていただきました。
 以上でございます。

【塩野座長】他に何かそちらの方でございますか。

【説明者(笹谷広報課長)】説明は以上でございます。

【塩野座長】それでは、今の御説明に従いまして、廃棄物処理施設と両方一緒でよろしゅうございますね。適宜お答えいただきたいと思います。それでは、どうぞどなたからでも。

【福井(秀)委員】今、後ろの方で御説明になった、5ページの原告適格の問題です。50件ほど取消訴訟があるということだったのですが、判決での原告適格の判断は今までどうなっているのかということと、行政解釈として、現行法ではどういう人に原告適格がありと考えておられるのか、あるいはないと考えておられるのか、ということについて教えていただけますか。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】最初の方のお尋ねの件については、今、具体的に手持ちに数字がなくて申し上げられないんですが。

【福井(秀)委員】認めた例はあるのでしょうか。

【随行者(森廃棄物・リサイクル対策部企画課課長補佐)】済みません。それは調べさせていただきます。ただ、この52件でございますが、中には人格権を基に訴訟の差止めを求めている民事訴訟もございます。ですので、すべてが取消訴訟ではないことを付言させていただきます。

【福井(秀)委員】行政庁としての解釈は。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】後者の点ですが、すべて網羅的に申し上げにくいんですが、例えば最終処分場が設置されて、それから管理型処分場というと水処理をした水が排水されるということになるんですが、例えばの事例ですけれども、想定されやすい事例としては、下流で農業用水として利用しているとか、そういったものとか、処分場をつくることによって地下水が影響を受けて、井戸水が従来通り利用できなくなるといったようなことが想定されると思いますが。

【福井(秀)委員】それは原告適格ありだと現行法でも考えておられるわけですか。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】そこは、今、定性的に申し上げたので、これまでの判決等の中でそれがどう整理されているか、ちょっとそこまで今は。

【福井(秀)委員】要するに、今の判例なりおっしゃったような解釈が広がるのは困るという意味ですか。今の範囲は妥当で、それをもっと狭めてくれというのか、同じでいいというのか、あるいはもう広げてもらう部分は一切ないというのか、その辺りの意味がよく分からなかったのです。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】例えば、最終処分場の問題というのは、ここ、あそこということではなくて、共通の大変深刻な問題があって、例えば付近に住んでられない方であったとしても、考え方としてこういった処分場、例えば安定型の処分場は、例えばコンクリートがらとかと入れて、普通は問題にならないものなんですが、そういったものの廃止を求めるという考え方の方がたくさんおられたりなどしまして、我々としては基準が満足されている限りは問題が起きないという、技術的にも証明できると思っているんですけれども、そういった付近で、先ほど申し上げたような利水者以外の方で訴訟を提起されるということがあるのではないかと思っているわけです。

【水野委員】3ページの差止め訴訟ですが、これは行政の行為の差止めを求める訴えが提起できるとしたとしても、行政が停滞するとか、そういうこととは必ずしも結び付かないと思います。つまり、それは民事訴訟だってやれるわけですから、行政行為の差止めを求める訴えを認めないという理由にはならないと思いますので、一言申し上げます。
 一番最後の団体訴訟の件なんですけれども、これは自然環境の分野でB案に基づく団体訴訟を導入することについては、どちらかというと消極的であるということですね、結論は。その理由は、原告・被告間の具体的な争訟事件の解決を目的とする司法権によることが適当かどうか、これが理由なんですか。その意味がよく分からないんですけれども。
 つまり、ある処分がなされて、それが違法だと言って争いになる。そのときに、環境に関心を持っている団体が、原告適格が認められて裁判所に訴え出て、裁判所が違法かどうかを判断しようじゃないかというのが今の考えられている制度です。だから、まさに裁判所で違法かどうかを判断してもらうしかないわけで、だからそれがそもそも司法権の場でやるのはおかしいのではないかというのは、ちょっと理解できないのです。

【説明者(笹谷広報課長)】補佐からお答えさせていただきます。

【随行者(小笠原大臣官房政策評価広報課課長補佐)】どういう範囲の者を原告、あるいは利害関係人として選ぶのかという考えがなかなか難しいのかなと、その辺りが我々としてまだよく理解していないのかなということでございます。

【水野委員】では、2段目にむしろこうした問題は、事前の行政的な手続でいろいろやったりして、そこできっちりやる方がいいと、それは行政側としては分かります。だけど、それをやってもなおかつこれは違法なんだとだれかが言っているときに、それを違法かどうかは裁判所が決めるわけですから、裁判所以外に決めるところはないではないか。だから、それはまさに司法権によって決めてもらうべきではないかと。
 そこで、だれが裁判所に持ち込むのかといったときに、環境問題については、個々の人がやるのがいいのか、あるいはある程度団体が形成されている場合には、それに適した団体が持ち込むという方がいいのではないかという議論なんです。
 だから、むしろ環境省は大いに賛成だというお答えが出てくるんじゃないかと期待していたのですけれども。

【随行者(小笠原大臣官房政策評価広報課課長補佐)】その辺りも含めて、我々も団体訴訟が何なのかというものの理解もまだ十分しておりませんので、その辺りも含めて考えていきたいと思います。

【水野委員】特に自然環境の分野は、そういうものに向いている分野ではないかというのがずっと言われているわけで、是非積極的なお考えをお願いしたいと思います。

【説明者(笹谷広報課長)】今の水野先生のおっしゃることは、司法権の判断のありようについて我々がどうこう言うという趣旨で書いたものではないので、そういう印象を与えるとすれば、ちょっと文章の書き方のまずさがあるとは思うんですが、我々がむしろ言いたかったのは、今、戦略アセスという新しいやり方も導入しつつあって、環境省としては一生懸命そのありようについて今、勉強中でもあり、むしろそういう形の中で関係者間の合意形成を図っていくという手法を進めているものですから、行政側のそういう後段の方の進め方について、こういう場でも御理解をした上で御判断をいただければありがたいという趣旨が強うございます。
 それから、特に希少動物の保護のような行政の部分は、なかなか難しい分野でありまして、その辺について判断する際に、どの程度の原告適格の広がりを認めていくかというのは、非常に難しい分野ではなかろうかと、私はこの分野の専門家ではありませんが、いろいろ事前にヒアリングを原局の自然保護局というところで行った中では、いろんなパターンが起こっておりますが、非常に難しいと。ハンドリングと関係者がみんな納得するという仕組みが非常に難しい部分があるという中で、これが訴訟の権利という形で動く場合に、いろいろ前段として考えなければいけないことが難しいなと思います。
 ですから、先ほどの戦略アセスメントのようなアプローチで行政がアプローチしている経験なども少しこういう場で御披露した上で御判断いただいてはいかがかと、こういったような。

【水野委員】行政のいろんな立場はよく分かるのです。しかし、ここで議論しているのは訴訟の話なんで、だから今の希少動物の保護に関する法律に違反して、違法な何らかのことが行われていると。当然環境省さんがチェックされるということになるのだけれども、しかしそれが例えば不十分であったりしまして、だれかがそれを裁判に持ち込むと。ところが、残念ながら希少動物はやれないわけですから、そうするとやはりその保護を日ごろから関心を持ってやっていた団体に原告適格を認めて、その団体が裁判所に持ち込んで、それで裁判所で違法かどうかを最終的にチェックしてもらうと、そういうシステムを導入するべきじゃないかという議論なんですね。

【説明者(笹谷広報課長)】我々もそれは絶対なじまないとか、そういう御提案について反対だということではなくて、役人言葉で恐縮でございますが、慎重な検討というのは検討すべきテーマと課題がかなりあったので、それを個別列記をするというよりは、我々の行政の目から見ていろんな判断要素が必要であるなという含みを書かせていただいております。

【水野委員】私の希望は、環境省の方で是非積極的な検討をお願いしたいということです。

【萩原委員】私、今まで環境省というのは、国民にとっての環境をとにかく最優先で守ろうとする唯一の省ぐらいに思っておりましたが、今日のお話をお聞きすると、非常に他の省と同じように、訴訟を受ける側の被害者的な意識を非常に感じて、非常に残念に思っております。
 この原告適格の拡大のことについても、非常に否定的なんですが、例えばもし否定的であったとして、現実の今の条文がそのまま生かされたとしたときに、これまでにいろんな環境保護の運動をやっている方々からの、いろんな意見として、特に法律上保護された利益説というところに引っかかって、原告適格なしということで門前払いをされていることに非常に不満があったと。そのときに、もし環境に関して個人の有する利益的なものが明確にどこかで明示されていれば、かなり裁判の過程でそれが考慮されて、原告適格として少なくとも認められ、本案にいってそれが勝訴するか、それはまた別の問題ですけれども、少なくとも原告適格ということで門前払いにはならなかったケースが幾つかあると思うのです。
 とすると、このときに保護された利益ということを本当に考えなければいけないのは環境省ではないかと思うのです。国民にとっての守られなければならない環境に関する利益とはどういうものであるか、だから積極的にある意味ではこの原告適格というものは何ぞやということを一番環境に関して言えば、考えなければならないのは環境省だと思うのに、何か今日の話を聞いていると否定的な意見であるということは非常に残念に思います。
 それと、戦略的環境アセスメントということをおっしゃって、確かにそれが現実に動いていることは確かなんですけれども、ではどうしてこの産業廃棄物処理場の場合にそれを適用して、利害関係者の調整プロセスをやらないんですか。実際にごみ処理場で、具体的な名前は挙げませんけれども、県レベルでやっているところもありますね。
 例えば、そういうことをして、もう少し解決の手立てを考えるということがあってもしかるべきではないのかと。ですから、ここの自然環境の保護の方については、戦略的環境アセスということが出てくるんですけれども、個人の場合、原告適格のときにそれが出てこないというのも何かおかしいという気もいたします。

【塩野座長】最初の方は御意見だと思いますけれども、後の方の戦略的環境アセスメントの点、どうぞ。

【説明者(笹谷広報課長)】戦略アセスメント自体は、これは別に自然保護の局面だけでやるものではなくて、資料の整理が若干そちらの方を強調させていただいただけでありまして、戦略アセスメント自体は環境省が中心となっていろいろ研究を進め、また関係省庁にもいろいろ働きかけをしまして、試行的に展開中でございますので、いろんな施設に関して実験適用しているような状況でございます。
 例えば、廃棄物処理施設の建設にあたっても、そういうものをどういうふうに適用していったらいいかというのを、都道府県と相談しながら検討中であるという状態で、今はまだすぐに動いている状況ではなくて、どういうふうに動かすかに当たって、当然いろんな施設、処理施設も含めていろんな施設のありようにも適用できるような戦略アセスということで考えております。
 ですから、ちょっとこの資料の整理の仕方が若干、両方に書いておいてもいいような話であろうと思っております。
 なお、戦略アセスメントにつきましては、海外の動向もかなりいろいろ動いておりますので、それらも情報収集をしまして勉強に努めているという実態でございます。

【塩野座長】では、一応今のお答えということで。

【福井(秀)委員】原告適格の補足ですが、今の判例と運用なりで、どの人にありとかなしというのを是非具体的に教えていただきたいということと、実際に主な検討事項の中でいろいろな案がありますけれども、どの案を取ったときに、例えばどれが含まれる、あるいは含まれないということになるから、いいのか悪いのか、ということも併せて後ほど是非教えていただきたいと思います。
 もう一つは、やはり基本的によく分からないのは、廃棄物処理施設は迷惑施設だという非常に強い御自覚を持っておられるわけですね。迷惑であればあるほど、普通の感覚で言えば、司法的救済の必要性も高いというのが通常の感覚だと思うのですけれども、おっしゃること全体を通してみると、迷惑施設だからたくさん裁判が起こるのは困るということを強調されているように思うのです。果たしてそういうロジックになるのでしょうかということをお聞きしたいのです。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】私自身は、自身が産業廃棄物の仕事をしているせいもあって、今の基準が守られるものであれば、その設置について反対を唱えるものではないという個人的考えを持っておりますけれども、先ほど申し上げたとおり、これまで悪質な業者による不法投棄などもありまして、私は思いますけれども、一般にはやはり自分の隣の庭に来てもらいたくない。ニムビー(NIMBY)という現象があるというのは、私自身の認識でというよりも、いろいろな方のお話を聞くとそう理解せざるを得ないと私は思います。

【福井(秀)委員】だから、迷惑であるならなおさら適法に設置してほしいという、近隣住民の利害は強いのじゃないですかという趣旨です。おっしゃっていることはむしろ逆で、迷惑であるからたくさん近隣住民から裁判が起きる。だから、原告適格を広げるべきではないとおっしゃっていますね。

【説明者(森谷産業廃棄物課長)】私どもの主張は、そこだけとらえられるというよりも、個別具体な保護法益といった一定程度明確な基準というところが大事だと思っています。ですから、先ほど判例について具体的に示してもらいたいというのは、そういう意味では私どももその点はきちんと勉強して、具体的な基準というのが一体どういうものであるかというのを考えていかないといけないと思います。

【随行者(森廃棄物・リサイクル対策部企画課課長補佐)】ちょっと付言させていただきますと、最高裁レベルでの判例が出ているかについては、承知していませんし、私どもも全て争訟当事者となっているわけではないので、判決例のようなものをちょっと勉強させていただきたいと思います。
 あと、これは都道府県が被告になっておりまして、私どもが必ずしも被告になっているケースではございませんので、できる限りでということで検討させていただきたいと思います。

【水野委員】1点だけ、要望ですけれども、萩原先生がおっしゃったことなんですけれども、この検討会で行政訴訟の改革をやっている理由の1つは、現代型行政訴訟に今までの制度は対応できていないと、その1つが環境行政訴訟なんです。ですから、そういう意識でやっていますので、環境省に是非それをお考えいただきたい。
 その解決方法は2つあって、1つは、今、検討している行政事件訴訟法を改革すること。もう一つは、いろんな個別法に訴訟条項を入れてもらうことなんです。例えばアセス法のときだって、日弁連なんかはアセス法には訴訟条項を入れるべきだと言ったけれども入らなかった。これは他の省庁の所管の法律もありますから、環境省だけではいかない部分もありますけれども、是非そういう方向もお考えいただきたいという要望を申し上げておきます。

【塩野座長】今、水野委員がおっしゃっている趣旨は、なかなか横並びでこういった団体訴訟とか、そういったものについてはなかなか出ないのですけれども、飛び出るとすると環境省かなという気持ちを皆さんお持ちだったものですから、それが一向に飛び出ないので心配だなということですが、私もドイツか何かのあれから見ても、やはり団体訴訟はたしか環境保護が。

【山本外国法制研究会委員】自然保護が唯一の立法例です。

【塩野座長】もしそこが資料がなければ、専門家がいますので、いつでも御用立てに応じます。

【説明者(笹谷広報課長)】にわか勉強で恐縮でございますが、ドイツの例は勉強してまいりましたが、まだなかなかドイツの状況と日本の状況、関係者の意識、それから各主体の状況の把握において、すぐに検討可能かどうか、ここは専門家が少し検証するべきだなという感じがしておりましたので、先ほどあえて触れておりませんが、原局、関係局では勉強している状況にあります。

【塩野座長】余り狭い範囲で勉強しないでくださいね。

【小早川委員】しり馬に乗ってですけれども、勉強されるのであれば、日本の場合についても、原告適格を広げると環境省の処分なり何なりについて攻められるという被害者意識だけではなく、環境省以外の各省の所管する領域においても環境問題は幾らでもあるわけなんで、そこで今の行政訴訟がどれだけの役割を果たしているのか、いないのかということをお調べになって、環境行政の手法としての行政訴訟の位置づけということを環境省としてももっと攻撃的に調査研究して何か方向を打ち出されると。それで、その先にまた団体訴訟の話も出てくると思います。是非前向きにお願いしたいと思います。

【塩野座長】御決意のほどを伺いますか。ひとつよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。
 あと事務的なことについて御連絡いただきたいと思います。

【小林参事官】次回は9月5日です。更に論点を詰められるように準備いたします。

【塩野座長】ただ、今日と昨日のヒアリングのあらましのようなものは、皆さん克明にメモを取っておられるわけではないので、なるべく早い機会にお回しいただきたいと思いますが、それは大丈夫ですか。いろいろ忙しいと思いますけれども、とにかく夏休み中には配られるようにしてください。
 それでは、以上で本日の会議は終了いたします。どうもありがとうございました。