【塩野座長】 それでは時間になりましたので、第22回行政訴訟検討会を開会いたします。まず、事務局から本日の資料について説明をお願いいたします。
【小林参事官】お手元の第22回の次第にございますように、議題は7月24日、25日に実施しました行政官庁等からのヒアリング結果につきまして、事務局の方から資料1で概要をまとめたので、そのポイントについて御報告をし、意見交換をお願いしたいと思っております。なお、委員からの御意見、御質問に対して、各省から資料2でお答えをいただいております。それから、当日は、意見を出していただかなかった防衛庁につきましても、改めて検討していただいて、御意見を出していただいております。全国知事会につきましても、各団体から出てきた意見についてまとめて資料を作って出していただいておりますので、是非、御参照いただければと思っております。
それから、私どもの方で実施いたしました国民からの意見募集につきまして、資料3−1にまとめてあります。後ほど御説明しますが、資料3−1に概要、資料3−2に主な項目、資料3−3に意見募集結果の全体についてまとめてございます。たくさんの方から非常に幅広い御意見をいただいております。是非、御参照をいただきたいと思っております。したがいまして、本日については国民からの意見募集の結果についても報告をした上で意見交換をお願いできればと考えております。
本日の議題については、以上のように考えております。
【塩野座長】今の参事官からの説明にありましたように、今日は6月から8月にかけて事務局で行いました国民からの意見募集結果の報告、それから7月に行いました行政官庁等からのヒアリングの結果、これらのいろいろな新しい情報を踏まえて意見交換を行いたいと思います。
前に申し上げたことがあるかもしれませんが、パブリックコメントの一番の大事なところは我々の気が付かなかった論点、あるいは気が付かなかったような物の見方、そういうものが出ていれば大変有り難いということでございますので、今日もそういう角度からの御説明があると思いますし、またそれに触発されてこういう見方もあるのではないか、あるいはこういう論点もあるのではないかというようなことがあれば、委員の皆様からも閃きのほどを伺わせていただきたいと思うわけであります。
それではまず、事務局において6月30日から8月11日までに行いました国民からの意見募集の結果、さらに7月24日、25日の両日に行われました行政官庁等からのヒアリングの際に委員の皆様から御指摘があった事項について、各行政官庁等から追加資料をお出しいただいております。そういうことで、まず事務局から簡単に御説明をいただきます。
【小林参事官】意見募集の結果につきましては、資料3−1の概要を御覧ください。この意見募集は、8月11日まで実施し、全体で151の御意見をいただいております。意見提出者につきましても、118の個人と、33の団体からの御意見をいただいておりまして、意見提出者の年代についても幅広くございます。また、職業別の内訳につきましては、大学教員の方を含む教員の方から27名、弁護士の方から21名、行政書士の方から11名、それから学生、公務員の方、税理士の方、その他さまざまな方から御意見をいただきました。
報告につきましては、資料3−2に主な項目をまとめていますので、これはかなり膨大になりますので、後ほど論点別にある程度分けて、行政官庁からの意見も論点別に分けて、内容の大まかなところだけでも御紹介できればと思っております。
それから、資料2の各省庁からの追加資料ですが、御覧いただきますとお分かりになりますように、人事院、内閣府、公正取引委員会、警察庁、防衛庁、総務省、法務省、財務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、会計検査院、全国知事会、東京都総務局法務部、最高裁判所の資料となっております。これらの中で、主要な新しい項目については別途、先ほどの概要資料の中に盛り込んでまとめていますので、それで併せて御紹介したいと思います。特に、防衛庁の方は、前回のヒアリングでは資料は出ておりませんでしたので、改めて御検討いただければと思います。
【塩野座長】それでは今、参事官からお話がありましたように個別の検討事項については若干グルーピングをしながら、もう少し具体的な内容にわたって説明があると思います。そのときに個別の検討事項についての御意見、あるいは御質問等を承ることといたしまして、まずは全体について何か、御質問あるいは御意見等があれば承りたいと思いますが、こういった国民からのパブリックコメントも大分慣れてまいりましたけれども、この際何か御注意いただくこと、あるいは御質問があれば承りたいと思います。
私からの確認ですが、もの自体はどういうことになりますか。
【小林参事官】ファイルして委員の方に御参照いただけるように用意していますので、事務局においでになったときに御覧いただければと思っております。
【塩野座長】何か意見を書いているときに、こういうクエスチョネアでは適切な意見も書けなかったではないかというお叱りでも、どこかで聞いておられましたら、そういった類いのことでも結構でございます。
【水野委員】これは前にも申し上げたとおり、回答しにくいペーパーだったと思うのですが、それにも拘らず、かなりのご意見が出されたということで、この151というのがどういう形で意見が分かれるか分かりませんけれども、私はこういう難しい問題に、しかも難しいペーパーに対して、これだけの回答があったということは私自身、予想外に思っております。まだ、詳しくは全部目を通していませんけれども、大体の回答は抜本的な改革をしてほしい、国際的に恥ずかしくない改革をしてほしい、あるいは新法を作ってほしい、こういった意見がかなり目につきましたし、各論点に渡っても積極的な御意見が多かったのではないかという印象です。それで改めて、検討会の一員として責任の重大さを痛感したというのは率直な感想でありまして、こういった御意見を受けて、何とか抜本的な国際的に恥ずかしくない改革を実現したいと、改めて思った次第であります。
【塩野座長】成川委員は、この質問事項はあまり適切ではないというご感想を前に承ったような記憶がありますが、その後何か御感想等ありますか。
【成川委員】特にありませんが、初めてというか、こういう率直に問いかけを受けて、読んで答えるということでは、日頃からこういう問題に関心を持って考えていない人にとっては大変難しい問題だったと思っております。組合的にも私以外の人間にもいろいろ検討させたのですが、なかなか具体的なことだと難しいという印象を持っております。いろいろと意見を言って頂いておりますので、参考にさせていただきたいと思います。
【塩野座長】それでは他になければ今のようなことで、概略の話はここに書いてございます。ものについてはどうしても知りたいという人は御覧いただきたいということでございます。
それでは先ほど、参事官からも御案内がありましたように多少項目をグルーピングした上で中身についての御紹介があります。その度ごとに、この論点についてどう思うか、あるいは先ほど申しましたように、こういう論点があるならば、自分としてもまたこういう論点もあるのではないかというふうに気が付いたところをおっしゃっていただければと思います。この論点は成り立たないとか、そういった議論はあとから御紹介があるかもしれませんが、今日直ちにというよりは、もう一度、今日の説明をお聞きになり、そして資料をお持ち帰りいただいて御覧いただいた上での、御意見を承るという機会もあろうかと思います。できれば論点の点で色々な意見交換をしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、グルーピングは、そちらにおまかせいたしますので。
【小林参事官】「行政訴訟検討会における主な検討事項」の2ページに目次があるのですが、第1に「基本的な見直しの考え方−権利利益の実効的救済の保障」という項目を掲げております。「第2 具体的な見直しの考え方」という項目を挙げております。
「1 行政訴訟を利用しやすくするための見直し」。
「2 審理を充実・迅速化させるための方策の整備」。
「3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」。
「4 権利利益の救済を実効的に保障するための多様な救済」。
「5 取消訴訟の対象、排他性、出訴期間」。
「6 原告適格、自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限、団体訴訟」。
「7 審理手続・証明責任・判決、裁量の審査」。
「8 費用の負担、行政不服審査法等の他の法令との関係・個別法上の課題」
これらのうち、第1と第2の1、それから3、4、5、ある意味で救済の枠組みのようなところ、そういったところをひとまとまりにまず御説明した上で、第2の2は、救済をするときの資料をどうやって充実させていくかということで、この救済をやっていくための中身の問題ということで、原告適格以降と、その審理手続の中に入れまして、2の方は別途そちらの方で後半に御紹介をさせていただいて、その間ぐらいに休憩をとっていただければと考えております。よろしいでしょうか。
(委員から異論なし)
それでは、まず資料1「行政官庁等からの意見の主な項目」に基づきまして、順次御説明したいと思います。
「第1 基本的な見直しの考え方」につきましては、1ページの1にございますように「行政と司法の機能分担に関する基本的な考え方を踏まえる必要」があるという総務省の御意見がございました。2も同じく、総務省から「行政活動が、その意思形成や執行の過程において、多種多様な利害を調整しながら行われていることに留意する必要」がある、というような意見がありました。3の国土交通省からは、「国民全体の利益衡量に充分留意することが不可欠」であると、このような御指摘をいただいております。
「第2 具体的な見直しの考え方」の「1−(1) 被告適格者の見直し」につきまして、「第1 被告とすべき者」は、処分又は裁決に係る事務の帰属する行政庁とすべきか、処分又は裁決をした行政庁とすべきかという問題がありまして、「「処分又は裁決に係る」との概念はあいまいであり、誤解を招くおそれがあるので、「処分又は裁決をした行政庁が帰属する」とする方が、国民の便宜を図る観点から望ましい」という御意見が全国知事会から出ました。その下の項目も関連するわけですが、「市町村から県への道路事業の代行事務のような事例を想定した場合、「処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は地方公共団体」だと市町村となり、「処分又は裁決をした行政庁が帰属する国又は地方公共団体」だと委託を受け事業(処分)を行なった県となるのであれば、後者が妥当」という意見が全国知事会から出ております。したがいまして、6にありますように、事務委任や事務委託をしている場合、我々としては、機関委任事務等はなくなったものですから、余りそういうことを考えていなかったのですが、その委託元になるのか、委託先になるのかという点についての整理をしなければならないという問題が提起されて、またこれは新たに検討しなければならないのではないかと思っております。
「第2 国の代表者に関する法的手当の必要」です。これは、7にありますように、最高裁判所の処分、それから国会、衆議院、参議院の行った処分につきましてはどうなるのか、それから公正取引委員会や、あるいは公害等調整委員会のように独立性の高い機関が行った処分、そういったものがあるのではないかという問題がございまして、そういった三権分立の観点で、最高裁判所が例えば職員に対して懲戒処分をすると、今では最高裁判所の長官が行政庁になって当事者になると思うのですが、国を当事者としてしまった場合には、法務大臣が代表するのかという問題になりますので、それでいいのかどうか、むしろそうでないとすれば、国というのは一体、こういう訴訟の場合は誰が代表すべきなのかということをきちんと整理する必要があるのではないか、その点を明確にした規定が現在ないものですから、その点を明確にする法的手当が必要である、こうした指摘がございました。
「第3 地方公共団体の議会との関係」です。「地方議会のした議員の除名処分に関する訴訟については、地方議会に被告適格を与えるべき」という意見が総務省から8に出ておりまして、それから地方自治法との関係で、9にありますように、「地方公共団体の上訴等に議会の議決(第96条第1項)が必要となるが、この規定の見直しが必要」という意見が、全国知事会から提起されております。したがいまして、地方公共団体におきましても、こういった行政処分に関する訴訟で、しかも議会に関わる問題を整理する必要が生ずる、またその代表をどうするか今後検討しなければならないということになります。
「第4 訴状に行政庁を記載させる訓示規定を設けるなど行政庁の特定の手当て」ということで、10で法務省等から言われていることですが、「訴状において処分行政庁を明記することが請求を特定する上で有益であるし、行政庁の特定がされないと、被告側において迅速に応訴対応することが困難な状況も想定されるので、訴状に行政庁を記載するものとするとの訓示規定を設けるなど、何らかの手当てを考慮する必要」があるとの意見が出ております。
「第6 行政不服審査法の不服申立ての相手方」は、12で、総務省から「行政不服審査法においては、行政事件訴訟における被告適格の見直しに連動して、不服申立ての相手方を行政主体に改めることは適当でない」という御意見が出ております。
2ページの「第2-1-(2) 行政訴訟の管轄裁判所の拡大」です。
「第1 行政コスト・円滑な訴訟運営の考慮」についての御指摘がございました。13では、「原告の利便と、効率的な訴訟対応のための行政コストを勘案する必要。B案の場合、行政コストが大幅に高まることが予想されることから、高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所への訴えの提起を認めるA案が望ましい」という意見が外務省、財務省から出されております。14では、「管轄を拡大した場合、期日調整が困難になるなど訴訟事務の円滑な実施が困難になり、審理がかえって長期化するおそれ。国の行政機関でも全国に拠点を有していないものについては、更に検討が必要」という意見が出されております。
「第2 土地に着目した処分、地域の事情に密着した処分等に係る訴え」についての問題が出されております。15では、農林水産省と、国土交通省から御意見が出ているのですが、「土地に着目した処分等に係る訴えについて、原告の住所地で訴えを提起することができることとすることについては、慎重であるべき」という御意見が出ております。16は、「地域の事情に密接に関係した処分については、関係者や関係機関の協力を得て審理を尽くす観点から、原告の居住地を管轄する裁判所への提訴を認めることが合理的か否かについて検討を行う必要」という意見が財務省からあります。財務省からの意見には注が付いておりまして、税務署というのは多数全国にある、そういったところの行う処分はどう考えるのか、という問題提起でした。
「第3 管轄の集中化との関係」で、17で経済産業省から、「特許等に関する訴訟については、従来どおり、特許法等に基づく管轄の集中化を維持すべき」との御意見が出ております。18では、「公正取引委員会の審決に係る訴訟、公害等調整委員会が鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律に基づき行った裁定(以下、単に「裁定」という。)及び裁定申請の却下決定に対する訴訟については、東京高等裁判所の専属管轄に属する。管轄を拡大することが相当でない事件について検討を要する」という御指摘が出ております。
「第4 地方公共団体、地方公社、特殊法人、独立行政法人」は、事務局の方でも問題の所在は検討事項の中でまとめていたのですが、これにつきましては、警察庁や総務省、あるいは全国知事会から19で、「地方公共団体を被告とする訴訟については、土地管轄を拡大すべきではない」という意見が出ております。それから、農林水産省から「地方公共団体や土地改良区等を被告とする訴訟については、無条件に原告の住所地での訴えの提起を認めると関係権利者等利害関係者や地方公共団体の負担の増と迅速な審理の妨げにつながることが懸念される」という御意見が出されております。国土交通省からは21で、「地方住宅供給公社等の地方公社や全国に拠点を有しない特殊法人・独立行政法人には過剰な負担」になるとの問題の指摘がございました。
「第5 同種の訴訟の移送規定の整備」についても、検討事項で問題を指摘していたのですが、これは22で、法務省、経済産業省、国土交通省、防衛庁から「同種の訴訟について、行政庁の所在地における同一の裁判所で行うことも可能とするよう、移送の規定を整備することを検討すべき」。関連する請求として、あるいは民事訴訟法では併合ができない場合があり得るのではないか、その場合の移送の規定について考えるべきではないか。あるいは行政庁の所在地にも移送していくことを考えるべきではないか。民事訴訟法では足りない移送の規定を整備するべきだという意見が出ております。
「第2-1-(3) 出訴期間等の教示」の、「第1 教示の相手方」です。教示の相手につきましては23で、「教示の相手は、その範囲を明確にするために、処分等の相手方に限定することが必要。第三者に教示を行う場合には教示を行うべき第三者の範囲について明確にする必要」という意見が出されております。24では、「処分時点での教示の対象を処分の相手方以外にも拡大する場合、利害関係者に教示を求められた際に教示することが適当」という御意見が出されております。
教示の対象となる処分につきましては、25のところで「法務省から教示義務の対象となる処分は,書面でするものに限るべき」、このような意見が出されております。
「第3 職員の任用に関する処分の除外」として、人事院からは「転任、配置換等の任用は、職員が著しく不利益な処分を受けたと思料する場合には処分説明書の交付を請求することができ、処分説明書に不服申立をすることができる旨及び不服申立期間等が記載されている。採用、昇任、転任、配置換等の職員に対する処分について、教示義務の対象とする必要はない」という御意見が出ております。
7ページ「第2−3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」について、御説明します。
「第1 執行停止の要件の緩和」は、53にありますように、経済産業省からは「国民の安全確保や電気・ガスの供給確保など、公共の福祉又は公益に関わる事案については、現行程度の執行停止要件等を維持すべき」という意見が出ております。54では、「個別法において処分に先だって住民合意に係る一定のプロセス・ルールが定められている場合には、現行程度の執行停止要件等を維持すべき」という経済産業省からの意見がございます。55のところで、「公共事業の施行について執行停止を認める場合には、事業の目的である公益の早期実現が困難となり、原告以外の多数の者に不利益を与えることとなるため、要件を緩和すべきではない」という意見が国土交通省から出ております。次が農林水産省の意見で、56におきまして、3行目のところで「農地の違反転用に対する工事停止命令等における執行停止により原状回復が困難になること、土地改良事業においては、執行停止が一部の反対者による反対運動の手段として利用され、事前調整手続を設けた意味がなくなるおそれがあること、さらに、公共事業の施行について執行停止により、事業の目的である公益の早期実現が困難となり、原告以外の多数の者に不利益を与える可能性がある」、こういった御指摘がございました。
「第2 第三者の不利益の考慮」の問題で、58で、経済産業省と全国知事会からは、「執行停止の要件を緩和する場合にも、要件として第三者に及ぼす不利益を考慮するとともに、執行停止要件の判断過程において利害関係者の意見陳述を可能とすべき」、こういう意見が出ております。
「第4 暫定的な執行停止制度による公益に対する影響」について、61に警察庁の御意見ですが、「道交法及び公安条例に基づく許可処分は、申請から集団行動が実施されるまでの時が極めて切迫しているから、「一定期間経過後に処分の執行力が発生するとの制度」や、「暫定的な執行停止制度」が導入されれば、公安委員会が付した条件が実質的に意味をなさないこととなる」という意見が出されております。
8ページで、「一律に一定期間経過後にしか処分の執行力が発生しないようにすべきという考え方や、処分が執行された場合に原状回復が不可能なときには、執行停止の要件の有無を厳格に審理することなく一旦執行を停止して、緊急にその要件の有無を審理する暫定的な執行停止制度を導入すべきであるとの考え方が採られると、例えば、退去強制令書及び収容令書について暫定的に一定期間執行力が発生しないとされれば、在留資格のない外国人の収容が不可能となり、逃亡を防止することができなくなるおそれがあるし、公安審査委員会が、暴力主義的破壊活動や無差別大量殺人行為を行った団体に対してする各種の処分についても、これを適時適切に執行することができなくなれば、公益に著しい支障を及ぼすおそれがある」という意見が法務省から出されております。さらに、農林水産省から64で、これは先ほどと同じように「農地の違反転用に対する工事の停止命令や保安林の指定処分等について、執行停止がなされると、執行停止が撤回されるまでの間に開発工事や立木の伐採が進行してしまい、原状回復が困難となる。また、関係農家の3分の2以上の同意があれば実施できることとされている土地改良事業について、一部の反対者が納得するまでは工事が事実上実施できないこととなってしまい、関係農家の権利、利益を損なうおそれがある。このため、特に暫定的な執行停止の導入については、慎重な検討が必要」という御意見が出されております。
「第5 執行停止決定に対する不服申立ての在り方(内閣総理大臣の異議の制度)」です。65で、警察庁から「内閣総理大臣の異議の制度は、現行のまま維持されることが望ましく、本制度の見直しについては、極めて慎重な議論が必要。仮に、本制度を見直す場合であっても、その廃止を結論とすべきではなく、例えば、現行の異議を申し立てることができる要件を更に限定して「公共の福祉に著しく重大な影響を及ぼすおそれがある」場合とする、あるいは、異議陳述の場面を執行停止に関する決定がなされた以降に限定することにより、裁判所の判断をより尊重した取扱いがなされるよう配慮するなどの観点からの見直しを検討すべき」、こういう意見が出されております。次に、66で「内閣総理大臣の異議の制度を廃止し、かつ、執行停止決定の執行を一切停止することができない制度とした場合には、公益を著しく害することになる事案が生じるおそれがないかの検討が必要。公共の安全や秩序の維持に関する処分について、特別の配慮が必要ないかを検討すべき」という意見が法務省、財務省から出されております。次に、追加で出てきた防衛庁の意見の中に、67で「条約上の義務を的確に履行するという極めて高度の公益的要請を満たすため、法に基づく手続の履行を確保する手段として内閣総理大臣の異議申立制度を存続する必要」という意見が出ております。それに伴って、68で、農林水産省と全国知事会からは、「執行停止決定等に対する即時抗告に執行停止決定等の執行を停止する効力を持たせることも検討する必要」という意見が出されております。
さらに、「第6 仮処分に類する仮の救済」についての意見ですが、これは具体的な事例を踏まえた問題の指摘がございまして、9ページ、71で、外務省から「旅券の発給について言えば、一旦仮の救済が認められれば、犯罪人が国外に逃亡するというような、回復不能な結果を招く危険がある。本案判決前の仮救済制度については、導入する場合は、仮の救済による結果が事後的にも回復可能なものに限定することが必要」という意見が出ております。73で、農林水産省からは「農地転用不許可処分に対して仮に農地転用ができることとし、工事が行われた場合にはその後の原状回復が困難となってしまう。また農薬の登録拒否処分について仮の救済を行うこととした場合、安全性の確保されていない農薬が一般に流通することとなり、国民の健康被害が発生するおそれがある等の支障がある」という御意見が出ております。
第7は、これまでの我々の検討には入っていないのですが、仮の救済制度の対象範囲を個別に検討すべきではないかと、こういう意見が出ております。「仮の救済方法の整備に関しては、処分ごとに影響が異なることから、一般的な規定として仮の救済方法を定めるのではなく、処分ごとに検討すべき」という意見が財務省から出ておりまして、逆に75では、「処分の性質を勘案して,仮の救済制度の適用除外をすべき処分がないかを検討する必要」というような意見が、法務省、厚生労働省からは出ております。具体的には、76の項目で、人事院からは「職員に対する分限処分及び懲戒処分については仮の救済の制度の対象としてなじまない」、こういう意見が出ておりました。
10ページ「第2-4-(1) 行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」で、「第2 行政の作為の給付(義務付け)を求めることができる場合」に、82で、総務省と財務省と全国知事会からですが、「一義性の要件、緊急性の要件、補充性の要件の3つが充たされることが必要。行政事件訴訟法における事後訴訟中心主義は維持されるべきであり、行政の作為の給付(義務付け)を求める訴えを認めるとしても、行政庁が判断する前に司法が判断するのは例外的な場合に限って認められるべき」との御意見が出ております。裁量処分との関係で、84で、全国知事会からは、「行政に一定の裁量が与えられている分野において、裁判所が作為の給付を命ずるという司法判断をすることについて適当ではないという意見が多い」とされておりまして、農林水産省からは85で、「指定漁業の許可は、申請内容が法令に合致したものでも、漁業調整上の観点から、申請者間で優劣をつけ許可・不許可を判断する。このように行政庁に裁量の余地のある処分については、行政の作為の給付(義務付け)を求める訴えになじまない」という意見が出ております。裁量に関連して、「高度な専門技術的知識を要する分野等においては、給付(義務づけ)の要否・内容が、法律上、一義的・明確であるような場合に限定すべき」という意見が経済産業省から出ておりまして、これは86です。87は、「電気・ガスなど公共料金については、事業者から届出等がされた内容の変更命令を、行政庁ができる旨規定されており、変更命令の判断基準は法律により規定されている。その基準は事業運営における効率性や需要家の利益等を判断するものであるため、様々な点を考慮して行政庁が命令の要否を判断しなければならない。したがって、裁判所が判断し、様々な考慮すべき点が不十分なまま差し止めや変更の命令が発せられることとなれば、事業制度や料金システム等に混乱を生じ、需要家が不利益を蒙るなどの問題が生じかねない」という御意見が出ております。
これは、かねて論点として指摘していたところですが、11ページで、検討会でも問題になっていたと思うのですが、申請権がない第三者が行政に対して、申し立てた人とは別の人に対して処分をしてくれということを認めるべきかという点に関してですが、文部科学省からは89で、「申請に対する処分等行政庁が何らかの処分を行うことが予定されているものについて、申請権のない者に対して作為の給付を求める訴訟の提起を認めることについては、行政の一次的判断権をも奪うものであり適当でない」。90で、「公共事業など多数の国民に影響を与える行政分野においては、申請に対する処分を行政が拒否した場合に当該処分を求めようとする場合などに限ることとし、不特定多数の者の利害に関係する抽象的な行政行為をすべきことを求める訴えを認めることは不適当」というような意見が出ております。
「第4 第三者に対する処分の義務付けと直接の差止請求との関係の検討」では、第三者に対する処分の義務づけ、今のような第三者から他人に対する処分の義務づけを求める場合と、それから第三者が他人に対して直接に請求する場合との関係をどういうふうに考えるのかという問題がありまして、92で、公正取引委員会からは、「法令に基づく申請権の認められないものに義務付け訴訟を認めるとすれば,独占禁止法に基づく民事上の差止請求訴訟(独占禁止法第24条)との関係(行政処分によらず自己の利益の回復を図ることができる場合)について検討する必要」という御意見が出ております。
そういった公益性とか、第三者に対する影響という観点から、「第5 訴訟参加制度の充実」という意見がありまして、93で国土交通省の方からは、「判決が公益性に重大な影響を及ぼすおそれがあることから、訴訟参加制度の充実も併せて検討することが必要」という意見が出ております。
それから、義務づけ判決の執行につきまして、「第7 判決の執行」の95で、全国知事会から、「作為の給付の判決の執行については、確定した判決に反して作為の給付をしないことはおよそ考えられず、強制執行にはなじまない」という意見が出ております。
12ページの「第2-4-(2) 行政の行為の差止めを求める訴え」ですが、「第2 差止めの要件」というところでは、97で先ほどの義務づけと同じように、「差止めの要件は、一義性の要件、緊急性の要件、補充性の要件を求めるA案を基本とし、その要件を厳格にすべき」という意見が出ております。
「第3 不特定多数の者の利害に関係する行政の行為の差止めは不適当」ということで、99で、「対象を特定の名宛人に対する行政処分等に限ることとし、不特定多数の者の利害に関係する行政の行為の差止めを求める訴えを認めることは不適当」ではないかという意見が出ております。
「第6 敗訴した原告がその後にされた処分に取消訴訟を提起した場合」ですが、「差止訴訟で敗訴した原告が、その後になされた処分について取消訴訟を提起して、同一内容の審理が繰り返されることについてどのように考えるか」という問題が財務省から指摘されてます。
次に13ページ、「第2-4-(3) 確認の訴え」です。確認の訴えは、その必要性につきまして、「第1 確認の訴えの必要性」の105で、「民事訴訟においても確認の訴えは観念的に権利関係を確認することを求めるものであって、対象は元々無限定であるが、訴訟経済を考え紛争解決の実効性を確保するため、確認の利益がなければ訴えの利益を欠くこととしており、確認の訴えが認められる範囲を拡大するだけでは紛争解決の効果は得られない」という指摘が全国知事会からございました。
「第2 確認の訴えが認められる範囲」ですが、108にありますように、「確認の訴えが認められる範囲を拡大する場合には、確認の対象、確認の利益が認められる範囲等につき、法律において、何らかの限定を付さなければ、訴えの適法性に疑義のある訴えが増加し、実務上混乱を来すおそれ」があるという指摘が、法務省、財務省からございました。109は、それと同じような関係だと思いますが、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができる場合には、確認の訴えの提起を認める必要はない」という御指摘が法務省からありました。
「第2-5-(1) 行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」ですが、14ページで、「第1 対象の拡大の必要性」に関する御意見で、110 では、「国民の権利義務に直接影響を与えないような行政立法等を訴訟の対象とすることについては、訴訟当事者だけでなく、広範囲に影響が及ぶため、慎重に検討すべき。これらについては、権利救済のため、一般に当該行政立法等に基づいた具体的な処分について、取消訴訟の対象として争うことは現時点でも可能であり、このような一般的なケースにおいても、広範囲に影響が及ぶ行政立法等自体を争う必要があるかについては慎重に検討すべき」という意見が経済産業省からございました。国土交通省から111で、「道路整備特別措置法等の規定に基づき国土交通大臣が公団に対して行う料金認可等のような行為まで取消訴訟の対象となる行為を拡大した場合、今後、広く全国の道路利用者等国民に対し原告適格が認められることになり、一日でも数百万人に上る有料道路の利用者の中から、法律に基づき適正に認可された料金認可等について全国各地で膨大な数の訴訟が提起されるおそれがある」という意見がございました。115ですが、「条例、規則等の地方公共団体による行政立法については、意見を異にする住民や関係団体による論議、検討を経て議会又は長の責任において制定されるものであり、これらを直接取消訴訟の対象とすることは、立案過程における論議が訴訟の場において蒸し返されることになり、著しく不適当な結果を招来する」という意見が総務省から出ております。116 で、全国知事会からですが、「条例の制定改廃については、地方自治法で直接請求が認められている(第74条)。 条例の司法審査は地方公共団体の民主的な法形成に国が直接介入することになり反対」という御意見が出ております。117で、「国民の権利義務に直接影響を及ぼさない行政計画等について取消訴訟の対象を拡大することは、法律上の利益を有する者が不明確な段階で事業の適法性を司法の場で争うことになり、訴訟経済上非効率であるばかりではなく、行政訴訟制度が被害者の救済よりも正当な利益を有しない者の活動の場として利用される恐れがあり、不適当」であるという意見が国土交通省から出ております。118は経済産業省の御意見で、「エネルギー基本計画等の行政計画についても、広範囲な関係者に影響を及ぼすことから、その策定過程における審議会の審議等プロセスが規定されているものも存在し、パブリックコメント等の仕組みを一般的に採用している。これについて、裁判所が当事者間の主張のみに基づいて取消し得るということであれば、プロセスを経た趣旨が没却され、広範囲の関係者の意見が十分に反映されず不利益を生じかねない」という御指摘があります。119は、文部科学省から、「通達や行政指導などは、国民の権利義務を直接形成する法的効果がないという判例があり、当該分野への取消訴訟の拡大は困難」ではないか。120で総務省からは、「行政指導をめぐる紛争の解決のためには、行政手続法上の手続の充実がまず考えられるべき」ではないかという御意見がございました。
さらに、16ページ「第2-5-(2) 取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設」に関する御意見で、「第1 取消訴訟の排他性と出訴期間の制限の維持」につきましては、125にありますように、「取消訴訟の排他性と出訴期間の制限によって、法律関係の安定が図られ、ひいては、行政の円滑・効率的な遂行による国民の利益を図ることができるから、取消訴訟の排他性と出訴期間の制限は、今後も維持するべき」という意見が、総務省、財務省、農林水産省、経済産業省、全国知事会から出されております。126では、「行政処分を長期間にわたって行政訴訟の対象とすることは、許認可を受けた事業者の活動をいたずらに不安定にする」という御指摘が文部科学省からございました。さらに、文書の保存期間との関係で、法務省から127で、「行政文書の保存期間が,最短で1年未満とされている(行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令別表第2)こと等の事情も考慮する必要」があるという意見が出ております。
「第2 個別法の規定により排他性と出訴期間を定めることについて」は、総務省の方からは129で、「取消訴訟の排他性と出訴期間の制限を個別法で定めるとすると、個々の処分ごとに内容が異なり、処分を受ける者は混乱することになるから、かえって、国民の権利利益に反する結果となって妥当でない」という御意見があります。130番は、農林水産省で、「排他性や出訴期間を個別法で定めるとしても、およそすべての処分等についてどのような関係者が存在しどの程度の出訴期間が適当であるかの判断を行うことは相当程度の困難を伴う」という御意見があります。131では、「排他性又は出訴期間が必要なものについて個別法の規定により定めるとすると、条例に基づく行為について、条例で出訴期間を定めることが必要になるが、条例の目的等によりどの程度の出訴期間を定めることができるかを個々に判断することはきわめて困難。条例で出訴期間を定めることができないとすると、条例に基づく行為については、出訴期間を定めることができなくなる」という問題が指摘されております。これは総務省からです。
「第4 行政決定ないし行政上の意思決定」についての問題ですが、133で、法務省と農林水産省からで「行政決定ないし行政上の意思決定という概念は、極めて広範な行為を含むものであるため、更なる限定のための要件を設けないこととし、又は解釈にゆだねることとする場合には、具体的な紛争の解決とはおよそ関係のない訴えが提起されて、実務上混乱を招くおそれがある」という指摘があります。
17ページ「第2-5-(3) 裁判所が判決で必要な是正措置を命ずる考え方」についての御意見ですが、「第2 必要な是正措置に関する司法判断の在り方」にありますように、136で、「裁判所が、国民・住民の間の利益調整を含めた政策判断を行わねばならなくなるおそれがある。例えば、一つの行政決定について正反対の立場から複数の是正訴訟が提起された場合、行政に代わって、裁判所が住民間の利益調整を含めた政策判断を行うことが必要となるが、このような判断を行うことが可能か」という意見が厚生労働省から出されております。137は、「行政決定について違法判断がなされたとしても、必要な是正措置が一義的に導かれるものでもなく、特に、専門性・特殊性の高い分野について、司法部門による判断の在り方を詳細かつ十分に検討する必要」があるのではないかという意見が金融庁と厚生労働省から出ております。138ですが、総務省から、「裁判所がどのような救済が当事者にとって有利かを考えて救済方法を決定することは、原告の請求の趣旨の当否を判断するという司法の機能になじまず、司法の限界を超えている」という意見が総務省から出ております。
「第3 審理の対象の特定の必要性」ですが、141では、「請求が明確でないと、審判の対象が拡大して、裁判所の審理判断が遅延するおそれがある上、被告の防御の対象が明確にならず、防御権の行使に重大な支障を及ぼすおそれがある」ということが、総務省と法務省から指摘されております。第三者との関係で、財務省から142の御指摘がありまして、「原告がどのような判決主文を求めるかが明確にされなければ、是正措置を命ずる判決が第三者の利益を害することにもなる場合には、当該第三者がその訴訟を知らないうちに、第三者の利益が害される」ことになるのではないかという問題が提起されております。
「第2-5-(4) 取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止」は、143で、「出訴期間を経過した処分等、従来他の訴訟では争うことが制限されていた事項について、争い得るようにすれば、処分を信頼して行動する国民に損害が生ずるおそれがあるほか安定的な行政運営に支障が生ずる」という意見が農林水産省から出されております。
最後に、19ページに「第2-5-(5) 出訴期間の延長」は、「第1 出訴期間の延長の必要性」で、145 では総務省、外務省、全国知事会は、「「処分を知った日から3箇月以内」より長期の期間に延長することは、行政処分の法的安定性の観点から問題」であるという御意見が出ております。146では、「出訴期間を延長した場合、証拠が散逸して事実の把握が困難となるおそれがあり、法律関係の早期確定という観点から、出訴期間を延長する場合には、あまりに大幅に延長すべきではない」という意見が法務省から出ております。147では、「教示義務を設けること等によって、出訴期間の制限を徒過したことにより、国民の権利救済が困難となる事態の発生を抑制できないかどうかを検討すべき」という意見が法務省、全国知事会から出ております。148では、農林水産省と防衛庁からは、「教示が行われることとなることを踏まえれば、行政事務の安定性の観点からは、現行法の出訴期間を維持することが望ましい」という意見が出ております。
資料の3−2で、国民の意見募集について、今と同じような論点を触れていきたいと思います。
資料の3−2の「第1 基本的な見直しの考え方−権利利益の実効的救済の保障」の項目につきましては、一番上のところにありますように、「権利利益の実効的救済の保障と並んで、行政の適法性確保が同程度に重要である」という御意見、あるいは、「抜本的改革とし新法を創設すべきである」という御意見、3番目のところですが、「訴訟制度の利用条件・救済方法は裁判所による柔軟な手法開発を可能にする制度設計が望まれる」という御意見、4番目のところでは、「裁判所が多様な救済方法を判決主文で出しうるような仕組みを作るべきである。民訴法375条は、請求権の確認・給付という従来の訴訟観を超えた、多様な判決が出せることを示している。不法行為の分野では、原状回復や妨害予防について種々の判決が出されている。非訟事件を裁判所が取り扱い、行政が各種の法的紛争処理機関を有していることを見れば、裁判所に多様な救済手段を与えることをもって、司法権の範囲を超えたもので行政への不当な介入になる等と考えるべきではない」、こういう御意見もございました。別の観点からの御意見としては、「その他の意見」というところにございますように、一番上にあるのは、「行政訴訟の過剰の独自性を緩和し、権利主体間の訴訟として民事訴訟との同質性をむしろ強めつつ、処分その他の行政の行為や行政上の法律関係の特殊性に基づく一定の特則からなる訴訟手続として、行政訴訟制度の不備を見直すことが、漸進的ではあるが十分改革の実をあげることができる」、こういう御意見もありました。その次では、「行政訴訟制度についても、公益上の理由から民事訴訟を修正するものの、基本的には民事訴訟と共通の構造をもった制度とすることが望ましい」という御意見もございます。それから、「専門家にしかうまく扱えない行政訴訟から、「国民が自分でできる充実・迅速・納得の行政訴訟」をつくるための知恵と工夫を行う必要がある」という意見もございます。その下で、「制度の再構築に当たっては、憲法第32条の「裁判を受ける権利」を基礎に実効的な権利保護という視点から、民事訴訟にはない固有の意義が存在するのか、また、手続的にも特別な規定を置く必要性があるのか、その内容などの見直しが期待されている」という御意見がございました。
次に2ページの「第2 具体的な見直しの考え方」の「第2-1-(1) 被告適格者の見直し」については「賛成する趣旨の意見」のところの2番目を見ていただきますと、「土地区画整理組合などの公共組合、都市基盤整備公団その他は、組合・公団等の名において換地処分その他の処分を行う(懲戒処分を行う弁護士会・日本弁護士会連合会も同様である)。つまり組合・公団等自体が処分行政庁となる。その場合は、「処分又は裁決をした行政庁が帰属する公共団体」という表現は不正確となる」、こういう御意見もあります。その次で、「公共団体ともいえない民間団体が「一方的に権利義務関係を変動させる」行為を行う。たとえば第一種・第二種市街地再開発事業を行う場合の再開発会社、あるいは建築確認を行う指定確認検査機関(法律上は法人に限定はされない)である。ここでも被告は当該指定確認検査機関とすべき」、こういう御意見が出ております。それから、真ん中の辺りに「「処分又は裁決をした行政庁が帰属する国又は公共団体」を被告とするのが適当であるとの意見」もございました。これは、先ほど行政庁の方からは全国知事会等からもそういった御意見がございましたが、「現実の行政処分の中では、「処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」を判別するのが困難な事例が存在する。「処分又は裁決をした行政庁が帰属する国又は公共団体」を被告とするほうが、こうした事例の問題点を回避することができてよりよい」、こういう意見が出ております
3ページの「第2-1-(2) 行政訴訟の管轄裁判所の拡大」ですが、原告の住所地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所、高裁所在地の裁判所というA案について、これを妥当とする意見としては、「同一処分についての取消訴訟が複数の裁判所に係属する事態は避けるべき」という視点からの御意見がございました。B案、つまり原告住所地の地方裁判所でもよいという案を指示する御意見としては、ここにあるように、「移送の規定を適切に運用すればよい」という御意見などがございました。
さらに、「個別の論点項目に関する意見」ですが、「アについて」、つまり除外する場合はないかということにつきましては、「地方公共団体の場合は拡大すべきではない」。それから、「地方公社の場合は拡大すべきではない」という御意見、その他、独立行政法人の場合等について、そこにお示ししたような多様な意見が出ております。
移送の規定に関するイのところは、「民事訴訟法とは異なる移送の規定を設けるべき」という意見と、「民事訴訟法と異なる移送の規定を設ける必要はない。民事訴訟法第17条で十分賄える」という意見と両方が出ております。
ウの点につきましては、これも先ほど行政官庁からも意見がありましたが、「土地・建物をめぐる行政訴訟等については事件の内容が地域の慣習等も審理の対象とする必要があるなど個別性の強いものであり、その不動産又は場所の所在する地の裁判所にも提起することができる他に管轄を拡大すべきでない」という御意見が出ておりました。
4ページの「第2-1-(3) 出訴期間等の教示」につきまして、アの出訴期間の教示の対象ですが、「教示義務の対象となる処分は、書面による行為に限定すべきである」という御意見、あるいは「原則教示義務は文書による場合に限定した上で、口頭での処分についても、要求があれば教示しなければならないとすべき」という御意見、あるいは「書面でする行為に限定すべきではない」という意見、この三様の御意見が出ております。
それから、イの項目につきまして、相手方ですが、これも「教示の相手方は、処分等の行為の相手方に限るべきである」という意見から、「教示の相手方については、請求のあった利害関係人も含める」という意見、それから、「利害関係のある第三者が特定できる限りは、その者にも教示すべきである」という意見、様々に分かれております。
エの教示の効果については、「誤った教示をした場合及び教示をしなかった場合について特に法的効果を定めるべきではない」、あるいはその下の意見で、「教示がなかった場合や誤った教示をした場合、法的不安定な状態をいつまでも残すことには問題がある」というような御意見もあります。そこからまた2つほど下がっていただきますと、「教示を怠ったときは、教示がされるまで出訴期間は進行しないとすべき」という御意見などもございまして、そこにありますように、様々な御意見がございました。
7ページの「第2−3 本案判決前における仮の救済の制度の整備」について、「ア 執行停止要件の緩和について」は、「執行停止の原則の採用をするべき」という御意見や、「仮命令・仮差止等の制度の導入をするべき」、あるいは「暫定的な執行停止制度を導入すべきである」という御意見もございます。これに対しては、「その他の意見」のところにありますように、「現行の執行停止の要件は緩和すべきではない。損害の回復困難性及び緊急性は、行政処分の執行を停止するための最小限度の要件である」という御意見もありますし、「執行力が即時に発生するという現行制度は見直すべきではない」、あるいは、「要件を厳格に審査することなく、一旦執行を停止するという、暫定的な執行停止制度の考え方も採るべきではない」というような御意見もあります。
内閣総理大臣の異議を含む「執行停止決定に対する不服申立の在り方」につきましては、「現行制度を維持すべきであるとする意見」と、「見直すべきであるとする意見」がございまして、「内閣総理大臣の異議の制度は、集団示威行進不許可処分の執行停止決定に対するものも、公共の福祉に照らしての行政の政治的判断の上に立ってのことで、濫用ではない」という御意見、「執行停止決定に対する即時抗告については、執行停止決定の執行力を停止する効力を有しないものとする制度を維持すべきである」、こういう意見が出ております。一方、見直すべきであるという観点からは、「内閣総理大臣の異議の制度(行政事件訴訟法第27条)は、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」(同条第3項)場合にされるのであるから、執行停止の消極要件である「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、・・することができない。」(行政事件訴訟法第25条第3項)と同じである。この点についての判断の誤りがあれば、その是正は、不服申立を判断する上級審に委ねるべき」という意見も出ております。
「ウ 公権力の行使に当たる行為についての執行停止以外の仮の救済について」ですが、これはどんな場合が必要かというような問いかけに対して、(ア)のところで、例えば「公売処分、買収処分の場合、その財産の現状保全、処分禁止」、あるいは、「係争物に関する仮処分に類する仮の救済が必要となる場合はない」というような御意見と、両方に分かれております。
(イ)は仮の地位を定める仮処分のような場合ですが、生活保護の支給拒否、これはこれまでもこの検討会でも議論になったような項目、こういったところを争う場合に必要があるのではないか、あるいは、「出入国管理難民認定法による更新申請拒否処分の場合」、「隣の公害工場に対して暫定的な改善命令、排出規制命令などを出させようとする場合」はどうか。これに対して、逆に、8ページの3つ目ですが、「公共の利益に影響があるような場合、たとえば、飲食店営業許可を仮に義務づけるのは適当ではない」というような意見も出ております。4番目では、「義務付け訴訟や差止訴訟の場合に、執行停止制度だけでは救済できない場合があるので、仮の地位を定める仮処分(民事保全法第23条第2項参照)に類する制度を整備すべき」というような意見もございます。
要件につきましては、ウにありますように、様々な要件に関する御意見がございまして、8ページの仮処分の排除のエについても、「仮処分の排除につき定めた行政事件訴訟法第44条は、廃止すべきでない」という意見と、「廃止すべきである」という意見と、両方出ています。
9ページですが、「第2−4 権利利益の救済を実効的に保障するための多様な救済」の「第2-4-(1) 行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え」ですが、「賛成する趣旨の意見」の中には、一番上の項目にありますように、「給付の訴えが適切な事案について、個別法で明定し、救済を容易化・明確化する必要性がある」という意見や、あるいは「十分な理由があれば、実体法の方で適用除外をする」という考え方の御意見もあります。「その他の意見」としては、「どのような場合どのような作為を義務づけるかが明確にされる必要がある」という御意見が出ております。次のところでは、「一般的に制度化する必要性はなく、したがって、実体法上の請求権を一般的に論じる実益に乏しい。具体の例外的・限界事例について特別の訴えを制度化することを検討してはどうか」という御意見もあります。
さらに、「個別の論点項目に関する意見」につきましては、9ページの「アについて」ですが、「A案が妥当」という意見、つまり、申請をした場合の拒否処分に対する許可の義務づけのような場合に限るべきだという意見と、第三者からも義務づけを求める、第三者が他人に対する処分をやれという義務づけを求めるような場合もできるとするB案に対する関係では、「三面関係であるが、当事者間による民事訴訟的解決が不可能であり、行政の介入によらざるをえない場合がどれほど想定できるか、また、行政責任については、国賠による事後的な救済で足りないかどうか、が問題になる」という御意見が出ております。それから、行政官庁からの御意見とも同じように、B案、つまり第三者からも義務づけ訴訟を認めるという案については、「法令に基づく申請権がないのに行政の作為の給付を求める訴えを認めようとするもので、賛成できない」との意見もございました。一方、両方認めるべきだという「C案が妥当」であるとする意見もございます。
「イについて」ですが、これは義務づける行為の対象は何かということですが、「処分以外については民事訴訟により給付の訴えが可能であり、必要はない」という御意見がありました。それから、「行政の作為の給付を求める訴えにおいて請求することができる行為は、取消訴訟の対象となる行為に限定すべきである」という意見もございます。
訴えの関係につきましては、9ページの一番下の項目ですが、「行政の作為の給付を求める訴えと不作為の違法確認の訴えは、それぞれ独立の訴えとすべき。訴えは、行政の作為の給付を求める訴えだけ認めればよく、判決で、処分の給付、不作為の違法の確認などの救済方法を選択する考え方は、訴訟の基本構造に反する」という御意見、10ページに「それぞれ独立の訴えと見るべきであるが、但し、訴えの変更に関する出訴期間の救済規定を設けるべきである」、例えば取消訴訟と義務づけ訴訟の両方提起した場合に、取消訴訟ではなくて、義務づけ訴訟を提起した場合もあり得ると思うのですが、その場合に、訴えを取消訴訟に変更した場合の出訴期間、義務づけ訴訟で起こしておいたが後ほど取消訴訟の方が適切だったと分かったというような場合に、出訴期間の救済規定を設けるべきではないかというような意見がございました。その中には、「特定の行為のみならず、抽象的な作為を求めることも認められるべきである」というような御意見もございます。
「ウについて」は、要件をどうするかということですが、一義性と緊急性と補充性と3要件が必要だという「A案が妥当」だという意見から、「C案が妥当」というような意見まで多様に分かれておりまして、「C案に賛成だが、裁判官の審理負担の増大等が危惧され、B案でもよい」というような意見、幾つか問題点の指摘もございます。
ウの要件の中では、「申請権の有無により認められる要件の異なることも止むを得ない」、つまり申請を拒否された人が、自分に対してもう一回処分をしてくれという義務づけをするのと、第三者が他人に対する処分をやってくれという義務づけを求める場合とでは要件が違ってもいいのではないかというような御意見もございました。
10ページの「エについて」ですが、強制執行の在り方につきましては、意思表示の擬制か、間接強制かということについては、A案、B案、どちらも御意見がありますが、強制執行を考える必要がないというC案に賛成という意見もございます。
11ページに「第2-4-(2) 行政の行為の差止めを求める訴え」ですが、差止めにつきましては、「個別の論点項目に関する意見」の「アについて」の意見ですが、「行政の不作為の給付(行為の差止め)を求める訴えの対象は、取消訴訟の対象となる行為(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為)に限定すべきである」という意見、特に、「行政訴訟として新設するのであれば、処分に限定すべきである」という意見がございます。他方で、「取消訴訟の対象になる行為に限定する必要性はない」という意見もございます。
「イについて」の、取消訴訟と差止訴訟との関係ですが、不作為の給付を求める訴えによる救済と、取消訴訟による救済との関係について、「行政の不作為の給付(行為の差止め)を求める訴えによる救済と取消訴訟による救済との関係については、特に考慮すべきことはない。救済の場面が異なるからである。民事訴訟による差止めの訴えとの関係も、特に問題とすべきことはない。民事訴訟による差止めの訴えでは、公権力の行使に当たる行為の差止めはできないからである」、こういう整理でいいのではないか、という御意見もございました。それから、「抽象的な不作為の給付を求める訴えは、認めるべきではない」というような御意見もございます。
さらには、11ページの下の「ウについて」ですが、「行為の差止により、影響を受ける利害関係者の保護、損害の補填等についても十分な配慮をお願いしたい」という意見もございました。さらに、要件については様々な意見があるところです。
12ページ「その他の意見」ですが、「民事訴訟上の確認の訴え、差止の訴えを許容する考え方が妥当である。多くは権利・法律関係の確認の訴えで足りる。民事訴訟における確認の訴えを処分についても可能とするとともに、訴えの利益を緩和すべきである(解釈にかかわる。)。事実行為による侵害の可能性があるときは、民訴の差止請求を許容すべきである」という意見、民事訴訟との関係を指摘する御意見もございました。
13ページの「第2-4-(3) 確認の訴え」ですが、「賛成する趣旨の意見」の一番上にありますように、「取消訴訟の対象に該当しないとされる行政立法、行政計画について、その効力を争う者は、その無効確認の訴えを起こすことができるものとするのが至当である。法律上効力がないとされる行政指導については、その無効確認の訴えを起こすことはできない」、こういう考え方の御意見もありました。次のところでは、「行政処分以外の訴訟は確認訴訟とくに違法確認訴訟を当事者訴訟と位置づけ、判決の拘束力とも併せて考慮すべき。あとは成熟性を要件とすればよく、とくに差し止め訴訟等は必要ではない。処分以外の公権力の行使の観念は曖昧で当事者訴訟で整理すべき」という御意見もございました。さらに、「新たな訴訟類型の創設や民事訴訟との関係はさらに検討を要する」という御意見もございました。「その他の意見」の中では、「民事訴訟上の確認の訴えを、処分その他の行為について、訴えの利益を緩和して、認めるべきである。特別の行政訴訟類型として新設する必要はない」という御意見の他、「確認の訴えについては必ずしもその必要性が十分ではない」という意見まであります。
その下の「個別の論点項目に関する意見」は、「アについて」のところでは、「個人の権利・利益の侵害と直接に結びつき、いわゆる事件の成熟性にかかわる様な場合に限定して認めるべきであろう」という御意見もあれば、「「公権力の行使」以外の行政決定等の無効(違法性)確認請求、行政指導の違法性確認請求は、民事訴訟についてと同等の確認の利益がある場合には適法としてよい」という御意見もあります。
13ページの一番下の「イについて」のところで、「確認の利益である以上、行政訴訟における確認の利益と民事訴訟における確認の利益とは、同じものであるべきである。取消訴訟制度があっても、これが確認の訴えにおける確認の利益の判断に影響を及ぼすことはない」、あるいは「行政訴訟に於ける確認の利益は、民事訴訟に於ける確認の利益よりも広く捉えられるべきである」という意見もあります。
14ページの「ウについて」ですが、「無効等確認の訴え(行政事件訴訟法第3条第4項)の原告適格を定める行政事件訴訟法第36条は、削除すべきである。同訴えの原告適格は民事訴訟法の確認の利益と同一とすべきであり、行政事件訴訟法にこれと異なる原告適格の規定を置く必要はない」という御意見、あるいは「36条前段は、訴えの利益一般の理論と同一であるから残し、後段は削除すべき」という御意見もあります。
15ページ「第2-5-(1) 行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大」の「賛成する趣旨の意見」については、上の2つのところにありますように、「紛争の成熟性がある場合に限って行政立法、行政計画などを取消訴訟の対象とすべきであるという考え方が適当である」という意見と、「紛争の成熟性にかかわらず行政立法、行政計画などを取消訴訟の対象とすべきである」という御意見と両方ございます。15ページの下の「その他の意見」の中には、様々な御意見がございまして、「紛争の成熟性を含め「法律上の争訟」性の判断にかかわり、基本的に裁判所の解釈の問題である」という御意見もあります。あるいは次のところで、「行政立法(行政規則を含む)および行政計画については、現行の取消訴訟との関連では紛争の成熟性の緩やかな解釈によって対象に取り込むことが望ましいが、特別の訴訟(法令解釈訴訟、違法確認訴訟など)を立法政策的に導入する必要がある」という意見もあります。それから、「処分性を拡大することによって権利救済の機会を確保することには、行訴法理論上の困難な問題が散在する」というような御意見もございます。16ページ、2つ目では、「行政立法、行政計画、通達、行政指導などをすべて一律に取消訴訟の対象とすべきであるとする考え方には賛成できない。行政立法、行政計画などでも、国民の権利義務に直接影響を及ぼすようなものは、現行法のもとでも、取消訴訟の対象となる処分に当たる。また、本来法的な効力のない行政指導をすべて訴訟の対象とすることも適切でない」、それから、その下の項目では、「抽象的規範統制まで拡大することには、問題がある」という御意見もございました。
17ページ「第2-5-(2) 取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設」にありますように、A案、是正訴訟として日弁連が提案をしておりまして、それにつきましては、「違法な行政決定は最初から最後まで無効であり、それを確認することが是正訴訟の基礎である。違法な行政決定が有効であるということはなく、是正訴訟は形成訴訟として構成されるものではない。なお、違法確認に付加して具体的な給付判決がなされることもあり得る。これまで、取消訴訟の排他的管轄の考えから取消訴訟に排他性を認め、民事訴訟が排除されてきたが、この考え方を改め、国民は原則として民事訴訟、行政訴訟のいずれの救済も求めることができるようにすべきである。また、国民の裁判を受ける権利を制限する出訴期間を原則として廃止すべきである」、という意見がございます。他方、「B案が最も適当とする意見」もありまして、その下の「その他の意見」では、これに対して、「「是正訴訟」のような改革ができたとしても、結局はいくつかの訴訟類型に集約されていくと思われるのであって、それまでの間の混乱を考えると、当面はかえって行政訴訟の機能不全を招くおそれがある」という御意見もありますし、「民事訴訟とあまりにも相違する特別の訴訟類型の導入には、賛成できない。取消訴訟制度と給付・確認・差止など民事訴訟上の訴えの選択性の拡大、民事訴訟上の訴訟要件の緩和、および必要な事案についての個別法による給付の訴えの導入が望ましい」という御意見もあります。その他、そこには様々な御意見が出されています。
19ページ「第2-5-(3) 裁判所が判決で必要な是正措置を命ずる考え方」につきましては、「賛成する趣旨の意見」としては、「訴訟の対象となる紛争は、多種多様であり、行政決定の違法性を争う原告が訴訟提起の時点で、その具体的是正措置を特定することは著しく困難である。当該行政決定が違法と判断される場合、その対象となった行政決定が違法であるとの確認をするだけでは違法な行政決定の違法是正が実効的に確保されることとはならない」という観点からの御意見もございます。「その他の意見」では、これに対しまして、「どのような措置を命ずるべきか一義的に特定し難く、またそれを、あげて裁判所の裁量に委ねるのも危険であってにわかに賛同し難い」、それから、その次の項目では、「ここまで積極的な役割を裁判所に負わせることは、訴訟制度そのものの趣旨との関係で果たして妥当であろうか」、3番目の項目では、「行政について特別の包括的訴訟制度を立法化することは、立法政策による客観訴訟の制度化ととらえられるおそれがあり、民事訴訟との選択性を損ない、また、訴訟要件の厳格化に至る可能性もある」という御意見もございました。
20ページ、「第2-5-(4) 取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止」については、「国民に開かれた司法、使いやすく効果的な司法救済の実現の観点から重要である」という御意見、あるいは「一般的な注意規定をおいてもよい」ということを指摘する御意見もあります。他方で、「その他の意見」の中で、「訴えの変更の許容範囲を拡大する規定を置くことで解決できる」という御意見もございました。また、「裁判例が取消訴訟の排他性の拡大解釈することを防止することは重要であるが、排他性について規定を設けない立場からすれば、防止の規定を置くことは不要である。別の形で、拡大解釈をしないよう裁判官の間に浸透させるべき」という御意見もございました。
21ページの「第2-5-(5) 出訴期間の延長」ですが、これはA案、3ヶ月を6ヶ月にすればいいのではないかという御意見の中に、2つ目の項目ですが、例えば「期間を遵守出来なかったことにつき正当理由がある場合の救済規定を置くべき」という御指摘もございました。
C案、これは処分の日から1年に統一するという案、これについても「出訴期間は不要なものもあるが、個別に規定すると混乱する」というような御意見もありまして、「その他の意見」の中に「B案を妥当」と指摘する御意見もございました。
出訴期間については、「出訴期間については、教示義務を新たに設けることから、その延長等の見直しをする必要はないと考える」という御意見も、実はその他の御意見の中にはございます。他方で、「出訴期間、審査請求期間は原則廃止すべきである」という御意見もございます。
大分長時間にわたって恐縮ですけれども、以上でございます。
【塩野座長】どうもありがとうございました。多少詳しく御説明いただきましたが、行政官庁等からのヒアリングの場合におきましても、すべて皆さんに出席を義務づけたわけでもありませんし、また、多少出入もございまして、お聞きいただく時間がなかった方もおられるかと思いまして、丁寧にご説明いただいたわけでございますし、また、取り分け国民の皆様からの御意見につきましては、今日が初めてということでございますので、多少時間を取って説明をした次第でございます。
以上の点につきまして、御感想でもいいですし、あるいはこういった意見があるとすると、こういった見方について自分としては、またプラスアルファとして、こういう見方も付け加えたいというような御意見があれば承ってまいりたいと思います。
順不同と申しますと少し議論が拡散するかもしれませんので、もしできれば、2ページの目次の第2は飛ばしましたので、そこは後になりますけれども、前の方から御意見等を承ればいいと思います。
更に、もっと一般的に御意見についての御感想をいただいても結構でございます。どなたからでも結構でございますので、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。
【芝池委員】行政官庁等からの意見の方ですが、これは、前回のヒアリングのときに、この検討会の委員の方から、一応反論と言いますか、そういう指摘があったものも含まれているわけですね。
【小林参事官】そこまでは含まれておりません。
【芝池委員】ですから、何か意見が出てきて、それに対してこちらの方から反論して、それが当たっている場合もあったと思うんですけれども、そういうものもこちらに入っているわけですね、生き残っているわけですね。
【小林参事官】反論はあり得るということで、これから議論する項目として、行政官庁から出てきた主な項目を挙げているわけです。
【福井(秀)委員】当日の議論でも、明らかにやりとりから見ても理由がないことがほとんど衆目の一致するところとなったものも随分あったと思うのですが、こちらの方からの質問なり、反論なりについてまとめた資料は作られていないのですか。
【小林参事官】まだ、そこまでは検討ができていません。
【福井(秀)委員】本当は、それとこれとを対比して、どっちに言い分があるかを議論した方が生産的だと思うのです。もう一回やってもいいのですけれども、もう片がついていると思うのも、私はお聞きしていて随分あると思うのです。要するに、前回も申し上げたのですが、特に行政庁の意見は、中には違うのもありますが、総じて言えば、理由がよく分からないものが多いのです。どういう場合に、なぜ困るのか、なぜ行政が停滞するのか、なぜ行政上の安定なりに支障があるのかということの具体的な弊害を示さない意見が多かったので、そういう意味では、私は、参考にならない意見が多かったというのが概括的な印象です。だから、具体的に困るのであれば、その具体的事項が補足意見なり追加資料等で出てきていると思いますので、それも踏まえて理由があったのかなかったのかを検証しないと、一般論だけで議論してもなかなかできないという気がします。
【塩野座長】今のお話は、追加的資料は今日お配りしていますので、できれば今日お配りした追加的資料の方も御覧いただきたいと思います。
【福井(秀)委員】追加資料の特筆すべき、よく分かったとか、よく補足がなされたというようなことを、今ここで御披露いただくことはできないのですか。
【小林参事官】そこまでの準備はしておりません。
【塩野座長】つい昨日、一昨日出てきているのもありますので。そんなに多くありませんので、追加資料がちょうどまとまって、ああこんな議論をしているのかというのでお読みになると、結構いろんな意味で参考になります。
【小早川委員】今おっしゃられた点は、確かに、そんなことを聞いてもしょうがないねとか、反論したからもうそれで終わりだねというのは、あると思いますけれども、何がそれであり何がそれでないかと詰めていくと大変ですので、ここのところは、言われたことを資料として御出しになるということでよろしいのではないかと思います。つまらない議論は、後からでもすぐに分かると思います。
【芝池委員】この目次の順番にこだわらなくてもいいですか。
【塩野座長】ええ、こだわらなくてよろしいです。
【芝池委員】1つ感想のようなことを申し上げますけれども、義務付け訴訟のところ、パブリックコメントの結果の9ページです。そこのところは、小林参事官の御説明を聞いておりまして、これは前のパブリックコメントの結果よりもちょっとトーンがダウンしているなという感想を持ちました。義務付け訴訟を導入してほしいという要望がちょっと弱くなっているのではないかなという感じがいたします。前の、最初にやったパブリックコメントのときには、かなり強く義務付け訴訟の導入を図ってほしいという意見があったように思います。
【小早川委員】どこから言っていいのか分からないので、たまたま今の芝池委員の点に付随してだけ申します。私も、義務付け訴訟フィーバーがちょっと収まったかなという感じもなくもないのですけれども、伺っていて、A案、B案、C案ですね、申請を前提にした義務付け訴訟と、そうではない、第三者から制度的にしっかり仕組まれていない形で義務付け訴訟が出てくるという場合とを分けたために、そうか、やはりそこは違いがあるんだなという反応があるという気がいたします。そういう感想が1つです。
それからもう一つ違うことですけれども、今のパブリックコメントの方の義務づけ訴訟の方ですが、10ページの最初に、それぞれ独立の訴えと見るべきであるが、つまり、どういう判決をするかということは、訴えも別だが、ただし、訴えの変更に関する出訴期間の救済規定を設けるべきである、と。これは一見なるほどという感じがするのですが、ただ、やはりこういう発想は本末転倒であって、行政訴訟の在り方をまず考えることが必要なのではないか。そこの考えを省略して、出訴期間を緩めれば結局同じことではないか、実際は困らないのではないかというお考えですけれども、やはりそれは逆なのではないか。訴えの変更をやるということは、当事者に対しては負担を強いることにもなるわけなので、制度を曖昧にして当事者に負担を残すというのは、よくないのではないかという気もします。他にもありまして、教示するからいいではないかとか、例外を緩く認めればいいではないかという非常に実務的で賢明な御提案もあるのですけれども、やはりそういう話というのは最後の最後に出てくる話であって、もう少し基本的なところをしっかりやった方がいいのではないかなという大変漠然とした印象です。
それにしても、ある意味では非常にレベルの高い答えが出てきているということも感じました。それはいいことだと思います。
【水野委員】私は、これをいちいち反論していれば切りがありませんから、感想程度のことですけれども、先ほど福井委員もおっしゃったけれども、行政官庁のヒアリングでは具体的にどう困るのかとか、具体的にどういうような支障が生じるのか、ということについての言及がほとんどなかったという気がいたしました。それで今回整理された形で、例えば具体的な形で出てくるのは、仮の救済、執行停止のところで、こういう場合に困るのではないかというのは出てきますけれども、これは要するに、こういう場合、こういう申請をすればどこの裁判所もすべて認容するという前提で困るとおっしゃっているだけで、私に言わせれば、そんな申請は執行停止の申立てをしても通らないですよとか、そんな解釈を出しても通らないではないですかと、裁判所が認めるはずがないではないですかという例を出して言っておられるような気がしまして、そんなことを言ってもしょうがないのではないかという気がしました。それから、1つ面白いというか、農林水産省は農地の違反転用に対する工事の停止命令とか、保安林の指定処分についての執行停止がされると、開発工事とか、立木の伐採が進行してしまって、原状回復が困難になるから困るのだと、これはまた逆の場合もあるわけで、開発行為をするというときに、執行停止ができないためにどんどん開発行為が進んでしまって原告が困る、住民が困るという例もあるのです。まさにこれは裏腹の議論をされているのです。そんな印象なので、私は、なるほどこれは考えなければいかないと思う点ももちろん幾つかありますけれども、総じていくと、余り行政官庁の反論については、なるほどと思う点が少なかったという印象です。
【塩野座長】他に何かございますでしょうか。また、休憩の時間の後に、もう一度全般的な御感想、あるいは今までのところでの思いついたことについて、御発言をいただく時間も取りますので、差し当たり、今のような形で御説明を承り、多少の御感想を承るということで、ここで暫時休憩ということでよろしゅうございますでしょうか。
(休 憩)
【塩野座長】それでは後半部分、先ほどと同じ要領で参事官に御説明いただき、質疑応答、その際には先ほど申しましたように、前半部分についての御意見あるいはコメントをいただくこともあるということでお願いしたいと思います。
【小林参事官】それでは、行政官庁の方の資料1は、4ページの「第2−2 審理を充実・迅速化させるための方策の整備」から御説明いたします。
まず、「第1 新たに規定を設ける必要性」との関係からは、31で「民事訴訟法の釈明処分等により対応すれば足り、その特則として広範な資料の提出を求めることができるとすることは適当ではない」という意見、それから32で、「情報公開法や平成13年12月1日施行の改正民事訴訟法における文書提出命令等の制度が整備されており、さらに、今般の民事訴訟法の改正により提訴前の証拠収集手続制度が導入されると、提訴前の証拠収集も可能となる。これらの制度の運用実績等を慎重に検討する必要」という御指摘がございます。
「第2 公務員が職務上知り得た秘密など提出を拒むことができる場合」ですが、人事院の方からは裁決に関する記録に関して、34で、「裁決に関する記録の中には、人事院に対して国家公務員法第90条の不利益処分の不服申立てを行った者等の個人に関する情報、公務員が職務上知り得た秘密に関する情報等も含まれる。個人に関する情報、公務員が職務上知り得た秘密に関する情報等が含まれる文書については現行の文書提出命令と同様提出を拒むことができることとすべき」、これは同じく財務省からも同様の御指摘がございます。それから、35で、警察庁からは「犯罪の捜査、情報協力者からの情報・資料の入手、視察内偵活動等のあらゆる警察活動を通じて入手した情報、資料のすべてを裁判で明らかにすれば、警察に協力して情報を提供した者を暴力団からの報復の危険にさらし、また、警察による内密の暴力団情報の収集・分析活動を暴力団側に明白にしてしまう危険が避けられず、国民の生命・身体の保護、公共の安全と秩序の維持という警察活動に大きな支障が生じないよう、一定の除外事由を設ける必要」という意見があります。さらに38ですが、個人情報保護との関係で、「個人情報関係法令(条例を含む。)の対象となる文書等については、提出を拒むことができるとすべき。地方公共団体が独自に定める情報公開条例等の非開示事由に該当する場合は、条例の規定に配慮すべき」という御指摘が総務省と全国知事会の方からございました。それから、法務省からは「個人、法人等の権利利益、国の安全、公共の利益等に対する適切な配慮は必要不可欠」であるという御指摘があります。
5ページの「第3 争点の立証に関係の深いものに限定」で、財務省からは「記録の提出義務の範囲は、争点の立証に関係の深いものに限定するなど、明確にすべき」という意見もあります。
「第4 記録の提出を拒むための手続」の46で、「記録等が提出されることにより第三者に不利益を与えるような場合等については、提出を命ぜられたことに対する不服申立手続において、不利益を受ける可能性のある者が意見陳述できる機会を設けるべき」と、経済産業省から意見が出ております。国土交通省からは、「記録を裁判所に提出する場合、全て記録が公開される。記録に、処分又は裁決の相手方以外の個人情報等が含まれている場合は、どのようにして裁判所に提出すべきか整備する必要」があるということでございます。
21ページ「第2-6-(1) 原告適格の拡大」の「第1 原告適格を拡大する必要性」について多数の御意見がございまして、157で、総務省、外務省、全国知事会は、「権利義務に関する具体的な争訟を解決するという司法の役割の観点から、真に権利利益の救済の必要性のある者に原告適格が認められるべきであり、行政事件訴訟法9条の規定は維持するべき」、158では、「行政法規が当該利益を個別具体的利益として保護しているかどうかにより「法律上の利益」に当たるか否かを判断することが適当」、159で、環境省からは特に「廃棄物処理施設が一般的には「迷惑施設」と捉えられる傾向にあるため、個別具体的な保護法益といった一定程度明確な基準の設定がなければ、原告適格が無制限に拡大されるおそれがある」、このような御指摘があります。それから160で、農林水産省からは、「農地の権利移動の許可において、畜産農家が農地を取得することを許可した場合に、これによる環境悪化を懸念する周辺住民がその取消しを求める場合等、法が本来保護することを意図している権利や利益を有する者が納得している処分について法が保護することを意図していない者が争い得るとすると、法が本来保護しようとしている権利者(この場合、畜産農業者等)の権利を損なうとともに、法本来の目的達成に支障が生ずるおそれがある」。法が保護することを意図していないものが争うことができるということになるのではないかという御指摘です。161では、「農地の転用のための権利移動の許可において、畜産農家が畜舎を建設することを許可した場合には、周辺住民が住環境への悪化等を懸念する場合には、これらは「農地を農地以外にすること」によって被害が生ずるのではなく、その後の畜舎の立地によって利益が侵害されるおそれがあるものであり、本来であれば立地について民事訴訟で争うか、畜舎の立地を規制する立法で解決すべき問題。こうした、自己の利益を実現する上で利用しやすい制度があることを奇貨として行われる訴訟についても、原告適格の拡大を行うべきか検討する必要」という御指摘がございました。162は、「原告適格を法律上の利益を有する者から拡大する場合、その範囲を明確にすることは相当に困難であり、給付行政について原告適格が拡大されれば、訴訟関係者が多数になり、円滑な訴訟遂行に支障が出ることや第三者の法的地位に影響を与えることも考えられる」、似たような御指摘で、163 で経済産業省からは、「行政処分により受益している第三者が存在し、取消訴訟によって直接的に不利益を生じるような分野や、行政処分が公共の福祉又は公益を目的としている分野では、原告適格が認められるべき範囲は、法律上の利益があるような場合に限られるべき」、これは、先ほど御指摘をした電気、ガスの料金とか、そういった公益事業に関する許可の事例を挙げておられます。
22ページ「第2 原告適格を拡大する範囲について」は、「どの範囲で原告適格を拡大するかを明確にする必要」があるのではないかという指摘が165 でありまして、さらに、166では、「A案ないしD案は,客観的な判断基準として不明確であると考えられるので,より判断が容易となるよう,何らかの要件を加えることなども検討すべき」、こういう意見が法務省から出されております。167の「保護されるべき具体的な権利利益の範囲を明確にせず、経済上の利益に関係しさえすれば、誰でも訴えることができることとなると、例えば、既存のたばこ小売店が、新規に参入する競業者の小売販売業の許可の取消しを求めて訴えを提起できるようになるなど、営業妨害を目的とした訴えも可能となりかねない。経済社会情勢を踏まえ、立法が保護することを予定していない既得権益を保護することにならないか、新規参入者の権利利益を不安定にすることにならないか」という財務省の方からの御指摘がございました。それから例えば、171 で、「労災保険制度においては、保険料に関するメリット制度(事業主の労働災害防止意欲を向上させることを目的として、保険給付の多寡に応じて保険料を増減させる制度)を設けている。仮に、事業主について、保険給付支給決定処分により保険料負担が増加することをもって「現実の利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者」として原告適格が認められることになる場合、事業主が保険給付支給決定の取消しを求める訴えを提起することもあり得る」、こういうような問題点の指摘が厚生労働省からございました。国土交通省からは173で、「法律の保護範囲内か否かを検討すれば足りるとする場合、これまで道路整備特別措置法等に基づく国土交通大臣の料金認可については、広く全国の高速自動車国道及び都市高速道路の利用者に原告適格を認め、全国の有料道路の利用者が一日でも数百万人に上る中、全国各地で膨大な数の訴訟が提起されるおそれ」があるのではないか。これと同様な御指摘が174の河川事業の問題でも、「都市計画決定に際して「利害関係者」は意見書を提出することができ、道路の都市計画決定に際して110万通の意見書が提出されたことがある。原告適格の解釈が、「利害関係者」と大差ないものとなる場合には、膨大な数の訴訟が提起されるおそれ」があるという御指摘もございました。
23ページの「第2-6-(2) 自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定の削除」に関しましては、177では、「主観訴訟という抗告訴訟の本質を害することとなって、適当でない。例えば、第三者に対して通知を要する処分について、原告に対する手続が適法になされている場合であっても、第三者に対する通知が数日遅れただけで当該処分が取り消されるといった事態が生じる可能性がある」という御指摘が総務省からございました。同様の検討の必要があるというのは、法務省から178のところでも指摘がございます。
「第2-6-(3) 団体訴訟の導入」につきましては、24ページの第2にありますように、個別法による規定が適当ではないかという御意見がありまして、190のところでは、「広く国民全体に広がった利益に関係する処分に関し、団体訴訟制度を設ける際には,どの範囲の者に原告適格を認めるべきか否かは、当該処分の特質、利益状況に応じ、具体的に検討しなければ決し難いものと考えられるから、個別実体法において規定すべき」であるという意見が、法務省、総務省から出ております。191では、「個人に原告適格が認められない場合に特定の利益を目的とする団体に原告適格を認めることは、個別法ごとにその法律が保護しようとしている権利、利益等を考慮して検討されるべき」という考え方、192では、「団体の適格性について、個別法ごとに事前登録制とするとか、裁判所の判断に委ねるといった違いが予想され、こうした点も個別法ごとに検討すべき」という御指摘がございます。
次に、「第2-7-(1) 主張・立証責任を行政に負担させること」につきまして、25ページのところ「第1 規定の必要性」に関して、193で、「行政訴訟における証明責任の分配は、処分の性質、根拠法規の趣旨、証拠との距離、当事者間の公平等を考慮して、個別に処分の根拠法の解釈によって定めることが適切である」という意見が出ております。
「第2 個別法による主張立証責任の問題」ですが、195では、法務省からは「在留資格の変更や更新を求める場合には、その申請者において資料を提出して在留資格の変更事由等の存在を立証すべきとされているが(入管法20条3項,21条3項参照)、これらの不存在についての主張立証責任を行政庁の側が負うこととなれば、行政庁に過大な調査義務が課され、多大な事務が生じることとなり、行政の円滑な事務遂行が妨げられる」、次に、196では、同じく法務省からですが、「不法入国及び不法上陸に係る退去強制令書の発付手続における退去強制事由のうち、有効な旅券を所持しないで本邦に入ったことなどの一定の事由については、容疑者において容易に立証し得ることから、その存否の立証責任は容疑者にあるとされているところ(入管法46条)、その不存在についての主張立証責任を行政庁の側が負うこととなれば、その調査能力を超えた過重な負担を負うこととなり、結果的に不法滞在者の在留を認めざるを得なくなってしまう」という意見が出ております。次に、197では「行政庁の側において身分関係の真偽を明らかにすることには限界があり、外国人登録における記載に不服があるとして取消訴訟が提起された場合に市町村が主張・立証責任を負うこととなれば、その負担は著しく過大」ではないかという御指摘がございました。
26ページ「第2-7-(2) 処分の理由等の変更の制限」、201ですが、「行政事件訴訟において理由の変更を許すのは、紛争の一回的解決を確保する趣旨であり、司法制度の効率を高める意義をも有する。また、処分には期限が定められていることも多く、新たな処分理由が判明する事態が生じることもないではなく、そのような場合にまで、一律に、処分理由の変更を制限するとすれば、客観的に見て適切な判決を得ることができず、公益を害する事態が生ずるおそれもある。加えて、処分の段階で処分理由をすべて述べておかなければならないとすると、それだけ行政庁の負担が増し、申請に対する応答が一般的に遅れるおそれがある」ということが指摘されております。202では、総務省からは、「理由の提示が要求されている処分について、処分の理由の変更が制限されるとすると、処分の段階で、想定されるあらゆる理由を明らかにする必要が生じ、ひいては処分の遅延につながりかねず、不適当」であるという御指摘があります。204の「許可申請に対する処分について、要件が複数ある場合に、第一の要件がクリアできなければ、その他の要件について判断することなく拒否処分を行うケースが存在する。このようなケースで第一の要件の判断に違法があった場合に理由の変更、追加を認めなければ、いったん取消された後、行政の側で第二、第三の要件の判断を行い、場合によっては再度不許可処分を行うこととなりかねない」という指摘が農林水産省や国土交通省からあります。
「第2-7-(3) 事情判決の制限」に関するところでは、27ページで、「第1 事情判決を制限する必要性」として、206で、「公共事業など多数の国民に影響を与える行政分野においては、現行の事情判決の制度は必要である。例えば、河川管理施設(ダム等)の撤去を求める訴訟が提起されたような場合、万が一手続きの一部に瑕疵があったとしても、既に当該施設が完成し、関係権利者の新たな権利関係が確定している場合にあっては、これを撤去し、原状回復することは、莫大な費用を必要とするのみならず、多数の関係権利者の利益を侵害する」、こういう御意見があります。
28ページ、「第2-7-(4) 裁量の審査の充実」では、209に「ある処分が裁量処分であるか否か、いかなる性質の裁量処分であるかは、個別の実体法が定めるものであって、裁判所の裁量処分の審査は、個別の実体法の定めを前提として、個別的に行われる。例えば、入管法上の在留の許可等は、法務大臣の自由裁量による処分であり、個々の事案に応じた判断を行っていることから、行訴法において一律の基準を設けることにはなじまない。裁量処分の審査手法を行政事件訴訟法において、一律かつ一般的に定め得るものではない」という指摘がございます。それから211に、「裁量の審査基準が定められるということであれば処分に当たっての判断基準を詳細に定めることとなるが、社会情勢の変化等を反映した総合的な判断に係る部分の基準化は困難。例えば、道路法第32条に基づく道路の占用許可について、道路管理者は個別具体的に、占用目的、当該占用場所の交通量、道路の状況等の諸要素を総合的に判断して決定するものであり、道路管理者の裁量に委ねられている。また、同法第47条の3に基づく特殊車両の通行許可については、道路の状況等を勘案しつつ、道路の交通の保全又は交通の危険の防止という観点から適正な判断が道路管理者の裁量に委ねられている。これらの処分について、違法又は裁量権の逸脱等がないにもかかわらず、裁判所の独自の判断により、取り消されることになれば、安全な道路構造の保全又は交通の危険防止等の観点から、大きな混乱が生じるおそれがある」という御指摘がありました。
「第2 行政管理や行政評価の考え方を裁判規範とすることについて」は、212で、総務省から「行政管理や行政評価に用いられている基準や考え方を裁判規範の中に持ちこむことは適当ではない」という御意見がございました。一番下のところにありますように、「評価法においては、費用便益分析手法が法令上行政手法に組み込まれているわけではない」という御指摘がございました。
29ページ「第2-8-(1) 訴え提起の手数料の軽減」につきましては、「行政訴訟という類型一般に関する訴え提起の手数料の軽減については、民事訴訟等費用法の一部改正及びその運用の状況等も踏まえ、慎重に検討する必要」という意見が法務省から出されております。
「第2-8-(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」については、例えば218で、「行政訴訟に限るものではなく、訴訟制度全体の問題として検討すべきものであり、全体として両案ともに適当でない」、それから219で、「敗訴の場合の経費負担の危険を減少させるだけであり、結局、勝訴の見込みのない訴訟を増大させることになるおそれがあるので、慎重に検討するべき」、220では、「弁護士報酬を敗訴者負担としない、あるいは原告が勝訴したときだけ敗訴者負担とした場合、行政は一切の非がない場合でも弁護士費用を負担することとなり、行政が訴訟に要するコストが増大し、結果的に国民の負担増となる」という意見、また、同種の意見が221で農林水産省からも出されております。また、223 の東京都からの御意見も同趣旨の御意見です。
30ページ、「第2-8-(3) 不服審査前置による制約の緩和」につきましては、「第1 不服審査前置の必要性」について、224で、総務省、厚生労働省からは「紛争の解決に当たって必要な役割を果たしていることから、不服審査前置を定めることができないとすることは適当ではない」という御意見が出ております。それから225では、「不服審査前置の規定は、個別の法律において、大量的に行われる処分であって行政の統一を図る必要がある、専門技術的な性格を有する処分である、審査請求に関する裁決が第三者機関である等の理由から、設けられたものであって、その趣旨は、行政による救済と司法による救済との合理的な資源配分の見地から十分合理性を有する。したがって、個別法の趣旨等を勘案せず、一律に不服審査前置主義を採ることを禁止する理由はない」という意見が法務省から出されております。227では、文部科学省から「不服審査前置の場合でも、行政事件訴訟法第8条第2項は広く例外を定めているから、適切な運用で訴えを提起する者に著しい不利益は生じない」という御意見が出ております。228では、人事院の方から、「職員に対する不利益処分の不服申立てについては、現行の不服審査前置制度を維持すべき」という意見が出ております。229では、犯罪被害者給付金の支給裁定の取消訴訟、それから暴力団対策法の指定の取消訴訟について審査請求を前置した趣旨が警察庁の方から説明されておりまして、「現行のとおり不服審査前置を維持したとしても、処分の相手方に不利益を生じさせるものではない」という意見が出ております。財務省からは230で、「国税、関税等に関して規定されている不服審査前置は、各行政分野の大量・反復性や技術性・専門性等を踏まえて設けられている。利用者である国民にとっての利便性、大量・反復性や技術性・専門性のある行政分野における不服審査機能の意義、及び裁判所の対応能力を踏まえて、検討する必要」がある、こういう意見が出ております。
33ページ「第2-9-(1) 行政訴訟の目的規定の新設」は、総務省から「行政訴訟の目的は、第一次的には権利侵害の救済にあり、適法性の確保は権利侵害の救済を通じて行われるものであるから、行政訴訟の目的として権利侵害の救済に加えて適法性の確保を記載することは適当ではない」。
「第2-9-(2) 国の公金の支出の適法性を確保するための納税者訴訟の創設」につきましては、236で、会計検査院からは「本院の憲法上の独立性との関係、地方公共団体の制度をそのまま国に当てはめることの妥当性、本院と裁判所との関係、検査請求を受ける場合の本院の検査権限との関係、本院の通常の検査業務との関係等について、理論的にも実務的にも、慎重かつ十分な検討が必要」であるとされていまして、続いて237で、同じく会計検査院からは、「会計検査院が検査請求を受けることは、会計検査院の地位、法的権限、通常の検査業務との関係、人員等の面で様々な問題があり、現時点で受け入れることは困難」という御意見が出されております。それから、238で、国土交通省からは「納税者訴訟制度が創設されると、原告の対象が納税者全般になることから、被害者の救済とは異なる活動に利用するために、直接利害関係のない者からの訴訟提起が大幅に増大する恐れがある」との意見が出されております。239では、経済産業省から「ベンチャー支援や次世代技術開発に対する補助金等の支出については、結果として事業が失敗するリスクが高い分野であるが、納税者訴訟の対象となる場合には、担当者に対して萎縮効果が働き、戦略的な予算執行が行われなくなる可能性がある。制度創設に当たっては、行政への萎縮効果によるデメリットを踏まえて、慎重に検討すべき」という意見が出ております。国土交通省からは240のところで、「公共事業の場合は、発注の単位、規模等により、それぞれ、権限を委任された職員が実施決定や契約を行うが、これら個々の契約等全てに対し、公金の支出の適法性に係る訴訟が提起されると、公共事業の執行に係る事務が停滞し、国民のニーズに応えるための行政が十分に行われなくなり、公益性に重大な影響を及ぼす」という御意見が出ております。
続きまして、資料3−2、国民からの意見募集の意見の主な項目について御紹介いたします。
5ページの「第2−2 審理を充実・迅速化させるための方策の整備」について御覧下さい。「賛成する趣旨の意見」の、例えば一番上の項目ですが、「文書提出命令制度を用いると、原告側は、文書の特定、立証事項との関連性など、そもそもどのような文書が行政側にあるのかわからない元で、困難をしいられる。また、早期に行政の主張とその根拠が判明するのが望ましいから、釈明など主張レベルの問題として位置付ける方が、文書提出命令などの立証の問題として位置付けるより好ましい」という御意見が出されております。また、他方では、「民事訴訟法149条による釈明権の行使は裁判所の裁量に委ねられている」という御指摘がございます。
「個別の論点項目に関する意見」は、アのところで、真ん中の少し下ですが、「民事訴訟法の釈明権の規定に解消することなく特別の規定をすべきである」という御意見が出ております。
「イ−(ア)について」の項目ですが、「釈明処分としてある程度包括的にできるようにすべきである」という御意見、それから、「原則として弁論主義がとられるという前提に立って、行訴法における文書提出義務のあり方や公務員の守秘義務との関係など総合的に勘案して、 釈明処分(民訴法第151条)の特則に位置づけるべき」という意見、それから、「審理の充足・迅速化のためであるから、「訴訟関係を明瞭にするため」(民事訴訟法151条)の釈明処分の一環として位置づけるべき」であるという御意見、それから、「釈明処分の特則であると同時に文書提出命令の特則とすべきである」という御意見、それから、「文書提出命令の特則と位置付けるべきである」という御意見、このような意見の分かれになっております。
6ページ「イ−(イ)について」ですが、対象については、「当該事案についてした調査の結果にかかる調書その他の当該処分又は裁決の原因となる事実を証する資料一切を対象とする」という、行政手続法18条第1項に準じた考え方の御意見が出ております。
「イ−(ウ)について」は、「民事訴訟法第220条4号ロ規定の除外文書は拒むことができるとすべき」という意見、その他、そこに記載されている御意見がございます。
「イ−(エ)について」の、取消訴訟以外にも適用すべきかということについては、「義務付け訴訟、行政上の差止め訴訟(予防訴訟)にも導入すべきである」という意見、それから、「取消訴訟、無効確認訴訟以外の訴訟(争点訴訟、国家賠償請求訴訟等)においては、通常の書証として提出を求めれば足りる」という意見、それから、「行政事件訴訟法の定める訴訟類型のすべてに適用すべきである」との意見、その他の意見が出ております。
23ページの「第2−6 原告適格、自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限、団体訴訟」ですが、「第2-6-(1) 原告適格の拡大」につきましては、A案、現実の利益というところですが、それに対する御意見として、それを支持する御意見の中に、「原告適格は判例では、「法律により保護された利益説」が確立されており、当該処分の根拠となっている行政法規が原告である第三者の利益を個別具体的に保護しているかどうかが判断基準になる。しかし、個別実体法は直接の規定がない場合も多く、ある処分の因果関係の結果、具体的に苦痛を被る者がいるのであれば、その者に原告適格があると判断すべき。これにより民事の受忍限度を超えるものとのバランスがとれる」という意見がございます。次は「主婦連のジュース判決のようなものを念頭に置いて、拡大をすべきだ」という御意見です。次ですが、「近鉄特急料金認可処分取消等請求事件のような事例において、通勤定期券を購入し特急を利用している沿線居住者に原告適格を容易に肯定することができる。この判断枠組みのもとにおいては、判断の積み重ねの中で、裁判官が躊躇することなく迅速に、原告適格の健全で常識的な判断に到達することができる」という意見があります。1つ飛びまして、「「法律上保護された利益説」が本質的に原告適格の範囲として狭すぎるかはともかく、判例実務の運用は、原告適格を諸外国に比して厳しく制限している。生命・身体の健康などが関わるものについては、原告適格が認められることがあるが、経済的利益については厳しい判断がなされる傾向があり、合理性があるとは思われない」というような御意見もございます。2つぐらい飛んで、「「現実の利益を侵害されるおそれのある者」は、拡大解釈され、濫訴が懸念されるので、一定の制限が必要である」という御意見もあります。
B案として、「法的利益」というような考え方に基づく意見としては、「利益がどのようなものであってもすべて原告適格が認められるというものではなく、原告適格が認められる範囲は、評価を経た法的な利益が侵害された場合に限られるべき」という意見が出ております。
C案という「利害関係」という前提の意見を支持するものもございますし、「その他の意見」にありますように、D案というのを支持する意見もございます。他方、その他の意見のところでは、3つ目にありますように、「現行9条の規定が緩やかな解釈の妨げになっているとは考えられない。本来、司法権による法律上の争訟の解釈にかかわるものであり、その点の改善がなにより求められる。法律の規定を安易に改正することは、行政訴訟の特別訴訟(政策的法定訴訟)化をもたらすおそれがあり妥当ではない。法律の保護に値する利益説の構成要素がこれまで不明確であった。裁判的保護利益性、処分と保護利益との相当な連関性、個別的利益性などが妥当であると考えている」という御意見もあります。次には、「取消訴訟の原告適格をどこまで拡大しても、処分によって原告が受ける「直接的、個人的な利益の侵害」要件を外すことはできない。その要件が、根拠法およびそれと関連する法令によって保護された利益まで拡大してきている(新潟空港事件およびエ)。当事者訴訟(の原告適格)との関係を考えると、それ以上の拡大は「保護に値する利益説」となり、当事者訴訟との境界がなくなる」という御意見もあります。次の意見に「要件を緩和するのは賛成だが、要件規定の文言の変更で運用が実質的に変わるかどうかは疑問」という御意見もございます。
25ページの「第2-6-(2) 自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定の削除」は、これは大体、従来この検討会における議論の分かれ目と同じような意見の分布で、双方意見が分かれているところです。
26ページの「第2-6-(3) 団体訴訟の導入」ですが、まず、原告適格を有する場合に、個人が有するときにも団体に認めようという案ですが、これを妥当とする意見もございます。「環境問題に関するもの、公共料金に関するものなど個人個人の利益が希薄な場合がある。このような場合、適当な団体が訴訟を遂行した方が、費用の負担、人的資源の活用など様々な面から見て有益であるし、現実的である。個別法では団体訴訟を導入することが困難で、一般的な規定が必要である。個別に当事者適格が認められている場合に団体が訴訟を提起しても、行政としては不都合はないはずであり、特に不都合のある場合のみ個別法で団体訴訟を禁止すれば足りる」という御意見もあります。
B案、個別では原告適格はない場合に原告適格を認めるべきという案については、「個別法で定めるべき。訴訟法できめるとなると、訴えを起こすことについての「団体固有の利益」をどのように表現するか、困難がある」という意見や、「行政事件訴訟法に規定を置く必要はなく、もっぱら個別法に定めることが妥当。行政事件訴訟法は民事訴訟の特例的性格を維持すべきであって、行政に関する特別訴訟の一般法という性格付けをことさらにすべきではない。取消訴訟制度の変質を招くため、原告適格の拡大によって対応すべきではない。個別法による法定訴訟として制度化すべきである。環境、自然保護、消費者などの分野で導入すべきである」という意見もあります。それから、「団体訴訟を行訴法で一般的に承認したうえで、どのような分野でどのような団体に原告適格を認めるかについては、個別法の定めるところに委ねる」という考え方もございます。
「その他の意見」ですが、まず、「原告適格を解釈運用するうえで、なお団体訴訟が必要な場合は、どのような場合が想定されるのか検討するかを先議すべき」という御意見、「団体訴訟制度は、今の段階において、このような制度を導入することは適切でない」という御意見、次に、「個人として原告適格を有する者によって基本的には構成されている団体については、訴訟遂行能力、訴訟遂行上の当事者双方にとっての合理性から、原告適格を認めることが適切。あわせて、当該領域の性質、そこで問題となっている利益の性質に即して、特定の利益を保護することを目的とする団体に原告適格を認める規定を個別法に設けることも必要」という御意見、むしろ、両面について認めるべきだという御意見です。
「第2-7-(1) 主張・立証責任を行政に負担させること」は、28ページになりますが、主張・立証責任を行政に負担させることに賛成する御意見の中では、2つ目にありますように、「あくまで原則規定であり、個別具体的な事例において例外を認めることを否定するものではない」という意見を述べておられる方がおられます。「その他の意見」で、「行政処分に関しては立証責任について定める法律の条項はないため、具体的な解釈は民事訴訟法の例によっていますが、立証責任の分配について民訴法は法律要件分類説(通説)がとられています。こうした立証責任の分配を前提として考えた場合に主張立証責任は原則として行政庁にあるとすると、行政庁はすべての違法事由の不存在を主張立証していかなければならないことになり、実際上不可能でないかという指摘もなされていることからして、行訴法の中に一般的に規定することは困難である」という御意見もあります。
29ページの「第2-7-(2) 処分の理由等の変更の制限」は、「賛成する趣旨の意見」としては、「行政決定の理由の追加又は差し替えについては、紛争の一回的解決の観点等から認めるが、審理の早い段階で主張させ、それ以降の主張や判決後の新たな行政決定について制限を設けるべき」という御意見もあれば、「その他の意見」では、「行政行為の結果的な適法性が問題であり、理由それ自体が行政行為の効果をもたらすものではないので、理由の変更を認めてもよい」という御意見、あるいは、「行政処分には、例えば懲戒処分など処分理由の変更が許されないと解される処分がある反面、租税の賦課処分などのように、処分理由が変更されても、結果として租税の賦課が正しいと判断されれば、その処分の取消しをすることはできないと考えられる処分も存在する。行政事件訴訟法で一律に処分の理由の変更を制限することはできない」、それから、その下で、「申請拒否処分の取消訴訟において、拒否の理由の差し替えを封じても、異なる理由での再処分を許容するとすれば、いたずらに紛争の長期化を招きかねない。勝訴判決の遮断的効力との関係を踏まえた議論が必要である」という御意見などがあります。
30ページの「第2-7-(3) 事情判決の制限」は、「賛成する趣旨の意見」としては、「損失補償などの代替措置を講じることができないときには認めるべきでない」、「選挙訴訟では事情判決をすることができないと、明文の規定を置くべきである」、「違法でも取り消さないという事情判決については「中間判決」をするようにすべき、加えて、必ず原告に損害賠償を行うべき」という意見、「事情判決前に当事者の意見を聞くこと、中間判決を義務づけることは妥当」とする意見などがあります。これに対して、「その他の意見」では、例えば「代償措置を講じることができなくとも、事情判決の要請される場合はありうると思われる。必ず中間判決を下すべしとの意見は、公定力=排他性を前提としない違法性確認訴訟の場合には、違法宣言判決が終局判決にならないのか疑問なしとしない」、それから、選挙訴訟との関係では、公職選挙法の219条第1項との関係を検討すべきではないかというような御意見、それから、「事情判決によって国民の権利救済が必要以上に制限されないようにすることは必要であるが、損害賠償ないし損失補償等の代替措置を諸ずることができない選挙訴訟において、事情判決が全くできないとしてしまう結論には賛成しない」という意見、その他、そこに挙げておりますような意見がございます。
31ページの「第2-7-(4) 裁量の審査の充実」につきまして、例えば考慮事項を規定してはどうかという意見について、「B案が最も適当とする意見」というのは、裁量の審査、逸脱、濫用の場合に限り取り消すことができるという30条を削除すべきだという意見ですが、その項目としては、「個別実体行政法は、広範な裁量を伴う不明確な規定が多く、行政権限に白紙委任が与えられている場合が多い。行政裁量など行政運用を適正化するために、本来は、裁量統制の基準、手続等を定めることが必要であり、行政手続法を強化すべきである」という意見、それから、「すでに現在の判例は30条を超えており、いずれも法律解釈として可能であるところからして、現行30条は廃止すべきである」というような意見、それから、A案のように、裁量の判断基準を規定するというような考え方は、「基準として不明確で、法文上に明記しても機能しないおそれがある」という意見、C案に対しては、「費用便益分析手法を唯一の基準とするという意味ならば疑問」というような意見、それから、「裁量統制基準を列挙することは、かえって学説・判例における理論の発展を歪める」というような御意見、このような御意見がございました。D案、裁量について行政に説明をさせるというような形の意見については、行政の説明責任の観点から、そのような考え方を支持する御意見がございます。「その他の意見」としては、「行訴法30条のような規定は必要である。問題は、判例による法形成である」と、あるいは「行政事件訴訟法第30条が、裁判所の裁量審査を抑制しているとはいえないので、この規定の見直しをすべきであるとする考え方には、賛成できない」、あるいは「裁量については行政実体法令に裁量基準を明定する」というような御意見、その他、いろいろな御意見が、多数ございます。
33ページ「第2-8-(1) 訴え提起の手数料の軽減」は、そこに記載してあるとおりでございまして、それぞれの考え方を支持する御意見があり、そこにあるような根拠を掲げられております。
34ページの「第2-8-(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」につきましても、それぞれA案、B案を支持する御意見と、それぞれの根拠が記載してあります。「その他の意見」としては、「民事訴訟法理によるべきで、特段の扱いは不要と思われる」という御意見や、「行政訴訟においても一定の敗訴者負担制度の導入を検討すべきである」という御意見などもあります。
35ページの「第2-8-(3) 不服審査前置による制約の緩和」では、これはそもそもそういった不服審査前置をできないようにするというような考え方に賛成するA案もありまして、さらにB案、C案の意見、「その他の意見」に書かれているような御意見があります。
36ページの「第2-9-(1) 行政訴訟の目的規定の新設」ですが、例えば「賛成する趣旨の意見」の2番目では、「行政訴訟は、違法な行政の行為から国民を守るという目的とともに、行政の違法な作用の是正という目的を持っており、法の支配の理念のもとこの2つの目的を実現するための、国民のための制度として、行政訴訟制度を設計し直さなければならない」という観点の御意見、あるいは、「行政訴訟の主たる機能は個別の権利救済であるが、法の支配を通じて行政の適法性を担保する役割も果たしている。この点を明らかにする規定を設けることは支持できる」という御意見もあります。他方で、「その他の意見」としては、「行政の適法性の確保を行政訴訟の目的とする旨の行政訴訟の目的規定を新設すべきであるとする考え方には、賛成できない。行政の適法性の確保は、独自の目的ではなく、行政により受けた権利侵害を救済することによって結果的に達成されるものであって、行政訴訟の目的は、あくまで、権利侵害を受けた者の救済である」、あるいはその規定は「不要である。とくに適法性確保の目的を書き込むことには賛成できない」という御意見、「解釈指針を明示すべきである」という御意見もあります。「行政不服審査法にはあるが、特別な機能をはたしていないので、設けても設けなくても大きな違いはない。訴訟の基本的役割をどう見るかが一番大きな問題」であるという御意見もあります。
37ページ「第2-9-(2) 国の公金の支出の適法性を確保するための納税者訴訟の創設」について、「賛成する趣旨の意見」としては、「公取委が勧告した同一の事件で、自治体の認識と国の認識の乖離は存在しますが、自治体も自主的に損害の回復に動いたものではありません。住民監査請求を行なうまでは損害の回復措置に取組んではいませんでした。このように、納税者による監視が働きかけられる納税者訴訟制度を国に設けることが必要です」という意見、あるいは、「憲法第90条第2項は、「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」と規定しており、格別の留保も存しないので納税者訴訟制度を立法化することに支障はない」というような御意見、これに対して、「その他の意見」では、「国の公金の支出をチェックする制度は必要であると考えるが、その仕組みについてはさらに検討すべきである」、それから、「納税者訴訟を創設すべきであるとする考え方には、賛成できない」、あるいは、「会計検査院と裁判所の役割分担を検討する必要がある」、このような御意見に分かれたところです。
【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、先ほどと同じように、今日御説明にあった行政庁側の意見、それから国民の皆様からお寄せいただいた意見、両方につきまして、コメントあるいは御感想をいただければと思います。場合によりましては、先ほどから言っておりますように、最初の部分について言及されるのも結構だと思います。
【福井(秀)委員】総じての印象ですが、後半の方は行政庁の意見と国民の意見と、ある意味でかみ合った非常にクリアな対比があって大変参考になったという印象です。おおむね、私は国民の意見の方の大勢を支持する立場ではありますが、そういう観点で若干のコメントを申し上げます。行政庁の意見の21ページですが、160とか、161にあります農水省の意見ですが、恐らく、こういう畜産農家の権利移動について余りに拡大されることを懸念しているような議論です。こういう議論は、他の省庁にも連続して見られるのですが、それほどこういったことは懸念には当たらないという印象です。結局、いくら現実の利益と言っても、それが法的な因果関係がなくして発生したものであれば、現実に判決で不当に拡大されて認められるという可能性は、現実問題、日本の優秀な裁判官制度の下ではあり得ないと思いますので、余りこういう議論で原告適格の拡大の余地を狭めるべきではないという印象を持っております。その他の167とか、171とかも、おのずと因果関係という観点から、縛りがあり得るのではないかという印象です。
25ページの主張・立証責任ですけれども、これも国民の意見と良い対比があると思うのです。例えば、195 とか196の法務省の意見ですけれども、例えば在留資格の変更事由の存在は在留者が、申請者が立証すべきだという規定が、まさにあるわけですから、こういう規定を置けば足りる話だと考えればいい。およそ、こんな事情について行政庁が不存在を立証せよなどという非常識なことに顛末としてなるはずはないわけでありまして、こういった本人の方がよく知っていることについては、本人に立証させるということを単に実定法の中に書き入れていけば、その上で適法性の判断は原則として、主張・立証は最後に残ったところは行政庁がやるのだというのは、そんなに不自然な話ではないように思います。
26ページの処分の理由等の変更の制限ですが、これも並べてみると余り説得力がないという印象です。行政庁の負担とか、それから想定されるあらゆる理由を明らかにするというのも、これも極端な議論でありまして、やはり処分を行うときには、国民の意見の方にもありましたが、一定の理由とセットでその処分の妥当性ということを想定して実施するわけですから、そもそも理由が違っていたというのは、やはりそれは相当な重大な瑕疵だと考えるのが普通の発想ではないかと思います。そういう意味で、この処分理由についてはどこまで差し替えを認めるかはともかくとして、差し替え自由だということについて制約を設けるべきだということの否定論拠には、各省の議論を見て余りなっていないのではないかという印象です。
28ページですけれども、裁量の議論ですが、例えば211の意見にもありますが、これもやや特殊な論点だと思うのです。いろいろ総合的に勘案するから裁量を残さないといけないのだということは、それはある意味では当たり前のことなのです。ところが、総合的に勘案すべき裁量基準が、場所が違ったり、処分権者が違ったり、違うように比較的恣意的に運用されている傾向があるのではないかという議論に対応するための論点だったわけですから、元々基準がちゃんとしていないのが、問題であるのにおよそ裁量があるから総合的勘案だから裁判所に判断させないのだというのは、これも全く反論になっていないという気がします。例えば212の総務省の意見なども、要するに現在は法律の中に、例えば費用便益分析とか、具体的な評価基準が書いていないと言うのですが、これも正に、立法論の場での議論としては、書いていなくても、それが妥当であるのかないのかということですから、必ずしもこういう切り口では反論にならない。
29ページの弁護士報酬の敗訴者負担ですけれども、これもいろいろ行政だけ特別ではないから片面的敗訴者負担はダメだというのはあるのですが、なぜ行政だけ特殊ではないということになるのかという論拠がよく分からない。むしろ、これは「主な検討事項」の中でも、この検討会の一貫した議事の中でも、行政と国民ないしは原告の側での力の格差ということを前提にした議論でありまして、そこに何も具体的に答えていない意見しか出ていないという印象です。
30ページの不服審査前置についても同様の印象ですが、例えば224とか、225とか、これは全く根拠がない意見だと思うのです。例えば、224にしましても、実情を把握するために有意義だと言うのですけれども、誰が実情を把握するのかというと、結局は処分庁なり処分庁側の不服申立機関の話でありますし、また事後の訴訟の審理の適正ということについても、適正でないと考える人が不服申立前置にとらわれることなく裁判所に訴えることを否定する論拠には、必ずしもならない。225の意見も極端でありまして、「一律に不服審査前置主義を採ることを禁止する理由はない」と言っておりますけれども、一律に禁止するべきだなどという議論はこの検討会で一体どなたが言っているのでしょうか。こういう存在もしない意見を前提にして攻撃するという議論の論法自体に問題がある。31ページの、例えば暴力団の指定について公正性や統一性が確保されるようにという議論がありますけれども、こういったことは前置でなければ本当に統一されないのかどうか。裁判所がやるのだったら、そういうことはあり得ないのかというのは、そもそも裁判制度そのものに対する信頼感の問題ではないかという印象です。
33ページの納税者訴訟ですけれども、これも極端な議論が多いのですが、例えば239の経済産業省の意見も、戦略的な予算執行を行うことが違法、不当だなどという判決は少なくとも今までの住民訴訟の数ある判決の中で見たことがございませんし、こういった領域については、少なくとも横並びでやるのであれば問題ないということは恐らく共通理解だと思いますので、過去の判例なども全く御存じなく、こういう主張をしておられる、こういう印象です。
【深山委員】先ほど法務省の意見を言われましたが事実誤認なのではないでしょうか。元々の「行政訴訟検討会における主な検討事項」の34ページ、先ほどの「不服審査前置による制約の緩和」というところですが、制約を緩和するという考え方があるという中で、A案、B案、C案と掲げてあります。A案はそもそも不服審査前置を定めることはできないこととする考え方というのが一番最初に掲げられています。これは若干内容は知っていますので、名誉のために言いますが、法務省の意見は、ここまでするのはいかがなものかと、正にそういう一律、不服審査前置はいろんなケースがあるわけですけれども、恐らくそれを全部というのはひどいのではないですかねという趣旨の意見ですので。私も実は誰が言われたか覚えていないのですが、そんな意見もどなたかが言われたために、事務当局の方でA案として取り上げられて、意見照会されたのだと思います。
【塩野座長】今、福井委員からは、むしろ論点の追加、あるいは論点の質というよりは、意見の反論という形でもお話になりました。そういった意見は、また次回にでもいろいろと伺わせていただくこともあろうかと思いますが、こんな論点があるならば、自分はむしろこういった論点についても考えた方がいいのではないかというような趣旨の御発言も結構でございます。
【小早川委員】福井委員からは、非常に手厳しい、行政庁の意見に対しての辛口のコメントがずっと続きましたが、私も同感するところもなくもありません。その中で、とにかく現状以上に訴訟が活発化しては困るという、ただそれだけの意識で、何とか現状を維持したいという発言と、そうではなくて、行政を実際に担当している立場で、ここのところをもう少しよく考えてくれというところと両方あって、全部がダメだというふうには私は思いません。それなりに参考になるところはあるかと思います。
具体的な点としては、例えば行政庁からのペーパーの26ページの処分理由の変更をどうするかという辺りは、これは今言った中で言えば、行政の実態からしてこういうところも考えてくれ、処分理由変更を余りに制限すると行政そのものがぎくしゃくしてきてシステムがうまく円滑に動かない、申請に対する応答が一般に遅れる、余りに真面目に事前調査をきちんとやるということになると行政の妙味は失われるというような指摘かと思います。それはそれでもっともなところもあるわけです。私は、この点は裁判所がどこまで行政処分の中身、実体にまで立ち入って、行政庁に代わって判断をすべきか、それとも処分に表わされたところをベースにして、それを事後審査するだけにするかという、これは基本的な姿勢の問題ではありますけれども、なかなか一律には言えないところがあって、結論を言うわけではありませんけれども、訴訟法の規定として余り一義的な解決は難しいのではないかなという気はしております。それよりは、義務付け訴訟ができるのかできないのかというようなところ、そういう外枠の方をはっきりさせるという方がまず先決かなと。その先で、中の審理の在り方の方は、おのずとまた実際的に処理されていくのではないか、今回のこれを見ながら、また改めてそういう感じがしたわけであります。ある意味で似ているのは、裁量処分についての規定で、これは前から私の申し上げている意見ですけれども、訴訟法で規定を置いても、余りプラスの意味はないのではないか、実際の審理に即して柔軟に考えて行かれるのが良いのではないか、その意味ではこの条文削除、という意見ですけれども、そんな感じを改めてもっているわけであります。
【芝原委員】感想になるのですが、法的な安定性とか、行政の安定性とか、こういう安定性と、一方では柔軟性という運用、あるいは国民側、あるいは更には言葉の定義を含めて厳格性という、その辺が何かそれぞれ都合のいいところで使っているという感じがするわけです。このバランスをどう取るのか、これだけ意見が多様に出てきたときに、そういうところのものをどうやって1つの意見に、この検討会の1つの答えとして集約していくのかというときには、何らかの規範的基準が上位の概念としてないと、個別、個別で詰めていくよりも、そういうものが何かないと、これだけ多様になるとちょっとしんどいのではないか、こういう感じがしております。
あと、法律上の利益とか、保護法益とか何度か出てきました。あるいはそれに対して、自己の利益と公益とがありまして、行政側の言う公益というのは、自分たちしか公益を考えていない、そういうふうに読み取れるのです。今や、NPOを含めて公益を考えている私人はいっぱいいるわけでちょっと感覚が違うな、という感じもこれを見ていて随分思います。公益を考える国民もいっぱいいるわけで、行政だけが公益を考え、ただ権限が違うから公益に対する表われ方が違うのであって、お互い公益を大事に考えるというのは同じだと思うのです。こういうものを訴訟法でどう表現するかはちょっと難しいと思います。ただ、そういう国民の方の熟度のレベルの問題と、行政が国民はこうではないかと思っている法律に表わす熟度の問題のレベル認識がちょっと違うのではないかなという感じがします。
【塩野座長】最初のところは、なかなか難しい問題で、検討会で軸足を統一的に決めることができるかどうか、これはもう少し議論をして、大事なところですので議論をしてみたいと思います。 萩原委員、何かコメントはありますか。
【萩原委員】ますます分からなくなってきたというところが正直なところです。
【塩野座長】今日のところは、本当に整理しないままで御説明をして、多少混乱したところもあろうかと思いますが、後の方で申しますけれども、次回はもう少し整理した形で、論点を浮かび上がらせる形で資料をまとめて、つまり我々が今まで議論してきたこと、それから官庁側、それから国民の側と、三者揃ったということでございまして、そういった資料をもう少し分かりやすくまとめてお出しする、それで議論をしていただく、あるいは掘り下げていただくというようなことになろうかと思います。ただ、国民の意見も、先ほど福井委員は官庁と国民の意見というふうに対比されましたけれども、国民の意見もいろいろあるということが、私は今回のこのパブリックコメントの1つの重要なポイントではないかと思いました。だから、これをどう咀嚼していくかというのはなかなか大変な問題だと思ったところでございます。
【市村委員】私も全く同じ感想をさっき言おうかなと思ったのですけれども、パブリックコメントの意見がかなり各意見に対応するようにして分かれたというのは興味深かったと思います。ただ、それだけにそうするとどうやって1つの案に詰めていくかという作業が、ますます大変だなと思って読ませていただきました。
【塩野座長】他に何かありますか。今日のところは、ある意味では生煮えの資料をお見せしたことになりますが、資料が大変膨大なものになったものでございますし、また先ほどもちょっと申しましたように、昨日、一昨日資料が出てきたというところもございますので、こういった形で皆様方に御披露するのもやむを得ないかなというふうにも思いました。
次回のことでございますけれども、次回は割合近い段階で9月17日でございます。近い段階でありますので、どの程度の資料をお出しできるか分かりませんけれども、今日この資料を見て、事務局の方で検討会としても、ここはやはりもう少し掘り下げてもらいたいとか、あるいはこの辺にばらつきがあったのでは今後なかなか整備も進まないという点について、もう一度検討会の御意見の交換をいただきたいというようなところもあろうかと思います。そういった点で、次回も我々の今までやってきた検討の意見交換と、それから今日お出しした2つの種類の資料を踏まえて、今度は論点の追加ということではなくて、まさに意見の交換ということになるのではないかと思います。そういうことで考えて、事務局もそういう考えでよろしいですか。
【小林参事官】今日御指摘が出たように、この行政庁の意見からどういう点を考えていく必要があるかというのを分かりやすく、またそれに対して、反論もあれば、そういう問題点を明らかにして議論をしていただくようにしてはどうかと思います。
【塩野座長】意見の反論、再反論、なかなか大変だなと思いました。先ほどの福井委員の理由の差し替えのところも、直ちに私も何か言いたくなるところをぐっとこらえたところもあるのですけれども、あの場合には判決の既判力の範囲をどの程度、どこまで認めるかということと関係しているようです。私も、多少この夏勉強したところでは、フランスでは理由の差し替えは認めない。しかし、判決の既判力は非常に狭い範囲だと、ですから割合早くぽんぽん判決を出して、それで行政庁も早く対応する、そういうシステムのところと、日本のように1つのことに突っ込んで、裁判官も突っ込むし、弁護士もやたらに突っ込む。これで一件落着で行こうというところと、何度でもやれるというところとは大分違うのです。そういった点で、いろいろ難しいなと思いましたので、どういうふうな議論の展開を今後お願いするかと、あるいは皆さん方がどういうふうに議論をしたいかということについて、次回そういう面も含めて、率直な意見交換をしていただきたいと思います。
【福井(秀)委員】基本的にそういうことで結構ですが、可能であればということで御提案ですが、行政庁とか一般国民の意見とか、元々検討会であった意見とか、一覧表で大括りにするような対比表があると議論しやすいし、見やすいとも思うのですが、技術的に可能であれば御検討いただきたい。それが1つ。
【塩野座長】御意見として承りました。
【福井(秀)委員】もう一つ、今日もこうやって集約していただくと、論点の整理ができて意味があったと思うのですが、ここで出てきた、例えば行政庁の意見はパブリックコメントの前提としては、必ずしも間に合っていなかったように思うので、必ずしも国民の意見の方には、それを踏まえた反論や、コメントが入っていないと思います。今日の要約版は、これで公開されたことになると思うのですけれども、これに対しても、引き続き積極的に意見を下さいという注意喚起をホームページなどでしていただくと、論点を煮詰める上で有益な参考情報なり意見が集まるのではないかと思い、御提案させていただきます。
【塩野座長】その点については、随時御意見を承るという気構えでおります。
【山崎局長】福井委員から御指摘がございまして、確かに一覧表を作ると非常に分かりやすい、今後の議論に有益だと分かるのですが、いかんせん、ちょっと時間が極めて短いものですから、それからやはり全体のことを考えると、残された時間は多くないものですから、論点の抽出の方になるべく時間を使わせていただきたい、やるだけやりますけれども、完全にならないという点もあろうかと思いますけれども、それはお許しをいただきたい。
【塩野座長】よろしゅうございますか。何か特に次回のことについて、御要望があれば承ります。
【成川委員】行政側の意見等をよく項目別にまとめられていると思うのですが、私も、小早川先生と同じように、大変現状維持型の回答と、それからその中には、少しはこの辺を考えてもいいよというふうな、あるいは我々も何か問題があって、少しこの検討会の意見を踏まえて、より具体化をする必要があるとか、そういう御回答といろいろ混ざっているわけなので、その辺はちょっと仕分けをして、余り保守的なところはパブリックコメントなんかに出ているよりも明らかに対比だけであると思うのですが、検討を深めるとかいうふうな課題について、どの中身のところで深めていくのかという次の段階の議論がしやすいような、そういう提起の仕方を是非お願いしたいと思います。
【塩野座長】ありがとうございました。それにできるだけお応えしたいと思います。よろしゅうございますか。今日は、多少時間が早くございますけれども、この程度で終わりにしたいと思いますが、ただ次回からはなかなかそうは参らないと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。それでは、今日は、これで終わります。どうもありがとうございました。