首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会行政訴訟検討会

行政訴訟検討会(第24回)議事録



1 日 時
平成15年10月24日(金) 13:30〜17:30

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官、村田斉志企画官

4 議 題
(1)「行政訴訟制度の見直しのための考え方と問題点の整理(今後の検討のためのたたき台)」についての検討
(2) 今後の日程等

5 配布資料
資料1 行政訴訟制度の見直しのための考え方と問題点の整理(今後の検討のためのたたき台)

6 議 題

【塩野座長】それでは、時間になりましたので、第24回「行政訴訟検討会」を開会いたします。今日の議題は、そこに掲げられているところでございますが、その前に事務局から本日の資料について説明をお願いいたします。

【小林参事官】本日の資料は、資料1「行政訴訟制度の見直しのための考え方と問題点の整理(今後の検討のためのたたき台)」を用意しています。

【塩野座長】本日は、議題にもありますように「たたき台」、「たたき台」という言葉は副題の方でございますけれども、「たたき台」について御検討をお願いすることになります。ただ御意見を伺う前に、「たたき台」の趣旨、性格、あるいは表現ぶりなどにつきまして、私の方から簡単に前もって説明させていただきます。
 まず、たたき台の性格でございます。「たたき台」は、この検討会における委員の多様な意見を土台として、理論的、実務的、法制的など各側面から問題点を整理し、来年の国会への法案提出を念頭に置いた上で、議論が十分成熟しているかどうか、更に議論が必要なところはどのような点であるかといったような点について十分考慮しながら、今後の議論の参考になるものを、事務局とも相談しながら、私の方から、当検討会にお示ししてはいかがかと考え、前回の検討会でその旨提案し、了承をいただいたところでございます。したがって「たたき台」は、これまでの行政訴訟検討会における議論を踏まえまして、行政訴訟制度の見直しのための様々な考え方や問題点を整理し、今後さらに検討を深めるための議論のたたき台として、座長である私が事務局と相談して作成したものであります。そういったことからしまして、私個人の考えを示したいわゆる座長「私案」のようなものではありません。そういうことでご理解いただきたいと思います。
 それから、表現ぶりでございますが、「たたき台」の中で、「取消訴訟の原告適格の拡大」、あるいは「義務付け訴訟の法定」など、明確に改正の方向性を示しているものがございます。これは、検討会の議論の状況から見て、立案に向けて一応の議論の成熟が見られると思われるものであります。もっとも、それらの項目についても、立案のためになお検討が必要な事項は少なくなく、その主なものは例えば1の「(1) 取消訴訟原告適格の拡大」の中の(注1)であるとか、2頁目の「義務付け訴訟の法定」の(注)であるとか、そういった形で記載をしております。また、「たたき台」の中で、「確認訴訟による救済の可能性」、「本案判決前における仮の救済の制度の整備」の項目につきましては、枠の中でも「なお検討する」、確認的に申し上げますと、確認訴訟では4頁の2行目に「実効性についてはなお検討する」という文言が出ております。これについては、検討会として、権利利益の実効的救済のために重要な論点であることの認識は共有されてきてはおりますけれども、議論がなお抽象的な段階にとどまっている面があり、今後議論を深めて、考え方を整理する必要があると思われるものであります。来年の国会への法案提出を念頭に置くと、今後の検討会では、これらの論点について検討の重点を置く必要があるのではないかと思われるところであります。他方、枠の中で「十分な検討を行う必要がある」と記載している項目もあります。一番最初の方から申しますと、2頁の「(2) 団体訴訟」のところでは「十分な検討を行う必要がある」となっております。検討会として、立案の方向性を示すにはまだ議論が成熟しておらず、これらの項目について、来年度の法案提出に向けて立案の方向性を示すことができるか否かは不透明であって、あるいは将来の課題として取り扱うべきかなど、中長期的な検討の継続の必要性も視野に入れた上で、その取扱いを議論していただいた方がよいと思われるものです。
 それから、(注)の中に記載しているものの考え方でございますけれども、例えば事情判決の制限の考え方や、主張・立証責任を行政に負担させる考え方など、「行政訴訟検討会における主な検討事項」では独立の項目とされていたものが、「たたき台」では(注)の内容として記載されているものがあります。例えば事情判決につきましては、「訴訟の対象」のところの最後、5頁に記載がされております。これらの項目は、委員の意見が分かれているなど、検討会として立案の方向性を示すにはいまだ議論が成熟しておらず、また、制度の運用の状況や判例及び学説の動向などを踏まえて検討する必要があるなど種々の問題もあるため、来年度の法案提出に向けて立案の方向性を示すことができるか否かはかなり不透明であって、今後の検討会としては立案に向けた検討に力を注ぐ必要があることを踏まえると、将来の検討を待つべきかどうかを含め、その取扱いについて慎重に検討する必要があるのではないかと思われるものです。以上が表現ぶりのことでございます。なお、当検討会で、「主な検討事項」として整理していただいた項目は、枠の中であれ、(注)としてであれ、何らかの形で言及されておりますことを、最後に付け加えておきます。
 以上、このたたき台の性格、さらにはその表現ぶりの意味するところについて、ご説明をいたしました。個別の論点の整理の仕方については、各項目ごとの説明の後でご議論、ご意見の開陳をいただくといたしまして、この段階で、いわば共通事項としてのご説明をいたしましたので、こういう共通事項につきまして、ご質問、ご意見があれば承りたいと思います。

【水野委員】今、御説明いただきましたけれども、今回の「たたき台」は前々回の「主な検討事項」を踏まえてのペーパーであるという趣旨で理解してよろしいですか。

【塩野座長】「主な検討事項」を踏まえてというか、「主な検討事項」として、いろいろ議論を積み重ねてまいりました。その後も議論を積み重ねてまいりました。そういった議論の積み重ね全体を踏まえてというふうに御理解いただきたいと思います。

【水野委員】今の御説明ですと、いわゆる今回やると決めているものと、「なお検討」についてはもう少し詰めてやっていこう、「十分な検討を行う必要がある」というものはなかなか難しい、(注)に落ちたものはもっと難しい、いわゆる4つのトラックに分けられたと理解してよろしいですか。

【塩野座長】トラックという意味が、この場合のトラックと随分違うと思うのですけれども、成熟度に応じて分けてみるとそういうことになりましたということでございます。

【水野委員】そうすると、3番目の「十分な検討を行う必要がある」と(注)に落ちているものは、かなり差があるという理解ですね。

【塩野座長】そこは、それぞれ厳密に考えていくと、そううまくきちっと分かれているかどうか、私もよく分かりませんけれども、例えば(注)になっているものは今後の学説、判例の展開があります、あるいは、もう少し学説、判例の動きを見なければダメではないかというふうな形で整理しているものがあります。そうすると、これは例えばこの検討会、何年続くか分かりませんけれども、幾ら何でも5年、10年続けるわけにはいきませんので、その間の判例の動向をどこかで見て結論、意見をまとめなければいけないといったことがございます。
 それに対しまして、「十分な検討を行う必要がある」というのは、その場がどこであるか分かりませんけれども、とにかく学説、判例の動きを見てみようなんていうことよりは、もう少し法政策論として議論ができることがあるのではないかという趣旨でございます。

【水野委員】「十分な検討を行う必要がある」というものと、(注)に落ちたものとの間に、どういう基準、どういう区別でそうされたのか、ちょっと理解できなかったものですから。これまではせいぜい第3トラックで終わっていた。今回はさらに分かれています。確かに、(注)にまわっているもので、例えば訴訟費用の問題について(注)の中に落ちているというのは分かるのです。ところが、例えば一番最後の納税者訴訟の中の(注2)で行政訴訟の目的のところが書いてあるわけです。行政訴訟の目的というのは、納税者訴訟だけの問題ではなくて、全般的な問題、むしろ納税者訴訟といった客観訴訟以外の行政訴訟についてどう考えるかというのがこの目的の問題ですから、なぜこういうところに落ちているのかというのが理解できなかったのです。

【塩野座長】そこは、技術的な話で、「主な検討事項」の目次を見ていただきますと、最後に「9 行政訴訟の目的・行政の適法性を確保するための訴訟」でまとめてあるものですから、ただ順番が(1)が目的規定で、(2)が納税者訴訟ですけれども、目的規定を置くか置かないかというのは、まず全部終わった後での話ではないかということを前からお話をし、また今度もそういう形で御意見をお諮りしたいと思いますので、落ち付き場所が余りよくないと言われれば余りよくないのですけれども、そんなに深い意味で言っているわけではなく、「主な検討事項」でもこうまとめておりましたので、そういうふうに御理解いただければと思います。

【水野委員】それから、今回の中で前回の「主な検討事項」では、例えばA案、B案、C案というふうなものがありました。それで、どれを取るかということがこれからの議論だと思うのですけれども、今回の「たたき台」でどの案を取るかということを明示してあるものと明示してないものがあります。これはどういうところで差が付いてきたのですか。

【塩野座長】この点は、なかなか私も事務局ともいろいろ議論して苦労したところなのですが、前の「主な検討事項」のときは、とにかくこの中でどういう議論が行われているかということを、関係省庁、あるいは国民の皆様にお目にかけたい。そこで、いろんな案があります、こういう案もありますと。そこで、もっと別の案がありますか、あるいは論点としてもっと論点がありますか、という国民への問いかけの文章として作られている面がございます。
 ところが、これから御審議いただく「たたき台」というのは、もう問いかけではなくて、来年の通常国会に向けての成案を得るべく向かっていくという段階で、A案、B案、C案という羅列の仕方がいいのかどうか、あるいはそういう形で「たたき台」ができるかどうかということで、私も随分考えました。ただ、議論していく過程で、ある成案を得るという方向に行くというのは、今までの御意見を外すことは、私はそれこそあってはならないと思いますけれども、まとめ方としては(注)の中でこういう意見があったという言い方を整理をするということも、少なくともこの検討会への資料の提出の仕方としては、あってよろしいかというふうに思ったわけでございます。

【水野委員】例えば、具体的に一つは、管轄の拡大については2つの考え方が示されています。つまり、原告の住所地の高裁所在地の地裁にするか、原告の住所地の地裁にするか、これは高裁の所在地を管轄する地裁にするというA案が1つだけ取り上げられている、一例としてですね。他にもありますけれども、これはやはりそちらが多ければ、それはそれでもいいと思いますけれども、私は原告の住所地の地裁でいいのではないかという意見ですから、それが今までの議論でこちらでいこうということには必ずしも大勢がなっていたとは理解してないのです。ですから、いわばそういうふうに今回の「たたき台」で、両説ある中で、こうだと決めておられるものがある。他方、原告適格については、A、B、C、Dの案が書いてある。これについては、Aで行くのか、Bで行くのか決めてない。そこらの差がどこから出てきているのか。

【塩野座長】それは、それぞれの項目ごとに、それぞれこういう理解の下に、あるいは今までの議論の仕方をこういう理解の下に、こういうふうにまとめましたということがあるものですから、今の段階で私が逐一お答えするのもいかがかというふうに思いますので、個別の段階に入ってよろしければ、その段階でやはりこの整理の仕方はおかしいのではないか、成熟度の判断の仕方がおかしいのではないかという形で御議論いただければ、むしろまさに今日はそのためにあるというふうに御理解いただければと思います。

【水野委員】分かりました。それから、もう一つは、「主な検討事項」では一定のテーマ、考え方を示しました。それに対して、それをサポートする意見、あるいはそれに対する反対する意見、特に問題点について、こういう問題があるというものを書いた。行政に対する意見聴取について、それだけでは最初に答案を教えているようなものだという小早川委員の御意見がありまして、それに対する反論もこの前のときに入れていただいたわけです。だから、これまでの検討会で検討してきた考え方があって、それに対する積極意見、消極意見がある程度整理されて、いろいろ議論もあったけれどもこれで行こうということで承認して照会したという経過があります。ところが、今回の「たたき台」を、きちっと整理したわけではありませんので、若干の誤解もあるのかも分かりませんが、「たたき台」の中には、これまでの議論に出てこなかったような反対意見と言いますか、そういうものが散見されるわけです。一つたとえて言いますと、「たたき台」の5頁に、「取消訴訟制度そのものを見直す」という項目があるわけですけれども、この中で例えば「是正訴訟の考え方及び取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止の考え方については、行政の行為の在り方・効力全般にかかわる問題であり、訴訟物、請求の趣旨の特定と被告の防御権の保障等との関係など訴訟法理論上の整理が必要な問題も多く含まれることなどから、さらに検討する必要がある」という記載がありますが、こういった指摘は、「主な検討事項」には出てきてないのです。他にもいろいろあります。例えば、2頁に「(2) 団体訴訟」というのがありまして、(注2)というのがありますけれども、この中に「団体の構成員の利益又は団体固有の利益と、団体の訴訟遂行権限との関係についても、さらに検討する必要があるのではないか」という問題点の指摘がありますが、こういったものは「主な検討事項」には出てきていない。例えば、裁量審査についても、7頁に(注)がありますけれども、その(注)の問題点の指摘というのは、必ずしも「主な検討事項」の指摘とは整合性がないと思うのです。だから、「主な検討事項」で我々が整理したいろいろな問題点以外のものを付け加えて、それでこれはいろいろ問題があるので、十分な検討を行う必要があるというふうなペーパーというのは、これまでの流れからしておかしいのではないかと思うのです。

【塩野座長】それについては、一般論でございますので、私からお答えいたしますが、この「主な検討事項」の時点から、かなり時間を経過しております。その間に、パブコメもいたしました。それから、いろいろこの中でも議論をいたしました。ですから、ここに掲げられているもの以外は、この新しい文章の中に入れてはいけないというルールは、私はないと思います。もし、ここに掲げられていないものを挙げてはいけないということだったらば、何のためにパブリックコメントをやったのか。パブリックコメントは無視してこれから検討を進めるべきだということであれば、私はそれは御意見として承りますけれども、それは反対でございます。
 それから、もう一つはそれぞれの御意見にやり取りがあります。そうすると、もう私も長年多少この問題に係わっておりますので、この方の御意見はどなたの論文との関係で出ているのかとか。あるいは独自の御意見なのか、そういうことを常々考えながら議論を拝聴しております。そうすると、是正訴訟のような問題についても、何かしら言葉の端々に、実はこれは行政行為の効力の問題なんだよというふうにおっしゃっているというふうにキャッチいたしますと、それはもちろんこの「主な検討事項」の中には入っておりませんけれども、そういうものとしてこれを整理すべきではないかというふうに思っているところがございます。その意味で、御発言にエクスプリシットに出ているもの、この議事録の全部に出ているものにないではないかという御意見もあるかもしれません。それは、しかし私はその御発言の趣旨が、一体どこから出ているのかということも含めて考える。それが私、年寄りのゆえに座長に据えられましたが、年寄りのすべき仕事かなというふうに思った次第でございます。

【水野委員】今の点は、お言葉を返すようですけれども、この「主な検討事項」ができたのが7月ぐらいです。まだ、二月余りですか。その間に、確かにパブリックコメントと行政の意見は聞きました。しかし、行政の意見ないしパブリックコメントで言われたから出てきたということではないものがあると思っているのです。そういったものについては、やはり公開されているわけですから、国民の側から見れば、「主な検討事項」でいろいろと問題点があるということで議論された。ところが、今回のペーパーでは、いわばそれとは全然関係ない、全然関係ないというと語弊がありますけれども、それに載ってないようなものがいきなり出てくるということになると、これはなぜなんだということを考えるのが通常だと思うのです。その趣旨で御質問をしたわけです。だから、やはり検討会のペーパーですから、やはり検討会で十分議論した項目について、あるいはその意見についてまとめる。もちろん、今から新しい意見を出したらいけないという趣旨で言っているわけではありませんが、そういう観点で是非これからも進めていただきたいと思います。

【塩野座長】それは個別にどうぞ御指摘ください。ただ、私の方も繰り返しになりますけれども、御発言の趣旨を私なりに斟酌しているところがあることは事実でございます。それは、やはり数十年勉強してまいりましたものですから、この御発言の趣旨はこういうところにあるのではないかということで咀嚼をしながら書いたところもございまして、それはやはり入ってないのではないかということであれば、そういう論点、問題の指摘が、これはすべきではないという形で、各論のところで御意見をいただければと思います。御指摘ありがとうございました。

【水野委員】もう一言だけ総括の意見を申し上げておきますが、今回のこのペーパーにつきまして、朝日新聞が報道していたのは御存じだろうと思いますが、大阪版の見出しは原告適格拡大骨抜きという見出しなのです。行政訴訟法改正原案、不便な法、条文温存という見出しで報じられています。東京版の見出しはちょっと違っています。要するに、今回の改正については、非常に不十分だという論調だと思います。このペーパーは、まさにおっしゃるとおり「たたき台」ですから、これからあと数回の検討会で議論を重ねて、そして成案を得ていくということで、我々も最大限努力をしないといけないと思うわけで、この記事には若干誤解の部分もあるとは思いますけれども、ただこの「たたき台」をそのまま、このままだというふうに受け取る向きには、つまりこれは原案を示した、原案をまとめたとか、そういう表現になっているのです。ですから、これがそのまま成案になるということであれば、極めて不十分だという印象を率直に国民に与えているわけですから、今回の分類の中で、「なお検討する」という事項はこれからの詰めで成案を得ていこうという趣旨のようですから、少なくともその部分については実現をするということを、是非強く意見として申し上げたいと思います。

【塩野座長】私は、「なお検討する」というのも、実現するものとして御提案しておりますので、ただなお検討する、結論を得るに際しても、この検討会の御意見を十分にしていただいて、その成果を得られたもので成案をつくっていただきたいという気持ちでございます。どうもありがとうございました。

【福井(秀)委員】今日のこの「たたき台」は、座長の私案という位置づけになるのですか。

【塩野座長】それは正確を期しまして、もう一度申し上げます。先ほど申しましたところですけれども、「たたき台」はこれまでの行政訴訟検討会における議論を踏まえ、行政訴訟制度の見直しのための様々な考え方や問題点を整理し、今後更に検討を深めるための議論の「たたき台」として、座長である私が事務局と相談して作成したものであり、私の個人の考えを示した、いわゆる巷間言われているところの座長私案のようなものではございません、というふうに先ほど申し上げました。

【福井(秀)委員】その区別がよく分からなかったのですが、そうしますとこれは検討会としてのとりまとめの第1次案という位置づけですか。

【塩野座長】この前私がこの場で申し上げて御了承を得た議事録を読み上げます。
 この前この場で申し上げたのは、「本日いただいた御意見も含めまして、本日までにいただいた委員の皆様の多様な御意見を土台といたしまして、理論的、行政法理論、あるいは実務的、それから法制的など各側面から問題点を整理いたしまして、来年の国会への法案提出を念頭に置いた上で、議論が十分成熟しているかどうか、更に議論が必要なところはどのような点であるかといったような点について十分考慮しながら、今後の議論の参考になるものをお示ししてはいかがかというふうに考えている次第でございます」というふうに申し上げ、更に、あとのやり取りの中で、事務局とも十分相談しながらというふうに書いております。ですから私案でもない、要するに今、申し上げたようなことなのです。

【福井(秀)委員】議論の参考に資するもの、としての資料ということですか。

【塩野座長】これは議事要旨にも出ていると。議事要旨は今日掲載ですので、あるいは私の発音の仕方が悪くて、お聞き取りになれなかったかと思いますが、私が今、読み上げたのは、前回申し上げたことをそのまま、一字一句直さないで申し上げたところでございます。

【福井(秀)委員】そういたしますと、この資料は最終的にどういう形になるのかということと、この資料の文責は誰の名義になるのかということを教えていただきたい。

【塩野座長】それは私と事務局双方の文責ということになります。

【福井(秀)委員】要するに、座長プラス事務局の文責の資料だということですか。

【塩野座長】座長プラスというか、座長と事務局です。

【福井(秀)委員】座長アンド事務局ということですね。

【塩野座長】座長と事務局です。

【福井(秀)委員】そうすると、検討会としての意見とりまとめというのは、それとは別にこれからはないのですか。

【塩野座長】それは分かりません、どういうふうな議論になりますか。検討会の報告書というものはどういうふうにするかということは、これからの話です。
 今日は、何度も申しますけれども、来年の国会への提案に向けてまとまるものはまとめる。それはどういう形でまとめるのがいいかという点について、御議論をいただきたい。その成果物をどういうふうな形で公にするかというのは、まだ全然決まっていないというふうに、私は理解しております。

【福井(秀)委員】なぜこういうことをお伺いするかというと、要するにこの資料が座長と事務局の文責になるものであれば、感想とか御意見はもちろん申し上げることはできるでしょうけれども、それはあくまでも最終的に座長と事務局でおまとめになるという資料にすぎないということに位置づけとしてはなるわけです。

【塩野座長】それは、私はこれは一過性のものだと思っているのです。今日お出ししますと、これを基に議論してくださいと、一過性のものです。

【福井(秀)委員】要するに、これがもし検討会として、いわば委員の資格で係わって最終的に公表されるとか、とりまとめられるものであれば、その当事者としての見解を披露しないといけないし、そうでないものであれば、一種の評論なり感想に留めざるを得ないのかもしれないと思うのですが、それはどちらと理解すればよろしいのでしょうか。

【塩野座長】2段階ありまして、1つはとりまとめとしてこれは不適切ではないかと、成熟してないと、幾つか分けています。それは今までの客観的なものと違うではないかというのが一つあります。それはどうぞ御指摘していただきたいと思います。
 もう一つは、ここでなお検討していただきたいと言っているものについて、そういう必要があるものを是非検討していただくと。それは評論家ではなく、今までどおり福井委員としての識見に基づいた御意見を開陳していただきたいということです。

【福井(秀)委員】その場合は、開陳するのはいいのですけれども、開陳した結果がその委員全員が参加として、何らかの形で検討会としてとりまとめられたものに反映するのか、それともこれがあくまでも最終的に「たたき台」で、これのアレンジという形で文責はあくまでも座長と事務局ということで最終的に推移するのかというところが、ちょっとよく読めないものですから。

【塩野座長】そんなことは考えていませんけれども、とにかく今日のところは、この前皆さんの前でお約束しましたものですから、そういうものとして「たたき台」をお出しいたしますと。これについて間違っているところがあれば御指摘いただきたい。そして、なお検討していただきたいという点については、是非御意見をいただきたい。その御意見が一つにまとまればいいし、まとまらない場合はどうするかという点についてはどうするかというのは、またこれからの議論になります。

【福井(秀)委員】何となく分かったような気もします。多分いろいろな意見が既に検討会の中でございましたし、今日も多分個別の議論でいろいろな意見があると思うのですが、せっかく検討会として、こういう合議体で議論してきたわけです。もちろんせっかく先生が示されたこれに対しては、建設的な議論ができるということは当然重要なことだと思うのですが、検討会の委員として今まで参画してきた延長線上で、それがいわば検討会としてのとりまとめにどのような形で反映されるのかということは重要な論点だと思いますので、そういうものとしての検討会のとりまとめということは十分念頭に置いていただければと思います。

【塩野座長】他の検討会もいろいろございますので、そういった情勢も考えながら、事務局としても考えますし、またそれこそ皆様方もお考えいただきたいと思います。ただ、この検討会に課された最大の課題は、この司法制度改革推進本部の設置期間内に、是非成案を得る、成案を得るというのは法案の形にするということでございますので、それに向けて今、一生懸命動いているということでございます。

【福井(秀)委員】それは分かりますが、もしこれが最終的に、今日なりこれからの何度かのいろんな議論を踏まえて、検討会委員からの意見はいろいろ聞くけれども、最終的に座長と事務局の案としてとりまとめるための参考、諮問意見を聞かれるということであれば、多分合議体としてこういう検討会をつくる意味はほとんど最初からなかったということになるような気がするのです。それであれば、座長と事務局が個別に委員に何回かヒアリングをして、それを斟酌して座長と事務局でおまとめになるという形もあり得たわけで、せっかく集まって議論して合議しているということは、合議体としての検討会で何らかの意見をまとめるかどうかはともかくとして、議論した結果を公表することを当然の前提としていたものとして理解しておりましたので、それはそのようにしていただくのが、最終的には適当ではないかという感想を持っています。

【塩野座長】時間を遅らせて大変恐縮でございますけれども、先日司法制度改革推進本部に置かれました顧問会議がございました。そこで、いろいろな御議論がありまして、刑事の方では裁判員制度について裁判員の数がちっとも決まらないではないか。行政訴訟の方では、原告適格は何をしているのか。そういうふうにごちゃごちゃ言って決まらないならば、それでは顧問会議の方で引き取りましょうという御発言がございました。そこで、私は皆様の御意見を体するという意味ではございませんけれども、今、一生懸命皆様が成案をまとめようと努力している間に、お前たちは適当に議論をして、それでまとまらなければ俺が引き取るということでは、私はそれはお引き受けできませんということを、2度ほど申しました。その記録は、おそらくホームページに載ると思います。人に頼んでおいて、合議体に頼むということはとにかくいい議論をしてくださいということを頼むのに、頼んでいる最中に意見が分かれているから俺が引き取るということでは、私としては座長としての役を引き受けられませんと言うつもりで、お引き受けいたしませんと申し上げました。しかし節目節目には御報告をいたしますというふうに帰ってまいりました。そういうつもりで今日臨んでいるわけでございます。よろしゅうございますか。
 それでは、時間の関係もありますので、先に進ませていただきます。そこで、この検討の順序ということでございますけれども、結構長くございますので、少し分けさせていただきたいと思います。
 まず一つは、第2の「1 救済範囲の拡大」があります。それから、その他の部分、第2の「2 審理の充実・促進」、「3 行政訴訟をより分かりやすく、利用しやすくするための仕組み」、「4 本案判決前における仮の救済の制度の整備」、「5 その他」というふうに、全体を大きく2つに分けて進めていってはどうかと思っております。
 前半の第2の「1 救済範囲の拡大」ですけれども、これは原告適格、義務付け訴訟、差止訴訟など、検討すべき点が多岐に分かれている部分が多く含まれておりますので、前半の部分の途中で議論の成り行きを見ながら、一度休憩を入れ、また前半と後半の間でもう一度休憩を入れて進めていきたいと思っているわけでございます。
 「基本的な見直しの考え方」については、行政訴訟制度の目的に関係する話でございますので、必要に応じ第2の5の項目と併せて御議論をいただければと思っております。
 議論の順序はそういう形でよろしゅうございますでしょうか。まず、第2の1から始まるということでございます。

(委員から異論なし)


【塩野座長】そこで、私と一緒に相談をして作ってもらっておりました事務局の方から、個別の問題でございますので資料を説明していただき、その後先ほど申し上げたような趣旨で御検討をいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

【小林参事官】資料1でございます。第1に「基本的な見直しの考え方−権利利益の実効的救済の保障」を掲げてございます。「行政訴訟制度につき、国民の権利利益のより実効的な救済を図るため、その手続を整備する」としております。(注)でございますが、(注1)として「国家賠償を含む民事訴訟や行政不服審査の制度との適切な役割分担を考慮する必要がある」。(注2)として「多種多様な利害調整を行う行政活動の特質も踏まえつつ、具体的な権利義務ないし法律関係に関する争訟に法令を適用することにより権利利益の救済を図る司法権の本質的役割が、より実効的に発揮される手続となるよう考慮する必要がある」としております。
 「第2 具体的な見直しの考え方」の「1 救済範囲の拡大」について御説明します。(1)、(2)、(3)の3つに分かれておりまして、「取消訴訟の原告適格の拡大」と、「団体訴訟」、それから「多様な救済方法による救済の拡大」という項目がございます。
 (1)の「取消訴訟の原告適格の拡大」について御説明します。「取消訴訟の原告適格について「処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」と定める行政事件訴訟法第9条の規定について、原告適格が実質的に広く認められるような規定とする」としております。(注1)ですが、「原告適格は訴訟による法的な救済を求める資格の問題であるから、何ら法的評価を経ない事実上の利益だけで原告適格を認めることは困難であるという意味において、基本的な考え方として「法律上の利益」が必要であることは否定し難いのではないか。もっとも、そのように考えるとして、「法律上の利益」が認められる範囲をどのような考え方で画するかについてはなお検討が必要であり、その際、原告適格を基礎付ける利益と処分権者が処分の際に考慮すべき利益との関係をどのように考えるべきかなどについて検討が必要ではないか。その上で、条文の文言をどのようなものとするかについては、原告適格が取消訴訟の訴訟要件であることを踏まえて、どのような規定の仕方が合理的かつ客観的な判断基準を提供することとなるのかについて検討が必要ではないか」としております。次に(注2)でございますが、「「自己の法律上の利益に関係のない違法」を取消しの理由とすることができないことを規定する行政事件訴訟法第10条第1項の規定を見直すべきであるとの考え方については、規定の趣旨や、原告適格について規定する行政事件訴訟法第9条の「法律上の利益」と行政事件訴訟法第10条第1項の「法律上の利益」との関係について、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 (2)は「団体訴訟」です。「団体訴訟の導入については、法分野ごとに、その法律の目的やその法律が保護しようとしている権利、利益、当該処分等の特質等を考慮して、十分な検討を行う必要がある」としております。(注1)として「一般法である行政事件訴訟法で、団体訴訟について規定を置くことが法制的に必要か否か、その必要がある場合にはどのような規定を置くべきかについては、民事訴訟一般において議論されている団体訴訟の考え方との関係を含め、さらに検討する必要があるのではないか」。(注2)として「団体の構成員の利益又は団体固有の利益と、団体の訴訟遂行権限との関係についても、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 (3)は「多様な救済方法による救済の拡大」です。これは「① 義務付け訴訟の法定」、「② 差止訴訟の法定」、「③ 確認訴訟による救済の可能性」、「④ 訴訟の対象」の項目を掲げてございます。「① 義務付け訴訟の法定」ですが、「行政庁に処分又は裁決をすることを義務付けることにより実効的な救済を図る必要性のある場合で、行政庁がその処分又は裁決をすべきことが明らかなときは、その処分又は裁決をすべきことを義務付ける判決を求めることができることを明示する」としております。(注1)は「行政庁に対し処分又は裁決をすべきことを義務付ける判決がされるためには、本案の要件として、行政庁がその処分又は裁決をすべきことが一義的に明らかであることが必要ではないか。また、義務付け訴訟による救済の必要性に関する要件についてどのように考えるか、例えば、処分又は裁決を求める申請権が認められる場合か否かで要件を異にすべきか否か、このほかに義務付け訴訟の要件としてどのようなものが必要かなどの問題点については、処分又は裁決がされないことによる原告の不利益の程度、他の訴訟による救済など他に適切な救済方法があるかどうかなどの点をどの程度考慮すべきかも含め検討する必要があるのではないか」としております。(注2)は「処分の相手方となる者以外の第三者が処分の義務付けを求めることもあり得ることから、義務付け訴訟の原告適格について検討する必要があるのではないか」としております。
 「② 差止訴訟の法定」につきましては、「行政庁が特定の処分又は裁決をする蓋然性があるが、行政庁が当該処分又は裁決をすべきでないことが明らかで、かつ、当該処分又は裁決がされた後にその取消訴訟等によって争ったのでは適切な救済が得られないなど、これを差し止めることにより実効的な救済を図ることが必要な場合には、差止判決を求めることができることを明示する」としております。(注)では「処分又は裁決を差し止める判決がされるためには、義務付け訴訟の場合と同様、本案の要件として、行政庁がその処分をすべきでないことが一義的に明らかであることが必要ではないか。また、差止訴訟による救済の必要性(緊急性)の要件についてどのように考えるか、このほかに差止訴訟の要件としてどのようなものが必要かなどの問題点について検討する必要があるのではないか」としております。
 「③ 確認訴訟による救済の可能性」でございますが、「国若しくは公共団体又はこれらの機関の行為であって「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法第3条第2項参照)に当たらないものであっても、当該行為又はこれに後続する行為などによって損害を受け、又は損害を受けるおそれがある場合に、これらの行為に係る法律関係等の確認をすることにより救済を図ることの実効性についてなお検討する」としております。(注1)は「確認訴訟は、確認の利益が存する場合には、行政訴訟においても一定の要件の下に認められ得ると考えられるところ、多様な救済方法による救済の拡大の趣旨にかんがみ、確認訴訟による救済の可能性について検討する必要があるのではないか」。(注2)ですが、「行政訴訟における確認の利益と民事訴訟における確認の利益の考え方との異同、その異なる点につきいかなる理由により具体的にどのような場合が異なることとなるのかについて検討する必要があるのではないか」。(注3)ですが、「取消訴訟の対象である「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法第3条第2項参照)は、判例により「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、あるいはその範囲を確定することが、法律上認められているもの」であると解されており、このような行為に当たらない行為を争う際に確認の利益が認められ得る場合としてどのような場合が考えられるのかについて検討する必要があるのではないか」としております。
 「④ 訴訟の対象」です。「行政立法、行政計画、通達、行政指導等のうち、判例により取消訴訟の対象と認められていない行為について、訴訟類型の拡充を行ってもなお救済が不十分で行政訴訟による救済が必要とされるのはどのような場合か、そのような場合につき、確認訴訟による救済の可能性との関係についてどのように考えるか、立法により訴訟の対象を拡大する場合の方法としては、一般法である行政事件訴訟法により訴訟の対象を拡大するのが適当か、それとも個別法により法分野ごとに争訟の方法を定めることが適当かなどについて、十分な検討を行う必要がある」としております。ここで言う「訴訟類型の拡充を行っても」というのは、「(3)多様な救済方法による救済の拡大」の「① 義務付け訴訟の法定」とか、「② 差止訴訟の法定」などを念頭に置いていることで、それから「確認訴訟による救済の可能性との関係」というのは、③に掲げられております「確認訴訟による救済の可能性」、こういった検討を前提にしながらという意味で掲げているわけです。(注1)ですが、「行政立法・行政計画については、より適切な救済方法として、それぞれの行為形式に応じた独自の訴訟手続を検討すべきか否か、その際、紛争の成熟性があることを実質的な要件とした制度とすべきか否か、出訴期間や後続処分に係る違法性の承継についてどのように考えるかなどについて、手続の在り方を含めた行政の行為形式とそれに対する争訟制度の在り方全般にかかわる問題として、さらに検討する必要があるのではないか」としております。(注2)ですが、「行政指導については、「行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」(行政手続法第32条第1項)で、「相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」(行政手続法第32条第2項)とされていることから、確認訴訟を含む行政訴訟による救済の必要性及び妥当性がどのような点にあるのかについて、民事訴訟(損害賠償請求・差止請求など)による救済の可能性及び妥当性を踏まえ、さらに検討する必要があるのではないか。通達についても、一般的には行政機関内部の行為であるとされていることを踏まえ、同様の観点から、さらに検討する必要があるのではないか」。(注3)ですが「取消訴訟の排他性の範囲さらにはその是非を含め取消訴訟制度そのものを見直す考え方、形成訴訟である取消訴訟に代えて行政決定ないし行政上の意思決定の違法を確認し違法を是正(違法行為の除去、原状回復、作為の義務付けなど)することを目的とする訴訟類型を新設し、裁判所が判決で必要な是正措置を命ずるものとする是正訴訟の考え方及び取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止の考え方については、行政の行為の在り方・効力全般にかかわる問題であり、訴訟物、請求の趣旨の特定と被告の防御権の保障等との関係など訴訟法理論上の整理が必要な問題も多く含まれることなどから、さらに検討する必要があるのではないか」としております。(注4)ですが、「事情判決の制度について、損害賠償ないし損失補償等の代替措置を講ずることができない選挙訴訟などでは事情判決をすることができないものとする考え方については、制度の運用の状況等も踏まえつつ、さらに検討する必要があるのではないか。なお、選挙訴訟に関しては、公職選挙法において行政事件訴訟法第31条を準用していないが、判例において事情判決制度の背後にあるとされる一般法理が適用された事例があることについても考慮した上で、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 以下については、後ほど別の論点のときに御説明したいと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、今の事務局からの説明を踏まえまして、先ほどちょっと申しましたように、「確認訴訟による救済の可能性」と「訴訟の対象」は休憩の後にやりたいと思いますので、その前のところ、「差止訴訟の法定」のところまでにつきまして、資料の整理の仕方や、これを踏まえて今後検討すべき点など、先ほど私か申し上げたような趣旨で委員の皆様のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 できれば、前の方からやっていただいた方がよろしいかと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。多少議論の質が違うところがございますので、前の方と申しますのは、「取消訴訟の原告適格の拡大」のところからということでございますが、まずこれについてどなたからでも御意見をいただければと思います。

【芝池委員】原告適格のところですが、この枠の中では「原告適格が実質的に広く認められるような規定とする」となっております。この意味ですが、もしこの表現が今後も生きた場合、この検討会として、原告適格が実質的に広く認められるような規定とするという方針を取るということになるのですね。

【塩野座長】というふうにまとめました。これでまとめはおかしいという御意見があれば伺います。

【芝池委員】これで固まった場合は、検討会としてこういう形で改めて意思表示をするのですか、するかどうかという問題はありますけれども。

【塩野座長】それはまだ事務局ともまだちゃんと相談しておりませんけれども、大体御意見はこういうことで行こうというときに、どういう形で今度は行くか。考え方を整理した上で、アウトプットは要綱案で出てくることがあります。その背後の方に要綱案の考え方の説明というスタイルがあって、これは情報公開法及び行政手続法の審議会でやった手法なんですけれども、今回はなかなかどうかという問題があります。そのアウトプットをどうするかという点については、今日ここですぐ決められるものではありませんというふうに私は思います。ただ、こういうまとめ方でよろしいか、そして、更にこのコメントにあるようなことについて、その考え方ではうまく整理しきれていないのではないか、あるいはこういう論点があるのではないかということを御指摘いただければと思います。

【芝池委員】それでは、そういう形で、対外的にどういう形で意思表示するかは別なのですが、こういう形で意見がまとまった場合、法案をどこかで作られるのでしょうけれども、そこに下駄を預けるような感じになるのですか。

【塩野座長】それは(注)のところをどの程度、ここで具体的に具体化できるかと、それにかかっていると思います。

【小早川委員】やはり今のアウトプットをどうするかということに係わるかと思いますけれども、今日の書きぶりは「法律上の利益」という言葉は、置き換え難いようにも見えると。しかし、今よりは原告適格が実質的に広く認められることが望ましいので、そのことを規定の上で何か工夫をする。多分そういう趣旨だろうと思いますが、それでいいのかということと、その場合に、仮にそうだとして、今より広く認めるということが、一体どの程度広く認めるのかということは、これはなかなか条文としては書きにくいのかもしれませんが、少なくとも前々から繰り返し議論していますように、検討会としては非常に時間をかけている点なので、後々の新しい法律の解釈、運用の際に参考になるような、参考にしていただければですけれども、そういう形で、例えば従来の最高裁判決のこれこれについてはいかがなものかというような意見が強かったとか、そのような言葉が何か後世に対して残るような、そういう方法をお考えいただければと思います。

【塩野座長】それは今後のまとめ方として承ります。前の方の部分についてですが、「正当な利益」、あるいは「事実上の利益」などの言葉の点については、いろんな案があるので「法律上の利益」として括弧書きしてあるというふうに私は理解しておりますが、本当の一番重要なところは、どういう考え方でこの最高裁のこれまでの判例をどういうふうに見て、今後実質的に広くするという点については、どういう考え方を我々として取るかという、そこを議論していただきたいという趣旨でございます。

【福井(秀)委員】今の小早川先生の御意見に基本的には賛成なのですが、若干関連でお聞きしたかったのは、この(注1)の3行目から4行目の意味です。「法律上の利益」という現行法9条の、一種の根幹的な原告適格の定義規定に当たる部分は変えないのだということを言った上で、変えないとしてもその「法律上の利益」という概念の範囲についていろいろと、例えば解釈規定のようなもので補うというようにも読めるのですが、これはそういう意味なんでしょうか。

【村田企画官】座長が先ほどお話しされたとおりでございますけれども、若干補足させていただきますと、ここの(注)の2行目から3行目のところに記載してありますように、「基本的な考え方として「法律上の利益」が必要であることは否定し難いのではないか」という、考え方の問題として話をしておりまして、かぎ括弧を付けたのは条文上の文言だからということではなくて、条文の問題はさて置いて、考え方としてどうかという意味でかぎ括弧を付けたのですが、かえって読みずらくなってしまったかもしれません。

【福井(秀)委員】条文上、「法律上の利益」という概念、概念というかこの言葉としてのこの6文字をそのまま維持することが前提だという意味なのかどうかということです。

【村田企画官】条文の文言をどのようなものにするかについては、更にその後に、この頁の一番最後の行から記載しておりますけれども、考え方を固めた上で条文、文言のお話が出てくるのではないかと考えております。

【福井(秀)委員】条文の文言は変わり得るということですか。

【村田企画官】そこはどうでなければいけないということを、上の方で言っているわけではございません。維持しなければいけないという前提でお話しているものではございません。

【福井(秀)委員】条文の文言を絶対いじらないで、別の形で補足するということを言っているわけではないということですね。

【村田企画官】そうですね。まず考え方として整理した上で、文言はその後で考えましょうという趣旨です。

【福井(秀)委員】そうすると、この考え方としての「法律上の利益」というのは、どういう幅を持つ概念ですか。

【村田企画官】それは(注1)の最初の方に記載しておりますように、「何ら法的評価を経ない事実上の利益」と対置されるものとしての「法律上の利益」という趣旨でございます。

【福井(秀)委員】そうであれば、かぎ括弧を付けるというのは、普通は言語としてそれを維持するという意味を表わすことが通例だと思いますので、その「法的評価を経ない事実上の利益」だけで云々という意味は分かるのですが、それを「「法律上の利益」が必要である」というのは、大変ミスリードな表現なので、考え方ということであれば、かぎ括弧を付けて誤解を招くような表現をされない方がよいと思います。

【塩野座長】これは「たたき台」でございますので、今のような説明で御理解いただきたいと思います。

【福井(秀)委員】併せて若干補足ですが、そういうことであればまさに法的評価ということは、当然この検討会のどの委員の方々も大前提にしているのだろうと思いますが、問題はまさに先ほどから議論になっております、今までの最高裁判決の、例えばこの判決の、この原告適格の読み方は、現行9条の「法律上の利益を有する者」の読み方としては、政策的に見て、あるいは立法的に見ていかにも狭過ぎた。最高裁判決が正しい解釈だということを前提にすれば、この文言の読み方としては狭過ぎたという部分があるのであれば、それを広げるように、要するに広げて読めるように立法を変えるというのが、この検討会のマンデートだったと理解しておりますので、そこの具体的な、これももう何度も議論なり話題になっておりますが、どの判決の原告適格を狭過ぎたと見るのかということを前提にしないと、裏返して言いますと、先ほど小早川先生も言われたように、その判決でも原告適格が読めるようにするためには、例えばこういう書き方があるというような、機能的なアプローチでないと、多分抽象的に法的か事実的かということを議論しても、余り生産的ではないと思うのです。だから、そこを是非詰める必要があると思います。

【塩野座長】それで「必要ではないか」と書いてあるわけです。この点ちょっと復習いたしますと、当初は割合観念的と申しますか、理論的な「法律上保護された利益説」、「法律上保護に値する利益説」ということで議論して、もう少し個別の具体的な裁判例を挙げてらっしゃいという、これは事務局次長の方から御要望があって、それで議論をしました。しかし、その後またそういう議論をしていくと、この問題はどう整理していいかなかなか難しい、やはり考え方についていろいろ議論をしてほしいという御意見が委員の方からございまして、そういうことで考え方についてこの前若干の議論をしたという経歴がございます。そこを、ですから常に頭の中に、そういった判決を描きながら考え方の整理をしました。そこでいろいろ議論してください。でも、おっしゃるとおりだと思います。

【福井(秀)委員】そういうことであれば分かるのですが、そうであれば、多分まさに文言としての「法律上の利益」を万が一そのまま維持することになりますと、これは最高裁が、実質的には反省している判決があっても変えようがないわけです。そういう意味では、やはり「法律上の利益」という文言自体がもたらした解釈が今までの最高裁の原告適格の判例の集積であるわけですから、もしいささかでも広げるという、あるいは今まで判決の中で政策判断としては別の考え方を取るというものがあるということを前提にするのであれば、文言としてはやはり絶対変えないと変わらないということが大前提だと思います。そういう前提で工夫するということを提案したいと思います。

【塩野座長】それは一つの御意見として承ります。

【芝池委員】今の福井委員の御発言ですが、私も同様に考えておりまして、この枠の中で書かれておりますように、原告適格を実質的に広く認めるようにするには、やはり現在の文言は変える必要があるだろうと思います。ただ、「法律上の利益」に変わる案というのが、なかなかないというのがここでの議論のこれまでの一つの結論のようなものでありまして、もし万が一この「法律上の利益」という文言が立法段階で維持されるのであれば、考慮すべき事柄をきちっとその前に書くというふうな方法があるのではないかと思っております。

【塩野座長】どうもだんだん中身に入ってきてしまったので、なかなか進まないのですが、次回にまたこういう形で検討をしてよいということでしたらば、そのための資料もお出しいたしますので、もちろん今日中身について意見を言いたいということであれば、それを差し止めるつもりは全くございませんが、まずこの整理の仕方でいいかどうかという点を重点的にして、御意見をいただきたいと思います。恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

【水野委員】先ほど来、出ている御意見もそうだと思いますけれども、この段階でも「原告適格を実質的に広く認められるような規定とする」と、抽象的な表現になっているわけですけれども、最終段階ではやはり具体的な形を我々が合意して、それを示すべきだと思うのです。具体的な名案がないという御意見もありましたけれども、これまでA、B、C、Dと4つの案が出ているわけで、もう少し議論を詰めて、どれかに決めないと仕方がないのではないかと私は思っております。要するに、現行の法律を変えて、広くするのだというメッセージを示さないと判例は変わらないわけですから、そうすべきだろう。そのときに、いつも問題になるのは、合理的かつ客観的な判断基準を提供できるかどうかという議論になるのです。客観的あるいは合理的というのは、分からないでもないですけれども、その客観的な判断基準というのは、これはどういう書きぶりをしてもなかなか難しい、これは何遍も申し上げていますけれども。だから例えばA案を取れば、一連の最高裁の判例のうちのここまでは認められる、B案を取れば、ここまでしか認められないということは仕分けできないだろうと思うのです。そういう意味で、ここの枠に書いてある「実質的に広く認められるような規定とする」、これは大いに結構なので、そのために具体的な提案をすべきだろうと思いますので、私自身ももう少し考えてみたいと思います。さっきおっしゃったように、現行の規定を置いておいて、解釈規定を置くというのも一つの選択肢としてはあり得るのかなと思っております。

【塩野座長】どうぞ、前の方に進んでいただいて。

【福井(秀)委員】今の点ですが、解釈規定を置いて、判例変更が可能なのかどうかというところは、私には非常に理解できないところがありますので、むしろ最高裁の方でそういうことが可能なのかどうか、御意見があればお聞きしたいのですが。

【塩野座長】それは今日の議題にはいたしませんので。まだまだ先のことですから。どうぞ、今日の議題に則して。

【福井(秀)委員】ただ、最終的にはそこが非常に重要で、判決変更を意図するのであれば、それが書けるということでないと、議論する前提が崩れることになると思うのです。

【塩野座長】それはおっしゃるとおりだと思います。ただ、いろいろ議論のあるところでして、文言が変われば変わるというのは、これまた独断なんですね。ドイツ人は権利侵害ということで、あれだけやっています。フランス人は、何の規定もなくても広げている、アメリカもそうなんです。それで、「事実上の利益」というのも、広めてみたり、狭めてみたりしているという状況なので、この辺は議論の仕方の問題として申し上げたいのですけれども、文言が変わらないともうダメだというふうに決めつけるとまた問題が起こるし、それから文言が変わらなくても、必ず最高裁は良心的に変えてくれるというふうに信頼するのも問題。そこでどういうふうにするか、そこがこの検討会の知恵の出しどころで、一つ知恵を出していただきたいと思います。

【市村委員】前々申し上げたように、先ほどからおっしゃられた中で、例えば客観的な、というのはどれでも客観的にはならないのではないかという御指摘ですが、それは書きぶり、A案からD案まであったら、どれによれば、どの程度それがはっきりするかという程度の差というのは、自ずととあるだろうと思います。やはり私どもとしては今後の運用ということを前提に考えると、そういうことは、大きなファクターとして見るべきだというふうに思っております。これは前々から申し上げたことで、繰り返しですが。

【小早川委員】団体訴訟の方ですが、「十分な検討を行う必要がある」グループに入れられています。そのこと自体については、また他の方から御意見があるかとも思いますが、少なくとも、そのことが(1)の原告適格の方に跳ね返って、団体については原告適格は認めないというのが、この検討会の差し当たりの国会に出す案の考え方であるというところまでは決め付けていただかないのがいいのではないか。そこは、原告適格の規定がどうなるかということもありますけれども、必要に応じて解釈、判例、学説で検討する余地はあるというふうに、この(1)と(2)の関係を理解したいと思います。

【塩野座長】私もそういう理解でこれはまとめてあると思います。ついでにまた、情報提供として申し上げますと、私は日本で機関訴訟、民衆訴訟が定められたことが客観訴訟と主観訴訟を峻別させ、主観訴訟の範囲を努力して広げるということに大きな支障があったと思っています。アメリカ人は、客観訴訟ということを言わずに、ケース・オブ・コントロバシーの中で広げているという状況があります。フランスでもそうであろうというふうに思います。ですから、団体訴訟ということを書くと、いかにも団体訴訟でないとダメだということになりかねないので、そこはもうこの検討会でも十分御議論をいただきたいと思います。それは情報提供ということで。
 それでは、義務付け訴訟、差止訴訟の方に移らせていただきます。

【水野委員】義務付け訴訟の枠の中ですけれども、「義務付けることにより実効的な救済を図る必要性のある場合」が出てきます。その次に、「行政庁がその処分又は裁決をすべきことが明らかなとき」という2つの要件が出てくるような気がするのです。あとの(注)を見ますと、まず「一義的に明らかであることが必要ではないか」というのは、これは後の方の「明らかなときは」という要件だと思いますけれども、また以下に必要性とかが出てくる。この枠の中の要件は、一義性だけでいいという趣旨なのか、そうだとすると「実効的な救済を図る必要性のある場合」というのはどう読むのか。ここがちょっと本文と(注)とが整合していないような印象なんですけれども、これはどうなんでしょうか。

【村田企画官】その点につきましては、まさに要件論として考えたときにどうかということは、(注1)に記載しているとおりでして、要件についてどのように考えるかということは、検討会で検討していただきたいという趣旨でございます。枠の中のところは、抽象的に救済の必要性があるからこそこういう訴訟が必要だと限度においては、言わば当然と言いますか、そういうことがありますので記載しておりますけれども、それを要件論という形で高めて考えるかどうかということについては、ここの(注)に記載しておりますような様々な点を考慮してどう考えるか検討していただきたいということでございます。

【深山委員】水野委員の言わんとすることは、恐らくこれこれの場合で、これこれのときはというのは、二重限定をしている普通の条文の書き方ですね。そうだとすると、条件節が2つ重なっていて、あることができることの条件が2つありますと書いてあるのです。Aであって、なおかつBであると。ところが、(注)の方は本案の要件としてこれこれが必要ではないか、また、救済の必要性に関する要件については、どのように考えるか、例えば云々となってきて、ここの書きぶりが本文と(注)とで少しポリシーの違いがあるのではないかということを言っているのだと思うのです。

【水野委員】付け加えて言いますと、この「主な検討事項」では、3つの要件がきちんと整理されています。つまり一義性の要件、緊急性の要件、補充性の要件という3つの要件が整理されていて、この要件が例えば全部要るのか、1つでいいのかとか、こういう議論の仕方をして整理したと思うのです。ところが、ここに出てくるのは、今言ったように枠の中では2つ出てくるような印象があるし、それから(注)のところでは、「また」以下で必要性の話が出る。つまり緊急性の話が出てくるのです。「例えば」と来て、「このほかに義務付け訴訟の要件としてどのようなものが必要かなどの問題点」と書いてある。これがよく意味が分からない。「などの問題点」というのは、一体どういう問題点を差すのか。そして、そのあとの方には「他の訴訟による救済など他に適切な救済方法があるかどうか」、これは補充性の話です。だから、一義性、必要性(緊急性)、最後に補充性と出てきて、それ以外に「どのようなものが必要かなどの問題点」があるのかと、もう一つよく分からない。それからもう一つ言うと、「処分又は裁決を求める申請権が認められる場合か否かで要件を異にすべきか否か」、これが必要性についてのところで出てくるのです。これは、前の「主な検討事項」では申請権がある場合とない場合とで、どうするのかという議論は立てておっても、要件には絡んでいなかったと思うのです。それが突如としてここでは、これはもう申請権が認められても認められなくても義務付け訴訟を入れようではないかという前提での議論だと理解しますけれども、ただそれによって要件が違ってくるという議論がまた出てくるので、そこらの(注)の整理が、本文との整合性と(注)の整理が何かもう一つよく理解できない。

【塩野座長】ここら辺はいろいろな議論のあったところで、ここで一番申し上げたいことは、義務付け訴訟は認める。一義的な特定、それはそうだろうということですが、あと要件が要るのか要らないのかということでは、「主な検討事項」からいろいろ議論がありまして、申請の場合とない場合とでは要件がやはり違うのではないかという御意見もあったように、私は記憶しているのです。ですから、ごちゃごちゃいろいろ書いてある趣旨は非常に悩んで、とにかくここは議論するならする、もう私のように、前から教科書にも書いたのですけれども、要件なんて要らないというならもう要らないというふうにどっちか決めてくださいというアナウンスメントです。しかし、義務付けには、これを日本で生かしていくためには、やはり要件をきちんと書かないといけないという実務的な御意見も、これも大変重要な事柄でして、私のように請求権があれば、それは請求権があるかどうかは裁判所が決めればいいことですなんていう形で、学者っぽい意見ばかりしてはいけないということで、ここにいろんなことが書いてある。その他、どんなふうに、どのようなものがあるかというのは、まさにこの場で、実はこんなものがあるよというふうな御指摘を願いたいところです。そのようなものはないと言われれば、それはそれで済むということですね。

【小早川委員】今、言われた義務付け訴訟そのものをどう考えるかという点はあります。民訴の山本教授の話で、請求権を軸に考えるか、訴訟類型の法定ということを軸に考えるかという、ある意味で分かりやすい整理がありました。私は今の座長とは違うかもしれませんが、現段階では訴訟類型としての規定の仕方をして、一定の訴訟の訴訟要件か本案の勝訴要件かはともかく、この訴訟で勝つためにはこれこれのことが必要ですよというようなことを分かりやすく書いておくのが、現段階ではいいのかなという気はしております。その前提で、先ほどからお話がありますように、この枠の中と注書きとか、どことどこが対応するのかというのが、もうちょっと整理されればいいなという感じはしております。
 中身については、一か所だけですけれども、(注)の中の一義的明白性、「一義的に明らかである」という表現がありますが、私はやはりこれはどうかなと思うわけです。これまでの行政庁の第一次判断権という法的な法理、法的な原則を前提にした裁判所のお考えでは、一義的明白性というのが第一次判断権をすっ飛ばすための、まず訴訟としての要件として大事だったという位置づけだったと思います。けれども、恐らく今度はそういう第一次判断権との住み分けということはもう考えない方がいいと思いますし、ここではせっかく本案の要件としてというふうに整理されていまして、私はこれでいいと思うのですが、本案の要件であれば、一義的に明らかというのは余り意味がなくて、要するに審理の結果明らかになればそれでいいわけです。判決時に明らかになっていればそれでいいわけなので、この「一義的に」という言葉を取った方がいいと思います。

【塩野座長】この場合の「一義的」というのは、私の理解では裁量ではないということだと思います。だから、一義的明白というのは、確かに重大明白を思い出させるので、私はよくないとしょっちゅう言うのですけれども、判決に熟するようになって、それこそ判断が決まってくればいいということです、本案ですから。

【小早川委員】あえて言えば、そうであればそれは一義的に明らかなのではなくて、一義的にすべきであるということになると思うのです。

【塩野座長】そうです。ここは表現の問題ですから、内容はそういうことで、それでいいですね。

【福井(秀)委員】私も、この(注)と本文の読み方が大変読みにくかったという意味で、今までの幾つかの御意見と同意見であるとまさに申し上げようと思っていました。この「明らか」という文言ですが、これは残すことに反対です。「明らか」ということは誤りだと思うのです。結局審理の結果、処分や裁決をすべきだということに熟すれば、それで十分なわけでして、それが最初から明らかとか、明確などという必要は全くないと思います。結局、処分すべきだけれども、それを明らかではないとして棄却するという判決が起き得るわけでして、義務付けるかどうかというのは違法と無効のような区別の問題はないのでして、要するに判決に熟すればいい。そういう先例は、例えば破棄自判の民訴法326 条で、判決に熟するときにそれができるのだという条文があるわけですから、用語例もあって、何の問題もない。「明らか」という言葉は有害無益で、これは是非削除すべきだと思います。

【塩野座長】内容には御賛成いただいているわけですね。

【福井(秀)委員】そのように読めるように、ちゃんと表現していただきたいと思います。

【塩野座長】私は読んでしまったものですから。どうも失礼しました。

【芝池委員】用語というか言葉遣いなんですが、「処分又は裁決」と書いておられて、差止訴訟のところでも同じように書いておられます。確認訴訟のところでは、行政事件訴訟法3条2項を引用しておられるのです。裁決というのは義務付け訴訟、あるいは差止訴訟の場合もそうですが、余り問題にならないのではないかと思います。何かこれは予想されて書いておられるのですか。

【村田企画官】裁決の義務付け、差止めは不要だという議論も今まではなかったかと思いまして、一般的に記載しているところでございます。

【芝池委員】この裁決というのは不服申立てに対する裁決ですね。

【村田企画官】3条3項に使っている意味での裁決ということでございます。

【市村委員】今の点、例えば裁決主義を取っている場合には、どうも押さえるとしたらここでやらないとやりにくいものがあるのではないでしょうか、つまり、裁決の部分で実質的に変えている。実際には切り分けにくいのですけれども、原処分に対する審査の部分と、それから更に行政の最後的な、内部的な決定として出されるものが組み合わさっているものは結構あると思うのです。例えば、固定資産評価委員会の評価裁決に対する不服などは、その中で具体的な額まで書くことがありますね。こうすべきだと義務付けるとしたら誰に義務付けるのかということと平仄を合わせようとすると、裁決を義務付けることで固定していかないと平仄が合わなくなってきます。そういう意味で裁決は残しておいていいのかなと思いました。

【小早川委員】それから、普通の裁決でも水俣の認定申請のような、今までは不作為の違法確認で処理していますけれども、せっかく義務付け訴訟ができるのであれば、これに乗せてもいいのではないかと思います。

【福井(秀)委員】義務付け訴訟の民事訴訟との関係なんですが、民事訴訟を排除するようなことになって、またこの訴訟類型でややこしい選択や権利の救済不能を生まないように、併用があり得るのだということを前提にした作りにした方がよいと思います。
 それから、第三者に対する義務付けですが、第三者の(注2)の意味がよく分からないのですけれども、第三者に対する義務付けについては、第三者に対する、例えば許認可の取消訴訟の原告適格があれば十分であって、第三者への許可の取消しには申請権は要らないのに、第三者への義務付けでは申請権が要るというのは多分不合理だと思いますので、そこは前提とした上で一致させるというような考え方がすっきりしているのではないかと思うのです。そういうことを言っているのかどうかよく読めなかったものですから、もうちょっとちゃんと書いていただきたいと思います。

【村田企画官】この義務付け訴訟の原告適格については、そもそも余り議論がされてこなかったかなというところがありまして、今、福井先生がおっしゃられたような考え方を明らかにしていく必要があるかと思いまして、論点として。

【福井(秀)委員】だから、何が論点なのかが全然分からないので。

【塩野座長】そこは議論してなかったですね。

【福井(秀)委員】これは第三者の申請権が法定されてなくてもよいという意味なのですか。さっき水野委員もちょっとお聞きになられましたけれども。

【村田企画官】申請権がない場合を前提にして、そうだとすると原告適格はどう考えるのだろうかという意味で記載しています。

【福井(秀)委員】もうちょっと分かりやすくしていただきたいと思います。

【深山委員】もうこれは皆さん理解の前提で、(注)の1行目の最後にある本案の要件としてと書いてあることの意味ですが、私はこれ最初本案判決の要件としてと読み飛ばして思っておりまして、本案判決の要件というのは訴訟要件という意味ですが、訴訟要件とは全く逆の実体要件としてという意味なんですね。そこは、それ自体に必ずしも反対でもないのですけれども、そういうことで少なくとも古典的な下級審の判例が言っている三要件の一義的明白性というのは、訴訟要件のつもりなんでしょうね。そこははっきりしてないのですけれども。

【塩野座長】それは、私の理解では取消訴訟中心主義だからそういう問題が起きて、今度は取消訴訟中心主義の枠を外すと、これは本案の問題であろうというつもりで書いているのですが、これがしかし専門家から見た用語として適切でないと言われれば、それは御専門のあれに従いますけれども。

【深山委員】本案判決と読んだら逆の意味になるというのに途中で気が付きまして。ただ考えてみればいわゆる三要件が全くどれもが同じようなものかというと、一義的明白性だけは少し性質が違うものだという気も昔からしているので、そう言われればそうかなという。

【塩野座長】ですから、そこを取っ払っていただきたいというのが、行政法学者の、むしろこれこそ一致した意見ということです。
 他に何か、差止めの方はいかがでございましょうか。

【深山委員】差止めの方で、一義的明白性は確かに分かりにくい言葉なので、いずれにせよ余り従来の判例にこだわらないのであれば、最終的にもう少し分かりやすくした方がいいのではないかと。特に差止めの方でこれを使うと、どう言っているのか非常に意味が分かりにくいのではないかという気がするのと、一義的明白性というのがどうも事前に明らかだということを含意しているかのように取られがちであるという面も、分かりにくい原因かもしれないという気がします。同じことを言うのに、別の言い方があり得るのではないかという、条文でどうなるかはまた全然別の話として。
 それから、先ほどの義務付けに戻りますけれども、一義的に本案の判決に熟した段階で、処分の内容が特定して明らかになっているという状態でなければいけないだろうと。一つに完全に特定しなければいけないのか。例えばこれかこれはしなければいけないという余地を残すのかということは、前は何か指令判決とかいうものもあっていいのではないかという提案もあり、いやそれは、という意見もあったとは思うのですが、そこはこのまとめでは少なくとも抽象的な義務付けみたいなもの、あるいはこの範囲の処分をしてはいけないという差止めみたいなもの、完全な特定に至ってないある範囲をもって特定できないものは許容しないというのが大勢ではないかという前提なんですかね、 そうではないのですか。

【塩野座長】そこのところは、正直なところを申しますと、そう深い議論をしているわけではございません。ただ、申し上げたいことの一つは、例えば国立の事件で、裁判所では第三者からの給付訴訟を義務確認という形に御理解いただいて、確認の判決を出されました。その趣旨は、具体的にどういう処分をするかまではなかなか踏み切れなかったので、一つの考え方として出したということで、私も自分の本に大変名判決であるというふうに書いたわけです。一つの問題、今のせっかくの東京地裁のあの判決が、今度はこれから確認の方も議論していただきますけれども、それがうまく救えるのかどうか、その点は実は是非議論をしていただきたいところの一つということになります。固定資産評価委員会の判断の修正を求めるもので、これは別の東京地裁の判決ですけれども、無名抗告訴訟の一種の義務付け訴訟であるということで、一部取消しではなくて、一部は無名抗告訴訟という形で整理をされているところがありまして、下級審では現にそういう形で動いているところがあります。ですから、そういった明確な場合もあります。複数の手段があるときに、一体どういう判決をしたらいいか、あるいはそれを訴訟として確認訴訟で受けた方がいいのかということについては、それこそきちんと整理をしていただきたいということでございます。

【小早川委員】つまり、今の深山委員の御指摘の点についてはこの2頁、3頁で。2頁で「処分又は裁決をすべきことを」とあって、3頁で「その処分又は裁決をすべきことが」と受けているのですけれども、これは処分又は裁決というのが、単一に特定されていることを必ずしも前提とした書き方ではないのではないか。あとの方の「その」というのも、それを踏まえた「その」ではないかと、私はこれをそのように読んだのですけれども。あとは許容性の解釈問題ではないかと思います。

【市村委員】ただ、その議論をしていくと、最後的にはそれではここで扱った訴訟物は何だったのかという議論、既判力との問題等それもきちっと詰めておかないと、どういう意味で、例えば一部認容し、あとは取ったかというところ、これが明確になるようなものであることも不可欠だと思います。その辺の議論はほとんど今までやってきてないのです。もしそういう形も許容するというのであれば、それを是非、しっかり詰めた上で立法の方につないでいただければと思っております。

【福井(秀)委員】今の点に関連して、私も当然一種の性能判決と言いますか、ある一種の性能を確保するための判決というのは、当然前提となっていると思っていたものですから、それが明らかでないということに今気が付いたわけで、やはり入れておいていただいた方がよいと思うのです。というのは、例えばの話ですけれども、建築確認、違法建築物に関する是正命令ですと、例えば建ぺい率違反でも容積率違反でも、どこか切り取ればいいという場合もあるし、切り取るにしても東側でも西側でも切り取れるとか、あるいは上下にも切り取れるとか、横にも切り取れるとか、あるいは土地を買い増せばいいとか、いろんなことがあり得るわけで、それは要するに違法でなくなればいいというのが元々の法の趣旨なわけです。もちろん訴訟法上の効果とかいろいろ検討は必要でしょうけれども、そういうものが逆に出せないということ自体が非常に不合理だという側面がありますので、そこは当然の前提として、要するに性能を満たせばよいのだという意味での判決が義務付けで出し得るということを前提に、いろんな整理をやる必要があると思います。それで、差止めもこの義務付けと同じような意味で、特に(注)の2行目にある「処分をすべきでないことが一義的に明らかであることが必要ではないか」とあるのですが、これはむしろこういう要件を課すことは不要ではないかと書いていただきたいという気がするわけです。差止訴訟自体を明示することは結構なことですけれども、結局差止訴訟というのは手前にずらされた取消訴訟です。本来、やったら違法になるというだけで十分でありまして、やったら違法になることが明らかだということは、先ほど義務付けに関して申し上げたのと同じような意味で、非常に加重した要件であると思うのです。この要件の書き方だと、無効というほど明白な違法の場合だけ差し止めることができるなどというように、拡大解釈されかねないわけでして、それだと後退になるわけですから、それは要するにやったら違法だということで十分だということが表われるように立法すべきだろうと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。ただ、その辺はちょっと義務付け訴訟と差止訴訟を同じように考えていいかどうかというのは、議論の対象になりますので、議論はさせていただきたいと思います。

【芝池委員】この差止訴訟のところですが、営業停止命令のようなものであれば分かるのですけれども、例えば公有水面埋立ての免許について、周辺の住民がそれの差止訴訟を起こすということがここで予定されているのかどうか。入るのですか。

【塩野座長】それは今すぐ答えろと言っても無理なので、そういうことを議論してくださいということです。ちゃんと考えてきてください。
 それでは、時間がまいりましたので、差止めのところまでで一応議論を済ませたということで、もちろんまた後に返ることはあり得べしということで、ちょっと休憩をさせていただきたいと思います。3時15分再開ということでお願いします。どうもありがとうございました。

(休 憩)

【塩野座長】よろしいでしょうか。それでは、時間がまいりましたので、会議を再開させていただきます。
 先ほど事務局から御説明いただきました、第2の「1 救済範囲の拡大」の残り、「③確認訴訟による救済の可能性」、「④ 訴訟の対象」について、休憩前までもいろいろ御議論がありましたけれども、それも頭の中に入れながら御議論をいただければと思います。両方かなり関係するところもありますので、確認の訴えと処分性の両方にまたがった御意見、御質問でももちろん結構でございますので、どなたからでも御発言いただければと思います。

【水野委員】最初に希望を申し上げておきますが、「訴訟の対象」、つまり処分性の拡大の議論は「十分な検討」になっているのです。今回の行政訴訟の改革で、やはりどこを改革すべきかというときに、原告適格と処分性の拡大というのは、これはもう何か決まり文句のように出てくるわけでして、処分性の拡大について今回の検討会で実現できなかったということになると、かなりの失望感がそういうことを考えている人の間にはあるだろうと思うのです。ですから、今までの議論を踏まえてこれから議論を詰めていくわけですけれども、是非この訴訟の対象の拡大については、何らかの形で盛り込むように是非座長の御指導力でお願いしたいと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、私の心構えを一つだけ申しますと、要するに救われるべき者が救われてないと、それはおかしい。それをどこかできちんととらえるというのが、今度の改革の重要なポイントだと思います。それを技術的にどういうふうにやるかというのはいろんなチョイスがある。そのチョイスについて、いろいろ御議論をいただきたいと思います。外国の法令を見ましても、処分性の拡大という形でやっているところもあれば、いろんな訴訟のやり方で考えているところもありますので、その辺も是非深めた御議論をいただきたい。それが私の心構えでございます。よろしくお願いいたします。

【芝池委員】私も、今の水野委員と同じような感想を持っておりまして、今回の案で触れられていないのは、取消訴訟の対象の拡大であります。「④ 訴訟の対象」は、取消訴訟の対象の話ではないと読んだのですが、この検討会の最初のころに使った言葉で言いますと、取消訴訟の汎用性のようなもの、もちろん一定の限界はあると思うのですけれども、その汎用性を確保する。そういう方向での議論があったと記憶しておりますが、この「たたき台」では入っていないので、そこのところを、新しいバージョンが出るのでしたら、付け加えていただきたいと思います。
 その取消訴訟の対象の拡大に代えて、座長の言葉を使って言いますと、チョイスとして挙がっているのが、確認訴訟の活用ではないかと思うのです。そうしますと、確認訴訟の中には、行政立法などの行政の行為をとらえた確認訴訟、抗告訴訟的確認訴訟と言いますか、そういう確認訴訟と、それから法律関係ないし権利義務の確認の訴訟、これら両方が入っているのではないかという気がいたします。間違っていれば御指摘ください。それから、更に前者の抗告訴訟的な確認訴訟としては、現在行政処分の無効確認訴訟というのがあるのですが、行政立法などについて言いますと、これは違法の確認訴訟ということになるのでしょうか。ちょっとそこの辺、確認訴訟の趣旨がよく分からなかったものですから、御説明いただければと思います。

【塩野座長】ここで確認訴訟については、そういう詰めた議論はしてないということで、それを是非詰めていただきたいということでございます。

【小早川委員】したがって議論はこれからなんでしょうけれども、私もこの③と④の関係が分からないと言いますか、どういう理解で議論をしたらいいのかということであります。どうも④は消極的だけれども、その部分は③で何とかしたいという雰囲気に読めるし、考え方によっては、それは一つの方向かなという気もしております。従来ですと、④で挙がっている行政立法、行政計画といったものは、それ自体が民事訴訟事項かというとそうではない、どっちかと言えば公権力の行使の性質がある。そうすると、これは4条ではなくて3条、民訴でもなく行訴法の4条でもなく3条の話であって、しかし3条で抗告訴訟としてそんな訴訟が認められるか、そこはちょっと待てと、成熟性の議論とか、そんなようなことで最後バリアがかけられる。そういう議論の構造があったと思いますけれども、今回のこれはそこをちょっと変えていくことも考えられる。多少公権力の行使っぽいものであっても、③の方の「「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらないもの」という中に位置づける、行政立法とか法律に基づく公共事業の事業計画とかそんなものは、公権力の行使っぽいのだけれども、しかしそれ自体が取消訴訟の対象となるような公権力の行使に当たる行為ではないというような整理の仕方もある。そうするとこれは、②までが、取消訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟、これが抗告訴訟の話である、従来の抗告訴訟の観念はもう一度見直す、37年の立法では抗告訴訟の概念をぐんと広げたのだけれども、今度はそれをもうちょっと狭くし直す、というような意味合いもあり得るのかなと。そんな議論も許容されるという前提で、今後の検討を進めていただきたいと思います。

【塩野座長】もちろん議論の対象には入っているとは思います。要するに、初めに抗告訴訟ありきとか何とかではなくて、こういった場合に普通の取消訴訟には乗りそうもないというときに、それでは民訴ではダメだ、それでは放っておけということになるのか。それとも、この権利利益の実効的救済という見地からは、ここで救わなければいけないというような議論、それが抗告訴訟に入るかどうかというのはやや法制的な問題でございますので、もう少し後の方でもいいかなと思っております。ただ、先ほども東京地裁の判決で持ち出しましたように、せっかくのああいう裁判官の発展的な手法をはじき出すような形の立法であってはいけないと思っております。
 それから、訴訟の対象について広げる広げない、いろいろ御議論がありましたことは、私もよく存じておりますし、取消訴訟の対象を広げるという議論も髄分あったのですけれども、他方取消訴訟の対象というのは、もう少しきちんとしなさいという御意見もあるものですから、そういったいろんなことを考えてこういう形で一応まとめてあるということでございます。

【福井(秀)委員】私も要するに処分性を与えるかどうかというよりは、実質的に救済されればいいという点で全く同感なのですが、その点でこの資料でやや分かりにくかったのは、5ページの(注2)に通達とか行政指導が出てくるのです。それは結局、その前の③の確認訴訟の実益がある、いわば典型事例のような気もするのです。そうすると、処分に当たるかどうかということはありますけれども、少なくとも確認訴訟の典型的な実益がある領域として、通達なり行政指導なりというのは明示的に議論していく。要するにそういうものが違法の確認の対象になり得るように少なくともするというところは、是非出発点としていただきたいと思います。確か、塩野先生も司法研修所の御講演か何かで、そういうことをおっしゃってられたように記憶しているのですけれども、むしろ明示的にそういうものとしてとらえていただければと思います。

【塩野座長】確認訴訟の確認の利益というのは、もともとは非常にきちっとしたものがあったところ、そこで最近は少し広まったというのだけれども、どうかというようないろいろな御議論があります。そこで、この際この検討会で確認訴訟というけれども、どういう場合に一体本当に使えるのかということについても議論した方がいいという御意見が多いようにも思いましたので、せっかく山本教授にもおいでいただいて御説明いただきました。説明も受けながらどういう場合かということを議論すべきであるということで、こういう形で出しております。確認訴訟は元々認められるはずなんだから、兼子一先生によれば、すべての訴訟は確認訴訟であると。形成要件の存否の確認の訴えであるということは、私何度も教えられました。ですから規定しようがしまいが、それはもう確認訴訟というのは確認の利益がある限りはあるのだと。そこで、本当にこれを条文化するかどうか、あるいは条文化しないにしても、どういうものを想定して議論したかという痕跡は残しておきたいということで、その点は福井委員と同じような意見でございます。

【福井(秀)委員】補足ですが、まさにそのとおりなのですが、多分確認訴訟が一般的にあり得るというのはそのとおりかもしれませんが、出てきた場合に、結局取消訴訟の排他性との関係で、確認訴訟はどういう位置づけなのかというところが問題になり得ると思うのです。結局、排他性で蹴飛ばされてしまうような読み方をされる可能性があると元も子もないので、確認訴訟は確認訴訟で処分性を認める類型とは独立のところで、こういう場合に許されるのだということがあらかじめ迷いがないように明らかになっていないといけないわけで、その意味で確認訴訟を仮に確認的にせよ、ちゃんと立法しておくということには非常に意味があると思います。

【塩野座長】先ほどの議論の、確認訴訟、取消訴訟の関係で申しますと、取消訴訟の対象を広げるという御議論のときに、排他性も含めての御議論ですと、確認訴訟はそれだけ使えなくなる。逆に取消訴訟の範囲が非常に狭まってくることに取消しの意味があるものというふうになりますと、今度は確認の範囲が広がる。あるいは、例えばの話ですけれども、確認だけではなくて、よく話題になりますのは税関の通知の処分、あれを通知行為処分と言って、最高裁は救済の手を差し延べたのですけれども、あれも処分と考えなければ、排他性を考えなければ引渡し請求権が行使できるという、仮に実体法に請求権があればそういう方向でいろいろ考えることができる。要するに、いろんなことを考えて法律を作らなければいけないのではないか。取消訴訟であれば救済が簡単だというのは、せっかくの検討会を設けた趣旨がないのではないかというのが、この整理の仕方の根本にあります。

【福井(秀)委員】全く同感ですが、その場合にもし論理的、概念的にトレードオフだとすると、要するにその境目が分かりにくいときに、またキャッチボールみたいなことが起こり得るので、片方で行ってダメだった場合にはもう片方で読み得るとか、そこの救済措置が非常に重要だと思います。その視点も是非検討していくべきだと思います。

【塩野座長】救済のところの問題は、出訴期間を徒過した場合にどうなるかという、そちらの方の問題として整理できると思います。

【小早川委員】救済の問題として考えるよりも、可能性としてはせっかく被告適格も変えるわけですから、どんな訴えでもとにかく受けて、裁判所の方で審理をしながら、この争いはどういう判決で処理するのが当事者のためにいいかということを見ながらうまく運営をしていただけるような、そういうふうにすれば特別救済の仕組みを考える必要もないということで、できればそういうふうな方向が望ましいと思います。

【塩野座長】その意見も、かなり前の方に出ていたと思いますし、それからこれは阿部泰隆さんの年来の主張で。

【小早川委員】あの人は、何かややこしい救済の仕組みを考えろという話ですが、もっと簡単でいいと思います。

【塩野座長】もっと絞っているところもあるのですが、ただそのときに排他性の問題と出訴期間の問題とが一緒になってきてしまうと、なかなか難しくなるのですけれども、入口は広くしておいて、裁判所はそこは適当にというのは前からあって、ただ私の聞いているところでは、日本の場合には訴訟物の特定は原告がしなければいけないという鉄則があるのでしょうか。

【市村委員】今までこういうことがなかなかできにくかったという、一番の隘路になっていたのは、被告適格の問題だったと思います。当事者訴訟と取消訴訟、抗告訴訟では、行政庁と行政主体というところが、被告の在り方として違ったものですから、そこが越えられない垣根だったのです。しかし、例えば同じ被告の中であれば、今まででも、それは当事者が何について不満を言い、どういう違法を言って取消を求めているかによって原告の言わんとするところをくみとり、形式がどうだといって、無下に取り扱ってきたことはないだろうと思います。そういう意味で、被告適格の面で、行政訴訟においてみんな揃ったということは非常に大きいことで、運用の面では恐らく今までのことを、ここまで広げられるという使い方が十分されるだろうと思います。きっとその点では御期待に応えられるのではないかと思います。

【水野委員】それは今の民訴の訴えの変更の規定で、正規の訴えに変更できると思うのです。たださっき、座長がおっしゃったように、問題は出訴期間が絡む場合の救済規定だけはいるのではないかということです。

【市村委員】先ほど来問題になっております確認訴訟と、それから訴訟の対象を広げることとの問題で、抗告訴訟の対象としてそのまま、すとっと広げるのが難しいものについて、確認訴訟の中で何とかもっていけないかという議論が一つ出てきました。例えば行政指導だという例が一つ挙がっておりましたけれども、そのときの議論の中で、必ずしも訴訟の対象だけではなく、原告適格としてはどうとらえるのか。例えば行政指導なら割と分かりやすいのですが、例えば行政計画だったらどうか、更に立法だったらどうかということになると、その広がりをどういうふうにして原告適格を認めていくかということは、かなり大きな難しい問題ではないかと思うのです。具体的に、求める対象が自分に対する何らかの関係や形成された法律関係の違法確認なら特定されますけれども、例えばある立法が違法であるとか、通達が違法であるとか、あるいは計画全体が違法であるということになると、それにつながって関連する人というのは、ものすごくたくさん考えられるわけです。そういう人の規制をどうするか、訴訟の維持をどうするか。例えば参加をさせるという制度にするのかどうか。それから、その判決の効力をどういうふうに考えていくのか。相対的なことをやったのでは全くそれこそ矛盾してしまうし、さりとて非常に早い段階ですから、その段階で絶対的な効力、通用力を与えるようなことをすると、乗り遅れた人は後で救済されない。例えば、ある行政計画として区域計画のようなものが何かあったとして、それによって自分は不利になる、こうやってはダメだと思う人は、訴訟を提起するでしょうが、その区域計画をあてにして、そういうことになるのだから、ではここにこういう計画をしようかと思ってる人もきっといるでしょう。そういうものの相互調整というのが、非常に大きい範囲で難しい問題だと思うのです。そういうことを十分視野に入れて議論しないと、単にある人の部分だけで救済範囲を拡大をしたからといって、全体の救済には必ずしもならないという気もします。そういう議論を十分やって、どの範囲で確認の対象にできるのかというような議論をしていただきたいと思います。

【水野委員】今のに関連しますが、今回のペーパーは「損害を受けるおそれがある場合に、これらの行為に係る法律関係等の確認をする」という立て方になっているのです。それで、今、市村さんがおっしゃったのは、前の「主な検討事項」のときには、これは15ページですけれども、「例えば、行政立法、行政計画のうち、取消訴訟の対象には該当しないとされるものに関し、その効力を争う者が当該行政立法又は行政計画の無効の確認を求める訴えについて、どのように考えるか」という立て方をしているのです。だから、行政立法と行政計画そのものの無効というものと、それに基づいて後続的なことが出て損害が生じる場合の法律関係等の確認というものとは明らかに違うわけで、今回のペーパーで「法律関係等の確認をする」というのが、いわば付け加わったというか、そのようになっているというのがどういう意味を持つのかというのを教えていただきたい。

【村田企画官】その点は、まさに「等」と書いてあるわけでして、計画そのもの、行政立法そのものについて何らかの確認をすることも含めて、単に広く記載しただけでございます。

【水野委員】そうすると、そのものの無効確認もこれに入っているという趣旨ですか。

【村田企画官】確認の対象が、何を対象にして、またどういうときに確認の利益を認めて救済をすることができるのか、それがまた適切かどうか、そういった点はまさに論点だろうと思います。

【水野委員】そうすると、少なくとも「おそれのある場合」に、要するにそのものの無効確認を求める、あるいはそれに基づく法律関係の確認を求めるというぐらいにしてもらわないと、ちょっと分かりにくいです。もう一つは、それでは「これらの行為に係る法律関係の確認」というのが、どんな例を想定しておられるのか分からないのですけれども、これは要するに現在の法律関係の確認ですね。そうすると、わざわざ規定を置かなくても、民訴の今の一般理論でやれるはずではないでしょうか。

【村田企画官】それもまさに論点だろうと思います。

【水野委員】行政事件訴訟法の36条は、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り」、処分そのものを無効確認訴訟ができるとしています。だから、現在の法律関係に関する訴えが可能な場合には、民訴の一般規定でできるからという趣旨だと私は理解しているのです。だから、要するにこの「たたき台」の「法律関係の確認をする」という部分については、わざわざ規定を置かなくてもできるわけであって、むしろ問題なのは処分から外れる、いわゆる処分的なものそのものの無効確認を求める訴訟という形で問題にすべきではないか。

【塩野座長】それはもちろんそうですね。そこで確認訴訟ということを言っているわけです。

【芝池委員】今の御意見と同じようなことを考えておりまして、要するに法律関係あるいは権利義務に関しては、当事者訴訟あるいは民事訴訟でいけるわけです。ですから、さっき言いました整理の言葉で言いますと、抗告訴訟的な確認訴訟、つまり行政計画などの行政の行為を争うという確認訴訟が、実際上はこの枠で予定されているものとしては重要だろうと思います。そして、その行政の行為を争う訴訟の中でも、無効確認訴訟は当然認められるとして、問題になりますのは行政計画、行政立法などの違法確認訴訟でありまして、それについて議論をする必要があるだろうと思います。私は、座長と異なりまして、取消訴訟の対象の方に未練を持っておりますので、そっちの方から意見を申し上げますけれども、この違法確認訴訟についてまず疑問に思いますのは、出訴期間はないのだろうかということでありまして、行政立法あるいは行政計画を想定いたしますと、これはやはり入ってこざるを得ないのではないかと思います。そうなるかどうかは一つの論点ですが、そういったことを考えますと、この違法確認訴訟の中身というのは、結局取消訴訟に準じたものになるのではないかという気がいたします。原告適格の問題とか、そういった点で取消訴訟に準じた仕組みになってこざるを得ないのではないかと思うわけでありまして、そうであればわざわざ確認訴訟として分離する必要がどこにあるのかという疑問を持つわけです。それから、この違法確認訴訟を制度化いたしますと、取消訴訟に悪影響が出るのではないかという感じも持っております。つまり取消訴訟が残るとしまして、取消訴訟の対象は行政処分であるという観念が今よりも強くなるのではないか。その推測が当たっているとしますと、行政処分に対する取消訴訟の排他性が現行法よりも強化される恐れがあると思うわけでありまして、私はこの違法確認訴訟を正面から制度化するよりも、取消訴訟の対象を少し、少しでいいと思うのですが、少し広げるという措置で対応すべきではないかと思っております。

【塩野座長】広げたときに、まだそこで拾えないものはどうしますか。

【芝池委員】どういうものですか。

【塩野座長】例えば、勧告は、行政指導は。

【芝池委員】それは、取消訴訟で対処することを考えています。

【塩野座長】行政指導をどうして取消訴訟でできますか。

【芝池委員】行政処分と考えればいいわけです。

【塩野座長】考えればって、法的効果がなければどうにもならないでしょう。

【芝池委員】だから、それは行政処分に準ずるものとして扱うわけです。

【塩野座長】何を取り消すのですか。

【芝池委員】今までもそういう訴訟があったと思います。

【塩野座長】例えば、通達のような場合は、それは明らかに一種の効果があるわけです。行政指導の場合に、いろんな行政指導がありますけれども、それを取り消すという判例はなかったと思いますけれども。

【芝池委員】取消訴訟の対象について、そういう議論はありました。

【塩野座長】議論はあります。私は議論を封ずるつもりはありません。
 もう一つ、ここでよく考えておいていただきたいのは、それが取消訴訟の対象を広げますと言って、ではそこで救われないものはどうしますかというときに、確認という道も考えておかなければいけないのではないでしょうかという、そういう2段構え、3段構えの議論がここに含まれているわけです。ですから、取消訴訟で救いますと言って、最高裁がそれに従ってくれればそれはそれでいいのですけれども、やはり行政処分、それに準ずるものということになると法効果ということを問題にするといったときに、どうお答えになるか。

【芝池委員】法効果は、確かに行政処分の定義の中には入っておりますけれども、無効の行為だって出訴期間内であれば取消訴訟の対象になるわけです。

【塩野座長】それは便宜の問題ですね。

【芝池委員】そういうものとして私は考えております。

【塩野座長】本質的な問題ではないですね。そういう御議論があることは、私もよく存じておりますので、その御議論をシャットアウトするつもりもありません。
 それからもう一つ申し上げておきたいのは、形式的行政処分論という学説がありますので、それは学説、あるいは解釈論としていつまでも残ると思うのです。そういった解釈論を否定するような立法であれば、それはそれとして私はまた硬直的な立法であるということだと思います。ただ、ここでいろいろ提案しているのは、私が今までの御議論をずっと伺ったときに、いろんな議論があるのですね。芝池委員のような議論もあれば、割合処分を狭く解するという議論も、いろんな議論のあるときに一番大事なことは、どちらでもいいのだけれども、とにかくそこの手の平にうまく乗らないものについては、他の道もありますよということをこの際確認しておかなければいけないのではないでしょうか。もしどういう場合があるかといえば、それこそどういう場合があるかということは、この事務局との間でもいろいろ議論して、さっぱりないではないですかと言われているところもあります。私は、なければないでいいので、あったときにちゃんとした用意しているお皿があればいいのではないかということが一つございます。
 もう一つは、立法で1条置くかどうかというのは、その次の問題です。こういう問題があるとすると、それから1条置くかどうかということは、最後のときに考えればいいということでございます。
 それから、行政計画、行政立法の話ですが、今の段階でその行政計画について処分性を広げて、それで大丈夫なんですか。大丈夫というのは、何の手当てもしないでですね。そこで、芝原委員がいつもおっしゃっているように、それはやはり手続と両方含めていろいろ考えなければいけないでしょうという、そこで行政計画は十分に検討する。あるいは、行政立法も十分に今後検討する方に入っているわけです。ですから、これは先ほど小早川委員が④のところは消極的に、というふうに御発言になりましたが、今回の立法についてはどうも成熟してないのではないかという判断でございまして、しかし行政立法、行政計画については、もう芝原委員からも、あるいは萩原委員からも常々御主張のところであって、これはこの検討会が引き受けている重要な宿題の一つであると思っているわけで、決して消極的という意味ではありません。そこも申し上げておきたいと思います。

【福井(秀)委員】私も今の座長のとりまとめに全く同感です。その上で、ちょっと補足申し上げたいのですが、計画の場合、計画の救済というのは重要だと思うのですけれども、多分処分の方の類型で行く場合には、まさに手続的整備という意味で、違法性の承継をどうするのかとか、それから先ほど市村委員からも御指摘がありましたように、第三者にもし効力を及ぼすのであれば、その防御の機会等をどうするのかというところは、かなり手当てしないといけないわけでして、そういう意味で、もしそこをちゃんと明示的に争わせるというのであれば、まさにその段階ですべての利害当事者が一堂に参加するなら参加して、確定的な効果を及ぼしても支障がないようなものとして仕組んだ方がフェアではないかという気がします。そういう意味で、やはり違法性の承継なりについてはっきりさせておいて、はっきりしているという前提で遮断するなら遮断する。しかもそれはみんなに分かっているという手当てが必要ではないかと思います。若干それに関連してなんですけれども、訴訟の対象の処分ということに関連してですが、例えば公的資金による給付の拒否について、処分なのか私法上の拒否なのかというところについて争いがあると思うのですけれども、これがもし後者だったら救済が困難なわけでして、こういったものの救済という意味では、むしろこういうのは一律に処分だとした方がちゃんと争える。もし民事で行くというのであれば、通常の契約と考えると、給付の請求権というものはないことになってしまいますので、もし民事で行くのであれば、そういうものについての一定の法令に羈束された給付請求権があるのだと考えて争えるとするか、そのどちらかでないと、ここのところが、今エアポケットになっている。訴訟の対象として非常に重要な領域の一つではないか。そこが読めているのかどうか、はっきりは分かりませんが、問題意識として持っております。先ほど来、少し議論も出ておりますが、違法と言いますか、訴訟の対象というよりも、あるいは訴訟の類型というよりも、判決の類型を残すべきだという考え方を、かねてより阿部教授もおっしゃっておられますし、私もそういう方向にシンパシーを感じるのですけれども、結局のところ、違法を是正してほしい、これは水野先生もかねてよりおっしゃっておりまして、違法を是正してほしい人に対して、審理の過程でいろいろな判決類型があり得ることを前提にして、釈明をしたり、あるいは当事者の意見を聞いた上で、申し出を促した上で判決を行うという意味では、判決類型が残るという考え方の方がむしろ素直ではないかと思っています。そういう意味でも、これも処分権主義で勝手に決めていいのかどうかという議論があるかもしれませんが、最終的に原告が特定するということであれば、そこは問題なくなると思います。
 あと、排他性の限定のことが(注)でちょっとだけ出てきているのですけれども、これはいろいろ検討すべきことがあるというのは分かるのですけれども、もうちょっと踏み込んで、大阪空港のようなものを念頭に置くとしたときに、ああいう判決が出ないようにするための立法手当てというのは、もうちょっと前向きに工夫する必要があるのではないか。一つの案としては、例えば民訴法の定める民事訴訟又は民事保全法の定める仮処分により直接にこれを差し止めることはできないということを書いて、裏返しに排他性が広がり過ぎないようにするというやり方もあると思いますので、御検討いただければと思います。

【塩野座長】分かりました。今の最後の点は、福井委員、何度もおっしゃいましたので、私もいろいろ考えたのです。だけど、大阪空港判決が出ないように、明示的に書けと言われても、なかなか書けないのです。ただ、ここでの議論は、仮にあれは結局、救済の道を閉ざしたというふうに評価されるとすれば、それは今回の立法で道が開いてなければいけないということだと思います。そこで大阪国際空港の読み方にもいろいろあって、最近は義務付け訴訟のことを提案しているのではないかと、これは阿部教授がそう言っているわけですけれども、もしそうだとしますと、それは申請権を有しない周辺住民が離着陸の差止めを求める義務付け訴訟になって、これはまさに我々の今、考えているものにぴったりそのものなんです。
 その他にどういうものがあるかということがいろいろあるのですけれども、ただパブリックコメントの中も私もいろいろ精査して読ませていただきましたけれども、余りここは排他性をいじくらない方がいいのではないかという議論もあるのです。つまりそれは段々学説、判例で、いわゆる公定力というものの概念、分析が緻密になってきて、今まで公定力の範囲と言われていたものが、だんだん縮んできている。ですから、変にここで立法的に手当てをするよりは、これは実体法の問題もありますし、作り方もいろいろ問題もありますので、そこで柔軟な解釈をしていった方がいいのではないかという問題もあります。一つだけ材料を出しますと、今度は個人情報保護法で開示請求が私人間同士で認められますが、片方は行政庁に向かって文句を言う方法があるのですが、あの場合はどうも民法の先生方は、私人間に直接請求はあれでは認めてないのだと、せいぜい人格権の範囲内で当事者訴訟が認められるので、そういうことは認められない場合もあるというふうに言っておられるのですけれども、しかしどうも私の読むところでは、あの場合には個人情報の開示請求権は監督官庁に向かって行く場合もあり得るし、それから当事者で行く場合もあり得るという形で、結構制定法で、いわゆる公定力というものの範囲が狭まっているところがあるのです。そういった全体の状況を見ますと、なかなか一般法で難しいところがあって、そこでここはまだ結論が出ないので、十分検討していただきたいという趣旨で書いてあります。ですから、公定力の範囲の問題もいろいろありまして、大阪国際空港のような場合をどうするかということとかいろいろありますので、今のようなごちゃごちゃして分かりにくい書き方をしているということで御理解いただきたいと思います。

【小早川委員】先ほども、確か水野委員からの御発言があって、確認訴訟にすると、では民訴と何で分けるのかというお話があり、その辺これから詰めていく必要があると思うのですけれども、そのことは一方で取消訴訟と違えるのか、違えないのかという、さっきの芝池委員と塩野座長との間のやり取りにもつながる話です。私は、ある意味では取消訴訟と共通している、今日の案でも確認訴訟の場合には一定の行為というものに着目をしているわけなので、その行為が与えられた行為規範に適合してなされたかどうかということを審査の主たる対象とするという意味では取消訴訟と共通しているわけです。ただ、座長が言われるように、本当に取り消さなければいけないものは取消訴訟で、それ以外のものはこっちだと言われるのは、従来の理論と一定の整合性を持った一つの考え方かなと思って拝聴しています。だから取り消しは必要ないにしても、拘束力辺りは多分働かせた方がいいわけで、公共事業計画なんかでも、先ほどからお話ありますように、関係者多数いるわけで、それを計画が違法なのかどうかということを裁判所でもう一度関係者を集めて判断し直すというよりは、従来のやり方に違法があれば行政段階に差し戻してしまえばいいわけで、その際に拘束力もくっ付けて、これこれは違法だからそうならないようにもう一度やれというような仕組みがここでも役に立つのではないか。事業計画の場合はそういうふうに考えられると思います。ただ、いろんな行為がここで、行政指導やら何やらまで入ってきますと、それぞれについてこういう訴訟類型なり、あるいは判決類型なりが、どういうメリットを持つかというのは、あるいは一つ一つ検討していかなければいけないのかもしれないなという気もしております。

【塩野座長】どうもありがとうございました。先ほどから確認訴訟でいろいろ御議論がありますけれども、ちょっと簡単にまとめの意味で、今後の検討のことでお話したいと思います。水野委員、先ほどそれは民訴でやるからいいと言われたのですが、日本は今までそれをうまく使いこなしてこなかったのです。つまりそうすると、先ほどの「法律上の利益」の言葉の使い方の逆手を取るようで大変申し訳ないのですけれども、ここで何かアクションを起こしませんと、裁判所は考えてくれないのです。それは私はあえて条文ということまで主張するつもりはないのですけれども、これは民訴で大丈夫ですよと言われても、では何で今までやってこなかったのですかねという疑問がでてきます。通達の無効確認だっていろいろあり得るわけです、税の関係でもですね。それは何かの関係で使ってこなかった、それはもういろんな理屈があるので、私はそこの理屈は今日申し上げるつもりはありませんけれども、今度はこういう道があるということを条文で示すか、我々の検討会の方向で出すかは別として、それは重要な意味を持つのではないかということで申し上げているところなので、民訴でやってきたからいいという御返事ならいいのですけれども、あるから大丈夫でしょうというのでは私は納得できないところがありまして、是非議論をしていただきたいと思います。
 それから、もう一つは確認訴訟というのは、よくこの事務局からも講義を受けるのですけれども、何でも入ってしまうので大変なんだと、だから、そう簡単には軽々に言うべきでないという議論があります。確かにそのとおりですが、これを今一つ一つ、どんなものどんなものと詰めていくのは、それはなかなかしんどい話で、それを全部つぶさなければ通してやらないというルールができますと、それはもう立案者の一番好きなところなんです。全部つぶして持ってらっしゃいと、そうでなければ受け付けませんというのが、日本の今までの立法の慣例になっているところもあります。しかし、私はそうではないので、国民の権利利益の実効的な救済を図るの受け皿はこういうものがある方がいいでしょう、現にこういったものもありますというのでよろしいのではないかと思います。1つも出ないのでは水野委員のおっしゃるように民訴でやってもいいでしょうということになるのですけれども、その点について実は私も自信がありませんので、こういう場でどういうものがあるのか、もう少し検討して具体的な案に即して、一種のサンプル的な調査をしてはどうかと、それがここの提案の趣旨であるというふうに御理解いただければと思います。
 もう一つは、先ほどの繰り返しになりますけれども、行政計画、行政立法については、ここでは我々の宿題として残しているのだということも十分頭の中に入れておいていただきたいと思います。
 他に何かございますでしょうか。それでは、大分時間も経ちましたので、何かこの確認の訴え、処分性の項目について、御意見があればもう一、二承りますが、この辺りで芝原委員、あるいは成川委員、よろしゅうございますか。この辺は、行政立法、行政計画は御専門に近いところもありますので、今後ともよろしくお願いいたします。

(休 憩)

【塩野座長】それでは、次に後半の第2の「2 審理の充実・促進」、「3 行政訴訟をより分かりやすく、利用しやすくするための仕組み」、「4 本案判決前における仮の救済の制度の整備」、「5 その他」について、事務局から資料を御説明いただき、その後御検討いただきます。では、お願いいたします。

【小林参事官】「2 審理の充実・促進」の「(1) 処分の理由を明らかにする資料の提出」です。「訴訟の早期の段階で、処分の理由・根拠に関する当事者の主張及び争点を明らかにするため、裁判所が、裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料の提出を釈明処分の一環として命ずることができる制度を設ける」という項目です。(注1)は「行政訴訟独自の文書提出命令制度が必要かどうかについては、公務文書の提出命令について改正により拡充が図られてきた民事訴訟法上の文書提出命令制度の運用や見直しの動向を踏まえつつ、さらに検討する必要があるのではないか。新たな制度を設けるに当たっては、審理の充実・促進を目的とするものとして、訴訟の早期の段階で利用するのに適した制度とするため、主張の整理など訴訟関係を明瞭にするための釈明処分の特則として位置付け、審理が進展した段階における文書提出命令の制度との適切な役割分担を図るべきではないか」としております。(注2)は「行政訴訟においては国又は公共団体がその行為が適法であることの主張・立証責任を負うことを定めるべきであるとの考え方については、行政訴訟における主張・立証責任の分配に関する現在の判例の考え方のどのような点に問題があるのか、その問題は立法により解決すべき問題か、立法によるべき場合にはいかなる法律にどのような定めを置くことが適当かなどについて、行政訴訟の主張・立証責任に関して様々な見解があることから、判例及び学説の動向を踏まえつつ、さらに検討する必要があるのではないか。また、原告の主張・立証の負担については、裁判所が裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料の提出を命ずることができる制度を設けることによる実質的な軽減の効果等についても考慮する必要があるのではないか」ということです。(注3)は、「処分の理由等を訴訟の前やその初期の段階に示されたものから変更することを無制限に許容すると原告の主張・立証の負担がいたずらに増大するのではないかとの観点から、処分の理由等の変更を制限すべきであるとの考え方については、一律に処分理由の変更を制限すると客観的に適切な判決を得られなくなるおそれはないかなどの問題がある。また、処分理由の変更の制限及びこれと密接な関連を有する処分の同一性の範囲の考え方については様々な見解があることから、判例及び学説の動向を踏まえつつ、さらに検討する必要があるのではないか」ということです。
 「(2) 裁量の審査」です。「行政の裁量に対する裁判所の審査を充実させるために「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り」処分を取り消すことができるとする行政事件訴訟法第30条の規定を見直すことに関しては、裁量の範囲・内容自体は裁量を認めている個別法の問題と考えられることや、裁量の司法審査の手法には様々なものがあり、どの手法がどのような場合に用いられるべきかについては様々な見解があること等を踏まえ、十分な検討を行う必要がある」としております。
 「3 行政訴訟をより分かりやすく、利用しやすくするための仕組み」につきましては、「(1) 被告適格者の見直し」として、「被告適格を有する行政庁を特定する原告の負担を軽減するため、抗告訴訟(行政事件訴訟法第3条第1項参照)については、処分又は裁決をした行政庁を被告としていたことを改め、処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告とする」としております。
 「(2) 抗告訴訟の管轄裁判所の拡大」です。「国に係る抗告訴訟(行政事件訴訟法第3条第1項参照)の管轄裁判所を拡大し、行政事件訴訟法第12条の規定する現行の管轄裁判所に加えて、少なくとも、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも訴えを提起できるものとする。独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の適用される法人についても、同様とする。あわせて、同種の訴訟について、判断の統一を図るため、同一の裁判所で審理を行うことを可能とするように、新たな移送の規定を整備する」としております。
 「(3) 出訴期間の延長」です。「「処分があったことを知った日から3か月」とされている出訴期間(行政事件訴訟法第14条第1項、第2項)を、少なくとも6か月に延ばす」としております。(注1)は「出訴期間の長さを検討するに当たっては、行政事件訴訟法によって定める一般原則に対し、個別法による特例があり得ることを考慮し、国民に対するわかりやすさの観点をも踏まえ、制度全体としての在り方を検討する必要があるのではないか」、(注2)は、「この新たな出訴期間についても、第14条第3項ただし書と同様、正当な理由による例外を認めることの適否について検討する必要があるのではないか」、(注3)は「第三者の権利義務関係に変動を及ぼす処分に限って出訴期間の制限を受けることを行政事件訴訟法に規定すべきであるとの考え方については、出訴期間を設ける意義について、多岐にわたる行政処分に関して形成される法律関係は様々であって、第三者の権利義務関係に変動を及ぼす処分か否かの判断は必ずしも容易ではないことを踏まえ、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 「(4) 出訴期間等の教示(情報提供)」です。「行政庁が書面による処分をする際、その相手方に対し、当該処分に係る取消訴訟の被告、出訴期間及び不服審査前置の要否を教示しなければならないものとする」としております。(注1)は、「教示を怠った場合及び誤った教示をした場合については、被告の変更につき第15条第1項により、出訴期間につき第14条第3項ただし書(ただし、第14条第1項の出訴期間については、その延長等の問題と併せて検討する必要がある。)により、不服審査前置につき第8条第2項第3号により、それぞれ救済が可能ではないか」としております。(注2)ですが、「不服審査前置による制約の緩和については、不服審査前置の定めがある場合にその旨を教示の内容とすることにより訴え提起の機会をより実質的に保障することになると考えられることから、これに加えて新たな制度を設けるべき必要性がどのような点にあるのかについて、不服審査前置を設けている各法律の趣旨を踏まえて、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 「4 本案判決前における仮の救済の制度の整備」の「(1) 執行停止の要件」です。「行政事件訴訟法第25条第2項本文の定める執行停止の要件(「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」)に関し、損害の性質のみならず損害の程度などを総合的に考慮することができるような規定に改めることについてなお検討する」としております。(注)で、「一定期間経過後に執行力が発生する制度及び処分が執行された場合に生じる損害が重大なときのための暫定的な執行停止制度を設けるべきであるとの考え方については、個別の法分野ごとに、公益や第三者に及ぼす影響などを勘案しつつ、これらの制度の導入が必要かつ適切なのはどのような場合かについて、さらに検討する必要があるのではないか」としております。
 「(2) 執行停止以外の仮の救済制度」は、「義務付け訴訟及び差止訴訟を法定することを前提として、執行停止制度以外に、仮の義務付け及び仮の差止めの制度を設けることについてなお検討する」としております。
 「(3) 執行停止決定に対する不服申立て」は、「執行停止決定に対する不服申立てについては、内閣総理大臣の異議の制度(行政事件訴訟法第27条)を含め、その具体的在り方についてなお検討する」としております。
 「5 その他」です。「(1) 訴え提起の手数料」は、「訴えの提起の手数料について、これを軽減する観点から見直すべきか否かに関しては、一般に経済的利益を基準に手数料を定める考え方を採用している制度の趣旨や民事訴訟一般における「訴えで主張する利益」の考え方との整合性などの問題があることを踏まえ、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律による民事訴訟の訴え提起の手数料の額の見直しの効果を見極めた上で、十分な検討を行う必要がある」としております。
 「(2) 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」は、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いについては、行政訴訟の特殊性にも配慮し、弁護士報酬の敗訴者負担制度の持つ訴訟の活用を促す側面と訴えの提起を萎縮させる側面の両面の観点等を考慮して、他の訴訟における取扱いの検討を踏まえつつ、十分な検討を行う必要がある」としております。
 「(3) 国の支出の適法性を確保するための納税者訴訟」は、「国の支出に対し、訴訟による行政の適法性の確保の機能を拡充する観点から、地方自治法第242条の2以下の住民訴訟に類する制度として、例えば国の支出に違法があると思われるときに国民が会計検査院に対し検査の請求をして会計検査院の判断に不服があれば国民が訴訟で争うなど、国の違法支出に関する納税者訴訟の制度を創設すべきであるとの考え方については、国の財務会計制度の在り方全体の中で、司法の果たすべき役割がどのようなものであるべきかとの観点から、権力分立の原理との関係等に配慮しつつ、十分な検討を行う必要がある」としております。(注2)では、「行政事件訴訟法に、行政訴訟の目的を明らかにする規定を設けるか否かについては、行政訴訟の目的として主張される「国民の権利利益の救済」と「行政の適法性の確保」との関係のとらえ方が多様かつ複雑であることや、目的規定の機能を踏まえつつ、一義的な目的の設定の適否等の観点を含め、検討する必要があるのではないか」としております。

【塩野座長】どうもありがとうございました。それでは、是非最後まで議論をしていただきたいと思います。そこで、順序は今、読み上げた順序で逐次いってはどうかと思いますけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。

(委員から異論なし)

【塩野座長】それでは、6ページの「審理の充実・促進」の(1)から、先ほどと同じように御自由に御意見、あるいは御質問をいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。

【水野委員】大きなことではありませんが、例えば処分理由の変更の制限の問題なんかでも、ここに書いてあるのは。

【塩野座長】6ページの(注3)ですね

【水野委員】「判例及び学説の動向を踏まえつつ」というのが出てきます。これは、いろいろな箇所に何回も出てきます。しかし、要するに枕言葉のように、先延ばしをするために「判例及び学説の動向を踏まえつつ」というのが書かれているというふうにしか思えないのが結構あるのです。例えば、今の処分理由の変更は、どういうことを予想しているのか。つまり処分理由の変更について、これまでの判例というのは最高裁の判例の1件だけです。学説で、例えば処分の同一性について論じた論文があるのかどうか知りませんが、果たして何本あるのか。これから先に、何年かかれば学説と判例が動向を示して、この問題に結論を出せるようになるのかというのが、私は非常に疑問だと思うのです。ですから、こういう言葉を軽々に使ってもらいたくないということを申し上げておきたいと思います。

【塩野座長】ここは私の言葉で入れさせてもらったのですけれども、軽々にではなくて非常に重々しく使っているのです。例えば、処分理由の変更については、交告教授の1冊の大きな本がございます。日本法、フランス法と比較して、私は大変感銘を受けて読んだのですけれども、それはフランス法のシステムというものがかなり背景にあります。理由の変更を認めないで、どんどん切っていくのです。私より小早川さんの方が専門家だと思いますけれども、私の推測ではコンセイユ・デタがどんどん切って、それで行政庁の方ではそれを受けて、またどんどん違った理由で処分をする、そういうシステムとしてできあがっているのではないか。
 ところが、日本ではどうかというと、なかなかそうはいってない。そこで、お前論文を書いていないではないかと言われますけれども、同一性については私も教科書できちんと書いているつもりですし、理由についてもいろいろ書いているところがございます。そういうわけで、交告教授の論文自体もまだここで御披露してないような状況ということもありますので、私はこれは学説及び判例に委ねるという趣旨は、実は軽々に言っているのではなくて、そういう議論の蓄積を見ながら、ここでこの検討会で決めるべきものなのか、あるいはもうちょっと学説、判例の蓄積を待つべきものなのか、大変悩んでいるところでして、この理由の変更というのはなかなか難しい。この前もちょっと申しましたように、今度は義務付け訴訟が出てきますと、この前、例として申しましたのは情報公開の開示請求なのです。あれは取消訴訟で出てきていますが、その前の小早川委員がやっておられる情報公開審査会では、要するに開示請求権の存否という全体をどうも議論しているときもありますし、それから理由の範囲で議論しているときもある、いろいろなんです。私は、これは実体法の研究がどんどん積み重なってまいりますと、恐らく情報公開請求訴訟というのは、開示請求権の存否の訴えであって、もうすぐ裁量のない限りは義務付け訴訟で行って、そのときにはもう一発で行くことになるのではないかというふうにも思って、そういった新しい実体法上の請求権とか、実体法の仕組みが出ていく中で、今ここで決めていいかどうかということで、私はこういうふうに整理をさせていただいているという趣旨でございます。

【水野委員】今、申し上げたのは、処分の同一性の範囲の考え方についての論文がそれほどたくさんあるのかということを申し上げたので、変更の有無についての議論はありますよね。だけど、そこの「処分の同一性の範囲の考え方」と書いてありますから、それについてはそれほど多くの論文が今まで書かれたわけではないのではないかということが一つ。それから、そうはおっしゃるけれども、それでは何年先にそれが、例えばあと5年待ってくださいよと、5年待てばその間に判例、学説が蓄積されてやれるのですということであればいいのです。しかし、そんなこと言えないのではないですか。それから、もう一つは、例えば主張立証責任だとか、裁量のところにも出てきます。しかし、主張立証責任にしたって裁量にしたって、結構今まで判例、学説の積み重ねがあるのです、私に言わせたら。これから先また何年待つのですかということを言いたいわけです。だから、すぐにこういう文言を使って先延ばしにするのだけれども、本当にこれから先どういうのが見込めるのかということを具体的なイメージなしに言うのはおかしいのではないかということを申し上げたのです。例えば、その上の6頁の(注1)の民訴の文提は、これからの運用なんだから、これからの判例、学説を見てやっていきましょうと、これは分かるのです。しかし、他の項目についてはちょっと私としては異論があるということを申し上げさせていただきます。

【塩野座長】もう一ついいですか。私が言いたかったのは、これは立法で決めるものなのかなというのも心の中にはあるのです。例えば、立証責任みたいなものについて、立法というのはどうしても固く一律になりますので、そういうことで果たしていいのだろうかと、それから処分の同一性とか何とかというのも、これもいろいろ学者は議論しますけれども、それは立法で決めるということになるのかどうかというのがもう一つあって、しかし学説、判例が固まってくれば、ではここで固定化しようという議論もあるのですけれども、立法化はある意味では固定化の道具なのです。ところが、学説、判例は常に動く道具なのです。これは使い分けが難しくて、固定化という道具を使った方がいいのか、しばらくいろんなことを考えながら動いていくのがいいのかという両方あって、その両方のところが入っています。
 それから、立証責任の問題は、むしろ私は蓄積があり過ぎて、どう整理したらいいのか。あれで通説とか何とかというのは言えない状況にあるときに、この検討会でこれが通説である、あるいはこれがいいということが言えるかというとなかなか難しい。それは、では何年待てば固まるかというと、これは私が今ちょっと申しましたように、やはり法律で決めることになるのか、それとも立証責任というのはそれこそ裁判官の法として動いていくのがいいのか、この見極めは今のところはできないということでございます。
 だから、決して軽々に、あるいは議論を先延ばしするために言っているわけではございません。そこはよく理解していただきたいと思います。そういうものしか挙げてないはずです。

【福井(秀)委員】私は、軽々だとは思いませんが、やはり判例及び学説の動向を踏まえて行うのは、解釈論であるべきであって、この検討会は元々行政訴訟法なり、あるいは行政法に関する様々な今までの運用なりについて反省しよう、反省して政策として、立法として対応しようというのが出発点だったわけです。その意味において私の知る限り判例は当然解釈論ですし、学説の大部分も解釈論ですから、前提が変われば法解釈というのは当然変わり得るものです。そういう今までの法の枠組みを前提とした解釈で、何か国民の権利利益の保護にまっとうできていない部分があるのではないか、あるいは行政チェックに何か問題があるのではないかということを、まず出発点として、この検討会なり司法本部全体の作業が設けられているわけですから、一種のトートロジーに陥るのです。余り判例、学説ということを強調しすぎると、今の条文を前提にできている判例や学説を積み重ねたのを立法論の参考にするということは、やはり論理矛盾する面がどうしてもあるわけです。判例、学説はもちろん参考にはなりますが、それは動向の蓄積を見るというようなものではなく、やはり政策判断として今までのこの判例や、あるいはこの学説は、運用の問題ないしは結論において利益衡量なり違法性適法性のチェックということから見て、何らかの尺度による問題があるときに、その問題を解決するための判断を検討会として、立法政策提案としてするのが任務だと思います。私もこれに非常に違和感があって、どこで申し上げようかと思っていたのですけれども、判例、学説の動向を踏まえるという意味での政策論というのは、基本的にはちょっと違うのではないかという印象を持っております。

【塩野座長】分かりました。ちゃんと答えておかないと誤解があるといけないと思いますので、判例、学説の動向を見るというのは、それはもしそれで私の頭ができているとすれば、最初から全部それになりますね、原告適格でも何でもですね。そうではないですね。判例、学説の動向に拠った方がいいと思われる、あるいはここでなかなか難しいと思われるものを拾い上げているわけですから、そこでただ私は自分の意見に固執するわけでもありませんし、整理が正しいと思っているわけでもありませんので、この部分については判例、学説よりもここで決めろと、そういうものに馴染むではないかという御意見は大歓迎ですので。ただ、およそ判例、学説に委ねるのはまかりならないということは私は理論的には成り立たないと思うのです。立法で解決すべきものと、それからもう少し判例、学説を見ておこうというものと、そこはあると。そのカテゴリーは2つあるので、そして私はこの検討会はまさに立法のための検討会ですので、できるものはできるだけ立法で解決しようということで、皆様の御意見を整理しているつもりです。そこで、個別の御意見のときに、ここは判例、学説に委ねるよりはもうここで、あるいは更に十分検討というところで決着をつけて立法提案をしようという御意見として、どうぞ個別にお願いいたします。

【市村委員】私は専ら、今出てきた(注3)のところの関係の判例のことで、今、水野委員が御指摘になられたので、そのことでコメントしたいと思ったのです。それは、「この辺はずっと動いてないのではないか,昔の青色申告に関する判決一つではないか」という御指摘でしたが、私の印象では、むしろここは近年非常に動いている部分だと考えています。平成5年にベンジジン判決と言われている、かなり著明な判決が一つあって、それが一つの同一性の切り方、処分の同一性、理由の差替えを規律する大きなヒントになる判決だと思います。それから、平成14年に逗子の情報公開条例に関する、これは理由の追加に関する判決だと思いますが、これもどういうもので理由の追加を許すかということについての、重要なエポックになった判決だと思います。こういうふうに、最近むしろ動きは活発化してきているのではないかと思います。これは、少なくともこのテーマについては、座長が先ほどおっしゃられたように、むしろ単一の訴訟物とは何か、処分の同一性の範囲は何かというあたりと密接に関連して、例えば差替えを許さず小さく処分を切れば、別途の処分という形で、あとは許すということとつながっている、裏表の関係になっているところがあります。そういうものを全体としてどう処理していくかということと密接に関連していると思いますので、少なくともこの分野については、今そういう議論が活発化し始まったところですから、もう少しその進展を見てから議論する方が、材料としていいものを使って、適切な立法につなげられるのではないかと私は感じております。

【芝池委員】先ほどの水野、福井両委員の御発言ですが、確かにおっしゃることはもっともなんです。ただ、他方で私はこの理由の変更、それから立証責任については、ここで議論する必要はないという立場を取っておりました。なぜかというと、結論が出ないというのがほぼ見えている。それは、表現としては判例、学説の動向を踏まえるということになるのだと思いますが、私個人について言いますと、きちっと根拠を持って考えをまとめ得るに至っていない。それは、私が努力不足ということではなくて、客観情勢がそういうものなのです。ですから、特に実務家でいらっしゃる水野先生が早く結論を出せと言われるのは分かるのですけれども、やはりこの問題はもう少し成熟を待った方がいいのではないかと思っております。

【小早川委員】私も一言言わせていただきます。私はちょっとニュアンスが違うかもしれません。この問題自体は解釈論としては非常に面白いし、いろんな立場があって、解釈論をやっていると切りがないですが、立法論として訴訟段階で、特にここの釈明処分として処分理由を説明させるという制度を導入するとすれば、そのこととの関連で訴訟の早い段階で理由を特定させてしまうというのは、立法論としてはあり得るし、考えられることではないかと思っているのです。ただ、私としてはそこは立法の必要性、緊急性がどれだけあるかということがあって、もちろん立法をするとなると、市村委員がおっしゃったように拘束力との関係、やり直しの範囲をどうするかというところの理論的整理をきちんとやらないといけませんし、かなりしんどい話ではあるし、しかし今まで言われたことですけれども、判例、学説、いろいろ一生懸命やっているところなんで、解釈論でしばらくやっていただいても、それほど国民の権利救済にとって、今すぐ立法でどうこうしなければいけないという話でもないのかなと。
 今日は時間が過ぎてくたびれているところもあるのかもしれませんけれども、この問題は次の機会でもいいのではないかと思っています。

【福井(秀)委員】今の発言のある一面には賛成の面もあるのですが、要するに立法論でやるとしたら、今の条文を踏まえての解釈について煮詰まることを待つ必要はないということは、言うまでもないことだと思います。ただし、立法論として現時点で立法する必要があるか否か、あるとしたら何を立法するのかということを決めないということは、基準を持たないし、判断をしないということにもなると思うのです。判例、学説がまだ見えないとか、あるいは数が少ないから決めないというのは、これは不当な理由だと思います。そうではなくて、現時点でこれは立法判断としてやるべきでない、やるべきでないとしたら、例えば先ほど塩野先生が言われたように、立法で硬直的に、一義的に決めてしまうには、時期尚早だということはあり得ると思います。ですから、そういうことであればそれは立法論として別に判例、学説の展開を待たなくても決められることですから、そういう意味で決めればいい。理由として判例、学説の解釈論の動向を見るというのは、極めて違和感があるということは、もう一度強調しておきたいと思います。

【塩野座長】判例、学説の展開を待つというのは立法論なんですよ。

【福井(秀)委員】だから、立法論の基礎として解釈論的な推移を見るというのは、論理矛盾だと思います。

【塩野座長】立法論なんです。立法しないという意味での立法論なんです。福井委員の言うことも何か分かりかけているような気もしますが、そういう立法を今すべきでないという意味での立法があります。
 これはなかなか難しいところで、特に立証責任というのは、民訴の一番大事なところですので、なかなか手を付けられないなというのを、兼子先生の顔を思い出しながらするものですから、この辺はもう少し立法論としては慎重に、しかし福井委員の言われるように、我々は立法の課題を仰せつかっているわけですから、立法すべきものは立法すべきということで会議を進めていきたいと思います。
 同じような問題は、裁量の審査にもありますから、ここはどうですか。

【小早川委員】私は前からこの条文が、現在の理論水準に合ってないということを申し上げてきましたが、その度に現在の裁判所は現在の高い水準の裁量審査をやっているという御主張がありまして、そうであればこれをどう書き直すかということで、また大変な議論になりますから、仕方ないのかなと。

【福井(秀)委員】ちょっと戻って、処分の理由の資料の提出のところですが、釈明処分の特則というふうに(注1)に位置づけているのですけれども、これも度々議論があったように、最初から関連文書をすべて提出させるという選択肢をどう考えるのかとか、あるいは裁判所提出以外の資料を自分の処分の根拠とはなし得ないというような考え方をどうするのかとか、そういったことも含めて考えていただければと思います。

【塩野座長】今の御趣旨をもう少し御説明いただけますか。

【福井(秀)委員】要するに、(注1)で釈明処分の特則というふうに、割合技術的な問題として位置づけているような印象を持つのですが、これも何度か議論がありましたように、最初から関連の処分の根拠となった関連文書をすべて提出させるというような行政庁の義務についてどう考えるのか。規定できるのかできないのか、できないとしたらなぜなのか。裁判所に提出した以外の資料は、例えば自分の処分の根拠としては主張し得ないという議論もあったかと思います。そういう議論についてどうするのかということも含めて考えていただければと思います。

【塩野座長】論点を付け加えろという趣旨ですね。

【福井(秀)委員】裁量については、もちろん裁量の中身についてはいろいろな議論があって、なかなか一元化しにくいということは分からないでもないのですけれども、この30条の規定の見直しということについては、依然として十分な検討というのがどういうニュアンスかというのはややはっきりしませんが、30条自体の持つ効果を考えれば、これを削ってしまうという可能性については、もうちょっと明示的に議論したいと思います。

【塩野座長】それでは、大分時間も押してまいりますので、まだあと大事な項目がありますので、次に進ませていただきたいと思います。
  「被告適格者の見直し」、それから「抗告訴訟の管轄裁判所の拡大」、この辺り御意見、あるいは御質問があればどうぞ。

【芝池委員】大したことではないのですが、「被告適格者の見直し」ですが、この見直しの理由として「行政庁を特定する原告の負担を軽減する」ということが書かれているのですが、これは人によってかなり理由は違ったのではないかと思います。私は、個人的には民事訴訟の一般原則に戻すのがいいというふうに思っておりました。

【塩野座長】どこですか。

【芝池委員】枠の中の1行目です。被告適格の見直しの「原告の負担を軽減」とありますが、それだけではなくて人によって違ったのではないか。それから、さっき市村委員が言われましたように、訴訟の訴えの変更との関係でもやはり意味があるようですので。

【塩野座長】そこは、確かにそういう御議論もあるのですけれども、一般原則に、すぐには戻れないところがあります。実は美濃部先生は論理上、あるいは本質上行政事件訴訟法の被告は行政庁であるという議論を立てておられて、それはドイツから来ているわけです。ですから、そう簡単に便宜的なものとはいえないのではないか。
 そこで、被告適格を誰にするかは便宜の問題であると言われたのは、田中二郎先生なんです。割合簡単に前の行訴法の改正のときに、それは便宜の問題である。それがどうも通ってしまったのですけれども、雄川一郎先生はまだ美濃部理論にこだわって教科書を書いておられますので、私が多少反省しているのは、ここを少し簡単に飛び越え過ぎたのかなと、もう少しそこは議論しなければいけなかったのかなという反省もありますので、こういう書き方をしているわけでございます。ただ、今となってみれば、ムダな議論をしたのかなというふうにも思いますけれども、しかし美濃部先生はムダな議論をしているはずではないので、やはりそれなりの取消訴訟の観念があったのだと思います。そこはやはり大事にしないといけないと私は思っているわけでございます。

【福井(秀)委員】被告の変更に関して、結論は別にこれで結構なんですけれども、やはりこの場合にも何度か議論になっていると思いますが、間違えたときの救済ということが必ず起きますので、今みたいに重過失があったらダメだというより、間違えても基本的には全て許容するというぐらいのことをしておかないと、またこれで余計間違える人が、不服審査と別になったのでややこしくなってふえるということがあり得ますので、そこはくれぐも充実するということを明示した方がよいのではないかと思います。

【塩野座長】そこはもう福井さんのいつもの御主張で、私も常に賛成しているのですが、今度は大丈夫ですというものですから、大丈夫なようにできているはずなものですから、そこは私も福井委員のおっしゃるとおりだと思います。

【村田企画官】(注2)に論点として記載しております。

【塩野座長】他に、どうぞ。出訴期間の方に入ってよろしゅうございますか。

【福井(秀)委員】管轄の点ですが、これは例えば、地裁で実績があるところをどうするか。京都とか神戸とか、そういうものは一律にこの考え方で統一するという意味でしょうか。

【村田企画官】これは、現在の管轄に加えてプラスアルファの管轄を設けようという趣旨ですので、今できているものができなくなるということはないと思います。

【福井(秀)委員】集約するときに、都道府県庁所在地のところですか。

【塩野座長】持って行ってしまうわけではないのです。

【水野委員】これは、実は両面ありまして、最高裁がこの場で御報告になったように、ほとんどの行政事件は原告の住所地で現実やっているのです。ところが、例外的に地方の裁判所ではやれないという例外、東京地裁にならざるを得ないというのが幾つかある。それは、今回の規定で、例えば大阪地裁でもやれるということはあるのです。もう一つは、例えば関西で言うと、大津地裁で税金の訴訟が起こせる。ところが、これができると大阪地裁でもやれるのです、プラスで。だから、例えば千葉の人が税務訴訟を起こすときは、千葉の地裁しか今はやれない。ところが、どうしても市村さんのところでやってもらいたいと言ったら、東京地裁でもやれるという面があるのです。ところが、逆に東京でしかやれない事件については、原告の住所地だということになれば、自分のところでやれる。ところがこれだと少なくとも大阪まで行かなければいけないということになりまして、若干私も迷うところがあるのです。だから、本当を言えば両方プラスしてもらうのが一番いいわけです。だけど、どちらを選ぶかと言われたら迷うわけですけれども、やはり弁護士は全国におりますから、東京とか大阪とか、高裁所在地だけをプラスするということにしますと、その他の地域の弁護士から文句が出ると思うので、私はやはり原告の住所地をプラスするという案に賛成だということを申し上げておきたいと思います。

【塩野座長】御意見としてお伺いします。

【福井(秀)委員】それに関連して、住所地という場合に、例えば神戸や京都の人が大阪にしか行けないオプションしか持たないのかというと、地元でもいいような気もするということを申し上げたのですけれども、それはそういうふうに読めるのですか。

【塩野座長】住所地で決めるわけではなくて、元々今の裁判管轄があって、その上に更に高裁の所在地であれば、今までは行けなかったけれども、高裁の所在地まで行けば裁判を受けられますよと。そこでは、恐らく私の希望的観測では、集中的に行政事件訴訟に長けた裁判官を配置していただけると。あるいは、そこに行けば行政事件訴訟に長けるというお話だと思います。
 御疑問の点は、また次回にでももう少し確認の御質問をいただければ結構だと思います。出訴期間の方は、いかがでしょうか。

【小早川委員】出訴期間を延ばすことがなぜ必要かという議論が既にありまして、国際的な相場から見ても、何も6ヶ月まで延ばさなくてもいいのではないかという議論はあったわけですが、私としては日本の現状に照らして、まずは行政訴訟に皆さん慣れてもらうと。もっと慣れてもらうための、いわば特例措置ですか、暫定措置ですか、臨時措置ですか、改革のための措置と言いますか、そういうことかなという気はしているわけです。
 つまりこれまでなぜ出訴期間がネックになっていたかというのは、実態をきちんと調べたわけではありませんけれども、やはり意識として裁判所というものは元々遠くて、ですから処分を受けた途端に、さあ裁判所に行くためにはどういう準備をすればいいかという対応は皆さん、一般国民は余りしないのではないか。裁判所に行く前に、まずどこかの先生のところへ行くということが普通頭に来て、それに時間を取っているうちに段々出訴期間が過ぎてしまうというようなことも、多分たくさんあったのではないかと思います。ですから、そういうビヘービアが改まれば、それはもう出訴期間が短くても構わないということなのかもしれないと思うのですけれども、そういういろんな手を尽くしたあげくに、やはり裁判所しかないという人を差し当たりは救う方がいいのかなと。そのことが行政訴訟の健全な発展に資するのかなというつもりで私は賛成します。

【水野委員】これは我々弁護士に関係あることなので一言申し上げますが、もちろん延長しなければならないと思うわけです。「少なくとも6ヶ月」という含みのある言葉なので、1年ということも考えられるのかなというふうに思います。この前の行政官庁のヒアリングをしたときに、行政の早期確定、安定ということをしきりに言うわけですけれども、大体聞いてみると1年でどうかといったら、それは1年では長過ぎて困るというところは一つもなかったように思うのです。1年ぐらいなら仕方がないなというか、そんな印象だったと思うのです。ですから、これを6ヶ月に延ばすというのを1年というふうにしてもいいのかなと。そうすると「処分があった日」から1年という規定は要らなくなりますね。だから、もう「知った日」から1年ということで1本にするというのも一つの。

【塩野座長】「知った日」からですね。「処分があったことを知った日」から勘定しますから、今よりも延びますよ。どっちですか。

【水野委員】「処分を知った日」からです。

【塩野座長】だから、今より延びますね。

【水野委員】そうです。「処分を知った日」から1年という1本でいいかなという。

【塩野座長】だから、今より延ばすというわけですね。御意見だと思います。

【福井(秀)委員】私も、「知った日」が起算点かどうか、あるいは「処分があった日」ということもあり得ると思うのですが、6ヶ月よりは1年の方がいいと思います。出訴期間について延ばすのであれば、6ヶ月よりは1年の方がいいと思います。6ヶ月ぐらいですと、まごまごしていると救済の機会がなかなか得られないということもあり得ますし、ましてや(注3)にはちょっとだけ問題点を書いてありますけれども、第三者に関わるかどうかという観点で言うと、6ヶ月だとやはり第三者に関わらない場合についてはやや短過ぎるという印象です。
 もう一つ、不服申立前置の場合は、課税とか年金裁定とかで、60日の異議申立期間というのが前置されている場合に被ってきますと、こういう場合については本体の行訴法の出訴期間を延ばしただけでは全く意味がないということがありますので、不服申立前置自体はまたどこか別の論点で出てきて、それ自体選択制にすべきだと思っていますが、それはともかくとして、異議申立が前置されるような場合の60日が、そのままになって6ヶ月とか1年という議論は、いかにもアンバランスだと思いますので、そういう前置がある場合の不服申立期間の方についても、同様な意味での救済の機会の拡充をセットで考えていくべきだろうと思います。

【芝池委員】少なくとも6ヶ月と書いておられますので、私は発言しないでおこうと思ったのですが、1年説が出てきましたので申し上げます。私は、かねてから1年ということを言っております。その場合、処分があってから1年というふうに説明をしておりました。知ってからではなくて、処分があってからというふうに説明をしておりましたので、ちょっとその点は水野委員と違うかと思います。ただ、「あった」というのがどの時点かという問題があるのですが、それはやはり知り得るべき状態に置かれたときだろうと思います。

【塩野座長】到達したということですかね。

【芝池委員】はい、到達したことです。

【福井(秀)委員】私も今の芝池先生の御議論に、基本的に賛成ですが、「知った日」か「あった日」かの場合、恐らく訴訟経済の観点で言うと知った日を特定するというのは大変、一種の確定コストのかかる問題だということも加味すれば、1年であれば「あった日」の方がよいのではないかと考えます。

【塩野座長】いろいろどうも、この1年というのは、これからの議論の中身になると思いますので、この枠の中は少なくとも6ヶ月と書いてありますので、このまま次回にまた議論をしていただきたいと思っております。

【水野委員】(注2)の「正当な理由による例外を認める」は、実は「主な検討事項」には出てなかったことだと思いますので、先ほどは「主な検討事項」に出てこない言葉を入れてはけしからんと言いましたけれども、この部分は是非。

【塩野座長】出訴期間の延長はそういうことで、ただこの前も情報提供ということで申し上げたのですけれども、出訴期間を議論している国はないのです。韓国では出訴期間はむしろ法治主義のためにあるのだということを言って、韓国では出訴期間を長くするということは考えてもいないということです。それはいろんな理屈があると思います。そこで、日本では取消訴訟を奨励するために6ヶ月に延ばしました、あるいは1年に延ばしましたということを国際会議に出てどういうふうな顔をして説明するのかということが心配なので、そこは是非きちんとした理由をおっしゃってください。東アジア行政法研究会がありますので、日本ではなぜ6ヶ月、あるいは更に1年という議論があるのは、一体何のことだろうという質問が必ず出ると思います。そこは6ヶ月、あるいは1年論者は是非説明をしていただきたいと思います。
 それから、仮の救済の制度の整備でございますけれども、これは全て「なお検討する」ということで、ここは是非立案に向けて、次回以降も詰めて検討していただきたいというのが、私と事務局側での「たたき台」を作ったときの気持ちでございます。
 そういうことで、この「なお検討する」ということについて、もう少しこの点も注意すべきではないかという点があれば是非おっしゃっていただきたいと思います。

【小早川委員】(1)は執行停止の要件を広げるという話で、(2)は執行停止以外の仮の救済の創設ということですけれども、義務付け訴訟と差止訴訟では仮の救済の在り方は全然違うと思いますが、少なくとも義務付け訴訟との関連で仮の救済を考えるということであるとしますと、現在の申請拒否処分取消訴訟についてもやはり並べて扱った方がいいのではないかという気がしております。特に今日の前半の議論との関連で、入口でどういう訴訟かというのを一応分ける、あとは訴えの変更なんかで処理しているのだというシステムだとしますと、最初の段階でどうしても義務付け訴訟をやっておかないと仮の救済の申立てもできない、そうではないと蹴っ飛ばされるというのも、ちょっと窮屈過ぎるかなという気もしまして、できればそういう方が。

【塩野座長】論点としての御意見だと思います。ありがとうございました。

【水野委員】仮の救済制度の(注1)ですけれども、問題点はどういう意味なんでしょうか。(2)の(注1)です。

【村田企画官】この点は、以前執行停止以外の仮の救済の制度を御議論いただきましたときには、一つの視点として民事保全法になぞらえた整理で類型化をして御検討いただいたこともあったのですけれども、それを改めて整理し直して考えたときに、仮の義務付け、仮の差止めと、それから元々ある執行停止ということに振り分けて考えると、それから漏れるものというのが果たしてあるのだろうか、なかなか想定し難いところもあるのかなというつもりで記載しているものです。
 更に言いますと、以前は例えば民事の保全になぞられまして、係争物に関する仮処分に類するような仮の救済が行政訴訟でも必要かということも論点としてはお示ししたこともあったのですが、それは仮の差止めであったり、あるいは執行停止の手続の続行の停止ですとか、そういったことで足りるということで整理していくとそういうことになるのかなというところもございまして、仮の義務付け、仮の差止め以外に何か必要なものというのは果たしてあるのかということを論点として記載したということでございます。

【水野委員】仮の義務付け、仮の差止めを実施することを前提にしてということですか、更に、ということですか。

【村田企画官】はい、その他にまだ必要かどうかということです。

【水野委員】そうすると、本文の「なお検討する」ということとは、どういう結び付きになるのですか。本文は制度そのものについて「なお検討する」のでしょう。

【村田企画官】制度そのものと言いますか、その要件ですとか、なお考えるべきところは多々あるであろうという意味で、「なお検討する」としておりまして、その際には仮の義務付け、仮の差止めだけでいいかというのも一応確認しておきたいということです。

【塩野座長】仮になければこれでいいということですね。それから、ここでは出ておりませんけれども、私の理解では確認訴訟の話も出まして、確認訴訟の仮の救済というのはどういうものかということも考えておかなければいけないと思っております。
 他にいかがでしょうか。

【水野委員】仮の救済については、元々検討会でやるということにしてあったわけだし、これは意外と言ったら語弊があるかもしれませんが、行政官庁のヒアリングでもそう大きな抵抗はなかった。むしろ執行停止の要件緩和については抵抗が大きくあったと思いますけれども。ですからこれは是非実施する方向でやっていただきたいと思っております。

【塩野座長】是非いい案を考えていただきたいと思います。
 それでは、もう少し先に進んでよろしいでしょうか。なかなか実は執行停止は具体的にこれを条文化するとなると、大変難事業がいろいろございます。特に不服申立ての辺りにつきましては、この点は今後の十分な検討をし、成案を得るように努めていただきたいと思います。
 それでは、「5 その他」に移ってよろしゅうございますか。「その他」は(1)、(2)、(3)とございまして、それから厳密に申しますと、(3)の(注2)の目的規定の話もございます。余り順序を問いませんので、どうぞ是非今日言っておきたいというところは御指摘をいただきたいと思います。

【水野委員】「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」のところですけれども、ここでの議論は要するに行政訴訟に片面的敗訴者負担制度を導入すべきかどうか、という議論だったと思うのです。行政が違法だと訴えられて、それが裁判所で通ったという場合には、いわば行政の違法が正されたわけだから、公益的なものではないか。だから、そういう場合には原告の弁護士費用を行政に負担させるべきではないかという、つまり片面的敗訴者負担制度を導入する訴訟領域としては、行政訴訟が一つあるのではないか。こういう議論の立て方だったと思います。ところが、この枠の中は「敗訴者負担制度の持つ訴訟の活用を促す側面と訴えの提起を萎縮させる側面の両面の観点等を考慮して」と書いてあるわけですけれども、「萎縮させる側面」の観点というのは出てこないはずなんです。ですから、ここの書き方が少し今までの議論と合わないのではないかと思いますので、意見を申し上げておきます。これは、「十分な検討を行う必要がある」ということで、「他の訴訟における取扱いの検討を踏まえ」てということになっているのですけれども、一般的に弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入すべきかどうかということについては、今、大激論があるわけなんですけれども、行政訴訟について片面的敗訴者負担制度を導入すべきかどうかという議論は、本籍はこちらだと思うのです。一般的な制度はどうであろうと、それは要するに踏み切るか踏み切らないかの判断だけなんです。しかもこれは例えば、ちょっと違いますけれども住民訴訟には規定がありますから、規定を書くことについてもそんなに難しいものではない。要は踏み切るか踏み切らないかだけの話なんです。そういう意味では、行政訴訟については、片面的敗訴者負担制度を導入するということに踏み切ればいいのではないか。それに異議のある委員の方がいらっしゃるのかということを私としては申し上げたいと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。

【福井(秀)委員】私も全く同感です。これは議論したことをちょっとずらして記述されているのではないかという印象すら持つのです。民事の対等当事者間の訴訟ではないから、この行政訴訟の検討会が存在しているわけで、この点については何度となく明示的に片面的敗訴者負担という用語も含めて、行政事件としての問題として考えようということが、何度も繰り返し出てきているわけで、それをなぜ無視するのか全く理解に苦しむというのが正直な感想です。「萎縮させる側面」とか、そんな議論はありましたでしょうかということを申し上げたいのです。行政庁との関係での片面的敗訴者負担なんですから、問題をすり替えるのはやめていただきたいと、強く申し上げたいと思います。

【塩野座長】分かりました。どうもありがとうございます。問題をすり替えているとは、随分昔の表現ですけれども、そういうつもりは全くないと思います。そこは弁護士報酬の敗訴者負担制度という、一般制度としてきておりますので、その上に行政訴訟の特殊性にも配慮してと書いてありますので、文法的にはこれで成り立っていると思います。ただ御意見は承ります。

【福井(秀)委員】他の敗訴者負担一般、しかも民事中心に考えている別の検討会なり、本部の事項を前提としてこちらがあるというのではなくて、これはあくまでも行政訴訟の在り方なのですから、行政訴訟としての敗訴者負担がどうかということは、よその検討会とか、あるいは民事のことを前提としないで、独自に結論を出すべき問題だと思います。

【塩野座長】御意見は分かりました。ただ、それに対しては、行政訴訟も訴訟ではないかという議論があり得ますので、そういう点も含めて考えて御意見をいただきたいと思います。

【福井(秀)委員】それは矛盾するとか、抵触するとか、何かよその制度に迷惑をもたらすかどうかという具体的な観点で考えるべきだと思います。

【塩野座長】そういう点も含めて十分検討するということになっております。

【水野委員】11ページの(注3)の、複数の原告が同一の処分の取消しを求めた場合の訴額をどうするかという議論ですけれども、これは御案内のように、合算しろという最高裁の判例が出た。前にも紹介しましたように、かつては行政訴訟については処分は1つなので、しかも違法性を争っているのだから1つでいいのだというのが、実務の大勢だったのです。あるときから、それが変わってきまして、最高裁は今回認めた。ところが、あの最高裁の判例を見ましても、全部についてあのように合算する結論を出しているのかどうか、若干疑問に思っているところがあります。つまり、どういう出し方をしているかというと、それぞれ人格権を問題にしているのです。行政処分を争っているのだけれども、それぞれ人格権に基づいて違法だと言っている。だから別々だから合算しろと言っているのです。例えば共通のことであって、例えば処分の手続に違法があるとか、何か共通の問題であれば合算しなくてもいいという結論になるのかも分からないという読み方もできるのではないかと思うのですけれども、それはともかくとしまして、これはその程度の問題なんです。それで、「理論的・実質的な問題点等について」というような問題では、私はないと思っているのです。そんな大層な問題ではなくて、要は合算させるのか、1つでいいのかと、これは現に過去は1つでやってきたわけですから、ああいう最高裁の判例が出てややこしくなっているわけです。ですから、これは条文を一つ置けば済む話なので、これは条文を置いて解決すべきではないかと思います。

【塩野座長】ありがとうございます。この点も今後の検討事項ということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 大変長時間にわたり、濃密な議論をしていただきまして、私と事務局で整理した点についての至らなかった点については、今日の御指摘を踏まえまして、適宜整理をしたいと思います。ただ、顧問会議の場では皆さん一生懸命になって、とにかく国民の権利の実効的救済のために鋭意努力しているのだと、できるだけ意見をまとめるべく検討を続けるということを申しておりますので、そういう方向で御議論いただいたかと私は思っております。
 そこで、今後これをどうしたらいいか、どういうふうに審議を進めていったらいいかということでございますが、この点については私一人でどうこうするという、あるいは座長の考えでどうこう動くということでもございませんので、事務局にそれなりのお考えがあればそれなりのお考えをまず伺わせていただきたいと思いますけれども、いかがでございますでしょうか。
 その前に、大体言いたいことは全部言っていただきましたか。

【福井(秀)委員】論点で、項目だけですが、事情判決、和解と不服申立前置廃止については、論点として重要だったと思うのですけれども、どうも明示的にはっきりとは見当たらなかったような気がします。

【塩野座長】(注)に入っていますよ。

【福井(秀)委員】(注)の中身の問題かもしれませんので、またそれは追って。

【塩野座長】「主な検討事項」の論点にあるのは全部拾いましたということは最初に申し上げておりますので、拾ってないのがあれば御指摘いただきたいと思います。

【芝池委員】仮の救済のところですが、10ページの「(3) 執行停止決定に対する不服申立て」のところ、「具体的在り方についてなお検討する」となっております。ただ、前々から言っておりますように、内閣総理大臣の異議の制度につきましては、多々批判があるところでありまして、そういう意味で、違憲の疑いを払拭するような制度づくりを目指すべきではないかと思っております。

【塩野座長】ちょっとニュアンスを含んだ御意見だと思いますし、また芝池委員の行政救済法講義も読ませていただいて、含みのある御提案がありますので、それも含めて今後の参考にさせていただきたいと思います。
 他に、よろしゅうございますか。それでは、先ほど申しましたように、今日この「たたき台」についての検討はこれで一応終わったということにさせていただきたいと思います。「たたき台」の性格は冒頭に申しましたような性格のものでございます。そこで、しかしそれでは次にどうするかということで、いろんなチョイスがあるかと思いますけれども、事務局側で一応考えていることがございますので、説明をいただきたいと思います。

【小林参事官】来年の通常国会への法案の提出を念頭に置いて、今後の検討を詰めていかなければいけないということで、今回この「考え方と問題点の整理」という「たたき台」を座長のお力で、こういうものを作って、更に検討の材料にしていただきたいということで検討を始めていただいたわけでございます。この課題の中でも、特に法案の提出を念頭に置いて、当面検討すべき重要課題としましては、やはり「取消訴訟の原告適格の拡大」の問題、「義務付け訴訟の法定」、「差止訴訟の法定」の問題、それから、その次にございます「確認訴訟による救済の可能性」、またそれと問題の所在としては裏返しの問題としてこれまで議論されてきたと思いますが、「訴訟の対象」の問題、それから、今御指摘のあった「仮の救済」の問題、これは非常に大きな問題として更に詰めるべき問題点がかなりあるのではないかと思っておりまして、特に次回、この点を中心に詰めた検討をお願いできないかと考えているところでございます。

【山崎事務局長】私からもフォローさせていただきたいと思いますが、私ども今、御案内のとおり11の検討会がありまして、実は14、15のテーマを持っております。もうこの本部、半分を過ぎておりまして、法律として国会へ提出をするということになりますと、次期通常国会ということでございまして、そうなりますとこのテーマがほぼ全部行くということでございます。この本部全体として、想像を絶する作業、あるいは想像したくないぐらいの作業ということになろうかと思います。そうなりますと、これを国会に提出するためには、議論の成熟度、分析がかなりできてないとなかなか物理的に無理だと。全体の時間を考えると、もう残された時間は余りございません。そういうことで、本当に法律改正をするということであれば、ターゲットをとにかく絞っていただいて、熟度の高い議論をしていただきたい。そういたしませんと法律として耐えられなくなるということ、場合によっては出せないということにもなりかねないわけで、我々としては出したいわけでございます。
 ですから、そういう意味では今、参事官の方から話がございましたけれども、幾つかに絞って、もう少しいろんな論点について御議論をいただければということでございますので、是非その趣旨を御理解賜りたいと思います。

【水野委員】今の事務局の御説明に基本的に賛成いたします。今、御指摘のあった点は、この中で極めて重要な事項だと思います。したがって、次回、あと何回やるか分かりませんが、今、事務局の御指摘になった事項について重点的にやって、少なくとも今の事項については絶対に今回の改革に盛り込むという決意で我々としてもやりたい。その他にも、いろいろ弁護士報酬の敗訴者負担の問題だとか、いろいろ言いたいことはたくさんありますけれども、あと時間が許せばともかくとして、とりあえずは今の重点項目についてやっていく。これは必ず実現するという趣旨で事務局の御提案に賛成したいと思います。

【塩野座長】他にいかがでしょうか。随分辛抱強くずっと聞いていただきまして、それなりに客観的にこの検討会の議論の進め方について御意見をいただけるかと思いますけれども、成川委員、芝原委員辺りから、何かございますか。

【成川委員】私、今御説明を受けましたし、読まさせていただいて、これまでの検討でかなり煮詰まった点について座長を中心にしてまとめていただいたと思って受け止めました。先ほどの検討でなお検討というところで、もう一歩具体的にして、今、水野委員もおっしゃいましたけれども、是非この点をしっかり検討した結果をまとめたものにして、この11月の段階で示していきたいということで、私もなお考えさせていただきたいと思います。

【福井(秀)委員】先ほどの幾つかの論点、重要なことは間違いないので、それはそれとして是非詰めていただくということは必要だと思いますが、ただ、今山崎局長が言われたように、熟度を煮詰めて議論したから改正ができるとかできない、という問題では必ずしもないと思うのです。基本的に熟度はあるけれども、決めるか決めないかという決断をするかどうかによって、行く末が決まってくるという論点だってかなりあり得るわけですから、熟度の問題というよりは、やはり決めるべきことを決めるということが、どこかの段階で検討会として必要でありますので、先ほどのことに限定して今後検討を進められるということであれば、私は反対です。

【塩野座長】他にどういう点を、次期国会に出せばいいというふうにお考えですか。

【福井(秀)委員】今ここで論点になっているようなことの全部というよりも、その中でまさに決めるべき熟度に達したものは決めて、できるだけたくさん拾っていく。どれがどれというよりも、できるだけたくさんを目指すべきだと思います。

【塩野座長】分かりました。ですが、できるだけたくさんのつもりで一応出しているつもりですけれども、しかしこういうのもこの際やってしまえばいいではないかという点があれば、御提案としては常に承ります。ただ、私が一番心配しておりますのは、これから例えば国会など、いろんなところで、いろんな角度からの質問が出てくるときに、あるいはそれを恐れてこれでは議論に耐えられないから成案には馴染まないよと言われるのが、私、法律家の端くれでございますので、一番残念なところでございます。ですから、事務局としてこれだけのものは是非検討したいと言っていることは、これだけのことは詰めてくだされば、もう何としてでも通しますという非常に強い決意だと思うのです。もっと重要なものもあるから、これも議論しろと言われれば、それはそれとしてまた、それこそ時間の関係、議論の熟度の関係で判断いたしますけれども、この、今挙げられたものだけでも、私は相当しんどい議論を重ねていかなければならないし、それこそ皆様の英知を傾けていただかなければならない仕事だと思います。また、そのためには相当な資料を準備しなければいけません。そういう意味で次回は2週間後に迫っておりますので、どこまでお出しできるか分かりませんけれども、とにかく先ほど事務局はこれはもう是非国会に出したいと思っている点について、それが全部出るかどうか分かりませんけれども、事務局はそれなりに大変御苦労をかけますけれども、資料の整備方よろしくお願いいたしたいと思います。

【福井(秀)委員】もう一度、山崎局長に確認ですが、先ほどの4項目以外は国会に法案提出する意思はないということですか。

【山崎事務局長】それを中心にやっていただきたいということでございます。

【福井(秀)委員】中心は分かります。私が聞きたいのは、それ以外の項目について立案する用意はないということですか。

【山崎事務局長】だから、皆様の議論、それから我々も考えて熟度が上がって、それはやるべきだという結論に達すれば、それはこれ以外でも出すことは当然あり得ると思います。

【福井(秀)委員】どうやって結論を出すのですか。

【山崎事務局長】もちろんこちらで御議論をいただき、かつ最終的には政府全体として判断をいたしますので。

【福井(秀)委員】検討会としては、どうやって結論を出すのですか。

【山崎事務局長】それはまだ決めておりません。これから皆様方と、今の段階ではまだです。

【塩野座長】検討会としてどういう結論を出すかということは、検討会の問題のように思いますので、事務局長をつかまえてどうだと言ってもちょっと。ある程度事務局の考え方がどうかというのはあると思いますけれども、検討会は検討会なので。

【福井(秀)委員】事務局が委嘱した意図、検討会の合議体に対して何を求めているのか、というのはこれはまず事務局の判断だと思います。

【塩野座長】そうですね。それは改革の問題について委嘱を受けまして、ここまで煮詰まったものはこれだけでございますと、事務局としてはこれは是非やりたいといって持ってきたと、そこまで今日決まったということでございます。それでよろしゅうございますか。

【福井(秀)委員】それがミニマムだということですか。

【塩野座長】ミニマムかどうか分からないけれども、これはやりますと言ってきて、そこでしかしこれだけでもしんどいなと思う人もいます。果たしてできるかねと思う人もいます。

【山崎事務局長】基本的に行政事件訴訟法の改正なんですけれども、これを改正することによって、他にもかなり影響を受けるものがございまして、そうなりますとその辺の分析等、これは早目に実質が決まっていかないと、そこがなかなか着手できないということもございますので、そういう点もバックにものすごく控えているということを頭に入れて、なるべく絞って、それである程度の熟度ができればそれに伴って周りの関係する法律、こういうものについてもどのようにしていくかということが分析できますので、そういうことを考えているということで御理解を賜りたいと思います。

【水野委員】関係する事項というのは、どんなことがあるのですか。

【山崎事務局長】例えば、出訴期間一つでも、他の法律にいろいろありますので。

【水野委員】そういう意味ですね。改正を伴う関連法令の整備の問題ですね。

【山崎事務局長】整備というか整理ですね。

【福井(秀)委員】それはあらゆる立法について、すべてに共通の事柄です。

【山崎事務局長】それは当然です。ですけれども、ここの場合でもそれが思想が固まらないとそちらがなかなかできないということです。それで、もう残された時間は非常に少ないということをお考えいただきたいということです。

【塩野座長】今、福井委員からいろいろ御意見がありましたけれども、次回以降、今の事務局から提案のあった項目について事務局は準備を進め、この場に資料を提供し、それについてまず議論を進めていくと。それでよろしゅうございますでしょうか。

(委員から異論なし)

【塩野座長】それでは、また次回も時間一杯、あるいは場合によっては超過することを覚悟の上でおいでいただきたいと思います。今日は大変どうもありがとうございました。
 次回の御案内をお願いします。

【小林参事官】11月7日金曜日の同じ午後1時半で事務局で予定しております。2週間後のすぐで恐縮でございますけれども、よろしくお願いいたします。

【塩野座長】それでは、今日はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。

以 上