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行政訴訟検討会(第3回)議事概要(司法制度改革推進本部事務局) 1 日 時
2 場 所
3 出席者
4 議 題
6 議 事
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【質疑応答】(●:委員、○:説明者)
● (文書の提出について)不十分だということだが、具体的にはどの点か。
○ 例えば、環境の被害などのときに、県にあるはずの化学物質のデータがなかかな出て来ないことがあり、機能していないと感じている。
● 行政は不透明あるいは何となく行政訴訟は起こしにくいということだったが、それはどういうところから感じたのか。
○ 具体的には後日文書等で説明したいが、あくまでもイメージでやはり不透明だと感じている。
● 情報公開法や行政手続法が制定されて、市民の方がやる気になればかなり透明性を確保するだけの仕掛けはできつつある。それが情報公開法や行政手続法がまだ不十分なので、そこをどうすれば不透明性はかなり解消されて訴訟も提起しやすいのだという具体的なご指摘があれば、是非、おっしゃっていただきたい。
○ 了解した。
● 飲料水の表示問題で行政訴訟を起こしたが訴訟にならなかったということだがその理由は何か。
○ 表示をしなくても良いという規約の違法性を争う資格については、国やメーカーにはあるが、一般の消費者にはないというのが当時の判断だった。
(3) 全国市民オンブズマン連絡会議からの説明
○ 行政が市民の生活に関与する範囲は非常に広く、その傾向は今後どんどん大きくなり、重要性も増していくだろうが、これだけ広い分野を全体的に正しくやっていくことは物理的に困難なのではないか。また、昨今の自治体や中央官庁の現状を見ると、行政はこれからの改革を責任をもってやっていくことはできないのではないか。また、官から民への社会構造の転換が図られていくことを考えると、これからは行政の優越性を認めて信頼していく時代ではないのではないか。
○ 重要なのは市民感覚のある司法。市民は困ったことや不祥事が起こると裁判所が正義を実現してくれると思っており、こういう市民の要求に応える責任が司法にあるのではないか。しかし、市民の要求に対する答えとしての行政裁判の実情は、公害規制が間違っていても裁判はできず、パチンコの営業許可反対について行政裁判では原告適格がないとされ、大阪のモノレール設置に反対しても裁判はできないと言われ、近鉄特急料金値上げの認可無効の裁判では利用者は反射的利益を持つに過ぎず原告適格がないとされた。しかし、利用者こそ一番直接的な大きな利害関係があると素人は考える。この素人の感覚はやはり法的にも重視されなければならない。
○ 行政訴訟でせっかく土俵に乗っても、町長の年間交際費の2倍以上を使って郷土の大臣祝賀会費用を使ったことも自由裁量とされ、土地の価格の2倍で購入しても自由裁量とされ、談合については直接証拠が出てこない限り認めようとはしない。このように市民が最後に望みをかけている司法が、なかなか市民に対して正当に答えていないのが現状であり、これらのことが続いて来ると市民も弁護士もやる気がなくなってくる。そして残るのは行政への不信と司法に対する絶望感だけであり、このようなことでは今後の社会の前途は危ない。行政裁判の改革が必要。
○ 行政裁判の改革のためには、市民の視点を持ち、行政や社会のことも熟知した、法律知識も豊かな独立性のある裁判官の養成が重要。しかしそれだけでなく、原告適格、処分性、自由裁量、地元管轄、提訴期間等の行政事件訴訟法の改正は必要。さらに、弁護士費用の片面的な敗訴者負担、法律扶助、裁判員制度の採用、法曹一元等が必要。
○ 司法による行政のチェック、行政の透明化、行政改革はこれからの社会を切り開いていく。司法制度改革審議会で国民は統治の客体であってはならず、主体になれと言われているが、それができるかどうかは納税者訴訟も含めて、行政事件訴訟法がかっちりできるかどうかにかかっている。半世紀に一度のこの機会をもらえて、是非、歴史的審判に耐えて、またこれからの社会を堅実につくっていく行政事件訴訟法が改正されるように改正作業を熱い期待をもって見つめていきたいし、ともに頑張っていきたいと思うので、よろしくお願いする。
○ 国民の行政監視、改革の要求、市民オンブズマン活動として多数の住民訴訟が提起されている状況を、住民訴訟の機能肥大化現象、行政訴訟のアンバランス現象であると言われたりすることもあるが、抗告訴訟の機能不全状況に対し、住民訴訟では司法が法に基づいて行政の財務行為の適法性を実体的に判断し、行政の違法な行為による損害を認定し、法に照らした行政の正しいあり方を示して、原告住民を含む住民全体、社会全体のあり方、公共の利益が実現され、その結果として、自治体行政の改革が大きく進められてきたという面がある。
○ 住民訴訟によって、自治体行政上この10年でずいぶんと大きな改革が進んできただけではなく、住民、国民が、お任せ民主主義ではなく、主体的に政治、行政に関わっていかねばという自覚を持ち、さらに行政がそれを積極的に受け止めていくという大きな循環が生み出されつつある。
○ 住民訴訟は、違法行為から原則として1年以内に行わねばならないという非常に厳しい制限があり、また、証拠が全て行政内部にあって、住民にとっては立証が非常に難しい。そのような悪条件の中でも、住民が主権者としての自覚だけをよりどころに行ってきたのが住民訴訟であり、決して濫訴といわれるような状況はない。そして、原告適格や処分性などの行政訴訟の形式的な制限がない住民訴訟では、裁判所が実体について判断する、真相、問題点が明らかにされる、そのことによって国民は司法が社会の中に生きている、法が生きていることを実感することができた。だからこそ、行政訴訟の中で、情報公開訴訟とともに、住民訴訟が積極的に活用されることになった。
○ 国に対しての住民訴訟に相当する制度があれば、現在の外務省の問題は起こっていなかったのではないか。国の行政に対する住民訴訟、すなわち国の行政機関における違法な会計行為に対する国民の被害回復予防措置を裁判所に求める訴訟制度、つまり国民訴訟の創設を、この検討会でも是非、積極的に提言して頂きたい。それは司法、裁判所が果たすにふさわしい役割であり、制度として我が国に導入することに、困難な問題は多くない。
○ 法の支配が、あまねく国家、社会に浸透するための司法改革、国民一人一人が統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として、社会の構築に参加することを求めた司法制度改革審議会の意見書に沿い、司法改革を具体化されるよう要望する。
【質疑応答】(●:委員、○:説明者)
● 市民オンブズマン連絡会議としては納税者訴訟の創設を最重点に主張するのか。
○ 最重点というわけではないが、それも極めて重要な項目だ。
● 先般、地方自治法が改正されたが、住民訴訟に具体的にどういう支障が出るか予測しているか。
○ 今回の地方自治法の改正には次の理由から反対してきた。一つは、2段階の訴訟に峻別され、しかも第2次訴訟には住民が全く関与できないために住民訴訟の効力が非常に弱められてしまうのではないかということ。もう一つは、自治体組織そのものが被告になってくると、訴訟における原告負担が経済的な負担も含めて非常に重いものになってくるのではないかということ。
● 情報公開法や情報公開条例を使って行政訴訟を展開した例はあるか。
○ 国の情報公開法を使った事例はまだないが、自治体における情報公開請求で情報を入手して、非常に重要な書類が出てきて、それに基づいて色々な住民訴訟をした例は多数ある。
● 納税者訴訟を「法の支配」という概念から理論付けていたが、外国で「法の支配」とは日本で言う住民訴訟を導くものだということか。
○ 理論的に詰めて考えたわけではない。公金支出問題も含めて司法統制を何らかの形で入れるべきであるという意見だ。日本は独自にこれだけ住民訴訟を積み上げた実務の蓄積があるので、真剣に考えればできるのではないか。
(4) 環境行政改革フォーラムからの説明
○ 財政負担と環境負荷や環境影響をもたらす政策や大規模公共事業の社会経済的な必要性、科学的、環境面からの妥当性、適正手続面での正当性を、第三者的立場で評価、判断する手段としての司法の役割、また、著しい影響、被害が起きてから事後的に救済することから脱し、予防的、未然防止的な措置をとることについての司法の役割が課題。
○ 行政訴訟、特に環境問題に関連した取消訴訟、差止訴訟などの抗告訴訟では、訴えの利益、処分性に関わる問題で、大部分が訴訟そのものに入れない現実があり、現在でも変わっていない。
○ 行政訴訟、とりわけ環境行政訴訟は機能不全に陥っていると言っても過言ではない。稀に初審で勝訴することはあっても、上級審でひっくり返っており、せいぜい和解で実質的に勝訴することがある程度。また最近の小田急の高架化をめぐる行政訴訟のように、行政訴訟に勝訴しても、裁判中も事業が進み勝訴した時点で事業が完了しているといったことも起こっている。
○ 環境問題は、ことが起こってからの対応では遅く、どうしても未然防止的、予防的な対応が必要になる。対象が国、自治体の公的予算をつぎ込む公共事業の場合には、費用対効果の観点からもこのことは重要。
○ 差止訴訟や取消訴訟などの抗告訴訟や環境アセスなど行政計画の策定過程での行政訴訟が有効に機能することが重要。
○ 環境に係わる行政訴訟、とりわけ抗告訴訟は実質的に機能不全となっており、住民側は事後救済的な措置として、民事訴訟や国家賠償訴訟、さらには住民訴訟、情報公開にもとづく訴訟しか有効に使えない状態にある。
○ 環境問題では、本質的に未然防止、予防的な対応が重要なのに、事後的な救済でしか対応できないこと、事後救済であればあるほど費用がかかるということは大きな社会問題であると同時に経済問題でもあり、したがって、処分の取消しや、差止訴訟を活発化させることが必要。
○ 現状では大部分の行政法が政府提案法案として制定されている。泥棒に金庫番、猫にカツオブシの番をさせるに等しい。その結果、実体法、手続法を問わず、行政機関や官僚の裁量が大きなものとなり、行政の都合で法の解釈がねじ曲げられる可能性が大きくなる。したがって、読み方により結果が決まる現行の政府提案法案ではなく、実体法にきめ細かく、権利、特に環境に係わる権利を書き込み、また行政の義務、計画法の場合は計画策定の期限、規制法の場合は明確な基準などをきめ細かく書き込む必要がある。
○ 環境権、人格権と言った権利を明確にする必要もある。現行の都市計画法には環境のカの字もないことが問題。21世紀は環境の時代であり、街づくりの基本となる都市計画関連法制に環境保全、環境配慮を明確に書き込む必要がある。
○ 議員提案法案の場合、法の骨格を議員がつくっても、政令、省令、規則、技術指針などの制定が行政の専管事項になっている現実があり、これをどうするかも大きな問題。
○ 司法制度改革と平行し、立法改革すなわち立法による行政の徹底したコントロールが不可欠。そこでは行政の裁量を極小化して誰が見ても読んでもわかる実体法とし、その実体法の存在をもとに裁判を起こせるようにすること。
○ 行政訴訟の機能を回復するには単に原告適格を拡大するだけでなく、個別の実体法を拡充するとともに、その中に、米国の環境法のように、市民訴訟、客観訴訟制度を組み込むことが望まれる。
○ わが国で行政訴訟を国民、市民、NPO/NGOなどに近づきやすくするためには、市民訴訟を環境法、行政計画法のなかに組み込むことが不可欠。
○ 30年間、霞ヶ関や自治体の政策立案を支援してきたが、多くの問題の本質的原因は、この政策立案や計画立案過程にあり、したがって、この段階で裁判を起こせるようにすることが問われる。計画段階で情報公開と合意形成をおろそかにしている一方で、土地収用法を改正し、土地の強制収用をし易くするのは、本末転倒。
○ 環境関連の訴訟は、科学的、専門的なものが多く、これが裁判の長期化の原因。
○ 被告となる行政側が多くの人材、費用、情報を有しているのに対し、住民側はすべての面で厳しい状態にある。行政訴訟における公平性をいかに確保するかが問題。住民側を専門的、実務的に支援する人材と資金の確保が大きな課題で、そのためには、住民側が行政に勝訴した場合、行政側が住民側の弁護士費用とともに、専門家が証拠、意見書、陳述書などの作成に要した費用を一定基準のもとに負担することが望まれる。
【質疑応答】(●:委員、○:説明者)
● 日本は、法律家集団がしっかりしないと難しいということだが、どの辺がネックだと考えているか。行政訴訟制度を柔軟なものにすればよくなっていくのか、戦略的な見通しがあるか。
○ とかくこの分野では、原告適格とか処分性が議論されるが、仮に間口である原告適格だけが広がっても、実質審議に入ったときに審議が出来ないということではまずい。そのためには、弁護士が増えるということだけでなくて、環境問題の実務にいて、ある程度法的なことも分かり、政策も分かる人間が、もっと行政訴訟に参加しやすくすることが重要。
● 市民訴訟を提言されているが、日本の状況の中で実現しようと思うと、個別の実体法に入れるのは現実問題としては困難で、むしろ行政事件訴訟法の中にそういった規定を設けるとか、又は環境影響評価法などもう少し一般的な法律の中に設けるような提言をした方がいいのではないか。
○ それが一番の理想だ。例えば様々な都市計画法制とか土地利用法制に入れ込めることができればいい。しかし、ここまで行政訴訟ができない現実があると難しいと思ってしまう。一つでも二つでも、例えばダイオキシン特別措置法とかいくつか問題になっている分野で入るといいと思う。
● 環境訴訟について、米国のように原告適格を広めにするとか、裁判にできる段階をもっと早めることをお考えか。また、財務会計上の違法だけではなく、現在の訴訟範囲よりも広げた訴訟類型として認めるべきだとお考えか。
○ 両方ともイエスだ。環境問題に係わる権利を何らかの形で明確にして、客観訴訟的に対応できれば一番いい。個別法制にビルトインするよりは行政事件訴訟法の中に市民訴訟の条項を入れ込めれば、一番いいと思う。
● 大規模公共事業の差止めは民事訴訟でやっていると思うが、その民事訴訟について、何か意見はあるか。
○ 自分自身、川崎公害訴訟とか日本を代表するような公害訴訟の控訴審にも証人に出たが、気になるのは訟務検事がなぜその場に出てくるのかということだ。国側は別途弁護人を使うべきであって、判事がそこに来て、自分のような丸腰の者に反対尋問するのは疑問を感じた。
● 訴訟手続上で何か問題は感じているか。
○ 公平性の問題。国は、膨大な人的資源、情報資源、調査費用を使って出てくるが、住民側はその3つがほとんど無く、初めから勝負があるようなものだ。勝訴のときでいいが、片面負担のような考え方が入らないと、勝負にならない。(行政訴訟をやっていると)本当に息絶え絶えになってくる現実をこの検討会の方々に理解して頂きたい。まともに戦える場があればそれなりのことはできる。
7 行政事件に関する統計について
8 今後の日程等
9 次回の日程について
以 上 |