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行政訴訟検討会(第5回)議事録



1 日 時
平成14年6月17日(月)15:00 〜17:30

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、深山卓也(敬称略)
(説明者)
松本英昭(財団法人自治総合センター理事長)
福井良次(行政訴訟検討会委員・総務省行政管理局審議官)
藤井昭夫(総務省行政管理局審議官)
高木光(学習院大学法学部教授)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官

4 議 題

(1)松本英昭財団法人自治総合センター理事長、総務省行政管理局及び高木光学習院大学教授からのヒアリング
(2)今後の日程等

5 配布資料

資料1 総務省行政管理局説明資料
資料2 判例法理を生かした改正を(高木教授説明資料)

6 議 事

【塩野座長】それでは時間になりましたので、第5回行政訴訟検討会を開催いたします。
 事務局から本日の資料についてご説明がございます。

【小林参事官】本日の資料ですけれども、行政訴訟検討会(第5回)次第、この資料の下にですね、資料の1というのが総務省の行政管理局の本日の説明資料。
 それから資料2というのが、高木光教授の「判例法理を生かした改正を」という説明資料。このようになっておりまして、それから右手の方に「行政に対する司法審査の在り方についてのご意見募集について」と申しますのは、これは国民一般への意見募集の現段階でのイメージ、ということでここに置いてあるわけでございます。以上でございます。

【塩野座長】ご確認いただきたいと思います。
 本日の議事日程は、あらかじめ、ご案内していると思いますが、財団法人自治総合センター松本英昭理事長からご意見。それから、総務省行政管理局から行政不服審査法、行政手続法、情報公開法の制度及び運用状況のご説明。最後ですが、学習院大学の高木光教授からご意見を頂く、ということになっております。順序はまず、松本理事長から約20分のご説明と10分程度の質疑応答。それから総務省行政管理局からは、同じように20分程度のご説明と10分程度の質疑応答をいただく、ということでございます。その後、10分程度の休憩時間を取りました後で、高木教授からの説明と質疑応答をいただく、ということにしたいと思います。それで、あと時間の配分にもよりますけれども、この高木教授の質疑応答の後で、ヒアリングを通じて出た様々な問題点について、お気づきの点でよろしいのですから、ご意見なり、ご感想をいただければと思います。ただ、この点はちょっと前の方、たくさんの方がいらっしゃいますので、説明を伺いますので、全員にお伺いする時間があるかどうかはわかりませんが、平素、多少、行政法、訴訟に縁遠い方からですね、今までの議論はおかしいと、市民の立場、あるいは別の専門家からするとおかしいというご意見でも賜れば、それが一番、有り難いというふうに私は思っております。では早速でございますが、松本理事長からご意見を伺いたいと思います。どうか、よろしくお願いいたします。

【松本理事長】ご紹介をいただきました松本でございます。このヒアリングの話を受けました際に、少し軽々にお引受けしてしまったのかなと思って、とても反省をいたしておりまして、早いうちに本当はお断りしようと思っていたのですけども、とうとう機会を逸してしまいました。
 率直に申し上げまして、私自身はそのような立場にもございませんし、そうした知識もないという気持ちには変わりはございません。そういうことでございますので、先生方や事務局の皆様には大変、申し訳ないと思っておりますが、よろしくお願いいたします。
 それからまた、時間も20分でございますので、体系的な話を申し上げるだけの知見もございませんし、話もまとまりがないこともありますので、お許しをいただきたいと思います。
 私はかつて、県において商工課長とか漁政課長といった、いわゆる私達の言葉で言うと現場の行政をやってきました。商工課長のときにはもちろん商工振興の仕事というのが多いのですけれども、金融、この中には信用組合の監督ということも含まれておりますし、それから中小企業の団体監督、それから大変幅広おうございまして、火薬取締りとか高圧ガスの取締りとか、砂利採取規制とか、鉱山行政とか、そういうことも所管をしておりました。それから漁政課長、これは魚の方ですけれども、こちらの課長のときには漁業振興はもちろんでございますが、ご承知のように漁業免許、指定漁業の許認可、そして、漁業団体監督、漁業の取締り、そういうこともやっておりました。これらの行政は市町村を通じてやるのではなくて、県が直接住民に対する、というものでございますので、直接対住民関係という意味において、行政庁としての意思決定に携わさせていただく機会が少なくなかった、のではないかと思っております。
 そうした経験を踏まえまして考えてみますと、一つどうしても申し上げておかなければならないと思いますのは、国であれ、地方公共団体であれ、行政庁はもともと、中立、公正を旨として活動をしているわけでございまして、当然に行政に携わる人間は、いかなる場合であっても、国民や住民の権利・利益を侵害するようなことがないようにとか、全体の公益との関係はどうであろうかとか、そういうことを一番最初に念頭に置いて仕事をしておりますし、ましてや行政が適正・適法でない、違法であるというようなことにならないように十分に気を配って仕事をしている、と思います。ただ、心ない例があって、一部例外があることは否定いたしませんけれども、これはごく一部の例外でありまして、多くの場合は、行政に携わる者は、今私が申し上げたことと同じでないかと思うわけです。
 しかし、一生懸命仕事はしましても、判断違いだとかあるいは行為の誤りというものはあるわけですから、その適法性について司法がチェックしていくこと、これはもう当然であります。そうした司法による行政のチェックについて、今一つどうしても申し上げておきたいことがあります。
 それは日本におきまして、お笑いになるかもしれませんけれども、行政庁が裁判に訴えられるということは今もって、行政庁にとってはとても恥ずかしいことでございまして、訴えられるというだけで、批判にさらされるということは決して、少なくありません。これは日本の風土といえば、風土だし、日本は恥の文化ですから、そういうことも言えるのではないかと思います。
 それで、行政に携わる者というのは、裁判になる前に何とか解決したいということで、一生懸命調整等の努力をします。これは何も裁判にならないためというだけじゃありません。それが当然と思ってやるわけです。これを行政指導というように、一般には言われますけれども、しかし実際の仕事というものはそんな「指導」なんていうものとは、大分、程遠い話です。場合によっては怒鳴られたり、あるいは脅かされたり、いろんな危険を感じることさえあるわけです。
 私はかってこんな話を聞いたことがあります。ある地方公共団体である優れた施策をやろうとしましたら、既得権のある人から、「そんなことをしたら住民訴訟で訴えるぞ、負けてももともとだからな。」と言われてその施策を諦めた、という話です。先生方にとっては何でそんなことで断念するのだと、おっしゃるかもしれませんが、これが現実の行政ではないかと私は思います。
 以上のようなことを是非先生方にも知っておいて頂きたいと思い、あえて申し上げた次第でございます。
 そして、ある先生はある論文の中で、「立法論としては性悪説に立った立法的工夫をするべきだ」というようなことを言っておられますが、いかなる関係においても行政庁について性悪説的な議論は私はやっぱり避けていただきたい、こういうふうに思います。
 このヒアリングに当たりまして、国については法務省の方から色々ご意見が出ているようでございますので、いくつかの地方公共団体の関係者の皆様から意見を聞かせていただきました。ある地方公共団体の人から次のような「思い」といったものを、これはまあ私的文書でございますけれども、いただきました。一つの見識として参考にご紹介させていただきたいと思います。そのくだりだけをそのまま読ませていただきます。
 「いわば、現在の行政訴訟制度によって、守られている感のある行政側が、率直な感想としては、今後行政訴訟改革が進み、国民にとって使い勝手がよい行政訴訟制度が構築されれば、それは行政側にとって厳しい環境の変化を意味し、皮肉な見方をすれば使い勝手が悪くなる、ということになるかもしれない。ただ、司法制度改革、行政訴訟改革に向けての動きはもはや否定しようがなく、今後、法の支配の基本理念の下に司法と行政それぞれの役割を見据えた総合的多角的な検討が進められることになるが、こうした基本的方向は行政としても好ましいものであるはずであり、反対する理由は存しない。
 従って、現在の行政訴訟制度にはそれほど問題はないとか、特に使い勝手が悪い点はない等というものであったとしても、もはや現在の行政訴訟制度に安住することは許されない。司法制度改革、行政訴訟改革の動き及び基本的方向性を前提とする以上、たとえ意見書及び行政法学者、弁護士等により指摘されている現行制度の問題点、それが行政側にとって都合の良いものであったとしても、今後は同じく行政側にとって改革すべき問題点であるという認識を有することが重要である」、というような文書をいただきましたので、そのまま申し述べさせていただきました。
 さて改革の内容に関しましてはごく大雑把なことしか申し上げるつもりはありませんが、私は一応2つの視点から申し上げたいと思います。
 一つは基本的制度に係るものについてであります。これは、私自身が思うところを申し上げるだけでございます。
 他の一つは、国民の側から使い勝手の良さということならば、行政庁の側から「使われ勝手」、こんな言葉があるのか知りませんけども、「使われ勝手」の問題ということもあるわけで、関係者から意見を聞いたものの中から、この場で申し上げていいものを申し上げたいと思います。
 第一の基本的な制度に係るものでございますが、最初に総論的なことを申し上げさせていただきたいと思います。第一は個人の権利利益の救済について多くの指摘があるとおりでありますが、このことについてはもう言うまでもないことであります。
 他方、原告以外の国民、住民の利益、これ一般には公益と言っているかと思いますけれども、その公益との調整の必要があり、それがまさに行政だと思います。個人が個人の権利利益の主張をするのに対して、行政側が公益の確保・保護を主張するのはこれはまた当然のことであり、また主張しなければならないという義務が行政にはあるわけであります。このことについては行政訴訟の場においても当然に言えることでございますので、そのことをしっかり踏まえた制度改革であってもらいたいと思うわけでございます。
 2つ目は裁判所は専門技術的判断であろうと、政策的判断であろうと、専ら法治主義的見地から国民の利益を救済する必要があるかどうかを審査する責務がある、というわけでございますが、あくまでそのことを前提として、行政側にとっても専門的判断であれ、政策的判断であれ、適法かどうかということの黒白を速やかにはっきりさせてもらいたいということもあるということであります。尤もこれは迅速にということが絶対の必要の条件であります。これについても十分留意をしていただきたいと思うわけであります。
 次にこの基本的な項目についてのことについて、ごく主要なものについてだけ申し上げさせていただきたいと思います。
 第1に訴訟類型及び訴訟要件等の問題でございます。国民が利用しやすいようなチャネルの多様化や入口要件の緩和は色々な要請とそれに対する法理論的な論議、及び実際の対応の可能性といったことを大いに検討して、最も適切な改革が進められるべきと思います。従って、訴訟類型や処分性、原告適格、訴えの利益などといったことについては私自身の一つ一つの意見を述べることは私の能力の外にあるものとして差し控えさせていただきたいと思います。
 第2に裁量についてでございます。裁量に係わる問題については、いくつか申し上げたいことがあります。
 まず、裁量について、行政の政策的見地、専門技術的見地等から法が行政の判断に優先的な意義を認める、これは優先権というんでしょうか、優先的意義を認めるべきものとして、裁判所の判断をもって行政庁の判断に置き換えるべきことが不適当であるとしている事項やケースが存在する、ということは私は否定できないのではないかと思います。そしてこうした裁量行為について、裁量判断の過程の適正さ、プロセスの適正さに対して適法かどうかを司法がコントロールすることはできるのであろうと思います。この点について、日弁連の改正試案においては判断余地のある処分、いわゆる裁量処分のことを言い換えておられますが、判断余地のある処分について不合理な事実調査に基づく場合、合理的な判断形成過程を欠く場合、(ちょっと中略しますが、)裁判所はその処分を取り消す、とされております。ここで不合理とか合理的とかといった裁判所の判断に、裁量的な要素が入るということならば、行政庁の裁量に代わって、裁判所の裁量が置き代わるだけということになり、裁判所がこうした判断をすることが適当なのか、またできるのか、十分に論議が必要ではないかと思うわけです。
 また原告となる住民とそれを取り巻く住民との利益調整といったことはまさしく行政の真髄みたいな部分であり、柔軟な裁量の余地が認められないと、行政の任務が果たせないことが少なくないと思います。なお、今一つ付け加えさせていただけますならば、費用便益分析を裁量の適否の基準に取り上げる考え方もみられますが、行政はたとえ事業などでも費用便益の視点からのみ行うものではなく、例えば箇所づけを取り上げましても当該区域の実情とか、民生の安定等や他の事業をも考慮した地域バランス、過去の経緯等などが重要な視点となります。そういうことにも留意をしていかなければならないということであります。
 さらにこれまではその行政庁の判断というものは、住民参加等ということはありましても、行政庁という一つの主体、(アクターですが、)の判断として還元できるものということで語られてきたところです。
 ところが昨今では住民との協働の関係の構築ということが各方面の行政分野で多様な内容と多様な手続で進められております。そしてどんどん今、広まってきているわけです。こうした住民との協働の関係では様々な主体、様々なアクター、これはNPO等も含みますけれども、そういうものが社会秩序の形成に対してそれぞれ自主性と主体性を保持し、その機能を発揮して協働の関係を築いて役割を担い合っていくこととなり、その場合行政庁もその主体、アクターの一つとして、行政庁として担当することとされる役割を果たすこととなります。その一つとして、例えば行政庁の処分が行われるとしても、それは協働の関係の中で定められた秩序等に従って行われるものであります。このような住民との協働の関係の構築は、今後の、少なくとも現場における行政の方向であります。このような場合、あらかじめ外からルールを決めたり、内容を制約したり、手続を定めておくのではなく、そうしたものはまさしく協働の関係の中で定められていくものであります。しかし、協働の関係で定められた枠組み、(企画とか立案とか計画とかルールとか地域指定とかプロセス等々ですが。)及びそれを踏まえて行政庁が担うこととされているものについての行政庁の活動について、裁量の幅が狭いと、これも違法、あれも違法、どうしても違法ということになってしまいます。そうしますと協働の関係の構築を否定し去ることになります。
 これは主として実体法の問題と言えますけれども、裁判において裁量の範囲を狭くする方向で取り扱われますと同じことになります。こうした住民との協働の関係の構築を踏まえて行われる行政庁の活動は、法的には裁量の幅が広いものでなければならないということになります。
 それから基本的課題、基本的事項の第3は審理の迅速化ということです。審理が長期間になることは市民の権利利益の救済の観点からのみならず、行政庁側においても不安定な状態が続くことになり、またその間の負担も大きくなります。審理の迅速化について裁判所も色々とご努力されているところであり、色々とご協力いただいておりますし、迅速化のための方策についても検討されているようでありますが、多面的に方策を講じて、審理の迅速化を図って欲しいと思われます。
 それから次に行政庁側から見た「使われ勝手」の問題についてでありますが、これは先ほども申し上げましたように、主として地方公共団体からの意見の中から数点を拾って申し上げておきたいと思います。
 第1に、出訴期間であります。3ヶ月ということで、原告がとりあえず急いで訴訟を提起して、それから時間をかけて準備するといったことも見られまして、そのために裁判が遅れることがありますので、行政側としても3ヶ月というのが必ずしもいいとは思っていない、という見方もあります。
 第2に、中間確認判決であります。本案の審理に相当の時間と労力を費やした後、訴訟要件で却下されるといったことがあり、時間と労力の無駄となることがあるので、訴訟要件の存否について中間確認判決について制度化して欲しいという意見があります。
 第3に、インカメラ審査の問題であります。情報公開法においてはインカメラ審査が適用されないとされていますが、行政側としては隠したままで不開示の主張は大変しにくいということであります。不服申立てにつきましては行政機関の保有する情報の公開に関する法律第27条第1項があり、また地方公共団体の条例により情報公開審査会等の審査機関のインカメラ審査が採用されており、これを審査機関に示して不開示決定の適法性・妥当性を判断することが可能となります。裁判の場合、インカメラ審査が採用されていないので、行政庁側としては不開示情報の内容や不開示の必要性についての説明が具体性を欠いたものとならざるを得ず、不開示決定等の適法性・妥当性に係る主張、立証が不十分なまま裁判官の心象が形成されるおそれがあるということでございます。
 第4に、これは少し偏ったところがあるようですが、行政庁の訴訟参加の問題であります。職権による行政庁の訴訟参加につきまして、終盤になって突然、参加を求められることがあります。意見を聞かれましてもなかなかこれは行政庁側としては拒否しにくいということのようですが、訴訟の進行状況も分からず困ることが少なくないので、参加決定に当たっては現に提出されている訴訟資料は参加を求める行政庁に交付しなければならないとするとともに、またどのような訴訟資料の提出を求めることとなるかということについて、理由を付して知らせることとする制度にできないかということであります。
 第5に、その他として、これは地方公共団体特有の問題ですが、国の法令に係る立法の経緯等の資料は国に求めざるを得ない。国にしかないわけでございますが、国の機関が必ずしもよく対応してもらえないことが多い。これは、運用の問題だといわれればそうかもしれませんが、国と地方の立場を考えますと何か立法的な解決がないだろうかということでございます。
 以上、先生方にとって大変、つまらない話を申し上げましたけれども、20分過ぎておりますので、私の説明を終わらせて頂きたいと思います。どうもありがとうございました。

【塩野座長】どうもありがとうございました。従来の地方団体における実務経験を交えてお話いただきまして、大変参考になりました。それでは短い時間、10分程度でございますけれども、ご質問があればいただきたいと思います。どなたからでも結構です。
 はい、どうぞ小早川委員。

【小早川委員】行政法の方で従来から言われている、こういう言い方をされることがありますけれど、どうお考えかということなんですが、行政の現場で様々な利害調整をし、公益判断をして、処分をすると。ただその場合に、やっぱりその、あらゆる利害関係者の意見が公平に反映できるかどうかというのが、これは行政手続の問題でもあるんですけれども、そこに一定の限界があると。そこで処分の相手方はともかくとして、第三者の意見なり主張なりが行政手続段階だけじゃなくて、事後の行政訴訟という土俵できちんと取り上げて、もう一度、精査をしてもらう、それが必要なんじゃないかと。そのためには特定の処分の相手方、狭い範囲の関係者だけじゃなくって、ある程度広い範囲の住民なり、利害関係者なりに原告適格を認める。現行法の解釈論の問題というよりはですね、政策論的に、行政訴訟にそういう役割を担わせるべきじゃないか、という意見がよく言われることがありますけども、どうなんでしょうか。

【松本理事長】先ほど申し上げましたように、訴訟要件、訴訟類型等の問題については、私個人の意見を申し上げるのは差し控えたいのですが、別に訴訟になるということではなくて、よくありました。例えば中小企業団体監督である行為をしますとそれによって不利益を受ける人から、文句が出てきてその調整に汗をかいたとかです。漁業の関係などはそういうことばかりしてるようなもので、一つの指定漁業を認可しますとよくそういうことになります。ただ、一度も訴訟にはなったことはありません。それは全く汗をかくより他はない。分かっていただくより他はない、ということであります。で、今小早川先生がおっしゃいましたように、そういうものについて、第三者に原告適格を行政訴訟で認めていくかということについてはいろんな先生がおっしゃっているように、解釈の問題でもあるかとは思いますが、判例等がかなり固まってきていますから、なかなか解釈でいかないということになれば、そういう利害調整的な第三者からの訴訟というものがいま少し広く認められても私はいいのじゃないかと。これはまあ私の個人的な見解です。また行政側もあまり利害関係の調整で引っ張られると非常に困ることもあるのです。法的な問題ならはっきりとさせてもらった方がいいと、黒白をですね。そういうことも決して少なくないような気がします。ただ、その第三者をどういうふうに絞り込むかというのはそれは本来の司法制度のあり方とか、そういうものとの関係で大変難しい点があるのではないかと思います。第三者といったら色んなタイプのものが出てきますから。今のように当該法令の規定に従って、実体法に従ってのみそれを判断するということがいいのか、訴訟法的にある程度解決することがいいのかどうか、それは一つの大きな論点だと私も思います。

【水野委員】2点、お尋ねしたいと思います。審理の迅速化についてお触れになりました。審理が遅いってことは原告側の弁護士が責任を負う部分もありますし、裁判所が責任を負うべき部分もありますが、私の印象では、結構、被告行政庁側に帰責すべきところが多いんじゃないかという印象なんですね。これは一つは訟務官制度というのがあって、各省庁の訟務官と訟務検事と一緒にやっていますよね。準備書面を一つ作るについても色んな手続が非常に煩雑なようで、時には本省の決済も取らないといけないということで、非常に長くかかっておる。次回期日が、普通だと1月ぐらいでいいところをね、行政の側が2月欲しいというふうなことがあったり、次回期日を決めるときに、いやその時期は転勤の時期なので避けて欲しいとかですね、そんなことが色々とありましてね、私から言わせると審理の迅速化については被告側がですね、もう少し制度を考えないといかんのじゃないかという印象を持っておるんですけど、そのあたりどんなふうにお考えになっているのか、というのが一つ。
 もう一つは出訴期間についてお触れになりましたが、ちょっとさっきよく分からなかったのですが、3ヶ月というのは行政から見ても短すぎるという趣旨でおっしゃったんですよね。そうだとすると行政庁側から見てもですね、どのくらいの期間が必要だとお考えになっているのか、その2点についてお尋ねしたい。

【松本理事長】第1点のことは、それはおっしゃるとおりだと思います。現に私がヒアリングをしたときにも「我々の方にも転勤とか色々ありまして、遅れることもあるのです。」とおっしゃってます。決して原告や裁判所だけに責任があるということではなくて、被告側の理由による場合もあります。ただ全体として、みんなが協力して、また制度的にも迅速にできるという制度の構築に向けて、行政訴訟検討会では是非一つ前向きに進めてもらいたい、とこういうことでございます。もちろん被告にもおっしゃるとおり問題はありますので、全体でそういうふうに考えていただきたい。紛争が長く続くというのは決して行政庁にとってもいいことではなく、別に引き延ばしを喜んでいることではないということを強調したいということで申し上げたので、そういうふうに理解していただきたいと思います。
 それから3ヶ月の話は中立ということです。行政庁として当然に3ヶ月がいいとか、短いことがいいとか思っているのではありません、という意味で申し上げたのです。

【塩野座長】どうもありがとうございました。あとお一方ぐらいもしあればお伺いしますが、いかがですか。
 それでは私から、行政訴訟の改革のですね、環境整備みたいなことでちょっと、今までの自治体のご勤務との関係で教えていただきたいのですが、要するにですね、松本理事長のお話では裁判はできるだけ少なくしようということで臨んでおられるということなんですが、しかし今後、情報公開制度を始めとして地方公共団体が被告の立場に立つ、場合によっては国に対して訴え出るという原告の立場に立つことも増えてまいりますが、率直なところ今の、従来の地方団体は訴訟に長けてると申しますか、あるいはそういった訴訟が増えていくというときの環境は備わっておられるというふうに考えますか。もし、備わっていないとなるとどういう点を、人材養成のようなものを含めて、力点をおかなければいけないかというお考えなのか、何かその辺はおありですか。

【松本理事長】ご承知のように機関委任事務制度が廃止になりました。先ほど私が現実に携わりました行政と言って申し上げましたが、あれはほとんどかつては機関委任事務ですね。これが全部、団体事務になりましたから、昔のように訟務検事のところにお願いするというわけにはいかなくなってきた。だからそういうことも踏まえまして、地方団体では、特に都道府県は今、そういう体制整備を急いでおります。ですから今までのことがそのままこれからも続くというようには理解はしていただきたくはないのですけれども、率直に言って都道府県でも十分な体制とはいえないでしょうし、ましてや小さな市町村になりますとほとんど、そういう体制は整っていない。だから結局、弁護士さんに相談するということになる。ただ、弁護士さんはこの検討会でも色々と出ておりましたと思いますが、必ずしも行政事件に長けておられないわけでして、ましてや地方に行きますと弁護士そのものが限られた数しかおられないわけですね。そういうこともありますので、環境整備は是非必要である、環境整備のことについて私は言わなかったのですけれども、そうした環境が整備されますように、制度的な面でも手当てをしていただければと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。
 では、松本理事長に対しての質疑応答これで終わることにいたしまして、続いて、行政管理局どうぞ。
 行政管理局からは福井さんとそれから藤井審議官もお見えというふうに聞いております。そういうことで時間は20分と申しましたが、1人で10分で情報公開や行政手続、全部やるのはなかなか大変なことだと思いますので、そこは適当にお考えになって、御発言いただきたいと思います。どちらがお先におやりになるかはそちらにお任せしますので、どうぞ。

【福井(良)委員】行政管理局の福井です。お手元の資料1に基づきまして、私の方からは行政不服審査法、それから行政手続法の説明をいたしまして、その後情報公開法を藤井審議官からご説明します。まず、行政不服審査法でございますが、昭和37年、簡便な手続きによる国民の権利利益の救済ということを目的といたしまして制定された法律でございます。資料に書いてありますように、裁判手続きと比べまして簡易迅速性といったことが特色となっております。そして、処分の適法性ということのみならず、妥当性も対象となっているところでございます。
 なお、不服の申立てにつきましては手数料はとらない、誰でもただで申立てができる、ということでございます。
 不服申立ての対象でございますけれども、行政処分の他に人の収容とか、物の留置など、いわゆる事実行為につきましても不服申立ての対象となる他、行政庁の不作為につきましても対象となっているわけです。ただ、刑事事件とかその他独自の手続が用意されている、あるいは教育、訓練といったその性格上、なじまないものにつきましては適用除外ということになっております。
 2枚目での不服申立ての種類でございますけれども、審査請求、異議申立て、再審査請求と3種類があります。
 申立て期間につきましては、処分を知った日から原則、60日以内、ということでございます。
 処理手続きでございますが、原則として書面による審理を行うこととされております。裁決ないし決定の種類でありますけれども、却下、棄却、容認の3種類で、容認する場合には原処分の一部または全部の撤廃ということになります。不作為につきましては、これを容認する場合には何らかの行為をするか、あるいは不作為とすることの理由を示さなければならない、となっております。
 そこで施行状況の調査ですが、最近は10年ごとに調査をやっておりまして、直近は平成6年度調査です。資料の6ぺージからがこの調査の概要ですけれども、国は全省庁、それから地方につきましては都道府県、政令市、それから県庁所在市について調査をいたしております。
 7ページをご覧いただきますと、平成6年度、1年間の調査でございますけれども、不服申立ての状況のものといたしまして、行政不服審査法自体に基づくものが11,713件、このうち、かなり案件的には偏っておりまして、国税通則法でありますとか、労災補償保険法というものがかなり多くなっております。この2つだけで、全体の87%でございます。そして工業所有権関係などの行政不服審査法以外の体系に基づく申立てにつきましては、23,865件になっております。
 不服申立ての処理状況というところをご覧いただきますと、行服法に基づくもの10,835件のうち、容認されましたのが大体、11%でございます。行政不服審査法に基づかない工業所有権等につきましては、容認率が76%と高い数字となっております。
 8ページはそれをマトリクスにしたものですので、ご説明は省略させていただきます。
 9ページ以下が都道府県、地方公共団体関係でありますので、これも省略いたしますが、10ページのところで、都道府県につきましては4,109件というものが対象期間内に申立てられております。このうち、社会保険関係がかなり多くなっております。行服法に基づかないものは地方の場合は公職選挙法関係が若干、ございます。
 不服審査法関係はとりあえず以上にさせていただきまして、次に行政手続法でございます。行政手続法は塩野座長に大変、お世話になりましたが、平成6年10月に施行されまして、先ほどの行政不服審査法が事後救済を目的とする、処分後の手続きを定めるものであるのに対しまして、手続法は処分前の手続きを定めることによりまして、国民の権利義務保護と行政の公正・透明性を確保することを目的といたしております。
 手続法のポイントと書いております資料の1ページでございますが、許認可等の申請に対する処分というのと、許可の取消しなどのようないわゆる不利益処分に分けまして、手続きを規定しております。
 申請に対する処分につきましては、審査基準、それから標準処理期間を定めてそれを公表することになっておりまして、申請を拒否する場合には理由を付して行うことが規定されております。それから不利益処分につきましては、処分基準を設定するとともに、処分の性格に応じまして、聴聞ないし弁明の事前手続きを踏まなければならない。そして処分を行う場合には理由を付すことが規定されております。
 その他、行政指導、それから届出の取り扱いについても規定がございます。
 2ページ以下に施行状況調査でございますが、平成11年度に調査いたしました。調査範囲は本省庁は全部、それから標準的な地方支分部、地方につきましては都道府県、政令市、その他標準的な市、となっております。
 4ページ以下をご覧いただきたいと思いますが、審査基準の設定状況というとこでご覧いただきますと、都道府県が81%の設定状況、国につきましては87%ということでございます。
 次のページでございますが、標準処理期間につきましては都道府県が67%、調査対象市は45%、国は79%となっています。
 不利益処分の処分基準の設定状況は下の表に掲げておりますとおりの数字でございます。
 それから6ぺージですが、不利益処分の場合に聴聞ないし弁明を、ということになっておりますが、聴聞ないし弁明の機会に係わらず、かなりの程度、これは放棄され、これらの手続なしで終結している例が現実にはございます。ご覧のとおり聴聞相当処分につきましては都道府県が25.7%、国の場合は45%、弁明相当処分については都道府県65%、国の行政機関の場合96%というものが不出頭ないし弁明書の未提出によって終結しているところです。以上が2法でございます。

【藤井審議官】前置きは一切、省略させていただきますので、失礼をお詫びいたします。お手元に行政機関の保有する情報の公開に関する法律の骨子でございます。ポイントだけでございますが、制度の趣旨は法、目的第1条に書いてありますように、国民主権の理念にのっとり、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする。ということで、いわば政府の主権者たる国民に対するアカウンタビリティを確保する制度と、こういう位置付けになっております。制度の中身は一つは開示請求権制度と情報提供制度というものがあるわけですが、この骨子にあります4以下の開示請求権制度、これを中核とした制度ということになっているわけであります。
 一枚めくっていただきますと、情報公開審査会の設置というところがあると思いますが、これは従来、不服申立て手続に諮問機関である情報公開審査会というものを設けて、民主的な意見を加味できるような制度にしておるところでございます。
 もう一枚、おめくりいただきますと、その他のところ、6の(3)ですが、第40条でこれは開示請求権制度以外にも積極的な情報提供は重要だよということになりますが、ここは非常に抽象的な書き方になっておりますけれども、別途、独立行政法人等公開法というのを昨年成立させていただき、今年の10月から施行となっておりますが、独立行政法人等公開法についてはこういうふうな情報提供施策、これを重視した制度でございますし、たまたま私のところでやっております行政の情報化の流れの中で行政情報の電子的提供というものを推進しているところでございますが、そういった電子的提供による行政の公開性ということも近頃、取り組んでいるところでございます。
 1枚おめくりいただきますと、情報公開制度の、開示請求権制度の仕組みを簡単な図にしておりますが、ポイントはいわば、開示請求手続と実施手続の2つがあるということとあと開示請求、これは申請行為になるのですが、それに対する開示決定、処分、これにつきましては行政不服審査法に基づく処分庁等による不服申立て手続、右側に書いてございますけれども情報公開審査会の諮問答申手続を加味して、ということでございます。
 もう1枚おめくりいただきますと、情報公開法の施行後の1年間の状況でございますが、情報公開法に基づきましては、毎年1回、総務省が全体的な施行状況を調査することになってございます。平成13年度部分の速報部分を取りまとめたのがこのお配りしているものです。詳細についてはまた報告できるかと思います。
 もう1枚、おめくりいただきますと、開示請求件数でございますが、1年間で48,650件となっております。それから開示決定件数は45,071件となってございます。なお、この請求件数と決定件数は統合したり、分離したりする場合がありますので、あるいはタイムラグを生じて、これを並べて分析するとちょっと困ったことになります。
 それから、不服申立て件数は1,342件、それから訴訟件数は14件となっているところでございます。また、そのうち情報公開審査会に諮問されたものは384件でございまして、答申件数は178件ということになっておりますが、詳細は以下のページが各省別に整理してございます。なお、開示請求の状況は真中の一番下の段、48,650件、それから開示決定、それも真中の方の45,071件、それから不服申立ての状況、1,342件、訴訟が14件ということになっておりますが、総数のところと同じような部分があります。それで、若干コメントをしておきたいのは、情報公開審査会における諮問・答申状況というのがございます。384件、178件というのが一番末尾にございますが、ちなみに6月13日ですから、先週の金曜日末の段階の情報公開審査会事務局からお聞きしたところ、諮問件数は462件となってございます。それから答申が239件でございます。そのうち、いわゆる逆転したのですね、逆転したものは86件ということで、そのうち一部の逆転が60件ということで、大体、3分の1ぐらい逆転しているという感じになろうかと思います。まあ結果論でございますので、いずれにしても審査会としての機能は果たされていることは間違いないと言えると思います。
 それと併せて、次のページ、ご覧いただきたいのですが、一部新聞で不服申立て数と不服審査会の諮問数が乖離しているのではないかというような討論がございます。先ほどの1,000件ぐらいが不服申立ての受付件数に対して、諮問件数は少ないという数字が出て、ただ、1,000件の方は実は不服申立てするときに統合したりしておりますので、実際、諮問件数という形になると少なくなるのが通例でございます。この末尾の方をご覧頂きたいのですが、1,342件のうち検討中というのが717件となっております。これは、実質そのタイムラグ的に所要の事務ができるというのも相当あると思われますが、いずれにしても情報公開法の趣旨からいきますと、できるだけ不服申立てを受けたら、速やかに不服審査会に諮問するというのが多分趣旨だろうと思いますので、その辺はもうちょっと状況を見た上で必要ならば対応したいということでございます。それから、以上が今日、ご下問いただいたことに対するご説明となりますが、余計なことになるかもしれませんけど、情報公開法なるものは非常に新たな制度をつくったということで、色々、行政事件訴訟法とのからみでも論点になっております。ちなみに今回のご説明には触れないつもりでいたんですけど、独立行政法人等の開示請求に対する決定、これに対して行政事件訴訟法の対象とするのかどうか、特に認可法人のところについては色々理論的にもご議論いただきました。また、あの指定法人についても今、宇賀先生が研究会を開いておられるわけですが、指定法人で開示請求権制度にする場合、その決定というのはどういう性格のものか、というようなことも理論的な検討の対象となっております。この私のご説明の最後のところに横書きで「情報公開法制検討過程における訴訟法制に関連する論点」ということで、どちらかというと思いつくままに挙げたものでございますが、これまた別の機会でご検討いただければ、という単なる参考の論点ぐらいでございますので、説明は省略させていただきます。色々理論的にもご苦労いただいたということを申し上げたいと思います。今日のところは以上でございます。

【塩野座長】どうもありがとうございました。まだこちらの論点が整理されていない段階で、ご説明をお伺ったということでございますので、今日のところは基礎的な資料のご説明、ということにとどまったかと思います。そういうことでもありますので、折角、担当の方からご説明がございましたので、ご質問あれば承りたいと思います。どうぞ、どなたからでも。順序は一応、不服審査法、行政手続法をやります。それから情報公開法の方にもし何かあればお伺いしますが、まず審査法とそれから手続法について何か、ご質問ございますでしょうか。
 はい、どうぞ、芝池さん。

【芝池委員】不服審査について2点、お伺いいたします。一つは不服審査の国民の権利救済との関連での有効性のようなものでありますが、私はよく学生諸君に、不服審査というのは租税とそれから社会保障を除くとあまり意味がないんじゃないかというふうなことを言っているのですけども、今日、ご提示いただいた資料7ページに容認、棄却、却下、その他と数字が挙がっているんですが、数字とそれから先ほどの私の持っている印象との対応関係があるのかどうか、私の考えが間違っているのであれば、ご指摘いただきたいと思います。それからもう一つ、今日お出しにはならなかったのですが、不服申立の前置主義の例が割合と現行法上、あるんですが、この前置主義を今後も維持すべきかどうかということの関係で何かお聞きできることがあればおうかがいしたいのです。

【福井(良)委員】まず最初の点ですけれども、おっしゃるように、租税と社会保障関係、その他、若干国家公務員法、地方公務員法関係がありまして、大体、10ぐらいの分野でほぼ全体の90%ぐらい占めておるわけです。ただ、従って、制度の広がりに比べて利用の状況はどうかというご質問で、そこはなかなか難しいところでありますが、利用は少なくとも窓口は開いておくということの意味はあるのかなと思います。あとは使い勝手がいいのかどうかという問題にあると思います。それから容認率は確かに10%ぐらい、それをどう見るかというのはなかなか難しいんですけども、必ずしも容認率が高いのがいいのかどうか、それは逆に行政としてですね、いい加減なことをやってきたのかということになります。容認件数が、容認率が低いということの評価は一概には難しいかなと。ただ、工業所有権の場合は容認率がかなり高くなっておりますが、どういうことかなと思って聞いてみましたら、工業所有権の場合はある程度、不服の処理の段階で、補正的なことをやらせている。補正をしますと、容認ということになるようなことを聞いております。そこのところで高くなっているということでございます。それから不服申立前置、例えば国税不服審判になりますけども、これも行政不服審査法の所管の立場から言いますと、特に行服法はそこについては初めから不介入でありまして、個々の個別法で前置の規定を設けている。そのことがいいかどうかというのはやはり、個々の制度として判断していただくべきかな、と思っています。

【水野委員】裁判が遅いということで、批判を受けているわけですけれども、行政不服審査も、非常に長くかかっているんですね。裁判の場合はまだ期日がありますから、見えるんですね。例えば結審して、次回判決が何ヶ月かかるか、というのが見えるわけです。不服審査の場合はある程度の審理を終えて、実際に結果が出るのが非常に長くかかる。これ、実感ですね。何やっているのか分からない、見えないものですから、不満は結構あると思うんですね。行政不服審査について、迅速化を図るべきだという問題提起とか問題意識があるのかどうか、そのための方策みたいなものを考えられたことがあるのかどうか。そのあたりはいかがでしょう。

【福井(良)委員】おっしゃるようにですね、かなり長期を要しているものもありまして、そこの方策は例えば立法的に処理の期間を義務づけるというような方法はありますが、処理期間がかなり長いことについて、たくさんの不満が寄せられているという状況では必ずしもありませんので、本格的に検討したことはありません。

【水野委員】処理期間の統計的なものはないんですか。

【福井(良)委員】そういう目で調査していないんですけれども、確かに毎年度の繰越しを見ますとですね、かなり翌年度繰越しというのがありますので。そういう状況から見ますと、相当かかっているものもあると思います。

【水野委員】是非、そういう統計を取って頂いて、そういう観点からの改善も是非お願いしたいと思います。

【小早川委員】行政不服審査法の運用体制でですね、それぞれの法律の適用ということで、各省というか、それぞれの担当セクションが審査を担当するというのが基本的な形ですが、それに対して、国の行政全体について統一的な審査が必要か、あるいはそうじゃなくても各省でも、担当セクションではない、多少そこからちょっと距離をおいた審査機関ないしシステムを作ってはどうかとかですね、そういうような意見は前々から、時々出ますけど、どういう問題点があるか、お考えがあれば。

【福井(良)委員】まずかなり専門技術的なことを要するものにつきましては、審査会として専門の機関が審査を扱うわけで、例えば国税については国税不服審判所というところで専門的にやっておりますので、あまり、そういう意味では処理能力という面で不十分ということについて我々は聞いたことはないのですけれども、たまにしか不服申立がないようなところにつきましては少しそういうことがあり得るのかなと思います。その辺、我々も各省の、運用体制も勉強したいと思います。

【塩野座長】私から一つですが、今日のプレゼンテーションに対するご質問というよりは今後のこの検討会との関係でなんですが、どうも制度的に見ますと行政手続法が一方ででき、今度、行政事件訴訟法がもっと使い勝手が良くなりますと。行政不服審査法がそのままでいいかどうかという点が一つと。それから今の状態、ちょっとサンドイッチみたいな感じで、いかがなものかという問題もありますので、行政管理局あるいは総務省の方で担当しておられる行政不服審査法について、今後何らかの形で再検討する用意がおありなのかどうか、その点をまず一つお伺いしたいと思います。

【福井(良)委員】当検討会の議論を踏まえまして、我々も柔軟に検討していきたいと思っております。

【塩野座長】私が仄聞しているところで若干は研究会的なもので、検討しておられると思いますけれども、時間の問題もあるかとも思いますが、いつかの段階でそういった基礎的な作業について、こちらの方で必要な場合があればご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは藤井審議官に対するご質問があれば、いただきたいと思いますが。

【市村委員】先ほど、不服申立の受付処理状況ということで、ご説明いただいたわけですけれども、検討中というものがかなり挙がっておりますけれども、期間的なものは分かりませんでしょうか。どのくらいそこで滞留していると言うのか、平均、どのくらいの期間、こういう状態で置かれているかということは、もしお分かりであったら教えていただければ有り難いのですが。

【藤井審議官】 すみません、調査しておりません、そこまでは。

【塩野座長】じゃ私の方から。この今日、お持ちいただいた資料の最後のところで裁判管轄についてですね、行政情報公開部会の答申と、それから最終的な法律の仕上がりとは違ってきたというところがございますが、この裁判管轄がここに変わったということについて、何らかしら意見が出たことがあるかどうか。さっきの松本さんのように使い勝手が行政庁にとって悪くなったとかですね、あるいは国民の側にとっては大変結構だ、やはり今のあれでは足りないので、もっと地裁のレベルまで下ろせとか、そういった議論は出てますでしょうか。

【藤井審議官】まだそういうような具体的な意見は把握しておりません。

【塩野座長】これを小早川さんに聞くのも具合悪いけど、審査会にはですね、口頭陳述の機会があるでしょ、そうすると地方から出てこられる、それについて何か特別なご不満みたいなものはありますか。

【小早川委員】審査会としましては、この裁判管轄問題も念頭にあって、一度出張審理というのをやりました。確か、私の部会でないので、正確でありませんが、関西で何件かまとめて意見陳述をやったということがあって、それはそれなりに喜ばれたと思いますけど。

【塩野座長】さっきの私の不服審査との関係もですね、この行政訴訟検討会の裁判管轄の使い方如何によってはそちらの方にも多少、影響を及ぼすということもありうると思いますので、今聞いたところでございます。多少、検討すべきかと思います。
 はい、どうぞ、小早川委員。

【小早川委員】この数字ですけれど、訴訟件数14件というのは全部直にいった件数ですか。不服申立て後の訴訟というケースはまだない。

【藤井審議官】不服申立とは別に直接裁判所に訴えたものがほとんどです。

【塩野座長】14件しかないということで、その数字をどう見るかですが、公平に見ると審査会の側から見れば使い勝手がいいと、そういうふうに自認しておられるのですか。

【小早川委員】いや、全く自認しておりません。

【塩野座長】それでは他に何かございませんでしたらば、行政管理局からのご説明、これで終わりといたします。どうも、ありがとうございました。それでは10分ばかりと申しましても、ちょっと時間がおしておりますので、15分まで休憩をいたします。15分に再開します。

(休  憩)

【塩野座長】それでは時間がまいりました。高木教授をお招きしておりますので、お待たせして申し訳ありませんでした。それでは高木教授からの意見を伺うことにいたします。ご案内していると思いますが、大体30分程度、ご説明をいただき、10分ないし15分で質疑応答の時間にしたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【高木教授】学習院の高木でございます。本日、お招きいただきましてありがとうございました。私は、ジュリストの「シリーズ・行政事件訴訟改革を考える」の中で未熟な私見を披露いたしましたが、本日はその概要を、その前提として判例の現状について、どう評価していくか、ということを補いながら説明したいと存じます。

【塩野座長】資料2ですね。

【高木教授】はい、基本的に原稿どおりしゃべらせていただきたいと存じます。
 2でございますが、ジュリストで表明した私見のポイントは以下のとおりであります。まず、基本方針としましては,いわゆる「段階的改革論」が適切である、すなわち、改正が必要と思われる事項のうち、行政事件訴訟法の基本的構造に直接関係せず、それとして検討が可能なものについて、成案を求め、より根本的なものはその後も継続して検討を進めるべきであると考えます。そして、当面の改正の主要な論点について、私の提案は、以下の8点に整理されます。
 第1でございますが、処分の取消訴訟を中核とする基本構造を維持する。
 第2に、処分性は拡大しない。これは多くの論者と異なるところでございます。
 第3でございますが、原告適格を拡大する。
 第4に、取消しの利益を緩やかに認める。取消しという言葉につきましては後に補いをしたいと思います。
 第5でございますが、憲法上の「包括的な権利保護」という要請を満たすことをめざし、原告側の「訴訟類型選択負担」を軽減する。
 第6でございますが、義務づけ訴訟を法定する。
 第7、処分の差止訴訟を法定し、差止要件を緩和する。
 最後、第8でございますが、行為形式の多様化に即して行政処分の所在を前提としない訴訟類型をいくつか新設する。
 以上でございます。
 それでは以上のような提案をしている背景としまして、判例との関係について私がどのように考えているかをご説明いたします。
 2000年の10月の日本公法学会の総会で私は「司法の現状分析」と題する報告をいたしました。それにつきましては注の2というところで、公法研究という雑誌に活字になっております。そこで、整理しましたように、行政事件訴訟に関する判例の現状につきましては、多くの学説によって強い不満が表明されております。そして、私もこの点は同様でありますけれども、こと立法による改革となりますと、従来の判例理論のすべてを「ご破算」にすべきであるとは考えません。
 と申しますのは、第1に、最高裁判所の判断枠組みは、それなりに学説を意識しつつ、理論的な整合性をめざして形成されたものでありまして、結論の妥当性につき賛成できない場合であっても、それを支える論理には傾聴に値するものが多く含まれているからであります。
 第2に、結論の妥当性という場合にも、その評価は個々の判断枠組み自体について行うだけでなく、いくつかの判断枠組みを全体として行う必要がある場合も多々あると思われるからであります。
 さらに、第3に、訴訟法が裁判官に指針を与えるものである点に着目いたしますと、可能な限り、従来の判例法理の蓄積を生かす形での法改正が望ましいと思われるのであります。
 以上の3つの理由から、それぞれの条文をどのように改正すべきかを検討する場合には、まず、現在の判例法理によって個々の条文の文言がどのように「書き換えられているか」を検討し、そのように書き換えられた条文を機械的に適用するとどのような不都合が生じるかを明らかにするという作業が有効であると思われます。
 例えば、取消訴訟の対象、処分性でございますが、について定める行政事件訴訟法3条2項では、元々の「行政庁の処分又は公権力の行使に当たる」という文言が「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうちで、その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」と書き換えられております。また、取消訴訟の原告適格について定める行政事件訴訟法9条本文では、「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」という元来の文言が「当該処分によって自己の権利若しくは法律上の利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」と書き換えられております。そして、更に、ここで言います侵害が問題となる「法律上の利益」とは、「当該処分の根拠法規が個々人の個別的利益として保護している利益」であるとされているのであります。
 他方、このような最高裁判所の判断枠組み、そしてそれを機械的に適用する裁判例に対しましては、「包括的な権利保護」あるいは「実効的な権利保護」という憲法上の要請が満たされていないという批判が向けられております。
 取消訴訟の対象、すなわち処分性を限定するという結論は、処分性が否定される行為について争う他の手段がない場合には「包括的な権利保護」という憲法上の要請に反することになる、というのが「処分性拡大論」の発想であります。これは、近時の「行政訴訟の憲法的基礎論」から見ますと、行政事件訴訟法3条2項の「憲法適合的解釈」を提案するものといえます。そして、この立場をとります場合には,行政事件訴訟法3条2項は元来は柔軟な解釈をとる余地を残しているはずの条文であったが、最高裁判所の判断枠組みとしてそれを機械的に適用する裁判例によって「硬化」していると診断することになると思われます。
 また、原告適格を限定するという結論は、原告適格を否定される者に自己の権利利益を守るための他の有効な手段が与えられない場合には「実効的な権利保護」という憲法上の要請に反する、というのが「原告適格拡大論」の発想であります。そして、この立場は、先ほどと同様に近時の「行政訴訟の憲法的基礎論」から見ますと、行政事件訴訟法9条本文の「憲法適合的解釈」を提案するものと位置付けられます。そして、行政事件訴訟法9条の本文も元来は柔軟な解釈をとる余地を残している条文であったけれども、最高裁判所の判断枠組み、そしてそれを機械的に適用する裁判例によって「硬化」していると診断することになると思われます。
 それでは、この2つの条文について、どのような治療が望ましいのでありましょうか。私は,冒頭で述べましたように、処分性と原告適格で別の治療法が適切であると考えます。
 「4 処分性」でございますが、すなわち、「処分性」につきましては、現状維持、あるいは見方によっては処分性の縮小による「処分概念の純化」が望ましく、「包括的な権利保護」という憲法上の要請には、取消訴訟以外の訴訟類型の充実によって応えるべきであると考えます。これが提案の第2と提案の第8がセットになっている、というものでございます。
 この点、若干理論的に説明いたしますと、わが国における処分性をめぐる議論の錯綜の主たる原因は、「取消訴訟の負担過重」あるいは「行政行為論の負担過重」であると考えます。「負担過重」といいますのは、ある制度なり理論が本来果たしうる機能以上のものを求められることを表現したものであります。取消訴訟の概念、行政行為ないし行政処分の概念はドイツから輸入されたものでありますが、現在の時点で日独両国を比較いたしますと、期待される機能には大きな相違が生じております。
 単純化して説明いたしますと、ドイツでは取消訴訟は行政訴訟の典型ではありますが、用意されている数多くの訴訟類型の一つに過ぎないのでありまして、権利保護が与えられるかどうかと、取消訴訟によって争えるかどうかは無関係であります。したがって、権利保護を与えるために、取消訴訟の対象である「行政行為」の概念を拡大する必要性は低いのであります。ある行為が「行政行為」であるかどうかは、権利保護が与えられることが決まったのち、どのような訴訟類型が選択されるべきかという問題にとって意味を持つにとどまるということになります。このように、争訟の存在と訴訟類型適合性が論理的にレベルを異にするものであり、起案をする場合にはこの順序をおろそかにしてはならないということは、ドイツの行政裁判実務では初歩的知識に属するところであります。
 ところが、わが国では「取消訴訟か民事訴訟かの二者択一」あるいは「取消訴訟なければ権利保護なし」という発想が強い影響力を持っております。従って、処分性が争われます場合に、学説のみならず、裁判官もまた、ここで処分性を否定すると裁判の拒否になるのではないか、という配慮をせざるを得なかったと推測されます。理論的枠組みに忠実に判断して結論の妥当性を犠牲にするか、結論の妥当性を重視して、多少は理論的整合性を犠牲にするかというジレンマが生じやすい構造であります。したがって、最高裁判所の判例のなかには、多少無理をして処分性を肯定したものもあるといえると思われます。
 以上のようなわが国の状況は、現在の行政事件訴訟法の基本構造であります「抗告訴訟と当事者訴訟の区別」「包括的抗告訴訟概念」、そして「取消訴訟中心主義」によってもたらされております。現在のドイツの行政裁判は、1960年の行政裁判所法によってその基本構造が定められているのでありますが、ご承知のとおり、行政事件訴訟法の立案作業は1955年から開始されたのでありまして、当時参考にできたドイツの行政裁判の仕組みは、現在のそれとは異なったものであるという事情、私の見解によりますと「不幸な事情」があります。
 今回の改正論議では、 処分性を拡大すべきである、という解釈論上の主張をそのまま立法論上の主張とする論者が多く見られるのでありますけれども、私には適切であるとは思えません。
 確かに白地に絵を描くのであれば、取消訴訟の概念、あるいは行政行為ないし行政処分の概念も知らないアメリカ合衆国をモデルといたしまして、「紛争の成熟性」あるいは「司法判断適合性」という枠組みで権利保護を与えるべきものを裁判官の柔軟な判断によって拾い上げてゆくということもありえましょう。しかし、そこまでのドラスティックな変革が果たして必要なのか、それは疑問であります。私は,このような改革は、以下のような理由で,むしろ副作用の方が大きいと危惧いたします。
 第1に、わが国には、行政処分という特殊な行為形式、すなわち多くの批判はありますが「公定力」という特殊な法的取り扱いの存在を前提として制定されている数多くの法律が存在しております。
 第2に、1993年に制定された行政手続法は、申請に対する処分、不利益処分及び行政指導に分けて規律をしております。そしてこれは行政法の一般理論、とりわけ「行為形式論」の成果を、一部ではあるが、ようやく見やすい形で示したという意義を有しております。そこで、このような行為形式と訴訟類型の有機的な結びつきを「救済の便宜」という理由だけで切断することは賢明ではないと考えられるのであります。小早川委員は、行政訴訟システムとして「連続=協働型」がふさわしいものであるとされていますが、私は、「連続=協働型」を実現するために、行為形式と訴訟類型の有機的な結びつきが活用されるべきであると感じております。
 「5 原告適格」であります。他方、原告適格については、判例法理による「硬化」に対する治療が9条本文に施される必要があると考えます。改正案の中には、原告適格について判例がとる「法律上保護された利益説」的な枠組みを否定することを提言するものが見受けられ、魅力的な提言であることは確かです。また、原告適格の拡大は、取消訴訟の対象の拡大とは異なり、行為形式と訴訟類型の有機的な結びつきに直接の影響を与えるものではありませんので、副作用は少ないと思われます。
 ただ、若干気になりますのは、多くの提言が、現在と同様に一般条項のみによって原告適格を規律しようとしている点であります。私は、「第三者の原告適格」と一括して呼ばれるものについて、「規律的侵害」と「事実的侵害」という分析をもとにした類型化という視点で見直すことが必要であると考えてまいりました。「規律的侵害」と申しますのは、行政処分の法的効果によってもたらされる不利益でありまして、不利益処分の名あて人が争うような類型、すなわち、「公定力の排除」という説明が典型的に当てはまる類型のほか,距離制限規定がある場合に、申請に基づく許認可を競業者等が争う類型においても、それが決め手になると思われます。これに対しまして、隣人訴訟あるいは環境訴訟のような類型で問題とされておりますのは、許認可を受けて事業者等が行う活動によってもたらされる不利益であります。このようないわゆる「事実行為」によってもたらされる不利益がどのような条件の下で第三者の原告適格を基礎づけるかは、理論上必ずしも十分に解明されているわけではないと私は考えております。
 最高裁判所の判断枠組みにつきましても、そこで言われている「権利利益の侵害」というものが「実態としての被害」を想定しているのか、あるいは与えられるべき保護が与えられないという「観念的な地位の喪失」を問題としているのか、はっきりいたしません。ドイツの「保護規範説」をとっているかのような外観を呈している、これは最高裁判所の判断枠組みについてそう言われているわけでございますが、無意識にアメリカの、原告適格の一部でございます「事実上の損害」的な実務感覚を示しているのではないか、という気もいたします。本検討会では、夏休みに3名の俊英による比較法研究が予定されているということでございますので、このあたりの疑問をぜひ解明していただきたいと希望いたしております。
 以上のような次第で,確かな裏付けがあるわけではありませんけれども、類型化というアイデアを採用することによって、従来の判例法理を生かしつつ、比較法的にみて恥ずかしくないレベルまで原告適格を拡大することが可能となるのではないかと考えております。ジュリストの論稿では、例えば、ということで9条を「処分の法的効果によって自己の権利利益を侵害された者」「処分の存在を前提とした行政機関の活動によって自己の権利利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者」「処分の存在を前提とした第三者の行為によって自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」などという例示を設ける。そしてその他に、「各号に掲げる者のほか処分の取消しを求めるにつき正当な利益を有する者」というような形にしてはどうかというたたき台を示しております。
 6でございます。
 残り時間、少なくなってきておりますので、その他の論点については、ごく簡単に説明するにとどめさせていただきたいと思います。
 まず、提言の第4でございます。取消しの利益を緩やかに認める、という部分でございますが、これは9条の現在のかっこ書きでございますが、これについても判例による「硬化」、治療の必要性という評価があてはまると思われます。例えばでございますが、運転免許の停止処分を争う場合を想定いたしますと、最高裁判所は、その前歴がカウントされて不利益な間はまだ取り消しの利益があるが、それ以降はない、ということを言っております。付随的な法的効果までは考慮するが、名誉信用の侵害、不当に免許取消、免許停止処分を受けたという、それ自体が気に入らないという、そういう原告は救済しない、ということを言っております。わけですけれども、考えてみますと運転免許の停止処分というのは「規律的侵害」をもたらすことは確かでございますが、その他にも「事実的侵害」をもたらしているという評価が可能であるかと思われます。そこで、その双方をもたらすような処分につきましては、「規律的侵害」がなくなった後、つまり運転免許の停止期間を過ぎてしまったと。それから無事故無違反で1年を過ぎたので前歴がカウントされないということになってもなおですね、権利利益の救済の必要性は消滅しないというふうに私は考えます。そこで事後的に違法の確認の訴えができるほうが望ましいのではないかということでございます。文言につきましては現在の行訴法は取消しということで一貫しておりますが、処分の法的効果がなくなった場合についても「取消し」という用語は違和感が伴いますので、直截に「処分の違法確認」を求めることができるという表現が望ましい、と思います。以上が第4のところでございます。
 提言の第5でございますが、憲法上の「包括的な権利保護」という要請を満たすことをめざし、原告側の「訴訟類型選択負担」を軽減する、というところでございます。この部分、憲法上の「包括的な権利保護」という要請をめざすという点では,他の多くの改革案と同様であります。この改革案の中で、例えば処分性を拡大すべきであるという提言は「包括的な権利保護」という要請を満たすための手段として、処分性の拡大というご提案をされているわけですが、私はその処分性は拡大しないと第2で言っておりますので、その受け皿としまして、第8で述べました行為形式に応じた多様な訴訟類型を用意するということが必要になると思われます。そこで、このような多様な訴訟類型ということになりますと、訴訟類型の選択について原告の負担が増しますので、「訴訟類型選択負担の軽減」が不可欠の条件となると思われます。これをどのように行うかにつきましては更に検討をする必要がございますが、これまで表明されているアイデアの中で最も有力な解決策は,「行政訴訟の教示制度」であるというふうに思われます。以上が第5でございます。
 提言の第6、第7でございますが、これは義務づけ訴訟と処分の差止め訴訟を法定することで再び処分に係わる訴訟、の問題でございます。提言の第6、第7は法定抗告訴訟の類型を増やすというもので、行政事件訴訟法3条1項という一般条項への依拠をなるべく避けるという意味を有しております。現在、2項以下に個別の抗告訴訟が類型化されておるのでございますが、類型を増やすという意味でございます。それから義務づけ訴訟というのは多くの場合は申請に対する拒否処分がなされたときに出てまいりますので、不利益処分の名あて人が争う場合と、申請に基づく処分について不作為又は拒否がなされた場合を分けて規律するという、取消訴訟と義務づけ訴訟という形で分けるという点に着目しますと、先ほど指摘しました行政手続法との有機的関連を重視した改正という意味を有する、となります。
 それから差止め訴訟でございますが、行政処分の差止訴訟につきまして、最高裁判所は「事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合でなければ認めない」という要件を示したことがございますけれども、それは昭和47年の判決でございまして、時代も変わってきておりますので、見直しが必要であるというふうに考えております。近時衆目を集めました東京都の外形標準課税条例に関する訴訟を見ますと、このような厳格な要件を機械的に適用するとどのような不都合が生じるかが示された、というふうに把握しております。
 そして最後でございますが、第8の行為形式の多様化に即して行政処分の所在を前提としない訴訟類型をいくつか新設する、ということでございますが、実はこれはどの範囲で新設するかということにつきましては、色々な議論が予想されますので、あるいは今回の改正では成案を得ることが難しい領域であるかもしれません。元々、「抗告訴訟と当事者訴訟の区別」という現行法の基本構造は「公法と私法の区別」あるいはこれと対応します「行政裁判所と通常裁判所の二元的構成」というものと密接な関係を有しております。ジュリストの私案では、「当事者訴訟」というカテゴリーを残した上で、ということで、民事訴訟と区別される当事者訴訟というものがあるということを前提とした上で取消訴訟,義務づけ訴訟、処分の差止訴訟でカバーしきれない部分をそこで受け止めようということで、仮に書いてみたものでございますけれども、我が国では裁判所が一元的に構成されておりますので、むしろ一歩進んでですね、一般的に認められる訴訟類型としては、行政処分権限の発動・不発動をめぐる訴訟とそれ以外の権利義務関係をめぐる訴訟に大別すると、あえて当事者訴訟と民事訴訟に区別しないという方が、将来的な訴訟類型の整備にとっては有益であるかもしれない、というふうに考えております。この場合、仮にということで仮称ですけども、例えば前者は「処分権限訴訟」、現在の抗告訴訟に代えまして「処分権限訴訟」、後者につきましては「権利義務訴訟」という名前を付ける。それ以外の個別のですね、立法化するものについてはそこから順番に抜けていくという整理があろうかと思われます。
 最後でございますが、行為形式の多様化に応じた多様な訴訟類型の整備という場合に、例えば、土地利用計画の決定ですとか公共事業の計画・実施、あるいは技術基準の策定をめぐる利害調整を思い浮かべるとわかりますように、行政訴訟自体が果たしうる機能には限界がある、すなわち、行政手続の整備ですとか、個別の行政実体法の見直しが併せてなされなければならないということを指摘しておきたいと存じます。このような観点は、例えば、団体訴訟をどう取り扱うかについて検討する際にも有益であると信じております。注の15番でございますが、ジュリストの最近の号に紹介されておりますように、このたびドイツの連邦自然保護法というのが改正されまして、ここでは、環境保護団体の手続参加、そして団体訴訟というものが連邦レベルで整備されたということでございます。これは新しいケースでございます。
 そこで終わりでございますが、以上、もっぱら行政事件訴訟の訴訟要件に関する論点について意見を陳述いたしました。行政事件訴訟法の改正論点といたしましては、そのほかに適正手続、手続的な瑕疵をどう扱うか、あるいは裁量などの本案の審理につきまして、あるいは裁判管轄等々、技術的な点についても論ずべき点が多く残されております。本日は私が最も基本的だと考えている事項にしぼらせていただきました。本委員会は、各方面から英知を結集して、よりよい改革案をめざされているものと理解しております。本日の報告が建設的な議論の一助となれば幸いであります。ご静聴ありがとうございました。

【塩野座長】どうもありがとうございました。論点、非常にたくさんにありますので、この短い時間、質問時間では処理しきれないものが多いかと思います。その点についてはまた色々な機会に教授の意見をうかがうことがあるべし、ということを留保させていただいた上で、10分ないし、15分ということにしたいと思います。どなたからでも結構ですからどうぞ。はい、どうぞ。

【福井(秀)委員】処分性とそれから第7に出てくる差止訴訟の関係についてお伺いしたいんですが、処分性を拡大しないということ、例えば計画の前段階ですとか、あるいはまさに例示にも出されている公共事業などについて、どういう差止訴訟の類型を想定されるのか、という点をお伺いできれば、というのが1つです。そういう意味で、処分性を拡大しないということと差止訴訟を法定するということの関係について教えていただければと思います。それから訴訟類型の充実という場合に、今のとも関連しますが、実際にはどういう訴訟類型になるのかという具体的なイメージをお聞きしたいのと、具体的に今、原告適格がなくて救済されていなくて先生のご議論では救済すべきだというその具体的な例をいくつか、もしお伺いできれば、ということでございます。

【高木教授】まず第1ですが、処分性を拡大しないということで、差止訴訟で法定されるもの、前に出てきますものはあくまでも処分が後からくる場合ですね。それについては差止要件が緩和されますので、後にくる処分を事前にたたくということで、差止め的な機能が出てくる。後から処分が出てこない場合がご質問の趣旨だと思いますが、そこにつきましては先ほどの整理ですと、権利義務関係訴訟の中で受け止められている、もともとのどこかの、前段になっている行為の違法確認訴訟というようなものが認められれば、それが差止の機能を持つということがあるだろうと思います。

【福井(秀)委員】その後で、権利侵害がないことを前提にして、差止を認めるという、そういう趣旨ですか。

【高木教授】プロセスが進んでいくと、権利侵害が出てくる。

【福井(秀)委員】いずれ出てくるものについての事前差止、という趣旨ですか。

【高木教授】はい。民事の確認訴訟をそのような発想でですね、後から処分が出てこなくても、権利侵害は処分でなくても出てくる場合があるわけですから、権利侵害が予想される場合には、権利義務訴訟にカウントして、前段階の確認訴訟を認めると。それから現実に被害が出ている場合には給付訴訟のアナロジーでですね、妨害排除的なものを、権利義務訴訟として認めると。

【福井(秀)委員】そうすると客観訴訟的なものを想定しておられるわけでないということですか。

【高木教授】さしあたりはですね。ただ、後の質問等に関連してきますけども、第8の場合にはですね、これは法律をもってつくるわけですから、必ずしも主観訴訟である必要はないのですね。だから計画関係について、新しく訴訟類型をつくる場合にはですね、それは何も主観訴訟に縛られる必要ないのであってですね、若干はみ出すものであっても、計画についてはこういう手続きを踏んで、そして一定限度ですね、その計画の違法確認なりを争えることにすれば、それはそれで立派な訴訟だというふうに考えます。
 それから第8の具体例ということですが、例えば河川区域に該当しないことの確認を求める訴えというのが、裁判上の問題だということでございますけども、そういうものですとか、あるいは最近出ました、2項道路に該当するかどうかということで争われた事例で、最近の最判ですか、民集の56巻1号1頁に載っている14年1月17日の最高裁判決は一括指定であっても処分である、という判断をしておりますが、ちょっと私に言わせれば無理をしているんですね、処分性を広げていると。ですからこの土地が2項道路に該当しないことの確認訴訟というものをですね、直截に認めればいいんじゃないかというわけです。ただまあ、そういうものをわざわざ別個の訴訟類型で書く必要があるのかというのはそれはおそらく裁判所の運用がですね、どうなるかということと関連してますので、一般的な権利義務訴訟だけでそれが十分入るということであれば、あえてつくる必要はないということで、非常に微妙な問題があろうかと思います。それから第8の具体例、色々思いつきでジュリストに書いてありますので、後でご覧いただけたらと思います。
 それから原告適格の点ですが、新しい条文にしたらどれくらい広がるのかということなんですけども、気持ちとしてはですね、従来の枠組みというのは極めて狭くて、結局だめというものが多いわけですから。

【福井(秀)委員】特に救いたいというのは何かございますか。

【高木教授】そうですね、例えば診療所の許可を出すとですね。距離制限によってパチンコ屋が出られなくなるときに、それはだめだというのが、裁判所の発想なんですが、やはりそれはもし仮にですね、違法な診療所の許可であれば、パチンコ屋が争えないというのはおかしいのではないかというふうに私は考えます。それから難しい理屈を離れますと伊場遺跡の訴訟でもですね、誰も争えないということになるというのはやはりいかにもおかしいという感じがしますけれども、これはどうも9条を手直しするだけではちょっと難しいかもしれないという感じがいたしまして、やはり団体訴訟的なですね、ものが必要になるのかなという感じがします。今日の報告ではあくまでも個々人が権利利益の侵害を受けた場合にはやっぱり争えないとおかしいという発想、主観訴訟を中心に書いてみたのですけども、自分としましては客観訴訟によって行政統制というんですか、ここにでてきました司法による行政のチェック機能を重視するという発想をすれば、今までの学説がこだわっていた権利利益の侵害があるかないかというものを越えられる、立法(措置としては)越えられるんじゃないか、というふうに思っています。

【塩野座長】では芝原さん。

【芝原委員】一つご確認したいんですけども、我々いわゆる文系じゃない人間が聞きますと、類型、類型という言葉がしきりに出てくるわけです。我々の言葉でいうとパターン化という言葉でしょうけども、パターン類型が先にあってそれに縛られて、後の議論が進むというのは、我々逆の分野の人間からすると非常に何か奇異に感じます。何か物事が、原理原則、プリンシプルがあって、これを理解するために、分かりやすくするために類型化して、これはこういうパターンで理解できるんだ、というのなら分かるんですが、パターン類型が先にあって、これが一つの規定要件的にあって、それをパターン類型を増やす、増やすというのは違うんじゃないかなというちょっと感じがしていまして。その辺はどうなんですか。限定列挙をずうっと書いていかないと、現実の世の中の流れに追いつかないという法律体系がいいのか、そういうものは運用の中でそういうパターン類型もある、といって運用上認めていくのか、どちらがよろしいんでしょうか、ちょっと私素人でよく分からないんですけども。

【高木教授】確かに訴訟法というのは最後、裁判官がすべて仕切ればいいと、ですから1条だけでいいという極論から始まって、やはり多くの人間が同じような安定的な判断をするためには細かいルールがあった方がいいと、色々ありますので、自分はやはり法律家的なんでしょうか、今までのってきた部品というんですか、そういうものをなるべくに生かした方が使いやすいんじゃないかという発想をします。ただ、道具に縛られちゃいけないということがありますので、料理で例えますと、必ずお箸で食べなくちゃいけないとかですね、ナイフフォークじゃなくちゃいけないという、そういうのよりは先折れスプーンで全部、食べればいいという、そういう栄養を取るためにはですね、そういう発想があるんですが、法律というのもやはり文化の一つですから、従来のものを一挙に捨ててというのは難しいんじゃないかと思っているのですが。

【芝原委員】そうすると確かに段階的改革的な意味合いが書かれてましたですね、ああいうもので、例えば今のように戦後かなり構造的に世の中の仕組みを変えようという流れの中、行革とかの流れもある中で司法だけがそういう段階的改革で、世の中の大きな流れにのっていけるのかと。この辺はどうですか。

【高木教授】おそらく司法というのは一番後からついてくる領域なので、1992年でしたか、新世紀の日本法という特集で書いたときもそういう表現をしたのですけども、社会、経済が先に進んでいって、段々遅れてくるんですね。訴訟の改革が一番最後に出てくるのではないかなと。

【塩野座長】今の芝原委員のご質問は大変重要なポイントだと思います。従来の法律学全般とは申しませんが、行政法の分野ではパターン化しますと、一種の排除効を持つということが起こってくる。我々の方でも反省をしています。民衆訴訟、機関訴訟なんていう類型をつくりますとこれはこれに当たるんだからもうだめだとかですね、あるいは取消訴訟に当たるか当たらないかで、当たらないとなるとちょっと先ほど高木さんからご指摘ありましたように、これは救えないんだというふうに考えてですね、だから取消訴訟をふくらませようとなるんですけれども、そのパターンを今の芝原委員のようにお考えですと、救わなければならないというものがあるとしますとそのパターンにのらなければ、また次のパターンあるいは別のパターンを考えればいいということになると、どうも法律をつくってしまうとそのパターン化が排除効を持つということがございますので、その点は是非今度法律をつくるときにはですね、排除効を持たないような形でつくるべきだというふうには思っております。どうも大事なご指摘ありがとうございました。どうぞ、水野委員。

【水野委員】今の芝原委員の発言に関連しますけど、最後におっしゃったことはね、司法の行政訴訟の改革がゆっくりでいいのかという、極めて重大なご指摘だと思います。高木先生は冒頭に段階的改革論ということをおっしゃってまして、当面やるものは8つだと、しかも8つのうちの第8については今回では難しいのかもしれない、ということになると7つまでだと。第8のいわば肝心なところは次回だと、いう印象があるんですね。もう一つは仮にですね、当面のやるべきものが第1から第8だとしましてね、より根本的なものはその後も継続して検討すべきであるとおっしゃっているわけですが、おそらく芝原委員に言わせれば、より根本的なところを改革すべきじゃないかということだと思うんですけれど、先生がおっしゃっているより根本的なもの、つまり今回は無理で、今後に行うべきより根本的なものというのはどんなふうなことを考えられておられるんでしょうか。

【高木教授】そうですね、これまでの議論を聞いておりますと、そもそも行政訴訟の独自の存在意義はあるのかどうかという問題提起がありまして、まず民事訴訟で別途やるべきだという議論があったかと思うのですが、そのような議論というのはおそらく、限られた期間ではケリがつかないんで、行政訴訟の存在意義はあるということを前提にしてですね、どういうものが当面必要かという議論であった、という趣旨であったかと。

【塩野座長】ではそろそろ行政訴訟の学者にいきましょうか。はい、芝池さん、小早川さん続いて、質問してください。

【芝池委員】いくつかあるんですが、一つにします。6ページで「行政訴訟の教示制度」というのをおっしゃっています。私も以前このアイデアを考えたことがありまして、おもしろいと思っているのですが、問題なのは、行政訴訟の場合と不服申立の場合とでは話が違うだろうということです。不服申立の教示の場合は、行政活動の中で行政機関が教示をするわけでして、ですから行政が言ったことについては、いわば自己拘束される、このことは問題ないのですけれども、行政訴訟の教示となりますと行政機関が教示をするわけですが、その教示に裁判所が果たして拘束されることになるのだろうか、そういう問題があるんではないかと思っております。その点ひとつご教示いただけたらと思います。

【塩野座長】それでは小早川委員、どうぞ。

【小早川委員】私はさっきの水野委員の話と重なるんですけど、より根本的な話というのはひょっとしてこの6ページの一番下の「行政裁判所と通常裁判所の二元的構成」かなと思ったんですが、権利義務訴訟というカテゴリーをお立てになった場合にこれは民事訴訟とどう違うのか。究極的にはドイツの場合には行政裁判所がやるかやらないか、ということが行政訴訟と民事訴訟の区別の実益になるわけで、それに対して日本では行政裁判所制度を仮にとらないとすると、それでもなお行政訴訟の審理の仕方が民事とどう違うというようなことで、その区別をお考えなのか、その辺をお聞きしようと思ったのですけど、より根本的な話だから後回しでも結構です。

【高木教授】まず教示の点ですが、おっしゃるとおりで、有効に働くのは例えば処分については教示をして、それによって出訴期間を走らせると。排他性を出すという部分はまあ機能するんですが。残りの部分はこれについてはこういう訴訟で争ってきなさいというのはなかなか決め難いというところはあります。
 それから行政裁判所の問題ですが、そこまでいくべきかどうかということも私自身も迷っておりまして、おそらく当面は一元的な裁判制度のもとで、改革するしかないということですので、ここに書きましたようなアイデアになる。そして裁判所が一元的である場合に民事訴訟と権利義務訴訟ですか、の区別がどうなるのかというのは今のとおりでありまして、おそらく訴訟手続ということではなくて、実体法が違ってきて初めて意味のある区別になりますので、そうしますとまた公法と私法という、また泥沼に入り込みますので、その辺りを避けて今回は改正がうまくいくとよいのではないかというふうに考えております。

【塩野座長】今の最後のところで私からもちょっと細かな質問かもしれませんけど、避けて通っても、救えるものは救えないということにはならないということですね。

【高木教授】避けても救うべきものは救えるような工夫をすべきでないかということですね。

【塩野座長】その場合、そうすると例えば行政事件訴訟というカテゴリーはない方がいいということですか。だからつまり言いたいのは処分権限訴訟とあと一般法。つまり行政事件訴訟法の中に権利義務訴訟を入れとかないと救えないことになるのかどうかという、そういう点については。

【高木教授】それは理論上必要ないと思います。

【塩野座長】必要ないですね。

【高木教授】はい。

【塩野座長】はい、わかりました。

【小早川委員】ただその、実体法が違うから、それに見合って訴訟としても区別しておいた方がいいと、いうことですかね。

【塩野座長】僕が言うのもおかしいけど、高木さんの発想はそうですよね。だけどもそれは違うからつくった方がいいということであって、つくらないと救えないというものではないはずですね。

【高木教授】むしろ、もともとの発想ですと、処分権限訴訟と当事者訴訟的なものと民事訴訟の3本立てになるわけですが、後の2つは分ける必要がないとすれば後の2つも合わせて権利義務訴訟という形で整理して、後は個別法でですね、拾っていく、ということでよいのではないか。公法と私法の区別は直接には必要ないと思います。

【塩野座長】その際、個別法で拾うというのは、個別法で拾う方が広く拾える場合があるということですね。

【高木教授】そうですね。主観訴訟でないものにも使えます。

【塩野座長】では、大体、この程度で終わりにさせていただきたいと思います。どうも高木さん、ありがとうございました。
 また高木さんにはこれからもご質問を別途差し上げる機会があるかと思いますが、そのときにはよろしくお答え頂きたいと思います。
 それでは本日は最初に申しましたように、一応、第一段階のヒアリングを終えたということになります。そこで多少今日、あと20分ばかり時間もございますので、これまでのヒアリングについてのご感想、あるいはこういった方のヒアリングがもっと必要でないかとか、あるいはこのヒアリングのこの段階でこれからどういうふうに進めていけばよろしいのか、という色んな委員のそれぞれのお立場に立った上でのご感想もおありかと思います。で、限られた時間でございますので、あまり長くお一方に時間を割り当てられなくて、大変申し訳ございませんけれども、何かありましたらおっしゃっていただきたいと思います。じゃこの前、何かこっちの方から回ってきたと思いますので、今度は市村委員の方からよろしくお願いします。

【市村委員】ずうっとヒアリングを聞かせていただきまして、実に幅広く行政訴訟といっても色んな分野について色んなご意見があるというのは本当に身にしみてよく分かりました。それで我々としてはこれからどうしていくのかという議論をしていくのかというときにですね、最後に少し話題になっていましたけども、どの段階からやっていくか、という考え方、ひっくり返しますとですね、どのくらい時間を持っているか、ということも考えながらいかないとですね、なかなか議論は大変なんではないかという気がいたします。実にどこからこの行政訴訟というものを描き直すか、ということについて、皆様、本当に深い色んなお考えがおありだと思いますが、それをある程度、今度は外側の制約というものを念頭に置きつつ、やらざるを得ないんだろうと思います。そういうときに、そうするとこれまでたくさんいただいたご意見などをどういうふうに整理していくかというときに、やはり私の考えでは司法の行政に対するチェック機能の強化という目的にとりあえず、ある程度の期間で役立てるものは何か、という優先順位を決めてですね、その実現可能性などをずうっと見通した上で、まず議論をやっていくということがやはりこの検討会に与えられた使命なのではなかろうかなというふうな感を特に強くした次第であります。
 もう一点だけ述べさせていただきますと、今検討の対象になっています行政事件訴訟法というのは検討に7年かかったというふうに言われています。それを全体的に見直そうかという話も今でているわけですけども、当時の記録の一部だけでも読ませていただきますと、非常に一点一点細かい議論を積み重ねているわけですね。もちろん、今回の中でもそういうご意見が随所に出てきましたけども、我々が審議していく上でやはりその当時、どうしてこういうふうになったのか、ということについてもですね、是非外国法について色々これからお調べいただき、またお教えいただくことと併せてですね、その当時の議論がどうしてこうなったかを、またここでやはりですね、思い起こしながらやっていくべきではなかろうかという感も深くしましたので、併せて感想ということで申し述べさせていただきたいと思います。

【塩野座長】どうもありがとうございました。後の部分につきましては私が編集しました行政事件訴訟法の制定過程の資料がございますので、一部私のものをこちらに預けてありますので、それを適宜事務局に使ってくださいというふうにしてあります。また、ご関心をお持ちの方はどうぞいつでもご覧になれるような状況にはおいてあります。どうもありがとうございました。
 では、小早川委員、どうぞ。

【小早川委員】私は基本的にはずうっと前に私の意見を申し上げさせていただきましたので、その内容にさしあたり変更はございません、というところなんですけど、もう一つは今の点と似てますが、かつての行訴法の制定の際の状況ですね、私もその折の議論というのは非常にレベルの高い緻密なものであったというふうに感じてますが、ただそれは一つには民事訴訟理論と行政訴訟のあり方をどうすり合わせるかという学理的な関心が非常に強かったことと、それからもう一つは戦後10何年かの行政訴訟の実務を前提にして、それをいかに制度として整合的に定着させるかということだったのではないか。その意味では新しいものをつくるというよりはいかにきちんとした制度を理論的に練り上げるか、という、かつ現実、実際の訴訟の実務を定着させるかという、そういうことだったんではないかという気がしてます。それに比べますと、今回は制度内在的な問題というよりはちょっと誤解を招く表現かもしれませんが、よく言われていることは、使い勝手がいいか悪いか、という利用者の立場からですね、率直な批判が出てきているということで、それで従来の訴訟の組み立て方に基本的にまずいところがあったんではないか、ということで、ですからまさに改革が課題になっている、という感じがいたします。多少、ですから昭和37年立法当時とは状況というか課題が違っているのかなという気がいたしまして、それでどうなるのかということなんですけれども、そうなりますと、かつそういう状況で色々、ヒアリングを聞いておりますと、本当に色んな注文が、色んな方向から、色んなベクトルで出てくるわけでありまして、これを理論的に制御して、自ずと一つの方向に行くってことは非常に難しいのではないか。ここは改革戦略的に、色々議論はあるだろうけどもこういう方向というのが全体として意味があるだろう、ということをですね、その辺の戦略的な議論をして、方向性を少し強引にまとめていくしかないのかなという気がしております。感想です。

【芝池委員】今の2人の委員の方とほぼ同じような考えを持っておりまして、ヒアリングで色んな意見が出てまいりました。思いがけない点も出てきたわけでありまして、それはそれで大きな収穫であっただろうというふうに思います。ただ、時間的な制約がある中での作業でありますので、やはり論点をもっと整理して、何らかの形で優劣を付けざるを得ないのではないかというふうに考えております。以上の点はお二人の委員もすでに述べられておられることですが、私は3月のプレゼンテーションで、行政訴訟制度の改革というのは、解答がある作業ではないということを申し上げました。解答を模索する試みである、ということであります。従いまして、委員の皆さんには、解答に向けての協力ないし協働というのが非常に重要になるのではないかと思っておりまして、私も微力ながらそういう方向でやっていきたいというふうに思っております。

【芝原委員】今までずうっとお伺いいたしまして、どちらかというと行政法の解釈論的な部分、あるいは学説的な部分という、あるいは色んな団体の方はある意味では、言い方は悪いでしょうけども、主観論的な表明という感じでございまして、今日初めて、元自治省の方の、あういう実務家の方の声を拝見しましたけれども、我々も日常的に見てますと、実際、現場実務の方が実は末端で一番、狭間で苦労されているということを、よく見聞きしていますので、もう少し、そういう今日の言い方でいくと、「使われる側」ですかね、行政事件訴訟法を、使われる側の意見ももうちょっとあっても良かったのかなと。そういう中で果たして、行政実務の中で執行プロセス、あるいは意思決定とか政策決定プロセスに見合った形で、どう関連付けるのか。その際にこの行政事件訴訟法だけで、果たして、解決できるものなのか。今日も関連法令の資料がありましたけれども、これ以外の例えば国賠法とか色んな補償関係のものがございますよね。あういうものも含めて、どういう住み分けになっているのか、私としては一度そういう何か、やや俯瞰的なマッピング整理といいますか、そういう整理をしていただくと、この行政事件訴訟法はどこをカバーすべきかと、あるいはどこが抜けているのかというのがもう少し明確になって議論なり整理がしやすいんじゃないかなという、気が若干しております。
 もう一つは、先ほど私が言った話と係わるのですけども、ややプリンシプルな、原理原則的にこうあるべきという部分とそれを踏まえて、でも実務的にあるいは技術的にこういうやり方しかできないという運用論とがですね、どうもないまぜになっているので、話のレベルが上へ下へ、いったりしているので、その辺も少し整理していただいたら、もう少し、原則はこうだけども、運用上、現在の技術はこうだから、こういう方向に規定しないといけない、とか。その辺の、少し話のレベルの整理をしていただくともう少し議論がしやすいんじゃないかな、というふうにちょっと感じました。

【成川委員】色んな意見を聞かさせていただいて、私としてはやはりこれを普通の国民がですね、司法に参加しながら行政をチェックしていく。あるいはその司法を利用したいと、する中で権利関係を明確にしたいと。こういう視点から見ますと、もう少し自分で使える制度で納得のいく根拠はこうなっていますよというふうな点で、ちょっと自分でも整理工夫していきたいな、とこんなふうに今、思っています。

【萩原委員】この検討会では色々と勉強させていただいております。まず最初に法律用語にとまどい、多少法律も勉強しなければと思っておりましたが、最近考えを変えました。つまり、素人に徹しまして、人間としておかしいことはおかしいという形で委員会で意見を申させていただきたいというふうに思うようになっております。ただ、私は最初の会合で申し上げましたように、経済学の立場から環境問題を眺めておりますが、その立場から見て、法律の用語が合っているか分からないんですが、例えば行政手続法のさらなる改正とか、行政訴訟制度の検討という対応だけでは特に環境問題に関しては済まないのではないかと思うようになりました。今、一つの例として少し勉強させていただいたところでは原告適格で訴えの利益のあるなしと、いうようなことが出てきているんですけれども、具体的な利益がなければ、ということは世の中全て金銭で考えるというような、ことに結びつきかねない。尤も、一方的に感情論とか、他者とかあるいは他の文化を否定するというようなことも困るわけですけれども、もっと金銭では明確に計れない利益を認めるような方向が必要ではないかというふうに思うようになっております。その一つの考え方として実体法とか、手続法とかさらには何とか基本法とかというものに何々権というようなものが明確に規定されていないということが問題なのかなと、いうふうに、これは全く素人考えですが、そういうふうに思っております。行政訴訟を起こしやすく、また門前払いともならないようにするためにも、こういうことは必要なのではないかなというふうに思い至りました。もちろんこれ以外にも情報公開の話とかありまして、行政の様々な分野での透明性の確保、例えば計画の段階で様々な利害関係者の利益と不利益を明らかにし、それで決定が行われるというようなことの必要性があるかと思いますけれども、広げれば際限がありませんので、この本検討委員会で検討しなければならないことに優先順位、例えば先刻来も出ておりますけども実現可能性という観点からも順位をつけられるものであれば、それを一つ一つ改める方向で委員会を進めていただきたいと思います。最後にこれはちょっと余計なことになるかもしれませんが、時折判決に人間味が感じられないというような批判をマスコミを中心としてされることがあるんですが、これは一つには法律に忠実にすれば、忠実に解釈するというんですかね、法律に忠実であればそうならざるを得ない、というそういう状況があるものかもしれないなあということも思っております。その意味からしても、もちろん法が人の情で動いたりするようなものであってはならないと思いますけれども、結果として人間味のある判決とか対応ができるような、そういう法律の体系というものを専門家である先生方に是非、考えていただきたいなということをちょっと最後に付け加えさせていただきます。以上です。

【福井(秀)委員】基本的な方向として是非、行政事件訴訟制度の国民側にとっての使い勝手というところをできるだけ帰納的に検証していただいて、改正法に向けて実施させると、そういうところを是非とも光を当てていただきたいと考えています。前に水野委員からもご指摘がありましたが、私自身の被告代理人としての経験で申し上げますと、やはり行政事件訴訟法というのは私人の権利救済を阻むのに極めて有効な武器になっているということを実感することもございまして、できるだけ使いやすく、例えば被告適格にしても訴えの利益にしても、トリッキーな部分が非常に多いものですから、できるだけ理論の美しさというよりは実利に徹するような改正の方向が非常に重要ではないかというふうに思っております。いくつか細かい論点ですが、論点を一体何にするのかということについては、例えばロースクールとか司法試験を何年後に発足、ということは決まっていますが、行政事件訴訟法についてはデッドラインという意味ではフレキシブルでございまして、当面重要なことをもちろん急いでやるということは非常に重要だと思いますが、さらに、だったらもうこれで例えば前の行訴法改正以来、何十年も経過したまま変わらなかった部分が多いということでは今度の場合はなくて、例えば重要なことを改正した後、さらにまた5年、10年かけて次の課題も追うということもありうるかと思います。もちろん重要度に応じて優先順位を付けることは重要ですが、それにとどまらず、さらに改善する努力を是非ともこの検討会として方向として出すことができればそれに越したことはないと考えています。現在、まだ論点が煮詰まっていない段階だと思いますが、できるだけこれまでに出た論点は広く提示していただければと思います。あんまり事務局の方で事前に論点を縛ったりされることなく、かつまた検討会の委員の議論を事務局が査定されるということではなくて、できるだけ幅広に、検討会の委員に限らず、各界の議論も論点として重要度の序列をつくるに当たっては客観的に淡々と出していただく、ということを是非お願いをしたいと思います。それに付随して申し上げれば、事務局資料をつくるときに、事前に最高裁にご相談になって、調整がついたものしか委員の目に触れさせないということは是非、今後は避けていただければと思います。内閣に置かれた行政庁ですので、しかも最高裁や法務省などからもここに委員がちゃんと出てきていただいているわけですから、公の場で議論をしていただく。委員の目に触れる前に事実上、話がついていて、調整がついているから直せませんというのは、是非やめていただきたいと思っております。以上でございます。

【福井(良)委員】特にございません。

【水野委員】5回の検討会を重ねまして、率直な感想は、市村委員、それから他の委員もおっしゃいましたけれども、大変幅広い問題提起が出されたと。これは私自身が当初予想していた以上に、勉強をさせていただいたと思っております。そういう意味では5回に渡って行われたヒアリングは非常に有益だったと思っています。私は第1回のときにですね、今回の行政訴訟の改革については行政事件訴訟法の一部手直しで終わるようなことがあってはならない、ということを申し上げたと思いますけれども、色んな出された意見はですね、いわゆる行政事件訴訟法の改正だけではなくて、根本的にですね、民事訴訟の他に行政訴訟がいるのか、いらないのか、といった議論、あるいは裁判所の体制の問題、裁判官の体制の問題だとか、あるいは納税者訴訟の創設だとか、その他もろもろありますけれども、行政事件訴訟法の改正以外の数多くの論点が提示されたと思っています。従って、これをですね、これから我々の検討会の委員でどこまで議論を深めて、どこまでそれを制度化していくか、ということが非常に重要だということで、改めてその責任の重大さを痛感しているわけです。ただ、確かに、市村委員とか萩原委員がおっしゃるとおり、時間的な制約があるということは現実問題ですし、実現可能性の問題もあることも十分承知しております。従って、優先順位を付ける必要があるだろうということもありましょうし、どういう論点を実現可能性のあるものとして絞っていくか、ということも必要になってくる。これは私も認めざるを得ないと思います。ただ、どういった論点が重要なのか、あるいはこの論点が実現可能性があるのかどうか、ということについては、当然のことながら検討会の委員の間に意見の相違があり得るわけでありますから、実現可能性あるいは優先順位、そういったものを含めてですね、この検討会の委員の自由で活発な議論をする場をつくっていただきたいと思います。重要なことですけどちょっと話しておきますが、13日に小林参事官が日弁連にお越しになりまして、論点のメモを置いていかれたんですね。これは要するに7月11日のフリートーキングの参考のために事務局がおつくりになった、ということなんですけれども、そしてこれはあくまで今後の検討の方向性を示すものではない、という断り書きもちゃんとあるんですが、例えばこれが7月11日の検討会の資料として配られるということになりますと、資料はオープンですから、全部知られることになるんですね。そうすると論点というのがですね、そういう断り書きがあっても検討会の委員が十分議論しないままに一人歩きしていくという可能性が非常に高いと思われるわけでありまして、そういった点については十分ですね、慎重なご配慮をいただきたい。これは検討会の委員だけにですね、事務局の方が参考として見てください、これはいいと思うのですね、色んな文献も含めてお配りいただく。ただ、それが検討会の委員が合意した論点であるというふうな形で誤解されるようなことは是非避けていただきたいし、その点は是非慎重にお願いしたいと思います。

【深山委員】私は途中から交替で来まして、ヒアリング全部を実際自分の耳で聞いたわけではありませんが、交替してこちらで色々お話を聞くにつけ、その様々な意見が出されて、これをまとめる側につい、私、自分自身が法律をつくる仕事をしておりますので、小林参事官以下と同じようなことをやっておりまして、まとめる方が大変だろうなという感が非常にします。行訴法についての様々な論点といわれるものがみんな、行訴法流の言い方、決まりきった第三者の原告適格とかですね、無名抗告訴訟の法定化とか、そういうキーワードを使われて、言われがちである、そういった、仲間内では分かりやすいということは分かるんですが、ただ私も同じような、法律を改正をするという作業をしていて、最後になって混乱する一番の理由はですね、実質、何をやりたいかという立法事実といいますか、動機といいますか、実質的なこととしてどういうことを実現したいかということについて、初期に議論が不十分ですと、最後、色んな意味で諦めることとかですね、当面の手当てしかできないこととか、色んなことが起こりますが、そこが分かりやすい形で、おおむね、全員一致ってことはないにしろですね、こういう規範をつくりたい、あるいはこういう事例をこうふうにしたいという、少し、分かりやすいレベルでメンバーの中で大いにその方向性なり、合意ってものが各、いくつかの論点についてあるのでしょうが、はっきりしていないと後でそれをどういう制度にするか、どう実現するという話になったときに大混乱になるというようなことが経験則上、そんな感じがします。これから、ばあっと広がった様々な意見や論点を段々段々絞っていって、まとめていくとそういう形にすると。これは手続法ですから、あっちをこう変えるとこっちが影響するという形で最後の調整が非常に大変なことになります。ちょっとでも変えるとですね。ですからそこに相当な時間を要するということも一方であって、ですから、段々とこの検討会の場でどういう実質的な規範を、あるいはどういうことをしたいのか、ということを合意ができれば、後はそれをどういう手当てをするかは、手当てが非常に全体に渡るような見直しをせざるを得ないことから、技術的な手当てで済むものまで色んなものがあるでしょうし、他の省庁の所管法律を動かさなくてはいけないとかですね、そんなことではできないといって諦めることも一方でそれはあるでしょうし、時間的切れということもあるでしょう。ですから、何人かの方が言われていたことと同じようなのかもしれませんが、この検討会、一体その実質として何をどう変えたいのか、ということについての議論をしやすいような資料をですね、是非、事務当局の方でつくってもらえると有り難いということと、もう一つ、同じような仕事をしている立場から言うと、全体のスケジュールですね、おおむねこんな時期にこんなことをやって、こんな雰囲気にして、こういう形で最後、皆さんで何だか一つのものをつくりましょうというものが、既に私、最初のころ出ていないので、それのせいかもしれないですけれども、何となくイメージができるような形で、今どういう時期にいるのかということが我々自身も分かるような形で何か、最終出口までの大まかなスケジューリングみたいなものを示していただけると有り難いです。

【塩野座長】それでは一渡り、ご意見を伺いまして、どうも色々率直なご意見いただきまして、ありがとうございました。ヒアリングを通じて、幅広な意見、あるいはさらに突っ込んだ意見、色々なご意見がございまして、このヒアリングの成果と、それからこの場での委員とプレゼンテーションしていただいた方々の、討議も記録も含めまして、できるだけまず幅広にここで出た議論は整理したいと思います。ただ、皆様方もここは大体、意見は一致していると思うのですけども、全部を拾うわけにはいかないだろうという点については意見の一致をみているというふうに私は思います。ただ、取り上げ方がなかなか難しいという問題が色々、ございます。先ほど水野委員からも委員限りの議論ということはあり得るというふうなご説明がございましたが、私はないというふうに理解をしております。全てのものはオープンにしますので、ただ、この点だけは委員限りで、最後の詰めの段階ですね、ということは有り得るのかと思いますが、今の段階ではそういうことはおそらくないというふうに思いますので、そこでいつの段階で、こういった論点みたいなものを一応、整理したものをお出しするかということは色々と難しいことだと思います。次回は実は、後から参事官の方からもご紹介あると思いますが、フリートーキングをいたしますが、フリートーキングというのは私の理解では今まで出てきた色々な論点をもう一度振り返ってみて、ここはどうかなというような点がそのときにいただけるか、あるいは次回のフリートーキングでもっとここが落ちているではないかという点があろうかと思います。まず、その点を是非お伺いしたい、というふうに考えておりますが、それからさらに進んで多少なりとも事の軽重についてのご意見、事の軽重といいますのは時間軸を含めての事の軽重ということで、ご理解いただきたいと思いますけれども、時間軸も含めて自分はこの点が今重要だというふうなご意見もいただければというふうに思っております。ただ、じゃどうぞと言って白地でここに臨むんでいいのかというと、それまた福井さんも水野委員もそれまた困るんじゃないですかね。何もなしに、じゃ、今までのフリートーキング、頭の中にあるでしょう、そこでご自分の意見を言ってくださいということで済むのかというと、私はどうもそれでは議論にならないのではないか、やはり今までの議論を整理したものを一応、お出ししなければいけないというふうに思います。その点はよろしいでしょうか。

【水野委員】整理するというと、整理の仕方が問題になるわけですね。

【塩野座長】だったら、やめろというんなら、それは私は。

【水野委員】だから、やめろというのではなくて、やはり色んな意見が出て、フリーな立場で議論するわけですから、やはり出される資料はですね、細かいところまで全部網羅しろというのは無理かも分かりませんが、今まで出た意見については項目的に整理していただいて、こういう意見、こういう意見がありましたというふうな形で整理していただきますと、これは非常に便利だと思いますが、やはり主観的な判断でこれを入れたり、これを外したりというのは、これはやはりまず議論をしてからにしていただきたい。

【福井(秀)委員】ですから、論点について、できるだけ委員に確認していただいて、それを事務局で網羅的な形で出していただければよろしいかと思います。

【塩野座長】できるだけやってみますが、ただフリートーキングのときの資料はですね、あまり分厚くて一覧性のないものだと、これまたあまり逆にいって議論の深みがなくなってしまうということもありますので、その点の今後の議論の入れ具合ですね、それは大変、申し訳ありませんが、皆様のご意見も勿論、いただきますけれども、私にお預けいただけますでしょうか。検討会の前に皆様にお配りをして、御了解を得るというのは私はこの検討会の趣旨に反すると思います。それはこの場で皆さんに決めていただく以外にはないと思います。ですから、この場に出すフリートーキングの材料というのは、もちろん皆様のご意見を十分に伺いますけれども、内密に全員のご同意を得るということはいたしませんが、それはそれでよろしゅうございますか。

【福井(秀)委員】ですから各委員がこれも材料ではないのかと提示したものについてはできるだけ淡々と出していただければと、こういう趣旨でございます。

【塩野座長】できるだけ淡々に出しますが、それは字義どおり、言葉どおりにはお出しはしかねる場合もあり得る、それはよろしゅうございますね。それではできるだけ簡にして要を得たものを、ですから皆さまも簡にして要を得たご意見をいただきたい、自分の言いたいことはこれだけだという論文をぽんと出されてもそれはお断りをする、ということでございますのでよろしうございますでしょうか。それでは次回の予定を含めて、はい。

【小林参事官】次回は第6回、7月の11日にですね、フリートーキングという予定になっておりますので、よろしくお願いします。それから、深山委員から申し出のあった、今後のスケジュールも、やはり次回までしか一応のスケジュールはまだお示ししていなかったというのはおっしゃるとおりですので、次回までに少し先を見通して、ある程度事務局でこんなふうに考えているけれど、どうだろうかと、というようなものをお示しできればと思いますので、よろしくお願いします。
 それから、行政に対する司法審査の在り方についてのご意見募集について、という簡単な資料ありますが、これは一般国民に対して、今後秋以降ですね、論点についての議論を、具体的な検討を行っていくための意見を募集したいということで、こんなようなイメージで7月の初めぐらいを目標に意見募集を国民一般に対して、したいと思っておりますので、ご参考までにお示ししております。よろしくお願いします。

【水野委員】ちょっと、今のところでご質問。行政訴訟検討会の検討状況というのが、参考資料として載せられますね。

【小林参事官】というか、インターネットで、そこが一々探さないといけないというのは大変なので、直ぐにクリックして出るように。

【水野委員】出てくる資料は今まで、もらった資料ですか。

【小林参事官】ここ2枚目にあるような、今までにある配布資料と議事録がですね、一覧でクリックできるようにしたいというふうに。これ、準備大変なんですが、もう一回ホームページに戻って、それから探すんじゃないようになるべくしたいと思っています。

【水野委員】了解しました。

【塩野座長】質問よろしいですか。それでは今日多少、時間も過ぎましたものですから、この辺で終わりたいと思います。先ほど申しましたように次回は7月11日木曜日の午後3時からここでフリートーキングを行い、そして皆様のご意見を伺う、ということにしたいと思います。
 それでは以上で終わります。どうも。