首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会行政訴訟検討会

行政訴訟検討会(第6回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時

平成14年7月11日(木) 15:00〜17:30

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
塩野宏座長、市村陽典、小早川光郎、芝池義一、芝原靖典、成川秀明、萩原清子、福井秀夫、福井良次、水野武夫、 深山卓也(敬称略)

(事務局)

松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、小林久起参事官

4 議 題

1 フリートーキング
2 今後の日程等

5 配布資料

資料1 第6回行政訴訟検討会フリートーキング参考資料
資料2 行政訴訟検討会における意見の概要(第5回検討会まで)
資料3 行政訴訟検討会の論点整理に向けて(芝原委員作成)
資料4 行政訴訟検討会の今後の予定(案)

6 議 事

 (1) フリートーキング

【フリートーキングの進め方について】

○座長から、フリートーキングの進め方については、委員との相談によって決めていきたいとの提案があり、了解されたが、委員からは特に意見がなく、座長から、一応の腹案として、以下の提案があり、了承された。

  • 芝原委員提出の資料は、フリートーキングとも関係するところが多いので、最初に、芝原委員からの説明と、それに対しての質疑応答をしたい。
  • 次に、資料1は、これまで検討会の審議の過程に出た意見を参考にして事務局に作成してもらったもので、網羅的なものと思うが、取りこぼし等もあり得るので、趣旨不明確、意見の拾い漏れ、追加などのご意見ご質問があれば伺いたい。必ずしもここで決めるということではないので、後に、提案してもらってもいい。
  • 本日委員に是非伺いたい中心的な事柄は、今後どのような視点に立って検討をしていくか、及び、今後のスケジュールを含めた検討の進め方、の2点だ。検討の視点は、中身に渡ることなので、本日一定の方向性を得るということでは全くないが、この段階で意見を交わしてもらい、ある程度情報交換をしてもらえばと思う。今後の検討の仕方については資料4に簡単なタイムスケジュールが書いてあるので、それを見ながら、どのように議論を進めていけばいいのか、自由な意見交換をしていただきたい。

【芝原委員による説明】

(総論)
○今までの検討会の議論は、行政事件訴訟法絡みがかなり多く、いきなり個別具体論・各論に入っていて、意見書にある総合的多角的な視点があまり議論されていないのではないかと感じる。総合的多角的な視点に重きを置いて議論した上で各論の議論をしてもいいのではないか。

○意見書では、行政事件訴訟法そのものではなくかなり幅広に問題提起がなされているので、本来のこの検討会の命題が「司法の行政に対するチェック機能の強化」であるということの認識を再確認してはどうか。

○意見書で書かれている行政訴訟に対する問題意識は、①現行の行政事件訴訟法に内在する行政庁の優越的な地位への疑問、②行政計画等の新たなタイプの紛争に対する手当ての問題、③行政事件の専門性に対応した裁判所の体制整備の3点だ。チェック機能という意味で、行政訴訟の提起は、主権者である国民の当然の権利行使でもあり、行政活動の改善、向上ができるから、不可欠な活動と積極的に捉えてもいいのではないか。

○行政事件のためだけの特別な訴訟類型を置く意義・必要性を、もう一遍考えることも必要だ。

○行政事件訴訟法だけで行政に対するチェック機能が十分果たされるのか。行政のプロセスは法律、行政立法、行政計画、行政処分、あるいは指導というふうに流れ、これがさらに、事前予防的にチェックされ、あるいは事後の是正・補償という形でなされる。行政に対するチェックとしても、行政自身による内部チェック、国会等を通じた民主的なチェック、司法によるチェック、と縦横のフレームがある。行政訴訟は、行政処分等に関する事後の是正についてのものだが、果たしてどこまでのことができるのか。もう少し他の手段とリンクしながらチェックすればもう少し機能がアップするのではないか。そういう意味で、色々なものとの連携を考慮しながら、行政訴訟の制度、在り方を考えてもいいのではないか。事前予防の、行政による内部チェック又は民主的チェックが、あまり十分な整理がまだなされていないが、この辺りについて行政手続法的なものをもう少し拡大をしてもいいのではないか。

○議論の基本的スタンスとして、行政活動について適法性確保の強化が必要ではないか。また、法的安定性の要請、行政の第一次的判断権の尊重、政策的判断への不介入の必要性、あるいは現状の妥当性をもう少し厳しく吟味していいのではないか。

(各論)
○行政立法又は行政計画の段階ではなく、処分の段階で救済する今の仕組みは、結果的には社会経済活動に大きなコストを発生させていると思うので、もう少し前段階で何らかのチェックが入った方が社会経済的にもトータルではコストミニマムにいくのではないか。実際の行政行為はほとんど行政立法で決まるので、そこのチェック機能がどうしても要るのではないか。特に、違法であるにもかかわらず、その取り消しを認めない事情判決については、国民の権利実現を犠牲にそこまで行政活動を保護する意味があるのか大変疑問であり、これはチェック機能以前の問題ではないか。

○裁判所が行政活動をチェックする場合、裁量の問題があるが、これはなかなか難しい部分もあるので、純粋に法律的にチェックが可能なように、行政活動についての事前の法的手続等を踏むことを前提にした判断をすれば裁判所も実務的にはやりやすいのではないか。

○パブリック・コメント及びパブリック・インボルブメントについては、いずれも任意であるので、それを法的に制度化できればよいのではないか。

○行政活動のチェックについては、手続的なチェックだけにとらわれず、もう少し行政活動の内容が具体化、特定化していく各段階での、内容面の決定基準の具体化も必要だ。裁量の余地が大きな行政活動に対するチェック手段としては、違法だけではなく不当性も審査できる行政不服審査、行政ADR(収用委員会等)が適する場合もあるので、その位置付け、住み分けをどうするかだ。

○行政事件訴訟法は行政処分の後の事後的な問題を扱うが、行政の不作為に対してのチェックは、申請に対する処分、裁決の留保の場合にしか基本的には使えず、違法を確認した上で何らかの応答を促すというレベルに留まっており、実体的な解決にはなかなか結びついていない。無名抗告訴訟の一類型として、義務づけ訴訟があることになっているが、かなりその要件は厳しい。昨今の薬害エイズ問題、又はBSE等のように、行政の不作為が結果的に決して小さくない問題を引き起こしているので、この辺のチェックをいかにするか十分に考えていいと思う。

○行政訴訟は、国民と行政、原告と被告の訴訟遂行能力の差が大きく、実態として効力を発揮していないのではないか。法律的には一応平等な扱いとされているが、実態的にはかなり違うので、何らかの形で武器対等の原則を検討したい。例えば、内部文書を含めた色々な関連行政文書の提出義務づけ、職権探知主義の導入、立証責任の転換、勝訴原告への報奨金制度等がある。さらに、訴えられる被告が組織であることを考慮すると、訴える方が一私人では難しいので、訴える方にも組織的なベース、例えば行政活動についての違法性の監査機能的な機関、あるいは国民が行政訴訟を行う際の前さばきをするような機関、あるいは訴訟遂行過程での支援ができるような独立専任機関というのも十分検討に値する。

○論点整理の手順については、現行の行政訴訟制度のどこが問題で、具体的にはどういう方向での見直し内容を骨子としてアウトプットすべきか、について、この検討会でも議論すべきではないか。

○検討は、論点を明らかにした上で国民にその過程を分かりやすく説明してやっていくこと、特に法律の専門家でなく実際に使うユーザーとしての一般国民が理解できることも重要。そのためには、現行制度の課題・問題点が、原告、被告行政庁、一般国民それぞれにとってどうか、それに対する見直しの方向はどのようにあるか、それら問題点のそれぞれについてどう対応するか、残された課題による副作用等はどうなのかを、もう少しわかりやすく対比的に示してほしい。

○行政訴訟と言っても、対象とする行政行為は非常に幅広いので、どこまで共通的な問題として言えるのか、あるいは個別的にどうするのか、具体的にイメージした議論も必要だ。

【質疑応答】(□:座長、○:委員、●:説明者)

○ほぼ全面的に賛同申し上げる。行政のチェック機能の強化という観点で、計画統制訴訟を明示的に挙げており、少し国民訴訟にも触れているが、公金の違法支出、計画、環境統制といった客観訴訟グループについて全体としてどのように考えるか。

●それらについては、外部的に見える部分が少ない。ある程度の手順が決まり、その手順をこういう形でクリアしている、というのを見せてもらえば、客観化され、外部的に見えるようになる。もう少しその辺りに行政手続法の網をかければいやでも見える形になる。

○制度論・行訴法の世界にとらわれずにできるだけ広い範囲で考えるのは賛成だが、それだけでは時間がかかる。対等性を実現するために独立専任機関の設置をとあるが、それよりは、民の側の訴訟遂行のポテンシャルを上げることが大事であり、その上で民の側からのパワーを受け止められる訴訟制度、裁判制度を考えるべきだ。少し官の側に頼っている感じだ。

□「国民に対してわかりやすく」とのことだったが、訴訟へのアクセスは、まず弁護士の所に行き、それで弁護士が訴訟にアクセスするわけだから、もう少し弁護士が行政訴訟を自分のものとすることが一番重要だ。また、国民の訴訟へのアクセスを容易にするという場合の国民というものを、どういう国民として捉えるか、という視点も重要だ。

【資料1(第6回行政訴訟検討会フリートーキング参考資料)について】(□:座長、○:委員、■:事務局)

□資料1につき、趣旨が不明確、このような意見があった、新たな意見提案がある、ということがあれば伺いたい。もちろん今日で締め切りではなく、フリートーキングで言って下さっても結構だ。

○大変丁寧に詳細にまとめてくれた。基本的に私の理解している論点は大体入っていると思う。あとはこの中から絞り込み、実質的に議論する段階で、国民にとっての使い勝手という観点から機能的にアプローチしてほしい。3ページ第1の1②イに「機能不全は実体法の問題であり、行訴法の抜本改正は不要である」との考え方があるが、実体法も行訴法も抜本改正した方がいいという選択肢がないので、それも検討してほしい。

○資料1は非常に網羅的に整理してもらった。資料2は、前回までの意見の概要を非常に丁寧にまとめてありこれからの議論の上で非常に大きい。あえて言えば、冒頭に大きな議論の項目がもう少しあってもよかった気がする。

○最近、最高裁判所が、「法律上の争訟」という話を、常識と違った使い方をした。論理的には、最高裁が憲法解釈をしたから、憲法改正しないと改められないことになるが、行政訴訟の前提となる憲法のルールは何なのかの議論も付け加える必要がある。

□それは重要な指摘だ。意見書にある「法の支配」という言葉は何であるか、よく深めて行きたいが、抽象的に法の支配は法治主義とどう違うかなど議論するよりは、例えば、最高裁のいう「法律上の争訟」が、実は我々に付託されていると思われる「法の支配」から少しずれているのではないかというような具体的な場合で話題になれば是非挙げていきたい。あえて「法の支配とは何か」を最初の項目に設けなかったのは、それをやると学者の間の概念論争になりかねないからであり、むしろ、具体的な事例に即して考えていきたい。

■指摘された点については資料1の3頁の第1の1①に「司法の行政に対するチェック機能を強化するためには、どのような改革が必要と考えるか」、第1の1③に「司法による行政審査の在り方を考えるには、統治構造の中における行政及び司法の役割・機能とその限界、さらには三権相互の関係を十分に吟味する必要があるとされることについてどのように考えるか」、5ページの1①に「司法審査の対象となる行政作用の範囲・司法審査の方法ないし条件等の行政訴訟の対象に関する問題について、国民の権利救済を実効化する見地から見直すべき点があるか」との形で記載しており、これは今までの検討会に出された大きな視点からの議論をも念頭において作成したものであって、これについても検討をお願いしたいと思っている。

○一昨日の最高裁判決で「行政上の義務履行を求める裁判は法律上の争訟ではないから訴えられない」とされたのは大変面白い判決だと思った。その解釈の適否はともかく、最高裁が「行政上の義務を行政代執行法以外のルートで求めるための特別の法律がないとできない」と言った以上は、推進本部の役割に入るならば、そういう制度の検討も、具体的課題として意味があると思うので問題提起したい。

□それがこの検討会の付託の範囲内かどうか、事務局に考えてもらう。ただ、そういう個別の問題が一つの契機になり、「法の支配」の観点から「法律上の争訟」について最高裁の従来の判例を見るとどうかについては検討の範囲に入ると思う。最高裁の判決が憲法に匹敵するとしても、おかしいことはおかしいといわなければならないので、あえて絞り込む必要はない。

□資料1についての追加の項目は大体よろしいようだが、実はこういう点が落ちていたということがあれば、是非ご指摘をいただき、これからの議論を実りのあるものにしていただきたい。

【今後の検討の視点について】(□:座長、○:委員、■:事務局)

□我々は、どういうスタンスで自分たちに付託された問題を考えていくのかが大変重要だ。資料1の3頁第1の1にも、行政訴訟制度の見直しの考え方についての色々な意見、また、第1の2の行政訴訟制度の趣旨・目的についての意見が紹介されているが、この段階で、委員各位が大体どういう意見を持っているかの意見交換をした方がいいと思う。もっとも、今日で方向性を決めるというものではなく、議論していくうちに別の視点が出てきたり、視点のウェートの置き方が動いてくることはある。

○行政訴訟の趣旨・目的について、今の行政訴訟のシステムは、たまたま主観的利益の侵害があった場合にだけ原則として出訴でき、ついでに適法性も担保される仕組みだが、行政訴訟には権利利益の救済と適法性の担保という目的が2つあり、通常目的が2つだと手段も2つある方が混乱がない。兼ねられる部分は兼ねるにしても、適法性の是正のためであれば、例えば計画統制訴訟、あるいは国民訴訟のようなものが考えられるし、権利利益の侵害を是正するのであれば、民事訴訟の救済との関係で行政訴訟でもどういう権利利益を守らないとまずいのか、というバランスにも繋がる。この2つの目的からくる今の制度の問題点をある程度分けて考えて議論した方が混乱が少ない。

○司法制度改革審議会の意見書は、司法の行政に対するチェック機能の強化が現状では極めて不十分だという問題意識を前提に、本格的な検討をすべきだとまで言っており、行政事件訴訟法の処分性や原告適格の拡大といった小手先の改正だけで終わってはならない。意見書を出発点として、改革の全体像を検討会で具体的に示していくべきだ。憲法は三権分立で、三権のチェックアンドバランスの上に成り立っているが、司法の役割は、憲法適合性あるいは法適合性を判断することにあり、その役割を特に行政面で強化する必要があると意見書はいっている。
 行政訴訟の役割の一つは国民の権利利益が侵害された場合の救済であり、これは 100%十分な制度でなければならないが、極めて不十分だ。もう一つは、適法性の是正・行政統制の強化であり、いわゆる国民の権利利益にかかわらない分野における違法な行政については、司法が是正する以外になく、司法にはそういった機能が与えられるべきだ。要するに、客観訴訟(例えば国民訴訟)により違法な行政に対するチェック機能が強化される面が非常に大きい。
 どういう制度が本来の司法の役目として、あるいは裁判制度としてふさわしいのかを考えたときに、どれだけの制度を持っているかが、その国の法文化の成熟度を示すものだ。
 行政訴訟については、制度を利用できるのかどうか、という利用の可否の問題、方法の問題が極めて曖昧となっている。自分が現実に担当した大阪国際空港の事件では、提訴から最高裁の判決まで、12年間かかった結果、そもそも訴えがだめだという判断を示された。最高裁だけでも6年間の審理がなされたが、それでその裁判ができるのか否かが判断されることは、他の国の人はどう思うか。訴訟ができるか否か、どういう方法でやるか、法律の専門家でなくとも分かる形でなければならない。現状のこのような点は、いかに我が国の法文化が未熟であるかを示すものだ。
 訴訟制度は当事者が対等でなければならないのが訴訟の大原則だが、行政訴訟については、審議会の意見書において「行政庁に対する信頼と司法権の限界性の認識を基礎とした行政庁の優越的地位が認められており、その結果として抗告訴訟が制度本来の機能を十分果たし得ていない」と指摘されている。当事者対等な訴訟制度にしなければならない。
 訴訟制度は実効性のあるものにする必要がある。今の行政事件訴訟は非常に広範な裁量権が認められており、裁量権の壁に阻まれる、あるいは訴訟をやっていくうちに、すべての事業が終わって訴えの利益が無くなったとか、あるいは訴訟の形式が非常に複雑、技術的なために紛争が一回では解決しないといった問題がある。
 民事訴訟との関係については、自分も、行政訴訟を全部廃止し民事訴訟一本でやるべきとまでは考えていない。しかしながら、二つの訴訟制度を認めると当然に選択の問題が生じ、これを排他的に捉えると利用者にとって極めて使い勝手の悪いことになる。従って、行政訴訟を残すとしても民事訴訟と行政訴訟の選択は、当事者に任せるべきだ。両訴訟を併存させる形で、民事訴訟で必ずしも十分でない部分を行政訴訟でやり、また、行政訴訟でやるからといって逆に民事訴訟はできないとはしないことが大前提になる。公定力については、民事訴訟の場合の私法上の法律関係と比較しても、その効力を行政側にだけ認める必要は全くない。公定力を認めず、民事訴訟以外に行政訴訟を認めて、そして両者の選択をするとの方向の改革が必要ではないか。

□今のところは各論の一番核心のところだ。その前にもう少し一般的な意見をお聞きしたい。

○行政訴訟改革は、単に行政事件訴訟法の改正問題だけでなく、行政全体をいかに「法の支配」の下に置くかの立場で考えるべきだ。従来から行政手続法なりで、行政そのものをきちんと位置付ける努力はされてきており、それと切り離さないで考えるべきだ。司法改革は従来の行政改革などと全て根は同じであり、行政のプロセスと訴訟のプロセスとをいかに合理的に繋げていくかが大事だ。そのために、一方では、行政の中身まで立ち入って、司法がチェックする仕組を作るべきだ。他方、行政そのものは何らかの意味で、社会にとって必要な部分であり、単に自由、平等の原理だけで考えるわけにはいかない。行政訴訟制度のコンセプトを考える場合にも、そういう意味での行政の特別扱いは、ある程度はしょうがない。公定力の話もそういうことだと思う。

○意見書の「司法の行政に対するチェック機能の強化」はそもそも、国民の厚生水準の向上のためであり、そのために行政がどのような役割を果たしているのかをチェックするということだ。そう考えると、今までの検討会の議論は非常に細かく、やはり広い観点からの議論が必要だ。したがって、訴訟類型を先に考えるのではなく、具体的な問題が出てきたときに、それを国民の厚生水準の向上という目的から考えたときに、どう検討して行けばいいか、という視点で見ることが必要だ。一国民の立場からすれば、訴訟はしなくても自分の厚生水準が上がるなら、訴訟はしたくない。その意味では訴訟に至るまでの様々な行政のプロセスの明確化、情報公開、政策評価、パブリック・インボルブメントなど、事前段階での制度の充実、様々な環境関連、都市計画法制などでの実体法での充実が必要だ。
 検討の進め方については、本年度それほど時間がないので、周辺の整備がある場合とない場合の二本立てで検討し、結果として、行政訴訟制度以外の様々な周辺について整理されず、最終的に現実的なアプローチで結論を出すことになっても、それについて大枠の外側のところに必ず明記してほしい。

○司法改革の中で行政訴訟が取り上げられているのは、今の日本の行政が大変不透明で非常に肥大化しているのに対して、しっかりした法律に基づく行政をどう確立していくのかという意識があったからだ。行政の内部的チェックには無理があり、外からのチェック機能が、公正で、国民の納得できる形で行われているか考える必要がある。その意味で、行政の適法性がしっかり担保されているかどうか、その中で国民の権利利益がしっかり確立しているかどうか、チェックシステムとしての司法の現状を分析し、それに沿う形での改善課題について、是非検討頂きたい。

○意見書に「司法の行政に対するチェック機能の強化」とあるが、どういう意味で行政の作用をチェックすべきと言っているのか一度確認しておくべきだ。少なくともこの中で、裁判所のチェック機能を強化せよ、と言われているのは、国民の権利救済の実効性を上げるということを強く求められているというのが自分の認識だ。もちろん法の適法性確保が重要な役割であることは全く異存ないが、審議会の中でチェック機能の強化がどういう意味で使われたかについての今までの委員の受け止め方には、異論がある。

○色々な意見があったが、要するに国民のために行政訴訟制度をよいものにするという点では一致できる。自分としてはそのための下請けの仕事を含め、最後までやりたい。福井委員と水野委員が内容にわたって発言した権利の保護、適法性統制、公定力の問題については自分は意見を留保する。また具体的な段階で議論することがあるかと思うが、要するに国民の権利充実に見合う行政訴訟制度を作るためにみんなで努力したい。

□こういった問題は何も今日決めるのではない。個別の問題を議論していくときに、色々な角度から見直すということで、進めていきたい。まとめるという意味では全くない。

○新しい訴訟制度を考えるときの大前提として、憲法上の枠組みがどうなっているのか前提として考えざるを得ない。また、従前の制度の在り方に固執しては意味がないが、ただ全く類例のない制度を新しく作るわけではなく、変える前提としての一つの法文化としての行政裁判制度は持っているわけで、それら従来の制度との連続性・法文化の承継といったことも考え、いいところは生かすことを考えるしかない。

○議論の入り口として間口を広げて幅広く議論することは重要だが、ただ、時間は限られているので、ある時期・ある段階では議論の土俵を絞り、当検討会としてのミッションを明確にしていただきたい。もう一点、司法改革と行政改革の根は同じという話があったが、行政改革の場合は行政コストの面をかなり意識するので、行政コストという面も意識して議論いただきたい。

□一当り意見を伺った。先ほど来、繰り返しているように、ここでまとめるということではない。ただ、今日のご議論を伺っていて、自分も共感することはあった。
 芝原委員のプレゼンテーションに対して、委員は賛同の向きが多い。自分が今どの辺のところを議論しているのか、全体を見る視点が重要だ。法律家は論理的に考えていても、なかなかそれが一般の方には分かりにくいので、わかりやすく整理していただき感謝する。
 我々に与えられた課題は司法による行政に対するチェック機能を議論することだが、そのときに、権利救済と、行政統制という大きく二つの意味があり、その組み合わせが問題である。その際、国民が司法でのチェックを求めるアクセスポイントがどこなのか、あるいはアクセスしやすいようにするにはどうすべきか、視点を国民に置いて考えることが重要だ。

【今後のスケジュールを含めた今後の検討の進め方について】

□今後のスケジュールを含めた今後の検討の進め方については、全く委員の皆様方の意見で進めていくことであり、今全部決まるものではないが、またもう一度議論するということもなかなか難しいので、建設的な意見をいただきたい。

○本検討会の最終的な結果、答申は、どういうものを予定しているか。座長の考えはあるか。

□座長としての自分の役割は、皆様のご意見を承って、検討会の意見としてとりまとめることなので、今の段階では自分個人の意見は出しにくい。

○法案の形にすることもあり得るか。

□今までの自分の経験から言うと、通常の審議会では、一番固まった形として要綱案があり、この検討会でそこまでまとめるかは、議論のまとまり方にもよると思う。また、要綱案に盛り込まれなかった事項については、要綱案とは別に説明、考え方のようなものを書くという選択肢もあろうかと思う。我々の意見でまとまるものはできるだけまとめて、是非実現したいということであれば、そういった方向でご議論をいただきたいし、あるいは、実現しなくても、立派なことを言えばそれでいいではないかということにするのか、その辺は皆さんのご判断で決めてほしい。

○短期間に大量で密度濃く検討するのがベストだが、行訴法改正を今回1年半あるいは1年強でやるのはかなりアクロバティックなので、2段ロケットのような形も是非、検討し、もし必要なら例えば3年とか5年先ぐらいまでに別の機関なりに引き継ぐような課題まで是非、整理してほしい。検討の際には、訴訟類型・訴訟の技術的事項よりは、今の行政訴訟制度で、この点で落とし穴が多い、この点で間違えやすい、この点で不自由しているから直す、という機能的アプローチを是非とってほしい。また、武器対等の観点での問題意識はあってもいい。

□後半部分は先ほどのアクセスの議論の中に入ると思う。2段ロケットの話とも関係するが、我々の任期は2年間でやるということだったな。

■どのくらいになるかは、今後の検討の進め方、皆さんの意見等を承りながら、決めていくことになると思うが、推進計画上は本部設置期限までにというのがこの見直しの計画になっている。

□今、一段ロケットを飛ばした後、どの程度の時間があるかという問題もある。一段ロケットを早く飛ばせば、後は時間が取れるが、ここで色々やっていれば、いつまでも終わらない。

○この資料1の項目は、どれも議論すべき事項だが、時間の制約を考える必要はある。また何らかの成果に繋げられないとこの会全体の責任となるので、結果を出したい。
 第6の訴訟費用等は、民事訴訟その他の訴訟と共通するアクセスの問題だ。行訴固有のアクセスは個々の場面で出てくるので、これについては、司法アクセス検討会で議論してもらえば足りる。
 それから、後は第7、第8は他の法令との関係とそれ以外の個別法の課題についてであるが、個別法の問題で処理するのか一般法の中で処理するのかは、当然に一般法の議論の中で出てくる問題なので、これを独立して検討するのではなく、それより前の検討をするときに並行的にやればいいのではないか。
 第9の行政訴訟の基盤整備上の諸課題は非常に重要だが、大枠についての議論が固まらないと議論しにくいので、第8までの議論の後にやるのが望ましい。第1は共通の縦糸横糸のようなものなので、具体的には第2から第5までを軸に個別に順次検討を進めるのが効果的だ。

○資料1の第2から第5までを一当たり議論するとのことだが、そのためには、そこに示されている考え方は一体どういうもので、何を主体にしているのか、どういうメリット、デメリットがあるのか、既存の制度とどういう点で矛盾抵触があり得るのか、客観的な問題状況を分かりやすい形で全員に示すための分析をした資料を事務局できちんと作り、事前にいただくのが非常に重要だ。また各回2時間半では難しいので、時間の延長を考えてもいいのではないか。

□注意すべきは、最初に事務局できちんとした資料を作ると、事務局主導だと批判されてしまう。そういう批判がないような資料を作ってもらうが、後からその資料は事務局主導で作ったから、検討に値しないなどと言わないでほしい。それが前提ならば、この会議の議論の密度を上げるため、できるだけの資料を事務局に作ってもらう。その作成の過程では色々な形で委員にご意見や資料の提出をいただくこともあるので、是非応援をいただきたい。検討会の検討時間は、自分も2時間半では短いと思っている。

○今のまとめで全く異存ないが、論点の補強資料を作る際は、その論点を主張している者とよく相談いただき、問題提起の趣旨が、過不足なく現れるように配慮いただきたい。

□資料1は、漏れのないように、一生懸命事務局が拾い出したが、項目の並べ方、あるいは論理過程を辿っていくと、必ずしもこういう形ではなく、こういう並べ方があるとか、あるいはこの項目はこちらで議論した方がやりやすいとか、いくつか出てくると思う。そういうことも含めて、事務局の方で資料を作ってもいいか。また、第2の点から順番に議論するということでよろしいか。(委員から異論なし)

○資料4の予定で10月はフリートーキングになっているが、具体的に、第2以下を検討するのが11月からだと、10月は何を議論するのか。あまり仕切りに時間をかけずに、立ち上がりを早くした方がいいと思う。

□9月の検討会で今後どうするかがある程度固まれば、10月から今の論点についての検討を始めることももちろん可能だ。

○ここでの議論は公開されるが、ある程度のところで何を主要な論点として考えて議論をするか、国民に対して審議の現状、問題の提示をする、ということをお考えか。

□さしあたりの感触では、資料1の第1は常に頭におき、第2から入っていくということになると思う。そのときにその個別の項目で、これは第1段ロケットでは無理だとか、あるいはこれは行政訴訟とは関係のないことではないか、ということで論点が落ちていくことはあると思うが、あらかじめ特定の論点はこれだと早めに出すのは困難だ。検討会は幅広い意見を承るということだし、国民の皆様からも幅広い意見を承るということだから、論点を逐次議論する段階で、この論点はどうするか、ここで取り上げて、あるいは要綱案、あるいは第1段ロケットの中身まで立ち入るのはこういう論点だ、と、おそらく毎回決まってくるのではないか。

■座長が言う流れになると思うが、ある程度の段階では、この検討会ではこの点を重点に検討するという国民への発信は必要になると思う。どの時点かは、検討を進めて考えてほしい。

○第3の取消訴訟のところが詳しいが、これは取消訴訟中心主義を反映しているのではないか。義務づけ訴訟の導入の意見が割合多く、その検討にあわせて義務づけ訴訟の原告適格、出訴期間等を考える必要が出てくるが、そうすると、目次どおりにはいかない気がする。

□おそらくそうだ。ただ、わざわざ仮の救済と書いてあることからもわかるように、義務づけ訴訟の話も含まれるわけであり、決して取消訴訟中心主義で出来上がっているものではない。

○先ほど、深山委員からも課題等をきちんと整理するのが必要だとあったが、同感だ。その辺の何が問題で、どうやっていくかという議論の前提が共通認識としてこの場でないと、あるいは、国民の方にも示されないと、議論が深まらないのではないか。

□国民に分かりやすい絵を、是非書いてみたいので、こう書くと分かりやすいという絵を、フローチャートで示していただき、もう一度共通の認識を高めたい。工学系の芝原委員、萩原委員から、9月ないし10月に披露してほしい。福井(秀)委員も一緒に考えてほしい。

■国民への意見募集については、既に7月1日からインターネット等を通じて行っている。8月23日までであり、今後も様々な媒体を使って、広く意見を聞けるような広報をしていきたい。その結果を要旨にまとめて、9月に報告をしたい。外国法制研究会については、夏休みの間にもう一回開いた上で準備し、9月に報告したい。10月のフリートーキングについては、場合によっては9月の検討会で今後どうするかという意見を伺う時間も取った方がよろしいか。(委員から異論なし)

□9月から4時間コースで大丈夫か。(委員了承)。では1時半から5時半までという形にする。

○9月24日に外国事情調査結果を報告いただけるということだが、是非、行訴訴訟制度のみではなしに、行政と司法の関係について、諸外国ではどんな形になっているのか、日本との違いなどに是非触れて報告してほしい。

□了解。ただ、時間との兼ね合いもある。

○今日の資料1の論点が、外国ではそもそも論点としてあるのか否か、あるならば日本と違ってこう処理されている、と対比できるような形で、是非ご披露いただきたい。

□外国法の研究で、私が研究者にお願いしたのは、外国法そのものの紹介ではなく、ものの見方として、日本人はこう考えているが外国人はどう考えているかということだ。研究者も多用なので、例えば資料1の第6の検討などは依頼していない。もっとも、この点は後でもいいから調べてほしいというお願いが検討会でなされれば、個別に対応していただく。

□今後段々厳しい問題が出てくると思うが、そのときに是非、双方の意見を聞いてできるだけきちんとした成果物を出して、これだけは外国に見劣りはしないというようなもの、あるいは国民のアクセスが容易になるにはこれだけのものは是非必要だという点を、取りまとめていきたいと思うので、自由に意見を交わしていただき、しかしまたそこは色々な意見が出るということを踏まえた上で、意見をまとめていただきたい。

○意見募集は、募集期間が終わった後、各個別論点を議論するような議事録等を見て、意見等を書くのは可能か。また、今後ある程度熟した段階でまた意見募集を行うのか。

■1点目については、一般的な意見募集の項目が首相官邸のホームページにあるので、いつでもいただける。2点目については、検討会で基本的な論点をまとめていただき、ある一定の段階で、検討会として国民の意見を聞く、ということをした方がいいというのが今の事務局の意見だ。

□意見募集の際は、正式な意見募集ということにすると、機関決定が必要な場合1ヶ月で回答するのは無理なことがあるので、正式な形で構えてやるのではなく、議論の議事録が正式にできる前に、議事要旨を出して、ご意見がある方はどうぞ、という柔軟なやり方もインターネット時代にはあり得ると思うので知恵を出してほしい。

 (2) 今後の日程等

 本日のフリートーキングの結果、今後の予定については、以下のとおり合意された。
  • 9月の検討会以降、従前は午前に検討会の開催が予定されていた12月の検討会を含め、検討時間を午後1時30分から午後5時30分までの4時間にすることになった。
  • 10月の検討会でフリートーキングを行うとの資料4の(案)については、これを繰り上げ、9月の検討会で、意見募集の結果及び外国事情調査結果の報告を踏まえてフリートーキングを行うこととし、個別の論点についての検討を10月から行うこととになった。検討は、資料1の項目に沿って、第2「行政訴訟の対象及び類型について」から順番に行うことになった。

7 次回の日程について

  • 第7回の検討会は、次の日時に開催することとなった。
     9月24日(火)13:30〜17:30
  • 第7回検討会では、意見募集の結果及び外国事情調査結果の報告を行う予定である。

以 上