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「弁護士(法曹)の国際化への対応強化・法整備支援の推進等」について(議論の整理メモ)

※  国際化検討会においては,司法制度改革審議会意見書及び司法制度改革推進計画(以下,「意見書等」という。)を踏まえ,「弁護士(法曹)の国際化への対応強化・法整備支援の推進等」を検討事項に掲げて,その在り方等についての検討を行った。以下は,第3回,第11回,第14回及び第15回国際化検討会における,これらの検討事項に関する議論を適宜項目別に要約・整理したものである。

1. 弁護士(法曹)の国際化への対応強化

司法制度改革審議会意見書(抄)
今後,国際的な法律問題が量的に増大し,かつ,内容的にも複雑・多様化することは容易に予想される。このため,弁護士が,国際化時代の法的需要を十分満たすことのできる質の高い法律サービスを提供できるようにすべきである。
 このような見地から,弁護士人口の大幅増員,弁護士事務所の執務態勢の強化,弁護士の国際交流の推進,外国法事務弁護士等との提携・協働,法曹養成段階における国際化の要請への配慮を進める等により,弁護士の国際化への対応を抜本的に強化すべきである。

※ 意見書等においては,弁護士が国際化時代の法的需要に十分対応できるようにするとの見地から,弁護士(法曹)の国際化への対応強化策として,1)弁護士事務所の執務態勢の強化・弁護士の専門性の強化,2)弁護士の国際交流の推進,3)法曹養成段階における国際化への配慮等が掲げられている。これらの点についての議論の結果,委員から出された意見は,概ね以下のとおりである。

1) 弁護士事務所の執務態勢の強化・弁護士の専門性の強化

○ 国際的な企業買収案件に代表されるように,大型の渉外案件に対応するためには,弁護士事務所において,専門分化した何十人もの弁護士が専従態勢を組むことができるような,執務態勢の強化が必要である。
○ 日弁連又は弁護士会の研修に関して,知的財産法,国際取引法等のいわゆるビジネスローや国際私法に関する研修の機会を増やすなど,その制度の拡充・強化を図ることは,弁護士の専門性(国際性)の強化に資すると考えられる。
○ 複雑・多様化する国際的な法律問題に対応するために,弁護士事務所を大型化・専門化するという問題は,基本的には,企業が耐えられる法律サービスのコストと,弁護士事務所が提供する法律サービスの質との関係で決まる問題であると考えられる。
○ 司法制度改革の流れは,弁護士の数を増やして競争を活発化させることにより,法律サービスの質の向上とコストの低減を図ることである。弁護士事務所の大型化・専門化については,このような視点が重要である。
○ ユーザーは,自らが抱える法律問題を依頼する弁護士を選択するに当たり,その選択の幅を広げるために,専門分野を含めた弁護士の情報の開示が促進されることを望んでいる。情報開示に当たっては,専門認定制度など,しかるべき機関が弁護士の専門性を担保するような仕組みが必要である。


2) 弁護士の国際交流の推進について

○ 日弁連の中でも国際交流をしている弁護士は限られているのが現状である。国際交流に参加する弁護士の数を増やし,その裾野を広げていくことが必要である。
○ 弁護士の研修制度に関して,日本での国際的な学会やシンポジウム等への弁護士の参加を促進するような仕組み,例えば,研修制度を義務化し,国際的な学会等への参加に単位を付与することなどを検討すべきである。


3) 法曹養成段階における国際化の要請への配慮について

○ 弁護士の語学力,コミュニケーション力,ディベート力を向上させるため,法科大学院の役割は重要である。具体的には,例えば,法科大学院において,英語で講義する科目や依頼者とのコミュニケーション,ディベートの科目を設けるなど,そのカリキュラムの内容について,創意工夫が必要である。
○ 法科大学院を国際化の方向へ導く方策として,司法試験の選択科目に国際関係法等を導入することも考えられる。
○ 法曹の国際化の観点からは,日本法の観点からだけでなく外国法の観点からも多角的に法律問題を考察し得るような,複眼的な視点を持つ法曹を育てることが重要である。そのためには,法科大学院のカリキュラムの内容について,創意工夫が必要である。


4) その他

○ 外国法事務弁護士と弁護士との提携・協働に関する規制を緩和することにより,両者が一体となって渉外的な案件を処理することができるような環境を整備することと,いわゆるビジネスローや外国法の知見が豊富な,国際的感覚を身に付けた弁護士の数を増加させることとがあいまって,複雑・多様化する国際的な法律問題についてのユーザーのニーズが満たされると考えられる。
○ 弁護士(法曹)の国際化への対応強化については,いわゆるビジネスローや国際取引実務に関するニーズのみならず,国際人権問題や国民・市民が抱える国際的な法律問題に関するニーズについての視点も必要である。
○ 国際機関等への弁護士の登用を推進すべきである。


2. 法整備支援の推進について

司法制度改革審議会意見書(抄)
 発展途上国が経済発展を遂げ,民主主義に基づく豊かで安定した社会を築き上げるには,経済社会活動の基礎となる法整備が不可欠である。
 我が国は,諸外国から近代的な法体系を受け継ぎつつ,国情に即した法制度及び運用を確立してきた経験を活かし,民商事法や刑事司法の分野において,アジア等の発展途上国の研修生の受入れ,専門家の派遣,現地セミナーの実施等による法整備支援を実施してきた。こうした支援への取組は,我が国が国際社会への一員としての主体的な役割を果たす上で重要であるとともに,経済社会のグローバル化が進む中で,円滑な民間経済活動の進展にも資するものである。このため,発展途上国に対する法整備支援については,政府として,あるいは,弁護士,弁護士会としても,適切な連携を図りつつ,引き続き積極的にこれを推進していくべきである。

※ 意見書等においては,グローバル化が進む中で,司法の役割を強化し,その国際的対応力を強めることが一層重要となっているとの認識の下,開発途上国への法整備支援を引き続き積極的に推進すべきであるとされている。この法整備支援の推進の在り方等についての議論の結果,委員から出された意見は,概ね以下のとおりである。

1)法整備支援の目的・理念等

○ 法整備支援を国の政策として認知し,我が国が国際社会においてどの程度の力をもって法整備支援を行わなければならないのかということを明確化するために,国としての戦略を策定することが必要である。
○ 法整備支援の目的・理念には,相手国の国益の面と我が国の国益の面があり,どちらもなおざりにしてはいけない。
○ 法整備支援の理念は,「法の支配」の妥当する民主国家体制の確立の支援というものであり,法曹の義務という面から支援を行うべきである。
○ 法整備支援には,究極的には,支援を通じて,日本の法制度や法令と親和性が強い体制をつくるという面もある。


2)財政・人的基盤の整備

○ 小さな予算規模の中で,ボランティア的に少数の人が携わっている現状を踏まえれば,法整備支援の一層の推進には,財政・人的基盤の拡充が必要である。
○ 日本の法制度や日本の法律に関する情報を海外へ発信することも法整備支援の中で取り組むべきであり,そのような観点から,長期的・戦略的な視野に立って財政的基盤を強化すべきである。
○ 人材確保のためには,財政的な裏づけとともに,法整備支援の仕事をボランティアではなく有償の仕事として請け負って貰うことができるような体制作りが必要である。


3)実施機関のあり方

○ 法整備支援を統一的かつ効率的に行うためには,少なくとも,各実施機関の相互の連絡協調体制を強化することが重要である。
○ 法整備支援を統一的かつ効率的に行うための望ましい姿は,現在の数ある実施機関を統合して,一元的な組織体制のもとで支援を行うことであると考えられるが,そのような一元的な組織体制を実現していくためには,強力なリーダーシップが必要である。


4)その他

○ 法整備支援の資金を集めるための寄付制度をつくり,その寄付に対する税制上の優遇措置を講じることも,財政的基盤を整備する一つの方法であると考えられる。
○ 法整備支援を推進するためには,法整備支援の活動の結果や成果を国民等に公表・アピールするなどして,それを評価してもらうような努力が必要である。
○ 法整備支援の対象国は,日本の法制度と運用に大きな関心があり,日本の法律情報を英語で発信することが不可欠であることを踏まえ,翻訳の際の補助としてコンピュータの技術を駆使するなどして,日本の法令等の英語訳の整備をすべきである。

3. その他

 上記1及び2の課題に関するもののほか,司法制度の国際化の観点から,次のような意見が出された。

○ 日本の基本的法令や判例については,信頼し得る英訳が十分でない状態であり,これらは有効な法整備支援及び法曹の国際化並びに日本の法律情報の海外発信の前提として重要なものである。そのため,基本的法令と判例の英訳の作業を早急に推進すべきである。
○ 未批准の条約については,国際的な動向,締結の必要性,国内法の整備についての検討状況等を踏まえつつ,批准を推進すべきである。
○ 今般,国際的な標準に沿って立法化が図られた仲裁制度と並び,裁判制度についても国際的な標準に近づけるべきである。

(以 上)