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国際化検討会(第1回)議事録



1 日時
平成14年1月24日(木)10:00〜11:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)(委員)柏木昇座長、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、西謙二、玉井克哉、波江野弘(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、齊藤友嘉参事官
  1. 開会
  2. 座長の選任
  3. 議事の公開
  4. 検討事項・検討スケジュール
  5. その他
  6. 閉会

【齊藤参事官】第1回「国際化検討会」を開催させていただきます。
 御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。後ほどこの検討会の座長を互選で決めさせていただきますけれども、それまでの間、私、参事官の斎藤でございますが、議事を進めさせていただきます。
 議事に先立ちして、司法制度改革推進本部事務局長の山崎からごあいさつを申し上げます。よろしくお願いします。

【山崎事務局長】事務局長の山崎でございます。よろしくお願い申し上げます。
 「国際化検討会」の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。皆様方には大変御多忙の中、この検討会への参加につきまして、快く御承諾をいただきまして、誠にありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。
 皆様も御案内のとおり、昨年の12月1日に内閣に司法制度改革推進本部が設けられ、司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとって司法制度の改革と基盤の整備を総合的かつ集中的に推進するということとされており、この作業を3年以内を目途に関連法案の成立を目指すとされているわけでございます。
 具体的な法令案等の立案作業ですが、これは私ども事務局が中心になって行うということになろうかと思いますけれども、その際には国際化検討会を始めといたしまして、主要なテーマごとに有識者の方々による検討会を開催いたしまして、意見交換を行いながら事務局と一体となって作業を進めるという方式を取らさせていただいているところでございます。
 したがいまして、この検討会の性格でございますけれども、皆様方には審議会の答申のような、とりまとめをやるということは予定はしておりませんけれども、立案作業に関しまして、忌憚のない御意見をちょうだいいたしまして、我々の立案作業の参考にさせていただきたいと考えておりますので、是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 世の中、社会全体のグローバル化が進む中で、今後国際的な法律問題が量的にかなり増大していくだろうと思われ、しかも、内容的にも複雑化あるいは多様化ということが容易に予想されるところでございます。このような国際化時代の法的需要に十分対応することができるように、質・量ともに充実した法律サービスを提供することができる体制を早急に整える必要がございます。
 このような見地から司法制度改革審議会の意見におきましては、日本弁護士と外国法事務弁護士等との連携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきであるとされ、また、弁護士の国際化への対応を抜本的に強化すべきであるとされております。
 更に我が国は民事司法や刑事司法の分野において、アジア等の発展途上国への法整備支援を実施していまいりましたが、我が国が国際社会の一員としての主体的な役割を果たしていく上でも、引き続き積極的に法整備支援を推進していくべきことも司法制度改革審議会の意見の中で提言されているところでございます。
 そこでこの国際化検討会におきましては、「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」「法整備支援の推進」等について御検討をお願いしたいと考えているところでございます。国際的情勢もにらみながら、臨機かつ十分に検討していただきたいと存じております。
 皆様方には大変お忙しいとは存じますけれども、是非御協力いただけるようにお願いを申し上げます。
 はなはだ簡単でございますけれども、以上でごあいさつとさせていただきます。

【齊藤参事官】それでは恐れ入りますけれども、ここで一旦報道関係の方は退室願います。

(報道関係者退室)

【齊藤参事官】この後、議事の公開の在り方について御協議願います。その前にまず配付資料の確認をさせていただきます。
 今日配付させていただいているのが資料1−1から1−4まででございます。議事次第の次に資料を配付させていただいていますが、資料1−1は、当国際化検討会の委員の名簿でございます。
 資料1−2が、当検討会の「検討事項(案)」でございます。
 資料1−3が「検討スケジュール(案)」でございます。
 資料1−4が、外国法事務弁護士制度に関係する日本弁護士連合会の会則・会規等のコピーです。
 あと、司法制度改革推進法案に対する附帯決議、衆議院のものと参議院のものを参考までに配付させていただいております。
 それから、弁護士法のコピーも配付させていただいておりますので、参照していただければと思います。
 続きまして、委員の皆様の御紹介に移らせていただきます。できれば自己紹介をしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、一応メンバー表にしたがいまして、バイヤーさんの方から順に自己紹介をお願いできますか。

【バイヤー委員】ヴィッキー・バイヤーと申しまして、現在はモルガン・スタンレーという証券会社の法務部で働いており、以前は10年間学者の役割でオーストラリアの大学とアメリカのテンプル大学等で教えたこともございます。
 日本での経験は20年くらい前からで、まだ日本語が足りないところもありますから、よろしくお願いします。

【柏木委員】東京大学の柏木です。国際取引法を専門にしております。東京大学に移ったのは、今から約9年前でありまして、その前は商社の法務部におりました。その関係で世界各地を回りまして、たくさんの弁護士さんとお付き合いをさせていただきました。
 そういうバックグラウンドでこの国際化検討会に参加したいと思います。
 よろしくお願いします。

【加藤委員】加藤と申します。私は根本特殊化学という中小企業に今在席しておりますが、それ以前は中小企業金融公庫という、今、新聞紙上をいろいろと賑しておりますが、特殊法人におりまして、中小企業を数多く見てまいりました。そういう立場で幾つかお話ができればと思っておりますが、基本的には法律については全く素人でございますので、お教えをいただきながら進めていただきたいと思っております。
 よろしくお願いします。

【久保利委員】久保利英明と申します。弁護士でございます。約30年弁護士をやってまいりまして、企業法務を中心に、知的財産権を含めていろいろ仕事をさせていただきました。現在は日弁連の副会長という立場でございますが、これは3月末までのことでございまして、あと長いお付き合いは日弁連の役員としてではないお付き合いになるんだろうと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。

【下川委員】外務省のサービス貿易室長の下川でございます。外務省に入省いたしまして18年目でございます。去年の7月から現在のポストにございまして、WTOのサービス貿易交渉に関わることになりました。
 これまでは過去にウルグァイラウンド交渉で知的所有権交渉に3年間関わったことがございます。そのほか経済協力局で経協をやったことがございまして、専門の語学という意味ではフランス語でございまして、直近がフランス大使館に3年近く勤務しておりました。法律、サービスの問題につきましては、まだ勉強途中ではありますけれども、いろいろと御報告等させていただきたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。

【下條委員】下條正浩と申します。弁護士になって今年が30年目になります。経歴といたしましては、1979年から1984年に掛けて、アメリカで留学及び研修をしてまいりました。アメリカではミシガン大学ロースクールで1年学び、その後ロスアンゼルスに行って現地の法律事務所で働きつつ、カルフォルニアの資格を取りました。現在所属している事務所は日本の弁護士の数が約110名ということで、大手の法律事務所に所属しております。
 私自身は、日弁連に外弁委員会というのがありますけれども、そちらの方の副委員長をしております。
 よろしくお願いします。

【道垣内委員】東京大学の道垣内正人です。国際私法及び国際民事手続法を専門としております。国際民事手続法の中で外国法事務弁護士の問題に触れることができればいいんですが、なかなかそういう時間もございませんで、必ずしも専門家というわけではございませんけれども、外国法事務弁護士法につきましては、これまで2度ほど改正のための法務省と日弁連との研究会に参加させていただきまして、難しさは少しはわかっております。
 よろしくお願いします。

【乗越委員】外国法事務弁護士の乗越と申します。もとは国家公務員で外務省で10年間過ごさせていただきました。その後イギリスに渡りまして、イギリスの資格を取りまして、現在、東京にありますリンクレーターズ外国法事務弁護士事務所ということで、主にイギリスの企業法務について仕事をしております。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【西委員】東京法務局訟務部長の西と申します。どうぞよろしくお願いします。
 私は外国の関係ではそれほど経験があるわけではありませんけれども、1983年から1984年まで1年間、当時まだ分離していました西ドイツに1年間行かしていただきました。そのときの経験など、もし生かせればと思っております。
 よろしくお願いします。

【玉井委員】東京大学の玉井でございます。やってくれないかという御依頼を受けましたときに、柏木先生もいらっしゃいるし、道垣内先生もいらっしゃるというので、余り貢献することはないのではいなかと思っておりましたけれども、余り角の立つことを申し上げしてもどうかとも思いましたので、やらせていただきました。
 知的財産権が専門でございますので、その面からということかもしれませんけれども、久保利先生もいらっしゃいますし、むしろアメリカとドイツの両方に留学した経験などを踏まえて、少し述べさせていただければと思っております。
 どうぞよろしくお願いします。

【波江野委員】最後になりましたが、小松製作所のコンプライアンス室の波江野と申します。
 2年ほど前まで法務部長を務めておりまして、この国際化検討会については、経団連の関係もあって、推薦されて、委員に就任させていただきました。外弁関係のお話もいろいろとあるだろうし、先ほどのテーマにありました法整備の支援という観点で申しますと、私は、たまたまロー・エイシアの理事にも就任しておりますので、こういった観点から幅広くいろいろな御意見が出され、活発な議論がなされることを期待しております。
 よろしくお願いいたします。

【齊藤参事官】どうもありかとうございました。
 それでは、次に事務局、関係機関の出席者の紹介に移ります。こちらも自己紹介という形でお願いしたいと思いますが、事務局、法務省、外務省、内閣官房、日弁連、日本弁理士会、こんな順序で自己紹介をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【山崎事務局長】山崎でございます。私、法曹になってから31年になります。もともと裁判官でございますが、最近17、18年はほとんど法務省の方に来ており、民事立法関係、司法制度関係あるいは訟務関係をやってまいりました。
 直前は民事局におりまして、去年1年間は商法の改正に追われまして、商法は半分くらい変わり、この次の通常国会にまた出ますから、それで全部変わってしまうということになると思います。
 司法制度改革の仕事に関しましては、平成9年のころだったと思いますが、自民党の特別調査会から始まったわけでございますが、そのときに法務省の司法法制調査部の部長をやっておりました。この火をつけたのは保岡自民党代議士でございまして、私は横で少し火を吹いていましたが、火が大変大きくなりまして、ついに消せなくなり、最後に消す役割を仰せつかったということになるわけでございます。
 実は以前に外弁法の法改正も担当して、大変苦労した記憶があります。今度は苦労しないように、是非皆さんに御協力いただければと思います。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【松川事務局次長】事務局の次長をしております松川と申します。
 私は財務省の出身でありますけれども、多少、立法の経験に携ったこともございますし、また、財務省以外にも、厚生省、あるいは経済企画庁、警察庁、そんな経験をさせていただいておりますので、いろんな意味で役立てればと思っています。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【齊藤参事官】私、参事官の齊藤でございます。私は弁護士なんですが、推進本部の事務局のスタッフとして仕事をさせていただいております。
 私は平成9年、10年の2年間、日本弁護士連合会の事務次長という仕事をさせていただいたことがございまして、その当時、第2次外弁研と言いましたけれども、外国弁護士問題研究会を、当時、事務次長として担当させていただきました。
 また、こちらの推進本部のスタッフになりましたらば、外弁問題が担当で、何か因縁めいたものを感じておりますけれども、恐らく今度の関わりで大体この役は終わるんじゃないかと思います。
 何分よろしくお願いいたします。

【事務局(平瀬参事官補佐)】参事官補佐の平瀬と申します。どうぞよろしくお願いします。

【事務局(黒田参事官補佐)】同じく黒田と申します。よろしくお願いします。

【事務局(矢野主査)】主査の矢野と申します。よろしくお願いします。

【齊藤参事官】次、法務省お願いします。

【法務省(大塲参事官)】法務省大臣官房司法法制部参事官をしております大塲でございます。法務省は司法制度、弁護士制度、外弁制度と言った司法制度を所管しておりまして、この検討会でいろいろ司法に関わる国際化について検討されるということでありますので、国際化について皆さんの御意見を賜りながら勉強していきたいと思います。
 よろしくお願いします。

【法務省(石山部付)】法務省司法法制部の石山でございます。よろしくお願いします。

【法務省(笠原補佐官)】同じく法務省司法法制部の笠原でございます。よろしくお願いします。

【外務省(大塚事務官)】外務省サービス貿易室の大塚と申します。よろしくお願いします。

【内閣官房(松永参事官補佐)】内閣官房副長官補室の松永と申します。どうぞよろしくお願いします。

【日弁連(奥村副会長)】日弁連の副会長の奥村と申します。併せて名古屋の弁護士会の会長をやっておりまして、少し国際の最先端の息吹を感じさせていただくために、担当ではございませんが、同席させていただきます。よろしくお願いします。

【日弁連(外山嘱託)】日弁連国際室というところの嘱託をしております外山と申します。よろしくお願いします。

【日本弁理士会(小倉副会長)】弁理士の小倉と申します。ただいま日本弁理士会の副会長をやっておりまして、弁理士会の中でも司法制度対策委員会という会議がございまして、その中でハーグ条約の関係であるとか、WTOの関係のGATS、こういった問題について取り組んで参りました。弁理士登録は25年が経ちます。
 よろしくお願いします。

【齊藤参事官】ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、まず座長の選任をしていただきましたと思います。互選で選任をしていただきたいと思いますが、どなたか御推薦はございますでしょうか。

【波江野委員】僣越ですけれども、メンバーの中で柏木先生に座長をお願いしたいと思います。

【齊藤参事官】ありがとうございます。
 そのほかに推薦される方はいらっしゃいますか。
 そうしましたらば、柏木委員に座長をお願いしたいという御推薦がございましたけれども、いかがでしょうか。

(「賛成です」と声あり)

【齊藤参事官】よろしいですか。
 それでは、柏木先生に国際化検討会の座長をお願いしたいと思います。
 それでは、先生、こちらの座長席にお移りください。

(柏木委員座長席へ移動)

(議事の公開について協議の結果、議事の公開について、次の取扱いとすることとなった。

  • 毎回の会議の議事概要及び議事録を作成し、公表する(議事録には発言者名を記載する)。
  • 報道機関に会場における議事の傍聴を認める。
  • プライバシー保護、外交上の配慮等やむを得ない場合には、議事概要及び議事録への記載を避けたり、報道機関の傍聴を制限することによって、公開を停止することができる。)
(報道関係者入室)

【柏木座長】それでは、次の議事に移ります前に、座長として一言ごあいさつさせていただきたいと思います。
 この検討会の検討事項は「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」、及び「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」、それから「法整備支援の推進」という3つのサブジェクトがありますけれども、最初の2つのサブジェクトは、とうとうたるグローバリゼーションの進行の中で、各国の法曹制度というのは属地主義的な色彩が非常に強かったと思います。しかし、これだけグローバル化が進みまして、しかも通信が発達いたしますと、国境を超えた法律問題というのは、多数発生してきますので、それに合った法律・サービスの体制をつくらなければいけないということであろうかと思います。
 私が見ているところ、1つには、やはりコモンロー・ローヤー、コモンローの法律サービスというのが非常に力が大きくなっております。むしろコモンロー・ローヤーとどう折り合いを付けるかというのが一つの大きな問題なのではないかと思います。世界を見ていますと、どうもドーバー海峡をはさんで、法律サービスばかりでなく経済でも政治でもいろんな面で違いが出てきておると思います。ランゲージの問題もございまして、とうとうたるコモンローの影響を受けながら、基本的人権と社会正義をどう守っていくかというバランスを取る難しい問題だと考えております。
 法整備支援につきましては、日本は100年の歴史があるわけで、その100年の西洋法整備の歴史の中で大変いろんな経験をしておりますが、これを最近、西洋法を整備し、あるいはこれから整備するという国に対しては、いろんなことでお手伝いできるんではないかということを考えております。
 この国際化問題検討会の座長を仰せつけられたわけですけれども、個人的にはたくさん意見はございますけれども、座長としては、なるべく個人的な意見は出さない方針をとりたいと思っています。
 この検討会は報告書をまとめるということではなくて、皆さん方の意見をなるべく引き出して、法案作成の参考にするということでございますから、多分、私の仕事は、いかにして皆さんのいい意見を引き出すかということになるんではなかろうかと思います。是非皆様方の御協力を得て、この重責を全うしたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、次の議事に移ります。本日は第1回目でありますので、まず、この検討会で検討すべき事項と検討のスケジュールについて、事務局から御説明をお願いします。

【松川事務局次長】それでは、私の方からこの国際化検討会におきます検討事項と、検討事項のスケジュールにつきまして、御説明申し上げたいと思います。
 お手元の配付資料の1−2を御参照いただければと思います。
 これは司法制度改革審議会の意見書にのっとり、この検討会における主な検討事項と考えられるものを記載したものでございます。先ほど事務局長からのごあいさつでも申し上げましたとおり、当検討会におきましては、主として「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」「法整備支援の推進」の3つについて御検討をお願いしたいと思います。
 まず「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」につきましては、司法制度改革審議会の意見におきまして、先ほどもありましたように、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うとされておりますので、現行の特定共同事業の実情と問題点、これまでの規制の根拠、規制緩和の必要性、特定共同事業の要件緩和等の具体的な方策等について、御検討していただくことを考えております。
 検討のスケジュールにつきましては、この特定共同事業の要件緩和等が、当検討会の検討事項の中で、また、改革審意見書の中でも最も具体的に制度改革内容として指摘され、かつ立法課題であると考えられることでありますので、この1番目のテーマを優先的に取り組んで、できるだけ早期に措置できるように御検討していただければと思っております。そこでその前提といたしまして、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の所要の改正法案をいつ国会に提出するかということでございますが、まさに事務局、本部が発足したばかりでありまして、現在のところでは確定はしておりません。ではございますけれども、あらゆる諸情勢に対応し得るようにしておく必要があると思いますので、前広に前倒しで御検討をいただければと考えております。
 そういうこともございまして、今後のスケジュールにつきまして、配付資料の1−3をごらんいただきたいと思いますが、平成14年中には一応の検討は終えられるように調査や御議論をお願いできればと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 なお、この第1のテーマであります弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の在り方の問題、先ほども御指摘がありましたように、WTOにおけるサービス貿易交渉の課題ともなっておりますので、その交渉の推移にも注視し配慮していく必要があるものと認識いたしております。
 「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」につきましては、司法制度改革審議会の意見におきましては、弁護士の専門性の向上、執務体制の強化、国際交流の推進、法曹養成段階における国際化の養成の配慮等が指摘されておりますので、それらの観点に関しまして、御検討していただくことを考えております。
 3番目の「法整備支援の推進」につきましては、我が国のこれまでの取り組みについて理解していただいた上で、関係機関、団体との適切な連携を図りながら、更に引き続き推進していく方策について、御検討していただくことをこの段階でお願いします。
 「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」と「法整備支援の推進」につきましては、最初のテーマでありますが、「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」についての検討を優先させつつ、できるだけ合理的に充実した検討が可能となるよう工夫してまいりたいと存じます。皆様方には御多用のところ、恐縮でございますが、よろしくお願いします。
 以上でございます。

【柏木座長】ありがとうございました。具体的な検討は今後の検討会で行うことにしたいと思いますが、ただいまの説明につきまして、何か御質問がありましたら、お願いします。

【道垣内委員】具体的なお話に入る前に確認させていただきたいのですが、この検討会の位置づけについてもう少し御説明いただきたいと思います。法律、あるいは政令には特に根拠はないんではないかと思いますが、先ほどの御説明では、法案に参考になる意見をということでございましたけれども、最終的な法案の提出は内閣提出だろうと思いますが、それとの関係で、どれほどの影響力がある検討会なのか、その位置づけをもう少し明らかにしていただきたいと思います。

【山崎事務局長】まさにこの検討会の位置づけは、私のところの事務局の私的諮問的な形で設営されているという性格を持つものでございます。そういう関係から、通常の審議会とは違いまして、最終的に答申を出すとか、そういう性格のものではないということを先ほど申し上げましたが、それを基本に考えております。
 では、検討内容がどの程度の位置づけを持つかということですが、まさに先生方の熱気ある御議論をいただければ、それだけ強く反映するというものだろうと思います。最終的には私どもの方で政策判断をせざるを得ないと思いますけれども、その中でなるべく皆様方の御意見を取り入れられるようにやっていきたいと思っております。そういうことで御理解をいただければと思います。

【下條委員】先ほど事務局次長の方から御指摘がありました例のサービス貿易一般協定との絡みですけれども、昨年の11月にカタールのドーハで行われたWTO閣僚会議で宣言が採択されて、サービス貿易についてのスケジュールが決められたわけです。そのスケジュールによりますと、今年の6月30日までに各国が他の国に対してリクエストを出すと。それに対してリクエストされた方は、来年の3月31日までにオファーを出すというスケジュールになっております。
 そうしますと、なるべく今回の立法作業も、そのスケジュールに合わせたものにすべきではないかと考えておりますので、是非そのような配慮をなされることを希望したいと思います。

【下川委員】WTO交渉との関係では、ただいま下條委員から御指摘があったとおりでございまして、具体的に各国の関心事項というものを今のところは、マルチの場で提案という形で表明・議論しておりますけれども、各国に対しての具体的な要望というのは今年の6月になって出てくる。それに対する回答を各国がまた来年3月に行うということでございます。
 したがいまして、先ほど次長からの御説明にもございましたように、交渉の推移というものも是非この議論の過程では配慮いただければと思いますし、他方で全体的な司法制度改革、全体的に行っていく流れというものもあろうかと思いますので、その両方をバランスさせながらできるところからやっていく。同時に、交渉への影響ということも配慮される形で議論をしていければと期待しています。

【久保利委員】今お二方のおっしゃったのと、別の面からの言い方になるかもしれないんですが、要するに、外弁問題というのをこういうスピードで集中的に進めていって、逆にその分だけ弁護士の国際化であるとか、法整備支援というのが、ある意味で後回しになってしまう。だけれども、考えてみると、養成段階からの国際化の問題とか、例えばロースクールに留学生をどうするかとか、しかもロースクールに留学生を入れるということは、アジア地域から例えばロースクールへ留学生に来ていただくということになると、ある意味での法整備支援とも絡んでくるような問題だと。
 そういう問題は、ある意味で言うとロースクールの方は2004年4月開校で、実際上カリキュラム等々は2003年には決まってしまうというときに、この検討会で早目に早目に対応して、こういうものが要請されるということを、実は2002年の段階で言わなければいけないのではないか。
 そうすると、そういう議論というのもある程度しておくべきであって、外弁問題だけを先行的にやって、しかも、今のスケジュールをお伺いしていると、その段階までに立法化までができ上がって何とかというのは、果たしてこの問題を取り扱っていらっしゃる国の機関としてもいいのかどうかという問題があると思うので、私としては、むしろもう少しバランスを、外弁問題だけに集中しないで、他の国際化問題とか、ロースクールの法曹養成における国際化問題とか、そういう問題にもう少し時間を割いていただけないだろうか。これはお願いを含めてですけれども、そんな気がするんで、そういうふうにやっていくと、今、下川委員がおっしゃったことととも平仄が合ってくるのかなとも思うんですけれども、いかがなものでしょうか。

【齊藤参事官】推進本部の事務局としましては、やはり明確に立案課題とされるものは、できれば優先的に検討を進めていただきたいと考えております。その意味で、国際化検討会では外弁法の改正問題というのは、明確に立案課題と考えられますので、やはりこの課題を中心的に検討のスケジュールは考えていきたいと考えております。
 ただし、そのほかの課題が全くおろそかになってもいけないということは重々承知しておりますので、例えば法整備支援等のことにつきましても、実は第2回である程度のプレゼンテーションをしていただいたりとか、委員の皆さんには、着々と検討していっていただくような準備なり配慮はさせていただきたいと考えております。
 そういうことで、確かに外弁法改正案の提出時期などにつきましては、今から確定するというわけにはなかなかまいらないと思いますが、諸情勢については十分留意していきたいと、このことはこちらも重々承知しているつもりでおりますので、よろしくお願いしたいと思います。

【波江野委員】今の事務局からのお話もよくわかるわけですが、一般ビジネスにたずさわるものとしては、何かやろうとする場合、目標と納期が重要と思います。その上で、できましたという達成感を得るというのは非常に大事なことでして、そういう点で法改正に取り組むという、それもスケジュールに合わせて実行されるというのは異論ありません。一方、弁護士の国際化ですとか、法整備の支援というものは、数値的とか定量的に評価をされるものではないですから、なおこういう場でいろいろな御意見をいただいて検討して取り組んでいくという方向づけというのは必要なのかと思います。先ほど久保利先生からお話がありましたが、テーマとして外弁法の改正ということを最優先で取り上げるということについては、勿論、異論はありませんけれども、国際化ですとか、法整備支援というのは、目に見えないようなことについても、この審議の中で必ず追い掛けていただきたいという感じがいたします。

【柏木座長】ほかに御意見ございませんか。久保利委員がおっしゃられたことについて、やはり中心課題は1番の「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」なんだろうと思いますけれども、1−3の資料を見ていると、どうも2番、3番、「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」「法整備支援の推進」が、余り文字として出てこないかなということなんだろうと思いますが、これは勿論2つとも非常に大事な問題なので、その辺はおろそかにしないで、是非検討したいと思っております。
 ほかにございませんか。今後の抱負でも何でも結構でございますので、スケジュール以外の点につきましても、どうぞ御自由に御発言をお願いいたします。

【下川委員】検討事項のスケジュールというか、中身にも若干関わってくる話でございますけれども、今、議論ございましたように、意見書ではっきり方向性が打ち出されている話でございますので、「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進」が中心的課題になるということは全く同じ意見でございまして、特にその絡みで特定共同事業の在り方について議論するということが中心的課題だろうと思いますので、その面でやっていきたいと思っております。これまでのWTOでの議論、それから二国間のいろいろな規制等の流れを見ますと、この絡みで、例えばパートナーシップの問題であるとか、その他のこれに関連する問題もございまして、特定共同事業の在り方について議論していくということが中心にはなってくるんだと思いますけれども、それに関連するいろいろな諸般の問題についても、適宜必要に応じて取り上げる。特にヒアリング等の過程において、何かその要望がなされたりしている場合に、それは特定共同事業の推進ということと直接関係ないから、今回のヒアリング対象にはならないと、そういうふうな形で議論、意見交換の範囲が定められることが少なくともないようにしていく必要があるのではないかと考えておりまして、そういう意味で特定共同事業の在り方に関連する外国法事務弁護士関係、いろんな議論も必要に応じて時間の許す範囲でできるということでいければと思います。

【柏木座長】ありがとうございました。多分それは2番の弁護士の国際化への対応強化ということにすべて関連してくるんじゃないかという気がしますので、ヒアリングにおきましても、適宜そういう問題は是非取り上げたいと思っております。

【久保利委員】今の下川委員の発言とも絡むんですけれども、意見書を見ますと、国際化への問題というのは、何か所にも分かれて書いてあります。その中で53ページに国際化への対応第3というのがありまして、その中で書かれているものとしては、例えば知的財産権関係では、総合的な対応強化という、国際的な民事事件の増大に対応するためという記載もあるわけです。
 その後には、法整備支援の推進というのが、54ページの3というところで「発展途上国に対する法整備支援を推進すべきである」というのがありまして、そして55ページで弁護士の国際化という中の2番目の項目として、「特定共同事業の要件緩和等を行うべきである」というのが出てくる。少なくとも意見書の中で見ますと、82ページの方にこの関係のものが出てくるわけありますけれども、専門性とか、それと絡んで国際化という話。
 これを見ていると、具体的立法につながっているものかというのは別にいたしますと、少なくともこの検討会で議論をするテーマとしては、かなりいろんなテーマがあって、その枠というのは、かなり広がりを持ったものなのではないか。そういう意味では今日の検討会のメンバーをいろいろ拝察するに、外弁問題の専門家というよりは、企業法務の方あり、中小企業の方ありで、むしろ弁護士の国際化をどうしていくか、あるいは法整備支援をどうしていくかという、もう少し違う切り口のものについての意見書もかなり触れていますので、そういう意味で外弁問題というのを、中心テーマというふうに、中心の1つであっても結構だと思うんですが、もう少し前広で、かつバラエティーに富んだ組み合わせ方を、座長の方で事務局とも御相談いただいて、組み合わせを考えていただけないだろうかというお願いでございまして、進行の具合、スケジュールの問題、さまざまな問題があることはよく理解できますけれども、是非それをお願いしたい。そうでないと、外弁問題だけに限られてしまうと、余り発言することがないという委員もいらっしゃるんじゃないかと思ったものですから、一言あえて苦言を。

【松川事務局次長】ちょっとよろしいでしょうか。御趣旨は非常によくわかっておるつもりでありまして、いろんな先生方から御発言がありましたように、この問題はいろんな分野に関わりがあることでございますので、意見書の中で中心課題にはなっておりますけれども、その背景となる事項はいろんなところに置いておくという意味では、非常に関連するということで、議論としてはいろんな関連する事項を活発に議論していただくということは有益ではないかと思いますけれども、ただ、具体的な課題である関係上から、一応その中心課題になってくることは念頭に置いていただきたいということでありますので、外弁の問題のところだけを議論するということではなくて、中心課題であるということを認識していただいた上で、いろんな角度から御検討いただくというふうに御理解をいただきたいと思います。

【道垣内委員】久保利委員のおっしゃったことを私の角度から申し上げてみたいんですが、外弁法は大切ということはよくわかりましたけれども、法整備支援につきましては、日本法はしっかりしているけれども、そうではない国があるので支援をするという立場のようです。しかし、果たしてそれでいいのかどうか。国際化という観点から日本法を横に切って検討してみる必要があるのではないでしょうか。最近は特にいろいろな個別の法律は改正され、新規立法されて相当に国際化しつつあるように思いますけれども、そのような個別の対処ではなく、全体を横断的に検討してもっと国際化したらいいんじゃないかと思う次第です。そういった検討項目があってもよろしいんじゃないかと思うわけです。
 それは内容と形式がございまして、内容につきましては、最近いろんな法律ができています。例えば消費者契約法とか、特定商品販売法とか特定の金融商品の販売規制の法律とかありますが、それらの法律が国際的な取引にどう適用されるのかは何の明文の規定もなくてよく分からない状態です。インターネットの世の中で、国境を意識せずに取引をしているにもかかわらず、法の適用関係がよくわからないというのが多々できてきておりまして、それは従来からそうですけれども、そういうことを放置したままでいいのかどうかは、全体を横断的に見て考えたらいいんじゃないかと思います。
 それから、形式の方ですが、これは日本語でしか日本法は存在しないのは当然でございますけれども、もう少し世界にわかる言語で情報提供ができないのか。勿論、政府の仕事としてやるのは難しいかもしれませんが、そういった情報提供をするところに助成をするとか、いろんなやり方があると思います。
 具体的には外国法文献センターというのが東大にあるんですが、外国法の情報を日本に取り込むということを精力的にしている機関で、そこには国からも予算が付いておりますが、日本法の情報を外に出すための組織はないですし、特にそのためのお金というのは用意されていないと思います。以上の通り、日本法の内容と形式の双方についての国際化ということも必要だというメッセージを発する場としても、この検討会は存在意義としてあるんではないかと思います。

【柏木座長】ありがとうございました。お話を聞いていますと、多々、問題がありまして、このスケジュールの中で収め切れるかというのは心配になってまいりますけれども、私も事務局と相談しながら、なるべく広い範囲の問題を取り上げるようにしたいと思います。

【下條委員】今、道垣内先生がおっしゃったことに全く賛成でして、現在、私、道垣内先生と一緒にほかの法制審で国際管轄条約のことをやっていますけれども、そういうことをやっていても、道垣内先生は勿論御専門ですけれども、やはり日本の民事訴訟法が余りにも国際化されていないとか、2番目に「弁護士(法曹)の国際化への対応強化」とありますけれども、いろんな法制度の国際化、こういったものも非常に大事じゃないかと思います。卑近な例を挙げれば、例えば、外国に対して訴状を出そうとすると、ハーグ条約か何かに従ってやるとなると、6か月か7か月かかる。これは今の時代に全くそぐわないというか、そういう面もあります。
 よくアメリカなどですと、訴状受領の代理人がありますけれども、日本ではその効果は認められないとか、そういった世界標準から見て非常に遅れている面があるんじゃないかということで、2番目の法曹の国際化というのは、法制度の国際化等も含んだ幅広い議論にしていただきたいと思っています。

【齊藤参事官】決して皆さんの御意見に水を差すつもりはないんですが、一応推進本部は3年間の時限で設置されておりまして、その間にもろもろの課題を措置しなければいけないという使命を負っております。したがいまして、検討事項として、確実に成果を求めるべきものと、それから議論というものをめり張りを付けて検討会を進めていく必要があろうかと考えております。
 議論自体は一定の制約を課したり、議論に一定のタブーの領域を設けてしまうということでは、議論自体がスムーズに有益な成果を生み難いと思いますので、議論していく広がりというのは、広目にお考えいただいて結構だと思うんですが、一方で検討事項として具体的な成果を目指すべきもの、これとのめり張りはこれからも事務局としても座長とよく相談してまいりますけれども、その辺のバランスというか、めり張りは是非念頭に置いて検討会での検討に御参加いただきたいと思います。

【柏木座長】私も国際取引法などをやっておりますと、日本の法律の国際化が非常に遅れている。一番基本的な民法ですら、外国人に示してわかっていただけるような英訳ができていないというのは非常に大きな問題だろうという気がするんです。まさに訴状の送達でも6か月か7か月掛かる。訴状の送達代理人を置けないとか、大変な問題があるんですけれども、これを全部やっていますと、大変な時間が掛かってしまうわけですがら、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進ということを中心に進めざるを得ないのではないかということを考えております。
 久保利委員がおっしゃられたこともその間のバランスの問題だろうという気がするんで、余り外国法事務弁護士問題ばかり議論していても生産的ではないのではないかということだろうと思います。これにつきましては、事務局と打ち合わせをして、バランスのいい検討会としたいと思っております。
 先ほど知的財産権についても触れられていましたが、玉井委員、何か御意見ございませんか。

【玉井委員】国際化というのは知的財産権にとっても大変重要な問題だと思っております。時代に即応した制度の整備ができませんと、企業は特許を取る際に重要なものであれば外国でも出願しますので、日本の法が整備されていませんと、真っ先にアメリカで取って、それを基にして英語から日本語に訳して日本の特許庁に出すということが普通に行われるようになります。裁判についても同様です。これでは法務サービスの空洞化がどんどん進むということになりまして、国際競争力にも関わることです。またそういう視点で、例えば弁護士の国際化につきましても、外国での経験がある人がロースクールに入りたいという場合に、3年間という修業年限が要るのかといったことも議論していくべきではないかと思います。

【久保利委員】意見書の54ページに「民事司法の国際化」というのがはっきりと書いてあって、ここに括弧書きで各ポイントがあって、そのうちの1つが、今、玉井先生もおっしゃった国際的な民事事件の増大に対応するため、知的財産権関係事件の総合的な対応強化を始め、民事司法制度を一層充実・迅速化すべきであるとなっていて、民事訴訟の充実・迅速化は国際的な民事事件の増大という意味で、国際化をにらんだ上での話なんです。
 そういう意味で、これも意見書で十分国際化の問題で議論すべきと言っている問題ですから、決してないがしろにしないでいただきたい。くどくなって申し訳ありませんけれども、是非その点を御留意いただきたいというお願いなんでございます。

【バイヤー委員】私も久保利先生が言っていることには賛成しますけれども、やはりコモンローヤーの立場から見ると、1つの問題を直せば、あとの問題は自動的に少しずつ直ってくると思っています。私にとって外弁問題は、その言葉は余り好きじゃないけれども、問題がある。日本の弁護士と外国の弁護士がもうちょっと協働ができることになったら、日本の弁護士でも考え方が少し国際ビジネスの考え方になるから、当然に民事問題も民法問題も少しずつ直ってくると思う。その分析のやり方が変わるから。だから、今、やっている3つのポイントは、フォーカスをすれば、後のものは自動的に直ってくるんじゃないかと思っています。

【柏木座長】楽観的と言ってはいけませんが、中心問題を解決すれば、国際化というのはもっともっと推進されるんではないかという御意見だと伺いました。

【下條委員】今、バイヤーさんがおっしゃったのは、何か日本の弁護士と外国の弁護士の協働ができていないようなことをおっしゃったんですが、それは大きな誤解だと思います。もう既に外国法事務弁護士として登録されている方で180名近くおられますし、特定共同事業の数も約20あります。そういうことで非常に協働化というのは進んでいると思います。特に最近は特定共同事業でも、大型の特定共同事業が進んでいますので、今おっしゃったのは、まるで協働化ができていないようなことは、ちょっと私としては異議があります。

【バイヤー委員】そこまでは言うつもりはありませんでしたが、うちの会社の目から見ると、足りていない部分がありますので、私が外弁問題という言葉は好きじゃないけれども、問題がまだ残っていることは確かです。今のうちでは、15年前に比べると、よくなっているんですけれども、まだまだ完璧ではありません。

【下條委員】それはまた後ほど。

【久保利委員】誤解があってはいけないんで、私、外弁問題をやるなと言ったわけじゃないんです。これは重要なポイントとしてやるんですが、ほかにもと言って、3つのフォーカスの中、分けてもその中で知的財産権の問題等もありますよということを申し上げているだけですから、そんなに違いは私はないと思います。

【柏木座長】外弁問題に話が移ってきましたけれども、リンクレーターズにおられる乗越委員、いかがですか。

【乗越委員】私自身が外弁だからというわけではないんですけれども、バイヤー委員がおっしゃったように、ある程度私は楽観しておりまして、例えば外弁問題について話す過程で、恐らく日本の弁護士の専門性の問題でありますとか、執務体制の強化の問題でありますとか、そういう話というのは、議論の中でかなりの程度出てくるのではないかと思います。
 それから、私自身も実務をやっておりまして、下條委員がおっしゃったような問題点というのは私自身も困った問題だと思っておりますので、国際化について議論するというのは大いに賛成でございます。
 進め方といたしましては、事務局からもおっしゃったように、これについては、こういうことをすべしという明確な目標がある案件が1つございますので、それはとりあえずそれとして淡々と進めていく。その他の問題について、この検討会からどういうメッセージを出していくかということについては、座長を中心に、その議論の過程で出てきたことを何らかの形でメッセージとして出すということを別途考えていけばいいんじゃないかと私は若干楽観しております。

【西委員】私は元裁判官なんですけれども、裁判をやるときに、裁判の迅速化というのを非常に意識してまいりました。これに対しては、弁護士さんの方が非常に抵抗しまして、余り早く裁判を進めていいのかどうかという議論があった。ただ、新民事訴訟法が施行されて、今の裁判は物すごく早くなった。今、裁判の迅速化ということに対して異論を唱える方は恐らくいないんだろうと思います。
 先ほどバイヤー委員から言われたようなことは、私は現実問題としてあり得る。私はドイツに、先程の自己紹介でもお話しましたが、いかにしたら日本の裁判が早くなるかというテーマを持って行ったんです。民事訴訟法が施行されるときに、今、議論にありますように、条件整備というものができないで、ドイツ的な裁判の迅速化ができるだろうかという気がいたします。
 1例を挙げますと、ドイツの場合ですと、弁護士強制主義というのが取られます。要するに、地裁以上の事件については、全部弁護士さんを立てて訴訟をやるという仕組みになっています。そういう制度の下にあれば、裁判を早く進めていくということはできるであろうと。ところが、日本の場合はそういう形にはなっていません。ですから、裁判の迅速化というのは果たして進むんであろうかという危惧を持っていたんです。ふたを開けて、新民事訴訟法が制定されて、皆さんがその気になってやれば、非常に早くなってくる。ですから、案ずるより産むが安しという面はないわけではないんでしょうけれども、そのための諸条件を十分検討するということは必要であろうと。
 ただ、問題を考えるに当たって、これは司法制度改革の中の一貫として位置つけざるを得ないという面があります。そうすると、そちらの方のスケジュールとの関係でどうなのかという関係も恐らくあるんだろうと思います。ただ、できるだけ多くの問題を議論するということは当然必要なことだろう。ただ、そういったスケジュールもあるということも、一方では考えていかざるを得ない。基本的に皆さん言われていることも、私が今言っていることも余り変わりはないんだろうと思います。どこに重心を置くかという問題だろうと思います。そういう感想を持っております。

【柏木座長】おっしゃるとおりだと思うんです。やはり、1年も2年もというか、時間に限りがないんであれば、いろんな問題、非常に興味ある問題ですし、重要な問題ですし、それを深く討議するというのは全く問題がないことだろうと思うんですが、やはり時間が限られているということと、その中でどう時間を配分していくかということが問題になるんだろうと思います。やはり久保利委員がおっしゃられたこともよく考慮して、事務局と打ち合わせしながら次回検討しようと思っております。
 ユーザーの立場から、加藤委員、何かありませんか。

【加藤委員】まずユーザーとして私は今参加しているんだと思いますけれども、この国際化検討会というのがあって、先ほどの意見書を読ましていただいて参加した、あるいは事前にオリエンテーションもございましたけれども、そういう中で外弁法をまず取り上げるんだということについては、かなり抵抗感があったことは事実で、これだけの国際化の指摘がある中で、なぜ真っ先に外弁法を取り上げなければならないかというところに抵抗感があったことは事実でございまして、むしろ我々実務を行っていて、国際的な問題として非常に切実な問題は、先ほど久保利委員からもございました知的財産権の問題、これは海外における問題でもありますし、我が国の中での、先ほどの裁判の問題も含めてございまして、それをどういうふうにこの検討会の中で取り上げていただけるか、あるいは議論がどういう場面でできるのかということについて関心がございまして、久保利委員のおっしゃるようなことに、どちらかと言えば私自身は賛成でございます。
 今までの議論を承っていて感じることは、ほかの委員の皆さんがどうお考えかわかりませんけれども、少なくとも私のような物の考え方で、今日始めて来た者としてと言いますと、まず第一回目、あるいはこれからのスケジュール等を考えるに当たっては、国際化という観点に立って、どういう問題点があるのかという総括的な議論があって、意見書がベースであっても構いませんけれども、それがあって、その中から必然的に外弁法の問題が出てくる。これはバイヤー委員がおっしゃるように、非常に問題を整理するにおいては適当な問題なのかもしまれませんけれども、そういったことがなくて、あるスケジュールの中で外弁法の立案課題だというはっきりした問題意識がおありになるからだと思いますけれども、その途中にぽんと乗った者とすると非常に抵抗を感じするという印象を持っております。

【齊藤参事官】第2回に日本の外国法事務弁護士制度、法整備支援、こういった観点の実情を検討会の場でよく関係者から説明いただくというところから入っていくつもりでおりますので、まず問題点というのを事務局主導というだけではなくて、問題意識も委員の方々からお出しいただいて、それも十分参考にさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

【柏木座長】例えば知的財産権の問題とか、具体的な問題の指摘はあったような気がするんですけれども、そういうところも配慮しながら、まさにやっていかなければいけないと思います。
 今、加藤委員から御指摘がありましたように、この外弁問題、法曹の国際化、法整備支援、そのほかにも知的財産権の問題も含め、重要な問題が多々あると思います。そういう点についてどうぞ忌憚のない御意見をお伺いしたいと思います。

【波江野委員】既に議論が尽くされていると思いますが、国際化というときに、外弁問題のみが出てくるのは、やはり違和感がありまして、先ほどからお話がありましたように、全体をやる中で1つの具体的な方法論、切り口として、最後に外弁問題というのが集約するところで出てくるんでしょうけれども、本来の検討の流れは、久保利さんおっしゃったように意見書にある民事司法の国際化とか刑事司法の国際化というのがあって、それを実現するための1つのところに外弁問題が出てくるだろうと思っております。これは非常に議論しやすいテーマなのか、昔からやっているテーマでもある。
 それから、弁護士法というのは、法人化の問題とか外弁法の問題とか最近変わって、そこでまた主要テーマとして改めて出てくるというのはなぜかなという違和感は覚えておりました。今日は皆さん委員の方々のお話を伺って、これだけが唯一のテーマではないということがわかって、安心したというか、理解ができたという感じがいたします。

【柏木座長】ありがとうございました。国際化の問題につきましては、多角的にいろんな問題にわたって検討する必要があるというのが多分大勢ではないかという気がいたします。これにつきましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、事務局と打ち合わせながら、広い問題にわたって、外弁問題に限らず検討するようにしたいと考えております。
 今までも民事訴訟法の問題とか、日本の法律自体が国際化していないとか、いろんな御指摘がありましたけれども、ほかに国際化につきまして、こういう点が大きな問題ではないかという点を御指摘いただければと考えますけれども、いかがでございましょうか。

【乗越委員】先ほども指摘がございましたけれども、実務をやっておりまして、私どもの日本国外におりますクライアントから大きな疑問が提示されますのは、そもそも日本法というのはどういうことかわからないという非常に基本的な苦情と言いますか、質問が非常に多うございます。
 まず第一に、先ほども御指摘がありましたように、そもそも英語で読める法律か、それから、仮に特定の法律について日本語訳があったとしても、それが本当に中身がちゃんと正しい訳になっているのかというのはだれも証明してくれないし、これでは全然実務の上では、この法律を英語で読んで、それに基づいて仕事をしていいのかどうかわからないというのが最も基本的な問題でございます。
 それから、もう一つ私どもの外国のクライアントからよく出てくる話ですと、これはほかの検討会の問題になりますけれども、日本のリーガル・サービスがなかなか受けにくい。弁護士の方々、皆さん非常に忙しいようで、自分たちが考えておるようなスケジュールで取引をなかなかやってもらえないという、この2つの非常に基本的な問題を、毎日のように私どもは指摘されておるということを御紹介したいと思います。

【柏木座長】確かに日本法がわからないというのは、私は比較法政国際センターというところに所属しております。法学部の中の付属機関ですけれども、そこで外国との学問の交流を推進しているわけですけれども、少なくとも法律の面においては圧倒的な輸入超過でありまして、輸出がほとんどないんです。これは多々理由があるんですけれども、言い訳を言ってもしようがないんで、少なくとも日本の法律に関しては輸出促進というのが非常に重要なんじゃないかということを感じております。
 何か根本的に難しい点がありますね。例えば、翻訳だって、債権という言葉自体が英語にならないんです。ああいう基本的なところが英語にならないのは非常に困るんですけれども、例えばクレームとかデッツとかコントラクチュアル・ライトとか、いろいろ訳し分けると、今度は訳し分けたものが、本当は根っこは1つの債権という単語だということが伝えられなくなってしまう。非常にジレンマを感じるんですけれども、おっしゃるとおり、法律の分野については情報の発信ということが非常に不足しているのではなかろうかという気がいたします。
 日本のリーガル・サービスにつきましては、これから御議論いただく非常に大きなテーマだろうという気がいたします。

【道垣内委員】今の点、輸出という表現がよろしいかどうかわかりませんが、日本法が準拠法にされないということでは、幾ら弁護士が国際化してもどうしようもないですね。日本法のサービスしか日本の弁護士はできないわけですから。日本法が国際化してはじめて弁護士も国際化するという関係にあるのだという認識で御検討いただければと思います。

【柏木座長】確かにそうなんです。国際ファイナンスになりますと、大きなファイナンスはニューヨーク、あるいはイギリス法が準拠法という傾向が非常に強いですし、外国の人たちと付き合いますと、やはり先ほど乗越委員がおっしゃられましたように、日本の法律がよくわからない。わからないから準拠法は日本法にないんだということ、交渉の過程でそういう意見をよく聞きます。
 本当は国内の法律を国際化して、それでいい法律ができたから、例えばデラウェアの会社法みたいに皆さん使ってくださいと。日本法が使われるようになれば、日本の法律サービスも国際化されるという因果関係にはあるのかもしれませんけれども、それを順番で言ったら、何年あっても足りないんじゃないか。多分みんな歩調をそろえながら進んでいかなければいけないんではないかという気がいたします。
 そういう中でもこれからこの検討会でどういう方策を取ったら日本の法律、法制度、法律サービスがもっと国際化できるのかということを検討したいと考えております。
 ほかに御意見ございますでしょうか。

【バイヤー委員】さっき先生が言いましたとおり、場合によって翻訳ができないから、やはり国際的な分析ができる弁護士が解釈すべきだと私は思います。今は結構渉外弁護士で国際の経験がある方は結構いらっしゃられるんですけれども、経験によって制限があると思います。その制限は国際的なビジネスの考え方をまだ理解していないから、国際的な相談をやろうとするときには、ちょっと足りないと思います。
 日本の法律は翻訳ができなければ、債権のことは1行でできなければ、概念的に解釈するべきと思います。でも、その解釈しようとすれば、やはり国際的なビジネンマンだったら、相手側の人がわかるように説明しなくてはいけない。そうするためには、弁護士も国際的な考え方がわかるような気がする。先生が言ったとおりの因果関係があると思いますけれども。

【柏木座長】ちょっと外れるかもしれませんけれども、国際取引などを教えていますと、法律を教えているのか取引自体を教えているのか、ちょっとわからなくなることがありまして、取引自体、例えばプロジェクト・ファイナンスを教えますと、プロジェクト・ファイナンスの仕組みから日本の学生に教えないとどうにもならないということがありまして、ビジネスも国際化しないと法律も国際化しないという、これまた厄介な問題が入ってきます。多分ここまでは議論しないだろうという気がするんですけれども、そういう因果関係も念頭に置きながら議論はしなければいけないとは考えております。
 ほかに御意見ございますか。
 それでは、御発言もひと区切りついたようでございますので、今後の日程について事務局から御説明願います。

【齊藤参事官】既に御案内だと思いますけれども、第2回は2月25日月曜日の午前10時から12時30分を予定しております。
 第3回は、3月20日水曜日、午後2時から5時を予定しております。
 第4回以降につきましては、事務局の方で皆様の御都合につきましては、アンケートをとらしていただきます。その結果を参考にして4回以降の日程をできるだけ早目に入れさせていただきたいと考えております。
 アンケートにお答えいただくときに、海外出張とか、その他どうしても予定は変更不可能であるといったようなことがございましたらば、そういうものを添え書きにしておいていただけるとありがたいです。こちらも日程調整をさせていただくときに参考にさせていただきたいので、よろしくお願いします。
 第2回は、外国法事務弁護士制度と、法整備支援の現状等についての背景説明をするべく準備しておりますので、法務省、外務省、日弁連にそのことをお願いしております。ですから、次回はこの検討会で取り上げる主要なテーマについての勉強をさせていただくという方針でおります。
 詳細は外務省、法務省、日弁連と、それぞれの時間配分でありますとか、説明していただく事項、余り重複があっても不経済かと思いますので、そういったことの準備を第2回に向けてさせていただきたいと思っております。
 ちなみに、法務省の方から、法整備支援の御説明をいただく予定でいるんですけれども、法務省の方では国連アジア極東犯罪防止研修所、いわゆるアジ研と、法務総合研究所の国際協力部の担当者にお願いしようと思っているんですが、次回2月25日がどうしても差し支えるということですので、こちらの御担当者には第3回の3月20日に時間を取って説明をいただくようになるかと思います。
 いずれにしましても、第2回はそんな要領で準備をさせていただきますので、よろしくお願いします。
 以上でございます。

【柏木座長】それでは、これで第1回の国際化検討委員会を閉会させていただきます。本日は御協力どうもありがとうございました。