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国際化検討会(第10回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年9月12日(木)14:00〜17:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
柏木昇、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
○具体的方策の検討

5 配布資料
資料10−1 乗越委員提出資料
資料10−2 弊害防止措置等について(案)
資料10−3 特定共同事業の届出時における弁護士の職務経験年数について

6 議 事
 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について、前回に引き続き、具体的方策の検討がなされた(○:委員、□:座長、●:事務局、■:法務省、△:日弁連)。


・弊害防止措置について
(乗越委員より資料10−1について説明。事務局より、資料10−2、10−3について説明。)

○ 乗越委員の資料は、①特定共同事業の目的制限の撤廃から、④外弁による弁護士雇用の禁止の撤廃までを前提としているが、この前提は違うのではないか。前回の議論では、少なくとも、③収益分配禁止の撤廃と④雇用の禁止の撤廃については両論あったはずである。

○ 私の理解では、収益分配禁止の撤廃や雇用禁止の撤廃を含めて、大方の委員が支持していると考えているので、これらを前提として議論すべきである。弊害防止措置を考えるならば、WTO協定の規定をも踏まえ、合理的で必要最低限のものにすべきである。

○ ここ2ヶ月間に米国において、会計事務所の不祥事の問題が大きくクローズアップされてきている。このような会計事務所と提携しているローファームが、日本に進出する可能性もあるということを、大きな視野の中に考慮しなければならない。このことを踏まえれば、外弁制度改革のあり方の総論としては、共同雇用までは良いが単独雇用を認めることには反対したい。共同雇用や共同事業の自由化を前提とすれば、まず、届出制といった事前規制をどのように確立するのかという問題がある。二番目に、事後規制を実効的に行うためには、何らかの監督体制の強化や調査応諾義務が必要なのではないか。調査応諾義務については、弁護士と外弁についてパラレルで考える必要がある。弁護士と外弁の両方に対する、職務範囲逸脱行為や不当関与行為の禁止を遵守するための措置を何か考える必要がある。さらに、職務経験要件については、要件緩和を要望する意見もなく、今回規制緩和する必要はないのではないか。ただし、共同雇用を前提とした場合、被雇用弁護士に要件を課す必要はない。日弁連の調査権限の行使については、弁護士、外弁の区別なく強化すべきである。外弁が出資面だけで弁護士に協力する提携については、規制するべきではないか。

○ 不当関与の典型例①〜③については、実際に起こっているものかどうか疑問である。ヒアリングでは、危険を侵してまで、外弁が日本法に関する法律事務へ不当関与するインセンティブはないとの説明があった。日本法に関する法律事務の取扱いについて、外弁が意見を言うということは、大事なプロセスであると言うべきである。実際に特定共同事業を営む弁護士の書いた論文によれば、外弁による不当関与は「想像の産物」であるとのことである。これは、参考になる意見であると思う。③の典型例については、共同事業を営む際に、事務所弁護士と外弁がお互い話合うのは当たり前のことであり、これが不当関与になるとは理解し難い。

○ 4条との関係では①の典型例は4条違反ということになろうが、②と③の典型例については、特定共同事業制度が廃止されて、共同事業が自由化された際には、起こり得ないという理解でよいのか。

□ ①と②は、外弁が弁護士をかいらいとして使って日本法を取扱うということであろうが、そのような違反は一体起こり得るのだろうかと考えている。③の典型例についても、本来、共同事業の契約上で解決されるべきものであり、そのような契約がないことを前提として、③のような不当関与が起こるという事態は考えにくい。

○ 外弁法4条は必要であるという点は一致している。それを実効的にするために、不当関与禁止規定を置いておけばいいのではないか。足を引っ張るような規制はいけないが、この規定を置いておいても、まともな人には迷惑がかからない。

○ 英米のローファームとは力の違いがあるため、共同事業が自由化されると、共同事業の相手方の弁護士は、実質的に雇用という形で使われることになるので、それを防止するためにも5年要件は維持すべきである。共同事業の目的については、弁護士と外弁が合意すれば良いことであるから、共同事業が自由化された場合でも、②や③の典型例は生きてくるのではないか。

○ 事務局の資料の注にあるように、③の典型例は別個の事務所を経営する場合に限り規制されるのであるから、事務局の提案はこれでよろしいのではないか。

○ 不当関与禁止規定と届出制については、共同事業が自由化されても維持すべきである。また、弁護士の職務経験要件についても、要件緩和するニーズもなく、維持すべきである。その場合に、共同事業の相手方である弁護士のみに要件を課し、被雇用弁護士に要件を課さなくてもいいのではないか。綱紀懲戒手続の充実化については、弁護士側にも同じ義務に服することを条件として、外弁に調査協力義務を課すべきである。

○ 基本的に、不当関与禁止規定を活用する案には賛成である。

○ 法律上の規制は、外弁の職務範囲の逸脱を禁止する4条で足りることから、不当関与禁止規定は必要ない。共同事業が自由化された際の事業形態としては、1つの事業体と現行のようなジョイント・ベンチャーの2つだけであると予断すべきではなく、ある形態の規制について1つの事業体の場合には課さずに、ジョイント・ベンチャーの場合には課すという考え方は危険ではないかと思う。

● 立法技術的に、同じ行為を規制をするために2つの規定を置くことは、合理性を欠くという指摘はそのとおりである。しかし、現行でも、特定共同事業との関係性の下で4条違反の行為を規制する、不当関与禁止規定が存在することから、法的安定性に資するという観点からも、この規定を活用するという考え方はあり得るのではないかと考えている。

○ 外弁が4条違反の行為に及ぶ危険性を払拭するためには、現行の不当関与禁止規定のようなものではなく、共同事業の自由化は4条違反の行為を許容するものではないという趣旨の規定をおけば済むことではないのか。

○ 共同経営を認める際に、特定共同事業を前提とする不当関与禁止規定をそのまま使うという点については、やや疑問を感じる。4条の趣旨を徹底するために、別の観点で考えるべきではないか。かいらいの問題については、一つの目的を達成するために、法律事務の取扱い方針についての弁護士と外弁の間でのディスカッションはあるべきであって、かいらいのように、外弁によって弁護士が使われるという事態は想像できない。

○ 米国で弁護士資格を取得した日本人が、外弁として弁護士を使うことを視野に入れれば、かいらいという事態はあり得るのではないか。

● 日本法に関する法律事務の取扱い方針について弁護士が外弁に強要されるなど、相当イレギュラーなケースでないと不当関与の事例は想像できないと思う。

○ 強要される弁護士は、外弁との提携関係を解消すべきである。それがユーザーの期待することではないか。外弁に不当関与されながら弁護士業務を続けるという極限的な例外的な状態を、あえて法律で明記しなくてはならないのか。

□ 不当関与禁止規定は明らかに必要ないという意見と、あえて設けることもないという意見が出たが、他の委員はあっても良いという意見でよろしいか。

○ 4条違反の行為を規制する趣旨であるならば、自由化を進めて行く上でのセーフガードとして、不当関与禁止規定を置いておいても良いのではないか。極限的な例外的な不当関与について確認的に規制することについては、一定の抑止力が期待できる。

○ 今回の規制緩和の目的は、ユーザーが優良な法律サービスを受けるようにすることである。それに対して、優良でない法律サービスを提供し得る不当関与を規制することは当然のことであろうと思う。そのために、4条だけで良いのか、それとも不当関与禁止規定を置くのが良いのかということになるのではないか。いずれにしても、真っ当な関与を制限して、ユーザーが優良な法律サービスを受けることを妨げてはいけない。

○ ③の典型例については、弁護士と外弁がそれぞれ別個の事務所を経営する場合に限り規制することで良いのではないか。

○ 共同事業の目的を制限するか否かについては当事者が決めることであって、当事者が制限すると一旦決めた際に、③のような関与を法律上で規制するのは、余計なお世話ではないか。

□ ③の典型例は、弁護士がかいらいのように使われる行為を禁止する①や②のと異なり、異質な関与を規制している。現行の解釈に異論を挟むつもりはないが。

○ ③として、弁護士がある依頼者の事件を受任する際に、提携している外弁からコンフリクトの問題があるので事件受任をしないように要請されるような介入の事例は考えられるのではないか。

○ コンフリクトの問題は、まさに日本の事務所においても起こり得ることではないか。

△ プロボノ活動や国選弁護事件など、弁護士の活動として義務化されているものがある。そのような活動をするならば、特定共同事業から外れるように言われることも不当関与の事例としてあることを補足しておきたい。

□ 特に③については、もう少し分析が必要ではないか。不当関与禁止規定がユーザーが優良なサービスを受けることを妨げるようなものであってはならないという点については異論のないところだと思う。後は、立法技術的な問題であるので、この問題についての議論はこの当たりで止めたい。

○ 届出制については必要だと思うが、問題は届出事項の内容である。届出事項は、現行特定共同事業と同程度のものとすべきである。

○ 職務経験要件については、単独雇用を認める場合に、共同雇用で課さずに単独雇用に課すということの合理的な説明は難しいのではないか。弁護士法人との共同事業まで視野を広げた時に、職務経験要件を法律で書くことにどれだけ合理性があるのか疑問である。また、特定の数字を法律で書くことにどれだけ合理性があるのか疑問である。

○ 職務経験要件については、ヒアリングでも不満の声はなかった。まっとうな外弁は経験を積んだ弁護士を共同事業の相手方として望むのであって、特に大きな問題がなければ、要件を維持しても良いのではないか。

○ 制度設計の問題として、職務経験要件を設ける合理的な理由はないのではないか。不当関与のおそれや弁護士の独立性の侵害という問題は、日本の事務所においても起こり得ることであって、もし、その問題があるというならば、倫理の強化や研修の実施など弁護士の独立性を増進するような方策を考えるのが筋ではないのか。

○ 職務経験要件を設けることには疑問がある。外弁制度の創設時から今までに、外弁はどんなひどいことをしてきたのか。今までの経過を考えると、外弁が入ってくるとどういう弊害があるのか分からないから、念のため事前規制するというのが趣旨であった。この要件を撤廃することで、どれだけ顧客の利益が害されるのか。誰のために何の目的で規制するのかという点に疑問を感じる。

○ 他の世界を知らずに外弁と共同事業を営む場合と、ある程度の経験を積んで外弁と共同事業を営む場合とでは、不当関与のおそれという点では大分違うのではないか。職務経験要件を課すのは、従来の繋がりから説明がつくのではないか。

○ 外弁に課される職務経験要件が3年であるから、弁護士の職務経験要件も3年で良いのではないか。

○ 外弁が経験豊富な弁護士を共同事業の相手方として望んでいるというのは、5年の職務経験要件を積極的に認める趣旨ではないと理解している。資料10−3にあるように8年から15年ぐらいの職務経験を有する弁護士がパートナーとなっているのであり、特に法律で職務経験要件を課す必要はないのではないか。共同事業の相手方としてどのような弁護士を選択するのかは、当事者の間で自由に決めてもらえば良いのではないか。

○ ユーザーの立場からは、弁護士に職務経験要件を課すことに違和感を感じる。司法修習を終えれば1人前の弁護士として活動する人がいる一方、外弁との共同事業や雇用の場面になると実は1人前ではないということになると、1人前ではない弁護士を1人前と見せられて法律サービスを受けるように感じられる。現実の問題として、パートナー弁護士に誰を選ぶのかということと、制度設計の問題とを区別して考えるべきであり、共同事業においても雇用においても職務経験要件を課すことには反対である。

○ 弁護士会においても、弁護士登録したら1人前という建前はあるが、実際には、他者とパートナーシップを組むとか他の組織に入って活動するという形態の時に経験がゼロである点については心配がある。例えば、サービサーの取締役の推薦基準について、多くの各単位会が10年の経験を有する弁護士としている。弁護士同士の共同事業を考えた場合にも、5年以上の経験は必要であるという経験則からしても、外弁との共同事業においても5年は要件足り得るのではないか。

■ サービサーの取締役たる弁護士の職務経験要件については、法律上は規定されていない点を補足させていただきたい。

□ 職務経験要件については賛否両論があったところである。綱紀懲戒手続を充実化するという方向性としては異論がないと思う。


・共同事務所の名称のあり方について

○ 第三類型としてここで例示されている名称がその事務所で何をやっているのか端的に示す名前なのかどうか、共同事務所を「法律事務所」と称することがユーザーにとってミスリーディングな結果になるのか、見解をお伺いしたい。

○ 「法律事務所」は弁護士の業務する事務所とすぐに思いつくが、あまり名前に拘る必要はないのではないか。共同事務所の名称は「法律事務所」で良いのではないか。

○ 「法律事務所」は弁護士がサービスを提供する場所であるとユーザーが思っていることは間違いないと思う。共同事務所の名称として、弁護士と外弁が共同事業を営んでいることが分かりやすい名称が良いとは思うが、具体的にどのような名称があり得るのかアイデアはない。

○ 共同事務所の名称に長い名前は必要ないと思う。「法律事務所」で良いのではないか。

○ 共同事業の目的とする法律事務に制限のある場合には、「法律事務所」とは別の名称をつけるのが良いとは思う。

○ 共同事務所は、必ず、第三類型の名称を称さなければならないとすることには疑問がある。事務所名称は、当事者に委ねても良いのではないか。

○ 事務所名称の問題は、外弁の事務所には「外国法事務弁護士事務所」の使用を義務づけている現行法を前提として考えるべきである。

○ 共同事務所の名称は「法律事務所」で良いのではないか。

○ ジョイント・ベンチャーの形態の場合には、弁護士固有の業務について事務所の看板をかけかえることになるのか。

● ここで議論すべきなのは、目的とする法律事務に制限のない共同事業の場合には、弁護士と外弁は1つの事業を1個の事務所において共同経営することになるので、その事務所の名称をどうするのかという点である。目的とする法律事務を限定する共同事業の場合には、弁護士側は独自に営む事業部分があるために、弁護士事務所は独立している必要があるため、弁護士事務所と外弁事務所とは独立することになり、事務所名称は従来どおりになると考えている。

○ 現行と同様に、共同事務所の名称中には、外弁の所属事業体の名称を使用することを認めるべきである。


・外弁と弁護士法人との共同事業のあり方について

○ 外弁と弁護士法人との共同事業は、もちろん認めるべきである。その場合に、二重事務所禁止の問題について、弁護士法人と個人事業主たる弁護士との間で整合性を保つべきである。つまり、弁護士法人と同様に個人事業主の弁護士にも支店を認めるべきである。

○ 共同事業を営む弁護士法人の社員には、5年以上の職務経験要件を満たす弁護士が1人いれば足りると思う。

○ 私もそう思う。

○ 弁護士法人の社員弁護士に職務経験要件を課すと、要件を満たす弁護士が欠けた場合には共同事業を解消せざるを得なくなり、不安定な制度とはならないか。

○ 社員1人の弁護士法人も認められているのだから、個人事業主たる弁護士との共同事業との整合性をとるべきである。

○ 職務経験要件を満たす社員弁護士が1人いれば良いのではないか。

○ 共同事務所の名称のあり方について、個人事業主たる弁護士と弁護士法人との間で差をつけなければならない理由は見出せない。

○ 弁護士法人の名称については、外弁の所属事業体の名称を使用してはならないという規制があるので、弁護士法人の名称と共同事務所たる法律事務所の名称とは異なる可能性がある。そのことをどう評価するのかという問題が残ることを指摘しておきたい。

○ 弁護士法人との共同事業を許容するとなると、事件受任、法律事務の遂行、責任のあり方等の検討すべき問題がある。

● 弁護士法人との共同事業については、論理的に不可能であるということは恐らくないとは思うが、いくつか検討すべき課題があるので、それらがうまくクリアできれば、共同事業を容認する方向で宜しいのではないかと考えている。名称については、弁護士法人と共同事務所たる法律事務所とで、別個の取扱いは可能ではないかと考えている。

(3)今後の日程

 次回(10月17日(木)14:00〜17:00)は、外弁法改正の方向性について、事務局から報告を行うこととなった。

(以上)