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国際化検討会(第10回)議事録



1 日 時
平成14年9月12日(木)14:00〜17:00

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
柏木昇、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
○具体的方策の検討

5 議 事
○柏木座長 所定の時刻になりましたので、第10回の「国際化検討会」を開催させていただきます。本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。早速ですが、今回の議事予定につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 御説明申し上げます。
 本日は、前回に引き続きまして、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進につきまして、検討を行う予定でございます。
 本日の検討の進め方ですが、特定共同事業の要件緩和等の具体的方策に関する前回までの御議論を踏まえまして、更に制度設計の細部について御検討いただきたいと存じます。
 なお、事務局といたしましては、制度設計の基本的方向性について一定の結論を得るに当たりましては、本日までの議論を十分に吟味しながら、慎重に判断してまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りたいと存じます。
 本日の検討事項としましては、弊害防止措置、共同事務所の名称の在り方、そして、弁護士法人との共同事業の在り方を考えております。
 これらの検討事項は、立法技術的な問題でもございますけれども、論点項目にも盛り込まれているものでございますので、今回検討したいと考えております。忌憚のない御意見をお聞かせいただければと考えております。
 また、制度設計の細部についての検討の後、時間の許す限り、弁護士の国際化、法整備支援の検討の進め方につきまして、自由に御討論いただく時間を設けたいとも考えておりますので、よろしくお願いします。
 本日の検討の進め方につきましては、以上でございます。

○柏木座長 それでは、まず初めに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 まず、資料10−1、これは乗越委員から提出していただいた資料でございます。概略は後ほど乗越委員から御説明いただくことになっております。
 資料10−2は、「弊害防止措置等について」の案でございます。
 資料10−3、これは特定共同事業の届出時における弁護士の経験年数についてのデータでございまして、日弁連の方で調べていただいたデータでございます。後ほどの御議論の際に参考にしていただきたいと思います。
 資料は以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。
 それでは議事に入ります。まず、乗越委員より弁護士と外弁との共同事業の自由化について議論のための参考資料の提出がございましたので御説明をお願いします。

○乗越委員 お手元にあります資料10−1でございますけれども、前回の国際化検討会で、特定共同事業の目的制限の撤廃、弁護士と外弁の共同事業の禁止の撤廃、弁護士と外弁の収益分配禁止の撤廃、それから外弁による弁護士の雇用禁止の撤廃について議論がありました。
 仮に、撤廃の方向で物事が進む場合に、法律あるいはその他の規則にどのような変更が必要となるのかということを簡単に考察しましたのが、このメモの趣旨でございます。
 検討に当たりましては、前提といたしまして、外弁は弁護士と同じ規律に服する弁護士会の会員であって、取り扱う法律に違いはあるけれども、基本的には弁護士と同じ権利義務を持っているべきものである。したがって、規制は合理的な必要最小限のものにとどめられるべきであるということを前提といたしました。
 それから、このメモを作成するに当たりましては、さきほど申しました4点について自由化を求める弁護士の方々の協力を得たことを付言いたします。
 具体的にどういうふうなことを考えましたかということをかいつまんで短く申し上げます。まず、少し弁護士法について見てみました。それにつきましては、名称の問題だけが多分要検討ではないかというふうに考えましたけれども、私が伺ったところでは、弁護士法第20条第1項にあります規定は、弁護士事務所を法律事務所と言わなければならないという義務を課したものではないというふうに伺いましたので、そういう前提であれば、仮に外弁による弁護士の雇用を認めるということになったとしても、弁護士が外国法事務弁護士事務所と称する事務所に勤務すること自体が弁護士法に反することにはならないので、弁護士法については変えることはないのではないかというふうに考えました。
 他方で、外弁法につきましては、幾つかの条項について検討しなければならないというふうに思います。まず、メモの3ページの2のAと書いてありますところですけれども、外弁法第45条第1項、これは主に名称の問題でございます。本日、後で議論されますので、そのときにまた発言申し上げようかと思いますけれども、基本的には利用者の立場から、事務所は何をやっているのかということが最もわかりやすい呼び方を認めるべきではないか、そういう呼び方をすることを排除すべきではないのではないかということは基本的に私どもが考えたことでございます。
 それから2番目に第49条、これは外弁による弁護士の雇用及び外弁と弁護士の共同事業について原則禁止という条項でございます。前回の議論の方向からして、これを自由化するということであれば、これは当然に削除されるべきものであるというふうに考えます。
 3番目に、第49条の2項、これは特定共同事業に関する規定でございますので、共同事業が基本的に自由化ということになる以上、この条項も不必要になるのではないかというふうに考えます。
 特に、共同事業の相手方に関する不当な関与を禁止する第3項につきましては、不当関与は弁護士と外弁との共同事業特有の問題ではあり得ないものであると考えますので、弁護士及び外弁の職務の遂行に関するルールあるいは倫理規定の問題として検討すべきものであって、共同事業のやり方の枠組みについてのルールの問題として処理すべきではないというふうに考えますので、第3項についても削除することを相当と考えます。
 ④に書いてあります第49条の3ですけれども、これは特定共同事業に関する届出の問題です。勿論、弁護士と外弁との共同事業が行われることを弁護士会として知る必要があるということは理解いたしますので、それが必要な限りで、本条は改正して残すべきであるというふうに考えます。その場合、届出の内容というのは、当然のことながら、目的に沿った合理的な範囲にすべきであるというふうに考えております。
 第49条の4は、これは名称の問題でして、第45条と一緒に、後ほど検討していくときに触れることがあると思います。
 同様に第61条の問題も名称の問題に触れますので、一緒に考えればいいのではないかというふうに考えました。
 そのほかの日弁連の会則、その他のルールについても、若干検討いたしましたけれども、考え方としては、今申し上げたことと同様ですので、今、ここでは触れないことといたします。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。ただいまの乗越委員の御説明につきまして、何か御意見、御質問がございましたらお願いします。

○下條委員 まず最初に、乗越委員のメモと書かれてある第1ページで、第1の1.①、②、③、④、この4つについて、すべて撤廃を前提としてこれをつくられているということについては、ちょっと前提が違うのではなかろうかというふうに考えます。
 特に、③の収益分配の禁止については両論あったかと思いますので、これを、「撤廃を前提」とするのはおかしいのではなかろうかと思います。
 それから④については、外弁による弁護士雇用の禁止の撤廃、これも、やはり単独雇用というのは問題があるということで、両論ありましたし、それとこれはそもそも外弁法第4条の外弁が職務範囲を超えてはならないという禁止にもかかわることですので、その点から見てもそれを撤廃を前提とするという点はやはり問題ではなかろうかとというふうに考えます。
 それからもう一つ、第1の2のところにありますけれども、基本的に外国法事務弁護士は、弁護士と同じ権利義務を有しているというふうにおっしゃられていますけれども、ここのところも、やはり少し問題でありまして、例えば、日弁連の総会における議決権とか、そういうことを取りましても、現在、外国法事務弁護士の数はどんどん増えているわけですけれども、仮に、今、日本弁護士の数よりも多い外弁が入ってきた場合、そうすると、日弁連の総会の議事なども外弁が考えるとおりに通ってしまうのかというような問題がございますので、外弁が弁護士と同じ権利義務を持っているという点は前提がちょっと間違っているのではなかろかというふうに考えます。もし、そういうふうにお考えになるのでしたら、やはり外弁の議決権というものは、なくするような方向も考えざるを得ないのではなかろうかというふうに思います。
 それから、1の弁護士法の改正のとのころで、外国法事務弁護士事務所に勤務する弁護士ということも考えておられますけれども、これはまさに単独雇用の問題ですから、単独雇用を認めるか認めないかという前提が1つあるということを指摘しておきたいと思います。
 それから、不当関与については、弁護士と外弁との共同事業特有の問題ではあり得ないということですけれども、不当関与という点は、やはり外弁法第4条の外弁の職務範囲の問題でもありますので、そういう意味から見て、やはり不当関与の問題は、外弁と弁護士との共同事業特有の問題と言えるのではなかろうかというふうに思います。
 とりあえず以上です。

○柏木座長 ほかに御質問ございませんか。

○下川委員 今、下條委員の方から御指摘のあった点も踏まえて、ちょっと総論的なコメントをさせていただきたいんですが、先ほどの前提、特に③と④については両論あったというような御指摘でございましたけれども、私の理解しているところでは、7月の会合において、意見の集約とか裁決ということではございませんけれども、③、④を含めて、こういう方向を支持する議論が非常にあったというふうに承知しておりますので、今回、そこをもう一回議論するというのは趣旨ではないというふうに理解しておりますけれども、それが多数の意見を占めたということを前提にして、今後の規制の在り方ということについて検討する必要があるのではないかというふうに考えておりますことを申し上げたいと思います。
 それから、乗越委員が最初の説明の中で言われて非常に重要だと思われます点が1つございまして、それはすなわち規制は合理的な必要最小限のものであるべきであるという基本的な考えに基づいているという御指摘がございました。この点に関しましては、WTOのサービス貿易交渉との関係で申し上げますと、サービス協定の中に、既に各国が課す国内規制というものは合理的、客観的かつ公平な対応で実施されることを確保するという一文の規定が既にございます。これは既にWTOの協定の中にございまして、何が合理的、客観的かつ公平な対応で実施されるかというのはまだパネル等で試されたことはない一般的な原則ではございますが、これが既に各種いろいろな国内規制に係ってくるということがまず指摘できるかと思います。更には、国内規制の絡みでいろいろと追加的な規律をつくっておこうという議論が現在進行しておりまして、その根拠になっておりますのが、GATSの6条の4項というところにあるわけでございますが、ここで、資格要件、資格の審査、事実上の基準、免許要件等に関する措置がサービス貿易に対する不必要な障害とならないことを確保するために必要な規律をこれから作成するという規定がございます。
 したがいまして、国内規制を更にいろいろと発展させて、これから規律をつくっていこうという動きがございます。その中で、例えば、客観的、透明性を有する基準でなければならないといった基準ですとか、サービスの質を確保するために必要である以上に大きな負担とならないようなものでなければならないとか、それから、免許の手続自体がサービスの提供に対する制限となってはいけない、そういう基本的な考え方が述べられております。
 こういう基本原則を踏まえて、国内規制に関しての、また国際的な規律を作成していく動きもございますので、そういう基準をクリアーできるような、透明性の高い客観的な規制にしていく必要があるということを御指摘申し上げたいと思います。

○柏木座長 ありがとうございました。そのほか、乗越委員のメモにつきまして御質問はありますか。

○久保利委員 乗越先生のメモそのものではありません。今、下川委員がおっしゃったような切口の観点から、若干申し上げたいと思うんですが、前回、7月25日があってから約2か月立とうとしているわけですけれども、その間非常に重要な流れが、あるいは動きがあったというふうに私は考えているんです。それはやはりエンロン、ワールドコム問題における会計士あるいは弁護士の果たしたといいますか、責められるべき役割、結果的にはむしろマイナスに一定の機能を果たしてしまったのではないかという反省というのがやはりアメリカにおいてもサーベンズ・オクスリー法というのができて、自己規制だけでいいのか、あるいは規制緩和という流れの中でプロフェッションの産業化というものを容認してきたけれども、本当にそれだけでいいのかというのが主として会計士について言われているわけですけれども、会計士だけではないのではないかと。
 例えば『国際商事法務』に3回連続で高柳先生が書いていますけれども、その中で、まさにエンロン問題としては、ビンソン・アンド・エルキンスというテキサスの法律事務所、これは私の調べたところによりますと、弁護士数で全米30位、売上高で全米26位の大事務所です。そういう事務所は、現在までこの事務所は日本に外弁を派遣しておりませんし、特定共同もやっていません。しかし、この26位とか30位というランキングで、我が国に今派遣している外弁の事務所を見ますと、実は人数ランキングで言うと、ビンソン・アンド・エルキンスよりも上位にいるクラスでいいますと、17の事務所が日本に進出をしている。このV&Eというふうに言いますが、それ以下でも5つの事務所が進出をしている。 一方、収入ランキングで言いますと、同順位ぐらいのものは18進出しておりまして、収入ランキングはV&E以下でも8社進出をしている。ということは、日本に進出してきている事務所にたまたまこの事務所は入っていませんけれども、そういう事務所があり得るということを想定して規制は考えなければいけないのではないでしょうか。勿論、V&Eが具体的に何をどうしたか、それが犯罪行為かどうかということについては、勿論、現在そうなっているわけではありませんし、ただ、問題になって非常に注目を集めている。
 一方、このV&Eは、自分たちが悪いのではない、むしろこれをやったのはカーク・ランド・エリスだという主張をしているというふうに高柳さんの論文に書いてありますが、そうだとすると、一体、カーク・ランド・エリスは何なんだと、これは弁護士数で29位、売上で20位、まさにV&Eと同格かそれ以上のクラスになって、これも日本には派遣をしておりません。しかし、そういう事務所が来るかもしれないということを前提に規制の問題というのは考えておく必要があるのではないか。従来、アメリカにも弁護士倫理がありますよと、日本の弁護士倫理を守る義務もありますよと、だから、そうそう心配はないという部分がありましたが、そうナイーブであっていいんだろうか、特に、今後の問題としては、今、進出している事務所が、そういう問題を起こしているというふうに私は思っておりませんけれども、そういうことも含めた規制というのはやはり対応しておく必要があるのではないかということは、やはり法的規制、特に事前規制、あるいは届出というふうなもので、きっちりとやっておく必要があるのではなかろうか、そういう意味で、公平性とか合理的というのは当然だと思いますけれども、逆に言えば、アメリカはそういう部分についてあれだけの厳しい規制をかけるということが合理的だというふうに判断をして、少なくとも会計士についてはさまざまな規制をかけているわけです。
 そういう点で考えてみると、これは単にMDPの問題で、アーサーアンダーセンは例外なんだというだけでくくれるのかどうか。そういう意味においては、これから、勿論、新しい情報も入ってくると思います。事件の発展性というのもありますから、今、ここで決める必要があるかどうかわかりませんが、大きな視野としては、その部分をやはり忘れるわけにはいかないのかなというふうに考えるわけです。
 では、外弁問題として具体的に私がこの問題をどう考えるかというと、総論としては、私は共同事業の自由化、あるいは共同雇用の解禁、これについては賛成でございます。支持をいたします。ただ、単独雇用については、どう考えてみても私は反対せざるを得ないという立場でございます。その共同雇用、あるいは共同事業を自由化するという前提で考えてみても、果たして本当にレッセフェールでそうそう自由化していいのかどうかというと、1つは事前措置をどこまで必要と考えるか、一定事項の届出、あるいは内部管理体制、これをどう確立するかという問題があるのではないか。
 2番目としては、事後規制を実効的に行うためには、何らかの監督体制の強化とか、調査応諾義務というのが必要なのではないか、勿論、調査応諾義務等については、日本の弁護士に対する日弁連の監督体制、あるいは応諾義務、こういう問題についても、パラレルに考えていかなければいけないだろうということは十分理解しているつもりです。
 そこで考えてみると、不当関与の防止措置、特にこの4条がどうしても一番問題になるわけですから、それを具体的に不当関与させることを禁止するという形になると、第49条の2、とりわけ第3項の辺りについては、一定の修正を行った上で明文を残す必要があるのではないか。特にそういう観点で考えますと、共同事業を営むすべての弁護士、これは日本弁護士ですが、及び外弁の両方に、職務外行為とか不当関与を行わないようにするための必要な措置を何か考える必要があるのではないか。
 例えば銀行法ですと、銀行法12条2の第2項というのがありますけれども、この中ではその業務に係る重要な事項の説明、その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならないというのが法律の条文であります。やはりこれは銀行不祥事等々を受けて、そのものに対するコンプライアンス体制等々をきっちりやれよということだと思いますが、そういう意味で、そのような規定を別途考える必要はないのかどうかというのは議論をしてもいいテーマではないかと考えます。
 それから、職務要件の5年ですけれども、これは別表もありますけれども、そもそも外弁そのものも、余り5年の要件に対して、これを共同事業をする上で緩和してくれということもないようですし、現実に5年くらいなければ言いたいこともちゃんと言えない、サービスもできないということのようですから、特に今回いじる必要はないのではないか。ただ、共同事業の中で雇用されるサイド、これは私は5年という制限を付ける必要は全くない。むしろ職務経験要件は要らないと考えておりまして、これは共同雇用という前提ですけれども、そういう中では、そこはむしろ外してもいいのだろうと考えております。
 あとは会則で現行の法律の中でも日弁連会則に委ねられている部分というのは、それで十分日弁連の会内で議論をして、それこそ今の合理性があるのか、公平性があるのかということを考えながら、会則の中身を決めていけばいいでしょう。しかし、調査権限の行使というのは、これは外弁のみならず、日本の弁護士に対する調査権限についても、いろいろ御批判をいただいているところもありますし、ここはやはり日弁連の実質的な機能そのものにも関わる問題ですから、ここは強化をするというのは、外弁、日弁関係なしに、私は必要なことだろうというふうに考えております。
 もう一つ、付随的な事項ですけれども、今回規制の緩和というのは、ユーザー・オリエンテッドなものでありまして、ユーザーが使いやすい、そして安心して使える。そういう意味でのできるだけ外弁と日本の弁護士が力を合わせた強力なサービス体制を敷こうということに根幹があるわけですから、そういう意味で言うと、共同して顧客サービスに当たるということが一番大事なんだろうと思います。
 その重要な観点が、共同事務所を認めた結果、例えば出資オンリーという金銭面だけそれを出して、何ら具体的なサービスにおいて日弁と外弁とが協力をするということに寄与しないような体制、それを欲してくる外弁がいるとすれば、あるいは親元事務所があるとすれば、それは規制をすべきなのではないか。したがって、単純な出資だとか、周旋対価の支払いのみを求めるというものに対しては何からの方法でそういうものは規制をする、排除をしていく。要するに、それは我々としては欲しくないんだ、むしろ日本国民、あるいは外国のユーザーに対して良いサービスを力を合わせてやってほしいという願いなんですよということを何らかの形でどこかに入れるべきでないか。
 従来、規制というとすべて悪で、規制は緩和だ撤廃だというふうに来ましたけれども、国民の法的なサービスをどのように確保するかということは、銀行に対する規制と同じように、そういう意味ではやはり一定の部分は必要だし、それを必要とする立法事実があるというふうにエンロン、ワールドコム事件以降私は考えるようになりました。
 そういう意味では、悪性なものが来ようとしたときに、勿論、法務省もきっちり管理していらっしゃるでしょうけれども、ある種の監督庁としても、日弁連としても、その付託に対して応えられるような体制なり制度なりというものは、存置する必要があるのではないか。私は共同事業、共同雇用も行ってできるだけ活性化した外弁の体制を日本国内につくりたいと思いますけれども、その点だけは一定の留保を置いておきたいということを申し上げたいと思います。
 以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。乗越委員の資料につきまして議論をしているうちに、久保利委員から非常に良い意見が出て、次の話題に移りかけていますが、エンロン事件以来、関係者のみならずプロフェッショナルに対する信頼が揺らいでいる傾向にあり、そのために弊害防止措置、事後の対策ばかりではなくて、事前の予防措置も大切だということで次の議論に入っていくのかと思います。
 念のため、乗越委員の提出されました資料につきまして、ほかに御意見がありますでしょうか。実は乗越委員の資料につきまして、言い訳するわけではありませんけれども私の理解としては、「仮に」という言葉を乗越委員がしきりと使っておられます。かなり遠慮していらっしゃると思いますので、この「仮に」ということを強くみて、まさにこれはディスカッションためのペーパーだという理解をすればよいのではないかと考えております。
 この乗越委員の資料につきましては、立法技術的な点も非常に盛り込まれておりますので、これからの議論で弊害防止措置を議論するときに、時おりリファーしたり、今後の事務局における検討につきましても、必要に応じて参考にしていただくということで次の議題に進ませていただきたいと思います。
 それでは、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進につきまして、制度設計の細部の検討を行いたいと思います。現在は、久保利委員がお話ししましたような状況にあるわけでありますけれども、今の制度を自由化するとすれば、当然その弊害防止措置というのをそれとパラレルで検討していかなければならないと思います。
 その前に、特定共同事業の要件緩和や雇用禁止の見直しに伴って、外弁が日本法に関する法律に不当に関与したり、弁護士の独立性が害されるおそれがあるという指摘がなされております。この点につきまして、一体どういうおそれがどの程度あるのかということをまず御議論いただく必要があるのではないかと思います。この点についていかがでございましょうか。
 事務局が配付した資料10−2に不当関与の典型例という説明が見られます。従来考えていた第49条の2の第3項で不当関与をしてはならないという規定があるわけですけれども、その不当関与の典型例というのは、この1、2、3の類型であるという具合に考えられてきたようであります。これについて事務局の方から説明いただけますか。

○齊藤参事官 この後資料10−2に沿いまして、御検討いただく予定でございますが、この時点で若干説明させていただきます。現行の外弁法第49条2第3項というのは、外国法事務弁護士は特定共同事業を営む場合において、当該特定共同事業に係る弁護士が自ら行う法律事務、その他の業務に不当な関与をしてはならないと規定をしているわけです。
 この規定で不当な関与というのはどういうことなのかということで、その解釈論を資料などに基づいて確認してみますと、この資料10−2の1枚目に記載してありますように、①から③のようなケースがその典型例であると解釈されているわけです。
 1つは、特定共同事業に関わる弁護士が、特定共同事業の対象となる法律事務、その他の業務を行うに際して、その業務に外弁が関与することによって、当該外弁が自ら権限外の法律事務を取り扱っているのと同視し得るような場合、これが1つであるということです。 ②は、特定共同事業に関わる弁護士が、特定共同事業の対象とはならない法律事務、その他の業務を行うに際し、その業務に外弁が関与することによって、実質的に当該外弁が特定共同事業の対象とはならない法律事務を取り扱っているのと同視し得るような場合。この①と②は、結局、共同事業という関係の下で、相手方である弁護士に不当に関与することによって、実質的に外国法事務弁護士が自分本来の職務範囲を超えて法律事務を取り扱おうとする現象を禁止しようとしている。要約すればこのように理解できるのではないかと思います。
 ③は、外弁が特定共同事業に関わる弁護士に対して、特定共同事業の対象とはならない法律事務を取り扱うことがないように働き掛け、弁護士の職務範囲を狭める結果をもたらすような場合、このように説明されております。これは現行の外弁法の下では、特定共同事業という限度で提携・協働が許容されているわけですが、その特定共同事業を前提として、このような働き掛けは禁止しているというように理解すると理解しやすいのではないかと思います。
 つまり、特定共同事業の制度の下では、弁護士の事務所と外国法事務弁護士の事務所というのは、本来は独立しているという関係性の下で、弁護士が取り扱おうとする法律事務を、特定共同事業の範囲内のものだけに縛ろうとするような働き掛け、これは不当な関与ということで禁止するのが妥当であろう。こんな制度になっているということだと思います。

○柏木座長 ありがとうございました。私から議論を誘発するという意味で、お話をさせていただきます。
 今、事務局からこの①②③の典型例について説明がありましたけれども、私自身はこれは少し抽象的だなという印象を持ちました。
 例えば①の、特定共同事業に係る弁護士が特定共同事業の対象となる法律事務、その他の業務を行うに際し、その業務に外弁が関与することによって、実質的に当該弁護士が自らの権限外の事務を扱っている場合と同視する場合というのは具体的にどういうことなのかということです。
 例えば特定共同事業の対象となる事務の中に、純粋に日本法の問題が入ってきた。そのようなときに外弁が日本の弁護士に対してああやれ、こうやれと指示して、その日本の弁護士が手足のごとく外弁の指示に従って動いている。要するに、日本の弁護士が自分の頭は余り使わないで外弁の傀儡となっているという状況なのかという気がするんですけれども、一体どういう状況が、自ら権限外の法律事務を取り扱っているのと同視し得るような場合なのか。もっと具体的に考えるとなかなかわからないという気がするんですが、何かこれについて御意見のある方はいらっしゃいますか。

○下條委員 この①は前から申し上げておりますように、外弁が日本の弁護士を使って、自分の思うとおりの意見を出させて、それを外弁がクライアントに対して説明してしまうというようなケースが考えられるのではないかと思います。外弁としては、パートナーとしての日本弁護士と相談してやると、パートナーである日本弁護士はきちんと独立した判断でもって、そういうことは日本法ではちょっと無理なのではないかというけむたいことを言われる。そうだとすれば、むしろ自分の言うことを聞くイソ弁的な日本の弁護士を使って、そういう考えを押し付けるような形でもって、そういうことでいいな、という感じでもって、日本の弁護士を使って外弁がクライアントに対して日本法マターをアドバイスをするということがあってはならないというところから①があると思います。

○柏木座長 外弁が自分で日本法に関してクライアントに対してアドバイスしてしまう。そうすると、日本の弁護士というのは余り存在価値はなくなってしまうという状況ですか。

○下條委員 残念ながらそういう例もあると聞いております。

○齊藤参事官 議論の整理のためにちょっと説明させていただきます。現行の第49条の2の第3項で、①のような不当関与がいけないと言っているのは、これは共同事業の相手方である弁護士が自ら法律事務を取り扱うけれども、その実質が外国法事務弁護士が自ら権限外の法律事務を扱っているというふうに評価されるような場面をとらえて禁止しようとしているわけです。
 先ほど下條委員が御指摘されたような現象というのは、弊害のおそれという意味では共通のものがあるんですけれども、共同事業の相手方である弁護士や雇用している弁護士から、日本法に関する知識を得て、外国法事務弁護士が自らクライアントにリーガル・サービスを提供しようとう場面は、これは第4条そのもので直接的に外国法事務弁護士が職務範囲を逸脱しているかどうかの問題だというふうに思います。
 ですから、その辺をもう少し整理の上御議論いただいた方が、第49条の2の第3項にまつわる議論としては、適切な議論がいただけるのではないかなという気がします。

○久保利委員 余り詳細なので、この検討会で議論をずっとするのがいいのかどうかという気はしますが、第49条2の3項を見ますと、今おっしゃったように、「特定共同事業に係る弁護士が自ら行う」とわざわざ書いてあるわけです。ここは「係る弁護士が行う法律事務」と書かないで、わざとここに「自ら」という言葉2文字が入っているわけですが、その意味というのは、今参事官がおっしゃったように、はっきりさせるために、日本弁護士が自らやっていても、やるようなことに不当に関与してはいけないよという、強めのためにこの自らを入れたんだという理解になるわけですか。自らがないと、弁護士が自分で行うものか、他をしてやらしめるか、あいまいな話になってくるので、この自らというのは、日本弁護士が自らやっている作業に不当介入をしてはいけない、そのために書いた文章だという理解なのですか。この自らというのが非常にしつこいような、くどいような、何でここへ自らを入れたのかというのが私自身の疑問なんです。

○齊藤参事官 ①②の方に外弁が自らと言っているのは、突き詰めていけば、外国法事務弁護士が自分の職務範囲外の法律事務を取り扱っているとまで評価できる行為は当然禁止される。そこの部分を明確にしようとしている趣旨だと理解できると思います。

○乗越委員 ここで典型例として書かれていることが実際に起こっているかどうかというのは、起こっているという意見もあり、起こっていないという意見もありまして、水掛け論にならざるを得ないと思うんですけれども、以前にここで説明をしてもらいました人のことを思い出すべきだと思うんです。確かここに来られた外弁の方の一人が、外弁の方にはそんなことをするインセンティブは全くないのだと。なんとなれば、実質上日本法を扱うことをしてしまえば、まず第1に法律違反である。
 第2に、資格法上の問題として、法律違反になるかどうかは別にしても、損害賠償責任というのは生ずる。そういう危険をあえて冒してまで、日本法のプロである日本の弁護士の判断に介入するようなインセンティブは全くないということを言っておられたと思います。
 勿論、いろいろ案件を処理していくに当たって、日本の弁護士の方が下された判断に対して外弁の側からいろいろ意見を述べて、いやいや、これはそうじゃなくて、こういう見方もできるのではないですか、あるいはこの条項を見ていけば、こういう判断の仕方もできて、こういうふうな論理の付け方もあるのではないですかという意見をすることは当然今もありますし、あるべき姿だと思います。
 そういうプロセスの結果、日本の弁護士の方が判断を変えて、わかりました、確かにそうです、あなたの言うとおりです、これはこういうやり方でいきましょうと変えるということは当然あり得るわけで、そういうものを不当介入とはとても言えないと思うんです。ですから、そういうものか許されるという前提であれば、ここで言っている不当な関与というのが実際に弊害としてあるかというのは非常に疑問であると思います。
 それから、実際に今、共同事業をやっておられる方の意見というのは非常に重要性を持つと思うんですけれども、第二東京弁護士会の会報9月号に1つアーティクルがございました。ここで岡田弁護士が、「外資系渉外事務所の真実」という2ページのアーティクルを書かれております。実際に自分が3年間、共同事業をやってみて、介入ということはあるかと書いておられるんですが、その中で日本法の解釈や案件の解釈について、外国人弁護士に介入されたという経験は全くない。共同事業の運営もどちらが支配するという関係ではなくて、日本人同士の共同事務所と同様に互いに協力して行っており、外国人弁護士に支配されている云々は、予断と偏見を持って外から見る人たちの想像の産物でしかないと非常に強く言い切っておられまして、実際に共同事業を既にやっておられる方がそういう不当関与というのはあるのかどうかという意味では非常に参考になる意見だと思います。
 それから、③に書いてあります特定共同事業の対象とならない法律事務を取り扱うことがないように働き掛け、職務範囲を狭める結果を防ぐというのがありますけれども、これについて若干理解し難い点がございまして、そもそも共同事業を始めようとするに当たって、当事者の間でこれから何を一緒にしていこうかと検討して、合意しておくのは当然のことでして、仮に同意した内容について後になってこれを変えたいということになれば当事者で話し合うことは当たり前の話です。
 これは日本弁護士同士の事務所でもあるべきことであるし、あってよいことだと思いますので、③というのが弊害、不当関与というのが私としてはちょっと理解し難い点がございます。

○道垣内委員 この点は前にも御議論があり、そのときも私は理解が十分できなかったところなのですが、この第4条との関係で言うと、この①に書いてある例は、当然第4条違反であって書くまでもないことではないかと思います。第4条と第49条の2を合わせて読むと、日弁連の規則にもありましたけれども、共同事業の対象となる事務については、通常の関与ならしてよいと、第4条の例外を書いてあるというふうに読む読み方があると思うのです。この段階で49条の2を削除しますと、通常の関与もいけない、要するに、第4条違反になるおそれもあるという効果も出るのではないかと思うのですが、おそらくそれは第49条の2を削除しようという方の意図とは違うのではないかと思うのですが、しかし、法律の言葉だけで読む一般の方々から見ると、そのようなおそれがあるのではないかというのが1つの問題です。
 もう一つ、共同事業の目的等をなくしますと、②③の問題はもう起きてこないということでよろしいんでしょうか。今の共同事業の原則自由化ということを受け入れると、①の問題をきちんと詰めておくことがここでの課題だということでよろしいのでしょうか。この2点をお伺いしたいと思います。

○齊藤参事官 まず、2点目ですけれども、2点目は、現行の規定の解釈で不当な関与の典型例の②というのは、特定共同事業の対象とはならない法律事務に関することですから、これは当然外国法事務弁護士から見れば、第4条に違反する領域のことではないかと思います。ですから、①と②は結果的には外国法事務弁護士が自ら取り扱ってしまえば、第4条違反ということで、統一的に考えることのできる領域なのではないかと思います。

○柏木座長 自ら取り扱っているのと同視し得るというんですから、これは弁護士を傀儡として使っているという状況なのだろうと思います。そういうことが実際起こりそうなのかどうかということを実はここで御議論をいただきたいのです。
 こういう弊害防止措置をつくるためには、不当関与の、従来考えられたような態様の違反が一体本当に起こるのだろうか。想像たくましくし過ぎたのではないかということも考えられないではない。どうも私が考えても、日本の弁護士を傀儡として使って、外国の弁護士が日本法を取り扱う状況というのは余り考えられないのではないかと思うのです。
 それから、第3項につきましては、これもちょっと座長の立場を逸脱しますけれども、これも一体不当な関与なのか。パートナー同志があのお客の仕事はやめよう、客筋が悪いと業務の範囲について合意することがなぜ不当な関与なのかというのは根本的に私は疑問があります。多分、③は、そういうアグリーメントなしに始まっていたところ、強引に外弁が日本弁護士に対してあの仕事をやめろと言ったような状況を考えているのだろうなと思いますが、また、そういう状況があるのかというのはどうも私はよくわからないのです。
 ですから、今、道垣内委員の質問に対しては、49条の2第3項は第4条とオーバーラップする。ただ、一応確認的にまさに不当な関与はいけないけれども、通常の関与はいいよというニュアンスを出す効果はあるのだろうと思うのです。

○道垣内委員 ニュアンスかどうかは非常に大切なところで、私は要するに事前規制は必要だと思っているので、どういう規制がよいかはともかく、先ほど久保利委員がおっしゃったように、どのようなものが想定されるのかよくわからないけれども、しかし安全のために置けるものは置いておいた方がいいと思っているのですが、そのときに第4条があれば十分なふうにしか聞こえない例をお出しになっているのではないかと思うわけで、そうであれば第49条の2は入らないけれども、第49条の2は別の意味も本当はあるのではないですか。通常の関与はいい、第4条の例外を書いているという役割もあるのではないかということを申し上げました。

○久保利委員 まさに制度設計のときに、さきほど、第二弁護士会の岡田会員のアーティクルの話がありましたけれども、それは岡田さんはそういうふうにおっしゃるし、私は大変正しいことだろうと。それで結構だと思います。そのことと、だから法律が要らない、規制が要らないということとは別なので、勿論、法律があるから、規制かあるからやらないということなると、多分第4条がなければやる外弁はたくさんいると思うのです。ということは、第4条は必要なのだということは、多分、この場で全員一致していると思うのです。
 そうすると、第4条の機能を最も効果的に発揮させるにはどういう仕掛けが必要なのか。4条に別に刑事罰があるわけじゃないですね。現に外弁で日本からもいなくなってしまう。実際上懲戒請求も何もできません。そういうような意味から考えてみると、そこの事前規制というのをどういうふうに考えたらいいのか。その1つとして、例えば第49条の2の第3項のようなもの、あるいは私がさきほど申し上げたように銀行法第12条の2のようなもの、そういうものを置くことによって、岡田先生には何も迷惑も掛からない。乗越先生にも何の迷惑もかからない。まともな外弁さんには何の迷惑も掛からないが、しかし、いやしいことを考えてくる人に対しては、十分事前チェックとして機能するというのを我々は制度としてつくるべきなので、逆に本当に真当ないいことを考えておやりになろうという人の足を引っ張るような仕掛けだったらまずいという話になるわけで、その意味では多分第49条の2の第3項が邪魔で邪魔でしようがない。この種類のものがあったら大変困るのだという人はどこにもいらっしゃらないのではないか。そうであれば、それ以上議論しなくたって置いておけばいいじゃないか。ただし、特定共同という制度がなくなった場合に、それが通常の共同経営となった場合に、ワーディングをどうするかとか、その位置づけをどう置くかという議論はあるかもれしませんけれども、そこまで検討会で議論をするのかという感じを私はしているんです。

○下條委員 先ほどの柏木座長の疑問点ですけれども、やはりこの特定共同事業というのが、特にアメリカとかイギリスから、パートナーシップを認めろとかいった要請との調和のために設けられたというところがあるわけですけれども、そうなりますと、確かに力の違いと言いますか、アメリカやイギリスの事務所は前にも御紹介しましたように、弁護士が1,000 人とか2,000 人とか、売上げも1,000 億とか2,000 億とか、そんなところが出てきて、5年経った日本の弁護士をつかまえて、特定共同をやろうということになりますと、力の差が余りにもあり過ぎるということでもって、実質雇用と同じような形でもってなされることがあり得るのではないかというところから①②③がきていると思います。
 確かに日本の弁護士は独立でいやだったら辞めればよいではないかということはよく言われますけれども、現実問題として、5年経った弁護士が住宅ローンを抱えたり、教育費を抱えたりしていれば、そんな簡単に自分の考えを貫いて辞めるということはなかなか難しいということがあり得るのではないかと思います。
 先ほど道垣内委員がおっしゃったことですけれども、確かに共同事業の目的制限は撤廃するのですけれども、それは必ずしも外弁と日本の弁護士が共同事業をやる場合に、目的は1つでないといけないということになるものではない。つまり強制的ではない。任意的に目的を完全一致させることができるということだと思います。
 そうだとすれば、先ほど乗越委員がおっしゃったように、外国法事務弁護士と日本弁護士が共同事業を組む場合に、何を目的範囲に入れるか、それは両者が合意すればいいことでありまして、そうなると、必ずしも完全に一致するとは限らない。今の特定共同事業のようになるかもしれないし、あるいは日本弁護士が日本法マターは留保して特定共同事業に入れないかもしれない。そういうことからくれば、やはり②③の趣旨も当然今後もあり得ると考えております。

○柏木座長 ここでは外弁の日本弁護士に関する不当関与ということのおそれが具体的にどの程度あるのかということをちょっとディスカッションしたかったんですけれども、どうも私の印象としては、議論が抽象的に空転しているのではなかろうかという気がいたします。これ以上議論を続けても抽象的な議論にとどまるのではないかとおそれています。

○孝橋委員 資料10−2の1枚目の1(1)の次の3行目のところに(注)というのがありまして、「弁護士と外弁がそれぞれ別個の事務所を経営しつつ、限定された法律事務の範囲内での共同事業を行う場合に限る」とございますが、先ほど座長がおっしゃいましたように、同じ1つの事務所で共同で特に目的の制限なしに1つの事業体として日本の弁護士と外弁が事務所を経営するという経営形態になったときに、その経営方針について、この契約は不適切だから排除しろとか、そういう判断をすることについてまで規制する必要はない、この規定が意味があるのは、それぞれ別個の事務所を経営しているような場合に限るという趣旨でこの注が入っているのではないかというふうに理解していたわけですけれども、それはそれでよろしいのでしょうか。
 今、下條先生がおっしゃることで気がついたんですけれども、仮に単独雇用を認めたり、あるいは特定共同事業の目的制限を撤廃するような制度が導入されたとしても今後とも目的制限を置いた事務所というのは存在する可能性がありますが、そうすると、別個の事務所を経営しつつ、目的制限が置かれている場合に限るとか、そういう留保がある、要するに、適用範囲を限定するという形でこの不当関与禁止規定は残していくという趣旨で事務局の提案がされているのかというふうに考えていたんですが、それはそれでよろしいのでしょうか。

○柏木座長 弊害防止措置についての案ということで、これは次の議題に入ってしまいます。つまり、余りにも自由化すると、いろんな弊害が出るかもしれない。その弊害が出ているものを事前措置としてどのような弊害防止措置等があるかということでお話になったので、多分、その次の議題の弊害防止措置について事務局からも御説明いただいた方がよいのではないかという気がします。
 この資料の10−2ですけれども、事務局の方から「弊害防止措置等について」ということで、案が出ておりますので、これにつきまして、事務局の方から御説明願えますでしょうか。先ほど①から③は御説明いただきましたので、これを飛ばしてお願いいたします。

○齊藤参事官 それでは、資料10−2のペーパーをごらんください。まず弊害防止措置として、現行の外弁法第49条の2の第3項を活用してはどうかということを考えております。具体的には共同事業、または雇用との関連における外弁法4条違反の行為を注意的に規制するとともに、外弁が弁護士事務所の運営に関する事務に不当に関与する行為を規制する。このような趣旨で現行の第3項の規定を活用し得るのではないかという考え方です。
 現行の規定で不当関与の典型例とされている①②の部分、この部分は仮に共同事業が自由化されて、1つの事業を外弁と弁護士が共同で営むという場合においても、やはり外国法事務弁護士の本来の職務範囲というものには、全く変化がないわけですので、可能性としては、先ほど来のように、外国法事務弁護士の方が、弁護士を手足に使うような形で、日本法の法律事務を実質的に取り扱ってしまうという現象があり得ないとは言えないであろう。その部分は、同じように共同事業に関する規制が原則撤廃された場合でも、同じように当てはめていくことができるのではないかという発想です。
 それから、先ほど孝橋委員が御指摘の1枚目の注のところとの関係なんですが、御指摘のように、共同事業について原則自由化したとしましても、それは1つの事務所で共同事業を行うという形態も可能になるということで、関係者の選択いかんでは、現行の特定共同事業と同じような提携関係を形成するということも、これも否定されるわけではないというふうに考えております。
 そうしますと、現行の特定共同事業と同様の共同事業を営もうという関係者との関係では、現行の規定の③に該当するような不当関与形態というのが引き続き想定され得るのではないか。そうだとしたら、その部分は同じように規制しておくようにするという考えで、現行の第49条の2第第3項をうまく修正することによって共同事業自由化の場面においても、必要な規制部分というものをうまく引き継いでいくことができるのではないかという観点で考えておりますので、御意見、御議論いただきたいと思います。
 資料10−2の「弊害防止措置」の(2)ですけれども、「届出制」につきましては、弁護士及び外弁に対する指導監督を行っている日弁連、あるいは所属弁護士会による共同事業などに対する指導監督が実効的になされるようにする観点から、弁護士と外弁が共同の事業を営む場合、または外弁が弁護士を雇用し得るとなった場合に、実際に雇用しようとする場合には、結局は弁護士と一緒にということになるかもしれませんが、共同の事業または雇用に係る事項を日弁連に届け出ることを義務付けてはどうかと思います。届出事項につきましては、現行の特定共同事業に関する届出制を参考にしてはどうかと考えています。
 それから、2ページ目ですが、(3)の「弁護士の職務経験要件」も、先ほど来、議論にも出ているんですが、御検討いただきたいと思います。この弁護士の職務経験要件ですが、法律事務の取り扱いの能力、資質、倫理面での習熟が十分な弁護士というのは、通常は5年以上の職務経験を有しているような人であろうと考えられるところです。
 そして、現行特定共同事業の制度におきましては、相手方の弁護士を5年以上の職務経験を有する弁護士に限るとすることによりまして、外弁が日本法に関する法律事務へ不当に関与する危険を回避するようになっております。
 弁護士と外弁が共同の事業を営む場合、または外弁が弁護士を雇用するという場合、弁護士の側の職務経験を要求するべきかどうか。この点を改めて御検討いただければと思います。
 もし特定共同事業の制度が廃止されることになって、共同事業が原則自由化されることとなった場合に、あえてこの要件を書く必要はないのではないか。外弁は共同事業の相手方として、経験豊富な弁護士を希望するのが通常でありますから、要件を課さないことの弊害は小さいのでないか。逆にこのような考え方もあり得ると思いますので、御議論いただければと思います。
 そして、資料10−3というのは、先ほど御説明いたしましたが、特定共同事業の届出がなされた時点における弁護士の職務経験要件のデータを示しておりますので、このところで御参考にしていただければと思います。
 あと(4)で「綱紀・懲戒手続の充実化」ということを挙げてございますが、ここの点は法律上で何か手当をするということは当面考えておりませんで、日弁連の会則等において適切な手当をしていただければというふうに考えているという趣旨でございます。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。論点は幾つかありますが、例えば弊害防止措置の規定ぶりということ。それから、届出制、職務経験の要件、その他の弊害防止策ということかと思います。最初に弊害防止措置として事務局から紹介がありましたのは、現在の外弁法第49条の2の3項を活用したらいかがかということで共同事業または雇用との関係、雇用を認めるかどうかは別問題としまして、雇用が認められたと仮定した場合、その関連における外弁法4条違反の行為を注意的に規制するとともに、外弁が弁護士事務所の運営に関する事務に不当に関与する行為を規制することとしてはどうかということなんですが、この案に関しまして、御意見ございますでしょうか。

○下條委員 先ほど乗越委員がおっしゃられましたけれども、非常に乗越委員の事務所はきちんとやっておられるということで、岡田弁護士の話も出されまして、岡田弁護士の所属される事務所もきちんとやっておられるということですけれども、久保利委員がおっしゃったように、すべて外国法事務弁護士事務所がそういう形になるようにするにはどうしたらいいのかということですから、そういう意味から言いまして、変な外国法事務弁護士事務所が出てこないようにするために、事務局から御説明のあった不当関与禁止規定とか、届出制、こういったものは維持すべきであろうというふうに考えます。
 それから、3番目の弁護士の職務経験要件については、この検討会におけるヒアリングにおいても、5年要件については、むしろこれは維持すべきであるという意見だったと思いますので、特にこれを短くするとか、そういうようなニーズは全然なかったと思いますので、この5年要件も維持すべきであると思います。
 その下の注に、共同事業の場合と雇用の場合と一律に考えるべきであるというふうに書いてありますけれども、これについては私は反対でありまして、先ほど久保利委員がおっしゃられたように、パートナーとしての弁護士の職務経験要件は5年を維持して、それからイソ弁として雇用される弁護士についしては、一切要件を課さないということでよろしいのではなかろうかと思います。
 4番目の綱紀・懲戒手続の充実化につきましては、先ほどの久保利委員のおっしゃったように、やはり日本弁護士も同じ義務に服するということを条件にして、調査に協力する義務、こういうものをきちんと書くべきであると考えます。

○柏木座長 順番に議論をしたいと思います。まず、第49条の2第3項の活用ですけれども、下條委員はこの事務局案に賛成であるということだと思いますけれども、道垣内委員はどうですか。

○道垣内委員 注意的に規制するというのは、どのように書くことをおっしゃっているのでしょうか。「不当な関与」という第49条の2の、このような場合、というところを直すというのは必要だと思うんですが、第4条違反の行為を注意的に規制するということを第49条の2の中に書き込むのでしょうか。それとも第4条はそのまま生きるということでしょうか。

○齊藤参事官 詳細な条文上の表現ぶりは、これからまたいろいろ詰めないといけないかもしれません。ただ、現行の規定が弁護士が自ら行う法律事務、その他の業務に不当な関与をしてはいけないという表現ぶりで、現行法でも結局、外国法事務弁護士が職務範囲外のことをやっているのと同視し得るような行為というのは規制しているというふうに一応解釈されていますので、不当な関与という表現を何とか活かしながら注意的に外弁法4条に違反する領域のことを規制する趣旨の規定にしていけないかなということを考えているわけです。

○柏木座長 条文上第4条違反の行為を注意的に書くということでは必ずしもなくて、第49条の2を活用するという趣旨をお書きになっているということですか。第4条違反の行為をしてはいけないということをわざわざ第49条の2に書くというふうに読めますけれども、その御趣旨ではないですね。

○齊藤参事官 はい。○印のところに書いてあるのは、趣旨を説明しているだけですので、条文の表現ぶりがこういうことを書くという意味ではありません。

○柏木座長 そうすると、注意的に規制するということは、規制する内容は別に第4条で決まっているわけですね。

○久保利委員 第4条違反という中には、自ら本当に日本法をやってしまうというパターンもあるし、読み方によっては、いわゆる傀儡として使うというのもある。ところが、第4条の解釈いかんでは、注意的にはっきり傀儡もだめだよと書いておかないと、傀儡はいいように誤解する人もいるので、したがって、注意的に第49条の2の3項のように傀儡もだめだと書きましょうと。それを注意的という表現でおっしゃっているのではないですか。

○齊藤参事官 つまり、これまでは雇用とか共同事業が原則禁止されていますけれども、それが許容されることになるので、共同事業とか雇用という関係性の下での権限逸脱という危険性が出てくるので、それとの関係で同じく第4条違反ということでは共通のことなのですけれども、そういう場面を的確にとらえて注意的に規制するための規定を設けておいてはどうか。そのために活用し得る条文として、第49条の2の第3項が適当ではないかという発想なのです。

○乗越委員 2点申し上げたいと思います。
 1点は、もしも第49条の2第3項を今の文言をほぼ使ったような形で活かすのであれば、それは当然解釈の仕方としては、第4条と違うことを何か言っているのではないかと推論が働くのが当然だと思います。
 今まで議論がありましたように、では第4条と第49条の2で何が違うのかということをあえて考えようとすれば、先ほど道垣内委員がおっしゃったように、第4条についてはそもそも真当であっても、不当であっても関与はいけない。第49条の2については、特定共同事業をしている場合には、不当な関与だけは許さないけれども、真当な関与は許すというふうな理解しかできなくなってしまうのではないかと思うんですけれども、第4条はそういう真当な関与、先ほど私が答弁申し上げましたように、意見を言って、弁護士の方の見解を変えてもらうとか、そういうものは真当な関与だと思うんですけれども、そういうのまで禁止している趣旨だとはとても思えないのです。そうであるとすれば、第49条の2は、第4条に何も加える趣旨ではないと考えるのが当然であって、そうであるとすれば、同じことを言うのに2つの規定を置くというのはちょっと拙劣なやり方ではないかなという気がいたします。
 もう一点は、ここに先ほどから出ました議論として、特定共同事業のような形態の共同事業の仕方は今後当然あり得るわけだから、そういうものについては、これは引き続き意味があるのではないかという御意見もありましたけれども、共同事業を1つのエンティティーとしてやるか、それとも今の特定共同事業みたいな形でやるか、どちらか2つしかやり方がないというふうに予断するのは非常に危険だと思います。
 我々、今ここで議論している趣旨は、これから色々な形態の共同事業というのはあり得るだろうけれども、別に形態について制限は設けませんというのが趣旨ですから、こういう場合には、第49条の2について残しておく意味があるけれども、こういう場合については意味がないねという議論をするというのは非常に危険ではないかという気がします。私は第4条があれば第49条の2の第3項は必要ないと思います。

○齊藤参事官 立法技術的に純粋に考えた場合に、同じ事柄を規制するのに、2つ以上の条文を設けるということに一面、合理性を欠くという御指摘はある意味でそのとおりかと思います。
 ただし、現行の外弁法でも、先ほど来御説明しているように、この第49条2の第3項というのは、一方で第4条がありつつ、特定共同事業という関係性の下、そういう場面で相手方弁護士に何らか介入することによって、そういう手段でもって権限の逸脱という現象があり得るということを想定して、その部分を規制しようとしているわけなんです。
 これから共同事業が自由化されるという場面で、やはり同じような危険性、あるいは危惧というものは一応指摘はされていますので、その部分の不安をできるだけ払拭する意味で、現にある規定をできるだけ構造的に矛盾なく活かしていくという、これは1つの立法作業としてあり得ることではないかと思っているわけです。ですから、一面、乗越委員の御指摘は傾聴に値する御指摘だと思うのですが、事務局の方で目指している趣旨というのは、そういうところにあるわけです。

○乗越委員 もし、そういうことであれば、第49条2第3項に書くべきことは、そういうふうな文言ではなくて、いろいろ49条の2の前の条項で共同事業は認めているけれども、共同事業を認めたということは、第4条違反を許すという趣旨ではありませんよという意味の規定を置けばそれで足りるのではないかと思います。

○齊藤参事官 実は現行法として第49条の2第3項が条文そのものよりもその解釈論として、先ほど来、御説明しているような、特定共同事業の相手方の弁護士に介入することによる権限逸脱というものをまさに規制している規定だという趣旨で存在していますので、むしろ現行の規定を活かして、同じような規制の趣旨を貫いていくという方が、むしろ法的な安定性にも資するのではないか、そういう考え方も十分あり得るのではないかという発想に立っています。

○波江野委員 非常に分かったような分からないような議論が続いていまして、参加し辛かったんですけれども、まず1つ、私なりの解釈で言いますと、もともと外弁法ではこの第4条の職務範囲を超えてはいけないという規定だけがあって、これで外弁の権限としてははっきりしていた。その第49条の2というのは、特定共同事業が創設されたときに、特定共同事業の規定を入れるために枝番の2ができたわけですから、その仕組みの過程で相互の支配介入と言いますか、不当関与ということを言うために、特に第49条の2第3項というのはできたのだろうと思われます。そうしますと、今の前提の中で特定共同事業の目的規制をなくすとか、もっと進んだ共同経営を認めるかといったところの議論でいくと、この特定共同事業の条文だけでそのまま使ってよいかどうかというのは、やや疑問のような感じがいたします。事務局の資料にある「注意的に」という部分は、「こういうことは忘れてはいけないよ」という点で大事かと思うのですけれども、これをそのまま「せっかくあるから使っていいではないか」という議論は、何かぴんと来ないと言いますか、もう少し別の観点で第4条の趣旨を徹底するために共同事業を認めた場合、あるいは単独雇用を認めるか認めないか、これはまだ決まっておりませんけれども、その場合にどうするかということは、別の観点で考えるべきではないかという気が私はします。
 もう一つ、先ほどの不当な関与の件の傀儡問題ですが、大先生方を前にして言うのは非常に口幅ったいのですが、法律というのはそもそも手段であって目的ではない部分があります。一つの目的を達成するために、日本法ではこういうことはできないけれども、アメリカの法律だったらこういうやり方でできるとか、何かをやりたい場合に、日本ではそれはできないけれども、こういうやり方だったらば、次善の策としてこの程度はできるとか、いろんなディスカッションというのは当然パートナーの中であるわけで、そこの中で結論がたまたま外弁の言ったとおりになったからと言って、関与だということはないだろうと私も思いますし、傀儡のようにして、あたかも腹話術みたいに、外弁の言うことを日本人の口を使って言うということは、どうも想像できません。不当な関与というのは、この①②③というのは、例示で見るとますます分からなくなくなってしまうので、もう少し分かりやすく例示というか、御説明いただけないでしょうか。不当な関与の例として。

○久保利委員 今の波江野委員の御質問にお答えすることになるかどうかわかりませんけれども、実は今、日弁連に海外からいろいろ外弁問題で大変ですねという話がきていまして、特にアジアの各国から様々なアプローチがあるのだそうです。もし私の話が間違っていましたら、副会長も来ていますから、訂正していただいてよいのですが、実は台湾が法律的には外弁制度というのを入れるという法律がもうできてしまった。しかし弁護士会としては反対だと言って抵抗している。何で抵抗しているのですかと聞くと、向こうの場合には、アメリカの事務所が来る、来ないという問題とは全く違っていて、アメリカで資格を取った台湾人がたくさんいる。その人たちが台湾にやって来て、それが外弁として入ってきて、台湾人弁護士をまさに使用するという形で来てしまっている。しかも、依頼者はアメリカの依頼者を一杯持ってくるとなったときに、どういうふうにしたらよいだろうか。その点で日本の今の制度と言いますか、要するに外弁がやれるのは、本来の外弁単独でやれるのはそういうもので、仮に雇用をしても、その人に台湾法をやらせるわけにはいかないのだというのが大変参考になるのだということです。彼らは、まさにそれをやるのではないかということをおそれているという話がありまして、ですから、今まではアメリカ人の弁護士さんが来て、日本人を使役したって、本人自身は日本法もよく知らないわけですから、それを傀儡的に使うことはないだろうという議論はあるのですが、日本人が外国で資格を取って日本に帰ってきて、そしてその人たちが日本弁護士を使うという外弁形態というのは、相当あり得る話なのです。日本の試験がずっとばかばかしい試験をやっていましたから、向こうの方がよほど資格は取りやすかったわけで、そういう意味でのことも視野に入れて考える。今起きている、起きていないではなくて、そういうことまで視野に入れて考えると、やはり傀儡というのはあり得るのではないかという気がするのです。
 その意味では、そこまで考慮に入れて、こういう条文がよいのかどうか、確かにお話のとおり考えどころだと思いますけれども、条件の体裁とか細かいことはともかくとして、そういう事態をさせてはいけないのではないか。それは台湾だけの問題ではないような気がするということなのです。

○柏木座長 ありがとうございました。

○齊藤参事官 波江野委員の御質問に答えられるかどうか、十分ではないかもしれませんが、要は①②に挙げてあるような例というのは、なお、これは抽象的な例としか理解しにくい、理解できないという疑念だと思うのです。では、実際の生の現象としてどういう現象がこの①②に該当するのかという御質問、御疑念ではないかと思うのです。
 そういうふうに考えてみたときに、あえて私なりに想像してみますと、これは相当色々な条件が介在してきて、日本の弁護士の方が法律判断、あるいはその案件処理に専門家としての判断の自由を失うような形で、外国法事務弁護士の方から強制される。その強制ないし供用に抗することができない。そういう状況をある程度総合的に評価して、最終的に判断するようなことになるのではないかなと思います。その意味では、相当イレギュラー、異常な場面ということを想定しないと、なかなか①②に該当するような現実の実例というのは創造しにくいのかなという気はしています。

○波江野委員 国会議員が「サルは木から落ちてもサルだけれども、議員は選挙で落ちたらただの人になる」と言います。先ほど下條委員が、特定共同事業を形成して、それから脱退する自由はあるけれども、生活的な問題などで、それはなかなか難しいですよとおっしゃいました。しかし、弁護士としての資格は厳としてお持ちなわけですから、今、参事官がおっしゃったようなシチュエーションで、自分の良心を曲げてまで従わなければならないような状況になれば、それは脱退して自らの良心に従って、弁護士としての仕事をされるべきであって、そういうことがユーザーからも期待されているのではないでしょうか。これで不当な関与をされながらやっているような弁護士がいて、しかもその不当な関与をしている外国法事務弁護士がいるという構造をそのまま許すような状態ではいけないのだろうと思いますから、そこまでの極限的な例外事由までカバーしているとなれば、この法律だけでももっと色々なことまで書かなければいけない状態になるのではないかなという気がしますがそういうことではないのでしょうか。

○柏木座長 要するに、波江野委員の御意見としては、余りにも例外的なことをあたかも一般的問題であるかの如く仰々しく規定しているんじゃないか。ごく例外的なことなら、別にここまで書くことはないのではないかという御意見ですね。不当関与を受けた弁護士が事務所を辞めればいいかどうかということについては、大きな異論があって、決着がつかない問題だろうと思います。
 今お伺いしていると、乗越委員は、明らかにこれは消した方がよいという御意見で、波江野委員は、あってもぎらぎらするだけで、格好悪いから切った方がよいのではないかという御意見のようです。あとの方はいかがでしょうか。特になくした方がよいという御意見はございますか。あってもこの程度ならばよいのではないかという御意見かなと理解してよろしいですか。

○下川委員 私もいろいろ議論を伺っていたのですけれども、フルライセンスを持っている弁護士と、それからリミテッド・ライセンスの外国法事務弁護士との関係ということになりますので、免許の範囲が限られている人間がフルの権限のない部分について不当に関与してはならないというのは、第4条と基本的に同じことを言っているので、繰り返しなのですということであれば、まさに自由化を進めていく上でのセーフガード、例外措置として置いておくということも考えられるのではないかなと考えています。この場合にまさに重要なのは、不当に関与ということでありまして、道垣内先生がおっしゃったように、こういう形で共同事業とか色々な形で提携が進めば、お互いに関与することはある意味では当然の前提になってくるので、不当に、ないしはさきほど参事官がおっしゃったように、本当に局限的な状況において、例外的な形での関与というのは禁止されるのだということを確認的に規制するということには一定の抑止力というか、効果があるのではないかというふうに感じております。

○齊藤参事官 外国法事務弁護士と弁護士との関係性なんですが、経済的な格差なり優劣関係、こういったことも余り協調すると、私も弁護士の端くれとして、ちょっと情ないものですから、あえて言いにくかったのですが、やはり弁護士といえども、自分の生活の安定ということに相当響いてくるようであれば、微妙な立場になるということは、ままあり得ることで、そのことを余り表立って言うことも極めて忸怩たるものもあるわけです。
 その辺は理論的に言えば、そのこと事態は余り直接的な理由にすることはふさわしくないけれども、そういう現実の微妙な問題があるということはできるだけ御理解いただきたい。

○加藤委員 私も余り立法技術的な話はわかりませんけれども、今回の規制緩和は、結局ユーザーサイドが優良なロー・サービスを受けられるようにすることが目的ですから、それに対して優良でないサービスを提供する可能性がある不当関与を規制しようというのは当然のことだろうと思っています。それに関して、第4条だけでよいのか、第49条の2第3項までが必要なのか。その点についてはよくわかりません。
 ただ、もう一つ言いたいことは、法整備に当たって、不当関与に関連した制限を設けるということが、先ほど来お話になっている真当な関与までを制限してしまって、まさに優良なロー・サービスを受けることを制限してしまうことになるようなことだけは是非避けるべきであると思っています。

○孝橋委員 私は、傀儡の場合は第4条違反になるのではないか、第4条は、「外国法事務弁護士は」と書いてありますが、実質的にそういう評価ができれば第4条を適用できるのではないかと思っておりますので、第4条の全く同趣旨の意味で49条の2第3項の規定を置いておくことにどれだけ意味があるかは疑問であると思っているのです。ただ、権限外の行為について、特定共同事業のような目的制限がある場合とか、事務所が別々である場合に、権限外の行為をすることについて規制する必要があるという意味で、この第4条でカバーできない部分をカバーするのが第49条の2第3項であるのではないかと思っておりまして、ですから、この不当関与の典型例③の場合、それから注で書いてあることなのですが、そこまで今回の規制緩和で取り払ってしまうことはないのではないかという意味で残しておいてよいのではないかという認識を持っているのです。ちょっとほかの方と違うかもしれないと思っています。

○柏木座長 乗越委員が疑問を呈されまして、私も少し疑問があります。

○孝橋委員 私は、別個の事務所の場合であるとか共同目的が限定されている場合に、それを超えるような場合については、やはり不当関与ということになるのではないかという理解をしております。

○乗越委員 今の孝橋委員の点について少し申し上げますと、目的が限定されているときに、それを超えるようなことは不当関与とおっしゃいますけれども、そもそも目的を誰が限定したかというと、当事者同士で限定したわけですから、それについて上の方から、お前は一旦決めたのだから、こうだというのは当事者にしてみればよけいなお世話ではないかという感じがいたします。

○柏木座長 1、2は傀儡を規制して、3は、要するに、弁護士の独立の意思決定を経済的な問題など法理論以外の問題で圧力を掛けて曲げるというような、3だけが異質なことを規定しているように思えます。今までの解釈がそうだというのですから、それに対して異論をはさむつもりはないのですが。ですから、3の解釈も、具体例としてどういうことなのか、実際そんなことがあるのかどうか。乗越委員がおっしゃったように、両者が集まって、この範囲の事業だけ一緒にやろうよと言ったのに、ほかにもやれということが実際あるのかどうか、私は実際疑問だと思うのです。

○久保利委員 コンフリクションの問題ではないでしょうか。親元事務所が海外でこれこれのクライアントをやっている。日本の事務所がそれのコンペティターをやっているとか。ただし、それは目的外のところであって、何をやろうとよいではないかというのに対して、いやあれをやめろとか、あの依頼者を切れとか、この依頼者をやれとか、そういうような問題は③としては考えられるのかなと思います。あるいは目的は同じで全部入っていたとしても、日本の弁護士に対してこちら側から依頼が来て、共同事務所へ、是非海外のこれと闘ってくれと言ってきたらば、親元の方から、ひょっとするとその相手方が来るかもしれないから、お前やめておけと言われて、今なら受任できるのに、ちょっと待て、だめだと言って断る。そうすると、日本のクライアントがせっかく外弁事務所を使って、両方の共同パートナーを使って海外へ打って出ようと思ったのに、親元からの規制でやられてしまうというのは良いのか悪いのか。そういうような意味での問題はあり得るのではないでしょうか。それもよいではないか。そんなの力関係なのだから、嫌なら日本弁護士が辞めたらよいだけであって、そんなのいいでしょうという考え方も一方であると思います。

○道垣内委員 辞めたらよいではないかという話が先ほどからありますけれども、辞めざるを得ない状況に負い込まれるのは不当なことなので、辞めた後、懲戒請求でもできるような仕組みをつくる意味でも必要な規定ではないかと思うのです。

○柏木座長 今の久保利委員がおっしゃったのは、仕事を辞めたらよいというので、少しニュアンスが違うと思うんですけれども、これは実際によくありますね。例えばアメリカの法律事務所は何千人もいるようなところに行きますと、力の弱いパートナーのところに行って、受けてあげると言ったのに、シニアパートナーからお前、辞めろと言われたと言って断られた例というのは実際にありますし、これは日常茶飯事でそれがいけないのかというのが私の感覚的疑問なのです。

○乗越委員 まさに同じような点ですけれども、この問題はまさに日本の弁護士事務所の中でも起こる話でして、外弁と弁護士の関係の問題とは少し違うのではないかという気がいたします。

○日弁連 この第3項の法律事務の中で、今ここで議論されているのは、まさにビジネス・ローヤーの業務のことを頭に置いておられると思うんですけれども、日弁連の方は、いわゆるプロボノ活動と言いますか、いわゆる当番弁護士活動だとか、国選弁護だとか、色々義務化されている活動がございます。そういうものについて、それをやるのであれば、特定共同事業から君は外れろと、こういうのはまさに不当な関与になるという面もありますので、若干補足させていただきます。

○柏木座長 ありがとうございました。ですから、今の印象としましては、不当関与とか①②③とかありますけれども、特に③の面はもう少し分析が必要ではないかと思います。先ほど加藤委員がおっしゃられたことに、筋として皆さんの意見がまとまった後は、どう規定するかということになるのではないかという気がいたします。
 ということで、よろしければこの問題はこれで終わりにさせていただきまして、次に届出制ですけれども、これは資料10−2に書いてあります事務局からの提案に余り反対の方はいらっしゃらないんじゃないかと思いますけれども、勿論、内容如何で、100 ページにわたって届出をせよというのは、勿論問題だろうと思いますけれども、一応届出でもって規制をするということについては、反対はないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○乗越委員 届出自体については当然必要だと思います。監督する上で、必要だと思うんですが、要は内容の問題でして、それは当然先ほどから下川委員からも発言があるように、合理的、かつ客観的であるべきであろうし、それ以上に実質的に監督のために必要ないような情報までディスクローズさせるということはあるべきではないということを申し上げたいと思います。

○柏木座長 今の原則につきましても、総論としては異論がないのではないかという気がいたします。
 次に「弁護士の職務経験」ですけれども、これにつきましては、先ほど来少し異論が出ております。事務局からは、弁護士と外弁が共同の事業を営む場合、または外弁が弁護士を雇用する場合、これは雇用が認められると仮定しての話です。弁護士の職務経験5年の要件の在り方で、注として「共同事業の場合と雇用の場合によって基本的に一律とすべきと考える。」と規定してあります。
 下條委員、久保利委員は、共同事業の方については、5年の制限が必要ではないか、一方で、久保利委員も下條委員も、共同事業が弁護士を雇用することを前提に考えると思いますけれども、その場合には、被雇用の弁護士の方は若くてもよいのではないかというお考えだったと思います。ほかに御意見ございますでしょうか。

○久保利委員 事務局だけがこういうことを言っているのではないですか。ほかは大体一致しているのではないですか。

○下川委員 特定共同事業という枠内で考えたときに、外弁のパートナーとなる弁護士が一定の職務の経験要件が必要であろうということは、何となく合理的な規制なのかというふうにも考えていたんですけれども、これを共同雇用とか、仮に単独雇用という形で入れていった場合、バランスというのを見たときに、どういうふうに整理されるのかというのはちょっと気になっているところでありまして、共同雇用で弁護士を雇う場合には、上の部分が対等なパートナーシップでしっかりしていれば、別に若い人が入ってきても、問題ないから職務経験要件は必要ないのかもしれない。
 では、仮に単独雇用になった場合に、上が外弁だけになってしまったら、今度は共同雇用だったら大丈夫だけれども、単独雇用の場合は不当な支配を受けないように要件が必要になってくる。そうすると、単独雇用か共同雇用かによって職務経験要件が違ってくるというのは、どうも合理的に説明がしにくいなと思います。
 これは雇用の関係ですけれども、パートナーシップの場合も、論点を広げて申し訳ございませんが、特定共同、それから一つの事務所の共同事業、更にはもう一歩進んで、例えば弁護士法人と外弁事務所との共同事業みたいな話になったときに、外弁法人のすべての弁護士が5年の職務経験要件を持っていなければいけないのか。それとも、一人だけ持っていればいいのか。それとも、弁護士法人の場合は、総体としてコントロールが利くから、だれも要件がなくてもよいのか。そういうふうに視野を広げて考えていくと、5年要件というのは、法律でわざわざ書くことにどこまで合理性があるかという感じがしなくもない。これまでこの5年要件というのが余り問題になってこなかったのは、実質的にはパートナーシップを組むときに、経験を持っている相手を外弁の側も望むので、実質的にも余り障害になってこなかったし、それは合理的な判断でもって障害になってこなかったから、問題になっていなかったのかもしれませんけれども、そういうふうにいろいろと視野を広げていっていろいろな組み合わせて考えていくと、5年要件というのはどこまで合理的なのか。
 更に考え始めると、外弁は3年の職務経験でよくて、どうして弁護士の方は5年と長くなければいけないのかとか、法律に数字を書くといろいろと合理性というのが、また、疑問も出てくるということで、結論はないんですけれども、制度設計をいろいろと考えていくと、職務経験の合理性ということも、いろいろな観点から考えなければいけないのではないかと感じております。

○久保利委員 ヒアリングのときでも、5年要件については、ほとんど不満はなかったと思うのです。乗越先生もおっしゃるとおり、やはりパートナーを組むならば、それなりのキャリアが必要だというのは、逆に言うと、進出している事務所の狙いと言いますか、何のために日本で外弁をやるかということの、かなり真当な意思を持っているということの証左でもあるのではないかと思うんです。
 ですから、特に大きな問題がなければ私はこれでよろしいのだろうと思います。勿論、単独雇用の場合は、確かに下川さんがおっしゃったようなことがありますが、それは単独雇用というものを認めるからそういう問題が出るので、単独雇用を認めなければ何の問題も起きないと私は思います。

○乗越委員 確かに5年の話というのは今まで出てきませんでしたけれども、それは私の個人的な意見として、5年以下の経験を有する先生との共同事業というのは考えにくいからそうであるんですけれども、ただ、制度設計の問題として、それを制限する合理的な理由というのはあるのかというと、それはないのでないかと思っております。
 恐らく私が理解しているところでは、こういう職務経験の要件を課すというのは、外弁からの圧力に対して毅然とそれを受け止めるだけの経験と知識があることが必要であるということが理由だと思うんですけれども、それは同じことは日本の弁護士事務所の中でもあり得ることでして、自分の良心にしたがって独立性を保ってやるということは、クライアントのベスト・インタレストを考えてやるということと同じで、別に相手が誰であろうが同じ問題であると思います。
 むしろ独立性が若い人では保てないという御判断があるのであれば、それはむしろ弁護士倫理とか、仕事の在り方について研修をするとか、そういうふうなやり方で独立性を増進するような方策を考えるのが筋ではないかという気がいたします。

○孝橋委員 私は前回も、徐々に単独雇用を認めたらよいのではないかと考えを固めていったわけですけれども、単独雇用を認めるということを前提にいたしますと、職務経験要件を設ける意味については、非常に疑問があると思います。
 翻って考えますと、昭和62年にこの外国法事務弁護士制度がスタートして、徐々に緩和されてきたかと思うのですけれども、当初はどういうことになるか分からないということで色々規制を掛けてスタートした制度だと思うんですけれども、先ほど久保利先生の方からエンロン事件の話が出ましたけれども、今まで日本国内で外国法事務弁護士としてやってきた人たちが、どんなひどいことをやってきたのかということからすると、おおむねはそれなりの仕事をされてきていて、そんなにひどい問題行動というのは起こっていない。ただ、今後法曹人口が増えるにつれて、どういうことが起きるかわからないので、それについては十分な手当をすることは必要だと思うんですけれども、今までの経過からすると、先ほどもどのような弊害が起きるかということについては、それほど具体的な議論というのは深くは出てきていなかったと思います。そうすると、こういう制度を考えるときに、そもそも外国法事務弁護士の人が入ってくるとどういうことが起こるかわからないという性悪説というか、そういう警戒感をもし取り払って、専ら日本国の企業とか、日本国民のユーザーサイドの視点からこういう規制を設ける必要があるかどうかということを考えていきますと、職務経験要件を設ける必要が実際どれだけ必要があるのか疑問に思います。独立性の問題と、顧客の利益の問題というのがよく絡めて議論されておりまして、つまり、外国法事務弁護士が日本の弁護士に対していろいろ圧力をかけるために、日本の弁護士が日本法についての正しいアドバイスができなくなって、そのことが顧客の利益を害するという形で、よく話がされていたかと思うんですけれども、実際に起こりそうなのは、むしろ顧客が雇い主の方に対して圧力を掛けて、その結果、被雇用弁護士が独立性を侵害されるという事態がむしろ想定しやすくて、顧客の利益のために被雇用弁護士の独立性が害されることを心配しなければならない事態は、実はそんなに起こらないのではないかということも考えたりもしています。恐らく若い弁護士さんにとっては、そういう外国法事務弁護士の事務所で仕事をしてみたいというニーズもあるでしょうし、また、相手側にも若い弁護士を雇用するニーズがあるとして、そういうニーズ同士を結び付けた形の事務所を認めたとして、それによって顧客の利益がどれだけ害されるであろうかということを考えていきますと、5年の要件というのは本当に必要なのだろうか疑問です。実際には、外国法事務弁護士の人が日本国内でビジネスを展開する場合でも、日本の顧客のレピュテーションを高めることに努めると思いますので、それなりに立派な日本の弁護士を招いてやることになると思われますので、余りそういう実質的な機能はないのかもしれませんけれども、法律でそういう規制をかける、それを誰のために、どういう目的でかけるのかということについては、やや疑問があるという感じを持っております。

○道垣内委員 私は、単独雇用は解禁すべきでないという点を含めて、久保利委員、下條委員と同じ意見ですけれども、この5年の期間について、これが本当に必要なのかということですが、この業界、と言っても私も余り知らないので、何が不当な関与かさえわからないおそれがあるのですが、要するに研修所を出てすぐ外弁事務所に入ってしまって、そんなものか、ほかの世界を知らずにそこにしかいない人と、5年でもいいから外に出て、それから外弁事務所に行くというのとは大分違うのではないかと思うのです。どうして4年ではいけないのかと言われると、それは法律で数字を書くときにはいつもそうなので、従来のつながりから言って、第49条の2であれば5年を残しましたという説明はできるので、この方がよいのではないかと思います。
 これがなくなりますと、私が従来申し上げていましたように、別のセーフガードが要るのではないかということで、数を同等以上にしろとか、もっとおそらく抵抗が強い。従来なかったものを解禁した途端に入れるということですから。それが通りにくいとすれば、5年というところで折り合うのがいいかなと思っています。
 以上です。

○柏木座長 ほかにありますか。

○バイヤー委員 ほかの人の意見を聞くと、私の考えはラディカルかもしれませんけれども、私にとって、外国法事務弁護士になるための期間が3年間と決まっていて、多分それが決められたときに、どの程度の経験が必要かを考えられて、3年で足りると思われたのではないかと思います。外弁になるために3年で経験が足りると思われれば、同じ雇用される弁護士は3年間でよいのではないかと私は思っています。

○波江野委員 基本的に5年要件の話、さきほど久保利委員もおっしゃいましたけれども、前のヒアリングのときに、外国法事務弁護士の方も5年要件に対しては肯定的な御意見があったというふうに私も理解していますけれども、それも積極的に5年を認めるのではなく、一緒に仕事をやるパートナーとして選ぶに当たっては、能力であるとか信頼性であるとか、それから特定共同事業としての成果を上げるために必要なキャリアとしてはそういうことがあってもよいというためのものとして、5年というのを認めていたのであって、5年でなければならないということを積極的に認めたことではないだろうと思います。
 今日の10−3という資料でいただいているのは、どういう趣旨でつくられたデータかは分かりませんけれども、たまたま見ると、5年未満の人は勿論いないわけですが、8年から15年くらいまでの、弁護士を開業されて脂ののりきった、もっと上の方は脂はのっているかも分かりませんが、そういう方たちがパートナーとなってやるということは、やはりそのパートナーとして選ぶに当たって、先方もいろいろそれまでのキャリアとかを調べてやっているわけですから、特に、法律で5年という要件を決める必要はないのではないかと思います。
 それで、ここでも話題になっていますように、特定共同事業の規制を撤廃して、まさに共同事業は営めるとか、あるいは単独雇用、あるいは共同雇用を認めるといったような場合に、同じ日本の司法試験を通って、司法修習を終えた弁護士でありながら、こういうことはできるけれども、こちらはできないというような非常に立場上のアンバランスのようなものも浮かび上がってくるのではないか。バイヤー委員のおっしゃったように、5年を3年にすればどうかという、私はそういう中途半端にバナナのたたき売りをするよりは、ゼロにして自由にできるような格好にしておいて、後は、弁護士同士の選択の中で、どういう人を選ぶかということを決めてもらえばよいのではないのかなという気がいたします。

○柏木座長 ありがとうございます。

○加藤委員 5年ということについて、ある程度の経験があるものがパートナーになるのがよいのかなと感覚的には思いますけれども、改めてこういうことを議論し、ユーザーの立場で物を見ると、ちょっと違和感があります。
 どういうところかといいますと、司法修習を終了すると、基本的にはすべて一人前として認められて、現実に弁護士活動をする方も当然にいるわけです。これは何も不当でも何でもなくて、堂々と、その仕事をする人がいる。一方で、外弁との関係で共同事業あるいは雇用という場面になると、実は、一人前ではないということになる。その両面をみると、我々ユーザーは、そもそも一人前ではない弁護士を、一人前であるがごとく見せられて、ロー・サービスの提供を求めているということになっているのではないかと感じてしまいます。そこに大変な違和感があるわけです。パートナーとしてだれを選ぶのかという場合には、現実の問題として一人前なのか半人前なのか等斟酌して選別することがあるとは思いますが、制度設計として考える場合に、弁護士という1つの資格の中に、実は一人前のものと半人前のものとがあるという解釈の下に制度設計をしていくということはいかがかと思います。制度設計の場合は、現実とは峻別して、あるべき姿を前提に考えないといけないのではないか、と思います。私はこの5年の要件については、共同事業の場合であろうと雇用の場合であろうと制限を設けることには反対です。

○久保利委員 債権回収会社、サービサーと比較していいかどうかは若干疑問はありますけれども、少なくとも弁護士会としても登録ができたら一人前だという建前は確かにありますが、実際問題として、他者とパートナーシップを組んだり、他の組織の中に入って活動するという形態のときに、弁護士経験がゼロでも大丈夫かという点については実は相当心配しているわけです。サービサーの取締役になる弁護士については日弁連の中にも適格性調査に関する規則というのがありまして、各単位会でも推薦基準を設けてやっているわけですが、おそらく相当の数の単位会が10年というのを1つの基準にしていると思うんですね。場合によると5年でもいいというところもあるかもしれませんけれども、いずれにしても、サービサーの取締役として入っていくというのは、相手方がかなり悪質な債権回収のやり方をするかもしれないという前提があって、弁護士が役員になれと、取締役になれと言われているわけですけれども、そんなケースでも何でもない全く善良なところでやる場合であっても、そのファクターというのはキープしている。
 やはり外弁というのも、別に悪いことを考えているという意味ではなくて、他の組織と連携を取って、パートナーシップを組んで、そこと共同経営なり何なりをやっていくというときには、弁護士として一定の経歴というのは必要なのではないか。それがやはり世の中的に見ると、日本の弁護士でもやはり5年経たないでパートナーになる人は、日本の弁護士同士でも余りないという経験則も含めて、5年というのが1つの基準になってきたのではないか。
 ですから、全くなかったものから、今ここでつくると言えば、加藤さんおっしゃるとおり、さあ、それが本当に必要かどうかという話になると思いますが、少なくとも5年の慣行で来て、特段の異存もないというものを変に規制緩和原理主義のようなことで、これをゼロにしてしまう必要があるんだろうかという感じが私はしておりまして、他の委員会等々での推薦の基準等も考えてみると、やはり5年というのは1つのファクターたり得るのではないかというふうに思います。

○法務省 法務省の大塲でございますが、若干補足させていただきますと、サービサー法の関係でございます。皆さん御案内のとおり、サービサー法、つまり債権管理回収業に関する特別措置法、法律レベルでは、弁護士について特に経験要件というのは付されていないということを確認のために申し上げます。

○柏木座長 ただいま、5年要件につきまして賛否両論あったわけですけれども、実質的な理由としては、外国法事務弁護士の影響を排除して、独立の判断ができるためには5年くらい必要だ。サービサーのアナロジーというのは、有効なのかどうかその辺少し気になるのですけれども、いずれにしても、ほかの組織との連携を十分に図ることができるためには、ある程度の職務経験が必要であるという意見と、それから、そもそもそんなものは要らないのではないか、ほうっておいても皆さん信頼に足る経験を持った弁護士をパートナーとして選ぶのだから、規制は少ない方がよいのではないかと、こういう御意見が2つに分かれたと思います。
 その次は「綱紀・懲戒手続の充実化」ですけれども、これは先ほどの久保利委員のエンロンの話がありましたけれども、綱紀・懲戒手続を充実化することについては余り反対はないのではないか。多分、これは日弁連の規則の問題になるのではないですか。ただ、おそらく、下川委員の意見を代弁すれば、要するに、日本の弁護士と外国人弁護士と極端に差をつけてくれるなと、極端にというか、差をつけてくれるなということになるのではなかろうかと思います。
 それで、方向性としては異論がないと思いますけれども、何か御意見はございますでしょうか。
 その次に「共同事務所の名称のあり方」ですけれども、「弁護士と外弁が共同経営する事務所(共同事務所)の名称のあり方(「法律事務所」とするか、又は、第三類型の名称とするか)」、これも頭の痛い問題ですけれども、これについては御意見はいかがでしょうか。注として幾つか提案が上がっていますけれども、どれもちょっと舌を噛みそうな感じがいたします。ただ、余りポピュラーな名前ですと、例えば、国際法律事務所なんていうとどこかにありそうな気がいたしますので、まずいのではないかと思いますが。

○乗越委員 私、ここは自分でも意見がよくまとまっていないものですから、むしろユーザーの方にお聞きしたいのですけれども、「法律事務所」というのは、その組織が何をやっているかというのは一言で非常によく分かる言い方だと思うんですけれども、例えば、今ある「外国法事務弁護士事務所」という言い方とか、あるいはここに書いてあります「共同事業法律事務所」といった言い方というのをぱっとごらんになってこれが何をやっているのかというのを端的に示している言葉だというふうにお考えでしょうか。
 それから、法律が違うとは言え、どの国の法律かという差があるにせよ、どこかの国の法律を扱っているという意味で、「法律事務所」を別に弁護士事務所であろうが何であろうが差を設けずに使うということはユーザーにとって非常にミスリーディングな結果を呼ぶことになるとお考えでしょうか。ちょっとそのあたりについて御見解をお伺いしたいと思います。

○柏木座長 飛び込みで弁護士事務所に行くということはほとんどないのでしょう。皆さん紹介で行きますよね。ユーザーの立場としましていかがでしょうか。

○波江野委員 ユーザーの立場で言うと、法律事務所というのは弁護士のやっている事務所ですよというふうに認識する人は日本全国民の中でどれぐらいいるかというのが1つ問題です。私どもですと、立場上、たしか、弁護士以外は法律事務所と使ってはいけないとかという規定が弁護士法かどこかにあって、司法書士だと司法事務所という似たようなちょっと違う名前を使ったりしていますから、「法律事務所」と言えば弁護士のところですよということはすぐ思いつきます。しかし、「共同事業法律事務所」と言ったらどうですかといっても、さきほど柏木座長がおっしゃったように、「国際法律事務所」としたら、ほかにも名前がありそうだというのと、似たような「総合法律事務所」だとか「共同法律事務所」だとかいろいろありますから、余りその名前の呼び方でこだわることもないのかなと思います。これは私の個人的な感想で、同じユーザーの加藤委員は別のお考えをお持ちかもしれませれんけれども、名前で、こういうところでこだわるというのはやはり専門家集団の非常に狭い議論ではないのかなという感じが私はします。

○柏木座長 要するに、こだわることはないというのは、法律事務所は単に法律事務所で構わない、特別な名前を強制することはないということでしょうか。

○波江野委員 何となくそんな感じがしますけれども。

○柏木座長 加藤委員、いかがでしょうか。

○加藤委員 法律事務所という言葉が弁護士のロー・サービスを提供する場所と理解されているかどうかという点について、一般的にはそういうように思われていることは間違いないと思います。しかし、これが、外国法に関連するものなのか、あるいは日本法のみなのかというようなところまでを峻別してはいないと思います。そもそも私も、この検討会に参加するまでは、外国法事務弁護士を知りませんでしたから。
 それから、波江野委員もおっしゃっておられましたけれども、「共同事業法律事務所」というのが、外国法に関係しているものであってかつ共同の法律事務所であるというように理解するかというと、ちょっとそこには無理があるような気はします。
 名称については、勿論外弁との共同であるというようなことがわかりやすい名称であることはよいと思いますが、本当に舌を噛まないで済むようなうまい名前があるのかどうか。私には全くアイデアもありませんし、特段の意見もございません。

○柏木座長 やはり別の名称を強制した方がよいということでしょうか。

○加藤委員 必ずしもそうは思っておりません。それこそ舌を噛むような難しい名前の場合は、それを理解することはかえって難しいのではないかと思います。

○バイヤー委員 私も共同事業の言葉を入れることが意味があるのかどうかについて疑問があります。「外国法事務弁護士事務所」など、かなり長い名前も入れるのは必要ないのではないかと思っています。加藤委員と同じように、別によい考えはないのですけれども、ただ、「法律事務所」でその前に何を付けるかは事務所に任せてもいいのではないかと思っています。それで何か危険性がありますか。

○柏木座長 ほかに御意見ございますか。ユーザー側の意見ばかり聞いておりますけれども。久保利委員いかがですか。

○久保利委員 そんなに大したアイデアがあるわけではなくて、まあ、名前ぐらい好きに付けてもよいのではないかと思いますし。最後は「法律事務所」で別に悪くはない、「共同事業」と付いたって最後は「法律事務所」になるわけで。

○道垣内委員 先ほどの議論では、目的制限を付ける場合と付けない場合とあり得るということでした。付けない場合には100 %できるわけですから「法律事務所」でよいですが、付けている場合に「法律事務所」と言われると、やはり中身と違うのかなというふうに思うのです。その場合には何か特別の名前を付けなければいけなくて、というなるとそこで分けるというのも非常に分けにくいですね。
 ただ、目的制限のないときになぜ法律事務所と付けてはいけないかという説明はまた違うんですね。普通の法律事務所で外国法事務弁護士もいるという感じなので、重国籍よのうなものですから、完全な日本人ではないかと、外国国籍があるにしても。ですから、そこと何かちょっと区別ができたらいいかなと思います。

○バイヤー委員 できた方がよいというのは、区別ができるように何か必ずやらなくてはいけないという前提からおっしゃっているのだと思いますけれども、本当に必ず必要があるのか、私には疑問があります。共同事業の場合は私たちが外国法をやっているから名前には必ずそういうことを伝えましょうと考えているのであれば、入れてもいいのではないかと思います。別に、その言葉は入れようと思わなければ、入れなくてもいいのではないでしょうか。そこまでは共同事業に任せてもよいのではないしょうか。

○道垣内委員 それについては、現行法を前提に申し上げているので、現在の法律は、弁護士さんでないと「法律事務所」という名前を使ってはいけないと、外国法事務弁護士さんは「外国法事務弁護士事務所」という名前を使なければいけないということを残した上での議論なので、そこは何でもいいですけれども、突然にそうはならないのではないでしょうか。

○乗越委員 私が問題提起を最初に申し上げたのは、まさに現行の法律、ちょっとラディカルと言われるかもしれませんけれども、現行の法律のように規定していることがいいことなのかどうかという意味で、そこのところはどうなのかということを純粋にお聞きしたかったわけで、もしも「法律事務所」というふうなことを特に規制を設けず言わせることがわかりやすいのであれば、それでもよいのではないかという気がするのですが。

○久保利委員 逆に事務局にお聞きしたいのですが、今のように、共同事務所をA外国法事務弁護士と日本のB弁護士が共同事務所でいきましょうと言ったけれども、目的制限をしたという場合に、合体した事務所以外に制限外目的を逆に外した部分について日本の弁護士は仕事ができるわけです。こちらの共同事務所の中では共同でここまでしかやりませんよというふうになっていて、しかし、1人の弁護士が2つの事務所を持つわけにいかないから、看板を変えて何かそこではそういう特定共同事業以外の部分の事務所をまた別看板か何かを掲げることになるのですか。これは日弁連に聞いた方がよいのかもしれないですけれども。

○齊藤参事官 とりあえず私の頭で整理している範囲で御説明します。
 もしも、取り扱う法律事務の範囲に限定を設けずに1つの事業を共同で営むことにする、そういう形態を選択したときには、事業が1個なのですから、それを営むための事務所も1個という形で考えておけばよいのではないかと思います。その場合に、事務所が1つになるわけですから、その事務所の名称をどうしましょうかということが問題です。その事務所というのは、弁護士の事務所でもあり外国法事務弁護士の事務所でもある、こういう属性を備えることになりますから、まさに名称をどうしようかという問題になるということです。
 それから、取り扱う法律事務を限定しておいて、その範囲で共同事業を行いましょうという形態での共同事業を選択したときには、理論的には弁護士の固有の取り扱い得る範囲というのが別に残ると思うのですね。そうしますと、弁護士から見ると、共同事業として営むべき事業と、自ら単独で行うべき事業というのが2つできることになってしまうと思います。
 そして、弁護士が単独で営む事業の部分は、これは外国法事務弁護士とは無関係の事業ですから、その部分の事業を弁護士が営むためには、弁護士の事務所自身は独立していなければいけないという整理になるのではないかなというふうに考えているんです。そうすると、法律事務の取り扱い範囲を限定して共同事業をやるという場合には、結果的には外弁の事務所と弁護士の事務所がそれぞれ独立しているという結果になるというのが落ち着きのいいところではないか、そうすると、それぞれの事務所が独立ですから、それぞれの事務所が事務所名称を持つということで考えておけばいいのかなと、このように一応整理しているのですが、ただ、この辺はまだ、それぞれの人の頭で整理している段階にとどまるかもしれませんので、もう少しこの辺りはきちんと議論も尽くして整理をしてみたいと思っています。

○久保利委員 今の共同事務所というのは、目的制限をしない、完全共同事務所の名称問題については、どう考えるかという質問なんです。

○齊藤参事官 少なくともその場面を考えれば、名称問題というのをある意味でクリアーしておかないといけないのではないかと、そういう問題提起なんです。

○柏木座長 今までのお話をお伺いいたしますと、1つのポイントはその法律事務所と称することについてそれでよろしいかという問題なんですけれども、それについては余り反対の方はなくて、それに加えて例えば、法律外国、法律・外国法事務弁護士といった言葉を付けるのかということになるんだろうと、それで付けた方がよいという人と、ただ、どうも具体的なよいアイデアは出てこないというような意見であったかと思います。

○バイヤー委員 今、弁護士法人ができたばかりですが、弁護士法人であることは、どのようにして名前の中で伝えるのでしょうか。何か決まっていますか。弁護士法人の「○○法律事務所」に、弁護士法人であることは名前から分かりますか。

○久保利委員 弁護士法人というのは付けることになっています。

○バイヤー委員 例えば、どのようなものですか。「弁護士法人○○法律事務所」といったものですか。

○齊藤参事官 ちょっと前提として、弁護士法人の場合には、法人としての名前、名称と、その法人の事務所の名称と、区別して一応考えるべきなんだろうと思うのですね。それで、通常、実例を見ますと、事務所名は、「弁護士法人○○法律事務所」という例が多いように思います。

○バイヤー委員 でも、そのようにやらなければいけないことは決まっていないのですか。ほかの表し方もありますか。

○下條委員 それは「弁護士法人」という名称は使用しなければならないと弁護士法第30条の3に書いてあるんですね。ですから、「弁護士法人」は必ず入れなければいけない。

○バイヤー委員 ほとんどの場合は、「弁護士法人」が先にきているのですか。

○下條委員 前でも後ろでもいいのです。株式会社と同じように。そのほかにどういう名前にするか、法律事務所でも弁護士事務所でもあり得るのではないかと思います。

○柏木座長 大体名称の件につきましては御議論いただいたと思うんですが、名称の中のもう一つの問題があります。それは、外弁の所属事業体の名称を使用することができるかどうかという問題なんですけれども、時間が大分経ちましたので、お疲れではなかろうかと思いますので10分間、休憩を取りたいと思います。4時半から再開いたしますので、よろしくお願いします。

(休  憩)

○柏木座長 それでは、時間になりましたので、また議論を再開したいと思います。
 共同事務所の名称の在り方については、もう一つ問題がありまして、その共同事務所の名称の中に、外弁の所属事業体の名称を使用することができることとしてはどうかと、これについてはあまり御異論はないのではないかと想像しますけれども、いかがでございましょうか。
 要するに、共同事務所の名前の中に、アメリカのさっき出ていましたカーク・ランド・エリスとか、そういう名称を持ち得るということだろうと思います。

○下川委員 当然使えることとした方がよいと思うのですが、これは単独でも使えるのでしょうか。それは当事者の選択なのですか。

○齊藤参事官 共同事務所の名称の固有名称部分に、所属事業体の名称を使うときに、所属事業体の名称それだけで表記することも可能かということでしょうか。

○下川委員 固有名詞を2つ並べなければいけないのかということです。たくさんいる場合などには。

○齊藤参事官 それは基本的には所属事業体の名称部分を、固有名称部分にそれだけ使うということを当事者が選択するのであれば、それはそれでもよいというふうに割り切ってよろしいのかなという気がしています。

○柏木座長 ほかに議論の点はございますでしょうか。
 なければ、次に「外弁と弁護士法人との共同事業のあり方」に移りたいと思います。
 議論のポイントについて、事務局から御説明いただきます。

○齊藤参事官 本年4月から弁護士法人制度が施行されるに至っております。そこで、現行の制度の下では特定共同事業につきましても、外国法事務弁護士と弁護士法人がその制度を利用することも認められていません。しかし、今後、弁護士と外国法事務弁護士との共同事業が規制緩和される場合に、外国法事務弁護士と弁護士法人との共同事業を許容すべきかどうか、この点がまず1つ問題になろうかと思います。
 それから、先ほどの5年という職務経験要件との関係ですが、もしも個人事業主としての弁護士と、外国法事務弁護士の共同事業において、弁護士側に一定の職務経験要件を課すのだとした場合には、弁護士法人との共同事業においても、弁護士法人の社員である弁護士、経営者である弁護士との関係で職務経験要件を課することにするべきかどうか、この点が2点目でございます。
 それから、3点目としましては、外弁と弁護士法人との共同事務所というものが、仮にできるとした場合には、先ほどと同じような名称の問題が出てくるのではないかと思います。その3点が当面の論点でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。
 それでは、最初の論点ですが、「外弁と弁護士法人との共同事業を容認することの妥当性」について御議論いただきたいと思います。これを禁止するということもないのかなと思いますけれども。

○下條委員 勿論認めるべきだと思いますけれども、ただ、その前に、1つ考えないといけないのは、外弁も2つの事務所を持つことは禁止されているわけです。ところが、弁護士法人というのは支店を持つことが許されているということで、そもそも2つの事務所を持ってはいけないという規定が弁護士法にもありますけれども、それも問題なわけです。その辺りの整合性を保つような配慮は要るというふうに思っています。

○柏木座長 今の点についていかがでしょうか。もっと具体的に言えば、外弁と弁護士法人との共同事業を容認したとしても、支店は認めない、とこういうことになりますか。

○下條委員 私は弁護士法人に支店が認められている以上、例えば、私どもの事務所のように組合形式でやっている事務所でも支店を設けることはできるように、そちらの方を変えることだというふうには思っております。

○柏木座長 この点について御意見ございますか。
 そういう2つ以上の事務所について整合性を付けるという御意見がございますけれども、その御意見をサブジェクト条件といたしまして、あとは問題がないように思いますけれども、いかがですか。
 それでは、次の議題「弁護士法人の社員たる弁護士の職務要件のあり方」についてです。先ほども5年という条件につきまして賛否両論がございましたけれども、これは専ら5年という職務要件が必要であるという具合に主張された方の問題かと思いますけれども、もし、共同事業で相手方のパートナー、弁護士の資格要件として5年の経験を要求するということであれば、整合性を保つ意味でも、弁護士法人の社員に、何らかの職務経験要件を付けるべきだろうと思います。
 そのときに、問題は弁護士法人の社員全員にその要件を要求する、あるいは半分なのか、あるいは1人なのかということが問題になると思いますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。

○久保利委員 私は1人いればよいというふうに考えます。ただし、その1人が亡くなったりすると大変なことになります。しかし、それは個人と組んでも同じ話なので、弁護士法人で少なくとも今見てみますと、5年以上の人が1人もいないとか、1人しかいないというところは余りないようですので、特に外弁と組みたいという、あるいは組む能力を持っているというところでは余り問題はないのかなと思いますが、論理的には1人いればよいということになり、1人いなければだめだということになると思います。

○下條委員 私も同意見です。

○柏木座長 ほかに御意見ございますか。

○乗越委員 法人ということは、要するに、法律上人という擬制を取っているということですから、その中の構成員がどうのこうのというのはちょっと論理的におかしいのではないかということ。
 それから今、まさに久保利委員がおっしゃったように、構成員が変わることによって、これは勿論個人の共同事業でも同じなんですけれども、構成員が変わることによって、あるときから急に共同事業できるけれども、急にできなくなったとか、そういう不安定な制度をつくるというのはちょっと意味があるのか、というか、百害あって一利なしという気がいたします。

○柏木座長 ほかに御意見ありますか。

○久保利委員 ただ、1点注意しなければいけないのは、今の弁護士法人というのは1人でもできるんです。1人法人を認めているという点で、いわゆる株式会社であるとか、そういうものと同じように法人というふうに言っても、要するに、たった一人の個人が、おれは個人でやると言えば個人だし、おれは法人だと言えば法人だという点においては、オンリー・ワンでもできる法人という特殊性を考えたならば、そう法人論を振りかざすわけには私はいかないのではないかと思います。よって、法人ではあるが1人は資格が必要だというふうに申し上げたわけです。

○柏木座長 ほかに御意見ございますか。
 法人論の議論はいろいろありますけれども、多分、これは社団論から言えば、組合に近いのでしょうね。だから、やはり人的な要件はどうも捨象できないのかなという気が私はしているのですけれども。いずれにしましても、少なくともミニマム1人という御意見が多かったように思いますけれども、加藤委員、いかがですか。

○加藤委員 私は、基本的に職務経験要件は付すべきではないという立場なものですから、ちょっと。

○道垣内委員 私も実態がよくわからないのですけれども、1人いれば十分だと思います。

○柏木座長 そういうことで、職務要件が必要であるという方は、弁護士法人の中に大体1人職務要件を満たした人がいればよろしいというようなことでしょうか。
 次に、「外弁と弁護士法人の共同事務所の名称中における外弁の所属事業体の名称使用の当否」ですけれども、これについてはいかがでしょうか。これはやはり弁護士法人カーク・ランド・エリスというような呼称を認めるということになるのでしょうか。

○久保利委員 弁護士法人の名前ではないのでしょう。

○柏木座長 これは弁護士法人ではない弁護士との共同事業を法律事務所と並列に取り扱う必要があるかどうかということですね。失礼いたしました。御意見いかがですか。

○乗越委員 この点について個人である場合と法人である場合と差をつけなければならない理由というのは私には見出せないです。

○久保利委員 これはむしろ分からないという部分で、私は論理的には今、乗越さんのおっしゃったとおりなんだろうというふうには考えているんです。ただ、問題なのは、そうすると弁護士法人の名称と、この共同事務所の名称とが違ってくる可能性がある、そのことは一体どう評価され、かつこれは日弁連の総会決議など、この検討会では知ったことではないと言われるかもしれませんが、弁護士法人の名称問題としては、海外の事務所、これは提携があろうとなかろうと、少なくとも、例えば会計事務所の名前で「弁護士法人」アーサーアンダーセン法律事務所と言ってはいけないとか、そういう規制が幾つか総会決議でついこの間通っておりますので、それとの関係で、もし弁護士法人が仮に提携をしていても、相手方が仮にカーク・ランド・エリスとすればカーク・ランド・エリス弁護士法人とは言えない、しかし、カーク・ランド・エリスが来て、共同事務所をつくると、それはカーク・ランド・エリス法律事務所と言える、となったときに、では、弁護士法人は多分違う名前を付けるのだろうとなると、弁護士法人の名称と、法律事務所の名称が違うということをどう評価するか、弁護士法の法律事務所と言わなくてはいけないと言っていることと、法人名は違ってもいいということになるのかならないのか、この辺りが実はすっぽり抜けたまま今まで進行してきておりますので、それについての問題は、弁護士法の問題としては残るのかと思います。外弁法の問題としては、そこは弁護士法人は関係ありませんから、少なくとも外弁と弁護士法人の共同事務所の中に、外弁の事務所名に所属事業体の名称を使うこと自体は私はOKではないか、そのOKとしたときの後の余波の問題がよくわからないというのは、検討会のテーマとちょっと違うかもしれませんが、一応問題点は指摘しておきます。

○柏木座長 先ほど問題点として、私もうっかり間違えて、弁護士法人カーク・ランド・エリスと言ってしまいましたけれども、弁護士法人のパートナーの場合に、その弁護士法人がバートナーであるということを示さなくてもよいか、弁護士法は弁護士法人であるということを示せと言っているわけです。それが外弁とパートナーを組んだ途端に、それが要するに外れてしまうというのも何か合理性があるのかなという気がして、ちょっとその辺は難しい問題がある。

○久保利委員 難しい問題としか言えないのですけれどもね。

○柏木座長 下條委員、何かアイデアはございませんか。

○下條委員 この辺は考え出すとよくわからないんですが、今の考えは、いわば外弁と弁護士法人が任意組合を結ぶような形で共同事業を考えておられるということでよろしいんですか。

○柏木座長 そうです。

○下條委員 そうなると、では、受任はどうするのかとか、法律事務の遂行をどうしていくのかとか、それからあと、最終的な責任はどうなるのかとか、何かいろいろ問題がたくさんあり過ぎて余り考えたくないような、非常に大きな問題が多くあるように思います。

○柏木座長 単に名称の問題ではないと。

○齊藤参事官 外国法事務弁護士と、弁護士法人との共同事業につきましては、論理的に不可能だということは恐らくないだろうとは思うんですが、下條委員が先ほど御指摘されましたように、二重事務所の関係の問題とか、弁護士法人の組織とか、業務遂行形態というのがいささか特殊なものですから、そういうこととの絡みで幾つか検討しなければいけない課題というのがあると思います。
 ですから、そういう問題がうまくクリアーできるということであれば、弁護士法人と外国法事務弁護士との共同事業というのも容認する方向でよろしいのではないかと、おおよそそんな考えでおります。
 それから、名称のことで言いますと、日弁連の会規では、弁護士法人の法人としての名称についての規制なんですね。法人としての名称については固有名称部分に所属事業体の名称を使ってはいけないという規制になっているわけです。ですから、弁護士法人の事務所の名称の固有名称部分に、どういう表現が可能かという点については、一応、その部分にまで規制はかかっていないんですけれども、弁護士法人の名称にこの種の規制をかけたということは、事務所名称についても、やはり心としては所属事業体の名称は使うべきではないというニュアンスは受け取れるのではないかと思いますね。
 ただ、外国法事務弁護士と共同で事務所を経営するという場面になったときには、別の扱いということも、それは可能なのではないかなというふうに思います。その辺の整理との絡みでもって、更に検討する必要があるのかもしれません。

○久保利委員 多分、更に検討する必要があるんだろうと思うんです。というのは、では、外弁と共同事務所のときだけそれはいいというふうにしても、そもそも法律事務所名と弁護士法人名が違っていていいのかどうかというのについては、まさに検討漏れになっていた部分で、現在日弁連でも検討中のようですから、したがって、その部分については全く外弁問題とは別に、弁護士会の中では、その名称は違うものが出てまいりまして、これに対する対応をどうするかというのは別途またあるようでございますので、その問題も含めて検討は必要なのかもしれません。ただ、当検討会でそこまで考えるのはもう疲れますから、結構だと思います。

○道垣内委員 ちょっとわからないのですが、外弁と一緒に共同事業し、組合になるとき、組合員は法人自体が組合員、議決権も法人が1票持つということですか。

○柏木座長 議決権は内部協定によって決まるわけですから、頭数ではないわけですね。

○道垣内委員 中で決めればいい。

○柏木座長 頭数ではないわけですね。だから、議決権とは直接関係がない。

○道垣内委員 それは1票という決め方もできるということですね。

○柏木座長 そうでしょうね。

○道垣内委員 日本の国内で弁護士さんと弁護士法人と共同事務所をつくるということは可能なのですか。

○齊藤参事官 おそらくそれは規制はされていないと思いますけれども。

○道垣内委員 意味はないでしょうけれども。そこでの議論かそのまま外弁のときにも使えるという話なのだろうと思うのです。日本の方は使わないとしても。

○柏木座長 何か議論ありましたでしょうか。

○道垣内委員 きちんと整理ができているのであれば、外弁との問題と思いますけれども。

○柏木座長 ちょっとこの問題は藪からヘビになってしまいました。少し事務局の方で御検討願えますでしょうか。

○齊藤参事官 はい。

○柏木座長 ということで、外弁関係はこのぐらいで終わりにいたしまして、時間が残れば弁護士の国際化法整備支援の検討の進め方に関しまして、皆様の自由な意見交換ということを考えていたんですけれども、ちょっと時間が押せ押せになってしまいました。予定した時間となってしまいましたが、弁護士の国際化、法整備支援の検討の進め方につきまして、何か皆様の中で、お考えになっていらっしゃることがあれば、御紹介を願います。いかがでしょうか。
 それでは、ないようですので、次回の予定につきましては事務局から説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 次回の検討会は、10月17日木曜日の午後2時から5時を予定しております。弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進のテーマにつきまして、一通り御検討いただけたのではないかというふうに思っております。
 そこで次回は、外弁法改正の方向性につきまして事務局より御説明できるように準備してまいりたいと存じます。これから今日の議論も踏まえまして、検討会での議論を尊重しながら判断してまいりたいと思っておりますので、御理解賜りたいと思います。
 以上です。

○久保利委員 次回も外弁法のことをやるわけですか。

○齊藤参事官 いえ、議論をまたいろいろお願いすることは予定しておりません。

○久保利委員 そういう方向性について御説明はいただくとして、メインは国際化の問題だから、今日やる予定だったようなことをもう少し各自が考えてきなさい、とこういうことですか、宿題として。

○齊藤参事官 そうです。弁護士の国際化、あるいは法整備支援の推進、この辺りにつきましては、少しどういう対象に絞って、どういう問題点ないしはそのポイントに着目して検討を進めていくのが一番合理的なのか、いささか漠然としておりますので、できれば、検討会の場に限りませんので、何かお気付きの点とか、お考えとか、そういったものを適宜事務局にお寄せいただいても結構です。

○久保利委員 では、次回のそういうところで出てくる発言、あるいはそれ以前に出てくるメモ等々を総合して論点を参事官の方で、その次々回ぐらいまでにおまとめになる、そういうためのいろいろな意見のフリーディスカッション。こういう位置づけでよろしいですか。論点整理まで行くかどうかわからないけれども。

○齊藤参事官 その辺りの要領も含めまして、少し準備させていただきたいと思います。

○久保利委員 わかりました。

○柏木座長 それでは、第10回「国際化検討会」を閉会させていただきます。本日は御協力ありがとうございました。