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国際化検討会(第11回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年10月17日(木)14:00〜16:50

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
柏木昇、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
(1) WTOサービス交渉におけるリクエストの概要について
(2) 弁護士の国際化と法整備支援の推進について(自由討論)

5 配布資料
資料11−1 国際化検討会名簿
資料11−2 外務省提出資料
資料11−3 弁護士(法曹)の国際化と法整備支援の推進について

6 議 事
 事務局より、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進に関する制度改正の基本方針については今回の検討会で報告を行うことは保留するが、平成15年通常国会に法案提出が予定されているので、できるだけ速やかに結論を固めたいとの説明がなされた。これに対して次のような質疑があった(○:委員、□座長、●:事務局)。

○ 検討会としての一定の方向性は出ていたものと考えていたが、現段階で更に時間を要することの背景、内容について御説明頂きたい。

● 制度の施行状況、規制緩和に伴う弊害のおそれの評価や政治情勢も含め検討している。細かい内容については事務局で責任をもって整理をつけていきたい。

○ いつ頃までに方向性を決定すればよいのか。

● 今頃の時期が適切ではあるが、最終的な立案作業との関係ではまだ時間はあるものと考えている。


(1) 下川委員(外務省サービス貿易室長)よりWTOサービス交渉におけるリクエストの概要について、資料11−2に基づき説明がなされた。これに対して、次のような質疑があった(○:委員、△:外務省、●:事務局)。

○ 対日リクエストの中で、諸外国の使うForeign Lawyerを全て外国法事務弁護士と整理するのは正確ではないので注意が必要である。

△ 外国弁護士と外国法事務弁護士の次元が違うということは認識しているので、個々のリクエストを読み進める際には十分注意して見ていく必要があると考えている。

○ 弁護士の活動は公益的な側面を有しており、経済原則に支配されるサービス産業とは異なる。WTOサービス交渉で捉えられることには違和感がある。近年、各国弁護士会で自主的に規律を作ろうとする動きがあるが、いったんWTOサービス交渉の対象から外した上で、各国の弁護士間で合意したものを持ち込むということは可能か。

△ 弁護士の活動が経済原理に支配される活動とは異なるという基本的な原則について疑問視する声はないし、各国の弁護士団体等が規律を定めて独立性を守ることにも異論はないだろう。だがこれまでの経緯からして、いったんWTOサービス交渉の対象から外して、合意の結果を最終的に戻すということは、事実上難しいのではないか。

○ 各国からのリクエストに対するオファーの提出時期はいつ頃になるのか。

△ 提出時期は来年の3月末以降であり、基本的には一斉に出している。国会の審議日程と極めて近接していると言うことはできる。

○ オファーを出すことは決まっているのに、こちらのスタンスを早期に示す必要もないのではないかという意見もあったように聞いている。冒頭に事務局から説明のあった「政治的情勢」とはそのような事情なのか。

● 国会での法案審議を見据え、現在の政治情勢がどのように影響してくるかということについて申し上げたものである。


(2) 弁護士の国際化と法整備支援の推進について、事務局より資料11−3に基づき説明がなされた(○:委員、□:座長、△:日弁連、●:事務局)。

○ 外弁問題と異なり必ずしも法改正につながるものではないと思うが、議論の成果として何を目指すのか。事務局で提言をまとめるということではないのか。

● そうした点も含め、まずは自由に議論していただきたい。

○ 弁護士の国際化や法整備支援の推進と異なる切り口として、日本法を国際的な空洞化から取り戻すという観点も考えられるのではないか。日本法の翻訳資料が不足している事情にも鑑み、具体的な提言や予算措置につながるような議論もして欲しい。これは意見書の範囲内の議論なのではないか。

□ こうした議論は、弁護士の国際化や法整備支援の次の段階の議論になるのではないかと考えている。

● どこかで区切りを設ける必要も出てくるかもしれないが、検討項目への追加は、少し御議論いただいてから判断させていただくのが良いのではないかと考えている。

○ 弁護士の国際化という結論の部分のみでなく、その前提に戻って制度や基盤の国際化ということをメインに議論を進めた方がよいのではないか。

○ 全弁護士の中でどれだけ国際化が達成されており、社会のニーズに応えられているのかが問題の一つなのではないかと考える。数値的な割合は事務局で把握されているか。

● 日弁連作成資料によると1万9千名の弁護士のうち、渉外関係の弁護士は約1500名程度である。

○ 意見書に「民事司法の国際化」、「刑事司法の国際化」という項目がありこの部分については別途検討がされており、この検討会の役割としては、「法整備支援の推進」「弁護士(法曹)の国際化」をメインに検討することが期待されているのではないか。

○ 弁護士の国際化を個々の事務所レベルで行うことは限界にきており、制度や基盤の整備が重要である。

□ 議論が拡散する場合にはポイントを絞り込むことが必要である。「弁護士(法曹)の国際化」と「法整備支援の推進」については意見書に具体的に課題が指摘されているのでまずはそちらを議論してから、その他の事項として司法制度のインフラ整備等について議論してみてはどうか。


・ 弁護士(法曹)の国際化への対応強化

□ 日本の法曹を養成するのに、英米のロースクール頼りという現象が強まっていることは問題ではないか。

○ 背景として、日本の法曹の英語力が低いことと、ディベート能力が不足していることがあるが、両者とも日本の大学では教わることができないことが問題である。今後法科大学院の役割が大きくなるが、この検討会で、法科大学院を中心とした語学の問題、ディベートの問題、留学生の受入等の問題、教育の問題等についての議論を展開していくことも必要なのではないか。

○ 「弁護士(法曹)国際化への対応強化」が、一体何をどうしようとしているのかがよく分からない。

○ ユーザーの立場からすると、渉外問題を扱う弁護士の数を増やすことと、国際的な場での交渉技術について経験と知識を積んでもらうこと、という2つの面があるのではないか。

○ 法曹三者を国際化することが必要である。そのためには事後的な手法をとるよりも国際感覚のある人が法曹になることができるように制度を作ることが有効なのではないか。法科大学院での教育も一つの手段である。また、裁判官に国際公法の感覚が殆どないことに問題を感じている。物事を複数の視点から見ることができるようにする必要がある。

□ 法律問題はその国の文化と結びついているものであるが、日本には複数の文化を橋渡しできる人がいない。外弁に対する規制を緩和して日本での活動の機会を増やすのも一つの方法であるし、日本の弁護士が国際的感覚を身につけることも必要である。また、検討項目は「弁護士(法曹)の国際化」よりも「法曹(弁護士)の国際化」とするのが適切ではないか。日本の裁判官に国際的な感覚が乏しいのではないかという指摘には同感である。制度としてどうしていくかということを考えることも必要である。

○ 裁判官の扱う分野は多岐にわたる。国際感覚のある専門家を育成する必要性は感じている。裁判所に国際取引の案件が増えれば、そうした体制の充実をより一層図ることができるのではないか。

○ 司法試験に外国語を入れることは難しいという話があったが、韓国の例もあり荒唐無稽な話ではない。また、日本の法曹の国際性の欠如というのは国際取引事件に限った話ではないのではないか。企業法務のみならず市民生活も国際化している中で、法曹が国際的な市場の需要を満たしていない所が問題である。物事を複眼で見ることは重要であり、そうした素養の必要性を本気で考える時期がきているのではないか。

○ 我が国には未批准の国際条約が多数ある。そうした事情も次回の検討会で取り上げて頂ければと思っている。

○ 国会で審議する条約数に制限が設けられているわけではないと思うが、関係省庁の体制等、課題はあるだろう。

□ 「弁護士の執務態勢の強化」は数の不足が問題なのか。

○ 日本では様々な局面で問題が先送りされてきたため法律的に解決しなければならない問題が山積みになっているが、それに対応できる法律事務所が限られているということが問題なのではないか。

○ 日本の法律事務所は英米の法律事務所と異なり、ノウハウを蓄積し共有するシステムが構築されていないということを聞いたことがある。これも態勢強化の課題の一つではないか。

○ 意見書に「法律事務所の共同化・法人化、専門性の強化、異業種との協働化、・総合事務所化等」とあることからすると、国際化するためにはある程度多人数による法律事務の総合化が必要であるということなのではないか。

○ 「国際交流の推進」については、国際法曹協会(IBA)、環太平洋法曹協会(IPBA)、ローエイシア等で各国の弁護士の会議が多数開催されており、現在でもかなり行われているのではないか。

○ 弁護士の国際交流の費用負担の現状はどのようになっているのか。

○ 会議の性質によって様々である。日弁連の一員として出席する場合には日弁連から費用が出るが、IPBAのように個人負担で参加しているものもある。

○ 全ての弁護士が国際感覚を有する必要はないのかもしれない。法曹の数も増加する中で、司法試験に語学を課すようなことが本当に必要なのか考える必要がある。また、日本人の外弁資格取得を奨励することも必要なのではないか。
 知的財産問題についてみると、国際的感覚は大変重要であり、弁護士のみならず裁判官の国際化という観点も取り入れてご議論いただきたい。

○ 全ての法曹を国際化すべきなのかということについては議論が必要である。渉外弁護士の数が不足している現状を考えると、制度として全体のレベルを少し上げるという視点で議論するのが良いのではないかと考える。

● 弁護士の専門性向上のため、日弁連では研修の充実を試みているが、国際化の観点はまだ取り入れられているとは言えないようである。この点について、日弁連や単位弁護士会が協調することで更に充実させていくことができるかどうか、御意見を伺いたい。

○ 全国の弁護士会にニーズがあるとは言えないが、首都圏では、英語はできないが海外の手法を取り入れて業務を行いたいという要望が多くある。また、弁護士過疎地域であっても、国際的視点で物事を考える弁護士への需要は、長期的には高まるのではないか。

△ 大阪の弁護士会では外弁委員会で研修を実施している。また大阪では国際的な人権問題について多くの弁護士がボランティアで関わっている。

○ 日弁連や単位弁護士会のレベルでも、家族法等生活に密着したサービスの部分の改善を図ることは可能なのではないか。

○ 日本の弁護士の海外における活動の展望について、御意見を伺いたい。

□ 問題点としては、国際機関で働く弁護士が少ないという制度的な問題と、外国の法律事務所で働く日本弁護士へのニーズの減少という現実の問題と2点あるのではないか。

○ これまで「国際」というと企業ニーズへの対応が中心だったが、今後は、国際公務員として人権問題に関わる弁護士を育成、派遣するしくみを作り、ビジネス以外にも視野の広い国際弁護士を育てることが重要なのではないか。

□ この議論は、法科大学院での教育課題にも関連するだろう。

○ 外務省は、国際機関の日本人職員の採用を増やすために積極的な働きかけを行っており、弁護士が入るのは公益にも適うことだと思うが、個々の処遇等についての課題はあるのではないかと考えている。


・ 法整備支援の推進

□ 法整備支援についてはコモンローよりも大陸法の方が根付きやすいのではないかという議論がある。大陸法を輸入した日本の独特の経験は、支援を必要とする国々にも評価されるのではないか。

○ そもそも、法整備支援をすべきであるという発想はどこから来ているのか。日本法に類似した制度があれば我が国にも有益だということなのか、全くのチャリティなのか。

□ 初回の検討会で、チャリティではいけない、教えてあげるという態度では良くない、といった議論もあったが御意見はあるか。

○ 切り口はいろいろあろうが、経済協力を推進する上で社会的インフラの整備は重要な柱であり、その一環として法整備支援が位置付けられていると理解している。究極的には日本法と親和性のある制度の整備を間接的、直接的に支援するものと言うことができるのではないか。

□ 現状の問題点としては、財政面の問題と実施機関の協調の必要性が挙げられるのではないか。

△ 法務総合研究所の開催する関係者の交流の機会等を利用して情報交換を行ってはいるが、人数が少ないこともあり、ニーズに合致しているのかといった問題はある。また、協調を進めていくためのシステムの必要性は感じている。

□ 「人的基盤の充実化」についてはどうか。

○ 一人の弁護士で実施可能な支援は限られている。英米で例があるようだが、例えば法整備を必要とする国の政府から日本の法律事務所に立案の依頼をさせ、法律事務所内の人的資源を活用し、日本法の体系に沿った形で立案を進めるというのも方法の一つとして考えられるのではないか。

○ そのように、法整備支援の機会を利用しつつ弁護士の国際化を進めていくということを国家戦略として取り入れて行くべきであるところ、現状ではそうなっておらず、少ない予算の中でボランティアに近い形で行っていることが問題である。

○ 日本法の普及という視点も大切だが、人的交流の活発化も重要である。

○ 日本には寄付制度がないが、法整備支援に充てることができるようなファンドを作り、税制上の優遇措置を創設するのも一つの方法ではないか。


・ その他の検討事項

□ 日本法の空洞化、日本の法律の国際化等について御議論頂きたい。

○ 日本法の英訳で信頼性の高いものがないのは切実な問題である。権威ある機関に法令の翻訳を行う体制ができると良い。

○ 需要が高いにも関わらず渉外法律事務所がビジネスとして翻訳を行おうとしないのはなぜか。

□ 信頼性のある翻訳を行うための労力、コストがペイしないからではないか。法令の翻訳は条文の訳だけでなく詳細な脚注をつけなければ使い物にはならない。

○ 裁判所は、訴訟当事者の作成した不十分な翻訳の文書をそのまま受理していると聞いており、裁判所の英語に対する評価はあまり高くないようだ。

○ 日本の裁判手続は全て日本語で行うことになっており、本来であれば当事者できちんと対応して欲しいというのが裁判所のスタンスであるが、十分にチェックできるスタッフがそろっていないことについては御指摘の通りだと思う。
 また、重要な裁判例の英訳は行っているが広く頒布されてはいないようだ。
 解説のない日本法の英訳へのニーズはあまりないのではないかと思う。

□ 翻訳にはコモンローの深い知識と能力を必要とするが、それに見合った評価がされていないのが現状であり、国としての何らかの支援が必要ではないか。
 司法制度改革の観点から国際化のために何ができるかということを考えると、法律の発信についてこうした議論を行うことはも有効ではないかと感じている。

○ 外国における訴状の送達に時間がかかりすぎるという問題も取り上げるべきである。


(次回の日程)

 次回(11月21日(木)14時〜17時)は、弁護士の国際化、法整備支援の推進につき、更に具体的なポイントについての検討を行うこととなった。

(以上)