○柏木座長 それでは、所定の時刻になりましたので、第12回「国際化検討会」を開催させていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
本日は、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進について御議論いただきたいと存じます。
それでは、まず初めに事務局から配布資料の説明をお願いします。
○齊藤参事官 本日配布させていただきました資料は、資料12−1でございます。整理案1と2が含まれております。
以上です。
○柏木座長 それでは、議事に入ります。外弁法の改正につきましては、これまでいろいろと議論を重ねてまいりました。座長といたしましては、この段階で、これまで積み重ねてきた議論を一度整理した方がいいのではないかということを考えております。そこで事務局の協力を得まして、客観的な見地からこれまでの議論の経過と法制的な観点を踏まえて案を整理いたしました。その内容につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○齊藤参事官 それでは、ただいま座長がお話ししたような見地で整理しました案をこれから御説明申し上げます。
先ほどの資料12−1をごらんいただきながらお聞きください。
当検討会では弁護士と外国法事務弁護士、以下、外弁と略称させていただきます。外弁との提携・協働の推進という検討事項につきまして、特定共同事業の要件緩和等の具体的方策につきまして、精力的に御検討いただきました。検討会での御議論の中心は共同事業及び雇用に関する規制の緩和、ないし撤廃と、弊害防止との関係であったかと存じます。
共同事業や外弁による弁護士の雇用が許容された場合には、外弁が共同事業の相手方である弁護士や被雇用の弁護士を介して、権限外である日本法に関する法律事務を行うおそれがある観点から、これまでは共同事業は原則として禁止され、例外的に特定共同事業が許容され、雇用は全面的に禁止されております。このような弊害のおそれに関しましては、一方で従前考えられてきましたように、係る弊害のおそれは依然として高いという考え方と、他方、外弁は顧客との信頼関係の維持や、弁護過誤の危険等に配慮するはずであって、あえて権限外の法律事務を行うとするインセンティブはなく、弊害のおそれは低いとの考え方も主張されました。
弊害のおそれにつきまして、基本的にどのような考え方に立つかにより、どのような規制緩和措置を妥当とするかに関する委員の皆さんの御意見も分かれていたように見られますが、このような議論の経過と法制的観点を踏まえて整理いたしますと、お示しした2つの案になるのではないかと考えられます。
そこで、まず整理案1ですが、この案は弁護士と外弁の共同事業、及び外弁による弁護士の雇用の双方について規制を撤廃し、外弁法4条違反について事後規制に委ねるという案です。この案では、共同事業につきましては、目的制限及び共同事業の相手方である弁護士の職務経験要件を撤廃することにより、弁護士と外弁が1つの事務所を構成して自由に共同事業を営むことができることとなります。
外弁による弁護士の雇用禁止につきましても、規制を撤廃し、外弁が単独で弁護士を雇用することも許容されることになります。
「3 その他」のところは、共同事業や外弁による弁護士の雇用に関して、日本弁護士連合会が実効的に指導・監督を及ぼし得るようにするとの観点から、届出制を採用するというものです。
この整理案1は、共同事業及び外弁による弁護士の雇用のいずれについても、弊害のおそれは4条違反の規制目的との関係で事前規制の合理性を基礎づけるほどには高くはないとの考え方に立ち、事後規制に委ねるべきであるという案であると思われます。
次に、整理案2について御説明します。
こちらは外弁による弁護士の雇用の在り方につきまして、共同雇用を許容すること等を内容とする案です。
この案では、弁護士と外弁との共同事業については、目的制限を撤廃することとしており、弁護士と外弁が1つの事務所を構成して共同事業を営むこともできることとなります。
しかし、共同事業の相手方である弁護士の職務経験要件は課されることとなります。また、この案は外弁による弁護士の雇用禁止につきましては、外弁が弁護士と共同事業を営む場合において、当該共同事業の相手方である弁護士と共同で弁護士を雇用する場合、いわゆる共同雇用に限り、弊害防止のための手当に配慮しつつ、その禁止を解除することとするものです。
なお、この整理案2におきましても、共同事業、または共同雇用に関しまして、届出制を採用することとなります。
整理案2は、弊害のおそれにつきましては、特定共同事業の施行実績を踏まえ、弁護士の職務経験要件を維持しつつ、共同事業の目的制限を撤廃しても、弊害のおそれは基本的になくなっていると考えられる一方、単独雇用まで許容した場合の弊害のおそれは、現時点においても、依然として残るとの考え方に立ち、外弁法4条違反に対する事後規制に加え、共同事業の職務経験要件や共同雇用といった事前規制を必要とするものと言えます。
そして、共同雇用の場合は、外弁とともに必ず弁護士も雇用主たる地位を取得することとなり、被雇用の弁護士が日本法に関する法律事務を取り扱うに当たっては、雇用主である弁護士が被雇用の弁護士に対して指揮命令権を適正に行使することにより、弊害は防止され得るとの立場に立つものと言えます。
この案によった場合の弊害防止のための手当としましては、雇用主である弁護士から、被雇用の弁護士に対する指揮命令権の適正な行使を確保するために、必要な規定を外弁法に設けることが考えられるところです。
また、弊害防止の観点のほか、被雇用の弁護士に対する指揮命令権の行使を実効的なものとする関係で、共同事業の相手方弁護士には、職経験要件を満たしていることが必要とされることとなります。
各整理案の概要は以上のとおりかと存じます。
○柏木座長 ありがとうございました。ただいま事務局からの説明にもありました議論の整理案につきまして、何か御意見、御質問がございましたら、挙手の上お願いいたします。
○加藤委員 今、整理案1、2をお示しいただいたわけですが、これを示して、本日何をしようとしているのか、私にはよく分かりません。
つまり、この整理案1を採用するにせよ、2を採用するにせよ、いずれにしても、今までこの検討会の中で議論されてきたこと、その結論というか方向性というか、それをまずこの検討会の中で確認した上で、その方向性に合致するものが1であれば1であるし、その方向性が2であるのならば、2であるべきであって、まずはその方向性なり結論をここで確認するべきであって、その作業がないのはおかしいのではないかと私は思います。
過去に一度ある特定の問題について皆さんがそれぞれに意見を開示した時期がございましたけれども、それぞれの課題について、各々そういう整理をしているわけではないわけですので、全体の流れとしてどういう方向が多数であったとか、あるいは結論めいたものが出たとかというようなことについての解釈は、それぞれ個々人で違う可能性がある。私と事務局とはあるいは違うかもしれない。そこの認識を同一にした上でないと、次のステップに入るのはおかしいのではないか、私はそう思います。
○柏木座長 今の御意見に対していかがですか。
○下川委員 私も今の加藤委員と同じ考えでございまして、私どもの理解では、7月の25日の会合の際に、基本的な方向性としては共同事業を自由化すると同時に、単独雇用についても解禁するということで大勢の賛同が得られて、それを踏まえつつ、今後事務局の方から案を提示いただくというふうに理解しておりましたので、そういう前提に立って仮に更に中身を検討していくのであれば、それを確認した上で議論していく必要があるのではないかと思っております。
いろいろと法制的な観点から検討する事項があるということで、9月以降、10月、11月と事務局案が提示されてこなかったわけでございますけれども、そもそもどうしてそんなに時間がかかったのか、案が流れに沿って出てくるかと思ったら、2つの案が出てきたというのはちょっと理解できないところでございまして、その辺の背景というか、理由について、もう少し御説明いただければありがたいと思います。
○柏木座長 私が理解しているところでは、以前の議論は大変に皆さんに長らく議論していただいたわけですけれども、前に事務局からA案B案C案D案と出されておりました。その中にも共同雇用の問題とか単独雇用の問題、共同雇用にしても、指揮命令系統をどう整理するのかとか、そういう個別の問題について、バラバラにいろいろ御議論をいただいたわけであります。
その後で事務局が法制上の問題も加えて検討の上、結局、大きな流れとしても、この1案と2案というくくりになるのではないか。こういうくくりとして、議論したことはなかったという気がするんです。
それについて、事務局が各委員のお考えを聞きたいということが今回の趣旨だと私は了解しております。事務局で何か補足することありますか。
○齊藤参事官 そのとおりだと思います。
○孝橋委員 7月の検討会のときに、単独雇用を認めるかどうかということについて、最後の段階で、各委員の意見表明を求められたことがあったかと思います。それと、職務経験要件については、9月の検討会のときに、一応テーマとして取り上げられて、各委員、全員ではありませんけれども、かなりの人数の人が意見を述べられたと思うんですが、そこでここに整理されたとおりに規制は必要というスタンスの委員と、そうではない委員が分かれたかと思うんですけれども、それを更にもう一度ここで改めて2つに整理されて、もう一度お諮りになるということですが、7月から10月までのプロセスというのはどういうふうに進められてきたのかというのはちょっと私どもにはよくわからないものですから、御説明いただければと思います。ですから、7月の意見集約は何であって、9月の意見聴取は何であって、今回はそれと違うのか同じなのかという辺りはいかがでしょうか。
○松川次長 それは座長が申し上げられたことにある意味では尽きるのかという感じはいたしておりますが、7月の時点では、それぞれ考えられるいろんな制度の各部分、パーツ、パーツについての意見を確認させていただきました。それを組み合わせれば、1つのあるべき姿として、ある意味ではこの検討会としては方向性が出ているとは理解できるかと思いますが、その後、法制的に検討する必要があるということで留保はさせていただいたことと存じます。
その後、法制的に詰める際に、かなり意見の分布は御案内のとおりでありますけれども、全員がほぼ一致しているということでもないものですから、考えられる方向性として2通り、今、整理案として示されているような方向、両方について、それぞれ法制的に検討する必要があるということで、私どもとしても、検討を進めてきたところでありまして、その検討を進める際に、いろいろと弊害防止措置についても、9月に御議論をさせていただきましたけれども、その議論も踏まえた上で整理をさせていただく必要があるということで進めてまいりました。確かにその間の作業が事務局の努力不足でここまでになったということは大変申し訳なく思っておりますが、パーツ、パーツの相互関係を整理するのに時間を要したということでございます。
○柏木座長 この整理案の第1を見ますと、これは共同事業の目的制限を完全に撤廃する。それから、職務要件も撤廃してしまう。それから、外弁による弁護士の単独雇用も全部許してしまう。要件としましては、届出だけという非常に徹底した自由化案であります。
一方、第2案というのは、職務経験要件をセットにしておりまして、更に職務経験要件のほかに外弁による単独雇用の禁止ということもセットになっております。
この案の法制上の問題は御説明いただいた方がいいかと思うんですが、いかがですか。
○齊藤参事官 もうちょっと具体的に御指摘があればと思うんですが、今、座長が御指摘のところは。
○柏木座長 中間案がないということなんですけれども。結局、法制上の問題をいろいろ検討した結果、どうも中間案というのはできづらいのではないか。この2案に集約されるということで、その集約されたものについてもう一度皆様方の御意見をお伺いしたいというのが趣旨であります。
○松川次長 大きなところだけを補足させていただきたいと思いますが、この検討会の議論の2つの方向としては、弊害防止について、どう評価するかというところが中心であろうかと思います。
まず弊害防止についていろんなことが言われておりますけれども、それについて法律的に評価すべき弊害とは何なのかということも整理する必要がありましたので、そのことの吟味に時間を要したことも事実です。検討会でいろんな議論がありましたけれども、皆さん方のこれまでの議論の積み重ねの過程から言うと、法律的に最小限整理すべき弊害としては、外弁と弁護士との共同事業、あるいは外弁による日本の弁護士の雇用の形態を通じて、故意でないにせよ、外弁法4条違反の状態になる。すなわち、外弁にとっての職務範囲外の行為、これは日本法に関する事務をやるということになろうかと思いますけれども、そういうことになってしまうということは、一応防止しないといけないということで、そこのことについてどういう形で防止し得るか、あるいはそのことをどう評価するかという問題になるのではないかと事務局としては考えました。
その場合は、およそその弊害というのが定形的に少ない上に、仮にあったとしても、それは事後規制、つまり4条違反として整理すればいいのではないかと単純に割り切ることができれば整理案1のような考え方になるであろうと、それでないならば、そうでない措置をしないといけないんですが、事後規制で割り切ることができないと整理する場合においても、今までの議論の経過を踏まえますと、少なくとも共同事業を通じての弊害のおそれということにつきましては、今までの施行実績等から考えて、先ほど参事官から説明致しましたように、そのおそれは定形的に低くなっているのではないかということで、これは事後規制で割り切ることもできるのかという一応の整理はできますが、雇用の関係については、今までの議論の経過の中では、一部の委員であるかもしれませんが、雇用関係というのは、共同事業の関係とは質的に異なるということがありましたので、そういう観点から法律的に整理をいたしますと、そこは外弁が被雇用の弁護士を通じてそういうおそれがあるという前提に立った議論の立て方もできる。
この場合の弊害防止につきましては、これまで議論の過程では、共同雇用ということであれば、日本法を扱える弁護士からの指揮監督があるということから、弊害防止をし得るのではないかということであるんですが、そういうことから考えますと、指揮監督があるという前提に立って立案をしないといけないわけでありますけれども、やはり法制的に考えれば、そこのところを一応指揮監督を通じて弊害を防止し得るということを実効的に担保する措置が必要であろうということで、弊害防止のための手当を必要最小限度だろうと思いますけれども、そういう手当をするということ。
その関係から言うと、指揮監督ということですので、ある程度経験を得た人が共同事業の相手方であることは必要になるであろうということで、職務経験要件を有するということがセットになるのではないか。こういうふうに考えまして、1つの案としては、整理案2のような形があるのではないかということで、基本的な考え方をどうするかということについては、一応整合的な形としては、整理案1か2のような形になるのではないかと考えた次第です。
○玉井委員 単純な質問ですけれども、段取りしては、この2つの整理案を見て、要するにパーツ、パーツの議論はしたけれども、全体的な議論はしていないので、どちらを取るかをこの場で決めてその後に進めましょうということでございますか。
○柏木座長 多数決で方向性を決めるとか、報告書を出すということではないので、この2つの案に大体集約されるであろうと。この内容につきまして、皆さんの意見をお聞きしたい。それをもって事務局が事務局案を最終的に作成する。
○玉井委員 事務局案というのは今日いただけるわけですか。つまり、整理案1であればこれ、と、引き出しから出てきていただけると。
○松川次長 そこまでできればもう少し議論はできるんですけれども、まだそういう状況ではありませんが、本日の議論がどういう意見になるかということを踏まえた上で、そういうのも準備した上で、改めてお示しできるようにしたいと思います。
○玉井委員 もし誤解があれば教えていただきたいんですけれども、この検討会が発足したときに、国際化と言ってもいろいろ問題があって、ほかにも大事なことがあるではないかというような御意見もあったと思うんですけれども、それについてはしかし、外弁問題というのは非常に重要な問題であるし、来年の通常国会に出さなければいけないので、急ぐのであるという話で、それを目標にやってきたと思うんです。
恐らく私の理解に誤りがなければ、来年の年頭に通常国会が召集され、そこに法案という形で、条文に書き起こしたものが出るということでございましょうか。それまでは少なくとも物すごく細かいところまで詰め切っていないと、条文というのはできないんだろうと思いますので、もう11月も終わりですから、何かその1つ手前か2つくらい手前の段階のものが出て、それでいいですねということで次に具体的な条文を作成する、何々を改め何々とするというのを多分お書きになるんだと思うんですけれども、そういう作業に入られるのかなと思っておりました。
つまり、この場で私どもが議論しておりますのは、それの言わば前段階のお手伝いということでしょうから、かなり条文に書き起こす手前の段階までこの場で議論して集約をしないと、なかなかそういう段取りになはならないと思うんですけれども、その辺りは勿論、1日20時間くらい働かれるんでしょうから、それは大丈夫とは思いますけれども、どういう段取りになっているのか、多少心配になるのは、多分、ほかの委員の先生方も同じだと思います。
○松川次長 御心配をかけて恐縮でありますけれども、かなりいろいろなパーツ、パーツの議論がパッケージとして、きちっと整理をできるような形で議論を進めるような環境整備ができなかったことについては、申し訳なく思っておりますが、少なくともここまで来ておりますので、条文の要綱の一歩手前までにこぎつけるまでの、おっしゃるような意味での議論は尽くしていただく必要があるかと思っておりますが、本日はここまで一応、理論的に今まで座長の御指示によって整理させていただきましたので、それを基にいろいろ御議論をいただいた上で、十分間に合うように準備させていただきたいと思います。
○玉井委員 師走に合宿でも、2、3日かけてこの検討会をやって、そこでもむということになりましょうから、それは皆さんはスケジュールを空けないと。
○松川次長 私の感じでは、基本的には整理させていただきました、細かいところは更にありますけれども、基本は弊害のおそれをどう評価するか、あるいはそれをどういう仕組みをとって防止するかというのが基本論ですので、その基本論について皆さんの御意見を伺えれば、検討会で更に細かい議論をしなくても、勿論、作業の経過は説明させていただきますけれども、合宿までしてということではないと思います。
○乗越委員 今、委員の方々からいろいろ御意見が出たのは、はっきり言って、今日のこの両論を見て、驚愕したというのが正直なところなんで、そういう反応が出てきていると思うんです。
恐らく大多数の委員の方々の認識では、7月ないし9月の段階で十分にこの検討会として、全員一致ではないかもしれないけれども、方向性としてはかなり明確なものが出ただろうという認識の下で、それだけ明確な方向性を出しておけば、あとはその線に沿って、事務局からそれに沿った案が出てくるだろうから、次の議題に移ってもいいなということで、次の議題に移ったんだと思うんですけれども、今日この両案を拝見しますと、余りにも両案の間のぶれが大きくて、本当に事務局の法に検討会としての方向性が伝わっているのだろうかというのが非常に危惧として生じていると思うんです。
今日は、議論を幾らでもいたしますけれども、それが終わった後で、議論は聞いたから、後は事務局に任してくださいと、この段階でもし言われるとすると、全く検討会の方向性と違うのが最終的に出てきたとしたら、では、検討会としては、そもそも何だったんだろうかと。皆さんの多大な時間と、税金を無駄遣いしたのではないかというような意味で、検討会の存在意義そのものについて疑問が生じてくると思うんです。ですから、そういうことを防ぐためには、今日、議論させていただいたら、それをちょっとフォローアップできるような機会を十分につくっていただきたいと思います。
○玉井委員 全く同感でございます。年末のこの資料が、2枚ありますから、今日議論してどちらかに決めるとすると、1枚になるわけですが、この1枚が私どもが3分の2年くらい議論した成果がこれでございますということだと、その納税者からは、あなたたち手当をもらっているじゃないですか、これで済むと思っていますかという批判が出るのではないかと危惧をいたします。
○松川次長 それは私どもが申し上げるのは言い過ぎかもしれませんが、今までの経過、議論は全てオープンにされているわけですので、当然、私どもとしても、その議論の経過は十分踏まえないといけないわけで、それをも踏まえるということで、今日お示しした案の意見の分布だけで決めるということではありません。ですから、これは今までの関係が必ずしも十分法律的に整理できてなかったきらいがありますので、その点も整理して、今までの議論とほぼ同じような議論になる可能性は十分に考えられますが、一応御意見を賜っておくことが大事ではないかという認識を私ども持っております。
○久保利委員 7月の段階で確かにお一人お一人御意見がある程度あったと思います。私の理解としては、それはあの時点での感想という意味で、共同雇用か、単独雇用まで認めてもいいかという感想というのは確かにお示しになったと思うんです。その後のいろいろな推移、それから、特にこの外弁問題について言うと、外弁そのものでいらっしゃるのは乗越先生、外弁と会って、顔を見たことがあるという人も数人しかいない。現実に外弁にお願いをしたという人はほとんどいない。そして、今の外弁というのはあくまでも特定共同ですから、日本の弁護士と特定共同をしているという実態しかこの世の中には存在しない。そういう中でどうかという、ある意味で言うと空中戦に近いようなところでありまして、私としては、論理の世界を押していけばああなるだろう、こうなるだろう、あるいは心配をすればこうなるだろう、それぞれに意見としてはごもっともな部分があったんだろうと思います。
ただ、ここへ来て、少なくともこれは1を取ろうと2を取ろうと、共同雇用という形、つまり共同事業をコラボレーションというふうにユーザーの方々はヒアリングでおっしゃっていました。そのコラボレーションは共同経営でやっていこうよということで、特定共同事業の目的要件も外すというところに踏み込むということになるわけなので、恐らくそのことを反対する人はこの場にはどなたもいらっしゃらないんだろう。
そういう点からすると、使ったことも、会ったことも、乗越先生の場合には特定共同事業をしていらっしゃらない事務所でございますから、そういう意味で言うと、多くの特定共同事業をやっている事務所とも違う。
そういう中で、この検討会がそもそも共同雇用というところを更に踏み込んで、単独雇用もいいんだという、意見書の55ページに書いてあるような「国際的議論もにらみつつ、将来の課題として引き続き検討」するというのを、そこまでそもそも踏み込むという権能と能力と予見性と言いますか、単独雇用になったらどうなるかということについて、コラボレーションが本来必要な共同経営さえなされていない中で、私も含めてその予見をどうせいというのかというのが問題なので、外弁問題などはいいかげんにして、どんどん先の国際化の話をしましょうよと言っているのに、事務局はもっとやれという話があったわけなんで、我々もやってきたわけです。
そういう意味からすると、この議論というのをこれ以上やってみても、心配か心配でないか、心配がどうあるか、というかなりの部分は想像の域を出ない。特定共同の中であっても、某有名外弁事務所が著作権事件については国内事件というものを内容証明でぶつけて、損害賠償請求をしたという事件もないではない。しかし、それはあくまでイレギュラーなんだ、それよりもコラボレーションという国民の声が大事なんだというのでここまで来たわけですから、それを考えると、そんなに細かいところまで、玉井先生おっしゃいますけれども、要綱のぎりぎりのところまで、条文の詳細を、合宿してまでやるようなテーマなのかどうかという点について、私はやや疑問を持っているというのがまず第一点あります。
仮にそうだとしても、少なくとも検討会というのは意見書の具現化をするのに、国民の声をなるべく聞いて、そこでいい立案をしていくための素材を提供していこうということで我々はやってきたと思うので、素材提供としては、かなり出したという気がするわけです。そこから先の話になると、どういう法文にするのか、その法文のときの座りがどうなるのか。現状の外弁法が特定共同しか認めていないところに、どこまで先へ踏み込むのかというような、さまざまな判断が入ってくる。ましてこれは、GATSの中における国際的な交渉マターでもあるという問題の微妙性、時期的な問題、こういうものを考えると、私としては、今日、事務局の方でそうお考えならそれで結構ですけれども、1案か2案かということで、ある程度の皆さんのそういうお気持ち、感想をお述べになって、それをとりまとめて具体化、どうしていくかというのを任せもいいのかなというふうに思ってはいるんです。
少なくともはっきりしておきたいのは、単独雇用でいいよと言った人たちも確かにいらっしゃいますけれども、では単独雇用になったらどうなるのかという本当のイメージは多分誰もわからないというのが実態だと思います。共同雇用や特定共同の目的が外れたときにどうなるかというと、恐らく日本の弁護士と外弁のコラボレーションが起きて、共同雇用の中で、ある意味で言うと、海外へも通用するようないい事務所ができるのではないかというほんわかとした夢のようなものを持っていますし、それは実現したいと思いますけれども、その後で単独雇用まで行ったときにどういう世界が、しかも共同雇用がここまで自由にできるのに、あえて単独雇用を選ぶ人がどういう人で、何をするだろうかというのは正直言って私にもわかりません。多分だれもわからないと思うんです。
そのときに、弊害論というのをここでぎりぎりと、こういう弊害があり得る、ああいう弊害があり得ると言ってみても、せん無いことかなと。むしろ共同でやってみて、その上で、もっといっても大丈夫だというならそうすればいいし、そこでこんなことが起きているということがあれば、それは取りやめたらいいのではないか。
したがって、とにかく共同雇用のところはみんな一致しているのですから、そこで取りまとめをするという方向はないんだろうか。
特に、今日も私、中国の弁護士さんと会ったんですが、今、日本に中国の弁護士は50人いるのだそうです。その中で外弁登録をしている人はそんなに多くないと思います。2万4,000 人とか2万5,000 人、今年の司法試験で中国は受かった。皆さん日本に来たいという熱意はものすごい。どんどん増えていくと思います。そういう人たちとどうやって中国の案件を日本の弁護士と組んでいくかというのは、やはり早くどんどん共同雇用の事務所をたくさんつくって、モデル的なものがどんどん出てくると。現にフレッシュフィールズなどは今年日本の弁護士を大勢採りまして、日本の弁護士だけでも20人近くになっています。そういうものが海外とセットになって発展していくというのはすばらしいと思いますので、とりあえずそういう辺りでまとめる方向というのはどうなのかと。その先の心配をいろいろここで言ってみても私は難しいのではないかという気がするんです。
○玉井委員 ほとんどのことは久保利先生と考えは同じでして、ほかの問題を早くやりたいという点も含めて同じなんですけれど、1点どうかなと思いますのは、共同雇用のところまでは集約されているから全く同じなんですけれども、単独雇用についても、意見を集約して法案にしていただくのがよいのではないかという意見を持っております。
これはやはり百年に一度くらいの司法改革であって、その中で何か今まで特定共同だったのがその目的制限を外しましたというとでは大きな改革になはならないと思うんです。そのためにわざわざ、言わば普通の法改正であれば、法制審議会とかきちんとした組織が既にあるものに対して、一見国民から見れは屋上屋を重ねるような検討会を設けて、あえて議論をしているというのは、私のような全くの素人を含めて、素人というのは従来の経緯を知らないので、大胆なことを言ったりするわけですから、そういう人を入れてこういう検討会を設けているというのは、それはまさに大きな司法改革をやれというミッションがあってやっているんだと思いますので、普通の法改正であれば、ちょっとずつ、前回5ミリ行ったから今回3ミリ進もうというやり方が適当だと思うんですけれども、この場の議論してはもう、しかも私としては説得力のある単独雇用はだめであるという議論はなかったと思いますし、勿論、やってみないとわからないというのは全く久保利先生おっしゃるとおりで、それは不安を感じるわけですけれども、しかし、考えてみれば、150 年くらい前は、紅毛人が上陸すると大変なことなる。本邦はめちゃくちゃになってしまうと言われたわけですし、近くは、IMF8条国になると、日本の産業はめちゃくちゃになるとか、そういう苦難をかいくぐって日本の産業というのは伸びてきたわけですので、本当に目に余るような弊害があれば、それは規制をするときの案というのは現行法というのであるわけですから、3年くらい経った後で、やはり規制した法がいいよ、外弁はやはりだめだということで改めて規制をかければいいと思いますので、ここは少し思い切った整理案1のような方向で集約されるのがよいのではないかと思います。
○下條委員 私は共同雇用にも反対しましたので、整理案3というのがないのが非常に残念なんですけれども、共同雇用と言いましても、雇用がダブルにあるだけで、単独雇用と一面同じじゃないかということで、整理案1でも2でもない、第3の案として共同事業は認めるけれども、それは現在の延長のような形で、別々の事務所というのは維持して、単独雇用とかいう問題が出てこない形を提案したんですけれども、残念ながらそれは取り上げられなくて、1と2になっているわけです。
それで、この検討会の一番最初に、この検討会は意見を集約する場ではないということをはっきりおっしゃったと思うんです。つまり、この検討会、11人の委員でこれからどういう改革をしていくかを多数決で決める場ではないということははっきりおっしゃった。あくまでもここでは意見を述べあって、それを見て推進本部が日本の法制度の問題ですから、日本の法制度の立場から、かつ、ここの委員の意見も聞いて、一番よかれという案を取られるということだと理解しております。そういう意味で、今日、再度こういった案をまとめて議論する場を設けられたと理解しております。
ついでに私の考えを言わせてもらえれば、第1点は、先ほど久保利委員がおっしゃったような司法制度改革審議会の意見書というものがある。それは先ほど久保利委員が引用されたように、雇用問題については、将来の課題として、国際的議論をにらみつつ検討するということで将来の課題とされたわけです。にもかかわらず、ここで取り上げているということについては、これはひとつ司法制度改革審議会の意見書で司法制度改革推進本部に与えられたマンデートの範囲を超えるものではないかということは強く感じております。
その面から見て、まず問題があるのではないか。これは勿論、司法制度改革推進法にも、「司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとって」と書いてあります。そういう面から見て、やはり雇用の問題について、今、玉井教授がおっしゃったような踏み込みは、この検討会の権限を越えるものではないかというふうに考えております。
それから、単独雇用の点について申し上げますと、従前から申し上げておりますような、日本の弁護士の独立性の確保、これは法律判断の独立性と、その他の面の独立性という面があるかと思いますけれども、そういう面を確保していくということが重要ではないか。1つのプロフェションとして、判断の独立性を確保していくべきであると考えます。
勿論、2番目の問題としては、先ほどの外弁法4条ということで、当然に外国法事務弁護士の職務範囲というのは、原資格国法、あるいは指定法に限られるわけですから、その範囲を超えてやるということは4条違反になる。
つまり、外国法事務弁護士が日本弁護士を雇うその理由は何かというと、日本法をやりたいということ以外何も合理的な理由はないのではないかと思われます。したがって、先ほど久保利委員もおっしゃったような現実の事例として、どうしても弁護士は秘密保持義務がありますので、なかなか現実の事例を申し上げられないんですけれども、著名な外国法事務弁護士が日本の著作権法違反の侵害についての損害賠償請求のレターを日本の企業に送り付けたという事件がありました。これはまさに外国法事務弁護士が日本の著作権法違反をやったということですから、明らかな4条違反になるわけです。そういう悪い事例もあります。
先ほど松川次長がおっしゃいましたように、弊害というのは現実にあるわけで、それ以外にも、具体例は言えませんけれども、外国法事務弁護士が交渉の当事者になって、相手方として、日本法に準拠した契約書のドラフトを出してくるということは非常に多くあることです。
もう一つ私が経験しましたのは、外国法事務弁護士が日本の弁護士に聞いて、日本の法制度についてのメモランダムを日本の依頼者に出そうとした。それはたまたま同じサイドでしたので、それはできませんよということを注意しましたけれども、そういうような事例は幾らでもあるわけです。まさにそういうところはきちんと事前規制をしていくべきであるというふうに考えます。
ですから、現在のように特定共同という制度を取っていても、そういう悪い事例は幾らでもあるわけです。特定共同というのはあくまでも別々の事務所ですから、外国法事務弁護士と日本弁護士は別々の事務所をつくっているわけですけれども、依然としてそういう例があるということから見て、その辺はきっちりと規制していくべき合理的な理由があるというふうに考えております。
それから、よく事後規制でいいじゃないかと言われますけれども、事後規制は余り役に立たないと思うんです。よく外国法事務弁護士が資格承認のときに法務省あてに外国の事務所が、マルプラクティスがあった場合には補償しますというレターを出しますけれども、それが現実に被害を被った依頼者の方から請求するときに、果たして役に立つのかということ、これはどうも当事者が違うわけですから、外国の事務所としては単に法務省に出しただけで、クライアントに対して出したわけではないので、それが役に立つかどうか非常に疑問があります。
勿論、問題を起こした外国法事務弁護士が本国に帰ってしまえば、前の検討会でも申し上げましたけれども、訴状送達に半年以上かかるとか、非常にいろいろな問題があって、現実問題としてはなかなか救済が得られないという面があるかと思います。
長くなって恐縮ですけれども、今週も韓国の方へ行って、韓国の弁護士会の前で、韓国も今度ドーハラウンドでもって、法律サービスの開放をしないといけないということで、スピーチしてくれと頼まれて行ってきたんですけれども、やはり韓国の方としても、日本の動向に非常に注目しているわけです。日本が開放すると、韓国としても、頼りにするところがなくなってしまうと。今回の検討会の一番最初に柏木座長がおっしゃいましたけれども、コモンローの国々の弁護士がこういったシビルローと言うか、東南アジアのいろいろな国々に進出してきているわけです。それに対してどう対処するかということが問題ということでおっしゃいましたけれども、まさにそういう面で見ると、日本としては、アメリカとかイギリスの代弁者ではなくて、むしろ東南アジアの国々の代弁者になるべきではないかと考えております。
以上のことから見まして、私は整理案3がないのが残念ですけれども、大勢が整理案2ということであれば、そちらの方でまとめていくのもよろしいのではないかと考えております。
○柏木座長 この検討会のとりまとめのやり方なんですけれども、私としましては、報告書はつくらないし、この検討会としてこの方向であると方向性を明確に打ち出して、事務局にこの方向で後は走ってくれという指示を与えるという性格のものでもないという具合に理解しております。おそらく、それは最初からそういう理解だったように思います。
下條委員がおっしゃったように、前回もいろんな意見が出ていたように思います。勿論、その内訳を分析すれば、こちらの意見が多数だったとか、少数だったという分析はできるのかもしれませんけれども、多数意見でこの委員会の結論がこうだということにはならないし、しない方向でこの会議はスタートしたと了解しております。 今日のこの整理案1、2につきまして、なぜ今ごろもう一度この問題をというような御不満が多いようでありますけれども、これは冒頭にも申しましたように、いろいろピース・ミールで議論をしていたものを、最終案1、2にまとめた。こういうところでもう一度皆さんの御意見をお聞きしたいというのが事務局の意向ということなので、それはそれでまとまった案としての皆さんの御意見を聞くことは意味があるかなということで今日お諮りしているわけであります。
そういうことで、全体として見た場合に、下條委員の御意見は第3案ということで、2から外れたところに行くべきではないかという御意見ではありましたけれども、ほかにこの1案、2案につきまして、道垣内委員、どうぞ。
○道垣内委員 私は1か2かと言われれば2なんですけれども、今おっしゃったようなマンデートであるということを確認された上であれば、結論よりは理由が大切で、本当ならば、今から言っても何ですが、表にしていただいて、プラス・マイナス、どういう理由があるのかということがないと、余り生産的ではないのでないかと思うんです。
1案の方は非常にシンプルなので、これは議論としては簡単ですね。制限に理由がないから1案だと言えるわけですが、2案の方は、今、下條委員と久保利委員がおっしゃったように、長く説明しなければ理由が立たないと言いますか、私も繰り返せと言われれば、すべてを私が議論したことを全部覚えているわけではないので、もう一回言ってもいいですけれども、それはもう理由は議事録を整理していただければわかるので、そういうまとめ方の方がいいのではないでしょうか。
要するに、結論についてのまとめではなくて、解決策は2つあります。それのメリット、デメリットがこうありまして、従来は従来の理由があったはずですから、そこがどう変わったのか。
共同事業の目的制限については、皆さん当初は非常に警戒的にいろいろ制限を付けたけれども、これはもう要らなくなったんじゃないかという認識があると思いますが、他の点について、特にこれから法曹人口も増えていって、どういう日本社会になるのかよく見えないところもあるので、そういうところへ向かって、従来のものをやめてしまって、しかも共同経営をやめて、事業を自由にしておきながら、更に単独雇用までできるという必要が本当にあるのかどうかというまとめのペーパーの方を出していただくと生産的かなと思います。
いずれにしても、私の結論は整理案2です。
○下川委員 この場の議論の位置づけという話に若干戻りたいんですけれども、先ほど玉井先生のお話がありましたけれども、なぜこの検討会か設けられたという原点に立ち返りますと、大きな司法制度改革という枠組みの中で、この外弁の問題も含めて検討するに当たって、従来の法曹三者を中心としたサプライサイドの側から制度改革を考えていくという発想を若干変えて、より幅広い国民的な基盤、ユーザーの立場、外弁の立場、いろんな立場で議論していこうということか出発点としてあったんだろうと思うんです。その上でいろいろと方向性を出してきて、いろいろと議論してきたということであります。
今出てきている第1案、第2案の最後の単独雇用の部分の話というのは、これまでもいろいろと議論してきて、まさにサプライサイドから見たときには、ここで押さえてほしいという話と、それからもっとより広いコンテクストでユーザー等々を含めて考えてみた場合には、そこはもう必要ないのではないかと。そこのまさに視野を広げたことによって出てきた論点の違いという部分でありますので、かつその議論の結果、単独雇用までいっていいのではないかという意見の方が多かったと理解しているので、そこの部分、まさに土俵を広げて幅広い観点から議論したにもかかわらず、そこで立場の差が鮮明になった部分については、あとは任せてください、また、関係者の間であるべき方向を考えますとしてしまうと、これは何のために検討会で議論してきたのか、また、昔の関係者が中心となってどういうふうに法改正をしていくか最終的には決めさせていただきますという世界に戻っていってしまうのではないか。これは、これまでいろいろと議論してきた流れの中では非常に残念なことではないかなと思います。
それから、久保利先生の方から、単独雇用の話は確かにまだ現実的に、どういう弊害があるのか、予見可能性がわからないし、当事者も少ないというお話もございましたけれども、それはそれなりにこの検討会の場で議論してきたというふうに理解しておりまして、久保利先生自身からパラリーガルに対してのニーズが非常にたくさんあるという話の紹介があったりして、それとの関係で、むしろ雇用を解禁していった方がユーザーにとっての質の確保という意味では役に立つのではないかという議論もあったわけですし、その方がかえってパラリーガルの問題を規制していく上でやりやすくなるかもしれないという議論もあったわけです。
それから、単独雇用の場合において、やはり文化の翻訳者としての、間に立てる人の重要性みたいな議論もあったわけですし、いろいろな観点で、抽象的なのかもしれませんけれども、それなりにいろいろな情報インプットを踏まえて、その議論を踏まえた上で、全体的な方向性としては、よりユーザーの視点に立ってこういう制度改革をしていく必要があるのではないかと、そういう議論をしてきたいというふうに私は理解しております。
したがいまして、そこの部分を見過ごして、最後は方向性として、ここまで合意できたから、そこから先はお任せしますとしてしまうと、何のためにこの検討会でいろいろと議論してきたのかという感じを持っております。
中身について申し上げますと、これまでずっと積み重ねてきた議論の中では、もう少し具体的に、では、法改正をやるときに、収益分配を禁止する規定を残すのか残さないのか。共同事業を自由化した場合に残すのか残さないとか、相当個々の法律の規定を残すのか残さないという次元でいろいろ議論をしてきたと承知しているんですけれど、今回御提示いただいている整理案1、2というのは、これまで見ていたABCD案とほぼ同じか、ないしそれよりも更に簡素化されていて、法制的にいろいろな論点を踏まえた上で集約すると言われる割には、さっきの玉井先生の話とも共通するかもしれませんけれども、個別の法律がどういう書き方になって出てくるのか、原則自由化なのか、原則禁止なのか、そういうところが非常にあいまいなままになっておりますので、包括的にパーツ、パーツを組み合わせた整理されたものとして意見をと言われても、これまで議論してきた結果すら、必ずしも全部この集約されていないような感じがいたしまして、なかなかコメントするのは難しいのかなというふうに感じております。ただ、全体的な方向性としては、これは7月にも申し上げておりますけれども、整理案1の方向性で、この整理案1をベースに、この規定において例えば収益分配規定はどうなったのかとか、そういう話を更に詰めていく余地、弊害防止措置としてその他だけでいいのかと、それを詰めていく余地はあるのではないかと考えております。
以上です。
○波江野委員 3点ほどございます。1つは、座長のおっしゃった当検討会の議論の位置づけでございます。基本的には多数決で決めてそのとおりにやっていただくようなものではなく、いろいろな方面の人の意見を聞いて、それを参考に事務局で法制はつくるという話は伺っております。さはさりながら、この司法制度改革推進本部というものが設置されて、そこでユーザーの意見を聞いて、幅広く検討しているというところからいえば、この場が、11人の委員がどこまで全体の意見を代表しているかどうかは別として、尊重はされてしかるべきではないのかなと思います。この整理案の1、2において、結論が全く違いますと言うつもりはありませんけれども、全く違う結論が出てきて、「検討会の意見はさておきこうですよ」という格好で、全体の意見の中、いろいろな委員の意見の中から出てきたものと、かなり違和感のあるものがまとまってくるとすれば、それは、れやはり検討会の位置づけについてもう一度考え直さなけれはいけないという気がするというのが第1点です。
第2点は、下條委員のおっしゃった「審議会の意見書」の書き方でございまして、7月の議論のときに、どういうふうな形で読むのとかということで議論があったかと私も記憶しておりますけれども、まさに下條委員のおっしゃった雇用禁止、雇用の要件緩和について云々というのは書いてあるんですが、枠の中で囲った部分と、その下に書いてある文章の部分の位置づけ、重みと言いますか、それをどのように理解するのか。色々な意見の集約として出てくることには、枠で囲った部分が出てくるわけでして、特定共同事業の要件の緩和の前提として、「日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地」というのが大前提で出ております。その中で、特定共同事業の要件緩和も勿論あるし、それから雇用の問題も当然入ってくるであろうと思われます。ですから、ここに将来の課題として引き続き検討すべきであるという文章で結ばれているわけですが、それは「現在の検討会ではやってはいけない」という禁止まで踏み込んだものなのかどうか。その辺についてはやや疑問を覚えるわけでして、マンデートな範囲というのはここまでですよと、それをちょっとでも踏み超えることが許されるのか、許されないかについては、やや疑問を覚えるという点がございます。
3番目の話ですが、外弁法の問題として外弁法4条の話、つまり、外弁が日本法に関与してはいけないという問題について、我々ユーザーの立場から、一体どこまでその部分でいろいろと気にしなければいけない人がいるのか不明です。基本的に大部分の、まさに司法制度改革の意見書が対象としている一般国民は、先ほど久保利委員もおっしゃったように、外国法事務弁護士などは見たこともないし知らないという人たちでしょう。まさに自分たちの身近な話というのは、日本の弁護士に直接相談をして、解決していくわけです。かなり限られた法人レベルの人たちで、特に海外から日本に見えている企業の方たちが特に相談をするというのが多いのだろうと思います。
それから、以前に私が申し上げましたけれども、日本の中堅、あるいは中小の企業でも、これから海外に出ていこうという場合には、外国法事務弁護士がいらして、かの国の事情についていろいろ御指導いただければ非常にやりやすいだろうという話はしたわけです。だからと言って、相談を受けた外弁が、即、いい機会だとして日本法に関与してきて、まさに弊害が、先ほどの話だと1、2の例はあるようですけれども、それが蔓延するような大変なことになるのかどうかは分かりません。
それから、弁護士会でのアンケート結果などを伺ったときも、調査の母数というのが、統計的手法で考えると少なすぎて、それで判断できるのかというレベルの数だったような感じもしております。その辺も含めて、一般大衆と言っては変ですけれども、ユーザーの立場での意見ということから考えてどうかということを考慮していただく必要があるのではないかと考えます。 整理案1と2は、今日突然拝見したわけですけれども、出てくることにはやや違和感を覚えますけれども、2つ出ることによって議論が引き起こされるということにおいては、決して悪いことではないと思います。しかし、なぜこの時点で出てきたのかというのはちょっと奇異な感じはしております。
○孝橋委員 今までの議論がかなり繰り返されている感じなので、手短に申しますが、私はやはりこの整理案1と2の分かれ目として、参事官が先ほどおっしゃいましたように、外国法事務弁護士の危険性について、どのような認識を持つかということ、つまり、弊害のおそれをどれほど現実的に重いものとして受け止めるかということが1つのポイントかと思うんですが、先ほど下條先生がいろいろ例を挙げられまして、こういう弊害もあるんだということをおっしゃいましたが、私どもは前回、あるいは前々回でしたでしょうか、実際に外国法事務弁護士の人で紹介された事例が昭和62年からどれだけあるのかということについての疑問を申し上げていたわけで、それは実際はつかまえるのが難しいんだからということがあるのかもしれませんが、勿論、外国法事務弁護士の人が全部いい人ばかりで、間違いないことばかりをやるとは私も申してないわけですけれども、ただ、日本の弁護士の人と比べて、日本の弁護士の人もたくさん懲戒を受けている人もいますし、非弁活動で弁護士でない人が法律事務を扱ったことで問題になっているケースは幾らでもあるわけですけれとも、そういうケースと比べて、定形的に外国法事務弁護士について日本の弁護士の人よりも重い制限をかけないといけない、そういう必要性があるということがこの検討会のいろんな話とか、ヒアリングの中で明らかになったとは到底思えないと認識しております。
この検討会の位置付けについては、いろんな委員の方がおっしゃったことで、特に繰り返すまでもいないんですが、やはりユーザーの方からの視点というのが非常に重要だと思われるわけですが、ちょっと私が気になっていますのは、整理案2で、弊害防止のための手当に配慮しつつという形で、具体的にどういうことが行えるかということがはっきりしないまま案が提示されているところです。つまり、外国のローヤーが全部悪いとはとても思えないわけで、私は日本のユーザーにとって役に立つ外国のローヤーの人もいると思うんです。そういう人が日本に参入しやすくするということも司法改革の流れに沿うことではないか。それは危険性のある人も勿論いるでしょうが、日本のユーザーにとって有用なサービスを提供する外国のローヤーの参入を認めて選択肢を広げるということも1つの制度改革のポイントだと思うわけですが、こういうややこしい仕掛けをつくることによって、外国のローヤーがそれだけで日本に入りにくくなってしまうということは、別に外国の利益のために言っているわけではなくて、この検討会にはユーザー側から参加されている委員の方がいらっしゃいますけれども、そういう方から見ても、果たしていかがなものかなという疑問を持っております。ですから、整理案2の「弊害防止のための手当に配慮しつつ」という部分は、事後規制では不十分だという認識に立って、こういう手当てをしようとされていると思うんですけれども、この中身が問題だと思います。
次に、職務経験要件についてこれまでに申し上げたことに付け加えさせて頂きますと、5年以上の職務経験要件というのは、確かに今までにもございましたし、久保利先生がおっしゃったように普通パートナーになるのは大体そのくらいの経験年数だということは私も承知しているところなんですけれども、ただ、弁護士さんは、これから法曹人口が増えて、いろんな分野での活動が可能になります。例えば企業で5年やれる方もおられるでしょうし、また、それぞれの分野において専門性がますます進んでいきます。そうしますと、弁護士としての経験が5年あれば間違いなく監督ができるのか、どんな分野についても、日本法については、5年弁護士としての資格を持ってさえいれば、適切な監督ができるのかという辺りをぎりぎり考えていくと、5年の職務経験要件を設けることが果たして本当に合理的なのかという疑問を現在では持っておりまして、そのような点からも、整理案2の方には疑問を持っているということを申し上げたいと思います。
○久保利委員 孝橋先生おっしゃるとおり、危険性の問題だと思います。それは要するに、4条違反をするかしないか、4条違反の誘惑に駆られるかどうかということをどう見るかということだと思うんです。先ほど下川さんが、私のパラリーガルについて以前お話しをしたのを取り上げられましたが、あれは何を言っているかというと、パラリーガルを雇ってでも、その人に日本法のサービスをさせたいという意欲も実は持っている。そのことは特定共同事業が非常に不自由だからそういうことになるのかもしれないという理屈はあるかもしれません。それは共同事業を自由に認めましょうということになれば、その意欲を持っていた人たちはむしろ安全に日本法のサービスができるパートナーシップを組むと思うんです。パートナーシップが非常に使いやすいものになっていったにもかかわらず、あえて雇用しようとする人はどういう人かというと、それは当然、あえてパートナーシッフで厳しいことを言われないで、自分たちが単独雇用をする弁護士に日本法をさせようという誘惑に駆られる、あるいはそういう意図を持っているという人たちではないだろうかというのが合理的な動機だと私は思うんです。そういう人に対して給料を払っているわけです。日本法の弁護士でもし5年以上、5年経っていればパートナーシップとして問題ないのかどうかというのは別の問題として、5年未満の人たちを仮に雇っている。その人たちにどうして自分の母国法である法律ができようか。普通はできないだろうと。その人をわざわざ給料を払って雇って、その人に日本法をやれと言ってはいけないという方が、ある意味で言うと、困難を強いるものなのではないか。
そう考えてくると、単独雇用をする事務所というのが、4条違反の誘惑に駆られるのは当然ではないか。そういうのを制度として認めて、それで単独雇用まで広げろと。しかし、今まで悪い事例は余りないではないかというけれども、もともと特定共同事業で非常に狭められていたら、そういう意味ではそこまで考えもしなかったし、そんな人は大体来なかった。これからは単独雇用までOKだとなれば、そういう人たちも来るようになるのではないか。そういう意味で別に外弁だからいいとか悪いとかは全くないわけで、そうではなくて、人間の心理として、しかも、ビジネスマンとして来るわけですから、お金を払って人を雇った人は、それはできないんだということが考えられるだろうか。では、海外の会社から日本に来て、日本人を雇って、その日本人には、一切、お前のところで、例えば特許を持っているものだけしかつくらせてはならない、ほかのものはやらせてはいけないと言われたら、それはやはりやりたいのではないか。自分の特許でなくても、ほかのものでもそれをやらせたいと思うのではないか。要するに、今までない話を議論しているわけですから、なかなかこうだという証明は難しいんですけれども、ごく普通のビジネスマンの気持ちになってみて、年間1,000 万も金を払っていながら、ろくに英語もできない、中国語もできない弁護士に何をやらせるかといったら、母国法のことは何も知らないという人にやられるんだったら、日本の司法試験を受かった者には日本法をやらせようと思うのではないのか。それはすごく当たり前の話ではないかという気がするわけです。
そういうことを制度として認めておいて、4条で取り締まるという方が私は合理性がない話であって、そういう誘惑に駆られるなら、やはりもともと禁止をした方がよくて、それはパートナーシップをうんと広げて、コラボレーションができるようにするから、そこは単独雇用はこらえてくれという方が普通のセンスだと思うんですが、これは弁護士の変なセンスなんでしょうか。
○加藤委員 今日のこれまでの議論は、過去に議論を済ませていることを繰り返しているに過ぎず、それほど新しい議論の論点があるわけではないと私は思うのですが・・
一体、今日この検討会で何をやろうとしているのかというのがいまだにわかりません。
もう一点、この検討会の趣旨について、確かに第1回目のときに、答申等を作成するものではないとのお話はありました。しかし、議事録を読んでいただくとおわかりいただけますが、「政策判断するに当たっては、なるべく検討会の意見を取り入れるようにやっていく」ということであった筈です。検討会の意見ということは、検討会として何らかのとりまとめがなければ、検討会の意見などはわかるわけがないじゃないですか。それをやってはならぬというのは、私には理解できません。
○柏木座長 座長としましては、後の問題につきましては、検討会の意見というのは、検討会の一本化された意見という具合には理解していません。
○加藤委員 仮に両論あって全く並行しているということもあるでしょう。それはそれで検討会の意見です。検討会の意見はどういう方向であったのかそれをとりまとめるべきであると私は思います。その上でないとこういう議論はできないです。
○玉井委員 今、加藤委員がおっしゃったことは、私も同感で、今日のいろんな御発言の中で一番勉強にさせていただいたと思っておりますのは下條委員の御発言でありまして、ほかは割合蒸し返しのものが多かったと思うんですが、下條委員がおっしゃる具体例は私は承知しないんですけれども、恐らくそういう弊害というのはあるんだろうと思うんです。全くの憶測ですが。
あるだろうと思いますので、それはやはり事前規制の形でそれを防止するということは、今の規制の下でそういう弊害が現に起こっているわけですから、現状のような規制では中途半端で手ぬるくて、だめで、もっと徹底的に規制をかけなくちゃいけない。特定共同というあいまいな形でも許さない。徹底的に分離する。ユーザーが多少不便でも、かなり不便でも外国法のことは外弁の方でしてください。日本の弁護士のところに行ったら、日本の司法試験を受かっている人だけですと分けてしまえば、そういう弊害はかなり予防できて、弊害防止という点では非常にいい。しかし、それで日本の産業競争力はどうなるのかという別の問題がありますけれとも、それはいいと。そんなの法律家の問題ではないという割り切りは1つの割り切りとしてあって、私はそういうのが3案としてあって、中間などは実はないんだと思うんです。案の2は実はないということをまず確認するのが議論の出発点ではないか。
つまり、自由化しても、弊害は起こる。起こるけれども、それを上回る利益が産業界にありそうだから、そういうユーザーサイドの声を聞いて規制緩和をしましょうというのか、弊害を徹底的に防止するために、十何年か前に戻って、徹底的に分離するのか。どっちかであって、最適の解を探して、この辺まで緩和して、もうちょっとやってみたと。弊害がどんどん大きくなるばかりで、しかも産業界にとってメリットは余りないということになるんじゃないかというのがこの十何年かの経験なのであって、そういう意味では案の2というのはないということをまず確認すべきではないかと思います。
○柏木座長 座長の立場を離れて委員の立場で言わせていただきますと、この間ある論文を、これはアメリカの英語の論文なんですけれども、リーガルサービスとカルチャー、ランゲージの関係を論じた論文なんです。そのリーガルサービスとカルチャー、ランゲージというのは非常に密接に結び付いている。例えばアメリカで育って、アメリカのカルチャーを身に付けた人が日本に来て、日本の法律を調べたい、意見を求めたいというときに、日本の弁護士さんで余り上手じゃない英語で説明を受けるか、あるいはアメリカ人でアメリカのカルチャーがわかって、英語がぺらぺらの人から説明を受けるか、やはりカルチャー、ランゲージの結び付きが非常に強いというんです。
これは私がアメリカにいたときに、全く同じことを感じまして、例えば私もアメリカに駐在していましたけれども、三菱商事の社員は英語は非常にうまい。アメリカの弁護士の話を聞いても完全にわかるんですけれとも、やはり私のところに来てアメリカの破産法はどうなんだと、こういう聞き方をするんです。そうすると、私は、日本の破産とアメリカのChapter11はこういうところが違うんだよという説明をすると非常に納得するわけです。
ですから、多分日本で外弁が日本の弁護士を雇用して、日本のプラクティスをやる一番危険な領域というのは、クライアントか外国文化で、外国のランゲージにどっぷりつかった人。これは非常にリスキーなのではないか。それを野放しにしていいかという問題が1つあるのではないかと思うんです。
前回か前々回に、例の中国のやせ薬の話が出ましたけれども、中国のやせ薬は飲む人の自由なんだと。リスク覚悟で飲んでいるんだからいいんじゃないかという考え方もある。外国人は日本人から意見を聞くよりも、英語でコンフォタブルな状況で意見を聞きたいんだから、そういうリスクを取っているんだからいいじゃないかという考え方も一方であるだろうと思うんです。
もう一方で、やせ薬は国民に飲ませてはいけないと。危険性のある薬は飲ませてはいけないという考え方もあるんだろうと思うんです。
だから、必ずしも外弁が日本の弁護士を雇用して、日本法のプラクティスをやることが非常に可能性が少ないかというと、私は必ずしもそうではないという気がするんです。
ですから、2というのは十分にあり得る選択肢ではないでしょうか。
○下條委員 玉井先生は私の意見に賛成していただいたのか反対していただいたのかよくわかりませんけれども、検討会の席上で私も一度フランス型の制度を提案したことがありまして、要するに、今、外国法事務弁護士がいるからこそこういう問題が起こってくる。外国法事務弁護士が日本法をやるというインセンティブがあって、だからこそそういう問題が起こってくる。いっそ外国法事務弁護士をなくして、インターナショナル・パートナーシップみたいなものを認める。つまり、外国の法律事務所の東京支店には、日本弁護士しかいない。外国法事務弁護士というものはいない。むしろ外国法事務弁護士が日本に来たければ、パートナーである日本弁護士の下で被雇用者として働けばいいと、そういう言わば下條私案Cみたいなものを提案しましたけれども、そういうことが一番究極の、外国法事務弁護士が日本法に乗り出してくるというあくなき欲望と言いますか、そういうところを防ぐのには一番いいのではないかと思います。
それから、先ほど来、ユーザーと言われていますけれども、残念ながらユーザーサイドは波江野委員と加藤委員しかいないわけで、いずれも企業サイドなんです。ですから、この検討会に残念ながら消費者代表とか、労働者代表とか、そういった方々が全然いないのに、ユーザーサイドではこういう意見だからいいじゃないかというのはちょっと行き過ぎじゃないかというふうに感じます。
これは日本の国のまさに外弁制度の問題ですから、今、WTO加盟国は144 か国ありますから、これはモスト・フェーバード・ネーション・クローズによって全部にオープンになるわけです。こういう制度を一旦つくってしまえば、英米みたいな先進国だけではなくて、いろいろな国、そこの国では弁護士制度というのは必ずしもしっかりしていないかもしれません。私や道垣内先生は外国判決の承認の件をやっておりますけれども、それも国によっては判決などは金で買えるような国もあるかもしれない。そういうところが条約に入ってきたら、それも執行しないといけなくなるというようなことがありますけれども、それと同様に、弁護士制度が非常に緩やかなところへ行けば、幾らでも外国法事務弁護士としてこれは相互主義の適用もできませんから、全部認めないといけないわけです。
そういった面から、国の制度としての面を考慮に入れて制度はつくっていかなければいけないという面があると思います。
それから、先ほど久保利委員もおっしゃいましたけれども、共同事業を認めていて、日本の弁護士とパートナーを組んでできるのに、それ以上になぜ日本弁護士を雇用する必要があるのか。そこのところは、恐らく合理的な理由はないのではないかと考えております。
○波江野委員 今、下條委員のおっしゃったユーザー代表は私と加藤委員の2人です。たしかにそのとおりですけれども、先ほどから申し上げているように、法人関係のマターで外国法事務弁護士の問題は出てまいります。それに対して個人レベルの話で、隣の塀が壊れたとか何とかということで、外国法事務弁護士の世界というのはあり得ないわけで、労働関係というと、外国系企業に雇われている人というのも出てくるから、あり得るかもしれませんけれども、やはり外弁問題について、国際化検討会の中で検討するケースであれば、民間ユーザー代表というのは、企業からの者で、当事者適格を満足しているのではないかなと私は思っております。本当に全国民に適用されるような制度ではないだろうと私自身、この外国法事務弁護士の問題というのは、もっと限られた限定的な問題なのかなという感じがしております。
○下川委員 先ほどからちょっと話があった、共同事業が開かれていれば、単独雇用を有しているというのはどういう動機なのか、不純な動機しか目的はなのではないかという議論なんですが、そこもまさに前に議論した話で、余り新しい話ではないんですけれども、そこでまさに両方の事情を知っていないとなかなかコミュニケーションがうまくいかないとか、下調べ的な話をする必要も生じてくるし、それを一部パラリーガルの雇用などで済ませている場合もあるけれども、よりきちっとした資格を持った人を単独雇用するという形でそこの部分を補う形があってもいいのではないかという議論があったんだろうと思います。
共同事業でやればいいじゃないかというのは、あれなんですけれども、では、共同事業以外の単独雇用というのをいかなるケースにおいてもアプリオリに法律で禁止しなけれはいけないのかというのがまさにこの場でも議論されていた話でありまして、そこまで必要ないのではという議論もあったんだろうと思います。
今、議論していまして、基本的には外弁が中に入ってくることばかり考えているわけですけれども、立場を逆にして考えてみて、将来的に日本の弁護士の先生方が中国とか台湾とか東南アジアの有力な市場に出ていって、例えればそれらの国から日本への投資の関心を有している国などに対して、サービス提供するという局面になったときに、当然中国法なり台湾法なりそれぞれの国のいろんな背景を知った上でアドバイスしていくという必要が出てくると思いますけれども、そういう場合においても、共同事業は必ずパートナーを選ばなければいけない、共同事業形でしか進出できないというのと、場合によっては進出した上で例えば現地の弁護士の先生を雇用して、サービスを提供することも許容される。選択肢があるのとないのとはどっちがサービス提供がしやすいのか、そういう問題もあると思いますので、入ってくる話ばかりではなく、出ていく話も含めていろいろと考えていった場合に、やはり提携・協働の在り方というのは、基本的には当事者間の選択に委ねられるべきである。勿論、4条のような職務権限を超えることは許されるべきではない。それはまさに事後規制でやっていくべきであるという議論があったのではないかなと思いますので、ちょっと共同事業の選択肢があれば、それ以外をやる必要はないじゃないかという議論に対して、繰り返しではありますけれども、一言述べさせていただきました。
○久保利委員 下川さん、非常にいいお話をしてくれたと思います。すなわち、私自身考えてみて、仮に中国、台湾に行ったとします。私は外弁としてそこでは日本法の母国法しかできないというときに、台湾法とか中国法のことを本当にアドバイスしたければ、必ずこれはパートナーを組むと思います。そこでもし雇用して、その人はとにかく私のエリアしかできないわけですから、台湾弁護士、中国弁護士なのに、日本法の仕事しかできないとすれば、そんな人を雇ったって意味がないわけです。それだったら、日本から日本の弁護士をもう一人連れていった方がいいわけであります。
したがって、海外で雇用だけでやっていこうとするときに、その人に母国法のサービスというものを期待する、その人が持っている現地の法律のサービスを期待するのは当然ではないだろうか。4条があるからそういう問題が起きるのでというのは話はちょっと別です。4条が仮にいいんだ、そして、外弁というのは母国の原資格国法しかできないんだと。そして、その事務所というものはそういうものなんだというふうに大前提をきっちり置くとすれば、私は下川先生のおっしゃるような不便は何もない。中国でも台湾でも日本の弁護士が進出するときに、必ずパートナーシップを組むであろうと。雇用をしたとすれば、その人はちょっとおかしな人だと私は考えます。
もう一つ、法人の問題だと波江野さん、おっしゃったんですが、しかし、個人の問題もあるんです。例えば今、東京都内で結婚している人の10人に1人は外国人と結婚しているんです。国際的な相続、国際離婚、これはものすごく多いんです。そういう意味で私はニーズはあるんだと思うんです。
そのときに、その人が中国法での離婚をやったときに、必ず相手の夫か妻は日本人である可能性があるわけです。そうなってくると、これは特定共同なりパートナーシップの対象にはなるのかもしれませんけれども、自分が何も組まないでいて、一人でいて、相手の人はどうなるんでしょうかというときに、どういうサービスができるのかというと、これはなかなかサービスは難しいだろう。では、一人、日本人の若いのを雇おうかいうことになったときに、その人は結局のところは、その人に日本人の配偶者のためのアドバイスをきっとやらせると思うんです。その人はどうなるからこういう交渉をしましょうという話になってくる。
そういう意味で、むしろ個人の話を本気で考えたり、あるいは労働者でブラジルから来る人たちもいます。現に日本ではブラジルの外弁がたしか2人いらっしゃると思いますが、その人たちがどういう仕事をしているか私は知りません。しかし、ホームページを見る限りでは個人的な事件をやっている。決してブラジルへの進出のお仕事をしているわけではない。
そういうようなことについて、実は日弁連も調査能力がないんです。本当はどうなのかということさえわからないんです。何もわからない中で、みんな議論をしていて、みんな英米系のことばかり考えていますが、正直言うと、あまり英米系、特に大事務所については余り心配していない。WTOの144 か国、日本を除外すれば143 か国、その国々の人たちがどういう思惑でどう出てくるか、全く読めない中で雇用をさせたらどうなるかという議論をすること自体が余りにも荒唐無稽な判断を我々はしはしないかというおそれを感じるということを申し上げたかったのです。
○下川委員 先ほどの久保利先生の言っておられるのは、若干過度に単純化しておりまして、我々、ここで議論していた前提として、日本法の話と外国法の話が非常にミックスしていて、なかなか分離が難しい。それから、総合的な情報提供とかコンサルティングが必要だと。そういう前提で議論しておったわけでございまして、外国法の話であれば、現地法の話は全然関係ないんだから、雇う必要はないんじゃないか。逆に関係したらすべて共同事業でやったらいいという、そういうことはならないのかなと。法律の中でも主要な部分が外国法の事務に関してという書き方になっているわけですから、全く外国法の話になったら外国法だけだということにはならないと思いますし、仮に、外のクライアントに対してサービスを提供しないとしても、ちなみに日本法はこうなっていますというアドバイスを雇用主に対して行うということもあるんだろうと思いますし、そこは久保利先生がおっしゃっている共同事業であればすべて満たされるはずだというのはちょっと違うのかなというふうに思います。
○乗越委員 私、申し上げたいことがいっぱいあるんですけれども、これからどういうふうに議論をしていくかによるんですが、とりあえずそもそも論と言いますか、この検討会の在り方というところをまずやって、サブスタンスにつてはお話する機会があると思いますので、2、3申し上げたいと思います。
審議会意見書からマンデートがあるかどうかという話なんですが、これは先ほど波江野委員もおっしゃいましたが、マンデートがないと読むのがむしろ無理があるので、これは素直にこの紙を読めば、今回自分たちは検討し切れなかったから、だれか今後検討してくださいねと読むのがまっとうな読み方ではないかと思います。
ちなみに同じパラグラフの上の方では、外国法事務弁護士等に関する制度云々については、臨機、かつ十分に検討すべきであるということを言っておって、それに基づいて我々はこの問題を検討しているわけで、一番最後の雇用禁止についても、引き続き検討すべきであると同じ文言を使っているわけでして、それをここで検討してはならないという意味に読むとのは相当無理があるのではないかと思います。
2番目、そもそもこの検討会が議論を集約すべきということではなかったということは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、私の感じでは、議論は集約してしまったんだと思うんです。議論がある程度集約してしまった以上、その議論を忠実に反映して案を立てていただくのが事務局に期待されていることだと思いますので、それと余り乖離した形で議論がなされるというのは、我々検討会の委員にとっては不本意なことであると考えます。
3点目、これはサブスタンスに入りますので、後でもう少し申し上げますけれども、1つだけ申し上げたいのは、全体としてここまで行けばいいじゃないか、あるいはここまででどうかという議論で整理案の2が議論されたような気がしますけれども、私、先ほど孝橋委員のおっしゃった点に絡んで、案の中で不明になっている点をどういうふうに処理するかによっては、現行のものより悪い制度になってしまうのではないかという危惧が非常にありまして、そういうものであれば、わざわざこれだけ時間を使って検討した上で、今より使い勝手の更に悪いものをつくるというのは、検討会のメンバーとしてはなかなか納得し難いものだと思います。
4番目、法制的にというふうに先ほどから何回も言っておられますけれども、これはどういう意味かよくわかりません。法制局の方で何か議論があるということであって、それが例えば憲法違反になるおそれがあるということであれば、私ども傾聴したいと思いますけれども、そうでなくて、法技術的なことをおっしゃっているのであれば、それはむしろ本末転倒でありまして、まず、政策マターとしてどうあるべきかということをこの検討会の議論を踏まえて決めて、それにしたがって、法技術的なことを処理すべきだと思います。
以上です。
○柏木座長 3番目の使い勝手がかえって悪くなるといのうは、よくわからなかったのですが、もうちょっと具体的にお願いします。
○乗越委員 サブスタンスの話になると思いますので、今は余り申し上げませんでしたけれども、制限の中にいろいろちょっと飾りが付いておりまして、先ほど孝橋委員の方から御指摘がありましたが、「弊害防止の手当に配慮しつつ」とありますね。この弊害防止のための手当というのは具体的にどういうことになるのか。場合によっては、今以上にパートナーたる日本の弁護士に何か過重な義務を負わせて、それに違反したら何か懲戒の対象になるとか、あるいは被雇用弁護士に何か密告と言うと言葉は悪いですけれども、何か通報義務みたいなものを課して、それを通報しなかったら懲戒になるとか、今よりも過剰な義務を弁護士の方に負わせるような制度になれば、現実問題として、1つの事務所として、とても使い勝手の悪い制度になりますので、そういうものであれば、整理案2というのは現状よりも更に使えないものになるのではないかという危惧があるということです。
ここのところが分からない限り、整理案2については、私はいずれにしても、整理案2というのはおかしいと思うんですけれども、議論しづらいのではないかという気がするんてず。
○柏木座長 第1点、第2点なんですけれども、私の立場から言わせていただければ、マンデートの問題、さきほど波江野委員が指摘した問題ですけれども、私の理解としては、司法制度改革審議会の意見書の解釈から非常に明確な解釈が出てくるわけではない。外弁による単独雇用の問題を議論してはいけないということは書いていないし、はっきりここに書いてあるのは将来の問題だということのみが書いてあるわけです。この検討会がそれをどう尊重するかという問題だろうと思うんです。 私の理解ではほかの検討会の討議状況でも、必ずしも意見書のとおりになっておりませんし、ただ、さはさりながら意見書を全く無視していいかというと、それはだめだろうと思います。意見書はやはり尊重はしなければいけないだろうと思います。尊重した上で、合理的な理由があるのであればそこから離れることもいいのであろうと思います。
それから、ここの検討会の意見の性質についても同じようなことなんだろうと思います。ここの検討会の意見で完全に事務局を拘束してしまうということではないし、それから事務局の方もこの検討会をこれだけ集めておいて税金を使っておいて、この検討会の意見を完全に無視してしまうということも絶対にしないだろうと思います。
そういう範囲での緩やかな影響力というのが両方の問題の本質で、これをどこまで拘束力があるかという議論をするのは、余り実益がないのではないかという気がいたします。
それから、使い勝手の問題で、今の弊害防止のための手当というのかものすごく厳しくなってしまえば、これは今の制度よりもクライアントのためにならないというような御意見と、それから法制上の問題については、これはやはり事務局からお願いします。
○齊藤参事官 現状で御説明できる範囲で説明させていただきます。
共同雇用の場合に、「弊害防止の手当に配慮しつつ」という部分は、現状で考え得るのは、雇用主である弁護士から被雇用の弁護士に対する指揮命令権を適正に行使してもらうということを確保するにふさわしい規定を外弁法の中に設けるということは考えられると思うんです。
○波江野委員 言葉として、「雇用主である弁護士から」といって、「雇用主である外弁から」とおっしゃらなかったですね。共同雇用の雇用主である弁護士から、被雇用の弁護士に対する指揮命令というのは、雇用主である外弁に対してはどういうことを事務局はお考えになっているのかというのが私は分かりません。まさに「雇用主である弁護士」というところの言葉が非常に気になる表現なんです。指揮命令というのは雇用主だと当たり前のように雇った人に対して指揮命令するわけではないのでしょうか。
○齊藤参事官 雇用主である外国法事務弁護士がその職務範囲内の法律事務に関して、被雇用の弁護士に対して指揮命令権を持つのは当然です。ただ、問題は、被雇用の弁護士をして、外国法事務弁護士が日本法を取り扱わせてしまうという部分を防止しようとしているわけですので、日本法に関する法律事務を被雇用の弁護士がどう扱うかという場面が問題になるんだと思うんです。
そうだとすると、日本法に関する法律事務について、本来権限のある雇用主たる弁護士が適正に指揮命令権を行使してもらう。そのような手段を取ることが有用かつ合理的ではないかという基本的な考え方なんです。
○乗越委員 そこも議論がいろいろあるんですけれども、私の理解する限りでは、日本の弁護士事務所の中である雇用・被雇用の関係以上に何か義務を負わせていることになるわけで、そういうことをのんでまで、一緒に共同事業をやってくださる弁護士の方がどれたけいらっしゃるか、非常に疑問になります。
私がさっき御説明したのは、法制的な問題という4番目の点は、それ以前の問題として、法制的な話を踏まえた結果、整理案1、2が出てきましたという話があったんですけれども、整理案2が出てきた法制的な理由というのは何かというのが全然分からなかったんです。
つまり、これは法制局かどこかに行って話をしたら、これは論理的におかしいからだめだよと言われたのか、あるいは1だと、憲法解釈上問題があるからおかしいよと言われたのか、そこのところがよく分からないものですから、どういう経緯で法制上の理由による整理案2が出てきたのかというのがよく分からないところです。
○松川次長 法制的にというと、すぐ法制局を思い浮かべられるかもしれませんが、それは法律の制度の仕組みとして、整合的なものを確保するのは我々立案する立場にいる以上、当然責任を負っておるわけですから、そういう意味でチェックをしてみたという意味であります。したがって、あくまでも我々の現時点での責任を持った判断として、整合性を確保するためにはこういう枠組みが考えられるのではないかということであります。勿論、それに対しては、異なった評価も可能だと思いますので、その点については、意見があれば、その意見を踏まえて更に検討するという話であります。そういうことで御理解いただきたいと思います。
○乗越委員 そうしますと、整合性を踏まえて考えたところによれば、整理案1でなければ、整理案2にならざるを得ないという判断になったわけですね。
○松川次長 いえ、整理案1でなけばということではなくて、共同雇用までなら弊害のおそれを気にする方でも、共同雇用までなら弊害のおそれは定形的に少ないんではないかという議論がこの検討会でございましたので、それを現実に制度的に仕組める案があるかどうかというのは検証しないといけない義務があると思いまして、その点について考えてみますと、一応の考え方は、日本法について扱う権限のあるパートナーの弁護士がいるという存在を通じて、定形的にはおそれが相対的に低いと考えられるという議論であろうというふうに、議論の経過を総合して判断いたしました。
ただ、法制的には一応定形的におそれが低いと言っただけでは不十分ですので、念のためにその趣旨、実効性を確保するための措置というのは考える必要がありますので、留保をさせていただいております。
ただ、そういう弊害防止の手当についてどういう方向かといいますと、今参事官が申し上げたような趣旨で、違反のおそれのある事態に対して適切に対処するように、雇用主であれば通常行使することが期待される権限を通常どおり適正に行使していただきたいということを、一応実効性ということから考えて、そういう規定が考えられるということを申し上げておりまして、この点は更に詰める必要はあります。だから、必要最小限度の範囲内でそういうことを詰めるというのが議論の流れではないかと思いますけれども、一応そういうことについては、手当する必要性がこの案でいったらあるのではないかと考えておりまして、そういう仕組みとして議論の素材を提供しているというということでございます。
○玉井委員 私は2案はないのではないかと思うんですが、それについて議論すると、また自己矛盾のような感じなんですが、一応忘れていただいて議論しますと、何となく皆さん1案だというつもりで、法制的にと言っても、要するに、こういうことをやってはだめと書いたのは通る話ですから、恐らく1案だとすごく事務局の作業は楽になって、内心こっちになるのを望んでおられるんじゃないかと憶測しておりますけれども、2案だと大変だと思うんです。こういうときはどうだということを考えなければいけません。
しかし、そのときにこの場で出てきた議論で、私も大分記憶が薄れてしまっておりますけれども、もし間違いないとすれば、共同雇用で日本の弁護士が入っていれば、雇用主として当然指揮命令権というのはあって、自分が雇用している外弁が変なことをやると自分の責任になるわけですから、当然指揮命令権を行使してちゃんと監視するでしょう。だから、共同雇用にしておくと、単独雇用を認めるのは全然違うんだと。そういう意味で共同雇用しか認めないということ自体が弊害防止のための措置なんであって、それで必要十分なんだというのが2案にまとめられた考えのバックグラウンドではないかと思いまして、共同雇用しか認めない、更になおかつ弊害防止のための手当が必要だというのは、この場を議論を踏まえたものではなくて、率直に申し上げて、事務局が独自に入れられたものではないかと思うんですが、違いますか。
○齊藤参事官 事務局が何とおっしゃいましたか。
○玉井委員 独自に入れられたものではないか。つまり、この場の議論で、弊害防止のための手当が更に必要だということが出ていて、それで入れられたのではなくて。
○松川次長 それは違います。「配慮しつつ」は論理的可能性があることを一応視野に入れて更に議論を発展していただきたいので、この枠組みで考える場合には、弊害防止のための手当というのは、いわゆる事実上の共同雇用ということで、雇用主であるということで足りるのかどうか。あるいは法律に確認的であれ、そういうことを設ける必要があるかどうかということは、一応議論しておかなければいけませんので、この枠組みではそのことについて議論する必要がありますから、「配慮しつつ」と書いてあります。配慮の仕方はいろいろな意見がありまして、必要最小限ということもありますし、およそそういうような割り切りでどうかということは、法律論的には更に詰めさせていただきたいと思います。
○玉井委員 今の明快な御説明でわかりましたので、私としては、この弊害防止のための手当というのは共同雇用ということで十分であると。勿論、それすら必要ないと思っておりますが、それで十分であると。それ以上は一切必要ないという考えであるということを議事録にとどめていただければいいと思います。
ついでに申し上げると、5年以上の職務経験というのも、全く不必要だと思いますので、2案を取られるとしても、ここも削除していただいた上で取っていただいた方がいいと思います。これはまさにこの場で議論することが必要だと思いますので、申し上げます。
○柏木座長 5年の職務要件と弊害防止措置につきまして、道垣内委員、どうぞ。
○道垣内委員 弊害防止措置の方は、私も玉井さんのおっしゃったところに近いですね。ほかに何かもっといいアイデアが、先ほどおっしゃったような日本の弁護士さんにちゃんと見なさいよということを確認的に書くというのは、法律的に条文としてうまく収まるかどうかがちょっと心配ですので、私としては共同雇用であれば、それはそれで結構かと思います。
5年の方は、これはまた別の議論だと思いますので、これは別に困るという御意見もなく、外国法事務弁護士のヒアリングのときにもですね、だから、あえて削除することもないのではないかと思います。
ですから、単独雇用禁止の迂回措置で若い人と共同雇用することがあるかもしれないということはありますが、それは余り、本当はないのかもしれませんので明確にはわかりません。
○乗越委員 5年の職務経験についてちょっと申し上げますと、正直これを拝見したときに、ちょっと裏から来たなという気が実はいたしまして、5年を取る必要はないではないかという話ではなくて、たしか7月にやった議論としては、共同事業についての制限はやめると。私の記憶では、最後に単独雇用か共同雇用かというところについては、多数意見と少数意見はあったけれども、その前提として共同事業の在り方についての、それ以外の規制というのは撤廃するということが、この検討会の意見ではなかったかというふうに記憶しております。
ですから、5年以上の職務経験という49条の2の1項の話がここで蒸し返されているのは、ちょっとあれという気がいたします。
○玉井委員 昨日たまたま事務局に確認させていただいたんですけれども、5年以上の職務経験ということは、私どもの大先達であります、三ケ月章先生という方がおられますが、退官されてすぐ弁護士になられて、しかるべきところのパートナーになられたわけですけれども、弁護士としては駆け出しで5年の経験があると。最初はなかったわけです。そういう人がパートナーに入っていると、外弁をパートナーにできないという意味ですかと伺うと、そのとおりだということなんで、そんな法務大臣が務まるような方ができないような、そんなに大変な仕事ですか、それはちょっと過剰規制ではないですかということを申し上げて、もし同じようなことを柏木先生が退官後になされたとして、それもだめですか、弁護士として新米だからだめですと、しかし大きな商社で何十人も部下を使っておられたような方が、まさにもし弊害があるとすれば、指揮・監督をする最もふさわしい方ではないかと思いますが、それもだめだと言ったらいかにも過剰規制で、この5年要件というのは撤廃するしか手はないんではないかという意見を事務局には申し上げたんですけれども、是非その点は御再考いただければと思います。
○柏木座長 私の記憶では、以前の議論は5年の職務経験というのは、それほど深く議論しなかったような気がするんです。というのは、お話をお聞きした方々が、皆さん5年の職務経験というのは、余り問題にならないんだと、どのみちパートナーを組むときには司法修習所出たての人とは組まない、実力のある人と組むんだから、余り問題にならないということで問題にしなかったんだろうと思うんです。
今度この2案では、1案でいけば整合性があるわけですけれども、2案でいきますと外国法事務弁護士の雇用禁止ということとセットになっているわけで、これは繰り返しになりますけれども、雇用禁止というのは、要するに指揮・命令形を使って、その4条の潜脱をするおそれがあると。そうすると、やはり共同事業の場合も、若い判断力のない弁護士と表面上パートナーシップを組んで、実質雇用と同じようなことをするおそれがあるのではないかいうことで、多分この雇用禁止の見直しと外国法事務弁護士による弁護士の雇用禁止と、それから5年の職務経験というのはセットになっているんだという気がするんです。
ですから、これは今日お出ししたわけで、まさに前に議論しなかったことを議論していただくのも一つの今日の目的でありまして、ここの職務経験に関しては、私はそういう理解をしております。ですから、確かに5年の職務経験は不要ではないか、1案がいいというのは、1案と2案を比べた場合には非常によくわかる意見なんですけれども、2案の中で見た場合には、2案全体が要らないではないかという議論は別とすれば、これはこれで整合性が取れているのではないかという気がするんですけれども。
○久保利委員 私も賛成です。
○孝橋委員 ですから、2案は基本的に外国法事務弁護士の人が、単独雇用を認めると4条違反をやるのではないか、だから外国法事務弁護士による雇用は共同事業でしか認めないという発想だと思うんですけれども、そういう弊害防止をする必要があるという前提で、例えば5年の職務経験要件が入っていると思うんですが、更にその「弊害防止のための手当に配慮しつつ」というのが書いてありますけれども、そういう弊害がかなり現実的にある、それを何とかしないといけないとする、それを防止する策としてどういうことが必要か、もし非常に心配する人からすると、それでもまだ不十分ではないかというふうになってくるのではないかと思うんですけれども、それは今の参事官おっしゃったようなことぐらいしか考えられてないんですか、それともそれ以外にまだ何か考えられているんですか。まだ不十分だという人も当然いると思うんですけれども、その点はいかがですか。
○柏木座長 下條委員、どうぞ。
○下條委員 弊害防止のことですけれども、さきほど事務局の方から法制面からということをおっしゃいましたけれども、確かに現在第三国法の取扱いがどうなっているかということは、第三国の有資格者の書面による助言を得ないとできないことになっています。ですから、そういう面とのつり合いも考えないといけないのではないか。
つまり、外国法事務弁護士が共同雇用の下にある日本弁護士を使って、日本法に関する知識を得て、それをクライアントに対して表明するときは、何もなしでできるのか、第三国法より緩やかになってしまうのかという問題がありますので、そういう面もまさに事務局がおっしゃった法制的な面ではないかと思うんですけれども、そのつり合いを考慮してその弊害防止措置も考えないといけないのではなかろうかというふうに考えます。
○下川委員 今、最後に御指摘のあった第三国法との関係では、いろいろな交渉の場ではまさに問題にされているところでございまして、日本の弁護士の先生の場合も、第三国法を基本的には自分で知識がなければ、詳しい有資格者からアドバイスを得て恐らくやっているであろうと、そういう意味ではまさにある特定国の外国法についてしか資格を有していない外弁の方が、第三国法によるときに、書面を要求するということが一見合理的に見えるんですけれども、結局みんなそれぐらいのことはクライアントとの関係では心配だからやっているということになるんですけれども、それを外弁についてのみ法律上の義務として書いているということがまさに問題になっているわけでございまして、それとパラレルで言うと、私は全く逆でして、5年の職務経験という話も通常であれば5年以上の人をパートナーに選ぶというのが実態としてあるのであれば、それをわざわざ外弁についてのみ法律に書く必要はないではないか、それを書くことによって原則禁止というのがまず最初に出てきてしまって、それゆえに先ほど玉井委員がおっしゃったような、もう十分に経験があると思われるような方が、例外的な状況なのかどうかわかりませんけれども、やろうとしてもそれはもう原則的に禁止されてしまう、アプリオリに禁止されてしまうという状況が生じると。そこにまさに明示的にそれを置くということに問題点があるんではないかというふうに考えております。
第三国法の法律事務について、外弁にだけ書面でアドバイスを求めるという点については、内国民待遇等との関係でも、いろいろと提起される可能性はあろうかと思います。この場合も、第三国法の指定法の指定を受けてなくても、例えば第三国法についてそれなりの知識を有しているというケースもあるかもしれませんし、アプリオリに必ず法律上の義務としてそれを求めなければいけないのかというのは、議論があるところだと思います。
○柏木座長 加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 それぞれの委員の意見表明となってきていますので、私の意見も申し上げたいと思います。
私は、基本的には整理案1を支持するものです。仮に整理案2が採用された場合であっても、先ほどの「弊害防止のための手当」に配慮というのは、全く不要なことではないかと思います。
5年以上の職務経験については、共同雇用との関係でも非常に微妙なところはあろうかと思いますが、原則禁止だということを法律上あえて書かなければいけないのかどうか、実態に照らしてもその必要性はないのではないかと思います。
以上です。
○柏木座長 ちょっとこれまた座長の立場を離れて申し訳ございませんが、これはクライアント・サイドからの発言でありますけれども、私も第三国法については気になっているものでして、多分今のビジネスのやり方というのは非常に迅速性が要求されていると思うんです。電話とか何とかで第三国法の意見を聞きながらどんどんアドバイスをしていかないと間に合わない時代で、私の経験でも書面を取ると非常に時間がかかる。それでは間に合わないことが非常に多いわけです。
そういうときに、第三国法を書面で取れと、書面という要件が非常にネックになっているような気がいたします。ちょっと委員としてというよりも、むしろ実務の経験から発言させていただきました。
ほかに第1案、第2案について、御意見ございませんか。
○道垣内委員 確認をさせていただきたいんですが、単独雇用と共同雇用が一番問題だと思いますけれども、久保利委員のおっしゃっている前提が事実なのかどうなのかなんですけれども、要するに、一番単純に言いますと、1人の外国法事務弁護士さんがいて、その下に1人の日本の弁護士さんが雇われるという場合にどんな仕事ができるかで、必ず外国法についての事務しかできないのか、それともその弁護士さんは日本法についてもはみ出し部分があるので、それは具体的には命令は受けないけれども、雇われ人としてはサービスを提供して、しかし経済的には服従していると、そこでの稼ぎもボスに入れて、それから給与をもらうということができるのかできないのかですが、久保利先生がおっしゃっているのはそれができないという前提ですね。
○久保利委員 はい。
○道垣内委員 そうであれば、論理的には2案しかないと言いますか、共同雇用しかだめだと思いますが、それができるんです、お医者さんをお医者さんでない人が雇ったのと同じだという話なのかどうなのか、もしかするともう十分明快なのかもしれませんが、私は少なくともわからなくなっていますので、教えていただければと思います。
○齊藤参事官 外弁法4条で、外国法事務弁護士が職務範囲外の法律事務を取り扱ってはならないということとの関連でいきますと、やはり被雇用の弁護士が日本法の法律事務を取り扱って、その結果が雇用主である外国法事務弁護士、あるいは外国法事務弁護士事務所に帰属するという実態だとすると、これは4条違反の可能性が残ると思います。
○道垣内委員 可能性なんですか。
○齊藤参事官 ですから、そこがある程度実質的な判断にはなるんだと思うんです。逆に言うとそういうケースの場合に、4条違反にはならないとは断定できないということです。
○松川次長 逆にわかりやすく言うと、基本的には4条違反になると考えるんです。ただ、それは外弁とは全く独立した形で、雇われている弁護士の独立の計算でやっているよというのが誰にも分かるような形になっていれば、あえて4条違反ということは。
○道垣内委員 経済的には支配されていて、専門的な知識の提供においては独立していると。
○松川次長 その辺はなかなか通常では難しいとは思います。
○齊藤参事官 一言申し上げます。外国法事務弁護士が4条違反の法律事務を取り扱っていると言えるか否かというのは、提供された日本法に関するサービスが適正であるか否かということとは直接関係ないんです。だから、今、道垣内先生がおっしゃったように、経済的な支配とプロフェッショナルな判断部分、これは別々だということを御指摘ですけれども。
○道垣内委員 そういう場合にどうでしょうかと申し上げているんです。
○齊藤参事官 ですから、リーガルサービスの内容が適正でありさえすれば、外弁法4条違反にはならないということではないんです。
○古口次長 結局、外弁が自分が雇用している被雇用の日本弁護士を使って、日本法事務をやったと言えるかどうかの事実認定の問題だと思うんです。
○道垣内委員 4条の問題だとかおっしゃってないわけですね。それでは解決にならないので。
○古口次長 その間接事実として、お金の関係がどうなっているかとか、依頼者にちゃんと説明しているかどうかということは、間接事実としてはいろいろ考慮すると思いますが、まさに外弁が自分の支配しているいそ弁を使って、日本法事務をやったかどうか、そういう事態と言えるかどうかの問題、それ以上は具体的な事例で言うしかないということなんだろうと思うんですが。
○道垣内委員 そうすると、久保利先生がおっしゃっている前提であるとは限らないということですか。
○齊藤参事官 久保利先生が前提にされていることは、私はそのとおりだと思うんですけれども。
○柏木座長 乗越委員どうぞ。
○乗越委員 そうしますと、日本の法律事務所の中での雇用関係と、それから外弁が絡むときの雇用関係というのは、資格法上の違いが出るということですか。今おっしゃったのは、経済的な支配、その他もろもろの要素があると思いますけれども、被雇用弁護士が日本法のアドバイスをしたときに、その結果が雇い主に帰属する場合はだめだということをおっしゃっていましたけれども、そうしますと例えば日本の事務所の中で、ある被雇用弁護士が何かやったときに、それが資格法違反を行った場合には、別にその資格法違反の行為が雇い主たる弁護士に帰属するということはありませんよね。
○齊藤参事官 被雇用の日本の弁護士の資格法違反の法律事務として具体的にどのようなことが想定されますか。
日本の弁護士は、国内で法律事務を取り扱う限りは、原則的に特段の規制はないんです。
○乗越委員 経済的な面以外で。
○玉井委員 それはあれですか、1案で雇用が解禁になったとしても、例えば外弁事務所に行って、今度はニューヨーク州でこういう事業をやろうと思っているんだけれどもどうしましょう、契約書をドラフトしてくださいと言ってクライアントが来ますね。それに対して、日本の弁護士と外弁であるパートナーが相談をして、準拠法をどっちにしようかと、日本法だとこうなりますと、ではニューヨーク州法の方がいいなと言って日本法の知識を提供して結局ニューヨーク州法にしたと、これは日本法の知識を使ったからだめだということになるわけですか、あるいはそれで準拠法。それはしかし成果は全部パートナーである外弁に行くわけですね。クライアントから入るお金はすべてそっちに行くと。
そういうことであるとすると、もし2案にして共同事業を認めたとしても、そういう案件については必ずパートナーである日本人の弁護士が、その場に望んで指揮・命令をしないと違法であるということになりそうですけれども、その解釈はちょっと取れないんじゃないですか。
○齊藤参事官 ただ、今の玉井先生の事例は、外国法事務弁護士が最終的に外国法に関する法律事務を処理したというふうな結論の下で、その処理の過程で日本法に関する知識は被雇用の弁護士から雇用主である弁護士が知識を活用するために得たと、そういう限度で理解する余地はあるかもしれません。
○玉井委員 だったら、その結論としてニューヨーク州法だと変な判例あるからやめようと、では日本法にしましょうということで日本法を準拠法にするということだって、結論としてあり得るわけですね。日本法が準拠法になると、それは日本法について知識が当然契約のすべての解釈に必要なわけですから、そういう契約書をつくったら違法だということになるわけですか。
○齊藤参事官 ですから、そういう形でもしも最終的に日本法に関する法律事務ということで取り扱われたというふうに割り切るのであれば、それが被雇用の弁護士が事務所のためにそのような法律事務を取り扱えば、それは4条違反になります。
○玉井委員 1案でそういうことだとすると、2案を取ったとしても、共同事業をやっている弁護士の中のパートナーである日本人の弁護士がそういう案件については一々監視をしていないと、実質上外国法事務弁護士と被雇用の日本人弁護士だけでそういう案件を処理したとすれば、やはり違法だということになるんではないですか。それはおかしいと思いますけれども、そういう不便をなくすためにこの場の議論をしているのではないですか。
○齊藤参事官 ですから、そこで勿論大きく雇用の規制を完全に撤廃してしまった方がいいという考え方と、できるだけ弊害のおそれを防止するという観点を維持した考え方と、やはり見解は分かれるのかとは思います。
○バイヤー委員 少し4条の前提がずれているんではないかと思います。4条は何か外国法だけの法律問題がある前提だと思いますけれども、大勢の場合は混ざっている問題になってしまうと思います。だから本当は、4条にはただし書か何を入れて混ぜている問題だとしたら、外国法事務弁護士が必ず弁護士と相談しながらやれば与ることができると言えば、やはり共同事業であっても、単独雇用であっても、その外国法事務弁護士が被雇用の弁護士と相談しながら、何とかその混ざっている法律問題の相談ができるようになると思います。
でも、今いろいろやっていることは、ピュアな外国法律問題だけではない問題だと思います。
○柏木座長 それは共同事業をやれば、全く問題なくできるようになりますね。
○バイヤー委員 その場合でもパートナーの弁護士を経由して下の弁護士に行くことになって、そのパートナーの弁護士が警察になってしまいます。何も法律相談ができなくなって、ずっと警察の仕事をやってしまうことになってしまうんです。
○柏木座長 ちょっと極端だと思いますけれども。
○バイヤー委員 でも、このいろいろなおそれが極端なことだと思います。
○柏木座長 要するに、外弁が日本の弁護士を雇用することが非常に多いかどうかという問題にも非常に関連してくるんだろうと思うんですけれども、多分バイヤーさんがおっしゃったようなことのためには、共同事務所をつくってしまう。それで協力しながらアメリカ法の問題も、日本法の問題もミックスした問題を処理するのではないかと思うんです。
○バイヤー委員 私もそう思いますけれども、さっき言ったとおりにやはり日本の法律問題があれば、外弁が直接被雇用の弁護士のところに行って相談しながら、指揮・命令できないと言っていたでしょう。それが第4条違反になってしまうから。その第4条の前提がちょっとずれているからなんじゃないですかと言っているんです。
○柏木座長 あり得るケースというのは、例えばさっきの離婚の話で、アメリカ人が日本人と結婚して、そのアメリカ人が離婚の相談をしようとした。やはり英語ができてアメリカ人の心がわかってくれるアメリカ人の弁護士のところに来たと。そのアメリカ人の弁護士がどうもこれは準拠法は日本法になりそうだと、離婚の準拠法は日本法だから、日本法がわからないから被雇用の弁護士を使って日本法のアドバイスをするというのが、一番あり得る多分典型的な例ではないかという気がするんですけれども。
○バイヤー委員 多分みんなはそういう事件を外弁が与ることは絶対だめ。それがピュア・ジャパニーズ・ローだから、でも混ざっている問題のことは、今の困っていることだと思います。そして国際と言えば、やはり混ざっていることが一番多いと思います。
○玉井委員 世界中で特許権を侵害されていますが、どこで訴えましょうかと言ったら、それぞれの国の法律を知らないとできないわけです。たまたま日本で訴えましょうという結論になった、それは外弁法違反ですと言うと、もう最初から結論。
○松川次長 先ほどの発言で基本的にはと申し上げたのは、一応わかりやすく純粋、ピュアな日本法を念頭においたものでありまして、基本的に外弁法上でも外弁が扱えるかどうかは、母国法が主要な部分かどうかという、その認定作業も必要なので、混ざった事案というのは、事後的なチェックがかなり難しいものです。わかりやすい例で言うと、ロジックで言えば基本的に日本法を被雇用弁護士が扱えば、それは外弁の行為と評価されるのでアウトですということを申し上げたわけでありまして、その問題以外に混ざった案件については、これは母国法関連の案件かどうかという認定も加わりますので、なかなか実際問題としては難しい認定になろうかと思います。
○玉井委員 それでは、先ほどの加藤委員の驥尾に付しまして、私この案のどちらかということであれば、内容的には案の1しかないということで、先ほど申し上げたとおりです。
それから、案の1を取るにしても、今申し上げた事例で言うと、日本の特許権を日本で侵害されているという事例で日本で訴えたら、ピュアに日本法の問題ですから、そういう問題と、日本で訴えるのはやめましょう、アメリカで訴えましょう、カリフォルニア州で訴えましょうという問題と、同時並行的に処理できなければ困りますから、4条も先ほどバイヤー委員がおっしゃったような方向で改正すべきだと思います。
もう一つ申し上げたいことは、今日の議論はそういうことを議論すべき場であって、案の2のようなものが出てくる場ではなかったと私は思います。そういうのは、私は事務局の仕切りに、非常に不満を持ちます。それが第2点です。
第3点は、案の2は従前の議論を整理されたとおっしゃっていますけれども、私の従前の議論を整理されたのは案の1だけだと思います。と言いますのは、案の2というのは、共同事業を認めるという点ではほとんど全員の集約された意見を反映していますけれども、5年以上の職務経験の要件については、この場でほとんど議論していませんし、弊害防止のための手当というのは、共同事業しか認めないということ以外に必要かどうかいうこともほとんど議論していませんから、そういうことを入れているというのは、これはこの場の議論を踏まえた整理案ということではないと理解します。
もし将来の方向として、いずれにしろ法律の立案をするためには、どちらかの案を下敷きにしてたたき台にして、どちらかの方向で立案しなければいけないわけですけれども、もし案の2をとられるのであれば、それは推進本部が法律で与えられた自らのミッションを果たされるために、御自身の責任でおやりになることであって、それは検討会の意見に基づいたものではないということをはっきりさせていただきたいと思います。
以上です。
○バイヤー委員 賛成です。
○加藤委員 賛成です。
○久保利委員 私は反対します。今この検討会で5年ということが議論されなかった、弊害防止が何も出なかったとおっしゃいますけれども、少なくとも私は5年でいいではないか、弊害防止の措置は必要であると考えています。ただし、その中身がどういうものであるかについては、議論の余地はあるという趣旨のことを一貫して言ってきたつもりでございまして、私が検討会のメンバーでないというなら別でございますけれども、少なくとも多数決ではないということで、少数意見であっても有力説というのはあり得るという前提に立つのであれば、今の玉井先生のお話は少しお言葉が過ぎるのではないかというふうに考えております。
○道垣内委員 私も本当は数量制限ということを言っていましたので、外弁の数と日本の弁護士の数のことを申し上げていまして、弊害防止措置が何らかの形であってもよいのではないかと思っています。
○乗越委員 私は玉井委員に賛成です。
○孝橋委員 私も整理案の1に賛成します。
○柏木座長 ほかに御意見ございますか。
○波江野委員 先ほどもありましたけれども、こう2つ並べてみると、やはり私は整理案の1でいいのではないかという気がいたします。
○柏木座長 ありがとうございました。大体議論が出尽くしたと思いますが、ほに何か。下條委員どうぞ。
○下條委員 先ほどからマンデートの話が出ましたけれども、マンデートの範囲を超えるということをサポートする立場から申し上げたいと思いますけれども、審議会の意見書の1ページを見ますと、司法制度改革審議会設置法というのがあって、それに基づいて司法制度改革審議会というのは設置されたわけです。法律に基づいて設置された機関だと書いてあります。
それから、更に下の方にいきますと、諸外国の司法制度についての理解を深めるために、現地、米・英・独・仏に赴き、各国の実情を視察するとともに、司法関係者との意見交換を行ったと書いてあります。改革審議会はこういうことをやっているわけです。そういった上に立って、先ほどの55ページにおいて、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の見直しは、「国際的議論もにらみつつ、将来の課題として引き続き検討すべきである」と言っているわけです。ですから、ここでまさにこのような法律に基づいてつくられた改革審議会が、国際的議論もにらみつつ、将来の課題としてというふうに言っているということは、現時点ではやるべきではなくて、将来的に検討しましょうという判断が下されているものだと思います。
にもかかわらず、この検討会は冒頭説明があったように、法令とかそういうものに根拠を置いたものではない、単に司法制度改革推進本部が言わば相談相手として私的に設けられた検討会であるという御説明をいただきました。そういうところですから、審議会の方が労働者代表も入っていれば、消費者代表も入っているのと違いまして、ここはそういった方々の代表が入っていないと。
そして意見書が何度か言っています国際的議論もにらみつつ、審議会は国際的議論も見てきているわけです。ところが、この検討会は何も国際的議論を見に行ってないわけです。そういうところが、この将来の課題としてというふうに言っているところを、言わばオーバーライドするということは、当検討会と言いますか、推進本部がやるべきではないというふうに考えます。
○柏木座長 ありがとうございました。下川委員そうぞ。
○下川委員 先ほど、私、意見を表面しておりませんでしたので、整理案1を支持するというとを申し上げたいと思います。
それから、国際的な動向を踏まえてないという御指摘がございましたけれども、この場におきましても、各国、米、EC等における状況を説明させていただいて、これは日弁連さんから御紹介いただきましたし、交渉における動向、要請等も紹介させていただいたと思いますので、我々が行ってないから国際的な動静を全く踏まえてないというのは、若干乱暴かなというふうに思います。
一言申し上げさせていただきます。
○柏木座長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。今日は、2つの整理案について、あるいは3つという説もありましたけれども、御議論をいただきました。
加藤委員から厳しい御意見、玉井委員からも厳しい御意見をいただきましたけれども、私自身としては、この今日の検討会でいろいろ過去に議論されてない点も指摘がありましたし、事務局としては大変参考になったのではないかということを期待いたします。
私、座長としましては、先ほどから繰り返しておりますように、この検討会で事務局に対してこういう案をまとめろとか、そういう指示を与える検討会ではないと了解しております。今日の意見、かなり火花の散る御意見がありまして、これを取り入れた事務局案というものができるものと期待しております。
という期待を表明させていただきまして、本日の議論はこれで終わりにさせていただきたいと思います。
乗越委員、どうぞ。
○乗越委員 私は期待の表明では若干足りないんではないかという気がしておりまして、今後どういうふうな御予定なのかというのをお伺いしたいと存じますが。
今日の議論を見るにつけ、検討会としては事務局案というものを拝見して吟味する機会というのが与えられてしかるべきではないかという気がしてまいりましたので、その点についてどういうふうにお考えになっているかというのをお伺いしたいと思います。
○柏木座長 それでは、今後の予定と次回の予定につきまして。
○齊藤参事官 事務局としましては、本日の御議論を踏まえまして、今後、検討を進めさせていただきます。
それから、次回の12月の検討会で、どのようなスケジュールで検討会を運ばせていただくか、そこは先の準備状況がなかなか後手後手になっておりまして、まだ固まっておりませんので、至急その辺りを固めてお知らせできるようにしたいと思います。
○柏木座長 波江野委員、どうぞ。
○波江野委員 議論を踏まえて検討するというのは、当たり前の答えで、先ほど玉井先生から御指摘があったように、来年の通常国会に出すのだとすれば、そのときに出る法律の条文はどうだと、これは私どもの関与すべきところではないにしても、そこで提案される基本がどんな姿になるか。例えば、今度12月19日に検討会があるわけですが、その場でもう一回事務局でとりまとめられた案について審議をして、それから法案に取りかかるとか、あるいはそのもっと前に別の顧問会議があると思いますけれども、そこにはいつこういうことを上げるとか、そういう日程のようなものを具体的に御説明いただかないと、先ほどの乗越委員の御質問の答えにはならないと思うんですけれども、いかがですか。
○齊藤参事官 それは申し訳ないんですが、そういう具体的な日程まで今日お示しできる段階にはありませんので、これは御容赦いただきたいと思います。しかし、平成15年の通常国会に法案を提出するという目標は、それを達成すべく最大限努力していくわけですので、できるだけ早い段階で基本方針は固めさせていただきたいと、そこまで申し上げておくことはできるかと思います。
○柏木座長 乗越委員、どうぞ。
○乗越委員 日程もそうですけれども、どういうふうに固めるかというのがわからないんですけれども。
○齊藤参事官 ですから、そこはいわく言い難いんですが、申し訳ないですが、委員の方々の御意見を尊重して判断していくということを申し上げることになります。
○加藤委員 次回は12月19日でしたか。これから再度検討されて我々に示して、さらにどういう議論が必要なのか、必要でないのかわかりませんが、日程的にも十分間に合うということでしょうか。
○齊藤参事官 これは間に合うように作業してまいるしかないですね。
ですから、今、確定的なことを申し上げることができなくて、大変恐縮なんですけれども、それはこちらでも早急に今日の御意見を踏まえまして対応しなければいけないことなんだと、それは考えております。
○加藤委員 せっかくここまでの議論を尽くしてきたわけですので、少なくともその方向性なり何なりを、この検討会として確認することまではしたいと思っておりまして、したがって19日までの間にどこかでもう一度検討会を設けていただけるのであるならば、私としては全くやぶさかでないということだけ申し上げておきたいと思います。
○柏木座長 私としましては、今日はそこまで、方向性を一本化する、例えば今日の議論でも、やはりいろんな御意見があるわけで、多数決でこの検討会はこういう意見であるということをまとめることがいいのかどうか、それからまとめることにどれだけ意味があるのか、つまりこれは報告をまとめる会ではなくて、事務局に対する意見の具申、要するに事務局に対する諮問委員会のようなものであるという理解ですから、今日その方向性をはっきり出すかどうかということについては、私としてはちょっと留保させていただきたいと思います。
今日はそういうことで、非常にフラストレーションのたまる議論だったように思いますけれども、座長もいろいろ不手際がございましたけれども、税金の無駄遣いという御批判があるかと思いますが、今日は今日なりに私はかなり問題点の理解が深まったように思います。また、12月19日に何をやるかということが決まってないということで、これまたもっともっとフラストレーションがたまっていらっしゃるのはよくわかりますけれども、私も事務局の作業を見ていますと、これは非常に大変な作業でありまして、単独でどんどん判断できる問題でもなさそうですし、その辺は御理解をいただく必要があるのではないかという気がいたします。
ということで、次回のスケジュールにつきましては、固まり次第事務局の方から御連絡させていただくということで、これで第12回国際化検討会を閉会とさせていただきたいと思います。
今日は本当にありがとうございました。
○齊藤参事官 ありがとうございました。