首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会国際化検討会

国際化検討会(第17回)議事録



1 日 時
平成16年6月30日(水)13:30〜14:10

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局共用第4会議室

3 出席者
(委員)
柏木昇座長、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、下条正浩、道垣内正人、乗越秀夫、孝橋宏、波江野弘(敬称略)
(関係団体)
日本弁護士連合会、日本弁理士会
(関係省庁)
最高裁判所、法務省、外務省
(事務局)
山崎局長、松川次長、古口次長、大野次長、齊藤参事官、笠井企画官

4 議 題
法令の外国語訳について

5 議 事

○柏木座長 それでは、所定の時刻になりましたので「国際化検討会」の第17回の会議を開会いたします。
 初めに事務局から、本日の議題と配布資料についての説明をいただきたいと思います。

○齊藤参事官 それでは、本日の議事次第と資料の説明をさせていただきます。
 本日は、お手元に配布させていただいた議事次第にありますとおり、法令の外国語訳の問題について、御検討をお願いしたいと考えております。
 続きまして、資料の説明をさせていただきます。
 資料17−1は、政府内部での法令の外国語訳についての議論などについて、まとめたものでございます。
 まず1は、この検討会及び顧問会議における議論をまとめたものです。この検討会では、法整備支援の推進と司法制度の国際化の観点から、法令の英語訳の整備をすべきであるとの御意見をいただきました。また、顧問会議では、法令等の外国語訳に関して、関係機関、関係団体と共同しつつ、迅速かつ正確な外国語訳が行われるような体制整備を検討すべきであるという御意見をいただきました。
 次に、2をごらんください。これは、対日投資会議関係の資料で、今年の5月19日に発表された対日投資促進プログラムとその実施状況に関するものの抜粋です。対日投資会議は、内閣総理大臣を議長、経済財政政策担当大臣を副議長とする閣僚レベルの会議でございまして、投資環境の改善に関わる意見の集約及び投資促進関連施策の周知を目的として、平成6年7月に設置されました。
 3枚目のプログラムの中に施策の欄がありますが、ここで会社設立、合併・買収、工場・店舗設立に関わる各種の投資手続及び関係法令等の情報の英語化を進め、それらの情報を一元的に得られる窓口をJETROに整備するとされております。
 3は、内閣に設けられている知的財産戦略本部が今年の5月27日に発表しました、知的財産推進計画2004の抜粋です。知的財産推進計画では「関係府省や関係団体と協働しつつ、正確かつ統一された英訳の国際的な発信を推進する」とされております。
 このほかにも、司法制度改革推進本部事務局には、日本経済団体連合会、日本商工会議所からも国際取引の推進、対日投資の促進等の観点から、法令の外国語訳の推進を求める旨の要望が提出されております。また、自由民主党司法制度調査会におきましても、法令外国語訳のための信頼できる一定の基準の策定やアクセス体制の整備の必要性などを指摘する提言がなされているところです。
 続きまして、資料17−2でございますが、これは法令の外国語訳について、これまでの検討会での御意見や各方面の御意見などを踏まえ、事務局におきまして、法令の外国語訳に関する現状と問題点、問題を解消するために必要な方策などについてまとめたものです。
 我が国の法令の外国語訳につきましては、これまで民間や関係府省における個別的な取組みがなされているにとどまっていたため、統一的で信頼できる外国語訳が十分に行われていない、外国語訳された法令についてのアクセスが容易でないなどの問題点が指摘されております。
 このような状況の下において、統一的で信頼のできる外国語訳を進めるための基盤整備、外国語訳された法令へのアクセスを容易にするために方策等の必要性が唱えられているところです。
 資料の説明等は以上でございます。
 なお、御報告を1つ申し上げます。外弁法の雇用と共同事業等の規制緩和に係る改正規定の施行期日でございますが、これは政令で定めることとされておりましたが、去る6月4日にその政令が制定されまして、施行期日は平成17年4月1日と定められておりますので、御報告申し上げます。
 以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。法令の外国語訳につきまして、これから意見交換を行いたいと思います。
 資料17−2にもありますように、日本法令の外国語訳は国際取引の円滑化、外国の法整備支援の推進、対日投資の促進などの面で非常に重要な問題です。日本法令の外国語訳の必要性については、各委員とも非常に必要であるというお考えのことと思いますけれども、そういう認識でよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)


○柏木座長 ありがとうございます。
 今の資料17−2ですけれども、法令の外国語訳についての現状と問題点、問題を解消するために必要な方策についても、まとめられております。事務局からの説明にもありましたように、これまでの司法制度改革推進本部や関係方面における議論の中では、正確で信頼できる外国語訳をつくるための翻訳の基本ルールの策定、訳語の整理、統一などの基盤整備、翻訳へのアクセスを容易にするための方策という大きな課題が指摘されております。本日は、この点について皆様の御意見をお伺いしたいと思っております。
 この国際化検討会としましても、これらの課題に対する取組みを検討していく必要がありますが、検討の対象となる事項がやや技術的になりますので、例えば、学識経験者、実務家、関係省庁などの参加するワーキンググループをつくって、基本的枠組みについて検討を進め、その結果をまた、この検討会に御報告するというような方策もあろうかと思います。このような検討の進め方についても、皆様の御意見をお伺いできればと思います。法令の外国語訳について、いずれの点でも結構ですので、御意見をいただければと存じます。
 下條委員、いかがですか。

○下條委員 それでは、最初に。実は、私どもの事務所で会社法の英訳をつくりまして、これは商事法務から出ているんですけれども、1冊1万2,000円という非常に高価なものですけれども、聞くところによりますと非常に売れ行きがいいということなので、やはりそういう面から見て需要というのはものすごくあると思うんですね。それぐらい高い本であっても、よく売れているということですから。まして、公定訳というのはちょっとあれですけれども、そういったプロジェクトに従って訳ができて、それがコンピュータでアクセスできるようになれば、アクセスの回数も非常に増えてくるであろうということは容易に予想できることですね。
 ただ、問題はやはり膨大なお金がかかるということですね。私が聞き及んだところによると、会社法の英訳をつくるにしても、それはほぼ1億円プロジェクトだというふうに聞いております。しかも、現在のものは非常に命が短いわけですね。今、商法の改正をやっていますので、来年にでも改正商法ができれば、そのときまでの命でしかないというものであって、それだけの莫大なお金がかかるということですので、その辺はきちんと心構えをしてやっていかないといけないんだろうなというふうに思っています。

○柏木座長 ありがとうございました。確かに、これは大変な仕事で、同僚にそういう計画があると言うと、それは大変だなという反応が、まず返ってまいります。
 したがって、拙速主義ではなくて、慎重に事を運ぶ必要があるのではないかという気がするんですけれども、それで先ほどもワーキンググループをつくって、まずその体制の検討のようなことから始める必要があるのかなというようなことを申し上げたわけですけれども。
 乗越委員、いかがですか。

○乗越委員 私も、このプロジェクトは大賛成で、今、下條委員のおっしゃられたコストの点というのは非常に大きい問題なんで、そこのところは政府の方の何らかの御支援がいただければいいなというふうに思っております。
 私が幾つかの気になっております点を申し上げますと、1つは、時期の問題でして、確かに拙速はよくないという点はあるのかもしれませんが、実務をやっている者からすれば、ある程度のものがあるのであれば、もうそれを実務に使いたいという需要もありますので、どれだけの権威性を持たせるかというのは別途議論をする必要があるのかと思いますけれども、とにかく早くこれをスタートして、できたところからどんどん公表して、それはもう訳した人が責任をとらなくてもいいと思うんです。それは使う人の責任で使ってもらうというふうにしてもいいと思いますので、できるだけ早くやっていただくように希望します。
 先ほど、下條委員のおっしゃったように、継続性というのは非常に重要だと思いますので、何らかのアドホックに集まって翻訳をつくって、それで終わりだというのでは、継続性は保たれませんので、どこか恒常的な組織が法律が変わるにつれモニターしておいて、実際にそこが翻訳するのかどうかというのは別の問題ではありますけれども、そこがリードをして、法律が変われば、すぐに翻訳の体制が整うようにしておくという制度的な面での整備というのを考えていく必要があると思います。

○柏木座長 おっしゃるとおり、その法律はアップデートされていないと使う方としては怖くて使えないわけで、特にその専門家にとっては古い法律を使ったりしますと専門家責任の問題も出てきますので、一旦やりだしたら常時新しいものを供給していく体制というものをつくる必要が出てくるんだろうと思います。
 波江野委員、いかがですか。

○波江野委員 今回のこのテーマは、時期的には遅れたのかもしれませんけれども、取り上げられたことは非常にありがたいと思います。
 私どもも実務をやっているときは諸外国といろいろ話をするに当たって、日本の法律を英訳するというのは、下條委員のおっしゃったような大きな組織でないところでは、該当する部分に限って小規模にやらざるを得ません。また、信頼できる訳文を探すというのは、大変な手間がかかったものです。
今回のこういう形で取り組むにあたっては、どこまで英文と日本語の整合性を担保するかという問題があるかと思いますが、国が主導した形の公定訳ができることは非常にありがたいと考えます。
 この間、事務局には申し上げておきましたが、これは言わずもがなな話ですが、英訳するに当たって法律としての日本語の文章を整理する必要があるのではないかということを考えておりまして、そういったことも含めて国際化にふさわしい形で進めていただければ非常にありがたいと思っております。

○柏木座長 道垣内先生、いかがですか。

○道垣内委員 私は勿論、この方向には大賛成でございまして、今の御指摘は非常に大切で、日本語でできたものを読むと、わかったつもりでも英語にしようと思うとどういうふうに訳そうかというので、やはり解釈が入ってくる余地が相当あると思うんですね。そこを今度のプロジェクトで、どれくらいのオフィシャルな程度にするか、余りにオフィシャルにすると、それは公定解釈が示されていると、逆に日本の法文の方を解釈するときに、そちらが使われるというのは、多分それは本来の意図ではないんだろうと思うので、その辺りのことを気を付けなければいけないということ。
 それからそうなることをできるだけ避けるように、今後はつくるときから英語のことを考える法案を作成する。官庁、お役所それぞれが英語を横に置きながら日本の法律をつくると。できたときには一緒にそれができているような体制、そこを何かサポートする機関があれば、そこと一緒にすればいいかと思いますが、そうしていただければ、あいまいさを排除した日本語に相応した法律になって、かつ読みやすいものができればいいかなと思います。
 ついでですけれども、まずは法令なんですが、いずれは判決も横文字で準公的なものが公にされれば、少なくとも最高裁判所の判決などは翻訳されているという状態になると非常にありがたくて、これはもっと解釈の余地がある文章になっていますので、そこはなかなか難しいかと思いますけれども、その方向でやっていただければと思います。

○柏木座長 ありがとうございます。
 加藤委員、いかがですか。

○加藤委員 基本的には大賛成です。特に中小企業と言えども、最近は国際化してまいりまして、外国の法律を我々が勉強すると同時に相手にも日本の法律の中身を知ってもらうという場面がしばしば出てまいります。
 そういう観点で言うと、できるだけ早く、我々の立場から言えば、経済法規、なかんずく基本法規を優先して外国語、何が適当なのか、多分英語が優先されるんだろうと思いますけれども、外国語訳ができ上がるということが望ましいと、このように思います。
 各先生からも御指摘がありましたように、やはりこれは継続すると。リアルタイムで変わる必要はさらさらないかとは思いますけれども、やはりメンテナンスしていかないと意味のないことでもありますから、そういう仕掛けを前提にした体制づくりが必要ではないかと、このように思います。

○柏木座長 ありがとうございました。
 久保利委員、いかがですか。

○久保利委員 知財戦略本部で大きな声で言って、これを入れてもらったのも、私でございますし、かなり最初のころから英文化という問題を提示したのも私でございまして、そういう点では、これを前向きに取り組んでいただいた事務局、座長に心から御礼申し上げたいというふうに思います。
 せっかくそういうことになったのであれば、私、乗越先生に賛成でございまして、いつまでも体制だとか基本ルールだとか、訳語の整理、統一などは多分本気でやったら10年経っても、きっと終わらないのではないかと。したがって、もしこういうのをやるのであれば、まずできたところから公開をしていただくということが必要ではないだろうかと。特に、特許法とか幾つか、もう現実には仄聞するところによりますと、各省庁では試訳を既につくっているところもあるようでありまして、これはもう試しで結構でございますから、アクセスを普通の国民にしても、あるいは外国人にしても、これにアクセスができるように早くアップをしていただきたいというのが、まず最初の願いです。
 その上で、確かにおっしゃるとおり、整合性というのは大事なことでありますから、それは逐次バージョンアップをしていくということは当然考えなければいけない。それは、商法はいつまでにバージョンアップする、いつまでにどうするというふうなことで、非常に早期にタイムスケジュールをつくると。ですから、ワーキンググループというお話でございますが、その体制の問題とタイムスケジュールづくりというのをおやりになっていただいたらどうかという気がいたします。
 そして、とにかく基ができてしまえば、確かにおっしゃるとおり、改正が次から次へと行われるわけでありますけれども、逆に改正部分だけを自分たちのコストでやるというのはあり得る話でありまして、全体をやるというと大変でたじろいでしまうわけですけれども、根本があって、その上に変わった部分については自前でやりましょうという企業なり法律事務所は幾らも出てくるのではないかというふうに思うんです。ですから、何からかにから完璧なものを全部お国でやってというところまでいかなくても、多分流れができ始めれば、それを実行する人たちは逆に民間からも出てくるのではないか。現に、何もない中で「西村ときわ法律事務所」はあれだけの本をおつくりいただいて、しかもあんなすごいものが1億円プロジェクトだというので、私は5億円ぐらいはかかっているんだろうというふうに思っておりましたが、非常に安いものだという気がするわけですね。ですから、予算の面があって、御苦労がいろいろなさるかもしれませんけれども、これは国として、特に対日投資を招いていこうということなんですから、大変な国家プロジェクトなので、そのために予算を1億だか5億だというけちなことを言わないで、100億単位で付けてでも早急にやるべではないかというふうに思います。
 したがって、私の言いたいことは、早くやっていただきたい。そして、少々の誤訳があっても現在の試訳で結構ですから、それをとりあえずアクセスできるような形にしていただきたい。その上でタイムスケジュールをつくって、よりよいものにしていくという努力は並行して続けていただきたいと。それができれば、多分いろんな意味での、例えば、読んでいる人から、これはこういう訳の方がいいのではないかとか、いろんな意見が出てくると思うので、ある意味で言うとリナックスのように、マイクロソフト的ではなくてリナックス的にユーザーが、例えば、乗越先生がごらんになって、これはこういう訳の方がいいというなら、そういう訳を入れてもらえばいいわけで、そのどこかの中心となるセクションがそれらを読んで、なるほど、これはいいねというのがあったら、そこが編集委員会のようなもので、それを採用するというのもあるのではないか。したがって、みんな寄ってたかっていいものをつくっていくという部分が大事なので、根本はまず基をつくらなければ始まらないから、基をつくるところは国でしっかりやりましょうと。あるものをたたき台で結構ですから出していただいて、その方向で進みましょうというふうに行けば、多分優れたものが出てくるのではないかというふうに楽観をしておりまして、その意味ではこの方針で早急に取り組んでいただきたいというふうにお願いいたします。

○柏木座長 確かに、この翻訳は学者が集まりますと、こちらの訳にすべきだ、こちらの訳にすべきだと、どちらにしたって大した違いはないんだけれども、なかなか意見がまとまらないという傾向がどうしても強くなり、時間がかかるという傾向がありますので、そういうことよりも早くつくると。それで、たくさんの人の意見を集めて、たたいてもらうという方が効率的なんだろうという御意見には、私も大賛成であります。

○久保利委員 もう一つ言いますと、そもそも我が国の法律そのものが誤訳も恐れずで、明治時代にとりあえずやっつけ仕事でフランス語やらドイツ語やらに寄ってたかってやったのが基なわけですから、これはもともと誤訳があるのが前提なので、それをまた英文に訳していくんですから、そんな正確性のことを言っていても、もともとが始まらないものをああでもない、こうでもないと言ってやってきたわけで、したがって解釈学というので大学の法律の先生が大変御苦労をされたところなわけでありますから、余り難しく考えないで、とりあえず字義どうり訳してみると、それが全く違っているのであれば、それはまた修正するということでも、例えば、特許法とか著作権法とか具体的に知財の関係で言いますと、それだけでも随分役に立つ。
 私は、日本の知財の法律はすごくよくできていると思っておりまして、世界の中でも最近の最高裁判例などは非常に高く評価されている部分もありますので、現にアメリカの学者も日本の最高裁判例を取り上げて均等論を含めて大議論が巻き起こっていると。そういう状態を考えてみると、日本が法律的に海外へ進出していくという意味でも、これは法整備支援も含めてですけれども、やはりとりあえず、英語がないとけんかにならないというか、何も言えないというところがあると思います。その辺の配慮もしていただいて、是非早く、しかも対日投資も早く来なければ余り意味がなくなりますので、是非お願いしたいと思います。

○柏木座長 バイヤーさんは、いかがですか。

○バイヤー委員 私の意見は、ほとんど大賛成で、早くやった方がいいと思っています。かなり大きいプロジェクトですから、やはり久保利先生が言ったとおり、計画をしないとうまくいかないし、できるだけ、でき上がったものの上に立っていくことが非常に役に立つと思います。
 その上に、多分、英文のユーザーが私みたいな人ですから、経験が結構あると、一番難しいのが多分、日本語の言葉ではわからない、インコンシステンシーのことですね、ある人が訳していると、この日本語の言葉はこの英語の言葉に訳して、違う人が同じ日本語の言葉を違う英語の単語を使ってしまう場合があるから、やはり何かの辞書は必要になると思いますね。そういう基本から始まれば、みんなが同じように訳すとわかるようになるのではないかと思います。

○柏木座長 ありがとうございます。
 孝橋委員、どうぞ。

○孝橋委員 最初に、先ほど道垣内先生の方から御指摘がありました、判例の英訳の点でございますけれども、余り広くは知られていないのかもしれませんけれども、最高裁判所のホームページのイングリッシュの方を見ていただきますと、最近の最高裁判例の英訳が掲載されております。今の時点で既に、去年の12月ぐらいに出た判決までの英訳が出ていると思います。これは詳細はちょっと私も承知していないんですけれども、外国の弁護士さんの力を借りてやっている作業だというふうに聞いております。ベストの翻訳かどうかということについては、いろいろ御意見はあるかもしれませんけれども、とりあえず速報性を重視してやっているというふうに聞いておりますので、それを情報提供という形で申し上げさせていただきます。
 この法令の外国語訳につきましては、私も特にほかの委員の先生方と意見は違いませんで、やはり乗越先生がおっしゃったスピードという点がかなり重要かなと思っております。
 いろいろ今までの出ている外国語訳について、信頼性が低いという批判が多いというふうにいろいろ書いてあるものがございますけれども、何が信頼できて何が信頼できないかということを余りぎりぎりやり出しますと、なかなか前に進まないということがあろうかなと思います。
 1つの単語をどういうふうに訳すかということについても、使う場面によっては違う単語がいいというふうなことも、あるいはあるかもしれないかなと思いまして、ルールづくりも非常に重要ですけれども、やはり実際に翻訳作業を早い段階で着手すると。
 それで、信頼性を高めるという点では、特定の人の意見だけではなくて、やはり複数の人がチームをつくってお互い批判というか、意見交換をし合いながら作業を進めることで、その信頼性を担保するというような、そういうふうなアプローチで行くのがよろしいのではないかと思っておりまして、余りそのルールを厳格につくるということに重点を置きますと、また信頼性というところを非常に重視いたしますと、なかなか一歩を踏み出すのが遅れるのではないかなという印象を今までのお話を聞いていて持ったわけでございます。
 それで、ちょっと別の話ですけれども、仲裁法については、司法制度改革推進本部でもう既に英訳を紹介されておりますけれども、ああいう形でできる分野で、あれも一応参考という形で出して利用してくださいというふうな注意書きが付いているかと思うんですけれども、そういうふうな留保と言いますか、どうしても、その公定訳と言っても、なかなかいろいろ使われ方についての注意事項みたいなものはどうしても付くと思うんですけれども、そういう意味でああいうチーム方式でできるところから作業を進めるという形がよろしいのではないかというふうに思っております。
 以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。
 皆さんの大体の総意というのは、とにかく拙速でもいいから早くやれということのようで、なかなかこれは難しいのですね。難しいと言うか、特にその学者などをやっておりますと、余り批判をされるのは好きではないものですから、どうしても念には念を入れてという態度になりがちでありまして、バイヤーさんがおっしゃったように、整合性ということをどうしても考えがちで、私が考えたのも、例えば、みなす、推定するなどというのは、あらかじめその単語を決めておいて、各法律で同じ単語を使うというような方式をコンピュータを使ってできないかなと。それから辞書などもコンピュータを使ってできないかなというようなことを考えておりました。ただ、そのコンピュータを使ったシステムと辞書をつくってから翻訳というと、これは何年かかるかわからないので、これも同時並行的なのだろうと思います。
 孝橋委員から指摘がありました、同じ単語を全部の翻訳で同じに使うと、これも以前述べましたけれども、債権なんていう非常に基本的な単語ですら、きちんとした英訳が1つの単語にならない。担保権という言葉も同じようなものでありまして、それをコンテクストによって訳しをかけるか、あるいは無理して統一してしまうかと。これは学者に議論をさせますと、これはまた1か月でも2か月でも議論するような問題ではなかろうかと思います。
 ただ、ここの国際化検討会の皆さんの総意は、どうもそういうことに割くエネルギーよりも、もっと前に進めるという方向を推し進めるべきであるという具合に理解いたしましたので、そのような方向でこれから検討をすることになろうかと思います。
 冒頭に申しましたように、これは非常に技術的な問題を含むのだろうと思います。これも、いつやるかの問題がありますけれども、例えば、EUなどが非常に参考になるわけで、今度25か国になりましたけれども、25か国語に自動的に翻訳するのかどうか、この間もあるEUからの留学生に聞きましたら、賄い切れないのではないかというようなことが彼の意見で、個人的な意見だから本当かどうかわかりませんけれども、英語をベースにして英語から各国語に翻訳していくというようなことも考えなければいけないようになっているし、実際そういうこともなされ始めているというようなことを聞きました。
 しかし、EUとか、あるいは国連も6か国の公用語に自動的に翻訳するわけで、ああいうところが非常に参考になるのではないかと。特に、ドイツ語、フランス語からどういう具合に英語に訳しているかというようなことも調査の必要があるのだろうと思います。
 それから、韓国が今から約十年ぐらい前から組織的に政府の機関をつくりまして、それが組織的に韓国の法律の英訳を推進しておりまして、もう800ぐらいの法令を英語に訳しているということを聞いております。これも翻訳の先達として、どういうシステムでやっているのかというようなことを調査する必要があるのだろうと思います。
 もう一つ、コンピュータをどうしても使わなければいけないと思います。整合性をとるためにも、翻訳の基本的なルール、訳語、翻訳のやり方、そういうことについてもコンピュータがあれば非常に能率が上がるわけで、それも余り拙速をしますと、一旦システムをつくってから、もう一回最初からシステムをつくり直すということも問題ですし、ある程度IT関係の専門家を入れながら検討をする必要があるのだろうと考えております。
 というようなことから、お忙しい皆さんに毎回出ていただいて、この会議でそういうことを検討するのは、余り効率的ではないなと考えまして、先ほど申しましたように、学識経験者、実務家、関係省庁の参加するワーキンググループをつくってはどうかというようなことを考えております。関係省庁というのは、これは皆さんも御存じのように法令の所管官庁がばらばらで分かれておりますので、どこかが代表してというわけにはいかないだろうという気がいたしますので、主要な関係省庁等からの参加も仰ぐ必要があるのではないかと思っております。
 そういう人たちの代表者によるワーキンググループをつくりまして、先ほどから御意見がありましたような、早くやれと、あるいはスケジュールをつくれとかいう御意見がありましたけれども、そういうことを考えながら、全体の枠組みというものをこのワーキンググループで立ててみると。その結果をまた皆さんにお諮りして、遅過ぎるとか、いろいろ御批判が出るんだろうと思うんですけれども、御批判を仰ぐことにしてはいかがかというように考えます。
 そのような方向でよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)


○柏木座長 ありがとうございます。
 そのほかに、日本の法令の翻訳につきまして、何か御意見ございますでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。本日の各委員の御意見も踏まえまして、法令の外国語訳を推進するための基盤整備について、先ほど申しましたような構想でワーキンググループを設けまして、今年の10月辺りを目途に、まずは法令の外国語訳の基盤整備の枠組みにつきまして検討した上で、その結果をまたこの検討会に御報告させていただくことにしたいと思います。
 ワーキンググループの人選につきましては、またお忙しい中をお集まりいただくのも何だと思いますので、座長に御一任いただけますでしょうか。

(「はい」と声あり)


○柏木座長 ありがとうございます。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。お忙しいところ、どうもありがとうございました。
 次回の日程につきましては、また追って御連絡いたします。(了)