○柏木座長 それでは、所定の時刻になりましたので「国際化検討会」の第18回会議を開会させていただきます。
初めに事務局から、本日の議題と配布資料につきまして、御説明をいただきます。
○笠井企画官 法令外国語訳に関するワーキング・グループを担当させていただきました関係で、私の方から御説明をさせていただきます。
まず、本日の議題と配布資料でございます。
議題の方は、議事次第にございますとおり「法令の外国語訳について」ということでございます。
資料は4点ございます。まず、資料18−1及び18−2でございますが、これが法令外国語訳に関するワーキング・グループの議論のとりまとめに関する資料でございます。
資料18−1は、ワーキング・グループの議論のとりまとめの概要。それとワーキンググループのメンバーに関する資料でございます。
資料18−2でございますが、これはワーキング・グループの議論の取りまとめそのものでごさいます。
議論の取りまとめにつきましては、ワーキング・グループの座長でもありました、柏木座長の方から、ワーキンググループに提出されました案がございまして、それがワーキング・グループでの議論を経て、取りまとめとなったというものでございます。
内容については、後ほど、柏木座長から御説明をいただく予定でございます。
資料18−3でございますが、これは法令の外国語訳の現状について調査した結果をまとめたものでございます。ワーキング・グループでも資料として提出させていただいたものでございます。
事務局において、各省庁のホームページ上で公表されている法令等の外国語訳について調査を種々まとめたものでございます。現在でも、相当の数の翻訳は行われていて、公表されているということはおわかりいただけるかと思います。
このほか、省庁によっては、法令等の外国語訳を出版物で公表されているという例もございます。また、ホームページ上では公表されていないものの、所管の独立行政法人や公益法人などで法令の外国語訳が公表されているという例もございます。
中を見ていただきますとわかりますけれども、方法につきましては、憲法、国会法、内閣法、国家行政組織法等の翻訳がございます。また、知的財産関係法につきましては、実用新案法、意匠法、商標法などの翻訳がございますし、独占禁止法等の経済関係法についても翻訳があるということでございます。
資料18−4でございますけれども、これはコンピュータシステムを活用した翻訳のイメージに関する資料でございます。
この資料は、ワーキング・グループのメンバーでありました松浦教授、それからオブザーバーとして参加していただいた外山教授、名古屋大学の両先生が作成されたということで、ワーキングにも資料として提出していただいたものでございます。内容につきましては、また後ほど御説明をさせていただきます。
以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。前回の検討会では、法令外国語訳の推進という検討課題につきまして、この検討会の下にワーキング・グループを設けて、法令の外国語訳の基盤整備の大枠について検討した上で、その結果を検討会に御報告するということになっておりました。
今回は、ワーキング・グループにおける検討結果を御報告し、皆様の御意見を賜りたいと思っております。よろしくお願いします。
法令外国語訳に関するワーキング・グループですが、これは平成16年7月30日、9月7日、10月14日、10月22日の合計4回開催いたしました。
ワーキング・グループのメンバーにつきましては、事務局の御説明にございましたとおり、資料18−1の一番最後のページにメンバー一覧が添付されております。ワーキング・グループの座長を私が務めました。ワーキング・グループの取りまとめは、資料18−2のとおりであります。
初めに、私の方から、資料18−1と資料18−2を使って、取りまとめの内容について御説明をして、その後で事務局から資料18−4のコンピュータにつきまして、御説明をいただいて、意見交換に移りたいと思います。
ワーキング・グループの取りまとめ概要ですが、資料18−1及び18−2は、法令外国語訳に関するワーキング・グループの検討結果の取りまとめに関する資料です。
まず、資料18−1の取りまとめの概要を御覧いただきたいと思います。取りまとめは、主としまして、「基盤整備の必要性」、「翻訳ルールの策定、アクセス体制整備の基本的枠組み」、今後の検討を行う「検討会議」について触れております。
「1 基盤整備の必要性」に関しましては、法令外国語訳の必要性やニーズについての指摘、法令外国語訳を推進するための基盤整備等の必要性などについて触れております。
「2 翻訳ルールの策定、アクセス体制整備の基本的枠組み」に関しましては、基本的な考え方、翻訳ルールの在り方、翻訳へのアクセス体制の整備、改善等に言及しております。
「3 検討会議」に関しましては、検討会議を設置すること、検討会議で検討していただきたい事項、検討会議の下に置かれる作業部会での作業の進め方、検討、作業の期間、その後の翻訳の進め方などに言及しております。
今後の法令外国語訳の推進のための基盤整備等の問題につきましては、12月、来月ごろに設置が予定されております検討会議と、その検討会議の下に置かれる作業部会で翻訳推進の基本方針などの重要事項の検討や、翻訳ルールの作成の作業等を進めていただくことにしております。
大体1年を目途にその検討結果を出していただいた後に、本格的な外国語訳が推進されることになる予定でありますけれども、検討会議で翻訳ルールを作成する過程におきましても、一部の法令の翻訳を行い、これを公表していくことになろうかと思います。
次いで、資料18−2の「法令外国語訳に関するワーキング・グループ 議論の取りまとめ」について御説明したいと思います。
取りまとめにつきましては、4つの大きな項目で構成されております。1つ目の項は「前提事項」、2つ目の項目が「翻訳ルールの策定、訳語の整理・統一についての基本的な枠組み」です。3つ目の項目は「アクセス体制の整備についての基本的枠組み」で、これは6ページに書いてございます。最後の4つ目の項目は「今後の検討及び翻訳の進め方についての基本的な枠組み」ということになっております。
「1 前提事項」でありますが、まず、「(1)法令外国語訳に対するニーズ」でありますけれども、このニーズにつきましては、ワーキング・グループで指摘された事項とニーズの高い法令等について外国語訳を推進すべきことをまとめております。
ワーキング・グループの場では、国際取引の円滑化、対日投資の促進、法整備支援の推進の観点を中心としつつ、日本法の国際的な発信や在日外国人の生活上の利便等の観点も含め、我が国の法令の外国語訳を推進する必要性が高いということを指摘するとともに、基本法や知的財産関係法、経済関係法、行政手続関係法、労働関係法についても外国語訳に対する利用者ニーズが高いということが指摘されました。それを受けまして、このようにまとめております。
「(2)法令外国語訳の現状と問題点」ですが、これにつきましては、「これまでは関係府省や民間による個別的取組みがなされていたに止まり、それにより一定の成果は上げられているものの、利用者から見て統一的で最新の法令をベースとして信頼できる外国語訳が十分に行われていない、外国語訳された法令についてのアクセスが容易でないなどの問題点が指摘されている」というようにまとめております。
「(3)海外の実情」につきましては、ワーキング・グループの松浦委員、外山オブザーバー、事務局の笠井企画官と私で、EUとフランスにおける法令の外国語訳の実情調査をいたしました。また、韓国につきましても、法務省から、調査結果についての情報提供をいただいております。これらの結果につきましては、ワーキング・グループでも資料としておりまして、海外の実情調査の結果を資料18−2の別添1といたしまして、添付しております。
次が「(4)法令外国語訳のための基盤整備のあり方」ですけれども、先ほど指摘しましたような現状の問題点を解決し、内外のニーズにこたえるために、法令の外国語訳を早急に推進する必要があること、そのためには、外国語訳推進のあり方に対する基本的方針を明らかにするとともに、基盤整備として、基本ルールの策定と翻訳へのアクセスを容易にするための方策を講ずる必要があるということをまとめております。
次の「2 翻訳ルールの策定、訳語の整理・統一についての基本的な枠組み」ですが、これは大きく分けて、「(1)翻訳ルールとして定めるべき事項」、「(2)翻訳ルールの位置付け」、「(3)翻訳の基本的スタンスのあり方」、「(4)訳語の整理・統一、改善のあり方」という4つの問題に分けてまとめております。
「(1)翻訳ルールとして定めるべき事項」ですが、「統一的で信頼できる外国語訳を進めるための基本ルールとして、一定の翻訳ルールを定めることとし、そこにおいては、①翻訳の基本スタンスの在り方、②単語・表現等についての訳語ルールを規定することとする」という形にしております。
「(2)翻訳ルールの位置付け」ですが、翻訳ルールに従った翻訳というものを民間に強制することはできませんので、翻訳ルールは翻訳の際の参考資料という位置付けにしております。また、翻訳ルールに基づいて翻訳が行われたとしても、これは公定訳にしないということにしております。
翻訳ルールは、広く一般に利用されるということが望ましいわけでありまして、公表し、自由な利用に供するほか、関係府省・民間団体等において翻訳を行うに当たっては、翻訳ルールをできる限り尊重していただくということにしております。
翻訳ルールに基づいて行われた翻訳は、公定訳ではないものの、これを信頼されるものとするためには、翻訳ルールは、有識者と各府省が横断的に参加した検討会議において作成するということとし、これによってその信頼性を高め、ルールとして尊重され得るものにするということにしております。また、翻訳ルールに基づいて翻訳が行われているということ、公定訳ではないことなども含めて、翻訳の位置付けを明確にすることとしております。
「(3)翻訳の基本スタンスのあり方」ですが、基本的な考え方としましては、3ページ目ですが、「正確でわかりやすく、全体として統一性が確保された翻訳が継続的に行われることを目指すことを基本とする」と、ちょっと総花的になっておりますけれども、こういう基本的な考え方にしております。
その翻訳を読んでいただく対象者としてどの辺のレベルの人を頭に置いて翻訳をするかということですけれども、日本法と日本語は知らない実際のユーザーを想定しますが、英語訳につきましては、英米の法律をある程度理解している内外の法律実務家、企業担当者などを念頭に置いて訳すという考え方にしております。
「(3) 正確性と分かりやすさ」ですが、これはときどき相反することがありますが、「翻訳の正確性を確保しつつも、わかりやすさを重視し、翻訳先の外国語を母国語とする者にとってわかりやすい訳、すなわち、原文の法令の趣旨に最も近い、読みやすい訳を目指す」こととしております。これもまた総花的ですけれども、わかりやすさを重視するということから、幾分わかりやすさに重みは置きたいということを考えております。抽象的に言ってもおわかりになりにくいかと思いますが、資料18−2に別添2として添付しております訳例というものがございます。これを参照していただきますと、大体イメージがつかめるのではないかと思います。
例えば、別添2の1ページ目の2には、民法54条の翻訳の例が出ております。訳例1は今までの訳でありまして、54条、「理事の代理権に加へたる制限はこれを以って善意の第三者に抵抗することを得ず」ですが、訳例1は、「No restriction place on the power of representation of any director can be set up against a bona fide third person. 」ということになっておりますけれども、ちょっとかたいのではないかという印象を受けます。一方、訳例2の方は、「No restriction upon the power of a director to represent a juristic shall be valid against a [third person without knowledge] 」、「善意」というものを「without knowledge」と訳すか、あるいは「bona fide third party who has no notice or knowledge」と訳すか、これはちょっと議論のあるところだと思いますけれども、イメージとしては、このぐらいやわらかく訳したいということです。
訳例2の方向で行きたいということが、ワーキング・グループではコンセンサスとなっております。
利用者を内外の法律実務家、企業担当者にするという前提ですと、翻訳の内容の理解を助ける上で有益である場合には、翻訳先の外国語における法律用語を使うこと、先ほども「bona fide」とか出てきましたけれども、ある程度の法律用語を使うことは妨げられるべきではないと考えております。
そこで、「例えば、英語訳については、英米の法律を理解している者の理解を容易にする法律用語の使用は妨げない」という具合にまとめてあります。
「(4) 統一性」ですけれども、統一性につきましては、「翻訳は、原則として翻訳ルールに従って行うことにより、全体としての統一性を確保することとする」としております。
「(5) 改正への対応状況の明確化」も必要であるという指摘がありまして、どの時点の法令を英訳したものであるかということを明確にすることが利用者にとって非常に重要な問題であると思われます。そこで、その法令等の翻訳に当たりましては、その翻訳がいつの時点の法令等に対応するものであるか、また、それが最新の改正に対応したものであるのか、対応したものであるとすれば、その法令等が既に施行されているのかなどの情報を明確にすることとしております。
「(4)訳語の整理・統一、改善のあり方」ですけれども、まず「ア 訳語ルールのあり方」ですが、これにつきましては、何点かまとめております。
訳語の整理・統一は、正確でわかりやすく、全体として統一性が確保された翻訳を行うとの見地から、単語、表現について、適切な訳語ルールを策定することにより行うということとされております。
また、訳語ルールにおきましては、原則として最も適切な訳語、訳文等を1つ示すこととしますけれども、例外的に、複数の選択肢を示すことが適当な場合には、複数の訳語を示すこともできるとしまして、あまりリジットにしないということです。ただし、これらのルールの使い分けの基準についても明確にすることとしております。
それでも、全体として、1つの日本語の法律用語に対応する英訳語というのは1つということが望ましいわけでありますけれども、それと異なる単語、文等を用いる場合が適当と思われる場合があろうと思われます。翻訳の統一性、正確性の確保という観点からは、このような場合も含めたルール策定が求められると思います。
ただし、それでもなお、ルールで定められたのと異なる訳をするのが適切な場合には、その翻訳ルールで定められているのと異なる翻訳をしたということを利用者にわかるようにする必要があるだろうと思います。そこで、「翻訳の統一性を確保するとの観点から、原則として同一の単語・表現については同一の訳語、訳文等により翻訳を行うこととする。ただし、法令の趣旨が正確に理解できる翻訳を行う等の観点から合理的理由がある場合には、別個の訳語・表現を使用することもできることとする。訳語ルールでは、これらの場合の使い分けの基準についても明確にする」という取りまとめをしております。
また、「翻訳が訳語ルールと異なる場合には、注書等で説明することにより補完する」こととしております。
訳語ルールでは、別添3を御参照いたしますと、イメージがわくのではないかと思います。例えば、法律の題名などは、日本は従来「Law」いう言葉を使っておりましたけれども、ある本によりますと、アメリカ、イギリスで単行法の場合には、ほとんど「Act」という言葉を使って「Law」という言葉を使っていないというような指摘がありまして、そういうことからすると「Act」という言葉でも構わないということであります。
別添3の3ページ目を見ていただきますと、単語ばかりではなくて、フレーズなどについても、いろいろ訳文のサンプルが載っております。例えば、原文は「…を準用する」という具合に書いてあった場合、これを「…shall apply to」と訳すのか、あるいは「…shall apply mutatis mutandis to 」という具合に訳すのか、こういうサンプルを載せて原則を決めておくというようなイメージであります。
翻訳の基本スタンスのところで御説明しましたとおり、正確性を確保しつつ、わかりやすい翻訳をするためには、単語レベルで訳語を対応させるのが適切な場合と、文全体として訳文に対応させるのが適切な場合などがあり、いろいろ考えられますので、このような場合分けをして適切な訳語、訳文等を整理することとして、これらのルールの使い分けの基準等についても明確にすることとしております。
訳文だけでは正確な理解に支障を来す場合も考えられますので、これは注書等で説明することにより補完するということにしております。
例えば、先ほどの別添3の一番最後のページ、4ページの下の方ですけれども、「債権」という言葉について、コモン・ロー諸国の人たちにとっては、なかなかわかりづらい概念かと思いますけれども、これにつきましては、「債権」というのは基本的にはここに書いてありますように、「specific person」に対して「some specific act」をすることを要求する権利なんだよというような説明が必要と考えられます。この説明がいいのかどうか、これはまた検討を要します。これは有斐閣の法律用語辞典に従って説明したわけですけれども、本来ならば、こういう説明というのは、コモン・ローの人の立場に立って、コモン・ローの人にどう説明したらわかりやすいかという観点から考えるのが一番いいので、有斐閣の法律学辞典を頭に置いては本来いけないのだろうと思いますけれども、大体イメージとして、こんな説明を付けることがいいのではないかということで、サンプルとして付けております。
訳語ルールは、翻訳をされる方にとって最も適切な訳語・訳文を選ぶためのものでありますので、必要があれば適切な用例等を併記することといたしております。
訳語ルールの内容を明確にするために必要な場合には、注書により補完的な説明を行うこととしております。
「イ 訳語ルールの作成」ですが、広い範囲の法令で使われている語句、文、基本的な文やフレーズにつきましては、できるだけ早い時期にその訳語ルールを作成することが必要になると思われます。この辺りをどういう手順でやっていくかということが差し当たりの問題になろうかと思います。
本日の資料18−3によれば、省庁のホームページで公表されているものに限っても、かなりの法令等の翻訳が行われていますが、訳語ルールの作成に当たって、それをどのように活用していくのかも重要な問題であります。
また、訳語ルールの作成に当たっては、実際に翻訳をしながら翻訳をやってみて、その中から基本的に単語、フレーズを選び出して、翻訳ルールをつくっていくという作業が必要になろうかと思います。そのための翻訳の対象としましては、基本法やニーズの高い分野の法律などが考えられると思っております。
こうした作業に当たりましては、後から説明があると思いますが、コンピューターシステム、資料18−4に添付しました、松浦先生、外山先生のコンピュータを利用した訳語・訳文生成システムが非常に効率的、効果的なツールになるのではないかということを考えております。
こういうようなことから、「(4)訳語の整理・統一、改善のあり方」につきましては、資料18−2の2の(4)のA、5ページのイのようにまとめております。
訳語ルールというのは一遍つくったら、それでもって確定するというものではなくて、やはり常時改善する必要があると思います。それはコンピューターで公表することによって、いいコメントが出てきたらそれを取り入れるということがあります。ほかにも、例えば、EU内の国際会社合併の指令が発表になりましたけれども、その中で包括承継のことを「universal succession」と訳しております。そういうようなことになりますと、やはりそれとパラレルに日本でも包括承継は「universal successionと」と訳すと、外国の人がもっとよくわかるのではないかということがありますから、そういうものを取り入れて、訳語というのは常時改善していかなければいけないと思います。そこで作成された訳語ルールについては、さまざまな意見を取り入れながら、常に改善を図っていくということにしております。
「3 アクセス体制の整備についての基本的枠組み」ですけれども、これはできるだけ手軽に必要な情報が手に入ることが重要だろうと思います。
そこで、関係府省、民間団体等で作成した翻訳法令につきましては、インターネット等を利用して、一元的に検索、アクセスできるとともに、法改正への対応状況など必要な情報を確認できる体制を整備することなど、利用者の立場に立ったアクセス体制の整備、改善に取り組むということにしております。
翻訳を無償で行うか有償で行うかということですが、これは今の段階ではちょっと問題が複雑過ぎて、一律にどちらかに決められるものではないということで、「無償で提供する場合と有償で提供する場合が考えられる」ということでまとめてあります。
一番大切なのは、「4 今後の検討及び翻訳の進め方についての基本的枠組み」でありますけれども、取りまとめの6ページの4以下ですが、今後の検討、翻訳の進め方の基本的な枠組みにつきましては、どのような形で検討を進めるのかということが問題になります。これにつきましては、「内閣の下に、有識者と各府省が横断的に参加する検討会議を設け、法令の外国語訳の推進のための基盤整備について、引き続き検討をする」ということとしております。
検討会議の検討事項につきましては、「検討会議では、今後の各府省や民間による取り組みへの橋渡しとなるような施策のあり方など、法令外国語訳の推進のための基盤整備に関する基本的かつ重要事項について検討する。具体的な検討事項としては、次のようなものが考えられる」ということにしておりまして、その具体的な検討事項としましては、「法令の外国語訳の推進のあり方に関する基本的方針(翻訳実施の枠組み、プロセス等を含む)」、「翻訳の指針となる翻訳ルールの策定」、「翻訳ルールを尊重した翻訳を迅速に推進するための方策」、「ニーズの的確な把握とこれを前提とした翻訳対象となる法令(訳語ルール作成過程での翻訳対象を含む)の選定のあり方」、「翻訳の正確性を確保しつつ、翻訳先の外国語を母国語とする者にとって分かりやすい訳を行うための方策」、「訳語ルールの改善、翻訳された法令の開示管理、法令等の改廃、新設等に伴うメンテナンスなどの継続的に必要な作業等に関する対応のあり方」、「翻訳された法令等に対するアクセス体制の整備のあり方(翻訳の提供を有償で行うか無償で行うかも含む)」という具体的検討事項を例示しております。
検討会議の組織に関する問題として、訳語ルールの作成等の作業には、専門家の関与は必要不可欠であると考えられますので、「検討会議には、訳語ルールの作成、その過程での翻訳など、訳語ルール策定のための基礎作業等を行う専門家ワーキング・グループを設ける」こととしております。
訳語ルールの作成作業に関連しますが、訳語ルールの策定、その過程での翻訳等の作業は、先ほどの資料18−4に説明がありますような、コンピューターシステムを大々的に利用して、辞書や翻訳システム等をつくりながら、それを最大限に活用して行うものとしております。
検討会議における検討スケジュールにつきましては、翻訳ルールの策定を含め、検討会議における検討は、資料18−2の別添4の作業工程スケジュールのイメージ、資料18−2の一番最後のページに付けております案を御覧いただきたいと思いますが、平成16年12月に始まって平成17年12月で法令外国語訳推進の基盤整備等に関する提言を行う、その前には訳語ルール案というものを作成する、その過程で実際の翻訳作業も行うという、かなりきつい案になっております。
この作業過程で作成した翻訳、訳語辞書等につきましては、順次公表し、必要に応じて利用者の皆様の意見を反映していくということを考えております。
「関係府省は、翻訳に関する従来の取組みの成果も含め、翻訳ルール策定のための資料提供等に最大限協力する」こととしております。後から説明があると思いますけれども、このコンピューターシステムは、既存の訳を全部コンピューターの中に入れてしまう、画面でその過去の翻訳を横に並べて検討することができるということになっておりますので、既にできた翻訳の資料というものは非常に大切になります。
「翻訳の進め方」ですが、これは、翻訳ルールの策定等が終わった後の翻訳の推進に関する問題であります。これは法令等の翻訳自体は訳語ルール策定過程でも一部、法令の翻訳を行うことになりますが、本格的な翻訳は翻訳ルールを含む検討会議の検討結果を踏まえて行うということとしております。
その翻訳の主体としましては、関係府省のほか民間団体等も考えられるところでありますけれども、関係府省の取り組みが民業を圧迫するような結果になるのは好ましくなく、かと言って、民間任せでは今までどおりで何の進展もないということになってしまいますので、「法令等の翻訳については、検討会議の検討結果を踏まえ、民間における取組を十分活用するとともに、関係府省において必要な対応を行う」ということとしております。
具体的には、どちらがどれだけの負担をするのかというようなことは、検討会議で更に検討いただくということにしております。
翻訳ルールに基づいた翻訳が行われることになれば、統一性があり信頼できる内容の翻訳が実現されることになりますので、「関係府省、民間団体において翻訳を行う際には、できる限りこの策定された翻訳ルールを尊重するように勧奨する」ということにしております。これは実際、これだけの体制で翻訳ルールをつくれば、おのずとそれを利用するということになるだろうと期待しております。
どの法令を翻訳するかという翻訳の順序につきましては、利用者のニーズを適切に反映させることとして、基本法や利用者のニーズが強い法令についてできるだけ優先的に外国語訳を推進する、その他の法令等の外国語訳についても、必要な整備に努めるということにしております。
法律、法令のうち、どのレベルのものを翻訳の対象とするのかということがありますけれども、これは、第一次的には法律を対象としますが、必要に応じて下位規範も対象とすることとしております。これは翻訳をする対象によって変わってくるのだろうと思います。ただし、下位規範につきましては、解説の翻訳等の手段にもよることができるのではないかということで、そういうことも考慮するということにしております。
大体、英語を念頭に置いているわけですけれども、どの外国語から翻訳を始めるのかという問題につきましては、第一次的に英語訳であるとしています。将来的には情報技術の活用による作業の効率化、利用者ニーズ等を勘案し、ほかの言語にも対応するということも検討するということとしております。
翻訳ルール策定前に作成された既存の翻訳につきましても、統一的で信頼できる内容の翻訳を実現するという観点から、翻訳ルールに照らして必要な対応を行うということとしております。
作業につきましては、コンピューターシステムを利用して、できる限りの効率化を図るということとしております。
議論の取りまとめとしましては、大体、今、御説明したとおりでございます。
何回か取りまとめの中でコンピューターシステムに言及いたしましたけれども、皆様にイメージを持っていただくために、資料18−4を使って、事務局から、我々が考えているコンピューターシステムについて御説明をお願いをしたいと思います。
○笠井企画官 それでは、もう少しお時間をいただいて、資料18−4にあります「コンピューターを利用した訳語・訳文生成」という、これは名古屋大学で研究されている成果ということでございますけれども、これから作業を進めていく上でも、ひとつ参考になるのではないかということで、御説明をさせていただきたいと思います。
本来であれば、外山先生にお越しいただいて、ここで説明していただくのが一番よろしいかと思います。私は素人なものですから、必ずしも余り詳しいことはわからないのですが、外山先生とも説明の仕方を相談させていただいていますので、そのとおり説明させていただきたいと思います。
この検討会でも御指摘がありましたけれども、訳語を統一していくということは非常に重要なことでございます。そのために、このコンピューターシステムを利用するということが非常に効果的であろうということですけれども、この訳語の統一をするために対訳辞書というものを使って、それをさまざまな翻訳者が共通に利用することができるということが必要になってくるのであろう。そして、その対訳辞書をつくるに当たって、情報技術を活用することによって、効率化あるいは経費の節減ということを図ることができるのではないかというのが、このシステムであるということでございます。
資料の1枚目を御覧いただきたいと思います。表紙をめくった1枚目でございます。 ここにあるのは対訳データベースのイメージということでございます。この対訳データベースというのは、既に翻訳されている文章、それからその原文、これを大量に集めたものでございます。コンピュータを利用することによって、このデータベースから対訳の自動抽出を行うことができるということでございます。
この資料の例を見ていただきますと、単語と単語の対応関係が示されているわけですけれども、「取消」という日本語を選びますと、それに対して、黄色と緑に分かれていますけれども、「annulment」と「revocation」という2つの英語が対応しているという結果が出てくるわけでございます。
ここでは「取消」という単語を抽出した結果をお示ししているわけですが、これが句のレベルであったり節のレベルであったり、場合によっては文全体のレベルで対応させるということも可能になるということでございます。
この例で行きますと、日本語の「取消」に対応する英語として「annulment」と「revocation」という二通りがあるわけですけれども、見ていただきますと、前者の「annulment」というのは、婚姻、縁組などの取消しという意味のときに使われている、「revocation」の方は、遺言あるいは推定相続人の廃除といったものの取消しという意味で使われているということがわかるということでございます。
これを実際に専門家に見ていただいて、これが分けられるということに理由があるのかどうか、合理的なのかどうか、それをきちんとチェックしていただいて、やはりこのとおり使い分けるのが相当だということになれば、これをルール化して、その使い分けの基準についてルール化して対訳辞書を構築していくということになるということでございます。
このようにして、こういう作業を繰り返すことによって対訳辞書というものができていくと、翻訳者がこれを利用して的確に統一性のある訳ができていくということになる、しかも、この対訳辞書というのは、翻訳が積み重ねられていくに伴って、どんどん進化していく、新しいものになっていく、そういうシステムということでございます。
1枚めくっていただきまして、資料の2枚目でございます。これは実際の翻訳作業のイメージということになります。
まず、「取消」、「縁組」、「養子」、「親族」ですとか、こういった言葉が下の左側の方にあります「対訳辞書」、この中に収められているということでございます。対訳辞書として収められているものを、翻訳者はそれを引っ張り出して使うことができる、これによって対訳辞書の中から容易に適切な英単語を選択することができる、更に、単語だけではなくて、句ですとか文とか、そういったレベルで対応するものを取り出すということも可能になってくるということでございます。
また、対訳辞書に入れるのは、かなり頻繁に使われて、専門家のチェックを経て入れられるわけですけれども、対訳辞書に入れるほどではないけれども、過去の翻訳で使われる例というのが、それが右の方にあります「翻訳メモリ」というところに蓄積されているということだということです。これについても、必要に応じて参照することができるということでございます。
ですから、こういう翻訳メモリというものを参照することによって、過去に同じ翻訳とか類似している翻訳、法律の場合はそういうものが非常に多いと思いますけれども、それがわかる仕組みになっているということでございます。
ですので、この資料で言いますと、例えば、「第七百九十四条の規定に違反した」という部分、あるいは、「取消を裁判所に請求することができる」という部分、これについては、翻訳メモリに収められている過去の例を参照して、これを的確に容易な英語表現に直す作業ができる、それを支援することができるということでございます。
ここの翻訳メモリの方に入っているデータも頻繁に使われるようなものになれば、更にチェックを経て、対訳辞書の方に組み込まれるということがあるということでございます。
もう一枚めくっていただきまして、資料の3枚目でございます。
これは具体的な翻訳の統一性の確保などに関するイメージということでございます。名古屋大学のシステムでいきますと、翻訳者が作成した翻訳は、まずコンピューターシステムによって翻訳ルールに従ったものであるかどうか、これがチェックされるということになるそうです。これは要するに、対訳辞書に従った翻訳であるかどうか、これをコンピューターが自動的にチェックするということで、翻訳文の自動品質検査ということでございます。
それで、この自動的なチェックを経た翻訳が、真ん中辺りにあります「翻訳法令データベース」というところに収められるということでございます。
ここに収められた翻訳のデータを、例えば、法律専門家が更に検討して、どれが最も適切な語、句であるということが確定されると、それが更にまた対訳辞書に還元される、あるいは翻訳メモリに蓄積されるということになるということでございます。
こうやって対訳辞書ですとか、翻訳メモリの内容がどんどん更新されていくということによって、辞書やメモリの中身の質も高まっていく、自動品質検査の質も高まっていくということでございます。更に、翻訳者の行う作業も効率的に行われて、より一層統一性がある正確性のあるものができていくはずだということでございます。これが名古屋大学で研究されている一つのシステムということでございます。
例えばということで、こういったシステムを活用することができれば、訳語ルールの作成、あるいはその改善、更には実際に翻訳の効率化、統一性の確保といったものに非常に大きく寄与するのではないかというところでございます。
私の方からは、以上でございます。
○柏木座長 それでは、今のコンピューターシステムのイメージも含めまして、ワーキング・グループでの議論の取りまとめにつきまして、御意見がございましたら、御遠慮なくお願いいたします。
○久保利委員 大変難しいものを短期間に、座長も含めてワーキング・グループでよくおまとめになったと、大変御苦労様だったというふうに思います。
私は、中身の細かいところについてはよくわからないんですが、気になりますのは、今後の進め方です。ここを一体どういうふうに考えたらいいのかなと。特に、かなりの部分が省庁の自主性みたいなところを委ねられてしまうと、基本的にはやらなければいけないことが各省庁ともたくさんおありになるので、この辺りの政府としての位置づけを明確にするということと、その中に省庁だけではなくて、経済界等を巻き込んで、弁護士とか、法律学者も含めて、要するにユーザーサイドの意見をちゃんと聞くという問題です。
もう一つは、フォローアップ、あるいはモニタリングの問題とか、3つぐらいあるのかなというふうに思っていまして、第1番目の問題、すなわち政府としてどういう位置づけを置くのか、またそれを置くやり方をどうするのかというのが第1番目にあるのではないかと思います。
やはり、私としては、推進本部が11月末でなくなるという今の状況からいうと、存続しているうちに、法令外国語訳の基盤整備というのは、政府全体で優先的に取り組むべき施策なんだということを、例えば推進本部の会合なりで明確に意思決定をすべきではないのかと。恐らく、ワーキング・グループの先生方の御苦労も考えると、これぐらいのことは、やはり明確に意思表示をするというのは当然ではないかというふうに、まず1つ考えます。
次に、当然政府の施策だということになるわけですから、そうすると、今回のワーキング・グループの枠を更に超えて、全府省が課題として取り組むんだと。その検討については、先ほど申し上げましたが、やはりユーザーオリエンテッドでないと、役所というのはこの翻訳によってどんな得をするのか、なかなかよく見えないところがあると思いますが、ユーザーは経済界を含め、あるいは弁護士を含め、外弁も含め、みんな必要だと言っているわけですから、この人たちの意見を広く聞いて尊重して進めていくという基本姿勢、これが2番目に必要ではないかと思います。
やはり、今回の検討会で、この話が結実したのもユーザーの声に耳を傾けるという検討の存在が大きな意味を持ったと思いますので、これを是非、今後とも続けていただきたい。 3番目は、この1年間の基盤整備の検討というのは確かに承りましたけれども、その後も含めてどうやっていくんだと。1年で全部が終わると思えませんし、その後の、例えば行動計画ですね。私もメンバーになっていますが、例えば知財戦略本部なんかでは、毎年毎年計画をつくり、その計画の見直しをやり、推進計画というのをつくって、その中には、実は知財関係についての法律の英訳をやれと、これは2004年度以降、どんどんやっていって、国際的な発信もするんだということが推進計画に書かれているんです。そういう行動計画をつくって、これを検討会議で策定するなり、そういう具体化をしていくべきではないかと。併せて、計画というのをつくるだけだったらつくるんですけれども、本当にやっているかどうかというのを、チェックしてモニタリングしていく組織というのがないといけないのかなと。そうなってくると、モニタリングを一体どういう組織がどのようにやるのか、検討会議でこれができるのかどうかという問題があるのではないかと思います。
私は、3番目の問題については、少し本検討会の課題から外れるかもしれませんけれども、今年の10月1日の日経新聞に、『司法改革に魂を入れる着実な実行を』という社説が出ていました。私としては、多分定年を迎えて9月末でお辞めになった藤川さんが遺言のように書いていったものではないかと。彼自身もロースクールの学生になるそうですけれども。そういうことを考えてみると、最後にしっかり法曹三者が真剣に改革に取り組んでいるかどうかチェックする機関が、推進本部がなくなるとなくなってしまう。何とかそういう後継組織をつくらなければいかぬということを提案しておられました。
この国際化の問題もそうですし、ロースクールの問題もそうですし、裁判員制度もそうですし、本検討会だけの問題ではありませんけれども、やはりこういう後継組織を含めて、あるいは、これは顧問会議というのがふさわしいのかどうかわかりませんけれども、少なくともこのようなモニタリングをしっかりやっていく組織がないと、皆さんが最優先というふうに幾ら決めても、なかなか現実的な推進ができにくくなるんではないかと。やはり、いつもそういうガバナンスというのはモニタリングをしないと機能しませんので、そういう組織を翻訳の問題にのみならず、ほかの部分も含めてつくるようなことが必要ではないかと。
とりわけ、翻訳の作業というのは、法曹三者だけではなくて、全府省にまたがる話になってきますので、相当強力なモニタリング組織がないと、実行がどうなんだろうか、法律つくっておしまいではなくて、計画つくっておしまいではなくて、実行してこその司法改革だと思いますので、その辺りについての後継組織もお考えいただきたいというふうに考えるということであります。
以上です。
○柏木座長 ありがとうございました。まず、政府としての法令の外国語翻訳の位置づけの問題でありますけれども、これにつきましては、おっしゃるとおりでありまして、政府の施策としてやっていただくという必要が非常に強いと思います。
これは、近々顧問会議がありまして、そこで私が今までの結果を報告することになっておりますので、そういう強い御意見があったということを是非報告したいと思っています。
○久保利委員 よろしくお願いします。
○柏木座長 それから、ユーザーサイドの意見をよく聞くと、これも全くそのとおりなんでありまして、例えば、ニーズについてのところですけれども、幾つか申し上げましたが、4回のワーキング・グループの日程では、満足のできるようなニーズの調査というのはできなかったわけです。
したがいまして、これも検討会議に積み残しであるということになります。したがって、検討会議の下にできる、専門家会議ワーキング・グループのどこかで、アンケート調査までやるかどうかは別として、ニーズの調査というものが必要であろうと思っております。
それから、フォローアップ体制ですが、全くこれもおっしゃるとおりなので、私も何回か申し上げましたけれども、これは1年で終わる仕事ではなくて、翻訳をどんどん進めるという翻訳作業のほかに、できた翻訳のメンテナンスの作業、それと辞書等のメンテナンスの作業がありますので、継続作業をしないことには、翻訳はまたまた古くなって使いものにならなくなってしまいます。
ですから、翻訳体制、それから翻訳のためのシステムのメンテナンス、改善の体制、これをどういう具合にするかということが、検討会議の1つの大きな重要な決定事項になると考えています。将来の構想がなければ、1年間やったって全く無駄だという具合に考えております。
プラン・ドゥ・シーの問題でありますけれども、翻訳に関しては全くそのとおりで、プラン・ドゥ・シー、プラス、改善の体制をどうするかということで、検討会議で基本的な枠組み体制を考えていただく。
そのほかの司法改革の点になりますと、ちょっと私の権限を超えるという気がいたしますけれども、そのように考えております。
○道垣内委員 全く久保利委員のおっしゃるとおりで、座長もそれを引き取ってくださったので、是非その方向でお願いしたいと思いますが、組織法的にどういう決定が一番強いのかよく存じませんけれども、推進本部の決定であれば、内閣のレベルになると思いますので、是非そういう明確な決定をしていただいて、おっしゃるような知財のアクションプランと同程度の、省庁に対して強さのある、そういう決定をしていただきたいと思います。
ちょっとだけ、おっしゃらなかった点を付け加えさせていただきたいんですが、まず、ニーズの点ですが、ビジネスも勿論大切なんですが、日本国内には相当な数の外国の方が住んでいらっしゃって、そういう方にとっては、例えば刑事法とか、道路交通法とかについてわかるようにしてほしいというニーズはあるのではないかと思います。
その場合、英語だけではないかもしれないので、まず、第一歩は英語でしょうけれども、そういったニーズも少しくみ上げるような配慮をしていただければと。勿論、婚姻に関する法律とか、そういうことについても同じことだと思います。
それから、どうやってメンテナンスしていくか、あるいは作業を進めていくかですが、これから先につくる法律は、必ず英語を考えなさいというのとともに、遡及的な翻訳というのが相当大変だろうと思うんですが、これも年次を区切って、毎年何次分はやれとか、仕事量を決めてやっていかないと到底できないと思うんです。
それで、重要な法律が取り残されて、新しい付加的な法律だけ翻訳されても困りますので、そこを是非していただくような仕組みにしていただきたいんですが、そのためには相当予算を組むと。そして人も付けると。それで外注をどんどんやっていただければいいと思いますが、その外注をやっていくことによって、法律翻訳家の市場と言いますか、法律翻訳家の育成も視野に入れていただいて、今の翻訳会社も相当努力はされていると思いますけれども、やはり必ずしも法律の翻訳ができますと、相当なものができますという会社は余りなくて、多分工学系とか、医学系だと国際会議もたくさんあって、それなりの人がいるんじゃないかと思うんですが、それに匹敵するような、あるいはもっと国からこれだけの予算は必ず投下しますというのがあれば、育てる側も安心して資本投資できると思いますので、人を育てていくことも視野に入れていただければと思います。
以上です。
○柏木座長 ありがとうございました。確かに、実際の問題を考えますと、1つの大きな頭痛の種が人の問題なのです。よい翻訳ができるような人は、ほかに論文を書いてしまうとか、ほかにたくさん仕事がある。暇な人はろくな翻訳をやってくれないということがありまして、この辺が悩みの種だろうと思います。御指摘の点は全くそのとおりでありまして、予算が付いて翻訳の市場が広がれば人材も育成されるということだろうと思います。
○下条委員 今、久保利委員と道垣内委員が非常によくまとめていただいたので、余り付け加えることはないんですけれども、やはりこういった日本の法令の英語訳をつくるということについては、この検討会でもコンセンサスが得られたところですし、ワーキング・グループでもいろいろやっていただいたわけなんで、これは是非久保利委員が心配されていたようなポシャるということがあってはならないと、是非強力にこれを進めていくべきではないかと思います。
今日のいろいろなワーキング・グループの発表は、非常に各論的にわたりますけれども、この検討会では、むしろ大元の根本の基本的方針を提言していくということでよろしいのではないかと思います。そのためには、やはり両委員が御指摘になったように、各省庁にまたがることなので、どうしても強力なリーダーシップ、これはやはり内閣の下において強力なリーダーシップでもってやっていただきたい。そうでないとなかなか進まないということになりかねないと思います。
あと、道垣内委員がおっしゃったように、これは私も前から言っておりますけれども、非常にお金のかかること、1つの単行法を翻訳するのは、おおざっぱに言って1億円プロジェクトと申し上げましたけれども、それぐらいのお金がかかることですので、これについては予算を付ける。これは多分各省庁の予算になると思うんですけれども、そのためには、やはり財務省の方で予算を付けやすくするために、基本的な方針を内閣の方できちんと打ち出してもらいたいということがあるかと思います。
もう一点、どこにも触れられていないんですけれども、そういう予算にも関わることなんですけれども、著作権をどうするかと、民間に依頼した場合には買い上げて、その著作権の対価を払うと、そのようなことも考慮に入れて、やはり道垣内委員がおっしゃったように、お金が非常にかかるということですから、予算をしっかり付けてもらいたい。そのためには、きちんとした基本方針を内閣府の方で打ち出してもらいたいと、そういうふうに考えております。
○柏木座長 ありがとうございました。確かに、著作権の問題は、面倒な問題がありまして、例えば民間がやった訳で、基本ルールに沿っていないというようなものにどうリンクを張るべきか、あるいは、今後つくる翻訳体制の中でどう取り込んで、それを改善していくか、面倒な問題があるかと思います。
○下条委員 一応、私どもの事務所でやった商法の翻訳については、私どもの事務所が著作権を持っていますので。
○乗越委員 今の御指摘の点にちょっと関係するんですが、私がこの資料を拝見して、御説明をお伺いして理解しましたのは、この検討会議と傘下のワーキング・グループは、翻訳ルール及び翻訳のデータベースをつくるということをやるのが主な仕事で。
○柏木座長 それと体制を考えるとこともあります。
○乗越委員 はい。実際の翻訳作業をするのは、言ってみれば、つくられたルールの下でやりたい人がやってくださいというふうなように思えるんですが、そうではないですか。○柏木座長 そうではございません。その点は検討会議でやっていただかなければいけないので、1つの考え方としては、各府省に翻訳作業を全部丸投げしてしまう。これは多分各府省は非常に嫌がるだろうと思うんです。それから、民でできることを全部官に押し付けるのはいいのかという問題もあるだろうと思います。
他方、もう一つは、翻訳ルールはつくってあげるから、これを利用して民が勝手にやれと。これだと、今度は今までと全く同じで、民はそんなお金のかかることはやらないということになるだろうと思います。
ですから、まだ将来の体制のイメージは全然考えてはおりませんし、これは検討会議で考えていただくことですけれども、例としては、例えばNPO、NGOみたいなものをつくって、そこが翻訳をやるとか、あるいは独立行政法人は、今、もうつくらないという方針のようですから、これはできるかどうかわかりませんけれども、独立行政法人を作ってやるという考え方もあるでしょうし、あるいは大学のような研究機関にやらせることも考えられると思います。フランスなんかそういうのをやっていますね。ポアチエ大学に翻訳の担当機関をつくって、そこが責任を持ってやることになっています。その体制をどうするかというのが、検討会議の非常に大きな仕事だと思っております。
○乗越委員 その点は、今、伺って安心したんですが、検討会議がこれから体制をつくられるに当たって、やはりそもそもの議論の出発点は、ユーザーの側としてオーセンティシティーのある翻訳がないので困っているというところが出発点なものですから、仮に民間にやらせるとか、そういうふうなことになったとしても、何らかの形で品質について、何か安心感が出るような仕組みというのを考えていただきたいと思います。
2つ目は、私どもは実務をやっていて、恐らくこういう実務をやっている者とか、あるいは会社の中で実際に実務をやっておられる方々が、実際の翻訳に接して、ここがちょっとおかしいんじゃないかとかいうふうな議論が一番出やすいところだと思うので、例えば、翻訳ルールとか、辞書をつくる当たって、それをいろいろ進化させていく仕組みというのを考えていらっしゃると思いますけれども、なるべく広く一般の人からもウェブサイトか何かを通じて、そういう貢献ができるような施策というものを考えていただきたいというふうに思います。
○柏木座長 それも全くそのとおりだろうと思います。例としてインターネットの英和辞典がありますね、あれは公開して、各ユーザーからいろんなアイデアを募って、それをどんどん反映していく。辞書をつくるというような仕事では、やはり多数の人からいろんな意見を集めて、それを反映させるというのは非常に効率的だろうと思います。松浦、外山両教授のコンピューターシステムも、そういうことを前提に考えております。
○孝橋委員 今まで各先生方がおっしゃった意見と特に趣旨は異なりませんが、やはりこのプロジェクトは非常に重要なプロジェクトでありますし、それから各官庁、各府省、それぞれ所管の法令というのを持っておられまして、それで所管法令の外国語訳につきましては、やはり所管省庁がやられることになるかと思いますけれども、その各府省の実情というのは、久保利委員が最初に御指摘になったように、それぞれの省庁はそれぞれの優先順位のある施策を抱えておられますから、やはり外国語訳という1つのプロジェクトを、一斉に、できるだけスピーディーに実現していくためには、府省横断的な組織をつくっていただいて、しかも高いレベルの方に参加していただいて、その強力なリーダーシップの下に推し進めていかないと、なかなか実現しないのではないかと思っております。
今日お配りいただいた資料18−2の添付資料の中に、韓国における法令の外国語訳の実情が紹介されていますが、これはちょっと見た限りでは、1996年から1997年にかけての集中的な翻訳で、かなりの量の法令の外国語訳が実現したということを御紹介になっていますが、このようなことが、今すぐに我が国で実現するのは到底難しいのかもしれませんけれども、しかし、せっかくここまで作業が進んできたものを実現していくためには、全府省横断的な組織をつくって、しかも先ほど来出ております予算措置についても、できるだけの御配慮をいただいてやっていかないと、なかなか難しいのかという感じを持っております。
是非その点につきまして、また引き続き御努力いただきたいと思っております。
○柏木座長 予算につきましては、これは勿論、大変にお金がかかることでもあります。予算につきましては、本当に予算がたくさん取れれば、韓国みたいにかなりの法令を集中的に翻訳して、それから後はほぼメンテナンスだけという体制ができるだろうと思いまして、またそれをやらなければいけないだろうと思います。孝橋委員の御意見には全く賛成でございます。
ほかに御意見はございますか。
○波江野委員 今、座長のおっしゃった検討会議の位置づけでございますが、法令の外国語訳のために検討会議が必要であって、これが設置されるというのは非常にいいことだと思います。推進本部は11月末で任期満了して解散しますが、まだほかの検討会等で取り組んでいたテーマで、幾つか、今後も進めていかなければいけないものがあると思います。ただ今御提案の検討会議は、そういった、ほかの検討会の課題も併せて担当されるのか、それとも法令外国語訳のためだけに設置されるものなのか、いずれでしょうか。
○笠井企画官 法令の外国語訳に関する検討会議、これは法令の外国語訳について検討していただくための会議というのを想定しているということでございます。
そのほかに、これからいろいろ実施していかなければいけない事務等があるわけでございますけれども、それをどういう形でやっていくかということについて、今、いろいろ検討しているところでございますけれども、それをどういう形でやっていくかということと、この検討会議をどうするかというのは、一応別のものとしてお考えいただければというふうに思います。
○波江野委員 先ほど座長からございましたように、検討会議として1年のスパンでワーキングされることは非常に結構ですが、更にその先はどうなるのでしょうか。フレームワークができて、その上で実際に外国語訳を進めていくのですが、この場合、1年限りで完了するのか、その後はどこかが一元的に管理するのか、いかがですか。外国の例として、フランスでは外務省がプロジェクトを運営すると承りました。
今回の司法制度改革は、各府省横断的な推進本部が設置され、非常に効率よく進められました。しかしながら、成果としてまとまったフレームに基づいて、実行が各役所に任され、それぞれの判断で進められるとなると、せっかくでき上がったフレームワークが機能しなくなるという懸念があります。表現がよくないのですが、日本の場合は、お役所同士の縦割りによる縄張り争いがあります。翻訳の推進を継続的にモニタリングあるいはフォローアップしていく体制が必要なのではないでしょうか。
もう一点、懸念としては、この活動が、フレームワークづくりにとどまって、実行はそれぞれの判断に任せてしまうと、今までと同じような結果にならないかということです。ニーズがあるからといって、一件の法律について同時に複数の機関が翻訳に着手するような事態は起きないでしょうか。こういった交通整理について、責任をもって取り組むべき機関が必要だと考えます。せっかくここまで動き出した新しい仕組みですので、このような観点からリーダーシップを発揮できるような体制をお願いいたします。
○柏木座長 お配りしたタイムテーブルが1年限りで終わってしまっているので、どうも誤解を招きがちでありますけれども、検討会議は基盤整備を考える会でありまして、その基盤整備の中に、これから先の体制も考えるということであります。
それは、波江野委員おっしゃるとおり、各省庁に任せ切りではだめだし、あるいは、これは検討会議で決めることですけれども、どこかの特定省庁に任せますと、そこの省庁だけのことしかやらないなんてことになりますから、それはこの検討会議で考えていただくということになると思います。
ほかに御意見はございますか。
○加藤委員 今までの諸先生方の御意見は、全く私も同感です。
外国語訳の作業を官でやるのか民でやるのかの疑問があると思います。官が全くタッチせずに、民に任せてしまうと、民が必要とするもののみ実行することとなって、全体の整合性、統一性あるいはバランスに欠けることとなりかねず、虫食い状態になってしまう恐れがあります。したがって、この作業は、実際の作業は民に委託するとしても、やはり官が主導して行うということが必要であると思います。
もう一つ、皆様の御指摘にもありましたように、各省庁の自主性に依存したのでは、うまくいかないと思います。強力なリーダーシップが必要で、その下に、予算が取れるとか取れないとかということではなく、予算を取るとの前提で体制をつくることが必要であると思います。そうでないと、十分な予算は取れず、予算が取れなければ人も組織もできないということになりかねない。どこが所管し、どういう位置づけをして、誰がリーダーシップを取るのか、この辺の仕組みづくが最も重要であると思います。それができれば、モニタリングであれ、チェック体制であれ、推進のスピードであれ、ひとりでについてくることではないかと、このように考えます。
したがって、これから行われる検討会議の設立を含めて、司法制度改革推進本部が解散されるまでの間が重要で、柏木座長には大変申し訳ありませんが、是非とも強力に意見を申し述べていただき、実現に向けて御尽力をお願いしたいと思います。
もう一点だけ、先ほど来の御説明の中でもありました正確性あるいは事後の継続性、更新について、議論がなされるのは当然のことと思いますが、あまりこの点にこだわることとなると、なかなか一歩が踏み出せないことにもなりかねないと懸念します。多少そういったところは犠牲にしてでも、第一歩を踏み出すことが重要であると、このように思います。
以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますでしょうか。
ありがとうございました。それでは、法令の外国語訳の推進につきましては、ワーキング・グループの検討結果が国際化検討会でも承認されたということで、今、出ました御意見などを含めまして、顧問会議で報告させていただきたいと思います。
(委員了承)
これで閉会になるわけですけれども、閉会に先立ちまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
国際化検討会では、外国法事務弁護士と弁護士との協働関係の検討を始めとしまして、司法制度改革の中での重要な意義を有する我が国司法の国際化に関しまして、御検討をいただいたわけであります。
法令の外国語訳の推進は、我が国の司法の国際化という面で極めて重要な意義を有する課題でありますので、このような重要な課題につきまして、国際化検討会で、大変エンカレッジな検討が行われ、また結論が出されたということは非常に有意義なことと思っております。
委員の皆様方には、御多忙中にもかかわらず、この検討課題に関しまして、真剣に取り組んでいただき、貴重な御意見をいただいたことを大変感謝しております。
座長として、一言お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
○松川事務局次長 一言御礼のごあいさつをさせていただきたいと存じます。
柏木座長を始め、委員の皆様方には、法令の外国語訳の問題との関連で、御多用中にもかかわらず、最後の段階までいろいろと御尽力をいただきまして誠にありがとうございました。
本日は、法令の外国語訳の問題につきまして、ワーキング・グループからの報告を受け、いろいろと御議論をいただきまして、検討会として、今後の基盤整備に向けての方向性をお示しいただきました。今後は、この検討結果を踏まえまして、政府として一体として本格的に法令の外国語訳を推進できますように努力してまいりたいと考えております。
さて、改めてこれまでの国際化検討会の取組みをふり返ってみますと、延べ18回にも及びまして、法曹や司法を巡る国際化の諸問題につきまして、さまざまな角度から御検討をいただきまして、数々の貴重な御意見をいただきました。
その結果、外国法事務弁護士と弁護士との協働の問題につきまして、いわゆる外弁法の改正は、いよいよ来年の4月から施行されることになりました。また、昨年の7月には、法令の外国語訳の問題を始めといたしまして、弁護士の国際化への対応強化、法整備支援の推進等の問題について、議論の整理を取りまとめいただいたところであります。改めて委員の皆様方の御尽力に対しまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。
推進本部は今月末で設置期限を迎えますけれども、皆様方には、今後何かといろいろとお知恵を拝借しなければならない面もあろうかと思いますので、今後ともよろしく御指導、御支援を賜わりますようお願い申し上げます。
本当に長期間、ありがとうございました。
○柏木座長 それでは、これで第18回の国際化検討会を閉会したいと思います。
これまで、どうもありがとうございました。