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国際化検討会(第2回)議事録



1 日時
平成14年2月25日(月)10:00〜12:40

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)(委員)柏木昇座長、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、西謙二、玉井克哉、波江野弘(敬称略)
(説明者)大塲亮太郎(法務省大臣官房司法法制部参事官)
 下川真樹太(外務省経済局国際機関第一課サービス貿易室長)
 小原 望 (日本弁護士連合会外国弁護士及び国際法律業務委員会委員長)
(事務局)山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、齊藤友嘉参事官
  1. 開会
  2. 検討の進め方について
  3. 議事の公開
  4. 外弁制度の現状等について(法務省・外務省・日弁連からの説明及び質疑応答)
  5. ヒアリングの実施について
  6. その他
  7. 閉会

【柏木座長】 所定の時刻になりましたので、第2回「国際化検討会」を開催させていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。それでは、早速、今回の議事予定について事務局から御説明をお願いします。

【齊藤参事官】 本日は、冒頭、約二十分くらいでこの検討会における検討事項と検討のスケジュールについて御議論いただきたいと思います。その後に、外弁制度の現状等につきまして、法務省、外務省、それから日弁連の順にプレゼンテーションしていただく予定です。プレゼンテーションしていただいた後で、質疑応答をするという段取りで進めさせていただきたいと思います。それから、今日の最後の部分、約十分程度かと思いますが、そこで第3回以降にヒアリングを予定しておりますけれども、そのヒアリングの実施要領につきまして、御議論いただくという予定でございます。今日の予定は以上でございます。

【柏木座長】 それでは、まず初めに事務局から配付資料の確認をお願いします。

【齊藤参事官】 まず、資料2−1、検討会のスケジュール案でございます。第1回に配付した資料を更に少し調整させていただいております。それから、資料2−2が法務省の本日の説明資料でございます。資料2−2の内訳ですけれども、資料1から資料9までございます。御確認いただきたいと思います。それから、資料2−3が外務省の説明資料でございます。資料2−3につきましても、別添の資料が1から9までございます。続きまして、日弁連の説明資料が、資料2−4でございます。これにつきましても、添付資料がAからCまでございます。資料2−5が、ヒアリング実施要領の案でございます。最後、資料2−6ですが、司法制度改革審議会における審議概要でございます。具体的には、法整備支援、あるいは国際化のテーマの関係の議事録の抜粋でございます。資料は以上でございます。

【柏木座長】 それでは議事に入ります。今後の検討の進め方につきましては、第1回検討会の際に、さまざまな意見をお出しいただいたところでございますけれども、この検討会における検討事項、検討スケジュールについて、ある程度コンセンサスを得ておきたいと考えております。まず事務局から考え方を御説明いただきます。

【齊藤参事官】 まず、この検討会ですが、推進本部事務局に設けられております他の検討会も、基本的には同様だと考えておりますけれども、司法制度改革審議会の意見書に記載されている改革課題を過不足なく検討するということが検討会の使命であるというふうに考えております。そこで司法制度改革審議会の意見書で司法の国際化という題目で記載されている中身を検討してみますと、まず、民事司法の国際化というテーマの中の具体的な各課題は、それぞれこれから申し上げるような、それぞれの場で検討されるということになっております。民事訴訟事件の審理の充実、迅速化、これは具体的な中身としまして、計画審理の推進、それから証拠収集方法の拡充といった内容です。これらは現在、法制審議会の方で検討されておりまして、当本部事務局におきましても、その検討状況を見守っているというところでございます。更に民事司法の国際化の中の具体的な課題としまして、専門的知見を要する事件への対応強化というものもございます。具体的には専門委員制度、あるいは鑑定制度の改善といった内容です。それから、知的財産関係事件への総合的対応強化のテーマの中で、東京・大阪両地方裁判所への専属管轄化、こういった課題も、現在法制審議会で検討されているところでございます。それから、知的財産関係事件の総合的対応強化のうち、弁理士に訴訟代理権を付与する、特許権の侵害訴訟につきまして、弁理士に訴訟代理権を付与すべきであるという課題につきましては、既に経済産業省から所要の法案が提出されるに至っております。更に民事司法の国際化の中で、国際商事仲裁を含む仲裁法制の整備というテーマもありますが、これも当本部事務局の「仲裁検討会」で検討されるに至っております。このように民事司法の国際化の中で、具体的な改革課題とされているものは、それぞれの場で検討されるという形になっております。それから、刑事司法の国際化というテーマにつきましては、改革審の意見書で、国際捜査、それから司法共助の制度の拡充・強化ということが記載されているわけですが、この課題も国際化の観点からというよりは、むしろ刑事問題としての専門性が極めて高いテーマでございますので、これもその専門性にふさわしい場で検討されるのが妥当ではないかと考えておりまして、当検討会で検討するにはふさわしくないのではないかと考えております。
このように整理してまいりますと、司法制度改革審議会の意見書における国際化への対応というところで記載されている課題のうち、残るのは弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進、それから、弁護士の国際化への対応強化、法整備支援の推進の各課題が残るという形になりますので、当検討会ではこれらの課題を主として検討すべきことになると考えております。ただし、これらの各課題を検討するに際しましては、我が国の司法の国際化を推進するという観点において、できる限り多角的な視点から有益な御議論をいただきたいと考えております。
なお、第1回のときにも、ある程度議論が出たところでございますが、知的財産権に関しましては、これを巡る諸課題を広く国際戦略的な視点から当検討会で検討すべきではないかと。こういった意見が出ていたかと思います。しかし、今述べましたように、司法の国際化というテーマで具体的な改革課題とされている内容につきましては、恐らくそれぞれの場で過不足なく検討されると思われますので、知的財産関係につきましても、具体的な課題としてはそれぞれの場で検討されることになると思いますので、当検討会で知的財産関係について、これを独立の課題として検討するということは妥当ではないと一応考えております。ただし、お集まりいただいております各委員の知的財産関係に関する知識、経験を踏まえまして、本来、この検討会で検討すべきと考えております弁護士の国際化であるとか、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進、こういったテーマについて御議論いただくということは、極めて検討の在り方としても有意義ではないかと考えております。ただし、繰り返しになりますけれども、知的財産関係を独立のテーマとして掲げるということはふさわしくないのではないかという結論でございます。
検討のスケジュールとの関係ですが、資料の2−1をごらんいただきいのですが、スケジュールとしましては、やはり立案課題と考えられます弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進、このテーマについて先行的に検討は進めさせていただければと思っております。そして、第11回から第15回まで、弁護士の国際化への対応強化、それから法整備支援の推進につきまして、ヒアリングや御議論を十分にいただけるように、それぞれ2回程度検討会を開催すると予定を立てさせていただいております。本検討会の検討事項、それから、スケジュール、これにつきましては、事務局としては、以上のように考えておりますので、できれば御理解を賜りたいと思います。

【柏木座長】 ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見がありましたら挙手の上、御発言願います。

【下條委員】 この前も申し上げましたけれども、この外弁問題は、非常にすぐれてGATS、サービス貿易交渉で問題になっていることですので、今のスケジュールを見ますと、平成14年11月ごろには外弁関係の議論が終わってしまうということになっておりますけれども、この前申し上げましたように、サービス貿易交渉の方は、今年の6月末までに各国がそれぞれの国に対してリクエストを出す、そして、来年3月末までにリクエストを出された国はどういう受け入れをするかということでオファーを出すというような状況になっておりますので、検討会における検討と、そういう立案とは別なのかもしれませんけれども、やはり来年3月末までにオファーを出すというスケジュールに合わせて、外弁関係の検討もなされた方がいいのではないかと思います。

【齊藤参事官】 WTOの交渉の見通しとの関係でございますけれども、外弁法につきまして、改正法案を提出する時期としましては、平成15年の通常国会か、あるいは16年の通常国会というふうに、通常国会が目指すべき場ということになろうかと思います。改革課題につきまして、できるだけ急いで法案提出するということを考えていかざるを得ないとすると、今年の11月くらいまでには外弁法についての検討も経ておかなければ、平成15年の通常国会に法案提出というスケジュールには間に合わなくなってしまう、それを念頭にスケジュール案は立てさせていただいております。実際WTOの手続の進展具合などは当然フォローしていかなければいけないと考えておりますので、今年の6月にリクエストが出たりといった状況を踏まえまして、その内容いかんではどのように対応するのが一番適切なのかということを、その場で検討せざるを得ないと考えております。したがいまして、この検討スケジュール案というのも、粛々と平成15年に法案提出ということを実現していかざるを得ないことを見計っての案ということでございますので、下條委員の御指摘の点につきましては、その場でまた検討はさせていただくことになろうかと思っております。

【下條委員】 それはわかりますけれども、やはり審議会の意見書も、特定共同事業の見直し、これはあくまでも国際的な議論をにらみつつと言っておりますので、その点において、GATSにおける状況、それをにらみつつ、それとスケジュールを合わせたような形でやるべきだと思います。それから、昨年11月のドーハにおける閣僚宣言ですけれども、日本が前から主張していました一括交渉ということがなされたわけですから、やはり一括交渉ということで、後ほど下川委員の方からもお伺いしたいと思いますけれども、いろんな分野を一括して交渉するということですので、1つの分野における譲歩をして、他方の分野を勝ち取るとか、そういう交渉事が可能なわけですから、それをも考えた上で、あくまでもGATSにおける交渉、それをにらみつつ、こちらの検討会を進めていくべきだと思います。

【齊藤参事官】 ですから、一般論として、WTOの動きを十分踏まえながら検討を進めるということは、私ども事務局としても当然考慮に入れていることなんですが、ただ、長いスパンで検討のスケジュールを立てておりまして、15年の通常国会を目指さざるを得ない状況に追い込まれるということになりますと、これでは検討が間に合わなくなってしまう危険性がありますので、一応当面の予定としては、前倒しして、検討のスケジュールは立てさせていただいていると御理解いただきたい思います。

【久保利委員】 違うテーマでありますけれども、今日ペーパーとして、私の個人的な意見を参考のためにお配りいたしました。「国際化検討会の検討事項に関する意見」というものでありまして、「国際化の観点から知的財産権に関する事項を検討すべきである」という趣旨のペーパーであります。ポイントは、先ほど参事官がおっしゃったとおり、確かに外弁の問題、それから法整備支援の問題、この2つは国際化としても大事な問題だと思いますが、ある意味で言うと、外弁というのは、輸入と言いますか、法知識、それを担う法曹、これを国内に入れるということで、整備支援の問題は逆に輸出をするという問題。もう一つ大事なのは、先ほど参事官もおっしゃいました弁護士の国際化という問題で、これは国際競争力をにらみながら、日本の国内弁護士を含む、あるいは法曹、法制度、これをどう強くするかという観点だと思うんです。これもすぐれて国際的な問題でありまして、お手元に配付した「意見の理由」の1でア〜キまで、7つの問題について意見書が書いているところを引用いたしました。かなり力を入れて、国民の期待に応える司法制度であるとか、法曹の在り方という中で、この問題を取り上げております。その意味では、まさに弁護士の国際化という切り口の中で、知的財産権というのを非常に浮かび上がらせている書き方になっているのではないか。この意見書の3ページをごらんいただくとわかるとおり、この国に豊かな創造性とエネルギーを取り戻そうとするさまざまな改革と、根っこを一にしながら、法の支配の下に有機的に結び合わせようというものであります。そうだとすれば、まさに創造性とエネルギーというものを考えるとともに、国際競争力、あるいは各国が必死で国家戦略として組み上げている知的財産権を我が国の司法の中でどのように組み立てるかというのは、非常に大きな重要な問題ではないか。現に意見書の中にもちらほらとその具体的な取り組み方がちりばめられておりますので、私としては、外弁と法整備支援を論議するなということではございません。勿論、これはやるんですが、それと軌を一にして、弁護士の国際化の中で、知的財産権ということに対する取り組みを是非お願いをしたい。したがって、スケジュール、あるいはヒアリングの内容等々の組み方の問題ということになると思いますが、私はどう考えてみても、今の組み方は外弁に余りにも偏り過ぎているのではないか。もう少しバランスのいい組み方をいただけないだろうかという希望と意見を申し上げるというのが私のペーパーの趣旨でございます。そのものは、今日の議論の種として提供するものですので、別に資料として配付する必要はないと思うんですけれども、そういう考え方を持っているということで御理解をいただき、同じお考えの先生方には、是非教えをいただきたいと考える次第です。

【柏木座長】 事務局から御説明がありましたように、知的財産権の問題はほかの検討会でもいろいろ検討されていますね。それとの関係はどういう具合にお考えですか。

【久保利委員】 現実問題として、では、どこでやっているんだと。私も10の検討会をつまびらかに存じているわけではございませんけれども、知的財産権に特化した検討会はないだろうと思います。それから、法制審でおやりになるという話ですけれども、本来法制審があるんですから、法制審でやるという話になれば、何も検討会などは要らないはずなんで、検討会をわざわざ設けてやるというのは、意見書を具体化するために、法制審か何か、手の回らないところ、あるいはもう少し掘り下げた方がいいところを検討会でやっていこう。まさに本部がそれをつくっていくということなんだろうと。そういう意味では、法制審という法務省の中にある審議会というところで御検討いただくんではなくて、本部の下にある検討会でやる。むしろダブったらこっちがやるというくらいのことで本当はよろしいのではないかと思いますが、少なくとも私の知る限り、今の専属管轄の問題は確かに法制審かもしれませんけれども、それ以外の弁護士の国際的な在り方の中でどういう法律をつくって、この知的財産権の強化に踏み出すかということは、法制審に掛かっているとは聞いておりませんので、よその検討会がやっているとも聞いていませんので、私としては、ここでやるしかないのではないかと考えて、特に国際競争力の関係、各国で必死で国家戦略としてやっているものを我が国ではどうこれに取り組むんだという姿勢の問題としては重要ではないかと考えるわけです。

【柏木座長】 ほかの委員の方、今の点について何か御意見ありませんか。

【玉井委員】 法制審議会は大変立派な先生方が集まって本格的な検討をされるかと思いますけれども、大変広い視野をお持ちの先生方が多いわけですし、それから検討課題も知的財産権というのは、どちらかというと二次的な課題で、民事訴訟にとってはもっと重要な問題がたくさんあると思うんです。広い視野をお持ちなだけに、私のように視野が狭くて、知的財産権のことしか知らないような人間が見出すような問題はそこでは出てこないかもしれないという気がしまして、これは検討会の趣旨にも関わることですけれども、こちらでやっているからこちらでやらなくていいという縦割り的な考え方であれば、それは事務局のおっしゃるとおりだと思いますけれども、そうではなくて、ここでヒットが出るよりは、ぶつかって野手同士が当たってけがしていいという考え方で運用されるのであれば、久保利委員のようなお考えも一理あるかなという気がいたします。

【乗越委員】 知的所有権、その他、国際化の問題について、広く議論するということについては、正しい方向だと思いますけれども、それによって議論が拡散してしまって、個々の議論が十分に尽くされないということだけは避ける必要があると存じます。したがいまして、私としましては、今、事務局の方から提案されたスケジュールに大体沿いまして、まず1つの問題を集中して議論していく。その上でほかの問題も議論するということになれば、検討会の回数を増やしても構わないと思いますので、それについては追って議論するというような対応の仕方でいいんではないかと考えております。

【道垣内委員】 この検討スケジュールの第10回までは非常に具体的で、成果もおよそ見当がつく、非常にわかりやすい話なんですが、それ以降のことが相当あいまいでございます。それぞれ2回ずつでヒアリング等の検討ですから、どんな産物が生まれるか、余り大きな期待はできないという感じはいたします。今おっしゃっているように知的財産権の問題は非常に重要だと思いますが、知的財産権だけが重要であるわけではなくて、むしろ司法制度改革審議会の意見書で言いますと、民事司法の国際化という中で知的財産権、ここは国際化検討会ですから、そういう大きな枠組みができないか。弁護士の国際化と、民事司法の国際化はやや大きさが違いまして、民事司法の国際化であれは、知的財産権も十分に、知的財産権事件も多いですから、私は前回もお話ししましたが、国際民事手続法とか、国際私法とかを専門にしているものですから、民事司法の国際化の中で知的財産権だけと言われると、私から見ると狭過ぎて、もっといろいろとあるんじゃないかと思うんです。ですから、弁護士の国際化のところで具体的に何をお考えなのか、それで落ちてしまうものがあるんじゃないかという点について、御説明いただければと思います。今の知的財産権の問題も落ちてしまうんじゃないかという懸念があるわけですから、それとともに、ほかに問題もあるんじゃないかということを思います。

【齊藤参事官】 改革審の意見書を読んでみまして、民事司法の国際化というところで、具体的に改革課題として掲げられているものを一応フォローすると、先ほど言いましたように、大体その場その場で検討の場が設けられているわけなんです。勿論、大きいくくりの中で更にいろんな改革課題があり得るのではないかという視点で考えれば、いろいろなことが考えられるかもしれないですが、それを取り上げてこの検討会で検討していくということになりますと、ある種限界をどの辺りで引けばいいのかということになってきますし、これは大変難しい問題になってこようかと思います。したがいまして、一応事務局の方の整理としましては、具体的に改革課題として掲げられているものを過不足なく実現していく。そのための検討というだけでもこれは相当大変な作業になるのではないかと考えているわけです。したがいまして、今日の久保利委員のペーパーを拝見しましても、具体的な課題として明らかに意見書の中でこういう課題もあるではないかということであれば、もう少しこちらもそういったテーマを慎重に取り扱っていかなければいけないということになろうかと思うのですが、なかなか意見書の中で、知的財産権に関しては、具体的な改革課題というものがどういうものなのかと。そういうものを一応掲げられている範囲では、検討のスキームが設けられているというふうに一応考えているわけです。それから、道垣内先生が御指摘のように、民事司法の国際化という広い観点から見れば、まだまだいろいろ落ちているものがありはしないかという御指摘ですけれども、これも一応具体的な課題として意見書から読み取れるものというのは、それぞれの場で検討されるというふうに一応整理はついているというふうに考える次第です。

【加藤委員】 検討事項等については、この司法改革では、利用者の意向に沿った改革を進めるということになっていると思います。私は、利用者側の立場として本会に出席していると考えておりますので、その観点から、是非知的財産権の問題を取り上げてほしいとの意見を申し上げたいと思います。先ほどの事務局のお話では、知的財産権については、法制審で専属管轄の問題として取り上げることとなっているということでございますが、知的財産権の国際間の問題は、専属管轄化ですべてが解決されるとは私は考えておりません。かなり幅広い観点での議論が必要であると思っております。そういう意味では、多分この国際化検討会で検討するのが適当なのであるだろうと思います。久保利委員がおっしゃいましたように、我が国にとって、知的財産権の問題は、国策的な意味合いも含めて重要な課題だろうと思っておりますので、先ほどのお話にもありましたように、この検討会の回数を増やしてでも、検討していただきたいと思っております。

【齊藤参事官】 知的財産関係につきましては、広く大局的に検討していくという点は、実はこの推進本部の検討会だけではなくて、他省庁とか政府部内に知的財産権の戦略会議もつくられるという動きも外ではあります。したがいまして、そういった検討スキームとの関係も配慮しなければいけないのではないかと思っています。まず、推進本部事務局に設けられる検討会というのは、意見書の改革課題というものをマンデートとして考えて、それを過不足なく実現する、それを第一義的に考えなければいけないと考えておりますので、外部の検討スキームなどとの関連も十分配慮して、整理をしていきたいとも考えております。そのことも念頭に置いていただければと思います。

【柏木座長】 検討事項につきましては、事務局の案に対して、下條委員、ほかの委員からたくさんの意見が出ました。スケジュールにつきましては、法案提出時期をにらみながら考える必要があり、この検討会の意見が法案提出時期に遅れてしまうということは非常にまずいことであろうという感じがいたします。その関係で、このスケジュールでとりあえず外弁問題は速やかに検討し、特に今、出されました知的財産権の問題、それから道垣内委員から出されましたほかの民事司法の国際化の問題、こういう問題は多分、弁護士の国際化の対応についてというところで議論できるのかなという気がするんですが、今、出されたような意見につきましては、事務局で更に検討させていただいて、どういう検討項目を、どの時点くらいで検討するのかということをまた考えたいと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。それでは、次に外弁制度の現状等につきまして、法務省、外務省、日弁連から御説明をいただきたいと思います。まず法務省からお願いいたします。

【法務省(大塲参事官)】 法務省大臣官房司法法制部参事官の大塲でございます。法務省におきまして、外国法事務弁護士制度を所管しておりますので、外国法事務弁護士制度の概要、日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働を積極的に推進する必要性、現行特定共同事業制度の問題点を中心に御説明させていただきます。お手元にお配りしたレジュメや資料をごらんになりつつお聞きください。資料2−2の後ろの方にレジュメがつづってあります。大体私が説明する順序は、このレジュメのとおりにしたいと思っておりますので、これをごらんになりながらお聞きいただければ幸いです。

 「第1 外国法事務弁護士制度の意義及び概要等」「1 外国法事務弁護士制度の意義」。
 外国法事務弁護士制度とは、外国の弁護士となる資格を有する者が、当該外国で与えられた資格を根拠として、我が国において新たに資格試験等を課されることなく、外国法に関する一定の法律事務を取り扱うことができるようにする制度のことであります。すなわち、この制度によって、例えばアメリカ合衆国ニューヨーク州の弁護士資格を有する者が、新たな試験を課されることなく、我が国において、ニューヨーク州法に関する一定の法律サービスを提供することが認められるということです。
 我が国における外国法事務弁護士制度の概要は、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法に定められております。以下、外国法事務弁護士制度のことを外弁制度、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法のことを外弁法と呼ばせていただきます。
「2 外弁法制定の経緯等」。外弁法は昭和61年5月に成立し、同62年4月に施行されたものですが、その制定の経緯については、資料1に記載したとおりでございます。
外弁法制定以前は、弁護士法72条の規制によりまして、我が国において、他人の法律事件に関する法律事務を業務として取り扱うことは、弁護士にしか許されておりませんでした。すなわち、弁護士以外の無資格者が自らの利益のために、みだりに他人の法律事件に介入することを業とすることを認めますと、当事者その他関係人らの利益を損ね、法律生活の公正円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序全体を害することになることから、原則として法律業務を弁護士に独占させたものです。
 外国の弁護士資格を持っているものであっても、それだけでは何ら能力的担保があるわけではなく、我が国国内におきましては、弁護士以外のものと同じであると考えられるため、法律事件に関する法律事務を業務として行うことは一切許されていなかったわけであります。
 しかしながら、アメリカ政府やECから、外弁受入制度の創設につき強い要望がありました。また、当時アメリカ合衆国ニューヨーク州において、フランスとの関係で外弁受入れ制度を採用したところでしたが、このような動きも考慮せざるを得ませんでした。このようなことから、法務省と日本弁護士連合会との間で鋭意協議を重ねた結果、昭和61年に外弁法が制定されました。
 外弁法は内外からの規制緩和要望を受けまして、平成6年、8年、10年の3回にわたり改正しております。各改正の経緯及び内容については、配付した資料2記載のとおりであります。
 また、現在の外国法事務弁護士の登録者数につきましては、資料の3に記載したとおり、184名ということになっております。
「3 現行外弁法の概要」「(1)外国法事務弁護士の承認と登録手続」。現行外弁法の概要につきましては、資料4に記載してあるとおりであります。
 外国弁護士が外国法事務弁護士として我が国において活動するためには、法務大臣の承認と日本弁護士連合会が備える外国法事務弁護士名簿への登録が必要とされております(外弁法2条3号)。
 法務大臣の承認は、外国弁護士が外国法事務弁護士として活動する上で、その提供する法律サービスの質を保障し、依頼者を保護するためのものであり、大きく言って3つ要件があります。1つが、外国弁護士となる資格を有していること。2が、一定年数の職務経験があること。3、その他欠格事由に該当しないこと。誠実に職務を遂行する意思があることなどが要件とされております(外弁法10条)。
 外国弁護士となる資格と言いますのは、我が国の弁護士に相当するものを意味しておりまして、アメリカ合衆国各州のアトーニー、連合王国のソリシター、バリスター、フランスのアボカ、ドイツのレヒツアンバルト、中国の律師などがこれに該当します。
 職務経験要件につきましては、原則として、外国弁護士となる資格を取得した後、3年以上をその資格を取得した外国において、外国弁護士として職務を行った経験を有することが必要とされています。
 ただし、この職務経験年数については、外国弁護士がその資格を取得した国、これを資格取得国と言いますけれども、その国以外の外国において当該外国弁護士の資格を基礎として資格取得国の法に関する法律事務を行う業務に従事した経験も含めることができます。例えば連合王国のソリシターの資格を有している者が、その資格に基づいてシンガポールで連合王国法に関する法律事務を行う業務に従事した経験も、この3年の職務経験年数としてカウントすることができるということであります(外弁法10条1項1号)。
 また、外国弁護士となる資格を有する者が、その資格を取得した後に、我が国国内において、我が国の弁護士又は外国法事務弁護士に雇用され、かつ、その弁護士または外国法事務弁護士に対し、資格取得国の法に関する知識に基づいて、外国法令の検索や判例・法律文献の調査、契約の下書き等の労務を提供していた期間についても、通算して1年を限度として職務経験年数にカウントすることが認められています(外弁法の10条2項)。外国弁護士が我が国国内で、日本の弁護士や外国法事務弁護士に雇用されて、当該弁護士及び外国法事務弁護士に対して行った労務提供の経験は、独立した外国弁護士としての職務経験と完全に同視することはできませんので、1年を限度に職務経験年数にカウントすることが認められているものです。
 この職務経験要件につきましては、外弁法制定当時は、職務経験年数は5年以上とされておりました。また、資格取得国以外での職務経験は一切カウントされることは許されていませんでした。それが、資料2に記載したとおり、平成6年、同10年の法改正で規制が順次緩和され、現在の形になったものであります。
 こうして法務大臣の承認を受けた者が、日弁連に備え付けられた外国法事務弁護士名簿に登録されることによって、外国法事務弁護士としての業務を行うことができるようになるわけです。
 登録を受けた外国法事務弁護士は、登録の時に単位弁護士会及び日弁連に入会するものとされ(外弁法40条1項)、入会した外国法事務弁護士は、外国特別会員として弁護士自治に一定の限度で参加できるものとされています(外弁法43条)。また、外国法事務弁護士が違法行為等を行った場合には、日弁連の懲戒処分を受けることになります(外弁法51条)。このように、外国法事務弁護士を弁護士の仲間として受け入れた点が、我が国外弁法の特質の1つであります。
次に「(2)外国法事務弁護士の職務範囲について」御説明します。
 外国法事務弁護士が職務として行うことのできる法律事務は、第1に、その者が外国の弁護士となる資格を取得した国において効力を有し、または有した法、すなわち原資格国法に関する法律事務です(外弁法3条)。例えばアメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士の資格に基づいて、法務大臣の承認を受けた者については、ニユーヨーク州法が原資格国法ということになります。
 第2に、外国法事務弁護士は、指定法に関する法律事務を職務として行うことができます(外弁法5条)。
 すなわち、外国法事務弁護士が法務大臣の承認の基礎となった外国弁護士の資格を取得した国以外の外国の弁護士となる資格を別途有していた場合等に、当該外国において効力を有し又は有した法について法務大臣の指定を受け、その旨日弁連の外国法事務弁護士名簿に付記されたときは、当該指定を受けた外国法、すなわち指定法に関する法律事務も職務として行うことができるのです。例えば、ニューヨーク州弁護士の資格に基づいて外国法事務弁護士の承認を受けた者が、同時に連合王国のソリシターとなる資格を有していた場合に、当該連合王国法について指定を受けると、ニューヨーク州法のみならず、連合王国法についての法律事務も取り扱うことができるということです。
 第3に、外国法事務弁護士は、原資格国法や指定法以外の外国法、いわゆる第三国法に関する法律事務についても、当該第三国における弁護士として、当該第三国法に関する法律事務を行う業務に従事している者等からの書面による助言を受けてする場合には、当該第三国法に関する法律事務も取り扱うことができます(外弁法5条の2)。例えば、ニューヨーク州弁護士の資格に基づいて外国法事務弁護士の承認を受けた者が、フランスで弁護士業務を行っている者から、フランス法に関する法的意見を記載したオピニオン・レターの交付を受けてするのであれば、当該フランス法に関する法律事務を取り扱うことができるということであります。
 このように外国法事務弁護士は、原資格国法、及び指定法に関する法律事務と、有資格者等からの書面による助言を受けることを条件として、第三国法に関する法律事務を取り扱うことができますが、日本法に関する法律事務は取り扱うことができません。日本法に関する法律事務について、外国法事務弁護士に取り扱わせる必要性もなく、能力的担保の点からも妥当ではないからです。
 また、外国法事務弁護士は、原資格国法や指定法、第三国法に関する法律相談や、オピニオン・レターの作成等の法律事務は行うことはできますが、訴訟手続の代理や、刑事事件の弁護人としての活動等を行うことはできません(外弁法3条1項)。これらの法律事務を適正に行うためには、我が国の訴訟法に関する知識が必要とされるからです。
 日本弁護士と外国法事務弁護士等の提携・協働についての法制度の内容については、後ほど御説明いたします。
 以上が現行外弁法の概要です。
 なお、諸外国の外弁受入制度の概要及び現在の諸外国からの規制緩和要望につきましては、資料5、資料6に記載したとおりですので、御参照ください。

「第2 日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する必要性」。 近時、社会・経済活動の国際化、グローバル化は加速度的に進んでおりまして、国際化、グローバル化の進展に伴って、日本法のみならず、外国法が適用される案件が飛躍的に増加していると言われております。
 通信・交通手段の発達により、企業のみならず個人が、例えば日本人が海外旅行中に交通事故に遭ったり、あるいは日本国内で外国人と婚姻又は離婚した場合のように、外国法の適用が問題となる事件に巻き込まれる事態も増加しています。電子商取引が発達し、個人が自宅に居ながらにして海外取引を行うことが今以上に盛んになれば、一層こうした傾向が進むものと予測されます。
 ところで、日本の企業あるいは個人が、このように日本法のみならず外国法が適用される案件に巻き込まれた場合において、国内において相談することのできる場所としては、一般的には日本の渉外事務所か、外国法事務弁護士事務所ということになるかと思われます。
 しかし、現状では、日本の渉外事務所の数自体それほど多くはないようですし、日本の最大規模の渉外事務所ですら、所属する弁護士の数は200 名にも満たないようです。大型の企業買収などの案件では、買収する企業の適正評価のために、何十人もの弁護士が専従体制を組む必要があると言われておりますが、このような大型の渉外案件があるときに対応する能力がある渉外事務所の数は、更に少ないものと思われます。
 一方、現在の外国法事務弁護士事務所については、所属する外国法事務弁護士の数が数名程度の小規模のものが大半を占めている上、単独では日本法に関する法律事務を取り扱うことができません。日本法と外国法にまたがる案件を取り扱うことができるのは、日本の法律事務所と外国法事務弁護士事務所との特定共同事業ですが、特定共同事業体の数は最近でこそ増加する傾向にありますが、未だ22にとどまっています。
 つまり、我が国において、渉外的案件に対する法律需要は着実に増加しているにもかかわらず、それに対応するだけの法的インフラがはなはだ不十分なのではないかということが懸念されるわけです。
 ところで、一部大企業や、恒常的に国際取引を行っている中小企業などは、一般的に法務部門がしっかりしており、また、海外のローファームとのパイプを有していて、直接現地のローファームへ電話やFAXなどを通じて相談することもできることから、国内の法的インフラ不足について、あまり不都合は感じておられないかもしれません。
 しかし、現状では、渉外的案件を相談するためには、日本弁護士事務所と海外ローファームの両方に依頼しなければならず、コスト面でも不利だと思われます。また、海外ローファームに相談するにしても、言葉の壁や時差の問題もあると思われます。さらに、本当にじっくりと相談するためには、電話やFAXなどではなく、直接顔を合わせて話をしたいというニーズもあるようです。
 もし我が国において、日本弁護士と外国法事務弁護士が共同で業務を行っている事務所が多数存在するようになれば、今以上に低コストで気軽に渉外事件について相談に行くことが可能になると思われます。
このような共同事務所は、1つの事務所の中で、日本弁護士と外国法事務弁護士とが共同で依頼者の相談にのることになりますから、コミュニケーション・ギャップの問題も生じないでしょう。こうした意味で、我が国国内でこのような日本弁護士と外国法事務弁護士との共同事務所が増加すれば、既に海外ローファーム等とのパイプを有している大企業や一部の中小企業にとっても更に選択の幅が広がるわけですから、便利であることは間違いないと思われます。まして、こうしたパイプを有しないその他の企業や一般国民にとって有用であることは言うまでもありません。
 米国やEUは我が国に対し、外国法事務弁護士と日本弁護士とのパートナーシップの許容、すなわち両者の共同事業の自由化を強く要望しています。それは、米国等の企業が我が国の市場に参入するに当たり、母国法すなわち外国法と日本法が適用される法律案件に直面することがあり、それを解決するインフラとして、外国法事務弁護士と日本弁護士との共同事務所の必要性を強く認識しているからであるように思われます。
 なお、日本の弁護士に対する批判として、専門性や国際性に乏しい、また、日本の弁護士はまさに「先生」であって、顧客に対するサービス精神がないなどと言われることがあります。このような批判は、必ずしもすべてが当を得たものではないかも知れませんが、我が国において、日本弁護士とビジネス・ロイヤーとして訓練された外国法事務弁護士との提携・協働が更に促進されることによって、日本弁護士の専門性や国際性も一層磨かれ、提供する法律サービスの質の向上にもつながることが期待されます。

「第3 特定共同事業制度とは」「1 現行特定共同事業制度の内容」。
 現行の外弁法におきまして、日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働が全く許容されていないわけではありません。資料7にありますとおり、現行外弁法では外国法事務弁護士が弁護士を雇用することについては全面的に禁止されていますが(外弁法49条1項)、日本弁護士と外国法事務弁護士との共同事業については、原則禁止とした上で(外弁法49条2項)、その一部例外として特定共同事業制度(外弁法49条の2)が設けられています。
 特定共同事業制度とは、外国法事務弁護士が職務経験が5年以上である弁護士とする場合に限定して、組合契約その他の契約により一定の範囲の法律事務を行うことを目的とする共同事業を営むことを認めるものです。
 特定共同事業が職務経験が5年以上である弁護士とする場合に限られているのは、職務経験が5年未満の若手弁護士との特定共同事業を認めますと、実質的には外国法事務弁護士が若手弁護士を雇用する手段として脱法的に特定共同事業の法形態を利用する恐れがあるからです。
 現行の特定共同事業制度においては、一定の範囲の法律事務であれば、個々の案件について共同して処理するだけではなく、常時の継続的な共同事業体として、案件を共同で処理し、その収益を分配することも認められています。
 特定共同の目的とすることのできる法律事務は、(1)外国法に関する知識を必要とする法律事務、(2)当事者の全部または一部が外国に住所又は本店等を有する者である法律事件についての法律事務、(3)外資系会社(外国会社等が発行済株式総数の2分の1以上に相当する株式を保有する会社等)の依頼による法律事件についての法律事務です。
 なお、特定共同事業の目的とすることのできる法律事務というのは、あくまで外国法事務弁護士と日本弁護士とが共同処理してその収益を分配できる法律事務の範囲を意味するものであって、これにより先ほど説明した外国法事務弁護士の職務範囲自体が拡大されるわけではありません。
 したがって、例えば、我が国で訴訟が必要になった場合でも、外国法事務弁護士が自ら法廷に立てるわけではありませんが、弁護士が行う法律事務を補助する事務、例えば弁護士の指示に従って書面等のドラフトを作成して弁護士に交付する事務、参考となる資料を集める事務、弁護士と依頼者との間のコミュニケーションを円滑にするための通訳等の事務を行うことで、日本の弁護士と協働した上で収支を共通し、その収益を分配することは現行法上認められております。
「2 現行特定共同事業制度について指摘されている問題点」。
 このように現行外弁法においても、特定共同事業制度により、一定の範囲で日本の弁護士と外国法事務弁護士とが提携・協働して、法律サービスを提供することが認められていますが、特定共同事業制度については、米国やEUを中心にさまざまな問題点が指摘されています。
 これまで指摘されている問題点は、資料8に記載したとおり、大きく2つに分類されます。
 第1に、現行特定共同事業制度では、外国法事務弁護士の知識や経験、ノウハウを活用できる法律事務の中にも、目的とすることができないものがあるということです。
 第2に、特定共同事業の目的として、共同処理することができる法律事務が限定されているため、日本弁護士と外国法事務弁護士が1つの事務所を構成することができないという点です。
 1つ目の問題点につきまして、具体的に言いますと、現行特定共同事業制度では、例えば、(1)当事者の全部又は一部が国内に在住する外国人である事件や、(2)外国会社等が保有する株式が発行済株式総数の2分の1未満である外資系会社の依頼による事件についての法律事務は目的とすることはできません。また、(3)外国法事務弁護士のビジネス・ロイヤーとしての経験に基づくさまざまな知識、例えば企業買収におけるデュー・ディリジェンス(適正評価)の手法や、ストラクチャード・ファイナンスにおけるリーガル・ストラクチャーの企画力などが必要とされる法律事務であっても、事件当事者や適用法令等の関係から、現行特定共同事業の目的に該当しないことがあるため、外国法事務弁護士を関与させることができない場合があると言われることがあります。更に、(4)例えば、米国における日米企業間の特許権侵害訴訟に関連いたしまして、被告である米国企業が当該特許侵害訴訟を有利に進めるために、第三者である日本人を使って、原告が日本で有している特許権について、日本の特許庁に特許異議の申立てをした場合のように、渉外的紛争と一体となって解決することに合理性のある事件についての法律事務も、特定共同事業の目的とすることができない場合があるなどと言われています。
 2つ目の問題点は、特定共同事業の目的として共同処理できる法律事務が限定されているため、外国法事務弁護士が関与できない日本弁護士固有の法律事務が存在することになり、日本弁護士と外国法事務弁護士とが1つの事務所を構成することができないということです。その結果、特定共同事業は、日本弁護士が所属する日本の法律事務所と外国法事務弁護士が所属する外国法事務弁護士事務所とのジョイント・ベンチャーという形にならざるを得ず、(1)日本弁護士と外国法事務弁護士とが緊密に連携して、質・量ともに豊かな渉外的法律サービスを提供することが困難である、(2)日本弁護士事務所と外国法事務弁護士事務所とで会計を分離しなければならず、そのための無駄なコストが掛かる、(3)形式上、日本弁護士と外国法事務弁護士とが別の事務所に所属しているために、例えばオピニオン・レターにしても、2つの事務所の連名のものとなってしまい、そのため顧客の信用を得ることができないなどの問題があると言われています。
 なお、これらの問題点以外に、外国法事務弁護士や外国企業等から、外弁法の条文を見ても特定共同事業によって許容されている範囲等がよく分からないという点が指摘されることがあります。特に弁護士と外国法事務弁護士との共同事業を原則的に禁止している49条2項と特定共同事業を許容している49条の2の関係や、49条の2の第1項に規定されている特定共同事業の目的とすることのできる法律事務の範囲等について、そのように言われております。このような批判にいても、我が国の法制度の国際化の見地から検討することが必要であると思います。

「第4 日本弁護士と外国法事務弁護士との共同事業を規制する根拠」「1 資格法制上の問題点」。
 先に述べたように、現行外弁法におきましては、外国法事務弁護士が弁護士を雇用することを禁止するとともに、外国法事務弁護士と日本弁護士との共同事業についても、原則禁止しています。
 外国法事務弁護士が弁護士を雇用することが禁止されているのは、これを認めると、職務範囲が制限されている外国法事務弁護士が、雇用契約上の指揮命令権を通じて、被雇用の日本弁護士に指示し、間接的に日本法に関する法律事務等を取り扱う結果になりかねず、まさに資格法制の根幹に関わるからであると考えられます。
 したがいまして、司法制度改革審議会意見におきましても、雇用の解禁については、「国際的議論もにらみつつ、将来の課題として引き続き検討すべきである。」とされているところです。
 このように、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用の禁止は、我が国における資格法制の根幹に関わるものでありますが、一方、外国法事務弁護士と日本弁護士との共同事業を原則禁止したのは、雇用禁止の脱法につながる恐れがあるためであるとされています。すなわち、外国法事務弁護士と日本弁護士が共同事業の体裁を装いつつ、実質的には雇用関係を形成するような脱法行為を防止するための政策的な措置であるということです。
 その意味では、共同事業の原則禁止は資格法制の根幹に関わるものとまでは言えず、雇用禁止の脱法防止のために、他に取るべき措置があるのであれば、必ずしもこの原則を維持し続けなければならないものでもないと思います。
「2 日本弁護士の業務に与える影響」。
 日本弁護士と外国法事務弁護士との共同事業についての規制を緩和すると、外国の巨大ローファームがたちまちのうちに我が国における法律サービスの市場を席巻することとなり、その結果、我が国の弁護士の独立性が害される、あるいは司法制度全体に歪みが生じるなどの弊害があるといったことが言われることがあります。この点については、その当否も含め、利用者の視点から冷静に議論することが必要であると思われます。

「第5 日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進の具体的方策」。
 これまで述べたように、今後の渉外的案件に関する法的需要の増大にかんがみれば、日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働をより一層推進する必要があることは明らかだと思います。
 そして、現行特定共同事業制度の問題点として指摘されていることのすべてが、必ずしも当を得たものとは言えないかもしれませんが、少なくも現行制度が当初期待されたほどには日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働を推進する結果をもたらしていないことについては、認めざるを得ないのかもしれません。
 このようなことから、審議会意見書においても、「日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきである。」とされているものと思われます。
 問題は、要件緩和のための具体策でありますが、これについては、例えば、特定共同事業を組む弁護士の職務経験を5年から3年に短縮するといったものから、原則的に弁護士と外国法事務弁護士との共同事業を自由化するものまで、いろいろなレベルのものが考えられます。
 なお、資料9にありますように、平成13年3月に閣議決定された政府の規制改革推進3か年計画におきましては、「日本法及び外国法を含む包括的、総合的な法律サービスを国民・企業が受け得る環境を整備する観点から、外国法事務弁護士と弁護士による包括的・総合的な協力関係に基づく法律サービスがあらゆる事案について提供できるよう、司法制度改革審議会が行う検討の結果をも踏まえて、特定共同事業の目的に関する規制を見直すなど所要の措置を検討する。」とされています。
 すなわち、特定共同事業の問題点として指摘されていることの原因となっている目的に関する規制を見直すべしということだろうと思います。
 今後の渉外的案件に関する法的需要の増加に対応する見地からは、日本の弁護士と外国法事務弁護士との共同事業に関する規制をできるだけ緩和し、外国法事務弁護士と日本弁護士がより提携・協働しやすくなる環境を整えることが重要であると考えられますが、一方で、規制を緩和することによる資格法制上の問題点や、我が国司法制度にもたらす弊害の有無等については、慎重に検討する必要があるものと考えられます。
 いずれにいたしましても、審議会意見書で「外国法事務弁護士等に関する制度及びその運用の見直しについては、・・・利用者の視点から臨機かつ十分に検討すべきである。」とされているところであり、外弁制度の内外の利用者にとって真に有用な制度の在り方は何かといった広い視点からの検討が必要であろうと思っております。

【柏木座長】 ありがとうございました。それでは、次に外務省から説明をお願いします。

【下川委員】 それでは、私の方から事実関係を中心にWTOでの動向のほか、国際的な動向について、御説明させていただきたいと思います。資料が多くて恐縮でございますが、大きく分けまして、現在のWTO協定の基本的な機構図。2番目に、その枠組みの中での各国の関心事項、懸案の状況に主に時間を割いて御説明させていただき、最後に二国間協議の関係についても触れさせていただきたいと思います。
 WTO交渉の枠組みにつきましては、先ほど下條委員からもお話もありましたとおりでございますが、別添の1にございますように、ドーハの閣僚会議において交渉の枠組みが設定されまして、閣僚宣言において、初期のリクエストを今年の6月30日までに、初期のオファーを来年3月31日までに出すということになっております。ちなみに、来年のこのオファーを出す3月31日というのは、農業の交渉におきましても、農業の各国の提案を出すことになっておりますので、新しいラウンドの交渉の中では非常に重要な期日ということになろうと思います。その上で交渉全体は2005年1月1日まで、3年間の期間で終わることということになっております。次のページは、今のGATSの基本的な構造と機関ということで、これは後ほど別の条文の方で説明させていただきたいと思います。WTOのサービス交渉でございますが、サービス交渉自体の交渉の枠組みと言いますか、ガイドラインというのは、もう一枚めくりました別紙2というところにガイドラインというのがございまして、こちらの方でいかなる分野やサービスの対応も排除しない形で包括的な交渉を行う。更には、交渉の中身はリクエスト・オファー方式で行うということが書いてございます。駆け足で恐縮でございますが、続きまして、別添2でGATSの基本的な協定の規定の枠組みを御説明させていただきたいと思います。別添2の1.にございますように、GATSの基本的な条文の中には、すべての加盟国に自動的に掛かってくる共通の規定と、各国がそれぞれの事情に応じてこういう約束を行うという形で、それぞれ行う約束、留保という2部の構成になっております。1枚めくっていただきまして、すべての加盟国に共通の規定というものの中で、特に重要なものを御紹介させていただきますと、第1に最恵国待遇、第2条1でございますが、それがございます。これはここにございますように、他の加盟国に対して与えている待遇よりも不利でない待遇を、即時かつ無条件で第三国、WTOに参加している第三国に対しても与えるという義務でございます。この義務自体は無条件で一般的に適用される形になっておりまして、この義務から免除されるためには、付属書にMFN免除リストというのがございまして、この措置については、その適用を受けないという免除をする必要がございます。それ以外にも例外に関しての幾つかの規定がございますが、ここで司法制度、弁護士制度等とで関係がございますのは第7条というところでございまして、「他国における教育・免許・資格等の承認」という規定がございます。ここでこの問題を取り上げましたのは、いろいろなサービス提供者の資格に関する法制というものが、各国それぞれの独自の事情に応じて、水準等が異なってくるいうこともございますので、加盟国間の資格の相互承認については、自動的にMFN最恵国待遇の義務の適応対象とはならないという形で、資格の相互承認については免除されるという形になっております。この協定の意味しますところは、したがいまして、GATSがMFN最恵国待遇の義務を規定しているからといって、ある一国の弁護士資格を、ほかの国に対して認めるか認めないかということは、そもそも二国間で相互承認するかどうかということを、別途交渉して決めると。かつそれが決まった場合も、それをほかの国に自動的に均てんしなければいけない、そういうことにはなりませんということが規定されているわけでございます。更に1枚めくりまして、GATSの中に「国内規制」という規定がございまして、ここに、2番目の●でございますが、免許要件、資格要件、技術上の基準等については、必要以上の負担とならず、客観的かつ透明性のある基準に基づかなければならない。それに関して、規律をつくるというふうなことが書いてございまして、いろいろな資格を付与する場合の手続が、一定の条件、必要以上の負担とならないようにしなければならないという一般的な原則が書いてございまして、この原則に基づいてGATSの中で、国内規制に関しての規律をつくるということになっております。以上、2つだけかいつまんで御説明しましたが、これが約束している、していないにかかわらず、一般的に掛かってくるGATS上の規律でございまして、更にもう一枚めくりまして「各加盟国がそれぞれ行う約束・留保」というのが、いわゆるリクエスト・オファー交渉と言われている交渉の中で行っている項目でございます。そちらにございますように「市場アクセスの条件・制限」。それから、内国民待遇を付与するかしないかということの条件・制限と、この2つにつきまして、各国が約束表に自国の留保事項ないしは自由化事項を書いて、それを各国がお互いに交換し合うような形で約束をすると。そういう形態でリクエスト・オファー交渉が行われるということになっております。更に、市場アクセスの制限、市場アクセスの付与、それから内国民待遇の付与ということとは別に、そのいずれにも属さないようなもので、追加的な約束というものも約束表の形で提出することができるような形になっております。以上が、各国がそれぞれの分野ごとに行う約束・留保でございまして、まさにリクエスト・オファー交渉という交渉に入りますと、この部分の各国が提示した市場アクセス、内国民待遇の約束表の中身が、十分か不十分かということを交渉すると。かつこれをすべてのサービス分野について一括して行って、最終的にはパッケージでお互いに相手の約束表に満足したところで交渉が妥結するという形式を取るわけでございます。以上が、WTOの主要な交渉、当分の枠組みでございますが、それに関連しまして、参考までに別添の3のところに、会計分野の国内規制というものがございますが、実は会計分野に関しましては、国内規制について個別の規律というのをつくっておりまして、いろいろな免許付与要件ですとか、権限ある当局の名称や住所をわかるようにするとか、免許を付与するに当たっての手続とか、一般的な各国が遵守すべき会計分野における国内規制の在り方についての規律というものが、既に交渉で作成されております。これはまだ効力はありませんけれども、交渉が終了した暁には、会計分野で適用されることになっております。国内規制に関しましては、先ほど申し上げましたように、6条という枠組みの下で、これから一般的な規律をつくっていくことになっておるんですけれども、法律等、自由職業の分野においても、この会計規律のような規律を別途作成する可能性を検討されておりまして、市場アクセス、内国民待遇の約束表ベースの交渉とは別に、国内規制はどうあるべきかという、一般的なセクター別の規律を作成することになる可能性も、このラウンド交渉の中ではございます。ちなみにもう一つ、これも中身は触れませんけれども、別添4のところで、同じく会計分野で相互承認協定というのがございまして、先ほども申し上げましたように、資格の相互承認は基本的にバイラテラル、二国間ベースでやるべきだというのが基本でございますが、そういう相互承認協定の締結を促進するために、こういうガイドラインに従って、相互協定を作成したらいいという、そういう趣旨のガイドラインとして、会計分野についてこういう指針というのが既にできております。この相互承認協定にいたしましても、その前の国内規制に対する会計規律に関しましても、特に会計の分野においては、相互承認ですとか、国際的な連携というのが進展しているというような状況も踏まえて作成されたものでございまして、今後他の分野においても、相互承認ないしは国内規制のハーモナイゼーションとは言いませんが、いろいろと一定の規律を設けてきているという場合に、この会計分野における実績というものが参考にされて、検討されているということになろうかと思います。以上が、全く駆け足で恐縮ですが、私が先ほど申し上げた第1の部分の、WTOの全体的な交渉と規定の枠組みでございます。

引き続きまして、各国の交渉提案の概要というようなことについて、御説明したいと思います。先ほども申し上げましたように、各国のリクエスト・オファー交渉というのは、最初のリクエスト、それぞれの国に対して何をやってほしいという、自由化要求というのが、今年の6月30日にならないと出てきませんので、例えばアメリカが日本に対して何を要望しているか、ECが日本に対して何を要望しているかというのは、WTO、サービス交渉の場では、まだ明確にされておりません。他方で、これまで2年間の交渉の間で、各国が一般的な形でこの法律分野において、どういうことを達成したいかということを、交渉提案という形で表明いたしております。その概要が、この別添5に書いてあるようなことでございまして、これを見ますと「自由職業サービス(法律サービス)」ということで、各国がどういうことに関心を持っているか、すべてわかるわけでございます。例えば、アメリカの提案というのを見ますと、法律サービスというものを広く商取引、アドバイザーの機能、紛争処理サービス、ロビー等も含めて、非常に幅広くとらえた上で、そういう問題について市場アクセスなり内国民待遇の障壁を削減することを目的とすると、その具体的な項目としまして、(2)にございますような、免許発給のための市民・居住要件の撤廃ですとか、業務範囲という話と並んで、現地の弁護士と外国人弁護士との連携や、現地の法律事務所と外国法律事務所との連携の促進といったようなことが含まれているわけでございます。オーストラリアの提案を見ましても、2.の(1)(ハ)のところに、例えば今回の国際化検討会でのテーマとも関連すると思われます、外国法律事務所及び弁護士が、パートナーシップ契約を結ぶ権利というようなことが言われております。更にオーストラリアは、法律に関して2番目の提案というのを出しておりまして、その中で我が国の外弁法のような制度に近いんだろうと思いますけれども、ホスト国、すなわち受入国の弁護士免許を持たなくても、外国の弁護士が母国法、すなわち原資格国における法律についての業務を行うことができる、限定的な免許制度を導入するということを提案しておりまして、これを各国が行うようにすべきだということを言っております。それと並びまして、ホスト国の弁護士とのパートナーシップを結んで、業務を行うことということも提案の中に含まれております。ECも大体同じような提案をしているわけでございますが、1枚めくりまして(3)のところにございますように、拠点上の問題の制限を最小にするということのほかに、現地パートナーとのパートナーシップ、雇用に係る規制や職業団体の会員制に関する規制を削減すべきというようなことを言っております。あとの提案は省略させていただきますけれども、こういうような形の交渉の関心事項というものを踏まえまして、これが6月30日の時点で各国に対しての具体的な要求、具体的な交渉上の要望という形になって、お互いに交換し合うと、我が国もこれを受け取る、日本も各国に対して出すという形態になるわけでございます。ちなみに、現在のGATSの約束表上、各国がどういうような約束をしているかということを示しているのが、別添の6でございまして、中身には余り触れませんけれども、これを見ていただきますと、大体の国が母国法に関する法律サービスについて約束しているというのが現状でございます。したがいまして、これは当然と言えば当然のことなのかもしれませんけれども、外国人の弁護士が外国の資格を持って、受入国の規制業種と言いますか、受入国の法律の知識を要するような業務を行うということについては、これまで見てきた交渉提案の中でも必ずしも要求されておりませんし、また各国もそれは約束はしていないと、基本的には各国が原資格国法について法律サービスが提供できるように、自分たちも約束しているし、それを更に開放してほしいということを言っているということが言えるかと思います。この米国の約束を見ましても、母国法に関する法律、ECも母国法に関する法律サービスについての約束、カナダも母国法というような形態を取っております。ちなみに、最恵国待遇(MFN)免除登録というのは、どこの国もやっておりません。このウルグァイ・ラウンドの際に、我が国もMFNの原則に基づいて、外弁法上の相互主義の規定を法改正したのは、配付されておりました資料に説明されていたとおりでございます。次に何ページかめくったところに、分野ごとに行う特定の約束ということで、ちょっと上下が横になっておりますけれども、これが我が国が実際にウルグァイ・ラウンド交渉時に行っている、いわゆる約束表と呼ばれるものの姿でございまして、ここにございますように、大きく分けて2つのカテゴリー、すなわち受入国法、日本国法に関しての法律ということと、それからまさに原資格国法、母国法に関しての法律改正ということで、(a)を2つに分けて、弁護士としての資格を有する弁護士の適用と、それからいわゆる外弁としての法律の相談という形で、コミットメントしているという形になっております。それで、共同事業に関して、どこまで認めるとか、どういう業務ができる、できないというようなことにつきましては、追加的な約束という欄で確認的に、どういうことができて、どういうことができないということを記載するような形になっております。したがいまして、これは技術的な書き方の問題ではございますけれども、最終的にこの今度のラウンド交渉におきましても、この約束表の書き方、何を書き込むか、書き込まないかということを巡って、今後交渉が行われていくということになっていこうかと思います。

大変駆け足で恐縮でございますが、最後に第3点目の二国間のバイの問題について、簡単に触れさせていただきます。各国から来ております要望事項につきましてのエッセンスは、先ほど法務省さんの方から御説明していただいたとおりでございます。別添8に書かれておりますのは、最も直近の規制緩和対話等の場において出されております、米側の要望事項、それからEU側の要望事項そのもの、全文でございます。先ほど御説明していたとおりの中身でございますけれども、外弁と弁護士との連携の自由化、ここでは中ほどにございますように、連携の自由化を是非してほしいということが要望の中心になっております。ECの方も同様でございますが、このECの要望の中に書き込まれているところ、これは是非御一読いただければと思いますけれども、ここで問い掛けられていることというのが、ここの検討会の場で議論される話とも非常に関連性が深いと言いますか、ここで問い掛けられていることについて、どういうふうに考えるかということが非常に重要なのではないかと思います。具体的なところを申し上げますと、これは一つには別添9のEUの要望のところでございますが、1.2.の法律サービスのところで、日本企業は、他のすべての先進工業国で提供されているものと同質の法律サービスを自国市場で受けることができないため、競争面で不利益を被っている。この指摘をどう評価するか。1.2.1.の3行目で、日本の若手弁護士にとっても、ますます国際化が進行する市場において、国際的な法律サービスを提供する経験を積む機会が、著しく制限される結果となっている。この指摘について、どういうふうに考えるか。更には、1枚めくりまして、先ほど法務省さんからも御説明があった、現在の法律上の制限を持つ規制の基本的な考え方でございますが、そういう禁止規定に関して、そのような禁止規定は日本の弁護士が非合法な活動を行うことを避けるために必要であるという説明には正当な根拠が存在しないということで、かつパートナーシップを認めているほかの国における経験では、そういう懸念は当たっていないということが指摘されているわけでございます。こういうような問い掛けについて、まさにこの検討会の場で、いろいろな方々の御意見を伺いながら、意見交換をしながら、方向性を見い出していくということが、当面我々に与えられている課題ではないかというふうに認識いたしております。大変掛け足で恐縮でございますが、事実関係を中心に現在の国際的動向について御説明させていただきました。

【柏木座長】 どうもありがとうございました。それでは、日弁連からよろしくお願いします。

【日弁連(小原委員長)】 ただいま御紹介をいただきました、日本弁護士連合会の会員で、現在外国弁護士及び国際法律業務委員会の委員長をしております、小原望と申します。先ほど、法務省の方からは、特定共同事業を中心とする我が国の外弁制度について、外務省の方からは、WTOのGATS及びサービス貿易交渉についての御説明をいただきましたので、私は弁護士と外国弁護士との共同事業の実態と規制緩和による我が国の弁護士業務への影響等を中心に御説明をさせていただきます。まず、司法制度改革のスケジュールにつきましては、先ほど下條委員とか外務省の方からも御説明がございましたけれども、発表されているスケジュールによりますと、平成15年度及び16年度中には、法科大学院制度以外の関連法案の提出をされるとの御予定でございますけれども、外国弁護士問題は、WTOサービス交渉の一つの大きな交渉事項でありますので、この交渉はリクエスト・オファー方式によりなされ、各国によるリクエスト・オファーの繰り返しをなされながら交渉が行われてます。弁護士輸入国である日本が、余り早く外弁制度改革の全貌を明らかにしますと、WTOのサービス交渉では、弁護士輸出国である欧米諸国より、かかる改革を前提として、さらなる自由化の要求がなされるということにもなり得ます。したがいまして、3年という推進本部設置期間との関係もございますが、外弁制度の関連法案の提出は、平成15年ではなく16年度中の方に回していただくのが、外交交渉上も望ましく、スケジュールには特に御配慮をお願いしたいと思います。
 次に、弁護士と外国法事務弁護士との共同事業の在り方を検討していただく際に、どうしても念頭に置いていただきたいのは、弁護士数ないし事務所の規模の違いでございます。欧米のローファーム等の規模は、毎日変動しておりますが、約一年前のデータによりますと、世界最大のベーカー・アンド・マッケンジーの弁護士数は、2,732 人、10番目のホワイト・アンド・ケースでも、1,030 人でございます。これに反し、日本の最大の長島・大野・常松法律事務所では、144 人。5番目のあさひ法律事務所では、69人でございます。また、最近リーガル・サービスの分野に進出しております、世界の五大国際会計事務所、いわゆるビッグ・ファイブの規模は、最大のプライスウォーターハウスクーパースのスタッフ数は、16万2,834 人、うち弁護士が1,700 人、そして、5番目のアーンスト・アンド・ヤングにおきましては、スタッフ数は7万8,311 人、うち弁護士数は1,850 人でございます。そして、このプライスウォーターハウスクーパースでの年間収入は、約2兆9,165億円とのことですので、日本の司法予算、裁判所と法務省の予算を併せて約9,214億円でございますが、その約三倍という、巨大な多国籍企業体でございます。しかも、そのビッグ・ファイブのスタッフ数の中に占める弁護士の数は、最大がアーサー・アンダーセンの3,400 人、最小のプライスウォーターハウスクーパースでも1,700 人でございますので、このビッグ・ファイブのすべてが世界の大ローファームのトップ3以上の規模になっております。これらの巨大事業体と日本の法律事務所が、完全で自由な国際的な共同経営を営むということは、仮に外国のローファームの弁護士数が1,000 人、そのうち半分の500 人がパートナーとし、日本の法律事務所の弁護士数が100 人、そのうちの半分の50人がパートナーとしますと、事務所運営に関する重要事項は、パートナー会議で決定されますので、外国から日本の法律事務所が運営できることになり、日本の弁護士の独立性、日本の司法制度に対して大きな影響を及ぼすことになります。
 このような状況を認識していただいた上で、最近大ローファームを擁する欧米諸国からの日本の外弁制度に関する要求を検討させていただきます。まず第1は、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用の許容でございます。外国法事務弁護士の大部分は、諸外国の大ローファームから日本に派遣されている、いわゆる日本支店のスタッフで、本国の所属事業体よりコントロールされております。この外国法事務弁護士に日本の弁護士が雇用されるということは、両者の間に支配と服従という関係が生じ、日本の弁護士の独立性に重大な影響を及ぼします。また、本国のローファーム、または日本の外弁事務所が、日本法に関する法律事務を受任し、日本の弁護士に担当させて収益を得るということが可能になり、日本の弁護士資格を有しない者が、間接的に日本法に関する法律事務を行うことが可能になります。第2は、外弁登録をしていない外国弁護士との国際的な共同経営の許容でございます。本日の説明では、日本国内に登録して、日本の弁護士の一種として活動を認められている者を、外国法事務弁護士または外弁と称させていただきますが、それ以外の外国の有資格者を、一応外国弁護士というふうに称することにさせていただきます。この外弁登録をしていない外国弁護士一般との国際的共同経営を認めるといたしますと、先ほど申しました、規模の差から、弁護士倫理を異にし、または日本法上は弁護士でない外国弁護士が、弁護士数、資金力により、実質的には日本の法律事務所をコントロールするという、大きな影響を与えることになります。第3は、外国法事務弁護士と弁護士の特定共同事業要件の緩和要求でございます。以上説明いたしましたように、外国のローファームと日本の法律事務所には、大きな差があることから、1994年の外弁法改正に際しましては、日本法上は非弁である外国弁護士一般とではなく、一定の要件を満たす外国弁護士のうち、法務大臣の資格承認と弁護士会への登録という手続を経た外国弁護士を外弁と称し、職務範囲は限定されておりますが、日本法の下での弁護士とし、かかる外弁と弁護士が、おのおの独立の事務所を有しつつ、国際的事案の処理につき協力し合って収益を自由に分配し得ることとしましたのが特定共同事業でございます。これは、弁護士の独立性を保持するとともに、日本法に関する法律事務は弁護士のみが取り扱い得るという原則を維持する、一種のローカル・パートナーシップとも言える制度でございます。この特定共同事業には、幾つかの要件が定められておりますが、この要件緩和に関しましては、後ほど詳細に検討させていただきます。第4は、外弁の職務要件緩和の要求でございます。これは、一定の職務経験を有する外国弁護士に日本において良質のリーガル・サービスを提供していただくための、能力担保として定められた要件でございますが、1986年の外弁法の下では、原資格国における5年の経験が求められていましたが、1998年の外弁法により、3年の職務経験でよいということになっております。この一定の職務年数の要件そのものを短くするか、または3年間とも原資格国でなくても、日本国または第三国における経験でもよいようにしてほしいというのが、この緩和要求の内容でございます。第5は、外国法事務弁護士による隣接法律職の雇用の許容でございます。これは、先ほど御説明させていただきました、外弁による弁護士の雇用が認められない場合の次善の策として、弁理士、税理士等の隣接法律職を雇用することの許容を求めているものであります。これを許容した場合には、日本の隣接法律職の規模の差から、独立性に問題が生じること、及びこれらの職務範囲に属する日本法に関する法律事務を間接的に取り扱うことになるという点では、同じような問題がございます。第6は、外弁登録をしていない外国弁護士と、隣接法律専門職との国際的共同経営の許容の要求でございます。これも、外弁と弁護士との国際的共同経営が認められない場合の次善の策として、せめて弁護士以外の隣接法律職との国際的共同経営の許容を求めているものであります。これを許容しました場合には、職業倫理を異にし、日本法上は弁護士でない外国弁護士に、我が国の弁護士以外の隣接法律職が、規模、資金力等により、実質的にコントロールされることになり、これらの職種の独立性等に大きな影響を与えることになります。第7は、外弁による、第三国法取り扱いの完全自由化の要求でございます。1986年の外弁法は、外弁の取り扱い得る法律としては、原資格国法、この中には原資格国が当事国となっている国際条約及び国際慣習法も含むとされておりますが、この原資格国法と第三国法のうち、法務大臣が知識と経験を有すると認めて、特に指定した指定法のみは自由に扱い得るということになっております。しかし、1998年の外弁法では、指定法以外の第三国法も、当該第三国の弁護士の書面による助言を得て取り扱い得ることとされました。したがって、現在では日本にいる外弁は、原則として日本法以外のすべての法律を取り扱い得るということになっております。かかる現状の下で、第三国法の取り扱いに際し、当該第三国の弁護士の書面による助言を得るという条件の撤廃を要求しておりますが、そもそも外弁制度は、外国の資格を有する弁護士に、日本国内において直接的に良質のサービスを提供していただくということを目的に認められたものでありまして、無条件で資格を有しない国の法律事務の取り扱いを認めることには、問題があると思われます。第8は、現時点では、我が国に対しては、正式な要求にはなっていないようでありますが、ビッグ・ファイブは、会計事務所がリーガル・サービスを提供し得るようにするため、公認会計士と弁護士等との異業種間の共同事業、いわゆるMDP(Multidisciplinary Partnership or Practice )を認めるよう、WTOやOECD等の国際機関に対し、熱心にロビーイング活動をすることともに、世界中に事実上のMDPを展開しつつあります。これが現在IBA、CCBE、ABA等の国際法曹団体で、非常にホットな議論の対象となっております。事実上のMDPの典型的な例は、ビッグ・ファイブが所有、または賃借している、同じビルの中に、1番目は、監査税務業務を行う公認会計士より構成される法人、2番目に、コンサルティング業務を行う、種々の業種より構成される法人、3番目に、リーガル・サービスの提供をする、弁護士より構成される法人、この3つの事務所が一つのビルの中にオフィスを設け、この3つの法人はお互いに顧客の紹介、資金の融資、事務所の賃貸借、機器のリース、従業員の派遣、経理及び一般事務の受託等の名目で、実質的には報酬を分配し、3つの法人の上部には友好な提携関係と称して、事実上の経営委員会的な合議体を設け、形式的には独立性を保ちつつ、実質的には同一グループとして運営している多国籍企業体でございます。しかしながら、最近のエンロン事件で、同一企業に対するコンサルティング業務と監査業務を同一会計事務所で行うことの矛盾が顕在化し、また米国SEC等が、監査の独立性を要求していることから、かかるMDPが、大きな問題とされるに至っています。かかる事実上のMDPは、ヨーロッパには数多く存在し、例えばフランスにおいては、ビッグ・ファイブの弁護士法人が、フランス国内に150 の支店を設け、地方の小さな法律事務所を吸収合併する等の方法で、我が国におけるローソンのチェーン店のように、フランチャイズ店的な展開を行っております。
次に、日本国内におきましては、経団連の司法制度改革についての意見、内閣の規制緩和推進3か年計画、規制緩和委員会の公的業務独占の見直し案、及び司法制度改革審議会の意見書等において、弁護士による法律事務独占の緩和、隣接法律職の職域拡大、ワンストップサービスを可能にするための、総合的法律経済関係事務所の実現が提唱されております。しかし、諸外国におきましては、イギリスのソリシター等の一部の例外を除き、弁護士による法律事務独占を前提としつつ、提携、共同事業によるネットワーク化、欧米ローファームによる諸外国の法律事務所の支店化、ビッグ・ファイブと法律事務所との事実上のMDP化が、ボーダレスに拡大しつつあり、大型化、効率化が進む一方で、法律業務の産業化がますます加速されつつあります。
次に、共同事業の諸問題を検討いたしますけれども、共同事業という用語は、多義的な言葉でありまして、その典型的な形態としましては、完全に一つの事務所として、収益の自由な分配が許されるという共同経営であります。かかる共同経営は、現行法の下では、弁護士と異業種間、または隣接職種間では禁止されています。これは、職業倫理、監督官庁の異なる業種、すなわち非弁護士との提携を禁止することにより、厳格な資格制度を前提とする、法律事務独占と弁護士の独立性を守り、長期的には依頼者の利益を保護しようとするものであります。しかしながら、広い意味での共同事業には、さまざまな形態のものが考えられます。まず第1に、おのおの独立の事務所を維持しつつ、事件ごとに協力をする個別的な提携、これには、更に契約によるある程度の期間引き続いてなされる継続的な提携があり得ますが、これらは何らの弊害も考えられませんので、現行法の下でも弁護士と外国弁護士、異業種、隣接業種のいずれとも許容されていると解されています。第2に、事務所の共同使用でございますが、これには事務所のスペースの共同使用と人的・物的施設の共同使用、いわゆる経費共同型の共同事業と言われるものがあります。いずれも同一場所を使用しつつも、観念的にはおのおの独立の事務所を維持しており、したがって、収益の分配は許されておりませんが、このような共同使用は理論的にはあらゆる業種間で許容されていると解されています。しかし、経費共同型はその運用の仕方いかんで実質的には雇用、または共同経営の脱法形態となり得ると言われています。第3は、日本国内における共同経営、いわゆるローカル・パートナーシップでございます。これは弁護士間では全く自由でございますけれども、異業種、隣接職種間の間では、前記のとおり、非弁提携との問題もあり許容されておりません。外弁は日本法の下では弁護士でありますが、その大部分が外国のローファームのコントロール下にある外国弁護士であるという特殊な事情から、全面的な共同経営ではなしに、国際的な事案に限定された特定共同事業のみが許容されています。第4番目は、国際的な共同経営でございますけれども、外国弁護士による間接的な日本法に関する法律事務の取り扱いを禁止し、日本の弁護士の独立性を守るために現行法の下では許されておりません。ただし、外弁と本国の所属事業体である外国ローファームとは、もともと本店と支店との関係にありますので、現行法上も外弁法の諸規定から国際的な共同経営、すなわち日本法の下で登録された外弁と、本国の所属事業体の間では、国際的な共同経営が許されていると解釈されています。
次に、本検討会の検討対象の一つである、特定共同事業の要件緩和についてでございますけれども、現行法の特定共同事業の主要な要件としましては、レジュメの6ページの末尾から7ページにかけて掲記しておりますような要件がございます。このうち、1番目の要件である、特定共同事業の相手方を外弁登録をしていない、外国弁護士一般に広げるといたしますと、直ちに国際的な共同経営と変わります。2番目の要件である、特定共同事業を営み得る弁護士の5年の職務経験の要件は単独事件を扱い得る判事補の例を参考としつつ、外弁と対等の立場で独立性を保ちつつ、共同事業を営むためには、最低5年程度の職務経験を要するとして設けられたものであります。もしこの要件をなくするとしますと、日本の弁護士の資格を取得した若い弁護士が、資格取得した直後に外国のロースクールに留学し、その後引き続いて外国のローファームにフォーリン・アソシエートとして勤務している日本の弁護士を、そのローファームの日本支店に転勤させますと、形式的には特定共同事業の外形は取りつつも、実質的には雇用という形態が可能になります。3番目の特定共同事業の対象を国際的事案に限定しない、すなわち、日本法のみに関する事案をも対象とし得るとしますと、特定共同事業を営む外弁及び所属事業体である外国ローファームの外国弁護士との関係においては、弁護士による法律事務の独占という原則の例外を認めることになります。4番目の、特定共同事業を営む弁護士と、外国法事務弁護士は、おのおの独立の事務所を有しなければならないという要件をなくするとしますと、完全に同一の事務所になり、外国ローファームに所属する外弁との特定共同事業に関しては、実質的には国際的共同経営になります。5番目の、特定共同事業の他の当事者の事案に不当に関与したり、他方当事者を不当に拘束してはならないという要件をなくせば、規模・資金面で劣る日本の弁護士の独立性が害され、ひいては依頼者の利益が害されることなると思われます。6番目の、特定共同事業を営む上での表示業務をなくせば、顧客において利益相反等をあらかじめ知ってそれを避けるということができなくなります。7番目の日弁連への届出業務をなくせば、日弁連において会員の指導監督を十分に行うことができなくなります。このように、特定共同事業の要件の緩和は、その緩和とその対象程度によりまして、国際的な共同経営化、日本の法律事務所の外国ローファームの事実上の支店化、外国ローファームによる弁護士の事実上の雇用化が進むことになります。
このような弊害を少なくするには、我が国において早急に健全な共同事業を可能にするための、基盤整備をすることが必要だと思われます。完全な共同経営は、パートナーの多数決により、重要な事務所運営上の事項が決定されますので、対等な立場での共同経営とするには、外国と日本の法曹人口の均衡が取れていることが必要です。アメリカの法曹人口は、世界の中でも突出しておりますが、ヨーロッパ主要国の法曹人口と、日本の隣接法律職を含む法曹人口を比較しますと、ドイツが約11万人、イギリスが8万3,000 人、フランスが3万6,000 人と比較しても、日本も10万人以上となり、全く遜色はないと言えます。現在、我が国ではロースクール構想が検討され、近く司法試験合格者を大幅に増やすことが予定されています。しかしながら、この構想が予定どおり実行されたとしましても、我が国の弁護士数が現在の欧州主要国の法曹人口と同等になるには、約15年を要すると言われています。これでは、我が国の弁護士と外国弁護士との健全な共同事業を可能にするための準備期間としては、長過ぎると思われます。世界における傾向としては、外国の弁護士資格を認め、自国において外国弁護士の活動を認め合う傾向にありますが、我が国の法律専門職が細分化されているために、弁護士でない隣接法律職は外国において、いわゆる外国弁護士とは認められず、したがって外国における活動に支障が生じております。また、弁護士でない隣接法律職に事件を依頼した日本の企業等は、国際的な訴訟手続において、いわゆるアトーニー・クライアント・プリビリッジ(Attorney-Client Privilege)と言われております、弁護士依頼者間の秘密保持特権等が認められず、不利となることが考えられます。更に新しい法曹養成制度の下で、弁護士数が大幅に増加されれば、日本におけるリーガル・サービスは主として弁護士により行われることになり、職務範囲の限定された、これら隣接法律職の活動が、著しく圧迫される事態が考えられます。以上のような現状の下で、これはまだ日弁連では十分検討されておりませんので、日弁連の立場ではございませんけれども、私の全くの個人的な意見ですが、この際弁護士と競合するような隣接法律職は、外弁と同じように、職務範囲の限定された弁護士、例えば特許弁護士、税務弁護士、登記弁護士等として、日弁連の特別会員として、弁護士資格に統合し、これら隣接職種の制度は廃止するというのが望ましいのではないかと考えます。そして、弁護士と新たに弁護士の一種となった(非弁ではない)これら新しいタイプの職務範囲の限定された弁護士との間においては、あらゆる形態の共同事業を許容することとして、実質的意味における日本の法曹人口を、直ちに欧州主要国並みにするのが、短期的な改革としてはよろしいのではないかと思います。そうすることによって、日本の弁護士に多様な形態の共同事業の選択を可能にし、国際的な活動をより自由にし得ることになると思います。これらとともに、弁護士倫理の国際的統一を図り、共通の職業倫理の下での弁護士間の国際的協力を容易にすることが、依頼者の保護と健全な司法制度の維持に不可欠であると考えます。
次に世界の主要国における外国弁護士受入状況と問題点に若干触れさせていただきます。WTO加盟国は、現在144 か国あると言われておりますが、その中で我が国のような完全な外弁制度を有しているのは、10数か国である言われております。我が国には、本年の1月現在では178 名の外弁が活動し、その下に外弁資格を有しない、多くの若い弁護士が働いておりますので、我が国において活動している外国弁護士数は相当数になります。ちなみに、我が国に事務所を有している外国ローファームの数は、47事務所、このうち特定共同事業を営んでいるのは、20事務所となっております。アメリカは、ニューヨーク、ワシントンD.C.、カリフォルニア等の大きな州等においては、外国弁護士の受け入れ制度を有しておりますけれども、51の法域のうちで、約半数の州においては、まだ外国弁護士の受け入れ制度を有しておりません。EUにおいては、域内の完全統合を目指し、EU弁護士の域内の活動は、相互に認め合っておりますが、EU以外の外国弁護士に対しては障壁を設けて差別をしております。イギリスにおいては、外国弁護士はイギリス国内に法律事務所を開設するためには、入国許可手続において、日本の弁護士会に相当するロー・ソサエティーの同意が必要とされておりますが、この同意のための基準が法令等で明らかにされておりません。また、労働許可手続においては、需要考慮がなされ、国際法、第三国法は取り扱わない旨の書面による誓約書の提出が必要だと言われております。ドイツにおいては、連邦弁護士法の下で、外国弁護士制度は1989年から導入されておりますが、各国の弁護士受入条件の相互性を要求し、昨年3月の日弁連の調査当時におきましては、WTO加盟国のうち米国、日本等の8か国の弁護士しか実質的には受け入れていない状態でございます。フランスにおいては、外国弁護士にフランス語でフランス法の試験を課し、それに合格しなければ活動できない制度としております。すなわち、日本のように外国弁護士の資格に基づいての活動は、できないというのが現状であります。
 次に世界の弁護士会、法曹団体の動きでございますけれども、1998年11月に日弁連の提唱で、世界の弁護士会の代表がパリに集まり、弁護士業の国際的な規制緩和につき、意見を交換しましたが、このいわゆるパリフォーラムは、WTOやOECDが、弁護士を含む自由職業をひとまとめにして、規制緩和をしようとする動きがあったことから、弁護士業務の特殊な性格と社会的責任、弁護士の基本的な倫理を維持することの重要性を再認識・再確認するために開催されたものであります。アメリカ最大の法曹団体であるABA、米国法曹協会は、2000年7月に開催された代議委員会で、MDPを認めないことを明確にするとともに、アメリカ51の法域において、他州の弁護士資格を一定の条件、すなわち数年間の職務経験を要すること等を条件として、お互いに認め合う方向で運動を開始しております。欧州における最大の法曹団体である、CCBE、欧州弁護士会評議会は、EU加盟国のEU域内における活動を自由にするための、あらゆる活動をする一方で、1999年11月にはアテネにおいて、「弁護士と弁護士以外の専門職との総合的協働連帯に関するCCBEの見解」を採択し、CCBEとしてはMDPを認めない立場を明確にしております。
世界最大の法曹団体ある、IBA、国際法曹協会と訳されておりますけれども、このIBAも、2000年9月に開催されたIBAの理事会において、MDPに否定的な態度を明確にするとともに、外国弁護士の活動に関しては、IBA加盟国間における、さらなる自由化のために活動し、今月25日ごろ、すなわち本日でございますけれども、IBA代表団がジュネーブのWTO本部を訪問し、弁護士業の国際的な規制緩和に際しては、自由職業をひとまとめにして改革するというのではなしに、弁護士業の特殊な性格と、弁護士として基本的な倫理を維持できるような自由化とするように要請することになっております。このように世界の法曹団体におきましては、弁護士業の国際的な規制緩和に関して、さまざまな観点からあるべき自由化が検討されております。また、GATT、ウルグァイ・ラウンドの際に、日弁連、ABA、CCBEの代表が、フランスのエビアンに集まり、外交官の同席の下に、弁護士間での予備交渉において実質的に合意に達したという前例があり、我が国の1994年外弁法は、この合意に基づき改正されたものであります。したがって、今回の外弁制度の改革においても、単に日本国内における議論のみではなしに、かかる世界の法曹団体やWTOのサービス交渉の動向に十分配慮しながら、これらの世界の法曹団体との協議を得て、より望ましい制度改革を検討してくださるように、お願い申し上げます。
最後に弁護士の国際化の条件整備でございますが、弁護士の国際化のためには、特定共同事業要件の緩和等の外弁制度の改革のみでは不十分であり、日本の法律情報の外国語訳があること、すなわち少なくとも日本の法律情報が英語化され、世界の弁護士がインターネットを通じての検索等で、容易に知り得る状態になっていることが必要であります。そうでなければ、内容のわからない法律制度は利用されませんので、今後日本の司法制度は国際化の中で、ますますローカル化してしまう恐れがあります。WTO144の加盟国の中で、日本語を国語とするのは日本だけであります。したがって、少なくとも英和対照で、すべての法令の英語訳を設けること、官報の英和対照化が不可欠であると思われます。また、日本の弁護士が諸外国の弁護士と自由に議論したり交渉し得るように、英語教育のさらなる充実が望まれます。また、国際的裁判管轄、送達制度等の国際的な民事訴訟制度、ADRの法制・施設の充実等の国際化が、弁護士の国際化の条件整備としてどうしても必要だと思われます。以上、簡単でございますが私の説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【柏木座長】 それでは挙手の上御発言ください。

【下條委員】 下川委員にお尋ねしたいんですけれども、先ほど申し上げました一括交渉の件についてお尋ねしたいと思います。これはWTOでもいろんな分野がございますが、私の理解するところでは、間違っていたら教えていただきたいんですけれども、アメリカは当初一つひとつばらばらに交渉して、ばらばらに合意していこうということを提案していたわけですけれども、日本とかEUとかが頑張って、最終的には一括交渉、すべての分野を同時に2005年1月1日までに一括で合意するというふうに変わったと思います。そうであれば、先ほど下川委員がおっしゃったように、来年の3月31日までに、サービス貿易については我が国のオファーを提出するわけですが、それは農業についても同じ期限でオファーを提出するということをおっしゃいましたけれども、そのような状況のときに、はやばやと外弁関係に関して、今年中にもう結論を詰めてしまうという状況であったら、そのときの外交交渉の切札にならないんじゃないかと思うんですけれども、その辺りについて下川委員にお尋ねしたいと思います。

【下川委員】 サービス交渉の場合は、この2枚目の表にもございますように、相当幅広い分野を取り扱っておりまして、自由職業、法律サービスのみならず、通信、建設、エンジニア、流通、教育、環境、金融、健康、社会事業、観光、娯楽、運送、運送の中には海運、陸運、空運とあるわけですけれども、こういうものが全部含まれているわけでございます。 それぞれについて各国によって関心事項の濃淡に差はございますけれども、リクエストを行い、オファーを行っていくというプロセスが予定されているわけでございます。それは結局、経済活動の各インフラセクターを含め、各種セクターを含んでいるわけでございまして、これらのすべてについてまさに全体として十分なオファーが得られたか得られなかったということを最終的に一括して総合的に判断して、交渉の結果が得られるわけございまして、逆に申し上げますと、これらすべての分野における規制改革とか、そういうものをWTOの交渉にそろえてやっていくということはなかなか難しいわけでございまして、それぞれのセクターでそれぞれのタイムスケジュールで各国が規制緩和等を進めているわけでございます。それを最後にパッケージとしてまとめて、やっていくと。最初から出すものもあれば、最後こういうオファーを示すということを意図的に判断して出すものもあると。そういう全体のパッケージでやっていくことになるわけでございますので、すべての項目についてこのスケジュールに合わせて国内の意思決定をしていくということには恐らくならないだろうと思います。確かに最初に相手国の関心が高い特定の分野について、早くオファーを出してしまったら、さらなる要求を受けるだけではないかいう御指摘はあろうかと思いますけれども、そこはまさにその分野について、それで十分なのかどうか、議論を尽くして、これは日本としてこれしかできないということがはっきりしているんであれば、それはあくまでも説明して、ほかの分野のパッケージの中で理解を得ていくという作用も1つの選択肢としてはあり得ると思いますし、逆に議論を尽くして、出してみた結果ではあるけれども、更に交渉、更に議論していく中で、それでは不十分なんだということになれば、それはそのときまた考えざるを得ないと。それはいずれもあり得るんだろうと思うんです。後者のようなことを想定して、今から検討のスケジュールはできるだけ交渉のおしりの方へ向けてアクセスするというのも1つの考え方だろうとは思いますけれども、先ほど申し上げましたように、いろいろなセクターのいろいろな規制緩和が同時並行的に行われていく中で、総合的に一括してやっていくことになりますので、果たして交渉スケジュールに合わせて、ありとあらゆる分野でこの検討スケジュールをそろえていくのがいいのかどうかという問題はあろうかと思います。直接お答えしたことになっているかどうかわかりませんけれども、そういう全体的な枠組みの中でやっていくしかないということです。

【乗越委員】 日弁連ないし法務省の方に1点と、それから外務省の方に1点お伺いしたと思います。プレゼンテーションの中で、弁護士の独立性が損なわれる、あるいは欧米の巨大ファームに席巻されるという言葉が何回か出てまいりましたけれども、そこのところがどういうことを実際に意味するのか、今ひとつ具体的に考えてみるとよくわかりません。恐らく独立性ということについて言いますと、弁護士倫理の上で正義を実現しつつ、誠実に依頼者の最善の利益を考えるという弁護士倫理上の問題と、それからだれかに雇われることによって、その弁護士倫理上の要求が完全に満たされにくくなるというコンフリクトの点を指摘されたのではないかと思いますけれども、1つには、現在でも日本の事務所においても、パートナーである先生方とパートナーでない先生方がおられて、そこのところで既にそういう問題は潜在的に生じ得ているはずですし、それについて外国事務所との提携をやることによって、そういうのが阻害されるという議論になるというのが今ひとつよくわかりませんのと、同じような問題は、日本に限らずどこの国でも生じていることですけれども、それは個々の弁護士が、それぞれ自分の倫理の問題と、そこから受けるかもしれない職務上の指揮命令と言いますか、その中にあれば、そこのところで判断をして、どうしてもコンフリクトが解消できないということになれば、事務所をやめるとか、そういう手段を最終的に取るということを常に要求されていることだと思うんです。外国事務所と提携することによって、弁護士の先生がそういう態度を取れなくなるというのは、日本の弁護士の先生に対して非常に失礼な言い方ではないかという気もするんですけれども、その点については独立性、あるいは席巻されるというのはどういうふうなことなのかというのを1点お伺いしたいと思います。それから、2点目は、最近日弁連のルールの中で、法人化をする際に日本の弁護士法人については、外国法事務弁護士の所属事業体の名前の一部をその名称に用いてはならないというルールが提案されていると承知しておりますけれども、その背景というものについて御説明願いたいと思います。

【柏木座長】 2点質問がありますけれども。

【日弁連(小原委員長)】 第1点の、弁護士の独立性でございますけれども、弁護士の独立性を議論する場合には、狭義の独立性と広義の独立性という言葉を使わせていただきますが、まず、第1の狭義の独立性に関しましては、弁護士が、弁護士倫理と良心に従って、依頼者に対して事件処理を行う場合の独立したサービスをする、それは個々の弁護士の問題でございますので、個々の弁護士がしっかりしておればやっていけるということができます。私が先ほど申し上げましたのは、広義の独立性と言いますか、組織の問題でございます。事務所の運営事項に関して、パートナー会議で決定される、事務所の経営ないし運営に関する事項に関しましては、個々の弁護士の独立性ということではなしに、例えば欧米の大ローファームの日本支店のレジデント・パートナーに対しては、毎年ビジネス・プランというものが要求されるわけです。今年はどれだけ顧客を拡大して、どれだけ売上げを上げるというようなビジネス・プランを出すことを要求され、それを実現できないということが何年も続くということになりますと、日本支店の責任者は更迭されるということになります。これは個々の弁護士の良心とか独立性の問題ではなしに、事務所運営組織上の問題であります。これが外弁の本国と支店の間でもあるわけでございますけれども、これが日本の弁護士との共同経営ということになりますと、先ほど言いました資金力の差から、例えば丸の内の一等地に大きな共同事務所を開設するという場合には、日本の弁護士は余りお金がない。何億円、何十億円という場所と規模によって違うかもしれませんけれども、そういう具合に、パートナーというのは、そういう資金を出資するということが必要になります。現在、ヨーロッパでの事実上のMDPなどでも行われておりますのは、お金は規模の大きい方が出すが、それはローンという形でしようというように、実質的には日本の弁護士は労務を提供すると言いますか、資金面では対等に出資ができないということになります。そして、先ほど申し上げましたようなビジネス・プランとか日本の顧客の開拓とか、毎年の計画を出し、それを本国でチェックされるというような状態になります。そういう状況の下で気に入らなければパートナーをやめたらいいじゃないかと言われますけれども、やめる場合に、当初約束した負担金の何億円というものを出さないといけない。また、やめるということにいかないまでも、例えば東京地裁におけるアメリカのクライアントの訴訟をするとか、または大きなプロジェクトで日本で事業化する場合のいろんな法律事務がございますが、訴訟、調停、示談交渉、商業登記等もその1つでしょうし、許認可の関係でも、日本の手続などが問題になります。役所に出される委任状などは個々の事件の処理にすぎず、依頼者との関係では、外国のローファームが受任者であります。大きな法人に関しては、海外から事件処理の方針についての指示が来ます。準拠法については、ニューヨーク州法にしなさい、管轄についても、ニューヨークの裁判所にしなさいと。アメリカのクライアントの意向と称して、アメリカの、または欧米の大ローファームの本国からの指示があります。そういう事務所の運営と言いますか、依頼者との関係を含む大きな経営に関する問題では、日本の弁護士がしっかりしておったらいいじゃないかということは、やはり大雨の後の濁流の中に割りばしを立てて、割りばしがしっかりしていたら立つじゃないかというのと同じような事柄でありまして、いい制度とするためには制度的な保障が必要であると考えます。第2点の日弁連で近く開催される臨時総会の8号議案の中に、これは弁護士の法人の名称に関する事柄でございますけれども、この名称に関しましては、日本の弁護士の弁護士法人に関する規定でございまして、その弁護士法人は、ビッグ・ファイブの名前であるとか、外国の著名なロー・ファームの名称を自分の事務所の名称としてはいけないという規定がございます。これは今年の4月1日から、弁護士法人が施行されるに際して、その名称をきちんと規定しておくというために設けられたものでありまして、特に外国弁護士とか外国法事務弁護士を拘束するとか、そういう趣旨の規則ではございません。以上でございます。

【柏木座長】 法務省から何かありますか。

【法務省(大塲参事官)】 特にありません。

【波江野委員】 弁護士会の資料の7ページで、隣接法律職が出ておりまして、御発言の中で、日本の弁護士は少ないけれども、隣接法律職を入れると大きな数になるというお話で、隣接法律職も弁護士会の中に取り入れたらという、御提案と言いますか1つのアイデアのご紹介がありましたが、どういうお考えでしょうか。弁護士が多くなるから、法曹人口を比較する(1)で見たときに、遜色なくなるよということなのか。そうではなくて、日本の弁護士というのは、二万人ほどしかいないので、そこら辺もっと強化しないといけないということなのか。お話を伺っていて趣旨がはっきりしなかったんですけれども、御説明いただけませんでしょうか。

【日弁連(小原委員長)】 この点に関する発言は、日本弁護士連合会の立場ではなく、私の個人的な発言でございますけれども、要するに、弁護士の国際化を図るという場合に、世界共通のリーガル・サービスの担い手を弁護士に統一するのがいいのではないかということです。諸外国を見ましても、弁護士業務を補完するような隣接職種はございますけれども、本来は弁護士の領域の仕事にまで職域の拡大を求め、訴訟行為までも要求する、弁護士と競合するような隣接職種があるのは日本だけです。また、国際化という場合に、特に外国弁護士の活動をお互いに認め合うという場合に、日本のリーガル・サービスをしていながら弁護士でない隣接法律職の資格では、有資格者として外国へ出ていけない。または、出ていっても弁護士と同じような扱いは受けられません。弁護士として外国へ出ていくことができないということは、実質的には日本のリーガル・サービスは隣接法律職を含めた10万人体制で行われているのにもかかわらず、外国弁護士制度の下での日本の隣接法律職は外国において弁護士としての活動は認められないという不合理な結果となります。そういう実態を直視して、これら日本の隣接法律職を非弁ではなく、外弁と同じように弁護士の一種として、日弁連の特別会員とし、弁護士とこれら隣接法律職間では共同事業は全く自由としようという提案です。日本のリーガル・サービスを一緒に担当している隣接法律職の共同事業を自由にしないで、外国の弁護士との共同事業の規制緩和だけを図るというのは、制度としては不十分でありまして、まず日本の法律サービスをする専門職、リーガル・プロフェッションを、弁護士の一種として、同じ日弁連の弁護士倫理の下で一緒に仕事をする。そして、彼らの間で完全に外弁との間よりも先に日本の国内で完全な形態の共同事業である共同経営を全く自由にする。そういうような状況にした上で、諸外国の弁護士との共同経営を自由にするということは、日本のリーガル・サービスを担う主体を統合することにより、日本のリーガル・プロフェッションを一挙に欧米諸国並みの数にして、諸外国との弁護士間の対等な立場での国際的な協力関係を可能にし、国際的共同経営もなるべく世界の共通のルールに近付けていって、何年か後には世界中のほとんどの国で日本の弁護士が活動し、誰もが日本法の法律サービスも容易に受けることができる、という状態にするのが望ましいと思います。外弁法の1条では、この制度の目的として、日本国内における渉外事務の充実に資するとともに、外国における日本法の事務処理の充実に資するという目的が挙げられておりますけれども、現在検討されているのは日本国内における外国弁護士の活動のことだけでありますが、日本のリーガル・プロフェッションも世界に出ていって、諸外国の弁護士と対等に競争し、また、諸外国にいる日本人、日本企業、その他日本法のリーガル・サービスを必要とする外国人(法人)に対するサービスを十分なものとしてないといけないと思います。世界共通のプロフェッション、すなわち外国で弁護士と認知される職種にするという観点からは、極めて日本的なリーガル・サービスの担い手を細分化して、細かい職務範囲の限定を加えて、彼らを外国で活動しにくくするような制度は望ましくありません。日本国内でも司法改革が進んで、弁護士の数が増えればほとんどすべての法律サービスが弁護士によりなされることになりますので、隣接法律職は中途半端な制度になってしまいます。このような状態を早期に解決すると同時に、なるべく早く、同じ弁護士という資格で国際的に共通の基盤に立って、諸外国の弁護士と競争できるような制度的基盤を日本国内で整備すべきではないか。そういう発想でございます。

【久保利委員】 私は今日は日弁連の代表で来ているわけではありませんので、もし、日弁連の正式な見解が必要な場合には、藤原副会長がお見えになっていますので、座長から御指名いただければ、日弁連としての考え方を申し上げられると思いますが、少なくともただいまの小原先生のお話は、個人的なお話でございまして、全く日弁連の代表的な考え方をそのまま述べているものではないということだけは御留意いただきたいというのが1点。もしよろしければ、1点、御質問を許していただきたいんですが、フランスの話は私大変関心があるんですけれども、大塲さんのペーパーによりますと、フランスには外弁受入制度なしというのが資料5にありますね。小原先生のお話によりますと、フランス語でフランス法の試験をするとか、ローソン化とかいろいろなお話もあったように思うんですが、実態のところは、これは多分歴史的な経過も含めて、ある時期はこうで、今こうだという話があるのかもしれませんが、その辺り、フランスは実態としてどういう歴史をたどって、どうなっているのか。そこはおわかりになる限度で結構でございますが、御説明いただけますでしょうか。

【法務省(大塲参事官)】 それでは、私の方から簡単に。歴史的経緯まで説明できるほど用意していないんですけれども、外弁制度というのが最初に私の報告で申しましたように、新たに資格試験等を課されることなく、外国法に関する法律事務を扱える制度ということだとするならば、そういった関係から見るならば、フランスでは現在、そのような制度はないと言わざるを得ないと思います。ところが、外国の弁護士資格を有する者について、フランスの方で実施されるフランス語によるフランス法の試験というのがあるようでして、これに合格すれば、フランス法、及びその人の原資格国の法律が扱えるようになるという制度はあると聞いております。今、正確な名前だとか歴史的経緯というのは、私自身持ち合わせていません。

【日弁連(小原委員長)】 ちょっと補足させていただきたいのですが、外国弁護士の制度と言われているものに関しましては、フル・ライセンシング・システム(Full Licensing System)と呼ばれ、外国の弁護士に正規の自国弁護士と同じ資格を認めるという完全資格制と、本国法とか一定の制限された資格を認めるリミテッド・ライセンシング・システム(limited Licensing System)と呼ばれる制度の2つに大きく分けられます。日本は後者の制限資格制で、日本法の扱いは認めないが、日本法以外の法律サービスはは外国の弁護士資格のみに基づいて、試験を課さないで認めるという制度をとっております。世界の外弁制度と言われるものは、日本と同じようないわゆるリミテッド・ライセンシング・システムと言われている制度を指しています。それから、自国の弁護士と同じ資格を認める完全資格制は、フランスが取っている制度でございます。フランスの制度の歴史的沿革を若干説明させていただきますと、1990年まではフランスには、アボカとコンセイユ・ジュリディックという2つの資格がありました。アボカというのは、イギリスのバリスター(法廷弁護士)に近い訴訟を中心とする業務を行っている弁護士でありまして、これは正規の国家試験がございました。コンセイユ・ジュリディックというのは、イギリスのソリシター(事務弁護士)に近い資格で、国家試験を経ずに外国の弁護士資格等があれば法廷外の法律事務を取り扱うことがで認められておりました。法律事務の独占も、訴訟外の事務に関しては、1990年法まではございませんでした。しかし、1990年ころに、諸外国の百数十名の外国弁護士の収入がフランスの数万人の弁護士の収入を上回るような状態になったということで、フランスの誇り高きド・ゴール大統領の後継者であるポンピドー大統領の時代に、法律を改正しまして、今までのコンセイユ・ジュリディックという制度を廃止して、コンセイユ・ジュリディックは無試験で自動的にアボカの資格を得ることにして、プロフェッションを統合しました。そして、新しいアボカの下では、法律事務はアボカに独占されるということになり、リミテッド・ライセンシング・システムの外弁制度も廃止し、外国弁護士の資格に基づく活動は認めないこととしました。その代わり、外国弁護士にフランスの司法試験とは少し違う、少しやさしいフランス法の試験をフランス語で受けさせ、それに合格した者には正規の新アボカの資格を付与することにしました。それは外国弁護士にフランスの司法試験とは異なる外国弁護士だけの試験により、完全なフランスのアボカの資格を付与する制度ですから、完全資格制と言われる極めてユニークな外弁制度にしてしまったわけです。フランスとしては、従来のように外国弁護士の資格に基づいてフランス国内で活動されると困るという政策的な配慮がありましたので、フランス語でフランス法の試験を受けさせるということで、障壁を設け、数の制限をしたのです。しかしながら、経過措置として、その時までにフランス国内で活動していた外国弁護士、外国のローファーム、またはビッグ・ファイブの会計事務所はその後も同じように活動してよろしいということにしました。その経過措置があるために、大きな外国のローファームやビッグ・ファイブ事務所はその当時既にフランスでオフィスを持っており、事務所単位で活動することが許されましたので、現在ではフランスのトップ10の法律事務所のうちの8つまでがビッグ・ファイブ系、または外国のローファーム系で、フランスの民族系と言われているフランス人による法律事務所は2つだけでございます。このように外国の弁護士資格に基づいて活動を認めるいわゆる外弁制度は現在のフランスには存在しないということができます。ただ、本来の司法試験とは異なる外国弁護士向けのやさしいと言われている、フランス語による特別な試験をうけてアボカになる道は設けています。

【柏木座長】 座長の議事進行がよくなくて、大分時間が足りなくなってしまいました。手短にお願いします。

【下條委員】 小原先生にお伺いしたいんですけれども、アメリカのカリフォルニア州の最高裁で、バーブローウァー事件というのがございまして、これは先ほど小原先生の説明にちょっとありましたように、アメリカの州の間で、ある州の弁護士が他の州でプラクティスができるかどうかということに絡んだケースであったわけです。この件ではニューヨークの弁護士がカリフォルニアに来て、仲裁に携わることについて、その報酬請求が認められなかった、つまり、それはアンオーソライズド・プラクティス・オブ・ロー、つまりニューヨーク州の弁護士であっても、カリフォルニアでは資格がないのであるから、そのようなことはできないという裁判があったと理解しておりますけれども、その関係で2点ありまして、1つは、1996年でしたか、日本で国際仲裁代理、これについて非常に自由化したわけですけれども、そのときのいきさつでは、アメリカではそのようなよその州でも、仲裁代理ができるというような説明を受けてそうしたのではなかったかと思うんですけれども、その点について1点お聞きしたい。それから、先ほどの説明で指定法という制度がありますけれども、指定法につきましては、アメリカのニューヨーク州の弁護士であれば、大陸法系を取っている州、1つだけありますけれども、その州を除いてすべての州について、指定法の申請をすれば、たとえて言えば、ニューヨーク州の弁護士であっても、カリフォルニア州を指定法として申請すればそれは認められるという取り扱いになっているそうなんですけれども、それが今のバーブローウァー事件で言いますと、ニューヨーク州の弁護士はカリフォルニア州で弁護士としてできないわけですから、本国でできないことを日本では認めていることになるのではないか。つまり、ニューヨーク州の弁護士が日本ではカリフォルニア州について、指定法としてアドバイスができるという、そういうおかしな結果になっているのではないかと思われるんですけれども、その点について御説明いただきたいと思います。

【日弁連(小原委員長)】 簡単に御説明しますが、第1点の仲裁代理の件でございますが、1996年の外弁法改正で日本国内では外弁のみならず、外国弁護士が日本に訪問して、あらゆる仲裁事件の代理ができるように改正いたしました。その前に国際仲裁代理研究会がございまして、ここにいらっしゃる先生の何名かはその研究会の委員でいらっしゃって、私も委員でしたが、そのときのアメリカの弁護士の説明では、仲裁というのは私的な裁判であるから、世界各国では誰でも仲裁代理人になることが認められており、日本だけが認められていないという趣旨の発言がありました。また、ヨーロッパ諸国の弁護士からもそういう説明がありましたので、自由にできる制度に改正したのであります。しかし、その後私個人が体験して、外弁委員会に報告したケースでございますけれども、私の依頼者がロスアンゼルスで仲裁をしようとしました。ロスアンゼルスの弁護士と提携しまして、現地ではロスアンゼルスの弁護士に仲裁代理人になってなっていただいていたのですけれども、私の依頼者である会社の人も一緒に行かれるので、どういう状況かということを説明できるように、仲裁代理人の1人としてその会議に出れるようにしてくださいということをお願いしたのですが、そのときに先ほど言われた判例を送ってこられまして、ニューヨーク州の弁護士がカリフォルニア州で仲裁代理をすることも禁止されている。これはアンオーソライズド・プラクティス・オブ・ロー(Unauthorized Practice of Law, 非弁行為)になるので、それは許されていない。だからやめておいた方がよろしいと言われました。違反になるのであれば仲裁裁定が後日取り消しされたりして、依頼者に迷惑をかけてはいけないので、やめることにしました。外弁制度の改革のときには、アメリカではできると言っていましたが、必ずしも正確ではなかったんだなという感じを受けました。現在、アメリカではABAを中心として、MJP(Mutijurisdictional Practice)という運動がABAを中心として行われております。アメリカでは自国内でも51の法域がありますが、他州の弁護士が自州、すなわちニューヨーク州の弁護士がカリフォルニア州で自由に活動できるという状況にはなっておりません。それは州によって異なりますが、私の調査では、三十数州において、一定の経験を要件として認めているというふうに拡大しつつありますが、すべての州においてフリーにできるということにはなっていない現状であります。アメリカは自国の中においてすら、他州の弁護士の自由な活動を認めていない状況で、日本に対しては、日本の制度は遅れている、閉鎖的だという理由で開放要求をしているのですが、アメリカの現状は非常に遅れています。それから、第2点の指定法の問題ですが、本来指定法という制度は原資格国以外の弁護士資格を有する又はそれと同程度の知識と一定の経験を有すると法務大臣が認めた場合のみに指定法として原資格国法と同様に取り扱うことを認めるというが制度であったのですが、アメリカ等の強い要求がありまして、アメリカの連邦法は共通である、州法は少し違うだけだと等の理由から、ニューヨークで弁護士資格を取ったものはカリフォルニア州法に関する活動も認めよという要求があり、政治的な判断もありまして、日本における運用では、ルイジアナ州だけは大陸法系だからだめだけれども、それを除く全州の指定を一定の職務経験があれば、日本国内においては自由にできるような運用がなされております。これは下條委員が言われましたように、アメリカ国内で認められないことを、日本へ来れば認められるという現状になっていることは事実でございまして、それは政治的な判断というか、その当時の外交交渉等他の影響もあり、そのような運用になって現在に至っております。

【柏木座長】 ありがとうございました。それでは、時間も大分過ぎておりますので、最後の議題に移りたいと思います。第3回以降のヒアリングの実施につきまして、事務局から御説明願います。

【齊藤参事官】 資料2−5をごらんいただきたいと思います。第3回以降では、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働というテーマに関しまして、ヒアリングを実施してまいりたいと思います。第3回のヒアリングの実施要領としましては、資料2−5の1ページに掲げてございますように、特定共同事業を営んでいる日本の法律事務所と外国法事務弁護士事務所、それぞれから日本の弁護士、それから外国法事務弁護士各お一人くらいずつを、この検討会にお呼びしまして、それでヒアリングをしたいと考えております。特定共同事業を営んでいる法律事務所、外国法事務弁護士事務所、特定共同事業としての場所を2か所くらい選んでヒアリングをしてみてはどうかというふうに考えております。それから、日本の渉外事務所で、しかし、特定共同事業は営んでいないという事務所も1つくらい選んで、そこからもヒアリングをしてみてはどうかと考えております。第4回以降は、2ページ目、3ページ目にヒアリングの要領を、一応たたき台として事務局の方としてお示ししているという趣旨でございますので、委員の方々からも、ヒアリングの対象先、それからヒアリングの項目、こういった点について御意見、御指摘があれば、どしどし事務局の方にお寄せいただきたいと思います。とりあえずは次回の第3回の検討会のヒアリングの実施要領をどうするかということは、これは早目におおまかなところはお決めいただきたいと思います。その上で事務局の方でいろいろとお膳立てはさせていただくというふうに考えております。あと1点、第3回には、法整備支援のプレゼンテーションを法務省、外務省、日弁連からしていただく予定です。当初、第2回に法整備支援もプレゼンテーションしていただこうかと思ったんですが、時間配分の関係で無理だろうということになりましたので、第3回に行わせていただくという予定でおります。

【柏木座長】 ありがとうございました。それでは、とりあえず第3回検討会のヒアリングの実施につきまして、今の事務局の説明に関して、何か御意見、御指摘ございますでしょうか。ございませんようでしたら、この実施要領案に基づいて、第3回のヒアリングを実施することとしたいと思います。それでは、予定した時間となりましたので、第3回の予定について事務局から御説明をお願いします。

【齊藤参事官】 それでは、次回第3回でございますが、冒頭の約一時間くらいで、法整備支援につきましてのプレゼンテーションを法務省、外務省、日弁連からしていただくことにしたいと思います。その後で、ただいまのようなヒアリング、特定共同事業を営んでいる日本の事務所、それから外国法事務弁護士事務所、更に特定共同事業を営んではいない渉外法律事務所、ここからのヒアリングを実施したいと思います。その辺の準備は座長と事務局の方で相談させていただきまして、準備はさせてください。それから、第3回目以降の本検討会の日程でございますけれども、資料の2−1にも書いてございますが、日にちが決まっておりますので、できるだけ万障繰り合わせの上、御出席くださるようにお願いいたします。

【柏木座長】 それでは、第2回「国際化検討会」をこれで閉会させていただきます。本日はどうも御協力ありがとうございました。