第2回配布資料一覧

資料2−3
別添3

会計分野の国内規制に関する規律(仮訳)




I 目的

  1.  自由職業サービスに関する閣僚決定に鑑み、加盟国は、会計分野の国内規制に関連するGATSの規定に基づいて定めた次の規律に合意した。当該規律の目的は、会計サービスの貿易に影響を及ぼす国内規制がGATS第六条4に規定する要件に適合することを確保することにより、会計サービスの貿易を促進することである。したがって、当該規律は、外国の提供者に対して国内市場へのアクセスを制約する又は内国民待遇の適用を制限するGATS第十六条及び第十七条の規定に基づいて約束表への記載の対象となっている措置を取り扱わない。このような措置は、GATSにおいては、特定の約束についての交渉及び約束表への記載を通じて取り扱われる。

II 一般条項

  1. 加盟国は、GATS第十六条又は第十七条の規定に基づく約束表への記載の対象となっていない(注)免許要件及び手続、技術上の基準並びに資格要件及び手続に関連する措置が、会計サービスの貿易を行う上で不必要な障害を作り出す目的又は効果のために立案され、制度され又は適用されないことを確保しなければならない。この目的のために、加盟国は、前述のような措置が正当な目的の達成のために必要以上に貿易制限的でないことを確保しなければならない。正当な目的は、特に、(すべての会計サービスの利用者及び一般公衆を含む)消費者の保護、サービスの質、専門的能力及び職業の高潔性の確保である。
    注 GATS第十六条及び第十七条の条文が本文書の附属書に掲げられる。

III 透明性

  1.  加盟国は、GATS第三条及び第四条の規定に基づき設けられた照会所及び連絡所を通じる方法を含め、権限ある当局(則ち、自由職業家又は事務所に対する免許付与若しくは会計規則について権限ある政府又は非政府機関)の名称及び住所を一般に入手できるようにしなければならない。
  2.  加盟国は、照会所及び連絡所を通じる方法を含めて次の事項を一般に入手できるようにするか又は加盟国の権限ある当局によって、一般に入手できるようにすることを確保しなければならない。
    (a) 可能な場合、規制されている又は特定の技術上の基準に従わなければならない活動及び職業上の肩書を記載した情報
    (b) 免許又は自由職業の資格を取得、更新又は保持するための要件及び手続並びにその履行を確保するための権限ある当局の監視措置
    (c) 技術上の基準に関する情報
    (d) 要望に応じて、特定の自由職業家又は事務所が管轄内において営業免許を有していることの確認
  3.  2に規定される正当な目的に関連して、加盟国は、他の加盟国の要望に応じて、会計分野についての国内規制措置の背景にある理由を通報しなければならない。
  4.  会計サービスの貿易に著しい影響を及ぼす措置を導入する場合には、加盟国は、その制定に先立って意見の機会を与えるように努め、その意見を考慮に入れなければならない。
  5.  GATS第六条2に規定される行政上の決定の審査手続の詳細は、かかる審査の要請のために、所定の期限が設定されている場合にはその期限を含め、公表しなければならない。

IV 免許要件

  1.  免許要件(則ち、営業許可の取得又は更新のために満たさなければならない資格要件以外の実質的な要件)は、事前に設けられ、一般に利用可能で及び客観的なものでなければならない。
  2.  GATS第十七条の規定に基づく約束表への記載の対象となっていない居住要件が存在する場合には、加盟国は、費用や当該加盟国の状況も勘案しつつ、当該要件の設定目的を達成するためにより貿易制限的でない手段を採りうるかどうか考慮しなければならない。
  3.  自由職業団体への加入が要求されている場合、2の規定でいう正当な目的の達成のために、加盟国は自由職業団体への加入要件が合理的なものであり、かつ当該目的の達成に無関係な条件や前提条件を含まないことを確保しなければならない。自由職業団体への加入が、免許(則ち、営業許可)申請の前提条件として要求される場合には、申請前の自由職業団体への加入期間は最低限に保たなければならない。
  4.  加盟国は、事務所の名称の使用が、正当な目的を達成する場合を除くほか、制限されないことを確保しなければならない。
  5.  外国申請者に対する自由職業賠償保険の要件が、領域内における又は領域内の関連する管轄における活動を対象とし、受入れ加盟国の法令に合致する限りにおいて、既存の保険の範囲を勘案することを確保しなければならない。
  6.  権限ある当局により課される手数料が、事務費用を反映したものであり、手数料自体が関連する業務を営むための障害とならないことを確保しなければならない。これは情報の検証、申請書類の処理及び試験に要する追加的費用の回収を妨げるものではない。開発途上国の申請者に対しては、緩和された手数料を課すことを考慮することができる。

V 免許手続

  1.  免許手続(則ち、営業許可申請書の提出及び処理において従うべき手続)は、事前に設けられ、一般に利用可能で及び客観的なものでなければならず、免許手続自体がサービスの提供を制限するものであってはならない。
  2.  申請手続及び関連書類は、申請者が資格及び要件を満たしていることを確保するために必要である以上に大きな負担となってはならない。例えば、権限ある当局は、免許付与のために厳に必要とされる以上の書類を要求してはならず、書類の形式に関して不合理な要件を課してはならない。申請に些細な誤りがある場合、申請者は当該誤りを修正する機会が与えられなければならない。書類の真正さは最も煩雑でない手続によって求めなければならず、可能な場合、真正な謄本は、原本に代わるものとして受理すべきである。
  3.  加盟国は、申請書の受領が権限ある当局により速やかに伝えられること及び申請に不備があった場合不当に遅滞することなく申請者に通知されることを確保しなければならない。権限ある当局は、申請者に対し、不備のない申請に関する決定を、次の資格手続に関する期間にかかわらず、受領した後、合理的な期間内、原則として六ヶ月以内に、通知しなければならない。
  4.  要請に応じて、申請を却下された申請者は、申請却下の理由を通知されなければならない。申請者は、合理的な制限の中で、免許の再申請を認められなければならない。
  5.  免許は、付与された場合には、当該免許に示された条件に従って速やかに効力を生じなければならない。

VI 資格要件

  1.  加盟国は、当該加盟国の権限ある当局が、他の加盟国の領域で取得した資格を教育、経験及び試験の要件の同等性に基づき考慮することを確保しなければならない。
  2.  試験その他の資格要件の範囲は、許可が求められている活動に関連する事項に限定しなければならない。資格要件は、教育、試験、実務研修、経験及び語学力を含む。
  3.  加盟国は、相互承認協定が資格の検証手続を促進し、教育の同等性を確定する役割を果たすことに留意する。

VII 資格手続

  1.  申請者が他の加盟国の領域内で取得した資格の検証は、合理的な期間内、原則として六ヶ月以内に行わなければならず、申請者の資格が要件に満たない場合には、申請者が取得しなければならない追加的な資格がある場合にはこれを明らかにする決定を行わなければならない。
  2.  試験は、合理的な頻度、原則として少なくとも年一回、行わなければならず、外国の及び外国の資格を有する申請者を含むすべての適格な申請者に開放しなければならない。申請者は、申請の提出に際して、合理的な期間が認められなければならない。権限ある当局により課される手数料は、事務費用を反映しなければならず、手数料自体が関連する業務を営むための障害となってはならない。これは、情報、手続及び試験の検証に要する追加的費用の回収を妨げるものではない。開発途上国の申請者に対しては、緩和された手数料を課すことを考慮することができる。
  3.  GATS第十七条の規定に基づく約束表への記載の対象となっていない居住要件は、受験のために要求してはならない。

VIII 技術上の基準

  1.  加盟国は、技術上の基準に関する措置が正当な目的を達成するためのみに立案され、制度され及び適用されることを確保しなければならない。
  2.  ある措置が2に基づく義務を遵守しているかいないかを決定するに当たり、当該加盟国が適用する関係国際機関(注)の国際的基準を考慮する。
     注 「関係国際機関」とは、少なくとも世界貿易機関のすべての加盟国の関係機関が参加することのできる国際機関をいう。


附属書

 明瞭性のため、GATS第十六条及び第十七条の条文が以下に掲げられる。

第十六条 市場アクセス

  1.  加盟国は、第一条に規定するサービスの提供の態様による市場アクセスに関し、他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し、自国の約束表において合意し、特定した制限及び条件に基づく待遇よりも不利でない待遇を与える(注)。  注 加盟国は、第一条2(a)に規定する提供の態様によるサービスの提供に関し市場アクセスに係る約束を行う場合において、国境を越える資本の移動が当該サービス自体の重要な部分であるときは、当該約束をもって当該資本の移動を認めることを約束したこととする。加盟国は、同条2(c)に規定する提供の態様によるサービスの提供に関し市場アクセスに係る約束を行う場合には、当該約束をもって自国の領域への関連する市場の移動を認めることを約束したこととする。
  2.  加盟国は、市場アクセスに係る約束を行った分野において、自国の約束表において別段の定めをしない限り、小地域を単位とするか自国の全領域を単位とするかを問わず次の措置を維持し又はとってはならない。
    (a) サービス提供者の数の制限(数量割当て、経済上の需要を考慮するとの要件、独占又は排他的なサービス提供者のいずれによるものであるかを問わない。)
    (b) サービスの取引額又は資産総額の制限(数量割当てによるもの又は経済上の需要を考慮するとの要件によるもの)
    (c) サービスの事業の総数又は指定された数量単位によって表示されたサービスの総産出量の制限(数量割当てによるもの又は経済上の需要を考慮するとの要件によるもの)(注) 注 この(c)の規定には、サービスの提供のための投入を制限する加盟国の措置を含まない。
    (d) 特定のサービスの分野において雇用され又はサービス提供者が雇用する自然人であって、特定のサービスの提供に必要であり、かつ、その提供に直接関係するものの総数の制限(数量割当てによるもの又は経済上の需要を考慮するとの要件によるもの)
    (e) サービスが合弁企業等の法定の事業体を通じサービス提供者によって提供される場合において、当該法定の事業体について特定の形態を制限し又は要求する措置
    (f) 外国資本の参加の制限(外国の株式保有比率又は個別の若しくは全体の外国投資の総額の比率の上限を定めるもの)

第十七条 内国民待遇

  1.  加盟国は、その約束表に記載した分野において、かつ、当該約束表に定める条件及び制限に従い、サービスの提供に影響を及ぼすすべての措置に関し、他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し、自国の同種のサービス及びサービス提供者に与える待遇よりも不利でない待遇を与える(注)。  注 この条の規定に基づいて行われる特定の約束は、加盟国に対し、関連するサービス又はサービス提供者が自国のものでないことにより生じる競争上の固有の不利益を補償することを要求するものと解してはならない。
  2.  加盟国は、他の加盟国のサービス及びサービス提供者に対し自国の同種のサービス及びサービス提供者に与える待遇と形式的に同一の待遇を与えるか形式的に異なる待遇を与えるかを問わず、1の義務を履行することができる。
  3.  加盟国が他の加盟国のサービス又はサービス提供者に対して与える形式的に同一の又は形式的に異なる待遇により競争条件が当該他の加盟国の同種のサービス又はサービス提供者と比較して当該加盟国のサービス又はサービス提供者によって有利となる場合には、当該待遇は、当該加盟国のサービス又はサービス提供者に与える待遇よりも不利であると認める。