第2回配布資料一覧

資料2−3
別添4

会計分野の相互承認協定又は取決めの指針(仮訳)




 この文書は、会計サービスに関する相互承認の交渉を行う政府、交渉主体又はその他の主体のための実用的な指針を定める。この指針は、拘束力を有さず、加盟国によって任意に利用されることを意図しており、WTO加盟国の権利又は義務を変更するものではない。  この指針の目的は、当事者が承認協定について交渉すること及び第三者が当該承認協定への当該第三者の加入について交渉し又は同等の協定について交渉することを一層容易にすることである。承認を行う最も一般的な方法は、二国間協定を通じた方法である。GATS第七条はこの方法を許容できるものとして認めている。教育及び試験の基準、経験要件、規制の影響並びにその他の諸事項には差異があり、これらすべてが多数国間で承認を行うことを極めて困難にしている。二国間交渉は、交渉関係者が両当事者の環境に関連する主要な問題に集中することを可能とする。しかしながら、二国間協定が実現した場合には、これが他の二国間協定に至る可能性があり、最終的には相互承認を一層広範に拡大する。  自主的な承認が与えられる場合には、透明性のためこの指針の中の関連する要素をWTOに対して通報することが奨励される。当該要素は、例えば、B3、B4(a)及び(b)、B5並びにB6を含みうる。  この指針の各節に掲げられた例は実例として挙げられている。これらの例の列記は例示であり、網羅的なものとすることを目的とするものではなく、またWTO加盟国による当該措置の適用を是認することを目的とするものでもない。

A 交渉の進行及びGATSの下での関連する義務

 この節は、GATS第七条に基づくWTO加盟国の義務に関して、当該義務の履行について有益と認められる項目を掲げている。GATS第七条の写しはこの指針に附属する。
1 交渉の開始
 WTOに提供される情報は次の事項を含むべきである。
— 交渉を行う意思
— 議論に参加する主体(例えば、政府、法令その他に基づき交渉を行う権限を有する会計分野の全国的な組織又は協会)
— 追加的な情報を入手するための連絡先
— 交渉の対象事項(対象となる具体的活動)
— 予想される交渉開始時期及び第三者が関心を表明するための目標の時期

2 結果
 相互承認協定の締結に当たり、提供される情報は次の事項を含むべきである。
— 協定の内容(新たな協定である場合)
— 協定の重大な修正(既に協定が存在する場合)

3 フォローアップ活動
 1に基づき情報を提供するWTO加盟国がとるべきフォローアップ活動は次のことを確保することを含む。
— 交渉の進行及び協定自体がGATSの規定、特に第七条に適合していること
— 加盟国が、自国について、協定の実施及び監視を確保するために必要なあらゆる措置及び行動をとり、並びに権限ある当局により又はGATS第一条の規定に従い、関連する地方機関及びその他の組織が当該措置及び行動をとることを奨励すること
— 加盟国が、相互承認協定の交渉を行うことを求める他のWTO加盟国の要請に速やかに応ずること

4 単一の交渉主体
 単一の交渉主体が存在しない場合には、加盟国は、これを設けることを奨励される。



B 協定の形式及び内容


 この節は、交渉で取り扱われうる及び合意された場合に最終協定案に含まれうる諸項目を掲げている。この節は、相互承認協定を利用することを求める外国の自由職業家に加盟国が要求する事項に関する基本的な考え方を含む。

1 参加者
 相互承認協定は次の事項について明確に定めるべきである。
— 協定の当事者(例えば、政府、全国的な会計業組織又は協会)
— 協定の当事者以外の権限ある当局又は組織及び当該当局又は組織の協定上の地位
— 協定の各当事者の地位及び権限の範囲

2 協定の目的
 相互承認協定の目的は明確に定められるべきである。

3 協定の適用範囲
 相互承認協定は次の事項について明確に定めるべきである。
— 当事者の領域内で当該協定の対象となる具体的な会計職業又は名称及び職業活動に関する当該協定の適用範囲
— 関係する職業上の名称の使用を認められた者
— 承認のメカニズムが資格、原資格国で取得した免許又はその他の要件のいずれに基づくものであるか
— 当該協定が、関係する職業への一時的及び(又は)恒久的なアクセスを対象としているか

4 相互承認規定
 相互承認協定は、各当事者の領域での承認のために満たすべき条件及び当事者間で合意された同等性の水準について明確に定めるべきである。協定の厳密な規定は、前記のとおり、当該相互承認協定が作成された基礎によって異なる。相互承認協定の当事者の諸地方管轄区域の要件が同一でない場合には、当該相違点は明確に示されるべきである。協定は各当事者のいずれかの地方管轄区域によって与えられた承認の他の地方管轄区域への適用可能性について取り扱うべきである。
(a) 承認のための適格性
(i)資格
 相互承認協定が資格の承認に基づく場合において、当該協定は、可能なときには、次のことを定めるべきである。
— 必要とされる最低限度の教育水準(入学要件、学習期間、学科)
— 必要とされる最低限度の経験水準(免許取得に先立つ実務訓練又は監督下での職業実務の場所、期間及び条件、倫理的及び規範的基準の枠組み)
— 合格した試験(特に職業能力試験)
— 原資格国の資格が受入国で承認される範囲
— 当事者が、例えば、ある機関が発行する特定の卒業証書若しくは証明書を掲げることによって又は原資格国の当局が証明する具体的な最低限度の要件の証明書によって承認する用意があるとしている資格。当該資格は、一定の水準の資格を保持することによって一定の活動についてのみ承認を与えるか否かを含む。
(ii)登録
 相互承認協定が原資格国の規制当局による免許付与又は登録の決定の承認に基づく場合には、当該協定は、当該承認のための適格性を証明するメカニズムを明記すべきである。
(b) 受入国における承認のための追加的な要件(「補償的措置」)
 サービスの質を確保するために追加的な要件を定めることが必要であると認められる場合には、相互承認協定は当該要件が適用される条件を定めるべきである。そのような場合とは、例えば、受入国の資格要件又は現地の法令、慣行、基準及び規制についての知識に関して不十分な点がある場合である。この知識は、免許に基づき行う実務の範囲に差異があることから受入国の管轄下での実務に不可欠であり又は必要とされるべきである。
 追加的な要件が必要であると認められる場合には、相互承認協定は、当該要件を満たすために必要なもの(例えば、試験、適性検査、受入国又は原資格国での追加的な実務、実務訓練、試験に用いられる言語)を詳細に定めるべきである。

5 実施メカニズム
 相互承認協定は次の事項について定めるべきである。
— 協定の規定を監視し及び実施するために使用される規則及び手続
— 当事者間の対話及び行政上の協力のためのメカニズム
— 相互承認協定に基づく紛争の仲裁手段
 個々の申請者の取扱いに関する指針として、相互承認協定は次の事項に関する詳細を含むべきである。
— 申請に関連するあらゆる事項についての情報を入手するための各当事者の連絡先(権限ある当局の名称及び住所、免許手続、受入国で満たす必要のある追加的な要件等)
— 受入国の関係当局による申請の処理手続の期間
— 申請者に求められる文書、当該文書の提出様式及び申請の期限
— 資格及び免許に関連する原資格国で発給された文書及び証明書の受理
— 関連当局への申立手続又は関連当局による審査手続
— 合理的に必要な手数料
 相互承認協定は、次の約束を含むべきである。
— 措置に関する要請が速やかに処理されること
— 必要な場合には十分な準備期間が与えられること
— すべての試験及び検査が合理的な間隔で実施されること
— 相互承認協定の規定を利用することを求める申請者に対する手数料は受入国又は受入機関の費用に比例すること
— 実務訓練に対する受入国の支援計画及びこれに関連する受入国の約束に関する情報が提供されること

6 受入国の免許及びその他の規定
 可能な場合には、
— 相互承認協定は、適格性が証明された後に免許を実際に取得する手段及び条件並びに当該免許の必要事項(免許及びその内容、職業団体への入会、職業上の名称及び(又は)学位の使用等)についても定めるべきである。資格以外の免許要件、例えば、次の免許要件は説明されるべきである。 事務所の住所、設置要件又は居住要件 言語要件 健全な経営及び財政状況の証明 職業上の損害賠償保険 業務上の又は事務所の名称の使用に関する受入国の要件の遵守 受入国の倫理(例えば、独立性及び兼業禁止)の遵守
— 相互承認協定は、制度の透明性を確保するために各当事者に関する次の事項に関する詳細を含むべきである。 適用される関連法令(懲戒処分、財政的責任、責任等) 規律上の権限及びその結果生ずる自由職業家に対する制限を含む規律の原則及び職業倫理の強制 現行の能力検証方式 自由職業家の登録取消しの基準及び関連手続 相互承認協定の目的のために必要な国籍要件及び居住要件に関する規制

7 協定の改正
 相互承認協定が、当該協定の改正又は撤廃を可能とする規定を含む場合には、その詳細は明確に定められるべきである。


附属書

第七条 承認

  1.  加盟国は、サービス提供者に対し許可、免許又は資格証明を与えるための自国の基準が全部又は一部について満たされることを認める目的をもって、3に規定する義務に従い、いずれかの国において得られた教育若しくは経験、満たされた要件又は与えられた免許若しくは資格証明を承認することができる。その承認は、措置の調和その他の方法により行うことができるものとし、当該いずれの国との間の協定若しくは取決めに基づいて又は自主的に行うことができる。

  2.  1に規定する協定又は取決めの当事者である加盟国は、当該協定又は取決めが現行のものであるか将来のものであるかを問わず、関心を有する他の加盟国が当該協定若しくは取決めへの自国の加入について交渉し又はこれと同等の協定若しくは取決めについて交渉するための機会を十分に与える。加盟国は、承認を自主的に与える場合には、他の加盟国に対し、当該他の加盟国の領域内で得られた教育、経験、免許若しくは資格証明又は満たされた要件が承認されるべきであることを明らかにするための機会を十分に与える。

  3.  加盟国は、サービス提供者に対し許可、免許又は資格証明を与えるための自国の基準を適用するに当たり、国の間を差別する手段又はサービスの貿易に対する偽装した制限となるような態様で承認を与えてはならない。

  4.  加盟国は、次のことを行う。
    (a) 世界貿易機関協定が自国について効力を生ずる日から十二箇月以内に、承認のための現行の措置をサービスの貿易に関する理事会に通報し、及び当該措置が1に規定する協定又は取決めに基づくものであるかどうかを表明すること。
    (b) 1に規定する協定又は取決めの交渉が実質的な段階に入る前に他の加盟国が当該交渉に参加することについての関心を示すための機会を十分に与えるため、当該交渉の開始をできる限り早期にサービスの貿易に関する理事会に対して速やかに通報すること。
    (c) 承認のための新たな措置を採用し又は承認のための現行の措置の重大な修正を行った場合には、当該措置をサービスの貿易に関する理事会に対して速やかに通報し、及び当該措置が1に規定する協定又は取決めに基づくものであるかどうかを表明すること。

  5. 5 1の承認は、適当な場合には、多数国間で合意された基準に基づくべきである。加盟国は、適当な場合には、承認のための共通の国際的基準並びに自由職業等のサービスの業務のための共通の国際的基準を確立し及び採用するため、関連する政府間機関及び非政府機関と協力して作業を行う。