第2回配布資料一覧

資料2−3
別添9

我が国の規制緩和に関するEUの要望(抄)(2001年10月)




1.2.法律サービス

昨今の顧客は、単一かつ完全に統合された国際的法律事務所から国際ビジネスに関する助言を得られることを期待している。これはとりわけ、国境を越えた投資取引きについていえることである。日本において顧客がこうした助言を得られないことは、経済に様々な形で深刻な影響を与えている。一方では、日本企業は、他のすべての主要先進工業国で提供されているものと同質の法律サービスを自国市場で受けることが出来ないため、競争面で不利益を被っている。他方、日本市場への潜在的投資家は、ビジネスにおける重大な決定----例えば日本企業の買収、合弁企業の設立、株式の新規公開など----をする際に必要とされる助言が受けられないことにより、対日投資を思いとどまるという傾向を示している。

1.2.1.共同事業、雇用、パートナーシップ

制限的な規制制度のために、外国弁護士が日本で活動する機会は限定されている。このことは、欧州を含む外国の法律事務所にとって問題であることはいうまでもない。と同時に、日本の若手弁護士にとっても、ますます国際化が進行する市場において国際的な法律サービスを提供する経験を積む機会が著しく制限される結果となっている。部門横断的な問題に対するダイナミックかつ完全に統合された最良の法律サービスが、日本の企業部門を支援し、また金融サービス部門の構造改革努力を維持させるために必要であるにもかかわらず、この制限的な規制の枠組みは弁護士がその種のサービスを提供することを阻んでいる。

現行の規則は、日本の弁護士が日本で資格承認されている外国法事務弁護士と真のパートナーシップもしくは雇用関係を結ぶことを禁止している。パートナーシップと雇用関係は、いずれも個々の弁護士の独立性および職務上の責任に影響を及ぼすものではない。日本以外の国(司法管区)において、異なる司法管区で資格を取った弁護士同士がそのような関係を結ぶことを許可しているケースを見ても、個々の弁護士の独立性、顧客に提供すか法律サービスの質のいずれにおいてもマイナスの影響は全く見受けられない。

1995年に導入され1998年に改正されたいわゆる「共同事業制度」という妥協措置により、特定のケースにおいて日本の弁護士と外国法事務弁護士間の共同事業が可能となったが、雇用関係やパートナーシップを結ぶことは許されていない。そのような禁止規定は、日本の弁護士が非合法な活動を行うことを避けるために必要であるという説明には、正当な根拠が存在しない。またこうした説明がもたらしている制限は、保護主義的性格を帯びたものだ。自国の弁護士と外国の弁護士との間でパートナーシップを認めている国における経験は、その種の懸念を支持するものでないし、そうした懸念は法律制度そのものによって対応できることを明らかにしている。さらに、統一されたサービスの提供を妨げることで、日本国内外の人や企業といった顧客の利益に反する法務環境を生み出す結果となっている。

したがって、まず外国法事務弁護士が日本の弁護士と完全なパートナーシップを結ぶことが保証され、その後、外国法事務弁護士による日本の弁護士の雇用が認められようになるために、さらなる改善が必要である。

EUは、本年6月に発表された司法制度改革審議会意見書で提示された改革機会を評価している。それは、特に、同審議会は次の様に述べているからに他ならない。「日本の弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、特定共同事業(現行制度下では、日本弁護士と外国法事務弁護士が、法令の定める一定の要件の下で、渉外的要素を有する法律事務を行うことを目的とする共同の事業とされている)の要件緩和等を行うべきである。外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の見直しは、国際的議論もにらみつつ、将来の課題として引き続き検討すべきである」。

EUは、この複雑な問題を一挙に解決するためにも、日本政府に対し、現在進行中の司法改革プロセスがもたらしている勢いをしっかり捕らえることを要請する。現行の法的枠組に求められている改正は比較的に控えめなものであり、従って、早期かつ簡便に対処することが可能なはずである。

優先提案:
外国弁護士と日本の弁護士のパートナーシップに関する制限を撤廃し、そしてその後に外国弁護士による日本の弁護士の雇用に関する制限を全面的に除去することにより、日本の弁護士と外国法事務弁護士間の全面的かつ無制限な提携(アソシエーション)の自由を保証する措置を取ること。

1.2.2.祭格承認基準である職務経験

外国法事務弁護士の資格承認要件として、原資格国における職務経験が要求されている。この条件は、日本の弁護士には課されていない。これは、職務経験が5年以下の者にとっては、日本に活動拠点を置こうという意欲をそぐだけでなく、不必要な規制障壁となっている。司法管区によっては、継続的学習を義務付けているケースがあるが、これは日本の職務経験の要件とは区別されるべきものである。そのような学習要件を課しているのは、受け入れ国ではなく母国の主管当局なのである。外国法事務弁護士の資格承認要件としての職務経験年数は、1998年には5年が3年に短縮され、この問題に関する進展が見られた。同時に、資格要件を満たすために算入される在日期間が2年から1年に短縮されている。また、これまで母国に限定されていた職務経験地も拡大され、資格申請者の母国法に関連する法律サービスが提供される他国における期間が含まれるようになった。

優先提案:
日本での活動が認められている指定外国弁護士の免許を取得する上で必要とされる資格取得後の職務経験要件を全面撤廃すること。