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国際化検討会(第3回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年3月20日(水)14:00〜17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
ヴィッキー・バイヤー、柏木昇、加藤宣直、久保利英明、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、西謙二、波江野弘(敬称略)
(説明者)
山下輝年(法務省法務総合研究所国際協力部教官)
城祐一郎(国連アジア極東犯罪防止研修所教官)
大塚和也(外務省経済局国際機関第一課サービス貿易室)
上柳敏郎(日本弁護士連合会国際室長)
前田陽司(太陽法律事務所)
ジョンH.スティード(ポール・ヘイスティングス・ジャノフスキー・アンド・ウォーカー外国法事務弁護士事務所)
近藤浩(東京青山・青木法律事務所)
垣貫ジョン(ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所)
ロバートF.グロンディン(在日米国商工会議所代表)
アランD.スミス(在日米国商工会議所金融サービス委員会委員長)
(事務局)
松川忠晴事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議題
1.法整備支援の現状について
2.特定共同事業事務所からのヒアリング
「特定共同事業事務所から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について」
3.在日米国商工会議所からのヒアリング
「米国企業から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について」
4.司法制度改革推進計画について

5 配布資料
資料3−1 法務省説明資料
資料3−2 外務省説明資料
資料3−3 日弁連説明資料
資料3−4 太陽法律事務所/ポール・ヘイスティングス・ジャノフスキー・アンド・ウォーカー外国法事務弁護士事務所説明資料
資料3−5 東京青山・青木法律事務所/ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所説明資料
資料3−6 在日米国商工会議所説明資料
資料3−7 司法制度改革推進計画

6 議事

(1)法整備支援の現状について
 法務省、外務省、日弁連から、法整備支援の現状について説明がなされた(資料3−1、資料3−2、資料3−3)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、▲:日弁連、△:法務省、▽:外務省)。

○ 法整備支援については、日本の法律事務への理解促進や外国との人脈作りなどといった観点からも重要であると考えるが、これらの観点について何かお考えはあるか。

△ ご指摘のような意味での交流は、名古屋大学、横浜国立大学、九州大学といった大学で行われていると承知している。これらの大学のマスターコースにアジア諸国から留学生を受入れており、これらの学生が日本のコンタクト・パーソンとなって帰っていく。ただ残念なのは、大学で受け入れると、実務での交流は盛んではなくなるので、どれだけ日本の実務への理解促進に役に立っているのかは若干疑問がある。そのようなシステムは長期的には、法務省も絡んでくる可能性が高いと考える。国連極東アジア犯罪防止研修所や法務総合研究所の国際協力部では1,2ケ月のアジア諸国に対する研修が行われているので、相手国を訪れた時には情報が取りやすい良好な関係は築いているが、それだけでは駄目で、その後も継続的に連絡をとるような体制づくりが重要であると考える。

○ 法整備支援の予算規模はどのくらいなのか。

△ 国際協力部の通常の予算は6000万円から7000万円程度である。これは研究の予算が中心である。研修については、海外からの招聘をすることになるので、そのほとんどがJICAの下で行われている。この他、アジア開発銀行や韓国の大法院などと資金を出し合って、研修などが行われている。外国での調査研究費についてはお寒い限りで、年に2、3人程しか海外へ出張することができない規模である。

▽ ODAでは法整備支援の枠があるわけではないので、個々の案件を集計しなくてはならないが、その作業が困難であるので今回は準備していない。

▲ カンボジア弁護士会との共同事業の予算は、今年度1000万円程度であり、来年度は3000万円程度である。リーガルエイドについては1000万円程度ではないか。専門家として派遣される弁護士が自腹を切るようなこともある。

○ 日本の法体系を開発途上国に押し付けないことが法整備支援の原則であるというのはそのとおりであるが、日本の法律を輸出する観点からは、予算面でかなり力が抜けてはいないか。

△ 直接の担当の部署から見ると、人員も足りないし、予算も足りないのは間違いはないが、やはり、法律家の全体量が少ないのが一番の問題であると感じている。実際にアジアに行くと米国のローヤーが幅を利かせており、全体量として日本は太刀打ちできるような状況にはない。我々は、相手国と協議を行う参加型の協力をしてきており、相手国の信頼を勝ち得てきたと考えており、実際に日本に対する途上国の期待は高いが、このままでは現状維持に留まることになろう。

(2)特定共同事業事務所からのヒアリング
 太陽法律事務所/ポール・ヘイスティングス・ジャノフスキー・アンド・ウォーカー外国法事務弁護士事務所から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について説明がなされた(資料3−4)。現行の特定共同事業の問題点等については、次のような説明がなされた。

  •  会計のシステムや書類の管理が複雑になるなどの問題がある。

  •  現行では、外資の割合が50%以上の企業が当事者である法律事務が特定共同事業の目的の一つとなっているが、このように目的を限定することに果たして合理性があるのかどうか疑問である。ある日突然、持ち株の比率が変わって特定共同事業の目的から外れることになり、振込み口座を特定共同事業から弁護士事務所の方へ変更することを余儀なくされ、依頼者を混乱させることがある。

  •  現状のまま、弁護士業界を保護し続けるのが果たしていいのかどうか疑問である。国際競争力の喪失や少数事務所による寡占といった弊害がないとは言えない。

  •  若い弁護士に対する日本法のトレーニングといった側面からある程度の規制は必要であり、完全な自由化もどうかとは思うが、外弁からの不当な干渉を恐れるがあまり弁護士と外弁との提携を不必要に制限することは間違っている。不当な干渉があるならば提携をしなければ良いのであって、制度として規制をするのではなく、できるだけ個々の弁護士の判断に任せてほしい。

 これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:事務局、■:特定共同事業事務所)。

○ どういう規制を外してほしいと考えているのか。

■ なぜ特定共同事業というシステムを続ける必要があるのか分からない。その規制の意味は果たして何なのか。そのシステムを維持することにより、どのようなパブリック・インタレストを守ろうとしているのか理解できないと考えている。

● 特定共同事業事務所で受任できるかどうかの判断に迷うような、グレーゾーンのケースはあるか。 

■ ある。その場合は、弁護士事務所で受任するようにしている。

 引き続いて、東京青山・青木法律事務所/ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について説明がなされた(資料3−5)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、■:特定共同事業事務所)。

○ 現行の弁護士事務所、外国法事務弁護士事務所、特定共同事業事務所という3つの事業体を1つにできるとしたら、今説明されたような問題は解決されるということなのか。

■ ほとんどの問題は解決されると考えている。

○ 特定共同事業を撤廃したら、渉外要素のない純国内案件の責任関係はどのようになるのか。外弁も責任を負うことになるのか。

■ 恐らくそのような形態にはならないだろうと考えている。純国内事件については、日本の弁護士が責任を負うことになろう。品質維持の問題があり、外弁が責任を追うことはない。

■ ベーカー&マッケンジーについては、若干誤解もあるかも知れないが、組織はローカルな事務所の緩やかな集合体であって、本店が支店に対して資金援助をしたり、支店をコントロールするようなことはない。

○ 仮に一つの事業体となったとしても、弁護士の独立性は保たれると考えて良いのか。

■ そのとおりである。

○ 弁護士と外弁が一体となって処理すべき純国内事件の例として、国際的な特許侵害訴訟における日本の特許庁に対する手続きを挙げられたが、日本の特許庁に対する手続きはあくまで日本の弁理士が行うことには変わらないのではないか。そうすると、現行の制度のどこに問題があることになるのか。

■ 特定共同事業を撤廃すると、一つのユニットとしてサービスが提供できるということである。

○ 制度の問題として、弁護士の独立性を担保する上で何か考えはあるか。

■ 制度の問題なのか処理の方策の問題なのか若干整理されていないが、純国内事件については日本弁護士のパートナーが関与して処理がなされなくてはならないと考えている。

○ 特定共同事業を営む弁護士の5年の職務経験要件については、要件緩和の必要性があると考えるか。

■ 個人的な見解だが、その必要はないのではないかと考えている。

○ レターヘッドに3つの事業体の名称を記載しなければならないという制約は、諸外国でもあるのか。

■ 10年程前から、ほとんどヨーロッパの国ではベーカー&マッケンジーの名称を名乗れるようになっている。未だに制約があるのは、開発途上国や南米ぐらいである。

■ 我々は東京青山・青木という名称に強いシンパシーを持っている。仮に名称を統一するならばこの名称に統一をと考えている程である。ただし、現行のままでは、色々な部分で混乱が起きているのは事実である。

○ これまでの説明によれば、日本法をどのように扱うべきかということと、日本の弁護士と外弁とがどのように提携すべきかということは分けて考えるべきであると理解して良いか。

■ そのとおりである。

(3)在日米国商工会議所からのヒアリング
 在日米国商工会議所(ACCJ)から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について、次のような説明がなされた(資料3−6)。

  •  ACCJは1980年代の初期のころから、この問題に関心を持ってきており、85年頃から意見書を出していた。

  •  資本市場のビックバンや企業のグローバル化の中、世界のネットワークを利用したワンストップ・サービスのニーズが高まってきている。その中で、法律事務所や会計事務所の合併が盛んに行われてきており、いずれその波が日本に来ると考えられる。

  •  今一番問題となっているのは法律事務所の規模である。その規模を大きくして欲しいというのが経済界の希望である。なぜ特定共同事業では駄目かというと、日本の弁護士が外国のローファームのパートナーにはなれないという曖昧さがあるからである。我々としては若手弁護士と組むことはなく、10年、20年と経験を積んだ弁護士をパートナーとして受け入れたいと考えているが、一方、ベテランの弁護士は海外のローファームのパートナーにはなれないということで我々とパートナーシップを組みたがらない。結果的に、なかなかマーケットが要求するような規模にはならないということになる。

  •  若い弁護士のトレーニングに適している小規模の案件が特定共同事業には少ないということも問題である。

  •  外国のローファームが弁護士をコントロールするという議論は抽象的なものに過ぎない。顧客に品質の高いサービスを提供するために、ベテランの弁護士が若い弁護士を厳しく指導するようなことは、どこの国のローファームでも同じように行われていることである。

  •  日本がこのパートナーシップの問題について最終的な解決を図らない場合は、WTOの関連において、日本は中国、インドネシアなどの開発途上国において一体化された品質の高い法律サービスを受けられないのではないか。今が日本にとって唯一のチャンスである。日本においても早急にパートナーシップを許容し、WTO交渉の場において、開発途上国に対して欧米諸国と協力してパートナーシップの自由化を要求してほしい。

  •  日本の弁護士については、訴訟関係では世界的に負けない有能な人が多いが、ビジネス上の取引関係では経験のある人が本当に少ないと感じている。人が少ないので、コンフリクト(利益相反)の問題が生じやすくなっている。司法研修所において取引の訓練を受けないことは問題であり、また、デューディリジェンス(適正評価)のような大型の取引になると複数の事務所に依頼せざるを得なくなることも問題である。結論として、経験のある弁護士が外国のローファームと提携して、若い弁護士を訓練するような体制づくりが行われることを希望したい。

 これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、■:ACCJ)。

○ 世の中には組織のしっかりとした立派なローファームばかりではないのだから、制度の問題として弁護士の独立性を担保することが重要であるが、この点についてどのように考えているのか。

■ 環境が変わったと言いたい。過去には渉外関係の仕事をやりたい人は少なく、若手の訓練も十分にできないような時代が続いた。今では、若い人が希望をすれば、ニューヨークでもどこでも色々な事務所に行けるのである。弁護士の独立性を担保するということは、弁護士個人の責任であると考えている。顧客からの独立性を保って、自分の意見を貫くような人ではないと、我々外国のローファームとしても歓迎することはできない。業務過誤の責任を最も恐れるので、独立性のないような弱い人はお断りであるというのが我々の原則である。米国では独立性のない者は弁護士会に告発すべきだというルールがある。ローファームによる弁護士のコントロールは問題だというが、それが具体的に何なのか良く理解できない。何が世の中のメインであるのかを見極めてシステム設計すべきなのである。そうでないとシステムの健全性が保たれない。マイナス面をベースにシステム設計するのは誤りである。例外的に独立性が保たれていない弁護士がいるとしたら、弁護士会として告発すべき問題なのである。

(4)司法制度改革推進計画について
 事務局から、司法制度改革推進計画(資料3−7)について説明がなされた。

(5)その他
 その他、事務局と委員との間で、次のような質疑がなされた(○:委員、●:事務局、□:座長)。

○ 知的財産の問題については、是非、国際化検討会で取り上げて欲しい。

● 司法制度改革推進計画の記載の限りにおいて、知的財産の問題をこの検討会で議論いただくことは結構であると考えている。

● 次回は、欧米以外の外国法事務弁護士からもヒアリングをしたいと考えているが、その必要性について何か意見はあるか。

○ 当然ヒアリングをすべきである。

○ 具体的には中国などを考えているのか。

● 選択肢としては中国も考えられる。

○ ドイツやフランスなどのシビル・ロー(大陸法)の国からのヒアリングも検討して欲しい。

○ ドイツの経験をヒアリングすることも面白いと思う。外国法事務弁護士は何人ぐらいを想定しているのか。

● 現在のところ1名を予定しているが、時間配分を工夫すればもう1人は可能かと思う。

○ アジアの人達がどのような意見を持っているのかは聞く価値があると思う。ドイツやフランスの人を排除するという意味ではないが。結局は人選の問題に尽きるのではないか。

□ 外国法事務弁護士の人選については、今出された意見も踏まえつつ、事務局で更に検討をして欲しい。

(6)今後の日程等
 次回(4月11日(木)10:00〜12:30)は、引き続き、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働について関係者からヒアリングを行うこととなった。

(以上)