伊藤忠商事(株)法務部コーポレート・カウンセルの茅野みつる氏から、日本企業から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について説明がなされた(資料4−2)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:説明者)。
○ 合弁事業の例は、日本における合弁会社の設立の案件であるので、本来、日本の渉外事務所に依頼をすべきところ、外国法事務弁護士事務所に依頼したのは奇異に感じる。この案件では特定共同事業を営む弁護士がアドホックにしか関わらなかったとのことだが、これは日本法の法律事務を外国法事務弁護士が取り仕切っているという、現行の特定共同事業の問題点を指摘しているのではないか。
● この合弁事業の例で当初外国法事務弁護士に依頼したのは、英語による契約書のドラフティングなど英語が特に重要な案件であったためである。この案件で、日本の弁護士がアドホックにしか関わらなかったことは大変残念である。我々が一番望んでいるのは、日本弁護士と外国法事務弁護士とが同じチームのメンバーとしてサービスを提供するということである。この件で外国法事務弁護士が日本法を取り仕切ったという事実はない。
○ 当初日本の法律事務所に依頼しなかったのは、日本弁護士と外国法事務弁護士がパートナーシップを形成できないという問題に起因することなのか、それとも、日本の弁護士の数が少なくて需要に応えられていないという問題に起因することなのか。
● 依頼した特定共同事業事務所では、日本の弁護士の数が少なく、弁護士と外国法事務弁護士に一体感がなかったことで、総合的なサービスが提供されなかった。振り返って、当初日本の法律事務所に依頼しなかった理由を考えてみると、渉外弁護士の数が少ないという問題とパートナーシップの問題の両方があったのではないか。
○ 案件の依頼先を変更するのは大変だと思うが、何か問題はなかったのか。
● 商社特有なのかも知れないが、弁護士が提供するサービスの質についてはかなりシビアに見ている。
○ この合弁事業の例は、渉外案件とはいっても実態としては日本法が適用される案件であったと思うが、当初外国法事務弁護士に案件を依頼したのは、海外との交渉に外国法事務弁護士を利用し、日本法については法務部門で十分に処理できるという判断があったということなのか。
● 米国でのソフトウエアに関する法律問題に重点を置いていたということである。
○ 中小企業の渉外案件については、日本の弁護士に依頼するケースが大半であると思うが、御社でもそのようなケースはあるのか。
● ビジネスモデル特許のような知的財産権関連の案件については、日本の弁護士事務所へ依頼している。
○ 案件の依頼先を外国法事務弁護士事務所から特定共同事業事務所に変更したのは、当初依頼した外国法事務弁護士の資質の問題があったということなのか。それとも、外国法事務弁護士単独のプラクティスと特定共同事業のプラクティスに違いがあったということなのか。
● 我々が期待していたのは、外国法事務弁護士事務所が外の日本の渉外事務所と共同で案件処理をするというサービスではなく、一つの事務所に依頼したらその事務所で全ての処理を行うというサービスであった。当初の依頼先に問題があったということではない。
○ 最近は渉外弁護士が増えていることなどを考えると、トータルとして日本の渉外弁護士の数が少ないという説明には実感が湧かない。
● これは、英語のドラフティングなどについてリアルタイムでサービス提供を必要とする案件であった。このようなリアルタイムにサービスを提供できる渉外弁護士事務所があまり思い浮かばないというのが正直なところである。