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国際化検討会(第4回)議事録



1 日 時
平成14年4月11日(月)10:00〜12:30

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
柏木昇座長、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、玉井克哉、道垣内正人、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(説明者)
茅野みつる(伊藤忠商事(株)法務部コーポレート・カウンセル)
トーマス・ヴィッティ(外国法事務弁護士)
何連明(外国法事務弁護士)
吉田孝司(中小企業総合事業団調査・国際部国際事業課長)
太田泰雄(中小企業総合事業団調査・国際部国際事業課・中小企業国際化支援アドバイザー)(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
1.茅野みつる氏からのヒアリング
「日本企業から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について」
2.トーマス・ヴィッティ氏からのヒアリング
「ドイツ弁護士から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について」
3.何連明氏からのヒアリング
「中国弁護士から見た弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について」
4.中小企業総合事業団からのヒアリング
「国際化支援事業から見た中小企業の海外投資・国際取引の現状等について」
5.ヒアリングについて(自由討論)
6.米国通商代表部(USTR)の外国貿易障壁報告書について

5 議 事
○柏木座長 所定の時刻になりましたので、第4回「国際化検討会」を開会させていただきます。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に、このたび人事異動の関係で、当検討会の西委員が孝橋委員に変更となりました。孝橋委員から簡単に自己紹介をお願いいたします。

○孝橋委員 東京法務局総務部長の孝橋でございます。私は昭和56年4月に裁判官に任官いたしまして、期で申しますと、33期の裁判官でございます。
 判事補の時代、昭和60年から61年に掛けまして、米国のシアトルにございますワシントン大学にビジティング・スカラーという形で約1年間席を置かしていただいた経験がございます。
 それから、平成5年に約半年間、米国とカナダの司法制度の調査ということで出張させていただいた経験がございます。
 その後は専ら日本国内で裁判事務に従事しておったわけでございますが、この4月の異動で西部長の後任で東京法務局の訟務部長という職を拝命することになりました関係で、この検討会のメンバーに加えていただくことになりました。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、早速、今回の議事予定について事務局から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 本日は前回に引き続きまして、ヒアリングを続行したいと考えております。本日お招きしておりますのは、伊藤忠商事の茅野みつるさん、それから、外国法事務弁護士のトーマス・ヴィッテイさん、同じく外国法事務弁護士で何連明さん。それから、中小企業総合事業団の吉田さん、太田さん、御両名に御出席いただいております。
 茅野さんからは、大手企業の法務部に勤務されているという御経験などを踏まえての御意見などを伺いたいと考えています。
 それから、ヴィッテイさんは、ドイツ出身の外国法事務弁護士さんでいらっしゃいますので、そういういったお立場から。
 何連明さんは中国御出身の外国法事務弁護士でいらっしゃいますので、そういったお立場から同じく御意見等を伺いたいと思います。
 それから、中小企業総合事業団からのヒアリングは、「国際化支援事業から見た中小企業の海外投資、国際取引の現状等について」といったテーマで御説明を受けたいと思っております。
 ヒアリングの後で、今日はフリートーキングをしていただく時間を15分程度設けておりますので、その際に、今日を含めまして、これまでヒアリングした状況などを踏まえての御意見、それから、4月中にもう一度検討会を予定しておりますが、そのときもヒアリングを予定しておりますので、そのことについての御意見等を忌憚なく伺えればと思っております。
 最後に、米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」というのがございまして、それを今日は資料にもお付けしてありますが、この資料につきまして、下川委員の方から若干御説明をいただくということにしたいと思います。
 以上ございます。

○柏木座長 それでは、まず事務局から配付資料の御説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 まず資料4−1でございますが、これは先ほど自己紹介いただきました孝橋委員が交代されました関係で、当検討会の名簿を配付しております。
 資料4−2は、本日の茅野みつるさんの説明資料でございます。
 資料4−3は、ヴィッテイさんの説明資料でございます。
 資料4−4は、何連明さんの説明資料でございます。
 資料4−5が、中小企業総合事業団からの説明資料でございます。これにはパンフレット類が3点ほど含まれております。
 それから、レジュメと資料、これらが含まれておりますので、御確認ください。
 最後に資料4−6、これが米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」でございます。
 資料は以上でございます。
 それから、封筒に入っている資料があるかと思いますが、これは当推進本部宛てに、「司法に国民の風を吹かせよう実行委員会」というところから、要請書が来ておりまして、各検討会にも配付してほしいという要望がございましたので、皆さんにお配りしております。当検討会の検討課題とは直接は関係ないかと思いますが、こういった御要望も来ているという参考でございます。
 以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。
 まず、伊藤忠商事法務部の茅野みつるさんからヒアリングを行いたいと思います。よろしくお願いします。

○茅野氏 皆様おはようございます。今日はこのような大事な検討会に出席する機会を与えられまして、大変光栄に思っております。
 今回、日本企業から見た弁護士と外国法事務弁護士との提携についてお話しをということでしたので、それに関して20分ほどお時間をいただいているように伺っていますので、プレゼンテーションをさせていただきます。
 私ごとで大変申し訳ありませんが、私がコメントする際に、なぜこういうコメントになっているのかという背景を少し申し上げることができればと思いまして、その話をさせていただきます。
 私はカリフォルニアの弁護士でして、99年までの9年間、グラハム・アンド・ジェームス弁護士事務所という、カリフォルニアにおける弁護士事務所で勤務しておりました。グラハム・アンド・ジェームズを勤務先として選んだ理由ですが、日本人ということもありますので、いずれは日本企業の海外、アメリカまたはヨーロッパ、アジアにおける事業のお手伝いができればと思ってです。グラハム・アンド・ジェームズでは、主にジャパン・プラクティスということで、その当時は日系企業がまだカリフォルニアで相当活躍していましたので、その仕事に関するお手伝いを致しました。
 それ以降、転勤になりまして、今度はグラハム・アンド・ジェームスの香港に移りました。そこではやはり日系企業の香港における仕事をお手伝い致しました。その当時はまだ返還前でしたので、日本企業が香港から中国へ進出する際に、香港をステッピング・ストーンとするという傾向がありましたので、そのお手伝い仕事が多くございました。
 それから、グラハム・アンド・ジェームスの東京オフィスに来まして、ここでは、どちらかと言いますと、日本企業とアメリカ企業の日本における合弁関係に関しまして、仕事をしております。
 その後サンフランシスコに異動になりまして、そこでは主に日本の銀行のサンフランシスコ支店のために、アメリカの会社に対する貸付け等に関する法律サービスの提供をしました。
 99年末にグラハム・アンド・ジェームスを離れまして、グラハム・アンド・ジェームスの重要なクライアントであった伊藤忠商事に入りました。今は伊藤忠商事の法務部に、コーポレート・カウンセルという形でおります。
 伊藤忠商事においての私の仕事というのは、主に伊藤忠商事とアメリカの会社が、日本において合弁事業を展開していく時の法律アドバイスや、東南アジアに随分まだ不動産資産がありますので、それらの売却に関するリーガルサービスの提供です。
 私がこれから申し上げますコメントは、今まで法律事務所においてなるべく総合的な法律サービスを提供しようしてきた、サービスを提供する立場にあった時の経験と、今回伊藤忠商事に入って2年以上になりますけれども、今度はサービスを受ける側の立場からにある経験とに基づくものです。
 日本企業だけではなくて、すべての企業だと思いますが、顧客は法律事務所が総合的に、それからなるべく低コスト、これは弊害があるかもしれませんが、リーズナブルなコストで、迅速に法律サービスを提供してくれることを常に望んでおります。
 これは国内、国外案件にかかわらず、法律事務所を探すときというのはそうだと思いますが、特に伊藤忠商事のような海外案件、または海外の会社との案件が日本においても多い会社の場合は、特にそれは言えると思います。
 顧客のニーズ、と申し上げましたけれども、今般お話しさせていただきたいのは、顧客が会社のときのことであります。私の経験上クライアントが個人であって、国際問題に関わってきたという経験ではありません。特に企業から見たニーズということについてお話ししたいと思います。
 一昨年前ですが、合弁事業のいい例ということで挙げさせていただきたいのが、伊藤忠商事と、日本の商社2社がアメリカのソフトウェア会社と日本において合弁事業を立ち上げるという案件がございました。ソフトウェアもまだバブルのころだったので、その様な案件というのは、私どものところだけではなく、ほかの会社でも経験されたのではないかと思います。その意味では割に一般的な案件ではないかと思います。この案件は、いろいろなイシューを含む案件でして、具体的にどの様なものであったかというと、合弁会社というのは日本において立ち上げる会社でしたので当然のことながら日本法における問題というのもいろいろ出てきましたし、また、日本の合弁会社がアメリカのソフトウェア会社からソフトウェアのライセンスを受けるということになりましたので、そのアメリカにおけるソフトウェアに関する問題がありました。また、日本の合弁会社がライセンシーとして、例えばアメリカの会社が倒産した場合には、どのような保護を受けられるかという問題がありました。
 具体的に、こちらとしまして要求した法律サービスの一例としては、日本及び米国における知的財産権、及び破産法に関するアドバイス、それから日本の商法、特に会社法に関する法律アドバイス等です。
 また、ライセンサーになりましたアメリカの会社というのは、当初パートナーシップという形を組んでおりまして、それからLLCに転換したものですから、ライセンサーがパートナーシップの場合、またはLLCの場合の特有の法律問題が出てきましたので、それに関する法律アドバイス。
 当然のことながら、相手方がアメリカの会社でしたので、契約書も英語でなければならないということになりまして、合弁契約書、ライセンス契約書などはすべて英語で作成するということになりました。
 当然のことながら、合弁会社そのものは日本の会社ですので、定款とか、日本語で作成する資料というのはさまざまありました。
 これは、結構長い間交渉した案件で、1年ほど交渉期間がありましたが、その間、日本、アメリカにおいて英語でネゴシエーションをすることは当然のことながら、商社3社側は、3社間でいろいろ合意をする必要事項もありましたので、日本語によるネゴシエーションもありました。又、日本側、商社間の日本語による覚書というのも作成しました。
 このような法律サービスを提供してくれるところはどこがあるだろうということで商社間で随分議論したわけですが、当然のことながら、日本の法律事務所に依頼することもできましたし、それから外国法事務弁護士に依頼することもできましたし特定共同事業にお願いするということもできました。最初はまず外国法事務弁護士に依頼しようじゃないかということで、当初は外国法事務弁護士に本件をお願いしました。なぜ外国法事務弁護士に依頼したかと申しますと、やはり米国及び日本にオフィスがありましたので、特に米国にオフィスがありましたので、交渉のときにも立ち会うことが可能であるし、それから、アメリカの破産法に関して特にアドバイスをほしかったものですから、ソフトウェア会社ということもありましたので、いつ倒産するかわからないとうことも考えていましたので、米国破産法に強いところということで、外国法事務弁護士の東京オフィスに依頼しています。
 相手方のソフトウェア会社は特定共同事業にお願いしました。
 結果的には、相手方の特定共同事業が大変良い仕事をしてくれました。こちらの外国法事務弁護士事務所は、東京における人数というのが3、4人だったということで、とても小さく、なかなか会議に出席して下さることができませんでした。
 また、破産法に関するアドバイスというのは、アメリカの方に専門家がいましたので、時差などもありまして、なかなかコミュニケーションがスムーズにできませんでした。直接電話などをしたりして、コメントを得るようにしましたけれども、どちからというと、こちら側にいろいろ質問があった場合、アドホックに電話をしてサービスをお願いするという形になりました。こちら側としては、1人だれかリーダー格の弁護士がいて、全体をまとめてくれるということを期待しておりましたが、残念ながらそういうサービスは得られませんでした。
 そういうこともあったものですから、相手方の特定共同事業はなかなか良い仕事をしているようだし、こちらも特定共同事業に変えようということで、プロジェクトの途中で特定共同事業にお願いしています。
 特定共同事業でも、本当に良いサービスをしてくれるところというのは、まだまだ数が少ないと考えておりますが、その中でも評判のよかった特定共同事業にお願いしました。
 その結果、なかなか良いアドバイスをしてもらったと考えています。ただ、後から考えますと、もっと改善点はあったと思います。やはり特定共同事業だったということで、窓口になっていたのは、アメリカの弁護士だったのですけれども、日本の問題というのをもう少し日本の弁護士も交えて1つのチームとしてこちらは法律サービスを提供して頂きたかったです。それがまだできていなかったと思います。
 なぜその様に思うかと申しますと、結構このプロジェクトはこういう日本の法律の問題に関してはどうですかとか、こういうアメリカの問題に関してはどうですかというアドホック的な質問をして、答えを受けるという案件ではなくて、ストラクチュアづくりのところから、もっとアメリカの弁護士と日本の弁護士が一体になって、チームとなってサービスを提供できる可能性のあったプロジェクトなのです。日本の弁護士さんと、実際に初めて会ったのは、1年間も一緒に仕事をしていたのに、クロージングのときくらいで、もう少しプロジェクト・メンバーということで最初から関与してくれていたならば、よりネゴシエーションのときにも、いい結果が生まれたのではないかなと考えております。
 コストのことですけれども、コスト面でもやはり2つの事務所を使うということで、日本の弁護士さんの仕事の分、アメリカの弁護士さんの仕事の分ということで、大分高かったのではと考えています。
 もし、1つのチームであった場合には、プロジェクト・リーダーというのがいますので、そのプロジェクト・リーダーがコストをコントロールできたのではないかなと思うのです。私のグラハム・アンド・ジェームスにいたときの経験にも基づきますが、やはりある案件をクライアントから依頼されてサービス提供するときに、日本の法律問題に関しては日本の弁護士さんに相談をする必要がある場合、その人はその人で、別にインボイスを切っているということになると、なかなかお願いするにも躊躇しました。これがもし1つのチームであった場合には、だれかが全体のインボイスを見て、余りにも高過ぎるから、このクライアントは良いクライアントで、将来的にもいろいろと仕事をくれそうだから、今回はカットしようとか、そういうコスト的な計画というのが弁護士側の方でもできる訳です。本件ではそのようなことができなかったのかどうかわかりませんけれども、結局、インボイスも高かったので、安くして下さることをお願いしましたが、それでも高いなという印象でした。
 特定共同事業もなかなか良いところもありますけれども、やはり真のパートナーシップではないということで、日本企業がどの様な面で損をしているかというと、先ほども申しましたように、コストとか、総合的なサービスを受けられないということです。又、それ以上に今日私が申し上げたいのは、特定共同事業以上のパートナーシップを、日本の弁護士と外国の弁護士が組めるという環境になったときには、日本の法律のコンセプトとかストラクチュアとか、そういうものもますます発展するのではないかなと思います。
 一番いい例がつい最近から認められるようなりましたトラッキング・ストックなどですけれども、それもアメリカのコンセプトとしてはあったわけですが、それが日本に新しく導入されるようになりました。又、日本の弁護士とアメリカの弁護士がブレーンストーミングをするということで、今までお互いのフレームワークでしか考えられなかったようなことが、より大きな意味で視野を広くして考えられるような機会を得ることにより、法律自体も発展する可能性も生まれるのではないかと思うのです。
 ですから、確かに企業の観点からいきますと、コスト、良い総合的なサービス、スピーディーなサービスということを求めるわけですけれども、それだけに限らず、特定事業を超えた次のステップがあれば、日本における企業活動、日本の企業だけではなくて、外国の企業のビジネス・コンセプトが導入される機会も増え、もっと新しい、面白いビジネスが生まれてくるのではないかと思います。
 時間が短いですけれども、以上が私のプレゼンテーションです。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、御質問ありますでしょうか。

○下條委員 大変貴重な話をありがとうございました。まず、今の発表の中で、一番最初に顧客のニーズということを言われて、ここに3つ書かれております。総合的、低コスト、迅速を挙げられておりますけれども、私が非常にびっくりしたのは、何とハイクオリティーというか、良質のサービスを挙げられていないということです。私どもの事務所は、まず何よりも先にハイクオリティーのサービスをしたいというふうに考えておりますので、このような顧客側のニーズとして、ハイクオリティーが挙がっていないということが、私にとっては非常に驚きであります。
 それから、2番目、渉外法律事務所というと、何か外国の法律を知っているようなことを言われますけれども、そうではなくて、我々はあくまでもやっているのは日本法であるわけです。したがいまして、ここで言われています合弁事業の一例ということで、日本における合弁会社設立、これはまさに日本法に関する事柄で、まさに我々がやっていることです。
 それなのに、御社の方でもって、外国法事務弁護士事務所に依頼されたというのは、私にとっては非常に奇異に感じます。これはまさに日本における合弁会社設立ということで、日本法マターであるわけです。したがって、この件を外国法事務弁護士事務所に依頼されたというのは非常に奇異に感じます。
 これをもし我々が依頼を受ければ、この件に即した一番適当な、例えばITとかタックスとかいった一番適当な法律事務所を選んでやるということになるかと思います。
 それから、3点目は、伊藤忠さんの方で選任された特定共同事業においては日本の弁護士はアドホックにコメントするくらいの立場であったということ。これは、今の特定共同事業の問題点を示しているのではないか。
 つまり、外国法事務弁護士が全部を取り仕切って、つまり日本法マターについてまで取仕切ってやろうとしているという、現在の外国法事務弁護士事務所の問題点がいみじくもここで出てきているのではないか。そのように感じました。

○茅野氏 下條先生にはいつも大変お世話になっておりまして、ありがとうございます。伊藤忠、丸紅の件では大変にお世話になりました。
 総合的な、と申し上げたときに、勿論、ハイクオリティーというのは、当然のことだと考えているもので、あえて入れておりませんが、総合的にというのは、様々な問題を加味して、なおかつよいクオリティーの法律サービスを提供するという意味でしたので、もし、言葉足らずでしたら大変申し訳ありませんが、そういうことでございます。
 それから、2番目の御質問に関して、確かにこの案件は、日本法に関する問題なので、日本の弁護士事務所に依頼するということも考えられたのですが、相当英語でのドラフティングというのが重視された案件でした。このプロジェクトは1年間も掛かりましたが、最後の方になりましたら、Eメールが来て、すぐにドキュメントを変えて、それをまたみんなに配付するという様なスピードになりました。
 これはピッツバーグの案件でしたが、ピッツバーグにすぐ生き、英語で交渉をするとか、または電話会議をするという、日本の合弁事業ではありましたが、大変英語インテンシブな案件でした。そういうこともありましたので、当初こちらが依頼したのは外国法事務弁護士事務所でした。
 3つ目のアドホックにコメントを要求されたというのは、私も大変残念だと思っております。私がイメージするアメリカの総合法律事務所で、例えば知的財産の専門家がいるとします。プロジェクト自体はコマーシャル・デパートメントの弁護士が担当しているが、このプロジェクトには知的財産の問題もあるとします。
 この場合、知的財産の弁護士もミーティングに参加して、一体となって作業をします。ただ、それがコマーシャル・デパートメントしか持っていない弁護士事務所が、ある知的財産のブティック・ファームにお願いするとなると、そういうわけにはいかなくて、アドホックで質問するという形になると思うのです。
 ですから、こちらとして一番望んでいるのは、日本の弁護士の先生は勿論、日本法の専門家でいらっしゃいますので、その専門ということで、ただ、同じ屋根の下で、同じチーム・メンバーとしてサービスを提供して下されるような環境が一番望ましいと考えています。

○柏木座長 今、下條委員の最後の質問なんですけれども、特定共同事業のサービスの中で、外国法事務弁護士が日本法についても取り仕切っているということはあったんですか。

○茅野氏 それはないと思います。それはできないと思います。たまたま今回の場合は、私どもの窓口が外国法事務弁護士でありましたが、日本の先生がプロジェクト・リーダーで、プロジェクト・メンバーに外国の弁護士がいるという逆のことというのも考えられると思います。

○乗越委員 最後におっしゃられた点で、なぜ日本の弁護士事務所に行かなかったかという理由で、すぐに反応して、人を送って、交渉をやってというのを非常に早く反応しなきゃいけないということをおっしゃられたんですけれども、それは特定共同事業であるか、完全なパートナーシップであるかという問題なのか、それとも、そもそも日本の弁護士の数が少な過ぎて需要に応えられていないということに起因するのか、どちらだと思われますか。

○茅野氏 日本の弁護士の数が少ないというのは、大変問題ですね。それも、渉外案件というのができるところというは大変限られていますので、これから数が増えてくれればいいなと思っております。
 ただ、今回、そういう総合的なサービスが提供できなかったというのは、確かにそういう意味では数の要因というのはあるとは思います。実際にお願いした、特定共同事業のところでも、人数的には日本の弁護士さんは大変少なかったです。知っています特定共同事業では日本の先生というは1人とか2人とかでやっているところもありますので、幾ら特定共同事業でも、こちらが最初に見るところというのは数です。幾ら特定事業だと言っても、本当に日本の弁護士がいるのかというところだと思います。
 数と、どれくらいインテグレートして事業を行っているのかということだと思います。

○波江野委員 大変面白い話をありがとうございました。2つのことを伺います。 1つは、このレジュメの4番で、茅野さんがおっしゃったように、当初は外国法事務弁護士事務所を使っていたけれども、特定共同事業に替えたということでしたが、私ども、弁護士を途中で取り替えるというのは非常に大変な、特に日本のプラクティスにおいては困難が多いと思います。本件では、色々な問題があって、変えられたんだと思いますが、弁護士の交代に当たって何か問題がなかったか、というのが第一点です。
 もう1点は、商社3社が連合で合弁会社をつくられたということですから、先ほど下條委員もおっしゃいましたが、私どもで考えれば、まず外国法事務弁護士とすぐ思い浮かぶのではなくて、国内において自社が一番よく使っている渉外事務所に相談をして、そこから始める例が多いと思います。当初から外国法事務弁護士に依頼されたというのは、商社間で弁護士選定がなかなか調整ができなかったということがあったのでしょうか。
 それとも、この件については、外国法事務弁護士が良いという特別な理由がございましたか。

○茅野氏 弁護士事務所を変えるということに関しましては、特に弊社がそうなのかもしれませんが、割と日本の弁護士事務所でも、外国法事務弁護士事務所でも、海外の弁護士事務所でも頻繁に行っていますけれども、やはり良いサービスを受けられないと判断した途端にすぐ変えるようにしています。
 勿論、顧問弁護士ということになりますと大変ですけれども、それでも弊社の場合は、顧問弁護士事務所の契約を終了させて頂く場合もありましたので、これは商社特有なのかもしれないけれども、結構その辺のところはシビアに行っております。
 それから、第2点目の商社3社でなぜ渉外事務所にまず行かなかったのかということですが、これは当初から外国の事務所にお願いしようというコンセンサスはございました。ですから、日本の弁護士事務所に行くというアイデアは最初からなかったです。なぜなかったのかということを今、考えてみますと、まず営業の方でレター・オブ・インテントを交しておりました。レター・オブ・インテントも英語でなされていましたし、それまでの交渉などもすべて英語でなされていましたので、一番自然なのは日本における外国法事務弁護士なのかということで、最初から候補に上がっていたのはすべて外国法事務弁護士事務所で、その中でいろいろコンフリクトとかがあって、相手方のソフトウェア会社は結構大きなところだったものですから、仕事ができないということで断られたところもありました。

○波江野委員 1つ追加でご質問します。先ほど下條委員がおっしゃったように、交渉の相手とか全体のスキームとしては、渉外案件ですけれども、実態そのものは日本で合弁会社を設立して、まさに日本法の世界なんですね。ですから、日本の弁護士が出てくる前に外国法事務弁護士を登用されるというのは、1つ考えられるのは、日本法については、商社の法務部門で十分できるという判断で、その他の、海外との交渉などについて外国法事務弁護士を使うというお考えに基づくものでしたか。

○茅野氏 この事業で一番重要だったのは、ソフトウェアです。ですから、ライセンサーが言うように、あなたたちが本当に彼等にライセンサーになるような権利があるのかとか、もし、破産したときには、アメリカで破産した場合ですけれども、どうなるのかとか、債権者がどのような手続を取れるのかということが、アメリカの法律問題として重要な問題としてありました。ですから、そこに重点を置いたということはあります。

○加藤委員 御説明と少し離れた質問になりますが、私どもは中小企業でございますので、外国法マターの事案でありましても、とりあえず私どもと日本の弁護士との間で事案について検討を行い、その日本の弁護士が我々が選定した外国の弁護士との間で、弁護士同士で事を調整していただいた上で、当該外国弁護士が相手側と交渉するという形態をとることが大半でございます。伊藤忠商事さんの場合に、そういったケースがあるのかどうか。もしあるとすれば、どういう場合にそういう方法を選択し、どういう場合に共同事業、あるいは外国法事務弁護士を選択されるのかというところをお教えいただければと思います。

○茅野氏 弊社はメーカーではないので主たる知的財産というのは持っておりません。ただ、たまに最近、ビジネス・モデル特許とかいろいろ出てきていますので、今まで経験しなかったような知的財産に関する問題というのが出てきまして、それに関しては、日本の弁護士事務所、特許事務所にお願いをして、もし何か海外の登録とか特許申請等をする必要性があるのであれば、その事務所を通じて行っています。
 ですから、法務部で見ている案件で、直接弁護士さん、または弁理士さんが海外とコンタクトを取るという、法務部は余り直接関与しない案件は、知的財産の分野です。

○加藤委員 知的財産に関連する部分は、そういう選択があって、それ以外は大体共同事業等の弁護士事務所に依頼するということですね。

○茅野氏 たまたまそういうことで今まで知的財産の仕事をしてきていないものですから、直接海外の事務所と仕事をしたことがないということもありますし、そういうことで国内の事務所にお願いをしております。

○加藤委員 法務部の力が非常にあるという前提がありるのでしょうね。

○茅野氏 それはどうかわかりませんけれども、少なくとも商社の売り物というのは、サービスですので、その先に商社のお客というのがありますので、なるべく良いサービスを商社としても提供するということで、その辺に関しては皆シビアに考えております。

○波江野委員 このプロジェクトで、当初外国法事務弁護士事務所を起用しました。途中で使い勝手が悪いんで、特定共同事業に替えましたよというお話でしたけれども、特定共同事業というのも、日本の弁護士と外国法事務弁護士とが協働するわけですね。ですから、これはたまたま個別の資質として、当初の外国法事務弁護士が余りそのプロジェクトにうまく合わなかったということではないかという質問なんです。
 例えば、当初の外国法事務弁護士がしっかりした方で、ちゃんとしたサービスをされておれば、日本法が必要になったときに、その段階でまた日本の弁護士を組み合わせるということもできるんだろうと思いますが、それを特定共同事業に切り替えましたというのは、何か外国法事務弁護士単独のプラクティスと、特定共同事業のプラクティスとが極めて違うことがあるんですか。

○茅野氏 確かにソフトウェアというのはアメリカのものでしたが、日本のコンポーネントというのも随分ありました。こちらとしても、外国法事務弁護士が外の、日本の弁護士と相談しながら仕事を行うということではなくて、こちらとしては、お願いしたらば、とにかく総合的にサービスを提供して下さることを期待しておりました。これは別に最初に依頼した外国法事務弁護士事務所が、そこだったから悪かったということではなくて、どちらかというと、外国法事務弁護士にこういう案件をお願いするということに関する潜在的なイシューだと考えます。

○波江野委員 潜在的にあるというのは、そういうのは当初から特定共同事業の方が。

○茅野氏 まだよかったという言い方は変ですけれども。

○孝橋委員 まとめの総合法律サービスのところで、「国際化が著しい昨今の情況の中で日本企業は法的なサポートを十分に受けることが出来ず」というふうにまとめていらっしゃるわけですけれども、最近、若い、修習を卒業した方は多く渉外事務所の方に進んでいまして、かなり急速に弁護士の数は増えている。先ほど、この案件で十分日本の弁護士が機能しないことを理由として、ピッツバーグでのやり取りなどは、そういうふうにやらないといけないという御説明があって、そういう場面もあるかもしれないんですれども、トータルとして、そんなに日本の渉外弁護士さんが十分な対応ができていないのかというのは、実感としてよくわからないんですけれども、もう少しお言葉をいただければと思います。

○茅野氏 本当にリアル・タイムのプロジェクトだったのです。ですので、どういう形になったかというと、Eメールでみんながやりとりして、とにかくコメントを出して、クライアントにまずドキュメントを送って、コメントをもらって、それからリバイスしてという風に時間がなくて、とにかくみんなが同じ情報を共有して、それでお互いどんどんドラフティングをしていく、または、電話口でこの契約はこういうふうに変えるんだというようなネゴだったのです。
 確かに日本のすばらしい弁護士事務所もたくさんありますし、私どももその様な事務所とお仕事をさせていただいておりますので、知っていますけれども、それでもそういう英語のドラフティングとかドキュメンテーション、交渉に関して、リアル・タイムにサービスが提供できるところがあるのかというと、なかなか思い浮かばなかったというところです。

○柏木座長 質問が尽きないんですけれども、面白いお話をいただきまして、ありかどうございました。時間が大分経っておりますので、ここで茅野さんのお話は終わりにさせていただきまして、次に、トーマス・ヴィッテイさんからヒアリングを行いたいと思います。
 茅野さん、どうもありがとうございました。

○茅野氏 どうもありがとうございました。

○トーマス・ヴィッテイ氏 ただいま御紹介いただきましたトーマス・ヴィッテイと申します。
 本日はドイツ弁護士から見た外国法事務弁護士等との特定共同事業についてお話しさせていただきたんですけれども、申し訳ないんですけれども、簡単な日本語しかできませんので、御了承ください。
 まず、ドイツの事情について少し御説明させていただきたいんですけれども、ドイツと日本とはいろんな共通点がありますけれども、弁護士制度もそうでありまして、過去にはドイツの方でもいろんな制限がありましたので、それを簡単に御説明させてください。
 ドイツの弁護士に関しても制限がありましたし、外国の弁護士に関しても制限がありまして、ドイツの弁護士はまず支店をつくることができなかったし、普通の事務所を開くこともできなかったし、認定された裁判所でしか法廷活動もできなかったという、ドイツの弁護士に対する制限がいろいろありまして、その当時は外国弁護士がドイツ国内で業務を提供することも不可能であって、当然ドイツの弁護士と提携することも不可能でありまして、それが大体1970年代の状況でありまして、大体77年から98年の間、非常に制限が緩和されて、それの主な理由としては、まず、EUの関係で、EUの中でも法律の調和、それで緩和が大きく行われまして、当然、ドイツは加盟国として大きな影響がありました。
 まず第一には、EUの中での開業の自由、つまり、どこでも自分の事務所とかが開ける。
 それに基づいて次に、サービスの自由というのが導入されて、まず、弁護士としても、サービス・プロバイダーとして、EUの中で自由にサービス提供ができるというもので、その後、また10年経っていたんですけれども、89年に弁護士資格の相互承認が導入されまして、それが大きな看板になりましたけれども、その後、最後に98年ですけれども、本当に自由化になりまして、EUの中で自由に業務ができることとなりました。
 98年の自由が特にGATSというWTOの94年のウルグアイ・ラウンドの結果だと思いますけれども、そこで弁護士がほかのWTOの加盟国において、自分の資格に基づいて原則的に業務を行うことができるとなりましたので、その結果、EUで自由化が完全にできました。
 それから、EUのことだけではなくて、ドイツ国内もいろいろ自由化が議論されましたので、裁判になったケースも幾つかありましたので、最終的にはドイツの最高裁の方から、職業選択の自由に基づいて、自由に弁護士として仕事ができるという判例がありまして、それが自由化の結果になりました。
 現在のドイツでの状況は、ドイツ弁護士が自由に事務所をどこでも開けるし、どこの裁判所でも法廷に立てますし、当然、外国の弁護士と自由にパートナーシップ、あるいは交流ができます。
 外国の弁護士の場合は区別しなければいけないんですけれども、まず、EU域内の場合は、先ほど申し上げたように、EUの加盟国ではどこでも自由にオフィスを開けます。当然ドイツでも自由に開けます。
 自分の国で取得した資格に基づいて弁護士業務を行います。
 ほかの加盟国、あるいは国際的な法律、あるいはEUの法律についてもできます。
 更に、例えばフランスの弁護士がドイツの方に事務所を持っていて、フランス弁護士がドイツの法律についての法律相談もできます。ですから、当該加盟国の法律相談もできます。
 フランスの弁護士が3年ドイツに事務所を置いて仕事をすれば、ドイツの弁護士としての登録手続も可能であります。当然、その結果、EU域内では、外国の弁護士、EUの弁護士は、ドイツの弁護士と、パートナーシップ、交流などはできます。ただ、条件としては、当然外国の弁護士が現地の弁護士会で登録する義務があります。
 そして、EU以外の場合は、先ほどとほとんど同じようですけれども、条件としては、WTOの加盟国であることなんですけれども、ドイツでは自由にオフィスが開けますし、外国弁護士として登録しなければいけませんけれども、自分で資格を取った国の法律相談は自由にできます。
 それから、インターナショナル・ローについても、法律相談ができます。ただし、ドイツ法については相談はできません。
 それから、ドイツの弁護士を雇うこともできますし、ドイツの弁護士とパートナーシップをつくることもできます。
 更に、WTO以外の国であれば、そういうケースは実際にはないんですけれども、その場合は、相互主義がまだ残っていますので、お互いに同じような条件があれば、弁護士業務ができます。
 先ほど申し上げたように、その流れは30年間掛かりましたので、非常に長い時間ですけれども、実際に自由化がそこまでできましたのは98年からなんですけれども、現在のドイツの弁護士制度、あるいは法律制度についてどのような影響があったかと言いますと、まず、ドイツの弁護士が当然外国の事務所との提携が増えましたけれども、法律相談の仕方、あるいは依頼者に対してのやり方も、その結果変わりました。
 ドイツの方では、大体ほかの先進国と違いまして、税理士と会計士の提携が禁止されませんので、その結果、そういう事務所が80年代から増えましたけれども、その自由化もありまして、英米の事務所との影響が特に渉外事務所の中で、ファイナンス・プロダクションに関して大きかったんですけれども、そういう意味で、例えば我々の事務所を、87年からスタートしましたけれども、割と歴史の浅い事務所なんですが、最初からMDPとして、つまり弁護士、会計士、税理士が一緒になった事務所としてつくられましたけれども、その理由としては、非常に英米弁護士事務所と、会計の世界でビッグ5と言われるところから、大きな監査の仕事がそこに行ってしまいました。結果がはっきりわかりますので、そこに対応するために、自分の今までどおりの弁護士活動だけではなくて、もう少し幅広く、つまり国際的、それから専門分野も広げないと対応できないではないかという考え方が一部ありました。
 MDPについては、ドイツは独特だと思いますけれども、今、エンロンの事件で、それがまた逆に議論されていますけれども、議論されている内容は、法定監査についての問題なんです。弁護士と税理士が一緒になるには全く問題がないと思われていますけれども、法定監査については、やはりコンフリクト・インタレストという問題がありますので、それから責任問題、いろいろありますので、大きく議論されていますし、今年の1月にEUの裁判所の方で判例がありまして、それはオランダに関する問題なんですけれども、法定監査を一緒に行う業務は、弁護士と一緒に業務提携はできないという判例がありました。そこは特別に秘密条項の問題として議論されていますので、ちょっとドイツの事情と違うと思います。
 話は戻りますけれども、現在、ドイツの大きな事務所はほとんど英米の事務所と提携関係ができていますけれども、それは先ほど申し上げたように、トランザクション・ワークが、英米の事務所に行ってしまいましたので、そのためにドイツの事務所も、特に大きな事務所が、自分が幾らでも国際的なネットワークをつくっても、遅れているということが大分理解されまして、提携するしかないという考え方になりました。
 それはドイツ全体の弁護士の数でいきますと、10%未満の話ですから、当然渉外事務所関係だけのことです。それがスタートしたのは、先ほど申し上げるように、まず銀行関係、ファイナンシャル関係、金融関係のトランザクションからです。
 次に、当然銀行関係だけではなくて、ほかのメーカー、例えばダイムラーベンツがクライスラーと合併したときに、ドイツの事務所ではなくて外国の事務所を使ったということが多かったので、やはりドイツの大手の事務所も提携するしかないということになりました。
 そういう意味で、我々の事務所はまだ例外的に提携しているところはないんですけれども、1つの理由は、我々が簡単にほかの法律事務所と提携しようと思っても、会計士が反対するかもしれませんし、逆に会計事務所と提携したい場合は、弁護士が反対しますから、まだ独立している状況なんですが、実際に私が弁護士としてドイツで仕事を始めたのは89年からなんですけれども、そのときから今までの流れを見ますと、大分仕事の仕方にも変化がありまして、まず第一に、ハイクオリティーのサービスは勿論ですけれども、依頼者のために、依頼者に向いているサービスをしなければいけない。
 先ほど茅野さんからも言われたんですけれども、反応が早いというのは、ハイクオリティーと同じくらい重要になってきたということなんです。それは多分、英米とかの事務所の考え方で、そちらの方から生まれたサービスの考え方と、我々が感じたということです。もともとドイツの方はそういうサービスの仕方は余りなかった。
 ドイツから離れまして、日本の特定共同事業について御説明させていただきたいんですが、こちらの事務所は、94年にできましたけれども、もともとグラハム・ジェームスと提携関係がありましたが、そこで1人がグラハム・ジェームスの事務所を日本につくりまして仕事をしたんですが、現在は、約20人のスタッフがいますけれども、大体仕事の流れは6、7割がドイツから日本への投資、3、4割が日本からドイツ、あるいはヨーロッパへの投資の話なんですけれども、トランザクションはM&A関係の仕事がほとんどですので、依頼者は大体ドイツからですと、機械製作のメーカーとか自動車関係、化学関係とかで、日本からは、商社、銀行、テレコム関係の依頼者がほとんどです。
 我々が特定共同事業に入ったのは今年からなんですけれども、94年から今までの間は、そういう形ではなくて、外国から日本への投資に関しては、いろんな法律事務所と違いがありまして、そこと日本国内に関する法律相談はそこにお任せしたんですけれども、特にそこの方が我々にとって難しく感じたんですけれども、特定共同事業でよくなるだろうというのは、長く検討したんですが、実際には、問題点が幾つか残っていると思います。
 まず特定共同事業に入った理由は、周りがそういうふうに変わりましたので、我々も依頼者から言われたんですけれども、おたくは一体でできないかということがよく言われましたけれども、それで特定共同事業のシステムを説明したときに、なかなか依頼者がぴんとこなかった。何が違うかと、組織が3つあるんではないか。外国の事務所と日本国内の事務所と、特定共同事業である。それはどういうふうに一体として考えていいのかというのを逆に言われたんです。
 我々も依頼者にとっては窓口があって、そこから仕事を流して、その法律事務所の中できれいに解決できれば、国内でも国外でもほかの事務所と違いがあって、あるいはそういう特定共同事業があっても、それはそれほど大きな違いではないのではないか。一体のローファームでなければ、まず、カスタマー事務所、あるいはパートナーにちゃんとしてもらえば十分なんですけれども、当然、外国の依頼者が望んでいるのは、外国の弁護士と話ができるといい、ただし、日本国内の専門家がいないと当然だめだと。その2つが一緒になっているところが一番望ましいと思いましたけれども、それが実際にできませんので、外国の事務所のみ、それがまだほかのところと付き合いができているか、特定共同事業に任せるのと変わらないだろうという反応が結構多かったんです。
 先ほど申し上げたように、特定共同事業が幾つかできましたので、我々もそれをしないと、依頼者から認められない心配がありましたので、それをやりましたと。
 今年の1月の話ですけれども、依頼者にそういうアナウンスメント制度として依頼者との関係は望ましい関係になったと思います。
 組織が3つありますから、ある意味では非常に複雑です。業務範囲が定義されているんですけれども、それは非常にあいまいな定義ではないかと我々感じていますし、よく特定共同事業で扱っている案件、あるいは法律事務所で扱っている案件、外国法事務弁護士事務所で扱っている案件を区別するのが非常に複雑だし、そういう時間がない案件が入りますし、途中でも案件の内容が変わりますし、そこがなかなか難しい。それは法律上でもそうだし、今度は会計上もそうです。そこの問題点を見ますと、環境がそういうふうに変わらなかったら、特定共同事業でない方がまだ楽だと思います。ただし、その場合は依頼者からコストが高くなるではないかという議論が今度は出てきますので、そういうディスカッションをしながら、今、特定共同事業と一緒にやっていますけれども、望ましい解決ではないと我々は思っています。
 結果としては、業務提携の自由化があって、法律相談については、当然その資格を持っている弁護士が、例えば日本の弁護士が日本の法律相談しかできない。外国の弁護士はその国の法律しかできないというのは問題ないんですけれども、業務提携が自由にできるというのは、我々からしてみて一番望ましいし、依頼者からも同じように言われていますので、できるだけ自由化してほしいと思います。
 時間が限られていますので、一応ここでストップさせていただきます。

○柏木座長 どうもヴィッテイさんありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明について、御質問のある方は挙手の上どうぞ。

○下川委員 ドイツの経験と言いますのは、この資料に出てきますけれども、日米等で話しているときでも、ドイツの例を挙げて、日本も自由化をしていくべきだということをよく言われるものですから、大変興味があるわけですけれども、提携を促進したり、それから特定共同事業などをしていく場合に、よく言われるのが、そういう提携を拡大することによって、ビッグ5等も含めて、在来のローファームによって法律の市場が席巻されるという問題ですとか、更には弁護士の独立性とかいう職業倫理にまで影響を及ぼすことがあるということがよく言われているわけですけれども、一部御説明の中でもあったかと思うんですけれども、そのような点についてドイツの経験を振り返って、個人的な見解になるのかもしれませんが、どういうふうに評価されているか。具体的にはマーケットのシェアという意味で言いますと、純粋な法律サービスという分野で見たときの英米系の参入の度合いと言いますか、シェアをどういうふうに占めてきたと考えられるか。
 それから、もう少し幅広く見て、経済活動、トランザクション全体においての英米法的なアプローチと言いますか、そういうものの導入というか、参入というのがどういうふうに進行したか。そういう2つの次元でのマーケットのシェア。
 ちょっと別の次元の話になりますけれども、弁護士の職業倫理と言いますか、独立性の問題とか、利益相反の話とか、そういう面で何らかの影響、ロー・アソシエーションが進んだことによって、何かハザートが起こったとか、そういうことがあるのか。その辺の3点についてお願いします。

○ヴィッテイ氏 おっしゃるとおり、その影響が非常に大きかったし、ずっと議論されています。ただし、まず、動きとか、発展の理由としては、大きな仕事の流れだけなんです。先ほど申し上げたように、独立性とか独立したい考え方は、ドイツの弁護士にも当然強いんですけれども、仕事の流れは、ファイナンシャル、金融関係のことで、英米の事務所に移りましたと。それはそちらの方が法律のテクニック、先ほどトラッキング不足の例を言われましたけれども、法律のテクニックもありまして、サービスの提供のよさもありましたので、大きなトランザクションはすべてそこに行きました。
 それから、今、ドイツの事務所が英米の事務所と提携するときに、今までドイツで最大の事務所も、日本と同じように200 名程度の話でありましたので、何千人がいる事務所というのもまず慣れていませんし、組織も世界が全然違いますから、いろんな問題点がありますけれども、ドイツ国内では最大の事務所は、今は500 人程度の大きさがありますけれども、その組織は過去の5、6年くらいで、少しずつ英米の事務所と同じように大きくなりまして、ある程度までそれは500 人か1,000 人くらいなので、そんなに大きな違いでもないし、ある程度までそれに慣れてきたんですけれども、英米の事務所の方から、今度、マルチ・パートナー制度とか、そういうのが導入されますけれども、それにもドイツの事務所は少しずつ慣れてきたんですけれども、ドイツの事務所にみんなが感じていたのは、もっと早く業務提携ができていればよかった。そのためにもっと早く英米の事務所との提携、あるいは共同事業ができたらよかったというんです。
 つまり、割と長くドイツの方も影響を受けないように、ドイツのスタイルのままで法律サービスを提供するという考え方が長かったので、結局、仕事の面で遅れてしまいましたので、急に英米の事務所に統合化されるのに抵抗するという人もいますから、そういうふうになりました。ですから、逆に言えば自由化が遅かったんじゃないかということもあります。
 実際に今見ますと、ドイツの事務所も経済的な影響力もありますし、ドイツは日本と同じように、国として非常に規模が大きくて重要なんですけれども、それは今はプロセスになってまいりますけれども、ドイツの事務所の力と英米のスタイルの間でどんどん変わってきます。また、不満を持っているパートナーもいますし、また、独立するパートナーもいますし、大きなところが、事務所が大き過ぎて、中小企業にとって余りいいサービスももらえないということで、小さく分割される事務所が幾つかできるというのもあります。
 ですから、まだかなり動いています。ですから、決してすべての法律事務所がテイクオーバーされる、英米のようになるということでもない。これからどうなるのかというのも見る必要がありますし、ビッグ5の場合も同じような流れだと思うんですけれども、エンロン事件だけではなくて、特にどこまで大きさだけでいいサービスが提供できるというのも議論がありますけれども、最終的に一番大きな問題として残っているのは、利益なんです。ローファームではどのくらいプロフィタブルな仕事ができるのかというのがポイントだと思うんです。
 当然どこでもハイクオリティーのサービスを追求したいんですが、まず仕事が入ってこないと、幾らハイクオリティーがあっても限界があるかもしれません。ですから、そこでプロフィタビリティーで、それはインターネットでも見られますけれども、ニューヨークのローファームが一番高いので、そこの影響力が非常に強くて、その影響力の結果で、ほかにもドイツで影響が与えられる。

○柏木座長 ほかに御質問は。下條委員どうぞ。

○下條委員 今の点ですけれども、私の理解しているところでは、ドイツの10大法律事務所のうち、半数が英米の法律事務所にテークオーバーされたということだと思うんですけれども、こういう場合、ドイツの法律事務所の独立性がどの程度担保されているか。先ほどおっしゃったように、例えばニューヨークの事務所からマネージング・パートナーが乗り込んできて、すべてドイツの事務所も運営しているのか。あるいは、ドイツの法律事務所はドイツの弁護士によってかなり独立して運営されているのか、その辺りをお聞きしたい。

○ヴィッテイ氏 プロフィタビリティーとしてドイツの法律事務所が、英米の事務所からいろいろ勉強しなければいけなかったと思うんですけれども、マネージング・パートナー制度がありまして、マネージング・パートナーが全部ドイツの事務所を支配することはない。逆にこれは多分これから4、5年で見られると思うんですけれども、そういう英米の事務所でドイツのパートナーがマネージング・パートナーになることもあり得ると思います。そのプロセスはちょっと時間が掛かりますので、そういう意味で独立がなくなるということはないと思います。
 ただし、考え方は当然どんどん変わります。1つの例で申し上げますと、ドイツの事務所にもレバレッジ・システムというのがなかったんです。大体一人で仕事をしてという形だったんですけれども、当然レバレッジ・システムを導入するときに、マネージメント・スキルも必要になってきますし、それは全体を考えると、マネージング・パートナーも最終的に必要になってきますけれども、我々のローファーム、英米と提携はないんですけれども、同じような議論がありますけれども、マネージング・パートナー・システムではないんですが、委員会がありまして、ただ、そこが動きが遅いんです。ですから、これが英米のことだけではなくて、大手企業に対応できるために、大きな組織をつくる必要が、英米とは別にあると思います。我々もそうなんですけれども、もしかしたら、日本の大手事務所もそういう必要性が出てくるかもしれません。それはすぐアメリカに行くより、もしかしたら代替する必要があるかもしれませんけれども、そのプロセスが同じではないかと思うんです。
 ですから、独立の意味で、テークオーバーとおっしゃったんですけれども、実際にそうかもしれませんが、独立がなくなったとは思わないんです。

○柏木座長 ほかに御質問ございませんか。

○乗越委員 関連している点なんですけれども、もう一つ、日本においてその問題を議論していくときによく言われる問題としては、事実上外国の弁護士が日本の法律までアドバイスしてしまうではないかという懸念があると思うんですが、そういう懸念はドイツにおいてもありましたか。あった場合には、現在、制度を変えられて、実際にそういう現象は起こっていると思われますか。

○ヴィッテイ氏 例えばアメリカの弁護士がドイツにおいて、ドイツ法について法律のアトバイスをするということですね。そういうケースはないです。逆にドイツの方は今は外国弁護士の数が日本より少ないんです。英米の事務所と提携して、ときどきトランザクションベースで飛んだり、来るかもしれませんけれども、ドイツ国内の仕事はドイツの弁護士に当然任す。そこにいる必要もそんなにないんです。
 逆にドイツの会社がそういう英米の事務所に依頼したときに、米国についての法律相談が欲しい場合は、米国から来るんですけれども、それだけです。

○柏木座長 それでは、時間も大分経っておりますが、ヴィッテイさん、ありがとうございました。
 それでは、次に何連明さんからヒアリングを行いたいと思います。

○何連明氏 御紹介にあずかりましたTMI総合法律事務所の何と言います。
 私は1989年に中国の弁護士資格を取得して、それから弁護士として中国国内及び日本において仕事を始めました。99年に法務省の承認を受けて、外国法事務弁護士として日本での活動を始めました。
 現在、御存知のように、中国の外国法事務弁護士は合わせて11名で、私はその中の1人です。欧米の外国法事務弁護士と比べれば、私たちは少人数であって、業務内容を見ても、投資、貿易などの分野に集中し、多少狭いという特徴があります。
 「1.中国の外国法事務弁護士の実情」
 現在、私を含めて日本にいる中国人の外国法事務弁護士が主に従事している法律業務はどういうものであるのか、レジュメに沿ってご説明致します。
 一番多いのは、日本企業の中国進出であり、仕事の中の7割を占めています。御存知のように、現在、中国投資の第3次ブームとなっていますので、当然その中に日本企業の投資もあり、今、中国への投資額及び件数から見ると、日本は世界で2位を占めています。
 中国のどの経済特区、どの都市を見ても、ほとんど日系企業がございます。中国に進出する場合には、中国の法律に従って、現地法人を設立することがあります。そういう部分については、必ず私たちのサービスが必要となります。
 日系企業の場合には、勿論、直接現地の法律事務所を探したり、現地の弁護士からサービスを受けたりすることもありますが、ほとんどは日本の法律事務所を通じて現地の弁護士に依頼するという形をとっています。
 基本的には、まず、日本でできるサービス、例えば会社をつくる場合には定款、合弁契約など、書類の作成をします。勿論、中国語版と日本語版ですが、場合によっては英語版を必要とするときもあります。それで2つもしくは3つのバージョンを作成して、基本的な内容をクライアントに提示します。更に具体的な手続については、現地の弁護士に依頼し、認可登記の手続を取ることになります。
 2番目は、逆のバージョンです。いわゆる中国企業の日本進出です。欧米の企業のように日本進出のケースはそれほど多くはないんですが、最近は徐々に増えてきています。例えば、中国の四大銀行は、ほとんど日本に支店を設置しています。そのような支店設置の手続については、主に日本法上のサービスを提供することとなりますので、事務所の日本弁護士が主に仕事をし、私が翻訳をしたり、いわゆる補助的なアドバイスを提供しています。私は、主にクライアントとのコミュニケーション、例えば、クライアントの要望がどういうものかなどを正確に日本の弁護士に伝える役割をしています。先程も言いましたが、私としては、日本の外弁法を守らなければならない面があるんですけれども、そのラインがはっきりとした一本ではないという感じがしています。
 なぜなら、私も中央大学で日本の商法を専攻しましたので、私なりの意見もあります。ですから、日本での会社設立の場合など、日本の弁護士にアドバイスを求めますが、そのままクライアントには伝えず、中国の会社制度と比較しながら、中国のクライアントに日本の会社制度を説明します。
 今までは、日本法に関する内容であれば、まず日本の弁護士が日本語の文書をつくり、それを私が訳していましたが、最近は、非常に急ぐことが多いので、私が日本の弁護士にアドバイスを受けて、その内容に基づいて直接中国語で文書を作成しています。その部分については、勿論、日本の弁護士の意思を100 %反映させようと思っていますが、その中に1%、0.5 %くらいの誤差がないとは言えません。それはだれがやっていても起こる問題ですので、その点については、日本の外弁法上どう処理するのか、これからの1つの課題であると思います。私としては、日本の弁護士の意見を求めることに特に不便を感じてはいません。それは当然であると私は思っています。
 3番目としては、貿易に関する紛争です。最近、日系企業が中国に投資するケースが増えましたが、今までの日系企業の中国進出の主な手段は貿易でした。最近は皆さんが直接投資をよく理解されるようになりましたが、昔は中国進出の手段は貿易のみとなっていましたので、日系企業がなかなか中国市場のシェアを獲得することができませんでした。一番代表的な例は日本の自動車産業です。中国人は実際に日本の自動車が大好きで、トヨタや日産などの日本車はとても人気があります。しかし、殆どの日本車は現地生産ではなく、輸入されていたため、値段が高く段々人気がなくなって行ったんです。今、中国市場を多く占めているのは欧米の車です。最近は日本の自動車メーカーもその点を認識し、より力を入れて中国進出を展開しています。現段階においては、日本の中小企業は、主に貿易、技術移転という形で中国へ製品、技術を販売して、現地での生産はそれほど行っていません。その部分のサービスは、主に売買契約の作成となります。勿論、貿易に関する紛争もあります。例えば、中国側の品質不良だとか、日本に輸出する場合には、日本側の代金の未払い、そのような問題がよく起こっています。今まで私が依頼を受けた事件の中には、日本での中国仲裁判断の強制執行のようなケースがあります。そのようなケースについては、日本の裁判所で中国の仲裁判断の承認から審理が始まりますので、やはり、私の立場としては、補助的な立場に立っています。例えば、収集した証拠を翻訳したり、あるいは日本の事務所の弁護士の要望を中国側に伝えたり、事件の進行状況をクライアントに報告したり、主に中国語で行っています。
 4番目は知的財産権に関する紛争です。私どものTMIという事務所も、知的財産権について強い事務所ですので、このような依頼もよくあります。例えば、模倣品対策や侵害調査などです。
 それ以外に、5番目になりますが、中国の留学生が日本で交通事故に遭ったケース、離婚や相続などの一般的な案件があります。ただし、このようなケースは、中国大使館からの紹介がない限り、一般的には受けないことにしています。当事務所としては、1、2、3、4のような仕事を主に行いたいと考えていますし、私個人的にも従事したい分野です。
 以上が私の業務内容なんですけれども、欧米の外国法事務弁護士との相違点は、先ほども申し上げたように、私どもの人数はかなり限られている。11名しかいない。実際に日本の大手法律事務所に入って、毎日中国法関係の業務をしている弁護士は、その全てではありません。日本での中国法関係の業務はほとんど5つの事務所に集中していますので、それ以外の事務所に務めると、中国法関係の仕事はあるにはありますが、それほど多くないのが現状です。
 次に、日本の弁護士との提携という形態については、私たち11人の中で1人だけ独立して外弁の事務所を設けていますが、それ以外の10人はすべて日本の事務所に雇用されています。それが現状です。
 「2.中国のローファームの実情」

○柏木座長 何さん、時間が足りないので、レジュメの3.4.を先にやっていただけますか。

○何氏 わかりました。
 「3.中国弁護士(外弁)から見た日本の外弁制度」
 中国の弁護士、及び中国人の外弁に対する日本の需要は、先ほども言いましたように、日系企業の中国進出に伴って、その需要も増えつつあります。その点に関する問題として、1つは量、すなわち日本は法律事務所が少ないので、私たち外弁の数も少なく、その分野のサービスができる事務所が少ないです。例えば、中国法に関する講演を行うと、遠い所から聴講者が来ることもあります。中国弁護士の数が足りないという感じがしています。 中国人の外弁は、今11名なんですが、中国の弁護士の中で日本関係の業務を実際に行える弁護士は大体100 名前後います。ですので、そのうちに増えるのではないかという期待はあるんですけれども、日本の外弁制度の弁護士登録という制限もありますので、中国の弁護士が日本に来るかどうかも1つの問題となります。全体的な流れから言うと増えることは増えても、実際にどのくらい増えるのかは疑問に感じます。ニーズは急激に増えているのに外弁の人数はそれほど増えません。ですから、外弁制度が中国の弁護士にもっと開放されて、もっと登録しやすいようになればいいなと、これは1つの課題ではないかと私は思っております。
 もう一つは質です。よいサービスを提供するためには、日本法や日本の事情をよくわかる中国の弁護士が必要になります。そのために、日本での留学経験とか、留学中に日本の弁護士事務所でアルバイトをしたとか、そのような経験が必要です。そのような質に対するニーズもあります。量と質、その2つなんです。
 次に、日本の外弁制度に対する中国の弁護士の認識及び問題点です。基本的には、中国の弁護士は、日本に来て日本の外弁資格をとるというよりは、永遠に日本で仕事をするつもりはないので日本で研修を受けるだけという考え方をしています。なぜかというと、自分が弁護士として個人的に独立をしていますので、自由業であり、会社員ではありません。弁護士としてだれかに雇われると、自分にとって不都合なこともありますので、日本で2、3年くらい研修して中国に帰る、このような考えで日本に来ている弁護士が多いと思います。
 また、日本で登録する場合には、例えば3年間の実務経験が必要であるなどの条件があります。けれども、日本語がわかる人たちは大体若いんです。3年以内の人が多いので、彼らは日本の外弁資格を取ることはできません。日本に来ても外弁資格を取れませんので、例えば報告書の中に自分の名前を載せられない、請求書にも載せられません。それならば、中国国内で仕事をした方がいいのではないかと、そういう考え方をしています。 あるいは日本に来て、短期研修を受けただけで中国に帰るという考え方です。
 更に、外弁登録については、外弁の会費の問題もあります。私たちにとってはそれほど高くないかもしれませんが、日本で研修を受けたいという若い弁護士の立場からいうと、毎月2万幾らの会費は高いと思います。
 「4.中国弁護士(外弁)から見た日本弁護士との共同事業」、「現行の特定共同事業に対する認識」についてですが、最近、欧米の法律事務所が日本の法律事務所と提携関係を結んでいます。当事務所もフランスとイギリスの法律事務所とそのような特定共同事業をしていますが、簡単に言うと、私たち、中国の弁護士にとってはこういう制度は利用できません。全く魅力を感じません。その主な理由としては、中国の法律事務所はそれほど大きくありません。日本と似ています。一番大きい事務所でも200 人は超えませんから、日本に進出し、共同事業を行い、事務所を設ける力があるのかどうか、という問題があります。また、共同事業の場合には、1人の弁護士ではなくて、人的な面では最低3人以上でないと難しいということですので、1つの事務所に日本語がわかる弁護士がそれほどいるかどうか、現段階においてこれも問題です。
 そのような理由から、私たち、中国の弁護士にとっては、現行の特定共同事業は、存在してもしなくても、特に関係がないという感じを受けています。
 逆に、中国の弁護士、中国の外弁と日本の弁護士とのパートナーシップ制による共同事業の必要性を私自らも感じています。何故かというと、日本の外弁法は、外国の弁護士が日本で良質のサービスをクライアントに提供することを目的として成立しています。良質のサービスを提供するためには、優秀な人材が日本にいなければなりませんが、今の制度から言うと、みんな日本に来て2、3年で中国に帰りますので、そのような良質のサービスが提供できるかどうか、1つの疑問です。例えば日本で2、3年仕事をして、弁護士として成長した頃に中国に帰ります。みんな独立したい、人には雇われたくないという考えでいるので、日本の法律事務所では中国担当の弁護士は安定しません。これは、クライアントに対する印象もよくありません。そういう事情から、良質のサービスを提供できるかどうかという問題があります。
 給料の面から言うと、日本の法律事務所に雇用されるのであれば、勿論、日本人の弁護士並みの給料を受けられますが、中国国内でも、特に国際関係の弁護士の報酬はかなり高騰していますので、そういう点ではそれほど差はありません。ですので、今後は、パートナーシップという制度で中国の弁護士も日本の法律事務所のパートナーになれるような環境をつくらないと、これからは難しいのではないかと、私はそう感じています。
 御静聴ありがとうございました。

○柏木座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの何さんの説明に対しまして、質問があれば挙手の上発言願います。下條委員どうぞ。

○下條委員 中国の制度のことをお聞きしたんですけれども、中国で日本で言う外国法事務弁護士ですね。それと同じような弁護士と、中国の弁護士との提携の形で、どういう提携の形が認められているんですか。

○何氏 現状においては、日本の外弁法のような特定共同事業という制度はまだ存在しません。外部的な提携のみとなっています。もう一つは、日本の法律事務所が中国にオフィスを開く方法です。私が在籍しているTMIは上海にオフィスを設置しています。日本からは、5つの法律事務所が中国でオフィスを設けており、そのような形で中国弁護士と提携をしています。中国では、外国の事務所の数から言うと、外国の法律事務所は合わせて102 社あります。それ以外に香港系の外国の法律事務所が28社あります。現段階においては、まだ認可制ですので、中国政府は、事務所の認可数で制限しています。去年、中国はWTOに加盟しましたので、このような制限をこれから廃止していくことになります。また、中国では、1つの外国の法律事務所がこれからは2か所以上の拠点をつくることが認可されるようになります。例えば、TMIは現在上海だけにオフィスをもっていますが、これから上海以外に北京でもつくることができるようになります。そのような規制緩和をしています。

○齊藤参事官 現状で、中国には日本の特定事業制度のようなものはないということですね。それよくわかりました。ただ、外国の弁護士と中国の弁護士が、中国で提携しようとするときに、そのほかの何か方法、手段はあるんですか。

○何氏 中国の外弁法も日本と同じで、外国の弁護士は中国の弁護士を雇うことができません。よく利用されている方法は、中国の弁護士を招聘して、自分の事務所の顧問という形をとり、その弁護士に具体的な案件を依頼するという方法です。

○齊藤参事官 わかりました。

○下條委員 中国もWTO、GATSに加盟したわけですので、現在はそういった提携は認められていないということですけれども、当然GATSに加盟した以上、日本が受けているのと同じように、アメリカとかイギリスからはそういう提携を認めろというリクエストが当然なされると思うんですけれども、それに対してどう考えますか。

○何氏 中国政府は、今後も特定共同事業のようなシステムを導入する考えは基本的にはないと思います。パートナーシップ、いわゆる合弁か合作という形で外国の弁護士と中国の弁護士が中国で共同の事務所を設立できる、そのような環境をつくりたいと考えていると思います。それはもう少し時間がかかると思うんですけれども、だからといって、それまでの間に特定共同事業というシステムを導入するという考えはおそらくないと思います。

○柏木座長 ほかに何さんに対する質問ありますか。

○下川委員 ちょっと補足させてもらえれば、今日は持ってこなかったんですが、たしか中国がWTOに加盟する際に、既に進出しているローファームについては、事務所を引き続き維持することを認めて、時限を設けて数量制限を撤廃するということが1つ。
 それから、パートナーシップを認めていくということを期限付きで約束していたと記憶しております。

○柏木座長 そのほかに何か質問はございませんか。それでは何さんどうもありがとうございました。
 それでは、次に中小企業総合事業団からヒアリングを行いたいと思います。御説明いただきますのは、国際事業課長の吉田さん、それから中小企業国際化支援アドバイザーの太田さんです。よろしくお願いします。

○吉田氏 中小企業総合事業団の吉田でございます。私どもの方から、今回の御検討の中の、外国に関して中小企業がビジネス展開をする上でどのように取り組み、その過程でどのような法律に関する問題の解決、それが見えれば、法曹界にはニーズという形で生じると思うんですが、そのような実態がいかがなものかということを説明していただきたいという御要請を受けまして、それについては直接その要請に応えられるかどうか自信はございませんけれども、お手元にお配りした資料で、私どもが中小企業国際化支援アドバイス事業というものを展開しておりますので、その事業の実績というか、成果を通じて垣間見ていただくということになるかと思いますけれども、御説明申し上げたいと思います。
 お手元のレジュメのほかに資料の確認をさせていただきますけれども、「中小企業総合事業団のご案内」、少し厚めですけれども、「知っておきたい国際化支援」とそのチラシでございます。並びにA4縦でございますけれども、これが私どもが展開しているアドバイス事業の実績から幾つか抜粋した資料でございます。この3種類の資料に基づいて御説明をしたいと思います。
 私ども中小企業総合事業団は、中小企業総合事業団法というものを根拠にした特殊法人でございます。中小企業に向けて、かなり幅の広い業務を展開しております。それについてこのパンフレットをごらんいただければと思います。これを説明しておりますと、これだけで今回の時間を超過することになりますので、ここでは9つの柱で整理させていただいて、今回お話しするのは、中小企業の経営の革新、あるいは中小企業の創業、これをバックアップするということも含めて事業を展開させていただいております。資料についてはお読みいただければと思います。
 今回、御報告する元になる事業でございますが、中小企業国際化支援アドバイス事業につきましては、白表紙の3ページ、4ページにその概略を書いてございます。これまでの数値も幾つか入っておりますので、ごらんいただきたいと思います。
 この仕組みと言いますのは、中小企業の方が今、盛んに経営の革新、あるいは厳しい環境変化の中で企業の屋台骨が揺らいでおる。今までの経営資源、あるいは市場、お客様に頼っておった根源を否定されるような状況が出てきておるわけでございます。それをいかにして克服するかということで、多くの方は、国内における既存の資源、あるいは情報を再度見直すというところで事業の方向転換をなさるんですが、今般、我々の業務を通じて感じておりますのは、海外展開を経営革新のキーファクターとして企業の基本的な問題解決、戦略転換をしていくということでございます。
 そこにどうしても国内のビジネスでは直面することのなかった新しい、あるいは予想もしないような事態も生じてくる。それらをこのアドバイス事業で問題解決をバックアップして、そのような経営を革新したいという方の支援をしていくという仕組みでございます。ですから、いろいろな内容の御相談を、いろいろな国について伺っております。
 私が基本的にここでお答えしなければいけないのは、今、申し上げたように、基本的な課題というのは、中小企業の経営の革新をいかに支援するか、バックアップするかということでございまして、その手段として、当然海外に拠点を設ける、海外に直接投資をする、あるいは従来行っていなかった貿易取引をビジネス・モデルの中に組み込んでいくというようなことを企画しておられる皆さんに対応していくわけであります。
 そのプロセスで法律的な要素も当然含んでくるわけでございますけれども、それらに対する基本的な姿勢としては、飽くまでも経営相談の一形態として取り扱うものでありまして、法律の問題の解決、そのものが目的とされるものでは必ずしもないということでございます。
 あるいは、そういう領域については、専門の方に委ねるということがあるだろうと思います。アドバイスという前提でございますので、勿論、アドバイスということでありますので、いろんな物の考え方、見方、あるいは選択する基準について、方向性を示すということでありまして、意思決定については企業の方に委ねるというところにございます。
 そのようなアドバイスを私ども二十数年前から展開してございます。その提供の仕方と言いますのは、職員のほかに実務経験の豊富な方々、例えば商社での職務経験を通じて、工場の立ち上げでありますとか、運営、あるいは貿易取引、これらに知見を持っておられる方をアドバイザーとして委嘱しまして、それらの方の協力を得てございます。 そのアドバイザーの体制ですけれども、主として、今申し上げたように、商社の御経歴のある方が大勢を締めております。アドバイザーとして約四百人ほどの体制がございまして、その中に弁護士さんも含み、あるいは会計士さんも含みという体制でございますが、必ずしも多くはございません。現状約四百名の中で、弁護士の資格を持っておられる方で御協力いただける関係にある方が12名ということでございます。
 これは国別にそれぞれ対応と言いますか、全く違う要素があるわけで、現状ですと、例えば中国関連で5名とか、アメリカ、それぞれ人数として少ない体制ではございます。また、全部の国を網羅しているわけではございません。全体で12名という状況でございます。
 その400 名を国別、それぞれの方のお持ちの経歴、あるいは職能と言いますか、それらの組み合わせで体制をつくって対応させていただいておるというところであります。
 本論でありますけれども、ニーズの状況はいかがなものかということでございますが、具体的には白表紙のものを見ていただきたいと思います。
 これが私どもが手掛けておりますアドバイスです。これも性格的に海外投資アドバイス。海外に生産の拠点をつくる方法、直接投資に関連する事案と、貿易を中心にするということで大きく2つに分けてございます。
 ほかに、電話あるいはFAXでも承っておりますので、大きく分けて3つの区分けで整理をさせていただいております。
 まず、海外投資関連を中心にお話しいたします。1ページから4ページまででございます。
 1ページをごらんいただきますと、3つの種類ですね。一番下が棒グラフでごらんいただいて投資関連、その上で取引関連、その他を上に重ねてございますけれども、97年のアジアの通貨危機以降、当初落ち込んでいたものが12年に来て、通貨危機以前のピークにキャッチアップしまして、13年に更に大きく伸びておるという状況でございます。これの要因として、中国に対する進出の急増というものが言えると思います。これについては2ページをごらんください。
 ここにありますように、中国が大幅に案件数を伸ばしておるという状況でございます。それらについて、今日の主題でありますが、4ページに、利用企業のプロフィール的なもの、あるいは相談の内容について整理してございます。製造業が3分の2を占めておりますし、次いでサービス業、卸売業というような構成でございます。
 資本金、あるいは従業員の分布もその下にございます。資本金もざっくりした平均値を取りますと、4,000 万くらいかなというところでございます。従業員規模でも70〜80くらいの間なのかなという、企業としては決して大きい層ではございません。そういう方々がお客様の横顔ということになろうかと思います。
 具体的な相談の内容、並びにそれが法的な事柄にどう絡んでおるかということでございますが、現地事情、あるいは事業の開始手続と順番に整理して棒グラフで一番下に掲げさせていただいておりますが、この中でカテゴリーに組んだ組み方自体にもいろいろ課題はありますけれども、一番の「現地事情全般」、これは極めて広く、法律のことも含みつつ、幅広い情報提供かと思います。
 「事業開始手続」、この辺には例えば契約、法人の設立、あるいは許認可に関連すること、規制、そういったものを含めてございますので、法律的な要素を含んだものであろうかと思います。
 「海外進出形態の選定」ということになりますと、例えば中国でございますと、日本側が100 %の投資という形を取るのか、合弁、あるいは合作というパートナーを組んだ形式を取るのか、それらについて法的な利用権と一方で経営的に見たときに、それがどのような効果を及ぼすかという点を含めて御相談に預かるということでございます。
 同様に、5ページ以下、取引に関連するものがございます。7ページに内容別実績というのが掲げてございます。この中では上から3つ目にありますような契約実務に関連すること。あるいは、提携を進める際の問題、PL法というような法律問題が介在してくるというものをうかがわせるものがございます。
 8ページ以降は、電話その他で承っている内容でございまして、今まで申し上げた投資、あるいは取引に関する御相談については、対面方式で、2時間くらいを1つのユニットとして御相談に預かるという形式を取っておりますけれども、今、電話、Eメール、というのは、極めて限定的に対応するという内容でございます。
 あとはこういった全体の動向について、若干加えますと、欧米に対する取組みと、中国とかも、かなり様子も変わってきているということでございますし、また、私どもは先ほど申しましたように、アドバイスということでございますので、アドバイスの結果必要になる具体的な事務作業、例えば日本語を現地の言葉に翻訳するというような業務・事務を代替するようなサービスは行っておりません。それはそれぞれの立場でふさわしい方に委嘱するなり、企業の責任でやっていただく。我々としては、そのような作業の結果、次のプロセスへ一歩前に進んだ段階になれば、そのことに対する評価というか、意見を申し上げるということで、継続的にアドバイスに当たるということであります。
 また、法律的な事柄につきましては、どうしてもアドバイス・サービスの中では限界がある。極めて個別性の強いものになり、時間的にも急ぎ、あるいは極めて専門的な判断を必要とするということになりますと、やはりアドバイス業務の範疇から対応できないということは現にございます。それについては、そういう問題解決にふさわしい、どういう対応をすべきかということの示唆をして、企業が法律家に御相談になるとかということで問題解決に当たっていただくということでございます。
 ここで一回切らせていただきまして、あとは質問を受けるような形で進めさせていただいた方がよろしいか思います。

○柏木座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、何か御質問があればどうぞ。

○乗越委員 日本の中小企業の方で、海外に進出しようという方に対する法律アドバイスというのは、恐らく何らかの形で受けておられると思うんですけれども、御承知の限りではどういうふうに受けておられると思いますか、例えば、自分の町の近くにおられる日本の法律事務所に行かれて、そこで受けておられるのか。
 それから、今、話題になっております特定共同事業というものについて、中小企業の方の間ではどのような理解があると思われますか。

○吉田氏 一般的な法律サービスをどのように受容しておるかということでございますが、充分には存じておりません。

○乗越委員 御存じでなければいいのですけれども、大体法律、例えば、タイで工場をつくりたいという話があったときに、当然そこでは向こうで会社を設立するとか、従業員を雇用するとか、そういう話があると思います。そういう相談も恐らくそちらに行くんでしょうが、そのときには大体法律問題で、うちではそこまでしませんから、どこかの法律事務所に行ってくださいという形でアドバイスされるんですか。

○吉田氏 今おっしゃったような、タイで立ち上げたいなと、当初は言っていらっしゃいますが、当然法律的な規制の問題であるとか、あるいはタイのBOIがその業種をどう見ておるかということが出てくるわけですけれども、法律の問題は当然出てきます。
 それらについて、基本的に、それらの業務体験をしたことのあるようなアドバイザーから、法律家からではなくして、アドバイザーの方で、タイでの企業の立ち上げを経験したような方、あるいは業務を今実際にやっておられる方、現状はこうだよ、この辺は気をつけなさいよということで、法律的な要素も含めて、経営サイドから情報提供をさせていただく。必ずしも法律が絡むから弁護士さんにお願いをするということではございません。

○太田氏 私、たまたま中国を担当しているアドバイザーなんですけれども、今みたいなお話は相当数受けます。それに対しては、私自身も中国で会社を立ち上げた経験もありますから、そういうものに基づいていろいろお話しさせていただきます。いわゆる基準などをつくる最終段階で弁護士さんなどに相談する。文書をどのように書くか、そのような点でお話ししたりする形を取っています。
 それから、一番大きな問題は、中小企業さんが、そういうことの必要性を余り認識されていないということなんです。本当はそれが非常に大切なことだということなんですけれども、皆さん余り認識されていない。
 例えば中国ですと、先ほど何さんの説明がありましたとおり、企業進出の話が一番多いんです。そのときに、いろんなものをつくらなければならない。例えば定款とか、いろんなものをつくらなければならない。そういうものは、普通の場合中国側から提供されまして、全く読まずに、これは中国語で書かれています。中国語で書かれているにもかかわらず全く読まずに、ここにサインしてください。ぱっとサインされてしまう方が、中小企業の方のかなり多いんです。そして、後からトラブルになりまして、こんなことになったんですけれども、どうしたらいいでしょうか。そんなことを聞きに来られるケースが本当に多いんです。
 そういう意味では、中小企業の方々には、こういうことが必要だということをよく認識していただくというか、宣伝していただくというか、そんなようなことが非常に大切なんじゃないかという気はしています。

○波江野委員 この紹介のチラシの「海外ビジネスのエキスパートが皆さんの国際化をしっかりとサポート! 」の3番に、スペシャリスト集団(弁護士、公認会計士)云々と書いてありますが、こういう弁護士を事業団として特定の方たちと提携関係というか、指名して持っているとか、そういうような仕組みをお持ちなんですか。

○吉田氏 1年の期間付きの登録制度というものでありますけれども、一定の条件で御協力いただけますねという意思確認をした上で、参加していただくということになります。

○波江野委員 その弁護士というのは、日本の弁護士なんですか。それとも、先ほどいろいろ話のあった外国法事務弁護士みたいな方もいらっしゃるんですか。

○吉田氏 いらっしゃいます。

○波江野委員 外国法事務弁護士は、先ほどの何さんのような方もいらっしゃいますけれども、あとはアメリカとかヨーロッパがほとんどで、この資料の3ページにあるような国にたくさん出ていますけれども、何という表現をしたらいいのかわかりませんが、欧米先進国でない国が非常に多いわけです。その分野に対してはどういうような事業団としてサービスをされておるのか。それから、その自信があるんですか。

○吉田氏 ごらんのように中国に比重が掛かっておるということでございますので、今は体制からしても、中国にかなり偏った布陣になっております。その他の国の中では1人もいないという状況もあり、対応できない場合があるということは申し上げざるを得ません。

○太田氏 中国に関しては、中国人の弁護士の方も登録アドバイザーになっていただいております。そういう面では現地対応という制度にはなっています。
 ちょっと付け加えますと、中国というのは御存じのとおり、法治国かという問題がよくあるんですけれども、かなり相談案件も、各地区に特有なものが多いんです。そこへどのような人脈を持っているかどうかというのが、いわゆる問題解決をするポイントになってくることがあるんですよ。だから、弁護士さんに頼むときでも、その地区に強い弁護士というか、法律に強いというんではなくて、その地区に強いという弁護士さんに依頼するという形をなるべく取るようにしています。

○柏木座長 ほかに御質問は。

○吉田氏 補足になりますが、よろしいですか。

○柏木座長 はい。

○吉田氏 具体的に弁護士さんにお願いするような業務がどのくらいあったかということを補足させていただきますけれども、12年、お手元にあります972 件を対面方式でやらせていただいておりますが、そのうちの67件を、13年度が1,365 件という取り扱いをさせていただいておりますが、そのうちの107 件を弁護士さんにお願いするような状況であったと。
 ウェートとしては、中国を中心としたアジア地域でのウェートが相当高うございます。6割前後がそういうことでございます。あとはアメリカが次のグループになります。

○齊藤参事官 中小企業の方々が御相談に見えて、日本においても外国法事務弁護士制度というのがあって、外国の弁護士も日本においてリーガル・サービスを提供しているんだという情報なり実情をどの程度御存知か、おおよその感触で結構ですから、もしもある程度御理解があれば御説明いただきたいと思います。

○吉田氏 極めて低いんじゃないですか。

○齊藤参事官 わかりました。

○柏木座長 ほかに御質問ございませんか。

○孝橋委員 このスペシャリスト集団、弁護士さんには、日本の有資格の弁護士さんも入っているということでございますか。

○吉田氏 それが主流です。

○孝橋委員 1年間の登録制とおっしゃいましたけれども、報酬はどういう形になっているのかということ。
 あと、弁護士の数が少ないようですが、それを更に増やすための働き掛けをされているのかどうかというあたりをお願いします。

○吉田氏 外国在住の方、あるいは国内におられる方も含めて2名になります。あと報酬ですけれども、これは具体的に相談を持ち掛けたもののみ一定の単価でお支払いさせていただいております。
 弁護士の強化・拡充の件ですが、先ほどのアドバイス制度のスキーム図を御覧下さい。アドバイザーは2種類で構成されています。東京の事務所を中心に15名の常設アドバイザーを配置しています。これがほぼ常駐に近い形で申し込みに応じ、申し込みの内容を確認するアドバイスを実施しています。そのほかに、特定分野の専門家として392名の非常勤のアドバイザーがおりまして、国内に309名、海外、現地に84名がおります。その中に先ほどの弁護士さんが含まれますということです。
 機能を担っている常設アドバイザーから、この地域には弁護士が必要であるという御提言、リクエストを踏まえながら拡充していくということで、ニーズのないところに人を立てるということは合理的ではありませんので、ニーズに応じながら、見直していくつもりでございます。

○柏木座長 それでは、どうもありがとうございました。
 ここで4月1日に就任されました古口事務局次長が出席されておりますので、御挨拶をいただきます。

○古口次長 古口と申します。4月1日から事務局の方に着任いたしました。よろしくお願いいたします。東京弁護士会所属の弁護士であるわけですが、通常の民事・刑事事件が主です。
 いろいろ勉強させていただいて、議論に加わっていきたいなと思っております。よろしくお願いします。

○柏木座長 本来ならばここでヒアリングについて自由に討論ということなんですけれども、時間も少ないのでいかがでございましょうか。

○下條委員 1点、意見があります。前回ヒアリングを行いまして、たしか弁護士と外国法事務弁護士合わせて5人。今日外国法事務弁護士2人ということで7人にヒアリングしたわけですけれども、いずれの方も特定共同事業に関与されておられる。特定共同事業を変えていこうという御意見の方ばかり。つまり一方の立場ばかりから聞いておりますので、是非、現行の特定共同事業もなかなかよい制度であると、これも捨てたものではないという反対の立場の方の御意見も是非聞いていただけるように、そうでないと余りにも偏頗な数になっておりますので、是非そういう点をお願いしたいと思います。

○齊藤参事官 ちなみに、次回4月22日のヒアリングの予定も御参考にしていただきたいと思います。
 お手元に第4回と第5回の進行メモ案というのを配付させていただいておりますが、それをちょっとごらんください。
 4月22日、第5回では、この表にありますように、弁護士の山田秀雄氏、この方は国内弁護士さんで、国内の平均的な事務所の弁護士さんでいらっしゃいます。
 それから、外資系企業の関係者ということで、GE Japanのベイツ氏、それから長島・大野・常松法律事務所の長島弁護士。この長島・大野・常松法律事務所は、現状ではまだ特定共同事業を営んでいらっしゃらないと思いますので、そういう事務所の渉外案件について、経験豊富な先生という趣旨です。
 それから、中央大学法学部教授の小島武司先生。小島先生は、いわゆる日本の外弁制度について、従前に改正のための検討会の委員になっていらっしゃった経験がありますので、日本の外弁制度についてお詳しい方という趣旨で御意見を伺うわけです。
 あとは欧州ビジネス協会の関係者という予定をしております。
 こんな顔ぶれで大体ひととおりヒアリング先が決まってきているわけですが、これらを踏まえて、更に今、下條委員が御指摘のように、違った視点と言いますか、これまでのヒアリング対象先とは違った視点の御意見も聴取してみてはどうかという御意見のようですから、その点について皆さんから御意見をいただきたいと思います。

○柏木座長 今の御意見についていかがでしょうか。

○バイヤー委員 最初のヒアリングのときには、政府機関が2つ、法務省、外務省、あと日弁連が政府機関と同じ立場からしましたから、それで弁護士の声は結構強く聞かれたと思います。

○柏木座長 弁護士の意見というよりも、今の共同事業形式でいいのだという意見ですか。

○バイヤー委員 日弁連の意見が反対だったじゃないですか。

○柏木座長 反対というか、むしろ規制緩和に消極的ということでしたね。

○バイヤー委員 下條先生によると、弁護士の声をお聞きしたいと言うけれども、私のポイントは、弁護士の声を最初に聞きまして、それが私の目から見ると、日弁連が政府機関と同じレベルでしましたから、まさに強い声でしたと。

○齊藤参事官 ちなみに、下條先生の御指摘のような御意見の方というのを、下條先生の方でどなたか候補は挙げていただけますか。

○下條委員 勿論挙げます。

○齊藤参事官 もしも依頼するとした場合にですね。

○乗越先生 今、下條先生のおっしゃった方というのは、特定共同事業のメンバーである日本の弁護士の先生のことですか。

○下條委員 違います。今までヒアリングされた方が特定共同事業に関与されておられる弁護士、あるいは外国法事務弁護士7人に対して、4月22日でそうでない方が2人と、7対2という、余りにもアンバランスの数なので、もう少しほかの意見の方も入れた方が討議の場としてはよろしいのではないかという意味です。

○乗越委員 ここの意見とおっしゃいますのは、特定共同事業に入っておられない方の意見ということですか。

○下條委員 そうです。

○柏木座長 今、具体的に腹案がおありであれば、御披露するのは何か問題がありますか。

○下條委員 本人に聞いていないですけれども、たとえて言えば牛島弁護士ですね。そういう方がよろしいのではないかと私は思います。

○乗越委員 長島弁護士はそういう方ではないわけですか。

○下條委員 直接には私、お話ししたことがないのでよくわかりませんけれども、長島・大野・常松法律事務所というのは、御存じのように、日本で一番大きな事務所で、単にうわさですけれども、特定共同事業も検討されておられるという話も聞いたこともありますし、そういうことです。

○齊藤参事官 人数の多い少ないで別にこの検討会での議論の方向性が決まるということでは決してなくて、やはり意見の中身の問題だと思うんです。
 ですから、人数そのもののバランスということについては私は余りこだわらなくてもいいと思うんですが、確かに下條先生のおっしゃるような観点からの御意見も、この検討会の場で反映させた上で十分議論を尽くすということ自体は私もそんなに反対ではないんです。

○下條委員 私も同じように、人数にこだわって、7人だから、反対の方を7人出せとか、そういうことを言っているわけではなくて、単に今までは特定共同事業を変えていこうという意見の方ばかり7人出てきたんで、それに対してもう少し違った視点の方も1人か2人出した方がよろしいんではないか。これは検討会という場として、そういうふうに甲乙両論を聞いた方がよろしいのではないかということです。

○柏木座長 牛島先生が適当なのかどうかということは、留保がありますけれども、おっしゃるとおり、違った意見を聞くというのも非常に大切だと思いますので、事務局と相談させていただきたいと思います。
 ほかに御意見ございますか。なければ、最後に、米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」について、下川委員から御報告をお願いします。

○下川委員 ごく簡単に事実関係を説明させていただきます。
 この「外国貿易障壁報告書」というのは、USTRが毎年議会に出しているものでございまして、本年のものにつきましても、去る4月2日に出されまして、その中に法律サービスについての言及がございましたので、この場を借りて御紹介させていただきたいと思います。
 この報告書自体は議会に対しての報告ということで、米国内向きの報告書でございますので、そういう視点で書かれているものでございます。それに対して、すぐ我が国が何かしなければいけないとか、それに対して何か措置を取ることを前提にして我が方に通報してきていると、そういう性格のものではございません。しかしながら、相当広範な分野にわたっていろいろなことが書いてございますので、これに対して事実関係の訂正も含めて、反論をする分野についてまとめているところでございまして、これはまた別途出すことになっております。
 中身でございますが、1枚めくっていただきますと、障壁がございますけれども、完全なパートナーシップを20年来求めているということを言っておりまして、その下の部分で、特定共同事業のさらなる修正という部分にも若干言及がございまして、むしろ完全なパートナーシップが重要なのであって、特定共同事業制度のさらなる修正では十分なニーズを応えることにならないという記述があることを指摘しています。
 あとは本当に大部な文書で、要点だけ触れておりますので、そのほかに日本弁護士の雇用問題、それから第三国法の扱いについての問題、更には専門職法人、LLP等を設立することの問題、更には日弁連、単位弁護士会への外弁の発言の機会という問題について指摘されております。
 これはUSTRのあれでございますが、これに関連いたしまして、3月14、15日、別の日米の対話の流れの中で、やはり法律サービスについてのやりとりがございまして、二国間の協議の中でも、おおむねここで指摘されているような項目につきまして、議論がございました。これも交渉ではございませんで、規制改革を相互に進めるための対話という位置づけでございますけれども、その中で大体ここに指摘されているような問題について議論がございました。
 1点御報告申し上げたいのは、その議論の中で、当検討会の議論についても相当議論がございまして、まさに今、特定共同事業のさらなる連携の在り方について、この検討会で検討しているところであるということを紹介したのに対しまして、先方からは、この報告書と同じでございますけれども、そもそもパートナーシップが重要なんである。特定共同事業そのもの以上にパートナーシップが本質的に重要であるという指摘がございました。
 それと同時に、第三国法の扱いの問題であるとか、雇用禁止の問題、こういう問題についても、是非この検討会で検討してほしいと。この検討会で検討される予定はあるのかということを、こちらに相当厳しく聞いてくるということがあったことを御報告させていただきたいと思います。
 最後に、この対話の中では、本検討会が外国法事務弁護士の方の参加も得て、非常に透明性の高い形で実施されていることについて感謝したいと。そういうような表明もございましたので、その点も併せて御報告いたします。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。ただいまの御説明に対しまして、何か御質問ございますか。

○乗越委員 反論する予定であるというふうおっしゃいましたけれども、その反論というのは、いずれかの段階でここで御紹介いただけるものでしょうか。それとも、交渉の関係もあって難しいという感じでしょうか。

○下川委員 これはほぼ全分野にわたっているものでございますので、大体案文をほほぼ固めておりまして、かつ法務省さん等とは協議して、接しているところでございまして、この場で特に御披露するということは予定しておりません。

○柏木座長 ほかに御質問ございますか。
 それでは、予定した時間をだいぶ超過いたしましたので、第5回の予定について事務局から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 第5回は4月22日、午前10時からということでございます。第5回の議事の内容は、先ほどごらんいただきました第5回進行メモ案のとおりに予定してございます。
 一応第5回まででヒアリングをひととおり終えるという段取りになりますので、そろそろ本格的に御議論いただく論点の整理の作業にも入っていきたいと考えております。ただし、第5回の時点では、まだ、本格的な論点整理の議論というわけには、時間的にも余裕がございませんので、大体どんな要領で論点整理をしていったらよろしいか。そんなことの簡単な御相談をさせていただくくらいにとどまるかと思っております。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。
 それでは、これで第4回国際化検討会を閉会させていただきます。
 本日はお忙しい中ありがとうございました。