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国際化検討会(第5回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年4月22日(月)10:00〜12:50

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
柏木昇、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、玉井克哉、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)

(説明者)
山田秀雄(山田秀雄法律事務所・弁護士)
ローレンス・W・ベイツ(ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インク日本企業グループ法務本部長)
長島安治(長島・大野・常松法律事務所・弁護士)
牛島信(牛島法律事務所・弁護士)
ジョン・ハウランド−ジャクソン(アイエヌジー証券会社東京支店最高経営責任者兼支店長)(敬称略)

(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題

  1. 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について
     1) 山田秀雄氏からのヒアリング
     2) ローレンス・W・ベイツ氏からのヒアリング
     3) 長島安治氏からのヒアリング
     4) 牛島信氏からのヒアリング
     5) 欧州ビジネス協会(ジョン・ハウランド−ジャクソン氏)からのヒアリング

  2. 論点整理について

5 配布資料

資料5−1 山田秀雄氏説明資料
資料5−2 ローレンス・W・ベイツ氏説明資料
資料5−3 長島安治氏説明資料
資料5−4 牛島信氏説明資料
資料5−5 外務省提出資料(「2002年外国貿易障壁報告書への日本政府のコメント」について)

6 議 事

 (1) 山田秀雄氏からのヒアリング

 弁護士の山田秀雄氏から、国内弁護士から見た渉外法律事務所・外国法事務弁護士について説明がなされた(資料5−1)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:説明者)。

○ 特定共同事業の要件緩和は、渉外法律事務所の問題だということだが、要件が緩和されると外弁が日本法を取り扱う恐れもでてくるから、一般の国内事務所にも影響があるのではないか。外弁による日本法の取扱いを防止するにはどうしたら良いのか。

● 直接的に影響を受けるのは渉外法律事務所であると思う。ただ、渉外法律事務所が影響を受けるということは、間接的に国内弁護士が影響を受けるということである。そのぐらい国内レベルでいうと、渉外法律事務所というのは大きな存在なのである。その渉外法律事務所でさえも、世界レベルで見ると、会計事務所や海外ローファームに飲み込まれる恐れのあるような力関係にあるということである。

○ 特定共同事業の規制緩和については、慎重であるべきとの意見であるが、それは外弁が日本の法律サービス市場を席巻するという懸念があるからなのか。それは、渉外弁護士の数が次第に増えてくることにより、解決されるものなのか。

● 国内弁護士の多くは、日本弁護士と外弁との提携について良く分からないということで、外国のローファームにコントロールされるのではないかという、漠然とした不安感を持っている。その不安感を解消するに足る制度的な基盤が国内にはないということもあり、やや慎重論があっても良いのではないか。ただし、大きな流れとしての規制緩和に異を唱えるべきではないと思う。

○ コントロールされるという不安感が良く理解できない。コントロールというのは、弁護士の法的なアドバイスの判断がコントロールされるということなのか。

● コントロールというのは、個々の法律事務の内容について指図するというものではなく、経営的なものである。具体的には、高い給料で修習生を採用したり、中堅の有能な弁護士をヘッドハンティングするために、国内事務所にはいい人が来なくなるのではないかという不安を持っている国内弁護士もいる。実態を知らないが故の漠然とした不安感である。

(2) ローレンス・W・ベイツ氏からのヒアリング

 ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インクのローレンス・W・ベイツ氏から、日本の弁護士と外国の弁護士との協働のあり方について説明がなされた(資料5−2)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:説明者)。

○ 弁護士と外弁とが平等な立場に立ってパートナーシップを形成することが重要であるとのことだが、如何にしてその平等を確保するのかが重要な課題であると考える。どのような達成手段があると考えているか。

● パートナーシップを形成して、弁護士と外弁が平等に収益分配に与り、平等に責任を分担するようにする必要があるのではないか。

○ 外弁による弁護士の雇用については、どのように考えているのか。

● 必ずしも共同事業でニーズが充たされるわけではないので、その必要があるのではないか。

○ 日本法のアドバイスは、日本弁護士から得たいと考えているのか、それとも外弁から得たいと考えているのか。

● 日本弁護士である。ただし、日本法の定義について、一体何なのか考える必要があるだろう。純国内の法律事務であっても、外国の法律を参考にするべき場合もあるのではないか。

(3) 長島安治氏からのヒアリング

 弁護士の長島安治氏から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働および競争について説明がなされた(資料5−3)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:説明者)。

○ 特定共同事業で働く弁護士の数がまだまだ少ないように思われるが、その理由についてはどのように考えているのか。日本の大手事務所が特定共同事業を利用していないのはなぜか。

● 一つには、外国のクライアントの側では、特定共同事業は一つのパートナーシップではないということで使い勝手が悪いと考えているのではないか。また、渉外弁護士の方では、現状に満足しているので特定共同事業に挑戦する人がいないということもある。ただ、特定共同事業の数とその規模は着実に増加或いは増大していくであろう。BIG4(4大法律事務所)がなぜ特定共同事業を営まないかというと、外国のローファームの方ではBIG4は特定共同事業の相手としては規模が大きすぎると考えているかも知れず、また、BIG4の方では、様々な外国のローファームとの間で仕事を抱えているので、特定のローファームと排他的な関係を築くのは困難であるということがあろう。

○ 特定共同事業の要件緩和と日本弁護士の判断の独立性を担保することとを両立させていくことについて、どのように考えているのか。

● 良い実例を見ることが大事であろう。例えば、長いこと付き合いのある、ブラッセルの多国籍ローファームはその良い例である。今の特定共同事業の制度の下でも懸念されている点はないことはないのかも知れないが、外国のローファームは多国籍化して変わってきており、また、日本の弁護士もそのような多国籍のローファームの中で力をつけていくことになるのではないか。

(4) 牛島信氏からのヒアリング

 弁護士の牛島信氏から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働についてについて説明がなされた(資料5−4)。これに対して、次のような質疑がなされた(●:説明者、□:事務局)。

□ 外国法事務弁護士が、渉外性のない日本法の法律事務から報酬分配に与ることについて、資格法制上制度設計は可能だと考えるか。

● 制度設計は可能であると思う。ただし、そうすることの合理的な根拠があるのかどうか疑問である。

(5) 欧州ビジネス協会(ジョン・ハウランド−ジャクソン氏)からのヒアリング

 欧州ビジネス協会のメンバーであるアイエヌジー証券会社のジョン・ハウランド−ジャクソン氏から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働に関して次のような説明がなされた。

・ 我々のような国際的企業が望んでいるのは、主要な管轄区域にまたがる継ぎ目のない法律サービスである。理想的には、管轄区域にかかわらず、取引全体にわたる全ての法律的要素について責任を取る統一したロイヤーのチームを望んでいる。

・ 国際的に経験を積んだ日本の弁護士が少ない。主要なM&A取引においては、経験のある弁護士が少ないために、利益相反の問題が発生する可能性がある。弁護士数の増加によって現状の問題は改善されるであろうが、日本の法律事務所と外国のローファームとの間の自由な提携が認められれば、問題はもっと早く解決される。

・ 単一の取引のために複数のローファームを利用しなければならないことは、結局のところ非効率である。時間もコストもかかる。

・ 日本は世界第二位の経済大国であり、国境をまたがる活動においては著しい増加が見られている。そして、G7の中で法律サービスの近代化に失敗している事実上唯一の国である。

・ 米国、英国、ドイツのような国において、ローカルのローファームと外国のローファームとの自由な提携の壁が取り払われたことにより、ローカルのローファームが、質の低下や大規模なビジネス上の損失といった不利益を被ったことはない。反対に、双方のローファームにとって新たなる成長のチャンスを与えられるとともに、市場を国際的企業にとって魅力のあるものにしたのである。

・ 法律事務所と外国ローファームとの自由な提携は、外国ローファームの一方的な陰謀なのではなく、法律事務所と外国ローファームの双方が、日本と外国のクライアントの利益のためにプロフェッションを近代化するチャンスなのである。

・ 日本の法律事務所にとって、海外のローファームと自由に提携する選択肢が増えることに何ら不利益はないのではないか。

 これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、●:説明者)。

○ 現行の特定共同事業の制度のどこが悪いと考えているのか。

● クライアントの立場からすると、法律事務所と外国のローファームとの提携に出来るだけ障壁がない方が良いということである。

(6) 論点整理について

 事務局から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働のテーマを中心とした外弁制度の改革に関する論点整理の実施要領について、論点項目のたたき台を事務局が作成し、次回の検討会において、そのたたき台を中心として論点項目の整理をする予定であるとの説明がなされた。

(7) 今後の日程等

 次回(5月17日(金)10:00〜12:30)は、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働について関係者からヒアリングを行うとともに、論点整理を行うこととなった。

(以上)