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国際化検討会(第7回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時

平成14年6月13日(木)14:00〜17:15

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
柏木昇、ビッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、玉井克哉、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)

(事務局)

山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題

弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
 論点についての検討

5 配布資料

資料7−1 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進に関する論点項目

6 議 事

 (1)論点項目の検討

 弁護士と外国法事務弁護士(以下「外弁」という)等との提携・協働の推進に関して、前回整理された論点項目の検討が行われた(○:委員、□:座長、●:事務局)。

 ・ 弁護士と外弁との提携・協働の推進の必要性

● 国際化、グローバル化の進展に伴い、我が国の司法の国際的対応力の強化が必要とされている。「渉外的法律サービスの需要」という観点からみると、国際的あるいは総合的法律問題の増大化、複雑・多様化という現象が進んでおり、今後もこのような増大化の傾向を辿るのではないか。「渉外的法律サービスの供給」という観点からみると、現状では、ユーザーに対する供給は必ずしも十分とは言えない。供給強化を図る方策としては、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進することも必要かつ重要である。

〇 渉外事務所においては、近年、渉外事件だけではなく純粋国内事件も増えてきているのが特徴的である。ビッグ4(4大法律事務所)は、特定共同事業を利用するよりはむしろ、案件毎に相応しい相手と提携することでこのような状況に対応することになろう。特定共同事業については、最近、事業の数や弁護士・外弁の人数が増えており、現状でもかなりの程度、この制度が使われていると思う。

〇 確かに純粋な国内案件が増えているのは事実だが、そのことと今より良い制度をつくるという話とは別である。

□ 現状認識としては、事務局の説明でよろしいのではないか。

 ・ 特定共同事業の目的の制限に関連する問題点

□ M&Aのデューディリジェンスやプロジェクト・ファイナンスのような外弁のビジネスロイヤーとしての知識・経験を活用できる法律事務についても、特定共同事業の目的とすることができないものがあるといった指摘について、どのように考えるのかがポイントになるだろう。

〇 特定共同事業の目的の範囲が明確になることが、予見可能性の面から重要であり、外弁が職務範囲外の法律事務について補助的に関与することは可能であろう。

〇 現行では、例えば、米国弁護士に案件処理を依頼したとしても、結果的に特定共同事業の目的にならないこともあるが、クライアントは、日米で協力して案件処理して欲しいと考えるだろう。現行のような、特定共同事業の目的にできる法律事務を列挙するポジティブリスト式の規制に、合理性はないのではないか。

〇 証券化などの分野では外弁のノウハウは役に立つだろう。ケース・バイ・ケースではないか。

〇 ヒアリングを通じて言えることは、まず、外国法に関する知識の要否の判断が必要となるところ、現実には準拠法の特定が難しいという問題点がある。また、外弁のノウハウが活用できるような法律事務についても、現行のようなポジティブリスト式の限定が制度を使いにくくしているという問題点もある。

〇 外弁法4条は、外弁が職務範囲外の法律事務を行うことを禁止しているが、この規定の実効性が担保されれば良いということではないのか。共同事業や雇用の禁止の趣旨は外弁による日本法に関する法律事務への不当関与の防止であるとのことだが、この「不当な」というのはどのような意味なのか。

● 特定共同事業においては、外弁は職務範囲外の法律事務について弁護士をサポートする関わり方はできるが、その限度を超える関与は不当な関与にあたると解される。

〇 外弁であることによる「不当関与」とは一体何なのか。

□ この点については、具体的方策との関連で議論していきたい。

〇 外弁法49条の2第1項第1号の「外国法に関する知識を必要とする法律事務」の制限については、どのような形で発動することになるのか。

● 外国法に関する知識を必要とするか否かは、まず、クライアントと話をしてみなければ分からないので、その話を聞いた結果、外国法に関する知識が必要ないことが分かれば、弁護士事務所で処理することになろう。

□ 具体例を考えながら、議論をすべきである。問題点の認識としては、この程度で良いのではないか。

 ・ 弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営することが出来ないことに起因する問題点

● 1つの法律事務所を共同経営できるようにして欲しいという要望は、ヒアリングの結果としても多くあり、特定共同事業制度の改正を検討する上で、これを認めるべきか否かは重要なポイントになろう。

〇 外国の著名なローファームが責任をもって案件処理をして欲しいというクライアントの要望が現実にあることを申し上げておきたい。

 ・ 特定共同事業制度の要件緩和策

□「弁護士についての職務経験要件の緩和」については、これだけの緩和策では十分な方策とは到底言えないのではないか。ヒアリングの結果でも、この要件緩和を要望する意見はほとんどなかった。

●「目的の制限の要件の緩和」については、渉外性のある法律事務をより広く目的の範囲に含ませる緩和策と、外弁の知識、経験、ノウハウ等を必要とする法律事務をも目的の範囲に含ませる緩和策の2つが考えられるかと思う。しかし、これらの緩和策については、共同事業の目的に制限がある以上、弁護士と外弁による1つの法律事務所の共同経営は許容されないことになり、1つの事務所を共同経営できないことに基づく問題点の解決にはならないのではないか。

〇 賛成するわけではないが、特定共同事業の目的とすることができない法律事務を列挙するネガティブリスト式というオプションもあるだろう。

〇 ユーザーの立場から言えば、特定共同事業の目的を狭めずに、ユーザーが相談しやすい制度を構築するという観点から検討して欲しい。

〇 その意見に賛成である。

〇 賛成するわけではないが、要件緩和策のオプションとして、目的の制限を撤廃しても、弁護士と外弁の事務所は別々ということもあろう。

●「共同事業の自由化」の内容について確認しておきたい。共同事業の目的の範囲については制限がなくなり、永続性を持った事業として営むことが可能となり、収益の分配も可能となる。弁護士と外弁は1つの収支共同事務所を経営することができるようになる。ただし、外弁の職務範囲は依然として制限されているので、基本的に外弁が日本法に関する法律事務を取扱うことはできない。

〇 雇用については何も触れられていないが。

●「共同事業の自由化」と「雇用との関係」というように論点を形式的に区別しているが、共同雇用については共同事業の自由化と一緒に議論したいと考えている。

 ・ 特定共同事業制度における目的の制限について

〇 ユーザーが入口でたらい回しになるような制度にはしないで頂きたい。現行のように、特定共同事業の目的とすることができる法律事務を列挙する、ポジティブリスト式の制限には、妥当性がないと思う。

〇 49条の2第1項1号の規定はどのような趣旨で設けられたのか。日本国民を守るためなのか。

● 外弁の職務範囲は外国法に関する法律事務に限定されていることから、特定共同事業の目的の範囲内の法律事務を外弁の職務範囲との関係で合理的な範囲に止めようとしたものと考えられる。

□ このような規定が設けられたのは、事件受任の段階で日本法と外国法に関する部分を区別できるという前提があったのではないか。

〇 私の経験では、企業買収の案件では、交渉の最後にならなければ準拠法が決まらないというケースがほとんどである。

〇 1号ばかりこだわるのはどうかと思う。2号又は3号に該当する法律事務ならば、1号に該当しなくとも特定共同事業の目的とすることができるのである。

〇 日本企業であっても特定共同事業を利用したいという要望はあり得るのである。当事者が利用を望むのであれば、それを排除する理由はないのではないか。

□ ここでは、外弁のノウハウを活用することができる法律事務であっても、特定共同事業の目的とすることができないものがあることが大きな問題になっていると理解している。

〇 もともと外弁制度は、利用者の利益を保護するために設けられていると理解しているが、その利用者側から、特定共同事業の目的が制限されるいることによる問題点の指摘がなされており、目的の制限の規定の合理性が疑われているというのが現状であろう。

〇 2号、3号の規定にどれだけ合理性があるのか。

〇 当事者が2号に又は依頼者が3号に該当するのであればその法律事務は特定共同事業の目的とすることができるのであり、これらの規定は明確性の観点から設けられているのである。

□ 明確性の観点からは、目的の制限を撤廃した方が良いのではないか。

〇 2号と3号は、特定共同事業の目的とすることができる法律事件の当事者又は依頼者として外国企業を規定し、日本企業を除外しているが、これは何を目的とした規定なのか。外弁の職務範囲が制限されているのは、ユーザーの利益保護のためであることを踏まえると、これらの規定は、日本企業が質の悪い法律サービスを受けることを防止するための規定なのか。

〇 その理解は誤りである。弁護士は職務範囲の制限がなく、外弁はその制限があることを前提として、本来外弁が取り扱うことのできない法律事務であっても渉外性のあるものに限り、利益分配に与ることを可能とする規定なのである。

 ・ 弁護士と外弁との間における収益の分配について

● 外弁は、職務範囲外の法律事務については、弁護士の法律事務の取扱いを補助・援助等する形態で関与することとなるが、この場合、合理的な収益分配が認められても良いのではないかとも考えられる。

〇 補助・援助とはどのような意味なのか。例えば、事件の紹介という形態での関与は認めるのか。外弁が、外国のローファームのブランドを利用して事件を紹介し、その事件を日本の弁護士に取扱わせ、紹介料をチャージすることに合理性はあるのだろうか。

□ 次回検討したい。

〇 私の事務所では、個々の案件についての歩合制ではなく、顧客から得た報酬を一旦プールし、そこから経費を差し引いた残りの収益を分配するような制度を採用している。収益分配について、事件紹介料のチャージのようなこととは、根本的に異なる認識を持っている。

〇 私の理解では、事件紹介という形態での関与は不当関与の問題になる。収益のプール制にするのであれば、不当関与の問題はないだろうが。

 ・ 外弁による日本法の取扱いまたは日本法に関する法律事務への不当な関与のおそれについて

〇 例えば、外弁にも責任が及ぶから日本での訴訟を止めてくれというように、様々な形で、外弁が日本法に関する法律事務へ不当に関与することはあり得るのではないか。

〇 特に外弁だから不当関与があるということはないのではないか。その点については納得できない。

 ・ 弁護士の独立性への影響

● そもそも「弁護士の独立性」の意味について明確にする必要がある。1つの考え方としては、「法律上の独立性」(一方が他方から法的に指揮監督されることはない関係)と「プロフェッションとしての独立性」(資格に基づく専門性に裏付けられた判断に従って行動するという行動規範)の2つに分けられようかと思う。もう1つは、「具体的法律事務の処理における専門的判断の独立性」と「事業運営上の独立性」の2つに分けるという考え方もあろうかと思う。

〇 これまでに外弁が懲戒処分を受けた例はあるのか。

● 会費の滞納による退会命令のケースが1件あるのみである。

□ これまでの議論の中で「事業運営上の独立性」ということも指摘されてきたが、これは今後の制度設計とあまり関係がないように思うが、いかがか。

〇 ドイツでは10大事務所のうち5つの事務所が、欧米のローファームに吸収合併されてた結果、サービスの単価が上がっている。これは大きな問題である。

〇 仮に共同事業が自由化されたとしても、共同事業を行わない自由があるということを指摘したい。

□ サービスの単価が上がることと、個々の弁護士の判断への影響とどのように関係するのかが良く分からない。

〇 個々の弁護士の判断への不当な影響ということも大きいが、それ以外にも、様々なところに外弁のコントロールが及ぶということを指摘しているのである。

〇 共同事業が雇用類似の関係になることが問題なのである。独立性に影響があるから共同事業を解消したら良いということでは、独立性の議論にはならない。

 ・ 指導・監督の強化の要否

〇 懲戒処分があるとは言っても、本人が本国に帰ってしまったら、実際に処分はできないことから、指導・監督の強化については制度化すべきである。

〇 指導・監督の強化には賛成する。そして、それが公平な形でなされるべきである。

〇 事後規制で指導・監督を強化すべきである。別の観点からユーザー保護の仕組みは必要である。

 ・ 雇用禁止の規制根拠について

〇 なぜ雇用が規制されなければならないのか。企業が弁護士を雇用することが出来るにも関わらず、外弁が弁護士を雇用することが出来ないのは理解できない。雇用を認めると弁護士の独立性に影響が出ることが問題であるならば、弁護士の独立性が害される危険性は、外弁よりも企業の方が高い。

● 今問題になっているのは、日本法に関する法律事務への不当関与である。

〇 それならば、弁護士が外弁を雇用しても良いのはなぜか。

● 雇用が禁止されているのは、雇用を通じて、職務範囲の制限がある外弁が自らの職務範囲外である日本法に関する法律事務へ不当に関与するおそれが類型的に高いと考えられたためだと思われる。

 ・ 雇用禁止の問題点

〇 共同事業の自由化が実現された際に雇用が依然として禁止されていると、事務所の一体性・同一性を維持するのに足かせとなる。

 ・ 雇用禁止の規制緩和の在り方との関係について

● 規制の在り方については、企業が社内法律家として弁護士を雇用することや、隣接法律専門職に関する法律では、弁護士の雇用を禁止する明文規定がないこととの比較が参考になる。雇用された弁護士が、使用者による無権限での法律事務の取扱いに加担する業務活動をしなければ、雇用自体を禁止する必要までは認められないと考えることに、合理性が認められるのではないか。規制緩和の要否ないし方向性については、弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営することが許容された場合、両者が共同で弁護士を雇用することを許容すべきかが問題となるが、共同経営が許容された場合に共同雇用を認めないのは、整合性がとれないのではないかと考えられる。

● 仮に雇用が認められた場合、外弁事務所は雇用した弁護士をどのように活用することになろうか。

〇 パートナーの弁護士とイソ弁で活用の仕方に差がでるとは考えられない。共同事業の自由化と雇用は一体不可分のものである。

〇 雇用については、諸外国において、どういう議論がなされた結果、現行の制度が採用されているのかということも、議論すべきではないのか。例えば、中国ではどのような理由で雇用が認められていないのか、明らかにできないのか。

● 諸外国の制度の現状については、出来るだけ把握に努めたい。

〇 外弁ではない外国弁護士が日本の弁護士を雇用すること自体は、禁止されておらず、雇用主たる外国弁護士が被雇用の弁護士に日本法の法律事務を取扱わせることが、弁護士法72条に違反するかどうかは、実質で判断することになるのであるならば、同様に、外弁による弁護士の雇用についても形式的に禁止するのではなく、それが職務範囲の逸脱にあたるのかどうかを実質で判断するということも考えられるのではないか。

〇 被雇用者が弁護士であるという理由で、雇用を一律に規制するのは問題である。外弁から弁護士への指揮命令は、サラリーマンの上下関係における指揮命令とは異なるものであるから、外弁による指揮命令が雇用を禁止する理由にはならないのではないか。

〇 外弁は日本法に関する法律事務を取扱うことはできない。雇用を認めると外弁が日本法に関する法律事務に不当に関与する危険が大きくなる。現実に、外弁が日本法に関するメモランダムを出したりしている。雇用禁止は維持すべきである。

〇 外弁が日本法に関する法律事務へ不当に関与する実例があることと、雇用禁止自体を維持することとは関係ないのではないか。雇用を一律に禁止するのではなく、別の形の規制もあるのではないか。

〇 外弁がなぜ弁護士を雇いたいのかと言えば、それは、日本法のアドバイスを行いたいということである。仮に雇用を認めると、外弁が弁護士から日本法のアドバイスをとって、それをクライアントに提供することが容易になる。

□ 雇用という形態では駄目だが、パートナーシップという形態であったら構わないということなのか。

〇 パートナーシップであっても問題はある。外弁の職務範囲が広がるわけではないので、日本法に関しては弁護士が関与することに変りはない。

□ クライアント側には、日本法と外国法を含む案件について、弁護士と外弁が連名でオピニオン・レターを出して欲しいという要望があるのだが。

〇 日本法と外国法を含む案件については外弁は関与できるだろうが、純粋に日本法だけの案件ならば、やはりそれは弁護士だけが関与しなければならない。

〇 外弁が日本法のアドバイスを取扱った事例があるとのことだが、公知の事例としてどのようなものがあるのか。本当にそのような事実はあるのか。

〇 事務所の弁護士に聞いてみると、結構、そのような事例があるとのことであった。

〇 それが事実であるとしたら、弁護士の雇用を認めてその弁護士に日本法のアドバイスをさせた方が、クライアントの利益保護に資するのではないか。

● 雇用主たる外弁が、被雇用の弁護士を通じて日本法に関する法律事務へ不当に関与することを防止することが雇用禁止の趣旨であり、その意味で、雇用禁止の規制がなされているのである。

〇 ここでは、共同事業との関係において雇用禁止の在り方を議論するのではないのか。全面的に雇用を見直すといった議論は、土俵をはみ出すことにはならないのか。

● 議論そのものは、線引きをせずに、できるだけ幅広くしていただきたい。最終的には、特定共同事業の要件緩和等との関連で、望ましい雇用の姿に落ちついていくことになるのではと考える。

□ ここでの議論の中心は、特定共同事業の要件緩和等についてであるが、これとの関連において雇用についても議論することに意味があるのではないか。

〇 そうであるならば、共同事業の禁止も雇用の禁止も外弁による日本法に関する法律事務への不当関与を防止する趣旨であるのだから、そのことを踏まえて雇用禁止の在り方をどのように考えるのかという問題になるのであろう。

〇 共同雇用とはどのような意味で使っているのか。

□ 共同事業が自由化された場合に、弁護士と外弁のパートナーシップが弁護士を雇用するという意味で用いている。

〇 それならば、弁護士がパートナーシップのパートナーとして入るのか、アソシエートとして入るのかというだけの差になる。

□ 「弁護士と外国弁護士の提携・協働について」の論点は、次回に議論することとしたい。

 (2)今後の日程等

 次回(7月12日(金)14:00〜17:00)は、弁護士と外弁との提携・協働の推進について、引き続き、検討を行うこととなった。

(以上)