● 規制の在り方については、企業が社内法律家として弁護士を雇用することや、隣接法律専門職に関する法律では、弁護士の雇用を禁止する明文規定がないこととの比較が参考になる。雇用された弁護士が、使用者による無権限での法律事務の取扱いに加担する業務活動をしなければ、雇用自体を禁止する必要までは認められないと考えることに、合理性が認められるのではないか。規制緩和の要否ないし方向性については、弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営することが許容された場合、両者が共同で弁護士を雇用することを許容すべきかが問題となるが、共同経営が許容された場合に共同雇用を認めないのは、整合性がとれないのではないかと考えられる。
● 仮に雇用が認められた場合、外弁事務所は雇用した弁護士をどのように活用することになろうか。
〇 パートナーの弁護士とイソ弁で活用の仕方に差がでるとは考えられない。共同事業の自由化と雇用は一体不可分のものである。
〇 雇用については、諸外国において、どういう議論がなされた結果、現行の制度が採用されているのかということも、議論すべきではないのか。例えば、中国ではどのような理由で雇用が認められていないのか、明らかにできないのか。
● 諸外国の制度の現状については、出来るだけ把握に努めたい。
〇 外弁ではない外国弁護士が日本の弁護士を雇用すること自体は、禁止されておらず、雇用主たる外国弁護士が被雇用の弁護士に日本法の法律事務を取扱わせることが、弁護士法72条に違反するかどうかは、実質で判断することになるのであるならば、同様に、外弁による弁護士の雇用についても形式的に禁止するのではなく、それが職務範囲の逸脱にあたるのかどうかを実質で判断するということも考えられるのではないか。
〇 被雇用者が弁護士であるという理由で、雇用を一律に規制するのは問題である。外弁から弁護士への指揮命令は、サラリーマンの上下関係における指揮命令とは異なるものであるから、外弁による指揮命令が雇用を禁止する理由にはならないのではないか。
〇 外弁は日本法に関する法律事務を取扱うことはできない。雇用を認めると外弁が日本法に関する法律事務に不当に関与する危険が大きくなる。現実に、外弁が日本法に関するメモランダムを出したりしている。雇用禁止は維持すべきである。
〇 外弁が日本法に関する法律事務へ不当に関与する実例があることと、雇用禁止自体を維持することとは関係ないのではないか。雇用を一律に禁止するのではなく、別の形の規制もあるのではないか。
〇 外弁がなぜ弁護士を雇いたいのかと言えば、それは、日本法のアドバイスを行いたいということである。仮に雇用を認めると、外弁が弁護士から日本法のアドバイスをとって、それをクライアントに提供することが容易になる。
□ 雇用という形態では駄目だが、パートナーシップという形態であったら構わないということなのか。
〇 パートナーシップであっても問題はある。外弁の職務範囲が広がるわけではないので、日本法に関しては弁護士が関与することに変りはない。
□ クライアント側には、日本法と外国法を含む案件について、弁護士と外弁が連名でオピニオン・レターを出して欲しいという要望があるのだが。
〇 日本法と外国法を含む案件については外弁は関与できるだろうが、純粋に日本法だけの案件ならば、やはりそれは弁護士だけが関与しなければならない。
〇 外弁が日本法のアドバイスを取扱った事例があるとのことだが、公知の事例としてどのようなものがあるのか。本当にそのような事実はあるのか。
〇 事務所の弁護士に聞いてみると、結構、そのような事例があるとのことであった。
〇 それが事実であるとしたら、弁護士の雇用を認めてその弁護士に日本法のアドバイスをさせた方が、クライアントの利益保護に資するのではないか。
● 雇用主たる外弁が、被雇用の弁護士を通じて日本法に関する法律事務へ不当に関与することを防止することが雇用禁止の趣旨であり、その意味で、雇用禁止の規制がなされているのである。
〇 ここでは、共同事業との関係において雇用禁止の在り方を議論するのではないのか。全面的に雇用を見直すといった議論は、土俵をはみ出すことにはならないのか。
● 議論そのものは、線引きをせずに、できるだけ幅広くしていただきたい。最終的には、特定共同事業の要件緩和等との関連で、望ましい雇用の姿に落ちついていくことになるのではと考える。
□ ここでの議論の中心は、特定共同事業の要件緩和等についてであるが、これとの関連において雇用についても議論することに意味があるのではないか。
〇 そうであるならば、共同事業の禁止も雇用の禁止も外弁による日本法に関する法律事務への不当関与を防止する趣旨であるのだから、そのことを踏まえて雇用禁止の在り方をどのように考えるのかという問題になるのであろう。
〇 共同雇用とはどのような意味で使っているのか。
□ 共同事業が自由化された場合に、弁護士と外弁のパートナーシップが弁護士を雇用するという意味で用いている。
〇 それならば、弁護士がパートナーシップのパートナーとして入るのか、アソシエートとして入るのかというだけの差になる。
□ 「弁護士と外国弁護士の提携・協働について」の論点は、次回に議論することとしたい。