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国際化検討会(第8回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時

平成14年7月12日(金)14:00〜17:30

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
柏木昇、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、 波江野弘(敬称略)

(事務局)

松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題

弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
論点についての検討

5 配布資料

資料8−1 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進に関する論点項目
資料8−2 特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態
資料8−3 下條委員提出資料
資料8−4 日弁連提出資料
資料8−5 乗越委員・バイヤー委員提出資料

6 議 事

 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について前回に引き続き論点項目の検討が行 われた(○:委員、△:日弁連、□:座長、●:事務局)。

 ・ 弁護士と外国弁護士との提携について

○ これまでの議論等から考えても外国弁護士と日本の弁護士との間の提携は基本的に自由であるべきではないかと考えている。
 弁護士と外国弁護士との共同事業に制約を設けることは合理性に乏しいという観点から、資料8−5を外弁法の見直しのたたき台として提出させていただいた。

○ 外国弁護士が、日本で外国法事務弁護士(以下、「外弁」という。)の資格を取得せずに活動することのメリット、ニーズはあるのか。

○ 外弁にならないと日本で法律事務ができないというところに異論があるのではなく、イギリスにいるイギリスの弁護士と日本にいる日本の弁護士との提携ができないことについて問題意識をもっており、ここで考えるべき論点だと思っている。

□ 日本の弁護士倫理等を外国のパートナーに及ぼすことができないことについてはどう考えるか。

○ 日本で全く活動していない弁護士に対して及ぼそうということが問題ではないか。

○ 弁護士法や外弁法の適用範囲を整理しないと議論がかみ合わなくなるのではないか。

○ 仮に現在の外弁制度を廃止して、外国の法律事務所の日本支店にいるのが日本の弁護士だけだという前提があれば、外国弁護士との間に規制を設けないことに賛成することはできる。

○ 外国の法律事務所と日本の法律事務所が提携し、外国の事務所の弁護士が日本に来なければよい、という話になるが、現実から考えてそういう規制の仕方は無理がある。また、ユーザーの観点からすると意味がないのではないか。

○ フランスでは自国の試験に合格した者しか資格を認めない制度になっている。日本もフランスと同じような制度にすればよいのではないか。

□ 問題のイメージはおおよそつかめたのではないか。今後の議論の参考にしたい。

 ・ 下條委員より前回提出された参考資料(米国の外国弁護士受入制度の現状等について)について説明

○ 外国との交渉にあたっては先方の受け入れ状況を勘案すべきであり、アメリカでは半分の州しか外国の弁護士を受け入れていないというのはご指摘のとおりである。WTOの交渉での努力は引き続き行っていく必要がある。
 ただ雇用について、州法に明示的な規定がないから認めていないという判断については慎重に考える必要がある。

○ WTOではこれから厳しい交渉が行われる。方向性を早く出しすぎるのは問題ではないか。

○ 外国との交渉がこの検討会の考え方を左右するというのはおかしいのではないか。

 ・ 特定共同事業の要件緩和等の具体的方策について

●(資料8−2 A〜D案について事務局より説明)

○(資料8−3について下條委員より説明)事務局の提示したA〜D案は一定の立場から出た案のように思われる。客観的な立場に立つ観点から資料8−3を提出した。この案では、明らかに審議会の意見書に反していると言えるC、D案は削除している。

○ 下條委員の私案はヒアリングでユーザーから指摘されたニーズを満たさないものではないか。

○ 事務局案は意見書の範囲を逸脱しているという御指摘であったが、本当にそうなのか。弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働を推進するための方法論として、雇用の問題、収益分配の問題も入れて検討してもよいのではないか。

○ この検討会の目的は国民の信頼に応える制度設計をすることであり、より合目的的な議論がされるのであれば、当然に議論すべきである。

□ 結果的にA案、B案にとどまるかどうかは別として、検討の内容をA案、B案に限定する実益はないのではないかと思われるので、これで議論を進めていきたい。

 ・ 特定共同事業制度における目的の制限について

   

○ 利用者側からのニーズ、事務所の負担等を考えると、原則としては一つの事務所で特定共同事業をやれることとして、共同事業の対象とすることに問題のある法律事務があればネガティブリストを考えるという方向が適当ではないか。少なくとも事務所形態としては、一つの事務所としてやることが望ましいのではないか。

□ 下條委員のB案で目的は撤廃するけれど事務所は別にする、と考える理由は何か。

○ 雇用禁止を確保するため。一つの事務所での共同雇用すると、重複雇用になる。外弁が日本の弁護士を通じて日本法へ踏み込むことを防止する必要がある。

 ・ 弁護士と外弁との収益分配について

● 「外弁の職務範囲の規制」と「弁護士と外弁との間の収益分配の在り方」とは論理必然的な関係にはないのではないかということについて、吟味が必要ではないか。

○ 収益分配禁止規定を存続させる意味が分からない。本規定を存続させたままでは、事務所のマネージングパートナーのような人が収益分配に預かることが適法なのかどうか、あいまいなボーダーラインがあるのではないか。事件紹介に弊害があるのであれば事後規制をすればよい。このままでは必要のない重荷を事務所に負わせることになるのではないか。

○ 49条2項前段を削除しながら後段を残すというのは、後段に独立の目的があるはずという解釈からくるのかもしれないが、普通に考えれば後段は共同事業の脱法を抑止する趣旨ではないかと思われるので、後段のみを残すことは整合性がないのではないか。
 仮に後段のみ残ったとしても、どういう場合に違反になるかが非常に分かりにくい。

○ この問題は弁護士と外弁の間の技術的な問題であり、依頼者側にとっては事務所内部で収益分配しようとしまいと構わない。なぜこの規定が設けられたのか。

● 資金提供の見返りとしての収益分配であるとしながら、実際には外弁が脱法的に日本の弁護士の法律事務の取り扱いに干渉するという危険性を防止する必要があると考えられたためではないかと思われる。

○ 民間企業では出資者が見返りをもらうのは当たり前。共同事業は一人ではできないものであり、もう一人いること自体が貢献になっているのではないか。また、日本の弁護士が外弁にこき使われるというが、日本の弁護士はそんなにレベルが低いのか。法律事務はそんなに特殊なものなのか。

□ 米でも非弁護士が利益をシェアしたり、事件紹介に対価を求めることは禁止されている。こうした公益性の高い職業について投資の対象にすることについてはどこでも規制が強いのではないか。目的の制限が撤廃されたときに、収益分配だけを目的とした関係は殆ど考えられないのではないかという指摘は的を射ているのではないか。

○ 株式会社とは違うということを理解していただきたい。特定共同事業の目的要件を撤廃して何が残るのかについては考える必要があるだろう。

 ・ 外弁による日本法に対する法律事務への不当関与について

△(日弁連より資料8−4について説明)

○ 外弁は「不当な関与」を行ってはならないということなのであれば、「相当な関与」であればできるのか。目的制限を撤廃し、日本法案件について、パートナー全員で責任をとることとした場合に、外弁の出す意見は不当な関与として認められないことになるのか。

△ 日本法の解釈が外弁の解釈にひきずられるのであれば不当な関与になるだろう。事務所の運営に関しては外弁法4条で規制されてないと考えてられているようだ。どこまでが日本法のマターかによって結論が変わってくるのではないか。

□ 例えば特許侵害訴訟において、日本で訴訟をしない方が顧客の利益になるというケースがある場合に、外弁がそうしたアドバイスをするのは不当な関与にならないのではないか。

△ 外弁の考えに日本弁護士が納得するかどうかということではないか。議論をすることは重要だが、日本の訴訟の行く末は日本の弁護士が判断すべき。

 ・ 弁護士の独立性への影響

(特に意見なし)

 ・ 指導・監督の強化の要否

○ 規制緩和される場合に、事後チェックを強化するのは当然である。外弁に対する規制は日本の弁護士に対する規制と同様に考えるべきである。

○ ユーザーの立場からすると情報の開示が重要である。

○ 「不当な関与」かどうかといったことは事後的には分からないため、事前規制を入れる可能性があるのではないか。シンガポールはパートナーの半分以上は現地の弁護士にするように、という制度があるようだが、事後的にコントロールできないとすれば、こうした数量規制のようなものもオプションとして考えられるのではないか。

○ 外弁は、広い意味でのロイヤーとして日弁連の下で指導監督を受けており、検討にあたっては弁護士と外弁で差を設ける必要があるのかという観点から注意深く検討する必要がある。WTOでの議論においても、業界団体への加盟が条件になっている場合に、内国民待遇が受けられるかどうかが非常に厳しく問われる。数量的な規制を導入することの合理性の説明は難しいのではないか。

○ 外弁も有資格者であるという前提で話を進めて頂きたい。現実問題として、特定の数字で規制するのは難しいだろう。

□ この問題は、全体を議論した後で規制緩和策との関連で立ち返って検討する必要があろう。

 ・ 雇用禁止の問題点 雇用のニーズ(C案、D案)

○ 雇用を認めることには弊害が多い。外弁は徐々に職務を拡大し、最終的には事実上日本法を扱うことを目指している。また、日本の弁護士は日本の弁護士に教育されることが重要である。教育には3〜5年程度必要。

○ 最近の企業法務の世界では弁護士も大規模な組織体制で仕事をする局面が増えている。
 若手の育成は日本人弁護士でなければできないわけではないだろう。共同事業という事業体で弁護士を雇用するという考え方もあるのではないか。

○ 難しいのではないか。私の経験からすると弁護士になりたての人は新しい法令に詳しくないため、セミナーによる教育、OJTによる弁護士からの指導等を行っている。外弁の下では日本法の素養を身につけることが十分にできないのではないかと思う。

□ 雇用のニーズの議論の前提については、外弁が弁護士を雇用する場合と、弁護士と外弁とが共同で弁護士を雇用する場合と2通りある。

○ 議論の前提は、雇用者である外弁が被雇用弁護士のアドバイスに基づいて日本法のアドバイスを行うことができるということなのか、被雇用弁護士が日本法を外弁にアドバイスできるかどうか、それができたとしても外弁がそれを顧客にアドバイスをすることはできないということか、どちらなのか。

● 現行制度では、外弁が日本弁護士から日本法のアドバイスを受けたとしても、日本法を自由に扱うことは禁止されているということが前提である。日本弁護士を雇用して活用する必要が色々あろうが、それは具体的にどういうことなのかを踏まえておくためにニーズ論を議論して頂きたい。

○ 相手が誰であろうと、日本の弁護士が日本法についてアドバイスできるのは当然である。誰が顧客に意見を伝えるかということは大した意味はなく、実質的に誰が最終的に責任を持ってアドバイスできるのかということが重要なのではないか。

□ B案で共同事業の目的制限を撤廃した場合に、共同事業で日本の弁護士を雇用することができるかについては後で再度議論したい。外弁が単独で日本弁護士を雇用するニーズについての議論に絞りたい。

○ なぜパートナー(日本の弁護士)がいなければ弁護士を雇用できないのか、その必要性が不明である。

● 外弁が弁護士を雇用することが必ず外弁の職務範囲の逸脱に結びつくのかどうか、必ずしもそうでないならば雇用を認めることにより、良い意味での協力関係が発揮できるのではないか、このあたりがポイントになるのではないかと考えている。

○ 外弁が日本法を取り扱うことができないのに何のために弁護士を雇うのか、ニーズはあまりないのではないか。

● 「共同事業の自由化」と「雇用」はうまくかみあわせることによってそのメリットが発揮される。その意味では両者を全く別々に議論することは窮屈と言えるかもしれない。

□ 外弁と弁護士は同じプロフェッションなので、例えば会計事務所が弁護士を雇用することとは事情は異なる。制度設計としては区別しなければいけないのではないか。

○ 外弁法の作りは、外弁の方が他の法律専門職の人より危ないという前提があって、わざわざ雇用禁止規定も設けている。この規定を残して共同雇用のみを認めるというのも一つの手である。雇用禁止規定は象徴的な規定なので残したくない、という意見もあろうが。

○ 日米交渉では自由な形態のパートナーシップと雇用は同列に扱われている。要望書などを見ていると同列で議論しているものが殆どであり、潜在的には雇用する形で使いたいという要望がかなりあるのではないか。現行制度では弁護士を雇いたいのに雇えない制度になっていることが問題ではないか。

○ 雇用禁止規定を象徴的に残しておくことにどれだけ意味があるのか疑問。弁護士と外弁との協力関係については、将来的に色々なバリエーションがあると思われる中で、外弁による雇用をもってワンパターンに4条違反とする意味があるのか。

○ 弁護士の判断の独立性を守ることが重要。外弁の指揮命令監督下に置かれることで判断の独立性は大きく害されるものであり、雇用禁止の意味はそこにある。外国からの要望は多々あろうが、法律判断の独立性は万国共通の重要な要素である。日本法を取り扱いたければ特定共同事業を利用すれば足りる。

○ 弁護士と外弁は同じ弁護士倫理の下に置かれている。雇用により法律判断の独立性が害されるのかについては疑問がある。

○ 49条1項の趣旨は外弁はロイヤーであるので違法行為をおこしがちだということを前提としているのではないか。それが今、突然変わるのか。外国からパートナーシップと雇用を一緒に言われているからということでは変わる理由にはならない。経験の浅い弁護士が雇用されている局面において、法律判断の独立性が守られているかということはチェックできない。だから49条1項の存在意義はあるのではないか。

○ 判断に雇用主の影響が出てくる可能性があることは否定しないが、可能性ということをもって規制を続けることが合理的なのか。そうしたリスクを全て排除しようとすることはそもそも無理がある。

 ・ 雇用禁止規定の見直しについて

○ 外弁による単独雇用のニーズは現行の特定共同事業が不便だから出てきたのではないかと思うが、単独雇用の可否はそもそも本筋ではない。特定共同事業がもっと広い形で認められるのであれば、そちらで雇用するようにすればよいのであり、逆に言うとそうであれば外弁の雇用は禁止しても構わないのではないか。

○ 同じ資格を得た弁護士がなぜ、パートナーか、被雇用者かによって差をつけなければいけないのかが分からない。

○ 各国の弁護士制度も様々であること、また、自己責任を持てないユーザーも多いということ。制度設計にあたってはその両方を考える必要がある。

○ ニーズ論を考えるにあたって、企業と個人と分けて考える必要はあろう。外弁の単独雇用は禁止しても構わないと思う。ただ、制度設計上、雇用禁止規定を維持すると、C案により得られるメリットを活かすことが難しくなり合理的でない、というのであれば、雇用禁止規定を撤廃して単独雇用の弊害防止措置を考えることもできるのではないか。

○ 雇用は、「提携・協働」とは少し違う。だからこそ審議会の意見書は雇用禁止の見直しを将来の課題としたのではないか。共同雇用は大きな提携の中の一つのファクターとして位置付けることは出来るだろう。

○ 審議会では時間がなくて雇用禁止についてまでの議論ができず、そのために雇用禁止の見直しを将来の課題としたのではないか。それなのに議論をしないのは検討会が怠慢のそしりを免れないのではないか。

□ 議論は尽くして頂きたい。

○ 企業の倒産につながりかねないような大きな案件はいくらでもある。外からチェックできない、おかしな事態の発生を事前に防止するのが法律である。自己責任と言ってもリーガルサービスと他のサービスでは性格が異なるのではないか。

● 雇用された弁護士の判断が害されるおそれについて、弁護士の独立性の尊重については、ABAモデル・ルールでも謳っていると強調しつつ、アメリカの弁護士が日本に来ると、日本の弁護士の独立性を尊重しないという説明は疑問である。また、雇用主が被雇用の弁護士の自由な判断を歪めるおそれは論理的にはあると言えるが、一方で、うまく協力体制をとることによるメリットもある。メリットとデメリットのどちらにスタンスを置いて制度設計をするのがよいのか、議論を深めて頂きたい。

○ 日本弁護士と外国弁護士はよって立つ法律や、文化的、社会的、歴史的背景が異なる。

● 各国の制度に差があることは否定しないが、弁護士の本質的な部分は同じであり、相互に専門領域について尊重しあえるのではないか。

○ 現実は違う。

 ・ 雇用が解禁された場合の弊害防止策について

○ 弁護士は命、財産を預かる仕事である。事後措置と言っても会社がつぶれてしまってから考えても遅い。ある程度の事前規制は必要である。

○ リスクと制度のバランスの問題なのではないか。可能性があることをもって使いにくい制度にすることは問題である。

○ ユーザーのニーズについては現行の特定共同事業でも十分対応は可能である。

○ 世の中全体として規制撤廃に動いている状況の中で、数量規制の合理的な根拠を提示することは難しい。外国との関係では、全く同等である必要はないかもしれないが内国民待遇ということが説明できる必要がある。

□ 今の意見との関連では雇用について届出制をとるとか、綱紀懲戒制度の充実で対応するということもアイデアとして考えられる。

 ・ 次回の検討会について

□ D案との関係での「弁護士と外弁との間の収益分配」については時間の関係で、次回の検討会で御議論頂きたい。

□ 外弁制度の改革については、日弁連の会規等の改正を伴うものなので、日弁連からも御意見があれば頂きたいと考えているが、御意見があればお願いしたい。

△ まとまった意見になるか分からないが、少なくとも検討状況についての説明の時間を次回に頂戴できれば幸いである。

 ・ 次回(7月25日14時〜17時)に引き続き検討を行うこととなった。

 ・ また、次回、欠席予定の下川委員の代理として外務省国際機関第1課サービス貿易室大塚課長補佐の出席が認められた。

(以上)