1 日時
平成14年7月12日(金)14:00〜17:30
2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室
3 出席者
(委員)柏木昇、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官
4 議題
弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
論点についての検討
5 議事
○柏木座長 所定の時刻になりましたので、第8回「国際化検討会」を開会いたします。本日は御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
早速ですが、今回の議事予定につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○齊藤参事官 本日は前回に引き続きまして、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進につきまして、論点項目の検討を行う予定でございます。
本日の検討の進め方ですが、まず論点項目のうち、前回検討未了だった「弁護士と外国弁護士との提携・協働について」、この点について御議論いただきたいと思います。
その後、前回御説明いたしましたように、特定共同事業の要件緩和等に関する具体的方策の検討に進んでまいりたいと思います。その際に、特定共同事業の要件緩和等との関連におきまして、想定される制度改正の基本的なパターンを事務局からお示ししたいと考えています。その基本的なパターンを念頭に置きまして、論点項目についての検討を深めていただきたいと存じます。
また、下條委員から前回資料の提出がございましたが、その資料につきまして、具体的方策の検討に入る前に御説明をいただきたいと考えております。
本日の検討の進め方につきましては、概略以上でございます。
○柏木座長 それでは、まず始めに事務局から配布資料の確認をお願いします。
○齊藤参事官 まず、資料の8−1ですが、これは論点項目の一覧表を、本日も検討の便宜のために資料として提出させていただいております。
資料8−2は「特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態」。後ほど説明させていただきます。
資料8−3は「下條委員提出資料」です。前回提出されたものと同じものですが、若干付け加わったものがございます。
資料8−4、これは「日弁連提出資料」でございます。
資料8−5、これは「乗越委員・バイヤー委員提出資料」でございます。
参考資料としまして、「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題する資料を配布させていただいております。これは、先日の顧問会議のときに採択されたアピールでございます。
資料は以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。まず、前回検討未了だった「弁護士と外国弁護士との提携・協働について」を検討したいと思います。ここでは、外国弁護士と弁護士との共同事業について検討することになろうかと思います。まず、事務局から説明をお願いします。
○齊藤参事官 外国法事務弁護士ではなくて、外国弁護士一般と弁護士との共同事業の現行法の規制との関係についてまず御説明します。
外国弁護士は、弁護士以外のものということになりますので、弁護士と共同で行うか否かに関わらず、日本国内で法律事務を取り扱うことは弁護士法72条に違反することになると解されます。
したがいまして、このような形態での共同事業は、現行法の下では許容されていないということになると考えます。
ただし、弁護士と外国弁護士との提携につきましては、いろいろな形態があり得ると考えられますので、具体的な形態に関しましては、提携の内容を総合的に勘案して、外国弁護士が自ら日本国内で法律事務を取り扱っていると言えるかどうか、そのことによって現行の規制に反しているかどうかが判断されることになるのではないかと考えられます。
概略以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。それでは、外国弁護士と弁護士との共同事業がいかなる内容のものとなるか、いかなる内容のものが考えられるかについて、まず御検討いただきたいと思います。
外弁でない、外国の弁護士と日本の弁護士との共同事業のパターンですけれども、例えば経費の問題や収入の分配の問題、責任の分担の問題、いろいろあるかと思います。イメージが湧き辛い面がありますので、乗越委員、何か御説明いただけますか。
○乗越委員 承知しました。協働の対応について、いろんなやり方を考えられるのだと思いますけれども、今、事務局の方からあった御説明から敷衍し、それから前回少し出た議論からも考えますと、恐らく外国弁護士と日本の弁護士との間の事業のやり方を規制する枠組みというのは全くなくて、基本的に自由なのではないかという気がいたしております。
もしそうであれば、別にそれをこうでならなければけいないというふうに新たな規制を加える必要はないと考えるんですけれども、具体的には仕事のやり方、あるいは収益の分配の仕方、責任の分け方というものは、今、国内の弁護士事務所でやっておられるようなやり方、あるいは外国法事務弁護士でやっているようなやり方と全く変わりないのだと思います。
仮に提携について規制がないという立場になりますと、日本の弁護士の方も外国弁護士と自由にパートナーの一人となって、単にそこで責任と収益の分配にあずかるというだけのことではないいかと私は考えております。
それに敷衍いたしまして、私どもが提出いたしました、資料の8−5がどういうものかということを申し上げますと、今までヒアリングを伺ってきたことを考え、それからここで議論していただいたことを考えますと、弁護士と外国弁護士との間で行われる共同事業にこれから制約を設けるということは、合理性に乏しいというのが有力な意見ではないかという気がいたしております。
そういう状況にかんがみまして、私どもの方で非常に簡単にではありますけれども、外弁法というものをそういう観点から見直してみましたら、下の表に書いてありますように、4つか5つの条項を簡単にいじればそれで用は足りるのではないかという意味で、たたき台としてこのペーパーを御提出申し上げた次第です。
○柏木座長 ありがとうございます。今の乗越委員の御説明、つまり国内の法律事務所と全く変わりはないということになるわけですね。そういうイメージであるということについて、何か御質問はございますでしょうか。
下條委員。
○下條委員 今の乗越委員の説明は、先ほど齊藤参事官の方からありました説明も無視した、全く現行法を無視した意見ではないかというふうに考えております。
あと諸外国の動向も全く無視しているのではないかと思います。どこの国でも資格制度を取っておりますから、外国の弁護士の参入については、それぞれの制限を設けているわけで、そういう諸外国の動向も無視した意見ではないかというふうに思っております。
現在、ここで主な話題になっている特定共同事業、そのほかにも私どもがやっておりますように、ケース・バイ・ケースでアメリカなりイギリスなりの、その案件に一番ふさわしい事務所を選んでやっていく方法があります。
例えば、M&Aのマターであれば、M&Aマターについて非常に専門的知識のある事務所と組んでやっていく、独禁法マターであれば、アメリカの独禁法に強い事務所と組んでやっていく、そういうケース・バイ・ケースでやるということで十分足りているのではないかと思います。更に業務委託という形でもやっております。
そのようなことで、逆にインバウントと言いますか、外から中に入ってくることについては、先ほど申し上げましたように、特定共同事業という形でもって十分弁護士と外国弁護士との協働もできているというように考えております。
○柏木座長 乗越委員どうぞ。
○乗越委員 今の下條委員の御発言につきまして、私の発言が舌足らずだっかもしれませんので訂正いたしますけれども、資格制限があるということは全く否定しておりません。そういう問題ではなくて、ここで議論しておりますのは外国弁護士という、日本における資格のない人が、日本で別に法律事務を行うんではなくて、外国で全く日本の法律に触れることなく法律事務を行っているときに、そういう人たちと日本の弁護士との間でどういう共同関係があるかということを述べる項目だと思っておりましたので、そういう趣旨で申し上げました。
○柏木座長 波江野委員どうぞ。
○波江野委員 2回前ぐらいに私が御質問したことですが、外国弁護士は外国で確かに資格があるので、その方が日本で法律活動をされる場合には、外国法事務弁護士として資格を取得して活動されればいいのではないでしょうか。外国法事務弁護士になることについては、弁護士法ですとか法律上の規制は何もなく、原資格国で資格をお持ちで、しかも実務経験があるというだけですから、日本の国内で法律事務をやろうとすれば、外国法事務弁護士になられて、その上で特定共同なりを形成されればいいと思いますが。外国弁護士のままで、日本での資格なしにやろうというのは、何か特別なメリットというかニーズがあるのですか。
○乗越委員 これはそういう趣旨ではございませんで、いわゆる外弁にならないで、日本で法律事務ができないというのは、私も別にそれについて問題があると思っておりません。私が言っておりますのは、例えばイギリスの事務所で、イギリスでイギリスのローヤーとして働いている人がいる。その人たちが日本の弁護士の方と一緒にアドバイスができれば非常にいい案件が多いだろうから、単一の事業にしましょうというふうなことを言ったときに、勿論日本で法律事務をするということではなくて、それは日本の弁護士の方を通じてやるのかもしれませんけれども、イギリスのアドバイスと日本のアドバイスを1つにしたアドバイスをクライアントに提供できるということは、別に日本で法律事務をする必要はないのではないかと思います。
そういう意味では、私どもみたいに外弁としている者を捨象して考えていただいて、そういう者は全く存在しないと考えられたときに、イギリスにいるイギリスの弁護士と、日本にいる日本の弁護士と、どうして提携ができないんだろうかというのが素朴な疑問でございます。
そういうことを今、外国弁護士と弁護士との間の協働ということで考えるべき問題だと思っております。
○柏木座長 固有名称を出して申し訳ございませんけれども、イメージとしてリンクレーターズの中に、日本の弁護士がパートナーとして参加するイメージですね。実際の仕事は、例えば日本の弁護士さんは日本で仕事をするけれども、たまにはイギリスに転勤したり、あるいはイギリスの弁護士が日本に来て外弁登録をして、外弁としてお仕事をされると、そういう自由な行き来ができるというイメージだと思うんですけれども。
1つ乗越委員に質問ですが、責任関係、例えば倫理規定とか、日本では各単位弁護士会が綱紀委員会をつくって綱紀を守らせるようにしていますね。そういうものは、外国のパートナーには及ぼせないと思いますけれども、その点はいかがですか。
○乗越委員 全く日本に関係なく仕事をしている場合に、及ぼそうという考えがそもそもおかしいのではないかと思います。
○道垣内委員 先ほどの乗越委員の御発言の前提となる話だと思うんですが、外弁法あるいは弁護士法の地域的な適用範囲がどこまでかということがあって、恐らくはそれは日本の領域でリーガルサービスを提供している場合にしか適用されないと。
今、乗越委員が念頭に置かれているのは、外国で日本の弁護士が共同してリーガルサービスを提供しているんであって、日本ではやってない場合のことをおっしゃっているんだと思いますけれども、ただ問題の設定は両方含む問題設定で、そこがどちらなのかがよくわからないんです。
現行法の解釈からしますと、やはり外弁法の49条とか49条2項の反対解釈からしますと、外弁でさえこれだけ制限があるわけですが、外弁でない外国弁護士については、およそいけなそうだし、弁護士法の27条、これの適用範囲がよくわからないんですけれども、非弁護士との提携禁止、これが外国でならいいのか、外国でもだめなのか、さっきの倫理の話からすると、属人的についてもあるのかもしれないので、その辺りを少し整理しないと議論がうまくかみ合わないのではないかと思います。
○下條委員 私個人的な意見としては、さきほどの乗越委員に賛成します。というと、びっくりされるかもしれないですけれども、ただしその前提として現在の外国法事務弁護士制度はもうやめるということです。つまり、そういった外国の事務所が日本に支店を設けても、日本の支店にいるパートナーというのは、日本弁護士だけであるということであれば賛成できる、そういうやり方もあるのではないかというふうに考えます。
そして、もう一つ今、倫理の問題を柏木座長がおっしゃられましたけれども、イギリスなんかでは私の知っているところでは、間違っていたら乗越委員に訂正していただきたいんですけれども、そういうふうに支店を設けている例えばアメリカの事務所その支店というのはアメリカのニューヨークのパートナーシップの一部でありますから、そこがイギリスに支店を設けていれば、アメリカ本国のパートナーもローソサエティーに登録する義務があるというふうに伺っております。もし間違っていたら教えてください。
○乗越委員 申し訳ありませんが、今の最後の点は正直存じません。
○下條委員 では、次回にでもお願いします。
○乗越委員 わかりました。
それから、今おっしゃられた点で、外国の事務所と日本の事務所が提携して、外国の事務所の人が全く日本に来ないで仕事をするならいいというお話ですが、今の現実から考えて、そういうふうな規制の仕方は無理があるのではないかと思います。日本の企業の人でも、仕事がしやすいように場合によっては日本でいろんな国のアドバイスを受けたり、まさにそれが外弁のやっていることでしょうし、ものによってはイギリスまでこちらから出向いてアドバイスを受けたいということもありますでしょうし、それをあえて道を閉ざすというのはユーザーの観点からして何の意味があるのかという気がいたしております。
○下條委員 今、申し上げました案は別に目新しいものではなくて、実はフランスがやっているのがそういうことなんです。つまりフランスは自国の試験を受かった者しか認めないということですので、外国法事務弁護士みたいなものは認めないとしています。
要するに、フランス語でもって、フランス法の試験に受かった者だけがフランス国内で法律事務をすることができる。これは結局今、問題になっている外国法事務弁護士と同じような問題があったわけです。つまり外国法事務弁護士というのは、本来1977年当時ですか、ニューヨーク州法をやるんだからやらせてくれということで入ってきたわけです。それで、1987年から外国法事務弁護士制度ができて、原資格国法についてやることができるということで入ってきたわけです。
そうすると、そのうちにだんだん範囲を広げてきたわけです。最初は松永書簡というのがありまして、ニューヨーク州の弁護士であったら、アメリカの各州の法律を日本でできるようにしろということで、ニューヨーク州の弁護士は本来カリフォルニア州のアドバイスはできないはずですけれども、なぜか日本ではできるようになっているんです。指定法ということで、ニューヨーク州の弁護士はニューヨーク州以外のアメリカの州の法律もできることになりました。
更にその次は、指定法ということで自分の国以外の、例えばイギリス法について知識があればイギリス法についても指定法として認めろ、というものです。
その次にやってきたのが第三国法です。第三国法もやらせろということで、これは第三国法の有資格者の書面による助言を得たらできるということになってきたわけです。
そこまでだんだん広がってきて、最後に日本法も取り扱えるというか、これは正面切って言うことはできませんから、今、問題になっているような雇用という形を取って日本法まで広げていこうということになってきて、こういうのは余りにも問題だということで、フランスはそういう道を閉ざしてしまって、あくまでもフランスで資格を持った者だけがフランス法のアドバイスができるというふうにしたわけですから、フランスと同じような制度にすればいいではないかという意見です。
○柏木座長 この論点につきましては、大体今の御議論から、皆様の中に問題のイメージというものが浮かび上がってきたのではないかと思います。今回の議論は、これで結論を出すということが目的ではございませんで、これから検討いたします特定共同事業の規制の緩和ということを論ずる際に、いろいろと参考になろうかと思います。その議論のときに思い出していただければよろしいのではないかと考えます。
次に、下條委員から前回配布していただきました参考資料の御説明をお願いします。
○下條委員 改革審の意見書においては、国際的議論もにらみつつということが2度にわたって書かれておりますけれども、どうしても当検討会では海外の調査もされないと、たしか改革審ではアメリカとかヨーロッパに調査に行かれたというふうに聞いておりますけれども、当検討会ではそういった調査もされないということで、改革審の意見書が国際的議論もにらみつつと言いながら、その辺が非常に弱いのではないかということで、海外での議論の状況とか、海外ではどういう状況にあるかということの一端を御紹介いたしたいと思います。
勿論海外の議論が、どこを中心になされているかというと、隣に下川委員がおられますけれども、勿論WTO、GATSの場を通してなされているということであります。
分厚い方の「提出書類説明書」の一番最後に付けましたけれども、これはたまたま最近の日経新聞で、USTRが包括提案を出したということです。これによって諸外国のサービス貿易を自由化することを強く求めているということで、この新聞記事に出ておりますように、最大の享受者は米企業になるであろうということを正直に言っているわけです。まさにこれは貿易問題でありまして、アメリカが膨大な経常収支の赤字を数年にわたって出しておりますけれども、サービス貿易の面で黒字をつくり出したいというところから出ている、まさにアメリカの国益に沿った動きをしているわけです。
このような動きに応じて、日本の方がこういったサービス貿易の点について言われたとおりにやっていれば、当然その反対作用として日本のサービス貿易の収支というのは、どんどん大きく赤字になっていくということがあるかと思います。
ちょっとインターネットで調べてみましたら、日本のサービス貿易の収支というのは、ここ数年の間大体5兆円〜6兆円のマイナスです。更にこういったサービス貿易について開放すると、更に日本のサービス貿易収支のマイナスが大きくなるという面が否めないのではないかと思っております。
このようなグローバルな面での議論をやっておりますけれども、私の感触では非常に一部のグローバルに展開しているアメリカとかイギリスの法律事務所の主張が非常に大きく影響しているという感じを受けます。と言いますのは、私ども1998年にパリフォーラムと言いまして、アメリカの法曹協会のABA、CCBEというヨーロッパの弁護士連合会、それと日弁連がパリに集まって、諸外国のいろんな弁護士会を呼んでこの点に関しての議論を行ったわけですけれども、そのときの議論では、やはり非常に弁護士の根源的価値といったものを重視して、このドメスティック・レギュレーションと言うか、WTO、GATSで問題になっている国内規制については、そういった弁護士の根源的価値を中心にして議論してまとめ上げていこうという意見が多数を占めたように思いました。
したがって、先ほどのようなグローバルに展開しているアメリカ、イギリスの法律事務所の利益追及一本槍の態度とは非常に違うなという感触を受けました。と言いますのは、そのパリフォーラムに来たのは、アメリカなんかでも州の単位弁護士会の方が来ているわけです。ですから、そういうところが来ると非常に違った見解になってくるという感じを受けました。
まず、資料の1番目ですけれども、これはたびたび申し上げておりますように、アメリカでは51の州、地域があるわけですけれども、そのうち24の州及び地域でフォーリン・リーガル・コンサルタントを認めているにすぎないと、残りの27の州ではフォーリン・リーガル・コンサルタントを認めてないということを示すものであります。これは、ABAのホームページから取ったものであります。
したがって、アメリカにおいても非常に競争力のない州は開放していないということがこれで明らかになるかと思います。
例えて言いますと、ペンシルバニア、フィラデルフィアという大都市がありますけれども、ペンシルバニア州なんかはいまだにフォーリン・リーガル・コンサルタントを認めていない。したがって、日本の弁護士が行っても、外国法事務弁護士みたいなFLCにはなれないということであります。それに対して、フィラデルフィアの弁護士が日本に来れば、外国法事務弁護士として認めざるを得ないという、非常にフェアでない状態になっているということを申し上げたいと思います。
資料の2番目は、ABAがモデルFLCルールというのをつくっていて、これはABAというのは任意団体ですので、ここでつくったものを採用するかどうかは各州の弁護士会によっているわけです。先ほど言いましたように、多くの州は採用していないということになっているわけですけれども、このABAのモデルルールのうち、今問題になっているFLCによる米国弁護士の雇用及びFLCと弁護士のパートナーシップに関する条文はどうなっているのかということですけれども、この条文は第5条というのがありまして、この第5条でこういうことができるよというふうに言っているわけです。
そのように言っているわけですけれども、先ほど言いましたように、採用しているのが24の州、地域にすぎないと。かつ24の州、地域の中で今申し上げました第5条を入れているのは、わずか4州にしかすぎないということが、その次の各州の調査に出ております。米国FLC制度の各州の調査を見ますと、このEmployment of local lawyers とか、
Partnershipのところを見ますと、Permittedとなっているところがわずか4州しかないということであります。
資料③のところの説明に5州と書いてありますけれども、4州を除きこの点については何も触れてないということになっております。
資料④は、弁護士の独立性に関する、1998年6月6日、IBAの決議ということで、IBAと申しますのは、世界中の弁護士とか弁護士会がメンバーになってつくり上げている任意の法曹団体でありますけれども、ここのところでウィーンの会議においてこのように弁護士の独立性を守っていこうという決議を採択しているわけです。
非常に簡潔なものであれですけれども、日本語訳で見ていただければ、前文で弁護士の義務を書いておりまして、1番のところにそのような役割及び義務を果たすために、弁護士の完全な独立性を維持することは、公共の利益に資するものであり、あらゆる営利本位の私的問題に優先する云々ということで、IBAが決議しているということであります。
その次の資料はABAの決議ですけれども、ABAも同じように弁護士の独立性というものを非常に重視した決議をしております。ABAの提言の1のbのところにありますけれども、依頼者利益のため適切に独立した法的判断を下す弁護士の義務ということが公益にかなうと言っております。
eのところは、依頼者の代理人としてだけでなくて、司法の役員、これはオフィサー・オブ・ザ・コートということをよく言いますけれども、司法の役員及び司法の質に関して特別な責任を負う市民としての責任を有するというようなことが公益にかなうことであるというふうに言っております。
そして、3のところでは、「弁護士を規制する法律は、米国の司法制度が正確に機能するにあたって不可欠である公益の保護及び弁護士職の本質的価値の維持のために制定された」というようなことも言っております。
7番のところでは、「非弁護士との弁護士報酬の分配及び非弁護士による弁護士業務の所有及びコントロールは弁護士の本質的価値と矛盾するものである」ということも言っております。
8番のところにも、弁護士報酬が弁護士と非弁護士との間で分配してはならないという規制は改正されるべきではないと。更には、弁護士業務を行う事業体の所有権及びコントロールを禁止している法律も改正されるべきではないというふうに言っております。
これがABAの決議であります。
資料6は、前に申し上げましたように、カリフォルニア州の1998年のBirbrower 判決という、カリフォルニア州の最高裁の判決であります。これは、ニューヨークの弁護士がカリフォルニア州に行って、仲裁の初期段階の準備をし、和解交渉をしたということなんですけれども、これはカリフォルニア州の法律事務の取り扱いであって違法であるという判断が下されたわけであります。
これは1998年に日本が外弁法を改正しまして、仲裁代理はアメリカの弁護士でも日本でできるようにしたわけですけれども、実はそういうことはアメリカでは認められていなかったんだという、非常にびっくりした判決であります。このBirbrower 事件の後、カリフォルニアには裁判所規則を変えまして、その後資料7として出ておりますけれども、米国の他州の弁護士であればカリフォルニア州で特別の承認を得て、仲裁代理はできるというようにルールが変えられたということです。ただし、これは他州の弁護士には言及しておりますけれども、外国の弁護士には言及しておりませんので、外国の弁護士は原則に戻ってできないのではないかというふうに考えられます。
資料⑧は、シンガポールでもって日本と同じような特定共同事業のような制度が認められておりますので、そこの制度の紹介であります。
ただ、シンガポールにおいては、この特定共同事業のようなジョイント・ロー・ベンチャーにおいては、シンガポールのローカルの弁護士が過半数を占めないといけないという要件が入っております。
これは、56ページの(六)のところに書いてありますけれども、外国のパートナーがシンガポールのパートナーの数より多くなってはならないということになっております。
これは日本と違いまして、数の制限を設けておりまして、最初5つにとどめるということが57ページに出ており、ジョイント・ロー・ベンチャーの登録の承認数は5つにとどめると書いてありますけれども、現実には下の注に書いてありますように、以下の7つの申請が承認されたということになっております。
資料⑨にまいりますと、これはドイツの状況を示したものであります。ドイツもかつては日本と同じように、非常に小さな事務所がたくさんあったわけです。たしか96〜97年ごろだったか、やはり日本と同じような支店を設けてはならないという規定があるわけですけれども、この支店を設けてはならないという規定が地域間共同事務所については許されることになったわけです。したがって、ドイツにある幾つかの州をまたがった共同事務所ができるようになったために、巨大な事務所ができるようになったというふうに伺っております。
そのような巨大な事務所の幾つかがアメリカまたはイギリスの大きな事務所に吸収合併されたということを示しているわけです。これは、弁護士の総数の順位になっておりませんので、私が左の方に弁護士の総数の順位を書いてありますけれども、これを見ますと一番がクリフォード・チャンス・ピュンダーということで、これはイギリスの法律事務所に吸収合併されました。
2番目がリンクレーターズということで、これもリンクレーターズが吸収合併したということです。
3番目がフレッシュ・フィールズ。
ですから、1、2、3はいずれもイギリスの法律事務所に吸収合併されたところであるということです。
あと8番目のロベルスというのが、同じくイギリスの法律事務所。
9番目のホワイト・アンド・ケースはアメリカの法律事務所ということで、10大事務所の半数までが外国の法律事務所に吸収合併されてしまったということを示しております。
これに対して、資料⑩はフランスの大法律事務所ということで、フランスの場合はそれに加えて私どもMDP、マルチ・ディシプリナリー・パートナーシップと呼んでいますけれども、複数の倫理規範に服するパートナーシップと言いますか、具体的には公認会計士事務所の傘下に入っている法律事務所が非常に多いことを示しております。
1番目のフィダルは、KPMG系であります。
2番目のランドウェルは、プライス・ウォーター・ハウス系であります。
3番目がアンダーセンです。アンダーセンは、その後エンロン事件でもってすべて法律事務所が切り離されたと聞いております。
4番目が、アーンスト&ヤング。
7番目が、デロイト・トゥーシュ。
8、10が、またイギリスの法律事務所で、クリフォード・チャンスとフレッシュ・フィールズということになっております。
したがいまして、フランスの場合でいきますと、10大法律事務所のうち、5つまでが会計系、2つがイギリスの法律事務所ということになっていることを示しているものであります。
以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。ただいまの下條委員の説明につきまして、御意見・御質問のある方、お願いします。下川委員。
○下川委員 ただいまの御説明、どうもありがとうございます。確かに、今後交渉を行っていく上でも、米、EC等における外国法律サービスの受け入れ状況ということも勘案しながら検討していかなければいけないということは事実だろうと思います。
そのうち最初に御指摘のありました、米国州においてはそもそも外国法事務、リーガル・コンサルタントというのを認めている州がまだ半分ぐらいにとどまっているということも事実でございまして、これはWTOの交渉が始まる以前から日米のバイの交渉なんかを通じて、全州においてそういう制度を設けるようにということを主張してきているところでございまして、その努力は引き続きやっていきたいというふうに考えております。
アメリカも全くできないと言っているわけではなくて、連邦制の制約の下で、どうやって州レベルにおいてその約束を実施するか、できるだけ努力をしていきたいということを言っているわけでございまして、したがってABAのこういうフォーリン・リーガル・コンサルタントに関するモデル・ローの普及などを通じて、できるだけ広げていきたい、と同時に、主要州については大分自由化を進めてきた、これを更に進めていくに当たっては、どの州において具体的にニーズがあるのかもっと教えてほしいというようなこともバイの協議の中では言っているわけです。従いましてこういう情報があればまた交渉にも力が入れられると思いますので、日弁連さん等とも協力して情報を得ながら、更に交渉を努力していきたいというふうに考えております。 米国における、2番目と3番目と共通すると思いますけれども、雇用やパートナーシップの受け入れ状況、どこまで許容されているかということについてですが、これは御指摘のありましたとおり、16州ぐらいについて、GATSの約束表上に明示的に州ごとに項目立てして雇用は認められる、それから、パートナーシップも認められるというふうに子細に書いてあるわけでございまして、にもかかわらずFLCのモデル法において明示的にそれを認める規定を置いていないことのみを理由として、これが禁止されていると言えるのかどうか、この点については十分慎重な検討が必要なのではないかと思われます。
今、下條委員から御紹介いただいた資料の6枚目をめくって、日本語の「報告」というところのパートナーシップと雇用というところで、注釈がございまして、その2段目の当たりから「ほとんどの州の弁護士倫理規定は、一般に、当該州の弁護士でない者とパートナーシップを組んで法律事務を行うことを禁じているが、この規定は、州際パートナーシップを禁じているものとは解されてこなかったし、資格のある外国弁護士がアメリカの法律事務所のパートナーとなることを拒否するために適用されたこともなかったと思われる。実際、そのようなパートナーは数多く存在する」という記述がございます。
更には、ここの規範規定自体は、米国法あるいは実務に実質的な変更をもたらすものではないという記述もございます。
したがいまして、この規定自体はこの規定がなければできなくなってしまうということを必ずしも規定しているものではなくて、むしろ外国との関係において、外国の弁護士が何ができるかということをより明確にするために、こういう法を導入していくことが望ましいということを言っているものだろうと思いますので、それが適用されていれば明確ですけれども、これが規定されてないことをもって雇用、それから、パートナーシップが禁止されているということは言えないのではないかというふうに思われます。
私どもも在外公館などを通じていろいろと調査をやっておりまして、確かに調査、訓令を出しますと、こういう具体的な規定の中でそれがどういうふうに規定されているかという観点から調査を行いますので、明示的な規定がない場合に、それが許容されているんだということを積極的に証明するのは難しい場合もありますけれども、幾つかの州において恐らくそれは禁止されていないであろうということは返事を得ております。カリフォルニアについては、既に平成5年の外国弁護士問題研究会が現地にミッションを送って、この雇用問題を調べた際には、カリフォルニア、コロンビア特別州においてはパートナーシップも雇用も認められているという調査を行っておりますし、今回在外公館に調査を行った際には、それ以外にもコネチカット州とかオレゴン州等については、確かに明示的な規定は見つけられないけれども、雇用は認められると考えられるというような意見、返事を得ているところでございます。
結局、雇用、パートナーシップが認められるか認められていないかというのは、必ずしも明示的にそれを許容する規定があるかどうかというところではなく、そもそもリーガル・コンサルタントがどういう地位を与えられているか、これはローヤーとして認知されているのか、それともノンローヤー扱いなのか、そこのところで決まってくるから、必ずしも規定がない場合であっても雇用が認められているところがあるのではないかと考えられます。
このモデルロー自身も、1枚前の5ページのところを見ると、本規定によりリーガル・コンサルタントとして資格を得た者は、本州の弁護士会に所属する弁護士とみなされる、ローヤーにみなされるんだということが規定されているわけでございまして、それがクリアーになれば基本的にはノンローヤーとして雇用するという問題ではなくて、自身がローヤーになるということになるので、場合によっては明示的に規定しなくてもパートナーシップ、雇用が認められているということが言えるようになるのではないかというふうに考えられるわけでございます。
したがいまして、私どもの方でも、すべての州、GATSで約束していて、なおかつFLCの規定を明示的に導入していない国について、本当に守っているのかということを調べ上げることがまだできてないわけですけれども、規定がないからと言って守ってないということは言えないのではないかと思います。
無論、今後具体的にこれを明らかに、例えば日本の弁護士の方が応募しようとして、ないしは雇用しようとしてできなかったというようなことがあれば、それは条約違反ではないのかということを取り上げてやっていきたいというふうに考えております。
とりあえずいただいた御説明に対しては、以上です。
○柏木座長 ありがとうございました。そのほかに今の点について御意見はございませんか。下條委員どうぞ。
○下條委員 1つ落としました。今日配布していただいた資料の一番最後の後ろから2つ目なんですけれども、たびたび申し上げておりますように、WTOのサービス交渉の日程です。これを外務省のホームページから取って付けておきました。ですから、まさに前から申し上げておりますように、今年の6月末に初期リクエストを各国が出して、来年の3月末までに初期オファーを出すということになって、その後具体的なネゴが始まるということは、来年、再来年にかけてこういう厳しい交渉が下川委員の方でなされるということになるわけです。
ですから、前から申し上げておりますように、余りにも早くこの問題を先に出してしまうのは、外交上得策ではないのではないかというふうに考えております。
○乗越委員 今、作っていただいた資料は、非常に興味深いですし、具体的な制度面での検討に移る際に、外国のものが参考になるんだと思うんですけれども、原則の問題として果たして外国がこうだから我が国の立場もこうだというのが、私どものフォーラムとして正しい立場なのかどうかというのは、皆さんに御意見を伺いたいと思います。
私の考えでは、このフォーラムは日本にとって何が一番いいのか、ひいては日本の法律ユーザーにとって何が一番いいのかという観点で考えて、その上でその立場を守るために外国との交渉に当たっては政府の方にいろんな資料を駆使しながら、その立場を守るために頑張っていただければいい話で、外国との交渉がこのフォーラムでの考え方を決めるというのはおかしいのではないかという気がしますけれども、私の立場だとバイアスがかかっているかもしれませんので、ほかの委員の方の御意見を伺いたいと思います。
○柏木座長 その問題は、以前一度議論したと思いますので、とりあえずは時間の切迫もありますので、検討を先に進めた方がいいのではないかという気がいたします。
そのほか特に御意見がなければ、時間も遅れぎみになっておりますので、今日一番の問題に入りたいと思います。
それでは、次に特定共同事業の要件緩和等の具体的方策について検討したいと思います。ここでは、先ほど事務局から説明がありましたように、特定共同事業の要件緩和等との関連において想定される制度改正の方向性についての基本的なパターンを念頭に置いて、論点項目について検討を深めたいと考えております。
まず、事務局から基本パターンの説明をお願いします。
○齊藤参事官 それでは、資料8−2「特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態」という資料をごらんください。簡潔に御説明申し上げたいと思います。
まず、1枚目、A案というのは、特定共同事業の目的要件規定についてその要件を緩和するもので、雇用禁止規定と収益分配禁止規定は存続させるというものです。この案は、言わば一番小幅な規制緩和策でありまして、この案では特定共同事業の目的とすることのできない法律事務が残るため、現行制度と同様、弁護士と外弁とか、1つの事務所を共同経営することができないという結果になります。
B案ですと、共同事業禁止規定を撤廃するとともに、雇用禁止規定と収益分配禁止規定は存続させるというものです。この結果、弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営し得ることになりますけれども、雇用禁止規定が存続するため、外弁と弁護士が弁護士を共同して雇用することも依然としてできないという形になります。
C案は、共同事業禁止規定と雇用禁止規定を撤廃するとともに、収益分配禁止規定は存続させるというパターンです。この結果、弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営し得ることになるとともに、外弁が単独で、あるいは弁護士と共同して弁護士を雇用し得ることとなります。
最後にD案ですが、D案になりますと、共同事業、雇用、収益分配、この3つの禁止規定をすべて撤廃するというもので、4つの案の中では最も規制緩和が進んだ案ということになります。
この場合、外弁が出資をして、弁護士が業務を行い、両者で収益を分配する形態による提携も可能になるということでございます。
今般、このA案〜D案をお示しするわけですが、これはあくまで現行の制度をどういうふうに撤廃し、あるいは存続させるかと、その基本的なパターンをお示しするということでございますので、これを念頭にしていただきながら、各論点項目の検討を深めていただきたいという趣旨でございます。
このA案〜D案というのは、基本的なパターンですので、それぞれの案の中で、あるいはそれぞれの案を基本として、例えば要件緩和に伴う弊害防止措置のような規定や、あるいは例外的な規定を設けるということは当然考えられることでございまして、それを排除する意味ではございませんので、その辺りにも御留意いただきたいと思います。
A案〜D案の御説明は、概略以上でございます。
○柏木座長 ありがとうございました。後ほどこれらの基本的なパターンを念頭に置きまして、論点項目の中身の検討を行いたいと思いますけれども、ただいまの事務局の説明と説明資料につきまして、特に御意見や御質問のある方はございますでしょうか。
なければ、次に制度改革の基本パターンにつきましては、下條委員から個人的な案が提出されておりますので、下條委員から御説明をお願いしたいと思います。
○下條委員 今、齊藤参事官の方からA〜D案までのパターンを示していただいたんですけれども、なぜか私から見ますと、一定の立場から立ったものの書き方のように思われまして、もう少し客観的な立場から案を出すべきではないかというふうに考えて出したわけです。
あとA案〜D案まで出ておりますけれども、私が申し上げましたのは、B案、C案、D案、この辺りは改革審の意見書の言っているところからはみ出しているのではないかということで御意見を申し上げておりました。
したがって、私の案では明らかに改革審の意見書からはみ出しているC案、D案は削ってあります。
そしてB案もより改革審の意見書に沿うような形でもって書き直してあります。
具体的には、A案の点については、下の方に最終的には「一つの事業体としての事務所を共同経営することができない」と、いかにもできないということが悪いというような感じで書いてありますので、そういうところを書き改めています。
そして、特定共同事業の収益分配の基礎というのは、お互いに協力し合って、つまり労務をお互いに提供して、それで共同事業をやっていると、それがたとえ日本法マターであっても、例えば前のヒアリングのときに出ましたように、外国の企業が日本の合弁会社の片方の親会社になるような場合、これは日本法マターであるわけですけれども、日本法マターであっても外国法事務弁護士は英文のドラフトをつくったり貢献することができるというところから利益を分配するという根拠があるわけです。
しかし、目的を完全になくしてしまうと、純粋の日本人間の日本法マター、例えば近隣訴訟のような、境界確定の訴訟とか、そういった全く外国法事務弁護士が貢献することが考えられない事件、そういったものまで利益共通のものに入ってきてしまうということはやはりおかしいのではないかということで、A案の最後に直しを入れた次第です。
B案の方は、齊藤参事官の案では、いきなり共同事業撤廃と言ってしまっていますけれども、その前にA案の方は目的要件を更に緩和するということだったので、更にもう一歩進んだ案として、目的要件を撤廃するという案もあるのではないかと。齊藤参事官の案は、その案をすっ飛ばされていますので、その意味でこういう案を御提案するということであります。
そして、目的要件を撤廃すると、理論的には外国法事務弁護士との目的は全く一致するわけですけれども、ただしその場合でも外国法事務弁護士と弁護士とは別々の事務所とするということをすることによって、弁護士はあくまでも弁護士によって雇用されるということを確保して、弁護士が外国法事務弁護士の指揮・命令・監督下に入ることはないようにしようというのがこのB案の趣旨であります。
一応目的要件を全部撤廃しても、やはりどうしても重ならない部分というのは出てくるのではなかろうかというふうに考えております。と言いますのは、日本の弁護士でありますと、いろいろな公益活動の義務とかがありますので、国選とかそういったことまで本当に特定共同事業の中に入れるのかという疑問もありますので、そういう点もあるということを申し上げておきたいと思います。
したがって、あくまでも先ほどちょっと申し上げましたけれども、外国法事務弁護士というのは、自分ができる範囲をどんどん広げていって、最終的には日本法も弁護士を雇用することによって踏み込んでこようということが見えますので、それがないようにしようということで、あくまでも雇用の禁止は存続させるということでB案を書いております。
C案、D案は削除ということであります。
C案、D案というような案を出すのであれば、先ほどちょっと申し上げましたように、むしろ外国法事務弁護士制度を一切廃止しまして、フランスのように日本における支店においては、パートナーは日本弁護士だけというような案を出す方がよいのではないか。それによってあくまでも外国法事務弁護士が日本弁護士を使って、日本法に踏み込んでくるということは阻止できるということが言えると思います。
○柏木座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。ただいまの下條委員の御説明につきまして、御意見・御質問がある方いらっしゃいますでしょうか。バイヤー委員どうぞ。
○バイヤー委員 この意見を見て驚きましたんですけれども、かなり狭くて、今までヒアリングのときにはユーザーサイドから聞かれたことはほとんど入っていない。2つの事務所であることなどで必要な相談はなかなかできないという意見が結構多かった気がしますが、この案ではユーザーのニーズに合っていないのではないかという恐れがあると思っています。
○柏木座長 今の点は、ちょっと内容に入りますので、あとでもう一回議論したいと思います。
今の下條委員の意見について、更に解明したいとか、そういう御意見はございますか。波江野委員どうぞ。
○波江野委員 今、事務局からA、B、C、Dと4つ出たものは、意見書の範囲を逸脱している、改革審議会の意見書で出された、この検討会に与えられている任務の範囲を超えているのではないかという御指摘だと理解しますが、本当にそうなのか疑問です。これは国語の問題のようなことですが、確かに特定共同事業について見直しをするということは出ております。ただし、特定共同事業についての見直しかしてはいけないとは書いてないと思うのです。
と言いますのは、「日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきである」と、枠組みの中にそういう書き方をしてあります。1つは要件緩和等の等があるからもう少し検討の範囲を広げても許されるのではないかということ、そして、提携・協働を積極的に推進するという観点からいきますと、今、下條委員からお出しいただいたようなところだけに限定して考えなくても、提携・協働を推進するための方法論として、先ほど事務局からあったような雇用の問題ですとか、収益分配の問題も入れて検討してもいいのではないかと思います。その辺はいかがでしょうか。
○柏木座長 加藤委員どうぞ。
○加藤委員 私も、波江野さんの意見に全く賛成です。基本的には、もともとこの司法制度改革審議会が始まったその目的は何かというと、意見書にもありますように、「国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼に応える司法制度を実現する」ことが目的であって、雇用禁止の見直しについて「将来の課題として検討すべき」とあるのは、我々の議論の範囲をある程度示したにすぎないのであろうと思います。仮にその範囲を少し逸脱することによって、より合目的的な議論がされるのであれば当然にそうすべきである。逆にはみ出すことによって非常に議論がまとまりにくいか、非常にいいかげんな議論になってしまうということであれば、これははみ出すことを制約しなければならないと思いますが、そうでない限りにおいては、できるだけ幅広く、議論をすべきだと思います。
○柏木座長 ありがとうございました。ここで制度改革の問題を議論するときに、やはり結果的にA案でとどまるか、B案でとどまるかということは別として、A案、B案を検討する上においては、やはりC案、D案まで一応討議してみるということは必要なのではなかという気がいたします。
下條委員の案も事務局案も当然検討するわけですけれども、検討の範囲をA案、B案に限定するという理由はないし、むしろ議論は広くやるべきではないかということを考えますので、その線で議論を進めてよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○柏木座長 ありがとうございます。それでは、次に特定共同事業の要件緩和等に関する具体的方策の検討を行いたいと思います。
まず、特定共同事業の目的、要件を緩和するA案と、共同事業禁止規定を撤廃するB案を念頭に置いて、関連する論点項目を検討したいと思います。
まず、特定共同事業における目的の制限についてですけれども、この論点について検討のポイントの説明を事務局よりお願いいたします。
○齊藤参事官 目的の制限という問題なんですが、ヒアリングなどの結果にかんがみましても、弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営できるかどうか、これが大きな問題であったかと思います。
その関連で申し上げますと、1つの事務所を共同経営し得るようになるためには、共同事業における目的の制限がなくなるという必要があると考えられます。そして、前回の検討におきましても、外国のノウハウを利用する、あるいは利用し得る国内の案件というのが増加しているのではないかといったことや、適用される法律というのは当初から明確だとは限らずに、むしろ案件処理の終盤で準拠法が決まるといった方が多いのではないかといったことから、目的の制限をすることの合理性自体がなくなりつつあるのではないかといった意見も出されていたのではないかと思います。
そこで本日は、特定共同事業の目的の範囲をどこまで拡張することが妥当かといったことのみならず、目的の制限自体を撤廃するということの妥当性についても十分御検討いただきたいと思います。
○柏木座長 いかがでしょうか、目的の制限につきまして、御意見・御質問のある方は、挙手の上発言をお願いいたします。孝橋委員どうぞ。
○孝橋委員 今までの議論でも出ていたことですけれども、利用者側からのニーズという点で、別々の事務所でやりますと、別々の事務所に対する依頼という形を取る関係で、少なくとも依頼する側にとってはどのぐらいの費用がトータルで掛かるかということについて、予想が困難な面もあろうかと思われますし、それからファイルとかデータの管理なんかでも、2つの事務所でやるということに伴う負担というものも出てくるというような話がいろいろ出ていたと思いますけれども、そのようなことからすると、1つの事務所で共同事業をやれるというふうに持っていくことが望ましいのではないかというふうに考えます。
どうしても先ほど下條委員がおっしゃっていました日本人同士の境界確定事件というふうなものを、実際ニーズがあるのかどうかわかりませんけれども、そういうところを排除する必要があるのであれば、ネガティブリストを考える。原則的には何でもやれる形にして、どうしてもこういうことは除いた方がいいというものを、もし規定として入れておく必要があればそれを考えるという方向ではないか。ですから少なくともB案と言いますか、事務所形態としては1つの事務所でやれるという方向が望ましいのではないかというふうに考えます。
○柏木座長 下條委員のB案では、目的は撤廃するけれども事務所は別と、その理由は何なんですか。
○下條委員 それはまさに雇用禁止を確保するということです。齊藤参事官の案のように、1つの事務所になって共同雇用ということは重複雇用だと思うんです。ですから、1人の弁護士を雇っていれば、外国法事務弁護士も雇っているということですから、外国法事務弁護士がイソ弁を呼んで、日本法ではどうなっているかを聞いて、そしてそれをそのままクライアントに伝えるということでもって、日本法の領域に踏み込んでくる可能性があるということです。それを別々の事務所にすれば、弁護士はあくまでも弁護士によって雇用されると、外国法事務弁護士は弁護士を雇用することはできないということによって截然と区別されるので、その点を確保することができるという趣旨です。
○加藤委員 今の下條委員の御説明に対して質問ですが、仮に制限する場合と、事務局案のような撤廃する場合とで、ユーザーに対してどのような影響があるでしょうか。
○下條委員 それは、資格制度の根本にいくかと思いますけれども、この前も出ましたように、資格制度が設けられているのサプライヤーの方の論理ではなくて、ユーザーを守るためだということがございましたけれども、そういうところまでさかのぼるんではないかと思います。
医者は免許を要求されています。それは、皆さん命を預けるからです。
銀行も免許を要求されています。それは、皆さんお金を預けるからです。
弁護士は両方とも預けられるわけです。命、身体の自由、あるいは財産とか、だからこそ資格制度が設けられている。ですから、そういう資格制度が設けられている以上、有資格者によってだけそういう日本法の事務が取り扱われるべきであるということがあるかと思います。
ですから、よく最近アメリカ人でも日本語がぺらぺらの人もいますけれども、そういう人の話を聞いていて、あっと驚くようなミスをしていることがあるんです。そういう意味で幾ら日本語が堪能であっても、どうしても思いも付かないミスがあるということですから、そういうことは外国法事務弁護士であっても、いかにも日本法を知ったようなふりをしてやっていても、そういう危険というのは非常に大きいというふうに考えています。
○加藤委員 ここでB案だけで終わってしまうのもどうかと思います。本来でしたらC案、D案を含めた後で、全体の議論をすべきだと思います。今まで、ユーザーを保護するために各種の規制が必要なんだという御議論がかなりあったかと思いますが、我々ユーザーサイドからしますと、前回か前々回にも申し上げましたように、我々には選択する自由がございまして、それなりに賢く、合理的に選択しているわけで、必ずしもサプライヤーサイドから過保護にお考えいただく必要は全くないと考えていることだけをとりあえず申し上げておきたいと思います。
○柏木座長 ありがとうございました。これは、かなり基本に関する問題ですけれども、加藤委員のお話にもありましたように、多分これは最後にもう一度議論するべき点かと思います。
とりあえず、ただいまは下條委員から目的を撤廃して、なおかつ事務所は共同事業を認めないというのは、雇用禁止を貫徹するためということがありますけれども、雇用禁止はまた別に議論してもよろしいのではないかという気がします。特にC案で雇用禁止を撤廃するということが出てきましたけれども、そのときに撤廃したら大きな問題が出るのか出ないのかというようなことを議論するついで、ついでと言っては語弊がありますけれども、雇用禁止を撤廃するというC案を検討する過程で、もう少し深く検討したいと思います。
ほかにB案の目的を撤廃するという案に関して、何か御意見のある方いらっしゃいますでしょうか。
○齊藤参事官 事務局から一般論として申し上げたいんですけれども、事務局がお示ししたA案からD案というのは、決して私個人の案ということではありませんで、事務局なりに検討したパターンでございます。
A案からD案までお示しして、無原則にできるだけ規制緩和をすればいいと、しかも無資格者が法律事務を取り扱うという現象が多少生じてもいいとか、そういうある種ラフな意味で御提案しているつもりは決してないのです。
規制緩和しても、無資格者が法律事務を取り扱うというような現象は、当然できるだけ厳格に注意して規制していかなければいけないと、当然それが前提になった上で、できるだけ外国法事務弁護士と弁護士との間のいい意味での提携・協働関係を、どうやったらば深めることができるか、その調和点をある意味で追及すべく御提案しているというつもりでおりますので、共同事業がより自由化されたり、あるいは雇用が認められれば、外国法事務弁護士が無権限の領域に必ず進出する恐れがあるとか、進出する結果になるということをよく吟味し見直してみたいという趣旨でございますので御理解いただきたいと思います。
○柏木座長 ほかに目的の制限について、御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。 それでは、次にB案では特定共同事業以外の収益分配禁止規定は存続させるということになっておりますけれども、弁護士と外弁との間の収益分配について検討したいと思います。この論点について、検討のポイントの説明を事務局からお願いします。
○齊藤参事官 収益の分配については、前回もある程度御議論いただきました。ここでは、外弁の職務範囲の規制と、それから弁護士と外弁との間の収益分配の在り方というのは、論理必然的な関係にはないのではないかという問題があると思っています。
つまり外弁の職務範囲外の法律事務についても、外弁が弁護士との間で継続的に収入分配を行うとしても、そのことにより論理必然的に外弁による権限外の法律事務の取り扱いに結び付くという関係にはないのではないかという点です。
前回も御説明しましたけれども、外弁の職務範囲外の法律事務、純粋に日本法に関する法律事務については、外国法事務弁護士はさまざまな形で、自らその法律事務を取り扱わなくても、いろんな形で貢献できるという貢献とのバランスで収益分配ということが考えられるんであれば、職務範囲の逸脱ということと必然的に結び付くわけではないんではなかという問題です。
前回この問題について御議論をいただいた際に、久保利委員から問題提起がございました。この点について申し上げたいと思います。久保利委員から提起された問題というのは、法律事務の取り扱いの補助・援助というのはどういう意味なのか、これには事件紹介というような現象を含むのかどうかという問題提起が1つだったと思います。
もう一つは、外弁が海外のローファームのブランドを利用して、特定共同事業の相手方である弁護士に事件を紹介して、その法律事件を相手方の弁護士に取り扱わせて、紹介料を収入するという形態というのは許容し得るのかどうかという点がもう一点あったかと思います。
まず、法律事務の取り扱いの補助・援助ということですが、まず考えられますのは付随事務の取り扱いということがあると思います。具体的には、通訳事務でありますとか、外国語の書類の校正、弁護士の責任の下での契約書等のドラフト作成、関係法令や判例の検索、参考となる法律文献等の収集、これらがまず付随事務としてあり得ると思います。
事件処理に参考となる外国法に関する知識や外国の法律実務上のノウハウ、こういったものを提供するということも、補助・援助に該当すると考えてよろしいんではないかと思います。しかし、そういった意味での補助・援助と事件紹介というのは、本来の用語の意味としては別物というふうに考えた方がよろしいんではないかと思います。
もう一点の事件紹介をして云々というところですが、この点につきましては、現行制度上、特定共同事業に係る弁護士と外弁は、特定共同事業の対象となる法律事務から得られる収益の分配につきましては、その分配に合理性がある限り自由に行うことができるというふうに考えられます。
そこで、外弁が自己の所属ローファームのブランドを利用して事件を相手方である弁護士に紹介して、その事件からの収入も含めて収益分配にあずかるといった形態につきましては、特定共同事業としての営みの中でそういった事件紹介が事務所の業績向上等に寄与するんであれば、これは合理的な収入分配が許される余地があるんではないかと考えられます。
そして、もし外弁が専ら事件紹介しかしなというような現象が、何らかの明らかな弊害を伴っているとか、あるいは何らかの法令違反等に該当するというようなときは、まさにそういった法令違反であるとか、場合によっては弁護士倫理違反、こういった観点から指導・監督、あるいは排除の対象にしていくと。
したがって、共同事業の在り方そのものというよりは、やはり別途の観点からの規制、あるいは排除という対象になるというふうに考えて対応していった方がよろしいのではないかと考えております。
以上でございます。
○柏木座長 ただいまの事務局の御説明に、御意見・御説明のある方はいらっしゃいますでしょうか。乗越委員どうぞ。
○乗越委員 収益分配については、恐らく仮にB案のような形に従って共同事業を認められることになったとすれば、例えば事務所が大きくなってマネージング・パートナーと呼ばれているような人とか、そういうふうな人が案件には直接タッチしないけれども、当然収益分配にあずかるというふうな状況まで阻止しようという禁止規定ではないと思うんですけれども、それに当たるかどうかというのを一々判断するというのは、現実問題としては相当な苦痛になるんではないかと思います。
今、事務局の方からおっしゃったように、事件紹介というふうなことが弊害になるんであれば、まさに倫理的に処理すればいい、あるいは懲罰の問題として処理すればいいんであって、基本的に収益分配の禁止規定を置いておくというのは、余り必要のない重荷を事務所に対して負わせるだけではないかという気がいたしております。
つまり、例えば私の事務所で言いますと、マネージング・パートナーと言いまして、マネージメントを一生懸命やっているパートナーがおりまして、その人がこっちのグループは忙しいけれども、こっちは少し暇だから人繰りをどうにかしてバランスを取ろうとか、あるいは事務所全体として利益相反の問題があるから、そういうことを常に扱って、いろんな事務所のいろんなところからこういう問題があるんだけれども、利益相反に当たるかどうか判断してくれとか、そういうふうな処理ばかりやっていて、案件に携わる機会のない人がいるわけです。そういう人がいたとして、仮に収益分配禁止規定によって、その人が収益分配にあずかることに疑義が生じると、案件には携わってないわけですから、そういうふうなことになると、非常に現実問題として困るなという気がいたしております。
○柏木座長 それはマネージング・パートナーがイギリスにいる場合なんですか、日本にいる場合なんですか。
○乗越委員 それとどこでも起き得ると思います。例えば、日本の弁護士とイギリスの弁護士の間で事業を始めれば、スタッフも合わせれば100 人を超えるような事務所になり得るわけで、そういうところになりますと人繰りをどうするとか、コンフリクトをどうするという話が出てくるわけですから、東京においてマネージング・パートナーという人もあり得ると思います。
○柏木座長 特定共同事業の範囲外でそういうことが起こるということですか。
○乗越委員 範囲内でもあり得るんではないかと思います。今のように2つ事務所を置いて、別々の事務所という前提でジョイントベンチャーという形であれば、そうでもないのかもしれませんけれども、仮にB案のような形で共同事業禁止規定を撤廃するということになったにもかかわらず、収益分配禁止規定を置いておくと、そういうふうな仕事をしている人というのは本当にちゃんとした収益分配にあずかれるんだろうかという疑義が生じるんではないかと思うんですか。
○柏木座長 その場合には、例えばB案で目的事項が撤廃されて、外弁と日本の弁護士が1つの事務所を形成することができるようになる。その弁護士事務所から上がった収益を外国のマネージング・パートナーに分配するということですか。
○乗越委員 それもありますけれども、日本の中だけで考えてもですね。
○柏木座長 日本の中だけで考えれば構わないんでしょう。
○乗越委員 それであればいいんですけれども、収益分配禁止規定というのは、どういうものを禁止しているのかというは、私の頭の中では余り整理が付かないんですが。ボーダーライン・ケースがあるような気がしまして。
○齊藤参事官 現行の規定の理解としては、外弁法49条の2項前段で共同事業が禁止され後段で収益の分配が禁止されるという構造になっています。このように、一応前段と後段で共同事業と収益の分配と分けている以上は、どこかに区別があるだろうというふうに考えています。
一応事務局としましては、前段の共同事業というのは、何らかお互いに法律事務の取り扱いをするということが前提になっている協力関係だというふうに考えています。
後段で言っている収益分配が禁止されるというところでの収益分配というのは、外国法事務弁護士は法律事務の取り扱いはしない。ですから、単に資金提供するだけとかという場合を想定しているというふうに理解しています。
○乗越委員 それは、常識的に考えてそうなんだろうと思うんですけれども、この文言を読むと法律事務を行って得る報酬、その他の収益の分配を受けてはならないというふうに書いてある。特定の弁護士が法律事務を行って得る報酬その他の収益の分配を受けてはならないということが書いてあるわけで、そうしますと事務所の中にありながら全く法律事務を行わない外国法事務弁護士というわけですから、その人たちというのは本当にこれに照らして大丈夫なのかなという気がするもんですから。
○齊藤参事官 共同事業というのは、お互いに法律事務の取り扱いをするということが前提になっていると言いましたけれども、それは現象的にたまたまある時期具体的な法律案件の処理に関わっていないという時期があったり、あるいは事務所の内部の分担として役割分担の結果、一体の事務所のマネージングに特化している弁護士がいたりという程度の現象は、1つの共同事業、あるいは現状では許容されているのは特定共同事業ですから、その特定共同事業という事業の内容として容認され得る範囲のことは構わないんではないかと思います。
○乗越委員 おっしゃるとおりだと思うんです。でしたら、さっき孝橋委員のおっしゃったようなアプローチで、こういうことはしてはいけない、こういうことは公共の利益にならないというふうなものがあれば、それを規制すればいいんであって、収益分配禁止規定を存続する意味がわからなくなってしまうんです。収益分配規定という条項を存続させるというよりは、そういうことは別に規制しないと、ただこういうことはしてはいけませんよというのがあれば、それをリストにすればいいんではないかというのが私の問題提起です。
○柏木座長 道垣内委員どうぞ。
○道垣内委員 今の御発言と趣旨は同じかと思いますけれども、49条2項の前段を削除すると言いますか、共同事業は原則としてOKであると言いながら後段を残す、それが独立の目的があるはずだという解釈からくるのかもしれませんが、しかし普通に考えれば共同事業の脱法を抑えるというのが後段の目的かなと思いますので、前段がなくなったときに後段が生き残れるかというと、相当苦しいことになるのではないかと思います。
後段が仮に残ったとして、それの違反にならないためには共同事業だと言えばいいわけですね。それは非常に簡単なことなので、どういう場合に49条2項の後段だけ残った場合、その違反だと言われることが起こるのかがややわかりにくいです。
ですから、選択肢としてB案の一番上の○一番下の○が違う結論になるということが整合的なのかな、上が消えれば下も自動的に消えんではないかというふうに思います。
○柏木座長 実際問題として、共同事業の制限が撤廃されたときに、果たして収益分配だけを目的とした関係というのが一体存在理由があるのかよくわからないのですけれども、今の道垣内委員の意見は、そういう状況というのはほとんどないのではないかということで、そうであるとすれば共同事業の目的をもし撤廃するんだったらば、後段も撤廃した方がすっきりするんではないかという御意見だと思います。いかがですか。
○波江野委員 この話は、弁護士と外国法事務弁護士の間における技術的な問題であって、依頼者の側からすると収益を分配しようと分配しないでやろうと、構わないような気がするのです。なぜこういう規定が入ったのか、前からもその部分の御質問をしているつもりですが、余り確たるお答えがいただけないような気がしております。こういう規定を残しておかなければいけない理由というか、そもそも入った立法趣旨ですが、我々頼む方は1つの件をお願いして、やってもらったところにフィーを払えはそれで終わりなわけです。それを弁護士の皆さん方がどのように分けようが、ユーザーの立場ではこだわる話ではないと思います。どこに問題があってこれを残すか残さないかという議論になるのですか。
○齊藤参事官 現行の制度趣旨を理解できている範囲で御説明しますと、共同事業というのは、弁護士と外国法事務弁護士が対等な立場で法律事務を行うことを事業として協力してやりましょうという制度です。しかし、この制度が対等な立場を装って、実質は外国法事務弁護士が日本の弁護士を事実上支配して、その支配関係の下で日本法も取り扱い、そこから得られる収益を分配するということがもしも現象的にあり得るとすれば、それは実質的には外国法事務弁護士が日本法の法律事務の取り扱いから収益を得ることになってしまうと。したがって、外国法事務弁護士の職務範囲を逸脱するという現象になるだろうと。それをまず禁止しようとして、共同事業の原則禁止という制度ができたんだというふうに考えられます。
それでは、なぜ収益の分配まで禁止するのかというと、今度は共同事業をやっているんではないんですと、単に外国法事務弁護士は日本の弁護士に一定の資金を提供して、法律事務の取り扱いには手は出していませんと、しかし資金提供した見返りとして収益の分配にあずからしてもらう。もしも、これが脱法的に資金を提供しているだけだと言っても、実際に収益の回収に積極的になれば、場合によっては日本の弁護士が法律事務を取り扱うことについて、何らか容喙していく、干渉していく危険性があるんではないか。そういう危険性までも厳格に防止しようとすれば、収益の分配だけでも禁止しておかなければいけないというふうな脈絡だったんではないかというふうに理解されます。
そういうこれまでの規定の在り方がよろしかったのかどうか、現在でも、あるいは将来に向けても妥当するのかどうかというのは、これはまさに御議論いただきたいというところです。
○波江野委員 例えば、民間企業であれば出資した投資家は配当金をもらうのは当たり前でして、無配の会社では厳しく経営責任を追及されます。出資したらばそのリターンをもらうというのは、出資することそのものが1つの事業に対する貢献なわけです。従って、今、齊藤参事官がおっしゃったように、出資に見合わない高額のものを取っていくとすれば問題かもしれませが、共同事業が成り立つという観点では、共同事業というのは2人以上いなければいけないわけですから、片方が存在するということそのものが1つの貢献であるというふうに考えることもできるのではないでしょうか。そういう暴論を言ってこの議論を止めるつもりはありませんが、この収益分配については、日本の弁護士が外国の人にこき使われることが根拠だとすれば、日本の弁護士というのはそんなにレベルの低いものなのか、そういう自虐的な議論をしなければいけないのかちょっと疑問に思います。もっとハイレベルで、海外の弁護士と対等にやるから共同事業というのがあるのではないかと思います。
○齊藤参事官 まさに、ある種合理的な考え方で、法律事務の取り扱いというものが対象になっているという特殊性なり公益性なり、そういう部分と一般常識的な考え方をどういうふうに調和させればいいのかという問題に帰着するのかと思います。
○波江野委員 そうすると、法律事務の特殊性とか公益性というのは、それほど特殊なものか、法律事務とは一体何なのかということも明確にするべきではないのでしょうか。
○柏木座長 アメリカでも同じように弁護士活動に対して、非弁護士、ノンローヤーが利益をシェアしたり、あるいは事件の紹介について対価を得たりということは禁じられていますから、こういう公益性の高い職業について投資の対象にするということについては、割と規制がどこでも強いのかという気はします。いずれにしてもむしろ道垣内委員が御指摘になった、果たして共同事業が目的の制限が撤廃されたときに、その範囲の外で収益分配だけを目的とするような関係というのは考えられるのか、実際そんなことが起こり得るのか、ほとんど起こり得ないのではないかという問題設定の方が的を射ているような感じがするんです。
ほかに、収益分配について御意見ございますでしょうか。
○齊藤参事官 久保利委員、よろしいですか。また、別なところで御議論いただいてもいいんですが。
○久保利委員 要する株式会社とは違うんだというところだけは、共通の認識にしておいていただきたいと。ただ、そのときに今の道垣内委員のおっしゃったような、そっちを全部撤廃したときに一体何が残るのかというのは、少し考えなければいけないかもしれませんね。
○柏木座長 それでは、次に外弁による日本法に関する法律事務への不当関与について検討したいと思います。この論点について、検討のポイントを事務局より説明お願いします。
○齊藤参事官 不当関与の問題につきましては、前回道垣内委員から問題提起などがございましたので、改めて検討していただきたいと思います。
まず、外国法事務弁護士から日本の弁護士への不当関与というものの内容ですけれども、事務局の方で当たってみた文献等によりますと、不当関与というのは特定共同事業を行っている相手方の弁護士の法律事務、その他の業務に外国法事務弁護士が関与することによって、実質的に外国法事務弁護士が自らの職務範囲外の法律事務を取り扱っているのと同視し得るような場合、これが不当関与の1つの類型であるというふうな説明がなされています。
例えば、外国法事務弁護士が実質的に弁護士を指揮・監督して日本法に関する法律事務を取り扱わせているような場合という説明があります。
もう一つは、外国法事務弁護士が相手方の弁護士に対して、特定共同事業の対象ではない法律事務を取り扱ってはいけないというふうに働き掛けて、弁護士の職務をせばめるような結果をもたらしている場合、このような場合も不当な関与の類型だというように説明されています。
問題は、共同事業がより自由化されていくということに伴って、外国法事務弁護士が日本の弁護士に不当関与する恐れというのがどの程度あるのか、その辺りをよく吟味していただきたいと思います。
共同事業がより自由化されていくということとの関係で、不当な関与の度合いが強まる、危険性が強まるというのは、意外とそれほどではないのかもしれませんので、この辺りを少し御議論いただきたいと思います。
○柏木座長 この論点につきまして、前回日弁連の特定共同事業に関する規程第5条にある関与で、規定には互いに相手方の行う当該特定共同事業に係る法律事務、その他の業務以外のその他の業務に関与してはならないという規定があります。
それと、次の5条第2項に、他の業務に不当な関与をしてはならないという規定がありますけれども、そこにも前回議論が及びましたが、その規定の解釈につきまして、日弁連から御説明をお願いします。
○日弁連 日弁連国際室の上柳です。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元に資料8−4ということで、私の方でつくりました解説図のようなものを配っていただいております。
これに添付資料として、今、問題になっております日弁連の規程の条文と、その規程ができましたとき、臨時総会というところで決めておるんですけれども、提案理由書を参考ということで付けました。なるべく簡単にとは思うんですけれども、この規定の構造を考えるときに、今更ながらでけれども、この8−4の一番上の方ですけれども、日弁連あるいは外弁法もそうだと思いますけれども、いわゆる特定共同事業の目的内と目的外とで大きく区切ることができると思います。この内外を何で決めるかと申しますと、下に「注釈」と小さな字で書いてあるんですけれども、御案内の外弁法49条の2の第1項で律せられているわけです。
現在は、第1号で外国法案件。
第2号はいわゆる外国居住者・団体・会社の案件。
第3号は、50%条項ということになっているわけですけれども、私どもから言いますと外資系の会社の案件については目的内にしてよいかと。まさに先ほど来B案ということで、この目的をどこまで緩和するか、あるいは撤廃ということも考えられるのではないかということを御議論いただいているところです。
更に特定共同事業の目的内といたしましても、その中に法律事務とその他の業務というのがあります。法律事務というのは、普通はこの弁護士法72条、これは弁護士以外が法律事務を扱ってはならないという規定のところに「鑑定、代理、仲裁若しくは和解」というふうに書いてあるですけれども、よく使われていますのはこの東京高裁の判決で、法律上の効果を発生変更する事項の処理、実際これがどこまで広く、あるいは狭く解するのかというのは、難しい問題もあるのかもわかりませんが、一応こういうふうに言われております。
更に法律事務の中でも、その表でいきますと上の方の3段目の列になるわけですけれども、外国法事務弁護士の職務範囲内かどうかという振り分けがあるわけです。これは勿論外弁法3条で、外弁さんの職務内であるかどうか、第4条により職務外法律事務は取り扱ってはいけないというふうに言われております。
法律事務以外のその他の業務は何かということについて、添付資料の中にありますが、普段言われておりますのは、法律事務ではないけれども、例えば事務所のマネージメント、経営に関する業務であるとか、あるいは弁護士会活動も含めて、公共的活動等というものがここだと言われております。
それでようやく日弁連規程第5条の趣旨になるわけですけれども、提案をいたしましたときには、これは外弁法49条の2の第3項を具体化するためにこの規定を置いたというふうにしております。
まず、この箱で言いますと左の方からになりますけれども、規程の第5条2項というものが、目的内の業務について不当関与を禁止しております。ですので、私の実線の箱で言うと、5つ箱があるとすると、左側の3つは「不当な関与」不可ということで、5条2項の対象の問題になります。
これについて提案理由では、不当な関与という限りには、逆に不当でない関与があるということになるわけですが、そこのことについて必要な関与は当然許されるという説明をしております。不当関与の例としては、相手方事務所の人事問題などに関与することは不当な関与であるという説明をしております。
その上で、前回、道垣内委員から御指摘のあったところは、そうではなくて5条1項は目的外の業務については、不当関与ではなくて関与を禁止しているのはどういうことなのかというような御趣旨の問題提起があったと思うんですけれども、おっしゃいますように5条1項は右の方の2つの箱、特定共同事業の目的外の問題について、外弁は関与してはならない、関与はできないというふうに書いております。
このことについて提案理由は、目的外業務について干渉することはここに言う関与であって禁止、資料を見てますと、原案では干渉という言葉を規定に入れようとやったような形跡もありまして、そうなっております。その間の議論では、干渉はいけないけれども、例えば通訳であるとか、先ほどの議論とも関連するんですが、依頼者の紹介というのは別に干渉ではなくて、ここに掲げられている問題外の話なんだというふうに言っております。
更に話が少しややこしくなるんですけれども、私の箱の中の左の方に戻っていただきますと、外弁の職務範囲内の問題については、同じ規程の中に2条3項というのがありまして、外弁と日本の弁護士とで共同受任してもよいというような、これは当たり前と言えば当たり前ですが、そんな指摘があります。
面白いのは、外弁の職務範囲外であっても、日弁連規程の2条4項というのは、補助は可能なんだという条文が置いてあるんです。これも「注釈」のところの3つ目の固まりのところに指摘をしておいたんですが、規程の2条4項は、目的内の外弁職務範囲外事務について、外弁は弁護士の指示に基づいて当該法律事務を補助できるというふうに規定しております。提案理由の場合は、この場合法律事務は弁護士のみが受任し、外弁の補助を受けて遂行する関係にあるというふうに言っています。
では、この補助というものがどういうものなのかということについて、これは私のレジュメでは、いきなり法務省の方の論文を引いておりますけれども、先ほども齊藤参事官の方から御指摘のあったことと関連しているんですけれども、法律事務に付随する事務ないし法律事務を補助する事務として通常よく挙げられますのが、まず通訳、書類の校正、プルーフリーディングでしょうか、次はなかなか微妙になってきますが、契約書等のドラフト、これは弁護士の責任の下にという限定がかかっております。関連の法令や判例を検索する。あるいは、参考となる法律文献雑誌を集めること。これは補助であって、繰り返し申しますと、特定共同事業の目的内の外弁の職務範囲外であっても、補助は可能であるという日弁連規程になっております。
更に今の関係で申しますと、今度は特定共同事業の目的外であっても、関与はいけないんですけれども、先ほどの通訳、事件紹介、更に今の言葉を使いますと、補助は可能だということになるわけです。
ただし、私の箱の右の2つですけれども、補助は可、ただしスポットであると。要するに、共同事業の目的外ですから、継続的な収益分配も含めた共同事業として補助をするわけにはいかないけれども、その案件ごと、あるいはその場ごとの単発的な契約関係に基づいて仕事をしていただいているということはあり得るということになるわけです。
最後の4行ですけれども「コメント」というふうに書いたわけですが、日弁連の規程の5条1項は、目的外事務、あるいは業務にはそもそも目的外ですから関与はあり得ないということで、関与という言葉を使ったものであります。ただし、重要なのはこの領域においても、継続的な共同事業ではないんですが、単発的に、いわゆるスポットで補助をすることはできるということになります。ですから、ここは私の私見というふうに限定した方がいいかもしれませんが、あえて言えばお客様、あるいはユーザーの側から見れば、特定共同事務所に行って、何でもやってもらえるわけです。ただし、事務所側の処理で言いますと、特定共同事業の目的内になったり目的外になると。目的外の場合は、外弁さんには事件紹介や通訳をしていただいて、補助していただくだけだと。それでもお客様から見れば、それは特定共同事業の範囲外だけれども、弁護士がやりますと、そのときに外弁さんは補助してできるんだと、ただしスポット契約だと、ただし今のスポットであるとか補助であるとかというのは、あくまでもサプライサイドであります事業者側の都合というふうに、あえて言えば言えるのかもわかりません。
問題はこの規程と外弁法との関係で、外弁法49条の2の第3項の方には、不当な関与という言葉だけで、関与と不当関与を必ずしも使い分けていないんですけれども、どうも第3項の不当な関与を禁ずる対象には、少なくとも特定共同事業の目的内のものについても、職務範囲内のものもあるし、外のものもあると。それから、解釈によってはと書きましたけれども、これはどうも日弁連の規程をつくった当時の人たちは、この49条の2の第3項というのは、特定共同事業の目的の範囲内だけのものを扱っておりまして、目的範囲外のことについては、対象としていなかったのではないかと考えていたようにも思われるんです。そういう意味では、私の方では、外弁法のところは、点線で囲って、かつ右側2つの箱については、49条の3の次に?を付けておきました。
これは49条の2は、あくまでも特定共同事業のことを議論しているだけですので、範囲外のことについては3項は規定していないんじゃないかという考え方もあり得るということです。ただ、そこは細かい話で、いずれにしても、49条の2の第3項の不当な関与には、職務範囲内外のこととの関係で、いろんなものが入っているというふうに言えると総括できるのではないかと思いました。
少し長くなりましたが、以上です。
○柏木座長 それでは、ただいまの事務局と日弁連の説明につきまして、質問、あるいは御意見のある方は挙手の上、御発言願います。
○道垣内委員 私が前回言っているので、そこまでの詳しい説明をいただくとは、非常にありがとうございました。私が前回お伺いしたのは、むしろ不当な関与ということは、相当な関与ができるという意味なんでしょうかと。今おっしゃった例は、自らの権限外と、自らやっているのと同視できる程度と。それはもはや違法な関与ですね。そうすると、それは当然だめだろうと思うんですが、そこまでいかなくてもだめということはあるのかどうか。今回の議論、まだ決まっているわけじゃないですが、1つのアイデアとしては、目的制限をなくすとしますと、おつくりいただいた枠の左3つでしかないわけです。その中で、どこまでやっていいのか。例えば、パートナーか10人いて、8人は外国法事務弁護士で2人が日本の弁護士。日本法の案件についても、みんなで最終的には責任を取らされるとすれば、どういう処理を最終的にすればいいのかは、全員の関心事項です。そうすると、8人の意見と2人の意見は分かれるかもしれないわけですが、そのときに事務所としてはこっちでいきましょうということは、不当な関与なのかどうか。そこがだめと言われると、共同経営ではなくなってしまうので、それは構わないんじゃないかと思うんです。
そうすると危ない。結局は外国法事務弁護士の意思で日本法の案件の処理が決まっているではないかということで、さっきおっしゃった同視できる状態だと日弁連はお考えになるのかどうか。その辺が関心事項なんです。
○日弁連 法律事務については、日本の弁護士が自分の弁護士倫理と、それから今までの修習課程、あるいは養成課程で養われてきた知識に基づいて、日本の弁護士が判断しなければいけない。いわゆる、日本法の解釈について、例えばパートナーシップの中で外国法事務弁護士さんが多数を占めたからと言って、そちらの解釈に引きずられる。あるいはそちらを取るということであれば、それはやはり不当関与ということだろうと思います。
ただ、更にそういうことでいうと、確かに外弁法4条の職務範囲との関係が大変関連が強いんですけれども、一方で、その他の業務、事務所運営とか公共的活動もありまして、これは必ずしも外弁法4条で規制されていないと普通は思われているようなんです。ですから、そこについてはひょっとすると今の多数決原理ということでいいのかもわかりません。ですから、どこまでがその他業務で、どこまでが法律事務の取り扱いなのか。あるいは、どこまでが日本法のマターで、どこまでがハイブリッドのマターなのか、あるいは外弁の職務範囲なのかということによって結論が変わってくるということだろうと思いました。
○柏木座長 ちょっと離れて申し訳ないんですが、玉井委員がこの間、お話ししたように、案件によってはむしろそういう外弁と日本の弁護士がディスカスして、外弁に干渉してもらたいということがあるわけです。もっと具体的な例を言えば、例えばアメリカで製造物責任訴訟が起きた。日本で関西鉄鋼事件みたいに債務不存在確認の訴訟を起こそうかと日本の弁護士が言っている。
ところが、もし起こした場合には、それがアメリカでまた反発を招いて、陪審員の評決に非常に不利な影響を与えるかもしれない。あるいは日本での訴訟をやめろという訴訟上の差止め命令を申し立てられるかもしれない。そういうような総合的な勘案の末、外弁はやはり日本の訴訟はやめるべきだと言った。日本の弁護士は、やはりやるべきだと言った。事務所の総意として、これはやはり日本の訴訟はやらない方がクライアントの利益になると判断したという場合には、これは不当な関与なんでしょうか。
○日弁連 今の設例で最終的に日本弁護士の構成メンバーが日本での法律解釈、あるいは日本での訴訟戦略としてそれでよいと。日本では対抗訴訟を起こす、起こさないの判断をされたとすればそれは構わないわけです。
○柏木座長 日本の弁護士が最後に納得したかどうかの問題ですか。
○日弁連 ということだと思います。まさに今の国際的訴訟競合の例というのは、私、個人的にも何件かやっていまして、まさに、幾つかの法域の知識を持った人たちが徹底的に議論すべき問題であろうと思いますけれども、日本の訴訟の行く末を最終的に受け入れるのは、日本の弁護士の中で判断すべきだという意見です。
○齊藤参事官 念のため、今、座長が御説明になった関西鉄鋼事件的な債務不存在確認訴訟というのは、どういう意味なのかをちょっと御説明いただいた方がいいかもしれないんですけれども、私も実は前回御指摘いただいて、意味がわからなくて、後で調べて勉強してようやくわかったんですが。
○道垣内委員 要するに二重起訴ですが、特にアメリカでの訴訟が、アメリカ以外の国から見ると非常に不安と言いますか、被告にされたときにどれほどのコストがかかり、最終的な判決もどうなるか非常に危ないと感じた場合には、最終的な判決の執行が自分の国に来るのであれば、あらかじめ自分の国で債務不存在確認訴訟を起こして勝っておけば、それでシールドできるんじゃないかということから、対抗訴訟を他の国でやる。日本企業については、日本で債務不存在確認の請求訴訟を起こすということで、起こすか起こさないか、それは訴えの利益があるのか、管轄があるのか、すべて日本法の問題ですが、しかし、関係は外国との関係です。それで今座長がお話になったわけです。
○柏木座長 ということでございまして、ほかにこの点について、御意見がなければ、次のポイントに移りたいと思いますが、よろしゅうございますか。
それでは、次は弁護士の独立性の影響について検討したいと思います。この論点につきましては、検討のポイントの説明を事務局からお願いします。
○齊藤参事官 弁護士の独立性への影響の問題も、前回ある程度議論させていただいたわけですが、本日も一定程度御議論いただきたいと思いますのは、やはり弁護士の独立性との関係で、資格法制上問題とすべきことは、結局は外国法事務弁護士による日本法に関する法律事務への関与、これをいかに適正な形にするかということとの関係ではないかと思うんですが、その辺り、再度御議論いただければと思います。
○柏木座長 いかがでしょうか。ただいまの事務局の説明に対して、御意見、御質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。
独立性の影響ということは、不当関与の問題とイコールの問題であるという了解でよろしゅうございますでしょうか。
それでは、次は指導監督の強化の要否について検討したいと思います。前回指導監督の強化は必要であるという意見が出されましたが、ここではその強化策の在り方について御議論いただければと思います。いかがでございましょうか。
○齊藤参事官 私の方からよろしいですか。前回の検討会のときにも、幾つかアイデアと言いますか、方策が御指摘を受けたわけですが、そのほかにもあり得るかどうか。あるいは、どの辺りの指導監督の方策が妥当なのか、その辺り、更に御意見なり御指摘があればと思っております。
○柏木座長 いかがでしょうか。指導監督については、現行制度の運用だけで十分と考えてよろしいでしょうか。
○齊藤参事官 そこまで限定しなくてもいいと思うんですが、一方で規制を緩和するという方向と、せっかく緩和したんだけれども、逆に不必要な指導監督の手段ができるというと、何となく落ち着きが悪いわけですけれども、一般論として、規制が緩和されて、その分、事後チェックの体制が整備されるべきだということは、恐らく余り異論はないところだと思いますので、この後事務局も更に検討してまいりますけれども、合理的なまさに事後チェックの制度、方策など、こういったものの御指摘などを受ければこちらも検討してまいりたいと思っております。
○久保利委員 前回もそうだったと思いますけれども、要するに、日本の弁護士に対する指導監督も日弁連も総会決議で厳しくやるということはあるわけです。したがって、懲戒制度、あるいは調査権限、こういうものについて同様の措置を考えると。まさに参事官おっしゃるとおり、規制緩和の裏返しというのは常に事後チェックは厳しく、入り口はやさしく、出口は厳しくということですから、全く当然の話なんで、ある意味で言うと、そこの議論、これはいつやるんですか。どういう形で厳しくやるというのは、かなりのところ日弁連の会則問題とか、そういうものと絡むと思うんですけれども、私としては、日本弁護士に対する、これは外弁問題を離れた通常の弁護士会の弁護士に対する規制の問題と、同様にこの外弁問題についても、同じような程度の、同じような規制の強化というものが望ましいのではないかと思っているんですが、その具体的な中身については事務局の方でもう少し御検討になって、具体的な提案をなさるということですか。
○齊藤参事官 できればそういう準備もしてみたいと思います。
○柏木座長 これも全体を検討してからでないと、監督の強化の程度もわからないとも言えますね。
○久保利委員 何も監督しないなら、何も言わないでいいという話になってしまうわけですから。セットでということはそのとおりです。
○加藤委員 指導監督とは少しずれますが、同じような観点で、ユーザーサイドが選択するについては、情報の開示が大事だと思います。現状、どの程度の情報が開示されているのか私はよく存じませんが、情報開示という観点を少し幅広くというか、適正な開示ができるような仕掛けにできるようにしていただきたいと思っております。
○柏木座長 もう少し具体的にはいかがですか。
○加藤委員 現在、具体案はございません。
○柏木座長 ほかに御意見ありましたでしょうか。あるいは指導監督強化以外の弊害防止措置につきましても、何か御意見をいただければと思います。
○道垣内委員 確かに規制緩和の代替策として事後規制というのはよく言われることですけれども、今問題にしているようなことは、なかなか事後的にはわからないと言いますか、先ほどの不当な関与かどうかは外にはまず見えませんし、中の人が外に言うとも考えられませんし、立ち入って見ておくというのもできないと思いますので、何か事前規制を入れる可能性があるんじゃないか。今その意見であるということまではコミットしませんが、例えば先ほどのシンガポールの法制の中で、パートナーの半分以上は地元の弁護士にしろというのがございましたが、さっき私が挙げた8対2というのはまだしも、もっとすごい比率になるかもしれませんし、場合によっては、特にコントロールしやすい人を一人入れておいて、共同事務所にするということだってあり得るわけでして、共同事務所だと途端にいろんなことができてくるという仕組みになってしまうのは、ちょっと心配かなと。先ほど申しました、事後的になかなかコントロールできないとすれば、半分まで必要かどうか。3分1なのか、数字はわかりませんけれども、少しそういう考え方もオプションとしては考えたらどうかと思います。
○下川委員 指導監督の関係で、1つ重要だと思われます視点は、外国法事務弁護士というものも所定の手続を経て登録されている弁護士である、基本的な認識としては、弁護士と全く同一ではないのかもしれませんけれども、広い意味でのローヤーとして日弁連に登録されているということです。それを出発点にした上で、指導監督がどうあるべきかということが議論されるべきであろうと思います。それが日弁連が全く関与していないほかの専門職とか外国弁護士一般との差だろうと思いますので、逆に言うと、指導監督を検討するに当たっては、弁護士と差を設ける必要があるのかという観点から、非常に注意深く検討する必要があるのではないかと考えます。
WTOなどの議論におきましても、法律サービスということではなくて、広く職業団体、自主的な業界団体等の加盟が活動を行う上で条件になっているような場合において、外国のサービス提供者が団体へのアクセスがそもそも認められているかという問題と同時に、入った後に内国民待遇ベースの扱いが与えられているかどうかというのは非常に重要な論点でありまして、そこで何か内外差別的な制限というものが入ってきますと、これはどういう合理性があるんだろうかということが厳しく問われるということはあろうかと思います。
そういう意味では、過半数とか、先ほど道垣内委員から出た話で、数量的に規制を導入するということにどれだけ合理性があるのかというのは、なかなか詰められると正当化は難しいかもしれないという感じがいたします。
○乗越委員 私も同じような趣旨なんですけれども、発想の基本としては、外弁もそれなりに悪い人たちばかりではなくて、基本的にはどこかで客観的な資格を得てきているわけですから、そういう前提で話を進めていただきたいなという気がいたします。
それから、人数の方は、今、道垣内委員の方が1つの案としておっしゃったと思いますけれども、現実問題として、ある特定の数字を拾ってきて、これで成否を判断するというのは非常に仕事のやりにくいことだと思います。それはもう本当にクライアントのニーズによりまして、こういうたぐいの仕事が多ければ、こういうたぐいの仕事をよくやっている人を一杯持ってきたいですし、ロンドンで忙しくなれば、外弁の人が引き揚げてロンドンで仕事をするということになりますし、そういう事情によってあるときから事業が営めなくなるというふうなことになるのは現実的ではないような気がいたします。
○柏木座長 道垣内委員から具体案が出されましたけれども、先ほどの議論のとおり、多分これは全体を議論した後でもう一度緩和策との関連で立ち帰って検討すべき問題だと思いますので、とりあえずこの議論はここでとめたいと思います。
A案とB案に関する論点項目につきまして、ひととおり御議論いただいたかと思います。更にC案、D案、あるいはC案、D案のところで、雇用禁止の問題が議論されますけれども、そのときに下條委員が御提出になったB案についても、立ち帰ることになるのかと思います。取り敢えず、C案、D案との絡みでの論点について検討に進みたいと思いますが、いかがでしょうか。
ところで、4時を15分ほど過ぎておりますので、この辺で10分間の休憩を取りたいと思います。議事の再開は16時25分としたいと思います。
それでは、これで休憩に入ります。
(休 憩)
○柏木座長 議事を再開したいと思います。特定共同事業の要件緩和等につきましては、具体的にどのような方策を妥当とするかということにより関連性が出てまいりますので、引き続きC案、D案の検討を行いたいと思います。
まず、雇用禁止との関係の論点項目について検討したいと思います。
まず、現行の雇用禁止の問題点につきましては、雇用のニーズについて確認したいと思います。前回は共同事業が自由化された際に、事務所が弁護士を雇用することを認めないと、事務所としての一体性、同一性の保持の足かせなるといった意見も出されましたけれども、いかがでございましょうか。雇用のニーズについて、御意見ございますでしょうか。乗越委員、いかがですか。
○乗越委員 前からの繰り返しになりますけれども、やはり1つ事業を一体のものとしてやるためには、雇用について、日本の弁護士しか日本の弁護士を雇用できないというのは非常に現実問題としてはやりにくいというのがあると思いますし、独立性というのが最前からの議論にありますけれども、その点については、また、いろんな方からも意見があったように、個人個人に対する倫理、監督、そういう問題として処理すべきものであって、組織がどういう形を取るから、あるいは雇用関係がどうだから独立性が阻害されるとかいう議論というのはなかなか難しいのではないかと考えます。
○柏木座長 ありがとうございました。下條委員。
○下條委員 勿論、外国法事務弁護士が日本法についてアドバイスが欲しければ、特定共同をやっている相手方のパートナーである日本弁護士から聞けばいいわけですから、特に雇用を認める必要はない。雇用を認めるということはむしろ弊害があるんじゃないか。
先ほど来から申し上げておりますように、外国法事務弁護士がだんだん自分たちのやることを広げていって、最後は日本法まで事実上やるような形に持っていこうとしていると、その点があるかと思います。
もう一つ重要な点は、日本弁護士はなかなか最初から一人前というわけではなくて、日本弁護士は日本の弁護士によって教育されて、日本法についてのいろいろな研修を受けて、ようやく一人前になるわけですから、私どももよく経験するんですけれども、研修所を出てきて1年目の弁護士というのは、なかなか使い物にならないわけで、それを鍛えるのには、3年ないし5年という時間がかかるわけですので、そういった教育という面も非常に大きいのではないかと思います。
○波江野委員 最近の企業法務、ビジネス法務の世界では、少数の弁護士で処理していただける案件も勿論ございますが、かなり大規模な組織体制で弁護士に仕事をやっていただくということが多くなってきております。ジョイント・ベンチャーとか合併という場合には多くの分野を担当する多数の弁護士が必要です。そうすると、組織的に仕事を行うためには、特定共同事業のパートナーだけではなく、そこに若手の人が、イソ弁でもアソシエーツでもいいですが、参画して、組織的に多人数で取組んでもらう必要があるという気がいたします。
その場合に、今、下條委員のおっしゃったように、確かに若手だったらすぐに一人前にならない、育成しなきゃいけないというときに、日本人弁護士でなければ育成できないわけではなくて、これは法律的に許されるかどうか私には分かりませんが、共同事業という事業体で日本弁護士を雇用する。そういった道もあるのではないでしょうか。先ほど下條委員は二重雇用と言いますか、外国法事務弁護士にも雇用され、日本人弁護士にも雇用されるという格好だと説明されましたが、もう少し割り切って考えることもできないのかなという感じがしますが、そういう道はないのでしょうか。
○下條委員 ちょっと難しいんじゃないかと思います。よく私どもは新しい弁護士が入ってきますと、一応指導担当委員とか決めて、勿論、みんな集めて大体私どもの事務所ですと、半年くらいいろんなセミナーをやるわけです。つまり、司法研修所から出てきた人は、証券取引法とかいうのも知りませんし、例えば独占禁止法とか、いろんなテーマに分けてセミナーをやるということで、それが半年くらいかかるわけですけれども、そういった教育を経て、その後に更にオン・ザ・ジョブ・トレーニングというか、それはやはり指導担当の弁護士がいて、その指導担当の弁護士からいろいろ教えを受けて、だんだん一人前になっていくわけです。
そういう意味で、そういった人がいきなり外国法事務弁護士と共同するような形になってしまうと、どうしても日本法についての素養が十分できないんじゃないかという心配があります。
○久保利委員 前提問題ですが、今、雇用のニーズというお話をしていらっしゃいますが、その雇用された、要するに外弁が日本弁護士を雇用するという問題が中心だと考えていいんですね。
○柏木座長 2つあるんです。外弁が雇用するのと、共同事業体として雇用するのと2つあると思います。
○久保利委員 要するに、日本の弁護士が日本の弁護士を雇うことについては何の問題もないわけですから、今の波江野さんのおっしゃっているような大勢が必要だというのは、相手方である日本弁護士が大勢日本の弁護士を雇えばいいだけなんで、その問題とはちょっと違うと思うんですが、基本的には外弁が雇った日本の弁護士は、日本法の仕事をやらせるという意味でのニーズのお話をなさっているのか、外弁そのものが日本法ができない以上は、外弁に雇われた日本弁護士は、日本法を直接外弁にアドバイスすることはできないという頭なのか。
あるいは、直接アドバイスしても、外弁そのものがクライアントに対して日本法をうちの若い人がこう言っていましたと言うことができるのかできないのか。それをできるとしてニーズがあると言っているのか。それができないときにはニーズという話もあり得ないように思うんです。そこの前提はどういう前提をお考えですが、両方あり得るという前提ですか。
○齊藤参事官 ちょっと御質問の確認なんですが、最後に両方とおっしゃったのはどういう意味だったんですか。
○久保利委員 外弁はクライアントに対して日本法のアドバイスも、もし雇用した日本弁護士がいれば、その雇用した日本弁護士の意見に基づいて使用者である外弁自身が日本法のアドバイスもできるという前提が1つ。
もう一つは、いや、今やっている前提は、日本のアソシエート、雇用された日本弁護士は、日本法を外弁には言えるけれども、あるいは言えないと。言えたとしても、外弁は日本法はこうですということをクライアントには言えないという考え方の両方があると思います。それが2つという意味で申し上げたわけです。言えるということなのか、言えないということなのか、どっちを前提にして今のニーズ論は始まっているんですかという質問です。
○齊藤参事官 日本の外弁制度を前提にして、雇用のニーズを考えるときに、今、久保利先生が前提。
○久保利委員 どっちの前提ですかと聞いたわけです。
○齊藤参事官 現行制度としては、外弁が日本の弁護士から日本法についてのアドバイスを受ければ外弁は日本法を自由に取り扱っていいということではないという前提です。それは日本法についてのアドバイスを幾ら受けたとしても、外国法事務弁護士が自ら日本法を扱うということ自体は原則これは禁止されているという前提です。ただ、そういう前提の下で、しかし、日本で法律事務を行うわけですから、日本の弁護士を雇用して活用するいろんな面での必要があるのではないかと思われるんですが、それが具体的にどういうことかということをよく踏まえておきたいということでニーズ論を論点項目としてとらえているわけです。
○久保利委員 もう一つお聞きすると、雇われた日本弁護士は直接外弁のクライアントに日本法を言うこと、これはできるということですね。
○齊藤参事官 被雇用の弁護士が自分自身の事件として、自分の責任でリーガル・サービスを提供することは、雇用関係の中でそれが許容されていれば可能だと思います。しかし、被雇用の弁護士が提供されるリーガル・サービスが実質的には雇用主のためのものだと評価できれば、雇用主が日本法を取り扱ったという評価に原則なるんだろうと思うんです。それは外弁法の4条に違反するという仕分けです。
○久保利委員 今の参事官の御説明のような、自分の事件として、自分の責任で云々というと、それはむしろ雇用の問題というよりは、相手方、すなわち特定共同の相手方のような存在になってしまうということを意味するわけですか。
○齊藤参事官 ですから、雇用関係の中にあっても、言葉は悪いかもしれませんが、アルバイトで自分の事件も一定程度処理してもいいよという形態もあり得るんだろうと思うんです。ですから、仮に外国法事務弁護士が弁護士を雇用できるというような制度を日本でも取り入れたときに、日本の弁護士が固有の日本法についての事件、例えば国選弁護事件などを一定程度経験したいというときには、これをできないというふうに規制してしまう必要はないと思うんです。そういう部分的に本来の独立した日本の弁護士として行い得る領域も認めつつ、雇用関係にもあるということは、バリエーションとしてはあり得るんだろうと思います。
○久保利委員 そういう前提だとすると、乗越さんがさっきおっしゃったニーズというのは、余り意味を持たないんじゃないですか。事業の一体性というのは、そういう前提でさっきおっしゃいましたか。
○乗越委員 ちょっと違いますね。私が考えておりましたのは、共同事業ということになれば、共同事業であろうが何であろうが、とにかく資格を持っている日本の弁護士の人が、イソ弁であろうがパートナーであろうが、日本法についてアドバイスできるのは当然だと思います。
それから、だれがマイクロフォンを担ってクライアントに対して直接言うかというところで切るというのは、私は余り意味がないんじゃないかと思います。と言いますのは、例えば何かのミーティングが案件についてあって、それで日本の弁護士に確認した上で、日本の法律の立場はこういうことですよということを単に伝えるということまで禁止されているということになると、これは現実問題として、あらゆるミーティングのときに、複数の弁護士が出ていかなければならないということになって、現実的にクライアントとしてはそんな無駄なコスト使いたくないということになるんじゃないかと思います。
ですから、それはだれがマイクになるかどうかという話ではなくて、実質的にだれが最終的に責任を持ってアドバイスが行えるかどうかというところで考えるべき話じゃないかという気がします。
ですから、さっきおっしゃったように、日本の弁護士に聞いたらこういうことでしたということすら言えないというふうな前提でおっしゃられているとするのであれば、それはちょっと現実的ではないと思います。
○柏木座長 議論がちょっと錯綜していると思うんですけれども、先ほどのB案で、もし特定共同事業の目的の制限を撤廃した場合、外弁と日本弁護士による1つの事務所を認めてしまう。外弁と日本の弁護士を。下條委員の御意見とはちょっと違いますけれども。そうなったときに共同事務所が日本の弁護士を雇用できるかという問題、これはちょっと後にもう一回議論したいと思うんです。その前に、久保利委員が指摘されたように、外弁が外弁として単独で日本の弁護士を雇用するニーズというものについて、議論を絞りたいと思います。
○乗越委員 それは今の特定共同事業を前提にしてということですか。例えばB案とかになった場合ですか。
正直言って、どうしてパートナーがいなければいけないのかというのはわかりません。パートナーがいなくても、日本の法律事務について、資格を持った人がアドバイスできるということであれば、その人のステータスがどうであろうが関係ないのではないかという気がいたします。
現実的なニーズについて言えば、勿論、こういう共同事業をやろうというところは、シニアな人が欲しいですから、当然パートナーをまず進めた上で、雇用するということになるんでしょうけれども、そのときに、別にそのパートナーが個人の名前で、あるいは一群の日本人のパートナーだけが日本人の雇われ弁護士を雇うというのは全く合理性がないような気がします。済みません。また、元へ戻ってしまいましたけれども。
○柏木座長 久保利委員が指摘された点は、私もよくわからなくて、もうちょっと具体的に言えば、外弁が日本の弁護士を雇用した場合に、お客の方がその事務所に行って意見書を書いてもらう。意見書は外国の法律と日本法に関する問題が入り混じった意見書とならざるを得ない。そのときに一番最後に一言、条件を加えておきまして、以上の意見書の中の日本法にわたる部分については、弁護士、何のだれがしの意見でございますということで、被雇用の弁護士がそこに署名するというスタイルを取れば何をやってもいいのかという問題があるような気がするんです。背後関係が被雇用弁護士で、外弁から給料をもらう存在であるということでもよろしいのではないかかという問題があるような気がするんです。
それがもしOKということになれば、かなり自由に何でもできるということになるのではないか。また、実害も日本法に関する限り日本の弁護士が発言しているわけですから、実害もないのではないかと考えるんですが、いかがでしょう。
○乗越委員 仮に日本の弁護士しか日本の弁護士を雇えないという制度を続けるとすると、仮に共同事業を認めた上で、そういうのだけを続けるとすると、例えば日本のパートナー一人と共同事業を始めてそこが3人の日本の弁護士を雇いましたと。そのパートナーが亡くなってしまいましたというときに、いきなり共同事業は解消しなきゃいけないのかとか、そういうふうな非常に変な問題が生じるような気がするんです。
○齊藤参事官 今の乗越さんの設定はちっと特殊な設定になりますので、それはさておいていただいて、雇用に関するかなり本質的な議論になっていると思うんです。日本の資格制度を念頭に置きながら、外弁法の下でも4条で職務範囲外の法律事務を取り扱ってはならないという規定があるわけなんです。よくこれまで雇用を認めるべきか、認めるべきでないかという議論になったときに、外国法事務弁護士が弁護士を雇用して、その雇用した弁護士に日本法に関する法律事務を自由にやらせて、そこから得られた収益を、まずは外国法事務弁護士が受け取って、その上で被雇用の弁護士との給与の問題を更に処理するという形というのは、従前日本では、それは被雇用の弁護士を活用することによって、雇用主自身が日本法を取り扱うことにほかならないというふうに考えられてきていたわけなんです。
現行の制度で日本の資格法制度そのものの構造は何ら変わっていませんので、一応被雇用の弁護士を活用することによって、つまり、そこに指揮命令が機能していて、その範囲内で日本法を取り扱っていると。そういう現象というのは、これは実質的に言うと、雇用主が日本法を取り扱うという現象だと一応考えられるのではないかと思います。
問題は、実質的に弁護士を雇用すれば、必ずそういう現象にまで結び付くかどうか。そこのところはもう少し吟味していただきたいと思うんです。雇用されたこと自体で、必ず職務範囲の逸脱という現象に結び付くのか。いや、雇用された上での被雇用の弁護士と雇用主との間の業務のやり方いかんでは、当然には職務範囲の逸脱という現象は起きないんではないか。もし、そうだと考えることの合理性があるならば、雇用自体は認めても、そこでの活動の内容をうまく考えていけば、雇用という1つの形態を活用して、外国法事務弁護士と弁護士との間の、いい意味での協力関係というのが発揮できるのではないか。この辺りがポイントなのではないかと考えております。
○柏木座長 ただいまの説明につきましていかがでしょうか。
○道垣内委員 私もそういう理解なんですが、先ほど座長がおっしゃった例で、意見書の中に日本人弁護士の書いたことがあって、そこにサインがある。もしそれがいいんであれば、コンサルティング会社でも会計事務所でも雇えて、かつ、外向けのサービスの中に法律のアドバイスまで組み込めることとなってしまうのではないか。それは非常に危ないのではないかと思いますので、そこはできないだろうと。
もし、それができないと、何のために外国弁護士が、あるいは外国法事務弁護士が日本人弁護士を雇うのか。あり得るのは、少しだけ日本法が関係して、準拠法が外国法になるかどうかはずっと前に申しましたが、法令を適用しなくてはいけないので、日本の国際私法を適用しなくてはいけないので、そこだけ日本の弁護士に考えてもらおうと。あとは全部、準拠法はニューヨーク州法になったので自分がやりますと。そういう雇い方というのはすごく無駄ですね。せっかく大きな能力のある人のごく一部しか使わない。
それで先ほどおっしゃったアルバイトはしてきていい、その代わり給料は少し少ないけどという使い方もあるかもしれないとおっしゃったわけですが、雇用を禁止するにせよ何にせよ、雇用の定義として、そういうのも雇用なんですか。
○柏木座長 それは雇用の定義如何の問題になってくると思うんですが。
○道垣内委員 ほとんど外でやっていて、ある特定の問題については、必ず私の質問には答えろと。それは単なる契約のような感じがして、雇用ではないような気がするものですから、さっき久保利さんのおっしゃったニーズという点では、余りニーズはなさそうで。 ○齊藤参事官 そこでちょっと関連して、僣越ですけれども、申し上げたいんですが、日本のような資格法制度の下では、やはり外国法事務弁護士と弁護士の提携・協働関係を考えるときは、共同事業の自由化と、雇用というのは、やはりうまくかみ合わせることによってそのメリットが発揮できるということになるんではないかという気がしています。
つまり、共同事業が自由に組めるということによって、外国法事務弁護士も日本の弁護士の適任の人とうまく提携できる。スムーズに提携できる。その下で弁護士を雇用すれば、被雇用の弁護士というのは、雇用主である日本の弁護士のためにも機能したという形を取れるわけですから、そうすると、1つの共同事業を行っている事務所に入ってきたもろもろの案件を処理するときに、その処理の形態としては、日本の弁護士と、雇い主である日本の弁護士と外国法事務弁護士が協力して案件を処理するというその機能を使いつつ、被雇用の弁護士にも最大限活動してもらうと。こういった形が取り得るのかという気がするんです。
だから、共同事業の自由化という問題と、雇用の問題を全く截然として、全く別々の制度として検討するということが、私自身としては、個人的にはそのこと自体が少し窮屈な議論なのかという気がします。
○波江野委員 雇用主である日本人弁護士と外国法事務弁護士とさらっとおっしゃいましたけれども、その雇われている弁護士の雇用主は、日本人弁護士だけという意味なんですか、それとも日本人弁護士と外国法事務弁護士、この2人が雇用主と、どういう意味でおっしゃったんですか。
○齊藤参事官 当然、共同事業をしている弁護士と外国法事務弁護士がいれば、そこでは共同して弁護士を雇用できるということを認めていた方がいいと思うんです。
○波干野委員 2人が雇用主ということですね。
○柏木座長 道垣内委員のおっしゃったことで、少し私は議論を整理しておいた方がいいんじゃないかと思うのは、さっき下川委員がおっしゃったように、この議論の1つのポイントというのは、外弁というのはやはり弁護士なんだと。同じ仲間の職業人なんだ。同じプロフェッションなんだと。したがって、会計士事務所が弁護士を雇って法律事務をやる。あるいは商社が弁護士を雇って意見書を書かせるのとは違うんだろうと思います。それがどうこうと言うんじゃないですが、性格として商社、あるいは会計事務所が雇う場合と、外弁が雇う場合というのは制度設計としては、多分区別しなきゃいけないんではないかと感じますが、いかがでしょうか。
○道垣内委員 外弁法のつくりは、外弁の方が危ないと考えているんです。だから、わざと禁止と書いているのであって、今おっしゃったのだと逆だと思うんです。ほかの人は雇ってはいけないと書いていないのに、外国法事務弁護士だけ書いてある。これをなくしても、大した違いはないんだろうと思うんです。ニーズが余りないだろう。一人で雇うというか、外弁ばかりの人たちを雇うことは余りなさそうです。
ですから、この禁止を残して、しかし、共同経営のときにはいいですよという条文を置くのも私は1つの手だと思うんです。それと雇用禁止をなくしてしまうのとはほとんど差がない。だけれども、象徴的にはすごく意味があって、いけないというのを残したというのであれば、あえて私は反対しないと言っているだけで、しかし、意味は一緒じゃないかと思うんです。共同事務所のときの例外を設ければほとんど同じことではないかと思います。
○下川委員 いろいろな場合の規制改革対話とか、それから今始まっている交渉などでもそうなんですけれども、いろいろな自由な形態での法律サービスを提供できるようにするという観点からは、これは外国が言っていることだと言ってしまえばそれまでなんですけれども、業務を提供する形態についてできるだけ制約が少ないことが望ましいと主張されています。その延長線で、ほとんどの場合、パートナーシップとエンプロイメントというのは同列に扱われている。それは1つの事実なんですけれども、そういうこととの関係で、対等のパートナーとして横並びで協力してやっていくということと、上下関係で指揮命令下に置かれて、お互い法律家同士やっていくということの間で、どれほど違いがあるのか、必ずしもよくわからない。逆に言うとニーズがないという話はあったんですが、本当にニーズがないのかどうか。むしろほとんど同列で議論している要望書などを見ている限りにおいては、やはり潜在的には雇用する形で使いたいというのが相当あるんじゃないかというのが感じがしております。
その関連で、ここから先は意見というより質問なんですけれども、外弁法の中で原資格国に関する法律事務というのを見た場合も、2条の定義の中で、原資格法が全部または主要な部分に適用されということが書いてありますので、まさにそういう原資格法に関することを純粋に主にやりたいと思っているようなローファームが出てきたときに、でも、全部ではなくて、主要な部分ですから、残りの部分で、例えば日本法の部分が残ったりしているときに、日本人の弁護士を雇いたいというニーズが出てき得るんではないか。それはさっきの資格法との議論との関係で認められているのか認められていないのか。そこをお伺いしたい。
○齊藤参事官 原資格国法に関する法律事務というのは、外弁法の定義でも、今、下川委員がおっしゃったように、まさに原資格国法がその全部、または主要な部分に適用され、または、適用されるべき法律事件についての法律事務と、こういうふうに定義されておりますので、主要でない部分に日本法が適用される場合というのはあり得ると思います。そういう部分も含めて、トータルとして、原資格国法に関する法律事務というふうに理解せざるを得ないと思います。
したがって、そういうふうに部分的に日本法の適用部分が含まれているような案件というのがあり得ると思いますので、その限度では外国法事務弁護士も、日本法を結果的には取り扱うことになると。ただし、そのときに日本の弁護士も被雇用の弁護士がいるということは、それなりに私は意味を持つと思います。
○下川委員 今まさに雇用禁止規定があるため雇用はできないわけですね。でも、いることによって、むしろ原資格法に関する法律事務であっても、全体としての日本法の部分を含めて質が高まるということもあり得るのかと。そういう意味で雇用のニーズというのはあるのかという感じがするんです。
○久保利委員 質問ですけれども、今、下川さんのおゃったようなことは、外弁だけでできるんじゃないですか。要するに、メインの主要な部分が全部原資格国法であった場合に、一部、非常に軽い部分に日本法が絡んだとしても、それは外弁だけではできないということなんですか。
○齊藤参事官 いえ、それは外国法事務弁護士の職務範囲に含まれると思うんです。
○久保利委員 だから、そこに日本弁護士がいた方がよりその部分に対するケアは厚くなるかもしれないけれども、今は少なくともできるわけですから、日本法の弁護士を雇わなきゃならないということにはならない。雇った方がよりいいのではないかということを今、下川さんおっしゃったわけですか。
○下川委員 今、申し上げたのは、雇いたいということがあったときに、今は逆にできない法制になっているので、そういう意味で雇用禁止を解除するニーズというのは潜在的にはあるんじゃないかなということです。現にいろいろな交渉の場に出てくるときには、パートナーシップとエンプロイメントとそんなに概念的に区別せずに、いろんな形態でサービスを提供したいということを言ってきているんで、それほど差がないのかなということを申し上げたかったんです。
○孝橋委員 さっき道垣内委員がおっしゃった、特定共同事業の目的制限を撤廃して、1つの事務所を共同経営することを認めるということになった場合に、そこで雇用というか、それに近い関係が発生するという、それは認めていいんじゃないかと私も思っているんですが、外国法事務弁護士が日本弁護士を雇用してはならないという雇用禁止の一般的な規定を象徴的なものとして残しておいて、共同事業の場合は例外とするという形は1つの方法だと思うんですけれども、そういうふうに象徴的なものとして雇用禁止規定を残しておくことにどれだけ意味があるのかという疑問があります。たしか長島先生が将来的なビジョンとして、日本の渉外事務所が国際化する中で外国法事務弁護士をパートナーとして迎えることも考えられるというお話をされていたと思いますが将来的にはいろんなバリエーションがあると思われる中で、とにかく外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用という形があれば、外弁法4条に違反することになるというワンパターンのような理解がずっと続くのかどうか。いろんな形態があって、いろんなニーズがある中で、この雇用禁止規定というものを残しておく意味がどれだけあるのか。確かに現実的な対応かもしれないんですけれども、象徴的に残しておくことにどれだけ意味があるのかという疑問を私は持っております。
○下條委員 先ほど私の提出した資料で説明しましたけれども、IBAにしろ、ABAにしろ、弁護士の判断の独立性というのは非常に重要視しています。弁護士の判断の独立性を守ることがまさに公益に資することであると。これはABAもIBAもいずれも言っていることです。
ですから、そういう面から見て、やはり弁護士が外国法事務弁護士の指揮・命令・監督下に置かれて、そうなるとまさに法律判断の独立性というのは非常に害される。そこのところからまさに雇用の禁止が来ているということがあるわけです。
ですから、もし、外国法事務弁護士のニーズと言われましたけれども、ニーズはいっぱいあると思うんです。つまり、先ほど来申し上げておりますように、外国法事務弁護士は原資格法から指定法、それから第三国法とだんだん広げてきたわけですから、日本法もやりたいわけなんで、それは日本の弁護士を雇用してやりたいわけですけれども、やはりそういうところでもって、法律判断の独立性というのは万国共通の重要な要素だと思いますので、それは重視して、これは許すべきではない。もし、どうしてもやりたければ、今は特定共同事業という制度が認められているわけですから、特定共同事業を組んで、日本の弁護士からアドバイスを受ければいい。あるいはケース・バイ・ケースでやってもいい。そういうふうに考えます。
○下川委員 今、下條委員がおっしゃった法律判断の独立性という観点からなんですけれども、この前も論点の整理の中で若干出ていたと思うんですけれども、他方で企業に雇用される弁護士というのがいて、その場合には企業のために弁護活動をするわけですから、とりあえず第三者へのサービス提供というのは抜きにしても、法律判断の独立性という観点から言えば、雇用者である企業の方向性とか政策的な判断等に相当影響される可能性がある。
他方で、外弁が雇用した場合の弁護士という場合は、外弁も弁護士も共に弁護士倫理に拘束されている、尊重する形になっている。そういうことで考えると、雇用者も被用者も弁護士倫理の枠内で権限のないこと、能力のないことについてはやらないという原則の下で職務を遂行していくわけですから、それほど雇用ということによって直ちに判断の独立性が害されるのかなと。そこはちょっと必ずしも納得できないところです。
○柏木座長 たまたま今の下川委員の御発言で次のポイントに移るわけですけれども、外弁法49条1項は雇用を禁止しているわけですけれども、これを撤廃しても、外弁法4条によって、外弁が自己職務範囲外の法律事務を扱うことは禁止されているわけです。だから、雇用主たる外弁が被雇用弁護士を指揮・命令して、日本法に関する法律事務を取り扱わせれば、これは雇用の問題に関係なく外弁法違反となるわけであります。
そういう状況で、更に雇用まで禁止する必要があるかということが問題になるんだろうと思います。
ちなみに、さっき道垣内委員がおっしゃいましたけれども、今のところの規定としては、公認会計士事務所が弁護士を雇用してもいけないという規定はないんですね。
○下條委員 そうですね。今は、営業許可という制度がありまして、営業許可の方でチェックされているわけです。ところが、だんだん営業許可も届出制の方に移りつつあるという状況です。
○道垣内委員 先ほど象徴的と申し上げたのはちょっと誤解を招いたかもしれません。どちらからも非常に関心の高い問題だということでありまして、49条1項をあえて置いている趣旨が、やはり弁護士であるので、違法行為になりがちではないかということがあると思うんです。法律をつくったときの考え方が。それが、今突然変わるかということで、外国からパートナーシップと雇用を一緒に言われているからというだけでは全然変わる根拠にならないので、先ほど申し上げたのは、イメージとしては一対一みたいなことを申しましたけれども、しかし、10人、20人の外国法事務弁護士の事務所に若い人が何人も雇われているという状態が、本当にもともとの主たる、あるいは主要なところが外国法だけを本当にやっている事務所なのかと。相当危ないと言いますか、本当に守られているのかどうかについて疑義が生ずるのではないか。それを事後的にチェックできるのか、わかるのかというと、雇われているわけですから、言えないでしょうし、それがわかって雇われているかもしれないので、中からは出てこないと思うんです。
ですから、49条1項には理由はあるのではないかと。ただし、共同事業の場合に、撤廃するのであれば、そこは雇ってもいいというのは下條委員とは違いますけれども、49条1項を残すと、違法に見えるものばかり残る気がして、ちょっと気になります。
○加藤委員 確かに雇用関係にある場合に、雇い主側の影響が色濃く出て、ある意味で雇われ側の主義主張なりが歪められる可能性があることについては否定しません。しかし、可能性があるというだけで、すべての仕掛けをつぶすようなことをしなければならないのかどうか。それが合理的なのかどうかということには疑問があります。
日本の弁護士同士の場合でも、ある程度の規模の共同事務所にあっては、雇用関係にある場合もあるでしょう。事は日本法に関する問題であるかもしれませんが、判断について意見が相異なることは当然にあり得ると思います。雇用主あるいはいわゆる大先生の影響というようなことによって主義主張が変わり得ることも当然にあり得ると思います。そういったリスクそのものを排除しようということは、そもそも無理があると私は思います。
仕掛けとして、そういうリスクそのものを全部つぶしていくということには無理があるわけですから、リスクがあることを前提に、我々ユーザーが選択をすればいいということだろうと思います。リスクがあるかないかということをユーザーサイドでどうやって判断するのかというのは非常に難しいことかもしれません。しかし、ともかく判断をした上で選択をする。選択をした結果、何らかの齟齬が生じたとしても、それが選択した側のまさに自己責任であるのならば、選択した側がその責任を取ればいい。選択した側にその責任はなくて、先ほどのお話のように、本来扱ってはならない法律事務を扱ったというようなことであれば、そのような極めて例外的・病理的な事案に対しては、倫理規定による処分、あるいは損害賠償請求というような対応をすれば良いと私は思います。
我々ユーザーサイドは、あくまで自己責任ということを前提にしてものを考えているわけでありまして、極めて例外的な事案をすべてつぶすような制度でなければならないというのはいかがか、大変に疑問があると思います。
○柏木座長 大分議論が出ましたけれども、大体出尽くしたように思いますので、次の論点に移ってよろしゅうございますでしょうか。
次の論点は、規制緩和の要否ないし方向性の論点につきまして、弁護士と外弁とが1つの事務所を共同経営することが許容された場合、共同事務所が弁護士を雇用すること。先ほど来、ときどきそちらの方に議論が移っておりましたけれども、このためには、雇用禁止規定を見直す必要があるかと思います。この点に関してはいかがでしょうか。
下條委員のアイデアのように、まさにこれを禁止するからこそ、1つの事務所を共同経営することもだめなんだという御意見もございます。それも踏まえた上で御議論願いたいと思います。
○久保利委員 先ほどの議論の続きみたいなことに絡むんですけれども、要するに、単独で共同していない外弁に雇用を認めよう云々という話が出てくるのも、今の共同事業なり特定共同事業は使い勝手が悪い、だからやりずらい。その中で、だったら日本弁護士を雇用しようというニーズも、しかも、そこで日本弁護士に日本法をやらせることによってそれ自体をサービスとして外弁が日本法もサービスしたいというニーズがあって、そういう話になってきているんだろう。むしろ逆にそれは本筋ではないので、共同して、いいパートナー同士か組んで、いいサービスをするというのは、ユーザーの観点から見ても非常にありがたい話なんで、そこをまた雇用して大勢の日本弁護士を雇うという自体は私は全く正しい方向だろうと思われるわけです。
今、座長が問題としてお出しになった問題がもし是認されるのであれば、あるいは共同経営というものが特定共同でもっとずっと広い形で認められるのであれば、逆に言うともう外弁事務所の雇用問題というのは、ある意味で言うと禁止をしたって構わない。こっちで来なさいという誘導策は十分あり得るのではないか。こっちを開かないでおいて、そっちをだめだと言えば大分違ってくるんだろうという形で、相関関係があるんだろう。
私自身としては、今、座長のおっしゃった方向性が外弁問題として、日弁連は知りませんけれども、私個人としては正しい方向ではないかと。
非常に卑近な例を取れば、私のコックとして中華料理のコックを雇った。これは言わば商社が法務部長として弁護士を雇ったという場合、私のために働くコックとして雇った。一生懸命おいしい料理をつくるというのと、フランス料理をやっているコックが中華料理をやっているコックを雇ってきて、フランス料理屋の名前で中華料理を売るという話になってくるのとは、私はスタンスが違うんだろう。
そういう意味で言うと、さっき道垣内委員がおっしゃったように、外弁というのがフランス料理屋の店主で、それが中華料理のコックを雇ってくるから話が非常に複雑になるんで、おれのためだけにおいしい中華料理をつくれと雇ったケースの場合には、これはかえって被害というか、波及効果というか影響は少ないんだという論理でこの外弁法というのはできているのか。正しいか間違いかは別にして、そういう考え方があるので、いつもおっしゃる、何で会社が雇えるのに同じ弁護士である外弁が雇えないのかというのは、そういう理屈なのかなと。もし、それが正しいとすれば、そういう理屈なら一定の制限は要る。しかし、逆に言うと、フランス料理のコックと中華料理のコックが組んだから最強じゃないの。それで共同事務所をつくりなさいよという方向性へリードする方が、全体の政策設計としては正しいのではないかという感じがするわけです。
○柏木座長 ただいまのフランス料理と中華料理の例による問題提起につきましてはいかがですか。
○乗越委員 そういう気のきいた比喩はできないんですけれども、私はまさにさっき加藤委員のおっしゃったように、適切な情報開示をした上でユーザーの自主的な判断に任せるというのがあるべき姿ではないかと思います。
外弁法のもともとの考えがどうなのかという議論はさっきからありますけれども、恐らく今議論されているのは、外弁法の背景にある考え方自体がおかしいんじゃないかというところが根本的な問題提起としてなされているわけであって、先ほどからありますように、共同事業を開いた場合についてのみ雇用を認めるというのは、特定の事業の在り方を上から決めるということにほからないんで、合理性に欠けるような気がいたします。なぜそういうふうな同じ資格を得た弁護士の人がたまたまパートナーとして迎えられるか、雇われた人として迎えられるかということによって、差を付けなければならないというところの合理性はなかなか説明がつきにくいんじゃないかと思います。
○下條委員 我々は制度設計の問題を話しているんであって、各国の弁護士制度でもいろいろなものがあると思うんです。非常に簡単に弁護士になれるところもあるかと思います。アメリカとかイギリスとか、道をきちっととしたところもあるし、それらをなべて同じに扱わないといけない。そういう制度設計の問題を話しているんだということをいつも留意しないといけないと思います。
加藤委員は、我々は自分で自分をプロテクトできるとおっしゃいましたけれども、そうでないユーザーも一杯いるわけです。ですから、何も大会社とか、自分で自分をプロテクトできる人だけじゃなくて、更に一般的な法律サービスの利用者もいるわけですから、あくまでも制度設計の問題として考えるときは、その両方を頭に入れて考えないといけないんじゃないかと思います。
○波江野委員 今、下條委員のおっしゃったのは誠にもっともな話だと思います。しかしながら、先ほど下條委員おっしゃったような例、例えば相隣関係の隣地との争いだとか、日本人同士の離婚だとか、交通事故、そういうたぐいについて、まさに個人レベルの法律問題、国内に限った法律問題について、わざわざ外国法事務弁護士のところへ相談にいくということはまずあり得ないわけです。そういう案件については、やはり日本の弁護士、全国に沢山いらっしゃいますから、そこへ行くでしょう。私とか加藤委員とか、法人にいますと、弁護士に関する情報というのは、今、下條委員のおっしゃったように、一般の民間人に比べればはるかに多量に持っていますし、いろいろ比較検討して選ぶこともできます。ですから、選んだ以上、うまくいかなかったとしても、それは依頼者の方の責任だということで、私どもクライアントの立場として自己責任において弁護士の選定を行います。
そのときに、余り制度ががちがちで、これはだめ、あれはだめということをやらないで、だれでも相談に行けるようにしていただきたいというのが私などの立場からの要望なわけです。
もう一つ、最初に申し上げたような個人レベルの話になった場合には、これは一番大事なのは情報公開と先ほど加藤委員がおっしゃいましたけれども、弁護士会での相談窓口なども含めて、そういうところでいろいろと選定ができるようになればいいわけであって、その場合には、外国法事務弁護士との共同事業ということはそんなに問題にならないのではないかなと思います。私はニーズ論として考えれば、この検討会で検討するときにも、やはり企業での場合と、個人レベルの場合とを、少し分けてお考えいただく必要があるのかという感じは常々しておりました。今、ちょうど下條委員からそういうお話がありましたので、一言申し上げた次第です。
○柏木座長 久保利委員のアイデアについてはいかがですか。つまり、共同事業については、むしろそちらの方に誘導する目的もあり、例えば雇用は自由とする。その代わり外弁が単独で日本の弁護士を雇用するのは禁止するというアイデアにつてはどういう御意見をお持ちでしょうか。
○波江野委員 私、個人的には今、座長のおっしゃったとおり、外弁が個人で日本弁護士を雇用するのは禁止しておいて良いのかと考えております。ただ、今回の制度設計の中で、それを維持しつつ、このC案みたいなものを生かそうとすると、非常に難しいということがあるならば、まず、雇用禁止も撤廃してしまって、その上で単独雇用による弊害防止措置を考えていただくこともできるのかと思っております。できれば、私が勝手に名前を付けたのですが、B´案として、「共同事業では日本人弁護士を雇用もできます。ただし、外国法事務弁護士が単独で日本人弁護士を雇用することはできません」というようなやり方の方が良いような感じが、いたします。
○柏木座長 ありがとうございました。乗越委員どうぞ。
○乗越委員 意見書の読み方として前からちょっと疑問の点があるんですけれども、本当に雇用については、話すなという意味なんでしょうか。むしろ私はあれを素直に読んだときに思ったのは、審議会として時間がなかったから、雇用問題については何とも言えませんと。ただ、今後いっぱいみんなで議論してくださいというのが趣旨だったと思うんです。時間的に言いましても、将来の課題として残されたわけで、現在将来の一部として議論をしていけばいい話じゃないかと思うんです。あえてそういう議論をしないということをするというのは、ちょっと検討会としては、そういう態度を取るというのは怠慢のそしりを免れないような気がいたします。
○柏木座長 議論は勿論尽くすべきだと思います。ただ、議論を尽くすべきことと、審議会の意見書がどういう方向性を目指しているかという解釈の問題はちょっと別問題じゃないかと思います。別に私は久保利委員の意見に賛成というわけじゃないんですけれども、議論はぜひ尽くしていただきたいと考えております。
○道垣内委員 加藤委員のおっしゃった、選べるので任せてくれ、ユーザーはしっかりしているということですが、先ほどの関西鉄鋼所事件みたいな話ですと、うまく案件が片づくかどうかで、倒産するかどうかなんです。そういう事件というのは中小企業にとって幾らでもあると思うんです。ですから、一生一度というか、企業活動の中で一回起こる事件しかない場合もあって、そのときに日本の法律の制度としてちゃんと資格制度を設けているのに、穴が開いている。仮に外国法事務弁護士に日本の若い人たちがくっ付いていて、外から見ているとよくわからないけれども、実は若い人が話している。そのまま通って、あるいは変に歪められて依頼者に伝えられるかもしれないような仕組みは事前に防止するのが法律ではないかと思います。
てすから、大きな会社で多少失敗してもだんだんと、要するにフランス料理でも何回か失敗したけれども、いいところを見つけたと、そういうものとはちょっと違うかもしれないので、リーガル・サービスとレストランはちょっと違うかなと。例としてはおっしゃったとおりだと思いますけれども。少しプロテクティブな話もあってもいいんじゃないか。 ○齊藤参事官 雇われた日本の弁護士がもしも、判断を歪められる恐れという点なんですけれども、これは雇う側の弁護士が、弁護士の独立性を尊重するというポリシーを持っている人なのかどうか。先ほど下條委員は、アメリカのABAでも弁護士の独立性を尊重するということは高く評価してうたっている。その制度の下で活動している有資格者であるアメリカの弁護士が、日本に来て弁護士を雇うと、日本の弁護士の独立性は尊重しないのかという疑問が私は1つしました。
それから、雇用主が被雇用の弁護士を自由な法律判断を歪める恐れ、これは勿論論理的にはあるわけですけれども、しかし一方で雇用主と被雇用の弁護士がうまく協力体制を取って、より多様な思考過程を経て事件処理に対応していくと、そういうメリットだって勿論考えられるわけなんです。ですから、メリットとデメリットのどちらをスタンスとして、制度設計するのがいいのかということとも絡んでいると思います。ですから、そこのところは是非もっと議論を深めていただければなという気がしているんです。
○下條委員 今おっしゃられたことについて、これはたしか小島教授でしたか、弁護士と外国法事務弁護士もなるべく同じようなものとして見ていこうということで、今、関連しているかと思うんですけれども、私はやはり違うと思うんてす。そもそも拠って立つ基盤が違う。つまり、私どもは日本法をやる。アメリカの弁護士であればアメリカの法律をやるということで、法律というのはなかなか全世界を統合することが難しい。つまり、いろいろな文化的、社会的、歴史的背景があるわけですから、そこが非常に違う。前に申し上げましたように、いろんな例を見ても、プレッジと質権は違うとか申し上げましたけれども、いろんなものが違うわけです。ですから、そこを同じものと言い切ってしまうのは非常に難しいんじゃないかと考えます。
○齊藤参事官 日本の制度と諸外国の制度と、制度に差があるという自体、絶対否定するつもりはないんです。むしろそれぞれ独自性なり特殊性というものを尊重すべきだと思います。ただ、弁護士の本質的な部分として、弁護士自身の専門的な判断を尊重しなければいけない。尊重することの意義は大きいんだということの認識自体はどうもABAでも日本でも、その部分は共通しているんではないかなということを一面強調しておきたいということなんです。
○下條委員 ただ、現実問題は必ずしもそうではないですから。
○柏木座長 議論が尽きないわけですけれどけも、この論点項目に関しましては、もう1つ、雇用が解禁された場合の弊害と、弊害がもしあるんであれば、どういう対策を取ったらいいか。さっき道垣内委員から、事後規制ばかり考えないで、事前規制も考えた方がいいというような意見がございましたけれども、雇用した場合に外弁が弁護士を指揮監督して日本法を行わせるというような可能性が非常に高いのかどうかということについても議論のポイントになろうかと思いますけれども、弊害があるのかどうか。あるとすれば防止策はどうしたらいいのかということについて御意見がありましたらお願いいたします。
○下條委員 私も道垣内委員と全く同意見で、先ほど言いましたように、弁護士は命も預かれば財産も預かる。死んでしまってから、事後的に考えてもしようがないわけですし、先ほど道垣内委員がおっしゃったように、会社がつぶれてしまってから、事後的措置を考えてもしようがないわけですから、やはりある程度の事前の規制というのはどうしても必要ではないかと思います。
○柏木座長 ほかにいかがですか。
○乗越委員 それはリスクとそれに対応する制度の問題のバランスの問題だと思います。確かに死んだ後で何か言ってもしようがないというのはそうかもしれませんけれども、それでは一般に死ぬまでいかないような人がほとんどなわけで、そういう人たちのニーズというのはどうするかというところでバランスを取ることを我々は求められているんではないかという気がいたします。
ですから、こういう可能性が少ないけれども、こういう可能性がある。そのためにこういうがっちりした制度をつくらなければならないということをやることによって、かえって使いにくい制度になっているというのは本末転倒のような気がいたします。
○下條委員 そのようなものは、現行の特定共同事業でも十分対応できるものではないかと思います。
○柏木座長 今の乗越委員の御意見は、先ほど加藤委員がおっしゃられたことと同じで、弊害とメリットのバランスを図れということだろうと思います。実害があるとして、例えばその防止策につきましては、先ほど道垣内委員がおっしゃられたような事前規制ということもありますけれども、何かほかに御意見ございますでしょうか。
○下川委員 先ほどの発言と繰り返しになるんですけれども、一定の範囲で何らかの規制というのは必要なのかもしれませんけれども、やはり数量的な規制というのは根拠を示すことが難しい。事前に課された数量的な規制というの根拠、合理性を示すことが難しい。世の中全体として、外資規制にしろ、国籍要件にしろ、そういうものは全部撤廃していく方向に動いている。したがって、何らかの措置を取る必要がある場合にも、合理性を説明することが難しい数量的な規制ではなくて、もっと定性的な違反行為があった場合には行うとか、そういう定性的な規制であることが重要であると思います。
それから、全く同等である必要はないかもしれませんけれども、内国民待遇ということが説明できる規制でないと、これまた合理性を説明する必要が生じてきて、早晩、また新たなハードルを設けたということを言われることだと思います。
○柏木座長 今の下川委員の意見を勘案したアイデアとしては、これについて届出制を取るというのは構わないわけですね。あるいは綱紀・懲戒制度を充実するということも。
座長の不手際でございまして、今日は非常に微妙な問題を取り扱ったということもあり、もう一つ実は、D案との関係で弁護士と外弁との間における収益の分配の禁止、これは共同事業以外の面での収益の分配禁止でありますけれども、これの撤廃の妥当性については、議論する時間がなくなってしまいました。誠に申し訳ございません。これは次回に回したいと思います。
かなり今日は白熱した議論がなされましたけれども、これらの外弁制度の改革につきましては、日弁連の会規等の改正を伴うものでございますので、日弁連からも特定共同事業の要件緩和等の具体的方策について、何か御意見があればいただきたいと思います。本日、日弁連関係者の方も傍聴に見えておられますので、何か御意見がありましたらお願いしたいのですが、いかがでございましょうか。
○日弁連 特にございません。もし、可能であれば、次回にまとまった意見になるか、少なくとも検討状況について時間をいただければ幸いかと思います。
○柏木座長 わかりました。それでは、次回に日弁連の方から御意見をちょうだいするということにしたいと思います。予定した時間を大幅に過ぎましたので、次に次回の予定につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○齊藤参事官 次回の検討会は7月25日木曜日、午後2時から5時を予定しております。引き続き本日のテーマであります弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働につきまして、更に議論を進め、集約に向けて努力していきたいと思っております。
今日、1つお諮りしたいんですが、次回、下川委員がよんどころない所用でどうしても出席できないんですが、下川さんは外務省というお立場で委員として御出席していただいておりますので、できれば組織としての対応をしていただく意味で、外務省国際機関第一課サービス貿易室課長補佐の大塚さんに代理として御出席して、議論に加わっていただくということでいかがかと考えているんですが、いかがでしょうか。
○柏木座長 皆さん、御異議ございませんか。
(「異存なし」と声あり)
○柏木座長 それでは、代理で大塚さんに御出席いただくということにしたいと思います。
それでは、第8回「国際化検討会」を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。
|