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国際化検討会(第9回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日 時

平成14年7月25日(木)14:00〜17:50

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
柏木昇、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、大塚和也(下川委員代理)、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、玉井克哉、波江野弘(敬称略)

(説明者)

古井明男(日本弁護士連合会副会長)
牛島 信(日本弁護士連合会外国弁護士及び国際業務委員会副委員長)

(事務局)

大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題

弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
 (1)日弁連からの意見表明
 (2)具体的方策の検討

5 配布資料

資料9−1 特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態
資料9−2 下條委員提出資料
資料9−3 日弁連提出資料
資料9−4 外弁法4条の規制内容

6 議 事

 (1)日弁連からの意見表明

 日弁連から、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について、意見表明がなされた(資料9−3)。これに対して、次のような質疑がなされた(○:委員、△:日弁連、●:事務局)。

○ 日弁連の中で、必ずしも、今表明されたような意見に組しない意見もあると思うが、差し支えない範囲でその内容を教えて欲しい。

△ 一部の会員の中には、パートナーシップを全面的に開放すべきであるとの意見もあった。

○ 日弁連から、司法制度改革審議会の意見書の枠内で検討すべきとの意見があったが、これまでの検討会の議論においては、司法制度改革審議会の意見書は、共同事業のあり方の検討の中で、雇用禁止の見直しを検討することを除外するものではないという意見が出されていたことを付言しておきたい。WTO交渉では内国民待遇違反かどうかが常に議論されるので確認したいのだが、弊害防止措置として資料に記載されている規制は、日本の弁護士にも課されていることなのか。

△ 弁護士会調査への応答義務については、弁護士の綱紀懲戒制度の範囲の中で、整備する作業が進んでいる。その他の措置については、特定共同事業に特有のものということで別立てで考えており、相手方の弁護士にも同様に課すことを検討している。雇用禁止の見直しの指摘については、改正すべき点がないかどうか、検討会の議論に十分に耳を傾けたい。

○ 日弁連の資料によれば、推進本部及び法務省が、総合規制改革会議の中間取りまとめにおいて、外弁による雇用禁止の撤廃については、現時点でこのような結論を明記することは適当ではない旨意見を出しているとのことだが、これは雇用の見直しについて検討すべきではないという趣旨なのか。

● 中間取りまとめの段階においては、雇用禁止の規定を撤廃するということを明言することはできないので、従来のスタンスを回答しているだけのことである。

 (2)具体的方策の検討

 弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について、具体的方策の検討がなされた(○:委員、△:日弁連、□:座長、●:事務局)。

 ・ 特定共同事業目的の要件緩和策について

○ 特定共同事業を存続させることになると、3つの事業体の運営が難しくなり、また、特定共同事業の目的となる法律事務の峻別に労力を使うことになるので、スピーディーな対応というニーズに十分に応えられないおそれもあることが、これまで指摘されてきている。A案は問題があるのではないか。

○ ヒアリングにおけるユーザーの意見やユーザー委員の意見によれば、特定共同事業ということで3つの事業体が存続することにより、ユーザーの利益を損なっていると理解できるのではないか。

○ 3つの事業体が誰にとって不便かと言うと、それはグローバルな事務所であり、ユーザーである日本企業ではない。彼らは、全てを自分達の勘定にしたいということから、不便であるということ言っているのである。また、目的要件を撤廃したからといって、日本法マターの弁護士固有の法律事務は残るのであり、日本の弁護士の勘定がなくなるということには疑問をもっている。

● 仮に共同事業が自由化されるとしても、弁護士固有の法律事務についての収益分配については、合理的に処理する方法は幾らでもあると考えられる。

○ 3つの勘定があるから不便であるというのは、形式的な理由に過ぎない。

○ 勘定が不便かどうかということは、事務所の問題かも知れないが、このような勘定にすることを制度的に決めなければならないことには疑問を感じる。特定共同事業を営む日本の弁護士やユーザーからも、不便な実例が指摘されており、これらの人達にとって不便ではないという意見は当たらないのではないか。

○ どの案件を誰が扱うのかという点について、ユーザーサイドにとって透明性がないという問題点が指摘されているが、この点はA案や日弁連案では解決されない。目的制限の緩和に関する日弁連案のうち、「外国法及び日本法双方の知識をあわせて必要とする法律事務を追加する」との意見については、現行でもこのような法律事務は特定共同事業の対象とされており、何ら法律事務の範囲を拡大するものではない。いずれにしてもA案では不十分である。

○ ユーザーの立場からは、特定共同事業の対象になるのかどうかを判断しなくてはならず、また、出資比率で対象から外れるということもあり、透明性や法的安定性を欠くと言える。共同事業の対象となる法律事務の範囲を若干広げたぐらいで済むという話にはならないのではないか。

○ A案については、この程度でユーザーの満足を得られるのか疑問である。PFIや国際税務など、日本法に関する法律事務であっても外弁の知識を活用できるものがあり、活用するニーズがあるということを踏まえれば、A案のように小幅な改革に止まるというわけにはいかない。

○ 49条の2第1項各号の法律事務については、外弁が何らかの貢献があり収益分配の基礎があるという理由から、特定共同事業の目的とした経緯がある。外弁が全く貢献できない法律事務があることは否定できず、そのような法律事務を共同事業の対象に含めるのは問題ではないか。

○ 外弁制度について規制緩和をしていくのが我々の立場ではないのか。現行では、共同事業の対象になるのかどうかを判断をしなくてはならない。ユーザーから見ても透明性の高い制度として欲しい。規制緩和すると多少問題がでるからと言って、制度をガチガチにするのは問題である。

□ 具体的方策として、特定共同事業の目的要件を緩和することに止めるという案は不十分であるという意見が多いので、さらに検討を進めたい。

・ 弁護士と外弁による共同事業の自由化策について

○ 事務局のB案のように、共同事業を自由化しておきながら、雇用禁止を維持することは、弁護士と外弁との提携・協働を積極的に推進するという趣旨にそぐわないのではないか。下條委員のB案についても、事務所を別々にするというのはユーザーにとっては分かりにくい。もっと進んだ案にすべきである。

○ ユーザー側が特定共同事業の3つの事業体のどちらかを選ばなくてはならないということは全くない。その点、誤解があるのではないか。

○ A案では、特定共同事業の対象となるのかどうかの峻別の問題は残る。ユーザー側からは、弁護士と外弁が一つのチームとなって動けば、より良い成果が得られるのではないかという指摘もなされているところであり、両者が1つの事務所を共同経営することができるようにした方が良いという意味で、下條委員のB案には賛成しかねる。

○ 事務局のB案は、1つの事業体とはいいながら雇用を禁止するという点で、中途半端で分かりにくい。本当は、このような形態はとり得ないのではないか。これを分かり易くするという意味では、雇用禁止の維持をはっきりさせるために2つの事務所のジョイント・ベンチャーという形態がよろしいのではないか。

○ B案では不十分である。日本経済の国際競争力を維持していくのに何が必要なのかという、より大きな視点からみると、一つには、弁護士と外弁との提携が自由化されて、海外から投資し易くする環境を整備することが重要なのではないか。

○ 外資が日本に入ってくる時に、信用のおける外弁が日本にいて、その外弁がしかるべき日本の弁護士と提携している、だから安心して日本へ投資できるという考え方ならば賛成できる。その場合に、事務局のB案で十分なのか、下條委員のB案で十分なのかということになるのではないか。

○ これは国家主権の問題である。外資が過半を占めるのは好ましくない。雇用禁止を撤廃すると、ドイツやフランスのように、資金力のある海外のローファームが司法制度を担う弁護士を傘下におさめることになり、好ましくない。現在、ニューヨークの事務所の初任給は日本円で1900万円ぐらいであり、そのような高いフィーで、弁護士をどんどんヘッドハンティングするということは十分に考えられる。弁護士事務所と外弁事務所とを別々にすることが解決方法ではないかと考えている。

○ 日弁連の方で各単位会と会内各関係委員会に対し、意見照会をしたとのことだが、どのくらいの回答数があったのか。

△ 回答数は、単位会については20ぐらい、関連の委員会については4であった。なお、個別の会員には意見照会をしていない。

○ そこで慎重論を唱えている弁護士は、人権のために活動しているので、フィーが高いということで外国の事務所になびくことはないのではないか。

△ 大多数の会員は、外弁問題は自分には関係ないと思っている一方、門戸開放の問題としてとらえ、日本に進出してきている外弁という認識が強く、将来的には各地方にまで進出して来るのではないかと危惧するなど、様々な事情から、要件緩和であればなるべく狭くてもいいのではないかという傾向にある。

○ 大ローファームに席巻されてしまうという議論は、全くユーザー側とは関わりのない話である。規制緩和されると、法律サービスの品質やスピードで渉外事務所は負けてしまうというのならば、低品質のサービスでユーザー側は納得せよと言っているようなものである。また、弁護士固有の法律事務からの収益がローファームの勘定に入ってしまうという意見に対しては、ユーザー側が純日本法の事件を海外のローファームに相談することはあり得ないと言いたい。

□ 下條委員のB案については、雇用との関係のところで議論したい。弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営できるようするという案について、委員の意見を確認したい。

○ 1つの事務所を認めるべきである。

○ 共同事務所を認めるのは自然であると思う。

○ 目的要件を撤廃して1つの事務所にするのが、素直な結論であると思う。

○ B案については当然である。

□ 弁護士と外弁が1つの事務所を共同経営することを認めるべきであるとの意見がかなりあるので、さらに検討を進めたい。

 ・ 収益分配禁止規定の撤廃について

○ 共同事業を推し進めるためには、共同事業を選択することを促すために収益分配禁止規定を維持する意味はあるのではないか。あえて積極的に撤廃する必要はないのではないか。

○ 共同事業以外の収益分配の典型例としては、外弁が弁護士に事件紹介して、そのあっせん料をとる場合が考えられ、これは禁止すべきではないか。

● 外弁が弁護士からの事件紹介料に与ることは、弁護士倫理に反するということで否定的に考えられているので、それを防止するだけのために、この規定を残す必要はないのではないかと思われるので、ご検討頂きたい。

○ これを禁圧するためには、弁護士倫理より法律の方が良いのではないか。

□ 立法のバランスではないか。弁護士倫理で禁止されていることを法律で規定するニーズはあるのか。外弁が法律事務を行なわず、事件のあっせんだけ行うというのは、インセンティブもなく、現実には考えられないのではないか。

● この規定が設けられたのは、共同事業の禁止の潜脱を防止するためと考えられてきたが、共同事業の自由化という方向に発想を変えていくことを踏まえて、この規定を存続する必要性を素直に考え、方向性を見出して欲しい。

○ 現行では、本規定で、外弁が弁護士事務所に出資のみを行う形態が禁止されているとのことだが、本規定を撤廃してそのような形態を認める理由は何か。共同事業の自由化がその理由になるのか。本規定の撤廃が、弁護士と外弁との提携・協働を積極的に強めるという積極的な意味を持つのか。

○ この規定には、共同事業とは独立して、外弁が弁護士に出資をしてはならないというルールの意味があるならば、弁護士法にも同様な規定があってしかるべきではないか。弁護士法にそのような規定はないということになれば、共同事業禁止の規定を削除するならば、この規定も削除すべきではないか。

○ 過剰規制は、基本的にすべきではないと考える。収益分配について例外的なケースを想定して、それを法律事項として規制するのには疑問がある。

○ この規定は、体裁からしても、共同事業の禁止を担保するためのものであると思う。この規定を残すかどうかということではなく、別個の規制をするのかというスタンスで議論すべきである。

○ 日本の弁護士にはこのような規定がないのに、あえてこの規定だけ残しておく必要があるのか疑問である。そういう意味では撤廃する方向で考えていいのではないか。

○ ユーザーサイドにとってはこの問題に関心はない。

○ この規定の撤廃の問題は、1つの事務所とするのか、別々の事務所とするのかという問題とも絡んでくるのではないか。1つの事務所であれば、共同事業へ金だけしか出さないという形態を防止するために、この規定を残すということになり、この規定を撤廃するならば、そのような弊害を防止するために、別々の事務所にしておくことになる。あるいは、金だけしか出さない形態は弊害ではないと考え方を変えるのか。どちらかに整理をしなくてはならない。

○ 収益分配をどのように行うのかについては、弁護士と外弁との間で決めればよいことであって、収益分配してはいけないとわざわざ法律に書くのは奇異に感じる。この規定を削除するなら削除して、収益分配は自由に行えばよいという形にすれば良いのではないか。

○ この規定を撤廃すると、外弁は弁護士に対して法律事件の斡旋を行うことができるようになるのか。

● 無資格者が斡旋を業として行うことは弁護士法72条の問題になるが、弁護士倫理において、弁護士は依頼者紹介の対価を支払ってはならないと規定されているので、事実上、外弁が弁護士から事件紹介料を受け取ることはできないと考えられる。

○ 規定を残すべきとは言わないが、削除する以上はその目的をはっきりさせるべきではないのか。

□ 規制をおくならば、その積極的な理由があるべきであるという考え方もあると思う。規定を残すべきとの意見と撤廃すべきとの意見、色々あるようだが、いずれも、どうしてもそうすべきという確たる根拠はないというのが大方の意見であったと思う。

 ・ 雇用禁止の見直しについて

(事務局から、資料9−4について説明)

○ 外弁に雇用された弁護士が、パートタイムで外弁事務所からは独立して日本法を取扱うことがあっても、その形態は「雇用」というのか。

● 一口に「雇用」と言ってもその形態は様々であり、論理的には、雇用されていながら、パートタイムで独立して法律事務を行うことはあり得ると考えられる。

○ 企業が弁護士を雇用する場合にも、被雇用の弁護士にプロボノ活動を認めるのかどうかについて議論されることがある。これは、外弁に雇われた弁護士にパートタイムによる法律事務の取扱いを認めるかどうかということと、同様ではないのか。

○ 仮に雇用が解禁された場合、外弁に雇用された弁護士が自己の計算で独立して日本法に関する法律事務を取扱うことは、外弁の職務範囲の逸脱には当たらないとのことだが、外弁事務所の顧客に対して日本法のサービス提供をする場合、雇用主である外弁がそのサービスに不当関与する危険はあるのではないか。被雇用の弁護士の職務範囲を外弁の職務範囲に限るという制約を課してもよいのではないか。

□ 被雇用の弁護士の仕事に対するクライアントによる歯止めという視点があるのではないか。アメリカでは、一時期、収益性を高めるためにアソシエートの数を増やす傾向にあったが、それに対してクライアントによる歯止めがかかり、パートナー1人当たりアソシエート数は大体決まっている。

● 被雇用の弁護士の職務範囲を制度的に制限するようなことは、現実的には難しいと考えられる。

○ 被雇用の弁護士が経験の浅い者であったなら、日本法について適切な助言が与えられない可能性もある。その際に、外弁が日本法の知識を聞きかじってきて、それを被雇用の弁護士に押し付けることも考えられる。外弁の指揮監督下にある以上、被雇用の弁護士はそのような不当関与に対抗することはできない。

○ 外弁が日本法に関する法律事務へ不当関与する場合は、4条違反ということで懲戒処分や罰則を課されることになる。そのような危険を冒してまで、外弁は不当関与するのだろうか。そもそも、外弁の職務範囲には一部に日本法が適用される法律事務も含まれるのであり、弁護士を雇う方が日本法の部分について、より信頼のおけるサービスを提供できることになるので、単独雇用のメリットはあるのではないか。

○ 単独雇用は、司法制度改革審議会の意見書において、将来の課題とされていることから、この検討会において結論を出すべきではない。現実に、外弁事務所が日本法の分かるパラリーガルの募集を行っている実態を踏まえれば、外弁が単独で弁護士を雇用して、職務範囲を逸脱する危険性が相当あるかも知れない。共同雇用が、意見書からみても実態からみても限界ではないか。

○ 雇用解禁の効果を考えてみると、今までパラリーガルを使ってあやしげなことをしていたのが、弁護士を雇うことによって日本法についてのサービスの質が上がるということも言えるのではないか。4条違反かどうかは依頼者からは判断がつかないというが、単独雇用の場合は、被雇用の弁護士は日本法について雇用主である外弁の指揮監督を受けないという情報を依頼者に開示すれば足りるのであって、単独雇用を禁止する必要はないのではないか。

○ 規制緩和をすれば、日本はドイツのようになってしまうという意見があるが、ドイツの弁護士会にドイツの外国弁護士受入制度の規制緩和について聞いたところ、英系の事務所が進出しているとはいっても、ドイツ法についてはドイツ弁護士が取扱い、高い収入を得ることができるので、その結果を高く評価しているとのことであった。外国弁護士の増加による法的体制の整備が、ダイムラー・クライスラーなど巨大合併の背景にもなっている。

○ 外弁事務所がパラリーガルを雇うというのは4条違反の疑義がある。若い弁護士が外弁事務所に雇用されることは反対である。外弁事務所で若い弁護士のために適正な教育ができるかというと、答はノーである。

○ 弁護士教育の実態の問題として、弁護士は弁護士に教育されなければならないというのは理解できるが、それを制度的に担保するために雇用禁止を維持するというのは、筋違いの話ではないか。これまで特定共同事業を利用したことはないが、弁護士と外弁との提携関係がより広がり、きめ細かなサービスが提供されるようになれば、共同事業に対するユーザーのニーズは大きくなると思う。少なくとも、共同雇用は認められるべきではないか。単独雇用については、前回、日弁連が絶対守らなければならない一線であるということならば、そこは規制しておいても構わないということで、若干慎重論を唱えた。

○ 弁護士が弁護士を教育することを法律をもって強制する必要はないだろう。ドイツでは規制緩和により大手のローファームが進出したとのことだが、個人的には、日本の法律サービス市場はそれ程魅力があるとは思えず、規制緩和によって大手のローファームがどっと日本に押し寄せることはないのではないか。いずれにしろ、憂慮すべきではない。

○ 雇用禁止の本来の目的は、外弁が日本法に関する法律事務へ不当関与することを防止するものである。今日の日弁連の意見表明を聞いても、外弁が悪者扱いされる話が多く出されていたが、昭和62年に外弁制度がスタートしてから今日に至るまで、外弁はそんなにひどいことをしてきたのか根本的な疑問がある。これまで、外弁が4条違反ということで懲戒された事例はない。不当関与のおそれをあまりに危惧して制度設計するのは、いかがなものか。4条の規制を実現するために、雇用禁止を維持しなくてはならないのかどうか、なお疑問を持っている。ドイツの例が挙げられているが、ドイツにおいて英米系のローファームが成長しているということについて、ドイツの企業や国民は不幸に思っており、その状態を改善したいと考えているだろうか。我が国でも、世界的に通用するローファームへ容易にアクセスしたいという要望はあるのではないか。

○ 雇用を解禁すべきという立場で申し上げたい。雇用禁止の理由として、弁護士の独立性の保持が言われるが、弁護士の独立性は、本来まわりが守ってあげるものではなくて、弁護士自らが確固たる意志の下に守るということが大前提でなければ、そもそも弁護士制度はあり得ないと思う。

○ 弁護士を独立性を害されるような立場に置くことをどうするのかという問題なのであって、弁護士を被雇用者の立場に置くことは避けるべきではないか。その結果、クライアントの利益が保護されるということは十分にあり得る話である。個々人の倫理だけに任せておくことにはならないのではないか。

○ 雇用の解禁自体が問題ということならば、そもそも永遠に雇用は解禁することはできないことになり、将来的にも検討すべきことではないということになるのではないか。

○ 外弁により雇用された弁護士が自己の計算で日本法に関する法律事務を行うことを認めれば、コンサルティング会社や会計事務所が弁護士を雇って、弁護士の計算で法律事務を取扱わせることが可能になるのではないか。

● 現行でもそれは論理的には可能であろうが、その形態が社会的に合理性があるものなのかどうか疑問である。

○ 外弁は日弁連に所属して、日弁連の規律に従っている。米国では、外国弁護士はロイヤーとみなされており、ロイヤーがロイヤーを雇うことについて制限はない。雇用禁止という手段がなければ、弁護士の独立性は保たれないのかどうか疑問である。雇用禁止は過剰規制ではないのか。

○ 単独雇用のニーズはないのではないか。共同事業が解禁されようとしているのに、あえて雇用という形態を使うことについて、その合理性が見つからない。

□ 外弁事務所で雇用される弁護士は、雇い主と顧客との間の「文化の通訳」という役割を担えるのではないか。

○ 商社のように弁護士を雇うことしかできない場合には、それは理解できる。

□ 全体を見てみると、少なくとも雇用を全面的に禁止しておくという意見は、あまりなかったように思われる。雇用禁止を貫徹するために、事務所を別々にしておく必要があるということについては疑義があるというのが大方の意見である。ここで、単独雇用・共同雇用について、各委員のご意見を確認しておきたい。

○ 少なくとも、共同雇用は認めるべきではないか。単独雇用については、積極的に禁止すべきというつもりはない。

○ 単独雇用・共同雇用ともに禁止しておく理由は見当たらない。

○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。

○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。

○ 共同雇用はいいが、もし単独雇用を認めるならば、被雇用の弁護士は日本法に関する法律事務を取扱えないようにすべきである。そうでなければ、単独雇用には反対である。

○ 単独雇用と共同雇用も同じものであるから、両方とも認めるべきではない。これを認めれば、弁護士の独立性の侵害という弊害を生じ、また、外弁が日本法に関する法律事務を取扱うことを公認することになる。日本の法制度の一環を担っている弁護士事務所が外資によって席巻されてしまうおそれがある。

○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。

○ 少なくとも、この検討会で単独雇用について結論を出すことは意見書違反である。

○ 単独雇用も共同雇用も認める方向で考えるべきである。ユーザーサイドにとっては、なるべく選択肢が多い方が良い。雇用解禁による弊害を防止するための規制は、別途考えれば良い。

○ 共同雇用は認めるべきである。単独雇用と共同雇用の区別ができないので、共同雇用を認めるならば単独雇用を認めてもいいのではないか。

● 本日は、基本的な方向性について、各委員からのご意見を伺った。これを踏まえて事務局で議論の整理をしつつ、制度設計の細部と併せて検討できるように次回の準備をしたい。

○ 次回も外弁問題をテーマに議論をすることになるのか。本日、大体の方向性はまとまったのではないかと思うが、次回は、これを前提に議論することになるのか。

● 基本的にそのような考え方で準備をしたい。

○ 7月末でこのテーマの議論は一通り終える予定ではなかったのか。

● 事務局としては、7月末までに明確な意見集約ができればと考えていたが、今後検討する事項もあるかも知れないので、この時点で議論が尽くされたと割り切らずに、慎重に対応したいと考えている。

 (3)今後の日程

 次回(9月12日(木)14:00〜17:00)は、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について、制度設計の基本的方向性についての各委員からの意見表明を踏まえて、引き続き、検討を行うこととなった。
(以上)