(事務局から、資料9−4について説明)
○ 外弁に雇用された弁護士が、パートタイムで外弁事務所からは独立して日本法を取扱うことがあっても、その形態は「雇用」というのか。
● 一口に「雇用」と言ってもその形態は様々であり、論理的には、雇用されていながら、パートタイムで独立して法律事務を行うことはあり得ると考えられる。
○ 企業が弁護士を雇用する場合にも、被雇用の弁護士にプロボノ活動を認めるのかどうかについて議論されることがある。これは、外弁に雇われた弁護士にパートタイムによる法律事務の取扱いを認めるかどうかということと、同様ではないのか。
○ 仮に雇用が解禁された場合、外弁に雇用された弁護士が自己の計算で独立して日本法に関する法律事務を取扱うことは、外弁の職務範囲の逸脱には当たらないとのことだが、外弁事務所の顧客に対して日本法のサービス提供をする場合、雇用主である外弁がそのサービスに不当関与する危険はあるのではないか。被雇用の弁護士の職務範囲を外弁の職務範囲に限るという制約を課してもよいのではないか。
□ 被雇用の弁護士の仕事に対するクライアントによる歯止めという視点があるのではないか。アメリカでは、一時期、収益性を高めるためにアソシエートの数を増やす傾向にあったが、それに対してクライアントによる歯止めがかかり、パートナー1人当たりアソシエート数は大体決まっている。
● 被雇用の弁護士の職務範囲を制度的に制限するようなことは、現実的には難しいと考えられる。
○ 被雇用の弁護士が経験の浅い者であったなら、日本法について適切な助言が与えられない可能性もある。その際に、外弁が日本法の知識を聞きかじってきて、それを被雇用の弁護士に押し付けることも考えられる。外弁の指揮監督下にある以上、被雇用の弁護士はそのような不当関与に対抗することはできない。
○ 外弁が日本法に関する法律事務へ不当関与する場合は、4条違反ということで懲戒処分や罰則を課されることになる。そのような危険を冒してまで、外弁は不当関与するのだろうか。そもそも、外弁の職務範囲には一部に日本法が適用される法律事務も含まれるのであり、弁護士を雇う方が日本法の部分について、より信頼のおけるサービスを提供できることになるので、単独雇用のメリットはあるのではないか。
○ 単独雇用は、司法制度改革審議会の意見書において、将来の課題とされていることから、この検討会において結論を出すべきではない。現実に、外弁事務所が日本法の分かるパラリーガルの募集を行っている実態を踏まえれば、外弁が単独で弁護士を雇用して、職務範囲を逸脱する危険性が相当あるかも知れない。共同雇用が、意見書からみても実態からみても限界ではないか。
○ 雇用解禁の効果を考えてみると、今までパラリーガルを使ってあやしげなことをしていたのが、弁護士を雇うことによって日本法についてのサービスの質が上がるということも言えるのではないか。4条違反かどうかは依頼者からは判断がつかないというが、単独雇用の場合は、被雇用の弁護士は日本法について雇用主である外弁の指揮監督を受けないという情報を依頼者に開示すれば足りるのであって、単独雇用を禁止する必要はないのではないか。
○ 規制緩和をすれば、日本はドイツのようになってしまうという意見があるが、ドイツの弁護士会にドイツの外国弁護士受入制度の規制緩和について聞いたところ、英系の事務所が進出しているとはいっても、ドイツ法についてはドイツ弁護士が取扱い、高い収入を得ることができるので、その結果を高く評価しているとのことであった。外国弁護士の増加による法的体制の整備が、ダイムラー・クライスラーなど巨大合併の背景にもなっている。
○ 外弁事務所がパラリーガルを雇うというのは4条違反の疑義がある。若い弁護士が外弁事務所に雇用されることは反対である。外弁事務所で若い弁護士のために適正な教育ができるかというと、答はノーである。
○ 弁護士教育の実態の問題として、弁護士は弁護士に教育されなければならないというのは理解できるが、それを制度的に担保するために雇用禁止を維持するというのは、筋違いの話ではないか。これまで特定共同事業を利用したことはないが、弁護士と外弁との提携関係がより広がり、きめ細かなサービスが提供されるようになれば、共同事業に対するユーザーのニーズは大きくなると思う。少なくとも、共同雇用は認められるべきではないか。単独雇用については、前回、日弁連が絶対守らなければならない一線であるということならば、そこは規制しておいても構わないということで、若干慎重論を唱えた。
○ 弁護士が弁護士を教育することを法律をもって強制する必要はないだろう。ドイツでは規制緩和により大手のローファームが進出したとのことだが、個人的には、日本の法律サービス市場はそれ程魅力があるとは思えず、規制緩和によって大手のローファームがどっと日本に押し寄せることはないのではないか。いずれにしろ、憂慮すべきではない。
○ 雇用禁止の本来の目的は、外弁が日本法に関する法律事務へ不当関与することを防止するものである。今日の日弁連の意見表明を聞いても、外弁が悪者扱いされる話が多く出されていたが、昭和62年に外弁制度がスタートしてから今日に至るまで、外弁はそんなにひどいことをしてきたのか根本的な疑問がある。これまで、外弁が4条違反ということで懲戒された事例はない。不当関与のおそれをあまりに危惧して制度設計するのは、いかがなものか。4条の規制を実現するために、雇用禁止を維持しなくてはならないのかどうか、なお疑問を持っている。ドイツの例が挙げられているが、ドイツにおいて英米系のローファームが成長しているということについて、ドイツの企業や国民は不幸に思っており、その状態を改善したいと考えているだろうか。我が国でも、世界的に通用するローファームへ容易にアクセスしたいという要望はあるのではないか。
○ 雇用を解禁すべきという立場で申し上げたい。雇用禁止の理由として、弁護士の独立性の保持が言われるが、弁護士の独立性は、本来まわりが守ってあげるものではなくて、弁護士自らが確固たる意志の下に守るということが大前提でなければ、そもそも弁護士制度はあり得ないと思う。
○ 弁護士を独立性を害されるような立場に置くことをどうするのかという問題なのであって、弁護士を被雇用者の立場に置くことは避けるべきではないか。その結果、クライアントの利益が保護されるということは十分にあり得る話である。個々人の倫理だけに任せておくことにはならないのではないか。
○ 雇用の解禁自体が問題ということならば、そもそも永遠に雇用は解禁することはできないことになり、将来的にも検討すべきことではないということになるのではないか。
○ 外弁により雇用された弁護士が自己の計算で日本法に関する法律事務を行うことを認めれば、コンサルティング会社や会計事務所が弁護士を雇って、弁護士の計算で法律事務を取扱わせることが可能になるのではないか。
● 現行でもそれは論理的には可能であろうが、その形態が社会的に合理性があるものなのかどうか疑問である。
○ 外弁は日弁連に所属して、日弁連の規律に従っている。米国では、外国弁護士はロイヤーとみなされており、ロイヤーがロイヤーを雇うことについて制限はない。雇用禁止という手段がなければ、弁護士の独立性は保たれないのかどうか疑問である。雇用禁止は過剰規制ではないのか。
○ 単独雇用のニーズはないのではないか。共同事業が解禁されようとしているのに、あえて雇用という形態を使うことについて、その合理性が見つからない。
□ 外弁事務所で雇用される弁護士は、雇い主と顧客との間の「文化の通訳」という役割を担えるのではないか。
○ 商社のように弁護士を雇うことしかできない場合には、それは理解できる。
□ 全体を見てみると、少なくとも雇用を全面的に禁止しておくという意見は、あまりなかったように思われる。雇用禁止を貫徹するために、事務所を別々にしておく必要があるということについては疑義があるというのが大方の意見である。ここで、単独雇用・共同雇用について、各委員のご意見を確認しておきたい。
○ 少なくとも、共同雇用は認めるべきではないか。単独雇用については、積極的に禁止すべきというつもりはない。
○ 単独雇用・共同雇用ともに禁止しておく理由は見当たらない。
○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。
○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。
○ 共同雇用はいいが、もし単独雇用を認めるならば、被雇用の弁護士は日本法に関する法律事務を取扱えないようにすべきである。そうでなければ、単独雇用には反対である。
○ 単独雇用と共同雇用も同じものであるから、両方とも認めるべきではない。これを認めれば、弁護士の独立性の侵害という弊害を生じ、また、外弁が日本法に関する法律事務を取扱うことを公認することになる。日本の法制度の一環を担っている弁護士事務所が外資によって席巻されてしまうおそれがある。
○ 単独雇用・共同雇用ともに認めるべきである。
○ 少なくとも、この検討会で単独雇用について結論を出すことは意見書違反である。
○ 単独雇用も共同雇用も認める方向で考えるべきである。ユーザーサイドにとっては、なるべく選択肢が多い方が良い。雇用解禁による弊害を防止するための規制は、別途考えれば良い。
○ 共同雇用は認めるべきである。単独雇用と共同雇用の区別ができないので、共同雇用を認めるならば単独雇用を認めてもいいのではないか。
● 本日は、基本的な方向性について、各委員からのご意見を伺った。これを踏まえて事務局で議論の整理をしつつ、制度設計の細部と併せて検討できるように次回の準備をしたい。
○ 次回も外弁問題をテーマに議論をすることになるのか。本日、大体の方向性はまとまったのではないかと思うが、次回は、これを前提に議論することになるのか。
● 基本的にそのような考え方で準備をしたい。
○ 7月末でこのテーマの議論は一通り終える予定ではなかったのか。
● 事務局としては、7月末までに明確な意見集約ができればと考えていたが、今後検討する事項もあるかも知れないので、この時点で議論が尽くされたと割り切らずに、慎重に対応したいと考えている。