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国際化検討会(第9回)議事録



1 日 時
平成14年7月25日(木)14:00〜17:50

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
柏木昇座長、ヴィッキー・バイヤー、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、 大塚和也(下川委員代理)、下條正浩、道垣内正人、乗越秀夫、玉井克哉、波江野弘(敬称略)
(説明者)
古井明男(日本弁護士連合会副会長)
牛島 信(日本弁護士連合会外国弁護士及び国際業務委員会副委員長)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進について
(1)日弁連からの意見表明
(2)具体的方策の検討

5 議 事

○柏木座長 それでは、所定の時刻になりましたので、第9回国際化検討会を開会させていただきます。
 本日はお忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。早速ですが、今回の議事予定につきまして、事務局の方から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 本日は前回に引き続きまして、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進、これにつきまして、検討を行う予定でございます。
 本日の検討の進め方ですが、まず、本テーマに関しまして、日弁連からの意見表明がございます。その後、制度改正の方向性につきまして、前回事務局が提示させていただきました基本的パターンなどを参考にしていただき、更に特定共同事業の要件緩和等に関する具体的方策の検討を深めていただきたいと思います。そして、本検討会として制度改正の基本的方向性につきましても、御検討いただきたいと考えております。
 基本的な方向性についての御検討の後、時間が余れば、制度設計の細部についての検討も、できれば行いたいと考えておりますが、本日は恐らく制度改正の基本的方向性についての御議論で大体所要時間が尽きてしまうのかなという気がしております。
 本日の検討の進め方につきまして、以上でございます。

○柏木座長 それでは、まず初めに事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 資料9−1、は特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態ということで、本日も引き続き御議論の参考にしていただくべく、改めて御提出しました。
 それから、資料9−2、これは下條委員の提出資料です。本日は前回と同じものなんですけれども、追加のものがございます。「下條委員私案C案」というものが追加になっておりますので、御確認ください。
 資料9−3、これは日弁連提出資料でございます。プレゼンテーションのペーパーと、日弁連外弁委員会副委員長の牛島信先生のレジュメが含まれております。
 資料9−4、外弁法4条の規制内容、これは事務局の方で用意させていただきました図面でございます。2枚物でございます。後ほど内容は説明させていただきます。
 配布資料は以上でございます。

○柏木座長 それでは、議事に入ります。まず、弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進に関しまして、日弁連より意見表明をお願いしたいと思います。日弁連からお願いします。

○大塚課長補佐(下川委員代理) ちょっとよろしいですか。今日の日弁連の意見表明というのは、これまでのヒアリングと同じような位置づけになるかと思われるんですが、今回、改めて日弁連から御説明があるというのは、何か日弁連の中で、組織として考えをまとめられたとか、そのような背景があってのことでしょうか。

○齊藤参事官 最後の方の御質問の部分は。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 特に今回、こういう説明をされたいということは、何か日弁連の中で御検討されて、意見をまとめられたとか、そういうことがあってのことなんでしょうか。

○齊藤参事官 その辺も含めて御説明いただきましょうか。恐らくこの検討会で検討している課題について、勿論、日弁連の方でもいろんな形で検討されておりますので、その現状況を踏まえた上での意見の表明ということになろうかと思います。

○古井日弁連副会長 日弁連の担当の副会長の古井と申します。よろしくお願いします。
 今、御質問がありましたとおり、日弁連についても、この検討会の状況に合わせて検討しておりますので、現在の状況をお話しさせていただきたいということで今日参りました。
 私がペーパーの1枚目、2枚目を説明させていただきますが、2枚目の(4)につきましては、同席していただいております牛島弁護士から、個々の具体的な実情について説明いただくということで分担させていただきます。
 資料につきましては、グラフが付いておるものがございますが、98年から今年の6月までの特定共同事業を営んでいる弁護士、外国法事務弁護士の事務所の数等をグラフにしたものでございます。ここ3年、倍々に増えているという実情がお分かりいただけるかと思います。
 それでは、ペーパーに沿って説明させていただきます。
 1 はじめに
 (1)検討の視点
 日弁連は、日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進策、特定共同事業の要件緩和等について、司法制度改革審議会意見書に沿って、会内で議論を行ってきました。
 (2)「意見書」の位置づけ
 日弁連は、司法制度改革審議会の意見を具体化する推進法に基づき、今次の司法制度改革に取り組んでおります。
 審議会意見書では、特定共同事業の要件緩和等を行うべきであるとしつつ、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の見直しは、将来の課題としております。現在進行中の他の検討会においては、意見書の枠内での改革を検討協議しており、本検討会においても、この意見書の方向性及び枠が尊重されるべきと考えております。
 このような観点から、当推進本部事務局より提出されております方向性を示すA案からD案については、特定共同事業の要件緩和等の方策の理論的な検討材料として提出されたもので、この案のいずれかが妥当かという議論はしないという認識の下に提出されたと理解しております。
 総合規制改革会議は、7月23日付で中間とりまとめを行いました。経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革を公表いたしましたが、その中でこの論点については、推進本部及び法務省が「外国法事務弁護士による雇用禁止の撤廃については、司法制度改革審議会意見書において『将来の課題として引き続き検討すべきである』とされており、また、推進計画においても全く言及されておらず、現時点でこのような結論を明記することは適当ではない。」という意見書を出していることを付言しておきます。
 (3)外交交渉日程について
 更にこの問題は、WTOサービス交渉(GATS)の課題の1つであるので、外交交渉日程及び交渉方法を十分に念頭に入れた配慮が必要であります。よって平成15年3月に外弁法の法改正に入るとの立法スケジュールで本問題を検討することは反対であります。
 2 日弁連の基本的考え
 日弁連は、各単位会及び会内関係委員会に対して、特定共同事業の要件緩和と外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用解禁問題等について、意見照会をしました。その結果を踏まえ、以下のとおり日弁連の基本的考え方を述べさせていただきます。
 (1)目的制限の緩和等について、
 日弁連は意見書の趣旨を踏まえ、弊害防止措置(外国法事務弁護士による日本法取扱及び不当関与の防止策)の整備を条件に、特定共同事業の目的制限を次のとおり緩和すべきと考えております。
 (a)外弁法49条の2第1項1号について、外国法の知識のみを必要とするものに加え、外国法及び日本法双方の知識をあわせて必要とする法律事務を追加する
 (b)同項2号について、日本に居住する外国人の事件を加える
 (c)同項3号に規定する議決権の要件を緩和する
 以上の目的制限を緩和する場合には、外国法事務弁護士によ日本法取扱や不当関与を防止するための弊害防止措置を整備強化、実効化する必要がある。例えば、提携契約の届出、個別案件について各弁護士及び外国法事務弁護士の関与内容等の記録開示義務、弁護士会調査への応答義務等の整備が重要であると考えております。
 (2)事務所名称について
 特定共同事業の表示規律(外弁法49条の4)の運用の緩和や、法律事務所名称について、なお検討したい。
 (3) 弁護士法人との関係について
 弁護士に加えて、弁護士法人も特定共同事業の主体となれることを許容するか否かについては、当該弁護士法人の代表社員の弁護士経験年数を一定以上とする等、更に検討を要する。
 (4)外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用問題について
 外国法事務弁護士が日本法を取り扱うことのないようにすることは、資格制度を前提とする日本で当然の制限であり、外国法事務弁護士が弁護士を雇用することは、この当然の制限が潜脱されるおそれが多くなるため、従来通り認められるべきではない。
 また、特定共同事業の相手方において日本弁護士を雇用できるのであるから、外国法事務弁護士若しくは特定共同事業による雇用が、従前通り禁止されても、これによるユーザー側の利便が損なわれることはない。このように考えております。

○牛島日弁連副委員長 では、引き続きまして、資料9−3と右上に番号が振ってありますメモ、簡単な表題だけのものでございますが、これにしたがって、申し上げてまいりたいと存じます。
 「背景」と「実態」、これは当然現在はないわけですから、予想される実態ということになるかと思います。そして「問題点」、この3つに分けて説明するつもりでございます。
 まず、背景の1番目「なぜ日本で外国法事務弁護士が必要とされるのか」という点でございますが、これは当然、外国法事務弁護士、外弁と申しますが、外弁の方の強みというのは、原資格国法についての能力と、それから外国語についての能力がございます。
 更に、多くの外弁の方に関しては、所属事務所の知名度というものがございます。知名度は単に一般的に知られているということではなくて、その事務所を特定の依頼者が長い間使っている。あるいは、特定の案件については、その事務所に依存することが大変大きいという意味で、事務所と特定の顧客との間の信頼関係というものも含んで申し上げているつもりでございます。
 では、なぜ外国の弁護士さんがわざわざ日本に来て、年に半年以上も滞在して仕事をされるのかということになりますと、これは当然日本にいてやる法律事務処理の需要が大変にあるからであるということでございます。主として外資系の仕事であると承知いたしております。つまり、日本の大企業は外国法事務弁護士に依頼するということはそれほどないと伺っております。
 日本での法律事務ですから、実のところ、その法律の中身は日本法を中心とする案件が多いわけでございます。これは具体的に申せば、本国での依頼者である外国の企業が日本に進出して、あるいは進出した後、更にビジネスを展開していくという上で、何かとアドバイスが欲しいといったことでございます。
 したがって、日本の法律についてアドバイスをしようということになれば、名実共に日本の弁護士をパートナーとして、あるいはアソシエートとして雇用したいということになってまいるということだろうと思います。これに対処すべくできたものが特定共同事業というものであったということでございます。
 特定共同事業で足りるはずのところ、しかし、足りないというのは何なのかということになりますと、いろいろ見方はあると思いますが、特定共同事業というものは、日本の弁護士と利益を分ける。あるいは日本の弁護士のコントロールをするについて、なかなか難しいところがある。更に個々の外弁の問題になるかもしれませんが、自分がこの仕事をやっているということ。これは単にその人が自分がやっているんだというような自覚と、請求額といったもの、請求というのは「ビリング」の請求です。そういった額というものだけのことではなくて、依頼者の方からも、この人を通じて話を聞きたいというニーズは無視できないものがあるんだろうと承知しております。
 2つ目、弁護士に関する資格制度というものが、ここでどういう意味を持ってくるかということでございますが、一部の洗練されたユーザーの観点から見れば、資格制度というのはそれほど重要ではないのかもしれません。しかし、私は寡聞ではありますが、承知しておりますところ、国民全体がユーザー、あるいはユーザーとなり得るものであるというふうにとらえればこそ、弁護士業というものには資格が必要とされているのだと理解いたしております。
 ところが、往々にして、優れた、あるいは経験を積んだ依頼者はそうではないのかもしませんが、往々にして依頼者は相当な規模のものであっても、外国弁護士の資格が実は制限されたものであるということにそれほどの関心を持ちません。
 先ほども申しましたが、法律アドバイザーというのは1人いてくれれば、その人を窓口にした方が効率的なのだというふうにビジネスマンは考える場合があります。また、それは個々のビジネスマンの問題ではなくて、外国の依頼者から見れば、その人の更に上司という観点から見れば、先ほども申しました所属事務所の知名度、ないし特定の企業との長い、あるいは深い信頼関係ということが大きいと思います。
 したがいまして、言葉が適切であるどうかは別といたしまして、外国法事務弁護士にとっては、日本法を取り扱うという誘惑は大変大きいわけであります。しかしながら、日本法は日本の弁護士資格を持った者しか取り扱ってはならない。日本法の知識のない者からアドバイスを受けて、不測の損害を被ることがないように、利用者保護のためにこういう弁護士の資格制度というものが設けられておる。これをなくすということでなければ、現実に弊害の可能性があるわけですから、外弁が日本法を取り扱うことがないようにする最低限の措置は必要であろうというふうに思います。それが最低限の措置が設けられているのが特定共同事業ではないかと考えております。
 「II.実態」でございます。先ほども申しましたように、これは予測される実態でございます。
 まず第1に、雇用されるという観点から見ますと、雇用の対象となる弁護士、これは雇用ですから、一般的には若い弁護士さんだろうと思います。若い日本の弁護士、例外ではなくて一般論で申しますと、若い日本の弁護士は英語力が不足しております。したがって、英語しか話せない外国法事務弁護士の方とのコミュニケーションというものは不足する可能性が現実にございます。
 更に、実際に実務で扱う法律というのは、司法試験には出ない法律を多々扱います。例えば証取法、銀行法、出資法、税法、労働法などと言ったことは、司法試験では扱わない科目でございまして、日々の仕事の中ではこういった法律が大変重要であります。したがって、これを一から勉強していく必要がございます。
 3つ目、外国法事務弁護士さんは、日本法について、当然ながら若い日本の弁護士さんを指導する能力というのはないわけでございます。
 また、外弁の方でも、いろいろ勉強されている方はいらっしゃいますが、日米の法律の違いというものは翻訳を通じてもなかなか理解し難い面というものがございます。不動産のこと1つを取っても、いろいろ難しい面があると伺っております。
 それから、日々の法律事務のスピードというものは、大変に迅速なものを要求されます。意見書の作成というのは1つの典型的な作業ではございますが、日々は契約書を作成したり、改訂したり、そのための準備のミーティングをしたり、あるいは電話でやり取りをしたり、更には最近ではごく当たり前になっておりますメールでのやり取り。文字どおり目の回る忙しさの中での瞬時の判断と処理が要求されております。外国法事務弁護士の方の携わる仕事となりますと、これに時差が加わります。例えば深夜自宅に電話がかかってきて、その場で右か左の即答を求められるということ、それ自体はごく日常的なことでございます。
 それから、よしあしは別といたしまして、日本の弁護士のアソシエートは外国法事務弁護士の方が直接依頼者に責任を持っている。依頼者との関係が深いと申しますでしょうか、責任というよりは関係が深いと申した方がいいかもしれませんが、その場合には、ボスである外国法事務弁護士を通じた依頼者との間接的な関係ということの意識を持ちがちでございます。
 2番目、雇用する側となる外国法事務弁護士の実態、これは予測でございますが、最初に外弁の方も事務所、ファームの中で一定の請求時間、先ほど申しましたけれども、ビルする時間を出すということが当然で、そういう圧力を受けております。パートナーであれば、特に自分の名前でどのくらいの依頼者に請求を出したか、年何十万ドルなのか、100 万ドルを超えるのかといったことについての最低限の要求の圧力というのは強いものがございます。私の友人の外国の弁護士さんたちの話でも、これは10年前と比べると、全く変わってしまったほど圧力が強くなっていると言っております。いいとか悪いとかということではなくて、そういうことであるということでございます。
 次に2つ目、日本の弁護士であれ外国の弁護士であれ、依頼者の要求には何とか応えたいものだと思います。頼ってきた依頼者というものを、何とか維持したい。そして、役に立ちたいというのは職業的な一種の本能であろう。また、事務所というものは、ファームとしても、依頼者を維持していかなくてはならない。コンピートしている。これが当然のことでございますが、そういう圧力下で働いております。
 更に、3つ目、したがって、事務所の収入が上下したところで、事務所の経費というものは、多くの場合、固定的なものてございます。特に外国からの弁護士の方は、一般的に日本の弁護士の方に比べて、港区の高いアパートに入っていたりというケースがままありますので、その分、それから自分の給料、これも稼ぎ出さなければならない。したがって、依頼者に請求しなければならない。こういう圧力下で働いております。
 「III.問題」でございますが、つまり外国法事務弁護士の方が日本の弁護士の雇用者となった場合に起こり得る弊害の可能性として、まず、具体的な例ということでございますが、外弁の方には、そもそも日本法のバッククラウンドが相対的に欠けておりますから、一体日本法上何が問題になるのかという発想そのものについての理解が不足していると思います。
 被雇用のアソシエートの弁護士がこういう問題なんだと説明しても、なかなか簡単には理解できない。これは日々の外国の弁護士とのやり取りの中でも経験するところでございますが、やむを得ないものだと思います。
 例えば企業買収において、被買収企業の買収後の人員整理、これは重要なポイントだと思いますが、これについて、日本では労働基準法の文言にかかわらず、皆さん御存じのとおり、解雇権の濫用ということが判例で発展しております。また、日々変化しております。そういったことについて、理解しにくい。そうすると、条文は翻訳で読むことは可能ですし、簡単な説明は勿論受けるわけですから、安易に考えてしまう。人員整理について安易に考えてしまうという傾向があると言われております。
 更に聞きましたところでは、競売手続において、占有者というものがあった場合、これは一体何なのか。どうやらそこに住民票を置いている人のことではないかと思い込んだという笑えない話もございます。
 2つ目に、外国の弁護士さんはビジネス・ローヤーでございますが、先ほど弁護士の職業本能と申しましたが、それ以上に何とかクライアントがやりたい、自分の依頼者がやりたというビジネスについて、日本法上できないということでは済ましたくないという強い欲望、そのようにしたいという気持ちを持っております。
 当然何とかできるように考えろというプレッシャーをアソシエートの日本の弁護士さんにかけるわけでございます。それがかけられて、いい結果になる場合もあると思いますが、一般的に雇われた日本の弁護士が、はるかに経験豊かな外国法事務弁護士さんから言われた場合に、そして、依頼者に対して直接の関係上いろいろ説明しなければならないことになるのかと思いますが、そういった外国法事務弁護士さんに言われたときに、なかなか逆らえない場面が出てくるのではないかということでございます。
 以上、外国法事務弁護士の依頼者というのは、外国の巨大会社である。これは多分、そういう場合が多いと思います。外国の巨大会社であるということで変なことをしない。一面から見て、自ら外弁の質を選ぶことができる。そこまでは正しいだろうと思います。しかし、それだけで事が終わらないということが最近のエンロンとかワールドコムの事件、エンロンの場合はアーサー・アンダーセンという、弁護士と一種似た専門的職業、一定の規律を持った、また、世界的な巨大な組織まで巻き込んでの問題になっております。
 例えば、先般、損失先送商品というものが日本で問題になって、そして、免許取消しに至ったところがあると聞いております。外資系の会社だと承知しておりますが、勿論、これは基本的には金融庁の問題であります。しかし、こういう商品をつくり上げるについて、法律家がどういうふうに関わった、どういう法律家がどういうふうに関わったのか。私はその具体的な中身、これは当然関わっていると思いますけれども、だれがということよりも、結局それで何が起こったかということが重要だと思います。
 免許取消しになってしまったという会社は、これはある意味で自業自得ということなのかもしれません。それで済むのかどうか私はわかりませんが、そういう面はあるだろうと思います。
 しかし、その結果はその損失先送商品を買ってどうなったのか。これは私が理解しておりますところ、国民にツケが回っているはずでございます。回り回ると、結局、そういうことになるのではないかということが資格制度というもので支えられている、逆に支える部分なのかという気がしております。
 つまり、被害者になる可能性のあるものは依頼者のみではなくて、結局のところ、国民になるのではないか。これは別の例で申せば、例えば日本で免許を持っていない外国の保険会社がどこまで、日本人に、日本にいる居住者に売り込みをしていいのかという問題。これは当然日本法の問題でございます。インターネットがある時代、大変現実的な問題でございますが、これについても、やはり日本法の問題として、だれが、どのようにすれば、国民の不測の損害を被らないのかということがあるような気がいたします。
 連名のオピニオンということについても、例えばパートナーである外国法事務弁護士とアソシエートである日本の弁護士とが連名でオピニオンを出すということになりますと、以上申し上げた理由で私は危惧感を持っております。だれもが善意の固まりであれば、勿論、問題は起きないと思いますけれど、依頼者は必ず善意の固まりだけではない場合もあります。勿論、その方々に、あるいはその方々も含めて一定の適正な法律意見を言っていくことが仕事だとは思いますけれども、それが一定の最低限度の措置がある中で行われるのか、全くそういうものがない中で行われていいのかという問題だろうと思っております。
 そして、先ほど統計の紹介がございましたが、特定共同事業という制度は、そういう状況に対処するために、相当な勢いで増えておりますから、一定の役割を現に果たしているものだと理解しております。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。ただいまの日弁連からの御意見につきましては、その後の具体的な方策の検討におきまして、参考にしたいと考えております。今の日弁連の御意見につきまして、何か御質問がございましたら、挙手の上、発言をお願いします。

○乗越委員 内容については、前にお伺いしたこととかなりダブりますし、後でまた議論することになると思いますが、もし差し支えなければ日弁連の中で、私の仄聞するところでは、必ずしもこういう議論にくみしないという弁護士の方も多くいらっしゃると思うんですけれとも、日弁連のほかの弁護士の方々の意見というのはどういうものか、差し支えない範囲で御紹介いただけますでしょう。

○古井日弁連副会長 先ほど申し上げたとおり、意見照会をしております。その中で、ほぼ多数は私が今述べさせていただいた日弁連の意見の中に集約されていると思いますが、一部の会員の方の中には、フリーなパートナーシップまで認めるべきだ。全面的に開放すべきだという意見もございました。それは委員会の意見とか単位会の意見ということではなくて、個人の意見、または単位会の中の少数意見としてこういうものがあったという形で出てまいっております。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 確認事項が1点と質問が1点ございます。確認事項に関しましては、意見書の枠の中での議論ということで、日弁連としての解釈を述べられておると思うんですけれども、別に日弁連に解釈権限があるという話ではなくて、検討会としてこの意見書をどう解釈して、我々がどう議論をしていくかということだと思いますので、これまでの議論においては、外弁による弁護士の雇用禁止の撤廃については、必ずしも除外されているものではないというほかの委員の御意見も出されておりますし、それは我々の議論によって決まることだということを確認させていただきたいと思います。
 2点目に関しては質問なんですが、日弁連で御検討された中で、(1)の(c)ですが、情報の開示等、規制のための措置をいろいろと御検討されているようですが、WTOとの関係で、内国民待遇違反かどうかということが常に議論になっている関係で気になっているので、教えていただきたいのですが。ここに書かれているような義務は、日本の弁護士についても同様に課せられているのでしょうか。

○牛島副委員長 2ページの(c)の下「目的制限を緩和する場合は」云々という部分でございますか。これは検討段階でございますから、私が申し上げていいのかわかりませんが。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 外弁かどうこうということではなくて、日本の弁護士に対してこういう義務は課せられているのかどうかという点です。

○牛島副委員長 特定共同事業についての問題でありますから、日本の弁護士も外国法事務弁護士も同様になるのではないのかなと私は理解しております。

○大塚課長補佐(下川委員代理) そうではなくて、WTOにおける内国民待遇というのは、同種のサービス提供者の間で競争条件に差がないかということを比べることでありますから、必ずしも特定共同ということに限らず、日本の弁護士にこのような義務が一般論として課せられているかどうかという点を確認したいのです。

○牛島副委員長 特定共同事業をしない日本の弁護士についても同じ義務が課せられているかという御趣旨でございますか。

○大塚課長補佐(下川委員代理) はい。

○古井日弁連副会長 弁護士会調査への応答義務等の整備が必要であるとの部分については、日弁連で、綱紀・懲戒の規定について全面見直しをしており、弁護士会の調査権限を強化し、一般会員の調査に応ずる義務を明記する方向で、綱紀・懲戒の規定を変えていこうという検討作業が今進んでおります。前半の契約の届出等については、特定共同事業についての規制ということで、別立てで考えております。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 記録開示義務についてはどうですか。

○古井日弁連副会長 それも同様でございます。特定共同事業に関与している者についてということで、日本の弁護士も、先ほどお話ししたとおりに、同様の義務があるということで考えております。
 それから、前段の方ですが、我々も議論していただくことについては、それをとやかく言う立場ではございません。大いに議論していただいて、その中で改正すべき点は何かということについては、十分耳を傾けたいと思っております。

○大塚課長補佐(下川委員代理) この検討会が始まったときに、事務局から御説明があったことは、検討会として何かまとまった成果物を出すということではないけれども、検討会としての検討結果を踏まえて、それに沿った法文作成作業を行うということを言っておられましたので、そういう理解でよろしいですね。

○齊藤参事官 それは基本的にそういう御理解で結構だと思います。

○乗越委員 これは事務局にする質問なのかもしれませんけれとも、1の(3)のすぐ前のパラグラフで、総合規制改革会議でやられたことについて、将来の課題として引き続き検討すべき事項とされており、現時点でこのような結論を明記することは適当ではないというふうに会議の意向というか、推進本部及び法務省の意向が、この件については、検討すべきでないというふうな感じに読めるのですが、そういう趣旨でこの意見は出されたものなんでしょうか。

○齊藤参事官 規制改革会議の方で、雇用禁止を撤廃すべきであるという考え方に対して応答しているわけなんですが、応答の段階では、雇用禁止の在り方について、どのような処置をするかについて、具体的に何らか決まっているということではありませんので、従前のスタンスどおりのことを回答しているというだけのことなんです。そのように御理解いただきたいと思います。

○乗越委員 そうしますと、現時点で、油断をしないために、今の段階で規制改革の中間とりまとめの中に書くのは適当ではないということを言われただけということですか。

○齊藤参事官 そういうことです。撤廃するということを中間とりまとめの段階で明言することについて、それを認めるという段階にはないわけですので、そのことを明確に応答しているというだけのことなんです。

○柏木座長 そのほか、ただいまの日弁連からの御意見につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。
 それでは、日弁連の皆様、どうもありがとうございました。
 先ほど申し上げたとおり、日弁連からの御意見につきましては、今後の具体策の検討におきまして、質疑も含めまして、御参考にしていただきたいと考えております。
 それでは、引き続き弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進につき、具体的方策の検討を行いたいと思います。
 前回、事務局より制度改正に関する基本的パターンの提示がありまして、また、下條委員からも案の提示があり、これらの基本的パターンなどを念頭に置いて関連する論点項目についての検討を行っていただきました。そして、論点項目ごとの検討につきましては、およそ議論が尽くされたかと存じますので、本日は更に議論を補足しながら、委員の皆様方の御意見を伺いたいと考えております。
 そして、本日の御議論を踏まえ、本検討会として、制度改正の基本的方向についても、御検討いただきたいと考えております。是非よろしくお願いします。
 それでは、事務局から検討の進め方について御説明いただけますでしょうか。

○齊藤参事官 確認的なことなんですが、若干検討会の進め方について御説明申し上げます。
 この国際化検討会では、特定共同事業の要件緩和等についての検討を十分尽くす上では、共同事業等の原則禁止、この制度と規制趣旨を同じくすると考えられる雇用禁止の問題が密接に関連するということで、この検討会での御理解を得つつ、論点整理を行いました。その結果、論点項目には特定共同事業の要件緩和等との関連で、外弁よる弁護士の雇用禁止との関係について、それから弁護士と外国弁護士との提携・協働についてという項目も掲げられたという経過でございます。
 その後、論点整理に従って検討が進められているわけですが、前回の第8回検討会におきまして、本部事務局から提出しました特定共同事業の要件緩和等をした場合の諸形態と題する資料、いわゆるA案からD案というものです。これは特定共同事業の要件緩和等の具体的方策を限られた時間の中で合理的に検討していただくための参考として考えられる基本的なパターンというものを提示させていただいたものです。そのような趣旨のものとして、これから御検討いただく際には参考にしていただきたいと考えております。念のため、重ねて御説明申し上げました。
 以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、まず、特定共同事業の目的要件を緩和することにとどめるという基本的な考え方について御意見をいただきたいと思います。比較的小幅な改正にとどまる案ですけれども、これはA案になるわけです。先ほど日弁連からの御説明にあった案も、これに類するかと思いますけれどけも、このような限度での改革にとどめることの当否が問題ではないかと思います。いかがでしょうか。御意見をいただきたいと思います。孝橋委員どうぞ。

○孝橋委員 既に前回までの議論でいろんな方からお話が出ているかと思いますけれども、特定共同事業を存続させるという形でありますと、特定共同事業の事務所と、それまでの固有の事務を扱う日本の弁護士の事務所、それから外国法事務弁護士の事務所という3つの組織が並存するという形になって、その組織の運営自体非常に複雑になるという問題があるということが指摘されていたと思いますし、今回の日弁連の御提案は、特定共同事業の対象を余り広げない形での御提案かと思うんですけれども、仮にもっと緩い形の緩和策の御提案がされたといたしましても、結局、その特定共同事業の目的になる事務かどうかということの峻別の問題が残りますと、そこで依頼する側、あるいは引き受ける側にとっても、本来、この事務をどこでやっていいのかということを判断するためにかなりの労力を割かなければならない。それは先ほど牛島先生がおっしゃったスピーディーな対応をしないといけないというニーズに十分応えられない恐れがあるということなど今までいろいろ出ていた議論かと思うんですけれども、そういうふうなことでA案は問題があるのではないかと考えております。

○柏木座長 ありがとうございました。玉井委員どうぞ。

○玉井委員 前回やむを得ず欠席させていただきましたので、前回の議論の詳細は承知していませんが、私はこの問題につきまして、一般的にサプライサイダーと言いますか、供給者側、私もその一人ですけれども、その市場においてサービスに関わっていない者よりはユーザーサイドと言いますか、外国法事務弁護士、あるいはそれと競合するような日本の弁護士に法律事務を依頼する立場からの意見が最も重要であると考えておりますけれども、その一般的な前提で申し上げますと、本日はいらっしゃいませんけれども、今までにお招きをした意見陳述のための説明者の御意見、あるいは委員として加わっておられる波江野委員、加藤委員などの御意見などを伺いましても、どうも特定共同事業という形で分かれていること自体が、つまり、外国法事務弁護士固有の事務と、日本弁護士の固有の事務と、それから特定共同事業と3つに分かれているということ自体が不便で、ユーザーサイドの利益を損なっているというお立場ではなかったかと思いますので、どうもそこに緩和をしても、限界線というのはどうしても残ってしまうわけですので、結論的には今の形を変えるものと考えております。

○柏木座長 下條委員のA案が提出されていますけれども、それとの関連ではいかがですか。

○下條委員 これはもうほとんど同じですから、いいと思いますけれども、今、お二方の御意見について、私のコメントを申し上げたいと思います。まず、1つは、特定共同事業が3つの勘定に分かれるから不便だと、これは誰にとって不便かということなんです。これは誰にとって不便かというと、グローバルに展開しているアメリカとかイギリスの法律事務所にとって不便であるということでしかないと思うんです。ですから、彼らとしては、すべて自分たちの請求に上げて、自分たちの手柄にしたいというか、特定共同事業ですと、日本法に関するところは日本の弁護士に持っていかれてしまう。それがどうも面白くない。すべて自分たちの勘定としたいということから、不便であるということがきている。
 ですから、日本企業にとって不便であるということではないと思います。その点が第1点。
 それから、万一この目的要件を完全に撤廃したとしても、日本側の弁護士の力が対等であれば、どうしたって日本法マターというのが出てくると思うんです。たとえて言えば、全く外弁に関係のない、前に申し上げました日本人間の近隣訴訟の境界確定訴訟とか、あるいはもっと言えば国選とか、全く関係ないものはどうしたって日本法マターということで日本弁護士の勘定に移るんじゃないか。完全に要件を撤廃したとしても、そういうものは日本弁護士の勘定に入るんじゃなかろうかと思います。
 これは弁護士事務所における収益の分配というのは千差万別ですから、いろいろあるわけですけれども、当然メリットシステムをどんどん入れてくれば、自分のやったことは自分のところに来るという、イート・ファット・ユー・キルということが言われています。やはり自分で持ってきたものは自分で持っていくということがありますから、もし非常に対等な共同事業ができれば、当然日本の弁護士としては、自分がやったことは自分のところにということはあり得るわけですから、撤廃すれば全く日本法の勘定がなくなるということはちょっと私は疑問に思っております。

○齊藤参事官 まだ補足的な議論が必要であれば、適宜していただいても、今日は時間はたっぷりあると思いますので。今の下條委員の御指摘で、2番目の方なんですけれども、仮に共同事業を行う場合でも、外国法事務弁護士がほとんど関与する余地のないような案件か残ると。これは理論的にはそのとおりだと思うんですが、しかし、そこから得られた報酬も含めて、どういうふうに分配するかは、合理的に処理する方法は幾らでもあるんじゃないかと思うんです。
 ですから、必ず1つの事務所を共同できるということの、どうしてもクリアーできない障害になるというふうには考えられないのかなと。大体そういう議論ではないかなという気がしているんてす。

○下條委員 ですから、勘定を3つに分けるというのが不便だ不便だというのは形式的な理由にすぎないということです。結局はそれは法律事務所としてはすべて帳簿を取っているわけですからね。そういうのがベースになってまた分配をするわけでしょう。ですから、普通法律事務所がやっていますのは、どのクライアントのどういう案件という、一種のケース・コードをつくって、すべてそれにチャージするということでやっているわけです。ですから、3つの勘定が不便であるというのは、誠に形式的な理由にすぎないということを指摘したかったんです。

○乗越委員 勘定が不便かどうかというのは、確かに事務所の側にとっての問題だと思います。ただ、それは別に勘定をこういうふうにしなければいけないことを決めなければいけないという問題ではなくて、今までのような勘定の仕方をしたい人たちが集まって事業をするんであればそうすればいいし、そうではないという人があれば、その人たちで決めればいいことではないかと思うんです。
 御指摘をしたいのは、誰にとって不便かという問題で、外国の弁護士の場合にとってだけ不便なんじゃないかという御指摘があったんですけれども、私の記憶しております限りでは、たしか日本の弁護士の方で今特定共同事業をやっておられる方もそういうことを言っておられたと思いますし、ユーザーの方も、聞いてみたら何か違う名前の弁護士事務所が出てきて、これはどういうことだと言ってなかなか説明がつかなくて理解してもらえなかったとか、そういうふうな不便な実例のことも話しておられたと思いますので、ユーザーとか日本の弁護士にとって不便ではないというのは、ちょっと当たらないんじゃないかという気がいたします。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今、下條委員から御指摘のあった誰にとって不便かという点なんですけれども、まさにこの論点ですと、勘定云々かんぬんということよりも、どの案件を誰が扱うのかということについて、ユーザーサイドにとって透明性がないというか、あらかじめふたを開けてみないとどういう性質の法律で、外弁マターなのか、日本弁護士マターなのかよくわからないというところが非常に不便であるということがこれまでも指摘されていたと思いますので、今、出てきたA案ではその点は全く改善されませんし、今日日弁連から出てきた改善案につきましても、全く同じ問題がこれでは解決されていないと思います。
 ちなみに、日弁連から提出されたペーパーの(1)のA、B、Cとありますけれども、このAに関しまして、これは枠を広げたことでも何でもなくて、現在認められていることの追認にすぎないと思います。この提案は日本法にも外弁の活動対象の範囲を及ぼすようにするという御趣旨だと思うのですが、このことにつきまして、既に外弁法の2条6号の定義で、「原資格国法が全部または主要な部分に適用され、または適用されるべき法律事件についての法律事務をいう」ということになっていますから、外弁の行えるべき活動範囲の中には、主要でない部分の日本法も含まれているということになると思いますので、ここは何ら新しいことを付け加えたことにはなっていないと思いますし、B、Cに関しましても、例えばCなどについても、議決権の要件を緩和するといっても、結局、議決権は何%以上なのかとか非常にユーザーサイドにとって判定の難しい要件がいまだに残るということですし、Bのところは、これまで法人を念頭においていたものが、自然人ということで、外国人を加えてということでしょうが、それでは日本人の自然人はどうなるのかとかという点もありますし、これがどれだけ改善効果があるのかいうのは非常に疑問ですので、いずれにしても、A案では不十分だと思います。

○波江野委員 今、各委員の方からお話のあったこととほとんど重複致しますが、今の特定共同事業の使い勝手の悪さというのは、下條委員のおっしゃるように、弁護士サイドでの問題もあるかもしれませんけれども、私どもユーザーの立場からして、そこに何かを持ち込んで相談をしようというときに、これは本当に対象になるかならないかという判断も必要とされます。
 あるいは目的要件にかなっているということで当初スタートしたけれども、その後に何かの事情で、例えば、当事者の出資比率が変わったりしたことによって外れてしまうということもあるかもしれない。先ほど大塚委員がおっしゃったように、ユーザーサイドにおける透明性と言いますか、そこの法的安定性ということを考えますと、今のA案のような形で若干の緩和をしたからそれで済むという話ではないのではないかと思います。やはり我々ユーザーサイドとして、日本固有の問題であればわざわざ特定共同事業に行く必要もなく、日本の弁護士に直接頼めば済む話です。共同事業を形成している日本の弁護士に頼むことは、勿論あるかもしれませんけれども、やはり特定共同事業に頼もうというときには、外国に関する案件で持ち込むわけですから、そういったときに、現在のような制限がある必要は全くありません。ユーザーサイドとしてちゃんと判断をして持ち込みますので、このA案程度で目的を若干緩めたから、それで済むのではないかということはないのではないかという気がいたします
 先ほど資料9−2の件で、齊藤参事官からお話がございましたけれども、推進本部及び法務省が、意見を出しているということですが、「この時期にこういうことをやってはいけない」、「規制改革会議がこういう結論を出しては困る」ということをおっしゃったと、そういう理解でよろしいのですか。

○齊藤参事官 推進本部も法務省の意見というのは、規制改革会議の方で、雇用禁止の制度は撤廃しろという意見を採択しようとしているわけですので、そのことを現時点でそのとおりというふうに意見を出すわけにはいかないので、従前どおりのスタンスでお答えしているというだけのことなんです。

○波江野委員 規制改革会議と推進本部というのはどういう関係で、どのような位置づけになるんですか。この辺は勉強すればわかるのもしれませんが、さっぱりわかりません。

○松川次長 規制改革会議はあらゆる分野について規制緩和を促進する観点からいろいろ議論されているということでありますので、そのあらゆる分野ということで、法務サービスの分野も議論の対象にはなっているということです。
 他方、我々の方は司法制度改革審議会で司法制度改革について意見をいただいておりますので、その意見書にのっとった改革を推進するための具体策を検討しているということなわけですから、我々の立場としては、まだ結論が出ていないものについて、たとえ規制緩和の立場からといっても、議論はされているでしょうけれども、それをイエスと言うわけにいかないということで、規制改革会議に対しての意見を表明させていただいたということでございます。

○波江野委員 推進本部の意見として、意見書の55ページに「雇用禁止等の見直しは国際的議論もにらみつつ、将来の課題として引き続き検討すべきである」と書いてあるから、今やるのではなく将来でなければならないというふうに限定されていると考える必要はないのではないかと思います。

○松川次長 そこは、意見書で書いてあるとおりなので、そういう意味で意見書ではさまざまな議論がありましたけれども、こういう観点から引き続き議論をする。そういう意味において、将来の課題であるということになっていますから、それを踏まえて検討していただく必要はあろうかとは思いますが、総合規制改革会議に対して表明したのは、総合規制改革会議は、意見書の議論とか、そういうことを全く離れて規制改革の観点からとは言え、今、直ちに雇用の規制を撤廃すべきであるということを内閣の方針として決めるべきであるということをおっしゃっていますので、それは我々の立場から言うと、物には順番があるので、まず共同事業の要件緩和の問題を議論して、そういう中でどういう具体策があるべきかということを検討するように、というのが我々の課題でありますので、それにのっとって今、議論しているところであります。御指摘の点について言えば、意見書ではこういうふうに指摘されているところでもあるので、そういう明快な形で結論を出すべきであるということについては賛成し得ないという意味で申し上げたということではないかと思います。

○齊藤参事官 ちょっと補足してよろしいですか。従前からこの検討会でも、特定共同事業の要件緩和等ということを十分に検討しようとする上では、収益分配の禁止の制度であるとか、あるいは雇用禁止の制度であるとか、こういったところと密接な関連性があるということがほぼ明らかですので、そういう関連性も踏まえて十分御検討いただきたいということなんです。
 ですから、検討会の場で委員の皆様に十分そういった関連性も踏まえて、御検討と御意見をいただきたいということに尽きるかと思います。

○久保利委員 私としては、今、波江野さんのおっしゃった雇用の問題については、冒頭から申し上げておりますけれども、意見書に何も足さない、何も引かないというのが本部の基本的な考え方であり、検討会も基本的にはそこに従っていくと考えておりますので、雇用の問題についてはいろいろ考えるところがありますが、今、議論は雇用の問題の前のA案についてどう考えるかということだと思いますのて、若干申し上げたいと思います。
 日弁連は大変苦労しておられると思うんです。やはり日弁連のメンバーというのはサプライサイドなわけで、その団体なわけですから、当然その中で執行部としてはいろんな苦労をしておられるだろうと。その御苦労については非常に敬意を表するわけですが、今おっしゃっているA案の中の、しかもこの部分だけを少し変えていく程度で、本当にユーザーの満足を得られるのかどうか。
 実は私、昨日、一昨日と一生懸命ホームページを、GoogleとYahooと、外国法事務弁護士という言葉を入れまして検索をいたしました。一千三十何件ございました。全部を見たとは言えません。しかし、3分の1くらいはおおむねどんなものであるかというのを拝見いたしました。
 そこで感じた1つの結論は、現状がどうであるとか、特定共同事業がどうだとか言っても、現実に外弁の人たちがどんなふうなことをやっているか。勿論、仕事の具体的な中身はホームページですから出てきません。しかし、どんな講演会をやっているかというのを見ると、非常に興味深いのは、例えば地方公共団体を集めた銀行主催の講演会、その中でPFIというふうな新しい公共事業のやり方、このことについてアメリカではどうやっているか。それは日本ではどうやったらいいだろうかという趣旨のことを講演会でお述べになっている外弁は何人もいらっしゃいます。
 あるいは、国際税務について、これは京都の立命館の主催だったと思いますけれども、国際税務のありようについていかに考えるべきか。その国際税務の考え方の中で日本の税制をどう変えていったらいいかとか、日本の税務当局のありようはどうあるべきかという趣旨のことをおっしゃっているような演題なんです。中身までは全部出ていません。
 そういうものを全部外弁の方々が議論をしている。しかも、講師として講演もなさっている。多分それはニーズがあるから、そういう部分について日本の弁護士が十分機能しないところで、そのプロフェッショナルな人はこの人だということで、多分呼ばれて行っているんだろうと。そう怪しいところが主催しているわけでも何でもないものです。
 そういうことを考えたら、このA案のような、一体原資格国法の方が主要であるとか、日本法が主要であるとかないとか、そういう問題として、主要と主要でないということで切り分けていいのだろうか。多分、それはアメリカでこうです、あるいはヨーロッパでこうですということが、そのまま実は新しく日本でPFIに関する法律をつくったり、あるいはその他の法律をつくったりするときに、ストレートに多分役に立つ話なんだろう。あるいは日本の法律を解釈していくときに、こういうふうに解釈した方がよりスムーズに現場は動きますよ。効率は上がりますよというお話をされるんだろうと。
 そういうふうにユーザーの観点、それから消費者としてそういう知恵をいただくことによって、より有効な業務なり、国民の生活そのものにPFIなどは関わるわけですけれども、公共工事の在り方ということについてまで、そういう知恵がいただけるのであれば、それを活用する方がいいわけであって、そのために、いささかどっちが主要か、主要でないかという矮小な議論で考えるのはどんなものだろうか。一法律家として考えてみると、私はむしろA案という小さな次元での変更ということでは、むしろ現状にさえも合っていないんじゃないか。今の法律違反だと言えばそうかもしれませんが、講演をするのが弁護士以外でもそういう法律についてコンサルタントがいっぱい講演しているときに、その講演もしてはいけないというのは私はいかがなものかと思いますので、そういうことが現状だとすれば、それを更に現実化していくためのアドバイスができるというところまで踏み込んでも当然いいんではないか。具体的な個別の案件についても、比喩を取ってアドバイスをするということがあってもいいのではないか。そうだとすると、A案は取り難いなという感じがしております。
 したがって、雇用の問題に関わっていくC、Dの方になりますと、いろいろ違う考え方がそちら側からはあります。それも実はホームページをたくさん読んで、勉強になることがたくさんございましたので、それはまたそのテーマのときに申し上げますけれども、そういう意味ではA案には私は乗れないと考えております。

○柏木座長 ありがとうございました。

○下條委員 今の目的の点は、たしか齊藤参事官が担当されたんじゃないかと思うんですけれども、98年の改正のときに、従前ネガティブリストであったものが、こういうふうにポジティブリストに変わったわけです。そのときの経緯もあるわけですけれども、何故こういう1号、2号、3号が書かれたかということですけれども、これは特定共同事業にほうり込んで、収益の分配をしてもいいですよということですので、やはりこれは外国法事務弁護士による何らかの貢献があるというところから収益分配の基礎があるということで入っているわけです。
 1号で言えば、外国法に関することですから、外国法事務弁護士が貢献できるでしょう。2号であれば、これは外国会社とか外国居住者のことですから、貢献できるでしょう。3号であれば、日本企業でありなから外資系、つまり外資が50%以上持っている。こういうものであれば外資系と言えるから貢献できるでしょうというところから収益分配の基礎があって、これを特定共同事業に入れて、収益分配することを認めましょうということで、これはその当時のNBLか何かの解説書にも書いてあるわけですけれども、そういうところに収益分配の基礎があるわけです。
 勿論、1号で言えば、今、久保利委員がおっしゃったように、外国法は今は必要とされると書いてありますけれども、これは齊藤参事官が冒頭説明されたように、必要とされるというのはせまいということであれば、参考となるとか、そういうふうに変えることは十分考えられると思います。
 いずれにしても、問題は何らかの外国法事務弁護士による貢献が考えられないような件、つまり、先ほど申し上げたように日本人間の近隣訴訟、そういったものとか、国選とかいったものについて、外国法事務弁護士もそこからの収益にあずかり得るとするのがいいのかどうか。そういうことが問題点だと思います。

○柏木座長 ありがとうございます。加藤委員。

○加藤委員 私はまずA案B案等の議論でありますが、基本的にはC、D案を含めて、規制緩和をできるだけやっていくという方向に賛成します。
 先ほど波江野委員からもお話がありましたし、久保利委員からもお話がありましたように、現実に問題を依頼する場合に、果たしてこの事案が特定共同事業の対象になるのかならないのか、なった場合にどちら側の対象になるのかをユーザーが判断しなければならない。あるいは相談を受けた場合に、実はこれは自分のところではなくて、隣であるというようなことがあるとすれば、それでユーザーのニーズに本当に応えられるのかということが一番の問題だろうと思います。
 そういう意味では、できるだけ外から見てわかりやすい透明性のある制度であるべきだと思います。
 それから、先の方に話が行ってしまうのかもしれませんが、先ほどの日弁連の御説明も含めてですけれども、外弁もいろいろで問題のある人もいるでしょう。同じように日本の弁護士にも問題がある人もある。ユーザー側にも、外国のユーザーも問題があるユーザーもあるだろうし、日本のユーザーの中にも問題があるユーザーがあるというのは、当然のことです。それを少しでも問題があれば、すべての問題点をクリアーすべく制度をがちがちに縛らなければならないというのは、全く間違っていると思います。
 そもそも本来は、自由であることが大前提であるべきです。しかし、多くの問題が発生する可能性があるとか、あるいは本人たちの注意義務だけでは十分にカバーしきれないというような場合に、初めて制度的な制約があるべきです。個々のあるかもしれない問題点をすべてクリアーするために制度設計をするのはいかがかと、私は思います。
 それから、雇用の問題についてだけ、意見書との関係で意見を申し上げておきたいと思います。
 意見書そのものは、前回も申し上げましたが、国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼に応える司法制度を実現すべきとの視点を念頭に置きながら、この調査審議を進めてきたということを冒頭に言った上で、将来の課題とは言うものの、外弁による弁護士雇用という論点を載せているわけですから、少なくともこれは国民に身近で利用しやすく、その期待と信頼に応え得る司法制度を実現すべき論点だというように指摘しているものであって、当然にこの検討会の中では俎上に上げるべき論点だと思います。
 とりあえず以上です。

○柏木座長 ありがとうございました。委員の皆様の御意見を伺いますと、特定共同事業の目的を緩和する、広げるというだけではどうも不十分じゃないかという意見が多いようにお伺いいたしました。ということは、A案にとどまらず、更にB案の検討も必要だろうということであろうと思います。ということで、更に検討を進めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

○柏木座長 ありがとうございます。
 それでは次に、共同事業の禁止規定廃止、弁護士と外国法事務弁護士が1つの事務所を共同経営することも可能とする考え方、すなわちB案ですね。これについて御検討いただきたいと思います。国際的法律サービスに対するユーザーのニーズに応えるべく、弁護士と外国法事務弁護士とが密接な提携関係を構築することが必要であり、このためには、弁護士と外国法事務弁護士が1つの事務所を共同経営することができるようにすることが重要なポイントとなってきております。この辺りを御留意いただきながら御検討いただければと考えます。
 なお、このB案につきましては、更に下條委員からアイデアが出ておりまして、共同事業の目的要件を撤廃しても、なお弁護士事務所と外国法事務弁護士事務所を別々にしておくという案も出されておりますので、この下條委員の案についても、併せて御検討いただければと思います。
 では、このB案につきまして、御意見はいかがでございましょうか。

○波江野委員 事務局からお出しいただいているB案で言いますと、共同事業の禁止規定は撤廃するけれども、雇用禁止と収益分配の禁止は存続させるということで、こういう形でパートナーシップを認めると言いながら、雇用禁止規定を存続させるというのは、言葉の遊びとしては非常に正しい論理的な帰結かもしれませんが、共同事業をしながら共同での雇用を認めないとの規制が残されるというのは、やはり実務上、運営上は片手落ちではないかなという気が致します。
 したがいまして、このB案に進んだとしても、雇用禁止規定がこのまま残っているのであれば、先ほどの審議会の意見書に戻れば、日本弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働を積極的に推進する見地からという書き方をして、「積極的に推進する見地」から言えば、雇用禁止をそのまま残しておくというのは、とても意見書の趣旨にそぐわないのではないか。そんな感じがいたします。
 下條委員からお出しいただいたB案というのは、そういう点で、共同目的要件を撤廃しても、別々の事務所でやるという御意見でございますので、先ほどのA案でも申し上げたように、入口が別々というのも、非常にユーザーサイドとしては分かりにくいという気がいたしまして、私自身はこの下條委員のB案にしても、事務局案のB案にしても、これよりもうちょっと進んだものにすべきではないかと、そのような感じがいたします。

○柏木座長 ありがとうございます。雇用禁止の問題につきましては、いずれにしても、更に非常に大きな問題ですので、時間をたっぷりかけなければならないかと思います。今の波江野委員の意見は、少なくともB案は当然であるという具合に理解しました。ほかに御意見ございますか。下條委員、どうぞ。

○下條委員 先ほどから波江野委員とか加藤委員の意見をお伺いしていて、ちょっと誤解があるのではないかと思うんですけれども、ユーザーサイドで3つの玄関があって、どの玄関に行くか選ぶ必要は全くないわけです。それを何か最初からユーザーの方で選ばないといけないというふうに理解されておられるようなんで、そこは物凄く誤解をされているのではないかと思います。
 勿論、ユーザーの方としましては、通常は自分が付き合っている弁護士のところに、あるいは外国法事務弁護士のところにお頼みに行かれるわけで、そうなった後に、頼まれた弁護士とか、外国法事務弁護士がその案件をどのように扱うか。それはすべて弁護士とか外国法事務弁護士の方のやるべきことでもって、ユーザーの方で最初からどこかを選んでいかないといけないということは一切ございません。そこのところが随分誤解があると思います。

○孝橋委員 ちょっと議論が混乱していると思うんですけれども、A案の問題点は、特定共同事業という事業体が存続するという形にしますと、特定共同事業の目的になる法律事務と、それ以外の法律事務の峻別の問題が起こるので、その問題がA案にはあるということを波江野委員も加藤委員もおっしゃっているんだと思うんです。下條委員のB案は、目的要件を撤廃されますから、下條委員のB案だとそれは問題なくなると。そこまではよろしいわけですが、事務所は2つにしたいというのが下條委員のB案かと思うんですけれども、私はやはり事務所は1つで動ける形にした方がいいという意味で、下條委員の御提案には賛成いたしかねるわけですが、そのポイントは、前回も申し上げたと思うんですけれども、伊藤忠商事の茅野さんがヒアリングでおっしゃっておりましたように、要するに、ユーザーとしては1つのチームで効率的なサービスを提供してほしい。日本の弁護士さんと外国法事務弁護士さんとが1つのチームになって、プロジェクト・チームという形で1つの組織体として動いた方がより成果物としてよいものができるのではないかという議論があったと思うんです。私もそれがいいのではないかという意味でこの2つの事務所にしないといけないという案には賛成しないわけです。
 茅野さんは、付随的な理由としては、別々の事務所から請求が来る形だとユーザーとしても請求額の予測がつきにくくなる、ということもおっしゃっておられました。それはそんなに重要ではないのかもしれませんが、どちらにしても、ユーザーのニーズに合ったサービスを迅速に、かつ効率的に、例えばその事務に張り付ける人数もそのときによってフレキシブルに変えていくとか、そういうことをするためには、1つの事務所の方が成果が上がるのではないかという意味で、そういう意味で下條委員のB案には賛成いたしかねるということでございます。

○久保利委員 確かに議論が混乱しているというか、同じB案という表現があるものですから、事務局のB案と下條委員のB案と、どう違うのか、下條委員から御説明をいただいた方がよいのではないでしょうか。

○下條委員 事務局のB案というのは、波江野委員が御指摘になったように、中途半端というか、わかりづらいですね。1つの事務所、1つの事業体と言いながら、雇用禁止は存続させるということで、非常にわかりにくい。果たしてこんな形態が現実問題としてあるのかどうかということで疑問があるということです。
 この事務局のB案をもう少し徹底してわかりやすくするとすれば、やはり外国法事務弁護士と弁護士とを別々の事務所にせざるを得ないんじゃないかということです。
 つまり、雇用禁止規定は存続させるということですから、雇用禁止規定を存続させながら、そこの共同事業体にはいそ弁の日本弁護士もいるわけですから、その点をすっきりさせるためには、あくまでもいそ弁の日本弁護士は日本弁護士に雇われているということをはっきりさせるためには、外国法事務弁護士と弁護士とは別々の事務所にせざるを得ないであろうというところから来ているわけです。
 ですから、別々の事務所でありながら、1つの事務所みたいな外観を有するようにするために、では、どうするかということで、その後ちょっと工夫が要るんですけれども、今、考えておりますのは、建設事業などで行われるJV、そのような形でよろしいのではなかろうかと考えております。
 つまり、A建設とB建設がジョイントベンチャーでもって事業をやる場合、A・Bジョイントベンチャーというのができますけれども、そういうような形が1つ考えられるのかなと考えております。

○齊藤参事官 事務局から、AからDというふうにお示ししたのは、現行の規定は、どの規定を維持し、どの規定を廃止するか、これを組み合わせにして、小幅な緩和措置から、大幅な緩和措置という順序で整理をしてみたということなんです。ですから、組み合わせのどれが妥当かということ自体を御議論いただくのではなくて、どの規定が廃止されると、どのような制度的な内容になるのかということの御理解のために参考にしていただきたいというのが主眼なんです。
 ですから、今B案というのが問題になっているのは、B案における共同事業における在り方、これが適切かどうかということを御議論いただきたいんです。
 事務局のB案における共同事業の在り方としては、基本的に共同事業の対象になし得る法律事務の範囲については特段の制限がなくなるし、併せて1つの事務所を、外国法事務弁護士と弁護士が共同で経営することができる状態になるんだと。そのことを前提に御議論いただきたいということなんです。
 それにプラス、雇用は全面禁止であるべきだということをセットで何もその妥当性をこちらで提案しているという趣旨ではございませんので、そこを誤解のないようにお願いしたいと思います。
 それとの対比で下條委員のB案というのを理解した上で御議論を深めていただければと思います。

○柏木座長 ありがとうございます。大塚さんどうぞ。

○大塚課長補佐(下川委員代理) まず、私はB案では不十分であるという立場なんですけれども、B案そのものについての各論というよりは、検討する上での視点なんですけれども、ユーザーの使い勝手ということが今出てきているんですが、それを更に超えて、日本経済の国際競争力を維持強化していくには何が必要なのかというより大きな視点があると思うので、その点について一言説明させていただきたいと思います。
 まず、現在の司法制度でなぜ改革が必要かという声が盛り上がってきている背景としては、司法界が経済界のニーズに対して、国際性、ノウハウ、スピード、アクセスといった面で、まだ十分応えてないという指摘があるのではないかと思うんです。もし、それが十分に、現在の司法界が応えているのであれば、改革の必要性という声はこれほど高まってはこなかったと思うんです。
 特に国際競争力という面では、皆さんよく御存じのように、日本はかつての国際競争力がなくなって、抜本的な構造改革がない限り、中国に追い越されて、日本は二流国に転落してしまうのではないかという危機感が強くあると思うんですけれども、その中における法律サービスが非常に重要な役割を担っていて、日本が構造改革をやっていく中で、法律サービスがしっかりして、この法律サービスのインフラがしっかりしていなければ、絶対スムーズに進まないのではないかと思うんです。
 1例として、ちょっと前になりますが、長銀とか日債銀が倒産して、それを競売に付すといったときに、外国からの入札が少なかったんですけれども、その理由は何なのかというと、デューデリジェンスとか、いろんな法律的な仕事を担う十分な法律事務所が見つからなかったと、絶対的な数が不足しているという状況があると思うんです。
 法曹人口を比べてみると、意見書にも書いてありますけれども、イギリスが8万人、ドイツが11万人、アメリカはもっと多いんですが、それに比べて日本は2万人程度であると。これを今度の司法試験の合格者数を増やすという改革をやるということで今、検討されていると思うんですけれども、この目標を聞いてみると、5万人規模にもっていくのに15年以上かかるという話なので、15年も待っていたら、その間に日本は二流国以下に転落してしまう可能性さえあるので、今、すぐにでも法律インフラのサービスをどうやって強化していくかということを考えなければいけないので、日本の法曹人口を増やすのにそれだけ時間がかかるのであれば、より外弁の人たちが活動しやすい環境をつくらなければいけないということになるのではないでしょうか。
 もう一つは、日本自体の構造改革をやっていく上で、どうしても外資が入ってこなければ日本は復活できないと思うんです。これは例えばイギリス病から抜け出すのにサッチャーが何をやったかというと、彼女自身がセールスマンになって、イギリスにどんどん来てくださいと、日本企業が進出しやすくなるように優遇税制とか国内体制を備えてやったわけなんですけれども、今の日本は全く同じ状況で、対内投資というのは極端に不足して、対内投資をしやすい環境をどうするかというのは非常に重要な論点なんですけれども、そのためには、外弁と日本人との連携が自由化されて、彼らが安心して企業買収なり、あるいは不良債権で出てきているものを買うとか、そういった活動ができてくるということが、日本の構造改革を進める上で非常に大きなステップになるのではないかと思われるんです。
 そのためにも、外弁が入ってくることによって、日本の法曹界自身もそれによって、競争が激しくなって、最初は大変な思いはすると思うんですけれども、逆に競争力が強化されるのではないかと思いますので、そういう観点からの御検討もお願いできればと思います。

○柏木座長 久保利委員。

○久保利委員 大塚さんのおっしゃっていることは、総論的にはよく言われることなんですが、幾つか根本的な間違いがあるだろうと思います。
 1つは長銀、日債銀の外資が名乗りを上げなかったのは、決して弁護士がいなかったからではありませんで、全く別の理由あります。私は当時、日債銀の顧問弁護士でございましたので、相当深いことを知っておりますが、それは全く的外れの御指摘だろうと思います。
 外弁がたくさん入ってくる。しかし、現在でもまだこれだけ特定共同をやって、300 人ぐらいですか。これを更に5倍に増やしても1,500 人、今おっしゃっていると2万人しかいない。これが5万人、6万人になるためには大分かかる。ここを外弁でどう埋めるんだと。私は、外弁というものを今の弁護士の足りないことの代わりにやるためには、まず日本法をやってもらわないといけない。その人数を、更に急激に1万人とかとんでもない数増やさないといけない。そんなことを一体日本国民が希望しているだろうか、日本国政府が本当に希望しているだろうかというふうに考えると、そうではない。
 例えば、現に私のところへ外弁から多く依頼が来るのは、民暴弁護士を紹介してくれよ、やくざ者を追い立てするのにどうしてもなかなかできないんだというもの。まさか久保利さんは忙しいからやらないだろうけれども、そういう民事暴力介入弁護士を紹介してくれよという依頼が来ます。要するに、欲しいのは日本の弁護士が足りないんです。しかし、その代わりに外弁が役に立てるとすれば、それは自分の原資格国法についてしか役に立てない。そこを明け渡して、日本法をどうぞというわけには、国の主権の問題からして世界中全部そうなわけですから、それはできない。
 したがって、大塚さんのおっしゃっていることは、大きな意味で日本の司法が弱いから、したがってこういう改革の問題が起き、そのことに誠実に対応していかなければいけないということについては全く同感でございますが、では外弁問題をそういう切り口だけでとらえるのかというと、やはりちょっと違うところがある。勿論、国際競争力というときに、日本の資本が海外に出ていく。あるいは、中国に出ていく。そういうときに中国の弁護士さんに外弁として来てもらって、その人たちのアドバイスをいただきながら中国へ行くとか、これは大いに意味があると思います。
 しかし、外資を呼ぶときに、日本法のアドバイスという切り口になったら、これは違うだろうと。しかし、外資が入ってくるときに信用のおける人が日本にちゃんといて、その事務所が日本のしかるべき弁護士事務所とちゃんと提携をしているから、だから安心して出ていけるということだったら、私は全く賛成です。そういう意味でやっていくために、A案はだめだとして、B案で十分なのかどうなのか、B案という案の下條私案と事務局案というものがどう違うのか。確かに参事官はこの条項を削ったらこうなるという、そのスキームのモデルとしてお出しになったんだとはおっしゃるけれども、我々は今ある条文自体を前提に、これの何を取ったらどうなるという検討をするつもりはないので、やはりあるべき外弁はどういう像を持って、どんなふうになってほしいのかということを議論するわけですから、その意味では下條先生のB案というのを1つ考えてみて、これで行ける行けないかという議論をする方が意味があると思います。
 というのは、事務局のB案というのは、1つの事業体だと言っていて、波江野委員がおっしゃるように、雇用ができない。それは条文を外していくと、確かにそうなるわけですけれども、そのことがいいか悪いかを議論してみても、参事官がお出しになった趣旨とは違うのだろうと思うので、その意味から言うと別々の事務所というふうにする意味が、逆に下條先生のお考えでは、こういう意味があるんだというところを御説明いただけると、わかりやすくなると思います。その上で、それでもいいか悪いかという議論の方がいいと思います。進行も含めて申し上げました。

○柏木座長 議事の進行につきましても、まさにそのとおりで、下條案というのは、共同事業の目的は撤廃するけれども、事務所としては別々にキープしておく。事務局案というのは、目的の制限を撤廃してしまったら、2つの事務所に分割しなければいけないということは意味を成さないのではないかということになってしまうということが違いだろうと思います。
 今の久保利委員の疑問点に対して、下條委員から御説明いただけますでしょうか。

○下條委員 今、大塚さんの方から、大所高所から立って考えないといけないということで、経済的な視点をポイントアウトされたわけですけれども、まさにそれも重要な点だと思います。
 あともう一つ大所高所から考えるんであれば、久保利委員も今申されたように、国家主権の問題、つまりこれはまさに司法制度の根幹に関わることですから、御存じのように司法制度というのは裁判官と検察官と弁護士、それでつくり上げている。まさに司法制度というのは日本の主権の根幹に関わるところであります。ですから、そういうところがこの前御紹介いたしましたように、弁護士の部分がほとんど自由化して、外資が半分以上占めるような状況、これは非常に好ましくないことであるというふうに考えます。
 ですから、そういう意味で、雇用禁止を撤廃してしまえば、まさにこの前御紹介したフランスとかドイツといった状況になりかねないわけで、あと一番最初に小原弁護士が諸外国の例を申されましたけれども、諸外国では弁護士の数が1,000 人を超え、年間の売り上げが1,000 億円を超えるというようなところもあるわけですから、そういうようなところがどんどん日本の弁護士を傘下におさめてしまうということは、膨大な資金力を持っているわけですから可能なわけです。
 現在、ニューヨークの弁護士事務所の初任給が幾らかというと、これは日本円に直すと、1,900 万円ぐらいです。16万ドルぐらいだと伺っています。ロースクールを出て、司法試験に受かったばかりの弁護士の初任給が16万ドル、1,900 万ぐらいです。ですから、そのような状況でもって、どんどん言わばそういう資金力のあるところがヘッドハンティングしていって、日本の弁護士をどんどん傘下におさめるということは非常によく考えられることであります。
 そういうふうに司法制度の一環を担う弁護士が、ドイツとかフランスのように外資に席巻されてしまう。そういうことは非常に好ましくないということから、雇用禁止規定は存続させないといけないであろうというところがあります。
 したがって、雇用禁止規定を存続させながら、先ほどの共同事業の目的要件は撤廃するというところで、どういうふうに調和を図ったらよいのだろうかというところを考えたときに、やはり現状どおり外国法事務弁護士と弁護士とは別々の事務所にするということが解決方法ではなかろうかというように考えております。

○久保利委員 1つ質問ですが、別々のというのと、1つということの違いなんですが、形態としては同じ場所に、同じように机を並べていて、入口が1つなのか2つなのかよくわかりませんけれども、でも入っていくと一体としてお仕事をされているということはそのとおりなんですね。そうすると、別々という意味は、会計的に別々という意味なんですか、それとも指揮命令系統はやはり別々なんですか。

○下條委員 両方です。

○久保利委員 両方とも別々だと。逆に事務局が言っている1つというのは、下條委員の御理解では、指揮命令系統も一本になってしまい、会計的にも一本になってしまうということなので、それでは外国法事務弁護士に実際上コントロールされてしまうから、別々にしましょうということなんですか。

○下條委員 はい。

○久保利委員 わかりました。質問はそれだけです。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今の、指揮命令系統が一本というのは、共同の事務所ということになると、パートナーが2人いると別に一本になるわけではなくて、それぞれが指揮命令系統はできるのではないですか。

○久保利委員 それがなくなるというふうに下條先生はおっしゃっているわけで、それは多分こちら側のパートナーが10人いて、日本人パートナーが1人しかいないとか、そういう数の問題も多分おっしゃっているんだろうし、力量の問題もおっしゃっているのかもしれませんけれども、少なくともパートナーだからマッチ・イーブンだというふうにはならないというのが、1つの事務所に反対する下條さんの理由ですね。

○下條委員 弁護士の現実の仕事ぶりと言いますのは、やはり弁護士なり外国法事務弁護士なりがアソシエートを使ってやるということで、例えば今の例で言えば1つの事務所ということを仮定すれば、外国法事務弁護士がいそ弁のだれそれを呼んで、日本法ではどうなんだというふうに聞くということが、それはやはり指揮命令下にあるというふうに思います。

○柏木座長 波江野委員。

○波江野委員 先ほどの日弁連の方の御説明のときに、アンケートをお取りになって、かなりの方たちがこの慎重論に賛成であるというふうにお答えがあったかと思うのですが、どれぐらいの回答者数だったんでしょうか。

○古井日弁連副会長 単位会、各弁護士会への照会と、日弁連の関連委員会に対する照会と二通りございまして、単位会で回答が来ているのは52会のうちまだ20ぐらいです。関連委員会は、4つほど回答が返ってきております。

○波江野委員 各会員に対する個別の質問というのはされてないわけですか。

○古井日弁連副会長 はい、しておりません。

○波江野委員もう一つだけこの関係で申しますと、雇用の問題が出てきて、チャージの高い、フィーの高い弁護士が海外から入ってきて、日本の弁護士が雇用されて指揮命令下に入ってしまうという危険性は確かにあるかもしれませんが、今、慎重論の意見をお出しになったような方たちは、フィーが高い安いではなくて「人権のために」弁護士として活動されるわけでしょうから、フィーが高いからといって海外になびくというようなことはないのではないか。多少、皮肉を込めた意見なんですけれども、その辺りはいかがですか。

○柏木座長 今の御質問に対しましては、むしろ日弁連からお答えいただいた方がよろしいかと思います。

○古井日弁連副会長 どうお答えしたらよろしいか、まず、この「外弁問題」というのは、日本の弁護士の大多数の人間は、自分には関係ない議論というふうに思っているようです。なぜかというと、自分が外弁と一緒に仕事をした経験とか、自分の単位弁護士会の中に外国法事務弁護士が登録しているという単位弁護士会は、少なくとも5つから8つぐらいで、ほとんどの方は「外弁問題」というのは自分のことではないという認識を持っている方が多いというのが1つです。
 ただし、その外弁問題がいつも貿易問題との絡みで、外国法事務弁護士が日本で自由に仕事ができるよう門戸を広げようという議論の中でされておりますので、日本に進出してくる外弁という認識は非常に強いというのが2つ目です。
 3つ目は、現代のいろんな状況の中で、外資がいろいろ日本の中に入ってきています。例えば保険の問題、銀行の問題、そういうところが外弁を使って進出してくるということになると、今までなかった傾向としては各地方、今まで経験のなかった単位弁護士会の中でも、そういうところが進出してくる可能性があるので、将来的には非常に危惧している問題であるといういろんな要素がございます。
 やはり、それはペイが高くて、安定した生活ができれば、それは人間の欲求としてはどうしても出てくるものです。我々の仕事は、どちらかというとサービス業で、日銭稼ぎのような仕事をしているメンバーがほとんどでして、安定的な収入源があるかというとそうではありません。その中で、公益的な仕事もしながら自分の満足も得て、それで不安定なところもカバーしているというところが大多数の弁護士の考え方だと思います。
 そういうようないろんな事情から考えると、どうしてもこの問題については要件緩和であれば、広くではなくてなるべく狭くてもいいのではないかというような議論になってしまうという傾向がございます。

○加藤委員 今のお話に絡みまして、今までも大ローファームに席巻されるのではないかという御意見が何回か出ているわけですけれども、基本的に我々ユーザーサイドから見れば、そのようなことはあり得ないと思います。
 まず一つは、今のお話にもありましたように、大ローファームに席巻されるのかされないのかというのは、2つの側面から見ないといけないだろうと思います。1つはユーザーサイド、1つはサプライサイド。先ほどもお話がありましたように、大ローファームの場合に、非常に待遇がよろしいと、待遇がよろしいからそこに雪崩を打って日本の弁護士は所属しにいくのだと。これはサプライサイドの話でありまして、我々ユーザーサイドには全く関わり合いのない話です。
 先ほど波江野委員がおっしゃいましたように、司法を扱う立場の人として、本当にそうなのかと疑問に思います。
 もう一つのサプライサイドの問題としては、我々のビジネスの場合ですと、製品の品質、あるいは価格、納期、そういう製品そのものの品質の問題であります。
 ここで仮に大ローファームに負けるのだとして、それでもなおかつその道を閉ざすのだとしますと、このことは低品質のローサービスでユーザーは満足しなさいということでありまして、これはとても我々は納得できないということです。サプライサイドの問題は、この2つの側面があるのではないかと思います。
 逆に我々ユーザーサイドの話として、我々ユーザーは本当に大ローファームに全部行くのか。我々が相談にいかなければ大ローファームは高い処遇を勿論維持できないわけです。それだけのニーズがあって、日本の弁護士さんが負けてしまう、全部大ローファームに行ってしまうというチョイスを我々が本当にするのかという問題です。いみじくも今、日弁連の方からお話がありましたように、大半の弁護士さんが関係ないというように考えておられるのと同時に、我々ユーザーとしてもこと純粋に日本法の問題を、外弁を含めた大ローファームのところに相談に行くか、離婚調停でそんなところに行くかというと、そのようなことはないのです。我々は純粋に日本法に関連する問題であれば、カタカナ、目の青いところに行くよりは、やはり日本人に相談する方が文化的にも、思想的にも非常にわかりやすいし、わかりやすいということはそれだけ時間もコストも安くて済むということですから、当然そちらをチョイスするわけです。私が申し上げるのもいかがかとは思いますが、余り自虐的に自分たちの能力はないのだと思う必要はさらさらないのではないかと思います。

○柏木座長 ちょっと議論を整理させていただきたいんですけれども、下條委員の御説明で、下條案、仮にB’としておきますと、外弁事務所と弁護士の事務所を2つに分けたままにしておくその理由というのは雇用禁止の規定をはっきりと守らせるためだということでした。
 私が今日予定していた議事の進め方としましては、雇用禁止の問題は大問題で、さっきから皆さんそっちの方に議論がなびくんですけれども、その議論は大問題なので後に置いておこうと思ったんです。
 事務局案のB案は、A案では不十分である、共同事業の要件を緩和しただけではだめなので、これをもう撤廃した方がいいのではないか。撤廃したとすれば、2つの事務所を区別しておく意味もないのではないかということから、事務局のB案というのが出てきたわけです。
 それに対して下條案が出てきたわけですけれども、下條案は雇用禁止と密接に関連してくるわけです。だから、こういう議論の整理の仕方でよろしいでしょうか。つまり下條案はしばらく置いておいて、置いておいてというのは雇用禁止の問題を皆さんで議論して、やはり雇用禁止にしておかないと外国の弁護士事務所に席巻されてしまうんだと、それではやはり日本の国としておかしいのではないかと、だからやはり雇用禁止は厳格に守らせなければいけないと。そうすると、たとえ目的の制限を撤廃したとしても、事務所を2つにセパレートさせておく必要があるという具合にはね返ってくるかもしれない。そういう条件つきで、とりあえず今は雇用禁止の問題の結論いかんによっては、もう一回下條案の検討に戻ってくるという前提で、共同事業の目的が撤廃されたとすれば、そして雇用禁止の問題がないとすれば、1つの事務所を保持させてよろしいかということで議論を進めてよろしいでしょうか。
 今のような、つまり雇用禁止の問題はもう一回後から戻ってくるという前提で、共同事業の目的を撤廃した場合に、1つの事務所を認めてもいいという考え方につきまして、いかがでしょうか。

○バイヤー委員 1つの事務所で認めて考えた方がいいと思います。別々の事務所となると、私にとっては非常に複雑で、また元に戻る状態になってしまいます。

○柏木座長 道垣内委員はいかがでしょうか。

○道垣内委員 雇用の問題がなければ、収益分配の話だと思うんですけれども。

○柏木座長 収益分配は当然行います。

○齊藤参事官 勿論1つの事務所を共同経営できるというのは、収益の分配を伴うということを前提で考えていただいて結構です。

○道垣内委員 日本の弁護士さんでも、いろいろ専門が分かれていて、御自分で得意とされない分野については弁護士さんの知らないことをアドバイスするのはどうかと思いますから、そこは多分なされないんだろうと思いますので、共同で仕事をされる。その中に、外国法についての専門家もいるという形であれば、それは共同事務所が自然だろうと思いますけれども、その延長線の問題ではないか。それで知らないことをアドバイスするのは、勿論外国法事務弁護士のやってはいけないことでございますけれども。

○柏木座長 乗越委員、いかがですか。

○乗越委員 まさに今、道垣内委員もおっしゃいましたように、知らないことはできるはずはないし、さきほど久保利委員がおっしゃったように、外弁が日本法についてアドバイスするということは、将来もあり得ないでしようし、私個人的にも日本法の問題が出てきたら恐ろしくてとてもアドバイスはできないので、いつも日本の弁護士の先生にお伺いしておりますが、そういうインセンティブも恐らくないんだと思います。
 そういう前提で言えば、目的禁止条項を仮にA案の言いますところの撤廃するという前提に立てば、目的は同じ事務所が別々に2つあって、それが提携して何か事業を営むというのは、論理的にあり得ないのではないかという気がいたします。雇用問題とか収益分配とかを別にしますれば、論理的には1つの事務所にするというのが素直な結論ではないかと思います。

○柏木座長 玉井委員、いかがですか。

○玉井委員 雇用禁止の話はまた後ということですから、雇用禁止を存続させるのであれば、下條先生のB案というのがあり得るというのはよくわかりました。それはさて置き、ということでありますけれども、B案程度のことは当然であるということだと思います。

○柏木座長 ありがとうございました。下條委員のB’案につきましては、雇用禁止の規定の議論を終えた時点でもう一回カムバックするという前提で、大体B案までいってもいいのではないかと、1つの事務所の共同経営することも認められるべきではないかという意見がかなりあるように理解いたしました。こうした前提で更に検討を進めたいと思います。
 次に、49条2項後段に法律から入っていくのがいいかどうかという議論はありますけれども、盲腸のように残っております49条2項後段、収益分配の禁止規定がございます。これにつきましては、共同事業の推進との関係でここで御検討いただきたいと思いますけれども、この規定を維持するべきか、廃止すべきかということについては、いかがでしょうか。
 これは、もし共同事業が許される、目的が撤回される、ということになれば、その範囲内では収益分配というのは当然許されるわけですから、それ以外の収益分配というと、例えば外弁が日本でほとんど仕事をしないで、日本の弁護士と収益分配契約を締結するというシチュエーションで、なかなか考えづらいのではないかと私は思うんですけれども、いかがでございましょうか。これをそのまま残しておく意味がありますかね。

○久保利委員 意味があるかどうかはわかりませんけれども、今おっしゃったように、共同経営をしない場合に収益分配はできません、収益分配がしたかったら共同で事業を行いなさい、と今のようなものを残しておいて、それをやる人がいるか、いないかはわからないけれども、すなわち提携・協働というものを推し進めるためには、こういうマイナスがありますと、逆に共同事業にはこういうプラスがありますというものとしては置いておく意味はあるのではないか。
 したがって、それを禁止しないということになると、共同事業でなくても収益は分配できるんだから、収益分配だけを考えましょうというところがないとは言えないのではないだろうか。したがって、あえてこれを削除しなければならない積極的な理由が逆にあるのだろうか。むしろ、そういう事務所は歓迎だと、共同事業をしないで収益だけ持っていくような事務所は是非来てほしいというニーズがあるならば、これは削除しなければいけないという議論になりますが、特にどちらともならないのならば置いておけばいいのではないかという感じがして、基本的には外弁問題というのは、日本の弁護士と外国法事務弁護士がなるべくいい関係で協働していい仕事をしてください、まさにさっき大塚さんがおっしゃったように、日本の全体としての法的なパワーというものを上げるために、いい仕事をするためにどういう制度が一番いいかというと、私はやはり雇用の問題を別にすれば、共同で一つの事務所でいい仕事をしていただくのが一番いいのだろうと思うのです。そちらへ制度設計をして、そちらへ誘導するということならば、私は第2項というか、後段の部分は置いておいてもいいのではないだろうかという気がするんです。

○下條委員 典型的な例として考えられるのは、外国法事務弁護士が、日本の弁護士にある案件を紹介して、自分は何もしないで一種のあっせん料を取るというのが考えられると思うんです。そうであれば、そういうのは禁止すべきだと思います。

○齊藤参事官 ちょっとよろしいですか。そのあっせん料というところですけれども、典型的に外国法事務弁護士が日本の弁護士に事件紹介をして、その対価を得るというのは、その現象だけとらえれば、日本の弁護士は事件紹介に対して対価を支払ってはいけないということは倫理上も禁止されていますから、そのことだけのために49条2項後段の規制を残す必要はないんだろうと思うんです。

○久保利委員 倫理より法律の方がいいのではないですか。

○齊藤参事官 しかし、そこはある意味であっせんだけで対価を得るということ自体は否定的に考えられていることですから、そのことの実現のために何か特段の立法政策ということまでは考えなくてよろしいのではないでしょうか。

○柏木座長 立法のバランスなのではないでしょうかね。つまり、一般的に日本の弁護士でも倫理規定で禁止されているのを法律で更にぎらぎらと書く必要があるのかということのような気がするんですけれども、そこまでの必要があるのかという問題です。
 今、下條委員がおっしゃったようなことは、私は現実には考えられないような気がするんです。確かに港区に住んであっせん料だけ取って生活できるかというと、生活できないわけです。なぜ、そんなことをやらなければいけないか。インセンティブがほとんどない。やはり、日本に来た外弁は自分で仕事をする過程で、あっせんを行うことになるのではないでしょうか。

○下條委員 例えばさきほど久保利委員がおっしゃったような民暴の件です。自分が紹介した民暴の件を扱って、100 万円なら100 万円を依頼者から取ったら、そのうち20%はおれによこせとか、そういうのはあり得ると思うんです。

○久保利委員 もっともっと高いと思いますよ。多分けたが違うと思います。

○下條委員 それとさっきおっしゃった、倫理規定というのは、強制力がないんです。今、懲戒の事由にもならないという解釈になっています。

○齊藤参事官 懲戒の事由にならないというのは、倫理規定違反だからというだけの理由では懲戒にならないわけで、倫理違反の行為自体が懲戒に値する非行行為だと認定されれば、勿論懲戒になるわけです。

○道垣内委員 目立つかどうかという話ですが、49条の2項に残すと目立つと思うんですが、多分場所は違ってきて、49条の2の中の後ろの方の項で、第1項の形態によらずして外弁は、弁護士がする仕事について報酬を得てはならないというふうにさらっと書けば、目立つかどうかという点について言えば、目立たないのではないかと思います。

○齊藤参事官 少し事務局が出しゃばり過ぎかもしれませんけれども、目立つ目立たないというレベルで立法政策を考えるというのは、いささかいかがと思うので、共同事業の禁止という前提があるために、それを潜脱させてはいけないということで収益の分配もなお大きく規制しておかなければいけないという思想の流れでこれまで来たと思うんですが、もしも共同事業が基本的に自由化してもいいんだという考えに発想を変えていくのであれば、収益分配というものだけの規制を維持しているということの総合的な意味での必要性なり有用性というものを冷静に御判断いただいて、それで素直な方向性を見出していただきたいという感じがしますけれども。

○久保利委員 ただ疑問なんですが、今だって特定共同というものについては収益分配をしていいわけですね。しかし、特定共同を組まないで、これをするかもしれないということでこの条文があるのではないですか。49条2項の後段は現在存している。前段の部分については、ある種例外規定として特定共同事業というものがつくられた。しかも、共同事業を禁止しているけれども、特定共同か、共同事業か何かは関係なしに、後段が今あるということは、さきほどおっしゃったような単純なものを想定しているのではないですか。今、現存することの意味はどういう事態を想定してこれを置いているんですか。

○齊藤参事官 ですから、それは実例があるかどうかわからないんですけれども、49条2項後段で想定されているのは、典型的には商法の匿名組合のようなものだろうというふうに言われています。要するに日本の法律事務所に外国法事務弁護士が出資だけをして、その出資先の事務所での法律事務の取り扱いには一切関わらない。しかし、法律事務所の方で収益が上がれば応分の分配を受けるという形が典型的なものとして想定されているということなんです。

○久保利委員 それは逆に言うと、特定共同の制限を撤廃した場合に、今のようなケースはあっていいんですか。

○齊藤参事官 あっていいということになります。

○久保利委員 出資だけしてお金を得ていって、それは許されるとすればその理由はどうしてですか。

○齊藤参事官 ですから、共同事業の基本的な禁止ということもなくなって、併せて収益分配のみの規制もなくすということであれば。

○久保利委員 いや、なくすのではなくて、それが今の収益分配規定の2項の後段は残っていた場合には、今おっしゃったような匿名組合みたいなものは許されないんでしょう。現状も許されないでしょう。

○齊藤参事官 はい。

○久保利委員 ということは逆にこれを外すということは、共同事業所でも共同事業体でもないものが出資だけして匿名組合のようなもので、それから利益を上げていっていいかどうかという判断に係るわけでしょう。それは、今だめだと言っているものが、共同事業がいいということになったときに、何でそれはよくなるんですか。
 要するに、私が言っているのは、今それがだめなものが、何によっていいという話になるか。それは共同事業体で一緒にやっていくからいいという部分はあると思うけれども、共同事業を組まない人が出資だけしてお金を持っていくということが、2項の後段を撤廃してどうしていいよというふうに言ってあげる必要があるんでしょうか。それは何か協働とか提携というのをより強める、そういう積極的な意味を持つんでしょうかという疑問です。

○乗越委員 弁護士法のことはよく知らないんですけれども、仮に49条の2項の後段が外弁との共同事業に絡むものではなく、独立のルールとしてここにあるということであれば、恐らくその趣旨は、さっき久保利委員や下條委員がおっしゃったように、何か社会的に見て通常許されないような形態の出資関係というものを防ぐ趣旨であろうと。
 そうだとすれば、恐らく弁護士法にも同じようなルールがあるのではないかと思うんです。例えば、ある弁護士が、他の弁護士事務所に出資だけして上前をはねるというふうなことはいけないというルールがあれば、恐らくこの後段は独立したルールだと言ってもいいんではないかと思うんですけれども、そうではないのであれば、これは外弁との共同事業の関係である後段ではないかという気がするんですけれども、いかがでしょうか。

○柏木座長 内国民待遇のようになる、ということも関係するのではないですか。

○乗越委員 といいますか、何のためのルールですかということを考えれば、社会的によくないことを防ぐのであれば、きっと弁護士法にも同じルールがどこかにあるのではないかなと思っただけです。

○齊藤参事官 今、私の理解では、弁護士法に特定のもの、弁護士と収益の分配をしてはならないというような規定はないです。

○乗越委員 だとすれば、私の印象では、49条の2項というのは一つ一体として読むべきものではないかなという気がいたしますが。したがって、共同事業の前段が消えるのであれば、後段も当然消えてしかるべきものではないかなという気がするんですが。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 私は、過剰規制は基本的にすべきではないということで、どうしても必要であればともかく、今例として出されているのは非常に例外的なケースであるということだと思います。
 もう一つは、外弁に対する扱いなんですけれども、アメリカのABAのペーパーなどを見ていましても、結局外弁はローヤーとして扱う、その資格を取った国の弁護士会の規律に服するということであれば、それは全く自分たちと同じプロフェッションとして扱うんだということがABAの職業倫理委員会で決定されていますから、そういう人たちを対象として、相当例外的なケースを想定して、わざわざ法律事項としてそれを規制しなければいけないかということに対して強い疑問を感じています。

○下條委員 今、ABAの話が出ましたから申し上げますと、この前も御紹介しましたように、ABAというのは任意団体でもって、各州がこういうルールを採用しなさいというだけなんです。採用するかどうかは各州にゆだねられています。
 ABAというのは、やはり大きな力のあるニューヨークの大ローファームとか、そういうところが牛耳っていますから、どうしてもGATSとか、そういう関係でもって、諸外国にリーガルマーケットをオープンさせるために、まず自分のところがオープンしないといけないということで、例のFLCルールというのをつくって、盛んに各州に同じものを採用しなさいと言っているわけです。
 ところが、この前御紹介しましたように、FLCルールと全く同じものを採用したのはわずか4州にしかすぎないんです。ということは、残りの47州では採用していないわけです。
 そういう意味で、そのままストレートにアメリカ全土がそうなっているというふうには全然考えられないということを御理解いただきたいと思います。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今、4州だけというお話がございましたけれども、少なくともパートナーシップの問題と雇用の問題に限っては24州で認められておりまして、実は昨日WTOサービス交渉でアメリカ等との議論があったんですけれども、そのときにアメリカ自身がそのように言っていました。24州というのは、アメリカの経済的活動の80%〜90%を占めているものであるという説明をしておりました。

○柏木座長 ちょっとアメリカの議論はさておきまして、日本の議論として共同事業の枠を撤廃してしまって、外弁事務所と日本の弁護士が一つの事務所を経営できるということにした場合に、収益分配の規定がそのまま盲腸みたいに残ってしまっているわけですから、そのまま残しておくべきかということなんですけれども、玉井委員何か意見ございますか。

○玉井委員 私は、2項後段の収益分配禁止規定というのは、規定の体裁から言いましても、やはり雇用の禁止が1項に書いてあって、それで2項の前段に共同事業の禁止ということが一般原則として書かれていて、言わばコアを担保するための防御体という意味になろうかと思います。
 ですから、特に2項前段の規制を撤廃する場合に、後段だけ残すというのは、一部分を残すということではなくて、別個の新たな規制をつくるべきかどうかというスタンスで議論をすべきことだろうと思います。

○柏木座長 孝橋委員、いかがですか。

○孝橋委員 私は、49条と49条の2との関係からいきましても、やはり49条ができたときの思想と、49条の2がつくられたときの思想が若干違っている部分があるのではないかという感じがいたしておりまして、今の段階では更に49条の2がつくられたときと違う発想で法律の在り方を考えようとしているわけですから、今、齊藤参事官がおっしゃったように、もし日本の弁護士法に外弁法49条2項後段のような規定がないということであれば、あえてこの部分だけ残しておく必要がどれだけあるのかという、そういう疑問を持っております。
 そういう意味では、撤廃する方向で考えてよろしいのではないかというふうに考えております。
 以上です。

○加藤委員 条文の構成なり、あるいはその解釈なり、できたときの経緯なりというのは私にはよくわかりませんが、共同事業を解禁することが、ある意味で日本の弁護士にとって非常に辛いことだとすれば、共同事業は営めるようにするけれども、分配を受けてはいけない。つまり、共同事業の中で純粋に日本法に限るものではないかもしれませんが、外弁が全く関わり合いをしなかった法律事務については、外弁の方に分配はしないという定めをして、むやみに日本人弁護士が得た報酬から外弁の方に配分しないのだということを決めるのは意味があるのではないかというように思います。
 したがって、そういう意味合いでこの条文を残すのか、どこかに置くというのは意味があるのではないかと思います。
 もう一言申しあげれば、我々ユーザーサイドでは、事この分配については余り関心はありません。

○柏木座長 ちょっと前段についてよくわからなかったのですけれども、共同経営が認められますと、共同経営で行った仕事については分配は勝手にするように、ということですか。

○加藤委員 基本的にはそういうことでいいだろうと思います。共同経営あるいは外弁の共同経営の中で分配も自由ということは、純粋に日本人弁護士同志の共同経営の場合にも、単独で処理した法律事務に従って得た収入、これも当然に分配する対象になるだろうというように理解するのが一般的でしょうけれども、自分だけでやった収入は他人には分配しない、してはいけませんということを言うことがあっても、それはそれでいいのではないかという意味です。

○齊藤参事官 その点、ちょっとよろしいですか。共同事業を自由化して、収益分配も自由にするというのは、まさにそれは好ましい、上手な分配をすればいいだけのことですから、今の加藤さんのような御懸念は、共同事業が自由化されても、自由化された共同事業の営み方の中で、純粋に日本の弁護士しかタッチしなかった案件を分配の場面でどう扱うかも含めて自由だという意味なんです。だから、そこをあえて制度的に日本の弁護士しか関与しなかった事件からの収入は分配してはいけないというふうに制度化するという必要性は恐らくないだろうというふうに考えているわけです。それは、自由に対応していいわけなんです。

○柏木座長 問題は、共同事務所をつくらないで、外弁が。

○久保利委員 そこで、さっきの1つの事務所か、事業体か、下條先生のおっしゃるB’案の独立した事業体が、ということに絡んでくるんですが、共同事業というのには、何も金だけ出して人は出さないという共同事業はあり得るわけですね。あるいは、名目的に出すけれども、実際上は全然人は動かない、仕事もしない。しかし敷金からいろんなものについての経費負担等々については、うちの事務所で面倒をみましょうという共同はあり得るわけです。
 1つの事務所というのは、それがあり得るわけだけれども、2つの事務所ということになると、それはあり得ないという話になる。
 したがって、いやそういう1つはだめだというためには、今の49条の2項後段のようなものがあると、それは単に金を払ってやるだけなんだから、それは言わば匿名組合における出資に相当することである。したがって、そんなものはだめだという理由にはならなくて、1つであってもこれがあるから実際上はお金だけ出して、実際仕事もしないようなものはできませんという理由にはなるのかなと。
 逆に、そうやっていい、しかも49条2項の後段をなくすという話になったときに、逆に下條説のように、2つの独立した事務所というふうに言わないと、今のところの弊害をクリアーすることができないのかな、あるいは弊害ではないというふうに考え方を変えて、金だけ出したっていいではないかと思います。なぜならば、日本の弁護士だってそれは規制されていないんだからというふうに考え方を変えるか、どちらかに整理しないと、どこかに矛盾が出てくるような気がするんですけれども。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今、まさに久保利委員がおっしゃったように、弊害と呼ばれているものは、本当に弊害なのかどうなのかというのは、私はよくわからなくて、例えば医者の世界でも、これまで資格を持った者にしか経営に参加できないということだったのが、経営と医者の資格を持ったプロフェッションがやる手術とか、医療活動とは別に切り離したって問題はないのではないかということで、経営を行う病院の理事会に、別に医者の資格を持った人ではなくて、優秀な経営者がいてもいいのではないかということで規制改革が進んでいるわけですから、それとの横並びで考えると、医者と弁護士というのはほぼ同じような社会的な重要性を持っていると思いますので、弁護士の世界だけが特別扱いというのは、余り理屈が通らないのではないかというふうに考えます。

○齊藤参事官 今の大塚さんの点は、プロフェッションの共通性もあると同時に違いもあって、一応この検討会での議論としては、いわゆる法律専門職についての基本的な資格付与制度を踏まえた上で御議論をいただいて、その範囲で着実に問題をクリアーしていきたいと、問題があれば議論するというスタンスでよろしいのではないかと思います。
 もしも、お医者さんのレベルとの比較までいきますと、もしかすると法律専門職の基本的な制度としての構造そのものを飛び超える議論と混在してくるかもしれませんので。

○大塚課長補佐(下川委員代理) そこまでドラスティックなことを申し上げるつもりはなくて、単に収入分配の話だけをしているつもりだったんですが。

○波江野委員 先ほど加藤委員がおっしゃったように、その中で得た収益を、外弁と日本人弁護士でどうやって分けるかと、これはその中で決めれば良い話で、それを収益を分配してはいけないとか、何とかとわざわざ法律で書かなければいけないこと自体の方が、私には奇異な感じがいたします。
 この国際化検討会の状況につきまして、企業法務の責任者クラスの人に状況説明をしたことがありますが、そのときに「収益分配禁止規定があって、これを外すべきかどうか」、「雇用禁止規定があって外すべきかどうか」という説明を致しました。説明した相手はトップ企業の法務部長クラスの人ばかりなんですが、その人たちもそういう規定があることすら知らないぐらいびっくりするような話で、まさに弁護士社会の中で決めればいいことであって、法律的にどうすべきかということをそんなに時間をかけてやる必要はないのかなと思います。
 ですから、49条の2項の後段は削除なら削除してしまって、収益分配についても自由にやればいいというような格好にすればいいのではないかという気が致しますが、いかがでしょうか。

○柏木座長 道垣内委員は、規定ぶりを変えて残した方がいいという意見ですか。

○道垣内委員 それは、さきほどおっしゃったことについてお伝え申し上げたんです。
 ちょっと全体像がわかっていないんですが、6条で弁護士法72条を適用除外にしていますね。72条の方にあっせんは弁護士でない者はいけないというのがあるので、さっきの匿名組合は違いますが、あっせんの方は、もし72条が適用されれば禁止のはずですね。そこを外してしまっているので、さっきの外国法事務弁護士については可能になってしまうのでしょうか。そういう構造になっているんでしょうか。
 要するに、外弁法6条で72条を削除して適用除外にしてしまっていることから、外弁だけはあっせんができてしまうということになっているんでしょうか。そのときに、現在では49条の2項の後段があるので、あっせんをしても収益分配が得られないので、そんな人はいないでしょうけれども、それを削除すると、あっせんはできてしまうと。外弁だけはできてしまうということになる。そういう仕組みなんでしょうか。

○齊藤参事官 少し基本的なところからいきますけれども、事件のあっせんそのものは、それ自体を禁止されているわけではないんですね。弁護士でない者が事件のあっせんを業として報酬を得て行うことが規制されているということなんです。
 外国法事務弁護士は、72条の適用を受けないわけですから、72条にいう弁護士以外の者という扱いを受けないということになります。ですから、外国法事務弁護士と弁護士との間で、事件の紹介などがあっても、当然にそのことが否定されるということではないんだろうと思うんです。
 と同時に、事業としてそれがやれるかどうかというところになると、しかし、今度は弁護士倫理との関係で、紹介をした対価をもらってはいけないという関係が出てきますから、現実問題としては、業として外国法事務弁護士が日本の弁護士と事件の紹介をやって収入を得ようということは事実上不可能だと思います。そんな関係ではないかと思います。

○道垣内委員 ちょっと倫理と事実上の話が入ったのでわからなくなったんですが、それを抜きにするとどうなるんでしょうか。

○齊藤参事官 そういうふうに考えると、あとは現行法を前提にする限りは、外弁法49条の2項後段の規制に、当てはまるのかどうかというようなところに最終的には帰着してしまうと思います。

○道垣内委員 ですから、49条の後段を削除したときには、外弁だけは報酬を得る目的で業として周旋ができるようになってしまうと。

○齊藤参事官 ただ、そこが先ほど言ったように、倫理的に相手から対価をもらってはいけないということになりますから。

○道垣内委員 どちらの倫理のですか。

○齊藤参事官 弁護士倫理です。

○道垣内委員 弁護士さんの方は支払う側ですか。

○齊藤参事官 支払ってはいけないということになっているわけです。

○柏木座長 弁護士とパラレルになるわけでしょう。日本の弁護士も、今は業としてやってはいけないわけですね。それは弁護士倫理規定上やってはいけないと。

○道垣内委員 72条ではできると。

○柏木座長 72条ではできるけれども、72条の問題ではなくて弁護士倫理規定上できないから、それは外弁も同じようにできないと。

○齊藤参事官 ですから、弁護士同士でも、A事務所の弁護士とB事務所の弁護士が、事件を紹介し合って、その都度対価を得るなんていうことは倫理に反してしまうわけですね。
 ですから、1つの事務所の中で事件の配転という現象にとどまっている限りは、別に問題はないんだろうと思います。
 ですから、外弁と日本の弁護士との関係でも特定共同事業というような事業の枠内で事件の配転という現象にとどまるのであれば、それは別に許容され得ると思いますが、それを離れて端的に事件紹介ということが独立の要素になってくると、弁護士倫理の障害があったりして、事実上それはできないだろうというふうに考えられると思います。

○柏木座長 そういう前提でいかがでございますか。

○道垣内委員 そこだけで、とりあえず結構です。

○柏木座長 ほかに収益分配の規制だけを残しておくということについての御意見をお持ちの方はいらっしゃいますか。

○久保利委員 誤解があるといけないので、残せと言っているわけではないんですが、あるものを削る以上は、こういう目的だから削るんだというのがはっきりしないといけないのではないか。それがどうもよくわからないので、そういうことを申し上げているだけです。

○柏木座長 これは、確かに現実に起こる可能性が非常に少ないんだと思うんです。だから、大塚さんの意見は逆に何か積極的な規制を置くんだったらば、規制を置かなければいかぬという積極的な理由があるべきだろうという意見が出て、それで対立するわけであります。
 大分この議論で長くなってしまいましたけれども、皆さんの御意見をお伺いすると、残しておけという御意見、切ってしまってもいいのではないかという御意見、いろいろあるようであります。いずれにしても、どうも余り確たる根拠はなくて、どうしても残さなければいかぬとか、どうしても切らなければいかぬという根拠はどうもないようであるというのが大方の意見ではないでしょうか。

○久保利委員 要するに外弁解禁以来の外弁研だとか、法務省、外務省、法曹三者のいろんなやりとりだとか、非常にこの制度というのは、局面局面でいろんな交渉の経緯でできているわけですね。それを今度は、がらがらぽんで、特定共同の事業目的みたいなものも外すんだというときには、新しい法のつくり方があっていいだろうという気はするんです。
 そのときに、従来の経緯の中の詳細な論議を存じ上げないものですから、ひょっとして49条2項の後段というところに、さっきいみじくも道垣内先生が少しおっしゃったような、例えばそういうようなものでまだ論じられていないような論点がひょっとしてあって、それを外すとえらいことになるというふうなことがあったらいけないなと思ったものですから、あえて問題提起をした次第でございます。

○道垣内委員 要するに共同事業を自由化した場合のセーフガードを別途考えるというのがあった上での話とは別に49条の2項後段にこだわっているわけではございません。

○柏木座長 ちょっと座長の不手際で、中身が非常にシリアスな問題であるということもございますけれども、時間が遅れてしまいまして、ここで10分間の休憩を取りたいと思います。4時35分から再開したいと思います。
 再開後は、先ほどから議論が出ております、雇用禁止の問題について論じたいと思います。それでは、4時35分まで休憩をいたします。

(休 憩)

○柏木座長 それでは、議事を再開いたします。先ほど共同事業の範囲の制限は撤廃するという方向が皆さんで確認されましたけれども、その場合に、どういう具合に共同事業を経営するのかということにつきましては、先ほど来の議論からもおわかりのとおり、雇用問題というのは、非常に大きく関連してまいります。
 これからは、雇用禁止の問題について更に検討を進めたいと思います。雇用禁止の規定の問題と、外弁法4条の内容について、まず、事務局より説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 前回に引き続いてのことなんですが、念のため基礎的なところを確認させていただきたいと思います。
 雇用禁止規定の意義というのは、外弁による日本法に関する法律事務への不当関与の防止ということです。外弁の職務範囲の逸脱行為の禁止規定としては、外弁法4条がございますけれども、弁護士と外弁は、同じく法律事務を取り扱うという点で職務の同質性が高いということで、外弁による弁護士の雇用は類型的に外弁の職務範囲の逸脱の恐れが大きいというふうにこれまで考えられてきたために、これを防止するために、4条の規制に加えて、政策的に雇用が全面的に禁止されてきたというふうに考えられます。そのような職務範囲の逸脱の恐れというのが、依然として大きいというふうに考えるべきなのかどうか。その辺りを御議論いただきたいと思います。
 今日の資料で9−4をごらんいただきながら、お聞きください。
 次に、雇用禁止規定が撤廃されて、外国法事務弁護士が弁護士を雇用することができるというふうに考えた場合、どのようなことになるかということについて、事務局の考えを御説明したいと思います。
 資料9−4が、そのことを図式的に示してみたものでございます。
 まず、雇用主たる外弁の権限内の法律事務につきましては、雇用主たる外弁が指揮監督権を行使して、被雇用の弁護士に取り扱わせても、外弁は4条違反にはならないと考えられます。
 次に、雇用主である外弁の権限外の法律事務につきましては、雇用主たる外弁に指揮監督権はないと考えられますし、仮にあえて被雇用の弁護士に取り扱わせると、そのことが外弁自身が権限外の法律事務を実質的に取り扱ったと認められれば、当該外弁については4条違反となると考えられます。
 仮に被雇用の弁護士であっても、雇用契約上許されているのであれば、一定の法律事務を個人的な法律事務として自己の責任で処理することは理論上は可能だというふうに考えられます。
 今、申し上げたことが、被雇用の弁護士が日本法に関する法律事務を自ら単独で処理する場合は可能だと。図面をごらんになって右側の太線です。ここで表わされているというふうにお考えください。
 今、申し上げたような基本的な考え方というのは、外国法事務弁護士が単独で弁護士を雇用する場合も、弁護士と外国法事務弁護士が共同で弁護士を雇用する場合にも基本的な理解としては共通であろうというふうに考えております。そのことは2枚目の図で、単独雇用の場合と、共同雇用の場合を比較して見てございます。
 なお、この図面では、いわゆる外国法事務弁護士が雇用した弁護士から日本法のアドバイスを得て、外国法事務弁護士が自らクライアントに日本法のアドバイスをするという問題は、この図には含まれておりません。それは端的に外国法事務弁護士自身が職務範囲内の法律事務を取り扱ったのかどうかということを基準に判断すれば、おのずと結論が出るというふうに考えます。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明を踏まえまして、雇用禁止との関係について御議論をお願いいたします。
 まず、49条1項、雇用禁止を撤廃してしまった場合、どのような弊害が起こり得るのかと、これまでもいろいろと議論が出ていたかと思いますけれども、どのような弊害が発生するのか、またそういう弊害というのは、懲戒制度とか、あるいは罰則規定とかで十分対応ができるかどうか。あるいは不当関与の恐れが現実にあるのどうか。そういうインセンティブ、自分の知らないところの法律を無理にやらせるというような不当関与のインセンティブがないのではないかとか、あるいはお客の方としてもそんなものを頼まないというような意見が出ていたかと思います。
 そういうような議論を踏まえながら、雇用禁止の問題について御議論いただければと思います。道垣内委員どうぞ。

○道垣内委員 言葉の定義の問題なんですけれども、雇用というのは、どういう契約を雇用と言うかということなんですけれども、資料9−4の図ですと、指揮監督が及ばない時間を弁護士さんは持っていて、そこでは自己の計算で第三者にリーガルサービスをすることができると。こういうのも雇用だと。パートタイムみたいな雇用。一定時間は、外国法事務弁護士さんの指揮命令下にあるけれども、他の時間はない。パートタイムの雇用というものという意味なんでしょうか。
 それとも完全に雇用されているんだけれども、ある時期は言うことを聞かないということもある、それも雇用ということなんでしょうか。

○柏木座長 事務局お願いします。

○齊藤参事官 雇用されているか否かの点については、普通に御理解いただけばよろしいというふうに考えているんです。ですから、パートタイム的なものであっても、場合によっては副業が許されているような雇用であっても、それ自体は可能性としてはいろいろなものがあり得るんだろうと思います。ただ普通に弁護士がどこかに勤務するということを考えた場合に、自分の固有の個人的な事件を処理するというのは、何らか例外的にそういうものも雇用契約の中で許容されるということも、論理的にはあり得るであろうということを示しているというふうに御理解いただきたいと思います。

○柏木座長 よろしいでしょうか。

○道垣内委員 論理的にはあり得るけれども、余りないことなんですか。それとも、雇用という以上は、それが当然あると、このまま図の書き方が同じぐらいの大きさになっているので、余計に。

○齊藤参事官 太線が同じ太線なんですけれども、それは日本の事務所に勤める場合でも、仮に外国の法律事務所に勤める場合でも、それは勤務先の事務所の事件で、忙しいという状況であれば、あえて個人的な事件というのはほとんどやらないと思います。ですから、それが基本的な状態だというふうにむしろ御理解いただきたいと思います。
 ただ、だからと言って雇用された弁護士が資格自体に法律上制約が生まれるわけではありませんので、雇用契約の中で例えばある国選弁護事件などを、自分の勉強のために一定程度経験したいということが例外的に許されるとか、そういう現象をむしろ表しているというふうに御理解いただきたいと思います。

○柏木座長 波江野委員、どうぞ。

○波江野委員 今の件で、私どもの会社では弁護士を雇用しておりませんが、ほかの民間企業では弁護士を採用している例もございます。その場合に弁護士としてのまさに社会的責任と言いますか、弁護士会業務であるとか、国選の事件であるとか、あるいは弁護士会の法律相談といったことを認めるか認めないかという問題がよく議論されることがあります。
 前に弁護士会からアンケートが参って、その中で「弁護士を採用しますか、しませんか」という場合に、そういう弁護士活動について必要なことを認めますかという質問がありました。年次休暇を取ったらいいのか、それとも会社の業務として一定の時間を割くことを認めるか、そんな問い合わせがあって、それにそれぞれ各会社が答えていると思いますけれども、昔の話では、弁護士を採用する場合には、各会社の社長に対して弁護士会から「弁護士活動を認めます」という誓約をしていただいているという話もあったやに聞いており まして、今まさに齊藤参事官のおっしゃったようなことは、フルタイム雇用するけれどもその一部において弁護士固有の活動を認めるというような話なのかなと思います。この中でも、フルタイム外弁に雇われているけれども、一部の部分は日本国の弁護士として弁護士会の仕事であるとか、弁護士としてやるべきことを認める部分として成り立つのではないかという気がします。

○齊藤参事官 主にそういう現象があり得ても、それは別に外弁法に抵触するような問題にはならないでしょうということを、注意的に表現してみてあるわけなんです。

○柏木座長 道垣内委員。

○道垣内委員 今のような弁護士会活動等であればよろしいんですが、ここに書いていらっしゃるのは自己の計算で独立して行うということですから、請求書を自ら出すという仕事も含むわけです。それを仮に同じ顧客、外国法事務弁護士のところに来たお客さんに、日本の雇われている弁護士さんも同席をして、彼は日本の弁護士ですからということで、すべて日本法のサービスをし、外国法事務弁護士の方は外国の法律のアドバイスをすると。ですから、ワンストップですべてわかりましたと。
 請求書が2つきましたというのは、形式的にはあるかもしれませんが、外国法事務弁護士が雇う場合にはそういう事態になるのではないかと思います。そういう使い方は、共同事務所を自由化しましょうという話と両方やってしまうと、外国法事務弁護士としてはどちらが使い勝手がいいかというふうに考えるだろうと思うんです。パートナーでうるさい方を一緒にするのがいいのか、若い人だけ雇って雇用の形にするのがいいのか、収益もその方がもしかすると多いかもしれない。ですから、両方セットの話だと思うんですが、ちょっとサービスし過ぎかなと言いますか、むしろ危険が雇用の方はあるんではないかと。独立だとは言っていますけれども、若い弁護士さんが本当に独立して、ある部分では雇われている外国法事務弁護士の言うことを一切聞かないで、そちらがやりたい方向に反することまで本当にアドバイスできるのかどうかは、ちょっと危惧しますので、もし雇われるのであれば、前回もお聞きしたんですが、この左側の原資格国法に関する法律事務のお手伝いをすると、そこだけしかできないというふうな制約を課してもいいのではないかと思うんです。要するに、第三者に対して独立の仕事はできませんと、そういうつもりで雇わてくださいという制限ですが、それが通るかどうかわかりませんが、いずれにしてもこれには危惧を覚えます。

○柏木座長 座長の立場を離れるのですが、私の経験からの見解で申し上げますと、クライアントの視点というのがちょっと抜けているだろうと思うんです。アメリカでは、やはりアソシエートの数とパートナーシップの数をどういう比率にするかというのが非常に問題になっていまして、アソシエートの数をたくさん増やして、レベレージを上げるといいますが、その方が収益性が高まる。これは外弁の問題と離れますけれども、そういう観点からアソシエートの数を増やす傾向にあったんですけれども、それに対してはクライアントの目があって、アソシエートにばかりやらせて薄まった意見が出てくると、クライアントが逃げてゆくので歯止めがかかってしまうんです。そういうことで、アメリカのマンハッタン辺りの大ローファームでは、レベレージという1人当たりパートナーに対するアソシエートの数は大体ある程度で止まっている現象がある。今、道垣内委員がおっしゃったことに対しては、クライアントの方がそんなに若い弁護士に意見を言われたって、そんなの信用できないという歯止めがかかるのではないかと思います。

○道垣内委員 私は若い人という例を出しましたけれども、日本の弁護士さんの方は若い人には限らないと思いますし、それとこれはお客さんとしては外国法事務弁護士さんの事務所に来ているお客さんで、いずれにしても日本法については附加的なサービスのつもりかもしれないと思います。そこはそうであれば共同事務所の意見だと思いますけれども。

○柏木座長 ただクライアントの立場からだと、どうも弁護士+外弁の場合の意見を求めるケースが非常に多いのではないかと思います。余り言い過ぎるといけませんので、加藤委員いかかですか。

○加藤委員 多分そうだと思います。純粋に外国法に関わる問題だとすれば、日本人弁護士がいる、いないに関係なく選択するのだろうと思います。ミックスした議論、あるいはそういう問題でのローサービスが欲しいことになると、やはり日本人弁護士が雇われているのか、共同であるのかは別にしまして、そういう形で日本人がいる事務所を選択することになると思います。
 今は海外に進出することは勿論、国内にいても向こうから押し寄せてくるなど、グローバル化した問題が非常に多くなっておりますから、そういうニーズは多くなってきているのだろうというようには思います。

○齊藤参事官 道垣内委員が先ほどおっしゃったのは外国法事務弁護士に雇われるのであれば、雇用される弁護士の方の職務範囲自体も制度的に制限してしまって、外国法事務弁護士の権限内のことだけに携わらせるという考え方もあるではないかという御趣旨でしたね。
 ただ、やはり雇用されるからと言って、弁護士が自分の職務範囲を、雇用期間中とは言え制度的に自分の職務範囲を限縮される。そのことを認めていただくためには、それは日弁連の御了解も得なければいけないでしょうし、現実的にはすごく難しいんではないかと思うんです。
 ですから、外国法事務弁護士の権限外の法律事務について、雇われた弁護士が実質的に外弁がそういう領域の法律事務を取り扱うことについて荷担してはいけないんだということをよく自覚してもらえば、そんなに大きな懸念はないのかなという気はするんですけれども、それをあえて法律的に、職務範囲自体が被雇用の期間中は法制度的に限定されるんだと、こういう制度をつくろうとしたら、それこそ非常に難しいんではないかという気がしています。

○柏木座長 多分議論をもうちょっと具体化した方がいいだろうと思うんですけれども、雇用か雇用でないか、外弁の計算か計算でないかということでどう違ってくるのかということを抽象的に議論しても、どうも余り実りがないのではないかと思います。もうちょっと具体的に、例えばさっき久保利委員がおっしゃいましたけれども、PFIなんていうのが非常にいい例でありまして、PFIというのは何かというと、今まで官でやっていた仕事を民にやらせようという新しい手法で、例えばイギリスなんかでは刑務所の建設とか、学校の建設を民間にやらせてオペレートさせる。官でやるよりも民の創意工夫を工夫するというプロジェクトなわけです。入札の仕方も今までと全然違いますし、評価の仕方も、官でやったら幾らかかるかという、パブリック・セクター・コンパレータという指標を使いまして、パブリックでやった場合とプライベートでやった場合と比較する。この比較の技法もものすごく複雑な技法がイギリスでは発達しています。
 お金の調達は大体イギリスでプロジェクト・ファイナンスを利用していますし、日本ではプロジェクト・ファイナンスはUSJで3年ぐらい前に始まったのが、第1回でほとんどプロジェクト・ファイナンスについて全く経験がない。イギリスではものすごく経験がある。USJで最初にやったときも、何をやったかというと、イギリスでのプロジェクト・ファイナンスのファイナンス契約を日本語に翻訳して、それを日本法上齟齬がないかということをチェックしたというぐらいに、イギリスの手法が導入されているわけです。
 そういう問題について、誰が日本でやっているかというと、日本は地方公共団体がやっていて、非常に経験が少ない人が田舎でやっている。田舎というのは余りよくない表現ですけれども、そういうことでやっている。
 そういう人たちが誰に相談したらいいか、勿論日本のものですから日本の弁護士さんに相談しなければいけない、だけれどもイギリスからやってきたもので、全部今までの手法はイギリスでたくさん蓄積があるとなると、やはりイギリスの弁護士さんに相談したいというようなことがある。それで、共同でやってもらえれば非常にありがたいわけです。共同でやっていただくときに、クライアントとしては多分背後が雇用であるのか、あるいは共同事業であるのか、そんなことはどうでもいいよ、いい仕事をやってくれる事務所であればどうだっていいよという考え方なんではないかとような気がするんですけれども、やはりそのようなところから議論を始めてはいかがでしょうか。下條委員どうぞ。

○下條委員 まさにおっしゃる点が問題で、ここで言っている被雇用の弁護士が非常に経験のない、例えば1年目とか2年目とか、そういった弁護士だったら今のようなPFIに関連した日本法に関する法律事務について、適切な助言が与えられないと思うんです。そうすると、上に立つ雇用主である外弁が自分の都合のよいように、日本法についてクライアント受けするように、どこからか聞きかじってきて、それを押し付けて日本法に関してのメモなり何なりを書かせるという場合に、指揮監督下にある以上、被雇用者である弁護士の方もなかなか自分自身も経験がないということもあって、それに対して対抗できないと思うんです。
 やはり被雇用の弁護士も、自分の生活もかかっているでしょうから、よく辞めればいいと言われますけれども、なかなか現実問題としてはそうもいかない。日々の生活がかかっているわけですから。そうすると、やはり雇用主である外弁がプッシュ・アラウンドして、日本法に関してこうだろうと言って、クライアント好みの意見を言わせる。 ですから、対等な立場の日本弁護士であれば経験も豊かで、対等な立場にある日本弁護士だったら、そこのところは日本法ではそうはいかないよときちっと言えると思うんですけれども、被雇用であればそこがなかなか言えないという弊害が出てくると考えます。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今、下條委員から出された例なんですけれども、それはまさに外弁法の第4条違反に当たるケースになりますので、場合によっては罰則規定が働くケースもありますから、そもそもそういった危険を冒してまで外弁はそういうことをするだろうかというそもそも論もあると思います。
 それと日本の弁護士も若いとは言っても、一応司法修習を受けて一人前とみなされているわけで、その人自身にも自分のよく分かっていないことを引き受けるかどうか、その人自身の問題がありますし、更に言えばもともと外弁というのは一部日本法も扱えることになっているわけですから、外弁が日本弁護士を雇えないでやるよりは、日本の弁護士を雇える方がよりサービス提供を受ける側からすれば、信頼の置けるサービスができるようになるということで、メリットはあるのではないかと思います。

○柏木座長 下條委員。

○下條委員 今、大塚さんが言われたことは、前提が全く間違っていまして、まさに日本法に関しては弁護士がやるわけです。1年目なり2年目なりの弁護士が単独で意見を出すとか、あるいは。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 下條委員がおっしゃったのは、それに対して外弁が指揮命令権を行使してこういうふうにやれという指示を出して、それでいいかげんなことが出てくるんではないかということを御心配されてということなんで、もしそういう指揮命令系統があれば、それは4条違反になりますということを申し上げたんです。

○下條委員 弁護士の方が連名でサインするなり、自分単独で出すなりするわけですから、表面的には弁護士が弁護士としての資格でやっているということになると思います。

○齊藤参事官 ですから、外弁の権限外の法律事務の取り扱いについて、外弁自身に4条違反があるかどうかは、これは実質的な判断だろうと思います。つまり直接リーガルサービスをした者の名前が、被雇用の日本の弁護士であるかどうかで、形式的に決まってしまうことではないというふうに考えるべきだと思います。

○柏木座長 久保利委員。

○久保利委員 また意見書に戻りますけれども、単独外弁が雇用するかどうかという問題と、共同事業体が雇用するかどうかは、やはり分けて考えなければいけないかもしれないということは考えていますが、単独の外弁がという場合について言うと、2つ、3つ理由がありまして、1つは意見書の55ページの最後の3行ですけれども、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の見直しは国際的議論をにらみつつ、将来の課題として引き続き検討すべきであるというのに対して、これは外国法事務弁護士が単独の場合はストレートにこれに当たると思いますので、少なくともその部分については今、結論を出してOKだというふうなことは言うべきではないだろうと思います。NOだというふうに言う必要もありませんけれども、少なくとも今ここで結論を出すべきではないだろうという感じがするわけです。
 もう一つは、さっきホームページの話をしましたけれども、現実はどんなふうになっているのかと思って、パラリーガルというところで見たところが、パラリーガルの募集者は日本弁護士はほとんどいません。ほとんどすべてが外弁です。その幾つかを見ておりますと、日本の法学部を出ていることとか、法務知識・法律知識のあること、これはどう考えてみても外国法の知識のことではなくて、日本法の知識なんです。勿論、外国法事務弁護士が一体単独でやっているのか、両方でやっていることなのかよくわからないので、具体的な一つひとつまで見ておりませんからわかりませんけれども、少なくとも日本法のわかるパラリーガルをそんなに外国法事務弁護士が求めているといいうのは、1つは、雇用を許してくれればそんなことをしないのだというふうに、外国法事務弁護士はおっしゃって、だから雇用が必要であるということの理由になるのかもしれない。
 しかし一方で、現在特定共同でちゃんと組めるのに、日本の弁護士と組まないでパラリーガルでそれを済まそうというのは、ひょっとすると雇用が認められても高い弁護士を雇うよりは相変わらずそういうパラリーガルを雇い続けて、その程度の質でいいというふうに思っているのかもしれない。確定はいずれもできないんですが、少なくともそんなにパラリーガルを求めているのかなというのが、1つの新鮮な情報です。
 もう一つは、パラリーガル同士がチャットをしておりまして、自分の事務所のことも含めていっぱい言っているんです。つい面白くて24ページも読んでしまったんですけれども、とにかくものすごく面白いことを言っているわけです。そういうのを見ていると、実態を全く抜きに、実は我々は外弁事務所が何をしているかということについて、外弁からは聞いたけれども、パラリーガルからも聞いてこなかったなと、実態がどうなのかと。牛島先生もさんざん日弁連ではいろんな実態がある、しかしなかなか情報源のこともあって言えないというふうなことをおっしゃっていたので、ある意味で言うと外弁だけで雇用を認めるというのには、相当の危険性、すなわちまさに下條さんがおっしゃっているような感じで、手足として使って自分の言いたいように意見書を日本法について書かせるということがあるかもしれない。ある可能性はあるだろうという状況が1つはある。しかもそのことはほとんど発覚しない、4条違反だというけれども4条違反のデータをつかまえることはほとんど不可能だと。
 そういうことになってくると、内部に弁護士がいる、共同事業としてやっているところのことは少しまた別に考えたいと思うんですが、少なくともあえて組まないで単独でやっている外弁事務所というものに、雇用というところまで与えるだけの法律改正をする立法事実はないのかということで、そこはやはり慎重に引き続き検討するテーマとして考えていいと、むしろ問題は共同事業、あるいはその共同事業も1つである必要はないというのが下條先生の説ですけれども、仮に1つであったとしたときに、その事務所で雇えるようにするかどうかというのが、意見書の範囲から見ても実態から見ても、おおむね現在の限界ではないか。
 仮に共同事業であっても、雇用だけはだめだという議論はあり得るのかもしれない。そのときには、逆に下條説の、2つに分けて、2つの事務所でやって日本事務所が幾らでもアソシエートを採用すれば、それで不自由はないではないかということで解決をするという方向にいくのかなという感じでありまして、是非先生方もホームページでごらんになるとよいと思います。ものすごくいろんな情報があって、なるほどITというのはこんなに便利なのかというのを初めて知りまして、大変参考になりました。
 以上です。

○柏木座長 玉井委員。

○玉井委員 今の点、私もかなり参考になりました。かなり共感しつつ、結論的には多少違うことを考えるんですけれども、つまり現状でパラリーガルを使って、4条違反のことも含めて、恐らく4条違反をやろうと決めてやるのではなくて、これは日本法だけれどもいいやと言ってやってしまうというのが実情だろうと思いますが、それも含めてやっているという実態がもしあるとしまして、これに対して雇用を解禁するというのはどういう効果を持つかというか、久保利委員がおっしゃったとおり、今までは怪しげなパラリーガルだったのが、正面から日本の弁護士を雇えるようになったので雇うという場合であれば、これはクライアントから見ればそれは少しはサービスがよくなることであって、あえて危惧する必要はないだろうと。
 しかし、実際上ありそうなのは、やはり日本の弁護士は高いので雇用しないで、パラリーガルで怪しげなことをやるというケースもあるだろうと思いますけれども、それは全くコントロールできないことで、現にあるものをそのまま続けるということですから、これは別途規制の仕方を考えないといけないということですので、むしろ弁護士を雇えるのに弁護士を雇わないと、パラリーガルで単なる法学部卒業者で済ましてしまうというのは全くけしからぬことであるというのは、むしろ雇用を解禁することで言いやすくなるのではないかと思います。
 もう一つ、いずれにしろ被害を被るのはクライアントなわけです。その被害を被るクライアントが、そんなに馬鹿なのかというと、そんなことはないので、つまりいずれにしろ日本の弁護士がパートナーに入っていなければ、外国法事務弁護士事務所としてしか書けないわけです。そこに弁護士が雇われているという関係である。だから、行ってみて相談してみると日本人が出て来て、名刺をもらうと弁護士と書いてある。ああそうか、この人は雇われているんだということが、それで一目瞭然にわかると。その弁護士が、日本法については弁護士としてお答えするけれども、それはパートナーである外国法事務弁護士からは何ら指揮監督を受けてないということは、外弁法を知っていればわかるわけですし、そういうことがもしあやふやになると、知らないクライアントがいてそこで騙されてしまうということであれば、それはディスクロージャーをさせればいい、当事務所は外国法事務弁護士事務所であって、純粋に日本法についての事務についてのパートナーは指揮監督をしておりませんということをディスクローズさせればいいことであって、一般的に禁止する必要はないんではないかという気がいたします。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 議論の順番が、単独雇用の方に焦点が移ってしまって、逆で、まず共同雇用の話を先にすべきだと思うんですが、単独雇用で一言だけ申し添えれば、全く違う視点から、日本の若い弁護士が外弁が持っているノウハウを吸収するという目的で、そこで雇用されるというニーズもあるのではないかということをもうちょっと考えていただきたいんですが。
 例えば、私の身近でも最近外務省を退職して、司法試験を目指して勉強して、自分の持っているドイツ語と英語の能力を生かして、国際法務の専門家になりたいという人もいまして、そういう人たちにとって選択の幅を広げるという意味でこういう道もあってもいいのではないかということを1つ申し上げたいと思います。
 むしろ共同雇用の話をしなければいけないと思うんですけれども、一般論として大分前になるんですが、下條委員の方から前回も言っておられたドイツのように、巨大ローファームが日本にきて、市場を占拠してしまっては困るというお話があったと思いますが、そういった不安をお持ちの弁護士の方は非常に多いと思うんですけれども、ドイツにある日本大使館の方から、ドイツの弁護士会として、ドイツの行ったそういう規制緩和策についてどういう評価をしているのかを聞いてみてもらったんですけれども、評価は非常に高いんです。それは別に事務所としてイギリス系の事務所が入ってきたりしても、実際にドイツ法を扱っているのは依然としてドイツ人弁護士であって、しかもそういうところに雇われている弁護士は高収入を得ながら働いているということです。更にこういったドイツの外弁の自由化ということが行われた時代背景を考える必要があると思うんですけれども、それはちょうど私がドイツに留学した前の年ぐらいに行われた話なんですけれども、当時のドイツの雰囲気というのは、今、日本が中国に対して日本はもう中国に負けてしまって、二流に落ちてしまうんではないかというのと同じような危機感をドイツは持っていて、産業空洞化が非常に進んでしまう。それはなぜかというと当時は日本が非常に強くて、アメリカと日本が世界を席巻して、欧州というのは没落してしまうんではないかという意識が非常に強くて、そのために欧州は統合していかなければいけないという議論が強くあったんですけれども、そういった中でいろんな構造改革をしていかなければいけないと。その中の1つとして、こういう弁護士の国際化というのがあったんだと思います。
 自由化が行われた結果どうなったかというと、その後の産業界を見てみれば、例えばダイムラー・ベンツとクライスラーが合併したりとか、あるいは欧州の統合が進んで、欧州域内企業の合併が非常に進んだということで、ドイツの経済界の国際競争力は向上していると思うんですけれども、その背景にはこういった外弁の自由化というものがあって、法律的ないろんな巨大合併なんかをやっていくための体制が非常に整備された。外弁の数もその間に非常に増えたということがあったと思うんです。
 先ほど、久保利委員の方から私の発言に対してコメントがありましたが、誤解があったらいけないので、もう一度繰り返しますと、私は別に外弁に日本法をやってもらうということは一言も言っておりませんで、あくまでもそういった日本人弁護士とのパートナーシップができるようにするということをすべきであると申し上げている訳で、今は制限があるので余り入って来ていませんけれども、それが自由化されれば相当程度の状況の改善というのが期待できるのではないかと思います。

○柏木座長 下條委員。

○下條委員 先ほど、久保利委員の方からパラリーガルの話が出ましたので、ちょっと御説明しておきたいと思います。外弁がパラリーガルを雇っているというのは、主としてM&Aのデューデリジェンスということがありまして、要するに、M&Aの対象となる企業のいろんな法律面、事実面のチェックをしないといけないわけです。その事業をやるのに必要な許可とか、そういったもろもろの業法上必要とされるものを取っているかどうか、あるいは議事録をずっと何年間かにわたってチェックするとか、あるいはその企業が入っているいろんなもろもろの契約、重要な契約を見て、問題点がないかどうか、そういうものをチェックするためにパラリーガルの要望が非常に強いわけです。そういうものを弁護士がやりますと高くつくということで、これはまさに人海戦術でやらないといけないわけで、したがってそういうことでパラリーガルを採用するということがあります。
 これは何もM&Aに限られなくて、普通のクレジット・アグリーメントと言いますか、金銭消費貸借でも同じであって、借りる方は一定の表明保証をするわけですけれども、その表明保証が本当に正しいかどうかチェックする。そういう面でパラリーガルの需要が非常に大きい。
 そう言いますと、では外弁事務所がパラリーガルを雇うというのは、非常に4条違反の可能性が高い、つまりパラリーガルがチェックするものは、そういった日本法上必要な許可を得ているとか、あるいは日本法上の商法に従った議事をやっているかとか、いろんな日本法上の諸契約、それが本当にいいのかどうかをチェックして、デューデリジェンス・レポートをつくるわけですから、そういうことはまさに日本法マターであるわけですから、そういう面で第4条違反であるのかないのか、非常に疑義のある点だと思います。
 あと今、大塚さんがおっしゃったことですけれども、若い1年目の弁護士がいきなりここういった外国法事務弁護士のところに行くというのは、私は非常に反対します。つまり若い弁護士が外国法事務弁護士のところに行って、日本法について適当な教育を受けることができるかといったら、それはNOなわけです。先ほど言いましたように、多分雇用主となる外弁は、自分のバイアスのかかった日本法の理解を非常に押し付けるようなことをやって、それこそ1年生の弁護士は先ほど牛島弁護士が言ったように、いろんな司法試験でやってこない、証取法とか、税金とか、外資法とか、いろんな法律があるわけですけれども、そういったものについて全く日本弁護士の下において教育を受けることなく、いきなり外弁のところに行って教育を受けるというのは、非常に問題があると思います。
 ドイツの例をおっしゃいましたけれども、ドイツの例を見て本当にユーザーのためかということが疑問になってくると思います。つまりドイツの弁護士のアワリーレートとか、弁護士報酬の基準が、先ほど言いましたようにアメリカ基準になってしまったわけです。ですから、アメリカの初任給が、先ほど言いましたように16万ドルとかですから、ドイツでのリーガルフィーというのは非常に高騰したというふうに聞いております。ですから、本当にユーザーにとっていいことなのかどうか、そういう面において疑問があると思います。

○柏木座長 波江野委員。

○波江野委員 色々な問題がありますが、まず単独雇用における教育の話、今、下條委員がおっしゃったわけですけれども、日本弁護士が外国法事務弁護士のところに新人の弁護士として入った場合教育の問題がある、司法試験以外のいろいろな分野があるというお話です。しかし、弁護士というのは、少なくともは司法試験に合格して、司法研修所を出て、もう資格があるわけですから、たまたま外国法事務弁護士のところに行ったら、見習いで訳がわからないという評価をされる可能性はありますが、一方、明日から弁護士事務所として開業すれば何でもできるわけです。実態論としては、今、下條委員のおっしゃるように、やはり育成、教育をしなければいけないということはよく理解できますけれども、制度的に教育が必要だから外国法事務弁護士の事務所に単独雇用されるのは問題だということは、ちょっと筋の違う話かなという気がいたします。
 大塚委員のおっしゃった件との関連ですけれども、私ども外国法事務弁護士というのはお付き合いはありますが、仕事上使ったこともない、特定共同事業も使ったこともない、直接海外の弁護士とやりますというふうに申し上げましたけれども、日本人として本当を言えば、日本国内で弁護士との仕事というのはやはり人と人との関係ですから、フェース・ツー・フェースでいろいろとできる方がいいだろうと思います。そうするとコミュニケーションの問題からいっても、時差をかけてアメリカまで行っていろいろやるよりは、日本の中で非常にきめ細かくいろいろと対応してくれる外国法事務弁護士と日本弁護士とのセットでできれば、やはりクライアントとして非常にありがたいだろうと思います。
 今まで、先ほど日弁連の方も、あまり弁護士会でも関心がないと言われました。ユーザーサイドでもそんなに関心がないという感じが私自身もしていますけれども、これも外国法事務弁護士の職域が広がることによって、ニーズというのは潜在的にはたくさんあると思います。これから海外に出ていこうというような会社の場合は、特に中堅とか中小企業の場合ですと、前にヒアリングのときにあったかと思いますが、国内でいろいろと外国法事務弁護士と相談をしながら、進出先のことを検討するということもありますので、やはり外国法事務弁護士の職域を拡大する。その中では、3つ目のポイントになりますけれども、雇用の問題として、少なくとも共同事務所での雇用は認められるべきではないでしょうか。
 前回、私は単独雇用についてはむしろネガティブで、共同事務所における雇用は認めるべきだというようなお話をしたかと思いますけれども、単独雇用の規制を撤廃してしまうというのは、これはまさに日弁連などにおいて、絶対守らなければいけない最後の一線・、生命線みたいな話かもしれないなと考えました。そうすれば、単独雇用については規制しておいても構わないのではないか、ただし共同事務所での雇用は認めるべきではないかということで、雇用禁止規定の撤廃ということについては、若干慎重論を唱えたわけです。
 以上です。

○柏木座長 玉井委員。

○玉井委員 波江野委員のおっしゃったことと重なることもあるんですけれども、若手弁護士の教育という点ではアドバイスとしては、外国法事務弁護士のところから始めたって力が付かないよというのは、大変立派なアドバイスだと思いますし、私自身一生の間に弁護士登録をするかどうかわかりませんけれども、駆け出しのときにあなたは日本法を知らないから、まず日本の弁護士事務所から始めなさいと言われれば、それはそうかもしれないという気がするんですけれども、これからまさに法科大学院などができて、言わば横からと言いますか、社会経験を10年ぐらい経てから来る人もいるわけです。これはもう人それぞれなんであって、多くの場合にそのアドバイスが正しいと思うんですけれども、法律を持って強制することはないだろうと、これは偏頗な人間になりたいと言って、外国法事務弁護士のところから始める人がいたって別に不思議はないので、ひょっとするとその方が正しいかもしれないということです。
 割とドイツで大手と言われる事務所でも半分ぐらいは外資系になってしまったという話もありますし、初任給16万ドルというのは私も余りに高いような気がします。それは最高裁のロークラークなどをやった人は、ひょっとしてそういう人はいるかもしれませんけれども、数として多くないと思うんですが、もしそういうことが実現するのであれば、これ憂慮するべき事態ではなくて、大変めでたいことではないかと。
 私の教え子や後輩などが16万ドルでどこかに雇ってもらえるということであれば、それは外弁事務所であろうと、日本の弁護士事務所であろうと、大変めでたいことであって、この会員個々にとってそういうめでたいことについて、どうして弁護士会が反対するのかよくわからない気がします。
 しかし、私はそんなオプティミストではなくて、もっと悲観的で、そういう機会は多分少ないだろうと思うんです。そんなに日本のリーガルサービスの市場というのは魅力があるとは思えない。本当に大手の事務所が金を飽かせて世界中から進出てきて、日本の大手事務所の半分は外弁主体の事務所になってしまったという、そんな事態になるぐらいに日本のリーガルサービスの市場が魅力があるんだったら、それは大変めでたいことであって、むしろそういうことを望むべきだと私は思いますけれども、どうもそうはなりそうもないという気がします。
 いずれにしても余り憂慮する必要はないのではないかと思います。

○柏木座長 孝橋委員。

○孝橋委員 私は前回も雇用禁止規定を置いておくことの必要性について疑問を持っているということを申し上げ、同じことをまた申し上げるんですけれども、今日、齊藤参事官が最初に御説明になりましたこの外弁法4条の規制内容についてのペーパーというのは、やはりこの雇用規制が本当に必要なのかということの問題点を浮かび上がらせる、非常に適切な資料ではないかというふうに思っております。
 結局雇用規制というのも、本来は外弁法4条の資格のない外国法事務弁護士が日本法に関する法律事務を扱うということを防止するということが目的で、そういうことを制度的に担保するために法的規制がされていると思われるわけですけれども、実際それだけ問題なのかということについて、今日の牛島先生のプレゼンテーションにもありましたように、外国法事務弁護士が非常に悪者扱いされる話が多いわけですけれども、私は昭和62年にこの外国法事務弁護士制度がスタートして、また特定共同事業が認められて今日に至るまでに、そんなに外国法事務弁護士の人がひどいことをやってきているのかということについて根本的な疑問がございます。
 先ほどのパラリーガルのお話についても、パラリーガルというのは日本の弁護士の数が少ないということで、特に地方では司法書士の方とか、パラリーガルの人が一定の範囲で法律事務に関わっている分野というのが事実上あるということで、それはそれで問題があると思うんですけれども、取り立てて外国法事務弁護士として入っくる人たちが、問題行動をそんなにやっているのだろうかと。
 確かに、牛島先生が言われたように、こういうことがアメリカでできるのに、何で日本でできないのかという形での指示なりをするというケースあるかもしれませんけれども、それはしかし日本の依頼者だって自分の望んだような結果を得るためには、そういう形で弁護士さんにいろいろ要請するということだってあると思いますし、日本の事務所の中でもそういうことが起きる可能性は十分あると思います。
 久保利先生は、実質的には外弁法4条違反だと言ったって、そんなことはなかなか発覚しないということでおっしゃるわけですけれども、実際は本当にひどいことだったら、やはり外弁法4条違反ということで、もっと問題になって懲戒とかになってもよさそうだと思うんですけれども、そういうケースは余りないのではないかというふうに私は認識しておりまして、そうするといろんな問題のある外国の依頼者もいるでしょうし、外国の弁護士さんもいると思われますけれども、余りその点ばっかりを危惧して制度設計するのはいかがなものかと。
 ドイツの方では、何度もお話が出ていますように、結構アメリカやイギリス系の弁護士事務所がかなり成長している、席巻という言葉はともかく、かなり幅をきかせているということなんですけれども、それでドイツの企業とかドイツの国民の人たちが不幸なのかと、何とか改善したいと思っているのかどうかというと、そうではないと思われるんです。日本の企業の人たちが外国の企業と交渉したり、取引したりするときにも、そういうビッグネームというか、世界的に通用する事務所ともっとアクセスを容易にしたいという要請は、多分我が国だってあるのではないかというふうに、私は抽象的な話しかできないんですけれども、そういう印象を持っておりまして、どうしてもこの4条の規制を実現するために雇用禁止を本当に維持しないといけないのかということについては、やはりなお疑問を持っているというという状況でございます。

○加藤委員 この雇用禁止につきましては、今までいろいろな議論が出ておりますけれども、私自身は解禁すべきだという意見でございます。
 ちょっとお伺いしたいことは、雇用禁止についていろいろな反対論が出ております。今日は独立性という言葉が余り出ていませんが、弁護士の独立性が阻害されるということが一番大きな要因だと説明されていると思います。それ以外に雇用禁止をする理由というのはあるのでしょうか。

○柏木座長 下條委員、どうぞ。

○下條委員 それは2つありまして、1つは今まさにおっしゃったように、弁護士の独立性です。
 もう一つは、外弁が日本法を取り扱うことの禁止から来ているということです。ですから、独立性のことは、今日は余り言われませんでしたけれども、やはり前回御紹介いたしましたように、IBAでもABAでも弁護士の独立性というのは非常に大事だということを言っておりまして、やはり独立性が認められているのは、やはりユーザーである国民の利益を守るためには、弁護士というのは何者からも独立していないといけないということです。
 例えば、国家権力に従属していれば、私どもの事務所なんかも税務訴訟をいっぱいやっておりますけれども、そういった税務訴訟で、本当にクライアントのために十分な代理ができないではないかということがありますし、それはほかのいろんなものにも従属していてはいけないと。それはまさにユーザーである国民の利益を守るための英知だと思うんですけれども、そういう意味から言って、やはり独立性というのは一番重要なものとして考えられないといけないというふうに思います。

○加藤委員 今の御説明で、外弁が日本法を扱うということは、結局被雇用弁護士の独立性に関わる問題であるというように思います。独立性がまさに保たれているのであれば、外弁が日本法について不当に関与されることはないはずであると思いますので、結局のところ独立性の問題ではないかと思います。
 独立性については、まさに日本人弁護士の倫理の問題、即ち、この弁護士の独立性というのは、周りが本来守ってあげなければいけないものなのか、自らこれを確固たるものとして守るべきものなのかということが問題であります。私は本人の意思の下に守るということが大前提でなければ、そもそも弁護士制度はあり得ないというように思います。

○道垣内委員 今の点ですが、ここで問題なのは、やはり独立性は当然前提なんですが、独立性が保たれないかもしれない状況に置くことをどうするかの話で、雇用されるということになりますと、一方では忠誠を誓わなければいけませんし、うまく自分が思うとおりにやって、全体でうまく進んでいく場合には何の問題もないわけですが、危機的な状況ですね。事務所としては、この方法で行きたいんだけれども、日本法に詳しい日本の弁護士さんからすれば、それは行き過ぎで止めなければいけないと思ったときに、どういう立場を取るのかと。それが完全に独立していれば問題がないわけですが、雇用されているわけですから、そういう立場に自らを置くということは避けるべきで、それもリッチの問題で、だから雇われなくてもいいではないかということなのかもしれませんが、法律上それを禁止しておくということが結局はクライアントのためになると。セーフガードです。あらかじめそんなことにならないような規制をしておくと、それは十分あり得る話で、個々人の弁護士さんの倫理に任せておけばいいというだけではないのではないかと私は思います。

○加藤委員 仮に今、先生がおっしゃるようなことだとしますと、そもそも弁護士、これは外弁に限らないと思いますけれども、弁護士が雇用されることそのものが問題だということになり、意見書にあっては将来的に検討すべきことだというようになっておりますけれども、将来的であっても検討すべき課題ではないとすべきであったということになると思いますがいかがでしょうか。

○道垣内委員 それを聞きたかったんですが、この図が大丈夫だというのであれば、一番上にある人が会計事務所なり、コンサルティング会社で、その真下にあるのはコンサルティング業務で、それを内部的に自分の雇い主のためにリーガルサービスをしますと、その分は左側。それ以外にお客さんに対して、独立に法律サービスをしてよろしいと、そうなるのであれば何だってできてしまうと言いますか、非常に懸念されているような状況が実現してしまうわけで、それも許すことになるのか。要するに、これがいいなら、そちらもいいということになるのかならないのか、ならないのであればどうしてならないのかを少し御説明いただけませんでしょうか。

○齊藤参事官 公認会計士事務所などに仮に雇用された弁護士がいるとして、法律事務の取り扱いを一般公衆に対しても行うということをして、その効果が公認会計士事務所の方に帰属するのであれば、それはまさに公認会計事務所が実質的に法律事務を事業として行っているということになりますから、それは弁護士法72条に違反することになりますね。

○道垣内委員 効果が帰属するという意味はわかるんですけれども、これも効果は帰属しないんですね。日本法については、日本の弁護士さんのところで止まっていて、そこで自ら請求書を切る話ですね。今、私が申し上げたのは、それと同じことをするわけです。会計士事務所に雇われているんだけれども、日本法について第三者にサービスする場合には、それは自らの仕事ですと。

○齊藤参事官 それは今の制度上でも論理的には別に否定はされていないということです。

○柏木座長 例えば、会社に雇われた弁護士さんが、国選を会社の仕事から外れて。

○道垣内委員 いやいや、その程度で止まっていればまだいいんですが、こういうことが一般化すれば、そういった別の業態からも弁護士さんを雇って同じようにしようではないかというのが出てきて、それもいいということまで覚悟してこの話をしている、単独雇用の話だけしていて、共同雇用までの話ですが、単独雇用はそこまでいく話なんでしょうか。

○齊藤参事官 ちょっと大塚さんの御意見の前に事務局として、弁護士が勤務先での業務を業務量の半分、それから自分の独自の業務を半分やるということだって論理的には別に否定はされないんだと思うんです。
 しかし、そういう現象が、日本なら日本の社会の中で、どういうふうに出現していくかということを考えれば、通常、今のところは雇用主の業務は半分弁護士の業務をやるというような人は、なかなかいないと思います。企業とか雇い主の側も業務量の半分だけ自分の仕事をしてくれというふうな形で弁護士を利用するという必要性なり合理性が、今の社会でどれだけあるかということを考えると、余りないと思います。
 ただ、それを論理的にそういうことが不可能なのかと言えば。

○道垣内委員 論理的なことだけではなくて、今、事業会社が雇い主であれば、そういうニーズは余りないし、そこまで外の仕事をする人を雇っている価値はないと思いますが、会計事務所、コンサルティング会社であれば、同じお客さんにサービスできるわけですから、それはすごく意味があると思います。むしろ私はそれが起きてこないということは考えられない。

○齊藤参事官 ですから、それは公認会計士と弁護士がどういうふうな提携関係を考えていくかという新たにすごく難しい問題だと思います。
 そのときに、公認会計士事務所と法律事務所が、それぞれの職務の特殊性を活かし合って提携するための手段として、雇用というのが悪用されるか、それとも別途の好ましい提携関係を模索していくかは、それはその課題として今後検討されるべき問題ではないかというふうに思います。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 今の議論で、会計士と外弁を同列に扱っているようで概念の混乱があると思うんですけれども、そもそも会計士はノンローヤーであって、外弁はローヤーなんです。そこは全く違う概念として扱っていただかないと。外弁は、日弁連に所属して、日弁連の規律に従っているわけですけれども、会計士は、日弁連に所属していなくて、日弁連の規律には全く影響を受けない独立した存在なんです。
 アメリカのABAにおいて、独立性が非常に重要であるという決議が出ていますけれども、それはまさに会計士事務所からの弁護士の独立性を念頭にしてつくられた色彩が非常に強いと思うんです。ただ、アメリカにおける独立性は、勿論非常に重要な原則として挙げられていますけれども、アメリカにおいても先ほどから申し上げているように、外弁はあくまでもローヤーとして扱われていますから、ローヤーがローヤーを雇うことについては、別に制限がないわけです。
 事実、私もGATSの約束表で確認しましたけれども、共同事業を認めたからには、米国のほとんどすべての州が外弁の雇用も認めてセットになっているという状況でして、唯一例外がオハイオ州なんですけれども、オハイオ州に至っては、パートナーシップは認めていないけれども、外弁が現地の弁護士を雇用することは認めているということですから、本当に雇用という手段がなければ、外弁の独立性が保たれているか非常に疑問で、それは過剰規制にあたるのではないかという疑いを少し持っております。

○久保利委員 今の問題は、大変微妙な問題だと思うんです。要するに同じローヤー、それはそうかもしれない。日弁連の会員、それはそうなんです。だから、その意味において私はほかのものとは違うということはよくわかるんですが、自分でサービスできない部分について、人を雇用するというのはどういうことか。自分が対外的にサービスできないことをだれかにさせるというときには、普通まともな人だったらパートナーシップを組もうと思うのではないか。そのときに、だれかを自分の指揮監督命令下に置く、しかも自分はそのことについてはアドバイスもできなければ管理もできない、そういう人をわざわざ入れるという場合に、その人のニーズというのは、雇用された弁護士に対して、どうぞ自由にあなたの良心に基づいておやりくださいということを言うためには、多分雇わないのではないかなと。
 要するにパートナーシップは禁止されています、だから仕方がないんですと言って雇用するならば別ですが、パートナーシップはどうぞどうぞと言っているのに、あえて雇用という形態を使って、自分のできないサービスをその人にさせようというふうに思わなければ、自分のできるサービスをその人のアドバイスで、資料9−4の真下の部分でやるというんだったら、何も日本法の弁護士を雇う必要はないわけで、むしろ原資格国に関わる人をたくさん雇った方がいいわけですから、そういうふうに考えていくと、独立性の問題だけではなくて、自分でその分野についてサービスできない人が、ほかの分野で資格を持っている人をあえて雇うということは、経済的にも、法律的にもどういう意味を持っているのかというのを、やはり雇用の問題を真剣に考えなければいけないのではないか。
 私が共同雇用がいいなと思うのは、共同雇用だったら自分のパートナーの人がコントロールしてくれるわけですから、それはそれでいいわけです。
 逆に言うと、4条違反をやろうと思わない人は、どうして雇用をするのだろうかというところが、どうも合理性が見つからないというのが、私の率直な気持なんですけれども。

○柏木座長 座長の場から離れますけれども、私の経験から、例えば私が企業にいるときに何をやったかと、勿論、弁護士資格はないわけですけれども、要するに文化の通訳をやっていたんです。つまり、日本のビジネスマン、商社マンなんていうのは、非常に経験も知識も豊かなわけです。それでも、外国の法律について、外国の弁護士さんとまともに自分の事情を正確に説明し、それから外国の弁護士さんが言ったこと正確に理解するというこができないんです。誰か一人両方の事情がわかっている人がいなけれいけないんです。
 例えば、アメリカのある弁護士事務所なんかは、日本の法学部も出ていない人を雇っているなんていうこともありました。日本の法学部を出てアメリカのLLMに留学した人が沢山アメリカの弁護士事務所に雇われています。そのファンクションというのは、まさに文化の通訳なんです。だから、さっきパラリーガルの仕事をするというようなこともありましたけれども、あるいはM&Aのデューデリジェンスをやるなんていうこともありましたけれども、もっと大きいファンクションは、多分そういう文化の通訳なんだろうと思います。
 これは、玉井委員からも出ましたけれども、まさに弁護士を雇えないからパラリーガルとしてそういう人たちを雇っている。これが、もし弁護士資格のある人が、そういう通訳をやってくれるのであれば、クライアントとしては非常に助かるわけですね。一を話せば十を知って、それをつないでくれると、こういうファンクションも非常に大きいのではないかという気がいたします。

○久保利委員 それはわかるんですけれども、座長のケースの場合、雇うということしかできないんです。例えば、三菱商事と某事務所がパートナーシップを組んで共同事務所にしましょうなんてことはできないわけですから、だから、その場合に人を雇うという方法でいくというのはあり得ると思うんです。
 まさに、私がさっき言ったように、パートナーシップが組める、パートナーシップを組んだ相手方は幾らでも自由に日本の弁護士を雇える、その人たちに幾らでも文化の通訳がやらせられるというときに、あえてパートナーシップは要らない。その人たちが雇うであろうアソシエートも使わない。外弁が人を雇いますというケースは、どうも先生のおやりになっていたこととは違うのではないか。先生の場合には、雇うというパターンでしか、その機能を使えなかったわけですけれども、別の方法がたくさんあるのに、しかもそれをどんどん自由化しようというのに、あえてそれにこだわるというのは、どうしてなのかというところが私の疑問なんです。

○齊藤参事官 ただ一般論としては、使い勝手のある手段があるから、本来の別の手段は規制しておくという論理にはならないんだと思うんです。

○久保利委員 だからこそ、最後の2行が効いていると私は言うわけです。だから、諸般の事情を考えながら考えましょうと。

○玉井委員 今の久保利先生の御議論は、我々の世界で言うと、教授で取ればいいんだから、助手から取るのはやめろというふうに聞こえるわけです。
 つまり、そういう立派な人もいるかもしれませんけれども、それはやはり若いし、経験も少なそうだから、よく見極めて、6〜7年やらせてからパートナーに上げようと、それはいろんなケースがあり得るのであって。

○久保利委員 それは物理の教授が化学の助手を取るようなものなんです。それは意味がないじゃないですか。やはり取ろうとすれば、物理の教授は物理の助手を取るじゃないですか。違う者を取ろうという者の根性がわからないと言っているんです。

○柏木座長 大分議論が出ましたけれども、今の久保利委員の議論は、要するにちゃんとほかに方法があるのに、単独雇用まで認める必要はないじゃないかと。あるいは、そういう必要性も最初から教授を雇うのはどういうことかという議論もあったり、独立性の問題、これは自分で解決しろというような意見もありまして、ただ全体を見てみますと、少なくとも雇用を全面的に禁止してしまえというようなことはどうもなかったように思われます。
 そうしますと、先ほどの下條委員のB′案、つまり雇用禁止を貫徹するために、事務所を分割したままにしておく必要があるのではないかというのは、やはり少し無理があるというのが大方の意見なのではないかという気がいたします。
 雇用問題につきましては、雇用規制を緩めるとドイツ、フランス型になってしまうんではないかというような意見もあり、これに対して、ドイツ、フランス型になってもいいではないかと、クライアントは幸せであるという意見。あるいは、日本の法律市場はそんなに魅力はないという意見なんかもあったりしまして、たくさんの御意見をいただきました。
 この点につきましては、また次回検討すると。

○齊藤参事官 ですけれども、一応共同雇用まではOKだというお考えの方と、単独雇用までもよろしいのではないかというお考えの方と、どういう御意見か御確認いただけませんでしょうか。

○柏木座長 わかりました。波江野委員いかがでしょうか。全体としましては、波江野委員はたしか共同雇用まではよろしいと。

○波江野委員 別に単独雇用を認めても良いのですが、少なくとも共同雇用は認めるべきであると考えます。雇用を積極的に禁止しなければいけないというつもりはありません。

○柏木座長 玉井委員。

○玉井委員 私の方も同じ意見でして、禁止する理由が特に見当たりませんので、単独雇用でもいいのではないかと。

○柏木座長 孝橋委員。

○孝橋委員 同様の意見です。単独雇用でも認めていいのではないかと思います。

○乗越委員 私も同じでございます。

○道垣内委員 共同雇用はいいですけれども、単独雇用についてもし認めるのであれば、日本法に関する法律事務はできなくなるという形でなら認めてもいいかと思います。そうでなければ反対です。

○柏木座長 下條委員。

○下條委員 私は単独雇用も共同雇用も同じようなものだと思いますから、両方とも認めるべきではないと思います。それを認めたときの弊害は、先ほどの独立性の侵害とか、それから日本法をやることを公認することになってしまうとか、更に大きく言えば、日本の法制度の一環を担っている弁護士事務所が、言わば外資によって席巻されてしまうのではないかというおそれもあります。

○大塚課長補佐(下川委員代理) 私は共同雇用、単独雇用共に認めて構わないと思います。

○久保利委員 私は道垣内委員と比較的近いと思いますが、少なくともこの検討会で単独雇用について結論を出すことは意見書違反だと思います。

○加藤委員 私は単独雇用も共同雇用も認める方向で考えるべきだという意見です。
 1つだけ、先ほど久保利委員のお話で、そこがやりたいのなら、共同事業という道があるのだから、そちらの道を取ればいいではないかという話がありました。共同事業の場合には、当然相手方が必要であって、すべての場合に可能であるとは思えない。また、まだまだ外弁の数は少ないわけですし、今後急に何万人ということになるとは思えません。さらに、ユーザーサイドからみると、専門性もあり、場所の問題もある等々から必ずしも選択肢が多い訳ではない。少ない中であっても、選択肢はなるべく多い方がいいと考えておりまして、したがって、両方とも認められるべきではないかと思います。
 私が申し上げるのは、方向性ということでありまして、これを全面的に解禁したときに、いろいろな問題か出てくる。それに対して、例えば各種の罰則規定等を強化すべきである等が必要であれば、それは別途に考えればいいということだと思っております。

○バイヤー委員 私は波江野委員と全く同じ意見です。

○齊藤参事官 波江野さんと同じですか。ということは、単独雇用についてはどのようなお考えだということですか。

○バイヤー委員 まず、共同雇用はいいと思って、単独雇用について別に意見はないけれども、共同雇用がいいんであれば、単独雇用でもいいんじゃないかと思っています。私はそんなに区別ができません。

○柏木座長 ありがとうございました。大分議論が白熱したこともありまして、また座長の不手際もありまして、大幅に時間が超過しまして、申し訳ございません。次回の予定につきまして、事務局から説明をお願いします。

○齊藤参事官 本日は基本的な方針についても、多かれ少なかれ御意見をいただきました。これを踏まえて、事務局なりに議論の整理をしつつ、細目の制度、それらも併せて合理的に次回検討できるように準備をさせていただきたいと思います。

○波江野委員 そうすると、次回も外弁法のことをやるということですか。次回は9月ですね。今日、大体の方向性として座長も確認していただいて、かなりまとまったのかなという感じが私自身しておりますが、次回は今日まとまったことを前提に、個別の弊害防止等について議論するということでしょうか。

○齊藤参事官 一応基本的にそういう考え方で準備をさせていただきたいと思います。

○波江野委員 今回で外弁法は大体終わらせるということで、予定回数も一回増やしてやってきたのではないかと思いますので、どうしたものかと思ったのですが。

○齊藤参事官 事務局とすれば、7月中の議論でもう少し細部のことまで含めて明確な意見集約ができるような状況になれば、それに越したことはなかったんですが、やはり皆さん率直にこれだけいろいろ御議論いただいて、事務局としても、また、新たな視点だとか、有益な御意見などが出たと思いますので、この時点で外弁法の議論が尽くされたというふうには割り切らずに、もう少しいろいろ検討させていただくべきところもあるかもしれませんので、そういったところはもう少し慎重に準備させていただければと思います。

○柏木座長 それでは、これで「国際化検討会」第9回を終わらせていただきます。
 御協力どうもありがとうございました。