ア | 前提事項 |
| 1) | 法令の外国語訳に対するニーズ |
| ○ | 日本の弁護士が海外の依頼者に対して日本の法令に関する説明をする際に苦労することがある。 |
| ○ | 法令の外国語訳がないと事業ができないというレベルではないが、あればもっとスムーズに仕事ができるというケースはかなり頻繁にある。例えば、会社の定款を変更するに当たって、英語版も作成するが、単元株という新たにできた制度をどのように英語に訳したらいいのかという問題で悩んだことがある。 |
| ○ | 翻訳された法令の利用者はどのような人なのかを考える必要がある。これまでの議論を前提にすると、弁護士や企業関係者であると思う。 |
| ○ | 行政機関においても、海外の機関等に制度説明をする際に外国語訳された法令があると助かる。 |
| 2) | 海外の実情 |
| ○ | 中国では、公定訳ではないが、法令の英語訳が進んでいると聞く。実際に、中国の関係者とは英語で話をするが、英語訳された中国法令があるので仕事をする上で不便な感じはない。 |
| ○ | 中国の法律の中には我が国の法律を参考に作られたものがある。そのような中国の法律の英語訳は参考になる。 |
| ○ | 香港は英語、中国語の2か国語の法令を持っている。カナダは英語とフランス語の2か国語である。バイリンガルの人が多いようで、事足りてしまい、翻訳システムとしてきちんとしたものが構築されていないようである。 |
イ | 翻訳ルールの策定、訳語の整理・統一についての基本的枠組み |
| ○ | 名古屋大学のプロジェクトで構想しているのは、標準対訳辞書を用いたシステムである。このシステムでは、法令の翻訳データを用いて標準対訳辞書を作成し、訳語の統一を図ることができる。翻訳者が作成した翻訳は、コンピューターにより、標準対訳辞書に沿ったものかどうかのチェックを受ける。このプロセスはコンピューターのみでできる。チェック済みのものは訳語の統一性などの最低限の要件を満たしたものとして扱われ、専門家のチェックを受ける。この専門家としては、例えば法令の所管省庁などが想定される。専門家がチェックしたものは標準対訳辞書にデータとして蓄積される。このようにして、標準対訳辞書自体が進化する。また、翻訳された法令のデータも同時に登録されるので、翻訳があるかどうかの情報提供にも役立てることができる。標準対訳辞書と翻訳法令データベースは公開し、翻訳者が標準対訳辞書を使うことによって、翻訳作業の効率化を図ることができる。翻訳された法令のうち、民間の商業ベースで翻訳されたものについては、制限付きデータとして扱うことにより、有料でのみ提供することも可能である。 |
| ○ | 逐語対応的に訳していくとどうしても不自然になるのではないか。そもそも、外国語と日本語では言語構造が違うので、逐語訳にこだわると不正確な訳になる。 |
| ○ | 公定訳にすべきでないという認識は各委員に共通ではないか。 |
| ○ | 外国とは法制度が異なることもあり、こういう訳語を使っているが、制度内容はこうであるという形での注記は必要である。 |
| ○ | 基本法で特定の訳語を使っている場合は、原則としてその訳語を使うことにし、その訳語を使わない合理的理由がある場合に別の訳語を使うというルールにしてはどうか。 |
| ○ | どのような訳語を充てるかは、分野ごとに、その分野の専門家が定めるべきである。 |
| ○ | 法令を単純に外国語訳しただけでは十分とは言えない。関連条文などの情報も含めて提供できるようでないと、法令で規定されている制度を理解することは難しい。 |
| ○ | 我が国の法律はドイツ法の影響を強く受けており、我が国の法律をドイツ語に直すのは比較的に容易である。ドイツ語に直した上で、ドイツ法の英訳などを参考にしながら、英訳するというやり方もある。 |