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司法制度改革推進本部−法令の外国語訳に関するワーキング・グループ(第2回) 議事要旨

(司法制度改革推進本部)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年9月7日(火) 13:00〜15:00

2 場 所
永田町合同庁舎共用第1会議室

3 出席者
(委員)
浅香吉幹,石丸陽,伊藤賢,稲垣克芳,上柳敏郎,内田幸雄,太田原和房,柏木昇(座長),木村実,ケン・マイケル・クロス,藤田正人,松浦好治(敬称略)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長,松川忠晴事務局次長,古口章事務局次長,齋藤友嘉参事官,笠井之彦企画官,瀧澤一弘参事官補佐

4 議題
法令の外国語訳について
(1) 法令外国語訳の推進のための基盤整備について
(2) その他

5 配布資料
資料2−1 主な論点項目〔再配布〕
資料2−2 民法の条文の訳例
資料2−3 訳語の整理・統一に関するイメージ
○ 古本委員提出ペーパー

6 議事要旨
(1)前提事項ついて
1)法令外国語訳に対するニーズ
以下の点について,各委員の意見が一致した。
国際取引の円滑化,対日投資の促進,法整備支援の推進等において法令外国語訳を推進する意義がある。
ニーズの多い法令等について外国語訳を推進すべきである。
利用対象者としては,日本法と日本語を知らない人を考えるべきである。
2)法令外国語訳の現状と問題点
以下の点について,各委員の意見が一致した。
統一的で信頼できる外国語訳が十分に行われていない。
外国語訳された法令についてのアクセスが容易でない。
(2)翻訳ルールの策定,訳語の整理・統一についての基本的枠組みについて
資料2−2,2−3について事務局から説明され,以下のとおりの議論がなされた。
1)翻訳の基本スタンスのあり方
概要,以下のような意見交換が行われた。
 資料2−2の訳例1は固すぎるのではないか。90条の法的な意味での「対抗する」は,be set upとはあまり言わないのではないか。訳例2では,1条1項などはやや意訳にすぎるような部分もあるが,この辺まではpermissiveなのではないか。
 例えば1条1項では,行為規範という点で見れば,法律の原文から離れて人(例えばall persons)を主語とする翻訳も考えられないではないが,裁判規範としてみれば,権利を主語として翻訳した方がよいのではないか。
 翻訳の位置づけをどうするかを先に議論した方がよいのではないか。公定訳と位置づけるなら,法律の文言に忠実にということになろうし,参考資料と位置づけるなら,法律の文言から離れてもわかりやすさを優先することもできる。対日投資という点で見ると,実際には,対日投資をするに当たって日本の弁護士にも依頼をすると思われるが,その前に参考までにどういう制度になっているか知りたいという要望が多いと思われる。
 公定訳とせず,参考訳とすることについては,異論はないのではないか。
 法令の外国語訳は我が国の法令の内容の海外への宣伝・広告であると割り切ってしまえば,むしろ読みやすさを優先すべきだと思う。
 分かりやすさを重視する方がよいと思うが,正確性がどの程度犠牲になるのか,基準をどのように定めるかが気になる。日本語に忠実に訳してみて少しずつ直していくという方法も考えられる。
 明確な基準を定めるのは難しいので,訳例2くらいのイメージで進めていくのがよいのではないか。
 EUの体制では母国語に翻訳することになっているが,それと同様に考えると,分かりやすさの基準は英語を母国語とする人の感覚で判断してもらうべきではないか。
 分かりやすさを考えていくには,透明性ある形で試行錯誤をしていくことも必要なのではないか。
 松浦委員のシステムであれば,一応のルールを作ってimproveさせていくことが可能になるので,詰めて試行錯誤していく必要はないのではないか。
 利用者にとって分かりやすいという視点のほか,翻訳する側でも誰がやっても同じような訳になるという視点ももって基準を作るとよいのではないか。
 利用者については,日本法と日本語を知らない人を考えるとしても,英語訳の場合は,英米の法律を読んで分かるような人を想定すればいいのではないか。したがって,英米法の法律用語は制限しなくてよいのではないか。ただし,逆にそれを使用することで有害になることもあり得るので配慮は必要である。
 日本の弁護士が欧米の依頼者に対して日本の法制度の内容を説明する際に,依頼者がその内容を分かるようにしておけばよいので,利用者としてもそのような依頼者のレベルを想定すればいいのではないか。
 正確性のうち,内容の正確性については個々具体的に検討していくしかないのではないか。
 正確性との関係で,翻訳がいつの時点の法令等に対応したものであるかを明確にしておくことが必要ではないか。施行されていないときはその点の注書が必要ではないか。
 改正ごとに新旧の法令の翻訳が蓄積される必要があるし,そこではいつの時点のものに対応するかも明らかにする必要がある。また,対応が欠けているときはそれも明らかにする必要がある。公布時の訳か施行時の訳かも意識する必要がある。その情報をどう管理していくかも重要である。改正への対応がすぐに間に合わないときにどうするかも考える必要がある。
 前回紹介したシステムでは,官報に基づいて公布,施行に対応したデータ管理もできる。この問題は基本的にシステムで対応できる。
以下の点については,各委員の意見が一致した。
法令等の翻訳は公定訳にはせず,参考訳とすべきである。
翻訳の正確さを確保しつつも,分かりやすさを重視し,その外国語を母国語とする人にとって分かりやすい訳とする必要がある。具体的には資料2−2の訳例2のような方向のイメージとする。
2)訳語の整理・統一のあり方
概要,以下のような意見交換が行われた。
 訳語については,「債権」のように1つの日本語に対して複数の外国語訳がある場合があり得る。そのような場合は,どういうときにどういう訳語を充てるのかを明確にする必要がある。
 「債権」のように使い分けが必要になる場合があるのは避けられず,これを無理に統一しようとするとおかしな訳になるのではないか。民法全体の中でも一つの訳語で統一できるかは検討が必要である。分かりやすさと統一性とのバランスの問題で,標準訳から離れたときは注書を入れることで対処するしかないのではないか。
 前回紹介したシステムでは,特定の日本語の単語を入力すればどのような訳語が充てられているのかがリストになって出てきてすぐに分かる。「債権」という日本語を例にすると,例えば破産法の分野ではこの訳語を充てるというようなルールを作り,そのデータをコンピューターの方に付けておけばそれ以外の訳はできないというように対処することは可能である。その上で,複数の訳語があるということを警告情報として追加することは考えられる。
 日本語と英語は常に1対1で対応するとは思えないので,使い分けるのであれば,注書をつけることにし,その基準や内容を明確にするとよいのではないか。
 訳語の整理・統一のイメージを考えるに当たって,各省等の翻訳例やマニュアル等を出してもらうことはできないか。
(3)今後の検討及び翻訳の進め方についての基本的枠組みについて
概要,以下のような意見交換が行われた。
 翻訳を有料で提供するか,無料で提供するかはこのワーキング・グループの後の検討体制の下での検討に委ねるべきではないか。
 できるだけ無料で提供できるようにするのがいいのではないか。
 翻訳を有料で提供するのか,無料で提供するのかという問題があるが,利用者としてどのような人を想定するのかという問題にも関係する。我が国が国としてその内容を海外に発信したい法令と,利用者から翻訳の要望が強い法令とは必ずしも一致するわけではない。例えば,ごく一部の限られた利用者からの翻訳の要望が強く,その翻訳を利用することによって利用者が大きな利益を得られるという場合であれば,翻訳を無料で提供するまでの必要はないという結論もあり得る。今後の検討の中で,どのような法令は無料で,どのような法令は有料かを考えていけば良く,一律に有料にするとか無料にするなどと決める必要はないのではないか。
 国が情報を発信したいというときなどは無料ということになるだろうし,民間が有料でやれるというときにはやってもらって大いに結構ということなのではないか。
 アクセス体制の整備という点では,無料であればインターネット,有料であれば出版物とすることも考えられるのではないか。
 できる限り無料がいいという面もあるが,民間においては,付加価値を付けてサービス提供をすることが成り立つものもあり得るところで,その場合は有料ということになるだろう。あまり国にばかり頼るのもどうかとは思う。
 あるべき姿を提示し,工程表を作成すべきという意見があるが,民法,刑法,行政法の主立ったものを1つか2つ,会社法,民事訴訟法,場合によっては刑事訴訟法あたりを翻訳してだいたいのイメージをつかみ,翻訳ルールを策定して,ニーズの高い法令の翻訳にかかるというイメージではないか。このようなサンプルとしての翻訳をして,翻訳ルールを明らかにするという程度であれば,作業工程の明確化は可能かもしれない。
 これから1年の間に何ができるのかというのを明らかにして,検証してもらう姿勢で臨むべきではないか。基本法や特許,外為等のニーズの高い法令のうち既存の訳があるものをルールを見据えて見直す,用語集の暫定版を作るくらいは来年度でやるようにするなどある程度の目標は示すべきではないか。
 ニーズのあるものをやりたいという面はある。一方,何がニーズかを調べることになると時間がかかる面もあるだろう。
 外為法については現在のところ翻訳もノウハウも持ち合わせていない。
 今は基盤整備のあり方について議論している段階であり,まずは基盤整備のあり方についての議論を進めるべきではないか。
 民法,刑法,行政法,会社法,民訴法あるいは刑訴法などを訳してみてルール作りをすると1年はかかるのではないか。そのルール作りをしないまま先に進んでしまうのはどうか。同時並行で知財関係法,経済関係法などニーズの高い法令を翻訳することも考えられるが,それが効率的にできるかどうかは気になる。
 コンピューターシステムの利用により,辞書まではデータさえあればすぐできるが,ルール化まで行くとなるとそうはいかない。
 ルール化については,委員会的なところでセレクトしていくことが必要になるだろうから,それで1年くらいはかかってしまうのではないか。
 ルールの策定のためにも,特許,外為などニーズの高いいくつかの法令の翻訳を進めてはどうか。
 条文の多い法律の翻訳には時間がかかる。比較的に条文の数が少なく,外国語訳のニーズの多い法令をまず翻訳してみるのは,成果が見えやすいという点からも1つの方法ではないか。
 法令の翻訳を急ぐべきという意見もあるが,信頼できる翻訳をするには,1つには,翻訳ルールの策定が必要であり,また,もう1つには,策定された翻訳ルールに従って行われた翻訳はこういうプロセスを経ているので信頼できるという仕組みを作ることが必要である。まずは,そのための議論を進めるべきではないか。
 どういうルールを作るかも工程表のあり方に関係する。それについては,翻訳して困ったことは何か,翻訳者に任せることになるのか,それをルールを作ることで解決できるのかなども議論する必要があるのではないか。
 翻訳ルールを作るに当たっては,法律を所管している各省庁にも当初から関与してもらう必要があるのではないか。
 法令の外国語訳に当たっては,民間活力の活用も予定されている。法令の外国語訳に限らず,現在は,政府全体の流れとして,民間でできることは民間でというのが基本である。無料の話も同じだが,初めから政府がやるという前提で進めると話が立ち行かなくなるおそれもあるのではないか。
 これまでは民間ではコスト的にペイしない,他方,法令の外国語訳は国のインフラではないかとの発想があったのではないか。民間でペイするところまでのインフラ整備としてどこまでやるのかを考える必要があるのではないか。
 翻訳マニュアルと事例のようなものをまず政府が関与して作って,あとは市場に委ねるというイメージではないか。学者・実務家・官庁関係者を集めてルールを作成して公開し,保守管理を行うシステムくらいまでは必要があるのではないか。そこまですれば,そこから先は民間でもできるようになるのではないか。
 そのようなイメージでいくなら,そのプロセスないし工程についてしかるべきオーソライズが必要ではないか。
(4)その他
 事務局より,今月下旬,柏木座長,松浦委員ほかと,EU,フランスで実情調査を行う予定であるとの報告があった。
 次回日程は追って決定。