首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会国際化検討会

司法制度改革推進本部−法令の外国語訳に関するワーキング・グループ(第4回) 議事要旨

(司法制度改革推進本部)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成16年10月22日(金) 10:00〜11:15

2 場 所
永田町合同庁舎共用第1会議室

3 出席者
(委員)
浅香吉幹,石丸陽,伊藤賢,稲垣克芳,上柳敏郎,内田幸雄,柏木昇(座長),木村実,ケン・マイケル・クロス,藤田正人,古本省三(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長,松川忠晴事務局次長,古口章事務局次長,齋藤友嘉参事官,笠井之彦企画官,安東章企画官,瀧澤一弘参事官補佐

4 議題
(1) 法令外国語訳の推進のための基盤整備について
(2) その他

5 配布資料
○ 柏木座長提出資料(法令外国語訳に関するワーキング・グループ 議論の取りまとめ(案))
○ 外山オブザーバー提出資料(コンピューターを利用した訳語・訳文の生成)

6 議事要旨
(1)コンピューターを利用した訳語・訳文の生成について
外山オブザーバーから,コンピューターを利用した訳語・訳文の生成について,概要,以下の説明があった。
 コンピューターを利用した訳語・訳文の生成についてご説明する。翻訳で重要なのは翻訳の品質維持で,その中でも特に訳語の統一が重要である。そのために対訳辞書を作って共通に利用する必要がある。対訳辞書の作成に情報技術を活用して経費節減を図ることができる。資料の1枚目にあるのは対訳データベースによるイメージである。資料では,単語単位での対応関係が示されている。コンピューターを利用することにより,対訳の自動抽出が行われ,例えば,取消という日本語に対してannulmentとrevocationという2通りの英語が対応していることが分かる。資料の例では,「取消」という単語で抽出しているが,句,節などで抽出することも可能である。前者は婚姻・縁組などの取消という意味で,後者は遺言・推定相続人の廃除などの取消という意味で使われていることが分かる。このような使い分けの基準について,専門家による情報の付加を行えば,より的確な翻訳が可能になる。
 資料の2枚目は翻訳作業のイメージである。例えば,取消,縁組,養子,親族という日本語の単語に対応する英語の単語は,対訳辞書に格納され,対訳辞書を使うことにより,翻訳専門家は容易に適切な英単語を選択できる。この例では対訳辞書から取り出すのは単語のみになっているが,句などを取り出すことも可能である。また,対訳辞書に格納するほどに頻繁に使われる単語,句などではないものの,過去の翻訳で使われたものについては,翻訳メモリに格納し,必要に応じてこれを参照することができる。翻訳メモリのデータも,頻繁に使われるようになれば,対訳辞書の方に取り込まれることになる。翻訳メモリを参照すれば,過去に同じ翻訳や類似する翻訳がされていれば,それが分かる仕組みになっている。資料の例では,「第794条の規定に違反した」という部分と「その取消を裁判所に請求することができる。」という部分の英語表現について,翻訳メモリに格納されている過去の翻訳例を参照し,翻訳者がこれらの表現を的確かつ容易に英語表現に直す作業を支援するイメージを表している。
 資料の3枚目は,翻訳の統一性の確保等のイメージである。翻訳者が作成した翻訳は,コンピューター・システムにより,翻訳ルールに従ったものであるか否かのチェックを受ける。この段階では,対訳辞書に従った翻訳であるかどうかが,コンピューターにより自動的にチェックされる。チェックが済んだ翻訳は,翻訳法令データベースに格納される。格納された翻訳は,法律専門家により,過去の翻訳例などと比較され,過去の翻訳例も含めて同一の日本語表現を英語表現に直す際の最も適切な語,句などがデータベースに格納され,使用頻度に応じて,対訳辞書や翻訳メモリに格納され,対訳辞書と翻訳メモリの内容が更新される。
その後,以下のような質疑応答があった。
 今説明していただいたシステムは,EUで採用されているTRADOSというシステムと基本的に同じものだと理解してよいか。
 TRADOSの特徴は翻訳メモリの使用にある。このシステムは,その点でTRADOSと共通であるが,翻訳の自動品質検査が入っている点ではTRADOSと異なる。EUでは,自動品質検査の部分は翻訳専門家が行うことになっている。
 データベースなどにはインターネット経由でもアクセスできるというイメージになるのか。
 インターネット経由でのアクセスが可能というイメージである。管理自体もインターネット経由で行う。
(2)議論の取りまとめ(案)について
1) 前提事項について
柏木座長より,概要,以下のような説明があった。
 ニーズについては,前回の議論を踏まえ,このような形にした。限られた時間内でのニーズの的確な把握は難しいので,このワーキング・グループで指摘された内容という形にした。
 検討会議で,このワーキング・グループで指摘された内容も参考にしていただき,的確なニーズの把握に努めていただくというイメージである。
 海外の実情については,前回の資料のうち,韓国の実情についてのものについて,委員からのご指摘を踏まえて修正した。その上で,別添資料を参照ということにした。
 法令外国語訳のための基盤整備のあり方に関して,前回の議論を踏まえて,今後の検討体制の下で外国語訳推進の基本的方針を明らかにするという趣旨が分かるようにした。
2) 翻訳ルールの策定,訳語の整理・統一についての基本的枠組みについて
柏木座長より,概要,以下のような説明があった。
 2(3)翻訳の基本スタンスのあり方の①の基本的考え方のところに,前回の議論を踏まえて,「継続的に」という語を入れている。③の正確性と分かりやすさの問題は時として矛盾衝突する問題であるが,分かりやすさに力点を置いてまとめたつもりである。④の統一性の確保は重要であり,本日ご紹介いただいたコンピューター・システムの活用等により統一性を向上させる必要があると考えている。
 どの国でも,その国に固有の制度はあると思う。特に,我が国の法制度には,英米法のコモン・ローにある概念に対応しない概念などもある。そういうものについては注書等で説明する必要があると思っている。
 早く翻訳が欲しいという声があるので,訳語ルールにおいては,当面,主要な訳語・訳文についての整理を行うという形にしている。大事なものから進める必要があると思っている。
 訳語ルールの作成に当たっては,既存の翻訳等を活用することも重要である。その際には,本日ご紹介いただいたコンピューター・システムを活用した手法が助けになると思う。
 2(4)②訳語ルールの改善のあり方について,利用者からの意見を反映することは大切であり,また,新たに締結された条約等で用いられている表現との整合性を確保することも必要だと思っている。
概要,以下のような意見交換が行われた。
 訳語ルールのあり方のところで,「訳文では正確な理解に支障を来すおそれがある場合には,注書等で説明することにより補完する。」とされているが,これはむしろ正確性と分かりやすさの問題ではないかという気がする。
 ご指摘の点については,ご意見を踏まえ,修正するか否かも含めて座長にご一任いただいてよいか。
 座長にお任せする。
3) アクセス体制の整備についての基本的枠組みについて
柏木座長より,概要,以下のような説明があった。
 翻訳の提供を無償で行うのか,有償で行うのかについては,このワーキング・グループで結論を出すのは難しい問題であり,このような形でまとめた。
4) 今後の検討及び翻訳の進め方についての基本的枠組みについて
柏木座長より,概要,以下のような説明があった。
 (1)検討の進め方について,前回の議論を踏まえて,検討会議における検討事項を明確にした。外国語訳推進の基本的方針を検討会議で検討することにした。検討会議で検討することが考えられる検討事項として,官民の関係なども含めて,どのような枠組みで翻訳を行うのか,どのようなプロセスで行うのかといった事項を掲げている。ニーズに関する前回の議論を踏まえ,ニーズの的確な把握と翻訳対象法令の選定のあり方や,翻訳提供を有償で行うのか無償で行うのかという問題も,検討会議で検討することが考えられる検討事項に掲げている。
 既存の翻訳等の資料提供等の面では,各府省の協力をお願いしたい。資料が豊富にあれば,本日ご紹介いただいたコンピューター・システムを利用して,より質の高い対訳辞書を作成できる。
 (2)の翻訳の進め方の問題について,基本法を早く進めれば,他の法令の翻訳の参考になると思う。前回,関係府省と民間の関係が議論された。全部民間に任せていてはどうにもならない。しかし,全部関係府省に任せるのも,時代の流れに反するし,効率的ではない。その中間で,民間と関係府省がどうやって翻訳を進めるかが重要である。このワーキング・グループのとりまとめとしては取りまとめ案のあたりではないかと考えている。ニーズに従って優先順位を付けて翻訳を進める点にはご異論はないと思う。
概要,以下のような意見交換が行われた。
 ほとんど言葉の問題かもしれないが,具体化に向けた色合いがやや弱まっている気が若干する。4(1)の2つ目の○のところで,具体的検討事項として「法令外国語訳の推進のあり方に関する基本的方針」とされているが,端的に,「推進に関する方針の具体化」としてはどうか。また,「ニーズの的確な把握とこれを前提とした翻訳対象となる法令の選定のあり方」とされているが,「あり方」を省いて,「選定」で終わらせてはどうか。その方がより一層明確であると思う。
 その点は,同じ感想を持った。
 2点目のご指摘について,翻訳対象法令の選定は検討会議だけが行うものではないので,このような表現にしている。検討会議では,選定も行うかもしれないが,将来の選定のためのルールについても検討するというイメージである。1点目のご指摘についても,枠組みの検討はするのでこのようにまとめた。これらの表現については座長に一任願えないか。
 おそらく両方があるのだろう。表現についてはお任せする。
以上の意見交換の結果,一部の表現を座長に一任することとした上で,取りまとめ案が了承された。
(3)その他
柏木座長から,本ワーキング・グループの取りまとめ結果は,11月5日開催予定の国際化検討会に報告させていただく旨の発言があった。