第1回配付資料一覧
資料2
○ 司法制度改革審議会意見書(抜粋)
II 国民の期待に応える司法制度
第2 刑事司法制度の改革
2. 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備
- 被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきである。
- 公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関とし、適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである。
- 弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。
- 上記機関は、制度運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべきである。殊に、訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備することが緊要である。
- 上記機関の組織構成、運営方法、同機関に対する監督等の在り方の検討に当たっては、公的資金を投入するにふさわしいものとするため、透明性・説明責任の確保等の要請を十分踏まえるべきである。
- 公的弁護制度の下でも、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性が損なわれてはならず、制度の整備・運営に当たってはこのことに十分配慮すべきである。
- 弁護士会は、弁護士制度改革の視点を踏まえ、公的弁護制度の整備・運営に積極的に協力するとともに、弁護活動の質の確保について重大な責務を負うことを自覚し、主体的にその態勢を整備すべきである。
- 障害者や少年など特に助力を必要とする者に対し格別の配慮を払うべきである。
- 少年審判手続における公的付添人制度についても、積極的な検討が必要である。
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(1) 公的費用による被疑者・被告人の弁護制度(公的弁護制度)
ア 導入の意義、必要性
刑事司法の公正さの確保という点からは、被疑者・被告人の権利を適切に保護することが肝要であるが、そのために格別重要な意味を持つのが、弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保することである。しかるに、資力が十分でないなどの理由で自ら弁護人を依頼することのできない者については、現行法では、起訴されて被告人となった以後に国選弁護人を付すことが認められているにとどまる。被疑者については、弁護士会の当番弁護士制度や法律扶助協会の任意の扶助事業によって、その空白を埋めるべく努力されてきたが、そのような形での対処には自ずと限界がある(関連して、少年事件の弁護士付添人についても、ほぼ同様の状況にある。)。これに加え、充実しかつ迅速な刑事裁判の実現を可能にする上でも、刑事弁護体制の整備が重要となる。このような観点から、少年事件をも視野に入れつつ、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきである。
イ 導入のための具体的制度の在り方
以下の内容を考え方の基本として、具体的な制度の在り方とその条件につき幅広く検討した上、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきである。
- 公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関とし、適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである。
- 弁護人の選任・解任(訴訟法上の地位の付与ないしこれを失わせる行為)は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の制度の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。
- 上記機関は、制度運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべきである。殊に、訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備することが緊要である。そのためには、例えば、常勤弁護士の配置や、個々の弁護士又は弁護士法人との契約を行うことなどが考えられる。
- 上記機関の組織構成、運営方法、同機関に対する監督等の在り方の検討に当たっては、公的資金を投入するにふさわしいものとするため、透明性・説明責任の確保等の要請を十分踏まえるべきである。
- 公的弁護制度の下でも、個々の弁護活動の自主性・独立性が損なわれてはならず、制度の整備・運営に当たってはこのことに十分配慮すべきである。
- 弁護士会は、弁護士制度改革(後記Ⅲ「司法制度を支える法曹の在り方」の第3参照)の視点を踏まえ、公的弁護制度の整備・運営に積極的に協力するとともに、弁護活動の質の確保について重大な責務を負うことを自覚し、主体的にその態勢を整備すべきである。
- 障害者や少年など特に助力を必要とする者に対し格別の配慮を払うべきである。
(2) 少年審判手続における公費による少年の付添人制度(公的付添人制度)
少年法の改正(平成12年法律第142号)により、検察官が少年審判の手続に関与する場合における少年に対する国選付添人の制度が導入されたが、それ以外の場合の公的付添人制度についても、少年事件の特殊性や公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスなどを考慮すると、積極的な検討が必要だと考えられる。その検討に当たっては、少年審判手続の構造や家庭裁判所調査官との役割分担、付添人の役割なども考慮される必要がある。