首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会公的弁護制度検討会

公的弁護制度検討会(第10回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年6月10日(火)13:30~17:58

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議題
公的弁護制度について

5 議事

 議事に先立ち、事務局から、本年6月5日に開催された「司法ネットについての有識者懇談会」の結果の概要について報告がなされた。続いて、議事に移り、前回(第9回)配布の資料9-1「公的弁護制度について(2)」(以下「たたき台(2)」という。)に沿って、公的弁護制度について議論が行われた。
 議論の概要は以下のとおりである。(□:座長、○:委員、●:事務局)

(1)公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策(たたき台(2)第6関係)

ア 常勤弁護士及び契約弁護士等の位置付け(たたき台(2)第6、1関係)

○ 今回、公的弁護制度を導入するに当たっては、国民の税金を用いることになるが、それによる国民のメリットは何かということが考えられるべきである。そうなると、刑事弁護に特化し、又は刑事弁護に通じ、技能が高く能力があり、刑事弁護の本質をわきまえた弁護士をより多く確保することが国民のニーズに合うということだと思う。そうなると、制度が動き出した段階では数の上では常勤弁護士の方が数が少ないかもしれないが、制度を設計する上での理念としては、常勤弁護士が中核になるべきであって、契約弁護士がそれに続き、どうしてもそれだけでは賄いきれない場合に一般の弁護士に公的弁護をお願いするという制度設計をするのが妥当であろう。

○ 刑事弁護について専門的に担当する常勤弁護士が、公的弁護制度全体の運営あるいは刑事弁護のノウハウの集積や活動について中核的な役割を果たし、公的弁護制度全体の担い手になるというのが、理念的に最も望ましいのではないか。

○ 常勤弁護士や契約弁護士は、現在の国選弁護の登録弁護士で対応が困難な事件の弁護態勢の確保、あるいは、長期間連日的開廷が想定されるような特別重大な事件への対応態勢の確保、さらに、刑事弁護全体の質の向上という観点から要請されることになるだろう。ただ、個々の弁護士が刑事弁護を担うことにより、弁護士がその使命である人権感覚を共通のものとして培うことができ、さらには、弁護の水準を確保する上で、多くの弁護士が弁護に携わることが重要だという面があり、弁護士が相互に多様な経験を蓄積し、交流し合うことによって弁護の質の向上に資する。さらには、弁護士会が会として国選弁護に責任をもった対応を行う。そういう点からしても、一般の弁護士が中心を担い、常勤弁護士あるいは契約弁護士が補完的役割を果たすという構図が最も望ましいのではないか。

○ 運営主体の役割としては、少なくとも弁護態勢のセーフティーネットとして一般の弁護士に引き受け手がない場合や集中審理に対応できる弁護士がない場合に弁護士を提供できるようにすることがまず必要だと思う。常勤弁護士や契約弁護士のセーフティーネットとしての役割は最低限のものであり、それ以上にどの程度の役割を担わせるべきかということについては更に議論が必要だと思うが、実際に常勤弁護士や契約弁護士がうまく機能し、制度全体として適切であるとなってくれば、自ずからその役割も大きくなってくるだろうと思う。少なくとも出だしのところでは、セーフティーネットとしての機能はきちんと果たすような制度設計にしておかなければならないと思う。

○ 新しい裁判員制度や裁判の迅速化ということを考えると、やはり弁護人が連日的開廷等に対応できなければ、すべてが崩壊するのではないかと危惧している。そういう意味での確実な態勢を整えるため、まず常勤弁護士あるいは契約弁護士がいるということが絶対に必要であるが、それだけでは足りないであろうから、これまで以上に一般の弁護士も積極的に刑事弁護を担ってもらいたいとも思っている。ただ、理念としては、刑事に専門化した弁護士集団ができ、刑事弁護の質が上がっていくという機動力になるという意味で、運営主体の常勤弁護士が中核になるというのが理想だと思う。

○ これから常勤弁護士や契約弁護士というものを設けていって、特にこの人たちに重大な事件を割り当てていくということになると、おそらくその役割は全体の中で相当大きなものになってくるだろう。これから先どんなイメージをもって制度設計していったらいいのかということになると、当面はB案ということにとどまるかもしれないが、やはり大きく見ていってA案というのがいいのではないか。

イ 常勤弁護士(たたき台(2)第6、2関係)

○ 常勤弁護士については、弁護活動の自主性・独立性が確保されなければならず、また、常勤弁護士の配置についても地域の弁護士会との十分な協議によって決定されるといったことも含めて制度設計される必要がある。

○ 常勤である以上、給与をもらうことになり、給与をもらっている以上、公的弁護を担当した場合に事件ごとの報酬を受け取らないことは当たり前であろう。

○ 運営主体をどういうものとして考えるかということになると思うが、例えば過疎地対策として、常勤弁護士を過疎地に置けば、刑事だけでなく民事も担当するということになるだろう。したがって、公的弁護以外の業務を担当するかどうかは、運営主体をどういうものとして構想するかということにかかわってくるだろう。

ウ 契約弁護士(弁護士法人を含む。)(たたき台(2)第6、3関係)

○ 受任が義務付けられる事件については、A案でいく以外ないのではないか。事件数で、何件いくらということで事務所と契約するというのが最も妥当である。その前提としては、ある程度定型化されている事件を受任するということであり、そうはいっても、実際にやってみるといろいろな問題が出てくる可能性はあるが、それはそれとして、事件数で決めるべきである。B案のような業務量では、算定の仕方が難しいため、個別事件の割当ては迅速に行わなければいけないのに、果たして一定の業務量に達しているかどうかということはなかなか判定できるものではなく、また、だれが判定するかという問題もあり、システムがうまく動かないのではないか。C案のように契約弁護士が特異重大事件を担当するのだということを主に考えると、事務所を運営する立場としては非常にやりにくいという意味で、契約弁護士として手を挙げる人が少ないのではないか。

○ 件数で契約する方が契約弁護士として仕事をさせやすいということは、そのとおりだろうが、事務所によっては、一定の業務量でもできるというところもあるだろう。お互いに契約する際に、この契約でよいということであれば、B案もあり得るだろう。C案はいかがかという点は同じ意見である。

○ 契約弁護士は、常勤弁護士の補完的役割を果たすということであるわけだから、その役割をどのように果たしたらよいかという観点から決まってくるのだろう。常勤弁護士が派遣できないところに一定数の事件があり、これを担当する契約弁護士ということもあり得るだろう。そうだとすると、件数でも業務量でも両方考えられるので、それぞれの状況によって契約していけばよい。契約弁護士は、補完的役割を果たすが、それだけにとどまらず、専門性の高い事件を担当する弁護士がどこかにいるというときには、その人に弁護を依頼するということも考えられるので、以前C案のような考えを述べたものである。

○ 契約金については、一般の国選事件が一件いくらという金額が出てくると思うので、それ掛ける件数の金額で契約する。その金額の中ですべてやり繰りをするというイメージである。事務所を運営する立場から言えば、今年度の経費のうちこれくらいは、運営主体との契約から入ってくるという予算組みができるような仕組みでないと、契約事務所として手を挙げるところは少なくなるだろう。

○ そのような算定の仕方はあろうかと思うが、一件の単価が、事務所を維持できる高い水準で設定されていればいいだろうが、安い水準に設定され、数多くやればやるほどマイナスになるということでは、契約弁護士のなり手はないのではないか。数多く事件を担当する場合、それなりのプラスアルファの金額を考えざるを得ない場合もあるだろう。

○ 契約した以上は、たとえ事件が来なかった場合でも、事務所経営という観点からすれば、その部分の契約金を受け取れるということでないとなかなか難しいだろうと思う。件数を100件としたときに、どういう事件が最終的に来るか分からないので、事件によっては、当初予定された金額でペイしきれないということがあるのではないか。

エ 常勤弁護士及び契約弁護士の確保方法(たたき台(2)第6、4関係)

○ 弁護士会は国民に適正な弁護活動を提供する義務を負っているということが言え、そういう意味では、弁護士が刑事弁護に適しているかどうかということは、運営主体よりも弁護士会の方が詳しいと言える。そうすると、やはり弁護士会の推薦に基づいて運営主体が契約をするというシステムが望ましいのではないか。「推薦に基づいて」というのは、弁護士会が推薦したら必ずその弁護士と契約しなければならないということではなく、弁護士会が推薦した弁護士や弁護士事務所の中から運営主体が契約するということであり、そのような制度とするのが望ましい。

○ 公正中立な運営主体が常勤弁護士や契約弁護士を確保するということであり、弁護士会の推薦がなければ常勤弁護士や契約弁護士になれないという実質的な理由は何か。「適正な弁護活動ができる弁護士」を推薦するとなると、「適正な弁護活動ができる弁護士」かどうかの基準を明らかにしておく必要があると思う。その趣旨が「不適正な弁護活動を行う弁護士」を取り除くということであれば、そのような弁護士の名簿を提出してもらえば済む話ではないか。一つの組織が弁護士を雇ったり、契約したりするときに、ほかの機関や団体からの推薦がなければできないという制度が果たして妥当なものなのか。推薦のない弁護士が常勤弁護士や契約弁護士になりたいと言い、能力もあると認められる場合に、なぜその弁護士と契約してはいけないのか。例えば運営主体が50人必要だと考える場合に、弁護士会が30人しか推薦できないということはあり得るかもしれず、あと20人は確保できないということになりかねない。実際には弁護士会に協力してもらわなければならないということは当然の前提であり、運営主体が弁護士会に協力をお願いするということは必要だと思うが、制度として、弁護士会の推薦がないといけないということはおかしいと思う。

○ 常勤弁護士や契約弁護士の確保に当たって、弁護士会の協力を得ないと弁護士を確保できないことになろうから、運用上又は事実上、そのような推薦ということはあるだろうと思うし、運営主体と弁護士会との積極的な協調関係が必要だろうと思うが、制度として、推薦がないと動けないということはできないのではないか。制度とすると、困ることが起こるということは先ほど来指摘されているとおりであり、そこまでは無理ではないか。しかし、運用上又は事実上、そういう推薦が望ましく、また、それを尊重して運用されていくであろうとは思う。

○ 弁護活動の自主性・独立性が確保されなければならないことは言うまでもなく、また、そのために弁護士会に自治権が認められているという前提がある。さらに、憲法34条及び37条が被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を定め、その保障の担い手を「資格を有する弁護人」と規定しているところからしても、弁護士・弁護士会として被疑者・被告人に弁護を提供する憲法上の責務を負っているという考え方もあるようである。弁護士の刑事弁護を提供する責務を考え、また、弁護士会の自治権に基づく自主性・独立性の確保ということを考えれば、運営主体が常勤弁護士あるいは契約弁護士を採用するに当たって、弁護士会が関与していくことの正当性は認められるのではないか。

○ 弁護士及び弁護士会の自主独立は当然の前提であるが、弁護士を雇う、あるいは弁護士と契約するについて制度として弁護士会の推薦がなければいけないということが弁護士及び弁護士会の自主独立に論理的に影響するとは思えない。また、弁護士のことは弁護士会がよく判断できるということは、事実上、弁護士会の推薦を受けて採用するということで満たされる。一般論として、公正中立な機関として設けられる独立の主体が人を雇ったり、人と契約したりするときに、なぜほかの団体の推薦が制度として前提にならなければいけないのか疑問である。

○ 事実上推薦が行われれば運用上うまくいくということもあり得るのではないかと思うし、それでもいいのかなと思うが、日弁連は、法的に認められた公的団体であり、全弁護士が加入し、弁護の在りようについて公的に責任を負う立場にあることは間違いなく、弁護について、日弁連が公的な立場で一定の役割を担うということはあり得ることではないか。

○ 常勤弁護士の採用がノーマルな状態で運用されているときには、弁護士会の推薦に基づくことになると思うが、必ずしも常にノーマルな状況であるとばかりは限らないだろう。今までの国選弁護人の選任に関する状況からすると、かなり危機的な状況があったことは間違いなく、そういうことが想定されるのだとすると、制度として弁護士会の推薦に基づかなければ行えないということでは固すぎる感じがする。また、これから常勤弁護士制度を大きく育てていくとすると、場合によっては修習を終えた者から採用するということもあり得るところであり、運営主体が主体になって採用するということも十分あり得るだろう。そういうことからすると、弁護士会の推薦に基づいて採用・契約を行うということは基本ではあるが、運用にとどめておくべきではないか。

オ その他の確保方策(たたき台(2)第6、5関係)

○ 日弁連が支援する公設事務所、刑事専門事務所などによっても、公的弁護に対応する弁護士の確保がなされており、運営主体の常勤弁護士や契約弁護士と切磋琢磨しながら弁護の水準を上げていくという図式がよいのではないか。

○ 一般の弁護士に国選弁護を担当してもらう場合にも、ボランティアでやってもらうという考え方は捨てなければならず、その事件で経済的にペイする程度の報酬が保障されなければ刑事弁護の世界に入ってくる弁護士は少ない。思いつきではあるが、ロースクールの奨学金の償還について、刑事弁護を担当した場合には償還を免除するなど広い視野で制度を組んでいかないとより多くの弁護士を刑事弁護の世界に呼び込むということは難しいのではないか。

○ 特に全国的に充実した刑事弁護を提供する態勢をつくるということになると、常勤弁護士や契約弁護士とは別に、一般の弁護士も積極的に強いインセンティブをもって刑事弁護をやってもらう態勢ができることが必要だし、望ましいと思う。これまで議論してきた契約弁護士は、運営主体との間で契約をした以上は、一定数あるいは一定量の事件を受任することを義務付けられるものであるが、もう少し緩やかな形で一般の弁護士も運営主体と一定の契約を結んで、受任は義務付けられないが、年間何件かを担当するという仕掛けがあればいいのではないか。

○ そうすると、常勤弁護士、契約弁護士のほか、一般弁護士も運営主体と契約するという形になるが、すべての公的弁護が運営主体の下に統合されることには絶対に反対である。

○ 運営主体が確保を担当する範囲を常勤弁護士及び契約弁護士のみにするのか、一般弁護士を含めるかについて議論があるが、一般弁護士を含めて全体を運営主体が担うのが相当であるという合理的な理由と相当性があれば、その可能性を検討することは当然だと思う。ただすべての公的弁護について運営主体を通さなければならないという理由は何か、また、一般弁護士の報酬算定・支払を運営主体が行う理由・必要性は何か、それが会計法24条やその趣旨と矛盾しないのか、どのような理論構成で矛盾しないと説明するのか、事件数の増加などによって当初予算が不足する事態になった場合にどのように手当てするのかなどの問題がある。また、現実論として、最初から運営主体がすべての弁護人の確保を行うことができるのか、運営主体の運営が軌道に乗るまでにはある程度の期間が必要ではないかという問題がある。さらに、極端な例かもしれないが、運営主体が機能しなくなってしまった場合に、弁護人の確保についてすべて運営主体を通すということになると、弁護人を確保できなくなってしまうという問題もある。また、弁護の適正確保について、運営主体がどのように担うのかという問題についても十分に議論して制度設計をすべきだという気がしている。

□ 予算の不足の問題は、前提として今の国選弁護の方式では、必要に応じて予算がついてくるということか。運営主体だと、初めに予算が決まっていて、その範囲内でやらないといけないということか。

○ 運営主体の組織形態をどうするか、報酬算定主体をどうするかということにもかかわってくるだろう。また、運営主体が算定を行うという場合に、報酬算定が適正になされていないと判断される場合も生じ得るだろう。

○ 予算の点は、今の国の予算が足りなくなった場合にどうするかということと同じではないか。

○ 運営主体であれば、当初予算の中でやれるよう自助努力せよ、常勤弁護士に担当させろという話になるだろうと思う。今の制度であれば、件数が増加したということで追加を求めるということになるであろう。そこは本質的に違うと思う。制度を考える場合には、健全に動くようにつくっていくことになるが、人間の組織である以上、不健全な症状が出ることも考え、安全弁をどうするかということも考えておかなければならず、すべてを運営主体に一元化してしまうとなると、安全弁のない危うい制度となると思う。

○ 一元論を採ったからといって、運営主体が公的弁護を担うものとしては理解していない。一般の弁護士が中心となった制度構想であり、運営主体が抱える常勤弁護士や契約弁護士は補完的なものとして存在するというイメージである。

カ 弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦又は連絡(たたき台(2)第6、6関係)

○ 結論的には、A案である。極めて技術的なことであり、また、迅速に行う必要があるので、運用に任せてよいのではないか。私のイメージとしては、起訴されたら、裁判所から運営主体の常勤弁護士事務所の事務局に推薦依頼を行い、同事務局が常勤弁護士の繁閑、契約弁護士に適した事件かどうか及び契約弁護士の繁閑を見て、常勤弁護士か契約弁護士が受けると判断した場合には、その旨裁判所に連絡する。常勤弁護士も契約弁護士も受けないと判断された場合には、裁判所は、一般の弁護士を選ぶという順序で流れていくのではないか。

○ A案である。刑事訴訟法上の弁護人の選任手続にかかわることであり、裁判所以外の機関の推薦が必要だということになると、それがないと裁判所は弁護人を選任できないという結論になるが、それでは制度として甚だ問題があると思う。

○ この問題についても、何らかの形で弁護士会の推薦ということが確認される必要がある。一つは、弁護人の推薦資格、適格性判断という問題があり、裁判所や検察当局に対抗的な弁護士が排除されるということでは困るので、運営主体が適格性判断を行うということは許されないことだと思う。もう一つは、個々の事件に対する推薦の順序という問題があるが、事件に対する弁護士の選定にかかわる実質的な判断が介在する余地があるので、これも運営主体が担うということには、弁護の独立性にかかわる問題が生じ得ると思う。弁護人として推薦される適格性、つまり推薦名簿の作成については、弁護士会が担うということで、これについて、何らかの手続法上あるいは組織法上の規定が必要ではないか。一方、個々の事件に対する推薦についても、弁護士会が主体的にかかわっていくことが確認される必要があり、配てん名簿の作成についても、弁護士会が主体的に行っていくシステムが必要だと思うが、その点については、弁護士会の推薦によることが確認された上で、現行と同様に運用によって賄うということも可能だろうと思う。

□ 運用によって賄うということは、弁護士会の推薦名簿に載っている弁護士については、運営主体が推薦できるということか。

○ 弁護士会と運営主体との間で何らかの協議を行い、公平な配てん名簿を作成して、それを裁判所に提出し、裁判所は、それに基づいて、事件が来たときに機械的に配てんを行うということである。

○ 常勤弁護士又は契約弁護士になる場合に弁護士会の推薦がなければならず、なおかつ、個々の事件について配てん名簿を作るのにも弁護士会との協議が必要だとすると、運営主体は必要なのか、運営主体は一体何をやるんだという疑問がある。いずれについても弁護士会の推薦、協議が必要だということであれば、弁護士会の方ですべて公的弁護の弁護士を確保できるということになり、運営主体を設ける説明はつかないだろう。

○ 個々の事件の配てんについては、運営主体も、弁護士会と協議しながら配てん名簿を作成するという意味では動くことになる。公正中立な機関だとはいえ、運営主体の弁護士だけに配てんするなど恣意的な配てんが行われる可能性は否定できないので、公平な配てん名簿を作ることによって、その点を確認していこうということである。

○ 説明を聴いていると、運営主体は単なる協議機関ということになる。何をするのかよく分からない。

○ そのようなシステムでは、絶対に動かないと思うし、それ以上に、運営主体の当事者能力を否定した考え方である。要するに、金の水路としてしか運営主体を見ておらず、これでは国民は納得しないと思う。そこから金をもらうけれども、基本的には運営主体の独立性や当事者性は全く認めず、個別の事件配てんまですべて弁護士会が口を出し、運営主体と契約関係にある常勤弁護士や契約弁護士についてまで口を出すということでは到底国民が納得する制度ではない。

○ 弁護士会が弁護活動の質の確保に責任を負う以上、弁護士会が運営主体に推薦するという仕組みはおそらく必要だろうが、弁護士会が提出した名簿の中から運営主体が選んでいくということでないと、個別に推薦を得るというのは現実的でないと思うし、問題があると思う。一般的な推薦名簿を出している弁護士会と運営主体との間で協力関係ができていれば、そこで協議されることになると思うが、それは事実上の仕組みとしての運用上の問題であって、法的に推薦がないと選任できないというような法的な拘束力まで設けることは無理ではないか。

○ 個々の事件についての弁護士の推薦については、事態が急激に変わるとは思えないし、それぞれの立場で配慮されてそれなりの運用がなされていると思われ、現行どおりで特に問題が起こるとは思わない。他方、ここでは、その前提として、一定の名簿に登載された弁護士の中から推薦するかどうかということが問題とされているのか。

● 弁護士会の持っているどのようなパワーから、弁護士会から推薦された弁護士の中からだけ公的弁護人に選任できるようにするということを正当化できるのか検討する必要があると思う。国選弁護人推薦準則のような事実上のものとして推薦停止するということは分かるが、主張されているような仕組みを法制度上のものとするには、その点の検討が必要である。

○ 常勤弁護士や契約弁護士の契約主体は運営主体であって、個々の事件の弁護士としてだれを推薦するかについても運営主体が行うというのが当然だと思う。更にそこを法定するのがいいかとなると、法定すると固い仕組みとなりかねないので、裁判所との協議で運用に任せるのがよいと思う。

(2)公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払(たたき台(2)第7関係)

○ 捜査段階の報酬算定は、本来極めて難しく、接見回数よりも接見で何を言うかが大事なので、接見回数に比例させるのでは、弁護の質を下げかねない。また、今後の捜査弁護の中身は、接見だけではなく、関係者からのヒアリングや現場へ行くことなど検察官の捜査と同じような活動を要求されることになるので、弁護活動は見えにくいものとなる。したがって、A案のように事前に額が決まっていない仕組みで算定するのは、なかなか困難であろう。他方、事件の内容によって、捜査弁護には濃淡があるので、C案のように定額とするのは実情に合わない。そうすると、B案として、いろいろな場合を想定して報酬額を決めておいて、その中から、どれが妥当か裁判所が選ぶというのが妥当であろう。公判段階は、準備手続と公判廷における活動と両方あり、いずれも裁判所から見える形になっている。裁判所に見えない事前準備の部分もあるが、その結果は概ね公判廷に表れてくるので、C案を採り、公判及び準備手続における弁護活動を踏まえて裁判所が一定の基準により算定するというのが妥当ではないか。報酬の算定・支払主体については、A案である。報酬基準の在り方については、実質的な活動を汲み取るようなものでなければならない。形式的な外見を見るという報酬基準を作ると、弁護の質が劣化すると思う。

○ 定額制だと、熱心に弁護をやればやるほど時間当たりの報酬単価が低くなってくる。タイムチャージだと、知識や経験によって所要時間が変わってくるので、実質的に不平等が生じる可能性がある。そこで、日弁連の国選弁護シンポジウムでは、ポイント制をつくった。これは、弁護活動における活動手数料的要素、時間的要素、活動結果的要素を類型化し、負担を計量し、成果の程度に見合う点数を配分して、実際になされた弁護活動をポイントに換算し、その合計ポイント数に応じて報酬額を算定するものである。捜査段階も公判段階も、弁護士が弁護活動報告書を提出してポイント制によって算定してもらう。算定・支払主体については、とりあえず運営主体が行う一元論を検討する。

○ ポイント制という意見では、報酬を支払う機関は、報告書それ自体は信用せよという前提か。

○ そのとおりである。

○ 数段階からの選択という意見は、報告書の信用性の問題があるから、大雑把に数段階に分けるということか。

○ そのとおりである。

○ 数段階からの選択という意見でも、どこに当てはめるかは、具体的な弁護活動の中身を確認しなければできないのではないか。

○ そこまで細かいことを言っているわけではない。ポイント制となったら、非常に細かいことになるのだろう。誤差があることを前提にしているから、大雑把なものでいいではないかと言っている。

○ 被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階・被告人段階を通じて一貫した弁護体制を採るとなると、報酬も被疑者段階・被告人段階を通じて一括した算定システムが合理的ではないか。その場合、公的な資金を使うのだから、どういう基準でどのように算定しているかについて透明性がなければいけないし、他方、定額制では、十分に活動した弁護士とそうでない弁護士とが同じになるということになり、これも公的資金の使い方としてまずいであろう。したがって、活動に応じた適切な算定ができることが望ましいと思う。裁判所には弁護活動の裏の実態は分からないところがあるので、報酬の算定・支払主体については、運営主体が算定して支払うという形が最も適切に算定できるのではないか。そのためには、具体的な報酬基準が明確に分かるような透明性のある基準を作っていかなければいけないのではないか。その上で、捜査段階については、弁護人の活動報告等に基づき実質に応じた報酬を払うべきではないかと思うので、定額制は相当ではなく、活動報告書を出させるということでは、A案が相当ではないか。公判段階については、弁護人の報告とともに、裁判所からも報告するというB案が相当ではないか。

○ 捜査段階の弁護活動の内容については、外部から客観的に、しかも適正に評価することは難しいと思うので、結論としては、定額がよいのではないか。捜査段階においては、公判段階における裁判所のように、一貫して手続に関与できる公正中立な機関がないので、活動に応じた報酬を算出するというのは、事実上大変難しいのではないか。また、接見回数、準抗告回数、弁護活動に要した時間が優れた弁護活動を表す指標であるのかどうかという問題があり、これらを指標にした場合、そのこと自体が自己目的になるおそれがあり、その結果、本来の適正な捜査活動を損なう事態を生じることも懸念される。捜査段階の場合には、時間的に限られた中で行われるということも併せて考慮すると、そのような要素を報酬の指標とすることは適当ではないのではないか。ただ、弁護人であった期間については考慮すべきではないかと思われるので、弁護人であった期間に比例する一定の報酬額をあらかじめ定めておくということでいかがか。

○ できるだけ定額に近いものがいいだろうと思っており、B案とC案の折衷くらいがいいのではないか。定額という場合でも、弁護人であった期間を考慮しなければいけないというのは当然あり得るが、ポイント制ということを採るとすると、どういう結果に結び付くか明らかではなく、事件に応じた報酬ということで考えていけば足りるのではないか。

○ 捜査段階の弁護ということを考えると、いろいろなやり方があることは間違いなく、一面からすると、活動がやりすぎだという評価を受ける場合もあるかもしれないが、定額しか出ないということになると、弁護士の意欲を削ぐことにもなるだろうと思うし、望ましい弁護活動を十分に期待することができないということになりかねない。弁護活動報告書に基づいてという仕組みにした場合に、水増しをするというようなことは、弁護士の間で多分分かるだろうし、警察サイドからのチェックも入ってくるだろう。そういう形での評価はあり得ることだと思うので、弁護士が納得して弁護活動ができるような報酬基準を設ける必要があるのではないか。したがって、捜査段階についてはA案であり、公判段階についてはB案の方がいいかもしれないという感じがする。

● 報酬の算定・支払主体について、運営主体が行うという案を採る場合、どういう構成で、そのような方式を採るのか議論いただきたい。会計法24条との関係も含めて、なかなか難しい問題があるように思うので、どういう法律構成を採るのかということについて御議論いただきたい。

○ 運営主体が支払うには、契約関係のような関係がないと払えないと思うが、そうすると、一般の弁護士も、最初の段階で、運営主体と何らかの契約関係に入らないといけないこととなる。そうなってくると、すべての公的弁護が運営主体の網の中に入ってくることとなるので、そのような制度でいいのかということになろうかと思う。

○ 法律構成として、裁判所で訴訟法上の公的弁護人として活動したことに対して、運営主体が報酬支払義務を負うという制度をつくれば、そこが債務者となり、国の債務ではなくなるので、会計法24条はネックにはならないのではないかと思う。

□ 問題は、そういう立法ができるか、そういう制度をつくれるかということではないか。運営主体にそういう義務を負わせる理論構成や制度論上の正当化ができるかという問題だと思う。

○ 国が選任して、ある活動をしてもらって、その活動の費用について国以外の者が支払うということは今でもある。破産管財人や更生管財人など、国が選任するが、財団等のために活動しているということで、そこが債務者になる。したがって、国の選任と支払主体が別になるということはあり得ると思う。

□ 財団のために活動する人を裁判所は後見的に選任しているという構成なので、そこが支払うという理屈にはなり得ると思うが、公的弁護では、どうなるか。

○ 公的弁護制度は、運営主体が公的弁護についてすべて責任を負うのだ、そこがサービスを提供する機関なのだ、だからそこが負うべきなのだ、裁判所はその義務をだれが果たすかを選定しているだけなのだということである。

□ 国が提供すべき弁護を包括的に運営主体が請け負っているという構成か。

● いろいろな法律構成によって、B案もあり得るわけで、今の構成も更に検討する必要があると思っているが、法律上、裁判所が選任したときに、弁護士に報酬を支払う義務を運営主体に負わせる一方、運営主体は支払うお金を国からもらう必要があるので、自動的に運営主体が国に対し、支払うお金の請求権を持つことになるのかという問題があり、そのように考えると、最終的には国が債務を負うことになるので、会計法24条の例外となってしまう。他方、国が債務を負わないとすると、運営主体は、自分で資金を調達しなければならなくなってしまうという問題が生じる。

○ 運営主体は、お金が通り過ぎるだけでなく、実際にそれだけの活動をするのだ、それだけの人を派遣するのだ、法的サービスを提供しているのだというだけの実態があれば可能なのだろうと思う。

● そのように、報酬の支払の部分だけではなく、制度全体としての合理性があれば、法律の例外はあり得るのだろうと思うが、制度全体として運営主体がどういう役割を負うのかということを言わないと、その例外は苦しいのではないかという印象を持っている。それ以外の構成としては、先ほど指摘があったように、事前に一定の契約関係を持つということが考えられると思っており、更に検討したい。

○ 捜査段階の報酬算定は、B案かC案だろうと考えている。敢えてA案ということにするのであれば、虚偽報告に対するサンクションを当然設けるべきであり、そうでないと国民の理解を得られず、また、透明性を確保できないと思う。そこまでする必要があるかと言うのであれば、B案かC案だと思う。公判段階の算定方法は、報酬の算定・支払主体とも関連する問題であるが、これについては、運営主体が一般の弁護士まで担当するかという問題に絡んでくる。その点について、疑問点が十分に議論されて解決できるということになれば、運営主体が報酬の算定・支払を行うということもあるかもしれない。その場合の算定方法については、外に見えたところでやればいいということで、C案であってもいいのかもしれない。弁護活動報告書ということだと、捜査段階と同じ問題が出てくると思う。一番悩ましいのは、会計法24条との関係であり、ここは、運営主体がどういう役割を担って、どういうシステムで何をするのかという制度の全体像が見えてこないと、実質的な理由が付きにくいのではないか。

○ 不服申立てについては、どこが報酬算定をするかによって変わってくるかと思うが、弁護人から、さらには負担を命じられた被疑者・被告人からの不服申立ても考えられるかもしれない。

○ 報酬算定に対する不服申立てという煩雑な手続を設けなけれないけないという制度設計そのものが妥当ではないのではないか。運営主体が国とは別の機関である場合に、不服申立てを断ち切れるかという問題があって悩ましいが、なるべくなら不服申立てがないような制度設計が望ましいと考える。

○ 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の報酬について、運営主体が受け取る場合には、運営主体が代理受領するという構成になるのであろうか。

○ 常勤弁護士及び契約弁護士であっても、公的弁護を担当するという点では一般の弁護士と全く同じであり、当該費用は、訴訟費用に含めて被疑者・被告人に負担させないと均衡を失するということになるのではないか。そうすると、一般の弁護士と同様に、常勤弁護士及び契約弁護士についても、裁判所が運営主体に報酬を支払って、国が被疑者・被告人に求償するという考え方もあるだろうという気がする。他方、常勤弁護士等は給料等をもらっているから報酬を支払わないという考え方もあるだろう。ただ、その場合、被疑者・被告人に対する費用の負担の問題をどうするかという問題が出てくるだろう。

□ その点は、第8の3「常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の弁護費用の負担」と関連している問題であり、この点を踏まえて、更にそちらで議論していただきたい。

(3)弁護費用の回収(たたき台(2)第8関係)

ア 弁護費用の回収の仕組み(たたき台(2)第8、1関係)

○ 基本的には、A案の方がよい。運営主体が回収するとした場合の回収方法のいかんにもよるかもしれないが、基本的には検察官が徴収権限を有していた方が徴収はしやすいのではないか。

○ A案が相当だろう。弁護費用を訴訟費用から切り離す合理性が今一つ分からないのと、切り離した場合には、債務名義がすぐには出てこないので、そのために民事手続で新たな債務名義を取得する必要が出てくるのではないかと思われ、そうなると、現行法以上に手間暇がかかり、徴収コストが増加して、業務が現状より一層困難で非効率なものになることが予想される。

○ 報酬支払主体が運営主体と考える以上は、B案でよい。現在の国選弁護の費用負担の回収に困難を来しているという話があったし、そういうことも考えて負担させることが少なくなっているのではないかという批判もあるので、その辺りは、運営主体が担当した方が、検察庁でやるよりも、回収のいろいろなノウハウ・方法を考えられるのではないか。

● 運営主体に国から来るお金がオープンエンドのようなものだとして、運営主体が回収するとすると、運営主体が回収したお金をどうするかという問題が生じるとともに、その辺りの理屈の整理が必要ではないか。回収の問題は、運営主体から国に来るお金の性質やそれがオープンエンドであるかどうかにもかかわるので、その辺りを議論していただきたい。

○ そこは、オープンエンドというのが前提なのか。そこが問題ではないか。

● お金がなくなったら公的弁護はできないというのであれば話は別であろうが、公判段階の国選弁護は国の義務であるので、運営主体のお金がなくなっても国は選任していかなければならず、お金を払っていかざるを得ないのではないかと思うので、制度上オープンエンドとならなければいけないのではないかと思っている。

○ 運営主体にかなりの実質を持たせてサービスの提供主体とし、そこにどれだけの補助を出していくのかと考え、自助努力で回収できれば、それに応じたものを補助すると言うことができるのではないか。

● それは、公的弁護の予算をオープンエンドではないものとするという前提ということか。

□ 予算が潤沢にあって、その範囲内で納まっていればよいのだろうが、事件数がどれだけになるか、また、回収がどれだけできるかが分からず、予算が不足するということも生じる可能性はあるだろう。その場合でも、国選弁護・公的弁護ということで、国の義務として選任しなければならず、選任すれば報酬を支払わなければならないことになるが、運営主体にお金がないから払えないということでいいのかということであり、理論的にはオープンエンドにもなり得るであろう。その考え方と、運営主体が回収し、その分お金がたまっていくという考え方をどう整理するかという問題であろう。

イ 捜査段階の弁護費用の負担(たたき台(2)第8、2関係)

○ 起訴された場合については、たたき台の案のとおりでよい。起訴されなかった場合については、不起訴の裁定主文にはかなり幅があるので、裁定主文によって区別するのは妥当ではないと思われるから、A案が妥当である。少年事件の場合についても、基本的にたたき台の案でよいのではないか。

○ 起訴された場合については、たたき台の案のとおりでよい。起訴されなかった場合も、嫌疑不十分とすべきところを起訴猶予で処理されるケースもあるので、A案である。少年事件の場合については、少年に資力があることはまず考えがたいので、実質的には負担をさせることに意味がないと思われ、むしろ明確に少年については負担させることを考えないというのが適当ではないか。

○ 起訴された場合については、たたき台の案のとおりで結構である。起訴されなかった場合も、検察官の処分の結果で分けるのは適当でないので、A案である。少年については、捜査段階の弁護費用を負担させることができるというたたき台の書き方に異論はないが、できれば少年には資力がないのが普通であるから、負担させないという選択もあるのではないか。

○ 起訴された場合については、たたき台の案のとおりでよい。起訴されなかった場合、犯罪事実が一応認定されているのであれば、基本的には負担させるべきではないかと思う。ただ、その場合には、被疑者が被疑事実を争うということがあり得るので、不服申立てを行う手続を導入するかどうかを検討しなければいけないかもしれず、そこを含めて検討すべきではないか。少年事件の場合、国選付添人の費用を少年又は扶養義務のある者から徴収できると定められているので、均衡上、たたき台の案でよろしいだろう。

□ 不起訴の場合に、費用負担を不服申立てで争った場合、そこが刑事裁判化しないか。

○ そこをどうするか知恵を絞る必要があるので、検討課題と考える。

○ 起訴された場合の前段は、たたき台の案でよいと思うが、後段の捜査段階の「責めに帰すべき事由」がどういうことなのか非常に難しい問題になるように思う。組み立て方として、今の被告人の場合と同じで、このような書き方とせざるを得ないと思うが、そこが難しいのではないか。起訴されなかった場合については、不起訴理由について争う余地がなく、このために不服申立てをすると、本案化してしまう可能性もないではないので、ここは負担させないということで行かざるを得ないのではないか。少年事件の場合については、公的付添人制度の設計にもかかわる問題であるので、そちらとの関連で決めていくべきだろう。

○ 「責めに帰すべき事由」の典型は身代わりの場合であり、そういう場合には負担させることができるということにしておく必要があるのではないか。

○ 出捐義務のない国に費用を負担させておいて、そのままにするということは許されないであろうから、何らかの合理的な制度ができるのであればそれでよいと思うが、そのためにどれだけの手続と労力をかけるのかという問題かと思う。

○ 告訴人等については原則として負担させないが、ただし、告訴人等の側に著しい過失があった場合には、告訴人等に費用負担させてよいのではないかと思う。

○ 告訴人等の負担の制度は、現行法どおりでよいのではないか。

ウ 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の弁護費用の負担(たたき台(2)第8、3関係)

○ 常勤弁護士や契約弁護士に弁護してもらった場合と一般の弁護士に弁護してもらった場合で扱いが違うのはおかしいと思うので、常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合、同じ条件で報酬相当額を負担させるというのが正しいと思う。

○ 一般の弁護士が担当した場合であれば支払ったであろう弁護費用を算定して、その事件の弁護費用であるとみなして訴訟費用を負担させるという方法を採らないと公平でない。

○ 私も、負担させるべきだと思っている。公的制度の利用料のようなものであり、それを利用した者は費用を支払うのは当然であるし、国もそれを回収すべきであろう。なお、報酬についての考え方として、できるだけ複雑でない基準を設け、できるだけ定額に近い形にした方が回収のときも分かりやすいだろう。個別の事件ごとに余りに算定要素が増えて多くの段階があるようだと、なぜその報酬額なのか説明することが必要になるだろう。また、運営主体が算定するにしても、裁判所が算定するにしても、算定事務が非常に大変であるので、事務的な負担の軽減を考える必要があると思っている。

エ 弁護費用回収の実効化(たたき台(2)第8、4関係)

○ 制度として可能であれば、労役場留置類似の制度を設けるのが実効性があると思う。

○ 逮捕され身柄拘束された時点で、所持金の範囲内でお金を提供させ、事前にある程度の金額を回収する。予想される費用の金額には満たないであろうが、できる限りの範囲内で預かっておくという制度を考えたらどうか。

○ 最も固い予納制度は、予納されない場合には弁護人が選任できないということであろうが、選任要件とは別に、ある程度の額があるのであれば、先に納めてもらうという仕組みはあり得るのではないか。

○ 特にその他要件で選任する場合には、相当部分を納めなければいけないということを言えるのかもしれないと思う。貧困要件の場合、どこまでそう言えるか難しい問題があるとは思う。

○ 運営主体が回収主体となるとすれば、国以外の組織がやる上での柔軟な工夫もできるのではないか。例えば分割弁済や家族の保証を求めるなどである。

○ 大阪の法律扶助協会の場合には、弁護士が一声掛けるようにしており、書式を定めて弁護士から一声掛けるということはあり得るかもしれない。

○ 回収の仕組みはどうあれ、債務名義ができるような形にすべきであると思う。

(4)次回以降の予定

 次回(7月8日)は、公的弁護制度及び公的付添人制度に関する検討を行う予定である。

(以上)