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公的弁護制度検討会(第10回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成15年6月10日(火)13:30~17:58

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議題
公的弁護制度について

5 議事

○井上座長 それでは、第10回公的弁護制度検討会を開かせていただきます。御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 まず、事務局の方から、前回お話がありました、司法ネットについての有識者懇談会の結果について報告していただきます。

○落合参事官 それでは、司法ネットについての有識者懇談会について御報告いたします。
 前回御紹介いたしましたとおり、当事務局では、本月5日午後4時から午後6時まで、司法ネットについての有識者懇談会を開催いたしました。
 当日は、片山善博鳥取県知事、紋別ひまわり基金公設事務所において勤務された御経験のある松本三加弁護士を始めとする有識者の方々、佐藤幸治座長を始めとする当推進本部の顧問の方々、井上座長を始めとする関係検討会の座長の方々など、多数の皆様に御出席を賜わりまして、司法過疎の実情、地方の司法に対するニーズの実態、司法過疎解消のために地方自治体が講じてきた方策等について活発な意見交換が行われました。
 同懇談会の結果については、今後、推進本部において司法ネット構想を具体化するに当たり、立案の参考とさせていただくこととしております。以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。今の報告について何か御質問はございますか。よろしいですか。
 それでは、早速中身の議論に入りたいと思います。前回、お手元に配布いたしました「公的弁護制度について(2)」という表題のペーパーですけれども、これは、公的弁護制度のうち、その担い手である弁護士の確保方策、公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払、弁護費用の回収、弁護活動の在り方、運営主体の在り方という点についてのたたき台です。
 このたたき台の性格については、「公的弁護制度について(1)」と同じように、これまでの検討会で協議され確認されているところですので、あえて繰り返さなくてもよろしいかと存じます。
 この「公的弁護制度について(2)」についての議論の進め方ですが、これも「公的弁護制度について(1)」についてと同様に、項目を区切って、それぞれの項目ごとに事務局から説明してもらい、それを踏まえて議論していくということでいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、そういうことを前提にしまして、事務局の方からたたき台について説明していただくことにします。

○落合参事官 それでは、「公的弁護制度について(2)」のうち、まず第6について御説明申し上げます。
 「第6 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策」は、司法制度改革審議会意見書の提言した「全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢」を整備するため、公的弁護制度の担い手である弁護士をどのように確保するかという問題であります。
 ここでは、「1 常勤弁護士及び契約弁護士等の位置付け」、「2 常勤弁護士」、「3 契約弁護士(弁護士法人を含む。)」、「4 常勤弁護士及び契約弁護士の確保方法」、「5 その他の確保方策」、「6 弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦又は連絡」、この六つの項目を記載しております。以下、各項目ごとに御説明申し上げます。
 まず、「1 常勤弁護士及び契約弁護士等の位置付け」についてであります。
 ここでは、公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策を考えるに当たり、常勤弁護士、契約弁護士及び一般の弁護士の位置付けや役割分担を議論することが、常勤弁護士及び契約弁護士の在り方や規模などを考える上で重要であると考えられますので、このような論点を掲げさせていただきました。
 具体的な案としましては、A案として「常勤弁護士を中核と位置付け、契約弁護士を補完的な位置付けとし、一般の弁護士を更にその補完的な位置付けとする」との案、B案として「一般の弁護士を中核と位置付け、常勤弁護士及び契約弁護士を補完的な位置付けとする」との案、C案として「常勤弁護士、契約弁護士及び一般の弁護士について、いずれが中核か補完かという位置付けは行わず、情勢に応じて、常勤弁護士及び契約弁護士の規模を考える」との案を記載しております。それぞれの位置付けの義論は常勤弁護士等にどのような役割を期待するのかということにもかかわると思われますので、役割論にも触れながら御意見をいただきたいと存じます。なお、C案は、情勢に応じて常勤弁護士及び契約弁護士の規模を考えるとの案でありますが、この案を採られる場合であっても、当面の制度設計に当たり、当面の情勢をどのように考え、常勤弁護士等の規模をどのようにすべきかについて、御意見をお願いしたいと思います。
 次に、「2 常勤弁護士」についてであります。司法制度改革審議会意見書は、運営主体が全国的に充実した弁護活動を提供し得る態勢を整備すべきであるとし、そのための方策として「常勤弁護士の配置」を例示しておりますので、たたき台には「運営主体において、弁護士を雇用し(雇用に準ずる場合を含む。)、常勤弁護士として確保するものとする」との案を記載し、常勤弁護士に関する論点として「(1)給与と公的弁護の報酬との関係」と「(2)公的弁護以外の業務」の二つを掲げました。
 このうち、「(1)給与と公的弁護の報酬との関係」につきましては、別の考え方もあり得るとは存じますが、常勤弁護士の収入が活動内容によって左右されるのでは、その地位が不安定なものとなるおそれがあるとの考えから、たたき台には、「常勤弁護士は、運営主体から給与を受け取るが、公的弁護を担当した場合、事件ごとの報酬は受け取らないものとする」との案を記載いたしました。
 次に、「(2)公的弁護以外の業務」でありますが、常勤弁護士の勤務形態については、文字どおり、「常勤」ということが想定されますので、常勤弁護士は、少なくとも勤務時間中は私的活動に従事せず、公的弁護を含め運営主体の業務に従事することを想定しております。そういたしますと、常勤弁護士が公的弁護以外の業務を担当するかどうかは、雇い主である運営主体がどのような業務を行うかの問題に帰着することとなると考えられます。そして、運営主体の業務につきましては、たたき台6ページの「第10 運営主体の在り方」の中の「3 業務内容」に「運営主体は、公的弁護以外の業務を取り扱うものとするか」という論点を記載しております。したがいまして、常勤弁護士の業務については、運営主体の業務内容という切り口で御議論をいただくのが適当であろうと考え、ここには具体的な論点は記載しておりません。
 次に、「3 契約弁護士(弁護士法人を含む。)」であります。契約弁護士に関しましては、常勤弁護士と同様、司法制度改革審議会意見書において、運営主体が弁護態勢を整備するための方策として「個々の弁護士又は弁護士法人との契約を行うこと」が例示されております。そこで、たたき台には、「運営主体において、弁護士又は弁護士法人と契約(雇用及びこれに準ずる契約を除く。)を締結し、契約弁護士として確保するものとする」との案を記載いたしました。契約弁護士につきましては、第3回検討会でも御説明申し上げましたとおり、司法制度改革審議会の議論では、「運営主体との契約により、一定の事件の受任が義務付けられている弁護士」がイメージされていたようであり、契約弁護士に関する論点も、そのようなイメージを前提として、「(1)受任が義務付けられる事件」と「(2)契約金」の二つを記載しております。
 まず、「(1)受任が義務付けられる事件」については、A案として「契約弁護士は、公的弁護について、一定数の事件を受任する」との案、B案として「契約弁護士は、公的弁護について、一定の業務量に相当する事件を受任する」との案、C案として「契約弁護士は、特異重大事件の公的弁護を担当する」との案を併記いたしました。A案は、契約弁護士の契約内容を考えた場合、一定数の事件の受任を義務付けるということが自然な発想としてあり得るところでありますので、そのような案を記載いたしました。これに対し、A案では、たまたま受任した1件が特異重大事件で、長期にわたる専従が必要となったために、残りの事件数を担当できなかった場合、契約上の義務の不履行になるのかという問題も生じ得ることから、B案のように、一定の業務量に相当する事件を受任するという案も掲げております。他方、契約弁護士も、要するに特異重大事件を受任する弁護士の確保が容易でないことに起因して設けられるのだという考え方に立てば、C案のような契約も考えられようかと思います。
 次に、「(2)契約金」でありますが、第3回検討会において、「契約金額(事件の受任を義務付けることの対価)の算定方法」や「公的弁護の報酬との関係」を論点として掲げましたが、これに関する御意見がなかったようでありますので、改めて論点として掲げさせていただいた次第であります。
 次に、「4 常勤弁護士及び契約弁護士の確保方法」についてであります。常勤弁護士の採用及び契約弁護士との契約は、弁護士会の推薦に基づいて行うものとすべきであるとの御意見が述べられましたことから、この点を論点として記載したものであります。
 次に、「5 その他の確保方策」についてであります。公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策として、司法制度改革審議会意見書は、常勤弁護士及び契約弁護士を例示しているわけでありますが、迅速かつ確実に弁護人を選任し得る態勢を整備するためには、常勤弁護士及び契約弁護士以外の弁護士の確保方策についても議論しておくことが必要であろうと思いますので、特に項目を掲げさせていただきました。
 この点について、特に具体的な論点は記載しておりませんので、いろいろなアイデアを出していただけると幸いですが、その他の確保方策としては、一般の弁護士が公的弁護を担当することを促すことが重要であると思われますので、そのような一般の弁護士に関する確保の在り方という観点からも御議論をいただきたいと存じます。
 次に、「6 弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦又は連絡」についてであります。この点につきましては、弁護人として裁判所に選任される弁護士の連絡を運営主体が行う、あるいは、弁護士の推薦を弁護士会が行うとの御意見が述べられたことから、論点として採り上げたものであります。ただ、現行の国選弁護制度の下における弁護士の推薦は、法的な位置付けのない運用上のものであり、公的弁護制度に関する法案策定のための議論をお願いしております本検討会での議論に当たっては、運営主体が行う、弁護士会が行うという案に、法的な位置付けを与えるのか否かを区別することが重要であると考えております。そこで、A案として、弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦については、現行のように運用上のものにとどめるとの案を掲げるとともに、B案として、弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦又は連絡の仕組みを法律に定めるとの案を記載し、その中で、B-1案として運営主体が行うとの案、B-2案として弁護士会が行うとの案を併記いたしました。
 「第6 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策」に関する説明は、以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。たたき台の第6について説明していただきました。この第6について、これから議論をしていきたいと思いますが、今の説明につきまして、何か質問がございましたらどうぞ。よろしいですか。それでは、また各小項目についての議論の中で、質問があれば適宜出していただければと思います。
 第6のうち、まず「1 常勤弁護士及び契約弁護士等の位置付け」という点で、A案、B案、C案という三つの案が示されているわけですけれども、事務局の説明のとおり、それぞれの案は、常勤弁護士にどういう役割を期待するのかということにかかわると思われます。
 この論点は、今後の具体的な制度設計にもかかわってくるわけですが、各委員がどのようにお考えかお伺いしたいと思います。どうぞ。

○??井委員 まず、制度を考えるときに、軸足をどこに置くかということを決めざるを得ないわけで、そういう意味では、C案のように軸足を定めないで情勢だけで決めていくというのは、本来の制度設計の在り方から言うと外れているのではないかと思います。したがって、C案ということはないだろうと思います。
 そうなると、A案かB案ということになりますが、今回、公的弁護制度を導入するに当たっては、国民の方々から貴重な税金をいただくということになるわけで、ではなぜ今まで出していなかったものを出すことになるのかと、出すことによる国民のメリットは一体何かということは当然考えられるべきで、そうなってくると、やはり刑事弁護に特化した、あるいは特化までいかなくても刑事弁護に通じた、要するに専門化した技能の高い、能力のある、そして刑事弁護の本質もわきまえた弁護士をより多く確保するということが国民のニーズに合うということだろうと思うのです。
 そうなってくると、やはり常勤弁護士というのが理念的に主とならざるを得ない。制度が動き始めた段階では、数の上では常勤弁護士の方が少ないかもしれないけれども、制度を設計する上での理念としては、常勤弁護士が中核になるべきであって、次いで契約弁護士がそれに続くと。どうしてもそれだけでは賄い切れないという場合に、一般の弁護士に公的弁護をお願いするというような制度設計をするのが妥当であろうと思います。そういう意味では、私はA案が妥当であるというふうに考えます。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○池田委員 私も??井委員の考え方に賛成で、刑事弁護について専門的に担当する常勤弁護士が、公的弁護制度全体の運営、あるいは刑事弁護のノウハウの集積や活動について中核となって、公的弁護制度全体の担い手になるというのが、やはり理念的に最も望ましいのではないかと思います。確かに人数的にはどうなるか、特に当初どの程度の人が集められるのかという問題はありますけれども、長期的に見れば、常勤弁護士が、数もある程度増えて中核を担うべきであろうというふうに思います。

○井上座長 お二人はそういう御意見ですが、どうぞ。

○浦委員 常勤弁護士あるいは契約弁護士につきましては、その役割とすれば、やはり現在の国選弁護の登録弁護士で対応が困難な事件での弁護態勢の確保の問題、あるいは長期間連日的開廷が想定されるような特異重大な事件の対応態勢の確保、更には刑事弁護全体の質の向上という観点から要請されることになるのだろうと思われます。
 ただ、これは弁護士の立場からということになる議論かもしれませんけれども、私としましては、B案が正しいのだろうと思います。個々の弁護士が刑事弁護を担うということによりまして、弁護士がその使命である人権感覚を共通のものとして培うこと、更には弁護士の弁護の水準確保の上で、多くの弁護士が携わることが重要だと、そういう面があるというふうに考えます。弁護士が相互に多様な経験を蓄積し、交流し合うことによって弁護の質の向上に資する。さらには、弁護士会が会として国選弁護に責任をもった対応を行う。そういう点からしても、一般の弁護士が中心を担い、常勤弁護士あるいは契約弁護士が補完的な役割を果たす、そういうふうな構図が一番望ましいのではないかと考えます。
 一方、常勤弁護士あるいは契約弁護士を中心に、この弁護の担い手ということを考えていくとすれば、これはかえって個々の弁護士が常勤弁護士あるいは契約弁護士に刑事事件は任せておけばいいんだと、そういうふうな意識を醸成することによって、弁護士の刑事弁護離れを一層引き起こす。更には少数の刑事専門弁護士が多数の事件を担うことによって効率的な事件処理ということに追われる結果、かえって質の低下の問題が生じ得ると、そういうふうなことも指摘できると思います。
 そういう意味では、私の意見は弁護士の立場からということになるのかもしれませんけれども、B案が妥当であろうと、このように考えます。

○本田委員 現実論として、運営主体の役割として、少なくとも弁護態勢のセーフティーネットとして一般の弁護士において引き受け手がない場合とか、集中審理に対応できる弁護士がない場合に、弁護士を提供できるようにするということが、まず必要なのだろうと思います。
 ただ、常勤とか契約弁護士のセーフティーネットとしての役割というのは、やはり最低限のものなのだろうと。それ以上にどの程度の役割を担わせるべきかというのは、更に議論が必要だろうと思っておりますけれども、実際に常勤、契約弁護士がうまく機能して、制度全体として適切であるというようになってくれば、おのずからその役割も大きくなっていくのだろうと思います。少なくとも出だしのところでは、セーフティーネットとしての機能はきちんと果たすような制度設計にしておかなければいけないだろうと思っております。

○井上座長 それはA案、B案、C案との関係で言うと、どういうことになりますか。

○本田委員 現実に制度をつくるときに、どういう観点からかということを申し上げたので、必ずしもA案、B案というようなことをきちんと振り分ける必要があるのか、ないのかということは別ですけれども、どちらかというとB案に近いのかもしれません。

○??井委員 まず、浦委員の先ほどの御意見ですが、まず、一般の弁護士が中心となって刑事弁護を担うことによって、技術、能力が向上するのだという御意見でしたが、それは従来も同じ態勢でやっているわけです。では、従来の国選弁護人の能力に国民が納得しているかというと、決してそうとは言えないと思うのです。ですから、一般弁護士が刑事弁護を担当した方が能力が向上するというのは、現実とは違うのではないかというのが第一点。
 それから、弁護士の人権感覚の中心的な根拠だから、一般の弁護士が刑事事件をやらなければいけないという御意見でしたが、そうなってくると、弁護士の人権感覚を磨くために国民が税金を払うということになって、極めておかしなことになるのではないか。国民は、弁護士が人権感覚を磨くための手段ではないわけですね、国民にしろ、事件にしろ。人権感覚は、弁護士が自ら、自らの費用で磨くべきであって、国民の税金でそういうものを磨こうというのは、やはり浦委員自身が言われているように、弁護士としての意見であって、果たして国民の納得が得られるのかというふうに私は思います。
 そういう意味でいっても、私は、要するに理念的にはB案はやはりおかしいと思います。

○浦委員 確かに、現在まで国選弁護に関して、質の向上ということは十分ではないと思うのですけれども、これは多くの弁護士が、それぞれ経験を共有し合いながら、その中で質を向上させていくという状況は、最近になってようやく各地でその芽は出てきていると、私はそのように考えております。したがって、そういう意味からしても、多くの弁護士が刑事弁護に関心を持ち携わっていくということの必要性というのはあるのだろうと思います。
 さらに、人権感覚を磨く手段とするという批判につきましては、私が述べた趣旨は、むしろそのことによって弁護士自身の広い範囲での社会的な積極的な人権活動が推進され、それによって国民が受ける利益も多くなると、そういうふうなことを言いたかったわけです。

○酒巻委員 私は、理念的にはA案に惹かれる。しかし、先ほど落合参事官がおっしゃったように、まず、当面の情勢でということになると、B案かなという割り切れない意見です。先ほど本田委員もおっしゃいましたし、私自身もずっと考えたり書いたりしている不安感・危惧感があるのです。連日的開廷で進行するであろう新たな裁判員制度や、刑事裁判全体の迅速化を実際に動かし、実現することを考えますと、セーフティーネットという言葉を先ほど本田委員はお使いになりましたけれども、確実に制度を動かすために、弁護士さんが連日的な開廷等に対応していただかないことには、最悪のシナリオとして、すべてが崩壊するであろうと危惧しているのです。
 ですから、制度運用のための確実な態勢を整えるという意味で、それに即応できる常勤あるいは契約の弁護士さんが、まずいるということが絶対に必要である。しかし、それだけでは足りない。広い意味での刑事弁護を担っていただく数としては、浦委員がおっしゃったとおり、今までも積極的にやっていただいている皆様に加えて、これまで以上に一般の弁護士さんにも積極的に刑事弁護を担当していただきたいとも思っているわけです。そこで、少なくとも当初はセーフティーネットのような形としての常勤弁護士、契約弁護士というのがあり、数の上では、全体の刑事弁護は一般弁護士の方にも積極的にやってもらうというB案的気持ちです。
 ただ、刑事弁護のスピリット、精神というか、心意気、理念の面では、A案なのです。最初に??井委員がおっしゃったような、刑事に専門化した、あるいは刑事事件をも専門領域の一つとした弁護士集団が次第に形成されて、その人たちが知識・経験を組織的に集積し、伝授し、洗練させることによって、日本全体の刑事弁護の質が上がっていくという夢があるのです。その起動力になってほしいという意味で「心意気」という言葉を用いましたけれども、そういう面では、中核は運営主体の下で活動する常勤弁護士になる、それが理想形だと思っております。

○井上座長 どちらから発想するにしても、他方を排除するということでは必ずしもないのだろうと思います。全体として両方が高め合っていけばいいと思うのですが、制度設計をするに当たってどちらから出発するのか、そういう話ではないかと思います。ほかの方の御意見はいかがでしょうか。どうぞ。

○平良木委員 従前の弁護制度は、私選と国選という分け方がされていたわけですけれども、これからは私選と公的弁護という分け方になって、その中に国選、常勤、契約というものがあるということになるだろうと思うのです。
 そういったときに、先ほど浦委員が言われたことは、どちらかというと、従前の国選と私選のイメージがかなり強く残っているという気がしまして、むしろこれから常勤、契約弁護士を設けていって、この人たちに重大な事件、困難な事件を割り当てていくということになると、恐らくその役割は全体の中で相当大きなものになってくるだろうという気がいたします。
 それと同時に、もう一つは、こういう制度をつくるときに、常勤と契約弁護士にどれだけの役割を担わせるのがいいのか、要するにこれから先にどんなイメージをもって制度設計をしていったらいいのかということになると思います。
 そうすると、恐らく先ほど酒巻委員が言われたように、当面はB案程度にとどまるかもしれないけれども、やはり大きく育てるという意味で、A案がいいのではないかと考えております。

○??井委員 別の観点から意見を申し上げますが、今までの御意見は、常勤弁護士と契約弁護士は同じような仕事をする、要するに特異重大事件を担当するという位置付けで議論されています。
 しかし、仮に契約弁護士をそういうふうに位置付けるとすると、ほとんど契約弁護士は動いていかないと思います。契約弁護士というのは、普通は、民事もやり、それから私選もやっているわけですね。それで定期的に、期日もいっぱい入っているし、いろんなミーティングの日程も全部入ってしまっている。そういうところへ突然刑事事件が来るわけです。ですから、そういうときに対応できる事件というのは、例えば裁判員裁判事件のようなことは多分契約事務所では対応できないと思います。そうすると、契約事務所に頼めるものはどういう事件かというと、手のかからない事件、こういう言い方はちょっとおかしいですが、要するに比較的簡単な事件、それほど時間も日数も要しない、裁判員裁判ではない事件というふうに、大量に発生するけれども、比較的定型化が進んでいる事件であれば、そういう時間をやりくりして対応することは可能です。ですから1年間に何件やってくださいねと、いいですよということはできるのですけれども、特異重大事件を例えば何件やってくださいと、それはいつ来るか分かりませんと、これではほとんど、例えば事務所として契約したら、事務所の維持は難しいし、実際の事務所の仕事をこなしていくのも難しいと私は思います。
 ですから、今言った理念的にA案かB案かという問題もあるけれども、同時に、実際に契約弁護士という制度を動かしていくためには、どういう事件を割り当てなければいけないのかということを考えなければいけないし、それが私がイメージしているように、比較的軽微で定型化した事件ということになると、量的にもある程度の量を与えるということになりますから、単に理念的にA案かB案かだけではなくて、数の問題として、どの程度の数を契約弁護士に与えるのかということも考えなければいけないわけです。
 ですから、特異重大事件を契約弁護士にやってもらおうという発想は、やはり制度が失敗する元だと思います。

○平良木委員 今のような話になると、恐らく国選つまり一般弁護士と、契約弁護士のすみ分けというのはなくなってくると、そういうイメージですか。

○??井委員 いえ、そうではなくて、私のイメージは、契約事務所というのは、当初1年間に、例えば100 件を1,500 万でお願いしますと、1,500 万の中でとにかくやりくりして、100 件ちゃんとこなしてくださいということです。ですから、当然100 件という以上は、例えば窃盗であるとか、窃盗がその対象になるかどうかは分かりませんけれども、仮になったとして、窃盗だとか、傷害だとか、そういう比較的軽い事件をやると。
 それで、国選は、別にそういう比較的軽い事件をやるわけではなくて、国選も裁判員裁判を受けることもあるでしょうし、軽い事件も受けるでしょう。ですから、質が違うと。国選は、とにかく受ける義務はないわけです。契約事務所の場合は、比較的軽いものを大量に処理をすると、受ける義務があるというイメージです。

○平良木委員 そうなってくると、契約弁護士の位置付けが極めて難しくなってくるのではないか。つまり、今、公的弁護として国選弁護というのがあって、それでは足りなくて、いわゆる常勤弁護士と契約弁護士を設ける。そういったときに、いわゆる常勤弁護士と契約弁護士にどの程度の役割を担わせるかということだから、今のような話だと、国選との違いが限りなくなくなってしまうというような気がします。従前の国選弁護との関係です。

○井上座長 個別に選任していくのと違わないのではないかということですか。

○平良木委員 そうです。

○井上座長 ??井委員の場合、常勤と契約との割り振りは非常にクリアなのですけれども、個別の弁護士さんを個別に選任するのは、常勤弁護士からの隔たりは契約弁護士より更に遠いという位置付けになるのですか、それとも両者の中間に位置するのですか。

○??井委員 要するに一直線上には並んでいないということですね。一直線の上に常勤弁護士がいて、契約弁護士がいて、一般の国選弁護士がいるというのではなくて、常勤弁護士がいて、契約弁護士がいて、こちらの方に一般の国選弁護士がいるというイメージです。

○井上座長 事件の性質による振り分けという図式の中ではどう位置付けられるのでしょうか。契約の場合は、一定数あるいは一定量の事件を引き受けるということになれば、こなせるのは定型的なものであろう。特異重大事件となると常勤でないと無理だろう、ということであったわけですが、そういった図式の中で、個別に選任される弁護士の位置付けはどうなるのですか。

○??井委員 個別の弁護士も特異重大事件を受けることは可能なわけですね。たまたまそこが空いていればできるわけですから。ですから、一般の国選弁護士は特異重大事件はできないというイメージではないのです。

○井上座長 そうすると、契約の場合よりは受けやすいという位置付けですか。

○??井委員 要するに、国選弁護士は受ける義務がないわけです。だから駄目ですよと言える。ところが、契約事務所は受ける義務がある。逆に言うと、運営主体から言うと、受けさせる義務もあるわけですね。だから、当然来たら受けなければいけない、今手一杯ですから駄目ですとは言えないわけです。そうである以上は、日程が幾ら入っていても受けられるような事件しかできないでしょうと私は言っているわけです。ですから、そういう意味では全く別物だという認識ですね。

○井上座長 分かりました。ほかに、この点で御意見はございますか。

○浦委員 日弁連の方の意見でも、刑事専門弁護士という範疇を考えて、そういう弁護士事務所をつくっていこうという動きがあると言われています。そういう意味で、運営主体の常勤弁護士、それから刑事専門弁護士、更には契約弁護士、一般弁護士がそれぞれ切磋琢磨しながら、多様な形態で公的弁護を担っていくと、そういうふうな図式になるのだろうと私は思っているのです。
 しかも、それぞれが、例えば運営主体の常勤弁護士と、それから弁護士会が設置する事務所の刑事専門弁護士が、それぞれ技術を競い合っていくというふうな、そんな図式が描かれるのが望ましいのではなかろうかというふうに思っております。

○井上座長 それはよく分かるのですが、今議論しているのは、公的弁護の方の、それを支える制度づくりの問題であるわけですから、何らかの考え方に基づいてそこは制度をつくっていく必要があるのです。したがって、そうなるだろうというだけでは駄目だろうと思うのですけれども。この点で更に御意見がなければ、まだこれから常勤弁護士についても議論しなければなりませんし、先ほどの??井委員の御意見との関係は、むしろ契約弁護士の在り方のところで、契約の仕方とか、そういったところに反映していくことになると思いますので、そこで更に議論していただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、今の一般的な議論を踏まえまして、具体的な論点に踏み込んで議論していただきたいと思います。「2 常勤弁護士」なのですけれども、たたき台では(1)と(2)という項目に分けられております。まず、「(1) 給与と公的弁護の報酬との関係」について御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○浦委員 この場合に、雇用に準ずる場合ということで、準ずるというのはどんな場合をお考えなのですか。

○落合参事官 通常の、今、いわゆる勤務弁護士というのがあるわけですが、あれがいわゆる民法上の雇用契約なのかというと、必ずしもそうではない場合もあるようです。しかしながら、ここでいう常勤弁護士は、いわゆる勤務弁護士も含むものと考えていますので、その関係で雇用及びこれに準ずる場合としたということです。

○井上座長 お分かりでしょうか。

○浦委員 雇用に準ずるというものの・・・。

○落合参事官 雇用に準ずるというのは、今、一般の開業弁護士のところで勤務されている勤務弁護士のような契約関係も常勤弁護士と同様に考えると。

○浦委員 何度も申し訳ありませんけれども、常勤弁護士を確保すると、それは改革審の意見として意見書に明確に記載されているわけですけれども、この常勤弁護士につきましては、やはりこの後に論議される幾つかの問題があるのだろうと思うのです。つまり、弁護活動の自主性・独立性の確保という観点は、常勤弁護士についても是非確保されなければならないのだろうと。
 さらには、こういう常勤弁護士の配置とかの問題についても、その地域の弁護士会と十分な協議によってなされるとか、そういうふうなことも含めて設計される必要があると考えます。
 それから、先ほどの議論の中で、やはり常勤弁護士も一般の刑事事件も含めて担当していくというような、特異重大事件だけを待っているのではなくて、一般事件も担当するというイメージが必要なのだと思います。

○井上座長 そこは、給与の問題とは違う問題で、むしろ常勤弁護士の業務の問題ですので、2の(2)のところで議論していただければと思います。できるだけ、たたき台の項目に沿って御意見をいただくということにさせていただければと思います。浦委員、今の関係の御意見はもう少し後でということでよろしいですか。

○浦委員 分かりました。おっしゃっている趣旨は分かりましたので、しかし、常勤弁護士は無前提に認められるのではなくて、幾つかのそういう要件がクリアされて初めて、常勤弁護士というものが言葉として認められると、そういうことの主張なんですが。

○井上座長 それは承っておきます。

○??井委員 常勤である以上は、当然これは給与になると思うのです。したがって、給与をもらっているわけですから、公的弁護を担当した場合に、事件ごとの報酬は受け取らないと、これは当たり前であるというふうに思います。

○井上座長 事件ごとに報酬を受け取った方がいいという御意見はございますか。そういうことも論理的にはあり得るわけですが。

○??井委員 基本的には、例えば普通の勤務弁護士は、事務所の事件以外に自分の事件をやって歩合でもらうとか、いろんな報酬体系があるわけですけれども、常勤事務所においては、そういうことは望ましいとは思えない。
 ただ、仮に、これは将来、更に先で議論されるのかもしれませんが、常勤事務所で受ける仕事、これは当然常勤事務所に勤務する弁護士として、それは当然できると、だから常勤事務所が、例えば刑事事件以外のものを受けますとなれば、それはやれるということになりますし、その前に刑事事件以外の事件については、どういう報酬体系にするのですかとなると、またそれは別途考えるという余地はあるかもしれないと思うのです。
 しかし、少なくとも公的弁護ということに関して言えば、公的弁護を担当したから、その費用の中から1件ごとに、例えば、一般国選の報酬の半分ぐらいもらいますというようなことはあり得ないだろうというふうに思います。

○井上座長 この点、ほかの方の御意見はいかがでしょうか。特に御異論はございませんか。よろしいですか。

○浦委員 その場合の給与というのは、これはまた次の議論になるのかもしれませんが、同期の裁判官とか、検察官程度の給料は保証されなければいけなくなるのでしょうね。

○井上座長 御意見として承っておきますと言うしかないですね。私が「保証します」と言えればいいのですけれども・・・。それでは、次に進んでよろしいですか。
 「(2)公的弁護以外の業務」ですが、これは、先ほど事務局から説明がありましたように、使用者である運営主体がどういう業務を行うかということが一番基本になるわけですね。運営主体がやるべきことではないのに、それに雇用される常勤弁護士ができるというのも変な話ですので、そういう関係を念頭に置いて議論していただければと思うのですが、さっきの浦委員の提起された問題は、ここで議論をした方がよろしいですか、それとも、運営主体の業務のところで議論した方がいいですか。浦委員のお考えは、運営主体としては公的弁護を専らやるのだけれども、そこに勤めている常勤弁護士は、時間があれば一般の刑事弁護をやった方がいいということですか。

○浦委員 運営主体をどういうふうに、これはまた運営主体の議論になるのかもしれませんね。運営主体をどういうふうなものとして考えるかということになると思うのですけれども、例えば過疎地対策的なものを運営主体がするとした場合、常勤弁護士を過疎地に置けば、これは刑事だけではなくて、民事もやるというふうな構想になるんだろうと思われます。
 だから、むしろ運営主体自体をどういうものとして構想するかによって変わってくるのかもしれませんね。

○井上座長 それでは、そちらの方でまた意見を出していただいて議論するということでよろしいですか。

○浦委員 そうですね。ただ常勤弁護士は特異重大事件が来るまで待って遊んでいるわけにもいかないでしょうし。

○井上座長 常勤弁護士は特異重大事件に限って担当するというふうに決まったわけではなく、そういう在り方が一つ考えられるという御意見が出ただけですので、正反対に、常勤弁護士には一般的な事件を多数やってもらおうという考え方もあり得るわけですね。これは、先ほどの位置付けの議論、役割論にかかわってくる問題ですので、またそれぞれのところで、そういった点も含めて議論していただけますか。
 今の「(2) 公的弁護以外の業務」については、運営主体の業務範囲をどうするのかということをまず議論し、それを踏まえて、個々の常勤弁護士はどこまでの仕事をするのかを議論する、そういうことでよろしいでしょうか。どうぞ。

○平良木委員 要するに、例えば、一般民事の事件をやることはできないのかと、そういう議論ではないのですか。

○井上座長 そういうこともあり得るとは思うのですけれども、運営主体自体が刑事以外の業務も担当するということになれば、当然、常勤弁護士がそれに当たるということになりますね。

○平良木委員 ですから、公的弁護ですから、職務専念義務みたいなのがあって、それを第一にやらなければいけない。それ以外の余った時間をどうするのかと、何ができるのかと。それが先ほど浦委員が言われたことなのでしょうか。

○井上座長 ですから、まず、運営主体としてどこまでの業務を担当するのかということが基本にあって、それを踏まえた上で、常勤弁護士は、雇い主である運営主体の業務を実施するというのがノーマルな考え方だと思うのですが、それ以外のことをやることもあり得るのかどうか、そういう議論の順序になるのではないかと思うのです。そういう意味から、運営主体の業務についての検討を先にした方がよいということなのですけれども、よろしいですか。

○浦委員 一般民事と同時に私選弁護を受任できるかどうかの問題というのも出てくると思います。

○井上座長 その点も、運営主体の業務について議論するところで、忘れずに出していただければと思います。よろしいですか。よろしければ、「3 契約弁護士(弁護士法人を含む。)」に移りたいと思います。
 事務局の説明にありましたように、運営主体との契約によって、一定の事件の受任が義務付けられている弁護士というのを、ここでは「契約弁護士」として捉えているわけですが、それについて(1)と(2)の二つの論点が挙げられております。両方とも契約内容として関連してきますので、両者を分けずに一緒に議論していただければと思いますが、いかがでしょうか。
 (1)は、受任が義務付けられる事件というのはどういうものが考えられるのかということであり、(2)は契約金ということですが、どうぞ。

○??井委員 まず、「(1)受任が義務付けられる事件」の中身ですが、これは先ほども若干申し上げましたが、A案でいく以外にないのではないかと。要するに数で何件幾らということで、契約事務所と契約をするというのが最も妥当であると。

○井上座長 数というのは事件数のことですか。

○??井委員 事件数です。当然、その前提としては、先ほど来申し上げていますように、ある程度定型化した事件と。定型化といっても実際にやってみるといろんな問題が出てくる可能性はあるわけですが、それはそれとして一応定型化している事件について事件数で決めるということです。
 B案を見ると、業務量に相当する事件とありますが、これは算定の仕方が難しいと思います。いわゆる配てん、個別事件の割当ては迅速に行わなければいけないわけですけれども、果たして業務量に相当する事件、一定の業務量に達しているかどうかと、なかなかこれは判定できないし、だれが判定するんだということにもなります。したがって、B案によると、ほとんどうまくシステムが動かないのではないかというふうに思います。
 C案ですが、別に私は契約弁護士が特異重大事件を担当できない、あるいは担当してはいけないというつもりは全くないわけで、それはその事務所のやりくりの中で担当できれば、それは担当していいと思いますが、契約弁護士は特異重大事件を担当するのだというふうに、そちらを主にして契約弁護士というものを考えると、先ほど来申し上げているように、事務所を運営する立場としては非常にやりにくい。そういう意味で契約弁護士として手を挙げる人が少なくなるだろうなというふうに思います。
 むしろ、定型的な事件を一定数で、2,000 万円だとか、そういう定額で出しますと言われた方が契約事務所として手を挙げるところは増えてくる。したがって、契約弁護士の確保もしやすくなるだろうというふうに思います。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○本田委員 確かに??井委員がおっしゃるように、件数でやった方が契約弁護士に仕事をさせやすいというのはそのとおりだと思いますが、事務所によっては、一定の業務量でもできるというところがあるかもしれない。余りこだわる必要はなくて、お互いに契約するときに、この契約でいいですというならB案もあり得るだろうと思います。一般的に言えば、??井委員のおっしゃることは確かにそうかなと思いますけれども。だから、これはA案、B案ということを決める必要もないだろうというような気もするのですけれども。ここでは相手方との契約ですから、相手方の事情によって異なってくるでしょう。
 C案というのは、ちょっといかがかなと思います。これは??井委員と同じ意見です。

○平良木委員 私も基本的には、今、本田委員が言われたとおりで、要するに契約弁護士というのは、常勤弁護士の補完的な役割を果たすということであるわけですから、その役割をどのように果たしたらいいかという観点から恐らく決まってくるのだろうと思います。そういったときに、例えば常勤弁護士をなかなか派遣できないようなところがあるというような場所に、一定数の事件があって、これを担当する契約弁護士というようなことだって、場合によってはあり得ると思うのです。そうだとすると、これは件数、業務量、両方考えられることで、そのときそのときの状況によって契約をしていけばそれで済むのではないかという感じがします。
 それから、C案は、恐らく前に私が言ったことではないかという気がするのですけれども、私が当時考えたのは、要するに契約弁護士というのは、補完的な役割を果たす、今言ったような意味で補完的な役割を果たすのだけれども、それだけにとどまらなくて、特に専門性の高い事件をやる弁護士がたまたまどこかにいるというときには、その人に弁護を依頼するという意味で、契約弁護士はそのような役割もあるのではないかということで述べたので、ちょっと前の言い方は言葉が足りなかったのかなという感じがしております。

○井上座長 ほかに、この点で御意見はございますか。どうぞ。

○??井委員 契約金ですが、私のイメージとしては、いずれ一般の国選弁護が1件幾らという金額が出てくると思うのです。ですから、掛ける件数でそれを契約金額として最初に払うかどうかは別にして、その金額で契約する。その金額の中で全部やりくりをするというイメージですね。だから、個別の事件をやったから、この事件をしたから幾らということではなくて。

○井上座長 最初に決めてしまう、標準的には1件幾らで件数は何件ということで、トータルな形で契約する。実際には1件当たり多少余計かかっても、あるいはかからなくても、トータルで支払をする。こういうことですか。

○??井委員 当然これは確保方策にもかかわってくるのですが、やはり事務所を経営するときには、当然これは予算を立てるわけですから、1,000 万なら1,000 万の予算がきちんと入るかどうかということが大事なので、幾ら入るか分かりませんよということで、それを基にして事務所運営を考えてくださいといってもこれは無理なのです。
 ですから、やはり契約事務所をたくさん集めようと思ったら、今申し上げたような方法で、事務所を運営する立場から言えば、今年度の経費のうちの幾ら幾らはこれで賄うというのもおかしいですが、運営主体との契約から入ってくるなということで予算組みができるというような仕組みでないと、契約事務所として手を挙げるところは少なくなるだろうなというように思います。

○井上座長 浦委員、いかがですか。

○浦委員 確かに今のような算定の仕方は一つあろうかと思うのですが、その場合に、1件の単価が、一定の事務所を維持できる相当な高い水準で設定されていればいいのでしょうけれども、それが低い水準で設定された場合には、数多くやればやるほどマイナスになるということで、その場合には契約弁護士には、なかなかなり手はないということになるのではなかろうか。むしろそういう場合には、数多くの事件を担当させるということで、契約弁護士には、それなりのプラスアルファの金額を考えざるを得ない場合も出てくるだろうと思います。
 逆にそれが一定の水準よりも高い、1件の単価が高ければ、先ほど??井委員が言われたように、言わば定型的な、定型的な事件というのがそれほどあるのかどうか分かりませんけれども、割合自白事件を数多く担当するというような場合には、全体としては若干安くするというふうなこと、つまり単価掛ける事件数よりも低くて済むという、そういうふうなことも考えられます。ですから、確かに契約金の定め方というのは難しいなと、いろいろ考えれば考えるほど難しい問題があるなとは思います。

○井上座長 ほかの方は、いかがですか。どうぞ。

○大出委員 今の??井委員の意見でいった場合、一定数の事件について受任するという契約を年度当初にするわけですね。

○??井委員 はい。

○大出委員 その場合、もちろん、先ほどのある程度定型的な事件というようなことであれば、それ相当の事件を見込めるということで契約をするということなのでしょうけれども、たまたまその年に一定数に達しない場合というのもありますね。そのときはそのときで構わないということでしょうか。

○??井委員 構わないというのは。

○大出委員 だから契約金額はすべて一定、だから多ければ多くて、多くを受任する必要はない、つまり、例えば100 件なら100 件という契約をしますね、それを超えた分については、もう受けなくていい。

○??井委員 そういうことですね。

○大出委員 では、80件だったと、たまたまそういう全部で全くないということはないのかもしれませんが、つまり当初想定された定型的な事件の類型か何かが。

○??井委員 要するに、100 件契約しましたが、80件しか来ませんでしたと、だから20件分契約金を返上しなさいと言われたら、これは事務所を経営する立場から困るのですね。だから、例えば100 件を1,000 万で契約したら、間違いなく100 件はちゃんと割り当ててもらわなければ事務所の運営はできないと、そういうふうでないと契約事務所として多くの人が手を挙げるというのは、なかなか難しいということです。
 ですから、80件しか配てんできなくても、最初お渡しした契約金額は返納していただかなくても結構ですよということであれば、それはそれで構わないのですけれども。

○井上座長 契約の在り方としては、幾つかのパターンがあり得ますね。実際に取り扱った事件数が所定の数に達しなかった場合には、按分して実績分だけ払うということもあり得るわけですけれども、それだとなかなか手を挙げる人を多くは確保できないだろうというのが、高井委員の御意見だろうと思います。
 その点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが、どうぞ。

○大出委員 もちろん、契約した以上は、たとえ事件が来なくても、その部分の契約金を受け取れるということでないと、事務所経営という観点からすれば、やはりなかなか難しいのだろうと思うのですけれども、ただ逆にそういう場合と同時に、さっき言ったように件数は100 件である以上、どういう事件が、例えば想定された事件は80件で、あと20件は余裕があるということになったときに、ですから事件内容自体を契約のときにある程度特定をするということはしないわけでしょう。
 ですから、どういう事件が最終的に来るか分からないということでいくと、例えば100 件というようなところで受けたときに、やはり事件によっては、当初予定された金額ではペイしきれないという場合も起こってくるということはないのですか。

○??井委員 それは、例えば難しい事件を100 件も配てんしたら、そもそも難しいわけで、それはこういう言い方をするとちょっと語弊があるのかもしれないけれども、それは受けた事務所の努力で、1,000 万なら1,000 万で契約したのなら、その中できっちりやると、足が出ようが出まいが、その中できっちりやると、これは当然だと思います。
 もう一つ、100 件で契約して80件しか配てんできなかったと、だけどあとの20件分はもらったままでいいよというのは、それはなかなか国民は納得しないですね。ただ、その場合は、20件分の半分は返しますというようなことになるかもしれません。それは最終的にはどういう契約をするかということになるのですけれども、ただ基本は、100 件で契約したらきちんと100 件配てんするという理念でないと、システムはうまく回っていかないし、信頼して、契約事務所をやりましょうという事務所はそんなに多くはないでしょうということです。

○井上座長 その点でも結構ですし、ほかの点でも結構なのですが。本田委員どうぞ。

○本田委員 いろんな御意見が出たのですけれども、いずれにしても税金を投入するわけですから、契約内容が合理的なものでなければいけないのですけれども、例えば100 件までで契約して、90件しか受任がなかった場合、それは実際にやる態勢は整えたわけなので、できなかったらそれはいいですよというのもあるかもしれないし、先ほども言ったように、余り金額に乖離があると、それは税金をそれだけ無駄遣いすることになる、それはある程度返してくださいとなるかもしれない。どういった契約内容にするかというのは、最終的に運営主体と事務所との契約ですから、ある程度合理的な制限があるとしても、余り細かくここでは決められないのかなという気がします。

○井上座長 この点は、このくらいでよろしいですか。それでは、次に進ませていただきます。
 次が、「4 常勤弁護士及び契約弁護士の確保方法」ですけれども、この点で、一部の方の御意見の中で、常勤弁護士の採用についても、契約弁護士との契約についても、弁護士会の推薦に基づいて行うものとすべきであるという考え方が示されていたわけですが、この点についてどういうふうに考えるべきか、御意見をどうぞ。

○??井委員 これも本来運営主体が契約するわけですから、運営主体が自分で自由に決めればいいではないかというのが基本だろうと思うのです。しかし、一応弁護士会というのが強制加入団体としてあって、やはり弁護士会として国民に適正な弁護活動を提供するという義務を負っているということは言えるわけで、そういう意味では、やはりその弁護士が刑事弁護に適しているかどうかということは、運営主体よりも弁護士会の方が詳しいということは言えるのだと思います。
 そうなってくると、やはり弁護士会の推薦に基づいて運営主体が契約をするというシステムが望ましいのではないかと。しかし、この場合に、「推薦に基づいて」というのは、弁護士会が推薦したら、必ずその人と契約しなければならないということではなくて、弁護士会が推薦した人の中から、あるいは推薦した事務所の中から、運営主体の裁量によって契約をするということだろうと思います。

○井上座長 御意見は、制度としてそういうものにすべきだということなのか、事実上そういう運用が望ましいということなのか、どちらなのですか。

○??井委員 制度とした方が望ましいと思います。

○井上座長 分かりました。推薦に基づいてということなのですが、推薦がなければ採用してはいけないということまで意味しているのでしょうか。

○??井委員 推薦のない人とは契約ができない。しかし、推薦があったら必ずその人と契約をしなければいけないというものでもないと。

○井上座長 推薦のあった中から絞り込むということでしょうか。

○??井委員 そうです。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○酒巻委員 ただいま座長がおっしゃった点を聴こうと思ったのですけれども、制度として、??井委員の御意見だと、推薦がなかった場合は、推薦されていない人とは運営主体は契約できないと、そういうことですね。それは、私は変だと思います。もしある弁護士会がだれも推薦しなかったらどういうことになるのですか。

○??井委員 弁護士会は推薦義務を負うということですね。では、弁護士会が1人も推薦しないといったら、それはやはりおかしなことで、それは制度として弁護士会が適していると思われる弁護士を推薦する義務を制度として課すというのが当然前提としてありますね。

○本田委員 質問が一つあるのですが、その場合、推薦というのはどこに推薦するのですか。運営主体に推薦するのですか。

○??井委員 運営主体です。

○本田委員 私は、推薦がなければ常勤弁護士、あるいは契約弁護士になれないという制度は、ちょっとおかしいのではないかと思います。公正中立な運営主体が常勤弁護士、契約弁護士を確保するわけですから、弁護士会の推薦がないと常勤弁護士や契約弁護士になれないという実質的な理由は何なんだろうかという疑問を感じます。
 今、??井委員が言われたように、一定の適正な弁護活動ができる弁護士さんを推薦するということになると、では適正な弁護活動ができる弁護士さんかどうかの基準というのは一体何なのだと、基準を明確にしておく必要があるだろう。むしろ、不適正な活動を行う人を取り除くためというのなら、例えば、そのような人の名簿を出してもらうといった方法で済む話ではないかという気もするのです。
 一つの組織が、ある弁護士さんを雇ったり、契約する場合に、他の機関あるいは団体からの推薦がないとできないという制度は果たして妥当なものなのかと。おれは推薦されないのだけれどもなりたいんだと言い、能力があると認められるときに、なぜその人と契約してはいけないのか。この前のヒアリングでもそういう質問をしました。そういう場合に、どうして運営主体は採用できないのか理解できません。
 それから、全く推薦がなかった場合はどうかという酒巻委員からの指摘があったのですけれども、例えば、運営主体で50人必要だと、ところが弁護士会は30人しか推薦できないということはあり得るかもしれない。では、あと20人はどうするかとなったら、実際に弁護士会に協力していただかなければいけないというのは当然の前提なのですが、必要な数を確保できないということになりかねないのではないかという疑問があります。公的弁護というのは、みんなが協力してつくっていかなければいけないので、弁護士会の方に、例えば運営主体がいろんなことをお願いしてそれに協力してもらうということ自体は大変大事なことで、そこは是非やっていかなければいけない、当然の前提だと思いますが、制度としてそういったものをつくると、やはりどうしても制度としていびつなものになってしまう。ここはやはりおかしいという気がします。

○池田委員 運営主体が、常勤弁護士あるいは契約弁護士を確保しておくということが必要で、それは運営主体の責任だと思います。それではどういう人を入れるのかということになると、先ほど??井委員も言われたように、実際には全弁護士の強制加入団体である弁護士会の協力を得ないと、そういう弁護士も得られないということになるわけですから、運用上あるいは事実上、そういう推薦というのは考えられるだろうと思いますし、また、積極的な協力関係、運営主体と弁護士会との協調関係というのは必要だと思いますけれども、制度として、法律上推薦がないと動けないというようなことは、やはりできないのではないかと思います。制度とすると困ることが起こるというのは、先ほど来指摘されているとおりで、そこまでは無理ではないかと思います。しかし、事実上、運用上、そういう推薦が望ましくて、それを尊重して運用されていくであろうというふうには思います。

○井上座長 分かりました。では、どうぞ。

○浦委員 今、??井委員も言われたところなのですけれども、言うまでもなく、弁護活動の自主性・独立性というのは確保されなければいけないわけですね。これは繰り返し繰り返し申し上げているところなので、これ以上重ねて申すつもりはございませんけれども、要するに弁護士の職務の自主性・独立性の確保のために、弁護士の強制加入団体である弁護士会に自治権が認められているという前提がございます。
 さらに、憲法34条、37条が被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を定めておりまして、その保障の担い手を「資格を有する弁護人」というふうに規定している。そういうところからしても、弁護士あるいは弁護士会として弁護を提供する憲法上の責務を負っていると言ってもいいという考え方もあるようです。
 こういうふうに、弁護士ないしは弁護士会の刑事弁護を提供する責務というようなことを考え、また弁護士会の自治権に基づく自主性・独立性の確保というようなことを考えれば、運営主体が常勤弁護士あるいは契約弁護士を採用するに当たって、その前提として弁護士会が関与していくことの正当性は認められるのではないかと思います。更に加えて、先ほど??井委員も言われましたように、常勤弁護士や契約弁護士というのが今回の制度の中で果たす役割というのは、相当程度大きいものがあるのだろうと思います。そのために、常勤弁護士あるいは契約弁護士につきましては、十分な見識あるいは相当の実績を備えた、それにふさわしい弁護士でなければならない。それにふさわしい弁護士であるかどうか、その適格性を判断するには、弁護士会が最も適切な機関ではないかと思います。したがって、その弁護士会の推薦に基づいて常勤弁護士、契約弁護士が選ばれていくというシステムは、制度上考えても不可欠のことだろうと思います。
 加えて、常勤弁護士、契約弁護士が弁護士会の推薦によって選出される、そういう方式というのは、国民の目から見ても、常勤弁護士、契約弁護士に対する信頼性を高からしめるものになるのではなかろうか、そういうふうに思います。

○井上座長 今言われた1番目の点は理由になっているのでしょうか。つまり、自主性・独立性ということは、懲戒とかそういった問題との関係でまた後で議論があると思いますけれども、そこのところの理屈としては分からないでもないのですけれども、常勤弁護士を雇用するときに弁護士会の推薦に基づかなければ自主性・独立性の確保に問題が生じるというのは、理由として成り立っているのか、もう少し補足説明をしていただかなければ理解が困難なように思います。
 2番目、3番目の点についても、運営主体の在り方をまだ議論していませんが、運営主体の意思決定機関にいろんな人が入って、そういうことを確保していくということが仮に考えられるとした場合に、その機関の判断で、ある弁護士が適任だと判断されたとしても、なおその弁護士を雇ってはならないとする理由があるのか、ちょっと理解できないのです。その2点を、もう少し説明していただけますか。

○浦委員 公正中立あるいはその中に弁護士会の関係者が運営主体にかかわっていくとしても、運営主体の立場で、その弁護士がふさわしいかどうか、適格かどうかということを判断するのと、弁護士会の立場で判断するのとは別だろうと思うのです。

○井上座長 そこがよく分からないのですよ。

○浦委員 そうですか。例えば、弁護士会は最高裁判事も推薦しますし、司法研修所の教官も推薦していますけれども。

○井上座長 それは、事実上そうしているということですね。

○浦委員 もちろん、事実上ではありますけれども、そういう場合に適格者というのは、そこの中から弁護士会として選任することができているわけですよ。

○井上座長 それはそうだとしても、運営主体の方で判断できないという理屈になるのかということなのですが。
 それに、適格性ということと同時に、個々の弁護活動の自主性・独立性への影響という意味で、弁護士会の推薦がなければそれが確保できないという御説明だったのですけれども、そこのところも、もう少し説明していただかないと分からないのですが。

○浦委員 ちょっと説明が足りないのかもしれませんが、例えば弁護士会としては、なってほしくない人を運営主体が積極的に採用されるというふうなことになると、これは大変困るわけですね。極めて問題があると思われる弁護士を。

○井上座長 それは、弁護士会の独立性に対する影響ということですか。

○浦委員 いや、弁護活動自体に対しても、弁護士会としてはどうもあの方は適切ではないと思われる方を運営主体が積極的に採用されるということになる。それは弁護活動、それ自体にも大きな影響を与えるのではないですか。

○??井委員 先ほど池田委員それから本田委員から制度上の前提として推薦だというと、確保できない場合があるのではないかという御意見がありました。しかし、これは少し前提が違っていまして、あくまでもこれは常勤弁護士と契約弁護士の推薦ですから、その数が足りなかったら、一般国選の方にやっていただければいいわけですから、確保できないという問題では基本的にはないというふうに思っているのです。
 ですから、要するに数が足りないかもしれない、私は多分そういうことは実務的には起きないと思っているけれども、仮にそういうことが起きたとしても、それは一般国選でやればいいわけだから、それで公的弁護が動かないということには多分ならないでしょうということです。
 それから、先ほど来、座長と浦委員がなされた議論ですけれども、やはり常勤弁護士及び契約弁護士というのは、私のイメージとしては、刑事の専門家を育てる、あるいは専門家を採用するという前提なわけです。もう一つは、刑事の専門家というためには、まず能力的に優れていなければいけないということもあるし、熱意もなければいけない、刑事事件に対する興味だとか関心がなければいけない、そういう問題だと思うのです。単に今までどういうことをやったことがあるかとか、経験年数がどのぐらいかという問題ではやはりないと思うのです。そうすると、かなり踏み込んだ知識が要るだろうと。例えば失礼な例を出させていただくと、我々が学者の先生方の中で非常に有能な先生を選ぶのと、学者の先生方同士で有能な学者の先生方を選ぶのと、どちらが適格かといったら、やはり後者でしょうと。部外者の我々が有能な学者を選ぶのはなかなか難しいでしょうと、それと同じことではないかということです。
 やはり、業界という言葉はおかしいけれども、その職にあったらその職にないと分からないこと、その世界にいないと分からないということはあるわけで、それは部外者から見ても同じですよという言い方は、やはり少し乱暴だろうなというように思います。

○井上座長 運営主体は部外者だということですか。

○??井委員 一応、弁護士も入るかもしれませんが、運営主体は基本的には部外者でしょうということです。

○酒巻委員 質問と意見です。浦委員がおっしゃったように、弁護士及び弁護士会の自主・独立、刑事弁護における独立性というのは、当然の前提だと思うのですが、そのことと??井委員、それから浦委員がおっしゃっている、運営主体が常勤の人を雇う、あるいはある人と契約するについて、制度として弁護士会の推薦がなければいけないということが、弁護士や弁護士会の自主・独立に論理的に影響するとは私には思えません。そこは説得的な議論ではないと思います。それが一つです。
 それから、今、??井委員のおっしゃったイメージでは、常勤というのは刑事専門で、そして業界の人がそれを一番よく判断できるというのだけれども、そのことは、皆さん事実上、弁護士会から十分御意見を聴いて人を雇うということは前提にしているわけですね。そのような運用が行われることで私は十分満たされると思うのです。
 一方で、先ほど座長が示唆されたように、運営主体の形態は、最後の方に出てきますけれども、いろんな形があり得るわけですけれども、公平・中立な、そして国の税金を受けて、公平・中立な団体という独立した法的な主体となるはずである。そのような独立の法的主体が、一般論・制度論として、人を雇ったり、人と契約したりするのに、何でほかの団体・機関の推薦を制度として組み込まなければいけないのか、これ自体私は制度として根本的におかしいのではないかという気がします。以上です。

○井上座長 ほかの方も手を挙げられておられますので、どうぞ。

○大出委員 ちょっと今、酒巻委員のお話を伺っていて、今の点でいくと、もちろん事実上そういうことで推薦が行われれば、運用上うまくいくというようなことも私はあり得るのではないかと思いますし、それでもいいのかなというふうに思うのですが、ただ他機関がどうのこうのという話でいくと、??井委員の言っていることにもそれなりの理由があるのかなという気がするのです。つまり、日弁連は一応法的に認められた公的団体であるわけですね。ですから、弁護について責任を負うという言い方は正しいのかどうかというのはありますけれども、少なくとも弁護士を全体として、つまり全員が加入し、弁護の在りようについては、いろいろと公的に責任を負う立場にあることは間違いないわけで、その弁護士会が、もちろん運営主体でもその判断が全くできないというわけではないのかもしれませんけれども、やはり弁護というものについて日弁連が公的な立場で一定の役割を担うということはあり得ることではないかという気がするのです。ですから、全く第三者的団体で部外団体だというようなことではないのではないかという気がするのです。その限りでは、それを法的推薦というふうにまでいって、ただ、さっき??井委員がおっしゃったように、この契約弁護士、常勤もそうですが、その場合に推薦がなかったとか、あるいはそれで決定的な欠落が生じるということではないという前提に立つのであれば、それはそれで推薦を認めたからといって何か障害が出るのかというと、どうもそうでもないのかなという感じがするのですが、そこはどうなのでしょうか。

○井上座長 酒巻委員が言おうとされたのは、運営主体を、責任の取れるものとしてつくるのに、それが独自に判断できないような制度になぜする必要があるのか、そこの説明がつかないのではないか、ということなのだろうと思います。そこだけでは判断がつかないということならば、それにふさわしい団体の意見を聴くことを前提にするということはあり得るかもしれないけれども、制度の出発点のところの説明がつくのだろうか、という疑問だと思うのですが。

○大出委員 でも、あくまでも推薦ですね。さっき??井委員もおっしゃったように、推薦されたから絶対に採らなければいけないというわけではないわけですね。

○井上座長 推薦されない限り採れないという形になるわけで、制度としてそれでよいかということだろうと思います。

○大出委員 それは、やはり専門家団体としての見識に基づいて推薦が行われるということになるので・・・。

○井上座長 その前提となる制度の在り方についての議論が本当に詰められているのかという議論だと思うのですけれども。

○本田委員 税金を投入して行う公的弁護ですから、適正な弁護の確保であるとか、適格性の確保が必要だとおっしゃることに私も全く異論はございません。しかし、そういうものを担保するために弁護士会の推薦が必要だと言われるのであれば、それはその基準をきちんと示してもらわないといけないのではないでしょうか。先ほど弁護をやってもらいたくない人を選んでは困るという話があったのですけれども、そういう議論になるのであれば、それは国民の目から見て、こういったきちんとした人を推薦しているのだということを透明にしていただかないと、国民の理解は到底得られないのではないかと思います。ただ、専門家集団だから我々の推薦に任せてくれと言われたって、それはどういう人が適格ではないのか、どういう人がやってもらいたくない人なのか、その基準をきちんと、こういう人は駄目なのだということを明らかにするべきだろうという気がします。そういうことが果たしてできるのだろうかという意見です。
 もう一つ、先ほど??井委員の方から、もし常勤が確保できなければ、これは個別の方に流せばいいのではないかという話がありました。それで賄える場合があるかもしれない。ただ、最初に申し上げましたように、運営主体が行う公的弁護というのは、一般の弁護士では賄えないセーフティーネットとしての機能は最低限営むようにしておかなければいけないですね。
 もし、それに満たないような状況になったら、公的弁護がうまく動かないのではないかという、その心配はまだあるのだろうと思います。推薦が必要だという制度にした場合に、本当に推薦ができなかったらセーフティーネットとしての機能さえ果たせないような状況ができてしまうような制度というのは、やはり少しおかしいのではないかという気がするのです。

○??井委員 まず、酒巻委員の御意見に対してですけれども、私としては、より良い弁護士を提供するという意味で推薦という制度にした方がいいということを言っているわけです。何も運営主体がどうのこうのということを言っているわけではなくて、国民のために何が一番利益になるのかと考えたら、最も刑事弁護に適した人をより多く提供する。そういうことを一番きっちり判断できるのは弁護士会だろうと。だから弁護士会の推薦を前提にする制度の方がいいのではないかと申し上げているということです。
 それから、運用でやればいいではないかという御意見もありました。これは私の基本的なスタンスなのですが、今まで日本の社会は、すべてありていに言えば、お上の運用に任せているという部分が多過ぎたのではないかと。もう少し透明性を確保するというのは、運用に任せるのではなくて、決められた範囲できちんと制度化していくと。それが国民の目から見て透明化を図るということにもなるわけであって、運用でできるからいいのではないかというのは、これから新しい制度をつくるときの姿勢としていかがなものかというように私自身は思っているということです。
 それから、本田委員の御意見に、だったら推薦基準を明確にするべきではないかと、できるのかということがありました。これは仮に制度として推薦するということになった以上は、当然そういう基準を国民の前に明らかにするという義務を弁護士会が負うということだと思います。もし、弁護士会がそれをするのが嫌だと言うのであれば推薦するという制度にしてくれと言うべきではないと、私自身は思っています。それは国民に対する義務であると思います。
 最後の本田委員の御懸念ですが、基本的にはセーフティーネットの役割も果たさない、それにも足りない程度しか推薦しないということは、基本的には、これは実際の見通しの問題になってしまいますけれども、弁護士会もばかではないわけですから、そういうことをやったらシステムが壊れることは分かっているわけですから、それは一生懸命推薦すると私は思います。ですから、セーフティーネットすらできないということ自体には立ち至らないのではないか。ですから、そういうことを前提にした議論は余りする必要はないのではないかというふうに思います。

○井上座長 ほかの方の御意見はいかがですか。

○浦委員 今、基準というふうなことを言われた点でありますけれども、これは、例えば独立行政法人通則法の役員に関しては、「当該独立行政法人が行う事務及び事業に関して高度な知識と経験を有する者」を任命するという基準があるわけですけれども、恐らくは、そういうふうな形で刑事弁護についての高度な知識と経験を有する弁護士というふうな基準というのはあり得るかと思います。しかし、全人格的な評価ということになるのだろうと思いますから、個別に適正な弁護がどうのこうのというような、今、本田委員が考えておられるような点についてまでの基準というのは恐らくは難しいのかと思います。

○本田委員 1点だけよろしいですか。

○井上座長 では、1点だけ。

○本田委員 先ほどのセーフティーネットの機能という、それさえ果たせない場合が出る可能性があるのではないかということに対して、それは実際ないだろうという??井委員の御指摘がありました。ただ、先日、日弁連の国選シンポジウムが開かれまして、その資料の中に、地域によっては刑事専門弁護士の設置などについて、刑事弁護を変質させる可能性があるとして消極的な意見を述べている単位会もあるわけです。そういったところが、いや、推薦は嫌だと、専門の公的弁護を担う弁護士は推薦しないというような懸念がないわけではないのですね。

○??井委員 私のイメージは、またちょっとそこら辺は違うのですけれども、確かに単位会で見ると、そういうところがあるかもしれません。だけど、このシステムを動かすときには、多分派遣のようなもの、例えば東京なんかは相当いると思うのです。東京からそういうところに派遣をしていくということが当然あり得るわけですから、やはり推薦を制度化したらセーフティーネットすらできないということはないと思うのです。

○井上座長 そういう仕組みを考えておられるということですね。どうぞ。

○落合参事官 先ほどの浦委員のお話なのですが、実体的な基準として浦委員がおっしゃったことの当否はともかくとして、その認定の資料はどうやって集めるのですか。個々の弁護人の活動は、ほかの弁護士の方が法廷に出ていって見ているわけではないですね。

○浦委員 弁護士というのは、それは相互にどういう活動をしているかというのは、同じ専門家集団ですから分かるのです。具体的にどんな事件をやったかというような資料を出せということはあり得るかもしれませんけれども、だれが会長にふさわしい、だれが副会長にふさわしいというのは、これは特にそんな資料を出させて選んでいるわけではないですけれども、これは分かることなのです。

○??井委員 例えば、民事で相手方になってやりますね。それでやり合えば、大体その弁護士の能力というのは分かるわけです。それから、共同弁護をやりますね。それでも分かるわけです。
 だから、ほかの人がしている仕事なんか分からないではないかということではなくて、やはりその世界、特に地方に行けば狭い世界ですから、あそこで一緒にやったとか、あそこで民事を一緒にやったとか、あそこで民事で戦ったとか、こっちで刑事弁護を一緒にやったとか、一緒に仕事をする機会はいっぱいありますから、仕事の能力とか、熱意とか、責任感とか、それはやはり分かるのです。

○井上座長 まだ私には十分理解できないのですけれども、そういうふうに、その地域の弁護士で経験を積んだ人なら、あの人は致命的に駄目だよということは分かる、そういう人は推薦しないということでしょう。

○浦委員 あるかどうかは分かるということです。

○井上座長 分かるということですね。そうであるのに、なぜ弁護士会という単位でなければその判定ができないのかが、まだよく分からないのですよ。運営主体として、そういう判断がなぜできないのか。能力がないような人を、弁護士会の推薦もないのに、一本釣りで常勤として雇うということが起こり得るというのが、浦委員が言われていることなのでしょうか。その辺が、まだよく理解できないのです。

○??井委員 私は、運営主体でもできるではないかという発想の方が理解できないのです。要するに、私が先ほど来言っているように、東京はちょっと違うのですが、地方に行ったら、しょっちゅういろんなところで敵方になったり、味方同士になったりして、仕事振りを見ているわけです。ところが、運営主体の人は、基本的にはそういう機会がないではないですか。だからその方が本当にその人の能力とか、性格だとか、人柄だとか、責任感だとか、それをどうして判断できるのかと思いますね。

○井上座長 それは運営主体のつくり方の問題だろうと思うのですけれども、その運営主体のつくり方の中に、どういう形で人を雇うか、そういう仕組みの問題ではないでしょうか。その場合に、弁護士会の推薦というものを、制度として前置しなければならない、とまで本当に言えるのかどうなのか。そこが、恐らくポイントだろうと思うのです。

○??井委員 座長の御意見ですか。

○井上座長 いや、意見というほどのものではなく、おっしゃっていることがまだよく理解できないと言っているだけなのですが。

○??井委員 座長の問題意識と言いますか、そういうことを解決するためだったら、運営主体の中に、そういうリクルート部隊なんかをつくればいいではないかみたいなことになると思うのですけれども、そういうことをするのだったら、最初から弁護士会の推薦を前置した制度にした方が簡単ではないですかということです。その分の人件費も浮きますよと。

○井上座長 先ほど酒巻委員が言われたように、運営主体といいますか、制度のつくり方の問題として、そういう議論で本当にいけるのかということだと思うのです。

○??井委員 もう一つ、推薦というのは、推薦のイメージが、私の推薦というのは広く推薦すると、実質的には本田委員が言われているように、これはどうしても駄目だと、はしにも棒にもかからないというのも含めて、もう少し広く、駄目な人を外していくというイメージなのです。選んで選んで、この人この人というふうに選抜をして推薦をするというようなイメージではないのです。

○井上座長 そこのイメージの違いがあるのですね。どうぞ。

○酒巻委員 高井委員の述べられた、お上の運用に任せるような社会から、制度的にあらかじめ明確にするのが望ましいという点に対して一言だけ申し上げますと、その思想においては私も全く同感ですけれども、私の問題意識は、先ほど座長がまとめてくださったとおりで、要するに法的な仕組みとしてと言うと言い過ぎかもしれませんが、何でそういう考え方が成り立つのかがさっぱり分からないということなのです。一つの独立した法的な主体が人を雇用したり、契約したりするのについて、制度の中に他の法的主体の推薦がなければ駄目だというような仕組みがそもそもあるのですかと、それが言いたいことでございます。

○浦委員 ありますよ。例えば、労働組合法が定める労働委員会で、使用者側委員、労働者側委員、これはそれぞれ労働者団体、使用者団体の推薦に基づいて選任することになっています。あるいは、人権擁護委員の委嘱についても、これは市町村長が推薦した者の中から、その地域の弁護士会などの意見を聴いて行わなければならないというふうな選任手続が組まれているわけです。ですから、他の機関の推薦に基づいて、ある委員を選任していくという仕組みは決してないことはなく、法律上も現にあるわけです。

○井上座長 そういう機関の委員の選出と、雇用すべき常勤ないし契約すべき相手方を選ぶのとが事柄として同じかどうかということだろうと思うのです。違うとも言ってはいないのですけれども。

○浦委員 違うというのは、どこが違いますか。

○井上座長 運営主体の意思決定機関のような公的機関の委員をどう構成するかというところでは、推薦ということを組み入れるということも可能性としてあり得るわけですね。労働委員会の委員だとか、人権擁護委員というのは、恐らくそれと同レベルの問題ではないでしょうか。ところが、そこで職員として雇用する人をどうやって選ぶかというときに、雇用主体がなぜ自分で決定できないのかと、そういう問題だと思うのです。

○浦委員 そのことは、弁護活動だからですよ。前提は弁護活動を提供するということにあるわけですよ。だから、それについて弁護士会が責任を負うという、さっき大出委員はそこまで言えるかどうかと言われましたけれども、実質そういうふうなことが前提とされているわけですよ、そうじゃないでしょうか。

○井上座長 ですから、そういう説明で十分な説得力を持つのかどうかということであり、酒巻委員などは、それでは説得されないと、そういうことをおっしゃっているのでしょう。

○本田委員 これも質問なのですけれども、先ほど明確な基準を示すべきだと、それは国民の理解を得るためにも、推薦をするというのであれば、一定の推薦基準を示してくださいと言いましたけれども、もう一つ、例えば私はあそこの常勤弁護士になりたいのだという弁護士さんがいて、その人を推薦しなかったら、その人に対する説明義務が弁護士会としてありますね。それは明確な基準がなければ説明できないですね。そこはどうお考えになるのですか。

○井上座長 ??井委員、どうですか。

○??井委員 私は基準をちゃんと明らかにするという立場ですから、それは当然ですね。

○本田委員 ??井委員の立場は、そうなのですけれども、浦委員はどうでしょうか。

○浦委員 それはそれなりに、例えば今も研修所教官に立候補する人たちのすべてを推薦しているわけではないのだと思いますよ。

○井上座長 理由は説明しているのですか。あなたは、こういう理由で推薦しないのだと。

○浦委員 それは選から漏れたということになっているのではないでしょうか。

○井上座長 具体的な理由は説明していないのではないですか。

○浦委員 具体的な説明はしていないと思いますけれども。

○本田委員 要するに、一応弁護士の資格を持って、単位弁護士会及び日弁連に登録してあるでしょうから、当然刑事弁護を担当する法律的な資格を持った人ですね。そういう国の試験を受けて、合格して、研修所に行って、研修をやって登録した人で、刑事弁護の資格、いわゆる法律的な資格を持った人について、おまえは常勤弁護士にはなれないということを言うわけですから、これは明確な基準をつくってやらないと、それでは訴訟になったらどうなるのですか。それはきちんと分かるようにしておかないと、推薦を受けなかった弁護士さんは納得しないですよ。だから、??井委員の場合のように、きちんと基準をつくるのだとおっしゃれば、それはおまえは該当しないのだと、これは事実認定の問題でしょうけれども、そう言えるのですが、そこがぼやっとしたままでは国民にも説明できないし、当該弁護士に対しても、当然そういう法律上の資格を持っている人に対して、おまえは駄目だと言うわけですから、そこは制度としてきちんとしておかないと、まずいのではないかという質問です。

○??井委員 弁護士を辞めろと言っているわけではありませんから、契約弁護士になれないだけで、では一般国選はできないかというと、一般国選はできるわけですから、そこら辺はちょっとね。

○井上座長 雇うのにふさわしくない、あるいは契約するのにふさわしくない、その限りだということですか。

○??井委員 その程度のものだということです。

○浦委員 先ほどの座長のお話なのですけれども、委員として選任される場合と、それから職員として雇用されるという場合とは違うのではないかということがありましたね。

○井上座長 むしろ、先ほど例に挙げられた委員のような場合、非常に特殊性があって、その性格上、そういう推薦が制度として組み入れているのだろうと思うのですが、それと同じことが、ある法人なら法人、ある組織なら組織で雇用される人との関係でも、当然のように言えるのだろうかというのが、恐らく酒巻委員などの疑問だと思うのですね。それには、ちゃんとお答えになっていないのではないか、ということなのです。

○浦委員 結論的な話ではなくて、さっきも言いましたように、これは弁護活動をするということで運営主体に入っていくわけですね。むしろ運営主体に逆に雇用される、今日のたたき台に「雇用」という言葉が出ていますけれども、そうなればなるほど、運営主体とのかかわりの中で、きちっと運営主体からのいろんな弁護活動に対する問題に対して、後の問題で出てくるのですけれども、それとのかかわりの中で弁護活動をきちんとやり切れるかどうかというふうな、そういう能力というようなものを判断するということになるのではないでしょうか。

○井上座長 ちょっと分からないのですけれども、運営主体とのかかわりの中においてというのは、どういうことですか。

○浦委員 運営主体とのかかわり中で、弁護活動をやり切れる、あとの問題でも出てくるのかもしれませんけれども。

○井上座長 具体的にはどういうことですか、今おっしゃったことの意味は。

○浦委員 ですから、例えば運営主体から弁護活動に対する何らかの介入があったような場合にでも、それに対抗できるだけの能力のある人と。

○井上座長 そういうことを想定されているわけですか。

○浦委員 そういうこともあり得るということです。

○井上座長 そういう想定に立っておられるなら、浦委員の説明というのは、それなりに分かるのですけれども、他の皆さんがそういう想定に立つとは限らないので、そこで議論がずれてくるのかもしれませんね。ほかの方は、いかがですか。どうぞ。

○平良木委員 ちょっと観点が違うのかもしれませんけれども、要するに常勤弁護士の採用ということがノーマルな状態で行われているときには、恐らく弁護士会の推薦に基づいてということになるだろうと思うのですが、しかし、やはり必ずしも常にノーマルな状況にあるとは限らないと思います。例えば、今までの国選弁護人の選任に関する状況からしても、かなり危機的な状況というのがあったことも間違いない。そういうことがもし想定されるとすると、制度として、弁護士会の推薦に基づかなければ行えないというようなことだと、やはりちょっと固過ぎるかなという感じがする。
 それと、先ほど本田委員の方からお話がありましたように、これから常勤弁護士という制度を大きく育てていくということだとすると、場合によっては、修習を終わった者から常勤弁護士を採用して育てていくということもあり得るだろう。そうなってくると、むしろそれを前提に、運営主体が主体になって採用するということも今後十分あり得るのではないかというように思います。
 そういうことから、弁護士会の推薦に基づいて採用や契約を行うことは、基本であるけれども、やはり運用の程度にとどめておくべきではないかというように思います。

○井上座長 ほかに御意見はございますか。かなり議論をしてきましたが、弁護士会の協力がなければ実際に動かないし、弁護士会の推薦というのが、制度化するかどうかは別として基本になるという点では、皆さん異論はないところだと思います。それを制度として組み入れて、必ずそれを前提にしなければならないものとすべきかどうかというところで、意見が大きく分かれているわけで、さらに浦委員の御意見も、後の運営主体の在り方、あるいは運営主体と個々の弁護士との関係ということと密接に結び付いているということが分かりましたので、その辺も踏まえて、今後更に先の方でも議論をしたいと思います。
 もう少しやっておきたかったのですが、ここで10分ほど休憩させていただいてよろしいですか。それでは、休憩といたします。

(休 憩)

○井上座長 それでは、再開いたします。
 4まで行きましたので、次は、「5 その他の確保方策」に進みたいと思います。これについては、先ほどの説明では、一般の弁護士に関する確保の在り方という観点から議論をしてもらいたいということでした。どなたからでも御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○浦委員 これは弁護士会の取組というようなことにもなるのかもしれませんけれども、現在、弁護士会が行っているのは、ひまわり基金公設事務所という形で過疎地に設置するもので、これは民・刑両方ともに対応している、そういうふうな事務所があります。
 それから、現在、大都市でいわゆる都市型公設事務所というのが設置されておりまして、それが東弁、二弁、一弁、それから大阪などで既に活動しています。そのうち東弁では、刑事対応型の公設事務所の設置ということで、今、具体的に計画されております。大阪でも、こういう刑事対応型の公設事務所というものについて、今、具体的な検討に入っているところであります。さらには、これは国選シンポジウムで提起されていたことなのですけれども、地方都市でも、比較的小規模な刑事弁護士事務所というのを設置して、あるいは既存の事務所を利用しながら、そこに刑事弁護の経験のある弁護士の下に何人かの若手の弁護士を置いて、そこで一定の刑事事件に対応していくと。そうすることによって、ある地方では、そういう既存の事務所を利用するというような形態で何とか対応できるところも出てくるのではないか、そういうふうなシミュレートも可能だろうと思います。
 そういう意味では、日弁連が支援する公設事務所、あるいは刑事専門事務所などによっても、こういう公的弁護に対応する弁護士の確保ということがなされているわけで、そういう意味で、先ほども申しましたけれども、運営主体の常勤弁護士や契約弁護士と日弁連がかかわってつくる公設事務所等が切磋琢磨しながら弁護の水準を上げていくというふうなことが必要ではなかろうかと思っています。

○??井委員 理念的に常勤事務所を主にするかどうかとは関係なく、実際の運用では一般弁護士に多くを期待しなくてはいけないということは事実だと思います。特に制度が動き始めた最初の数年間はです。そうすると、今でも国選をやる弁護士は少ない。一弁なんかではそれを義務化しているわけです。そして人を集めているという状況があるわけであって、新しい制度にするに当たっては、一般の弁護士が進んで刑事弁護の世界に入ってくるというふうにしないといけないと思うのです。
 常勤事務所、常勤弁護士は、例えば給料制である。契約弁護士は一定の金額で払うと。いずれも、その前提としては、その給料、あるいは契約金額で事務所がある程度維持できる、その給料で生活ができるということが前提になっているわけです。ボランティアを前提にしたものではないわけです。
 そうなってくれば、当然一般の弁護士に国選を依頼するときもボランティアでやっているという精神は捨てなければいけないということです。その事件である程度ペイすると。経済的にペイする程度の報酬が保障されなければ、やはり刑事弁護の世界に入ってくる弁護士は少ないということです。
 どうすれば、そういうことで入ってくるかということになると、一つはこれは私の全くの思い付きなのかもしれませんが、今度ロースクールができますね、そこで多分奨学金制度というものをつくって、それで奨学金の償還の場合に、例えば刑事弁護を担当した場合には、その償還を免除するというような、いろんな広い視野で制度を組んでいかないと、より多くの弁護士に刑事弁護の世界に入ってきてもらう、呼び込むということは難しいのではないかと。一弁が義務化をする、弁護士会が義務化をして無理矢理させる、あるいは、今、浦委員がおっしゃったように、いろんなことをするにしても、それで全部が十分足りるかというと、やはりなかなか難しいのではないかと思います。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。

○酒巻委員 今、??井委員のおっしゃったことと同じようなことを考えておりまして、やはり常勤・契約と別に、特に全国的に充実した刑事弁護を提供する態勢をつくるということになりますと、一般の弁護士さん、つまり今まで国選をやっていた方々も、積極的に、あるいは強いインセンティブを持って刑事弁護をやっていただくという態勢ができることが必要だし、望ましいと思っています。これまで議論してきた契約弁護士というのは、運営主体との間で契約をした以上は、その契約内容に拘束されて一定数の事件ないし一定量の事件を受任することを義務付けられるというものです。私は民事法の専門家ではないのでよく分からないのですが、一般の弁護士さんと運営主体との法的な関係として、もう少し緩やかな形の契約関係みたいなものがあって、その中で一般の弁護士さんも、運営主体との間でそういう一定の契約を結んで、受任を義務付けられるところまではいかないけれども、刑事を年間何件かやるといったような、そんな仕掛けが考えられないだろうかと思うのです。これに適した法律的な構成は具体的に思い付かないのですけれども、そういう仕掛けがあれば、いいのではないかと思います。

○井上座長 今、無前提で議論しているのですけれども、確保するという場合、一般的に確保されるという形で議論していると思うのですが、だれが確保するということを考えなくていいのでしょうか。先ほどは弁護士会が責任を持って確保するということだったのですけれども、それで十分かどうか、制度として確保する方策というのが更に必要かどうか、そういう問題なのですが。

○??井委員 先ほどの酒巻委員の御意見は、多分運営主体が確保するということですね。そうすると、常勤・契約、それから一般の国選弁護士も全部運営主体が契約をするということになるわけですね。

○酒巻委員 全部とは言いませんけれども、運営主体が契約弁護士とは異なったもう少し緩やかな契約をする、そういう道もあってもいいのではないかと考えたのです。

○??井委員 しかし、私自身は、すべての刑事弁護が運営主体の旗の下に統合、統合というのはおかしいけれども、その中に集められていくと、囲い込まれていくと、これは絶対に反対であるというふうに思います。
 それは、やはりそういう運営主体とは何の関係を持たなくても刑事弁護ができるという道がなければおかしいと思います。

○井上座長 刑事弁護はできるのですけれども、公的弁護はできないと・・・。

○??井委員 失礼、公的弁護ですね。公的弁護ができなければおかしいと。公的弁護をしようと思ったら、すべからく運営主体と一定の関係を持たなくてはいけないと。これはやはりおかしいと、私は弁護士個人として、ここは生理的におかしいと思います。

○井上座長 そういう御意見が出ましたけれども、ほかの方はいかがでしょうか。どうぞ。

○本田委員 今の点に関してですけれども、運営主体が確保を担当する範囲を常勤あるいは契約弁護士のみにするのか、一般弁護士を含めるかと、これはずっと今まで第1ラウンドから議論があったのですけれども、そのどちらかに絶対にしなければいけないということを今申し上げるつもりはないのです。一般弁護士を含めて全体を運営主体が担うのが相当であるという合理的な理由と相当性があれば、その可能性を検討するというのは当然のことだろうと思います。ただ、やはり運営主体が全部持つということについて、第1ラウンドあるいはヒアリングのときにも若干申し上げたと思うのですが、やはり幾つか疑問があるわけで、そこの議論をきちんと詰めておく必要があるのではないかという気がします。
 幾つかあるのですけれども、一つは、今、??井委員がおっしゃったように、すべての国選弁護人を運営主体を通さなければならないとする理由は一体どこにあるのだろうかというのが一つです。それから、一般弁護士の報酬算定とか支払を運営主体が行う理由、必要性というのは一体何なのだろうかと。こういったものが前から出ておりましたように、会計法24条や、その趣旨と矛盾しないのか。それをどのような理論構成で説明するのかというようなところが一つあるだろうと。それから、例えば事件数の増加等の事由によって当初の予算が不足するような事態になった場合、これをどうやって手当てしていくのだろうか。
 というような問題がありますし、実際に、これは現実論で最初に申し上げたのですけれども、最初から運営主体がすべての国選弁護人の確保を行うことができるのかと。運営主体の運営が軌道に乗るまでは、ある程度の期間が必要なのではないか。これは現実論ですが、実際にそれができるのかどうかという問題がある。さらには、これはちょっと極端なのですけれども、運営主体が機能しなくなってしまう、あるいは何かの理由でつぶれてしまうというような場合に、運営主体をすべて通すということになってしまうと国選弁護人が確保できないではないか、これは極端な例かもしれませんけれども、そういった問題もあるだろうと。
 それから、先ほどから少し話が出てきましたが、運営主体が全部やるということになれば、弁護の適正確保の問題があります。これを運営主体がどのように担っていくのかといったような問題点というのを十分議論して、その上で制度設計をするべきだという気がしております。

○井上座長 2番目の点が、ちょっと分かりにくかったのですけれども、予算の足りなくなったというところですが、もう少し説明していただけますか。

○本田委員 例えば、運営主体が報酬算定とか支払も全部やるとなると、算定の方法をどうするかという話になるかと思うのですけれども、報酬算定が適正かどうかという問題も当然出てくるわけです。それがもし適正ではない報酬算定をして支払っている場合に、予算が不足したからといって国の追加予算がもらえるのかというような問題があるだろうと、そういったところも考えた方がいいのではないでしょうかという話です。

○井上座長 前提として、今の国選弁護の方式ですと、必要に応じてお金が付いてくるといういうことですか。

○本田委員 いや、最初に予算が決まっていますね。予算の範囲内で運営されていると思うのですけれども。

○井上座長 予算の範囲を超えた場合には、もちろん財政当局と交渉しないといけないのでしょうけれども、その交渉の結果、増える可能性がある。事件がすごく多いとか、特殊な事件がたくさんあるというような場合ですね。ところが、運営主体という形ですと、最初に予算が決まってしまっていて、あくまでその範囲内でやらないといけない。こういうことなのですか。

○本田委員 それは、裁判所が今やっていることを全部運営主体に移すのか、その運営主体をどういう組織形態でやるのかという問題は当然あると思うのですけれども、報酬の算定をどうするのか、どこがやるのかという問題もあると思うのですが、そういった問題も絡んでくると思います。また、運営主体が算定する場合に、きちんとした報酬算定が行われていればいいのですけれども、そうではないような場合、つまり適正に算定していないじゃないかと判断される場合だって生じ得るわけですね。

○井上座長 という御意見ですけれども、いかがですか。どうぞ。

○池田委員 今の予算の点は、結局は同じなのではないでしょうか。国の予算が足りなくなったらどうするかとか、その債務を負うだけなのかというのは、今やっている国の予算が足りなくなったときにどうするかというのと運営主体が足りなくなったときにどうするかというので変わらないのではないですか。

○井上座長 それは運営主体の在り方との関係で、同じに近かったり、異なってきたりするのではないでしょうか。業務委託をし、幾らの範囲でやってくださいというような形ですと、増額というのはなかなか難しい仕組みになるかもしれませんね。
 無論、今でも予算というものがあるわけですから、原則としてその範囲内でやらなければならないのだけれども、その基礎となっている事情が異なってくれば、増額ということも可能なシステムに恐らくなっているのだろうと思いますが、そのとおりにいくのかどうか。そういうところで違いがあるかもしれない。そういう御意見ではないかと思うのですが。

○??井委員 運営主体だったら、最初の予算の中でできるように、まず自助努力しろと言われますね。常勤弁護士をもっと酷使しろという話になると思うのです。当然そうなると思うのです。
 ただ、今の制度だったら、件数がこれだけ増えたのだから、追加を求めると、そうしたら比較的それは簡単に出ると思うのです。運営主体のように、最初に予算を決めましたよと、その中でやりなさいよと、あとは自助努力ですよと言われるのとは少し違うわけですね。裁判所の自助努力でやっているわけではないのですから、だからそこは私は本質的に違うと思うのです。
 それから、先ほどの私の意見をもう少し補充したいのですけれども、要するに、運営主体がどういうふうに動いていくかと、制度を考えるときには、当然健全に動くようにつくるわけですね。健全に動くようにいろいろ考えてつくって、多分健全に動いていくと思うのですが、しかし、人間の組織である以上、いつ不健全な症状が出るか分からないわけです。当然システムをつくるときには、健全に動くことを目指していくわけですけれども、不健全な動きをしたときにどうするかということも考えておかなければいけないわけです。そういう意味では、やはり安全弁を考える、あるいは複線化をするということは必ずシステムをつくる上で必要なので、そういう意味では、今回の公的弁護でもそれを全部運営主体に一元化してしまうと、すべて運営主体と何らかの関係を持たなければ公的弁護はできないとなると、そういう意味では全く安全弁がない、非常にある意味で危うい制度になるのではないかと、こういうふうに思うわけです。
 それから、国民から見ても、当然運営主体の中で就業規則なり、そういう規則はいずれにしても持つことになる、個別の一般弁護士向けにそのような規則を置くかどうかはよく分からないのですが、当然何らかの運営主体である以上、そこに何らかの規則なり、決め事を持つことになるわけで、その決め事を認めない限り、公的弁護はできませんよというような弁護制度は、果たして国民が安心して支持するかという問題もありますね。正確には覚えていませんけれども、要するに国王と対立しても君の利益を守るというのが、刑事弁護人の基本的な姿勢なわけです。そういうときに、運営主体と対立しても君の利益は守ってやるよというふうに、あるいは運営主体と対立してもきちんとした公的弁護が受けられるという制度でないと、やはり国民はなかなか安心していい制度だとは言わないのではないかと思うのです。ですから、そういう意味でもすべての公的弁護が運営主体の中に集約されていくというのは極めて危険だと、弁護の本質に反すると思います。
 先ほど来、浦委員は、要するに弁護の独立性を前提にして推薦権を強く主張されているわけですけれども、そういう立場からいったら、浦委員、あるいは日弁連は、すべての弁護が運営主体に集約されることにもっと強く異議を唱えなければ、私はおかしいと思うのです。そうしないと浦委員の立場は一貫しないのではないかと私は思いますけれども。

○井上座長 混ぜっ返すようですけれど、??井委員は、先ほど推薦の問題については、制度が健全に動いていることを前提にして議論されていたようですが、今度は、そこはちょっとどうかなということでしょうか。

○??井委員 ちょっとそれは座長の理解が違っているので、私があのとき言ったのは、あの議論をしているときは、既に複線化を前提にしているから、ああいう議論ができるというわけです。だから、私の立場は矛盾していないのです。

○井上座長 分かりました。

○浦委員 今、??井委員からありましたけれども、例えば、後に議論になるかもしれないけれども、いわゆる一元論、二元論の問題があるわけですけれども、一元論を採ったからといって、運営主体が公的弁護全体を担っていくというものではない、我々はそういうものとしては全く理解してはおりません。
 むしろ、先ほども申しましたが、一般の弁護士が中心となった制度構想だと、運営主体が常勤・契約弁護士を抱えるけれども、それはやはり補完的なものとして存在すると、そういうふうなイメージでおりますので、??井委員のおっしゃることはちょっと違うのかなというふうに思います。

○井上座長 二元論、一元論の話はもう少し後なのですけれども。

○浦委員 それともう一つ、先ほど酒巻委員のお話がございましたが、例えば、これは弁護士によって何件か事件を受任してやっていくというシステムは、現に大阪でやっていまして、各弁護士の年間の受任希望件数というのを予め提出させるわけです。それに応じて事件を配てんする日を、担当日を、年間20件の希望件数のある人は、月に2回だとか、10件の人は1回だとか、そういう形で割り振って、それぞれ日を決めてやっております。
 したがって、それが運営主体でなくても、弁護士会でもそういうふうな形の配てんといいますか、日を決めて、受任件数に応じて対応するということは十分可能なのです。

○井上座長 この点について、ほかの方はいかがですか。恐らくこれは、さっきちょっと出ましたが、費用をどこで算定して、どういうふうに支払うのかというようなこととも密接に関係しているものですから、そこのところでもまた再燃する議論かと思いますが、そこのところでまたやっていただいて結構ですので、もう少し先に進んでよろしいですか。ここのところは、項目としてはかなりざくっとした書き方、あっさりした書き方なのですけれども、そういうふうに突っ込んで考えていくと、かなり難しい問題になってくるのです。
 次は6ですが、弁護人として裁判所に選任される弁護士を推薦し、あるいは連絡する仕組みということです。これから法案を策定していくための議論としては、推薦又は連絡というものに法的な位置付けを与えるのかどうかを区別する必要があるというのが先ほどの説明でして、したがって、たたき台には、法律上の位置付けを与えるB案と、与えないA案とに分けています。その上で、与えるとした場合に、どこが主体になって推薦ないし連絡をするのかという点で、B-1案とB-2案に分かれている、という図式だと言えます。これを手掛かりにして御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○??井委員 結論的にはA案。先ほど私は運用はよくないというふうに言っていましたが、これに限っては運用でいいと思います。
 なぜかというと、極めて技術的なことだからです。かつ、迅速にやらなければいけないということがありますので、運用に任せていいのではないかというふうに思います。ただ、実際にどういうふうにやるかということですが、私のイメージとしては、起訴状が来ました、そうすると裁判所から運営主体に対して、その旨推薦依頼のようなものが来ますと、それに対して運営主体の、私の場合は常勤事務所の事務局が、まず常勤弁護士の繁閑を見る、それから契約弁護士に適した事件かどうかを見る、あるいは適した事件であれば、契約弁護士の繁閑を見る、それでそのいずれかで受けるべきだと判断をすれば、その常勤事務所の事務局がその旨裁判所に連絡をする。ところが、契約弁護士も常勤弁護士も手一杯でできませんということになったら、その旨を裁判所に連絡する。裁判所は、その時点で一般の弁護士を選ぶという順序で流れていくのではないかというふうに思います。だから、これを全部法律に書くというのは、そんなことまで法律で書くのかというような感じがするものですから、運用でいいのではないかというふうに思います。

○酒巻委員 ここは、私は一貫して、したがって、??井委員と結論は同じでA案でございます。

○井上座長 一貫してというのは、運用だということで一貫しているということですか。

○酒巻委員 法制度の設計における合理性の追求という観点、並びに独立した意思決定に際して別の主体の介在に反対するという観点において一貫してという意味です。さらに、理由を補充しますと、もちろん??井委員がおっしゃったような事情もあって、運用にゆだねるのが望ましいと思いますし、更にこれは正に刑事訴訟法上の弁護人の選任手続にかかわることでございますので、ここに何らかの裁判所以外の機関の推薦が必要だということになりますと、それがないと裁判所が弁護人を選任できないという帰結が生じてしまいます。これは制度として甚だ問題があると思いますので、ここはそういう法律制度にはすべきではない、運用にゆだねるのが望ましいと思います。

○井上座長 分かりました。ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○浦委員 この問題につきましても、何らかの形で弁護士会の推薦ということが確認される必要があるのではないかと。これを法的な問題とするか、運用の問題にするかというのは、今、申し上げたいと思うのですけれども、一つは、弁護人の推薦資格、適格性判断という問題があるのだろうと思います。この適格性判断につきまして、これはもちろん言うまでもありませんが、裁判所や検察当局に対抗的な弁護士が排除されるというようなことがあっては困るわけで、そういう意味で、この運営主体が適格性の判断をするということは許されないことだろうと思います。
 さらに、もう一つは、個々の具体的な事件に対する推薦の順序というような問題があると思うのです。事件に対しての個別の推薦というふうなことにつきましては、やはり個々の事件に対する弁護士の選定にかかわる実質的な判断が介在する余地がありますので、これも運営主体が担うということについては、弁護の独立性とかかわる問題が生じ得ると思います。今、??井委員も、酒巻委員も言われましたけれども、現在の運用は、昭和23年6月9日の最高裁事務総局の通達で行われているというわけですけれども、これについては、8割以上の単位会が円滑に推薦してやってきていると、そういう実情もあります。
 ここで考えなければならないことは、弁護人として推薦される適格性、つまり推薦名簿の作成ということの問題なのです。これにつきましては、推薦名簿の作成というのは、やはり弁護士会が担うということで、これについては何らかの手続法上あるいは組織法上の規定が必要になるのではないか。例えば、現行の弁護士法33条2項10号に、弁護士会が会則で定めるべき事項として、官公署に対する弁護士の推薦に関する規定が置かれているわけです。国選弁護人の推薦もこの官公署に対する推薦に当たるというふうに理解されておりまして、この規定は弁護士会が国選弁護人の推薦権を有することを前提とする規定とも解し得ることが可能ではないかと思われるわけですけれども、その辺を明確にするために、この点について、国選弁護人の推薦についての組織法上の明確な規定を何らかの形で置くということは十分考えられるのではないかと思います。
 一方、個々の具体的な事件、これは日々の当番の名簿といいますか、配てん名簿というものがありますけれども、これについてもやはり弁護士会が主体的にかかわっていくということが確認される必要があるように思います。この点では、例えば、ミランダの会に所属する弁護士が、個々の事件の配てんにおいて差別的な取扱いを受けたという例も地方では報告されております。そういう意味では、配てん名簿、当番名簿の作成についても、やはり弁護士会が主体的に担っていくシステムが必要であると思います。
 しかし、その点を手続法上の要件として規定するかどうか、これについてはまた別の考え方があろうかと思います。弁護士会の推薦によることは確認された上で、現行と同様に運用によって賄われていくと、そういうことは可能だろうと、少なくともそうされるべきであろうと。その場合に、運用に当たっては、例えば運営主体の業務規程の中に置かれるとか、あるいは確認書あるいは覚書でその辺のシステムを相互に確認し合うということ、その中身とすれば、公平な配てん名簿の作成ということになります。これは、一般弁護士につきましては、各人の年間の希望受任件数、契約弁護士については契約件数、更に常勤弁護士については、事件の負担の状況などを考慮した上で構成される配てん名簿をつくる。実際には、弁護士会と運営主体とが協議を行うということになると思われますけれども、運営主体の確保する常勤弁護士、契約弁護士も弁護士会の配てんのルールを尊重してもらう。そういうふうなことが考えられます。
 それから、特別案件についての名簿、特異重大事件が起こった場合、あるいは弁護人との信頼関係が困難な事件が起こった場合には、弁護士会と運営主体とが協議して運営していく。さらには、その辺の弁護士への事件の割当て、あるいは選任の状況について恣意的な運用が行われていないかどうかを担保するために、各弁護士への配てん状況について相互に定期的に協議する、あるいは報告をし合うと、そういうふうなことも必要になろうかと思います。
 したがって、推薦資格の問題については、一定の法律の規定を考えられるべきかなと思いますが、個々の具体的な配てんの問題については、現在のように運用で行われるということになろうかと思います。

○井上座長 一番最初に言われた点ですが、必ず弁護士会が推薦すべきだと言われたのは、常勤弁護士とか契約弁護士についても同じだということですか。

○浦委員 一応この名簿の中に入っていただいて、それで事件を配てんしていく。常勤弁護士がどの程度一般事件を・・・。

○井上座長 いや、そういうことではなくて、制度として、常勤弁護士や契約弁護士についても、運営主体が裁判所に推薦するのではなくて、弁護士会を経由して弁護士会が推薦するということなのか、ということですが。

○浦委員 弁護士会と協議の上で、そういう配てん名簿を・・・。

○井上座長 いや、協議はいいのですけれども、どこが推薦するのですか。

○浦委員 推薦は、運用の問題ですので、弁護士会が推薦する。

○井上座長 いや、制度の問題としてです。制度の問題として推薦というのを位置付けるべきだとおっしゃいましたよね。

○浦委員 いや、それは個々の事件の配てんの問題は、これは運用の問題で。

○井上座長 いや、私が伺っているのは、弁護士会の推薦というのを制度として位置付けるべきだとおっしゃった、その場合の推薦の対象は、契約弁護士や常勤弁護士ではなく、一般の弁護士さんだけなのか、それとも常勤弁護士も契約弁護士も含めて、すべて公的弁護人として選任される人の推薦は、弁護士会の方から出ていくと、こういうお考えなのか、ということです。どちらなのですか。

○浦委員 推薦資格の問題を言えば、それは常勤弁護士も契約弁護士も弁護士会の推薦名簿に記載された人が推薦されていくことになると思います。

○井上座長 ということは、弁護士会が推薦の主体だということですね。

○浦委員 そうではなくて、一般に公的弁護を受任できる、推薦される資格として、それは弁護士会が今の準則に従って担っていくと。

○井上座長 そうすると、確認なのですけれども、要するに常勤弁護士として雇われるときとか、契約をするときも、弁護士会が適任だとして推薦をする。それで雇用された人についても、個別事件の弁護人として推薦するのは、やはり主体は弁護士会を通すのだと、こういうシステムですか。

○浦委員 だから、今、分けて申しましたのは、推薦資格をどうするか、推薦名簿、弁護人の推薦名簿というのがあるわけですけれども。

○井上座長 ですから、載っているということは、推薦するに値するということなのでしょう。

○浦委員 ただ、あとの具体的な個々の事件への推薦、個別事件の推薦あるいは連絡というのは、それは運用の問題であると。

○井上座長 運用ということは、運営主体も、弁護士会の推薦名簿に載っている人については、自ら推薦できるということですか。

○浦委員 いや、先ほど申しましたように、それは弁護士会と運営主体との間で何らかの協議をして、公平な配てん名簿を作成する。それを裁判所に提出すると。

○??井委員 配てん名簿と個別の事件配てんと。

○浦委員 同じです。配てん名簿と個別の、だから配てん名簿があって、それに基づいて、裁判所が、事件が来たときに、だれそれ弁護士というのを選任して配てんするのです。

○??井委員 機械的に配てんするのですか。

○浦委員 機械的に配てんが行われます。

○井上座長 まだ、よく分からないのですけれども。

○本田委員 幾つか疑問点があるのですけれども、一つは運営主体というのは、公正中立なものとして制度設計されなければいけないということになっているわけですね。仮に公正中立な運営主体が個々の事件について、国選弁護人を推薦するという制度設計をするとして、弁護士会の推薦がなければならないというのが、果たして公正中立性と調和するのかという疑問点が一つあります。
 それから、これはもう少し大きな問題なのですけれども、まず、常勤、契約弁護士になるときは弁護士会の推薦がなければいけないということをやった上で、なおかつ、個々の事件について配てん名簿を作るのも協議して、それでやらなければいけないということになると、運営主体というのは本当に必要なのかという気がします。要するに、日弁連の方でこういう人は、常勤みたいな形でやりますと、この人は一定の数のものをやってもらいますということを決めて、しかも個々の事件についての配てんまでやるとするならば、運営主体は一体何をやるのだと。要するに、人と金を入れて、それだけの組織をつくって、実質的に運営主体は何をやっているのですかという話になると思うのです。そういうことを突き詰めていけば、日弁連の方ですべて公的弁護の弁護士さんを全部確保してやれるという前提ですね。それであるならば、運営主体に人と金を入れてつくるときの説明としては、到底それは説明がつかないと思うのです。以上2点が疑問点ですけれども。

○浦委員 運営主体も、個々の事件への配てんの問題については、弁護士会と協議しながら配てん名簿を作成するという意味では動くわけです。中立公正な機関だとはいえ、その中で、それではある事件について運営主体の弁護士だけに配てんされるとか、その辺の恣意的な配てんが行われるというようなことの可能性は否定できないわけですので、それをやはり配てん名簿、公平な名簿を作ることによって、お互い確認し合っていこうと、そういうふうなイメージです。

○井上座長 要するに、弁護士会推薦というのが片一方にあるとして、それと運営主体推薦というのが仮にあるとして、かなり特殊な事件とかある種の事件が出てきたので、どっちに振り分けようかというときに、その双方と裁判所とが協議して、どういうルールでどういうふうに振り分けていこうかということは、恐らく運用上あると思うのですけれども、少なくとも私が聞いていた限りでは、先ほどおっしゃったことは、常勤弁護士や契約弁護士についても、何人かいる場合に、その事件をその中のどの人に割り当てるかというところも、弁護士会と協議しないと決まらない、そのように聞こえるのですが。

○浦委員 ですから、例えば契約弁護士ですと、先ほどの年間50件なら50件という契約をするわけですから、それはその割り当てられる回数を増やせば足りるわけですね。常勤弁護士の場合にも、一般的な刑事事件をどれだけ受任するかということが事前に明らかにされて、それを個々の配てん名簿の中に、この日は常勤弁護士が事件を受任する日だというふうなことで当てはめていくということです。

○??井委員 そんなシステムは、ほとんど動かないと思いますね。

○本田委員 もう一点だけ、要は今の御説明を聴いていると、運営主体というのは単なる協議機関ですね。何をするのかよく分からないのです。
 先ほどの御主張ですと、一番どれが適任か、どの人が国選弁護人に適任かは弁護士が一番よく分かると、こうおっしゃった上で、今度は、そうであるならば日弁連の方で全部責任をもってやるということと、実質的に同じ話ではないですか。ただ協議をするだけ、運営主体が何をやるのかということがよく分からないのです。

○??井委員 今の浦委員のシステムだと、実際に絶対に動かないと思いますけれども、それよりも運営主体の当事者能力を否定した考え方ですね。要するに金の水路としてしか運営主体を見ていない。これでは国民は絶対に納得しないと思いますね。単に金を流す水路として運営主体をつくって、そこから金をもらいますと、あとは基本的には運営主体の独立性とか、当事者性は全く認めないで、個別の事件配てんまで全部弁護士会が口を出しますと、しかもそれは運営主体と契約関係にある常勤弁護士とか契約弁護士まで口を出しますと、これは到底国民が納得する制度ではないと思いますね。

○井上座長 ほかの方の御意見も伺いたいと思います。どうぞ。

○池田委員 弁護士会が運営主体に推薦するというような仕組みは、多分必要だろうと思います。弁護士会が弁護活動の質の確保についても責任を負う以上、そういうような仕組みは必要でしょう。しかし、名簿を出したら、その中から運営主体が選んでいくということでないと問題があるのではないかと思います。個別にもう一度推薦を得るというようなことは、ちょっと現実的ではないと思いますので。もちろん、一般的な推薦名簿を出している弁護士会と運営主体との間で、うまく回していく、しかも協力関係ができていれば、その辺りでどうやって割り当てていくかというのは当然協議されるわけで、それが行われていけば、問題を生じないと思います。しかし、それは、あくまでも事実上の仕組みとしての運用上の問題であって、法的に推薦がないと選任できないというような法的な拘束力まで設けるということは相当ではないと思うのですけれども。

○本田委員 一般の弁護士についての弁護士会の個別事件の推薦というのはよく分かるのですけれども、常勤弁護士とか契約弁護士についてまで個別事件についての推薦に弁護士会が関与するというところは全く理解できないです。

○浦委員 それは全く別のルートで事件を受任していくという、そういうお考えなのでしょうか。契約弁護士、常勤弁護士というのは全く弁護士会とは別に事件を受任していくと、そういうシステムをお考えですか。

○井上座長 なぜ弁護士会を通さなければいけないのかが分からない、ということだと思いますが。

○浦委員 それは、やはり先ほども申しましたように、契約弁護士、常勤弁護士に、弁護士会推薦弁護士を排除して、恣意的にそういうふうなことが行われる可能性は否定できないという問題があると思うのですね。

○井上座長 でも、そこは、どっちに振り分けるかは協議してやっていくというのが池田委員のお話ですね。そういうことを前提にしても駄目なのですか。

○浦委員 駄目というのは・・・。

○井上座長 そういうこともノーマルに動かないということを想定して、制度としても弁護士会に推薦権を全部集中しようということなのでしょう。

○浦委員 推薦権を集中しようという個別の問題について・・・。

○井上座長 いや、推薦というものを、今は事実上のものですが、それを制度化しようとおっしゃっているわけで、そうなると推薦の主体というのはどこなのですか、弁護士会だけなのですかということをお尋ねしているのですよ。そこは個別の問題だとおっしゃるけれども、個別の問題ではないのですね。弁護士会だけではなく、推薦というものをもっと一般的な制度とし、推薦主体としては弁護士会もあり、運営主体もあるという制度になった場合に、それではどっちに振り分けるのか、勝手にやられては困る、そういった議論ならまだ分かるのです。そうではなくて、そういうことがあるかもしれないので一本化すべきだと、そういう御主張なのですかと、そこを伺っているのですけれども。

○浦委員 一本化すべきだとは申してはいないんですよ。

○井上座長 だから、分からないのですよ。

○浦委員 いや、推薦される資格の問題がありますね。

○??井委員 それは雇用されている関係とどう違うのですか。

○浦委員 いや、雇用されている場合でも、例えば後で弁護士会の推薦準則の問題になると思いますが・・・。

○??井委員 一般弁護士と常勤弁護士、契約弁護士ときちんと区別してちゃんと説明してもらわないと。

○浦委員 それは推薦資格としては同じなのではないでしょうか。

○井上座長 浦委員のおっしゃっているのは、この事件にこの人を推薦するということを言っているのではなくて、推薦するに値する資格のある人は、このリストに載っている人ですと、そういうことを弁護士会としてはやるべきである。そして、そこに載っている人の中から、裁判所が一定のルールなりによって個別の事件に割り当てていくと、こういうことを言っておられるわけですか。

○浦委員 そうです。その場合に、従来の運用に従って、弁護士会が推薦してきたという経過もありますので、その辺は尊重されるべきだということなのです。

○井上座長 それは、運用としてでしょう。

○浦委員 それは運用です。

○井上座長 それを制度に高める・・・。

○浦委員 ということは、その部分では申し上げているわけではないです。

○井上座長 そうすると、どの部分で制度に高めるのですか。

○浦委員 ですから、制度というか、例えば弁護士会が、後に議論になると思われますが、準則を適用することによって、推薦資格を停止した場合ですと推薦名簿から外れるわけですね。

○??井委員 それは一般弁護士の場合でしょう。

○浦委員 いや、それは常勤弁護士でも契約弁護士でもその辺は同じではないでしょうか。

○井上座長 だから、浦委員は同じとして想定されていると、こういうことですか。

○浦委員 そうです。だから、その点については、何らかの形で、例えば組織法上にでもそのことが記載されてもいいかなという気がしているのです。

○井上座長 書くということは、要するに弁護士会の推薦名簿に載っていないと選任することはできないということを明記しろということですね。それが制度化ということの意味なのですね。

○浦委員 だから、個々の具体的な事件をだれにどう当てはめていくかについては、それは運用の問題であると。ただ、その場合でも恣意的な運用がなされないようなシステムは構築されるべきだと。

○井上座長 ここで推薦とか連絡と言っているのは、主に、個別事件について公的弁護人を付けなければならないので、だれを選ぼうかというときに、推薦とか連絡というのを制度化するかどうかと、そういう議論なのですが。

○浦委員 もし、そうだとすればそれは運用の問題でA案になると思います。

○井上座長 だけれども、推薦とか連絡の対象になる人については、弁護士会の推薦名簿に載っている人でなければ選任してはいけないという制度的な規制をかけようということでしょう。

○浦委員 そういうものが必要ではないかと。

○井上座長 という御意見なのですが。

○浦委員 すみません、説明不足で申し訳ございませんが、ただ運用の場合でも、現行法上の運用が尊重されなければいけないというふうには思います。

○??井委員 現行法でも個別の事件にきっちり弁護士を選んで推薦しているかというと、全部の単位会が推薦しているわけではないですね。

○浦委員 ただ、一定の名簿を出すことによって、それをどういうふうに回していくかについては、裁判所と事実上の合意があって、先ほど言いましたように、そのことで何か問題が起こるケースは余り多くないのですが。

○井上座長 正確に言うと、あるところが比較的多いということで、ないところもあるということですね。

○浦委員 ないところもある、しかし多くの単位会では推薦している・・・。

○井上座長 ですから、そういう意味では、今は制度ではないのです。

○浦委員 制度ではない、おっしゃるとおり、運用の問題です。

○井上座長 それと、一応確認したいのですが、現在、弁護士法に基づいて名簿をつくっているというのは、あくまで弁護士会としてどういうルールで、どういう人を推薦するか、そのために名簿をつくっているわけですね。訴訟法上の制度としてそういうものが要求されているということではない。そこを、浦委員のお考えは、訴訟法上の制度として名簿という形で制度化しようと、そういう提案ですね。

○浦委員 訴訟法か、組織法かは、また検討すべきであると思いますけれども。

○井上座長 いずれにしろ、今の名簿とは趣旨が違ってくるわけですね。そういうものを組み込むべきだという御主張だということですね。これは確認です。

○大出委員 ちょっと私も確認なのですけれども、つまり、個々の事件についての弁護士の推薦についてはA案、個々の事件でどの弁護士がその事件を担当することにするのかということについて、それはA案という御趣旨なわけですね。ですから、今の現状でやられている国選なんかについてと同じ趣旨でお考えだという趣旨ですか。

○浦委員 推薦名簿が出されて、それに基づいて順番に配てんされていくということです。

○大出委員 恐らく、個々の事件の推薦については、いろいろと全部私も事情を知っているわけではありませんけれども、そんなに事態が急激に変わるというふうにも思いませんし、そこそこそれなりにそれぞれの立場で配慮が行き届いて、裁判所との間で、それなりの運用の仕方をしているということになっているのだと思いますし、個別事件ということで考えたときに、現行どおりで問題が起こるということにはならないと思うのですけれども、その前提として、その場合に個別的に推薦をするかしないかという前提として一定の名簿に登載された人間の中からというのが今の御趣旨ですか。それで、その際には、それが弁護士会の推薦でその名簿はつくられるべきだと、こういう御趣旨のお話だったと、座長がまとめられたのは、そういう趣旨なのですか。

○井上座長 その場合、運用にしろ、個別の事件についての推薦の主体は弁護士会なのですか。

○浦委員 個別の事件の推薦の運用は、従来のとおりということ。

○井上座長 契約弁護士とか、常勤弁護士についてはどうなるのですか。

○浦委員 だから、それは実質協議ということになるのだろうと思いますけれども。協議して、公平な配てんができるような、そういう配てん名簿というものを協議の上でつくるということになると思うのです。

○井上座長 配てん名簿はいいのですけれども・・・。

○??井委員 推薦名簿と配てん名簿はどう違うのですか。

○浦委員 同じことです。

○??井委員 名簿が2種類あるの。

○浦委員 いやいや、推薦名簿というのは推薦資格の名簿と、それから個々の具体的な事件の配てんとはちょっとレベルが違うのです。

○??井委員 だから、配てん名簿、何月何日はこの人とこの人という名簿があるということ。

○浦委員 そういうことです。

○??井委員 その日に起きた事件は、機械的にそういった人に入るのですか。

○大出委員 配てん名簿というのは、この中から推薦してくれという名簿ではないのですか。

○浦委員 それは別にある。だから2種類あるのです。

○井上座長 この人は推薦に値しますという名簿があって、その上で更に順番を決めるということですか。常勤についても契約についても、そういう順番を決めた名簿をつくる。それも、弁護士会が関与して、弁護士会が納得しなければ、それは駄目だというわけですか。

○浦委員 だから、弁護士会の意見を尊重していただいてつくっていくと。

○井上座長 浦委員のお考えとしては分かりました。ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○落合参事官 浦委員のお話は、弁護士法33条2項10号の官公署その他に対する弁護士の推薦に関する規定は、読みようによっては弁護士会に推薦権があるということを前提にされている規定にも読める、したがって、それを確認するための規定として組織法に国選弁護人として選任される者の資格に関する規定を置いてはどうかということを言われたと思うのですが、その前提としての33条2項10号というのは、推薦権というようなものを与えたものではないのではないですか。

○浦委員 それは、いろいろ理解の仕方があろうかと思いますが。

○落合参事官 少なくとも、そこの推薦がなければ、裁判所が選任できないという法律になっていないですね。前提が違うのではないですか。

○浦委員 しかし、推薦に関する規定を会則事項として決めろというふうになっていますから、前提として推薦権があるという理解は、解釈上は不可能ではないと思うのですけれども。

○井上座長 でも、訴訟法の解釈としては無理ですね。現にそういう形になっていないわけですから。

○浦委員 訴訟法では、弁護士会の推薦に基づいて選任するとは確かになっていないですね。おっしゃるとおりです。

○井上座長 だから、そこはちょっと無理ではないですか。それをレベルアップといいますか、性質も違ってくるかもしれないけれども、そういうものとして組み込むべきだという御主張なのかなというふうに伺ったのですが。

○浦委員 検討されるべきだということです。

○落合参事官 さらに、もし制度論としてそういうことを言うのであれば、弁護士会の持っているどのようなパワーからそういうことを正当化できるのですか。国選弁護人推薦準則のような、弁護士会が事実上のものとして推薦を停止するというのは分かるのですが、それを法制度上のものとして書くとなると、弁護士会がそういうパワーを法律で持つことになりますね。その根拠が問われるだろうと思います。資格に関しては、確かに資格独占で、いろいろ弁護士法上に規定がありますけれども、国選弁護人になり得る弁護士は弁護士会が決めるんだというふうなパワーがどこから出てくるのですか。

○浦委員 今、言いました推薦に関する規定を会則で決めるということになっていますからね。

○落合参事官 ですから、それは推薦権のような、そこしかできないという解釈ではないですね、現実も。

○浦委員 それは、そういう解釈も可能かもしれません。

○井上座長 そこは、ちょっと無理なのではないかと申し上げたのですけれども。
 そういうことを前提にして、今落合参事官が言われたのは、弁護士会のそういう権限の源がどこにあるのか、弁護士法のどこに根拠があるのか、そういうことだと思うのです。つまり、弁護士会の推薦を経なければ選任され得ないことにしようということを提案されているわけですけれども、そういう弁護士会の権限というのは、弁護士法のどこに根拠があるのですかということですが。

○浦委員 それは検討します。

○井上座長 そこのところはクリアにしていただかないと、ほかを説得するのは難しいのではないかという感じがするのです。

○??井委員 個別事件の配てんリストまでつくる。何月何日の事件はこの人と、そういう配てんリストまでつくったら、しかもその中には常勤弁護士も入っているし、契約弁護士も入っているという話でしょう。そうしたら常勤弁護士の繁閑とか、契約弁護士の繁閑なんていうのは、基本的には弁護士会は分からないわけだし、契約したとおりの件数が来るか来ないかも分からない、そういう非常に不安定なシステムにして、この制度が動くと思うのが私はおかしいと思います。

○浦委員 ですから、それは逐次定期的に協議をしながら、その配てん名簿は検討していくわけです。検討しながら具体的な事件を回していくわけです。ですから、それはおっしゃるように繁閑を見ながら協議を続けていくことになると思います。

○井上座長 なぜ協議をしないといけないのかが理解できないという方が何人かおられるということですよ。

○??井委員 いいですか、もう一点。

○井上座長 はい。

○??井委員 浦委員が、そういう提案をされるのは、そういうふうに機械的に配てんしないと、要するに裁判所がうるさい弁護士は排除してしまうのではないかということを考えておられるからだと思うのです。
 だけど、仮にそういうことを心配するとすれば、それは1年が終わったときに、きちんと統計を取ってみて、本来受けていいはずの人が、受けるよと手を挙げている人が1件も配てんされていないではないかというイレギュラーな事案が出てくれば、そのときにそれこそ協議をして申入れをするというようなことで十分担保できることだと思います。

○井上座長 分かりました。ほかに、どうぞ。

○平良木委員 今日の最初の方の議論と同じことになりますけれども、常勤・契約弁護士の契約の主体は当然のことですけれども運営主体であって、これが個々の事件の弁護士としてだれを付けるか、推薦するかという役割を、運営主体が果たすのは当然のことだと思うのです。
 そして、更にそこを法定するのがいいのかどうかということになると、これは先ほどの議論と同じで、やはり少し固い仕組みということになりかねない。ここのところは、運営主体の運用といいますか、裁判所との協議で運用に任せるのがいいだろうというふうに思います。

○井上座長 ほかの方で、更に付け加えて何か。ございませんでしたら、時間も押していますので、次に進みたいと思いますが。

○浦委員 すみません。もう少し、今日初めてここで申し上げたので、整理させていただいて、意見を述べる機会を与えていただければ助かります。

○井上座長 これで議論が終わったというわけではありませんが、ただ、かなり重い宿題であるということは御承知おきください。やはり理論的な説明が、私を含め何人かの方がよく分からないということですので。
 それでは、「第7 公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払」という項目に移りたいと思います。
 これについても、事務局の方から説明をお願いしたいと思います。

○落合参事官 「第7 公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払」について御説明申し上げます。
 ここでは、「1 捜査段階の報酬の算定方法」、「2 公判段階の報酬の算定方法」、「3 報酬の算定・支払主体」、「4 報酬基準の在り方」、「5 不服申立て」、「6 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の報酬」、この六つの項目を記載しております。以下、各項目ごとに御説明申し上げます。
 「1 捜査段階の報酬の算定方法」については、A案として、弁護活動報告書等に基づき、一定の基準(弁護活動の内容、要した時間等)により算定するとの案、B案として、あらかじめ数段階の報酬額を定めた上、一定の基準(弁護人であった期間、接見回数等)により支払うべき報酬額を選択するとの案、C案として、定額とするとの案の三つを記載しております。
 「2 公判段階の報酬の算定方法」については、A案として、弁護活動報告書等に基づき、一定の基準(弁護活動の内容、要した時間等)により算定するとの案、B案として、弁護人の報告とともに、裁判所からの公判活動の結果報告も求めて、一定の基準(弁護活動の内容、要した時間等)により算定するとの案、C案として、公判に表れた弁護活動を踏まえて、一定の基準により算定するとの案の三つを記載いたしました。
 「3 報酬の算定・支払主体」については、A案が裁判所、B案が運営主体とする案を併記しております。
 次に、「4 報酬基準の在り方」についてであります。現在の国選弁護制度の下では、最高裁判所が各地方裁判所等に示している標準報酬額が報酬算定の一つの目安となっているものと承知しておりますが、ここでは、1及び2の報酬算定方法に関する議論を踏まえ、報酬基準の策定方法なども含む具体的な報酬基準の在り方について御議論いただきたいと存じます。
 次に、「5 不服申立て」についてであります。ここでは、報酬算定に対する不服申立手続を設けることについて、どのように考えるかという論点を記載しております。この論点は、報酬の算定主体にかかわる問題であり、裁判所が報酬を算定するとの案を採る場合には、新たに抗告などの不服申立手続を設けるかという問題になろうかと思われます。また、運営主体が報酬を算定するとの案を採る場合には、運営主体における報酬算定について、運営主体内部での不服申立手続を設けるかという問題と、弁護人であった弁護士が裁判所に出訴することができるかという問題の二つの問題が生じると思われます。したがって、報酬の算定主体に関する議論を踏まえながら、そのような問題について御議論をお願いしたいと存じます。
 次に、「6 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の報酬」についてであります。この論点は、裁判所が報酬の算定・支払を行うとの案を採った場合に生ずる問題であり、常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当したとき、裁判所から運営主体に対し、事件ごとの報酬が支払われるものとするかという論点を記載しております。
 「第7 公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払」の説明は、以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。今の説明について何か質問はございますか。よろしいですか。それでは、また各小項目についての議論の中で、何か疑問が生じましたら説明していただこうと思います。
 時間も押していますので、議論の仕方なのですけれども、この項目のうち1から5の不服申立てまでは、かなり相互に関連していますので、この1から5までをまとめて議論してはいかがかと思いますが、よろしいですか。順番に全部意見を言うということでも結構ですが、とにかく1から5までをまとめて御意見をいただくということにさせていただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。

○??井委員 まず、私の立場は、基本的に常勤弁護士、契約弁護士は、給料あるいは契約金として報酬が支払われるという立場に立っています。したがって、具体的な報酬算定が必要な場合はどういう場合かというと、一般の国選弁護士を選任した場合だけこの問題が出てくるという形になると思います。
 それを前提にして申し上げますが、まず、捜査段階の報酬の算定、これは本来極めて難しいですね。1回接見に行ったら3万円、掛ける回数というようなつくり方というのは、基本的には弁護の質を下げかねないと思います。一番大事なのは、接見に行く回数よりも接見に行って何を言ってくるのかということが一番問題なのであって、回数ではないと思うのです。
 もう一つは、今後、捜査弁護が始まっていけば、単に捜査弁護の中身は、接見に行くだけではなくて、関係者からヒアリングをするとか、自分で現場を見に行って調書をつくるとか、いろんな検察官の捜査と同じような活動を要求されてくるわけで、そういう意味では、非常に裁判所から弁護活動が見えにくくなってくるということになろうかと思います。したがって、A案のように、全く事前の額も決まっていない仕組みで算定していくというのは、なかなか困難であろうと思います。
 したがって、B案かC案ということになりますが、先ほどから申し上げているように、事件の内容によって捜査弁護というのは濃淡ありますし、幾重にも変わってくるわけですから、C案の定額とするのは、やはり実情に合わない。そうすると、B案として、いろんな場合を想定して、一定の、こういう場合はこのぐらいというような報酬額を決めておいて、その中からどれが妥当かを裁判所が選ぶというのが妥当であろうと思います。
 それから、公判段階はC案。基本的には公判段階は、準備手続と公判廷における活動と両方あるわけですが、いずれも裁判所から見える形になっております。当然見えない形で事前準備をするという部分もありますけれども、その結果は、どの程度立派な準備をしたかということで、おおむね公判廷に表われてくるわけですね。したがって、これはC案で、公判及び準備手続段階における弁護活動を踏まえて、裁判所が一定の基準により算定するというのが妥当ではないかと思います。
 報酬の算定・支払主体は、私の先ほど来の意見によれば、当然A案ということになります。
 「4 報酬基準の在り方」については、先ほどから申し上げているように、実質的な活動を汲み取るようなものでなければいけないと。形式的な外見で見ていくということは、そういう報酬基準を作ると弁護の質が劣化すると思います。以上です。

○井上座長 分かりました。非常に効率的に御意見をいただきましたが、ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○浦委員 まず、公判段階あるいは捜査段階も含めて、報酬の算定方法についてなのですけれども、これは定額制というようなことになると、熱心に弁護をやればやるほど時間単位当たりの報酬単価は低くなってくる。更に今度は時間制、タイムチャージというようなことになると、知識や経験によって所要時間も変わってくるわけで、実質的に不平等が生ずる可能性がある。そういうことから、日弁連の国選シンポジウムでは、ポイント制というのを提案しました。これは弁護活動における活動手数料的要素、あるいは時間的要素、それから活動結果的要素を類型化して、負担の計量をし、成果の程度に見合う点数を配分して、実際になされた弁護活動をこれに照らしてポイントに換算し、その合計ポイント数に応じて報酬額を算定する。言わば、医療における保険点数制のようなものであります。
 したがって、そういうポイント制というのは、それが合理的にポイントの算定方法が組めるのであれば、それに基づく算定によって、弁護活動の内容とかそれに要した時間とかに対して、適切な報酬が支払われることになるのではないか。これは、委員の方々に日弁連の方から配布されていると思うのですけれども、国選弁護シンポジウムの電話帳のような基調報告書がございますが、その中に書かれております。
 したがって、公判段階につきましても捜査段階につきましても同様にポイント制によって算定する。特に捜査段階につきましては、これは弁護士が弁護活動報告書を提出して、それに基づいて算定してもらう。それから公判段階につきましても、同様に弁護活動の報告書を提出して、それに基づいて算定してもらう。そういうふうな方法が適切ではなかろうかというふうに思っております。
 一応、そういう意見を載せさせていただいています。

○井上座長 それは、だれが算定するのですか。

○浦委員 算定の主体ですね。これは裁判所か運営主体かということになるわけですけれども、これは運営主体ということに、いわゆるこれは一元論、二元論の問題ともかかわってくるかと思いますけれども、とりあえず一元論を検討するということになりますので、運営主体ということになるかと。

○井上座長 一般の弁護士さんについても、その点は運営主体が出てくるということでしょうか。

○浦委員 そういうことになりますね。

○井上座長 そうですか。分かりました。

○酒巻委員 今の浦委員の話について確認ですが、捜査段階でも公判段階でも個々の仕事をされた弁護士が活動報告書を作って、それをお出しになるということですか。

○浦委員 はい。具体的な中身まではどうか、一定の書式を作りまして、どういうことをしたかという報告をしてと。

○酒巻委員 それを運営主体に提出して、それで査定ではないですけれども・・・。

○浦委員 査定ではなくて、点数を当てはめていくと。

○酒巻委員 分かりました。

○井上座長 ??井委員が言われた実質を見るというのと、例えば活動要素として幾つか基準を設けてポイントを1点、2点といったふうに査定をするというのとは同じことですか、それとも違うのでしょうか。

○??井委員 私の場合は、特に捜査段階の弁護活動は外から見えない、だから的確に判断できないだろうということです。幾らポイント数といっても、最終的にポイントを当てはめる前提は、主観的な報告書なり何なりによるわけです。必ずしもそれは正確に報告されているのかという問題がありますね。

○井上座長 それは、だれが調べるのですか。

○??井委員 だから私の場合はそれは調べられないと、だから最初からある程度の数種類の報酬額を決めておいて。

○井上座長 何段階かに分けて、どれかに当てはめるということでしょうか。

○??井委員 大雑把に当てはめる以外ないでしょうということです。

○井上座長 分かりました。お二人の考えの異同をクリアにしただけです。

○酒巻委員 先ほどの私の質問は、ただいま??井委員がおっしゃったこととの関係でお尋ねしたわけですけれども、要するに簡単に言いますと、浦委員のポイント制というお考えでは、その報告書自体は、お金を払うところはすべて信用していただきたいという、そういう前提になっているわけですか。

○浦委員 そうです。

○酒巻委員 ??井委員は、報告書の信用性の問題があるから大雑把に数段階に分けて、そこから選ぶということですね。

○??井委員 はい。

○酒巻委員 お考えの概要はよく分かりました。

○大出委員 今の??井委員の、幾つかに分けた基準のうちのどこに当てはめるかというのは、具体的な弁護活動の中身を確認しなければできないのではないですか。

○??井委員 いや、そこまで細かいことを言っているわけではないのです。ポイント制となったら非常に細かいことになるわけでしょう。こういう活動をしました、それは何点とやらなければいけなくなるのですから。

○浦委員 細かいことではないようですが。

○大出委員 それでも、基準との関係でいったときには、ある程度中身について確認しないとできないのではないですか。

○??井委員 だから、その中に誤差があるということを前提にしているから、ざくっとした大雑把なものでいいのではないですかと言っているのです。

○井上座長 実質はそんなに違わないのかもしれませんけれども。どうぞ。

○池田委員 今回、被疑者に対する公的弁護制度を導入して、被疑者段階・被告人段階を通じて一貫した弁護体制を採るということになると、報酬も被疑者段階・被告人段階を通じて一括した算定システムというのが合理的なのではないかというふうに思うわけです。その場合に、やはり公的な資金を使うわけですから、どういう基準でどういうふうに算定しているかについて透明性はなければいけないし、といって、逆に定額にすると、今度は十分やった弁護士と、そうではない弁護士とが同じような報酬になるわけで、これは公的資金の使い方としてもまずいわけですから、そういう活動に応じて適切な算定ができるというのが望ましいと思うのです。
 そういう意味から、最初の第1の被疑者段階での弁護というのは、特に前の第1ラウンドでもお話ししましたけれども、裁判所はなかなか裏の弁護活動の実態がよく分からないところがあって、特に被疑者段階になるとそうなる可能性があるわけですが、そういう面から、私は、3番は運営主体が算定して支払うという形が、一番適切に算定できるのではないかと思います。そのためには、4番の具体的な報酬基準というのを明確に、かなり分かるような透明性のあるもの、ある程度の基準をつくっていかなければいけないのではないかと思うのです。
 その上で、1については弁護活動報告書に基づいて、その活動に応じた金額を、もちろんある程度のランク付けを最初からしておいて、そこに加算していくとか、そういうことは考えられますけれども、実際の本人の活動報告等に基づく実態に応じた報酬を払うべきではないか。ですから定額制は相当ではなくて、A案かB案、活動報告書を出させるということではA案の方が相当かなと思います。
 2番目の公判段階の報酬については、そういう意味からすると、弁護人の報告とともに、裁判所からもそれについて報告するというB案というのが相当ではないかというふうに思います。

○井上座長 樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 捜査段階のところについてだけ一言御意見を申し上げたいと思います。やはり捜査段階の弁護活動の内容というのは、外部から客観的に、しかも適正にというのは、なかなか評価が難しいのだろうと思います。ということで、結論は、やはり定額がよいのではないかということです。捜査段階には、公判段階における裁判所のような一貫して手続に関与できる公正中立な機関がないわけで、活動に応じた報酬を算出するというのは、事実上大変難しいのではないかということです。
 それから、接見の回数でありますとか、それはポイントなのか、指標と呼ぶのか、いろいろ見方はあろうかと思いますが、準抗告の回数でありますとか、あるいは弁護活動に要した時間が、優れた弁護活動を表わす指標なのかどうかという問題があると思うのです。これらをもし指標にした場合に、かえってそのこと自体が自己目的になるおそれがあると。その結果、本来の適正な捜査活動を損なうような事態が生じることも懸念されるということだろうと思います。さらに、捜査段階の場合には、極めてというかどうかなのですけれども、時間的に限られた中で行われるというようなことも併せて考慮しますと、そういった先に申しましたような幾つかの要素を報酬の基準とすることは適当ではないのではないかということです。
 では、何を基準にしてということなのですが、定額と一言で言ってしまったらそれまでかもしれないのですけれども、弁護人であった期間については、やはり考慮すべきではないかということではないかと思います。その弁護人であった期間に比例する一定の報酬額をあらかじめ定めておくといった考え方ではいかがでしょうかということでございます。

○平良木委員 常勤・契約弁護士に報酬を支払うということは、最初の段階であり得ないというわけですね。そうすると、ここで報酬は、弁護費用を被疑者に負担させるための報酬ぐらいではないかという気がするのです。そのほかで、個別の弁護士を、いわゆる捜査段階の弁護人として当てるということについては、まだ全体としてコンセンサスが得られていないのではないかと思いますが、そうでもないのですか。

○井上座長 そういうこともあり得るという前提で議論がされて来たのではないですか。平良木委員御自身は、それは考えていないということでしょうか。

○平良木委員 私は、必ずしもそこまでは、まだ議論が行っていないのではないかというように思っていましたが。

○井上座長 では、仮に当てるとした場合に、どう算定するかということでも結構ですけれども。

○平良木委員 分かりました。そうした場合に、先ほど樋口委員が言われたように、私もここのところはできるだけ定額に近いものがいいだろうということで、B案とC案の折衷ぐらいのところがいいのかなという気がしているということです。

○井上座長 「折衷」という意味がよく分からないのですけれども。

○平良木委員 確かに定額といったときに、弁護人であった期間というのも考慮しなければいけないということも当然で、それによって報酬が左右されるということは当然あり得るはずです。
 これも先ほど言われたことですけれども、それ以外のポイント制ということを、もし採るとすると、本当にこれはどういう結果に結び付くか、必ずしも明らかではない。したがって、そこは、やはりその事件に応じたものということで考えていけば足りるのではないかということです。

○大出委員 私は、第1ラウンドのときに折衷的な案ということで考えざるを得ないのではないかということを申し上げたわけですが、今の樋口委員のおっしゃったこととの関連なのですが、確かに樋口委員のおっしゃった側面がないわけではないというふうに私は思いますけれども、ただ、やはりさっき??井委員もおっしゃいましたけれども、ボランティアというようなことで弁護士に捜査弁護というようなことは、もう原則では考えないということで、それぞれやはり弁護活動に見合った報酬というものを考える必要があるのだろうというふうに思うのです。そうなったときには、見えないからということで、確かにいろいろと全部そのまま言いなりでいいのかという問題はあるかもしれませんけれども、やはり捜査段階の弁護ということで考えたときには、やはりいろいろとやりようがあることは間違いないわけですね。ですから、それが一面からするとやり過ぎだという評価を受ける場合もあるかもしれませんけれども、でも定額で、つまり報酬としてはそれだけのものしか出ないということになってしまったときに、やはり弁護士の方たちの意欲を削ぐことにもなるだろうと思いますし、やはり望む弁護活動というものを十分に期待することができないというようなことになりかねない状況というのは、いろいろとあり得ると思いますが、そういうことから考えますと、やはりそれではなかなか弁護士の方たちの共感を得られないのではないかというふうに思うのです。
 ですから、もし活動報告書に基づいてというようなことで、そこで例えばいい加減なことをやるとか、水増しをするというようなことは、先ほど??井委員もおっしゃっていましたけれども、恐らくそれは弁護士の間で、あの弁護士はけしからんことをやっているということは多分分かる話なのだと思うのです。あるいは、それは警察サイドからだってチェックは入ってくると思いますし。そうじゃないですか。ろくに接見も来ていないのに、そういう接見をしたとか、そういうことは当然樋口委員などはすぐ問題にされるでしょうし、そういうことでいけば、それは制度として何かペナルティーが来るかどうかではなくて、そういう形での評価というのは、やはり弁護士の狭い世界という言い方はいいかどうか分かりませんが、そういう中ではあり得ることだと思いますので、そこはやはり弁護士の方たちが安んじてとまでは言わないにしてみても、それなりに納得して弁護活動ができるような報酬基準というのは設ける必要があるのではないかという気がするのです。ですから、そこはちょっと考えた方がいいだろうと思います。
 ですから、私は捜査段階についてはA案、公判段階についてはB案の方がいいかもしれないという感じがしますけれども、その辺は考えてみる必要はあるのではないかというふうに思っています。

○落合参事官 法制上の見地から御議論いただきたい点があるのですけれども。「3 報酬の算定・支払主体」で、A案は現行の方式ですので、特段の法制上の問題というのはないのですが、B案を採った場合に、どういうような構成で、そのような方式を採るのかということについて御議論をいただきたいというふうに思っております。
 もちろん、A案がいいとか、B案がいいというわけではありませんで、B案がいいものならば、こういう方式を十分検討しておかなければいけないというふうに思っております。ただ、会計法24条との関係も含めて、ここはなかなか難しい問題があるように思いますので、どういう法律構成を採るのかと、単にB案がいいということではなくして、どういう法律構成を採るのかということについて御議論をいただければと思います。

○井上座長 個別の弁護士への支払を運営主体が全部取り扱うことを法制上どのように位置付けて説明するのかということですね。これは前から問題点として指摘されていたところですので、議論をし、明確に答えないといけない問題だと思います。どうぞ。

○??井委員 まず、池田委員のおっしゃったことですが、基本的に裁判所から捜査弁護の中身は分からないから、だから運営主体が算定するべきであろうという御意見だったと思うのですが、捜査弁護の中身が分からないという意味では運営主体も同じなのですね。ですから、捜査弁護の内容を裁判所が分からないということは、裁判所が算定しないということの理由にはならないと私は思います。
 先ほど事務局が指摘された問題については、当然これは契約関係のような関係にならない限り、これは多分払えないと思うのです。単に、事実上やりましたと、そこに事実上払いますというわけには絶対にいかないわけで、そうすると、一般の弁護士も運営主体と最初の段階で何らかの契約関係にならなければいけない。そうなってくると、先ほど来、私が申し上げているように、すべての公的弁護が運営主体の網の中に入ってきてしまって、果たしてそんな制度でいいのですかということになろうかと思うのです。

○池田委員 今の見えないという話ですが、見えないのは、確かに運営主体も、個々の弁護士について、常勤なり契約弁護士は別かもしれませんけれども、ある程度遠いのは間違いないと思いますけれども、ただ、今まで裁判所が、例えば公判段階で、もっと活動状況に応じて報酬の算定をしたいと思って、弁護人に活動状況について何か、ここに出てきた報告書のようなものを出したら、そういう算定も可能ですよということを言っているのですが、なかなか出てこないのです。それはなぜかと言うと、裁判所に何をやっていたのかなんていうのは言いたくないと、あるいはそれがまたどのように使われるのか分からないということもあるわけです。そういう意味からすると、運営主体であれば、そういうことは報告しやすいだろうと、そこについてはどんなことをやっているのか見えるというのはあり得るだろうというふうには思うのです。
 それから、もう一つ、落合参事官も言われたのですが、裁判所で訴訟法上の公的弁護人として活動したことに対して、法律構成として運営主体が報酬支払義務を負うというような制度をつくれば、国の債務ではないわけで、そういう制度をつくればそこが債務者になる。そうであれば会計法24条というのはネックにはならないのではないかというふうに思うわけです。

○井上座長 問題は、そういう立法ができるかということだと思うのです。つまり、そういう制度がつくれるのか、理論的といいますか、制度論としてどう正当化ないし説明するのか、そこがポイントだと思うのです。そのような法律をつくれれば、もちろん、その結果としておっしゃるとおりになるのですけれども、運営主体がどうして支払義務を負うことになるのか、運営主体にその義務を負わせられるような理論構成というか、制度論上の正当化ができるのか、そういう問題だと思うわけです。そういう正当化ができるならば、おっしゃるようなことも考えられるというのが、落合参事官の指摘だと思うのですけれども。

○池田委員 今でも国が選任して、ある活動をしてもらって、その活動の費用については、国以外の者が払うというのがあるわけですね。それは実体法上の前提があるからでしょうけれども、破産管財人とか、更生管財人とか、それは国が選任しますけれども、それは財団等のために活動しているということで、そこが債務者になる。ですから、国の選任と支払主体は別になるということがあり得るわけですね。

○井上座長 そのレベルで見る限りはいいように見えるのだろうとは思うのですけれども、しかし、今例に挙げられた破産財団等の場合は、当の財団のために管財人として活動する人を裁判所が後見的に選任しているという構成だから、財団が支払うという理屈になっているわけですが、公的弁護の場合に同じことが言えますか。

○池田委員 今回の公的弁護制度というのは、この運営主体というのが公的な弁護については全部責任を負うことになる、要するにそこがサービスを提供している、そこはそのサービスを提供する機関なのだと、だからそこが負うべきなのだと言えるのでは。裁判所は、そこの義務をだれが果たすかを選定するだけだとは考えられないでしょうか。

○井上座長 国が提供すべき弁護というものを包括的に運営主体が請け負っているという構成ですか。

○落合参事官 いろんな法律構成によって、B案もあり得ると私も思っております。今の池田委員のおっしゃった構成ももっと考えてみないといけないとは思っているのですけれども、法律上裁判所が選任したときに、運営主体はお金がなければ国からもらわざるを得ないので、運営主体が支払債務を負うと、自動的に運営主体が国に対して支払うお金を請求できる、つまり国はそのお金を支払う義務が生じるのでしょうか。そうでないと運営主体は自分のお金で支払わなければいけない、自分でお金を調達しなければいけないということになるわけですね。そうすると、最終的には国が債務を負うことになるので、それは結局会計法24条の例外を設けているということになってしまうのです。
 先ほどの池田委員の意見は、会計法24条の例外を法律でつくることができるという当然のことを言っているだけにすぎないのではないでしょうか。

○池田委員 そういう法制度をつくれば、会計法24条も法律レベルですから、それは憲法問題ではないわけで、それはあり得ると思うのですけれども。
 例えば、サービスというのを、例えば教育というサービスを国立大学でやっていたのを今度は国以外の別のところがやるわけですね。

○井上座長 法人が・・・。

○池田委員 法人がです。そのサービスは大学法人がサービスを提供するのですね。しかし・・・。

○井上座長 大学法人からの類推は恐らく余りよくないと思うのですけれども、今の主題に絞って言いますと、運営主体は、選任や個別の弁護士との関係では何も絡んでこないのに、支払のときだけ何で主体として出てくるのか、どうして支払義務を負うことになるのか、そういう問題だろうと思うのです。
 ですから、もちろん法律ができればそれでいいのですけれども、憲法の問題でないとしても、そもそも、そういう法律がつくれるのかということです。

○池田委員 ですから、そこの運営主体というのが、お金が通り過ぎるだけではなくて、実際にそれだけの活動をするのだと。そういう組織としてきちんとあるのだと。それだけの人を派遣して法的なサービスを提供しているのだという実態があれば可能なのだろうと思うのですけれども。

○落合参事官 正にそうでして、制度と全体としての、お金を流すところだけではなくて、制度全体としての合理性があれば、法律の例外というのはあり得るのだろうと思います。ですから、制度全体として運営主体がどういう役割を負うのかということを言わないと、なかなかそこの例外は苦しいのかなという印象です。
 それ以外の構成としては、??井委員がおっしゃいましたように、事前に何らかの契約関係を持つというのも一つあるのかなというふうに思います。いずれにしても、更に検討したいと思います。

○??井委員 先ほどの池田委員に対して、反論を言わせていただいていないので。

○井上座長 どうぞ。

○??井委員 報酬の算定とか、算定の基本となる弁護活動報告書、これはある意味では弁護活動の独立とかなり密接に絡んできている問題で、この組み方を間違うと、弁護活動の独立が保障されないということになりかねないと思うのです。その場合の独立というのは、当然裁判所からも独立していなければいけないし、運営主体からも独立していなければいけないし、もちろん弁護士会からも独立していなければいけない。逆に言えば、弁護士会が、あなた何やったのと聴くことを認めてはいけないし、運営主体が、あなた何やったのと聴くことを認めてもいけない。当然、裁判所が聴くのを認めてもいけないというふうに私は思うのです。
 そういう意味では、今、池田委員は、裁判所にはそういうことは言いにくいが、運営主体だったら言いやすいのではないかとおっしゃったけれども、それはやはり同レベルの問題だと思うのです。
 私は、先ほどの1でB案がいいというふうに言っていますが、それは個々の内容に応じてではなくて、事件の種類だとか、そういう客観的な要素で何種類かに分けてやった方がいいですと申し上げているわけであって、弁護活動の内容に応じて何種類か種類を分けて報酬額を決めた方がいいと言っているのではないのです。弁護活動の内容を明らかにしなければ報酬額が出てこないような制度は、本質的に弁護活動の独立を侵すというふうに思っています。

○酒巻委員 私も、最初に弁護活動報告書についてお尋ねし、運営主体に報告書をお出しになるというような御意見があったために、今、正に??井委員がおっしゃったようなことが気になったのです。先ほど来、弁護士会は個々の弁護士の刑事弁護の独立ということを強くおっしゃっているのですけれども、そのことと、弁護士会とは違うところに、??井委員は弁護士会からも独立とおっしゃいましたが、自らの活動報告書をお出しになること、それ自体には余り問題は感じておられないのかどうか、この点をさっきからのお話とのつじつまという点も含めて、浦委員に御説明いただけると大変ありがたいのですが。

○浦委員 弁護活動報告書というのは、現に出しているところは結構あるのです。むしろ、弁護士会としては、国選弁護にこれだけの労力をかけたということを裁判所に理解してもらう、そして報酬を増額してもらおうということで、相当の単位会では報告書を出す運動をしたことがあります。現に私の属する大阪などでは、そういう報告書を出しています。東京はどうなっているか知らないのですけれども。
 したがって、中身で具体的にどうしたかという細かいところまでは、もちろん報告はしないわけです。これにどれだけかかった、接見に何回行って何時間かかったか、あるいは弁論要旨の作成に何時間かかったのか、証人との打合せに何時間かかったのか、そういうふうな報告書は現に出しておりますから、今回の準則の中でも活動報告書を提出するということを一応義務付けておりますので、そういう意味では、内容にはよりますけれども、報告書を出すこと自体にそう大きな問題はないように私は思っております。

○井上座長 その点は、よろしいですか。

○本田委員 私も捜査段階の報酬の算定は、B案かC案だろうと考えています。基本的には、今、??井委員がおっしゃったような理由です。
 あえてA案ということにするのならば、これは虚偽報告に対するサンクションを当然設けるべきである、そうでないと国民の理解は得られない、透明性が確保できないと思います。そこまでする必要があるのかと言うのだったらB案かC案。ざっくりした形でのB案という??井委員の見解も十分あり得るのだろうと考えています。
 公判段階の算定方法というのは、報酬の算定・支払主体とも関連する問題になるわけですけれども、これについては今まで議論がありましたように、運営主体が一般弁護士まで担当するのかどうかという問題と絡まっているわけで、先ほど何点か疑問点を申し上げましたけれども、そこの疑問点が十分議論されて解決できるということになれば、B案というのもあるのかもしれません。B案になった場合に、報酬の算定をどうするかというのは、例えばこれはC案であっても別に構わないのかもしれませんね。一番よく見えるところ、つまり外に見えたところでやればいいと。弁護活動報告書ということになれば、捜査段階と同じような問題がやはり出てくるだろうというような気がしております。
 一番悩ましいのは、会計法24条との関係だろうと思います。先ほど議論があったのですけれども、やはり議論を聴いていても、なかなかそうだなと、すとんと胸に落ちるような説明はまだないような気がしておりますし、ここは運営主体の制度全体、どういう役割を担って、どういうシステムで、何をするのかというような制度の全体像がはっきりした上でないと、なかなか24条の例外規定というのをつくるにも、実質的な理由がなかなか付けにくいのではないかという気がしております。
 そういう意味では、後ろの方は若干疑問を留保したままという形になります。

○井上座長 この点はこれくらいでよろしいですか。それでは、「6 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の報酬」に移り・・・。

○浦委員 報酬基準の在り方の点についてちょっと申し上げたい。

○井上座長 どうぞ。

○浦委員 先ほど??井委員も言われましたように、国選弁護がボランティア的、あるいは自己犠牲的精神で行われているというのは、非常に問題なわけですし、被告人の方も現段階では国選弁護人だから接見に来てくれなかったり、手続について十分説明されなかったりしてもしょうがないと、我慢するという構造になっているわけです。そういう意味では、この報酬基準の在り方というのは大変重要な問題だし、それなりのきちんとした基準の定め方というのは、必要になるのだろうと思います。
 例えば、報酬基準の定め方につきましては、報酬基準審議会というようなものをつくる、それには日弁連、最高裁、学識経験者などが入って、そこで基準を策定していくというふうなものをつくっていく必要があるのではなかろうかと。

○井上座長 法務・検察は入らないのですか。

○浦委員 ちょっと問題が。
 更に裁判所との間で論議されてきた謄写費用とか、交通費の負担の問題などにつきましても、これを明確化するためには、現行の刑訴法38条2項に「費用」という明文の規定がないのですけれども、この点については、「費用」ということを明確に規定する必要がある。
 さらには、報酬の決定方法が、現在、最高裁の通達と支給基準に従っていて、すべて裁判官あるいは裁判所の裁量によって賄われております。その内容は外には分からないというようなことになっておりますので、これも何らかの形で法律で定めていくような、明確化していくことが検討されなければならないだろうと思います。

○井上座長 分かりました。今の点で、他の方は何か御意見がございますか。よろしいですか。そういう御意見があったということで・・・。

○浦委員 それから、不服申立てについても、これがどこがどういうふうに算定するかという問題が前提となりますけれども、現行法では報酬決定はどうも刑訴法上の裁判ではないのだというふうなことで不服申立てが認められていないようです。けれども、この点はどこが報酬決定をするかによって変わってくるかと思いますが、やはり不服申立てというのは、弁護人から、更には負担を命ぜられた場合の被疑者・被告人からというようなことも考えられるかもしれませんので、不服申立ての方法についても検討しておく必要があると思います。

○井上座長 先ほど浦委員は、運営主体が決めるというふうに言っておられましたが、そうするとどうなるのですか。

○浦委員 その場合だと、行政審査請求か何かをすることになるのでしょうか。

○井上座長 行政機関ではないですね。

○浦委員 行政機関ではないのでしょうけれども、何か行政機関に準ずるところであれば、審査請求みたいなことができるようになるのではないでしょうか。

○井上座長 そういう仕組みが必要だという御意見だということですね。

○浦委員 はい。

○井上座長 今の点は、何か御意見がありますか。

○本田委員 不服申立てなのですけれども、これは捜査段階のものは定額制か、あるいはB案でざくっとしたもので客観的に決めてしまうということになれば、恐らく不服申立ての制度というのは要らない話になるのではないかと思うのです。公判段階も現行のとおりであるとすれば、やはり不服申立てというのは要らないという整理でいいのではないか。こういった報酬算定に対する不服申立てという煩雑な手続を設けなければいけないというような制度設計そのものが余り妥当ではないのではないかという気がしています。
 運営主体が国とは別の機関ということで、そこが算定するということになった場合に、そこを絶ち切れるかと、特に訴訟という形での不服申立てを絶ち切れるかという問題があるので悩ましいのです。そうであると、その点は制度的にはやむを得ないのかなという気もしますけれども、なるべくならば不服申立てがないような制度設計が望ましいという気がしています。

○井上座長 ほかによろしいですか。
 それでは、「6 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の報酬」に移りますが、これは裁判所が報酬の算定・支払を行う場合に問題になることですので、先ほど裁判所以外の機関が算定・支払を行うという考え方に立たれた方は、この点を議論する必要はないとおっしゃるかもしれませんけれど、その前提問題はそれとして、この論点についても一応議論をしておいていただきたいと思います。いかがでしょうか。具体的には、裁判所から運営主体に事件ごとの報酬を支払うという形をとるのかどうか、個別の弁護士には報酬を支払うわけですので、それと同じようなものを運営主体に支払うという形になるのかどうか、こういう論点ですが、いかがでしょうか。

○浦委員 請求権は、常勤弁護士、契約弁護士にあることになるのでしょうね。

○井上座長 弁護士なのか運営主体なのか、考え方としては両方あり得るのではないでしょうか。

○浦委員 運営主体は、それはどういう構成をとるのですか。

○井上座長 裁判所との関係が、国法上の契約なのか命令なのか、命令だとしても、その名宛人となるのが運営主体だという組み方があり得るということでなければ、そういう構成は成り立たないわけですけれども。

○浦委員 あるいは、代理受領という構成はあるのかもしれませんね。

○井上座長 個人が受け取るものを代理受領するということですか。一応ここでの問題設定としては、個人が受け取るのではなく・・・。

○浦委員 だから、それを運営主体が受け取る場合です。

○井上座長 代理の場合は、個人が受け取れるのを受取りだけを代行するということになると思うのですけれども、ここで想定されているのは、そうではなく、運営主体の経理に入っていく、そういうことを考えるべきかどうかということだと思いますが。どうぞ。

○本田委員 いろいろ考えようがあると思うのですけれども、一つの考え方としては、常勤・契約弁護士であっても公的弁護を担当する点では一般の弁護士と全く同じわけですね。当該費用というのは、訴訟費用に含めて被疑者・被告人に負担させないと、かれこれ均衡を失するということになるのではないか。そうすると、一般弁護士と同様に、常勤・契約弁護士についても裁判所が運営主体に報酬を支払って、国が被疑者・被告人に求償するというような考え方も当然あるだろうという気がします。
 しかし、裁判所が運営主体に報酬を支払わない、別に給料をもらっているのだからもういいではないかという考え方もあると思うのです。その場合、被疑者・被告人に対する費用の負担をどうするかという問題がちょっと出てくるかなと。先ほど平良木委員から問題提起がありましたけれども、名目上のものをどうやって負担させるのだと。

○井上座長 それは次の第8のところの話で、個別の弁護人なのか、常勤・契約弁護士なのかによって、被告人が負担させられる場合と、負担させられない場合が出てくるということでいいのか、そういう話だと思うのです。その議論と密接に関連している問題ですので、その辺も踏まえて、また御議論いただきたいと思います。
 この点について、更に御意見がございますか。ないとしますと、ここでちょっと皆さんに御意見を伺いたいのですが、本日、もう一項目、第8をやるかどうかです。あとまだ第8、第9、第10とあるのです。次回は7月に予定されていますが、これ以外にも議論をしなければならない事項があるものですから、覚悟して7月に全部やるということにするのか、本日、もう一つやっておくのかということなのですが、いかがですか。

○??井委員 体力の続く限り。

○浦委員 やっていただいたらいかがですか。

○井上座長 時間は大丈夫ですか。

○浦委員 私は大丈夫です。

○井上座長 そうですか。ほかの方も、よろしいですか。それでは、もう何十分かお付き合いください。
 それでは、第8に移って、今の論点も回収のところとの関連がありますので、また御議論いただければと思うのですけれども。第8の費用負担の問題です。では説明をお願いします。

○落合参事官 「第8 弁護費用の回収」について御説明申し上げます。
 ここでは、「1 弁護費用の回収の仕組み」、「2 捜査段階の弁護費用の負担」、「3 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の弁護費用の負担」、「4 弁護費用回収の実効化」、この四つの項目を記載しております。以下、各項目ごとに御説明申し上げます。
 「1 弁護費用の回収の仕組み」については、A案として、現行どおり、裁判所が弁護費用も訴訟費用の一部として負担を命じ、検察官が徴収するとの案、B案として、弁護費用を訴訟費用から外し、運営主体において回収するとの案を併記しております。なお、第5回検討会でも申し上げたところでありますが、回収の仕組みについて、弁護費用を訴訟費用から外す場合には、現行法上、国選弁護人の報酬等とともに、訴訟費用とされている証人、鑑定人等に関する費用の負担・徴収の取扱いをどうするのかということも問題となりますので、この点についても御意見をお願いしたいと存じます。
 次に、「2 捜査段階の弁護費用の負担」についてであります。ここでは、回収の仕組みの問題とは切り離して、捜査段階の弁護費用を被疑者等に負担させるかどうかという実体的な問題として、たたき台に記載した四つの場合について御議論いただきたいと考えております。
 一つ目が、「(1)起訴された場合」であり、これについては、現行の刑訴法181 条において、刑の言渡しがなされた場合に資力に応じて公判段階の弁護費用を負担させ、刑の言渡しがなされなかった場合でも、被告人の責めに帰すべき事由によって生じた費用は被告人に負担させることができるとされておりますので、これと同様の案を掲げております。
 次に、「(2)起訴されなかった場合」ですが、ここではA案として、被疑者に負担させないのを原則とした上で、被疑者の責めに帰すべき事由によって生じた費用は被疑者に負担させることができるものとするとの案を記載しております。また、B案として、起訴猶予を理由として起訴されなかった場合や被疑者の責めに帰すべき事由が認められる場合には、被疑者に負担させることができるものとするとの案を記載しております。
 次に、「(3)少年事件の場合」であり、被疑者が少年で、事件が家裁に送致され、検察官送致決定以外の決定で終局した場合には、(1)及び(2)とは場面が異なることとなりますので、別個の論点として掲げております。
 次に、「(4)告訴人等の費用負担」についてであります。これは、現行の刑訴法183 条が、告訴、告発又は請求により公訴の提起があった事件について、被告人が無罪又は免訴の裁判を受けた場合において、告訴人等に故意又は重大な過失があったときは、その者に訴訟費用を負担させることができるとしており、捜査段階の弁護費用についても、告訴、告発又は請求がなされた事件について起訴がなされなかった場合における弁護費用の負担を検討しておく必要があると考え、論点として記載したものであります。
 次に、「3 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の弁護費用の負担」についてであります。これは、常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合に、事件ごとの報酬の支払が行われないときは、負担させるべき弁護費用の金額が特定されないという問題があることから生じる論点であり、そのような場合であっても、一般の弁護士が弁護人となった事件との均衡上、事件ごとの報酬に相当する金額を負担させるものとする必要があるとの意見がありましたので、論点として掲げたものであります。
 次に、「4 弁護費用回収の実効化」についてであります。これは、検討会において、弁護費用の回収を実効化すべきであるとの御意見が述べられたところでありますので、そのための方策について御議論をいただきたいと考え、論点として掲げたものであります。
 「第8 弁護費用の回収」の説明は、以上でございます。

○井上座長 ありがとうございました。今の説明について、何か質問はございますか。よろしければ、中身に入って、その過程でまた分からないところがあれば御質問をいただきたいと思います。
 まず、「1 弁護費用の回収の仕組み」ですけれども、弁護費用を訴訟費用の一部として考えて、現行と同様の回収方法とする、現行どおりというのがA案。訴訟費用から外して運営主体が回収するというのがB案ですけれども、これについて御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○??井委員 基本的にはA案の方がいいと思います。運営主体が回収するとした場合に、どういう方法で回収するのだという仕組みのつくり方によっては、別の結果になるのかもしれませんが、基本的には検察官が徴収義務あるいは徴収権限を持っていた方が徴収はしやすいのではないかというふうに思います。それだけの理由なのですけれども。

○井上座長 分かりました。実効性ということですね。ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○本田委員 私もA案が相当だろうと考えています。弁護費用を訴訟費用から切り離すということの合理性が今一つ分からないということと、もし、切り離すことになると、債務名義がすぐには出てこないわけで、そのために、また民事手続で新たな債務名義を取得する必要が出てくるのではないか。それは現行法以上に手間暇がかかるわけで、それに伴って徴収コストも増加する。業務が現状よりも一層困難で非効率なものになるのではないかというふうなことが予想されるわけでして、やはりこれはA案ではなかろうかというふうに考えております。

○井上座長 ほかに御意見は。どうぞ。

○池田委員 先ほど来、報酬支払主体は運営主体だと考えたわけですが、そうである以上は私はB案でいいと思います。現在の被告人弁護の弁護費用の負担について、かなり回収に困難を来しているという話もありましたし、またそういうことも考えて負担させることが少なくなっていないかというような批判もあるわけですが、その辺りは運営主体になった方が回収のいろいろなノウハウを、今の検察庁でやるよりはいろいろな方法を考えられるのではないかという感じがします。ですから、回収方法については、いろいろ工夫の余地があると思うのです。運営主体が回収するという方法でいいのではないかと思います。
 確かに、最終的な強制執行が今のものと違ってできなくなるわけで、債務名義を何らかの形でつくらなければいけない場合があると思いますけれども、そこら辺は、また制度として考えなければいけないのでしょうが、全体としてどちらがいいのかという問題だろうと思いますけれども。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○落合参事官 今のところもちょっと御議論いただきたいと思うのですが、運営主体に国から来るお金がオープンエンドのようなものだとして、更にB案を採って運営主体が回収すると、運営主体にお金がたまるのですね。それをどうするかが問題になりますし、それはどういう理屈なのかというのが、ちょっとよく分からないのです。それはB案を採る人がオープンエンドではなくて、国から来たお金の中で運営主体が事業としてサービスを提供するのだと、したがって、そのお金を回収するというなら分かるのです。回収の問題は、国から運営主体に来るお金の性質やそれがオープンエンドかどうかともつながっているのです。もしオープンエンドを採るのだとすれば、B案はどういう理屈で運営主体が回収するのか、そこを御議論いただきたいと思います。

○井上座長 つまり、弁護士にお金を支払っていく、あるいは常勤の人に給料を払っていく、契約で報酬を払っていくというのが一定額以上になった場合に、どんどん国からお金をつぎ込んでいかなければならない。そこをオープンエンドとしながら、運営主体で回収したお金はそこにたまっていくことになるというのは、どういう理屈かということですね。一つの独立会計としてやっている場合には、回収し、それを経理に入れて、また支払に戻していくというのが一つの考えられるイメージだと思うのですけれども、そうならずに、出と入りが関連していないことになるが、それはどういう理屈によるのかと、そういう疑問だと思いますけれども。

○池田委員 オープンエンドというのは、絶対的な前提ですか。そこが問題ではないのですか。

○落合参事官 公判段階の国選弁護は国の義務ですので、お金がなくなると公的弁護はできないというなら別ですけれども、運営主体のお金がなくなっても国は弁護人を選任してお金を払っていかなければいけないので、制度上オープンエンドにならなければいけないのだろうと思うのです。

○池田委員 運営主体にかなりの実質を持たせて、そこでいろいろなことをさせる。サービスを提供する主体です。そこへ、どれだけの補助を出していくかということだと、自助努力で回収できれば、それに応じたものを補助すれば足りるということも考えられるわけですね。

○落合参事官 そうすると、それは公的弁護の予算をオープンエンドではなくするという前提ですね。

○井上座長 予算が潤沢にあって、その範囲内で常に収まっていれば、その理屈でいけるかもしれません。回収したものをそこにまた繰り入れて、それを運営資金に持ち出していくということならよいのですが、そうではなくて、事件数がどれだけになるか、また、どれだけ回収できるかは実際には分からないので、予算が不足するという可能性はある。しかし、国選弁護あるいは公的弁護ということで、国の義務として弁護人を付けなければならない。そして、付けたときには報酬を支払わなければならないわけで、その場合に、運営主体にお金がないから払えないということでは済まされないので、理論的にはそこはオープンエンドになり得るわけですね。そういう意味で、国からの出の方はオープンエンドにしながら、入りの回収したお金は運営主体にとめておけるという理屈はないのではないか、ということですね。回収したお金も国の方に戻っていくということなら、それで回転するのですが、運営主体のところにたまっていくという理屈があるのかということだと思うのです。どうですか、酒巻委員。

○酒巻委員 どのような問題であるかは分かりましたが、何分お金のことはよく分からず・・・。

○井上座長 刑訴法学者向きの問題設定ではないですね。

○酒巻委員 戻してしまっては駄目なのですか。

○井上座長 何で国に戻せるのかですね。

○落合参事官 戻すのであれば、最初から国が回収すればと。

○池田委員 回収したのを戻さずに、次に導入する際に差し引きにするとか、知恵を絞らないといけないのでしょうね。

○井上座長 結果だけで言えば、そうすればつじつまが合うかもしれませんけれども、システムとして説明がつくのかということだろうと思うのです。そういう問題点を検討しないといけないのですが、恐らく今ここでどうですかと聴いても、これ以上知恵が出ないかもしれませんね。そういう論点があるということははっきりしたと思いますので、この点はこれくらいでよろしいですか。
 それでは、次の「2 捜査段階の弁護費用の負担」という点ですが、どういう場合に被疑者に負担させるべきか、どういう場合には負担させるべきではないか、という問題です。(1)、(2)、(3)というふうに掲げられていますが、(3)の場合は、(1)、(2)と異なることで別に掲げられていますけれども、いずれの論点も関連しますので、一括して御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

○??井委員 まず、起訴された場合は、この原案どおりでいいのではないかと思います。
 次に、起訴されなかった場合は、B案は不起訴の裁定主文によって分けようという考え方ですが、裁定主文というのはかなり幅のあるものですから、裁定主文によって、こういうものを区別するのは、やはり妥当ではないのではないかと。したがって、起訴されなかった場合には、基本的には被疑者に負担させないと。ただし、例外的に被疑者の責めに帰すべき事由によって生じた費用は被疑者に負担させるというA案が妥当ではないかと思います。
 少年事件の場合ですが、この案では、検察官送致決定以外の決定で終局した場合には、捜査段階の弁護費用を負担させることができるということになっております。これも基本的には、これでいいのではないかと思います。以上です。

○井上座長 という御意見ですけれども、どうぞ。

○浦委員 起訴された場合、刑の言渡しがなされたときには、捜査段階の弁護費用は、必ず被告人に負担させると、そういう趣旨なのですか。そうではなくて、今の現行法どおり全部又は一部の負担、あるいは免除するということもあり得るという趣旨なのですね。

○落合参事官 そうです。

○浦委員 そうであれば、たたき台どおりでいいと思います。
 それから、起訴されなかった場合にも、??井委員と同じで、起訴猶予というものには幅があると言いますか、本来なら嫌疑不十分とすべきところを起訴猶予で処理されるケースもままありますので、そういう点から考えますと、やはりA案で、起訴されなった場合には、負担させない。
 (3)の少年事件の場合につきましては、少年というのは資力があるということは、まず考え難いということで、ここでは費用を負担させることができるということで、常に負担させるということではないようですけれども、これは負担させるという記載があっても、実際上意味がないように思われます。むしろ、少年については明確に負担をさせることは考えないというのが適当ではないでしょうか。

○井上座長 分かりました。土屋委員は、この辺はどういうお考えですか。

○土屋委員 私も余り意見は違いません。起訴された場合についてもたたき台のとおりで結構だと思いますし、起訴されなかった場合についても、検察官の処分の結果で分けるのは適当ではないと思いますから、A案でいいと思います。
 少年事件については、今の浦委員の意見と私は同じです。捜査段階の弁護費用を負担させることができるというたたき台の書き方に別に異論はありませんけれども、できましたら、少年事件の場合は、やはり資力がないのが普通ですから、負担させないという選択もあるのだと思います。

○井上座長 分かりました。どうぞ。

○本田委員 起訴された場合については、たたき台の案のとおりでよろしいかと思います。
 起訴されなかった場合、起訴猶予に幅があるという話があったのですけれども、犯罪事実が一応認定されているということになれば、基本的には負担させるべきではなかろうかという気がします。ただ、その場合には、被疑者が被疑事実を争うということがあり得るわけです。おれはやっていないのだということになると、不服申立てを行う手続を導入するかどうかということを若干検討しなければいけないのかと思います。そこはやはりちゃんと手続をつくっておくと、そこを含めて検討すべきではないかという気がしています。
 少年事件の場合は、国選付添人の費用を少年又は扶養義務のある者から徴収することができるということが定められていますので、かれこれ均衡上、負担させることができるものとするというたたき台の案でよろしいのだろうと考えています。

○井上座長 2番目のところなのですけれども、費用の負担を不服申立てで争った場合、その手続が刑事裁判化しませんか。

○本田委員 そこをどうするかですね。知恵を絞らないとうまくいかないというので、検討課題であると。

○井上座長 分かりました。ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○池田委員 (1)については、前段は、このたたき台の案でいいと思います。後段の刑の言渡しがなかった場合の責めに帰すべき事由というのは、捜査段階の場合には、特に被疑者だった段階の責めに帰すべき事由というのがどういうことなのかというのが非常に難しくなるだろうなという気がいたします。その組立てとしては、今の被告人の場合と同じようにせざるを得ないと思いますけれども、そこは難しいのではないかという気がいたします。
 2番目の起訴されなかった場合については、やはり起訴猶予という不起訴理由について、基本的には今は争う余地がないので、それをこの不服申立てのために、それをもう一度やるというのは、今も議論が出ているように、やはり本案化してしまう可能性もないではないので、やはりここは負担させないということで行かざるを得ないのではないかという気がいたします。
 3番の少年については、公的付添人制度の設計にもかかわることなので、そちらとの関連で決めていくべきだと思います。

○井上座長 不起訴の場合には負担させないということですが、(2)のところは、たたき台のただし書みたいなものも付けないということですか。

○池田委員 確かにそこは今度はかなり大きな問題になるわけですね。実体が分からないと、ともかく責めに帰すべき事由で争っていたのか、そうではないのかすら分からない、判断できないわけで、ものすごい重い判断を迫られることになって、これだけのためにすごく大きな手続になってしまいかねないのではないかなという気がするのですけれども。

○本田委員 一番典型なのは、身代わり犯なのですね。よく交通違反とかに、身代わりとかありますね。そういう場合に、もちろん、本体では起訴されないのです。

○池田委員 それは起訴猶予ではないわけでしょう。

○本田委員 私はA案を前提に話しています。そういう場合は負担させることができるというようなものはつくっておく必要があるのではないかという気がします。

○井上座長 さっきの池田委員の問題意識は共通していて、(1)の場合も被告人の責めに帰すべき事由という認定は難しいだろう、(2)のA案についても難しいだろう、ということなのですが、今のような身代わり犯の例ですと、(1)の場合は、また別の事態が考えられるということですね。

○本田委員 そのまま起訴されたって無罪と。

○井上座長 そういう意味ですか。有罪で刑の言渡しがなされなかったということではなくて、無罪の場合があるということですか。

○本田委員 ほかにもいろいろあると思いますけれども、思い付いた典型的なものを申し上げただけです。

○井上座長 いずれにしろ、その辺がはっきりした場合に、こういう措置がとれるということなのでしょうね。ですから、そういう場合のことを考えて、こういう規定を置いておくべきかどうか、そういう場合になったらあきらめることにして、最初から置かないかですね。

○池田委員 費用の出捐義務がない国に費用を負担させておいて、最後にはそのまま逃げてしまうという話は許されないわけですから、それは何らかの合理的な制度ができれば、負担させることでいいと思うのです。ただ、そのために今度は、どれだけの手続と労力をかけるかということもあるのかと思いますけれども。

○井上座長 分かりました。ほかに御意見は、よろしいですか。
 それでは、先を急ぐようですけれども、「(4)告訴人等の費用負担」について御意見をお伺いしたいと思います。どうぞ。

○??井委員 基本的には、告訴人等には、弁護費用の負担はさせないと。ただし、告訴人側に極めて著しい過失があったと。こんな事件は告訴するはずがないじゃないかというようなものを告訴してきたとか、ここに書いてあるのは、明らかに責めに帰すべきような事由があって間違った告訴をしてきたと、それを捜査機関も間違いを見抜けなかったというような場合、これはやはり告訴人等に費用負担をさせてもいいのではないかと思いますが、原則は、やはり費用負担なしが妥当ではないかと思います。

○井上座長 そういう御意見ですが、いかがでしょうか。これは、現行の刑訴法にならったということなのですか。浦委員、何か御意見がありますか。

○浦委員 現行法どおりでいいのではなかろうかと思います。

○井上座長 この点は、余り御異論がないかと思いますので、この程度でよろしいですか。
 あと、二つです。いずれも重要な点ですので、御議論いただければと思いますが、まず「3 常勤弁護士及び契約弁護士が公的弁護を担当した場合の弁護費用の負担」です。これは、先ほど本田委員から出された論点と密接あるいはほとんど不可分の関係になる問題点です。この点について、どなたからでも結構です、御意見をお願いしたいと思います。どうぞ。

○??井委員 これは、やはり常勤弁護士、契約弁護士に弁護してもらった場合と、一般の弁護士に弁護してもらった場合とで扱いが違うというのは、やはりおかしいと思いますので、常勤及び契約弁護士に公的弁護を担当してもらった場合にも、同じ条件で報酬相当額を負担させるというのが正しいと思います。

○井上座長 分かりました。ほかの方は、いかがですか。
 ちょっと??井委員にお聴きしたいのですが、その場合に取ったお金はどこに行くのですか。

○??井委員 そうなんですね。これは先の話になってしまうのですが、基本的には、運営主体のところにとどまっていいのではないかという気がするのです。

○井上座長 そうすると、運営主体が回収するということですか。

○??井委員 そうなると、難しいのですけれども。

○井上座長 一般弁護士の場合はどうなるのですか。

○??井委員 しかし、これはとにかく負担させないというのはおかしいと思うのです。だから負担させなければいけないと思うのですが、では、負担した金はどうするかというのは、これから皆さんで知恵を出し合っていただければ・・・。

○井上座長 ほかの方、どうぞ。

○本田委員 私も??井委員と同意見でして、やはり一般の弁護士が担当した場合であれば支払ったであろう弁護費用を算定して、その事件の弁護費用であるとみなして訴訟費用を負担させるというような方法を採らないと、やはり公平ではない結果になるのです。ですから、そういう方法を取るべきだろうと。これは、訴訟費用として負担させて回収するのだったら、それは国に入るというのが一番素直かなという気がしますけれども。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。いずれもどういう形で回収して、どこへ行くかは別として、やはり負担させるべきだという御意見ですが、どうぞ。

○土屋委員 私も同じ意見です。負担させるべきだと思っております。それはやはり公的制度を利用する意味でも、一種の利用料というのか、それを支払うのは当然だと思いますし、国も当然回収すべきであろうと私は思いますので、その点は同じです。
 さっき全然発言しておりませんので、報酬の基準だとか、その辺りについて一言言っておきたいなと思ったのですが、報酬についての考え方として、できるだけ複雑ではない基準を設けて、できるだけ定額に近いような形のものにした方が回収のときにも分かりやすいのだろうと思うのです。つまり、個別の事件ごとに余りに算定要素が増えてしまって、余りに多くの段階が刻まれるようなことになってしまうと、なぜ、その額を負担させるのかということを説明するのが難しくなるだろうという気が一面でします。
 それから、これは瑣末なことなのですけれども、もうちょっと言ってしまえば、運営主体が算定するにしても、裁判所が算定するにしても、算定事務が非常に大変だと思うのです。そこのところはできるだけ事務的な負担の軽減を考える必要もあるだろうと事実上思っていますので、そういった辺りをできるだけ簡潔な基準に基づいた報酬算定をし、その上で、回収に当たるという、そういう制度設計をすべきだろうというふうに思っています。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。このくらいでよろしいですか。
 それでは、最後の「4 弁護費用回収の実効化」に移りまして、これは理論的な問題ではないかもしれませんが、かなり切実な問題とはなり得ますので、議論を是非していただきたいと思います。弁護費用の回収の実効化を図るために、どういう制度が考えられるのか。精神論だけで頑張って回収しろということでは済まないかもしれませんので、何か良い知恵があれば出していただきたいのですが、いかがでしょうか。

○??井委員 これは、第1ラウンドでも言ったと思うのですけれども、労役場留置に類似した制度というのは、法制度上無理ですか。

○井上座長 どうぞ御意見を言ってください。

○??井委員 制度として可能であれば、そういう労役場留置に類似の制度をつくるというのが、本当は一番実効性があると思うのです。実効性だけを考えたら、それが一番です。

○井上座長 それでも支払えないという人については、労役場に入れると、食べさせなければならないなど、かえって費用がかかることになりますね。

○??井委員 それはしょうがないですね。そういう経済効率の問題はありますが。

○井上座長 分かりました。一つのアイデアだとは思います。いかがですか。その点でも結構ですし、ほかの点でも結構なのですけれども。
 この点についてもお知恵を更に絞っていただきたいと思います。全体としての仕組みの中で、ここのところに制度的な手当てができれば、更に多くの方々の理解を得やすいように思いますので、どうぞ。

○土屋委員 私も第1ラウンドのときに、??井委員が一種の予納金制度と言いましょうか、供託金制度みたいな提案をされたのをよく覚えていまして、これは一つの有力な手段かなというふうに思っています。
 つまり、逮捕されて身柄拘束された時点で、公的弁護を頼む人というのは、恐らくほとんど金を持っていないでしょうけれども、持っている限りの所持金の範囲内で提供させるというか、事前にある程度回収するというのでしょうか、当然予想される金額があるわけですから、それに恐らく満たないのでしょうけれども、できる限りの範囲内で預かっておくという制度を考えたらどうかなということで、??井委員はきっとおっしゃるかなと思ったのですが。

○??井委員 思い出しました。

○井上座長 少なくとも現実に目の前にあるものは確保しておこう。そうすれば、将来負担させられる場合に、全部払えなくてもそれだけは確保できると、そういうアイデアですね。どうぞ。

○酒巻委員 私も同じようなことを考えております。以前には予納というのは、幾らなんでもお金のない人から金を取るのかというイメージだったので消極だったのですが。一番固い予納というのは、予納がないと弁護人を選任できないというようなことだと思っていますが、名前はともかく、選任要件とは別に、ある程度の手持ち金額があれば、先に納めていただくというような仕組みはあり得るのではないかと思います。これを予納というのかどうか分かりませんが。

○井上座長 選任要件と別ということは、それすらない人にまでは要求しない。ある人の場合に、供託みたいなものとして確保しておくということでしょうか。

○酒巻委員 はい。名前はともかくそういう制度はあり得ると思います。

○井上座長 選任要件としない形で位置付けるということですね。いかがですか、どうぞ。

○本田委員 確かに予納という選択肢はあり得ると思うので、その中で特にその他要件で選任する場合がありますね、貧困要件ではなくて。その場合は相当部分を納めないと駄目だということは、あるいは言えるのかもしれないと思います。貧困要件の場合は、どこまでそう言えるのかというのは、なかなか難しい問題があるように思いますが。

○井上座長 ほかにいかがですか。どうぞ。

○池田委員 運営主体が回収主体になるとすれば、国以外の組織がやる上での、いろいろ柔軟な工夫もできるのではないかと思います。今より柔軟に、分割するとか、家族等に保証を求めるとか、いろいろな方法があり得るのではないかと。
 法律扶助協会の大阪支部などでは、かなりいろいろな工夫がされて、回収率も上がっているというようなことを聞いたことがあるのですが、そういうようないろいろな工夫が必要なのではないかと思いますけれども。

○浦委員 大阪の扶助協会の場合は、弁護士が一声掛けるのですね。支払ってくださいというようなことで、そういう協力をするというようなことで、何か書式でも決めて弁護士の名前で支払いなさいよということで催告することは考えられるかもしれません。それは、どのくらい効果があるのか分かりませんが、相当額の回収ができています。

○井上座長 ほかのところより目立って回収率が高いということですか。

○浦委員 ほかでは、原則、償還はしていませんので、必ずしも比較はできませんが、大阪では、2割以上、二十数パーセントの、何もしていないんですよ。催告するだけで22パーセント回収していますので。

○井上座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○平良木委員 回収の仕組みがどうなるにしても、訴訟費用ですから、債務名義ができるような仕組みをつくってもらいたいということです。いろいろな組み方というのはあると思いますけれども。

○井上座長 一番簡明なのは、訴訟費用負担の裁判でしょうけれども、仮にそういう形をとらないとしても、債務名義ですぐ強制執行できるというものをつくった方がいい。そういう御意見ですね。

○平良木委員 そういうことです。

○井上座長 分かりました。よろしいですか。この点も、更にいいアイデアをどんどん、こういうのもあるのではないかということを言っていただければと思います。
 それでは、本日はかなり長時間に及びまして申し訳ございませんでしたが、このくらいにさせていただきたいと思います。次回も、議論をしなければならない事柄がかなり多いものですから、その覚悟でおいでいただければと思います。
 それでは、事務連絡をどうぞ。

○落合参事官 毎回申し上げておりますとおり、事務局では今般の司法制度改革につきまして、広く国民の皆様からの御意見を承っており、その目録を作成しておりますので、御希望の委員の方は、適宜事務局にお申し付けください。
 なお、検討会の委員の方で、国民の皆様からの意見を直接御覧になりたいとの御希望がありましたら、本検討会の終了後の適宜の機会に事務局の方にお申し付けください。

○井上座長 次回は7月8日午後1時30分からですので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

(以上)