○井上座長 それでは、第11回公的弁護制度検討会を開会させていただきます。本日も、御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
本日の議論ですが、たたき台の「第9 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」というところからになります。この第9について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○落合参事官 それでは、「第9 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」について御説明申し上げます。
ここでは、大きく「1 弁護活動の自主性・独立性の確保方策」及び「2 弁護活動の水準・適正の確保方策」の二つの項目に分けて論点を記載しております。
まず、「1 弁護活動の自主性・独立性の確保方策」につきましては、検討会において、主務官庁及び運営主体に個別弁護活動への指揮権がない旨の規定や常勤弁護士の身分保障規定などを定めるべきであるとの御意見が述べられましたので、それについて、どのように考えるかという問題提起を行っております。
次に、「2 弁護活動の水準・適正の確保方策」につきましては、「(1) 運営主体によるルールの策定」、「(2) 運営主体による違法・不当な弁護活動への対応」、「(3) 運営主体による刑事弁護全体の質の向上への取組」、「(4) 推薦、連絡又は選任の欠格事由」の四つの項目を記載しております。これらは、いずれも、検討会において、たたき台に記載しました内容の意見が述べられましたことから、それぞれどのように考えるかという問題提起を行っているものであります。
なお、「(4) 推薦、連絡又は選任の欠格事由」につきましては、たたき台の「第6 弁護人として裁判所に選任される弁護士の推薦又は連絡」における推薦又は連絡の位置付けの議論を踏まえて御検討いただきたいと存じます。
「第9 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」につきましては、以上でございます。
○井上座長 ありがとうございました。今の説明について、何か御質問があれば、どうぞ。よろしいですか。それでは、中身に入って議論をしたいと思います。
まず、「1 弁護活動の自主性・独立性の確保方策」について、どなたからでも結構ですので、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○浦委員 弁護活動の自主性・独立性の確保ということにつきましては、強く審議会意見書が述べておるところでありまして、弁護人の具体的な職務の執行に当たりましては、公的弁護制度の運営主体がいかなるものになろうとも、個々の弁護活動への干渉は避けられるべきであろうと考えます。仮に運営主体がどのような組織になったとしましても、主務官庁の下で国の監督を受ける組織になる以上は、運営主体に確保される常勤弁護士や契約弁護士の個々の弁護活動に対する国による干渉が行われる危険があります。常勤弁護士や契約弁護士が安んじて職務に専念できるように、主務官庁及び運営主体に個別の弁護活動に指揮権がない旨の規定を置くと同時に、常勤弁護士の身分保障に関する規定を定めるべきだと、そのように考えます。
身分保障に関する規定につきましては、言うまでもありませんが、裁判官の身分保障の規定もございますし、あるいは検察庁法に検察官に関する身分保障の規定もあります。そういうものを参考にしながら、身分保障の規定が策定されるべきだろう、そのように思います。
○井上座長 ほかの方は、いかがでしょうか。どうぞ。
○本田委員 浦委員から、今、話がありましたように、弁護活動の自主性・独立性が確保されなければいけないというのは当然のことだろうと思います。ただ、法制的に指揮権がない旨の規定をどういう形で置くことができるのかというところは若干検討が必要だろう。一定の指揮権を否定するということは、指揮権があることが前提になるわけですね。そういう問題もありますし、一定の者に指揮権がないと言うと、ほかの人に指揮権はあるのかとか、主務官庁の指揮権については、運営主体の組織形態がどのようなものになるか、まだ決まっていないのですけれども、例えば、たたき台に記載されているような指定法人とか独立行政法人など国以外の法人を運営主体とする場合に、主務官庁が一般的に運営主体やその職員に対する指揮権を有することになっているのかどうか。そのようにはなっていないのではないかという気がするのですけど、そういう規定を置くことが、法制的にうまく説明がつくのかなという疑問が一つあります。実質的に弁護活動の自主性・独立性が確保されなければいけないということは全く異論がございません。
それから、身分保障の関係なのですけれども、常勤弁護士が公務員ということならともかくとして、運営主体が国以外の法人として常勤弁護士を公務員としないということになると、常勤弁護士の身分は、当該運営主体と民事上の雇用関係によって規律されることになるのではないか。
それから、国選弁護人の身分自体は、裁判所の選任行為に基づくものでありますから、運営主体との関係では、身分保障規定を設けることになるのか、そういう必要があるのかどうかというような問題があるのではないかという気がします。
○井上座長 浦委員が言われた「身分保障」というのは、どちらの意味なのですか。運営主体との関係における身分保障ですか。
○浦委員 運営主体の関係ですね。主務大臣あるいは主務官庁の関係で言えば、例えば独立行政法人になる場合には、主務大臣は独立行政法人の自主性を尊重しなければならないという通則法の規定もありますね。独立行政法人通則法3条3項に、「この法律及び個別法の運用に当たっては、独立行政法人の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」という。
○井上座長 それは大臣との関係でですか。
○浦委員 そういうものが参考にされることになるのだろうと思いますけれども。
○井上座長 それが、個別事件について指揮ができないということに直結するのかどうかですね。
○浦委員 そうですね。運営主体それ自体の独立性を保持する、そういうことになるのかもしれません。今の規定から言いますと。
○井上座長 今議論しているのは個々の弁護人の弁護活動の自主性・独立性の問題なので、運営主体と個々の弁護士・弁護人との関係ではないでしょうか。
○浦委員 第一義的にはそういう問題になるのですね。
○井上座長 本田委員が言われたのは、法制上、指揮権というものをそもそも観念できるのかということなのでしょう。
○浦委員 そうですね。
○井上座長 検察庁ですと法務大臣と検事総長、総長と一検事との関係ということで、割りと分かりやすいのですけど、運営主体の場合、そういう構造にならないとすると、指揮権というものを観念できるのかどうかなのでしょうね。そこは、法制上、詰める必要があるということでしょう。
○浦委員 詰めなければいけないところだと思いますけれども。
○井上座長 身分保障の方は、本田委員が言われたのは、公務員型でないとすれば、雇用契約なので、雇用契約だとすると、一般の雇用契約についての一定の身分保障が当然妥当するわけですね。正当な理由がなければ解雇されないという意味でのですね。それ以上のものが設けられるかどうか、そういう問題なのでしょうか。
○浦委員 弁護ということの特殊性を考えて、そういうものが必要ではないかという、そういう趣旨なんです。
○井上座長 効果としては、一般の雇用の場合以上に解雇できないという規制を強くするということになりますか。
○浦委員 解雇に関する規定を・・・。
○井上座長 解雇だとか給与、そういうものの保障ということですか。
○浦委員 厳格になってないですね。あるいは、どこか身分の変更や転職と言うんですか、あるいは勤務場所がよそへ変わるというようなことについてもそれなりの配慮が必要になる。
○井上座長 お二人から以上のような御意見が出ましたけれども、ほかの方、いかがですか。
○大出委員 本田委員からの御意見も、自主性・独立性は当然保障されるべきであるというお考えで、その点は、もちろんそのとおりで、今、その趣旨で、規定上の問題として、訓示規定といいますか、そういったものも置くのも少し違和感があるというような御趣旨なんですか。つまり、確認的な規定といいますか、それはもちろん御異論もないところだと思うのですが、保障については。ですから、ほかのところでも、そういったことについての訓示的規定というのは置くことがあるだろうと思うのですけれども、それも必要ないという御趣旨なのか。
○本田委員 私が言ったのは、指揮権を否定するというのは、指揮権があることが前提になっているのでしょうと。だから書くのでしょう。指揮権がないということになると、なかなかそういう形では書きづらいのではないですかと申し上げただけで・・・。
○大出委員 そうすると逆に・・・。
○本田委員 ちょっといいですか。もし、今、大出委員がおっしゃったようなことを言うとするならば、例えば弁護活動の自主性・独立性は尊重されなければならないというようなものはあるのかもしれません。ちょっと法制的に詰めなければいけないですが。ただ、指揮権をということになると、法制上どうなのかという議論です。
○井上座長 運営主体には指揮権はないというような規定が書けるのか、ということなのでしょう。
○本田委員 理屈の問題です。
○井上座長 その辺は法制上どういうことがあり得るのか、その辺の詰めが必要だということですね。
○??井委員 個別の弁護活動の自主性・独立性が維持されなければならない。これは当然のことで、これについては争いがないと思うのですね。どういうような仕組みにすれば、それが維持できるかということになろうかと思うのですが、最終的には運営主体との関係で言えば、先ほどから言われているように雇用関係等をどういうふうにつくるか。例えば常勤でも任期制にするのか、しないのか。任期制にした場合に、任期を何年にするのか、再任を原則にするのか、しないのか。解雇する場合は、解雇の規定をどうするかとか、解雇の仕組みを、例えば別の委員会をつくってそこで判断するようにするとか、具体的な制度設計の中で、その弁護活動の自主性・独立性が維持されるように考えていくべきものであって、一片の条文を、確かに精神を表すものとしては意味があるかもしれないけれども、そういう条文を置いたからといって、実際の具体的制度設計に手抜かりがあれば、実際は維持されなくなるということだろうと思うのですね。ですから、この問題を議論するのであれば、もう少し踏み込んだ、細かいその辺の制度設計についての議論をしないと充実した議論にはならないかなというふうに思いますけれども。
○井上座長 そこは、これまで議論した運営主体と個々の弁護士との法律関係をどう規律するのか、常勤もあれば契約もあるし、恐らく個別というものもあるのかもしれないのですけど、その辺のところのつくり方の問題ですね。そういうところでも配慮していくべきだという御意見だということですね。よろしいですか、この辺は。
それでは、次の「2 弁護活動の水準・適正の確保方策」というところに進みたいと存じます。ここでは、先ほど説明がありましたように、四つの小論点が挙げられているわけですけれども、このうちの「(1) 運営主体によるルールの策定」という問題と、「(2) 運営主体による違法・不当な弁護活動への対応」は関連している問題ですので、できれば、(1) と(2) を併せて御議論いただければと思いますが、そういうことでよろしいですか。関連させて議論していただければと思うのですが、よろしければ、どなたからでも結構ですので、御意見をいただきたいと思います。
○浦委員 私の方は、運営主体が弁護活動のルールを定めることができるということは否定しないわけでありますけれども、運営主体がルールを定めるに当たっては、弁護士会の定めた基準を尊重されるべきでありますし、特に適正弁護、すなわち弁護活動の限界を画する基準につきましては、運営主体は弁護士会の定めた基準によってもらわなければならないと、そのように思っております。
まず、審議会の意見書は、公的弁護制度の運営主体につきまして、公的弁護制度の運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供し得る態勢を整備すべきであるというふうにしております。公的機関としてこのような任務を担う運営主体が、およそルールを定めることができないと解することができないのは当然でありまして、運営主体が組織体として、まず常勤弁護士の執務等に関して、就業に関する規定を定めることができるとしなければならないと思います。
さらに、運営主体がそれ以上に弁護活動のルールを定めることができるかということにつきましては、憲法で定められた被疑者・被告人の弁護人依頼権の保障の趣旨や、強制加入団体として自治権を有していて、運営主体とのかかわりの有無を問わず、全弁護士に対して懲戒権を有する弁護士会のルールとの関係を考える必要があるのではないかと思います。言うまでもございませんけれども、憲法34条、37条3項は、被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利、取り分け37条3項では、資格を有する弁護人に依頼する権利を保障しているわけであります。この憲法の趣旨は、国家刑罰権の対象となる被疑者・被告人が法律の専門家たる弁護士による効果的な弁護を受けて、自らの権利・利益が擁護される、そういう権利を保障するものであると考えられます。この場合、効果的な弁護を提供すべき責務といいますのは、第一義的には弁護士及び弁護士に対する指導監督を行うことを目的とする弁護士会にあると言えるわけでありますけれども、さらに、公費を受けて全国的に充実した弁護活動を提供できる態勢を整備して、国民に対してアカウンタビリティーを果たすべく位置付けられた運営主体におきましても、憲法の定める弁護人依頼権を制約するものでない限り、運営主体が確保する常勤弁護士や契約弁護士が効果的な弁護を提供し得るように弁護の質を確保するルールを定めることを否定することはできないのだろうと考えます。
しかしながら、一方で、運営主体においてそのようなルールを定めようとする場合に、強制加入団体であります弁護士会が、長年の国選弁護に関する実践も踏まえて、公的弁護に携わる多数の弁護士の納得と共感の下に、民主的手続を経て制定した弁護の質を確保するためのルールというものがあるとすれば、運営主体とすれば、それを尊重すべきでありまして、特段の理由もないのに弁護士会のルールとは異なったルールを定めるべきではないのではないかと考えます。そうでなければ、公的弁護の質の確保のルールが、弁護士会のルールと運営主体のルールとのダブルスタンダードになって弁護活動に混乱を招くばかりか、ひいては被疑者・被告人の弁護人依頼権の内容に悪影響を及ぼすものと考えられるからであります。
また、運営主体が適正弁護を確保するという観点から、弁護活動の限界について、弁護士会の基準と異なる運営主体のルールを定めることについては一層問題があると思われます。弁護活動は、国の刑罰権の対象とされた被疑者・被告人の権利・利益を擁護するところから、検察官を始め公的機関と対決を迫られることがあることは言うまでもありませんが、そのような場合に、訴追側の検察官の目から見ると、弁護活動として適正を欠いていると見える場合でありましても、弁護士ないし弁護士会の目からは正当な弁護活動であると評価されることもしばしばあるわけです。したがいまして、ある弁護活動が適正であるか否かということは一義的に決まるものではなくて、極めて微妙な問題をはらんでおりまして、運営主体の定めるルールというのは、場合によっては個々の弁護活動の自主性・独立性を侵しかねないものとなり得るわけであります。運営主体が定める適正弁護に関するルールは、公的弁護に関するものに限られるということになるわけでありますけれども、国選弁護と私選弁護は、選任の主体が異なるだけで弁護の本質においては何ら異なるところはありません。弁護士倫理にも、弁護士は私選、国選を問わず被疑者・被告人の正当な権利と利益を擁護するために最善の弁護活動に努めると規定されているところであります。にもかかわらず、運営主体が弁護士会とは異なる適正弁護のルールを定めるということは、私選弁護なら被疑者・被告人のために正当に行うことができる行為が国選弁護人には禁止されるというような事態を招くことになりかねません。そうしますと、資力のない被疑者・被告人には、私選弁護なら提供される弁護が提供されないということになるわけで、そのような結論が不当であることは明らかだと言えると思います。
したがいまして、弁護活動の適正さの確保という観点から、弁護活動の限界を画するということは、弁護士の強制加入団体として自治権の下で、加入弁護士に対して懲戒権を有する弁護士会が一元的にこれを担うものと考えられます。したがいまして、運営主体としては、弁護士会の基準によるべきでありまして、それと異なるルールを定めるべきものではないというふうに考えております。(1) の点については、そういうことであります。
○井上座長 ほかの方は、いかがでしょうか。
○??井委員 「弁護活動のルール」と書いてありますが、基本的に運営主体から見ると、懲戒のルールだということになろうかと思うのです。運営主体も一つの組織である以上、組織としての懲戒のルールを持つということは当然だと思うのですね。例えば決められた時刻に出勤しないとか、そういうものに何ら懲戒権が行使できないとなったら、これは困るわけですね。そして、ここでの問題は、運営主体の懲戒に関するルールの中に弁護活動の中身を懲戒事由として定められるかどうかということだろうと思うのです。ただ、運営主体における弁護士は、こういう弁護活動をすべきであるというような、そういう積極的な形で一定のルールを定めることはなかなか難しいと思うのですね。ですから、懲戒事由の中に取り込むときにどうするかということだと思うのです。
本来の筋からいえば、それは独立行政法人ですから、独自の懲戒規定を持てるというのが当たり前だと思うのですね。
○井上座長 そこまでまだ議論が行っていないのですが。
○??井委員 仮にそうだとした場合です。いずれにしても、組織である以上は、その組織独自の懲戒権がないとおかしいと思うのですね。その場合に、今、浦委員がおっしゃっていることももちろん一理あるわけで、一番いいのは弁護士会で定めているルールをそのまま持ってきて、それを新しい運営主体の懲戒ルールの一つにするということができれば、それは一番いいことだと思うのですが、仮に弁護士会がつくらなかったらどうするのかという問題もあるわけです。
というような問題を考えると、常に弁護士会の決めたことにそのまま乗っかるのが当たり前だと、それしか道がないというのもいかがなものかと思うのですね。ですから、まずは弁護士会がつくるべきだと私は思うのですが、一定期間、例えばそれは今議論していますと、2年先、3年先になったらできますというようなことを言われたときに、それまでノールールでやるのか、それはなかなか難しいことではないのか。だから、一定期間、合理的な期間、弁護士会の方で検討していただいて、それで間に合わなければ、運営主体の方で考えざるを得ないというふうになるのではないかと思うのです。いずれにしても、運営主体独自で一定の懲戒ルールを持つというのは当然ではないかと思います。
○浦委員 今の点・・・。
○??井委員 懲戒というのは、常勤としての身分に対する懲戒で、弁護士という身分に対する懲戒ではありません。
○浦委員 弁護士会のルールということで言われましたが、言うまでもありませんけれども、審議会意見書が、弁護活動の質の確保について、弁護士会が弁護活動の質の確保について重大な責務を有することを自覚して、主体的にその態勢を整備すべきだ、そういうことを言っているわけで、これに対しまして、弁護士会は、この意見書の趣旨に則って、その責めを果たすべく、全国の単位会で、今、「国費による弁護人の推薦等に関する準則」の策定作業を鋭意行っているところであります。
この準則は、弁護士会で2000年から約3年にわたる時間をかけて、全国で激しい討議を行った結果、公的弁護について、弁護活動の質を確保するためのルールとしては、現段階での一応の落着点として定められたものであります。こういう意味で、この準則は、弁護士によって民主的手続を経て定められたものと言えるのでありまして、今、この準則に則って全国の単位会での規定化の作業が行われております。
そういうことで、運営主体としましては、意見書の趣旨に則って弁護士会の準則を尊重して、その策定と今後の運用を見守るべきではないかと思います。この準則については、これが十分かどうかは議論のあるところかもしれませんけれども、日弁連では弁護士倫理を弁護士業務基本規程に改定して、その内容と効力についても見直す議論を行っているところでありますし、準則の規定につきましても、将来において支障が生ずるということであれば、その時点で更に改定作業ということも当然考えられるところだと思います。
○井上座長 よく分からなかったのですが、二つのことを言われて、推薦についてのルール、これは前にヒアリングで伺ったことだと思うのですが、それを今全国の単位弁護士会で採択を進めているということと、もう一つ、最後の弁護士倫理を何に改めると言われましたか。
○浦委員 弁護士業務基本規程。
○井上座長 その二つは、どう違うのですか。
○浦委員 弁護士倫理と。
○井上座長 はい。
○浦委員 これは、現行の弁護士倫理は直接懲戒事由にはならない。懲戒事由の一つの解釈根拠みたいなものとしてつくられているわけですけれども、会規としてそれに直接的な効力を付与するというふうな議論が今行われているわけで、これが弁護士会で今行われていると、そういう趣旨なのです。
○井上座長 そうですか。前の御説明ですと、それは解釈基準だとおっしゃっていましたね。解釈基準ということは、例えば偽証教唆したというようなことが書かれていたと思うのですけれど、そういう場合にも、ほかの一般規定の違反として、懲戒手続に乗り得るという、そういう位置付けだったと思うのですが、今度はどうなるのでしょうか。今、検討されているというのは・・・。
○浦委員 なるかどうか分かりませんが、議論されているところです。
○井上座長 それに違反すると、直に懲戒に結び付くような一種の格上げというか、そういうことを検討されているということですか。
○浦委員 内容も含めて、そういうことです。
○井上座長 分かりました。どうぞ、酒巻委員。
○酒巻委員 ただいまの浦委員のお話に出てきた最初の方の準則について、前にも概要を承りました、国費による弁護人の推薦に関する準則について質問です。この問題を考える前提として、現在の単位会の採択の状況を教えていただければと思います。
○浦委員 日弁連の担当者なら分かると思います。
○井上座長 お分かりですか。
○高階氏(日本弁護士連合会副会長) 分かります。
○井上座長 突然ですみませんが、御説明くださいますか。
○高階氏 日弁連副会長の高階でございます。現時点の状況を御報告します。若干遅れ気味であったのですけれども、この4月以後急速にそれは進みつつございます。今日の時点で、52単位会のうち35の弁護士会で既に機関決定をしております。それから、あと10の単位会につきましては、機関決定に向けて手続中でございます。これで45になります。あと7につきましては、まだ検討中でございます。この残った7につきましては、この7月、8月のうちに、私ども日弁連の執行部の方で各弁護士会に出向いていろいろ協議し、むしろ実質的な説得をして制定の方に向けていきたい、こういうふうに思っているところです。あと残った7につきましても、7月、8月のうちに制定の目処をつけたいと思っています。そんな状況でございます。
○井上座長 ありがとうございました。それでよろしいですか。
○酒巻委員 はい、ありがとうございました。
○本田委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、公的弁護制度の下でも、個々の弁護活動の自主性・独立性が尊重されなければいけないというのは当然のことだと思いますけれども、公的弁護が税金で賄われるものだということになりますと、これを費やすことについての国民の理解と納得を得なければいけない。そうすると、違法・不当な弁護活動に公的資金を費やすということについては、国民の理解と納得は到底得られないのではないかと考えます。運営主体というのは、公的弁護を提供する立場にあるわけですから、提供する弁護活動が適正なものであるように措置を講ずる義務が当然あるのだろう。
弁護士会の方で、いろいろ推薦準則や弁護士倫理の業務基本規程ですか、こういうことに向けていろいろ努力されていることについては歓迎したいと思うのですが、弁護士会においてルールを定めるということと、運営主体がルールを定めるというのは別の事柄だろうと思います。運営主体というのはその責任を果たす義務があるわけで、やはりきちんとしたものをつくっておかないと税金の運用はできない。ルールの内容をどういうふうにつくるかというのは、運営主体によって意思決定機関を設けてそこでやるというようなことも当然考慮されていくべきだろうと思います。
ルールの内容については、最終的には公正中立な機関である運営主体において検討すべき事柄であります。公正中立な機関ですから、法務省とか日弁連や裁判所とは当然別の機関でありますので、そちらで検討して定めることになる。だから、日弁連の方でいろいろ弁護士倫理についていろんな作業をされているということで、そういった内容を十分斟酌するということは考えられるのでしょうけれども、日弁連の方で定めた規範そのとおりにならなければならないという必然的な関係にはならないのではないかと思います。
○池田委員 運営主体が公正中立な立場から、後で出てきますけれども、ボードをつくって、そして、そこでルールづくりができるというのは、これは先ほど来異論のないところで、そういうことを前提として、どういうものをルールとして定めることができるかということになるわけですけれども、弁護士の場合には特殊性があって、全部日弁連に入ってなければいけないと。そちらの方の締め付けがあるということで、運営主体が良い方、こういう弁護活動が望ましいという方のことは、それは競争してでもレベルをどんどん高くする方がいいと思うのですが、悪い方は、こういう違法・不当なものは駄目だというのは、私選弁護と国選弁護とで異なるというのもやっぱり変な話ですので、一致する方が望ましいわけです。ですから、そういう意味からすると、運営主体がルールの内容を独自に決められるわけですけれども、弁護士会の方でも、それについてルールをつくろうと努力しているということであれば、それを運営主体が採用できるものなら、それを採用するのが一番望ましい、一致するのが望ましいということですので、日弁連側には更に努力してもらって、運営主体がこれでいいというようなもの、採用できるようなものをつくってもらうように努力してもらうべきではないかと思うのですが。
○??井委員 弁護士会がつくるのは、弁護士としての身分の得喪にかかわるものですね。運営主体の場合は、別に弁護士としての身分の得喪にかかわるものではなくて、運営主体の傘下で公的弁護をするという立場に対するものだと思うので、これは位相が違うと思うのですね。ですから、先ほど池田委員がおっしゃったようなことは、一つの理想ではあるのだけれども、逆に言うと、弁護士としての身分ではなくて、運営主体の傘下で公的弁護をするという身分との得喪と、弁護士としての身分の得喪が一致してしまうというのはかえって不合理な場面も出てくるのではないかと思うのです。ですから、運営主体としては、独自に一定のルールを持つということはあっても当然いいと思うのです。
もう一つは、盛んに浦委員とか弁護士会が心配している問題はありますけれども、仮に一般の弁護士から見て、そんなルールでまともな弁護ができるのかというようなルールを運営主体がつくれば、そんな運営主体には誰も参加しないわけで、公的弁護はもたなくなるだけの話ですから、運営主体に任せたらむちゃくちゃなルールをつくるというようなことを心配することは、実際はそんなに必要ではないのではないかという気がするのですけれども。
○大出委員 ちょっと確認ですけど、今の??井委員、その前の本田委員の御発言の趣旨も、職務の在りようにかかわって懲戒事由が発生することはあり得ることだと思うのですが、今のお話は弁護活動自体についてもということですか。
○??井委員 ということもあり得ますね。
○大出委員 例えば勤務時間というか、何日の何時にちゃんと行くべきはずのところに行かなかったとか。
○??井委員 虚偽証拠と知りつつ出したとか、それはやっぱり懲戒対象になるでしょう。運営主体は。
○大出委員 弁護士会も当然ルールは、そこはつくるのでしょうから。
○??井委員 今言ったように、弁護士としての身分の得喪と、それから運営主体において公的弁護をやるという立場の得喪というのは分けて考えなくてはいけないのではないかと私は言っているわけです。
○井上座長 たまたま一致しても別に構わないということでしょう。
○??井委員 一致させなければいけないということ自体、それはおかしいと思うのです。
○井上座長 言っておられることはそう違わないのではないかと思うのですが、浦委員も、一字一句それを写せということまで言っておられるわけではないのでしょう。
○浦委員 弁護士会の準則を守ろうというふうな規定が、運営主体が持つという程度のことであれば一番いいわけですね。
○井上座長 ですから、その場合、準則の中身にもよりますね。単なる思い付きなのですけれども、要するに弁護士会としては、推薦準則と倫理というのを分けて二本立てという構成ですね。しかし、その倫理の中に偽証教唆をしてはいけないとか、虚偽の証拠を捏造してはいけないということが入っているわけですよね。そういうのを受けて、そういうことをしたら、運営主体としてクビにします、ということは当然あっていいわけでしょう。
○浦委員 それは、後の(2) の問題になるのですけどね。
○井上座長 ですから、そういうルールを運営主体として独自につくるというのは、実質的には何も矛盾しないのですね。
もう一つ、イメージがよく分からなかったのですけれど、??井委員が言われたのは、何のためにそういうことを問題にするかという位相が違うと言われたのはそういうことだと思うのですが、弁護士会としては、弁護士としての身分にかかわるようなところに結び付いていく問題ですね。ところが、運営主体としては、運営主体との関係、雇用関係とか契約関係をどうするか、そこに結び付いていく問題なので、手続的には別だろうと思うのですね。実体的な基準は仮に同じだとしても、それは別々であってもいいわけでしょう。
○浦委員 その点につきましても、(2) の問題とかかわってくる。つまり、違法・不当な弁護活動の場合、その場合につきましては、違法・不当な弁護活動というのは、これは刑訴法とかその他の弁護士倫理に違反した活動であれば、これは弁護士法上の懲戒事由になり得るわけですね。懲戒処分の対象になります。その場合に、先ほど述べましたような適正か否かの判断、あるいは当該弁護活動が違法か不当かということにつきましては、やはり国の機関と弁護士ないし弁護士会との間で相対立することはあり得るわけですね。
こういう場合に、国の機関である運営主体が、弁護人の活動をとらえて違法・不当だと速断して、弁護士会の懲戒手続の判断に先行して、常勤弁護士を解雇する、あるいは契約弁護士との契約を解除するというふうな措置をとったときには、個々の弁護活動の自主性にもかかわる問題だし、自治権ともかかわる問題として問題が生ずるのではないかという気がするわけです。
確かに、今座長も言われましたように、弁護人に選任された常勤弁護士や契約弁護士が違法・不当な弁護活動を行った場合には、常勤弁護士の解雇事由あるいは契約弁護士の契約解除事由になるし、最終的には運営主体がそのことを理由に解雇とか解除をなし得るだろう、そういう措置はとり得るだろうと思うのです。しかし、運営主体によるそういう措置は弁護士会の懲戒手続の結論を待ってなされるべきです。また、その結論は尊重されるのが相当ではないかと考えます。
もちろん制度論として、先ほど座長が言われましたように、二つは違うのだという、そういうことは言えると思いますし、運営主体としての措置は必ず弁護士会の懲戒手続の判断を待って、それに拘束されなければならないとは言えないと思いますけど、懲戒権を弁護士会に付与したという、そういう弁護士法の趣旨からしましても、弁護士会の懲戒判断を尊重するという運用が強く求められるのではないか、そのように思います。
○井上座長 そこまで言えるかどうかですね。
○浦委員 公務員が起訴された場合、有罪・無罪の判断があるまで懲戒処分がなされないことが多いですよね。その前にやることもありますけれども。
○井上座長 それと同じ問題なのですかね。
○浦委員 それと似たような問題になっているのですね。
○井上座長 浦委員の場合は、違法か合法か、正当か不当かの判断が微妙な場合を想定されているのですが、明白な場合でも待たないといけないということですか。
○浦委員 原則として待つべきで、もちろん明白で、あるいは本人が自白して、認めているという場合には、それはまた別の扱いが可能だと思いますけれども。
○井上座長 お考えは分かりました。違う御意見もあるかもしれませんので。
○酒巻委員 今の浦委員のお話を聴いて、思い付きで恐縮なのですけれども、違法・不当な弁護活動があったと仮に運営主体の方が考えた場合に、今の懲戒請求の手続というのは、別に誰が行ってもいいのだと思うのですけれども、運営主体が弁護士会に懲戒請求するということだって形としてはあり得ますね。
○浦委員 あり得ます。
○酒巻委員 そういうこと自体は、別に構わないのですか。
○浦委員 問題ないと思います。検察官が今でも現に懲戒請求なさっていますので。
○井上座長 ただ、浦委員がおっしゃっているのは、こういう問題については、弁護士会の判断を先行させるべきだし、尊重すべきだということなのでしょう。
○酒巻委員 そうすると、仮に運営主体が違法・不当弁護だと判断し、懲戒請求したとしても、もし、その判断が弁護士会の方の判断と違っているということになれば、あまり意味がないということになってしまうのですか。
○井上座長 割り切って言えば、違った場合に不当だと思えば、それは解雇権を濫用したといった訴えを起こせばいい、そういう割り切り方もできなくはないと思うのですけれど。
○酒巻委員 すいません。もう一つだけ質問させてください。後の方の話とも関連するのかもしれませんが、弁護士会の内部での、正に自主的な団体として正式な懲戒手続があるわけで、それは非常に大事なことなのですけれども、もう一つ大事なことは、外から、第三者から見た場合に、それが的確にそれなりに迅速に働くということも重要だと思うのですね。ところが、聞くところでは、余りスピードが速くないというようにも伺っているわけです。まず、訴追に当たる綱紀委員会の決定があり、それから懲戒委員会が審理する。確かにそれが慎重、適切に働くことが必要なわけですが、大体どのぐらい時間がかかっているのか教えていただきたいと思います。
また、仮に運営主体が、自分の雇っている常勤弁護士が違法・不当な弁護をやったと判断し、弁護士会に対して懲戒請求をしたとして、懲戒手続が行われている間、その人をどう処遇するのか。もし懲戒手続のスピードが余りに遅いと、そういう懲戒手続の対象になっている人を、刑事弁護に使うというのは、これはお金が税金ですから、外から見た場合に、難しい問題だと思うのです。私の希望としては、そこはルールの策定とともに、ルールのエンフォースメントも迅速、的確にということこそが弁護士の自主性・独立性にとって、より強いサポートになるように思うのです。その辺のところについて、御意見を賜れればと存じます。
○浦委員 懲戒に平均どのぐらいかかっているかというのは、私は資料を持ち合わせていないのですけれども、これは各方面から指摘されているところでありますが、最近は懲戒手続を早く終わるように努力しているということで、これまで長くかかっている懲戒手続の期間をどれだけ短縮できるか、それをどれだけ迅速に行えるかとかかわってくるのだろうと思います。
また、場合によっては、今、酒巻委員から言われた綱紀委員会を経て、懲戒相当として懲戒委員会にかかった段階では、例えば公務員の場合には起訴されれば起訴休職があるわけですから、その時点で運営主体としての何らかの措置も考えることを検討することは可能かもしれないという気はいたしますね。
○本田委員 今の酒巻委員の話と似たような話なのですけれども、懲戒に付すまでには、綱紀委員会にかけて、懲戒手続相当の決定をして、それから懲戒委員会が審理してと、懲戒の結論が出るまでが一般的に長いですね。常勤弁護士が違法・不当な弁護活動を行ったことが明白な場合など運営主体が違法・不当だと判断した場合に弁護士会の判断が出るまでずっと給料を払い続けるのかと、税金を。それではやっぱり国民の納得は得られないだろう。だから、運営主体の方できちんとしたルールをつくって、あくまでも公正中立な機関である運営主体がきちんとルールをつくって、その運営主体の中に、例えばボードみたいなものをつくって、そこできちんと判断して、的確にルール違反した者については、国選弁護はそこで終わりだと、常勤は解雇、契約は解除というような形にしておかないと、これは到底国民の納得は得られないと思います。
○樋口委員 議論が非常に細かく精緻なところに入っておられてかみ合わないかもしれないのですけれども、当初の出発点といいますか、戻って考えますと、結論は運営主体において弁護活動に関する必要なルールを定めるというのは非常に常識的な結論なのではないかと思います。弁護活動のルールといった場合に、弁護士会において規律されるべき事項、これを本当にすべてカバーするのかどうか、やや違った面があるのではないのかといったようなこともあるのかもしれませんけれども、要は弁護活動の適正さをどう担保するかだと思います。公的資金が入るわけですから、どう担保するかという観点から考えを進めていくと、一つは、弁護士会の役割もあるでしょうし、それから裁判所の解任権の適切な行使等を通じて担保されるべきものもあるでしょう。それとともに、運営主体は、運営主体としてルールを定める。それはそれで常識的な帰結ではないのかなという考えであります。
実務の実態から言いましても、確かに数が多い少ないはあるでしょうが、偽証でありますとか、虚偽の陳述の教唆、証拠隠滅等にわたる違法な行為も見られるところでもございますし、それから、被疑者の考えでありますとか、事件のいろんな特性があるわけですが、その辺りを捨象してしまって、弁護人の立会いがない限り黙秘することを勧めるといったような弁護活動も、これらは私どもはやはり不当な弁護活動であると思いますけれども、実際にあるわけでございまして、こういった弁護活動をどう排除できるのかといった観点を中心に据えてと申しますか、どう適正さを担保できるかということを考えるべきではないかというのが意見でございます。
それから、今、議論されているところからちょっと外れるのですが、前回、発言できなかったものですから、一つ付言させていただきたいのです。こうした確かに実務上違法・不当な弁護活動といったものがあるということなのですが、違法・不当な弁護活動につきましては、裁判所による解任事由としても明記しておく必要があるのではないかという考えでございます。
○井上座長 そういう御意見ですが。
○大出委員 先ほどの本田委員の御趣旨で、懲戒手続に時間がかかるというようなことは多分そうなのだろうと思うのです。それは配慮されるべきことだと思います。私も、実は綱紀委員会をやらせていただいたことがあって、委員会での中身ということでいけば、それなりに慎重にやられていることは間違いなくて、どうしてもそれは身分にかかわる問題になってくるわけですから、それなりの調査なり審議が必要だという部分もあることは間違いないと思うのですね。ですから、そこでの時間との関係で、何らかの不十分性が生ずるとすれば、それなりの配慮といいますか、さっき起訴休職的なものというようなことも浦委員おっしゃいましたけれども、そういったことはあってしかるべきなのかもしれないという感じはするのです。
ただ、そのことを前提とした場合であっても、なおかつ、先ほど来の御主張との関係でいくと、公的弁護ということで、公費が注入されることによって配慮されるべき中身というものとしてどういうことがあるというふうに想定されているのか。
今、樋口委員がおっしゃったことからすると、弁護活動についてのルールということになったときに、事例として、私は必ずしも十分今理解できなかったのかもしれませんが、それは不当だということになると、弁護士の方たちの間では少し議論になる可能性がある。つまり黙秘権の問題のところですね。それまでがルールの中へ入ってくるとなると、ちょっとそこはそう簡単ではないという感じもするものですから、具体的に公費が注入されることによって、先ほど言った時間の問題はともかくとして、弁護士会が迅速に措置をすればそれで問題はないのだということでなくて、具体的に中身として、こういう点について、運営主体としてどうしても措置しなければいけないという具体的な何かあるのかどうかですね。何かその辺を想定されていることがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
○井上座長 今の御趣旨は、弁護士会とは異なるルールで運営主体が規律することが必要な事柄があるかということですか。
○大出委員 ですから、さっき樋口委員がおっしゃったうちでも、全部ではありませんけれども、多分弁護士会のルールに入ってくると思うのですね。ですから、そういうことでないことで、何か公的資金を注入することによって、どうしてもこの点だけは別にルールをつくる必要がある場合があるのではないかというようなことが想定されているのかどうか。
○本田委員 ルール自体は運営主体の方で検討されるべきで、私どもがどうこうここで言う問題ではないと思うのですけれども、少なくとも、今、弁護士倫理に書いてあることがありますね。偽証とか虚偽の証拠をつくり出すとか、そういうものが違法・不当な弁護活動であることは間違いない。そういうことが行われた場合に、運営主体がきちんとした措置ができないとおかしいでしょう。
それから、先ほど弁護士の身分に絡む問題だから慎重になされていると、綱紀委員会、懲戒委員会、それはそうなのでしょう。ただ、運営主体がとる措置というのは、別に弁護士資格を剥奪するわけではない。先ほど??井委員から正に正しい指摘があったわけで、それは国選弁護として、国費を注入してこういうことをやるのは問題があるので、やめてくださいと。しかし、弁護士資格まで剥奪するわけではないわけで、そこは当然違った手続で行われて当たり前だろうと思います。
○大出委員 違うことについて別に異論を言っているわけではなくて、具体的な今の場合、ですから・・・。
○井上座長 実体的な基準について、非常に微妙な部分があって、判断が人によって違うということは、恐らく弁護士会の中でも同じようなことが問題になり得ると思うのですね。したがって、その問題はその問題として、むしろ枠組みというか、仕組みとして、それぞれが独自に判断する。それぞれというか、運営主体が別に判断するという、そういう仕組みにするのかどうかですね。
それとも、浦委員がおっしゃるように、弁護士会の方を実体的にも手続的にも尊重して、その判断を待って、運営主体の方で、後追いと言ったら悪いのですけれど、それを待って処分をするならする、ということにするのか。そういう問題になるのだろうと思うのですね。
○大出委員 御意見を伺っていると、弁護士会による身分問題と運営主体の雇用関係との違いというのがあるのはそれで分かりますけれども、お話を伺っていると、弁護士会の今までの懲戒手続が非常に時間的に、時間がかかってしまったりして、そこが迅速に処理されないことによって、問題がむしろ複雑化しているといいますか、大きくなっているというような御趣旨のようにも聞こえたものですから、そうではないとすれば、何か実体的な要件として違いというものを本当に用意しなければいけない。そこが迅速に処理されてくれば、後追いにしてみても、それを待ってということもあり得るという御趣旨なのか、それとも更にそうではなくて、別に基準を設けないと、そこは運営主体としては処置しきれないという話なのだということなのか、そこをちょっとお伺いしたかったのです。
○??井委員 大出委員の質問に答えることにもなりますが、それは私の意見としては、そういうふうにしないと弁護士の自治が守れないということです。浦委員がおっしゃっていることとか、日弁連が言っていることは、弁護士自治から見て極めて危険であると私は思います。要するに、浦委員とか、今の日弁連の意見は、要するに弁護士の身分の得喪と運営主体において公的弁護を担当する立場が連動するということになるわけですね。これを本来切り離すことにこそ弁護士の身分保障があるわけです。
片や弁護士会の自治の中には民事の世界もいっぱい含んでいるわけですね。ところが、公的弁護の方は、刑事事件の問題なわけですね。そこでの行動によって、要するに民事事件も何もできなくなるということに、連動するということは、なるわけです。ですから、それはかえって弁護士自治を害する。今の弁護士会の懲戒手続は遅いから駄目だという問題ではなくて、理念的に弁護士の独立を害すると。私は、なぜそこに日弁連が気付かないのか不思議でならないけれども。
弁護士会というのは極めて私的な団体だけれども、仕事が公的だから自治が認められている。極めてそれは私的自治の範囲だと私は思うのです。ところが、運営主体というのは、半ば公的なものですから、当然そこには別のルールが働くのは当たり前なのであって、弁護士で本当に私的自治の世界のルールを公的な運営主体のルールと重ね合わせるということは本質的に極めて危険であると、私は一弁護士として思っているわけです。ですから、これは二つを分けて論ずることこそ弁護士の自治に資するというふうに思っているということが第1点。
それから、今、樋口委員が指摘された問題、例えば弁護士が立ち会わない限り完黙しろというような指導は不適切である、あるいは違法であるという指摘がありましたけれども、確かに捜査サイドから見ればそういうふうに思われる。しかし一方、弁護士会から見ればそうではないという意見は当然出てくるわけであって、何が適法、何が違法弁護か、これは極めて難しいのですね。弁護士会の中でも意見の一致は多分見ない。ですから、何をもって違法な活動かということは、それはまた別途本当はきちんとした機関を設けて、ここから先は違法だという議論を別途やるという仕組みというか、そういう作業が必要だと思います。ただ、ここでその議論を始めると、余りにも議論が複雑になって、なかなか議論は整理されていかないと思います。
○井上座長 私が申し上げたのも、後者はそういう趣旨です。要するに、ここでは、仕組みの問題を議論していただきたいということです。
○平良木委員 私は弁護士会のつくっているルールと、運営主体がこれからつくるであろうルールは違うと思うのです。弁護士会の方は、これも先ほどから出ていましたけれども、弁護士の身分とか業務に関するものであって、それに対して、運営主体はどちらかというと、当該事件から外れるとか、あるいはトータルで契約を解除するとか、そういう問題になる。ですから、二つ並立しても、ちっとも構わないだろう。ただ、運用の問題として、それをどういうようにつくっていくのかというのは考えなければならないところだろうと思います。ですから、両方のルールが連動しなければいけないという議論を採る必要もないだろうと思います。
○浦委員 例えば違法・不当な弁護活動があった場合、運営主体では違法・不当だと判断されたけれども、弁護士会の基準では違法・不当ではないと判断される。そういうことも当然あり得るわけですよね。
○平良木委員 あり得るわけです。
○浦委員 逆に公的弁護であるから、さっきちょっと申しましたけれども、私選とは違う基準でしか弁護を受けられないというふうな、そういうことにもなりかねないような気がするのですけれども。
○井上座長 そういうことを言っておられるのでは、どうもないような気がするのです。
○浦委員 基準が違うとすればですよ。
○井上座長 要するに、運営主体としての責任を、お金を出していただいている、究極的には国民だと思うのですけれど、国民に対して責任を持たなければいけない。そのために基準を立てて手続をつくるということであって、実体的な基準としてかけ離れたことを考えておられるようには聞こえないのですが。
○浦委員 その基準を考えていけば、それは重なってくるように思われるのですけれども。
○井上座長 浦委員もほかの方も、違法・不当なという一般的・抽象的な概念のレベルでとどまって議論しておられるから、違法・不当なというところの評価がすごくずれるではないかという話になってしまうのですが、それをもっとブレークダウンして、具体的にこういうことはいけません、というふうに書いていかなければいけないのでしょう。
○浦委員 こういうのは頑張りましょうというのは、それはあり得るかもしれませんね。
○井上座長 そういう作業をしていけば、そんなに食い違ったものにはならないのではないかという・・・。
○浦委員 ブレークダウンするというのは、例えばどういうことを言われるのですか。
○井上座長 基準の中身を具体化して、違法・不当と認められるような場合を列挙していくということです。無論、どうしても最後のところは、バスケット条項として、違法・不当なことをやった場合は懲戒にするというのが残るかもしれませんから、弁護士会でそういう規定を設け、運営主体も同じ規定を入れたとしても、具体的な事例について両者の間で判断が食い違うということは理論上あり得ます。しかし、それは、弁護士会の方が緩くて、運営主体の方が厳しいという場合もあれば、運営主体の方が緩くて、弁護士会が厳しいということもあり得るので、手続が二つである以上はあり得ることですよね。
○浦委員 それは一元的に考える・・・。
○井上座長 一元的にすべきだ、弁護士会の判断を前置すべきだ、というのが浦委員の意見だということですね。
○浦委員 先ほど本田委員が言われたところで、違法・不当であることが明白な場合に、運営主体では何もできないのかとおっしゃっておられます。違法・不当であることが明白であれば、これは懲戒手続も恐らく早く結論が出ると思うのですね。先ほど樋口委員のおっしゃった弁護活動の問題につきましては、これはかつて弁護士会と法務省との間の法曹三者の意見交換会が行われていましたが、そこでも違法・不当な弁護活動ということで、いくつかの事例について法務省から弁護士会に対して指摘がありました。しかし、それらについては、いずれも違法・不当ではないのではないかということで、弁護士会が反論したという経過もありました。そういう意味では、事ほどさように、違法・不当であるかというような判断につきましては、法務省あるいは検察庁や警察と弁護士会との間で非常に評価が異なる場面というのは多々あるわけです。それを一刀両断に、駄目だ、いいということはとても言えないだろうと、そのように思っています。
○本田委員 先ほども座長からの指摘があったように、違法・不当という言葉を私は使っていますけれども、そういったたぐいのということを言っているだけで、違法・不当なことがあったら懲戒すると規定しろと言っているわけではないのです。だから、例えて言えば、具体的に弁護士倫理に書いてあるようなことがあるでしょうと。そういうものがあった場合に何らかの措置がとれるような手続を運営主体が持たないとおかしいのではないですかと言っているだけで、違法・不当な弁護活動があったら懲戒するという規定を設けろと言っているわけではないのです。そこは誤解のないようにお願いします。
○井上座長 実体的な基準の具体的な中身、在り方については、さっき??井委員が言われたように、それ自体を対象にした議論の場をつくって議論していくということでないといけないと思うのですけれども、仮にそういうものが弁護士会でつくられるとして、運営主体として、それに完全に従わないといけないということになるのかどうか。また、仮に実体的な基準が一致したとしても、更に手続として、弁護士会の判断を待たなければならない、前置しなければならないのか。そこが意見の分かれどころだと思うのですね。
先ほど起訴休職の例を挙げられましたけれども、果たして雇用関係でそれができるのかというのは、法制上考えなければならない問題のようにも思えます。今は、公務員法でそうなっているので、公務員についてはできるのですけれども、普通の雇用契約でも果たしてできるのかどうかですね。その辺もまた考えなければならないのだろうと思います。
○樋口委員 ここは仕組みの問題をまず議論するのだという整理で円滑に議事が進められているところで、また混乱させるようなことは本意ではないのですけど、違法・不当な弁護活動といったものがルールなるものに入るのか入らないのかというのは先送りの話ではないかもしれませんですよね。
○井上座長 抽象的にそのように書いておくだけでよいのか、もっと具体的に書くのかということですね。
○樋口委員 法制的な検討というのは必要なのだと思うのですけれども。
○井上座長 両者の中間として、例示を挙げて、最後に包括条項を置くということもあり得て、どういう在り方があるのかということにももちろん密接にかかわってくるのですが、しかし、先ほどからどうも抽象的に、違法・不当というレベルだけで議論がされ、基準や判断が大きくずれるといった想定で話が展開されている印象を持ったものですから、具体的に考えれば、そうではないのではないかということを申し上げたのです。
○樋口委員 それともう一点なのですけれども、運営主体がカバーするのは契約弁護士と常勤弁護士なわけですから、一般弁護士をどうするのかという議論は、やはり一つの問題ではないかと思います。
○井上座長 そこは一般弁護士と運営主体の関係をどういうふうに構成していくのかということと連動しているものですから、それを踏まえて、考えていかなければいけないということですね。
○??井委員 いいですか。
○井上座長 先の事項もありますので、それを念頭に置かれて、簡潔にお願いしたいと思います。
○??井委員 一般論としては、別に公的運営主体から税金をもらっているわけではありませんから、一般の国選のルールに従うということで、そういう意味では、そこは二元に分かれたっていいのではないかと思います。
○井上座長 運営主体と一定の法的関係を持っている場合に、その法的関係を切るということはあり得るように思うのですけれども。分かりました。ほかに、よろしいですか。それでは、先に進ませていただきたいと思います。
(2) の方は、今の議論の中でほぼカバーされていたと思いますので、(3) の「運営主体による刑事弁護全体の質の向上への取組」という点について、先ほどの説明を踏まえまして、御意見を伺いたいと思います。
○??井委員 これは、こういう機能を積極的に運営主体あるいは常勤事務所が果たすべきであるというふうに思います。従前、ややもすると、従来との国選と同じような感覚で、今後の公的弁護を論ずるきらいがないわけではないのですが、この前の裁判員裁判の方の検討会で議論になっているように、今後、例えば証拠開示がルール化されると、能力のある弁護士だったら出てくるけど、能力のない弁護士だったら出てこない証拠というのもあり得るわけで、弁護士の力量によって差がつくということは十分あり得るわけです。今までは、極端な言い方すると、誰でもできる国選弁護だったのだけれども、今後は誰でもはできない国選弁護になるということです。
○井上座長 それは、??井委員しか言えないことですね。
○??井委員 言論の自由だから言いますけど、だから弁護士はボランティアでやるのでなくて、もっと真剣に刑事弁護をやりなさいという時代が来るわけですから、当然専門性というものを身に着けなくてはいけない。そのためには、やはりそのための教育機関が必要であるし、いろんな統計資料を提供するための機関も必要なわけですね。ですから、そういうノウハウの集積場所として、運営主体あるいは常勤事務所が機能するということは、裁判員裁判制度がうまく機能するためにも是非とも必要なことだと思います。
○井上座長 ??井委員、運営主体でそういうノウハウを蓄積していく、それを還元するということなのですけど、弁護士会との関係はどうなるのですか。
○??井委員 余り問題になるとは思わないのですけど、弁護士会が運営主体にいる常勤弁護士を講師に招いていろいろ教えていただくとか、いろいろやればいいのではないでしょうか。だから弁護士会もそこを十分活用すると。当然弁護士会も常勤弁護士に教えないではなくて、全部アクセスフリーにして、一般弁護士もちゃんと情報を提供するという形で考えていくのが前提ですね。
○井上座長 運営主体というものをどういうふうにイメージするのかによって、一般の弁護士さんの対応が大分違ってくるのかなという感じも、先ほどの議論を聴いていてしましたけれど。司法制度改革審議会でも、ポジティブな面として、そこにデータやノウハウがたまっていく、それを一般弁護士さんも活用することによって、刑事弁護全体に還元していくという、そういうことを強調していたのですが。
○浦委員 今、??井委員のおっしゃったとおりで、運営主体が刑事弁護活動全体の質の向上に資するというのは、これは望ましいことだと思います。ただ、座長からも御指摘がありましたが、運営主体がそういう活動をされるに当たっては、弁護士会とも連携をとっていただいて、その連携の中でお互いレベルアップしていく、そういう作業が必要になるのだろうと思います。
○井上座長 そうですね。連携という点で、一方が他方に従えということばかり言うと亀裂が生ずるので、無論必要なところでは批判し合い、切磋琢磨し合うということが必要だろうと思うのですね。そういうふうに持っていけば、先ほど議論したところも大分違ってくるのかなというふうにも思いますね。
○酒巻委員 ??井委員がおっしゃったとおり、私は、この運営主体が刑事弁護について、正にたたき台に書いてあるような情報のセンターになり、刑事弁護の様々な知識・技術等を蓄積して、広く一般弁護士にそれを広げていく、その中核になって、日本の刑事弁護全体の質が向上するという夢を持っていますので、是非そういう形になってほしい。その前提として、弁護士会の刑事弁護センター等、様々なところと友好的な協力が行われるということを強く望むところであります。以上です。
○平良木委員 付け加えておきますと、ここがうまく機能することによって、例えば法科大学院の実務家教員の貴重な給源になるのではないかというような気もしております。
○井上座長 給源というのは、法科大学院の先生の給源ですか。
○平良木委員 教員です。
○井上座長 分かりました。ここは、このくらいでよろしいですか。
(4) に進み、「推薦、連絡又は選任の欠格事由」という問題ですが、この点については、いかがでしょうか。
○本田委員 この欠格事由の話なのですけれども、裁判所の国選弁護人選任の際の欠格事由というものについては、解任事由を定めることとリンクさせて、例えば一定の不適切な弁護活動により解任されたことがあるときなどは、公的弁護制度において、弁護人に選任できないと。一定期間にするのかどうか、そこはいろいろ検討の余地があると思いますが、そういうことにして、弁護人の選任の欠格事由を設けると。これによって、公的弁護制度に対する国民の信頼を確保するという形にすべきだろうと思います。
○井上座長 という御意見ですが、他の方はいかがですか。どうぞ。
○浦委員 この欠格事由については、現状でも行われていないわけですし、現時点でこれを新たに設ける必要はないのだろうと思います。先ほど事務局からの説明で、この場合に推薦の問題をどう考えるのかともリンクして意見を述べろと、そういう御指摘がございました。前回、私は、弁護士会が推薦される弁護人としての適格性に関する名簿については、法的なものとして考えるべきだということを申し上げましたが、この点については、いろいろ考えますと、結局は運用上のものということになるのかというふうに私はその後思い考えております。
そういう意味で、前回のその点につきましては、なお、検討はしますけれども、その場合には、弁護士会の推薦準則によって、推薦停止された場合に資格はなくなるという、そういう意味では欠格事由という、そういう構成にもなり得るのかと思うわけですけれども、そこまで私の方も主張しようというつもりはございませんで、これは運用上の問題、あるいは今の準則の適用の問題というのは事実上のものというふうに理解し、それを裁判所なり、あるいは今後運営主体なりが尊重するという、そういうものだろうと考えております。ですから、それ以上に、今の段階で欠格事由というようなものは設ける必要はない。そういう理由も見当たらないと考えています。
○井上座長 両様の御意見があったわけですが、いかがでしょうか。
○酒巻委員 私が先ほど言ったような場合について、解任事由をどうするかともリンクするとは思うのですけど、訴訟法の世界においても、その中に弁護士会の懲戒手続をかませるという、そういうやり方もあるのではないか。例えば懲戒手続の対象になっている人は訴訟法上も選任の適格を欠くというような法律の規定をつくるというようなやり方もあるように思います。これは論点としての提示でございます。
○井上座長 ほかの方は、御意見いかがですか。特に付け加えられることはございませんか。
○??井委員 懲戒手続がきちんとルール化されれば、(4) の欠格事由も必要ないのかなと思うのだけれども、その必要性がよく分からない。懲戒手続のルールがはっきりしないと必要かなとは思いますけれども。
○本田委員 今の趣旨が分からなかったのですが、また、「違法・不当」という言葉を使いますけど、違法・不当な弁護活動をやったことによって、例えば裁判所から、国選弁護人として不適当だと解任されたとしますね。そういう人をもう1回、国選弁護人に直ちに選任してもいいですよということを認めるような制度はおかしいのではないか。そこはそういう国選弁護人にそぐわない人は選任できませんよというようなものを制度としてきちんとつくっておかないと、制度的に国民の理解が得られないのではないかということです。
○??井委員 それは懲戒手続で担保されるのではないですか。違うのですか。そういう理由で裁判所から解任されるような人は当然懲戒対象になると思うのですけれども。
○井上座長 解雇とかそういう場合はいいのですけれど、そうでないような場合なのでしょう。考えておられるのは、弁護士会の懲戒でも、資格を失うわけではないような場合ということなのでしょう。
○??井委員 減俸になった人を次の事件で推薦していいのかと、それはあるかもしれないですね。
○井上座長 問題にしているのは、そういうことなのでしょう。
○本田委員 そういう場合も含めてです。
○浦委員 そういう場合には、推薦準則が働いて推薦しない。それを裁判所なり、運営主体が尊重する、そういうことなのですね。
○??井委員 でもその準則は、一般的な推薦ですよ。今言っている準則は。ここでは、個別の推薦のことを言っているのでしょう。
○浦委員 その場合も、それぞれ常勤、契約、一般弁護士全体がその推薦準則にかかってくる。
○??井委員 この(4) は、個別事件の選任のことを言っているのですね。
○井上座長 そうです。
○??井委員 そうすると、その辺は欠格事由として規定するかどうかは別にして、ルールは必要だということになるかもしれないですね。部内ルールが。
○落合参事官 私が理解しているところでは、弁護士会の推薦準則では、刑事弁護人としての職務の遂行に関して懲戒処分を受けたときに、一定期間、当該会員を弁護人として推薦しないことができるとなっているのですね。これを欠格事由で書くことも反対でいらっしゃるのですか。なぜ同じことを法律に定めてはいけないのでしょうか。
○浦委員 それでは、それだけという、もっとほかに欠格事由というのは考えなければいけない。もし考えるのなら、例えば心身の故障によりうんぬんとか。今、そこをそれだけ大きなものにしていく必要があるのかという、そういうことです。
○??井委員 それは心身に障害があっても、弁護させていいという趣旨ですか。
○浦委員 いいえ、そういう場合は推薦はされないでしょうから、それは現状で弁護士会の推薦という方法で、問題は整理されてきていると思われます。ですから、その点だけをあえて欠格事由として掲げる意味合いがどれほどあるのかと思いますけれども。
○井上座長 これは第6のところと絡んでくる問題ですね。弁護士会に一元化すれば、確かにおっしゃるような場合は、それでカバーできるのですけれども、一元的でないとすると、それではカバーできないわけですね。論理的には、そうでしょう。
○浦委員 一元化していただきたいと思っています。
○井上座長 ですから、浦委員の世界ではそれで納まるのでしょうけれども、納まらない場合には、別途考える必要があるかもしれない。そういう問題でしょう。論点ははっきりしたと思いますので、このくらいでよろしいでしょうか。
それでは、次に第10の方に移らせていただきたいと思います。「運営主体の在り方」という点ですけれども、この点について、まず説明を事務局からお願いします。
○落合参事官 それでは、「第10 運営主体の在り方」について御説明申し上げます。
ここでは、「1 組織形態」、「2 意思決定機関」、「3 業務内容」の三つの論点を記載しております。
まず、「1 組織形態」につきましては、検討会において出された意見に基づき五つの案を記載しております。組織形態の検討に当たっては、第5回検討会で御説明申し上げました組織形態に係る留意点なども踏まえた御議論をお願いしたいと存じます。
次に、「2 意思決定機関」は、検討会において、運営主体に、一定の事項について意思決定を行う、有識者等から成る機関を設けるべきであるとの御意見が述べられたことから、それについて、どのように考えるか、また、同機関を設ける場合、どのような事項について意思決定を行うものとするかという問題提起を行っております。
最後に、「3 業務内容」として、運営主体は、公的弁護以外の業務を取り扱うものとするかという論点を記載しております。この論点は、これまでの検討会でも御紹介申し上げました司法ネット構想にもかかわる問題であります。司法ネット構想は、民事・刑事を問わず、国民が気軽に全国どこの街でも法律上のトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような態勢を整備することを目指すものであり、公的弁護制度の運営主体の在り方とも関連し得るものであります。また、この問題は、第6の「2 常勤弁護士」の「(2) 公的弁護以外の業務」についての御説明でも申し上げましたとおり、常勤弁護士が公的弁護以外の業務を担当するかどうかという論点にもかかわるものであります。したがいまして、本論点は、それらの観点をも踏まえて御議論いただきたいと存じます。
「第10 運営主体の在り方」の説明は、以上でございます。
○井上座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問がございましたら。よろしいですか。それでは、項目に沿って議論したいと思います。
まず、「1 組織形態」についてです。この問題については、第5回検討会において、事務局の方から参考として資料が提出されております。それに基づいて行政改革の動向等を踏まえた留意点についても説明がなされたところでありますが、これらの留意点をも踏まえながら、御意見を伺えればと思います。どなたからでも結構でございますので、どうぞ。
○浦委員 この運営主体につきましては、繰り返し申しますけれども、弁護活動の自主性・独立性の保障、あるいは運営主体そのものの行政からの独立性というふうなことをなしうるような、そういう運営主体の組織形態が必要だろう。そういう意味で、第5回検討会におきまして、運営主体としてふさわしい組織としまして、弁護士会で論議されてきました裁判所付設型、独立行政委員会型の組織、さらには法律扶助協会というものについても意見を述べさせていただきました。
裁判所付設型といいますのは、司法権や行政権のいずれにも属さない、独立性の高い検察審査会に類似した機関を国法上の裁判所に付設しようというものでありました。また、司法行政の一部について、外部に委託するということも不可能ではないということが考えられましたから、独立した機関が事務を指定法人に委託するというイメージで示されているC案についても言及いたしました。
さらに、独立行政委員会型といいますのは、公正取引委員会だとか労働委員会のような、国家行政組織法3条に基づく行政からの独立性の高い組織とすると、そういうものでありました。
このほか、被疑者弁護援助事業、あるいは少年付添人扶助事業の実績を持っております指定法人である法律扶助協会を運営主体とするという案についても言及いたしました。
これらの組織形態につきましては、運営主体として、今なお極めて適切だろう。その点につきましては、裁判所や法務省におかれまして、その実現に向けて格段の努力を求めたいというふうにも思うところです。
しかし、一方で行政改革の現状ではそれらの実現が困難であるという、そういう面もございます。そこで、この行政改革の動向の中で、実現可能性が最も高いものとして独立行政法人というのが挙げられております。これを公的弁護の運営主体とするということも考えられます。日弁連もこの独立行政法人を運営主体の組織形態とすることについて現在検討しているところであります。
この独立行政法人を運営主体とするに当たりましては、まず、主務大臣が法人の長を任命するとか、中期目標を指示するということがありますけれども、そういう点につきまして、法人として主務大臣からの独立性が確保されるのか、あるいは評価委員会というのがあって、業務の実績を評価する制度というのがあるようですけれども、その業務効率が過度に強調されるおそれがないのだろうか。さらには、主務省が法務省となる可能性が高いということなどを考えますと、弁護活動の自主性・独立性が脅かされることはないのだろうか。このいろいろな問題点についての手立てがなされることが必要だろうと考えます。
具体的には、弁護士会が公的弁護制度の整備・運営に積極的に協力すべきだという意見書の趣旨を実現するためにも、独立行政法人の必要的な機関であります理事会、あるいは後に議論になるかと思いますけれども、独立行政法人の意思決定、事務運営に当たる中立・公正な合議体として設置される委員会、いずれにつきましても相当数の弁護士の参加が認められること、あるいは主務大臣が法人の長を任命したり、中期目標を定めて指示したりする場合においても、弁護士会の意見が述べられるというような措置が講じられる必要があるのだろう。そういった諸点がクリアーされるということなら独立行政法人という、そういう組織形態についても運営主体として適切なものになり得るのではないかと考えます。
○井上座長 ほかの方、いかがですか。
○??井委員 一巡目の議論でも出ておりましたけれども、基本的には独立行政法人のD案が最も妥当だろうと思います。仮に運営主体で常勤弁護士を置いてやるとした場合に、果たして刑事国選だけをやるということで、国民の理解が得られるかどうかという問題もあります。その場合は、刑事国選以外の仕事も常勤弁護士にしてもらうというようなことも考えなければいけないわけで、そういうような柔軟性等を考えたら、D案の方がいいのではないか。
D案にすると、主務官庁が法務省になるのではないかということが弁護士会辺りから強く指摘されて、それでは弁護活動の独立性が損なわれるのではないかという懸念が示されておりますが、主務官庁が法務省になったから、直ちにそれで弁護活動の独立性が損なわれるということにはならないわけで、当然その間の仕切りなり制度なり、具体的な制度設計をどうするかで変わってくるわけで、そこは十分弁護活動の独立性を担保できるような制度設計をしていけば、主務官庁がどこであれ、それは余り関係がない問題であろうと思います。中期目標ということもありますが、例えば中期目標で無罪獲得率を50パーセントにしろということだったら、一生懸命やるはずで、ですから中期目標がいけないという問題でもないでしょうと、これは半ば冗談ですが。ですから、要するに主務官庁が法務省であれば、弁護活動ができなくなるというのは、やはり現実を見ない議論だというふうに思います。以上です。
○井上座長 ほかの方、いかがですか。
○土屋委員 私も運営主体についてはいろいろ悩んでいたのですけれども、現状で考えていくと、D案に挙がっているような非公務員型の独立行政法人というのが一番有力な選択肢かなというふうに考えています。
理由は五つぐらいありまして、一つは独立行政法人であれば、国有財産などの施設の利用が割と楽にできて、全国的な展開が割と容易ではないだろうかと思われるということが一つあります。二つ目の理由としては、第1ラウンドなどで議論しました会計法上の問題もクリアーしやすいということですね。三つ目は、今、法律扶助協会などが悩んでいるような管理費、人件費の問題だとか、こういう辺りが公費で手当てするために手当てがしやすくなって、安定した運営が可能になるのではないだろうかということです。四つ目は、独立行政法人をどういうふうに設計するかによって違う話だとは思いますが、非公務員型のものであれば、今、??井委員が言われたみたいなつくり方によっては弁護の自主性・独立性という一番懸念される部分の確保もうまくできる設計が可能ではないだろうかというふうに思われます。五つ目は、独自の事業の展開というのが可能になるはずなので、国民の立場から見て、法的なサービスの向上にも役に立つのではないだろうか、そういういわば多面的な、この五つぐらいちょっと考えられるのですけれども、そういう多面的な展開を可能にする運営主体というのが独立行政法人ではないだろうかと思っています。
法務省が主務官庁になるのではないかというのは一番懸念しているところでありまして、そこが悩ましく思っていたために、どうしたらいいだろうかということを考えていたのですけれども、ただ、これは克服できない難点ではないのだろうと私は思うのです。いくつかの条件を満たすことによって、そういう懸念を払拭できる、そういう組織がつくり得るのではないかと考えています。三つほど、満たすべき要件みたいなことを考えていたりしていたのですけれども、一つは、浦委員が強調されていたような弁護活動の自主性・独立性、それを具体的に保障するような、そういうような仕組み、それをどうやってつくったらいいだろうかということだと思うのですけれども、先ほどルールの策定のところで、私はあえて意見を述べませんでしたが、運営主体が独自のルールを持つというのは、私は当然だと思っております。ですから、そういうルールのつくり方がいわば最低限守るべき規律というのでしょうか、そういうようなものとしてつくられていくような、そういうルールを持って、なおかつ弁護活動の自主性・独立性が保障されるような仕組みを保証するということ、具体的なアイディアとしてはいろいろ考えられるものもあるのでしょうけれども、後ほどいろいろと議論されてくるだろうと思いますけれども、そういった工夫をもっとすべきだろうというのが一つです。
それから、二つ目は、最高裁がヒアリングで提示した重要事項を審議するボードという考え方です。この設置が非常に有力なのだろうと私は思っていまして、ここでいわばルールの問題とか、いろいろ懸念される部分についてクリアーする条件づくりというのができるのではないだろうかと思います。
三つ目は、独立性というのが外部からはっきり見えるというのがやはり人事の問題だろうというふうに思っていまして、つまり理事会の人事、ここを法務省あるいは検察庁の影響下にあるような構成にしないというようなことでもって、独立した活動ができる存在だという保障ができるのではないかというふうに思ったりしています。
この三つぐらいが条件として考えられると思うのですけれども、そういった条件が満たされるならば、独立行政法人としてつくっていっていいのではないかと私は思います。刑事事件だけではなくて、ちょっと先走ってしまいますけれども、事業活動として、もっと多面的な法律サービスができるような組織の構成ができるとすれば、それにどういうふうに独立行政法人なり、そういうものがかんでいくかという問題はありますけれども、少なくとも常勤弁護士が刑事事件だけをするのではなくて、地域住民からいろいろ法律相談などが来れば、その法律相談も受けるし、あるいは民事事件の受任の依頼があれば、それを受任してやるというようなことがあってもいいでしょうし、そういったいろいろ多角的な活動ができるような組織として発展させていけるような、そういう独立行政法人ができればいいのではないかと思ったりしています。以上です。
○井上座長 ほかの方は。
○??井委員 第10全体でいいのですね。
○井上座長 それはもうちょっと先で議論していただこうと思いまして。
○??井委員 1についてはありません。
○井上座長 組織形態ですが、ほかの方は。どうぞ。
○池田委員 既にいろいろお話が出ていますように、私はD案でいいのではないかと思います。先ほど浦委員から、当初のというか、今もそうなのかもしれませんが、日弁連の検討案の中に、裁判所付設の案もあるということでしたけれども、運営主体のやることは、また後でも議論になるわけですが、その事柄をみると、今回の公的弁護についても、運営主体で行わなければいけないことは、弁護士の募集、事務所の確保、報酬の算定ですとか、かなり経営的な、あるいは政策的な判断が必要な、言ってみれば非常に行政的な事務ですから、それをB案のように、司法で行うというのが非常に無理があるのは当然のことで、C案でも、やはり司法の役割としてはそぐわないのではないかと思います。今、C案のような独立機関としては検察審査会がありますけれども、検察審査会は第1ラウンドでも話しましたように、行政に置くわけにはいかないということと、司法作用に似た判断作用があるということで置かれているわけですけど、それとはちょっと違うのではないかということもあって、B案、C案というのは採れないのではないかと思います。
○井上座長 よろしいですか。では、ここの点はこのくらいにしまして、前後すると思いますけれど、「2 意思決定機関」、これは既に浦委員や土屋委員が言及された点ですが、この点について、ほかの委員の方、いかがですか。
○??井委員 既に出されているように、私もボードをつくって、そこで重要な事項は決定していくという制度にするのが望ましいと思います。そのボードは、法曹三者の代表か有識者というもので構成するのがいいだろうと思います。公正中立の機関ということになっていますので、弁護士だけを特に多くしろといっても、これはなかなか世論はついてこないだろうと思いますが、弁護士が全く入っていない機関というのはやはり不相当だろうと思います。
そこで何を決めるかということになりますが、もちろん具体的な事件の弁護方針については、それは全く関与しないわけで、例えば常勤事務所を地方にどういうペースで配置していくかとか、予算要求をどうするかとか、そういうような本当の行政事務に関すること、大きな意味での組織を動かすための重要事項を決定していくと、そういうことです。
○井上座長 運営とかそれに係る重要な事項と・・・。
○??井委員 具体的な弁護活動の中身については一切触れないということだろうと思います。
○井上座長 ほかの方、いかがですか。
○本田委員 私も、例えば国以外の法人を運営主体とする場合には、法人の役員として適切な人選が行われることを確保する、あるいは法人の運営に関する重要事項を審議させる、あるいはこういうことをさせるために有識者等から成る議決機関を設置することは極めて重要なことだと思います。そういうものを設けることによって、法人の運営が公正中立なものとなることを確保すると、そういった仕組みにしていくべきだろうと考えています。この場合にどういうことをやらせるかというと、特に公正中立性が求められる事項、例えば常勤弁護士や契約弁護士に関する苦情の処理であるとか、常勤弁護士に対する懲戒措置、契約弁護士の債務不履行に対する措置などを行う場合の意思決定とこういったものが考えられるのだろうと思います。
○井上座長 分かりました。
○浦委員 先ほども申したところで、行うべき事項として考えられるのは、例えば報酬規定についての報酬基準の策定みたいなものも場合によってはここであり得る。
○井上座長 何の報酬基準ですか。
○浦委員 弁護士の報酬基準、それについての改定作業を検討する。
○井上座長 常勤とか。
○浦委員 そうです。
○井上座長 常勤の場合は給与ですね。
○浦委員 常勤でなくて個別の公的弁護のものです。そういう委員会みたいな、あるいは先ほど出ていた就業規程、契約の内容とか、そういうものもここで決められる。さらに、先ほど言われましたそれらの具体的な運用もこのボードが行っていく。そのためには、例えば小委員会を設けるとか、さらには、地方の裁判所、弁護士会に対応するところに地方機関みたいなものを設けていくというような、そういうようなことも考えられるのかと思います。
○井上座長 一番最後の点は、要するに運営主体の組織をどういうものとして構成するかということにかかわってきますね。ここで皆さんがお考えの「意思決定機関」というのは役員会のようなものですか。
○浦委員 そうです。
○井上座長 そこがどういう形になるのか、いろんな形があり得ると思うのですが。
○本田委員 法人の役員から成る役員会とは別の機関という頭で考えていたのですが。
○井上座長 浦委員もそうですか。
○浦委員 理事会とは別に。
○井上座長 運営評議会とか、そういったものですか。
○浦委員 小委員会をいくつか、報酬に関する小委員会だとか、業務規程に関する小委員会とか、そういうようなものを設けるということになるかもしれません。
○井上座長 委員会というのは執行機関という意味ですか。そこもいろんな組立方が恐らくあるのだろうと思うのですけれども、いずれにしても、一定の重要な事項については、こういう意思決定機関を設けて、そこでいろいろ議論をして決めていくというのが望ましい、そういうイメージでしょうか。この辺は、特に付け加えることがなければ、3の方に進みたいと思います。
「3 業務内容」ですけれども、既に何人かの方からお話がありましたし、事務局からもその点について議論していただきたいということでしたが、要するに、常勤弁護士の業務の問題ですね。常勤弁護士が公的弁護以外の業務を担当するかどうかという問題と密接に関連するわけですが、そこの点について、既に3人の方から御意見が出ていますけれども、そのお三方でも結構ですし、それ以外の方でも結構ですので、付け加えることがございましたら、御議論いただけますか。先ほどは、司法ネットとも関連するというような御指摘もございましたけれども。
○??井委員 私は、この運営主体で被害者の支援もしていただきたいと思います。例えば、公判の傍聴に対する同行であるとか、被害者は公判の優先傍聴を認められておりますが、自分で一人で行っても、どういう手続が行われていてということはほとんど理解できないわけですね。弁護士も一緒にくっついていって、今日の出来事はこういうことで、この分がこうなるとか、そういうような解説を現実にしているわけです。ですから、そういうような活動であるとか、例えば意見陳述をするときにそのサポートをするとか、もう一つは、電話相談を無料でやっているわけですけれども、そういうような相談業務であるとか、そういうものもこの運営主体でやるというふうにしていただきたいと思います。
それから、制度の組み方なのですけれども、刑事の私選はできないのか。この運営主体の公的弁護について、どういう事件を割り振るかによってかなり変わってくると思うのですが、仮に重い事件しか割り振らないとなると、場合によっては結構時間が余るのではないか。そうすると私選をやるというのも考えられるのではないかと思います。それから、民事もやってもいいと思います。要するに余り狭くしないということでいいのではないか。
ただ、そうは言っても、基本的には刑事弁護のセンター的な機能を担うわけですから、そういう機能を害さない範囲内でいろんなことができるということだろう。そういう仕組みにするべきだろうと思います。
○井上座長 今、被害者の方たちの支援というのは、ボランティアでやっておられるのですか。
○??井委員 一弁の場合は全くのボランティアでやっています。
○井上座長 報酬を取ってやっているケースはあるのですか。
○??井委員 具体的な事件を受けて、例えば電話相談は全くのボランティアです。それから、法廷傍聴の同行であるとか、意見陳述のサポート、そういうのは会員は全くのボランティア。それから、かなり時間がかかるものについては一応有料になっていますが、基本的には足が出ていて、ボランティアでやっています。
○井上座長 分かりました。
○浦委員 公的弁護以外には民事事件の対応が考えられるわけで、この場合、常勤弁護士、契約弁護士がその地域の需要に応じて民事事件、取り分け民事扶助事件などを包括的にやっていくと、そういうふうな対応が十分考えられる。そうすることによって、運営主体にとっても、運営主体にかかわる弁護士の確保の上からもメリットが出てくるのではないか。
それから、こういう司法アクセスを含む民事扶助、公的弁護、あるいは全体を含む総合的な事業体となることが、運営主体としての地位を高めることになりますし、最も大きなメリットとしては、十分な予算を確保できることになるのではないか。そういう意味で予算の措置が期待できると考えます。
ただ、運営主体が公的弁護以外に民事関連の問題、先ほどの被害者支援も入るのかもしれませんけれども、そういうものを取り込んだ場合に考えておかなければならないのは、民刑一体型の運営主体になることによって、刑事についての弁護活動の独立性の保障というのが希薄化する懸念もあるので、そうならないような制度設計が必要だろうと。
逆に、公的弁護に対する予算不足が生じないような措置がとられなければいけない。例えば刑事の事件数の増加によって予算が超過したような場合に、民事の他の事業が圧迫されるというようなことになってはならない。民事と刑事が予算を取り合うというような、そういう事態にならないような、そういう工夫も必要になるのではないか、そのように思います。
○井上座長 2点ちょっと分からなかったのですが、常勤の場合は、よく分かるのですけれども、契約の場合もそういう機能を、民事法律扶助とか・・・。
○浦委員 現にこれは、東京の法律扶助協会などでは、契約弁護士という形で事件数を契約してやっているのです。
○井上座長 それは分かるのですが、その役割を公的弁護を担う運営主体の方に移していくということですか。それとも法律扶助協会とはまた独立して、こちらもやるべきだというアイディアですか。
○浦委員 それはいろいろ考え方があろうかと思いますが、法律扶助協会も今組織についていろいろお考えのようなので、そういうことも含めてということを申し上げております。
○井上座長 最後の刑事の独立性の希薄化というのはどういうことですか。
○浦委員 民事も含めることによって、刑事事件の独立性がおろそかになる可能性はないのかという危惧があるので、それはないようにしてもらおうと。
○井上座長 ちょっと抽象的すぎて、何を言っておられるのか、私にはピンとこないのですが。
○大出委員 それに絡んで質問があるのですが、??井委員の構想でいったとき、先ほどの運営主体が被害者の支援をされるということの意味なのですけれども、それが運営主体に雇用された弁護士がということですよね。
○??井委員 常勤弁護士です。
○大出委員 その場合、当然、その運営主体に雇用された弁護士が弁護を担当する事件ということでの被害者の問題というのが出てきますよね。
○??井委員 そういうことを言っているわけではないのです。
○大出委員 ですから、そういう場合、どうするのですか。同じ運営主体に被害者も支援を求めてくるし、被疑者・被告人も支援を求めてくるということになる場合があるわけでしょう。その場合のことは、全然配慮しなくていいのかどうかという問題ですよね。
○??井委員 配慮しなくていいと思いますね。問題とされている趣旨がよく分からないのですが、弁護士は基本的には、例えば私は被害者の支援をやりますけど、被疑者の弁護を全然やらないかというと、それはやるわけです。ですから、担当する事件、立場によって使い分けをするということは、弁護士のプロとしての職業的なセンスというか、能力というか、当然のことです。
○井上座長 そこは全く問題がないわけではなくて、被害者、加害者に分かれる場合もそうですけれども、共犯の被疑者や共同被告人の間で利益相反があるような場合に、同じ主体が双方の弁護を提供するということでいいのか、そういう問題もあるわけですね。それを、個々の弁護士が自主独立である、常勤の人を含めて個々の弁護人が自主独立であるということでクリアーできるのか、それとも、やはり違う形態の人を弁護人に選任しないといけないのか。そういったことと通底する問題であるような気がするのですが。
○??井委員 そういう意味ではファイヤーウォールをどこかに設けるということは必要かもしれませんね。
○井上座長 そこは、制度のつくり方の問題ではないかと思いますけれども。どうぞ。
○酒巻委員 先ほどの??井委員のお話の中で一つだけ疑問に思った点があります。もし時間が余ったら、刑事の私選もとおっしゃったのですが、これだけは、私は疑問です。常勤弁護士の話だけに限定しますと、私の常勤の方のイメージは、月給をもらって、業務内容はもちろん公的弁護に限らずに民事もあるのかもしれませんけど、決められた仕事をすることで月給をもらうわけで、それ以外に私選という・・・。
○??井委員 私は個人として私選をやっていいと言っているわけではないのです。
○井上座長 運営主体が、私選の刑事事件も受けるということなのですね。
○??井委員 そういう意味です。
○酒巻委員 なるほど、誤解しましたが、ただ・・・そういう制度はあり得るのですか。
○??井委員 運営主体の先生はどうも刑事弁護の専門家らしいと。だから、是非そこの先生にお願いしたいということがあるかもしれませんね。
○井上座長 要するに運営主体が、自主事業というか、自分でお金を稼ぐということをどこまで認めるのか。その一つとして、刑事の私選を受けるということもあっていいのではないかというのが??井委員の御意見です。
○酒巻委員 分かりました。誤解し、失礼いたしました。
○??井委員 個人でやるわけではないです。
○井上座長 ほかの方の御意見はいかがですか。
○本田委員 運営主体がどこまでできるかというのは、一つの組織をつくるわけですから、どの程度の機能を持たせるものがつくれるかということと密接に関連していまして、そういう意味で、ある程度の機能を持たせることによって、例えば先ほど紹介のあった司法ネットみたいな機能の意味付けを与えることになれば、当然公的弁護以外の業務を担当することもあり得るのでしょうけれども、なかなか組織の問題でどこまでのものがつくれるかという問題に密接に絡むので、だから、ほかのことをやることを否定するわけではありませんけれども、なかなか制度設計というか、組織をつくるとき、どの程度の人と予算を投入できるのかという問題と密接に関連しているのだと思います。
○井上座長 どの程度の人を最初から確保できるのかという問題も絡んできますね。この点は、特に付け加えることがございませんでしたら、このくらいにしたいと思います。
ちょうど切りのいいところですので、この辺で10分休憩させていただきます。
(休 憩)
○井上座長 それでは、再開させていただきます。以上で、たたき台(2) がひとわたり終わりましたので、次に、公的付添人制度についての検討に入りたいと思います。
お手元に、「公的付添人制度について」という表題のペーパーが配布されていると思いますけれども、これは、見ていただければ分かりますように、公的付添人制度の導入の要否及び導入するとした場合における具体的な制度設計に関するたたき台です。
たたき台の性格につきましては、これまでの「公的弁護制度について」の(1) 及び(2) について、ここで協議され確認されたところと同様でございますので、確認は省略させていただきます。それでは、このたたき台につきまして、事務局から説明をお願いしたいと存じます。
○落合参事官 それでは、公的付添人制度に関する第2ラウンドの議論のためのたたき台として作成いたしました資料11-1「公的付添人制度について」を御説明いたします。
本たたき台は、大きく二つの項目に分かれております。すなわち、まず1ページ目に「第1」として、「公的付添人制度の導入の要否」、次に2ページ目の中ほどに「第2」として、「公的付添人制度を導入するとした場合における具体的な制度設計」を掲げております。それでは、1ページ目に戻っていただきまして、たたき台の内容について、各項目ごとに御説明いたします。
まず、「第1 公的付添人制度の導入の要否」について御説明いたします。ここでは、公的付添人制度の導入の要否を検討するための足掛かりとするために、第1ラウンドで配布いたしました「第6回公的弁護制度検討会における論点(案)」の「1 公的付添人制度の意義、必要性、留意点」に記載した六つの事項並びに第1ラウンドでこれらの事項に密接に関連して御議論いただいた「公的付添人制度と検察官関与制度との関係」及び「公的付添人制度と被害者等への配慮との関係」の二つの事項を掲げた上で、委員の皆様や関係機関から様々な考え方が述べられた事項等については、それらの考え方を併記しております。ただし、「第6回公的弁護制度検討会における論点(案)」では別個に掲げておりました「家庭裁判所調査官との役割分担」及び「付添人の役割」の二つの事項につきましては、相互に密接な関連を有するものと思われますので、本たたき台では両者を一体として掲げております。
まず、「1 少年事件の特殊性」について御説明いたします。第1ラウンドにおきましては、成人と比べて防御能力や弁明力に劣るなど、少年の特殊性に関する御意見のほか、刑事事件と比べて知る権利が制限されているなど、少年事件における被害者の特殊性も考慮すべきであるとの御意見が述べられました。本項目に関しましては、これらの御意見それ自体についてどのように考えるかにとどまらず、それらの特殊性が具体的な制度設計にどのように影響するかについても、御議論いただきたいと存じます。
次に、「2 公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランス」について御説明いたします。第1ラウンドにおいては、たたき台に記載しましたとおり、「公的付添人制度を導入しなければ、公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスを失するとの考え方」、「公的付添人制度を導入しなくても、公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスを失することはないとの考え方」とが述べられました。この点につきましては、捜査段階で公的弁護人が選任された場合、その選任の効力は、家裁送致により終了すると考えるのか、現在、家裁段階では、少年の権利保護のための制度が整備されていないと考えるのか、捜査手続と少年審判とをパラレルに考えるのか、公判手続と少年審判とをパラレルに考えるのかといった観点も踏まえ、御議論いただきたいと存じます。また、以上のような理論的な観点に加えまして、捜査段階で公的弁護制度の対象となる少年の数、逆送決定を受ける少年の数などといった統計的・実証的な観点からの検討も必要ではないかと思われます。
次に、「3 少年審判手続の構造」について御説明いたします。第1ラウンドにおいては、公的付添人制度を導入した場合、少年及び公的付添人と家庭裁判所との対峙状況を生じ、少年審判手続の構造を変容させるおそれがないかどうかが議論され、これを回避するために、併せて検察官関与制度をも検討すべきではないかが議論されました。したがって、この点の検討につきましては、「6 その他」の「(1) 公的付添人制度と検察官関与制度との関係」にも御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。
次に、「4 家庭裁判所調査官との役割分担及び付添人の役割」について御説明いたします。第1ラウンドにおいては、たたき台に記載しましたとおり、大別して、「少年の要保護性の問題については、家庭裁判所調査官の調査により適切に審判をなし得るとの考え方」、「少年の要保護性の問題についても、家庭裁判所調査官に加えて、公的付添人が必要であるとの考え方」とが述べられました。また、後者の「少年の要保護性の問題についても、家庭裁判所調査官に加えて、公的付添人が必要であるとの考え方」については、さらに、その場合における公的付添人に期待されている役割として、「公的付添人は環境調整の役割を期待されているとの考え方」、「公的付添人は少年に対する働きかけにより教育効果を高める役割を期待されているとの考え方」、「公的付添人は保護者を代替する役割を期待されているとの考え方」、「公的付添人は被害回復等の役割を期待されているとの考え方」という四つの考え方が述べられました。本項目に関しましては、これらの考え方について、それぞれどのように考えるか御議論いただきたいと存じますが、本来法律専門家である弁護士に対し、具体的にどのような役割を期待するのか、また、公的付添人に法律的専門性以外の知識・経験が求められるとすれば、公的付添人は必ずしも弁護士に限定する必要がないのかどうかという点についても、御議論いただきたいと存じます。また、「公的付添人は被害回復等の役割を期待されているとの考え方」につきましては、第1ラウンドの議論では御意見が分かれたところでございます。
次に、「5 公的付添人の給源となる弁護士の確保」について御説明いたします。第1ラウンドにおきましては、たたき台に記載しましたとおり、「公的付添人の給源となる弁護士の確保は困難であるとの考え方」、「公的付添人の給源となる弁護士の確保は困難でないとの考え方」とが述べられました。関係機関からも御指摘のありましたとおり、今のところ付添人の担い手となる弁護士は少ないようであり、また、少年事件の特殊性から一定の研修を行う必要もあるとのことです。もとより、今後、将来的には弁護士の数は大幅に増加していくものと思われますが、公的付添人としてふさわしい資質を備えた弁護士の確保の在り方にも御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。
次に、「6 その他」について御説明いたします。
まず、「(1) 公的付添人制度と検察官関与制度との関係」について御説明いたします。第1ラウンドにおきましては、たたき台に記載しましたとおり、「公的付添人制度の導入は、検察官関与制度と併せて検討すべき問題であるとの考え方」、「公的付添人制度の導入は、検察官関与制度と併せて検討すべき問題ではないとの考え方」の二つが述べられました。この問題につきましては、第1ラウンドにおいて、検察官関与のない公的付添人制度を導入すると、少年及び公的付添人と家庭裁判所との対峙状況を生じ、少年審判手続の構造を変容させるのではないか、被害者側の理解、納得が得られないのではないかという二つの異なる角度から御議論がなされましたので、本日も、これらの点に御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。また、「公的付添人制度の導入は、検察官関与制度と併せて検討すべき問題であるとの考え方」の立場を採る場合には、検察官関与の具体的な在り方についても御意見を述べていただきたいと存じます。
次に、「(2) 公的付添人制度と被害者等への配慮との関係」については、第1ラウンドにおいては、たたき台に記載しましたとおり、「公的付添人制度の導入に当たっては、被害者等への配慮の観点が必要であるとの考え方」、「公的付添人制度の導入と被害者等への配慮とは別個の問題であるとの考え方」が述べられました。本日も、これらの考え方について御議論いただきたいと存じます。
「第1 公的付添人制度の導入の要否」については、以上でございます。
続きまして、「第2 公的付添人制度を導入するとした場合における具体的な制度設計」について御説明申し上げます。公的付添人制度を導入するかどうかは、第1ラウンドにおける御議論や、本たたき台の第1に関する本日の御議論などを踏まえて、最終的には推進本部において今後判断すべき事柄ではございます。しかしながら、第1の議論において公的付添人制度の導入に賛成される方は、恐らく導入の必要性の議論と具体的な制度設計についての理由付けが重複する場合が少なくないと思われます。また、当検討会に残された検討時間から考えますと、今後公的付添人制度を導入すると判断した場合に、その具体的な制度設計について全く白紙の状態から御議論いただくほどの時間的余裕もないかと思われます。したがいまして、公的付添人制度を導入する場合における具体的な制度設計についても、本日御議論いただくこととした次第でございます。もとより、公的付添人制度を導入する場合には多岐にわたる論点を検討しなければなりませんが、本日は、時間の制約もございますので、関係機関からのヒアリングや国民の皆様の意見募集における御意見などを参考にいたしまして、最低限検討しておく必要があると思われる制度の大きな枠組みに関する主要な論点を例示するにとどめております。具体的には、「身柄拘束の有無や罪名等による限定」、「職権による選任制度及び必要的選任制度」、「公的付添人制度下での公的付添人の選任の始期及び選任の効力の終期」の三つの論点を例示いたしました。
まず、「身柄拘束の有無や罪名等による限定」につきましては、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件等における御議論と同様、理念的な観点はもとより、それだけにとどまらず、弁護士会の対応能力、国の財政負担の在り方、国民の理解・納得などの現実的な観点をも踏まえた御議論をお願いしたいと存じます。
次に、「職権による選任制度及び必要的選任制度」でございます。職権による選任制度につきましては、被疑者に対する公的弁護制度における御議論と同様、裁判所が職権を適切に行使しなかった場合の法律効果に加えて、裁判官の裁量によって行われている少年保護事件付添扶助事業に関して、関係機関から、同種の事案でも裁判官によって付添人が付される場合と付されない場合があることや、基準が抽象的であるため調査が相当進んだ段階でしか判断できないことが多いことなどの問題点が指摘されておりますので、この点にも御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。必要的選任制度につきましては、被疑者に対する公的弁護制度における御議論と同様、公的付添人が選任されるまでの間の調査及び審判への影響などの法律効果に加えて、先ほど御説明いたしました、「第1」の「5 公的付添人の給源となる弁護士の確保」にも御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。
最後に、「公的付添人制度下での公的付添人の選任の始期及び選任の効力の終期」でございますが、選任の始期につきましては、被疑者に対する公的弁護人の選任の効力の終期にも関連いたしますので、この点についても御留意いただきながら、御議論いただきたいと存じます。また、公的付添人の選任の効力の終期につきましては、第1ラウンドにおきまして、少年法45条6号の改正の要否が指摘されました。すなわち、私選の付添人は逆送決定により弁護人とみなされますが、同号は国選付添人には適用されず、選任の効力は失われます。公的付添人制度を導入した場合に同号を改めるべきかどうか御議論いただきたいと存じます。
「第2 公的付添人制度を導入するとした場合における具体的な制度設計」の説明は、以上でございます。
最後に、議論の進め方でございますが、先ほど申し上げましたとおり、「第1 公的付添人制度の導入の要否」と「第2 公的付添人制度を導入するとした場合における具体的な制度設計」については、恐らく導入の必要性の議論と、具体的な制度設計についての理由付けとが重複する場合が少なくないだろうと思われますし、そもそも導入に慎重な意見をお持ちの方は具体的な制度設計についての各論について意見を述べようがないということにもなろうかと思われますので、第1と第2とを別々に議論するのではなく、第1で導入に賛成される御意見の方は、併せて具体的な制度設計についても御意見を述べていただいてはいかがかと存じます。以上でございます。
○井上座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問がございましたら、まず伺いたいと思いますが、よろしいですか。それでは、また議論の中で不明な点等がございましたら、質問を交えて御指摘いただきたいと思います。
次に、議論の仕方なのですけれども、今、事務局の方の御提案としては、第1と第2を併せて御意見をいただければということでした。理由は、具体的な制度設計についての理由付けと導入の必要性の議論とは重複するだろう。導入が必要だという御意見の方の場合ですね。また、制度が必要ないという方の場合、具体的制度設計について分けて議論すると、具体的制度設計のところでは発言する余地もないということになりますので、そういう意味でも併せて御意見を述べていただいてはどうかということでした。ただ、せっかく小項目を整理していただいていますので、小項目として整理された論点を順次念頭に置きながら、全体としては二つを一緒に議論していただくということでいかがかと思うのですが、それでよろしいですか。それでは、そういうことで、一緒にといっても、ある程度整理して議論しないといけないので、こちらで適宜整理させていただきますけれども、全体としては積極の御意見をお持ちの方は、その理由等についてのお考えと同時に、具体的な制度設計についてもお考えを述べていただくというような形で、まず進めていきたいと思います。
ここも最初から要らないのだという議論から始めるのは難しいと思いますので、第1ラウンドの議論と同様に、導入についての積極的要素について、もちろん消極の方でも結構なのですが、まず積極的要素について御意見をいただくという形で始めていった方がいいのかなというふうに思うのですが、特に積極論をお持ちの方から、議論をしていただくと生産的な議論ができるのかなと思います。いかがでしょうか。
○浦委員 今の論点整理の流れに合うのかどうか、ちょっと分かりませんが、これは前回の検討会の中での意見が、私自身が思うところについて十分出ていなかったので、積極論の立場から、若干意見を述べさせていただきます。
少年法につきましては、非行少年に対して保護処分を原則的処遇と定めて、少年の健全育成を期することを目的とする保護主義を採っていますこと、そのために少年審判手続が、裁判所による後見的・職権的審問構造を採っていることは言うまでもないところでありますけれども、保護処分は少年に対して必要な限度で、自由の制限を受忍させるとともに、事実上不利益なスティグマとして機能することは否定できないところでありまして、保護処分は刑事処分とともに、刑事政策の一翼を担う制裁として位置付けられるものだと考えます。大雑把に言いまして、昭和50年代後半以降の最高裁の判例は、少年に対する保護処分の制裁としての性格に着目して少年審判手続における適正手続の保障に腐心してきたものと言って過言ではないと考えています。少年は、先ほど事務局の説明にもございましたけれども、未熟でありますし、法的手続についての知識や理解力も乏しい、それから捜査官の暗示や誘導にも乗りやすい、そういう存在ですから、適正手続の重要な内容としましては、弁護人依頼権を保障した憲法34条、37条3項の規定の趣旨は、身体の自由の制限を伴う保護処分が問題となる少年審判手続にも及ぶものと解されるべきです。
付添人の任務として、少年の権利を擁護し、適正手続が実践されるように監視する役割があるのでありますが、この観点からは弁護士である付添人が重要な役割を担うことになるのではないかと思います。適正手続の保障ということにつきましては、単に非行手続の認定だけでなくて、要保護性の認定判断についても要請されるところであります。少年審判におきましては、広範囲で多様な資料に基づきまして、非行事実の有無と要保護性の有無、程度が判断されるのでありますけれども、その基礎となる事実は職権手続の下で、厳格でない方法で、しかも多くの場合、短期間に認定されなければならないわけであります。このような少年審判手続におきまして、付添人は、適正手続の諸条項が遵守されて、非行事実が的確に認定され、さらには要保護性に関する資料の証拠価値を吟味して適正な処分がなされるように少年の利益を擁護することになるわけです。非行事実の認定手続につきましては、調査官が付添人の役割を兼ねることができないのは言うまでもないところでありますし、要保護性に関する調査結果につきましても、適正処遇を期するには、少年側にその資料についての批判の余地が与えられなければならないと考えられるところでございます。調査官は、このような自ら集めた証拠に対する批判をするという、そういう役割を担うことはできないわけでありまして、少年審判における適正手続を監視するということは、法律専門家たる弁護士付添人がよくなし得るところです。このように、適正手続の観点から、自ら付添人を選任できない少年に対しまして、公的付添人が付される必要性はこういう観点からも、一つの観点ですけれどもあるのではないか、そのことを付け加えさせていただきます。
○井上座長 適正手続の保障という観点から、法律家としての弁護士である付添人が必要であるという御趣旨ですね。今の点についての御意見でも結構ですし、他の積極論、積極的な理由についてでも結構なのですけれども、消極あるいは慎重論の方ももちろん意見を言っていただいて結構ですので、どうぞ。
○樋口委員 消極論なのですが、もう既に多分前のラウンドでも出ている話なのですけれども、まず、第1の小項目で、少年事件の特殊性が挙げられているわけですけれども、確かにこの実態を見ましても、御承知のところではありますけれども、取調べに当たって、動揺でありますとか不安から非常に迎合的なところが見られるとか、あいまいな供述が繰り返されるとか、それから少年の場合は共犯が非常に多く、友人をかばったりとか、一時逃れのために虚偽の供述をしやすいという特性、これは結構広く一般的に指摘されているわけですが、警察捜査でもこうした特殊性を踏まえまして、特に少年事件の捜査に当たりましては、少年が弁解やアリバイの主張をする、そういった場合にはもちろん、それから犯行を認める供述をいたしました場合にも、供述内容を十分吟味する、裏付け捜査を徹底すると。成人の場合以上に、と言うと語弊があるのですけれども、物的証拠と非行事実等を結び付ける立証措置を確実に講じるといったことを心掛けております。
このように、少年の場合、その特性に応じた慎重な捜査に努めているということなのですけれども、この少年事件の特性が何に結び付くのかということなのですが、この特性から事実認定に誤りが生じる危険性があるということが一つあるのだろうと思いますが、これは、基本的にはこの問題というのは捜査段階のものなのであろうと思います。といたしますと、これに対する措置といたしましては、申し上げましたとおり、警察捜査でも慎重な捜査をやる。さらには、今回新たに導入される被疑者の公的弁護制度によってもこの部分は十分担保されることにもなるのであろうと思います。
一方、家裁における審判手続なのですけれども、審判手続では裁判官は少年と対峙する位置関係にあるわけではないわけですね。公正な立場にある裁判官、調査官によって手続が進められるということですし、それから、平成12年に導入された裁定合議制度を利用されるという場合も必要に応じてある。その場合には多角的な観点からの検討によって判断の客観性が担保される。さらには、手続の公正でありますとか、信頼性も確保されるといったことも十分可能なわけでありますから、その上に更に公的付添人制度を導入するという必要性があるのかどうかということを考えます。
○井上座長 という御意見ですが、ほかの方、いかがですか。
○大出委員 私は、前回、余り記憶は定かではないのですが、もちろん必要だという御意見を申し上げたと思うのですが、今、浦委員のおっしゃった点については、私も基本的に賛成であるわけでありますが、それを踏まえて考えたときに、今、樋口委員がおっしゃった点、確かにいろいろと御配慮になっていらっしゃる、捜査段階でもいろいろと特別の担当者をお決めになったり、準則的なものもお持ちになっていらっしゃるかと思いますし、いろいろと捜査に当たっても配慮されている。これは、何も警察だけでなくて検察でもそういう御配慮はあるのだろうと思いますし、その点についてはそのとおりだと思います。
ただ、そうは言っても、なかなか経過的に見ますと、そこが本当に十分に配慮されていたのかどうかというようなことについては、疑義のあるケースもなかったわけではないだろうと思うわけです。さらに、その場合であったとしても、では、なぜ付添人が付くことが必要ないということになるのか。更に加えて付くことがあって、なぜいけないのかという理由にはならないだろうと思うのです。
やはり少年の特殊性だとか、少年の持つ弱さというようなこと、これ自体は、皆さん、今、樋口委員も否定されていないわけですし、お認めになっていらっしゃるわけですから、そのことによって生じてくる事態は、幾重にも保障措置というのがあっておかしくないわけですね。しかも、裁判所も、もちろん後見的な役割を果たされている。つまり、成人事件とは違った役割を担われているということはそのとおりだろうと思いますし、警察、検察もその点配慮されているにしてみても、やはり少年の立場といいますか、少年の側に立っているということには必ずしもならないのだろうと思うのですね。その点で、付添人というのは、あくまで少年の立場に立ってということを、もちろん理念的にも追求されているわけですし、現実にもそういう立場に、実際上は対立的な構造であるかどうかともかくとして、正に付添人なわけですから、そういう立場にお立ちになるということであるわけですから、そういう意味でも、決してそのことが付添人を否定するというところまでの意味合いを持っているとはちょっと思えないですね。
もちろん私は、弁護士の方だけではない適格者でもというふうにも思ったりするのですが、今の現状の中で、法律の専門家である弁護士の方たちが、要保護性の問題についても、これは先ほど適正手続というような観点のお話がありましたけれども、将来的にはいろいろと考えられる余地があるかもしれませんけれども、ただ、今の時点で弁護士の方たちが対応能力の問題はあるのかもしれませんが、対応されるというのはどうしても必要なことだろうと思いますので、それは制度的に設ける必要があると考えています。
○井上座長 最後の点は、要保護性について、今現実に対応できるのは弁護士だということですか。法律専門家でないと対応できないと・・・。
○大出委員 制度として構想するときに、ほかの方たちがどういう対応能力を持っているのかということを考えたときに、具体的にはなかなか見えないなという感じがするのです。
○井上座長 適正手続ということで浦委員が説明されたのは、一つの説明だと思うのですが、要保護性という専門領域について、論理的に法律専門家が対応すべきだとまで言えるのでしょうか。もちろん実態論としておっしゃるのはそれなりに分からないわけではないのだけれど、制度論としては、そこのところを論証しないと、結び付きが見えないように思うのですね。どうなのでしょうか。
○大出委員 御疑念は分からないではないという感じもしますけど。
○井上座長 疑念というよりは、論証していないのではないかということなのですが。
○大出委員 ただ、実際問題として、それに代わり得る方たちというのは、座長がどういうことだというふうに・・・。
○井上座長 私の意見というわけではなくて、制度論として、そこのところの結び付きを説明してくださいということを言っているのです。制度論としては、現在の少年法は、いろんな人を付添人として想定しているわけでしょう。公的付添人ではないのですけれど、保護司やカウンセラーといった人を付添人にすることも可能なわけですね。そういった中で法律専門家である弁護士でなければならないと言われるわけですが、そこの結び付きについてやはり論証がもう一つ必要ではないのか。今の段階ではそれしかないとおっしゃったのは実態論なのかもしれませんが、制度論としてそう言えるのですかとお尋ねしたわけです。
○大出委員 要保護性についても、決してすべて法的要素というものがそこにないわけではないわけですね。あくまでも法的な観点からいって、保護という問題については考えられているわけだと思いますし、そこを例えば心理学の専門家でも、教育学の専門家にすべてゆだねて、それで対応可能なのかと言えば、相手でいらっしゃるのは最終的には裁判官でもあるわけですから、その辺の判断について議論し、法的な観点から最終的な判断をされるのだろうと思いますから、それは法律の専門家であること自体は、決して付添人であることと矛盾するわけではないと私は思います。
そのとき、私は個人的には、付添人の在り方としては、例えばほかの専門家が入ってくるということがあったとしても、最終的に法律の専門家というのは必要なのではないかと思うのです。
○井上座長 大出委員は法的な判断だととらえているということですね。ほかの方は、いかがですか。
○本田委員 公的付添人の問題については、いくつか検討しなければいけない事項があるわけですけれども、これは第1ラウンドで申し上げましたが、一つは少年審判の構造です。要するに、職権主義的な審問構造の中で後見的な役割を期待されている裁判官によって要保護性というか、保護処分に向かっての保護手続が行われている。そういう意味で、保護手続は、制裁を科すための刑事訴訟手続とは全く性質を異にするものです。
先ほど浦委員が、事実認定と要保護性の両方について、法律家である弁護士が公的に関与する必要があるのだと、こういうことをおっしゃいました。事実認定の問題について言うならば、それは適正手続はもちろん必要なのですけれども、裁判所と少年との対峙構造、第1ラウンドで申し上げた、そういうものがどうしても生じてしまうだろう。事実認定について困難な問題があるということで、先の改正で検察官関与というものが取り入れられて、そこでは国選付添人も付いて、そこは事実認定だから、厳格にやるというなら、それは双方の主張というか、きちんとした審判の協力者として、事実認定がきちんとできるような制度にしておかないと、公的付添人だけで検察官は全く要りませんというような形できちんとした判断ができるのかという疑問があります。ここをどういうふうに説明するのだろうか。
それから、要保護性の問題なのですけれども、先ほどは調査に対する批判の余地が与えられなければならないという御意見だったのですが、そのようにおっしゃるのであれば、それは公的付添人からだけの批判でいいのか、検察官からということも考えなくてよいのかという問題も生じてくるだろうという気がします。これは、見方の問題ですから、双方向ということが必要になってくるのではないでしょうか。
もう一つは、家庭裁判所調査官の役割は一体どうなるのでしょうか。家裁の調査官がいろんな社会調査をして要保護性に関する調査などについて裁判官に報告することになっているのですけれども、現在の家庭裁判所調査官ではきちんとした調査ができないという、そういう能力がないのだという前提に立っていらっしゃるのか、それとも数が足りないということでおっしゃっているのか、よく分からないですね。
更に要保護性の問題について言うならば、これは先ほど議論に出ていましたけれども、何も弁護士、法律専門家である必要は何もないわけです。要するにどういった保護処分をするかというなら、むしろ心理学とか教育学の専門家であっても十分対応できる部分が多いはずだろうと思うのですね。どうしてもそこが弁護士でなければならないというところの論証は必ずしもなされていないのではないかという気がします。
そういったところ、現在の少年審判構造の中で、一体公的付添人にどういった役割を持たせるべきなのか。現在では不足なのだと、裁判官と家庭裁判所調査官では駄目なのだということがきちんと説明できないと、制度として認めてもらうことは難しいでしょう。
さらに、余り大幅に付添人を関与させ、また、検察官関与を多くしていくと、第1ラウンドで申し上げましたけれども、少年審判の構造そのものを変えてしまうのではないか。果たしてそれはいいことなのだろうかという疑問がいまだに消えていないですね。
先ほど付添人を付けて何が悪いという趣旨の御発言があったのですけど、それは必要性がないところに付けてどうするのだということになるわけですね。だから、そこはこういう役割で、これが必要なのだということが論証されないと、それは税金をそこに注ぎ込むわけですから、そこはきちんとした論証がなされる必要があるのではないか。だから、そういったところの説明がきちんと明確にされるならば、どういう場合にどこまで、あるいは検察官関与も含めて全体的な議論というのがもうちょっと深まるのかなという気はしています。
○井上座長 今の御意見は、たたき台の3とか4にも踏み込んだ御意見だと思うのですが、その特殊性という点については、樋口委員からは、特殊性はあるのだけれども、それは主に捜査段階であり、そこは公的弁護の対象とすることでカバーできるのではないか。審判の段階は職権主義あるいは裁判所ないし調査官の後見的な役割で賄えるのではないかという御意見が出たところなのですね。
それにはまだ正面からお答えが出ていないと思うのですが、そういう御意見もあったことを踏まえて、更に御意見をいただければと思います。どうぞ。
○??井委員 少年事件の特殊性については、樋口委員がおっしゃるとおりだと私も思うのです。樋口委員は、それは捜査段階の問題で、審判段階は違うのではないかというふうにおっしゃいますが、基本的には、捜査段階で弁解が出尽くしているか、あるいは主張が出尽くしているかというと必ずしもそうではないわけで、審判段階でも捜査段階と同じような必要性はあるだろうと思うのですね。そういう意味では、私は、基本的に否認事件については審判段階でも付添人が必要だろうと思います。
もう少し全般的なことを申し上げてしまうと、私の基本的な立場は、事実認定をしっかり行うためには、やはり対審構造がいいという立場ですから、少年事件においても、事実関係あるいは重要な情状事実について争いがあるという場合は付添人が付くべきだろうというふうに思うのですね。ただし、付添人だけでは審判廷の構造がおかしくなりますから、そういう場合は検察官も付けることができるというような制度にするべきだろうと思います。
一方、事実関係については全く争いがない、要保護性の判断だけだという場合には、調査官がいるわけですから、調査官の判断で十分であろうというふうに思うのです。
ただ、否認だというと、途中から否認になったときはどうするのだとかというような問題が出てくるわけですね。そういうような問題、あるいは最初は争いがないと思っていたのだけれども、重要な情状事実について、途中から問題が出てきたというような場合は、裁判官が職権で付ける制度にしておけば、付添人が必要な事案については適切に対応できるのではないかと思います。
仮に要保護性の判断だけの場合に、ここにいろいろな判断要素が入っていますが、要保護性に限って言うと、絶対に法律専門家でなければならないという要請はなかなか見出しがたいのではないかと思います。
○井上座長 ??井委員の意見も、3の「少年審判手続の構造」というところ、あるいは4の「役割分担」というところにも入った話だと思うのですけれど、さっきの浦委員の適正手続という観点から付添人が必要ではないかということを事実認定の問題に限って考えてみた場合、それは両方から吟味する必要があるのではないかというのが??井委員とか本田委員の意見だと思うのですが、その点はいかがなのでしょうか。ここは対審構造とまで言っていいのかどうかというのは、後で専門家の酒巻委員から御意見を伺いたいと思いますけれど、まず実質論としていかがですか。
○浦委員 もし事実認定に検察官関与というようなことを考えるのであれば、手続自体、起訴状一本主義、予断排除の原則だとか、伝聞証拠排除の原則だとか、そういう手続が要求されるのではないか。今の家裁の審問手続は職権手続であって、裁判官は記録を全部見ているわけで、いわば捜査官の嫌疑を引き継いでおられるという、そういう前提にあるわけですね。保護の立場からですけれども、職権的な手続ということになれば、原理的にはそういうことになり得るのかなと。
そうしますと、その際に検察官が加わると、逆に付添人と裁判官及び検察官との対峙というふうなバランスを失した対峙構造になるような気もしないわけではないのです。
○井上座長 そういう御意見もあり得るとは思うのですけれども、今の現行法の検察官関与はそういう建前に立っていないわけですね。あくまでも職権主義の下で、裁判官の事実認定を助ける立場で、必要な場合に検察官に関与してもらう。その場合に弁護士の付添人が付いていないときは、弁護士の付添人を付けようということになっているわけで、それを前提にした場合、直ちに御説明のとおりにいくかどうかですね。それと、嫌疑を引き継ぐというのは、刑事手続における職権主義についての批判的な説明ではあるのですけれども、それが果たして少年審判手続にそのまま当たるかどうかについては異論の余地もあるのだろうと思うのですが。
○浦委員 現行の少年法自体が、少年の健全育成という少年法の目的に合致するものとして付添人を置いているわけですから、これに公的付添人という制度を導入することで、なお付添人を実質化するという、そういう意味合いであるわけで、そこで公的付添人が付いたからといって、その構造が直ちに裁判官との対峙構造になって、検察官がいなければならないという理由にもならないような気がするのですね。
○井上座長 適正手続とおっしゃったから、多分そういうふうな反論をおっしゃったのでしょうけれども。
○浦委員 それでも、適正手続という観点からしても、現行の少年法の構造からしても、それは直ちに検察官関与が必要だという理屈が導かれるとも思えないです。
○井上座長 ちょっと3のところに踏み込んでいるのですけれど、どうぞ。
○池田委員 今の非行事実の認定に争いがある場合のことは、少年法の改正のときにも議論があったことで、いろんな議論があり得るので、ちょっと置いておくとして、要保護性に関する面で、少年審判の構造などを考えると、要保護性に問題があってもすべて法律家である弁護士を付添人にしなければいけないとは思わないわけです。特に家裁の調査官、鑑別所の技官等の補助によって、裁判官もかなり少年の立場に立って何がいいのかということを考えながらやっています。そういうことからすると、かなりの事件は今のままでもいいのではないかと思うのですが、一方では、本当にすべての事件で公的な付添人制度というのを不要とするまでのものなのだろうか。要保護性の観点でも、重要な情状事実について争いがあれば、それはまた非行事実の認定に争いがあるときに準ずるのだという考え方もあり得ますけれども、例えば精神状態について若干問題になって、その辺りをどう見るのかとか、法律家の観点からの意見を聞きたいという場面もあるように思うのですね。特に重大な処分、刑事処分相当で検察官への逆送が予想される、あるいは少年院への送致が予想される場合で、しかも、本来、少年に誰か保護者がいたり、あるいは誰かほかに手伝ってくれる人がいれば、その辺りはある程度出るかもしれないけれども、それが全くないような事件の場合には、そういう法的な観点からのアドバイザーが必要な場合もあるのではないかという気がしているわけです。
ただ、それではどこまでを求めるのかということになると、これまた非常に難しい問題があると思いますし、もっと具体的に検討しなければいけないと思います。その検討もしてないで何だと言われるかもしれないのですが、そういう実務的な感覚があるということを述べておきます。
○井上座長 分かりました。どうぞ。
○酒巻委員 大上段の議論はしませんけれども、今、池田委員のおっしゃった御意見に私も共感するところがあります。今まで要保護性ということで一括して議論されていましたけれども、やはりその中でも、今おっしゃられた、一切非行事実に争いがなかった場合においても、しかし、見通しとして、実質的には自由が制約されるという意味で当人にとって不利益な処分である少年院送致になりそうであるとか、あるいは刑事手続に連続する逆送決定になりそうだというような場合には、法律家である弁護士付添人が関与する意味は大きいのではないかと思います。そのためにどういう制度をつくることができるかは別にして、適正手続という観点からも、そのような実質的不利益処分に至る手続である場合には、法律家である弁護士がそこにいて、少年の言い分を的確に処遇の判断をする裁判官に伝えてあげる、法律家としての役割を果たすべきところはあるだろうと考えます。
それから、先ほど少年審判の構造の話が出ましたが、現在でも私選で弁護士が付添人になるということはいくらでもあり、その結果として裁判官と少年側との対峙状況という話が出ましたけれども、一種の対峙状況的なことが個別事案において審判廷で起こるのかもしれません。しかし、今の職権主義的審問構造の下で、あくまで建前としては、付添人は審判の協力者という形で関与している。仮に公的な形でそこに弁護士さんが付添人になったからといって、直ちに論理的に、だから相手方に検察官がいないといけないということにはならないのではないかというふうに思っています。
○井上座長 分かりました。どうぞ。
○本田委員 今、公的付添人を付ける例として、刑事処分が見込まれる、あるいは少年院送致が見込まれるというお話があったのですけれども、刑事処分が見込まれる事件、あるいは少年院送致が見込まれる事件について付添人に一体どういう役割を期待しているのか、どういう役割が必要なのかという点がいま一つ分からないのと、こういった基準でつくると、公的付添人を付ければ刑事処分か、あるいは少年院送致かと、少年に分かってしまって、要するに重要な機能である審判の教育的機能とか、そういったものは一体どこへ行ってしまうのだという疑問もあるわけで、果たしてそんな考えでいいのかなという気がします。
○浦委員 今の点で一言だけ。
○井上座長 どうぞ。
○浦委員 家裁の送致書には検察官の意見が書かれていて、少年院送致相当だとか、刑事処分相当だとか書かれているわけで、それなりに送致の段階で事件の分類みたいなものは可能になるように思うのですが。
○本田委員 そこはちょっと説明しますと、意見の一致率は低いですね、検察官の意見と家庭裁判所の決定は。あれは、あくまでも検察官の意見であって、家庭裁判所が実際に見込んでいるというのとは全然意味が違います。
○平良木委員 私は、前に捜査の段階で公的弁護人が付くような事件については、これは少年審判のところでも付けるべきだという、そういう話をいたしましたけれども、もうちょっとこれを絞ることが可能だろうと思っています。例えば原則逆送になるような事件については、恐らくそのようなやり方が可能になってくるのではないかというような気がします。
というのは、刑事事件の場合には、犯罪事実がまず認定されて、それから法定刑が出てくる。ところが、少年事件の場合は、どちらかというと、非行事実の内容はもちろんありますけれども、それよりも要保護性の大小というのが処遇に結び付くことが極めて多い。そういう意味で少年審判というのは特殊だと言われるわけですけれども、原則逆送になる事件というのは、例えば20条の規定などを見ますと、犯罪事実の認定、これがまず前面に出てくる。そして、それ以外の要保護性と言ったらいいのか、事情というのが消極的な要件で出てくると、こういう組合せになっている。そうすると、ここのところは犯罪事実をどう認定するかということが極めて大きい。しかも、原則として逆送される可能性が極めて高い。こういうことを考えていくと、もし付けるとなると、身柄拘束されている者、これは当然のことになりますが、その中で原則逆送事件について付けたらどうかというように思います。
○井上座長 少年法20条2項の、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき、16歳以上の少年に係るもの、こういうものについては付けるべきだということですか。
○平良木委員 はい。
○井上座長 先ほどの本田委員の疑問とも絡むのですが、今の逆送の場合に、平良木委員の説明ですと、刑事事件的な役割をそこで想定されていると思うのですけれども、少年院送致が見込まれる場合、確かに身柄拘束というか、自由を奪う処分であるのですが、それ自体としては保護処分ですよね。そこのところで、付添人が付くことによってどういう役割をさせようということなのか。酒巻委員は、先ほど、そういう場合にも法律家としての役割があるとおっしゃったけれども、今と同じような意味ですか。刑事手続で弁護人が付いて行うようなですね。平良木委員は、今そういうイメージで語られたと思うのですけれども、どうですか。
○酒巻委員 座長の鋭い分析的な御指摘に対して、何かぼわっとした割り切れない話になってしまうのですが、もともと少年法自体の性格が複雑で割り切れぬところがあり、保護処分はすべて、少年の健全育成のための処遇であると同時に、広い意味での刑事司法作用を担っている部分がある。そして保護処分の中でも、取り分け実質的には身体の自由を奪う結果になる少年院送致というのは、少年の保護育成のための措置であると同時に、しかし不利益処分だと思うのですね。その不利益性に着目すれば、そこに至るようなことが見込まれる場合には、審判の過程で、もちろん要保護性の判断に必要な事柄の中には様々な要素があり、そこで調査官の社会調査が果たす意味が大きいのは確かですけれども、法的な側面で少年に有利な事情や言い分、刑事でいう犯情に当たる事柄等を法律家として説明する役割の人がいるということは処遇のための適正な手続に資するであろうと思うのです。
○井上座長 ぼわっとしたレベルでは分からなくもないのですが、その場合、保護観察だって、一種の不利益処分ですよね。それが付いていなければ自由に行動できるわけですから。
○酒巻委員 詰めると不利益処分か・・・。
○井上座長 そういった処分の場合との違いをどう説明するのか、理論としては興味があるのです。言わんとされるところは、何となく分からないでもないのですけれど。
○酒巻委員 あともう一点だけ、ついでに言ってよろしいですか。
○井上座長 どうぞ。
○酒巻委員 もう一つ、少年審判には観護措置という名前ではありますけれども、審判の過程で、現実に少年の身柄の自由が奪われる措置があるわけですね。そして、これはこの間の少年法改正で、何度か期間を延長することができるようになって、その過程で不服申立ての制度も設けられました。だから、観護措置がとられた場合には法律家である弁護士さんがいれば、それが不合理に延びるというようなことを防ぐ意味で、弁護士付添人がいらっしゃる必要性はあるだろうと思います。弁護士付添人の必要性を裏付ける要素として、そういうのが一つあると思います。
○井上座長 分かりました。ほかの方は、いかがですか。どうぞ。
○本田委員 先ほど平良木委員の方から、身柄拘束事件が前提だというようなお話があったのですが、若干これは細かい話になってしまうのですけれども、観護措置というのは、いったんとられたとしても、審判の途中で一回離すというのはちょっとおかしいのですが、観護措置をやめて、例えば少年院送致になりそうなときは、もう一回観護措置を付けて身柄確保して少年院ヘ送るという運用も実は行われているわけですね。その間はどうなるのでしょうか、離れている部分は。
○井上座長 そこは、大きな枠組みができたときに、どうするかという話ですね。
○本田委員 それだから、ちょっと細かいことになると断ったのです。
それから、もう一つは、家裁の受理人員というのが大体今28万人ぐらいですか、交通事件を除いた一般事件で約20万人の事件を受理している。全件送致主義では当然そうなります。そのうちの95パーセントというのは大体審判不開始、不処分、保護観察付きで終わっている。こういう数字から見ると、現在の家庭裁判所で調査官あるいは鑑別所の技官の資質鑑別、社会調査、家庭裁判所の裁判官の後見的な審判構造の中で、きちんとした審判が行われているのだということが結果として出ているのだろうと思うのですね。その上に立って、もう一つ、必要だという、必要だとおっしゃるところで、もう少し説明をしていただかないと、なぜ必要なのかよく分からないのですね。
○井上座長 そこは、期待される役割は何なのかということにもかかわる問題ですね。
○本田委員 そこが今一つよく分からない。
○浦委員 お答えになるかどうか分からないですが、調査官というのは、裁判官の調査命令によって環境調査を行うというのが任務になっているわけですね。もちろん裁判所の方も家裁の少年事件で裁判官自身が大変御苦労なさっていますし、また、調査官もいろんな活動をなさっていることは我々も認めるのにやぶさかではないわけですけれども、少なくとも環境調査の限度が任務だというふうに位置付けられているわけですね。
ところが、付添人の仕事とすれば、可塑性のある少年の改善・更生のために社会資源の発掘ということと、それから環境調査ではなく環境調整ということの役割を期待されているのだろう。そういう意味での役割を果たすことが期待されているからこそ・・・。
○井上座長 「社会的資源の発掘」というのは具体的にどういうことですか。
○浦委員 例えば、就職先の確保、あるいはそれ以外に暴力団と断絶させるだとか、退学処分の回避をさせる・・・。
○井上座長 それはどっちかというと環境調整ですよね。
○浦委員 社会資源の発掘というのは、就職先を確保させて、改善・更生に資する、そういうことになるかと思いますね。あるいは家庭の夫婦関係が不和で保護者として適切でないような場合にその問題の調整をする。さらには、家庭が多額の借金をかかえて破産状態になっているような場合には破産手続をするとか、そういうふうな付添人としての行動があり得ると思うのですね。そういう総合的なことを考えれば、これは、例えば市井のボランティアの方の活動では無理で、弁護士が環境調整を総合的にどういうふうにすればいいかということを判断しながら、しかるべき法的手続を指導したり、とったりするというような、そういうことが可能になるのではないか。そういう意味では、弁護士たる公的付添人が付くことによって、そういう問題が解決でき、かつ、少年の改善・更生に資するといった大きなメリットがあるように思われます。
○本田委員 何点か質問しておきたいのですが、例えば環境調整、今、おっしゃったようなことは家裁の調査官は一切できないのかという疑問があります。それから、就職先の確保とか、暴力団との断絶というのは弁護士でないとできないのかという疑問がまだあるのです。就職先だったら、付添人で、地元の会社の人とか、調査官から探してきてもらって、その人に頼んで、どこか適切な就職先を探してもらうということで十分できるのではないか。暴力団との断絶というのは、これはむしろ警察の方にきちんとやってもらわないと、なかなかああいう組織を相手にやれるものではないだろうという気もするのです。なぜ弁護士さんでなければいけないのかというところが、まだ疑問が解けない。
○井上座長 環境調整については、池田委員に伺った方がよいかもしれません。いかがですか。
○池田委員 今の家裁調査官も問題のない環境調整ならやれると思いますけれども、多くの場合には直接やるのではなくて、保護者なり誰かにこういうことができないかということをしてやる方が多いと思うのですね。特に家裁の調査官がある方向性を決めて調整するとなると、うまくいかなかったら、後で問題になってしまいますので、そういうようなことはしないと思いますけど、どんなことができるかという、そういうアドバイスをすることは可能だろうと思いますね。
○井上座長 実際にも、一定範囲では、かなり熱心にやっておられると思うのですけれども。もし最高裁の方から御説明があれば、どうぞ。
○松村氏(最高裁判所事務総局家庭局第二課長) 結構です。
○池田委員 今の付添人扶助の実情については、先ほど落合参事官が言われたとおり、ばらつきもあって、それがいいとは思っていないのですけれども、現に扶助として付添人を付けている例があるわけです。私自身は、少年事件をそんなに長く経験したわけではなくて、少年院送致もありましたし、逆送もありましたが、大体は保護者が付いていたような気がするのですね。少年事件では、かなりの場合には、家裁調査官も非常に少年に肩入れしていると言うとおかしいですけど、その少年のいいところを探し出して裁判官に伝えようと思ってやっていますので、少年の代弁者的な人がいることの方が多いのですが、ただ、本当に家裁調査官としても少年のいいところなんて全然見当たらない、しかも付き添う保護者もいないというような場合だと、これは空論かもしれませんが、やっぱり本当にこれでいいのだろうか、言い分を聞かなくていいのかというようなことが出て来はしないかと思うのです。
そういうときに、先ほど座長の言われた保護処分である少年院送致と保護観察で何が違うかということになると、理屈の上ではそれは違わないのですが、保護観察だったら、本人もそれは甘受する、あるいは希望している、しかし少年院送致は希望していないというときには、少年の希望と違うから、だから少年法の手続を変えろと言うつもりはないのですが、判断する方としては、それで大丈夫なのかと心配になる面があるのではないかと思うのです。そういう限られた部分について職権で付するという余地はあるのではないか。
○井上座長 既に1、2の範囲をかなり飛び越えて、3、4のところに入ってきているのですが、その3と4について更に付け加えることはございますか。よろしいですか。それでは、次の「5 公的付添人の給源となる弁護士の確保」について、これも第1ラウンドで議論された点ですので、繰り返していただく必要は必ずしもないのですけれども、さらに、こういう問題があるとか、こういう御意見だということがあれば、お聞きしたいと思いますが。
確保は十分だというのか確保は困難だというのか、これは具体的制度設計においてどういう範囲を対象にするのかということとも関係するのですが、いかがですか。
○浦委員 今、弁護士会が検討しているということで聞いておりますのは、観護措置決定を受けた少年、身体拘束を受けた少年を対象とすると。これまでの先の公的付添人に関する日弁連の方のプレゼンテーションでは、なお在宅の場合にも、否認の場合だとか、あるいは法定合議事件の場合などには付添人を付けると、そういうことを言っていたかと思うのですけれども、観護措置決定を受けた少年ということを限定しますと1万8000件ぐらいということになります。その程度の件数であれば、被告人の国選弁護事件を7万件やっているわけで、少年審判によって相当数増えることになるわけですけれども、他方で、被疑者段階で少年事件にも対応するということになりますと、引き続いて審判手続をやるということになれば、被疑者段階で対応可能であれば、審判段階も可能だという、そういうふうな理屈付けになると思われます。また、一方、福岡県などで全件付添制度をやっておりますけど、これは75パーセントぐらいができているようです。
この給源となる弁護士の確保の問題につきましては、公的弁護の際の対応能力の問題と同時に、少年付添の問題も含めて、なお説得力のある議論を出すということで、日弁連が今なお検討しているということを聞いていますので、その結果を待っていただければ、給源の確保は見えてくるのではなかろうかと、そのように思います。
○井上座長 公的弁護のところで、どの範囲にするかということとも絡むのですが、バランス論としてはどうなりますか。そのところで、例えば13万件はとても無理だということで絞ったという場合ですね。
○浦委員 法定合議事件ということに一挙に小さくなりますと、それは今の審判で・・・。
○井上座長 そこはまだ議論しているところで、仮にそう想定した場合の話です。
○浦委員 そうなってしまうと、付添人の大半は、現行の国選付添人が付くということになるのですか。それは外れる場合もあるのでしょうけれども。
○井上座長 事件の範囲の規定ぶりは明らかに違うわけですね。実際の運用でかなり重なってくるということはあるかと思うのですけれども、法定合議事件と、故意の犯罪行為により被害者が死亡したという場合プラス短期2年以上の事件とで、どっちが広いのか、その辺は数字的に分かりますか。最高裁の方で分かりますでしょうか。まず、法定合議事件というのはどのぐらいなのか。今、検察官関与の前提となっている範囲、それはどのぐらいなのかといった点ですが。
○松村氏 最高裁判所でございますけれども、家裁に送致される事件の統計のとり方が、ちょっと仕切りが違うところがありまして、法定合議事件ということの正確な数は今持っておりません。検察官関与の対象となる事件ということでございますけれども、これは平成14年の例でございますが、身柄事件を前提にしますとおよそ1500件でございます。
○井上座長 分かりました。法定合議事件という括りをしていないので、そこは分からないということですね。そこは要件の定めが違うので、どういうでこぼこが生ずるのか定かではないのですけれども、いずれにせよ、浦委員、途中で遮って申し訳ありませんでしたが、だから、どうだということなのでしょうか。
○浦委員 対象事件をどうするか、全身柄事件の被疑者について、そうすれば、明らかにバランスを失するというバランスの問題が出てくるということですが。
○井上座長 そういう範囲としてはバランスを失するということですか。分かりました。確保については、確保できるように考えているとおっしゃるわけですが、被疑者の公的弁護のところとも共通する問題なのですけれど、それで果たしてほかの委員が安心するかということが問題ですね。
○浦委員 安心していただくようなものを出してもらわないといかんと思っています。
○井上座長 この確保の点、ほかの方の御意見はいかがですか。
○本田委員 少年の場合、身柄事件だけという前提で、日弁連は、観護措置がとられた事件だけということでお考えなのですか。
○浦委員 今、そういうふうな方向に向いていると聞いています。
○本田委員 まだ、動いていない。
○浦委員 身柄事件について、1万8000件ぐらいを対象ということです。
○井上座長 向いているとしか言われない弁護士会が結構多くて・・・。
○浦委員 これはこれから動きますので。
○井上座長 「そうします。」と、はっきり言った方が説得力があると思うのですけれど。それでも、1万8000件も大丈夫なのか、恐らくそこの判断の問題だろうと思うのですけれども、それと、さっきのバランスというものも、その範囲だけの問題ではないので、なかなか言いにくいのですが、そこをどう考えるかですね。
更にこの点で付け加える御意見がないようでしたら、先に進んで、正に範囲だとか、そういうことまで踏み込んで議論していただきたいのですが、その前に、審判構造とも関係するのですけれど、6の「(1) 検察官関与制度との関係」という点は、一つの論点になっているわけです。それと、「(2) 被害者等への配慮との関係」について、これも既に踏み込んで御議論いただいたところですので、更に御意見を補足して伺うことがあれば伺いたいと思います。今まで御意見をいただいたところで大体言い尽くしているとお考えならば、それで結構なのですが、いかがでしょうか。
○??井委員 被害者との関係についてまだ一言も申し上げていないので。被害者の立場から言いますと、公的付添人がどの程度の範囲で付くかということについて、この範囲でなければいけないというようなことを申し上げる立場にはないわけですね。ただ、御存じのように、少年事件の被害者というのは、成人事件の被害者よりもいろいろな苦しい立場に置かれているわけで、被害者の立場から申し上げますと、例えば公的付添人が付くことによって、その公的付添人から、更に2次加害、3次加害を加えられるというようなことがあっては困るということは言えるのですね。
ですから、公的付添人になる人は、少年のことも一生懸命考えるのは当然だけれども、被害者のことにも当然思いを致すというようなことができる人でないと困ります。そういう意味では、公的付添人に対する教育というものを被害者の立場から考えてもらいたいというふうな要求があるということと、税金をそれだけ加害者に手厚く使うのであれば、被害者についても、先ほど申し上げたような常勤弁護士で被害者支援をしていただくというだけではなくて、少年事件に関して、もっといろいろな権利であるとか、情報の開示だとか、そういうような施策も併せてとってもらわないと納得できない。自分たちの税金で手厚く加害者が保護されて、自分たちが全く保護されないというのでは、被害者は納得できないということだろうと思うのです。
○井上座長 「苦しい立場」というのは、成人の手続の場合に比べて、今、最後に言われたような点ということですか。
○??井委員 そうですね。情報の開示の問題であるとか、意見陳述の問題であるとか、やはり差があるわけで、もう少し手厚く保護されてしかるべきではないか。
○本田委員 検察官関与との関係については、先ほどちょっと申し上げたのですけれども、先の改正の際にも検察官と弁護士付添人の双方が関与することによって事実認定の適正化を図ると、これが適切だという議論の上に立ってあの制度ができたということを考えるならば、ここで検察官関与の問題を切り離して、公的付添人だけを付するという議論は恐らくおかしいのではないかという気がします。
先ほどちょっと??井委員から否認事件という話が出たのですけれども、これはなかなか難しくて、否認をすれば付添人が付くという結果が果たしていいのかと。争いますと言えば公的付添人が付いてしまうという問題が出てこないだろうか、若干ここは疑問であると考えております。
いろいろ細かいことはほかにもあって、例えば要保護性の認定のためという、先ほどお話があったのですけれども、そのために付された付添人は事実認定に関与できるのかとか、いろいろ細かい問題があると思うのです。そこは検討しないといけないだろうと。
もう一つは、被害者への配慮という観点から考えると、これは当然考えなければいけない話で、当該非行少年あるいは犯罪少年に対して、公的付添人を付しながら検察官関与が許されないということになると、一方からの主張はあるのだけれども、片方からの主張がないということになり、本当に正しい事実の認定とか要保護性とか処分の相当性について被害者の納得が得られるのかというところは大きな疑問でして、到底それでは被害者は納得しないのではないかという気がしますね。ここは被害者への配慮という面でも、検察官関与の問題と切り離しては考えられないのではないかという気がしています。もし公的付添人をということを議論するならばですね。
○井上座長 ほかの方は、いかがですか。
○酒巻委員 今の被害者等への配慮との関係について、私は基本的に??井委員がおっしゃったのと同じ考えで、大きな考慮要因ではありますけれども、被害者への配慮は独立に、そして今以上の一層の対処を考えるべき問題だと思っています。多分成人の場合との一番大きな違いは、先ほどもお話に出たとおり、少年審判が非公開である結果として、直接の情報取得ができないという側面が一番大きな違いだと思います。そのことは先般の少年法改正により、いくつかの局面で情報提供を行い、また刑事裁判で導入されたものと類似の意見陳述もそれなりの形でできるようになっていますけれども、より一層の配慮は必要だと思います。ただ、それと公的な付添人制度を導入するかどうかということとは、論理的には直ちに関係しないのであって、別個に配慮を考えるべきだと思っております。
また、本田委員がおっしゃったように、確かに今の検察官関与の制度は、非行事実の認定に関して、被害者やその遺族を含む一般国民の社会的関心の強い重大事件について、そのような社会的関心をも踏まえて関与しているという側面はありますが、しかし、検察官は被害者の代理人ではなく、あくまで公益の代表者として審判の協力者とされているわけでありますので、公的付添人が付いたからといって、被害者の立場を代弁する検察官が必ず必要だというところに直ちに結び付くわけではないと考えます。
○井上座長 1点だけ、検察官が関与するのが良いというわけでは必ずしもないのですけれども、確か、前の少年法改正のときの議論として、付添人が付いて、事実認定について激しく争われる場合には、裁判官と付添人ないし少年の側が対峙する関係にどうしてもなってしまう。それでは、審判構造の面からいっても、手続の性質からいっても望ましくない。そういう意味で検察官が関与して、双方から主張を述べ合ってもらって、裁判官が判断した方がいいのではないかという議論があったように記憶するのですけれど、酒巻委員は、そういう議論との関係はどうお考えでしょうか。
○酒巻委員 非行事実の認定について激しい争いがあった場合ですね。
○井上座長 はい、そういう場合です。
○酒巻委員 そういう事案だと、裁判所と少年側との対峙状況が・・・。
○井上座長 望ましくないということだったですよね。
○酒巻委員 それは、私選で弁護士がいらっしゃって非行事実の存否を激しく争われる場合に・・・。
○井上座長 付添人が付くとしても必ずしも検察官の存在を要求するものではない、そういうふうになっているというふうに言われたわけですが、全面的ではないかもしれませんけれど、そういう場合、例えば否認事件が典型ですけれど、事実が争われる場合に公的付添人を付けるとしたときには、そういう状況が生じるわけでしょう。
○酒巻委員 その事実認定に争いがある場合については、今の制度が正にそういうことで、対峙状況を回避することをも目的として職権で検察官関与をさせて、公的な弁護人を付けるということですね。
○井上座長 今の場合は、大きな事件で裁判官が必要だと判断すれば、検察官を関与させる。その場合に付添人がいなければ付添人を付けるという構造になっているのですけれども、今度逆転して、そういう場合に裁判官が判断して、付添人が必要であるということになった場合に、同じような構造がそこで生じるはずではないかということなのですが。
○酒巻委員 非行事実の認定に争いがある場合についてはそのとおりだと思いますけれども、私自身は、非行事実の認定に争いがある場合よりも、そうでない場合の必要性を考えていたのです。非行事実の認定に争いがある場合については、今の制度でそれなりに十分対処できていると思っているものですから。さっき言いましたとおり、今だって私選で付添人が付いておられて、そういう場合、必ず検察官が出てこなければいけないだろうというふうにはなってないわけですね。ですから・・・。
○??井委員 ただ、私選で付く場合と国が制度としてそういうことを考える、これは違うと思うのですね。だから私選で付添人が付いたときに検察官がいないときはいくらでもあるのではないかというのは理由にはならないのではないかと思います。
○井上座長 やや私の個人的興味から聴いてしまい、議論を混乱させたかもしれませんが、そういう角度からの論点もあるのではないかと思ったものですから。
大分、議論が進んできたのですけれども、第2の「具体的な制度設計」については、まだ必ずしも議論していただいていない論点があるものですから、それらについても議論をしておいていただかないと、制度設計に結び付けるとした場合困ると思うのです。
無論、そもそも消極だとおっしゃった方の場合は、ちょっと議論しにくいとは思いますが、そういう方も、仮に必要とした場合には、こういうことが考えられるのではないかと、そういう形でも結構ですし、積極的に必要だとおっしゃった方は、たたき台に三つ挙げられているのですが、この辺をどう考えるかについて是非御意見を伺えればと思います。もちろん、ここだけに限定するのではなく、これまでのところに戻って議論していただいても結構なのですが、土屋委員、いかがですか。
○土屋委員 あまり具体案がなくてあれですけれども、私は公的付添人制度の導入をすべきであるという意見を前に申し上げておりますから、その立場でございます。ですから、ここで具体案を示せと御指名を受ける理由はあると認識しておりますが、では、具体案を示せと言われるとそれほど具体案があるわけでなくて、実は困っているのです。ただ、私、今までの議論を聴いていて、一つ、戻ってしまって申し訳ないのですけど、給源の問題として、先ほど公的付添人は弁護士でなければならないのかという問題がありましたけれども、私はできれば弁護士さんがいいのだけれども、いわゆるゼロワン地域だとかいろんなところがありますよね。そういうところで少年事件が起きたときに、弁護士でなければならないとしてしまうと、ちょっと窮屈かなという気もするのです。
それに、現実にその少年審判が何のためにあるのかということを考えると、それを処罰するためにあるだけではなくて、その少年の教育的効果というものが考えられているわけですから、そうすると少年の立ち直りや社会復帰、そういった面で役に立つ人が付けられるということも大事だと思うのです。ですから弁護士さんが一番望ましいと思うけれども、給源として弁護士さんがいない場合もあるわけで、そうするともうちょっと幅広くとっておいた方がいいかなというふうに感じたりもしていました。それが一つです。
それから、身柄拘束のところなのですけれども、身柄拘束という言葉はよくないのでしょうね、少年ですから観護と言うのですね。
○井上座長 身柄拘束というのは比較的ニュートラルな言葉で、身体の自由を拘束されている場合ということです。
○土屋委員 そういう状況にある少年についてはやはり付けるべきであろうと私は思っています。それは成人の場合の被疑者の公的弁護のときに身柄拘束のことから考えたというところとちょっと連続しているのですけれども、やはりそういう少年審判が、成人の刑事裁判と違う機能を持っているということを前提としても、なおかつ、先ほど不利益処分ということが出ていましたけど、そういう面もあるわけで、身柄が拘束された状態にある少年については、その前提に立って制度を考えた方がいいかなと思っております。
ただ、そうした場合にいろいろ対応能力だとかいろんな問題が出てくる。ちょっと広過ぎるかなという気も私はしていまして、そうするともう少し絞り込みをかけた方がいいのかなという気もします。それから、もちろん財政負担の問題もありますし、そういう辺りを考えると、どの程度まで絞り込んだらいいのかなということは、具体案がないので申し訳ないのですけれども、もうちょっと絞り込んだ方がいいかなと。
○井上座長 それ以上、回答を迫っているわけではありません。考え方だけを示していただければ。
○土屋委員 もう一つ、必要的選任制度なのですけれども、これも悩ましく思っているところなのですが、私の考えとしては、職権による選任制度というのでしょうか、そちらの方に力点を置いた方がいいのではないかと思ったりしています。事件によって必ず付けるということで、それはそういう対応能力の問題だとかいろいろありますから、うまく切れればいいのでしょうし、うまく絞り込めればいいのですけど、そういうことができるのかなという気もしていまして、もうちょっと弾力性のある裁判官の判断に任せるような部分があってもいいのかなという気がしています。
○井上座長 分かりました。ほかの方は、いかがですか。
○浦委員 ここで挙げられているいくつかの論点ですけれども、身柄拘束の有無の点では、これは身柄拘束にされている少年を対象とする。それは十分納得できるところであります。罪名による限定ということになりますと、これは先の意見のとおり、罪名による限定はするべきではない、要保護性というふうなことを考えますと、要保護性の程度と罪名とは必ずしも結び付かないということも考えられますので、罪名による限定というのはすべきではないと。後の具体的な制度設計の中でももう少し検討しなければならないと思います。
それから、職権による選任制度についてでありますけれども、この点につきましては、当番弁護士の経験からしましても、成人に比べて少年被疑者が弁護人を依頼することは少ないわけでありまして、それをこれまでは家裁からの付添人選任の依頼、あるいは当番弁護士のいわゆる委員会派遣制度によって後見的に補完してきた、そういう実情があるわけです。このようなことからしますと、裁判所による職権選任制度を設けられるべき必要性は非常に強いのではないかと思います。しかも裁判所の後見的判断で選任制度を設けるということは、裁判官がその手続の全体を主宰している少年審判手続の構造にもなじむものだと思われます。さらには少年扶助事業の長年の実績にも沿うものだろうと考えます。
どういう場合に職権選任をするかということにつきましては、これは現在法律扶助協会と家庭裁判所との間で選任依頼の3基準というのが設けられております。先ほどからも出ていたことのまとめということになるのかもしれませんが、一つは罪質・情状・非行性などに照らし刑事処分又は少年院送致が予想される重大な事件であること。二つ目が少年が非行事実の重要な部分を争っていること。三つ目として、その他、少年の利益のため特に必要と認めること。そういうふうな三つの条件がありまして、こういう要件の下で職権選任制度を採られるということがいいのではないかと思います。
それから、必要的選任の問題につきましては、先の被疑者弁護と同じような問題はあるわけですけれども、少年の場合には、職権選任というふうなことになりますと、先ほど事務局の方の説明にもありましたが、ある程度裁判官が記録を検討されて審理が進んだ段階でないと、その要否が判断できないということもありますので、ある罪名に絞るか、あるいは身柄拘束全件というようなことが対象になるかどうか別にしまして、少年の場合は必要的選任の制度を置く必要性は高いように思われます。しかし、その効果との関係で、なお検討すべき点はあるということは承知しております。
それともう一つ、これは弁護士会の方で検討しているということでは、少年の請求ということも一つ考えることができるのかなと。少年法10条の規定が、少年に付添人請求権を認めた規定であるかどうかというのは争いがあるところです。職権手続の中で請求権というのがあるのかないのか、この辺も議論になるところでありますけれども、少なくとも身体拘束される少年に請求権を認めるということは、先ほど申しました適正手続条項にも合致するのではないか。少年に公的付添人の請求権を認めた上で後見的に裁判所の裁量による職権制度を用意する。そうすることで、少年の保護が十分ならしめられるように考えております。
それから、公的付添人制度下での選任の始期、終期の問題でありますけれども、始期については、被疑者段階の弁護人がそのまま家裁の公的付添人に選任される制度が最も望ましいわけです。特に観護措置決定がなされる段階での活動は大変重要でありまして、例えば、これは福岡県弁護士会などでは、全件付添が始まって以来、観護措置の対象となった約380 人の少年のうち約80人について、在宅に切り替わったという報告もあります。そういう意味で、観護措置決定に対して、弁護士である付添人の果たす役割は相当大きいものがあるように思います。
それから、終期の点ですけれども、これは先ほど事務局の説明にありましたが、今の国選付添人は、検察官送致決定の段階で地位がなくなるとされております。したがって、意見書の言っている一貫した弁護活動ということになりますと、その規定については、今、この段階で見直して、私選の付添人と同じように、少年が逆送決定されてもそのまま弁護人とみなすという規定に基づく運用というか、むしろ、そのような法改正が、運用ではなくて、その辺は制度の問題になろうかと思いますけれども、そういう法改正が必要になろうかなというふうに思います。
○井上座長 最後の点は少年法45条6号の規定ですね。
○浦委員 そうです。45条6号の規定によるということです。
○井上座長 分かりました。ほかの方と違うところは請求権を認めたらどうかという点だろうと思いますが、どうぞ。
○本田委員 私は今までずっと意見を申し上げたように、現行の国選付添人制度以外の公的付添人制度の導入が本当に必要なのかという疑問があるので、余り突っ込んだ話はできないのです。ただ、強いて言うならば、この2番目の「職権による選任制度及び必要的選任制度」のところですけれども、現行法上、少年審判というのは、先ほど申し上げましたように、職権主義的審問構造が採られて、しかも付添人は刑事の弁護人と異なりまして、家裁の審判協力者というふうに位置付けられているわけですね。そういう構造からすると、職権による選任というのが構造的には一番適合するのではないかという気はしますね。あくまでも裁判所に対する審判の協力者ですから。
必要的に選任する、あるいは先ほど少年に請求権を与えるというような話が出ましたけれども、そこの点については、ちょっと慎重に検討する必要があるのではないか。果たしてそういう制度が構造的に合うのかという気はします。前段の疑問が氷解しないとなかなかそれ以上は申し上げられないところです。
○平良木委員 私は、先ほど原則逆送の事件に付けるという言い方をしたけれども、考えようによっては、今の少年法の22条の2とか、あるいは3の規定の運用によってほぼ同じことができると思うのですね。ただ、切り口がちょっと違って、検察官の方の関与からということではなくて、いわゆる公的付添人を付けるという観点からの制度があってもおかしくないのではないかということです。
したがって、そこのところを前提にすると、身柄拘束の事件で、先ほども申し上げましたけれども、原則逆送になる事件、こういうことをまず前提にして、そして、それについて公的付添人を付けることができるのだという形にすればいい。ここのところは、始期がどうか、効力がどうかという問題が出てくるけれども、できれば、私は捜査段階から公判段階まで一貫して同じ人が付けられる制度がいいだろう。そういうのが、例えば運用でできるということであるならば、それはそれでも構わないと思っています。
○井上座長 聴き逃したのかもしれませんが、原則逆送になるような事件については、全件に付けるということでしょうか。それとも、裁判官が職権で付けるのか。どちらですか。
○平良木委員 職権で付けられるという形でいいだろうというように考えますけれども。
○井上座長 裁判官が必要があると認めるときに付けるということですか。
○平良木委員 そうです。要するに切り口を逆の方からも認めるという趣旨です。
○井上座長 ほかの方はいかがですか。請求によるという御意見も出たのですが、そういうことも含めて、ほぼ考えられる御意見は出尽くしたと考えてよろしいですか。現段階において、ということですけれども。どうぞ。
○樋口委員 最初に申し上げましたのは、少年事件の特殊性から公的付添人が必要かどうかというのはなかなか結び付かないのではないかという趣旨で申し上げたわけです。さらに、この問題については、なかなか結論はございませんで、考えは定まっていないのですけど、実態から見ると、簡易送致が四十数パーセントぐらいあり、先ほども出ていましたけど、細かな数字を持っていませんが、少年院、刑事処分と合わせて数パーセントですね。また、少年の場合には非常に再犯も多いという問題もあります。
ですから、この問題については、そもそもこの少年審判制度が制度として理想的に機能しているのかどうかということを抜きになかなか難しいのではないかと思うのですね。ですから、公的弁護制度の延長線での議論なのですが、なかなか難しいですね。
要するに結論というのではないのですけど、少年審判における事実認定、要保護性の認定、判断について、更に万全を期するために何らかの役割があり得ないというわけでもないのかもしれないとは思うのですが、ただ、そうしますと、そこから先は、その辺りが定まらないままで、次に本当は進めないのですけれども、そうすると公益を代表する立場で検察官の関与が必要なのではないかという話になってくるのだと思います。そうすると、そもそも少年審判の理想として言われていますのは、裁判官が審判を通じて少年にその責任を自覚させる、行為の意味、結果についてその重大性を理解させる。その辺りから、社会に与えた影響等についても質問をし、あるいは説示をして、この性格の矯正とか環境調整を行うといった教育的機能を果たすということだと理解していますが、それが変わってくるのではないか。そして、変わることが、また、そこから先いいのかどうかという判断になってきますね。だから、その辺りを抜きにして本当に議論ができるのかという感じがいたします。
○酒巻委員 選任方式の部分については、本田委員がおっしゃったのと同じような意見でありまして、基本的に職権主義的審問構造を採っている少年審判においては、一番なじむのは職権による選任という方式だろうと思っております。
それから、請求というのは、そういう意味で、必要はないであろう。また、必要的選任という制度は、公的刑事弁護の場合と同じような、必要的にした場合に、その先の手続への影響という難しい問題があり、望ましくないだろうと思います。以上です。
○井上座長 付かなかった場合、あるいは付くのが遅れた場合の法的効果ということでしょうか。
○酒巻委員 はい。
○井上座長 ほかに御意見がありますか。よろしいですか。ひとわたり、消極的な御意見も含めて御意見を伺ったと思いますので、中身の議論はこれで一応終了したいと思います。
次に、次回以降の進行に関する御相談をしたいと思います。まず、9月以降の検討会の日程について、既に皆様に打診があったかと思いますけれども、事務局の方から説明していただけますか。
○落合参事官 9月以降の日程につきましては、お手元の配布資料11-2のとおりとさせていただきたいと思っております。裁判員制度・刑事検討会と合わせ、日程調整には相当御無理をお願いしたところでございますが、お許しいただきたいと存じます。
なお、9月1日から3日まで地方調査を計画しております。予定としましては、9月1日に釧路地裁の管内ということになりますが、北海道北見市におきまして、支部の実情調査を行いたいと考えております。翌2日には、旭川に移動していただき、裁判所及び弁護士会を視察し、国選弁護人となる弁護士の確保の実情や手続の実情などについて説明を受けるとともに、旭川家裁から家裁調査官の方を中心にヒアリングを行いたいと考えております。翌3日には、旭川地裁・地検・弁護士会・警察の実情調査を行いたいと考えております。移動距離が長い中での強行軍的な日程になろうかと思いますが、御容赦いただきたいと存じます。
○井上座長 日程及び地方調査については、今の御提案のとおりでよろしいでしょうか。一部の委員の方は、特に強行軍になるというふうに伺っていますが、暑い時期ですので、あまり御無理をなさらずに、日程をこなしていただければと思います。
今の日程を前提に、9月以降の議論の進め方なのですけれども、この点について、まず法律案立案の責任を負う推進本部の事務局から、今後、どういう作業スケジュールであるのかということや、検討会の検討の進め方について、お考えをお聴きして、その上で御議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○落合参事官 事務局として考えておりますところを御説明させていただきたいと思います。
法案の提出は、来年の通常国会を予定しておりますので、そこから逆算ということになります。そうしますと、事務局といたしましては、年内には、新たな制度の基本的な在り方を顧問会議にお諮りし、条文案の作成作業等を進めていく必要があると考えております。そのような日程を踏まえ、事務局としては、新たな制度の骨格案のようなものを作成したいと考えております。
このような事務局の作業予定を踏まえて考えますと、本検討会では、これまで、既に第1ラウンド及び第2ラウンドと2回にわたりまして、活発に御議論いただいたところでありますが、主要な論点に関し、御意見が分かれ、また、新たな論点の指摘がなされ、更に検討を行うとされた論点もありましたので、そのような論点について、できる限り重複を避けつつ御議論いただきたいと考えております。そこで、10月3日の第12回検討会におきまして、そのような論点を中心として御議論をいただいてはいかがかと存じます。
そのような御議論をも踏まえて、事務局の方で、新たな制度の骨格案のようなものを作成して、この検討会にもお示しし、御議論いただきたいと考えております。日程上、そのような御議論は、11月11日の第13回検討会でお願いすることとなろうかと思いますが、11月11日の予定につきましては、10月3日に、その日の進み具合を踏まえ、お決めいただいてはいかがかと思っております。以上でございます。
○井上座長 ありがとうございました。先日の裁判員制度・刑事検討会の進め方と同じようなイメージだろうと思いますけれども、今、落合参事官から説明がありましたように、主要な論点については、今後、できる限り重複を避けつつ、特に意見が分かれたような点を中心に更に検討を行う。その後に、それを踏まえて骨格案のようなものを示していただいて、それをベースにして議論するということにしていただければということですが、こういう事務局のお考えについてはいかがお考えでしょうか。そういうことでよろしいですか。
今、落合参事官の方からもちょっと含みのある発言がありましたが、要するに10月3日は、更に検討を行うべき点を中心に議論を行う。ここははっきりしているわけですが、それでおさらいが済むのかどうか、済まなければ恐らくどこかにまた入れるとか、あるいはほとんどの人が重なっていますので、裁判員制度・刑事検討会の会合の前か後ろにくっつけてダブルヘッダーで組むということも可能性としてはないわけではないと思いますが、いずれにしても、その辺は10月3日の議論の進み具合を見ながら、更に御相談させていただく。ただ、全体としてのイメージは、今お話しいただいたように、その後のスケジュールもありますので、10月3日にとにかくできるだけ集中的に御議論をいただいて、それを踏まえて骨格案のようなものをつくっていただいて、それについて、更に11月に議論をすると、大体こういうお心づもりで臨んでいただければと思います。そういうことで御協力をよろしくお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○浦委員 本日議論しました公的付添人の問題、これは議論の分かれたところということで10月3日、あるいは11月に論議されると、そういうお考えですか。
○井上座長 さっきの御説明の趣旨ですね。
○浦委員 はい。
○落合参事官 10月3日には、基本的には公的弁護制度と公的付添人制度の両方を御議論いただきたいというふうに思っております。
○井上座長 ですから、終了時刻の制限はないかもしれないということもお覚悟の上、体力を蓄えてお臨みくださればと思います。よろしいでしょうか。
最後に、事務局から連絡事項はありますか。
○落合参事官 毎回申し上げておりますとおり、事務局では、今般の司法制度改革につきまして、広く国民の皆様からの御意見を承っており、目録を作成しておりますので、御希望の委員の方は、適宜事務局にお申し付けください。なお、検討会の委員の方で直接意見を御覧になりたいとの御希望がありましたら、本検討会終了後の適宜の機会に事務局にお申し付けください。以上です。
○井上座長 それでは、本日はどうもありがとうございました。