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公的弁護制度検討会(第13回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年12月24日(水)13:00~15:17

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議題
公的弁護制度及び公的付添人制度について

5 配布資料
資料13-1 公的弁護制度について

6 議事

(1) 公的弁護制度について

 まず、事務局において作成した公的弁護制度の骨格案(資料13-1「公的弁護制度について」)の説明がなされ、引き続き同骨格案について議論が行われた結果、その基本的な方向性について委員全員が賛成しており、今後、事務局において、同骨格案を基に、本日各委員から述べられた意見も参考にして立案作業を進めることが了承された。
 議論の概要は以下のとおりである。(□:座長、○:委員、●:事務局。)

ア 請求による選任制度

○ 骨格案において、罪名による限定をいわゆる必要的弁護事件の範囲とするとの提案がなされており、これは、私が段階的実施案として述べたところが基本的に採用されているので評価したい。在るべき制度としては、逮捕勾留された全被疑者を対象とし、罪名による限定をすべきでないと考えていたが、必要的弁護事件の範囲とすることにより、おおむね重要な刑事事件を対象とすることができるという意味で、その意義は大きいと思う。請求権を与える事件の範囲については、この範囲を固定的に考えるのではなく、制度実施後の実績を検証しつつ、拡大方向への適時の見直しを行っていただきたい。

○ その他要件の審査に関し、その基本的な考え方には賛成であるが、弁護士会からの書面の提出あるいは選任の申出からの相当の期間の経過による選任がスムーズにできる必要がある。この辺りは、弁護士会の規模や地理的な事情によっても違ってくると思うので、それぞれの地域で関係機関が協力してスムーズな運用ができるようにしなければならないが、法制度としても、各地の実情に配慮できるようにしなければいけないと思う。

● 運用の在り方にも配慮しつつ、法令上どのように対処するか検討してまいりたい。

○ 弁護士会において、私選弁護人の選任依頼に速やかに対応できる態勢を構築してもらわないと、弁護士会の手続の遅れによって国選弁護人が選任されるというのでは国選弁護人の選任要件の性質を変容させることにもなるから、弁護士会には、そのような態勢の整備をお願いしたい。それぞれ制度の運営に携わる者が協力しながら、速く弁護人を選任できるようにしていくことが望ましいと考える。

□ 手続的には、対象事件の被疑者に対し、逮捕された段階で権利を告知し、弁護人の選任を希望する者は弁護士会に選任を申し出てもらうということになるのか。

● 法律、内規あるいは運用上、そのような仕組みを採りたいと考えている。

○ 逮捕段階で弁護人の選任の申出があり、かつ、お金がなく資力要件を満たす場合、国選弁護人の選任時期が勾留段階となると、逮捕段階ですぐに対応できるときであっても、逮捕段階の被疑者からの国選弁護人選任の申出には対応しないということになるのか。

● 国選弁護人の選任時期を勾留段階としたのは、関係機関の対応の問題のほか、貧困要件等の審査に当たり、場合によっては裁判官が被疑者から直接確認することが必要であろうということも考えると、逮捕段階とするのは難しいと判断したものである。

○ 貧困要件の基準となる金額について、どのように考えているか。

● 大きな考え方については骨格案に記載したとおりであるが、具体的な金額については、国民感情や標準的な弁護報酬の金額なども踏まえて、今後決められることとなると考えている。

○ 虚偽の資力申告書の罰則については、違法性の程度からして罰金程度とすべきではないか。

○ どのような罰則とするかについては、行為の違法性の程度や類似の行為に対する罰則との整合性も考えた上で定める必要があり、一般に罰金を上限とするという議論では済まないのではないか。

○ アメリカの資力申告書は宣誓供述書であり、虚偽の記載があった場合の法定刑には、罰金と自由刑の両方があったと思う。文書の法的な性質は制度上違うとは思うが、資力に関する虚偽申告が必ず罰金かというと、必ずしもそうではないのではないか。

イ 職権による選任制度

○ 判断能力の不足として、具体的には、どのような場合を想定しているか。

● 一般的には、裁判官が勾留質問等の際に把握した事情に基づいて、被疑者が国選弁護人選任請求権を行使するのが相当であるのに行使しないような場合である。公判段階の職権選任に関して、心神喪失や心神耗弱の疑いなどが規定されているが、捜査段階もいろいろな場合があろう。

○ 国選弁護人選任請求権のない被疑者に関し、適切に私選弁護人の選任が行われるためには、私選弁護人依頼権の告知が重要になると思われるので、その点に留意してほしい。

ウ 弁護人の選任・解任及び選任の効力に関する事項

○ 弁護人の選任時期について勾留段階からとしたわけだが、例えば資力申告書の作成やその他要件に関する弁護士会への通知など、選任行為の準備については、逮捕段階から始めることが必要であろう。また、解任事由を法定するのであれば、骨格案のようなものにならざるを得ないのではないかと思うが、弁護人の解任は、時には被疑者・被告人にとって重大な不利益となるから、被疑者・被告人の利益を害さないようにするという明文の規定を置いてもらいたい。さらに、解任について、適正な手続が設けられる必要があると思う。

○ 解任の手続に関してであるが、不服申立てを認めると手続が止まるなどの疑問がある。弁護人の意見聴取などの手続の整備については、考えとしては分かるところであるが、法に盛り込むかどうかについては、現在の制度との整合性を考えてもらう必要があると思う。

○ 選任できる人数については、追加できる人数を一人に限定する必要はないと思うので、更に検討してほしい。

● 検討会でも議論されたところであるが、資力がなく国選弁護人を選任された者は複数の弁護人を付されるが、私選弁護人を依頼した者は、資力によっては一人だけしか頼めないというのではバランスを失するし、常勤弁護士制度が設けられることも考えると、弁護人の負担が重い事件には、それに対応できる弁護士を付けるべきであると考えられるところである。

エ 弁護士の確保及び報酬の算定・支払

○ 具体的な事件についての弁護士の推薦は、弁護士の選定にかかわる実質的な判断が介在するところであるので、恣意的な運用がなされると、弁護活動の自主性・独立性に重大な影響を及ぼすことになる。運営主体は、弁護士会と提携・協議しながら、弁護人の通知・連絡業務を行っていくことが重要であることを改めて指摘したい。

○ 公的弁護において質の高い弁護士を確保するためには、適正な報酬の基準を定めることが重要だと思う。この点に関して、選任できる人数に関する骨格案は非常に重要な意味を持っていると思っており、被疑者・被告人に公的弁護人を付けることや適正な報酬を確保することについて国民の理解を得るためには、その辺りのバランスが重要ではないかと思う。

□ 従来議論されていた常勤弁護士や契約弁護士のほか、一般の弁護士についても、契約により確保するという部分でカバーされるのか。

● 契約には、例えば100件を受任することを約し、これに対する報酬をまとめて受け取るという契約で、100件の受任を義務付けられるものもあり得るし、裁判所から選任されたら基本契約に従って弁護をしてもらうというフランチャイズ契約のようなものまで幅広いものが考えられる。一般の弁護士が個別に選任される場合については、そのようなフランチャイズ契約のようなものが考えられる。

○ 常勤弁護士について、検察官からの出向があると、国民の目から見て心配されるのではないか。裁判官が常勤弁護士になることは、刑事裁判全体のことを考えると良いことだと思うが、検察官が出向するとなると心配がある。

○ 裁判官と検察官で区別して考える必要はないであろう。むしろ検察官となる者が弁護人の立場から事件をよく見ておくことは、貴重な経験になるであろう。

○ 積極的に検察官に一定期間弁護人の役割を果たさせるべきである。弁護人になってみると、違う風景を見ることができる。

● 司法制度改革推進本部では、判事補、検事に弁護士の経験をさせるための法案を提出する予定であり、そちらで弁護士事務所に行けば、民事事件のみならず刑事事件もやることになる。法曹は、立場によって仕事をするという前提で制度をつくっているところである。

オ 弁護費用の回収

○ 骨格案に基本的に賛成であるが、起訴された場合の弁護費用の負担の仕組みについては、費用がいくらになったか判決の時までに裁判所に分かる仕組みにする必要がある。起訴されなかった場合と告訴人等の費用負担については、裁判所には事情が分からないので、検察官の申立てによるという仕組みにしてもらわないと動かないであろう。少年事件の場合については、成人が起訴猶予の場合に費用負担させられないこととのバランスで、非行事実が認定されると費用負担が原則となることには疑問がある。できれば保護処分で終局した場合に費用負担させるという切り方はできないか更に検討してほしい。

● 少年事件の場合について、そのような考え方もあり得るとは思うが、骨格案は、少年法31条で非行事実が認定されたときには国選付添人の費用を徴収できることとのバランスを考慮したものである。

○ 検察官により不起訴とされた場合と少年審判で裁判所が決定した場合とは性質が違うので、現在の少年法は、そのような定めになっているのであろう。現在の取扱いは、そのような性質から来るものであって、成人とのバランスということだけで、違った取扱いをする理由になるのか疑問がある。

カ 公的弁護制度下での弁護活動の在り方

○ 弁護活動の自主性・独立性を確保するために、運営主体の弁護士に対する指揮命令を制限することを定めることについては評価したい。また、運営主体が契約関係に基づく措置をとることは、弁護士にとって著しい不利益や不名誉を生じることがあるから、慎重な運用を確保するため、公正中立性を確保するために設けられる機関の議決を要するとしたことについても評価したい。運営主体が契約関係に基づく措置を講ずる際の基準を定めることができることを否定するものではないが、弁護士会が基準を定めている場合には、運営主体は、特段の事由がない限り、弁護士会の基準と異なる基準を定めないようにしてほしい。違法不当な弁護活動に対する措置については、原則として弁護士会による措置を待って、これを尊重する運用が重要だと思う。

□ その点については、これまでほかの委員から異なる意見が述べられていたところであり、ここでそれを繰り返すことはやめ、今の御意見は御意見として承ることとしたい。

キ 運営主体の在り方

○ かねて独立行政法人が良いと思うけれども、三権分立との関係から、司法の関与する法人が考えられないかと考え、そのような意見を述べていたところであり、そのような趣旨で骨格案が出されたことに感謝したい。骨格案に記載されたところを具体化することにより、独立性、中立性、公平性のある運営主体になり得るのではないか。

○ このような組織形態がとられることは望ましいと考える。ただ、長の任命に当たり法人の意見が反映される仕組みや、主務大臣による中期目標の指示に当たり弁護士会との協議が行われる仕組みなどが考えられてよいのではないか。また、経済効率だけが過度に追求されることのないようにしてほしい。機関の設置には賛成であるが、有識者の選任に適切な人選が行われる仕組みが必要になるだろう。司法ネットの一環として公的弁護に関する業務を位置付けることにも賛成であるが、市民が良質な法的サービスを受けられる社会をつくるためには、中核となる運営主体に十分な財政的措置がとられることが重要である。司法ネット構想を実現するためには、弁護士、弁護士会の関与が不可欠であり、運営主体の業務全般について、運営主体と弁護士会及び日弁連とが適切に連携・役割分担していくことが重要であると考える。

● 13回にわたり熱心に討議していただいたことに感謝したい。今後、関係各方面との調整を進め、次期通常国会に法案を提出するよう頑張りたい。

(2) 公的付添人制度について

 次に、公的付添人制度について、事務局から、これまでの検討会における議論を踏まえると、事務局として具体的な制度設計に関する資料を作成しうる段階にないと判断した旨及びその理由の説明がなされ、本日は、同制度に関する今後の検討の在り方について議論することとされた。その結果、法曹三者(法務省、最高裁判所及び日弁連)が開催する意見交換会において、本検討会における議論も生かして検討することに期待することとされた。
 議論の概要は以下のとおりである。(○:委員、◆:法務省)

○ 公的付添人制度については、様々な問題点が指摘され、導入の要否について大きく意見が分かれており、これを導入するとなると、少年審判の構造論にまで踏み込んだ議論が必要で、公的弁護制度の導入を契機として公的付添人制度の導入の要否を検討する本検討会の範疇を超えるのではないか。そうすると、本検討会とは別の枠組みで、少年審判の構造論にまで踏み込んだ議論の場が必要ではないかと考えられる。この点について、本検討会での議論の推移などを踏まえ、法務省において議論の在り方について検討されていると聴いている。

◆ 公的付添人制度については、更に幅広い検討が必要ではないかとの御指摘もあったことから、今後、法務省、最高裁、日弁連の三者において意見交換会を開催したいと考えている。これまで本検討会で行われた議論も十分に踏まえて幅広い観点から意見交換を行い、その状況を踏まえて検討していきたいと考えている。

○ 引き続き法曹三者の意見交換が継続されることになったことはやむを得ないだろう。司法制度改革審議会意見書の趣旨に従って、速やかに公的付添人制度が実現するよう十分に議論してほしい。

(3) 今後の予定等

 今後、必要が生じた場合にはその都度開催することとなった。

(以上)